説明

生分解性一酸化窒素発生ポリマー及び関連医用デバイス

a)式


(式中、Rは、水素又はポリマー、Aは、それぞれ独立して、NONOate含有アミンジオール単位及び脂肪族ジオール単位から選択され、nは1より大きい整数である。ただし、少なくとも1つのNONOate含有アミンジオール単位及び脂肪族ジオール単位がそれぞれ存在する。)を有する化合物及びb)クエン酸−脂肪族ジオールプレポリマーのアミン架橋エラストマーから選択される生体適合性弾性ポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、出願番号61/192,654(2008年9月19日出願)の出願の優先権を享受し、全趣旨を参照することによりここに取り込む。
【0002】
本発明は、一酸化窒素放出性N22-官能基を備える、特定の自発性、生分解性一酸化窒素発生クエン酸系ポリマーに関する。より詳細には、本発明は、血栓症及び再狭窄の防止に使用するためのジアゼニウムジオール化された脂肪族生分解性エラストマーに関する。
【背景技術】
【0003】
多くの最新の医療処置では、合成医療デバイスが、治療を受けている個々の患者に残存することを要する。血液と接触する種々のインプラント型の体外医療デバイスを製造するために、多数の重合材料が現在使用されているが、そのような材料の血栓形成の性質は、患者に深刻な合併症をもたらし、最終的に機能不全をもたらす。その結果、特に脈管移植片の場合、全身系の血液凝固の阻止療法が、血栓形成の危険性を低減させるために臨床的に常に要求される。さらに、アテローム性動脈硬化症はすべての先進国において一般的で、主要な死因となり、アメリカ合衆国での障害である。心血管疾患による死は1日につき2400件、あるいは1年につき871,517件にものぼり、これに次ぐ5つの脂肪原因を組み合わせても余りある。近年、重篤なアテローム硬化性心筋梗塞又は末梢性動脈疾患では、気球血管形成及びステント(バイパス移植又は動脈内膜切除)によって治療されている。
【0004】
しかし、動脈壁に沿ってルーメンを侵食し、最終的に、平滑筋細胞の精力的な成長をもたらす多くの事象のカスケードに起因する新生内膜過形成の発現のため、これらの処置の耐久性には制約があり、再狭窄又は管閉塞を引き起こす。この問題の広範囲にわたる特性の証拠は、7900万人のアメリカ人が、現在心血管疾患にかかっていることであり、この数は、老年人口の成長によりかなり増加すると見積もられる。また、アメリカ合衆国において、繰り返しのインターベンションの費用がそのかなりの部分を占めるが、1年につき4320億ドルが、心血管疾患に関して費やされると見積もられる(Rosamond W. et al., Circulation, 2007, 115: p69-p71)。
【0005】
血栓症及び新生内膜過形成を防止する1つの有望な治療的戦略は、一酸化窒素(NO)、血管壁を保護するのに役立つ内皮細胞において通常生産された分子の使用に集中している。NOは、3つの異なるNO合成酵素(NOS)の1つによって、L−アルギニンから作り出される非常に短い半減期を有する、小さな、拡散性の分子である。NOは、強力な血管拡張薬、脈管細胞増殖及び移動の抑制剤、血小板凝集の抑制剤、白血球走化性の抑制剤及び内皮細胞成長の刺激剤としての重要な役割を果たす(Ahanchi S. et al., Journal of Vascular Surgery, 2007, 45: A64-73)。その結果、NOを放出するために自発的に分解する化合物が、脈管構造での使用のために広く研究されている。
【0006】
金属錯体、ニトロソチオール、ニトロソアミン及びジアゼニウムジオレートは、有効なNOドナーとして開発された分子構造の全サンプルである(Wang P. et al., Chem Rev, 2002, 102: 1091- 1134)。ジアゼニウムジオレートNOドナーは、それらがNOドナー1モルにつき2モルのNOを与えるための生理的条件(すなわち、37℃、pH7.4)下で、自発的に分離するため、医療用途のために特に魅力的である(Hrabie J. et al., Chem Rev, 2002, 102: 1 135-1154)。長期間局所的にNOを放出又は発生させることができる合成重合材料を使用することにより、最終的に、血液と接触している多くの種類の生医学的移植片の表面で血栓症の危険性を相当に低減させ、新生内膜過形成の発達を防止する方法を提供するかもしれない。
