説明

生分解性脂肪族ポリエステルからなる積層フィルム及びその用途

【課題】柔軟性、隠蔽性、化粧性、紫外線カット性を損なわずに、印刷適性、ラミ強度、溶断シール強度を有する生分解性積層フィルムを提供すること。
【解決手段】脂肪族等のジカルボン酸成分(a1)、脂肪族等のジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)98〜35質量%及び脂肪族等のジカルボン酸成分(b1)20〜95モル%及び芳香族ジカルボン酸成分(b2)80〜5モル%の酸成分と脂肪族等のジヒドロキシ化合物成分(b3)からなる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)2〜65質量%の合計100質量部と無機充填剤(C)3〜20質量部からなる脂肪族ポリエステルの基材層(I)の少なくとも片面に、前記共重合体(A)98〜35質量%及び前記ポリエステル(B)2〜65質量%からなる被覆層(II)からなる積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化チタン等の無機充填剤の微粒子を配合した生分解性脂肪族ポリエステルからなる基材層に、生分解性脂肪族ポリエステルの被覆層を積層した積層フィルムに関する。更に詳しくは、乳白色を帯びており、柔軟性、隠蔽性、化粧性、紫外線カット性を備えた生分解性の積層フィルムであって、かつ生分解性被覆層が表面光沢、印刷適性、ラミ強度、溶断シール強度に優れた積層フィルム、特に印刷を施したポリ乳酸二軸延伸フィルムにシーラント層としてラミネートするのに好適な積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムの廃棄処理を容易にする目的で生分解性のあるフィルムが注目され、各種フィルムが開発されて来ている。その生分解性フィルムは、土壌中や水中で加水分解や生分解を受け、徐々にフィルムの崩壊や分解が進み、最後には微生物の作用で無害な分解物へと変化するものである。そのようなフィルムとして、芳香族系ポリエステル樹脂やポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族系ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース、デンプン等から成形したフィルムが知られている。
ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族系ポリエステル樹脂の剛性を改良する方法として、脂肪族ポリエステルとして、脂肪族ジカルボン酸成分及び脂肪族ジヒドロキシ化合物成分に、脂肪族オキシカルボン酸成分を共重合させた脂肪族ポリエステル共重合体(たとえば、特許文献1参照)、脂肪族ジカルボン酸成分及び脂肪族ジヒドロキシ化合物成分に、脂肪族オキシカルボン酸成分若しくはラクトンを共重合させた脂肪族ポリエステル共重合体(たとえば、特許文献2)が提案されている。
かかる脂肪族ポリエステル共重合体の物性を改良する目的で、ポリ乳酸を添加する方法が提案されている(たとえば、特許文献3、特許文献4参照)。
更にこれら脂肪族ポリエステル共重合体によっては柔軟性が未だ不十分で、耐衝撃性を改良する方法が提案されている(たとえば、特許文献5、参照)。
一方、生分解性プラスチックをペーパーライクに用いるために、生分解性脂肪族ポリエステルに白色無機顔料を混練したフィルムとする方法がある(たとえば、特許文献6参照)。
このようにして得られた白色脂肪族ポリエステルフィルムは、隠蔽性、化粧性、紫外線カット性を備えている。しかし得られるフィルムは表面で無機物の欠落が起きるため、表面光沢、印刷適性、ラミ強度、溶断シール強度に劣るものである。
【0003】
【特許文献1】特開平8−239461号公報(請求項1)
【特許文献2】特開平8−311181号公報(請求項1)
【特許文献3】特開平9−272789号公報(請求項1)
【特許文献4】WO 02/44249 A1号公報(95頁)
【特許文献5】特開2004−244553号公報
【特許文献6】特開2002−67479号公報(請求項4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、酸化チタン等の無機充填剤の微粒子を配合した生分解性脂肪族ポリエステルフィルムの優れた柔軟性、隠蔽性、化粧性、紫外線カット性を損なわずに、その表面光沢、印刷適性、ラミ強度、溶断シール強度を改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)98〜35質量%及び脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)20〜95モル%及び芳香族ジカルボン酸成分(b2)80〜5モル%からなる酸成分と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)からなる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)2〜65質量%と無機充填剤の微粒子(C)を3〜20質量部からなる脂肪族ポリエステルからなる基材層(I)の少なくとも片面に、
脂肪族ポリエステル共重合体(A)98〜35質量%及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)2〜65質量%からなる被覆層基材層(II)が積層されてなる積層フィルムとする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の積層フィルムは、柔軟性、隠蔽性、化粧性、紫外線カット性に加えて、表面光沢、印刷適性に優れ、実用的なラミ強度、溶断シール強度を有する。
特に本発明の積層フィルムとポリ乳酸二軸延伸フィルムをラミしたフィルムは、ポリ乳酸二軸延伸フィルムに裏印刷後にシーラント層としてラミすることで、バックが白ベタになり印刷の映えが良く、更に十分なラミ強度を有しているので化粧性の高い包装袋となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の延伸積層フィルムは、基材層(I)と、その少なくとも片面に積層された被覆層(II)とからなる。
