説明

生得的免疫およびアレルギー性免疫を活性化させるための組成物および方法

【課題】プロテオソーム(Proteosome)ベースの免疫活性組成物の治療処方物を作成および使用するための方法の提供。
【解決手段】プロテオソームおよびリポサッカリドを含む免疫原性組成物を用いて、例えば、感染性疾患を処置または予防するための非特異的な生得の免疫応答を誘発または増強し、さらに、生得の免疫系を活性化した後、抗原をさらに含む免疫原性組成物を用いて、特定の適応的免疫反応を誘発することができ、さらに、過反応性応答または炎症性免疫応答、例えばアレルギー反応を変更し得る組成物。このような組成物は、予防薬として、または感染性疾患(例えば、寄生生物、真菌、細菌またはウイルスの感染)を処置もしくは予防するための種々の臨床状況において、または不適切な炎症性免疫応答(例えば、アレルギー性反応または喘息)を変更するために用いられてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、一般に免疫調節に関しており、さらに詳細には、適応的免疫応答が強化もしくは増強されるように非特異的免疫応答(例えば、生得の免疫応答)を誘導するための、または感染性疾患が処置もしくは予防されるように非特異的な免疫応答および特異的な適応的免疫応答の両方を誘導するための、またはアレルギー性喘息のような炎症性反応を処置または予防するための免疫応答を調節するための、免疫刺激性プロテオソーム(Proteosome)組成物の治療的な使用、に関している。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
いくつかの微生物学的病原体は、強固な宿主免疫応答に直面した場合でさえ致死性の感染を生じ得る。それにもかかわらず、猛烈な感染性疾患の制御は一般に、厳格な公衆衛生の手段、薬物(例えば抗生物質)およびワクチンを用いることによって現代社会において成功している。ワクチンは代表的には、特異的な(適応的)免疫応答を活性化するために弱毒化した微生物または微生物抗原を含む。宿主において抗原が防御免疫応答を誘導する能力は、免疫刺激性因子またはアジュバントを用いて抗原を処方することによって強化され得る。ミョウバン(硫酸アルミニウム)ベースのアジュバントは、認可された注射可能なヒトワクチンのためにほとんど独占的に用いられる。しかし、適応的免疫応答は、抗原の起源に関する情報(すなわち、自己対非自己の抗原)および誘導される応答のタイプ(すなわち、T細胞および/またはB細胞の応答)を提供するシグナルを要する。最近集った証拠では、これらのシグナルは生得の免疫系によって提供され得ることが示される(例えば、非特許文献1;非特許文献2)。
【0003】
生得の免疫は、感染に対する抗体依存性防御の第一線であり、多くの場合は感染性因子を排除し得る。生得の免疫の構成要素は、微生物の病原の特徴であり、哺乳動物細胞には存在しない構造を認識する。生得の免疫の原則的なエフェクター細胞は好中球、単核球食細胞、およびナチュラルキラー(NK)細胞である。好中球およびマクロファージは、血液および組織中で微生物を認識する表面レセプターを発現して、摂食を刺激する(食作用、例えば、マンノースまたはオプソニンレセプター)か、または摂食に関与しない食細胞を活性化する(例えば、トール様レセプター、TLRs)。生得の免疫のエフェクター機構がしばしば用いられて、適応的免疫応答においてさえ、微生物を排除する。従って、生得の免疫応答は、抗原と呼応して機能するシグナルを提供して、抗原特異的(適応的)TおよびBリンパ球の増殖および分化を刺激し得る。
【0004】
効率的な免疫応答は、生得の免疫応答と適応的な免疫応答との間の連絡に依存する。Tリンパ球は、エフェクター分子の放出を制御することによって適応的免疫応答を協調させるために重要である。例えば、Tヘルパー(Th)1細胞は、細胞媒介性免疫の発達に重要である、インターロイキン−2(IL−2)、腫瘍壊死因子α(TNF−α)およびインターフェロンγ(IFN−γ)を産生する(非特許文献3;非特許文献4)。対照的に、Th2細胞は、IgEの産生の刺激、粘膜肥満細胞症および好酸球増加症について重要であるIL−4、IL−13、IL−5、IL−9、IL−6およびIL−10を産生する(非特許文献3;非特許文献4)。Th1またはTh2表現型へのシフトは、病原体に対する防御に重要であり得るが、一方向または別へのシフトはまた、自己免疫疾患(Th1)または炎症性疾患(Th2)の誘導に関連し得る。
【0005】
アレルギーまたは喘息のような炎症性疾患において、Th1、Th2およびT調節性サイトカイン応答の間の微妙なバランスはTh2表現型へシフトするようである。例えば、喘息は、可変性の気流閉塞、気道過敏症(AHR)、および気道炎症によって特徴付けられる肺の複合的な炎症性疾患である。喘息は元来、多因子性であるが、炎症性プロセス(喘息のほとんどの一般的な型では、外因性またはアレルギー性の喘息と呼ばれる)は、通常に吸引されたアレルゲンに対する異常な免疫応答の結果であると考えられる。影響を受け易い個体の肺におけるCD4+細胞に対する吸引されたアレルゲンの提示によって、Th2サイトカイン、IL−4、IL−13およびIL−5の産生が生じ、これが気道粘膜において肥満細胞および好酸球の分化、補充および活性化を制御する。これらのエフェクター細胞は、種々の炎症性メディエータ(例えば、ヒスタミン、粘膜分泌促進物質、好酸球由来塩基性タンパク質、プロテアーゼ)を放出する。このメディエータは個々にまたは一斉に急性の気管支収縮、気道上皮層の破壊、気道緊張の神経制御における変更、粘液産生の増大、および平滑筋細胞量の増大を生じる。炎症性プロセスのこれらの各々の結果は、AHRと組み合わせて起きるかまたは生じ得る。喘息の頻度、罹患率および死亡率は、過去20年間にわたって世界中で増大しており、既存の抗炎症性の医薬(例えば、コルチコステロイド)は、疾患が緩和されない(すなわち、症状が処置されるだけであり、この医薬が停止されれば戻る)という点で限界があり、そしてこれらの医薬は、重大な副作用の可能性を伴っている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】FearonおよびLocksley,「Science」,1996年,272:50
【非特許文献2】MedzhitovおよびJaneway,「Curr.Opin.Immunol.」,1997年,9:4,
【非特許文献3】Mosmannら、「J.Immunol.」,1986年,136:2348
【非特許文献4】StreetおよびMosmann,「FASEB J.」,1991年,5:171
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、微生物感染およびこのような感染に対する免疫病理的(例えば、炎症性)の応答に対して治療上有効である免疫刺激性組成物、特に防御免疫を強化または増強し得る組成物、ならびに免疫病理的応答を抑制し得る組成物を同定および開発する必要性が存在する。本発明は、このような必要性を満たし、そしてさらに他の関連の利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本明細書に記載される発明は、プロテオソームベースの免疫活性組成物の治療処方物を作製および使用するための方法を提供する。プロテオソームおよびリポサッカリドを含む免疫刺激性組成物を用いて、感染性疾患を処置または予防するための非特異的な生得の免疫応答を誘発または増強し得る。さらに、生得の免疫系を活性化した後、抗原をさらに含む免疫原性組成物を用いて、特定の適応的免疫応答を誘発し得る。さらに、アレルギー反応のような過敏性の応答または炎症性の免疫応答を変更し得る組成物が提供される。
【0009】
本発明の1実施形態では、非特異的免疫応答を誘発するための方法が提供され、この方法は、プロテオソームおよびリポサッカリドを含む免疫刺激性組成物を被験体に対して非特異的な免疫応答を誘発するのに十分な量で投与する工程を包含する。1実施形態では、この非特異的な免疫応答は、ウイルス、寄生生物、真菌または細菌の感染である微生物感染を予防または処置する生得の免疫応答である。特定の実施形態では、この微生物感染はウイルス感染であり、ウイルス感染はインフルエンザ感染である。1実施形態では、この免疫刺激性組成物は、粘膜、経腸、非経口、経皮、経粘膜、経鼻および吸入のうちの少なくとも1つから選択される経路によって投与される。ある実施形態では、上記のリポサッカリドの最終含量は、プロテオソームタンパク質の重量パーセンテージとして約1%〜500%におよぶ。特定の実施形態では、このプロテオソームおよびリポサッカリドは、同じグラム陰性細菌種から得られるか、またはこのプロテオソームが第一のグラム陰性細菌種から得られ、かつこのリポサッカリドが、第二のグラム陰性細菌種から得られる。特定の実施形態では、このリポサッカリドは、Shigella種、Chlamydia種、Yersinia種、Pseudomonas種、Plesiomonas種、Escherichia種、Porphyromonas種およびSalmonella種のうちの少なくとも1つから選択されるグラム陰性細菌から得られる。特定の実施形態では、このプロテオソームは、Neisseria種から得られ、別の特定の実施形態では、このプロテオソームは、Neisseria meningitidisから得られ、そして上記リポサッカリドがShigella flexneriから得られる。
【0010】
別の実施形態では、この提供される方法はさらに、上記免疫刺激性組成物の投与後に、プロテオソーム、リポサッカリドおよび微生物抗原を含む免疫原性組成物を上記被験体に投与する工程であって、この微生物抗原がウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原または寄生生物抗原である工程を包含する。特定の実施形態では、この微生物抗原は組み換え体である。他の実施形態では、この微生物抗原は、Bacillus anthracis、Chlamydia trachomatis、Yersinia pestis、または腸病原性Escherichia coliから得られる細菌抗原である。特定の実施形態では、この細菌抗原は、Bacillus anthracis由来の防御抗原である。別の特定の実施形態では、この微生物抗原は、ウイルススプリット抗原であり、このウイルススプリット抗原はインフルエンザスプリット抗原である。特定の実施形態では、この免疫原性組成物は、ウイルス、細菌、真菌もしくは原生動物である同じ微生物から得られてもよいし、または異なる微生物から得られてもよい、少なくとも2つの微生物抗原を含む。この免疫原性組成物は、特定の実施形態に従って適応的免疫応答を誘発する。特定の実施形態によれば、上記免疫原性組成物のうちのプロテオソームおよびリポサッカリドの重量とこの免疫原性組成物のうちの微生物抗原の重量との比は4:1〜1:4、1:1〜1:500、または1:1〜1:200の範囲内である。他の実施形態では、この免疫原性組成物は、上記免疫刺激性組成物の約1日〜約7日後に投与され、そして他の特定の実施形態では、少なくとも1つの上記免疫刺激性組成物および免疫原性組成物はさらに、薬学的に受容可能なキャリアを含む。
【0011】
本発明はまた、微生物感染を処置または予防するための方法であって:
(a)プロテオソームおよびリポサッカリドを含む免疫刺激性組成物を被験体に対して、生得の免疫応答を誘発するのに十分な量および条件下で投与する工程と;(b)プロテオソーム、リポサッカリドおよび微生物抗原を含む免疫原性組成物を被験体に対して、適応的免疫応答を誘発するのに十分な量および条件下で投与する工程とを包含し、その結果、ウイルス、寄生生物、真菌または細菌の感染であるこの微生物感染が処置または予防される、方法を提供する。詳細な実施形態では、微生物感染はウイルス感染であり、ウイルス感染はインフルエンザ感染である。特定の実施形態では、上記の免疫刺激性組成物は、上記の免疫原性組成物の約1日前〜約10日前に投与される。1実施形態では、免疫刺激性組成物および免疫原性組成物の各々が粘膜、経腸、非経口、経皮、経粘膜、経鼻および吸入のうちの少なくとも1つから選択される経路によって投与される;そして特定の実施形態では、この組成物は経鼻的に投与される。1実施形態では、このリポサッカリドの最終含量は、プロテオソームタンパク質の重量パーセンテージとして上記免疫刺激性および免疫原性の組成物の各々において約1%〜500%におよぶ。特定の実施形態では、この免疫刺激性組成物のプロテオソームおよびリポサッカリドは、同じグラム陰性細菌種から得られるか、またはこの免疫原性組成物のプロテオソームおよびリポサッカリドは、異なるグラム陰性細菌種から得られる。別の特定の実施形態では、この免疫刺激性組成物のプロテオソームおよびリポサッカリドは、同じグラム陰性細菌種から得られるか、またはこの免疫原性組成物のプロテオソームおよびリポサッカリドは、異なるグラム陰性細菌種から得られる。他の特定の実施形態では、上記免疫刺激性および免疫原性の組成物のプロテオソームは、Neisseria種から得られ、そしてこの免疫刺激性および免疫原性の組成物のリポサッカリドの少なくとも1つが、Shigella種、Chlamydia種、Yersinia種、Pseudomonas種、Plesiomonas種、Escherichia種、Porphyromonas種およびSalmonella種のうちの少なくとも1つから得られる。別の特定の実施形態では、上記の免疫刺激性および免疫原性の組成物の各々のプロテオソームは、Neisseria meningitidisから得られ、そして上記免疫刺激性および免疫原性の組成物の各々のリポサッカリドはShigella flexneriから得られる。微生物抗原は、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原または寄生生物抗原である。特定の実施形態では、この免疫原性組成物の微生物抗体は組み換え体である。他の実施形態では、この微生物抗原は、Bacillus anthracis、Chlamydia trachomatis、Yersinia pestis、または腸病原性Escherichia coliから得られる細菌抗原である。特定の実施形態では、この細菌抗原は、Bacillus anthracis由来の防御抗原である。別の特定の実施形態では、この微生物抗原は、ウイルススプリット抗原であり、このウイルススプリット抗原はインフルエンザスプリット抗原である。特定の実施形態では、この免疫原性組成物は、ウイルス、細菌、真菌または原生動物である同じ微生物から得られてもよいし、または異なる微生物から得られてもよい、少なくとも2つの微生物抗原を含む。この免疫原性組成物は、特定の実施形態によって適応的免疫応答を誘発する。この免疫原性組成物は、特定の実施形態によって適応的免疫応答を誘発する。特定の実施形態によれば、上記免疫原性組成物のうちのプロテオソームおよびリポサッカリドの重量とこの免疫原性組成物のうちの微生物抗原の重量との比は4:1〜1:4、1:1〜1:500、または1:1〜1:200の範囲内である。他の実施形態では、この免疫原性組成物は、上記免疫刺激性組成物の約1日〜7日後または約1日〜約10日後に投与され、そして他の特定の実施形態では、少なくとも1つの免疫刺激性組成物および免疫原性組成物はさらに、薬学的に受容可能なキャリアを含む。
【0012】
また、炎症性免疫応答を変更するための方法であって、プロテオソームおよびリポサッカリドを含む免疫調節性組成物を被験体に対して、炎症性免疫応答を変更するのに十分な量で投与し、この免疫調節性組成物が粘膜、経腸、非経口、経皮、経粘膜、経鼻および吸入のうちの少なくとも1つから選択される経路によって投与される工程を包含する方法が提供される。特定の実施形態では、リポサッカリドの最終含量は、プロテオソームタンパク質の重量パーセンテージとして約1%〜500%におよぶ。特定の実施形態では、このプロテオソームおよびリポサッカリドは、同じグラム陰性細菌種から得られ、そして別の特定の実施形態では、プロテオソームおよびリポサッカリドは、異なるグラム陰性細菌種から得られる。特定の実施形態による、グラム陰性細菌種は、Shigella種、Chlamydia種、Yersinia種、Pseudomonas種、Plesiomonas種、Escherichia種、Porphyromonas種およびSalmonella種のうちの少なくとも1つから選択される。特定の実施形態では、プロテオソームは、Neisseria種から得られる。別の特定の実施形態では、プロテオソームは、Neisseria meningitidisから得られ、そしてリポサッカリドはShigella flexneriから得られる。
【0013】
1実施形態では、炎症性免疫応答を変更するための方法であって、プロテオソームおよびリポサッカリドを含む免疫調節性組成物を被験体に対して、炎症性免疫応答を変更するのに十分な量で投与する工程を包含し、さらにこの免疫調節性組成物の投与後に、プロテオソーム、リポサッカリドおよび抗原を含む免疫原性組成物を被験体に投与する工程を包含する方法。特定の実施形態では、この免疫原性組成物は、少なくとも1つの微生物抗原を含み、この少なくとも1つの微生物抗原は、ウイルス、細菌、真菌または寄生生物である。特定の実施形態によれば、上記免疫原性組成物のうちのプロテオソームおよびリポサッカリドの重量とこの免疫原性組成物のうちの微生物抗原の重量との比は4:1〜1:4、1:1〜1:500、または1:1〜1:200の範囲内である。特定の実施形態では、この免疫原性組成物の抗原は、組み換え体である。別の実施形態では、この免疫刺激性組成物の抗原は、Bacillus anthracis、Chlamydia trachomatis、Yersinia pestis、または腸病原性Escherichia coliから得られる細菌抗原である。特定の実施形態では、この細菌抗原は、Bacillus anthracis由来の防御抗原である。別の特定の実施形態では、この免疫原性組成物の抗原は、ウイルススプリット抗原であり、そして特定の実施形態では、このウイルススプリット抗原はインフルエンザスプリット抗原である。別の実施形態では、この免疫原性組成物は、免疫調節性組成物の約1日〜約10日後に投与され、そして別の特定の実施形態では、この免疫原性組成物は適応的免疫応答を誘発する。特定の他の実施形態では、この炎症性免疫応答は、喘息またはアレルギー反応である。特定の実施形態によれば、少なくとも1つの免疫調節性組成物および免疫原性組成物はさらに、薬学的に受容可能なキャリアを含む。
【0014】
また、アレルギー反応を処置または予防するための方法であって、(a)その必要な被験体に対して、プロテオソームおよびリポサッカリドを含む免疫刺激性組成物を、炎症性免疫応答を変更するのに十分な量および条件下で投与する工程と;(b)この被験体に対して、プロテオソーム、リポサッカリドおよびアレルゲンを含む免疫原性組成物を、このアレルゲンに対する耐性を誘発するのに十分な量および条件下で投与する工程とを包含し、その結果このアレルギー反応が処置または予防され、この免疫刺激性組成物および免疫原性組成物の各々が粘膜、経腸、舌下、非経口、経皮、経粘膜、経鼻および吸入のうちの少なくとも1つから選択される経路によって投与される、方法が提供される。特定の実施形態では、この免疫調節性組成物は、免疫原性組成物の約1日前〜約10日前に投与される。1つの特定の実施形態では、このリポサッカリドの最終含量は、プロテオソームタンパク質の重量パーセンテージとして上記免疫刺激性および免疫原性の組成物の各々において約1%〜500%におよぶ。1実施形態では、この免疫刺激性組成物のプロテオソームおよびリポサッカリドは、同じグラム陰性細菌種から得られ、そして別の実施形態では、この免疫調節性組成物の上記プロテオソームおよびリポサッカリドは、異なるグラム陰性細菌種から得られる。別の特定の実施形態では、この免疫原性組成物のプロテオソームおよびリポサッカリドは、同じグラム陰性細菌種から得られ、そしてさらに別の特定の実施形態では、この免疫原性組成物のプロテオソームおよびリポサッカリドは、異なるグラム陰性細菌種から得られる。1つの特定の実施形態では。調節性および免疫原性の組成物の各々のプロテオソームは、Neisseria種から得られ、そして免疫調節性組成物および免疫原性組成物の少なくとも1つのリポサッカリドは、Shigella種、Chlamydia種、Yersinia種、Pseudomonas種、Plesiomonas種、Escherichia種、Porphyromonas種およびSalmonella種のうちの少なくとも1つから得られる。ある特定の実施形態では、各々の免疫調節性および免疫原性の組成物のプロテオソームは、Neisseria meningitidisから得られ、そして各々の免疫調節性および免疫原性の組成物のリポサッカリドは、Shigella flexneriから得られる。別の実施形態では、この免疫原性組成物はさらに、少なくとも2つのアレルゲンを含む。別の実施形態では、このアレルゲンは微生物抗原である。特定の実施形態では、上記免疫原性組成物のうちのプロテオソームおよびリポサッカリドの重量とこの免疫原性組成物のうちのアレルゲンの重量との比は、4:1〜1:4の範囲内、1:1〜1:500の範囲内、または1:1〜1:200の範囲内である。ある特定の実施形態では、この免疫原性組成物のアレルゲンは、組み換え体であり、他の実施形態では、このアレルゲンは細菌抗原である。さらに別の実施形態では、この免疫原性組成物のアレルゲンは、吸入された粒子、花粉、蒸気、ガス、食物、飲料、薬物、毒素、微生物抗原、鱗屑(dander)、動物由来の化合物、チリダニ糞便(dust mite feces)、ポリペプチド、炭水化物および核酸のうち少なくとも1つから選択される。特定の実施形態では、このアレルゲンは、カバノキ花粉である。別の実施形態では、この免疫原性組成物は、免疫調節性組成物の約1日〜約7日後、または約1日〜約10日後に投与される。別の実施形態では、このアレルギー反応は、喘息、アレルギー性肺胞炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻感冒、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性脈管炎およびアレルギー性鼻炎のうち少なくとも1つである。特定の実施形態では、少なくとも1つの免疫調節性組成物および免疫原性組成物はさらに薬学的に受容可能なキャリアを含む。
【0015】
また、微生物感染を処置または予防するための方法であって、プロテオソームおよびリポサッカリドを含む免疫刺激性組成物を被験体に対して、生得の免疫応答を誘発するのに十分な量で投与する工程を包含し、この微生物感染がウイルス、細菌、寄生生物または真菌の感染である、方法を提供する。特定の実施形態では、この微生物感染は細菌感染であり、この細菌感染はChlamydia trachomatis感染である。別の実施形態では、この微生物感染はウイルス感染であり、このウイルス感染はインフルエンザ感染である。特定の実施形態では、この免疫刺激性組成物は、粘膜、経腸、非経口、経皮、経粘膜、経鼻および吸入のうちの少なくとも1つから選択される経路によって投与される。1実施形態では、リポサッカリドの最終含量は、プロテオソームタンパク質の重量パーセンテージとして約1%〜500%におよぶ。他の実施形態では、プロテオソームおよびリポサッカリドは、同じグラム陰性細菌種から得られ、そして別の実施形態では、プロテオソームは、第一のグラム陰性細菌種から得られ、かつ上記リポサッカリドが、第二のグラム陰性細菌種から得られる。特定の実施形態では、リポサッカリドは、Shigella種、Chlamydia種、Yersinia種、Pseudomonas種、Plesiomonas種、Escherichia種、Porphyromonas種およびSalmonella種のうちの少なくとも1つから選択されるグラム陰性細菌から得られる。特定の実施形態では、プロテオソームは、Neisseria種から得られ、そして別の特定の実施形態では、このプロテオソームは、Neisseria meningitidisから得られ、そしてリポサッカリドがShigella flexneriから得られる。
【0016】
1つの特定の実施形態では、インフルエンザウイルス感染を処置または予防するための方法であって、プロテオソームおよびリポサッカリドを含む免疫刺激性組成物を被験体に対して、生得の免疫応答を誘発するのに十分な量で投与する工程を包含し、このプロテオソームがNeisseria meningitidisから得られ、そしてリポサッカリドがShigella flexneriから得られる、方法が提供される。
【0017】
本発明のこれらおよび他の局面は、以下の詳細な説明および添付の図面を参照して明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1−1】図1Aおよび図1Bは、プロテオソームバルク材料を製造するための2つの方法を示す(それぞれ、フローチャート1Aおよびフローチャート1B)。
【図1−2】図1Aおよび図1Bは、プロテオソームバルク材料を製造するための2つの方法を示す(それぞれ、フローチャート1Aおよびフローチャート1B)。
【図2】図2は、Shigella flexneri 2a LPSの製造のためのスキームを示す(フローチャート2)。
【図3】図3は、Protollin(商標)とも呼ばれるIVX−908プロテオソーム LPSアジュバントの製造のためのスキームを示す(フローチャート3)。
【図4−1】図4A〜図4Cは、経鼻的に2回、50μg、20μgまたは5μgのF1−Vを、Protollin(2.5、1、または0.25μg)とともにまたはProtollinなしで用いて免疫するか、またはミョウバン(Alhydrogel(登録商標))上に吸着された20μg F1−Vを筋肉内に注射したマウス由来の、それぞれ血清IgG、肺IgAおよび肺IgGの力価を示す。一次免疫の35日後に半分のマウスを安楽死させて、残りを55日目に安楽死させた。力価は、特定の抗体濃度の幾何平均として表す(血清IgGについてはμg/ml;肺IgAおよび肺IgGについてはng/ml);95%信頼限界を示す。
【図4−2】図4A〜図4Cは、経鼻的に2回、50μg、20μgまたは5μgのF1−Vを、Protollin(2.5、1、または0.25μg)とともにまたはProtollinなしで用いて免疫するか、またはミョウバン(Alhydrogel(登録商標))上に吸着された20μg F1−Vを筋肉内に注射したマウス由来の、それぞれ血清IgG、肺IgAおよび肺IgGの力価を示す。一次免疫の35日後に半分のマウスを安楽死させて、残りを55日目に安楽死させた。力価は、特定の抗体濃度の幾何平均として表す(血清IgGについてはμg/ml;肺IgAおよび肺IgGについてはng/ml);95%信頼限界を示す。
【図5−1】図5A〜図5Dは、エアロゾル化したYersinia pestisの致死用量を用いて負荷した後の生存マウスを示す。マウスを20μgのF1−Vを用いて2回、経鼻的にProtollinの有無において免疫するか、またはAlhydrogel(登録商標)上に吸着された20μg F1−Vを筋肉内で用いて免疫して、次いで初回の免疫後35日目(図5A)または55日目(図5B)にY.pestisの169 LD50に対する全身曝露によって負荷した。第二の研究では、マウスを、50μgのF1−Vを経鼻的に、1μgのProtollinの有無のもとで用いるか、またはAlhydrogel(登録商標)上に吸着されたF1−Vを筋肉内で用いて免疫したマウスを、初回の免疫後55日目(図5C)にY.pestisの254 LD50に対する全身曝露によって負荷した。図5Dは、169 LD50のエアロゾル化Y.pestisを用いた35日目または55日目の負荷に対するマウスの生存を示す。マウスを5μgのF1−Vを経鼻的に用いて、2.5μg、1μgまたは0.25μgのProtollinとともに、またはProtollinなしで用いて免疫した。全ての研究では、コントロール群の動物にはProtollinのみを投与したが、Y.pestisを負荷した際に死亡した。
【図5−2】図5A〜図5Dは、エアロゾル化したYersinia pestisの致死用量を用いて負荷した後の生存マウスを示す。マウスを20μgのF1−Vを用いて2回、経鼻的にProtollinの有無において免疫するか、またはAlhydrogel(登録商標)上に吸着された20μg F1−Vを筋肉内で用いて免疫して、次いで初回の免疫後35日目(図5A)または55日目(図5B)にY.pestisの169 LD50に対する全身曝露によって負荷した。第二の研究では、マウスを、50μgのF1−Vを経鼻的に、1μgのProtollinの有無のもとで用いるか、またはAlhydrogel(登録商標)上に吸着されたF1−Vを筋肉内で用いて免疫したマウスを、初回の免疫後55日目(図5C)にY.pestisの254 LD50に対する全身曝露によって負荷した。図5Dは、169 LD50のエアロゾル化Y.pestisを用いた35日目または55日目の負荷に対するマウスの生存を示す。マウスを5μgのF1−Vを経鼻的に用いて、2.5μg、1μgまたは0.25μgのProtollinとともに、またはProtollinなしで用いて免疫した。全ての研究では、コントロール群の動物にはProtollinのみを投与したが、Y.pestisを負荷した際に死亡した。
【図6】図6Aは、血清IgGレベルを示し、そして図6Bは、肺IgAレベルを示しており、これはProtollin(1μg)と混合されるか、またはProtollinなしのBacillus anthracis由来の5μgまたは25μgの組み換え防御抗原(rPA)を用いて0日目および14日目に経鼻的に免疫したマウスにおける、レベルを示す。
【図7】図7Aおよび図7Bは、Protollinと混合されたrPA(PA+Protollin)か、rPA単独(PA)か;または筋肉内に投与されたrPA(PA(IM))を用いて免疫したマウスから得たそれぞれ血清および肺洗浄液によるマクロファージのPA媒介性殺傷の中和を図示する(図7Bに説明される図は、図7Aおよび7Bの両方に用いられた記号を規定する)。
【図8】図8Aはマウスの死亡率を示し、図8Bはウスの罹患率(体重変化パーセント)を図示しており、これは、マウス適合A/H3インフルエンザウイルスの吸入投与による負荷の1日前(d−1)、2日前(d−2)または3日前(d−3)にProtollinを用いて免疫したマウスでの率である。図8Bでは、IVX=Protollin。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(発明の詳細な説明)
