説明

生物学的利用能が向上したデリバリー・システム

【課題】生物学的利用能が大きな状態で活性物質を目標に到達させることのできる乾燥組成物に関する。
【解決手段】公知のリポソーム法を用いて活性物質を乳化した後、修飾されたデンプンでカプセル化することによって調製する。修飾されたデンプンは、疎水基、または疎水基と親水基の両方を有するデンプン誘導体を調製した後、酵素を用いてそのデンプン誘導体を加水分解することによって調製する。得られる組成物は、生物学的利用能が大きな乾燥粉末である。さらに、この組成物は含有率が大きく、安定性も優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的利用能が向上したデリバリー・システムに関する。多くの活性物質は、乾燥した形態では実質的に生物学的に不活性である。このタイプの薬剤を生物学的に活性な状態で目標に到達させる1つの方法は液体形態であり、例えばリポソームが利用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
しかしながら、一般に消費者は、そのような活性物質を錠剤または他の固体投与形態で摂取することを好む。この問題は、カプセル化という一般的な形態を利用することで解決されてきた。さまざまな化学組成物が、特に食品産業、化粧品産業、塗料産業、医薬品産業、パーソナル・ケア産業、家庭用品産業、ポリマー産業といった業界で乾燥材料を目標に到達させるためにカプセル化剤として従来から利用されている。カプセル化剤として一般的に機能する典型的な組成物としては、アラビアゴム、デキストリン、デンプン、アラビノガラクタン、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、トラガカントゴム、カラヤ、アルギン酸ナトリウム、タンニン、セルロースなどが挙げられる。これらの組成物を用いて活性物質を乾燥粉末に変換できるが、生物学的利用能に関しては大きな犠牲を払っている。
【課題を解決するための手段】
【0003】
驚くべきことに、疎水基、または疎水基と親水基の両方を有するデンプン誘導体を調製した後にそれを酵素で変換することによって調製した修飾されたデンプンをカプセル化剤として用いる本発明により、安定して大きな生物学的利用能が得られることが見いだされた。
【0004】
本発明は、活性物質を生物学的利用能が良好な状態で目標に到達させることを可能にする乾燥組成物に関するものである。この組成物は、従来技術において公知のリポソーム法を利用して活性物質を乳化した後、修飾されたデンプンでカプセル化することによって調製する。修飾されたデンプンは、疎水基、または疎水基と親水基の両方を有するデンプン誘導体を調製した後、それを酵素で加水分解することによって調製される。得られる組成物は、生物学的利用能が優れた乾燥粉末である。さらに、この組成物は、含有率が大きく、安定性も優れている。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明は、活性物質を生物学的利用能が良好な状態で目標に到達させることを可能にする乾燥組成物に関するものである。この組成物は、従来技術において公知のリポソーム法を利用して活性物質を乳化した後、修飾されたデンプンでカプセル化することによって調製する。リポソーム性液体活性物質の調製法は、一般に特許文献に記載されており、例えばアメリカ合衆国特許第5,783,211号、第5,492,648号が挙げられる。修飾されたデンプンは、疎水基、または疎水基と親水基の両方を有するデンプン誘導体を調製した後、それを酵素で加水分解することによって調製される。得られる組成物は、生物学的利用能、含有率、安定性が優れた乾燥粉末である。この組成物は、活性物質の含有率が大きく、活性物質の保持力も優れている。この組成物は、活性物質の含有率が大きく、活性物質の保持能力が優れ、表面の油が少なく、抗酸化性も優れている。さらに、このようなカプセル化剤は、従来から知られている多くのカプセル化剤よりも固体が多い状態で処理することができる。
【0006】
乾燥形態での生物学的利用能が小さい活性物質、中でも水に溶けない食品・栄養サプリメント(例えばビタミン、脂肪酸、酸化防止物質)はどれも、本発明によってカプセル化するのに特に適している。特に重要なのは補酵素Q10、共役リノール酸、オメガ3/6脂肪酸(マリーン油)、ライトヤシ、ホファチジルコリン(PC)、ホファチジルセリン(PS)、ルテインエステル、フィトステロールエステル、パルミチン酸ビタミンA、ビタミンC(パルミチン酸アスコルビル)、ビタミンE(トコフェロール)、酢酸ビタミンE、ビタミンK、ビタミンA(パルミチン酸エステル)、ビタミンC(パルミチン酸エステル)、ビタミンE混合物、β-グルカン、緑茶、イソフラボン、フィトステロール、フィトスタノール、ルテイン、リコペン、カロテノイドである。本発明に最適なのは、食品サプリメントである補酵素Q10(Co-Q10)である。
【0007】
Co-Q10は天然の補酵素であり、栄養サプリメントおよび治療薬として一般に使用されている。Co-Q10は、化学的には2,3-ジメトキシ-5-メチル-6-デカプレニル-1,4-ベンゾキノンであり、ユビキノン、ユビデカレノン、ビタミンQという名称でも知られている。Co-Q10は脂溶性キノンに分類される。Co-Q10は、一般に、心臓疾患、がん、免疫力低下、活動力不足、抗しわの治療に使用されている。
【0008】
水に溶けないこれらの活性物質の生物学的利用能は、さまざまな理由で大きく制限されている。例えば、Co-Q10のイソプレノイド側鎖は油水性の大きな分子になるため本質的に水に溶けず、経口による生物学的利用能が大きく制限される。使用する活性物質の量は、その活性物質が何であるかと、所望の効果の実現に有効な量を提供するのに必要な量に依存する。例えば、Co-Q10を使用する場合、典型的な量は、抗酸化効果をもたらすのに必要な量である。特に適した量は、カプセル化製剤(活性物質+リポソーム+デンプン)に対して約0.1〜約30質量%、特に約5〜約15質量%の範囲である。
【0009】
