生物学的又は化学的作用物質に対する予防又はそれらの治療のために遺伝子改変されたヒト臍帯血管周囲細胞
本発明は、遺伝子改変されたヒト臍帯血管周囲細胞を投与することによって、対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物)中で生物学的作用物質又は化学的作用物質によって引き起こされる疾患又は障害を予防又は治療する方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子改変されたヒト臍帯血管周囲細胞を投与することによって、対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物)中で生物学的又は化学的作用物質によって引き起こされる疾患又は障害を予防又は治療する方法を提供する。このような方法で有用な遺伝子改変されたヒト臍帯血管周囲細胞、及びそれらを含む医薬組成物も提供する。
【背景技術】
【0002】
臨床的価値がある治療用タンパク質用の組換えタンパク質の製造は、バイオテクノロジー産業の多大な技術的及び商業的成功となっている。モノクローナル抗体(MAb)は2006年には206億ドルの世界的販売があり、最も急速に拡大している製薬部門である。米国のモノクローナル抗体を販売するトップの6つはリツキサン(登録商標)のみで年に10億ドルを超える販売が1年間であり、トップは47億ドルの販売がある。
【0003】
国家の防衛のためのモノクローナル抗体の利用は、生物兵器による惨事(及び、感染性疾患、例えばSARSの大規模な蔓延)の治療を命じられた機関にとって強い関心の的である。軍事及び民間研究プログラムはいくつかの治療用モノクローナル抗体を同定しており、いくつかの例では、生物兵器の医学的対策としてこれらを開発するプロセスが始まっている。
【0004】
モノクローナル抗体を最重要対策として配備する場合、2つの問題:高い薬剤コストと厄介な送達系に対処しなければならない。「生物製剤」を製造するコストは高い。モノクローナル抗体のような組換えタンパク質は、大規模なcGMP製造及び真核生物/原核生物発酵系、次に最終的な多量の薬理活性原末の下流精製及び精錬を含むコストがかかるプロセスによって産生される。第二に、注射によるモノクローナル抗体及び他のタンパク質ベースの薬剤の送達は治療上の障壁となっている。従来の注射又は注入によるモノクローナル抗体の大規模な使用は、戦場での生物兵器による攻撃又はテロリストのシナリオの時間的及び人材的制約内では実用的ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、遺伝子改変されていないヒト臍帯血管周囲細胞(HUCPVC)と比較してHUCPVC中でのオリゴヌクレオチド又はポリペプチドの発現が増大するように遺伝子改変されたHUCPVCを投与することによって、生物学的又は化学的作用物質からの攻撃に対して対象を保護するための方法を提供する。本発明の別の態様では、このような方法で有用な遺伝子改変されたHUCPVC、及びこのような遺伝子改変された細胞を含む医薬組成物も提供する。対象は、哺乳動物(例えば、ヒト)などの脊椎動物であってよい。HUCPVCは、それを投与する対象にとって同種異系又は異種であってよい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態では、遺伝子改変されたHUCPVCを対象に投与して生物学的作用物質からの攻撃に対して保護する。生物学的作用物質は、細菌、ウイルス、真菌、又は寄生虫などの病原体であってよい。細菌は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、大腸菌(Escherichia coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、ブルセラ菌(Bruscella)、鼻疽菌(Burkholderia mallei)、ペスト菌(Yersinia pestis)、又は炭疽菌(Bacillus anthracis)であってよい。ウイルスは、ギャドゲッツガリーウイルス(Gadgets Gully virus)、カダムウイルス(Kadam virus)、キャサヌール森林病ウイルス、ランガットウイルス、オムスク出血熱ウイルス、ポワッサンウイルス、ロイヤルファームウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、跳躍病ウイルス、ミーバンウイルス(Meaban virus)、サウマレズリーフウイルス(Saumarez Reef virus)、チュレニーウイルス(Tyuleniy virus)、アロアウイルス、デングウイルス、ケドウゴウウイルス(Kedougou virus)、カシパコアウイルス(Cacipacore virus)、コウタンゴウイルス(Koutango virus)、日本脳炎ウイルス、マーレーバレー脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、ウスツウイルス、西ナイルウイルス、ヤオンデウイルス、ココベラウイルス、バガザウイルス、イレウスウイルス、イスラエルターキー髄膜脳脊髄炎ウイルス、ウンタヤウイルス、テンバスウイルス、ジカウイルス、バンジウイルス、ボウボウイウイルス(Bouboui virus)、エッジヒルウイルス、ジュグラウイルス、サボヤウイルス、セピックウイルス、ウガンダSウイルス、ウェセルスブロンウイルス、黄熱病ウイルス、エンテベコウモリウイルス、ヨコセウイルス、アポイウイルス、カウボンリッジウイルス(Cowbone Ridge virus)、フティアパウイルス、モドックウイルス、サルビージャウイルス(Sal Vieja virus)、サンペルリタウイルス、ブカラサコウモリウイルス、カーレー島ウイルス、ダカーコウモリウイルス、モンタナミオチス白質脳炎ウイルス、プノンペンコウモリウイルス、及びリオブラボーウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、東部ウマ脳炎ウイルス(EEE)、西部ウマ脳炎ウイルス(WEE)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、天然痘ウイルス、ワクシニアウイルス、ラッサウイルス、アイピーウイルス(Ippy virus)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、モバラウイルス(Mobala virus)、モペイアウイルス、アマパリウイルス、フレクサルウイルス(Flexal virus)、グアナリトウイルス、フニンウイルス、ラチノウイルス、マチュポウイルス、オリベロスウイルス(Oliveros virus)、パラナウイルス、ピキンデウイルス、ピリタルウイルス(Pirital virus)、サビアウイルス、タカリベウイルス、タミアミウイルス、及びホワイトウォーターアロヨウイルス、シンノンブレウイルス、ハンターンウイルス、リフトバレー熱ウイルス、クリミアコンゴ出血熱ウイルス、ドゥグベウイルス(Dugbe virus)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)、インフルエンザウイルスA、H5N1鳥インフルエンザウイルス、インフルエンザウイルスB、インフルエンザウイルスC、重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルス、狂犬病ウイルス、又は水泡性口内炎ウイルス(VSV)であってよい。真菌は、アスペルギルス(Aspergillus)、ブラストミセスデルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、カンジダ(Candida)、コクシジオイデスイミティス(Coccidioides immitis)、クリプトコッカスネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラズマカプスラーツム変種カプスラーツム(Histoplasma capsulatum var.capsulatum)、パラコクシジオイデスブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)、スポロトリクスシェンキイ(Sporothrix schenckii)、接合菌網種(Zygomycetes spp.)、アブシディアコリンビフェラ(Absidia corymbifera)、リゾムコールプシラス(Rhizomucor pusillus)、又はリゾプスアルヒザス(Rhizopus arrhizus)であってよい。寄生虫は、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)、卵形マラリア原虫(P.ovale)、四日熱マラリア原虫(P.malariae)、トリパノソーマ種(Trypanosoma spp.)、又はレジオネラ種(Legionella spp.)であってよい。
【0007】
本発明の別の実施形態では、遺伝子改変されたHUCPVCを対象に投与して化学的作用物質からの攻撃に対して保護する。化学的作用物質は、リシン、ジフテリア毒素、大腸菌(E.coli)腸毒素、コレラ菌(Vibrio cholerae)腸毒素、ブドウ球菌(Staphylococcal)腸毒素、連鎖球菌(Streptococcal)腸毒素、又はボツリヌス毒素などの、細菌、ウイルス、真菌、又は寄生虫の毒素であってよい。化学的作用物質は合成又は天然由来であってよい。化学的作用物質は、神経剤、発疱剤、血液剤、又は呼吸器作用物質であってよい。化学的作用物質は、ナイトロジェンマスタード、硫黄マスタード、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、又はルイサイトであってよい。化学的作用物質は、サキシトキシン、ビス(2−クロロエチル)エチルアミン、2−クロロビニルジクロロアルシン、2−クロロエチルクロロメチルスルフィド、ビス(2−クロロエチル)スルフィド、サリン(GB)、シクロサリン(GF)、ソマン(GD)、タブン(GA)、VX、アミトン、PFIB、3−キヌクリジニルベンジレート、ホスゲン、ジホスゲン、塩化シアン、シアン化水素、又はクロロピクリンであってよい。
【0008】
本発明の他の実施形態では、HUCPVCを遺伝子改変して、抗体、抗体断片、微生物抗原、サイトカイン又は増殖因子、ホルモン、凝固因子、薬剤耐性又は抗ウイルス耐性ポリペプチド、抗毒素薬、抗酸化剤、受容体又はリガンド、免疫調節因子、検出可能な標識、又は細胞性因子などのポリペプチドを発現させる。ポリペプチドはHUCPVCにとって内因性又は非内因性であり得る。さらに他の実施形態では、HUCPVCを遺伝子改変して、2つ以上のポリペプチドを発現させることが可能である。さらに他の実施形態では、HUCPVCは抗体又は抗体断片を合成及び分泌することができ、抗体又は抗体断片は組換えでもよく、ヒト化されていてもよく、又はモノクローナルでもよい。抗体又は抗体断片は、単鎖抗体(scFv)、Fab、Fab’2、scFv、SMIP、ダイアボディ、ナノボディ、アプタマー、又はドメイン抗体であってよい。さらに他の実施形態では、サイトカイン又は増殖因子は、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、TNF−β、インターフェロン−α(IFN−α)、IFN−β、IFN−γ、インターロイキン1(IL−1)、IL−1β、インターロイキン2〜14、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、RANTES、MIP−1α)、形質転換増殖因子−β(TGF−β)、血小板由来増殖因子(PGDF)、インスリン様増殖因子(IGF)、表皮増殖因子(EGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、エリスロポエチン(EPO)、又はトロンボポエチン(TPO)であってよい。ホルモンは、アンギオテンシノゲン、アンギオテンシン、副甲状腺ホルモン(PTH)、塩基性線維芽細胞増殖因子−2、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、バソプレシン、オキシトシン、ソマトスタチン、ガストリン、コレシストキニン、レプチン、心房性ナトリウム利尿ペプチド、エピネフリン、ノルエフィネフリン、ドーパミン、カルシトニン、又はインスリンであってよい。凝固因子は、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、又はフィブリノゲンであってよい。酵素は、ブチリルコリンエステラーゼ(BChE)、アデノシンデアミナーゼ、グルコセレブロシダーゼ、α−1アンチトリプシン、ウイルスチミジンキナーゼ、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ、マンガンスーパーオキシドジスムターゼ(Mn−SOD)、カタラーゼ、銅−亜鉛−スーパーオキシドジスムターゼ(CuZn−SOD)、細胞外スーパーオキシドジスムターゼ(EC−SOD)、グルタチオンリダクターゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、一酸化窒素合成酵素、又はパラオキシナーゼであってよい。受容体又はリガンドは、T細胞受容体(TCR)、LDL受容体、表面結合免疫グロブリン、可溶性CD4、嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス受容体(CFTR)、又はFc受容体であってよい。免疫調節因子は、CTLA−4、VCP、PLIF、LSF−1、Nip、CD200、ウロモジュリン、CD40L(CD154)、FasL、CD27L、CD30L、4−1BBL、CD28、CD25、B7.1、B7.2、又はOX40Lであってよい。検出可能な標識は緑色蛍光タンパク質(GFP)であってよい。細胞性因子はシトクロムb、ApoE、ApoC、ApoAI、MDR、組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、ヒルジン、β−グロブリン、α−グロブリン、HbA、ras、src、又はbclであってよい。ポリペプチドは、抗原として作用し、それによって対象中で生物学的又は化学的作用物質に対する免疫応答を発生させる細胞タンパク質であってよい。
【0009】
本発明のさらに他の実施形態では、HUCPVCを遺伝子改変して、オリゴヌクレオチド、例えば、ウイルス複製又は感染を阻害することができるRNA干渉(RNAi)分子を発現させる。RNAi分子は、低分子阻害型RNA(siRNA)又はショートヘアピン型RNA(shRNA)分子であってよい。オリゴヌクレオチドはHUCPVCにとって内因性又は非内因性であり得る。他の実施形態では、HUCPVCを遺伝子改変して、2つ以上のオリゴヌクレオチドを発現させることが可能である。
【0010】
本発明の別の実施形態では、本発明の遺伝子改変されたHUCPVCの投与前に、対象は生物学的又は化学的作用物質に曝されている。対象には単回用量のHUCPVC又は複数回用量のHUCPVCを投与することができる。HUCPVCをワクチンとして投与して、その必要性がある対象を保護することができる。HUCPVCは、対象に静脈内、筋肉内、経口、吸入、非経口、腹腔内、動脈内、経皮、舌下、鼻腔、頬側、リポソーム、脂肪、眼部、眼球内、皮下、くも膜下、局所、又は局部投与することができる。42.対象には、投与当たり101〜1013個のHUCPVC、又は投与当たり103〜108個のHUCPVCを投与することができる。
【0011】
本発明の他の実施形態では、対象に投与する遺伝子改変されたHUCPVCは、1週間、1カ月、又は2カ月を超えて存続する。HUCPVCは対象中での免疫認識を回避することができる。
【0012】
本発明のさらに他の実施形態では、遺伝子改変されたHUCPVCを、HUCPVCではない少なくとも1つの間葉系幹細胞(MSC)と組み合わせて投与する。MSCを遺伝子改変して、遺伝子改変されていないMSCと比較してMSC中でのオリゴヌクレオチド又はポリペプチドの発現を増大することができる。MSCは骨髄、臍帯血、胚卵黄嚢、胎盤、皮膚、又は血液から単離することができる。MSCを遺伝子改変して、HUCPVCにとって内因性又は非内因性であるオリゴヌクレオチド又はポリペプチドを発現させることが可能である。
【0013】
本発明の別の実施形態では、遺伝子改変されたHUCPVCを、HUCPVC治療の予防的又は治療的効果を増強又は延長する1つ又は複数の治療剤と組み合わせて対象に投与することができる。治療剤は、例えばサイトカイン、抗ウイルス剤、免疫促進剤、又は免疫抑制剤であってよい。
【0014】
本発明のさらに別の実施形態では、遺伝子改変されたHUCPVCを、薬学的に許容される担体又は賦形剤と共に投与する。
【0015】
本発明の別の実施形態では、遺伝子改変されたHUCPVCを、生物学的又は化学的作用物質の治療又はそれらからの保護の必要がある対象に投与するためのキット中に提供する。
【0016】
一般に本発明は、対象中で生物学的又は化学的作用物質によって引き起こされる疾患又は障害の予防又は治療用の医薬品を調製するための、遺伝子改変されたHUCPVCの使用を提供する。
【0017】
定義
