生物反応促進用バリア
本発明は、生物反応を行うためのシステム、装置、及び方法に関する。特に、本発明は、サンプル分離、精製、改変、及び分析プロセスにおける、親油性、水非混和性、又は疎水性バリアの使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物反応を行うためのシステム、装置、及び方法に関する。特に、本発明は、サンプルの分離、精製、改変、及び分析プロセスにおける疎水性、水非混和性、又は親油性バリアの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
関連発明の相互参照
本出願は、2008年2月29日に出願された仮出願に対して優先権を主張し、前記仮出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
政府支援
本出願は、米国立衛生研究所により承認されたGrant CCF0329957、及び米国立科学財団により承認されたGrant 5RO1EB001418−03により支援された。
【0004】
生物サンプルの分析用のコスト効率的で使い易いシステム、方法及び装置に対する大きなニーズがある。多くの市販のシステムは、数万から数十万ドルの費用がかかり、且つ失敗し易くする多くの可動部を有する。かかるシステムのコスト及び複雑性のために、その使用は、一般的に、その操作及びメンテナンスを支援する必要がある組織及びサービスを有する、人員を有する臨床的研究所に限定される。
【0005】
Abbott Architect、Siemens Centaur、Roche Elecsys等により代表される十分に統合された自動化アナライザー類は、免疫学的検定を行う。Abbott m2000、Roche COBAS、bioMerieux NucliSENS等に代表されるモジュールアナライザー類は、核酸検定を行う。これらのシステムの複雑性の多くは、検定の加工に関与する分離ステップの結果である。
【0006】
モジュールシステムは、調査研究所においても頻繁に使用される。免疫学的検定分離は、Titerket MAP−C2、BioTek ELx50、Tecan PW 96/384等のプレート洗浄機により行われてもよい。核酸分離は、Applied Biosystems PRISM(商標)6100、Invitrogen Prep,Thermo Scientific KingFisher,Promega Maxwell等のシステムにより行われる。
【0007】
低コストで確実なアナライザーの利用可能性は、疾患の診断及び管理に関するので、世界中で重大な関心事である。この問題はHIV感染の管理に関連する問題により強烈に例示される。HIVに関連する核酸又はタンパク質レベルの検出を可能にする多くの技術が存在する。この検出はHIVに感染したものの患者ケアを管理するために重要である。しかしながら、これらのシステムのコスト及び複雑性により、その汎用的使用が妨げられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、生物反応を行うためのシステム、装置、及び方法に関する。特に、本発明は、サンプル分離、精製、改変、及び分析プロセスにおける、疎水性、水又はアルコール−非混和性、又は親油性バリアの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明のある実施態様のサンプル精製及びPCRのためのカートリッジを示す。図1aは、カートリッジ試作品を示す。図1bは、液体ワックスチャネルの図を示す。
【図2】図2は、本発明のある実施態様のサンプル精製のためのカートリッジを示す。
【図3】図3は、本発明のある実施態様のカートリッジの構成で使用されるホイル積層板の層を示す。
【図4】図4は、本発明のある実施態様で使用されるホイル積層板カートリッジの図を示す。
【図5】図5(a)は、2つの非混和性流体に対する永久磁石の位置を示し、(b)は、x及びy方向における粒子の磁力の表面プロットを示す。
【図6】図6は、重錘法を用いる表面張力の推定のための実験装置を示す。
【図7】図7は、チューブベースのマイクロ流路系におけるサンドイッチアッセイの様々な段階の例示を示す。
【図8】図8は、FL1高さ対Log(ビオチン濃度)のプロットを示す。
【図9】フローサイトメーター対前方散乱、側方散乱、及びFL1高さにより記録される事象のプロットを示す。
【図10】図10は、ストレプトアビジン被覆磁性粒子の、一のキャピラリーから別のキャピラリーへの動きと、その後のビオチンでの反応の例示を示す。
【図11】図11aは、オイル含有蛍光色素を介して動いた後の、ストレプトアビジン被覆粒子のシグナルを示す。図11bは、ストレプトアビジン被覆粒子を、油含有蛍光色素を介して動かし、PBSバッファ中で攪拌した後の当該粒子のシグナルを示す。
【図12】図12は、本発明のある実施態様において使用される2チャンバーキュベットの概略図を示す。
【図13】図13は、本発明のある実施態様において使用される2チャンバーキュベットの概略図を示す。
【図14】図14は、IPF法を用いる血漿からのHIV−1のqRT−PCRを示す。4つの異なるRNA濃度についてのCt値の標準曲線は、HIV−1ウイルスコピー数のlog10に対して二重にプロットされる。
【図15】図15は、IPFと、精製のマニュアル法と比較するBland−Altmanプロットを示す。黒色塗りつぶしの正方形は、2つの方法間の差異を示し、実線(y=−0.00772)2つの方法間の平均差をプロットし、点線は当該平均の平均+2及び−2標準偏差(SD)を示す。
【図16】図16は、尿サンプル由来のクラミジアのqPCRによるIPF定量を示す。
【図17】図17は、尿サンプル由来の淋菌のqPCRによるIPF定量を示す。
【図18】図18は、クラミジアのIPF及び精製のマニュアル法を比較するBland−Altmanプロットを示す。
【図19】図19は、淋菌のIPF及び精製のマニュアル法を比較するBland−Altmanプロットを示す。
【図20】図20は、25μL WB由来のプロウイルスDNAについてのIPF PCRを示す。
【図21】図21は、IPF及び精製のマニュアル法を比較するBland−Altmanプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ある実施態様によれば、本発明は、生体分子又は細胞の精製、改変、分析、及び/又は検出のための試薬を含んでなる複数のサンプル加工チャンバー;及び2以上のチャンバーの中間に(例えば、前記チャンバーを分離する)親油性物質を含んでなる、生物サンプル精製及び/又は分析装置を提供する。ある実施態様によれば、親油性物質はワックスである。ある実施態様によれば、当該ワックスは、規定の温度で液体又は固体状態をとることができる相転移ワックスである。例えば、ある実施態様によれば、当該ワックスは、貯蔵及び輸送温度で固体状態をとり、反応温度(例えば、室温)で液体状態をとる。ある実施態様によれば、親油性物質はオイルである。ある実施態様によれば、2つの反応チャンバーがある。ある実施態様によれば、3つの反応チャンバーがある。ある実施態様によれば、4つの反応チャンバーがある。ある実施態様によれば、5つの反応チャンバーがある。ある実施態様によれば、6以上(例えば、7、8、9、10、11、・・・、20、・・・)の反応チャンバーがある。ある実施態様によれば、親油性物質は2以上のチャンバーの間に隣接するバリアを提供する(すなわち、サンプルは第一チャンバーから直接親油性物質に、その後、当該親油性物質から直接第二チャンバーに通過する)。他の実施態様によれば、親油性物質と1以上のチャンバーとの間に、空気、液体、又はその他の物質がある。かかる実施態様によれば、当該親油性物質は、加工されるサンプル又は生体分子が、第一チャンバーから第二チャンバーまでの通過の間のいくつかの点で、当該親油性物質を通り抜けるように位置される。
【0011】
ある実施態様によれば、反応チャンバーの全て、又はサブセットは、サンプル精製のためのみに使用される。例えば、1又は複数の反応チャンバーは、サンプル精製事象、限定するものではないが、例えば、細胞溶解、生体分子捕捉、生体分子分離、及び細胞培養、精製、及び/又は分析を起こす試薬を含む。いくつかの実施態様によれば、反応チャンバーの全て、又はサブセットは、サンプル改変のためのみに使用される。例えば、1又は複数の反応チャンバーは、生体分子(例えば、核酸、タンパク質、脂質等)、又は細胞改変事象、限定するものではないが、例えば、増幅、ライゲーション、開裂、標識、伸長、分解、リガンドとの結合、オリゴマー形成、形質移入、形質転換、遺伝子組換え、分裂、分化等を起こす試薬を含む。ある実施態様によれば、反応チャンバーの全て、又はサブセットは、サンプル分析のためのみに使用される。例えば、1又は複数のチャンバーは、注目の生体分子又は細胞の検出又は他の分析ができる試薬又は他の成分を含む。ある実施態様によれば、チャンバーは、色、蛍光シグナル、発光シグナル、又はその他の検出可能な特徴の発現ができる試薬を含む。いくつかの実施態様によれば、チャンバーはシグナル読取器(例えば、色読取器、蛍光読取器、発光読取器、目視等)による最適なシグナル検出をするよう構成される。1又は複数のチャンバーを、様々な多数の課題、例えば精製、改変、分析、及び/又は検出のために使用してよい。
【0012】
本発明は、チャンバーが互いに構成されるか、分離されるかに限定されない。チャンバーは、互いに同サイズ及び形状であっても、異なるサイズ又は形状であってもよい。様々な構成を使用できる。いくつかの実施態様によれば、チャンバーは、ウェル、及び一のチャンバーから別のチャンバーへ移される任意の物質が、そして上下運動により親油性物質を通りぬけ、且つそこを去るように、当該ウェルの上又は下に位置する親油性バリアである。いくつかの実施態様によれば、チャンバーは、親油性物質の存在により創出される。例えば、いくつかの実施態様によれば、親油性物質を、1又は複数のチャネル(例えば、ガラス、プラスチック、又はセラミック管)における1又は複数の点に沿って堆積させ、前記1又は複数のチャネルの区間の間にバリアを創出する。当該チャネルは、任意のサイズでよく、キャピラリー管又はマイクロ流体チャネル等の小さいサイズがある。ある実施態様によれば、注目のサンプル又は生体分子を、反応チャンバーの線系列に送達させるような、チャンバー及びバリアを構成する。しかしながら、別の実施態様によれば、第一反応チャンバーにおけるサンプル又は生体分子は、任意に1又は複数の他のチャンバーを飛ばしてもよい。いくつかの実施態様によれば、当該チャンバーは、従来の実験室装置(例えば、自動ロボットアーム、プレートホルダー(例えば、96ウェル)、サーモサイクラー、蛍光検出器等)に適合するよう構成されたサイズ又は形状を有する装置に収容される。ある実施態様によれば、反応チャンバーを分離するためにチャネルを使用し、ここでチャネルの全て又は一部は、親油性物質を含む。例えば、ある実施態様によれば、装置を、2以上のウェルを接続するチャネルを有する96ウェル又は384ウェルプレートと同様に構成する。ある実施態様によれば、2つのチャンバー間の経路は、当該親油性物質に侵入するか、そこから離れる前及び/又は後に、空気、水、又はその他の流体を含む。
【0013】
ある実施態様によれば、反応チャンバーは、疎水性溶液を含むマイクロウェル又はマイクロ管であり、親油性物質は当該チャンバーのサブセット又は別々のチャンバーにおいて、前記溶液の上又は下に置かれる。
【0014】
ある実施態様によれば、当該装置は、親油性物質を介し、1の反応チャンバーから別のチャンバーへ所望の物質を移動させる輸送メカニズムを含んでなる。例えば、ある実施態様によれば、当該反応チャンバーの1つにおいて、注目の生体分子を磁性ビーズ等の磁性粒子と結合させる。磁性粒子を、疎水性バリアを介して、第一チャンバーから第二チャンバーへ移動させる(例えば、磁石からの)磁場の適用により、注目の生体分子は、一方のチャンバーから他方のチャンバーへ動かされる。他の実施態様によれば、電場が、電荷を用いて、生体分子又は生体分子と結合した成分(例えば、リガンド、ビーズ、チャージタグ等)を、1のチャンバーから別のチャンバーへ動かす。ある実施態様によれば、遠心力を用いて、1のチャンバーから別のチャンバーへ注目の生体分子を、疎水性バリアを介して移動させる。ある実施態様によれば、真空又は吸引による圧力を用いて、チャンバー間の物質を動かす。本発明は、輸送のメカニズムにより限定されない。
【0015】
ある実施態様によれば、装置は、操作又は使用の際の液体の損失を防止又は低減する蒸気バリアを含んでなる。ある実施態様によれば、装置は、複数の互いに積み重なった物質の薄層から構成される。例えば、ある実施態様によれば、当該層は、プラスチック層間に挟まれるアルミホイル層を含んでなる。
【0016】
ある実施態様によれば、本発明の装置は、サンプル収集、サンプル操作、サンプル廃棄、データ収集、データ分析、及びデータ提示ができる1以上の他の成分を含むシステム(例えば、キット)として提供される。これらの成分は、別々の装置であっても、多成分装置を1つに統合してもよい。これらの成分は、限定するものではないが、医療装置、環境サンプル操作装置、タンパク質精製装置、核酸精製装置、コンピュータ、ソフトウェア等を含んでよい。当該システム又は装置の1以上の成分は、自動化できる。ある実施態様によれば、当該システムの1以上の成分を、自動化しないで行うよう構成する。例えば、非自動化システムにおいて、ハンドヘルド磁石で1のチャンバーから別のチャンバーへサンプルを動かすか、ヒートブロック又は水浴を用いて所望の反応温度を作り出すか、ハンドヘルド蛍光検出器を用いてシグナルを検出するか、又はシグナルを目視する。
【0017】
本発明のシステム及び装置は、様々なサンプルの使用が見出されている。例えば、ある実施態様によれば、サンプルは、生物サンプル又は環境サンプルである。生物サンプルは、動物(例えばヒト)から得てもよく、流体、固体、組織、及び気体を包含する。生物サンプルには、血漿、血清等の血液製剤、及び脳脊髄液、唾液、気管支洗浄剤、気管支吸引物、尿、リンパ液、及び様々な呼吸器系外分泌物、腸及び泌尿生殖路、涙、唾液、乳、白血球、骨髄腫、細胞培養上清、組織(固定又は非固定)、細胞(固定又は非固定)等の生体液等がある。環境サンプルには、限定するものではないが、表面物質、土壌、水、工業サンプル等の環境物質がある。
【0018】
本開示の理解の促進のために、以下で用語を定義する。
本明細書で使用される場合、「親油性物質」なる用語は、水、アルコール、又の親水性又は水溶性の溶液において、実質的に非混和性である任意の物質のことを言う。ある実施態様によれば、本発明の親油性物質は、核増幅又は生体分子検出等の特定の生物プロセスを干渉する物質に対し、低溶解性である。ある実施態様によれば、本発明の親油性物質は、低蒸気圧である。親油性物質は、それら自身内で、且つ他の物質と、ファンデルワールス力を介して相互作用する傾向がある。これらは、水素結合をほとんど形成しないか、形成する能力を有さない。親油性物質は典型的に、大きなo/w(油/水)分配係数を有する。
【0019】
「水非混和性」及び「疎水性」物質は、本明細書において同意義として使用される。該用語は、水中で特に不溶性であり、且つ塩化メチレン等の揮発性親油性溶媒及び非揮発性溶媒、特にN−メチルピロリドン(NMP)に溶解しやすい、ポリマーを含む。
【0020】
「水混和性」又は「親水性」物質とは、少なくとも等量の水で、分離することなく希釈することができる有機液体のことを言う。
【0021】
「水非混和性」又は「親油性」物質の特性は、少なくとも等量の水で、分離することなく希釈することができないもののことを言う。
【0022】
「精製ポリペプチド」又は「精製タンパク質」又は「精製核酸」は、注目のポリペプチドもしくは核酸、又は注目のポリペプチドもしくはポリ核酸がもとから結合する細胞成分を基本的に含まない、例えば、当該成分を約50%未満、好ましくは約70%未満、そしてより好ましくは約90%未満含有するその断片を意味する。
【0023】
「単離(された)」なる用語は、物質が本来の環境(例えば、天然物である場合は、天然環境)から除去されることを意味する。例えば、動物に存在する天然のポリヌクレオチド又はポリペプチドは単離されていないが、同じポリヌクレオチド又はDNA又はポリペプチドでも、天然系に共存している物質のいくつかもしくは全てから分離されるものは、単離される。かかるポリヌクレオチドは、ベクターの一部となり得る、及び/又はかかるポリヌクレオチドもしくはポリペプチドは組成物の一部となり得る、そして、当該ベクター又は組成物はその天然環境の一部でない点でなお単離され得る。
【0024】
「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書において互換的に使用され、且つ以下に記載の全てのポリペプチドを含む。ポリペプチドの基本構造は周知であり、且つ当該技術分野における無数の許可書及びその他の刊行物に記載されている。これに関連して、本明細書で当該用語は、互いにペプチド結合により直鎖状に結合した2以上のアミノ酸を含んでなる、任意のペプチド又はタンパク質のことを言うために使用される。本明細書で使用される場合、当該用語は、当該技術分野においてペプチド、オリゴペプチド及びオリゴマーとして通常記載される短鎖と、例えば、当該技術分野においてその多くの種類が存在するタンパク質として一般的に記載される長鎖の両方のことを言う。
【0025】
ポリペプチドは、多くの場合、通常20個の天然アミノ酸として記載される20アミノ酸以外のアミノ酸を含み、且つ末端アミノ酸を含む多数のアミノ酸が、加工及びその他の翻訳後修飾等の天然プロセスによるか、又は当該技術分野で周知の化学改変技術により、所与のポリペプチドにおいて改変されてよいことは明らかである。ポリペプチドにおける天然に発生する共通の改変を個々に完全に列挙するには多すぎるとしても、これらは基本書及びより詳細なモノグラフ、並びに膨大な研究文献に十分に記載されており、且つ当業者に周知である。本発明のポリペプチドに存在し得る既知の改変から、数例を挙げると、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、核酸又は核酸誘導体の共有結合、脂質誘導体の脂質の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル反応、共有架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、ガンマ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリソイル化(myrisoylation)、酸化、タンパク質分解処理、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニン化等の転移RNA媒介性のタンパク質へのアミノ酸付加、及びユビキチン化がある。
【0026】
かかる改変は当業者に周知であり、且つ科学的論文に非常に詳細に記載されている。複数の特に一般的な改変、例えば、グリコシル化、脂質付加、硫酸化、グルタミン酸残基のガンマ−カルボキシル化、ヒドロキシル化及びADP−リボシル化が、Proteins−Structure and Molecular Properties,2.sup.nd Ed.,T.E.Creighton,W.H.Freeman and Company,New York(1993)等の最も基本的な文書に記載される。この主題についての多くの詳細なレビューが利用可能であり、例えば、Wold,F.,Posttranslation on Protein Modifications:Perspectives and Prospect,pg.1−12 in Posttanslational Protein Covalent Modification of Proteins,B.C.Johnson,Ed.,Academic Press,New York(1983);Seifter et al.,Analysis for protein modifications and nonprotein cofactors,Meth.Enzymol.182:626−646(1990)及びRattan et al.,Protein synthesis:Posttranslational Modifications and Aging,Ann N.Y.Acad.Sci.663:48−62(1992)がある。
【0027】
周知の通り且つ上記の通り、ポリペプチドが常に完全な直鎖ではないことは明らかである。例えば、ポリペプチドは、ユビキチン化の結果として分岐してもよいし、天然処理の事象等の翻訳後事象、及び天然に発生しない人間の操作によりもたらされる事象の結果として、分岐を有するか又は有さない環状であってもよい。環状、分岐、及び分岐環状のポリペプチドは、非翻訳天然プロセスによっても、そして同様に完全に合成的方法によっても合成できる。
【0028】
改変はポリペプチドのいずれにおいても起こり得て、例えばペプチド骨格、アミノ酸側鎖、及びアミノ末端又はカルボキシル末端がある。実際に、ポリペプチドにおけるアミノ基又はカルボキシル基の骨格、または共有結合改変によるその両方は、天然及び合成のポリペプチドに共通している。例えば、タンパク質分解の前に、E.coliにおいて作られるポリペプチドのアミノ末端残基は、ほとんど常に、N−ホルミルメチオニンとなるはずである。
【0029】
ポリペプチドにおいて発生する改変は、多くの場合、どのようにそれがなされるかによるはずである。例えば、宿主にクローン化遺伝子を発現させることにより作製されるポリペプチドについて、大部分における改変の性質及び範囲は、宿主細胞の翻訳後修飾の許容量及びポリペプチドアミノ酸配列に存在する改変シグナルにより決定されるはずである。例えば、周知の通り、グリコシル化は、多くの場合、E.coli等の細菌性宿主において発生しない。したがって、グリコシル化を所望する場合、ポリペプチドは、グリコシル化宿主、一般的に真核細胞において発現させるべきである。虫細胞は、多くの場合、哺乳類細胞と同じ翻訳後グリコシル化を行うので、虫細胞発現系は、グリコシル化の天然のパターンを有する哺乳類タンパク質を効率的に発現するよう開発されてきている。同様の考察は、他の改変にも適用される。
【0030】
同じ種類の改変が、所与のポリペプチドにおける複数の部分で、同程度又は様々な程度で存在する可能性があることは明らかである。また、所与のポリペプチドは、多種の改変を含んでよい。
【0031】
本明細書に記載される通り、一般的に、ポリペプチドなる用語は、全てのかかる改変、特に宿主細胞において発現されるポリヌクレオチドにより合成されるポリペプチドに存在するものを包含する。
【0032】
「成熟」ポリペプチドなる用語は、対象ポリペプチド及び起源細胞に適する、完全な翻訳後修飾を受けているポリペプチドのことを言う。
【0033】
特定のポリペプチドの「断片」とは、特定のポリペプチド由来である、少なくとも約3〜5アミノ酸、より好ましくは少なくとも約8〜10アミノ酸、及びさらにより好ましくは少なくとも15〜20アミノ酸を含んでなるアミノ酸配列のことを言う。
【0034】
「〜と免疫学的に同等である」なる用語は、指定された(1又は複数の)ポリペプチドに存在し、且つ当該ポリペプチドに特有である、(1又は複数の)エピトープ及び(1又は複数の)ポリペプチドが存在することを言う。免疫学的同等性は、抗体結合及び/又は結合における競合により決定してよい。エピトープの特有性は、当該エピトープをコードするポリヌクレオチド配列についての、GenBank等の既知のデータバンクのコンピュータサーチによって、及びその他の既知のタンパク質とのアミノ酸配列比較によって決定することができる。
【0035】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」は、ポリペプチド又はタンパク質の抗原決定基を意味する。考えられる限りにおいては、エピトープは、当該エピトープに特有の立体配座において3つのアミノ酸を含むことができる。一般的には、エピトープは、少なくとも5つのかかるアミノ酸からなり、且つより一般的には、少なくとも8〜10アミノ酸からなる。立体配座を調べる方法は、当該技術分野において既知であり、例えば、x線結晶解析及び2次元核磁気共鳴がある。
【0036】
「配座エピトープ」は、免疫学的に識別できる構造におけるアミノ酸の特定の並列からなり、かかるアミノ酸は、隣接又は非隣接順で同じポリペプチドに、又は異なるポリペプチドに存在する。
【0037】
ポリペプチドは、それが抗体に結合する場合、ポリペプチド内に含まれる特定のエピトープの抗体認識により、抗体と「免疫学的に反応する」。免疫学的反応性を、抗体結合により、より具体的には抗体結合の動力学により、及び/又は(1又は複数の)競合因子として、抗体に向かうエピトープを含む(1又は複数の)既知のポリペプチドを用いて結合における競合により決定してよい。ポリペプチドが抗体と免疫学的に反応するか否かを決定するための方法は、当該技術分野において既知である。
【0038】
本明細書で使用される場合、「注目のエピトープを含有する免疫原性ポリペプチド」は、注目の天然のポリペプチド又はその断片、並びにその他の方法、例えば、化学合成又は組換え生物における当該ポリペプチドの発現により調製されるポリペプチドを意味する。
【0039】
「精製産物」は、当該産物が通常結合する細胞構成物、及び注目のサンプルに存在する可能性のある多種類の細胞から単離された産物の調製物のことを言う。
【0040】
本明細書で使用される場合、「検体」は、試験サンプル、例えば注目の生体分子、小分子、病原体等に存在する可能性のある検出されるべき物質である。当該検体には、タンパク質、ポリペプチド、及びアミノ酸、ヌクレオチド標的等があり得る。当該検体は、血液、血漿もしくは血清、尿等の体液に可溶性であってよい。当該検体は、組織、細胞表面又は細胞内のいずれかに存在してよい。当該検体は、血液、尿、乳穿刺液(breast aspirate)等の体液に分散する、又は生検として得られる細胞上又は細胞内に存在してよい。
【0041】
本明細書で使用される場合、「特異結合メンバー」は、特異結合対のメンバーである。つまり、2つの異なる分子のうち1つが、化学的又は物理的方法により、第二の分子に特異的に結合する。したがって、従来の免疫アッセイの抗原及び抗体の特異的結合対に加え、他の結合対には、ビオチン及びアビジン、炭水化物及びレクチン、相補的ヌクレオチド配列、エフェクター及びレセプター分子、補因子と酵素、酵素阻害因子、及び酵素等が含まれ得る。さらに、特異結合対には、もともと特異結合メンバーの類似体であるメンバー、例えば、検体類似体が含まれ得る。免疫反応特異結合メンバーには、抗原、抗原断片、抗体及び抗体断片、モノクローナル及びポリクローナル抗体の両方、及びその複合体、例えば、組換えDNA分子により形成されるものが含まれる。
【0042】
特異結合メンバーには、「特異結合分子」が含まれる。「特異結合分子」は、任意の特異結合メンバー、特に免疫反応性特異結合メンバーを意図する。このように、「特異結合分子」なる用語は、抗体分子(ポリクローナル及びモノクローナル調製物の両方から得られる)、並びに、以下のもの:ハイブリッド(キメラ)抗体分子(例えば、Winter,et al.,Nature 349:293−299(1991)及び米国特許第4,816,567号を参照されたい);F(ab’)sub.2及びF(ab)断片;Fv分子(非共有へテロダイマー、例えば、Inbar,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA69:2659−2662(1972)及びEhrlich,et al.,Biochem.19:4091−4096(1980)を参照されたい);一本鎖Fv分子(sFv)(例えば、Huston,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85: 5879−5883(1988)を参照されたい);ヒト化抗体分子(例えば、Riechmann,et al.,Nature 332:323−327(1988),Verhoeyan,et al.,Science 239:1534−1536(1988)、及び1994年9月に公開された英国特許第GB2,276,169号を参照されたい);及びかかる分子由来の、親抗体分子の免疫学的結合特性を保持する任意の機能的断片、を包含する。
【0043】
本明細書で使用される場合、「ハプテン」なる用語は、抗体に結合できるが、担体タンパク質と共役しない限り抗体形成を引き起こせない、部分的抗原又は非タンパク質結合メンバーのことを言う。
【0044】
本明細書で使用される場合、「捕捉試薬」は、サンドイッチアッセイの場合の検体か、競合アッセイの場合の指標試薬又は検体か、又は間接アッセイの場合のそれ自身が検体に特異的である補助的な検体特異結合メンバーのいずれかに特異的な、未標識特異結合メンバーのことを言う。捕捉試薬は、当該アッセイを行う前、又はアッセイを行っている間に、固相物質に直接的又は間接的に結合でき、これにより、固定化複合体の試験サンプルからの分離が可能となる。
【0045】
「指標試薬」は、外部手段により検出可能な、測定可能シグナルを発生させることができ、且つ発生させる、「シグナル発生化合物」(「標識」)を含んでなる。ある実施態様によれば、指標試薬は、特異結合メンバーと複合化(「付加」)する。特異結合対の抗体メンバーであることに加え、当該指標試薬は、任意の特異結合対のメンバーであってもよく、例えば、ハプテン−抗−ハプテン系、例えばビオチン又は抗ビオチン、アビジン又はビオチン、炭水化物又はレクチン、相補的ヌクレオチド配列、エフェクター又はレセプター分子、酵素補因子及び酵素、酵素阻害因子又は酵素等のいずれかがある。免疫反応性特異結合メンバーは、サンドイッチアッセイの場合の注目のポリペプチドか、競合アッセイの場合の捕捉試薬か、又は間接アッセイの場合の補助的特異結合メンバーのいずれかに結合できる、抗体、抗原、又は抗体/抗原複合体があり得る。プローブ及びプローブアッセイについて記載する場合、「レセプター分子」なる用語を使用してもよい。レセプター分子は、カルバゾール又はアダマンタン等の特異結合対の特異結合メンバーと複合化する、上記のシグナル発生化合物を含んでなる。
【0046】
想定される様々な「シグナル発生化合物」(標識)には、クロマゲン(chromagen)、酵素等の触媒、フルオレセイン及びローダミン等の発光化合物、ジオキセタン、アクリジニウム、フェナントリジニウム(phenanthridinium)及びルミノール等の化学発光化合物、放射活性因子及び直視標識がある。酵素の例には、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキイダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ等がある。特定の標識の選択は、厳密ではないが、それ自身か、1又は複数の追加の物質との複合状態のいずれかによりシグナルを発生できるべきである。
【0047】
「固相」(「固体支持体」)は、当業者に既知であり、且つ反応トレイのウェルの壁、試験管、ポリスチレンビーズ、磁性もしくは非磁性ビーズ、ニトロセルロース片、膜、ラテックス粒子等の微小粒子等がある。「固相」は、厳密ではなく、且つ当業者に選択されてよい。すなわち、ラテックス粒子、微小粒子、磁性もしくは非磁性粒子、膜、プラスチック管、マイクロタイターウェルの壁、ガラス又はシリコンチップは、全て好適な例である。固相は、任意の好適な多孔性物質も含んでよいことは、想定されることであり、且つ本発明の範囲内である。
【0048】
本明細書で使用される場合、「検出する(detect)」、「検出(detecting)」、又は「検出(detection)」なる用語は、検出できるよう標識された組成物の、発見もしくは識別の一般的行為か、又はその特異的観察のいずれかのことを言ってよい。
【0049】
「ポリヌクレオチド」なる用語は、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、改変RNAもしくはDNA、又はRNAもしくはDNA模倣剤のポリマーのことを言う。したがって、当該用語には、天然の核酸塩基、糖及び共有ヌクレオシド間(骨格)結合(internucleoside linkages)からなるポリヌクレオチド、並びに同様に機能する非天然部分を有するポリヌクレオチドが含まれる。かかる改変又は置換ポリヌクレオチドは、当該技術分野において周知であり、本発明の「前駆体」として、「類似体」と呼ばれる。
【0050】
本明細書で使用される場合、「核酸分子」なる用語は、分子を含有する任意の核酸のことを言い、限定するものではないが、例えばDNA又はRNAがある。当該用語は、DNA及びRNAの既知の塩基類似体のいずれかを含む配列を包含し、限定するものではないが、例えば、4−アセチルシトシン、8−ヒドロキシ−N6−メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、シュードイソシトシン(pseudoisocytosine)、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシメチル−アミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチルシュードウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチル−グアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルキューオシン、5'−メトキシカルボニルメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、オキシブトキシン(oxybutoxosine)、シュードウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、N−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、シュードウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、及び2,6−ジアミノプリンがある。
【0051】
「遺伝子」なる用語は、ポリペプチド、前駆体、又はRNA(例えばrRNA、tRNA)の製造のために必要な配列をコードすることを含んでなる、核酸(例えばDNA)配列のことを言う。ポリペプチドは、全長コード配列によるか、又は全長もしくは断片の所望の活性もしくは機能特性(例えば、酵素活性、リガンド結合、シグナル伝達、免疫原性等)を保持する限り、コード配列の任意の部分により、コードされ得る。当該用語はまた、構造的遺伝子のコード領域、及び当該遺伝子が全長mRNAの長さに対応するよう、5'及び3'のいずれかの末端上に約1kb超にわたりコード領域に隣接して位置する、両末端上の配列も包含する。コード領域の5'に位置し、且つmRNAに存在する配列のことを、5'非翻訳配列と呼ぶ。3'又はコード領域の下流に位置し、且つmRNAに存在する配列のことを、3'非翻訳配列と呼ぶ。「遺伝子」なる用語は、cDNA及びDNAのゲノム状態の両方を包含する。遺伝子のゲノム状態又はクローンは、「イントロン」又は「介在領域」又は「介在配列」と呼ばれる非コード配列により干渉されるコード領域を含有する。イントロンは、核RNA(hnRNA)に転写される遺伝子のセグメントであり;イントロンは、エンハンサー等の制御因子を含んでよい。イントロンは、核又は一次転写物から除去又は「スプライシング」さるため、イントロンは、伝令RNA(mRNA)転写物に存在しない。mRNAは、転写の間、発生期のポリペプチドにおけるアミノ酸の配列又は順序を特定するよう機能する。
【0052】
「核酸増幅試薬」なる用語は、増幅反応において使用される従来の試薬を含み、且つ限定するものではないが、ポリメラーゼ活性を有する1又は複数の酵素、酵素補因子(例えば、マグネシウム又はニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD))、塩、バッファ、デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP;例えば、デオキシアデノシン三リン酸、デオキシグアノシン三リン酸、デオキシシチジン三リン酸、及びデオキシチミジン三リン酸)及び前記ポリメラーゼ酵素活性又はプライマーの特異性を調整するその他の試薬がある。
【0053】
本明細書で使用される場合、「相補的な」又は「相補性」なる用語は、塩基対合則に関連するポリヌクレオチドヌクレオチド(すなわち、オリゴヌクレオチド又は標的核酸等のヌクレオチドの配列)のことを言うために使用される。相補性は「部分的」であり、ここでわずかな核酸の塩基だけが、塩基対合則に適合する。あるいは、核酸間の「完全な」又は「前宅的な」相補性が存在してもよい。核酸鎖間の相補性の度合いは、核酸鎖間ハイブリダイゼーションの効率及び強度に大きな影響を及ぼす。これは増幅反応、及び核酸間の結合に依存する検出方法において特に重要である。
【0054】
「相同性」なる用語は同一性の度合いを言う。部分的な相同性又は完全な相同性が存在してよい。部分的な同一配列は、別の配列と100%未満同一であるものである。
【0055】
本明細書で使用する場合、「ハイブリダイゼーション」なる用語は相補的核酸の対合について言う際に使用される。ハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションの強度(すなわち、核酸間の結合の強度)は、核酸間の相補性度合い、関連条件のストリンジェンシー、形成ハイブリッドのTm、及び核酸内のG:C比率のような要因により影響を受ける。
【0056】
本明細書で使用される場合、「Tm」なる用語は、「融解温度」のことを言う際に使用される。融解温度は、二本鎖核酸分子の集団のうち半分が一本鎖に解離する温度である。核酸のTmを計算するための等式は、当該技術分野で周知である。標準的な文献に示されるように、Tm値の単純な見積もりは、核酸を1M NaClの水溶液中に置いた場合、等式:Tm=81.5+0.41(%G+C)により計算してよい(例えば、Anderson and Young,Quantitative Filter Hybridization,in Nucleic Acid Hybridization(1985)を参照されたい)。その他の文献には、Tmの計算に、構造的及び配列特性を考慮し、より洗練された計算がある。
【0057】
本明細書で使用される場合、「ストリンジェンシー」なる用語は、核酸ハイブリダイゼーションが行われる、温度、イオン強度、及び他の化合物の存在の条件のことを言う際に使用される。「高ストリンジェンシー」条件では、核酸塩基対合は、相補的塩基配列が高頻度である核酸断片間でしか発生しないことになる。すなわち、互いに完全に相補的でない核酸が一緒にハイブリダイズ又はアニーリングすることが望まれる場合、「弱」又は「低」ストリンジェンシー条件がしばしば必要となる。
【0058】
「野生型」なる用語は、天然の供給源から単離される場合、その遺伝子又は遺伝子産物の特性を有する遺伝子又は遺伝子産物のことを言う。野生型遺伝子は、ある集団において最も頻繁に観察されるものであり、すなわち当該遺伝子の「正常」又は「野生型」状態は任意に設計される。逆に、「改変」又は「変異」なる用語は、前記野生型遺伝子又は遺伝子産物と比較して、配列及び/又は機能特性(すなわち、変更された特性)に改変を示す遺伝子又は遺伝子産物のことを言う。
【0059】
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」なる用語は、2以上のデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド、好ましくは、少なくとも5ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも10〜15ヌクレオチド、及びより好ましくは少なくとも15〜30ヌクレオチド、又はそれ以上からなる分子と定義される。正確なサイズは、多くの要因に依存することになり、そしてオリゴヌクレオチドの根本的機能又は使用にも依存する。当該オリゴヌクレオチドは、任意に手法、例えば、化学合成、DNA複製、逆転写、又はその組み合わせ等により作製されてよい。
【0060】
