説明

生地改良剤及びそれを用いたベーカリー

【課題】アーモンドプードルの代替物を、安価で、安定して提供する。また、アーモンドプードルのもつ、ベーカリー生地の物性改良機能を応用した生地改良剤、さらに、それらをベーカリー生地に添加し、焼成したベーカリーを提供する。
【解決手段】上記課題を解決するために、本発明は、必須成分として、パン粉、オカラ、油分を含み、これらを混合し、乾燥した粉状にした生地改良剤の構成とした。必要に応じ、呈味原料、フレーバー、色素、乳化安定剤を添加した生地改良剤の構成とした。アーモンドプードルフレーバーであれば、アーモンドプードル代替物となる。また、それら生地改良剤を、任意の菓子、パン生地に添加し、加熱し、口ほぐれがよく、ソフト感、しっとり感があり、風味のよい多種多様な菓子、パンなどのベーカリーの構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、菓子、パンなどのベーカリー生地の物性改良を目的とした生地改良剤、及びそれを用いて焼成されたベーカリーに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
昨今の原料価格高騰の影響により、製菓、製パン業界においては原料の見直しが進み、消費者視点に立った価格の維持に努めているのが現状である。例えば、アーモンドプードルも例外ではなく、もともと安価な原料ではないがさらに価格が高騰している。しかし、アーモンドプードルはお菓子には欠かせない原料であり、またその代替もなくメーカーも頭を悩ませている。
【0003】
アーモンドプードルとは、アーモンドをローストした粉末で、五訂日本食品標準成分表のアーモンド/乾の項によれば、100g当たり、水分4.6g、タンパク質18.6g、脂質54.2g、炭水化物19.7g、灰分2.9g、食物繊維10.4gとされる。
【0004】
このアーモンドプードルを菓子生地に添加することにより、菓子の口ほぐれが良くなりソフトな食感となる。また、油脂含量も50%以上と多いため、しっとりした菓子に仕上がる。風味は、アーモンド特有の香りとほのかな甘みがある。アーモンドプードルを使用した菓子としては「フィナンシェ」などが代表的である。
【0005】
フィナンシェとは、アーモンドプードルを主原料に、卵白、バター、砂糖を混合し、フィナンシェ型に入れ、焼いた菓子。焦がしバター、アーモンド風味が特徴で、形、風味のバリエーションも豊富である。
【0006】
特許文献1において、粉砕アーモンドと糖の混合物を加熱したマーチパンに使用する代用マーチパン組成物が公開されている。代用マーチンパン組成物は、マーチパンに存在する粉砕アーモンドの少なくとも一部を粉末化核実又はミールで置換する、糖及び脂質の混合物を含むものである。
【特許文献1】特公昭60−17489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、アーモンドプードルの代替物を、安価で、安定して提供すること、及びアーモンドプードルのもつ、ベーカリー生地の物性改良機能を応用した生地改良剤、さらに、それらをベーカリー生地に添加し、焼成したベーカリーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の目的を達成するために、必須成分として、パン粉、オカラ、油分を含み、これらを混合し、乾燥させ、粉状に成型したことを特徴とする生地改良剤の構成、乾燥パン粉、乾燥オカラを混合し、次に、液状の油分を徐々に混合しながら添加し、粉状に成型したことを特徴とする生地改良剤の構成、乳化安定剤、糖分、呈味成分、着色料、香料の内何れか1以上を含むことを特徴とする前記何れかに記載の生地改良剤の構成、前記オカラが、生オカラであって、成型物中、5〜30重量%の範囲で添加されていることを特徴とする前記何れかに記載の生地改良剤の構成、前記乾燥オカラが、生地改良剤中、5〜30重量%の範囲で添加されていることを特徴とする前記何れかに記載の生地改良剤の構成、乾燥オカラが、10メッシュ(目開き1.70mm/目の大きさ2.45mm)スルーかつ30メッシュ(目開き532μm/目の大きさ0.84mm)オーバーの粒径であることを特徴とする前記何れかに記載の生地改良剤の構成、パン粉が、成型組成物中、30〜70重量%の範囲で添加されていることを特徴とする前記何れかに記載の生地改良剤の構成、パン粉