説明

生活支援装置

【課題】脈波信号と脈波以外の信号を用い、状況ごとや個人ごとに判定の基準が異なると考えられることを考慮したしくみを備えた生活支援装置を提供すること。
【解決手段】脈波を測定する脈波測定部212と、安定して測定できている時間の長さを自動的に判定する測定安定性判定部213と、安定して測定できている時間の長さに基づいて、医療支援、健康管理、機器制御、安否確認の各々の機能に対して、機能を行うかを決める機能実施決定部214を備える。また、前記機能実施決定部214が、各機能を行うかを決める際に用いる機能実施条件を、脈波以外の生体に関する信号であって、脈波の測定において補助的に用いる信号である補助信号と本人の健康管理の結果を用い、個人別、あるいは、状況別、あるいは、脈波の性質を反映して変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体信号を用いた生活支援装置に関し、特に、脈波を計測して、計測結果に基づいて医療支援、健康管理、機器制御、安否確認を行う生活支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化と電子情報技術の進歩を背景に、日常生活、特に高齢者の日常生活を電子技術を用いて支援する装置の必要性が高まっている。具体的には、ホルター心電計や血圧計のように、医師の診断や本人の健康管理に役立てるために測定結果を測定・蓄積したり、温度感覚の低下を補助するために体温と気温の差を検知して機器を制御したり、転倒して動けないなどの緊急事態に対応するために加速度計で転倒を検知して通報するなど、多面的な支援が必要とされている。
【0003】
たとえば、無線通信機能を有するホルタ心電計と、中継器と、広域通信ネットワークとパーソナルコンピュータを代表例とする生体信号の取り込み装置とを構成に含む「生体信号等の通信システム」は、医療機器を自宅で用い、医師などと通信するシステムのうち、構成要素間の通信方法を具体的に記載した例である(特許文献1)。
【0004】
また、自宅で生活している高齢者が通常と異なる行動を行ったことをサービスセンタで検知して高齢者の親戚などへ連絡する「安否確認サービスシステム」は、高齢者の自宅内に複数の人感センサを配置して、部屋内や部屋間の移動をモニタし、モニタ結果をサービスセンタで蓄積・分析し、分析の結果、高齢者が通常と異なる行動を行ったと判断した場合に高齢者の親戚などへ連絡する(特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】特開2001−78974 生体信号等の通信システム
【0006】
【特許文献2】特開2002−324291 安否確認サービスシステム
【非特許文献1】Sadeh, A., Alster, D., Urbach, D., and Lavie, P. (1989). Actigraphically based automatic bedtime sleep/wake scoring:Journal of Ambulatory Monitioring, 2(3), 209-216.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1で例示した医療機器は、日常生活中に自宅で使われるものであっても、体を伸張しにくい、あるいは装着面を圧迫できないなど、行動が制限されるという問題があった。生活を支援するためには、測定機器が、行動を制限しないものである必要がある。
【0008】
また、特許文献2で例示した安否確認の機器は、行動を制限しない測定機器を用いており、安否確認を行うには十分な機能を持っているが、医療支援や健康管理で必要である、情報量が多く精度が必要な信号は測定していないため、そのままでは医療支援や健康管理へ拡張できなかった。
このように、日常的に生体信号を測定し、複数の機能を実施して多面的に生活を支援するには、行動を制限しない測定機器であることと、測定する信号が、安否確認から医療支援や健康管理にまで用いることのできる信号であることを両立する必要がある。
【0009】
本発明は、上記の事情を鑑み、安否確認から医療支援や健康管理にまで用いることのできる信号として、脈波を採用してなされたもので、特に、行動を制限しない機器で情報量が多い信号を測定しようとすると望ましくない性質が避けられないこと、具体的には、機器の密着性が低く、計測中も行動しているなど、計測条件が整っていない場合が多いため、時刻によって、安定して測定できている計測結果と、安定して測定できていない測定結果が混在し、時刻や支援内容によって役に立つか立たないかが異なること、および、前記の性質を持った測定結果を医療支援に用いるため、役立つ信号をより多く拾う工夫が必要であることに着目して、下記を目的とした。
