説明

生化学分析装置

【課題】検査カートリッジに衝撃が加わって、試薬が流出したり、分析処理の途中で望ましくない流動を起こしたりすることを防止する生化学分析装置を得る。
【解決手段】保持ディスク12に保持された取り外しが可能な検査カートリッジ2とを有し、保持ディスク12の回転によって発生する遠心力を利用して、検査カートリッジ2に形成された内周側の試薬容器230から外周側の試薬容器420へ試薬を移動させることで分析処理を行う生化学分析装置において、検査カートリッジ2は、凹部によって形成された流路231と流路に接続された試薬容器230、420を有する基板と、試薬を試薬容器の内部に密閉する蓋90と、蓋及び基板2の凹部を覆う上面カバー199と、を備え、蓋90に穿孔することで、試薬容器230の内部と流路231とを連通させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な流路や反応容器を表面に成形した検査カートリッジ内に試薬を入れて遠心力を用い流動させ分析する生化学分析装置及びそれに用いる検査カートリッジに関し、特に分析処理を自動的に行うものに好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の化学物質を含む試料から特定の化学物質を抽出し分析する生化学分析装置において、穿孔機で容器上部の蓋に穴を開けて、各試薬を遠心力で流動させることが知られ、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−212050号公報(第18図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術においては、単に容器上部に穴を開けるため、検査カートリッジに衝撃が加わって、試薬が流出したり、分析処理の途中で望ましくない流動を起こしたりする恐れがある。また、試薬は密閉空間に確実に保持されていないため、検査カートリッジの使用前、例えば運搬時・保管時に蒸発し、特に長期間の保管に適するとは言い難かった。
【0005】
本発明は、上記の従来技術の課題を解決し、試薬の長期保管を可能とし、分析処理の進行に従って試薬の流動化を可能とし、多数の試料と試薬の混合や反応、検出を自動的に実行することにある。また、他の目的は、検査カートリッジの構造を単純化して製造を容易とすると共に、生化学分析装置及び検査カートリッジを簡素化して小型化することにある。
なお、本発明は、上記目的の少なくともいずれかを達成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明は、回転可能とされたと、前記保持ディスクに保持された取り外しが可能な検査カートリッジとを有し、前記保持ディスクの回転によって発生する遠心力を利用して、前記検査カートリッジに形成された内周側の試薬容器から外周側の試薬容器へ試薬を移動させることで分析処理を行う生化学分析装置において、前記検査カートリッジは、凹部によって形成された流路と流路に接続された前記試薬容器を有する基板と、試薬を前記試薬容器の内部に密閉する蓋と、該蓋及び前記基板の凹部を覆う上面カバーと、を備え、前記蓋に穿孔することで、前記試薬容器の内部と前記流路とを連通させ、遠心力を利用して前記試薬を内周側から外周側の前記試薬容器へ移動させるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、予め試薬が分注され蓋によって試薬を内部に密閉する容器を基板に設け、蓋に穿孔し、基板と基板を覆う上面カバーによって形成された空間と試薬容器の内部とを連通させ、遠心力を利用して試薬を外周側の流路あるいは容器に移動させるので、検査カートリッジに衝撃が加わって、試薬が流出したり、分析処理の途中で望ましくない流動を起こしたりすることがない。したがって、検査カートリッジの構造を単純化した上で、多数の試料と試薬の混合や反応、検出を自動的に実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図1〜図12を参照して一実施の形態による生化学分析装置およびそれに用いるカートリッジを説明する。
図1は、生化学分析装置のひとつである遺伝子分析装置1を斜視図で示し、縦軸状に配置されたモータ11と、モータ11の出力軸に取り付けられ、モータ11で回転駆動される保持ディスク12とを有する。保持ディスク12の周方向には、同一形状の検査カートリッジ2が多数配置されている。検査カートリッジ2の上方であって、検査カートリッジ2に形成された流路またはチャンバに対応した位置に、液体の流動を制御する穿孔機13が配置されている。さらに、検査カートリッジ2の上方には、加温装置14や検出装置15が配置されている。
【0009】
遺伝子分析装置1を用いた分析においては、操作者が検査または分析項目に応じて検査カートリッジ2を用意し、保持ディスク12に装着する。装着された検査カートリッジ2は、モータ11の起動停止および穿孔機13の動作により、検査カートリッジ2内に形成された流路を試薬や試料が流動する。そして、流体の遺伝子検査が実行される。
図2、図3は、検査カートリッジ2の詳細を示し、図2は、試薬容器の蓋を除いた状態である。
検査カートリッジ2は、先すぼまりの扇形部を有し、概略台形形状となっており、その上面には、凹凸が形成されている。この凹凸で試薬等の密閉流路および容器を形成するために、フィルムあるいは薄板等でできた図示しない上面カバー199が、検査カートリッジ2の上面全体を覆っている。上面カバー199は、検査カートリッジ2に接着あるいは接合されている。そして、検査に必要な試薬を収容する複数の試薬容器230〜290が形成されている。
【0010】
