説明

生物学的作用因に対する防護用フェイスマスク

本発明は、生物学的作用因に対する防御のための新規のマスクに関するものであり、その有効性を保証するために新たな特徴を備えている。上記マスクは、生物学的作用因に対して特に顕著な効果を奏するフィルタ層、高効率の排気バルブ、およびマスクと顔との密着をさらに高めるための境界を密着する層とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の属する技術分野〕
本発明は、生物学的作用因(エージェント)に対して高いフィルタ特性を持ち、その性能を向上させるための付加的な特徴を有するマスクに関するものである。
【0002】
〔従来技術および課題〕
防護マスクは、人間の呼吸器を、空気中に浮遊する微粒子、粉末、または固体と液体とのエーロゾルから保護するために、広く応用されて用いられている。
【0003】
マスクは、一般的に2種類に区分けすることができる。即ち、カップ型に成型されたマスクと、平たく折り重ねられたマスクとに区分けすることができる。
【0004】
カップ型に成型されたマスクについては、例えば、GB-A-1 569 812, GB-A-2 280 620, US 4,536,440, US 4,807,619, US 4,850,347, US 5,307,796, US 5,374,458などに記載されている。
【0005】
必要となるまでは形状を平らに保たれる、平たく折り重ねられたマスクについては、例えば、WO 96/28217, 米国特許公報No. 08/612,527, US 5,322,061, US 5,020,533, US 4,920,960 およびUS 4,600,002などに記載されている。
【0006】
マスクは、一枚、もしくは多数の空気透過性の素材による層で形成されており、一般的には内部層、フィルタ層、およびカバー層からなる。
【0007】
フィルタ層は、通常は不織布でできており、一般的には溶かして吹き付けたマイクロ繊維で作られる。このことは、例えば、US 5,706,804, US 5,472,481, US 5,411,576 およびUS 4,419,993などに記載されている。フィルタの素材は、一般的にはポリプロピレンが用いられる。
【0008】
フィルタの素材は、フィルタの効率を向上させるための添加物を含むこともあり、例えば、US 5,025,052, およびUS 5,099,026などに記載されている。
【0009】
また、上記素材は、湿気やミスト抵抗性の作用因を含んでいてもよいし(US 4,874,399, US 5,472,481, US 5,411,576)、電荷を上記素材に付与するもの (US 5,496,507, US 4,592,815, US 4,215,682)であっても良い。
【0010】
外側のカバーは、研磨する外力からフィルタ層を保護する。通常、外側のカバーは不織布でできており、一般的にはポリオレフィン、ポリスチレン、またはポリアミドでできている。例としてはUS 4,807,619 および US 4,536,440に記載されている。
【0011】
内部層は、形を保持する機能を持っており、通常は不織布でできている。一般的にはポリエステルでできている。
【0012】
空気がマスクを通るとき、着用者が汚染物質を吸引しないように、フィルタ層は流れの中から汚染物質を取り除く。同様に、マスクを通して排出される空気は、病原性の作用因と汚染物質とが他の人に晒されないように取り除かれる。
【0013】
幾つかのマスクでは、マスクの装着者が息を吐き出すときに圧力の上昇に応じて開くとともに、吸い込むときには閉じて、強制的に空気をフィルタ媒体に通す発散バルブを備えている。
【0014】
バルブを備えているマスクの例は、例えばUS 4,827,924, US 347,298, US 347,299, US 5,509,436, US 5,325,892, US 4,537,189, US 4,934,362, US 5,505,197 またはUS 2002023651 などに記載されている。
【0015】
