説明

生物学的サンプル中のペプチドの改良された同定方法

本発明は、カーゴペプチド-担体タンパク質複合体を含有するサンプルからのカーゴペプチドの分離方法を提供する。該方法は、カーゴペプチド-担体タンパク質複合体を含むサンプルを、上記担体タンパク質に対して選択性の結合性成分と、上記担体タンパク質が上記結合性成分と非共有結合し且つ上記結合性成分を支持体に結合させる条件下に接触させる工程;上記カーゴペプチドを、前記カーゴペプチド-担体タンパク質複合体から、上記担体タンパク質が上記結合性成分に結合したままで解離させる工程;及び、上記カーゴペプチドを収集し、それによって上記カーゴペプチドを上記サンプルから分離する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(関連出願との相互参照)
本発明は、2004年4月27日に出願された米国仮特許出願第60/521,440号の優先権を主張する;該特許出願は、その全体を参照として本明細書に合体させる。
【0002】
(技術背景)
疾患の早期検出は、多くの場合、有効治療における重要な要因である。そのようなものとして、肉体症候発症前の疾患についてのスクリーニングは、乳癌及び新生児代謝性障害のようなある種の疾病においては一般的な診療となってきている。これら及び他のスクリーニング診療が功を奏するようになってきたことを考慮すると、多様なタイプの障害に応用し得る新規で且つ種々のタイプのスクリーニング試験の開発が、医療研究界において進行中である。殆どの診断法及びスクリーニング方法は特異的な生理学的又は生化学的マーカーの検出に依存しているが、最近の研究においては、患者サンプルからの生化学的マーカーのプロフィールを判定することによる疾病検出の有効性が証明されてきている。このことは、患者サンプルに含まれる分子がサンプル収集時の患者身体の生理学的状態を反映することから可能である。
【0003】
ペプチド及びタンパク質バイオマーカーは、生体系の生理学的状態の指標として、従って、診断及び予後マーカーとして出現する。プロテオミクスに基づく技術における最近の開発は、複合体タンパク質サンプルの分析を可能にし、それによって、組織及び生体液のバイオマーカープロファイリングを可能にしている。これらの方法を使用するバイオマーカープロファイリングの重要な局面は、サンプルの調製である。試験標本を分析用に如何に調製するかが、バイオマーカープロフィールの質を決定し得る;何故ならば、これらのペプチドは、生物学的試験標本中に含まれる他のタンパク質と比較して一般に低濃度で存在するからである。更にまた、生物学的試験標本は、一般に、血液中にアルブミンのようなある種のタンパク質を高量に含有する。アルブミンのような高量のタンパク質は、多くの場合、体内のペプチド類と結合して、これらのペプチドに対する担体として機能することが観察されている。高量のタンパク質に結合した特定のペプチドは、患者の生理学的状態の指標であり得、従って、バイオマーカーとして機能し得る。即ち、ペプチド類を含有するサンプルの調製を可能にすることは、バイオマーカーの発見並びにバイオマーカーを使用する臨床検査法の開発を容易にするであろう。
【0004】
(発明の開示)
本発明は、カーゴペプチド-担体タンパク質複合体を含有するサンプルからのカーゴペプチドの単離又は分離(isolation)方法を提供する。該方法は、カーゴペプチド-担体タンパク質複合体を含むサンプルを、該担体タンパク質に対し選択性の結合性成分と、該担体タンパク質が結合性成分と非共有結合し且つ該結合性成分を支持体に結合させる条件下に接触させる工程;上記カーゴペプチドを、上記カーゴペプチド-担体タンパク質複合体から、上記担体タンパク質が上記結合性成分(binding moiety)に結合したままで解離させる工程;及び、上記カーゴペプチドを上記支持体から収集し、それによって上記カーゴペプチドを上記サンプルから分離する工程を含む。
【0005】
また、本発明は、カーゴペプチド-担体タンパク質複合体を含有するサンプルからの複数のカーゴペプチドの分離方法も提供する。該方法は、カーゴペプチド-担体タンパク質複合体を含むサンプルを、少なくとも1種の担体タンパク質に対して選択性の結合性成分と、上記少なくとも1種の担体タンパク質が上記結合性成分と非共有的に結合し且つ上記結合性成分を支持体に結合させる条件下に接触させる工程;上記複数のカーゴペプチドを、上記カーゴペプチド-担体タンパク質複合体から、上記担体タンパク質が上記結合性成分に結合したままで解離させる工程;及び、上記複数のカーゴペプチドを上記支持体から収集し、それによって上記複数のカーゴペプチドを上記サンプルから分離する工程を含む。
本発明は、バイオマーカープロフィールの判定方法を更に提供する。該方法は、カーゴペプチド-担体タンパク質複合体を含むサンプルを、少なくとも1種の担体タンパク質に対し選択性の結合性成分と、上記少なくとも1種の担体タンパク質が上記結合性成分と非共有結合し且つ上記結合性成分を支持体に結合させる条件下に接触させる工程;上記カーゴペプチドを、上記カーゴペプチド-担体タンパク質複合体から、上記担体タンパク質が上記結合性成分に結合したままで解離させる工程;上記カーゴペプチドを上記支持体から収集し、それによって上記カーゴペプチドを上記サンプルから分離する工程;及び、分離したペプチドの質量スペクトルを測定し、該質量スペクトルに示されたペプチドをバイオマーカープロフィールとして同定する工程を含む。該方法は、同定したバイオマーカープロフィールを対照バイオマーカープロフィールと比較する工程を更に含む。
【0006】
本発明は、血清サンプルからの複数のカーゴペプチドの分離方法を提供する。該方法は、カーゴペプチド-担体タンパク質複合体を含む血清サンプルを、少なくとも1種の担体タンパク質に対し選択性のアニオン交換成分と、上記少なくとも1種の担体タンパク質が上記アニオン交換成分に非共有結合し且つ上記アニオン交換成分を支持体に結合させる条件下に接触させる工程;上記カーゴペプチド-担体タンパク質複合体を、上記サンプルのpHよりも高いpHを有する溶出溶液と接触させ、それによって上記複数のカーゴペプチドを上記カーゴペプチド-担体タンパク質複合体から解離させ且つ上記担体タンパク質を上記アニオン交換成分に結合させたままにする工程;及び、上記複数のカーゴペプチドを上記支持体から収集し、それによって上記カーゴペプチド類を上記血清サンプルから分離する工程を含む。
【0007】
本発明の方法の1つの実施態様においては、上記結合性成分は、イオン交換成分である。上記イオン交換成分は、例えば、アニオン交換成分又はカチオン交換成分であり得る。本発明の方法において有用なアニオン交換成分の例としては、ジエチルアミノエチル成分、ジエチルメチルアミノエチル成分、ジエチル-[2-ヒドロキシプロピル]アミノエチル成分、アリルアミン成分及び第四級アンモニウム成分がある。特定の実施態様においては、上記アニオン交換成分には第四級アンモニウム成分がある。本発明の方法において有用なカチオン交換成分の例としては、スルホン酸成分、スルホプロピル成分、メチルスルホネート成分、カルボキシメチル成分及びリン酸塩成分がある。本発明の方法において有用な支持体は、例えば、膜、ゲル、粒子、表面及びマトリックスであり得る。
本発明の方法の1つの実施態様においては、解離は、上記カーゴペプチド-担体タンパク質複合体を溶出溶液と接触させることを含み得る。
アニオン交換成分を使用する特定の実施態様においては、上記溶出溶液は、上記サンプルのpHよりも高いpHを有し得る。そのような溶出溶液はアルカリ種を含有し得る。カチオン交換成分を使用するもう1つの特定の実施態様においては、上記溶出溶液は、上記サンプルのpHよりも低いpHを有し得る。そのような溶出溶液は、酸種を含有し得る。
カーゴペプチドを分離する本発明方法は、血清タンパク質である担体タンパク質を含有するサンプルを使用することを含み得る。担体タンパク質のさらなる例としては、血清アルブミン、フィブロネクチン、トランスフェリン、イムノグロブリン、タム・ホースフォール糖タンパク質、フィブリノゲン、アルファ2-マクログロビン、補体タンパク質、セルピン、ハプトグロビン、アルファ1-酸糖タンパク質及びセルロプラスミンがある。
種々のサンプルを、本発明の方法において使用し得る。1つの実施態様においては、上記サンプルは、ヒト個々人から取得する。他の実施態様においては、上記サンプルは、体液、血漿又は血清を含み得る。本発明方法において使用するサンプルは、必要に応じて、サンプル負荷溶液を含み得る。
【0008】
本発明は、本発明方法を実施するのに有用な市販用パッケージを提供する。1つの実施態様においては、上記市販用パッケージは、担体タンパク質に対し選択性の結合性成分を含むイオン交換支持体;及び、カーゴペプチド-担体タンパク質複合体からカーゴペプチドを解離させ且つ上記担体タンパク質と上記結合性成分との結合を維持するように適応させた溶出溶液を含む。上記イオン交換支持体は、例えば、第四級アンモニウム成分アニオン交換支持体のようなアニオン交換支持体であり得る。もう1つの実施態様においては、上記イオン交換支持体は、カチオン交換支持体である。
