生物学的分析物を分析検査するボルタンメトリーシステム
【課題】測定精度が高く、ヘマトクリットの影響を低減した、サンプル中の分析物の濃度を決定するシステム、方法及びデバイスを提供する。
【解決手段】電圧印加を、リニア、サイクリック、または、非サイクリックボルタンメトリースキャン、および/または、準積分、微分、または準微分データ処理を実施することにより測定精度の向上を実現する。またデータ処理と組み合わせることによりまたは、スキャン速度を高速にすることにより、ヘマトクリットの影響を低減させる。
【解決手段】電圧印加を、リニア、サイクリック、または、非サイクリックボルタンメトリースキャン、および/または、準積分、微分、または準微分データ処理を実施することにより測定精度の向上を実現する。またデータ処理と組み合わせることによりまたは、スキャン速度を高速にすることにより、ヘマトクリットの影響を低減させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互引用)
本出願は、2004年5月14日に出願され、参照によりその全体が組み込まれる、「Methods for Using Linear or Cyclic Voltammetry in Assaying Glucose and Other Biological Analytes」という名称の米国仮出願第60/571,388号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
生物学的流体中の分析物の定量的測定は、生理学的異常の診断および処置において有用である。たとえば、血液などの生物学的流体中のグルコース濃度を決定することは、自分の食事および/または薬を調節するために、自分の血糖値を頻繁にチェックしなければならない糖尿病の個人にとって重要である。
【0003】
こうした目的で、電気化学的方法が使用されてきた。電気化学バイオセンサは、全血サンプル中のグルコースの酸化を触媒するために、グルコースオキシダーゼまたはグルコース・デヒドロゲナーゼなどの分析物に特異的な酵素を使用する場合がある。酵素による触媒的酸化中に、酵素の酸化還元中心は分析物から電子を受け取る。
【0004】
この酸化還元中心は、グルコースオキシダーゼのフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、または、グルコース・デヒドロゲナーゼ用のピロロキノリンキノン(PQQ)などの酵素の補因子であってよい。酵素によって取得された電子は、次に、メディエーターによって電極に移動することができ、メディエーターは、酵素の酸化によって、還元形態に変換される。最終的に、フェリシアニド/フェロシアニド酸化還元対のフェロシアニド種などの、還元形態のメディエーターは、電極において酸化されて、測定可能電流が生成される。
【0005】
このプロセスは、以下の式で表すことができる。
(1)グルコース+EOx==ERed+生成物
(2)ERed+nMedOx==nMedRed+EOx
(3)MedRed==MedOx+ne−
ここで、EOxおよびERedは、それぞれ、酵素の酸化還元対の酸化形態および還元形態であり、一方、MedOxおよびMedRedは、それぞれ、メディエーターの酸化形態および還元形態である。酵素反応の生成物は、グルコン酸またはグルコノラクトンであってよい。
【0006】
生物学的流体中の分析物を定量するのに使用されてきた1つの電気化学的方法は、クーロメトリーである。たとえば、Heller他は、米国特許第6,120,676号において、全血グルコース測定のためのクーロメトリー法を述べた。クーロメトリーにおいて、分析物(グルコース)濃度は、小容積内で分析物を完全に酸化させ、酸化期間にわたって電流を積分して、分析物濃度を表す電荷を生成することによって、定量される。換言すれば、クーロメトリーは、センサストリップ内にグルコースの全量を捕捉する。
【0007】
クーロメトリーの重要な態様は、電荷対時間の積分曲線の終わりに向かって、電荷が変化する速度が、比較的一定になって、定常状態条件が生じることである。クーロメトリー曲線のこの定常状態部分は、曲線の比較的平坦なプラトー領域を形成し、そのため、対応する電流の正確な決定が可能になる。しかし、クーロメトリー法では、分析物の全容積の完全な変換を必要とする。結果として、この方法は、時間がかかり、グルコース監視製品などの電気化学デバイスのユーザが要求する迅速な結果を提供しない。クーロメトリーに関する別の問題は、センサセルの小容積が、正確な結果を提供するために、制御されなければならないことであり、これは、大量生産式デバイスに関して難しい場合がある。
【0008】
生物学的流体中の分析物を定量するのに使用されてきた別の電気化学的方法は、アンペロメトリーである。アンペロメトリーにおいて、一定電位(電圧)の期間の終わりに、センサストリップの作用電極と対向電極にまたがって電流が測定される。電流を使用して、生物学的サンプル中の分析物が定量される。アンペロメトリーは、電気化学的に活性な種、したがって、分析物が、酸化されるか、または、還元される速度を測定する。バイオセンサのためのアンペロメトリー法の多くの変形形態は、たとえば、米国特許第5,620,579号、第5,653,863号、第6,153,069号、および第6,413,411号に述べられた。アンペロメトリー法は、分析物の拡散速度およびバルク濃度に比例する電流を測定することによって、電極表面の近くの分析物濃度をサンプリングする。
【0009】
アンペロメトリー法の欠点は、電位印加後に電流が非定常状態になる性質である。時間に対する電流変化速度は、最初は非常に速く、分析が進むにつれて、底流にある拡散プロセスが変化する性質のために、ゆっくりになる。電極表面における還元されたメディエーターの消費速度が、拡散速度に等しくなるまで、定常状態電流を得ることができない。そのため、非定常状態期間中に電流を測定することは、定常状態期間に行われる測定と比べて、より大きな不正確さを伴う場合がある。
【0010】
全血サンプル中の分析物を測定する1つの重要な態様は、ヘマトクリットの影響である。ヘマトクリットは、全血サンプル中の赤血球細胞(RBC)の容積のパーセンテージとして表されたRBCの容積である。全血サンプルについてのヘマトクリット値は、約20〜60%の範囲にあり、通常、約40%である。
【0011】
試薬バイオセンサは、電気化学反応によって血液標本内のグルコースを検出することができる任意のシステムを含む。試薬バイオセンサの例は、インディアナ州エルクハート(Elkhart, Indiana)のBayer HealthCare、LLCから入手可能なAscensia AUTODISC(登録商標)およびElite(登録商標)バイオセンサ;イリノイ州アボット公園(Abbott Park, Illinois)のAbbottから入手可能なPrecision(登録商標)バイオセンサ;インディアナ州インディアナポリス(Indianapolis, Indiana)のロッシュから入手可能なAccucheck(登録商標)バイオセンサ;およびカルフォルニア州ミルピタス(Milpitas, California)のLifescanから入手可能なOneTouch Ultra(登録商標)バイオセンサを含む。
【0012】
典型的な電気化学センサストリップは、作用電極、対向電極、および任意選択の第3電極を含む。基準電位は、適切に構成される場合、対向電極によって、または、任意選択の第3電極によって、システムに供給されてもよい。グルコースオキシダーゼまたはグルコース・デヒドロゲナーゼなどの酵素、および、フェリシアニドまたはルテニウムヘキサミンなどのメディエーターを有する試薬層は、バインダとしてのポリマーによって、作用電極上に、または、作用電極と対向電極上に印刷されるか、または、堆積される。
【0013】
試薬のバインダとして使用されるポリマーの例は、CMC(カルボキシルメチルセルロース)およびPEO(酸化ポリエチレン)を含む。試薬に対する、種々のタイプおよび分子量のポリマーの添加によって、赤血球細胞のろ過が補助され、赤血球細胞が電極表面を被覆することを防止することができる。
【0014】
好ましくは、センサストリップは、米国特許第6,531,040号、第5,798,031号、および第5,120,420号に記載される技法などの複数の技法を使用して、絶縁基材上に電極を印刷することによって作られる。試薬は、グルコースオキシダーゼなどのグルコース酸化酵素、フェリシアニドなどのメディエーター、酸化ポリエチレン(PEO)などの親水性ポリマー、およびクエン酸緩衝液などの適切な緩衝液の混合物によって、作用電極と対向電極上に共に印刷されることができる。
【0015】
あるいは、異なる試薬の化学物質を、2003年10月24日に出願された米国仮特許出願第60/513,817号に記載される方法を使用して、作用電極と対向電極上に、別々に、印刷するか、または、微小堆積することができ、作用電極上の試薬は、酵素、メディエーター、ポリマーを含み、対向電極上の試薬は、メディエーターと同じか、または、異なることができる可溶性酸化還元種およびポリマーを含む。一実施形態では、微小堆積において使用されるポリマーは、カルボキシルメチルセルロースである。
【0016】
本発明による試薬バイオセンサを読み取り取るのに使用されてもよい適した卓上電気化学機器の例は、インディアナ州ウェストラファイエット(West Lafayette, Indiana)のBAS Instrumentsから入手可能なBAS100B分析器;テキサス州オースチン(Austin, Texas)のCH Instrumentsから入手可能なCHインスツルメント分析器;カンザス州ローレンス(Lawrence, Kansas)のCypress Systemsから入手可能なCypress電気化学ワークステーション;およびニュージャージー州プリンストン(Princeton, New Jersey)のPrinceton Research Instrumentsから入手可能なEG&G電気化学機器を含むが、それに限定されない。可搬型機器の例は、Bayer CorporationのAscensia Breeze(登録商標)およびElite(登録商標)メータを含む。
【0017】
グルコース用バイオセンサは、酵素とメディエーターが、電極上に堆積されていてもよい。このセンサがグルコースを測定する能力は、RBCが血液サンプル中で関連する試薬の拡散を阻止するときに影響を受ける。アンペロメトリー電流は、還元形態のメディエーターの拡散に直接比例するため、ヘマトクリットは、グルコース測定の精度に著しい影響を及ぼすことになる。全血サンプル中のヘマトクリットレベルに依存して、RBCはグルコースの読み取り値に偏移をもたらす。
【0018】
得られるグルコース測定値に対する全血のヘマトクリットの影響を低減しようとする試みにおいて、種々の方法および技法が提案されてきた。たとえば、米国特許第6,475,372号においてOhara他は、電気化学的グルコース測定におけるヘマトクリットの影響を補償するために、順方向と逆方向の電位パルスからの電流比を使用する方法を開示した。米国特許第5,708,247号および第5,951,836号においてMcAleer他は、電極表面からRBCをろ過し、それによって、ヘマトクリットの影響を低減するための、シリカ粒子を使用した試薬処方を開示した。米国特許第5,628,890号において、Carter他は、ヘマトクリットの影響のために、血液サンプルを分散させるため、メッシュ層と組み合わせて、電極の広い間隔配置を使用する方法を開示した。
【0019】
ヘマトクリットの影響に起因する偏移を低減するこれらの従来の技法は、(a)ヘマトクリットの影響を最小にするためのポリマーの同時堆積、(b)ポリマー層についてのろ過作用を実施するための種々の種類の溶融シリカの添加、(c)順方向と逆方向の電位パルスからの電流比に基づく補償係数、および(d)全血サンプルの既存の溶液抵抗を利用することによる自己補償を含む。これらの方法は有用である場合があるが、従来のグルコースセンサは、ヘマトクリットの影響に起因する著しい分析偏移を示し続ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第6,120,676号
【特許文献2】米国特許第5,620,579号、
【特許文献3】米国特許第5,653,863号
【特許文献4】米国特許第6,153,069号
【特許文献5】米国特許第6,413,411号
【特許文献6】米国特許第6,531,040号
【特許文献7】米国特許第5,798,031号
【特許文献8】米国特許第5,120,420号
【特許文献9】米国特許第6,475,372号
【特許文献10】米国特許第5,708,247号
【特許文献11】米国特許第5,951,836号
【特許文献12】米国特許第5,628,890号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、ヘマトクリットの影響による偏移を低減する、生物学的流体中の分析物、特に、全血のグルコース内容物を定量するシステムを提供することが、望ましいはずである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
一態様では、本発明は、サンプルに非サイクリックスキャンを適用するステップと、サンプル中の分析物の濃度を決定するステップとを含む、サンプル中の分析物の濃度を決定する方法を提供する。
【0023】
別の態様では、本発明は、サンプル中の分析物の濃度を決定するための、手持ち式分析物測定デバイスを提供する。分析物測定デバイスは、センサストリップを受け取るようになっている非サイクリックスキャン式測定デバイスを含む。非サイクリックスキャン式測定デバイスは、電気回路によって、ディスプレイに電気接続する少なくとも2つのデバイス接点を含む。センサストリップは、導体によって、作用電極と対向電極に電気接続した、少なくとも、第1センサストリップ接点と第2センサストリップ接点を含み、第1試薬層は、電極のうちの少なくとも1つの電極上にあり、第1層は、オキシドレダクターゼおよび酸化還元対の少なくとも1つの種を含む。非サイクリックスキャン式測定デバイスとリニア走査式測定デバイスの両方が提供される。
【0024】
別の態様では、本発明は、サンプル中の分析物の濃度を決定する方法を提供し、方法は、サンプルにボルタンメトリー順方向リニアスキャンを適用するステップと、得られる電流を測定するステップと、測定された電流にデータ処理を適用するステップと、サンプル中の分析物の濃度を決定するステップとを含む。
【0025】
別の態様では、本発明は、サンプル中の分析物の濃度を決定するための、手持ち式測定デバイスを提供し、デバイスは、センサストリップを受け取るようになっている。デバイスは、接点と、少なくとも1つのディスプレイと、接点とディスプレイとの間の電気接続を確立する電子回路要素とを含む。電子回路要素は、電気接続した状態の、電気充電器およびプロセッサとを備え、プロセッサは、コンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードを含むコンピュータ読み取り可能記憶媒体に電気接続する。コンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードは、プロセッサによって実行されると、プロセッサが、準積分、微分、および/または準微分データ処理、ならびに/またはボルタンメトリー走査を実施するようにさせる。
【0026】
本明細書および特許請求の範囲の、明瞭でかつ一貫した理解を可能にするために、以下の定義が設けられる。
用語「メディエーター」は、酸化されるか、または、還元されてもよく、1つまたは複数の電子を移動させてもよい物質として定義される。メディエーターは、電気化学分析における試薬であり、対象の分析物ではないが、分析物の間接測定を可能にする。簡単なシステムでは、メディエーターは、分析物の酸化および還元に応答して酸化還元反応を受ける。酸化されるか、または、還元されたメディエーターは、次に、作用電極において反対の酸化還元反応を受け、その元の酸化数に再生される。
【0027】
用語「酸化還元反応」は、第1の種から第2の種への少なくとも1つの電子の移動を含む2つの種の間の化学反応として定義される。そのため、酸化還元反応は、酸化と還元を含む。反応の酸化半電池(half-cell)は、第1の種による少なくとも1つの電子の喪失を含み、一方、還元半電池は、第2の種に対する少なくとも1つの電子の付加を含む。酸化される種のイオン電荷は、移動する電子数に等しい量だけ、正側でより大きくなる。同様に、還元される種のイオン電荷は、移動する電子数に等しい量だけ、正側でより小さくなる。
【0028】
用語「酸化還元対」は、異なる酸化数を有する化学物質の2つの共役種として定義される。酸化数の高い種の還元は、酸化数の低い種を生成する。あるいは、酸化数の低い種の酸化は、酸化数の高い種を生成する。
【0029】
用語「酸化数」は、原子などの化学種の式量イオン電荷として定義される。たとえば(III)などの、より高い酸化数は、正側でより大きく、(II)などの、より低い酸化数は、正側でより小さい。
【0030】
用語「可逆性酸化還元対」は、準積分の順方向スキャンと逆方向スキャンとの間の分離が、siss遷移の半分の高さで最大30 mVにある酸化還元種の対として定義される。たとえば、図3Bでは、siss遷移高さに加えて、フェリシアニド/フェロシアニド酸化還元対についての順方向準積分スキャンと逆方向準積分スキャンが示される。半分の高さのsiss遷移線が、順方向スキャン線と逆方向スキャン線に交差する線において、線間の分離は、29 mVであり、示すスキャン速度におけるフェリシアニド/フェロシアニド酸化還元対の可逆性が確立される。
【0031】
用語「擬可逆性酸化還元対」は、準積分の順方向スキャンと逆方向スキャンとの間の分離が、酸化還元対についてのsiss遷移の半分の高さで30 mVより大きい酸化還元対として定義される。
【0032】
用語「定常状態」は、電圧に対する電気化学電流が、±10%内または±5%内など比較的一定であるときとして定義される。
用語「反転点」は、順方向スキャンが停止し、逆方向スキャンが開始されるときのサイクリックスキャンまたは非サイクリックスキャンにおける点として定義される。
【0033】
用語「リニアスキャン」は、たとえば、1.0 Vスキャン範囲を設けるために、−0.5 Vから+0.5 Vまでなどで、単一の「順」方向に一定のスキャン速度で電圧が変わるスキャンとして定義される。リニアスキャンは、一連の電位の増分変化により近似することもできる。増分が時間上で非常に接近して起こる場合、増分は連続リニアスキャンに相当する。そのため、リニアな変化を近似する電位変化を適用することは、リニアスキャンと考えてもよい。
【0034】
用語「サイクリックスキャン」は、スキャン範囲が酸化還元対の酸化ピークと還元ピークを含むような、リニア順方向スキャンとリニア逆方向スキャンの組み合わせとして定義される。たとえば、−0.5 Vから+0.5 Vへ、そして、−0.5 Vへ戻るように、サイクリックに電位を変えることは、酸化ピークと還元ピークが共にスキャン範囲に含まれる、グルコースセンサで使用されるフェリシアニド/フェロシアニド酸化還元対のためのサイクリックスキャンの例である。
【0035】
用語「非サイクリックスキャン」は、順方向電流ピークまたは逆方向電流ピークを他方の電流ピークよりも多く含むスキャンとして、一態様において定義される。たとえば、−0.5 Vから+0.5 V、そして、+0.25 Vに戻るなど、逆方向スキャンが停止する電圧と異なる電圧で順方向スキャンが開始するような、順方向リニアスキャンと逆方向リニアスキャンを含むスキャンは、非サイクリックスキャンの例である。別の例では、スキャンが、酸化還元対の式量電位EO/から最大±20 mV、±10 mV、または±5 mV離れた点で開始するときに、非サイクリックスキャンは実質的に同じ電圧で開始し、終了してもよい。別の態様では、非サイクリックスキャンは、酸化還元対の酸化ピークと還元ピークを実質的に排除する順方向リニアスキャンと逆方向リニアスキャンを含むスキャンとして定義される。たとえば、スキャンは、酸化還元対の定常状態領域内で、開始し、反転し、終了してもよく、したがって、対の酸化ピークと還元ピークが排除される。
【0036】
用語「高速スキャン」および「高速スキャン速度」は、電圧が、最小176 mV/秒の速度で変化するスキャンとして定義される。好ましい高速スキャンは、200、500、1000、または2000 mV/秒より大きな速度である。
【0037】
用語「低速スキャン」および「低速スキャン速度」は、電圧が、最大175 mV/秒の速度で変化するスキャンとして定義される。好ましい低速スキャンは、150、100、50、または10 mV/秒より低い速度である。
【0038】
用語「手持ち式デバイス」は、人の手で保持されてもよい、可搬型であるデバイスとして定義される。手持ち式デバイスの例は、Bayer HealthCare(インディアナ州エルクハート(Elkhart, IN))から入手可能なAscensia(登録商標)Elite血液グルコース監視システムを連想させる測定デバイスである。
【0039】
用語「上に(on)」は、「上方に(above)」として定義され、述べられる向きを基準にする(relative to)。たとえば、第1要素が、第2要素の少なくとも一部分を覆って堆積される場合、第1要素は、第2要素の「上に堆積される」と言われる。別の例では、第1要素が、第2要素の少なくとも一部分の上方に存在する場合、第1要素は、第2要素の「上に」あると言われる。用語「上に」の使用は、述べられている上側要素と下側要素の間における物質の存在を排除しない。たとえば、第1要素は、その上部表面を覆って皮膜を、さらに、第1要素の少なくとも一部分を覆って第2要素を有してもよく、その上部皮膜は、第1要素の「上」にあるとして述べることができる。そのため、用語「上に」の使用は、関連する2つの要素が、互いに物理的に接触していることを意味してもよく、意味しなくてもよい。
【0040】
本発明の態様:
態様1:
サンプル中の分析物の濃度を決定する方法であって、
前記サンプルに非サイクリックスキャンを適用するステップと、
前記サンプル中の前記分析物の濃度を決定するステップとを含む方法。
【0041】
態様2:
前記分析物は、グルコース、コレステロール、トリグリセリド、乳酸、ピルビン酸、アルコール、ビリルビン、尿酸、NAD(P)H、および一酸化炭素からなる群から選択される、態様1に記載の方法。
【0042】
態様3:
前記分析物はグルコースである、態様1または2に記載の方法。
態様4:
前記サンプルは生物学的サンプルである、態様1〜3のいずれかに記載の方法。
【0043】
態様5:
前記サンプルは全血である、態様1〜4のいずれかに記載の方法。
態様6:
前記非サイクリックスキャンは、順方向リニアスキャンと逆方向リニアスキャンを含み、前記順方向スキャンは、前記逆方向リニアスキャンが終了する電圧と異なる電圧で開始する、態様1〜5のいずれかに記載の方法。
【0044】
態様7:
前記非サイクリックスキャンは、順方向リニアスキャンと逆方向リニアスキャンを含み、酸化還元対の式量電位EO/から最大±20 mV離れた点で、前記順方向スキャンは開始し、前記逆方向スキャンは終了する、態様1〜6のいずれかに記載の方法。
【0045】
態様8:
前記非サイクリックスキャンは、酸化還元対の定常状態領域内に順方向リニアスキャンと逆方向リニアスキャンを含み、前記スキャンは、10〜200 mVの範囲のスキャンを有する、態様1〜7のいずれかに記載の方法。
【0046】
態様9:
前記非サイクリックスキャンは、最小176 mV/秒の速度で前記スキャンの電圧を変えるステップを含む、態様1〜8のいずれかに記載の方法。
【0047】
態様10:
前記非サイクリックスキャンは、最小500 mV/秒の速度で前記スキャンの電圧を変えるステップを含む、態様1〜9のいずれかに記載の方法。
【0048】
態様11:
前記非サイクリックスキャンは、最大175 mV/秒の速度で前記スキャンの電圧を変えるステップを含む、態様1〜10のいずれかに記載の方法。
【0049】
態様12:
前記非サイクリックスキャンは、最大50 mV/秒の速度で前記スキャンの電圧を変えるステップを含む、態様1〜11のいずれかに記載の方法。
【0050】
態様13:
前記非サイクリックスキャンは、400〜600 mVのスキャン範囲を含む、態様1〜12のいずれかに記載の方法。
【0051】
態様14:
前記非サイクリックスキャンは、600〜1000 mVのスキャン範囲を含む、態様1〜13のいずれかに記載の方法。
【0052】
態様15:
前記非サイクリックスキャンは、最小25 mVの定常状態領域を含む、態様1〜14のいずれかに記載の方法。
【0053】
態様16:
前記スキャンの前記定常状態領域は、電圧に対して最大±10%の電気化学的電流の変化を含む、態様1〜15のいずれかに記載の方法。
【0054】
態様17:
前記非サイクリックスキャンは、25〜400 mVの定常状態領域を提供するために選択された反転点を含む、態様1〜16のいずれかに記載の方法。
【0055】
態様18:
前記非サイクリックスキャンは、反転点から負側に50〜500 mVの電位で終了する逆方向スキャンを含む、態様1〜17のいずれかに記載の方法。
【0056】
態様19:
前記非サイクリックスキャンは、前記逆方向スキャンの電流が、定常状態電流から最小25%だけ偏移すると終了する逆方向スキャンを含む、態様1〜18のいずれかに記載の方法。
【0057】
態様20:
前記非サイクリックスキャンは、酸化還元対の2つの種の間で最小100:1の濃度比を提供する少なくとも1つの電圧を含む、態様1〜19のいずれかに記載の方法。
【0058】
態様21:
前記非サイクリックスキャンは、作用電極における最小180 mVの少なくとも1つの電位を含む、態様1〜20のいずれかに記載の方法。
【0059】
態様22:
前記決定することは、準積分データ処理を含む、態様1〜21のいずれかに記載の方法。
態様23:
前記準積分データ処理は、前記非サイクリックスキャンからの電流値を準積分し、定常状態準積分電流を決定するステップを含む、態様1〜22のいずれかに記載の方法。
