説明

生物医学的用途のための非粘着性伝導性コーティング

【課題】プラズマシステムを提供すること。
【解決手段】少なくとも1つの電極を備えるプラズマデバイス;電離可能媒体源であって、該プラズマデバイスに結合され、そして該プラズマデバイスに電離可能媒体を供給するように構成されている、電離可能媒体源;少なくとも1つのモノマー前駆体を該プラズマデバイスに供給するように構成された電離可能媒体源;および電源であって、該少なくとも1つの電極に結合され、そして該プラズマデバイスにおいて該電離可能媒体に点火して、プラズマ流を大気条件で形成するように構成されており、ここで該プラズマ流は、該少なくとも1つのモノマー前駆体を重合させて疎水性導電性ポリマーを形成する、電源、を備える、プラズマシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景)
(技術分野)
本開示は、非粘着性導電性コーティングを有する医療デバイス(例えば、電気外科電極)、ならびにこのコーティングをこれらのデバイスに施すための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の背景)
現在、種々の医療デバイス(例えば、気管チューブ、ステント、移植物、小刀、器具、およびファスナーなど)は、コーティングを備える。これらのコーティングは、これらのデバイスを使用して提供される医療の質を向上させる。コーティングの例としては、凝固防止コーティング、抗菌コーティング、粘着防止コーティング、自己洗浄コーティング、および腐食防止コーティングなどが挙げられる。種々のコーティングがまた、エネルギーベースの組織処置において使用される電気外科電極に施されている。
【0003】
エネルギーベースの組織処置は、当該分野において周知である。種々の型のエネルギー(例えば、電気、超音波、マイクロ波、低温、熱、レーザーなど)が、所望の結果を達成するために、組織に加えられる。電気外科は、高い無線周波数の電流、マイクロ波エネルギーまたは抵抗加熱を、外科手術部位に加えて、組織を切断するか、切除するか、凝固させるか、または封止することを包含する。
【0004】
双極電気外科において、手に持たれる器具の電極のうちの1つが活性電極として機能し、そして他の電極が戻り電極として機能する。この戻り電極は、この活性電極のすぐ近くに配置され、その結果、これらの2つの電極間に電気回路が形成される(例えば、電気外科鉗子)。この様式で、印加される電流は、これらの電極間に配置された身体組織に制限される。
【0005】
双極電気外科の技術および器具は、血管または組織(例えば、軟組織構造(例えば、肺、脳および腸))を凝固させるために使用され得る。外科医は、これらの電極間でこの組織に印加される電気外科エネルギーの強度、周波数および持続時間を制御することによって、焼灼、凝固、乾燥および/または出血を単に減少させるかもしくは遅くすることのいずれかを行い得る。外科手術部において組織の望ましくない炭化を引き起こすことなく、または隣接組織への副次的損傷(例えば、熱の広がり)を引き起こすことなく、上記所望の外科手術効果のうちの1つを達成する目的で、電気外科発電機からの出力(例えば、電力、波形、電圧、電流、パルスレートなど)を制御することが必要である。
【0006】
単極電気外科において、活性電極は代表的に、外科医により持たれる外科手術器具の一部分であり、この電極は、処置されるべき組織に付けられる。患者の戻り電極は、この活性電極から離れた位置に配置されて、電流を発電機に戻し、そしてこの活性電極により印加される電流を安全に分散させる。これらの戻り電極は通常、大きい患者接触表面積を有して、この部位での加熱を最小にする。加熱は、高い電流密度により引き起こされ、この電流密度は、この表面積に直接依存する。より大きい表面接触面積は、より低い局所加熱強度をもたらす。戻り電極は代表的に、特定の外科手術手順中に利用される最大電流およびデューティーサイクル(すなわち、その発電機の電源が入っている時間の百分率)の仮定に基づいたサイズにされる。
【0007】
電気外科に関与する高温は、炭化した物質を形成させ、そして電極の先端に固着させ得る。炭化した物質の蓄積は、RFエネルギーが標的領域に透過することを妨害する絶縁層を作製することによって、切断および/または焼灼のプロセスの効率を低下させ得る。例として、ある領域を焼灼して出血を防止する場合、炭化した物質は、焼灼を妨げ得、さらなる組織の破壊を引き起こし得、そして熱による組織損傷を増大させ得る。従って、炭化した物質の蓄積は、外科手術手順を遅くし得る。なぜなら、外科医が、この炭化した物質をこの電極先端から除去することを要求されるからである。
【0008】
フルオロポリマーをコーティング層として電気外科電極先端の少なくとも一部分に施すことは、この先端にさらなる特性を与える(非粘着性表面および高温安定性を与えることが挙げられる)際に価値あることであることが示されている。しかし、電極先端のコーティング層としてのフルオロポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」))の接着防止特性は、この電極先端への細片の蓄積を減少させることによって、電気外科による切断および/または焼灼を容易にしているが、このような蓄積を完全には排除していない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
少なくとも1つの電極を備えるプラズマデバイス;
電離可能媒体源であって、該プラズマデバイスに結合され、そして該プラズマデバイスに電離可能媒体を供給するように構成されている、電離可能媒体源;
少なくとも1つのモノマー前駆体を該プラズマデバイスに供給するように構成された電離可能媒体源;および
電源であって、該少なくとも1つの電極に結合され、そして該プラズマデバイスにおいて該電離可能媒体に点火して、プラズマ流を大気条件で形成するように構成されており、ここで該プラズマ流は、該少なくとも1つのモノマー前駆体を重合させて疎水性導電性ポリマーを形成する、電源、