本明細書で交互に使用する用語「抗体」は、完全抗体又は免疫グロブリン及び任意の抗原結合断片又はその単鎖を含む。本明細書で使用する抗体は、哺乳動物(例えば、ヒト又はマウス)、ヒト化、キメラ、組換えであってよく、合成的に産生、又は天然に単離することができる。本発明の抗体は、全ての知られている型の抗体及び抗体様の性質を有する他のタンパク質骨格を含む。例えば抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体、キメラ抗体、又はフィブロネクチン又はアンキリンリピートなどの抗体様の性質を有するタンパク質骨格であってよい。抗体は、Fab、Fab’2、scFv、SMIP、ダイアボディ、ナノボディ、アプタマー、又はドメイン抗体であってもよい。抗体は、以下のアイソタイプ:IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4)、IgM、IgA(例えば、IgA1、IgA2、及びIgAsec)、IgD、又はIgEのいずれかを有することができる。
【0018】
本明細書で使用する用語「抗体断片」は、抗原と特異的に結合する能力を保持する1つ又は複数の抗体の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって実施され得る。用語抗体の「抗原結合部分」内に包含される結合断片の例には、(i)Fab断片、VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなる一価断片、(ii)F(ab’)2断片、ヒンジ領域においてジスルフィド架橋により連結した2つのFab断片を含む二価断片、(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単鎖アームのVL及びVHドメインからなるFv断片、(v)VH及びVLドメインを含むdAb、(vi)dAb断片(Wardら、Nature341:544〜546(1989))、これはVHドメインからなる、(vii)VH又はVLドメインからなるdAb、(viii)単離された相補性決定領域(CDR)、及び(ix)場合によっては合成リンカーにより連結することが可能である2つ以上の単離されたCDRの組み合わせがあるが、これらだけには限られない。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VL及びVHは別個の遺伝子によってコードされるが、それらは組換え法を使用して、その中でVL領域とVH領域が対になり一価分子を形成する一本のタンパク質鎖としてそれらを生成することが可能である合成リンカーによって、連結することが可能である(単鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Birdら、Science242:423〜426(1988)及びHustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:5879〜5883(1988)を参照)。
【0019】
用語「有効量」又は「のに有効な量」又は「治療有効量」は、望ましい結果、例えば細菌又はウイルス感染の予防又は治療、血液凝固の低減、又は毒(例えば、ヘビ毒)の作用の減弱をもたらすのに十分な遺伝子改変されたHUCPVCの量を意味する。
【0020】
「遺伝子改変されたHUCPVC」とは、少なくとも1つのポリペプチド(例えば、抗体、サイトカイン、又はホルモン)又はオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)を組換えで発現し、ヒト(例えば、兵士)に投与したとき、病原微生物又は化学的作用物質(例えば、毒素)によって引き起こされる疾患又は障害を予防又は治療することができる、ヒト臍帯血管周囲細胞を意味する。このポリペプチド又はオリゴヌクレオチドは、HUCPVCへのポリペプチド又はオリゴヌクレオチドの遺伝子配列の導入(例えば、トランスフェクション又は形質導入)後、HUCPVCによって組換え産生される。
【0021】
本明細書で使用する用語「ヒト抗体」は、例えばKabatら、(「免疫学的に興味深いタンパク質の配列(Sequences of proteins of Immunological Interest)」、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91〜3242(1991))によって記載されたように、フレームワーク領域とCDR領域の両方がヒト生殖系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する、抗体、又はその断片を含むものとする。さらに、抗体が定常領域を含有する場合、その定常領域もヒト生殖系列の免疫グロブリン配列に由来する。ヒト抗体は、ヒト生殖系列の免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroでランダム又は部位特異的突然変異によって又はin vivoで体細胞突然変異によって導入された突然変異)を含む可能性がある。しかしながら、本明細書で使用する用語「ヒト抗体」は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列由来のCDR配列が、ヒトフレームワーク配列に移植されている抗体(即ち、ヒト化抗体又は抗体断片)は含まないものとする。
【0022】
用語「ヒト化抗体」は、ヒト免疫グロブリン又は抗体に実質的に由来する可変フレームワーク領域及び非ヒト免疫グロブリン又は抗体に実質的に由来する相補性決定領域(例えば、少なくとも1つのCDR)を含む可変領域を有する少なくとも1つの免疫グロブリンドメインを含む、任意の抗体又は抗体断片を指す。
【0023】
「インターフェロン」とは、哺乳動物(例えばヒト)のインターフェロン−α、−β、−γ、又は−tauポリペプチド、又はその生物活性断片、例えば、IFN−α(例えば、IFN−α−1a;例えば、参照として本明細書に組み込まれる米国特許出願第2007/0274950号を参照)、IFN−α−1b、IFN−α−2a(参照として本明細書に組み込まれる、PCT出願第WO07/044083号を参照)、及びIFN−α−2b)、IFN−β(例えば、参照として本明細書に組み込まれる米国特許第7,238,344号中に記載された;参照として本明細書に組み込まれる米国特許第6,962,978号中に記載されたIFN−b−1a(AVONEX(登録商標)及びREBIF(登録商標))、及びIFN−β−1b(BETASERON(登録商標)、参照として本明細書に組み込まれる、米国特許第4,588,585号、米国特許第4,959,314号、米国特許第4,737,462号、及び米国特許第4,450,103号中に記載された)、IFN−g、及びIFN−t(参照として本明細書に組み込まれる、米国特許第5,738,845号及び米国特許出願公開第2004/0247565号及び2007/0243163号中に記載された)を意味する。
【0024】
「薬学的に許容される担体」とは、それと共に投与する遺伝子改変されたHUCPVCの治療性を保持しながら、治療する対象(例えばヒト)に対して生理的に許容される担体を意味する。1つの例示的な薬学的に許容される担体は生理食塩水である。他の生理的に許容される担体及びそれらの製剤は当業者に知られており、例えば、参照として本明細書に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences、(第18版)、A.Gennaro編、1990、Mack Publishing Company、Easton、PA中に記載される。
【0025】
「治療」とは、疾患又は障害(例えば、病原微生物又は毒素によって引き起こされる感染疾患)の進行又は重度、又は対象(例えばヒト)における疾患又は障害の1つ又は複数の症状の進行、重度、若しくは頻度の低下(例えば、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、又はさらに100%)を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、遺伝子改変されたヒト臍帯血管周囲細胞(HUCPVC)、それらを含む医学上有用な組成物、及び脊椎動物、例えばヒトなどの哺乳動物中での、例えば、生物学的作用物質(例えば、細菌、ウイルス、真菌、及び寄生虫などの病原体による感染)又は化学的作用物質(例えば、生物学的又は化学的(例えば、合成)毒素)による攻撃を阻害、低減、予防、又は治療するためのそれらの投与を提供する。さらに、遺伝子改変されたHUCPVCを、生物又は化学兵器中で使用される毒素を含めた、それぞれ病原体又は生物学的若しくは化学的毒素に曝される可能性があるか又は曝されている哺乳動物に、予防的又は治療的に投与することができる。本発明の方法は、患者、例えば、生物又は化学兵器への曝露のリスクが高い、軍事関係者(例えば、兵士)、医療関係者(例えば、医師又は看護士)、又は文官の予防又は治療に特に適している。さらに本発明は、常在感染因子(例えば、マラリア、フラビウイルス、例えば、デングウイルス、西ナイルウイルス、及び黄熱病ウイルス)が相当な健康リスクを示す世界の地域に滞在する、軍事関係者又は医療関係者の予防又は治療を提供する。
【0027】
HUCPVCを遺伝子改変して、治療する対象(例えば、ヒト)に予防的又は治療的利益を与える、抗体、抗体断片、サイトカイン、ホルモン、凝固因子、免疫調節因子、検出可能な標識、又は酵素などのポリペプチド(例えば、ヒトポリペプチド)を発現させることが可能である。さらに、HUCPVCを遺伝子改変して、治療する対象又はその中に存在する病原微生物若しくは毒素の細胞過程を調節する(例えば、阻害する)オリゴヌクレオチド(例えば、RNAi分子)を発現させることが可能である。HUCPVCを遺伝子改変して、病原微生物又は毒素への曝露に起因する1つ又は複数の疾患又は障害の予防又は治療用の、1つ又は複数の治療用ポリペプチド又はオリゴヌクレオチドを発現させることが可能である。
【0028】
遺伝子改変されたHUCPVCを、1つ又は複数の診断剤又は治療剤(例えば、インターフェロン−αなどの免疫調節剤)と同時投与して、HUCPVC治療の予防的又は治療的性質を増強又は延長することができる。HUCPVCは1つ又は複数の薬学的に許容される担体又は賦形剤と組み合わせて投与することもでき、配合して静脈内、筋肉内、経口、吸入、非経口、腹腔内、動脈内、経皮、舌下、鼻腔、頬側、リポソーム、脂肪、眼部、眼球内、皮下、くも膜下、局所、又は局部投与することができる。さらなる態様中で、本発明は、1つ又は複数の遺伝子改変されたHUCPVC集団での哺乳動物の予防又は治療的処置のための説明書の付いたキットを提供する。
【0029】
ヒト臍帯血管周囲細胞(HUCPVC)
ヒト臍帯血管周囲細胞(HUCPVC)は、ヒト臍帯のワルトンジェリー内の周囲領域から得られる、多分化能細胞の非造血、間葉系集団である(例えば、Sarugaserら、「ヒト臍帯血管周囲(HUCPV)細胞:間葉系前駆細胞の源(Human umbilical cord perivascular(HUCPV)cells):A source of mesenchymal progenitors」、Stem Cells 23:220〜229(2005)を参照)。米国特許出願公開第2005/0148074号及び国際特許出願公開第WO2007/128115号は、HUCPVCの単離及びin vitro培養のための方法を記載し、これらは参照として本明細書に組み込まれる。HUCPVCは、標準的な接着条件下で培養したとき第2〜7代のそれぞれにおいて約20時間の倍加時間(血清依存性)を示す、比較的迅速な増殖によってさらに特徴付けられる。表現型的に、HUCPVCは、採取時に、Oct4−、CD14−、CD19−、CD34−、CD44+、CD45−、CD49e+、CD90+、CD105(SH2)+、CD73(SH3)+、CD79b−、HLA−G−、CXCR4+、及びc−kit+として特徴付けられる。さらにHUCPVCは、周囲領域以外のワルトンジェリーの源から抽出した細胞集団と比較して高いレベルで、CK8、CK18、CK19、PD−L2、CD146及び3G5(周囲細胞マーカー)に陽性である。
【0030】
HUCPVCの利点
ポリペプチド又はオリゴヌクレオチド(例えば、ヒトポリペプチド又はオリゴヌクレオチド)を組換えで発現させるために使用すると、遺伝子改変されたHUCPVCは、他の細胞ベースの療法に優るいくつかの利点を与える。HUCPVCは同種異系又は異種宿主に投与すると低い免疫原性を示すので、他の同種異系又は異種細胞と比較して宿主内で、それらは増大した寿命を有する。HUCPVCは、治療上有意なレベルの対象とするタンパク質又はオリゴヌクレオチド(例えば、HUCPVCが遺伝子改変され発現している組換えポリペプチド又はオリゴヌクレオチド)をもたらす、実証された遺伝子発現モダリティも有する。さらに、HUCPVCは迅速に増殖するが、それらは他の細胞ベースの遺伝子治療用媒体と比較して低い増殖障害のリスクを有する。対象(例えば、ヒト)を予防又は治療するための遺伝子改変されたHUCPVCのこれらの有利な性質のそれぞれは、以下で詳細に論じる。
【0031】
遺伝子改変されたHUCPVCの低い免疫原性は、それらを脊椎動物対象、例えばヒトなどの哺乳動物、及び特に同種異系又は異種レシピエントへの投与に理想的な媒体にする。HUCPVCは、宿主免疫系による検出を回避するそれらの能力に基づいて、低い免疫原性を有することが示されている(例えば、Sarugaserら(2005)及び米国特許出願公開第2005/0148074号を参照)。このように、例えばヒト(即ち、ドナー)から採取したHUCPVCはin vitroで培養することができ、遺伝子改変されたHUCPVCに対する同種特異的免疫応答を宿主中で誘導せずに、別の、無関係且つHLA−ミスマッチなヒト(即ち、宿主)に投与することができる(例えば、Ennisら、「ヒト臍帯血管周囲細胞のin vitroでの免疫原性(In vitro immunologic properties of human umbilical cord perivascular cells)」Cytotherapy10(2):174〜181(2008)を参照)。したがって、遺伝子改変されたHUCPVCは、宿主免疫系の活性化により治療有効性を失わずに、非相同ヒト集団に、又はさらに異種集団に投与することができる。さらに、事実上任意の脊椎動物(例えば、ヒトなどの哺乳動物)においてHUCPVCを使用する能力は、緊急状況(例えば、感染疾患の蔓延)中で使用するための大規模な調製及び保存(即ち、「備蓄」)を可能にする。
【0032】
HUCPVCの低い免疫原性は、他の同種異系又は異種細胞と比較して、治療した宿主中のin vivoでこれらの細胞の増大した寿命をもたらす。同様の間葉系細胞が、同種異系に送達するとヒト宿主中に数年存続することは文書化されており(Le Blancら、「重度の骨形成不全症を有する患者における子宮内移植後の骨中での胎児性間葉系幹細胞の生着(Fetal mesenchymal stem−cell engraftment in bone after in utero transplantation in a patient with severe osteogenesis imperfecta)」Transplantation79(11):1607〜1614(2005))、したがって、HUCPVCは、注射後に少なくとも数週間から数カ月(例えば、2週間、4週間、6週間、2カ月以上)、脊椎動物(例えば、ヒトなどの哺乳動物)宿主内で存続し得ると予想することができる。(例えば、ウイルス用ポリペプチド又はオリゴヌクレオチドを与えることにより)療法又は予防用のポリペプチド又はオリゴヌクレオチドを与えるために使用するHUCPVCの寿命は、他の予防接種又は療法の技術に優る利点をもたらす。従来のワクチン又は治療剤は、個体中で保護又は治療効果をもたらすために複数回投与を必要とするが、治療有効量の遺伝子改変されたHUCPVCは単回用量で個体に投与することができる。或いは、2つ以上の用量の遺伝子改変されたHUCPVCを投与して、予防又は治療をもたらすことができる。病原微生物又は毒素によって引き起こされる疾患又は障害を予防又は治療するために使用する遺伝子改変されたHUCPVCの寿命によって、それらは軍事配備の不確かな性質のため、療法剤又はワクチンの複数回投与を受けることができない軍事関係者(例えば、兵士)への投与に特に有用になる。
【0033】
HUCPVCの別の有利な性質は、それらをいくつかの標準的なトランスフェクション及び形質導入技法により容易に遺伝子改変して、治療用ポリペプチド又はオリゴヌクレオチドの組換え発現を可能にすることができることである。本明細書でさらに記載するように、遺伝子導入は、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス及びレンチウイルス)及び核酸トランスフェクション(例えば、リポソーム、カチオン性媒体、又はエレクトロポレーションと組み合わせたDNAプラスミド)を使用して実施することができる。
【0034】
骨髄の提供を典型的に必要とする多くの他の間葉系幹細胞集団と異なり、HUCPVCは、出生後通常廃棄されるヒト臍帯から確実に回収することができる。先進工業国では、ヒト臍帯血液製剤は現在普通に回収され、考えられる将来の自己又は同種移植のために保存される。このように、本発明の方法による、増殖及び遺伝子改変のためのHUCPVCの回収には、他の間葉系幹細胞集団の回収に関する多くの理論上の制約がない。
【0035】
