説明

生分解性積層体及びそれを用いた生分解性容器

【課題】液体中への分解促進剤の溶出を抑制した生分解性樹脂積層体の提供。
【解決手段】分解促進剤を含有する生分解性樹脂層A、及び、前記分解促進剤の分解物と親和性を有する物質を含有する生分解性樹脂層Bを有する、生分解性樹脂積層体。分解促進剤を含有する生分解性樹脂Aと液体との間に、前記分解促進剤の分解物と親和性を有する物質を含有する生分解性樹脂Bを配置することによって、液体中への分解促進剤の溶出を効率よく抑制できるという知見に基づく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生性と生分解性が両立した生分解性樹脂積層体及び該積層体から成形される生分解性容器に関する。
【背景技術】
【0002】
包装資材として生分解性樹脂組成物を含む包装容器が提案されており、その分解速度を向上させるために、生分解性樹脂中に分解促進剤を含めた樹脂組成物の使用が提案されている(特許文献1)。このような樹脂組成物(易分解性組成物ともいう)は、生分解性酵素を含む分解液中に入れると、樹脂中の分解促進剤の作用により優れた生分解性を得ることができる。
しかしながら、上記のような分解促進剤を含む樹脂組成物から製造された容器等に水分を含む食品や液体を入れて使用すると容器内部の分解促進剤が溶出し、そのため衛生上の懸念が生じるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際出願公開第2008/038648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、液体中への分解促進剤の溶出を抑制した生分解性樹脂積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、分解促進剤を含有する生分解性樹脂と液体との間に、前記分解促進剤の分解物と親和性を有する物質を含有する生分解性樹脂を配置することによって、液体中への分解促進剤の溶出を効率よく抑制できるという知見に基づくものである。
即ち、本発明は、分解促進剤を含有する生分解性樹脂層A、及び、前記分解促進剤の分解物と親和性を有する物質を含有する生分解性樹脂層Bを有する、生分解性樹脂積層体を提供する。
また、本発明は、上記生分解性樹脂積層体から成形される生分解性容器であって、生分解性樹脂層Aに対し容器の内側となる側に生分解性樹脂層Bが配置されていることを特徴とする生分解性容器を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、生分解性樹脂からの分解促進剤の溶出を抑制し、衛生性と生分解性が両立した生分解性容器を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1、2、比較例1、2について、分解液中へのシュウ酸の溶出量を示す。
【図2】実施例1、2、比較例1、2について、分解4日後における分解率を示す。
【図3】実施例3、比較例3、4について、分解液中へのグリコール酸の溶出量を示す。
【図4】HPLC測定におけるグラジエントパターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の生分解性樹脂積層体は、分解促進剤を含有する生分解性樹脂層A、及び、前記分解促進剤の分解物と親和性を有する物質を含有する生分解性樹脂層Bを有する。
生分解性樹脂層A及び生分解性樹脂層Bを構成する生分解性樹脂は、生分解性を有する樹脂であればよく、例えば化学合成系樹脂、微生物系樹脂、天然物利用系樹脂などが挙げられる。具体的には、脂肪族ポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)、セルロース類、澱粉類などが挙げられる。脂肪族ポリエステルとしては、例えばポリ乳酸(PLA)樹脂及びその誘導体、ポリブチレンサクシネート(PBS)樹脂及びその誘導体、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)及びその誘導体、ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリテトラメチレンアジペート、ジオールとジカルボン酸の縮合物などが挙げられる。セルロース類としては、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、アセチルセルロースなどが挙げられる。これらは単独での使用、共重合体での使用、2種以上を組み合わせての使用でもよい。