マスクと顔との密着性を向上させるために、マスクにはノーズクリップやバンドなどの特徴をさらに備えるものがある。ノーズクリップについてはUS 5,558,089に、バンドについてはUS 4,802,473, US 4,941,470 または US 6,332,465に記載されている。
【0016】
さまざまな種類のマスクがあるにもかかわらず、既に存在するものにくらべて特性の向上した新しい防護手段を作製するための努力が続けられている。
【0017】
われわれは、生物学的作用因(エージェント)に対して高いフィルタ特性を持ち、その性能を向上させるための付加的な特徴を有するマスクを見出した。
【0018】
上記マスクは、特に、生物学的作用因に対して顕著な性能を有するフィルタ層と、高効率の発散バルブおよびマスクと顔との密着を高める境界密着層とを備えている。
【0019】
〔発明の実施の形態〕
本発明は、生物学的作用因に対する防御として有効なマスクを提供する。
【0020】
マスクは、平たく折り重ねられる形状か、カップ型をしている。平たく折り重ねられる種類のマスクが好まれ、以下ではこの種のマスクに関して記載する。
【0021】
マスクの構造について、図1を参照して説明する。図1では、マスクは着用者の顔に開いて装着されているところを示しており、図2では、マスクの内側について示している。
【0022】
マスクの本体は、装着者の鼻と口とを被うようにカップ型のチャンバを備えており、中央パネル1、上部パネル2、および下部パネル3を含んでおり、それらは、機械的に圧着したり、縫ったり、接着したり、熱によって溶かし付けたりするなどの従来の方法によってそれぞれ結合している。
【0023】
弾性力のあるバンド4は、マスクが人の頭に対して動かないように固定している。また一方、ノーズクリップ5は、マスクが装着者の鼻と頬とを被って顔にしっかりと装着されるように上部パネル2の内側に備えられている。
【0024】
バルブ6は、中央パネル1の外側にオプションで備えられていて、吐き出した息をマスクの内側から外気に対して容易に通過させることができる。
【0025】
マスクは、収納するときには、上部パネル2と下部パネル3とを中央パネル1の後ろに折り曲げて、平らにたたむことができる。
【0026】
パネル1,2および3は同じ構成であり、複数の層からなっている。また、上記複数の層のうち少なくとも一つの層は、フィルタ機能を有しており、酢酸ビニル樹脂で結合された硼珪酸ミクロガラス繊維で構成されている。この層では、強靭なセルロースを基にした保持容量の大きい基質によって保持されている。またその構造は、疎水性を与えるために、シリコンを基にしたコーティング処理が施されている。
【0027】
中央の層にフィルタ機能、内部層に形状保持機能、外部層にカバー機能をもつ3個の層から構成されるマルチレイヤパネルを例にする。
【0028】
一つの層の場合と同じく、素材の寸法と重さは広い範囲で変化しうる量であり、それは、素材が繊維構造であるからである。また、本記載において、幾つかの一般的な値を示すが、それらの値によってなんらかの制限を意図するものではない。
【0029】
3層構造の場合、全般に、素材は一般的には500〜1000(ミクロン)の厚さであり、130〜250(g/m)の単位重量である。
【0030】
内部層は、フィルタ層を支え、マスク本体の構造を与える。内部層は、不織布で作られる。例えば、ポリプロピレンやポリエステルの繊維で作られ、一般的にはポリプロピレンの繊維で作られる。
【0031】
内部層の厚さは、一般的には100〜180(ミクロン)の厚さであり、25〜45(g/m)の単位重量である。
【0032】
外部層は、フィルタ層を磨耗から保護する。外部層はポリオレフィン、ポリエステルまたはナイロンの繊維による不織布で作られる。一般的には溶かして吹き付けたポリプロピレン繊維で作られる。
【0033】
厚さは、一般的には250〜420(ミクロン)の厚さであり、80〜140(g/m)の単位重量である。
【0034】
中央層は、フィルタ機能を備えており、酢酸ビニル樹脂で結合された硼珪酸ミクロガラス繊維で構成されている。また、繊維基質はセルロースをベースとした支持層によって保持され、珪素を基にしたコーティングが施されている。
【0035】
一般的には、中央層は150〜400(ミクロン)の厚さであり、25〜65(g/m)の単位重量である。
【0036】
