説明

生化学自動分析装置

【課題】反応容器がディスポーザブルタイプである生化学自動分析装置において、装置のコンパクト性と測定精度を両立させる。
【解決手段】複数のディスポーザブル式のキュベットをセット可能な反応槽と、キュベットに第1試薬、検体、及び第2試薬を分注する分注部と、キュベットに光を当ててその吸光度を測定する測光部と、測光部の測定値を演算するCPUと、を備える。測光部は、キュベットに第1試薬と検体と第2試薬とを分注して反応させた後の吸光度である反応吸光度を測定するとともに、キュベットが空の状態のときの吸光度であるエアブランク値と、キュベットに第1試薬のみを分注したときの吸光度である第1試薬ブランク値と、を測定可能である(S104、S106)。前記CPUは、エアブランク値と第1試薬ブランク値の少なくとも何れか一方に基づいて、前記反応吸光度を補正する(S112、S113)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体と試薬とを反応容器内で反応させて吸光度を測定する生化学自動分析装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、反応容器の使い捨て型(いわゆるディスポーザブルタイプ)の自動分析装置は、装置の構造が簡略化され、製造コストが低減される反面、ランニングコスト及び省資源の点で問題があると指摘する。そして特許文献1は、上記の問題を解決するために下記の構成を提案する。即ち、反応容器カセットの反応容器部が乾燥された状態(検体がサンプリングされる前)の反応容器部の吸光度値を光学測定装置で測定し、該測定された吸光度値が予め設定された上下限値内にない反応容器部に対しては検体をサンプリングしないように駆動制御する。
【0003】
特許文献1は、上記のように空容器の吸光度(いわゆるエアブランク値、キュベットブランク値)を測定し、これが上下限値内にない場合にはサンプリングをしないことで、洗浄し切れず汚れている容器でサンプリングすることを防止でき、測定精度を高めることができるとする。また、洗浄装置を必要としないので、構成を大幅に簡易化できるとする。
【特許文献1】特許第3035601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1の構成は、使用後の反応容器は装置外の洗浄装置で洗浄する構成であるので、洗浄の手間が煩雑になっている。また、反応容器の再利用のための洗浄のコストが相当に必要になり、特に、装置が使用される国や地域によっては洗浄に必要な純水のコストが相当に高くなる場合があった。従って、特許文献1の構成は、洗浄の手間や純水の使用量の低減の観点から改善の余地が残されていた。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、ディスポーザブルタイプの反応容器を利用する場合の洗浄不要という利点を活かしながら、測定精度の良好な生化学自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の観点によれば、以下の構成の生化学自動分析装置が提供される。複数のディスポーザブル反応容器をセット可能な反応槽と、前記反応容器に試薬を分注する試薬分注部と、前記反応容器に前記検体を分注する検体分注部と、前記反応容器に光を当ててその吸光度を測定する吸光度測定部と、前記吸光度測定部の測定値を演算する演算部と、を備える。前記吸光度測定部は、前記反応容器に試薬と検体とを分注して反応させた後の吸光度である反応吸光度を測定するとともに、前記反応容器が空の状態のときの吸光度である第1ブランク値と、前記反応容器に試薬のみを分注したときの吸光度である第2ブランク値と、の少なくとも何れか一方を測定可能に構成される。前記演算部は、前記第1ブランク値及び第2ブランク値の少なくとも何れか一方に基づいて、前記反応吸光度を補正する演算が可能である。
【0008】
この構成により、ディスポーザブルの反応容器を用いる生化学分析装置において、第1ブランク値や第2ブランク値に基づいて反応吸光度を補正することで、バラツキが小さく精度の良い吸光度(ひいては、成分分析値)を得ることが可能になる。また、いわゆる水ブランク値を用いる場合に比較して、純水の給排の手間を低減できるとともに、純水使用量を減少させてランニングコストを低減できる。
【0009】
前記の生化学自動分析装置においては、以下のように構成することが好ましい。即ち、前記吸光度測定部は、前記第1ブランク値と前記第2ブランク値の両方を測定可能に構成される。前記演算部による前記反応吸光度を補正する演算の際に使用されるブランク値として、前記第1ブランク値及び前記第2ブランク値から選択して指定可能な指定部を備える。
【0010】
この構成により、吸光度の補正のために第1ブランク値又は第2ブランク値を状況に応じて使い分けることができる。従って、補正方法の適切な選択により、吸光度の測定精度を一層良好にできる。
【0011】
前記の生化学自動分析装置においては、前記指定部は、前記演算部による前記反応吸光度の補正の演算をしないように指定可能であることが好ましい。
【0012】
この構成により、種々の条件で吸光度の柔軟な取得が可能になる。
【0013】
前記の生化学自動分析装置においては、以下のように構成することが好ましい。即ち、空の前記反応容器を前記反応槽へセット可能であり、且つ前記反応吸光度を測定した後の前記反応容器を前記反応槽から取り外して廃棄することが可能な搬送部と、この搬送部を制御する制御部と、を備える。前記搬送部は、前記反応容器を把持可能な把持アームと、この把持アームによる前記反応容器の把持を検知する把持センサと、を備える。前記制御部は、空の前記反応容器を前記反応槽へセットする前に当該セット予定箇所において前記把持アームを把持動作させ、前記把持センサが前記反応容器の把持を検知しないときにのみ空の前記反応容器を前記反応槽へセットするように前記搬送部を制御する。
【0014】
この構成により、反応槽に既に反応容器が装着されているのに新しい反応容器を更に装着しようとして装置を破損させたりすることを防止できる。また、反応槽の反応容器装着箇所にそれぞれセンサを取り付ける場合よりも、構成の簡素化、低コスト化を図れる。
【0015】
前記の生化学自動分析装置においては、前記制御部は、前記セット予定箇所において前記把持アームを把持動作させたときに前記把持センサが前記反応容器の把持を検知したときは、当該反応容器を前記反応槽から取り外して廃棄するように前記搬送部を制御することが好ましい。
【0016】
この構成により、後の新しい測定のために空の反応容器を反応槽へセットできる状態になるので、測定を殆ど中断させることなく継続することができる。
【0017】