活性物質は、必要な場合には適切な溶媒に溶かし、まず最初に、従来技術において公知の方法を利用してリポソームに組み込む。そのような従来法の1つでは、レシチンを水に溶かし、特定の条件下で均質化する。次に、このレシチン貯蔵溶液を、選択した界面活性物質の水溶液と混合する。次に、液体活性物質をこの混合物に添加し、均質化し、非常に大きな剪断力でマイクロ流体化し、粒径を一般には、0.3ミクロン未満にする。得られる液体生成物は、活性成分を含む、レシチンをベースとした安定なリポソームである。使用するリポソームの量は、活性成分を効果的に保護するのに必要な量である。特に適した量は、カプセル化製剤(活性物質+リポソーム+デンプン)に対して約0.5〜約59.9質量%、特に約10〜約50質量%の範囲である。
【0010】
次に、修飾されたデンプンを用いて液体リポソーム製剤をカプセル化する。この明細書で使用する修飾されたデンプンのベースは、いかなるデンプンや穀粉(今後はまとめてデンプンと呼ぶ)でもよく、任意の天然供給源からのものが可能である。この明細書で使用する天然のデンプンは自然界で見いだされるものであり、その中には、植物の育成により開発されたものや、生物工学によるデンプンが含まれる。デンプンと穀粉の一般的な供給源は、穀物、塊茎、根、豆及び果実である。天然の供給源としては、トウモロコシ、エンドウ、ジャガイモ、サツマイモ、バナナ、オオムギ、コムギ、イネ、サゴ、アマランサス、タピオカ、クズウコン、カンナ、モロコシ、オートムギ並びにこれらのワキシー品種または高アミロース品種が可能である。この明細書では、「ワキシー」または「低アミロース」という用語には、少なくとも約95質量%のアミロペクチンを含有するデンプンまたは穀粉が含まれ、「高アミロース」という用語には、少なくとも約40質量%、特に少なくとも約70質量%、さらに特に少なくとも約80質量%のアミロースを含有するデンプンまたは粉が含まれるものとする。この明細書では、「普通の」デンプンとは、高アミロース品種でも低アミロース品種でもないデンプンを意味するものとする。特に、普通のアミロース品種または低アミロース品種は、本発明においてとりわけ有用である。
【0011】
ベースとなる有用なデンプン材料には、前記の任意のデンプンに由来する変換生成物(酸化、α-アミラーゼによる変換、穏やかな酸による加水分解、熱によるデキストリン化のいずれかによって調製した流動性デンプンまたは低粘性変性デンプン)や、誘導体化したデンプン(例えば、エーテルやエステル)も含まれる。
【0012】
特に有用なデンプンベースとしては、糊化デンプン(あらかじめ調理した非粒状デンプン)が挙げられるが、穏やかな酸による分解や熱によるデキストリン化といった従来技術において公知の方法で変換した流動性デンプンまたは低粘性変性デンプンも可能である。例えば、Rutenberg著「デンプンとその修飾」、『水溶性のゴムと樹脂に関するハンドブック』、Davidson編、マグローヒル社、ニューヨーク、ニューヨーク州、1980年、22〜36ページを参照のこと。これら変換法の1以上の組み合わせを利用することができる。一般に変換は、疎水性試薬または疎水性/親水性試薬を用いた処理の前、かつ酵素処理の前に実施する。所望なら、米国特許第4,035,235号に開示されている方法に従ってデンプン・ベースをα-アミラーゼ酵素で処理し、流動性デンプンを生成させることができる。高粘度システムが望ましい場合には、デンプン・ベースを変換する必要はない。
【0013】
デンプンは、デンプンにカプセル化するための特性を与える任意の試薬または試薬の組み合わせを用いて処理することによって誘導体化することができる。試薬は疎水性部分を含んでいる必要があるが、親水性部分は含んでいなくてもよい。疎水性部分は、少なくとも5個の炭素原子を含むアルキル基またはアルケニル基、あるいは少なくとも6個(特に約24個まで)の炭素原子を含むアラルキル基またはアラルケニル基でなくてはならない。親水性部分は試薬からのものが可能である。あるいは試薬は疎水性部分にだけ寄与し、デンプン自身のヒドロキシル基が親水性部分として機能してもよい。
【0014】
デンプン分子に望む疎水基、または疎水基と親水基の望ましい混合状態を発生させることによって安定なカプセル化特性を生み出す任意のデンプン誘導体化法を利用し、本発明の修飾されたデンプンを調製することができる。適切な誘導体と、そのような誘導体を製造する方法は従来技術において公知であり、米国特許第4,626,288号に開示されている。なおこの特許の内容は、参照によりこの明細書に組み込まれているものとする。特に有用な態様では、米国特許第2,613,206号と第2,661,349号(これら特許の内容は参照によりこの明細書に組み込まれているものとする)に開示されている方法を用いてデンプンを無水アルケニル環式ジカルボン酸と反応させることにより、あるいはプロピレンオキシドと反応させることにより、好ましくは無水オクテニルコハク酸と反応させることにより、デンプンを誘導体化する。
【0015】
低粘度が望ましい場合に特に有効な態様は、アミロペクチン含有デンプン(例えばワキシートウモロコシ)のオクテニルコハク酸半エステル誘導体を、水流動度(WF)が約60未満の値になるように変換したものである。粘度の逆数である水流動度は粘度に関する実験値であり、0〜90のスケールで測定される。デンプンの水流動度は、一般に、粘度が24.73cpsの標準油(この油は100回転するのに23.12±0.05秒必要とする)を用いて30℃で標準化したトーマス回転式剪断タイプ粘度計(アーサーA. トーマス社、フィラデルフィア、ペンシルヴェニア州から市販されている)を用いて測定する。水流動度に関する正確で再現性のある測定結果は、デンプンの変換率(変換率が大きくなると粘度が小さくなる)によって異なるさまざまな値の固体含有率において100回転するのに要する時間を測定することによって得られる。特に有効な実施態様では、変換されたデンプンを、食品に関しては約0.1%〜約3.0%の無水オクテニルコハク酸で、他の生成物に関しては少なくとも約0.1%の無水オクテニルコハク酸で処理する。別の方法として、ヒドロキシプロピルオクテニルコハク酸誘導体を使用することもできる。
【0016】
他の生成物に関しては、所望の粘度とカプセル化特性になるのであれば、任意の置換率または変換率にすることができる。例えば米国特許第4,035,235号には、適切な態様として、水に溶けない物質(揮発性の着香油や香料)をカプセル化するのにアラビアゴムの代わりにデンプンの疎水性誘導体を製造する方法が開示されている。
【0017】