また、試薬容器230〜290は、その外周側に接続される出口流路231〜291を備える。なお、試薬容器240と250および試薬容器280と290は試薬を移動させる先が共通であるため、出口流路がそれぞれ共通化されている。
さらに、上面カバー199と蓋90の間には、各試薬容器に対応する針構造体235〜295が設けられ、上面カバー199と試薬容器蓋間の側壁のうち一箇所を支持点として、試薬容器の中央付近に伸びた後、回転中心軸に対し内周側と外周側の2方向に棒状に伸びて概略T字形状を有している。棒状に伸びた先端には蓋に対向する方向に概略円錐形状の針が設けられている。試薬容器240〜290が位置する側面とは反対側の側面付近に、検査カートリッジ2にサンプルである全血試料を投入するための試料容器310が形成されている。試料容器310の下流側には、試料を所定の動作にしたがって操作するための血清定量容器312と血球貯蔵容器311が隣り合って形成されている。
【0011】
検査カートリッジ2の中央部付近には、試薬と試料を反応させる血清反応容器420および結合前容器430が、その下流にはバッファー容器800が形成されており、容器420、430、800よりも下流側となる外周側には、溶離液回収容器390が形成されている。最外周側には、検査カートリッジ2のほぼ幅全体にわたって、廃液容器900が形成されている。各容器には、流路が接続されており、試薬や試料を所定の手順で流通させることが可能になっている。
【0012】
図4を参照して検査カートリッジ2の組み立てを説明する。
検査カートリッジ2は、試薬容器230〜290を構成する試薬容器部品238〜288と、流路と針構造体体235〜295およびその他の容器からなる基板51から構成されており、試薬容器部品238〜288は、基板の裏面に接着あるいは接合される。試薬容器部品248は、出口流路を共有する試薬容器240と250の二つの試薬容器を備え、試薬容器部品および蓋が共通化されている。試薬容器280と試薬容器290を備えた試薬容器部品288についても同様である。
図5は試薬容器部品248を示し、基板51への接合あるいは接着の前に、試薬容器部品248の上面には、予め蓋90が接着あるいは接合されている。また、容器240、250にはそれぞれ試薬が所定量分注される。他の試薬容器部品238、268、278、288についても同様に構成されている。
【0013】
つぎに、検査カートリッジ2を必要数だけ保持ディスク12に装着し、サンプルとして全血を用い、ウイルス核酸を抽出及び分析する場合について、図6、7に示した手順書および図8ないし11を参照して説明する。
(1)検査を始めるに当たり、操作者は、真空採血管等で採血した全血を、検査カートリッジ2の試料注入口301から試料容器310に注入する。
その際、試料注入口301上に配置した上面カバー199を、穿孔手段を用いて穿孔し、試料注入口301の部分を外部に開口する。検査カートリッジ2の外部に全血が飛散するのを防止するために、全血を注入したら試料注入口301上の部位を、シールあるいはキャップ等で塞ぐ。
溶解液容器230、第1洗浄液容器240、第2洗浄液容器250、第3洗浄液容器260、溶離液容器270、第1増幅液容器290、第2増幅液容器280からなる試薬容器のそれぞれには、予め溶解液、第1洗浄液、第2洗浄液、第3洗浄液、溶離液、第1増幅液、第2増幅液が所定量分注され前述のように試薬容器上面の蓋90によってそれぞれ密閉されている。
【0014】
(2)血清分離(ステップ1010):遺伝子検査装置1のモータ11を駆動して、保持ディスク12を回転させる。(ステップ912、ステップ1012)試料容器310に注入した全血501は、保持ディスク12が回転して発生した遠心力により、回転中心99から半径方向外向きの力を受け、外周側に流動する。そして、試料容器310に連通する血清定量容器312へ、さらに血清定量容器312に連通する血球貯蔵容器311に流れ込む。
全血試料の投入量を、血球貯蔵容器311と血清定量容器312がちょうど満たされる程度に設定する。また、血清定量容器の外周側に接続している血清定量容器の出口流路318は、一旦血清定量容器より内周側まで折り返した形状のトラップとなっている。これにより、試料に遠心力が付加されているときは、出口流路318の折り返し位置を越えて試料が外周側に流れることがなく、血球貯蔵容器311と血清定量容器312内に保持される。
【0015】
(3)保持ディスク12の回転を継続する。全血は、血球と血清に遠心分離される(ステップ914、1014)。血球は外周側の血球貯蔵容器311へ移動し、血清定量容器312内に血清503だけが残る。
【0016】
(4)所定時間だけ保持ディスク12を回転させると(ステップ916)、血清の遠心分離動作が終了し、検査カートリッジ2が停止する。停止した後、血清定量容器の出口流路318は毛細管現象によって血清で満たされる。
【0017】
(5)穿孔機13を用いて溶解液容器230上の蓋90を穿孔する(ステップ918)。
図9〜12を用いて穿孔動作の詳細を説明する。
図9は溶解液容器230付近の拡大図、図10は図9におけるA―A’で示す経路の断面図であり、針構造体235は、上面カバー199と蓋間の側壁の一箇所を支持点として、試薬容器230の中央付近に支持梁83が伸びた後、回転中心軸に対し内周側と外周側にそれぞれ棒状に伸びる概略T字形状を有し、その先端部には蓋90に対向するように円錐状の針89がそれぞれ設けられている。
針89はそれぞれ回転中心軸に対し、試薬容器の内周付近と外周付近に位置する。また、試薬容器230の中央付近には穿孔時にカートリッジ外部から穿孔操作による変形を伝えるための突起82が設けられ、カートリッ上面ジカバー199と近接あるいは接するように構成されている。