前記の生化学自動分析装置においては、以下のように構成することが好ましい。即ち、使用済の前記反応容器を貯溜可能な使用済容器貯溜部と、前記反応吸光度を測定した後の前記反応容器を前記反応槽から取り外して前記使用済容器貯溜部に投下して廃棄することが可能な搬送部と、この搬送部を制御する制御部と、を備える。前記搬送部は、前記反応容器を把持可能な把持アームを備える。前記使用済容器貯溜部は投入孔を備えるとともに、その投入孔には上下方向のガイド壁が備えられている。使用済の前記反応容器を廃棄するときは、前記制御部は、当該反応容器を前記把持アームで把持した状態でその反応容器の側面を前記ガイド壁に近接又は接触させ、その位置で前記把持アームの把持を解除するように制御する。
【0018】
この構成により、ガイド壁の案内によって反応容器の廃棄時の落下姿勢を安定させることができるので、反応容器の廃棄作業を円滑に行うことができる。
【0019】
前記の生化学自動分析装置においては、前記把持アームによる前記反応容器の把持の解除時に、当該把持アームが下降していることが好ましい。
【0020】
この構成により、反応容器が下方への勢いを得て確実に把持アームから離れて落下するので、投下ミスを防止し、廃棄作業を円滑に行うことができる。
【0021】
前記の生化学自動分析装置においては、前記使用済容器貯溜部の投入孔は、前記反応容器を差込可能な幅のスリット部を有していることが好ましい。
【0022】
この構成により、前記スリット部において反応容器の側面をガイド壁に近接又は接触させることが容易であり、反応容器を一層安定させて真っ直ぐ落下させることができる。また、スリット状の形状であるので、キュベットが投入孔に引っ掛かって詰まることも防止できる。
【0023】
前記の生化学自動分析装置においては、前記搬送部は、使用済の前記反応容器を、前記スリット部の長手方向の異なる位置で投下することが可能であることが好ましい。
【0024】
この構成により、使用済容器貯溜部に反応容器を山状ではなく均一に堆積させることが容易であるので、使用済容器貯溜部が頻繁に満杯になることを防止できる。
【0025】
前記の生化学自動分析装置においては、以下のように構成することが好ましい。即ち、前記投入孔は複数設けられている。前記搬送部は、使用済の前記反応容器を、互いに異なる前記投入孔から投下することが可能である。
【0026】
この構成により、使用済容器貯溜部に反応容器を山状ではなく均一に堆積させることが容易であるので、使用済容器貯溜部が頻繁に満杯になることを防止できる。
【0027】
前記の生化学自動分析装置においては、以下のように構成することが好ましい。即ち、使用済の前記反応容器を貯溜可能な使用済容器貯溜部と、前記反応吸光度を測定した後の前記反応容器を前記反応槽から取り外して前記使用済容器貯溜部に廃棄することが可能な搬送部と、この搬送部を制御する制御部と、前記搬送部による前記反応容器の廃棄個数を記憶する記憶部と、を備える。前記使用済容器貯溜部は、装置本体に着脱可能な貯溜容器と、この貯溜容器が前記装置本体から取り外されたことを検知する取外しセンサと、を備える。前記制御部は、前記搬送部によって前記使用済容器貯溜部に前記反応容器を1つ廃棄するごとにカウントして前記記憶部に記憶し、この記憶内容が所定の値に達するとユーザに報知する。前記貯溜容器が前記装置本体から取り外されたことを前記取外しセンサが検知したときは、前記制御部は前記記憶部の記憶内容をリセットする。
【0028】
この構成により、貯溜容器が満杯近くになったことをユーザに的確に知らせることができる。また、例えば貯溜容器内の反応容器の堆積量をセンサで直接検出する構成に比較して、誤検出がなく、また安価に構成することができる。更に、ユーザが貯溜容器を本体から取り外す動作を検知して、記憶部に記憶された廃棄個数を自動的にリセットするので、特別なリセット動作が不要になり、ユーザの作業負担を軽減できる。
【0029】
前記の生化学自動分析装置においては、前記貯溜容器は、前記装置本体から取り外すときに手を掛けるための把手を備えるとともに、当該貯溜容器の内部に袋体を装着できるように構成していることが好ましい。
【0030】
この構成により、把手を持つことで貯溜容器を本体から簡単に取り外すことができる。また、貯溜容器内部の反応容器を廃棄するときには袋体ごと纏めて処分することができるので、取り回しが良好であるとともに、廃棄作業時に試薬等が手に付着することも防止できる。
【0031】
前記の生化学自動分析装置においては、以下のように構成することが好ましい。即ち、使用済の前記反応容器を貯溜可能な使用済容器貯溜部と、検体容器を収納可能な検体庫及び第2検体庫と、を備える。前記第2検体庫はスライド自在なホルダを備え、このホルダを装置本体の外部に水平に引き出した状態で前記検体容器を装着し、当該ホルダを装置本体の内部にセットすることで前記検体分注部により分注可能に構成される。前記検体庫の検体の測定中に前記第2検体庫の検体の測定を割り込ませて行うことが可能に構成されている。
【0032】
この構成により、通常の分析測定中に臨時(緊急)の測定の必要が生じたときには、装置全体を停止させることなく、第2検体庫に当該検体の検体容器をセットするだけで、割込み的に測定を行うことができる。従って、柔軟性の高い測定スケジュールが可能になるとともに、測定の効率を良好に維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
図1に本実施形態の生化学分析装置1の外観斜視図を示す。この生化学分析装置1は、血液や尿等の検体の成分濃度を測定するために使用される分析機である。この生化学分析装置1は、本体11と、この本体11の上方の空間を覆うカバー12と、を備える。
【0034】
前記本体11からカバー支持部13が上方に向けて延出され、このカバー支持部13に前記カバー12が枢支されている。カバー12は図1の白抜き矢印方向に回動することで本体11の上方の空間を開閉できるようになっている。カバー12の正面部分は透明又は半透明の合成樹脂で構成されており、図1のようにカバー12を閉鎖した状態でも、その内部の様子を視認することができる。
【0035】
本体11の正面にはタッチパネル式のディスプレイ(表示部、入力部、指定部)14が備えられる。このディスプレイ14は測定の進捗等を表示可能に構成されているほか、ユーザが前記ディスプレイ14のタッチパネルに触れることにより、測定条件を設定したり、測定の開始/中止を指示する等、各種の操作をすることができる。
【0036】
図2に、生化学分析装置1の平面断面図を示す。この図2に示すように、前記本体11の内部には、反応槽21と、検体庫22と、試薬庫23と、が備えられている。
【0037】
反応槽21は平面視円形に構成されるとともに、反応容器としてのキュベット2を周方向に等間隔で並べて複数セットできるようになっている。キュベット2は、透明な合成樹脂により、一端を開放させた細長い形状の容器に成形されている。また、このキュベット2は、使用後には廃棄されるいわゆるディスポーザブル式のキュベットとされている。反応槽21は、反応槽駆動部としての図略の駆動モータによって、所定時間毎に所定のピッチ角度ずつ間欠的に回転駆動される。