基材層(I)
基材層(I)は、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)98〜35質量%及び脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)20〜95モル%及び芳香族ジカルボン酸成分(b2)80〜5モル%からなる酸成分と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)からなる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)2〜65質量%((A)と(B)の合計で100質量%とする)の合計100質量部と無機充填剤の微粒子(C)3〜20質量部からなる。
【0008】
被覆層(II)
被覆層(II)は、脂肪族ポリエステル共重合体(A)98〜35質量%、及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)2〜65質量%((A)と(B)の合計で100質量%とする)からなる。

脂肪族ポリエステル共重合体(A)
本発明に係わる脂肪族ポリエステル共重合体(A)は、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)である。
脂肪族ポリエステル共重合体(A)は、融点(Tm)は80〜120℃が好ましく、より好ましくは80〜115℃であり、結晶化温度(Tc)は35〜75℃が好ましく、より好ましくは37〜73℃である。また脂肪族ポリエステル共重合体(A)は(Tm)−(Tc)は30〜55℃が好ましく、より好ましくは35〜50℃である。
融点(Tm)が80℃未満の脂肪族ポリエステル共重合体は、得られるフィルムを基材層として用いるには融点が低過ぎ、包装用フィルムとして用いた場合、ヒートシールする際に、ヒートシールバーにフィルムが融着する虞があり、包装適性に劣る。一方、融点(Tm)が110℃を越える脂肪族ポリエステル共重合体は、結果として2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)の含有量が少なく、得られるフィルムの柔軟性が損なわれる虞がある。
結晶化温度(Tc)が35℃未満の脂肪族ポリエステル共重合体は、結晶化温度が低過ぎ、かかる共重合体からフィルムを得ようとしても、通常の冷却温度(5〜30℃)では完全に固化せず、得られるフィルムにニップロール等の押し跡が転写したり、冷却ロールから容易に剥がれず、外観に劣るフィルムとなる虞がある。
(Tm)−(Tc)が30℃未満の脂肪族ポリエステル共重合体は、得られるフィルムは耐衝撃性、耐突刺し性に劣る虞がある。
本発明に係わる脂肪族ポリエステル共重合体(A)は、好ましくは2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)の含有量が0.1〜25モル%、より好ましくは1〜10モル%〔脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)で、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)量は実質的に等しく、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)の量の合計は100モル%である。〕の範囲にある。
本発明に係わる脂肪族ポリエステル共重合体(A)のメルトフローレート(MFR:ASTM D−1238、190℃、荷重2160g)は、フィルム形成能がある限り特に限定はされないが、通常0.1〜100g/10分、好ましくは0.2〜50g/10分、さらに好ましくは0.5〜20g/10分の範囲にある。
【0009】
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)
本発明に係わる脂肪族ポリエステル共重合体(A)を構成する成分である脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジカルボン酸成分は2〜10個の炭素原子(カルボキシル基の炭素も含めて)、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する化合物であり、線状であっても枝分れしていてもよい。脂環式ジカルボン酸成分は、通常、7〜10個の炭素原子、特に8個の炭素原子を有するものが好ましい。
また、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a)は、2〜10個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸を主成分とする限り、より大きい炭素原子数、例えば30個までの炭素原子を有するジカルボン酸成分を含むことができる。
かかる脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a)としては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸および2,5−ノルボルナンジカルボン酸等のジカルボン酸、かかるジカルボン酸のジメチルエステル、ジエチルエステル、ジ−n−プロピルエステル、ジ−イソプロピルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−イソブチルエステル、ジ−t−ブチルエステル、ジ−n−ペンチルエステル、ジ−イソペンチルエステルまたはジ−n−ヘキシルエステル等のエステル形成誘導体を例示できる。
これら、脂肪族または脂環式ジカルボン酸あるいはそのエステル形成誘導体は、単独かまたは2種以上からなる混合物として使用することもできる。