【0060】
態様24:
前記準積分データ処理は、少なくとも1つのヘマトクリットによって影響を受けた平衡電流から少なくとも1つの定常状態電流を分離する、態様1〜23のいずれかに記載の方法。
【0061】
態様25:
前記準積分は、少なくとも1つの半ステップ積分を含む、態様1〜24のいずれかに記載の方法。
【0062】
態様26:
前記準積分データ処理は時間依存因子を欠く、態様1〜25のいずれかに記載の方法。
態様27:
前記決定することは、ピーク電流値と定常状態電流値との比を決定するステップを含むヘマトクリット補償を含む、態様1〜26のいずれかに記載の方法。
【0063】
態様28:
前記決定することは、微分データ処理を含む、態様1〜27のいずれかに記載の方法。
態様29:
前記決定することは、負側のピークを正側のピークで除算するステップを含むヘマトクリック補償を含む、態様1〜28のいずれかに記載の方法。
【0064】
態様30:
前記決定することは、準微分データ処理を含む、態様1〜29のいずれかに記載の方法。
態様31:
前記準微分データ処理は、ボルタンメトリー電流領域の少なくとも一部分をピークに変換する、態様1〜30のいずれかに記載の方法。
【0065】
態様32:
前記決定することは、少なくとも1つの定常状態電流値を補償式に入力するステップを含む、態様1〜31のいずれかに記載の方法。
【0066】
態様33:
前記サンプル中の前記分析物の濃度を決定することは、前記非サイクリックスキャンをクーロメトリーに置き換えた場合に比べて、基準機器から得られる濃度値により近い濃度値を提供する、態様1〜32のいずれかに記載の方法。
【0067】
態様34:
サンプル中の分析物の濃度を決定するための、手持ち式分析物測定デバイスであって、センサストリップを受け取るようになっている非サイクリックスキャン式測定デバイスを備え、
前記非サイクリックスキャン式測定デバイスは、電気回路によって、ディスプレイに電気接続する少なくとも2つのデバイス接点を備え、
前記センサストリップは、少なくとも第1センサストリップ接点および第2センサストリップ接点を備え、前記第1センサストリップ接点は導体によって作用電極に電気接続し、前記第2センサストリップ接点は導体によって対向電極に電気接続し、
第1試薬層は、前記電極のうちの少なくとも1つの電極上にあり、前記第1試薬層は、オキシドレダクターゼおよび酸化還元対の少なくとも1つの種を含むデバイス。
【0068】
態様35:
前記分析物はグルコースである、態様34に記載のデバイス。
態様36:
前記第1試薬層は、少なくとも前記作用電極と前記対向電極上にある、態様34または35に記載のデバイス。
【0069】
態様37:
少なくとも前記対向電極上に第2試薬層を含み、前記第2試薬層は、酸化還元対の少なくとも1つの種を含む、態様34〜36のいずれかに記載のデバイス。
【0070】
態様38:
前記電気回路は、前記サンプルを含む前記センサストリップに非サイクリックスキャンを適用する手段を備える、態様34〜37のいずれかに記載のデバイス。
【0071】
態様39:
前記非サイクリックスキャンは、順方向リニアスキャンと逆方向リニアスキャンを含み、前記順方向スキャンは、前記逆方向直線スキャンが停止する電圧と異なる電圧で開始する、態様34〜38のいずれかに記載のデバイス。
【0072】
態様40:
前記非サイクリックスキャンは、順方向リニアスキャンと逆方向リニアスキャンを含み、酸化還元対の式量電位EO/から最大±20 mV離れた点で、前記順方向スキャンは開始し、前記逆方向スキャンは終了する、態様34〜39のいずれかに記載のデバイス。
【0073】
態様41:
前記非サイクリックスキャンは、酸化還元対の定常状態領域内に順方向リニアスキャンと逆方向リニアスキャンを含み、前記スキャンは、10〜200 mVのスキャン範囲を有する、態様34〜40のいずれかに記載のデバイス。
【0074】
態様42:
サンプル中の分析物の濃度を決定する方法であって、
前記サンプルにボルタンメトリー順方向リニアスキャンを適用するステップと、
得られる電流を測定するステップと、
前記測定された電流にデータ処理を適用するステップと、
前記サンプル中の前記分析物の濃度を決定するステップとを含む方法。
【0075】
態様43:
前記分析物はグルコースである、態様42に記載の方法。
態様44:
前記サンプルは全血である、態様42または43のいずれかに記載の方法。
【0076】
態様45:
前記順方向リニアスキャンの反転点において、前記サンプルにボルタンメトリー逆方向リニアスキャンを適用するステップをさらに含む、態様42〜44のいずれかに記載の方法。
【0077】
態様46:
前記ボルタンメトリー順方向リニアスキャンと前記ボルタンメトリー逆方向リニアスキャンは、サイクリックスキャンを形成する、態様42〜45のいずれかに記載の方法。
【0078】
態様47:
前記順方向スキャンは、最小176 mV/秒の速度で前記スキャンの電圧を変えるステップを含む、態様42〜46のいずれかに記載の方法。
【0079】
態様48:
前記順方向スキャンは、最小500 mV/秒の速度で前記スキャンの電圧を変えるステップを含む、態様42〜47のいずれかに記載の方法。
【0080】
態様49:
前記順方向スキャンは、400〜1000 mVのスキャン範囲を含む、態様42〜48のいずれかに記載の方法。
【0081】
態様50:
前記逆方向スキャンは、最小25 mVの定常状態領域を含む、態様42〜49のいずれかに記載の方法。
【0082】
態様51:
前記スキャンの前記定常状態領域は、電圧に対して最大±10%の電気化学的電流の変化を含む、態様42〜50のいずれかに記載の方法。
【0083】
態様52:
前記反転点は、25〜400 mVの定常状態領域を提供するために選択される、態様42〜51のいずれかに記載の方法。
【0084】
態様53:
前記順方向スキャンは、酸化還元対の2つの種の間で最小100:1の濃度比を提供する少なくとも1つの電圧を含む、態様42〜52のいずれかに記載の方法。
【0085】
態様54:
前記順方向スキャンは、作用電極における最小180 mVの少なくとも1つの電位を含む、態様42〜53のいずれかに記載の方法。
【0086】
態様55:
前記データ処理は、準積分、微分、準微分、およびその組み合わせからなる群から選択される、態様42〜54のいずれかに記載の方法。
【0087】
態様56:
前記データ処理は、準積分データ処理を含む、態様42〜55のいずれかに記載の方法。
態様57:
前記データ処理は、前記順方向リニアスキャンからの電流を準積分し、定常状態準積分電流を決定するステップを含む、態様42〜56のいずれかに記載の方法。
【0088】
態様58:
前記準積分データ処理は時間依存因子を欠く、態様42〜57のいずれかに記載の方法。
態様59:
前記データ処理は、準微分データ処理を含む、態様42〜58のいずれかに記載の方法。
【0089】
態様60:
前記準微分データ処理は、ボルタンメトリー電流領域の少なくとも一部分をピークに変換する、態様42〜59のいずれかに記載の方法。
【0090】
態様61:
前記決定することは、ヘマトクリット補償を含む、態様42〜60のいずれかに記載の方法。
【0091】
態様62:
前記補償は、ピーク電流値と定常状態電流値との比を決定するステップを含む、態様42〜61のいずれかに記載の方法。
【0092】
態様63:
前記決定することは、少なくとも1つの定常状態電流値を補償式に入力するステップを含む、態様42〜62のいずれかに記載の方法。
【0093】
態様64:
前記サンプル中の前記分析物の濃度を決定することは、前記ボルタンメトリー順方向リニアスキャンをクーロメトリーに置き換えた場合に比べて、基準機器から得られる濃度値により近い濃度値を提供する、態様42〜63のいずれかに記載の方法。
【0094】
態様65:
サンプル中の分析物の濃度を決定するための、手持ち式分析物測定デバイスであって、センサストリップを受け取るようになっているボルタンメトリー走査式測定デバイスを備え、
前記ボルタンメトリー走査式測定デバイスは、電気回路によって、ディスプレイに電気接続する少なくとも2つのデバイス接点を備え、
前記センサストリップは、少なくとも、第1センサストリップ接点および第2センサストリップ接点を備え、前記第1センサストリップ接点は導体によって作用電極に電気接続し、前記第2センサストリップ接点は導体によって対向電極に電気接続し、
第1試薬層は、前記電極のうちの少なくとも1つの電極上にあり、前記第1試薬層は、オキシドレダクターゼおよび酸化還元対の少なくとも1つの種を含むデバイス。
【0095】
態様66:
前記分析物はグルコースである、態様65に記載のデバイス。
態様67:
前記ボルタンメトリー走査は、リニアスキャンを含む、態様65または66のいずれかに記載のデバイス。
【0096】
態様68:
前記ボルタンメトリー走査は、サイクリックスキャンを含む、態様65〜67のいずれかに記載のデバイス。
【0097】
態様69:
前記第1試薬層は、少なくとも、前記作用電極と前記対向電極上にある、態様65〜68のいずれかに記載のデバイス。
【0098】
態様70:
前記対向電極上に第2試薬層をさらに含み、前記第2試薬層は、酸化還元対の少なくとも1つの種を含み、
前記第1試薬層は、前記作用電極上にある、態様65〜69のいずれかに記載のデバイス。
【0099】
態様71:
前記電気回路は、前記サンプルを含む前記センサストリップにボルタンメトリースキャンを適用する手段を備える、態様65〜70のいずれかに記載のデバイス。
【0100】
態様72:
前記センサストリップにボルタンメトリースキャンを適用する手段は、前記センサストリップにリニアスキャンを適用する手段を備える、態様65〜71のいずれかに記載のデバイス。
【0101】
態様73:
前記センサストリップにボルタンメトリースキャンを適用する手段は、前記センサストリップにサイクリックスキャンを適用する手段を備える、態様65〜72のいずれかに記載のデバイス。
【0102】
態様74:
サンプル中の分析物の濃度を決定するための、手持ち式測定デバイスであって、
デバイスは、センサストリップを受け取るようになっており、デバイスは、
接点と、
少なくとも1つのディスプレイと、
前記接点と前記ディスプレイとの間の電気接続を確立する電子回路要素とを備え、前記電子回路要素は、
電気接続した状態の、電気充電器およびプロセッサとを備え、前記プロセッサは、コンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードを含むコンピュータ読み取り可能記憶媒体に電気接続し、前記コンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードは、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサが、準積分、微分、準微分、およびその組み合わせからなる群から選択されるデータ処理を実施するようにさせるデバイス。
【0103】
態様75:
前記分析物はグルコースである、態様74に記載のデバイス。
態様76:
前記データ処理は、準積分データ処理を含む、態様74または75に記載のデバイス。
【0104】
態様77:
前記データ処理は、微分データ処理を含む、態様74〜76のいずれかに記載のデバイス。
態様78:
前記データ処理は、準微分データ処理を含む、態様74〜77のいずれかに記載のデバイス。
【0105】
態様79:
前記コンピュータ読み取り可能記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードをさらに含み、前記コンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードは、前記プロセッサによって実行されると、前記電気充電器が、前記接点を通してボルタンメトリックスキャンを適用するようにさせる、態様74〜78のいずれかに記載のデバイス。
【0106】
態様80:
前記コンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードは、前記プロセッサによって実行されると、前記電子回路要素が、態様1〜33および42〜64のいずれかに記載の方法を実施するようにさせる、態様74〜79のいずれかに記載のデバイス。
【0107】
態様81:
前記コンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードは、前記プロセッサによって実行されると、前記電子回路要素が、態様1〜33および42〜64のいずれかに記載の方法を実施するようにさせる、態様74〜79のいずれかに記載のデバイス。
【0108】
態様82:
サンプル中の分析物の濃度を決定するための、手持ち式測定デバイスであって、
デバイスは、センサストリップを受け取るようになっており、デバイスは、
接点と、
少なくとも1つのディスプレイと、
前記接点と前記ディスプレイとの間の電気接続を確立する電子回路要素とを備え、前記電子回路要素は、
電気接続した状態の、電気充電器およびプロセッサとを備え、前記プロセッサは、コンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードを含むコンピュータ読み取り可能記憶媒体に電気接続し、前記コンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードは、前記プロセッサによって実行されると、前記充電器が、前記接点を通してボルタンメトリースキャンを適用するようにさせるデバイス。
【0109】
態様83:
前記ボルタンメトリースキャンは、非サイクリックスキャンを含む、態様82に記載のデバイス。
【0110】
態様84:
前記ボルタンメトリースキャンは、リニアスキャンを含む、態様82または83に記載のデバイス。
【0111】
態様85:
前記ボルタンメトリースキャンは、サイクリックスキャンを含む、態様82〜84のいずれかに記載のデバイス。
【0112】
態様86:
前記コンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードは、前記プロセッサによって実行されると、前記電子回路要素が、態様1〜33および42〜64のいずれかに記載の方法を実施するようにさせる、態様82〜85のいずれかに記載のデバイス。
【0113】
態様87:
前記コンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードは、前記プロセッサによって実行されると、前記電子回路要素が、態様1〜33および42〜64のいずれかに記載の方法を実施するようにさせる、態様82〜85のいずれかに記載のデバイス。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】図1Aは、典型的なセンサストリップの作用電極と対向電極の平面図である。図1Bは、典型的なセンサストリップの作用電極と対向電極の端面図である。
【図2A】図2Aおよび図2Bは、図1A〜図1Bのセンサストリップの外面図である。
【図2B】図2Aおよび図2Bは、図1A〜図1Bのセンサストリップの外面図である。
【図2C】図2Cは、測定手段の略図である。
【図3A】図3Aは、センサシステムからのサイクリックボルタモグラムを示すグラフである。
【図3B】図3Bは、図3Aのサイクリックボルタモグラムに相当する準積分のグラフである。
【図3C】図3Cは、逆方向電流ピークが始動する前に逆方向スキャンが終了する、非サイクリックスキャンを示す図である。
【図3D】図3Dは、非サイクリックデータの準積分を示す図である。
【図3E】図3Eは、サイクリックスキャンを非サイクリックスキャンと比較する図であり、非サイクリックスキャンの順方向スキャンが、酸化還元対についての式量電位EO/の近くで開始したことを表している。
【図3F】図3Fは、図3Eの準積分電流を比較する図である。
【図3G】図3Gは、非サイクリックスキャンが、定常状態領域で重なった状態のサイクリックスキャンを示す図である。
【図3H】図3Hは、図3Gの非サイクリックスキャンについて、準積分と記録された電流値とを比較する図である。
【図4A】図4Aは、20%ヘマトクリット全血サンプル中の16 mMフェロシアニドのサイクリックボルタモグラム、準積分、および準微分を示す図である。
【図4B】図4Bは、図4Aの準微分曲線の拡大図である。
【図4C】図4Cは、図7Aのサイクリックボルタモグラムの順方向リニアスキャンからの準微分を示す図である。
【図4D】図4Dは、図7Bのサイクリックボルタモグラムの順方向リニアスキャンからの準微分を示す図である。
【図4E】図4Eは、図7Cのサイクリックボルタモグラムの順方向リニアスキャンからの準微分を示す図である。
【図4F】図4Fは、図4C〜4Eからの準微分電流を示す図である。
【図4G】図4Gは、ボルタモグラムの不変順方向スキャン(LS)、ボルタモグラムデータの準積分(si)、およびボルタモグラムデータの準微分(sd)からの計算されたグルコース値の比較を示す図である。
【図5】図5は、水性溶液内の種々のグルコース濃度の影響を示す一組のサイクリックボルタモグラムである。
【図6】図6は、図5のボルタモグラムの準積分電流を示す図である。
【図7A】図7A〜図7Cは、全血内のヘマトクリットパーセンテージとグルコース濃度の変化の影響を示すサイクリックボルタモグラムである。
【図7B】図7A〜図7Cは、全血内のヘマトクリットパーセンテージとグルコース濃度の変化の影響を示すサイクリックボルタモグラムである。
【図7C】図7A〜図7Cは、全血内のヘマトクリットパーセンテージとグルコース濃度の変化の影響を示すサイクリックボルタモグラムである。
【図7D】図7D〜図7Fは、全血内のヘマトクリットパーセンテージとグルコース濃度の変化の影響を示す非サイクリックボルタモグラムである。
【図7E】図7D〜図7Fは、全血内のヘマトクリットパーセンテージとグルコース濃度の変化の影響を示す非サイクリックボルタモグラムである。
【図7F】図7D〜図7Fは、全血内のヘマトクリットパーセンテージとグルコース濃度の変化の影響を示す非サイクリックボルタモグラムである。
【図8A】図8Aは、図7Aの準積分電流を示す図である。
【図8B】図8Bは、図7Bの準積分電流を示す図である。
【図8C】図8Cは、図7Cの準積分電流を示す図である。
【図8D】図8Dは、図7Dの準積分電流を示す図である。
【図8E】図8Eは、図7Eの準積分電流を示す図である。
【図8F】図8Fは、図7Fの準積分電流を示す図である。
【図9A】図9A〜図9Cは、ヘマトクリットの影響に対する種々の走査速度の影響を示すサイクリックボルタモグラムである。
【図9B】図9A〜図9Cは、ヘマトクリットの影響に対する種々の走査速度の影響を示すサイクリックボルタモグラムである。
【図9C】図9A〜図9Cは、ヘマトクリットの影響に対する種々の走査速度の影響を示すサイクリックボルタモグラムである。
【図10A】図10Aは、図9Aのサイクリックスキャンに相当する準積分電流を示す図である。
【図10B】図10Bは、図9Bのサイクリックスキャンに相当する準積分電流を示す図である。
【図10C】図10Cは、図9Cのサイクリックスキャンに相当する準積分電流を示す図である。
【図11A】図11Aは、図9Aの実験結果に基づく図10Aの準積分線と、各サンプルの基準グルコース濃度との相関を示す図である。
【図11B】図11Bは、図9Bの実験結果に基づく図10Bの準積分線と、各サンプルの基準グルコース濃度との相関を示す図である。
【図11C】図11Cは、図9Cの実験結果に基づく図10Cの準積分線と、各サンプルの基準グルコース濃度との相関を示す図である。
【図12】図12は、ヘマトクリット指数を決定するのに使用されてもよい、準積分電流ピークおよび準積分電流定常状態値を示す図である。
【図13A】図13Aは、全血のヘマトクリット含有量に関するヘマトクリット指数の相関を示す図である。
【図13B】図13Bは、図11Aから導出される%−ヘマトクリットに対する電流/グルコース(μA/mg/dL)の較正線の傾斜を示す図である。
【図14】図14は、ヘマトクリット指数を使用して、ヘマトクリットについて、グルコース含有量(mg/dL)を補正する作用を示す図である。
【図15A】図15A〜図15Cは、電圧に対してプロットされた図7Aからの順方向スキャンの微分電流を示す図である。
【図15B】図15A〜図15Cは、電圧に対してプロットされた図7Bからの順方向スキャンの微分電流を示す図である。
【図15C】図15A〜図15Cは、電圧に対してプロットされた図7Cからの順方向スキャンの微分電流を示す図である。
【図16A】図16Aは、20、40、および60%ヘマトクリットにおける、グルコース濃度に対する0.3ボルトの電流のプロットである。
【図16B】図16Bは、図15に示す、負側ピークと正側ピークとの比に対する%−ヘマトクリットのプロットである。
【図16C】図16Cは、%−ヘマトクリットに対する図16Aの曲線の傾斜のプロットである。
【図16D】図16Dは、微分電流を使用した、ヘマトクリットについてのグルコース含有量の補正の作用を示す図である。
【図17A】図17A〜図17Bは、非サイクリックスキャンの、それぞれ、記録された電流値と準積分電流値についての適用量応答プロットを示す図である。
【図17B】図17A〜図17Bは、非サイクリックスキャンの、それぞれ、記録された電流値と準積分電流値についての適用量応答プロットを示す図である。
【図17C】図17Cは、非サイクリックスキャンから得られるグルコース濃度値の精度を、低速スキャン速度を有するサイクリックスキャンから得られるグルコース濃度値の精度と比較する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0115】
電気化学分析システムは、全血のグルコース濃度などの、生物学的流体中の分析物の濃度を決定する。システムは、生物学的サンプルを含むセンサストリップに、ボルタンメトリーリニアスキャン、サイクリックスキャン、または非サイクリックスキャンを適用してもよい。ボルタンメトリースキャンは、ストリップに印加される電位(電圧)を時間に対してリニアに変えながら、センサストリップからの電流(アンペア)を測定する。デバイスは、得られる電流および電圧データを比較して、サンプル中の分析物の濃度を決定し、一方、特定の血液サンプルのヘマトクリット含有量の変動について結果を補正する。デバイスはまた、ボルタンメトリーデータを比較し、補正するために、準積分、微分、および準微分に基づく処理を含む、1つまたは複数のデータ処理を適用してもよい。
【0116】
システムは、一般に、全血サンプル中のグルコースの濃度を決定する文脈で述べられる。しかし、システムには、コレステロール、トリグリセリン、乳酸、ピルビン酸、アルコール、ビリルビン、尿酸、NAD(P)H、および一酸化炭素などの分析物が、血漿、尿素、唾液、および間質液を含む生物学的流体中で見出される他の用途がある。
【0117】
システム概要
分析物濃度を決定するシステムは、サンプルを含むセンサストリップと、1つまたは複数の走査技法および1つまたは複数のデータ処理を実施する測定デバイスとを含んでもよい。一態様では、本発明は、1つまたは複数のセンサストリップと、分析物の濃度を出力するための、走査技法およびデータ処理を実施する手持ち式電子デバイスとを含むキットであってよい。
【0118】
センサストリップは、作用電極と対向電極とを含んでもよく、任意選択で、参照電極または第3電極を含んでもよい。一態様では、作用電極および対向電極は、Ascensia(登録商標)AUTODISCセンサにおいてなどで、共に印刷/共に堆積することによって、単一試薬層で被覆されてもよい。別の態様では、各電極は、試薬層がその上に存在する電極について最適化された試薬層で被覆されてもよい。作用電極の試薬層は、血液サンプル中のグルコースを酸化する酵素、および、グルコースを酸化することによって還元された後の酵素を再酸化させる酸化還元化合物などのメディエーターを含む。グルコース酸化の酵素反応によって電極に電子を運ぶ、還元されたメディエーターは、作用電極の表面において再酸化する。
【0119】
この再酸化によって、電極およびセンサストリップの導体を通る電子の通過が生じる。センサストリップの導体は、電極間に電圧差を印加する測定デバイスに電気接続する。デバイスは、血液サンプルのグルコース含有量の尺度として、センサを通過する電流を記録してもよい。
【0120】
全血サンプルは、センサストリップに塗布され、血液内のグルコースは、試薬層内の、または、試薬層に非常に接近した酵素と反応する。サンプルから作用電極までの還元されたメディエーターの拡散速度は、作用電極と対向電極との間を通過する電流を制限することがある。
【0121】
走査技法
一定電圧を印加し、一方、時間の関数として電流を測定する従来のアンペロメトリーおよびクーロメトリーと違って、ボルタンメトリー走査は、固定速度(V/秒)で電極にまたがって電位(電圧)を印加すること、および、印加された電位の関数として電流を測定することを含む。ボルタンメトリー走査は、リニア方式、サイクリック方式、または、非サイクリック方式で実施することができる。サイクリックボルタンメトリー走査は、一般に、「サイクリックボルタンメトリー」と呼ばれる。
【0122】
リニアスキャン中に、作用電極の電流を測定し、その間、作用電極の電位は、一定の速度で時間と共に直線的に変化する。−0.5 V〜+0.5 Vなどのスキャン範囲は、1つの状態から他の状態への遷移が起こるように、酸化還元対の還元状態と酸化状態をカバーしてもよい。作用電極で測定される電流は、3つの成分、すなわち、平衡電流、拡散電流、および表面電流を有するものと考えることができる。電極上で吸収された任意の種から引き出される可能性がある表面電流は、概して小さく、無視することもできる。平衡電流と拡散電流は、得られるボルタモグラムで示される主要成分である。
【0123】
