説明

生物分解性ナノファイバーおよびその実施例

基質上に生物分解性繊維を含有する繊維性製品について記載する。前記繊維は、タンパク質ベースの成分および担体ポリマー成分を含有する析出溶液から生じ、これらの各成分は生成される析出溶液が電着法を使用して析出可能なように構成される。一実施形態において、析出溶液内のタンパク質は、生成された析出溶液の粘度を改変して、析出溶液がエレクトロスピニングに適合できるように、変性される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2009年5月18日出願の、「Biodegradable Nanofibers for Air Filtration」と題する、米国仮特許出願第61/179、279号への優先権の利益を主張するものである。さらに、本願は、2010年3月29日出願の、「Biodegradable Nanofibers」と題する、
米国仮特許出願番号第61/318,623号への優先権の利益を主張するものである
。これらの出願の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は繊維および繊維性製品に関し、例えば、繊維は、担体ポリマー溶液およびタンパク質ベースの溶液(例えば変性されたタンパク質を有する)を含有する溶液のエレクトロスピニングによって形成される。
【背景技術】
【0003】
再生可能な供給原料を使用して生成される製品は、主に化石燃料および他の再生不可能材料に由来する合成ポリマー物質の消費量を減少させる。これらのポリマーの多くは、埋立地および廃棄物貯蔵所で生じる条件はいうまでもなく、通常の条件では分解しない。このため、合成ポリマー物質で生成される製品は、何世紀にもわたって持続する。
【発明の概要】
【0004】
本明細書では、生物分解性繊維、その製造、それらの製造で使用される前駆物質、それらの製造で使用されるデバイスおよび装置、かかる繊維から生成される繊維性製品、かかる繊維性製品を作成するための方法、およびかかる繊維性製品を作成するためのデバイスおよび装置について記載する。いくつかの例において、繊維はナノファイバー(つまり1ミクロン未満の直径を有する繊維)である。いくつかの例において、繊維は、変性されたタンパク質またはペプチドを含有する。いくつかの例において、繊維は、さらに、非ペプチド性および非タンパク質の水溶性ポリマーを含有する。いくつかの実施形態において、タンパク質/ペプチドはプロテオグリカンである。いくつかの例において、繊維は、エレクトロスピニングによって製造される。
【0005】
いくつかの例において、繊維性製品は、本明細書に記載される生物分解性繊維ネットワークを含有する。いくつかの例において、繊維性製品は、フィルタとして使用される。いくつかの例において、繊維性製品は生物分解性であり、および/または堆肥化できる。いくつかの例において、かかる繊維性製品の繊維ネットワークは粘着性である、および/または病原体(例えばウィルス、バクテリアおよびその構成物質)に付着する。いくつかの例において、かかる繊維性製品は、(例えば生物非分解性および/またはタンパク質/ペプチド非含有、および/またはミクロン以下のサイズの繊維で生成される)他の繊維性製品と比較して、柔軟性および/または巻き取り可能および/または軽量である。
【0006】
一実施形態において、繊維性製品は、生物分解性基質、およびその生物分解性基質上に配置される繊維ネットワークを含む。繊維ネットワークは、析出溶液を形成するために、タンパク質ベースの成分と、タンパク質ベースの成分と混合される水溶性ポリマー成分とを含有する繊維を含有する。この実施形態においては、さらに析出溶液は、タンパク質ベースの成分から生じる変性されたタンパク質を含有すると定義される。
【0007】
別の実施形態では、生物分解性ろ過用製品は、生物分解性基質を有する第1の層および生物分解性基質上に配置される第2の層を含む。前記第2の層は、空気を第2の層に通過
させるための複数の開口を形成する相互に連結する繊維ネットワークを含む。この実施形態においては、さらに、相互に連結する各繊維が、タンパク質ベースの成分および水溶性ポリマー成分を含有すると定義される。生物分解性ろ過用製品はさらに、タンパク質ベースの成分は、変性されたタンパク質を含有すると定義される。
【0008】
さらに別の実施形態では、基質上へ繊維をエレクトロスピニングするための析出溶液。析出溶液の実施形態は、タンパク質ベースの成分を含有する第1の溶液と、第1の溶液と混合された第2の溶液とを含有する。この実施形態においては、水溶性ポリマーを含有する担体成分を含有する。この実施形態においては、さらに、タンパク質ベースの成分は、変性されたタンパク質を含有すると定義している。
【0009】
さらに別の実施形態は、繊維性製品を形成するためのステップを含む方法である。この方法の実施形態は、水中に大豆タンパク質を含有する第1の溶液を調製するためのステップ、水中に水溶性ポリマーを含有する第2の溶液を第1の溶液に導入するためのステップ、大豆タンパク質を変性させるためのステップ、および生成された析出溶液を基質上にエレクトロスピニングするためのステップを含む。
【0010】
さらに別の実施形態では、ナノ繊維は、変性されたタンパク質ベースの成分および水溶性ポリマー成分を含有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示の上記に挙げられた特徴が詳細に理解できるように、上記において簡潔に要約される本開示のより詳細な記載が、図面を参照して行われ得、そのうちのいくつかは添付の付録において図示および記述される。しかしながら、本開示は、他の等しく効果的な実施形態を受け入れてもよいため、添付の文書は、本開示の典型的な実施形態のみを説明するものであり、従って、その範囲を制限すると考えられるべきではないことに留意されたい。さらに、いかなる図面も必ずしも正しい縮尺になっているわけではなく、本開示の特定の実施形態の原則の図示を主眼としている。
【0012】
したがって、本開示の性質および目的のさらなる理解のために、付録に関連して読まれる、以下の詳細な記載を参照できる。
【図1】繊維性製品の例示的な実施形態の上面図である。