【0007】
今日まで、ポリウレタン(Jun H. et al., Biomacromolecules, 2005, 6: 838-844)、ポリ(エチレンイミン)(Davies K. et al., J Med Chem, 1996, 39: 1148- 1 156)、ポリメタクリレート(Parzuchowski P. et al., JAm Chem Soc, 2002, 124: 12182- 12191)、ポリ塩化ビニル (Saavedra J. et al., J Org Chem, 1999, 64: 5124-5131)、ジアミノ架橋ポリメトキシシラン (Smith D. et al., Biomaterials, 2002, 23: 1485-1494)、デンドリマー (Stasko N. et al., JAm Chem Soc, 2006, 128: 8265-8271)等のジアゼニウムジオール化されたポリマーが、NOドナー剤の最も研究されたクラスであった。しかし、NOを発生させるためのジアゼニウムジオール化された脂肪族生分解性エラストマーは、製造されていない。
【発明の概要】
【0008】
上記を鑑み、本発明の目的は、血栓症及び再狭窄の予防のための一酸化窒素を放出するN22-(NONOate)官能基を含む生分解性一酸化窒素発生ポリマーを提供することである。本発明の1以上の面が特定の目的に合致し、1以上の他の面が他の目的に合致し得ることは、当業者によってよく理解されている。本発明のすべての面に、すべてのその事項において、各目的が等しくあてはまらないかもしれない。そのように、以下の目的は、本発明の如何なる唯一の面に関しても、択一的に見なすことができる。
【0009】
したがって、本発明の目的は、クエン酸、脂肪族ジオール及びアミノ含有モノマーの重縮合を含むアミノ含有クエン酸系エラストマーを製造する方法を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、第2のアミン含有単位の所定量の存在を含む生分解性アミノ含有クエン酸系エラストマーの機械的特性及びNO放出をコントロールする方法を提供することである。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、NOでグラフト、架橋及び処理するためにここで記載したNO放出エラストマーのコーティングを含む被覆ePTFEグラフトの製造方法を提供することである。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、NO放出エラストマーを含む医用デバイスを提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】NONOate PPOC及びNONOate PDCを製造するために用いられた方法を示す概略図である。
【図2】NONOate PPOC及びNONOate PDCを製造するために用いられた方法を示す概略図である。
【図3】種々のアミノジオール組成物のPDC及び種々のプロリン含量のPPOCの機械特性を示す。
【図4】PDC及びPPOCの張力の重圧カーブを表す。
【図5】PDCの分解性を示す。
【図6】(a)PPOC20及び(b)PDC10で24時間、(c)PPOC20及び(d)PDC10で1週間培養したHAECの顕微鏡写真(×200)である。
【図7】(a)ePTFEグラフト対照の内表面、(b)被覆ePTFEグラフトのない表面、(c)ePTFEグラフト対照の横断面及び(d)被覆ePTFEグラフトの横断面のSEMイメージである。
【図8】フィルム及びPDC10被覆ePTFEからのNO放出である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
