説明

生分解性潤滑剤

【課題】ポリオールエステルまたはポリアルキレングリコールなどの生分解性基油と、スルホン酸カルシウムベースの増粘剤と、磨耗防止添加剤として、環境に敏感な用途のためのレシチンなどの自然発生のリン酸脂質と、をベースにした潤滑剤組成物であって、海洋用途のために、比重が60°F(15.6℃)において1.0より大きい潤滑剤組成物を提供する。
【解決手段】増粘剤は、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸と、酢酸と、12−ヒドロキシステアリン酸と、炭酸カルシウムの固体薄膜潤滑剤と、を含むことができる。潤滑剤は、水中に排出されたときの表面光輝の形成の防止し、浸水したときには生分解されるため、水性環境に優しいものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生分解性潤滑剤に関し、より詳細には半流動性グリースの組成物に関する。かかる組成物は、合成基油または天然基油をベースにしており、エステル類およびグリコール類、ならびに、増粘剤系を含み、増粘剤系は自然発生のリン脂質の性能強化剤および環境的に敏感な用途のために生分解されるように考案された摩耗防止剤を含む。また、かかる組成物は、海洋、内陸、沿岸水路、浄水、および、汚水の処理用途のために、1.0以上の比重を有する。
【背景技術】
【0002】
常に、生分解性の潤滑剤組成物を提供する必要があり、ベアリング用途および他の海洋用途、ならびに、2サイクルエンジンに関しては特に必要性がある。これらのエンジン類は小型のガソリンエンジンであることが多く、モーターボート、水上用モノスキー、スノーモービル、などの娯楽用車両、そして、芝刈り機において用いられる。このように、使用用途はすべて、汚染にさらされる敏感な環境にある。潤滑剤の生分解性レベル、排出、漏出が受容可能なレベルでない場合、森林、河川または他の水路を汚染する可能性がある。
【0003】
船尾管軸受は、プロペラ駆動船内の軸受の中でも最も重要な軸受の一つであり、議論の対象となる場合が多い。油で潤滑された金属製のプロペラ軸での故障率は、直径が600mm以上であるプロペラ軸を有する船舶において、故障率が約10%である。これらの故障は、水中への油の拡散が発生する遮水不足に関連する。船尾管潤滑剤は、海洋船舶のプロペラ軸用の軸受を有する負荷を潤滑するために考案されている。これらの鉱物油は、船尾管軸封装置から漏出すると、水面に「光輝」、または玉虫色の様相を引き起こす。これらの種類の潤滑剤の性能を増大する鉱物油および添加剤は容易に生分解されず、通常、環境的に有害である。
【0004】
浄水および汚水処理機関において潤滑される機械装置のいくつかの部品において、生分解性潤滑剤で潤滑される。しかしながら、これらの潤滑剤の比重は水より低く、60°F(15.6℃)における比重は1.0より小さい。水より軽い、これらの潤滑剤は、水面をただよい、水面を光輝させる。潤滑剤を取り除くには、さらに下流に高価な脱油装置を必要とする。
【0005】
生分解度は、二酸化炭素発展試験として知られるOECD301B試験に準じて測定され、1979年に経済協力開発機構により採用された。OECD301B試験は、生分解度を測定する欧州共同体標準(試験標準EUC.4−C)として採用されてきた。生分解性試験は、検査化合物により生成されるCO量の測定を含み、このことはすなわち、検査化合物の炭素含有量から算定される、化合物が生成されうる理論的なCOのパーセントとして表される。試験では、BaCOとして取り出されるCO排出量の測定がなされ、これは当業者にとって公知であり、それゆえ本願明細書で詳細を述べることはない。OECD301B試験に準じて60%を超える生分解度を有する潤滑剤は、一般的に、受容可能な生分解性特性を有すると考えられる。比較として、同一試験における鉱物油類は、20%から30%の間で標準結果を示す。
【0006】
米国特許第5681800号明細書には、分鎖状の合成エステル類および分鎖状の合成エステル類から形成される潤滑剤がベースとなる、生分解性基油が開示されている。本願明細書によって、分鎖状の脂肪酸類によって、含有される添加剤の好ましい粘性、低温特性、滑性、生分解性および溶解性が得られる。米国特許第6551968号明細書では、ポリネオペンチルポリオールエステル潤滑剤がベースとなる2サイクルエンジンの潤滑剤が開示されている。これらの水の表面上に浮かぶ油および潤滑剤は、海洋生物および鳥類の皮膚、毛皮、羽根に付着して、動植物を傷つける原因となる。これらは、一般的に玉虫色の膜として認識され、水中への送酸量を減少させる傾向があり、従って、海洋生物の生命が危険にさらされる。
【0007】
オーバーベース化されたスルホン酸カルシウムベースのグリースの増粘剤系もまた当業者にとって公知であり、米国特許第4560489号および第5308514号明細書に開示されている。かかるグリース類は通常、ホウ酸カルシウムを含有しており、これらの増粘剤系の環境的に敏感な使用は望ましいものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