【図2】図1の繊維性製品の側面断面図である。
【図3】図1の繊維性製品の上面の詳細図である。
【図4】繊維性製品の別の例示的な実施形態の側面断面図である。
【図5】繊維性製品のさらに別の例示的な実施形態の側面断面図である。
【図6】繊維性製品のさらに別の例示的な実施形態の上面図である。
【図7】図6の繊維性製品の側面断面図である。
【図8】図1〜7の繊維性製品等の繊維性製品を形成するための方法の例示的な実施形態の流れ図である。
【図9】図1〜7の繊維性製品等の繊維性製品を形成するための方法の別の例示的な実施形態の流れ図である。
【図10】電着システムの例示的な実施形態の概略図である。
【図11】電着システムの別の例示的な実施形態の画像である。
【図12】図8および9の方法に従って作成された繊維性製品等の繊維性製品の引っ張り試験データのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
われわれは、より持続可能で環境にやさしい製品を追求する消費者による、再生可能な材料から作成された物質の産業的なニーズを認識している。共に木綿、トウモロコシおよ
びジャガイモ等の再生可能な材料に由来し得る、セルロースおよびポリ乳酸(PLA)等の生物分解性ポリマーは、その耐用期間の終了時に堆肥とすることができるものの例である。大豆は、世界で最も多く栽培される作物のうちの1つであり、その豊富さのために、容易に入手可能であり、生物分解性の用途のために、最も安価な供給原料の1つである。しかしながら、供給が豊富であるとはいえ、大豆ベースの成分を含有する組成および物質は、概して、生成される製品の特性(例えば機械的性質)のために、ある種の用途においては利用されていない。
【0014】
われわれは、さらに、タンパク質ベースの生物分解性物質の提供のニーズを認識しており、かかるタンパク質ベースの生物分解性物質は、例えばフィルタおよびろ過システムにおける使用に適合する機械的性質を有することが特に望ましい。
【0015】
従って、以下の記載において、繊維および繊維性製品の実施形態に関する詳細、構成、および過程について述べる。いくつかの実施形態において、これらの繊維性製品は、自然の条件において、ならびに堆肥媒体内での、その分解を促進するように構成される。しかし、多くの生物分解性物質は分解するが、本開示の特定の実施形態の繊維性製品は、繊維性製品の繊維および/または繊維ネットワークが、例えばフィルタ媒体における圧力低下に悪影響を与えることなく、さらに、優れた機械的性質、効率性を含む向上したろ過特性、および向上した可能性を示すように構成される。一例において、フィルタ媒体内の本開示の繊維および繊維ネットワークの利用は、例えば生物非分解性合成ポリマーで構成される繊維を使用する従来のろ過媒体およびデバイスと比較して、圧力低下を改善する。
【0016】
一例として、また、以下により詳細に記載するように、われわれは、複数の繊維を形成するために、電着すること(例えばエレクトロスピニングすること)が可能な析出溶液を形成するために、共に混合できる成分の組み合わせを特定した。これらの繊維は、ろ過用製品等の用途で有用である。しかしながら、従来のろ過用製品で使用される合成およびガラス繊維とは異なり、本発明の特定の繊維は生物分解性であり、上記のフィルタ媒体としての使用等の工業用途のために十分な機械的強度が与えられている。一実施形態において、析出溶液は、タンパク質ベースの溶液および担体ポリマー溶液等の1つ以上の成分溶液を含むことができる。成分溶液は、選択的に、水溶性および/または水処理可能な成分を有する水性の溶液であり、これにより、有機溶媒および上記の合成繊維を製造するために必要な他の化学物質の必要性およびそれらに付随するコストが不要になる。エタノール等の他の適した溶媒(例えば非毒性の溶媒)が、任意に、それのみでまたは水と組み合わせて利用される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される繊維および繊維製品は、実質的に、毒性の溶媒を含有しない。より特定の実施形態において、本明細書に記載される繊維および繊維製品は、実質的には、水またはアルコール以外の溶媒を含有しない(例えば1%w/w未満、0.5%w/w未満、0.1%w/w未満、0.01%w/w未満)。
【0017】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される繊維またはタンパク質ベースの溶液は、タンパク質および/またはペプチド性成分を含有し、その成分は、一例において、析出溶液の粘度が、エレクトロスピニングされた繊維を形成するために使用できるように変性される。タンパク質成分の例は、大豆タンパク質濃縮物(「SPC」)、大豆粉(「SF」)、および/または大豆タンパク質分離物(「SPI」)等の大豆ベースの物質を含んでもよい。さらに、以下の記載は、主にSPIに焦点を当てたものであるが、タンパク質成分は、さらに、中でも、乳清、グルテン、ゼイン、アルブミン、およびゼラチン等の他のタンパク源にも見られる。いくつかの例において、タンパク質は、任意の植物源または動物源からのものである。特定の実施形態において、タンパク質成分は、プロテオグリカンである。さらに、本明細書における、いかなるSPIの列挙も例示的なものであり、本明細書に記載等の別の大豆ベースの物質(例えばSPC)または別のタンパク質源と
置き換えることができる。
【0018】
本明細書に記載される繊維または担体ポリマー溶液は、担体ポリマーを含有することができる。担体ポリマーは、任意に、生物分解性または生物非分解性である。担体ポリマーは、繊維の意図された目的に適したいかなるポリマーをも含有することができる。この担体ポリマーは、(例えばエレクトロスピニング中の)繊維の処理および/または製造を促進するポリビニルアルコール(PVA)および/または他のポリマー等の、水溶性ポリマー(例えば合成ポリマーを含む)を含むことができる。かかるポリマーは、さらに、例えばエレクトロスピニング中に、タンパク質ベースの成分の一体性を維持するように役立ち得る。担体ポリマーとしての使用に適した物質の他の例は、ポリエチレンオキシド(PEO)およびポリエチレングリコール(PEG)を含むことができるが、これらに限定されない。さらに、担体ポリマー内および/またはこの担体ポリマーとして使用可能なもの等のポリマーおよび/またはポリマー物質(以降「ポリマー」)は、反復構造単位を含有できる物質であることができることが企図され、一例において、ポリマーは、100を越える反復単位を含むことができる。ポリマーは、さらに、反復単位の長い鎖を有する溶解性および/または可溶性の分子を含有する物質を含むことができる。