を備える、プラズマシステム。
(項目2)
前記少なくとも1つの電極が、アルミニウム合金およびチタン合金からなる群より選択される金属合金から形成されている、上記項目に記載のプラズマシステム。
(項目3)
前記少なくとも1つのモノマー前駆体が、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタン、エタン、ブタン、スチレン、アセチレン、四フッ化炭素、オクタフルオロシクロブタン、ヘキサフルオロアセトン、テトラフルオロエタン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロブタン、シラン、ヘキサメチルジシロキサン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載のプラズマシステム。
(項目4)
前記前駆体源が、前記少なくとも1つのモノマー前駆体のエアロゾルスプレーを形成するように構成された噴霧器を備える、上記項目のうちのいずれかに記載のプラズマシステム。
(項目5)
前記プラズマデバイスが:
第一のハウジングであって、誘電性材料から形成され、そして該第一のハウジング内に第一の管腔を規定しており、内側電極が、管腔内で同軸状に配置されており、該内側電極は、実質的に円筒形の形状を有し、そして該内側電極内に第二の管腔を規定している、第一のハウジング;および
実質的に円筒形の形状を有する外側電極であって、該外側電極は、該第一のハウジングを覆って配置されている、外側電極、
を備える、上記項目のうちのいずれかに記載のプラズマシステム。
(項目6)
前記第一の管腔は、前記電離可能媒体源と気体連絡しており、そして前記第二の管腔は、前記前駆体源と気体連絡している、上記項目のうちのいずれかに記載のプラズマシステム。
(項目7)
電離可能媒体をプラズマデバイスに供給する工程;
該プラズマデバイスにおいて該電離可能媒体に点火して、プラズマ流を大気条件で形成する工程;
少なくとも1つのモノマー前駆体を該プラズマ流と接触させる工程であって、ここで該少なくとも1つのモノマー前駆体は、少なくとも1つの触媒物質を含む、工程;
該少なくとも1つのモノマー前駆体を重合させて疎水性導電性ポリマーを形成する工程;および
該疎水性導電性ポリマーを加工片の表面に堆積させて、該表面上にコーティングを形成する工程、
を包含する、プラズマを発生させる方法。
(項目8)
前記電離可能媒体が、約800sccm〜約900sccmの流量で供給される、上記項目に記載の方法。
(項目9)
前記少なくとも1つのモノマー前駆体が、前記電離可能媒体の約0.25体積%〜約2体積%の濃度で供給される、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目10)
前記点火する工程が、前記電離可能媒体に、約10ワット〜約50ワットの無線周波数電力を供給する工程をさらに包含する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目11)
前記少なくとも1つのモノマー前駆体が、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタン、エタン、ブタン、スチレン、アセチレン、四フッ化炭素、オクタフルオロシクロブタン、ヘキサフルオロアセトン、テトラフルオロエタン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロブタン、シラン、ヘキサメチルジシロキサン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目12)
前記コーティングが、約80°〜約120°の接触角により表わされる疎水性を有する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目13)
作業表面であって、該作業表面上に堆積された疎水性導電性コーティングを有し、ここで該コーティングは、約80°〜約120°の接触角により表わされる疎水性を有する、作業表面、
を備える、電気外科電極。
(項目14)
前記コーティングが、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタン、エタン、ブタン、スチレン、アセチレン、四フッ化炭素、オクタフルオロシクロブタン、ヘキサフルオロアセトン、テトラフルオロエタン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロブタン、シラン、ヘキサメチルジシロキサン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つのモノマーから重合された少なくとも1つのポリマーを含む、上記項目に記載の電気外科電極。
(項目15)
前記少なくとも1つのポリマーが、前記少なくとも1つのモノマーをプラズマ流と接触させることにより形成されている、上記項目のうちのいずれかに記載の電気外科電極。
(項目16)
前記プラズマ流が、約800sccm〜約900sccmの流量で供給される電離可能媒体を含む、上記項目のうちのいずれかに記載の電気外科電極。
(項目17)
前記少なくとも1つのモノマーの前駆体が、前記電離可能媒体の約0.25体積%〜約2体積%の濃度で供給される、上記項目のうちのいずれかに記載の電気外科電極。
【0010】
(摘要)
本開示は、プラズマシステムを提供し、このプラズマシステムは、少なくとも1つの電極を有するプラズマデバイス;このプラズマデバイスに結合された電離可能媒体源であって、このプラズマデバイスに電離可能媒体を供給するように構成された、電離可能媒体源;少なくとも1つのモノマー前駆体をこのプラズマデバイスに供給するように構成された前駆体源;およびこの少なくとも1つの電極に結合された電源であって、このプラズマデバイスにおいてこの電離可能媒体に点火して、プラズマ流を大気条件で形成するように構成された、電源を備え、ここでこのプラズマ流は、この少なくとも1つのモノマー前駆体を重合させて疎水性導電性ポリマーを形成する。