生分解性特質を有する種々の公知の潤滑剤は入手可能であるが、漏出により潤滑剤は水面上に集まる傾向がある。したがって環境的に敏感な用途に適した生分解性潤滑剤であって、水面上に集らず、水生生物により容易に生分解でき、潤滑剤に関連して、一般的に見られる環境汚染を解決する潤滑剤を提供することが好ましい。
【0009】
一般的に、本発明による、生分解性を改良した潤滑剤が提供され、天然または合成基油を基にしており、エステル類またはグリコール類、オーバーベース化されたスルホン酸カルシウムおよびα−レシチンなどの自然発生のリン脂質を含み、性能強化性かつ摩耗防止性をもたらす。利用される合成エステル類は、生分解性されるように考案され、一般的に60°F(15.6℃)の温度において1.0以上の比重を有し、これにより海洋利用に適したものとなっている。潤滑剤はまた、固体薄膜潤滑剤状の性能強化添加剤を含んでもよい。
【0010】
好ましい組成物としては、ネオペンチルポリオールと直鎖モノカルボン酸または直鎖モノカルボン酸混合物のエステル化から形成されるポリオールエステル類の基油と、ポリアルキレングリコールの基油と、を含む。ネオペンチルポリオールは、5から18の炭素原子を有し、直鎖モノカルボン酸または直鎖モノカルボン酸混合物は、5から8の炭素を有する。また、ポリアルキレングリコールの基油は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、および、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体をベースにする。基油は、オーバーベース化されたスルホン酸カルシウム、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸、12から24の炭素原子の脂肪酸、および、α−レシチンで増粘される。好ましい潤滑剤組成物および添加剤は1.0より大きい比重を有し、このため、水上に排出された場合には沈降するので、水面上での表面光輝を防止する。潤滑剤は、沈水したのちに生分解される。
【0011】
したがって、本発明の目的は、生分解性を改良した合成エステルの潤滑剤基油を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、海洋用途での使用に適した生分解性を改良した合成エステルの潤滑剤を提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、水面上に排出された際に表面光輝を形成しない生分解性を改良した合成エステルの潤滑剤を提供することである。
【0014】
本発明のさらに別の目的は、外気温度において、生分解性を改良し、さらに、1.0より大きい比重を有するように潤滑特性を改良した、潤滑剤を提供することである。
【0015】
本発明のさらに別の目的および長所は、自明となる部分があり、かつ、本願明細書から明白になる部分があろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明は、特質、特性、および、以下に説明される組成物において例示される成分の関係を有する事項の内容を含み、本発明の範囲は、請求項に示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明によって調製される生分解性グリースおよび生分解性潤滑剤は、天然油ベースの半流動性グリースの組成物、スルホン酸カルシウムの増粘系と性能を強化する自然発生の動物性または植物性脂肪油、合成エステル類またはグリコール組成物、または、レシチンなどのリン脂質化合物である。使用される合成エステル類は生分解性となるように考案される。海洋、内陸部、沿岸水路での浄水および汚水処理分野に適用されるために、60°F(15.6℃)において、1.0以上の比重を有することが特徴付けられる。グリースの組成物は、性能強化添加剤により増大される。これらの添加剤は固体薄膜潤滑剤の形態をとってもよい。グリースの組成物を増加させる添加剤は、好ましくは生分解性のものであるか、または環境的に無害なものであり、かつ60°F(15.6℃)で1.0以上の比重を有することを特徴とする。
【0018】
摩耗防止剤として添加されるレシチンは、植物および動物を含む全ての生態系に見られる、自然発生のリン脂質であり、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸のジグリセリドの混合物であり、リン酸のコリンエステルに結合されている。レシチンは大豆から得られ、大豆レシチンは、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸およびC20酸からC22酸を含有する。α―レシチンの構造式を以下に示す。
【化1】