【0019】
本明細書に記載される繊維または析出溶液はさらに、補助成分または補助溶液を含有できる。種々の実施形態において、かかる補助成分または溶液は、生成される析出溶液、繊維、および/またはフィルタ媒体の特徴を改変するために使用できる。これらの改変は、例えば、繊維の耐湿性、感湿性、硬度および引っ張り強度に対する向上、向上したろ過効率等を含むことができる。補助成分/溶液は、ステアリン酸等の脂肪酸、酸化チタン(TiO2)およびナノクレイ等のマイクロスケールおよびナノスケール微粒子、ナノ結晶性
セルロース(NCC)、セルロースナノ結晶(CNC)、ナノフィブリル化セルロース(NFC)、およびバイオ炭等の炭素ベースの物質等であるが、これに制限されない種々の補助成分を含有できる。析出溶液の1つ以上の流動学的特性を改変できる他の添加剤を含むこともできる。例示的な添加剤は、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)等のpHを調整するための添加剤、p−3−オクチルフェノキシポリエチルアルコール等の界面活性剤、および界面張力を改変し、例えば担体ポリマーとして使用される場合に、PVのゲル化を抑制するための他の添加剤を含むことができる。一実施形態において、例示的な補足成分は、抗菌剤である(例えば抗真菌、抗ウィルス、および/または制菌剤)。特定の実施形態において、抗菌剤は、抗菌ナノ粒子である。
【0020】
繊維は、基質上に、繊維ネットワークとして、概してランダムに析出させることができる。繊維ネットワークは、流体(例えば空気)が繊維性製品を通過できる、複数の孔を含むことができる。繊維ネットワークは、これらの孔の密度、これらの孔の大きさに従って、さらに、(例えばフィルタ媒体の特定の面積に関連付けられるように)孔の大きさの分布に従って、特徴付けることができる。繊維ネットワークは、さらに、基質上に配置される繊維の重量範囲によって特徴付けることができる。一例として、フィルタ媒体としての使用に適した繊維性製品内の繊維の重量範囲は、制限なく、約0.2g/m2〜約10g
/m2にすることができる。繊維ネットワークの特性は多様であってもよいが、本明細書
に開示された概念に従って構成された繊維ネットワークは、約0.1μm程度の小さい粒子を捕獲およびフィルタできる。さらに、析出溶液内の成分のうちの1つ以上と適合できる物質は、ウィルスのスケールのもの(例えば約0.1μm)等の、より小さい微粒子、微生物、および生物学的有機体を抑制および/または捕獲することにより、生成された繊維性製品の性能を改善できる。
【0021】
特定の実施形態において、本明細書に記載される繊維または析出溶液は、タンパク質ベースの成分:担体ポリマー成分の比率が99:1未満、または98:2未満、または0.001:1〜99:1、または1:1未満、または2:1未満、または3:1未満、また
は4:1未満、または5:1未満、または10:1未満、または20:1未満、または0.01:1〜1:1である、タンパク質ベースの成分および担体ポリマー(例えば水溶性ポリマー)を含有する。
【0022】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される繊維は、任意の適した直径を有し、例えば、ナノファイバーの平均直径は、200nm未満、150nm未満、80nm未満、10ミクロン未満、5ミクロン未満、300nm〜1ミクロン、350nm〜10ミクロン、350nm〜5ミクロン等である。特定の実施形態において、本明細書に記載される繊維は、0.1%〜9%相対重量、0.1%〜6%相対重量、1%〜6%相対重量、2%〜5%相対重量、約3%相対重量等の元素窒素パーセンテージを有する。
【0023】
次に図を参照し、上記に簡単に記載されている概念の更なる説明のために、図1〜3において、繊維性製品100の例示的な実施形態を示す。繊維性製品100は、基質106等の第1の層104で形成された複数層構造102および基質106上に配置された第2の層108を含むことができる。第2の層108は、分散されて孔114を形成する複数の繊維112を有する繊維ネットワーク110を含むことができる。繊維112のそれぞれは、繊維形態116を含むことができ、現在の例において、繊維形態116は、上記に記載された酸化チタンナノ粒子等の粒子120の周囲に形成された1つ以上の繊維節118を含むことができる。
【0024】
複数層構造102は、繊維性製品100のために選択された実現形態に従って構成できる。ろ過、純化、および関連する実現形態は、例えば、複数層構造102が、第1の層104および第2の層106に加えて、物質層を含むことを必要とし得る。これらの層は生物分解性であってもよい、または、一実施形態において、第1の層104および第2の層106のうちの一方または両方は、廃棄のためにこれらの追加の層から取り外すことができ得る。廃棄されない物質層は、その上に配置された新しい層(例えば第1の層104および第2の層108)の受け入れ等により、再利用するように構成できる。他の実現形態は、同様に、繊維性製品100を、例えばろ過システムに設置することを可能にし得る、外側フレーム(図示せず)等の支持的成分を必要とし得る。かかる支持的成分のための繊維性製品100のカットによるサイズ調整を含む構築は、製造時において、または繊維性製品100の製造について二次的である1つ以上の過程として、行うことができる。
【0025】