また、本発明によって提供する市販パッケージは、溶出溶液も含み得る。アニオン交換物質を使用する1つの実施態様においては、上記溶出溶液は、アルカリ性物質を含有する。カチオン交換物質を使用するする1つの実施態様においては、上記溶出溶液は、酸性物質を含有する。
【0009】
更に、本発明によって提供する市販用パッケージは、サンプル負荷溶液を含み得る。1つの実施態様においては、上記溶出溶液はサンプル負荷溶液のpHよりも高いpHを有し、上記パッケージはアニオン交換支持体を含む。もう1つの実施態様においては、上記溶出溶液はサンプル負荷溶液のpHよりも低いpHを有し、上記パッケージはカチオン交換支持体を含む。
1つの実施態様においては、本発明は、アニオン交換支持体;サンプル負荷溶液;及び、サンプル負荷溶液のpHよりも高いpHを有し、カーゴペプチド-担体タンパク質複合体からペプチドを解離させ且つ上記担体タンパク質と上記結合性成分との結合を維持し得る溶出溶液を含む市販用パッケージを提供する。
【0010】
1つの実施態様においては、本発明は、カチオン交換支持体;サンプル負荷溶液;サンプル負荷溶液のpHよりも低いpHを有し、カーゴペプチド-担体タンパク質複合体からペプチドを解離させ且つ上記担体タンパク質と上記結合性成分との結合を維持し得る溶出溶液を含む市販用パッケージを提供する。
本発明の市販用パッケージは、使用のための使用説明書を更に含む。
1つの実施態様においては、本発明は、第四級アンモニウムアニオン交換支持体と約9〜11のpHを有する溶出溶液を含む包括的な市販パッケージを提供する。特定の実施態様においては、上記溶出溶液は、約10のpHを有する。
【0011】
(発明を実施するための最良の形態)
本明細書において説明する技術は、ペプチド類が担体タンパク質と結合したカーゴとして存在しているタンパク質複合体からペプチド類を分離するための方法及び市販用パッケージに関する。そのような複合体は、例えば、個々人の体液及び組織のような生物学的サンプル中に存在し得る。そのような複合体からのカーゴペプチド類の分離は、生物学的サンプルの分析において有用であり得る。例えば、カーゴペプチド-担体タンパク質複合体に含まれるカーゴペプチドが病状を指標し得るバイオマーカーとして機能し得ることは、既に説明されている(米国特許出願第2004/0009534号)。本明細書において説明する方法に従って分離したカーゴペプチドは、法医学的、診断及び予後のバイオマーカーアッセイ法の開発に応用し得る新規のバイオマーカー類及びバイオマーカープロフィールの同定のような種々の目的において使用し得る。
【0012】
後の実施例において説明するように、アニオン交換媒体と非定型的な溶出溶液との予想外の組合せを使用して、カーゴペプチドをカーゴペプチド-担体タンパク質複合体から分離し得ることを見出した。更に詳細には、カーゴペプチドを、血清サンプルをアニオン交換体に約8のpHで適用し、水酸化アンモニウムを含有するそれより高いpHの溶出溶液を使用してカーゴペプチドを溶出させることにより、血清から分離し得ることを見出した。一般的には、サンプル中に含まれるカーゴペプチド-担体タンパク質複合体は、アニオン交換体に、上記担体タンパク質の上記交換体への結合によって結合するようになっていた。血清サンプル中の他の分子は、上記アニオン交換体から洗浄する。上記高pH溶出溶液の適用時に、カーゴペプチド類は、上記アニオン交換体から選択的に溶出し、該交換体に結合した担体タンパク質を残存させる。カーゴペプチド-担体タンパク質複合体よりはむしろカーゴペプチドを特異的に溶出させ得たことは、高pHではアニオン交換体のタンパク質結合能力が低いことから、予想外であった。上記タンパク質がアニオン交換体に結合したままであるという予想外の結果は、低pH溶出が上記アニオン交換体からの担体タンパク質の放出をもたらしたときに確認した。
【0013】
本明細書において説明する方法は、担体タンパク質(例えば、アルブミン)を化学的解離によってカーゴペプチドから先ず解離させ、次いで、サイズ分画クロマトグラフィーによってカーゴペプチドから分離するような既知のカーゴペプチドの調製手法と対照をなす(例えば、Mehta et al. (2003〜2004) Dis Markers 19:1〜10;Liotta et al. (2003) Nature 425:905;及び、Chertov et al. (2004) Proteomics 4(4):1195-203を参照されたい)。更に、本明細書において説明する手法は、血清アルブミンを、担体タンパク質溶出前に、不溶性支持体に共有結合させる既知の方法とも対照をなす(例えば、米国特許出願第2004/0009534号参照)。
【0014】
1つの実施態様においては、本発明は、血清サンプルからのカーゴペプチドの分離方法を提供する。アルブミンのような高量の担体タンパク質と複合体化したカーゴペプチドを含有する血清サンプルを希釈し、約pH7〜8を有するサンプル負荷溶液中の第四級アンモニウムアニオン交換体に適用する。上記担体タンパク質、とりわけ、アルブミンは、これらの条件下に、上記アニオン交換体に結合する。即ち、上記アニオン交換体は、カーゴペプチド-担体タンパク質複合体並びに遊離の担体タンパク質を捕捉する。上記アニオン交換体をサンプル負荷溶液で洗浄して、未結合血清タンパク質及びペプチドを除去する。この段階において、カーゴペプチドを、1%水酸化アンモニウムを含有する溶出溶液を適用させるによってカーゴペプチド-担体タンパク質複合体から溶出する。この処理は、カーゴペプチドの担体タンパク質からの分離及び上記アニオン交換体上での担体タンパク質の保持をもたらす。その後、得られた分離ペプチドを必要に応じて濃縮させ、質量分光法によって分析する。即ち、この実施態様は、担体タンパク質を支持体に共有結合させることも又は解離させたカーゴペプチド-担体タンパク質複合体を含有するサンプルからカーゴペプチドを精製することも何ら必要としないカーゴペプチドの分離方法を提供する。
【0015】
本発明の1つの実施態様は、カーゴペプチド-担体タンパク質複合体を含有するサンプルからのカーゴペプチドの分離方法を提供する。該方法は、カーゴペプチド-担体タンパク質複合体を含有するサンプルを、上記担体タンパク質に対して選択性の結合性成分と、上記担体タンパク質が上記結合性成分と非共有結合し且つ上記結合性成分を支持体に結合させる条件下に接触させる工程;上記カーゴペプチドを、上記カーゴペプチド-担体タンパク質複合体から、上記担体タンパク質が上記結合性成分に結合したままで解離させる工程;及び、上記カーゴペプチドを収集し、それによってカーゴペプチドを上記サンプルから分離する工程を含む。
【0016】
同様に、本発明は、カーゴペプチド-担体タンパク質複合体を含有するサンプルからの複数のカーゴペプチドの分離方法を提供する。該方法は、カーゴペプチド-担体タンパク質複合体を含有するサンプルを、少なくとも1種の担体タンパク質に対して選択性の結合性成分と、上記少なくとも1種の担体タンパク質が上記結合性成分に非共有結合し且つ上記結合性成分を支持体に結合する条件下に接触させる工程;上記複数のカーゴペプチドを、上記カーゴペプチド-担体タンパク質複合体から、上記担体タンパク質が上記結合性成分に結合したままで解離させる工程;及び、上記複数のカーゴペプチドを収集し、それによって上記複数のカーゴペプチドを上記サンプルから分離する工程を含む。上記結合性成分は、2種以上の担体タンパク質、5種以上の担体タンパク質、10種以上の担体タンパク質、或いは当該方法特定の用途において有用と判断したときの任意の数の担体タンパク質に対して選択性であり得る。例えば、1種の担体タンパク質に対して選択性の結合性成分は、アルブミンバイオマーカープロフィールのような比較的高特異性のバイオマーカープロフィールについてのペプチドサンプルを取得する場合に使用し得る。また、複数の担体タンパク質に対して選択性の結合性成分は、全血清バイオマーカープロフィールのような比較的広いバイオマーカープロフィールについてのペプチドサンプルを取得する場合に使用し得る。
【0017】
本発明の方法は、1種以上のカーゴペプチドを分離するのに使用し得る。本明細書において使用するとき、カーゴペプチドに関して使用するときの用語“分離”とは、カーゴペプチドをサンプル中の他の分子、物質又は材料から分離してカーゴペプチド(1種以上)を実質的に純粋形のような精製形で取得する作用を意味する。精製なる用語は、絶対純度を必要とするものではなく、むしろ相対的用語を意図する。例えば、精製なる用語は、質量分析計においてペプチドシグナルを発生させるに十分な純度を有するペプチドサンプルを称し得る。本明細書において使用するとき、用語“カーゴペプチド”は、担体タンパク質に非共有結合しているペプチドを意味する。カーゴペプチドの担体タンパク質への結合は、動物の体液中で一般に生じる。従って、カーゴペプチドは、典型的に、細胞、体液又は組織中の担体タンパク質に結合している天然産生のタンパク質又はその1部である。しかしながら、カーゴペプチドは、例えば、薬物、トレーサー、標的分子、診断用薬等として、個々人、試験生物体、組織又は細胞に導入された人工タンパク質又は他の巨大分子でもあり得る。
【0018】
