説明

生物システムに用いるプレフィルタシステム

【課題】液体流が精製工程に達する前に、NSBを低レベルにまで低減する、新しい方法を提供する。
【解決手段】本発明は親和クロマトグラフィカラム及び限外ろ過システムなどの精製システムに用いるプレフィルタに関する。システム入口の上流側に配置されるプレフィルタは、システムに入る非特異性結合(NSB)化学種の量を低減し、これによりシステムの収率、処理能力及び寿命を延ばす。適正な薬剤には疎水性物質、親油性物質、活性炭、帯電カチオン又はアニオン物質、リガンド、ヒュームドシリカ、ガラス、細孔性ガラスなどの粒子又はそれぞれの誘導体、シリカ又はシリケート、及びそれらの化合物を含むが、これらに限定されない。物質はファイバ、ビーズ、メンブレン等のような様々な媒質に混入され、その後、レンズ状パッド、デプスフィルタ、カラムを含有するビーズ、スパイラル巻きデバイス、TFTデバイス等を含む様々なデバイス構成に組込みできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノクロナル抗体などの生物学的製剤の精製システムに用いるプレフィルタに関する。さらに詳細には、本発明は、液体流を親和クロマトグラフィのカラム又は限外ろ過システムなどの精製システムに供給する前に、液体流から非特異性結合(NSB)成分を除去するプレフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的流れの精製においては、精製の目的は、細胞からの他のタンパク質・脂質・凝集タンパク質、細胞壁からの媒質タンパク質・炭水化物及びコロイド、DNA、DNA/タンパク質合成物等のような様々な成分を含む液体流から、1つ以上の所望のタンパク質を収集することである。多数の精製工程を利用できるが、一般に親和クロマトグラフィ及び限外ろ過(UF)システムの1つ又は両方を中心にしている。
【0003】
液体流は一般に、所望のタンパク質を生成するために処理された溶解細胞のバッチから取り出される。細胞成分の大部分は、クロマトグラフィ及び/又は限外ろ過の前に、ろ過又は遠心分離により液体から除去される。しかし、液体流を精製システムに供給するとき、極めて多量の、特に小さいか又は可溶性成分が液内に残る。これらの多くは所望のタンパク質と競合し、カラム内の親和性物質と結合するか、又は限外フィルタを詰まらせる。
【0004】
親和クロマトグラフィでは、特定の成分は所望のタンパク質に比べて優先して結合し、収率を低減させる。他の成分は親和性物質と不可逆的に結合し、収率だけでなく、特に媒質の後続の使用において全体処理能力を低減させる。
【0005】
これらの非所望化学種の大部分は非特異性結合化学種として公知であり、この問題は非特異性結合(NSB)と呼ばれてきた。
【0006】
NSBを低減するための様々な方法、最初に収率を増加し、カラムの長期間にわたる処理能力を維持し、フラックスの所望の流量を維持し、UFシステムの有効寿命を延ばすための両方の様々な方法、が試みられてきた。
【0007】
一般に、カラムは、NSB化学種を除去するために、親和性収集段階と溶出段階の間に、pHの異なる様々な緩衝剤及び/又は異なる化学洗浄剤を用いて数回洗浄される。同様に様々な一連の清浄化手順は、収率及び処理能力値を維持するために媒質から可能な限り多くのNSB化学種を試験して除去するために、使用後に用いられてきた。
【0008】
これらは、生物薬剤産業において最も一般的に使用される親和性媒質に特に効果的であるとは立証されていなかった。この原因の一部は、これは親和性リガンド自体のタンパク質Aに起因する。これはタンパク質が、そうでない場合には熱、高いアルカリ濃度等のようなNSB濃度を低減するのに使用できる、様々な条件の下で変質し易いものであることによる。
【0009】
UFシステムは、システムが十分に密封されることにより、高圧の背圧を生成するか、又はフラックスを所定のレベル未満に低減された後に、清浄化される。それらのフィルタは再使用の前に、アルカリ溶液で洗浄される。
【0010】
アルカリを用いる洗浄によりメンブレンの無いNSB化学種が得られるが、ろ過におけるフィルタの寿命を延ばすことにはならない。汚染物の問題は依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