Protollin(商標)は、Neisseria meningitidisのようなグラム陰性細菌から調製されたプロテオソーム(単数または複数)(Projuvantとも呼ばれる)と呼ばれる外膜タンパク質調製物、および1つ以上のリポサッカリドを含む、外膜(OM)−リポサッカリド(LPS)アジュバントである。本明細書において記載されるとおり、Protollinは病原性微生物に対する防御を提供する強力な生得の免疫応答を誘発するために用いられ得る。従って、本発明は概して、Protollinを含有する免疫刺激性組成物が、細菌、ウイルス、真菌および原生動物を含む広範な種々の感染性因子に対して防御し得る広範なスペクトルの抗原依存性の非特異的な免疫応答を刺激し得るという驚くべき発見に関する。さらに、Protollinは、有害な免疫応答を調節または変更して、極めて強固な炎症性応答からの障害を最小化するために用いられ得る。従って、本明細書の説明によってまた、Protollinを含む免疫調節性組成物が炎症性応答、例えば、気道過敏性(AHR)を抑制するために、または免疫応答を変更してこれによって障害となる炎症性応答を最小限にする(例えば、Th2応答のTh1表現型へのシフト)ために用いられ得るという予期せぬ知見が得られる。本明細書においてさらに詳細に記載されるのは、プロテオソーム:LPSまたはプロテオソームを含む免疫刺激性および免疫調節性の組成物、ならびにプロテオソーム:LPSまたは1つ以上の微生物抗原とともに処方されたプロテオソームを含む免疫原性の組成物である。特定の実施形態では、この組成物は、特異的な免疫応答、非特異的な免疫応答、または両方のタイプの応答を誘導することによって微生物感染を処置または予防するような治療用途に適切である。他の実施形態では、本明細書に記載される組成物は、アレルギー性喘息またはAHRなどの関連の合併症のような炎症性の免疫応答を処置または予防するために適切である。本明細書の説明はまた、本明細書に記載される任意の組成物を調製するための方法を提供する。
【0020】
プロテオソームまたはProjuvantは、Neisseria種のようなグラム陰性細菌由来の外膜タンパク質(OMPs、ポーリン(porins)としても公知)の調製物を指し(例えば、Lowellら、J.Exp.Med.167:658,1988;Lowellら.,Science 240:800;Lynchら、Biophys.J.45:104,1984;Lowell、「New Generation Vaccines」第2版、Marcel Dekker,Inc.,New York,Basil,Hong Kong,193頁(1997);米国特許第5,726,292;米国特許第4,707,543号を参照のこと)、これは、1つ以上の細菌またはウイルスの抗原のような免疫原のためのキャリアまたはアジュバントとして有用である。プロテオソームは、疎水性であって、特定のウイルスに対して適合したサイズで、ヒトでの使用のために安全である。プロテオソームは、20〜800nmの、小胞または小胞様のOMPクラスターに自己アセンブルする能力を有し、そしてタンパク質抗原(Ags)、特に疎水性部分を有する抗原を非共有結合的に組み込むか、そのような抗原と協調するか、会合するかもしくは相互作用(例えば、静電気的または疎水性に)するか、またはそうでなければ協同する能力を有する。プロテオソームは、多分子膜構造または1つ以上のOMPの溶融した球状OMP組成物を含む、小胞または小胞様の形態に外膜タンパク質構成要素を提供する任意の調製方法の産物を含む。プロテオソームは、本明細書において(図1Aおよび図1Bのフローチャートを参照のこと)、そして当該分野で(例えば、米国特許第5,726,292号または同第5,985,284号を参照のこと)に記載されるように容易に調製され得る。
【0021】
リポサッカリドとは、ネイティブ(生物体から単離されるか、またはネイティブ構造を有する合成的に調製された)か、または修飾されたリポポリサッカリドまたはグラム陰性細菌由来のリポオリゴサッカリド(総称的に、「LPS」とも呼ばれる)を指す。例えば、リポサッカリドは、Shigella flexneriもしくはPleiomonas shigelloides、または他のグラム陰性細菌(以下の属由来の種を含む:Alcaligenes、Bacteroides、Bordetella、Borrellia、Brucella、Campylobacter、Chlamydia、Citrobacter、Edwardsiella,Ehrlicha、Enterobacter、Escherichia、Francisella、Fusobacterium、Gardnerella、Hemophilus、Helicobacter、Klebsiella、Legionella、Leptospira(Leptospira interrogansを含む)、Moraxella、Morganella、Neisseria、Pasteurella、Proteus、Providencia、他のPlesiomonas、Porphyromonas(Porphyromonas gingivalisを含む)、Prevotella、Pseudomonas、Rickettsia、Salmonella、Serratia、他のShigella、Spirillum、Veillonella、Vibrio、またはYersinia種)から単離されても、あるいはそれら由来のリポサッカリドと同じ糖鎖構造を有するように合成的に生成されてもよい。このリポサッカリドは解毒された型(すなわち、リピドAを有するかまたはリピドAコア除去された)であっても、または解毒されていない型であってもよい。本開示では、このリポサッカリドは、解毒される必要はなく、好ましくは解毒されない。例えば、P.gingivalis LPSのような多数のリピドA種を含むLPSが、本明細書に記載される組成物中で用いられてもよい(例えば、Darveauら、Infect.Immun.72:5041〜51(2004)を参照のこと)。リポサッカリドは、例えば、図2のフローチャートに記載されるように調製されてもよい。
【0022】
本明細書に記載されるプロテオソーム:LPS混合物またはProtollin(商標)(IVXまたはIVX908としても公知)は、免疫刺激性組成物として用いられ得るOMP−LPS組成物を得るために少なくとも1種のリポサッカリドを用いて、本明細書に記載のとおり混合されたプロテオソームの調製物である(Projuvant)。従って、OMP−LPSアジュバントまたはProtollinは、Neisseria種(例えば、Neisseria meningitidis)のようなグラム陰性細菌から調製されたプロテオソームの外膜タンパク質調製物、および1つ以上のリポサッカリドの調製物を含む。Protollinはまた、1つ以上の脂質、糖脂質、糖タンパク質、低分子などを含んでもよい。Protollinは例えば、図3のフローチャートに記載されるように調製されてもよい(例えば、米国特許出願公開第2003/0044425も参照のこと)。
【0023】
Projuvantは一般に、疎水性部分(疎水性フットとも呼ばれる)を保有する抗原(天然の単離された抗原または修飾された抗原)とともに用いられる。Protollin(外因的にLPSを添加された)は、疎水性フットを含む抗原と会合されてもよいし、または疎水性であり、疎水性フットドメインを含まない抗原(単数または複数)とともに用いられてもよい。
【0024】
本開示は一般に、リポサッカリドとともにさらに処方されたプロテオソームを含み得る免疫刺激性組成物(Protollin)を提供する。例えば、Protollin組成物は、抗原非依存性、非特異的な防御免疫応答を刺激するために用いられ得る。さらにこの免疫刺激性組成物は、最初に非特異的な免疫応答を促進(すなわち、刺激、誘発または増強)して、引き続きまたは同時に適応的免疫応答を刺激または誘発するために、免疫原性組成物と組み合わせて用いられてもよい。
【0025】
背景のつもりであって、理論によって束縛されることは望まないが、免疫系は、自己と非自己との間の識別によって、侵入する病原体を検出かつ排除するように設計される。哺乳動物では、免疫系は、2つに分岐していると考えられる;1つは、生得の免疫と呼ばれ、そしてもう一方は適応的免疫と呼ばれる。生得の免疫応答の誘導は、全体的な免疫防御に対して有意に寄与し得る(MedzhitovおよびJaneway、Trends in Microbiol.8:452,2000)。生得の免疫は、曝露後直ちに感染を制限する、非特異的な防御の第一線を提供し、また、クローン性の応答を刺激することによって適応的な免疫応答系と「ネットワーク(network)」し得る(Hoffmannら、Science 284:1313,1999)。従って、非特異的、または生得の免疫応答とは、哺乳動物の生得の免疫系によって媒介される特異的な効果のような、病原体関連分子パターン(PAMPs)に対する抗原非依存性または抗体非依存性の免疫応答をいう(例えば、MedzhitovおよびJaneway、前出を参照のこと)。例えば、食作用性の抗原提示細胞(APCs)に存在するPAMPsとトール様レセプター(TLRs)との相互作用は、炎症促進性のサイトカイン(例えば、IFN−γ、TNF−αおよびIL−12)の放出および同時刺激性分子の上方制御を誘導し、これが次に適応的免疫を刺激し得る。
【0026】
本明細書に記載される免疫刺激性組成物は、生得の免疫応答をプライミング、強化、活性化、刺激、増強、ブースト、増幅または向上させ得る、任意の1つ以上のタンパク質、ペプチド、炭水化物、脂質、核酸、化学物質もしくは他の分子、またはそれらの組み合わせであってもよい。免疫刺激性因子または組成物は、感染性の疾患または状態を軽減、変更、処置または予防し得る(例えば、予防因子として)。増強されるかまたは活性化された非特異的な免疫応答は、防御的であり、特異的な抗原依存性、抗体依存性の免疫応答の存在下で、またはその前に、またはそれと同時に、広範なスペクトルの防御を提供さえすることが理解されるべきである。すなわち、活性化された免疫応答は、細菌、ウイルス、寄生生物または真菌を含む種々の微生物による感染から宿主に対する防御を提供し得る。本明細書においてさらに詳細に記載される免疫刺激性因子または組成物の代表的な例としては、例えば、プロテオソーム(「Projuvant」)またはProtollin(プロテオソーム:リポサッカリド)のようなアジュバントが挙げられる。
【0027】
理論によって拘束されることは望まないが、生得の免疫系によって媒介される免疫応答の誘導は、非抗原だが特異的な効果を発揮し得る病原体関連分子パターン(PAMPs)に関与する。PAMPsとトール様レセプター(TLRsは、その少なくとも10個が公知であり、TLR−1、TLR−2などと呼ばれる)との相互作用は、食作用性の抗原提示細胞(APCs)の細胞表面に存在し、例えば、細胞間のシグナル伝達経路を開始して、これが次に炎症促進性サイトカイン(例えば、IFN−γ、TNF−αおよびIL−12)の放出、および同時刺激性分子の上方制御を誘導し、次にこれが適応的免疫を刺激し得る。生得の免疫の構成要素は、固有の核酸構造(例えば、CpG DNA配列)、複合糖質(例えば、LPS)を含む、微生物の病原体に特徴的であるが、哺乳動物細胞には存在しない構造、ならびに細菌のタンパク質、リポタンパク質およびペプチドグリカンを認識する。例えば、Neisseriaのポーリンタンパク質(例えば、プロテオソームを調製するために用いられる、ポーリンA、ポーリンB)は、TLR−2によって認識され、そしてグラム陰性細菌由来のLPS(Protollinの成分である)はTLR−4によって認識される。プロテオソーム(Projuvant)およびProtollinアジュバントは、生得の免疫応答を刺激するために用いられ得る。さらに、Protollinの2つの成分(タンパク質およびリポサッカリド)とTLRsとのAPCs上での係合を通じて、Protollinは生得免疫および適応免疫の両方の誘導をもたらす一連の事象を開始し得る。生得免疫のToll様レセプター活性化に加えて、Protollinは、他の免疫系成分または免疫機能を活性化し得る。LPSは、特定の免疫系細胞の細胞表面に存在するTLR−4レセプターとの相互作用を通じて免疫刺激性であることが理解される;従って、プロテオソーム(Projuvant)によって刺激または誘発される免疫応答、およびProtollinによって刺激または誘発される免疫応答は、Protollin中におけるLPSに対するOMPの比と相関する統計学的に有意性の方式で定性的にまたは定量的に識別され得る。本明細書に記載されるProtollin組成物はまた、Porphyromonas gingivalisから得られるLPSのような、2つ以上のトール様レセプターと相互作用し得るLPSを包含し得る(例えば、Darveauら、Infect.Immun.72:5041〜51(2004)を参照のこと)。
【0028】
適応的免疫応答(すなわち、特異的または後天的な)とは、免疫系によって媒介される感染性因子または抗原に対する抵抗性であって、その感染性因子または抗原に対する以前の曝露から生じる抵抗性を包含する。例えば、特異的な免疫は、自然に獲得された(開存性または潜在性)の感染の結果であっても、または意図的なワクチン接種由来であってもよい。さらに、特定の免疫は、別の(例えば、母性的に遺伝された)個体由来の抗体の自然な移行から受動的かつ一過性に獲得されても、または意図的な接種による抗体または免疫細胞の外因性の移入(ときに、受動免疫療法と呼ばれる)から獲得されてもよい。
【0029】
本明細書に記載されるような免疫原性組成物は、細胞性(T細胞)もしくは体液性(B細胞)の応答であってもよく、またはT細胞およびB細胞の応答の組み合わせであってもよい適応的(特異的)免疫応答を、プライミング、誘発、強化、活性化、刺激、増強、ブースト、増幅または向上させ得る、1つ以上の化合物、抗原、免疫原または因子を含む。好ましくは、適応的免疫応答は、防御的である。免疫原の代表的な例は、1つ以上の細菌、ウイルス、真菌、または寄生生物の目的のタンパク質のような微生物抗原である。
【0030】
本明細書に記載されるような免疫調節性組成物は、プロテオソームもしくはProtollinアジュバント、および1つ以上の免疫機能を統計学的に有意な方式で、または臨床的に有意な方式で、変更(改変、変調、調整、調節)(または増大(増強)または軽減(抑制)し得る、1つ以上のタンパク質、ペプチド、化合物、もしくは他の分子、またはそれらの組み合わせを含む。免疫調節性因子または組成物は、所望されないかまたは異常な炎症性応答を緩和、寛解、処置または予防(例えば、予防因子として)し得る。免疫機能は、特定の微生物または抗原に対する、特別なパターンのサイトカイン産生との細胞性応答(例えば、Th1、Th2)、体液性応答(例えば、抗体産生)、またはそれらの組み合わせを包含し得る。例えば、アレルゲンに対して以前に曝露された(すなわち感作されている)被験体が再度アレルゲンと接触されれば、CD4+Tリンパ球によって分泌される2型サイトカイン(IL−4、IL−5、IL−9、IL−13)の産生の増大によって特徴付けられるTh2応答に起因して、アレルギー性喘息が発症し得る。本明細書に記載されるような免疫調節性組成物は、例えば、気道に対する障害が少ないTh1表現型に向かって応答をシフトすることによって、Th2応答を変更し得る。すなわち、変更された(変調された)免疫応答は、種々の微生物(細菌、ウイルス、寄生生物または真菌を含む)による感染に対して、または抗原によって生じる炎症性応答(例えば、アレルギー、喘息、鼻ポリープ)に対して宿主に防御を提供し得る。
【0031】
本明細書に記載されるようなアレルギー反応は、被験体が以前に曝露されて感作されている特定の抗原(アレルゲン)との接触後のこの被験体における局所的または一般的な反応をいう。内因性または外因性の抗原と抗体または感作されたリンパ球との免疫学的な相互作用は、炎症および組織損傷を生じ得る−言い換えれば、アレルギーは、通常炎症性の反応を通じて、自己の組織および細胞に対する障害を生じる免疫反応である。外因性またはアレルギー性の喘息(本明細書においては、気道過敏症とも呼ばれる)は、一般的に可逆性の気道閉塞によって特徴付けられる肺の炎症性疾患である。アレルギー性喘息の特徴としては、血清IgEの濃度上昇、肺好酸球増加症、気道過敏症、過剰な気道粘液産生、ならびに細気管支周囲コラーゲン沈着および気道平滑筋量増大が著しい気道再構築が挙げられる。他の例示的なアレルギー性反応または炎症状態としては、アレルギー性肺胞炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、アレルギー性皮膚炎、湿疹、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻感冒、アレルギー性脈管炎、鼻副鼻腔炎およびアレルギー性鼻炎が挙げられる。
【0032】
過敏反応性は、外来の因子が強調された免疫応答を誘発する、異常な応答または状態に関する。例えば、アレルギー性喘息は、呼吸器系における構造的および機能的な変化を生じ得る、気管支壁での持続性の炎症のような有害な免疫学的応答を誘発する風媒性のアレルゲンに対する反復性の曝露の結果であり得る。感作された被験体(すなわち、このアレルゲンに既に曝されている被験体)によるアレルゲン吸入後、この免疫応答は、ヘルパーT(Th)2表現型へと傾斜されるCD4+Tリンパ球に依存性である。Th2サイトカイン、例えば、IL−4、IL−5、IL−9およびIL−13は、喘息の病因に重要である。例えば、IL−4は、Th2を支持してヘルパーT応答を駆動し、その結果以下の産生が増強されるIgE;IL−5、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)とともに、そして好中球の産生に重要なIL−3;ならびに臨床的な喘息に密接に関連する下流の病態生理学的特徴である、気道の過敏反応症および粘液異形成に必要なIL−13。これらのサイトカインの全てが、TGF−βと一緒になって気道の再構築に関与している。喘息の病理学における好酸球の役割は、完全には理解されていないが、多数の気道好酸球が疾患の重篤度に直接関係している(例えば、Leeら、Science 305:1773(2004;Humblesら、Science 305:1776(2004)を参照のこと)。得られた構造および形態学変化(再構築)としては、上皮下の線維症、杯状細胞過形成および異形成が挙げられ、これが喘息性気道の伸展性の消失、気管支過敏症(アレルゲンの非存在下でさえ)、および1秒間努力呼吸量(forced expiratory volume at 1 second time intervals)(FEV)の加速的な進行性の減少のような機能的な結果を生じる。Th2サイトカインはまた、観察された組織障害、再構成および過敏反応性に寄与すると考えられる炎症促進性因子、脂質媒介因子および他のサイトカインを放出するように好酸球をプライムして活性化し得る。
【0033】
本明細書において用いられる寛容とは、刺激に対して、特に一定期間を超える持続的な曝露、例えば、アレルゲンに対して耐えるかまたは反応性が低下する能力をいう。例えば、免疫学的寛容とは、特定の抗原またはアレルゲンに対する低下するかまたは非応答性の天然または人工的に誘導された状態をいう。
【0034】
本説明では、他に示さない限り、任意の濃度範囲、パーセンテージの範囲、比の範囲または他の整数の範囲は、言及された範囲内の任意の整数の値、そして必要に応じて、その分数(例えば、ある整数の十分の一および百分の一)を包含すると理解されるべきである。本明細書において用いる場合、「約、ほぼ、およそ(about)」または「本質的に〜からなる(comprising essentially of)」とは±15%を意味する。代替(例えば、「あるいは、または、もしくは(or)」の使用は、その代替物のうち1つ、両方、またはその任意の組み合わせを意味すると理解されるべきである。本明細書において用いる場合、「1つの(「a」または「an」)」のような不明確な物体の使用は、ある名詞または名詞句の単数および複数を指すと理解されるべきである。さらに、本明細書に記載される組成物もしくは配列、構造および置換の種々の構成要素または組み合わせに由来する個々の組成物、処方物もしくは化合物、または組成物、処方物もしくは化合物の群は、あたかも各々の組成物もしくは化合物、または組成物もしくは化合物の群が個々に説明される程度まで本出願によって開示される。従って、特定の配列、構造または置換の選択は、本発明の範囲内である。
【0035】
1実施形態では、免疫調節性組成物は、リポサッカリドとともに処方されたプロテオソーム、すなわちProtollinを含んでもよい。例えば、Protollin組成物を用いて、所望されない免疫応答を抑制もしくは阻害するか、または所望されない免疫負荷(challenge)に対する寛容を誘発もしくは促進することができる(例えば、Th2サイトカイン産生表現型のTh1表現型へのシフト)。さらに、本明細書に記載される免疫調節性組成物を、免疫原性組成物と組み合わせて用いて、最初に所望されない免疫応答の抑制を促進し得、そして引き続きまたは同時に、寛容の誘導を促進し得る。背景のつもりであって、理論によって束縛されることは望まないが、Tリンパ球、詳細にはTh2サイトカインを産生し、異常な増殖を受けているCD4T細胞は、喘息の病因に重要な役割を果たす。マウスモデルでは、IL−12およびIFN−γまたはCpGオリゴデオキシヌクレオチドのような因子の投与は、Th2サイトカイン産生を阻害し、そしてTh1リンパ球およびサイトカインを刺激して、抗原誘発性の気道反応性亢進および炎症の発症が妨げられ得る(Lackら、J.Immunol.157:1432(1996);Gavettら、J.Exp.Med.182:1(1995);Kilineら、J.Immunol.160:2555(1998)を参照のこと)。
【0036】
特定の実施形態では、本明細書に記載される免疫刺激性組成物は、非特異的な(または生得の)免疫応答を誘発するために有用である。このような免疫刺激性組成物は、宿主または被験体における微生物感染を予防または処置する非特異的な防御免疫応答を提供し得る。本明細書に記載される免疫刺激性組成物はまた、引き続いて投与されたワクチン、例えば、F1−Vプラーク抗原、Bacillus anthracisの防御抗原、またはChlamydia trachomatis、腸管病原性E.coliもしくは別の病原性細菌由来の細菌抗原のような微生物抗原とともに処方されたProtollinを含む免疫原性組成物によって誘発された適応的免疫応答を強化または増強する、生得(非特異的な)免疫応答を刺激するために用いられ得る。
【0037】
特定の実施形態では、免疫刺激性および免疫原性の組成物は、適応的免疫応答を同時に増強またはプライムしながら生得の免疫応答を誘発するように同時に投与されてもよい。特定の他の実施形態では、免疫刺激性および免疫原性の組成物は、寛容を同時に増強またはプライムしながら、変更された免疫応答を誘発するように同時に投与されてもよい。あるいは、本明細書に記載されるような免疫刺激性および免疫調節性組成物の短期間の使用は、免疫原性組成物の引き続く使用なしに、またはその同時の処置とともに用いられてもよい。非特異的な防御または変更された免疫応答(免疫原性組成物での引き続く処置も同時の処置もなし)は、約1日から3ヶ月またはそれ以上まで続き得る。例えば、残りの動物は、プロテオソーム−LPS(Protollin)での処置後少なくとも11週間Chlamydia負荷から防御された(実施例15を参照のこと)。
【0038】
他の実施形態では、本明細書に記載される免疫調節性組成物は、炎症性免疫応答を変更するために有用である。本明細書に説明されるとおり、本発明の組成物は、特定の抗原に対する寛容の発達を増強するかまはた向上させ得る炎症性免疫応答を変更する(例えば、Th2からTh1表現型へのシフトを生じる)ために用いられ得る。
【0039】
免疫刺激性または免疫調節性の組成物は、アジュバント、好ましくはプロテオソームまたはプロテオソーム:LPSアジュバントを含む。プロテオソームは、Neisseria種由来の外膜タンパク質(OMPsまたはポーリン)から構成されてもよいが、また他のグラム陰性細菌(例えば、Lowellら、J.Exp.Med.167:658,1988;Lowellら、Science 240:800,1988;Lynchら、Biophys.J.45:104,1984;米国特許第5,726,292号;米国特許第4,707,543号を参照のこと)、またはNeisseria OMPおよび少なくとも1つの他のグラム陰性細菌由来のOMPの組み合わせに由来してもよい。背景のつもりであって、理論によって束縛されることは望まないが、プロテオソームとタンパク質(例えば、微生物抗原)との混合は、例えば透析またはダイアフィルトレーションによってプロテオソームを可溶化させるために用いられる界面活性剤が選択的に除去または減少させられたとき、会合または配位を形成する、微生物抗原とプロテオソームとの間の非共有結合、相互作用または配位を含む組成物を提供する。
【0040】
プロテオソームは、アジュバント(すなわち、免疫刺激性または免疫調節性の組成物の成分)として用いられてもよいし、そして/または抗原送達組成物(すなわち、免疫原性組成物)として用いられてもよい。1実施形態では、免疫原性組成物は、1つ以上の微生物抗原(すなわち、細菌、寄生生物、真菌またはウイルス抗原もしくは免疫原、またはその改変体およびフラグメント)、およびアジュバントを含み、このアジュバントはProjuvant(すなわち、プロテオソーム)またはProtollin(すなわち、プロテオソーム:LPS)を含む。好ましい微生物抗原とは、宿主または被験体を防御する(微生物感染を防ぐか、微生物負荷を減少させるか、微生物を殺傷するか、またはその増殖を妨げる)免疫応答(体液媒介性または細胞媒介性のいずれか)を、刺激または誘発するものである。
【0041】
特定の実施形態では、免疫刺激性または免疫調節性の組成物は、リポサッカリドとともにさらに処方されたプロテオソームであってもよい。すなわち、プロテオソームアジュバント(Projuvant)は、LPSのようなさらなる(例えば、外因性または内因性)の免疫刺激性または免疫調節性分子を含むように調製されてもよい。リポサッカリドは、合成的に調製されても、生物学的供給源(例えば、無毒化されていない)から単離されても、化学的に修飾されても(例えば、無毒化、そうでなければ付加、欠失もしくは置換基変化によって化学的に修飾される)、またはその任意の組み合わせであってもよい。例えば、Projuvantを、リポサッカリドと、本明細書に記載されたように混合してOMP:LPSアジュバント(すなわち、Protollin)を得てもよい。Protollinのこれらの2つの成分を、特定の初期の比(図3のフローチャートを参照のこと)で処方して、それらの相互作用を最適化し、免疫刺激性または免疫調節性の組成物における使用のためのこの成分の安定な会合および処方を得る。Protollinを作製するためのプロセスは一般に、選択された界面活性剤溶液(例えば、Empigen(登録商標)BB、Triton(登録商標)X−100またはMega−10)または他の界面活性剤(例えば、オクトグルコシド)中にこの成分と混合する工程を包含する。OMPおよびLPS成分の複合体形成は、一方で透析によって、またはダイアフィルトレーション/限外濾過方法によって、所定の好ましい濃度までこの界面活性剤の量を減らしながら行なわれる。透析の期間は、ワクチン処方物中に種々の量、例えば、250、500、750、1000ppm以上の濃度、またはそれより低い量(例えば、50ppm)を含む量の界面活性剤を保持するように調整され得る。2つの成分の混合、共沈または凍結乾燥はまた、十分かつ安定な会合または処方物に影響するように用いられ得る。特定の実施形態では、Protollinは、1つの細菌由来のLPSを含むように処方されてもよいし、または異なる細菌から得られた2つ以上のリポサッカリドを含むように処方されてもよい。例えば、1つのProtollin処方物は、EscherichiaおよびShigella由来、またはChalamidiaおよびYersinia由来、またはPhorphyromonasおよびShigella、またはNeisseria、Escherichia、YersiniaおよびShigellaなど由来のリポサッカリドを含んでもよい。Protollin処方物は、1つまたは必要であるかもしくは所望されるだけの多数の異なるリポサッカリドを用いて最適化されてもよい。
【0042】
本明細書に記載されるProtollin組成物は、任意のグラム陰性細菌種に由来するリポサッカリドを含み得、このグラム陰性細菌種は、プロテオソームの供給源である同じグラム陰性細菌種であってもよいし、または異なる細菌種であってもよい。1実施形態では、最終のリポサッカリド含量は、総プロテオソームタンパク質の重量パーセンテージとして、約0.1%〜約10%の範囲、約0.5%〜約5%の範囲、約1%〜約500%の範囲、または約10%〜約100%、約5%〜約20%もしくは約10%〜約50%の範囲、または約20%〜約200%の範囲、または約30%〜約150%もしくは約50%〜約150%の範囲であってもよい。好ましい実施形態では、この免疫刺激性組成物は、最終リポサッカリド含量が、総プロテオソームタンパク質重量の50%〜150%の間であるように、Neisseria meningitidis、から調製されたプロテオソーム成分と、Shigella flexneriまたはPlesiomonas shigelloidesから調製されたリポサッカリドとを含む。別の実施形態では、プロテオソームは、総OMPの約0.5%〜約5%の範囲におよぶNeisseria由来の内因性リポオリゴサッカリド(LOS)含量で調製される。別の実施形態では、総OMPの約12%〜約25%、好ましい実施形態では約15%〜約20%の範囲の内因性リポサッカリド(すなわち、プロテオソームと同じ細菌由来)を含むプロテオソームが提供される。あるいは、もはやLPSを産生できない変異体細菌(例えば、Neisseria LPS−マイナス株)を、Projuvantを調製するために用いてもよく、その結果OMP:LPS混合物の内因性LPSは0%になる。従って、Protollinjは、外因性LPS、内因性LPSまたはその組み合わせを有してもよく、この外因性および内因性のLPSは、等量で存在しても異なる比で存在してもよい。
【0043】
本発明はまた概して、免疫原性組成物を生成するための、免疫刺激性または免疫調節性の組成物と組み合わせた微生物抗原の使用に関する。この抗原は好ましくは、臨床的に関係のある微生物、例えば、病原性細菌を含む細菌;ウイルス(例えば、インフルエンザ、麻疹、コロナウイルス);寄生生物(例えば、トリパノソーマ属、プラスモジウム属、リーシュマニア属);真菌(例えば、アスペルギルス属、カンジダ属、コクシジオイデス属、クリプトコッカス属);など由来である。例えば、この抗原は、細菌、特に病原性細菌、例えば、炭素菌(Bacillus anthracis)、ペスト(Yersinia pestis)、胃癌(Helicobacter pylori)、性感染症(Chlamydia trachomatisまたはNeisseria gonorrhea)などの病原因子由来であってもよい。他の代表的な例としては、特定のウイルス、例えばインフルエンザウイルス、ノーウォークウイルス、天然痘ウイルス、西ナイル熱ウイルス、SARSウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、麻疹ウイルスなど由来の抗原が挙げられる。例示的な真菌としては、Candida albicansまたはAspergillus種が挙げられ、そして例示的な寄生生物としては、トリパノソーマ症、リーシュマニア、肺ペストおよびライム病(Borrellia burgdorferi)の病原因子が挙げられる。
【0044】