リニアスキャン・ボルタモグラム(電流対電圧のプロット)は、平衡電流で開始し、ピーク電流に達し、スキャン中に低い電流レベルに減衰するプロットを特徴としてもよい。初期ピーク電流後、測定電流は減衰し、定常状態領域に近づき、定常状態では、電極表面における還元されたメディエーターの酸化は、拡散によって制限された最大速度に達する。そのため、スキャンのこのプラトー領域における定常状態電流は、電極を通過する、拡散によって制限された電流を意味し、拡散によって制限された電流は、血液サンプルのグルコース含有量の尺度として使用することができる。
【0124】
サイクリックスキャンまたは非サイクリックスキャンについて、順方向スキャンの終了後に、順方向スキャンと実質的に同じスキャン速度で、逆方向電位リニアスキャンが適用される。サイクリックスキャン、場合によっては、非サイクリックスキャンは、印加された電位に関連して、または、電極表面に対する酸化還元種の拡散速度に関連して、還元状態から酸化状態へ(また、その逆)の酸化還元種の遷移を調べてもよい。
【0125】
リニアスキャンに関連して、サイクリックスキャンおよび非サイクリックスキャンは、スキャンの定常状態(拡散で制限された)部分のよりよい表現を提供する場合がある。サイクリックスキャンおよび非サイクリックスキャンの利点は、高速スキャン速度における擬可逆性酸化還元対による定常状態電流を定量するのに特に有利である場合がある。リニアおよびサイクリックスキャンボルタンメトリーに関するさらなる情報は、A.J. BardおよびL.R. Faulknerによる「Electrochemical Methods: Fundamentals and Applications」(1980)に見出されてもよい。
【0126】
非サイクリックスキャンは、サイクリックスキャンに比べて、スキャン時間が短いことおよび測定可能な状態に電気化学的に変換されるメディエーターの量が実質的に少ないことを含む、複数の利点を有することができる。そのため、メディエーターが、分析物に応答して還元され、測定中に、電気化学的に酸化される場合、酸化されたメディエーターが電気化学的に還元される前に逆方向スキャンを終了させることは、分析物に応答せずに、サンプル中の還元されたメディエーターの量を減らす。スキャン時間を減らすことによって、分析時間の短縮、ユーザにとっての著しい利益が可能になる場合がある。
【0127】
図3Aは、フェリシアニド/フェロシアニド酸化還元対の25 mV/秒サイクリックスキャンによるデータを、サイクリックボルタモグラムとして示す。ボルタモグラムは、フェロシアニドの酸化を示す−0.3 Vから+0.6 Vまでの正側の電圧スキャン中の順方向スキャンピーク、および、フェリシアニドの還元を示す+0.6 Vから−0.3 Vまでの負側の電圧スキャン中の逆方向スキャンピークが特徴である。順方向および逆方向のスキャンピークは、対向電極を基準とすると、フェロシアニド/フェリシアニド酸化還元対の式量電位EO/(−0.05 mV)の周りに集中する。この態様では、対向電極の電位は、フェロシアニド、対向電極上に存在する主要な酸化還元種の還元電位によって実質的に決まる。図3Bは、ボルタモグラムデータの準積分を提示し、このデータ処理方法が未処理データに及ぼす影響を示す。図3Cは、匹敵する非サイクリックスキャンを示し、逆方向スキャンは、逆方向電流ピークの始動前に終了する。図3Dは、非サイクリックスキャンの準積分を提示する。
【0128】
走査プロセスは、電位が、式量電位EO /に対して増加するにつれて、作用電極の近くでの電流を益々大きくする。同時に、電極表面における酸化は、空乏エリア、したがって、電極の近くでの濃度勾配を生成する。この濃度勾配は、さらなるメディエーターが、電極に向かって拡散する駆動力を作る。組み合わせると、これらの力は、分析物によって還元されたメディエーターまたはオキシドレダクターゼが、作用電極へ移動し、再酸化するにつれて、ボルタモグラムにおいて初期順方向ピークを提供する。スキャンが続くにつれて、電流は、減衰し、図3Aの〜0.3 Vから〜0.6 Vの、定常状態領域に近づく。定常状態領域で測定された電流は、還元されたメディエーターの濃度、したがって、血液サンプルのグルコース含有量に関連付けられてもよい。
【0129】
順方向スキャンおよび逆方向スキャンが開始する電位(スキャン範囲)は、酸化還元対の還元状態と酸化状態にまたがるように選択されてもよいが、スキャン範囲は、分析時間を短縮するように減らされてもよい。しかし、スキャン範囲は、好ましくは、酸化還元対について定常状態領域を含む。たとえば、25 mV/秒のスキャン速度において、フェロシアニド/フェリシアニド可逆性酸化還元対の還元された[Red]種および酸化された[Ox]種の濃度ならびに得られる電極電位は、ネルンストの式によって以下のように記述される。
【0130】
【数1】
【0131】
作用電極の電位が、それ自体の酸化還元電位を基準にすると、式量電位EO /は、実質的にゼロになり、式は、元の形でなくなり、
【0132】
【数2】
【0133】
になる。式(1)から、酸化されたメディエーターと還元されたメディエーターの比が、10だけ変化すると、作用電極の電位は、約60 mVだけ変化する。逆もまた真である。そのため、10:1、100:1、1000:1、および10,000:1のフェリシアニド[Ox]とフェロシアニド[Red]の濃度比の場合、作用電極の電位は、ゼロ電位から、それぞれ、約60、120、180、および240 mV離れていることになる。
【0134】
したがって、フェリシアニドとフェロシアニドの比が、〜1000:1であるときに、+180 mV〜−180 mVのスキャン範囲が、作用電極における、還元された種の実質的に完全な酸化を提供するはずである。180 mVにおいて、酸化速度は、還元された形態のメディエーターが、電極表面にどれだけ速く拡散することができるかによって制限され、この電位から順方向に、拡散によって制限される定常状態電流領域が存在する。そのため、反転点が、ゼロ電位から〜400 mVに設定される場合、定常状態の〜200 mVが設けられてもよい。
【0135】
可逆性システムの場合、400〜600 mVのスキャン範囲を設けること、したがって、酸化還元対の式量電位EO /の両側に200から300 mVまで走査することが望ましい場合がある。擬可逆性システムの場合、600〜1000 mVのスキャン範囲を設けること、したがって、酸化還元対の式量電位EO /の両側に300から500 mVまで走査することが望ましい場合がある。スキャンの定常状態部分が、スキャンのプラトー領域がそれほど広くないところで起こる場合があるため、擬可逆性システムの場合、より大きなスキャン範囲が好ましい場合がある。本質的に、擬可逆性である酸化還元対に加えて、高速スキャン速度によって、低速スキャン速度で可逆性である酸化還元対が、擬可逆性挙動を示す場合がある。そのため、高速スキャン速度における可逆性酸化還元対について、より大きな擬可逆性スキャン範囲を設けることが好ましい場合がある。
【0136】
好ましくは、少なくとも25、50、100、150、または300 mVの定常状態領域は、選択されたスキャン範囲によって提供される。別の態様では、サイクリックスキャンまたは非サイクリックスキャンについての反転点は、25〜400 mV、50〜350 mV、100〜300 mV、または175〜225 mVの定常状態領域が提供されるように選択される。可逆性システムの場合、サイクリックスキャンまたは非サイクリックスキャンについての反転点は、定常状態領域の180〜260 mV、または200〜240 mVが提供されるように選択される。擬可逆性システムの場合、サイクリックスキャンまたは非サイクリックスキャンについての反転点は、定常状態領域の180〜400 mV、または200〜260 mVが提供されるように選択される。
【0137】
反転点が、所望の定常状態領域を提供するように選択されると、逆方向スキャンの継続時間が、非サイクリックスキャンについて選択されてもよい。図3Eで見てわかるように、約−0.025 mVで、順方向スキャンを開始し、逆方向スキャンを終了させることは、逆方向電流ピークより順方向電流ピークを多く含んだ非サイクリックスキャンをもたらした。図3Eの比較から、サイクリックスキャン(a)および非サイクリックスキャン(b)について得られたピーク電流は異なるが、スキャンの定常状態部分は、特に、逆方向スキャンについてほぼ同様であった。スキャンの準積分が、図3Fにおいてプロットされると、逆方向スキャンのプラトー領域の定常状態電流の読み取りがさらに確立され、反転点から最大50 mVにおいて正確な電流の読み取りが可能になった。
【0138】
別の態様では、逆方向スキャンは、図3Cに示すように、逆方向電流ピークに達する前に終了してもよい。順方向スキャンが、図3Cの−0.05 mVなどの、酸化還元対の電位範囲の中央に対して、図3Cの−0.3 mVなどの、十分に負側の電位で開始したとき、順方向スキャンは、酸化還元対の酸化還元電位の全範囲を含んだ。そのため、たとえば、反転点から負側に、50〜500 mV、150〜450 mV、または300〜400 mVの電位で逆方向スキャンを終了させることによって、逆方向電流ピークは、フェリシアニド/フェロシアニド酸化還元対について排除される。
【0139】
同様に、逆方向スキャン電流が、定常状態電流から所定値だけ偏移するときにスキャンを終了させることによって、逆方向電流ピークに達する前に、逆方向スキャンが、終了させられてもよい。最小2%、5%、10%、または25%の逆方向スキャン電流の変化が、逆方向スキャン電流ピークの開始を指示するのに使用されてもよい。
【0140】
図3Gは、酸化還元対の順方向酸化ピークと逆方向酸化ピークを排除する非サイクリックスキャンを高速サイクリックスキャンと比較する。非サイクリックスキャン速度は、速く(1 V/秒)、200 mVの開始点と終了点、および300 mVの反転点を有した。順方向酸化ピークと逆方向酸化ピークを排除する酸化還元対の定常状態領域内の非サイクリックスキャンについての好ましいスキャン範囲は、10〜200 mV、より好ましくは、50〜100 mVである。
【0141】
グラフを見てわかるように、非サイクリックスキャンについて記録された電流値は、サイクリックスキャンの電流値より数値的に小さいが、バックグラウンド電流は、非サイクリックスキャンについて、より低い。この有益なバックグラウンド低減は、意外にも、サイクリックスキャンの還元ピーク部分において非サイクリックスキャンを始動させる必要なく得られる。そのため、酸化還元対の定常状態領域内における高速で、かつ、短い非サイクリックスキャンは、信号対バックグラウンド比の低減によって、分析物決定の精度を増加させる場合がある。
【0142】
図3Hは、図3Gの200〜300 mV非サイクリックスキャンについて準積分と記録された電流値を示す。スキャンの減衰電流は、準積分データ処理によって、定常状態電流プラトーに変換される。準積分の定常状態部分、たとえば、300 mVの電流値は、サンプルの分析物濃度を決定するのに使用されてもよい。
【0143】
サイクリックスキャンおよび非サイクリックスキャンは、リニアスキャンに関して複数の利点を提供してもよい。一態様では、反転点から、逆方向電流ピークが開始する点までの逆方向スキャンの部分は、順方向スキャンの定常状態領域よりも、優れた定常状態領域の表現である場合がある。順方向スキャンが、明瞭な定常状態領域を示さない場合があるため、逆方向スキャンの定常状態領域は、擬可逆性酸化還元システムについて、または、高速スキャン速度において、分析物濃度のより正確な表現である場合がある。この現象は、たとえば、図10Cにおいて観察された。
【0144】
データ処理
リニア走査、サイクリックスキャン、または非サイクリックスキャンによって、サンプル中の分析物の濃度が決定されてもよい。さらに、分析物濃度測定に対するヘマトクリットの影響が、決定されてもよい。スキャンからのデータは、複数の方法で処理されて、この有用な情報および他の有用な情報が抽出されてもよいが、準積分、微分、および準微分技法が、今のところ好ましい。
【0145】
これらのデータ処理方法の概要が、グルコース分析に関連して以下で述べられるが、電気化学電流についてのこれらのデータ処理および関連するデジタルの実施についてのより徹底的な議論は、Bard, A.J.、Faulkner, L.R.「Electrochemical Methods: Fundamentals and Applications」1980;Oldham, K.B.「A Signal-Independent Electrochemical Method」Anal. Chem. 1972, 44, 196;Goto, M.、Oldham, K.B.「Semi-integral Electroanalysis: Shapes of Neopolarograms」Anal. Chem. 1973, 45, 2043;Dalrymple-Alford, P.、 Goto, M.、Oldham, K.B.「Peak Shapes in Semi-differential electroanalysis」Anal. Chem. 1977, 49, 1390;Oldham, K.B.「Convolution:A General Electrochemical Procedure Implemented by a Universal Algorithm」Anal. Chem. 1986, 58, 2296;Pedrosa, J.M.、 Martin, M.T.、Ruiz, J.J.、Camacho, L.「Application of the Cyclic Semi-Integral Voltammetry and Cyclic Semi-Differential Voltammetry to the Determination of the Reduction Mechanism of a Ni-Porphyrin」J. Electroanal. Chem. 2002, 523, 160;Klicka, R,「Adsorption in Semi-Differential Voltammetry」J. Electroanal. Chem. 1998, 455, 253において見出される場合がある。
【0146】
準積分
ボルタモグラムの準積分は、拡散によって制限された定常状態電流をヘマトクリットによって影響された平衡電流(初期ピーク)から分離してもよい。実験的に得られたボルタンメトリー電流i(t)の準積分は、以下の数学的形式を有する。
【0147】
【数3】
【0148】
ここで、i(t)は、スキャン中に得られるボルタンメトリー電流の時間関数であり、
I(t)は、変換およびi(t)の準積分であり、
uは、変換パラメータであり、
d−1/2/dt−1/2は、準積分作用素である。
【0149】
十分に高い酸化電位において、定常状態準積分電流は、
【0150】
【数4】
【0151】
によって与えられる。ここで、Ilimは、酸化可能な種の表面濃度がゼロであるという条件下での、拡散によって制限された定常状態電流である。準積分電流の単位は、クーロン/秒1/2であり、クーロン/秒である、電流を表す従来の単位ではないことに留意されたい。
【0152】
単純にするために、Ilimは、クーロン/秒1/2の単位を持つ、定常状態準積分電流(SI)と呼ばれる。SI電流(クーロン/秒1/2)は、電流(クーロン/秒)からの半ステップ積分に過ぎない。半ステップ積分は、基本的に、クーロメトリーと異なる。その理由は、クーロメトリーでは、電極を通過する全電荷を提供するために、全積分が、i−t曲線に適用されるためである。
【0153】
式(2)は、準積分の理論的な定義を与えるが、デジタル処理の場合、i−tデータは、t=0とt=NΔtの間の、等間隔で配置されたN個の時間間隔に分割されてもよい。1つのデジタル処理アルゴリズムは、式(4)
【0154】
【数5】
【0155】
によって与えられる。ここで、t=kΔtであり、u=jΔtであり、iは、各間隔の中央点で決定される。
デジタル処理のための好ましいアルゴリズムは、
【0156】
【数6】
【0157】
によって与えられる。ここで、Γ(x)は、xのガンマ関数であり、Γ(1/2)=π1/2、Γ(3/2)=1/2π1/2、Γ(5/2)=3/2*π1/2などである。
式(3)から、定常状態準積分電流は、従来のアンペロメトリー法の時間依存因子を欠くことが見てわかる。そのため、準積分電流応答は、従来のアンペロメトリーから得られる連続して変化するアンペロメトリー電流の代わりに、一連のプラトー電流と考えられてもよい。準積分によって、定常状態電流の定量が可能になるため、ピーク電流が定量されるときよりも、より高速なスキャン速度が使用されてもよい。そのため、準積分と組み合わせた、リニア、サイクリック、または非サイクリックボルタンメトリーは、グルコース濃度に応答して定常状態電流を迅速に生成する。こうして、クーロンメトリの長い待ち時間、および、アンペロメトリーにおける電流の非定常状態の性質の欠点が低減される場合がある。
【0158】
式(3)はまた、準積分と共に使用するために、可逆または擬可逆酸化還元対が好ましいことを示す。この理由は、可逆または擬可逆酸化還元対からの準積分は、還元状態から酸化状態への急峻な遷移(および逆もまた同様)、および、広い定常状態領域を示すことができ、したがって、遷移をより容易に決定させるからである。フェリシアニド/フェロシアニドならびにルテニウムヘキサミンの+3および+2状態は、好ましい可逆挙動(低速スキャン)または擬可逆挙動(高速スキャン)を示す酸化還元対の例である。
【0159】
活性化の低い電極は、たとえ可逆または擬可逆酸化還元対の場合でも、許容可能な定常状態条件を提供しない場合がある。そのため、米国特許5,429,735に記載されるような電極活性化手順を使用して、好ましい電極活動が達成されてもよい。
【0160】
準微分
準積分に加えて、ボルタモグラムの準微分もまた、準微分のピークを測定することによって、分析物を定量するのに使用されてもよい。実験的に得られたボルタンメトリー電流i(t)の準微分は、以下の数学的形式を有する。
【0161】
【数7】
【0162】
ここで、I(t)は、時間関数i(t)の準積分である。
準微分の一実施態様は、式(7)で先に示したように、準積分の全ステップ微分をとることである。準積分プロットにおいてボルタンメトリースキャンを表すピークおよび定常状態プラトー領域と違って、準微分プロットは、ボルタンメトリースキャデータを酸化還元対の遷移を中心とするピークに変換する。図4Aは、20%ヘマトクリット全血サンプル中の16 mMフェロシアニドの、サイクリックボルタンメトリー、準積分、および準微分を示す。この例では、センサストリップの作用電極は、酵素および酸化されたメディエーターを欠いた。図4Bは、順方向スキャンについてのピーク高さを示す、図4Aの準微分曲線の拡大図である。順方向または逆方向スキャンピーク高さの値は、サンプルの分析物濃度に関係付けられてもよい。
【0163】
ヘマトクリットの影響
ヒトについての標準的なヘマトクリット範囲(RBC濃度)は、20%〜60%であり、40%のあたりを中心とする。ヘマトクリットの影響は、YSI Inc.(オハイオ州イエロースプリング(Yellow Spring, Ohio))から入手可能なYSI2300STAT PLUS(商標)などの基準機器から得られる基準グルコース濃度読み取り値と、上述した方法から得られる実験的なグルコース濃度読み取り値との間の差(偏移)を指す。基準の読み取り値と実験的な読み取り値との差は、特定の全血サンプル間の変動するヘマトクリットレベルから生じる。
【0164】
全血サンプル中のグルコース濃度は、異なるヘマトクリットレベルについて同様であるが、アンペロメトリーなどの拡散ベースの分析方法では、ヘマトクリットが高くなればなるほど、測定されるアンペロメトリー電流が低くなる。20、40、および60%の全血ヘマトクリットレベルの場合、得られる電流の読み取り値は、同じグルコース濃度について、20%>40%>60%の順序で異なることになる。20%の電流の読み取り値と60%の電流の読み取り値との差は、全血サンプルについて得られるグルコースの読み取り値についてのヘマトクリット偏移スパンを構成する。各全血サンプルについてヘマトクリットレベルの変動によって導入されるグルコース決定の不正確さは、分析における主要な誤差源となる場合がある。
【0165】
たとえば、実験的に得られるグルコースの読み取りが、血漿内のグルコースについて得られる電流の読み取りを参照して行われ、較正法が、サンプル中の40%ヘマトクリット含有量を仮定する場合、20%ヘマトクリットを含む全血サンプルから得られるより高い電流の読み取り値は、40%較正線に関して正側の偏移に変換されることになる。同様に、60%ヘマトクリットを含む全血サンプルから得られるより低い電流の読み取りは、40%較正線に関して負側の偏移に変換されることになる。
【0166】
ヘマトクリット低減
一態様では、全血をグルコース濃度について分析するときに、濃度決定についてのヘマトクリット偏移を低減するために、低速スキャン速度が、リニア走査、サイクリックスキャン、または非サイクリックスキャン、および準積分と組み合わされてもよい。図10Aは、低い(25 mV/秒)スキャン速度の場合、60%ヘマトクリット(線c)について、準積分の準方向スキャン部分において大きなピークが観察されるが、60%ヘマトクリット(線b)について、小さなピークが観察されることを示す。20%ヘマトクリット線(a)は、有意のピークを欠く。そのため、準積分プロットのピーク部分は、サンプルのヘマトクリット含有量に応答し、ピークの大きさは、ヘマトクリットレベルに定量的に関連してもよい。
【0167】
別の態様では、全血をグルコース濃度について分析するときに、濃度決定についてのヘマトクリット偏移を低減するために、リニアスキャン、サイクリックスキャン、または非サイクリックスキャンが、微分データ処理と組み合わされてもよい。図15A〜図15Cは、図7A〜図7Cのサイクリックボルタモグラムの微分を示す。これらの微分プロットは、電圧が増加するときの電流の初期増加と、それに続く減少と、最後に、定常状態領域を示す。ヘマトクリットの影響は、図15A〜図15Cで、約0.1ボルトに位置する負側のピークにおいて見られてもよく、より高いRBC濃度が、より負側のピーク値として反映される。
【0168】
図15Bの微分プロットに示すような正側および負側の微分ピークの値は、濃度依存性であり、負側ピークと正側ピークとの比は、濃度依存性を相殺し、したがって、ヘマトクリット依存性である。この比(HI−DER)は、濃度に依存せず、かつ、ヘマトクリット依存性であるため、サンプル中のパーセントヘマトクリットを示す。そのため、微分ピークのこの比は、以下でさらに述べるように、分析物決定のためのヘマトクリット補償式を決定するのに使用されてもよい。
【0169】
別の態様では、全血が、グルコース濃度について分析されるときに、濃度決定についてのヘマトクリット偏移を低減するために、リニアスキャン、サイクリックスキャン、または非サイクリックスキャンが、準微分データ処理と組み合わされてもよい。図4C、図4D、および図4Eは、バックグラウンドボルタモグラムの減算後(0 mg/dLグルコース)の、50、100、および40 mg/dLグルコースにおける、図7A、図7B、および図7Cのサイクリックボルタモグラムの順方向リニアスキャン部分からの準微分曲線を示す。
【0170】
図4Fは、各ヘマトクリットレベルにおける基準グルコース濃度に対してプロットされた図4C、図4D、および図4Eからの準微分電流を示す。20%と40%のヘマトクリット線の重なりは、ヘマトクリットの影響が、より低い(20%)値において実質的になくなったことを立証する。40%ヘマトクリット線と60%ヘマトクリット線との間のヘマトクリット偏移はまた、ボルタモグラムからの不変データの定常状態部分またはボルタモグラムの準積分から得られるヘマトクリット偏移に対して低減された。そのため、準微分データ処理は、本質的に、グルコース決定についてのヘマトクリット補償を可能にする場合がある。
【0171】
図4Gは、ボルタモグラムの不変順方向スキャン(LS)、ボルタモグラムデータの準積分(si)、およびボルタモグラムデータの準微分(sd)の比較を示す。グルコース値は、40%ヘマトクリットレベルにおける較正曲線を使用して計算された。プロットを見てわかるように、準微分データは、YSI基準機器から得られた線によく対応している。
【0172】
準積分および準微分データ処理は、ヘマトクリットの影響によって影響を受けた電流スキャンの部分の識別および定量を可能にする。そのため、これらのデータ処理は、普通なら、分析物濃度の決定に影響を及ぼすはずである、ヘマトクリット偏移の低減を可能にする。準微分データ処理は、以下でさらに議論するように、補償式がない状態では、普通なら、分析物濃度の決定に影響を及ぼすはずである、ヘマトクリット偏移の低減を可能にする場合がある。
【0173】
別の態様では、図10Bおよび図10Cの500および1000 mV/秒のスキャン速度などの、高速スキャン速度は、ヘマトクリット偏移を低減し、全血のグルコース含有量を測定するために、リニア走査、サイクリックスキャン、または非サイクリックスキャン、および、準積分データ処理、微分データ処理、または準微分データ処理と組み合わされてもよい。高速スキャン速度はまた、スキャン時間がより短いという利益、ユーザにとってのかなりの利益を提供する場合がある。
【0174】
スキャンの全体の長さが、従来のアンペロメトリーまたは低速スキャンボルタンメトリーの場合と同様に、比較的長いとき、メディエーターの拡散および測定される電流は、サンプルのRBC含有量によって著しく影響を受けることになる。逆に、スキャン速度が、500 mV/秒などの高速である場合、−200 mV開始点から、400 mV終了点に達するのに必要とされる時間は、1.2秒である。同様に、1000 mV/秒スキャン速度で0.6秒後に、または、2000 mV/秒スキャン速度で0.3秒後に、400 mV終了点に達してもよい。そのため、最大3秒、1.5秒、1秒、または0.5秒の総スキャン時間が、数学的に除去することなく、濃度測定に関するヘマトクリット偏移を低減する場合がある。
【0175】
分析物濃度を決定すること