抗酸化性を大きくするため、デンプンを誘導体化した後、非還元性末端部からデンプン分子の1,4-結合を開裂させることのできる少なくとも1つの酵素でそのデンプン誘導体をさらに加水分解し、単糖類および/または二糖類(特にグルコースが約3単位未満のもの)を生成させる。その一方でデンプン・ベースの高分子量部分は実質的にそのままにし、カプセル化特性が得られるようにする。本発明で役立つ酵素としては、限定するものではないが、β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、マルトゲナーゼ、プルラナーゼ、エキソ-α-1,4-グルコシダーゼ、エキソ-1,4-α-D-グルカンマルトテトラヒドロラーゼ、エキソ-1,4-α-D-グルカンマルトヘキサヒドロラーゼが挙げられるが、特にβ-アミラーゼとグルコアミラーゼが好ましい。
【0018】
デンプン・ベースを酵素を用いて加水分解するには従来技術で公知の方法を用いる。使用する酵素の量は、酵素(すなわちその酵素のタイプ、供給源、活性)、使用するベース材料並びに所望の加水分解の程度によって異なる。一般に、酵素の使用量は、デンプンに対して約0.01〜約1.0質量%、特に約0.01〜0.3質量%である。
【0019】
酵素活性の最適パラメータは、使用する酵素に応じて異なるであろう。酵素による分解速度は、使用する酵素のタイプ、酵素の濃度、基質の濃度、pH、温度、阻害剤の存在または不在、修飾の程度とタイプなど、従来から知られている因子に依存する。これらパラメータを調節することにより、デンプン・ベースの消化速度を最適化することができる。
【0020】
デンプンを糊化した後、酵素で加水分解することができる。糊化プロセスによってデンプン分子が粒状構造から広がるため、酵素がデンプン分子をより容易かつ均一に分解できるようになる。
【0021】
一般に、酵素処理は、処理するデンプン・ベースに依存して、デンプンの固体含有率が約10〜約40%のスラリー水溶液またはスラリー緩衝溶液の中で実施する。本発明では、固体含有率が約15〜35%であることが特に有用であり、約18〜25%であることがさらに有用である。別の方法では、このプロセスにおいて固体支持体上に固定化した酵素を用いることができる。
【0022】
一般に、酵素による消化は、固体含有量をできるだけ多くして反応速度を低下させることなく実施し、その後に行なうデンプン組成物の乾燥が容易になるようにする。反応速度は、撹拌が難しくなり、あるいは撹拌の効果がなくなり、デンプン分散液の取り扱いがより難しくなって固体の含有量が多くなることで低下する可能性がある。
【0023】
スラリーのpHと温度を調節して酵素による加水分解が効果的になされるようにする必要がある。これらのパラメータの値は従来技術において公知であり、使用する酵素によって異なる。一般に、約22〜約65℃という温度、中でも約50℃〜約62℃が利用される。一般に、pHは、従来技術を用いて約3.5〜約7.5、中でも約4.0〜約6.0に調節される。
【0024】
酵素反応は、デキストロース当量が少なくとも約20〜約80、好ましくは約20〜約50になるまで、あるいは所望の終点(すなわち十分に分解されて特定の用途にとって望ましい機能が得られる点)に到達するまで継続させる。終点は、粘度の変化によって、あるいは糖含有量の低下(デキストロースの当量から測定される)によって、あるいは酵素によるデンプン分子の分解レベルを測定するための従来技術において公知の他の任意の方法によって決定することができる。一般に、酵素反応は、約0.1〜約24時間、特に約0.5〜約4時間行なわせる。反応時間は、使用するデンプンと酵素、使用する酵素の量並びに固体の割合、pH、温度といった反応パラメータに応じて異なる。
【0025】
次に、従来技術において公知の任意の方法(例えば、酸または塩基による不活性化、熱による不活性化、イオン交換、溶媒の抽出)で酵素による分解を終わらせる。例えば酸による不活性化は、少なくとも30分間にわたってpHを2.0未満に調節することによって実現でき、熱による不活性化は、温度を約85〜95℃に上昇させ、その温度を少なくとも10分間にわたって維持して酵素を完全に不活性にすることによって実現できる。粒状生成物が望ましい場合には、熱による不活性化は適していない。というのも、酵素を不活性にするのに必要な熱によって一般にデンプンも糊化してしまうからである。
【0026】
一般に、得られる溶液は、目的とする最終用途が何であるかに応じて所望のpHに調節する。一般にpHは、従来技術を利用し、約5.0〜約7.5、特に約6.0〜約7.0に調節する。修飾されたデンプンを用い、リポソームで乳化させた活性物質、あるいは後で使用するために従来技術において公知の方法(特にスプレー乾燥)で乾燥させた活性物質をカプセル化することができる。修飾されたデンプンを濃縮して水分の大部分を除去した後、リポソームで乳化した活性物質をカプセル化することもできる。
【0027】
修飾されたデンプンは、粘度が比較的小さく、デキストロース当量がかなり大きく、無味で、カプセル化剤として独自の機能を有することを特徴とする。
【0028】
修飾されたデンプンの粘度は、漏斗法で測定した場合に約30秒未満、特に約8〜約25秒、より好ましくは約8〜約15秒になっている必要がある。粘度は、効果的なカプセル化に寄与する重要なパラメータである。
【0029】
漏斗法でデンプンの粘度を測定するため、テストするデンプン分散液を屈折計で測定して19%または25%(w/w)に調節する。分散液の温度を制御して22℃にする。合計100mlのデンプン分散液を目盛付きシリンダーで計る。次に、較正した漏斗に対し、その漏斗の穴を指で塞ぎながらデンプン分散液を注ぐ。捕捉された空気をすべて除去するため、少量を目盛付きシリンダーに流し込み、残量は漏斗に戻す。次に目盛付きシリンダーを漏斗の上方でひっくり返し、内容物を漏斗の中に流し込む。そのとき、サンプルであるその内容物が流れていく。タイマーを使用し、サンプル100mlが漏斗の開口部を通過するのに必要な時間を記録する。
【0030】
漏斗のガラス部分は、壁部が厚くて耐久力のある標準的な58°ガラスであり、頂部の直径が約9〜約10cm、足の内径が約0.381cmになっている。漏斗のガラス製の足は、円錐の頂点から約2.86cmの長さで切断されて注意深く火仕上げされており、その先には長さが約5.08cm、外径が約0.9525cmの細長いステンレス製の先端部が取り付けられている。ステンレス製先端部の内径は、ガラス製の足に接続する上端部において約0.5952cmであり、流出端において約0.4445cmであるが、両端部から約2.54cmの位置で幅が狭くなっている。ステンレス製先端部は、テフロン(登録商標)・チューブを用いてガラス製漏斗に取り付けられている。前記の手続きを利用して漏斗を較正し、水100mlが6秒間で通過できるようにする。