本明細書において用いる場合、抗原は、組み換え的に調製されても、合成的に調製されても、生物学的供給源から単離されても、組み換えまたは化学的に改変されてもよいし、その任意の組み合わせであってもよい。生物学的供給源としては、限定はしないが、宿主または被験体由来の生物学的サンプル(例えば、組織、血液、血清、血漿、肺洗浄液、鼻腔洗浄液)、細菌細胞培養または組織細胞培養が挙げられる。本明細書において用いる場合、「サンプル(sample)」とは、生物学的サンプルをいい、そして血液サンプル、生検試料、組織移植片、器官培養物、または被験体もしくは生物学的供給源由来の任意の他の組織または細胞調製物を得ることによって提供され得る。サンプルとはさらに、組織または細胞調製物であって、その形態学的完全性または物理的状態が、例えば、解剖、解離、可溶化、分画、ホモジナイゼーション、生化学的または化学的抽出、微粉化、凍結乾燥、超音波処理、被験体もしくは生物学的供給源由来のサンプルを処理するための任意の他の手段によって破壊されている組織または細胞調製物をいう。
【0045】
微生物抗原またはそのフラグメントは、種々の生物学的供給源、例えば、感染した被験体または培養された細胞株の組織から調製され得る。一次単離は、例えば、末梢血液細胞由来、または呼吸器分泌物もしくは排出物由来であってもよい。好ましくはこの単離された微生物は、当業者に公知の適切な培養培地上で一次細胞培養物に、または特定の微生物については必要に応じて当該分野で公知の樹立された細胞株上で増殖または培養される。特定の実施形態では、この抗原またはそのフラグメントは、インタクトな微生物粒子から単離される。本明細書において用いる場合、「単離された(isolated)」または「〜に由来する(derived from)」という用語は、この物質が、そのもとの環境または天然の環境から取り出されていることを意味する。例えば、生きている動物または細胞もしくはウイルスに存在する天然に存在する核酸分子またはポリペプチドは単離されていないが、同じ核酸分子またはポリペプチドは天然の系における既存の物質のいくつかまたは全てから分離されている場合、単離されている。単離された核酸分子または、その天然の環境から取り出されている核酸分子としては、微生物抗原をコードする核酸分子を含む組み換え発現ベクターのようなベクターが挙げられる。他の実施形態では、ペプチドまたはポリペプチド、例えば、抗原もしくはその改変体およびフラグメントは、部分的に精製されてもまたは均質に精製されてもよい。
【0046】
また本明細書に提供されるのは、微生物抗原、改変体またはそのフラグメントを含む融合タンパク質を含む合成の微生物抗原を産生するための方法である。免疫原性組成物のペプチドまたはポリペプチド成分は、自動的な手順による合成を含む標準的な化学的方法によって合成され得る。一般に、免疫原性のポリペプチドまたはペプチドはカップリング剤としてHATUを用いる標準的な固相Fmoc保護ストラテジーに基づいて合成される。免疫原性ペプチドは、側鎖官能基をやはり脱保護する、適切なスカベンジャーを含むトリフルオロ酢酸で固相樹脂から切断され得る。粗免疫原性ペプチドは、分取的逆相クロマトグラフィーを用いてさらに精製され得る。他の精製方法、例えば、分配クロマトグラフィー、ゲル濾過、ゲル電気泳動またはイオン交換クロマトグラフィーが用いられてもよい。tBoc保護ストラテジー、種々のカップリング試薬の使用などのような、当該分野で公知の他の合成技術が、同様の免疫原性ペプチドを産生するために使用されてもよい。さらに、Dアミノ酸またはLアミノ酸およびその組み合わせを含む、任意の天然に存在するかもしくは天然に存在しないアミノ酸またはその誘導体を用いてもよい。
【0047】
本明細書において用いる場合、本発明の微生物抗原またはそのフラグメントは、組み換え体であって、組み換え核酸発現構築物がその抗原をコードするポリヌクレオチドを含み、そして発現制御配列(例えば、プロモーター、エンハンサー)に対して作動可能に連結される組み換え体であってもよい。組み換えポリヌクレオチド発現構築物は、分子生物学の分野において当業者に公知の方法によって調製され得る。原核生物および真核生物宿主との使用のためのクローニングおよび発現ベクターは、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor,NY,(2001)に記載され、そしてこれにはプラスミド、コスミド、シャトルベクター、ウイルスベクターおよびそこに開示される染色体複製起点を含むベクターを挙げることができる。組み換え発現構築物はまた、宿主細胞における目的のポリペプチドの発現を可能にする発現制御配列(制御配列)を含み、この発現制御配列には1つ以上のプロモーター配列(例えば、lac、tac、trc、ara、trp、λファージ、T7ファージ、T5ファージプロモーター、CMV、最初期、HSVチミジンキナーゼ、初期および後期のSV40、レトロウイルス由来のLTRsおよびマウスメタロチオネイン−I)、エンハンサー配列、オペレーター配列(例えば、lacO)などが挙げられる。
【0048】
一般に、組み換え発現ベクターは、複製起点と、宿主細胞の形質転換を可能にする選択マーカーと、下流の構造配列の転写を指向するように高度に発現された遺伝子由来のプロモーターとを備える。異種構造配列は、翻訳開始および終止配列と適切なフェーズでアセンブルされる。好ましい実施形態では、この構築物は、インビボで投与される組成物に含まれる。このようなベクターおよび構築物としては、下記のような、染色体;非染色体;および合成のDNA配列、例えば、SV40の誘導体;細菌プラスミド;ファージDNA;酵母プラスミド;プラスミドおよびファージDNAの組み合わせに由来するベクター;ウイルスDNA、例えばワクシニア、アデノウイルス、鶏痘ウイルスおよび仮性狂犬病;または複製欠損レトロウイルスが挙げられる。しかし、任意の他のベクターが、組み換え発現構築物の調製のために用いられてもよく、そして好ましい実施形態では、このようなベクターは、複製可能であり、宿主(被験体)において生存可能である。
【0049】
組み換え発現ベクターは、分子生物学の当業者に公知の方法に従って、形質転換、トランスフェクションまたは形質導入によって宿主細胞に導入され得る。宿主細胞(例えば、真核生物または原核生物の宿主細胞または昆虫細胞)は、コードされた微生物抗原の発現を可能にして、これによって組み換えタンパク質抗原(または免疫原)またはそのフラグメントを産生するように構築されてもよい。この抗原はさらに、別のアミノ酸配列に融合されても結合体化されてもよく、このアミノ酸配列とは、ProjuvantまたはProtollinとの非共有結合的な会合を促進するかそうでなければ強化するように疎水性アンカーまたはフット(anch)であってもよい。微生物抗原ポリペプチドのフラグメントは、微生物感染に対する防御免疫(細胞性または体液性)を誘発し得る少なくとも1つのエピトープを有するポリペプチドのような任意の部分を含み得る。免疫原性ポリペプチドはまた、整列されるか組み合わされて、直線型に連結されてもよく、そして各々の免疫原は保持されてもされなくてもよく、この反復は1回生じても複数回生じてもよい。さらに、複数の異なる免疫原性ポリペプチド(例えば、タンパク質改変体、またはそのフラグメント)を、選択して混合するか、またはカクテル組成物と合わせて、防御的免疫応答を誘発するのに有用な多価ワクチンを得ることができる。
【0050】
本明細書に記載されるような微生物抗原もしくはアレルゲンを含む、抗原の改変体または抗原のフラグメントもしくは改変体とは、構造的に類似であり機能的に類似である分子を含む。抗原またはアレルゲンの改変体またはフラグメントは、この改変体またはフラグメントが、この抗原またはアレルゲンによって誘発される免疫応答に対して免疫応答の1つ以上の特徴またはパラメーターによって少なくとも匹敵する免疫応答を誘発し得る場合、この抗原またはアレルゲンに対して機能的に類似であり、この免疫応答は、本明細書に記載され当該分野において実践される動物モデルおよびインビトロアッセイを含む方法を用いて決定され得る。例えば、匹敵する免疫応答は、動物モデルにおいて決定される場合、サイトカイン産生、抗体産生(クラスおよび/またはアイソタイプを含む)および防御の定量的および/または定性的な決定によって決定され得る。抗原の改変体またはこの抗原に対するフラグメントの匹敵する免疫応答は、特定の指標(例えば、サイトカイン産生または免疫グロブリン産生)の統計学的分析によって示されてもよいし、そしてこの指標の5%、10%、15%または20%または25%内であってもよい。機能的に同様の改変体またはフラグメントはまた、この抗原またはアレルゲンに対して特異的に結合する抗体に対して結合し得る。
【0051】
このような改変体としては、天然に存在する多形性または対立遺伝子改変体、微生物株改変体、ならびにこのアミノ酸配列の保存的アミノ酸置換を含む、合成ポリペプチド(またはこの改変ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド)が挙げられる。ペプチドまたはポリペプチドにおける特定の位置でいずれのアミノ酸が類似であるかは、当業者に公知の種々の基準によって示される。例えば、類似のアミノ酸または保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されているものであり、類似の側鎖を有するアミノ酸としては、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン);酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸);非荷電性極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、ヒスチジン);非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン);β分枝側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン)を有するアミノ酸が挙げられる。分類することがさらに困難であると考えられるプロリンは、脂肪族側鎖(例えば、Leu,Val、IleおよびAla)を有するアミノ酸と特性を共有する。特定の状況では、グルタミン酸についてのグルタミンまたはアスパラギン酸についてのアスパラギンの置換は、グルタミンおよびアスパラギンがそれぞれグルタミン酸およびアスパラギン酸のアミド誘導体であるという点で類似の置換とみなされ得る。
【0052】
改変ポリヌクレオチドおよびそのコードされたポリペプチド産物は、このポリヌクレオチドが高度にストリンジェントまたは中度にストリンジェントな条件下のヌクレオチド配列を有する核酸分子とハイブリダイズするか否かを決定することによって同定され得る。従って別の、改変体ポリヌクレオチドおよびコードされたポリペプチドは、配列比較によって同定され得る。本明細書において用いる場合、2つのアミノ酸配列は、その2つのアミノ酸配列のアミノ酸残基が最大一致について整列されたとき同じである場合に「100%のアミノ酸配列同一性(100% amino acid sequence identity)」を有する。同様に、2つのヌクレオチド配列は、その2つのヌクレオチド配列のヌクレオチド残基が最大一致について整列されたとき同じである場合に「100%のヌクレオチド配列同一性(100% nucleotide sequence identity)」を有する。配列比較は、BLAST、tBLAST、pBLASTまたはMegAlignのような任意の標準的なソフトウェアプログラムを用いて行なうことができる。さらに他には、DNASTAR(登録商標)(Madison,Wisconsin)によって作製されるLasergeneバイオインフォマティクス・コンピューティング・スイートに提供されるプログラムが挙げられる。ALIGNまたはBLASTのようなアルゴリズムについての参考文献は、例えば、Altschul,J.Mol.Biol.219:555〜565,1991;またはHenikoffおよびHenikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915〜10919,1992に見出され得る。BLASTは、NCBIウェブサイトで利用可能である。最適のアラインメントを決定することによって複数のヌクレオチドまたはアミノ酸配列を比較するための他の方法は、当業者に周知である(例えば、PeruskiおよびPeruski,The Internet and the New Biology:Tools for Genomic and Molecular Research(ASM Press,Inc.1997);Wuら(編)、「Information Superhighway and Computer Databases of Nucleic Acids and Proteins」Methods in Gene Biotechnology,123〜151頁(CRC Press,Inc.1997);およびBishop(編)、Guide to Human Genome Computing,第2版、Academic Press,Inc.1998を参照のこと)。抗原またはアレルゲンおよびその改変体は、少なくとも50%のアミノ酸配列同一性、そして好ましくは60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%の同一性を有するべきである。
【0053】
改変体は、当該分野で公知であってかつ実施される突然変異誘発技術を用いて容易に調製され得る。例えば、部位指向性突然変異誘発(例えば、Kramerら(Nucleic Acids Res.12,9441,(1984));the Anglian Biotechnology Ltd handbook;Kunkel Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488〜92(1985);Kunkelら、Methods in Enzymol.154:367〜82(1987))およびランダム突然変異誘発技術、例えば、アラニンスキャンニング突然変異誘発、エラープローンポリメラーゼ連鎖反応突然変異誘発およびオリゴヌクレオチド指向性突然変異誘発は、周知であり、かつ当該分野において広く用いられる(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY(2001)を参照のこと)。
【0054】
免疫刺激性組成物、免疫調節性組成物および免疫原性組成物を調製するための方法は、本明細書に記載されており、そして当該分野で公知である(例えば、米国特許出願公開第2001/0053368号および同第2003/0044425号を参照のこと)。この抗原(単数または複数)およびアジュバントは、成分の間の相互作用(または協同作用)を最適化して、この2つの成分のうち重大な部分のお互いとの非共有結合(または非特異的な並置)を生じるように、特定の初期比(重量:重量)で処方される。例えば、少なくとも1つの抗原とプロテオソーム(Projuvant)またはProtollinとの混合物は、界面活性剤の存在下で調製され、そしてダイアフィルトレーション/限外濾過によるこの混合物からの界面活性剤の濃度の低下または界面活性剤の除去によってこの抗原(単数または複数)とアジュバントとの会合(相互作用または協同作用)がもたらされる(図3を参照のこと)。この混合物が透析、ダイアフィルトレートまたは限外濾過された後の抗原に対するプロテオソームまたはProtollinの比は初期の比と同じであってもまたは変更(増大または減少)されてもよい。特定の実施形態では、初期のまたは透析/ダイアフィルトレーション/限外濾過後の、免疫原性組成物混合物中の抗原に対するプロテオソームまたはProtollin(Protollinの重量は、プロテオソームおよびリポサッカリドの合わせた重量に等しい)の比(重量/重量)は、約1:1〜約4:1におよぶ。この比は、1:1〜約8:1またはそれ以上におよんでもよい。特定の他の実施形態では、混合物中の抗原に対するプロテオソームまたはProtollinの比(重量/重量)は、約1:1〜約1:500、または約1:1〜約1:200もしくは約1:2〜約1:200の範囲、または約1:2〜約1:100の範囲、または約1:5〜約1:50の範囲、または約1:2〜約1:20の範囲におよぶ。2つの成分のうち界面活性剤に基づく溶液は、同じ界面活性剤または異なる界面活性剤を含んでもよく、そして2つ以上の界面活性剤が限外濾過/ダイアフィルトレーションに供された混合物に存在してもよい。適切な界面活性剤としては、Triton(登録商標)、Empigen(登録商標)BBおよびMega−10が挙げられる。他の界面活性剤も用いられ得る(例えば、オクトグルコシド)。界面活性剤は、この組成物を調製するために用いられる組成物を溶解するように働く。界面活性剤の混合物の使用は、特に有利であり得る。界面活性剤(単数または複数)は、除去されるか、または最終処方の前にダイアフィルトレーション/限外濾過によって濃度が低下させられる。
【0055】
また、非特異的な防御免疫応答を誘発するために本明細書に記載される免疫刺激性組成物を投与することによって微生物感染を処置または予防するための方法も意図される。別の実施形態では、生得の免疫応答を誘発するために免疫刺激性組成物を投与すること、および適応的免疫応答を誘発するために免疫原性組成物を投与することによって微生物感染を処置または予防するための方法が提供される。また、本開示の免疫調節性および/または免疫原性の組成物を用いて炎症性の応答を変更するか、またはアレルギー反応を処置もしくは予防するための方法も意図される、免疫刺激性組成物、免疫調節性組成物または免疫原性組成物はさらに、1つ以上の微生物抗原(または免疫原)またはそのフラグメントもしくは融合物および必要に応じて他の成分に加えて、薬学的に受容可能なビヒクル、キャリア、希釈剤および/または賦形剤を含んでもよい。例えば、免疫刺激性組成物、免疫調節性組成物または免疫原性組成物とともに使用するのに適切な薬学的に受容可能なキャリアまたは他の成分としては、増粘剤、緩衝化剤、溶媒、保湿剤、防腐剤、キレート剤、追加の補助剤など、およびその組み合わせが挙げられる。
【0056】
さらに、本明細書に記載の薬学的組成物は、水およびリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)のような希釈剤を含んでもよい。特定の実施形態では、この希釈剤はPBSであり、最終のリン酸濃度は、約0.1mM〜約1M、約0.5mM〜約500mM、約1mM〜約50mM、または約2.5mM〜約10mMにおよび、そして最終の塩濃度は、約100mM〜約200mMまたは約125mM〜約175mMにおよぶ。別の実施形態では、最終のPBS濃度は約5mMのリン酸および約150mMの塩(例えばNaCl)である。特定の実施形態では、さらに希釈剤を含む任意の上述の免疫刺激性組成物、免疫調節性組成物または免疫原性組成物は無菌である。
【0057】
この組成物は、無菌の環境下でこれらを調製することによって、または当該分野で利用される方法を用いる最終滅菌によって滅菌され得る。多くの製剤は、無菌になるように製造され、その基準はUSP XXII<1211>に規定される。「USP」という用語は、米国の薬局方(Rockville,MD)を指す。滅菌は、ガス滅菌、イオン化照射または濾過を含む、産業上許容されかつUSP XXII<1211>に列挙される多数の手段によって達成され得る。滅菌は、USP XXII<1211>にも規定される、無菌的処理と名付けられるものによって維持され得る。ガス滅菌に用いられる受容可能なガスとしてはエチレンオキサイドが挙げられる。イオン化照射方法に用いられる受容可能な放射線のタイプとしては、例えば、コバルト60線源および電子ビーム由来のγ線が挙げられる。γ放射線の代表的な線量は2.5MRadである。必要に応じて、濾過は、適切な細孔サイズ、例えば、0.22μmを有しており、かつ適切な物質、例えばTeflon(登録商標)のフィルターを用いて達成され得る。プロテオソームまたはProtollinの調製は、免疫原性組成物が0.8μmのフィルター、0.45μmのフィルターまたは0.2μmのフィルターをとおって濾過され得る十分に小さい粒子を生じる。従って、特定の実施形態では、本発明の免疫刺激性組成物、免疫調節性組成物および/または免疫原性組成物は、滅菌濾過され得る。これは、混入物の存在に起因するなんらかの合併症を除くには極めて有利である。
【0058】
1実施形態では、非特異的な防御免疫応答を誘発する方法が提供され、この方法は、その必要な被験体(または患者)に対して、免疫応答を誘発、誘導または刺激するのに十分な量の免疫刺激性組成物を、それに十分な条件下で投与する工程であって、その結果この免疫刺激性組成物の量が治療上有効である工程を包含する。被験体において免疫応答が誘発される条件としては、本明細書に記載され、かつ医学分野における当業者によって理解される種々のパラメーターおよび基準が挙げられ、そしてこれには、限定はしないが、投与の時間、投与回数、投与経路などが挙げられる。本明細書に記載されるような非特異的な防御免疫応答としては、生得の免疫応答が挙げられ、これは特異的な抗原依存性でも抗体依存性の応答でもなく(すなわち、T細胞および/またはB細胞のクローン性の増殖に関与しない)、そして多数の抗原、免疫原または微生物のうちのいずれか1つによって誘発され得る。免疫刺激性組成物は、プロテオソームおよびリポサッカリド(Protollin)を含み、そのいずれか一方または両方が非特異的な防御応答を誘発し得る。免疫刺激性組成物を用いて、細菌感染またはウイルス感染のような微生物感染を処置または予防するための非特異的な免疫応答または生得の免疫応答を誘発する場合、Protollinを含む免疫刺激性組成物は、処置または予防されるべき感染の原因因子である細菌の属由来のリポサッカリドを含まなくてもよいかもしれない。すなわち、Protollinは、感染を生じているかまたは感染を生じ得る生物体由来の成分もPAMPsも有する必要はない。例えば、Neisseria meningitidisから得られたプロテオソーム、およびShigella flexneriから得られたLPSを含む免疫刺激性組成物を用いて、防御を提供する、すなわちインフルエンザウイルスのようなウイルスによって、またはYersinia pestis、Bacillus anthracisまたはChlamydia trachomatisのような細菌によって生じる感染を処置または予防する、被験体における生得の応答を刺激してもよい。従って、本明細書に記載される免疫刺激性組成物は、種々の株のインフルエンザウイルスのような多数の異なる株のウイルスのうちの1つによって生じ得る、または細菌種の多くの異なる株、血清型もしくは免疫タイプの1つによって生じ得る感染を処置または予防するために有用であり得る。
【0059】
Protollinのプロテオソームおよびリポサッカリドは、同じ細菌の属もしくは種から得られても、または異なる細菌の属もしくは種から得られてもよい。プロテオソームは、Neisseria種のようなグラム陰性細菌から得られてもよく、そしてリポサッカリドは、Shigella、Chlamydia、Plesiomonas、PorphyromonasまたはE.colのような別のグラム陰性細菌から得られてもよい。1実施形態では、特定の免疫応答を強化するための方法であって、その必要な被験体に対して、プロテオソームおよびリポサッカリドを含む治療上有効な量の免疫刺激性組成物を投与する工程を包含する方法が提供される。
【0060】
別の実施形態では、微生物感染を処置または予防するための方法であって、免疫刺激性組成物が投与された後、免疫原性組成物がその必要な被験体(または患者)に対して、その両方の組成物の投与が特異的な免疫応答を有効に誘発するのに十分な量でかつ条件下で投与される方法が提供される。特定の実施形態では、この免疫原性組成物は、プロテオソーム、リポサッカリドおよび微生物抗原のような抗原(細菌、ウイルス、寄生生物または真菌の抗原)を含む。この免疫原性組成物は、異なるグラム陰性細菌の属および/または種のような、免疫刺激性組成物のプロテオソームの同じまたは異なる供給源から得られるプロテオソームを含んでもよい。同様に、免疫原性組成物および免疫刺激性組成物のLPS成分は、同じまたは異なる細菌由来であってもよい。免疫原性組成物は、微生物抗原である1つの抗原を含んでもよく、または2、3、4、5、6、7または8〜10の微生物抗原を含んでもよい。少なくとも2つの微生物抗原が免疫原性組成物に含まれる場合、この抗原は、もともと同じ微生物に由来するかもしくは異なる微生物に由来してもよいし、それに関連してもよいし、またはそれに由来することが公知であってもよい。あるいは、免疫原性組成物は、プロテオソームおよび/もしくはLPSなしに少なくとも1つの抗原を含んでもよいし、またはこの免疫原性組成物は、少なくとも1つの抗原およびミョウバンのようなアジュバントを含んでもよい。この抗原は、単離(精製)されてももしくは部分的に単離(または精製)されてもよいし、または生きた感染性の微生物としてもしくは弱毒化型で送達されてもよい。特定の実施形態では、この微生物抗原は、本明細書に記載されるようなウイルススプリット抗原であり、ウイルスの全ての成分を含み得る。本明細書に記載の任意の1つの免疫原性組成物は、免疫刺激性組成物の投与後、1回または2回以上(複数回)被験体に投与されてもよい。
【0061】
本明細書に記載の免疫刺激性組成物および免疫原性組成物は、感染を生じる微生物に対する曝露の前に微生物感染を予防するために予防的処置として被験体(または患者)に投与され得る。予防的な処置はまた、免疫刺激性組成物単独の投与、またはその後の原因の微生物因子に対して曝露されていることが既知であるか、曝露の危険性があるか、もしくは曝露されている可能性が高い被験体における微生物感染を予防するための免疫原性組成物の投与を包含する。免疫刺激性組成物単独またはその後の免疫原性組成物はまた、無症状性の感染(すなわち、適切な臨床基準に従って検出されない)を有し得るか、または臨床感染を有し得る、すなわち総体症状、臨床化学および微生物学的分析を含む当業者に公知の基準に従って臨床上診断され得る被験体を処置するために用いられてもよい。
【0062】
免疫原性組成物の抗原に対するプロテオソームまたはProtollin(プロテオソームおよびリポサッカリドの合わせた重量)の比(重量:重量)(最初の比または界面活性剤の除去後の比)は、約4:1〜約1:4におよんでもよいし、そして少なくとも4:1または少なくとも2:1であってもよい。抗原に対するプロテオソーム(またはProtollin)の比は、1:1より大きくても、2:1より大きくても、3:1より大きくてもそして4:1より大きくてもよい。この比は8:1程度またはそれ以上であってもよい。あるいは、混合物中の抗原に対するプロテオソーム(またはProtollin)の比は1:1、1:2、1:3、1:4または1:8である。混合物中の抗原に対するプロテオソームまたはProtollinの比は約1:1〜約1:500、または約1:1〜約1:200または約1:2〜約1:200、または約1:2〜約1:100、または約1:5〜約1:50、または約1:2〜約1:20にわたってもよい。
【0063】
本明細書において記載されるとおり、種々の供給源のLPSがProtollin調製物に用いられ得る。特定の供給源またはタイプのLPSの使用は、特定の経路によって、例えば経鼻的に投与される場合、プロテオソーム:LPS組成物のアジュバント特性、誘導される免疫応答のタイプ(生得のおよび/または適応的)、サイトカイン産生の量および質、特定のLPSタイプが特定の宿主細胞と相互作用する能力、LPSの可溶性の特性(すなわち、O−ポリサッカリド鎖の長さがProtollinの調製の間にプロテオソーム/LPS混合物の溶解度に影響し得る)、ならびに産生方法(例えば、収率、バイオハザードの混入要件)に依存し得る。S.flexneri 2a LPS、種々の株のE.coli由来のLPSまたは他のグラム陰性細菌由来のLPSを含むProtollinが調製され、そして本明細書に記載されておりかつ当該分野で公知の方法に従って特徴づけられてもよい。
【0064】
Protollin調製物中のLPSに対するプロテオソーム(OMPs)の比は、キャピラリー電気泳動のような、遊離したもの(すなわち、未結合体化)対結合した(すなわち、OMP:LPS複合体)LPSまたはOMPsの量を決定するために本明細書に記載され、かつ当該分野で公知の方法によって決定され得る。ProtollinのLPS含量は、KDOアッセイ、NMR、ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびゲルの銀染色、ならびに当業者によって実践される他の方法によって決定され得る。ProtollinのOMP含量は、限定はしないが、質量分析法、例えば、LC−MS、逆相高圧液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)(クマーシーブルーまたはイムノブロッティングのようなタンパク質染色を含む)、N末端配列決定、アミノ酸分析、ローリーまたはBCAタンパク質アッセイ、およびMALDI−TOFMを含むタンパク質含量を測定する多数のアッセイによって決定され得る。プロテオソーム調製物中の残りのLPSは、KDOのようなLPSアッセイによって決定され得る。核酸を検出するための当該分野で公知の方法によるOMP、LPSまたはProtollin調製物に残る核酸、および界面活性剤の存在は、HPLCによって決定され得る。
【0065】
特定の実施形態では、抗原は、細菌性抗原、例えば、炭素菌防御抗原(PA)(例えば、Lindlerら、Infect.Immun.66:5731〜42(1998)を参照のこと)またはペスト抗原である。免疫原性組成物に用いられるペスト抗原は、Yersinia pestis由来のF1抗原もしくはV抗原、またはF1−V抗原融合タンパク質抗原、またはその組み合わせを含んでもよい(例えば、Andersonら、Infect.Immun.64:4580〜85(1996)を参照のこと)。他の実施形態では、抗原は、ウイルススプリット抗原調製物のようなウイルス性抗原である(例えば、インフルエンザスプリット抗原(米国特許出願第2004/0156867号)または麻疹スプリット抗原)。ウイルススプリット抗原は、ウイルス粒子から分離されるかまたは単離される抗原調製物である。ウイルススプリット抗原は一般に、2つ以上の単一のウイルス抗原を含み、そして全てのウイルス抗原をただしインタクトなウイルス粒子に見出され得るのと同じ割合または量で含んでもよい。スプリットウイルス抗原は、2つ以上のウイルス抗原を富化する手順によって調製されてもよく、すなわち、スプリット抗原調製物における特定の抗原の割合が、インタクトなウイルスにおいてよりも大きくなってもよい。例えば、インフルエンザスプリット抗原は、インフルエンザ血球凝集素について富化されてもよい。
【0066】
他の例示的な微生物抗原としては、限定はしないが、リポポリサッカリド、構造的なポリペプチドまたは糖タンパク質、鞭毛タンパク質または繊毛タンパク質、毒素、毒性因子、ウイルスコアタンパク質およびウイルスエンベロープタンパク質および糖タンパク質が挙げられる。特定の実施形態では、単離されたLPSは、抗原、例えばP.gingivalisから単離されたLPSであってもよく、これは歯肉疾患、歯周病、虫歯などを処置または予防するためのP.gingivalisに対する免疫応答を刺激するのにおける使用のめにプロテオソームとともに処方され得る。
【0067】
特定の実施形態では、免疫原性組成物は、免疫原性組成物の後、約1〜約10日、1〜14日、または1〜21日後に、好ましくは免疫刺激性組成物の投与後少なくとも3日後に投与されて、適応的免疫応答を誘発する。微生物感染を処置または予防するためのこのような方法は、その必要な患者に対して、プロテオソームおよびリポサッカリドを有する免疫刺激性組成物を、生得または非特異的な防御的免疫応答を誘発するのに十分な量および条件下で投与する工程と;その必要な患者に対して、プロテオソーム、リポサッカリドおよび抗原、または少なくとも2つの微生物抗原を有する免疫原性組成物を、適応的免疫応答を誘発するのに十分な量および条件下で投与する工程と包含し得る。