【0010】
第一の目的は、時刻によって、また、支援内容によって役に立つか立たないかが異なる、日常的に計測した脈波信号のうち、各時刻での測定結果が役立つかどうかを支援内容ごとに自動的に判定し、測定結果に基づいて各機能を実行するしくみを備えた生活支援装置を実現することである。第二の目的は、脈波以外の信号を用いて、上記のような性質を持った測定結果から医療支援に役立つ信号をより多く拾うしくみを備えた生活支援装置を実現することである。そして、第三の目的は、個人の性質用いて、上記のような性質を持った測定結果から医療支援に役立つ信号をより多く拾うしくみを備えた生活支援装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
脈波を測定する脈波測定部と、安定して測定できている時間の長さを自動的に判定する測定安定性判定部と、前記測定安定性判定部が判定した、安定して測定できている時間の長さに基づいて、医療支援、健康管理、機器制御、安否確認の各々の機能に対して、機能を行うかを決める機能実施決定部を備えることで、時刻や支援内容によって役に立つか立たないかが異なる測定結果を、複数の支援内容に活用することができるようにする。
【0012】
また、前記機能実施決定部が、各機能を行うかを決める際に用いる、安定して測定できている時間の長さに関する条件である機能実施条件を、脈波以外の生体に関する信号であって、脈波の測定において補助的に用いる信号である補助信号も用いて決める。このように、脈波以外の信号を用いることで、時刻や支援内容によって役に立つか立たないかが異なる測定結果からも、役立つ信号をより多く拾うことができる。
また、前記機能実施条件を、個人別、あるいは、状況別、あるいは、脈波の性質を反映して変更する。
【0013】
具体的には、健康管理の結果をもとに、医療的な検討が必要な脈波の事象が発生している頻度が高い状況を、補助信号の条件として定式化し、定式化した条件を反映あるいは学習して、前記機能実施条件を決める、あるいは、安否確認が行われた頻度が高い状況を補助信号の条件として定式化し、定式化した条件を反映あるいは学習して、前記機能実施条件を変更する。このように、個人の性質を用いることで、このように、脈波以外の信号を用いることで、時刻や支援内容によって役に立つか立たないかが異なる測定結果からも、役立つ信号をより多く拾うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の方法によれば、安定して測定できている時間が長い場合は、不整脈の有無を判断するために測定波形を医師に提供するなどの医療支援に用い、安定して測定できている時間が短い場合は、生きていることを検知した信号として安否確認のみに使うなど、測定が正確な時間と不正確な時間が混じった脈波の測定結果を、連続して測定できた時間の長さによって評価することで、複数の分野に対してそれぞれ必要な情報を得ることができる。また、脈波以外の情報および個人の性質を用いることで、役立つ情報をより多く拾うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、医療支援に用いるには、医療目的にかなう測定量で(したがって、目的別に具体的に条件を検討する必要がある)、正確あるいは詳細であることが必要であり、健康管理に用いるには、医療に準じた測定量で、すくなくとも、妥当な平均値が算出できることが必要で、安否確認に用いるには、異常(最低限、通常と異なること)あるいは正常(最低限、生存)を正確に判定できること、機器制御に用いるには、測定対象者の状態がわかることがそれぞれ必要であるとした。
【0016】
(実施例1)
図1は、本発明の第1の実施の形態の生活支援装置の概要を示した図である。
110は、自宅療養している患者や、一人暮らしの高齢者等である測定対象者、120は前記測定対象者110の居室、130は、医者や測定対象者110の家族や測定対象者110に緊急事態が発生した際に前記測定対象者110の居室120を訪問するなどして助けにかけつけるレスキュー員やレスキュー員を派遣するサービス業者である確認者である。
【0017】