必要とされることは、液体流が精製工程に達する前に、NSBを低レベルにまで低減する方法である。本発明はこれに関する新しい方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明はUFシステム及び親和クロマトグラフィカラムなどの精製システムに用いるプレフィルタに関する。プレフィルタは、システムに入るNSB化学種の量を低減し、これによりカラム内で使用される親和性媒質の収率、処理能力及び寿命を延ばし、UFメンブレンの汚染を低減する。適正な薬剤には疎水性物質、親油性物質、活性炭、イオン交換ビーズ又は粉末などの帯電カチオン又はアニオン物質、リガンド、ヒュームドシリカ、細孔性ガラスなどの粒子又はそれぞれの誘導体、シリカ又はシリケート、及びそれらの化合物を含むが、これらに限定されない。
【0013】
媒質は、必要に応じてカラム内で使用できるが、別のろ過媒質に混入させることができる。充填層、レンズ状パッド、デプスフィルタ、プリーツフィルタ等などの各種フィルタ形状を使用できる。
【0014】
好ましいプレフィルタは1つ以上のレンズ状ろ過パッドデバイスの形状であり、それぞれは繊維質媒質及び1つ以上のNSB薬剤を含有する。このようなデバイスの1つは、繊維質物質に埋め込まれたガラス又はシリカ粒子で構成されるNSB薬剤を含有する繊維質物質の1つ以上の層で形成されるレンズ状パッドである。別のデバイスは、一連のガラスマットで形成されるレンズ状デバイスである。好ましいデバイスは、繊維質物質に埋め込まれた細孔性ガラス粒子で構成されるNSB薬剤を含有するセルロース系物質の1つ以上の層で形成されるレンズ状パッドである。
【0015】
別の好ましい形態はスパイラル巻きフィルタカートリッジである。1つ以上のNSB薬剤を含有する繊維質物質の1つ以上の層を、当技術分野では知られているように、それ自体又は中心マンドレルの周りに巻くことができる。
【0016】
別の好ましい形態は、1つ以上のNSB薬剤を含有する繊維質物質の一連の平板ディスクで構成される使い捨てカプセルであり、このディスクは液体流通路を形成する中心穴及び一連の内側及び外側ナイフエッジシールを有し、このデバイスから出る全液体流は最初に必ずディスクを通り流れる。
【0017】
別の好ましい実施形態は、一連のカセット又はポッド内に配置された1つ以上のNSB薬剤を含有する繊維質物質を有する接線流デバイスの形状であり、液体流は物質を横切るか又はこれに接して流れ、液体流の少なくとも一部はそれぞれの通過の際にその物質を通過して流れる。
【0018】
本発明の目的はタンパク質精製システムに用いるプレフィルタを提供することであり、このフィルタは、非特異性結合成分を、タンパク質を含有する液体流から除去するために選択される1つ以上の媒質の1つ以上の層を含む。
【0019】
本発明の目的はタンパク質精製システムを提供することであり、この精製システムは入口、出口、その間の空間(この空間はタンパク質精製のための媒質で充填されている)、及びシステムの入口の上流でこの入口に接続されたプレフィルタを有するタンパク質精製システムを備え、プレフィルタは非特異性結合成分を、タンパク質を含有する液体流から除去するために選択される1つ以上の媒質の1つ以上の層を含む。
【0020】
本発明の目的はタンパク質精製システムを提供することであり、この精製システムは入口、出口、その間の空間(この空間はタンパク質精製のための媒質で充填されている)、及びシステムの入口の上流でこの入口に接続されたプレフィルタを有するタンパク質精製システムを備え、プレフィルタは非特異性結合成分を、タンパク質を含有する液体流と、プレフィルタの出口及び精製システムの入口と流体連通している貯蔵タンクとから除去するために選択される1つ以上の媒質の1つ以上の層を備える。
【0021】
本発明の目的は、親和クロマトグラフィカラムに用いるプレフィルタシステムを提供することであり、このプレフィルタシステムは1つ以上のレンズ状パッドデバイスの形状の1つ以上のプレフィルタを含み、各デバイスは中心レンズ状支持構造体及び1つ以上のプレフィルタパッドを有し、各パッドは非特異性結合成分を、タンパク質を含有する液体流から除去するために選択される1つ以上の媒質の1つ以上の層から形成され、エッジシールは1つ以上のパッドを支持体及び中心出口に固定することにより、デバイスに入る全液体流が1つ以上のプレフィルタパッド及び支持体を必ず通過後に、中心出口及び1つ以上のプレフィルタが配置されているハウジングに達するようにし、ハウジングは中心出口により各デバイスを取り付ける中心ロッドを有し、中心ロッドはハウジングの出口、デバイスとハウジングの内壁との間にある液体流を通す空間、及びハウジングの入口に接続されている。
【0022】