本発明の方法を使用し分離する特定のカーゴペプチド(1種以上)は、使用するサンプルのタイプ及び試験の目的による。個々人からのサンプル中に存在するカーゴペプチドのタイプ及び量は、特定の健康状態、遺伝子性向、又は身体の他の生理状態を指標し得る。従って、サンプル中に含まれるカーゴペプチドの量又はカーゴペプチド類のプロフィールの特定は、個々人の生理状態を特性決定するのに使用し得る。そのように、カーゴペプチドプロフィールは、特性決定、法医学的、診断又は予後診断の手段として機能し得る。従って、本発明の方法に従って調製したカーゴペプチドは、例えば、質量分析、免疫分析、ペプチドシークエンシング、ゲル電気泳動、クロマトグラフィー等のような任意の種々の方法によって分析することができる。
【0019】
種々のサンプルを、本発明の方法を実施する場合に使用し得る。本明細書において使用するとき、用語“サンプル”とは、1種以上のカーゴペプチド-担体タンパク質複合体を含む任意の生体液、細胞、組織又はこれらの画分を意味する。サンプルは、例えば、個々人から取得した試験標本であり得、或いはそのような試験標本に由来し得る。例えば、サンプルは、体液、生検によって得られた組織切片、又は組織培養物中にある又は組織培養に適応させた細胞であり得る。そのようなサンプルは、血液及びリンパ液のようなカーゴペプチド-担体タンパク質複合体を含有する循環性体液、並びに髄液及び乳液のような組織又は臓器と結合したままの液体であり得る。サンプルの非限定的な例としては、痰サンプル、尿サンプル、リンパ液サンプル、脳脊髄液サンプル、乳サンプル、眼液サンプル、精液サンプル、腟分泌サンプル、羊水サンプル、滑液サンプル、鼻分泌サンプル、胆汁サンプル、涙サンプル、乳頭吸引物、腹水液サンプル、血液サンプルがある。特定の実施態様においては、本発明の方法において使用するサンプルは、体液である。
【0020】
サンプルは、必要に応じて、特定の細胞タイプを含有する画分に更に分画し得る。例えば、血液サンプルは、血清として又は白血細胞(白血球)のような特定タイプの血液細胞を含有する画分として分画し得る。必要に応じて、サンプルは、組織と液サンプルの組合せ等のような個々人からのサンプルを組合せであり得る。1つの実施態様においては、本発明の方法において使用するサンプルは、血清サンプルである。もう1つの実施態様においては、本発明の方法において使用するサンプルは、血漿サンプルである。
【0021】
本発明の方法において使用するに当っては、サンプルは、カーゴペプチド-担体タンパク質複合体を保存する又は安定化させるために加工し得る。サンプル中の分子の完全性を保持する方法は、当業者にとって周知である。そのような方法は、適切な緩衝液、及び/又はサンプル中の分子の変化を維持する又は最低限にするヌクレアーゼインヒビター、プロテアーゼインヒビター及びホスファターゼインヒビターのような抑制剤の使用を含む。そのような抑制剤としては、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、エチレングリコールビス(P-アミノエチルエーテル)N,N,Nl,Nl-テトラ酢酸(EGTA)のようなキレート化剤;フェニルメチルスルホニルフルオライド(PMSF)、アプロチニン、ロイペプチン、アンチパイン等のようなプロテアーゼインヒビター;及び、リン酸塩、フッ化ナトリウム、バナジウム酸塩等のようなホスファターゼインヒビターがある。また、サンプルは、干渉性物質の存在を排除又は最小限にするためにも加工し得る。
【0022】
細胞下分画法、又はイオン交換、疎水及び逆相、サイズ除外、アフィニティー、疎水性荷電誘発クロマトグラフィー等のようなクロマトグラフィー法を含む、液体サンプル又は細胞抽出物の各種分別方法は、当業者にとって周知である (Scopes, Protein Purification: Principles and Practice, third edition, Springer-Verlag, New York(1993);Burton and Harding, J. Chromatoqr. A 814:71-81(1998))。1つの例として、個々人からの血清サンプルは、必要に応じて、分画して白血球を分離するか、或いは、例えば、マクロファージ、T細胞、B細胞、好酸球等として下位分画してもよい。
サンプルは、例えば、ヒト;イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ及びヤギのような家畜動物;ラット、マウス、モルモット及びウサギのような研究動物;植物、真菌類及び原核生物から取得し得る。1つの実施態様においては、本発明の方法において使用するサンプルは、ヒト個々人から得られる。
【0023】
本発明の方法において有用なサンプルは、カーゴペプチドと担体タンパク質間の結合が直接的又は間接的であるカーゴペプチド-担体タンパク質複合体を含有し得る。カーゴペプチドと担体タンパク質間の結合は、例えば、カーゴペプチドが、担体タンパク質に結合している分子(1個以上)と結合している場合に、間接的であり得る。間接相互作用の場合、カーゴペプチドと結合する分子は、カーゴペプチドを解離させるのに選定した条件に応じて、カーゴペプチドと分離し得或いは担体タンパク質に結合させたままであり得る。
本発明の方法において使用するサンプルは、少なくとも1つのタイプの担体タンパク質を含有する。本明細書において使用するとき、用語“担体タンパク質”とは、生物学的試験標本中のカーゴペプチドに結合するポリペプチドを意味する。サンプル中に存在する特定の担体タンパク質は、サンプルの起源に依存する;何故ならば、種々の生体液及び組織は、種々の担体タンパク質及び種々の量の特異的担体タンパク質を含有するからである。担体タンパク質の非限定的な例としては、血清タンパク質及び尿タンパク質がある。担体タンパク質の例としては、アルブミン、フィブロネクチン、トランスフェリン、イムノグロブリン、タム・ホースフォール糖タンパク質、フィブリノゲン、アルファ2-マクログロブリン、補体タンパク質、セルピン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、アルファ1-酸糖タンパク質、アルファ1-アンチトリプシン、アルファ-フェトプロテイン、セルロプラスミン等がある。1つの実施態様においては、担体タンパク質は、血清タンパク質である。
【0024】
カーゴペプチドを分離する本発明の方法は、カーゴペプチド-担体タンパク質複合体の担体タンパク質部分を結合性成分に非共有結合させることを含む。本明細書において使用するとき、担体タンパク質に関連して使用する場合の用語“結合性成分”とは、担体タンパク質が非共有的に且つ選択的に結合する分子構造体を意味する。担体タンパク質に対して選択性の結合性成分は、例えば、小分子又はその1部或いは巨大分子又はその1部であり得る。小分子の例としては、染料;薬物;リガンド;及びイオン交換成分がある。本明細書において使用するとき、用語“イオン交換成分”とは、担体タンパク質に対して選択性の荷電小分子結合性成分を意味する。イオン交換体上に存在している成分のようなイオン交換成分の例は、下記で説明する。巨大分子の例としては、天然産生及び非天然産生形の核酸、タンパク質、炭水化物;タンパク質-核酸;及び他の人工巨大分子がある。
【0025】
担体タンパク質に対して選択性の結合性成分は、一般的又は特異的結合タンパク質であり得る。一般的な結合性成分は、サンプル中に含まれる担体タンパク質の1種以上の種に対して選択的に結合する。一般的結合性成分に関連して使用するときの用語“選択的結合”とは、非担体タンパク質が結合性成分に実質的に結合しないことを意味する。1例としては、一般的結合性成分は、特定pHでの担体タンパク質の正味電荷のような特定の物理的特性に特徴を有する任意の種々の担体タンパク質に結合するように選定し得る。即ち、1つの実施態様においては、担体タンパク質に対して選択性の結合性成分は、2以上のタイプの担体タンパク質に結合し得る。一般的結合性成分の例は、イオン交換成分である。1つの実施態様においては、本発明の方法は、イオン交換成分を使用して実施する。1つの特定の実施態様においては、上記イオン交換成分は、アニオン交換成分である。アニオン交換成分の例は、下記で説明する。
【0026】
特異的結合性成分は、特定の担体タンパク質に選択的に結合し得る。特異的結合性成分に関連して使用するときの用語“選択的結合”とは、定義するタンパク質以外のタンパク質が結合性成分に実質的に結合しないことを意味する。特異的結合性成分の例は、アルブミンに対して特異性の坑-アルブミン抗体のような、特定の担体タンパク質に対して特異性の抗体である。特異的結合性成分のさらなる例は、プロテインA又はプロテインGであり、各々がイムノグロブリン担体タンパク質の特定の種に結合する。そのような結合は、例えば、当該技術において既知の任意の種々の化学架橋剤を使用して好都合に実施する。
【0027】
必要に応じて、担体タンパク質に対して選択性の2種以上の結合性成分を、本発明の方法において使用し得る。例としては、担体タンパク質の複数の種に対して特異性の複数の抗体を使用し得、アニオン交換成分の混合物を使用し得る。