【0068】
本明細書において用いる場合、生得の免疫応答は、微生物の大きい群によって共有される分子構造(PAMPs)を示す感染性微生物のうち不変の分子構成、例えば、グラム陰性細菌に見出される保存的リピドA構造またはグラム陽性細菌に共通のペプチドグリカンを有するリポポリサッカリドの宿主認識を含む。このような抗原は、宿主のレセプターによって非自己抗原として認識され、従って宿主は非自己標的を破壊するように非特異的免疫応答を誘発する。本明細書に記載される免疫刺激性組成物、例えばProtollin単独が種々の病原体、例えばChlamydia trachomatisまたはBacillus anthracisを用いたエアロゾル負荷に対する生得の免疫を刺激する能力は、動物モデルを含む、本明細書に記載されかつ当該分野で公知の方法に従って決定され得る。げっ歯類(マウス、ラット、ウサギ)のような動物は、本明細書に記載されるように調製されたProtollinで処置されて、次いで病原性微生物で負荷され得る。次いで、罹患率および死亡率が決定され得る。動物は、生得の免疫応答がどれくらいの長さ維持されるかまたは再刺激され得るかを決定するために免疫刺激性組成物を用いて1、2、3またはそれ以上の処置を受けてもよい。免疫刺激性組成物が、免疫原性組成物の有無のもとで生得の免疫応答を誘発、増強または刺激する能力はまた、野性型マウス由来、およびTLR−2、TLR−4およびMyD88ノックアウトトランスジェニック動物由来の末梢血Bリンパ球、樹状細胞および粘膜上皮細胞でMHCクラスIおよびIIおよびB7.2をこの組成物が上方制御する能力によって試験され得る。
【0069】
1実施形態では、本開示は、炎症性免疫応答を変更するための方法に関し、この方法は、その必要な被験体(または患者)に対して、プロテオソームおよびリポサッカリドを含む治療上有効な量の免疫調節性組成物を投与して、その結果この炎症性免疫応答が変更される工程を包含する。別の実施形態では、アレルギー反応を処置または予防するための方法は、その必要な被験体(または患者)に対して、プロテオソームおよびリポサッカリドを含むある量の免疫調節性組成物を投与して、その結果このアレルギー性反応が処置、減弱、寛解または予防される工程を包含する。特定の実施形態では、アレルゲン誘発性反応のようなアレルギー性反応を処置または予防する場合、Protollinを含む免疫調節性組成物は、特定のアレルゲンを含まず、またこのアレルゲンが細菌である場合、アレルゲンである細菌の属由来のリポサッカリドを含まない。すなわち、Protollinは、アレルギー性反応を直接または間接的に生じる成分を有する必要はない。ある実施形態では、プロテオソームおよびリポサッカリドは、同じまたは異なる細菌の属または種から得られる。好ましくは、プロテオソームはNeisseria種由来であり、そしてリポサッカリドは、Shigella、Chlamydia、Plesiomonas,PorphyromonasまたはE.coliから得られる。
【0070】
別の実施形態では、免疫調節性組成物が投与された後、アレルギー性反応に罹患しているかまたはそのリスクのある被験体は、プロテオソーム、リポサッカリドおよびアレルゲン(例えば、微生物抗原または花粉)を含むある量の免疫原性組成物を投与され、その結果このアレルギー性反応は処置、予防、軽減、減弱または寛解される。特定の実施形態では、免疫原性組成物のアレルゲン(または抗原)に対するプロテオソーム(またはプロテオソームとリポサッカリドとの合わせた重量を含むProtollin)の比(重量:重量)(初期の比および/または界面活性剤除去後の比)は、約4:1〜約1:4、好ましくは少なくとも4:1または少なくとも2:1におよぶ。他の実施形態では、免疫原性組成物の抗原に対するプロテオソーム(またはProtollin)の比は、約1:1〜約1:500におよび、好ましくはこの比は少なくとも1:20、少なくとも1:50または少なくとも1:100である。特定の他の実施形態では、混合物中のアレルゲン(または抗原)に対するプロテオソームまたはProtollinの比は、約1:1〜約1:500に、または約1:1〜約1:200の範囲に、または約1:2〜約1:100の範囲に、または約1:5〜約1:50の範囲に、または約1:2〜約1:20の範囲にわたる。特定の実施形態では、このアレルゲンは、吸入された粒子、花粉(例えば、雑草、木、草などの小胞子)、蒸気、ガス、食物、野菜(またはその成分)、薬物、毒素、微生物抗原(例えば、ウイルス、ウイルススプリット抗原、細菌、寄生生物、真菌およびその組み合わせ)、鱗屑、動物由来化合物、ほこり(例えば、LPSを有するほこりまたはチリダニ糞便)、ポリペプチド、炭水化物、核酸またはアレルギー性反応を誘発し得る任意の他の因子のうちの少なくとも1つである。この免疫原性組成物は、炎症性免疫応答またはアレルギー性反応が変更されるように、免疫調節性組成物の後、約1日〜約10日、1〜20日、または1〜30日後に、または約3日後に投与されてもよい。
【0071】
本明細書に記載される免疫刺激性、免疫原性および/または免疫調節性の組成物は、以下の1つ以上を含む特異的な抗抗原免疫応答または免疫調節性の効果を誘導し得る。抗原特異的抗体の産生を生じる特異的な体液性応答が誘発または刺激されてもよく、この抗体は、IgG、IgA、IgMおよび/またはIgEを含む任意のクラスの免疫グロブリン、およびこのクラスのアイソタイプを含み得る。例えば、血清、鼻腔洗浄液、肺洗浄液または他の組織における、特異的なIgG、IgA(特に粘液分泌物中)、およびIgEの存在は、限定はしないがELISA、イムノブロット、ラジオイムノアッセイ、免疫組織化学、蛍光活性化細胞分類(FACS)、オクタローニ(Octerlony)などを含む、本明細書に記載され当該分野で公知である任意の種々のイムノアッセイによって決定され得る。イムノアッセイにおける抗原または微生物特異的な抗体の検出のためには、生物学的サンプルは、精製、単離、部分的に単離された抗原もしくはそのフラグメントと相互作用させられるか接触させられてもよいし、または固定されてもよいし(例えばエタノールまたはホルムアルデヒドを用いて)もしくは固定されなくてもよいし、変性されなくてもよい微生物と相互作用させられるかもしくは接触させられてもよい。粘膜分泌物は、鼻咽頭および肺を含む呼吸器官から収集されたものを含む。抗原特異的抗体が毒素を中和するか(例えば、マクロファージ防御アッセイ)、微生物の食作用もしくはオプソニン作用を促進するか、または宿主細胞への微生物の進入を防止するか、または宿主細胞におけるウイルスのような微生物の進入、融合もしくは増殖を防止する能力のような機能的アッセイも行なってもよい。このような方法は、本明細書に記載され、そして当業者によって慣用的に行なわれる。
【0072】
本明細書に記載される1つ以上の免疫組成物を投与されている被験体における細胞媒介性免疫(CMI)または免疫応答はまた、本明細書において記載されかつ当該分野で公知である方法を用いて決定され得る。細胞媒介性免疫応答は、免疫応答が主にTh2応答から、平衡もしくは混合されたTh1およびTh2応答(Th1応答の増大またはTh1の付随する増大およびTh2応答の減少に起因する)に、または主にTh1応答にシフトされているか否かを決定する工程を含む。同様に、Th1応答から平衡もしくは混合されたTh1/Th2応答、または増大もしくは主にTh2応答へのシフトが決定され得る。例えば、Th1サイトカイン、例えば、IFN−γ、IL−2およびTNF−β、ならびに2型サイトカイン、例えば、IL−4、IL−5、IL−9、IL−10およびIL−13のレベルは、ELISA,ELISPOTおよびフローサイトメトリー(細胞内サイトカインを測定する)を含む、本明細書に記載され、かつ当該分野で実施される方法によって決定され得る。1型の応答は、Th1免疫の指標である細胞毒性T細胞(CTLs)の発達のような他のCMI関連応答の誘導の予測となる。免疫応答の抗原特異的誘発または免疫応答の刺激から生じる免疫細胞増殖およびクローン性の増殖は、脾臓細胞またはリンパ節由来の細胞のようなリンパ球を単離すること、抗原でこの細胞を刺激すること、およびサイトカイン産生、細胞増殖および/または細胞生存度を、例えば、トリチウム化チミジンの取り込みまたは非放射性アッセイ、例えば、MTTアッセイなどによって測定することによって、決定され得る。
【0073】
これらの任意の上述の方法では、免疫調節性組成物、免疫刺激性組成物および免疫原性組成物はさらに、本明細書に記載のように、薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤または希釈剤を含んでもよい。薬学的組成物は滅菌の水溶液または非水溶液、懸濁液またはエマルジョンであってもよく、これはさらに生理学的に受容可能なキャリア(すなわち、活性成分の活性を妨害しない非毒性物質)を含む。このような組成物は、固体、液体またはガス(エアロゾル)の形態であってもよい。あるいは、本発明の組成物は、凍結乾燥物として処方されてもよい。本発明の範囲内の薬学的組成物はまた、生物学的に活性であっても不活性であってもよい他の成分を含み得る。このような成分としては、限定はしないが、緩衝液(例えば、中性緩衝化生理食塩水またはリン酸緩衝化生理食塩水)、希釈剤、安定化剤、色素、香料および懸濁剤および/または防腐剤が挙げられる。
【0074】
当業者に公知の任意の適切なキャリアが、本発明の薬学的組成物において使用され得る。治療用途のキャリアは周知であり、そして例えば、Remingtons Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.(A.R.Gennaro編(1985))に記載される。一般に、キャリアのタイプは投与の様式に基づいて選択される。薬学的組成物は例えば、局所、経口、経鼻、クモ膜下腔内、直腸、膣、舌下、または皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内、腔内、外尿道内もしくは尿道内の注射もしくは注入を含む非経口投与を含む投与の任意の適切な方式のために処方され得る。非経口投与のためには、キャリアは好ましくは、水、生理食塩水、アルコール、脂肪、ワックスまたは緩衝液を含む。経口投与のためには、任意の上記のキャリアまたは固体キャリア、例えば、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石粉、セルロース、カオリン、グリセリン、デンプンデキストリン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、グルコース、スクロースおよび/またはカルボン酸マグネシウムが使用され得る。
【0075】
薬学的組成物(例えば、経口投与または注射による送達のため)は、液体の形態であってもよい(例えば、エリキシル、シロップ、溶液、エマルジョンまたは懸濁液)。液体の薬学的組成物は、例えば、以下の1つ以上を含んでもよい:滅菌希釈液、例えば、注射用水、食塩水、好ましくは生理学的な生理食塩水、リンゲル液、等張性塩化ナトリウム、溶媒または懸濁培地として役立ち得る不揮発性油、例えば、合成のモノグリセリドまたはジグリセリド、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または重硫酸ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸;緩衝液、例えば、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩および張度の調節のための因子、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロース。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチックで作製されたアンプル、ディスポーザブルシリンジまたはマルチドーズバイアルに入れられてもよい。生理食塩水の使用が好ましく、そして注射用の薬学的組成物は好ましくは無菌である。
【0076】
本明細書において用いる場合、処置するおよび寛解させるという用語は、所望の組成物または化合物の治療的な投与であって、疾患の少なくとも1つの局面またはマーカーを、統計学的に有意な様式でまたは臨床上有意な様式で、処置、阻害、減弱、緩和、軽減、予防または変更するのに十分な量でかつ条件下での投与をいう。治療上有効な量の免疫調節性組成物、免疫刺激性組成物または免疫原性組成物とは、本明細書において記載されるような疾患の少なくとも1つの局面またはマーカーを処置する組成物の量である。
【0077】
1つ以上の免疫調節性組成物、免疫刺激性組成物および免疫原性組成物を含む本明細書に記載の組成物は、ヒトまたは動物のような被験体にこの組成物が投与されることを可能にする任意の形態であってもよい。例えば、組成物は、液体溶液として調製および投与されてもよいし、または固体型(例えば、凍結乾燥された)として調製されてもよく、これは固体型で投与されても、または投与の際時に溶液に懸濁されてもよい。この組成物は、その中に含まれる活性成分が被験体または患者に対する投与の際に生物学的に利用可能であるように処方されてもよいし、または徐放性を介して生物学的に利用可能であってもよい。被験体または患者に対して投与される組成物は、1つ以上の投薬単位の形態をとり、例えば、一滴が単独の投薬単位であってもよく、そして1つ以上の組成物の容器が複数の投薬単位を保持してもよい。特定の好ましい実施形態では、免疫刺激性組成物または免疫刺激性組成物と少なくとも1つの抗原(または免疫源)もしくは免疫源のカクテルを含む免疫原性組成物、または免疫調節性組成物とを含む任意の上述の薬学的組成物は容器中、好ましくは滅菌容器中である。
【0078】
投薬レベルおよび投薬のタイミングを含む、投与のための特定のプロトコールのデザインは、当業者に周知の慣用的方法を用いてこのような手順を最適化することによって決定される。薬学的組成物は、処置される(または予防される)疾患に適切な方式で投与され得る。適切な用量ならびに投与の適切な期間および頻度は、患者の状態、患者の疾患のタイプおよび重篤度、活性成分の特定の形態および投与の方法のような因子によって決定される。一般に、適切な用量および処置のレジメンは、治療および/または予防上の利点(例えば、改善された臨床的転帰、例えば、さらに高頻度の完全または部分的な感染の根絶、またはより長期の疾患のない状態かおよび/もしくは全生存、または症状の重篤度の低下)を提供するのに十分な量(治療上有効な量)でこの組成物を提供する。予防的な使用のためには、特定の感染性微生物に関連する疾患を予防、その発現を遅延、またはその重篤度を軽減するのに十分な用量でなければならない。
【0079】
1実施形態では、免疫調節性組成物、免疫刺激性組成物、または免疫原性組成物のいずれか1つが経鼻的に投与される。他の投与経路としては、経腸、非経口、経皮/経粘膜、舌下、経鼻および吸入による経路が挙げられる。本明細書において用いる場合、経腸という用語は、免疫原性組成物が、口腔、直腸および舌下を含む胃腸管または経口粘膜を通じて吸収される投与の経路である。本明細書において用いる場合、非経口という用語は、動脈内、皮内、筋肉内、鼻腔内、眼内、腹腔内、静脈内、皮下、粘膜下および膣内の注射または注入技術を含む、胃腸管を迂回する投与経路を述べる。本明細書において用いる場合、経皮/経粘膜という用語は、本明細書に記載される任意の組成物が皮膚を通じてまたは経由して投与される投与経路であり局所投与を含む。「経鼻(nasal)」および「吸入(inhalation)」という用語は、免疫原性組成物が呼吸樹に導入される投与の技術を包含し、肺内または経肺動脈投与を含む。好ましくは本発明の組成物は経鼻的に投与される。
【0080】
さらに、本発明の免疫原性組成物は、免疫を増強するために、または免疫もしくは寛容の誘導に続いて用いられてもよく、この時、生の弱毒化ワクチン、または不活化サブユニットワクチンのような別のワクチンと一緒に与えられる。例えば、1つ以上の抗原またはそのフラグメントもしくは融合物をProjuvantまたはProtollinとともに含む組成物は、異なるワクチンを投与する前またはその後に免疫のプライミングまたはブーストとして(粘膜経路または非経口経路によって)用いられ得る。
【0081】
本明細書において引用されるか、および/またはアプリケーションデータシート(Application Data Sheet)に列挙される全ての米国特許、米国特許出願公報、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および特許でない刊行物は、その全体が参照によって本明細書に援用される。本発明は記載されてきており、以下の実施例は、限定はしないが本発明を例示することを意図している。
【実施例】
【0082】
(実施例1)
(プロテオソームの調製)
免疫原(例えば、微生物抗原またはアレルゲン)を、プロテオソームとともに処方して、ヒトまたは動物の被験体において防御免疫応答または寛容を誘発し得る本発明の免疫原性組成物を形成し得る。プロテオソームはアジュバントとして有用であり、そしてグラム陰性細菌から精製された外膜タンパク質から構成される。プロテオソームを調製するための方法は、例えば、Mallettら、Infect.Immun.63:2382,1995;米国特許第6,476,201 B1号;米国特許出願公開第2001/0053368号;および米国特許出願公開第2003/0044425号に記載される。要するに、フェノールで殺傷したB群タイプ2のNeisseria meningitidisのペーストを6%Empigen(登録商標)BB(EBB)(AlbrightおよびWilson,Whithaven,Cumbria,UK)を含有する1M塩化カルシウムの溶液で抽出した。この抽出物をエタノールで沈殿させて、1% EBB−Tris/EDTA−生理食塩水に溶解し、次いで硫酸アンモニウムで沈殿させた。沈殿したプロテオソームを1% EBB緩衝液に再度溶解して、ダイアフィルトレートして、0.1% EBB緩衝液中において−70℃で保管した。
【0083】
このプロセスのフローチャートは、約0.5%〜約5%のリポサッカリド含量を有するプロテオソームを生じるが、これをフローチャート1A(図1A)に示す。プロテオソームはまた、このプロセスを短くするために硫酸アンモニウム沈殿工程を省略することによって調製されてもよい。約12%〜約25%のリポサッカリド含量を有する得られたプロテオソームは、この物質に依存して、フローチャート1B(図1B)に示されるとおり約15%〜約20%の間であってもよい。当業者は、本明細書に記載されるようなProjuvantまたはOMP−LPS(Protollin)組成物を含む処方物を調製する方法を調整してワクチン成分の特別な特徴を最適化することができる。
【0084】
(実施例2)
(リポサッカリドの調製)
フローチャート2(図2)の実施例は、S.flexneriまたはP.shigelloidesからのLPS(例えば、無毒化されてない)の単離および精製のためのプロセスを示す。このプロセスは同様に、Shigella、Plesiomonas、Porphyromonas、EscherichiaおよびSalmonella種を含む1つ以上の他のグラム陰性細菌からLPSを調製するために用いられ得る。300L中での発酵による細菌の増殖後、この細菌を沈降させて、細胞ペーストを、細菌ペースト1グラムあたり3mlの0.9M NaCl、0.005M EDTAおよび10mg リゾチームで再水和させた。リゾチーム消化は室温で1時間進行させた。次いで、50U/ml Benzonase(登録商標)(DNase(Merck Chemicals)を含有する0.025M MgClを添加して、DNase消化を室温で30分間進行させた。次いで、この懸濁液を、マイクロフルイダイザー(microfluidizer)を14,000〜19,000psiで通過させることによってクラッキングさせた。新鮮なDNase(50U/ml)を添加して、この懸濁液の消化を室温でさらに30分間進行させた。消化された細胞懸濁液を水浴中で68℃まで加熱した。次いで、等容積の90%フェノール(これも68℃に加熱した)を添加して、この混合物を68℃で30分間、振盪しながらインキュベートさせた。この混合物を4℃で遠心分離して、水相および有機相を分けた。水相を回収して有機相をWFI(注射用水)を用いて68℃で30分間、再抽出した。この混合物を4℃で遠心分離して、第二の水相を回収し、2つの回収された水相を合わせた。核酸を沈殿させるために、20%エタノールと10mM CaClをプールされた水相に添加した。この混合物を4℃で一晩撹拌した。次いで、沈殿した核酸を10,000×gで30分間の遠心分離によって沈殿させた。上清を回収し、濃縮し、30,000MWの中空ファイバーカートリッジを用いて、0.15M NaCl、0.05M Tris、0.01M EDTAおよび0.1% Empigen(登録商標)BB、pH8.0(TEEN緩衝液)中にダイアフィルトレートした。次いで、0.22μm Millipak(登録商標)60フィルターユニットを用いて滅菌濾過して、滅菌の保管容器に等分して、−80℃で凍結させた。安定性研究によってバルクのLPSは少なくとも2年間の貯蔵期間を有することが示された。
【0085】
(実施例3)
(プロテオソーム:リポサッカリドのアジュバントの調製および特徴づけ)
プロテオソームとLPSとを混合することによってプロテオソームアジュバント処方物を調製した(Protollin)。LPSは、Shigella、Plesiomonas、EscherichiaまたはSalmonella種のような多数の1つ以上のグラム陰性細菌のいずれかに由来してもよく(実施例2を参照のこと)、これをフローチャート3(図3)に記載されるように、実施例1のプロテオソームと混合する。要するに、プロテオソームおよびLPSを4℃で一晩解凍して、界面活性剤濃度を1% Empigen(登録商標)BB含有TEEN緩衝液に調節した。プロテオソームおよびLPSを室温で15分間混合して、その量は約10:1〜約1:3のプロテオソーム:LPSという最終の重量/重量比を得た。このプロテオソーム:LPS混合物を、ほぼ10,000サイズ(例えば、Size 9)のMWCO(分子量カットオフ)の中空ファイバーカートリッジでTNS緩衝液(0.05M Tris,150mM NaCl pH8.0)中にダイアフィルトレートした。このダイアフィルトレーションは、透過物中のEmpigen(登録商標)含量が<50ppmであるときに停止したが、この含量はEmpigen(登録商標)濁度アッセイ(Turbidity Assay)によって、またはBradford Reagent Assay製造業者のプロトコールおよび標準のプロトコールによって決定した。バルクのアジュバント(本明細書においてはOMP−LPSとも呼ばれる)を濃縮して5mg/mlのタンパク質まで調節した。標準のローリー(Lowry)アッセイによってタンパク質含量を決定した。0.22μm Millipak 20フィルターユニットを用いてこのアジュバントを滅菌濾過した。バルクのアジュバントを無菌の貯蔵容器に等分して凍結させた。
【0086】
OMP−LPSアジュバントを、(1)逆相HPLCを用いて、Empigen(登録商標)(400ppm)について;(2)ローリーアッセイによってタンパク質含量について;そして(3)2−ケト−3−デオキシオクトン酸(KDO)アッセイでの測定によってLPS含量について、試験した。OMP−LPS組成物をさらに、粒子セイザー(particle seizer)(例えば、Brookhaven Instrumentsモデル90プラスまたは同様の機械)(10〜100nm)を用いて定量的数値加重分析によって決定される粒子サイズ分布について特徴付けた。しかし、複合体の粒子サイズは、プロテオソーム対LPSの比が変化する(例えば、より高い)とともに増大しても調節されてもよい。これらのプロテオソーム:LPS複合体はProtollinと名付けられる。安定性データによって、この処方物は2年を超えて安定であることが示された。
【0087】
Protollinは、LPSの他の供給源を用いて調製されている。2つのProtollin調製物は、E.coliの2つの異なる株由来のLPSを用いて作製し、両方が同様のアジュバント活性を有した。Protollinはまた、N.meningiditis LPSを用いて調製する。N.meningitisのLPSは頻繁に、リポオリゴサッカリドを意味するLOSと呼ばれる。なぜなら、N.meningiditisのリポサッカリドのO側鎖は、E.coliおよびShigellaのような他のグラム陰性細菌の側鎖よりも短いからである。N.meningiditis LPSを有するProtollin(Protollin−Nm)の産生は、全ての他のバージョンのProtollinと異なる。N.meningiditisのプロテオソームOMPの産生の間、LPSは硫酸アンモニウム沈殿技術によって除去され、その結果プロテオソーム粒子のN.meningiditis LPSは2.5%未満になる。LPSがこの工程で除去されない場合、得られたプロテオソーム粒子は約20〜25%LPSを有し、その結果OMP:LPSの比は約5:1〜約4:1におよぶ。従って、Protollin−Nmは単一工程で産生され、これによってプロテオソーム粒子のさらなる精製は除かれる。各々のProtollinのアリコートを例えば、スピンダウンアッセイにおける使用のために保持して、LPSと複合体化するプロテオソームOMPを検証する。これらのバージョンのProtollinの各々を、rPA(組み換え防御抗原)との処方後にマウスにおいてアジュバント活性について試験する。
【0088】
(実施例4)
(ペストの抗原F1−Vを用いて処方したProtollinでの免疫)
本実施例は、ペスト抗原(F1−V)と処方されたプロテオソーム:LPS(Protollin)組成物が、Yersinia pestisでの致死性負荷に対して防御し得る免疫応答を誘発する能力について記載する。0日および21日に、20匹の群の6〜8週齢雌性Swiss−Websterマウス(Charles River,St−Constant,Quebec)を免疫することによってF1−V免疫応答を評価した。ProtollinおよびF1−V融合タンパク質(U.S.Army Medical Research Institute of Infectious Disease)の新鮮解凍アリコートの溶液を免疫の前16時間未満に混合した。経鼻投与のためには、イソフルラン吸入によってマウスを最初に浅く免疫した。25μlのワクチンまたは適切なコントロールサンプル(Protollin単独またはF1−V単独)を各々のマウスの鼻孔に加えた(鼻孔あたり12.5μl)。並行して一群のマウスを、500mgのAlhydrogel(登録商標)に吸着された25μlのF1−Vを用いる後肢への注射によって筋肉内(i.m.)免疫した。コントロールのi.m.注射も行った。その35日後および55日後に、各々の群由来の10匹のマウスを、COを用いる窒息および失血によって安楽死させた。血清、鼻腔洗浄液および肺洗浄液のサンプルを得て、−80℃で保管した。脾臓をインビトロの再刺激および放出されたサイトカインの評価のために処理した。各々の群由来の残りの10匹のマウスを、170〜250 LD50のエアロゾル化Y.pestis(Colorado 92株)の吸入によって35日目または55日目に負荷して防御を評価した。罹患率および死亡率の決定のために負荷後28日間、マウスをモニターした。
【0089】
血清および肺洗浄液サンプルに存在する抗体を、Protollinと処方された2用量のF1−V抗原を用いて経鼻的に免疫されたマウスから得て、F1−V単独で経鼻的に免疫したマウス由来のサンプルと、またはAlhydrogel(登録商標)吸着F1−Vで筋肉内免疫したマウスと比較した。その結果を図4に示す。全ての組み合わせのProtollinおよびF1−Vが高度に免疫原性であって、1〜9mg/mlというF1−V特異的血清IgGの力価を誘発した(図4A)。両方のサンプリングの日に、さらに低いF1−Vおよび/またはProtollin濃度によって誘発されるさらに低い力価への傾向が観察されたが、F1−VおよびProtollinの濃度の任意の組み合わせによって誘発された特異的なIgG力価、またはAlhydrogelに吸着された20μgのF1−Vの筋肉内注射によって誘発された力価においては有意な相違は測定されなかった(P>0.05)。F1−V処方されたワクチンで免疫したマウスでの全ての特異的な血清IgGは、処方されていないF1−Vコントロールの経鼻投与を受けた動物で測定された力価よりも有意に高かった(P≦0.001)。F1−V特異的な抗体は、コントロールのマウス由来の血清では検出されなかった。
【0090】
肺洗浄液サンプルに存在する特異的な抗F1−V、抗F1および抗V抗体のレベルは、F1−V融合タンパク質、F1ポリペプチドおよびVポリペプチドを抗原として用いる標準的な方法に従って行なったELISAによって決定した(U.S.Army Medical Research Institute of Infectious Disease)。IgGおよびIgA抗体の力価は、以前に記載されたようにELISAによって個々のサンプルで決定された(Planeら、Vaccine 20:218(2001))。要するに、ELISAプレートをF1−V、F1またはVを事前に決定した濃度で用いてコーティングした。結合した抗体をHRP結合体化した抗マウスIgGまたはIgAを用いて検出する。データは、個々のマウスサンプルにおける抗体濃度の幾何平均として表し、そしてそのデータの有意差は、Tukey−Kramerのペアワイズ比較を用いてANOVA分析によって評価する。F1−V抗原に加えてProtolinを用いて経鼻的に免疫したマウスの全ての群は、図4Bに示されるとおりF1−V特異的な肺IgAの高い力価を有し、これによって粘膜(例えば、鼻腔内)経路による免疫が粘膜抗体を効率的に誘発することが確認された。ANOVA分析では、種々の組み合わせのF1−Vに加えてProtollinを用いて免疫したマウスの群の間でIgA力価に有意な差は示されなかった。処方されていないF1−Vのみを経鼻的に投与された動物は、かろうじて検出可能なIgAレベルを有した。分泌IgAは、Alhydrogel吸着F1−Vを用いてi.m.注射されたマウス由来のサンプルでは検出されなかった。
【0091】
20μgの用量のF1−V抗原で免疫した全てのマウス由来の血清および肺洗浄液を、ELISAで試験して、血清中の抗体がF1もしくはVまたは両方の成分に特異的に結合するか否かを決定した。全ての場合にかつ両方のサンプリング時間で、F1−V抗原のF1およびV部分を認識する血清IgGおよび肺洗浄液IgA抗体を検出した(表1)。F1−V抗原のF1およびV部分に対する、Protollin組成物で免疫したマウス由来の肺洗浄液および血清抗体の結合によって、免疫応答が主にF1−V融合タンパク質のV成分に対することが示された(表1)。肺洗浄液サンプルはまた、F1−V特異的なIgGの力価が血清力価のわずかなパーセントにしか相当しない場合であっても(0.11%〜0.56%の範囲;中央値0.175%)、有意な力価のF1−V特異的なIgGを含んだ。
【0092】
(表1.ペスト抗原F1−Vのいくつかの処方物で免疫したマウスの血清および肺洗浄液における抗V抗体に対する抗F1抗体の比)
【0093】
【表1】

