説明

生化学測定装置

【課題】
装置の小型化が可能で安価な、多チャンネル測定のセンサチップに適した生化学測定装置を提供することにある。
【解決手段】
この発明は、nチャネルに対応する投光系のn本の光ファイバの途中にn本のうちの1本の光ファイバの投光光を順次選択的に通過させる投光系ファイバ切換機構を設け、1つの分光器でn本の受光系光ファイバからの受光光を共通に受けるようにしたものである。それにより分光器が1個でn個の光学薄膜センサ部の反射スペクトルの測定データを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生化学測定装置に関し、抗体反応などの生化学物質の結合を多チャンネルで測定する多チャンネル測定のセンサチップを使用した測定に適し、安価で装置の小型化が可能な生化学測定装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から光学薄膜の光干渉色を利用した化学センサは知られている。このセンサは、光学薄膜の厚さを、可視光の波長の1/4またはその奇数倍として光を照射したときに薄膜に垂直方向の反射強度が特定の波長で実質的にゼロとなるピークを持つ反射スペクトルを生じ、それに応じてこのセンサは所定の干渉色を反射光として発生させる。
例えば、このセンサの薄膜の上に生化学物質(プローブ)としてリガンド(官能基)の単分子層を設けると、膜が厚くなった分だけ、このセンサは、反射スペクトルにおけるピーク波長の位置がずれる。さらに、リガンド単分子層の上にサンプル(検体タンパク質など)が付着すると、さらに膜が厚くなった分、反射光のピーク波長の位置がずれて干渉色が変化し、反射スペクトルも変わるので、干渉色あるいは反射スペクトルにより、サンプル(検体タンパク質など)の光学薄膜への付着をこのセンサにより測定することができる。
【0003】
抗体反応などの生化学物質の結合の測定方法として、シリコンに光学薄膜を設け、その上に生化学物質(プローブ)を設けたセンサチップが前記とは別の化学センサとして知られている。さらに、光学薄膜を金として表面に生化学物質(プローブ)として、例えばカルボキシルメチルデキストランなどのリガンドを付着させてセンサチップとし、金の表面プラズモンの振動現象を光と共鳴させてセンサチップ表面の屈折率の変化を捉える化学センサもある。
この表面プラズモンのセンサチップは、プリズムを介して照射された照射光に対してリガンドとサンプル(検体タンパク質)との結合あるいは結合・解離に応じた反射光を発生させる。その反射光は、特定の角度にエネルギー消失を生じる。そこで、この特定の角度に見られるエネルギー消失を、反射強度が減衰した谷(ピーク)としてプリズムを介して測定装置によりこのピークを検出する。さらにこのピークをSPR角度(消失角度)としてピーク角(SPR角度)の移動度(ピークシフト)の時間変化を測定する。このことで2分子間の結合あるいは結合と解離の変化が測定される。
なお、2分子間の結合あるいは結合・解離を測定する場合には、その測定中、センサチップに対してチャネル流路を形成するフローセルに一定流速で送液することが必要である。
【0004】
この金の光学薄膜のセンサチップは、金へのリガンドの付着が難しいことと高価になることから、これとは別にシリコン基板の表面に窒化シリコン(SiN)を成膜して光学薄膜を形成した、光干渉色を利用するセンサチップが知られている。窒化シリコンは、リガンドが付着し易いので、これをセンサチップとして利用する測定装置は、このセンサチップに照射光を照射してそにより得られる光学薄膜の光干渉による反射光を波長分析して干渉スペクトル波形を得て、結合したサンプルの結合あるいは結合・解離を干渉スペクトル波形のピークシフトの時間的な変化として測定することができる。
なお、ガラス基板に光学薄膜として金属薄膜を形成し、光干渉色を利用するセンサチップは公知である(特許文献1,2)。また、センサチップにチャネル流路を形成して測定中チャネル流路に送液するマイクロ流体デバイスも公知である(特許文献3)。
【特許文献1】特開2004−132799号公報
【特許文献2】特開2005−321196号公報
【特許文献3】特開2005−181095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光学薄膜の光干渉による反射光のピークシフトの時間的な変化を測定するためには、センサチップから得られる反射光のスペクトルを高い精度で測定することが必要になる。そのため、特許文献1,2に記載されているように、光学薄膜の領域を多数形成したセンサチップに対して多チャネル受光機を設けて各チャネルの測定結果の得て、それらの平均値を算出し、さらに前記ピーク波長を得るために反射スペクトルの減衰曲線を最小自乗法等で近似する処理がなされる。また、センサチップの多チャネル化は、チャネル別に生化学物質の結合をそれぞれに測定することも可能にする。
しかし、特許文献1,2に示されるような4チャネル測定のセンサチップに対しては、4個の分光器が必要になる。その理由は、それぞれの光学薄膜からの反射光は独立のものであって、これらの反射スペクトルを分析するためにこれらを光の段階で混合することができないからである。
その結果、多チャネル測定の生化学測定装置は大型化し、かつ、分光器は高価なものであるので、装置全体の価格を押し上げている問題がある。しかも、透光性のセンサチップは、多チャンネル同時測定を行うと、チャンネル間で相互に光りが漏れて測定精度が落ちる問題がある。
【0006】
また、ピークシフトを測定するためのセンサチップは、送液状態での測定となる関係から特許文献1,2に示されるように、バッファ液の入力ポートと出力ポートとが必要になる。そのため、センサチップにおいては、光学薄膜センサ部とは別の場所に入力ポートと出力ポートとを設けておかなければ光学薄膜センサ部への照射と光学薄膜センサ部からの反射光の受光ができない問題がある。しかし、特許文献1,2のようにセンサチップに特別に入力ポートと出力ポートとを設けると、センサチップ自体が大きくならざるを得ず、これがセンサチップの取扱い上問題となる。