担体タンパク質に対して選択性の結合性成分の特定例は、イオン交換成分である。アニオン交換成分は、正荷電性であり、負荷電ポリペプチドに対して選択性である。カチオン交換成分は、負荷電性であり、正荷電ポリペプチドに対して選択性である。サンプル中に含まれる担体タンパク質の荷電特性に基づき、適切なイオン交換成分は、当業者であれば選定し得るであろう。アニオン交換成分の非限定的な例としては、ジエチルアミノエチル成分、ジエチルメチルアミノエチル成分、ジエチル-[2-ヒドロキシプロピル]アミノエチル成分、アリルアミン成分及び第四級アンモニウム成分がある。カチオン交換成分の非限定的な例としては、スルホン酸成分、スルホプロピル成分、メチルスルホン酸塩成分、カルボキシメチル成分及びリン酸塩成分がある。
【0028】
本発明の方法において有用なイオン交換成分は、必要に応じて、ポリマー鎖のようなリンカーを含み得る。ポリマー鎖に結合させ、このポリマー鎖を引き続き支持体に結合させたイオン交換成分は、当該技術において公知であり、触手(tentacle)イオン交換体とも称される。1つの実施態様においては、本発明の方法は、上述したアニオン交換成分を使用して実施する。特定の実施態様においては、上記アニオン交換成分は、第四級アンモニウム成分である。さらなる実施態様においては、本発明の方法は、上述したカチオン交換成分を使用して実施する。
【0029】
本発明の方法において使用する結合性成分は、一般に、支持体に結合させる。本明細書において使用するとき、用語“支持体”とは、担体タンパク質に対して選択性の結合性成分を結合させる或いは担体タンパク質に対して選択性の結合性成分を含むように官能化させ得る固形又は半固形の物質を意味する。支持体は、例えば、天然又は合成ポリマー、樹脂又はシリケートであり得る。適切な支持体は、当該技術において公知であり、具体的には、Sepharoseとして商業的に入手し得るようなアガロース;例えば、カルボキシメチルセルロースのようなセルロース;Sephadexとして商業的に入手し得るようなデキストラン;ポリアクリルアミド;ポリスチレン;ポリエチレングリコール;樹脂;シリケート;ジビニルベンゼン;メタクリレート;ポリメタクリレート;ガラス;セラミック;紙;金属類;メタロイド類;ポリアクリロイルモルフォリド;ポリアミド;ポリ(テトラフルオロエチレン);ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリ(4-メチルブテン);ポリ(エチレンテレフタレート)、レーヨン;ナイロン;ポリ(ビニルブチレート);ポリビニリデンジフルオライド(PVDF);シリコーン類;ポリホルムアルデヒド;酢酸セルロース;ニトロセルロース等を含む。
【0030】
本発明の方法において有用な“支持体”は、種々の物理的形状を有し得、例えば、膜;チューブ、カラム又は容器のような表面;中空又は固形ビーズ、微細粒子、ゲル、マトリックスがあり得る。1つの実施態様においては、本発明の方法は、膜である支持体を使用して実施する。もう1つの実施態様においては、本発明の方法は、粒子である支持体を使用して実施する。
本発明の方法の1つの応用においては、結合性成分を、一方で支持体に結合させている担体タンパク質に結合させてもよい。また、支持体が結合性成分に選択的に結合し得る限り、支持体は、結合性成分を担体タンパク質に結合させる間に又は結合させた後に、結合させてもよい。1例としては、抗体である結合性成分をサンプル中に含まれる担体タンパク質と接触させ、同時に又は順次に、プロテインA、G又はその混合物に接合させたビーズのような選択性支持体に結合させ得る。従って、結合性成分を結合させる支持体は、本発明の方法を実施しながら任意の好都合な時点で付与し得る。
【0031】
結合性成分は、結合性成分と相互作用して結合性成分を支持体に結合させると共に、担体タンパク質に結合するのに利用し得る結合性成分を残存させ得る種々の周知の官能基を使用して、支持体に結合させ得る。官能基の具体的な例としては、アルキル、Si-OH、カルボキシ、カルボニル、ヒドロキシル、アミド、アミン、アミノ、エーテル、エステル、エポキシド、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、メルカプト基、ジスルフィド、オキシド、ジアゾ、ヨウ素、スルホン基又は化学反応性もしくは潜在的化学反応性を有する同様な基がある。そのような官能基は、反応して結合性成分を支持体に結合させ得る。
【0032】
担体タンパク質に対して選択性の結合性成分は、一般に、典型的なタンパク質相互作用アッセイ条件下で担体タンパク質に結合する。そのような条件は、当業者にとって周知であり、一般に、おおよその生理食塩レベル、緩衝剤、及び4〜37℃範囲の温度を含む。選定した結合性成分に対して、サンプルは、特定のpH又は塩濃度のような特定化した特性を有する“サンプル負荷溶液”中に入れるか又は該溶液を生成させるように調整する。従って、1つの実施態様においては、本発明の方法は、サンプル負荷溶液を含むサンプルの使用を含む。そのようなサンプル負荷溶液は、サンプルを特定化したpHに調整及び/又は維持するための緩衝液を含み得る。緩衝液の非限定的な例としては、ACES (N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸)、ADA (N-(2-アセトアミド)イミノジ酢酸)、BES (N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸)、ビシン (N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン)、ビス-トリス、カコジル酸塩、CAPS、CHES (2-(N-シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸)、グリシルグリシン、グリシンアミドHCl、HEPES (4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-エタンスルホン酸)、
【0033】
HEPPS (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N'-(3-プロパンスルホン酸)、イミダゾール、MES (2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)、MOPS (3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、PIPES (ピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸)、POPSO (ピペラジン-N,N'-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、TAPSO (3-[N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、TES (N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸)、トリシン、トリス、重炭酸塩、リン酸塩及びホウ酸塩がある。緩衝液は、一般に、担体タンパク質をその結合性成分に結合させる所望の条件に応じて、1〜500ミリモル範囲の濃度で使用する。イオン交換媒体に関連して下記で説明するように、緩衝液は、選定した緩衝液が緩衝能力を維持する限り、5mM以下のような低イオン力価で使用するのが望ましい。
【0034】
下記の実施例において説明するように、サンプル負荷溶液の例は、20mM重炭酸ナトリウム緩衝液、pH8.3である。サンプル負荷溶液の他の例としては、20mMイミダゾール緩衝液、pH7.2、及び20mMトリス;リン酸緩衝生理食塩水、pH7.2がある。アニオン交換体と一緒の使用においては、約5〜10範囲のpHを有する任意の緩衝液を使用する。カチオン交換体と一緒の使用においては、約2〜7のpH範囲を有する任意の緩衝液を使用し得る。一般に、サンプル負荷溶液は、サンプルの元の容量の0.01〜1000倍の量で、又は担体タンパク質を該担体タンパク質に対して選択性の結合性成分に結合させるのに適する特性を有するサンプルを得る任意の他の量で添加し得る。
【0035】
1つの実施態様においては、カーゴペプチド-担体タンパク質複合体を含有するサンプルは、イオン交換結合性成分と接触させる。イオン交換条件の選定については、当業者であれば、適切なイオン交換成分は、興味ある担体タンパク質(1種以上)の電荷とは反対の電荷を一般に有することを理解しされたい。例えば、イムノグロブリンは、全体的に正電荷を一般に有し、負荷電官能基を含有するカチオン交換体と良好に結合する。対照的に、アルブミンは、全体的に負電荷を一般に有し、アニオン交換体に良好に結合する。この相互作用はイオン性であるので、結合は、低イオン条件下で生じる。一般に、カーゴペプチド-担体タンパク質複合体を含有するサンプルは、アニオン交換結合性成分と約5〜10のpHで接触させ得る。また、カーゴペプチド-担体タンパク質複合体を含有するサンプルは、カチオン交換結合性成分と約2〜7のpHで接触させ得る。しかしながら、特定の結合性成分に対する適切なpH条件の確認は、当業者であれば、経験的になし得るであろう。
【0036】