最後に、HUCPVCは、その必要性がある哺乳動物(例えば、ヒト)に投与するための遺伝子改変されたHUCPVCの、迅速及び大規模な調製を可能にする短い集団倍加時間を有する(例えば、Sarugaserら、2005を参照)。HUCPVCは酵素テロメラーゼを実質的に欠いており、したがって、増殖性疾患を発症するリスクは最小である。これらの細胞は、アポトーシスが起こる前に、所定の分裂数を超えて分裂することはできないからである。動物実験では、臨床上認められているより大きな桁数で投与したときでさえ、HUCPVCが腫瘍を生成することは知られていない。
【0036】
組換えポリペプチド及びオリゴヌクレオチドの発現
本発明では、HUCPVCを遺伝子改変して、治療有効量で与えたとき、遺伝子改変されたHUCPVCが「ステルス細胞」として作用して、生物学的(例えば、病原微生物)又は化学的(例えば、毒素)作用物質による攻撃を阻害、低減、予防又は治療するように、1つ又は複数のポリペプチド(例えば抗体、サイトカイン、又はホルモン)又はオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA分子)を発現させることが可能である。免疫調節オリゴヌクレオチド又はポリペプチドをHUCPVC中で発現させて、宿主の免疫応答を調節する(例えば、増大又は低減する)ことも可能である。HUCPVC中で発現されたポリペプチドは、原形質膜表面上に分泌又は提示され得る(例えば、膜結合受容体又はリガンド)。1つ又は複数のオリゴヌクレオチド又はポリペプチドを1つのHUCPVC中で同時発現させて、1つ又は複数の生物学的又は化学的作用物質の治療又はそれらに対する保護を可能にすることができる。
【0037】
抗体及び抗体断片
本発明はさらに、病原微生物又は化学的作用物質(例えば、毒素)と特異的に結合し中和する遺伝子改変されたHUCPVCによる、抗体(例えば、ヒト化モノクローナル抗体)又は抗体断片の発現を与える。例1中に示すように、抗体又は抗体断片を発現するHUCPVCを使用して、それぞれ病原微生物又は化学的作用物質に曝されている、又は曝される可能性がある脊椎動物(例えば、哺乳動物、ヒト(例えば、兵士)など)を治療又は保護することができる。例えば免疫系を調節するために使用することができる例示的な抗体には、TNF阻害剤(例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴール)、アレムツズマブ、アフェリモマブ、アセリズマブ、アトリズマブ、アトロリムマブ、バシリキシマブ、ベリムマブ、ベルチリムマブ、セデリズマブ、クレノリキシマブ、ダクリズマブ、ドルリモマブアリトックス、ドルリキシズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、エルシリモマブ、エルリズマブ、ファラリモマブ、フォントリズマブ、ガリキシマブ、ガンテネルマブ、ガビリモマブ、ゴリムマブ、ゴミリキシマブ、イバリズマブ、イノリモマブ、イピリムマブ、ケリキシマブ、レブリリズマブ、レルデリムマブ、ルミリキシマブ、マスリモマブ、メポリズマブ、メテリムマブ、モロリムマブ、ムロモナブ−CD3、ナタリズマブ、ネレリモマブ、オクレリズマブ、オズリモマブ、オマリズマブ、オテリキシズマブ、パスコリズマブ、ペキセリズマブ、リツキスマブ、レスリズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、シプリズマブ、タリズマブ、テリモマブアリトックス、テネリキシマブ、テプリズマブ、トシリズマブ、トラリズマブ、バパリキシマブ、ベパリモマブ、ビシリズマブ、ザノリムマブ、ジラリムマブ、及びゾリモマブアリトックスがある。
【0038】
ワクチンとしての微生物抗原
微生物病原体(例えば、細菌、ウイルス、真菌、又は寄生虫)由来の1つ又は複数の抗原を発現するHUCPVCはワクチンとして使用して、治療する対象において防御又は治療免疫応答を誘導することができる。投与時に、遺伝子改変されたHUCPVCは、宿主免疫系により外来として認識される微生物抗原を発現する。適応的免疫応答の活性化(例えば、宿主抗体及びT細胞)を含めた抗原に対する一次免疫応答の発生は、微生物病原体による感染時に強力及び長期的二次応答の生成を可能にする。ワクチンにおける細菌、ウイルス、真菌、及び寄生虫のポリペプチドの使用、及び本発明の方法によるHUCPVC中での発現に適したこれらの微生物由来の免疫原性抗原の同定は、当技術分野で知られている。
【0039】
サイトカイン及び増殖因子
本発明は、遺伝子改変されたHUCPVCによるサイトカイン及び増殖因子の発現を提供する。多くのサイトカインは免疫調節特性を有し、これらを使用して免疫応答を増強する、又は免疫病理学的応答を減退することができる。HUCPVC中で発現させることが可能であるサイトカイン及び増殖因子の例には、TNF−αなどの腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロン(例えば、インターフェロン−α、インターフェロン−β、及びインターフェロン−γ)、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−1β、及びインターロイキン2〜14)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、ケモカイン(例えば、RANTES及びMIP−1α)、形質転換増殖因子−β(TGF−β)スーパーファミリーのメンバー、血小板由来増殖因子(PGDF)、インスリン様増殖因子(IGF)、表皮増殖因子(EGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、エリスロポエチン(EPO)、及びトロンボポエチン(TPO)があるが、これらだけには限られない。
【0040】
ホルモン
本発明は、遺伝子改変されたHUCPVCによるホルモンの発現を提供する。HUCPVC中で発現させることが可能であるホルモンの例には、アンギオテンシノゲン、アンギオテンシン、副甲状腺ホルモン(PTH)、塩基性線維芽細胞増殖因子−2、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、バソプレシン、オキシトシン、ソマトスタチン、ガストリン、コレシストキニン、レプチン、心房性ナトリウム利尿ペプチド、エピネフリン、ノルエフィネフリン、ドーパミン、カルシトニン、及びインスリンがあるが、これらだけには限られない。
【0041】
血液凝固因子
本発明は、遺伝子改変されたHUCPVCによる血液凝固因子の発現を提供する。HUCPVC中で発現させることが可能である凝固因子の例には、第VII因子、第VIII因子、及び第IX因子、及びフィブリノゲンがあるが、これらだけには限られない。
【0042】
酵素
HUCPVC中で発現させることが可能である酵素の例には、ブチリルコリンエステラーゼ(BChE)、アデノシンデアミナーゼ、グルコセレブロシダーゼ、α−1アンチトリプシン、「自殺」ポリペプチド(例えば、ウイルスチミジンキナーゼ(TK)、例えば、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、又は水痘帯状疱疹ウイルス由来のTK)、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ、抗酸化剤(例えば、マンガンスーパーオキシドジスムターゼ(Mn−SOD)、カタラーゼ、銅−亜鉛−スーパーオキシドジスムターゼ(CuZn−SOD)、細胞外スーパーオキシドジスムターゼ(EC−SOD)、及びグルタチオンリダクターゼ)、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、一酸化窒素合成酵素、及びパラオキシナーゼがあるが、これらだけには限られない。
【0043】
免疫調節因子
HUCPVC中で発現させることが可能である免疫調節因子の例には、CTLA−4、VCP、PLIF、LSF−1、Nip、CD200、ウロモジュリン、CD40L(CD154)、FasL、CD27L、CD30L、4−1BBL、CD28、CD25、B7.1、B7.2、及びOX40Lがあるが、これらだけには限られない。
【0044】
受容体及びリガンド
HUCPVC中で発現させることが可能である受容体及びリガンドの例には、T細胞受容体(TCR)、LDL受容体、表面結合免疫グロブリン、可溶性CD4、嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス受容体(CFTR)、及びFc受容体があるが、これらだけには限られない。
【0045】
検出可能な標識
検出可能な標識をHUCPVC中で発現させて、その必要性がある哺乳動物(例えば、ヒト)へのこれらの細胞の臨床的施用を容易にすることができる。臨床医は、例えば、血液又は組織サンプルを単離し検出可能な標識の存在を分析することによって、患者に投与した標識HUCPVCの量及び寿命を決定することができる。検出可能な標識は、緑色蛍光タンパク質(GFP)などの蛍光分子を含む。
【0046】
代謝産物及び他の細胞性因子
HUCPVC中で発現させることが可能である代謝産物及び他の因子の例には、シトクロムb、コレステロール輸送又は代謝ポリペプチド(例えば、ApoE、ApoC、ApoAI)、薬剤耐性又は抗ウイルス耐性ポリペプチド(例えば、MDR、リボザイム、アンチセンスRNA、抗ウイルスプロテアーゼ)、抗毒素剤、血管新生ペプチド、組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)、尿プラスミノゲン活性化因子(例えば、ウロキナーゼ)、ヒルジン、血管作用性ペプチド、グロビン(例えば、β−グロビン、α−グロビン、HbA)、プロトオンコジーン(例えば、ras、src、及びbcl)、及び分泌性ペプチド(例えば、アンギオテンシン転換酵素、血管平滑筋カルシウムチャンネル、又はアドレナリン受容体の競合阻害剤として作用することができる)があるが、これらだけには限られない。
【0047】
RNA干渉
HUCPVCを遺伝子改変して、患者(例えば、ヒト)に投与したとき1つ又は複数のRNA干渉(RNAi)分子を発現させることが可能である。RNAiは、特異的RNA分子の分解を引き起こすこと、又は特異的遺伝子の転写を妨げることによって、遺伝子発現を阻害する機構である。RNAiの機構の鍵は、標的メッセンジャーRNA(mRNA)分子と相補的なヌクレオチド配列を有する低分子阻害型RNA鎖(siRNA)である。siRNAは、配列特異的な形式で遺伝子発現を阻害又は下方制御することができる、低分子の一本鎖核酸分子である。例えば、Zamoreら、Cell 101:25 33 (2000);Bass、Nature411:428〜429(2001);Elbashirら、Nature411:494〜498(2001);及びKreutzerら、国際PCT公開第WO00/44895号;Zernicka−Goetzら、国際PCT公開第WO01/36646号;Fire、国際PCT公開第WO99/32619号;Plaetinckら、国際PCT公開第WO00/01846号;Mello及びFire、国際PCT公開第WO01/29058号;Deschamps−Depaillette、国際PCT公開第WO99/07409号;及びLiら、国際PCT公開第WO00/44914号を参照。遺伝子サイレンシングにおいて使用するためのsiRNA分子を調製するための方法は、参照として本明細書に組み込まれる米国特許第7,078,196号中に記載される。
【0048】
本発明中のRNAi技術(例えば、siRNA分子)の施用はいくつかの方法で実施することができ、それぞれHUCPVC集団における遺伝子産物の機能的サイレンシングをもたらす。1つ又は複数の内因性HUCPVC遺伝子産物の機能的サイレンシングは、(例えば、1つ又は複数のプロアポトーシス遺伝子産物のサイレンシングによって)in vivoでのHUCPVCの寿命を増大させる可能性があり、又は治療用ポリペプチド(例えば、抗体、サイトカイン、又はホルモン)の発現を増大させる可能性がある。
【0049】
RNAi作用物質(例えば、siRNA分子)による機能的遺伝子サイレンシングは、標的遺伝子産物の完全な阻害を必ずしも含まない。いくつかの例では、RNAi作用物質により引き起こされる遺伝子産物発現のわずかな低下は、宿主細胞、組織、器官、又は動物中で有意な機能又は表現型変化に変わる可能性がある。したがって、遺伝子サイレンシングは機能的に均等であると理解され、サイレンシングを得るための遺伝子産物分解の程度は遺伝子標的又は宿主細胞系間で異なる可能性がある。遺伝子サイレンシングは1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、又は10%遺伝子産物発現を低下させる可能性がある。遺伝子産物発現は、優先的に10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%(即ち、完全な阻害)低下する。
【0050】
HUCPVCの遺伝子改変
HUCPVC中での非内因性ポリペプチド又はオリゴヌクレオチドの組換え発現は、いくつかの異なる標準的な遺伝子導入モダリティを使用することによって実施することができる。これらのモダリティ、それらの利点及び制約は、以下でさらに論じる。HUCPVCを遺伝子改変する例示的な方法は、参照として本明細書に組み込まれる国際特許出願公開第WO2007/128115号中でも論じられる。
【0051】
形質導入(ウイルスベクター)
形質導入は、標的細胞の遺伝子改変を可能にするウイルスによる標的細胞(例えば、HUCPVC)の感染である。多くのウイルスは哺乳動物細胞と結合し感染し、それらの複製サイクルの一部として宿主細胞にそれらの遺伝物質を導入する。いくつかの型のウイルス(例えば、レトロウイルス)は、宿主のゲノムにそれらのウイルスゲノムを組み込む。これによって、その細胞の生存期間にわたって宿主細胞の遺伝子間にそのウイルスの遺伝子を取り込む。遺伝子導入用に修飾したウイルスでは、ドナー遺伝子(例えば、ヒト化モノクローナル抗体)をウイルスゲノムに挿入する。追加の修飾をウイルスに施して、感染性又は向性(例えば、シュードタイピング)を改善し、複製能力を低減又は排除し、免疫原性を低減する。新たに導入される哺乳動物遺伝子は、感染宿主細胞又は生物中で発現され、欠陥宿主遺伝子を交換する場合、欠陥遺伝子によって引き起こされる状態又は疾患を改善する可能性がある。アデノウイルス及びレトロウイルス(レンチウイルスを含む)は、以下で論じるように、遺伝子改変する能力及びこれらのウイルスのライフサイクルを利用する能力のため、遺伝子治療用途の特に魅力的なモダリティである。
【0052】
アデノウイルス
組換えアデノウイルスベクターは、HUCPVC中でのポリペプチド(例えば、抗体、サイトカイン、又は凝固因子)又はオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)の発現に有意ないくつかの利点を与える。ウイルスは非常に高い力価で調製することができ、非複製細胞に感染し、対象とする注射又はかん流後in vivoで標的細胞の高有効性及び高レベルの形質導入をもたらす可能性がある。さらに、アデノウイルスは宿主ゲノムにそれらのDNAを組み込まないので、この遺伝子治療モダリティは自発性増殖障害を誘導する低いリスクを有する。動物モデルでは、アデノウイルス遺伝子導入は、約1週間にわたって高レベルの発現を仲介することが一般に分かっている。導入遺伝子発現の期間は延長することができ、異所性発現は組織特異的プロモーターを使用することによって低減することができる。アデノウイルスベクター自体の分子工学における他の改善点は、より持続的な導入遺伝子発現及び少ない炎症をもたらしている。これは、追加の初期アデノウイルス遺伝子に特異的突然変異を有するいわゆる「第二世代」ベクター、及びcre−lox戦略(Engelhardtら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA91:6196〜6200(1994)及びKochanekら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA93:5731〜5736(1996))を使用して事実上全てのウイルス遺伝子が欠失した「ガットレス」ベクターで見られる。さらに、非病原性パルボウイルス由来の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を使用して、ポリペプチド又はオリゴヌクレオチドを発現させることが可能である。これらのベクターは細胞の免疫応答をほとんど誘導せず、大部分の系で数カ月間持続する導入遺伝子発現をもたらすからである。組織特異的プロモーターの取り込みは、再度有益である。
【0053】
レトロウイルス
対象又は細胞にポリペプチド又はオリゴヌクレオチドを送達するのに有用な他のウイルスベクターは、レンチウイルスを含めたレトロウイルスである。アデノウイルスと対照的に、レトロウイルス中の遺伝物質はRNA分子の形状であり、一方それらの宿主の遺伝物質はDNAの形状である。レトロウイルスが宿主細胞に感染すると、それはそのRNA及びいくつかの酵素を細胞中に導入する。レトロウイルス由来のこのRNA分子は、逆転写と呼ばれるプロセスによって、そのRNA分子から二本鎖DNAコピー(プロウイルス)を生成する。細胞核への輸送後、プロウイルスDNAを宿主染色体に組み込み、感染細胞のゲノム及び生じる可能性がある任意の子孫細胞を恒久的に改変する。HUCPVCなどの細胞中にポリペプチド又はオリゴヌクレオチドをコードする遺伝子を恒久的に導入する能力は、遺伝子治療に使用するレトロウイルスを明確にする特徴である。レトロウイルスは、レンチウイルス、ウイルス感染及びプロウイルスの組み込みを容易にするためのいくつかの補助タンパク質を含むヒト免疫不全ウイルス(HIV)を含めたウイルスのファミリーを含む。
