説明

生物処理装置

【課題】生物処理槽の汚泥の解体が進んだ場合であっても、汚泥を低含水率となるように脱水処理することができる生物処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】生物処理槽1内の生物処理水をポンプ10によって膜分離槽11に供給し、この膜分離槽11内の分離膜3の透過水を処理水として取り出し、濃縮水の一部を生物処理槽1に返送し、余剰汚泥を凝集槽6に取り出す。余剰汚泥は、無機凝集剤を添加後、凝集槽6で高分子凝集剤が添加されて凝集処理され、濃縮機7で濃縮処理された後、脱水機8で脱水処理される。脱水機としては、フィルタープレス脱水機、ベルトプレス脱水機、遠心脱水機、電気浸透脱水機など各種のものを用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物含有水を活性汚泥法により処理する生物処理手段を有した生物処理装置に関するものであり、特に、生物処理液を膜分離して処理水を得ると共に、余剰汚泥を脱水処理する手段を備えた生物処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生物処理槽の活性汚泥混合液を固液分離して処理水を得る方法の1つとして、この固液分離に膜分離を採用する装置(いわゆるMBR装置)がある(例えば、下記特許文献1〜3)。このMBR方式の生物処理装置によると、生物処理槽内の汚泥濃度を高く保つことができる。
【0003】
なお、本出願人は、汚泥を効率よく濃縮することができる汚泥濃縮装置を特開2003−164899にて提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−332483号公報
【特許文献2】特開2005−74345号公報
【特許文献3】特開2006−334587号公報
【特許文献4】特開2003−164899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
MBR方式の生物処理装置では、生物処理槽内のSRT(汚泥滞留時間)が長くなる傾向がある。SRTが長いと、汚泥の自己消化(解体)が進み、汚泥は脱水されにくくなる。
【0006】
本発明は、生物処理槽の汚泥の解体が進んだ場合であっても、汚泥を低含水率となるように脱水処理することができる生物処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の生物処理装置は、有機物を含有する原水を活性汚泥と混合して生物処理する生物処理手段と、生物処理液を膜分離する膜分離手段と、該生物処理手段の余剰汚泥を脱水する脱水機とを備えた生物処理装置において、該余剰汚泥を無機凝集剤及び高分子凝集剤で凝集処理する凝集処理手段と、該凝集処理手段からの凝集汚泥を濃縮する濃縮機とを備え、該濃縮機からの濃縮汚泥を前記脱水機で脱水することを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の生物処理装置は、請求項1において、前記凝集処理手段は凝集槽を備えており、前記濃縮機は、該凝集槽の水面の位置よりも下側に配置されて、水位差によって前記凝集汚泥をその一の端部から内部に導入する円筒体と、この導入された前記凝集汚泥の水分を、上記水位差によって上記円筒体の内面から外面に向かって分離して通過させる前記円筒体の周面に形成された濾過スクリーン部と、上記円筒体内部に位置して、上記濾過スクリーン部内面を清掃すると共に、前記凝集汚泥を前記円筒体の一の端部から他の端部へ移送し濃縮凝集汚泥として排出するスクリューと、上記濾過スクリーン部から円筒体外部に分離される分離液を収容し、且つこの分離液に前記円筒体の濾過スクリーン部を水没せしめる外容器と、この外容器に設けられた分離液排出口とを備えたものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の生物処理装置では、生物処理手段からの余剰汚泥を無機凝集剤及び高分子凝集剤で凝集処理してから濃縮機で濃縮し、その後、この濃縮汚泥を脱水機で脱水する。このように、余剰汚泥に、無機凝集剤及び高分子凝集剤による凝集処理と、その後の濃縮機による濃縮処理とを施すことにより、脱水機での脱水性が向上し、低含水率の脱水汚泥が得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態に係る生物処理装置のフロー図である。
【図2】実施の形態に係る生物処理装置のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の有機物含有水の生物処理方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0012】