【0018】
蓋90を穿孔する際には、図11に示すように、穿孔機13の移動あるいは穿孔機13の移動と回転ディスクの回転を組み合わせることによって、穿孔機13が突起82の上部に移動する。つぎに、穿孔機13が上面カバー199を変形させ、突起82を下側に押付ける。針構造体235は支持梁83の変形によって図11に示すように蓋90の側に変位し、針89が蓋90の2箇所を穿孔する。後穿孔機13をカートリッジカバー199から離すと、針構造体およびカートリッジカバーはその弾性によってもとの位置に戻る。
蓋に用いる材質としては、針によって穿孔しやすく、十分な強度をもち、かつ試薬容器に接合あるいは接着可能であるものが望ましい。また加えて、保管時に試薬容器内で気化した試薬が蓋を通して蒸発しないように、透湿度の低いものが望ましい。これらの用件を備えたものとして例えば、両面を薄い樹脂でラミネートしたアルミフィルムが良い。
【0019】
保持ディスク12を回転させる(ステップ920)と、図12で示すように、遠心力の作用により溶解液237は流動して(ステップ1018)、外周側の穿孔穴93から溶解液容器出口流路231を経て、血清定量容器の出口流路318と合流部419で合流し、血清反応容器420に流入する。試薬が流動するには、溶解液容器から排出された試薬の液量分に相当する空気が溶解液容器に流入しなければならないが、その空気は空気流路85、内周側の穿孔穴94を経由して溶解液容器230に供給される。
また、図8に示すように、空気流路85は血清反応容器420の内周側とも接続されており、全体的には血清反応容器内の空気と溶解液容器内の試薬が入れ替わるように流動する。すなわち、内部の蓋を穿孔することによって試薬を流動させ、かつ外周側の容器と空気流路を接続させることによって、外部からの空気の流入あるいは外部への空気の排出を伴わずに検査カートリッジ内の密閉された空間で分析処理を行うことが可能となる。
【0020】
外周側の穿孔穴に対応する針は溶解液容器内の液が全て流動するように、回転中心軸に対し出来るだけ外周側を穿孔するように配置するのが望ましく、外周側に飛び出した突き出し部84を設けるとより確実に全ての液を流動させることが出来る。また、内周側の穿孔穴は空気の流入をスムーズに行うために、試薬容器の内周側になるように針を配置するのが望ましい。
針89は試薬容器の内周側と外周側に位置するとともに、カートリッジ外部から穿孔操作による変形を伝えるための突起82を試薬容器230の中央付近に設けることによって、上面カバー199を最も変形させやすい試薬容器の中央付近で変形させながら、試薬容器の内周側と外周側に穿孔することが出来る。さらに、1回の穿孔動作で複数箇所の穿孔を行うことも出来る。
【0021】
ステップ920の回転においては、サイホン現象によって血清定量容器312内の血清も同時に流動し、合流部419で溶解液と合流し両者は混合しながら血清反応容器420に移送される。血清定量容器312も溶解液容器230と同様に空気流路85に接続されているため、血清が血清定量容器から排出された分に相当する空気が血清定量容器312に流入し、全体的には血清反応容器420内の空気と血清定量容器内312の血清が入れ替わる。この際にも、外部からの空気の流入あるいは外部への空気の排出を伴わずに検査カートリッジ内の密閉された空間で液の移送が行われる。
【0022】
保持ディスク12の回転を継続して、遠心力を十分付与し続けると、溶解液は全て流れ、血清は、出口流路318が血清定量容器312に接続する位置に血清の液水位が低下するまで、流れ続ける。
(6)血清反応容器420では、混合した血清と溶解液が反応する(ステップ1024)。
血清と溶解液の混合液は、反応容器出口流路421の最内周部である折り返し部を越えず、保持ディスク12の回転中は、混合液が血清反応容器420内に保持される。
【0023】
溶解液は、血清中のウイルスや細菌等からその細胞膜を溶解して核酸を溶出させ、さらに結合部301への核酸の吸着を促進させる。DNAを溶出および吸着する際の試薬としては塩酸グアニジンを、RNAを溶出および吸着する試薬としてはグアニジンチオシアネートを用いる。
血清反応容器420で血清と溶解液の反応が終了したら、保持ディスク12の回転を停止する(ステップ924)。停止した後に、毛細管現象によって、血清反応容器出口流路421は混合液で満たされる。
【0024】
(7)結合モード(ステップ1026)に移行する。
保持ディスク12を回転させる(ステップ928)。サイホン現象によって、混合液は下流側の結合前容器430に移送され、結合部401に流入する。(ステップ1030)。
結合部401は、検査カートリッジ2のほぼ中央部に形成されており、核酸を結合するための結合フィルタが充填されている。結合部401を溶解液と血清の混合液である溶解反応液が通過する(ステップ930、1032)と、核酸が結合部401に設けられた結合フィルタに吸着する。結合部401を通過して生成された廃液は、結合部401に接続されたバッファー容器800を経て溶離液回収容器390に流入する。溶離液回収容器390の最外周側には、溶離液回収容器折返し流路494が接続されており、この溶離液回収容器折返し流路494は、一旦内周側に戻り、外周端側にある廃液貯蔵容器900に接続されている。廃液はこれらの容器を経由して廃液貯蔵容器900に移送される。
結合前容器、バッファー容器、溶離液回収容器は全て空気流路85で接続されているため、溶解液、血清の流動と同様に検査カートリッジ内の密閉された空間で液の移送が行われる。
【0025】
(8)洗浄モード(ステップ1036)に移行する。