(実施例5)
(Protollin:ペスト抗原での免疫後のサイトカインプロフィールの決定)
経鼻的に投与されたProtollinまたは注射されたAlhydrogel(登録商標)アジュバントのF1−Vワクチンによって誘発された適応的免疫応答の表現型(1型または2型)を比較するために、免疫されたマウスの選択された群由来の脾臓細胞(実施例4を参照のこと)を、F1−Vを用いてインビトロで再刺激した。各々の群のマウス由来の脾臓をプールして、標準的な方法によって単一の細胞懸濁物に処理した。次いで、この脾細胞懸濁物を種々の濃度のF1−Vとともにインキュベートした。培養上清に放出されたサイトカインを、OptEIAキット(BD Biosciences,San Jose,CA)を用いて定量的ELISAによって決定した。培養上清に放出されたIFN−γ、TNF−αおよびIL−5のサイトカインの量を決定した。Protollin(1μg)と混合されたF1−V(50μg)で経鼻的に免疫したマウス由来の脾細胞は、高レベルのIFN−γおよびTNF−αの両方を分泌することによって、インビトロ再刺激に対して応答した;極めて低量のIL−5も検出された。対照的に、Alhydrogelに吸着されたF1−V(20μg)の注射によって免疫したマウス由来の脾細胞は、比較的低い量のIFN−γおよびTNF−αを分泌することによって、応答したが、有意な量のIL−5が検出された。従って、F1−V抗原とともに処方された(アジュバント化された)Protollinの経鼻投与によって誘発されたサイトカインプロフィールは、1型免疫応答の誘発と一致していたが、Alhydrogel(登録商標)で処方されたF1−V抗原のi.m.注射によって誘導されたサイトカインプロフィールはそれよりも、2型の表現型に偏った応答と一致している。
【0094】
(実施例6)
(エアロゾル化された生きたY.pestisを用いる免疫したマウスの負荷)
本実施例は、Protollinとともに処方したF1−Vでの鼻腔内免疫によって提供された免疫防御を記載する。Protollinと組み合わせたF1−Vを投与されたマウスは、生きたエアロゾル化されたY.pestisに対する全身曝露によって負荷した(実施例4を参照のこと)。動物の生存によって示される負荷からの防御のレベルを、Alhydrogel上に吸着されたF1−Vを注射したマウスおよびF1−V単独またはProtollin単独の鼻腔内投与を受けたマウスの保護と比較した。35日目でかつ169LD50 Y.pestisの負荷用量で、5、20または50μgのF1−Vに加えて1または2.5μgのProtollinを用いて鼻腔内免疫したマウスは、Alhydrogel上に吸着されたF1−Vを用いて注射されたマウスと同様に、全て生存した。5、20または50μgのF1−Vおよび0.25μgのProtollinを用いて経鼻免疫したマウスの生存は、それぞれ、90%、100%および90%であったが、同じ用量のF1−Vを用いてProtollinなしで経鼻免疫したマウスの生存は、それぞれわずか30%、40%および40%であった。Protollin単独を投与されたコントロールマウスは負荷後4日間より長く生存したものはなかった。Protollinとともに処方したF1−Vで免疫した全てのマウスの群についての生存は、コントロールのマウスまたはF1−V単独で免疫したマウスでの生存に比較して極めて有意であった(フィッシャーの直接確率法を用いて、P≦0.05かそれよりよい)。20μgの用量のF1−Vで免疫したマウスの結果は、図5Aに示し、5μgの用量のF1−Vで免疫した動物の結果は、図5Dに示す。
【0095】
動物を55日目に負荷した場合、同様の結果が得られた(図5B).F1−Vとともに処方された2.5μgのProtollinで免疫した全てのマウスおよびAlhydrogel上に吸着されたF1−Vの注射によって免疫されたマウスは、Y.pestisによる負荷を生残した。50μgまたは20μgのF1−Vとともに処方された1μgのProtollinで免疫した全てのマウスも生残し、一方、ProtollinおよびF1−Vの全ての他の組み合わせを投与された動物のうち90%が生残した。処方されたF1−V(F1−Vに加えてProtollin)で免疫された全てのマウスでは、観察された防御は、未処方のF1−Vで免疫したマウス(10〜30%の防御)、または生残した動物がいなかったProtollinのみのコントロール群のマウスに比較して高度に有意であった(P≦0.01かそれよりよい)。
【0096】
50μgF1−Vを用いて1μgのProtollinの有無で経鼻的に免疫したマウス、またはAlhydrogel上に吸着された20μgのF1−Vを注射されたマウスを、254 LD50のエアロゾル化された生きたY.pestisに対する全身曝露によって55日目に負荷した。結果は図5Cに示す。50μgのF1−Vに加えて1μgのProtollinを用いて免疫したマウスのうち80%が生残した;Alhydrogel上に吸着された20μgのF1−Vを用いて免疫したマウスのうち60%が生残した;そしてF1−Vのみを投与された動物のうち20%が致死性の負荷に対して生残した。Protollin単独を与えられたコントロールのマウスは全て死んだ。処方されたF1−Vでの免疫は、コントロールのマウスに比較して死亡に対する有意な防御を誘導した(F1−Vに加えてProtollinの経鼻については、P≦0.001;i.m.注射したF1−VについてはP≦0.01)。F1−Vに加えてProtollinでの経鼻免疫は、F1−V単独での免疫よりも死亡に対して有意に防御を提供した(P≦0.05)。Alhydrogel上に吸着されたF1−Vを注射したマウスの生存は、ProtollinなしでF1−Vを用いて鼻腔内免疫した動物の生存よりも有意に良好ではなかった(P=0.095)。
【0097】
(実施例7)
(Protollin炭素菌免疫原性組成物によるマウスの防御)
本実施例では、Bacillus anthracisの防御抗原(PA)とともに処方したProtollin(実施例8を参照のこと)を、それがPA媒介性マクロファージ殺傷における統計学的に有意な減少によって例証される免疫応答を誘導する能力について評価した。1μgのProtollinと混合した5μgまたは25μgのrPA(List Biological Laboratories)を用いて0日目および14日目にマウスを経鼻的に免疫した。
【0098】
標準的なELISAプロトコールを用いて、血清および肺洗浄液サンプルのIgGおよびIgA Iを検出した。要するに、試験サンプル(血清および洗浄液)の連続希釈を、精製したrPAでコーティングしたELISAプレートのウェルに加えた。固定された抗原に固着された抗原特異的抗体を、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)に結合体化した抗マウス定常領域抗体で検出した。HRP抗体結合体のインキュベーション後、ウェルを洗浄して、TMB基質を添加して、結合したHRP抗体の量を490nmでの吸光度を測定することによって検出した。試験サンプル中の抗体濃度は、IgAおよびIgGについての精製された標準抗体を用いて、並行して行なった標準曲線から算出した。ELISAデータは、対数変換したデータを用いて統計学的分析によって95%信頼水準で幾何平均として表した。Protollinに加えてPAを投与された動物は、5または25μgのrPA単独を鼻腔内に投与されたマウスでのレベルよりも有意に高い、特異的な抗PA血清IgGおよび肺IgAのレベルを示した(p<0.05)(図6A〜B)。Protollin単独またはrPA単独で処置した動物における粘膜のIgAレベルは、このアッセイの検出レベル未満であった。
【0099】
特異的な抗PA抗体がPA媒介性のマクロファージ殺傷を中和する能力を、動物由来の血清および肺洗浄液のサンプルを用い、細胞培養アッセイを用いて評価した。RAW264.7マクロファージ(ATCC、Manassas,VA)(1ウェルあたり2×10細胞)を滅菌の96ウェルプレートにプレートして、5%のCO中において37℃で24時間インキュベートさせた。PA免疫された動物由来の血清または肺洗浄液のサンプルの連続希釈をPA溶液(10%ウシ胎仔血清を補充したrPMI細胞培養培地中に4μg/ml)とともに37℃で1時間インキュベートさせて、その後にこの混合物をRAW264.7細胞を含有するウェルに添加した。致死因子(LF)の溶液をウェルに添加して、そのプレートを5%のCO中において37℃で4時間インキュベートさせた。次いで、細胞生存度を測定するためにMTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)の溶液を各々のウェルに添加して、そのプレートを5%のCO中において37℃で4時間インキュベートさせた。この反応を20% SDS含有50% DMF(ジメチルホルムアミド),pH4.3を添加することによって停止させた。ELISAプレートリーダー(Molecular Devices,Menlo Park,CA)を用いて570nm(690nmが基準)で光学密度を測定する。このアッセイは、細胞濃度については10〜10細胞/ウェルの範囲で直線である。経鼻ワクチン、rPA+Protollinは、IM ミョウバンアジュバント化ワクチンと同様に、rPA活性を中和した抗体の匹敵するレベルを誘発した(図7)。
【0100】
(実施例8)
(炭素菌ワクチン処方物の調製)
鼻腔Protollin炭素菌ワクチンは、炭素菌PA抗原と可溶性の事前形成されたプロテオソームに加えてLPS(すなわち、Protollin)とを免疫の前に混合することによって作製した。rPA抗原およびrPA−anch(疎水性のアンカー配列を有するrPa)抗原の両方を、Protollinのいくつかの異なる処方物を用いて評価して、好ましい免疫原性抗原およびProtollin成分を有する処方物(単数または複数)を決定する。コントロールの処方物は、例えば、Protollin単独から構成されるか、または疎水性アンカー配列(anch)を有するかもしくは疎水性アンカー配列を有さない組み換えの連鎖球菌タンパク質を含む少なくとも1つそして好ましくは2つのコントロール抗原と混合される。従って、評価されるProtollinの処方物は、異なる供給源のLPS、変化したプロテオソーム:LPS比および変化したProtollin:rPA抗原比を有する。rPA−anchはまた、プロテオソームアジュバントがその中に貯蔵されている界面活性剤の濃度を除去または減少させるように設計されている、本明細書に記載される透析またはダイアフィルトレーション方法を用いて、極めて低レベルのLPS(<2重量%)を有するプロテオソームタンパク質で処方される。これらのプロテオソームアジュバント調製物は、添加された外因性のLPSを有さない。本実施例に記載されるようなProtollinを処方するのに用いられるプロテオソーム調製物は、プロテオソームの鼻腔インフルエンザワクチンの安全性、免疫原性および有効性を評価するために、大規模な前臨床毒性試験、ならびに第1相および第2相のヒトでの臨床試験で用いられている。
【0101】
好ましいLPSの細菌タイプおよび供給源、ならびにOMP:LPS処方物の好ましい比は、免疫原性研究によって決定される。好ましい細菌の発酵後、LPSを精製して分析する。次いで、分析されたLPSをプロテオソームOMP粒子と選択された比で混合してOMP:LPS複合体、Protollinを形成する。LPSおよびOMPsの複合体形成の程度は、キャピラリー電気泳動、LPS「スパイク(spiking)」研究、および当該分野で行なわれる他の分析を用いて「遊離対結合(free−vs.−bound)」アッセイによって決定する。Protollinを、KDO、NMRおよび銀染色PAGEを用いてLPS含量について分析して、LC−MS、RP−HPLC、SDS−PAGE(モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を用いるクマーシーブルー染色&ウエスタンイムノブロット)、N末端配列決定、アミノ酸分析、ローリーまたはBCAによる総タンパク質、およびMALDI−TOFMS(例えば)を用いてプロテオソームOMP含量について分析する。残りのLPS、核酸、および界面活性剤の存在は、LPS含量を決定するためにはKDO、そして界面活性剤の存在を決定するためにはHPLCを含む種々の技術を用いて決定する。
【0102】
(実施例9)
(血清および粘膜の免疫応答の評価)
本明細書に記載のような試験免疫刺激性または免疫原性の処方物で免疫した動物(マウス、ウサギ)から得た生物学的サンプルにおける総免疫グロブリンならびにB.anthracis防御抗原(PA)特異的IgG、IgAおよびIgMの力価をELISAを行なって決定した。サンプルとしては、血清、鼻腔および肺の粘膜洗浄液が挙げられる。標準的なELISAプロトコールを用いて、直線性、特異性、感度および再現性を決定する。要するに、試験サンプル(血清および洗浄液)の連続希釈を、精製したrPAまたはその誘導体でコーティングしたELISAプレートのウェルに加える。固定された抗原に固着された抗原特異的抗体を、動物(例えば、抗ウサギまたは抗マウス定常領域抗体)および抗体サブタイプに特異的な西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)に結合体化した抗体を用いて検出する。HRP抗体結合体のインキュベーション後、ウェルを洗浄して、TMB基質を添加して、結合したHRP抗体の量を490nmでの吸光度を測定することによって検出する。試験サンプル中の抗体濃度は、IgA、IgMおよび/またはIgG(マウスアイソタイプ、IgG1およびIgG2aを含む)についての精製された標準抗体を用いて、並行して行なった標準曲線から算出する。必要に応じて、粘膜洗浄液サンプルにおける特異的な抗体レベルを標準化して、サンプル中のIgAまたはIgGの総量に比較して、検出された特異的な抗体を表すことによって正規化する。ELISAのデータは、対数変換したデータを用いて統計学的分析によって95%信頼水準で幾何平均として表す。
【0103】
(実施例10)
(炭素菌中和抗体について評価するためのマクロファージ防御アッセイ)
本実施例は、プロテオソームワクチンで免疫した動物由来の中和抗体を測定するために用いられるアッセイを記載する。インビトロにおいてアッセイを設計して、免疫された動物から得られた血清サンプルにより炭素菌毒素の細胞傷害性の阻害を測定する。血清サンプルの連続希釈を致死量の炭素菌PAおよび致死因子(LF)(List Biological Laboratories,Cambell,CA)と組み合わせて、J774A.1マクロファージ細胞または他のマクロファージ細胞株に対して、96ウェルプレートにおいて3時間、37℃で添加する。細胞の生存度は、1/10容積の5mg/ml MTT溶液を添加することによってクロマトグラフィーで測定する。37℃で4時間のインキュベーション後、アッセイプレートをELISAプレートリーダー(Molecular Devices,Menlo Park,CA)を用いて570nmで分光光度的に分析する。このアッセイは、10〜10細胞/ウェルの範囲では細胞濃度について線形である。
【0104】
(実施例11)
(炭素菌に対する免疫を評価するための細胞媒介性免疫アッセイ)
プロテオソームベースのPAワクチンでの免疫後に誘導される細胞性免疫応答は、種々の方法を用いて研究される。例えば、T細胞由来のサイトカインは、マウス脾臓および/または縦隔リンパ節から単離されたPA再刺激された精製または富化されたT細胞で評価される。1型(例えば、IFN−γ)およびII型(例えば、IL−4およびIL−5)サイトカインの存在およびレベルは、ELISA、ELISPOTを含む1つ以上の方法によって決定される。細胞内サイトカインの存在およびレベルは、標準的なフローサイトメトリー法によって決定される。ウサギのサイトカインに特異的な試薬の入手困難性に起因して、PA再刺激されたPBMC T細胞の増殖を測定する技術を用いて、ウサギにおける細胞媒介性免疫応答を評価する。
【0105】
Tリンパ球増殖アッセイを用いて、クローン増殖に対する免疫の効果を測定し、種々の動物モデル由来の動物におけるメモリーリンパ球の存在を決定する。動物の屠殺後、縦隔リンパ節および頸部リンパ節を標準的な技術を用いて外科的に取り出して、そのリンパ節を単離し、次いでPAの有無において培養する。増殖はH−チミジンの取り込みによって測定する。ニセのワクチンで免疫した動物由来の細胞を陰性コントロールとして用いる。アッセイ結果を用いて、リンパ節におけるT細胞分化に対する免疫の効果を、特に粘膜の免疫に関して決定する。その結果はまた、炭素菌負荷動物研究において決定した免疫の有効性とも相関している。
【0106】
(実施例12)
(鼻腔洗浄および肺洗浄液を収集するための方法)
マウスおよびウサギから肺および鼻腔の洗浄液を収集して、免疫刺激性処方物または免疫原性処方物に対する免疫応答を分析した。マウスでは、鼻腔洗浄液および肺洗浄液は、気管にカニューレ挿入すること、そして気管をとおって上側に0.1%のウシ胎仔血清アルブミンおよびプロテアーゼインヒビターを補充した1ml PBS(General Use Protease Inhibitor Cocktail;Sigma−Aldrich Chemicals containing 0.2mM AEBSR、1μg/mlアプロチニン、3.25μMベスタチン、10μMロイペプチン)をポンピングすることによって行なった。鼻孔から流れ出す液体を収集して、ボルテックスして、次いで遠心分離によって組織および細胞砕片を除去した。上清を−70℃で保管した。カニューレを気管に再挿入して、肺液の収集のために肺に向かわせた。肺を1.0mlのプロテアーゼ補充PBSで2回洗浄した;この液を収集してボルテックスした;そして遠心分離によって細胞砕片を除いた。肺および鼻腔の洗浄液を−70℃で保管した。ウサギ粘膜液を同様に収集して、必要に応じて容積を調節した。特定の実験では、粘膜サンプルを収集した後、頸部リンパ節および縦隔リンパ節を外科的に取り出して、単核球を単離して、本明細書に記載のようにELISPOT抗体、サイトカインおよびCMIアッセイのために培養した。
【0107】
(実施例13)
(Protollinを用いるウサギでの生得免疫の誘発)
Protollinは、プロテオソームおよびLPSの両方に関してアジュバント活性を有する。Chlamydia trachomatisまたはBacillus anthracisのような種々の病原体でのエアロゾル負荷に対して、Protollin単独(抗原なし)が生得免疫を刺激する能力を決定する。Protollin投与後2〜3日内、またはそれ以上で炭素菌の芽胞の100または200 LD50を有するエアロゾルによってウサギを負荷する。炭素菌負荷に生残するウサギを、防御が延長され得るか生得免疫が再刺激され得るかを決定するためにProtollinを用いて再度免疫する。
【0108】
(実施例14)
(Chlamydia trachomatisでの負荷に対するプロテオソーム:LPS処方物による免疫応答の誘導)
Chlamydia LPSは種々のChlamydia株の間で高度に保存されており、Chlamydia属特異的なLPSについて特異的な抗体はChlamydia感染に対して防御し得ることがデータによって示唆される(Petersonら、Infect.Immun.66:3848,1998)。Chlamydia LPSは、E.coli LPSおよび粗「chlamydia様(chlamydia−like)」変異体(rLPS)の両方を等しい割合で合成する組み換えEscherichia coli(C.t./E.coli rLPS)(GlycoTech,Kukels,Germanyから購入)中で産生された。Chlamydia感染についてのマウス肺モデルを用いて、Protollinで処方されたC.t./E.coli rLPSによって発揮される免疫応答を評価した。
【0109】
プロテオソーム:LPS組成物をC.t./E.coli rLPSで透析手順を用いて調製した。プロテオソーム単独(0.1%Empigen(登録商標)BB界面活性剤中に可溶化した)またはLPSで可溶化した(1%Empigen(登録商標)BB界面活性剤中に可溶化した)を1mg/mlのプロテオソームという最終濃度で、1,000MWのカットオフを有するSpectraPor(登録商標)透析チューブに加えた。透析は、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)に対して10日間またはそれ以上行なった。透析の期間は、例えば、250、500、750、1000ppm、またはそれ以上またはそれより低い量(例えば、50ppm)の濃度を含む、ワクチン処方物における界面活性剤の種々の量を含むように調節され得る。透析されたサンプル中のLPSの濃度は、3−デオキシ−D−マンノ−オクツロン酸を測定することによって決定して、そしてタンパク質の濃度は、標準的なローリー法を用いて決定した。透析の前のプロテオソームとC.tr./E.coli LPSとの混合は、ほぼ1:2.7の比(プロテオソームの重量:C.tr./E.coli LPSの重量)であって、透析後は約1:1.8の比となった。透析の前のプロテオソームおよびE.coli LPSの混合物は、1:1.35であって、透析後は約1:1.4であった。
【0110】
プロテオソーム処方物中に提供されるChlamydia LPSが生きたChlamydia細菌の負荷に対してマウスを特異的に防御し得るか否かを決定するために、16匹のマウス(6〜8週齢)の群を麻酔して、次いでプロテオソーム:C.tr./E.coli rLPSを用いて0日目および22日目に鼻腔内免疫した。マウスはまた、プロテオソーム:E.coli LPSまたはプロテオソーム:Plesiomonas shigelloides LPSを用いて処置した。プロテオソーム:LPS処方物は、表2に記載されるプロテオソーム:LPSの比および用量で与えられた。他の群のマウスには、0日目に単回用量として、400感染単位(IFU)の生きたCT MoPn(陽性コントロール)またはHeLa細胞抽出物(陰性コントロール;感染したHeLa細胞において増殖した;C.trachomatis(CT MoPn)のマウス間質性肺炎株の400 IFUsを精製するために必要な抽出物の容積に相当する)のいずれかを与えた。全ての免疫は、25μlの容積で与えた(鼻孔あたり12.5μl)。
【0111】
−1日目および30日目に各々のマウスの後眼窩洞から血液を無菌的に収集した。気管支肺胞洗浄液を30日目に1群あたり6匹のマウスで行なった。34日目に、1群あたり残りの10匹のマウスの各々に、5,000 IFUの生きたCT MoPnを鼻腔内負荷した。これらのマウスの毎日の体重を10日連続して測定した。この10日の期間に屠殺したマウスで心臓の放血および肺の回収を行なった。HeLa細胞に対して肺および洗浄液サンプルを加えること、および蛍光特異的な抗Chlamydiaモノクローナル抗体を用いてChlamydia基本小体(EB)を特定することによって、肺でのChlamydia IFUの量を決定した。
【0112】
400IFUのCT MoPnを用いて経鼻的に免疫したマウス(第2群、Ct400)は、体重減少(BWの最大減少)に対して高度に防御された(表3;P=0.001326)。この群のマウスでは、5,000IFUのCT MoPnで鼻腔内負荷した後、最大10日間にわたってその肺において検出可能なC.trachomatis(表4;P=4×10−9)を有するものはなかった。HeLa細胞抽出物を投与されたコントロールのマウス(第1群、HELA)は、体重最大減少の高さ(減少%)および肺におけるChlamydia感染単位(IFU)の高い力価によって示されるとおり致死性の負荷からは防御されなかった(表3および4)。Chlamydia LPS、そしてまたE.coliまたはP.shigelloides LPSのいずれかを含むプロテオソーム調製物で処置したマウスは、体重の減少および細菌の増殖に対して有意な保護を示した(表3および4)。
【0113】
防御が少なくとも部分的には特異的な抗Chlamydia LPS抗体に起因し得るか否かを検討するため、免疫されたマウス由来の血清および肺におけるChlamydia特異的抗体の存在を、抗原の供給源として不活性化された丸ごとのChlamydiaの細胞を用いるELISAによって決定した。22日目に第二の免疫の2週間後にプロテオソーム−LPSワクチンで免疫した動物から血清を得た。HeLa細胞抽出物またはCT−MoPnで免疫した動物由来の血清を初回かつ唯一の免疫の30日後に得た。表2に示される結果によって、Chlamydia LPSで処方されたプロテオソームを与えられた動物由来の血清および肺に存在する抗体は、丸ごとのChlamydiaの細胞に結合することが実証された。
【0114】
Chlamydiaに対して結合する抗体がE.coli LPSおよびP.shigelloides LPSに存在するエピトープと交差反応するか否かを決定するために、処置された動物由来の血清および肺における抗体のこれらのタイプのLPSに対する結合をまたELISAによって決定した。表2に示される結果によって、プロテオソーム:LPS処方物における特異的なLPSタイプの各々で免疫したマウスの血清中の抗体が、対応するLPSにのみ結合することが実証された。プロテオソーム処方されたChlamydia LPSで免疫した動物由来の抗体のみが丸ごとのChlamydia細胞に結合した。E.coli単独またはP.shigelloidesのいずれか由来のLPSで処方されたプロテオソームは、丸ごとのChlamydia細胞に結合できなかった;しかしこれらの調製物はChlamydia負荷に対してマウスを有意に防御した(表3および4を参照のこと)。
【0115】
(表2.BALB/cマウスに対して鼻腔内に投与されたProtollin組成物の免疫原性)
【0116】
【表2】