【0038】
検体庫22及び試薬庫23は、円筒状の保管ケース24内に設けられている。検体庫22においては、検体を収容した検体容器3を周方向に並べて複数セットできるように構成している。また、試薬庫23においては、試薬を収容した試薬容器4を周方向に並べて複数セットできるように構成している。
【0039】
前記保管ケース24は、検体庫駆動部及び試薬庫駆動部としての図略の駆動モータによって回転駆動される。この駆動モータにより、保管ケース24とともに検体庫22及び試薬庫23を適宜回転させて、複数の検体及び試薬の中から所望のものを後述の分注部41に供給できるようになっている。
【0040】
また、検体庫22及び試薬庫23の上側は蓋カバー25によって覆われている。従って、ユーザは、装置が停止している状態で前記カバー12を回動して開き、前記蓋カバー25を取り外すことで、検体容器3及び試薬容器4をセットしたり交換したりできるようになっている。
【0041】
また、前記本体11には前記検体庫22とは別に第2検体庫28が備えられている。この第2検体庫28はホルダ29を備え、このホルダ29に前記検体容器3を1つセットできるようになっている。このホルダ29は図2の矢印で示す方向にスライド自在に構成されており、本体11の側面から前記ホルダ29を水平方向に引き出して露出させ、このホルダ29に前記検体容器3をセットして再び本体11内に押し込むことで、前記カバー12を開放することなく検体容器3を第2検体庫28にセットすることができる。
【0042】
前記反応槽21の側部には測光部(吸光度測定部)31が備えられている。この測光部31は光源部32と受光部33とを備えている。光源部32は、反応槽21にセットされた状態のキュベット2が周方向で所定の場所(測光位置p)に位置しているときに、当該キュベット2に対して光(例えば、白色ハロゲン光)を照射する。受光部33は、キュベット2を通過した光を入射させ、その強度を測定する。また、光源部32は、特定の波長を透過させる図略のフィルタを複数備えており、このフィルタを図略の駆動モータにより切り換えることで、特定の波長の光の吸光度を測定できるようになっている。
【0043】
前記本体11は、検体庫22の検体や試薬庫23の試薬を吸引して反応槽21のキュベット2に所定量吐出するための分注部(検体分注部、試薬分注部)41を備えている。この分注部41は、上下方向に配置された旋回軸42と、この旋回軸42の上端に取り付けられた旋回アーム43と、この旋回アーム43の先端に下向き突出状に設けられるピペット44と、を備えている。
【0044】
前記旋回軸42には図示しない昇降機構及び旋回機構が備えられており、旋回アーム43及びピペット44を昇降させたり旋回させたりすることができる。本体11の上面及び蓋カバー25の上面には、前記ピペット44の旋回に伴ってその先端が描く軌跡に沿うように、円弧溝26が形成されている。
【0045】
前記円弧溝26は、平面視において、前記反応槽21の周方向の所定の場所(分注位置q)と、検体庫22と、試薬庫23と、第2検体庫28と、を接続するように形成されている。ピペット44の先端は、前記旋回機構によって、この円弧溝26の内部を移動するようになっている。また、所定の位置で前記昇降機構を駆動することで、ピペット44の先端を検体容器3、試薬容器4、又はキュベット2の内部へ上方から挿入できるようになっている。
【0046】
分注部41のピペット44には図示しない吸引吐出機構が連結されており、検体容器3の検体や試薬容器4の試薬を吸引し、反応槽21のキュベット2へ吐出する動作が可能になっている。前記円弧溝26の中途部にはピペット洗浄部61が備えられて、このピペット洗浄部61によって、ピペット44内の余分な検体や試薬を排出したり、ピペット44を洗浄したりできるようになっている。
【0047】
また、前記本体11は、キュベット2に分注された試薬や検体を撹拌するための撹拌部51を備えている。この撹拌部51は、上下方向に配置された旋回軸52と、この旋回軸52の上端に取り付けられた旋回アーム53と、この旋回アーム53の先端に下向き突出状に設けられる撹拌棒54と、を備えている。
【0048】
前記旋回軸52には図示しない昇降機構及び旋回機構が備えられており、旋回アーム53及び撹拌棒54を昇降させたり旋回させたりすることができる。本体11の上面には、前記旋回アーム53の旋回に伴って撹拌棒54の先端が描く軌跡に沿うように、円弧溝27が形成されている。
【0049】
前記円弧溝27は、平面視において、前記反応槽21の周方向の所定の場所(撹拌位置r)と、反応槽21の側部に設けられた撹拌洗浄部62と、を接続するように設けられている。撹拌棒54の先端は、前記旋回機構によって、この円弧溝27の内部を移動するようになっている。また、所定の位置で前記昇降機構を駆動することで、撹拌棒54の先端をキュベット2の内部へ上方から挿入できるようになっている。
【0050】
撹拌部51の撹拌棒54には図示しない駆動モータが連結されており、撹拌棒54の先端をキュベット2の内部に挿入した状態で撹拌棒54を回転駆動することで、キュベット2の内容物を撹拌できるようになっている。また、前記撹拌洗浄部62では、撹拌後に試薬等が付着した撹拌棒54を洗浄できるように構成されている。
【0051】
前記本体11の上面にはキュベットストッカ71が備えられている。このキュベットストッカ71は前記反応槽21のほぼ直上方の位置に配置されるとともに、空のキュベット2を立てた状態で多数並べてストックできるようになっている。また、前記反応槽21の近傍にはダストポッド(使用済容器貯留部)81が備えられて、使用済のキュベット2を廃棄可能に構成されている。
【0052】
更に前記本体11は、前記反応槽21、前記キュベットストッカ71及び前記ダストポッド81の間でキュベット2を搬送する、キュベット搬送部(搬送部)95を備えている。このキュベット搬送部95は、本体11の前後方向(Y軸方向)にスライド可能な第1ベース91と、この第1ベース91に設けられ、本体11の左右方向(X軸方向)にスライド可能な第2ベース92と、この第2ベース92に設けられ、上下方向(Z軸方向)にスライド可能なアーム機構93と、を備えている。
【0053】
アーム機構93の詳細な構成が図3に正面図要部拡大図として示される。このアーム機構93は、上下スライド自在なスライドベース96に取り付けられている。スライドベース96には、一対の把持アーム94と、この把持アーム94のうち一側を駆動させる把持モータ97と、が取り付けられている。そして、前記把持モータ97によって把持アーム94を開閉駆動させることで、キュベット2の上端部(開放側の端部)付近を掴むことが可能になっている。