溶解液と同様の手順で、第1洗浄液容器240上の蓋90を穿孔する(ステップ934)。再度保持ディスク12を回転させ(ステップ936)、第1洗浄液を遠心力により第1洗浄液容器240から、結合前容器430を経由して、結合部401に導く(ステップ1038、ステップ938)。結合前容器430を洗浄するとともに、結合部401を洗浄する(ステップ1040)。
第1洗浄液には、たとえば上述した溶解液あるいは溶解液の塩濃度を低減した液を使用する。結合前容器430や結合部401を洗浄した後の廃液は、混合液同様に、溶離液回収容器390を経て廃液貯蔵容器900に導く(ステップ1042)。廃液貯蔵容器900に廃液を移送したら、保持ディスク12の回転を停止する(ステップ940)。
【0026】
次に、第2洗浄液を流動させる。第2洗浄液には、結合前容器430および結合部401に付着した塩等の不要成分を洗浄するために、たとえばエタノールあるいはエタノール水溶液を用いる。保持ディスク12の回転を停止させた状態で、溶解液容器と同様に第2洗浄液容器250の上部に位置する蓋90を穿孔する。その後、保持ディスク12を回転させ遠心力を作用させる。
遠心力により第2洗浄液は第2洗浄液容器250から、結合前容器430を経由して、結合部401に流入し、結合前容器430と結合部401とを洗浄する。洗浄後の廃液を、第1洗浄液と同様に溶離液回収容器390を経て廃液貯蔵容器900へと移送する。廃液を廃液貯蔵容器900に移送し終えたら、保持ディクス12の回転を停止する(ステップ1038〜1042)。
【0027】
同様に、第3洗浄液を流動させるために溶解液と同様の手順で第3洗浄液容器260の上部に位置する蓋90を穿孔する。第3洗浄液は、バッファー容器800を経由して、溶離液回収容器390に流入する。そして、溶離液回収容器390に付着した塩あるいは第2洗浄液の微量な残液を洗浄する。第3洗浄液には、たとえば滅菌水やpHを7〜9に調整した水溶液を用いる。
結合部401と溶離液回収容器390を洗浄したら、核酸の溶離工程に移行するために、保持ディスク12を停止する(ステップ940)。
【0028】
(9)溶離モードに移行する(ステップ1044)。
溶解液と同様の手順で溶離液容器270を流動させるために、溶離液容器の上部に位置する蓋90を穿孔する(ステップ942)。保持ディスク12を回転させ(ステップ944)、結合部401に溶離液を流す(ステップ1046)。
溶離液には、水或いはpHを7から9に調整した水溶液を用いる。溶離液は、核酸を結合部401の結合フィルタから溶離する(ステップ946、ステップ1048)。核酸を含んだ溶離液は結合部341を通過した後、溶離液回収容器390に回収される(ステップ1050)。溶離液は液量が少ないために溶離液回収容器折り返し流路494を越えることが出来ず、溶離液回収容器に保持される。保持ディスク12の回転を停止する(ステップ948)。
【0029】
(10)増幅および検出モード(ステップ1052)に移行する。
溶解液と同様の手順で第1増幅液容器280の上部に位置する蓋90を穿孔する。モータ11を回転させると、第1増幅液は、バッファー容器800を通過して、溶離液回収容器390に流入する。第1増幅液は、核酸を増幅して検出する試薬で、例えばデオキシヌクレオシド3リン酸及び蛍光試薬等を含む。溶離液と同様に第一増幅液は溶離液回収容器に保持される。モータ11を停止する。
第1増幅液を流通させた後、加温装置14を検査カートリッジの溶離液回収容器に移動させる。あるいは保持ディスク12を回転させて、検査カートリッジ2を加温装置14の位置まで移動させる。加温装置14を用いて、溶離液回収容器390を温度制御する。
次に、溶解液と同様の手順で、第2増幅液容器の上部に位置する蓋90を穿孔する。モータ11を回転させる。遠心力により、第2増幅液はバッファー容器800を通過して、溶離液回収容器390に流入する。第2増幅液は増幅に必要な酵素を含む。溶離液や第1増幅液、第2増幅液の液量は、これら3種の液のすべてが溶離液回収容器390側に移動したときに、その液面が溶離液回収容器折り返し流路494を越えてあふれないように設定されている。
【0030】
第2増幅液を溶離液回収容器390に移送したら、加温装置14を検査カートリッジの溶離液回収容器390に移動するか、保持ディスク12を回転させて検査カートリッジ2を加温装置14の位置まで移動させる。溶離液回収容器390を温度制御する。所定時間だけ温度制御している間に核酸が増幅し、検出装置15が核酸を検出する(ステップ1054)。増幅および検出に必要な時間、例えば30分ないし2時間程度、加温する。第2増幅液287が移送された溶離液回収容器390には、溶離液と第1、第2増幅液の混合液である増幅反応液が保持される。
【0031】
以上述べたように、予め試薬が分注され蓋によって試薬が内部に密閉された密閉構造を有する試薬容器を備え、試薬容器の蓋に穿孔し、基板と上面カバーによって形成された空間と試薬容器との内部を連通させ、試薬を流動化させることによって、検査カートリッジの使用前の、例えば運搬時・保管時において、試薬は密閉空間に確実に保持されているため、検査カートリッジに衝撃が加わっても、試薬が使用前に流出したり、望ましくない流動を起こしたりすることがない。
また、蓋材としては、試薬容器と接合あるいは接着可能である限りにおいて、ラミネート構造など自由に材質を選定できるため、透湿度の十分低い材料を蓋に用いることで、長期間試薬を蒸発させることなしに検査カートリッジを保管することが出来る。
さらに、試薬容器と基板を別部品とし、蓋を接合あるいは接着した試薬容器を基板の裏側から接合あるいは接着する構成としたことで、蓋に穿孔する手段として、例えば金型による成形等によって、針構造体を基板と一体の単一部品として形成することが可能となり、検査カートリッジの製造が容易になる。
