説明

生分解性多層フィルム

【課題】二軸延伸ポリ乳酸フィルム、その他のフィルムにラミネートすることでヒートシール強度を付与するのに好適な生分解性シーラントフィルムを提供すること。【解決手段】 脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)80〜99重量%、ポリ乳酸(B)20〜1重量%、((A)及び(B)の合計で100重量%とする)からなる第1層(I)、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)1〜20重量%、ポリ乳酸(B)99〜80重量%、((A)及び(B)の合計で100重量%とする)からなる第2層(II)がからなる多層フィルムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族ポリエステルとポリ乳酸からなる多層フィルムに関する。更に詳しくは、ポリ乳酸延伸フィルムとラミネートしてシーラントフィルムとして用いるのに好適な多層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムの廃棄処理を容易にする目的で生分解性のあるフィルムが注目され、種々のフィルムが開発されている。その生分解性フィルムは、土壌中や水中で加水分解や生分解を受け、徐々にフィルムの崩壊や分解が進み、最後には微生物の作用で無害な分解物へと変化するものである。そのようなフィルムとして、芳香族系ポリエステル樹脂やポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族系ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース、デンプン等から成形したフィルムが知られている。かかる生分解性樹脂の一つであるポリ乳酸からなる二軸延伸フィルムは、透明性が優れることから包装用フィルムとして使用され始めているが、そのままでは熱融着性(ヒートシール性)がない。ポリ乳酸二軸延伸フィルムに熱融着性を付与する方法として、ポリ乳酸からなる二軸延伸フィルムの片面にD−乳酸の含有量が多いポリ乳酸系重合体を積層するポリ乳酸系積層二軸延伸フィルム(特許文献1)、ポリ乳酸からなる二軸延伸フィルムの片面にコハク酸・1,4−ブタンジオール等の低融点の脂肪族ポリエステルを積層する多層生分解性プラスチックフィルム(特許文献2、3)提案されているが、熱融着性は付与されるものの、ヒートシール強度が不十分であったり、光学特性に劣るフィルムであったりして、いずれも包装用フィルムとしての性能が不十分である。
【0003】
【特許文献1】特開2001−219522号公報(請求項1)
【特許文献2】特許公報3236842号公報(請求項1)
【特許文献3】特許公報3084239号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、二軸延伸ポリ乳酸フィルム、紙、アルミ箔、その他プラスチックフィルムにラミネートすることでヒートシール強度を付与するのに好適な生分解性シーラントフィルムを提供することを目的とする。
【0005】
本発明は、二軸延伸ポリ乳酸フィルム、紙、アルミ箔、その他プラスチックフィルム、特にポリ乳酸二軸延伸フィルムの優れた透明性、表面光沢、生分解性を損なわずに、そのヒートシール強度、ピロー包装等による自動充填機適性を改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)80〜99重量%、ポリ乳酸(B)20〜1重量%、((A)及び(B)の合計で100重量%とする)からなる組成物(D1)の第1層(I)、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)1〜20重量%、ポリ乳酸(B)99〜80重量%、((A)及び(B)の合計で100重量%とする)からなる組成物(D2)の第2層(II)、が積層されており、第1層(I)、第2層(II)の各層の厚さが全厚さ(第1層(I)、第2層(II)の厚さの合計を100%とする)の20%以上であることを特徴とする第1層(I)/第2層(II)の構成からなる多層フィルムに関する。
【0007】
また本発明は、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)80〜99重量%、ポリ乳酸(B)20〜1重量%、((A)及び(B)の合計で100重量%とする)からなる組成物(D1)の第1層(I)、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)1〜20重量%、ポリ乳酸(B)99〜80重量%、((A)及び(B)の合計で100重量%とする)からなる組成物(D2)の第2層(II)、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)80〜99重量%、ポリ乳酸(B)20〜1重量%、((A)及び(B)の合計で100重量%とする)からなる組成物(D3)の第3層(III)がこの順序で積層されており、第1層(I)、第2層(II)、第3層(III)の各層の厚さが全厚さ(第1層(I)、第2層(II)、第3層(III)の厚さの合計を100%とする)の20%以上であることを特徴とする第1層(I)/第2層(II)/第3層(III)の構成の多層フィルムに関する。
【0008】
さらに本発明は、上記のそれぞれの多層フィルムにおいて、第2層(II)が、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)1〜20重量%、ポリ乳酸(B)94〜65重量%、及びポリ乳酸ブロック(e1)25〜98重量%と、−COO−基を含有する鎖状炭化水素および/または脂環式炭化水素から構成されるポリエステルブロック(e2)75〜2重量%((e1)と(e2)の合計で100重量%とする。)とから構成され、その重量平均分子量が1.5万〜10万である線状乳酸系共重合ポリエステル(E)5〜15重量%((A)、(B)及び(E)の合計で100重量%とする)からなることを特徴とする多層フィルムに関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の多層フィルムは二軸延伸ポリ乳酸フィルム、紙、アルミ箔、その他プラスチックフィルム、特にポリ乳酸二軸延伸フィルムのヒートシール強度、ピロー包装等による自動充填機適性を改良することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、第1層(I)/第2層(II)からなる多層フィルムと、第1層(I)/第2層(II)/第3層(III)からなる多層フィルムである。これらの各層、多層フィルム、またポリ乳酸二軸延伸フィルムとラミして得られるポリ乳酸二軸延伸ラミフィルムを以下に説明する。
【0011】
第1層(I) 第1層(I)は、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)80〜99重量%及びポリ乳酸(B)20〜1重量%((A)及び(B)の合計で100重量%とする)の組成物(D1)からなる。第2層(II) 第2層(II)は、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)1〜20重量%及びポリ乳酸(B)99〜80重量%((A)及び(B)の合計で100重量%とする)の組成物(D2)からなる。第3層(III) 第3層(III)は、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)80〜99重量%及びポリ乳酸(B)20〜1重量%((A)及び(B)の合計で100重量%とする)の組成物(D3)からなる。
【0012】