【0054】
遺伝子治療用のレトロウイルスの使用に関する1つの問題は、インテグラーゼ酵素が、宿主ゲノム中のいずれか任意の位置にウイルスの遺伝物質を挿入する可能性があることである。遺伝物質が宿主細胞の原型遺伝子の1つの中央に偶然挿入される場合、この遺伝子は妨害され得る(例えば、挿入突然変異)。遺伝子が偶然に細胞分裂を制御する遺伝子である場合、制御不能な細胞分裂(例えば、癌)が起こる可能性がある。ジンクフィンガーヌクレアーゼを利用することにより、又はβ−グロビン遺伝子座制御領域などの特定配列を封入して組み込み部位を特異的染色体部位に誘導することにより、この問題は近年対処され始めてきている。この考慮事項にもかかわらず、レトロウイルス及びレンチウイルスには遺伝子治療用途に関する相当な有用性がある。現在の「第三世代」レンチウイルスベクターは、哺乳動物細胞に関する、完全な複製不全、広範囲の向性、及び増大した遺伝子導入能力を特徴とする(Mangeat、B.及びTrono、D.、「レンチウイルスベクター及びアンチレトロウイルスの内因性免疫(Lentiviral vectors and antiretroviral intrinsic immunity)」、Human Gene Therapy 16(8):913〜920(2005)及びWiznerowicz、M.及びTrono、D.、「治療、基礎研究及びバイオテクノロジーのためのHIVの利用(Harnessing HIV for therapy,basic research and biotechnology)」、Trends Biotechnol.23(1):42〜7(2005)を参照)。例えば水泡性口内炎ウイルス糖タンパク質(VSV−G)又はネコ内因性ウイルスRD114エンベロープ糖タンパク質でシュードタイピングしたレンチウイルスを使用して、HUCPVCを形質導入することができる(例えば、Zhangら、「修飾型RD114エンベロープ糖タンパク質でシュードタイピングしたレンチウイルスの使用による、骨髄由来間葉系幹細胞の形質導入(Transduction of bone−marrow−derived mesenchymal stem cells by using lentivirus vectors pseudotyped with modified RD 114 envelope glycoproteins)」、J.Viral.78(3):1219〜1229(2004)を参照)。参照として本明細書に組み込まれる米国特許第5,919,458号、米国特許第5,994,136号、及び米国特許第7,198,950号は、標的細胞を遺伝子改変するためのレンチウイルスの生成及び使用を記載する。
【0055】
他のウイルスベクター
アデノウイルス及びレトロウイルスベクター以外に、対象又は細胞に望ましいポリペプチド又はオリゴヌクレオチドをコードするDNAベクター(例えば、プラスミド)を導入するために使用することができる、他のウイルスベクター及び技法が当技術分野で知られている。これらは、例えば、Wattanapitayakul及びBauer(Biomed.Pharmacother54:487〜504(2000)、及びその中の引用によって記載されたものを含む。
【0056】
トランスフェクション
裸DNA及びオリゴヌクレオチド
ポリペプチド(例えば、抗体、サイトカイン、又はホルモン)又はRNA干渉分子(例えば、siRNA又はshRNA)をコードする裸DNA又はオリゴヌクレオチド(例えば、プラスミドなどのDNAベクター)を使用して、HUCPVCを遺伝子改変することもできる。これは非ウイルストランスフェクションの最も簡単な方法である。裸DNAプラスミドの筋肉内注射を使用して実施した臨床試験にはいくつかの成功があるが、しかしながら、トランスフェクションの他の方法と比較して発現は低くなっている。エレクトロポレーション、及び高圧ガスを使用してDNAコーティング金粒子を細胞に撃ちつける「遺伝子ガン」の使用などの、裸DNAを送達するための他の有効な方法が存在する。
【0057】
リポプレックス及びポリプレックス
HUCPVCへのDNAベクター(例えば、プラスミド)の送達を改善するために、DNAは損傷から保護することができ、細胞中へのその進入は容易にすることができる。リポプレックス及びポリプレックスは、トランスフェクションプロセス中の望ましくない分解から導入DNAを保護する能力を有する。プラスミドDNAは、ミセル又はリポソームのような組織構造に脂質を用いて覆うことができる。組織構造がDNAと複合体形成するとき、それはリポプレックスと呼ばれる。3タイプの、アニオン性(負に帯電した)、中性、又はカチオン性(正に帯電した)脂質が存在する。カチオン性脂質を利用するリポプレックスは、遺伝子導入に関する有用性が証明されている。カチオン性脂質は、それらの正電荷のため、負に帯電したDNAと自然に複合体形成する。さらにそれらの電荷の結果として、それらは細胞膜と相互作用し、リポプレックスのエンドサイトーシスが起こり、DNAは細胞質中に放出される。カチオン性脂質は、細胞によるDNAの分解に対しても保護する。
【0058】
ポリマーとDNAの複合体はポリプレックスと呼ばれる。大部分のポリプレックスはカチオン性ポリマーからなり、それらの生成はイオン性相互作用によって制御される。ポリプレックスとリポプレックスの作用の方法の間の1つの大きな違いは、ポリプレックスはそれらのDNA充填物を細胞質中に放出することができないので、この目的のため、不活化ウイルスが必ず生じるように(エンドサイトーシス中に作製されるエンドソームを溶かすために)エンドソーム溶解剤とコトランスフェクトされることである。しかしながら、これが常に当てはまるわけではない。ポリエチレンイミンなどのポリマーには、キトサン及びトリメチルキトサンと同様に、それら独自のエンドソーム破壊法がある。
【0059】
ハイブリッド法
欠点を有する遺伝子導入のそれぞれの方法のため、2つ以上の技法を組み合わせて開発されたいくつかのハイブリッド法が存在している。例えば、ビロソームは、リポソームと不活化ウイルスを組み合わせる。この手法は、ウイルス単独法又はリポソーム単独法のいずれかよりも、呼吸上皮細胞においてより有効な遺伝子導入をもたらすことが示されている。他の方法は、他のウイルスベクターとカチオン性脂質を混合すること、又はウイルスをハイブリダイズすることを含む。これらの方法のそれぞれを使用して、HUCPVCへのDNAベクター(例えば、プラスミド)の導入を容易にすることができる。
【0060】
デンドリマー
デンドリマーを使用してHUCPVCを遺伝子改変することもできる。デンドリマーは、球形を有する高度に分岐したマクロ分子である。粒子の表面は多くの方法で官能化することができ、生成する構築体の性質の多くはその表面によって決定される。特に、カチオン性デンドリマー(即ち、正の表面電荷を有するデンドリマー)を構築することができる。DNAプラスミドなどの遺伝物質の存在下では、電荷の相補性は核酸とカチオン性デンドリマーの一時的結合をもたらす。その目的地に到達すると、デンドリマー核酸複合体は次いでエンドサイトーシスによってHUCPVCに取り込まれる。
【0061】
生物学的及び化学的作用物質
本発明の方法は、生物学的又は化学的作用物質に曝されているか又はそれらに曝されるリスクが高い対象(例えば、軍事関係者などのヒト)への、遺伝子改変されたHUCPVCの投与をもたらす。
【0062】
細菌
本発明の方法を使用して、対象(例えば、ヒト)中の細菌感染を治療又は予防することができる。ヒトの疾患又は病状を引き起こす細菌には、緑膿菌、ネズミチフス菌、大腸菌、肺炎桿菌、ブルセラ菌、鼻疽菌、ペスト菌、及び炭疽菌があるが、これらだけには限られない。
【0063】
ウイルス
本発明の方法を使用して、対象(例えば、ヒト)中のウイルス感染を治療又は予防することができる。ヒトの疾患又は病状を引き起こすウイルスには、フラビウイルス(例えば、ギャドゲッツガリーウイルス、カダムウイルス、キャサヌール森林病ウイルス、ランガットウイルス、オムスク出血熱ウイルス、ポワッサンウイルス、ロイヤルファームウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、跳躍病ウイルス、ミーバンウイルス、サウマレズリーフウイルス、チュレニーウイルス、アロアウイルス、デングウイルス、ケドウゴウウイルス、カシパコアウイルス、コウタンゴウイルス、日本脳炎ウイルス、マーレーバレー脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、ウスツウイルス、西ナイルウイルス、ヤオンデウイルス、ココベラウイルス、バガザウイルス、イレウスウイルス、イスラエルターキー髄膜脳脊髄炎ウイルス、ウンタヤウイルス、テンバスウイルス、ジカウイルス、バンジウイルス、ボウボウイウイルス、エッジヒルウイルス、ジュグラウイルス、サボヤウイルス、セピックウイルス、ウガンダSウイルス、ウェセルスブロンウイルス、黄熱病ウイルス、エンテベコウモリウイルス、ヨコセウイルス、アポイウイルス、カウボンリッジウイルス、フティアパウイルス、モドックウイルス、サルビージャウイルス、サンペルリタウイルス、ブカラサコウモリウイルス、カーレー島ウイルス、ダカーコウモリウイルス、モンタナミオチス白質脳炎ウイルス、プノンペンコウモリウイルス、及びリオブラボーウイルス)、トガウイルス(例えば、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、東部ウマ脳炎ウイルス(EEE)、及び西部ウマ脳炎ウイルス(WEE))、フィロウイルス(例えば、エボラウイルス(例えば、コートジボワール、レストン、スーダン、ウガンダ、及びザイール菌株)、マールブルグウイルス(例えば、アンゴラ、Ci67、ムソク、ポップ、及びラブニナ菌株))、ポキシウイルス(例えば、天然痘ウイルス、ワクシニアウイルス)、アリーナウイルス(例えば、ラッサウイルス(例えば、ジョサイア、LP、及びGA391菌株)、アイピーウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、モバラウイルス、モペイアウイルス、アマパリウイルス、フレクサルウイルス、グアナリトウイルス、フニンウイルス、ラチノウイルス、マチュポウイルス、オリベロスウイルス、パラナウイルス、ピキンデウイルス、ピリタルウイルス、サビアウイルス、タカリベウイルス、タミアミウイルス、及びホワイトウォーターアロヨウイルス)、ブンヤウイルス(例えば、シンノンブレウイルス、ハンターンウイルス、リフトバレー熱ウイルス、クリミアコンゴ出血熱ウイルス、及びナイロビウイルス(例えば、ドゥグベウイルス))、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、及びカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV))、オルトミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルスA(例えば、H5N1鳥インフルエンザウイルス)、B、及びCなどのインフルエンザウイルス)、コロナウイルス(例えば、重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルス)、及びラブドウイルス(例えば、狂犬病ウイルス及び水泡性口内炎ウイルス(VSV))があるが、これらだけには限られない。
【0064】
真菌
本発明の方法を使用して、対象(例えば、ヒト)中の真菌感染を治療又は予防することができる。ヒトの疾患又は病状を引き起こす真菌には、アスペルギルス、ブラストミセスデルマチチジス、カンジダ、コクシジオイデスイミティス、クリプトコッカスネオフォルマンス、ヒストプラズマカプスラーツム変種カプスラーツム、パラコクシジオイデスブラジリエンシス、スポロトリクスシェンキイ、及び接合菌網種(例えば、アブシディアコリンビフェラ、リゾムコールプシラス、及びリゾプスアルヒザス)があるが、これらだけには限られない。
【0065】
寄生虫
本発明の方法を使用して、対象(例えば、ヒト)中の寄生虫感染を治療又は予防することができる。ヒトの疾患又は病状を引き起こす寄生虫には、トキソプラズマ原虫、熱帯熱マラリア原虫(三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、及び四日熱マラリア原虫)、トリパノソーマ種、及びレジオネラ種があるが、これらだけには限られない。
【0066】
化学的作用物質(毒素)
本発明の方法を使用して、哺乳動物(例えば、ヒト)の化学的作用物質(例えば、毒素、化学兵器、又は発疱剤)への曝露によって引き起こされる疾患、症状、又は状態を治療又は予防することができる。哺乳動物の疾患又は病状を引き起こす化学的作用物質には、リシン、ジフテリア毒素、大腸菌腸毒素、コレラ菌腸毒素、ブドウ球菌腸毒素、連鎖球菌腸毒素、ボツリヌス毒素、サキシトキシン、ナイトロジェンマスタード(例えば、ビス(2−クロロエチル)エチルアミン)、ルイサイト(例えば、2−クロロビニルジクロロアルシン)、硫黄マスタード(例えば、2−クロロエチルクロロメチルスルフィド及びビス(2−クロロエチル)スルフィド)、サリン(GB;O−イソプロピルメチルホスホノフロリデート)、シクロサリン(GF)、ソマン(GD;O−ピナコリルメチルホスホノフロリデート)、タブン(GA;O−エチル、n,n−ジメチルホスホラミドシアニデート)、VX(O−エチルS−2−ジイソプロピルアミノエチルメチルホスホノチオレート)、アミトン、PFIB、3−キヌクリジニルベンジレート、ホスゲン、ジホスゲン、塩化シアン、シアン化水素、クロロピクリン、及びアセチルコリンエステラーゼ阻害剤(例えば、ノビコック剤)があるが、これらだけには限られない。
【0067】
本発明の遺伝子改変されたHUCPVCで治療することができる対象
病原体又は毒素などの生物学的又は化学的作用物質を用いた攻撃を治療、阻害、低減、又は予防するための本発明の方法による、遺伝子改変されたHUCPVCの投与から恩恵を被ることができる対象。これらの対象は、例えば、鳥類(例えば、ニワトリ、シチメンチョウ、ガチョウ、アヒル、ライチョウ、ハクチョウ、クジャク、イエバト、ハト、及びキジなどの家禽類)、は虫類(例えば、ヘビ及びトカゲ)、両生類(例えば、カエル及びサンショウウオ)、哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、サル、チンパンジー、類人猿)、有蹄動物(例えば、ウマ、ウシ、ヤギ、ブタ、ヒツジ、ロバ、及びシカ)、イヌ、及びネコなどの脊椎動物を含む。
【0068】
投薬及び投与
本発明は、治療有効量の1つ又は複数のポリペプチド(例えば、抗体、サイトカイン、又はホルモン)又はオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)を発現する、遺伝子改変されたHUCPVCを提供する。遺伝子改変されたHUCPVCは、予防又は治療的処理のための、非経口(例えば、筋肉内、皮下、及び静脈内)、鼻腔内、局所、経口、又は経皮手段などによる局部投与を対象にする。一般に、遺伝子改変されたHUCPVCは、疾患により罹患した領域に非経口(例えば、静脈内、筋肉内、又は皮下注射により)投与又は動脈内注射する。追加の投与経路には、血管内、動脈内、腹腔内、心室内、硬膜内、及び鼻腔、眼部、強膜内、軌道内、直腸、局所、又はエアロゾル吸入投与がある。
【0069】
遺伝子改変されたHUCPVCは、予防又は治療的処理のために投与することができる。予防用途では、遺伝子改変されたHUCPVCを、臨床的に決定された素因又は病原体又は化学的作用物質(例えば、化学的作用物質)による攻撃に対する増大した感受性を有する、対象(例えば、ヒト)に投与する。例えば、遺伝子改変されてブチリルコリンエステラーゼ(BChE)を発現するHUCPVCを、BChE遺伝子に関して劣性ホモ接合である対象(例えば、兵士)に投与して、化学的作用物質による攻撃を治療又は予防することができる。遺伝子改変されたHUCPVCにおいて発現されるBChEポリペプチドは、いくつかの化学的作用物質を代謝することができるからである。
【0070】
遺伝子改変されたHUCPVCは、微生物病原体又は化学的作用物質による攻撃によって引き起こされる臨床疾患の発症を遅延、低減、又は好ましくは予防するのに十分な量、対象(例えば、ヒト)に投与することができる。治療用途では、遺伝子改変されたHUCPVCを、これらの作用物質の症状を治癒する又は少なくとも部分的に抑えるのに十分な量、微生物病原体又は化学的作用物質への曝露による感染に既に罹患している対象(例えば、兵士)に投与する。この目的を果たすのに適したHUCPVCの数を「治療有効用量」として定義する。この使用に有効な量は、疾患又は状態の重度、並びに患者の体重及び一般的状態に依存する可能性がある。本発明の方法により単回又は複数回用量で対象に投与する遺伝子改変されたHUCPVCの合計数は例えば101、102、103、104、105、106、107、108、109個、又はより多くの細胞であってよいが、有効用量はおそらく投与当たり103〜107個の細胞の範囲に存在する。遺伝子改変されたHUCPVCは、単回用量でその必要性がある対象に投与することが好ましい。遺伝子改変されたHUCPVCは、初回用量として、次に1時間、1日、1週間、1カ月、又は2カ月間隔の1回又は複数回の追加投与で施用することもできる。比較的短期間にわたりボーラスとして又は注入のいずれかにより、単回用量として対象に投与する遺伝子改変されたHUCPVCの全有効用量は、複数回用量をより長期間にわたり投与する(例えば、4〜6、8〜12、14〜16、若しくは18〜24時間毎、又は2〜4日毎、1〜2週間毎、月に1回、又は2カ月に1回の投与)分割治療プロトコルを使用して投与することができる。或いは、血液中の治療有効濃度を維持するのに十分な連続的静脈内注入が企図される。