中央層の構成は、生物学的作用因、特に炭疽菌(Bacillus Anthracis)、結核症原因菌(tubercolosis virus)、HBVおよびHCVなどの危険な微小生物はもちろん、一般的なバクテリア、ウイルスなどに対して高いフィルタ機能を保証する。
【0037】
フィルタ素材による効力は、幾つかの試験によって保証されている。それらのうち、2個について下に記載する。
【0038】
〔試験1〕
微小バクテリアである結核症原因菌を用いた単一分散試験(monodispersed challenge)
本試験は、フィルタ素材の効率の確認のために、微小バクテリアの結核症原因菌株(H37RV)を用いてなされた。
【0039】
この方法は、「エーロゾルへのバクテリアの単一分散試験」と呼ばれており、衛生環境での結核症原因菌の拡散移動が主に、感染者からのエーロゾルの液滴によってなされているために、非常に重要であると考えられている。
【0040】
この試験は、図3に概略を示す機器によって実行される。
【0041】
微小生物を含んだエーロゾルは、フィルタ(a)を通すことによってろ過された圧縮空気を用いて、ネブライザー(噴霧器)(c)の作用によって、乾燥チャンバ(b)に7L/分のガスの流れとして与えられる。エーロゾルは、フィルタ(d)を通して別に乾燥チャンバに送られた圧縮空気と混ぜられ、28L/分の流れとなる。
【0042】
汚染されたエーロゾルの液滴は、乾燥チャンバに入ると急速に蒸発する。
【0043】
液滴は、乾燥チャンバの中でも当然それらの重量を保持しており、蒸発チューブ(e)の中でチューブの壁から叩かれてもそれらの重量を保持している。
【0044】
引き続いて、単一に分散したバクテリアが、評価されるフィルタ素材(f)に到着する。
【0045】
評価される上記素材の前後でのガスの流れは、真空ポンプによって液体用のガラスのサンプリング容器に28L/分の流量で集められる。
【0046】
上記素材の前(g)と後(h)とのサンプル容器はそれぞれ独立しており、それらを通る流れが次々に真空バルブ(i)によって選択される。
【0047】
試験の間、5秒毎に、サンプリングが行われる。そして、サンプル容器は置き換えられ、真空は他のサンプル容器につながれる。
【0048】
どの実験でも、エーロゾルで汚染する構成は5分間続く。その後、ネブライザーの圧縮空気は、関連するバルブによって閉じられ、ろ過された空気が真空ポンプによって2分間サンプル容器に通される。
【0049】
(g)からやってくる液体のサンプルは、その後連続して10回希釈され、『寒天培地』に移されてインキュベートされる。
【0050】
サンプル容器(h)の全内容物は、0.45(ミクロン)のニトロセルロース製の分析用メンブランのフィルタでろ過され、上記メンブランは寒天の層に載せられ、インキュベートされる。
【0051】
インキュベートは14日間35℃でおこなわれ、インキュベート終了後、コロニーの数が数えられる。
【0052】
フィルタ素材の除去効率は次のように計算される。
【0053】
{(エーロゾルチャンバ中の微小生物の数−回復した微小生物の数)/エーロゾルチャンバ中の微小生物の数}×100
10回の測定をおこなったところ、除去効率は>99.999%ということがわかった。
【0054】
〔試験2〕
MS-2を用いた単一分散試験
バクテリオファージMS-2を用いて単一分散試験を行った。
【0055】
MS-2は多面体のウイルスであり、およそ0.02(ミクロン)の寸法を持つ。MS-2は人体に対して病原性はない。そのため、同様の形状および寸法の病原性のウイルスの模擬実験として役にたつ。
【0056】
方法は基本的に試験1と同一で行い、流量は10L/分、24時間30℃でのインキュベーションとした。
【0057】
除去効率は99.999%より優れていることがわかった。
【0058】
試験2の結果を基にして、バクテリオファージMS-2よりも大きいいくつかの微小生物、特にC型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、シュードモナス属(Sp. Pseudomonas)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、セラチアマルケシェセンス(Serratia Marcescescens)、炭疽菌(Bacillus Anthracis)に対するフィルタシステムの効果を考えることができる。