本発明の別の目的は、親和クロマトグラフィカラムに用いる、非特異性結合成分を、タンパク質を含有する液体流から除去するために選択される1つ以上の媒質の1つ以上の層を備えるプレフィルタを提供することであり、このプレフィルタは1つ以上のレンズ状パッドデバイスの形状であり、各デバイスは中心レンズ状支持構造体及び1つ以上のプレフィルタパッドを有し、エッジシールはパッドを支持体及び中心出口に固定することにより、デバイスに入る全液体流が1つ以上のプレフィルタパッド及び支持体を必ず通過後に、中心出口に達するようにする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1A】本発明の第1実施形態の断面図である。
【図1B】本発明の第2実施形態の断面図である。
【図1C】本発明の第3実施形態の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態のプレフィルタの断面図である。
【図3】本発明の一実施形態のプレフィルタの断面図である。
【図4】本発明の一実施形態のプレフィルタの断面図である。
【図5】本発明の一実施形態のプレフィルタの断面図である。
【図6】本発明の一実施形態のプレフィルタの断面図である。
【図7】本発明の一実施形態のプレフィルタの断面図である。
【図8】本発明の一実施形態のプレフィルタの断面図である。
【図9】本発明の一実施形態のプレフィルタの断面図である。
【図10】本発明の一実施形態のプレフィルタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、NSB化学種の一部又は全部が精製システムに達する前にそれらを除去するための、クロマトグラフィカラム又はUFシステムを含有する親和媒体などの、タンパク質精製システムの上流側に用いられるプレフィルタを提供する。このような方法で、NSBの量が低減され、媒質は現在実現されているものに比べて、高い収率及び処理能力及び長寿命を得る。
【0025】
プレフィルタは、液体流からNSB化学種を除去可能な1つ以上の種類の物質を含有する。このような方法で、カラムに達するNSB化学種の量が低減されるか又は除去され、結合の競合場所を減少又は無くする。これによりいくつかの利点及び利益が得られる。クロマトグラフィシステムでは、収集する所望の化学種についての高い全体処理能力と、その化学種の多くが低減された装填量のNSB化学種を用いて収集されるのに利用できる結合場所を有する理由による所望の化学種の高い収率と、NSB化学種の不可逆結合が少ないことにより、クロマトグラフィ媒質を清浄化し、現在可能なものに比べて高い割合で再利用できる理由による長期間にわたり保持される大きい処理能力と、を達成できる。UFシステムでは、汚染が低減され、フィルタを清浄化又は交換する以前のろ過作動寿命が延びる。
【0026】
プレフィルタにおいて使用されるNSB除去物質は、クロマトグラフ分離の前に液体流から除去することを望むNSB化学種又は複数の化学種を除去することを立証されている任意の物質であってもよい。一般にこれら物質は、疎水性物質、親油性物質、活性炭、イオン交換ビーズのような帯電カチオン又はアニオン物質、リガンド、シリカ又はシリケート、ヒュームドシリカ、細孔性ガラスなどの粒子又はそれぞれの誘導体、及びそれらの化合物から成るグループから選択される。
【0027】
これら物質は媒質、好ましくは多孔質媒質に混入され、次にこの媒質は選択されたデバイス構成に組み込まれる。このような媒質はフィルム、多孔質フィルム、メンブレン、多孔質マット、多孔質モノリス、不織布、織布等の形状であってもよい。
【0028】
これら媒質は、ろ過の当業者により用いられる各種の物質、例えばポリエチレン及びポリプロピレンを含むポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ポリアリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、PTFE、PFA樹脂、ポリエステル、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、PVDF、セルロース及びセルロースアセテートなどの変性セルロース物質、セラミック、ホウ珪酸ガラス又は細孔性ガラスのようなガラスなどの物質から生成できる。
【0029】
NSB除去物質の形状は、その物質が選択された媒質に混入されるかどうか、混入している場合はその方法を決定する。例えば、リガンドは界面化学により細孔性ガラスなどの基板に付着させることができる。活性炭、シリカ、細孔性ガラス等は、ビーズなどの粒子の形状にでき、形成するときに媒質のフィルタとして追加できる。1つの例では、NSB除去物質をPTFE樹脂及び化合物のフィルタとして追加し、2つを合わせて、繊維質PTFE構造体全体に分散されるNSB除去物質のフィルタを含有するPTFEの多孔質メンプレンを得る。特定の物質、例えば活性炭、シリカ、細孔性ガラスのビーズは、自己支持的であり、媒質に混入する必要がない。その代わりに、これらは、このような物質のベッドの形で使用することができる。ただし、これらは、必要に応じてフィルタとして媒質に混入できる。