一実施形態において、基質106は第2の層108を支持し、より具体的には、繊維ネットワーク110を、例えばエレクトロスピニングによって析出させることができる、適したプラットフォームを提供できる。基質106として使用するようなタイプの基質は、概して、繊維112の析出のためのプロセスと適合する。これらの基質は、繊維性製品100の実現形態とのそれらの適合性等の、それらの化学的なおよび物理的な性質のために選択できる。規模拡大および生産能力の目的のために、基質106の物質は、さらに、連続的な生産能力を可能にするように、バルクまたはバルクタイプ量で提供されてもよい。これらの物質の例には、生物分解性および分解可能物質を含むことができ、ある特定の構成において、第1の層102は、紙(例えばペーパータオルおよび薄膜を含む市販のフィルタ)および関連するウッドパルプ製品等のセルロースベースの物質を含有する。
【0026】
第2の層108は、厚さTを含む種々の寸法によって定義することができ、それらの値は、製造時において利用される析出技術によって制御することができる。典型的には、厚さTは、基質106の表面上の繊維ネットワーク110の平均厚さを定義する。プロセスおよび/または生産要因によってこの平均厚さが変動する可能性があることが認識されているが、厚さTの値は約0.5mm〜約10mmの範囲内であり、繊維性製品100のある構成における厚さTは約3mm〜約5mmであることが、一般的に望ましいといえる。
【0027】
繊維112は、繊維ネットワーク110を形成するためにランダムに析出できる。析出は、選択された電着技術の有効パラメータに従って制御可能である。ランダムな析出は、繊維112の多様な断面および寸法を生み出す可能性がある。断面は、概して、円形にすることができる。しかしながら、繊維ネットワーク100内の個々の繊維112の間、および、単一の繊維112に沿った他の断面は、基質106上への析出の間に生じ得るように、楕円および長方形の断面も含むことができる。本明細書で企図されているタイプの繊維は、約0.3μm未満の平均直径を有することができ、繊維性製品のある特定の構造において、平均直径は、約0.1μm〜約0.5μmの範囲にすることができる。粒子120の析出混合物への組み込みは、繊維112の断面に他の変形を生じさせる可能性もある。これらの変形は、一例において繊維節118として現れる可能性がある。繊維112に沿って繊維節118が見出される程度は、析出溶液内で見出される粒子120の負荷または濃度によって制御することができる。
【0028】
複数層構造102の構成および構造は、より多いまたはより少ない層(例えば層104および/または層108)、基質(例えば基質206)等を提供すること等によって、変動できる。一例として、かかる概念に従って構成される繊維性製品の追加の実施形態のために、次に、図4〜7を参照する。図1の実施形態と図4〜7において図示される実施形態の間で、同様の番号が同様の成分を表すように使用されるが、こうした番号は、100ずつ増加される(例えば図4では、100は200となる)。さらに、また上記の図1の繊維性製品100の上記の記載を鑑みて、例えばフィルタおよびろ過媒体としての使用にも適している繊維性製品(例えば繊維性製品200、300、および400)の例が提供される。
【0029】
図4において、例えば、基質206を成す第1の層204、および第2の層208を含む、複数層構造202を有する繊維性製品200が図示される。複数層構造202は、さらに第3の層222を含み、その層は、本構成において、複数の繊維226を有する繊維ネットワーク224を含む。第3の層222の繊維は、複数層構造202の第2の層208等の他の層を成す繊維と物質的におよび形態的に同じにすることができる。一方で、また例えば所望の実現形態または特性(例えば圧力低下)に基づき、複数層構造202の種々の層の繊維を、所望のように変動させることができる。
【0030】
図5において、複数層構造302で構成される、繊維性製品300が図示され、ここでは基質306を成す第1の層304、および、本明細書で記載されるような繊維で構成される第2の層308が提供される。複数層構造302は、さらに、第3の層322を含む。しかし、上記の図4の第3の層222と比較すると、本例の第3の層322は、基質328を成すことができる。一例において、基質328は、基質306と同じ性質および構成を有することができる。別の例において、基質328は、基質306とは異なる物質、組成、および他の物理的および化学的な特性を含むことができる。
【0031】
さらに、他の物質を含む構造および構成が、本明細書で上記に記載される繊維性製品およびフィルタ媒体の種々の実施形態において、企図される。これらの物質は、例えば数層構造の一部分内、その周囲、その上またはこれと連通して配置することができる。これらの物質は、必ずしも、特に析出溶液に由来するものでなくてもよく、生成されたフィルタ媒体の構造的および物理的な特徴を改善および可能にするように、追加の成分として添加してもよい。
【0032】
図6および7の繊維性製品400の例示的な実施形態として示される、一実施形態において、繊維性製品400は、フィラメント、繊維糸、および繊維物質等の構造上のらせん構造430を含むことができ、その全ては、セルロース等の生物分解性物質を含むことができる。構造上のらせん構造430は、所望に応じて、繊維性製品400の硬度、強度、
および他の物理的な特性を向上できる構造的なネットワーク432を形成できる。一例において、構造的ならせん構造430を、複数層構造402のもう一つ多い層の繊維ネットワーク410へ織り込んだ(または相互に分散された)構造的ならせん構造430を示す、図6および7の特定の構造によって、繊維性製品へ組み込むことができる。構造的ならせん構造430として使用するための物質は、生物分解性および生物非分解性物質を含むことができる。さらに、個々の構造的ならせん構造430の構造、ならびに繊維性製品400への実現形態は、生成された繊維性製品400および/またはフィルタおよびろ過媒体の実現形態および/または所望の特性(例えば圧力低下)によって変化させることができる。構造的ならせん構造430を基質406に組み込まれる、繊維性製品400のさらに他の実施形態が企図される。
【0033】