が、20メッシュ(目開き955μm/目の大きさ1.27mm)スルーの粒径であることを特徴とする前記何れかに記載の生地改良剤の構成、油分を30〜60重量%、粉糖、アーモンドフレーバーを添加し、アーモンドプードル代替物としたことを特徴とする前記何れかに記載の生地改良剤の構成、前記何れかに記載の生地改良剤を、ベーカリー生地に添加し、加熱したことを特徴とするベーカリーの構成、糖分100重量部と卵白100重量部を混合した混合物に、前記生地改良剤100重量部と小麦粉10重量部を添加混合し、さらに溶解した油脂100重量部を添加し、撹拌混合した生地を、型に流し、焼成したことを特徴とするフィナンシェ様ベーカリーの構成とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明である生地改良材をベーカリーに添加し、焼成することで、ベーカリーの口ほぐれ、ソフト感、しっとり感等の物性を改良することができる。
【0010】
アーモンドフレーバーを添加すれば、アーモンドプードルを添加したときと同等の物性、風味をベーカリーに付与することができる。その見た目、使い勝手もアーモンドプードルと同等である。従って、従来にないアーモンドプードルの代替品となり、安価で、安定して供給することが可能になる。
【0011】
さらに、アーモンドフレーバーに限らず、他の種実類、穀類、野菜、フルーツなどの呈味成分を使用し、風味にバリエーションを持たせ、口溶けの、ソフトな物性のベーカリーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
アーモンドプードルの代替物を、安価で、安定して提供すること、及びアーモンドプードルのもつ、ベーカリー生地の物性改良機能を応用した生地改良剤、さらに、それらをベーカリー生地に添加し、焼成したベーカリーを提供することを目的を必須成分として、パン粉、オカラ、油分を含み、これらを混合し、乾燥した粉状にした生地改良剤の構成とし、さらに、必要に応じ、呈味原料、フレーバー、色素、乳化安定剤を添加した生地改良剤の構成、また、前記オカラが乾燥オカラであれば、10メッシュ(目開き1.70mm/目の大きさ2.45mm)スルーかつ30メッシュ(目開き532μm/目の大きさ0.84mm)オーバーの粒径とし、前記パン粉が20メッシュ(目開き955μm/目の大きさ1.27mm)スルーの粒径とした生地改良剤の構成とすることで実現した。
【0013】
また、それら生地改良剤を、任意の菓子、パン生地に添加し、加熱し、口ほぐれがよく、ソフト感、しっとり感があり、風味のよい多種多様な菓子、パンの構成とすることで実現した。
【0014】
ここで、乾燥パン粉とは、小麦粉から作られたパンを乾燥させ、粉砕した粉で、フライや揚げ物の衣にしたり、ハンバーグのつなぎに使用される。乾燥させていない生のパンをフードプロセッサー等で粉砕したものは、生パン粉、適度に乾燥させたものは半生パン粉と呼ばれる。パン粉を添加する目的は、ベーカリーにソフトな物性と、口ほぐれの良さを付与する。
【0015】
乾燥パン粉は、五訂日本食品標準成分表によれば、100g当たり、水分13.5g、タンパク質14.6g、脂質6.8g、炭水化物63.4g、灰分1.7g、食物繊維は、4.0gとされる。
【0016】
本発明で用いられるパン粉は、生地改良材の製造工程において、乾燥工程を採用しないときは、乾燥パン粉で、乾燥工程を採用する場合は、乾燥パン粉のみならず、生パン粉、半生パン粉も使用することができる。その場合は、乾燥後、粉砕、成型(ふるい分けなどし、所望の粒径を選択することも含む)する。
【0017】
また、その粒径は、ステンレス篩であれば、線番30#、20メッシュ(目開き955μm)スルー、さらに好ましくは線番34#、40メッシュ(目開き402μm)スルーの粒径であることが望ましい。20メッシュオーバーであると、ベーカリーでの食感も荒く感じる。
【0018】
オカラとは、豆腐を作るときの大豆の絞りカスである。なお、他の豆類を用いて、豆腐を作るときでるオカラであってもよい。オカラには、豆乳を絞ったままの水分を多量に含んだ状態の生オカラ、乾燥した乾燥オカラがあり、どちらも本発明の生地改良剤に使用することができる。アーモンドプードルと同等量の油分を吸油させるためのもので、
【0019】