任意の通常の緩衝液(典型的には0.5mM〜500mMの濃度)を、イオン交換成分を使用する場合に使用し得る。一般に、正荷電緩衝イオンはアニオン交換成分に対して、負荷電緩衝イオンはカチオン交換成分に対して使用する。リン酸緩衝液は、一般に、双方の交換体タイプにおいて使用する。興味あるタンパク質の結合を可能にする最高塩濃度は、出発条件として一般に使用する。
担体タンパク質の該担体タンパク質に対して選択性の結合性成分との接触は、第1容器からサンプルをピペット採取し、該サンプルを第2容器(第2容器は、1以上の結合性成分を含む支持体を有する)中に沈着させるような、これら成分間の接触をもたらす任意の種々の通常の方法によりなし得る。
【0037】
必要に応じて、平衡溶液を使用して、担体タンパク質と該担体タンパク質に対して選択性の結合性成分との結合を可能にする適切な条件を得ることができる。平衡溶液は、必要に応じて、担体タンパク質が上記結合性成分に結合するのに先立って支持体及び結合した結合性成分を洗浄するのにも使用し得る。更に、平衡溶液は、担体タンパク質の結合後の支持体及び結合担体タンパク質から未結合物質を洗い流すのにも使用し得る。平衡溶液は、一般に、サンプルと同じ又は同様なpH、並びに同じ又は同様な塩濃度及び緩衝液力価を有し得る。即ち、例えば、200mM重炭酸ナトリウム、pH8.3を含むサンプル負荷溶液をサンプルに添加して、20mM重炭酸ナトリウムのサンプル中の負荷緩衝液最終濃度を達成し得、相応する平衡溶液は20mM重炭酸ナトリウム、pH8.3を含み得る。サンプル負荷溶液と平衡溶液の他の組合せは、当業者であれば、認識していることである。更に、2種以上の平衡溶液を調製して、結合性成分を含む支持体を洗浄するのに使用し得る。例えば、サンプル中のpH、塩及び緩衝剤濃度と同じ又は同様なpH、塩及び緩衝剤濃度を有する第1の平衡溶液を調製して、支持体及び結合性成分を洗浄するのに使用し、溶出溶液と同様なpH、塩及び緩衝剤濃度を有する第2の平衡溶液を調製して、支持体及び担体タンパク質を結合する前の結合性成分を洗浄するのに使用する。
【0038】
担体タンパク質を結合性成分に結合させることは、サンプルが結合性成分と十分な時間接触したままで担体タンパク質の結合性成分への結合達成するのを可能にすることを含む。当業者により認識されているように、結合に必要な時間は、温度、塩濃度及びpHのような変動要因を含む、結合反応が生じる条件に依存する。結合のための適切な条件及びインキュベーション時間は、周知の方法を使用して決定し得る。典型的な適切時間は、約1秒〜約24時間の範囲である。
【0039】
一般に、イオン交換体のような一般的結合性成分への結合を含む反応は、上記交換体の独自性と所望の溶出条件によって決まる条件下で実施する。とりわけ、条件は、イオン交換体の独自性に依存する。そのような実施態様においては、サンプルのpHは、サンプルのpHを調整し且つ各反応物を接触させ担体タンパク質と担体タンパク質結合性成分とを反応せしめながら所望pHに維持するように選定したサンプル負荷溶液を添加することによって調整し得る。
結合性成分を含む支持体は、必要に応じて、サンプルと同じ又は同様なpH及び塩濃度を有する緩衝液のような溶液中で平衡させて、担体タンパク質を担体タンパク質に対して選択性の結合性成分に結合させるための所望条件を発生させるようにし得る。
【0040】
本発明の方法は、担体タンパク質が結合性成分に結合したままであるようにして、カーゴペプチドをカーゴペプチド-担体タンパク質複合体から解離させることを含む。本明細書において使用するとき、カーゴペプチドに関連して使用する場合の用語“解離”とは、カーゴペプチドと担体タンパク質間の分子間結合を破壊することを意味する。そのような分子間結合は、例えば、水素結合、双極子間結合、疎水性相互作用等であり得る。解離は、カーゴペプチド-担体タンパク質複合体を1以上の物理的又は化学的条件に供することにより達成し得る。カーゴペプチドを解離させる物理的条件の例としては、担体タンパク質とその結合性成分との結合を維持しながらの、カーゴペプチドと担体タンパク質間の結合を破壊するのに十分な熱、例えば、37℃よりも高い熱の適用及び、レーザーパルスのような電磁エネルギーの適用がある。カーゴペプチドを解離させる化学的条件の例としては、担体タンパク質とその結合性成分との結合を維持しながらの、上記カーゴペプチドと担体タンパク質間の結合を破壊するのに十分な化学変性剤の適用がある。
【0041】
化学変性剤の非限定的な例としては、カオトロピック剤、高塩溶液、高pH溶液(例えばpH>9)、低pH溶液(例えばpH<5)及び有機溶媒がある。アニオン交換成分を使用する1つの実施態様においては、高pH溶出溶液を、カーゴペプチドをカーゴペプチド-担体タンパク質複合体から解離させるのに使用する。溶出溶液のpHは、例えば、約pH 9より大きい、約pH 9〜14、約pH 10〜14、約pH 11〜14、約pH 12〜14、約pH 13〜14及び約pH 14であり得る。カチオン交換成分を使用するもう1つの実施態様においては、低pH溶出溶液を、カーゴペプチドをカーゴペプチド-担体タンパク質複合体から解離させるのに使用する。溶出溶液のpHは、例えば、約pH 3〜1、約pH 2及び約pH 1のような約pH 3未満であり得る。
【0042】
カーゴペプチドを分離する本発明方法の1つの実施態様においては、解離は、カーゴペプチド-担体タンパク質複合体を、化学変性剤を含有する溶出溶液と接触させることによって達成する。溶出溶液中に含有させる特定の化学変性剤は、使用する結合性成分の化学特性に依存する。例えば、アニオン交換結合性成分を使用する場合、溶出溶液は、サンプルを結合性成分と接触させるときに使用するpHと比較して高pHを有する。従って、1つの実施態様においては、本発明方法は、サンプルのpHよりも高いpHを有する溶出溶液を使用して実施する。
アニオン交換体と一緒の使用に適する溶出溶液は、例えば、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、トリエチルアンモニウム塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム又はその混合物のようなアルカリ種を含有し得る。特定の溶出液は、約0.05〜20%の水酸化アンモニウムを含有する。下記の実施例において説明する溶出溶液は、約1%の水酸化アンモニウムを含有している。
【0043】
1つの実施態様においては、本発明方法は、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、トリエチルアンモニウム塩、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムから選ばれる種のようなアルカリ種を含有する溶出溶液を使用して実施する。
支持体は、担体タンパク質からの分離カーゴペプチドを容易に分別する手段を提供し、上述したように、例えば、膜;チューブ、カラム又は容器のような表面;中空又は固形ビーズ;微粒子;ゲル;マトリックスであり得る種々の物理的形態を有し得る。そのように、カーゴペプチドは、選定した支持体に応じて種々の手段を使用して、支持体から分離し得る。カーゴペプチドを収集する典型的な手法には、カーゴペプチドを、支持体を含有する反応混合物から分離することを含む。そのような分離は、解離カーゴペプチド含有液相を、担体タンパク質を結合させている固形又は半固形支持体相から離脱させることを含み得る。1つの例として、サンプルを膜である支持体と接触させる場合は、サンプルを膜に適用し、解離したカーゴペプチドは、遠心力、圧力の適用、真空の適用等によって膜から分離し得る。
【0044】
もう1つの例としては、サンプルを粒子又はゲルである支持体と接触させる場合、サンプルを充填カラム方式の材料に適用し、解離したカーゴペプチドは、同様にして遠心力、圧力の適用、真空の適用等によりカラムから分離し得る。さらなる例としては、サンプルを磁気粒子である支持体と接触させる場合、サンプルを溶液中の材料に適用し、解離したカーゴペプチドは、材料の磁力除去によって分離し得る。当業者であれば、標準の実験室手順を使用して、本明細書で説明する方法をあらゆる種類の支持体に対して適用することが可能であろう。
【0045】
本明細書において説明するようにして分離したカーゴペプチドは、サンプル中に存在するバイオマーカーの数及び/又は量を測定するのに有用であり得る。従って、本発明は、バイオマーカープロフィールの同定方法を提供する。該方法は、カーゴペプチド-担体タンパク質複合体を含むサンプルを、少なくとも1種の担体タンパク質に対して選択性の結合性成分と、上記少なくとも1種の担体タンパク質が上記結合性成分に非共有的に結合し且つ上記結合性成分を支持体に結合させる条件下に接触させる工程;上記カーゴペプチドを、上記カーゴペプチド-担体タンパク質複合体から、上記担体タンパク質が上記結合性成分に結合したままで解離させる工程;上記カーゴペプチドを収集し、それによって上記カーゴペプチドを上記サンプルから分離する工程;及び、分離したペプチド類の質量スペクトルを測定し、該質量スペクトルで示されたペプチドをバイオマーカープロフィールとして同定する工程を含む。そのように同定したバイオマーカープロフィールは、正常又は疾病健康状態に相応するプロフィールのような対照バイオマーカープロフィールと比較し得る。そのような比較により、数ある用途のうちで、個々人が疾病状態に影響を受けている可能性を診断又は予見することが可能であり得る。