【0031】
修飾されたデンプンは、デキストロース当量が約20〜約80になっている必要がある。グルコアミラーゼを使用してデンプンを加水分解する場合には、DEは特に約30〜約50である。β-アミラーゼを使用する場合には、DEは特に約20〜約50、さらに特に約25〜約38である。デキストロース当量(DE)は、加水分解産物の還元力として定義される。それぞれのデンプン分子は還元端を1つ備えている。したがって、DEは分子量の逆数に関係する。無水D-グルコースのDEは100と定義され、加水分解されていないデンプンのDEはほぼゼロである。
【0032】
別の方法として、誘導体化したデンプンは、糖類(例えば、単糖類、二糖類もしくはオリゴ糖類、またはマルトデキストリン)をその場で生成させる代わりにそのような糖類と混合することができる。単糖類、二糖類、オリゴ糖類にはグルコースが約10単位までのすべての糖類、中でもグルコースが約3単位までのすべての糖類が含まれる。具体例としては、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マルトース、イソマルトース、スクロース、ラクトース、ラフィノース、スタキオース、フルクトシルスクロース及びマルトオリゴ糖類が挙げられるが、中でもグルコース、フルクトース及びマルトースが好ましい。マルトデキストリンとしては、デキストロース当量が約2〜約50、特に約5〜約15のものが挙げられる。
【0033】
得られるデンプン/糖類混合物は、グルコースとして測定した糖類の割合が比較的多い必要があり、糖類が少なくとも約20〜約80質量%、特に約40〜約60質量%になっていなくてはならない。
【0034】
得られるデンプン(またはデンプン/糖類混合物)は、カプセル化剤として使用する場合には、高い含有率、少ない表面の油、優れた抗酸化性を安定して実現し、かつ維持できるという利点を有する。
【0035】
活性物質は、本発明の修飾されたデンプンと従来技術において公知の方法を用いてカプセル化することができる。方法としては、スプレー乾燥、押し出し、スプレー冷却、凍結乾燥及び流動床コーティングがあるが、これだけに限られるわけではない。デンプンは、例えば水に分散させ、活性物質を添加して乳化させ、次にそのエマルジョンをスプレー乾燥させてカプセル化製品を形成することができる。使用するデンプンの量は、活性物質とリポソームを効果的にカプセル化するのに必要な量である。特に適切な量は、カプセル化する製剤(活性物質+リポソーム+デンプン)の約30〜約90質量%の範囲、特に約30〜約80質量%の範囲である。
【0036】
デンプン/糖類混合物を使用する場合、糖類として特に単糖類を使用するときには、この系の粘度が大きいことと、乾燥させる堆積物が多いことのため、スプレー乾燥の効率が低下する可能性がある。スプレー効率は、従来技術において公知の方法によって増大させることができる。例えば、高い乾燥タワー、わずかに油を塗ったチェンバー壁、水分を実質的に除去した処理済みの空気などを利用する。
【0037】
カプセル化剤を用いて調製したカプセル化製品は、特定の活性物質が比較的高い含有率になることを安定して実現し、かつ維持する。活性物質+リポソームの含有率が40%を超えるようにできるが、一般には活性物質のみをより低い含有率にする。特に、活性物質が製剤全体に対して0.1〜25%(w/w)、特に5〜15%(w/w)となる含有率が使用される。活性物質の含有率は、従来技術において公知の方法で決定することができる。ビタミンの場合には、例えば、溶媒抽出法による。
【0038】
カプセル化剤はしばしば高価であるため、活性物質の含有率が大きいと、最終製品を製造するコストを下げる上で望ましい。さらに、カプセル化剤は、最終システムに対して不利な性質または望ましくない性質を与える可能性がある。したがって使用するカプセル化剤の量を減らすことが望ましい。
【0039】
活性物質の含有率を大きくするだけでなく、有効期間をより長くできるようにすることが重要である。多くの活性物質は、揮発性および/または不安定である。活性物質をカプセル化していない場合には、活性物質が消失し、最終製品において味の望ましくない変化を消費者が感知する可能性がある。さらに、そのような成分が消失すると、最終製品のコストが上昇する。というのも、消失分を補うため、高価である可能性のある活性物質の量を増やす必要があるからである。
【0040】
油をベースとした活性物質の場合、表面の油を少なくするため、カプセル化剤は油も保持する。これは、酵素としてグルコアミラーゼを使用してデンプンを加水分解する場合に特に当てはまる。表面の油は、従来技術において公知の方法で測定することができる。例えば、カプセル化した粉末を適切な溶媒で洗浄する方法による。表面の油を減らすのは重要である。というのも、表面の油が増えるというのは、含まれている活性物質が保持されず、カプセル化が不十分であることを示しているからである。したがって表面の油を減らすと、有効期間が長くなる。
【0041】
カプセル化剤は抗酸化性のレベルも比較的大きいため、カプセル化製品の貯蔵安定性が大きくなり、最終製品の有効期間が伸びる。抗酸化性は、従来技術において公知の方法で測定することができる。例えばレモン油を含むカプセル化剤の抗酸化性は、50℃で2週間にわたって熟成させた粉末から抽出した油の中に存在しているリモネンの酸化生成物(例えばカルボン、カルビオールまたはリモネンオキシド)の量をガス・クロマトグラフィ(GC)を利用して測定することによって明らかにすることができる。そのときカルボンが約0.8%未満というのは、酸化が許容可能なレベルであることを一般に意味する。抗酸化性は、油の香りに関してだけでなく、さまざまなビタミンの活性を維持するためにも重要である。抗酸化性をさらに増大させるには、酸化防止剤を油に添加するとよい。
【0042】