この発明の目的は、このような従来技術の問題点を解決するものであって、装置の小型化が可能で安価な、多チャンネル測定のセンサチップに適した生化学測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するためのこの発明の生化学測定装置の構成は、n個(nは2か、それ以上の整数)の光学薄膜センサ部を有するセンサチップと、n個の光学薄膜センサ部にそれぞれ光を照射するn本の投光系光ファイバと、このn本の投光系光ファイバの途中に設けられn本のうちの1本の光ファイバからの投光光を選択的に通過させ残りの投光光を遮断する投光系ファイバ切換機構と、n個の光学薄膜センサ部からの各反射光をそれぞれ受光するn本の受光系光ファイバと、n本の受光系光ファイバから各反射光を入光側に共通に受ける1つの分光器と、投光系ファイバ切換機構を制御して投光系光ファイバの任意の1本の投光系光ファイバからの照射光を選択をする制御部とを備え、選択された投光系光ファイバが照射する光学薄膜センサ部からの反射光を分光器で分光するものである。
【発明の効果】
【0008】
このように、この発明にあっては、nチャネルに対応するn個の光学薄膜センサ部に対して設けた投光系のn本の光ファイバの途中にn本のうちの1本の光ファイバの投光を順次選択的に通過させる投光系ファイバ切換機構を設けて、1つの分光器でn本の受光系光ファイバからの光を受けるようにしているので、分光器は、1個であってもn個の光学薄膜センサ部の反射スペクトルの測定データを投光系ファイバ切換えに応じて得ることができる。なお、n本の投光系光ファイバは、それぞれ複数本束ねられたバンドルであってもよい。
ここで、分光器を回折格子型とした場合には、反射光を導光するn本の受光系の各光ファイバの径を回折格子型分光器の入光側スリットの長さの1/nとしてスリット長さ方向に対応させてスリットに沿ってn本配列することが可能になる。そこで、投光系ファイバ切換機構の時分割切換えに応じて1本の投光系の光ファイバを順次選択し、これに応じて前記nチャネルの各チャネル対応に回折格子型分光器の出力を時分割で順次得るようにすれば、分光器は1個であっても時分割でnチャネル分の測定データを順次得ることができる。
また、入力光が1つの分光器を使用する場合には、受光系ファイバ切換機構を設けてn本の受光系光ファイバの1本を選択して分光器に入力すればよい。
【0009】
したがって、センサチップとしてはn本のマイクロチャネルを形成した透光性のセンサチップを使用することができる。そのセンサチップとして、特に、半導体プロセスにおいてシリコン基板の表面に窒化シリコンを成膜して光学薄膜形成した基板にn本のマイクロチャネルを形成したシリコーンゴム、例えば、PDMS(ポリジメチルシロキサン)からなる対面基板が接着されて形成されたnチャネルセンサチップを使用することができる。さらにこのセンサチップには、各マイクロチャネルの両端にポッドを設けてこのポッドを送液の入力ポートと出力ポートに結合するようにすれば、センサチップの厚さを小さくでき、センサチップの大きさを抑え、その取扱いが容易になる。なお、前記の光学薄膜センサ部は、リガンド等の生化学物質をプローブとして前記の光学薄膜上に形成することで成立する。
PDMS製により透光性センサチップを用いても投光系ファイバ切換機構の切換えにより投光光が1本になるので、チャンネル間で光りが漏れが発生しない。それにより測定精度が落ちる問題は生じない。
その結果、装置の小型化が可能で安価な、多チャンネル測定のセンサチップに適した生化学測定装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、この発明を適用した一実施例の生化学測定装置のブロック図、図2(a)は、2本のマイクロチャネルを形成したセンサチップの平面説明図、図2(b)はそのA−A断面説明図、図3は、測定ステージの説明図の説明図、図4は、2チャネルの投光系ファイバ切換機構の正面図、図5は、光ファイバと回折格子型分光器の入光側スリットにおける受光系光ファイバの配置の説明図、図6は、投光系と受光系の光ファイババンドルの断面説明図、図7は、測定された干渉スペクトルと反射光の谷の移動度(ピークシフトグラフ)の説明図、図8は、8チャネルの投光系ファイバ切換機構の説明図、図9(a)は、この発明を適用した他の実施例における受光系ファイバ切換機構の平面図、図9(b)は、受光系ファイバ切換機構の受光系ファイバ配置図、図9(c)は、受光系ファイバ切換機構の分光器側ファイバ配置図、そして図10は、投光系ファイバ切換機構と受光系ファイバ切換機構の切換タイミングの説明図である。
前記した各図においては、同等の構成要素は同一の符号で示し、その説明を割愛する。
図1において、10は、生化学測定装置であって、生化学測定装置10は、測定ステージ1、送液システム2、温度調整システム3、投光系4、受光系5、受光制御回路6、データ処理/制御装置7、そしてUSBハブ8等からなり、センサチップ9における生化学物質の結合あるいは結合・解離を測定する。
測定ステージ1は、温度調整システム3の恒温ベース11上に載置されるセンサチップ載置テーブル16と、これの上に設けられたチップカバー17、そしてこれの上部に設けられた移動台12とを有している。
【0011】
移動台12は、2本の投光系光ファイババンドルと2本の受光系光ファイバを支持し、恒温ベース11は、センサチップ9を所定の温度に保持する。
移動台12は、上下に昇降移動するものであって、測定ステージ1の背面において装置ベース13に起立したブラケット14に昇降機構(図示せず)を介して取付けられている。15は、移動台12の降下を停止させる突当ストッパバーであり、装置ベース13に根本が植設されている。移動台12には、その停止位置を微調整する調整摘み12aが設けられていて、これにより突当ストッパバー15に対する移動台12の停止位置が微調整される。その結果としてセンサチップ9(その光学薄膜センサ部)に対する投光・受光の光ファイバの先端部(バンドル管40a,40b)の位置をセンサチップに対して微調整することができる。
【0012】