【0046】
本発明は、カーゴペプチドを分離するための市販用パッケージを提供する。該パッケージは、担体タンパク質に対して選択性の結合性成分を含むイオン交換支持体;及び、カーゴペプチドをカーゴペプチド-担体タンパク質複合体から解離させ且つ担体タンパク質と上記結合性成分との結合を維持するように適応させた溶出溶液を含む。
上記パッケージは、担体タンパク質を該担体タンパク質に対して選択性の結合性成分に結合させるのを可能にするように選定したサンプル負荷溶液を更に含み得る。また必要に応じて、上記パッケージは、カーゴペプチドを分離するための市販用パッケージ成分の使用についての使用説明書も含み得る。必要に応じて、平衡溶液も含ませる。
【0047】
市販用パッケージの1つの実施態様においては、イオン交換支持体を提供する。典型的には、イオン交換支持体は、具体的には、膜、ビーズ、粒状固形物、ゲル及びマトリックスのような形で提供する。1つの実施態様においては、上記イオン交換支持体は、結合ペプチドを有する担体タンパク質を結合させるのに適するアニオン交換成分を含む材料のようなアニオン交換支持体である。イオン交換成分の例としては、ジエチルアミノエチル成分、ジエチルメチルアミノエチル成分、ジエチル-[2-ヒドロキシプロピル]アミノエチル成分、アリルアミン成分及び第四級アンモニウム成分がある。特定の実施態様においては、上記市販用パッケージは、第四級アンモニウム成分を含有するアニオン交換支持体を含む。
【0048】
さらなる実施態様においては、供給するサンプル負荷溶液は、包括的に5〜11範囲のpHを有し、供給する溶出溶液は、上記サンプル負荷溶液のpHよりも高いpHを有する。更にもう1つの実施態様においては、供給するサンプル負荷溶液は、包括的には2〜7範囲のpHを有し、供給する溶出溶液は、上記サンプル負荷溶液のpHよりも低いpHを有する。適切なサンプル負荷溶液としては、典型的には、ACES (N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸)、ADA (N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸)、BES (N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸)、ビシン(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン)、ビス-トリス、カコジル酸塩、CAPS、CHES (2-(N-シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸)、グリシルグリシン、グリシンアミドHCl、HEPES (4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-エタンスルホン酸)、HEPPS (N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N'-(3-プロパンスルホン酸)、イミダゾール、MES (2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)、MOPS (3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、PIPES (ピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸)、POPSO (ピペラジン-N,N'-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、TAPSO (3-[N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、TES (N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸)、トリシン、トリス、重炭酸塩、リン酸塩及びホウ酸塩のような緩衝液がある。サンプル負荷溶液は、必要に応じて、濃縮溶液として提供し得る。
【0049】
溶出溶液は、カーゴペプチドを、カーゴペプチド-担体タンパク質複合体から、担体タンパク質と結合性成分との結合を維持しながら溶出させるために提供する。溶出溶液の成分は、提供するイオン交換体に応じて変化し得る。アニオン交換支持体を提供する場合、溶出溶液は、一般に、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、トリエチルアンモニウム塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等又はこれらの混合物のようなアルカリ種を含有する。カチオン交換支持体を提供する場合、溶出溶液は、一般に、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、酢酸、塩酸等又はこれらの混合物のような酸種を含有する。本明細書において使用するとき、用語“アニオン交換支持体”とは、担体タンパク質に対して選択性の結合性成分含む支持体を意味し、この結合性成分がアニオン交換成分である。アニオン交換成分の例は、担体タンパク質に対して選択性の結合性成分に関連して上記で説明している。本明細書において使用するとき、用語“カチオン交換支持体”とは、担体タンパク質に対して選択性の結合性成分を含む支持体を意味し、この結合性成分がカチオン交換成分である。カチオン交換成分の例としては、担体タンパク質に対して選択性の結合性成分に関連して上記で説明している。
【0050】
カーゴペプチドを分離するための本明細書に説明する方法は、標準の実験室基準を使用して実施し得る。カラムの洗浄、サンプルの負荷、及びペプチド類の溶出は、遠心力、真空、圧力、或いは溶液をカラム、膜又は他の支持体に流し通すための任意の他の手段を使用して実施する。結合性成分の性質に応じて、十分容量のサンプル負荷溶液又は平衡溶液による複数回の洗浄を使用して、その後の質量分析によるペプチド分析を干渉し得る材料中の遊離高分子物質を除去し得る。
本明細書において説明する方法は、サンプル、支持体及び溶液を収容し、分離したペプチドを回収するのに適する任意の容器中で実施し得る。本発明の方法は、1つの容器内又は複数の容器内で実施し得る。一般的に使用する容器の例としては、マルチウェルプレート、チューブ、カラム及び毛管がある。
【0051】
実施例
この実施例は、生物学的サンプル中に含まれるカーゴペプチド-担体タンパク質複合体からカーゴペプチドを分離する新たに特定した方法を説明する。
カーゴペプチドを血清から分離するために、以下で説明するように調製したサンプルを、サンプル負荷溶液(pH 8)中の第四級アンモニウム(Q)アニオン交換体に適用し;該アニオン交換体を洗浄し;そして、カーゴペプチドを、高pHを有する溶出溶液中に溶出させた。試験を行い、溶出ペプチドが、実際に、担体タンパク質に以前は結合していたペプチドであり、自由浮遊性の血清由来ペプチドではないことを確認した。3つのタイプのサンプルをこれらの試験においては使用した(1つは血清サンプルであり、他の2つは加工して低質量の自由循環性ペプチドを除去した血清サンプルであった)。
【0052】
各血清サンプルを下記のように加工して、10K〜15Kよりも低い質量を有するペプチドを除去した。血清(500マイクロリットル)を、10KカットオフSLIDE-A-LYZER Casette(Pierce社、イリノイ州ロックフォード)又は15KカットオフSpectra/Por透析バッグを使用して広範囲に透析した。5回連続1リットル緩衝液交換を行い、各透析工程は、少なくとも連続10時間であった。最初の2回の透析はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で実施し、次の2回の透析は20mMトリス-HCl、pH7.2中で実施し、最後の透析は20mM NaHCO3、pH8.3中で実施した。回収した透析液の最終容量は、約680マイクロリットルであった。透析液を遠心分離により清澄化し、上清をさらなる加工に使用した。沈降タンパク質画分を、500マイクロリットル20mM NaHCO3、pH8.3緩衝液で2回洗浄し、SDS-PAGE分析に使用した。
【0053】
その後、血清(S)、10K透析液(P)及び15K透析液(D)サンプルを、以下のようにしてアニオン交換条件に供した。6本のアニオン交換Q-カラム(VivascienceTM、カリフォルニア州カールズバッド)を、20mM NaHCO3、pH8.3緩衝液中での2回500ミリリットル洗浄、1%NH4OHの1回500ミリリットル洗浄、次いで、20mM NaHCO3、pH8.3緩衝液中での3回500ミリリットル洗浄を使用して、予備洗浄した。上記P-、D-及びS-血清サンプルを、20mM NaHCO3、pH8.3緩衝液中に1:10希釈し、カラム当り700ミリリットルの希釈透析血清サンプル及び500ミリリットルの希釈未透析血清サンプルを使用して、上記予備洗浄Qカラム上に重複2回負荷させた。透析及び未透析血清サンプルの700ミリリットル:500ミリリットル負荷容量は、それぞれ、透析工程中の血清サンプルの希釈要因を補正するために選定した。血清タンパク質のQ-カラムへの結合は、卓上遠心分離機内で2,000RPMの遠心分離によって実施した。未結合物質を、通り抜け画分として、SDS-PAGE分析用に収集した。その後、上記Q-カラムを、500ミリリットルの20mM NaHCO3、pH8.3緩衝液を使用して6回洗浄した。図1のパネルAは、出発血清サンプル(レーンS、P及びQ)、Q-カラムに結合しなかった物質(“Q-カラム後の通り抜けサンプル”)、及び各サンプルの不溶性画分のSDS PAGE分析を示す。レーンS、P及びQの比較は、各出発血清サンプルが同様な濃度のタンパク質を含有していたことを示している。レーンUS1-US2に出現した微量のタンパク質染色は、各サンプル中に含まれていたタンパク質の殆どがQカラムに結合していたことを示唆していた。