【0059】
試験が、最も危機的な状態に相当する単一分散粒子に対して行われていることについて、言及しておくことは効果があると思われる。通常の状態では、微小生物の大部分は単一分散にはなっておらず、そのかわりにさまざまな大きさの液滴や、さまざまな大きさの単一の微小生物を形成している。そのため、使用時における一般的な状態では、フィルタの効果は上記試験での結果と同等か、もしくは優れている。
【0060】
マスクは、フィルタ素材の特性によってバリアを行うことに加えて、どのような状態であっても完全で安全な密着性の保証と、装着者への快適さの向上とが要求されている。
【0061】
特に、マスクは、呼吸を容易にすることができるバルブを備えることができる。そのようなバルブとは、装着者が息を吐き出すときに圧力が上昇したことに反応して開くバルブであり、上記バルブによって暖かく、湿っていて、高いCOを含む空気を、マスクの内側から急速に排出することのできるバルブである。それと同時に、このマスクは、吸入する間は閉じることができ、この吸入の間にマスクを通過する微小生物を防ぐための完全な密着を保証するために、従来のものと比較して新しく特徴的なデザインを提示する。
【0062】
このような理由から、バルブは本発明の代表的な物体である。
【0063】
バルブは、同様の排気システムが備える主要な特徴を持ち、その形状、大きさ、および素材は、一般に知られているものから選ぶことができる。
【0064】
主要な基本的特徴について、図4〜図9を参照して説明する。例として丸い形状のものを記載する。
【0065】
特に、バルブ(図4)は、安全のために引き出されたバルブカバー(b)、それを覆うバルブシート(a)、および伝達用の開口部(c)とを含んでいる。
【0066】
シート(図5)は、フラットサーフェス(d)、空気の流れを許可する4個の長円形のオリフィス(e)からなっている。
【0067】
バルブシート(a)の中央では、円形で、薄い厚さであるレリーフ(f)が立ち上がっている。
【0068】
カバー(図6および図7)は、円形で、4個の開口部(c)がある。開口部(c)は半円形の形状であり、空気が透過することができる。円形のバルブフラップ(h)は適切なサポート(g)によって、カバーの内側の中央の位置に取り付けられている。そして、フラップは、柔軟な素材でできており、バルブを開閉するための可動性部品に相当する。
【0069】
バルブは、熱形成に適したさまざまな素材によって作製される。特に、鋳造されたポリプロピレンから作られることが好ましい。フラップは、弾性のある柔軟な素材、例えば合成ゴムなどから作られる。
【0070】
バルブカバー、バルブシートおよび他の構成要素との相互の位置について図9に示す。
【0071】
バルブは、マスクの、円形の開口部が設けられたパネル1の中央に取り付けられている。
【0072】
バルブは、バルブシート(a)の上で、単にパネル1に横たわる形で取り付けられ、バルブシート(a)のオリフィスの中央の素材が相互に開くようにフィッティングに気をつけて配置されている。バルブカバー(b)は、圧力によってバルブシートを覆って固定されている。
【0073】
この方法では、パネル1の素材は、バルブカバーとバルブシートとの間に固定される。
【0074】
装着者が息を吸い込むと、バルブフラップがレリーフ(f)に対して密着し、空気が流れ込むことを防ぐ。一方、装着者が息を吐き出すと、バルブフラップがレリーフ(f)から持ち上がり、空気が透過するようになる。
【0075】
結果として、マスクに入ってくる吸入空気は、全面的にマスクのフィルター媒体を通る。一方、排出する空気は、マスクの開口部とバルブのオリフィスとを通る。
【0076】
バルブの実用的原則は知られているが、本発明のバルブは、息を吸っている間、微小生物によるありとあらゆる汚染を避けるために最も高い密着性を保証するという追加の特徴をさらに備えている。
【0077】