【0054】
また、前記把持アーム94の開閉を検知する把持センサ98が、前記スライドベース96に支持されている。この把持センサ98は、把持アーム94によってキュベット2を正常に把持した場合には、それを検知できるようになっている。更に、前記キュベット搬送部95は前記アーム機構93を前記X軸、Y軸、及びZ軸の方向へ変位させる図略の駆動機構を備えており、キュベット2をアーム機構93に把持した状態で所望の位置へ搬送できるようになっている。
【0055】
図4は、ダストポッド81の構成を詳細に示す正面断面拡大図である。このダストポッド81は、本体11の上面に凹設した装着穴82と、この装着穴82に着脱可能な箱状のダストボックス(貯溜容器)83と、このダストボックス83の上方開放部分を覆う蓋体85と、を備えている。このダストボックス83は、廃棄された使用済のキュベット2を所定の量だけ貯溜できるよう構成されている。また、当該ダストボックス83の内部にはビニール袋や紙袋等の袋体84を装着できるようになっている。
【0056】
前記蓋体85には、キュベット2を投入するための投入孔86が貫通状に形成されている。本実施形態において投入孔86は直線状の長孔であり、平行に2つ並べて設けられている。投入孔86はその全体にわたってスリット部を有しており、このスリット部の幅は前記キュベット2の幅よりも若干大きく設定されている。それぞれの投入孔86の内壁(ガイド壁87)は上下方向に形成され、前記スリット部において、ガイド壁87同士は平行で互いに向かい合うように配置されている。
【0057】
前記装着穴82の開口端近傍には、取外し検知センサ88が設置されている。この取外し検知センサ88は、前記ダストボックス83が装着穴82から引き抜かれた場合に、それを検知できるように構成されている。また、前記ダストボックス83は前記本体11の装着穴82から上面に若干突出するように設けられており、この突出部分に把手89が固定されて、ダストボックス83の持ち運びや装着穴82への着脱を容易にしている。
【0058】
図2に示すように、前記キュベットストッカ71の近傍位置において、前記本体11の上面には窓部72が形成されている。この窓部72は反応槽21の直上方に位置しており、この窓部72を通じて前記反応槽21の一部が露出するようになっている。
【0059】
従って、前記キュベット搬送部95が適宜駆動されることで、キュベットストッカ71上の空のキュベット2を1個掴んで取り出し、前記窓部72から反応槽21に差し込んでセットできるようになっている。またキュベット搬送部95は、反応槽21にセットされている使用済のキュベット2を掴んで前記窓部72を通じて取り出し、図4に示すように、前記ダストポッド81に投入孔86から投下して廃棄できるようになっている。
【0060】
次に、図5のブロック図を参照して、本体11の電気的構成を説明する。この図5に示すように、本体11は、演算部としての制御CPU75を備えるとともに、各種情報を記憶するためのメモリ(記憶部)76を備える。
【0061】
更に、本体11は、測光信号処理CPU77と、駆動信号処理CPU78と、を備える。測光信号処理CPU77は、吸光度の測定時に測光部31から得られた信号を演算し、制御CPU75へ吸光度信号を送信する。駆動信号処理CPU78は、制御CPU75からの指令に基づいて、測光部31、反応槽21、保管ケース24、分注部41、撹拌部51、及びキュベット搬送部95等の各部へ駆動信号を送信し、各種動作を行わせる。なお、本実施形態においては、制御CPU75及び駆動信号処理CPU78が制御部に相当する。
【0062】
また、前記キュベット搬送部95が備える把持センサ98、及び、前記ダストポッド81に備えられる取外し検知センサ88は、前記制御CPU75へ信号を送信できるように構成されている。
【0063】
制御CPU75は前記タッチパネル式のディスプレイ14と接続され、測定条件や測定結果等、各種情報の入力及び出力が可能になっている。また、前記メモリ76には、エアブランク値(第1ブランク値)や、第1試薬ブランク値(第2ブランク値)や、反応吸光度等、得られた測定結果を記憶できるように構成されている。更に前記メモリ76には、測定に使用してダストポッド81に廃棄したキュベット2の個数を記憶したり、ユーザの使用頻度が高い測定条件を記憶したりできるようになっている。
【0064】
次に、以上の構成の生化学分析装置1における測定フローの例を、図6のフローチャートを参照して説明する。
【0065】
まず、測定を始める前に、検体容器3及び試薬容器4を検体庫22及び試薬庫23にセットした上で、操作画面が表示されているディスプレイ14に指で触れて操作し、測定条件を指定する(S101)。この測定条件としては、例えば検体や試薬のキュベット2への分注量や、反応時間、測光波長、吸光度の測定方法等が挙げられる。
【0066】
次に、反応吸光度を計算する際の、補正に用いるブランク値を予め指定する(S102)。即ち、本実施形態の生化学分析装置1では、通常用いられる純水のブランク値とは異なり、反応槽21に空のキュベット2を挿入してセットした状態でのブランク値(エアブランク値)か、あるいは、キュベット2に第1試薬だけを分注した状態でのブランク値(第2ブランク値としての第1試薬ブランク値)の何れかを用いて、後述の反応吸光度を補正できるように構成されている。
【0067】
本実施形態の装置では、どのブランク値を用いて吸光度を補正するか(あるいは補正しないか)を、以下のようにして指定することができる。即ち、S101で測定条件を設定するのと同時に、又はその後に、ディスプレイ14に図7のような操作画面が現れる。この操作画面では、ブランク値を表す「Blank:」のラベルの横にプルダウンリスト101が描画されている。その端の下向き三角が描かれたボタン102を指で触れると、ブランク値の指定の一覧103が表示される。
【0068】
現れた一覧103には、「ブランクなし」、「エアブランク」、「試薬ブランク」の3種類の指定が表示される。「ブランクなし」はブランク値を使って吸光度を補正しないことを意味し、「エアブランク」はエアブランク値を使って補正することを意味し、「試薬ブランク」は第1試薬ブランク値を使って補正することを意味する。3種類のうちどれかに指で触れて指定すると、触れたものがプルダウンリスト101に表示され、一覧103は消える。こうして、補正なし、エアブランク値による補正、第1試薬ブランク値による補正、の何れかを指定することができる。この指定は検体ごと及び測定項目ごとに行うことができ、指定された内容は前記メモリ76に記憶される。
【0069】
そして測定が開始されると、先ずキュベット搬送部95がキュベットストッカ71から空のキュベット2を1つ取り出し、反応槽21にセットする(S103)。なお、キュベットストッカ71に並べられている多数のキュベット2のうち何れを取り出すかは、タッチパネル式のディスプレイ14によって指示することができ、また、予め設定しておいた順番で自動的に取り出すように指示することもできる。