【0011】
(要旨)
本開示は、非粘着性導電性コーティングを有する医療デバイス(例えば、電気外科電極)、ならびにこのコーティングを形成するためのシステムおよび方法を提供する。ある実施形態において、このコーティングは、大気条件(例えば、大気ガスおよび大気圧)下でプラズマ増強化学蒸着(AP-PECVD)を使用して医療デバイスに施される、疎水性コーティングであり得る。
【0012】
本開示はまた、外気中で使用して疎水性ポリマーフィルムを生成する、AP-PECVDのためのシステムおよび方法を提供する。プラズマは、産業的、科学的、および医学的要求に対する代替の解決策(特に、低温での加工片表面処理)を提供するための、広い適用性を有する。プラズマは、加工片に送達され得、これによって、プラズマが衝突する材料の特性に、多様な変化を引き起こす。プラズマは、高い空間制御、材料選択性、および時間制御で、材料特性を改変させるために適切な、放射線(例えば、紫外線)、イオン、プロトン、電子、および他の励起状態(例えば、準安定)種の大きい流れを作製する、独特の能力を有する。
【0013】
本開示は、プラズマシステムを提供し、このプラズマシステムは、少なくとも1つの電極を有するプラズマデバイス;このプラズマデバイスに結合された電離可能媒体源であって、このプラズマデバイスに電離可能媒体を供給するように構成された、電離可能媒体源;少なくとも1つのモノマー前駆体をこのプラズマデバイスに供給するように構成された前駆体源;およびこの少なくとも1つの電極に結合された電源であって、このプラズマデバイスにおいてこの電離可能媒体に点火して、プラズマ流を大気条件で形成するように構成された、電源を備え、ここでこのプラズマ流は、この少なくとも1つのモノマー前駆体を重合させて、疎水性導電性ポリマーを形成する。
【0014】
本開示はまた、プラズマを発生させる方法を提供する。この方法は、電離可能媒体をプラズマデバイスに供給する工程;このプラズマデバイスにおいてこの電離可能媒体に点火して、プラズマ流を大気条件で形成する工程;少なくとも1つのモノマー前駆体をこのプラズマ流と接触させる工程であって、ここでこの少なくとも1つのモノマー前駆体は、少なくとも1つの触媒物質を含む、工程;この少なくとも1つのモノマー前駆体を重合させて疎水性導電性ポリマーを形成する工程;およびこの疎水性導電性ポリマーを加工片の表面に堆積させて、この表面上にコーティングを形成する工程を包含する。
【0015】
添付の図面は、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成し、本開示の例示的な実施形態を図示し、そして上に与えられた本開示の一般的な説明および以下に与えられる実施形態の詳細な説明と一緒になって、本開示の原理を説明する役に立つ。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1Aおよび図1Bは、本開示の実施形態による電気外科器具の斜視図である。
【図2】図2は、本開示の1つの実施形態によるプラズマシステムの概略図である。
【図3】図3は、本開示の1つの実施形態によるプラズマデバイスの斜視断面図である。
【図4】図4Aおよび図4Bは、プラズマ増強化学蒸着されたヘキサメチルジシロキサンコーティングの、入力RF電力およびヘキサメチルジシロキサンの濃度の関数としての、接触角のプロットである。
【図5】図5Aおよび図5Bは、プラズマ増強化学蒸着されたヘキサメチルジシロキサンコーティングのフーリエ変換赤外(FTIR)分光写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(詳細な説明)
本開示は、非粘着性導電性コーティングを有する医療デバイス(電気外科電極が挙げられるが、これらに限定されない)を提供する。当業者は、本開示によるコーティングが、他の医療デバイス(例えば、気管チューブ、創傷カバー、把持具、鉗子、および内視鏡道具など)に施され得ることを理解する。
【0018】
図1Aは、ペンシル形状のハウジング3を有する単極電気外科器具2を示す。電気外科器具2は、刃様の形状を有する電極4を備える。ある実施形態において、電極4は、種々の適切な形状(ループ、フック、パドル、ボール、またはローラが挙げられるが、これらに限定されない)を有し得る。電極4は、ハウジング3に取り外し可能に結合され得る。器具2は、電気外科発電機(図示せず)に接続されるように構成され、この電気外科発電機は、組織を処置(例えば、凝固、切断など)するための電気外科エネルギーを供給する。電気外科ペンシルのより詳細な説明は、共有に係る米国特許第7,156,842号(その全開示は、本明細書中に参考として援用される)に見出される。
【0019】
図1Bは、患者の組織を処置するための1つ以上の電極を有する双極電気外科鉗子6を示す。ある実施形態において、電気外科鉗子6は、対向する顎部材5および7を備え、これらの顎部材はそれぞれ、その内部に配置された1つ以上の活性電極8および1つの戻り電極9を有する。活性電極8および戻り電極9は、電気外科発電機に結合され、この電気外科発電機は、これらの顎部材間に把持された組織を処置(例えば、封止、凝固、切断など)するために、電気外科エネルギーを鉗子6に供給する。
【0020】
電極4、8、9は、その表面に配置されたコーティングを備える。ある実施形態において、このコーティングは、疎水性導電性コーティングであり得る。このコーティングは、モノマー前駆体から形成された1つ以上の疎水性導電性ポリマーを含み得る。このコーティングは、図2に示されるようなシステム10によって、これらの電極上に堆積され得る。システム10は、大気条件下でプラズマを発生させるように構成される。用語「大気条件」とは、本明細書中で使用される場合、約-10℃〜約40℃、ある実施形態においては約0℃〜約25℃の温度、および約75kPa〜約150kPa、ある実施形態においては約95kPa〜約125kPaの圧力の、空気で満たされた環境(例えば、酸素、窒素、二酸化炭素、水、および他の気体を含む、空気の気体混合物)を表わす。