図5は、水溶液のグルコース濃度が増加するときの、サイクリックボルタモグラムに関する作用を示す。0 mg/dLのグルコース濃度を表す線(線a)、100 mg/dLのグルコース濃度を表す線(線b)、200 mg/dLのグルコース濃度を表す線(線c)、400 mg/dLのグルコース濃度を表す線(線d)、および600 mg/dLのグルコース濃度を表す線(線e)が示される。走査速度は、25 mV/秒であった。図6は、準積分データ処理による準積分電流への変換後の、図5からのスキャンデータを提示する。そのため、各グルコース濃度の差は、図6のX軸から明らかである。
【0176】
サイクリックボルタモグラムの形状は、全血サンプルが走査されるにつれて変わることになる。サイクリックボルタモグラムは、ヘマトクリットおよびグルコース濃度と共に変わるボルタンメトリー電流、特に、定常状態部分(図7A〜図7Cの0.3〜0.4 V)に近い電流の変位を示すことになる。変化は、図7A〜図7Cにおいて見ることができ、ボルタモグラムは、それぞれ、50 mg/dL(図7A)、100 mg/dL(図7B)、および400 mg/dL(図7C)のグルコース濃度について、また、同様に、グルコース濃度のそれぞれについて、20、40、および60%のヘマトクリット(それぞれ、曲線a、b、およびc)について示される。走査速度は、25 mV/秒であった。ヘマトクリットの影響の観点から予想されるように、サンプル中のヘマトクリットのパーセンテージが高ければ高いほど、同じグルコース濃度についての読み取り値は大きい。サイクリックスキャンの対応する準積分プロットは、図8A〜図8Cとして示され、定常状態電流間の変位は、円で強調されている。図7D〜図7Fおよび図8D〜図8Fは、類似の非サイクリックスキャンについての、スキャンデータおよび対応する準積分を提示する。
【0177】
走査は、−600 mV〜+600 mVの範囲にわたって実施されてもよいが、好ましいスキャン範囲は、バイオセンサにおいて使用される酸化還元対(メディエーター)に依存する。概して、測定デバイスは、製造段階の間に、走査される範囲をプログラムされることになる。
【0178】
図9A〜図9Cは、400 mg/dLのグルコースを含む血液サンプルについて、それぞれ、25 mV/秒、500 mV/秒、および1000 mV/秒の走査速度についての結果を示す。スキャン速度が、図9Aの25 mV/秒から、図9Bの500 mV/秒および図9Cの1000 mV/秒に増加するにつれて、最初にヘマトクリットによって影響を受けたピークが減少する。さらに、ピーク電流値は、サンプルのヘマトクリット値(aは20%、bは40%、cは60%ヘマトクリット)に関連し、ヘマトクリットのより大きなパーセントは、概して、低速スキャン速度におけるピーク電流からの速い減衰に関連付けられる。
【0179】
図9A〜図9Cのボルタモグラムに対応する準積分プロットは、それぞれ、図10A〜図10Cに示される。25 mV/秒の図10Aのスキャンにおいて、円で囲んだ反転点を見てわかるように、20%、40%、および60%ヘマトクリット線の定常状態電流は、Y軸に関して分離された。スキャン速度は、図10Bの500 mV/秒および図10Cの1000 mV/秒に増加するにつれて、20%、40%、および60%ヘマトクリット線のY軸分離は減少する。そのため、スキャン速度が増加するにつれて、スキャンのヘマトクリットに影響を受けた部分が減少する。
【0180】
図11A〜図11Cは、図9A〜図9Cの実験結果に基づく図10A〜図10Cの準積分線と、各サンプルの基準グルコース濃度との相関を示す。YSI機器からの基準グルコース濃度値(X軸)は、各ヘマトクリットパーセンテージについての準積分電流(Y軸)と比較された。予想されるように、図11Aの25 mV/秒スキャンは、ヘマトクリットの影響に起因する最も大きな偏移を示し、一方、図11Bおよび図11Cのより速い500 mV/秒および1000 mV/秒スキャンは、それぞれ、より小さい偏移を示す。
【0181】
準積分プロットにおける、ピーク電流値と定常状態電流値との比は、ヘマトクリット指数(HI)を基準にしてもよい。ヘマトクリット指数(HI)は、図12に示すように、準積分電流ピーク(ip)を、準積分電流定常状態値(iss)で割ったものとして定義されてもよい。計算されたヘマトクリット指数(HI)は、サンプルの実際の%−ヘマトクリット含有量に関係付けられて、図13Aに示す相関線を得られた。微分データ処理に関して先に議論したように、HI−DER比はまた、相関線を得るのに使用されてもよい。
【0182】
準積分データ処理について、図13Aに示すような、相関線の傾斜または切片と傾斜を記述する補償式が、次に、決定されてもよい。補償式が決定されると、ヘマトクリットの影響を補償された、サンプルのグルコース濃度は、定常状態電流値などの所望の電流値を式に引き入れることによって決定されてもよい。そのため、準積分データ処理についてのピーク電流値と定常状態電流値との比、または、微分データ処理についての負側ピークと正側ピークとの比は、ヘマトクリットの影響に起因する分析偏移を補正するのに使用されてもよい。
【0183】
図13Bは、ヘマトクリット補償を使用した、固定電流における種々のグルコース濃度についての傾斜と%−ヘマトクリットとの相関を示す。グラフを見てわかるように、図13Aの曲線を記述するために決定された補償式は、WBサンプルの隠されたヘマトクリット含有量に無関係に、電流とグルコース濃度との実質的にリニアな相関を提供する。図14は、本発明のセンサシステムから得られた、複数の補償済みと未補償のグルコース読み取り値を、YSI基準機器から得られた値と比較する。
【0184】
以下の例は、本発明の1つまたは複数の好ましい実施形態を示すために提供される。本発明の範囲内に入る、いくつかの変形を以下の例に対して行うことができる。
実施例1:センサストリップの調製
図1A〜図1Bを参照すると、電気化学センサストリップ10を調製するために、電極12および14は、米国特許第5,798,031号および第5,120,420号に記載される技法を使用してなどで、絶縁材料の基部上に形成された。ポリカーボネートストリップ16上にスクリーン印刷することによって、銀ペースト18が堆積された。このペーストは、電極12および14の電気接点20aおよび20bならびに下部層18を形成するために、あるパターンで印刷された。
【0185】
図1Bでは、各電極の上部層、グルコースオキシダーゼ(またはPQQ−GDHグルコース・デヒドロゲナーゼ)およびメディエーターとしてのフェリシアニドの試薬層26および28を形成するために、導電性カーボンを含むインクおよびバインダが、パターン22および24でスクリーン印刷することによって塗布された。作用電極および対向電極12および14は、それぞれ、1 mm2および1.2 mm2の表面を有し、電極は、約0.25 mm離れている。図2Aでは、アクリレート修飾ポリウレタンを含む誘電体層30が、基部上に堆積された。電極の下部層は、次に、UV放射によって硬化させられた。
【0186】
図2Bを参照すると、乾燥後に、基部は、蓋32に接合されて、センサストリップ10が形成された。蓋の構築は、米国特許第5,798,031号に記載されるように実施された。ポリウレタン水分散体の皮膜溶液が、ポリカーボネートストリップの一方の面上に塗られ、乾燥させられた。ストリップは、窪みエリア34を形成するためにエンボスすること、および、穴36を穿孔することによって、蓋内に形成された。蓋と基部とを位置合わせし、接触させることによって、蓋が基部に接合され、それに続いて、構造の周囲に沿う接触エリアに熱が加えられた。
【0187】
完成した電気化学センサは、電極の活性を増加させるために、米国特許第5,429,735号に記載される手順を使用して活性化された。
実施例2:分析の実施
図2Cは、電気回路210およびディスプレイ230に電気接続した接点220を含む測定デバイス200の略図である。一態様では、測定デバイス200は、手で保持され、センサストリップを受け取るようになっている。別の態様では、測定デバイス200は、センサストリップを受け取り、ボルタンメトリー走査を実施するようになっている手持ち式測定デバイスである。別の態様では、測定デバイス200は、センサストリップを受け取り、非サイクリックスキャンを実施するようになっている手持ち式測定デバイスである。
【0188】
接点220は、電気回路210、ならびに、図1Aに示すセンサストリップ10の接点20aおよび20bなどのセンサストリップの接点との電気接続を提供するようになっている。電気回路210は、電気充電器250、プロセッサ240、およびコンピュータ読み取り可能記憶媒体245を含んでもよい。電気充電器250は、ポテンショスタットなどであってよい。そのため、充電器250は、充電器−記録器として機能するために、得られる電流を記録しながら、接点220に電圧を印加してもよい。
【0189】
プロセッサ240は、充電器250、コンピュータ読み取り可能記憶媒体245、およびディスプレイ230に電気接続してもよい。充電器が、電流を記録するようになっていない場合、プロセッサ240は、接点220の電流を記録するようになっていてもよい。
【0190】
コンピュータ読み取り可能記憶媒体245は、磁気メモリ、光メモリ、半導体メモリなどのような任意の記憶媒体であってよい。コンピュータ読み取り可能記憶媒体245は、固定メモリデバイス、または、取り外し可能メモリカードなどの取り外し可能メモリデバイスであってよい。ディスプレイ230は、数値読み取り値を表示するようになっている、アナログまたはデジタルディスプレイ、一態様では、LCDディスプレイであってよい。
【0191】
サンプルを含むセンサストリップの接点が、接点220に電気接続すると、プロセッサ240は、サンプルにボルタンメトリースキャンを適用し、したがって、分析を開始するように、充電器250に指示してもよい。プロセッサ240は、たとえば、センサストリップの挿入、前に挿入されたセンサストリップに対するサンプルの適用、または、ユーザ入力に応答して分析を開始してもよい。
【0192】
ボルタンメトリースキャンの実施に関する命令は、コンピュータ読み取り可能記憶媒体245に記憶されたコンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードによって提供される。コードは、オブジェクトコード、または、本アプリケーションで記述される機能を記述するか、または、制御する任意の他のコードであってよい。スキャンから得られるデータは、プロセッサ240で1つまたは複数のデータ処理を受け、分析物濃度などの結果が、ディスプレイ230に出力される。走査命令の場合と同様に、コンピュータ読み取り可能記憶媒体245に記憶されたコンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードからのデータ処理は、プロセッサ240によって実施されてもよい。
【0193】
実施例3:サイクリックボルタンメトリーおよび準積分
100 mg/dL水性グルコース溶液は、AscensiaAUTODISC(登録商標)センサ内に導入された。25 mV/秒のスキャン速度を有するサイクリックスキャンが、CH Instrumentsのポテンショスタットを使用してセンサストリップに適用された。サイクリックボルタモグラム(CV)が、図3Aにプロットされ、一方、その準積分(si)が、図3Bとしてプロットされた。データは、対向電極の電位(フェリシアニド)に対する走査電位の関数としてプロットされた。図3Bは、さらに、準積分プロットにおける定常状態電流のプラトーを示し、たとえば、0.2 Vと0.4 Vと間の定常状態プラトー領域の差は、実質的にゼロであったが、〜−0.15 Vにおける、定常状態プラトーと、順方向電流ピーク(siss)との差は、比較的大きかった。
【0194】
この準積分データ処理、ならびに、どこか他で述べられる微分データ処理および準微分データ処理に使用される式は、CH Instrumentsの電気化学ワークステーション、model CHI660Aを伴う、2004年4月26日に改定された電気化学ワークステーションパッケージversion4.07によって実施された。
【0195】
実施例4:高いグルコース濃度の影響
図5では、それぞれ、a〜eで表示された0、100、200、400、および600 mg/dLのグルコースを含む水性グルコース溶液を装填されたAscensiaAUTODISC(登録商標)に、サイクリックスキャンが適用された。図を見てわかるように、各グルコース濃度についてのピークは、グルコース濃度が増加するにつれて、上昇し、より高電位にシフトした。図6は、図5のサイクリックボルタモグラムについての対応する準積分を示す。グルコース濃度がゼロにて、準積分電流は、実質的にゼロであった。
【0196】
実施例5:WBサンプル中のグルコースのサイクリックボルタンメトリー、低速スキャン
2003年10月24日に出願された米国仮特許出願第60/513,817号に全体が記載されるように、作用電極と対向電極上に異なる試薬層を有するセンサストリップが構築された。約22%K3Fe(CN)6、0.7%ベントン、1.5%CMCから作られるが、活性成分を含まないフェリシアニド層が、対向電極上に堆積された。16.8ユニット/μL PQQ−GDH、250 mMフェリシアニド、1.8%CMC、64 mMリン、および64 mM NaClの試薬溶液から作られた層が、作用電極上に堆積された。50 mg/dLグルコースおよび20%、40%、または60%ヘマトクリット(図7A〜図7Cにおいてそれぞれa〜cで表示される)を含む全血サンプルが、センサストリップ内に導入された。
【0197】
60%ヘマトクリットサンプル(c)からのピーク電流は、最も高かったが、20%(a)および40%(b)ヘマトクリットを含むサンプルとほぼ同じ定常状態電流に最も速く減衰した。50 mg/dL濃度を含む60%ヘマトクリット全血サンプルについての電流減衰プロセスは、それぞれ、100および400 mg/dL濃度についての図7Bおよび図7Cにおいて観察された電流減衰プロセスと同様である。60%ヘマトクリット全血サンプルにおいて、グルコース濃度が増加すると、20%および40%ヘマトクリットサンプルで得られる電流値と比べて定常状態電流値が減少した。
【0198】
実施例6:サイクリックボルタモグラムの準積分
サイクリック電流および非サイクリック電流は、サンプルのグルコース濃度を定量するのに直接使用されてもよいが、これらのボルタモグラムの準積分は、サンプルのグルコース濃度を表すための好ましい値を提供する。図8A、図8B、および図8Cに提示される準積分は、図7A、図7B、および図7Cから得られた。20%全血サンプル(a)からの準積分は、実質的に平坦であり、プラトーにおいて事実上全くピークを持たないことに留意されたい。ヘマトクリットレベルが増加するにつれて、40%〜60%ヘマトクリット(b、c)からのピークが、益々顕著になった。同様に、グルコース濃度が増加するにつれて、20%、40%、および60%ヘマトクリットの3つの定常状態電流は、さらに分離された。準積分から得られる0.3 Vでの定常状態電流は、3つのヘマトクリットについての較正曲線を構築するのに使用された。
【0199】
実施例7:WBサンプル中のグルコースのサイクリックボルタンメトリー、高速スキャン
20%、40%、および60%ヘマトクリットレベルの全血グルコースを使用して、高速スキャンサイクリックボルタンメトリーを行うのに、例4で述べたセンサストリップが使用された。図9A、図9B、および図9Cは、それぞれ、0.025 V/秒、0.5 V/秒、および1 V/秒スキャン速度における、400 mg/dLグルコースを含む全血のサイクリックボルタモグラムである。0.025 V/秒スキャン速度におけるボルタモグラムについて、0.3 Vのボルタンメトリー電流間に大きな偏移が存在したが、スキャン速度の増加に伴って、この偏移は減少した。これらのサイクリックボルタモグラムの準積分は、図10A、図10B、および図10Cに示される。同じグルコース濃度における、各ヘマトクリットパーセンテージについての定常状態電流は、スキャン速度が増加するにつれて、一緒に合流した。最初の電流ピークは、高速スキャン速度で実質的に減少した。
【0200】
実施例8:WBサンプル中のグルコースの非サイクリックボルタンメトリー、高速の短いスキャン
400 mg/dLグルコースおよび20、40、または55%ヘマトクリットを含む全血サンプルが、それぞれ、3つのセンサストリップに適用された。約6秒待った後に、高速(1 V/秒)非サイクリックスキャンが、0.2 Vから0.3 Vまで、そして、もとの0.2 Vまで適用された。図3Hに関して先に述べたように、スキャンから準積分電流を決定した後、0.3 Vにおける、非サイクリックスキャン電流値および対応する準積分電流値を使用して、3つのWBサンプルのそれぞれにおいてグルコース濃度が決定された。
【0201】
図17A〜図17Bは、それぞれ、記録された電流値と準積分電流値についての適用量応答プロットを示す。記録された電流値に関連して、図17Bの準積分データ処理は、ヘマトクリットの影響に起因する、20%サンプルと55%サンプルとの間の分析偏移のわずかな低減を提供した。図17Cは、非サイクリックスキャンから得られるグルコース濃度値の精度を、0.025 V/秒の低速スキャン速度を有するサイクリックスキャンから得られるグルコース濃度値の精度と比較する。非サイクリックスキャンから得られる濃度値は、より長いサイクリックスキャンから得られる濃度値に比べて、基準YSI機器から得られる濃度値により近い。
【0202】
実施例9:異なるスキャン速度におけるsi電流の較正曲線
20%、40%、および60%ヘマトクリット線からの準積分電流を使用して、図11A、図11B、および図11Cに示す、0.025 V/秒、0.5 V/秒、および1 V/秒のスキャン速度について、較正曲線が構築された。センサストリップは、例4のセンサストリップと同様である。0.025 V/秒のスキャン速度では、図11Aにおいて試験された全血サンプルの3つのヘマトクリットについて、3つの明瞭な線が観察された。スキャン速度が、0.025 V/秒から0.5 V/秒(図11B)へ増加するにつれて、3つの較正曲線は、接近し、1 V/秒(図11C)において、ほぼ合流した。この例は、全血サンプル中のグルコース測定が、WBサンプルのヘマトクリットの影響を回避する場合があることを実証した。
【0203】
実施例10:準積分からヘマトクリット指数を定義すること
図8A〜図8Cから、ヘマトクリットレベルと電流ピークの高さとの間の関係が存在する。ピーク高さと定常状態電流(si)との比は、グルコース濃度に無関係である。この特性を使用して、全血サンプルのヘマトクリットレベルが示されてもよい。
【0204】
図12は、準積分から得られる、ピーク電流と定常状態電流との比としてヘマトクリット指数(HI)を定義する。以下の表は、50、100、および400 mg/dL全血グルコース、ならびに、20%、40%、および60%ヘマトクリットにおける、準積分のピーク電流とプラトー電流を記載する。
【0205】
【表1】
【0206】
実施例11:WBグルコースについての測定偏移の補償
全血%−ヘマトクリットは、図13Aに示すように、ヘマトクリット指数についての較正曲線として、ヘマトクリット指数(HI)値に対してプロットされた。同時に、図11Aからの3つのヘマトクリットレベルにおけるグルコース較正線の傾斜が、図13Bに示すように、WB%−ヘマトクリットに対してプロットされた。電流信号からグルコース値を計算するのに、40%ヘマトクリットにおける単一の傾斜(および切片)を使用する代わりに、%−ヘマトクリット依存曲線が使用された。これは、以下の方法で達成された。
(a)図12からなど、準積分からのピーク電流およびプラトー電流が得られた後、ヘマトクリット指数(HI)値が計算された。
(b)このHI値を使用して、WBサンプルの%−ヘマトクリット値が、図13Aから見出された。
(c)この%−ヘマトクリット値を使用して、ヘマトクリット依存である近似較正傾斜が、図13Bから決定された。同様な方法は、ヘマトクリット依存切片を見出すのに使用されてもよい。
(d)(c)からの傾斜(および切片)を使用して、si電流がグルコース値に変換された。
図14は、こうした補償手順の最終結果を示し、未補償グルコース読み取り値は、ダイアモンドとして示され、一方、補償済みデータ点は、開いた四角形として示される。精度の改善は、特に、高いグルコース濃度において明らかである。
【0207】
実施例12:サイクリックボルタモグラムの微分
ヘマトクリット値は、スキャン中のピーク電流に続く場合がある電流減衰プロセスによって識別されてもよい。この特徴は、図7A、図7B、および図7Cに示され、電流減衰は、60%ヘマトクリット全血において最も速い。この特徴はまた、スキャンからのボルタンメトリー電流の微分をとることによって表されてもよい。図15A〜図15Cは、20%、40%、および60%ヘマトクリットパーセンテージに関して、50 mg/dL、100 mg/dL、および400 mg/dLにおけるサイクリックボルタモグラムの微分を示す。微分曲線の最も大きな負側のピークは、図7A〜図7Cのサイクリックボルタモグラムの最も速い電流減衰を表す。そのため、微分ダイアグラムのピーク高さを使用して、全血におけるヘマトクリットの影響による分析偏移が補償されてもよい。一態様では、準積分電流について、例9で議論された方法と同様の、図16A〜図16Cに示す方法が使用された。
【0208】
図16Aは、20、40、および60%ヘマトクリットにおいて、グルコース濃度に対する0.3ボルトの定常状態領域でのCV電流のプロットを示す。これは、準積分について図11Aと同様であり、ヘマトクリットの増加に伴う電流の発散(divergence)を示す。図16Bは、図15A〜図15Cの%−ヘマトクリットに対する、負側ピークと正側ピークとの平均比のプロットを示す。この比は、この場合、準積分電流ではなく、電圧に対する電流の微分を使用した、ヘマトクリット指数の別の定義である。図16Cは、%−ヘマトクリットに対して、図16Aの曲線の傾斜を示す。準積分についての手順と同様の手順で、電圧に対する電流の微分が得られ、正側ピークに対する負側ピークを使用して、ヘマトクリット指数(HI−DER)が定義された。HI−DERを使用して、図16Bから%−ヘマトクリットが決定された。次に、図16Cを使用して、%−ヘマトクリットについて、測定されたグルコース含有量が補正された。図16Dは、ボルタンメトリーによって得られた電流の微分を使用した、ヘマトクリットの影響の補正を示した。
【0209】
本発明の種々の実施形態が述べられたが、本発明の範囲内で、他の実施形態および実施態様が可能であることが、当業者には明らかになるであろう。したがって、本発明は、添付特許請求の範囲およびその等価物に照らして制限される以外には制限されない。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互引用)
本出願は、2004年5月14日に出願され、参照によりその全体が組み込まれる、「Methods for Using Linear or Cyclic Voltammetry in Assaying Glucose and Other Biological Analytes」という名称の米国仮出願第60/571,388号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
生物学的流体中の分析物の定量的測定は、生理学的異常の診断および処置において有用である。たとえば、血液などの生物学的流体中のグルコース濃度を決定することは、自分の食事および/または薬を調節するために、自分の血糖値を頻繁にチェックしなければならない糖尿病の個人にとって重要である。
【0003】
こうした目的で、電気化学的方法が使用されてきた。電気化学バイオセンサは、全血サンプル中のグルコースの酸化を触媒するために、グルコースオキシダーゼまたはグルコース・デヒドロゲナーゼなどの分析物に特異的な酵素を使用する場合がある。酵素による触媒的酸化中に、酵素の酸化還元中心は分析物から電子を受け取る。
【0004】
この酸化還元中心は、グルコースオキシダーゼのフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、または、グルコース・デヒドロゲナーゼ用のピロロキノリンキノン(PQQ)などの酵素の補因子であってよい。酵素によって取得された電子は、次に、メディエーターによって電極に移動することができ、メディエーターは、酵素の酸化によって、還元形態に変換される。最終的に、フェリシアニド/フェロシアニド酸化還元対のフェロシアニド種などの、還元形態のメディエーターは、電極において酸化されて、測定可能電流が生成される。
【0005】
このプロセスは、以下の式で表すことができる。
(1)グルコース+EOx==ERed+生成物
(2)ERed+nMedOx==nMedRed+EOx
(3)MedRed==MedOx+ne−
ここで、EOxおよびERedは、それぞれ、酵素の酸化還元対の酸化形態および還元形態であり、一方、MedOxおよびMedRedは、それぞれ、メディエーターの酸化形態および還元形態である。酵素反応の生成物は、グルコン酸またはグルコノラクトンであってよい。
【0006】
生物学的流体中の分析物を定量するのに使用されてきた1つの電気化学的方法は、クーロメトリーである。たとえば、Heller他は、米国特許第6,120,676号において、全血グルコース測定のためのクーロメトリー法を述べた。クーロメトリーにおいて、分析物(グルコース)濃度は、小容積内で分析物を完全に酸化させ、酸化期間にわたって電流を積分して、分析物濃度を表す電荷を生成することによって、定量される。換言すれば、クーロメトリーは、センサストリップ内にグルコースの全量を捕捉する。
【0007】