共重合体を形成する成分としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ビスフェノールA、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アントラセンジカルボン酸などのジカルボン酸;グリコール酸、L-乳酸、D-乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、マンデル酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸;グリコリド、カプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、ポロピオラクトン、ウンデカラクトンなどのラクトン類などが挙げられる。
また、上記生分解性樹脂と、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリカーボネートなどの汎用化学樹脂、添加剤との混合体であってもよい。ここで添加剤としては可塑剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、顔料、フィラー、無機充填剤、離型剤、耐電防止剤、香料、滑剤、発泡剤、抗菌・抗カビ剤、核形成剤などが挙げられる。
【0009】
生分解性樹脂層Aに含まれる生分解性樹脂は分解促進剤を含有し、好ましくは生分解性樹脂100重量部に対して分解促進剤を0.1〜20重量部、例えば1.0〜10重量部含有する。分解促進剤の使用量が少なすぎると、生分解樹脂の分解を促進させることが困難となる恐れがあり、また、必要以上に多量に使用すると、この樹脂組成物の調整段階或いは成形体として使用に供している段階で生分解性樹脂の分解が始まってしまう恐れがあるからである。分解促進剤は、好ましくは加水分解により酸を放出し、放出される酸としては、特に0.005g/ml濃度の水溶液乃至水分散液でのpH(25℃)が4以下、特に3以下を示すものであり、水と混合したときに容易に加水分解して酸を放出するポリマーが好適に使用される。放出される酸の具体例としては、シュウ酸、マレイン酸、無水マレイン酸、グリコール酸等が挙げられるが、上記のうちシュウ酸およびグリコール酸が好ましい。このような分解促進剤としては、ポリオキサレート、ポリエチレンマレエート、ポリグリコール酸などが挙げられる。好ましい分解促進剤はポリエチレンオキサレート、ポリグリコール酸である。これらはコポリマー、単独での使用、2種以上を組み合わせての使用でもよい。コポリマーを形成する成分としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ビスフェノールA、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アントラセンジカルボン酸などのジカルボン酸;グリコール酸、L-乳酸、D-乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、マンデル酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸;グリコリド、カプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、ポロピオラクトン、ウンデカラクトンなどのラクトン類などが挙げられる。
【0010】
また本明細書では、ホモポリマー、共重合体、ブレンド体において、少なくとも一つのモノマーとしてシュウ酸を重合したポリマーをポリオキサレートとする。
【0011】
特に、上記のポリオキサレートやポリグリコール酸は易加水分解性の生分解性樹脂であり、それ自体で生分解性を有している点でも好適に使用される。
【0012】
また、上述した分解促進剤は、そのガラス転移点(Tg)が生分解性樹脂の分解に用いる酵素の失活温度よりも低いものが好適である。このような低ガラス転移点のものを使用することにより、生分解性樹脂の酵素による分解をより迅速に促進させることが可能となる。ガラス転移温度は、例えば、セイコーインスツルメント株式会社製DSC6220(示差走査熱量測定)を用いて測定することができる。
【0013】
生分解性樹脂層Bに含まれる生分解性樹脂は、前記分解促進剤の分解物と親和性を有する物質を含有する。生分解性樹脂層Bが上記のような物質を含むことにより、隣接する生分解性樹脂層Aの内部から溶出した分解促進剤の分解物と結合して生分解性樹脂層Bの内部に捕捉し、前記分解物が生分解性樹脂層Bの外部にさらに溶出するのを抑制することができる。なお、本明細書において「親和性を有する」とは、親和性の対象となる分解物と結合することができることを意味するが、結合の様式(化学的結合、物理的結合等)や強度等は特に限定されず、上記の効果を得られる程度に分解物の少なくとも一部を捕捉できればよい。