センサチップ9は、2本のチャネル流路を有するマイクロチップである。これは、図2(a)の平面説明図と図2(b)のA−A断面説明図に示されるように、半導体プロセスにおいてシリコン基板9aの表面に窒化シリコン(SiN)を成膜して光学薄膜9bを形成したベース91を有していて、このベース91に少なくとも2本のマイクロチャネル92、93を形成したPDMSからなる対面基板94が接着されている。シリコン基板9aの厚さは、0.7〜0.8mm程度であり、光学薄膜9bの厚さは数百nm程度である。
マイクロチャネル92、93の両端にはそれぞれポッド94〜97が設けられ、ポッド94〜97の上部は開口している。その大きさは、15mm×20mm〜20mm×30mm程度の矩形である。
このセンサチップ9は、図3に示すように、測定ステージ1に載置される。測定ステージ1のセンサチップ載置テーブル16には、センサチップ9の外形より少し大きな凹部16aが設けられ、ここにセンサチップ9が位置決め挿着される。位置決め部材は図示していない。
【0013】
チップカバー17は、移動台12の下側においてセンサチップ9の上部に所定距離離れて配置され、図3に示すように、位置決めされたセンサチップ9に対してその上からセンサチップ9に適合するように降下してセンサチップ9に被せられる。
チップカバー17は、点線で示すように、それぞれクランク型の連通路を持つ入力ポート17aと出力ポート17cとがマイクロチャネル92の上部の位置に対応するように両側端部に形成されている。入力ポート17bと出力ポート17dとはマイクロチャネル93の上部の位置に対応するように同様に両側端部に形成されているが、図3の側面図では、入力ポート17a,17bとは側面からみた位置が重なっていてかつ同様な形状であるので図2(a)におけるマイクロチャネル92側の入力ポート17aのみを点線で示し、入力ポート17bは省略してある。
入力ポート17a,17bの開口部は、センサチップ載置テーブル16に位置決めされたセンサチップ9のポッド94,96の位置に対応して位置付けられ、出力ポート17c,17dの開口部も同様にポッド95,97の位置に対応するように位置付けられている。
なお、チップカバー17は、PDMS製であってもSUS製であってもよく、測定に影響を与えないようなその他の部材が用いられてもよい。
【0014】
入力ポート17a,17bと出力ポート17c,17dとにはラッパ状のコネクタ挿入部18がチップカバー17の両側端部にそれぞれ設けられている。それぞれの入出力ポートは、このコネクタ挿入部18を介してインジェクタ21,22と導管で接続される。
これにより、ポッド94,96は、図1に示すインジェクタ21,22に接続され、それぞれに所定の量の薬液の供給を入力ポート17a,17bからそれぞれ受けてその薬液がポッド94,96に充填される。供給された薬液は、さらにマイクロチャネル92、93に流れ、これらを経てそれぞれポッド95,97に送られる。さらにこれらポッドを経て出力ポート17c,17dから排出されて導管を通して廃液ホルダ28に送られる。
【0015】
図2(b)に点線で示すように、チップカバー17には、ポッド94〜97の位置に対応してシールリング突起19がフランジとして下側に突き出して設けられている。これによりインジェクタ21,22から送り込まれる薬液(送液)、排出される薬液(送液)が漏れることはない。
なお、チップカバー17は、一定の圧力でセンサチップ9の表面に押しつけられる構成を採るが、その押圧機構は図示していない。
図2(a)に示すように、チップカバー17には孔17e,17fが設けられている。この孔17e,17fは、図2(a)に一点鎖線で示すように、マイクロチャネル92、93の上部にそれぞれ位置する矩形の孔である。この孔17e,17fに2本のバンドル管40a,40b(図3参照)がそれぞに挿入される。2本のバンドル管40a,40bは、図1では、2本であることの説明の都合上、位置をずらせて並列に2本示してあるが、実際には前後に重なっているので、図3では、バンドル管40bをバンドル管40aに重ねて、バンドル管40a側だけを示してある。
【0016】
投光系光ファイバと受光系光ファイバは、センサチップ9に対峙する先端部では、図6(c)に示すような2mmφ程度の1本のバンドル管40a,40bとされ、このバンドル管40a,40bが図1に示すように移動台12の孔に貫通して固定的に支持される。これによりバンドル管40a,40bの先端部がそれぞれ1本づつ孔17e,17fに配置される。各先端部の位置は、それぞれマイクロチャネル92、93の上部に位置している。
図2(b)に示すように、ポッド94〜97と各マイクロチャネル92、93には、窒化シリコン(SiN)の光学薄膜9bの表面に光学薄膜センサ部100がそれぞれ形成されている。ここでの光学薄膜センサ部100の形成は、バッファ液ホルダ25にリガンドを含むバッファー液を蓄積しておき、センサチップ9の各入力ポート17a,17bからこのバッファー液をポッド94,96に送液してこれに充填し、各マイクロチャネル92、93にそれぞれ流すことで行われる。
光学薄膜9bは、SiN、SiN+アミノ基、SiN+エポキシ基、あるいはSiN+カルボキシル基などから選択されたもので構成され、光学薄膜センサ部100は、そのような光学薄膜9bの表面に付着したリガンドからなり、そのような光学薄膜センサ部100を形成した後にそれぞれのセンサチップとしてセンサチップ9が提供される。
以下では、ポッド94〜97と各マイクロチャネル92、93にはそれぞれに光学薄膜センサ部100がすでに形成されているものとして説明する。
【0017】
図1に戻り、送液システム2は、データ処理/制御装置7により制御され、インジェクタ21,22とポンプ23,24、バッファ液ホルダ25、ポンプ制御ユニット26,27、そして廃液ホルダ28とからなる。
ポンプ制御ユニット26,27は、それぞれポンプ23,24を駆動して所定量の薬液をバッファ液ホルダ25から吸い上げてそれぞれに接続されている導管を経てインジェクタ21,22へと薬液を供給する。
インジェクタ21,22は、入力ポート17a,17bに接続された導管を経てポッド94、95に調整された所定量の薬液を供給する。
温度調整システム3は、恒温ベース11と温度制御ユニット31からなり、データ処理/制御装置7の制御下でセンサチップ9が目標の温度になるように恒温ベース11の温度を設定し、制御する。