クーロメトリーの重要な態様は、電荷対時間の積分曲線の終わりに向かって、電荷が変化する速度が、比較的一定になって、定常状態条件が生じることである。クーロメトリー曲線のこの定常状態部分は、曲線の比較的平坦なプラトー領域を形成し、そのため、対応する電流の正確な決定が可能になる。しかし、クーロメトリー法では、分析物の全容積の完全な変換を必要とする。結果として、この方法は、時間がかかり、グルコース監視製品などの電気化学デバイスのユーザが要求する迅速な結果を提供しない。クーロメトリーに関する別の問題は、センサセルの小容積が、正確な結果を提供するために、制御されなければならないことであり、これは、大量生産式デバイスに関して難しい場合がある。
【0008】
生物学的流体中の分析物を定量するのに使用されてきた別の電気化学的方法は、アンペロメトリーである。アンペロメトリーにおいて、一定電位(電圧)の期間の終わりに、センサストリップの作用電極と対向電極にまたがって電流が測定される。電流を使用して、生物学的サンプル中の分析物が定量される。アンペロメトリーは、電気化学的に活性な種、したがって、分析物が、酸化されるか、または、還元される速度を測定する。バイオセンサのためのアンペロメトリー法の多くの変形形態は、たとえば、米国特許第5,620,579号、第5,653,863号、第6,153,069号、および第6,413,411号に述べられた。アンペロメトリー法は、分析物の拡散速度およびバルク濃度に比例する電流を測定することによって、電極表面の近くの分析物濃度をサンプリングする。
【0009】
アンペロメトリー法の欠点は、電位印加後に電流が非定常状態になる性質である。時間に対する電流変化速度は、最初は非常に速く、分析が進むにつれて、底流にある拡散プロセスが変化する性質のために、ゆっくりになる。電極表面における還元されたメディエーターの消費速度が、拡散速度に等しくなるまで、定常状態電流を得ることができない。そのため、非定常状態期間中に電流を測定することは、定常状態期間に行われる測定と比べて、より大きな不正確さを伴う場合がある。
【0010】
全血サンプル中の分析物を測定する1つの重要な態様は、ヘマトクリットの影響である。ヘマトクリットは、全血サンプル中の赤血球細胞(RBC)の容積のパーセンテージとして表されたRBCの容積である。全血サンプルについてのヘマトクリット値は、約20〜60%の範囲にあり、通常、約40%である。
【0011】
試薬バイオセンサは、電気化学反応によって血液標本内のグルコースを検出することができる任意のシステムを含む。試薬バイオセンサの例は、インディアナ州エルクハート(Elkhart, Indiana)のBayer HealthCare、LLCから入手可能なAscensia AUTODISC(登録商標)およびElite(登録商標)バイオセンサ;イリノイ州アボット公園(Abbott Park, Illinois)のAbbottから入手可能なPrecision(登録商標)バイオセンサ;インディアナ州インディアナポリス(Indianapolis, Indiana)のロッシュから入手可能なAccucheck(登録商標)バイオセンサ;およびカルフォルニア州ミルピタス(Milpitas, California)のLifescanから入手可能なOneTouch Ultra(登録商標)バイオセンサを含む。
【0012】
典型的な電気化学センサストリップは、作用電極、対向電極、および任意選択の第3電極を含む。基準電位は、適切に構成される場合、対向電極によって、または、任意選択の第3電極によって、システムに供給されてもよい。グルコースオキシダーゼまたはグルコース・デヒドロゲナーゼなどの酵素、および、フェリシアニドまたはルテニウムヘキサミンなどのメディエーターを有する試薬層は、バインダとしてのポリマーによって、作用電極上に、または、作用電極と対向電極上に印刷されるか、または、堆積される。
【0013】
試薬のバインダとして使用されるポリマーの例は、CMC(カルボキシルメチルセルロース)およびPEO(酸化ポリエチレン)を含む。試薬に対する、種々のタイプおよび分子量のポリマーの添加によって、赤血球細胞のろ過が補助され、赤血球細胞が電極表面を被覆することを防止することができる。
【0014】
好ましくは、センサストリップは、米国特許第6,531,040号、第5,798,031号、および第5,120,420号に記載される技法などの複数の技法を使用して、絶縁基材上に電極を印刷することによって作られる。試薬は、グルコースオキシダーゼなどのグルコース酸化酵素、フェリシアニドなどのメディエーター、酸化ポリエチレン(PEO)などの親水性ポリマー、およびクエン酸緩衝液などの適切な緩衝液の混合物によって、作用電極と対向電極上に共に印刷されることができる。
【0015】
あるいは、異なる試薬の化学物質を、2003年10月24日に出願された米国仮特許出願第60/513,817号に記載される方法を使用して、作用電極と対向電極上に、別々に、印刷するか、または、微小堆積することができ、作用電極上の試薬は、酵素、メディエーター、ポリマーを含み、対向電極上の試薬は、メディエーターと同じか、または、異なることができる可溶性酸化還元種およびポリマーを含む。一実施形態では、微小堆積において使用されるポリマーは、カルボキシルメチルセルロースである。
【0016】
本発明による試薬バイオセンサを読み取り取るのに使用されてもよい適した卓上電気化学機器の例は、インディアナ州ウェストラファイエット(West Lafayette, Indiana)のBAS Instrumentsから入手可能なBAS100B分析器;テキサス州オースチン(Austin, Texas)のCH Instrumentsから入手可能なCHインスツルメント分析器;カンザス州ローレンス(Lawrence, Kansas)のCypress Systemsから入手可能なCypress電気化学ワークステーション;およびニュージャージー州プリンストン(Princeton, New Jersey)のPrinceton Research Instrumentsから入手可能なEG&G電気化学機器を含むが、それに限定されない。可搬型機器の例は、Bayer CorporationのAscensia Breeze(登録商標)およびElite(登録商標)メータを含む。
【0017】
グルコース用バイオセンサは、酵素とメディエーターが、電極上に堆積されていてもよい。このセンサがグルコースを測定する能力は、RBCが血液サンプル中で関連する試薬の拡散を阻止するときに影響を受ける。アンペロメトリー電流は、還元形態のメディエーターの拡散に直接比例するため、ヘマトクリットは、グルコース測定の精度に著しい影響を及ぼすことになる。全血サンプル中のヘマトクリットレベルに依存して、RBCはグルコースの読み取り値に偏移をもたらす。
【0018】
得られるグルコース測定値に対する全血のヘマトクリットの影響を低減しようとする試みにおいて、種々の方法および技法が提案されてきた。たとえば、米国特許第6,475,372号においてOhara他は、電気化学的グルコース測定におけるヘマトクリットの影響を補償するために、順方向と逆方向の電位パルスからの電流比を使用する方法を開示した。米国特許第5,708,247号および第5,951,836号においてMcAleer他は、電極表面からRBCをろ過し、それによって、ヘマトクリットの影響を低減するための、シリカ粒子を使用した試薬処方を開示した。米国特許第5,628,890号において、Carter他は、ヘマトクリットの影響のために、血液サンプルを分散させるため、メッシュ層と組み合わせて、電極の広い間隔配置を使用する方法を開示した。
【0019】
ヘマトクリットの影響に起因する偏移を低減するこれらの従来の技法は、(a)ヘマトクリットの影響を最小にするためのポリマーの同時堆積、(b)ポリマー層についてのろ過作用を実施するための種々の種類の溶融シリカの添加、(c)順方向と逆方向の電位パルスからの電流比に基づく補償係数、および(d)全血サンプルの既存の溶液抵抗を利用することによる自己補償を含む。これらの方法は有用である場合があるが、従来のグルコースセンサは、ヘマトクリットの影響に起因する著しい分析偏移を示し続ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第6,120,676号
【特許文献2】米国特許第5,620,579号、
【特許文献3】米国特許第5,653,863号
【特許文献4】米国特許第6,153,069号
【特許文献5】米国特許第6,413,411号
【特許文献6】米国特許第6,531,040号
【特許文献7】米国特許第5,798,031号
【特許文献8】米国特許第5,120,420号
【特許文献9】米国特許第6,475,372号
【特許文献10】米国特許第5,708,247号
【特許文献11】米国特許第5,951,836号
【特許文献12】米国特許第5,628,890号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、ヘマトクリットの影響による偏移を低減する、生物学的流体中の分析物、特に、全血のグルコース内容物を定量するシステムを提供することが、望ましいはずである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
一態様では、本発明は、サンプルに非サイクリックスキャンを適用するステップと、サンプル中の分析物の濃度を決定するステップとを含む、サンプル中の分析物の濃度を決定する方法を提供する。
【0023】
別の態様では、本発明は、サンプル中の分析物の濃度を決定するための、手持ち式分析物測定デバイスを提供する。分析物測定デバイスは、センサストリップを受け取るようになっている非サイクリックスキャン式測定デバイスを含む。非サイクリックスキャン式測定デバイスは、電気回路によって、ディスプレイに電気接続する少なくとも2つのデバイス接点を含む。センサストリップは、導体によって、作用電極と対向電極に電気接続した、少なくとも、第1センサストリップ接点と第2センサストリップ接点を含み、第1試薬層は、電極のうちの少なくとも1つの電極上にあり、第1層は、オキシドレダクターゼおよび酸化還元対の少なくとも1つの種を含む。非サイクリックスキャン式測定デバイスとリニア走査式測定デバイスの両方が提供される。
【0024】
別の態様では、本発明は、サンプル中の分析物の濃度を決定する方法を提供し、方法は、サンプルにボルタンメトリー順方向リニアスキャンを適用するステップと、得られる電流を測定するステップと、測定された電流にデータ処理を適用するステップと、サンプル中の分析物の濃度を決定するステップとを含む。
【0025】
別の態様では、本発明は、サンプル中の分析物の濃度を決定するための、手持ち式測定デバイスを提供し、デバイスは、センサストリップを受け取るようになっている。デバイスは、接点と、少なくとも1つのディスプレイと、接点とディスプレイとの間の電気接続を確立する電子回路要素とを含む。電子回路要素は、電気接続した状態の、電気充電器およびプロセッサとを備え、プロセッサは、コンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードを含むコンピュータ読み取り可能記憶媒体に電気接続する。コンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードは、プロセッサによって実行されると、プロセッサが、準積分、微分、および/または準微分データ処理、ならびに/またはボルタンメトリー走査を実施するようにさせる。
【0026】
本明細書および特許請求の範囲の、明瞭でかつ一貫した理解を可能にするために、以下の定義が設けられる。
用語「メディエーター」は、酸化されるか、または、還元されてもよく、1つまたは複数の電子を移動させてもよい物質として定義される。メディエーターは、電気化学分析における試薬であり、対象の分析物ではないが、分析物の間接測定を可能にする。簡単なシステムでは、メディエーターは、分析物の酸化および還元に応答して酸化還元反応を受ける。酸化されるか、または、還元されたメディエーターは、次に、作用電極において反対の酸化還元反応を受け、その元の酸化数に再生される。
【0027】
用語「酸化還元反応」は、第1の種から第2の種への少なくとも1つの電子の移動を含む2つの種の間の化学反応として定義される。そのため、酸化還元反応は、酸化と還元を含む。反応の酸化半電池(half-cell)は、第1の種による少なくとも1つの電子の喪失を含み、一方、還元半電池は、第2の種に対する少なくとも1つの電子の付加を含む。酸化される種のイオン電荷は、移動する電子数に等しい量だけ、正側でより大きくなる。同様に、還元される種のイオン電荷は、移動する電子数に等しい量だけ、正側でより小さくなる。
【0028】
用語「酸化還元対」は、異なる酸化数を有する化学物質の2つの共役種として定義される。酸化数の高い種の還元は、酸化数の低い種を生成する。あるいは、酸化数の低い種の酸化は、酸化数の高い種を生成する。
【0029】
用語「酸化数」は、原子などの化学種の式量イオン電荷として定義される。たとえば(III)などの、より高い酸化数は、正側でより大きく、(II)などの、より低い酸化数は、正側でより小さい。
【0030】
用語「可逆性酸化還元対」は、準積分の順方向スキャンと逆方向スキャンとの間の分離が、siss遷移の半分の高さで最大30 mVにある酸化還元種の対として定義される。たとえば、図3Bでは、siss遷移高さに加えて、フェリシアニド/フェロシアニド酸化還元対についての順方向準積分スキャンと逆方向準積分スキャンが示される。半分の高さのsiss遷移線が、順方向スキャン線と逆方向スキャン線に交差する線において、線間の分離は、29 mVであり、示すスキャン速度におけるフェリシアニド/フェロシアニド酸化還元対の可逆性が確立される。
【0031】
用語「擬可逆性酸化還元対」は、準積分の順方向スキャンと逆方向スキャンとの間の分離が、酸化還元対についてのsiss遷移の半分の高さで30 mVより大きい酸化還元対として定義される。
【0032】
用語「定常状態」は、電圧に対する電気化学電流が、±10%内または±5%内など比較的一定であるときとして定義される。
用語「反転点」は、順方向スキャンが停止し、逆方向スキャンが開始されるときのサイクリックスキャンまたは非サイクリックスキャンにおける点として定義される。
【0033】
用語「リニアスキャン」は、たとえば、1.0 Vスキャン範囲を設けるために、−0.5 Vから+0.5 Vまでなどで、単一の「順」方向に一定のスキャン速度で電圧が変わるスキャンとして定義される。リニアスキャンは、一連の電位の増分変化により近似することもできる。増分が時間上で非常に接近して起こる場合、増分は連続リニアスキャンに相当する。そのため、リニアな変化を近似する電位変化を適用することは、リニアスキャンと考えてもよい。
【0034】
用語「サイクリックスキャン」は、スキャン範囲が酸化還元対の酸化ピークと還元ピークを含むような、リニア順方向スキャンとリニア逆方向スキャンの組み合わせとして定義される。たとえば、−0.5 Vから+0.5 Vへ、そして、−0.5 Vへ戻るように、サイクリックに電位を変えることは、酸化ピークと還元ピークが共にスキャン範囲に含まれる、グルコースセンサで使用されるフェリシアニド/フェロシアニド酸化還元対のためのサイクリックスキャンの例である。
【0035】
用語「非サイクリックスキャン」は、順方向電流ピークまたは逆方向電流ピークを他方の電流ピークよりも多く含むスキャンとして、一態様において定義される。たとえば、−0.5 Vから+0.5 V、そして、+0.25 Vに戻るなど、逆方向スキャンが停止する電圧と異なる電圧で順方向スキャンが開始するような、順方向リニアスキャンと逆方向リニアスキャンを含むスキャンは、非サイクリックスキャンの例である。別の例では、スキャンが、酸化還元対の式量電位EO/から最大±20 mV、±10 mV、または±5 mV離れた点で開始するときに、非サイクリックスキャンは実質的に同じ電圧で開始し、終了してもよい。別の態様では、非サイクリックスキャンは、酸化還元対の酸化ピークと還元ピークを実質的に排除する順方向リニアスキャンと逆方向リニアスキャンを含むスキャンとして定義される。たとえば、スキャンは、酸化還元対の定常状態領域内で、開始し、反転し、終了してもよく、したがって、対の酸化ピークと還元ピークが排除される。
【0036】
用語「高速スキャン」および「高速スキャン速度」は、電圧が、最小176 mV/秒の速度で変化するスキャンとして定義される。好ましい高速スキャンは、200、500、1000、または2000 mV/秒より大きな速度である。
【0037】
用語「低速スキャン」および「低速スキャン速度」は、電圧が、最大175 mV/秒の速度で変化するスキャンとして定義される。好ましい低速スキャンは、150、100、50、または10 mV/秒より低い速度である。
【0038】
用語「手持ち式デバイス」は、人の手で保持されてもよい、可搬型であるデバイスとして定義される。手持ち式デバイスの例は、Bayer HealthCare(インディアナ州エルクハート(Elkhart, IN))から入手可能なAscensia(登録商標)Elite血液グルコース監視システムを連想させる測定デバイスである。
【0039】
用語「上に(on)」は、「上方に(above)」として定義され、述べられる向きを基準にする(relative to)。たとえば、第1要素が、第2要素の少なくとも一部分を覆って堆積される場合、第1要素は、第2要素の「上に堆積される」と言われる。別の例では、第1要素が、第2要素の少なくとも一部分の上方に存在する場合、第1要素は、第2要素の「上に」あると言われる。用語「上に」の使用は、述べられている上側要素と下側要素の間における物質の存在を排除しない。たとえば、第1要素は、その上部表面を覆って皮膜を、さらに、第1要素の少なくとも一部分を覆って第2要素を有してもよく、その上部皮膜は、第1要素の「上」にあるとして述べることができる。そのため、用語「上に」の使用は、関連する2つの要素が、互いに物理的に接触していることを意味してもよく、意味しなくてもよい。
【0040】
本発明の態様:
態様1:
サンプル中の分析物の濃度を決定する方法であって、
前記サンプルに非サイクリックスキャンを適用するステップと、
前記サンプル中の前記分析物の濃度を決定するステップとを含む方法。
【0041】
態様2:
前記分析物は、グルコース、コレステロール、トリグリセリド、乳酸、ピルビン酸、アルコール、ビリルビン、尿酸、NAD(P)H、および一酸化炭素からなる群から選択される、態様1に記載の方法。
【0042】
態様3:
前記分析物はグルコースである、態様1または2に記載の方法。
態様4:
前記サンプルは生物学的サンプルである、態様1〜3のいずれかに記載の方法。
【0043】
態様5:
前記サンプルは全血である、態様1〜4のいずれかに記載の方法。
態様6:
前記非サイクリックスキャンは、順方向リニアスキャンと逆方向リニアスキャンを含み、前記順方向スキャンは、前記逆方向リニアスキャンが終了する電圧と異なる電圧で開始する、態様1〜5のいずれかに記載の方法。
【0044】
態様7:
前記非サイクリックスキャンは、順方向リニアスキャンと逆方向リニアスキャンを含み、酸化還元対の式量電位EO/から最大±20 mV離れた点で、前記順方向スキャンは開始し、前記逆方向スキャンは終了する、態様1〜6のいずれかに記載の方法。
【0045】
態様8:
前記非サイクリックスキャンは、酸化還元対の定常状態領域内に順方向リニアスキャンと逆方向リニアスキャンを含み、前記スキャンは、10〜200 mVの範囲のスキャンを有する、態様1〜7のいずれかに記載の方法。
【0046】
態様9:
前記非サイクリックスキャンは、最小176 mV/秒の速度で前記スキャンの電圧を変えるステップを含む、態様1〜8のいずれかに記載の方法。
【0047】
態様10:
前記非サイクリックスキャンは、最小500 mV/秒の速度で前記スキャンの電圧を変えるステップを含む、態様1〜9のいずれかに記載の方法。
【0048】
態様11:
前記非サイクリックスキャンは、最大175 mV/秒の速度で前記スキャンの電圧を変えるステップを含む、態様1〜10のいずれかに記載の方法。
【0049】
態様12:
前記非サイクリックスキャンは、最大50 mV/秒の速度で前記スキャンの電圧を変えるステップを含む、態様1〜11のいずれかに記載の方法。
【0050】
態様13:
前記非サイクリックスキャンは、400〜600 mVのスキャン範囲を含む、態様1〜12のいずれかに記載の方法。
【0051】
態様14:
前記非サイクリックスキャンは、600〜1000 mVのスキャン範囲を含む、態様1〜13のいずれかに記載の方法。
【0052】
態様15:
前記非サイクリックスキャンは、最小25 mVの定常状態領域を含む、態様1〜14のいずれかに記載の方法。
【0053】
態様16:
前記スキャンの前記定常状態領域は、電圧に対して最大±10%の電気化学的電流の変化を含む、態様1〜15のいずれかに記載の方法。
【0054】
態様17:
前記非サイクリックスキャンは、25〜400 mVの定常状態領域を提供するために選択された反転点を含む、態様1〜16のいずれかに記載の方法。
【0055】
態様18:
前記非サイクリックスキャンは、反転点から負側に50〜500 mVの電位で終了する逆方向スキャンを含む、態様1〜17のいずれかに記載の方法。
【0056】
態様19:
前記非サイクリックスキャンは、前記逆方向スキャンの電流が、定常状態電流から最小25%だけ偏移すると終了する逆方向スキャンを含む、態様1〜18のいずれかに記載の方法。
【0057】
態様20:
前記非サイクリックスキャンは、酸化還元対の2つの種の間で最小100:1の濃度比を提供する少なくとも1つの電圧を含む、態様1〜19のいずれかに記載の方法。
【0058】
態様21:
前記非サイクリックスキャンは、作用電極における最小180 mVの少なくとも1つの電位を含む、態様1〜20のいずれかに記載の方法。
【0059】
態様22:
前記決定することは、準積分データ処理を含む、態様1〜21のいずれかに記載の方法。
態様23:
前記準積分データ処理は、前記非サイクリックスキャンからの電流値を準積分し、定常状態準積分電流を決定するステップを含む、態様1〜22のいずれかに記載の方法。
【0060】
態様24:
前記準積分データ処理は、少なくとも1つのヘマトクリットによって影響を受けた平衡電流から少なくとも1つの定常状態電流を分離する、態様1〜23のいずれかに記載の方法。
【0061】
態様25:
前記準積分は、少なくとも1つの半ステップ積分を含む、態様1〜24のいずれかに記載の方法。
【0062】
態様26:
前記準積分データ処理は時間依存因子を欠く、態様1〜25のいずれかに記載の方法。
態様27:
前記決定することは、ピーク電流値と定常状態電流値との比を決定するステップを含むヘマトクリット補償を含む、態様1〜26のいずれかに記載の方法。
【0063】
態様28:
前記決定することは、微分データ処理を含む、態様1〜27のいずれかに記載の方法。
態様29:
前記決定することは、負側のピークを正側のピークで除算するステップを含むヘマトクリック補償を含む、態様1〜28のいずれかに記載の方法。
【0064】
態様30:
前記決定することは、準微分データ処理を含む、態様1〜29のいずれかに記載の方法。
態様31:
前記準微分データ処理は、ボルタンメトリー電流領域の少なくとも一部分をピークに変換する、態様1〜30のいずれかに記載の方法。
【0065】
態様32:
前記決定することは、少なくとも1つの定常状態電流値を補償式に入力するステップを含む、態様1〜31のいずれかに記載の方法。
【0066】
態様33:
前記サンプル中の前記分析物の濃度を決定することは、前記非サイクリックスキャンをクーロメトリーに置き換えた場合に比べて、基準機器から得られる濃度値により近い濃度値を提供する、態様1〜32のいずれかに記載の方法。
【0067】
態様34:
サンプル中の分析物の濃度を決定するための、手持ち式分析物測定デバイスであって、センサストリップを受け取るようになっている非サイクリックスキャン式測定デバイスを備え、
前記非サイクリックスキャン式測定デバイスは、電気回路によって、ディスプレイに電気接続する少なくとも2つのデバイス接点を備え、
前記センサストリップは、少なくとも第1センサストリップ接点および第2センサストリップ接点を備え、前記第1センサストリップ接点は導体によって作用電極に電気接続し、前記第2センサストリップ接点は導体によって対向電極に電気接続し、
第1試薬層は、前記電極のうちの少なくとも1つの電極上にあり、前記第1試薬層は、オキシドレダクターゼおよび酸化還元対の少なくとも1つの種を含むデバイス。
【0068】
態様35:
前記分析物はグルコースである、態様34に記載のデバイス。
態様36:
前記第1試薬層は、少なくとも前記作用電極と前記対向電極上にある、態様34または35に記載のデバイス。
【0069】
態様37:
少なくとも前記対向電極上に第2試薬層を含み、前記第2試薬層は、酸化還元対の少なくとも1つの種を含む、態様34〜36のいずれかに記載のデバイス。
【0070】
態様38:
前記電気回路は、前記サンプルを含む前記センサストリップに非サイクリックスキャンを適用する手段を備える、態様34〜37のいずれかに記載のデバイス。
【0071】
態様39:
前記非サイクリックスキャンは、順方向リニアスキャンと逆方向リニアスキャンを含み、前記順方向スキャンは、前記逆方向直線スキャンが停止する電圧と異なる電圧で開始する、態様34〜38のいずれかに記載のデバイス。
【0072】
態様40:
前記非サイクリックスキャンは、順方向リニアスキャンと逆方向リニアスキャンを含み、酸化還元対の式量電位EO/から最大±20 mV離れた点で、前記順方向スキャンは開始し、前記逆方向スキャンは終了する、態様34〜39のいずれかに記載のデバイス。
【0073】
態様41:
前記非サイクリックスキャンは、酸化還元対の定常状態領域内に順方向リニアスキャンと逆方向リニアスキャンを含み、前記スキャンは、10〜200 mVのスキャン範囲を有する、態様34〜40のいずれかに記載のデバイス。
【0074】
態様42:
サンプル中の分析物の濃度を決定する方法であって、
前記サンプルにボルタンメトリー順方向リニアスキャンを適用するステップと、
得られる電流を測定するステップと、
前記測定された電流にデータ処理を適用するステップと、
