説明

生分解性樹脂組成物

【課題】 従来、バイオマス由来樹脂とポリオレフィン樹脂のブレンドによる樹脂組成物を成形した場合には、相溶性や耐衝撃性等の機械物性が未だ満足できるものではなかったため、バイオマス由来樹脂とポリオレフィン樹脂の相溶性に優れ、耐衝撃性等の機械物性に優れた成形品を与える、生分解性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 バイオマス由来樹脂(A)、ポリオレフィン樹脂(B)および相溶化剤(C)を含有してなる樹脂組成物において、(C)が、分子中に0.1〜20個の水酸基を有する水酸基変性ポリオレフィン(C1)のみからなることを特徴とする生分解性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生分解性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、バイオマス由来樹脂、ポリオレフィン樹脂および相溶化剤を含有してなる生分解性樹脂組成物に関する。ここおよび以下において、バイオマス由来樹脂とは、バイオマス(生物由来の物質)を原料として得られる樹脂を指し、該樹脂には発酵合成樹脂(微生物が体内でバイオマスを重合させて得られるもの)、天然物由来樹脂(バイオマス自体をポリマーとして利用するもの)、化学合成樹脂(バイオマス由来モノマーを化学的に重合して得られるもの)等が含まれ、具体例としては後述のものが挙げられる。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の観点から生分解性に優れるバイオマス由来樹脂をプラスチック原料に極力併用しようとする動きがある。しかしながら、該バイオマス由来樹脂を併用して各種成形品として用いた場合、他のプラスチック原料との相溶性(以下において分散性ということがある。)や、各種成形品にとくに求められるプラスチックの耐衝撃性等の機械物性の点で問題があった。
そこで、バイオマス由来樹脂とポリオレフィン樹脂のブレンドによる生分解性樹脂の耐衝撃性等の機械物性の改良が盛んに検討されている。例えば、該ブレンドに際してスチレン系熱可塑性エラストマーや変性ポリオレフィンを相溶化剤として使用する方法等が提案されている(例えば特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭 56−100840号公報
【特許文献2】特開平 6−256417号公報
【特許文献3】特開2007−177213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来技術では、バイオマス由来樹脂とポリオレフィン樹脂のブレンドによる樹脂組成物を成形した場合に、相溶性や耐衝撃性等の機械物性が未だ満足できるものではなく改良が求められている。
本発明の目的は、バイオマス由来樹脂とポリオレフィン樹脂の相溶性に優れ、耐衝撃性等の機械物性に優れた成形品を与える、生分解性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、バイオマス由来樹脂(A)、ポリオレフィン樹脂(B)および相溶化剤(C)を含有してなる樹脂組成物において、(C)が、分子中に0.1〜20個の水酸基を有する変性ポリオレフィン(C1)のみからなることを特徴とする生分解性樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の生分解性樹脂組成物は下記の効果を奏する。
(1)二酸化炭素の排出量を削減することができる環境調和型成形品を与える。
(2)高含量でバイオマス由来樹脂を含有し、かつ耐衝撃性等の機械物性に優れる成形品を与える。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[バイオマス由来樹脂(A)]
バイオマス由来樹脂(A)としては、具体的にはポリ乳酸(A1)、ポリヒドロキシブチレート(A2)、ポリトリメチレンテレフタレート(A3)、エステル化デンプン(A4)およびセルロースアセテート(A5)およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0008】
これらのうち(A)の、後述するポリオレフィン樹脂(B)への分散性の観点から好ましいのは(A1)、(A2)、(A3)、さらに好ましいのは(A1)、(A2)である。
【0009】
ポリ乳酸(A1)には、乳酸単独重合体を含む、乳酸成分が50重量%以上のポリマーが含まれる。具体例としては、
(1)ポリ乳酸
(2)乳酸と他の脂肪族オキシカルボン酸とのコポリマー
(3)乳酸、脂肪族多価アルコールと脂肪族多塩基酸とのコポリマー
(4)(1)〜(3)のいずれかの組み合わせによる混合物
等が挙げられる。
本発明で用いられる乳酸としては、L−、D−およびDL−乳酸、それらの混合物、および乳酸の環状二量体であるラクチドが挙げられる。
【0010】
(A1)の製造方法の具体例としては、下記の方法が挙げられるが、その製造方法は特に限定されることはない。
[1]乳酸または乳酸と脂肪族オキシカルボン酸の混合物を原料として、直接脱水重縮合させる方法(例えば米国特許5310865号明細書記載の製造方法)
[2]乳酸の環状二量体(ラクチド)を溶融重合させる開環重合法(例えば米国特許2758987号明細書記載の製造方法)
[3]乳酸と脂肪族オキシカルボン酸の環状二量体、例えばラクチドやグリコリドとε−カプロラクトンを、触媒の存在下、溶融重合させる開環重合法(例えば米国特許4057537号明細書記載の製造方法)
[4]乳酸、脂肪族二価アルコールと脂肪族二塩基酸の混合物を、直接脱水重縮合させる方法(例えば米国特許5428126号明細書記載の製造方法)
[5]ポリ乳酸と脂肪族二価アルコールと脂肪族二塩基酸とのポリマーを、有機溶媒存在下に縮合させる方法(例えば欧州特許公報0712880A2号明細書記載の製造方法)
[6]乳酸を触媒の存在下、脱水重縮合反応させることによりポリエステル重合体を製造するに際し、少なくとも一部の工程で固相重合させる方法。
【0011】
また、少量のトリメチロールプロパン(以下TMPと略記)、グリセリン(以下GRと略記)等の脂肪族多価(3〜4価)アルコール、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多塩基酸(3価〜6価またはそれ以上)、多糖類(4価〜8価またはそれ以上)等の多価アルコールを共存させて共重合させてもよく、またジイソシアネート化合物等の結合剤(高分子鎖延長剤)を用いて分子量を高めてもよく、ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキシド等の過酸化物で架橋させてもよい。
【0012】
(A1)の数平均分子量[以下Mnと略記。測定は後述するゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]や分子量分布は、特に制限されないが、(B)との相溶性および工業上の観点からMnは好ましくは500〜100,000、さらに好ましくは1,000〜80,000、とくに好ましくは2,000〜50,000である。
分子量の調整は、モノマー濃度、その他原料濃度、反応温度等の条件を調整することで可能であり、高分子量ポリ乳酸の熱分解、加水分解、エステル交換等により低分子量化することでも調整可能である。
【0013】
前記GPCの測定条件は下記のとおりである。以降におけるMnも同様の条件で測定するものとする。
<GPC測定条件>
[1]装置 :Waters150−CV[Waters(株)製]
[2]カラム :PLgel 10μm MIXED−B[ポリマーラボラトリーズ
(株)製]
[3]溶離液 :o−ジクロロベンゼン
[4]基準物質:ポリスチレン
[5]注入条件:サンプル濃度3mg/ml、カラム温度135℃
【0014】
ポリヒドロキシブチレート(A2)には、発酵合成法および化学合成法により得られるものが含まれる。発酵法により得られるポリヒドロキシブチレートは、ポリ[(R)−3−ヒドロキシブタン酸](ホモポリマー)であり、化学合成法で得られるものは、ポリ[(R)−3−ヒドロキシブタン酸]とポリ[(S)−3−ヒドロキシブタン酸]との混合物(ラセミ体)である。
ここにおいて、(R)は不斉中心炭素原子に結合している4個の基を順位法則の優先性の高い順(水酸基、CH2COOH基、メチル基、H)に右回りを表し、(S)は左回りを表す。