140は、前記測定対象者110の身体に装着され、前記測定対象者110の脈波を測定し、前記測定対象者110の脈波と、時刻、場所、体位、皮膚温度、環境温度、加速度、血圧、血中酸素飽和度、呼吸、眼球運動、脳波のうち1つ以上である補助信号を測定する測定機器、150は、前記測定対象者110の脈波と補助信号の測定結果を蓄積し、その概要である概要信号を作成するパーソナルコンピュータなどであるホームサーバである。160は、前記ホームサーバに蓄積された測定結果および概要信号を前記測定対象者110が閲覧するためのディスプレイなどである表示手段である。なお、前記測定機器140およびホームサーバ150は無線通信により各種信号の送受信を行うための無線通信手段を有する。170は概要信号を蓄積するパーソナルコンピュータなどであるセンタサーバ、180は概要信号および測定結果を取得するパーソナルコンピュータなどである端末装置、190は前記ホームサーバ150、センタサーバ170および前記端末装置180を接続するインターネット網や地域IP網であるネットワークである。
【0018】
前記測定機器140は、前記測定対象者110の身体に装着され、前記測定対象者110の脈波および補助信号を測定し、所定時間ごと(例えば、1分間ごと)に前記ホームサーバ150へ送信する。前記ホームサーバ150は、測定結果を記憶・蓄積するための測定結果記憶部151を有し、前記測定機器140から測定結果を受信して前記測定結果記憶部151に記憶・蓄積するとともに、測定結果の概要を示す概要信号を作成し、所定時間ごと(例えば、1時間ごと)にこの信号を前記センタサーバ170へ送信する。前記センタサーバ170は、概要信号を記憶する前記概要信号記憶部171を有し、前記ホームサーバ150から送信された概要信号を受信して前記概要信号記憶部171に記憶・蓄積する。
【0019】
また、センタサーバ170は、前記確認者130の操作により、前記端末装置180から測定対象者110の測定結果の概要信号の取得要求を受けると、前記概要信号記憶部171から当該概要信号を検索して前記端末装置180へ送信する。また、前記端末装置180から、この概要信号のもととなった測定結果の取得要求を受けたときには、ネットワーク190経由で前記ホームサーバ150から当該測定結果を取得して、この信号を前記端末装置180へ送信する。
【0020】
このような構成により、前記測定対象者110は、前記測定機器140によって、従来の測定機器よりも行動を制限されずに自分の脈波および補助信号を測定でき、自分の健康状態を表示手段160によって閲覧することで健康管理ができる。また、前記確認者130は、前記測定対象者110が遠隔地にいる場合でも、前記測定対象者110の測定結果や概要信号を前記端末装置180で閲覧し、測定対象者の状態を把握することができ、把握した状態をもとに、前記確認者130が医者である場合は医療支援、前記確認者130が測定対象者110の家族、測定対象者110に緊急事態が発生した際に助けにかけつけるレスキュー員、レスキュー員を派遣するサービス業者のうち1つ以上である場合は安否確認を行うことができる。
【0021】
次に、図2を用いて、本実施の形態の生活支援装置の構成要素うち測定機器140の構成について詳細に説明する。図2は、図1の生活支援装置の構成を示したブロック図である。
120は前記測定対象者110の居室、140は前記測定機器、150は前記ホームサーバ、160は前記表示手段、170は前記サンタサーバ、180は前記端末装置、190は前記ネットワークである。
【0022】
測定機器140のうち、211は、ホームサーバ150との無線通信を行うための無線アンテナや送受信機を有する無線通信部である。212は、測定対象者110の脈波を測定する生体センサを有する脈波測定部である。213は、前記脈波測定部212の安定して測定できている時間の長さを自動的に判定する測定安定時間判定部である。214は、前記測定安定性判定部の判定結果を参照し、安定して測定できている時間の長さに基づいて、医療支援、健康管理、機器制御、安否確認の各々の機能に対して、機能を行うかを決める機能実施決定部である。215は、前記測定安定性判定部が行う判定において補助的に用いる、時刻、場所、体位、皮膚温度、環境温度、加速度、血圧、血中酸素飽和度、呼吸、眼球運動、脳波のうち1つ以上である補助信号を測定する生体センサを有する補助信号測定部である。216は、測定対象者1を識別するための識別信号(ID)を記憶し、前記脈波測定部212で測定した測定結果と前記機能実施決定部214の決定結果を一時的に記憶する記憶部である。217は、記憶部216から測定対象者110の識別信号と脈波測定部212で測定した測定結果と前記機能実施決定部214の決定結果を読み出し、これらの信号を無線通信部211経由で、ホームサーバ150へ送信する測定結果送信部である。218は、記憶部140から測定対象者110の識別信号と脈波測定部212で測定した測定結果とを読み出し、これらの信号を前記測定対象者110が閲覧するための表示を制御する測定結果表示制御部であり、219が表示手段である。210は、前記測定対象者110に転倒や発作などの緊急事態が生じた際に前記測定対象者110が緊急事態であることを入力するボタンなどである応答入力手段である。