前記サンプル中の前記分析物の濃度を決定するステップとを含む方法。
【0075】
態様43:
前記分析物はグルコースである、態様42に記載の方法。
態様44:
前記サンプルは全血である、態様42または43のいずれかに記載の方法。
【0076】
態様45:
前記順方向リニアスキャンの反転点において、前記サンプルにボルタンメトリー逆方向リニアスキャンを適用するステップをさらに含む、態様42〜44のいずれかに記載の方法。
【0077】
態様46:
前記ボルタンメトリー順方向リニアスキャンと前記ボルタンメトリー逆方向リニアスキャンは、サイクリックスキャンを形成する、態様42〜45のいずれかに記載の方法。
【0078】
態様47:
前記順方向スキャンは、最小176 mV/秒の速度で前記スキャンの電圧を変えるステップを含む、態様42〜46のいずれかに記載の方法。
【0079】
態様48:
前記順方向スキャンは、最小500 mV/秒の速度で前記スキャンの電圧を変えるステップを含む、態様42〜47のいずれかに記載の方法。
【0080】
態様49:
前記順方向スキャンは、400〜1000 mVのスキャン範囲を含む、態様42〜48のいずれかに記載の方法。
【0081】
態様50:
前記逆方向スキャンは、最小25 mVの定常状態領域を含む、態様42〜49のいずれかに記載の方法。
【0082】
態様51:
前記スキャンの前記定常状態領域は、電圧に対して最大±10%の電気化学的電流の変化を含む、態様42〜50のいずれかに記載の方法。
【0083】
態様52:
前記反転点は、25〜400 mVの定常状態領域を提供するために選択される、態様42〜51のいずれかに記載の方法。
【0084】
態様53:
前記順方向スキャンは、酸化還元対の2つの種の間で最小100:1の濃度比を提供する少なくとも1つの電圧を含む、態様42〜52のいずれかに記載の方法。
【0085】
態様54:
前記順方向スキャンは、作用電極における最小180 mVの少なくとも1つの電位を含む、態様42〜53のいずれかに記載の方法。
【0086】
態様55:
前記データ処理は、準積分、微分、準微分、およびその組み合わせからなる群から選択される、態様42〜54のいずれかに記載の方法。
【0087】
態様56:
前記データ処理は、準積分データ処理を含む、態様42〜55のいずれかに記載の方法。
態様57:
前記データ処理は、前記順方向リニアスキャンからの電流を準積分し、定常状態準積分電流を決定するステップを含む、態様42〜56のいずれかに記載の方法。
【0088】
態様58:
前記準積分データ処理は時間依存因子を欠く、態様42〜57のいずれかに記載の方法。
態様59:
前記データ処理は、準微分データ処理を含む、態様42〜58のいずれかに記載の方法。
【0089】
態様60:
前記準微分データ処理は、ボルタンメトリー電流領域の少なくとも一部分をピークに変換する、態様42〜59のいずれかに記載の方法。
【0090】
態様61:
前記決定することは、ヘマトクリット補償を含む、態様42〜60のいずれかに記載の方法。
【0091】
態様62:
前記補償は、ピーク電流値と定常状態電流値との比を決定するステップを含む、態様42〜61のいずれかに記載の方法。
【0092】
態様63:
前記決定することは、少なくとも1つの定常状態電流値を補償式に入力するステップを含む、態様42〜62のいずれかに記載の方法。
【0093】
態様64:
前記サンプル中の前記分析物の濃度を決定することは、前記ボルタンメトリー順方向リニアスキャンをクーロメトリーに置き換えた場合に比べて、基準機器から得られる濃度値により近い濃度値を提供する、態様42〜63のいずれかに記載の方法。
【0094】
態様65:
サンプル中の分析物の濃度を決定するための、手持ち式分析物測定デバイスであって、センサストリップを受け取るようになっているボルタンメトリー走査式測定デバイスを備え、
前記ボルタンメトリー走査式測定デバイスは、電気回路によって、ディスプレイに電気接続する少なくとも2つのデバイス接点を備え、
前記センサストリップは、少なくとも、第1センサストリップ接点および第2センサストリップ接点を備え、前記第1センサストリップ接点は導体によって作用電極に電気接続し、前記第2センサストリップ接点は導体によって対向電極に電気接続し、
第1試薬層は、前記電極のうちの少なくとも1つの電極上にあり、前記第1試薬層は、オキシドレダクターゼおよび酸化還元対の少なくとも1つの種を含むデバイス。
【0095】
態様66:
前記分析物はグルコースである、態様65に記載のデバイス。
態様67:
前記ボルタンメトリー走査は、リニアスキャンを含む、態様65または66のいずれかに記載のデバイス。
【0096】
態様68:
前記ボルタンメトリー走査は、サイクリックスキャンを含む、態様65〜67のいずれかに記載のデバイス。
【0097】
態様69:
前記第1試薬層は、少なくとも、前記作用電極と前記対向電極上にある、態様65〜68のいずれかに記載のデバイス。
【0098】
態様70:
前記対向電極上に第2試薬層をさらに含み、前記第2試薬層は、酸化還元対の少なくとも1つの種を含み、
前記第1試薬層は、前記作用電極上にある、態様65〜69のいずれかに記載のデバイス。
【0099】
態様71:
前記電気回路は、前記サンプルを含む前記センサストリップにボルタンメトリースキャンを適用する手段を備える、態様65〜70のいずれかに記載のデバイス。
【0100】
態様72:
前記センサストリップにボルタンメトリースキャンを適用する手段は、前記センサストリップにリニアスキャンを適用する手段を備える、態様65〜71のいずれかに記載のデバイス。
【0101】
態様73:
前記センサストリップにボルタンメトリースキャンを適用する手段は、前記センサストリップにサイクリックスキャンを適用する手段を備える、態様65〜72のいずれかに記載のデバイス。
【0102】
態様74:
サンプル中の分析物の濃度を決定するための、手持ち式測定デバイスであって、
デバイスは、センサストリップを受け取るようになっており、デバイスは、
接点と、
少なくとも1つのディスプレイと、
前記接点と前記ディスプレイとの間の電気接続を確立する電子回路要素とを備え、前記電子回路要素は、
電気接続した状態の、電気充電器およびプロセッサとを備え、前記プロセッサは、コンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードを含むコンピュータ読み取り可能記憶媒体に電気接続し、前記コンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードは、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサが、準積分、微分、準微分、およびその組み合わせからなる群から選択されるデータ処理を実施するようにさせるデバイス。
【0103】
態様75:
前記分析物はグルコースである、態様74に記載のデバイス。
態様76:
前記データ処理は、準積分データ処理を含む、態様74または75に記載のデバイス。
【0104】
態様77:
前記データ処理は、微分データ処理を含む、態様74〜76のいずれかに記載のデバイス。
態様78:
前記データ処理は、準微分データ処理を含む、態様74〜77のいずれかに記載のデバイス。
【0105】
態様79:
前記コンピュータ読み取り可能記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードをさらに含み、前記コンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードは、前記プロセッサによって実行されると、前記電気充電器が、前記接点を通してボルタンメトリックスキャンを適用するようにさせる、態様74〜78のいずれかに記載のデバイス。
【0106】
態様80:
前記コンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードは、前記プロセッサによって実行されると、前記電子回路要素が、態様1〜33および42〜64のいずれかに記載の方法を実施するようにさせる、態様74〜79のいずれかに記載のデバイス。
【0107】
態様81:
前記コンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードは、前記プロセッサによって実行されると、前記電子回路要素が、態様1〜33および42〜64のいずれかに記載の方法を実施するようにさせる、態様74〜79のいずれかに記載のデバイス。
【0108】
態様82:
サンプル中の分析物の濃度を決定するための、手持ち式測定デバイスであって、
デバイスは、センサストリップを受け取るようになっており、デバイスは、
接点と、
少なくとも1つのディスプレイと、
前記接点と前記ディスプレイとの間の電気接続を確立する電子回路要素とを備え、前記電子回路要素は、
電気接続した状態の、電気充電器およびプロセッサとを備え、前記プロセッサは、コンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードを含むコンピュータ読み取り可能記憶媒体に電気接続し、前記コンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードは、前記プロセッサによって実行されると、前記充電器が、前記接点を通してボルタンメトリースキャンを適用するようにさせるデバイス。
【0109】
態様83:
前記ボルタンメトリースキャンは、非サイクリックスキャンを含む、態様82に記載のデバイス。
【0110】
態様84:
前記ボルタンメトリースキャンは、リニアスキャンを含む、態様82または83に記載のデバイス。
【0111】
態様85:
前記ボルタンメトリースキャンは、サイクリックスキャンを含む、態様82〜84のいずれかに記載のデバイス。
【0112】
態様86:
前記コンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードは、前記プロセッサによって実行されると、前記電子回路要素が、態様1〜33および42〜64のいずれかに記載の方法を実施するようにさせる、態様82〜85のいずれかに記載のデバイス。
【0113】
態様87:
前記コンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードは、前記プロセッサによって実行されると、前記電子回路要素が、態様1〜33および42〜64のいずれかに記載の方法を実施するようにさせる、態様82〜85のいずれかに記載のデバイス。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】図1Aは、典型的なセンサストリップの作用電極と対向電極の平面図である。図1Bは、典型的なセンサストリップの作用電極と対向電極の端面図である。
【図2A】図2Aおよび図2Bは、図1A〜図1Bのセンサストリップの外面図である。
【図2B】図2Aおよび図2Bは、図1A〜図1Bのセンサストリップの外面図である。
【図2C】図2Cは、測定手段の略図である。
【図3A】図3Aは、センサシステムからのサイクリックボルタモグラムを示すグラフである。
【図3B】図3Bは、図3Aのサイクリックボルタモグラムに相当する準積分のグラフである。
【図3C】図3Cは、逆方向電流ピークが始動する前に逆方向スキャンが終了する、非サイクリックスキャンを示す図である。
【図3D】図3Dは、非サイクリックデータの準積分を示す図である。
【図3E】図3Eは、サイクリックスキャンを非サイクリックスキャンと比較する図であり、非サイクリックスキャンの順方向スキャンが、酸化還元対についての式量電位EO/の近くで開始したことを表している。
【図3F】図3Fは、図3Eの準積分電流を比較する図である。
【図3G】図3Gは、非サイクリックスキャンが、定常状態領域で重なった状態のサイクリックスキャンを示す図である。
【図3H】図3Hは、図3Gの非サイクリックスキャンについて、準積分と記録された電流値とを比較する図である。
【図4A】図4Aは、20%ヘマトクリット全血サンプル中の16 mMフェロシアニドのサイクリックボルタモグラム、準積分、および準微分を示す図である。
【図4B】図4Bは、図4Aの準微分曲線の拡大図である。
【図4C】図4Cは、図7Aのサイクリックボルタモグラムの順方向リニアスキャンからの準微分を示す図である。
【図4D】図4Dは、図7Bのサイクリックボルタモグラムの順方向リニアスキャンからの準微分を示す図である。
【図4E】図4Eは、図7Cのサイクリックボルタモグラムの順方向リニアスキャンからの準微分を示す図である。
【図4F】図4Fは、図4C〜4Eからの準微分電流を示す図である。
【図4G】図4Gは、ボルタモグラムの不変順方向スキャン(LS)、ボルタモグラムデータの準積分(si)、およびボルタモグラムデータの準微分(sd)からの計算されたグルコース値の比較を示す図である。
【図5】図5は、水性溶液内の種々のグルコース濃度の影響を示す一組のサイクリックボルタモグラムである。
【図6】図6は、図5のボルタモグラムの準積分電流を示す図である。
【図7A】図7A〜図7Cは、全血内のヘマトクリットパーセンテージとグルコース濃度の変化の影響を示すサイクリックボルタモグラムである。
【図7B】図7A〜図7Cは、全血内のヘマトクリットパーセンテージとグルコース濃度の変化の影響を示すサイクリックボルタモグラムである。
【図7C】図7A〜図7Cは、全血内のヘマトクリットパーセンテージとグルコース濃度の変化の影響を示すサイクリックボルタモグラムである。
【図7D】図7D〜図7Fは、全血内のヘマトクリットパーセンテージとグルコース濃度の変化の影響を示す非サイクリックボルタモグラムである。
【図7E】図7D〜図7Fは、全血内のヘマトクリットパーセンテージとグルコース濃度の変化の影響を示す非サイクリックボルタモグラムである。
【図7F】図7D〜図7Fは、全血内のヘマトクリットパーセンテージとグルコース濃度の変化の影響を示す非サイクリックボルタモグラムである。
【図8A】図8Aは、図7Aの準積分電流を示す図である。
【図8B】図8Bは、図7Bの準積分電流を示す図である。
【図8C】図8Cは、図7Cの準積分電流を示す図である。
【図8D】図8Dは、図7Dの準積分電流を示す図である。
【図8E】図8Eは、図7Eの準積分電流を示す図である。
【図8F】図8Fは、図7Fの準積分電流を示す図である。
【図9A】図9A〜図9Cは、ヘマトクリットの影響に対する種々の走査速度の影響を示すサイクリックボルタモグラムである。
【図9B】図9A〜図9Cは、ヘマトクリットの影響に対する種々の走査速度の影響を示すサイクリックボルタモグラムである。
【図9C】図9A〜図9Cは、ヘマトクリットの影響に対する種々の走査速度の影響を示すサイクリックボルタモグラムである。
【図10A】図10Aは、図9Aのサイクリックスキャンに相当する準積分電流を示す図である。
【図10B】図10Bは、図9Bのサイクリックスキャンに相当する準積分電流を示す図である。
【図10C】図10Cは、図9Cのサイクリックスキャンに相当する準積分電流を示す図である。
【図11A】図11Aは、図9Aの実験結果に基づく図10Aの準積分線と、各サンプルの基準グルコース濃度との相関を示す図である。
【図11B】図11Bは、図9Bの実験結果に基づく図10Bの準積分線と、各サンプルの基準グルコース濃度との相関を示す図である。
【図11C】図11Cは、図9Cの実験結果に基づく図10Cの準積分線と、各サンプルの基準グルコース濃度との相関を示す図である。
【図12】図12は、ヘマトクリット指数を決定するのに使用されてもよい、準積分電流ピークおよび準積分電流定常状態値を示す図である。
【図13A】図13Aは、全血のヘマトクリット含有量に関するヘマトクリット指数の相関を示す図である。
【図13B】図13Bは、図11Aから導出される%−ヘマトクリットに対する電流/グルコース(μA/mg/dL)の較正線の傾斜を示す図である。
【図14】図14は、ヘマトクリット指数を使用して、ヘマトクリットについて、グルコース含有量(mg/dL)を補正する作用を示す図である。
【図15A】図15A〜図15Cは、電圧に対してプロットされた図7Aからの順方向スキャンの微分電流を示す図である。
【図15B】図15A〜図15Cは、電圧に対してプロットされた図7Bからの順方向スキャンの微分電流を示す図である。
【図15C】図15A〜図15Cは、電圧に対してプロットされた図7Cからの順方向スキャンの微分電流を示す図である。
【図16A】図16Aは、20、40、および60%ヘマトクリットにおける、グルコース濃度に対する0.3ボルトの電流のプロットである。
【図16B】図16Bは、図15に示す、負側ピークと正側ピークとの比に対する%−ヘマトクリットのプロットである。
【図16C】図16Cは、%−ヘマトクリットに対する図16Aの曲線の傾斜のプロットである。
【図16D】図16Dは、微分電流を使用した、ヘマトクリットについてのグルコース含有量の補正の作用を示す図である。
【図17A】図17A〜図17Bは、非サイクリックスキャンの、それぞれ、記録された電流値と準積分電流値についての適用量応答プロットを示す図である。
【図17B】図17A〜図17Bは、非サイクリックスキャンの、それぞれ、記録された電流値と準積分電流値についての適用量応答プロットを示す図である。
【図17C】図17Cは、非サイクリックスキャンから得られるグルコース濃度値の精度を、低速スキャン速度を有するサイクリックスキャンから得られるグルコース濃度値の精度と比較する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0115】
電気化学分析システムは、全血のグルコース濃度などの、生物学的流体中の分析物の濃度を決定する。システムは、生物学的サンプルを含むセンサストリップに、ボルタンメトリーリニアスキャン、サイクリックスキャン、または非サイクリックスキャンを適用してもよい。ボルタンメトリースキャンは、ストリップに印加される電位(電圧)を時間に対してリニアに変えながら、センサストリップからの電流(アンペア)を測定する。デバイスは、得られる電流および電圧データを比較して、サンプル中の分析物の濃度を決定し、一方、特定の血液サンプルのヘマトクリット含有量の変動について結果を補正する。デバイスはまた、ボルタンメトリーデータを比較し、補正するために、準積分、微分、および準微分に基づく処理を含む、1つまたは複数のデータ処理を適用してもよい。
【0116】
システムは、一般に、全血サンプル中のグルコースの濃度を決定する文脈で述べられる。しかし、システムには、コレステロール、トリグリセリン、乳酸、ピルビン酸、アルコール、ビリルビン、尿酸、NAD(P)H、および一酸化炭素などの分析物が、血漿、尿素、唾液、および間質液を含む生物学的流体中で見出される他の用途がある。
【0117】
システム概要
分析物濃度を決定するシステムは、サンプルを含むセンサストリップと、1つまたは複数の走査技法および1つまたは複数のデータ処理を実施する測定デバイスとを含んでもよい。一態様では、本発明は、1つまたは複数のセンサストリップと、分析物の濃度を出力するための、走査技法およびデータ処理を実施する手持ち式電子デバイスとを含むキットであってよい。
【0118】
センサストリップは、作用電極と対向電極とを含んでもよく、任意選択で、参照電極または第3電極を含んでもよい。一態様では、作用電極および対向電極は、Ascensia(登録商標)AUTODISCセンサにおいてなどで、共に印刷/共に堆積することによって、単一試薬層で被覆されてもよい。別の態様では、各電極は、試薬層がその上に存在する電極について最適化された試薬層で被覆されてもよい。作用電極の試薬層は、血液サンプル中のグルコースを酸化する酵素、および、グルコースを酸化することによって還元された後の酵素を再酸化させる酸化還元化合物などのメディエーターを含む。グルコース酸化の酵素反応によって電極に電子を運ぶ、還元されたメディエーターは、作用電極の表面において再酸化する。
【0119】
この再酸化によって、電極およびセンサストリップの導体を通る電子の通過が生じる。センサストリップの導体は、電極間に電圧差を印加する測定デバイスに電気接続する。デバイスは、血液サンプルのグルコース含有量の尺度として、センサを通過する電流を記録してもよい。
【0120】
全血サンプルは、センサストリップに塗布され、血液内のグルコースは、試薬層内の、または、試薬層に非常に接近した酵素と反応する。サンプルから作用電極までの還元されたメディエーターの拡散速度は、作用電極と対向電極との間を通過する電流を制限することがある。
【0121】
走査技法
一定電圧を印加し、一方、時間の関数として電流を測定する従来のアンペロメトリーおよびクーロメトリーと違って、ボルタンメトリー走査は、固定速度(V/秒)で電極にまたがって電位(電圧)を印加すること、および、印加された電位の関数として電流を測定することを含む。ボルタンメトリー走査は、リニア方式、サイクリック方式、または、非サイクリック方式で実施することができる。サイクリックボルタンメトリー走査は、一般に、「サイクリックボルタンメトリー」と呼ばれる。
【0122】
リニアスキャン中に、作用電極の電流を測定し、その間、作用電極の電位は、一定の速度で時間と共に直線的に変化する。−0.5 V〜+0.5 Vなどのスキャン範囲は、1つの状態から他の状態への遷移が起こるように、酸化還元対の還元状態と酸化状態をカバーしてもよい。作用電極で測定される電流は、3つの成分、すなわち、平衡電流、拡散電流、および表面電流を有するものと考えることができる。電極上で吸収された任意の種から引き出される可能性がある表面電流は、概して小さく、無視することもできる。平衡電流と拡散電流は、得られるボルタモグラムで示される主要成分である。
【0123】
リニアスキャン・ボルタモグラム(電流対電圧のプロット)は、平衡電流で開始し、ピーク電流に達し、スキャン中に低い電流レベルに減衰するプロットを特徴としてもよい。初期ピーク電流後、測定電流は減衰し、定常状態領域に近づき、定常状態では、電極表面における還元されたメディエーターの酸化は、拡散によって制限された最大速度に達する。そのため、スキャンのこのプラトー領域における定常状態電流は、電極を通過する、拡散によって制限された電流を意味し、拡散によって制限された電流は、血液サンプルのグルコース含有量の尺度として使用することができる。
【0124】
サイクリックスキャンまたは非サイクリックスキャンについて、順方向スキャンの終了後に、順方向スキャンと実質的に同じスキャン速度で、逆方向電位リニアスキャンが適用される。サイクリックスキャン、場合によっては、非サイクリックスキャンは、印加された電位に関連して、または、電極表面に対する酸化還元種の拡散速度に関連して、還元状態から酸化状態へ(また、その逆)の酸化還元種の遷移を調べてもよい。
【0125】
リニアスキャンに関連して、サイクリックスキャンおよび非サイクリックスキャンは、スキャンの定常状態(拡散で制限された)部分のよりよい表現を提供する場合がある。サイクリックスキャンおよび非サイクリックスキャンの利点は、高速スキャン速度における擬可逆性酸化還元対による定常状態電流を定量するのに特に有利である場合がある。リニアおよびサイクリックスキャンボルタンメトリーに関するさらなる情報は、A.J. BardおよびL.R. Faulknerによる「Electrochemical Methods: Fundamentals and Applications」(1980)に見出されてもよい。
【0126】
非サイクリックスキャンは、サイクリックスキャンに比べて、スキャン時間が短いことおよび測定可能な状態に電気化学的に変換されるメディエーターの量が実質的に少ないことを含む、複数の利点を有することができる。そのため、メディエーターが、分析物に応答して還元され、測定中に、電気化学的に酸化される場合、酸化されたメディエーターが電気化学的に還元される前に逆方向スキャンを終了させることは、分析物に応答せずに、サンプル中の還元されたメディエーターの量を減らす。スキャン時間を減らすことによって、分析時間の短縮、ユーザにとっての著しい利益が可能になる場合がある。
【0127】
図3Aは、フェリシアニド/フェロシアニド酸化還元対の25 mV/秒サイクリックスキャンによるデータを、サイクリックボルタモグラムとして示す。ボルタモグラムは、フェロシアニドの酸化を示す−0.3 Vから+0.6 Vまでの正側の電圧スキャン中の順方向スキャンピーク、および、フェリシアニドの還元を示す+0.6 Vから−0.3 Vまでの負側の電圧スキャン中の逆方向スキャンピークが特徴である。順方向および逆方向のスキャンピークは、対向電極を基準とすると、フェロシアニド/フェリシアニド酸化還元対の式量電位EO/(−0.05 mV)の周りに集中する。この態様では、対向電極の電位は、フェロシアニド、対向電極上に存在する主要な酸化還元種の還元電位によって実質的に決まる。図3Bは、ボルタモグラムデータの準積分を提示し、このデータ処理方法が未処理データに及ぼす影響を示す。図3Cは、匹敵する非サイクリックスキャンを示し、逆方向スキャンは、逆方向電流ピークの始動前に終了する。図3Dは、非サイクリックスキャンの準積分を提示する。
【0128】
走査プロセスは、電位が、式量電位EO /に対して増加するにつれて、作用電極の近くでの電流を益々大きくする。同時に、電極表面における酸化は、空乏エリア、したがって、電極の近くでの濃度勾配を生成する。この濃度勾配は、さらなるメディエーターが、電極に向かって拡散する駆動力を作る。組み合わせると、これらの力は、分析物によって還元されたメディエーターまたはオキシドレダクターゼが、作用電極へ移動し、再酸化するにつれて、ボルタモグラムにおいて初期順方向ピークを提供する。スキャンが続くにつれて、電流は、減衰し、図3Aの〜0.3 Vから〜0.6 Vの、定常状態領域に近づく。定常状態領域で測定された電流は、還元されたメディエーターの濃度、したがって、血液サンプルのグルコース含有量に関連付けられてもよい。
【0129】