なお、本発明に使われる積層フィルムには、第1層(I)/第2層(II)および、第1層(I)/第2層(II)/第3層(III)からなる積層フィルムがあり、それを第1層(I)をシーラント層として外面に持つようにポリ乳酸二軸延伸フィルムとラミネートして本発明のポリ乳酸二軸延伸ラミフィルムを得ることができる。これらの各層、積層フィルム、ポリ乳酸二軸延伸ラミフィルムを以下に説明する。 なお、各層に用いられるポリマーの種類、組成等は、それぞれが規定された範囲内である限り、それぞれ同様でもよく、また異なったものとしてもよい。従って、各層が同じ規定であっても、各層をその規定の範囲内で異なった種類、組成とすることもできる。なお、成形の際の効率を考慮して同一の規定の場合は同一の種類、組成とすることもできる。各層に用いられるポリマーについて以下に説明する。
【0013】
脂肪族ポリエステル共重合体(A) 本発明に係わる脂肪族ポリエステル共重合体(A)は、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)である。脂肪族ポリエステル共重合体(A)は、1層(I)、第2層(II)、第3層(III)を構成する脂肪族ポリエステル共重合体であり、その融点(Tm)は80〜120℃の範囲とすることが好ましい。 融点(Tm)が80℃未満の脂肪族ポリエステル共重合体(A)は、融点が低すぎて、包装用フィルムとして用いた場合、例えば溶断シールする際に、シール部の固化が遅いために溶断刃にフィルムが融着する虞があり、包装適性に劣る虞がある。一方、融点(Tm)が120℃を越える脂肪族ポリエステル共重合体(A)は、ラミネートするポリ乳酸二軸延伸フィルムとの融点差が小さく、ポリ乳酸二軸延伸フィルムとラミして用いる場合は自動包装する際の速度が小さくなる虞がある。 また、脂肪族ポリエステル共重合体(A)の結晶化温度(Tc)は35〜75℃が好ましく、より好ましくは37〜73℃である。また脂肪族ポリエステル共重合体(A)の(Tm)−(Tc)は、30〜55℃が好ましく、より好ましくは35〜50℃である。 結晶化温度(Tc)が35℃未満の脂肪族ポリエステル共重合体は、結晶化温度が低すぎ、かかる共重合体からフィルムを得ようとしても、通常の冷却温度(5〜30℃)では完全に固化せず、得られるフィルムにニップロール等の押し跡が転写したり、冷却ロールから容易に剥がれず、外観に劣るフィルムとなる虞がある。 (Tm)−(Tc)が30℃未満の脂肪族ポリエステル共重合体(A)は、ポリ乳酸二軸延伸フィルムとラミして用いる場合は得られるポリ乳酸二軸延伸ラミフィルムの透明性、ヒートシール性(特にヒートシール強度)が劣る虞がある。
【0014】
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル共重合体(A)は、好ましくは2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)の含有量が0.1〜25モル%、より好ましくは1〜10モル%〔脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)で、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)量は実質的に等しく、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)の量の合計は100モル%である。〕の範囲にある。 本発明に係わる脂肪族ポリエステル共重合体(A)のメルトフローレート(MFR:ASTM D−1238、190℃、荷重2160g)は、フィルム形成能がある限り特に限定はされないが、通常0.1〜100g/10分、好ましくは0.2〜50g/10分、さらに好ましくは0.5〜20g/10分の範囲にある。
【0015】
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1) 本発明に係わる脂肪族ポリエステル共重合体(A)を構成する成分である脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジカルボン酸成分は2〜10個の炭素原子(カルボキシル基の炭素も含めて)、好
ましくは4〜6個の炭素原子を有する化合物であり、線状であっても枝分れしていてもよい。脂環式ジカルボン酸成分は、通常、7〜10個の炭素原子、特に8個の炭素原子を有するものが好ましい。 また、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a)は、2〜10個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸を主成分とする限り、より大きい炭素原子数、例えば30個までの炭素原子を有するジカルボン酸成分を含むことができる。
【0016】
かかる脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a)としては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸および2,5−ノルボルナンジカルボン酸等のジカルボン酸、かかるジカルボン酸のジメチルエステル、ジエチルエステル、ジ−n−プロピルエステル、ジ−イソプロピルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−イソブチルエステル、ジ−t−ブチルエステル、ジ−n−ペンチルエステル、ジ−イソペンチルエステルまたはジ−n−ヘキシルエステル等のエステル形成誘導体を例示できる。 これら、脂肪族または脂環式ジカルボン酸あるいはそのエステル形成誘導体は、単独かまたは2種以上からなる混合物として使用することもできる。
【0017】
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)としては、特に、コハク酸またはそのアルキルエステルまたはそれらの混合物が好ましく、融点(Tm)が低い脂肪族ポリエステル共重合体(A)を得るために、コハク酸を主成分とし、副成分としてアジピン酸を併用してもよい。脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2) 本発明に係わる脂肪族ポリエステル共重合体(A)を構成する成分である脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジヒドロキシ化合物成分であれば、2〜12個の炭素原子、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する枝分かれまたは線状のジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物成分であれば、5〜10個の炭素原子を有する環状の化合物が挙げられる。
【0018】
かかる脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)としては、具体的には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、とくには、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール);シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール類及びジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール並びにポリテトラヒドロフラン等が例示でき、特には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール又はこれらの混合物又は異なる数のエーテル単位を有する化合物が挙げられる。脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分は、異なる脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物の混合物も使用することができる。 脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)としては1,4−ブタンジオールが好ましい。
【0019】