いくつかの非限定的な実施形態で示すように、本発明は、一酸化窒素放出N22-官能基を含む生分解性一酸化窒素発生ポリマーに関する。一酸化窒素(NO)は、血小板粘着力のよく知られた阻害剤であり、健康な内皮の抗血栓性に顕著に関与する。一酸化窒素は、新生内膜過形成、つまり、一般に、例えば、気球血管形成及びステント、バイパス移植並びに動脈内膜切除等の血管インターベンション後に再狭窄をもたらすプロセスの強力な阻害剤である。従って、本発明のポリマーは、それらの表面で局所的にNOを放出するか発生し、非常に増強された抗血栓性を示し、血管壁にダメージを与える装置に起因する新生内膜過形成を低減させることができる。本発明のそのようなNO放出生分解性ポリマーは、ホスティング組織への刺激なしに、機械的にダイナミックな環境内で安定性及び構造的完全性を付与することができ、軟部組織のそれらに類似した機械特性を示すことができる。
【0015】
具体的には、本発明は、式Iを有する生分解性弾性ポリマーに関する。

(式中、Rは、水素又はポリマー、Aは、それぞれ独立して、NONOate含有アミンジオール単位及び脂肪族ジオール単位から選択され、nは1より大きい整数である。ただし、少なくとも1つのNONOate含有アミンジオール単位及び脂肪族ジオール単位がそれぞれ存在する。)
特定の実施形態では、Aは、それぞれ独立して、−O−(CH2)8−O−及び−(CH2)2−N[(N+=N−O-)O-]−(CH2)2−N+2−(CH2)2−O−から選択される。
また、本発明は、特定のクエン酸−脂肪族ジオールプレポリマーのアミン架橋性エラストマーに関する。特定の実施形態では、クエン酸−脂肪族ジオールプレポリマーのアミン架橋剤は、プロリンであり、好ましくは、trans−4−ヒドロキシ−L−プロリンである。
【0016】
特定の実施形態に関するように、本発明のポリマーは、調整できる機械特性並びにインビボ及びインビトロの生体適合性を備えたクエン酸系生分解性弾性ポリマーとすることができる。そのようなポリマーは、種々のアミン単位、1つの水酸基とジオールとの双方で同様に、種々の脂肪族ジオールで、例えば、米国特許出願第10/945,354(2004年9月20日出願)(全趣旨を参照することによりここに取り込む)に開示されたように、製造することができる。にもかかわらず、NO発生は、ポリマーネットワークにNH官能基を取り込むことによって達成することができる。NO放出エラストマーは形成、キャスト又は成形し、モノリシックデバイス(例えば、植込み型装置(例えば、薬剤デポット)又は留置デバイス(例えば、カテーテル又は体外管セット腎臓透析)を形成することができる。弾性ポリマーは、他の基体(例えば、ポリマー基板(例えば、発泡ポリテトラフルオロエチレン)又は金属移植片の表面)のコーティングとして適用することもできる。本発明のエラストマーは、血管を包むためのバイオフィルムとして作用させることもできる。
【0017】
特定の非限定的な実施形態では、本発明は、自発性の生分解可能な、NO放出クエン酸系エラストマーの製造に関する。エラストマーは、クエン酸及び脂肪族ジオールのプレポリマーを合成し、ポストリンキングの間に架橋性アミン単位の添加及びNOガスの反応によって得ることができる(図1)。エラストマーは、クエン酸、脂肪族ジオール及びアミノジオールの重縮合、架橋及びNO処理によって製造することもできる(図2)。
【0018】
図3は、エラストマーの密度及び機械的特性を示し、一方、図4は、異なる組成でのエラストマーの典型的な引張−歪カーブを表す。図3に示すように、エラストマーの機械的特性は、プロリン又はアミンジオール含量を調節することによって、良好にコントロールすることができる。 特に、すべての第2のアミン含有エラストマーは、クエン酸/l,8−オクタンジオール系エラストマー(POC)より強いが、伸長はわずかに減少する。PDCの引張強さは10.71Paの高さ、ヤング率は、合成条件によって、5.91から32.64MPaの範囲であり、一方、引張強さ及びヤング率は、POCのそれらに対して約4から60倍より大きいところまで増加する。
【0019】
弾性PDCの分解特性を図5に示す。種々のアミンジオール含量でのエラストマーは、同程度の分解率を示す。エラストマーの質量損失は、37℃でのPBS中にて、最初の2週間で4から6%であり、4週間後に7から12%であり、6週間後に18から22%となる。
【0020】
エラストマーのHAEC細胞接着及び増殖を、1日後及び1週間後に観察する。図6(a)及び(b)における顕微鏡写真は、両方の種類の細胞が、弾性PPOC20及びPDC10に接着し、通常の表現型を表すことを示す。1週間後、細胞は融合する(図6(c)及び(d))。