順方向スキャンおよび逆方向スキャンが開始する電位(スキャン範囲)は、酸化還元対の還元状態と酸化状態にまたがるように選択されてもよいが、スキャン範囲は、分析時間を短縮するように減らされてもよい。しかし、スキャン範囲は、好ましくは、酸化還元対について定常状態領域を含む。たとえば、25 mV/秒のスキャン速度において、フェロシアニド/フェリシアニド可逆性酸化還元対の還元された[Red]種および酸化された[Ox]種の濃度ならびに得られる電極電位は、ネルンストの式によって以下のように記述される。
【0130】
【数1】
【0131】
作用電極の電位が、それ自体の酸化還元電位を基準にすると、式量電位EO /は、実質的にゼロになり、式は、元の形でなくなり、
【0132】
【数2】
【0133】
になる。式(1)から、酸化されたメディエーターと還元されたメディエーターの比が、10だけ変化すると、作用電極の電位は、約60 mVだけ変化する。逆もまた真である。そのため、10:1、100:1、1000:1、および10,000:1のフェリシアニド[Ox]とフェロシアニド[Red]の濃度比の場合、作用電極の電位は、ゼロ電位から、それぞれ、約60、120、180、および240 mV離れていることになる。
【0134】
したがって、フェリシアニドとフェロシアニドの比が、〜1000:1であるときに、+180 mV〜−180 mVのスキャン範囲が、作用電極における、還元された種の実質的に完全な酸化を提供するはずである。180 mVにおいて、酸化速度は、還元された形態のメディエーターが、電極表面にどれだけ速く拡散することができるかによって制限され、この電位から順方向に、拡散によって制限される定常状態電流領域が存在する。そのため、反転点が、ゼロ電位から〜400 mVに設定される場合、定常状態の〜200 mVが設けられてもよい。
【0135】
可逆性システムの場合、400〜600 mVのスキャン範囲を設けること、したがって、酸化還元対の式量電位EO /の両側に200から300 mVまで走査することが望ましい場合がある。擬可逆性システムの場合、600〜1000 mVのスキャン範囲を設けること、したがって、酸化還元対の式量電位EO /の両側に300から500 mVまで走査することが望ましい場合がある。スキャンの定常状態部分が、スキャンのプラトー領域がそれほど広くないところで起こる場合があるため、擬可逆性システムの場合、より大きなスキャン範囲が好ましい場合がある。本質的に、擬可逆性である酸化還元対に加えて、高速スキャン速度によって、低速スキャン速度で可逆性である酸化還元対が、擬可逆性挙動を示す場合がある。そのため、高速スキャン速度における可逆性酸化還元対について、より大きな擬可逆性スキャン範囲を設けることが好ましい場合がある。
【0136】
好ましくは、少なくとも25、50、100、150、または300 mVの定常状態領域は、選択されたスキャン範囲によって提供される。別の態様では、サイクリックスキャンまたは非サイクリックスキャンについての反転点は、25〜400 mV、50〜350 mV、100〜300 mV、または175〜225 mVの定常状態領域が提供されるように選択される。可逆性システムの場合、サイクリックスキャンまたは非サイクリックスキャンについての反転点は、定常状態領域の180〜260 mV、または200〜240 mVが提供されるように選択される。擬可逆性システムの場合、サイクリックスキャンまたは非サイクリックスキャンについての反転点は、定常状態領域の180〜400 mV、または200〜260 mVが提供されるように選択される。
【0137】
反転点が、所望の定常状態領域を提供するように選択されると、逆方向スキャンの継続時間が、非サイクリックスキャンについて選択されてもよい。図3Eで見てわかるように、約−0.025 mVで、順方向スキャンを開始し、逆方向スキャンを終了させることは、逆方向電流ピークより順方向電流ピークを多く含んだ非サイクリックスキャンをもたらした。図3Eの比較から、サイクリックスキャン(a)および非サイクリックスキャン(b)について得られたピーク電流は異なるが、スキャンの定常状態部分は、特に、逆方向スキャンについてほぼ同様であった。スキャンの準積分が、図3Fにおいてプロットされると、逆方向スキャンのプラトー領域の定常状態電流の読み取りがさらに確立され、反転点から最大50 mVにおいて正確な電流の読み取りが可能になった。
【0138】
別の態様では、逆方向スキャンは、図3Cに示すように、逆方向電流ピークに達する前に終了してもよい。順方向スキャンが、図3Cの−0.05 mVなどの、酸化還元対の電位範囲の中央に対して、図3Cの−0.3 mVなどの、十分に負側の電位で開始したとき、順方向スキャンは、酸化還元対の酸化還元電位の全範囲を含んだ。そのため、たとえば、反転点から負側に、50〜500 mV、150〜450 mV、または300〜400 mVの電位で逆方向スキャンを終了させることによって、逆方向電流ピークは、フェリシアニド/フェロシアニド酸化還元対について排除される。
【0139】
同様に、逆方向スキャン電流が、定常状態電流から所定値だけ偏移するときにスキャンを終了させることによって、逆方向電流ピークに達する前に、逆方向スキャンが、終了させられてもよい。最小2%、5%、10%、または25%の逆方向スキャン電流の変化が、逆方向スキャン電流ピークの開始を指示するのに使用されてもよい。
【0140】
図3Gは、酸化還元対の順方向酸化ピークと逆方向酸化ピークを排除する非サイクリックスキャンを高速サイクリックスキャンと比較する。非サイクリックスキャン速度は、速く(1 V/秒)、200 mVの開始点と終了点、および300 mVの反転点を有した。順方向酸化ピークと逆方向酸化ピークを排除する酸化還元対の定常状態領域内の非サイクリックスキャンについての好ましいスキャン範囲は、10〜200 mV、より好ましくは、50〜100 mVである。
【0141】
グラフを見てわかるように、非サイクリックスキャンについて記録された電流値は、サイクリックスキャンの電流値より数値的に小さいが、バックグラウンド電流は、非サイクリックスキャンについて、より低い。この有益なバックグラウンド低減は、意外にも、サイクリックスキャンの還元ピーク部分において非サイクリックスキャンを始動させる必要なく得られる。そのため、酸化還元対の定常状態領域内における高速で、かつ、短い非サイクリックスキャンは、信号対バックグラウンド比の低減によって、分析物決定の精度を増加させる場合がある。
【0142】
図3Hは、図3Gの200〜300 mV非サイクリックスキャンについて準積分と記録された電流値を示す。スキャンの減衰電流は、準積分データ処理によって、定常状態電流プラトーに変換される。準積分の定常状態部分、たとえば、300 mVの電流値は、サンプルの分析物濃度を決定するのに使用されてもよい。
【0143】
サイクリックスキャンおよび非サイクリックスキャンは、リニアスキャンに関して複数の利点を提供してもよい。一態様では、反転点から、逆方向電流ピークが開始する点までの逆方向スキャンの部分は、順方向スキャンの定常状態領域よりも、優れた定常状態領域の表現である場合がある。順方向スキャンが、明瞭な定常状態領域を示さない場合があるため、逆方向スキャンの定常状態領域は、擬可逆性酸化還元システムについて、または、高速スキャン速度において、分析物濃度のより正確な表現である場合がある。この現象は、たとえば、図10Cにおいて観察された。
【0144】
データ処理
リニア走査、サイクリックスキャン、または非サイクリックスキャンによって、サンプル中の分析物の濃度が決定されてもよい。さらに、分析物濃度測定に対するヘマトクリットの影響が、決定されてもよい。スキャンからのデータは、複数の方法で処理されて、この有用な情報および他の有用な情報が抽出されてもよいが、準積分、微分、および準微分技法が、今のところ好ましい。
【0145】
これらのデータ処理方法の概要が、グルコース分析に関連して以下で述べられるが、電気化学電流についてのこれらのデータ処理および関連するデジタルの実施についてのより徹底的な議論は、Bard, A.J.、Faulkner, L.R.「Electrochemical Methods: Fundamentals and Applications」1980;Oldham, K.B.「A Signal-Independent Electrochemical Method」Anal. Chem. 1972, 44, 196;Goto, M.、Oldham, K.B.「Semi-integral Electroanalysis: Shapes of Neopolarograms」Anal. Chem. 1973, 45, 2043;Dalrymple-Alford, P.、 Goto, M.、Oldham, K.B.「Peak Shapes in Semi-differential electroanalysis」Anal. Chem. 1977, 49, 1390;Oldham, K.B.「Convolution:A General Electrochemical Procedure Implemented by a Universal Algorithm」Anal. Chem. 1986, 58, 2296;Pedrosa, J.M.、 Martin, M.T.、Ruiz, J.J.、Camacho, L.「Application of the Cyclic Semi-Integral Voltammetry and Cyclic Semi-Differential Voltammetry to the Determination of the Reduction Mechanism of a Ni-Porphyrin」J. Electroanal. Chem. 2002, 523, 160;Klicka, R,「Adsorption in Semi-Differential Voltammetry」J. Electroanal. Chem. 1998, 455, 253において見出される場合がある。
【0146】
準積分
ボルタモグラムの準積分は、拡散によって制限された定常状態電流をヘマトクリットによって影響された平衡電流(初期ピーク)から分離してもよい。実験的に得られたボルタンメトリー電流i(t)の準積分は、以下の数学的形式を有する。
【0147】
【数3】
【0148】
ここで、i(t)は、スキャン中に得られるボルタンメトリー電流の時間関数であり、
I(t)は、変換およびi(t)の準積分であり、
uは、変換パラメータであり、
d−1/2/dt−1/2は、準積分作用素である。
【0149】
十分に高い酸化電位において、定常状態準積分電流は、
【0150】
【数4】
【0151】
によって与えられる。ここで、Ilimは、酸化可能な種の表面濃度がゼロであるという条件下での、拡散によって制限された定常状態電流である。準積分電流の単位は、クーロン/秒1/2であり、クーロン/秒である、電流を表す従来の単位ではないことに留意されたい。
【0152】
単純にするために、Ilimは、クーロン/秒1/2の単位を持つ、定常状態準積分電流(SI)と呼ばれる。SI電流(クーロン/秒1/2)は、電流(クーロン/秒)からの半ステップ積分に過ぎない。半ステップ積分は、基本的に、クーロメトリーと異なる。その理由は、クーロメトリーでは、電極を通過する全電荷を提供するために、全積分が、i−t曲線に適用されるためである。
【0153】
式(2)は、準積分の理論的な定義を与えるが、デジタル処理の場合、i−tデータは、t=0とt=NΔtの間の、等間隔で配置されたN個の時間間隔に分割されてもよい。1つのデジタル処理アルゴリズムは、式(4)
【0154】
【数5】
【0155】
によって与えられる。ここで、t=kΔtであり、u=jΔtであり、iは、各間隔の中央点で決定される。
デジタル処理のための好ましいアルゴリズムは、
【0156】
【数6】
【0157】
によって与えられる。ここで、Γ(x)は、xのガンマ関数であり、Γ(1/2)=π1/2、Γ(3/2)=1/2π1/2、Γ(5/2)=3/2*π1/2などである。
式(3)から、定常状態準積分電流は、従来のアンペロメトリー法の時間依存因子を欠くことが見てわかる。そのため、準積分電流応答は、従来のアンペロメトリーから得られる連続して変化するアンペロメトリー電流の代わりに、一連のプラトー電流と考えられてもよい。準積分によって、定常状態電流の定量が可能になるため、ピーク電流が定量されるときよりも、より高速なスキャン速度が使用されてもよい。そのため、準積分と組み合わせた、リニア、サイクリック、または非サイクリックボルタンメトリーは、グルコース濃度に応答して定常状態電流を迅速に生成する。こうして、クーロンメトリの長い待ち時間、および、アンペロメトリーにおける電流の非定常状態の性質の欠点が低減される場合がある。
【0158】
式(3)はまた、準積分と共に使用するために、可逆または擬可逆酸化還元対が好ましいことを示す。この理由は、可逆または擬可逆酸化還元対からの準積分は、還元状態から酸化状態への急峻な遷移(および逆もまた同様)、および、広い定常状態領域を示すことができ、したがって、遷移をより容易に決定させるからである。フェリシアニド/フェロシアニドならびにルテニウムヘキサミンの+3および+2状態は、好ましい可逆挙動(低速スキャン)または擬可逆挙動(高速スキャン)を示す酸化還元対の例である。
【0159】
活性化の低い電極は、たとえ可逆または擬可逆酸化還元対の場合でも、許容可能な定常状態条件を提供しない場合がある。そのため、米国特許5,429,735に記載されるような電極活性化手順を使用して、好ましい電極活動が達成されてもよい。
【0160】
準微分
準積分に加えて、ボルタモグラムの準微分もまた、準微分のピークを測定することによって、分析物を定量するのに使用されてもよい。実験的に得られたボルタンメトリー電流i(t)の準微分は、以下の数学的形式を有する。
【0161】
【数7】
【0162】
ここで、I(t)は、時間関数i(t)の準積分である。
準微分の一実施態様は、式(7)で先に示したように、準積分の全ステップ微分をとることである。準積分プロットにおいてボルタンメトリースキャンを表すピークおよび定常状態プラトー領域と違って、準微分プロットは、ボルタンメトリースキャデータを酸化還元対の遷移を中心とするピークに変換する。図4Aは、20%ヘマトクリット全血サンプル中の16 mMフェロシアニドの、サイクリックボルタンメトリー、準積分、および準微分を示す。この例では、センサストリップの作用電極は、酵素および酸化されたメディエーターを欠いた。図4Bは、順方向スキャンについてのピーク高さを示す、図4Aの準微分曲線の拡大図である。順方向または逆方向スキャンピーク高さの値は、サンプルの分析物濃度に関係付けられてもよい。
【0163】
ヘマトクリットの影響
ヒトについての標準的なヘマトクリット範囲(RBC濃度)は、20%〜60%であり、40%のあたりを中心とする。ヘマトクリットの影響は、YSI Inc.(オハイオ州イエロースプリング(Yellow Spring, Ohio))から入手可能なYSI2300STAT PLUS(商標)などの基準機器から得られる基準グルコース濃度読み取り値と、上述した方法から得られる実験的なグルコース濃度読み取り値との間の差(偏移)を指す。基準の読み取り値と実験的な読み取り値との差は、特定の全血サンプル間の変動するヘマトクリットレベルから生じる。
【0164】
全血サンプル中のグルコース濃度は、異なるヘマトクリットレベルについて同様であるが、アンペロメトリーなどの拡散ベースの分析方法では、ヘマトクリットが高くなればなるほど、測定されるアンペロメトリー電流が低くなる。20、40、および60%の全血ヘマトクリットレベルの場合、得られる電流の読み取り値は、同じグルコース濃度について、20%>40%>60%の順序で異なることになる。20%の電流の読み取り値と60%の電流の読み取り値との差は、全血サンプルについて得られるグルコースの読み取り値についてのヘマトクリット偏移スパンを構成する。各全血サンプルについてヘマトクリットレベルの変動によって導入されるグルコース決定の不正確さは、分析における主要な誤差源となる場合がある。
【0165】
たとえば、実験的に得られるグルコースの読み取りが、血漿内のグルコースについて得られる電流の読み取りを参照して行われ、較正法が、サンプル中の40%ヘマトクリット含有量を仮定する場合、20%ヘマトクリットを含む全血サンプルから得られるより高い電流の読み取り値は、40%較正線に関して正側の偏移に変換されることになる。同様に、60%ヘマトクリットを含む全血サンプルから得られるより低い電流の読み取りは、40%較正線に関して負側の偏移に変換されることになる。
【0166】
ヘマトクリット低減
一態様では、全血をグルコース濃度について分析するときに、濃度決定についてのヘマトクリット偏移を低減するために、低速スキャン速度が、リニア走査、サイクリックスキャン、または非サイクリックスキャン、および準積分と組み合わされてもよい。図10Aは、低い(25 mV/秒)スキャン速度の場合、60%ヘマトクリット(線c)について、準積分の準方向スキャン部分において大きなピークが観察されるが、60%ヘマトクリット(線b)について、小さなピークが観察されることを示す。20%ヘマトクリット線(a)は、有意のピークを欠く。そのため、準積分プロットのピーク部分は、サンプルのヘマトクリット含有量に応答し、ピークの大きさは、ヘマトクリットレベルに定量的に関連してもよい。
【0167】
別の態様では、全血をグルコース濃度について分析するときに、濃度決定についてのヘマトクリット偏移を低減するために、リニアスキャン、サイクリックスキャン、または非サイクリックスキャンが、微分データ処理と組み合わされてもよい。図15A〜図15Cは、図7A〜図7Cのサイクリックボルタモグラムの微分を示す。これらの微分プロットは、電圧が増加するときの電流の初期増加と、それに続く減少と、最後に、定常状態領域を示す。ヘマトクリットの影響は、図15A〜図15Cで、約0.1ボルトに位置する負側のピークにおいて見られてもよく、より高いRBC濃度が、より負側のピーク値として反映される。
【0168】
図15Bの微分プロットに示すような正側および負側の微分ピークの値は、濃度依存性であり、負側ピークと正側ピークとの比は、濃度依存性を相殺し、したがって、ヘマトクリット依存性である。この比(HI−DER)は、濃度に依存せず、かつ、ヘマトクリット依存性であるため、サンプル中のパーセントヘマトクリットを示す。そのため、微分ピークのこの比は、以下でさらに述べるように、分析物決定のためのヘマトクリット補償式を決定するのに使用されてもよい。
【0169】
別の態様では、全血が、グルコース濃度について分析されるときに、濃度決定についてのヘマトクリット偏移を低減するために、リニアスキャン、サイクリックスキャン、または非サイクリックスキャンが、準微分データ処理と組み合わされてもよい。図4C、図4D、および図4Eは、バックグラウンドボルタモグラムの減算後(0 mg/dLグルコース)の、50、100、および40 mg/dLグルコースにおける、図7A、図7B、および図7Cのサイクリックボルタモグラムの順方向リニアスキャン部分からの準微分曲線を示す。
【0170】
図4Fは、各ヘマトクリットレベルにおける基準グルコース濃度に対してプロットされた図4C、図4D、および図4Eからの準微分電流を示す。20%と40%のヘマトクリット線の重なりは、ヘマトクリットの影響が、より低い(20%)値において実質的になくなったことを立証する。40%ヘマトクリット線と60%ヘマトクリット線との間のヘマトクリット偏移はまた、ボルタモグラムからの不変データの定常状態部分またはボルタモグラムの準積分から得られるヘマトクリット偏移に対して低減された。そのため、準微分データ処理は、本質的に、グルコース決定についてのヘマトクリット補償を可能にする場合がある。
【0171】
図4Gは、ボルタモグラムの不変順方向スキャン(LS)、ボルタモグラムデータの準積分(si)、およびボルタモグラムデータの準微分(sd)の比較を示す。グルコース値は、40%ヘマトクリットレベルにおける較正曲線を使用して計算された。プロットを見てわかるように、準微分データは、YSI基準機器から得られた線によく対応している。
【0172】
準積分および準微分データ処理は、ヘマトクリットの影響によって影響を受けた電流スキャンの部分の識別および定量を可能にする。そのため、これらのデータ処理は、普通なら、分析物濃度の決定に影響を及ぼすはずである、ヘマトクリット偏移の低減を可能にする。準微分データ処理は、以下でさらに議論するように、補償式がない状態では、普通なら、分析物濃度の決定に影響を及ぼすはずである、ヘマトクリット偏移の低減を可能にする場合がある。
【0173】
別の態様では、図10Bおよび図10Cの500および1000 mV/秒のスキャン速度などの、高速スキャン速度は、ヘマトクリット偏移を低減し、全血のグルコース含有量を測定するために、リニア走査、サイクリックスキャン、または非サイクリックスキャン、および、準積分データ処理、微分データ処理、または準微分データ処理と組み合わされてもよい。高速スキャン速度はまた、スキャン時間がより短いという利益、ユーザにとってのかなりの利益を提供する場合がある。
【0174】
スキャンの全体の長さが、従来のアンペロメトリーまたは低速スキャンボルタンメトリーの場合と同様に、比較的長いとき、メディエーターの拡散および測定される電流は、サンプルのRBC含有量によって著しく影響を受けることになる。逆に、スキャン速度が、500 mV/秒などの高速である場合、−200 mV開始点から、400 mV終了点に達するのに必要とされる時間は、1.2秒である。同様に、1000 mV/秒スキャン速度で0.6秒後に、または、2000 mV/秒スキャン速度で0.3秒後に、400 mV終了点に達してもよい。そのため、最大3秒、1.5秒、1秒、または0.5秒の総スキャン時間が、数学的に除去することなく、濃度測定に関するヘマトクリット偏移を低減する場合がある。
【0175】
分析物濃度を決定すること
図5は、水溶液のグルコース濃度が増加するときの、サイクリックボルタモグラムに関する作用を示す。0 mg/dLのグルコース濃度を表す線(線a)、100 mg/dLのグルコース濃度を表す線(線b)、200 mg/dLのグルコース濃度を表す線(線c)、400 mg/dLのグルコース濃度を表す線(線d)、および600 mg/dLのグルコース濃度を表す線(線e)が示される。走査速度は、25 mV/秒であった。図6は、準積分データ処理による準積分電流への変換後の、図5からのスキャンデータを提示する。そのため、各グルコース濃度の差は、図6のX軸から明らかである。
【0176】
サイクリックボルタモグラムの形状は、全血サンプルが走査されるにつれて変わることになる。サイクリックボルタモグラムは、ヘマトクリットおよびグルコース濃度と共に変わるボルタンメトリー電流、特に、定常状態部分(図7A〜図7Cの0.3〜0.4 V)に近い電流の変位を示すことになる。変化は、図7A〜図7Cにおいて見ることができ、ボルタモグラムは、それぞれ、50 mg/dL(図7A)、100 mg/dL(図7B)、および400 mg/dL(図7C)のグルコース濃度について、また、同様に、グルコース濃度のそれぞれについて、20、40、および60%のヘマトクリット(それぞれ、曲線a、b、およびc)について示される。走査速度は、25 mV/秒であった。ヘマトクリットの影響の観点から予想されるように、サンプル中のヘマトクリットのパーセンテージが高ければ高いほど、同じグルコース濃度についての読み取り値は大きい。サイクリックスキャンの対応する準積分プロットは、図8A〜図8Cとして示され、定常状態電流間の変位は、円で強調されている。図7D〜図7Fおよび図8D〜図8Fは、類似の非サイクリックスキャンについての、スキャンデータおよび対応する準積分を提示する。
【0177】
走査は、−600 mV〜+600 mVの範囲にわたって実施されてもよいが、好ましいスキャン範囲は、バイオセンサにおいて使用される酸化還元対(メディエーター)に依存する。概して、測定デバイスは、製造段階の間に、走査される範囲をプログラムされることになる。
【0178】
図9A〜図9Cは、400 mg/dLのグルコースを含む血液サンプルについて、それぞれ、25 mV/秒、500 mV/秒、および1000 mV/秒の走査速度についての結果を示す。スキャン速度が、図9Aの25 mV/秒から、図9Bの500 mV/秒および図9Cの1000 mV/秒に増加するにつれて、最初にヘマトクリットによって影響を受けたピークが減少する。さらに、ピーク電流値は、サンプルのヘマトクリット値(aは20%、bは40%、cは60%ヘマトクリット)に関連し、ヘマトクリットのより大きなパーセントは、概して、低速スキャン速度におけるピーク電流からの速い減衰に関連付けられる。
【0179】
図9A〜図9Cのボルタモグラムに対応する準積分プロットは、それぞれ、図10A〜図10Cに示される。25 mV/秒の図10Aのスキャンにおいて、円で囲んだ反転点を見てわかるように、20%、40%、および60%ヘマトクリット線の定常状態電流は、Y軸に関して分離された。スキャン速度は、図10Bの500 mV/秒および図10Cの1000 mV/秒に増加するにつれて、20%、40%、および60%ヘマトクリット線のY軸分離は減少する。そのため、スキャン速度が増加するにつれて、スキャンのヘマトクリットに影響を受けた部分が減少する。
【0180】
図11A〜図11Cは、図9A〜図9Cの実験結果に基づく図10A〜図10Cの準積分線と、各サンプルの基準グルコース濃度との相関を示す。YSI機器からの基準グルコース濃度値(X軸)は、各ヘマトクリットパーセンテージについての準積分電流(Y軸)と比較された。予想されるように、図11Aの25 mV/秒スキャンは、ヘマトクリットの影響に起因する最も大きな偏移を示し、一方、図11Bおよび図11Cのより速い500 mV/秒および1000 mV/秒スキャンは、それぞれ、より小さい偏移を示す。
【0181】
準積分プロットにおける、ピーク電流値と定常状態電流値との比は、ヘマトクリット指数(HI)を基準にしてもよい。ヘマトクリット指数(HI)は、図12に示すように、準積分電流ピーク(ip)を、準積分電流定常状態値(iss)で割ったものとして定義されてもよい。計算されたヘマトクリット指数(HI)は、サンプルの実際の%−ヘマトクリット含有量に関係付けられて、図13Aに示す相関線を得られた。微分データ処理に関して先に議論したように、HI−DER比はまた、相関線を得るのに使用されてもよい。