【0023】
ホームサーバ150のうち、221は、測定機器140との無線通信を行うための無線アンテナや送受信機を有する無線通信部である。222は、ネットワーク190経由でセンタサーバ170等と各種信号の送受信を行う通信部である。223は、前記測定機器140から受信した各種信号を記憶する測定結果記憶部151を有する記憶部である。224は、記憶部223から測定結果を読み出し、センタサーバ170へ送信する概要信号を測定結果に基づいて作成する概要信号作成部である。225は、前記概要信号あるいは前記測定結果を前記表示手段160に表示する表示制御部である。
【0024】
前記測定対象者110の脈波を前記脈波測定部212が日常的に長時間計測し、前記補助信号測定部215が測定した補助信号を参考に用いつつ、前記測定安定時間判定部213が、測定が安定していたかを時間ごとに自動的に判定し、さらに前記機能実施決定部214が、各時刻での測定結果に基づいて各機能を行うかどうかを、安定して測定できている時間の長さに基づいて自動的に判定する。
【0025】
図2に示した構成によれば、適用分野と時刻によって役に立つか立たないかが異なる、日常的に長時間脈波を測定した測定結果のうち、各機能に役立つ測定結果を自動的に、また、最大限に抽出して各適用分野において活用できる。
なお、測定結果送信部217は、送信データを暗号化する手段をさらに備え、測定結果のセキュリティを確保するようにしても良い。また、図2に詳細を示した前記測定機器140の形状は、測定対象者1の測定結果を測定しやすく、かつ測定対象者1の身体に装着しやすい形状であることが好ましく、例えば、リストバンド型、ペンダント型、指輪型のものが考えられる。
【0026】
以下、前記測定安定時間判定部213、前記機能実施決定部214の処理の具体例を、図3、図4、図5、図6を用いて説明する。
図3は、前記測定安定時間判定部213の処理の一例を示したフロー図である。
本フローで表す処理は、各測定時刻Tに前記測定安定時間判定部213が起動し、いつから連続して脈拍が計測できていたかを検知して、処理を起動した時刻Tと、時刻Tから時間をさかのぼってカウントした、連続して脈拍を測定できた時間の長さLを出力する。(時刻Tで脈拍が測定できていない場合、Lは0。)
処理の内容を具体的に述べる。各時刻Tにおいて処理が起動されると、出力の1つであるLをカウントする変数LNを初期化する(310)。次に、2例を後述する既定の判定方法によって、時刻T−LN+1で脈拍が測定できていたかを判定し(320)、測定できている間はLNを更新する(330)。測定ができていない時刻、すなわち、Tから時間をさかのぼって初めて脈拍が計測できなかった時刻T−LN、+1を検知するとLNの更新を中止し、起動した時刻Tと、Tまで連続して脈拍を測定できている時間のLNを出力する(340)。
【0027】
前記既定の判定方法の第1の例を述べる(第2の例は実施例2として説明する)。以下、時刻Tで脈拍が測定できているかどうかを判定するとして説明する。
Nとnを既定の整数とし、S1(t)(tは、t=1、2、…、Nである整数とする)〜Sn(t)(tは、t=1、2、…、Nである整数とする)を、正常・異常双方を含む、複数の鋳型波形パターンとし、F(t)(tは、t=T−N+1、…、T−1、Tである整数とする)を、鋳型波形パターンと時間幅が同じNで時刻Tを終点になるように測定データから切り出した測定データの一部とし、Thr0を、既定の閾値としたとき、前記鋳型波形パターンS1、…、SnとFの距離として相関係数を計算し、相関係数がThr0以上である鋳型波形パターンがS1からSnのうちにある場合に、時刻Tで脈拍が測定できているとする。
【0028】
なお、前記鋳型波形パターンS1、…、Snは、前記測定安定時間判定部213があらかじめ保持しており、例えば、S1は正常な脈波パターン、S2は異常な波形パターンで期外収縮にあたる脈波パターン、S3は異常な波形パターンで心室細動にあたる脈波パターン、…などとする。
【0029】
図4は、前記機能実施決定部214の処理の一例を示したフロー図である。