2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3) 本発明に係わる脂肪族ポリエステル共重合体(A)を構成する成分である2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)は、特に限定はされないが、通常、1〜10個の炭素原子を有する枝分かれまたは線状の二価脂肪族基を有する化合物が挙げられる。かかる2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)としては、具体的には、例えば、グリコール酸、L−乳酸、D−乳酸、D,L−乳酸、2−メチル乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシイソカプロン酸、ヒドロキシカプロン酸等、かかる2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、シクロヘキシルエステル等の2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸エステル形成誘導体を挙げることができる。
【0020】
これらの中では、L―乳酸、D―乳酸、D,L−乳酸などの乳酸を主成分とするものが好適であり、L−乳酸を主成分とするものが望ましい。 本発明に係る脂肪族ポリエステル共重合体(A)は種々公知の方法で製造し得る。具体的な重合方法としては、例えば、特開平8−239461号公報、特開平9−272789号公報に記載されている。又、本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(A)としては、例えば、三菱化学株式会社からGS Pla(商品名)として製造・販売されている。
【0021】
ポリ乳酸(B) 本発明の積層フィルムの第1層(I)、第2層(II)または第3層(III)を形成するポリ乳酸(B)は、D−乳酸(またはL−乳酸)を好ましくは7〜30重量%、より好ましくは8〜25重量%含むポリL−乳酸(またはD−乳酸)である。 D−乳酸(またはL−乳酸)の含有量が7重量%未満のポリL−乳酸(またはポリD−乳酸)は、得られるポリ乳酸二軸延伸積層フィルムの低温ヒートシール性が損なわれるおそれがあり、一方、30重量%を超えるものは成形性が劣るお傾向にある なお、ポリ乳酸(B)におけるD−乳酸含有量は、クロムバック社製ガスクロマトグラフCP CYCLODEX B 236Mを用いて測定した値である。 ポリ乳酸(B)は、好ましくはガラス転移点温度(Tg)が58℃未満、更に好ましくは、50〜57.5℃の範囲にある。
【0022】
ポリ乳酸(B)の重量平均分子量はフィルム成形能がある限り特に限定はされないが、MFR(ASTM D−1238による、荷重2160g、温度190℃)が、通常、0.1〜100g/10分、好ましくは1〜50g/10分、特に好ましくは2〜10g/10分のものが使用される。 かかるポリ乳酸(B)の重合法としては、縮合重合、開環重合法など公知のいずれの方法を採用することができる。例えば、縮合重合ではL−乳酸またはD−乳酸あるいはこれらの混合物を直接脱水縮合重合して任意の組成を持ったポリ乳酸を得ることができる。 本発明に用いられるポリ乳酸(B)には、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、抗菌剤、核剤、無機化合物あるいは有機化合物充填材等の添加剤を必要に応じて配合してもよい。
【0023】
組成物(D1) 本発明の積層フィルムの第1層(I)を構成する組成物(D1)は、前記脂肪族ポリエステル共重合体(A)80〜99重量%、好ましくは80〜90重量%、と前記ポリ乳酸(B)20〜1重量%、好ましくは20〜10重量%との組成物(脂肪族ポリエステル共重合体(B)とポリ乳酸(C)の合計は100重量%である)からなる。 ポリ乳酸(B)の量が1重量%未満の組成物(D1)を積層フィルムの第1層(I)に用いた場合には、後述する組成物(D2)からなる第2層(II)との層間強度が小さくなる虞があり、一方、ポリ乳酸共重合体(B)が20重量%を超える組成物(D1)からなる積層フィルムの第1層(I)の(脂肪族ポリエステル組成物とポリ乳酸が非相溶で相分離を起こすため)メラメラ感を生じヘイズが著しく悪化し、ポリ乳酸二軸延伸ラミフィルムとしての透明性を低下させる、また(ポリ乳酸はシール層として用いるには脆いため)ヒートシール強度が小さくなる虞がある。
【0024】
組成物(D2) 本発明の積層フィルムの第2層(II)を構成する組成物(D2)は、前記脂肪族ポリエステル共重合体(A)1〜20重量%、好ましくは10〜20重量%、と前記ポリ乳酸(B)99〜20重量%、好ましくは90〜80重量%との組成物(脂肪族ポリエステル共重合体(B)とポリ乳酸共重合体(C)の合計は100重量%である)である。 脂肪族ポリエステル共重合体(A)の量が1重量%未満の組成物(D2)を積層フィルムの第2層(2)に用いた場合には、前述した組成物(D1)からなる第1層(I)、または後述する組成物(D3)からなる第3層(III)との層間強度が小さくなる、またフィルムが脆くなり製膜、スリットの工程で切断してしまい効率が低下する、(層が脆いために)ヒートシール強度が小さくなる虞があり、一方、脂肪族ポリエステル共重合体(A)が20重量%を超える組成物(D2)からなる積層フィルムの第2層(II)の(脂肪族ポリエステル組成物とポリ乳酸が非相溶で相分離を起こすため)メラメラ感を生じヘイズが著しく悪化し、透明性を低下させる虞がある。
【0025】
組成物(D3) 本発明の積層フィルムの第3層(III)を構成する組成物(D3)は、前記脂肪族ポリエステル共重合体(A)80〜99重量%、好ましくは80〜90重量%、と前記ポリ乳酸(B)20〜1重量%、好ましくは20〜10重量%との組成物(脂肪族ポリエステル共重合体(B)とポリ乳酸(C)の合計は100重量%である)からなる。 ポリ乳酸(B)の量が1重量%未満の組成物(D3)を積層フィルムの第3層(III)に用いた場合には、前述した脂肪族ポリエステル組成物(D2)からなる第2層(II)との層間強度が小さくなる虞があり、一方、ポリ乳酸共重合体(B)が20重量%を超える組成物(D3)からなる積層フィルムの第3層(III)は(脂肪族ポリエステル組成物とポリ乳酸が非相溶で相分離を起こすため)メラメラ感を生じヘイズが著しく悪化し、透明性を低下させる、またポリ乳酸はシール層として用いるには脆いためヒートシール強度が小さくなる虞がある。
【0026】
組成物(D1)、(D2) および(D3)のそれぞれは、脂肪族ポリエステル共重合体(A)及びポリ乳酸(B)を夫々上記範囲でヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーミキサー等で混合する方法、混合後更に単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー等で溶融混練する方法等により調製することができる。 本発明に係わる脂肪族ポリエステル組成物(D1)、(D2)および(D3)には、脂肪族ポリエステル共重合体(A)及びポリ乳酸(B)の夫々別個に、あるいは組成物(D1)(D2)、および(D3)を製造する際に、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、抗菌剤、核剤、無機化合物あるいは有機化合物充填材等の添加剤を必要に応じて配合してもよい。
【0027】
多層フィルム 本発明の多層フィルムは、その第1層(I)が前記脂肪族ポリエステル共重合体(A)が80〜99重量%%及び前記ポリ乳酸(B)が20〜1重量%からなり、その第2層(II)が前記脂肪族ポリエステル共重合体(A)が1〜20重量%%及び前記ポリ乳酸(B)が99〜10重量%からなり、その第3層(III)が前記脂肪族ポリエステル共重合体(A)が80〜99重量%%及び前記ポリ乳酸(B)が20〜1重量%からななる各層が積層されており、第1層(I)、第2層(II)の各層の厚さが全厚さ(第1層(I)、第2層(II)の厚さの合計を100%