次に図8を参照すると、図1〜7の繊維性製品等の繊維性製品を形成するための方法200の例示的な実施形態が図示される。方法500等の方法は、析出溶液の調製および析出に有用な、様々なステップ502〜506を含むことができる。これらのステップの1つ以上は、析出溶液内のタンパク質成分に伴うタンパク質の変性または溶解を生じさせること等によって、析出溶液の見かけの純粋粘度(apparent shear viscosity)を修正するように実現できる。析出溶液に適した粘度は約0.1Pa・s〜約1000Pa・sにすることができ、一実施形態において、析出溶液の粘度は約1Pa・s〜約10Pa・sである。
【0034】
方法500は、ステップ502において、成分溶液の形成、ステップ504において、析出混合物の調製、およびステップ506において、基質上に析出混合物を析出させること含むことができる。各成分溶液は、析出溶液を形成するために共に混合する前に、別々に調製できる。各成分、例えばタンパク質ベースの成分および担体ポリマーを溶解するために、水を使用できる。一実施形態において、析出溶液内のタンパク質ベースの成分のパーセンテージは約50%を超えない。しかしながら、より特定の実施形態は、析出溶液内のタンパク質ベースの成分のパーセンテージが約10%〜約100%になるように構成してもよい。
【0035】
図9は、繊維性製品を形成するための方法600の別の例示的な実施形態を図示する。上記の図8に関連して説明されているように、方法600は、ステップ602において、成分溶液の形成、ステップ304において、析出混合物の調製、およびステップ606において、基質上への析出混合物の析出を含むことができる。しかしながら、図9の実施形態に関しては、特に、タンパク質ベースの溶液を形成するためのステップ608が提供され、そのステップは、溶液においてタンパク質ベースの成分を攪拌および混合するための1つ以上のステップ610を含むことができる。方法600はさらに、溶液に担体ポリマー成分を溶解するためのステップ614を含む、担体ポリマー溶液を形成するためのステップ612を含む。方法600はさらに、ナノ粒子および/または他の補助成分を析出溶液に追加する場合に生じる等の補助溶液を調製するためのステップ616を含むことができる。
【0036】
方法600はさらに、ステップ618において、成分溶液(この場合、タンパク質ベースの溶液および担体ポリマー溶液)を混合して、析出溶液を形成することを含む。一例として、方法600は、ステップ622において、析出溶液のpHレベルを調整すること等により、析出溶液の粘度を調整するためのステップ620を含む。方法600はさらに、析出溶液を攪拌および混合するための1つ以上のステップ624、ならびに、析出溶液が、例えば基質上に析出される前に、析出溶液を冷却するためのステップ626(ステップ606)を含む。
【0037】
次に図10および11を参照すると、基質への析出は、以下に記載される例示的なエレ
クトロスピニング析出システム700および800のうちの1つ等の電着システムを使用して促進できる。図10において、エレクトロスピニング装置702を含むことができるエレクトロスピニング析出システム700の一実施形態が示される。エレクトロスピニング装置702は、マイクロポンプ706、シリンジ708、およびヒーター710が組み込まれた、スピニングユニット704を含むことができる。エレクトロスピニング装置702はさらに、ヒーター710に結合される温度制御装置712およびシリンジ708の先端において電圧を生じさせるように、シリンジ708に結合される電源714を含むことができる。接地された金属プレートまたは金属ローラ等の収集装置716も提供され、収集装置上に、本明細書に開示され記載される繊維の形態で、析出溶液が析出される。
【0038】
図11は、エレクトロスピニング析出システム800の別の例示的な実施形態である。適用可能な場合、図10と図11の間で、同様の成分を特定するために同様の数字が使用されるが、数字は、100ずつ増加する(例えば700は図11において800である)。一例として、エレクトロスピニング析出システム800はさらに、図10のシステム700に関連して記載されるように、スピニングユニット804、電源814、および収集装置816と共に含むことができる、エレクトロスピニング装置802を含むことができる。上記で図10に関連して記載されるが図11の現在の図に示されない特徴等の、他の特徴を、エレクトロスピニング析出システム800に組み込むことができる。
【0039】
特に本例に関して、エレクトロスピニング析出システム800はさらに、基質輸送アセンブリ818を含むことができ、それは、本明細書の概念に従う、規模拡大および生産能力のために有用であり得る。基質輸送アセンブリ818は、供給ローラ822および巻き取りローラ824等のローラ820を含むことができ、その両方は、エレクトロスピニング装置802を通して基質826を輸送するために、共に動作する。さらに、図示されてはいないが、自動化デバイス(例えばロボット)および関連する制御構造を組み込むこと等による、自動的に本明細書に記載されるタイプの繊維性製品を生成するために有用または必要であり得るモータ、ギア、ベルト、および制御デバイス等の種々の補助的デバイスが考慮される。
【0040】
本明細書に記載される繊維および繊維性製品は、種々の有利な性質を示し、そのうちのいくつかは以下を含む。
【0041】
任意に、本明細書に記載される繊維および繊維性製品は生物分解性である(例えば堆肥化できる)。例えば、本明細書に記載される繊維および繊維性製品は、変性されたタンパク質/ペプチドおよび水溶性非タンパク質/ペプチドポリマーで構成される。かかる物質が堆肥化条件におかれると、かかる物質は分解する。しかしながら、堆肥化の条件におかれない場合には、かかる物質は分解しないか、ごく少量しか分解しないので、かかる物質の有用性は低下しない。
【0042】
任意に、本明細書に記載される繊維および繊維性製品は病原性物質に対して粘着性である(つまり付着する)。かかる病原性物質は、ウィルス、プリオン、バクテリア、真菌、かかる病原体の構成物質等を含むが、これらに限定されない。つまり、繊維性製品を形成するために、本明細書に記載される繊維が繊維ネットワークに編みこまれる場合に、かかる繊維性製品の一利用例は、フィルタ物質の形態である。かかるフィルタ物質は、気体を通過させる。しかしながら、先行技術の繊維性物質とは異なり、本明細書に記載される繊維は粘着性であり、この結果、繊維性製品は、繊維ネットワークの孔の大きさに基づいて物質の通過を制限するだけでなく、繊維ネットワークの孔の大きさよりも小さい物質の通過も制限する。繊維性製品は、例えば繊維ネットワークの繊維の粘着性のために、後者の利点を実現する。このため、例えば繊維ネットワークの孔の大きさよりも小さい粒子(例えば病原体)は、繊維ネットワークを通過することを阻害される。かかる粘着性は、例え