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)としては、特に、コハク酸またはそのアルキルエステルまたはそれらの混合物が好ましく、融点(Tm)が低い脂肪族ポリエステル共重合体(A)を得るために、コハク酸を主成分とし、副成分としてアジピン酸を併用してもよい。
【0010】
脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)
本発明に係わる脂肪族ポリエステル共重合体(A)を構成する成分である脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジヒドロキシ化合物成分であれば、2〜12個の炭素原子、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する枝分かれまたは線状のジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物成分であれば、5〜10個の炭素原子を有する環状の化合物が挙げられる。
かかる脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)としては、具体的には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、とくには、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール);シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール類及びジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール並びにポリテトラヒドロフラン等が例示でき、特には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール又はこれらの混合物又は異なる数のエーテル単位を有する化合物が挙げられる。脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分は、異なる脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物の混合物も使用することができる。
脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)としては1,4−ブタンジオールが好ましい。
【0011】
2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)
本発明に係わる脂肪族ポリエステル共重合体(A)を構成する成分である2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)は、特に限定はされないが、通常、1〜10個の炭素原子を有する枝分かれまたは線状の二価脂肪族基を有する化合物が挙げられる。
かかる2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)としては、具体的には、例えば、グリコール酸、L−乳酸、D−乳酸、D,L−乳酸、2−メチル乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシイソカプロン酸、ヒドロキシカプロン酸等、かかる2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、シクロヘキシルエステル等の2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸エステル形成誘導体を挙げることができる。
【0012】
本発明に係る脂肪族ポリエステル共重合体(A)は種々公知の方法で製造し得る。具体的な重合方法としては、例えば、特開平8−239461号公報、特開平9−272789号公報に記載されている。又、本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(A)としては、例えば、三菱化学株式会社からGS Pla(商品名)として製造・販売されている。

脂肪族・芳香族ポリエステル(B)
本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(B)は、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)20〜95モル%、好ましくは30〜70モル%、さらに好ましくは40〜60モル%及び芳香族ジカルボン酸成分(b2)80〜5モル%、好ましくは70〜30モル%、さらに好ましくは60〜40モル%からなる酸成分と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)からなるポリエステルである。脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)は脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)と芳香族ジカルボン酸成分(b2)との合計のモル数と実質的に等しく、得られる脂肪族・芳香族ポリエステルの分子量を上げるためにイソシアネート基に代表される連結基を含んでも良い。
本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(B)は、好ましくは、融点が50〜190℃、さらに好ましくは60〜180℃、より好ましくは70〜170℃の範囲にある。また、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)のメルトフローレート(MFR:ASTM D−1238、190℃、荷重2160g)は、フィルムが成形できる限り特に限定はされないが、通常0.1〜100g/10分、好ましくは0.2〜50g/10分、さらに好ましくは0.5〜20g/10分の範囲にある。
【0013】
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)