【0071】
本発明の方法により対象(例えば、ヒト)に投与する遺伝子改変されたHUCPVCの治療有効量は、当業者によって決定することができる。考慮することができる要因には、例えば、対象の年齢、体重、条件(例えば、対象が曝されているか又は曝される可能性がある作用物質の型、対象に対する生物学的又は化学的作用物質(例えば、病原体感染又は毒素)の影響の重度)、及び生物学的又は化学的作用物質への曝露のレベルの個々の違いがある。生物学的又は化学的作用物質への曝露は、十分特徴付けられた生理学的マーカーを使用して決定することができる(例えば、参照としてその全容が本明細書に組み込まれる、Black and Nort、Chemical Warfare Agents、第2版(第2版)、John Wiley & Sons、Ltd.、2007中の「化学兵器への曝露の生物学的マーカー(Biological Markers of Exposure to Chemical Warfare Agents)」を参照)。
【0072】
本発明は、対象(例えば、ヒト)への第二の遺伝子改変されたHUCPVC集団の同時投与を提供し、その中で第二のHUCPVC集団は、予防又は治療用途の1つ又は複数の異なるポリペプチド又はオリゴヌクレオチドを発現する。或いは、HUCPVCではない1つ又は複数の間葉系幹細胞(MSC)を投与することができる。この場合、MSCを遺伝子改変して、ポリペプチド又はオリゴヌクレオチドを発現させることが可能である。しかしながら、同時又は同じ方法で、HUCPVC又はMSC集団の両方を投与することは必ずしも必要ではない。いくつかの場合、第二集団の投与は、第一集団の投与期間の終了後すぐに始めることができ、又は逆も同様である。このような2投与期間の間の時間のギャップは、1日から、1週間まで、1カ月以上まで変わる可能性がある。いくつかの場合、2つの遺伝子改変されたHUCPVC集団を最初に同時投与し、続いて後の期間に個々に投与することができる(例えば、特定のウイルスの血清型又は菌株に対して防御性がある1つのモノクローナル抗体を個別に発現する2つ以上のHUCPVC集団の投与)。さらに、HUCPVC集団を修飾して、予防又は治療用途の2つ以上のポリペプチド又はオリゴヌクレオチドを発現させることが可能であり、したがって複数回投与の必要性を除去することが可能である。
【0073】
有効量を含む本発明の組成物の単回又は複数回(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20又はそれより多くの)投与は、治療する臨床医(例えば、医師又は獣医師)によって選択される用量レベル及びパターンで実施することができる。投薬及び投与スケジュールは、感染性微生物又は化学的作用物質への曝露の重度又は可能性に基づいて決定及び調節することができる。さらに、遺伝子改変されたHUCPVCを投与した対象(例えば、哺乳動物、ヒト(例えば、兵士)など)は、臨床医によって一般に実施される方法又は本明細書に記載する方法によって、治療の経過を通じてモニターすることができる。
【0074】
1つ又は複数の生理的に許容される賦形剤又は担体を、適切な製剤用の組成物中に含めることもできる。本発明中で使用するのに適した製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Philadelphia、PA、第17版、1985中に見られる。薬剤送達のための方法の簡単な総説に関しては、Langer、Science249:1527〜1533、1990を参照。
【0075】
他の治療レジメン
本発明は、遺伝子改変されたHUCPVCと組み合わせた1つ又は複数の治療剤(例えば、抗ウイルス化合物などの抗菌剤)の同時投与を提供する。例えば、追加の治療剤を、このような治療剤に有効であることが知られている濃度で、本明細書に記載する遺伝子改変されたHUCPVCと共に投与することができる。特に有用な治療剤には、例えば、サイトカイン、抗ウイルス剤、免疫促進剤、免疫抑制剤、及び予防接種ワクチンがある。
【0076】
いくつかの場合、遺伝子改変されたHUCPVC及び追加の治療剤を、少なくとも1時間、2時間、4時間、6時間、10時間、12時間、18時間、24時間、3日間、7日間、14日間、又は1カ月間隔で投与する。それぞれの成分の用量及び投与の頻度は独立に調節することができる。本明細書に記載する追加の治療剤は、例えば、従来の薬学的に許容される担体中で追加の活性又は不活性成分と混合することができる。医薬担体は、対象への本発明の組成物の投与に適した、任意の適合性がある、非毒性の物質であってよい。薬学的に許容される担体には、例えば、水、生理食塩水、バッファー、及び例えばMerck Index、Merck & Co.、Rahway、New Jersey中に記載された他の化合物がある。徐放製剤又は徐放装置も連続投与に使用することができる。追加の治療レジメンは、治療する対象のライフスタイルの変更を含めた、他の療法を含むことができる。
【0077】
サイトカイン
サイトカインは追加の治療剤として、又は遺伝子改変されたHUCPVCとの組み合わせのいずれかで使用することができる。例示的なサイトカインは、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、G−CSF、IL−15、GM−CSF、OSM、LIF、IFN−γ、IFN−α、IFN−β、TNF−α、TNF−β、LT−β、IL−8、MCP−1、MIP−α、MIP−β、RANTES、TGF−β、IL−1α、IL−1β、IL−lRA、及びMIFである。
【0078】
抗ウイルス剤
遺伝子改変されたHUCPVCとの組み合わせ、又は個別投与のいずれかで、抗ウイルス剤を追加の治療剤として使用することができる。例示的な抗ウイルス剤は、アバカビル、アシクロビル、アシクロビル、アデフォビル、アマンタジン、アンプレナビル、アルビドール、アタザナビル、アトリプラ、ブリブジン、シドフォビル、コンビビル、ダルナビル、デラビルジン、ジダノシン、ドコサノール、エドクスジン、エファビレンツ、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカビル、侵入阻害剤、ファムシクロビル、多剤混合薬、フォミビルセン、フォサムプレナビル、フォスカルネット、フォスフォネット、融合阻害剤、ガンシクロビル、ガルダシル、イバシタビン、イムノビル、イドクスリジン、イミクイモド、インジナビル、イノシン、インテグラーゼ阻害剤、インターフェロンIII型、インターフェロンII型、インターフェロンI型、インターフェロン、ラミブジン、ロピナビル、ロビリド、MK−0518、マラビロック、モロキシジン、ネルフィナビル、ネビラピン、ネクサバール、ヌクレオシド類似体、オセルタミビル、ペンシクロビル、ペラミビル、プレコナリル、ポドフィロトキシン、プロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、リバビリン、リマンタジン、リトナビル、サクイナビル、スタブジン、相乗作用促進剤、テノフォビル、テノフォビルジソプロキシル、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、ツルバダ、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ビクリビロック、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル、及びジドブジンである。例示的な抗ウイルス剤は、例えば参照として本明細書に組み込まれる、米国特許第6,093,550号及び米国特許第6,894,033号中に挙げられている。
【0079】
免疫促進剤
本発明の組成物を免疫促進剤又はアジュバントと同時投与する場合、医薬組成物の免疫原性を有意に改善することが可能である。例示的な免疫促進剤には、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、QS21、Quil A(並びにその誘導体及び相補体)、リン酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、糖脂質類似体、アミノ酸のオクトデシルエステル、ムラミルジペプチド、ポリホスファゼン、リポタンパク質、ISCOMマトリクス、DC−Chol、DDA、サイトカイン、並びに他のそれらのアジュバント及び誘導体がある。免疫系の細胞を刺激又は同時刺激することができる他の分子には、CD40L(CD154)、FasL、CD27L、CD30L、4−1BBL、CD28、CD25、B7.1、B7.2、及びOX40Lがある。
【0080】
免疫抑制剤
治療する個体の免疫系を抑制して、例えば、感染と関係がある免疫病(例えば、デング出血熱症候群)を予防すること、又は毒素への曝露と関係がある炎症を低減することは望ましい可能性がある。免疫抑制剤を使用して、宿主による投与したHUCPVCの拒絶を減らし、それによってin vivoでのこれらの細胞の寿命を増大することも可能である。例示的な免疫抑制剤には、アベチムス、デフォロリムス、エベロリムス、グスペリムス、ピメクロリムス、シロリムス、タクロリムス、テミシロリムス、アナキンラ、アザチオプリン、シクロスポリン、レフルノミド、メトトレキセート、マイコフェノール酸、及びサリドマイドがある。TNF阻害剤(例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリツマブペゴール)、アレムツズマブ、アフェリモマブ、アセリズマブ、アトリズマブ、アトロリムマブ、バシリキシマブ、ベリムマブ、ベルチリムマブ、セデリズマブ、クレノリキシマブ、ダクリズマブ、ドルリモマブアリトックス、ドルリキシズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、エルシリモマブ、エルリズマブ、ファラリモマブ、フォントリズマブ、ガリキシマブ、ガンテネルマブ、ガビリモマブ、ゴリムマブ、ゴミリキシマブ、イバリズマブ、イノリモマブ、イピリムマブ、ケリキシマブ、レブリリズマブ、レルデリムマブ、ルミリキシマブ、マスリモマブ、メポリズマブ、メテリムマブ、モロリムマブ、ムロモナブ−CD3、ナタリズマブ、ネレリモマブ、オクレリズマブ、オズリモマブ、オマリズマブ、オテリキシズマブ、パスコリズマブ、ペキセリズマブ、リツキスマブ、レスリズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、シプリズマブ、タリズマブ、テリモマブアリトックス、テネリキシマブ、テプリズマブ、トシリズマブ、トラリズマブ、バパリキシマブ、ベパリモマブ、ビシリズマブ、ザノリムマブ、ジラリムマブ、及びゾリモマブアリトックスを含めた、免疫抑制を引き起こす多くのモノクローナル抗体も当技術分野で知られている。
【実施例】
【0081】
以下の実施例は本発明を例示するためのものである。これらは決して本発明を限定することを意味しない。
【0082】
(例1)
ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)E2抗原に対するヒト化モノクローナル抗体を発現するHUCPVC。
生物学的兵器作用物質としてのVEEVの歴史
全3個のウマ脳炎熱ウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、西部ウマ脳炎ウイルス(WEE)、及び東部ウマ脳炎ウイルス(EEE)は、潜在的な生物学的兵器作用物質である。ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)は、その感染力(わずか10〜100ビリオンが人間に感染するのに必要とされる)及び身体機能を奪う作用物質としての有効性のため、兵器において使用するのに特に魅力的な作用物質である。VEEV感染が致命的であることは希であるが、インフルエンザと類似した重症を引き起こし、したがって診断するのが困難である可能性がある。脳炎熱は、脳の炎症及び神経系障害などの長期の副作用を引き起こす。VEEVを使用した考えられる生物攻撃は噴霧経路によるものであろうが、VEEVはアルボウイルスであるので蚊が最も活発である期間中に最も有効であろう。VEEVは安定した液状又は乾燥形で散布することも可能である。
【0083】
米国が兵器化したVEEVは、その生物兵器プログラムの終了前は攻撃的な身体機能を奪う作用物質であった。ソビエト連邦も身体機能を奪う作用物質としてVEEVを兵器化した。ソビエトの科学者は、天然痘ウイルスへのVEEVゲノムのスプライシングも実験した。その結果は、顕微鏡下では天然痘ウイルスに類似しているがその宿主中で異なる症状をもたらす組換え天然痘−VEEキメラウイルスであった。1959年、VEEVを含有する凍結乾燥バイアルがソビエトの医療関係者によって偶然落下し、20人の研究スタッフが感染状態になった。この研究室の事故及び他のVEEVの自然に起こった大発生は、噴霧VEEVの感染性を実証する。
【0084】
遺伝子ペイロード:ヒト化抗E2/VEEV抗体
1A4A1のヒトIgG1重鎖定常領域及び単鎖断片可変抗体をコードした、組換え遺伝子融合体(pRSmA116huFc)を生成した(Huら、「ベネズエラウマ脳炎ウイルスに対するネズミモノクローナル抗体のヒト化及び哺乳動物における発現(Humanization and mammalian expression of a murine monoclonal antibody against Venezuelan equine encephalitis virus)」Vaccine25:3210〜3214(2007))。ネズミモノクローナル抗体1A4A1は、VEEVのエンベロープ糖タンパク質E2の保存された中和エピトープを認識することが示されている(Roehrigら、「ベネズエラウマ脳脊髄炎(TC085)ウイルスのE2糖タンパク質上の中和部位は、多数の立体配座が安定したエピトープで構成される(The neutralizing site on the E2 glycoprotein of Venezuelan equine encephalomyelitis (TC085) virus is composed of multiple conformationally stable epitopes)」Virology142:347〜356(1985))。この遺伝子融合体を、アデノ随伴ウイルス(AAV)の転写制御の下に置いて、ヒト細胞中で高レベルの構成的発現を誘導した。
【0085】
In Vitroでの抗E2VEEV組換え抗体産生の評価
HUCPVCを培養し(例えば、Ennisら(2008)を参照)、pAAV−RsmA116huFcを形質導入してモノクローナル抗体1A4A1の発現を可能にする。さらなる実験(例えば、ELISA)によって遺伝子改変されたHUCPVCが産生することができる組換え抗体の量を確認し、この発現の長さを記載する。さらに、結合試験を実施して、組換え抗体の生物活性及びVEEVビリオンを中和するそれらの能力を確認する。
【0086】
In Vivoでの抗体産生、薬物動態及び有効性
生物活性がある抗VEEV抗体を分泌することが示されている安定したHUCPVCトランスフェクタントを、静脈内、筋肉内、又は皮下投与によってマウスに導入する。免疫正常マウスを使用する。骨髄基質由来の生物学的に類似した細胞はin vivoで異種として使用するとき拒絶されず(Plotnikovら、「異種移植成体ヒト間葉系幹細胞は、イヌの心臓中で持続性生物学的ペースメーカー機能の基盤となる(Xenografted adult human mesenchymal stem cells provide a platform for sustained biological pacemaker function in canine heart)」Circulation116:706〜713(2007))、ラット中でのHUCPVCを用いた準備作業は拒絶を示さないからである(非公開データ)。一連の血清サンプルを抗VEEV抗体の量、質、及び寿命に関して評価する。
【0087】
病原体の攻撃の実験
抗VEEVMAbの治療レベルを治療したマウスにおいて確認した後、マウスを鼻腔内VEEV攻撃で攻撃して、標準的な方法を使用して発現したMAbの予防効果を測定する。
【0088】
(例2)
エボラウイルス糖タンパク質(GP)を発現して防御免疫応答を刺激するHUCPVC。
遺伝子ペイロード:エボラウイルス(ザイール菌株)の糖タンパク質
ザイールエボラウイルス菌株メインガ(ZEBOV)の糖タンパク質(GP)を発現するrVSVベクターを作製する(例えば、Garbuttら、J Virol.78:5458〜65、2004、及びJonesら、Nat Med11:786〜90、2005を参照)。具体的には、バクテリオファージT7プロモーター配列、VSVリーダー配列、肝炎ウイルスデルタウイルスリボザイム配列、及びT7ターミネーター配列と隣接する、5つのVSV遺伝子(核タンパク質(N)、リンタンパク質(P)、マトリクスタンパク質(M)、糖タンパク質(G)、及びポリメラーゼ(L))を含有するプラスミドを利用する。G遺伝子とL遺伝子の間には、発現されるエボラウイルス糖タンパク質用の転写開始及び停止シグナルと隣接する、特有のリンカー部位(Xho−NheI)が存在する。培養したHUCPVCに、様々な感染多重度でpVSV/エボラGPベクターを形質導入する。
【0089】
In Vitroでの糖タンパク質産生及び抗原性の評価