本発明では、有機物含有水よりなる原水を生物処理槽に導入し、活性汚泥によって生物処理し、この生物処理水を膜分離処理する。また、この生物処理槽から余剰汚泥を抜き出し、凝集処理後、濃縮処理し、脱水処理する。
【0013】
本発明で処理対象とする有機物含有水としては、特に制限はないが、地下水、河川水、湖沼(ダム湖を含む)水等の自然水、水道水、食品工場排水又は半導体等の電子産業排水を処理して得られた回収水などが例示される。
【0014】
このような有機物含有水を生物処理するための生物処理槽は、好気槽、嫌気槽のいずれでもよく、具体的にはBOD除去を行う曝気槽、硝化を主体として行う硝化槽、脱窒を主体として行う脱窒槽などのいずれでもよい。活性汚泥は、BODを分解する好気性細菌を主体とする汚泥、アンモニアを酸化する硝化細菌を主体とする汚泥、硝酸又は亜硝酸を還元する脱窒菌を主体とする汚泥のいずれでもよい。
【0015】
生物処理槽におけるMLSS濃度は、2,000〜50,000mg/L、特に5,000〜20,000mg/Lと高濃度とすることにより、生物処理効率を高くすることができる。
【0016】
なお、生物処理槽内には、担体を浮遊させてもよい。このような浮遊性の担体としてはスポンジ、ゲルなどが例示される。
【0017】
生物処理槽のBOD負荷は、好気処理の場合は0.5〜5kg−BOD/m/day、特に0.5〜2kg−BOD/m/day程度が好ましく、嫌気処理の場合は1〜10kg−BOD/m/day特に2〜6kg−BOD/m/day程度が好ましい。
【0018】
この生物処理槽の生物処理水を固液分離して処理水を得るための分離膜としては、MF(精密濾過)膜、UF(限外濾過)膜、NF(ナノ濾過)膜などのいずれでもよい。膜の形態は、平膜、管状膜、中空糸などのいずれであってもよい。膜の材質としては、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)等が例示されるが、これに限定されない。分離膜は、生物処理槽内に浸漬配置されてもよく、生物処理槽とは別個の膜分離槽に設置されてもよい。この膜分離槽は浸漬型膜分離槽であってもよく、加圧型膜分離装置であってもよい。
【0019】
図1は、本発明の有機物含有水の生物処理装置の一例を示すフロー図である。原水が生物処理槽1に導入され、活性汚泥と混合され、生物処理される。生物処理槽1内の底部に設けられた散気管2からの空気によって曝気が行われる。
【0020】
この生物処理槽1内に分離膜3が浸漬配置されている。生物処理された水は、分離膜3を透過して処理水として取り出される。なお、図1ではポンプ4で透過水を取り出しているが、重力によって透過水を取り出してもよい。
【0021】
生物処理槽1内の余剰汚泥は、取出管5によって取り出され、無機凝集剤を添加後、凝集槽6で高分子凝集剤が添加されて凝集処理され、濃縮機7で濃縮処理された後、脱水機8で脱水処理される。
【0022】
図1では生物処理槽1内に分離膜3を浸漬配置しているが、図2のように、生物処理槽1内の生物処理水をポンプ10によって膜分離槽11に供給し、この膜分離槽11内の分離膜3の透過水を処理水として取り出し、濃縮水の一部を生物処理槽1に返送し、余剰汚泥を凝集槽6に取り出すようにしてもよい。図2のその他の構成は図1と同一である。
【0023】
なお、図1,2のいずれの場合も、取出管6で取り出した余剰汚泥の一部を汚泥可溶化槽に導き、オゾン等によって可溶化してから生物処理槽1へ返送するようにしてもよい。
【0024】
凝集槽6では、無機凝集剤と高分子凝集剤が添加された汚泥を凝集処理する。無機凝集剤としては、ポリ硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウムなどが好適であるが、これに限定されない。高分子凝集剤としては、両性ポリマー系高分子凝集剤、カチオンポリマー系高分子凝集剤、アニオンポリマー系高分子凝集剤などが好適である。凝集剤の添加量は、汚泥性状に応じて実験的に定めるのが好ましい。
【0025】