【0019】
本発明による調製されたグリース類の合成エステルの基油は、5から8の炭素原子および少なくとも2のヒドロキシル基を有する少なくとも1つのネオペンチルポリオールを、5から18の炭素原子を有する少なくとも1つの直鎖カルボン酸を含むモノカルボン酸混合物と反応させることにより調製される。本発明による組成物で用いられる基油を調製するために用いられるネオペンチルポリオールは、以下の構造式で示される、少なくとも1つのネオペンチルポリオールである。
【化2】

上式でRはそれぞれ独自に、CH、C、CHOHからなる基から選択される。これらの例としては、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ネオペンチルグリコールなどを含むネオペンチルポリオールが挙げられる。本発明のいくつかの実施形態においてネオペンチルポリオールは、これらのネオペンチルポリオールのうちの1つのみを含む。他の実施形態において、2以上のネオペンチルポリオールを含む。
【0020】
ポリオールは販売されているモノペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトール、工業銘柄のペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコールでもよい。モノペンタエリスリトール、C12(MPE、CAS#=115−77−5)は、融点が255℃から259℃の無色の固体である。ジペンタエリスリトール、C1022(DPE、CAS#=126−58−9)は、融点が215℃から218℃の無色の固体である。市販の工業銘柄のペンタエリスリトールは、モノペンタエリスリトールと、約6重量%から約15重量%のジペンタエリスリトールを含む。
【0021】
エステル類を調製するために用いられる直鎖モノカルボン酸には、5から18の炭素原子を有するものが挙げられるが、バレリアン酸(ペンタン酸)、ヘキサン酸(カプロン酸)、ヘプタン酸(ヘプタン酸)、オクタン酸(オクタン酸)、ペラルゴン酸(ノナン酸)、デカン酸(カプリン酸)、および、これらの混合物など、5から10の炭素原子を有するものが好ましい。本発明の好ましい実施形態においてポリオールは、モノペンタエリスリトール、または、5から10の炭素原子を有する少なくとも1つの直鎖モノカルボン酸をエステル化したポリオールエステルベースの工業銘柄のペンタエリスリトールである。好ましくは、直鎖状の酸成分はバレリアン(C)酸、または、ヘプタン(C)酸とオクタン(C)酸からデカン(C10)酸との混合物である。オクタン酸−デカン酸は8から10の間の炭素原子を有するとして識別されるが、実際には、C酸からC12酸を含み、実質的にC12酸は有さない(1%未満)。本発明に用いられるエステル類を調製において、使用に適する、好ましいヘプタン酸とオクタン酸からデカン酸との混合直鎖状の酸成分の量は大きく変わるものであってもよい。たとえば、混合物は約30重量%から約70重量%のヘプタン酸と、他はオクタン酸からデカン酸との混合物であってもよい。好ましい実施形態においては、直鎖状の酸混合物は、ヘプタン酸と他はオクタン酸からデカン酸の約40重量部から約60重量部である。
【0022】
エステル調製中において、酸混合物は反応組成物に存在し、用いられるポリオール混合物の量を約5重量%から約10重量%あまりのエステルを形成する。過酸は、反応の終了させるために使用され、反応実施するために必要不可欠というわけではないが、過酸の量が小さいほど、反応時間は長くなる。反応が終了すると、過酸は、ストリッピングおよび精製により除去される。一般的にエステル化反応は、従来の触媒の中で実施される。たとえばスズまたはチタンなどのベースの触媒を用いてもよい。蓚酸錫は、1つの例である。
【0023】
用いられるオーバーベース化された増粘剤系を以下に述べる。
【表1】