【0021】
システム10は、電源14、電離可能媒体源16、および前駆体源または前期電離源18に結合される、プラズマデバイス12を備える。電源14は、電力または整合インピーダンスをプラズマデバイス12に送達するための任意の適切な構成要素を備える。より具体的には、電源14は、電力を生成して電離可能媒体に点火し、プラズマ流32を発生させて維持することが可能な、任意の無線周波数発電機または他の適切な電源であり得る。
【0022】
プラズマは、直流(DC)電気または交流(AC)電気のいずれかとして、連続モードまたはパルス化モードのいずれかで、約0.1ヘルツ(Hz)〜約100ギガヘルツ(GHz)の周波数(無線周波数帯域(「RF」、約0.1MHz〜約100MHz)およびマイクロ波帯域(「MW」、約0.1GHz〜約100GHz)を含む)で、適切な発電機、電極、およびアンテナを使用して送達される電気エネルギーを使用して、発生させられる。AC電気エネルギーは、約0.1MHz〜約2,450MHz、ある実施形態においては約1MHz〜約160MHzの周波数で供給され得る。プラズマはまた、連続的もしくはパルス化された直流(DC)電気エネルギー、または連続的もしくはパルス化されたRF電気エネルギー、あるいはこれらの組み合わせを使用することによって、点火され得る。
【0023】
励起周波数、加工片、および電気エネルギーを回路に送達するために使用される電気回路の選択は、プラズマの多くの特性および要件に影響を与える。プラズマの化学的発生の性能、気体または液体のフィードストック送達システム、および電気励起回路の設計は、相互に関連している。なぜなら、作動電圧、周波数および電流レベル、ならびに位相の選択は、電子温度および電子密度に影響を与えるからである。さらに、電気励起およびプラズマデバイスハードウェアの選択もまた、所定のプラズマシステムが、ホストプラズマガス媒体または液体媒体への新たな成分の導入に、動的にどのように応答するかを決定する。電気駆動の対応する動的調節(例えば、動的整合ネットワーク、または電圧、電流もしくは励起周波数の調節による)は、電気回路からプラズマへの制御された電力移動を維持するために使用され得る。
【0024】
前駆体源18は、前駆体フィードストックをデバイス12への導入前にエアロゾル化するように構成された、気泡発生器または噴霧器17を備え得る。噴霧器17は、Analytica of Branfordにより構築されたものであり得るか、あるいはBurgener噴霧器(例えば、Ari Mistモデル)であり得、ここで電子スプレーがアトマイザーとして使用され、電気によりエネルギーを与えられない。ある実施形態において、前駆体源18はまた、体積約1フェムトリットル〜約1ナノリットルの前駆体フィードストックの所定の精製された液滴体積を生成させることが可能な、微小液滴システムまたは微小インジェクタシステムを備え得る。前駆体源18はまた、微小流体デバイス、圧電ポンプ、または超音波気化器を備え得る。
【0025】
システム10は、デバイス12を通して加工片15(例えば、コーティングされるべき電極4、8、9)へのプラズマの流れを提供する。プラズマフィードストック(これは、電離可能媒体および前駆体フィードストックを含有する)は、それぞれ電離可能媒体源16および前駆体源18によって、プラズマデバイス12に供給される。操作中、この前駆体フィードストックおよびこの電離可能媒体は、プラズマデバイス12に提供され、このプラズマデバイス12において、これらのプラズマフィードストックが点火されて、プラズマ流32を形成する。これらのフィードストックは、図1に示され、以下により詳細に記載されるように、このプラズマ流の点火点の上流またはその中流で(例えば、点火点で)混合され得る。
【0026】
電離可能媒体源16は、電離可能フィードバック気体混合物を、プラズマデバイス12に提供する。電離可能媒体源16は、プラズマデバイス12に結合され、そして貯蔵タンクおよびポンプ(明示的には示さない)を備え得る。この電離可能媒体は、液体または気体(例えば、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、ラドン、二酸化炭素、窒素、水素、酸素など)、およびこれらの混合物などであり得る。これらおよび他の気体は、最初は液体形態であり得、これは適用中に気化される。
【0027】
前駆体源18は、前駆体フィードストックをプラズマデバイス12に提供する。この前駆体フィードストックは、固体形態、気体形態または液体形態のいずれであってもよく、そして電離可能媒体と任意の状態(例えば、固体、液体(例えば、粒子、ナノ粒子または液滴)、気体、およびこれらの組み合わせ)で混合され得る。前駆体源18は、ヒーターを備え得、その結果、この前駆体フィードストックが液体である場合、この前駆体フィードストックは、電離可能媒体と混合される前に、加熱されて気体状態にされ得る。
【0028】
1つの実施形態において、これらの前駆体は、疎水性導電性コーティングを加工片上に形成することが可能な、任意の化学種であり得る。ある実施形態において、この前駆体は、プラズマによって重合し得る任意のモノマーであり得る。適切なモノマーの例としては、アクリル酸アルキル(例えば、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、およびアクリル酸ラウリルなど);アルカン(例えば、メタン、エタン、およびブタンなど);アルキン(例えば、スチレンおよびアセチレンなど);フルオロカーボン(例えば、四フッ化炭素、オクタフルオロシクロブタン、ヘキサフルオロアセトン、テトラフルオロエタン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロブタン、および3より小さいフッ素対炭素の比を有する他のフルオロカーボン);オルガノシリコーン(例えば、シランおよびヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)など)、ならびにこれらの混合物(例えば、四フッ化炭素とブタンとアセチレン、四フッ化炭素とメタン、オクタフルオロシクロブタンとメタン)、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