前記機能実施決定部214は、起動されると、前記測定安定性判定部が判定した、安定して測定できている時間の長さに基づいて、各機能を行うかを決める(410)。具体的には、例えば、安定して測定できている時間の長さが60秒以上の場合は、正確な測定ができたと考え、脈波の波形である測定結果を概要信号として前記概要信号記憶部171に格納し、医師に提供して、医師が波形異常、心拍間隔の異常、心停止を診断するのを支援する(420)。安定して測定できている時間の長さが2波形以上の場合は、妥当な平均値を算出するのに役立つ測定ができたと考え、前記鋳型波形パターンS1、…、Snごとに例えば1分間での頻度分布を計算し、例えば1分間での心拍間隔の平均値を計算して概要信号として前記概要信号記憶部171に格納し、前記測定対象者110や前記確認者130に、前記表示手段160および端末装置180を用いて提示して、健康管理に役立てる(430)。安定して測定できている時間の長さが1波形以上の場合は、1波形の観測結果があれば、拍動があることがわかり、これは、生存していること、すなわち、最も弱い意味で、正常であることと解釈できる測定結果だと考えて、例えば、測定時刻ごとに、測定された時刻において生存していることを示すフラグを概要信号として前記概要信号記憶部171に格納し、前記確認者130による安否確認に役立てる(440)。
なお、上記の説明では、安定して測定できている時間の長さが60秒以上の場合医療支援を、2波形以上の場合健康管理を、1波形以上の場合安否確認を行うとしたが、これらの値は別の値でもよい。
【0030】
上記のような処理によれば、安定して測定できている時間と、安定して測定できていない時間が混在する測定結果でも、安定して測定できている時間の長さを各時刻で自動的に計算し、各機能に役立つのに十分と考えられる長さ以上、安定して測定できている時間が長い場合にそれぞれの機能を行うので、日常的に測定した脈波を幅広い分野に活用可能にすることができる。
【0031】
図5は、前記機能実施条件を、補助信号も用いて決める場合の、前記機能実施決定部214の処理の一例を示したフロー図である。
410から440は図4に記載された処理、530は420、540は430、550は440と同じ処理である。本例と図4の例の違いは、補助信号が既定の条件を満たす場合に(510)、図4に示した処理における前記機能実施条件(410)と異なる前記機能実施条件(520)に基づいて各機能を行う点である。
【0032】
例えば、医療的に重要な状況、例えば循環器系の異常が発生しやすい状況であることを補助信号を用いて検知し(510)、異常が発生しやすい状況下では、測定が正確でなくても測定結果すなわち脈波の波形を概要信号として前記概要信号記憶部171に格納し、医師に提供する(520、530)。
【0033】
図4に示した処理における前記実施条件(410)は、測定の正確さを基準にした条件で、測定が正確な場合のみ医療支援を行うようにしているが、図5に示したような処理によれば、補助信号の結果によっては、測定の正確さ以外の基準によって各機能を実施させられるので、医療的に役立つ可能性のある測定結果をより多く収集・活用できる。
なお、医療的に重要な状況であることを判断する補助信号の条件(510)は、被測定者110あるいは確認者120あるいは本方法を実装した装置を製造する者があらかじめ設定するとする。
【0034】
循環器系の異常が発生しやすい状況であることを補助信号から検知する、510における補助信号の条件の具体例としては、例えば、心臓発作や脳梗塞などの循環器系の疾患は早朝に多いことを反映した、「睡眠中で、時刻が5時から7時であること」がある。尚、睡眠中か覚醒中かは加速度によって判定できることが一般に知られており、測定機器140に取り付けられた加速度計を用いることができる。
【0035】
また、補助信号の条件は、時刻に関する条件の他に、生理的な条件、環境的な条件、および、それらの組み合わせでもよい。生理的な条件の例としては、加速度から検知できる、睡眠、転倒、食事などのイベント中・後であることや、1日の活動量が多かったあるいは少なかったこと、血中酸素飽和度から検知できる、無呼吸症候群患者におこる無呼吸状態である可能性があること、体温が急激に変化したこと、環境的な条件の例としては、環境温度が急激に変化したこと、既定の場所にいること(既定の場所に、本装置を感知するセンサがある場合に得られる信号である)が挙げられる。これらおよびこれらの組み合わせとして補助信号の条件を設定すれば、循環器系の事故の多い状況である、上記の例および入浴中・入浴後であること、循環器系以外の医療事故が多いあるいは健康状態が悪化した状況である、上記の例、家庭内事故の多い状況および場所である、食事時、階段を下降・昇降中であること、トイレ、玄関、階段にいること、など、各機能にとって重要な状況に注目して信号を収集・活用することができる。
【0036】
図6は、前記機能実施条件を、個人別、あるいは、状況別、あるいは、脈波の性質を反映して決める場合の、前記機能実施決定部214の処理の一例を示したフロー図である。