【0030】
本発明によるプレフィルタは、様々な物質及び様々なデバイス構成で生成できる。
【0031】
図1Aは本発明の第1実施形態を示す。クロマトグラフィカラム2は入口4、出口6、ならびに入口4及び出口6の間の空間8を有する。空間8は、例えばタンパク質A又はタンパク質Gリガンド、又はアガローズ、シリカ又は細孔性ガラスなどのクロマトグラフビーズに付着される2−アミノベンゾイミダゾール(ABI)、アミノメチルベンゾイミダゾール(AMBI)、メルカプトエチルピリジン(MEP)又はメルカプトベンゾイミダゾール(MBI)のような化学リガンドなどの、1つ以上の種類の親和性媒質10を充填される。このような親和性媒質は当業者には公知であり、例えば、商品名ProSep(登録商標)A媒質(細孔性ガラス上のタンパク質Aベースのリガンド)又はProSep(登録商標)G媒質(細孔性ガラス上のタンパク質Gベースのリガンド)としてミリポア社(Millipore Corporation)から入手できる。
【0032】
プレフィルタアセンブリ12は、カラム2の上流側に配置されることにより、プレフィルタアセンブリ12の出口14がカラム2の入口4と流体連通する。アセンブリ12は、出口14及び入口18を有するハウジング16と、出口14及びロッド20周りにプレフィルタ22相互及びプレフィルタ22自体内でロッド20に対して液密封で配置された一連のプレフィルタ22に接続された中心ロッドアセンブリ20とで構成され、これにより、出口14から出る全液体流は最初に入口18に入り、プレフィルタ22の1つを通過してロッド20に達し、その後出口14に達する。
【0033】
図1Bは図1Aの代替実施形態を示しており、プレフィルタ12とカラム2の間に中間貯蔵タンク3が置かれている。このタンクを利用して処理液体を貯蔵後、カラムに送ることにより、必要に応じて、プレフィルタ又はカラムのどちらか、又は両方を連続モードでなくバッチモードで作動することができる。
【0034】
図1Cは図1Aの代替実施形態を示しており、カラムの代わりに、例えばマサチューセッツ州ビルリカ(Billerica,Massachusetts)のミリポア社(Millipore Corporation)から入手できるPELLICON(登録商標)TFFシステムのような接線流デバイスなどの限外ろ過デバイス5を使用している。限外ろ過デバイス5は限外ろ過メンブレン11の1つ以上の層を含み、この層は各種スペーサ、供給スクリーン、ろ過スクリーンサンド等を備えるか又は備えない。この実施形態をバッチモードで作動する場合、図1Bに示すようなタンク(図1Cには図示されない)を使用できる。
【0035】
図1Aから1Cの実施形態に別の追加要素、例えば生物薬剤産業において一般に使用される、1つ以上のポンプ、弁、圧力計、温度センサ又は制御、サンプリングポート等を追加することができる。
【0036】
図1Aから1Cのプレフィルタ22は図2に詳細に示されており、このプレフィルタは1つ以上の多孔質媒質層を有する支持セル(この場合には、中心支持デバイス26の外側面に取り付けられた2つの層24A及び24B)として形成される。支持セルは、一連の放射状の突き出る凸形状リブ(図示せず)で構成されるレンズ状(両凸レンズ)支持構造体上に形成され、このリブは、放射状リブの中心からそれぞれの周辺部で一連の間隔を空けたリング(図示せず)により相互に保持されている。米国特許第4,704,207号明細書及び第4,783,262号明細書を参照されたい。リブ間の空間はチャネルを形成し、このチャネルを通して、フィルタ媒質を通り流れた液体が収集され、別の使用に備えてコア28に送られる。リングは液体流を極力妨げないように配置される。一般に、隣接するリングはリブの反対側に形成して、液体流が一方のリングの上を流れ、次に他方のリングの下を流れるようにする。媒質の外側エッジは外側シールエッジ30により液密封固定される。
【0037】
プレフィルタは単一又はグループで使用できる。米国特許第2,788,901号明細書及び第5,085,784号明細書を参照されたい。一般に、プレフィルタは、図1Aに示すとおり、ハウジング内の中心ロッド上に重ねられたグループ(一般にグループ当たり16から20)として使用される。ろ過される液体流はハウジングの底面又は底面に近接する側面から入り、フィルタ媒質を通過して液をコアに導くレンズ状支持構造体に達し、そこで収集されて、ハウジングの底面又は側面の出口を通して排出される。