【0070】
反応槽21は順次回転するので、セットされたキュベット2は、所定時間後に所定の位置(測光位置p)に至り、測光部31によって測光される(S104)。なお、このときはキュベット2は空の状態であるので、測光部31によって測定される値は、キュベット2内の空気及びキュベット2自体の吸光度ということになる(エアブランク値、キュベットブランク値)。測定されたエアブランク値は、本体11の備えるメモリ76に記憶される。
【0071】
上記のエアブランク値の測定後も、反応槽21は順次回転する。上記キュベット2が所定の位置(分注位置q)まで移動すると、今度は分注部41が駆動されて、1つ目の試薬(第1試薬)を試薬庫23の試薬容器4から吸引し、前記キュベット2に所定量だけ吐出する(S105)。こうして、キュベット2に第1試薬のみが分注された状態になる。
【0072】
反応槽21は更に回転するので、キュベット2は1周して再び測光位置pに移動し、測光部31により測光される(S106)。なお、この時点ではキュベット2は第1試薬のみが分注されているので、測光部31によって測定される値は、キュベット2内の第1試薬の吸光度ということになる(第1試薬ブランク値)。この第1試薬ブランク値は、本体11の備えるメモリ76に記憶される。
【0073】
第1試薬ブランク値の測定後、反応槽21のキュベット2は再び分注位置qに至る。このとき、分注部41は、検体庫22の検体容器3から検体を吸引し、前記キュベット2へ所定量だけ吐出する。その後、反応槽21のキュベット2が所定の撹拌位置rに至ると、前記撹拌部51が撹拌棒54をキュベット2内に挿入して回転させ、第1試薬と検体とを撹拌する(S107)。
【0074】
上記の撹拌後も、反応槽21の回転に伴ってキュベット2は移動する。そして、所定時間の経過後(キュベット2が何周か周回した後)、キュベット2が測光位置pに移動したときに測光部31により測光され、その測定値がメモリ76に記憶される(S108)。
【0075】
次に、キュベット2は分注位置qに至り、このときに分注部41は2つ目の試薬(第2試薬)を試薬庫23の試薬容器4から吸引し、当該キュベット2に所定量だけ吐出する。次にキュベット2が撹拌位置rに至ると、撹拌部51が前記と同様に、キュベット2の内容物を撹拌する。こうして、第1試薬と検体と第2試薬とが良好に撹拌されて反応する(S109)。
【0076】
反応後は、キュベット2が測光位置pに移動したときに、測光部31により測光される(S110)。こうして、反応後の吸光度を取得することができる。なお、この吸光度は、所定時間後(キュベット2が何周か周回した後)に1回だけ測定しても良いし、反応後にキュベット2が1周周回して測光位置pを通過する毎に測定しても良い。測定された吸光度は、本体11の備えるメモリに記憶される。
【0077】
次に、S102で指定されたブランク値、言い換えれば、図7の画面で指定された事項が何であったかを、メモリ76から読み出して調べる(S111)。エアブランク値を使って補正をする旨(「エアブランク」)が指定されていた場合はS112へ進み、S110で測定された反応吸光度から、S104で測定されたエアブランク値を減算して補正する。また、第1試薬ブランク値を使って補正をする旨(「試薬ブランク」)が指定されていた場合はS113へ進み、S110で測定された反応吸光度から、S106で測定された第1試薬ブランク値(試薬ブランク値)を減算して補正する。補正を行わない旨(「ブランクなし」)が指定されていた場合は、上記S112、S113の何れの処理も行わない。
【0078】
以上の処理により、簡便で装置のコンパクト化が可能なディスポーザブルキュベット式の生化学分析装置においても、エアブランク値又は第1試薬ブランク値に基づいて吸光度を補正することで、バラツキが小さく精度の良い吸光度(ひいては、成分分析値)を得ることが可能になる。
【0079】
なお、吸光度を測定する場合においては、キュベットに純水を注入したときの吸光度(水ブランク値)を測定し、この水ブランク値を反応吸光度から減算して補正することが一般に行われている。しかしながら、水ブランクを補正に用いる方法は、キュベットへの純水の注入及び純水の排出工程が余分に必要となり、測定の効率が低下してしまう。また、純水の使用量増加によってランニングコストが増大するとともに、純水をキュベットから排出するための特別な機構が必要になるので、装置の小型化、軽量化を実現することが難しい。この点、上記のエアブランク値又は第1試薬ブランク値を用いて補正する方法は、純水が必要なく、装置の簡素な構成を実現できるので有利である。
【0080】
また本実施形態では、状況に応じてエアブランク値又は第1試薬ブランク値を補正のために使い分けることができるので、補正方法の適切な選択により、測定される吸光度の精度を一層良好にできる。例えば、試薬の種類によっては吸光度が高過ぎて、第1試薬ブランク値がブランク値として使えないことがあるので、このときはエアブランク値を用いるといったようにである。
【0081】
更には、吸光度の補正を行わないことも選択できるので(「ブランクなし」)、種々の条件で吸光度の柔軟な取得が可能になる。
【0082】
所要に応じて補正された反応吸光度は、前記ディスプレイ14等に出力される(S114)。その後、反応後のキュベット2が窓部72に相当する位置に至ると、キュベット搬送部95が反応槽21からキュベット2を取り出し、ダストポッド81へ廃棄する(S115)。
【0083】
以上により、一連の測定が終了する。なお、図6のフローは1つのキュベット2について説明したものであるが、実際は複数の検体について多数の試薬を用いて検査するので、同時に複数のキュベット2が反応槽21にセットされて使用され、上記の測定フローが流れ作業的に同時並行で行われる。
【0084】
なお、本願の発明者は、(a)補正なしの場合、(b)エアブランク値を用いて補正した場合、(c)第1試薬ブランク値を用いて補正した場合、のそれぞれについて、24個のキュベットに特定の検体及び試薬を分注して吸光度を測定する実験を行った。この実験の結果、(a)補正なしの場合は吸光度の標準偏差が4.9となり、(b)エアブランク値で補正した場合は吸光度の標準偏差が2.3となり、(c)第1試薬ブランク値で補正した場合は吸光度の標準偏差が1.8となった。以上に示すように、補正なしの場合に比べて、エアブランク値あるいは第1試薬ブランク値を用いて吸光度を補正した方が、吸光度のバラツキを良好に抑制できることが判った。
【0085】