モノヌクレオチドが、一のモノヌクレオチドペントース環の5'リン酸が、同一方向でその隣接する3'酸素にホスホジエステル結合を介して付加するようにオリゴヌクレオチドを作製するように反応させるために、オリゴヌクレオチドの末端は、5'リン酸がモノヌクレオチドペントース環の3'酸素に結合しない場合は「5'末端」と呼ばれ、そしてその3'酸素が、続くモノヌクレオチドペントース環の5'リン酸に結合しない場合は「3'末端」と呼ばれる。本明細書で使用される場合、核酸配列は、より大きなオリゴヌクレオチドに内在する場合であっても、5'及び3'末端を有すると言ってよい。核酸鎖に沿う第一領域は、核酸に沿って5'〜3'方向に動く場合、当該第一領域の3'末端が、第二領域の5'末端の前であると、別の領域の上流であると言われる。
【0061】
2つの異なる重複しないオリゴヌクレオチドが、同じ直鎖の相補的核酸配列の異なる領域とアニーリングするとともに、一方のオリゴヌクレオチドの3'末端が他方の5'末端の方向を向く場合、前者を「上流」オリゴヌクレオチド、そして後者を「下流」オリゴヌクレオチドと呼ぶことができる。
【0062】
「プライマー」なる用語は、プライマー伸長が開始される条件下に置かれた場合、合成の開始点として作用できるオリゴヌクレオチドのことを言う。オリゴヌクレオチド「プライマー」は、精製した制限酵素消化など天然に発生しても、又は合成で作製してもよい。
【0063】
発明の詳細な説明
本発明は、生物反応を行うためのシステム、装置、及び方法に関する。特に、本発明は、サンプル分離、精製、改変及び分析プロセスにおける親油性のバリアの使用に関する。
【0064】
本発明のシステム、装置、及び方法は、所望の場合には、高額でなく且つ使い易いサンプル精製及び/又は改変及び/又は分析及び/又は検出システムを構成することができる。例えば、本明細書に記載される本発明の実施態様は、汎用的な生体分子検出、分析、及び特性決定のための経済的な方法を提供する。これらのシステム、装置、及び方法は、多くの使用が見出される。本発明の態様及び利益を例示するために、核酸及びタンパク質分析へのその応用、特に、HIV感染及び状態をモニタリングするための応用について以下に示す。本発明は、これらの例示的実施態様に限定されるものではない。ある実施態様によれば、本発明のシステム、装置、及び方法は、現存の複雑で高額のサンプル分離、精製、改変、及び分析装置と複合化して利用される。例えば、ある実施態様によれば、本発明のアプローチは、従来の装置(例えば、サーマルサイクラー、質量分析、NMR装置等)を用いる改変及び/又は分析の前に、サンプル(例えば、核酸又はポリペプチド精製)の調製のために使用される。
【0065】
HIV/AIDSに罹患する3500万人の成人及び子供がおり、彼等のうち2200万人がサハラ以南のアフリカに暮らしている。アフリカにおける平均的な診療所は約400人の患者を扱っており、輸送の問題により、巨大な中央施設の発展よりもむしろ、診療所の数が増加している。したがって、100,000以上のウイルス量を測定する機械が必要とされている。現在利用可能なウイルス量アッセイの主な制限としては、必要な機器の費用、高度に訓練した人員を必要とする複雑且つ時間のかかる手法、及び低温流通が必要な試薬がある。
【0066】
無理なく購入可能且つ単純なHIVウイルス量アッセイの開発は、発展途上国の世界において、AIDS患者のケアの質を向上するために重要なステップである。これは、ポイントオブケア(POC)小装置を用いて、集権的研究所において通常行われる複雑な診断手法を自動化することが必要とされ;最も遠隔な状況に重要な健康関連情報があっても、この性能は、ヘルスケアに従事する者及び患者に権限を与える可能性がある。所望のHIVウイルス量アッセイは、好ましくはポイントオブケアでの回答を送達すべきだが、患者により近い地域の病院検査室へ、遠隔な中央研究所から移動することが、成果を向上させることになる。かかる装置は、短い所要時間且つ購入可能な費用で、HIVの分離、増幅、及び検出をすることになる。短時間というのは重要であり、これは、診療所に必要な機械の数を低減させ、且つ診療所で患者が過ごす時間を低減させるので、実際の費用を低減するためである。
【0067】
HIVウイルス量アッセイを行う場合、集権的研究所及び当該技術分野外のいずれにおいても、多くの課題が克服されるべきである。巨大な研究所は、高容量HIVウイルス量アッセイのために、自動化又は半自動化ロボットシステムを使用する。しかしながら、典型的にサンプル加工は、これらの試験において最も煩雑である。現在は、サンプル加工手法には、多くの場合遠心分離及び抽出ステップを必要とする多数のステップが関与する。また、これらの方法は、多くの場合、標的核酸を十分に精製しない。これらには、しばしば、増幅反応の阻害を引き起こし、且つ偽陰性をもたらす、反応混合物中の阻害性もしくは干渉性物質が残る。従来のサンプル加工技術の手作業の性質は、偽陽性をもたらす可能性のある、検査サンプルの二次汚染が起きる可能性もある。
【0068】
PCR又はその他の核酸分析技術のより汎用的な使用が考慮されるので、サンプル調製プロセスを自動化する試みにおける、想定される努力は既になされている。しかしながら、現存の自動化ハイスループットシステムは、多重な抽出及び精製ステップを行い、且つサンプル及び試薬のロード、及び廃棄物の除去等の特定の手作業の調製をなお必要とする。それ故、アッセイを行い、且つ装置を整備するために、高度に訓練された技術者が必要である。自動化システムは、溶液又は磁気粒子を動かすための複雑なロボットアーム、又は液体のピペッティングのための精密機器を使用するために、非常に高額である。自動化システムの費用は、より小規模の研究所、特に資源が限られる状況では、正当であると証明することは多くの場合困難である。これらは増幅技術を使用するため、二次汚染も問題である。診療検査室では、試薬調製、サンプル調製、増幅、及び増幅後の分析のために、多くの場合別々の部屋を使用する。このため、自動化にも関わらず、ウイルス量試験は、臨床検査改善促進(Clinical Laboratory Improvement Amendments(CLIA))の下、高度に複雑な試験と考えられている。サンプル調製及び試薬操作の自動化の困難性が主な原因となり、これまで、CLIA不履行状態に値する核酸試験(NAT)システムは存在していない。
【0069】
現場使用又は患者に身近なNATを行うことは、特にこれらが非研究所環境において経験の浅い使用者により行われることが不可避となるので、さらに多くの課題が関与する。以下のシステムは、当該分野におけるNATの展開のために近年開発されている。
【0070】
Cepheid(Sunnyvale,CA)によるGeneXpertシステムは、サンプル調製、増幅、及び検出を統合する最初のPCRを基にした機器の1つである。使い捨ての単一試験GeneXpertサンプル調製カートリッジは、4つの機能的構成要素:キャップ、カートリッジ本体、バルブ本体組立部、及び微量PCR反応管、からなる。カートリッジ本体は、内部で様々なサイズ及び機能の多数のチャンバーに分割され、そのいくつかは、凍結乾燥試薬ビーズを含み、且つ各々は、流体の流入及び流出のために底部にポートを有する。当該チャンバーを、中央の注射筒の周囲に徹底的に並べる。カートリッジ本体の下に位置するバルブ本体組立部は、細胞溶解及びDNA精製の部位であり、ソフトウェア制御の下、当該機器上の回転バルブが、プログラムされたアッセイプロトコルに従って、流体が、混合、希釈、及び洗浄のための適切なチャンバーから吸引されるか、又は当該チャンバーに分配されるよう、バルブ本体組立部を動かす。反応管は、カートリッジから突き出ており、調製サンプルを受け取り、且つ増幅のためのPCR反応器及び標的検体の検出を整合させる。GeneXpertシステムでの試験を行うために、操作者は、カートリッジキャップを開け、且つサンプルチャンバーに液体サンプルをロードする。操作者がこのキャップを閉めると、カートリッジは試験進行及びバイオハザード廃棄にわたって恒久的に密封され、サンプルの二次汚染の任意のリスクを除去する。バルブ本体組立部で小さなガラスビーズを、カートリッジ下で直接発生させた超音波でかき混ぜることにより細胞を溶解する。抽出されたDNAは、固定化DNAプローブを含有するマイクロ流体チャネルに流れ込み、ここを細胞残骸のDNAは通過する。結合DNAは、後にその付加部位から離れ、且つPCR増幅のために洗い出される。
【0071】
IQuum Inc(Allston,MA)により開発された別のシステムは、商標権を有するlab−in−a−tube(Liat)テクノロジープラットフォームに基づく、Liat Molecular Analyzerである。Liatチューブは、サンプルベッセルのような柔軟なチューブを使用し、且つチューブ区分に予備充填された全てのアッセイ試薬を含有する。貼り直し可能なシールを用いて、単位用量試薬及び内部標準を、アッセイに使用される順番に、一連のチューブ区分に別々に置くことができる。貼り直し可能なシールは、プラスチックチューブの熱溶接により形成される。各々のシールに隣接するチューブ区分へ圧力をかけることにより、当該シールは、勢いよく開き、試薬を放出する。Liat アナライザーにおいて、多重サンプル処理装置モジュールを、Liarチューブと連結する。各々のモジュールは、作動装置及びクランプからなり、その位置は、チューブ内の試験サンプルを操るよう制御できる。格納式の磁石を、磁気ビーズを操るためのモジュールの1つに付加する。チューブにアナライザーをロードすると、作動装置及びクランプは、連続的にチューブを圧迫し、試薬を動かし、且つ1の区分から別の区分まで制御する。同様に、作動装置及びクランプの動きを同期させることにより、様々なサンプルプロセスを、チューブ内で行うことができる。かかるプロセスには、区分内で液体の容量を調整すること;隣接する区分に試薬を放出すること;試薬及びサンプルを混合すること;所与の温度で反応混合物をかき混ぜ且つインキュベートすること;及び洗浄及び区分から廃棄すること、が含まれる。廃棄物は、キャップの廃棄チャンバーに向かって動くが、精製サンプルはチューブのさらに下方に動く。最低部のチャンバーにおいて、放出DNAが増幅される。
【0072】
当該分野での使用が意図される他の市販のリアルタイムPCR装置には、Idaho Technology Inc.(Salt Lake City)製のRuggedized Advanced Pathogen Identification Device、Lawrence Livermore National Laboratory(Libermore,CA)製のHand−Held Advanced Nucleic Acid Analyzer、及びSmiths Detection(Pine Brook,N J)製のBio−Seeq検出器がある。しかしながら、これらの装置は、自動化サンプル調製及び試薬操作機能を持たない。
【0073】
上記のシステムは、正しい方向のステップである。しかしながら、GeneXpertは、操作にはなお複雑であり、且つ訓練した技術者による操作を必要とする。それは使用者が当該領域で液体のピペッティングすることを要するので、精密な測定機器は、当該システムの費用をさらに増大することが必要となるはずである。Liar Molecular Analyzeは、当該領域で液体容量を正確に測定することはないが、流体を正確に動かすために複雑な機械的システムが必要なので高額である。Liatチューブは、製造が困難であり、品質制御が困難である。当該チューブは保存が困難であり、且つ洩れの問題がある。
【0074】
タンパク質及び化学試薬等の小量の分子の、制御された動作及び送達は、マイクロ流体中に継続する課題を示し、且つHIVウイルス量装置等のPOC装置の開発のために非常に需要である。マイクロ流体システムの大半は、一の位置から別の位置へ分子の溶液を動かす流体運動に依存し、その結果、これらのシステムは、溶媒及び物質を不必要に消費し、流量を制御する複雑な機械的システムが必要である。本発明の実施態様は、1の反応媒体から次の媒体へ分子を動かすし、且つ当該システムから全ての流量を除去する担体としての磁性マイクロ粒子の使用における問題に対処する代替的アプローチを提供する。磁力を使用して磁性粒子を操り、バイアルロード試験等の複雑な化学反応を行わせる場合、かかるアプローチは低費用の閉鎖カートリッジである。反応における駆動力が磁場なので、当該システムは自動化でき、汚染問題のないウイルス量試験のための携帯可能で且つ信頼性のある機器の構築が可能である。従来のシステムはHIVウイルスRNAのサンプル精製について実証されていないが、プラットフォームは、他の核酸試験及び免疫アッセイ、及びその他の注目の生体分子又は非生体分子の検出まで容易に拡張できる。
【0075】
本発明の実施態様は、単一機器におけるサンプル精製及び分析アッセイを行うために使用される装置を提供する。ある典型的な実施態様によれば(例えば実施例1を参照されたい)、RNAの捕捉のための固相としての磁性粒子の使用、その後、増幅及び検出を行うためのRNAの精製及び放出が必要である。
【0076】
従来の装置は固相に接触する溶液を交換することによりアッセイを行う。当該固相は、マイクロタイターウェル、マイクロ粒子、又は充填カラムであってよい。固相が常磁性粒子(PMP)であっても、アッセイは典型的には、マイクロ粒子の磁気による捕捉、及び単一容器における溶液の交換により行われる。本発明の実施態様は、試験サンプル、及び水ベース又は水−アルコール混合物の洗浄バッファ、及び分析を行うためのバッファを保持するための多数のチャンバーを使用する。チャンバーにおける水ベースの溶液は、当該溶液と非混和性である親油性物質(例えば、ワックス又はオイル)により分離される。ある実施態様によれば、これはワックス物質及びウェルで例示される。異なるウェル中のワックスは、互いに接続し、ワックスチャネルを形成する(図1)。当該ワックスは、保存及び輸送のために固形化できる。アッセイの間、当該ワックスは溶解するとともに、PMPはワックス中で引き上げられ、且つワックスに通過させることにより、PMPを1の区画から次の区画に動かす。磁場は、PMPを動かし、且つ水ベースの溶液とワックスとの間の界面を通過させるのに必要とされる力を発生するために使用される。最大の力は、当該界面を通過する粒子を動かすために使用され、且つ柔軟な上部のプレートは、当該界面近傍の磁石に到達し、当該力を発生することを必要とする磁石の強度を低減するために使用される。
【0077】
流体の代わりにPMPを動かすことは、自動化処理装置におけるポンプ及びアスピレーターの必要性、及び液体を等分する訓練した技術者の必要性を排除する。ワックスの使用は、ポイントオブケア分析において使用される、単回使用試験カートリッジにおける区画間のバルブの必要性を排除する。それはまた、1のウェルから次のウェルへ持ち越される(キャリーオーバー)一定量の液体を低減することにより、1のチャンバーから次のチャンバーへ持ち越される一定量の阻害因子を低減させる。動かすために使用される力は磁石なので、このシステムは、完全に閉鎖することができ、PCR等の感度の高いアッセイにおいて主要な問題である汚染のリスクを有意に低減する。
【0078】
I.装置
上記の通り、本発明は、サンプル調製及び分析のための低コスト装置の作製及び使用を可能にする。ある実施態様によれば、当該装置は、単回使用又は多重回使用であり、且つ使い捨てできる。ある実施態様によれば、本装置は、複数のサンプル加工(例えば、サンプル調製及び/又は分析)ウェルを含んでなる、プラスチック(又はその他の物質)カートリッジを利用する。各々のウェルは、サンプル調製又は分析のための試薬を含んでなる。試薬の性質は、使用される特定のサンプル及び分析方法に依存する。ある実施態様によれば、カートリッジは化学的に不活性な任意の物質からなり、且つ十分な機械的強度を提供する。ある実施態様によれば、カートリッジは、蒸気バリアの目的でアルミニウム層を、及び試薬と接触する不活性ポリマーを含んでなる、ホイル積層板を使用して構築される。RNAの精製及び分析を必要とする実施態様(例えば、ウイルス検出又は量アッセイ)によれば、カートリッジはRNA及びRNAseを含まない。当該技術分野で既知の滅菌法を、使用前にカートリッジを滅菌するために利用できる。
【0079】
本発明の実施態様のカートリッジは、サンプル加工チャンバーを分離する物質で覆われる。ある実施態様によれば、当該物質は、相転移特性を有する任意の親油性物質であり、且つサンプル調製及び分析のための試薬、及び増幅及び検出を干渉する可能性のあるサンプル中の物質とは非混和である。ある実施態様によれば、当該物質はワックスである。ある実施態様によれば、当該ワックスは、室温で液体である。その他の実施態様によれば、当該ワックスは、室温で固形であり、反応に適する温度で液体である。その他の実施態様によれば、親油性物質はオイルである。当該親油性物質を、使用温度、サイズ排除、安定性等の点で、注目の特定の分子との使用に適するように選択してよい。
【0080】
ある実施態様によれば、親油性物質は、サンプル加工チャンバーを分離する。その他の実施態様によれば、親油性物質は、チャンバー間に置かれるが、チャンバー間の物理的バリアを形成しない。かかる実施態様によれば、当該サンプルは、親油性物質を通過する前又は後に、空気又はその他の試薬を通過してよい。
【0081】
本発明は、特定の親油性物質に限定されない。ある実施態様によれば、親油性物質は、水及びアルコールに非混和性であり、水に対して低溶解性を示し(例えば、ppm)、化学的に不活性であり、アッセイプロセス進行(processing)に適合する融点及び沸点を有し(例えば、パーフルオロヘキサンは56℃の沸点を有する)、水に対する比重を有し(例えば、水に対する浮遊又は沈殿)、低膨張率を有し、且つ50℃で長期間安定である(例えば、数週間、数ヶ月、又は数年)
【0082】
本発明の実施態様においての使用が見出される市販の親油性物質には、限定するものではないが、Chill−Out14ワックス(MJResearch)、IGI1070A等のパラフィンワックス、IGI Micosere5788A等の蝋ワックス、熱融解接着剤、アタクチックポリプロピレン、及びポリオレフィン化合物、石油ワックス、及び歯科用ワックスがある。
【0083】
他の実施態様によれば、天然ワックス、例えば、動物ワックス(例えば、密ろう、ラノリン、又は獣脂)、植物ワックス(例えば、カルナバ、カンデリラ(candelilla)、ダイズ)、又は化石もしくは土(例えば、セレシン又はモンタン)又は石油(例えば、パラフィン又は微結晶)ワックス等の鉱物ワックスを利用する。さらに他の実施態様によれば、合成(人工)ワックス、例えば、エチレンポリマー(例えば、ポリエチレン又はポリオール エーテル−エステル)、塩素化ナフタレン、又は炭化水素型ワックス(例えば、Fischer−Tropsch)を利用する。
【0084】
ある実施態様によれば、鉱物オイル、パラフィンオイル、シリコンオイル、フルオロシリコン、フルオロカーボンオイル(例えば、Fluorinert FC−40、3M製)、パーフルオロカーボン流体(例えば、Flutec(登録商標)、F2Chemicals製)、パーフルオロデカリン(例えば、P9900、Aldrich製、FlutecPP6、FluoroMed APF−140HP)、パーフルオロパーヒドロフェナントレン(例えば、FluoroMed APF−215M)、又はパーフルオロオクチルブロミド(例えば、FluoroMed APF−PFOB)を利用する。
【0085】
追加のバリア物質には、限定するものではないが、1,4−ジオキサン、アセトニトリル、酢酸エチル、tert−ブタノール、シクロヘキサン、塩化メチレン、tert−アミルアルコール、tert−ブチルメチルエーテル、酢酸ブチル、ヘキサノール、ニトロベンゼン、トルエン、オクタノール、オクタン、炭酸プロピレン、及びテトラメチレンスルホンがある(例えば、Chin等、Biotechnology and Bioengineering 44:140 (1994)を参照されたい;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0086】
さらなる実施態様によれば、イオン性液体(例えば、BMIM[PF6]、BMIM[Tf2N]及びOMA[Tf2N]、ここで、BMIM−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、PF6=1−n−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、Tf2N=ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、及びOMA=メチルトリオクチルアンモニウム)、をバリア物質として利用する。
【0087】
さらに他の実施態様によれば、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート ECOENG(商標)21M、1−エチル−3−ヒドロキイメチルピリジニウムエチルスルフェート、ブチルメチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ECOENG(商標)212、又はECOENG(商標)1111P(全て、Solvent Innovationsから購入可能)をバリア物質として利用する。
【0088】
装置の様々な区画において提供される試薬は、サンプル調製及び分析を行うための任意の試薬でよい。例としては、限定するものではないが、細胞溶解バッファ、洗浄バッファ、アフィニティ試薬、溶出バッファ、及び生物アッセイのための反応構成要素がある。本発明の装置は、様々な生体分子の精製に適し、当該生体分子には、限定するものではないが、核酸(例えば、RNA、ゲノムDNA、オリゴヌクレオチド等)、タンパク質(例えば、ペプチド、ペプチド断片、オリゴマータンパク質、タンパク質複合体、膜タンパク質等)、及び抗体がある。本発明の装置は、多くの生物アッセイの実施に適し、生物アッセイには、限定するものではないが、RNA又はDNAの増幅(例えば、PCR、TMA、NASBA)、核酸検出(例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ)、及び免疫学的検定がある。
【0089】
ある実施態様によれば、装置には、サンプルを装置の1の区画から次の区画へ輸送ための構成要素が含まれる。ある実施態様によれば、サンプルはが磁性ビーズと結合すると、ここで輸送構成要素は磁石である。他の実施態様によれば、当該輸送構成要素が、サンプルを輸送するための電流を発生する。さらに別の実施態様によれば、遠心力を利用してサンプルを輸送し、且つ当該輸送構成要素が、かかる力を発生させる(例えば、装置の動きにより)。他の実施態様によれば、機械的に介入することなく流体を動かすように、水より大きい比重を有する流体を使用する。
【0090】
ある実施態様によれば、装置には、標識した、又はそうでない場合は存在生物サンプル又はアッセイ産物を検出する検出構成要素を含む。例としては、限定するものではないが、分光光度計、質量分析、NMR,顕微鏡等がある。ある実施態様によれば、産物を、装置の最終区画から直接的に読み取る(例えば、顕微鏡のウインドウを用いて)。他の実施態様によれば、産物を、検出のための装置から除去する(例えば、装置の自動化構成要素を用いて)。
【0091】
本発明の実施態様は、さらに、反応因子の混合を阻止するが、微粒子を交差できる(例えば、磁性粒子は磁石により輸送される)親油性物質の「壁」により分離される反応因子の流体チャンバー(例えば、垂直カラム)を含んでなる装置を提供する。
【0092】
ある実施態様によれば、装置及びその使用は自動化される。自動化システムは、サンプルの精製及び分析のための装置、当該装置でサンプルを移動させる輸送構成要素、及びこのプロセス(例えば、予備加工試薬及びサンプル輸送、又は事後分析検出又はさらなる解析構成要素)の自動化のために必要であるか、十分であるか、もしくは有用である任意の追加の構成要素を含んでなる。磁性輸送が利用されるある実施態様によれば、輸送構成要素は、装置のチャンバー間を動く磁石を含んでなる。他の実施態様によれば、装置は、固定磁石又はその他の輸送装置と相対的に動く。
【0093】
II.方法
上記の通り、本発明は、サンプル調製及び分析装置、及び当該装置の使用方法を提供する。
【0094】
A.サンプル
精製及び/又は分析のための所望の物質を含有するとみられる任意のサンプルは、開示の方法により検査できる。ある実施態様によれば、サンプルは生物サンプルである。かかるサンプルは、細胞(例えば、ウイルス感染しているとみられる細胞)、組織(例えば、生検サンプル)、血液、尿、精液、又はその一部(例えば、血漿、血清、尿上清、尿細胞ペレット又は前立腺細胞)であってよく、これらは患者又はその他の生物物質の供給源、例えば、解剖検体又は法医学物質から入手してよい。
【0095】
サンプルを装置と接触させる前に、又は装置の構成要素もしくは自動化システムとして、サンプルを加工し、所望の分子のためのサンプルを単離するか、又は富化してよい。標準的な実験操作を用いる様々な技術は、例えば、遠心分離、免疫捕捉(immunocapture)、細胞溶解、及び核酸標的捕捉等の目的のために使用してよい。
【0096】
他の実施態様によれば、本発明の実施態様の方法を利用し、無傷細胞(例えば、原核又は真核細胞)を精製及び/又は分析する。
【0097】
B.精製方法
ある実施態様によれば、本発明の装置を、サンプル調製及び精製において利用する。任意の好適な精製のための方法は、限定するものでないが、標的捕捉、洗浄、沈殿等を利用する。ある実施態様によれば、サンプル精製は、装置において完全に行われ、且つ任意の追加の精製ステップを必要としない。精製は、1以上の反応チャンバーにおいて起こってよい。これは、精製の複雑性を低減するとともにコストを低減させる。当業者は、特定の精製方法は、標的生物サンプルの性質によることを理解する。
【0098】
C.改変/分析/検出
精製サンプルを、任意の好適な方法を用いて検出してもよく、限定するものではないが、例えば、本明細書に記載される方法がある。核酸及びタンパク質等の生体物質のための例示的な技術を以下に記載する。生体分子又は非生体分子に、所望の通りに、又は必要に応じて、他の技術を適用してもよい。
【0099】
i.核酸検出
核酸改変/分析/検出方法の例には、限定するものではないが、核酸配列決定、核酸ハイブリダイゼーション、及び核酸増幅がある。核酸配列決定技術の例示的な非限定的例には、限定するものではないが、チェーンターミネーター(Sanger)配列決定、及びダイターミネーター配列決定がある。当該技術分野において通常の技能を有する者は、RNAは細胞において安定性が低く、且つ実験的なヌクレアーゼ攻撃を受け易いので、通常配列決定前に、DNAに逆転写されることを認識するはずである。核酸ハイブリダイゼーション技術の例示的な非限定的例には、限定するものではないが、インサイチュ・ハイブリダイゼーション(ISH)、マイクロアレイ、及びサザンブロットもしくはノーザンブロットがある。核酸を、検出前又は検出と同時に増幅してもよい。
【0100】
核酸増幅技術の例示的な非限定的例には、限定するものではないが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、転写媒介増幅(TMA)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、ストランド置換増幅(SDA)、及び核酸配列ベース増幅(NASBA)がある。当該技術分野における通常の知識を有する者は、特定の増幅技術(例えば、PCR)では、増幅前にRNAをDNAに逆転写する(例えば、RT−PCR)ことが必要であり、その他の増幅技術はRNAを直接増幅する(例えば、TMA及びNASBA)ことを認識するはずである。
【0101】
通常PCRとよばれるポリメラーゼ連鎖反応(米国特許第4,683,195号、第4,683,202号、第4,800,159号及び第4,965,188号、各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、変性、逆ストランドへのプライマー対のアニーリング、及びプライマー伸長の多サイクルを用い、標的核酸配列のコピー数を指数関数的に増加させる。RT−PCRと呼ばれる変形型において、逆転写(RT)を使用し、mRNAから相補的DNA(cDNA)を作製し、その後cDNAをPCRにより増幅し、DNAの多重コピーを作り出す。その他の様々なPCRの置換については、例えば、米国特許第4,683,195号、第4,683,202号及び第4,800,159号; Mullis等, Meth.Enzymol.155:335(1987);及びMurakawa等、DNA7:287(1988)、各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0102】
通常TMAと呼ばれる転写媒介増幅(米国特許第5,480,784号及び第5,399,491号、各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、標的配列の多重RNAコピーがさらなるコピーを自己触媒的に生み出す、実質的に一定な温度、イオン強度及びpHの条件下で、標的核酸配列の多重コピーを自己触媒的に合成する。例えば、米国特許第5,399,491号及び第5,824,518号を参照されたい(各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。米国特許公開第20060046265号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載される変形型において、TMAは、ブロック部位、停止部位、及びその他の改変部位を任意に組み込み、TMAプロセス感度及び精度を向上させる。
【0103】
通常LCRと呼ばれるリガーゼ連鎖反応(Weiss, R.,Science 254:1292(1991)、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、標的核酸の隣接領域にハイブリダイズする、2セットの相補的DNAオリゴヌクレオチドを使用する。DNAオリゴヌクレオチドは、熱的変性、ハイブリダイゼーション、及びライゲーションのサイクルの反復サイクルにおいてDNAリガーゼにより共有結合され、検出可能な二本鎖がライゲーションされたオリゴヌクレオチド産物を作製する。
【0104】
通常SDAと呼ばれるストランド置換増幅(Walker, G.等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:392−396(1992);米国特許第5,270,184号及び第5,455,166号、各々その全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、標的配列の逆ストランドに対するプライマー配列対のアニーリング、二重ヘミホスホロチオエート化プライマー伸長産物を作製するdNTPαSの存在下でのプライマー伸長、半改変制限エンドヌクレアーゼ認識部位のエンドヌクレアーゼ媒介ニック挿入、及び存在するストランドを置換するとともに、次の回のプライマーアニーリング、ニック挿入及びストランド置換のためのストランドを作り出す、ニックの3'末端からのポリメラーゼ媒介プライマー伸長のサイクルを使用し、産物の幾何級数的増幅をもたらす。好熱SDA(tSDA)は、基本的に同じ方法において、より高温で、好熱エンドヌクレアーゼ及びポリメラーゼを使用する(欧州特許第0 684 315)。
【0105】
その他の増幅方法には、例えば:通常NASBAと呼ばれる核酸配列ベース増幅(米国特許第5,130,238号、その全体が参照により本明細書に組み込まれる);通常Qβレプリカーゼと呼ばれるRNAレプリカーゼを使用し、プローブ分子それ自身を増幅するもの(Lizardi等、BioTechnol.6:1197(1988)、その全体が参照により組み込まれる);転写ベース増幅法(Kwoh等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:1173(1989));及び自家持続配列複製法(Guatelli等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA87:1874(1990)、各々その全体が参照により本明細書に組み込まれる)がある。既知の増幅法のさらなる議論については、David H., “In Vitro Nucleic Acid Amplification Techniques” in Diagnostic Medical Microbiology: Principles and Applications (Persing et al., Eds.), pp. 51-87 (American Society for Microbiology, Washington, DC (1993))を参照されたい。
【0106】
非増幅又は増幅標的核酸は、任意の従来の手法により検出可能である。例えば、標的mRNAは、検出可能に標識されたプローブとのハイブリダイゼーション、及び得られたハイブリッドの測定により検出できる。検出法の例示的な非限定的例を以下に記載する。
【0107】
ある例示的な検出法である、ハイブリダイゼーション保護アッセイ(Hybridization Protection Assay)(HPA)は、標的配列への化学発光オリゴヌクレオチドプローブ(例えば、アクリジニウムエステル標識(AE)プローブ)のハイブリダイズ、未ハイブリダイズプローブ上に存在する化学発光標識の選択的加水分解、及びルミノメーターに残存するプローブから発される化学発酵の測定を必要とする。例えば、米国特許第5,283,174号、及びNorman C.Nelson等、Nonisotopic Probing,Blotting,and Sequencing,ch.17(Larry J.Kricka ed.,2d ed.1995を参照されたく、各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0108】
リアルタイムにおける増幅プロセスの定量的評価のための別の例示的検出法を提供する。「リアルタイム」における増幅プロセスの評価には、増幅反応の間の、連続的か、又は周期的のいずれかで、反応混合物におけるアンプリコンの量を決定し、且つ当該決定値を使用し、サンプルに初めから存在する標的配列の量を計算することが必要である。リアルタイム増幅に基づく、サンプルに存在する初期の標的配列の量の決定のための様々な方法が周知である。これらには、米国特許6,303,305号及び第6,541,205号(各々、その全体が参照により組み込まれる)において開示された方法がある。リアルタイム増幅に基づくものではないが、サンプルに初めから存在する標的配列の量を決定するための別の方法は、米国特許第5,710,029号に開示され、その全体が参照により組み込まれる。
【0109】
増幅産物は、そのほとんどがステムループ構造を有する様々なハイブリダイゼーションプローブの使用を介し、リアルタイムで検出できる。かかる自己ハイブリダイズするプローブは、プローブが自己ハイブリダイズした状態であるか、標的配列へのハイブリダイゼーションを介して変更された状態であるかにより異なる検出可能なシグナルを発するように標識される。非限定的な例によれば、「分子トーチ(torches)」は、領域への結合(例えば、非ヌクレオチドリンカー)により連結され、且つ既定のハイブリダイゼーションアッセイ条件下で互いにハイブリダイズする、自己相補性の明確な領域(「標的結合ドメイン」及び「標的閉鎖(closing)ドメイン」と呼ばれる)を含む、一種の自己ハイブリダイズプローブである。好ましい実施態様によれば、分子トーチは、長さが1〜約20塩基であり、ストランド置換条件下で増幅反応に存在する標的配列へのハイブリダイゼーションを受け易い一本鎖塩基領域を含む。標的結合ドメインに存在する一本鎖領域に結合し、且つ標的クローニングドメインの全て又は一部を置換する標的配列が存在する場合を除いて、ストランド置換条件下で、分子トーチの完全に相補的であっても部分的に相補的であってもよい2つの相補的領域のハイブリダイゼーションが好まれる。分子トーチの標的結合ドメイン及び標的停止ドメインには、分子トーチが標的配列にハイブリダイズした場合よりも、分子トーチが自己ハイブリダイズした場合に、異なるシグナルを発生させ、それにより、未ハイブリダイズ分子トーチの存在下、試験サンプルにおけるプローブ:標的二重鎖の検出が可能になるように置かれる、検出可能な標識又は相互作用する標識の対がある。分子トーチ及び多種類の相互作用する標識の対は既知である(例えば、米国特許第6,534,274号、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0110】
自己相補性を有するプローブの別の例は、「分子ビーコン」である(例えば、米国特許第5,925,517号及び第6,150,097号を参照されたい、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。分子ビーコンには、標的相補的配列を有する核酸分子、増幅反応に存在する標的配列の不存在下、閉鎖コンフォメーションにおいてプローブを保持するアフィニティ対(又は核酸アーム)、及び当該プローブが閉鎖コンフォメーション内にある場合相互作用する標的対がある。標的核酸と標的相補的配列のハイブリダイゼーションは、前記アフィニティ対のメンバーを分離し、それによりプローブを開放コンフォメーションに変える。この開放コンフォメーションへの変化は、例えば蛍光色素分子及びクエンチャー(例えば、DABCYL及びEDANS)などの標識対の相互作用の減少により検出可能である。
【0111】
他の自己ハイブリダイゼーションプローブは、当業者に周知である。非限定的な例によれば、相互作用標識を有するプローブ結合対(例えば、米国特許第5,928,862号を参照されたい、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、本明細書に開示の組成物及び方法における使用に適合させることができる。一塩基変異多型(SNP)を検出するのに使用されるプローブシステムを使用してもよい。さらなる検出システムには、「分子スイッチ」がある(例えば、米国特許公開第20050042638号を参照されたい、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。その他のプローブ、例えば、インターカレートする色素及び/又は蛍光色素を含んでなるものも、本明細書に開示される方法における増幅産物の検出に有用である(例えば、米国特許第5,814,447号を参照されたい、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0112】
ある実施態様によれば、検出法は定性的である(例えば、特定の核酸の存在下、又は不存在下)。他の実施態様によれば、これらは定量的である(例えば、ウイルス量)。
【0113】
ii.タンパク質検出
タンパク質検出の例には、限定するものではないが、酵素アッセイ、直接可視化、及び免疫学的検定がある。ある実施態様によれば、免疫学的検定は精製タンパク質に抗体を利用する。かかる抗体は、ポリクローナル又はモノクローナル、キメラ、ヒト化、一本鎖又はFab断片であってよく、これらは標識されていても、未標識でもよく、これらの全ては、周知の手法及び標準的な実験室操作を用いて作製できる。例えば、Burns,ed.,Immunochemical Protocols,3rd ed.,HumanaPress(2005);Harlow and Lane,Antiboies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory(1988);Kozbor等、Immnology Today 4:72(1983);Kohler and Milstein,Nature 256:495(1975)を参照されたい。ある実施態様によれば、市販の抗体を利用する。
【0114】
D.データ解析