形質導入したHUCPVCを、ELISA、ウエスタンブロット、ドットブロット、又は免疫沈降などの、標準的なイムノブロッティング分析を使用してエボラGPの発現に関して試験する。
【0090】
混合リンパ球反応、リンパ球増殖アッセイ、及び細胞毒性アッセイ(例えば、クロム遊離又はIFN−ガンマELISPOT)を使用して、培養中のリンパ球を刺激するために使用したときの、発現したエボラGPの抗原性を決定する。
【0091】
In Vivoでの糖タンパク質の産生、薬物動態及び有効性
in vitroでのGP発現及び抗原性の確認によって、培養したHUCPVCをマウスに静脈内及び腹腔内投与して抗GP免疫を初回抗原刺激する。免疫処置後1週間間隔で、マウスを屠殺し、脾臓及びリンパ節(例えば、液窩、鼠径、及び上腕)を採取する。前に記載したリンパ球増殖及び細胞毒性アッセイを使用して、適応的抗GP免疫応答(例えば、T細胞及び中和抗体)の幅及び有効性を決定する。
【0092】
(例3)
インターフェロンを発現して多くの異なるウイルスに対する広範囲の防御をもたらすHUCPVC。
患者(例えば、兵士)に投与するHUCPVC中でのインターフェロンの組換え発現は、多くの異なるウイルス(例えば、出血熱ウイルス)に対する広範囲の防御をもたらすことができる。遺伝子改変されたHUCPVCによって産生されるインターフェロン(IFN)は、病原性ウイルスに曝された又は感染した患者によって予防的又は治療的に使用され得る。治療剤として投与するとき、IFNは短いin vivo半減期を示す。1つ又は複数のIFN(例えば、IFN−α)を発現させるための遺伝子改変されたHUCPVCの投与は、IFNの持続放出及び送達をもたらすことによってこの欠点を克服する。IFNの標準的な臨床投与は、IFNの迅速な消失動態のために頻繁な注射又は修飾(例えば、ペグ化)を必要とする。この実施例では、遺伝子改変されたHUCPVCを使用してIFN−αを提供することにより、この問題を克服する。
【0093】
遺伝子ペイロード:インターフェロンα(IFN−α)
インターフェロン−αをコードするレトロウイルスベクター(例えば、レンチウイルス)をHUCPVCに形質導入する。HUCPVC染色体中へのプロウイルスDNAの組み込みによって、構成的活性プロモーター(例えば、CMVプロモーター)を使用してIFN−αの発現及び分泌を誘導する。
【0094】
In VitroでのIFN−α産生の評価
形質導入したHUCPVCを、ELISA、ウエスタンブロット、ドットブロット、又は免疫沈降などの、標準的なイムノブロッティング分析を使用してIFN−αの発現に関して試験する。IFN−αの活性は、Foserら、「モノペグ化インターフェロン−α−2a異性体の改善された生物及び転写活性(Improved biological and transcriptional activity of monopegylated interferon−alpha−2a isomers)」、The Pharmacogenomics Jour.3:312〜319(2003)によって記載されたのと同様の抗増殖アッセイによって確認する。
【0095】
In VivoでのIFN−αの産生、薬物動態及び有効性
in vitroでのIFN−αの発現及び活性の確認によって、培養したHUCPVCをマウスに静脈内又は腹腔内投与する。予防効果の試験のため、ウイルス(例えば、LCMV)とのHUCPVC投与後1週間マウスを攻撃する。さらに、数匹のマウスに、遺伝子改変されたHUCPVCの投与前に1週間ウイルス(例えば、LCMV)を感染させて、これらの細胞の治療可能性を評価する。血清サンプルから導かれるウイルス力価は実験の経過中に計算し、HUCPVC/IFN−α治療を与えなかったマウスに対してプロットしてin vivoでの有効性を決定する。
【0096】
他の実施形態
本発明をその具体的な実施形態に関して記載してきたが、さらなる変更形態が可能であり、本出願は、一般に本発明の原理に従い、本発明が属する技術分野内の既知又は慣例の範囲内にある本開示から逸脱するようなものを含めた、本発明の任意の変形、使用、又は適用を包含することを目的とし、本明細書中で前に述べた必要な特徴に適合させることが可能であることは理解されよう。
【0097】
本明細書中で言及する全ての刊行物及び特許出願は、それぞれ独立した刊行物又は特許出願が参照としてそれらの全容が本明細書に組み込まれることが具体的且つ個別に示される場合と同じ程度で、参照として本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子改変されたヒト臍帯血管周囲細胞を投与することによって、対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物)中で生物学的又は化学的作用物質によって引き起こされる疾患又は障害を予防又は治療する方法を提供する。このような方法で有用な遺伝子改変されたヒト臍帯血管周囲細胞、及びそれらを含む医薬組成物も提供する。
【背景技術】
【0002】
臨床的価値がある治療用タンパク質用の組換えタンパク質の製造は、バイオテクノロジー産業の多大な技術的及び商業的成功となっている。モノクローナル抗体(MAb)は2006年には206億ドルの世界的販売があり、最も急速に拡大している製薬部門である。米国のモノクローナル抗体を販売するトップの6つはリツキサン(登録商標)のみで年に10億ドルを超える販売が1年間であり、トップは47億ドルの販売がある。
【0003】
国家の防衛のためのモノクローナル抗体の利用は、生物兵器による惨事(及び、感染性疾患、例えばSARSの大規模な蔓延)の治療を命じられた機関にとって強い関心の的である。軍事及び民間研究プログラムはいくつかの治療用モノクローナル抗体を同定しており、いくつかの例では、生物兵器の医学的対策としてこれらを開発するプロセスが始まっている。
【0004】
モノクローナル抗体を最重要対策として配備する場合、2つの問題:高い薬剤コストと厄介な送達系に対処しなければならない。「生物製剤」を製造するコストは高い。モノクローナル抗体のような組換えタンパク質は、大規模なcGMP製造及び真核生物/原核生物発酵系、次に最終的な多量の薬理活性原末の下流精製及び精錬を含むコストがかかるプロセスによって産生される。第二に、注射によるモノクローナル抗体及び他のタンパク質ベースの薬剤の送達は治療上の障壁となっている。従来の注射又は注入によるモノクローナル抗体の大規模な使用は、戦場での生物兵器による攻撃又はテロリストのシナリオの時間的及び人材的制約内では実用的ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、遺伝子改変されていないヒト臍帯血管周囲細胞(HUCPVC)と比較してHUCPVC中でのオリゴヌクレオチド又はポリペプチドの発現が増大するように遺伝子改変されたHUCPVCを投与することによって、生物学的又は化学的作用物質からの攻撃に対して対象を保護するための方法を提供する。本発明の別の態様では、このような方法で有用な遺伝子改変されたHUCPVC、及びこのような遺伝子改変された細胞を含む医薬組成物も提供する。対象は、哺乳動物(例えば、ヒト)などの脊椎動物であってよい。HUCPVCは、それを投与する対象にとって同種異系又は異種であってよい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態では、遺伝子改変されたHUCPVCを対象に投与して生物学的作用物質からの攻撃に対して保護する。生物学的作用物質は、細菌、ウイルス、真菌、又は寄生虫などの病原体であってよい。細菌は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、大腸菌(Escherichia coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、ブルセラ菌(Bruscella)、鼻疽菌(Burkholderia mallei)、ペスト菌(Yersinia pestis)、又は炭疽菌(Bacillus anthracis)であってよい。ウイルスは、ギャドゲッツガリーウイルス(Gadgets Gully virus)、カダムウイルス(Kadam virus)、キャサヌール森林病ウイルス、ランガットウイルス、オムスク出血熱ウイルス、ポワッサンウイルス、ロイヤルファームウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、跳躍病ウイルス、ミーバンウイルス(Meaban virus)、サウマレズリーフウイルス(Saumarez Reef virus)、チュレニーウイルス(Tyuleniy virus)、アロアウイルス、デングウイルス、ケドウゴウウイルス(Kedougou virus)、カシパコアウイルス(Cacipacore virus)、コウタンゴウイルス(Koutango virus)、日本脳炎ウイルス、マーレーバレー脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、ウスツウイルス、西ナイルウイルス、ヤオンデウイルス、ココベラウイルス、バガザウイルス、イレウスウイルス、イスラエルターキー髄膜脳脊髄炎ウイルス、ウンタヤウイルス、テンバスウイルス、ジカウイルス、バンジウイルス、ボウボウイウイルス(Bouboui virus)、エッジヒルウイルス、ジュグラウイルス、サボヤウイルス、セピックウイルス、ウガンダSウイルス、ウェセルスブロンウイルス、黄熱病ウイルス、エンテベコウモリウイルス、ヨコセウイルス、アポイウイルス、カウボンリッジウイルス(Cowbone Ridge virus)、フティアパウイルス、モドックウイルス、サルビージャウイルス(Sal Vieja virus)、サンペルリタウイルス、ブカラサコウモリウイルス、カーレー島ウイルス、ダカーコウモリウイルス、モンタナミオチス白質脳炎ウイルス、プノンペンコウモリウイルス、及びリオブラボーウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、東部ウマ脳炎ウイルス(EEE)、西部ウマ脳炎ウイルス(WEE)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、天然痘ウイルス、ワクシニアウイルス、ラッサウイルス、アイピーウイルス(Ippy virus)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、モバラウイルス(Mobala virus)、モペイアウイルス、アマパリウイルス、フレクサルウイルス(Flexal virus)、グアナリトウイルス、フニンウイルス、ラチノウイルス、マチュポウイルス、オリベロスウイルス(Oliveros virus)、パラナウイルス、ピキンデウイルス、ピリタルウイルス(Pirital virus)、サビアウイルス、タカリベウイルス、タミアミウイルス、及びホワイトウォーターアロヨウイルス、シンノンブレウイルス、ハンターンウイルス、リフトバレー熱ウイルス、クリミアコンゴ出血熱ウイルス、ドゥグベウイルス(Dugbe virus)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)、インフルエンザウイルスA、H5N1鳥インフルエンザウイルス、インフルエンザウイルスB、インフルエンザウイルスC、重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルス、狂犬病ウイルス、又は水泡性口内炎ウイルス(VSV)であってよい。真菌は、アスペルギルス(Aspergillus)、ブラストミセスデルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、カンジダ(Candida)、コクシジオイデスイミティス(Coccidioides immitis)、クリプトコッカスネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラズマカプスラーツム変種カプスラーツム(Histoplasma capsulatum var.capsulatum)、パラコクシジオイデスブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)、スポロトリクスシェンキイ(Sporothrix schenckii)、接合菌網種(Zygomycetes spp.)、アブシディアコリンビフェラ(Absidia corymbifera)、リゾムコールプシラス(Rhizomucor pusillus)、又はリゾプスアルヒザス(Rhizopus arrhizus)であってよい。寄生虫は、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)、卵形マラリア原虫(P.ovale)、四日熱マラリア原虫(P.malariae)、トリパノソーマ種(Trypanosoma spp.)、又はレジオネラ種(Legionella spp.)であってよい。
【0007】
本発明の別の実施形態では、遺伝子改変されたHUCPVCを対象に投与して化学的作用物質からの攻撃に対して保護する。化学的作用物質は、リシン、ジフテリア毒素、大腸菌(E.coli)腸毒素、コレラ菌(Vibrio cholerae)腸毒素、ブドウ球菌(Staphylococcal)腸毒素、連鎖球菌(Streptococcal)腸毒素、又はボツリヌス毒素などの、細菌、ウイルス、真菌、又は寄生虫の毒素であってよい。化学的作用物質は合成又は天然由来であってよい。化学的作用物質は、神経剤、発疱剤、血液剤、又は呼吸器作用物質であってよい。化学的作用物質は、ナイトロジェンマスタード、硫黄マスタード、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、又はルイサイトであってよい。化学的作用物質は、サキシトキシン、ビス(2−クロロエチル)エチルアミン、2−クロロビニルジクロロアルシン、2−クロロエチルクロロメチルスルフィド、ビス(2−クロロエチル)スルフィド、サリン(GB)、シクロサリン(GF)、ソマン(GD)、タブン(GA)、VX、アミトン、PFIB、3−キヌクリジニルベンジレート、ホスゲン、ジホスゲン、塩化シアン、シアン化水素、又はクロロピクリンであってよい。
【0008】
本発明の他の実施形態では、HUCPVCを遺伝子改変して、抗体、抗体断片、微生物抗原、サイトカイン又は増殖因子、ホルモン、凝固因子、薬剤耐性又は抗ウイルス耐性ポリペプチド、抗毒素薬、抗酸化剤、受容体又はリガンド、免疫調節因子、検出可能な標識、又は細胞性因子などのポリペプチドを発現させる。ポリペプチドはHUCPVCにとって内因性又は非内因性であり得る。さらに他の実施形態では、HUCPVCを遺伝子改変して、2つ以上のポリペプチドを発現させることが可能である。さらに他の実施形態では、HUCPVCは抗体又は抗体断片を合成及び分泌することができ、抗体又は抗体断片は組換えでもよく、ヒト化されていてもよく、又はモノクローナルでもよい。抗体又は抗体断片は、単鎖抗体(scFv)、Fab、Fab’2、scFv、SMIP、ダイアボディ、ナノボディ、アプタマー、又はドメイン抗体であってよい。さらに他の実施形態では、サイトカイン又は増殖因子は、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、TNF−β、インターフェロン−α(IFN−α)、IFN−β、IFN−γ、インターロイキン1(IL−1)、IL−1β、インターロイキン2〜14、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、RANTES、MIP−1α)、形質転換増殖因子−β(TGF−β)、血小板由来増殖因子(PGDF)、インスリン様増殖因子(IGF)、表皮増殖因子(EGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、エリスロポエチン(EPO)、又はトロンボポエチン(TPO)であってよい。ホルモンは、アンギオテンシノゲン、アンギオテンシン、副甲状腺ホルモン(PTH)、塩基性線維芽細胞増殖因子−2、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、バソプレシン、オキシトシン、ソマトスタチン、ガストリン、コレシストキニン、レプチン、心房性ナトリウム利尿ペプチド、エピネフリン、ノルエフィネフリン、ドーパミン、カルシトニン、又はインスリンであってよい。凝固因子は、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、又はフィブリノゲンであってよい。酵素は、ブチリルコリンエステラーゼ(BChE)、アデノシンデアミナーゼ、グルコセレブロシダーゼ、α−1アンチトリプシン、ウイルスチミジンキナーゼ、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ、マンガンスーパーオキシドジスムターゼ(Mn−SOD)、カタラーゼ、銅−亜鉛−スーパーオキシドジスムターゼ(CuZn−SOD)、細胞外スーパーオキシドジスムターゼ(EC−SOD)、グルタチオンリダクターゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、一酸化窒素合成酵素、又はパラオキシナーゼであってよい。受容体又はリガンドは、T細胞受容体(TCR)、LDL受容体、表面結合免疫グロブリン、可溶性CD4、嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス受容体(CFTR)、又はFc受容体であってよい。免疫調節因子は、CTLA−4、VCP、PLIF、LSF−1、Nip、CD200、ウロモジュリン、CD40L(CD154)、FasL、CD27L、CD30L、4−1BBL、CD28、CD25、B7.1、B7.2、又はOX40Lであってよい。検出可能な標識は緑色蛍光タンパク質(GFP)であってよい。細胞性因子はシトクロムb、ApoE、ApoC、ApoAI、MDR、組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、ヒルジン、β−グロブリン、α−グロブリン、HbA、ras、src、又はbclであってよい。ポリペプチドは、抗原として作用し、それによって対象中で生物学的又は化学的作用物質に対する免疫応答を発生させる細胞タンパク質であってよい。