【0014】
分解促進剤の分解物と親和性を有する物質は、好ましくは無機化合物および/または金属化合物である。このような化合物としては、無機化合物としては例えばカルシウム化合物、ナトリウム化合物、カリウム化合物、リチウム化合物、例えば、カルシウム、ナトリウム、カリウム、リチウムと、炭酸、酢酸等の酸との塩が挙げられ、上記のうち、炭酸カルシウムが最も好ましい。金属化合物としては例えば鉄化合物、銅化合物、銀化合物、アルミニウム化合物、ニッケル化合物、スズ化合物、マグネシウム化合物、チタン化合物、亜鉛化合物など、例えば酸化鉄が挙げられる。例えば、前記化合物として炭酸カルシウムを使用し、分解促進剤としてポリオキサレートをした場合には、ポリオキサレートの分解物であるシュウ酸が炭酸カルシウムと反応して不溶性の塩であるシュウ酸カルシウムを形成することにより、シュウ酸が生分解性樹脂層Bの外部の液体に溶出するのを抑制することができる。
生分解性樹脂層B中に含まれる分解促進剤の分解物と親和性を有する物質の量は、分解促進剤の種類や量などを考慮して当業者が適宜設定することが可能であるが、例えば0.1〜50重量%、好ましくは1.0〜10重量%含有する。さらに、分解物と親和性を有する物質は表面処理が施されていてもよい。
【0015】
本発明の生分解性樹脂積層体において、生分解性樹脂層Aと生分解性樹脂層Bは好ましくは隣接して配置されるが、本発明の効果が得られる限り層A及び層Bの間に別の層(例えば接着層、水分バリア層、酸素バリア層、炭酸ガスバリア層など)が配置されていてもよい。また、生分解性樹脂層Aに対して一方の側に生分解性樹脂層Bが配置されていてもよいし、両側のそれぞれに、例えば生分解性樹脂層B1、生分解性樹脂層B2として同一又は異なる種類の層が配置されていてもよい。
例えば、後述のように本発明の生分解性樹脂積層体から成形される生分解性容器においては、生分解性樹脂層Aに対し容器の内側となる側に生分解性樹脂層Bを配置することによって好ましい効果を得ることができる。
【0016】
生分解性樹脂層A及び生分解性樹脂層Bの厚さは、両層の配置、それを構成する生分解性樹脂の種類、分解促進剤やその分解物と親和性を有する物質の種類や量などに応じて適宜設定することができ、特に限定はされない。例えば、生分解性樹脂層Aの厚さは50〜500μm、好ましくは100〜400μm、より好ましくは200〜300μm、例えば250μmとすることが可能であり、生分解性樹脂層Bの厚さは5〜50μm、好ましくは10〜40μm、より好ましくは15〜30μm、例えば20μmとすることができる。また、層Aと層Bの厚さの比としては、1:1〜100:1、好ましくは5:1〜50:1、より好ましくは10:1〜20:1、例えば12.5:1とすることができる。
【0017】
本発明の生分解性樹脂積層体は、公知の成形法により生分解性容器等の成形体とすることができる。
例えば、樹脂の種類に応じた数の押出機を用いて、多層多重ダイを用いて押出成形を行うことで多層フィルム、多層シート、多層パリソン又は多層パイプ等が成形できる。また、樹脂の種類に応じた数の射出成形機を用いて、同時射出法や逐次射出法等の共射出成形によりボトル成型用の多層プリフォームを製造することができる。このような多層フィルム、パリソン、プリフォームをさらに加工することにより、本発明の生分解性容器を得ることができる。また、圧縮成形を用いることによっても同様の容器を得られる。
フィルム等の包装材料は、種々の形態のパウチや、トレイ・カップの蓋材として用いることができる。パウチとしては、例えば、三方又は四方シールの平パウチ類、ガセット付パウチ類、スタンディングパウチ類、ピロー包装袋等が挙げられる。製袋は公知の製袋法で行うことができる。また、フィルム又はシートを、真空成形、圧空成形、張出成形、プラグアシスト成形、圧縮成形、キャスト成形等の手段に付することにより、カップ状、トレイ状等の包装容器が得られる。
なお、生分解性樹脂層A及び生分解性樹脂層Bは、その種類、形状、成形法等を考慮し、予め積層体としたものを成形して容器等の成形体としてもよいし、成形体の過程で生分解性樹脂層A及び生分解性樹脂層Bを積層体として成形体を得てもよい。
【0018】