本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を構成する成分である脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジカルボン酸成分は2〜10個の炭素原子(カルボキシル基の炭素も含めて)、特に4〜6個の炭素原子を有する化合物であり、線状であっても枝分れしていてもよい。脂環式ジカルボン酸成分は、通常、7〜10個の炭素原子、特に8個の炭素原子を有するものである。
また、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)は、2〜10個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸を主成分とする限り、より大きい炭素原子数、例えば30個までの炭素原子を有するジカルボン酸成分を含むことができる。
かかる脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)としては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸および2,5−ノルボルナンジカルボン酸等のジカルボン酸、かかるジカルボン酸のジメチルエステル、ジエチルエステル、ジ−n−プロピルエステル、ジ−イソプロピルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−イソブチルエステル、ジ−t−ブチルエステル、ジ−n−ペンチルエステル、ジ−イソペンチルエステルまたはジ−n−ヘキシルエステル等のエステル形成誘導体を例示できる。
これら、脂肪族または脂環式ジカルボン酸あるいはそのエステル形成誘導体は、単独かまたは2種以上からなる混合物として使用することもできる。
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)としては、特に、アジピン酸またはそのアルキルエステルまたはそれらの混合物が好ましい。
脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の酸成分中の脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)は20〜95モル%、好ましくは30〜70モル%、さらに好ましくは40〜60モル%の範囲にある。脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)は、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の加水分解性や生分解性を向上させ、得られるフィルムを柔軟にする。
【0014】
芳香族ジカルボン酸成分(b2)
本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を構成する成分である芳香族ジカルボン酸成分(b2)は、特に限定はされないが、通常、8〜12個の炭素原子を有する化合物、とくに8個の炭素原子を有する化合物が挙げられる。
かかる芳香族ジカルボン酸成分(b2)としては、具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフトエ酸および1,5−ナフトエ酸並びにそのエステル形成誘導体を例示できる。芳香族ジカルボン酸のエステル形成誘導体としては、具体的には、芳香族ジカルボン酸のジ−C1〜C6アルキルエステル、例えばジメチルエステル、ジエチルエステル、ジ−n−プロピルエステル、ジ−イソプロピルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−イソブチルエステル、ジ−t−ブチルエステル、ジ−n−ペンチルエステル、ジ−イソペンチルエステルまたはジ−n−ヘキシルエステル等を例示できる。
これら芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体は、単独かまたは2種以上からなる混合物として使用することもできる。
芳香族ジカルボン酸成分(b2)としては、特に、テレフタル酸またはジメチルテレフタレートまたはそれらの混合物が好ましい。
脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の酸成分中の芳香族ジカルボン酸成分(b2)は80〜5モル%、好ましくは70〜30モル%、さらに好ましくは60〜40モル%の範囲にある。芳香族ジカルボン酸成分(b2)を共重合することにより、脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の耐熱性を保ちながら、柔軟なポリエステルが得られる。
【0015】
脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)
本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を構成する成分である脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)は、特に限定はされないが、通常、脂肪族ジヒドロキシ化合物成分であれば、2〜12個の炭素原子、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する枝分かれまたは線状のジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物成分であれば、5〜10個の炭素原子を有する環状の化合物が挙げられる。