【0009】
本発明のさらに他の実施形態では、HUCPVCを遺伝子改変して、オリゴヌクレオチド、例えば、ウイルス複製又は感染を阻害することができるRNA干渉(RNAi)分子を発現させる。RNAi分子は、低分子阻害型RNA(siRNA)又はショートヘアピン型RNA(shRNA)分子であってよい。オリゴヌクレオチドはHUCPVCにとって内因性又は非内因性であり得る。他の実施形態では、HUCPVCを遺伝子改変して、2つ以上のオリゴヌクレオチドを発現させることが可能である。
【0010】
本発明の別の実施形態では、本発明の遺伝子改変されたHUCPVCの投与前に、対象は生物学的又は化学的作用物質に曝されている。対象には単回用量のHUCPVC又は複数回用量のHUCPVCを投与することができる。HUCPVCをワクチンとして投与して、その必要性がある対象を保護することができる。HUCPVCは、対象に静脈内、筋肉内、経口、吸入、非経口、腹腔内、動脈内、経皮、舌下、鼻腔、頬側、リポソーム、脂肪、眼部、眼球内、皮下、くも膜下、局所、又は局部投与することができる。42.対象には、投与当たり101〜1013個のHUCPVC、又は投与当たり103〜108個のHUCPVCを投与することができる。
【0011】
本発明の他の実施形態では、対象に投与する遺伝子改変されたHUCPVCは、1週間、1カ月、又は2カ月を超えて存続する。HUCPVCは対象中での免疫認識を回避することができる。
【0012】
本発明のさらに他の実施形態では、遺伝子改変されたHUCPVCを、HUCPVCではない少なくとも1つの間葉系幹細胞(MSC)と組み合わせて投与する。MSCを遺伝子改変して、遺伝子改変されていないMSCと比較してMSC中でのオリゴヌクレオチド又はポリペプチドの発現を増大することができる。MSCは骨髄、臍帯血、胚卵黄嚢、胎盤、皮膚、又は血液から単離することができる。MSCを遺伝子改変して、HUCPVCにとって内因性又は非内因性であるオリゴヌクレオチド又はポリペプチドを発現させることが可能である。
【0013】
本発明の別の実施形態では、遺伝子改変されたHUCPVCを、HUCPVC治療の予防的又は治療的効果を増強又は延長する1つ又は複数の治療剤と組み合わせて対象に投与することができる。治療剤は、例えばサイトカイン、抗ウイルス剤、免疫促進剤、又は免疫抑制剤であってよい。
【0014】
本発明のさらに別の実施形態では、遺伝子改変されたHUCPVCを、薬学的に許容される担体又は賦形剤と共に投与する。
【0015】
本発明の別の実施形態では、遺伝子改変されたHUCPVCを、生物学的又は化学的作用物質の治療又はそれらからの保護の必要がある対象に投与するためのキット中に提供する。
【0016】
一般に本発明は、対象中で生物学的又は化学的作用物質によって引き起こされる疾患又は障害の予防又は治療用の医薬品を調製するための、遺伝子改変されたHUCPVCの使用を提供する。
【0017】
定義
本明細書で交互に使用する用語「抗体」は、完全抗体又は免疫グロブリン及び任意の抗原結合断片又はその単鎖を含む。本明細書で使用する抗体は、哺乳動物(例えば、ヒト又はマウス)、ヒト化、キメラ、組換えであってよく、合成的に産生、又は天然に単離することができる。本発明の抗体は、全ての知られている型の抗体及び抗体様の性質を有する他のタンパク質骨格を含む。例えば抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体、キメラ抗体、又はフィブロネクチン又はアンキリンリピートなどの抗体様の性質を有するタンパク質骨格であってよい。抗体は、Fab、Fab’2、scFv、SMIP、ダイアボディ、ナノボディ、アプタマー、又はドメイン抗体であってもよい。抗体は、以下のアイソタイプ:IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4)、IgM、IgA(例えば、IgA1、IgA2、及びIgAsec)、IgD、又はIgEのいずれかを有することができる。
【0018】
本明細書で使用する用語「抗体断片」は、抗原と特異的に結合する能力を保持する1つ又は複数の抗体の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって実施され得る。用語抗体の「抗原結合部分」内に包含される結合断片の例には、(i)Fab断片、VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなる一価断片、(ii)F(ab’)2断片、ヒンジ領域においてジスルフィド架橋により連結した2つのFab断片を含む二価断片、(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単鎖アームのVL及びVHドメインからなるFv断片、(v)VH及びVLドメインを含むdAb、(vi)dAb断片(Wardら、Nature341:544〜546(1989))、これはVHドメインからなる、(vii)VH又はVLドメインからなるdAb、(viii)単離された相補性決定領域(CDR)、及び(ix)場合によっては合成リンカーにより連結することが可能である2つ以上の単離されたCDRの組み合わせがあるが、これらだけには限られない。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VL及びVHは別個の遺伝子によってコードされるが、それらは組換え法を使用して、その中でVL領域とVH領域が対になり一価分子を形成する一本のタンパク質鎖としてそれらを生成することが可能である合成リンカーによって、連結することが可能である(単鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Birdら、Science242:423〜426(1988)及びHustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:5879〜5883(1988)を参照)。
【0019】
用語「有効量」又は「のに有効な量」又は「治療有効量」は、望ましい結果、例えば細菌又はウイルス感染の予防又は治療、血液凝固の低減、又は毒(例えば、ヘビ毒)の作用の減弱をもたらすのに十分な遺伝子改変されたHUCPVCの量を意味する。
【0020】
「遺伝子改変されたHUCPVC」とは、少なくとも1つのポリペプチド(例えば、抗体、サイトカイン、又はホルモン)又はオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)を組換えで発現し、ヒト(例えば、兵士)に投与したとき、病原微生物又は化学的作用物質(例えば、毒素)によって引き起こされる疾患又は障害を予防又は治療することができる、ヒト臍帯血管周囲細胞を意味する。このポリペプチド又はオリゴヌクレオチドは、HUCPVCへのポリペプチド又はオリゴヌクレオチドの遺伝子配列の導入(例えば、トランスフェクション又は形質導入)後、HUCPVCによって組換え産生される。
【0021】
本明細書で使用する用語「ヒト抗体」は、例えばKabatら、(「免疫学的に興味深いタンパク質の配列(Sequences of proteins of Immunological Interest)」、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91〜3242(1991))によって記載されたように、フレームワーク領域とCDR領域の両方がヒト生殖系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する、抗体、又はその断片を含むものとする。さらに、抗体が定常領域を含有する場合、その定常領域もヒト生殖系列の免疫グロブリン配列に由来する。ヒト抗体は、ヒト生殖系列の免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroでランダム又は部位特異的突然変異によって又はin vivoで体細胞突然変異によって導入された突然変異)を含む可能性がある。しかしながら、本明細書で使用する用語「ヒト抗体」は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列由来のCDR配列が、ヒトフレームワーク配列に移植されている抗体(即ち、ヒト化抗体又は抗体断片)は含まないものとする。
【0022】
用語「ヒト化抗体」は、ヒト免疫グロブリン又は抗体に実質的に由来する可変フレームワーク領域及び非ヒト免疫グロブリン又は抗体に実質的に由来する相補性決定領域(例えば、少なくとも1つのCDR)を含む可変領域を有する少なくとも1つの免疫グロブリンドメインを含む、任意の抗体又は抗体断片を指す。
【0023】
「インターフェロン」とは、哺乳動物(例えばヒト)のインターフェロン−α、−β、−γ、又は−tauポリペプチド、又はその生物活性断片、例えば、IFN−α(例えば、IFN−α−1a;例えば、参照として本明細書に組み込まれる米国特許出願第2007/0274950号を参照)、IFN−α−1b、IFN−α−2a(参照として本明細書に組み込まれる、PCT出願第WO07/044083号を参照)、及びIFN−α−2b)、IFN−β(例えば、参照として本明細書に組み込まれる米国特許第7,238,344号中に記載された;参照として本明細書に組み込まれる米国特許第6,962,978号中に記載されたIFN−b−1a(AVONEX(登録商標)及びREBIF(登録商標))、及びIFN−β−1b(BETASERON(登録商標)、参照として本明細書に組み込まれる、米国特許第4,588,585号、米国特許第4,959,314号、米国特許第4,737,462号、及び米国特許第4,450,103号中に記載された)、IFN−g、及びIFN−t(参照として本明細書に組み込まれる、米国特許第5,738,845号及び米国特許出願公開第2004/0247565号及び2007/0243163号中に記載された)を意味する。
【0024】
「薬学的に許容される担体」とは、それと共に投与する遺伝子改変されたHUCPVCの治療性を保持しながら、治療する対象(例えばヒト)に対して生理的に許容される担体を意味する。1つの例示的な薬学的に許容される担体は生理食塩水である。他の生理的に許容される担体及びそれらの製剤は当業者に知られており、例えば、参照として本明細書に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences、(第18版)、A.Gennaro編、1990、Mack Publishing Company、Easton、PA中に記載される。
【0025】
「治療」とは、疾患又は障害(例えば、病原微生物又は毒素によって引き起こされる感染疾患)の進行又は重度、又は対象(例えばヒト)における疾患又は障害の1つ又は複数の症状の進行、重度、若しくは頻度の低下(例えば、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、又はさらに100%)を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、遺伝子改変されたヒト臍帯血管周囲細胞(HUCPVC)、それらを含む医学上有用な組成物、及び脊椎動物、例えばヒトなどの哺乳動物中での、例えば、生物学的作用物質(例えば、細菌、ウイルス、真菌、及び寄生虫などの病原体による感染)又は化学的作用物質(例えば、生物学的又は化学的(例えば、合成)毒素)による攻撃を阻害、低減、予防、又は治療するためのそれらの投与を提供する。さらに、遺伝子改変されたHUCPVCを、生物又は化学兵器中で使用される毒素を含めた、それぞれ病原体又は生物学的若しくは化学的毒素に曝される可能性があるか又は曝されている哺乳動物に、予防的又は治療的に投与することができる。本発明の方法は、患者、例えば、生物又は化学兵器への曝露のリスクが高い、軍事関係者(例えば、兵士)、医療関係者(例えば、医師又は看護士)、又は文官の予防又は治療に特に適している。さらに本発明は、常在感染因子(例えば、マラリア、フラビウイルス、例えば、デングウイルス、西ナイルウイルス、及び黄熱病ウイルス)が相当な健康リスクを示す世界の地域に滞在する、軍事関係者又は医療関係者の予防又は治療を提供する。
【0027】
HUCPVCを遺伝子改変して、治療する対象(例えば、ヒト)に予防的又は治療的利益を与える、抗体、抗体断片、サイトカイン、ホルモン、凝固因子、免疫調節因子、検出可能な標識、又は酵素などのポリペプチド(例えば、ヒトポリペプチド)を発現させることが可能である。さらに、HUCPVCを遺伝子改変して、治療する対象又はその中に存在する病原微生物若しくは毒素の細胞過程を調節する(例えば、阻害する)オリゴヌクレオチド(例えば、RNAi分子)を発現させることが可能である。HUCPVCを遺伝子改変して、病原微生物又は毒素への曝露に起因する1つ又は複数の疾患又は障害の予防又は治療用の、1つ又は複数の治療用ポリペプチド又はオリゴヌクレオチドを発現させることが可能である。
【0028】
遺伝子改変されたHUCPVCを、1つ又は複数の診断剤又は治療剤(例えば、インターフェロン−αなどの免疫調節剤)と同時投与して、HUCPVC治療の予防的又は治療的性質を増強又は延長することができる。HUCPVCは1つ又は複数の薬学的に許容される担体又は賦形剤と組み合わせて投与することもでき、配合して静脈内、筋肉内、経口、吸入、非経口、腹腔内、動脈内、経皮、舌下、鼻腔、頬側、リポソーム、脂肪、眼部、眼球内、皮下、くも膜下、局所、又は局部投与することができる。さらなる態様中で、本発明は、1つ又は複数の遺伝子改変されたHUCPVC集団での哺乳動物の予防又は治療的処置のための説明書の付いたキットを提供する。
【0029】
ヒト臍帯血管周囲細胞(HUCPVC)
ヒト臍帯血管周囲細胞(HUCPVC)は、ヒト臍帯のワルトンジェリー内の周囲領域から得られる、多分化能細胞の非造血、間葉系集団である(例えば、Sarugaserら、「ヒト臍帯血管周囲(HUCPV)細胞:間葉系前駆細胞の源(Human umbilical cord perivascular(HUCPV)cells):A source of mesenchymal progenitors」、Stem Cells 23:220〜229(2005)を参照)。米国特許出願公開第2005/0148074号及び国際特許出願公開第WO2007/128115号は、HUCPVCの単離及びin vitro培養のための方法を記載し、これらは参照として本明細書に組み込まれる。HUCPVCは、標準的な接着条件下で培養したとき第2〜7代のそれぞれにおいて約20時間の倍加時間(血清依存性)を示す、比較的迅速な増殖によってさらに特徴付けられる。表現型的に、HUCPVCは、採取時に、Oct4−、CD14−、CD19−、CD34−、CD44+、CD45−、CD49e+、CD90+、CD105(SH2)+、CD73(SH3)+、CD79b−、HLA−G−、CXCR4+、及びc−kit+として特徴付けられる。さらにHUCPVCは、周囲領域以外のワルトンジェリーの源から抽出した細胞集団と比較して高いレベルで、CK8、CK18、CK19、PD−L2、CD146及び3G5(周囲細胞マーカー)に陽性である。
【0030】
HUCPVCの利点
ポリペプチド又はオリゴヌクレオチド(例えば、ヒトポリペプチド又はオリゴヌクレオチド)を組換えで発現させるために使用すると、遺伝子改変されたHUCPVCは、他の細胞ベースの療法に優るいくつかの利点を与える。HUCPVCは同種異系又は異種宿主に投与すると低い免疫原性を示すので、他の同種異系又は異種細胞と比較して宿主内で、それらは増大した寿命を有する。HUCPVCは、治療上有意なレベルの対象とするタンパク質又はオリゴヌクレオチド(例えば、HUCPVCが遺伝子改変され発現している組換えポリペプチド又はオリゴヌクレオチド)をもたらす、実証された遺伝子発現モダリティも有する。さらに、HUCPVCは迅速に増殖するが、それらは他の細胞ベースの遺伝子治療用媒体と比較して低い増殖障害のリスクを有する。対象(例えば、ヒト)を予防又は治療するための遺伝子改変されたHUCPVCのこれらの有利な性質のそれぞれは、以下で詳細に論じる。
【0031】