多層フィルムや多層シートの製造には、押出コート法や、サンドイッチラミネーションを用いることができる。また、予め形成された単層及び多層フィルムをドライラミネーションによって積層することもできる。例えば、易分解性樹脂組成物/ポリ乳酸(シーラント)層から成る2層共押出フィルムに透明蒸着生分解性フィルムをドライラミネーションにより積層する、ドライラミネートにより積層したポリ乳酸/ポリグリコール酸の2層フィルムに易分解性樹脂組成物/ポリ乳酸(シーラント)の2層をアンカー剤を介して押出コートする方法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、パリソン、パイプ又はプリフォームを一対の割型でピンチオフし、その内部に流体を吹込むことにより容易にボトルやチューブを成形できる。また、パイプ、プリフォームを冷却した後、延伸温度に加熱し、軸方向に延伸すると共に、流体圧によって周方向にブロー延伸することにより、延伸ブローボトル等が得られる。
【0019】
本発明の生分解性容器は、好ましくは生分解性樹脂層Aに対し容器の内側となる側に生分解性樹脂層Bが配置される。容器の内側となる側とは、一般に容器に入れる又は載せる食品、液体等の対象物が接する面の側を意味するが、容器の形状等に応じて変わる概念であり、用途等を考慮し、技術常識に基づいて適宜判断されるべきものである。このような配置とすることにより、容器の内側からの分解促進剤の溶出を抑制することが可能となる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0020】
(使用材料)
PLAはnatureworks社製4032D(d乳酸2%)を用いた。
PGAはkureha社製(Mw=100000)を用いた。
PEOxは下記合成品を用いた。
【0021】
(ポリエチレンオキサレート (以下「PEOx」とも略す)の合成)
マントルヒーター、攪拌装置、窒素導入管、冷却管を取り付けた1Lのセパラブルフラスコにシュウ酸ジメチル354g(3.0mol)、エチレングリコール223.5g(3.6mol)、テトラブチルチタネート0.30gを入れ窒素気流下フラスコ内温度を110ºCからメタノールを留去しながら170℃まで加熱し9時間反応させた。最終的に210mlのメタノールを留去した。その後内温150℃で0.1-0.5mmHgの減圧下で1時間攪拌し、内温170℃〜190℃で7時間反応後、取り出した。合成物の溶液粘度(ηinh)は0.12だった。得られたPEOxの融点(m.p.)及びガラス転移温度(Tg)は、m.p.172℃、Tg25℃であった。
溶液粘度(ηinh)の測定は、120℃で一晩真空乾燥させた合成したPEOxを用い、これをm-クロロフェノール/1,2,4-トリクロロベンゼン=4/1(重量比)混合溶媒に浸漬し、150℃で約10分溶解させ濃度0.4g/dlの溶液を作り、ついでウベローデ粘度計を用いて30℃で溶液粘度を測定した。(単位dl/g)
【0022】
(分解促進剤含有PLAペレットの作製)
各種材料をドライブレンドし、二軸押出機(テクノベル社製ULT Nano05-20AG)を用いて溶融混合し、PLA/PEOxあるいはPGA=95/5wt%のマスターペレットを作製した。分解促進剤としてPEOxを用いた場合は200℃、PGAを用いた場合は240℃の成形温度にてペレットを作製した。
【0023】
(生分解性樹脂層Aの作製)
マスターペレットを、二軸押出機(テクノベル社製ULT Nano05−20AG)を用いて溶融混合し、ラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製)を用いて厚さ190〜270μmのシートを成膜した。その際、PEOx含有PLAを200℃、PGA5%含有PLAを240℃の成形温度で成膜した。
【0024】
(生分解性樹脂層Bの作製)
クロロホルム45mlにPLAを溶解させ、後述する親和性を有する物質を加え、その混合溶液をテフロン(登録商標)バットに流し込み、1日静置させ、10μm〜20μmのキャストフィルムを作製した。
【0025】
(生分解性樹脂積層体の作製)
生分解性樹脂層Aを1×2cmに切り取り、生分解性樹脂層Bでサンドし、120℃で溶着し積層させて、生分解樹脂層Aが露出しないように縁を切り取って試験片を得た。得られた試験片の厚みは、生分解性樹脂層Aが190〜270μm、生分解性樹脂層Bが10μm〜20μmであった。
(酸溶出試験)
得られた試験片を、純水10mlを25mlのバイアル瓶内に入れ、40℃で静置させ、溶液内に溶出する酸の量をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)により測定した。
HPLCシステムはJASCO製GULLIVER seriesを使用し、以下の条件で分析した。カラム(Waters製Atlantis dC18 5μm、4.6×250mm)を40℃に保ったカラムオーブン内で用い、0.5%リン酸とメタノールで流速1mL/分となるように図4のとおりグラジエントをかけ、それを移動相としてサンプルを50μl注入した。検出には210nmのUV吸収を用い、標準サンプルとしてシュウ酸、グリコール酸またはL-乳酸(和光純薬工業社製)を精製したものを用いた。