【0018】
投光系4は、ハロゲンランプの光源41と2本の光ファイババンドル42,43とからなり、光源41の光をセンサチップ9のマイクロチャネル92,93に照射する。
光ファイババンドル42,43は、図6(b)に示すように、6本の光ファイバ44からなる投光系光ファイバである。光源41の光出力の位置では、図6(a)に示すように、光ファイババンドル42,43の各の6本の光ファイバ44は2段に整列されて上下に配置されている。各光ファイバの径は0.5mmφである。
これら光ファイババンドル42,43の経路は、途中で遮断され、それぞれ2つのブロック42a,42bと43a,43bとに分離されている。
2つのブロック42a,42bと43a,43bの間には、それれぞ2チャネルの投光系ファイバ切換機構45が設けられている。これにより、センサチップ9のマイクロチャネル92,93に投光する光の一方を遮断し他方を透過する切換えを行う。その切換えは、データ処理/制御装置7からの駆動信号をUSBインタフェース73,USBハブ8を介してソレノイド駆動回路46が投光切換信号S1(図10(a)参照)を受けてシャッタ機構47を駆動することで行われる。
【0019】
図4は、この2チャネルの投光系ファイバ切換機構の正面図である。シャッタ機構47は、ベース板47aの両端に起立したブラケット47b,47cを有し、これらブラケット47ba,47cに固定されたソレノイド48a,48bが両端にそれぞれ設けられている。各ソレノイド48a,48bには、その進退するロッドにシャッタ板49が橋渡されて取付られている。なお、49aは、光ファイババンドル42,43の挿着固定板であって、手前側にも同様なものが一枚設けられているが、図では見えていない。挿着固定板49aは、ベース板47aに起立して固定され、図1に示すように、それぞれ光ファイバ保持用のコネクタが挿着されている。
シャッタ板49の前後にあるそれぞれある2枚の挿着固定板は、分離された2つのブロック42a,42bと2つのブロック43a,43bとの各ブロックの光ファイバの中心が相互に一致するようにそれぞれの光ファイバを固定するものである。
ところで、図4では、シャッタ機構47は、ベース板47aが下側に位置しているが、反転させてベース板47aを上側としてこれを使用してもよい。
【0020】
シャッタ板49には、光透過用の孔50が1つ開けられている。ソレノイド駆動回路46によるソレノイド48a,48bのいずれか一方の駆動で、図1に示すように、孔50が光ファイババンドル42,43のいずれかの位置に対応して位置付けられ、いずれかの光ファイバに投光光を通過させるようになっている。なお、孔50の径は、光ファイババンドル42,43の径2mmφよりも少し大きく、3mmφ程度のものである。
受光系5は、光ファイバ51,52と分光器53とからなる。光ファイバ51,52は、図6(c)に示すように、バンドル管40a,40bの6本の光ファイバ44の中心部に受光部となる先端側が配置された光ファイバであって、そこから各バンドル管40a,40bを経てそれぞれに引き出されたものとして右側に1本の光ファイバ51(52)として示すものである。
【0021】
図1に示すように、分光器53は、透過回折格子型分光器であって、入力コネクタ53aを有していて、図5に示すように、入力コネクタ53aを介して入射光を受けるスリット54とコリメータミラー55、透過型ホログラフィックグレーティング56、フォーカシングミラー57、そして一次元CCDイメージセンサ(リニアセンサ)58等からなる。
スリット54には入力コネクタ53aを介して2本の光ファイバ51,52がスリット54の長手方向に沿って設けられている。入射光を受けるスリット54の幅は、光ファイバの径の0.5mmφより少し大きく、その長さは、数mmで、複数本の光ファイバをスリット54の長手方向に沿って配列することができる。そこで、透過型ホログラフィックグレーティング56は、水平面からみれば光ファイバ51,52の照射光が同じ位置となり、垂直方向では上下にずれて各ファイバからの光が照射されるようになっている。
スリット54から入射された光は、コリメータミラー55、透過型ホログラフィックグレーティング56、フォーカシングミラー57を経て波長分析されてそのスペクトル光がフォーカシングミラー57から各波長に応じた反射角でCCDセンサ58に入射される。CCDセンサ58は、ここでは画素数が1024であって、画素配列方向と垂直な方向の画素幅は、上下に配置された2本の光ファイバ51,52の入射光を分析したスペクトル光を受けることができる大きさになっている。
【0022】
図1に戻り、受光制御回路6は、コントローラ61とA/D変換回路(A/D)62、メモリ63、USBインタフェース64とからなる。
コントローラ61は、データ処理/制御装置7からの制御信号に応じて分光器53のCCDセンサ58から得られる1024画素分を読み出してその出力信号を、例えば16ビットのA/D62でデジタル値に変換して検出画素位置対応にメモリ63に記憶する処理をする。
なお、各検出画素位置は、分析されたスペクトル波形の波長に対応していて、コントローラ61は、分光開始信号AS(第10図(c)参照)をMPU71から受けて、A/D変換された1回分のスペクトル分析データをA/D62を介してCCDセンサ58から読出してメモリ63へ記憶する。その記憶が終了すると、データ処理/制御装置7に割込信号In(第10図(d)参照)を発生する。もちろん、この場合、1回分のスペクトル分析データの読出が複数回、例えば100回程度行われ、100個分のスペクトル分析データがメモリ63に記憶されてもよい。なお、コントローラ61によるCCDセンサ58からのスペクトル分析データ読出は、投光切換信号S1(第10図(a)参照)の切換タイミング(その立上がりあるいは立下がり)から所定時間後、例えば、1.1sec後に行われる。
【0023】
USBインタフェース64は、メモリ63に記憶された受光データ(1回分あるいは複数回分のスペクトル分析データ)をデータ処理/制御装置7の制御に応じてデータ処理/制御装置7に転送する処理をする。