(1)鼻腔内免疫(25μl、12.5μl/鼻孔)を0日目に第1群(HELA細胞)および第2群(Chlamydia trachomatis)に対して1回、または第3〜6群(プロテオソーム:LPSワクチン)に対して0日目(上位比)および22日目(下位比)に2回、麻酔されたマウス(1群あたり16匹のマウス)に対して与えた。(2)初回の免疫の5週間後(30日目)(プロテオソーム−LPSワクチンでの第2の免疫の2週間後)に得られた血清(6匹のマウスからのプール)中の抗LPS抗体力価は、バッククラウンドよりもほぼ2倍大きい450nmのO.D.を与える希釈として表される。
(3)免疫に用いた抗原と独立した血清抗Chlamydia IgAは検出されなかった。
(4)第1群および2群については、ホモジナイズした肺のプールを分析した。第3〜6群については、肺洗浄液のプールを分析した。肺および肺洗浄液は30日目に得た。「−」:抗体が検出されなかった。
【0117】
(表3.第二の処置後の体重減少(最大減少)パーセント)
【0118】
【表3】

(表4.第二の処置後の肺におけるC.trachomatis IFU)
【0119】
【表4】

Ct400−Chlamydia;Ec12:8−E.coli LPS;Ct12:8またはCt1.6:8−Chlamydia/E.coli LPS;およびPs 10:9−P.shigelloides LPS。
【0120】
(実施例15)
(Chlamydiaに対する生得の免疫応答防御の期間)
プロテオソーム:LPS(Protollin)またはプロテオソーム(projuvant)のような免疫刺激性組成物によって誘導された非特異的なタンパク質の寿命を検査した。10匹のマウスの群を、(a)プロテオソーム単独(Prot10)、(b)E.coli由来のLPS(Ec10:14)で処方されたプロテオソーム;(c)C.tr./E.coli LPS(Ct10:18)で処方されたプロテオソーム;(d)P.shigelloides由来のLPS(Ps10:12)で処方されたプロテオソーム;(e)生きたChlamydia(800IFU)(CT800);または(f)HeLa細胞のニセ感染(HeLa)を用いて0日目および22日目に処置した。各々の処置について、種々の群のマウスを、生きたChlamydia細菌を用いて、2回目の処置の2、5、8または11週後に負荷した。各々のマウス(群におけるマウス番号によって指定)について、最大の体重低下(減少%)を決定すること、および肺におけるChlamydia IFUを決定することによって防御を評価した。そのデータを表5〜12に示す。
【0121】
実施例14に記載されるとおり、プロテオソーム:LPS処方物の各々を用いた処置、または生きたChlamydiaを用いた免疫は、体重減少の防止および/または肺における細菌の力価の減少によって示されるように、HeLa細胞コントロール群に比較して有意な防御を提供した。プロテオソーム単独で処置した動物の防御は、第二の免疫後ほぼ5週間にわたって継続した。Chlamydia抗原での再刺激後のT細胞増殖応答を決定するアッセイをマウスの脾細胞で行なった。各々の群のマウス由来の脾臓をプールして、標準的な方法に従って単一細胞懸濁物に処理した。次いで、脾臓細胞懸濁物を種々の濃度のChlamydia抗原とともにインキュベートした。培養上清に放出されたサイトカイン(IFN−γ、IL−10、IL−2およびTNF−α)を、OptEIAキット(BD Biosciences,San Jose,CA)を用いて定量的ELISAによって決定した。これらの実験では、プロテオソーム:LPS処方物によって誘導されたChlamydia特異的な脾臓のT細胞応答は、免疫されたマウスでは観察されなかった。これらの免疫された動物におけるChlamydia特異的抗体または抗原特異的T細胞応答の非存在下では、非特異的な抗原非依存性(生得)免疫の役割は、Chlamydiaの肺感染からマウスを防御するための機構として示唆される。同様に、実施例14に記載される実験では、抗原特異的なT細胞応答は、Chlamydia細菌を投与された動物においてのみ観察され、プロテオソーム:LPS処方物のいずれを投与された動物でも観察されなかった。
【0122】
(表5.2回目の免疫の2週後の負荷後に測定した体重の最大減少)
【0123】
【表5】