ある実施態様によれば、精製及び検出の後、コンピュータベース解析プログラムを使用し、検出アッセイにより発生した生データ(例えば、所与の標的分子の存在、不存在、又は量)を、臨床医及び研究者にとって予測となる値のデータに翻訳する。ある実施態様によれば、ソフトウェアプログラムを、自動化装置に統合させる。他の実施態様によれば、離れて設置される。臨床医は、任意の好適な手段を用いてデータを評価できる。すなわち、ある好ましい実施態様によれば、本発明は、遺伝子学又は分子生物学の教育を受けていないような臨床医が生データを理解する必要がない、というさらなる利益を提供する。当該データはその最も有用な状態で臨床医に直接提示される。そして、臨床医は、対象のケアを最適化するために、当該情報をすぐに利用できる。
【0115】
アッセイを行う研究所、医療てきな個人の提供情報、及び対象からの、及びこれらへの情報を、受け取り、加工し、且つ送信することができる任意の方法を使用できる。例えば、本発明のある実施態様によれば、サンプル(例えば、生検又は血清又は尿サンプル)は、対象から得られ、且つ生データを生み出す世界の任意の場所(例えば、当該対象が居住する国か、又は当該情報が最終的に使用される国とは異なる国)に設置されるサービス(例えば、医療施設での臨床的研究所、ゲノム増殖ビジネス等)に供される。サンプルが組織又はその他の生物サンプルである場合、対象は、医療センターを訪れ、サンプルを取ってもらい、そしてプロファイリングセンターに送ってもらってもよいし、又は対象は、サンプルそれ自体を収集し(例えば、尿サンプル)、且つそれを直接プロファイリングセンターに送ってもよい。サンプルが事前に決定された生物情報を含む場合、当該情報は、対象により当該プロファイリングサービスに直接送られてもよい(例えば、当該情報を含む情報カードを、コンピュータ及び当該変換電子伝達システムを使用してプロファイリングセンターのコンピュータに送信されたデータでスキャンしてもよい)。プロファイリングサービスで受信されると、サンプルは加工され、そして特に対象に所望される診断又は予後情報である、プロファイル(すなわち、表現データ)が作製される。
【0116】
その後プロファイルデータは、処置する臨床医による解釈に適する形式で準備される。例えば、生データを提供するよりも、準備した形式では、特定の治療選択肢を薦めるとともに、対象への診断又はリスク評価(例えば、ウイルス量レベル)を表すことができる。データは、任意の好適な方法で臨床医に表示されてよい。例えば、ある実施態様によれば、当該プロファイリングサービスは、(例えばポイントオブケアにおいて)臨床医のために印刷されるか、又はコンピュータモニター上で臨床医に対して表示される可能性がある報告書を作成する。
【0117】
ある実施態様によれば、当該情報は、ポイントオブケア又は地域の施設で最初に解析される。その後当該生データは、さらなる解析のため、及び/又は臨床医もしくは患者のために生データを有用な情報に変換するために、中央加工施設に送られる。中央加工施設は、プライバシー(全てのデータは、均一なセキュリティプロトコールで中央施設に保存される)、スピード、及びデータ解析の均一性の点で利点を提供する。その後、当該中央加工施設は、その後の対象の治療で、当該データの結果を制御できる。例えば、電子伝達システムを用い、中央施設は、データを臨床医、対象、又は研究者に提供できる。
【0118】
ある実施態様によれば、当該対象は、電子伝達システムを用いて当該データに直接アクセスできる。当該対象は、結果に基づき、さらなる介入又はカウンセリングを選択できる。ある実施態様によれば、当該データを研究的使用のために使用する。例えば、当該データを、特定の症状もしくは疾患段階の有用な指標としてマーカーの内包又は排出をさらに最適化するために使用してもよい。
【0119】
E.組成物&キット
ある実施態様によれば、本発明のシステム及び/又は装置を、精製及び分析を行うために必要な全ての構成要素を含んだ状態で輸送する(例えば、装置に予備ロードされる)。その他の実施態様によれば、キットに一緒に梱包された別のベッセルに、追加の反応構成要素が供給される。
【0120】
これらの組成物の任意のものは、単独であっても、本明細書に開示されるかもしくは当該技術分野において周知のその他の組成物とのくみあわせであってもよいが、キットの状態で提供されてよい。キットは、適切なコントロール及び/又は検出試薬をさらに含んでよい。本明細書に記載の任意の方法においての使用が見出される、任意の1又は複数の試薬を、キットにおいて提供してよい。
【0121】
実施例
以下の実施例は、特定の好ましい、本明細書に記載の組成物及び方法の実施態様及び態様を、実証且つ例示するために提供されるが、請求される発明の範囲を限定すると解されるべきではない。
【実施例1】
【0122】
本実施例は、精製及び検出のために、RNAを捕捉するために磁力を用いる常磁性マイクロ粒子の移動、その後の精製、及びRNAの放出について記載する。例示的親油性物質として、様々な洗浄バッファ間にバリアを形成する間、常磁性マイクロ粒子の移動を可能にする、様々なチャンバー間のバルブとして、液体ワックスの使用が示されている。
【0123】
(a)カートリッジの製作
アッセイのための個別のカートリッジを、滅菌され清潔な丸底ポリスチレン96ウェルプレートを機械加工することにより調製した(図1a)。ワックスチャネルを、FDA準拠1/16”ポリプロピレンの平面バックシートを用いて作った。ワックスチャネルを製作するため、低界面エネルギー物質に適する9495LEアクリル接着剤転写テープ(3M、St.Paul,MN)を、正確な寸法で切断されたプラスチックの長方形のピースの両サイドに接着させた。長方形チャネルをプラスチックピースから引き伸ばして作製した。当該引き伸ばしプロセスも、接着を切断した。ポリプロピレンの熱伝導性の悪さ及び低融点の点から、それを機械加工する場合は特別の配慮を必要とする。チャネルの機械加工の際に形成するバリを、かみそりの刃を用いて除去した。頂部のプレートも、ポリプロピレンシートから作製した。当該頂部のプレートに、流体を導入させる微小な穴を開けた。
【0124】
ポリプロピレンを頂部プレート及びチャネルに使用したのは、その優れた化学的耐性のためである。飽和オレフィン鎖は、ほとんどのオイル及び溶媒、並びに水性の化学物質、セッケン、及び中程度の酸及び塩基に対する耐性を発揮する。ポリプロピレンの強度特性を有する他の物質は、ポリプロピレンの化学的耐性に適合する。また、ポリプロピレンの硬度、高光沢な面は、カートリッジの流れの滅菌を干渉する可能性のある累積の懸念があり、試験の間中、RNAフリー環境を維持することが好ましい場合、環境を所望の状態にする。市販のプラスチック部分を、ガンマ線を放射して滅菌する場合、実験室環境で容易に行うことができるプラスチック部分滅菌のためにプロトコールを開発した。プレートの機械加工の前に、試験のために使用されるウェルを接着テープを用いて封鎖した。機械加工の完了後、当該カートリッジを以下のプロトコールを用いて洗浄した。
【0125】
a.水で2回洗浄
b.100%エチルアルコールで2回洗浄
c.RNaseZap(登録商標)RNase Decontamination Solution(Ambion, Austin, TX)で洗浄
d.水で2回洗浄
洗浄完了後、カートリッジを50℃で一晩乾燥させた。
【0126】
RNA精製アッセイ:
当該アッセイを、106コピー数/mL Armored RAN(Abbot Molecular,Des Plaines,IL)を含有する400μLの血漿サンプルを用いて行った。試験サンプルとして、ネイキッドRNAの代わりにAmored RNAを使用するのは、それがリボヌクレアーゼ耐性であるとともに、RNAのコピー数を容易に定量化できるためである。扱いを容易にするために、それは非感染性でもある。
【0127】
血漿サンプルからRNAを精製するために、MagMAX Viral RNA Isolation Kit(Ambion,Austin、TX)を使用した。この方法において、チオシアン酸グアジニウムベースの溶液の従来方法を用いて細胞を分離した。これは、ウイルスRNAを同時に放出し、且つサンプルマトリクスにおいてヌクレアーゼを失活させる。その後、RNAは、カオトロピック剤及びアルコールの存在下、シリカ被覆磁性ビーズに結合する。その後、当該ビーズを洗浄し、低塩濃度のバッファ水溶液に溶出する。
【0128】
溶解/結合溶液及びビーズミックス:担体RNAの調製物を、表1の溶解/結合溶液濃縮物に添加し、短時間混合する。その後、100%イソプロパノールを添加する。ビーズミックスを調製するために、全ての反応で、10μLのRNA結合ビーズを10μLの溶解促進剤と混合する。当該ビーズを分ける前にボルテックスする。
【0129】
【表1】
【0130】
カートリッジの調製
802μLの溶解溶液を、armored RNAを含有する400μLの血漿サンプルとともに、マイクロフュージチューブに添加した。サンプルの添加時、エアロゾル形成による汚染を防ぐため、溶液にピペットチップをわずかに入れるべきである。溶液を30秒穏やかにボルテックス混合し、その後20μLのビーズミックスを当該チューブに添加した。ウイルスを十分に溶解し、且つ磁性ビーズにRNAが結合するボルテックス混合で、溶液を4分間穏やかにボルテックス混合した。磁性スタンド上のマイクロフュージチューブから離すことにより、ビーズを捕捉する。600μLの溶液を除去し、破棄した。当該ビーズを222μLの溶液を残した状態でボルテックス混合する。当該溶液をカートリッジの第一チャンバーに分ける。イソプロパノールを含有する150μLの洗浄バッファ1を、チャンバー2及び3にそれぞれ添加する。エタノールを含有する225μLの洗浄バッファを、チャンバー4及び5にそれぞれ添加する。50μLの溶出バッファを、チャンバー6に添加する。
【0131】
ここで、ワックスチャネル(図1−b)を、ワックスチャネルに貼り付けられた接着転写テープの紙ラミネートをはがし、且つ当該ワックスチャネルをカートリッジに適用することにより、カートリッジに接着させる。その後、ワックスチャネルに頂部プレートを接着させ同様のプロセスを行う。その後、Chill-Out Liquid Wax(Bio-Rad Loboratories,Hercules,CA)を、頂部プレートに穿孔した穴を介して、カートリッジ内にエアギャップが残らくなるまで、カートリッジにピペットで入れる。図1は、異なるバッファ及びワックスでカートリッジが完全に満たされた図を示す。
【0132】
サンプル精製プロトコール
(a)カートリッジにおける精製。サンプル精製プロセスにおいて、様々な精製ステップ、例えば集団として堆積させるビーズの磁気分離、バッファからワックスへの粒子の移動、ワックスにおける粒子の移動、次のバッファへの粒子の再導入、及びバッファにおける粒子のかき混ぜ(表2中のサンプルC1)を行うために磁力を用いる(図2)。当該磁力は、永久磁石により発生する。粒子の集団を、チャンバー1の溶解バッファから、チャンバー6の溶出バッファに、チャンバー2〜5の様々な洗浄バッファを通して移動させた。粒子を、各洗浄バッファ中に30秒置き、溶出バッファに10分置いた。これらの時間の間、粒子をバッファ中に磁力によって移動させた。
【0133】
(b)マイクロフュージチューブにおける精製。サンプル精製を、Ambion MagMax キットを用い、同様にマイクロフュージチューブ中で行った。この場合、溶解バッファ及びRNA結合PMPを含有するマイクロフュージチューブを、PMOを捕捉するよう磁性スタンドに置いた。捕捉が完了すると、RNA結合ビーズは、当該磁性スタンドにおける磁石に対してペレットを形成した。ビーズを乱すことなく上清を吸引した。当該チューブを磁性スタンドから離し、洗浄バッファ1をそれに添加した。溶液を30秒かき混ぜた。同様の捕捉及び吸引プロセスを行った。ビーズを洗浄バッファ1で2回、及び洗浄バッファ2で2回洗浄した。この研究においては、洗浄バッファの量の異なる2つの組み合わせを使用した。(i)300μLの洗浄バッファ1及び450μLの洗浄バッファ2(表2中のサンプルC2)、(ii)150μLの洗浄バッファ1及び225μLの洗浄バッファ2(表2中のサンプルC3)。4つの洗浄ステップの後、ビーズを室温で開放しておき、アルコールを蒸発させた。アルコールがPCRを阻害するので、チューブの残存アルコールを調べた。50μLの溶出バッファを添加し、サンプルを4分間勢いよくかき混ぜた。各々において、溶出後に粒子を捕捉し、そして、12.5μLのンサンプルをAbbot Real time Assayに使用した。
【0134】
分析の結果及びデータ
以下に示す表は、3つのサンプルタイプについての平均Ct値を示す。
【0135】
【表2】
【0136】
データから、粒子を、ワックスを介して動かす場合、RNA精製において2.8倍(2^は、Ct差を意味する)の改善があることが示される。これは、洗浄バッファ量の低減の代わりに発生する。洗浄バッファが同様の量である結果と比較すると、RNA精製において30倍の改善がある。サンプル精製のマニュアルアプローチにおいては、大量の溶液が粒子に付着し、吸引できない。したがって、各洗浄ステップが溶解溶液から運搬される阻害剤を希釈させるが、多数回の洗浄、及び全ての阻害因子を完全に希釈する洗浄バッファ量が必要となるはずである。一方、粒子輸送の媒体としてワックスを用いると、運搬される液体量は、非常に少なく、Ctの改善をもたらす。
【0137】
RT−PCRに与えるアルコールの影響
アルコールはPCRの阻害剤として知られる。したがって、Ambionサンプル精製キットは、RNAの溶出前に空気中で粒子を乾燥する必要がある。本明細書に記載する新規なプロトコールによれば、乾燥ステップは、完全に除去される。さらに、これは、1のチャンバーから次のチャンバーへ運搬される流体量が最小限であることを示す。容易な自動化を可能とするため、それは、サンプル精製プロセスも非常に単純化する。より少量の阻害因子の存在はまた、より少量の溶出バッファにおける溶出を可能にし、同時に、サーマルサイクルスピードを加速し、それにより試験を行うために必要な時間を低減する。
【実施例2】
【0138】
自動化
高額でない自動化サンプル精製システムは、流体の代わりに磁性粒子を移動することより開発される。長期間の保存にわたり流体を保持できるカートリッジが設計される。これは、当該分野におけるピペッティングのようなものをまさに取り除く。この新規なプラットフォームにおけるアッセイの最適化は、サンプル精製プロセスの改善、且つシステムのより良好な理解の進行を可能にする。精製を行うための自動化システムは、高度に訓練した実験技術者を必要とすることなく、ウイルス量の測定を可能にする。閉鎖カートリッジと、自動化装置との組み合わせは、HIVウイルス量のためだけでなく、交差汚染のリスクを低減しながら安価で便利な手法で全ての種類の核酸の試験のための、ポイントオブケアプラットフォームを創作するはずである。
【0139】
システムを最適化するための実験には、以下が含まれる。
a 保存のための化学物質を保持し、且つ反応を行うためにホイルラミネートを用いてカートリッジを製作する。
b 新たなカートリッジにおいてサンプル精製プロトコールを最適化する。
c 堅固な自動化システムを組立て、人手の必要性を除去する。
【0140】
a.サンプル精製を行うための試作品カートリッジの製作
この製作には2つの部分がある。(a)カートリッジを作製するために使用される物質、(b)カートリッジそれ自身の設計。
【0141】
(a)物質。カートリッジを作製するために使用される物質は、好ましくは、(a)顕著な損失無く、長期間の保存にわたり液体を保持する蒸気バリア。(b)機械的強度;及び(c)溶液チュに存在する血液又は粒子に張り付かない化学的に不活性な表面。
【0142】
ポリスチレン又はポリプロピレンは、化学的に不活性であるため、化学アッセイの実施のための物質の選択であるが、これらは、長期間、試薬の保存に必要な蒸気バリアを提供しない。物質の蒸気バリアは、物質を介する水蒸気の通過の測定値である、水蒸気透過率(WVTR)について測定される。
【0143】
WVTR=Δw/ΔtA(gm-2s-1)、
式中、Δw/Δtは、移動の単位時間当たりの湿度損失の量(gs-1)であり、且つAは、湿度移動の暴露領域(m2)である。
【0144】
【表3】
【0145】
以下の表3は、いくつかのプラスチックとホイルラミネート(RP#26−1244、Rollprint,Addison,IL)のWVTRを示す。ホイルラミネートが、保存の間、試薬について優れた蒸気バリアを提供することが明白である。ホイルラミネートは、非常に安価であるという利益も追加される。ホイルラミネートから作製される単一カートリッジのコストは、数セントを超えないはずである。使用されるホイルラミネートの様々な層は、以下の図3に示される。
【0146】
ホイルラミネート(Rollprint Packaging Products,Addision,IL)は、試薬の保存のために理想的な、低WVTRの原因となる2mil アルミニウム層を含む。ポリエステル層は、アッセイの実施に適する、化学的に不活性且つ疎水性の表面を提供する。それはまた、当該ホイルを、別のホイル又はプラスチックのピースに熱融着させる。ナイロンの外表面は、アルミニウム表面を腐食から保護し、且つ当該ホイルラミネートへ機械的強度も提供する。ホイルラミネートは剛性がない。これは、硬い物質にそれを包装することにより克服できる。ホイルラミネートが、水蒸気に対して事実上不浸透性であるが、ホイルの2つの層間のシールは、不浸透性でなく、且つ蒸気の損失要因でもあることに留意すべきである。
【0147】
他の実施態様によれば、ポリプロピレン又はポリスチレンから作製される真空形成チャンバーを、96ウェルプレートと同様に使用する。ある実施態様によれば、蒸気バリアを提供するため、これは蒸着によりアルミめっきされる。
【0148】
(b)カートリッジの形状及びサイズ。チャンバーの形状は、粒子を移動させるために作用する様々な力、及び自動化を単純化するための必要性により支配されるが、チャンバーのサイズは、サンプル精製関連する化学により支配される。試作の設計は、3D Mechanical CADプログラム,Solidworks(Solidworks Corpowarion,Concerd,MA)を用いて行われる。現在使用される容量に基づくカートリッジの例は、図4に示される。化学又は自動化の必要性における変化は、チャンバーの形状及びサイズの変化に応じて調節される。
【0149】
(c)貼り直し可能な層及び頂部プレート:カートリッジの頂部プレートは、サーマルサイクリングの際に光学的読取をするために、好ましくは透明である。頂部プレートとホイルチャンバーとの間に置かれる貼り直し可能なホイルラミネート層は、図には示されていない。これは、プリンターインクカートリッジに類似する。皮(peel)の末端は、頂部プレートとワックス層との間に出てくる。これは、長期間保存に最適な蒸気バリアを提供する。固形ワックスは、当該シールの上下にある。下のワックスは、皮に張り付く試薬損失のリスクなく、皮を除去することを可能にする。試験の前に、皮を除去し、且つワックスを融解する。シール除去により創出される空洞のために形成される任意のエアギャップを除去するように、我々が圧迫できる頂部プレートを柔軟にすることができる。1のチャンバーから次のチャンバーに引っ張られると、粒子と接触することになるので、頂部プレートも化学的に不活性にすべきである。貼り直し可能なシールは、チャンバーに熱融着する。チャンバー間の距離は、適切な密封ができるように6mmが好ましいが、他の寸法を使用してもよい。この密封プロセスは、Rollprint Inc.で行われる。
【0150】
製作。アルミニウムホイルカートリッジの製作は、同じサイズのネガティブ・モールドに適合する、半球型のポジティブ・ヘッドを含んでなる、ピンチプレス装置を用いて行われる。ポジティブ・ヘッドと、ネガティブ・モールドとの間にホイルを押し付けることにより、当該ホイルがモールドの形状を確認するよう伸ばす。ラミネートの降伏強度及び伸長強度は、知られていないが、標準的な工業基準では、
(チャンバー作製後の最大面積)<(2×伸長前の面積)である。
【0151】
ワックスチャネル、カートリッジのための固体支持体、頂部プレートは、全て3M接着転写テープを用いて一緒に統合させた。数個の接着剤を試験した後に、これを選択したが、それは特に低界面エネルギー表面に対するその優れた接着特性による。当該接着剤は、レーザー切断され、GML(Vadnais Heights,MN)により正確なサイズにされる。アッセイ性能を向上させるサンプル精製プロトコールの最適化は、以下の通りである。
【0152】
アッセイは、Ambicon製のシリカ被覆PMPベースMagMaxキットを用いて行われる。当該キットプロトコールは、ビーズの沈殿及び流体からのピペッティング採取を必要とするアッセイ形成における最良の性能のために、最適化されている。ワックスを使用することは意図されていない。サンプル精製に与えるワックスの影響をさらに理解し、且つサンプル精製プロセスを最適化するために、以下の実験を行う。
【0153】
1.ワックスを介する水のキャリーオーバー:初期の実験に基づき、1のチャンバーから次のチャンバーへの水又はバッファのキャリーオーバーが、ワックスを介する粒子の移動で顕著に低減すると仮定した。これは、アルコールにより阻害されないことを示す上記の結果をある程度根拠にした。この仮定を確認するため、既知の濃度の蛍光色素、フルオレセインを水に溶解させる。この溶液に、既知数の粒子(Luminex フローサイトメーターで測定される)を添加する。その後、当該粒子を、ワックスを介して、既知容量のフルオレセイン不存在水に、磁力で移動させる。出発サンプル及び最終サンプルにおけるフルオレセインの濃度の測定時に、1のチャンバーから次のチャンバーへの持ち越される(キャリーオーバーされる)水の容量を定量的に推定できる(Va)。
【0154】
実験では、結果を比較するために使用される2つのコントロールを用いる。(a)フルオレセインの同一溶液から、水へ、ピックピンを用いて粒子を移動する。これはMaxwell又はKingfisher等の現在利用可能なシステムを表す。(b)フルオレセイン溶液を含有するマイクロフュージチューブ及び粒子を磁性スタンドに置き、その後、当該溶液を注意深くピペッティングすることにより回収する。フルオレセイン不存在水の固定量をその後これに添加する。
【0155】
精製性能における向上を、一のチャンバーから次のチャンバーにわたって運搬される流体の平均量を比較することにより定量する。サンプル操作による精製プロセスにおける変動を定量するために、分散を用いる。実験は、様々な粒子数、様々なサンプル初期容量、及び様々なフルオレセイン濃度で繰り返される。運ばれる液体容量は、ワックス中で動かされる粒子を含有する、液滴(V)の容量の割合Φである。
【0156】
(1−Φ)V=(4/3)πr3N
ΦV=Va
Φ=Va/(Va+4πr3N)
【0157】
上記の等式において、rは粒子の半径であり、Nは粒子の総数である。液滴の容量VはNに依存するので、液体ΦVの容量もNに依存する。ΦVがフルオレセイン溶液の初期容量に依存すると期待するのではなく、むしろフルオレセインの濃度に依存するはずである。この実験により、最適な洗浄ステップ及び量、又は必要な溶解バッファの量の決定が可能になる。
【0158】
2.最適な洗浄ステップの量及び数の選択。Ambionに推奨されるプロトコールは、マニュアルピペッティング工程のために最適化される。ワックスの使用は考慮されていない。したがって、当該プロトコールは、ワックスを使用して最適化する。PCRを阻害する、血液血漿に存在する阻害因子は具体的に知られていないが、大半の阻害因子による阻害は、濃度依存性であることは認められている。以前の実験から得られる結果は、流体の除去に与えるワックスの影響についての情報を提供する。ガイドスティックとしてそれを使用し、精製ステップ数を低減する。精製ステップ数の低減は、サンプル精製プロセスの複雑性を低減し、試験のコスト及び試験に必要な時間を低減する。阻害剤濃度の低減は、より少量の溶出バッファにおける溶出を可能にし、RNA濃度のさらなる増加、及びより速いサーマルサイクリングをもたらす。
【0159】
方法の感度は、その方法の許容性の下限と関連する。化学との関連で、検出下限値は、多くの場合、検出下限な正味の濃度又は量のことを言う。
【0160】
LODの決定
LODの計算は、専門家の学術団体間で異なり、且つ、アプリケーション間で異なるが、LODの定義は以下の通りである。
【0161】
LOD・(ブランクの平均)+K(sd)
ここで、ブランクの平均=アッセイに関連するブランク決定について与えられる平均値;K=所望の信頼水準に関連する被覆率;及びsd=ブランク決定の標準偏差。
【0162】
この計算は、ブランクコントロールが、典型的にPCR反応で使用される最高のサイクル数と同じ値を有するような、リアルタイム定量PCRと関連するLODの推定には適さない。さらに、当該アッセイが正しく行われれば、これらのブランクの値は、全て同じになるはずであり、且つそれらの分布が切断される、つまり、有用な標準偏差の計算を妨げている。
【0163】
科学文献に記載されるLODの従来的計算が直面する困難のいくつかを克服するため、時間の少なくとも95%で検出可能なPCR増幅産物を提供する、最低のコピー数としてLODを定義できる。これは、95%の確立でバックグラウンドノイズと区別できる最低のコピー数とも解釈できる。現在のRNA精製のためのAmbiconキット、及びRt−PCRのためのAbbot Real timeプロトコールを用いる、Rt−PCRアッセイは、1.0mlの血漿サンプル中、40コピー数のRNAのLODを有すると報告されている。好ましいアッセイは、500コピー数のRNAを検出する。すなわち、全てのプロトコールについて、アッセイの感度を、Ctに対するRNAのコピー数の希釈曲線を作ることにより測定する。所望のゴールは、一回の洗浄ステップもなく、溶解バッファから溶出バッファへ移ること、である。精製アッセイは、様々な洗浄ステップ数及び洗浄容量で行われる。
【0164】
3.ワックス融点
実施例1に記載される実験で使用されるワックスは、融点が10℃である。したがって、このワックスは、室温で液体である。60℃又はその他のより高い融解温度で融解するワックス(DyNawax Reagent,Finland)を、いくつかの実施態様で使用した。これは、実験のすぐ前に融解させ、保存の間は固体としてワックス保存が可能であるので、粒子の動きについての相転移プラグを作り出す。貼り直し可能なシールの下に存在するワックスにより、ホイルが張り付くチャンバーから、流体を損失することなく、ホイルをはがすことができる。しかしながら、これは水浴における実験を行うか、又はワックスを加熱するためにペルチェヒーターを用いることが必要となるはずである。
【0165】
サンプル精製プロトコールの自動化:
自動化サンプル精製システムを提供する。自動化には多くの利益があり、例えば、(a)プロセスが技能を有する作業者を必要としない、(b)システムの理解がより良好になる、(c)アッセイ進行及び試験プロセスが加速する、(d)プロセスの標準化によりサンプルを、サンプル変動まで減少させる。
【0166】
(a)第一構成要素は、磁石及びカートリッジを動かすステージである。プロセスを自動化するために、ステージを5つのプロセスを行ってくみ上げる。つまり(a)流体中での粒子の凝集、(b)内表面にわたる当該流体の引きずり、(c)ワックス中での粒子凝集体の引きずり、(d)ワックスから水への粒子凝集体の引きずり、(e)流体中での粒子のかき混ぜ、である。操作のマニュアルモードにおいては、カートリッジを安定に保ち、一方、磁石をカートリッジと相対的に置いた。複雑な動きを自動的に創出するために、ある実施態様によれば、カートリッジを磁石に対して動かす。すなわち、磁石及び/又はカートリッジを、動作ステージに乗せる。いずれが動くかはプロセスの構成の容易性、コスト及び信頼性に依存する。ステッピングモーターを使用し様々な動きを行ってもよい。
【0167】
i)洗浄バッファにおける粒子のかき混ぜ。この設計は、関連する力の単純な推定により導かれる。密度PP、半径Rp、容量Vp=(4πRp3)/3、及び質量mpの球状磁石粒子の動きは、以下の複数の力に支配される。(a)全ての場の供給源による磁力、(b)流体抵抗、(c)粒子/流体相互作用(流動場への摂動)、(d)浮揚性、(e)重力、(g)熱動力学(ブラウン運動)、及び(h)磁気双極子相互作用等の粒子間効果がある。パラメータの設計を導くために、磁性及び粘性の引きずり力が支配する場合、低濃度及び低流動様式における磁性粒子の挙動をモデル化する。したがって、粒子/流体相互作用及び粒子間効果を無視する。第二のオーダーについて粒子サイズによっては無視できない可能性がある重力も含まれる。古典的なニュートン力学によれば、以下の通りである。
【0168】
mp=dvp/dt=Fm+Ff+Fg
式中、vpは、粒子の速度、及びFm、Ff及びFgは、それぞれ磁力、流体力、異種的且つ重力的力である。磁力は、磁化粒子を「等価」点双極子により、モーメントmp.effに置換される場合、「有効」双極子モーメントアプローチを用いて得られる(Furlani and Ng, 2006)。双極子上(つまり粒子上)の力は、以下の式により与えられる。
【0169】
Fm=μf(mp.eff・▽)Ha
式中、μfは輸送流体の透過性、mp.effは粒子の「有効」双極子モーメント、及びHaは等価点双極子が置かれる場合、粒子中心での(外部から)加えられる磁場強度である。粒子が自由空間にある場合、mp.effはVpMpであり、上記の等式は、以下の通常状態になる。
【0170】
Fm=μ0(mp・▽)Ha
式中、Vp及びMpは、粒子の容量及び磁化であり、且つμ0=4π×10-7は、自由空間の透過性である。図5は、流体チャンバー上の磁石の配列と、磁石からの固定距離での、x方向及びy方向における粒子上の力の表面プロットを示す。力の計算には、粒子サイズ、及び粒子を作るFe3O4(マグネタイト)の物質特性の選択が必要である。示される計算においては、Fe3O4は、密度p=5000kg/m3、飽和磁化M=4.78×105A/m及び粒子サイズは0.5マイクロメーターであると仮定した。一の磁石又は磁石の配列からなるシステムのための磁力を推定するプログラムはMatlabにより書かれた。これにより、様々な磁石及び磁石の配置に対する磁力の計算が可能である。現在のプログラムは、磁石の直線配列により力を推定することしかできないが、磁石のより複雑な配置を推定するプログラムを作ることは可能である。
【0171】
流体力は、均一な流量における球体上の引き上げについてのストークスの定理を用いて予測される。Ff=−6πηRp(vp-vf)で与えられ、式中、η及びvfは、それぞれ粘度と流体の速度である。重力は、Fg=−Vp(ρp−ρf)gyで与えられる。式中、ρp及びρfは、それぞれ粒子及び流体の密度であり、g=9.8m/s2は、重力による加速度である。重力は、−y方向に作用する。重力は、サブミクロン粒子の磁気泳動的(magnetophoretic)動きを分析する場合に無視されることが多く、それは通常磁力よりも非常に弱いためである。
【0172】
様々な力を運動のニュートン等式に差し込むことで、粒子が凝集し、さらに粒子曲線をプロットするのに必要なおよその時間を予測することが可能である。これらの計算は、設計パラメータを導くために使用される。
【0173】
(ii)表面張力の測定及び界面を交差する粒子の引きずり。
自動化プロセスで使用される磁石の強度は、異種表面張力を克服する必要のある磁場の強度により支配される。界面を交差して1の粒子を動かすことは困難であるが、粒子集団を、当該界面を交差して動かすことができる。
【0174】
異種的な力は、y2πRpと推定することができ、ここでyは、ワックスとバッファとの間の異種的な張力である。異種的な力を、テート(Tate)の法則に従う重錘法を用いて測定する。
【0175】
これは、表面張力を測定するための正確な方法であり、且つ液−空気又は液−液界面の表面張力を測定するための最も便利な研究用の方法である。図6に示した通り、当該手法は、チューブの末端でワックスの液滴を形成し、当該液滴を、バッファを含む容器に落とす。その後、液滴の重量を使用して表面張力を決定する。テートの法則は、液滴引く置換流体の重量であるWについて非常に単純な表現を与える:W=2πryf、式中、rは液滴が形成されるチューブの半径であり、且つfは、r/V1/3の無次元比率の関数であり、Vは液滴容量である。図6に示されるシステムを使用して、ワックスと様々なバッファとの間の表面張力を測定する。この方法を使用する場合に講じるべき重要な予防策は、末端を滑らかに研磨し、任意のニックがない状態のチップを使用することである。チップが湿っていない液体の場合は、rは、内部半径である。液滴もゆっくりと形成すべきであり、そうでない場合、液滴重量が高くなる。
【0176】
異種的な力を推定すると、界面にわたって粒子を動かすために必要な磁力を推定できる。したがって、設計基準は、Fm>Fiである。式中、Fm及びFiは、それぞれ磁力及び異種的な力である。この推定は、摩擦力も無視する。この推定は磁石の選択を導いた。バッファからワックスへの粒子の移動に必要な磁石の強度を低減させるため、磁石をできる限り界面に近づけるよう動かす。これは、柔軟な頂部プレートでなされる。柔軟な頂部プレートはまた、チャンバーと頂部プレートとの間にあるホイルラミネートをはがす場合に形成され得る任意のエアギャップを除去するために押すことができるように使用される。
【0177】
iii)ワックスにわたる粒子凝集体の引きずり。ワックスを介する粒子の引きずりのための運動の等式は、粒子の凝集のものと類似する。しかしながら、この場合、当該運動は、単一粒子のものよりもむしろ、粒子凝集体を含有する流体の液滴のものである。正味の摩擦力は以下の式で与えられる。
【0178】
Ff=−6πηRp(vp−vf)
式中、Rpは、液滴の形状と液滴の内部粘度に依存する並進テンソルである。ワックスを介して粒子凝集体を引き上げることは、極めて容易である。このプロセスの際、粒子はカートリッジの頂部表面と接触することになる。したがって、頂部プレートプロセスのために使用される物質は、化学的に不活性であり、且つ滑らかな表面質感を有することが好ましい。
【0179】
(iv)ワックスからバッファへの粒子凝集体の引きずり。ワックスから洗浄バッファへの粒子の動きは、表面エネルギーの減少を伴うので、これは、単純なプロセスである。小さな磁力で十分に水中に粒子を戻すことができる。また、重力が、粒子定着(settlement)のプロセスを支援する。
【0180】
(v)かき混ぜの必要性の検証。実施例1で行われたアッセイにおいて、チャンバー周囲の磁石の動きにより、粒子をかき混ぜた。マニュアルピペッティングが必要なサンプル精製プロセスは、ボルテックス混合による洗浄バッファ中の粒子のかき混ぜを要するので、これを行った。様々な磁場を作り出すことは、ステージ上の磁石を動かすことにより可能であるが、アッセイにコストを追加する。すなわち、ある実施態様によれば、かき混ぜは使用されない。
【0181】
ステッピングモーターとカートリッジの動きを制御するソフトウェア。コンピュータのUSBポートを、RS232コンバーターへのUSBを介して、ステッピングモーターコントローラーへ接続できる。これは、ハイパー端子を用いて、モーターへのコマンドの送信を可能にする。Docklight等の任意のシリアル通信ソフトウェアを使用し、RS232コマンドセットを用いてステッピングモーターと効率的に通信できる。
【0182】
自動化サンプル精製システムの性能試験。サンプル精製システムの性能を試験するため、粒子の損失を測定する。これは、アッセイ及び流体のピペッティングを伴うアッセイのマニュアル状態での性能の損失と比較される。このため、粒子濃度を、Luminexフローサイトメーターを用いて測定する。通常のフローサイトメーターとは異なり、Luminexシステムは、粒子の計数、及び使用される溶液の容量の測定が可能なポジティブフロー制御システムを有するため、ビーズ溶液の濃度を測定することができる。ビーズの損失=ビーズの初期濃度×使用したサンプルのVol−ビーズの最終濃度×溶出バッファのVolである。
ビーズの損失%=(ビーズの損失/ビーズの初期総数)×100
【0183】
ビーズの損失割合は、システムの性能を測定する自動プロセスの各ステージで測定される。この目的は、損失割合を、マニュアルプロセスにおいて観察されるものよりも低減することである。ビーズ損失%の平均と、ビーズ損失%の分散を、自動化プロセス及びマニュアルアプローチについて比較する。自動化システムは、マニュアルプロセスよりも低分散であることが期待される。
【実施例3】
【0184】
チューブ状処理装置
この実施例は、生物反応を行うためのチューブ状処理装置を記載する。診断アッセイのための実験の設定を図7に示す。CAVRO 3000XLディジタルポンプに取り付けられた0.060”内径チューブ(Small Parts Inc.)からなる。ディジタルポンプを、RS232界面を介して制御する。様々な洗浄バッファ、検体、磁性粒子含有溶液、及びシリコンオイル(Gelest Inc.)を、チューブの遠位末端から投入する。
【0185】
当該実験のために使用される粒子は、Spherotech Inc.から入手したカルボキシル被覆平滑表面磁性粒子である。SPERO1M Smooth Surface Magnetic Particleは、酸化鉄被覆を十分に封入する粒子の表面にポリマー被覆の薄層を有する。粒子の表面上で暴露される酸化鉄は存在しない。
【0186】
Cylindrical Neodymium磁石(Bunting Magnetics Co)を、キャピラリーの長さ方向に動かす。当該磁石をキャピラリー周囲に置き、粒子を混合する。全ての実験についてN35及びN40グレードの磁石を使用した。
【0187】
テフロン(登録商標)チューブは、ガラスチューブよりも良好であることが判明しており、全ての実験で使用された。粒子はテフロン(登録商標)よりもガラスに張り付く。これは、粒子表面にはカルボキシル基が存在するため、ガラスより疎水性であるテフロン(登録商標)が、ガラスよりも親水性である当該粒子をはじくと仮定する。しかしながら、粒子は非常に疎水性であるため、テフロン(登録商標)に張り付かない。
【0188】
蛍光読取は、以下の実験のためのチューブにおいて採用されないが、キャピラリーシステムに光学的システムを取り付けることができる。化学反応の完了後、粒子をチューブから取り出し、且つフローサイトメーターで読み取る。全ての読取値を、SPHERO Rainbow Calibration Particlesに対して規格化した。当該SPHERO Rainbow Calibration Particlesは、様々な蛍光強度を有する複数の同じサイズの粒子の混合物を含む。各々の粒子は、365〜650nmの任意の波長で発光できる蛍光分子の混合物を含む。これは、フローサイトメーターにおいて、同じ粒子セットで全てのチャネルのキャリブレーションを可能にする。使用される蛍光分子は非常に安定であるが、FITC、PE、又はPE−Cy5等の通常使用される蛍光分子に非スペクトル的に適合する。チョッパーボトル(chopper bottle)で、1mLの希釈液に粒子フラム(flam)の数滴を希釈して、フローサイトメーターのキャリブレーションのための十分な粒子濃度が提供される。希釈したRainbow Calibration Particlesは、凍結融解の反復後も安定な状態を維持する。
【0189】
チューブ状処理装置おマイクロフュージチューブにおけるストレプトアビジン−ビオチン反応
診断装置としての使用のためのチューブ状処理装置は、感度の損失なくアッセイを行うことができる。オイルを介する粒子の移動は、当該粒子に結合するタンパク質を変性させるか、又はバルク溶液から粒子表面への核酸を困難にする粒子上の層を形成する可能性がある。
【0190】
ストレプトアビジン−ビオチンシステムを利用する。ビオチン−アビジン又はビオチン−ストレプトアビジン相互作用は、それを一般的なブリッジシステムとして有利にさせる、いくつかの特有の性質を有する。アビジン、ストレプトアビジン、及びニュートルアビジン(NeutrAvidin)ビオチン結合タンパク質の各々は、高い親和性と選択性で、1タンパク質分子当たり、4つのビオチンと結合する。
【0191】
平均直径3μの、未標識ストレプトアビジン被覆SPHERO Smooth Surface Magnetic Particles(1% w/v)を、実験に使用した。以下の実験において、0.7*106個の磁性粒子を使用した。粒子を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で洗浄し、磁石で分離し、且つ0.1%のNonidet P−40洗浄剤を含有する60μLのPBSバッファに再懸濁した。様々な濃度のAlexa−488−ビオチンを、0.1%のNonidet P−40含有リン酸Naバッファに溶解させた。