データ処理/制御装置7は、USB端子をもつ通常のパーソナルコンピュータである。これは、MPU71とメモリ72、USBインタフェース73、ディスプレイ74、キーボード75、そしてこれらを接続するバス76等とを有している。コントローラ61からの割込信号Inを受けてメモリ63に記憶された測定データ(スペクトル分析データ)をUSBインタフェース64,USBインタフェース73を介して得て、メモリ72の所定の領域に記憶する。なお、77は、HDD等の外部記憶装置である。
【0024】
メモリ72には、時分割切換プログラム72aと、測定データ採取プログラム72b、干渉スペクトル波形算出/表示プログラム72c、そしてピークシフト算出/表示プログラム72d等が格納され、パラメータ領域72e、作業領域72fとが設けられている。 時分割切換プログラム72aは、キーボード75における測定開始の機能キー入力に応じてあるいは他のプログラムの実行中にコールされてMPU71により実行される。これをMPU71が実行して、MPU71は、2チャネルの投光系ファイバ切換機構45を駆動して、例えば、1.5秒間隔(第10図(a)の投光切換信号S1参照)で光ファイババンドル41と光ファイババンドル42からの投光光を交互に切換えてセンサチップ9のマイクロチャネル92,94に交互に照射する制御をし、光ファイババンドル41と光ファイババンドル42の照射の各照射期間のそれぞれ対応して分光器53から得られるスペクトル分析データ、例えば、100個分の分析データを受光制御回路6のメモリ63に記憶させる。
【0025】
測定データ採取プログラム72bは、キーボード75における所定の機能キー入力に応じてあるいは他のプログラムの実行中にコールされてMPU71により実行される。これをMPU71が実行して、MPU71は、データ処理/制御装置7により送液システム2を駆動する。最初は、バッファ液ホルダ25にサンプルを希釈するバッファ液が蓄積される。この時点でのこのプログラムの実行でそのバッファ液がマイクロチャネル92(第1チャネル)とマイクロチャネル93(第2チャネル)に流される。同時に時分割切換プログラム72aがコールされてタスク処理で実行される。そして、投光系ファイバ切換機構45の投光切換信号S1(第10図(a)参照)の切換タイミング時点から所定時間後にコントローラ61からの発生する割込信号Inに応じて、データ読取信号Rd(第10図(d)参照)をコントローラ61に送出する。それにより、投光切換信号S1による投光系ファイバ切換機構45の切換えごとに交互に受光制御回路6のメモリ63からマイクロチャネル92(第1チャネルに対応),94(第2チャネルに対応)の反射光の各100個のスペクトル分析データ(測定データ)が交互にUSBインタフェース64を介して読出されてメモリ72に記憶される。読出されたそれぞれの光学薄膜センサ部100の反射光のスペクトルデータは、このとき作業領域72fの各チャネル対応の記憶位置に記憶される。そして、MPU71は、干渉スペクトル波形算出/表示プログラムプログラム72cをコールする。
【0026】
干渉スペクトル波形算出/表示プログラムプログラム72cは、前記の測定データ採取プログラム72bの実行終了時のコールの他に、キーボード75におけるスペクトル波形データ表示の機能キー入力に応じてコールされてMPU71により実行される。これをMPU71が実行して、MPU71は、作業領域72fに記憶されたマイクロチャネル92(第1チャネル)とマイクロチャネル93(第2チャネル)の分析波長に応じた各100個の合計200個のスペクトルデータを平均化して波形データを作成して、受光レベル[電圧]を縦軸とし、波長を横軸として図7(a)に示すような干渉スペルトル波形をディスプレイ74上に表示する。
このときの干渉スペルトル波形は、サンプルを希釈するバッファ液が送液されて測定されたものであるので、リガンドに対する干渉スペルトル波形である。その干渉スペルトル波形の山と谷の差Dが小さいときには、光ファイバー先端がチップ表面より離れていたり、あるいはチップ表面に押し込まれていたりするので、調整摘み12aで突当ストッパバー15に対する移動台12の位置を調整して再度干渉スペルトル波形を表示して適正か否かを確認する。
【0027】
ピークシフト算出/表示プログラム72dは、干渉スペルトル波形が適正であるときに測定開始の機能キー入力あるいは所定の機能キー入力に応じてコールされてMPU71により実行される。このときにはバッファ液ホルダ25にはバッファ液にサンプルが充填されている。
このプログラムをMPU71が実行してサンプルの測定を開始する。MPU71は、送液システム2を制御して、インジェクタ21,22からポッド94、95にサンプルを注入して、時分割切換プログラム72aと測定データ採取プログラム72bとをコールしてタスク処理で並行してこれらを実行する。これにより、所定の速度に調整された所定量の薬液をマイクロチャネル92(第1チャネル),94(第2チャネル)に流してマイクロチャネル92(第1チャネル),94(第2チャネル)に形成されたそれぞれの光学薄膜センサ部100からの反射光のスペクトルデータをそれぞれにメモリ72の作業領域72fに各チャネル対応に記憶する。なお、このときには干渉スペクトル波形算出/表示プログラムプログラム72cはコールされない。
【0028】
さらに、MPU71は、時間経過とともに得られるメモリ72の作業領域72fに記憶された各チャネル対応のスペクトルデータ(200個)に基づき、各チャネルのピーク(反射光の谷)の位置の波長λpの波長変化量を算出する。
具体的には、MPU71は、1.5秒間隔で所定の時間の間、作業領域72fに記憶された第1チャネルと第2チャネルの多数のスペクトルデータを3秒間隔の各測定回ごとに平均化して、最小自乗法でフォークト関数の係数を算出して、各スペクトル波形データをフォークト関数でフィティング処理をしてピーク位置の波長λp(図7(a)参照)を検出する。さらに、各スペクトル波形データ波長λpiから波長の差Δλ=λpi-λpoを算出して(ただしλpoは測定開始時点のピーク位置の波長λp)ピーク波長の変化量対時間データを作成し、波長の変化量Δλを縦軸とし、経過時間を横軸として図7(b)に示すようなピークシフト波形をディスプレイ74上に表示する。