最も重要なのは、活性物質が生物学的利用能を実質的に保持していることである。乾燥状態では生物学的利用能が低いが液体状態ではそうではない活性物質をカプセル化して乾燥粉末にすると、生物学的利用能が一般に大きく低下する。このように生物学的利用能が低下すると、最終投与形態において使用する活性物質の量を増やす必要がある。すると、特に高価な活性物質の場合に投与形態のコストが顕著に増大する。特に、そのような活性物質の生物学的利用能は、少なくとも50%、特に少なくとも65%になろう。
【0043】
カプセル化製品は粉末として保管する場合に効果的であり、水分と接触したときに自発的に活性物質を放出する。得られるカプセル化製品は、所望の任意の用途で使用することができ、食品に添加することや、サプリメントとして摂取される固体投与形態に成形することが可能である。カプセル化製品は、パーソナル・ケア用品や局所的塗布用医薬品に製剤化することもできる。使用量は、組み込む活性物質の量によって異なり、ビタミンまたは食品サプリメントについて推奨されている1日の摂取量に基づいて決まることがしばしばある。
【0044】
カプセル化製品は、さまざまな食品で使用することができる。食品としては、例えば、シリアル、粉末飲料混合物、インスタントのコーヒーや茶、粉末ソースや肉汁混合物、インスタント・スープ、粉末ドレッシング、パン製品、フレーバー、フレグランス、着色剤及び他の乾燥食品が挙げられるが、これだけに限られるわけではない。これらの粉末製品やインスタント製品を調理するとき、水分によって放出メカニズムが作動し、活性物質が消費者に提供される。一般に、カプセル化製品は、食品に対して約0.01〜約10質量%、特に約0.1〜約5質量%が使用されることになろう。
【0045】
カプセル化製品は食品サプリメントに使用することができ、粉末として、あるいは固体投与形態として摂取される。特に、カプセル化製品は、固体錠剤様の形態(例えば錠剤やカプレット)で使用し、そのままで摂取したり、あるいは摂取前に発泡(溶解)させたりすることができる。粉末カプセル化製品は、従来技術において公知の他の形態(例えば、粉末充填硬ゼラチンカプセル)で使用することもできる。カプセル化製品は、一般に所望のレベルで使用することができる。その量は、組み込む活性物質の量によって異なる。一般に、カプセル化製品は、錠剤の約1〜約95質量%の量で用いられる。
【0046】
カプセル化製品は、圧縮錠剤において特に有用である。圧縮錠剤は、従来技術において公知の任意の方法で製造することができる、特に、錠剤成分を直接圧縮する方法による。別の方法として、錠剤は、カプセル化製品を製剤の他の成分と乾燥状態で混合し、その混合物を粒状化して錠剤にすること(例えば、流動床、ローラー圧縮、押し出し、高剪断力粒状化装置及び乾燥圧縮)によって製造することもできる。
【0047】
従来技術において公知の医薬用添加剤を医薬用投与形態に添加し、十分な処理特性、圧縮特性、崩壊特性を与えることができる。そのような添加剤としては、希釈剤、流動促進剤、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、着色剤、香料及び甘味剤が挙げられるが、これだけに限られるわけではない。これらの添加剤は従来技術において周知であり、所望の適合性と性質によってのみ制約を受ける。
【0048】
本発明のための結合剤としては、ゼラチン、微結晶セルロース、糖類、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、アルギン酸、グアーガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレンオキシド及びエチルセルロースが挙げられる。
【0049】
潤滑剤および流動促進剤としては、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル、鉱物油、ポリエチレングリコール、ステアリルフマル酸ナトリウム、植物油、ステアリン酸亜鉛及び二酸化ケイ素が挙げられる。
【0050】
本発明に適した崩壊剤としては、デンプン、アルギン、ガム、クロスカルメロース、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、ラウレル硫酸ナトリウム、微結晶セルロース、ポラクリリンカリウム及びメチルセルロースが挙げられる。
【0051】
本発明に適した希釈剤としては、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、セルロース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、デンプン、糖類、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、デキストレート、デキストリン、デキストロース、フルクトース、ソルビトール、スクロース及び微結晶セルロースが挙げられる。
【0052】
特に、結合剤を錠剤に添加すると、所望の硬度の錠剤が得られる。一般に、得られる錠剤の硬度は少なくとも約3キロパスカル(kP)であり、少なくとも約4kPであることが好ましく、少なくとも約6kPであることが最も好ましい。
【0053】
所望の最終生成物が医薬用投与形態でない場合には、当業者に公知の他の添加物を使用することができる。例えば局所塗布では、浴用油錠剤にの中で香料やフレグランスを使用する。
【0054】
水と接触させると水分によって放出メカニズムが作動し、カプセル化されたデンプンから活性物質を放出させることが可能になる。例えば医薬用投与形態が消化されると、活性物質が体内に放出される。
【0055】
以下の態様は、本発明をさらに説明するために提示したものであり、本発明がこれら態様に限定されると解すべきではない。
【0056】
1.複数のリポソームの中にカプセル化された活性物質を含む乾燥粉末形態の組成物であって、リポソームがさらに、疎水基、または疎水基と親水基の両方を有するデンプン誘導体を含むマトリックスの中にカプセル化されており、そのデンプン誘導体が、デンプン分子の1,4-結合を非還元末端から開裂させて短鎖の糖類を生成させることのできる少なくとも1つの酵素によって分解されていることを特徴とする組成物。
2.前記デンプンが約20〜約80のデキストロース当量に分解される、態様1に記載の組成物。
【0057】