ば、繊維のタンパク質/ペプチド部分の組成より生じる。かかる粘着性は、例えば付着性質を提供する繊維のタンパク質/ペプチド部分の成分を改変することにより、任意に調整される。いくつかの実施形態において、上記の部分は、タンパク質/ペプチドの帯電したアミノ酸および/またはタンパク質/ペプチド(例えばグリカン、例えばシアル酸基を含む)の翻訳後の修飾物である。ある選択的実施形態では、繊維の「粘着性」部分は、繊維と共有結合するが、他の実施形態において、繊維の「粘着性」部分は、繊維に共有結合されない。
【0043】
任意に、本明細書に記載される繊維および繊維性製品は、大きな表面積を有する。いくつかの実施形態において、大きな表面積は、直径、および/または繊維範囲密度、および/または繊維の織りの関数である。いくつかの実施形態において、ろ過効率は、繊維密度範囲が増加するにつれて、増加する。
【0044】
任意に、本明細書に記載される繊維および繊維性製品は、繊維および繊維性製品を含有する非タンパク質/ペプチドと比較して、改善された引っ張り強度を有する。いくつかの実施形態において、繊維および繊維性製品の引っ張り特性は、変性溶液のpHの関数であり、例えばより極端なpH値(酸性または塩基性)であればあるほど、タンパク質/ペプチドは損傷し、これがより低い引っ張り性質をもたらす。
【0045】
任意に、本明細書に記載される繊維および繊維性製品は、窒素の存在により識別される。概して、繊維および繊維性製品が変性されたタンパク質/ペプチドを含有するため、繊維および繊維性製品は、炭素、水素および酸素に加えて、窒素の存在によって特徴付けられる。この特性は、選択的に、繊維性製品の起源/原点を特定し、非タンパク質/ペプチドベースの繊維と、本明細書に記載される繊維性製品を区別するために使用される。
【0046】
任意に、本明細書に記載される繊維性製品は、繊維性製品を含有する非タンパク質/ペプチドと比較して、柔軟性があるおよび/または巻き込み可能である。この結果、かかる繊維性製品は、任意に、巻き込みおよび/または他のパックされた繊維性製品の形態で貯蔵される。必要に応じて、かかる巻き込み/パックされた繊維性製品は、必要に応じて、繊維性製品を広げる/パックから出すことにより使用される。
【0047】
任意に、本明細書に記載される繊維性製品は、検出可能な量の非水性または非エタノール性溶媒を含有しない。本明細書に記載される繊維性製品は、製造のために非水性または非エタノール性溶媒を必要としない。このため、および先行技術の物質とははっきりと異なり、生成される繊維性製品は、検出可能な量の(ベンゼン、トルエン、メタノール、塩化メチレン、ギ酸、フォルムアルデヒド、クロロフォルムおよびクロロベンゼンを含む)非水性または非エタノール性の溶媒を含有しない。
【0048】
上記の概念のさらなる明確化、指示および記載のために、次に、本発明の実施形態を、以下の実施例に関連して例示および説明する。
【0049】
<実施例1>
タンパク質ベースの溶液および担体ポリマー溶液で析出溶液を形成できる。担体ポリマー溶液は、PV粉末の濃度が約15%未満になるように水に溶解される、PV粉末(例えばSt.Louis,MOのSigma Aldrichによって製造される分子重量78,000のPV粉末)を含有できる。水は、約50℃〜約90℃の水温を有することができる。調製時、PV粉末は、約0.25時間〜3時間の間、水に溶解できる。
【0050】
タンパク質ベースの溶液は、SPI粉末の濃度が8.5%未満になるように水に溶解される、SPI粉末(例えばDecatur,ILのArcher Daniels Mi
dland Co.によって製造されるPRO FAM (登録商標))を含有できる。水は、約70℃〜約95℃の水温を有することができる。調製中、SPI粉末は、約10分〜約60分の間、水に攪拌できる。
【0051】
このように調製された成分溶液は、析出溶液を形成するように組み合わせることができ、ここで、析出溶液の合計物質濃度(例えばSPIおよびPVAの物質濃度)を約5重量%〜約20重量%にすることができる。第1の添加物の量を、析出溶液のpHを中性(例えばpH7)より高くするために、析出溶液に添加することができる。界面活性剤(例えばSt.Louis,MOのSigma Aldrich製のTriton X−100)等の第2の添加物の量を、析出溶液に添加できる。この量は、析出溶液の基準体積の約0.02重量%〜約0.1重量%にすることができる。生成された析出溶液は、その後、約25℃〜約90℃の温度に加熱することができる、および/または約10分〜約30分の間、混合することができる。
【0052】
<実施例2>
析出溶液を形成するために実施例1のPV粉末およびSPI粉末を使用する。この実施例において、担体ポリマー溶液は、PV粉末を含有し、これは約4時間水に溶解され、このとき水温は、約95℃である。タンパク質ベースの溶液は、SPI粉末を含有し、室温程度(例えば約20℃〜約25℃)の水に分散され、約5分〜約10分の間攪拌される。
【0053】
タンパク質ベースの溶液および担体ポリマー溶液が、析出溶液を形成するように混合する。析出溶液のpHが約8〜約12に変動するように、十分な量の水酸化ナトリウムを、析出溶液に添加する。Triton X−100を、界面活性剤濃度が析出溶液の体積に基づいて、約0.5%になるように添加する。その後、析出溶液を、約80℃に加熱し、約10分間、混合する。
【0054】
図10および11に示されるエレクトロスピニングアセンブリ等の電着アセンブリを使用して、析出溶液を基質上に析出できる。この実施例2において、18ゲージ針(内径約0.84mm)を有する5ccのプラスチックシリンジに、析出溶液を充填した。針に正電荷を印加するために、高圧電源を使用した。収集装置を接地した。溶液を注入し、収集装置に向かって押し出すために、マイクロポンプを使用した。15kVの電圧を、針の先端で維持した。収集装置および針の先端の間の距離は約15cmであった。溶液の流量は約0.9ml/時間に設定した。