なお、以上の各プログラム処理のフローチャートについては、各プログラム処理が単純であり、前記の記述内容で理解されるものと思われるので割愛する。
【0029】
図8は、8チャネルの投光系ファイバ切換機構の説明図であって、8チャネルの投光系ファイバ切換機構は、図4の投光系ファイバ切換機構45のシャッタ機構47のシャッタ板49を回転式のシャッタ円板49aとしたものである。その投光系ファイバ切換機構45aは、実線と点線で示すように、45度間隔に円板の外周8箇所に8本の投光系光ファイババンドル光41a〜41hを、図1の2本の投光系光ファイババンドル光41,42に変えて円形に配置したものである。シャッタ円板49aの外周の1箇所に光透過用の孔50が設けられている。この投光系ファイバ切換機構45aは、ステッピングモータ50aによりシャッタ円板49aを45度単位でステップ送りして8チャネルの投光系光ファイババンドル光41a〜41hの1つの照射光を選択して8チャネルのマイクロチャネルが形成されたセンサチップのマイクロチャネルの1つに選択的に照射するものである。
これにより8チャネルのセンサチップの各マイクロチャネルについて時分割で1つの分光器により波長分析する測定ができる。
なお、この場合には、受光系5は、受光系光ファイバが8本になる。そこで、分光器53は、そのスリット54において8本の受光系光ファイバについてスリット54の長手方向に沿って配列し、画素配列と直交する方向のCCDセンサの1画素の幅を8本の受光系光ファイバからの光を受光できる大きさにすればよい。
【0030】
図9は、この発明を適用した他の実施例における受光系ファイバ切換機構の平面図、受光系ファイバ配置図、および受光系ファイバ切換機構の分光器側ファイバ配置図である。なお、受光系ファイバ切換機構と分光器を除いてこの実施例のその他の構成は、図1に示すものと同様であるのでそれらの説明を割愛する。
図9(a)の平面図に示すように、受光系のファイバ切換機構400は、ベース401上に設けられたX軸移動機構402と光コネクタ403、分光器に入力するための入力側光ファイバ404(以下光ファイバ404)、ベース401上に設けられた移動基準位置405、そしてモータ駆動回路406とからなる。
光コネクタ403は、固定側光ファイバコネクタ部403aと可動側光ファイバコネクタ部403bとからなる。
【0031】
X軸移動機構402は、ボールスクリュウ機構402aとその移動台402bとステッピングモータ402cとからなり、移動台402bには、可動側光ファイバコネクタ部403bが搭載され、移動基準位置405には基準位置検出器としてフォトインターラプタ405aが設けられている。
ボールスクリュウ機構402aは、スクリュウ軸がステッピングモータ402cにより回転駆動され、ステッピングモータ402cには、移動台402bの移動量を検出するためのエンコーダ402dが設けられ、ステッピングモータ402cがモータ駆動回路406により駆動される。
エンコーダ402dの出力信号とフォトインターラプタ405aの検出信号とは、それぞれリード線407a,407b、USBハブ8を介してデータ処理/制御装置7に入力される。モータ駆動回路406は、リード線407c、USBハブ8を介してデータ処理/制御装置7に接続されている。
【0032】
図9(b)の受光系ファイバ配置図に示すように、固定側光ファイバコネクタ部403aは、ベース401上に固定され、光ファイバ51、52(2本の受光系ファイバ)の出光側端部を所定間隔を置いて装着固定する。一方、図9(c)の分光器側ファイバ配置図に示すように、可動側光ファイバコネクタ部403bは、分光器側の光ファイバ404の入光側の端部を固定してX軸方向に移動する。光ファイバ404の出光側の端部は、分光器59に入光ポートに結合されて受光光を分光器59に入光する。
分光器59は、前記した分光器53とは異なり、1本の光ファイバの入光ポートを有し、その入光ポートに入光する入力コネクタ59aが設けられた反射型あるいは透過型の回折格子を有する通常の分光器である。これは、分光器53と同様にスペクトル分析信号をA/D62に出力する。
【0033】
受光系ファイバ切換機構400は、メモリ72に設けられた受光系ファイバ切換切換えプログラム(図示せず)をMPU71が実行することによりMPU71の制御で投光系ファイバ切換機構45のスイッチングに応じて切換えが行われる。それにより、光ファイバ51と光ファイバ52のいずれかが選択的に光ファイバ404と光結合する。
パラメータ領域72eには、移動基準位置405から光ファイバ51と光ファイバ52までのそれぞれの移動台402bの移動距離がステッピングモータ402bの駆動パルス数としてそれぞれに記憶されている。
パラメータ領域72eに記憶される光ファイバ51と光ファイバ52までのそれぞれの移動距離は次のようにして測定される。
【0034】
まず、生化学測定装置10において、ステッピングモータ402bを駆動してフォトインターラプタ405aの検出信号を受けて移動台402bを移動基準位置405に設定する。次に投光系ファイバ切換機構45を駆動してマイクロチャネル92(第1チャネル)を光照射状態にして移動基準位置405からステッピングモータ402bを駆動して光ファイバ51まで移動台405を移動して分光器59の検出の出力が最大になったときの移動基準位置405からの駆動パルス数をパラメータ領域72eに記憶する。次にマイクロチャネル93(第2チャネル)に対して同様にして駆動パルス数をパラメータ領域72eに記憶する。
なお、ここでは、分光器59の検出の出力が最大になったときの位置は、光結合をする各光ファイバの相互の中心が一致したものとしている。
ここでのマイクロチャネル92とマイクロチャネル93の受光光の切換は、マイクロチャネル92からマイクロチャネル93へ、あるいはその逆に直接切換るものではなく、移動台402bを移動基準位置405に一旦戻してから、この移動基準位置405を基準としてマイクロチャネル92あるいはマイクロチャネル93へと移動台402bを移動させることによる。このような切換を行うことにより、光ファイバ404の光ファイバ51あるいは光ファイバ52との光結合についての位置決め累積誤差をなくすことができる。