次に、ダストポッド81へのキュベット2の廃棄について説明する。即ち、使用済のキュベット2を廃棄するのに用いられるキュベット搬送部95は、図3に示すように、キュベット2の上部を把持可能な把持アーム94を備える。そして図4に示すように、前記ダストポッド81は投入孔86を備えるとともに、この投入孔86には上下方向のガイド壁87が備えられている。
【0086】
上記の構成で、使用済のキュベット2を廃棄するときは、キュベット搬送部95は、先ずキュベット2の上部を把持アーム94で把持した状態で、当該キュベット2の下部を投入孔86に図4のように差し込むように、制御CPU75及び駆動信号処理CPU78によって制御される。そしてキュベット搬送部95は、キュベット2の下部側面を前記ガイド壁87に近接(又は接触)させた状態で、把持モータ97を駆動して把持アーム94の把持を解除するように制御されるのである。なお、図4では把持が解除された瞬間の様子を示している。
【0087】
従って、キュベット2は、把持が解除された瞬間から前記ガイド壁87に沿うようにして真っ直ぐ落下して廃棄される。このように、ガイド壁87の案内によってキュベット2の落下姿勢が安定するので、内部の試薬や検体がこぼれてダストポッド81の周囲等を汚染することを防止できる。特に本実施形態のような生化学分析装置では、試薬の意図せぬ付着や静電気等によりキュベット2が把持アーム94に付着して落下しにくくなることがあるが、本実施形態ではこのようにキュベット2を真っ直ぐ投下して廃棄できるので、廃棄作業もスムーズである。
【0088】
また、上記の把持モータ97の駆動による把持アーム94の把持の解除は、図4の矢印で示すように、把持アーム94が下降しているときに行われるように構成されている。従って、キュベット2が下方への勢いを得て把持アーム94から確実に離れて落下するので、投下ミスを防止し、廃棄作業を円滑に行うことができる。
【0089】
また、前記投入孔86は、図2等に示すように、キュベット2を差込可能な幅のスリット部として構成されている。従って、キュベット2の側面をガイド壁87に近接/接触させることが容易であり、キュベット2を一層容易に真っ直ぐ落下させることができる。また、投入孔86はスリット状に形成されているので、開口面積を確保することができ、廃棄されたキュベット2が投入孔86に詰まることも防止できる。
【0090】
また、前記キュベット搬送部95は、使用済のキュベット2を、スリット状の投入孔86の長手方向における異なる位置で投下できるように構成されている。従って、例えば前回廃棄時と異なる位置からキュベット2を廃棄することで、ダストボックス83の内部でキュベット2を山状とさせずに均一に堆積させていくことができる。このため、ダストボックス83がすぐに満杯になることが防止され、メンテナンスの手間を低減できる。
【0091】
更に、本実施形態では投入孔86が複数(2つ)設けられている。そして、前記キュベット搬送部95は、使用済のキュベット2を、互いに異なる投入孔86から投下できるように構成されている。従って、例えば前回廃棄時と異なる投入孔86からキュベット2を廃棄するように制御することで、上記と同様にキュベット2を山状とさせずに均一に堆積させ、ダストボックス83がすぐに満杯になることを防止できる。
【0092】
なお、本実施形態では、1個目のキュベット2は一側の投入孔86の一端から投下し、2個目は同じ投入孔86の他端から投下し、3個目は他側の投入孔86の一端から投下し、4個目は当該他側の投入孔86の他端から投下し、・・・というように、キュベット2の投下場所をローテーションで変化させている。これにより、廃棄されたキュベット2を均一に堆積させることが可能になっている。
【0093】
更に本実施形態では図5に示すように、本体11のメモリ76は、キュベット2がダストポッド81へ廃棄された個数を記憶できるように構成されている。そして、図6のS115でキュベット2を1つ廃棄する毎に、制御CPU75は廃棄個数の値を1だけカウントアップし、この廃棄個数が所定の値(ダストボックス83が満杯近くになる個数として予め設定されている値)に達すると、アラームをディスプレイ14に表示してユーザに報知するようになっている。これにより、ダストポッド81が満杯近くになったことをユーザに的確に知らせることができる。また、例えばダストボックス83内のキュベット堆積量をセンサで直接検出する構成に比較して、誤検出がなく、また安価に構成できる点でも有利である。
【0094】
そして、ダストボックス83が装着穴82から引き抜かれたことが取外し検知センサ88によって検知されると、制御CPU75は前記メモリ76のキュベット2の廃棄個数をゼロにリセットするように構成している。このように、ユーザがダストボックス83を空にするために装着穴82から引き抜いた動作を検知して、廃棄個数が自動的にゼロにリセットされるので、特別なリセット動作が不要になり、ユーザの作業負担が軽減される。
【0095】
また、図2や前記ダストボックス83は、前記装着穴82から引き抜いて本体11から取り外すための把手89を備える。また、ダストボックス83の内部には袋体84を装着できるようになっている。従って、把手89を持つことでダストボックス83を本体11から簡単に取り外すことができる。また、ダストボックス83に装着した袋体84の中にキュベット2を堆積させていくことで、当該堆積されたキュベット2を廃棄するときは袋体84ごと纏めて処分することができる。従って、取り回しが良好であるとともに、作業時に試薬等が手に付着することも防止できる。
【0096】
更に、前記本体11は第2検体庫28を備えて、この第2検体庫28はスライド自在のホルダ29を備えている。そして、このホルダ29を本体11の外部に水平に引き出した状態で検体容器3をセットし、ホルダ29を本体11の内部にセットすることで分注部41により第2検体庫28の検体をキュベット2に分注可能に構成されている。
【0097】
これにより、通常の分析測定中に臨時(緊急)の測定の必要が生じたときには、カバー12を開いて装置全体を停止させることなく、第2検体庫28に当該検体の検体容器3をセットするだけで、割込み的に測定を行うことができる。従って、柔軟性の高い測定スケジュールが可能になるとともに、測定の効率を良好に維持できる。
【0098】
なお、第2検体庫28に上記検体(緊急検体)をセットするときは、ユーザがタッチパネル式のディスプレイ14を操作することで分注部41の動作を停止させ、その状態でホルダ29に検体容器3をセットできるように構成されている。この結果、分注部41の破損が防止される。なお、動作を停止させるのは分注部41だけであり、キュベット搬送部95等は動作を継続している。従って、測定効率の大幅な低下を防止できる。第2検体庫28への検体容器3のセット後は、再びタッチパネル式のディスプレイ14を操作することで、分注部41の分注動作が再開される。
【0099】