【0038】
この構成の好ましい実施形態においては、フィルタは多層の媒質を含む。このような多層媒質は異なる物質及び/又は異なる孔サイズであってもよい。好ましくは、このような媒質はそれぞれ、異なる孔サイズ範囲を有し、その結果、本発明から様々な異なるカートリッジを形成できる。これら媒質は、例えばマサチューセッツ州ベッドフォード(Bedford,Massachusetts)のミリポア社(Millipore Corporation)から販売されているMILLISTAK+(商標)媒質などの様々な原料から得ることができる。さらにウィスコンシン州ウォーパカ(Waupaca,Wisconsin)のフィルタマテリアル社(Filter Materials)もまた、本発明のデバイスに適する各種の媒質を生産している。
【0039】
フィルタを形成するのに有効な代表的媒質は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、セルロース/シリカ混合物を含むセルロースならびにセルロースアセテートなどのセルロース誘導体、綿、ポリアミド、ポリエステル、ガラスファイバ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、PFA、MFA及びFEO等のフルオロポリマの繊維を含む。セルロース媒質又はセルロース合成媒質は、例えばマサチューセッツ州ビルリカ(Billerica,Massachusetts)のミリポア社(Millipore Corporation)から入手できるMILLISTAK+(商標)媒質が望ましい。これら物質及びこれらを生成する方法は、当技術分野で公知の湿式処理法(製紙に類似)又は乾式処理法のいずれかで生成される。このような媒質を精製する例については、米国特許第5,928,588号明細書及び第4,007,113号明細書及び第4,007,114号明細書を参照されたい。
【0040】
類似の物質はカートリッジの構造部分に適する。好ましくは、これら物質はポリプロピレンから生成される。これら用途における利用に適する他の物質には、超高分子量ポリエチレン、ポリオレフィンのコポリマー又はターポリマーを含むポリエチレンのような他のポリオレフィンのような熱可塑性樹脂、ナイロン、PTFE樹脂、PFA、PVDF、ECTFE、及び他のフッ化樹脂、特に過フッ化熱可塑性樹脂、ポリカーボネート、メタロセン誘導体ポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリスルホン又はポリフェニルスルホンなどの変性ポリスルホン、任意のガラス又は強化プラスチック、又はステンレススチール、アルミニウム、銅、青銅、真鍮、ニッケル、クロム又はチタンのような金属、又はそれらの合金又は混合物が挙げられるが、これらには限定されない。
【0041】
本発明の第2実施形態においては、充填されたNSB除去物質のカラムを使用する。図3はこのようなデバイスを示す。この実施形態においては、カラム40は上面カバー42及び底面カバー44を有し、上面カバー42は入口46を有し、底面カバー44は出口48を有する。入口46及び出口48の両方は、フリット、メンブレン、スクリーン、ディストリビュータ等の1つ以上の多孔質デバイスによりカラム40の本体50から分離しており、このディストリビュータはカラム40に流入及び流出する液体の分配を制御して、カラム40から外にNSB除去物質52が移動するのを防止する。このようなデバイスは公知であり、焼結ポリエチレンなどの焼結プラスチック、焼結ステンレススチール又はニッケルなどの焼結金属、ガラスマット又はメッシュ、プラスチックマット、ポリエチレン不織マット等などのネット又はメッシュから生成できる。
【0042】
この実施形態においては、NSB除去物質52は粒子として示される。これらは定形ビーズ、不定形粒子、破片、繊維、モノリス又は通常供給される任意の別の形状の形態にできる。このような粒子ベースの物質には、シリカ、シリケート、細孔性ガラス及び前述のいずれかの誘導体、ならびに活性炭ビーズが挙げられるが、これらには限定されない。カラムは単一種類のNSB除去物質を含有することができるが、必要に応じて、カラム内の個々の層に異なるNSB除去物質の混合物又は一連の異なるNSB除去物質のどちらかを含有することができる。粒子はビーズベースのろ過に通常使用される任意のサイズにできるが、一般に、平均直径は10から100ミクロンである。低い背圧の均一流れを保証するには、粒子はほぼ同一サイズとし、一般に、粒子の50%以上は平均直径の±10%であるのが望ましい。特定の場合においては、これら粒子は単分散粒子であってもよく、少なくとも90%が平均直径の±10%である。