かかる脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)としては、具体的には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、とくには、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール);シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール類及びジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール並びにポリテトラヒドロフラン等が例示でき、とくには、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール又はこれらの混合物又は異なる数のエーテル単位を有する化合物が挙げられる。脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分は、異なる脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物の混合物も使用することができる。
本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(B)は種々公知の方法で製造し得る。具体的な重合方法としては、例えば、特表2002−527644公報、特表2001−501652公報に記載されている。又、本発明に係る脂肪族・芳香族ポリエステル(B)としては、例えば、BASF社からECOFLEX(商品名)として製造・販売されている。
【0016】
無機充填剤の微粒子(C)
本発明に用いられる無機充填剤には、酸化チタン、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、計算マグネシウム、シリカ、タルク、カオリン、天然または合成の雲母、ハイドロタルサイトなどがある。これらの中では酸化チタンの微粒子が好適である。
酸化チタンの微粒子
酸化チタンは、アナタース型、ルチル型、ブルカイト型のいずれも使用することができる。その平均粒径は0.1〜3μm、特に0.1〜1μm、中でも0.15〜0.5μmであることが望ましい。また、生分解性脂肪族ポリエステルへの分散性を向上させるために、表面をアルミナ、シリカ、酸化亜鉛等の酸化物で被覆したり、脂肪族ポリオール等で表面処理した酸化チタンを用いることも行われる。これらの市販品として、タイペーク〔石原産業(株)製、商品名〕、タイトン〔堺化学工業(株)製、商品名〕等が挙げられる。
【0017】
基材層(I)の脂肪族系ポリマー
本発明の基材層(I)の脂肪族系ポリマーは、前記脂肪族ポリエステル共重合体(A)が98〜35質量%、好ましくは95〜40質量%及び前記脂肪族・芳香族ポリエステル(B)が2〜65質量%、好ましくは5〜60質量%((A)と(B)の合計で100質量%とする)の合計100質量部と無機充填剤の微粒子(C)が3〜20質量部、好ましくは5〜15質量部からなる。
脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の量が2質量%未満の組成物は、得られるフィルムの耐衝撃性等が改良されない虞があり、一方、65質量%を越える組成物は、得られるフィルムの耐衝撃性が低下する虞がある。
また無機充填剤の微粒子(C)の割合が3質量部未満では延伸積層フィルムの白色発色が不十分で隠蔽性に劣るおそれがあり、20質量部を超えるとフィルム成形性及びフィルムの強度を損なう虞がある。
これら脂肪族系ポリマーの中でも、前記脂肪族ポリエステル共重合体(A)が98〜65質量%及び前記脂肪族・芳香族ポリエステル(B)が2〜35質量%であり、これら(A)と(B)の100重量部に対して、無機充填剤の微粒子(C)が5〜20質量部からなる組成が、得られるフィルムの耐衝撃性、突刺しエネルギーが共に優れるので好ましい。
本発明の脂肪族系ポリマーには、脂肪族ポリエステル共重合体(A)及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)、無機充填剤の微粒子(C)の夫々別個に、あるいは組成物を製造する際に、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、粘着付与剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、抗菌剤、核剤、無機あるいは有機化合物充填材等の添加剤を必要に応じて配合することができる。
【0018】
被覆層(II)の脂肪族系ポリマー
本発明の基材層(II)の脂肪族系ポリマー
は、前記脂肪族ポリエステル共重合体(A)が98〜35質量%、好ましくは95〜40質量%及び前記脂肪族・芳香族ポリエステル(B)が2〜65質量%、好ましくは5〜60質量%((A)と(B)の合計で100質量%とする)からなる。
脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の量が2質量%未満の組成物は、得られるフィルムの耐衝撃性等が改良されない虞があり、一方、65質量%を越える組成物は、得られるフィルムの耐衝撃性が低下する虞がある。
これら脂肪族系ポリマーの中でも、前記脂肪族ポリエステル共重合体(A)が98〜65質量%及び前記脂肪族・芳香族ポリエステル(B)が2〜35質量%からなる組成が、得られるフィルムの耐衝撃性に優れるので好ましい。
本発明の脂肪族系ポリマーには、脂肪族ポリエステル共重合体(A)及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)の夫々別個に、あるいは組成物を製造する際に、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、粘着付与剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、抗菌剤、核剤、無機あるいは有機化合物充填材等の添加剤を必要に応じて配合することができる。
【0019】
積層フィルム
本発明の積層フィルムは、その基材層(I)が前記脂肪族ポリエステル共重合体(A)が98〜35質量%及び前記脂肪族・芳香族ポリエステル(B)が2〜65質量%((A)と(B)の合計で100質量%とする)の合計100質量部と無機充填剤の微粒子(C)が3〜20質量部からなり、得られる積層フィルムは柔軟性、隠蔽性、化粧性、紫外線カット性に優れている。