【0035】
図10は、投光系ファイバ切換機構と受光系ファイバ切換機構の切換タイミングの説明図である。
図10(a)は、投光切換信号S1であり、ソレノイド駆動回路46がこの信号を受けて投光切換信号S1の立上がりと立下がりをそれぞれの切換タイミングとしてそれぞれにシャッタ機構47を駆動する。これにより投光切換信号S1がハイレベル(“H”)のときにはマイクロチャネル92への投光が選択され、投光切換信号S1がロウレベル(“L”)のときにマイクロチャネル93への投光が選択される。なお、投光切換信号S1の周期は、3秒であり、各チャネルへの投光期間は、1.5秒である。
図10(b)は、受光切換信号S2であり、この信号の立上がりと立下がりをそれぞれの切換タイミングとしてステッピングモータ402bを駆動して移動台402bを移動基準位置405に戻し、そこからステッピングモータ402bを所定パルス数駆動して光ファイバ51あるいは光ファイバ52と光ファイバ404とを光結合させる。その周期は、投光切換信号S1と同じである。受光切換信号S2が“H”のときにはマイクロチャネル92からの反射光の受光が選択され、受光切換信号S2が“L”のときにマイクロチャネル93への投光が選択される。
なお、受光切換信号S2の信号の立上がりあるいは立下がりから光結合に光ファイバ404が設定される時間は、0.2秒程度である。この光結合のための移動台402bの移動が完了したタイミングに合わせて図10(c)に示す分光開始信号ASを発生する。
【0036】
図10(d)は、分光完了を示すコントローラ61からの割込信号Inである。この割込信号を点線で示すのは、分光処理時間が通常0.2程度で済むので、この割込信号は必ずしも制御に必要なものではないからである。
図10(e)は、データ読取信号Rdであって、データ読取信号Rdは、コントローラ61からの割込信号Inに応じてあるいは投光切換信号S1の立上がり又は立下がりから所定時間経過後、例えば1.1秒後にデータ処理/制御装置7からコントローラ61に送出される。MPU71は、データ読取信号Rdの立下がりタイミングでメモリ63からスペクトルデータDS(図10(f)参照)を読出す。
【0037】
ところで、この実施例は、図1の実施例に対応させて2本の受光系光ファイバについて切換えを行っているが、図8のような8チャネルの投光系ファイバに対応させて8チャネルの受光系光ファイバについて同様な回転式のシャッタ円板で構成して8チャネル切換えを行うようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上説明してきたが、実施例の投光系光ファイバは、1本のバンドルに複数本のファイバ設けられ、これに対して受光系光ファイバが1本設けられているが、この発明は、 投光系光ファイバは、バンドルではなく1本のものであってもよく、逆に受光系光ファイバが1本のバンドルに複数本設けられていてもよい。
実施例の投光系ファイバ切換機構は、1.5秒間隔で光ファイババンドル41(第1チャネルに対応)と光ファイババンドル42(第2チャネルに対応)の照射光を交互に切換えてセンサチップ9に照射し、それぞれの測定データを1個の分光器から得ている。しかし、この切換間隔は、1.5秒間隔に限定されるものではない。さらに、この場合、この発明は、交互ではなく、例えば、先に光ファイババンドル41(第1チャネル)を選択して複数個の波形データを得て、その後に光ファイババンドル42(第2チャネル)側に切換えて同様に複数個の波形データを得るような1回の切換えであってもよい。
また、実施例では、光学薄膜センサ部は、各マイクロチャネルに連通する各ポッドが両側にそれぞれ設けられているが、1つのチャネルに複数の光学薄膜センサ部が分離して設けられていてもよいことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、この発明を適用した一実施例の生化学測定装置のブロック図である。
【図2】図2(a)は、2本のマイクロチャネルを形成したセンサチップの平面説明図、そして図2(b)はそのA−A断面説明図である。
【図3】図3は、測定ステージの説明図の説明図である。
【図4】図4は、2チャネルの投光系ファイバ切換機構の正面図である。
【図5】図5は、光ファイバと回折格子型分光器の入光側スリットにおける受光系光ファイバの配置の説明図である。
【図6】図6は、投光系と受光系の光ファイババンドルの断面説明図である。
【図7】図7は、測定された干渉スペクトルと反射光の谷の移動度(ピークシフトグラフ)の説明図である。
【図8】図8は、8チャネルの投光系ファイバ切換機構の説明図である。
【図9】図9(a)は、この発明を適用した他の実施例における受光系ファイバ切換機構の平面図、図9(b)は、受光系ファイバ切換機構の受光系ファイバ配置図、そして図9(c)は、受光系ファイバ切換機構の分光器側ファイバ配置図である。
【図10】図10は、投光系ファイバ切換機構と受光系ファイバ切換機構の切換タイミングの説明図である。
【符号の説明】
【0040】
1…測定ステージ、
2…送液システム、3…温度調整システム、
4…投光系、5…受光系、6…受光制御回路、
7…データ処理/制御装置、8…USBバブ、
9…センサチップ、10…生化学測定装置、
11…恒温ベース、12…移動台、12a…調整摘み、
13…装置のベース、14…ブラケット、15…突当ストッパバー、
16…センサチップ載置テーブル、17…チップカバー、
17a,17b…入力ポート、
17c,17d…出力ポート、21,22…イジェクタ、
23,24…ポンプ、25…バッファ液ホルダ、
26,27…ポンプ制御ユニット、28…廃液ホルダ、
40a,40b…バンドル管、41…ハロゲンランプの光源、
42,43…光ファイババンドル、
44…光ファイバ、45…投光系ファイバ切換機構、
46…ソレノイド駆動回路、47…シャッタ機構、
48a,48b…ソレノイド、49…にシャッタ板、
72a…時分割切換プログラム、
72b…測定データ採取プログラム、
72c…干渉スペクトル波形算出/表示プログラム、
72d…ピークシフト算出/表示プログラム、
72e…パラメータ領域、72f…作業領域、