これらの前駆体物質は、電離可能媒体と混合させられ、そしてプラズマ流32によって、気化および/または重合させられ、次いで、加工片15上に堆積させられる。具体的には、これらの前駆体は、プラズマ流32の反応性種(例えば、イオン、電子、励起状態(例えば、準安定)種、および分子フラグメント(例えば、ラジカル)など)と反応する。これらの反応性種は、電離可能媒体が電源14からの電気エネルギーにより点火されると形成される。
【0030】
この電離可能媒体の流量は、約500標準立方センチメートル/分(SCCM)〜約1,200SCCM、ある実施形態においては約800SCCM〜約900SCCMであり得る。この電離可能媒体に対するこのモノマー前駆体の濃度は、この電離可能媒体の約0.1体積%〜約5体積%、ある実施形態においてはこの電離可能媒体の約0.25体積%〜約2体積%、さらなる実施形態においてはこの電離可能媒体の約0.5体積%〜約1体積%であり得る。
【0031】
電離可能媒体源16および前駆体源18は、それぞれチュービング13aおよび13bを介して、プラズマデバイス12に結合され得る。チュービング13aおよび13bは、1つのチュービングに結合されて(例えば、Y字型継手を介して)、電離可能媒体と前駆体フィードストックとの混合物を、デバイス12に、その近位端で送達し得る。このことは、プラズマフィードストック(例えば、前駆体フィードストック、ナノ粒子および電離可能ガス)が同時に、プラズマデバイス12に送達され、その後、このプラズマデバイス内でこの混合物が点火されることを可能にする。
【0032】
別の実施形態において、電離可能媒体源16および前駆体源18は、図3に示されるように、別々の接続部でチュービング13aおよび13bを介してプラズマデバイス12に結合され得、その結果、フィードストックの混合は、プラズマデバイス12内の、点火点より上流で起こる。換言すれば、これらのプラズマフィードストックは、プラズマフィードストックの点火前に、点火点(それぞれの源16および18とプラズマデバイス12との間の任意の点であり得る)より近位で混合されて、加工片「W」に対する各特定の表面処理のための、プラズマ流の種の流れの所望の混合物を作製する(例えば、粒子/cm2秒)。
【0033】
さらなる実施形態において、これらのプラズマフィードストックは、中流で(例えば、点火点、またはプラズマ流の下流で)混合され得、プラズマ流32に直接入り得る。より具体的には、チュービング13aおよび13bは、点火点においてデバイス12に結合され得、その結果、前駆体フィードストックおよび電離可能媒体は、これらが混合されると同時に点火される。電離可能媒体は、点火点より近位でデバイス12に供給され得、一方で前駆体フィードストックは、点火点においてこれらの電離可能媒体と混合されることもまた想定される。
【0034】
さらなる例示的な実施形態において、電離可能媒体は、混合されない状態で点火され得、そしてこれらの前駆体は、点火されたプラズマ流32内に直接混合され得る。混合前に、これらのプラズマフィードストックは、個々に点火され得る。このプラズマフィードストックは、所定の圧力で供給されて、デバイス12を通るこの媒体の流れを作製し、これは、プラズマフィードストックを反応させてプラズマ流32を生成することを補助する。本開示によるプラズマ流32は、大気圧またはその近くで、通常の大気条件下で発生させられる。
【0035】
図3を参照すると、デバイス12は、第一のハウジング127内に同軸状に配置された内側電極122を備える。内側電極122は、実質的に円筒形の形状を有し、その内部に管腔125を規定する。内側電極122は、近位開口部133および遠位開口部128を備える。内側電極122は、近位開口部133において、チュービング13bを介して前駆体源18に結合される。第一のハウジング127もまた、実質的に円筒形の形状を有し、これを通る管腔129を規定し、内側電極122がこの管腔内に配置される。具体的には、第一のハウジング127は、遠位開口部130および近位開口部131を備える。
【0036】
デバイス12はまた、外側電極123を備える。外側電極123もまた、実質的に円筒形の形状を有し、そして第一のハウジング127の外側表面を覆って配置される。電極122および123は、プラズマの点火に適した伝導性材料(例えば、金属および金属−セラミック複合体)から形成され得る。1つの実施形態において、電極122および123は、天然の酸化物化合物または窒化物化合物が内部に配置された、伝導性金属から形成され得る。ある実施形態において、第一のハウジング127は、誘電性材料(例えば、セラミックおよびプラスチックなど)から形成されて、内側電極122と外側電極123との間に容量結合を提供し得る。
【0037】
第一のハウジング127の近位部分(すなわち、開口部131)は、第二のハウジング140内に配置される。第二のハウジング140は、近位開口部142および遠位開口部144を備える。内側電極122は、近位開口部142を通して挿入され、そしてその接合部において、第二のハウジング140に結合される。第一のハウジング127は、遠位開口部144を通して挿入され、そしてまた、その接合部において、第二のハウジング140に結合される。第二のハウジング140はまた、チュービング13aを介して電離可能媒体源16に結合される入口146を備える。