【0192】
以下の溶液を、所与の順序で、各々60μLのシリコンオイルで分離したキャピラリーに注入した。
(a)磁性粒子含有の、60μLのPBSバッファ
(b)0.1%のNonidet P−40含有の、60μLのPBS洗浄バッファ
(c)既知の濃度のAlexa−488−ビオチン含有の、200μLのリン酸Naバッファ
(d)0.1%のNonidet P−40含有の、60μLのPBS洗浄バッファ
【0193】
最初に粒子を、「溶液−a」から、洗浄バッファ(溶液−b)を含有するチャンバーに磁石で移動させた。これにより粒子の破片を取り除く。その後、これらを、Alexa−488−ビオチンを含有するチャンバーに移動し、ストレプトアビジン被覆粒子を、Alexa−488−ビオチンに結合させた(溶液−c)。粒子を、磁石の力で定期的に混合した。反応を90分間継続させ、その後粒子を次のチャンバーに移動させ(溶液−d)、粒子に張り付いているはずの任意の破片を洗い流す。シリコンオイルを介する1のチャンバーから次のチャンバーへの粒子の移動には、粒子がオイル−水バリアを交差できるように、集団に統合することが必要である。ゆえに、粒子が一のチャンバーから次のチャンバーにわたって動く各々の時間、粒子は、磁石を動かすことにより十分に混合させられる。その後、粒子を回収し、そして粒子上の蛍光をフローサイトメーターで測定する。
【0194】
実験のために使用されるAlexa Flour色素は、近UV、可視、及び近IRスペクトルに渡る優れた蛍光色素のシリーズである。これらの色素は、例外なくフルオレセインと比較してより明るい複合体を作製する。Alexa−488は、495nmで光を吸収し、519nmで発光し、且つ71000の減衰係数を有する。色素は、水溶性であり、且つ広いpH範囲にわたり高い蛍光を維持する。
【0195】
同一の反応をマイクロフュージチューブで行った。0.7*106個の粒子をPBS中で洗浄し、磁石で分離し、且つ0.1%のNonidet P−40洗浄剤を含有する60μLのPBSバッファに再懸濁した。その後粒子を以下の溶液と各時間混合し、磁石で分離し、その後、次の溶液に再懸濁した。
【0196】
(a)磁性粒子含有の、60μLのPBSバッファ
(b)0.1%のNonidet P−40含有の、60μLのPBS洗浄バッファ
(c)既知の濃度のAlexa−488−ビオチン含有の、200μLのリン酸Naバッファ
(d)0.1%のNonidet P−40含有の、60μLのPBS洗浄バッファ
【0197】
キャピラリーにおける反応の場合のように、ストレプトアビジン被覆磁性粒子を、90分間、ビオチン含有バッファと混合させた。粒子をこの時間、定期的に混合した。これらの粒子から蛍光を読取り、キャピラリーシステムから得られた粒子の蛍光読取値と比較した。
【0198】
図8は、異なる濃度のビオチンでのフローサイトメーターにおいて測定されたFL1高さの値を示す。ダイアモンドは、キャピラリーシステムで行われたストレプトアビジンビオチン反応についてのシグナルを表し、ピンク四角は、マイクロフュージチューブで行われたストレプトアビジンビオチン反応のシグナルを表す。全ての測定値を、固定値での虹の第三のピークを維持することにより規格化した。プロットから理解される通り、粒子はシグナルが低減し始めた後、10-10Mのビオチン濃度まで完全に飽和する。ストレプトアビジン被覆粒子上に結合するビオチン量は、当該反応が、キャピラリーで行われたか、マイクロフュージチューブで行われたかに関わらず、同様である。2つの反応間の差は、測定された全てのビオチン濃度で統計的に有意でない。このグラフは、ビオチン高濃度での蛍光シグナルにおけるいくらかの消光があることを示す。図8は、ビオチン濃度0.5*10-10Mでの、チューブ状処理装置におけるストレプトアビジン−ビオチン反応の5回の反復を示す。
【0199】
以下の実験の手法は、上記の前の実験と同じである。図9は、2セットの粒子について測定された2つの重ね合わせ図からなる。つまり、以下の通りである。
(a)10-12Mビオチン溶液と反応する、ストレプトアビジン被覆SPHERO Smooth Surface Magnetic Particles
(b)脱イオン水と反応する、ストレプトアビジン被覆SPHERO Smooth Surface Magnetic Particles
【0200】
前方散乱及び側方散乱は、2セットの粒子について同じであり、これは、2セットの粒子のサイズ及び表面粗度が同じであるため期待通りであった。粒子表面で発光される蛍光量の測定値であることより、ストレプトアビジンへ結合するビオチン量の直接測定値であるFL1高さは、2セットの粒子で異なる。図9は、粒子が10-12Mビオチンと反応する場合、FL1高さ(ピーク)の中点は、ストレプトアビジン被覆粒子が水と反応する場合とは明確に区別でき、且つより大きいことを示す。装置の感度は、ビオチンについては10-12Mであることがわかった(ブランクよりも2dB超である)。
【0201】
チューブ間の粒子輸送
図10に示すように、一のチューブを別のチューブに挿入し、ここでより薄いチューブの外径が、より大きなチューブの内径とほぼ同じであるようにする。ストレプトアビジン被覆粒子を、PBSバッファを含有するチャンバーに移動させる。これを行う間、また、それを一のキャピラリーから別のキャピラリーに動かす。その後、それを、10-8M Alexa−488−ビオチン及び0.1% Nonidet−P40(NP−40)を含有するPBSバッファを含むチャンバーに移動させる。一のチャンバーから別のチャンバーへの移動は、シリコンオイルの領域を交差することを必要とする。粒子をAlexa−488−ビオチンと、90分間反応させ、その後、粒子を取り出すとともに、その蛍光をフローサイトメーターで測定する。蛍光読取値は、一のキャピラリーから別のキャピラリーへ移動するにもかかわらず、反応が起きることを示唆する。
【0202】
携帯可能な診断装置において、試薬はチューブ中に存在している可能性があり、一方、測定されるサンプルは、別の分離チューブに回収されるか、又はサンプルの回収に適するベッセルに回収される可能性がある。この実験は、粒子をチューブもしくは回収ベッセルにおいてサンプルと反応させ、その後当該粒子を、試薬が存在している別のチューブに移動させることにより、行われる反応の進行を可能にすることの実現可能性を実証した。
【0203】
シリコンオイルの影響
診断装置に影響を与える因子の1つが、粒子上のシリコンオイルの影響である。オイル領域を介する粒子の移動の間、当該オイルが粒子に張り付く場合について調べた。このために、蛍光色素、ピロメテン(pyromethene)546をシリコンオイルに溶解させた。ピロメテンは、546nmで蛍光を発するオイル可溶性レーザー色素である。粒子を、ピロメテン546を含有するシリコンオイルの領域を介して動かした。その後、粒子をキャピラリーから取り出し、そして蛍光シグナルをフローサイトメーターで測定した(図11a)。
【0204】
別の実施態様によれば、粒子を、ピロメテン546を含有するシリコンオイルを介して移動させ、その後、0.1% Nonidet P40を含有するPBSバッファにおいて混合した。これらの粒子を凝集させるために磁石を使用した。その後、粒子をキャピラリーから取り出し、そして図11bに示すとおり、フローサイトメーターで蛍光シグナルを測定した。
【0205】
前方散乱値は粒子のサイズを表し、一方、側方散乱は、粒子の表面特性についての情報を提供する。図11aにおいて、前方散乱プロットは広い分布を示すが、粒子はほぼ同じサイズを示す。これは、オイルが粒子に張り付いているか、様々なサイズのオイル液滴が形成されていることを実証している。オイルを介して粒子を移動後、PBSバッファにおける粒子をかき混ぜると、粒子サイズの分布は、期待通り、2つの区別できるピーク、つまり、粒子及び粒子の二重項(doublets)を示す(図11b)。図11aにおける側方散乱プロットも、同様に形成されたオイルの小さな液滴が存在するはずであることを示唆する2つのピークを示す。図11aのFL1中央値は73であり、これは蛍光色素のいくつかが、粒子とともに移動したことを実証している。これは、粒子を混合することにより洗浄することができ、そうすると、図11bにおいて、より低い蛍光値38が得られる。
【実施例4】
【0206】
液体ワックスを用いる市販のRNA精製の効率
この実施例は、液体ワックス媒体を介して磁性粒子に結合したRNAを輸送する精製方法は、様々な種類の粒子、及び多様な溶解、洗浄、及び溶出バッファを使用する市販のキットに適合可能であることを実証する。試験キットは、シリカ(Ambion)、酸化鉄(Abbott/Promega)及びセルロース(Cortex)磁性粒子を含んでいた。粒子化学における差異に加えて、これらのキットは、それぞれの溶解及び溶出バッファ、及び中間洗浄バッファの組成の点で異なる。
【0207】
正常な血漿中で急増したウイルス粒子を、キット製造業者の指示書、例えば、溶解及び溶出の間の全ての洗浄ステップ、及びリアルタイムPCRにより決定されたRNAレベル等に従って精製した。その後、急増した血漿を、溶解及び溶出バッファのみを用いるワックス相方法で精製し、RNAレベルを比較した。
【0208】
Ct単位において表わされるRNA濃度の比較は、液体ワックス伝達精製方法論の効率が、製造業者指定の指針における手法のものと同等であることを示した。まとめると、これらの結果は、液体ワックスによる溶解バッファの排除は、RNA精製システムにより典型的に規定される多重のマニュアル洗浄の適切な置換であることを示している。
【0209】
ワックス−ブリッジキュベット
全ての実験は、図12及び13に示される2チャンバーキュベットにおいて行われ、当該チャンバーは、溶解バッファから溶出バッファへの粒子の移動を促進するよう設計された。図12に示すように、溶解バッファを左のチャンバーに添加し、且つ溶出バッファを右のチャンバーに添加する。その後、両方のバッファ溶液を覆い、且つ2つのチャンバー間にブリッジを形成する液体ワックスを添加する。磁石を溶解チャンバー上の側壁上に置き、ペレットを形成しながら壁に引き付けられる。図13に示す通り、その後、磁石を、オイル層中の溶解バッファを介して壁に沿ってペレットを引きずりながら上方に動かす。その後、磁石を、ペレットが溶出チャンバーより上になるまでオイルブリッジを介して粒子を引きずりながら側面に沿って移動させる。最後に、磁石は、オイルから溶出バッファへ、粒子を引きずりながら下方に動かされる。
【0210】
製造業者のプロトコール
Ambion MagMacx Viral RNA Isolation Kit(カタログ番号AM1929)、Abbott/Promega M Sample Preparation System(カタログ番号02L02−24)、及びCrtec Biochem MagaZorb(登録商標)RNA Isolation Kit(カタログ番号MB2001)を試験した。ウイルスRNAサンプルを、多重の洗浄ステップを含むキットのプロトコールに従って、各々の製造業者の試薬を用いて加工した。
【0211】
液体ワックスプロトコール
Ambion MagMacx Viral RNA試薬
サンプル溶解
1.5×106cp/mL HIV−1ビリオンを含有する血漿25μLを、1.5mLのスクリューキャップチューブ中の、802μLの溶解バッファ(組成:400μLの製造業者により供給される溶解/結合濃縮物、400μLの無水イソプロパノール、2μLの製造業者により供給される担体RNA)に添加し、ピペットで混合した。20μLウェル懸濁磁性粒子(製造業者により供給される;組成:10μL粒子、10μL結合促進剤)の存在下、50℃で10分間まで溶解を進行させる。初期の溶解ステップ後、又は現在の溶解の間に、粒子を添加でき、精製効率における識別可能な影響は観察されていない。
【0212】
カートリッジ設定
磁性粒子は、磁性ラック上に堆積し、600μLの上清液体を破棄し、調製したカートリッジにロードさせる。溶解バッファ及びRNA結合粒子を含有する最大250μLスラリーを、カートリッジの「溶解」チャンバーに移す。25μの製造者が供給するTris−EDTA溶出バッファを、カートリッジの「溶出」チャンバーにロードする。典型的には800μLの液体ワックスを用いて、ワックス「ブリッジ」がカートリッジの頂部にわたって形成されるように、両チャンバーにおいて流体の頂部にChill−out Liquid Wax(Bio−Rad)を重ねる。多重サンプルのためのカートリッジは、この手順で1回で調製され、製作されたラック上に配列することができる。
【0213】
精製
RNA結合ビーズを、磁石により硬いペレットに集積させる。「溶解」から「溶出」チャンバーへ粒子の移動についてカートリッジは個別に扱われる。磁性粒子は、ビーズが硬いペレット中の状態を維持し、且つ溶解バッファのキャリーオーバーが最小限であるように、一定の手順で、磁石によりワックスを介して溶出バッファに輸送される。一度、溶出バッファおいて、ビーズを磁石のマニュアル操作により混合する。
【0214】
サンプル回収
液体ワックスを、サンプル損失なく、「溶出」チャンバー超の最小限量(メニスカスで1mm)を維持するように、カートリッジから吸引する。当該カートリッジを、液体ワックスが固化するが、溶液バッファ/ビーズスラリーは液相を維持するように、4分間、−20℃に設定する。液体ワックスプラグは、溶出バッファの抽出のために、ピペットチップにより除去されるか、又は穿孔されてよい。溶出バッファ/ビーズスラリーを、1.5mLのスクリューキャップチューブに移し、70℃で10分まで加熱し、バッファ上清へのウイルスRNAの完全な溶出を促進する。ビーズを磁性ラック上に沈殿させ、Tris−EDTAバッファ中のRNA50μLまでを、qRT−PCRにすぐに使用できるように、各チューブに回収する。
【0215】
Abbott/Promega試薬:
サンプル溶解
1.5×106cp/mL HIV−1ビリオンを含有する血漿25μLを、1.5mLのスクリューキャップチューブ中の、600μLの溶解バッファ(2μLの製造業者により供給される担体RNAが補充される)及び25μL酸化鉄粒子に添加し、ピペットで混合した。50℃で10分まで溶解を進行させる。
【0216】
カートリッジ設定
溶解後、磁性粒子を沈殿させ、且つ400μLの上清を破棄した。25μLの高塩溶出あっふぁを「溶出」チャンバーに添加する。溶解バッファ及びRNA結合粒子を含有する最大250μLのスラリーを、カートリッジの「溶解」チャンバーに移す。典型的には800μLの液体ワックスを用いて、ワックス「ブリッジ」がカートリッジの頂部にわたって形成されるように、両チャンバーにおいて流体の頂部にChill−out Liquid Wax(Bio−Rad)を重ねる。多重サンプルのためのカートリッジは、この手順で1回で調製され、製作されたラック上に配列することができる。
【0217】
精製及びサンプル回収
Ambiconキットで使用したものと同じ手法を使用した。
【0218】
Cortex Biochem試薬:
サンプル溶解
1.5×106cp/mL HIV−1ビリオンを含有する血漿25μLを、1.5mLのスクリューキャップチューブ中の、20μLプロテアーゼKで、穏和に混合することにより処理した。200μLの製造業者により供給される溶解バッファを添加し、且つ15秒のプラス−ボルテックスによりサンプルを混合し、その後、55℃で15分加熱した。500μLの製造業者により供給される結合バッファと、20μLの単分散MagaZorb試薬をサンプルに添加し、時折転倒混和しながら室温(20℃)で10分インキュベートした。
【0219】
カートリッジ設定
磁性粒子を磁性ラック上に沈殿させ、500μLの上清液を破棄し、調製したカートリッジにロードさせる。溶解バッファ及びRNA−結合粒子を含有する最大250μLのスラリーを、カートリッジの「溶解」チャンバーに移す。25μLの製造業者により供給されるTris−EDTAバッファを「溶出」チャンバーに添加した。典型的には800μLの液体ワックスを用いて、ワックス「ブリッジ」がカートリッジの頂部にわたって形成されるように、両チャンバーにおいて流体の頂部にChill−out Liquid Wax(Bio−Rad)を重ねる。多重サンプルのためのカートリッジは、この手順で1回で調製され、製作されたラック上に配列することができる。
【0220】
精製及びサンプル回収
溶出バッファ/ビーズスラリーを70℃まで15分間加熱し、ウイルスRNAの溶出を容易にした点以外は、Ambiconキットで使用したものと同じ手法を使用した。
【0221】
手法の比較
液体ワックス精製方法への、様々なウイルスRNA精製化学の適合性を、Abbott m2000rtアッセイキットで供給される試薬を用いてqRT−PCRにより評価した。各事例において、HIV−1ビリオン含有血漿を、qRT−PCR分析のためのテンプレートとして使用し、適切なポジティブ(精製HIV−1転写因子)及びネガティブ(偽血漿精製物又は水)コントロールを補完した。全ての精製サンプルは、内部コントロールとして担体RNAを含むとともに、反復して行われた。各RNA調製物について、各版王においてHIV−1 RNAの7,500コピーを生み出す5μLのRNAを使用した。一のサンプルについてのqRT−PCR混合物を、以下の表4に記載する。
【0222】
【表4】
【0223】
qRT−PCR分析の結果
qRT−PCR装置により提供されるCt値を、以下の表5に示す。
【0224】
【表5】
【0225】
HIV−1テンプレートコピーの設定数に対して、試験される化学物質及び使用される精製方法の間で、qRT−PCR分析から得られる報告Ct値における変動はほとんどなかった。これらの実験におけるネガティブ増幅及び偽精製物コントロールは、これらの実験でCt値がないか、又は無視できるほどであった。相ゲート精製手法は、溶解バッファ及びその他のPCR阻害因子を排除する液体ワックスは、キット製造業者プロトコールと同程度に効率的であり、多重洗浄と同様に効果的であることを実証する。Abbott/Promegaサンプルからの溶出RNAサンプルの分光光度分析は、230nmでの吸収を示さない。グアニジニウムは、この溶解バッファにおける高い重量モル濃度で存在し、且つ230nmでの紫外光を吸収する。吸収ピークの不存在は、この汚染物質のキャリーオーバーが低いことを示す。Ct値は、反復実験にわたって一致しており、精製化学物質に対してほぼ不変であり、且つ良好なRNA回収が達成されることを実証する精製方法論と同程度である。
【実施例5】
【0226】
CD4+T細胞の単離
新鮮な末梢血単核球細胞(PBNMC's)をAllcells(Emeryville,CA)から購入した。抗−CD4抗体で被覆したDynabead CD4磁性粒子(直径4.5um)をInvitorogen(Carshbad,CA)から購入した。
【0227】
1.2mLのPBNMC'sを50μLのDynabead CD4磁性粒子と混合した。穏和な傾斜と回転を与えながら、4℃で45分間、捕捉反応を進行させた。CD4+ve T細胞ポジティブ単離を、3つの手法を用いて比較した。
【0228】
a)Dynabeads CD4プロトコールを用いるポジティブ単離:200μlの上記ストックを、研究カートリッジのウェル1に分けた(図12に示される、標識溶解バッファ、及び図13)。磁石を1分間カートリッジの側面に置き、磁性粒子及び捕捉細胞を側面上でペレット形成させた。上清を吸引するとともに破棄した。ペレットを200μl PBSでの再懸濁押磁石を用いる分離を3回行うことにより洗浄した。最後の洗浄後、60μlの0.2%Triton X−100を添加し、細胞を溶解させた。
【0229】
b)Chill−Out Liquid Wax(Bio−Rad,Hercules,CA)を介するポジティブ抽出。200μlのストック溶液を、研究カートリッジのウェル1に分けた。60μlの0.2%Triton X−100溶解バッファを、研究カートリッジのウェル2に分け(図12に示される、標識溶出バッファ、及び図13)、ここでウェル2は、Chill−Out Liquid Waxによりウェル1から分離された。磁石を1分間カートリッジの側面に置き、磁性粒子を引きずり、ウェル1の側面に細胞を捕捉した。その後、当該ペレットを、図13に示すような経路に沿って磁石をひきずることによりワックスを介してゆっくりとウェル2に動かした。磁石を用いて、ウェル2において粒子をかき混ぜた。
【0230】
c)キャノーラオイル(Jewel-Osco/Supervalu,Eden Prairie,MN)を介するポジティブ抽出。200μlのストック溶液を、カートリッジのウェル1に分けた。60μlの0.2%Triton X−100溶解バッファを、溶解チャンバーに分け、これはキャノーラオイルによりウェル2から分離されている。磁石を1分間カートリッジの側面に置き、磁性粒子を引きずり、ウェル1の側面上に細胞を捕捉した。その後、ペレットをキャノーラオイルを介して、ウェル2に磁石とともにゆっくりと動かした。磁石を使用し、ウェル2において粒子をかき混ぜた。
【0231】
親油性バリアを介する移動の効率を、β2−ミクログロブリン遺伝子についてのリアルタイムPCRアッセイを用い、ウェル2における溶液の一定量中の細胞性DNAの量を測定することにより決定した。各々の実験において、磁石を用いてウェル2の側面で粒子を引き;且つ60μlの溶解細胞懸濁物をエッペンドルフチューブに移動させた。その後、各サンプル5μlを得て、β2−ミクログロブリン(New England Biolabs,Ipswich, MA)についてPhusion GCアッセイを用いてRT−PCRを使用した。
【0232】
結果
以下の表6は、リアルタイムPCRアッセイの閾値蛍光強度に到達するために必要なサイクル数を示す。
【0233】
表6
細胞精製 Ct値
DynalBeadsプロトコール 27.59
Chill−Out Wax 27.14
植物オイル 28.99
【0234】
結果は、3つの細胞単離手法から得られるCt値は、同程度であることを示している。アッセイはβ2−ミクログロブリンを定量化したので、結果は、ワックス及びオイルを介して動く間に、細胞における遺伝物質が保護されることを示す。
【実施例6】
【0235】
デキストランPMPを用いる血漿からのRNA精製
核酸を精製するための全ての洗浄ステップを除去し、且つ加工システムとサンプルとの間の全ての接触を除去するため、PMPを、外部から加える磁場を用いてウェル間に輸送した。ウェルを、PMPが輸送されるものを介して、疎水性液体と接触させる(図12)。疎水性液体は、溶解チャンバーと溶出チャンバーと間で、2つの溶液の混合を阻止し、バリアとして機能する。磁力を適用すると、PMPは、溶解チャンバーから溶出チャンバーへNAを輸送しながら、疎水性液体を介して動かされ、一方、溶解及び溶出バッファは変化しない状態を維持する。当該疎水性液体は、非混和性相フィルター(IPF)として機能し、これは、プロセスをたった3つのステップにまで低減する:細胞溶解/NA結合、PMP輸送/及びNA溶出。IPFを、RNA精製プロトコールに組み込むことの実行可能性を実証するため、HIV−1 RNAを、ウイルス量を測定する際になされるように、血漿から抽出した。HIV−1の定量的測定は、疾患進行のモニタリング及び抗レトロウイルス薬物療法結果の評価のために重要である(Mylonakis,Paliou等,Am.Fam.Phisician 63(3)483 2001)。ウイルス量測定は、ヒト血液由来のサンプルにおける、相対的に低いウイルスコピー数及びPCR阻害因子の不存在により、典型的に要求が多く、このアッセイが良好なモデルシステムを提供する。
【0236】
血漿の1.5×106コピー/mlで、Rush Virology Quality Assurance Laboratoryから得られたHIV−1ウイルスを、血清反応陰性の血漿で希釈し、それぞれ、300、60、及び12コピー/μLのHIV−1濃縮物を得た。Ambion MagMax(商標)Total RNA単離キット(Applied Biosystem;Foster City,CA)マニュアルプロトコールを、製造業者の推奨の通りに行った。IPF法での精製について、200μLのAmnion 溶解/結合溶液濃縮物(Applied Biosystem;Foster City,CA)、200μLのイソプロピルアルコール、1μLの単体RNA(Applied Biosystem;Foster City,CA)、5μLのAmbion PMP、及び5μLの結合促進剤(Applied Biosystem;Foster City,CA)からなる溶解及び結合試薬を、カートリッジのより大きなチャンバーに添加し、そして混合した。その後、HIV−1ウイルス含有の50μLの血漿をそれに添加し、自動化システムを用いて4分間混合した。50μLの溶出バッファに、IPFカートリッジのより小さいチャンバーに分け、且つ2つの一定量の流体を、図12に示すように、Chillout(商標)液体ワックス(Biorad Laboratories;Hercules,CA)で覆った。自動化システムは、外部磁石を用いて2分間PMPを凝集させ、且つ溶解バッファから溶出バッファへ凝集物を動かした。PMPを含有する溶出バッファを55℃で10分間加熱し、RNAを溶出した。PMPを凝集させ、且つ溶出バッファから除去した。HIV−1ウイルス量の定量を、25μlの反応容量中で、0.2mg/mlウシ血清アルブミン(B8667,Sigma)、150mM トレハロース(T9531;Sigma)、及び0.2% Tween20(28320;Pierce Thermo Fisher Scientific)、並びに5μlのテンプレートを添加し、Abbott RealTime HIV−1 Amplification Reagent Kit(Huang,Salituro等、2007)(Abbott Molecular,Des Plaines,IL)を用いて行った。増幅反応を、Cepheid SmartCycler II(Sunnyvale,CA)で行った。
【0237】
精製RNAを、Abbott RearTime HIV−1 Amplification Kitを用いて増幅した。PCR効率E=102%が観察され(図14)、これは、標準的プロトコールで必要とされる、4回の洗浄ステップ及びアルコール蒸発ステップを除去した後ですら、阻害因子のキャリーオーバーが最小限であることを示唆している。Ambion MagMax(商標)Total RNA単離キットを用いる、IPFとRNA精製のための標準的プロトコールの比較は、有意性レベル0.05(α=0.05)を示し、2つの方法間に統計的な差異はなかった(p値=0.967)(図15)。複数の低コピー数での10回の反復産物は、精製され、60コピーのウイルスRNAは、100%の感度でPCR反応において検出できた。50μlの血漿を使用したので、これは100%感度での血液1ml当たり600コピーに対応する。
【実施例7】
【0238】
尿からのクラミジア及び淋菌の精製
核酸を精製するための全ての洗浄ステップを除去し、且つ加工システムとサンプルとの間の全ての接触を除去するために、PMPを外部から加える磁場を用いてウェル間に輸送した。当該ウェルを、それを介してPMPを輸送する疎水性液体と接触させる(図12)。疎水性液体は、溶解チャンバーと溶出チャンバーとの間のバリアとして機能し、2つの溶液の混合を防ぐ。磁場を加える際、溶解及び溶出バッファの安定な状態を維持しながら、溶解チャンバーから溶出チャンバーへNAを輸送して、PMPを、疎水性液体を介して動かす。疎水性液体は、加工を、細胞溶解/NA結合、PMP輸送、及びNA溶出という、たった3つのステップに低減する、非混和性フィルタ(IPF)として機能する。尿からNAを抽出するIPF法を用いることの実現可能性を実証するため、真菌DNAをクラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis、CT)及びネイセリア・ゴノルホエアエ(Neisseria gonorrhoeae、NG)を、これらの性感染疾患の診断のために精製した。尿サンプルを、クラミジア:McCoy細胞培養懸濁物中のATCCトラコマチス血清型F、及び30%グリセロール含有PBSに再懸濁した凍結乾燥ネイセリア・ゴノルホエアエを、コントロール尿(Fisher Scientific,PA)と組み合わせることにより調製した。製造業者のプロトコールの通りに、Abbott RealTime CT/NGアッセイを用いて、マニュアルプロトコールを行った。IPF法での精製について、200μLのAmbion 溶解/結合溶液濃縮物(Applied Biosystem;Foster City,CA)、200μLのイソプロピルアルコール、1μLの担体RNA(Applied Biosystem;Foster City,CA)、5μLのAnbion PMP及び5μLの結合促進剤(Applied Biosystem;Foster City,CA)を混合した。その後、200μLの尿サンプルをそれに添加した。溶液を55℃で10分加熱し、2ステップ精製を血漿サンプルと同様に行った。既報の通り(Marshall,Chernesky等、2007)、精製DNAを、50μLの反応容量で、Abbott RealTime CT/NGアッセイを用いて増幅させた。増幅反応は、Abbott Molecular m2000rt装置(Abbott Park,IL)で行った。
【0239】
7桁にわたるCT及びNGアッセイのPCR効率は、それぞれ97.2%及び94.5%であり(図16〜17)、これは阻害剤キャリーオーバーが最小限であることを示している。これらの効率は、Abbott Realtime CT/NGキットを用いたマニュアル抽出法から得られたもの(それぞれ、87.9%及び87.9%)と類似していた。CT及びNGアッセイのBland−Altmanプロットは、Abbott DNA精製キットを用いる標準的方法とIPF法との間に統計的な差がないことを示す(図18〜19)。有意さレベル0.05(α=.05)で、この2つが同一であることがわかる(それぞれ、p値が0.42及び0.70)。
【実施例8】
【0240】
全血からのゲノムDNAの精製
核酸を精製するための全ての洗浄ステップを除去し、且つ加工システムとサンプルとの間の全ての接触を除去するために、PMPを外部から加える磁場を用いてウェル間に輸送した。当該ウェルを、それを介してPMPを輸送する疎水性液体と接触させる(図12)。疎水性液体は、溶解チャンバーと溶出チャンバーとの間のバリアとして機能し、2つの溶液の混合を防ぐ。磁場を加える際、溶解及び溶出バッファの安定な状態を維持しながら、溶解チャンバーから溶出チャンバーへNAを輸送して、PMPを、疎水性液体を介して動かす。疎水性液体は、加工を、細胞溶解/NA結合、PMP輸送、及びNA溶出という、たった3つのステップに低減する、非混和性フィルタ(IPF)として機能する。
【0241】
全血(WB)は、ゲノムDNAの豊富な供給源である。しかしながら、それは、多数のPCR阻害因子を高濃度で含有する非常に複雑な媒体である。方法がかかるサンプルを加工するかを決定するため、抹消血単核細胞にまとめられるプロウイルスHIV−1 DNAを検出するようにqPCRアッセイを開発する。プロウイルスDNA検出には、通所、HIV−1患児を使用する(Read and Comittee on Pediatric AIDS Pediatric 120(6):e1547−1562 2007)。10ステップ(溶解、7回の洗浄、乾燥及び溶出)からなるPromega Magnesil gDNA精製キットを、3ステップ(溶解、液体ワックスを介するPMP、及び溶出)からなるIPF法の使用に適合させた。
【0242】
血清反応陰性の供与者由来のWBに添加された、1細胞当たりHIV−1ゲノムの単一コピーを含有する、培養8E5細胞(Folks, Powell et al. J. Exp. Med. 164(1): 280−290 1986) (Rush Virology Quality Assurance Laboratory, Chicago, IL)を使用し、プロウイルスDNAアッセイの胎児血をシミュレートした。細胞を解凍し、ヘモサイトメーターを用いて計数し、リン酸緩衝食塩水(PBS)で段階的希釈し、且つ血清反応陰性の供与者由来のWBに、8000細胞/μl、1600細胞/μl、320細胞/μl、及び64細胞/μlの濃度で添加した。Promega Magnesil gDNA精製プロトコールを、製造業者の推奨で行った。IPF法において、25μlの血液を、60μLの溶解バッファに添加し、1分かき混ぜ、且つ室温で4分インキュベートした。44μLの溶解バッファ及び6μLのPMPを添加し、1分かき混ぜ、且つ4分インキュベートした。15μLの溶解バッファ及び200μLのアルコール洗浄バッファを、溶液に添加し、且つIPH精製を既に述べたとおりに行った。精製DNAを、Abbott RealTime HIV−1 Amplification Reagent Kit(Abbott Molecular,Des Plaines,IL)(Huang, Salituro 等. 2007)を用いて、25μlの反応容量で増幅させた。増幅反応を、Cepheid SmartCycler II(Sunnyvale、CA)で行った。
【0243】
4桁超の段階的希釈により、−3.15の傾きの標準曲線、及びPCR効率108%が得られた(図20)。プロウイルスPCRアッセイのBland−Altmanプロットは、Promega精製キットを用いる標準的方法と、IPF法との間に統計的な差異がないことを示した(図21)。有意さレベル0.05(α=.05)で、この2つの方法が、同一であることがわかった(p値=0.98)。
【0244】
本明細書において記述された、全ての刊行物、特許、特許出願、及び受託番号により識別される配列は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明は、特定の実施態様との関連で記載されているが、請求される本発明が、かかる特定の実施態様に過度に限定されるものではないと解すべきである。本発明の記載された組成物及び方法について、本明細書に記載される組成物及び方法の機能的特徴を大きく変化しない改変及び変形は、以下の請求の範囲内であることを意図する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物反応を行うためのシステム、装置、及び方法に関する。特に、本発明は、サンプルの分離、精製、改変、及び分析プロセスにおける疎水性、水非混和性、又は親油性バリアの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
関連発明の相互参照
本出願は、2008年2月29日に出願された仮出願に対して優先権を主張し、前記仮出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
政府支援
本出願は、米国立衛生研究所により承認されたGrant CCF0329957、及び米国立科学財団により承認されたGrant 5RO1EB001418−03により支援された。
【0004】
生物サンプルの分析用のコスト効率的で使い易いシステム、方法及び装置に対する大きなニーズがある。多くの市販のシステムは、数万から数十万ドルの費用がかかり、且つ失敗し易くする多くの可動部を有する。かかるシステムのコスト及び複雑性のために、その使用は、一般的に、その操作及びメンテナンスを支援する必要がある組織及びサービスを有する、人員を有する臨床的研究所に限定される。
【0005】
Abbott Architect、Siemens Centaur、Roche Elecsys等により代表される十分に統合された自動化アナライザー類は、免疫学的検定を行う。Abbott m2000、Roche COBAS、bioMerieux NucliSENS等に代表されるモジュールアナライザー類は、核酸検定を行う。これらのシステムの複雑性の多くは、検定の加工に関与する分離ステップの結果である。
【0006】
モジュールシステムは、調査研究所においても頻繁に使用される。免疫学的検定分離は、Titerket MAP−C2、BioTek ELx50、Tecan PW 96/384等のプレート洗浄機により行われてもよい。核酸分離は、Applied Biosystems PRISM(商標)6100、Invitrogen Prep,Thermo Scientific KingFisher,Promega Maxwell等のシステムにより行われる。
【0007】
低コストで確実なアナライザーの利用可能性は、疾患の診断及び管理に関するので、世界中で重大な関心事である。この問題はHIV感染の管理に関連する問題により強烈に例示される。HIVに関連する核酸又はタンパク質レベルの検出を可能にする多くの技術が存在する。この検出はHIVに感染したものの患者ケアを管理するために重要である。しかしながら、これらのシステムのコスト及び複雑性により、その汎用的使用が妨げられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、生物反応を行うためのシステム、装置、及び方法に関する。特に、本発明は、サンプル分離、精製、改変、及び分析プロセスにおける、疎水性、水又はアルコール−非混和性、又は親油性バリアの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明のある実施態様のサンプル精製及びPCRのためのカートリッジを示す。図1aは、カートリッジ試作品を示す。図1bは、液体ワックスチャネルの図を示す。
【図2】図2は、本発明のある実施態様のサンプル精製のためのカートリッジを示す。
【図3】図3は、本発明のある実施態様のカートリッジの構成で使用されるホイル積層板の層を示す。
【図4】図4は、本発明のある実施態様で使用されるホイル積層板カートリッジの図を示す。
【図5】図5(a)は、2つの非混和性流体に対する永久磁石の位置を示し、(b)は、x及びy方向における粒子の磁力の表面プロットを示す。
【図6】図6は、重錘法を用いる表面張力の推定のための実験装置を示す。
【図7】図7は、チューブベースのマイクロ流路系におけるサンドイッチアッセイの様々な段階の例示を示す。
【図8】図8は、FL1高さ対Log(ビオチン濃度)のプロットを示す。
【図9】フローサイトメーター対前方散乱、側方散乱、及びFL1高さにより記録される事象のプロットを示す。
【図10】図10は、ストレプトアビジン被覆磁性粒子の、一のキャピラリーから別のキャピラリーへの動きと、その後のビオチンでの反応の例示を示す。
【図11】図11aは、オイル含有蛍光色素を介して動いた後の、ストレプトアビジン被覆粒子のシグナルを示す。図11bは、ストレプトアビジン被覆粒子を、油含有蛍光色素を介して動かし、PBSバッファ中で攪拌した後の当該粒子のシグナルを示す。
【図12】図12は、本発明のある実施態様において使用される2チャンバーキュベットの概略図を示す。
【図13】図13は、本発明のある実施態様において使用される2チャンバーキュベットの概略図を示す。
【図14】図14は、IPF法を用いる血漿からのHIV−1のqRT−PCRを示す。4つの異なるRNA濃度についてのCt値の標準曲線は、HIV−1ウイルスコピー数のlog10に対して二重にプロットされる。
【図15】図15は、IPFと、精製のマニュアル法と比較するBland−Altmanプロットを示す。黒色塗りつぶしの正方形は、2つの方法間の差異を示し、実線(y=−0.00772)2つの方法間の平均差をプロットし、点線は当該平均の平均+2及び−2標準偏差(SD)を示す。
【図16】図16は、尿サンプル由来のクラミジアのqPCRによるIPF定量を示す。
【図17】図17は、尿サンプル由来の淋菌のqPCRによるIPF定量を示す。
【図18】図18は、クラミジアのIPF及び精製のマニュアル法を比較するBland−Altmanプロットを示す。
【図19】図19は、淋菌のIPF及び精製のマニュアル法を比較するBland−Altmanプロットを示す。
【図20】図20は、25μL WB由来のプロウイルスDNAについてのIPF PCRを示す。