【0032】
さらに、針構造体を少なくとも1箇所が基板あるいは試薬容器に支持して、針と穿孔押付け位置を異なる場所に配置することによって、カートリッジカバー199を最も変形させやすい試薬容器の中央付近で変形させながら、流動化させるために試薬容器の内周側と外周側の望ましい穿孔場所を穿孔することができ、1回の穿孔動作で複数箇所の穿孔を行うことが出来る。
さらに、予め試薬が分注され蓋によって試薬が内部に密閉された試薬容器とし、試薬容器の蓋に穿孔し、基板と上面カバーによって形成された空間と試薬容器との内部を連通させ、試薬を流動化させ、かつ試薬容器に空気を流入させる空気流路と試薬が移送される先の容器の空気流路を結合することによって、外部からの空気の流入あるいは外部への空気の排出を伴わずに検査カートリッジ内の密閉された空間で液の移送が行うことが可能となる。したがって、検査カートリッジ外部への試薬・サンプルの気化成分の流出や外部から空気の流入によるコンタミネーションを防ぐことができ、安全で安定な分析処理を行うことが出来る。特に全ての試薬容器とその他の容器に対応する空気流路を全て接続することによって、全ての分析処理を検査カートリッジ内の密閉された空間で行うことが出来る。
【0033】
また、基板と複数の試薬容器部品で構成されているとしたが、図13に示すように、試薬容器部品を一体で構成しても良い。図13においては、試薬容器部品238〜278が、一体で形成された試薬容器部品298で構成されており、検査カートリッジの製造がさらに容易になる。さらに、穿孔時に上面フィルムが変形し易いように、図19、20に示すように、上面カバーに予め平面以外の予備変形形状を設けると良い。図19は穿孔前の状態、図20は穿孔時の状態を示し、図19に示すように、例えば上面カバーに波状の予備変形部570を設けることにより、上面フィルムがより変形し易くなる。あるいは上面カバー199の材質が比較的硬くても穿孔を行うことが出来る。
さらに、上記においては、穿孔手段として、上面カバーと試薬容器の蓋の間に針構造体を設けているが、穿孔手段として例えば、蓋を光吸収性の高い材質とし、外部から光を照射して、熱的に蓋を穿孔することも良い。この場合、穿孔手段に限定されることなく全ての分析処理を検査カートリッジ内の密閉された空間で行うことが可能となる。
【0034】
次に本発明に係る生化学分析装置およびそれに用いるカートリッジの第2の実施例を示す。本実施例においては遺伝子分析装置の形態、及び分析対象は第1の実施例と同様である。
第2の実施例における検査カートリッジ2を、図14に斜視図、図15に上面図、図16に分解斜視図で示す。図14、15においては、試薬容器上面の上面カバー199を除いたものを示している。また、図15においては、内部の構造を分かりやすく示すために、試薬容器の蓋に相当する部分を除いて示し、下側の構造を点線で示している。なお、本実施例においては、以下の点が第1の実施例と異なっており、他の点は第1の実施例と同様である。
【0035】
図16に示すように検査カートリッジ2は、複数の試薬容器と、その他の容器とが一体で構成された容器層198、複数の試薬容器をそれぞれ密閉し、かつその他の容器に対しても流動を制御するための手段を提供する内蓋層190、穿孔後の液を移送させるための流路および、穿孔のための針構造体を備えた基板層51、基板層51の上面を覆う上面カバー層199の4つが積層されている。
第1の実施例で示した試薬のうち、第1増幅液、第2増幅液はそれぞれ、乾燥試薬と乾燥試薬溶解液の組み合わせによって形成されているが、その代わりに、固体状の乾燥試薬である第1乾燥増幅試薬、第2乾燥増幅試薬とそれぞれを溶解するための第1試薬溶解液、第2試薬溶解液が検査カートリッジの第1乾燥増幅試薬容器510、第2乾燥増幅試薬容器500、第1試薬溶解液容器690、第2試薬溶解液容器680に予め充填されている。
【0036】
血清定量容器312、血清反応容器420の出口に設けられていた折り返し流路318と421が、それぞれ折り返し部を持たない外周側に向かう流路で構成され、かつ、容器層に設けられた血清定量容器312、血清反応容器420は内蓋層190によって外周側への液の移送が妨げられるように構成されている。また、血清定量容器312、血清反応容器420の上部には基板層によって針構造体315と425が設けられている。
第1乾燥増幅試薬容器510と第2乾燥増幅試薬容器500においても、血清定量容器、血清反応容器と同様に、内蓋層によって外周側への液の移送が妨げられるように構成され、それぞれの上部には基板層によって針構造体515と505が設けられている。
各々の容器を接続する流路上には、基板層51と容器層198を流体的に接続するための、液流路上下接続部700と空気流路上下接続部701が設けられ、液および空気が基板層から容器層あるいはその逆の方向に移動可能となっている。内蓋層190においては、液流路上下接続部700と空気流路上下接続部701に対応する位置に穴910がそれぞれ設けられている。
【0037】
検査カートリッジ2を必要数だけ保持ディスク12に装着し、サンプルとして全血を用い、ウイルス核酸を抽出及び分析することを以下に順を追って説明する。
【0038】
(1)全血を、検査カートリッジ2の試料注入口301から試料容器310に注入する。検査カートリッジ2の外部に、全血が飛散するのを防止するために、全血を注入したら試料注入口301上の部位を、シールあるいはキャップ等で塞ぐ。溶解液容器230、第1洗浄液容器240、第2洗浄液容器250、第3洗浄液容器260、溶離液容器270、第1試薬溶解液容器690、第2試薬溶解液容器680、第1乾燥増幅試薬容器510、第2乾燥増幅試薬容器500からなる試薬容器のそれぞれには、予め溶解液、第1洗浄液、第2洗浄液、第3洗浄液、溶離液、第1試薬溶解液、第2試薬溶解液、第1乾燥増幅試薬、第2乾燥増幅試薬が所定量分注され試薬容器上面の内蓋層190によってそれぞれ密閉されている。