特に、バルブシートのレリーフ(f)は、凹状の表面形状を備えており(図10および図11)、その中に連続的にシリンダーの形状をした、プラスチックで作られたOリング状の素材が全周にわたって配置されている。Oリングは異なったモノマーから得られる合成高分子で作られていて、異なった配合、例えばフッ素、シリコン、もしくは窒素をベースにした配合から製造することが可能である。上記リングは、閉じている間に最も高い密着性を提供するために、寸法や構造といった観点からデザインされている。実際、バルブフラップがレリーフ(f)に対して密着するときには、バルブフラップが直接リング(i)に接触する(図12)。そのため、フラップのサポート(g)の配置とリングの厚みとのために、バルブフラップはそのエッジの上で曲げられている。
【0078】
フラップの素材は、その物質固有の塑性復元力と弾性的な特徴により、Oリング上の表面で完全に密着する。さらに、上記2種類の素材の互換性、即ち表面に関する同様の化学的―物理学的特徴によって、完全な接着性を保証することができる。
【0079】
結果として、密着性の効率は、既に知られているマスク、即ちバルブフラップが、バルブの設けられていた素材の上に直接平らに配置される構成に対して、劇的に優れていることがわかる。
【0080】
さらによいと考えられるバルブの構造について、異なる部品の幾つかの一般的な配置について、符号とともに図13に示す。
【0081】
13a:バルブシートの平面図
x:45mm
y:30mm
z:26mm
13b:バルブシートの側面図
x:1mm
y:4.2mm
z:4mm
13c:バルブカバーの平面図
x:32mm
y:30mm
z:18mm
13d:バルブカバーの側面図
x:8mm
y:3mm
z:1mm
w:3.5mm
13e:バルブフラップ
x(直径):30mm
発明の特徴として、本発明の個々の実施の形態で、バルブについて表現した。
【0082】
このような観点から、上記の記載は、特有の特徴を越えて、何ら制限を加えることを意図したものではない。
【0083】
それゆえ、バルブは他の形状を取ることも可能であり、例えば、方形であってもよい。また、他の素材で形成してもよい。バルブは、他の従来からあり、既に知られている方法によって作られたマスク、たとえばポリオレフィンやEVA材を基にした熱による溶解接合方法で作られたマスクであっても上記機能を保証する。
【0084】
上記マスクは、マスクが装着者の顔にしっかりと装着され、マスクのエッジがきつく顔のほかの部分に接触する従来のシステムをも装備することができる。
【0085】
特に、バンド4が使用者の頭を覆うことによって、マスクの位置を心地よい位置にするのに対して、クリップ5は装着者の鼻を覆い、装着性を向上させる。また、バンドは従来の素材で構成されており、特に、弾性を有する構成を組み合わせるという観点から、合成ゴムで構成されてもよいし、また、好ましいマスクの構成との親和性の観点から、例えばポリプロピレンによって熱形成されるとしてもかまわない。
【0086】
さらに、マスクは、そのエッジに、図2のパネル2および3の周囲にそって、境界密着層が備えられている。この層は、図2の参照番号7として示されていて、マスクの周囲に図示されている。マスクのエッジの上部と下部とでは、サイドのジョイントから上記層が始まっている。さらに、この層と隣接する層では、同様の素材による細長い素材が約9cmの長さでノーズクリップのエリアに形成されている(図2の符号8)。
【0087】
上記細長い素材はマスクの装着をより快適にし、さらに、鼻の位置での変形やひだによって起こりうるマスクと顔との密着性を保証する。
【0088】
密着層は天然ゴムのラテックス樹脂、シリコンを基にした樹脂、もしくはそのほかに好適な素材によって形成される。
【0089】
例としては、天然ゴムのラテックスを約2mmの幅で、200〜400(g/m)の単位重量で塗布する。
【0090】
このような寸法と重量とは、例として挙げただけに過ぎず、何ら本願の発明を制限することを意図するものではない。
【0091】
密着層は、どのような形状の顔であっても装着者の顔を完全に覆ってきつく密着する。このことは、汚染物質がフィルタ素材によって除去されずにマスク本体を通ることを許す、針の穴や歪みがない限り、装着者の顔に対して漏れなく接触するということを保証する。
【0092】