【0021】
図7は、PDC10でコートした前後のePTFEのマイクロアーキテクチャを表し、被覆ePTFEのフィブリル及びノードのネットワークのマイクロアーキテクチャが堆積したPOC層内で保存されることを示す。
【0022】
図8は、NONOateエラストマー及び被覆ePTFEのNO放出特性を示す。PPOC10は、7日間NOを放出し続ける。PPOC20及びPPOC30では、ほぼ90%のNOが最初の2日間で放出される。 PDC5及びPDC15は、類似の放出傾向を示す。
【0023】
ePTFEグラフトは、多孔性で、ガス又は有機溶剤が浸透可能である。また、ePTFEの孔サイズは、製造の間、ストレッチ量を変えることによって調節することができる。液体プレポリマー溶液は、ePTFEに浸透することができ、ポスト架橋後、ポリマー改変ePTFEを得ることができる。図8で認められるように、被覆グラフトにおけるNONOate PDC10被覆コートのePTFEからのNO放出は、約20重量%である。 大部分のNOは、最初の3日間にグラフトから放出する。
【実施例】
【0024】
材料:1,8−オクタンジオール(98%)、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)−エチレンジアミン、trans−4−ヒドロキシ−L−プロリン及びクエン酸(99.5%)をシグマアルドリッチ(セントルイス、MO、USA)から購入して使用した。ePTFEグラフトを、W. L. Gore & Associates, Inc. (3300 E. Sparrow Ave, Flagstaff, Arizona, 86004, USA)から購入する。
【0025】
以下の非限定的な実施例及びデータは、ここで記載するように、クエン酸系生分解性弾性ポリエステルの製造及び使用を含む、本発明の組成物及び/又は方法に関する種々の面及び特徴を示す。関連した実施例、手順及び方法は、出願中の米国特許出願第10/945,354(2004年9月20日出願)及び第11/704,039(2007年2月8日出願)に記載され、双方とも全趣旨を参照することによりここに取り込む。
【0026】
実施例1
プロリン含有ポリ(1,8−オクタンジオールクエン酸エステル)(PPOC)の製造
クエン酸:1,8−オクタンジオール:トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリン、それぞれ100:100:10(PPOC10)、100:100:20(PPOC20)、100:100:30(PPOC30)のモル比のモノマーを、ヒドロキシプロリン架橋弾性フィルムを製造するために使用する。実施例として、0.1モルの1,8−オクタンジオール及び0.1モルのクエン酸を、100mlの丸底フラスコに添加し、窒素ガスの一定流に晒す。混合物を、160から165℃で強く攪拌しながら溶解させる。溶解後、混合物を130℃で30分間重合させ、プレポリマーを得、次いで、0.02モルのtrans−4−ヒドロキシ−L−プロリンを添加する。その系を、さらに30分間重合させ、プロリン含有プレポリマーを得る。種々のプロリン含量のプレポリマーを、さらに80℃で4日間架橋させ、架橋エラストマーを得る。
【0027】
実施例2
アミノジオール官能化ポリ(ジオールクエン酸エステル)(PDC)の製造
クエン酸:1,8−オクタンジオール:N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−エチレンジアミン、それぞれ100:95:5(PDC5)、100: 90:10(PDC10)、 100: 85:15 (PDC15) のモル比のモノマーを、架橋弾性フィルムを製造するために使用する。実施例として、0.09モルの1,8−オクタンジオール及び0.1モルのクエン酸を、100mlの丸底フラスコに添加し、窒素ガスの一定流に晒す。混合物を、160から165℃で強く攪拌しながら溶解させる。溶解後、0.01モルのN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−エチレンジアミンを混合物に添加し、その複合物を130℃で40分間、窒素雰囲気中で重合させ、PDC10のプレポリマーを得る。次いで、そのプレポリマーをガラスプレートにキャストし、さらに80℃で4日間ポスト重合し、架橋エラストマーPDC10を製造する。