410から440は図4および図5に記載された処理、510から550は図5に記載された処理で、図6では、既定の時刻(例えば、日曜の24時00分)を、補助信号の条件510を更新する時刻として前記機能実施決定部214が保持しているとして、図5に示した処理に、条件更新のための既定の時間であるかを判定する処理(610)と、前記既定の時間であった場合に、健康管理の結果に基づいて補助方法の条件を更新する処理(620)を加えた。
【0037】
健康管理の結果に基づいて補助信号の条件を更新する処理(620)の具体例としては、例えば、前記鋳型波形パターンS1(正常)、S2(異常;期外収縮)、S3(異常;心房細動)…、Snのうち、S2(異常;期外収縮)に着目して、S2の測定頻度が高い状況を、既定の時間内(例えば1週間)の本人の健康管理の結果から、例えば「1日の活動量が2000アクティビティカウント(アクティビティカウントとは、加速度から活動量を定量化する一般的な方法において用いられている単位。非特許文献1に記載。)以上で、体温が37.0度以上で、入浴した日の深夜4時から6時」などと補助信号の条件として定式化して、処理510で用いる条件を定式化した結果に更新する例が挙げられる。なお、条件処理620は処理510の条件の他に処理520の条件をも変更してもよい。
【0038】
図5に示した処理では、重要な状況に注目するために設定する補助信号の条件は、既定の知識をもとに作成するが、図6に示す処理では、本人の健康管理の結果をもとに、医療的な検討が必要な脈波の事象が発生している頻度が高い状況を、補助信号の条件として定式化し、定式化した条件を反映あるいは学習して、前記機能実施条件を決めることができるので、より個人ごとの特性に則して、重要な状況をもれなく把握して、信号を収集・活用することができる。
【0039】
また、各時刻での測定の正確さが十分、という基準のみに基づいて医療用に測定データを格納する場合(410)、日常用の測定機器では必ずしも測定が正確ではないため、重要だが十分な正確さでは測定されない信号は収集できない。これに対して、正確さが十分でなくても再現性があれば意味がある信号であると考えて、図6に示すように、測定の正確が十分でない測定結果と補助信号を用いて、補助信号の条件別に測定結果のうち、重要だと考えられる既定の事象、上記の例では鋳型波形パターンS2(期外収縮)の頻度分布を作成し、補助信号が共通で頻度が高いことを再現性があると解釈して、頻度の高い状況では測定の正確さが低くても測定結果を医療用に格納するようにすることで、医療的に価値がある信号をより多く収集することができる。
【0040】
なお、上記の例では、健康管理の結果に基づいて処理510の条件を更新するとしたが、被測定者110が応答入力手段210を用いて、胸が苦しい場合など、緊急事態の報告をセンタサーバ170に蓄積している場合は、安否確認が行われた頻度が高い状況を補助信号の条件として定式化し、定式化した条件を反映あるいは学習して、前記機能実施条件を変更してもよい。
【0041】
(実施例2)
前記測定安定時間判定部213において各時刻で脈拍が測定できているかを判定する前記既定の判定方法の第2の例を説明する。以下、時刻Tで脈拍が測定できているかどうかを判定するものとして説明する。
【0042】
前記既定の判定方法の第2の例では、まず、Nを既定の整数値とし、S(t)(tは、t=T−N+1、…、Tである整数とする)=F(t)(tは、t=T−N+1、…、Tである整数とする)を、時刻T−N+1から時刻Tまでを切り出した測定結果とし、nmaxを既定の整数値、具体的には、脈波の測定を時間間隔Δで行っているとし、脈拍としてあり得る最大の時間間隔、例えば2秒をΔで割った値とし、nを0からnmaxまでの値を取る整数とし、F(t−n)(tは、t=T−N+1、…、Tである整数とする)を、時刻T−N+1―nから時刻T―nまでの測定結果としたとき、S(t)とF(t−n)の距離として相関係数をnが小さい順に並べて関数
【0043】
【数1】

【0044】
をn=1,2,…,nmaxに対して算出する。次に、nminを既定の値、具体的には、脈拍としてあり得る最小の時間間隔、例えば0.5秒をΔで割った値とし、Thr1を既定の整数値とし、nmin以上のnにおいて、Thr1以上の極大値をH(n)が持つ場合に、脈拍が時刻Tで測定できていると判定する。
なお、リアルタイムに、あるいは、少ないデータを用いて信号の周期を計算する場合、一般的には、自己相関関数の極大値から周期を計算しているが、より望ましくは、上記のように、自己相関関数を正規化した関数である式1の極大値を用いて周期を計算するのがよい。