【0043】
図4に示すとおり、NSB除去物質はプリーツフィルタ又はデプスフィルタのどちらかのようなフィルタカートリッジデバイスに混入することもできる。この実施形態においては、NSB除去物質は、PTFE又はポリエチレンの不織布、図1Aのセルロース繊維パッド、又は多孔質プラスチックメンブレンなどの多孔質支持媒質に混入され、この媒質の各々は、リガンドの場合と同様に、フィルタ又は付着化学物質のどちらかとしてNSB除去物質を含有する。カートリッジ51はカートリッジ51からの出口56を形成する第1エンドキャップ54に接続している中心コア55を含有する。媒質57を含有するNSB除去物質はコア55の上流側にある。必要に応じて、当技術分野で公知のとおり、媒質57の外側又は内側又は両側のいずれかの上に、支持層又はケージ(図示せず)を使用できる。媒質57は第1エンドキャップ54及び第2エンドキャップ60に対してそれぞれの端部において液密封されることにより、入口53からカートリッジ51に入る全液体流れは媒質57を必ず通過後、コア55に入る。外側スリーブ58は媒質57を囲み、結合ネジ、クランプ、接着剤、溶剤接着、超音波溶接等などによりエンドキャップ54に対して密封される。プリーツ形状では、媒質の1つ以上の層が使用される。デプスフィルタ形状においては同様に、媒質はマット又はフェルト又はモノリスなどの1つの厚い層であることが多く、あるいは媒質の重ねて巻かれた単一シートでもよく、あるいは相互の上に重ねた一連の個別シートでもよく、それらの開いた両端をシールされている(図示せず)。カートリッジは、液密封された再利用できるハウジング内に組み込みでき、あるいは外側スリーブ液密封(図示のように)を有することにより、カートリッジは使い捨てカプセルカートリッジ形状にできる。
【0044】
図5は別のデバイス実施形態を示す。この実施形態においては、同様に、NSB除去物質は、PTFE又はポリエチレンの不織布、図1Aのセルロース繊維パッド、リガンドの場合にはNSB除去物質をフィルタ又は付着化学物質のどちらかとして含有する多孔質プラスチックメンブレンなどの多孔質支持媒質に混入される。この構成はまた、米国特許第4,895,806号明細書に示されており、2つの半分部分70及び72から成り、第1半分70は入口74を有し、第2半分72は出口76を有する。デバイス内部には、上側及び下側多孔質基板80及び82の間で、それぞれ順に上に重ねた複数の媒質ディスク78がある。ディスクの周辺周り及びディスクの積層の上面及び底面の周辺周りのシールは、一連のガスケット84によりなされる。
【0045】
図6は図5の構成の変形形態を示しており、一連の媒質層90はスペーサ92により相互に分離され、一連の媒質層90の上面及び底面周辺周りをガスケット94によりデバイス内部に対して液密封されている。デバイスは2つの半分部分98及び100から形成され、これらの半分部分はデバイスの2つの半分部分98及び100のそれぞれの端部に形成された入口102及び出口104を有する。
【0046】
図7は一端113に入口112及び他端115に出口114を有し、その間に一連の媒質層116を有するカートリッジ110から形成される別のデバイス構成を示す。この場合にも、NSB除去物質は、PTFE又はポリエチレンの不織布、図1Aのセルロース繊維パッド、リガンドの場合にNSB除去物質をフィルタ又は付着化学物質のどちらかとして含有する多孔質プラスチックメンブレンなどの多孔質支持媒質に混入される。多孔質スペーサ118及び120はそれぞれ、入口及び出口近くにあり、媒質を所定の位置に維持する。媒質のサイズは、媒質がデバイスの内壁に接触することにより、全液体流れが、媒質を内壁等に沿って通過させることなく、媒質の本体を必ず通るようなサイズに形成される。
【0047】
本発明では他のデバイス構成であってもよく、またそのような構成にすることも可能である。
【0048】