【0054】
カーゴペプチドを以下のようにしてQ-カラムから溶出させた。上述のようにして洗浄した後、2工程溶出を、各溶出工程当り300マイクロリットルの1%NH4OH溶液を使用して実施した。両工程からの溶出画分を、サンプル毎に混合し、サンプル毎に25マイクロリットルの50%トリフルオロ酢酸(TFA)を添加することによって酸性化した。各サンプルの約20マイクロリットルをSDS-PAGE分析用に保存し、一方、残りのサンプルを、製造業者が推奨推奨しているようにして、ZipPlate (Millipore社、マサチューセッツ州デッドフォード)上で濃縮し脱塩させた。図1のパネルBは、血清サンプルが殆ど1%NH4OH用液中に溶出していなかったことを示している。溶出カーゴペプチドは、SDS-PAGEゲル上に出現しない;何故ならば、これらのカーゴペプチドは、その小分子量故に、SDS-PAGEマトリックスから電気泳動して出てしまうからである。
【0055】
担体タンパク質が1%NH4OH溶液による溶出後のQ-カラムに結合したままであることを確認するために、各Q-カラムを、各溶出工程当り300マイクロリットルの2%TFAを使用し2工程溶出で更に溶出した。溶出画分を各サンプルにおいて混合し、各サンプルの20マイクロリットルをSDS-PAGE分析用に保存し、一方、残りのサンプルを、製造業者が推奨するようにして、ZipPlate上で濃縮し脱塩させた。図1のパネルBは、アルブミン及び他のタンパク質が2%TFA溶液によって溶出されていたことを示す。このデータは、アルブミン及び他の血清タンパク質が、カーゴペプチドを溶出させる条件(1%NH4OH)下では、Q-カラムに結合したままであったことを裏付けている。
【0056】
図1のさらなる詳細は次の通りである:MWM = Benchmark Protein Ladder(Invitrogen Corporation社、カリフォルニア州カールスバッド);US1、US2、UP1、UP2及びUD1、UD2 = それぞれ、Q-カラムに結合しなかったS-、P-及びD-血清タンパク質の対;P-ペレット、D-ペレット = それぞれ、P-及びD-血清サンプルの透析中に沈降したタンパク質;ES1、ES2、EP1、EP2及びED1、ED2 = それぞれ、1%水酸化アンモニウムを使用してQ-カラムから溶出させたS-、P-及びD-血清タンパク質の重複対;AS1、AS2、AP1、AP2及びAD1、AD2 = それぞれ、1%水酸化アンモニウム溶出後に2%TFAによる2回目の溶出においてQ-カラムから溶出したS-、P-及びD-血清タンパク質の重複対。分画前の約10マイクログラムのS-、P-及びD-血清タンパク質をレーン毎に負荷した。等容量の未結合及び分画タンパク質を、各サンプル中のタンパク質量との便宜的な比較のために、レーン毎に負荷した。サンプルは、全て4%〜12%勾配Bis-Trisゲル(Invitrogen Corporation社、カリフォルニア州カールスバッド)上で操作した。
要するに、SDS-PAGE分析結果は、担体タンパク質が、1%NH4OH溶出工程中においてはQ-カラムに結合したままであるが、2%TFA溶液を使用するとカラムから溶出することを示唆していた。
【0057】
上述したようにして1%NH4OH溶出によって担体タンパク質から分離したカーゴペプチドを、prOTOFTM2000MALDITOF MS計器を使用して、質量分析により分析した。各サンプルは、分析前にZipPlate上で脱塩し濃縮させた。
図2は、得られた質量スペクトルを示す。図2Aは、重複分析した15-K透析血清、10-K透析血清及び未透析血清から得たカーゴペプチドのサンプルを示す。これらのサンプル中のペプチドは、1000〜5000m/z範囲においてピークとして出現する。透析及び未透析血清サンプルにおけるペプチドピークの有意の重複は、1%NH4OHで溶出させたペプチドの大部分が、血清サンプル中の自由循環性ペプチド類からよりはむしろカーゴペプチド-担体タンパク質複合体から解離されていたことを示唆している。
【0058】
図2Bは、1%NH4OHカーゴペプチド溶出に引続き、2%TFAを使用してQ-カラムから溶出させたサンプルの質量スペクトルを示す。この分析において示すサンプル類は、15-K透析血清、10-K透析血清及び無透析血清の重複物を含む。スペクトルは、痕跡量のペプチド類が2%TFAを使用するタンパク質リッチ酸性溶出において回収されたことを示している。
要するに、質量分光分析は、カーゴペプチドがアニオン交換体からの高pH溶出によってそのカーゴペプチド-担体タンパク質複合体から分離されたが、担体タンパク質はアニオン交換体に結合したままであることを裏付けている。
【0059】
本明細書において記載した特許及び刊行物は、いずれも、各個々の刊行物を参考として合体するように明確且つ個々に指示した場合と同じ程度に参考として本明細書に合体させる。
当業者であれば、本発明を、その実体を実施し且つ説明した目的及び利益並びに本発明の独自性を達成するように良好に適応させ得ることは容易に理解し得るであろう。本明細書において説明した方法及び市販用パッケージは、代表的なものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明における変更及び他の使用は、当業者にとっては生じ得るであろう。そのような変更及び他の使用は、特許請求の範囲において示すような本発明の範囲から逸脱することなくなし得ることである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1A】本発明の1つの実施態様に従うペプチド分離前及びペプチド分離中の血清サンプル中に含まれたタンパク質が示す染色SDS-PAGEゲルを示す。
【図1B】本発明の1つの実施態様に従うペプチド分離前及びペプチド分離中の血清サンプル中に含まれたタンパク質が示す染色SDS-PAGEゲルを示す。
【図2A】サンプル負荷溶液のpHよりも高いpHを有する溶出溶液を使用するアニオン交換物質から溶出させた透析した及び透析していない血清サンプルの質量スペクトルを示す。
【図2B】低pH溶液を使用するアニオン交換物質からのタンパク質サンプルのさらなる溶出することによって得られたサンプルの質量スペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーゴペプチド-担体タンパク質複合体を含有するサンプルからカーゴペプチドを単離する方法であって、下記の工程、
カーゴペプチド-担体タンパク質複合体を含むサンプルを、前記担体タンパク質に対して選択性の結合性成分と、前記担体タンパク質が前記結合性成分と非共有結合し且つ前記結合性成分が支持体に結合する条件下で接触させる工程、
前記カーゴペプチドを、前記カーゴペプチド-担体タンパク質複合体から、前記担体タンパク質が前記結合性成分と結合したままで解離させる工程、及び、
前記カーゴペプチドを収集し、それによって前記カーゴペプチドを前記サンプルから分離する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記結合性成分が、イオン交換成分である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記イオン交換成分が、アニオン交換成分である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記アニオン交換成分が、ジエチルアミノエチル成分、ジエチルメチルアミノエチル成分、ジエチル-[2-ヒドロキシプロピル]アミノエチル成分、アリルアミン成分及び第四級アンモニウム成分から選択ばれた成分を含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記アニオン交換成分が、第四級アンモニウム成分を含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記イオン交換成分が、カチオン交換成分である、請求項2記載の方法。
【請求項7】