【0015】
(A2)の製造方法の具体例としては、下記の方法が挙げられるが、その製造方法は特に限定されることはない。
[1]ポリヒドロキシブチレート生産能を有している微生物を炭素源、窒素源、無機イオンおよび必要に応じその他の有機成分を含有する通常の培地で培養することにより菌体内にポリヒドロキシブチレートを蓄積させ、クロロホルム等の有機溶媒により抽出する方法(例えば特開平9−131186号公報記載の製造方法)。
[2]ポリヒドロキシブチレート合成遺伝子を含む組換えDNAを導入して形質転換させた微生物を培養し、その菌体内に生成したポリヒドロキシブチレートを採取する方法(例えば特開平10−176070号公報記載の製造方法)。
[3]ヒドロキシブタン酸を原料として、直接脱水重縮合させる方法(例えば米国特許5310865号明細書記載に示されている製造方法)
[4]β−ブチロラクトンを、触媒の存在下、溶融重合させる開環重合法(例えば特開平11−323115号公報記載の製造方法)
【0016】
(A2)のMnや分子量分布は、特に制限されないが、(B)との相溶性および工業上の観点からMnは好ましくは500〜2,000,000、さらに好ましくは1,000〜1,000,000、特に好ましくは2,000〜500,000である。
分子量の調整は、モノマー濃度、その他原料濃度、反応温度等の条件を調整することで可能であり、高分子量ポリヒドロキシブチレートの熱分解、加水分解、エステル交換等により低分子量化することでも調整可能である。
【0017】
ポリトリメチレンテレフタレート(A3)には、1,3−プロパンジオールとテレフタル酸から得られるものが含まれる。ここで1,3−プロパンジオールは植物発酵により製造されるものである。1,3−プロパンジオールの製造方法としては特に限定されることはないが、例えば、トウモロコシ等の植物を発酵させてグルコースを製造し、1,3−プロパンジオールに変換する方法等が挙げられる(特公表2006−504412号公報記載の方法等)。
【0018】
1,3−プロパンジオールとテレフタル酸の反応は、前記公知の方法(例えば、米国特許5428126号明細書記載の製造方法)により行われる。
【0019】
(A3)のMnや分子量分布は、特に制限されないが、(B)との相溶性および工業上の観点からMnは好ましくは500〜100,000、さらに好ましくは1,000〜80,000、特に好ましくは2,000〜50,000である。
分子量の調整は、モノマー濃度、その他原料濃度、反応温度等の条件を調整することで可能であり、高分子量ポリトリメチレンテレフタレートの熱分解、加水分解、エステル交換等により低分子量化することでも調整可能である。
【0020】
エステル化デンプン(A4)としては、例えば特開2006−299271号公報に記載のもの、すなわちデンプンの炭素数(以下Cと略記)2〜22エステル、例えばデンプンの酢酸エステル、デンプンのプロピオン酸エステル、デンプンの酪酸エステル、デンプンのペンタン酸エステルおよびデンプンのヘキサン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種のデンプンエステルが挙げられる。
【0021】
セルロースアセテート(A5)としては、例えば特開2008−56768号公報に記載のもの、例えばセルローストリアセテート、その他のアセチル化度の異なるセルロースアセテートが挙げられる。
【0022】
(A4)および(A5)のMnや分子量分布は、特に制限されないが、後述するポリオレフィン樹脂(B)との相溶性および工業上の観点からMnは好ましくは500〜100,000、さらに好ましくは1,000〜80,000、特に好ましくは2,000〜50,000である。
【0023】
[ポリオレフィン樹脂(B)]
ポリオレフィン樹脂(B)としては、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、プロピレン−エチレン共重合体[共重合比(重量比)=0.1/99.9〜99.9/0.1]、プロピレンおよび/またはエチレンと他のα−オレフィン(C4〜12)の1種以上との共重合体(ランダムおよび/またはブロック付加)[共重合比(重量比)=99/1〜5/95]、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)[共重合比(重量比)=95/5〜60/40]、エチレン/エチルアクリレート共重合体(EEA)[共重合比(重量比)=95/5〜60/40]等が挙げられる。
これらのうち好ましいのは、ポリプロピレン、ポリエチレン、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレンおよび/またはエチレンとC4〜12のα−オレフィンの1種以上との共重合体[共重合比(重量比)=90/10〜10/90、ランダムおよび/またはブロック付加]である。
【0024】
(B)のメルトフローレート(以下MFRと略記)は、後述する成形品の機械物性の観点から好ましくは0.5〜150、さらに好ましくは1〜100である。MFRは、JIS K 6758に準じて(ポリプロピレンの場合:230℃、荷重2.16kgf、ポリエチレンの場合:190℃、荷重2.16kgf)測定される。
【0025】
本発明における相溶化剤(C)は、分子中に0.1〜20個の水酸基を有する水酸基変性ポリオレフィン(C1)のみからなるものであり、該(C1)はポリオレフィン(C0)を変性して水酸基を有するものとすることにより得られる。
【0026】
[ポリオレフィン(C0)]
ポリオレフィン(C0)としては、オレフィンの1種または2種以上の(共)重合体、オレフィンの1種以上と他のモノマーの1種以上との共重合体、およびこれらの(共)重合体の高分子量物を減成(熱的、化学的または機械的減成)してなる減成物等が挙げられる。
上記オレフィンには、C2〜30(好ましくは2〜12、さらに好ましくは2〜4)のアルケン、例えばエチレン、プロピレン、並びにC4〜30のα−オレフィン(1−、2−およびイソブテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1,1−デセン、1−ドデセン等);また、他のモノマーには、オレフィンと共重合性のC3〜36の不飽和モノマー、例えばスチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸およびそのアルキル(C1〜30)エステルが含まれる。
上記(C0)のうち、相溶化剤(C)と前記ポリオレフィン樹脂(B)との相溶性の観点から好ましいのは80〜100(さらに好ましくは90〜100、とくに好ましくは95〜100)モル%のプロピレンを構成単位として含有する(共)重合ポリオレフィンである。
(C0)は、さらに必要によりエチレンおよびC4〜12(好ましくは4〜8)のα−オレフィンを構成単位に加えることができる。
(C0)中のエチレンの含有量は、通常20モル%以下、相溶化剤(C)と前記ポリオレフィン樹脂(B)との相溶性の観点から好ましくは10モル%以下、さらに好ましくは5モル%以下である。
また、(C0)中のα−オレフィンの含有量は、通常25モル%以下、相溶化剤(C)と前記ポリオレフィン樹脂(B)との相溶性の観点から好ましくは20モル%以下、さらに好ましくは15モル%以下である。
【0027】
C4〜12のα−オレフィンとしては、例えば直鎖のα−オレフィン(1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等)、分岐のα−オレフィン(4−メチル−1−ペンテン、2−エチルヘキセン等)が挙げられる。
これらのうち、前記ポリオレフィン樹脂(B)との相溶性の観点から好ましいのはC4〜8のα−オレフィン(1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等)、さらに好ましいのはC4〜6のα−オレフィン(1−ブテン、1−ペンテンおよび4−メチル−1−ペンテン等)、とくに好ましいのは1−ブテンである。
ポリオレフィン(C0)を構成する前記モノマーが2種以上の場合の結合形式は、ランダムおよび/またはブロックのいずれでもよい。
【0028】
ポリオレフィン(C0)の分子末端および/または分子内の炭素1,000個当たりの二重結合数は、後述の変性のしやすさおよび工業上の観点から、好ましくは0.2〜10個、さらに好ましくは0.3〜6個、特に好ましくは0.5〜5個である。また、二重結合数は1H−NMR(核磁気共鳴)分光法から得られるスペクトル中の4.5〜6.0ppm間における二重結合由来のピークから算出できる。