【0024】
オーバーベース化されたスルホン酸カルシウムは、鉱物油、白油、または、合成炭化水素希釈剤内に、300mgKOH/gから400mgKOH/gの全アルカリ価(TBN)を有する。低アルコール溶剤は2から5の炭素原子、好ましくは3の炭素原子を有するイソプロピルアルコールなどのモノアルコールであってもよい。低酸は1から5の炭素原子を有するモノカルボン酸、好ましくは酢酸またはバレリアン酸であってもよい。固体薄膜潤滑剤は炭酸カルシウムである。
【0025】
本発明による調製された潤滑剤は以下を含むことを特徴とする。
【表2】

【0026】
本発明に従ったグリースおよび潤滑剤を調製するプロセスは以下に示すとおりであり、以下の実施例に関連して記述される。
●好適量のオーバーベース化されたスルホン酸カルシウムをかまに入れ、攪拌しながら、温度を160°Fから185°F(71.1℃から85℃)に加熱し、総量の35%から45%の油、そして、総バッチサイズの4%から6%にあたる水を加え、アルコールに溶解した直鎖アルキルベンゼンスルホン酸を加えながら、温度を一定に保つ。酸性の酸を加えながら、これら3つの成分を混合する。
●この混合物30分から60分間、約212°F(100℃)で攪拌しながらゆっくりと加熱してから、強火で加熱する。
●混合物の温度を235°Fから250°F(112.8℃から121.1℃)の間において、増粘したら、油の総量の約20%を加える。このとき、12−ヒドロキシステアリン酸の全量を加え、その混合物を385°Fから400°F(196.1℃から204.4℃)の温度に加熱する。
●次に反応組成物を、350°Fから365°F(196.1℃から185℃)の間の温度に冷却し、20%から40%の油を炭酸カルシウムとともに加える。
●混合物の温度が250°F(121.1℃)未満になったら、グリースをミリングし、さらに油を加え、所望の粘度を得る。混合物が180°F(82.3℃)未満となり、ミリング終了後、α―レシチンを加える。
【0027】
本発明は、以下の実施例を参照することでより理解されるであろう。示されるパーセンテージは全て、モル量を示す場合を除き重量%を意味する。これらの実施例は、例示目的で表示されるものであって、限定的に解釈されることを意図しない。
【実施例】
【0028】
<実施例1>
以下の出発物質ベースの本発明による生分解性グリースを調製した。
【表3】

【0029】
製造工程は以下のステップを含んだ。
1)オーバーベース化されたスルホン酸カルシウムを全てかまに入れ、攪拌しながら混合物の温度を160°Fから185°F(71.1℃から85.0℃)の温度に加熱する。
2)総量の35%から45%のPE−C5−10エステルと、総バッチ量の3%から5%に等しい量の水をケトルに加える。攪拌して混合物温度を160°Fから185°F(71.1℃から85.0℃)に上げる。
3)イソプロピルアルコール全量に溶解した、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸全量を加える。
4)3つの成分を10分から15分間かまで混合したあと、酢酸全量を加える。
5)210°Fから215°F(98.9℃から101.7℃)の混合物温度において攪拌しながら30分から60分間かけてゆっくり加熱を続けたのち強火で加熱する。
6)混合物温度が235°Fから250°F(112.8℃から121.1℃)において、混合物が増粘したら、(総量の約20%の)Tech−PE−C5−10エステルを加え始める。
7)混合物温度が235°Fから250°F(112.8℃から121.1℃)になったときに、12−ヒドロキシステアリン酸を全量かまに加える。
8)混合物を385°Fから400°F(196.1℃から204.4℃)の温度に加熱し始める。
9)最高温度に達したのち、バッチを冷却する。
10)混合物温度が350°Fから365°F(176.6℃から185.0℃)に達したら、PE−C5−10エステル(総量の約20−40%)および全量の炭酸カルシウムを加え始める。
11)混合物温度が250°F(121.1℃)未満になったら、グリースをミリングする。
12)ミリング工程中に、混合物の浸透度を調べ、所望の浸透範囲を得るために必要とされるPE−C5−10エステルを加える。
13)混合物温度が180°F(82.3℃)未満で、かつ、ミリングが完了したら、レシチンを全量加える。
【0030】
<実施例2>
実施例1で調製されたグリースの物理的属性および効能属性は以下の結果を生じた。
【表4】