3.前記酵素が、β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼ、マルトゲナーゼ、エキソ-α-1,4-グルコシダーゼ、エキソ-1,4-α-D-グルカンマルトテトラヒドロラーゼ及びエキソ-1,4-α-D-グルカンマルトヘキサヒドロラーゼからなる群から選択される、態様1または2に記載の組成物。
4.前記デンプンが約20〜約50のデキストロース当量に分解され、前記酵素がβ-アミラーゼまたはグルコアミラーゼである、態様1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【0058】
5.前記デンプンが約25〜約38のデキストロース当量に分解され、前記酵素がβ-アミラーゼである、態様4に記載の組成物。
6.前記デンプン誘導体が糊化され、前記疎水基が、少なくとも5個の炭素原子を有するアルキルもしくはアルケニル基、または少なくとも6個の炭素原子を有するアラルキル基もしくはアラルケニル基のいずれかを含んでいる、態様1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
7.前記デンプンが糊化され、デンプンの乾燥質量に対して少なくとも約0.1%の無水オクテニルコハク酸で処理することによって誘導体化される、態様1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【0059】
8.前記活性物質が、補酵素Q10、共役リノール酸、オメガ3/6脂肪酸(マリーン油)、ライトヤシ、ホファチジルコリン(PC)、ホファチジルセリン(PS)、ルテインエステル、フィトステロールエステル、パルミチン酸ビタミンA、ビタミンC(パルミチン酸アスコルビル)、ビタミンE(トコフェロール)、酢酸ビタミンE、ビタミンK、ビタミンA(パルミチン酸エステル)、ビタミンC(パルミチン酸エステル)、ビタミンE混合物、β-グルカン、緑茶、イソフラボン、フィトステロール、フィトスタノール、ルテイン、リコペン及びカロテノイドからなる群から選択される、態様1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【0060】
9.前記活性物質が補酵素Q10である、態様1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
10.前記デンプンが約30〜90質量%存在し、前記活性物質が約0.1〜30質量%存在し、前記リポソームが約0.5〜59.9質量%存在する、態様1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
11.前記デンプンが約30〜80質量%存在し、前記活性物質が約5.0〜15質量%存在し、前記リポソームが約10〜50質量%存在する、態様1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
12.前記活性物質が少なくとも50%の生物学的利用能を保持している、態様1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【0061】
13.前記活性物質が少なくとも65%の生物学的利用能を保持している、態様1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
14.態様1〜13のいずれか1項に記載の組成物を含む固体投薬形態。
【0062】
15.複数のリポソームの中にカプセル化された活性物質を含む乾燥粉末形態の組成物であって、リポソームがさらに、疎水基、または疎水基と親水基の両方を有するデンプン誘導体と、少なくとも1つの化合物とを含むマトリックスの中にカプセル化されており、その少なくとも1つの化合物が、単糖類、二糖類、オリゴ糖類及びマルトデキストリンからなる群から選択される組成物。
16.前記デンプンが糊化され、デンプンの乾燥質量に対して少なくとも約0.1%の無水オクテニルコハク酸で処理することによって誘導体化され、前記活性物質が補酵素Q10である、態様1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【0063】
17.態様1〜16のいずれか1項に記載の組成物を製造する方法であって、
a.前記活性物質のリポソームを形成するステップと、
b.前記デンプンとリポソームを溶液中で乳化するステップと、
c.前記組成物を乾燥させるステップを含む方法。
18.前記乾燥ステップを、スプレー乾燥、押し出し、スプレー冷却、凍結乾燥、流動床コーティングからなる群の中から選択した方法を利用して実施する、態様17に記載の方法。
【実施例】
【0064】
以下の実施例は、本発明をさらに詳しく説明するために提示したものであり、いかなる点においても本発明がこれら実施例に限定されると解すべきではない。
以下の分析テストを利用し、実施例においてさまざまなパラメータを測定した。
【0065】
デキストロース当量(DE)の測定
デンプンのデキストロース当量は、『食品用化学薬品コデックス』、第4版、1996年7月1日、セクション5、「一般的なテストとアッセイ、付録X:炭水化物(デンプン類、糖類並びに関連物質)」に記載されている還元糖テストを利用して、あるいはトウモロコシ精製協会によるデキストロース当量のための標準的分析方法#E-26を利用して測定することができる。
【0066】
HPLC分析による生物学的利用能(%)の測定
分析方法
移動相は、アセトニトリル/2-プロパノール/脱イオン水(68.75/28.75/2.50)である。
カラムはオールテック・プラチナムEPS C 18 100A 5uである。
流速:1ml/分。
注入体積:20マイクロリットル(フル・ループ)。
炉の温度:33℃。
検出器の波長:268nm。
実行時間:7分。
【0067】
手順
1)アセトニトリル/2-プロパノール(50/50)中にCo-Q10が1000ppm含まれる貯蔵溶液を用いて、10、25、50、75及び100ppmを含む標準サンプルを用いて較正曲線をプロットする。
2)スプレー乾燥させたCo-Q10の粉末0.010gを、脱イオン水を10.0ml入れた小瓶に分散させる。サンプルのアリコートを注入用の瓶に移し、実験サンプルに対してクロマトグラフィを行なってCo-Q10の含有率を決定する。
3)残った実験サンプルを0.45ミクロンの酢酸セルロース・フィルタで濾過する。濾過された実験サンプルに対してクロマトグラフィを行ない、Co-Q10の含有率を決定する。