次に、反応槽21へのキュベット2の装着を確認する構成について説明する。即ち、前記反応槽21に同時にセットできるキュベット2の数には限りがあるため、多数の検体と多数の試薬を組み合わせたそれぞれの反応吸光度を一連の作業で測定する場合は、キュベット2を反応槽21にセットして測定後に取り外し、再び新しいキュベット2をセットして測定を行う必要がある。しかしながら、キュベット搬送部95によるキュベット2の取外しミス等の事情によって、キュベット2が反応槽21に残っている場合がある。このような箇所に更にキュベット2をセットしようとすると、キュベット2同士が衝突して、キュベット2や装置の破損等を招いてしまう。
【0100】
そこで、上記の事態を防止するために、新しいキュベット2の反応槽21へのセット前(図6のS103の前)の段階において、制御CPU75及び駆動信号処理CPU78はキュベット搬送部95を以下のように制御する。即ち、図8に示すように、キュベット2を把持していない状態の前記アーム機構93を窓部72に上側から差し込み、前記反応槽21のすぐ上方(キュベット2のセット予定箇所のすぐ上方)に位置させる。そして、キュベット2の装着のために反応槽21に凹設されているセット穴73に対面する位置で、把持モータ97を駆動し、把持アーム94の把持動作を行う。
【0101】
これにより、上記の取外しミス等の何らかの理由で反応槽21にキュベット2が残っていた場合は、把持アーム94の把持動作によってそのキュベット2が掴まれることになり、これが把持センサ98で検出される。この場合、制御CPU75は、キュベット2のセット予定箇所に他のキュベット2が残っていた旨のエラーメッセージをディスプレイ14に表示する。
【0102】
把持センサ98がキュベット2の把持を検知しなかった場合は、前記セット予定箇所にキュベット2が無かったことを意味する。従って、キュベット搬送部95は把持アーム94をキュベットストッカ71へ移動させて空のキュベット2を把持した上で、再び窓部72から把持アーム94を差し込み、反応槽21の前記セット予定箇所にセットし、測定を開始する。
【0103】
これにより、反応槽21にキュベット2がセットされているか否かを確認するための簡素な構成が実現される。即ち、仮に反応槽21に形成されている全てのセット穴73にキュベット装着検知センサを配置する場合、高価で複雑な構成になってしまうが、本実施形態によればキュベット2の装着の有無はキュベット搬送部95の把持センサ98で検知できるので、簡素で低コストな構成になっている。
【0104】
なお、このキュベット2の有無確認動作は、キュベット2の搬送作業を行っていないキュベット搬送部95のアイドリング時に適宜行うようにしている。これにより、測定の効率を良好に維持しながらキュベット2の装着の有無を確認することができる。
【0105】
また、上記のようにキュベット2のセット予定箇所に古いキュベット2が残っている場合は、制御CPU75は上記のエラーメッセージを表示するとともに、キュベット搬送部95で反応槽21の前記セット穴73から強制的に古いキュベット2を取り外して、ダストポッド81へ廃棄するように制御する。こうすることで、後の新しい測定のために空のキュベット2を反応槽21へセットできるようになり、測定の継続性を確保できる。
【0106】
以上に本発明の好適な形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0107】
補正用のブランク値としてエアブランク値か第1試薬ブランク値かをユーザに手動で選択させることに代えて、例えば制御CPU75が、測定条件、及び、実際に測定された第1試薬ブランク値に基づき、エアブランク値又は第1試薬ブランク値を自動で選択して反応吸光度を補正するように変更することができる。
【0108】
補正に用いるブランク値の指定(図7)は、測定開始前に予め行われる必要は必ずしもなく、例えば反応吸光度の測定後のタイミングで指定することもできる。
【0109】
図6のS102でエアブランク値を指定した場合は、S106の第1試薬ブランク値を測定しないように構成することができる。また同様に、S102で第1試薬ブランク値を指定した場合は、S104のエアブランク値を測定しないように構成することができる。
【0110】
補正に用いるブランク値の指定は、図7のようにプルダウンボックスを用いて選択させることに代えて、チェックボックスによる方法、ラジオボタンによる方法等、任意の指定方法に変更することができる。また、タッチパネル式のディスプレイ14に限らず、キーボード等の外部入力手段を本体11の外部接続端子に接続し、これによって補正用のブランク値として何れを用いるかを指定する方法も考えられる。また、本体11に設けられたボタン式のスイッチで指定すること等が考えられる。
【0111】
図5のブロック図において、制御CPU75、測光信号処理CPU77、駆動信号処理CPU78と3つのCPUで処理を分担することに代えて、1つのCPUで処理を行うように変更することができる。
【0112】
上記の実施形態のように検体・試薬両用の分注部41とすることに代えて、検体分注部と試薬分注部とを別々に設けることができる。また、検体庫22と試薬庫23は、本実施形態のように同一の保管ケース24に収納させることに代えて、別々に設けることができる。
【0113】
ダストポッド81の構成、ダストボックス83の形状、投入孔86の形状や数等は適宜変更することができる。例えば、投入孔86を直線長孔状ではなく、例えば折り曲げた形状の長孔や、H字状の孔に形成することができる。
【0114】
また、上記の実施形態では第1試薬と第2試薬の2つの試薬を用いて測定する場合を説明したが、試薬の種別や測定項目によっては第2試薬を用いず第1試薬のみを使用して測定しても良く、その場合においても本発明の適用は妨げられない。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の一実施形態に係る生化学自動分析装置の外観斜視図。
【図2】生化学自動分析装置の平面断面図。
【図3】キュベット搬送部のアーム部を示す正面拡大図。
【図4】ダストポッドの構成とキュベットの投下の様子を示す正面断面拡大図。
【図5】生化学自動分析装置の電気的構成を示すブロック図。
【図6】生化学自動分析装置による測定の手順を示すフローチャート図。
【図7】ブランク値の指定を行うときのディスプレイの表示画面を示す図。
【図8】キュベット搬送部が反応層へのキュベットのセット有無を調べる様子を示す要部断面図。
【符号の説明】
【0116】
1 生化学分析装置
2 キュベット(反応容器)
14 タッチパネル式ディスプレイ(表示部、指定部)
21 反応槽
22 検体庫
23 試薬庫
31 測光部(吸光度測定部)
41 分注部(試薬分注部、検体分注部)
75 制御CPU(制御部の一部、演算部)
78 駆動信号処理CPU(制御部の一部)
81 ダストポッド(使用済容器貯溜部)