生オカラ(未乾燥)の組成は、五訂日本食品標準成分表によれば、100g当たり、水分81.1g、タンパク質4.8g、脂質3.6g、炭水化物9.7g、灰分0.8g、食物繊維は、9.7gとされる。流通品により、水分は75〜80%と範囲がある。
【0020】
乾燥オカラは、オカラをドラム乾燥などで、乾燥させたもので、100g当たり、水分10g、タンパク質23g、脂質17g、炭水化物46g、灰分4g程度とされる。
【0021】
本発明に使用する乾燥オカラの粒径は、ステンレス篩であれば、10メッシュ(目開き1.70mm)スルーかつ30メッシュ(目開き532μm)オーバーの粒径であることが望ましい。粒径が上記より、細かいと、本発明である生地改良材が粉状に成型されず、ペースト状になってしまう。
【0022】
油分には、食品に一般に使用する油が使用できる。特に、室温(概ね0℃〜40℃)で液状が好適で、ナタネ油、パーム油の分別油であるパーム軟質油、大豆油、コメ油、コーン油などの液状油が例示できる。その添加量は、アーモンドプードル代替物であれば、アーモンドプードルと同程度(50重量%前後)となるような範囲で添加する。その範囲は、本発明である生地改良剤の乾燥(水分5%程度)させた状態において、30〜60重量%である。これによりアーモンドプードルと同様な物性、風味を生地改良剤に付与することができる。
【0023】
乳化安定剤には、小麦、大豆、牛乳など由来の乳化性タンパク質、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチンなどの乳化剤が例示でき、本発明に使用することができる。乳化安定剤はオカラへの油分の吸着を補強し、さらに生地にソフト感、耐老化性を付与する目的で添加される。
【0024】
その添加量は、本発明である生地改良剤の乾燥(水分5%程度)させた状態において、0〜5重量%の範囲が望ましい。
【0025】
糖分、呈味成分、着色料、香料は、本発明である生地改良材が、ベーカリーに付与する風味により選択することができる。
【0026】
糖類としては、ショ糖、黒糖、麦芽糖、果糖、乳糖、トレハロース、それらの粉末、特にアーモンドプードル代替品では、砂糖の粉糖が最適である。最も、プードルに近い甘みを呈する。
【0027】
呈味成分としては、胡桃、栗などの種実類、胡麻、サツマイモなど穀類、ホウレン草、カボチャ、ニンジンなど野菜、イチゴ、ブルーベリー、柑橘類などのフルーツなどの原料、粉末、ジュース、濃縮物、クエン酸などの酸味料などが上げられる。なお、これらに限定するものではない。
【0028】
それら、呈味成分に合わせ、本発明である生地改良材が添加されるベーカリー生地に、適宜、着色料、フレーバーを添加し、ベーカリー生地に色と香りを付与することができる。
【実施例1】
【0029】
本発明について、実施例に基づき、より詳細に説明する。しかし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0030】
図1に、実施例1のアーモンドプードル代替物の配合組成を示す。本発明の生地改良材の一例であるアーモンドプードル代替物は、乾燥パン粉(20メッシュスルー)、乾燥オカラ(10メッシュスルー)、粉糖(ショ糖)を混合し、次に、レシチン、フレーバーを溶解させた液状油を徐々に、前記粉体の混合物に添加し、粉状に成型した。
【0031】
液状油を徐々に添加し、混合していくことで、本発明の生地改良材は粉状に自然と成型される。さらに、好適な粒径を篩などで、選別してもよい。
【実施例2】
【0032】
次に、本発明である生地改良材を用いたベーカリーにつて説明する。ベーカリーは、小麦粉などの穀粉に、水分、糖分、油分、乳製品、卵製品、その他添加物を添加し、捏ねた生地を、オーブンなどで加熱(焼成)したパン、菓子などの食品である。なお、加熱には、蒸気で蒸すこと、マイクロ波照射なども含まれる。
【0033】
ここでは、ベーカリーとして、フィナンシェ様ベーカリーについて説明する。図2に、フィナンシェ(比較例1)及び本発明である生地改良材の一例のアーモンドプードル代替物を添加したフィナンシェ様ベーカリー(実施例2)の配合組成を示す。
【0034】
比較例1は、アーモンドプードル100重量部を用いて、作成した一般的なフィナンシェの組成である。マーガリンは、バターであってもよい。
【0035】
実施例2は、アーモンドプードルの全量100重量部を実施例1のアーモンドプードル代替物に置換したものである。
【0036】