例えば、図8は、国際公開第01/83077号パンフレットに記載された積層フィルタデバイス130の使用を示す。デバイス130は、使い捨てカプセル又は再利用可能ハウジングであるハウジング132内に組み込みできる。ハウジング132は入口134及び出口136を有する。第1エンドキャップ138は、出口136と液連通している第2エンドキャップ140に接続される。図に示すとおり、これはOリング142によりなされるが、当技術分野で公知の他の手段を利用することもできる。中心ロッド144は第1エンドキャップ138を第2エンドキャップ140に接続する。中心ロッド144周りに、1つ以上のNSB薬剤を含有する繊維質物質で生成される一連のディスク146が配置される。これは、各ディスクがそこを貫通してロッド144が突き出る中心開口147を有することにより達成される。一連の内側148及び外側150ナイフエッジシールはディスク146について交互に配置され、一連の交互のディスク対を形成する。これらのシール148及び150はディスク146のそれぞれの場所をシールし、入口134に流入する全液体が1つ以上のディスク146を必ず通過した後に、中心穴147に入り、その後矢印149に示すとおり出口136に達する。ロッド144はナット又は当技術分野で公知の特定の他の手段を用いることにより、シール148及び150ならびにディスク146上のシール圧力を維持して、液体の側路が発生しないことを保証する。
【0049】
図9は別の実施形態を示しており、NSB薬剤を含有する物質152は、米国特許第5,490,926号明細書からなどの、当技術分野で公知のスパイラル巻きアセンブリ154に形成される。アセンブリ154は一連の開口158を有する透過収集チューブ156の周りに巻かれ、この物質を通過する液体はチューブ156に入る。外側層160は、フィルタ物質152を所定の位置に保持するための外部保護メッシュ162を有する。図8と同様に、このアセンブリをハウジング内に配置してデバイスを形成する。
【0050】
図10は別の好ましい実施形態を示しており、NSB薬剤を含有する物質180は接線流れ又はTFTデバイス182内にある。物質180は中心入口又はディストリビュータ184の両側に使用される。液体流は入口186からディストリビュータに導かれ、その後、ディストリビュータに流れ込み、物質180を通過して収集領域188に入った後に、出口190に達する。別の配置を構成することにより、液体流が外側から中心に流れるようにするか、又は液体流れの一部だけがフィルタ層を通過し、残りがディストリビュータから収集され、再循環されることにより、デバイスを通る第2又は後続の通過を可能にする、ことができる。これは、デバイスを短時間で詰まらせる高濃度の不純物を含有する液体について特に有効である。接線流れ及び再循環はフィルタ表面を清浄にし、デバイスの急速な詰まりを減少させる。
【0051】
別の実施形態も同様に使用できることは当業者には明らかであろう。このような別の実施形態も本発明に包含されるものとする。
【符号の説明】
【0052】
2 クロマトグラフィカラム
3 中間貯蔵タンク
4、14、48、53、56、76、104、114、136、190 出口
5 限外ろ過デバイス
6、18、46、74、102、112、134 入口
8 空間
10 親和性媒質
11 限外ろ過メンブレン
12 プレフィルタアセンブリ
20 ロッド
22 プレフィルタ
24A、24B 層
26 中心支持デバイス
30 外側シールエッジ
40 カラム
42 上面カバー
44 底面カバー
50 本体
51 カートリッジ
52 NSB除去物質
54 第1エンドキャップ
55 中心コア
57 媒質
58 外側スリーブ
60 第2エンドキャップ
70、72、98、100 半分部分
78 媒質ディスク
80 上側多孔質基板
82 下側多孔質基板
84、94 ガスケット
90 媒質層
92 スペーサ
110 カートリッジ
113 一端
118、120 多孔質スペーサ
130 積層フィルタデバイス
132 ハウジング
138 第1エンドキャップ
140 第2エンドキャップ
142 Oリング
144 中心ロッド
146 ディスク
147 中心穴
148 内側ナイフエッジシール
150 外側ナイフエッジシール
152 フィルタ物質
154 スパイラル巻きアセンブリ
156 透過収集チューブ
158 開口
160 外側層
162 外部保護メッシュ
180 物質
184 ディストリビュータ
188 収集領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質を含有する液体流から非特異性結合成分を除去するのに選択される1つ以上の媒質の1つ以上の層を備えるタンパク質精製システムに用いる、プレフィルタ。
【請求項2】
プレフィルタが親和クロマトグラフィカラムの上流側にあって、このカラムと流体連通している、請求項1に記載のプレフィルタ。
【請求項3】
プレフィルタが限外ろ過システムの上流側にあって、このシステムと流体連通している、請求項1に記載のプレフィルタ。
【請求項4】
プレフィルタが入口及び出口及びその間の空間を有し、この空間が非特異性結合成分を除去する1つ以上の薬剤を含有する媒質で充填されている、請求項1に記載のプレフィルタ。
【請求項5】