【0029】
ポリオレフィン(C0)の製造方法には、重合法(例えば特開昭59−206409号公報、特開昭55−135102号公報等に記載のもの)および減成法(熱的、化学的および機械的減成法等)が含まれ、このうち熱的減成法(熱減成法ということがある)としては、例えば特公昭43−9368号公報、特公昭44−29742号公報、特公平6−70094号公報等に記載のものが挙げられる。これらのうち、バイオマス由来樹脂(A)のポリオレフィン樹脂(B)への分散性および工業上の観点から好ましいのは減成法、さらに好ましいのは熱減成法である。
【0030】
重合法には、前記オレフィンの1種または2種以上を(共)重合させる方法、および前記オレフィンの1種以上と前記他のモノマーの1種以上とを共重合させる方法が含まれる。
該重合法によるポリオレフィンの具体例には、プロピレン系重合体、例えばポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、プロピレン/C4〜12のα−オレフィンの共重合体、プロピレンとC3〜36の不飽和モノマー(前記他のモノマー)との共重合体が含まれる。
【0031】
減成法によるポリオレフィンには、上記重合法で得られる重合体でしかもさらに高分子量[(C0)の変性のしやすさの観点から好ましいMnの下限は500、さらに好ましくは1,000、とくに好ましくは2,000、工業上の観点から好ましいMnの上限は100,000、さらに好ましくは80,000、とくに好ましくは50,000]のポリオレフィンを熱的、化学的または機械的に減成したものが含まれる。
【0032】
該減成法のうちの熱減成法によると、1分子当たりの平均末端二重結合量が1.5〜2個の低分子量ポリオレフィンが容易に得られる〔村田勝英、牧野忠彦、日本化学会誌、192頁(1975)〕ことから、ポリオレフィン(C0)の変性のしやすさ、従って相溶化剤(C)と、バイオマス由来樹脂(A)およびポリオレフィン樹脂(B)との相溶性の観点から好ましいのは熱減成法である。
【0033】
熱減成法には、上記の高分子量ポリオレフィンを窒素通気下で、(1)有機過酸化物非存在下、通常300〜450℃で0.5〜10時間、連続的に熱減成させる方法、および(2)有機過酸化物存在下、通常180〜300℃で0.5〜10時間、連続的に熱減成させる方法が含まれる。
これらのうち、ポリオレフィンの分子末端への二重結合の導入のしやすさ、得られる熱減成ポリオレフィンの変性のしやすさ、従って相溶化剤(C)と、バイオマス由来樹脂(A)、ポリオレフィン樹脂(B)との相溶性の観点から好ましいのは(1)の方法である。
【0034】
ポリオレフィン(C0)のMnは、後述の変性のしやすさの観点から、好ましくは100〜40,000、さらに好ましくは500〜30,000、とくに好ましくは1,000〜20,000である。
【0035】
[水酸基変性ポリオレフィン(C1)]
本発明における水酸基変性ポリオレフィン(C1)は、分子中に0.1〜20個、好ましくは0.5〜15個、さらに好ましくは1〜10個の水酸基を有する。水酸基が0.1個未満では相溶化剤(C)とバイオマス由来樹脂(A)との相溶性が悪くなり、20個を超えると(C)とポリオレフィン樹脂(B)との相溶性が悪くなる。該(C1)分子中の水酸基の個数は(C1)のMnと水酸基価(単位:mgKOH/g、以下においては数値のみで示す。)から計算により求めることができる。
(C1)のMnは前記の方法で測定することができ、水酸基価は、(C1)をキシレン等の有機溶媒に加熱溶解させて均一溶液とした後、JIS K0070に準じて測定することができる。従って(C1)の分子中の水酸基の個数は下記の式から求めることができる。

(C1)分子中の水酸基の個数=
[(C1)のMn]×[(C1)の水酸基価]/56100
【0036】
水酸基変性ポリオレフィン(C1)は、前記のポリオレフィン(C0)を以下の方法で変性することにより得られる。
【0037】
(1)ポリオレフィン(C0)と、酸無水物基を好ましくは1〜2個有するエチレン性不飽和モノマー(x)を、ラジカル開始剤(d)の存在下または非存在下で反応させて酸無水物変性ポリオレフィン(C0a)を得た後、該(C0a)と、水酸基を好ましくは1〜4個(さらに好ましくは1〜2個)およびアミノ基を好ましくは1〜3個(さらに好ましくは1〜2個)有する化合物(e)を反応させる方法。該方法で得られるものは以下において水酸基変性ポリオレフィン(C11)とする。
(2)ポリオレフィン(C0)と、水酸基を好ましくは1〜4個(さらに好ましくは1〜2個)有するエチレン性不飽和モノマー(y)を、ラジカル開始剤(d)の存在下または非存在下で反応させる方法。該方法で得られるものは以下において水酸基変性ポリオレフィン(C12)とする。
これらの方法のうち、工業上の観点から好ましいのは(1)の方法である。
【0038】
酸無水物基を1〜2個有するエチレン性不飽和モノマー(x)としては、C4〜10の不飽和ポリ(n=2〜3またはそれ以上、好ましくは2)カルボン酸の無水物、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、シクロヘキセンジカルボン酸無水物、アコニット酸およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
これらの(x)のうち、相溶化剤(C)と、バイオマス由来樹脂(A)およびポリオレフィン樹脂(B)との相溶性および工業上の観点から好ましいのは、不飽和ジカルボン酸の無水物、さらに好ましいのは無水マレイン酸である。
【0039】
ポリオレフィン(C0)に(x)を反応させて変性する際の(C0)と(x)の重量比は(C)とポリオレフィン樹脂(B)との相溶性および(C)とバイオマス由来樹脂(A)との相溶性の観点から好ましくは80/20〜99/1、さらに好ましくは83/17〜98/2、特に好ましくは85/15〜95/3である。
【0040】
(C0)と(x)は、ラジカル開始剤(d)の存在下または非存在下のいずれにおいても反応させることができるが、(C0)と(x)との反応性の観点から(d)の存在下で反応させるのが好ましい。
【0041】
(d)としては、例えばアゾ化合物(アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等)および過酸化物〔単官能(分子内にパーオキシド基を1個有するもの)[ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド等]および多官能(分子内にパーオキシド基を2個以上有するもの)[2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジアリルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート等]〕が挙げられる。
これらのうち、(C0)と(x)との反応性の観点から好ましいのは過酸化物、さらに好ましいのは単官能過酸化物、とくに好ましいのはジ−t−ブチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシドおよびジクミルパーオキシドである。
【0042】
(d)の使用量は、(x)の重量に基づいて通常30%以下、(C0)と(x)との反応性および工業上の観点から好ましくは0.001〜20%、さらに好ましくは0.01〜10%、特に好ましくは0.1〜5%である。
【0043】
酸無水物変性ポリオレフィン(C0a)の具体的な製造方法には、
[1]ポリオレフィン(C0)および酸無水物基を有するエチレン性不飽和モノマー(x)を加熱溶融、あるいは適当な有機溶媒[C3〜18、例えば炭化水素(例えばヘキサン、トルエンおよびキシレン)、ハロゲン化炭化水素(例えばジ−、トリ−およびテトラクロロエタンおよびジクロロブタン)、ケトン(例えばアセトンおよびメチルエチルケトン)およびエーテル(例えばエチル−n−プロピルエーテル、ジ−i−プロピルエーテルおよびジオキサン)]に懸濁あるいは溶解させ、これに必要により、ラジカル開始剤(d)[もしくは(d)を適当な有機溶媒(上記に同じ)に溶解させた溶液]、後述の連鎖移動剤(t)、重合禁止剤(u)を加えて加熱撹拌する方法(溶融法、懸濁法および溶液法);