【0028】
実施例3
エラストマーの特徴づけ
エラストマーの密度を、アルキメデス原理に基づく密度測定キット(Greifensee、スイス)で、メットレール・トレド・バランスによって測定する。無水エタノールを、補助液体として使う。引張機械試験を、SOON負荷細胞(Instron Canton, MA)を備えたインスロン5544機械テスターで、ASTM D412aに従って行う。サンプル(26−4−1.0mm、長さ−幅−厚さ)を、500mm/mmの速度で引張る。値を応力歪に変換し、ヤング率を初期傾斜から算出する。4から6つのサンプルを測定し、平均する。
【0029】
実施例4
インビトロでの分解
ディスク形標本(直径6mm、約1mm厚)を、10mlのリン酸塩バッファ食塩水(pH 7.4)含有試験管に載置し、37℃でインキュベートする。インキュベーション後、サンプルを水洗し、1週間凍結乾燥する。式(1)で示すように、質量損失を、初期質量(W0)を、所定の時点(wt)で測定した質量と比較することによって算出する。分解試験のために5つの実験を行う。結果を平均として表す。
質量損失(%)=[(W0−Wt)/W0]×100 (1)
【0030】
実施例5
インビトロでの細胞培養
ヒト大動脈内皮細胞(HAEC)(Clonetics, Waikersville, MD)を、EBM−2培養メディウム(Clonetics, Waikersville, MD)で培養する。細胞培養物を、37℃にて、5%の二酸化炭素で平衡させたウォータージャケットインキュベータで維持する。PDCフィルムを小片(1から2cm2)に切り分け、細胞培養皿(直径6cm)に載置する。全てのポリマーサンプルを30分間70%エタノールでインキュベートし、さらに30分間紫外線照射によって滅菌する。1.0×106セル/mlのHAECの密度でのHAECを、それぞれ、組織培養皿中で弾性フィルムに添加する。細胞シーディングの約30分後、5mlの培養メディウムを、培養皿に加える。付着細胞の形態を、Photometries CooISNAP HQ (Silver Spring, MD)を備えた倒立光学顕微鏡(Nikon Eclipse, TE2000-U)にて、シーディングの1日及び7日後に観察し、記録する(図6)。
【0031】
実施例6
PDC被覆ePTFEの製造
標準壁非ストレッチePTFEグラフト(Gore-Tex, W. L. Gore &Associates, Flagstaff, AZ、内径6mm)のルーメンを、10%のPDC10エタノール溶液で被覆する。6cm長でePTFEの一端を封止し、15mlの10%PDC10エタノール溶液を、他端を通してePTFEに注入し、ポリマー溶液をグラフトの内層を通して浸透させる。PDC溶液を除去した後、エタノールを蒸発させるために、グラフトを24時間室温で放置する。その後3日間、80℃でのポスト重合で、PDCコートePTFEを与える。
【0032】
実施例7
NONOate PDC又は被覆ePTFEの製造及びそのNO放出
PDCフィルム及びPDC被覆ePTFEグラフトを、48時間室温にて、アセトニトリル中NOガスで処理した。処理されたフィルムを48時間室温にて真空で乾燥した。 フィルムと被覆ePTFEを、1から7日間、37℃にて、PBSでインキュベートした。フィルムからのNOの放出を、グリース分析を使って測定し、亜硝酸塩(NOの主要な分解生成物)を定量する。
【0033】
結果
本発明は、クエン酸系NO放出生分解性エラストマー、例えば、プロリン架橋ポリ(1,8−オクタンジオールクエン酸エステル)(PPOC)及びポリ(クエン酸ジオール)(PDC)含有アミンジオールを提供する。エラストマーの機械的特性は、第2のアミン含量に依存させることができ、エラストマーは、インビトロ細胞培養物をベースとして形成したことを示す。NOは、ポリマー膜及び被覆ePTFEから良好に発生する。 エラストマーは、市販の合成血管移植片のそれらと類似した機械的特性を有し、コーティング、血管グラフト及び管での使用を含むが、これに限らず、心血管の多種多様な広いアプリケーションに役立てることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)式