さらに、境界密着層の素材は、非常にやわらかく、マスクを快適に装着することができる。
【0093】
マスクの密着についてはマスク試験機によって顕著な結果が得られている。
【0094】
〔試験3〕
本試験は、バクテリアを用いた試験であり、シェフィードヘッドと自動呼吸機とを用いて現実の呼吸をシミュレーションした試験として行った。
【0095】
マスクは、装着者が用いる方法を模してシェフィードヘッドに装着し、上記ヘッドをテストチャンバの中に設置する。
【0096】
基準量の微小生物であるブレヴンディモナス・ディミヌータ(Brevundimonas diminuta)(ATCC19146) をエーロゾル発生器に導入し、テストチャンバ中に噴霧する。
【0097】
人口肺のスイッチを入れ、通常のヒトの呼吸をシミュレートするために25(呼吸/分)に調整する。その後、吸入した空気を50(mL)の塩溶液の入ったガーガリング容器に集める。
【0098】
30分後、溶液中の微小生物を数えた。
【0099】
マスクを通ってきた微小生物のUFC/50mLの数(Na)を、マスクがないときの微小生物のUFC/50mLの数(Nv)と比較した。
【0100】
上記結果は、微小生物に関する除去力価(reduction titre)を与える。上記値は、試験の結果から次の式によって与えられる。
R(除去力価)=(Nv−Na)×100/Nv=99.99%
マスクの別々の部品は既存の技術、例えば、熱や超音波による溶着接合もしくは機械的に押し付けることによって組み立てられる。接着がおこなわれるときには、熱による溶着がなされることが好ましい。
【0101】
本発明のマスクは、中央層によるフィルタ効果と、バルブおよび境界面の密着層での傑出してタイトな密着性との組み合わせによって、生物学的作用因に対して既存の防御手段が到達することのできなかったバリア機能を備えている。
【0102】
本発明の実施の形態は、上記のように記載したが、本発明において、単純な変形や再構成は、発明の精神、または以下の請求項によって定義される本発明の本質的な特徴から逸脱するものではないと、当業者に理解されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明におけるマスクの装着図であり、マスクの構造についての見取り図である。
【図2】本発明におけるマスクの内側について示す見取り図である。
【図3】単一分散試験(monodispersed challenge)の方法を示すブロック図である。
【図4】本発明におけるバルブの構造を示す見取り図である。
【図5】本発明におけるバルブの構造を示す見取り図であり、シートを示す見取り図である。
【図6】本発明におけるバルブの構造を示す平面図であり、カバーを示す平面図である。
【図7】本発明におけるバルブの構造を示す断面図であり、カバーを示す断面図である。
【図8】本発明におけるバルブを示す図である。
【図9】本発明におけるバルブの構造を示す断面図であり、バルブカバー、バルブシートおよび他の構成要素との相互の位置を示す断面図である。
【図10】本発明におけるバルブの構造を示す断面図であり、バルブシートのレリーフを示す断面図である。
【図11】本発明におけるバルブの構造を示す断面図であり、バルブシートのレリーフを示す断面図である。
【図12】本発明におけるバルブの構造を示す断面図である。
【図13】本発明におけるバルブの構造を示す図であり、図13aはバルブシートの平面図、図13bはバルブシートの側面図、図13cはバルブカバーの平面図、図13dはバルブカバーの側面図、図13eはバルブフラップの平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的作用因に対するマスクであって、
複数の層からなり、
上記層のうち少なくとも一つの層が、フィルタ機能を有し、
酢酸ビニル樹脂によって結合した硼珪酸ミクロガラス繊維によって構成され、
上記繊維のマトリックスは、強靭なセルロースを基にした基質によって保持され、
疎水性を与えるために、シリコンを基にしたコーティング処理が施されることを特徴とするマスク。
【請求項2】
上記複数の層が3層であり、
中央層が請求項1に記載するフィルタ機能を有し、
内部層が形状保持機能を有し、