とする)の20%以上であることを特徴とする第1層(I)/第2層(II)の構成の多層フィルム、または第1層(I)、第2層(II)、第3層(III)の各層の厚さが全厚さ(第1層(I)、第2層(II)、第3層(III)の厚さの合計を100%とする)の20%以上であることを特徴とする第1層(I)/第2層(II)/第3層(III)の構成の多層フィルムである。
【0028】
更にポリ乳酸二軸延伸フィルムと第1層(I)をシーラント層として外面に持つようにラミすると本発明の透明性、ヒートシール強度に優れ、特にピロー包装、溶断シール包装に好適なポリ乳酸二軸延伸ラミフィルムが得られるものである。 多層フィルムは、第1層(I)/第2層(II)の2層構成、または第1層(I)/第2層(II)/第3層(III)の3層構成のいずれとしても良いが、3層構成であるとフィルムが第2層を中心に対称になるため、反りが少なく、好ましい。 本発明の第1層(I)、第2層(II)または第3層(III)からなる多層フィルムにおいて、第1層(I)、第2層(II)または第3層(III)の各層の厚さは用途に応じて種々決めることができるが、通常、第1層(I)の厚さは3〜20μm、好ましくは5〜10μm、の範囲、第2層(II)の厚さは5〜50μm、好ましくは10〜30μm、の範囲であり、第3層(III)を用いる場合は第3層(III)の厚さは3〜20μm、好ましくは5〜10μm、の範囲である。
【0029】
多層フィルム全体としての厚さはいずれの場合も通常10〜100μm、好ましくは20〜50μm、の範囲である。 多層フィルムが第1層(I)/第2層(II)からなる多層フィルムにおいては、第1層(I)の厚さが3μm未満ではヒートシール強度が小さくなる虞があり、20μmを超えると層のヘイズが悪化する虞があり、また第2層(II)5μm未満では結果として第2層(II)または第3層(III)の比率が大きくなり、シーラントフィルムとしてのヘイズが悪化する虞があり、20μmを超えると多層フィルムが脆くなり、製膜、スリット時に切断を起こしたり、ヒートシール強度が小さくなる虞がある。
【0030】
多層フィルムが第1層(I)/第2層(II)/第3層(III)からなる多層フィルムにおいても同様であるが、フィルムの反りを減らすために第3層(III)の厚みは第1層(I)とほぼ等しいことが好ましい。 更に多層フィルム全体の厚さが10μm未満では製膜、スリット、ラミネートが難しくなり、100μmを超えるとフィルムの重量が大きくなり製品(包装袋)としてのハンディさを損ない、コストが高くなる虞がある。 本発明に使われる多層フィルムは、種々公知の方法で製造することができる。例えば、第1層(I)、第2層(II)、第3層(III)のそれぞれを構成する脂肪族ポリエステル共重合体(A)及びポリ乳酸(B)を夫々所定の量で配合し、直接二層以上の多層ダイを備えたフィルム成形機に投入して共押出し成形により多層フィルムを製造することができる。
【0031】
また、予め、第1層(I)、第2層(II)、第3層(III)のそれぞれを構成する脂肪族ポリエステル共重合体(A)及びポリ乳酸(B)を夫々所定の量で配合した後、溶融混練して第1層(I)、第2層(II)、第3層(III)の原料である組成物(D1)、(D2)、および(D3)を得た後、二層以上の多層ダイを備えたフィルム成形機に投入して共押出し成形により多層フィルムを製造することができる。あるいは夫々別個に第1層(I)の組成物(D1)、第2層(II)の組成物(D2)、第3層(III)の組成物(D3)のからなるフィルムを成形した後貼り合せて多層フィルムを製造することがきる。 本発明の多層フィルムは、未延伸であることが好ましい。延伸フィルムとするとヒートシール強度、透明性が低下する虞がある。また本発明の多層フィルムは、印刷性の改良、蒸着、スパッタ膜接着性の改良、あるいは先述の多層フィルムとの接着性の改良をするために、一方の表面を、たとえばコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理等で表面活性化処理を行うのが好ましい。
【0032】
芳香族ポリエステル(F)
芳香族系ポリエステル共重合体(F)が、スルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸を含む芳香族系ポリエステルであり、より具体的には、芳香族ジカルボン酸、脂肪族グリコール、およびスルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸、それに必要に応じて脂肪族ジカルボン酸または脂肪族ヒドロキシカルボン酸を加え、それらの成分間で重縮合反応を行って得られるポリエステルであることが望ましい。ポリエステル樹脂の好ましい組成は、芳香族ジカルボン酸成分に由来する単位が30〜49.9モル%、脂肪族グリコール成分に由来する単位が35〜50モル%、スルホン酸金属塩基を置換基として有する芳香族または脂肪族ジカルボン酸成分に由来する単位が0.1〜5モル%、および脂肪族ジカルボン酸または脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分に由来する単位が0〜30モル%(ここで、全単位の合計が100モル%になる)である。
本発明に使用されるスルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸を1共重合成分として含むポリエステルは、基本的には、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとの重縮合によって形成される芳香族ポリエステル樹脂であって、生分解性を付与するためにスルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸を共重合成分の1種として含むポリエステル樹脂である。またそのフィルムに可撓性、生分解性等の性能を付与し、また向上させるために、さらに脂肪族ジカルボン酸または脂肪族ヒドロキシカルボン酸を共重合成分として加えた多成分系のポリエステル樹脂であってもよい。そのような樹脂は、特表平5−507109号公報、特表平6−505040号公報、特表平6−505513号公報等に記載されている。
好適な当該共重合体は、芳香族ジカルボン酸および脂肪族グリコールを主成分にし、それにスルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸、および脂肪族ジカルボン酸または脂肪族ヒドロキシカルボン酸を副成分として加え、それらの成分間で重縮合反応を進行させて得られたポリエステルである。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などを例示することができ、またそれらのジアルキルエステルのようにエステル形成能を有する誘導体を使用することもできる。それらの内ではテレフタル酸またはジメチルテレフタレートの使用が好ましい。また、前記したジカルボン酸を2種類以上組み合わせて使用してもよい。
脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のアルキレングリコール類を例示することができ、またそれらのオリゴマー、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、さらに高分子量のポリアルキレングリコール等のポリアルキレングリコール類も使用することができる。また、前記したグリコール類を2種類以上組み合わせて使用してもよい。ジエチレングリコール等のオリゴマーは、ポリエステル樹脂の機械的物性、加水分解性あるいは生分解性を適度に調整する効果を有していることから、アルキレングリコール類とポリアルキレングリコール類とを併用して用いることが好ましい。それらの中で、エチレングリコールとジエチレングリコールとの併用が望ましい。
スルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸のベンゼン環にスルホン酸金属塩基(−SO3M)が置換基として結合した化合物である。金属(M)としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、あるいはマグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属である。好ましい例として、5−スルホ−イソフタル酸の金属塩、4−スルホ−イソフタル酸の金属塩、4−スルホ−フタル酸の金属塩を挙げることができる。この成分は、芳香族系ポリエステル共重合体に加水分解性や生分解性を付与する目的で加えられるが、特に5−スルホ−イソフタル酸ナトリウム塩はその効果が高いので好ましい。なお、前記の芳香族ジカルボン酸は、アルキルエステルになっていてもよく、例えばジメチル-5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩の形で使用することができる。
脂肪族ジカルボン酸としては、アゼライン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸等を例示することができ、また脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、カプロラクトン等を例示することができる。この脂肪族ジカルボン酸または脂肪族ヒドロキシカルボン酸は、芳香族系ポリエステル共重合体のガラス転移点温度を下げ、好適には70℃以下に下げ、あるいは樹脂の加水分解性や生分解性を向上させる目的で共重合成分の1種として加えられるものである。
前記した成分間の重縮合反応は、酸化アンチモン、酸化ゲルマニウム等の触媒の存在下に200℃以上の高温かつ減圧下で行うことにより、分子鎖に沿ってランダムにそれらの成分に由来する単位が分布した線状ポリエステル樹脂を得ることができる。
重縮合したポリエステル樹脂中の各成分に由来する単位の含有量は、芳香族ジカルボン酸成分に由来する単位が30〜49.9、好ましくは37〜48.7モル%、脂肪族グリコール成分に由来する単位が35〜50、好ましくは40〜49モル%、スルホン酸金属塩基を置換基として有する芳香族ジカルボン酸成分に由来する単位が0.1〜5、好ましくは0.3〜3モル%、および脂肪族ジカルボン酸または脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分に由来する単位が0〜30、好ましくは2〜20モル%である。ここで、全単位の合計が100モル%になる。
好適な芳香族系ポリエステル共重合体では、テレフタル酸成分に由来する単位が30〜49.9、好ましくは37〜48.7モル%、エチレングリコール成分に由来する単位が15〜48、好ましくは20〜45モル%、ジエチレングリコール成分に由来する単位が1〜29、好ましくは4〜20モル%、スルホン酸金属塩基を置換基として有する芳香族ジカルボン酸成分に由来する単位が0.1〜5、好ましくは0.3〜3モル%、および脂肪族ジカルボン酸または脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分に由来する単位が0〜30、好ましくは2〜20モル%である。ここで、全単位の合計が100モル%になる。
本発明で用いる芳香族系ポリエステル共重合体は、その重量平均分子量が、10,000〜500,000の範囲が好ましい。また、そのメルトフローレートは、ASTM D−1238に準拠し、220℃、2160g荷重下で測定した値が、0.1〜100(g/10分)であることが好ましい。分子量およびメルトフローレートが前記の範囲内にあると、押出成形に適した溶融粘度を示し、また積層フィルム基材層としての十分な機械的強度を有する。
【0033】
ポリ乳酸二軸延伸ラミフィルム 上記多層フィルムと上記ポリ乳酸二軸延フィルムをラミして得られるポリ乳酸二軸延伸ラミフィルムは透明性及びグロス等の光学特性、剛性に優れており、且つ多層フィルムをシーラント層として有するので光学特性を損なうことなく低温ヒートシール性、ヒートシール強度が付与されている。本発明のポリ乳酸二軸延伸ラミフィルムの全体の厚さは15〜200μm、好ましくは30〜100μmの範囲にある。 ポリ乳酸二軸延伸ラミフィルムの厚さが15μm未満では包装袋として用いた際にピンホールが空く虞があり、200μmを超えると包装袋としてはかさばり、製品(包装袋)としてのハンディさを損ない、またコストが高くなる虞がある。 ポリ乳酸二軸延伸ラミフィルムを製造する方法としては、予めポリ乳酸を用いて二軸延伸フィルムを製造し、また脂肪族ポリエステル共重合体(A)及びポリ乳酸(B)を用いて多層フィルムをキャスト成形で製造し接着剤を用いて貼り合せる方法(ラミネート法)、またはポリ乳酸二軸延伸フィルムの片面に組成物(D1)および(D2)、または組成物(D1)、(D2)および(D3)の2または3層を押出し被覆する方法(押出しラミ法)をとり得るが、ラミネート法であれば多層フィルム側に印刷または蒸着、スパッタ処理を行うことが可能であるため好ましい。
【0034】
芳香族ポリエステル二軸延伸ラミフィルム 上記多層フィルムと上記芳香族ポリエステル二軸延フィルムをラミして得られる芳香族ポリエステル二軸延伸ラミフィルムは透明性及びグロス等の光学特性、剛性に優れており、且つ多層フィルムをシーラント層として有するので光学特性を損なうことなく低温ヒートシール性、ヒートシール強度が付与されている。本発明の芳香族ポリエステル二軸延伸ラミフィルムの全体の厚さは15〜200μm、好ましくは30〜100μmの範囲にある。 芳香族ポリエステル二軸延伸ラミフィルムの厚さが15μm未満では包装袋として用いた際にピンホールが空く虞があり、200μmを超えると包装袋としてはかさばり、製品(包装袋)としてのハンディさを損ない、またコストが高くなる虞がある。 芳香族ポリエステル二軸延伸ラミフィルムを製造する方法としては、予め芳香族ポリエステル(F)を用いて二軸延伸フィルムを製造し、また脂肪族ポリエステル共重合体(A)及びポリ乳酸(B)を用いて多層フィルムをキャスト成形で製造し接着剤を用いて貼り合せる方法(ラミネート法)、またはポリ乳酸二軸延伸フィルムの片面に組成物(D1)および(D2)、または組成物(D1)、(D2)および(D3)の2または3層を押出し被覆する方法(押出しラミ法)をとり得るが、ラミネート法であれば多層フィルム側に印刷または蒸着、スパッタ処理を行うことが可能であるため好ましい。
【0035】
蒸着、スパッタ 本発明の多層フィルムは煎餅、乾燥食品、スナック菓子、等を包装する際のガスバリア性、特に水蒸気バリア性を改良するために酸化アルミ、アルミ、珪酸、ITO、の内いずれか1種以上の無機金属が蒸着またはスパッタ処理することができる。透明性を維持したままガスバリア性改良され、またコストが安いことから酸化アルミ、珪酸の蒸着処理が好ましい。 また多層フィルムには上記処理を行わずに、蒸着またはスパッタ処理を行ったポリ乳酸二軸延フィルムまたは芳香族系ポリエステル共重合体二軸延伸フィルムとラミすることでバリア性能を付与しても良い。 また蒸着またはスパッタ処理後多層フィルムとポリ乳酸二軸延フィルムまたは芳香族系ポリエステル共重合体二軸延伸フィルムをラミする場合には、当然ではあるが、蒸着膜またはスパッタ膜を保護するために、蒸着膜またはスパッタ面がラミ面となり包装袋の外面にならないことが好ましい。 これらの蒸着、スパッタによる層の厚さは、通常10Åから500Å程度である。
【0036】
ピロー包装用フィルム 本発明の多層フィルムを用いて得られるポリ乳酸二軸延伸ラミフィルムまたは芳香族ポリエステル二軸延伸ラミフィルムは、上記ポリ乳酸二軸延伸フィルムまたは芳香族ポリエステル二軸延伸ラミフィルムに上記多層フィルムをラミネートして調製される。 そのためピロー包装用フィルムとして用いる場合は、ポリ乳酸二軸延伸フィルムまたは芳香族ポリエステル二軸延伸ラミフィルムが外面となるので、得られるピロー包装袋は透明性及びグロス等の光学特性、剛性に優れ、且つ片面に、組成物(D1)および(D2)、または組成物(D1)、(D2)および(D3)から得られる多層フィルムを有しているので、光学特性を損なうことなく片面が低温ヒートシール性、ヒートシール強度を有するので、ピロー包装適性に優れている。
【0037】