【0038】
電極122および123のうちの一方は、活性電極であり得、そして他方は、中性(例えば、中立)または戻り電極であり得、発電機14内に配置された絶縁変圧器(図示せず)を通してのRFエネルギーの結合が、加工片「W」との電気的絶縁を提供することを容易にする。電極122および123の各々は、それぞれリード線134および136を介して電源14に結合される。電源14は、電源14からのエネルギーがデバイス12を通って流れるプラズマフィードストックを点火するために使用され得るように、プラズマ発生を駆動する。プラズマ流32の発生のために電極122および123に印加される電力は、約10ワット(W)〜約50W、ある実施形態においては約20W〜約30Wであり得る。
【0039】
電離可能媒体および前駆体は、それぞれ矢印147および149により示されるように、入口146および開口部133を通って、デバイス12を通って流れる。プラズマ流32は、電離可能媒体が内側電極122と外側電極123(これらの電極は、第一のハウジング127を通して容量結合されている)との間を通過する際に、管腔129内で発生する。モノマー前駆体は、内側電極122の管腔125を通して、プラズマ流32内に直接供給される。プラズマ流32に流入すると、これらのモノマー前駆体は、プラズマにより誘導される重合を起こす。具体的には、高度に反応性のラジカル(ヒドロキシルラジカル、酸素ラジカル、水素ラジカルが挙げられるが、これらに限定されない)が、モノマー前駆体との種々の重合反応を誘導する。得られるポリマーは、図2に示されるように、プラズマ流32によって、加工片15の表面に運ばれる。得られる疎水性導電性コーティングは、液体(例えば、水)が加工片15の表面に接触する接触角により表わされる、疎水性を有し得る。この接触角は、約80°〜約120°、ある実施形態においては約90°〜約115°であり得る。
【0040】
内側電極122は、フィルム(例えば、原子層堆積)または誘電性スリーブもしくは層として堆積された、絶縁材料または半導体製材料から形成されたコーティングを備え得る。ある実施形態において、このコーティングは、内側電極122の外側表面および内側表面に堆積され得る。1つの実施形態において、このコーティングは、内側電極122の表面全体(例えば、それぞれその外側表面および内側表面)を覆い得る。別の実施形態において、このコーティングは、内側電極122の一部分のみを覆い得る。
【0041】
このコーティングは、ナノポアを有する天然の酸化物、または内側電極および外側電極が形成される金属の天然の窒化物であり得るか、あるいは堆積された層またはイオン注入によって形成された層であり得る。ある実施形態において、内側電極122は、アルミニウム合金から形成され、そしてコーティングは、酸化アルミニウム(Al2O3)または窒化アルミニウム(AlN)である。別の例示的な実施形態において、内側電極122は、チタン合金から形成され、そしてコーティングは、酸化チタン(TiO2)または窒化チタン(TiN)である。ある実施形態において、このコーティングはまた、非天然の金属酸化物または金属窒化物(例えば、酸化亜鉛(ZnO2)および酸化マグネシウム(MgO))であり得る。このコーティングはまた、この電極への組織の粘着を減少させるために使用され得る。
【0042】
内側電極122およびコーティングはまた、不均質な系として構成され得、ここで内側電極122は、1つの材料から形成され、そしてこのコーティングは、別の材料から形成される。具体的には、内側電極122は、任意の適切な電極基板材料(例えば、伝導性金属または半導体)から形成され得、そしてこのコーティングは、種々のコーティングプロセスによってこの電極上に堆積され得る。このコーティングは、内側電極122上に、酸化環境への曝露、アノード処理、電気化学処理、イオン注入、または堆積(例えば、スパッタリング、化学蒸着、原子層堆積など)によって形成され得る。
【0043】
ある実施形態において、このコーティングは、第一のハウジング127に加えて、内側電極122と外側電極123との間に容量結合を提供する。得られる容量回路素子構造体は、内側電極122の表面に正味負のバイアス電位を提供し、これは、イオンおよび他の種を、プラズマ流から引き付ける。次いで、これらの種は、このコーティングに衝撃を与え、そしてエネルギーを有する電子を放出する。
【0044】
イオンおよび/または光子の衝撃に応答して、高い二次電子放出特性「γ」を有する材料は、コーティングを形成するために適切である。このような材料としては、絶縁体および/または半導体が挙げられる。これらの材料は、比較的高いγを有し、ここでγは、1個の入射衝撃粒子あたり放出される電子の数を表す。従って、金属は一般に、低いγ(例えば、0.1未満)を有し、一方で絶縁性材料および半導体材料(例えば、金属酸化物)は、高いγを有する(約1〜約10であり、いくつかの絶縁体は、20の値を超える)。従って、このコーティングは、二次放出電子の源として働く。
【0045】
二次電子放出γは、式(1)によって記載され得る:
(1) γ=Γsecondaryion
式(1)において、γは、二次電子放出の収率または効率であり、Γsecondaryは、電子流であり、そしてΓionは、イオン流である。二次放出は、イオン衝突係数が二次電子放出を誘導し、従ってγモードの放電を起こすために充分なエネルギーを有する場合に、プラズマ種(例えば、イオン)がコーティングに衝突するので起こる。一般に、放電は、電子発生が気体中(αモード放電)ではなく電極表面で起こる(すなわち、γ>1)場合に、γモードであるといわれる。換言すれば、コーティングと衝突各イオンごとに、所定の数の二次電子が放出される。従って、γはまた、Γsecondary(例えば、電子流)とΓion(例えば、イオン流)との比と考えられ得る。
【0046】