外部層がカバー機能を有することを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
上記フィルタ層が、150ミクロン〜400ミクロンの厚さであり、25g/m〜65g/mの単位重量であることを特徴とする請求項2に記載のマスク。
【請求項4】
上記内部層がフィルタ層とマスク本体の構造とを支え、
ポリプロピレンまたはポリエステルの繊維からなる不織布によって構成されることを特徴とする請求項2に記載のマスク。
【請求項5】
上記内部層がポリプロピレンの繊維からなる不織布によって構成されることを特徴とする請求項2に記載のマスク。
【請求項6】
上記外部層は、上記フィルタ層を磨耗から保護する機能とともに、
ポリオレフィン、ポリエステルまたはナイロンの繊維からなる不織布によって構成されることを特徴とする請求項2に記載のマスク。
【請求項7】
上記外部層が溶かして吹き付けたポリプロピレン繊維によって構成されることを特徴とする請求項2に記載のマスク。
【請求項8】
さらに呼吸を容易にするためのバルブを備え、
上記バルブは、
上記マスクの装着者が息を吐き出すときに圧力が上昇したことに反応して開き、空気を速やかにマスクの内側から排出するとともに、息を吸い込む間には閉じることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項9】
上記バルブは、安全のために引き出されたバルブカバー、それを覆うバルブシート、および伝達用の開口部とを備えており、
上記バルブシートは、平坦な形状の平面であり、空気の流れを許可するオリフィスを備え、
上記バルブシートの中央には薄い厚みのレリーフが隆起するように形成され、
上記カバーは、空気を通す開口部を備え、上記カバーの内側、かつ、中央には適切なサポートによってバルブフラップ(h)が接続され、
上記バルブフラップは柔軟な素材で構成され、バルブを開閉するときに動く部品であり、
上記バルブは、熱形成に適したさまざまな素材によって構成され、好ましくは鋳造されたポリプロピレンであり、
上記バルブフラップは、弾性のある柔軟な素材から形成され、例えば合成ゴムなどから形成され、
上記バルブは、開口部が形成されたマスクの中央の位置に取り付けられており、
装着者が息を吸い込むとき、上記バルブフラップが上記レリーフに対して密着し、空気が流れ込むことを防ぐとともに、装着者が息を吐き出すとき、バルブフラップがレリーフから持ち上がり、空気が透過し、
すなわち、マスクに入ってくる吸入空気は全面的にマスクのフィルター媒体を通るとともに、排出する空気はマスクの開口部とバルブのオリフィスとを通ることを特徴とする請求項8に記載のマスク。
【請求項10】
上記バルブシートの上記レリーフは、
凹状の表面形状を備えており、
上記レリーフの表面に、連続的なシリンダーの形状のプラスチックが形成され、
上記プラスチックは、
異なったモノマーから得られる合成高分子で形成されており、
異なった配合、例えばフッ素、シリコン、もしくは窒素をベースにした配合から形成されることが可能であり、
寸法や構造といった観点からデザインされており、閉じている間に最も高い密着性を与え、
事実として、バルブフラップがレリーフに対して密着するときには、バルブフラップが直接上記プラスチックに接触し、
そのため、フラップのサポートの配置と上記プラスチックの厚みとによって、バルブフラップはそのエッジの上で曲げられ、
上記バルブフラップの素材は、
上記バルブフラップの素材の固有の塑性復元力と弾性的な特徴によって、上記プラスチックの表面で完全に密着し、
さらに、上記2種類の素材の互換性によって、表面に関する同様の化学的―物理学的特徴を有し、
完全な接着性を保証することができることを特徴とする請求項9に記載のマスク。
【請求項11】
上記バルブシートの上記レリーフが円形であり、
上記バルブフラップが丸みを帯びており、
連続的であり、シリンダーの形状をしている上記プラスチックがOリングであり、
上記Oリングが上記レリーフの全周にわたって配置されていることを特徴とする請求項10に記載のマスク。
【請求項12】
上記バルブが、図13に示される形状および寸法で構成されており、
13a:バルブシートの平面図
x:45mm