[2](C0)、(x)および必要により(d)、(t)、(u)を予め混合し、押出機、バンバリーミキサーまたはニーダ等を用いて溶融混練する方法(溶融混練法)、が含まれる。
これらのうち(C0)と(x)との反応性の観点から好ましいのは[1]の方法、さらに好ましいのは溶融法および溶液法である。
【0044】
溶融法での溶融温度は、(C0)が溶融する温度であればよく、(C0)と(x)との反応性および得られる(C0a)の分解温度の観点から好ましくは120〜260℃、さらに好ましくは130〜240℃である。
【0045】
溶液法での溶液温度は、(C0)が溶媒に溶解する温度であればよく、(C0)と(x)との反応性、および得られる(C0a)の分解温度と工業上の観点から好ましくは50〜220℃、さらに好ましくは110〜210℃、特に好ましくは120〜180℃である。
【0046】
上記連鎖移動剤(t)としては、例えば炭化水素[C6〜24、例えば芳香族炭化水素(例えばトルエン、キシレン、エチルベンゼンおよびイソプロピルベンゼン)および不飽和脂肪族炭化水素(例えば1−および2−ブテン、1−および2−ヘキセン、1−ドデセンおよび1−テトラデセン)];ハロゲン化炭化水素(C1〜24、例えばジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素および塩化ベンジル);アルコール(C1〜24、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノールおよびアリルアルコール);チオール(C1〜24、例えばエチルチオール、プロピルチオールおよび1−ドデシルチオール);ケトン(C3〜24、例えばアセトン、メチルエチルケトンおよびエチルブチルケトン);アルデヒド(C2〜18、例えば2−メチル−2−プロピルアルデヒドおよび1−オクチルアルデヒド);フェノール(C6〜36、例えばフェノール、m−、p−およびo−クレゾール);キノン(C6〜24、例えばヒドロキノン);アミン(C3〜24、例えばジエチルメチルアミン、トリエチルアミンおよびジフェニルアミン);およびジスルフィド(C2〜24、例えばジエチルジスルフィド、ジ−1−プロピルジスルフィドおよびジ−1−オクチルジスルフィド)が挙げられる。
これらのうち、ポリオレフィン(C0)と連鎖移動剤(t)の相溶性の観点から好ましいのは炭化水素、ハロゲン化炭化水素、さらに好ましいのは炭化水素、とくに好ましいのは不飽和脂肪族炭化水素である。
(t)の使用量は、(x)の重量に基づいて通常40%以下、(C0)と(x)との反応性および(C0)と(t)との相溶性の観点から好ましくは0.05〜20%である。
【0047】
重合禁止剤(u)としては、無機化合物[例えば酸素、硫黄および金属塩(例えば塩化第二鉄)]および有機化合物〔カテコール(C6〜36、例えば2−メチル−2−プロピルカテコール)、キノン(C6〜24、例えばp−ベンゾキノンおよびデュロキノン)、ヒドラジン(C2〜36、例えば1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジン)、フェルダジン(C5〜36、例えば1,3,5−トリフェニルフェルダジン)、ニトロ化合物(C3〜24、例えばニトロベンゼン)および安定ラジカル[C5〜36、例えば1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(DPPH)、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPO)および1,3,5−トリフェニルフェルダジル]〕が挙げられる。
(u)の使用量は、(x)の重量に基づいて通常5%以下、(C0)と(x)との反応性および(C0)と(x)との相溶性の観点から好ましくは0.01〜0.5%である。
【0048】
水酸基を1〜4個およびアミノ基を1〜3個有する化合物(e)としては以下のものが挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物が使用できる。
【0049】
(e)としては、ヒドロキシルアミン、アルカノールアミン[C2〜12のモノ−およびジアルカノールアミン(モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、モノブタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン等)、およびこれらのジメチル硫酸あるいはベンジルクロリド等の4級化剤による4級化物等]、1級−、2級モノアミンのヒドロキシアルキル化(C2〜4)物、並びに1級−、2級モノアミンおよびそれらのアルキル化(C1〜4)物等のアルキレンオキシド(以下AOと略記)付加物[モノ−、ジ−およびトリ(ヒドロキシ)アルキルアミン(モノ−、ジ−およびトリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、N−ヒドロキシエチルモルホリン、並びにエチルアミン、モルホリン等のAO付加物等)]および3級アミノ基含有ジオール等が挙げられる。
(e)の有する水酸基の個数は、(C)の、(A)および(B)との相溶性の観点から好ましくは1〜4個、さらに好ましくは1〜2個であり、(e)の有するアミノ基の個数は、工業上の観点から好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1〜2個である。
これらのうち(A)と(B)との相溶性および工業上の観点から好ましいのはモノエタノールアミンである。
【0050】
酸無水物変性ポリオレフィン(C0a)と(e)との反応による水酸基変性ポリオレフィン(C11)の製造方法には、
[1](C0a)および(e)を加熱溶融、あるいは適当な有機溶媒(前記に同じ)に懸濁あるいは溶解させ、加熱撹拌する方法(溶融法、懸濁法および溶液法);
[2](C0a)および(e)を予め混合し、押出機、バンバリーミキサーまたはニーダ等を用いて溶融混練する方法(溶融混練法)が含まれる。
これらのうち(C0a)と(e)との反応性の観点から好ましいのは[1]の方法、さらに好ましいのは溶融法および溶液法である。
【0051】
溶融法での溶融温度は、(C0a)が溶融する温度であればよく、(C0a)と(e)との反応性の観点から好ましくは120〜260℃、さらに好ましくは130〜240℃である。
【0052】
溶液法での溶液温度は、(C0a)が溶媒に溶解する温度であればよく、(C0a)と(e)との反応性および工業上の観点から好ましくは50〜220℃、さらに好ましくは110〜210℃、特に好ましくは120〜180℃である。
【0053】
前記の水酸基変性ポリオレフィンの製造方法(2)における水酸基を1〜4個有する不飽和モノマー(y)としては、以下の(1)〜(6)が挙げられる。
(1)水酸基含有(メタ)アクリレート
(1−1)下記の一般式(1)で示される(メタ)アクリレート

CH2=C(R1)−COO−(A−O)m−H (1)

[式中、R1はHまたはメチル基、AはC2〜4のアルキレン基、mは1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1)の数である。]
【0054】
例えば2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、HEMAと略記)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(以下HEAと略記)、2−および3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(C2〜4)(メタ)アクリレート、並びに2−ヒドロキシエトキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルコキシ(C2〜4)アルキル(C2〜4)(メタ)アクリレート等;
【0055】
(1−2)3〜8個の水酸基を含有する多価アルコールの(メタ)アクリレート
多価アルコールとしては、例えばC3〜12のアルカンポリオール、その分子内もしくは分子間脱水物および糖類等[例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール(それぞれ以下GR、TMP、PE、SOと略記)、ソルビタン、ジGR、ショ糖、メチルグルコシド等]が挙げられ、それらの(メタ)アクリレートとしてはGRモノ−およびジ−(メタ)アクリレート、TMPモノ−およびジ−(メタ)アクリレート、並びにショ糖(メタ)アクリレート等;