コーティングの表面とのこれらのイオンの衝突は、次に、二次電子放出がγ放電を引き起こすために充分なエネルギーを提供する。コーティング材料がγ放電を引き起こす能力は、数個のパラメータにより変わり、最も大きい影響は、上で議論されたように、高いγを有する材料の選択に起因する。この特性は、コーティングが、二次放出電子の源として、または選択された化学反応経路を増強するための触媒物質として、働くことを可能にする。
【0047】
経時的に、このコーティングは、プラズマ操作中に薄くなり得るか、または除去され得る。このコーティングを維持して二次放出電子の源を続けて提供する目的で、このコーティングは、プラズマ操作中に連続的に補充され得る。このことは、ネイティブコーティングを内側電極122上に再調合する種を追加することによって、達成され得る。1つの実施形態において、前駆体源18は、酸素ガスまたは窒素ガスのいずれかをデバイス12に供給して、酸化物コーティングまたは窒化物コーティングを補充し得る。
【0048】
従来の非大気PECVDは、高価な低圧真空チャンバおよび装填をロックされたバッチ加工を必要とする。本開示によるAP-PECVDは、加工がインライン製造の一部として外気中で行われ得る点で、非大気PECVDより優れた有意な利点を提示する。さらに、AP-PECVDはまた、比較的低い温度で実施され、その結果、温度感受性の基板が、熱損傷なしでコーティングされ得る。さらに、従来の化学重合プロセスは、比較的長い反応時間および/または反応時間を短縮するための触媒の使用を必要とする。本開示によるAP-PECVDにおいて、プラズマにより生成される反応性ラジカルは、モノマー前駆体の化学結合を切断して、不安定な中間体分子を生成させて形成し、この中間体分子は、加工片の表面に堆積されると、重合して安定なポリマーフィルムを形成する。
【0049】
以下の実施例は、本開示の実施形態を説明するために与えられる。これらの実施例は、説明のみを意図されるのであり、本開示の範囲を限定することは意図されない。また、部および百分率は、他に示されない限り、重量による。本明細書中で使用される場合、「室温」とは、約20℃〜約30℃の温度をいう。
【実施例】
【0050】
(実施例1−ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)のアルゴンプラズマ重合による疎水性コーティング)
プラズマシステムを図2および図3に従って設定し、そしてアルゴンガスを電極に約800立方センチメートル/分(SCCM)〜約900SCCMの流量で供給した。無線周波数(RF)電力を約25ワット(W)でこれらの電極に供給した。次いで、HMDSOをこのプラズマに、アルゴンガスの約0.2体積%〜約2.0体積%の濃度で供給した。このプラズマ流をガラス基板に当てた。HMDSOの濃度およびRF電力を変化させて、複数のコーティングされた基板を得た。
【0051】
(実施例2−コーティングされた基板の疎水性)
これらのコーティングの疎水性を、これらのコーティングされた基板の表面上の水滴の接触角を測定することにより、分析した。図4Aおよび図4Bは、それぞれ入力RF電力およびHMDSOの濃度の関数としての、接触角のグラフである。具体的には、図4Aは、RF電力が増大するにつれて、接触角が増大したこと、例えば、コーティングがより疎水性になったことを示す。アルゴンの流量を約800sccmに維持し、そしてHMDSOの濃度は約0.5%であった。図4Bは、最大の接触角が、HMDSOの濃度が約1.0%であるときに生じたことを示す。アルゴンの流量を約800sccmに維持し、そしてRF電力は約25Wであった。
【0052】
(実施例3−コーティングの化学構造)
約10W〜約20Wの入力RF電力、および約0.2%〜約2%のHMDSO濃度で堆積されたコーティングを、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法により分析した。図5Aおよび図5Bは、これらのコーティングのFTIRスペクトルを示す。図5Aは、約10W、15W、および20WのRF電力で、アルゴンの流量が約800sccmで、約1%のHMDSO濃度で発生したプラズマによって堆積した、3種のHMDSOポリマーコーティングでコーティングされたガラス基板のスペクトルを示す。図5Bは、約25WのRF電力で、アルゴンの流量が約800sccmで、約0.2%、0.5%、1%、および2%のHMDSO濃度で発生したプラズマによって堆積した、4種のHMDSOポリマーコーティングでコーティングされたガラス基板のスペクトルを示す。
【0053】
本開示の例示的な実施形態が、添付の図面を参照しながら本明細書中に記載されたが、本開示は、これらの正確な実施形態に限定されないこと、ならびに種々の他の変更および改変が、本開示の範囲または趣旨から逸脱することなく当業者により行われ得ることが、理解されるべきである。具体的には、上で議論されたように、このことは、加工片表面に対して望まれる特定のプロセスのため、または反応性プラズマ流中での必要性に合うように、プラズマ種の相対的割合の調整を可能にする。
【符号の説明】
【0054】
10 システム
12 プラズマデバイス
14 電源
16 電離可能媒体源
18 前駆体源
32 プラズマ流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電極を備えるプラズマデバイス;
電離可能媒体源であって、該プラズマデバイスに結合され、そして該プラズマデバイスに電離可能媒体を供給するように構成されている、電離可能媒体源;
少なくとも1つのモノマー前駆体を該プラズマデバイスに供給するように構成された電離可能媒体源;および
電源であって、該少なくとも1つの電極に結合され、そして該プラズマデバイスにおいて該電離可能媒体に点火して、プラズマ流を大気条件で形成するように構成されており、ここで該プラズマ流は、該少なくとも1つのモノマー前駆体を重合させて疎水性導電性ポリマーを形成する、電源、