【0031】
OECD301Bによるグリースの生分解性は69.2%であった。
【0032】
<実施例3>
以下の出発物質ベースの本発明による生分解性グリースの組成物を調製した。
【表5】

【0033】
製造プロセス
1)オーバーベース化されたスルホン酸カルシウムを全てかまに入れ、攪拌しながら混合物の温度を160°Fから185°F(71.1℃から85.0℃)の温度に加熱する。
2)総量の35%から45%のDiPE−C8/10エステルと総バッチ量の3%から5%にあたる量の水をかまに加える。攪拌して混合物温度を再び160°Fから185°F(71.1℃から85.0℃)に加熱する。
3)イソプロピルアルコール全量に溶解した直鎖アルキルベンゼンスルホン酸を加える。
4)3つの成分を10分から15分間かまで混合したあと、酢酸全量を加える。
5)210°Fから215°F(98.9℃から101.7℃)の混合物温度において攪拌しながら30分から60分間かけてゆっくり加熱を続けたのち強火で加熱する。
6)混合物温度が235°Fから250°F(112.8℃から121.1℃)において、混合物が増粘したら、(総量の約20%の)DiPE−C8−10エステルを加え始める。
7)混合物温度が235°Fから250°F(112.8℃から121.1℃)になったときに、12−ヒドロキシステアリン酸を全量かまに加える。
8)混合物を385°Fから400°F(196.1℃から204.4℃)の温度に加熱し始める。
9)最高温度に達したのち、バッチを冷却する。
10)混合物温度が、350°Fから365°F(176.6℃から185.0℃)になっときに、DiPE−C8−10エステル(総量の約20−40%)および炭酸カルシウムを全量加え始める。
11)混合物温度が、250°F(121.1℃)未満になったら、グリースをミリングする。
12)ミリング工程中に、混合物の浸透度を調べ、所望の浸透範囲を得るために必要とされるDiPE−C8−10エステルを加える。
13)混合物温度が180°F(82.3℃)未満で、かつ、ミリングが完了したら、レシチンを全量加える。
【0034】
<実施例4>
グリース実施例3で調製されたグリースの物理的属性および効能属性は以下の結果を生じた。
【表6】