(2)C2〜12のアルケノール
ビニルアルコール(酢酸ビニルの加水分解により形成される)、およびC3〜12のアルケノール[(メタ)アリルアルコール、(イソ)プロペニルアルコール、クロチルアルコール、1−ブテン−3−オール、1−ブテン−4−オール、1−オクテノール、1−ウンデセノール、1−ドデセノール等]
(3)C4〜12のアルケンジオール
2−ブテン−1,4−ジオール等
(4)C3〜12の、アルケニル基を有する水酸基含有アルケニルエーテル
例えばヒドロキシアルキル(C1〜6)アルケニルエーテル〔例えば2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル、並びに(1−2)で挙げた多価アルコールのアルケニル(C3〜12)エーテル[TMPモノ−およびジ−(メタ)アリルエーテル、蔗糖(メタ)アリルエーテル等]〕
(5)水酸基含有芳香族モノマー
o−、m−およびp−ヒドロキシスチレン等
(6)上記(1)〜(5)のAO付加物
(1)〜(5)の水酸基のうちの少なくとも1個が−O−(A−O)mHで置換されたモノマー[但し、Aおよびmは前記一般式(1)と同じ]。
【0056】
(y)のうち、(A)および(B)の相溶性の観点から好ましいのは(1)、(2)、(4)、(5)、(6)、さらに好ましいのは(1−1)、とくに好ましいのはHEA、HEMA、最も好ましいのはHEMAである。
【0057】
ポリオレフィン(C0)を(y)で変性してなる水酸基含有変性ポリオレフィン(C12)の具体的な製造方法には、次の[1]、[2]の方法が含まれる。
[1](C0)および(y)を加熱溶融、あるいは適当な有機溶媒(前記に同じ)に懸濁あるいは溶解させ、これに必要により前記のラジカル開始剤(d)[もしくは(d)を適当な有機溶媒(前記に同じ)に溶解させた溶液]、前記の連鎖移動剤(t)、重合禁止剤(u)を加えて加熱撹拌する方法(溶融法、懸濁法および溶液法)、および
[2](C0)、(y)および必要により(d)、(t)、(u)を予め混合し、押出機、バンバリーミキサーまたはニーダ等を用いて溶融混練する方法(溶融混練法)が含まれる。
これらのうち(C0)と(y)との反応性の観点から好ましいのは[1]の方法、さらに好ましいのは溶融法および溶液法である。
【0058】
溶融法での溶融温度は、(C0)が溶融する温度であればよく、(C0)と(y)との反応性および得られる(C12)の分解温度の観点から好ましくは120〜260℃、さらに好ましくは130〜240℃である。
【0059】
溶液法での溶液温度は、(C0)が溶媒に溶解する温度であればよく、(C0)と(y)との反応性、および得られる(C12)の分解温度および工業上の観点から好ましくは50〜220℃、さらに好ましくは110〜210℃、特に好ましくは120〜180℃である。
【0060】
(d)の使用量は、(y)の重量に基づいて通常30%以下、(C0)と(y)との反応性および工業上の観点から好ましくは0.001〜20%、さらに好ましくは0.01〜10%、特に好ましくは0.1〜5%である。
【0061】
(t)の使用量は、(y)の重量に基づいて通常40%以下、(C0)と(y)との反応性および(C0)と(t)との相溶性の観点から好ましくは0.05〜20%である。
【0062】
(u)の使用量は、(y)の重量に基づいて通常5%以下、(C0)と(y)との反応性および(C0)と(y)との相溶性の観点から好ましくは0.01〜0.5%である。
【0063】
水酸基変性ポリオレフィン(C1)のMnは樹脂成形品の機械物性およびバイオマス由来樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)の相溶性の観点から好ましくは500〜30,000、さらに好ましくは1,000〜20,000である。
【0064】
水酸基変性ポリオレフィン(C1)のうち、相溶化剤(C)と、バイオマス由来樹脂(A)およびポリオレフィン樹脂(B)との相溶性の観点から好ましいのは、該(C1)が、前記熱減成ポリオレフィンを変性してなる水酸基変性ポリオレフィンである。すなわち、該水酸基変性ポリオレフィンは、前記熱減成ポリオレフィンの酸無水物変性ポリオレフィンをさらに水酸基変性してなるものである。
【0065】
[生分解性樹脂組成物(Z)]
本発明の生分解性樹脂組成物(Z)は、バイオマス由来樹脂(A)、ポリオレフィン樹脂(B)および相溶化剤(C)を含有し、該(C)が、分子中に0.1〜20個の水酸基を有する水酸基変性ポリオレフィン(C1)のみからなるものである。
(Z)における(A)と(B)の重量比は、環境保護および後述する成形品の機械物性の観点から好ましくは10/90〜60/40、さらに好ましくは25/75〜50/50である。
また、(A)、(B)、(C)の合計重量に基づく(C)の割合は、成形品の機械物性および(C)の(A)、(B)との相溶性の観点から好ましくは0.1〜30%、さらに好ましくは1〜20%、特に好ましくは2〜10%である。
【0066】
本発明の生分解性樹脂組成物(Z)は、本発明の効果を阻害しない範囲で必要によりさらに種々の添加剤(H)を含有させることができる。
(H)としては、着色剤(H1)、難燃剤(H2)、充填剤(H3)、帯電防止剤(H4)、分散剤(H5)、酸化防止剤(H6)および紫外線吸収剤(H7)からなる群から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0067】
着色剤(H1)としては、顔料[白色(酸化チタン等)、黒色(カーボンブラック等)および黄色顔料(カドミイエロー等)等]、染料[アゾ、アンスラキノン、インジゴイドおよび硫化染料等]等;
【0068】
難燃剤(H2)としては、有機難燃剤[含リン化合物(リン酸エステル等)、含臭素化合物(テトラブロモビスフェノールA等)、含塩素化合物(塩素化パラフィン等)等〕;無機難燃剤[三酸化アンチモン等]等が挙げられる。
【0069】
充填剤(H3)としては、金属粉(アルミニウム粉等)、金属酸化物(アルミナ、タルク等)、金属水酸化物(水酸化アルミニウム等)、金属塩(炭酸カルシウム等)、繊維[無機繊維(ガラス繊維等)、有機繊維(ナイロン繊維等)等]、マイクロバルーン(ガラス等)、炭素類(カーボンブラック等)、金属硫化物(二硫化モリブデン等)、有機粉(木粉等)等が挙げられる。
【0070】
帯電防止剤(H4)としては、下記および米国特許第3,929,678および4,331,447号明細書に記載の、非イオン性、カチオン性、アニオン性および両性の界面活性剤が挙げられる。
(1)非イオン性界面活性剤
AO付加型ノニオニックス、例えば疎水性基(C8〜24またはそれ以上)を有する活性水素原子含有化合物[高級アルコール、高級脂肪族アミンおよび高級脂肪酸等]の(ポリ)オキシアルキレン誘導体、多価アルコール[前記のもの、例えばGR、PEおよびソルビタン]の高級脂肪酸エステルの(ポリ)オキシアルキレン誘導体、高級脂肪酸の(アルカノール)アミドの(ポリ)オキシアルキレン誘導体、多価アルコールアルキルエーテルの(ポリ)オキシアルキレン誘導体、およびポリオキシプロピレンポリオール;多価アルコール型ノニオニックス、例えば多価アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールアルキルエーテル、および脂肪酸アルカノールアミド;並びに、アミンオキシド型ノニオニックス、例えば(ヒドロキシ)アルキルジ(ヒドロキシ)アルキルアミンオキシド。
【0071】
(2)カチオン性界面活性剤
第4級アンモニウム塩型カチオニックス、例えばテトラアルキルアンモニウム塩(C11〜100);トリアルキルベンジルアンモニウム塩(C17〜80);アルキル(C8〜60)ピリジニウム塩;(ポリ)オキシアルキレン(C2〜4、重合度1〜100またはそれ以上)トリアルキルアンモニウム塩(C12〜100);およびアシル(C8〜18)アミノアルキル(C2〜4)もしくはアシル(C8〜18)オキシアルキル(C2〜4)トリ[(ヒドロキシ)アルキル(C1〜4)]アンモニウム塩;並びにアミン塩型カチオニックス、例えば1〜3級アミン[例えば高級脂肪族アミンや脂肪族アミンのポリオキシアルキレン誘導体、およびアシルアミノアルキルもしくはアシルオキシアルキルジ(ヒドロキシ)アルキルアミン]の、無機酸塩および有機酸塩。