【図21】図21は、IPF及び精製のマニュアル法を比較するBland−Altmanプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ある実施態様によれば、本発明は、生体分子又は細胞の精製、改変、分析、及び/又は検出のための試薬を含んでなる複数のサンプル加工チャンバー;及び2以上のチャンバーの中間に(例えば、前記チャンバーを分離する)親油性物質を含んでなる、生物サンプル精製及び/又は分析装置を提供する。ある実施態様によれば、親油性物質はワックスである。ある実施態様によれば、当該ワックスは、規定の温度で液体又は固体状態をとることができる相転移ワックスである。例えば、ある実施態様によれば、当該ワックスは、貯蔵及び輸送温度で固体状態をとり、反応温度(例えば、室温)で液体状態をとる。ある実施態様によれば、親油性物質はオイルである。ある実施態様によれば、2つの反応チャンバーがある。ある実施態様によれば、3つの反応チャンバーがある。ある実施態様によれば、4つの反応チャンバーがある。ある実施態様によれば、5つの反応チャンバーがある。ある実施態様によれば、6以上(例えば、7、8、9、10、11、・・・、20、・・・)の反応チャンバーがある。ある実施態様によれば、親油性物質は2以上のチャンバーの間に隣接するバリアを提供する(すなわち、サンプルは第一チャンバーから直接親油性物質に、その後、当該親油性物質から直接第二チャンバーに通過する)。他の実施態様によれば、親油性物質と1以上のチャンバーとの間に、空気、液体、又はその他の物質がある。かかる実施態様によれば、当該親油性物質は、加工されるサンプル又は生体分子が、第一チャンバーから第二チャンバーまでの通過の間のいくつかの点で、当該親油性物質を通り抜けるように位置される。
【0011】
ある実施態様によれば、反応チャンバーの全て、又はサブセットは、サンプル精製のためのみに使用される。例えば、1又は複数の反応チャンバーは、サンプル精製事象、限定するものではないが、例えば、細胞溶解、生体分子捕捉、生体分子分離、及び細胞培養、精製、及び/又は分析を起こす試薬を含む。いくつかの実施態様によれば、反応チャンバーの全て、又はサブセットは、サンプル改変のためのみに使用される。例えば、1又は複数の反応チャンバーは、生体分子(例えば、核酸、タンパク質、脂質等)、又は細胞改変事象、限定するものではないが、例えば、増幅、ライゲーション、開裂、標識、伸長、分解、リガンドとの結合、オリゴマー形成、形質移入、形質転換、遺伝子組換え、分裂、分化等を起こす試薬を含む。ある実施態様によれば、反応チャンバーの全て、又はサブセットは、サンプル分析のためのみに使用される。例えば、1又は複数のチャンバーは、注目の生体分子又は細胞の検出又は他の分析ができる試薬又は他の成分を含む。ある実施態様によれば、チャンバーは、色、蛍光シグナル、発光シグナル、又はその他の検出可能な特徴の発現ができる試薬を含む。いくつかの実施態様によれば、チャンバーはシグナル読取器(例えば、色読取器、蛍光読取器、発光読取器、目視等)による最適なシグナル検出をするよう構成される。1又は複数のチャンバーを、様々な多数の課題、例えば精製、改変、分析、及び/又は検出のために使用してよい。
【0012】
本発明は、チャンバーが互いに構成されるか、分離されるかに限定されない。チャンバーは、互いに同サイズ及び形状であっても、異なるサイズ又は形状であってもよい。様々な構成を使用できる。いくつかの実施態様によれば、チャンバーは、ウェル、及び一のチャンバーから別のチャンバーへ移される任意の物質が、そして上下運動により親油性物質を通りぬけ、且つそこを去るように、当該ウェルの上又は下に位置する親油性バリアである。いくつかの実施態様によれば、チャンバーは、親油性物質の存在により創出される。例えば、いくつかの実施態様によれば、親油性物質を、1又は複数のチャネル(例えば、ガラス、プラスチック、又はセラミック管)における1又は複数の点に沿って堆積させ、前記1又は複数のチャネルの区間の間にバリアを創出する。当該チャネルは、任意のサイズでよく、キャピラリー管又はマイクロ流体チャネル等の小さいサイズがある。ある実施態様によれば、注目のサンプル又は生体分子を、反応チャンバーの線系列に送達させるような、チャンバー及びバリアを構成する。しかしながら、別の実施態様によれば、第一反応チャンバーにおけるサンプル又は生体分子は、任意に1又は複数の他のチャンバーを飛ばしてもよい。いくつかの実施態様によれば、当該チャンバーは、従来の実験室装置(例えば、自動ロボットアーム、プレートホルダー(例えば、96ウェル)、サーモサイクラー、蛍光検出器等)に適合するよう構成されたサイズ又は形状を有する装置に収容される。ある実施態様によれば、反応チャンバーを分離するためにチャネルを使用し、ここでチャネルの全て又は一部は、親油性物質を含む。例えば、ある実施態様によれば、装置を、2以上のウェルを接続するチャネルを有する96ウェル又は384ウェルプレートと同様に構成する。ある実施態様によれば、2つのチャンバー間の経路は、当該親油性物質に侵入するか、そこから離れる前及び/又は後に、空気、水、又はその他の流体を含む。
【0013】
ある実施態様によれば、反応チャンバーは、疎水性溶液を含むマイクロウェル又はマイクロ管であり、親油性物質は当該チャンバーのサブセット又は別々のチャンバーにおいて、前記溶液の上又は下に置かれる。
【0014】
ある実施態様によれば、当該装置は、親油性物質を介し、1の反応チャンバーから別のチャンバーへ所望の物質を移動させる輸送メカニズムを含んでなる。例えば、ある実施態様によれば、当該反応チャンバーの1つにおいて、注目の生体分子を磁性ビーズ等の磁性粒子と結合させる。磁性粒子を、疎水性バリアを介して、第一チャンバーから第二チャンバーへ移動させる(例えば、磁石からの)磁場の適用により、注目の生体分子は、一方のチャンバーから他方のチャンバーへ動かされる。他の実施態様によれば、電場が、電荷を用いて、生体分子又は生体分子と結合した成分(例えば、リガンド、ビーズ、チャージタグ等)を、1のチャンバーから別のチャンバーへ動かす。ある実施態様によれば、遠心力を用いて、1のチャンバーから別のチャンバーへ注目の生体分子を、疎水性バリアを介して移動させる。ある実施態様によれば、真空又は吸引による圧力を用いて、チャンバー間の物質を動かす。本発明は、輸送のメカニズムにより限定されない。
【0015】
ある実施態様によれば、装置は、操作又は使用の際の液体の損失を防止又は低減する蒸気バリアを含んでなる。ある実施態様によれば、装置は、複数の互いに積み重なった物質の薄層から構成される。例えば、ある実施態様によれば、当該層は、プラスチック層間に挟まれるアルミホイル層を含んでなる。
【0016】
ある実施態様によれば、本発明の装置は、サンプル収集、サンプル操作、サンプル廃棄、データ収集、データ分析、及びデータ提示ができる1以上の他の成分を含むシステム(例えば、キット)として提供される。これらの成分は、別々の装置であっても、多成分装置を1つに統合してもよい。これらの成分は、限定するものではないが、医療装置、環境サンプル操作装置、タンパク質精製装置、核酸精製装置、コンピュータ、ソフトウェア等を含んでよい。当該システム又は装置の1以上の成分は、自動化できる。ある実施態様によれば、当該システムの1以上の成分を、自動化しないで行うよう構成する。例えば、非自動化システムにおいて、ハンドヘルド磁石で1のチャンバーから別のチャンバーへサンプルを動かすか、ヒートブロック又は水浴を用いて所望の反応温度を作り出すか、ハンドヘルド蛍光検出器を用いてシグナルを検出するか、又はシグナルを目視する。
【0017】
本発明のシステム及び装置は、様々なサンプルの使用が見出されている。例えば、ある実施態様によれば、サンプルは、生物サンプル又は環境サンプルである。生物サンプルは、動物(例えばヒト)から得てもよく、流体、固体、組織、及び気体を包含する。生物サンプルには、血漿、血清等の血液製剤、及び脳脊髄液、唾液、気管支洗浄剤、気管支吸引物、尿、リンパ液、及び様々な呼吸器系外分泌物、腸及び泌尿生殖路、涙、唾液、乳、白血球、骨髄腫、細胞培養上清、組織(固定又は非固定)、細胞(固定又は非固定)等の生体液等がある。環境サンプルには、限定するものではないが、表面物質、土壌、水、工業サンプル等の環境物質がある。
【0018】
本開示の理解の促進のために、以下で用語を定義する。
本明細書で使用される場合、「親油性物質」なる用語は、水、アルコール、又の親水性又は水溶性の溶液において、実質的に非混和性である任意の物質のことを言う。ある実施態様によれば、本発明の親油性物質は、核増幅又は生体分子検出等の特定の生物プロセスを干渉する物質に対し、低溶解性である。ある実施態様によれば、本発明の親油性物質は、低蒸気圧である。親油性物質は、それら自身内で、且つ他の物質と、ファンデルワールス力を介して相互作用する傾向がある。これらは、水素結合をほとんど形成しないか、形成する能力を有さない。親油性物質は典型的に、大きなo/w(油/水)分配係数を有する。
【0019】
「水非混和性」及び「疎水性」物質は、本明細書において同意義として使用される。該用語は、水中で特に不溶性であり、且つ塩化メチレン等の揮発性親油性溶媒及び非揮発性溶媒、特にN−メチルピロリドン(NMP)に溶解しやすい、ポリマーを含む。
【0020】
「水混和性」又は「親水性」物質とは、少なくとも等量の水で、分離することなく希釈することができる有機液体のことを言う。
【0021】
「水非混和性」又は「親油性」物質の特性は、少なくとも等量の水で、分離することなく希釈することができないもののことを言う。
【0022】
「精製ポリペプチド」又は「精製タンパク質」又は「精製核酸」は、注目のポリペプチドもしくは核酸、又は注目のポリペプチドもしくはポリ核酸がもとから結合する細胞成分を基本的に含まない、例えば、当該成分を約50%未満、好ましくは約70%未満、そしてより好ましくは約90%未満含有するその断片を意味する。
【0023】
「単離(された)」なる用語は、物質が本来の環境(例えば、天然物である場合は、天然環境)から除去されることを意味する。例えば、動物に存在する天然のポリヌクレオチド又はポリペプチドは単離されていないが、同じポリヌクレオチド又はDNA又はポリペプチドでも、天然系に共存している物質のいくつかもしくは全てから分離されるものは、単離される。かかるポリヌクレオチドは、ベクターの一部となり得る、及び/又はかかるポリヌクレオチドもしくはポリペプチドは組成物の一部となり得る、そして、当該ベクター又は組成物はその天然環境の一部でない点でなお単離され得る。
【0024】
「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書において互換的に使用され、且つ以下に記載の全てのポリペプチドを含む。ポリペプチドの基本構造は周知であり、且つ当該技術分野における無数の許可書及びその他の刊行物に記載されている。これに関連して、本明細書で当該用語は、互いにペプチド結合により直鎖状に結合した2以上のアミノ酸を含んでなる、任意のペプチド又はタンパク質のことを言うために使用される。本明細書で使用される場合、当該用語は、当該技術分野においてペプチド、オリゴペプチド及びオリゴマーとして通常記載される短鎖と、例えば、当該技術分野においてその多くの種類が存在するタンパク質として一般的に記載される長鎖の両方のことを言う。
【0025】
ポリペプチドは、多くの場合、通常20個の天然アミノ酸として記載される20アミノ酸以外のアミノ酸を含み、且つ末端アミノ酸を含む多数のアミノ酸が、加工及びその他の翻訳後修飾等の天然プロセスによるか、又は当該技術分野で周知の化学改変技術により、所与のポリペプチドにおいて改変されてよいことは明らかである。ポリペプチドにおける天然に発生する共通の改変を個々に完全に列挙するには多すぎるとしても、これらは基本書及びより詳細なモノグラフ、並びに膨大な研究文献に十分に記載されており、且つ当業者に周知である。本発明のポリペプチドに存在し得る既知の改変から、数例を挙げると、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、核酸又は核酸誘導体の共有結合、脂質誘導体の脂質の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル反応、共有架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、ガンマ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリソイル化(myrisoylation)、酸化、タンパク質分解処理、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニン化等の転移RNA媒介性のタンパク質へのアミノ酸付加、及びユビキチン化がある。
【0026】
かかる改変は当業者に周知であり、且つ科学的論文に非常に詳細に記載されている。複数の特に一般的な改変、例えば、グリコシル化、脂質付加、硫酸化、グルタミン酸残基のガンマ−カルボキシル化、ヒドロキシル化及びADP−リボシル化が、Proteins−Structure and Molecular Properties,2.sup.nd Ed.,T.E.Creighton,W.H.Freeman and Company,New York(1993)等の最も基本的な文書に記載される。この主題についての多くの詳細なレビューが利用可能であり、例えば、Wold,F.,Posttranslation on Protein Modifications:Perspectives and Prospect,pg.1−12 in Posttanslational Protein Covalent Modification of Proteins,B.C.Johnson,Ed.,Academic Press,New York(1983);Seifter et al.,Analysis for protein modifications and nonprotein cofactors,Meth.Enzymol.182:626−646(1990)及びRattan et al.,Protein synthesis:Posttranslational Modifications and Aging,Ann N.Y.Acad.Sci.663:48−62(1992)がある。
【0027】
周知の通り且つ上記の通り、ポリペプチドが常に完全な直鎖ではないことは明らかである。例えば、ポリペプチドは、ユビキチン化の結果として分岐してもよいし、天然処理の事象等の翻訳後事象、及び天然に発生しない人間の操作によりもたらされる事象の結果として、分岐を有するか又は有さない環状であってもよい。環状、分岐、及び分岐環状のポリペプチドは、非翻訳天然プロセスによっても、そして同様に完全に合成的方法によっても合成できる。
【0028】
改変はポリペプチドのいずれにおいても起こり得て、例えばペプチド骨格、アミノ酸側鎖、及びアミノ末端又はカルボキシル末端がある。実際に、ポリペプチドにおけるアミノ基又はカルボキシル基の骨格、または共有結合改変によるその両方は、天然及び合成のポリペプチドに共通している。例えば、タンパク質分解の前に、E.coliにおいて作られるポリペプチドのアミノ末端残基は、ほとんど常に、N−ホルミルメチオニンとなるはずである。
【0029】
ポリペプチドにおいて発生する改変は、多くの場合、どのようにそれがなされるかによるはずである。例えば、宿主にクローン化遺伝子を発現させることにより作製されるポリペプチドについて、大部分における改変の性質及び範囲は、宿主細胞の翻訳後修飾の許容量及びポリペプチドアミノ酸配列に存在する改変シグナルにより決定されるはずである。例えば、周知の通り、グリコシル化は、多くの場合、E.coli等の細菌性宿主において発生しない。したがって、グリコシル化を所望する場合、ポリペプチドは、グリコシル化宿主、一般的に真核細胞において発現させるべきである。虫細胞は、多くの場合、哺乳類細胞と同じ翻訳後グリコシル化を行うので、虫細胞発現系は、グリコシル化の天然のパターンを有する哺乳類タンパク質を効率的に発現するよう開発されてきている。同様の考察は、他の改変にも適用される。
【0030】
同じ種類の改変が、所与のポリペプチドにおける複数の部分で、同程度又は様々な程度で存在する可能性があることは明らかである。また、所与のポリペプチドは、多種の改変を含んでよい。
【0031】
本明細書に記載される通り、一般的に、ポリペプチドなる用語は、全てのかかる改変、特に宿主細胞において発現されるポリヌクレオチドにより合成されるポリペプチドに存在するものを包含する。
【0032】
「成熟」ポリペプチドなる用語は、対象ポリペプチド及び起源細胞に適する、完全な翻訳後修飾を受けているポリペプチドのことを言う。
【0033】
特定のポリペプチドの「断片」とは、特定のポリペプチド由来である、少なくとも約3〜5アミノ酸、より好ましくは少なくとも約8〜10アミノ酸、及びさらにより好ましくは少なくとも15〜20アミノ酸を含んでなるアミノ酸配列のことを言う。
【0034】
「〜と免疫学的に同等である」なる用語は、指定された(1又は複数の)ポリペプチドに存在し、且つ当該ポリペプチドに特有である、(1又は複数の)エピトープ及び(1又は複数の)ポリペプチドが存在することを言う。免疫学的同等性は、抗体結合及び/又は結合における競合により決定してよい。エピトープの特有性は、当該エピトープをコードするポリヌクレオチド配列についての、GenBank等の既知のデータバンクのコンピュータサーチによって、及びその他の既知のタンパク質とのアミノ酸配列比較によって決定することができる。
【0035】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」は、ポリペプチド又はタンパク質の抗原決定基を意味する。考えられる限りにおいては、エピトープは、当該エピトープに特有の立体配座において3つのアミノ酸を含むことができる。一般的には、エピトープは、少なくとも5つのかかるアミノ酸からなり、且つより一般的には、少なくとも8〜10アミノ酸からなる。立体配座を調べる方法は、当該技術分野において既知であり、例えば、x線結晶解析及び2次元核磁気共鳴がある。
【0036】
「配座エピトープ」は、免疫学的に識別できる構造におけるアミノ酸の特定の並列からなり、かかるアミノ酸は、隣接又は非隣接順で同じポリペプチドに、又は異なるポリペプチドに存在する。
【0037】
ポリペプチドは、それが抗体に結合する場合、ポリペプチド内に含まれる特定のエピトープの抗体認識により、抗体と「免疫学的に反応する」。免疫学的反応性を、抗体結合により、より具体的には抗体結合の動力学により、及び/又は(1又は複数の)競合因子として、抗体に向かうエピトープを含む(1又は複数の)既知のポリペプチドを用いて結合における競合により決定してよい。ポリペプチドが抗体と免疫学的に反応するか否かを決定するための方法は、当該技術分野において既知である。
【0038】
本明細書で使用される場合、「注目のエピトープを含有する免疫原性ポリペプチド」は、注目の天然のポリペプチド又はその断片、並びにその他の方法、例えば、化学合成又は組換え生物における当該ポリペプチドの発現により調製されるポリペプチドを意味する。
【0039】
「精製産物」は、当該産物が通常結合する細胞構成物、及び注目のサンプルに存在する可能性のある多種類の細胞から単離された産物の調製物のことを言う。
【0040】
本明細書で使用される場合、「検体」は、試験サンプル、例えば注目の生体分子、小分子、病原体等に存在する可能性のある検出されるべき物質である。当該検体には、タンパク質、ポリペプチド、及びアミノ酸、ヌクレオチド標的等があり得る。当該検体は、血液、血漿もしくは血清、尿等の体液に可溶性であってよい。当該検体は、組織、細胞表面又は細胞内のいずれかに存在してよい。当該検体は、血液、尿、乳穿刺液(breast aspirate)等の体液に分散する、又は生検として得られる細胞上又は細胞内に存在してよい。
【0041】
本明細書で使用される場合、「特異結合メンバー」は、特異結合対のメンバーである。つまり、2つの異なる分子のうち1つが、化学的又は物理的方法により、第二の分子に特異的に結合する。したがって、従来の免疫アッセイの抗原及び抗体の特異的結合対に加え、他の結合対には、ビオチン及びアビジン、炭水化物及びレクチン、相補的ヌクレオチド配列、エフェクター及びレセプター分子、補因子と酵素、酵素阻害因子、及び酵素等が含まれ得る。さらに、特異結合対には、もともと特異結合メンバーの類似体であるメンバー、例えば、検体類似体が含まれ得る。免疫反応特異結合メンバーには、抗原、抗原断片、抗体及び抗体断片、モノクローナル及びポリクローナル抗体の両方、及びその複合体、例えば、組換えDNA分子により形成されるものが含まれる。
【0042】
特異結合メンバーには、「特異結合分子」が含まれる。「特異結合分子」は、任意の特異結合メンバー、特に免疫反応性特異結合メンバーを意図する。このように、「特異結合分子」なる用語は、抗体分子(ポリクローナル及びモノクローナル調製物の両方から得られる)、並びに、以下のもの:ハイブリッド(キメラ)抗体分子(例えば、Winter,et al.,Nature 349:293−299(1991)及び米国特許第4,816,567号を参照されたい);F(ab’)sub.2及びF(ab)断片;Fv分子(非共有へテロダイマー、例えば、Inbar,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA69:2659−2662(1972)及びEhrlich,et al.,Biochem.19:4091−4096(1980)を参照されたい);一本鎖Fv分子(sFv)(例えば、Huston,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85: 5879−5883(1988)を参照されたい);ヒト化抗体分子(例えば、Riechmann,et al.,Nature 332:323−327(1988),Verhoeyan,et al.,Science 239:1534−1536(1988)、及び1994年9月に公開された英国特許第GB2,276,169号を参照されたい);及びかかる分子由来の、親抗体分子の免疫学的結合特性を保持する任意の機能的断片、を包含する。
【0043】
本明細書で使用される場合、「ハプテン」なる用語は、抗体に結合できるが、担体タンパク質と共役しない限り抗体形成を引き起こせない、部分的抗原又は非タンパク質結合メンバーのことを言う。
【0044】
本明細書で使用される場合、「捕捉試薬」は、サンドイッチアッセイの場合の検体か、競合アッセイの場合の指標試薬又は検体か、又は間接アッセイの場合のそれ自身が検体に特異的である補助的な検体特異結合メンバーのいずれかに特異的な、未標識特異結合メンバーのことを言う。捕捉試薬は、当該アッセイを行う前、又はアッセイを行っている間に、固相物質に直接的又は間接的に結合でき、これにより、固定化複合体の試験サンプルからの分離が可能となる。
【0045】
「指標試薬」は、外部手段により検出可能な、測定可能シグナルを発生させることができ、且つ発生させる、「シグナル発生化合物」(「標識」)を含んでなる。ある実施態様によれば、指標試薬は、特異結合メンバーと複合化(「付加」)する。特異結合対の抗体メンバーであることに加え、当該指標試薬は、任意の特異結合対のメンバーであってもよく、例えば、ハプテン−抗−ハプテン系、例えばビオチン又は抗ビオチン、アビジン又はビオチン、炭水化物又はレクチン、相補的ヌクレオチド配列、エフェクター又はレセプター分子、酵素補因子及び酵素、酵素阻害因子又は酵素等のいずれかがある。免疫反応性特異結合メンバーは、サンドイッチアッセイの場合の注目のポリペプチドか、競合アッセイの場合の捕捉試薬か、又は間接アッセイの場合の補助的特異結合メンバーのいずれかに結合できる、抗体、抗原、又は抗体/抗原複合体があり得る。プローブ及びプローブアッセイについて記載する場合、「レセプター分子」なる用語を使用してもよい。レセプター分子は、カルバゾール又はアダマンタン等の特異結合対の特異結合メンバーと複合化する、上記のシグナル発生化合物を含んでなる。
【0046】
想定される様々な「シグナル発生化合物」(標識)には、クロマゲン(chromagen)、酵素等の触媒、フルオレセイン及びローダミン等の発光化合物、ジオキセタン、アクリジニウム、フェナントリジニウム(phenanthridinium)及びルミノール等の化学発光化合物、放射活性因子及び直視標識がある。酵素の例には、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキイダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ等がある。特定の標識の選択は、厳密ではないが、それ自身か、1又は複数の追加の物質との複合状態のいずれかによりシグナルを発生できるべきである。
【0047】
「固相」(「固体支持体」)は、当業者に既知であり、且つ反応トレイのウェルの壁、試験管、ポリスチレンビーズ、磁性もしくは非磁性ビーズ、ニトロセルロース片、膜、ラテックス粒子等の微小粒子等がある。「固相」は、厳密ではなく、且つ当業者に選択されてよい。すなわち、ラテックス粒子、微小粒子、磁性もしくは非磁性粒子、膜、プラスチック管、マイクロタイターウェルの壁、ガラス又はシリコンチップは、全て好適な例である。固相は、任意の好適な多孔性物質も含んでよいことは、想定されることであり、且つ本発明の範囲内である。
【0048】
本明細書で使用される場合、「検出する(detect)」、「検出(detecting)」、又は「検出(detection)」なる用語は、検出できるよう標識された組成物の、発見もしくは識別の一般的行為か、又はその特異的観察のいずれかのことを言ってよい。
【0049】
「ポリヌクレオチド」なる用語は、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、改変RNAもしくはDNA、又はRNAもしくはDNA模倣剤のポリマーのことを言う。したがって、当該用語には、天然の核酸塩基、糖及び共有ヌクレオシド間(骨格)結合(internucleoside linkages)からなるポリヌクレオチド、並びに同様に機能する非天然部分を有するポリヌクレオチドが含まれる。かかる改変又は置換ポリヌクレオチドは、当該技術分野において周知であり、本発明の「前駆体」として、「類似体」と呼ばれる。
【0050】
本明細書で使用される場合、「核酸分子」なる用語は、分子を含有する任意の核酸のことを言い、限定するものではないが、例えばDNA又はRNAがある。当該用語は、DNA及びRNAの既知の塩基類似体のいずれかを含む配列を包含し、限定するものではないが、例えば、4−アセチルシトシン、8−ヒドロキシ−N6−メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、シュードイソシトシン(pseudoisocytosine)、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシメチル−アミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチルシュードウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチル−グアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルキューオシン、5'−メトキシカルボニルメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、オキシブトキシン(oxybutoxosine)、シュードウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、N−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、シュードウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、及び2,6−ジアミノプリンがある。
【0051】
「遺伝子」なる用語は、ポリペプチド、前駆体、又はRNA(例えばrRNA、tRNA)の製造のために必要な配列をコードすることを含んでなる、核酸(例えばDNA)配列のことを言う。ポリペプチドは、全長コード配列によるか、又は全長もしくは断片の所望の活性もしくは機能特性(例えば、酵素活性、リガンド結合、シグナル伝達、免疫原性等)を保持する限り、コード配列の任意の部分により、コードされ得る。当該用語はまた、構造的遺伝子のコード領域、及び当該遺伝子が全長mRNAの長さに対応するよう、5'及び3'のいずれかの末端上に約1kb超にわたりコード領域に隣接して位置する、両末端上の配列も包含する。コード領域の5'に位置し、且つmRNAに存在する配列のことを、5'非翻訳配列と呼ぶ。3'又はコード領域の下流に位置し、且つmRNAに存在する配列のことを、3'非翻訳配列と呼ぶ。「遺伝子」なる用語は、cDNA及びDNAのゲノム状態の両方を包含する。遺伝子のゲノム状態又はクローンは、「イントロン」又は「介在領域」又は「介在配列」と呼ばれる非コード配列により干渉されるコード領域を含有する。イントロンは、核RNA(hnRNA)に転写される遺伝子のセグメントであり;イントロンは、エンハンサー等の制御因子を含んでよい。イントロンは、核又は一次転写物から除去又は「スプライシング」さるため、イントロンは、伝令RNA(mRNA)転写物に存在しない。mRNAは、転写の間、発生期のポリペプチドにおけるアミノ酸の配列又は順序を特定するよう機能する。
【0052】
「核酸増幅試薬」なる用語は、増幅反応において使用される従来の試薬を含み、且つ限定するものではないが、ポリメラーゼ活性を有する1又は複数の酵素、酵素補因子(例えば、マグネシウム又はニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD))、塩、バッファ、デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP;例えば、デオキシアデノシン三リン酸、デオキシグアノシン三リン酸、デオキシシチジン三リン酸、及びデオキシチミジン三リン酸)及び前記ポリメラーゼ酵素活性又はプライマーの特異性を調整するその他の試薬がある。
【0053】
本明細書で使用される場合、「相補的な」又は「相補性」なる用語は、塩基対合則に関連するポリヌクレオチドヌクレオチド(すなわち、オリゴヌクレオチド又は標的核酸等のヌクレオチドの配列)のことを言うために使用される。相補性は「部分的」であり、ここでわずかな核酸の塩基だけが、塩基対合則に適合する。あるいは、核酸間の「完全な」又は「前宅的な」相補性が存在してもよい。核酸鎖間の相補性の度合いは、核酸鎖間ハイブリダイゼーションの効率及び強度に大きな影響を及ぼす。これは増幅反応、及び核酸間の結合に依存する検出方法において特に重要である。
【0054】
「相同性」なる用語は同一性の度合いを言う。部分的な相同性又は完全な相同性が存在してよい。部分的な同一配列は、別の配列と100%未満同一であるものである。
【0055】
本明細書で使用する場合、「ハイブリダイゼーション」なる用語は相補的核酸の対合について言う際に使用される。ハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションの強度(すなわち、核酸間の結合の強度)は、核酸間の相補性度合い、関連条件のストリンジェンシー、形成ハイブリッドのTm、及び核酸内のG:C比率のような要因により影響を受ける。
【0056】
本明細書で使用される場合、「Tm」なる用語は、「融解温度」のことを言う際に使用される。融解温度は、二本鎖核酸分子の集団のうち半分が一本鎖に解離する温度である。核酸のTmを計算するための等式は、当該技術分野で周知である。標準的な文献に示されるように、Tm値の単純な見積もりは、核酸を1M NaClの水溶液中に置いた場合、等式:Tm=81.5+0.41(%G+C)により計算してよい(例えば、Anderson and Young,Quantitative Filter Hybridization,in Nucleic Acid Hybridization(1985)を参照されたい)。その他の文献には、Tmの計算に、構造的及び配列特性を考慮し、より洗練された計算がある。
【0057】
本明細書で使用される場合、「ストリンジェンシー」なる用語は、核酸ハイブリダイゼーションが行われる、温度、イオン強度、及び他の化合物の存在の条件のことを言う際に使用される。「高ストリンジェンシー」条件では、核酸塩基対合は、相補的塩基配列が高頻度である核酸断片間でしか発生しないことになる。すなわち、互いに完全に相補的でない核酸が一緒にハイブリダイズ又はアニーリングすることが望まれる場合、「弱」又は「低」ストリンジェンシー条件がしばしば必要となる。
【0058】
「野生型」なる用語は、天然の供給源から単離される場合、その遺伝子又は遺伝子産物の特性を有する遺伝子又は遺伝子産物のことを言う。野生型遺伝子は、ある集団において最も頻繁に観察されるものであり、すなわち当該遺伝子の「正常」又は「野生型」状態は任意に設計される。逆に、「改変」又は「変異」なる用語は、前記野生型遺伝子又は遺伝子産物と比較して、配列及び/又は機能特性(すなわち、変更された特性)に改変を示す遺伝子又は遺伝子産物のことを言う。
【0059】
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」なる用語は、2以上のデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド、好ましくは、少なくとも5ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも10〜15ヌクレオチド、及びより好ましくは少なくとも15〜30ヌクレオチド、又はそれ以上からなる分子と定義される。正確なサイズは、多くの要因に依存することになり、そしてオリゴヌクレオチドの根本的機能又は使用にも依存する。当該オリゴヌクレオチドは、任意に手法、例えば、化学合成、DNA複製、逆転写、又はその組み合わせ等により作製されてよい。
【0060】
モノヌクレオチドが、一のモノヌクレオチドペントース環の5'リン酸が、同一方向でその隣接する3'酸素にホスホジエステル結合を介して付加するようにオリゴヌクレオチドを作製するように反応させるために、オリゴヌクレオチドの末端は、5'リン酸がモノヌクレオチドペントース環の3'酸素に結合しない場合は「5'末端」と呼ばれ、そしてその3'酸素が、続くモノヌクレオチドペントース環の5'リン酸に結合しない場合は「3'末端」と呼ばれる。本明細書で使用される場合、核酸配列は、より大きなオリゴヌクレオチドに内在する場合であっても、5'及び3'末端を有すると言ってよい。核酸鎖に沿う第一領域は、核酸に沿って5'〜3'方向に動く場合、当該第一領域の3'末端が、第二領域の5'末端の前であると、別の領域の上流であると言われる。
【0061】
2つの異なる重複しないオリゴヌクレオチドが、同じ直鎖の相補的核酸配列の異なる領域とアニーリングするとともに、一方のオリゴヌクレオチドの3'末端が他方の5'末端の方向を向く場合、前者を「上流」オリゴヌクレオチド、そして後者を「下流」オリゴヌクレオチドと呼ぶことができる。
【0062】
「プライマー」なる用語は、プライマー伸長が開始される条件下に置かれた場合、合成の開始点として作用できるオリゴヌクレオチドのことを言う。オリゴヌクレオチド「プライマー」は、精製した制限酵素消化など天然に発生しても、又は合成で作製してもよい。
【0063】
発明の詳細な説明
本発明は、生物反応を行うためのシステム、装置、及び方法に関する。特に、本発明は、サンプル分離、精製、改変及び分析プロセスにおける親油性のバリアの使用に関する。
【0064】
本発明のシステム、装置、及び方法は、所望の場合には、高額でなく且つ使い易いサンプル精製及び/又は改変及び/又は分析及び/又は検出システムを構成することができる。例えば、本明細書に記載される本発明の実施態様は、汎用的な生体分子検出、分析、及び特性決定のための経済的な方法を提供する。これらのシステム、装置、及び方法は、多くの使用が見出される。本発明の態様及び利益を例示するために、核酸及びタンパク質分析へのその応用、特に、HIV感染及び状態をモニタリングするための応用について以下に示す。本発明は、これらの例示的実施態様に限定されるものではない。ある実施態様によれば、本発明のシステム、装置、及び方法は、現存の複雑で高額のサンプル分離、精製、改変、及び分析装置と複合化して利用される。例えば、ある実施態様によれば、本発明のアプローチは、従来の装置(例えば、サーマルサイクラー、質量分析、NMR装置等)を用いる改変及び/又は分析の前に、サンプル(例えば、核酸又はポリペプチド精製)の調製のために使用される。
【0065】
HIV/AIDSに罹患する3500万人の成人及び子供がおり、彼等のうち2200万人がサハラ以南のアフリカに暮らしている。アフリカにおける平均的な診療所は約400人の患者を扱っており、輸送の問題により、巨大な中央施設の発展よりもむしろ、診療所の数が増加している。したがって、100,000以上のウイルス量を測定する機械が必要とされている。現在利用可能なウイルス量アッセイの主な制限としては、必要な機器の費用、高度に訓練した人員を必要とする複雑且つ時間のかかる手法、及び低温流通が必要な試薬がある。
【0066】
無理なく購入可能且つ単純なHIVウイルス量アッセイの開発は、発展途上国の世界において、AIDS患者のケアの質を向上するために重要なステップである。これは、ポイントオブケア(POC)小装置を用いて、集権的研究所において通常行われる複雑な診断手法を自動化することが必要とされ;最も遠隔な状況に重要な健康関連情報があっても、この性能は、ヘルスケアに従事する者及び患者に権限を与える可能性がある。所望のHIVウイルス量アッセイは、好ましくはポイントオブケアでの回答を送達すべきだが、患者により近い地域の病院検査室へ、遠隔な中央研究所から移動することが、成果を向上させることになる。かかる装置は、短い所要時間且つ購入可能な費用で、HIVの分離、増幅、及び検出をすることになる。短時間というのは重要であり、これは、診療所に必要な機械の数を低減させ、且つ診療所で患者が過ごす時間を低減させるので、実際の費用を低減するためである。
【0067】
HIVウイルス量アッセイを行う場合、集権的研究所及び当該技術分野外のいずれにおいても、多くの課題が克服されるべきである。巨大な研究所は、高容量HIVウイルス量アッセイのために、自動化又は半自動化ロボットシステムを使用する。しかしながら、典型的にサンプル加工は、これらの試験において最も煩雑である。現在は、サンプル加工手法には、多くの場合遠心分離及び抽出ステップを必要とする多数のステップが関与する。また、これらの方法は、多くの場合、標的核酸を十分に精製しない。これらには、しばしば、増幅反応の阻害を引き起こし、且つ偽陰性をもたらす、反応混合物中の阻害性もしくは干渉性物質が残る。従来のサンプル加工技術の手作業の性質は、偽陽性をもたらす可能性のある、検査サンプルの二次汚染が起きる可能性もある。
【0068】
PCR又はその他の核酸分析技術のより汎用的な使用が考慮されるので、サンプル調製プロセスを自動化する試みにおける、想定される努力は既になされている。しかしながら、現存の自動化ハイスループットシステムは、多重な抽出及び精製ステップを行い、且つサンプル及び試薬のロード、及び廃棄物の除去等の特定の手作業の調製をなお必要とする。それ故、アッセイを行い、且つ装置を整備するために、高度に訓練された技術者が必要である。自動化システムは、溶液又は磁気粒子を動かすための複雑なロボットアーム、又は液体のピペッティングのための精密機器を使用するために、非常に高額である。自動化システムの費用は、より小規模の研究所、特に資源が限られる状況では、正当であると証明することは多くの場合困難である。これらは増幅技術を使用するため、二次汚染も問題である。診療検査室では、試薬調製、サンプル調製、増幅、及び増幅後の分析のために、多くの場合別々の部屋を使用する。このため、自動化にも関わらず、ウイルス量試験は、臨床検査改善促進(Clinical Laboratory Improvement Amendments(CLIA))の下、高度に複雑な試験と考えられている。サンプル調製及び試薬操作の自動化の困難性が主な原因となり、これまで、CLIA不履行状態に値する核酸試験(NAT)システムは存在していない。
【0069】