溶断シール包装用フィルム 同じく溶断包装用フィルムとして用いる場合は、ポリ乳酸二軸延伸フィルムまたは芳香族ポリエステル二軸延伸フィルムが外面となるので、得られる溶断シール包装袋は透明性及びグロス等の光学特性、剛性に優れ、且つ片面に、組成物(D1)および(D2)、または組成物(D1)、(D2)および(D3)から得られる多層フィルムを有しているので、光学特性を損なうことなく溶断ヒートシール強度を有するので、溶断シール包装適性に優れている。
【0038】
線状乳酸系共重合ポリエステル(E) 本発明の多層フィルムの第2層(II)に用いられることがある線状乳酸系共重合ポリエステル(E)は、重量平均分子量が1.5万〜10万であり、ポリ乳酸ブロック(e1)25〜98重量%、好ましくは25〜95重量%と、−COO−基を含有する鎖状炭化水素および/または脂環式炭化水素から構成されるポリエステルブロック(e2)2〜75重量%、好ましくは5〜75重量%((e1)と(e2)の合計で100重量%とする。)とから構成される線状乳酸系共重合ポリエステルである。 また、ポリ乳酸ブロック(e1)は、一般にラクタイドが開環重合して成るラクタイド成分から構成することが好ましく、また−COO−基を含有する鎖状炭化水素および/または脂環式炭化水素部分から成るポリエステルブロック(e2)とは、原料ポリエステルに由来するポリエステル部分であり、−COO−基を含有する鎖状炭化水素および/または脂環式炭化水素部分から成る構成部分である。 このような線状乳酸系共重合ポリエステル(E)は、一般にはラクタイド25〜98重量%と、脂肪族ジカルボン酸成分と脂肪族ジオール成分とから成る重量平均分子量1万〜25万の脂肪族ポリエステル2〜75重量%とを、開環重合触媒の存在下に、開環重合並びにエステル交換反応させる方法により製造することができる。
【0039】
ラクタイドは、乳酸を環状二量化した化合物で、立体異性体を有し、L−乳酸からなるL−ラクタイド、D−乳酸からなるD−ラクタイド、L−乳酸とD−乳酸からなるMESO−ラクタイドがある。 L−ラクタイド、またはD−ラクタイドを主成分とする共重合体は結晶化し、高融点が得られる。本発明の線状乳酸系共重合ポリエステル(E)はこれら3種のラクタイドを組み合わせることによって好ましい樹脂特性を実現できる。 本発明で線状乳酸系共重合ポリエステル(E)は、ラクタイドとしてL−ラクタイドを総ラクタイド中、90%以上を含むものが好ましい。
【0040】
脂肪族ポリエステルは、脂肪族ジカルボン酸成分とジオール成分からなるものを意味し、高分子量であることが好ましく、具体的には重量平均分子量で10,000〜250,000である。高分子量の脂肪族ポリエステルを得る為には、脂肪族ジカルボン酸成分とジオール成分のモル分率は、ほぼ1であることが好ましい。 脂肪族ポリエステル中の脂肪族ジカルボン酸成分としては、特に限定されないが、なかでも炭素原子数4〜14の脂肪族ジカルボン酸成分であることが好ましい。具体的にはコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。この他にダイマー酸等も例示される。 またジオール成分としては、炭素数が2〜10ジオールが好ましく、具体的にはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサメチレングリコール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブタンジオール、3−ヒドロキシピバリルピバレート等、および水添ビスフェノールが例示される。
【0041】
重合反応には、一般に開環重合触媒が使用され、一般の開環重合触媒、エステル交換触媒としても知られる錫、亜鉛、鉛、チタン、ビスマス、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属、さらにそれらの誘導体があり、特に金属有機化合物、炭酸塩、酸化物、ハロゲン化物が好ましい。具体的には、オクタン酸錫、塩化錫、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、酸化鉛、炭酸鉛、塩化チタン、アルコキシチタン、酸化ゲルマニウム、酸化ジルコニウムが適している。 ポリラクタイドと脂肪族カルボン酸、ジオール成分を押出機内で加温溶融させ、重合を開始する。反応温度はラクタイドの融点以上が一般的である。
【0042】
重合反応は、共重合に使用する脂肪族ポリエステルの末端OH基へ、ポリラクタイドがブロック状に開環付加重合して、例えばA−BB−A−BBB−A型のブロック状の共重合体が生成し、更にポリマー同士のエステル交換反応が進行するものと考えられる。これらの開環重合とエステル交換反応により、生成する乳酸系共重合ポリエステルは実質的に線状構造を保つものと考えられる。
【0043】
また、−COO−基を含有する鎖状炭化水素および/または脂環式炭化水素から構成されるポリエステルブロック(e2)としては、プロピレングリコール、コハク酸またはセバシン酸からなるポリエステルブロック(e2’)が特に好適である。 本発明の線状乳酸系共重合ポリエステル(E)は、柔軟性の良い樹脂であることが望ましく、ガラス転移点が室温以上であり、融点が140℃以上のものが望ましい。 多層フィルムの透明性改良を目的として前記の多層フィルム第2層(II)に脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)1〜20重量%、ポリ乳酸(B)94〜65重量%、線状乳酸系共重合ポリエステル(E)5〜15重量%((A)、(B)及び(E)の合計で100重量%とする)の比率になるように配合することができる。
【実施例】
【0044】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの実施例に制約されるものではない。 実施例及び比較例等で使用した原料は次の通りである。(1)脂肪族ポリエステル共重合体(A)(i)コハク酸・1,4−ブタンジオール・乳酸・ポリエステル共重合体(A−1) 三菱化学社製、商品名 GS−Pla AD92W MFR(190℃、荷重2160g):4.5g/10分、融点(Tm):86.9℃、結晶化温度(Tc):40.4℃、(Tm)−(Tc):45.5℃、密度:1.3g/cm。(ii)コハク酸・1,4−ブタンジオール・乳酸・ポリエステル共重合体(A−2) 三菱化学社製、商品名 GS−Pla AZ91T MFR(190℃、荷重2160g):4.5g/10分、融点(Tm):108.9℃、結晶化温度(Tc):68.0℃、(Tm)−(Tc):40.9℃、密度:1.3g/cm。(2)ポリ乳酸(B): D−乳酸含有量:12.6重量%、MFR(温度190℃、荷重2160g):2.6g/10分、融点(Tm):なし、Tg:56.9℃。密度:1.3g/cm(3)線状乳酸系共重合ポリエステル(E) ポリ乳酸とポリ(プロピレンサクシネート)のブロック共重合体 大日本インキ化学社製 プラメートPD−350 重量平均分子量:2.6万、Tm(℃)139.7℃
(4)スルホネート基含有芳香族ポリエステル(F):
テレフタル酸45モル%、エチレングリコール37モル%、ジエチレングリコール9モル%、5−スルホ−イソフタル酸ナトリウム1モル%、ヒドロキシ酢酸8モル%、密度:1.35g/cm3、融点(Tm):200℃、MFR(220℃、2160g荷重):15g/10分。
【0045】
(5)添加剤(i)シリカ 富士シリシア化学社製、商品名サイリシア730(粒径4μm)(ii)エルカ酸アミド チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名ATMER SA1753(iii)ポリエチレングリコール 第一工業製薬製、商品面PEG4000 本発明における各種測定方法は以下のとおりである。(1) 光学特性 積層フィルム、ポリ乳酸ラミフィルムの両方で測定した。 日本電色工業社製ヘイズメーター300Aを用いて、ヘイズ(HZ:%)、平行光線透過率(PT:%)及びグロス(%)を測定した。測定値は5回の平均値である。 ラミフィルムのグロスは延伸フィルム側を測定した。
【0046】