【0072】
(3)アニオン性界面活性剤
カルボン酸(塩)、例えば高級脂肪酸、エーテルカルボン酸、およびそれらの塩;硫酸エステル塩、例えば上記の高級アルコールまたはそのAO付加物の硫酸エステル塩、硫酸化脂肪酸エステルおよび硫酸化オレフィン;スルホン酸塩;並びにリン酸エステル塩、例えば高級アルコールもしくはそのAO付加物またはアルキル(C4〜60)フェノールのAO付加物のリン酸エステル塩。
【0073】
(4)両性界面活性剤:
カルボン酸(塩)型アンフォテリックス、例えばアミノ酸型アンフォテリックス、およびベタイン型アンフォテリックス;硫酸エステル(塩)型アンフォテリックス、例えばアルキルアミンの硫酸エステル(塩)、およびヒドロキシアルキルイミダゾリン硫酸エステル(塩);スルホン酸(塩)型アンフォテリックス、例えばアルキルスルホタウリン、およびイミダゾリンスルホン酸(塩);並びにリン酸エステル(塩)型アンフォテリックス、例えばGR高級脂肪酸エステルのリン酸エステル(塩)。
【0074】
上記のアニオン性および両性界面活性剤における塩には、金属塩、例えばアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)およびIIB族金属(亜鉛等)の塩;アンモニウム塩;並びにアミン塩および4級アンモニウム塩が含まれる。
塩を構成するアミンには、C1〜20のアミン、例えばヒドロキシルアミン、3級アミノ基含有ジオールおよび1級モノアミン、2級モノアミン、並びにそれらのアルキル化(C1〜4)および/またはヒドロキシアルキル化(C2〜4)物(AO付加物):例えばモノ−、ジ−およびトリ−(ヒドロキシ)アルキル(アミン)(モノ−、ジ−およびトリ−エタノールアミンおよびエチルアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−ヒドロキシエチルモルホリン等)が含まれる。4級アンモニウム塩には、これらのアミンの4級化物[米国特許第4,271,217号明細書に記載の4級化剤またはジアルキルカーボネート(前記)による4級化物]が含まれる。
【0075】
分散剤(H5)としては、Mn1,000〜20,000のポリマー、例えばビニル樹脂{例えばポリオレフィン〔例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/ブテン共重合体[共重合重量比1〜99/1〜99]、プロピレン/ブテン共重合体[共重合重量比1〜99/1〜99]およびエチレン/プロピレン/ブテン共重合体[共重合重量比1〜98/1〜98/1〜98]、変性ポリオレフィン[例えば酸化ポリエチレン(ポリエチレンをオゾン等で酸化し、カルボキシル基、カルボニル基および/または水酸基等を導入したもの)、酸化ポリプロピレン(上記酸化ポリエチレンにおいてポリエチレンをポリプロピレンに代えて同様に得られるもの)、エポキシ変性ポリエチレン(エポキシ当量100〜20,000)、エポキシ変性ポリプロピレン(エポキシ当量100〜20,000)、ヒドロキシル変性ポリエチレン(水酸基価0.1〜60)、ヒドロキシル変性ポリプロピレン(水酸基価0.1〜60)、ヒドロキシル変性エチレン/ブテン共重合体(水酸基価0.1〜60、共重合重量比1〜99/99〜1)およびヒドロキシル変性プロピレン/ブテン共重合体(水酸基価0.1〜60、共重合重量比1〜99/99〜1)]〕および上記ポリオレフィン以外のビニル樹脂〔例えばポリハロゲン化ビニル[例えばポリ塩化ビニル、ポリ臭化ビニル、ポリフッ化ビニルおよびポリヨウ化ビニル]、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメチルビニルエーテル、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル[例えばポリ(メタ)アクリル酸−メチル、−エチル、−n−およびi−プロピルおよび−n−およびt−ブチル]およびスチレン樹脂[例えばポリスチレン、アクリロニトリル/スチレン(AS)樹脂およびアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂]〕};
【0076】
ポリエステル樹脂〔例えばポリアルキレン(C2〜24)テレフタレート[例えばポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリブチレンテレフタレート(PBT)]、ポリアルキレン(C2〜24)イソフタレート[例えばポリエチレンイソフタレートおよびポリブチレンイソフタレート]およびポリ−p−フェニレンエステル[例えばポリ−p−フェニレンマロネート、ポリ−p−フェニレンアジペートおよびポリ−p−フェニレンテレフタレート]〕;ポリアミド[例えばポリカプラミド(6−ナイロン)、ポリヘキサメチレンアジポアミド(6,6−ナイロン)、ポリヘキサメチレンセバカミド(6,10−ナイロン)、ポリウンデカンアミド(11−ナイロン)、ポリ−ω−アミノヘプタン酸(7−ナイロン)およびポリ−ω−アミノノナン酸(9−ナイロン)];ポリエーテル樹脂[例えばポリオキシメチレン、ポリオキシエチレン、ポリオキシフェニレンおよびポリ−1,3−ジオキソラン];ポリカーボネート樹脂;ポリフェニレン樹脂(PPO);およびそれらのブロック共重合体等が挙げられる。
【0077】
酸化防止剤(H6)としては、ヒンダードフェノール系〔p−t−アミルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、2−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHA)、6−t−ブチル−2,4,−メチルフェノール(24M6B)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール(26B)等〕;
【0078】
含イオウ系〔N,N’−ジフェニルチオウレア、6−(4−オキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)2,4−ビス(n−オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン等〕;
【0079】
含リン系〔2−t−ブチル−α−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−クメニルビス(p−ノニルフェニル)ホスファイト、ホスファイトエステル樹脂、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジオクタデシル−4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルベンジルホスホネート等〕等が挙げられる。
【0080】
紫外線吸収剤(H7)としては、サリチレート系[フェニルサリチレート等];ベンゾフェノン系[2,4−ジヒドロキシゼンゾフェノン等];ベンゾトリアゾール系[2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール等]等が挙げられる。
【0081】
後述するマスターバッチ樹脂組成物中の(H)全体の含有量は、該組成物の重量に基づいて、通常30%以下、(H)の機能発現および工業上の観点から好ましくは0.1〜10%である。
該組成物の重量に基づく各添加剤の使用量は、(H1)は通常10%以下、好ましくは1〜5%;(H2)は通常15%以下、好ましくは3〜10%;(H3)は通常15%以下、好ましくは3〜10%;(H4)は通常10%以下、好ましくは1〜5%;(H5)は通常2%以下、好ましくは0〜0.5%、特に好ましくは0%;(H6)は通常3%以下、好ましくは0.01〜1%、(H7)は通常3%以下、好ましくは0.01〜1%である。
【0082】
また、後述する成形用樹脂組成物中の(H)全体の含有量は、該組成物の重量に基づいて、通常20%以下、(H)の機能発現および工業上の観点から好ましくは0.05〜5%である。
該組成物の重量に基づく各添加剤の使用量は、(H1)は通常5%以下、好ましくは1.5〜5%;(H2)は通常8%以下、好ましくは1.5〜5%;(H3)は通常8%以下、好ましくは1.5〜5%;(H4)は通常8%以下、好ましくは1.5〜5%;(H5)は通常1%以下、好ましくは0〜0.03%、特に好ましくは0%;(H6)は通常2%以下、好ましくは0.005〜0.5%、(H7)は通常2%以下、好ましくは0.005〜0.5%である。