現場使用又は患者に身近なNATを行うことは、特にこれらが非研究所環境において経験の浅い使用者により行われることが不可避となるので、さらに多くの課題が関与する。以下のシステムは、当該分野におけるNATの展開のために近年開発されている。
【0070】
Cepheid(Sunnyvale,CA)によるGeneXpertシステムは、サンプル調製、増幅、及び検出を統合する最初のPCRを基にした機器の1つである。使い捨ての単一試験GeneXpertサンプル調製カートリッジは、4つの機能的構成要素:キャップ、カートリッジ本体、バルブ本体組立部、及び微量PCR反応管、からなる。カートリッジ本体は、内部で様々なサイズ及び機能の多数のチャンバーに分割され、そのいくつかは、凍結乾燥試薬ビーズを含み、且つ各々は、流体の流入及び流出のために底部にポートを有する。当該チャンバーを、中央の注射筒の周囲に徹底的に並べる。カートリッジ本体の下に位置するバルブ本体組立部は、細胞溶解及びDNA精製の部位であり、ソフトウェア制御の下、当該機器上の回転バルブが、プログラムされたアッセイプロトコルに従って、流体が、混合、希釈、及び洗浄のための適切なチャンバーから吸引されるか、又は当該チャンバーに分配されるよう、バルブ本体組立部を動かす。反応管は、カートリッジから突き出ており、調製サンプルを受け取り、且つ増幅のためのPCR反応器及び標的検体の検出を整合させる。GeneXpertシステムでの試験を行うために、操作者は、カートリッジキャップを開け、且つサンプルチャンバーに液体サンプルをロードする。操作者がこのキャップを閉めると、カートリッジは試験進行及びバイオハザード廃棄にわたって恒久的に密封され、サンプルの二次汚染の任意のリスクを除去する。バルブ本体組立部で小さなガラスビーズを、カートリッジ下で直接発生させた超音波でかき混ぜることにより細胞を溶解する。抽出されたDNAは、固定化DNAプローブを含有するマイクロ流体チャネルに流れ込み、ここを細胞残骸のDNAは通過する。結合DNAは、後にその付加部位から離れ、且つPCR増幅のために洗い出される。
【0071】
IQuum Inc(Allston,MA)により開発された別のシステムは、商標権を有するlab−in−a−tube(Liat)テクノロジープラットフォームに基づく、Liat Molecular Analyzerである。Liatチューブは、サンプルベッセルのような柔軟なチューブを使用し、且つチューブ区分に予備充填された全てのアッセイ試薬を含有する。貼り直し可能なシールを用いて、単位用量試薬及び内部標準を、アッセイに使用される順番に、一連のチューブ区分に別々に置くことができる。貼り直し可能なシールは、プラスチックチューブの熱溶接により形成される。各々のシールに隣接するチューブ区分へ圧力をかけることにより、当該シールは、勢いよく開き、試薬を放出する。Liat アナライザーにおいて、多重サンプル処理装置モジュールを、Liarチューブと連結する。各々のモジュールは、作動装置及びクランプからなり、その位置は、チューブ内の試験サンプルを操るよう制御できる。格納式の磁石を、磁気ビーズを操るためのモジュールの1つに付加する。チューブにアナライザーをロードすると、作動装置及びクランプは、連続的にチューブを圧迫し、試薬を動かし、且つ1の区分から別の区分まで制御する。同様に、作動装置及びクランプの動きを同期させることにより、様々なサンプルプロセスを、チューブ内で行うことができる。かかるプロセスには、区分内で液体の容量を調整すること;隣接する区分に試薬を放出すること;試薬及びサンプルを混合すること;所与の温度で反応混合物をかき混ぜ且つインキュベートすること;及び洗浄及び区分から廃棄すること、が含まれる。廃棄物は、キャップの廃棄チャンバーに向かって動くが、精製サンプルはチューブのさらに下方に動く。最低部のチャンバーにおいて、放出DNAが増幅される。
【0072】
当該分野での使用が意図される他の市販のリアルタイムPCR装置には、Idaho Technology Inc.(Salt Lake City)製のRuggedized Advanced Pathogen Identification Device、Lawrence Livermore National Laboratory(Libermore,CA)製のHand−Held Advanced Nucleic Acid Analyzer、及びSmiths Detection(Pine Brook,N J)製のBio−Seeq検出器がある。しかしながら、これらの装置は、自動化サンプル調製及び試薬操作機能を持たない。
【0073】
上記のシステムは、正しい方向のステップである。しかしながら、GeneXpertは、操作にはなお複雑であり、且つ訓練した技術者による操作を必要とする。それは使用者が当該領域で液体のピペッティングすることを要するので、精密な測定機器は、当該システムの費用をさらに増大することが必要となるはずである。Liar Molecular Analyzeは、当該領域で液体容量を正確に測定することはないが、流体を正確に動かすために複雑な機械的システムが必要なので高額である。Liatチューブは、製造が困難であり、品質制御が困難である。当該チューブは保存が困難であり、且つ洩れの問題がある。
【0074】
タンパク質及び化学試薬等の小量の分子の、制御された動作及び送達は、マイクロ流体中に継続する課題を示し、且つHIVウイルス量装置等のPOC装置の開発のために非常に需要である。マイクロ流体システムの大半は、一の位置から別の位置へ分子の溶液を動かす流体運動に依存し、その結果、これらのシステムは、溶媒及び物質を不必要に消費し、流量を制御する複雑な機械的システムが必要である。本発明の実施態様は、1の反応媒体から次の媒体へ分子を動かすし、且つ当該システムから全ての流量を除去する担体としての磁性マイクロ粒子の使用における問題に対処する代替的アプローチを提供する。磁力を使用して磁性粒子を操り、バイアルロード試験等の複雑な化学反応を行わせる場合、かかるアプローチは低費用の閉鎖カートリッジである。反応における駆動力が磁場なので、当該システムは自動化でき、汚染問題のないウイルス量試験のための携帯可能で且つ信頼性のある機器の構築が可能である。従来のシステムはHIVウイルスRNAのサンプル精製について実証されていないが、プラットフォームは、他の核酸試験及び免疫アッセイ、及びその他の注目の生体分子又は非生体分子の検出まで容易に拡張できる。
【0075】
本発明の実施態様は、単一機器におけるサンプル精製及び分析アッセイを行うために使用される装置を提供する。ある典型的な実施態様によれば(例えば実施例1を参照されたい)、RNAの捕捉のための固相としての磁性粒子の使用、その後、増幅及び検出を行うためのRNAの精製及び放出が必要である。
【0076】
従来の装置は固相に接触する溶液を交換することによりアッセイを行う。当該固相は、マイクロタイターウェル、マイクロ粒子、又は充填カラムであってよい。固相が常磁性粒子(PMP)であっても、アッセイは典型的には、マイクロ粒子の磁気による捕捉、及び単一容器における溶液の交換により行われる。本発明の実施態様は、試験サンプル、及び水ベース又は水−アルコール混合物の洗浄バッファ、及び分析を行うためのバッファを保持するための多数のチャンバーを使用する。チャンバーにおける水ベースの溶液は、当該溶液と非混和性である親油性物質(例えば、ワックス又はオイル)により分離される。ある実施態様によれば、これはワックス物質及びウェルで例示される。異なるウェル中のワックスは、互いに接続し、ワックスチャネルを形成する(図1)。当該ワックスは、保存及び輸送のために固形化できる。アッセイの間、当該ワックスは溶解するとともに、PMPはワックス中で引き上げられ、且つワックスに通過させることにより、PMPを1の区画から次の区画に動かす。磁場は、PMPを動かし、且つ水ベースの溶液とワックスとの間の界面を通過させるのに必要とされる力を発生するために使用される。最大の力は、当該界面を通過する粒子を動かすために使用され、且つ柔軟な上部のプレートは、当該界面近傍の磁石に到達し、当該力を発生することを必要とする磁石の強度を低減するために使用される。
【0077】
流体の代わりにPMPを動かすことは、自動化処理装置におけるポンプ及びアスピレーターの必要性、及び液体を等分する訓練した技術者の必要性を排除する。ワックスの使用は、ポイントオブケア分析において使用される、単回使用試験カートリッジにおける区画間のバルブの必要性を排除する。それはまた、1のウェルから次のウェルへ持ち越される(キャリーオーバー)一定量の液体を低減することにより、1のチャンバーから次のチャンバーへ持ち越される一定量の阻害因子を低減させる。動かすために使用される力は磁石なので、このシステムは、完全に閉鎖することができ、PCR等の感度の高いアッセイにおいて主要な問題である汚染のリスクを有意に低減する。
【0078】
I.装置
上記の通り、本発明は、サンプル調製及び分析のための低コスト装置の作製及び使用を可能にする。ある実施態様によれば、当該装置は、単回使用又は多重回使用であり、且つ使い捨てできる。ある実施態様によれば、本装置は、複数のサンプル加工(例えば、サンプル調製及び/又は分析)ウェルを含んでなる、プラスチック(又はその他の物質)カートリッジを利用する。各々のウェルは、サンプル調製又は分析のための試薬を含んでなる。試薬の性質は、使用される特定のサンプル及び分析方法に依存する。ある実施態様によれば、カートリッジは化学的に不活性な任意の物質からなり、且つ十分な機械的強度を提供する。ある実施態様によれば、カートリッジは、蒸気バリアの目的でアルミニウム層を、及び試薬と接触する不活性ポリマーを含んでなる、ホイル積層板を使用して構築される。RNAの精製及び分析を必要とする実施態様(例えば、ウイルス検出又は量アッセイ)によれば、カートリッジはRNA及びRNAseを含まない。当該技術分野で既知の滅菌法を、使用前にカートリッジを滅菌するために利用できる。
【0079】
本発明の実施態様のカートリッジは、サンプル加工チャンバーを分離する物質で覆われる。ある実施態様によれば、当該物質は、相転移特性を有する任意の親油性物質であり、且つサンプル調製及び分析のための試薬、及び増幅及び検出を干渉する可能性のあるサンプル中の物質とは非混和である。ある実施態様によれば、当該物質はワックスである。ある実施態様によれば、当該ワックスは、室温で液体である。その他の実施態様によれば、当該ワックスは、室温で固形であり、反応に適する温度で液体である。その他の実施態様によれば、親油性物質はオイルである。当該親油性物質を、使用温度、サイズ排除、安定性等の点で、注目の特定の分子との使用に適するように選択してよい。
【0080】
ある実施態様によれば、親油性物質は、サンプル加工チャンバーを分離する。その他の実施態様によれば、親油性物質は、チャンバー間に置かれるが、チャンバー間の物理的バリアを形成しない。かかる実施態様によれば、当該サンプルは、親油性物質を通過する前又は後に、空気又はその他の試薬を通過してよい。
【0081】
本発明は、特定の親油性物質に限定されない。ある実施態様によれば、親油性物質は、水及びアルコールに非混和性であり、水に対して低溶解性を示し(例えば、ppm)、化学的に不活性であり、アッセイプロセス進行(processing)に適合する融点及び沸点を有し(例えば、パーフルオロヘキサンは56℃の沸点を有する)、水に対する比重を有し(例えば、水に対する浮遊又は沈殿)、低膨張率を有し、且つ50℃で長期間安定である(例えば、数週間、数ヶ月、又は数年)
【0082】
本発明の実施態様においての使用が見出される市販の親油性物質には、限定するものではないが、Chill−Out14ワックス(MJResearch)、IGI1070A等のパラフィンワックス、IGI Micosere5788A等の蝋ワックス、熱融解接着剤、アタクチックポリプロピレン、及びポリオレフィン化合物、石油ワックス、及び歯科用ワックスがある。
【0083】
他の実施態様によれば、天然ワックス、例えば、動物ワックス(例えば、密ろう、ラノリン、又は獣脂)、植物ワックス(例えば、カルナバ、カンデリラ(candelilla)、ダイズ)、又は化石もしくは土(例えば、セレシン又はモンタン)又は石油(例えば、パラフィン又は微結晶)ワックス等の鉱物ワックスを利用する。さらに他の実施態様によれば、合成(人工)ワックス、例えば、エチレンポリマー(例えば、ポリエチレン又はポリオール エーテル−エステル)、塩素化ナフタレン、又は炭化水素型ワックス(例えば、Fischer−Tropsch)を利用する。
【0084】
ある実施態様によれば、鉱物オイル、パラフィンオイル、シリコンオイル、フルオロシリコン、フルオロカーボンオイル(例えば、Fluorinert FC−40、3M製)、パーフルオロカーボン流体(例えば、Flutec(登録商標)、F2Chemicals製)、パーフルオロデカリン(例えば、P9900、Aldrich製、FlutecPP6、FluoroMed APF−140HP)、パーフルオロパーヒドロフェナントレン(例えば、FluoroMed APF−215M)、又はパーフルオロオクチルブロミド(例えば、FluoroMed APF−PFOB)を利用する。
【0085】
追加のバリア物質には、限定するものではないが、1,4−ジオキサン、アセトニトリル、酢酸エチル、tert−ブタノール、シクロヘキサン、塩化メチレン、tert−アミルアルコール、tert−ブチルメチルエーテル、酢酸ブチル、ヘキサノール、ニトロベンゼン、トルエン、オクタノール、オクタン、炭酸プロピレン、及びテトラメチレンスルホンがある(例えば、Chin等、Biotechnology and Bioengineering 44:140 (1994)を参照されたい;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0086】
さらなる実施態様によれば、イオン性液体(例えば、BMIM[PF6]、BMIM[Tf2N]及びOMA[Tf2N]、ここで、BMIM−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、PF6=1−n−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、Tf2N=ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、及びOMA=メチルトリオクチルアンモニウム)、をバリア物質として利用する。
【0087】
さらに他の実施態様によれば、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート ECOENG(商標)21M、1−エチル−3−ヒドロキイメチルピリジニウムエチルスルフェート、ブチルメチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ECOENG(商標)212、又はECOENG(商標)1111P(全て、Solvent Innovationsから購入可能)をバリア物質として利用する。
【0088】
装置の様々な区画において提供される試薬は、サンプル調製及び分析を行うための任意の試薬でよい。例としては、限定するものではないが、細胞溶解バッファ、洗浄バッファ、アフィニティ試薬、溶出バッファ、及び生物アッセイのための反応構成要素がある。本発明の装置は、様々な生体分子の精製に適し、当該生体分子には、限定するものではないが、核酸(例えば、RNA、ゲノムDNA、オリゴヌクレオチド等)、タンパク質(例えば、ペプチド、ペプチド断片、オリゴマータンパク質、タンパク質複合体、膜タンパク質等)、及び抗体がある。本発明の装置は、多くの生物アッセイの実施に適し、生物アッセイには、限定するものではないが、RNA又はDNAの増幅(例えば、PCR、TMA、NASBA)、核酸検出(例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ)、及び免疫学的検定がある。
【0089】
ある実施態様によれば、装置には、サンプルを装置の1の区画から次の区画へ輸送ための構成要素が含まれる。ある実施態様によれば、サンプルはが磁性ビーズと結合すると、ここで輸送構成要素は磁石である。他の実施態様によれば、当該輸送構成要素が、サンプルを輸送するための電流を発生する。さらに別の実施態様によれば、遠心力を利用してサンプルを輸送し、且つ当該輸送構成要素が、かかる力を発生させる(例えば、装置の動きにより)。他の実施態様によれば、機械的に介入することなく流体を動かすように、水より大きい比重を有する流体を使用する。
【0090】
ある実施態様によれば、装置には、標識した、又はそうでない場合は存在生物サンプル又はアッセイ産物を検出する検出構成要素を含む。例としては、限定するものではないが、分光光度計、質量分析、NMR,顕微鏡等がある。ある実施態様によれば、産物を、装置の最終区画から直接的に読み取る(例えば、顕微鏡のウインドウを用いて)。他の実施態様によれば、産物を、検出のための装置から除去する(例えば、装置の自動化構成要素を用いて)。
【0091】
本発明の実施態様は、さらに、反応因子の混合を阻止するが、微粒子を交差できる(例えば、磁性粒子は磁石により輸送される)親油性物質の「壁」により分離される反応因子の流体チャンバー(例えば、垂直カラム)を含んでなる装置を提供する。
【0092】
ある実施態様によれば、装置及びその使用は自動化される。自動化システムは、サンプルの精製及び分析のための装置、当該装置でサンプルを移動させる輸送構成要素、及びこのプロセス(例えば、予備加工試薬及びサンプル輸送、又は事後分析検出又はさらなる解析構成要素)の自動化のために必要であるか、十分であるか、もしくは有用である任意の追加の構成要素を含んでなる。磁性輸送が利用されるある実施態様によれば、輸送構成要素は、装置のチャンバー間を動く磁石を含んでなる。他の実施態様によれば、装置は、固定磁石又はその他の輸送装置と相対的に動く。
【0093】
II.方法
上記の通り、本発明は、サンプル調製及び分析装置、及び当該装置の使用方法を提供する。
【0094】
A.サンプル
精製及び/又は分析のための所望の物質を含有するとみられる任意のサンプルは、開示の方法により検査できる。ある実施態様によれば、サンプルは生物サンプルである。かかるサンプルは、細胞(例えば、ウイルス感染しているとみられる細胞)、組織(例えば、生検サンプル)、血液、尿、精液、又はその一部(例えば、血漿、血清、尿上清、尿細胞ペレット又は前立腺細胞)であってよく、これらは患者又はその他の生物物質の供給源、例えば、解剖検体又は法医学物質から入手してよい。
【0095】
サンプルを装置と接触させる前に、又は装置の構成要素もしくは自動化システムとして、サンプルを加工し、所望の分子のためのサンプルを単離するか、又は富化してよい。標準的な実験操作を用いる様々な技術は、例えば、遠心分離、免疫捕捉(immunocapture)、細胞溶解、及び核酸標的捕捉等の目的のために使用してよい。
【0096】
他の実施態様によれば、本発明の実施態様の方法を利用し、無傷細胞(例えば、原核又は真核細胞)を精製及び/又は分析する。
【0097】
B.精製方法
ある実施態様によれば、本発明の装置を、サンプル調製及び精製において利用する。任意の好適な精製のための方法は、限定するものでないが、標的捕捉、洗浄、沈殿等を利用する。ある実施態様によれば、サンプル精製は、装置において完全に行われ、且つ任意の追加の精製ステップを必要としない。精製は、1以上の反応チャンバーにおいて起こってよい。これは、精製の複雑性を低減するとともにコストを低減させる。当業者は、特定の精製方法は、標的生物サンプルの性質によることを理解する。
【0098】
C.改変/分析/検出
精製サンプルを、任意の好適な方法を用いて検出してもよく、限定するものではないが、例えば、本明細書に記載される方法がある。核酸及びタンパク質等の生体物質のための例示的な技術を以下に記載する。生体分子又は非生体分子に、所望の通りに、又は必要に応じて、他の技術を適用してもよい。
【0099】
i.核酸検出
核酸改変/分析/検出方法の例には、限定するものではないが、核酸配列決定、核酸ハイブリダイゼーション、及び核酸増幅がある。核酸配列決定技術の例示的な非限定的例には、限定するものではないが、チェーンターミネーター(Sanger)配列決定、及びダイターミネーター配列決定がある。当該技術分野において通常の技能を有する者は、RNAは細胞において安定性が低く、且つ実験的なヌクレアーゼ攻撃を受け易いので、通常配列決定前に、DNAに逆転写されることを認識するはずである。核酸ハイブリダイゼーション技術の例示的な非限定的例には、限定するものではないが、インサイチュ・ハイブリダイゼーション(ISH)、マイクロアレイ、及びサザンブロットもしくはノーザンブロットがある。核酸を、検出前又は検出と同時に増幅してもよい。
【0100】
核酸増幅技術の例示的な非限定的例には、限定するものではないが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、転写媒介増幅(TMA)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、ストランド置換増幅(SDA)、及び核酸配列ベース増幅(NASBA)がある。当該技術分野における通常の知識を有する者は、特定の増幅技術(例えば、PCR)では、増幅前にRNAをDNAに逆転写する(例えば、RT−PCR)ことが必要であり、その他の増幅技術はRNAを直接増幅する(例えば、TMA及びNASBA)ことを認識するはずである。
【0101】
通常PCRとよばれるポリメラーゼ連鎖反応(米国特許第4,683,195号、第4,683,202号、第4,800,159号及び第4,965,188号、各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、変性、逆ストランドへのプライマー対のアニーリング、及びプライマー伸長の多サイクルを用い、標的核酸配列のコピー数を指数関数的に増加させる。RT−PCRと呼ばれる変形型において、逆転写(RT)を使用し、mRNAから相補的DNA(cDNA)を作製し、その後cDNAをPCRにより増幅し、DNAの多重コピーを作り出す。その他の様々なPCRの置換については、例えば、米国特許第4,683,195号、第4,683,202号及び第4,800,159号; Mullis等, Meth.Enzymol.155:335(1987);及びMurakawa等、DNA7:287(1988)、各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0102】
通常TMAと呼ばれる転写媒介増幅(米国特許第5,480,784号及び第5,399,491号、各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、標的配列の多重RNAコピーがさらなるコピーを自己触媒的に生み出す、実質的に一定な温度、イオン強度及びpHの条件下で、標的核酸配列の多重コピーを自己触媒的に合成する。例えば、米国特許第5,399,491号及び第5,824,518号を参照されたい(各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。米国特許公開第20060046265号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載される変形型において、TMAは、ブロック部位、停止部位、及びその他の改変部位を任意に組み込み、TMAプロセス感度及び精度を向上させる。
【0103】
通常LCRと呼ばれるリガーゼ連鎖反応(Weiss, R.,Science 254:1292(1991)、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、標的核酸の隣接領域にハイブリダイズする、2セットの相補的DNAオリゴヌクレオチドを使用する。DNAオリゴヌクレオチドは、熱的変性、ハイブリダイゼーション、及びライゲーションのサイクルの反復サイクルにおいてDNAリガーゼにより共有結合され、検出可能な二本鎖がライゲーションされたオリゴヌクレオチド産物を作製する。
【0104】
通常SDAと呼ばれるストランド置換増幅(Walker, G.等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:392−396(1992);米国特許第5,270,184号及び第5,455,166号、各々その全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、標的配列の逆ストランドに対するプライマー配列対のアニーリング、二重ヘミホスホロチオエート化プライマー伸長産物を作製するdNTPαSの存在下でのプライマー伸長、半改変制限エンドヌクレアーゼ認識部位のエンドヌクレアーゼ媒介ニック挿入、及び存在するストランドを置換するとともに、次の回のプライマーアニーリング、ニック挿入及びストランド置換のためのストランドを作り出す、ニックの3'末端からのポリメラーゼ媒介プライマー伸長のサイクルを使用し、産物の幾何級数的増幅をもたらす。好熱SDA(tSDA)は、基本的に同じ方法において、より高温で、好熱エンドヌクレアーゼ及びポリメラーゼを使用する(欧州特許第0 684 315)。
【0105】
その他の増幅方法には、例えば:通常NASBAと呼ばれる核酸配列ベース増幅(米国特許第5,130,238号、その全体が参照により本明細書に組み込まれる);通常Qβレプリカーゼと呼ばれるRNAレプリカーゼを使用し、プローブ分子それ自身を増幅するもの(Lizardi等、BioTechnol.6:1197(1988)、その全体が参照により組み込まれる);転写ベース増幅法(Kwoh等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:1173(1989));及び自家持続配列複製法(Guatelli等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA87:1874(1990)、各々その全体が参照により本明細書に組み込まれる)がある。既知の増幅法のさらなる議論については、David H., “In Vitro Nucleic Acid Amplification Techniques” in Diagnostic Medical Microbiology: Principles and Applications (Persing et al., Eds.), pp. 51-87 (American Society for Microbiology, Washington, DC (1993))を参照されたい。
【0106】
非増幅又は増幅標的核酸は、任意の従来の手法により検出可能である。例えば、標的mRNAは、検出可能に標識されたプローブとのハイブリダイゼーション、及び得られたハイブリッドの測定により検出できる。検出法の例示的な非限定的例を以下に記載する。
【0107】
ある例示的な検出法である、ハイブリダイゼーション保護アッセイ(Hybridization Protection Assay)(HPA)は、標的配列への化学発光オリゴヌクレオチドプローブ(例えば、アクリジニウムエステル標識(AE)プローブ)のハイブリダイズ、未ハイブリダイズプローブ上に存在する化学発光標識の選択的加水分解、及びルミノメーターに残存するプローブから発される化学発酵の測定を必要とする。例えば、米国特許第5,283,174号、及びNorman C.Nelson等、Nonisotopic Probing,Blotting,and Sequencing,ch.17(Larry J.Kricka ed.,2d ed.1995を参照されたく、各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0108】
リアルタイムにおける増幅プロセスの定量的評価のための別の例示的検出法を提供する。「リアルタイム」における増幅プロセスの評価には、増幅反応の間の、連続的か、又は周期的のいずれかで、反応混合物におけるアンプリコンの量を決定し、且つ当該決定値を使用し、サンプルに初めから存在する標的配列の量を計算することが必要である。リアルタイム増幅に基づく、サンプルに存在する初期の標的配列の量の決定のための様々な方法が周知である。これらには、米国特許6,303,305号及び第6,541,205号(各々、その全体が参照により組み込まれる)において開示された方法がある。リアルタイム増幅に基づくものではないが、サンプルに初めから存在する標的配列の量を決定するための別の方法は、米国特許第5,710,029号に開示され、その全体が参照により組み込まれる。
【0109】
増幅産物は、そのほとんどがステムループ構造を有する様々なハイブリダイゼーションプローブの使用を介し、リアルタイムで検出できる。かかる自己ハイブリダイズするプローブは、プローブが自己ハイブリダイズした状態であるか、標的配列へのハイブリダイゼーションを介して変更された状態であるかにより異なる検出可能なシグナルを発するように標識される。非限定的な例によれば、「分子トーチ(torches)」は、領域への結合(例えば、非ヌクレオチドリンカー)により連結され、且つ既定のハイブリダイゼーションアッセイ条件下で互いにハイブリダイズする、自己相補性の明確な領域(「標的結合ドメイン」及び「標的閉鎖(closing)ドメイン」と呼ばれる)を含む、一種の自己ハイブリダイズプローブである。好ましい実施態様によれば、分子トーチは、長さが1〜約20塩基であり、ストランド置換条件下で増幅反応に存在する標的配列へのハイブリダイゼーションを受け易い一本鎖塩基領域を含む。標的結合ドメインに存在する一本鎖領域に結合し、且つ標的クローニングドメインの全て又は一部を置換する標的配列が存在する場合を除いて、ストランド置換条件下で、分子トーチの完全に相補的であっても部分的に相補的であってもよい2つの相補的領域のハイブリダイゼーションが好まれる。分子トーチの標的結合ドメイン及び標的停止ドメインには、分子トーチが標的配列にハイブリダイズした場合よりも、分子トーチが自己ハイブリダイズした場合に、異なるシグナルを発生させ、それにより、未ハイブリダイズ分子トーチの存在下、試験サンプルにおけるプローブ:標的二重鎖の検出が可能になるように置かれる、検出可能な標識又は相互作用する標識の対がある。分子トーチ及び多種類の相互作用する標識の対は既知である(例えば、米国特許第6,534,274号、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0110】
自己相補性を有するプローブの別の例は、「分子ビーコン」である(例えば、米国特許第5,925,517号及び第6,150,097号を参照されたい、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。分子ビーコンには、標的相補的配列を有する核酸分子、増幅反応に存在する標的配列の不存在下、閉鎖コンフォメーションにおいてプローブを保持するアフィニティ対(又は核酸アーム)、及び当該プローブが閉鎖コンフォメーション内にある場合相互作用する標的対がある。標的核酸と標的相補的配列のハイブリダイゼーションは、前記アフィニティ対のメンバーを分離し、それによりプローブを開放コンフォメーションに変える。この開放コンフォメーションへの変化は、例えば蛍光色素分子及びクエンチャー(例えば、DABCYL及びEDANS)などの標識対の相互作用の減少により検出可能である。
【0111】
他の自己ハイブリダイゼーションプローブは、当業者に周知である。非限定的な例によれば、相互作用標識を有するプローブ結合対(例えば、米国特許第5,928,862号を参照されたい、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、本明細書に開示の組成物及び方法における使用に適合させることができる。一塩基変異多型(SNP)を検出するのに使用されるプローブシステムを使用してもよい。さらなる検出システムには、「分子スイッチ」がある(例えば、米国特許公開第20050042638号を参照されたい、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。その他のプローブ、例えば、インターカレートする色素及び/又は蛍光色素を含んでなるものも、本明細書に開示される方法における増幅産物の検出に有用である(例えば、米国特許第5,814,447号を参照されたい、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0112】
ある実施態様によれば、検出法は定性的である(例えば、特定の核酸の存在下、又は不存在下)。他の実施態様によれば、これらは定量的である(例えば、ウイルス量)。
【0113】
ii.タンパク質検出
タンパク質検出の例には、限定するものではないが、酵素アッセイ、直接可視化、及び免疫学的検定がある。ある実施態様によれば、免疫学的検定は精製タンパク質に抗体を利用する。かかる抗体は、ポリクローナル又はモノクローナル、キメラ、ヒト化、一本鎖又はFab断片であってよく、これらは標識されていても、未標識でもよく、これらの全ては、周知の手法及び標準的な実験室操作を用いて作製できる。例えば、Burns,ed.,Immunochemical Protocols,3rd ed.,HumanaPress(2005);Harlow and Lane,Antiboies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory(1988);Kozbor等、Immnology Today 4:72(1983);Kohler and Milstein,Nature 256:495(1975)を参照されたい。ある実施態様によれば、市販の抗体を利用する。
【0114】
D.データ解析
ある実施態様によれば、精製及び検出の後、コンピュータベース解析プログラムを使用し、検出アッセイにより発生した生データ(例えば、所与の標的分子の存在、不存在、又は量)を、臨床医及び研究者にとって予測となる値のデータに翻訳する。ある実施態様によれば、ソフトウェアプログラムを、自動化装置に統合させる。他の実施態様によれば、離れて設置される。臨床医は、任意の好適な手段を用いてデータを評価できる。すなわち、ある好ましい実施態様によれば、本発明は、遺伝子学又は分子生物学の教育を受けていないような臨床医が生データを理解する必要がない、というさらなる利益を提供する。当該データはその最も有用な状態で臨床医に直接提示される。そして、臨床医は、対象のケアを最適化するために、当該情報をすぐに利用できる。
【0115】
アッセイを行う研究所、医療てきな個人の提供情報、及び対象からの、及びこれらへの情報を、受け取り、加工し、且つ送信することができる任意の方法を使用できる。例えば、本発明のある実施態様によれば、サンプル(例えば、生検又は血清又は尿サンプル)は、対象から得られ、且つ生データを生み出す世界の任意の場所(例えば、当該対象が居住する国か、又は当該情報が最終的に使用される国とは異なる国)に設置されるサービス(例えば、医療施設での臨床的研究所、ゲノム増殖ビジネス等)に供される。サンプルが組織又はその他の生物サンプルである場合、対象は、医療センターを訪れ、サンプルを取ってもらい、そしてプロファイリングセンターに送ってもらってもよいし、又は対象は、サンプルそれ自体を収集し(例えば、尿サンプル)、且つそれを直接プロファイリングセンターに送ってもよい。サンプルが事前に決定された生物情報を含む場合、当該情報は、対象により当該プロファイリングサービスに直接送られてもよい(例えば、当該情報を含む情報カードを、コンピュータ及び当該変換電子伝達システムを使用してプロファイリングセンターのコンピュータに送信されたデータでスキャンしてもよい)。プロファイリングサービスで受信されると、サンプルは加工され、そして特に対象に所望される診断又は予後情報である、プロファイル(すなわち、表現データ)が作製される。
【0116】
その後プロファイルデータは、処置する臨床医による解釈に適する形式で準備される。例えば、生データを提供するよりも、準備した形式では、特定の治療選択肢を薦めるとともに、対象への診断又はリスク評価(例えば、ウイルス量レベル)を表すことができる。データは、任意の好適な方法で臨床医に表示されてよい。例えば、ある実施態様によれば、当該プロファイリングサービスは、(例えばポイントオブケアにおいて)臨床医のために印刷されるか、又はコンピュータモニター上で臨床医に対して表示される可能性がある報告書を作成する。
【0117】
ある実施態様によれば、当該情報は、ポイントオブケア又は地域の施設で最初に解析される。その後当該生データは、さらなる解析のため、及び/又は臨床医もしくは患者のために生データを有用な情報に変換するために、中央加工施設に送られる。中央加工施設は、プライバシー(全てのデータは、均一なセキュリティプロトコールで中央施設に保存される)、スピード、及びデータ解析の均一性の点で利点を提供する。その後、当該中央加工施設は、その後の対象の治療で、当該データの結果を制御できる。例えば、電子伝達システムを用い、中央施設は、データを臨床医、対象、又は研究者に提供できる。
【0118】
ある実施態様によれば、当該対象は、電子伝達システムを用いて当該データに直接アクセスできる。当該対象は、結果に基づき、さらなる介入又はカウンセリングを選択できる。ある実施態様によれば、当該データを研究的使用のために使用する。例えば、当該データを、特定の症状もしくは疾患段階の有用な指標としてマーカーの内包又は排出をさらに最適化するために使用してもよい。
【0119】
E.組成物&キット
ある実施態様によれば、本発明のシステム及び/又は装置を、精製及び分析を行うために必要な全ての構成要素を含んだ状態で輸送する(例えば、装置に予備ロードされる)。その他の実施態様によれば、キットに一緒に梱包された別のベッセルに、追加の反応構成要素が供給される。
【0120】
これらの組成物の任意のものは、単独であっても、本明細書に開示されるかもしくは当該技術分野において周知のその他の組成物とのくみあわせであってもよいが、キットの状態で提供されてよい。キットは、適切なコントロール及び/又は検出試薬をさらに含んでよい。本明細書に記載の任意の方法においての使用が見出される、任意の1又は複数の試薬を、キットにおいて提供してよい。
【0121】
実施例
以下の実施例は、特定の好ましい、本明細書に記載の組成物及び方法の実施態様及び態様を、実証且つ例示するために提供されるが、請求される発明の範囲を限定すると解されるべきではない。
【実施例1】
【0122】
本実施例は、精製及び検出のために、RNAを捕捉するために磁力を用いる常磁性マイクロ粒子の移動、その後の精製、及びRNAの放出について記載する。例示的親油性物質として、様々な洗浄バッファ間にバリアを形成する間、常磁性マイクロ粒子の移動を可能にする、様々なチャンバー間のバルブとして、液体ワックスの使用が示されている。
【0123】
(a)カートリッジの製作
アッセイのための個別のカートリッジを、滅菌され清潔な丸底ポリスチレン96ウェルプレートを機械加工することにより調製した(図1a)。ワックスチャネルを、FDA準拠1/16”ポリプロピレンの平面バックシートを用いて作った。ワックスチャネルを製作するため、低界面エネルギー物質に適する9495LEアクリル接着剤転写テープ(3M、St.Paul,MN)を、正確な寸法で切断されたプラスチックの長方形のピースの両サイドに接着させた。長方形チャネルをプラスチックピースから引き伸ばして作製した。当該引き伸ばしプロセスも、接着を切断した。ポリプロピレンの熱伝導性の悪さ及び低融点の点から、それを機械加工する場合は特別の配慮を必要とする。チャネルの機械加工の際に形成するバリを、かみそりの刃を用いて除去した。頂部のプレートも、ポリプロピレンシートから作製した。当該頂部のプレートに、流体を導入させる微小な穴を開けた。
【0124】
ポリプロピレンを頂部プレート及びチャネルに使用したのは、その優れた化学的耐性のためである。飽和オレフィン鎖は、ほとんどのオイル及び溶媒、並びに水性の化学物質、セッケン、及び中程度の酸及び塩基に対する耐性を発揮する。ポリプロピレンの強度特性を有する他の物質は、ポリプロピレンの化学的耐性に適合する。また、ポリプロピレンの硬度、高光沢な面は、カートリッジの流れの滅菌を干渉する可能性のある累積の懸念があり、試験の間中、RNAフリー環境を維持することが好ましい場合、環境を所望の状態にする。市販のプラスチック部分を、ガンマ線を放射して滅菌する場合、実験室環境で容易に行うことができるプラスチック部分滅菌のためにプロトコールを開発した。プレートの機械加工の前に、試験のために使用されるウェルを接着テープを用いて封鎖した。機械加工の完了後、当該カートリッジを以下のプロトコールを用いて洗浄した。