【0182】
準積分データ処理について、図13Aに示すような、相関線の傾斜または切片と傾斜を記述する補償式が、次に、決定されてもよい。補償式が決定されると、ヘマトクリットの影響を補償された、サンプルのグルコース濃度は、定常状態電流値などの所望の電流値を式に引き入れることによって決定されてもよい。そのため、準積分データ処理についてのピーク電流値と定常状態電流値との比、または、微分データ処理についての負側ピークと正側ピークとの比は、ヘマトクリットの影響に起因する分析偏移を補正するのに使用されてもよい。
【0183】
図13Bは、ヘマトクリット補償を使用した、固定電流における種々のグルコース濃度についての傾斜と%−ヘマトクリットとの相関を示す。グラフを見てわかるように、図13Aの曲線を記述するために決定された補償式は、WBサンプルの隠されたヘマトクリット含有量に無関係に、電流とグルコース濃度との実質的にリニアな相関を提供する。図14は、本発明のセンサシステムから得られた、複数の補償済みと未補償のグルコース読み取り値を、YSI基準機器から得られた値と比較する。
【0184】
以下の例は、本発明の1つまたは複数の好ましい実施形態を示すために提供される。本発明の範囲内に入る、いくつかの変形を以下の例に対して行うことができる。
実施例1:センサストリップの調製
図1A〜図1Bを参照すると、電気化学センサストリップ10を調製するために、電極12および14は、米国特許第5,798,031号および第5,120,420号に記載される技法を使用してなどで、絶縁材料の基部上に形成された。ポリカーボネートストリップ16上にスクリーン印刷することによって、銀ペースト18が堆積された。このペーストは、電極12および14の電気接点20aおよび20bならびに下部層18を形成するために、あるパターンで印刷された。
【0185】
図1Bでは、各電極の上部層、グルコースオキシダーゼ(またはPQQ−GDHグルコース・デヒドロゲナーゼ)およびメディエーターとしてのフェリシアニドの試薬層26および28を形成するために、導電性カーボンを含むインクおよびバインダが、パターン22および24でスクリーン印刷することによって塗布された。作用電極および対向電極12および14は、それぞれ、1 mm2および1.2 mm2の表面を有し、電極は、約0.25 mm離れている。図2Aでは、アクリレート修飾ポリウレタンを含む誘電体層30が、基部上に堆積された。電極の下部層は、次に、UV放射によって硬化させられた。
【0186】
図2Bを参照すると、乾燥後に、基部は、蓋32に接合されて、センサストリップ10が形成された。蓋の構築は、米国特許第5,798,031号に記載されるように実施された。ポリウレタン水分散体の皮膜溶液が、ポリカーボネートストリップの一方の面上に塗られ、乾燥させられた。ストリップは、窪みエリア34を形成するためにエンボスすること、および、穴36を穿孔することによって、蓋内に形成された。蓋と基部とを位置合わせし、接触させることによって、蓋が基部に接合され、それに続いて、構造の周囲に沿う接触エリアに熱が加えられた。
【0187】
完成した電気化学センサは、電極の活性を増加させるために、米国特許第5,429,735号に記載される手順を使用して活性化された。
実施例2:分析の実施
図2Cは、電気回路210およびディスプレイ230に電気接続した接点220を含む測定デバイス200の略図である。一態様では、測定デバイス200は、手で保持され、センサストリップを受け取るようになっている。別の態様では、測定デバイス200は、センサストリップを受け取り、ボルタンメトリー走査を実施するようになっている手持ち式測定デバイスである。別の態様では、測定デバイス200は、センサストリップを受け取り、非サイクリックスキャンを実施するようになっている手持ち式測定デバイスである。
【0188】
接点220は、電気回路210、ならびに、図1Aに示すセンサストリップ10の接点20aおよび20bなどのセンサストリップの接点との電気接続を提供するようになっている。電気回路210は、電気充電器250、プロセッサ240、およびコンピュータ読み取り可能記憶媒体245を含んでもよい。電気充電器250は、ポテンショスタットなどであってよい。そのため、充電器250は、充電器−記録器として機能するために、得られる電流を記録しながら、接点220に電圧を印加してもよい。
【0189】
プロセッサ240は、充電器250、コンピュータ読み取り可能記憶媒体245、およびディスプレイ230に電気接続してもよい。充電器が、電流を記録するようになっていない場合、プロセッサ240は、接点220の電流を記録するようになっていてもよい。
【0190】
コンピュータ読み取り可能記憶媒体245は、磁気メモリ、光メモリ、半導体メモリなどのような任意の記憶媒体であってよい。コンピュータ読み取り可能記憶媒体245は、固定メモリデバイス、または、取り外し可能メモリカードなどの取り外し可能メモリデバイスであってよい。ディスプレイ230は、数値読み取り値を表示するようになっている、アナログまたはデジタルディスプレイ、一態様では、LCDディスプレイであってよい。
【0191】
サンプルを含むセンサストリップの接点が、接点220に電気接続すると、プロセッサ240は、サンプルにボルタンメトリースキャンを適用し、したがって、分析を開始するように、充電器250に指示してもよい。プロセッサ240は、たとえば、センサストリップの挿入、前に挿入されたセンサストリップに対するサンプルの適用、または、ユーザ入力に応答して分析を開始してもよい。
【0192】
ボルタンメトリースキャンの実施に関する命令は、コンピュータ読み取り可能記憶媒体245に記憶されたコンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードによって提供される。コードは、オブジェクトコード、または、本アプリケーションで記述される機能を記述するか、または、制御する任意の他のコードであってよい。スキャンから得られるデータは、プロセッサ240で1つまたは複数のデータ処理を受け、分析物濃度などの結果が、ディスプレイ230に出力される。走査命令の場合と同様に、コンピュータ読み取り可能記憶媒体245に記憶されたコンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードからのデータ処理は、プロセッサ240によって実施されてもよい。
【0193】
実施例3:サイクリックボルタンメトリーおよび準積分
100 mg/dL水性グルコース溶液は、AscensiaAUTODISC(登録商標)センサ内に導入された。25 mV/秒のスキャン速度を有するサイクリックスキャンが、CH Instrumentsのポテンショスタットを使用してセンサストリップに適用された。サイクリックボルタモグラム(CV)が、図3Aにプロットされ、一方、その準積分(si)が、図3Bとしてプロットされた。データは、対向電極の電位(フェリシアニド)に対する走査電位の関数としてプロットされた。図3Bは、さらに、準積分プロットにおける定常状態電流のプラトーを示し、たとえば、0.2 Vと0.4 Vと間の定常状態プラトー領域の差は、実質的にゼロであったが、〜−0.15 Vにおける、定常状態プラトーと、順方向電流ピーク(siss)との差は、比較的大きかった。
【0194】
この準積分データ処理、ならびに、どこか他で述べられる微分データ処理および準微分データ処理に使用される式は、CH Instrumentsの電気化学ワークステーション、model CHI660Aを伴う、2004年4月26日に改定された電気化学ワークステーションパッケージversion4.07によって実施された。
【0195】
実施例4:高いグルコース濃度の影響
図5では、それぞれ、a〜eで表示された0、100、200、400、および600 mg/dLのグルコースを含む水性グルコース溶液を装填されたAscensiaAUTODISC(登録商標)に、サイクリックスキャンが適用された。図を見てわかるように、各グルコース濃度についてのピークは、グルコース濃度が増加するにつれて、上昇し、より高電位にシフトした。図6は、図5のサイクリックボルタモグラムについての対応する準積分を示す。グルコース濃度がゼロにて、準積分電流は、実質的にゼロであった。
【0196】
実施例5:WBサンプル中のグルコースのサイクリックボルタンメトリー、低速スキャン
2003年10月24日に出願された米国仮特許出願第60/513,817号に全体が記載されるように、作用電極と対向電極上に異なる試薬層を有するセンサストリップが構築された。約22%K3Fe(CN)6、0.7%ベントン、1.5%CMCから作られるが、活性成分を含まないフェリシアニド層が、対向電極上に堆積された。16.8ユニット/μL PQQ−GDH、250 mMフェリシアニド、1.8%CMC、64 mMリン、および64 mM NaClの試薬溶液から作られた層が、作用電極上に堆積された。50 mg/dLグルコースおよび20%、40%、または60%ヘマトクリット(図7A〜図7Cにおいてそれぞれa〜cで表示される)を含む全血サンプルが、センサストリップ内に導入された。
【0197】
60%ヘマトクリットサンプル(c)からのピーク電流は、最も高かったが、20%(a)および40%(b)ヘマトクリットを含むサンプルとほぼ同じ定常状態電流に最も速く減衰した。50 mg/dL濃度を含む60%ヘマトクリット全血サンプルについての電流減衰プロセスは、それぞれ、100および400 mg/dL濃度についての図7Bおよび図7Cにおいて観察された電流減衰プロセスと同様である。60%ヘマトクリット全血サンプルにおいて、グルコース濃度が増加すると、20%および40%ヘマトクリットサンプルで得られる電流値と比べて定常状態電流値が減少した。
【0198】
実施例6:サイクリックボルタモグラムの準積分
サイクリック電流および非サイクリック電流は、サンプルのグルコース濃度を定量するのに直接使用されてもよいが、これらのボルタモグラムの準積分は、サンプルのグルコース濃度を表すための好ましい値を提供する。図8A、図8B、および図8Cに提示される準積分は、図7A、図7B、および図7Cから得られた。20%全血サンプル(a)からの準積分は、実質的に平坦であり、プラトーにおいて事実上全くピークを持たないことに留意されたい。ヘマトクリットレベルが増加するにつれて、40%〜60%ヘマトクリット(b、c)からのピークが、益々顕著になった。同様に、グルコース濃度が増加するにつれて、20%、40%、および60%ヘマトクリットの3つの定常状態電流は、さらに分離された。準積分から得られる0.3 Vでの定常状態電流は、3つのヘマトクリットについての較正曲線を構築するのに使用された。
【0199】
実施例7:WBサンプル中のグルコースのサイクリックボルタンメトリー、高速スキャン
20%、40%、および60%ヘマトクリットレベルの全血グルコースを使用して、高速スキャンサイクリックボルタンメトリーを行うのに、例4で述べたセンサストリップが使用された。図9A、図9B、および図9Cは、それぞれ、0.025 V/秒、0.5 V/秒、および1 V/秒スキャン速度における、400 mg/dLグルコースを含む全血のサイクリックボルタモグラムである。0.025 V/秒スキャン速度におけるボルタモグラムについて、0.3 Vのボルタンメトリー電流間に大きな偏移が存在したが、スキャン速度の増加に伴って、この偏移は減少した。これらのサイクリックボルタモグラムの準積分は、図10A、図10B、および図10Cに示される。同じグルコース濃度における、各ヘマトクリットパーセンテージについての定常状態電流は、スキャン速度が増加するにつれて、一緒に合流した。最初の電流ピークは、高速スキャン速度で実質的に減少した。
【0200】
実施例8:WBサンプル中のグルコースの非サイクリックボルタンメトリー、高速の短いスキャン
400 mg/dLグルコースおよび20、40、または55%ヘマトクリットを含む全血サンプルが、それぞれ、3つのセンサストリップに適用された。約6秒待った後に、高速(1 V/秒)非サイクリックスキャンが、0.2 Vから0.3 Vまで、そして、もとの0.2 Vまで適用された。図3Hに関して先に述べたように、スキャンから準積分電流を決定した後、0.3 Vにおける、非サイクリックスキャン電流値および対応する準積分電流値を使用して、3つのWBサンプルのそれぞれにおいてグルコース濃度が決定された。
【0201】
図17A〜図17Bは、それぞれ、記録された電流値と準積分電流値についての適用量応答プロットを示す。記録された電流値に関連して、図17Bの準積分データ処理は、ヘマトクリットの影響に起因する、20%サンプルと55%サンプルとの間の分析偏移のわずかな低減を提供した。図17Cは、非サイクリックスキャンから得られるグルコース濃度値の精度を、0.025 V/秒の低速スキャン速度を有するサイクリックスキャンから得られるグルコース濃度値の精度と比較する。非サイクリックスキャンから得られる濃度値は、より長いサイクリックスキャンから得られる濃度値に比べて、基準YSI機器から得られる濃度値により近い。
【0202】
実施例9:異なるスキャン速度におけるsi電流の較正曲線
20%、40%、および60%ヘマトクリット線からの準積分電流を使用して、図11A、図11B、および図11Cに示す、0.025 V/秒、0.5 V/秒、および1 V/秒のスキャン速度について、較正曲線が構築された。センサストリップは、例4のセンサストリップと同様である。0.025 V/秒のスキャン速度では、図11Aにおいて試験された全血サンプルの3つのヘマトクリットについて、3つの明瞭な線が観察された。スキャン速度が、0.025 V/秒から0.5 V/秒(図11B)へ増加するにつれて、3つの較正曲線は、接近し、1 V/秒(図11C)において、ほぼ合流した。この例は、全血サンプル中のグルコース測定が、WBサンプルのヘマトクリットの影響を回避する場合があることを実証した。
【0203】
実施例10:準積分からヘマトクリット指数を定義すること
図8A〜図8Cから、ヘマトクリットレベルと電流ピークの高さとの間の関係が存在する。ピーク高さと定常状態電流(si)との比は、グルコース濃度に無関係である。この特性を使用して、全血サンプルのヘマトクリットレベルが示されてもよい。
【0204】
図12は、準積分から得られる、ピーク電流と定常状態電流との比としてヘマトクリット指数(HI)を定義する。以下の表は、50、100、および400 mg/dL全血グルコース、ならびに、20%、40%、および60%ヘマトクリットにおける、準積分のピーク電流とプラトー電流を記載する。
【0205】
【表1】
【0206】
実施例11:WBグルコースについての測定偏移の補償
全血%−ヘマトクリットは、図13Aに示すように、ヘマトクリット指数についての較正曲線として、ヘマトクリット指数(HI)値に対してプロットされた。同時に、図11Aからの3つのヘマトクリットレベルにおけるグルコース較正線の傾斜が、図13Bに示すように、WB%−ヘマトクリットに対してプロットされた。電流信号からグルコース値を計算するのに、40%ヘマトクリットにおける単一の傾斜(および切片)を使用する代わりに、%−ヘマトクリット依存曲線が使用された。これは、以下の方法で達成された。
(a)図12からなど、準積分からのピーク電流およびプラトー電流が得られた後、ヘマトクリット指数(HI)値が計算された。
(b)このHI値を使用して、WBサンプルの%−ヘマトクリット値が、図13Aから見出された。
(c)この%−ヘマトクリット値を使用して、ヘマトクリット依存である近似較正傾斜が、図13Bから決定された。同様な方法は、ヘマトクリット依存切片を見出すのに使用されてもよい。
(d)(c)からの傾斜(および切片)を使用して、si電流がグルコース値に変換された。
図14は、こうした補償手順の最終結果を示し、未補償グルコース読み取り値は、ダイアモンドとして示され、一方、補償済みデータ点は、開いた四角形として示される。精度の改善は、特に、高いグルコース濃度において明らかである。
【0207】
実施例12:サイクリックボルタモグラムの微分
ヘマトクリット値は、スキャン中のピーク電流に続く場合がある電流減衰プロセスによって識別されてもよい。この特徴は、図7A、図7B、および図7Cに示され、電流減衰は、60%ヘマトクリット全血において最も速い。この特徴はまた、スキャンからのボルタンメトリー電流の微分をとることによって表されてもよい。図15A〜図15Cは、20%、40%、および60%ヘマトクリットパーセンテージに関して、50 mg/dL、100 mg/dL、および400 mg/dLにおけるサイクリックボルタモグラムの微分を示す。微分曲線の最も大きな負側のピークは、図7A〜図7Cのサイクリックボルタモグラムの最も速い電流減衰を表す。そのため、微分ダイアグラムのピーク高さを使用して、全血におけるヘマトクリットの影響による分析偏移が補償されてもよい。一態様では、準積分電流について、例9で議論された方法と同様の、図16A〜図16Cに示す方法が使用された。
【0208】
図16Aは、20、40、および60%ヘマトクリットにおいて、グルコース濃度に対する0.3ボルトの定常状態領域でのCV電流のプロットを示す。これは、準積分について図11Aと同様であり、ヘマトクリットの増加に伴う電流の発散(divergence)を示す。図16Bは、図15A〜図15Cの%−ヘマトクリットに対する、負側ピークと正側ピークとの平均比のプロットを示す。この比は、この場合、準積分電流ではなく、電圧に対する電流の微分を使用した、ヘマトクリット指数の別の定義である。図16Cは、%−ヘマトクリットに対して、図16Aの曲線の傾斜を示す。準積分についての手順と同様の手順で、電圧に対する電流の微分が得られ、正側ピークに対する負側ピークを使用して、ヘマトクリット指数(HI−DER)が定義された。HI−DERを使用して、図16Bから%−ヘマトクリットが決定された。次に、図16Cを使用して、%−ヘマトクリットについて、測定されたグルコース含有量が補正された。図16Dは、ボルタンメトリーによって得られた電流の微分を使用した、ヘマトクリットの影響の補正を示した。
【0209】
本発明の種々の実施形態が述べられたが、本発明の範囲内で、他の実施形態および実施態様が可能であることが、当業者には明らかになるであろう。したがって、本発明は、添付特許請求の範囲およびその等価物に照らして制限される以外には制限されない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の分析物の濃度を決定するための、手持ち式分析物測定デバイスであって、センサストリップを受け取るようになっている非サイクリックスキャン式測定デバイスを備え、
前記非サイクリックスキャン式測定デバイスは、電気回路によって、ディスプレイに電気接続する少なくとも2つのデバイス接点を備え、
前記センサストリップは、少なくとも第1センサストリップ接点および第2センサストリップ接点を備え、前記第1センサストリップ接点は導体によって作用電極に電気接続し、前記第2センサストリップ接点は導体によって対向電極に電気接続し、
第1試薬層は、前記電極のうちの少なくとも1つの電極上にあり、前記第1試薬層は、オキシドレダクターゼおよび酸化還元対の少なくとも1つの種を含むデバイス。
【請求項2】
サンプル中の分析物の濃度を決定する方法であって、
前記サンプルにボルタンメトリー順方向リニアスキャンを適用するステップと、
得られる電流を測定するステップと、
前記測定された電流にデータ処理を適用するステップと、
前記サンプル中の前記分析物の濃度を決定するステップとを含む方法。
【請求項3】
サンプル中の分析物の濃度を決定するための、手持ち式分析物測定デバイスであって、センサストリップを受け取るようになっているボルタンメトリー走査式測定デバイスを備え、
前記ボルタンメトリー走査式測定デバイスは、電気回路によって、ディスプレイに電気接続する少なくとも2つのデバイス接点を備え、
前記センサストリップは、少なくとも、第1センサストリップ接点および第2センサストリップ接点を備え、前記第1センサストリップ接点は導体によって作用電極に電気接続し、前記第2センサストリップ接点は導体によって対向電極に電気接続し、
第1試薬層は、前記電極のうちの少なくとも1つの電極上にあり、前記第1試薬層は、オキシドレダクターゼおよび酸化還元対の少なくとも1つの種を含むデバイス。
【請求項4】
サンプル中の分析物の濃度を決定するための、手持ち式測定デバイスであって、
デバイスは、センサストリップを受け取るようになっており、デバイスは、
接点と、
少なくとも1つのディスプレイと、
前記接点と前記ディスプレイとの間の電気接続を確立する電子回路要素とを備え、前記電子回路要素は、
電気接続した状態の、電気充電器およびプロセッサとを備え、前記プロセッサは、コンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードを含むコンピュータ読み取り可能記憶媒体に電気接続し、前記コンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードは、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサが、準積分、微分、準微分、およびその組み合わせからなる群から選択されるデータ処理を実施するようにさせるデバイス。
【請求項1】
サンプル中の分析物の濃度を決定するための、手持ち式分析物測定デバイスであって、センサストリップを受け取るようになっている非サイクリックスキャン式測定デバイスを備え、
前記非サイクリックスキャン式測定デバイスは、電気回路によって、ディスプレイに電気接続する少なくとも2つのデバイス接点を備え、
前記センサストリップは、少なくとも第1センサストリップ接点および第2センサストリップ接点を備え、前記第1センサストリップ接点は導体によって作用電極に電気接続し、前記第2センサストリップ接点は導体によって対向電極に電気接続し、
第1試薬層は、前記電極のうちの少なくとも1つの電極上にあり、前記第1試薬層は、オキシドレダクターゼおよび酸化還元対の少なくとも1つの種を含むデバイス。
【請求項2】
サンプル中の分析物の濃度を決定する方法であって、
前記サンプルにボルタンメトリー順方向リニアスキャンを適用するステップと、
得られる電流を測定するステップと、
前記測定された電流にデータ処理を適用するステップと、
前記サンプル中の前記分析物の濃度を決定するステップとを含む方法。
【請求項3】
サンプル中の分析物の濃度を決定するための、手持ち式分析物測定デバイスであって、センサストリップを受け取るようになっているボルタンメトリー走査式測定デバイスを備え、
前記ボルタンメトリー走査式測定デバイスは、電気回路によって、ディスプレイに電気接続する少なくとも2つのデバイス接点を備え、
前記センサストリップは、少なくとも、第1センサストリップ接点および第2センサストリップ接点を備え、前記第1センサストリップ接点は導体によって作用電極に電気接続し、前記第2センサストリップ接点は導体によって対向電極に電気接続し、
第1試薬層は、前記電極のうちの少なくとも1つの電極上にあり、前記第1試薬層は、オキシドレダクターゼおよび酸化還元対の少なくとも1つの種を含むデバイス。
【請求項4】
サンプル中の分析物の濃度を決定するための、手持ち式測定デバイスであって、
デバイスは、センサストリップを受け取るようになっており、デバイスは、
接点と、
少なくとも1つのディスプレイと、
前記接点と前記ディスプレイとの間の電気接続を確立する電子回路要素とを備え、前記電子回路要素は、
電気接続した状態の、電気充電器およびプロセッサとを備え、前記プロセッサは、コンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードを含むコンピュータ読み取り可能記憶媒体に電気接続し、前記コンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードは、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサが、準積分、微分、準微分、およびその組み合わせからなる群から選択されるデータ処理を実施するようにさせるデバイス。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図3H】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図8F】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図3H】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図8F】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【公開番号】特開2011−174943(P2011−174943A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103157(P2011−103157)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【分割の表示】特願2007−513447(P2007−513447)の分割
【原出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(503106111)バイエル・ヘルスケア・エルエルシー (154)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【分割の表示】特願2007−513447(P2007−513447)の分割
【原出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(503106111)バイエル・ヘルスケア・エルエルシー (154)
[ Back to top ]