92,93…マイクロチャネル、94〜97…ポッド、
400…受光系のファイバ切換機構、401…ベース、
402…X軸移動機構、403…光コネクタ、404…入力側光ファイバ、
405…移動基準位置、406…モータ駆動回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学薄膜の光干渉を利用して生化学物質の結合を測定する生化学測定装置において、
n個(nは2か、それ以上の整数)の光学薄膜センサ部を有するセンサチップと、
前記n個の光学薄膜センサ部にそれぞれ光を照射するn本の投光系光ファイバと、
このn本の投光系光ファイバの途中に設けられn本のうちの1本の光ファイバからの投光光を選択的に通過させ残りの投光光を遮断する投光系ファイバ切換機構と、
前記n個の光学薄膜センサ部からの各反射光をそれぞれに受光するn本の受光系光ファイバと、
前記n本の受光系光ファイバから各前記反射光を入光側に共通に受ける1つの分光器と、
前記投光系ファイバ切換機構を制御して任意の1本の前記投光系光ファイバからの照射光を選択する制御をする制御部とを備え、
選択された前記投光系光ファイバが照射する前記光学薄膜センサ部からの反射光を前記分光器で分光する生化学測定装置。
【請求項2】
前記センサチップはn個のマイクロチャネルが形成され各チャネル対応に前記光学薄膜センサ部を有するnチャネルのセンサチップであり、1本の前記投光系光ファイバと1本の前記受光系光ファイバとが1個の前記マイクロチャネルに対応して配置され、前記制御部は、前記投光系ファイバ切換機構を時分割で切換制御するものであり、
前記分光器から前記反射光について分光された波長についての信号を前記n個の各チャネル対応に時分割で得る請求項1記載の生化学測定装置。
【請求項3】
n個の各前記マイクロチャネルは、その両端にそれぞれポッドが形成されてこのポッドと各前記マイクロチャネルの全体が光学薄膜センサ部となっていて、両端の前記ポッドは、それぞれ送液のための入力ポートと出力ポートに結合される請求項2記載の生化学測定装置。
【請求項4】
さらに前記センサチップのn個のマイクロチャネルにプローブとなる生化学物質を送液する送液装置を有し、前記センサチップは基板に金属薄膜を形成した光学薄膜を有し、前記n個の光学薄膜センサ部は、前記センサチップに前記ポッドを介して前記生化学物質を送液することによって前記光学薄膜上に形成される請求項3記載の生化学測定装置。
【請求項5】
1本の前記投光系光ファイバは複数本の光ファイバからなるバンドルとして構成され、n個の各前記バンドルの先端部がn個の各前記光学薄膜センサ部の上部にそれぞれ配置され、n本の前記受光系光ファイバはそれぞれ1本の光ファイバで構成され、その受光部がn本の各前記バンドルの前記先端部において前記バンドルの中心部に配置されている請求項4記載の生化学測定装置。
【請求項6】
前記分光器は、透過回折格子とスペクトル分析方向に配列された多数の受光素子とを有する分光器であって、前記n本の受光系光ファイバは、その径が前記分光器の入光口のスリットの幅かこれよりも小さく、前記スリットの長手に方向に沿って配列され、前記受光素子は、前記n本の受光系光ファイバから入光された光のスペクトル分析光を受光するために前記配列された受光素子の方向には直交する方向に所定の幅を有する請求項4記載の生化学測定装置。
【請求項7】
さらに、前記n本の受光系光ファイバのうちの1本の光ファイバからの受光光を選択して1本の光ファイバに前記受光光を入光してこの1本の光ファイバの出光を前記分光器に入力する受光系ファイバ切換機構を有する請求項4記載の生化学測定装置。
【請求項8】
前記受光系ファイバ切換機構は、前記n本の受光系光ファイバの出光側の端部を固定する第1のコネクタ部材と前記分光器に入力するための入力側光ファイバの入光側の端部を固定する第2のコネクタ部材とからなる光コネクタを有し、前記第1のコネクタ部材を固定側とし、前記第2のコネクタ部材を可動にして前記n本の受光系光ファイバの1本と前記入力側光ファイバとを選択的に光結合させる請求項7記載の生化学測定装置。
【請求項9】
前記受光系ファイバ切換機構は、さらに前記第2のコネクタ部材を移動する1軸移動機構を有し、前記1軸移動機構は、基準位置を有していて、前記第2のコネクタ部材を前記基準位置から移動させて前記光結合をさせる請求項8記載の生化学測定装置。
【請求項10】
前記センサチップの基板はシリコン基板であり、前記光学薄膜は、前記シリコン基板の表面に窒化シリコンを成膜して形成され、前記シリコン基板に対して前記n本のマイクロチャネルを有する光透過性のシリコーンゴムからなる対面基板が接着されて前記センサチップが形成される請求項5記載の生化学測定装置。
【請求項11】
n個の各前記光学薄膜センサ部の上部において各前記バンドルの先端部の位置を前記センサチップの各前記光学薄膜センサ部に対して距離調整する調整機構を有し、前記送液装置によりサンプルを希釈するバッファ液が送液されて前記分光器から得られる前記分光された波長についての信号に応じて得られる干渉スペルトルの波形に従って各前記バンドルの先端部の位置が前記調整機構により調整される請求項10記載の生化学測定装置。
【請求項12】
さらに前記センサチップの上部に前記入力ポートと前記出力ポートとを有するチップカバーが設けられ、前記チップカバーが前記入力ポートと前記出力ポートとを有し、前記チップカバーが前記センサチップにかぶせられたときに前記入力ポートと出力ポートが両端の前記ポッドにそれぞれ連通する請求項11記載の生化学測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−89579(P2008−89579A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218114(P2007−218114)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(502338454)フルイドウェアテクノロジーズ株式会社 (11)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】