【0125】
a.水で2回洗浄
b.100%エチルアルコールで2回洗浄
c.RNaseZap(登録商標)RNase Decontamination Solution(Ambion, Austin, TX)で洗浄
d.水で2回洗浄
洗浄完了後、カートリッジを50℃で一晩乾燥させた。
【0126】
RNA精製アッセイ:
当該アッセイを、106コピー数/mL Armored RAN(Abbot Molecular,Des Plaines,IL)を含有する400μLの血漿サンプルを用いて行った。試験サンプルとして、ネイキッドRNAの代わりにAmored RNAを使用するのは、それがリボヌクレアーゼ耐性であるとともに、RNAのコピー数を容易に定量化できるためである。扱いを容易にするために、それは非感染性でもある。
【0127】
血漿サンプルからRNAを精製するために、MagMAX Viral RNA Isolation Kit(Ambion,Austin、TX)を使用した。この方法において、チオシアン酸グアジニウムベースの溶液の従来方法を用いて細胞を分離した。これは、ウイルスRNAを同時に放出し、且つサンプルマトリクスにおいてヌクレアーゼを失活させる。その後、RNAは、カオトロピック剤及びアルコールの存在下、シリカ被覆磁性ビーズに結合する。その後、当該ビーズを洗浄し、低塩濃度のバッファ水溶液に溶出する。
【0128】
溶解/結合溶液及びビーズミックス:担体RNAの調製物を、表1の溶解/結合溶液濃縮物に添加し、短時間混合する。その後、100%イソプロパノールを添加する。ビーズミックスを調製するために、全ての反応で、10μLのRNA結合ビーズを10μLの溶解促進剤と混合する。当該ビーズを分ける前にボルテックスする。
【0129】
【表1】
【0130】
カートリッジの調製
802μLの溶解溶液を、armored RNAを含有する400μLの血漿サンプルとともに、マイクロフュージチューブに添加した。サンプルの添加時、エアロゾル形成による汚染を防ぐため、溶液にピペットチップをわずかに入れるべきである。溶液を30秒穏やかにボルテックス混合し、その後20μLのビーズミックスを当該チューブに添加した。ウイルスを十分に溶解し、且つ磁性ビーズにRNAが結合するボルテックス混合で、溶液を4分間穏やかにボルテックス混合した。磁性スタンド上のマイクロフュージチューブから離すことにより、ビーズを捕捉する。600μLの溶液を除去し、破棄した。当該ビーズを222μLの溶液を残した状態でボルテックス混合する。当該溶液をカートリッジの第一チャンバーに分ける。イソプロパノールを含有する150μLの洗浄バッファ1を、チャンバー2及び3にそれぞれ添加する。エタノールを含有する225μLの洗浄バッファを、チャンバー4及び5にそれぞれ添加する。50μLの溶出バッファを、チャンバー6に添加する。
【0131】
ここで、ワックスチャネル(図1−b)を、ワックスチャネルに貼り付けられた接着転写テープの紙ラミネートをはがし、且つ当該ワックスチャネルをカートリッジに適用することにより、カートリッジに接着させる。その後、ワックスチャネルに頂部プレートを接着させ同様のプロセスを行う。その後、Chill-Out Liquid Wax(Bio-Rad Loboratories,Hercules,CA)を、頂部プレートに穿孔した穴を介して、カートリッジ内にエアギャップが残らくなるまで、カートリッジにピペットで入れる。図1は、異なるバッファ及びワックスでカートリッジが完全に満たされた図を示す。
【0132】
サンプル精製プロトコール
(a)カートリッジにおける精製。サンプル精製プロセスにおいて、様々な精製ステップ、例えば集団として堆積させるビーズの磁気分離、バッファからワックスへの粒子の移動、ワックスにおける粒子の移動、次のバッファへの粒子の再導入、及びバッファにおける粒子のかき混ぜ(表2中のサンプルC1)を行うために磁力を用いる(図2)。当該磁力は、永久磁石により発生する。粒子の集団を、チャンバー1の溶解バッファから、チャンバー6の溶出バッファに、チャンバー2〜5の様々な洗浄バッファを通して移動させた。粒子を、各洗浄バッファ中に30秒置き、溶出バッファに10分置いた。これらの時間の間、粒子をバッファ中に磁力によって移動させた。
【0133】
(b)マイクロフュージチューブにおける精製。サンプル精製を、Ambion MagMax キットを用い、同様にマイクロフュージチューブ中で行った。この場合、溶解バッファ及びRNA結合PMPを含有するマイクロフュージチューブを、PMOを捕捉するよう磁性スタンドに置いた。捕捉が完了すると、RNA結合ビーズは、当該磁性スタンドにおける磁石に対してペレットを形成した。ビーズを乱すことなく上清を吸引した。当該チューブを磁性スタンドから離し、洗浄バッファ1をそれに添加した。溶液を30秒かき混ぜた。同様の捕捉及び吸引プロセスを行った。ビーズを洗浄バッファ1で2回、及び洗浄バッファ2で2回洗浄した。この研究においては、洗浄バッファの量の異なる2つの組み合わせを使用した。(i)300μLの洗浄バッファ1及び450μLの洗浄バッファ2(表2中のサンプルC2)、(ii)150μLの洗浄バッファ1及び225μLの洗浄バッファ2(表2中のサンプルC3)。4つの洗浄ステップの後、ビーズを室温で開放しておき、アルコールを蒸発させた。アルコールがPCRを阻害するので、チューブの残存アルコールを調べた。50μLの溶出バッファを添加し、サンプルを4分間勢いよくかき混ぜた。各々において、溶出後に粒子を捕捉し、そして、12.5μLのンサンプルをAbbot Real time Assayに使用した。
【0134】
分析の結果及びデータ
以下に示す表は、3つのサンプルタイプについての平均Ct値を示す。
【0135】
【表2】
【0136】
データから、粒子を、ワックスを介して動かす場合、RNA精製において2.8倍(2^は、Ct差を意味する)の改善があることが示される。これは、洗浄バッファ量の低減の代わりに発生する。洗浄バッファが同様の量である結果と比較すると、RNA精製において30倍の改善がある。サンプル精製のマニュアルアプローチにおいては、大量の溶液が粒子に付着し、吸引できない。したがって、各洗浄ステップが溶解溶液から運搬される阻害剤を希釈させるが、多数回の洗浄、及び全ての阻害因子を完全に希釈する洗浄バッファ量が必要となるはずである。一方、粒子輸送の媒体としてワックスを用いると、運搬される液体量は、非常に少なく、Ctの改善をもたらす。
【0137】
RT−PCRに与えるアルコールの影響
アルコールはPCRの阻害剤として知られる。したがって、Ambionサンプル精製キットは、RNAの溶出前に空気中で粒子を乾燥する必要がある。本明細書に記載する新規なプロトコールによれば、乾燥ステップは、完全に除去される。さらに、これは、1のチャンバーから次のチャンバーへ運搬される流体量が最小限であることを示す。容易な自動化を可能とするため、それは、サンプル精製プロセスも非常に単純化する。より少量の阻害因子の存在はまた、より少量の溶出バッファにおける溶出を可能にし、同時に、サーマルサイクルスピードを加速し、それにより試験を行うために必要な時間を低減する。
【実施例2】
【0138】
自動化
高額でない自動化サンプル精製システムは、流体の代わりに磁性粒子を移動することより開発される。長期間の保存にわたり流体を保持できるカートリッジが設計される。これは、当該分野におけるピペッティングのようなものをまさに取り除く。この新規なプラットフォームにおけるアッセイの最適化は、サンプル精製プロセスの改善、且つシステムのより良好な理解の進行を可能にする。精製を行うための自動化システムは、高度に訓練した実験技術者を必要とすることなく、ウイルス量の測定を可能にする。閉鎖カートリッジと、自動化装置との組み合わせは、HIVウイルス量のためだけでなく、交差汚染のリスクを低減しながら安価で便利な手法で全ての種類の核酸の試験のための、ポイントオブケアプラットフォームを創作するはずである。
【0139】
システムを最適化するための実験には、以下が含まれる。
a 保存のための化学物質を保持し、且つ反応を行うためにホイルラミネートを用いてカートリッジを製作する。
b 新たなカートリッジにおいてサンプル精製プロトコールを最適化する。
c 堅固な自動化システムを組立て、人手の必要性を除去する。
【0140】
a.サンプル精製を行うための試作品カートリッジの製作
この製作には2つの部分がある。(a)カートリッジを作製するために使用される物質、(b)カートリッジそれ自身の設計。
【0141】
(a)物質。カートリッジを作製するために使用される物質は、好ましくは、(a)顕著な損失無く、長期間の保存にわたり液体を保持する蒸気バリア。(b)機械的強度;及び(c)溶液チュに存在する血液又は粒子に張り付かない化学的に不活性な表面。
【0142】
ポリスチレン又はポリプロピレンは、化学的に不活性であるため、化学アッセイの実施のための物質の選択であるが、これらは、長期間、試薬の保存に必要な蒸気バリアを提供しない。物質の蒸気バリアは、物質を介する水蒸気の通過の測定値である、水蒸気透過率(WVTR)について測定される。
【0143】
WVTR=Δw/ΔtA(gm-2s-1)、
式中、Δw/Δtは、移動の単位時間当たりの湿度損失の量(gs-1)であり、且つAは、湿度移動の暴露領域(m2)である。
【0144】
【表3】
【0145】
以下の表3は、いくつかのプラスチックとホイルラミネート(RP#26−1244、Rollprint,Addison,IL)のWVTRを示す。ホイルラミネートが、保存の間、試薬について優れた蒸気バリアを提供することが明白である。ホイルラミネートは、非常に安価であるという利益も追加される。ホイルラミネートから作製される単一カートリッジのコストは、数セントを超えないはずである。使用されるホイルラミネートの様々な層は、以下の図3に示される。
【0146】
ホイルラミネート(Rollprint Packaging Products,Addision,IL)は、試薬の保存のために理想的な、低WVTRの原因となる2mil アルミニウム層を含む。ポリエステル層は、アッセイの実施に適する、化学的に不活性且つ疎水性の表面を提供する。それはまた、当該ホイルを、別のホイル又はプラスチックのピースに熱融着させる。ナイロンの外表面は、アルミニウム表面を腐食から保護し、且つ当該ホイルラミネートへ機械的強度も提供する。ホイルラミネートは剛性がない。これは、硬い物質にそれを包装することにより克服できる。ホイルラミネートが、水蒸気に対して事実上不浸透性であるが、ホイルの2つの層間のシールは、不浸透性でなく、且つ蒸気の損失要因でもあることに留意すべきである。
【0147】
他の実施態様によれば、ポリプロピレン又はポリスチレンから作製される真空形成チャンバーを、96ウェルプレートと同様に使用する。ある実施態様によれば、蒸気バリアを提供するため、これは蒸着によりアルミめっきされる。
【0148】
(b)カートリッジの形状及びサイズ。チャンバーの形状は、粒子を移動させるために作用する様々な力、及び自動化を単純化するための必要性により支配されるが、チャンバーのサイズは、サンプル精製関連する化学により支配される。試作の設計は、3D Mechanical CADプログラム,Solidworks(Solidworks Corpowarion,Concerd,MA)を用いて行われる。現在使用される容量に基づくカートリッジの例は、図4に示される。化学又は自動化の必要性における変化は、チャンバーの形状及びサイズの変化に応じて調節される。
【0149】
(c)貼り直し可能な層及び頂部プレート:カートリッジの頂部プレートは、サーマルサイクリングの際に光学的読取をするために、好ましくは透明である。頂部プレートとホイルチャンバーとの間に置かれる貼り直し可能なホイルラミネート層は、図には示されていない。これは、プリンターインクカートリッジに類似する。皮(peel)の末端は、頂部プレートとワックス層との間に出てくる。これは、長期間保存に最適な蒸気バリアを提供する。固形ワックスは、当該シールの上下にある。下のワックスは、皮に張り付く試薬損失のリスクなく、皮を除去することを可能にする。試験の前に、皮を除去し、且つワックスを融解する。シール除去により創出される空洞のために形成される任意のエアギャップを除去するように、我々が圧迫できる頂部プレートを柔軟にすることができる。1のチャンバーから次のチャンバーに引っ張られると、粒子と接触することになるので、頂部プレートも化学的に不活性にすべきである。貼り直し可能なシールは、チャンバーに熱融着する。チャンバー間の距離は、適切な密封ができるように6mmが好ましいが、他の寸法を使用してもよい。この密封プロセスは、Rollprint Inc.で行われる。
【0150】
製作。アルミニウムホイルカートリッジの製作は、同じサイズのネガティブ・モールドに適合する、半球型のポジティブ・ヘッドを含んでなる、ピンチプレス装置を用いて行われる。ポジティブ・ヘッドと、ネガティブ・モールドとの間にホイルを押し付けることにより、当該ホイルがモールドの形状を確認するよう伸ばす。ラミネートの降伏強度及び伸長強度は、知られていないが、標準的な工業基準では、
(チャンバー作製後の最大面積)<(2×伸長前の面積)である。
【0151】
ワックスチャネル、カートリッジのための固体支持体、頂部プレートは、全て3M接着転写テープを用いて一緒に統合させた。数個の接着剤を試験した後に、これを選択したが、それは特に低界面エネルギー表面に対するその優れた接着特性による。当該接着剤は、レーザー切断され、GML(Vadnais Heights,MN)により正確なサイズにされる。アッセイ性能を向上させるサンプル精製プロトコールの最適化は、以下の通りである。
【0152】
アッセイは、Ambicon製のシリカ被覆PMPベースMagMaxキットを用いて行われる。当該キットプロトコールは、ビーズの沈殿及び流体からのピペッティング採取を必要とするアッセイ形成における最良の性能のために、最適化されている。ワックスを使用することは意図されていない。サンプル精製に与えるワックスの影響をさらに理解し、且つサンプル精製プロセスを最適化するために、以下の実験を行う。
【0153】
1.ワックスを介する水のキャリーオーバー:初期の実験に基づき、1のチャンバーから次のチャンバーへの水又はバッファのキャリーオーバーが、ワックスを介する粒子の移動で顕著に低減すると仮定した。これは、アルコールにより阻害されないことを示す上記の結果をある程度根拠にした。この仮定を確認するため、既知の濃度の蛍光色素、フルオレセインを水に溶解させる。この溶液に、既知数の粒子(Luminex フローサイトメーターで測定される)を添加する。その後、当該粒子を、ワックスを介して、既知容量のフルオレセイン不存在水に、磁力で移動させる。出発サンプル及び最終サンプルにおけるフルオレセインの濃度の測定時に、1のチャンバーから次のチャンバーへの持ち越される(キャリーオーバーされる)水の容量を定量的に推定できる(Va)。
【0154】
実験では、結果を比較するために使用される2つのコントロールを用いる。(a)フルオレセインの同一溶液から、水へ、ピックピンを用いて粒子を移動する。これはMaxwell又はKingfisher等の現在利用可能なシステムを表す。(b)フルオレセイン溶液を含有するマイクロフュージチューブ及び粒子を磁性スタンドに置き、その後、当該溶液を注意深くピペッティングすることにより回収する。フルオレセイン不存在水の固定量をその後これに添加する。
【0155】
精製性能における向上を、一のチャンバーから次のチャンバーにわたって運搬される流体の平均量を比較することにより定量する。サンプル操作による精製プロセスにおける変動を定量するために、分散を用いる。実験は、様々な粒子数、様々なサンプル初期容量、及び様々なフルオレセイン濃度で繰り返される。運ばれる液体容量は、ワックス中で動かされる粒子を含有する、液滴(V)の容量の割合Φである。
【0156】
(1−Φ)V=(4/3)πr3N
ΦV=Va
Φ=Va/(Va+4πr3N)
【0157】
上記の等式において、rは粒子の半径であり、Nは粒子の総数である。液滴の容量VはNに依存するので、液体ΦVの容量もNに依存する。ΦVがフルオレセイン溶液の初期容量に依存すると期待するのではなく、むしろフルオレセインの濃度に依存するはずである。この実験により、最適な洗浄ステップ及び量、又は必要な溶解バッファの量の決定が可能になる。
【0158】
2.最適な洗浄ステップの量及び数の選択。Ambionに推奨されるプロトコールは、マニュアルピペッティング工程のために最適化される。ワックスの使用は考慮されていない。したがって、当該プロトコールは、ワックスを使用して最適化する。PCRを阻害する、血液血漿に存在する阻害因子は具体的に知られていないが、大半の阻害因子による阻害は、濃度依存性であることは認められている。以前の実験から得られる結果は、流体の除去に与えるワックスの影響についての情報を提供する。ガイドスティックとしてそれを使用し、精製ステップ数を低減する。精製ステップ数の低減は、サンプル精製プロセスの複雑性を低減し、試験のコスト及び試験に必要な時間を低減する。阻害剤濃度の低減は、より少量の溶出バッファにおける溶出を可能にし、RNA濃度のさらなる増加、及びより速いサーマルサイクリングをもたらす。
【0159】
方法の感度は、その方法の許容性の下限と関連する。化学との関連で、検出下限値は、多くの場合、検出下限な正味の濃度又は量のことを言う。
【0160】
LODの決定
LODの計算は、専門家の学術団体間で異なり、且つ、アプリケーション間で異なるが、LODの定義は以下の通りである。
【0161】
LOD・(ブランクの平均)+K(sd)
ここで、ブランクの平均=アッセイに関連するブランク決定について与えられる平均値;K=所望の信頼水準に関連する被覆率;及びsd=ブランク決定の標準偏差。
【0162】
この計算は、ブランクコントロールが、典型的にPCR反応で使用される最高のサイクル数と同じ値を有するような、リアルタイム定量PCRと関連するLODの推定には適さない。さらに、当該アッセイが正しく行われれば、これらのブランクの値は、全て同じになるはずであり、且つそれらの分布が切断される、つまり、有用な標準偏差の計算を妨げている。
【0163】
科学文献に記載されるLODの従来的計算が直面する困難のいくつかを克服するため、時間の少なくとも95%で検出可能なPCR増幅産物を提供する、最低のコピー数としてLODを定義できる。これは、95%の確立でバックグラウンドノイズと区別できる最低のコピー数とも解釈できる。現在のRNA精製のためのAmbiconキット、及びRt−PCRのためのAbbot Real timeプロトコールを用いる、Rt−PCRアッセイは、1.0mlの血漿サンプル中、40コピー数のRNAのLODを有すると報告されている。好ましいアッセイは、500コピー数のRNAを検出する。すなわち、全てのプロトコールについて、アッセイの感度を、Ctに対するRNAのコピー数の希釈曲線を作ることにより測定する。所望のゴールは、一回の洗浄ステップもなく、溶解バッファから溶出バッファへ移ること、である。精製アッセイは、様々な洗浄ステップ数及び洗浄容量で行われる。
【0164】
3.ワックス融点
実施例1に記載される実験で使用されるワックスは、融点が10℃である。したがって、このワックスは、室温で液体である。60℃又はその他のより高い融解温度で融解するワックス(DyNawax Reagent,Finland)を、いくつかの実施態様で使用した。これは、実験のすぐ前に融解させ、保存の間は固体としてワックス保存が可能であるので、粒子の動きについての相転移プラグを作り出す。貼り直し可能なシールの下に存在するワックスにより、ホイルが張り付くチャンバーから、流体を損失することなく、ホイルをはがすことができる。しかしながら、これは水浴における実験を行うか、又はワックスを加熱するためにペルチェヒーターを用いることが必要となるはずである。
【0165】
サンプル精製プロトコールの自動化:
自動化サンプル精製システムを提供する。自動化には多くの利益があり、例えば、(a)プロセスが技能を有する作業者を必要としない、(b)システムの理解がより良好になる、(c)アッセイ進行及び試験プロセスが加速する、(d)プロセスの標準化によりサンプルを、サンプル変動まで減少させる。
【0166】
(a)第一構成要素は、磁石及びカートリッジを動かすステージである。プロセスを自動化するために、ステージを5つのプロセスを行ってくみ上げる。つまり(a)流体中での粒子の凝集、(b)内表面にわたる当該流体の引きずり、(c)ワックス中での粒子凝集体の引きずり、(d)ワックスから水への粒子凝集体の引きずり、(e)流体中での粒子のかき混ぜ、である。操作のマニュアルモードにおいては、カートリッジを安定に保ち、一方、磁石をカートリッジと相対的に置いた。複雑な動きを自動的に創出するために、ある実施態様によれば、カートリッジを磁石に対して動かす。すなわち、磁石及び/又はカートリッジを、動作ステージに乗せる。いずれが動くかはプロセスの構成の容易性、コスト及び信頼性に依存する。ステッピングモーターを使用し様々な動きを行ってもよい。
【0167】
i)洗浄バッファにおける粒子のかき混ぜ。この設計は、関連する力の単純な推定により導かれる。密度PP、半径Rp、容量Vp=(4πRp3)/3、及び質量mpの球状磁石粒子の動きは、以下の複数の力に支配される。(a)全ての場の供給源による磁力、(b)流体抵抗、(c)粒子/流体相互作用(流動場への摂動)、(d)浮揚性、(e)重力、(g)熱動力学(ブラウン運動)、及び(h)磁気双極子相互作用等の粒子間効果がある。パラメータの設計を導くために、磁性及び粘性の引きずり力が支配する場合、低濃度及び低流動様式における磁性粒子の挙動をモデル化する。したがって、粒子/流体相互作用及び粒子間効果を無視する。第二のオーダーについて粒子サイズによっては無視できない可能性がある重力も含まれる。古典的なニュートン力学によれば、以下の通りである。
【0168】
mp=dvp/dt=Fm+Ff+Fg
式中、vpは、粒子の速度、及びFm、Ff及びFgは、それぞれ磁力、流体力、異種的且つ重力的力である。磁力は、磁化粒子を「等価」点双極子により、モーメントmp.effに置換される場合、「有効」双極子モーメントアプローチを用いて得られる(Furlani and Ng, 2006)。双極子上(つまり粒子上)の力は、以下の式により与えられる。
【0169】
Fm=μf(mp.eff・▽)Ha
式中、μfは輸送流体の透過性、mp.effは粒子の「有効」双極子モーメント、及びHaは等価点双極子が置かれる場合、粒子中心での(外部から)加えられる磁場強度である。粒子が自由空間にある場合、mp.effはVpMpであり、上記の等式は、以下の通常状態になる。
【0170】
Fm=μ0(mp・▽)Ha
式中、Vp及びMpは、粒子の容量及び磁化であり、且つμ0=4π×10-7は、自由空間の透過性である。図5は、流体チャンバー上の磁石の配列と、磁石からの固定距離での、x方向及びy方向における粒子上の力の表面プロットを示す。力の計算には、粒子サイズ、及び粒子を作るFe3O4(マグネタイト)の物質特性の選択が必要である。示される計算においては、Fe3O4は、密度p=5000kg/m3、飽和磁化M=4.78×105A/m及び粒子サイズは0.5マイクロメーターであると仮定した。一の磁石又は磁石の配列からなるシステムのための磁力を推定するプログラムはMatlabにより書かれた。これにより、様々な磁石及び磁石の配置に対する磁力の計算が可能である。現在のプログラムは、磁石の直線配列により力を推定することしかできないが、磁石のより複雑な配置を推定するプログラムを作ることは可能である。
【0171】
流体力は、均一な流量における球体上の引き上げについてのストークスの定理を用いて予測される。Ff=−6πηRp(vp-vf)で与えられ、式中、η及びvfは、それぞれ粘度と流体の速度である。重力は、Fg=−Vp(ρp−ρf)gyで与えられる。式中、ρp及びρfは、それぞれ粒子及び流体の密度であり、g=9.8m/s2は、重力による加速度である。重力は、−y方向に作用する。重力は、サブミクロン粒子の磁気泳動的(magnetophoretic)動きを分析する場合に無視されることが多く、それは通常磁力よりも非常に弱いためである。
【0172】
様々な力を運動のニュートン等式に差し込むことで、粒子が凝集し、さらに粒子曲線をプロットするのに必要なおよその時間を予測することが可能である。これらの計算は、設計パラメータを導くために使用される。
【0173】
(ii)表面張力の測定及び界面を交差する粒子の引きずり。
自動化プロセスで使用される磁石の強度は、異種表面張力を克服する必要のある磁場の強度により支配される。界面を交差して1の粒子を動かすことは困難であるが、粒子集団を、当該界面を交差して動かすことができる。
【0174】
異種的な力は、y2πRpと推定することができ、ここでyは、ワックスとバッファとの間の異種的な張力である。異種的な力を、テート(Tate)の法則に従う重錘法を用いて測定する。
【0175】
これは、表面張力を測定するための正確な方法であり、且つ液−空気又は液−液界面の表面張力を測定するための最も便利な研究用の方法である。図6に示した通り、当該手法は、チューブの末端でワックスの液滴を形成し、当該液滴を、バッファを含む容器に落とす。その後、液滴の重量を使用して表面張力を決定する。テートの法則は、液滴引く置換流体の重量であるWについて非常に単純な表現を与える:W=2πryf、式中、rは液滴が形成されるチューブの半径であり、且つfは、r/V1/3の無次元比率の関数であり、Vは液滴容量である。図6に示されるシステムを使用して、ワックスと様々なバッファとの間の表面張力を測定する。この方法を使用する場合に講じるべき重要な予防策は、末端を滑らかに研磨し、任意のニックがない状態のチップを使用することである。チップが湿っていない液体の場合は、rは、内部半径である。液滴もゆっくりと形成すべきであり、そうでない場合、液滴重量が高くなる。
【0176】
異種的な力を推定すると、界面にわたって粒子を動かすために必要な磁力を推定できる。したがって、設計基準は、Fm>Fiである。式中、Fm及びFiは、それぞれ磁力及び異種的な力である。この推定は、摩擦力も無視する。この推定は磁石の選択を導いた。バッファからワックスへの粒子の移動に必要な磁石の強度を低減させるため、磁石をできる限り界面に近づけるよう動かす。これは、柔軟な頂部プレートでなされる。柔軟な頂部プレートはまた、チャンバーと頂部プレートとの間にあるホイルラミネートをはがす場合に形成され得る任意のエアギャップを除去するために押すことができるように使用される。
【0177】
iii)ワックスにわたる粒子凝集体の引きずり。ワックスを介する粒子の引きずりのための運動の等式は、粒子の凝集のものと類似する。しかしながら、この場合、当該運動は、単一粒子のものよりもむしろ、粒子凝集体を含有する流体の液滴のものである。正味の摩擦力は以下の式で与えられる。
【0178】
Ff=−6πηRp(vp−vf)
式中、Rpは、液滴の形状と液滴の内部粘度に依存する並進テンソルである。ワックスを介して粒子凝集体を引き上げることは、極めて容易である。このプロセスの際、粒子はカートリッジの頂部表面と接触することになる。したがって、頂部プレートプロセスのために使用される物質は、化学的に不活性であり、且つ滑らかな表面質感を有することが好ましい。
【0179】
(iv)ワックスからバッファへの粒子凝集体の引きずり。ワックスから洗浄バッファへの粒子の動きは、表面エネルギーの減少を伴うので、これは、単純なプロセスである。小さな磁力で十分に水中に粒子を戻すことができる。また、重力が、粒子定着(settlement)のプロセスを支援する。
【0180】
(v)かき混ぜの必要性の検証。実施例1で行われたアッセイにおいて、チャンバー周囲の磁石の動きにより、粒子をかき混ぜた。マニュアルピペッティングが必要なサンプル精製プロセスは、ボルテックス混合による洗浄バッファ中の粒子のかき混ぜを要するので、これを行った。様々な磁場を作り出すことは、ステージ上の磁石を動かすことにより可能であるが、アッセイにコストを追加する。すなわち、ある実施態様によれば、かき混ぜは使用されない。
【0181】
ステッピングモーターとカートリッジの動きを制御するソフトウェア。コンピュータのUSBポートを、RS232コンバーターへのUSBを介して、ステッピングモーターコントローラーへ接続できる。これは、ハイパー端子を用いて、モーターへのコマンドの送信を可能にする。Docklight等の任意のシリアル通信ソフトウェアを使用し、RS232コマンドセットを用いてステッピングモーターと効率的に通信できる。
【0182】
自動化サンプル精製システムの性能試験。サンプル精製システムの性能を試験するため、粒子の損失を測定する。これは、アッセイ及び流体のピペッティングを伴うアッセイのマニュアル状態での性能の損失と比較される。このため、粒子濃度を、Luminexフローサイトメーターを用いて測定する。通常のフローサイトメーターとは異なり、Luminexシステムは、粒子の計数、及び使用される溶液の容量の測定が可能なポジティブフロー制御システムを有するため、ビーズ溶液の濃度を測定することができる。ビーズの損失=ビーズの初期濃度×使用したサンプルのVol−ビーズの最終濃度×溶出バッファのVolである。
ビーズの損失%=(ビーズの損失/ビーズの初期総数)×100
【0183】
ビーズの損失割合は、システムの性能を測定する自動プロセスの各ステージで測定される。この目的は、損失割合を、マニュアルプロセスにおいて観察されるものよりも低減することである。ビーズ損失%の平均と、ビーズ損失%の分散を、自動化プロセス及びマニュアルアプローチについて比較する。自動化システムは、マニュアルプロセスよりも低分散であることが期待される。
【実施例3】
【0184】
チューブ状処理装置
この実施例は、生物反応を行うためのチューブ状処理装置を記載する。診断アッセイのための実験の設定を図7に示す。CAVRO 3000XLディジタルポンプに取り付けられた0.060”内径チューブ(Small Parts Inc.)からなる。ディジタルポンプを、RS232界面を介して制御する。様々な洗浄バッファ、検体、磁性粒子含有溶液、及びシリコンオイル(Gelest Inc.)を、チューブの遠位末端から投入する。
【0185】
当該実験のために使用される粒子は、Spherotech Inc.から入手したカルボキシル被覆平滑表面磁性粒子である。SPERO1M Smooth Surface Magnetic Particleは、酸化鉄被覆を十分に封入する粒子の表面にポリマー被覆の薄層を有する。粒子の表面上で暴露される酸化鉄は存在しない。
【0186】
Cylindrical Neodymium磁石(Bunting Magnetics Co)を、キャピラリーの長さ方向に動かす。当該磁石をキャピラリー周囲に置き、粒子を混合する。全ての実験についてN35及びN40グレードの磁石を使用した。
【0187】
テフロン(登録商標)チューブは、ガラスチューブよりも良好であることが判明しており、全ての実験で使用された。粒子はテフロン(登録商標)よりもガラスに張り付く。これは、粒子表面にはカルボキシル基が存在するため、ガラスより疎水性であるテフロン(登録商標)が、ガラスよりも親水性である当該粒子をはじくと仮定する。しかしながら、粒子は非常に疎水性であるため、テフロン(登録商標)に張り付かない。
【0188】
蛍光読取は、以下の実験のためのチューブにおいて採用されないが、キャピラリーシステムに光学的システムを取り付けることができる。化学反応の完了後、粒子をチューブから取り出し、且つフローサイトメーターで読み取る。全ての読取値を、SPHERO Rainbow Calibration Particlesに対して規格化した。当該SPHERO Rainbow Calibration Particlesは、様々な蛍光強度を有する複数の同じサイズの粒子の混合物を含む。各々の粒子は、365〜650nmの任意の波長で発光できる蛍光分子の混合物を含む。これは、フローサイトメーターにおいて、同じ粒子セットで全てのチャネルのキャリブレーションを可能にする。使用される蛍光分子は非常に安定であるが、FITC、PE、又はPE−Cy5等の通常使用される蛍光分子に非スペクトル的に適合する。チョッパーボトル(chopper bottle)で、1mLの希釈液に粒子フラム(flam)の数滴を希釈して、フローサイトメーターのキャリブレーションのための十分な粒子濃度が提供される。希釈したRainbow Calibration Particlesは、凍結融解の反復後も安定な状態を維持する。
【0189】
チューブ状処理装置おマイクロフュージチューブにおけるストレプトアビジン−ビオチン反応
診断装置としての使用のためのチューブ状処理装置は、感度の損失なくアッセイを行うことができる。オイルを介する粒子の移動は、当該粒子に結合するタンパク質を変性させるか、又はバルク溶液から粒子表面への核酸を困難にする粒子上の層を形成する可能性がある。
【0190】
ストレプトアビジン−ビオチンシステムを利用する。ビオチン−アビジン又はビオチン−ストレプトアビジン相互作用は、それを一般的なブリッジシステムとして有利にさせる、いくつかの特有の性質を有する。アビジン、ストレプトアビジン、及びニュートルアビジン(NeutrAvidin)ビオチン結合タンパク質の各々は、高い親和性と選択性で、1タンパク質分子当たり、4つのビオチンと結合する。
【0191】
平均直径3μの、未標識ストレプトアビジン被覆SPHERO Smooth Surface Magnetic Particles(1% w/v)を、実験に使用した。以下の実験において、0.7*106個の磁性粒子を使用した。粒子を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で洗浄し、磁石で分離し、且つ0.1%のNonidet P−40洗浄剤を含有する60μLのPBSバッファに再懸濁した。様々な濃度のAlexa−488−ビオチンを、0.1%のNonidet P−40含有リン酸Naバッファに溶解させた。
【0192】
以下の溶液を、所与の順序で、各々60μLのシリコンオイルで分離したキャピラリーに注入した。
(a)磁性粒子含有の、60μLのPBSバッファ
(b)0.1%のNonidet P−40含有の、60μLのPBS洗浄バッファ
(c)既知の濃度のAlexa−488−ビオチン含有の、200μLのリン酸Naバッファ
(d)0.1%のNonidet P−40含有の、60μLのPBS洗浄バッファ
【0193】
最初に粒子を、「溶液−a」から、洗浄バッファ(溶液−b)を含有するチャンバーに磁石で移動させた。これにより粒子の破片を取り除く。その後、これらを、Alexa−488−ビオチンを含有するチャンバーに移動し、ストレプトアビジン被覆粒子を、Alexa−488−ビオチンに結合させた(溶液−c)。粒子を、磁石の力で定期的に混合した。反応を90分間継続させ、その後粒子を次のチャンバーに移動させ(溶液−d)、粒子に張り付いているはずの任意の破片を洗い流す。シリコンオイルを介する1のチャンバーから次のチャンバーへの粒子の移動には、粒子がオイル−水バリアを交差できるように、集団に統合することが必要である。ゆえに、粒子が一のチャンバーから次のチャンバーにわたって動く各々の時間、粒子は、磁石を動かすことにより十分に混合させられる。その後、粒子を回収し、そして粒子上の蛍光をフローサイトメーターで測定する。
【0194】
実験のために使用されるAlexa Flour色素は、近UV、可視、及び近IRスペクトルに渡る優れた蛍光色素のシリーズである。これらの色素は、例外なくフルオレセインと比較してより明るい複合体を作製する。Alexa−488は、495nmで光を吸収し、519nmで発光し、且つ71000の減衰係数を有する。色素は、水溶性であり、且つ広いpH範囲にわたり高い蛍光を維持する。
【0195】
同一の反応をマイクロフュージチューブで行った。0.7*106個の粒子をPBS中で洗浄し、磁石で分離し、且つ0.1%のNonidet P−40洗浄剤を含有する60μLのPBSバッファに再懸濁した。その後粒子を以下の溶液と各時間混合し、磁石で分離し、その後、次の溶液に再懸濁した。
【0196】
(a)磁性粒子含有の、60μLのPBSバッファ
(b)0.1%のNonidet P−40含有の、60μLのPBS洗浄バッファ
(c)既知の濃度のAlexa−488−ビオチン含有の、200μLのリン酸Naバッファ
(d)0.1%のNonidet P−40含有の、60μLのPBS洗浄バッファ
【0197】
キャピラリーにおける反応の場合のように、ストレプトアビジン被覆磁性粒子を、90分間、ビオチン含有バッファと混合させた。粒子をこの時間、定期的に混合した。これらの粒子から蛍光を読取り、キャピラリーシステムから得られた粒子の蛍光読取値と比較した。
【0198】
図8は、異なる濃度のビオチンでのフローサイトメーターにおいて測定されたFL1高さの値を示す。ダイアモンドは、キャピラリーシステムで行われたストレプトアビジンビオチン反応についてのシグナルを表し、ピンク四角は、マイクロフュージチューブで行われたストレプトアビジンビオチン反応のシグナルを表す。全ての測定値を、固定値での虹の第三のピークを維持することにより規格化した。プロットから理解される通り、粒子はシグナルが低減し始めた後、10-10Mのビオチン濃度まで完全に飽和する。ストレプトアビジン被覆粒子上に結合するビオチン量は、当該反応が、キャピラリーで行われたか、マイクロフュージチューブで行われたかに関わらず、同様である。2つの反応間の差は、測定された全てのビオチン濃度で統計的に有意でない。このグラフは、ビオチン高濃度での蛍光シグナルにおけるいくらかの消光があることを示す。図8は、ビオチン濃度0.5*10-10Mでの、チューブ状処理装置におけるストレプトアビジン−ビオチン反応の5回の反復を示す。
【0199】
以下の実験の手法は、上記の前の実験と同じである。図9は、2セットの粒子について測定された2つの重ね合わせ図からなる。つまり、以下の通りである。
(a)10-12Mビオチン溶液と反応する、ストレプトアビジン被覆SPHERO Smooth Surface Magnetic Particles
(b)脱イオン水と反応する、ストレプトアビジン被覆SPHERO Smooth Surface Magnetic Particles
【0200】
前方散乱及び側方散乱は、2セットの粒子について同じであり、これは、2セットの粒子のサイズ及び表面粗度が同じであるため期待通りであった。粒子表面で発光される蛍光量の測定値であることより、ストレプトアビジンへ結合するビオチン量の直接測定値であるFL1高さは、2セットの粒子で異なる。図9は、粒子が10-12Mビオチンと反応する場合、FL1高さ(ピーク)の中点は、ストレプトアビジン被覆粒子が水と反応する場合とは明確に区別でき、且つより大きいことを示す。装置の感度は、ビオチンについては10-12Mであることがわかった(ブランクよりも2dB超である)。
【0201】
チューブ間の粒子輸送
図10に示すように、一のチューブを別のチューブに挿入し、ここでより薄いチューブの外径が、より大きなチューブの内径とほぼ同じであるようにする。ストレプトアビジン被覆粒子を、PBSバッファを含有するチャンバーに移動させる。これを行う間、また、それを一のキャピラリーから別のキャピラリーに動かす。その後、それを、10-8M Alexa−488−ビオチン及び0.1% Nonidet−P40(NP−40)を含有するPBSバッファを含むチャンバーに移動させる。一のチャンバーから別のチャンバーへの移動は、シリコンオイルの領域を交差することを必要とする。粒子をAlexa−488−ビオチンと、90分間反応させ、その後、粒子を取り出すとともに、その蛍光をフローサイトメーターで測定する。蛍光読取値は、一のキャピラリーから別のキャピラリーへ移動するにもかかわらず、反応が起きることを示唆する。
【0202】
携帯可能な診断装置において、試薬はチューブ中に存在している可能性があり、一方、測定されるサンプルは、別の分離チューブに回収されるか、又はサンプルの回収に適するベッセルに回収される可能性がある。この実験は、粒子をチューブもしくは回収ベッセルにおいてサンプルと反応させ、その後当該粒子を、試薬が存在している別のチューブに移動させることにより、行われる反応の進行を可能にすることの実現可能性を実証した。