濃縮機としては、ロータリースクリーン型汚泥濃縮機、スクリュープレス型汚泥濃縮機、遠心濃縮機など各種の汚泥濃縮機を用いることができるが、中でも、前記特開2003−164899号公報記載の汚泥濃縮機が好適である。同号の濃縮機は、凝集槽の水面の位置よりも下側に配置されて、水位差によって前記凝集汚泥をその一の端部から内部に導入する円筒体と、この導入された前記凝集汚泥の水分を、上記水位差によって上記円筒体の内面から外面に向かって分離して通過させる前記円筒体の周面に形成された濾過スクリーン部と、上記円筒体内部に位置して、上記濾過スクリーン部内面を清掃すると共に、前記凝集汚泥を前記円筒体の一の端部から他の端部へ移送し濃縮凝集汚泥として排出するスクリューと、上記濾過スクリーン部から円筒体外部に分離される分離液を収容し、且つこの分離液に前記円筒体の濾過スクリーン部を水没せしめる外容器と、この外容器に設けられた分離液排出口とを備えたものである。この濃縮機は、栗田工業株式会社より商品名アナティスとして販売されている。脱水機としては、フィルタープレス脱水機、ベルトプレス脱水機、遠心脱水機、電気浸透脱水機など各種のものを用いることができる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例及び比較例について説明する。
【0027】
以下の実施例及び比較例で用いた原水はTOC濃度100mg/Lの電子産業排水である。
【0028】
装置としては図2に示す浸漬型分離膜を備えたものを用いた。生物処理槽の容積は320m、膜分離槽の容積は172mである。この浸漬型分離膜としては、25m/ユニットの中空糸MF膜(三菱レイヨン(株)製、孔径0.4μm)160ユニットを用いた。
【0029】
[実施例1]
原水供給量を1700m/dayとし、BOD負荷を1.5kg−BOD/m/dayとし、浸漬型分離膜3から真空ポンプ4により処理水(透過水)を取出した。この処理水のTOCは2mg/Lであった。
【0030】
膜分離槽11から余剰汚泥(固形分濃度12000mg/L)を取り出し、無機凝集剤としてポリ硫酸鉄を乾燥ベースの汚泥重量1kgに対し150gの割合で、すなわち15重量%/TSにて添加し、高分子凝集剤として栗田工業株式会社製両性ポリマークリベストP359を0.6重量%/TSの割合で添加した。
【0031】
次いで、栗田工業株式会社製濃縮機「アナティス」によってこの凝集汚泥を3倍に濃縮した。次いで、この濃縮汚泥をスクリュープレス脱水機(月島機械株式会社製)によって脱水したところ、含水率は70%であった。
【0032】
[比較例1]
実施例1において、膜分離槽からの余剰汚泥に高分子凝集剤としてカチオン性ポリマー高分子凝集剤(栗田工業株式会社製クリフィックスCP111)を0.8重量%/TS添加した後、遠心濃縮機(三菱化工機株式会社製)で1.5倍に濃縮した。この濃縮汚泥を実施例1と同一の脱水機にて脱水したところ、含水率は75%であった。
【0033】
[比較例2]
実施例1の膜分離槽からの余剰汚泥に比較例1と同じカチオン性ポリマー高分子凝集剤を同一量添加し、濃縮機を経ることなく実施例1と同じ脱水機にて脱水したところ、含水率は75%であった。
【0034】
なお、余剰汚泥の処理量は、比較例1は比較例2の1.1倍、実施例1は比較例2の1.3倍であった。
【0035】
以上の結果より、本発明によると、低含水率の脱水汚泥が効率よく得られることが認められた。
【符号の説明】
【0036】
1 生物処理槽
2 散気管
3 分離膜
6 凝集槽
7 濃縮機
8 脱水機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を含有する原水を活性汚泥と混合して生物処理する生物処理手段と、
生物処理液を膜分離する膜分離手段と、
該生物処理手段の余剰汚泥を脱水する脱水機とを備えた生物処理装置において、
該余剰汚泥を無機凝集剤及び高分子凝集剤で凝集処理する凝集処理手段と、
該凝集処理手段からの凝集汚泥を濃縮する濃縮機とを備え、
該濃縮機からの濃縮汚泥を前記脱水機で脱水することを特徴とする生物処理装置。
【請求項2】
請求項1において、前記凝集処理手段は凝集槽を備えており、
前記濃縮機は、該凝集槽の水面の位置よりも下側に配置されて、水位差によって前記凝集汚泥をその一の端部から内部に導入する円筒体と、
この導入された前記凝集汚泥の水分を、上記水位差によって上記円筒体の内面から外面に向かって分離して通過させる前記円筒体の周面に形成された濾過スクリーン部と、
上記円筒体内部に位置して、上記濾過スクリーン部内面を清掃すると共に、前記凝集汚泥を前記円筒体の一の端部から他の端部へ移送し濃縮凝集汚泥として排出するスクリューと、
上記濾過スクリーン部から円筒体外部に分離される分離液を収容し、且つこの分離液に前記円筒体の濾過スクリーン部を水没せしめる外容器と、
この外容器に設けられた分離液排出口と
を備えたものであることを特徴とする生物処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−183471(P2012−183471A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47842(P2011−47842)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】