また、基材層(I)の少なくとも片面に積層される被覆層(II)は、前記脂肪族ポリエステル共重合体(A)98〜35質量%及び前記脂肪族・芳香族ポリエステル(B)2〜65質量%((A)と(B)の合計で100質量%とする)からなり表面光沢、印刷適性に優れており、実用的なラミ強度、溶断シール強度を有する。
本発明の積層フィルムは、種々公知の方法で製造し得る。例えば、基材層(I)を構成する脂肪族ポリエステル共重合体(A)及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)、無機充填剤の微粒子(C)並びに被覆層(II)を構成する脂肪族ポリエステル共重合体(A)及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を夫々所定の量で配合し、直接二層以上の多層ダイを備えたフィルム成形機に投入して共押出し成形により積層フィルムとする方法、
予め、基材層(I)を構成する脂肪族ポリエステル共重合体(A)及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)、無機充填剤の微粒子(C)、並びに被覆層(II)を構成する脂肪族ポリエステル共重合体(A)及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を夫々所定の量で配合した後、溶融混練して基材層(I)組成物、被覆層(II)組成物を得た後、二層以上の多層ダイを備えたフィルム成形機に投入して共押出し成形により積層フィルムとする方法あるいは夫々別個に基材層(I)組成物及び被覆層(II)組成物からなるフィルムを成形した後貼り合せてもよい。
本発明の積層フィルムは、印刷性あるいは他のフィルムとの接着性、滑り性等を改良するために、一方の表面を、たとえば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理等で表面活性化処理を行っておいてもよい。
フィルムの厚さは、用途に応じて種々決め得るが、通常10〜200μm、好ましくは20〜100μmの範囲にある。
本発明の積層フィルムの基材層(I)及び被覆層(II)の厚さは用途に応じて種々決め得るが、通常、基材層(I)となるフィルムの厚さは5〜500μm、好ましくは10〜200μm、被覆層(II)の厚さは1〜50μm、好ましくは3〜20μmの範囲にあり、積層フィルムの厚さは5〜500μm、好ましくは10〜200μmの範囲である。
このような積層フィルムの被覆層(II)の表面のグロスは75〜90%の範囲であることが望ましい。
また、被覆層(II)の表面のラミ強度は15N/15mm幅以上であることが好ましい。さらに、被覆層(II)を内面としたときの溶断シール強度が15N/15mm幅以上であることが好ましい。
又、用途によっては積層フィルムの片面に後述のラミネート用フィルム等を貼り合せてラミネートフィルムとして種々の用途に用いることもできる。
【0020】
ラミネート用フィルム
本発明の積層フィルムと貼り合せて用いられるラミネート用フィルムは、通常、包装材料として使用されている種々材料、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン及びポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート及びポリカーボネート等のポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリメチルメタクリレート、エチレン・酢酸ビニル共重合体等、ポリ乳酸、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、スルホネート基含有芳香族ポリエステル等の生分解性ポリエステル、熱可塑性ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、あるいは熱硬化性ポリウレタン、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケイ素樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂等から得られるフィルム、シート、カップ、トレー状物、あるいはその発泡体、ガラス、金属、アルミニューム箔、紙等が挙げられる。基材として、熱可塑性樹脂からなるフィルムを用いる場合は無延伸であっても一軸あるいは二軸延伸フィルムであっても良い。勿論、基材は1層でも2層以上としても良い。
特にポリ乳酸二軸延伸フィルム、中でも厚さ約10〜100μmのフィルムは、植物を原料とする生分解性フィルムで透明性、強度に優れているので、印刷を施したポリ乳酸二軸延伸フィルムに裏印刷後にラミすることで、バックが白ベタになり印刷の映えが良く、更に十分なラミ強度を有した化粧性の高い包装袋となる
【0021】
本発明の基材層(I)組成物および被覆層(II)組成物、それぞれを混合する方法には、夫々の各成分をヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーミキサー等で混合する方法、混合後更に単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー等で溶融混練する方法等がある。
本発明の基材層(I)組成物および被覆層(II)組成物には、予め組成物を調製する際に、または製膜時に直接押出機に、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、抗菌剤、核剤、無機化合物あるいは有機化合物充填材等の添加剤を必要に応じて配合することができる。
本発明の積層フィルムは、溶断シール強度に優れており、隠蔽性を利用して手提げ袋に用いるのに有効である。また溶断シール袋として各種の用途、例えば冷凍食品、チョコレート、ガム、キャンデー等の菓子類、化粧品等の嗜好品、カセットテープ、ビデオテープ、CD、CDR、DVD、ゲームソフト等の記録材料、即席カップ麺食品、乳酸菌飲料のような飲料デザート類カップ食品の個別あるいは複数個等の包装用フィルム、エアゾール製品、インテリア製品の包装用フィルムとして好適である。