【0203】
シリコンオイルの影響
診断装置に影響を与える因子の1つが、粒子上のシリコンオイルの影響である。オイル領域を介する粒子の移動の間、当該オイルが粒子に張り付く場合について調べた。このために、蛍光色素、ピロメテン(pyromethene)546をシリコンオイルに溶解させた。ピロメテンは、546nmで蛍光を発するオイル可溶性レーザー色素である。粒子を、ピロメテン546を含有するシリコンオイルの領域を介して動かした。その後、粒子をキャピラリーから取り出し、そして蛍光シグナルをフローサイトメーターで測定した(図11a)。
【0204】
別の実施態様によれば、粒子を、ピロメテン546を含有するシリコンオイルを介して移動させ、その後、0.1% Nonidet P40を含有するPBSバッファにおいて混合した。これらの粒子を凝集させるために磁石を使用した。その後、粒子をキャピラリーから取り出し、そして図11bに示すとおり、フローサイトメーターで蛍光シグナルを測定した。
【0205】
前方散乱値は粒子のサイズを表し、一方、側方散乱は、粒子の表面特性についての情報を提供する。図11aにおいて、前方散乱プロットは広い分布を示すが、粒子はほぼ同じサイズを示す。これは、オイルが粒子に張り付いているか、様々なサイズのオイル液滴が形成されていることを実証している。オイルを介して粒子を移動後、PBSバッファにおける粒子をかき混ぜると、粒子サイズの分布は、期待通り、2つの区別できるピーク、つまり、粒子及び粒子の二重項(doublets)を示す(図11b)。図11aにおける側方散乱プロットも、同様に形成されたオイルの小さな液滴が存在するはずであることを示唆する2つのピークを示す。図11aのFL1中央値は73であり、これは蛍光色素のいくつかが、粒子とともに移動したことを実証している。これは、粒子を混合することにより洗浄することができ、そうすると、図11bにおいて、より低い蛍光値38が得られる。
【実施例4】
【0206】
液体ワックスを用いる市販のRNA精製の効率
この実施例は、液体ワックス媒体を介して磁性粒子に結合したRNAを輸送する精製方法は、様々な種類の粒子、及び多様な溶解、洗浄、及び溶出バッファを使用する市販のキットに適合可能であることを実証する。試験キットは、シリカ(Ambion)、酸化鉄(Abbott/Promega)及びセルロース(Cortex)磁性粒子を含んでいた。粒子化学における差異に加えて、これらのキットは、それぞれの溶解及び溶出バッファ、及び中間洗浄バッファの組成の点で異なる。
【0207】
正常な血漿中で急増したウイルス粒子を、キット製造業者の指示書、例えば、溶解及び溶出の間の全ての洗浄ステップ、及びリアルタイムPCRにより決定されたRNAレベル等に従って精製した。その後、急増した血漿を、溶解及び溶出バッファのみを用いるワックス相方法で精製し、RNAレベルを比較した。
【0208】
Ct単位において表わされるRNA濃度の比較は、液体ワックス伝達精製方法論の効率が、製造業者指定の指針における手法のものと同等であることを示した。まとめると、これらの結果は、液体ワックスによる溶解バッファの排除は、RNA精製システムにより典型的に規定される多重のマニュアル洗浄の適切な置換であることを示している。
【0209】
ワックス−ブリッジキュベット
全ての実験は、図12及び13に示される2チャンバーキュベットにおいて行われ、当該チャンバーは、溶解バッファから溶出バッファへの粒子の移動を促進するよう設計された。図12に示すように、溶解バッファを左のチャンバーに添加し、且つ溶出バッファを右のチャンバーに添加する。その後、両方のバッファ溶液を覆い、且つ2つのチャンバー間にブリッジを形成する液体ワックスを添加する。磁石を溶解チャンバー上の側壁上に置き、ペレットを形成しながら壁に引き付けられる。図13に示す通り、その後、磁石を、オイル層中の溶解バッファを介して壁に沿ってペレットを引きずりながら上方に動かす。その後、磁石を、ペレットが溶出チャンバーより上になるまでオイルブリッジを介して粒子を引きずりながら側面に沿って移動させる。最後に、磁石は、オイルから溶出バッファへ、粒子を引きずりながら下方に動かされる。
【0210】
製造業者のプロトコール
Ambion MagMacx Viral RNA Isolation Kit(カタログ番号AM1929)、Abbott/Promega M Sample Preparation System(カタログ番号02L02−24)、及びCrtec Biochem MagaZorb(登録商標)RNA Isolation Kit(カタログ番号MB2001)を試験した。ウイルスRNAサンプルを、多重の洗浄ステップを含むキットのプロトコールに従って、各々の製造業者の試薬を用いて加工した。
【0211】
液体ワックスプロトコール
Ambion MagMacx Viral RNA試薬
サンプル溶解
1.5×106cp/mL HIV−1ビリオンを含有する血漿25μLを、1.5mLのスクリューキャップチューブ中の、802μLの溶解バッファ(組成:400μLの製造業者により供給される溶解/結合濃縮物、400μLの無水イソプロパノール、2μLの製造業者により供給される担体RNA)に添加し、ピペットで混合した。20μLウェル懸濁磁性粒子(製造業者により供給される;組成:10μL粒子、10μL結合促進剤)の存在下、50℃で10分間まで溶解を進行させる。初期の溶解ステップ後、又は現在の溶解の間に、粒子を添加でき、精製効率における識別可能な影響は観察されていない。
【0212】
カートリッジ設定
磁性粒子は、磁性ラック上に堆積し、600μLの上清液体を破棄し、調製したカートリッジにロードさせる。溶解バッファ及びRNA結合粒子を含有する最大250μLスラリーを、カートリッジの「溶解」チャンバーに移す。25μの製造者が供給するTris−EDTA溶出バッファを、カートリッジの「溶出」チャンバーにロードする。典型的には800μLの液体ワックスを用いて、ワックス「ブリッジ」がカートリッジの頂部にわたって形成されるように、両チャンバーにおいて流体の頂部にChill−out Liquid Wax(Bio−Rad)を重ねる。多重サンプルのためのカートリッジは、この手順で1回で調製され、製作されたラック上に配列することができる。
【0213】
精製
RNA結合ビーズを、磁石により硬いペレットに集積させる。「溶解」から「溶出」チャンバーへ粒子の移動についてカートリッジは個別に扱われる。磁性粒子は、ビーズが硬いペレット中の状態を維持し、且つ溶解バッファのキャリーオーバーが最小限であるように、一定の手順で、磁石によりワックスを介して溶出バッファに輸送される。一度、溶出バッファおいて、ビーズを磁石のマニュアル操作により混合する。
【0214】
サンプル回収
液体ワックスを、サンプル損失なく、「溶出」チャンバー超の最小限量(メニスカスで1mm)を維持するように、カートリッジから吸引する。当該カートリッジを、液体ワックスが固化するが、溶液バッファ/ビーズスラリーは液相を維持するように、4分間、−20℃に設定する。液体ワックスプラグは、溶出バッファの抽出のために、ピペットチップにより除去されるか、又は穿孔されてよい。溶出バッファ/ビーズスラリーを、1.5mLのスクリューキャップチューブに移し、70℃で10分まで加熱し、バッファ上清へのウイルスRNAの完全な溶出を促進する。ビーズを磁性ラック上に沈殿させ、Tris−EDTAバッファ中のRNA50μLまでを、qRT−PCRにすぐに使用できるように、各チューブに回収する。
【0215】
Abbott/Promega試薬:
サンプル溶解
1.5×106cp/mL HIV−1ビリオンを含有する血漿25μLを、1.5mLのスクリューキャップチューブ中の、600μLの溶解バッファ(2μLの製造業者により供給される担体RNAが補充される)及び25μL酸化鉄粒子に添加し、ピペットで混合した。50℃で10分まで溶解を進行させる。
【0216】
カートリッジ設定
溶解後、磁性粒子を沈殿させ、且つ400μLの上清を破棄した。25μLの高塩溶出あっふぁを「溶出」チャンバーに添加する。溶解バッファ及びRNA結合粒子を含有する最大250μLのスラリーを、カートリッジの「溶解」チャンバーに移す。典型的には800μLの液体ワックスを用いて、ワックス「ブリッジ」がカートリッジの頂部にわたって形成されるように、両チャンバーにおいて流体の頂部にChill−out Liquid Wax(Bio−Rad)を重ねる。多重サンプルのためのカートリッジは、この手順で1回で調製され、製作されたラック上に配列することができる。
【0217】
精製及びサンプル回収
Ambiconキットで使用したものと同じ手法を使用した。
【0218】
Cortex Biochem試薬:
サンプル溶解
1.5×106cp/mL HIV−1ビリオンを含有する血漿25μLを、1.5mLのスクリューキャップチューブ中の、20μLプロテアーゼKで、穏和に混合することにより処理した。200μLの製造業者により供給される溶解バッファを添加し、且つ15秒のプラス−ボルテックスによりサンプルを混合し、その後、55℃で15分加熱した。500μLの製造業者により供給される結合バッファと、20μLの単分散MagaZorb試薬をサンプルに添加し、時折転倒混和しながら室温(20℃)で10分インキュベートした。
【0219】
カートリッジ設定
磁性粒子を磁性ラック上に沈殿させ、500μLの上清液を破棄し、調製したカートリッジにロードさせる。溶解バッファ及びRNA−結合粒子を含有する最大250μLのスラリーを、カートリッジの「溶解」チャンバーに移す。25μLの製造業者により供給されるTris−EDTAバッファを「溶出」チャンバーに添加した。典型的には800μLの液体ワックスを用いて、ワックス「ブリッジ」がカートリッジの頂部にわたって形成されるように、両チャンバーにおいて流体の頂部にChill−out Liquid Wax(Bio−Rad)を重ねる。多重サンプルのためのカートリッジは、この手順で1回で調製され、製作されたラック上に配列することができる。
【0220】
精製及びサンプル回収
溶出バッファ/ビーズスラリーを70℃まで15分間加熱し、ウイルスRNAの溶出を容易にした点以外は、Ambiconキットで使用したものと同じ手法を使用した。
【0221】
手法の比較
液体ワックス精製方法への、様々なウイルスRNA精製化学の適合性を、Abbott m2000rtアッセイキットで供給される試薬を用いてqRT−PCRにより評価した。各事例において、HIV−1ビリオン含有血漿を、qRT−PCR分析のためのテンプレートとして使用し、適切なポジティブ(精製HIV−1転写因子)及びネガティブ(偽血漿精製物又は水)コントロールを補完した。全ての精製サンプルは、内部コントロールとして担体RNAを含むとともに、反復して行われた。各RNA調製物について、各版王においてHIV−1 RNAの7,500コピーを生み出す5μLのRNAを使用した。一のサンプルについてのqRT−PCR混合物を、以下の表4に記載する。
【0222】
【表4】
【0223】
qRT−PCR分析の結果
qRT−PCR装置により提供されるCt値を、以下の表5に示す。
【0224】
【表5】
【0225】
HIV−1テンプレートコピーの設定数に対して、試験される化学物質及び使用される精製方法の間で、qRT−PCR分析から得られる報告Ct値における変動はほとんどなかった。これらの実験におけるネガティブ増幅及び偽精製物コントロールは、これらの実験でCt値がないか、又は無視できるほどであった。相ゲート精製手法は、溶解バッファ及びその他のPCR阻害因子を排除する液体ワックスは、キット製造業者プロトコールと同程度に効率的であり、多重洗浄と同様に効果的であることを実証する。Abbott/Promegaサンプルからの溶出RNAサンプルの分光光度分析は、230nmでの吸収を示さない。グアニジニウムは、この溶解バッファにおける高い重量モル濃度で存在し、且つ230nmでの紫外光を吸収する。吸収ピークの不存在は、この汚染物質のキャリーオーバーが低いことを示す。Ct値は、反復実験にわたって一致しており、精製化学物質に対してほぼ不変であり、且つ良好なRNA回収が達成されることを実証する精製方法論と同程度である。
【実施例5】
【0226】
CD4+T細胞の単離
新鮮な末梢血単核球細胞(PBNMC's)をAllcells(Emeryville,CA)から購入した。抗−CD4抗体で被覆したDynabead CD4磁性粒子(直径4.5um)をInvitorogen(Carshbad,CA)から購入した。
【0227】
1.2mLのPBNMC'sを50μLのDynabead CD4磁性粒子と混合した。穏和な傾斜と回転を与えながら、4℃で45分間、捕捉反応を進行させた。CD4+ve T細胞ポジティブ単離を、3つの手法を用いて比較した。
【0228】
a)Dynabeads CD4プロトコールを用いるポジティブ単離:200μlの上記ストックを、研究カートリッジのウェル1に分けた(図12に示される、標識溶解バッファ、及び図13)。磁石を1分間カートリッジの側面に置き、磁性粒子及び捕捉細胞を側面上でペレット形成させた。上清を吸引するとともに破棄した。ペレットを200μl PBSでの再懸濁押磁石を用いる分離を3回行うことにより洗浄した。最後の洗浄後、60μlの0.2%Triton X−100を添加し、細胞を溶解させた。
【0229】
b)Chill−Out Liquid Wax(Bio−Rad,Hercules,CA)を介するポジティブ抽出。200μlのストック溶液を、研究カートリッジのウェル1に分けた。60μlの0.2%Triton X−100溶解バッファを、研究カートリッジのウェル2に分け(図12に示される、標識溶出バッファ、及び図13)、ここでウェル2は、Chill−Out Liquid Waxによりウェル1から分離された。磁石を1分間カートリッジの側面に置き、磁性粒子を引きずり、ウェル1の側面に細胞を捕捉した。その後、当該ペレットを、図13に示すような経路に沿って磁石をひきずることによりワックスを介してゆっくりとウェル2に動かした。磁石を用いて、ウェル2において粒子をかき混ぜた。
【0230】
c)キャノーラオイル(Jewel-Osco/Supervalu,Eden Prairie,MN)を介するポジティブ抽出。200μlのストック溶液を、カートリッジのウェル1に分けた。60μlの0.2%Triton X−100溶解バッファを、溶解チャンバーに分け、これはキャノーラオイルによりウェル2から分離されている。磁石を1分間カートリッジの側面に置き、磁性粒子を引きずり、ウェル1の側面上に細胞を捕捉した。その後、ペレットをキャノーラオイルを介して、ウェル2に磁石とともにゆっくりと動かした。磁石を使用し、ウェル2において粒子をかき混ぜた。
【0231】
親油性バリアを介する移動の効率を、β2−ミクログロブリン遺伝子についてのリアルタイムPCRアッセイを用い、ウェル2における溶液の一定量中の細胞性DNAの量を測定することにより決定した。各々の実験において、磁石を用いてウェル2の側面で粒子を引き;且つ60μlの溶解細胞懸濁物をエッペンドルフチューブに移動させた。その後、各サンプル5μlを得て、β2−ミクログロブリン(New England Biolabs,Ipswich, MA)についてPhusion GCアッセイを用いてRT−PCRを使用した。
【0232】
結果
以下の表6は、リアルタイムPCRアッセイの閾値蛍光強度に到達するために必要なサイクル数を示す。
【0233】
表6
細胞精製 Ct値
DynalBeadsプロトコール 27.59
Chill−Out Wax 27.14
植物オイル 28.99
【0234】
結果は、3つの細胞単離手法から得られるCt値は、同程度であることを示している。アッセイはβ2−ミクログロブリンを定量化したので、結果は、ワックス及びオイルを介して動く間に、細胞における遺伝物質が保護されることを示す。
【実施例6】
【0235】
デキストランPMPを用いる血漿からのRNA精製
核酸を精製するための全ての洗浄ステップを除去し、且つ加工システムとサンプルとの間の全ての接触を除去するため、PMPを、外部から加える磁場を用いてウェル間に輸送した。ウェルを、PMPが輸送されるものを介して、疎水性液体と接触させる(図12)。疎水性液体は、溶解チャンバーと溶出チャンバーと間で、2つの溶液の混合を阻止し、バリアとして機能する。磁力を適用すると、PMPは、溶解チャンバーから溶出チャンバーへNAを輸送しながら、疎水性液体を介して動かされ、一方、溶解及び溶出バッファは変化しない状態を維持する。当該疎水性液体は、非混和性相フィルター(IPF)として機能し、これは、プロセスをたった3つのステップにまで低減する:細胞溶解/NA結合、PMP輸送/及びNA溶出。IPFを、RNA精製プロトコールに組み込むことの実行可能性を実証するため、HIV−1 RNAを、ウイルス量を測定する際になされるように、血漿から抽出した。HIV−1の定量的測定は、疾患進行のモニタリング及び抗レトロウイルス薬物療法結果の評価のために重要である(Mylonakis,Paliou等,Am.Fam.Phisician 63(3)483 2001)。ウイルス量測定は、ヒト血液由来のサンプルにおける、相対的に低いウイルスコピー数及びPCR阻害因子の不存在により、典型的に要求が多く、このアッセイが良好なモデルシステムを提供する。
【0236】
血漿の1.5×106コピー/mlで、Rush Virology Quality Assurance Laboratoryから得られたHIV−1ウイルスを、血清反応陰性の血漿で希釈し、それぞれ、300、60、及び12コピー/μLのHIV−1濃縮物を得た。Ambion MagMax(商標)Total RNA単離キット(Applied Biosystem;Foster City,CA)マニュアルプロトコールを、製造業者の推奨の通りに行った。IPF法での精製について、200μLのAmnion 溶解/結合溶液濃縮物(Applied Biosystem;Foster City,CA)、200μLのイソプロピルアルコール、1μLの単体RNA(Applied Biosystem;Foster City,CA)、5μLのAmbion PMP、及び5μLの結合促進剤(Applied Biosystem;Foster City,CA)からなる溶解及び結合試薬を、カートリッジのより大きなチャンバーに添加し、そして混合した。その後、HIV−1ウイルス含有の50μLの血漿をそれに添加し、自動化システムを用いて4分間混合した。50μLの溶出バッファに、IPFカートリッジのより小さいチャンバーに分け、且つ2つの一定量の流体を、図12に示すように、Chillout(商標)液体ワックス(Biorad Laboratories;Hercules,CA)で覆った。自動化システムは、外部磁石を用いて2分間PMPを凝集させ、且つ溶解バッファから溶出バッファへ凝集物を動かした。PMPを含有する溶出バッファを55℃で10分間加熱し、RNAを溶出した。PMPを凝集させ、且つ溶出バッファから除去した。HIV−1ウイルス量の定量を、25μlの反応容量中で、0.2mg/mlウシ血清アルブミン(B8667,Sigma)、150mM トレハロース(T9531;Sigma)、及び0.2% Tween20(28320;Pierce Thermo Fisher Scientific)、並びに5μlのテンプレートを添加し、Abbott RealTime HIV−1 Amplification Reagent Kit(Huang,Salituro等、2007)(Abbott Molecular,Des Plaines,IL)を用いて行った。増幅反応を、Cepheid SmartCycler II(Sunnyvale,CA)で行った。
【0237】
精製RNAを、Abbott RearTime HIV−1 Amplification Kitを用いて増幅した。PCR効率E=102%が観察され(図14)、これは、標準的プロトコールで必要とされる、4回の洗浄ステップ及びアルコール蒸発ステップを除去した後ですら、阻害因子のキャリーオーバーが最小限であることを示唆している。Ambion MagMax(商標)Total RNA単離キットを用いる、IPFとRNA精製のための標準的プロトコールの比較は、有意性レベル0.05(α=0.05)を示し、2つの方法間に統計的な差異はなかった(p値=0.967)(図15)。複数の低コピー数での10回の反復産物は、精製され、60コピーのウイルスRNAは、100%の感度でPCR反応において検出できた。50μlの血漿を使用したので、これは100%感度での血液1ml当たり600コピーに対応する。
【実施例7】
【0238】
尿からのクラミジア及び淋菌の精製
核酸を精製するための全ての洗浄ステップを除去し、且つ加工システムとサンプルとの間の全ての接触を除去するために、PMPを外部から加える磁場を用いてウェル間に輸送した。当該ウェルを、それを介してPMPを輸送する疎水性液体と接触させる(図12)。疎水性液体は、溶解チャンバーと溶出チャンバーとの間のバリアとして機能し、2つの溶液の混合を防ぐ。磁場を加える際、溶解及び溶出バッファの安定な状態を維持しながら、溶解チャンバーから溶出チャンバーへNAを輸送して、PMPを、疎水性液体を介して動かす。疎水性液体は、加工を、細胞溶解/NA結合、PMP輸送、及びNA溶出という、たった3つのステップに低減する、非混和性フィルタ(IPF)として機能する。尿からNAを抽出するIPF法を用いることの実現可能性を実証するため、真菌DNAをクラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis、CT)及びネイセリア・ゴノルホエアエ(Neisseria gonorrhoeae、NG)を、これらの性感染疾患の診断のために精製した。尿サンプルを、クラミジア:McCoy細胞培養懸濁物中のATCCトラコマチス血清型F、及び30%グリセロール含有PBSに再懸濁した凍結乾燥ネイセリア・ゴノルホエアエを、コントロール尿(Fisher Scientific,PA)と組み合わせることにより調製した。製造業者のプロトコールの通りに、Abbott RealTime CT/NGアッセイを用いて、マニュアルプロトコールを行った。IPF法での精製について、200μLのAmbion 溶解/結合溶液濃縮物(Applied Biosystem;Foster City,CA)、200μLのイソプロピルアルコール、1μLの担体RNA(Applied Biosystem;Foster City,CA)、5μLのAnbion PMP及び5μLの結合促進剤(Applied Biosystem;Foster City,CA)を混合した。その後、200μLの尿サンプルをそれに添加した。溶液を55℃で10分加熱し、2ステップ精製を血漿サンプルと同様に行った。既報の通り(Marshall,Chernesky等、2007)、精製DNAを、50μLの反応容量で、Abbott RealTime CT/NGアッセイを用いて増幅させた。増幅反応は、Abbott Molecular m2000rt装置(Abbott Park,IL)で行った。
【0239】
7桁にわたるCT及びNGアッセイのPCR効率は、それぞれ97.2%及び94.5%であり(図16〜17)、これは阻害剤キャリーオーバーが最小限であることを示している。これらの効率は、Abbott Realtime CT/NGキットを用いたマニュアル抽出法から得られたもの(それぞれ、87.9%及び87.9%)と類似していた。CT及びNGアッセイのBland−Altmanプロットは、Abbott DNA精製キットを用いる標準的方法とIPF法との間に統計的な差がないことを示す(図18〜19)。有意さレベル0.05(α=.05)で、この2つが同一であることがわかる(それぞれ、p値が0.42及び0.70)。
【実施例8】
【0240】
全血からのゲノムDNAの精製
核酸を精製するための全ての洗浄ステップを除去し、且つ加工システムとサンプルとの間の全ての接触を除去するために、PMPを外部から加える磁場を用いてウェル間に輸送した。当該ウェルを、それを介してPMPを輸送する疎水性液体と接触させる(図12)。疎水性液体は、溶解チャンバーと溶出チャンバーとの間のバリアとして機能し、2つの溶液の混合を防ぐ。磁場を加える際、溶解及び溶出バッファの安定な状態を維持しながら、溶解チャンバーから溶出チャンバーへNAを輸送して、PMPを、疎水性液体を介して動かす。疎水性液体は、加工を、細胞溶解/NA結合、PMP輸送、及びNA溶出という、たった3つのステップに低減する、非混和性フィルタ(IPF)として機能する。
【0241】
全血(WB)は、ゲノムDNAの豊富な供給源である。しかしながら、それは、多数のPCR阻害因子を高濃度で含有する非常に複雑な媒体である。方法がかかるサンプルを加工するかを決定するため、抹消血単核細胞にまとめられるプロウイルスHIV−1 DNAを検出するようにqPCRアッセイを開発する。プロウイルスDNA検出には、通所、HIV−1患児を使用する(Read and Comittee on Pediatric AIDS Pediatric 120(6):e1547−1562 2007)。10ステップ(溶解、7回の洗浄、乾燥及び溶出)からなるPromega Magnesil gDNA精製キットを、3ステップ(溶解、液体ワックスを介するPMP、及び溶出)からなるIPF法の使用に適合させた。
【0242】
血清反応陰性の供与者由来のWBに添加された、1細胞当たりHIV−1ゲノムの単一コピーを含有する、培養8E5細胞(Folks, Powell et al. J. Exp. Med. 164(1): 280−290 1986) (Rush Virology Quality Assurance Laboratory, Chicago, IL)を使用し、プロウイルスDNAアッセイの胎児血をシミュレートした。細胞を解凍し、ヘモサイトメーターを用いて計数し、リン酸緩衝食塩水(PBS)で段階的希釈し、且つ血清反応陰性の供与者由来のWBに、8000細胞/μl、1600細胞/μl、320細胞/μl、及び64細胞/μlの濃度で添加した。Promega Magnesil gDNA精製プロトコールを、製造業者の推奨で行った。IPF法において、25μlの血液を、60μLの溶解バッファに添加し、1分かき混ぜ、且つ室温で4分インキュベートした。44μLの溶解バッファ及び6μLのPMPを添加し、1分かき混ぜ、且つ4分インキュベートした。15μLの溶解バッファ及び200μLのアルコール洗浄バッファを、溶液に添加し、且つIPH精製を既に述べたとおりに行った。精製DNAを、Abbott RealTime HIV−1 Amplification Reagent Kit(Abbott Molecular,Des Plaines,IL)(Huang, Salituro 等. 2007)を用いて、25μlの反応容量で増幅させた。増幅反応を、Cepheid SmartCycler II(Sunnyvale、CA)で行った。
【0243】
4桁超の段階的希釈により、−3.15の傾きの標準曲線、及びPCR効率108%が得られた(図20)。プロウイルスPCRアッセイのBland−Altmanプロットは、Promega精製キットを用いる標準的方法と、IPF法との間に統計的な差異がないことを示した(図21)。有意さレベル0.05(α=.05)で、この2つの方法が、同一であることがわかった(p値=0.98)。
【0244】
本明細書において記述された、全ての刊行物、特許、特許出願、及び受託番号により識別される配列は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明は、特定の実施態様との関連で記載されているが、請求される本発明が、かかる特定の実施態様に過度に限定されるものではないと解すべきである。本発明の記載された組成物及び方法について、本明細書に記載される組成物及び方法の機能的特徴を大きく変化しない改変及び変形は、以下の請求の範囲内であることを意図する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物サンプル加工装置であって、
a)サンプル加工試薬を含んでなる2以上のサンプル加工チャンバー;及び
b)サンプルが、第一と第二の加工チャンバーの間を動かされる場合、それを介して動くような、前記2以上のサンプル加工のうち少なくとも2つの間の、水及びアルコール非混合性、疎水性、又は親油性物質、
を含んでなる、生物サンプル加工装置。
【請求項2】
前記物質により分離される3以上のサンプル加工チャンバーを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記物質により分離される4以上のサンプル加工チャンバーを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記物質により分離される5以上のサンプル加工チャンバーを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記サンプル加工チャンバーの各々がサンプル精製試薬を含んでなる、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
サンプル精製試薬を含んでなるサンプル精製チャンバー、サンプル分析試薬を含んでなるサンプル分析チャンバー、並びにサンプル精製及びサンプル分析チャンバーの混合物、からなる群から選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記親油性基質がワックスである、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記親油性基質がオイルである、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記サンプル精製チャンバーから、前記サンプル分析チャンバーへ、磁性粒子を動かすように設置される磁石をさらに含んでなる、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
蒸気バリアを含んでなる、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
プラスチック層間に挟まれるアルミホイル層を含んでなる、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
a)生物サンプル加工装置であって、サンプル加工試薬を含んでなる、2以上のサンプル加工チャンバー、及び前記サンプル加工チャンバーの少なくとも2つの間の、水及びアルコール非混合性、疎水性、又は親油性物質;並びに
b)前記サンプル加工チャンバー間及びチャンバーにおいて、少なくとも一部のサンプルを輸送するように構成されるサンプル輸送構成要素、
からなるシステム。
【請求項13】
前記サンプル輸送構成要素が磁石を含んでなる、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
サンプル検出構成要素をさらに含んでなる、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
a)加工サンプルを作製する第一の加工試薬を含んでなる、第一のチャンバーにサンプルを置くこと;
b)水及びアルコール非混和性、疎水性又は親油性バリアを介して、第二のチャンバーへ前記加工サンプルを動かすこと;
c)前記第二のチャンバーにおける前記加工サンプルを、さらなる加工サンプルを作製する第二の加工試薬で処理すること、
を含んでなる、生物サンプル加工方法。
【請求項16】
前記第一及び/又は第二の加工試薬が精製試薬である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第一の試薬が捕捉試薬であり、且つ前記第二の試薬が洗浄試薬である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第一の試薬が精製試薬であり、且つ第二の試薬が分析試薬である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記精製サンプルが、磁性粒子と結合した生体分子を含んでなる、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記動かすことが、前記第一のチャンバーから、前記バリアの中へ、その後前記第二のチャンバーへ、磁性粒子を引き入れる磁石の使用を含んでなる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記生体分子が、無傷細胞、RNA、DNA、又はタンパク質である、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記精製サンプルが、前記第二のチャンバーに動かされる前に、1又は複数の追加のチャンバーに動かされる、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記1又は複数の追加のチャンバーが、洗浄試薬を含んでなる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第二の加工試薬が、核酸増幅試薬を含んでなる、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記第二の加工試薬が、核酸検出試薬を含んでなる、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
前記第二の加工試薬が、ポリペプチド検出試薬を含んでなる、請求項15に記載の方法。
【請求項1】
生物サンプル加工装置であって、
a)サンプル加工試薬を含んでなる2以上のサンプル加工チャンバー;及び
b)サンプルが、第一と第二の加工チャンバーの間を動かされる場合、それを介して動くような、前記2以上のサンプル加工のうち少なくとも2つの間の、水及びアルコール非混合性、疎水性、又は親油性物質、
を含んでなる、生物サンプル加工装置。
【請求項2】
前記物質により分離される3以上のサンプル加工チャンバーを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記物質により分離される4以上のサンプル加工チャンバーを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記物質により分離される5以上のサンプル加工チャンバーを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記サンプル加工チャンバーの各々がサンプル精製試薬を含んでなる、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
サンプル精製試薬を含んでなるサンプル精製チャンバー、サンプル分析試薬を含んでなるサンプル分析チャンバー、並びにサンプル精製及びサンプル分析チャンバーの混合物、からなる群から選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記親油性基質がワックスである、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記親油性基質がオイルである、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記サンプル精製チャンバーから、前記サンプル分析チャンバーへ、磁性粒子を動かすように設置される磁石をさらに含んでなる、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
蒸気バリアを含んでなる、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
プラスチック層間に挟まれるアルミホイル層を含んでなる、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
a)生物サンプル加工装置であって、サンプル加工試薬を含んでなる、2以上のサンプル加工チャンバー、及び前記サンプル加工チャンバーの少なくとも2つの間の、水及びアルコール非混合性、疎水性、又は親油性物質;並びに
b)前記サンプル加工チャンバー間及びチャンバーにおいて、少なくとも一部のサンプルを輸送するように構成されるサンプル輸送構成要素、
からなるシステム。
【請求項13】
前記サンプル輸送構成要素が磁石を含んでなる、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
サンプル検出構成要素をさらに含んでなる、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
a)加工サンプルを作製する第一の加工試薬を含んでなる、第一のチャンバーにサンプルを置くこと;
b)水及びアルコール非混和性、疎水性又は親油性バリアを介して、第二のチャンバーへ前記加工サンプルを動かすこと;
c)前記第二のチャンバーにおける前記加工サンプルを、さらなる加工サンプルを作製する第二の加工試薬で処理すること、
を含んでなる、生物サンプル加工方法。
【請求項16】
前記第一及び/又は第二の加工試薬が精製試薬である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第一の試薬が捕捉試薬であり、且つ前記第二の試薬が洗浄試薬である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第一の試薬が精製試薬であり、且つ第二の試薬が分析試薬である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記精製サンプルが、磁性粒子と結合した生体分子を含んでなる、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記動かすことが、前記第一のチャンバーから、前記バリアの中へ、その後前記第二のチャンバーへ、磁性粒子を引き入れる磁石の使用を含んでなる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記生体分子が、無傷細胞、RNA、DNA、又はタンパク質である、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記精製サンプルが、前記第二のチャンバーに動かされる前に、1又は複数の追加のチャンバーに動かされる、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記1又は複数の追加のチャンバーが、洗浄試薬を含んでなる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第二の加工試薬が、核酸増幅試薬を含んでなる、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記第二の加工試薬が、核酸検出試薬を含んでなる、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
前記第二の加工試薬が、ポリペプチド検出試薬を含んでなる、請求項15に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2011−516034(P2011−516034A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−548909(P2010−548909)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/035497
【国際公開番号】WO2009/111316
【国際公開日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(596057893)ノースウエスタン ユニバーシティ (35)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/035497
【国際公開番号】WO2009/111316
【国際公開日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(596057893)ノースウエスタン ユニバーシティ (35)
【Fターム(参考)】
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