(2) 引張り試験 多層フィルム、ポリ乳酸ラミフィルムの両方で測定した。 試験片として、ポリ乳酸二軸延伸積層フィルムから縦方向(MD)及び横方向(TD)に短冊状フィルム片(長さ:150mm、幅:15mm)を切出し、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を用い、チャック間距離:100mm、クロスヘッドスピード:300mm/分(但し、ヤング率の測定は5mm/分)の条件で引張試験を行い、破断点における強度(MPa)、伸び(%)及びヤング率(MPa)を求めた。なお、伸び(%)はチャック間距離の変化とした。測定値は5回の平均値である。
【0047】
(3) ヒートシール強度 多層フィルムとポリ乳酸二軸延伸フィルムを貼り合わせポリ乳酸二軸延伸ラミフィルムとした後に、シール側が積層フィルム面同士となるように、テスター産業株式会社製TP−701−B HEATSEALTESTERを用いて、所定の温度で、シール面圧:1kg/cm、時間:0.5秒の条件下で熱融着した。 尚、加熱は上側のみとした。次いで、熱融着したポリ乳酸二軸延伸積層フィルムから幅:15mmの試験片を切出し、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を用いて300mm/分の引張り速度で剥離し、その最大強度をヒートシール強度(熱融着強度:N/15mm)とした。(4)酸素透過度 JIS K7126に基づいて20℃湿度0%RH(相対湿度)の条件で、酸素透過測定器(MOCON社製、OXTRAN2/21 ML)を使用して測定した。(5)透湿度(水蒸気透過度)



JIS Z0208 に準拠して求めた。フィルムを採取して、表面積が約100cmの袋を作り、塩化カルシウムを適量入れた後、密封した。これを40℃、90%RH(相対湿度)の雰囲気中に3日間放置し、重量増加から透湿度(水蒸気透過度)を求めた。






【0048】
実施例1〜3、比較例―1〜10<脂肪族ポリエステル組成物(D)の製造> 多層フィルムに用いる脂肪族ポリエステルとして、表1の原料、添加剤を実施例−1〜3、比較例―1〜10の処方で配合し、40mmφの1軸押出機を用いて180℃で溶融混練し、それぞれの脂肪族ポリエステル組成物(D)を用意した。<多層フィルムの製造> 実施例−1〜3は3層、比較例―1〜10は単層として、先端にマルチマニホールド式のT−ダイを備えた三層共押出シート成形機を用い、表―1記載の層比となるように吐出量を調整して、200℃に加熱したT−ダイから、共押出(または単層)シートを押出した後、30℃のキャスティングロールで急冷することにより、厚さ30μmの三層(または単層)無延伸多層フィルムを用意した。また片面にコロナ処理を行った。
【0049】
<ポリ乳酸二軸延伸ラミフィルムの製造> 上記記載の多層フィルムに、厚み20μmのポリ乳酸二軸延伸フィルム(東セロ社製:パルグリーンLC)のコロナ処理面にウレタン系接着剤(武田薬品工業製:タケラックA310(60%)+タケラックA3(5%)+酢酸エチル(35%))を約7g/m塗布した後にドライラミネートして厚さ50〜55μmのポリ乳酸二軸延伸ラミフィルムを得た。 多層フィルム及び得られたポリ乳酸二軸延伸ラミフィルムの物性を前記方法で測定した。測定結果を表1に示す。
【0050】
【表1】




測定結果1で多層フィルムの比較、測定結果2でポリ乳酸二軸延伸ラミフィルムの比較を行っている。 実施例―1と比較例―1〜6は同じ脂肪族ポリエステル(A―1)とポリ乳酸(B)からなる系であり、実施例−1は表−1の比率の3層構成としており、比較例―1〜6は単層である。比較例のように単層ではポリ乳酸(B)量が0〜50%(比較例―1〜4)ではヘイズが18〜12%(多層フィルム)、19〜14%(ポリ乳酸二軸延伸ラミフィルム)と実施―1の6%(多層フィルム)、7%(ポリ乳酸二軸延伸ラミフィルム)に比べて著しく悪い。しかも比較例のように単層では更にポリ乳酸(B)量を80〜100%(比較例―5、6)と上げると、ヘイズは4〜2%(多層フィルム)、7〜4%(ポリ乳酸二軸延伸ラミフィルム)と改良するものの、ポリ乳酸二軸延伸ラミフィルムとして用いた際のシール強度は10N/15mm幅以下と大幅に低下し、包装フィルムとして使用できないレベルになってしまう。 またポリ乳酸(B)量を50〜100%とした単層の比較例―4〜6は引っ張り試験によるMD方向の破断伸度が3%以下であり、製膜、スリット時においてフィルム破断の起きる可能性が高く、生産性が低い。
【0051】
また実施例―1と比較例―4では原料としては脂肪族ポリエステル(A):ポリ乳酸(B)=50:50と同じであるのに、透明性、シール強度とも優れており、多層化したメリットは明白である。 また実施例−3では実施例―1の第2層に共重合体(E−1)を10%配合することにより、透明性が更に改良している。
【0052】
実施例―2も同様で、実施例―2と比較例―7〜10、6は同じ脂肪族ポリエステル(A―2)とポリ乳酸(B)からなる系であり、実施例−2は表−1の比率の3層構成としており、比較例―7〜10、6は単層である。比較例のように単層ではポリ乳酸(B)量が0〜50%(比較例―7〜10)ではヘイズが22〜12%(多層フィルム)、23〜14%(ポリ乳酸二軸延伸ラミフィルム)と実施例―2の10%(多層フィルム)、11%(ポリ乳酸二軸延伸ラミフィルム)に比べて悪い。しかも比較例のように単層では更にポリ乳酸(B)量を100%(比較例―6)と上げると、ヘイズは2%(多層フィルム)、4%(ポリ乳酸二軸延伸ラミフィルム)と改良するものの、ポリ乳酸二軸延伸ラミフィルムとして用いた際のシール強度は10N/15mm幅以下と大幅に低下し、包装フィルムとして使用できないレベルになってしまう。また実施例―2と比較例―10では原料としては脂肪族ポリエステル(A―2):ポリ乳酸(B)=50:50と同じであるのに、透明性が優れており、多層化したメリットは明白である。 尚、実施例の多層フィルムは破断伸度がいずれも小さいが、ポリ乳酸二軸延伸ラミフィルムではポリ乳酸二軸延伸フィルムにより強度が大幅に改善し、実用上問題のないものとなっている。
実施例4〜11、参考例1、2
<脂肪族ポリエステル組成物(D)の製造> 多層フィルムに用いる脂肪族ポリエステルとして、表2の原料、添加剤を実施例−4記載の処方で配合し、60mmφの2軸押出機を用いて180℃で溶融混練し、それぞれの脂肪族ポリエステル組成物(D)を用意した。<多層フィルムの製造> 実施例−4記載の層構成で先端にマルチマニホールドのT−ダイを備えた三層共押出シート成形機を用い、表―2記載の層比となるように吐出量を調整して、200℃に加熱したT−ダイから、共押出(または単層)シートを押出した後、30℃のキャスティングロールで急冷することにより、厚さ30μmの三層(または単層)無延伸多層フィルムを用意した。また第3層面(添加剤なしの面)にコロナ処理を行った。

<ポリ乳酸二軸延伸フィルム>
ポリ乳酸二軸延伸フィルム(東セロ社製:パルグリーンLC#25)(厚み:25μmm、両面コロナ処理)を用いた。
<スルホネート基含有芳香族ポリエステル二軸延伸フィルムの製造>
オーブン中で予備乾燥したスルホネート基含有芳香族ポリエステル(F)を、連続二軸延伸フィルム成形機(ブルックナー社製、逐次二軸延伸フィルム成形機)の60mmφ押出機を用いて230℃の押出温度で230℃のTダイより押し出し、30℃のキャスティングロールで急冷し、温度55〜80℃で縦方向および横方向に連続的に逐次二軸延伸し、200℃で約5秒ヒートセットを行い、次いで両面にコロナ処理を行い、厚さ25μm延伸フィルムを成形した。
<蒸着処理> 電子ビーム加熱方式真空蒸着装置を用い、真空容器内を0.001Torr以下の真空度に維持しながら蒸着処理を行った。アルミ蒸着の場合は蒸着源としてアルミを使用した。またアルミナ蒸着の場合は、蒸着源としてアルミを用い、更に酸素導入しアルミをアルミナに酸化することでアルミナ蒸着膜を形成した。但し、実施例−11はアルミナ自体を蒸着源として実験を行った。
<多層フィルムと二軸延伸フィルムのラミフィルム>