血清分離を行う前に、第1試薬溶解液容器690、第2試薬溶解液容器680の上部に位置する内蓋層190を針構造体695と685を用いて穿孔する。穿孔動作は第1の実施例において溶解液の流動の際に説明したものと同様である。
【0039】
(2)血清分離(ステップ1010):全血は、血清定量容器312、血球貯蔵容器311に流れ込む。なお、血清定量容器312、血球貯蔵容器311は容器層198と内蓋層190からなる空間で構成されており、基板層51の側には全血は流れ込まない。また、前段階で第1試薬溶解液容器690、第2試薬溶解液容器680の上部に位置する内蓋層190が穿孔されているため、第1試薬溶解液、第2試薬溶解液はそれぞれ、第1乾燥増幅試薬容器510と第2乾燥増幅試薬容器500にそれぞれ移送される。
第2試薬溶解液容器680と第2乾燥増幅試薬容器500周辺の拡大図を図17に、また図17におけるB−B’経路の概略断面を図18に示し、遠心力によって、第2試薬溶解液は図18に示す外周側の穿孔穴93を通過して、基板上の流路を通り、外周側に移送される。
基板上の流路は、第2試薬溶解液容器と第2乾燥増幅試薬容器の間に位置する液流路上下接続部700に接続されており、第2試薬溶解液は液流路上下接続部700を経由して、第2乾燥増幅試薬容器500に移送される。第2乾燥増幅試薬容器500には第2乾燥増幅試薬507が予め充填されており、第2乾燥増幅試薬と第2試薬溶解液が混合される。第2乾燥増幅試薬容器500はその上部に位置する内蓋層190が穿孔されていないため、次に遠心操作が行われても、第2乾燥増幅試薬と第2試薬溶解液は第2乾燥増幅試薬容器500内に保持される。
第1試薬溶解液と第1乾燥増幅試薬についても同様に、その混合液が第1乾燥増幅試薬容器510に保持される。
【0040】
(3)保持ディスク12の回転を継続する。全血は、血球と血清に遠心分離される(ステップ914、1014)。血球は外周側の血球貯蔵容器311へ移動し、血清定量容器312内に血清503だけが残る。
【0041】
(4)所定時間だけ保持ディスク12を回転させると(ステップ916)、血清の遠心分離動作が終了し、検査カートリッジ2が停止する。
【0042】
(6)穿孔機13を用いて溶解液容器230上の内蓋層190と血清定量容器312上の内蓋層190を穿孔する(ステップ918)。穿孔は第1の実施例で溶解液の流動の際に説明したのと同様に、それぞれ針構造体235と針構造体315の上部を押すことで達成される。但し、血清定量容器は内周側で既に空気流路とつながっているため、外周部のみ穿孔する。
保持ディスク12を回転させる(ステップ920)と、内蓋層が穿孔されたため、溶解液と血清はそれぞれ出口流路231と318を経由して外周側に移送される。この二つの流路は外周側で合流し、合流部に位置する液流路上下接続部700を経由して、血清反応容器420と内蓋層190で形成される空間に移送される。
【0043】
試薬が溶解液容器から排出された分に相当する空気が溶解液容器に流入しなければならないが、その空気は空気流路85、内周側の穿孔穴を経由して溶解液容器に供給される。また、血清反応容器はその内周側に設けられた空気流路上下接続部701を経由して、基板層の空気流路85と流体的に接続されているため、全体的には血清反応容器内の空気と溶解液容器内の試薬が入れ替わるように試薬が流動する。
血清反応容器420を容器層198に設け、内蓋層190によって保持するような構成としても、空気流路上下接続部を設けることにより、外部からの空気の流入あるいは外部への空気の排出を伴わずに検査カートリッジ内の密閉された空間で分析処理を行うことが可能となる。
また、血清定量容器312もその内周側のカートリッジ側壁付近に設けられた空気流路上下接続部を通し空気流路85に接続されているため、血清が血清定量容器から排出された分に相当する空気が血清定量容器に流入し、全体的には血清反応容器内の空気と血清が入れ替わる。この際にも、外部からの空気の流入あるいは外部への空気の排出を伴わずに検査カートリッジ内の密閉された空間で液の移送が行われる。
保持ディスク12の回転を継続して、遠心力を十分付与し続けると、溶解液は全て流れ、血清は血清定量容器上部の内蓋層の穿孔された位置に液位が低下するまで、流れ続ける。
血清反応容器420では、混合した血清と溶解液が反応する(ステップ1024)。血清反応容器に移送された液は内蓋層によって血清反応容器に保持される。
【0044】
(7)結合モード(ステップ1026)に移行する。
穿孔機13を用いて血清定量容器420上の内蓋層190を穿孔する。針構造体425の上部を押すことで達成される。保持ディスク12を回転させる(ステップ928)。血清と溶解液が混合反応した液である溶解反応液は血清反応容器420上の内蓋の穿孔された場所を経由して、基板層上の流路を流れ液流路上下接続部を経由して、容器層198に形成されている結合部401に流入する。(ステップ1030)。
結合部401を溶解液と血清の混合液である溶解反応液が通過する(ステップ930、1032)と、核酸が結合部401に設けられた結合フィルタに吸着する。結合部401を通過して生成された廃液は、結合部401に接続されたバッファー容器800を経て溶離液回収容器390に流入し、最終的に廃液貯蔵容器900に移送される。この際、バッファー容器、溶離液回収容器は全て空気流路上下接続部を介して空気空気流路85で接続されているため、溶解液、血清の流動と同様に検査カートリッジ内の密閉された空間で液の移送が行われる。