【0055】
<実施例3>
繊維性製品試料のろ過効率試験を、複数流路粒子試験培地デバイスを使用して計測した。一例において、約0.1μm〜約2μmの直径を有する粒子を、塩化カリウム(KCL)溶液を使用して生成した。粒子は、空気と混合され、0.24m/sの速度で試料に導入される。粒子の計数は、レーザ粒子カウンタを使用して、試料の上流および下流の位置の両方で行う。試料における上流の濃度を、約3分間計測した。以下の式1および2に従い、ろ過効率を計算した。
【数1】

ここで、式(1)においてP(i)は、
【数2】

さらに、P(i)はiμmの大きさの粒子の通過率であり、a(i)はiμmの大きさの粒子のフィルタ後の粒子濃度であり、b(i)はiμmの大きさの粒子のフィルタ前の粒子濃度である。
【0056】
いくつかの繊維性製品試料を、基質(例えばセルロース繊維で構成される裸のフィルタ)の表面上の繊維に実施例2の析出溶液をエレクトロスピニングすることにより、調製した。裸のフィルタの正方形の片(寸法7.5cm×7.5cm)を、基質として使用した。繊維の重量範囲が約1.2g/m2および約2.4g/m2である試料を得られるように、裸のフィルタに繊維を析出させた。
【0057】
以下の表1〜2は、繊維性製品試料のそれぞれのろ過効率を要約する。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
<実施例4>
おがくずおよび鶏糞を1:1(重量/重量)の比率で、またC/N比率を50/50で混合することにより、堆肥化媒体を調製した。調製した繊維性製品試料を入れた小型のプラスチック容器を、別の大型のプラスチック容器内に配置した。小型のプラスチック容器は、空気循環のために、その壁に円形の孔が開いている。堆肥化ユニット内の条件は、約25±5℃の温度および75±5%の高湿度で維持された。
【0061】
実施例2の析出溶液を、基質(例えばセルロース繊維で構成されるベアフィルタ)の表面上の繊維へエレクトロスピニングすることによって、いくつかの繊維性製品試料を調製
した。それぞれの繊維性製品試料を、約24時間、真空オーブンにおいて、試料を乾燥した後で計測した。試料を、不織性、高多孔性の非分解可能なポリプロピレン袋に配置した。試料を入れた袋を堆肥媒体に挿入し、試料内を、最長で約26日間、堆肥化した。堆肥化中、各試料の重量を、時間の関数として計測した。
【0062】
実施例4の目的のために、全ての試料を、約20℃〜約25℃で、約24時間、真空状態で乾燥させた。4つの試料が、各条件で堆肥化された。平均値を計算した。
【0063】
以下の表3は、繊維性製品試料の重量損失を要約する。
【0064】
【表3】

【0065】
<実施例5>
繊維性製品試料の機械的試験を、精密な強度および伸びを試験するために使用できる、器具DMQ Q800を用いて実行した。試料を、爪(jaws)にクランプ固定し、繊維性製品試料内の初期の圧着および他の偏差を除去するために、0.01Nまであらかじめ荷重を加えた。試料が破断するまで、0.6N/分で上昇する力をそれぞれの試料に印加した。
【0066】
基質(例えばセルロース繊維で構成された裸のフィルタ)の表面の繊維内に実施例2の析出溶液をエレクトロスピニングすることにより、いくつかの繊維性製品試料を調製した。この実施例の目的のために、繊維性製品試料は、約10cmの直径を有する長い丸いバー上に配置されたアルミニウムフォイル上にエレクトロスピニングされた。バーは、約120RPMで回転された。アルミニウムフォイルに、本例の繊維性製品試料の繊維が生じる、約4mmの開口が提供された。エレクトロスピニングは、約1時間実施した。
【0067】
以下の表4および図12は、それぞれ、繊維性製品試料の、破断時における平均力/伸び、および、それぞれの伸びに対する強度である。
【0068】
【表4】

【0069】
<実施例6>
繊維直径(つまり厚さ)等の繊維性製品試料の特性を、ImageJ1.41等の画像解析ソフトウェアと組み合わせて、Lieca440等の走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して、観察した。画像品質を向上させ、ノイズを除去するためにメジアンフィルタを使用した。画像を向上させるために、輝度/コントラストアルゴリズムを適用した。その後、画像はバイナリ画像に変換され、そこでは、例えば、画像は白黒の色のみを有した。繊維範囲密度を、画素単位の、全体領域における全ての繊維面積の合計として計算した。
【0070】
以下の表5は、繊維直径を要約する。
【0071】
【表5】

【0072】
<実施例7>
上記の実施例1〜6に関連して記載されるもの等の繊維性製品試料の他の特性は、さらに、エレクトロスピニングされた繊維および裸のフィルタ材料の間の付着も含む。付着は、実施例2の析出溶液を基質(例えばセルロース繊維で構成される裸のフィルタ)の表面上の繊維に繊維としてエレクトロスピニングすることによって等で形成された繊維マットを分離することにより、定量的に決定できる。一例において、純粋なPVAおよび低いSPI比率の両方の溶液から生成された繊維マットは、ピンセットによって容易にはがすことができる。別の例において、付着力は、SPI比率が上昇すると向上した。
【0073】
本明細書において列挙される数値および他の値は、本開示の記載によって明示的に述べられるものであれ、本質的に派生するものであれ、「約」という用語によって修正されることが企図される。本明細書に記載される、「約」という用語は、制限されないが、そのように修正された数値までの、およびその数値を含む、許容差および値を含むように、修正された値の数値の範囲を定義する。つまり、数値は、明示的に述べられる実際の値、ならびに、開示に示される、および/または記載される実際の値の小数値、分数値、または他の倍数値である、またはそうすることができる他の値を含んでもよい。
【0074】