次に、実施例2の作成方法について説明する。粉糖100重量部と卵白100重量部を混合し、混合物を作る。次に実施例2の生地改良剤100重量部と小麦粉10重量部を前記混合物に添加混合する。
【0037】
さらに、溶解したマーガリン100重量部を徐々に添加し、撹拌混合し、生地準備する。そして、型に生地を流し、オーブンで200℃、15分焼成し、完成する。なお、比較例1も実施例2と同様に作成する。アーモンドプードル代替物に替え、アーモンドプードルとすればよい。
【0038】
次に、比較例1、実施例2の物性について、官能検査結果(図3)を示す。官能検査は、図3にある検査項目について行った。
【0039】
官能評価は、熟練したパネラー20名により行われ、評価結果は、各検査項目において、「よい」と答えた人数を記載した。その結果、全ての項目において、本発明である実施例1の生地改良材を用いて作成したフィナンシェ様ベーカリー(実施例2)は、アーモンドプードルを用いて作成したフィナンシェ(比較例1)と同等以上によい結果であった。口ほぐれ、風味においては、実施例2が特に優れていた。
【0040】
なお、実施例1において、生地改良材にアーモンドプードルフレーバーを添加せず、他の呈味原料、フレーバー、色素を用いて、他の風味の生地改良材を作成し、菓子、パンの生地に適当量添加し、加熱すれば、口ほぐれがよく、ソフト感、しっとり感があり、風味のよい多種多様な菓子、パンを提供できることは、勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】アーモンドプードル代替物の配合組成である。
【図2】フィナンシェ(比較例1)及び本発明である生地改良材の一例のアーモンドプードル代替物を添加したフィナンシェ様ベーカリー(実施例2)の配合組成である。
【図3】実施例2の官能検査結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
必須成分として、パン粉、オカラ、油分を含み、これらを混合し、乾燥させ、粉状に成型したことを特徴とする生地改良剤。
【請求項2】
乾燥パン粉、乾燥オカラを混合し、次に、液状の油分を徐々に混合しながら添加し、粉状に成型したことを特徴とする生地改良剤。
【請求項3】
乳化安定剤、糖分、呈味成分、着色料、香料の内何れか1以上を含むことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の生地改良剤。
【請求項4】
前記オカラが、生オカラであって、成型物中、5〜30重量%の範囲で添加されていることを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の生地改良剤。
【請求項5】
前記乾燥オカラが、生地改良剤中、5〜30重量%の範囲で添加されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の生地改良剤。
【請求項6】
乾燥オカラが、10メッシュスルーかつ30メッシュオーバーの粒径であることを特徴とする請求項2、請求項3又は請求項5の何れかに記載の生地改良剤。
【請求項7】
パン粉が、成型組成物中、30〜70重量%の範囲で添加されていることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れかに記載の生地改良剤。
【請求項8】
パン粉が、20メッシュスルーの粒径であることを特徴とする請求項1〜請求項7の何れかに記載の生地改良剤。
【請求項9】
油分を30〜60重量%、粉糖、アーモンドフレーバーを添加し、アーモンドプードル代替物としたことを特徴とする請求項1〜請求項8の何れかに記載の生地改良剤。
【請求項10】
請求項1〜請求項9の何れかに記載の生地改良剤を、ベーカリー生地に添加し、加熱したことを特徴とするベーカリー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−278898(P2009−278898A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133015(P2008−133015)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000165284)月島食品工業株式会社 (22)
【Fターム(参考)】