【0045】
(8)洗浄モード(ステップ1036)に移行する。
第1洗浄液、第2洗浄液による洗浄動作は、結合前容器の代わりに血清反応容器420を経由して洗浄を行う点を除いて第1の実施例と同様であるが、血清反応容器420に流入した血清と溶解液を内蓋層によって保持するため、結合前容器が不要となる。このため、洗浄液は血清反応容器420を経由して洗浄を行う。
次に第3洗浄液を流動させる。第3洗浄液による洗浄動作は第1の実施例と同様であり、結合部401と溶離液回収容器390を洗浄したら、核酸の溶離工程に移行するために、保持ディスク12を停止する(ステップ940)。
【0046】
(9)溶離モードに移行する(ステップ1044)。溶離液の動作は溶離液が結合前容器ではなく、血清反応容器に流入する点を除いて第1の実施例と同様である。
【0047】
(10)増幅および検出モード(ステップ1052)に移行する。
第1試薬溶解液と第2試薬溶解液は前述の血清分離のステップにおいて、既にその外周側に位置する第1乾燥増幅試薬容器510、第2乾燥増幅試薬容器500にそれぞれ移送され、乾燥試薬とその溶解液が混合された状態となっている。したがって、血清分離のステップから溶離モードのステップの至るまでの時間において、乾燥試薬と増幅時間が混合しており、これにより乾燥試薬が溶解液に溶解し、最終的に必要な第1乾燥増幅試薬が溶解した第1増幅液、第2乾燥増幅試薬が溶解した第2増幅液がそれぞれ形成されている。なお本実施例においては、血清分離のステップにおいて、乾燥試薬溶解液を流動させて乾燥増幅試薬と混合させているが、乾燥試薬が溶解するための時間を確保すれば良い。
【0048】
第1乾燥増幅試薬容器510の上部に位置する内蓋層190を穿孔する。モータ11を回転させると、第1増幅液は、バッファー容器800を通過して、溶離液回収容器390に流入する。モータ11を停止する。
第1増幅液を移送させた後、第1の実施例と同様に溶離液回収容器390を温度制御する。次に、溶解液と同様の手順で、第2乾燥増幅試薬容器500の上部に位置する内蓋層190を穿孔する。モータ11を回転させる。遠心力により、第2増幅液はバッファー容器800を通過して、溶離液回収容器390に流入する。
第2増幅液を溶離液回収容器390に移送したら、第1の実施例と同様に温度制御と検出を行う。
【0049】
試薬が予め分注された複数の試薬容器が一体で構成された容器層、複数の試薬容器を密閉するための内蓋層、試薬通過流路から流れた試薬を移動させるための流路を備える基板層、基板層の上面を覆う上面カバー層の少なくとも4つの積層された層から検査カートリッジを構成することによって、複数の試薬容器を単一の蓋で密閉することができ、第1の実施例に比較してカートリッジの製作がさらに容易になる。
また、試薬容器以外の容器を容器層に配置することで、基板層は容器を含まない構成とすることができるので、基板層の最大厚さを薄くすることができ、基板層の製作が容易となる。特に針構造体を基板層内に一体で金型により成形する場合、最大厚さが薄いことで成形時に型から成形品を引き離す事が容易になり、強度的に弱い構造である針構造体の形状を変形させることなく成形を行うことができる。
【0050】
さらに、血清定量容器、血清定量容器、第1乾燥増幅試薬容器、第2乾燥増幅試薬容器で示したように、予め分注された試薬を試薬容器から移送させる先の容器において、液が移動することを一時的に妨げるための内蓋を備え、内蓋に穿孔することで、液を再度流動させることで、液を一旦保持したまま、遠心分離、血清反応等の必要な分析処理を行い、必要な段階で再度液を流動化させることが可能となる。
この際、第1の実施例の血清と溶解反応液の流動のように毛細管現象を利用しないため、液の表面張力や接触角によらず安定的に液を流動化させることができる。
【0051】
さらに、乾燥試薬を溶解する場合においては、分析処理の初期段階で予め、溶解液を乾燥試薬と混合させ、その状態で本来の分析処理を継続することが可能となる。このため、乾燥試薬を溶解させるのに時間を要する場合、あるいは溶解させた後安定するまでに所定の時間を必要とする場合において分析時間を短縮させることが出来る。
さらに、乾燥試薬の場合に限らず、液状試薬同士の混合においても、本来の処理を行いながら、時間をかけて混合を実施することが可能となる。したがって、乾燥試薬の溶解処理がカートリッジ上で実現でき、試薬が乾燥・固形状でのみ長期間の保管が可能な場合にも、検査カートリッジ内に試薬を充填しておける。
【0052】
また、検査カートリッジを4つの積層された層から構成しても、液流路上下接続部、空気流路上下接続部によって、試薬容器に空気を流入させる空気流路と試薬が移送される先の容器の空気流路を結合するので、外部からの空気の流入あるいは外部への空気の排出を伴わずに検査カートリッジ内の密閉された空間で液の移送が行うことが可能となり、検査カートリッジ外部への試薬・サンプルの気化成分の流出や外部から空気の流入によるコンタミネーションを防ぐことができ、安全で安定な分析処理を行うことが出来る。
【0053】
さらに、穿孔手段としては、例えば、蓋を光吸収性の高い材質とし、外部から光を照射して、熱的に蓋を穿孔することでも良い。この場合においても、液を一旦保持したまま、遠心分離、血清反応等の必要な分析処理を行い、必要な段階で再度液を流動化させることが可能となる。
さらに、乾燥試薬を溶解する場合においては、分析処理の初期段階で予め、溶解液を乾燥試薬と混合させ、その状態で本来の分析処理を継続することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明による一実施の形態に係る遺伝子診断装置を示す斜視図。