(表6.2回目の免疫の2週後の負荷後に定量した肺のChlamydia IFU)
【0124】
【表6】

t検定の算出のためには9および10の値を用いた;しかし、Chlamydiaは検出されなかった。
【0125】
(表7.2回目の免疫の5週後の負荷後に測定した体重の最大減少)
【0126】
【表7】

(表8.2回目の免疫の5週後の負荷後に定量した肺のChlamydia IFU)
【0127】
【表8】

t検定の算出のためには9および10の値を用いた;しかし、Chlamydiaは検出されなかった。
【0128】
(表9.2回目の免疫の8週後の負荷後に測定した体重の最大減少)
【0129】
【表9】

(表10.2回目の免疫の8週後の負荷後に定量した肺のChlamydia IFU)
【0130】
【表10】

t検定の算出のためには9および10の値を用いた;しかし、Chlamydiaは検出されなかった。
【0131】
(表11.2回目の免疫の11週後の負荷後に測定した体重の最大減少)
【0132】
【表11】

(表12.2回目の免疫の11週後の負荷後に定量した肺のChlamydia IFU)
【0133】
【表12】

t検定の算出のためには9および10の値を用いた;しかし、Chlamydiaは検出されなかった。
【0134】
(実施例16)
(Protollinは、インフルエンザウイルス感染に対して防御的な生得の免疫を刺激する)
(実験1)
25 LD50のマウス適応A/H3インフルエンザウイルス(Hong Kong)を鼻腔内負荷する前1、2または3日目に単回鼻腔内用量のProtollin(ほぼ5μgの各々のNeisseria OMPsおよびS.flexneri LPSを含有する)をマウスに与えた。このウイルスは、標準的な方法に従って増殖した(もとの種子ストックは、Phil Wyde博士(Baylor University,Waco,TX)の贈与であった)。マウスを、負荷の前に、そして全部で14日間の間、2日後ごとに秤量した。個々の生残者を秤量すること、および負荷の日に体重の変化を体重のパーセントとして表すことによって罹患率を評価した(図8Bを参照のこと)。死亡の日をまた記録した(図8Aを参照のこと)。負荷の3日前にProtollinを投与された全てのマウスが生存しており、また急性の罹患はなかった(最大の体重減少が7%であった)。負荷の1または2日前にProtollinを投与された動物の群では70%の生存が観察された;しかし、両方の群の動物とも15〜18%の体重減少を被った。各々の群についての死亡の時間の遅延の統計学的な有意差は全体としてウイルコクソンの符号付き検定によって評価した。負荷の72時間前にProtollinを投与された全てのマウスが生存した。陰性のコントロール群(Protollinなし)についての生存データと比較して、負荷の3日前にProtollinを与えたマウスの生存は有意に高かった(P≦0.001;フィッシャーの直接確率検定)。負荷の1日または2日前のいずれかにProtollinを投与されたマウスの70%が生存した(陰性コントロール群と比較してP≦0.07)。これらの2つの群における生存者の絶対数は、コントロール群における生存者の数と有意に異なることはなかったが、死亡までの時間は、コントロールのマウスに比較して両方の群とも有意に長かった(負荷の1日前または2日前にProtollinを与えた群ではそれぞれ、P≦0.05または≦0.01)。
【0135】
全ての群において生残しているマウスで、感染から生じる罹患率の代用として体重の減少(負荷の日に対する)を用いて、罹患率をモニターした。モニタリングの期間中、全てのマウスが体重を減少したが、Protollinを与えられたマウスは、PBSを与えられたコントロールマウスよりも体重減少が少なかった。体重の減少はまた、Protollinの投与と負荷との間の時間に依存した。負荷の3日前にProtollinを与えられたマウスは、負荷の2日前にProtollinを与えられたマウスよりも被った体重減少が少なく、そして負荷の2日前にProtollinを与えられた動物は、負荷の1日前にProtollinを与えられた動物よりも体重減少が少なかった。8日目までに(その後、コントロール群における限られた数の生残者で行なった統計学的比較は信頼できない)、コントロールのマウスは、Protollinを投与されたマウスよりも有意に多く体重が減少した(負荷の4日および6日後で、Protollinを与えられた全てのマウスに対してP≦0.001;負荷の8日後で、負荷の3日前または2日前にProtollinを与えられたマウスに対して、それぞれP≦0.01およびP≦0.05)。これらの結果によって、Protollinは生得免疫を誘導し、これが致死的な生きたウイルスの負荷後の死亡に対してマウスを防御し、そして感染に関連する罹患率を有意に減少させたことが示された。
【0136】
(実験2)
さらに、限られた用量範囲内で防御の期間を分析した。単回用量の3、1または0.3μgのProtollinを、マウス適合性のA/H3インフルエンザウイルスの25 LD50を用いる負荷の15日、12日、9日、6日または3日前にマウスの群(1群あたり10匹の動物)に投与した。この実験のためのヒトによるエンドポイントの指標は、体重、外観および行動に基づいた。動物を以下のとおり各々のカテゴリーにおいて0〜3にスコア付けした。体重に関しては、0というスコアは、試験開始の体重から減少がないことを示し;1は、試験開始時の体重の10%以下の減少を示し;2は、試験開始時の体重の11〜19%の減少を示し;そして3は、試験開始時の体重の20%以下の減少を示した。外観に関しては、0というスコアは、正常な外観を示し;1というスコアは毛の逆立ちを示し;2というスコアは逆立った毛が脂ぎって、鼻汁/眼漏であることを示し;3というスコアは、丸めた背中、重篤な脱水を示した。行動に関しては、0というスコアは、正常な行動を示し;1というスコアは異常な歩行および衰弱を示し;2というスコアは、活力の低下、重篤な振戦を示し;そして3というスコアは不活発を示した。単独または組み合わせた症状で3以上のスコアのマウスは安楽死させた。
【0137】
コントロール群(Protollinなし)および0.3μgのProtollinを与えた群における全てのマウスが負荷の6日後にエンドポイントの基準を満たして、安楽死させられた。1μgのProtollinを投与されている動物のうち全てを、負荷後8日目まで5匹のマウスが生存していた負荷の3日前に投与された群の動物を除いて、負荷後6日で安楽死させた。コントロール群に比較して、この群における動物の生存は、死亡までの時間が有意に遅くなっていた(群について全体としてP<0.05)。
【0138】
3μgのProtollinを与えた群では、負荷の6日前に投与された動物の30%がこの研究を生残した;残りの70%は負荷後6〜8日目にエンドポイント基準を満たした。これらの結果によって、生残者の数はコントロール群と有意に異なることはなかった(フィッシャーの直接確率検定による)ということが示唆されるが、死亡までの時間は群について全体として、コントロール群と有意に異なった(P<0.001)。負荷の3日前に3μgのProtollinを投与されたマウスのうち50%がこの研究を生残し(フィッシャーの直接確率検定によってP<0.05);マウスのうちその他の50%が負荷後6〜8日間でエンドポイント基準に達した。ここでも群について全体として、死亡までの時間は、コントロール群と有意に異なることはなかった(P<0.001)。
【0139】
これらの実験では、防御的な非特異的、抗原非依存性の免疫応答の誘導は、3〜5μgのProtollinの閾値範囲を超えて、かつProtollinが負荷の3〜6日前に投与された場合、生じた。さらに、インフルエンザ抗原(負荷のために用いられるマウス適合性A/H3インフルエンザ株のホモタイプの改変体由来)のProtollinとの同時投与は、防御的な生得免疫応答を阻害しなかった。防御的な生得の免疫応答の誘導はまた、グラム陰性細菌(この場合、E.coliの非病原性株(E.coli 017))由来の別の円滑なLPSを含むProtollinによって誘導された。
【0140】
(実験3)
マウスの群に、Protollinを、負荷の8、6、4および2日前に、そして負荷の日(負荷の30分前)に与えた。他の群のマウスには、負荷のために用いたマウス適合性A/H3インフルエンザ株のホモタイプ改変体ウイルス由来のインフルエンザ抗原と組み合わせてProtollinを同時に投与した。マウスには、約40 LD50のマウス適合性A/H3の生きたウイルスを負荷して、上記のように負荷後14日間モニターした。
【0141】
40 LD50用量のウイルスで、PBSのみのコントロール群の動物では生残したものはなかった。この致死的な負荷にかかわらず、負荷の6日前にProtollinを投与されたマウスのうち50%が生残した(コントロールマウスと比較して、P≦0.05;フィッシャー直接確率検定)。負荷の4〜6日前にProtollinを投与された動物の群では生残の割合が最大であった。生存しているマウスでの体重の変化(感染後の罹患率の代用)をモニタリングすることによって、投与の最適時点は、負荷のほぼ4日前であったことが示された。負荷の2、4または6日前に投与された全てのマウスが他のマウスよりも体重減少が少なく、より急速に体重が回復しはじめた。
【0142】
致死的な負荷の前に抗原と組み合わせてProtollinを投与されたマウスのうち、ほとんどの生残者は、負荷の4および6日前に投与された群であった(コントロールに比較して、それぞれ100%および60%;P≦0.001および0.01)。インフルエンザ抗原に対する特異的な抗体(IgG)応答は、抗原投与の4〜6日内は最適を下回ると予想される。前の実験に示されるとおり、体重の変化によって、生得の免疫応答ならびに死亡率および罹患率に対する引き続く防御の誘導は、負荷の前の2〜6日間の間にマウスが投与された場合に生じたことが確認された。
【0143】
(実施例17)
(アレルギー性喘息のアレルゲン誘導性マウスモデル)
本実施例は、マウスのアレルギー性喘息動物モデルを記載する。マウスをカバノキ花粉抽出物(BPEx)に対して複数回曝露させて、炎症および気道の応答性亢進(すなわち、アレルギー性反応を刺激すること)を刺激させた。要するに、6〜8週齢のBALB/cマウスを、8μgのBPEx(Greer Laboratories,Inc.)および1mgの水酸化アルミニウム(ミョウバン)(Alhydrogel(登録商標)、Superfos Biosector,Kvistgard,Denmark)を含有する150μlのリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を用いて単回腹腔内(i.p.)注射によって0日目に感作させた。感作後、マウスを次に、10μg BPExを含有する36μl PBSを用いて(鼻孔あたり18μl)15日、16日および17日目に毎日1回、浅いハロタン麻酔下で鼻腔内(i.n.)に負荷した。コントロールには、(1)0日目に150μlのPBSをi.p.投与して、次に10μg BPExを含有する36μl PBSを用いて(鼻孔あたり18μl)15日、16日および17日目に毎日1回、浅いハロタン麻酔下でi.n.に負荷したニセの感作されたマウス、ならびに(2)0日目に8μg BPExおよび1mgのミョウバンを用いてi.p.で感作して、次に36μl PBSを用いて(鼻孔あたり18μl)15日、16日および17日目に毎日1回、浅いハロタン麻酔下でi.n.投与したニセの負荷されたマウスを含んだ。8匹のマウスが各々のタイプの処置を受けた。感作および負荷後、気管支収縮剤メタコリン(MCh)の静脈内(i.v.)ボーラスをマウスに与えて、気道過敏症(AHR)を誘発させた。最終負荷の2日後(すなわち、19日目)に、MCh処置に対する気道応答(呼吸抵抗およびエラスタンス)を測定した。さらなる分析を行なって炎症を評価した。
【0144】
(実施例18)
(アレルギー性喘息のアレルゲン誘発性マウスモデルの分析)
(気道過敏症(AHR))
AHRの決定は、以下のとおり行なった。実施例17に記載のように処置したBALB/cマウスを、塩酸キシラジン(10mg/kg)のi.p.注射によって鎮静し、引き続いてペントバルビタールナトリウム(30mg/kg)を用いて麻酔した。頸に小切開を作製して、頸静脈を切り分けてここにカテーテルを挿入した。気管切開を行って、動物を機械的に換気できるように気管にチューブを挿入した。以下の設定を用いて小動物ベンチレーター(FlexiVent;SCIREQ,Montreal,Canada)を用いて動物を準正弦的に(吸気対呼気比が1:1)換気した:150呼吸/分の呼吸数、0.15mlの1回換気量、および1.5cm HOの呼気終端陽圧(PEEP)レベル。マウスには麻痺を誘発するために臭化パンクロニウム(0.5mg/kg)の静脈内注射を与えて、この動物を機械的に換気可能にした。EKGを介して心拍数をモニターして、動物が深く麻酔されたことを確認した。標準的なボリュームヒストリーを得るために30cm HOの気道圧への膨張後、20〜640μg/mlの2倍化用量で頸静脈カニューレを介してMChを与えた。McHの投与前の機械的換気の間に用いたオシレーション(oscillation)と等しいオシレーションの間に呼吸器系の抵抗およびエラスタンスを測定して、Mchの送達後15秒ごとに繰り返して、ピークの値を報告した。気道抵抗(R)測定によって、肺の収縮のレベルの定量的評価を得た − すなわち、気道抵抗の増大は、炎症性応答によって生じ得る気道閉塞の増大を示す。気道エラスタンス(E)は、肺の弾性剛直性の指標であり;従って、エラスタンス値の増大は、肺の堅さの増大を示す。RおよびEは多重線形回帰を用いてFlexiVentの製造業者によって提供されるソフトウェアで算出して以下の式についてのベストフィットを得た:
P=Pres+Pel+Pin=FR+VE+K
ここでPは、機械的呼吸器によって加えられるガス圧であり;Presは、抵抗圧であり;Pelは弾性圧であり;Pinはイナーティブ(inertive)圧であり;Fはガスの流量であり;Vは機能的残気量に対する肺容積であり;そしてKは定数である(Irvinら、Respir.Res.4:4(2003))。気道抵抗および気道エラスタンスは、平均値±SEMとして表される。スチューデントのt検定を用いて、動物の群の間の相違のレベルを決定した。
【0145】
(血清)
気道抵抗の測定直後に、心臓穿刺による放血によってマウスを屠殺して、収集した血液を遠心分離して、得られた血液を清浄なチューブに移して凍結させた。ELISAを用いて血清を分析して、BPEx特異的な抗体が存在するか否かを決定した。
【0146】
(気管支肺胞洗浄液(BALs)および好酸球増加症)
放血後、下行大動脈を切断して5mlの生理食塩水緩衝液を用いて心臓を灌流させてBALを行なう前に肺から血液を除去した。全部で4.6mlの生理食塩水緩衝液を、気管切開カニューレを通じて、最初0.6mlの溶液、続いて4回連続して1mlの容積で注入した。初回の0.6mlの洗浄液からのリターンを遠心分離して、その上清をELISAによって分析して抗体およびサイトカインを検出した。
【0147】
最初の洗浄液から収集した細胞を生理食塩水緩衝液に再懸濁させ、次いで引き続く4つのアリコートの洗浄液から遠心分離によって回収した細胞とともにプールした。トリパンブルー染色および血球計算器を用いることによって総細胞数をカウントした。BAL細胞のサイトスピンのスライドを細胞遠心分離機(Cytospin model II;Shandon,Pittsburgh,PA)を用いて調製した。
【0148】
洗浄液サンプル中で示差的に染色されたマクロファージ、好酸球、好中球、リンパ球および上皮細胞(Diff−Quick,International Medical Equipment)の割合を測定することによってBAL中の好酸球を評価した。少なくとも200個の細胞のカウントから光学顕微鏡によって、示差的な細胞カウントを決定した。
【0149】
(肺組織)
BAL後、各々のマウスの肺を露出させて、左葉をクランプする。右肺の最大の葉を直接10%のパラフィンに入れる。第二の最大の葉をRNA抽出溶液(Rneasy(登録商標)RLT緩衝液;Qiagen Inc,Mississauga,Ontario)に入れて、これを一晩4℃で保持し、次いでリアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応(QPCR)のための引き続く使用のために−70℃で凍結保存する。右肺の2つの他の葉をエッペンドルフチューブに移して、液体窒素に浸し、次いで−70℃で保管する。肺モホジネートを調製して、上清をELISAによって、BPEx特異的抗体および総抗体について、そしてサイトカインレベルについて分析する。左の肺を、5%最適切断温度(OCT)包埋化合物(Miles Labs,Elkhart,IN)で膨張させて(約25cm圧)、イソペンタノールに浸しながら100%OCTに入れ(液体窒素中のビーカー;すなわち、急速凍結)、そして−70℃で保管する。
【0150】
パラフィン中の肺組織をスライスして、粘膜産物の評価のために周期的な酸−シッフ(PAS染色)を用いて切片を染色する。パラフィン切片をまた、コラーゲン(ファン・ギーソン染色)および好酸球(ギムザ染色)の存在について分析する。さらに、気道の損傷を染色された切片で評価する。OCT包埋化合物中で凍結肺組織をスライスして、インサイチュの免疫染色によって分析する。抗マウス主要塩基タンパク質(MBP)抗体を用いる免疫染色によって好酸球を定量する。肺切片を、サイトカイン(抗IL−4、抗IL−5または抗IFN−γ)、T細胞(抗CD3)およびマクロファージ(抗CD68)の同定のために用いる。
【0151】
(抗体およびサイトカインのレベルのELISA)
ELISAを用いて、特異的抗体(IgA、IgE、IgG1およびIgG2a)および特異的なサイトカイン(IL−4、IL−5、IL−10、IL−13、TNF−αおよびIFN−γ)を同定する。血清、BALおよび肺ホモジネートを、OptEIAマウスIgEセット(BD Pharmingen,Mississauga,Ontario)を用いてBPEx特異的なIgEおよび総IgEについて分析する。血清、BALおよび肺ホモジネートを、Southern Biotech Associates,Inc(Birmingham,AL)由来の試薬を用いてBPEx特異的なそして総IgG1およびIgG2aについて分析する。血清、BALおよび肺ホモジネートを、Bethyl Laboratories,Inc.(Montgomery,TX)の試薬を用いてBPEx特異的なそして総IgAについて分析する。BALおよび肺ホモジネートを、BD Pharmingen(Mississauga,Ontario)の試薬を用いてIL−4、IL−5、IL−10、TNF−αおよびIFN−γのレベルについて分析する。BALおよび肺ホモジネートを、R&D Systems(Minneapolis,MN)の試薬を用いてIL−13のレベルについて分析する。抗体およびサイトカインの力価は、対応する組み換え抗体またはサイトカインを用いて並行して行なった標準から推定して、それぞれng/mlおよびpg/mlとして表す。
【0152】
RNA抽出溶液において凍結保持した肺サンプルにおけるリアルタイムのQPCRでのIL−4、IL−5、IL−10、IL−13、TNF−αおよびIFN−γの定量(本明細書に記載したとおり)は、Qiagen RNeasy(登録商標)Mini Kit(Qiagen Inc.)を用いて総細胞RNAの単離によって開始される。抽出されたRNAの濃度は、260nmでの光学密度(OD260)を測定することによって決定され、純度は、1.8以上というOD260/OD280比に基づいて評価される。逆転写は、20μlの定容積でQmniscript(商標)トランスクリプターゼキット(Qiagen Inc.)を用いて1μg RNAサンプルで行なう。得られた相補的なDNA(cDNA)溶液由来の1μlの容積を、LightCycler(商標)(Roche Diagnostics,Mannheim,Germany)で行なうリアルタイムQPCR反応のために用いる。この反応物は、Syber(登録商標)Green Iを、二本鎖DNA特異的結合色素としてLightCycler(商標)−プライマーセット(Search Lc,Heidelberg,Germany)に特定のサイトカインについて、またはS9リボソーマルタンパク質(コントロール、ハウスキーピング遺伝子)について含む。
【0153】
気道抵抗(表13)および気道エラスタンス(表14)の両方で測定された気道過敏症は、漸増する量のMChを投与され、そしてBPExで感作され負荷された動物において、BPExのみで感作されるかBPExのみを負荷されたマウスに比べて増大した。320μg/mlのMchの静脈内注射後、感作/負荷されたマウスは、感作された/ニセのマウス(それぞれ、p=0.014およびp=0.038)およびニセ/負荷されたマウス(それぞれ、p=0.042およびp=0.084)よりも2倍高い気道抵抗(12.88cm HO秒/ml)およびエラスタンス(103.08cm HO/ml)を有した(表13および14を参照のこと)。640μg/mlのMchのi.v.(静脈内)注射後、感作/負荷されたマウスは、それぞれ、BPExのみで感作されたコントロールのマウス(それぞれ、p=0.014およびp=0.028)およびBPEXのみで負荷されたマウス(それぞれ、p=0.031およびp=0.062)よりも3倍および5倍高い36.63cm HO.秒/mlという気道抵抗、および359.88cm HO/mlというエラスタンスを示した(表13および14を参照のこと)。
【0154】
(表13.マウスアレルギー性喘息モデルでの平均呼吸器抵抗(cmHO.s/ml))
【0155】
【表13】

データはt検定によって分析した:
第1群対第2群 320μg/ml MCh:p=0.014
第1群対第3群 320μg/ml MCh:p=0.042
第1群対第2群 640μg/ml MCh:p=0.014
第1群対第3群 640μg/ml MCh:p=0.031
(表14.マウスアレルギー性喘息モデルでの平均呼吸器エラスタンス((cmHO)/ml))
【0156】
【表14】

データはt検定によって分析した:
第1群対第2群 320μg/ml MCh:p=0.038
第1群対第3群 320μg/ml MCh:p=0.084
第1群対第2群 640μg/ml MCh:p=0.028
第1群対第3群 640μg/ml MCh:p=0.062
さらに、BALB/cマウスにおけるBPExを用いた感作および負荷の組み合わせによって好酸球増加症が生じた。マクロファージ、好中球、好酸球、リンパ球および上皮細胞を気管支肺胞洗浄液サンプルにおいて数え上げた(BALs)。細胞の総数あたりの各々の細胞タイプの割合は、表15に示す。これらのマウスでは、好酸球(8.26%)およびリンパ球(10.16%)の割合は、BPExのみで感作されたコントロールのマウスにおける、それぞれ12倍および4倍であった(それぞれ、p=0.036およびp=0.024);これらの値は、BPExのみを負荷されたマウスにおいてよりもそれぞれ、3倍および2倍高かった(それぞれ、p=0.204およびp=0.320)。
【0157】
(表15.マウスアレルギー性喘息モデルでのBALにおける異なる細胞カウント(%))
【0158】
【表15】