【0035】
OECD301Bによるグリースの生分解性は46.0%であった。
【0036】
上述の目的は、前述の説明から明白な目的において、効果的に達成され、かつ、上述の事項の内容において、本発明の精神および範囲を逸脱することなく変更がなされるため、上述された説明に含まれる全ての事項は、本発明を限定されず、例示として解釈されるべきであること意図する。
【0037】
本願請求項は、本願明細書で述べられる発明の一般的かつ特定の特徴を網羅するために意図され、かつ、本発明の範囲に関する全ての記述は、文言の事項として、それらの範囲に収まると言える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)約55重量%から約90重量%の生分解性基油と、
(b)約7.5から20重量%のオーバーベース化されたスルホン酸カルシウムの増粘剤系と、
(c)約5重量%から約10重量%のリン脂質の摩耗防止剤と、を含む潤滑剤組成物。
【請求項2】
前記リン脂質は、α−レシチンである請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項3】
前記生分解性基油は、ポリオールエステルである、請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項4】
前記ポリオールエステルは、5から8の炭素原子および少なくとも2つのヒドロキシル基を有する少なくとも1つのネオペンチルポリオールと、5から18の炭素原子を有する少なくとも1つの直鎖カルボン酸を含むモノカルボン酸混合物との反応生成物である、請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項5】
前記生分解性基油は、ポリアルキレングリコールである、請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項6】
前記組成物は、60°F(15.6℃)で少なくとも約1.0の比重を有する、請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項7】
約1重量%から約4重量%の固体薄膜潤滑剤をさらに含む、請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項8】
前記固体薄膜潤滑剤は、炭酸カルシウムである、請求項7に記載の潤滑剤組成物。
【請求項9】
前記オーバーベース化されたスルホン酸カルシウムの増粘剤系は、オーバーベース化されたスルホン酸カルシウムと、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸と、低分子量アルコール溶媒と、低分子量モノカルボン酸とを、含む請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項10】
成分 含有量
(全組成物に対する重量%)
オーバーベース化されたスルホン酸カルシウム 10−15
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸 0.45−0.90
アルコール溶剤低分子量アルコール溶媒 0.5−0.60
低分子量酸 0.10−0.30
12−ヒドロキシステアリン酸 2.5−5.0
および、他に生分解性基油と、を含む請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項11】
(a)約55重量%から約90重量%の生分解性基油と、
(b)約10重量%から約35重量%のオーバーベース化されたスルホン酸カルシウム増粘剤と、
(c)約3重量%から約5重量%の12−ヒドロキシステアリン酸と、
(d)約1.5重量%から約3.0重量%の炭酸カルシウムと、
(e)約5重量%から約10重量%のリン脂質の摩耗防止剤と、を含む潤滑剤組成物。
【請求項12】
前記生分解性基油は、ポリオールエステルである、請求項11に記載の潤滑剤組成物。
【請求項13】
前記ポリオールエステルは、5から8の炭素原子および少なくとも2つのヒドロキシル基を有する少なくとも1つのネオペンチルポリオールと、5から18の炭素原子を有する少なくとも1つの直鎖カルボン酸を有するモノカルボン酸混合物と、を含む反応生成物である請求項12に記載の潤滑剤組成物。
【請求項14】
前記生分解性基油は、ポリアルキレングリコールである、請求項11に記載の潤滑剤組成物。
【請求項15】
生分解性潤滑剤を調製する工程であって、
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸に溶解した、オーバーベース化されたスルホン酸カルシウムと、油と、低分子量アルコールとの混合物を加熱する工程と、
12−ヒドロキシステアリン酸を加えて、385°Fから400°F(196.1℃から204.4℃)の最高温度までさらに加熱する工程と、
冷却する工程と、
冷却を継続しながら、さらに油と炭酸カルシウムを加える工程と、
自然発生のリン脂質の性能強化添加剤および摩耗防止剤を加える工程と、を含み、
冷却を継続しながら、追加的な油と炭酸カルシウムを加える工程においては、前記グリースをミリングし、約180°F(82.3℃)より低い温度において、所望の粘性を得るために、さらに油を加えることを含む工程。
【請求項16】
海洋用途において潤滑するための方法であって、60°F(15.6℃)で少なくとも約1.0の比重を有する潤滑剤組成物を用いることを含む方法。
【請求項17】
前記潤滑剤は、
(a)約55重量%から約90重量%の生分解性基油と、
(b)約7.5重量%から約20重量%のオーバーベース化されたスルホン酸カルシウムの増粘剤系と、
(c)約5重量から約10重量%のリン脂質の摩耗防止剤と、を含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
海洋用途において潤滑するための方法であって、
(a)約55重量%から約90重量%の生分解性基油と、
(b)約10重量%から約35重量%のオーバーベース化されたスルホン酸カルシウム増粘剤と、
(c)約3重量%から約5重量%の12−ヒドロキシステアリン酸と、
(d)約1.5重量%から約3.0重量%の炭酸カルシウムと、
(e)約5重量%から約10重量%のリン脂質の摩耗防止剤と、を含む潤滑剤組成物の使用と、を含む方法。

【公表番号】特表2006−528996(P2006−528996A)
【公表日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533152(P2006−533152)
【出願日】平成16年5月17日(2004.5.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/015447
【国際公開番号】WO2004/106474
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(505428835)アンデロール インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】