【0083】
上記(H1)〜(H7)の間で添加剤が同一で重複する場合は、それぞれの添加剤が該当する添加効果を奏する量を他の添加剤としての効果に関わりなく使用するのではなく、他の添加剤としての効果も同時に得られることをも考慮し、使用目的に応じて使用量を調整するものとする。
【0084】
生分解性樹脂組成物(Z)の製造方法には、次の[1]、[2]の方法が含まれる。
[1](A)、(B)、(C)、および必要により添加剤(H)を成形品中の割合と同じ割合で一括混合して(Z)(成形用樹脂組成物)とする方法(一括混合法);
[2](C)の全量、(A)の一部および/または(B)の一部、および必要により(H)の一部もしくは全量を混合して高濃度の(C)を含有するマスターバッチ樹脂組成物(MZ)を一旦作成し、その後残りの(A)、(B)、および必要により(H)の残りを加えて混合し(Z)(成形用樹脂組成物)とする方法(マスターバッチ法)。
これらの方法のうち、(A)、(B)と、(C)との混合性の観点から好ましいのは[2]の方法である。
【0085】
上記(MZ)における(C)の含有量は、(A)と(B)との相溶性および工業上の観点から、(A)および/または(B)、並びに(C)の合計重量に基づいて好ましくは30〜80%、さらに好ましくは40〜60%である。
【0086】
上記成形用樹脂組成物(Z)およびマスターバッチ樹脂組成物(MZ)の具体的な製造方法としては、例えば
<1>前記一括混合法の場合は、(A)、(B)、(C)、および必要により(H)を、また、前記マスターバッチ法の場合は、(C)と、(A)および/または(B)、および必要により(H)を、それぞれ例えば粉体混合機〔ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー[商品名、Farrel(株)製]等〕で例えば0〜80℃で混合した後、溶融混練装置{バッチ混練機(反応槽等)、連続混練機〔FCM[商品名、Farrel(株)製]、LCM[商品名、(株)神戸製鋼所製]、CIM[商品名、(株)日本製鋼所製]等〕、単軸押出機、二軸押出機等}を使用して120〜220℃で2〜30分間混練する方法;
<2>前記<1>と同様の配合物を、上記粉体混合をすることなく、上記と同様の溶融混練装置を使用して同様の条件で直接混練する方法、が挙げられる。
これらの方法のうち混練効率の観点から<1>の方法が好ましい。
【0087】
本発明の生分解性樹脂組成物の成形品は、上記樹脂組成物を成形して得られる。該成形方法としては、射出成形、圧縮成形、カレンダ成形、スラッシュ成形、回転成形、押出成形、ブロー成形、フィルム成形(キャスト法、テンター法、インフレーション法等)等が挙げられ、目的に応じて単層成形、多層成形あるいは発泡成形等の手段も取り入れた任意の方法で成形できる。
【0088】
本発明の樹脂組成物からなる生分解性樹脂成形品は、優れた機械強度を有すると共に、良好な塗装性および印刷性を有し、成形品に塗装および/または印刷を施すことにより成形物品が得られる。
該成形品を塗装する方法としては、例えばエアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、静電スプレー塗装、浸漬塗装、ローラー塗装、刷毛塗り等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
塗料としては、例えば、ポリエステルメラミン樹脂塗料、エポキシメラミン樹脂塗料、アクリルメラミン樹脂塗料、アクリルウレタン樹脂塗料等のプラスチックの塗装に一般に用いられる塗料が挙げられる。
塗装膜厚(乾燥膜厚)は、目的に応じて適宜選択することができるが通常10〜50μmである。
【0089】
また、該成形品または成形品に塗装を施した上に印刷する方法としては、一般的にプラスチックの印刷に用いられている印刷法であればいずれも用いることができ、例えばグラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、パッド印刷、ドライオフセット印刷およびオフセット印刷等が挙げられる。
印刷インキとしてはプラスチックの印刷に通常用いられるもの、例えばグラビアインキ、フレキソインキ、スクリーンインキ、パッドインキ、ドライオフセットインキおよびオフセットインキが使用できる。
【実施例】
【0090】
以下実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中の部は重量部、モル%以外の%は重量%を表す。
【0091】
製造例1
反応容器に、プロピレン98モル%およびエチレン2モル%を構成単位とするポリオレフィン(Mn70,000)100部を窒素雰囲気下に入れ、気相部分に窒素を通気しながら加熱溶融し、撹拌しながら360℃で60分間熱減成を行い熱減成物(C0−1)を得た。(C0−1)は炭素1,000個当たりの二重結合数が13.9個、Mn2,000であった。
別の反応容器に(C0−1)55部、無水マレイン酸45部およびキシレン100部を入れ、窒素置換後、窒素通気下に130℃まで加熱昇温して均一に溶解した。ここにジクミルパーオキサイド0.5部をキシレン10部に溶解した溶液を滴下した後、キシレン還流温度まで昇温し、3時間撹拌を続けた。その後、減圧下(1.5kPa、以下同じ。)でキシレンおよび未反応の無水マレイン酸を留去して、1分子当たりに18個の酸無水物基を有し、Mn4,800の酸無水物変性ポリオレフィン(C0a−1)を得た。
【0092】
製造例2
(C0a−1)85部に2−アミノエタノール15部を加え、180℃で1時間撹拌し、1分子当たりに18個の水酸基を有し、Mn4,400の水酸基変性ポリオレフィン(C11−1)を得た。
【0093】
製造例3
製造例1において、360℃で60分間の熱減成に代えて、360℃で10分間の熱減成を行ったこと以外は製造例1と同様にして、熱減成物(C0−2)を得た。(C0−2)は、炭素1,000個当たりの二重結合数が6個、Mn4,000であった。
さらに、製造例1において、(C0−1)55部、無水マレイン酸45部に代えて、(C0−2)80部、無水マレイン酸20部を用いたこと以外は製造例1と同様に行い、1分子当たりに8個の酸無水物基を有し、Mn5,000の酸無水物変性ポリオレフィン(C0a−2)を得た。
【0094】
製造例4
(C0a−2)89部に2−アミノエタノール11部を加え、180℃で1時間撹拌し、1分子当たりに8個の水酸基を有し、Mn6,000の水酸基変性ポリオレフィン(C11−2)を得た。
【0095】
製造例5
製造例1において、プロピレン98モル%およびエチレン2モル%を構成単位とするポリオレフィン(Mn70,000)に代えて、プロピレン80モル%、1−ブテン20モル%を構成単位とするポリオレフィン(Mn70,000)を用い、360℃で60分間の熱減成に代えて、360℃で5分間の熱減成を行ったこと以外は製造例1と同様にして、炭素1,000個当たりの二重結合数が2.0個、Mn12,000の熱減成物(C0−3)を得て、さらに1分子当たりに5個の酸無水物基を有し、Mn12,500の酸無水物変性ポリオレフィン(C0a−3)を得た。
【0096】
製造例6
(C0a−3)96部に2−アミノエタノール4部を加え、180℃で1時間撹拌し、1分子当たりに5個の水酸基を有し、Mn13,000の水酸基変性ポリオレフィン(C11−3)を得た。
【0097】
製造例7
製造例1において、プロピレン98モル%およびエチレン2モル%を構成単位とするポリオレフィン(Mn70,000)に代えて、プロピレン100モル%を構成単位とするポリオレフィン(Mn60,000)を用い、360℃で60分間の熱減成に代えて、360℃で5分間の熱減成を行ったこと以外は製造例1と同様にして、炭素1,000個当たりの二重結合数が2.1個、Mn12,000の熱減成物(C0−4)を得て、さらに1分子当たりに6個の酸無水物基を有し、Mn12,500の酸無水物変性ポリオレフィン(C0a−4)を得た。
【0098】
製造例8
(C0a−4)96部に2−アミノエタノール4部を加え、180℃で1時間撹拌し、1分子当たりに6個の水酸基を有し、Mn13,000の水酸基変性ポリオレフィン(C11−4)を得た。
【0099】
製造例9