データはt検定によって分析した
(実施例19)
(気道過敏症および気道炎症のProtollin誘導性の抑制)
アレルギー性喘息のマウスモデル(実施例18に記載される)を用いて、炎症性免疫応答および気道過敏症を抑制する(すなわち、アレルギー性反応を抑制する)ための組成物を分析した。要するに、6〜8週齢のBALB/cマウスを、8μgのBPExおよび1mgミョウバン含有150μl PBSを用いて0日目にi.p.で感作した。感作の7、10および13日後、8匹のマウスの群を各々(1)PBS;(2)10μg BPEx;(3)10μg Protollinと混合された10μg BPEx;または10μg Protollin単独の10μl(鼻孔あたり5μl)の溶液を用いてi.n.で免疫した。免疫後、次にマウスを、10μg BPExを含有する36μl PBS(鼻孔あたり18μl)を用いて15日、16日および17日に1日1回、浅いハロタン麻酔下で負荷した。最終の負荷の2日後(すなわち、19日目)、マウスにMChのi.v.ボーラス(20〜640μg/ml)を与えた。MCh処置に対する気道応答(気道抵抗およびエラスタンス)、炎症および好酸球増加症を実施例18に記載のように決定した。
【0159】
BPExとPtotollinとを、またはProtollin単独を含む組成物を用いて免疫し、その後にBPExを用いてi.n.で負荷した感作マウスは、MChの静脈内の量が増大されるにつれて、AHR測定において気道抵抗およびエラスタンスの低下を示した(表16および17を参照のこと)。640μg/mlでのMChの静脈内注射後、Protollinと混合されたBPExで処置されたマウスは、PBSのみ(それぞれ、p=0.028およびp=0.050)またはBPExのみ(それぞれ、p=0.132およびp=0.20)で処置されたマウスと比較して、それぞれほぼ43%および48%まで気道抵抗(12.54cm HO.秒/ml)およびエラスタンス(99.73cm HO/ml)が低下していた。同様に、Protollinアジュバント単独はまた、PBSのみ(それぞれ、p=0.005およびp=0.009)またはBPExのみ(それぞれ、p=0.029およびp=0.074)で処置されたマウスと比較して、それぞれほぼ56%および64%まで気道抵抗(9.71cm HO.秒/ml)およびエラスタンス(69.24cm HO/ml)を低下させた。
【0160】
(表16.マウスアレルギー性喘息モデルでのProtollin:カバノキ花粉抽出物(BPEx)の投与後の平均呼吸器系抵抗(cm HO.s/ml))
【0161】
【表16】

データはt検定によって分析した:
第3群対第1群 640μg/ml MCh:p=0.028
第3群対第2群 640μg/ml MCh:p=0.132
第4群対第1群 640μg/ml MCh:p=0.005
第4群対第2群 640μg/ml MCh:p=0.029
(表17.マウスアレルギー性喘息モデルでのProtollin:カバノキ花粉抽出物(BPEx)の投与後の平均呼吸器系エラスタンス((cm HO//ml))
【0162】
【表17】

データはt検定によって分析した:
第3群対第1群 640μg/ml MCh:p=0.050
第3群対第2群 640μg/ml MCh:p=0.220
第4群対第1群 640μg/ml MCh:p=0.009
第4群対第2群 640μg/ml MCh:p=0.074
動物における気道炎症の程度は、PBS、BPEX、BPEX+ProtollinおよびProtollin単独で処置したマウス由来の気管支肺胞洗浄液(BAL)サンプルに存在する免疫細胞を数え上げることによって決定した。そのデータを表18に示す。Protollinと混合されたアレルゲンBPExを用いて処置した動物は、それぞれ、PBSのみ(p=0.36)またはBPExのみ(p=0.29)で処置されたマウスと比較して、ほぼ56%および43%、BALの好酸球のレベルを低下させた。BPExに加えてProtollinでの処置はまた、それぞれPBSのみ(p=0.04)またはBPExのみ(p=0.26)で処置された動物と比較して、ほぼ51%および40%までBALにおけるリンパ球の数を減少させた。Protollin単独で処置された動物は、それぞれPBSのみ(p=0.28)またはBPExのみ(p=0.14)で処置されたマウス由来の好酸球の数と比較して、ほぼ71%および63%までBALの好酸球のレベルを減少させた。Protollin単独でのマウスの処置はまた、それぞれPBSのみ(p=0.10)またはBPExのみ(p=0.40)で処置されたマウスと比較して、ほぼ45%および32%までリンパ球の数を減少させた。肺サンプルを杯状細胞の存在について分析した。気道炎症の軽減はまた、PBSのみ(75%;7匹のマウスのうち5匹)またはBPExのみ(50%;6匹のマウスのうち3匹)で処置されたマウスと比較して、BPExに加えてProtollinまたはProtolin単独で処置された群において、気管支梢における粘液産生杯状細胞を有するマウスの割合が低いこと(29%;すなわち、各々の群における7匹のマウスのうち2匹のマウスが気管支上皮細胞の総数の少なくとも1%の杯状細胞を有した)によって示された。
【0163】
BPExに特異的に結合する血清に存在する抗体は、実施例18に記載される方法を用いてELISAによって検出された。BPEx特異的IgEおよびIgG1は、マウス血清中で低レベルで測定されたが、BPEx特異的な血清IgG2aは、十分に検出可能ではなかった(図19を参照のこと)。Protollin単独での動物の鼻腔内処置は、PBSのみまたはBPExのみで処置されたマウスと比較して、少なくとも50%までBPEx特異的IgEおよびIgG1のレベルを減少させた。
【0164】
(表18.気道炎症:気管支肺胞洗浄液における免疫細胞および粘液産生杯状細胞を有するマウスの割合)
【0165】
【表18】

(表19.血清中のアレルゲン特異的抗体のレベル)
【0166】
【表19】

当業者は、本明細書に記載される本発明の特異的な実施形態に対する多くの等価物を、認識するか、または慣用的な実験のみを用いて、確認することができる。このような等価物は、添付の特許請求の範囲によって包含されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非特異的な免疫応答を誘発するための方法であって、
非特異的な免疫応答を誘発するのに十分な量で免疫刺激性組成物を被験体に投与する工程を包含し、該免疫刺激性組成物はプロテオソームおよびリポサッカリドを含む、方法。
【請求項2】
前記免疫刺激性組成物が、粘膜、経腸、非経口、経皮、経粘膜、経鼻および吸入のうちの少なくとも1つから選択される経路によって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記免疫刺激性組成物が経鼻的に投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記リポサッカリドの最終含有重量が、プロテオソームタンパク質のパーセンテージとして、約1%〜500%の範囲におよぶ、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記プロテオソームおよびリポサッカリドが、同じグラム陰性細菌種から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記プロテオソームが第一のグラム陰性細菌種から得られ、かつ前記リポサッカリドが、第二のグラム陰性細菌種から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記リポサッカリドがShigella種、Chlamydia種、Yersinia種、Pseudomonas種、Plesiomonas種、Escherichia種、Porphyromonas種およびSalmonella種のうちの少なくとも1つから選択されるグラム陰性細菌から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記プロテオソームがNeisseria種から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記プロテオソームがNeisseria meningitidisから得られ、そして前記リポサッカリドがShigella flexneriから得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、前記免疫刺激性組成物の投与後に免疫原性組成物を前記被験体に投与する工程をさらに包含し、該免疫原性組成物は、プロテオソーム、リポサッカリドおよび微生物抗原を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記免疫原性組成物が少なくとも2つの微生物抗原を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記微生物抗原がウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原または寄生生物抗原である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも2つの微生物抗原が同じ微生物から得られ、該微生物が、細菌、ウイルス、真菌または寄生生物である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも2つの微生物抗原が、異なる微生物から得られる、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記免疫原性組成物のうちのプロテオソームおよびリポサッカリドの重量と該免疫原性組成物のうちの微生物抗原の重量との比が、4:1〜1:4の範囲内である、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記免疫原性組成物のうちのプロテオソームおよびリポサッカリドの重量と該免疫原性組成物のうちの微生物抗原の重量との比が、1:1〜1:500の範囲内である、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記免疫原性組成物のうちのプロテオソームおよびリポサッカリドの重量と該免疫原性組成物のうちの微生物抗原の重量との比が、1:1〜1:200の範囲内である、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記微生物抗原が組み換え体である、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記微生物抗原が細菌抗原である、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記細菌抗原が、Bacillus anthracis、Chlamydia trachomatis、Yersinia pestis、または腸病原性Escherichia coliから得られる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記細菌抗原がBacillus anthracis由来の防御抗原である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記免疫原性組成物の前記微生物抗原がウイルススプリット抗原である、請求項10に記載の方法。
【請求項23】
前記ウイルススプリット抗原がインフルエンザスプリット抗原である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記免疫原性組成物が、前記免疫刺激性組成物の約1日〜約10日後に投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項25】
前記免疫原性組成物が適応的免疫応答を誘発する、請求項10に記載の方法。
【請求項26】
前記非特異的免疫応答が微生物感染を予防または処置する生得的免疫応答である、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記微生物感染がウイルス感染、寄生生物感染、真菌感染または細菌感染である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記免疫刺激性組成物および前記免疫原性組成物のうちの少なくとも1つが、薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む、請求項1または請求項10のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
微生物感染を処置または予防するための方法であって:
該微生物感染が処置または予防されるように、
(a)免疫刺激性組成物を、生得的免疫応答を誘発するのに十分な量および条件下で被験体に投与する工程であって、該免疫刺激性組成物は、プロテオソームおよびリポサッカリドを含む、工程;ならびに
(b)免疫原性組成物を、適応的免疫応答を誘発するのに十分な量および条件下で該被験体に投与する工程であって、該免疫原性組成物は、プロテオソーム、リポサッカリドおよび微生物抗原を含む、工程
を包含する、方法。
【請求項30】
前記工程(a)の免疫刺激性組成物が前記工程(b)の免疫原性組成物の約1日前〜約10日前に投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記免疫刺激性組成物および免疫原性組成物の各々が、粘膜、経腸、非経口、経皮、経粘膜、経鼻および吸入のうちの少なくとも1つから選択される経路によって投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記免疫刺激性組成物および免疫原性組成物が経鼻的に投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記リポサッカリドの最終含有重量が、プロテオソームタンパク質のパーセンテージとして、前記免疫刺激性組成物および免疫原性組成物の各々において約1%〜500%の範囲におよぶ、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記免疫刺激性組成物のプロテオソームおよびリポサッカリドが、同じグラム陰性細菌種から得られる、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記免疫原性組成物のプロテオソームおよびリポサッカリドが、同じグラム陰性細菌種から得られる、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
前記免疫刺激性組成物のプロテオソームおよびリポサッカリドが、異なるグラム陰性細菌種から得られる、請求項29に記載の方法。
【請求項37】
前記免疫原性組成物のプロテオソームおよびリポサッカリドが、異なるグラム陰性細菌種から得られる、請求項29に記載の方法。
【請求項38】
前記免疫刺激性組成物のプロテオソームおよび前記免疫原性組成物のプロテオソームが、Neisseria種から得られる、請求項29に記載の方法。
【請求項39】
前記免疫刺激性組成物のリポサッカリドおよび前記免疫原性の組成物のリポサッカリドのうちの少なくとも1つが、Shigella種、Chlamydia種、Yersinia種、Pseudomonas種、Plesiomonas種、Escherichia種、Porphyromonas種およびSalmonella種のうちの少なくとも1つから得られる、請求項29に記載の方法。
【請求項40】
前記免疫刺激性組成物および前記免疫原性組成物の各々のプロテオソームが、Neisseria meningitidisから得られ、そして前記免疫刺激性組成物および前記免疫原性組成物の各々のリポサッカリドが、Shigella flexneriから得られる、請求項29に記載の方法。
【請求項41】
前記免疫原性組成物が少なくとも2つの微生物抗原をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項42】
前記少なくとも2つの微生物抗原が同じ微生物から得られ、該微生物が、細菌、ウイルス、真菌または寄生生物である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記少なくとも2つの微生物抗原が、異なる微生物から得られる、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記免疫原性組成物のうちのプロテオソームおよびリポサッカリドの重量と該免疫原性組成物のうちの微生物抗原の重量との比が、4:1〜1:4の範囲内である、請求項29に記載の方法。
【請求項45】
前記免疫原性組成物のうちのプロテオソームおよびリポサッカリドの重量と該免疫原性組成物のうちの微生物抗原の重量との比が、1:1〜1:500の範囲内である、請求項29に記載の方法。
【請求項46】
前記免疫原性組成物のうちのプロテオソームおよびリポサッカリドの重量と該免疫原性組成物のうちの微生物抗原の重量との比が、1:1〜1:200の範囲内である、請求項29に記載の方法。
【請求項47】
前記免疫原性組成物の前記微生物抗原が組み換え体である、請求項29に記載の方法。
【請求項48】
前記免疫原性組成物の前記微生物抗原が細菌抗原である、請求項29に記載の方法。
【請求項49】
前記微生物抗原が、Bacillus anthracis、Chlamydia trachomatis、Yersinia pestis、または腸病原性Escherichia coliから得られる、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記細菌抗原がBacillus anthracis由来の防御抗原である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記免疫原性組成物の前記微生物抗原がウイルススプリット抗原である、請求項29に記載の方法。
【請求項52】
前記ウイルススプリット抗原がインフルエンザスプリット抗原である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記免疫原性組成物が、前記免疫刺激性組成物の約1日〜約7日後に投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項54】
前記微生物感染がウイルス感染、寄生生物感染、真菌感染または細菌感染である、請求項29に記載の方法。
【請求項55】
前記免疫刺激性組成物および前記免疫原性組成物の少なくとも1つが、薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項56】
炎症性免疫応答を変化させるための方法であって、免疫調節性組成物を、炎症性免疫応答を変化させるのに十分な量で被験体に投与する工程を包含し、該免疫調節性組成物は、プロテオソームおよびリポサッカリドを含む、方法。
【請求項57】
前記免疫調節性組成物が粘膜、経腸、非経口、経皮、経粘膜、経鼻および吸入のうちの少なくとも1つから選択される経路によって投与される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記免疫調節性組成物が経鼻的に投与される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記リポサッカリドの最終含有重量が、プロテオソームタンパク質のパーセンテージとして、約1%〜500%の範囲におよぶ、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
前記プロテオソームおよびリポサッカリドが、同じグラム陰性細菌種から得られる、請求項56に記載の方法。
【請求項61】
前記プロテオソームおよびリポサッカリドが、異なるグラム陰性細菌種から得られる、請求項56に記載の方法。
【請求項62】
前記リポサッカリドが、Shigella種、Chlamydia種、Yersinia種、Pseudomonas種、Plesiomonas種、Escherichia種、Porphyromonas種およびSalmonella種のうちの少なくとも1つから選択されるグラム陰性細菌である、請求項56に記載の方法。
【請求項63】
前記プロテオソームが、Neisseria種から得られる、請求項56に記載の方法。
【請求項64】
前記プロテオソームがNeisseria meningitidisから得られ、そして前記リポサッカリドがShigella flexneriから得られる、請求項56に記載の方法。
【請求項65】
前記免疫調節性組成物の投与後に免疫原性組成物を前記被験体に投与する工程をさらに包含し、該免疫原性組成物がプロテオソーム、リポサッカリドおよび抗原を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項66】
前記免疫原性組成物が少なくとも1つの微生物抗原を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記少なくとも1つの微生物抗原が、ウイルス、細菌、真菌または寄生生物である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記免疫原性組成物のうちのプロテオソームおよびリポサッカリドの重量と該免疫原性組成物のうちの抗原の重量との比が、4:1〜1:4の範囲内である、請求項65に記載の方法。
【請求項69】
前記免疫原性組成物のうちのプロテオソームおよびリポサッカリドの重量と該免疫原性組成物のうちの抗原の重量との比が、1:1〜1:500の範囲内である、請求項65に記載の方法。
【請求項70】
前記免疫原性組成物のうちのプロテオソームおよびリポサッカリドの重量と該免疫原性組成物のうちの抗原の重量との比が、1:1〜1:200の範囲内である、請求項65に記載の方法。
【請求項71】
前記免疫原性組成物の抗原が組み換え体である、請求項65に記載の方法。
【請求項72】
前記免疫原性組成物の抗原が細菌である、請求項65に記載の方法。
【請求項73】
前記細菌抗原が、Bacillus anthracis、Chlamydia trachomatis、Yersinia pestis、または腸病原性Escherichia coliから得られる、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記細菌抗原がBacillus anthracis由来の防御抗原である、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
前記免疫原性組成物の前記抗原がウイルススプリット抗原である、請求項65に記載の方法。
【請求項76】
前記ウイルススプリット抗原がインフルエンザスプリット抗原である、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記免疫原性組成物が、前記免疫調節性組成物の約1日〜約10日後に投与される、請求項65に記載の方法。
【請求項78】
前記免疫原性組成物が適応的免疫応答を誘発する、請求項65に記載の方法。
【請求項79】
前記炎症性免疫応答が喘息である、請求項56に記載の方法。
【請求項80】
前記炎症性免疫応答がアレルギー反応である、請求項56に記載の方法。
【請求項81】
前記免疫調節性組成物および前記免疫原性組成物のうちの少なくとも1つが薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む、請求項56に記載の方法。
【請求項82】
アレルギー反応を処置または予防するための方法であって:
該アレルギー反応が処置または予防されるように、
(a)免疫調節性組成物を、炎症性免疫応答を変化させるのに十分な量および条件下で該方法が必要な被験体に投与する工程であって、該免疫調節性組成物がプロテオソームおよびリポサッカリドを含む、工程;ならびに
(b)免疫原性組成物を該被験体に投与する工程であって、該免疫原性組成物は、プロテオソーム、リポサッカリドおよびアレルゲンを含み、該免疫原性組成物は、該アレルゲンに対する耐性を誘発するのに十分な量および条件下で投与される、工程;
を包含する、方法。
【請求項83】
前記工程(a)の免疫調節性組成物が前記工程(b)の免疫原性組成物の約1日前〜約10日前に投与される、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記免疫調節性組成物および前記免疫原性組成物の各々が、粘膜、経腸、舌下、非経口、経皮、経粘膜、経鼻および吸入のうちの少なくとも1つから選択される経路によって投与される、請求項82に記載の方法。
【請求項85】
前記免疫調節性組成物および免疫原性組成物の各々が経鼻的に投与される、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記リポサッカリドの最終含有重量が、プロテオソームタンパク質のパーセンテージとして、前記免疫調節性および免疫原性の組成物の各々において、約1%〜500%の範囲におよぶ、請求項82に記載の方法。
【請求項87】
前記免疫調節性組成物のプロテオソームおよびリポサッカリドが、同じグラム陰性細菌種から得られる、請求項82に記載の方法。
【請求項88】
前記免疫原性組成物の前記プロテオソームおよびリポサッカリドが、同じグラム陰性細菌種から得られる、請求項82に記載の方法。
【請求項89】
前記免疫調節性組成物のプロテオソームおよびリポサッカリドが、異なるグラム陰性細菌種から得られる、請求項82に記載の方法。
【請求項90】
前記免疫原性組成物の前記プロテオソームおよびリポサッカリドが、異なるグラム陰性細菌種から得られる、請求項82に記載の方法。
【請求項91】
前記免疫調節性組成物および免疫原性組成物の各々のプロテオソームがNeisseria種から得られる、請求項82に記載の方法。
【請求項92】
前記免疫調節性組成物および前記免疫原性組成物のうちの少なくとも1つのリポサッカリドが、Shigella種、Chlamydia種、Yersinia種、Pseudomonas種、Plesiomonas種、Escherichia種、Porphyromonas種およびSalmonella種のうちの少なくとも1つから得られる、請求項82に記載の方法。
【請求項93】
前記免疫調節性組成物および免疫原性組成物の各々のプロテオソームが、Neisseria meningitidisから得られ、そして前記免疫調節性および免疫原性の組成物の各々のリポサッカリドが、Shigella flexneriから得られる、請求項82に記載の方法。
【請求項94】
前記免疫原性組成物が少なくとも2つのアレルゲンをさらに含む、請求項82に記載の方法。
【請求項95】
前記アレルゲンが微生物抗原である、請求項82に記載の方法。
【請求項96】
前記免疫原性組成物のうちのプロテオソームおよびリポサッカリドの重量と該免疫原性組成物のうちのアレルゲンの重量との比が、4:1〜1:4の範囲内である、請求項82に記載の方法。
【請求項97】
前記免疫原性組成物のうちのプロテオソームおよびリポサッカリドの重量と該免疫原性組成物のうちのアレルゲンの重量との比が、1:1〜1:500の範囲内である、請求項82に記載の方法。
【請求項98】
前記免疫原性組成物のうちのプロテオソームおよびリポサッカリドの重量と該免疫原性組成物のうちのアレルゲンの重量との比が、1:1〜1:200の範囲内である、請求項82に記載の方法。
【請求項99】
前記免疫原性組成物のアレルゲンが組み換え体である、請求項82に記載の方法。
【請求項100】
前記免疫原性組成物のアレルゲンが細菌抗原である、請求項82に記載の方法。
【請求項101】
前記免疫原性組成物のアレルゲンが、吸入された粒子、花粉、蒸気、ガス、食物、飲料、薬物、毒素、微生物抗原、鱗屑、動物由来の化合物、チリダニ糞便、ポリペプチド、炭水化物および核酸のうち少なくとも1つから選択される、請求項82に記載の方法。
【請求項102】
前記アレルゲンが花粉である、請求項82に記載の方法。
【請求項103】
前記花粉がカバノキ花粉である、請求項102に記載の方法。
【請求項104】
前記免疫原性組成物が、前記免疫調節性組成物の約1日〜約7日後に投与される、請求項82に記載の方法。
【請求項105】
前記アレルギー反応が喘息である、請求項82に記載の方法。
【請求項106】
前記アレルギー反応が、アレルギー性肺胞炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻感冒、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性脈管炎およびアレルギー性鼻炎のうち少なくとも1つである、請求項82に記載の方法。
【請求項107】
前記免疫調節性組成物および免疫原性組成物のうちの少なくとも1つが、薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む、請求項82に記載の方法。
【請求項108】
前記微生物感染がウイルス感染である、請求項26または請求項29のいずれかに記載の方法。
【請求項109】
前記ウイルス感染がインフルエンザウイルス感染である、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
微生物感染を処置または予防するための方法であって、免疫刺激性組成物を、生得的免疫応答を誘発するのに十分な量で被験体に投与する工程を包含し、該免疫刺激性組成物は、プロテオソームおよびリポサッカリドを含む、方法。
【請求項111】
前記微生物感染が、ウイルス感染、細菌感染、寄生生物感染または真菌感染である、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
前記微生物感染が細菌感染である、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記細菌感染がChlamydia trachomatis感染である、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
前記微生物感染がウイルス感染である、請求項110に記載の方法。
【請求項115】
前記ウイルス感染がインフルエンザ感染である、請求項114に記載の方法。
【請求項116】
前記免疫刺激性組成物が粘膜、経腸、非経口、経皮、経粘膜、経鼻および吸入のうちの少なくとも1つから選択される経路によって投与される、請求項110に記載の方法。
【請求項117】
前記免疫刺激性組成物が経鼻的に投与される、請求項116に記載の方法。
【請求項118】
前記リポサッカリドの最終含有重量が、プロテオソームタンパク質のパーセンテージとして、約1%〜500%の範囲におよぶ、請求項110に記載の方法。
【請求項119】
前記プロテオソームおよびリポサッカリドが、同じグラム陰性細菌種から得られる、請求項110に記載の方法。
【請求項120】
前記プロテオソームが、第一のグラム陰性細菌種から得られ、かつ前記リポサッカリドが、第二のグラム陰性細菌種から得られる、請求項110に記載の方法。
【請求項121】
前記リポサッカリドがShigella種、Chlamydia種、Yersinia種、Pseudomonas種、Plesiomonas種、Escherichia種、Porphyromonas種およびSalmonella種のうちの少なくとも1つから選択されるグラム陰性細菌から得られる、請求項110に記載の方法。
【請求項122】
前記プロテオソームがNeisseria種から得られる、請求項110に記載の方法。
【請求項123】
前記プロテオソームがNeisseria meningitidisから得られ、そして前記リポサッカリドがShigella flexneriから得られる、請求項110に記載の方法。
【請求項124】
インフルエンザウイルス感染を処置または予防するための方法であって、免疫刺激性組成物を、生得的免疫応答を誘発するのに十分な量で被験体に投与する工程を包含し、該免疫刺激性組成物は、プロテオソームおよびリポサッカリドを含む方法。
【請求項125】
前記プロテオソームがNeisseria meningitidisから得られ、そして前記リポサッカリドがShigella flexneriから得られる、請求項124に記載の方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−157380(P2011−157380A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83368(P2011−83368)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【分割の表示】特願2006−536826(P2006−536826)の分割
【原出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(506013829)アイディー バイオメディカル コーポレイション オブ ケベック (7)
【Fターム(参考)】