プレフィルタが入口及び出口及びその間の空間を有し、この空間が非特異性結合成分を除去するための1つ以上の薬剤を含有する媒質で充填されており、媒質がビーズ形状である、請求項1に記載のプレフィルタ。
【請求項6】
プレフィルタが1つ以上のレンズ状パッドデバイスの形状であって、各デバイスが中心レンズ状支持構造体、1つ以上のプレフィルタパッド、パッドを支持体に固定するエッジシール、及び中心出口を有することにより、このデバイスに入る全液体流は1つ以上のプレフィルタパッド及び支持体を必ず通過した後に、中心出口に達する、請求項1に記載のプレフィルタ。
【請求項7】
1つ以上のプレフィルタが1つ以上のレンズ状パッドデバイスの形状であって、各デバイスが、中心レンズ状支持構造体と、1つ以上のプレフィルタパッドを有し、各パッドが、タンパク質を含有する液体流から非特異性結合成分を除去するのに選択される1つ以上の媒質の1つ以上の層で形成されており、さらに、1つ以上のパッドを支持体及び中心出口に固定するエッジシールと、を有することにより、このデバイスに入る全液体流は1つ以上のプレフィルタパッド及び支持体を必ず通過した後に中心出口に達し、さらに、内部に1つ以上のプレフィルタを配置するハウジングを有し、このハウジングは中心出口により各デバイスを取り付ける中心ロッドを有し、この中心ロッドはハウジングの出口に接続されており、さらに、デバイスとハウジングの内壁の間に液体流を流す空間と、ハウジングに取り付けた入口と、を有する、請求項1に記載のプレフィルタ。
【請求項8】
媒質が、疎水性物質、親油性物質、活性炭、帯電カチオン又はアニオン物質、リガンド、ヒュームドシリカ、ガラス、細孔性ガラスなどの粒子又はそれぞれの誘導体、シリカ又はシリケート、及びそれらの化合物から成るグループから選択された物質で構成されている、請求項1に記載のプレフィルタ。
【請求項9】
媒質が、疎水性物質、親油性物質、活性炭、帯電カチオン又はアニオン物質、リガンド、ヒュームドシリカ、ガラス、細孔性ガラスなどの粒子又はそれぞれの誘導体、シリカ又はシリケート、及びそれらの化合物から成るグループから選択された物質で構成されており、さらに媒質が、選択された物質を繊維質フィルタパッド又はメンブレン内に埋め込むことにより形成されている、請求項1に記載のプレフィルタ。
【請求項10】
媒質がガラス、シリケート、シリカ及びそれらの混合物から成るグループから選択された物質を含有するセルロース誘導繊維質パッドである、請求項1に記載のプレフィルタ。
【請求項11】
媒質がガラスから成るグループから選択された物質を含有するセルロース誘導繊維質パッドであって、ガラスが繊維、マット及び細孔性ガラス粒子から成るグループから選択される形状である、請求項1に記載のプレフィルタ。
【請求項12】
プレフィルタが親和クロマトグラフィカラム及び限外ろ過システムから成るグループから選択される精製システムの上流側にあって、このシステムと液連通しており、さらに、プレフィルタの出口と精製システムの入口の間の中間に配置され、これら両方と流体連通している貯蔵タンクを備えている、請求項1に記載のプレフィルタ。
【請求項13】
プレフィルタがスパイラル巻きフィルタカートリッジ形状である、請求項1に記載のプレフィルタ。
【請求項14】
プレフィルタが1つ以上のNSB薬剤を含有する繊維質物質の一連の平板ディスクを含む使い捨てカプセル形状であり、このディスクは液体流通路を形成する中心穴及び一連の内側及び外側ナイフエッジシールを有することにより、このデバイスから出る全液体流は最初に必ずこのディスクを通り流れる、請求項1に記載のプレフィルタ。
【請求項15】
プレフィルタが一連のカセット又はポッド内に配置された1つ以上のNSB薬剤を含有する繊維質物質を有する接線流デバイスの形状であり、液体流は物質を横切るか又はこれに接して流れ、液体流の少なくとも一部はそれぞれの通過の際に物質を通過して流れる、請求項1に記載のプレフィルタ。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−111781(P2012−111781A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−54079(P2012−54079)
【出願日】平成24年3月12日(2012.3.12)
【分割の表示】特願2009−106004(P2009−106004)の分割
【原出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(504115013)イーエムディー ミリポア コーポレイション (33)
【Fターム(参考)】