を備える、プラズマシステム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの電極が、アルミニウム合金およびチタン合金からなる群より選択される金属合金から形成されている、請求項1に記載のプラズマシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つのモノマー前駆体が、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタン、エタン、ブタン、スチレン、アセチレン、四フッ化炭素、オクタフルオロシクロブタン、ヘキサフルオロアセトン、テトラフルオロエタン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロブタン、シラン、ヘキサメチルジシロキサン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載のプラズマシステム。
【請求項4】
前記前駆体源が、前記少なくとも1つのモノマー前駆体のエアロゾルスプレーを形成するように構成された噴霧器を備える、請求項3に記載のプラズマシステム。
【請求項5】
前記プラズマデバイスが:
第一のハウジングであって、誘電性材料から形成され、そして該第一のハウジング内に第一の管腔を規定しており、内側電極が、管腔内で同軸状に配置されており、該内側電極は、実質的に円筒形の形状を有し、そして該内側電極内に第二の管腔を規定している、第一のハウジング;および
実質的に円筒形の形状を有する外側電極であって、該外側電極は、該第一のハウジングを覆って配置されている、外側電極、
を備える、請求項1に記載のプラズマシステム。
【請求項6】
前記第一の管腔は、前記電離可能媒体源と気体連絡しており、そして前記第二の管腔は、前記前駆体源と気体連絡している、請求項5に記載のプラズマシステム。
【請求項7】
電離可能媒体をプラズマデバイスに供給する工程;
該プラズマデバイスにおいて該電離可能媒体に点火して、プラズマ流を大気条件で形成する工程;
少なくとも1つのモノマー前駆体を該プラズマ流と接触させる工程であって、ここで該少なくとも1つのモノマー前駆体は、少なくとも1つの触媒物質を含む、工程;
該少なくとも1つのモノマー前駆体を重合させて疎水性導電性ポリマーを形成する工程;および
該疎水性導電性ポリマーを加工片の表面に堆積させて、該表面上にコーティングを形成する工程、
を包含する、プラズマを発生させる方法。
【請求項8】
前記電離可能媒体が、約800sccm〜約900sccmの流量で供給される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのモノマー前駆体が、前記電離可能媒体の約0.25体積%〜約2体積%の濃度で供給される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記点火する工程が、前記電離可能媒体に、約10ワット〜約50ワットの無線周波数電力を供給する工程をさらに包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つのモノマー前駆体が、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタン、エタン、ブタン、スチレン、アセチレン、四フッ化炭素、オクタフルオロシクロブタン、ヘキサフルオロアセトン、テトラフルオロエタン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロブタン、シラン、ヘキサメチルジシロキサン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記コーティングが、約80°〜約120°の接触角により表わされる疎水性を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
作業表面であって、該作業表面上に堆積された疎水性導電性コーティングを有し、ここで該コーティングは、約80°〜約120°の接触角により表わされる疎水性を有する、作業表面、
を備える、電気外科電極。
【請求項14】
前記コーティングが、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタン、エタン、ブタン、スチレン、アセチレン、四フッ化炭素、オクタフルオロシクロブタン、ヘキサフルオロアセトン、テトラフルオロエタン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロブタン、シラン、ヘキサメチルジシロキサン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つのモノマーから重合された少なくとも1つのポリマーを含む、請求項13に記載の電気外科電極。
【請求項15】
前記少なくとも1つのポリマーが、前記少なくとも1つのモノマーをプラズマ流と接触させることにより形成されている、請求項14に記載の電気外科電極。
【請求項16】
前記プラズマ流が、約800sccm〜約900sccmの流量で供給される電離可能媒体を含む、請求項15に記載の電気外科電極。
【請求項17】
前記少なくとも1つのモノマーの前駆体が、前記電離可能媒体の約0.25体積%〜約2体積%の濃度で供給される、請求項16に記載の電気外科電極。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−99534(P2013−99534A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−246219(P2012−246219)
【出願日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【出願人】(592246587)コロラド ステート ユニバーシティー リサーチ ファウンデーション (17)
【Fターム(参考)】