カチオン交換成分を、スルホン酸成分、スルホプロピル成分、メチルスルホネート成分、カルボキシメチル成分及びリン酸塩成分の群から選択する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記支持体を、膜、ゲル、粒子、表面及びマトリックスから選択する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記サンプルが、サンプル負荷溶液を更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記解離が、前記カーゴペプチド-担体タンパク質複合体を溶出溶液と接触させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記溶出溶液が、前記サンプルのpHよりも高いpHを有する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記溶出溶液が、アルカリ種を含む、請求項11記載の方法
【請求項13】
前記アルカリ種を、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、トリエチルアンモニウム塩、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムの群から選択する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記溶出溶液が、前記サンプルのpHよりも低いpHを有する、請求項10記載の方法。
【請求項15】
前記溶出溶液が、酸種を含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記酸種を、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、酢酸及び塩酸の群から選択する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記担体タンパク質が、血清タンパク質である、請求項1記載の方法。
【請求項18】
前記担体タンパク質を、血清アルブミン、フィブロネクチン、トランスフェリン、イムノグロブリン、タム・ホースフォール糖タンパク質、フィブリノゲン、アルファ2-マクログロブリン、補体タンパク質、セルピン、ハプトグロビン、アルファ1-酸糖タンパク質及びセルロプラスミンから選択する、請求項1記載の方法。
【請求項19】
前記サンプルを、ヒト個々人から得る、請求項1記載の方法。
【請求項20】
前記サンプルが、体液を含む、請求項1記載の方法。
【請求項21】
前記サンプルが、血漿又は血清を含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
カーゴペプチド-担体タンパク質複合体を含有するサンプルから複数のカーゴペプチドを分離する方法であって、下記の工程、
カーゴペプチド-担体タンパク質複合体を含むサンプルを、少なくとも1種の担体タンパク質に対し選択性の結合性成分と、前記少なくとも1種の担体タンパク質が結合性成分に非共有結合し且つ前記結合性成分を支持体に結合させる条件下に接触させる工程、
前記複数のカーゴペプチドを、カーゴペプチド担体タンパク質複合体から、前記担体タンパク質が前記結合性成分に結合したままで解離させる工程、及び、
前記複数のカーゴペプチドを収集し、それによって前記複数のカーゴペプチドを前記サンプルから分離する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
バイオマーカープロフィールの同定方法であって、下記の工程、
カーゴペプチド-担体タンパク質複合体を含むサンプルを、少なくとも1種の担体タンパク質に対し選択性の結合性成分と、前記少なくとも1種の担体タンパク質が結合性成分に非共有結合し且つ前記結合性成分を支持体に結合させる条件下に接触させる工程、
前記カーゴペプチド類を、カーゴペプチド担体タンパク質複合体から、前記担体タンパク質が前記結合性成分に結合したままで解離させる工程、
前記カーゴペプチド類を収集し、それによって前記カーゴペプチドを前記サンプルから分離する工程、及び、
分離したペプチド類の質量スペクトルを測定し、該質量スペクトルに示されたペプチドをバイオマーカープロフィールとして同定する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
同定したバイオマーカープロフィールを対照バイオマーカープロフィールと比較することを更に含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
血清サンプルからの複数のカーゴペプチドを分離する方法であって、下記の工程、
カーゴペプチド-担体タンパク質複合体を含有する血清サンプルを、少なくとも1種の担体タンパク質に対して選択性のアニオン交換成分と、前記少なくとも1種の担体タンパク質が前記アニオン交換成分と非共有結合し且つ前記アニオン交換成分を支持体に結合させる条件下に接触させる工程、
前記カーゴペプチド-担体タンパク質複合体を前記サンプルのpHよりも高いpHを有する溶出溶液と接触させ、それによって前記複数のカーゴペプチドを前記カーゴペプチド-担体タンパク質複合体から解離させ且つ前記担体タンパク質は前記アニオン交換成分に結合したままである工程、及び、
前記複数のカーゴペプチド類を収集し、それによって前記複数のカーゴペプチドを前記血清サンプルから分離する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
市販用パッケージであって、下記の要素、
担体タンパク質に対し選択性の結合性成分を含むイオン交換支持体、及び、
カーゴペプチドをカーゴペプチド担体タンパク質複合体から解離させ且つ前記担体タンパク質と前記結合性成分の結合を維持する溶出溶液、
を含むことを特徴とする市販用パッケージ。
【請求項27】
前記イオン交換支持体が、アニオン交換支持体である、請求項26記載の市販用パッケージ。
【請求項28】
前記アニオン交換支持体が、第四級アンモニウム成分を含む、請求項27記載の市販用パッケージ。
【請求項29】
前記イオン交換支持体が、カチオン交換支持体である、請求項26記載の、市販用パッケージ。
【請求項30】
前記支持体が、膜、ゲル、粒子及びマトリックスから選択された材料を含む、請求項26記載の市販用パッケージ。
【請求項31】
アルカリ性物質を含有する溶出溶液を更に含む、請求項27記載の市販用パッケージ。
【請求項32】
前記アルカリ性物質を、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、トリエチルアンモニウム塩、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムから選択する、請求項31記載の市販用パッケージ。
【請求項33】
酸物質を含有する溶出溶液を更に含む、請求項29記載の市販用パッケージ。
【請求項34】
前記酸物質を、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、酢酸及び塩酸から選択する、請求項33記載の市販用パッケージ。
【請求項35】
サンプル負荷溶液を更に含む、請求項31記載の市販用パッケージ。
【請求項36】
前記溶出溶液が、サンプル負荷溶液のpHよりも高いpHを有する、請求項35記載の市販用パッケージ。
【請求項37】
サンプル負荷溶液を更に含む、請求項33記載の市販用パッケージ。
【請求項38】
前記溶出溶液が、前記サンプル負荷溶液のpHよりも低いpHを有する、請求項37記載の市販用パッケージ。
【請求項39】
市販用パッケージであって、下記の要素、
アニオン交換支持体、
サンプル負荷溶液、及び、
前記サンプル負荷溶液のpHよりも高いpHを有し、ペプチドをカーゴペプチド-担体タンパク質複合体から解離させ且つ前記担体タンパク質と結合性成分との結合を維持し得る溶出溶液、
を含有することを特徴とする市販用パッケージ。
【請求項40】
市販用パッケージであって、下記要素、
カチオン交換支持体、
サンプル負荷溶液、及び、
サンプル負荷溶液のpHよりも低いpHを有し、ペプチドをカーゴペプチド-担体タンパク質複合体から解離させ且つ前記担体タンパク質と結合性成分との結合を維持し得る溶出溶液、
を含有することを特徴とする市販用パッケージ。
【請求項41】
使用説明書を更に含む、請求項26記載の市販用パッケージ。
【請求項42】
第四級アンモニウムアニオン交換支持体と、約9〜11のpHを有する溶出溶液を含む、市販用パッケージ。
【請求項43】
前記溶出溶液が、約10のpHを有する、請求項42記載の市販用パッケージ。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【公表番号】特表2007−536218(P2007−536218A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510945(P2007−510945)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/014496
【国際公開番号】WO2005/104763
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(504006010)パーキンエルマー ラス インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】