本発明の積層フィルムは、またポリ乳酸二軸延伸フィルム等とラミネートしてシーラント層フィルムと用い、ヒートシール包装袋とするのに好適である。特にポリ乳酸二軸延伸フィルムに裏印刷を施した後にラミすることで、バックが白ベタになり印刷の映えが良く、更に十分なラミ強度を有した化粧性の高い包装袋となり、上記用途以外にもフォト印画紙、パンフレット、カルテ、紹介資料等の三方シール包装用フィルム等として好適である。
【実施例】
【0022】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの実施例に制約されるものではない。
【0023】
実施例及び比較例等で使用したポリエステル等は次の通りである。
(1)脂肪族ポリエステル共重合体(A)
(イ)コハク酸・1,4−ブタンジオール・乳酸ポリエステル共重合体(A−1)
三菱化学社製、商品名 GS−Pla AZ91T MFR(190℃、荷重2160g):4.5g/10分、融点(Tm):108.9℃、結晶化温度(Tc):68.0℃、(Tm)−(Tc):40.9℃、密度:1.25g/cm
(ロ)コハク酸・アジピン酸・1,4−ブタンジオール・乳酸ポリエステル共重合体(A−2)
三菱化学社製、商品名 GS−Pla AD92W MFR(190℃、荷重2160g):4.5g/10分、融点(Tm):86.9℃、結晶化温度(Tc):40.4℃、(Tm)−(Tc):46.5℃、密度:1.25g/cm
(2)脂肪族・芳香族ポリエステル(B)
アジピン酸・テレフタル酸・1,4−ブタンジオールポリエステル共重合体(B−1)
テレフタル酸:46モル%、アジピン酸:54モル%及び1,4−ブタンジオール:100モル%、BASF社製、商品名 ECOFLEX、MFR(190℃、荷重2160g):3g/10分、融点(Tm):112℃、密度:1.26g/cm
(3)酸化チタンの微粒子(C)
石原産業株式会社製 タイペークPF739
比表面積:10(m/g)、平均粒径:0.21(μm)、比重:4.2
(4)シリカ
富士シリシア化学社製、商品名サイリシア730(粒径4μm)
(5)エルカ酸アミド
チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名ATMER SA1753
(6)ポリエチレングリコール
第一工業製薬製、商品面PEG4000
【0024】
本発明における各種測定方法は以下のとおりである。
(1)光学特性
日本電色工業社製ヘイズメーター300Aを用いて、ヘイズ(HZ:%)、平行光線透過率(PT:%)及びグロス(%)を測定した。測定値は5回の平均値である。
(2)引張り試験
試験片として、フィルムから縦方向(MD)及び横方向(TD)に短冊状フィルム片(長さ:150mm、幅:15mm)を切出し、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を用い、チャック間距離:100mm、クロスヘッドスピード:300mm/分(但し、ヤング率の測定は5mm/分)の条件で引張試験を行い、降伏点及び破断点における強度(MPa)、伸び(%)、ヤング率(MPa)を求めた。なお、伸度(%)はチャック間距離の変化とした。測定値は5回の平均値である。
(3)引き裂き試験
軽荷重引裂試験機(東洋精機製作所製)を用いて切り込み部からの引き裂き強度を測定した。測定値は5回の平均値である。
(4)ラミフィルムのヒートシール強度
積層フィルムにコロナ処理を施し、厚み25μmのポリ乳酸二軸延伸フィルム(東セロ社製:パルグリーンLC)のコロナ処理面にウレタン系接着剤(武田薬品工業製:タケラックA310(60%)+タケラックA3(5%)+酢酸エチル(35%))を約7g/m塗布した後にドライラミネートして厚さ55〜57μmのラミネートフィルムを得た。
得られたラミネートフィルムの積層フィルム面同士を重ね合わせた後に、テスター産業株式会社製TP−701−B HEATSEALTESTERを用いて、所定の温度で、シール面圧:1kg/cm、時間:1秒の条件下で熱融着した。
尚、加熱は上側のみとした。次いで、熱融着した二軸延伸積層フィルムから幅:15mmの試験片を切出し、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を用いて300mm/分の引張り速度で剥離した。剥離面の確認を行い、積層フィルム面間で剥離した場合(ドライラミネートした層間はついている)は無表記とし、ドライラミネートした層間で剥離した場合はその最大強度と合わせて、×と表記し、更に積層フィルム面間、ドライラミネートした層間ともに剥離せずにラミネートフィルム自体が切れた場合はその最大強度と合わせて、○と表記した。測定値は5回の平均値である。
(5)溶断シール強度
積層フィルムの評価面同士を重ね合わせた後に、協和電機株式会社製シュリンクシステムLS−600のL型溶断バーを用いて、出力1.0A、1.0秒の条件で溶断シールした。次いで、溶断シールした延伸フィルムから幅:15mmの試験片を切出し、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を用いて300mm/分の引張り速度で剥離し、その最大強度を溶断シール強度とした。測定値は5回の平均値である。
【0025】
実施例1
<基材層(I)用組成物(A1)の製造>
脂肪族ポリエステル共重合体(A):脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を78:22(質量%)、これらの合計100質量部に対して酸化チタンの微粒子(C)を11質量部、また添加剤としてシリカ:エルカ酸アミド:ポリエチレングリコールを1000:1000:1000(ppm)計量し、二軸押出機を用いて180℃で溶融混練して基材層(I)用の組成物(A1)を得た。
<被覆層(II)用の組成物(B1)の製造>