【0026】
(分解性試験)
pH7の60mmol/lリン酸緩衝液10mlに、CLE酵素液(リパーゼ活性653U/mlを示すCryptococcus sp. S-2由来リパーゼ(独立行政法人酒類総合研究所:特開2004-73123))48μlを添加して分解液を作製した。なお、リパーゼ活性は基質としてパラニトロフェニルラウレートを用いて測定した。ここで、リパーゼ活性の1Uとは1μmol/minのパラニトロフェノールをパラニトロフェニルラウレートから遊離させた時の酵素量で定義される。上記方法で作製された積層体を、上記分解液10mlを25mlのバイアル瓶内に入れ、所定の温度(45℃100rpm)で4日間振とうさせた。なお、pHの極度な低下を避けるため、4日間を2日目に分解液を交換して行った。4日後、試験片を取り出し45℃オーブンで一晩乾燥させ、重量を測定した。試験片の分解率は{(初期のフィルム重量)―(4日後のフィルム重量)/初期のフィルム重量)}×100で求めた。
【0027】
(実施例1)
PLAにPEOxを5wt%含有した生分解性樹脂層A、PLAに炭酸カルシウム(和光純薬工業株式会社)を10wt%含有した生分解性樹脂層B、を作製し、生解性樹脂積層体を作製した。得られた積層体を上記酸溶出試験、分解性試験を行った。なお、酸溶出試験は、1日毎行い6日目まで行った。結果を図1、2、表1に示す。
【0028】
(実施例2)
生分解性樹脂層Bの炭酸カルシウム含有量を50wt%含有した以外は実施例1と同様に行った。結果を表1、図1、2に示す。なお、実施例1と比べて分解性試験における分解率が低くなったが、これは、生分解性樹脂層Bの炭酸カルシウム含有量が多くなったために、生分解性酵素が生分解性樹脂層Aに浸入しにくくなって分解速度が遅くなったためと考えられる。
【0029】
(比較例1)
生分解性樹脂層Bに炭酸カルシウムを含有しなかった以外は実施例1と同様に行った。結果を表1、図1、2に示す。
【0030】
(比較例2)
生分解性樹脂層Bを設けなかった以外は実施例1と同様に行った。結果を表1、図1、2に示す。
【0031】
(実施例3)
PLAにPGAを5wt%含有した生分解性樹脂層A、酸化鉄(和光純薬工業株式会社)を10wt%含有した生分解性樹脂層B、を作製し、生分解性樹脂成形体を作製した。得られた積層体を上記酸溶出試験を行った。なお、酸溶出試験は、2日、7日、14日それぞれ行った。結果を表2、図3に示す。
【0032】
(比較例3)
炭酸カルシウムを含有しなかった以外は実施例3と同様に行った。結果を表2、図3に示す。
【0033】
(比較例4)
生分解性樹脂層Bを設けなかった以外は実施例3と同様に行った。結果を表2、図3に示す。
【表1】

(ppm)
【表2】

(ppm)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分解促進剤を含有する生分解性樹脂層A、及び、前記分解促進剤の分解物と親和性を有する物質を含有する生分解性樹脂層Bを有する、生分解性樹脂積層体。
【請求項2】
分解促進剤の分解物と親和性を有する物質が無機化合物および/または金属化合物である、請求項1記載の生分解性樹脂積層体。
【請求項3】
分解促進剤の分解物と親和性を有する物質が炭酸カルシウムである、請求項1または2記載の生分解性樹脂積層体。
【請求項4】
生分解性樹脂層Bが、分解促進剤の分解物と親和性を有する物質を0.1〜50重量%含有する、請求項1〜3のいずれか1項記載の生分解性樹脂積層体。
【請求項5】
分解促進剤が加水分解により酸を放出する、請求項1〜4のいずれか1項記載の生分解性樹脂積層体。
【請求項6】
分解促進剤がポリオキサレートおよび/またはポリグリコール酸である、請求項1〜5のいずれか1項記載の生分解性樹脂積層体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の生分解性樹脂積層体から成形される生分解性容器であって、生分解性樹脂層Aに対し容器の内側となる側に生分解性樹脂層Bが配置されていることを特徴とする生分解性容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−212923(P2011−212923A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82073(P2010−82073)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】