【図2】一実施の形態に係る検査カートリッジの斜視図(蓋を除いた状態)。
【図3】一実施の形態に係る検査カートリッジの斜視図。
【図4】一実施の形態に係る検査カートリッジの組み立てを示す分解斜視図。
【図5】一実施の形態に係る試薬容器を示す斜視図。
【図6】一実施の形態に係る遺伝子診断装置の動作手順を示すフロー図。
【図7】一実施の形態に係る遺伝子診断装置の動作手順を示すフロー図。
【図8】一実施の形態に係る検査カートリッジの平面図。
【図9】一実施の形態に係る検査カートリッジの部分平面図。
【図10】一実施の形態に係る試薬容器の穿孔を説明する部分断面図(穿孔前)。
【図11】一実施の形態に係る試薬容器の穿孔を説明する部分断面図(穿孔時)。
【図12】一実施の形態に係る試薬容器の穿孔を説明する部分断面図(穿孔後)。
【図13】他の実施の形態に係わる検査カートリッジを示す分解斜視図。
【図14】他の実施の形態に係わる検査カートリッジを示す斜視図。
【図15】図14に示した検査カートリッジの平面図。
【図16】他の実施の形態に係わる検査カートリッジの分解斜視図。
【図17】図14に示した検査カートリッジの部分平面図。
【図18】図14に示した検査カートリッジの部分断面図。
【図19】他の実施の形態に係る試薬容器の穿孔を説明する部分断面図(穿孔前)。
【図20】他の実施の形態に係る試薬容器の穿孔を説明する部分断面図(穿孔時)。
【符号の説明】
【0055】
1…遺伝子検査装置、2…検査カートリッジ、11…モータ、12…保持ディスク、13…穿孔機、14…加温装置、15…検出装置、蓋90…蓋、199…上面カバー、230…試薬容器、流路231…流路、420…外周側の試薬容器。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能とされた保持ディスクと、前記保持ディスクに保持された取り外しが可能な検査カートリッジとを有し、前記保持ディスク回転手段の回転によって発生する遠心力を利用して、前記検査カートリッジに形成された内周側の試薬容器から外周側の試薬容器へ試薬を移動させることで分析処理を行う生化学分析装置において、
前記検査カートリッジは、凹部によって形成された流路と流路に接続された前記試薬容器を有する基板と、試薬を前記試薬容器の内部に密閉する蓋と、該蓋及び前記基板の凹部を覆う上面カバーと、を備え、
前記蓋に穿孔することで、前記試薬容器の内部と前記流路とを連通させ、遠心力を利用して前記試薬を内周側から外周側の前記試薬容器へ移動させることを特徴とする生化学分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載のものにおいて、前記上面カバーと前記蓋の間に前記基板と一体で形成された針構造体を備え、該針構造体が押圧されることで前記穿孔が行われることを特徴とする生化学分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載のものにおいて、前記上面カバーと前記蓋の間に前記基板あるいは前記試薬容器に支持され、前記蓋に対向して前記試薬容器の内周側及び外周側に設けられた針を有する針構造体を備え、前記針と針との間で前記試薬容器の中央部となる位置が押圧されることで前記穿孔が行われることを特徴とする生化学分析装置。
【請求項4】
請求項1に記載のものにおいて、前記上面カバーと前記蓋の間に前記基板あるいは前記試薬容器に一端が支持され、前記蓋に対向して前記試薬容器の内周側及び外周側に設けられた針と、前記試薬容器の中央部に設けられた突起と、有する針構造体を備え、前記突起が押圧されることで前記穿孔が行われることを特徴とする生化学分析装置。
【請求項5】
請求項1に記載のものにおいて、前記試薬容器の内周側に接続され空気が流入する空気流路と、前記試薬容器の外周側に接続された出口流路と、を備え、前記試薬容器の内周側及び外周側の前記蓋に穿孔穴が穿孔され、前記空気流路から内周側の前記穿孔穴を介して空気が前記試薬容器に流入し、外周側の前記穿孔穴から前記試薬容器内の試薬が排出されることを特徴とする生化学分析装置。
【請求項6】
請求項1に記載のものにおいて、複数の前記試薬容器が設けられ、それぞれの前記試薬容器の内周側に接続され空気が流入する空気流路を備えことを特徴とする生化学分析装置。
【請求項7】
請求項1に記載のものにおいて、外周側の前記試薬容器に内蓋を設け、該内蓋に穿孔することで外周側の前記試薬容器に移動した前記試薬を再度流動させることを特徴とする生化学分析装置。
【請求項8】
請求項1に記載のものにおいて、外周側の前記試薬容器に予め第2の試薬を充填し、内周側の試薬と混合することを特徴とする生化学分析装置。
【請求項9】
回転可能とされた保持ディスクと、前記保持ディスクに保持された取り外しが可能な検査カートリッジとを有し、前記保持ディスクの回転によって発生する遠心力を利用して、前記検査カートリッジに形成された内周側の試薬容器から外周側の試薬容器へ試薬を移動させることで分析処理を行う生化学分析装置において、
前記検査カートリッジは、複数の前記試薬容器が一体で構成された容器層と、前記複数の試薬容器を密閉する蓋層と、試薬を移動させるための流路を備える基板層と、該基板層の上面を覆う上面カバー層と、を備え、
前記蓋層に穿孔することで、前記試薬容器の内部と前記流路とを連通させ、遠心力を利用して前記試薬を内周側から外周側の前記試薬容器へ移動させることを特徴とする生化学分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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