脂肪族ポリエステル共重合体(A):脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を80:20:(質量%)、また添加剤としてシリカ:エルカ酸アミド:ポリエチレングリコールを1000:1000:1000(ppm)計量し、二軸押出機を用いて180℃で溶融混練して被覆層(II)用の組成物(B1)を得た。
【0026】
<積層フィルムの製造>
組成物(A1)を一軸押出機を用いて、200℃でマルチマニホールド式のT−ダイより200℃で押出し基材層(I)とした。
更に、組成物(B1)を一軸押出機2台を用い、それぞれTダイより共押出により、基材層(I)の両方の面に組成物(B1)からなる被覆層1、2を積層した。また、被覆層1/基材層/被覆層2の厚みが6/18/6(μm)となるように溶融樹脂の吐出量を調整した。
この溶融押出した共押出フィルム(30μ)を15℃のキャスティングロールで急冷し、3層構成の積層フィルムを得た。フィルムの評価結果を表1と表2に示す。
【0027】
比較例1
実施例1の3層に代えて組成物(A1)の単層とした以外は実施例1と同様に行った。

[参考例1]
実施例1の組成物(A1)に代えて、
脂肪族ポリエステル共重合体(A):脂肪族・芳香族ポリエステル(B)を78:22(質量%)、また添加剤としてシリカ:エルカ酸アミド:ポリエチレングリコールを1000:1000:1000(ppm)と配合し、酸化チタンの微粒子(C)を除いた処方とする以外は実施例1と同様に行った。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】




表1と表2から明らかなように、被覆層1として組成物(B1)としたフィルム(実施例1)は組成物組成物(A1)の単層からなるフィルム(比較例1)に比べて同程度の隠蔽性を有しながら、グロスが78%から84%と上がっており、更にラミフィルムのヒートシール強度を見ると130、140℃のシールで層間剥離が起きることなく、ラミフィルムが切れるまで十分な強度でヒートシール、ラミ接着でき、更に溶断シール強度も酸化チタンの微粒子(C)を含まない参考例1と同程度まで上がり、化粧性、印刷性、ラミネート適性、溶断シール性が大幅に改善されたことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の積層フィルムは、柔軟性、隠蔽性、化粧性、紫外線カット性に加えて、表面光沢、印刷適性、ラミ強度、溶断シール強度に優れており、隠蔽性を利用した生分解性手下げ袋、及び溶断シール袋、各種包装用フィルム、ラッピング包装等の自動充填包装用フィルムとして用できる。
またポリ乳酸二軸延伸フィルム等とラミネートしてシーラント層フィルムと用い、ヒートシール包装袋として、特に印刷を施したポリ乳酸二軸延伸フィルムに裏印刷後にラミすることで、バックが白ベタになり印刷の映えが良く、化粧性の高い包装袋として好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)からなる脂肪族ポリエステル共重合体(A)98〜35質量%及び脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(b1)20〜95モル%及び芳香族ジカルボン酸成分(b2)80〜5モル%からなる酸成分と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(b3)からなる脂肪族・芳香族ポリエステル(B)2〜65質量%((A)と(B)の合計で100質量%とする)の合計100質量部と無機充填剤の微粒子(C)3〜20質量部からなる脂肪族ポリエステルからなる基材層(I)の少なくとも片面に、脂肪族ポリエステル共重合体(A)98〜35質量%及び脂肪族・芳香族ポリエステル(B)2〜65質量%((A)と(B)の合計で100質量%とする)からなる被覆層(II)が積層されてなることを特徴とする積層フィルム。
【請求項2】
無機充填剤の微粒子(C)が酸化チタンの微粒子である請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
脂肪族ポリエステル共重合体(A)が、2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)の含有量が0.1〜25モル%〔脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)で、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)と脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)量は実質的に等しく、脂肪族または脂環式ジカルボン酸成分(a1)、脂肪族または脂環式ジヒドロキシ化合物成分(a2)及び2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)の量の合計は100モル%である。〕の範囲にある請求項1記載の積層フィルム。
【請求項4】
2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸成分(a3)が、乳酸である請求項1または3に記載の積層フィルム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の積層フィルムを溶断シールしてなる隠蔽性を有する生分解性手下げ袋
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかに記載の積層フィルムをポリ乳酸二軸フィルムのシーラント層としてラミネートして得られるラミネートフィルム。
【請求項7】
ポリ乳酸二軸フィルムが裏印刷されていることを特徴とする請求項6記載のラミネートフィルム。

【公開番号】特開2006−205599(P2006−205599A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22258(P2005−22258)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】