95 キュベット搬送部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のディスポーザブル反応容器をセット可能な反応槽と、
前記反応容器に試薬を分注する試薬分注部と、
前記反応容器に前記検体を分注する検体分注部と、
前記反応容器に光を当ててその吸光度を測定する吸光度測定部と、
前記吸光度測定部の測定値を演算する演算部と、
を備え、
前記吸光度測定部は、前記反応容器に試薬と検体とを分注して反応させた後の吸光度である反応吸光度を測定するとともに、前記反応容器が空の状態のときの吸光度である第1ブランク値と、前記反応容器に試薬のみを分注したときの吸光度である第2ブランク値と、の少なくとも何れか一方を測定可能に構成され、
前記演算部は、前記第1ブランク値及び第2ブランク値の少なくとも何れか一方に基づいて、前記反応吸光度を補正する演算が可能であることを特徴とする生化学自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生化学自動分析装置であって、
前記吸光度測定部は、前記第1ブランク値と前記第2ブランク値の両方を測定可能に構成されるとともに、
前記演算部による前記反応吸光度を補正する演算の際に使用されるブランク値として、前記第1ブランク値及び前記第2ブランク値から選択して指定可能な指定部を備えることを特徴とする生化学自動分析装置。
【請求項3】
請求項2に記載の生化学自動分析装置であって、
前記指定部は、前記演算部による前記反応吸光度の補正の演算をしないように指定可能であることを特徴とする生化学自動分析装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の生化学自動分析装置であって、
空の前記反応容器を前記反応槽へセット可能であり、且つ前記反応吸光度を測定した後の前記反応容器を前記反応槽から取り外して廃棄することが可能な搬送部と、
この搬送部を制御する制御部と、を備え、
前記搬送部は、前記反応容器を把持可能な把持アームと、この把持アームによる前記反応容器の把持を検知する把持センサと、を備え、
前記制御部は、空の前記反応容器を前記反応槽へセットする前に当該セット予定箇所において前記把持アームを把持動作させ、前記把持センサが前記反応容器の把持を検知しないときにのみ空の前記反応容器を前記反応槽へセットするように前記搬送部を制御することを特徴とする生化学自動分析装置。
【請求項5】
請求項4に記載の生化学自動分析装置であって、
前記制御部は、前記セット予定箇所において前記把持アームを把持動作させたときに前記把持センサが前記反応容器の把持を検知したときは、当該反応容器を前記反応槽から取り外して廃棄するように前記搬送部を制御することを特徴とする生化学自動分析装置。
【請求項6】
請求項1から3までの何れか一項に記載の生化学自動分析装置であって、
使用済の前記反応容器を貯溜可能な使用済容器貯溜部と、
前記反応吸光度を測定した後の前記反応容器を前記反応槽から取り外して前記使用済容器貯溜部に投下して廃棄することが可能な搬送部と、
この搬送部を制御する制御部と、を備え、
前記搬送部は、前記反応容器を把持可能な把持アームを備え、
前記使用済容器貯溜部は投入孔を備えるとともに、その投入孔には上下方向のガイド壁が備えられており、
使用済の前記反応容器を廃棄するときは、前記制御部は、当該反応容器を前記把持アームで把持した状態でその反応容器の側面を前記ガイド壁に近接又は接触させ、その位置で前記把持アームの把持を解除するように制御することを特徴とする生化学自動分析装置。
【請求項7】
請求項6に記載の生化学自動分析装置であって、
前記把持アームによる前記反応容器の把持の解除時に、当該把持アームが下降していることを特徴とする生化学自動分析装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の生化学自動分析装置であって、
前記使用済容器貯溜部の投入孔は、前記反応容器を差込可能な幅のスリット部を有していることを特徴とする生化学自動分析装置。
【請求項9】
請求項8に記載の生化学自動分析装置であって、
前記搬送部は、使用済の前記反応容器を、前記スリット部の長手方向の異なる位置で投下することが可能であることを特徴とする生化学自動分析装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の生化学自動分析装置であって、
前記投入孔は複数設けられており、
前記搬送部は、使用済の前記反応容器を、互いに異なる前記投入孔から投下することが可能であることを特徴とする生化学自動分析装置。
【請求項11】
請求項1から3までの何れか一項に記載の生化学自動分析装置であって、
使用済の前記反応容器を貯溜可能な使用済容器貯溜部と、
前記反応吸光度を測定した後の前記反応容器を前記反応槽から取り外して前記使用済容器貯溜部に廃棄することが可能な搬送部と、
この搬送部を制御する制御部と、
前記搬送部による前記反応容器の廃棄個数を記憶する記憶部と、
を備え、
前記使用済容器貯溜部は、装置本体に着脱可能な貯溜容器と、この貯溜容器が前記装置本体から取り外されたことを検知する取外しセンサと、を備え、
前記制御部は、前記搬送部によって前記使用済容器貯溜部に前記反応容器を1つ廃棄するごとにカウントして前記記憶部に記憶し、この記憶内容が所定の値に達するとユーザに報知するとともに、
前記貯溜容器が前記装置本体から取り外されたことを前記取外しセンサが検知したときは、前記制御部は前記記憶部の記憶内容をリセットすることを特徴とする生化学自動分析装置。
【請求項12】
請求項11に記載の生化学自動分析装置であって、
前記貯溜容器は、前記装置本体から取り外すときに手を掛けるための把手を備えるとともに、当該貯溜容器の内部に袋体を装着できるように構成していることを特徴とする生化学自動分析装置。
【請求項13】
請求項1から3までの何れか一項に記載の生化学自動分析装置であって、
使用済の前記反応容器を貯溜可能な使用済容器貯溜部と、
検体容器を収納可能な検体庫及び第2検体庫と、
を備え、
前記第2検体庫はスライド自在なホルダを備え、このホルダを装置本体の外部に水平に引き出した状態で前記検体容器を装着し、当該ホルダを装置本体の内部にセットすることで前記検体分注部により分注可能に構成され、
前記検体庫の検体の測定中に前記第2検体庫の検体の測定を割り込ませて行うことが可能に構成されていることを特徴とする生化学自動分析装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−26051(P2008−26051A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196545(P2006−196545)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】