y:30mm
z:26mm
13b:バルブシートの側面図
x:1mm
y:4.2mm
z:4mm
13c:バルブカバーの平面図
x:32mm
y:30mm
z:18mm
13d:バルブカバーの側面図
x:8mm
y:3mm
z:1mm
w:3.5mm
13e:バルブフラップ
x(直径):30mm
で構成されていることを特徴とする請求項11に記載のマスク。
【請求項13】
密着性を保証するための境界を密着する層が上記マスクの縁にさらに備えられており、
上記境界の層は、
上記マスクの周囲にそって備えられており、
上記マスクのサイドのジョイント部を起点として形成されており、
上記密着する層は、
どのような形状の顔であっても装着者の顔を完全に覆ってきつく密着し、
上記境界を密着する層が、汚染物質がフィルタ素材によって除去されずにマスク本体を通ることを許してしまう針のあなや歪みがない限り、装着者の顔に対して漏れなく接触するということを保証するということを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項14】
上記境界を密着する層は、天然ゴムのラテックス樹脂またはシリコンを基にした樹脂で形成されることを特徴とする請求項13に記載のマスク。
【請求項15】
上記境界を密着する層は、天然ゴムのラテックスで形成され、
約2mmの幅であり、200g/m〜400g/mの単位重量で塗布されることを特徴とする請求項13に記載のマスク。
【請求項16】
請求項13に記載の上記境界を密着する層に隣接して、細長く、上記境界を密着する層と同じ細長い素材がノーズクリップのエリアに形成されており、
上記細長い素材は、
マスクの装着をより快適にし、
さらに、通常変形やひだが起こりうる鼻の位置でのマスクと顔との密着性を保証することを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項17】
請求項1に記載のマスクを生物的作用因を防ぐ目的で使用する方法。
【請求項18】
請求項1に記載のマスクであり、請求項10に記載する上記バルブをさらに備えたマスクを生物的作用因を防ぐ目的で使用する方法。
【請求項19】
請求項1に記載のマスクであり、請求項10に記載する上記バルブと請求項13に記載する上記境界を密着する層とをさらに備えたマスクを生物的作用因を防ぐ目的で使用する方法。
【請求項20】
C型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、シュードモナス属(Sp. Pseudomonas)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、セラチアマルケシェセンス(Serratia Marcescescens)、炭疽菌(Bacillus Anthracis)を防ぐことを特徴とする請求項17、18または19に記載のマスクを使用する方法。
【請求項21】
請求項10に記載する呼吸を容易にするバルブ。
【請求項22】
請求項11に記載する呼吸を容易にするバルブ。
【請求項23】
生物学的作用因に対して密閉した接着を保証する請求項13に記載する境界を密着する層。
【請求項24】
生物学的作用因に対して密閉した接着を保証する請求項14に記載する境界を密着する層。
【請求項25】
生物学的作用因に対して密閉した接着を保証する請求項15に記載する境界を密着する層。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2007−522867(P2007−522867A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553770(P2006−553770)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【国際出願番号】PCT/IT2005/000060
【国際公開番号】WO2005/077214
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(505179454)シーエル.コム アドバンスト テクノロジー ソシエタ ペル アチオニ (2)
【Fターム(参考)】