4)0.45ミクロンのフィルタを通過するCo-Q10の量は、生物学的に利用できるCo-Q10の指標である。
【0068】
実施例1
誘導体化されたデンプンの調製
ワキシーコーンスターチ500gを水750mlの中でスラリー化した。3%水酸化ナトリウムを用いてpHを7.5に調節した。3%水酸化ナトリウムを用いてpHを7.5に維持しつつ、常に撹拌した状態で、無水オクテニルコハク酸(OSA)15gを30分ごとに1/3ずつ添加した。次にデンプンを濾過して取り出し、水750mlで洗浄した。次にデンプンを水500mlの中で再びスラリー化し、3:1の塩酸を用いてpHを5.5に調節した。次にデンプンを濾過し、水750mlで洗浄し、大気中で乾燥させるとOSAデンプンが得られた。
【0069】
実施例2
修飾されたデンプンの調製
a.グルコアミラーゼを使用
実施例1のOSAデンプン100gを水300mlの中でスラリー化し、希塩酸を用いてpHを5.5に調節した。C1-339ジェット・クッカー(ナショナル・スターチ・アンド・ケミカル社から市販されている)の中でジェット加熱調理することにより、スラリーを糊化した。そのときの条件は、148.9℃(300°F)、チェンバーの圧力が379.2kPa(55psi)、蒸気バルブを75%解放した状態でスラリーの速度が6ml/分である。
【0070】
次に、デンプン溶液の温度を55℃に下げた。デンプンに対して0.05質量%のグルコアミラーゼ(AMG 200 L、ノボ・ノルディスク社から市販されている)を添加し、常に混合しながら約2.5時間にわたって55℃にて反応を進行させたところ、漏斗法によると、固体が25%で温度が22℃のとき、最終的にデキストロース当量が36、粘度が17秒になった。次に、分散液を90℃に加熱することによって酵素を不活性化し、この高温を30分間にわたって維持した。次に分散液を室温まで冷却し、入口の温度200℃、出口の温度100℃、供給速度65ml/分にしてスプレー乾燥させた。
【0071】
b.β-アミラーゼを使用
実施例1のOSAデンプン100gを水300mlの中でスラリー化し、希塩酸を用いてpHを5.5に調節した。C1-339ジェット・クッカー(ナショナル・スターチ・アンド・ケミカル社から市販されている)の中でジェット加熱調理することにより、スラリーを糊化した。そのときの条件は、148.9℃(300°F)、チェンバーの圧力が379.2kPa(55psi)、蒸気バルブを75%解放した状態でスラリーの速度が6ml/分である。
【0072】
次に、デンプン溶液の温度を55℃に下げた。デンプンに対して0.2質量%のβ-アミラーゼ(スペザイムBBA 1500、ジェネンコア社から市販されている)を添加し、常に混合しながら約4時間にわたって55℃にて反応を進行させたところ、漏斗法によると、固体が25%で温度が22℃のとき、最終的にデキストロース当量が36、粘度が17秒になった。次に、分散液を90℃に加熱することによって酵素を不活性化し、この高温を30分間にわたって維持した。次に分散液を室温まで冷却し、入口の温度200℃、出口の温度100℃、供給速度65ml/分にしてスプレー乾燥させた。
【0073】
c.β-アミラーゼとプルラナーゼの組み合わせを使用
実施例1のOSAデンプン100gを水300mlの中でスラリー化し、希塩酸を用いてpHを5.25に調節した。C1-339ジェット・クッカー(ナショナル・スターチ・アンド・ケミカル社から市販されている)の中でジェット加熱調理することにより、スラリーを糊化した。そのときの条件は、143.3℃(290°F)、チェンバーの圧力が275.8kPa(40psi)、蒸気バルブを75%解放した状態でスラリーの速度が3.5ml/分である。
【0074】
次に、デンプン溶液の温度を58℃に下げた。デンプンに対して5.0質量%のプルラナーゼ(プロモザイム、ノボ社から市販されている)を添加し、常に混合しながら約18時間にわたって反応させた。次に、デンプンに対して0.1質量%のβ-アミラーゼ(スペザイムBBA 1500、ジェネンコア社から市販されている)を添加し、常に混合しながら約2.5時間にわたって58℃にて反応を進行させたところ、漏斗法によると、固体が25%で温度が22℃のとき、最終的にデキストロース当量が32、粘度が14秒になった。次に、分散液を95℃に加熱することによって酵素を不活性化し、この高温を30分間にわたって維持した。次に分散液を室温まで冷却し、入口の温度200℃、出口の温度100℃、供給速度65ml/分にしてスプレー乾燥させた。
【0075】
実施例3
リポソーム/Co-Q10混合物のカプセル化
実施例2bのデンプン888gを43℃(110°F)の蒸留水2471mlに分散させ、塊が存在しなくなるまで適度な速度で機械的に撹拌した。次にこのデンプン溶液を、3i社から市販されているリポソーム/Co-Q10混合物1200gにゆっくりと添加し、10分間にわたってゆるやかに撹拌した。1つにまとまった液体混合物を、遠心スプレーを利用したナイロ・ユーティリティ・スプレー・ドライヤー#3-068の中でスプレー乾燥させた。そのときの入口の温度は150℃(約302°F)、出口の温度は90℃(約194°F)、供給速度は約100ml/分である。
デンプンと混合する前のリポソーム/Co-Q10混合物の平均粒径(堀場製作所のLA900粒径分析器で測定)は0.120ミクロンであった。デンプンを添加すると粒径は0.128ミクロンになった。スプレー乾燥させた粉末は活性なCo-Q10を5.0%含んでいる。
【0076】
実施例4
錠剤の調製
実施例3のカプセル化製品を用い、以下のようにして錠剤を調製した。Co-Q10を5%含むスプレー乾燥させた粉末600gを、無水DTラクトース(シェフィールド・ケミカル社から市販されている)387.5g、ステアリン酸マグネシウムNF潤滑剤(ワイコ社から市販されている)5.0g、エクスプロタブ(Explotab、デンプングリコール酸ナトリウムNF)崩壊剤(メンデル社から市販されている)5.0g、キャボ-シル(Cabo-Sil、キャボット社から市販されている)2.5gと混合した。ピッコラ(piccola)10ステーション錠剤プレスの中で粉末混合物に1334N(3000ポンド)の圧縮力を加えることにより、1000mgの錠剤を調製した。それぞれの錠剤はCo-Q10を30mg含んでいる。ファーマトロン(登録商標)モデル6D錠剤テスターで測定したこの錠剤の破砕強度は4〜5kPである。