ポリ乳酸二軸延伸フィルムまたはスルホネート基含有芳香族ポリエステル二軸延伸フィルムのコロナ面(蒸着を行っている場合は蒸着面)に上記記載の多層フィルムのコロナ面((蒸着を行っている場合は蒸着面)をウレタン系接着剤(武田薬品工業製:タケラックA310(60%)+タケラックA3(5%)+酢酸エチル(35%))を約7g/m塗布した後にドライラミネートして厚さ50〜55μmのラミフィルムを得た。 ラミフィルムの物性を前記方法で測定した。測定結果を表4から表6に示す。

測定結果3で多層フィルムと延伸フィルムのラミフィルムの透明性、酸素透過度、水蒸気透過度の各ラミにフィルムの比較を行っている。
表4から明らかなように蒸着処理を行った実施例−4〜11は蒸着をしていない参考例−1、2に比べて酸素透過度、水蒸気透過度が大幅に改善し、食品包装等バリア性能が必要な用途にも問題ないレベルにまでなっていることが分かる。
特に芳香族ポリエステル延伸フィルムを用いた実施例−6、7は芳香族ポリエステル延伸フィルム本来のガスバリア性が優れているため、更にガスバリア性に優れている。
【0053】
【表4】

(表5および表6)

【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の多層フィルムは、光学特性に優れ、且つヒートシール性を有するので、例えば、ポリ乳酸二軸延伸フィルムとラミすることによりラーメン、うどん、そば、焼きそば等の即席カップ麺食品、ヨーグルト、プリン、ゼリー等の乳酸菌飲料のような飲料デザート類カップ食品の個別あるいは複数個等の包装用フィルムに限らず、エアゾール製品、インテリア製品、CD類、磁気テープ製品の一般シュリンク包装、缶・瓶詰飲料、調味料などの集積シュリンクパックや、プラスチック容器、ガラス瓶などの胴張りシュリンクラベル、ワイン、ウイスキー等の瓶のキャップシール等、種々の包装用フィルム等に用い得る。
【0055】
また、上記ポリ乳酸二軸延伸ラミフィルムはピロー包装、溶断シール包装に用いることができ、透明性、グロス、剛性に優れ、片面にヒートシール性を備えており、又、運搬に耐え得る耐衝撃性も有しているので、従来ポリオレフィンフィルムからなるオーバーラップ包装用フィルムが使用されているあらゆる用途、例えば、チョコレート、ガム、キャンデー等の菓子類、たばこ、化粧品等の嗜好品、カセットテープ、ビデオテープ、CD、CDR、DVD、ゲームソフト等の記録材料、およびそれらの集積包装材料等の、箱物包装の包装用フィルムとして好適に使用できる。 更に本発明の延伸フィルムまたは多層フィルムに無機金属を蒸着またはスパッタすることでガスバリア性能が向上し、食品包装で用いる場合の品質保持期間が長くなり、用途が広がる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)80〜99重量%、ポリ乳酸(B)20〜1重量%、((A)及び(B)の合計で100重量%とする)からなる組成物(D1)の第1層(I)、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)1〜20重量%、ポリ乳酸(B)99〜80重量%、((A)及び(B)の合計で100重量%とする)からなる組成物(D2)の第2層(II)が積層されており、第1層(I)、第2層(II)の各層の厚さが全厚さ(第1層(I)、第2層(II)の厚さの合計を100%とする)の20%以上であることを特徴とする第1層(I)/第2層(II)の構成からなる多層フィルム。
【請求項2】
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)80〜99重量%、ポリ乳酸(B)20〜1重量%、((A)及び(B)の合計で100重量%とする)からなる組成物(D1)の第1層(I)、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)1〜20重量%、ポリ乳酸(B)99〜80重量%、((A)及び(B)の合計で100重量%とする)からなる組成物(D2)の第2層(II)、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)80〜99重量%、ポリ乳酸(B)20〜1重量%、((A)及び(B)の合計で100重量%とする)からなる組成物(D3)の第3層(III)、がこの順序で積層されており、第1層(I)、第2層(II)、第3層(III)の各層の厚さが全厚さ(第1層(I)、第2層(II)、第3層(III)の厚さの合計を100%とする)の20%以上であることを特徴とする第1層(I)/第2層(II)/第3層(III)の構成の多層フィルム。
【請求項3】
請求項1または2において、第2層(II)が、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)1〜20重量%、ポリ乳酸(B)94〜65重量%、及びポリ乳酸ブロック(e1)25〜98重量%と、−COO−基を含有する鎖状炭化水素および/または脂環式炭化水素から構成されるポリエステルブロック(e2)75〜2重量%((e1)と(e2)の合計で100重量%とする。)とから構成され、その重量平均分子量が1.5万〜10万である線状乳酸系共重合ポリエステル(E)5〜15重量%((A)、(B)及び(E)の合計で100重量%とする)からなることを特徴とする請求項1または2に記載の多層フィルム。
【請求項4】
ポリ乳酸(B)が、D−乳酸を7〜30重量%含むポリL―乳酸、またはL−乳酸を7〜30重量%含むポリD―乳酸であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項5】
2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)が、乳酸である請求項1ないし4のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項6】
脂肪族ポリエステル共重合体(A)の融点(Tm)が80〜120℃、結晶化温度(Tc)が35〜75℃及び(Tm)−(Tc)が35〜55℃の範囲にある脂肪族ポリエステル共重合体であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の多層フィルムに酸化アルミ、アルミ、珪酸、ITOのうちのいずれか1種以上の無機金属が蒸着またはスパッタされている請求項1ないし5のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項8】
請求項7に記載の無機金属が蒸着またはスパッタされている多層フィルムにポリ乳酸または芳香族系ポリエステル共重合体(F)からなる二軸延伸フィルムをラミネートされていることを特徴とする二軸延伸ラミネートフィルム。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれかに記載の多層フィルムに酸化アルミ、アルミ、珪酸、ITOのうちのいずれか1種以上の無機金属が蒸着またはスパッタされているポリ乳酸または芳香族系ポリエステル共重合体(F)からなる二軸延伸フィルムをラミネートされていることを特徴とする二軸延伸ラミネートフィルム。
【請求項10】
芳香族系ポリエステル共重合体(F)がスルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸を1共重合成分として含むポリエステルであり、芳香族ジカルボン酸、脂肪族グリコール、およびスルホン酸金属塩基を核置換基として有する芳香族ジカルボン酸、それに必要に応じて脂肪族ジカルボン酸または脂肪族ヒドロキシカルボン酸を加え、それらの成分間で重縮合反応を行って得られるポリエステルであることを特徴とする請求項8、9記載の二軸延伸ラミネートフィルム。

【公開番号】特開2007−176143(P2007−176143A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110478(P2006−110478)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】