本開示は、特定の例示的な実施形態を参照して、具体的に、例示および記載されているが、詳細における種々の変更が、記述された記載および図面によって支持できる請求項によって定義される、開示の精神および範囲から逸脱せずに、本明細書において達成され得ることが、当業者により、理解される。さらに、例示的な実施形態が特定の数の要素を参照して記載される場合、特定の数のよりも少ない、または多い要素を利用して、例示的な実施形態を実施できることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物分解性基質と、前記生物分解性基質上に配置された繊維ネットワークとを含む繊維性製品であって、
前記繊維ネットワークは、析出溶液を形成するように、タンパク質ベースの成分と、前記タンパク質ベースの成分と混合された水溶性ポリマー成分とを含有する繊維を含み、
前記析出溶液は、前記タンパク質ベースの成分から生じる変性されたタンパク質を含有する、繊維性製品。
【請求項2】
前記タンパク質ベースの成分は、大豆ベースの物質を含有する、請求項1に記載の繊維性製品。
【請求項3】
前記水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコールを含有する、請求項1に記載の繊維性製品。
【請求項4】
前記タンパク質ベースの成分は、大豆タンパク質分離物、大豆タンパク質濃縮物、および大豆粉で構成される群のうちの1つ以上を含有する、請求項1に記載の繊維性製品。
【請求項5】
前記繊維は、複数のナノ粒子を含有する、請求項1に記載の繊維性製品。
【請求項6】
前記繊維は、酸化チタン微粒子を含有する、請求項1に記載の繊維性製品。
【請求項7】
生物分解性ろ過用製品であって、
生物分解性基質を有する第1の層と、前記生物分解性基質上に配置された第2の層とを含み、
前記第2の層は、空気を前記第2の層に通過させるための複数の開口を形成する相互に連結した繊維ネットワークを含み、
前記相互に連結した各繊維は、タンパク質ベースの成分および水溶性ポリマー成分を含有し、
前記タンパク質ベースの成分は、変性されたタンパク質を含有する、生物分解性ろ過用製品。
【請求項8】
基質上へ繊維をエレクトロスピニングするための析出溶液であって、
前記析出溶液は、
タンパク質ベースの成分を含有する第1の溶液と、前記第1の溶液に混合された第2の溶液を含み、
前記第2の溶液は、水溶性ポリマーを含有する担体成分を含有し、
前記タンパク質ベースの成分は、変性されたタンパク質を含有する、析出溶液。
【請求項9】
酸化チタンナノ微粒子をさらに含有する、請求項8に記載の析出溶液。
【請求項10】
界面活性剤をさらに含有する、請求項8に記載の析出溶液。
【請求項11】
pHは約8〜約12である、請求項8に記載の析出溶液。
【請求項12】
前記タンパク質ベースの成分の前記重量パーセンテージは50%を超えない、請求項8に記載の析出溶液。
【請求項13】
前記析出溶液の粘度は約0.1Pa・s〜約10Pa・sである、請求項8に記載の析出溶液。
【請求項14】
前記タンパク質ベースの成分は、大豆タンパク質分離物、大豆タンパク質濃縮物、および大豆粉のうちの1つ以上を含有する、請求項8に記載の析出溶液。
【請求項15】
前記水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコールを含有する、請求項14に記載の析出溶液。
【請求項16】
繊維性製品を形成するための方法であって、
水中に大豆タンパク質を含有する第1の溶液を調製することと、
水中に水溶性ポリマーを含有する第2の溶液を、前記第1の溶液へ導入することと、
前記大豆タンパク質を変性させることと、
前記生成された析出溶液を基質上にエレクトロスピニングすること、とを含む方法。
【請求項17】
前記第1の溶液および前記第2の溶液のうちの1つ以上のpHを、約8〜約12の値に調整することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
1つ以上の補助成分を、前記第1の溶液および前記第2の溶液のうちの1つ以上と混合することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記生成された析出溶液内の前記大豆タンパク質成分および前記水溶性ポリマーの合計物質濃度は、前記生成された析出溶液の基準体積の少なくとも約10%の重量を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の溶液内の前記大豆タンパク質の前記重量パーセンテージは、8.5%を超えない、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
変性されたタンパク質ベースの成分および水溶性ポリマー成分を含有する、ナノ繊維。
【請求項22】
タンパク質ベースの成分の水溶性ポリマー成分に対する比率は、約0.01:1〜約1:1である、請求項21に記載のナノ繊維。
【請求項23】
前記ナノファイバーの平均直径は、約200nm未満である、請求項21に記載のナノ繊維。
【請求項24】
前記ナノファイバーの前記平均直径は約300nm〜約1ミクロンである、請求項21に記載のナノ繊維。
【請求項25】
前記タンパク質ベースの成分はプロテオグリカンである、請求項21に記載のナノ繊維。

【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図1】
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【図3】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−527545(P2012−527545A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511953(P2012−511953)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/035220
【国際公開番号】WO2010/135300
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(508057896)コーネル・ユニバーシティー (12)
【氏名又は名称原語表記】CORNELL UNIVERSITY
【Fターム(参考)】