製造例1において、360℃で60分間の熱減成に代えて、360℃で5分間の熱減成を行ったこと以外は製造例1と同様にして、炭素1,000個当たりの二重結合数が2個、Mn14,000の熱減成物(C0−5)を得て、さらに1分子当たりに2個の酸無水物基を有し、Mn14,200の酸無水物変性ポリオレフィン(C0a−5)を得た。
(C0a−5)99部に2−アミノエタノール1部を加え、180℃で1時間撹拌し、1分子当たりに2個の水酸基を有し、Mn14,500の水酸基変性ポリオレフィン(C11−5)を得た。
【0100】
製造例10
製造例1において、360℃で60分間の熱減成に代えて、360℃で3分間の熱減成を行ったこと以外は製造例1と同様にして、炭素1,000個当たりの二重結合数が1個、Mn28,000の熱減成物(C0−6)を得て、さらに1分子当たりに0.5個の酸無水物基を有し、Mn28,100の酸無水物変性ポリオレフィン(C0a−6)を得た。
(C0a−6)99.5部に2−アミノエタノール0.5部を加え、180℃で1時間撹拌し、1分子当たりに0.5個の水酸基を有し、Mn28,200の水酸基変性ポリオレフィン(C11−6)を得た。
【0101】
製造例11
反応容器に、熱減成物(C0−1)100部とキシレン100部を仕込み、130℃で熱減成物を溶解した。別のガラス製ビーカーに、HEMA14部、ジクミルパーオキサイド0.5部およびキシレン10部を仕込み、20℃で撹拌、混合してモノマー溶液を調製し、滴下ロートに仕込んだ。反応容器の気相部の窒素置換を行った後に還流下130℃で2時間かけてモノマー溶液を滴下し、滴下終了から2時間、130℃で熟成した後、減圧下でキシレンを留去し、1分子当たりに3個の水酸基を有し、Mn2,300の水酸基変性ポリオレフィン(C11−7)を得た。
【0102】
製造例12
製造例1において、プロピレン98モル%およびエチレン2%を構成単位とするポリオレフィン(Mn70,000)に代えて、エチレン100モル%を構成単位とするポリオレフィン(Mn80,000)を用い、360℃で60分間の熱減成に代えて、340℃で20分間の熱減成を行ったこと以外は製造例1と同様にして、炭素1,000個当たりの二重結合数が6.5個、Mn3,500の熱減成物(C0−8)を得て、さらに1分子当たりに10個の酸無水物基を有し、Mn4,500の酸無水物変性ポリオレフィン(C0a−8)を得た。
【0103】
製造例13
(C0a−8)88部に2−アミノエタノール22部を加え、170℃で1時間撹拌し、1分子当たりに10個の水酸基を有し、Mn5,000の水酸基変性ポリオレフィン(C11−8)を得た。
【0104】
製造例14
水酸基変性ポリオレフィン(C11−1)50部および市販のポリプロピレン(B−1)[商品名「サンアロマーPL500A」、サンアロマー(株)製、以下同じ。]50部をヘンシェルミキサーで3分間ブレンドした後、ベント付き2軸押出機にて、200℃、100rpm、滞留時間5分の条件で溶融混練してマスターバッチ樹脂組成物(MZ−1)を得た。
【0105】
比較製造例1
反応容器に、プロピレン50モル%およびエチレン50モル%を構成単位とするポリオレフィン(Mn60,000)100部を窒素雰囲気下に仕込み、気相部分に窒素を通気しながら加熱溶融し、撹拌しながら360℃で120分間熱減成を行い、熱減成物(比C0−1)を得た。(比C0−1)は炭素1,000個当たりの二重結合数が18.5個、Mn1,500であった。
【0106】
比較製造例2
(C0a−6)99.7部に2−アミノエタノール0.3部を加え、180℃で1時間撹拌し、1分子当たりに0.04個の水酸基を有し、Mn28,100の水酸基変性ポリオレフィン(比C11−1)を得た。
【0107】
比較製造例3
(C0a−1)80部に2−アミノエタノール20部を加え、180℃で1時間撹拌し、1分子当たりに22個の水酸基を有し、Mn5,000の水酸基変性ポリオレフィン(比C11−2)を得た。
【0108】
実施例1〜18、比較例1〜12
(C0a−1)、(C0a−2)、(C11−1)〜(C11−8)、(比C0−1)、(比C11−1)、(比C11−2)、(MZ−1)および市販の下記成分を表1、2に示した配合組成(部)でそれぞれヘンシェルミキサーで3分間ブレンドした後、ベント付き2軸押出機にて、200℃、100rpm、滞留時間5分の条件で溶融混練して成形品樹脂組成物を得た。各樹脂組成物について射出成形機[商品名「PS40E5ASE」、日精樹脂工業(株)製]を用い、シリンダー温度240℃、金型温度40℃で成形して所定の試験片を切り出した後、後述の試験方法に従って評価した。結果を表3に示す。
【0109】
市販のポリ乳酸(以下PLAと略記)(A−1)
:商品名「レイシアH−100」、三井化学(株)製。
市販のポリヒドロキシブチレート(以下PHBと略記)(A−2)
:商品名「ビオグリーン」三菱ガス化学(株)製。
市販のポリプロピレン(以下PPと略記)(B−1)
:商品名「サンアロマーPL500A」、サンアロマー(株)製。
市販のポリエチレン(以下PEと略記)(B−2)
:商品名「ノバテックHD HJ490」日本ポリエチレン(株)製
【0110】
<試験方法>
[1]アイゾット衝撃強度(単位:J/m)
ASTM D256に準拠して測定した。試験片の形状は、タテ63.5mm×ヨコ12.
7mm×厚み4mm、ノッチ付き。
[2]曲げ弾性率(単位:MPa)
ASTM D790に準拠して測定した。試験片の形状は、タテ80mm×ヨコ10mm×
厚み4mm。
[3]相溶性(数平均分散粒径μmで評価)
上記アイゾット衝撃強度評価後の試験片を−100℃条件下、ウルトラミクロトーム[型番「EMFC6」、LEICA(株)製]を用いて破断面をガラスカッターおよびダイヤモンドカッターで削り鏡面を作成した後、走査型電子顕微鏡[型番「S4800」、(株)日立製作所製]で観察し、マトリックス樹脂(PP)中のPLA樹脂またはPHB樹脂の数平均分散粒径を測定して相溶性を評価した。単位はμm。数平均分散粒径は20μm×25μmの範囲での数平均値である。数平均分散粒径が小さいほど相溶性が良好であることを示す。
【0111】
【表1】

【0112】
【表2】

【0113】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の生分解性樹脂組成物は、バイオマス由来樹脂(A)、ポリオレフィン樹脂(B)および相溶化剤(C)を含有してなり、高含量でバイオマス由来樹脂を含有し、かつ該樹脂組成物を成形してなる成形品は優れた機械物性(耐衝撃強度、曲げ弾性率等)を有することから環境調和型成形品として、容器・包装材(食品、医療品、工業用品および家電部品用等)、筐体(家電部品用等)、搬送材(コンテナ等)、生活資材(家具、園芸用品等)、建材(ドア、天井材等)等の分野において幅広く好適に用いることができ極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス由来樹脂(A)、ポリオレフィン樹脂(B)および相溶化剤(C)を含有してなる樹脂組成物において、(C)が、分子中に0.1〜20個の水酸基を有する水酸基変性ポリオレフィン(C1)のみからなることを特徴とする生分解性樹脂組成物。
【請求項2】
(C1)が、熱減成ポリオレフィンを変性してなる水酸基変性ポリオレフィンである請求項1記載の組成物。
【請求項3】
(A)と(B)の重量比が、10/90〜60/40である請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
(C)の含有量が、(A)、(B)および(C)の合計重量に基づいて0.1〜30%である請求項1〜3のいずれか記載の組成物。
【請求項5】
バイオマス由来樹脂(A)および/またはポリオレフィン樹脂(B)、並びに請求項1〜3のいずれか記載の相溶化剤(C)を含有してなり、(C)の含有量が(A)および/または(B)、並びに(C)の合計重量に基づいて30〜80%であるマスターバッチ生分解性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか記載の組成物を成形してなる生分解性樹脂成形品。
【請求項7】
請求項6記載の成形品に塗装および/または印刷を施してなる成形物品。

【公開番号】特開2011−132525(P2011−132525A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265273(P2010−265273)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】