【0077】
実施例5
修飾されたさまざまなデンプンでカプセル化したCo-Q10の生物学的利用能
実施例3の方法を利用し、Co-Q10のリポソームを、修飾されたさまざまなデンプンとともに、各成分の割合(%)をさまざまな値にしてカプセル化した。生物学的利用能についての結果を以下の表Iに示す。
【0078】
デンプン1は、実施例2bに従って調製した、修飾されたデンプンである。
デンプン2は、冷水に溶けるデキストリンである。このデキストリンは、少量の塩酸をスプレーすることでpHを3にした酸性のタピオカを5時間かけて22℃(72°F)から149℃(200°F)に加熱することによって調製した。
【0079】
デンプン3は、冷水に溶けるデンプンである。このデンプンは、ワキシーコーンスターチを塩酸で加水分解し、3%の無水オクテニルコハク酸と反応させ、次いで固体30%の状態で121℃(250°F)のスチームで加熱することによって加熱調理し、スプレー乾燥させて得られた生成物である。
【0080】
【表1】

【0081】
実施例6
カプセル化されたリコペンの調製
パートA
植物油300gに酸化防止剤100gを溶かし、この溶液をレシチン200gと蒸留水1,200mlの混合物に添加することにより、リポソーム化リコペンを調製する。次にこの混合物を均質化し、137.9kPa(20psi)でマイクロ流体化すると、安定な最終リポソーム混合物が得られる。このリポソーム混合物は、リコペンを5.56%、レシチンを11.11%、植物油を16.67%及び水を66.67%含んでいる。
【0082】
パートB
実施例2aに従って調製した修飾されたデンプン500gを蒸留水700mlに溶かし、その溶液をリポソーム化リコペンにゆっくりと添加し、軽く撹拌しながら30分間にわたって混合する。修飾されたデンプンと混合する前後のリポソーム混合物の粒径(堀場製作所の装置で測定)は、0.2ミクロンであった。次に、実施例3に記載した手順に従ってこのリポソーム化混合物をスプレー乾燥させる。その結果得られるスプレー乾燥した粉末は、安定化したリコペンを9.1%含んでいる。
【0083】
実施例7
誘導体化したデンプン/糖混合物の調製
a.実施例1で調製したOSA誘導体化デンプン600gをグルコース400gと混合した。
b.酸を用いて実施例1のデンプンを加水分解して流動度が約60になるようにし、スプレー乾燥させることにより、冷水に溶け、穏やかに酸で分解されたOSA誘導体化デンプンを調製した。このデンプン600gをグルコース400gと混合した。
c.実施例6bで調製したデンプン500gをマルトース500gと混合した。
d.実施例1で調製したOSA誘導体化デンプン340gをマルトース660gと混合した。
e.実施例1で調製したOSA誘導体化デンプン550gをグルコース450gと混合した。
f.実施例1で調製したOSA誘導体化デンプン500gをグルコース500gと混合した。
g.実施例1で調製したOSA誘導体化デンプン400gをグルコース600gと混合した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリポソームの中にカプセル化された活性物質を含む乾燥粉末形態の組成物であって、前記リポソームがさらに、疎水基、または疎水基と親水基の両方を有するデンプン誘導体を含むマトリックスの中にカプセル化されており、前記デンプン誘導体が、デンプン分子の1,4-結合を非還元末端から開裂させて短鎖の糖類を生成させることのできる少なくとも1つの酵素によって分解されていることを特徴とする、組成物。
【請求項2】
前記デンプンが約20〜約50のデキストロース当量に分解され、前記酵素がβ-アミラーゼまたはグルコアミラーゼである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記デンプンが糊化され、デンプンの乾燥質量に対して少なくとも約0.1%の無水オクテニルコハク酸で処理することによって誘導体化されている、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記活性物質が補酵素Q10である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記デンプンが約30〜90質量%存在し、前記活性物質が約0.1〜30質量%存在し、前記リポソームが約0.5〜59.9質量%存在する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記活性物質が少なくとも50%の生物学的利用能を保持している、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物を含む、固体投薬形態。
【請求項8】
複数のリポソームの中にカプセル化された活性物質を含む乾燥粉末形態の組成物であって、リポソームがさらに、疎水基、または疎水基と親水基の両方を有するデンプン誘導体と、単糖類、二糖類、オリゴ糖類及びマルトデキストリンからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含むマトリックスの中にカプセル化されていることを特徴とする、組成物。
【請求項9】
前記デンプンが糊化され、デンプンの乾燥質量に対して少なくとも約0.1%の無水オクテニルコハク酸で処理することによって誘導体化され、前記活性物質が補酵素Q10である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物を製造する方法であって、
d.前記活性物質のリポソームを形成するステップと、
e.前記デンプンとリポソームを溶液中で乳化するステップと、
f.前記組成物を乾燥させるステップ
を含む、方法。

【公開番号】特開2011−12072(P2011−12072A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−207060(P2010−207060)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【分割の表示】特願2004−163199(P2004−163199)の分割
【原出願日】平成16年6月1日(2004.6.1)
【出願人】(308036790)ブルノプ トゥヴェーデ ベスローテン フェンノートシャップ (21)
【Fターム(参考)】