(式中、Rは、水素又はポリマー、Aは、それぞれ独立して、NONOate含有アミンジオール単位及び脂肪族ジオール単位から選択され、nは1より大きい整数である。ただし、少なくとも1つのNONOate含有アミンジオール単位及び脂肪族ジオール単位がそれぞれ存在する。)
を有する化合物及び
b)クエン酸−脂肪族ジオールプレポリマーのアミン架橋エラストマー
から選択される生体適合性弾性ポリマー。
【請求項2】
Aは、−O−(CH2)8−O−及び−(CH2)2−N[(N+=N−O-)O-]−(CH2)2−N+2−(CH2)2−O−から選択される請求項1のポリマー。
【請求項3】
アミン架橋剤は、トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリンである請求項1のポリマー。
【請求項4】
脂肪族ジオールは1,8−オクタンジオールである請求項3のポリマー。
【請求項5】
クエン酸脂肪族ジオールプレポリマーのアミン架橋性エラストマーの製造方法であって、
a)クエン酸と脂肪族ジオールのプレポリマーを合成し、
b)プレポリマーを架橋性アミン単位とポスト重合し、及び
c)ポストポリマーをNOガスと反応させることを含む方法。
【請求項6】
架橋性アミン単位が4−ヒドロキシ−L−プロリンである請求項5の方法。
【請求項7】
脂肪族ジオールが1,8−オクタンジオールである請求項6の方法。
【請求項8】
a)式

(式中、Rは、水素又はポリマー、Aは、それぞれ独立して、NONOate含有アミンジオール単位及び脂肪族ジオール単位から選択され、nは1より大きい整数である。ただし、少なくとも1つのNONOate含有アミンジオール単位及び脂肪族ジオール単位がそれぞれ存在する。)
の生体適合性弾性ポリマーの製造方法であって、
a)クエン酸、脂肪族ジオール及びアミノジオールを重縮合し、
b)架橋し、及び
c)架橋ポリマーをNOガスで処理することを含む方法。
【請求項9】
脂肪族ジオールが1,8−オクタンジオールである請求項8の方法。
【請求項10】
アミンジオールがN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−エチレンアミンである請求項9の方法。
【請求項11】
デバイスの少なくとも1つの表面上に、
a)式

(式中、Rは、水素又はポリマー、Aは、それぞれ独立して、NONOate含有アミンジオール単位及び脂肪族ジオール単位から選択され、nは1より大きい整数である。ただし、少なくとも1つのNONOate含有アミンジオール単位及び脂肪族ジオール単位がそれぞれ存在する。)
を有する化合物及び
b)クエン酸−脂肪族ジオールプレポリマーのアミン架橋性エラストマー
から選択されるNO放出エラストマーを含む被膜を堆積した医用デバイス。
【請求項12】
Aは、−O−(CH2)8−O−及び−(CH2)2−N[(N+=N−O-)O-]−(CH2)2−N+2−(CH2)2−O−から選択される請求項11の医用デバイス。
【請求項13】
アミン架橋剤は、トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリンである請求項11の医用デバイス。
【請求項14】
脂肪族ジオールは1,8−オクタンジオールである請求項1の医用デバイス。
【請求項15】
デバイスがインプラント可能デバイスである請求項12の医用デバイス。
【請求項16】
デバイスがインプラント可能デバイスである請求項14の医用デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−503068(P2012−503068A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527825(P2011−527825)
【出願日】平成21年9月21日(2009.9.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/005240
【国際公開番号】WO2010/033242
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(596057893)ノースウエスタン ユニバーシティ (35)
【Fターム(参考)】