また、計算量を少なくする必要がある場合には、距離を計算する関数H(n)(式1)を
【0045】
【数2】

【0046】
にし、Thr2を既定の閾値として、nmin以上のnにおいて、Thr2以下の極小値をH(n)が持つ場合に、脈拍が時刻Tで測定できていると判定してもよい。
なお、実施例2として説明した前記既定の判定方法は、計算量が少ない点と、就寝時と運動時など、脈波の周期や波形が変わっても特別な考慮が不要である点で優れている方法である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
在宅高齢者の他にも、病院や老健施設で生活する高齢者を対象とした例が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る生活支援装置の概要を示した図。
【図2】本発明に係る測定機器の構成を説明する図。
【図3】本発明に係る測定安定時間判定部の処理の一例を示したフロー図。
【図4】本発明に係る機能実施決定部の処理の一例を示したフロー図。
【図5】本発明に係る機能実施決定部の処理の一例を示したフロー図。
【図6】本発明に係る機能実施決定部の処理の一例を示したフロー図。
【符号の説明】
【0049】
110...測定対象者、120...測定対象者110の居室、130...確認者、140...測定機器、150...ホームサーバ、160...表示手段、170...センタサーバ、180...端末装置、190...ネットワーク、213...測定安定時間判定部、214...機能実施決定部、215...補助信号測定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定された脈波に基づき機能を実施する生活支援装置であって、
脈波を測定する脈波測定部と、
測定された前記脈波に基づいて、連続して測定できた脈波測定期間を測定する測定安定性判定部と、
前記測定安定性判定部で測定された前記脈波測定期間に基づいて、登録された機能を実施するかどうかを決定する機能実施決定部と、
前記機能実施決定部により決定された機能を出力する出力部とを有し、
前記測定安定性判定部は、登録された脈波の鋳型波形パターンあるいは測定された前記脈波から切り出した鋳型波形パターンと、測定された前記脈波から切り出した波形パターンとの距離を演算し、前記距離が定められた閾値以上の場合の前記脈波測定期間を測定しすることを特徴とする生活支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生活支援装置において、前記測定安定性判定部は、起動された時刻Tにおいて、連続して脈を測定できた時間長さLをカウントする変数Lを初期化し、時刻T−L+1で脈を測定できた場合にはLを更新し、脈が測定できなかった場合にはLの更新を中止し、Lを出力することを特徴とする生活支援装置。
【請求項3】
請求項1に記載の生活支援装置において、前記鋳型波形パターンは複数有り、前記相関係数が前記閾値以上であって、前記鋳型波形パターンのいずれかにあてはまる場合に、脈波が測定されていると判断することを特徴とする生活支援装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の生活支援装置において、登録された機能は、医療支援、健康管理、安否確認のうち少なくとも1つであることを特徴とする生活支援装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の生活支援装置において、さらに、前記脈波とは異なる補助情報を測定する補助情報測定部とを有し、測定された前記補助情報に基づいて、前記機能実施決定部は、機能実施条件を決定することを特徴とする生活支援装置。
【請求項6】
請求項5に記載の生活支援装置において、前記補助情報は、時刻、生理的情報、環境的情報のうち少なくとも1つ以上であることを特徴とする生活支援装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の生活支援装置において、前記機能実施決定部は、測定された前記脈波及び前記補助情報に基づき、登録された条件更新情報に該当するかどうか判定し、条件更新を行うことを特徴とする生活支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−141658(P2006−141658A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−335287(P2004−335287)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】