遺伝子改変されたHUCPVCの低い免疫原性は、それらを脊椎動物対象、例えばヒトなどの哺乳動物、及び特に同種異系又は異種レシピエントへの投与に理想的な媒体にする。HUCPVCは、宿主免疫系による検出を回避するそれらの能力に基づいて、低い免疫原性を有することが示されている(例えば、Sarugaserら(2005)及び米国特許出願公開第2005/0148074号を参照)。このように、例えばヒト(即ち、ドナー)から採取したHUCPVCはin vitroで培養することができ、遺伝子改変されたHUCPVCに対する同種特異的免疫応答を宿主中で誘導せずに、別の、無関係且つHLA−ミスマッチなヒト(即ち、宿主)に投与することができる(例えば、Ennisら、「ヒト臍帯血管周囲細胞のin vitroでの免疫原性(In vitro immunologic properties of human umbilical cord perivascular cells)」Cytotherapy10(2):174〜181(2008)を参照)。したがって、遺伝子改変されたHUCPVCは、宿主免疫系の活性化により治療有効性を失わずに、非相同ヒト集団に、又はさらに異種集団に投与することができる。さらに、事実上任意の脊椎動物(例えば、ヒトなどの哺乳動物)においてHUCPVCを使用する能力は、緊急状況(例えば、感染疾患の蔓延)中で使用するための大規模な調製及び保存(即ち、「備蓄」)を可能にする。
【0032】
HUCPVCの低い免疫原性は、他の同種異系又は異種細胞と比較して、治療した宿主中のin vivoでこれらの細胞の増大した寿命をもたらす。同様の間葉系細胞が、同種異系に送達するとヒト宿主中に数年存続することは文書化されており(Le Blancら、「重度の骨形成不全症を有する患者における子宮内移植後の骨中での胎児性間葉系幹細胞の生着(Fetal mesenchymal stem−cell engraftment in bone after in utero transplantation in a patient with severe osteogenesis imperfecta)」Transplantation79(11):1607〜1614(2005))、したがって、HUCPVCは、注射後に少なくとも数週間から数カ月(例えば、2週間、4週間、6週間、2カ月以上)、脊椎動物(例えば、ヒトなどの哺乳動物)宿主内で存続し得ると予想することができる。(例えば、ウイルス用ポリペプチド又はオリゴヌクレオチドを与えることにより)療法又は予防用のポリペプチド又はオリゴヌクレオチドを与えるために使用するHUCPVCの寿命は、他の予防接種又は療法の技術に優る利点をもたらす。従来のワクチン又は治療剤は、個体中で保護又は治療効果をもたらすために複数回投与を必要とするが、治療有効量の遺伝子改変されたHUCPVCは単回用量で個体に投与することができる。或いは、2つ以上の用量の遺伝子改変されたHUCPVCを投与して、予防又は治療をもたらすことができる。病原微生物又は毒素によって引き起こされる疾患又は障害を予防又は治療するために使用する遺伝子改変されたHUCPVCの寿命によって、それらは軍事配備の不確かな性質のため、療法剤又はワクチンの複数回投与を受けることができない軍事関係者(例えば、兵士)への投与に特に有用になる。
【0033】
HUCPVCの別の有利な性質は、それらをいくつかの標準的なトランスフェクション及び形質導入技法により容易に遺伝子改変して、治療用ポリペプチド又はオリゴヌクレオチドの組換え発現を可能にすることができることである。本明細書でさらに記載するように、遺伝子導入は、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス及びレンチウイルス)及び核酸トランスフェクション(例えば、リポソーム、カチオン性媒体、又はエレクトロポレーションと組み合わせたDNAプラスミド)を使用して実施することができる。
【0034】
骨髄の提供を典型的に必要とする多くの他の間葉系幹細胞集団と異なり、HUCPVCは、出生後通常廃棄されるヒト臍帯から確実に回収することができる。先進工業国では、ヒト臍帯血液製剤は現在普通に回収され、考えられる将来の自己又は同種移植のために保存される。このように、本発明の方法による、増殖及び遺伝子改変のためのHUCPVCの回収には、他の間葉系幹細胞集団の回収に関する多くの理論上の制約がない。
【0035】
最後に、HUCPVCは、その必要性がある哺乳動物(例えば、ヒト)に投与するための遺伝子改変されたHUCPVCの、迅速及び大規模な調製を可能にする短い集団倍加時間を有する(例えば、Sarugaserら、2005を参照)。HUCPVCは酵素テロメラーゼを実質的に欠いており、したがって、増殖性疾患を発症するリスクは最小である。これらの細胞は、アポトーシスが起こる前に、所定の分裂数を超えて分裂することはできないからである。動物実験では、臨床上認められているより大きな桁数で投与したときでさえ、HUCPVCが腫瘍を生成することは知られていない。
【0036】
組換えポリペプチド及びオリゴヌクレオチドの発現
本発明では、HUCPVCを遺伝子改変して、治療有効量で与えたとき、遺伝子改変されたHUCPVCが「ステルス細胞」として作用して、生物学的(例えば、病原微生物)又は化学的(例えば、毒素)作用物質による攻撃を阻害、低減、予防又は治療するように、1つ又は複数のポリペプチド(例えば抗体、サイトカイン、又はホルモン)又はオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA分子)を発現させることが可能である。免疫調節オリゴヌクレオチド又はポリペプチドをHUCPVC中で発現させて、宿主の免疫応答を調節する(例えば、増大又は低減する)ことも可能である。HUCPVC中で発現されたポリペプチドは、原形質膜表面上に分泌又は提示され得る(例えば、膜結合受容体又はリガンド)。1つ又は複数のオリゴヌクレオチド又はポリペプチドを1つのHUCPVC中で同時発現させて、1つ又は複数の生物学的又は化学的作用物質の治療又はそれらに対する保護を可能にすることができる。
【0037】
抗体及び抗体断片
本発明はさらに、病原微生物又は化学的作用物質(例えば、毒素)と特異的に結合し中和する遺伝子改変されたHUCPVCによる、抗体(例えば、ヒト化モノクローナル抗体)又は抗体断片の発現を与える。例1中に示すように、抗体又は抗体断片を発現するHUCPVCを使用して、それぞれ病原微生物又は化学的作用物質に曝されている、又は曝される可能性がある脊椎動物(例えば、哺乳動物、ヒト(例えば、兵士)など)を治療又は保護することができる。例えば免疫系を調節するために使用することができる例示的な抗体には、TNF阻害剤(例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴール)、アレムツズマブ、アフェリモマブ、アセリズマブ、アトリズマブ、アトロリムマブ、バシリキシマブ、ベリムマブ、ベルチリムマブ、セデリズマブ、クレノリキシマブ、ダクリズマブ、ドルリモマブアリトックス、ドルリキシズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、エルシリモマブ、エルリズマブ、ファラリモマブ、フォントリズマブ、ガリキシマブ、ガンテネルマブ、ガビリモマブ、ゴリムマブ、ゴミリキシマブ、イバリズマブ、イノリモマブ、イピリムマブ、ケリキシマブ、レブリリズマブ、レルデリムマブ、ルミリキシマブ、マスリモマブ、メポリズマブ、メテリムマブ、モロリムマブ、ムロモナブ−CD3、ナタリズマブ、ネレリモマブ、オクレリズマブ、オズリモマブ、オマリズマブ、オテリキシズマブ、パスコリズマブ、ペキセリズマブ、リツキスマブ、レスリズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、シプリズマブ、タリズマブ、テリモマブアリトックス、テネリキシマブ、テプリズマブ、トシリズマブ、トラリズマブ、バパリキシマブ、ベパリモマブ、ビシリズマブ、ザノリムマブ、ジラリムマブ、及びゾリモマブアリトックスがある。
【0038】
ワクチンとしての微生物抗原
微生物病原体(例えば、細菌、ウイルス、真菌、又は寄生虫)由来の1つ又は複数の抗原を発現するHUCPVCはワクチンとして使用して、治療する対象において防御又は治療免疫応答を誘導することができる。投与時に、遺伝子改変されたHUCPVCは、宿主免疫系により外来として認識される微生物抗原を発現する。適応的免疫応答の活性化(例えば、宿主抗体及びT細胞)を含めた抗原に対する一次免疫応答の発生は、微生物病原体による感染時に強力及び長期的二次応答の生成を可能にする。ワクチンにおける細菌、ウイルス、真菌、及び寄生虫のポリペプチドの使用、及び本発明の方法によるHUCPVC中での発現に適したこれらの微生物由来の免疫原性抗原の同定は、当技術分野で知られている。
【0039】
サイトカイン及び増殖因子
本発明は、遺伝子改変されたHUCPVCによるサイトカイン及び増殖因子の発現を提供する。多くのサイトカインは免疫調節特性を有し、これらを使用して免疫応答を増強する、又は免疫病理学的応答を減退することができる。HUCPVC中で発現させることが可能であるサイトカイン及び増殖因子の例には、TNF−αなどの腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロン(例えば、インターフェロン−α、インターフェロン−β、及びインターフェロン−γ)、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−1β、及びインターロイキン2〜14)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、ケモカイン(例えば、RANTES及びMIP−1α)、形質転換増殖因子−β(TGF−β)スーパーファミリーのメンバー、血小板由来増殖因子(PGDF)、インスリン様増殖因子(IGF)、表皮増殖因子(EGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、エリスロポエチン(EPO)、及びトロンボポエチン(TPO)があるが、これらだけには限られない。
【0040】
ホルモン
本発明は、遺伝子改変されたHUCPVCによるホルモンの発現を提供する。HUCPVC中で発現させることが可能であるホルモンの例には、アンギオテンシノゲン、アンギオテンシン、副甲状腺ホルモン(PTH)、塩基性線維芽細胞増殖因子−2、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、バソプレシン、オキシトシン、ソマトスタチン、ガストリン、コレシストキニン、レプチン、心房性ナトリウム利尿ペプチド、エピネフリン、ノルエフィネフリン、ドーパミン、カルシトニン、及びインスリンがあるが、これらだけには限られない。
【0041】
血液凝固因子
本発明は、遺伝子改変されたHUCPVCによる血液凝固因子の発現を提供する。HUCPVC中で発現させることが可能である凝固因子の例には、第VII因子、第VIII因子、及び第IX因子、及びフィブリノゲンがあるが、これらだけには限られない。
【0042】
酵素
HUCPVC中で発現させることが可能である酵素の例には、ブチリルコリンエステラーゼ(BChE)、アデノシンデアミナーゼ、グルコセレブロシダーゼ、α−1アンチトリプシン、「自殺」ポリペプチド(例えば、ウイルスチミジンキナーゼ(TK)、例えば、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、又は水痘帯状疱疹ウイルス由来のTK)、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ、抗酸化剤(例えば、マンガンスーパーオキシドジスムターゼ(Mn−SOD)、カタラーゼ、銅−亜鉛−スーパーオキシドジスムターゼ(CuZn−SOD)、細胞外スーパーオキシドジスムターゼ(EC−SOD)、及びグルタチオンリダクターゼ)、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、一酸化窒素合成酵素、及びパラオキシナーゼがあるが、これらだけには限られない。
【0043】
免疫調節因子
HUCPVC中で発現させることが可能である免疫調節因子の例には、CTLA−4、VCP、PLIF、LSF−1、Nip、CD200、ウロモジュリン、CD40L(CD154)、FasL、CD27L、CD30L、4−1BBL、CD28、CD25、B7.1、B7.2、及びOX40Lがあるが、これらだけには限られない。
【0044】
受容体及びリガンド
HUCPVC中で発現させることが可能である受容体及びリガンドの例には、T細胞受容体(TCR)、LDL受容体、表面結合免疫グロブリン、可溶性CD4、嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス受容体(CFTR)、及びFc受容体があるが、これらだけには限られない。
【0045】
検出可能な標識
検出可能な標識をHUCPVC中で発現させて、その必要性がある哺乳動物(例えば、ヒト)へのこれらの細胞の臨床的施用を容易にすることができる。臨床医は、例えば、血液又は組織サンプルを単離し検出可能な標識の存在を分析することによって、患者に投与した標識HUCPVCの量及び寿命を決定することができる。検出可能な標識は、緑色蛍光タンパク質(GFP)などの蛍光分子を含む。
【0046】
代謝産物及び他の細胞性因子
HUCPVC中で発現させることが可能である代謝産物及び他の因子の例には、シトクロムb、コレステロール輸送又は代謝ポリペプチド(例えば、ApoE、ApoC、ApoAI)、薬剤耐性又は抗ウイルス耐性ポリペプチド(例えば、MDR、リボザイム、アンチセンスRNA、抗ウイルスプロテアーゼ)、抗毒素剤、血管新生ペプチド、組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)、尿プラスミノゲン活性化因子(例えば、ウロキナーゼ)、ヒルジン、血管作用性ペプチド、グロビン(例えば、β−グロビン、α−グロビン、HbA)、プロトオンコジーン(例えば、ras、src、及びbcl)、及び分泌性ペプチド(例えば、アンギオテンシン転換酵素、血管平滑筋カルシウムチャンネル、又はアドレナリン受容体の競合阻害剤として作用することができる)があるが、これらだけには限られない。
【0047】
RNA干渉
HUCPVCを遺伝子改変して、患者(例えば、ヒト)に投与したとき1つ又は複数のRNA干渉(RNAi)分子を発現させることが可能である。RNAiは、特異的RNA分子の分解を引き起こすこと、又は特異的遺伝子の転写を妨げることによって、遺伝子発現を阻害する機構である。RNAiの機構の鍵は、標的メッセンジャーRNA(mRNA)分子と相補的なヌクレオチド配列を有する低分子阻害型RNA鎖(siRNA)である。siRNAは、配列特異的な形式で遺伝子発現を阻害又は下方制御することができる、低分子の一本鎖核酸分子である。例えば、Zamoreら、Cell 101:25 33 (2000);Bass、Nature411:428〜429(2001);Elbashirら、Nature411:494〜498(2001);及びKreutzerら、国際PCT公開第WO00/44895号;Zernicka−Goetzら、国際PCT公開第WO01/36646号;Fire、国際PCT公開第WO99/32619号;Plaetinckら、国際PCT公開第WO00/01846号;Mello及びFire、国際PCT公開第WO01/29058号;Deschamps−Depaillette、国際PCT公開第WO99/07409号;及びLiら、国際PCT公開第WO00/44914号を参照。遺伝子サイレンシングにおいて使用するためのsiRNA分子を調製するための方法は、参照として本明細書に組み込まれる米国特許第7,078,196号中に記載される。
【0048】
本発明中のRNAi技術(例えば、siRNA分子)の施用はいくつかの方法で実施することができ、それぞれHUCPVC集団における遺伝子産物の機能的サイレンシングをもたらす。1つ又は複数の内因性HUCPVC遺伝子産物の機能的サイレンシングは、(例えば、1つ又は複数のプロアポトーシス遺伝子産物のサイレンシングによって)in vivoでのHUCPVCの寿命を増大させる可能性があり、又は治療用ポリペプチド(例えば、抗体、サイトカイン、又はホルモン)の発現を増大させる可能性がある。
【0049】
RNAi作用物質(例えば、siRNA分子)による機能的遺伝子サイレンシングは、標的遺伝子産物の完全な阻害を必ずしも含まない。いくつかの例では、RNAi作用物質により引き起こされる遺伝子産物発現のわずかな低下は、宿主細胞、組織、器官、又は動物中で有意な機能又は表現型変化に変わる可能性がある。したがって、遺伝子サイレンシングは機能的に均等であると理解され、サイレンシングを得るための遺伝子産物分解の程度は遺伝子標的又は宿主細胞系間で異なる可能性がある。遺伝子サイレンシングは1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、又は10%遺伝子産物発現を低下させる可能性がある。遺伝子産物発現は、優先的に10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%(即ち、完全な阻害)低下する。
【0050】
HUCPVCの遺伝子改変
HUCPVC中での非内因性ポリペプチド又はオリゴヌクレオチドの組換え発現は、いくつかの異なる標準的な遺伝子導入モダリティを使用することによって実施することができる。これらのモダリティ、それらの利点及び制約は、以下でさらに論じる。HUCPVCを遺伝子改変する例示的な方法は、参照として本明細書に組み込まれる国際特許出願公開第WO2007/128115号中でも論じられる。
【0051】
形質導入(ウイルスベクター)
形質導入は、標的細胞の遺伝子改変を可能にするウイルスによる標的細胞(例えば、HUCPVC)の感染である。多くのウイルスは哺乳動物細胞と結合し感染し、それらの複製サイクルの一部として宿主細胞にそれらの遺伝物質を導入する。いくつかの型のウイルス(例えば、レトロウイルス)は、宿主のゲノムにそれらのウイルスゲノムを組み込む。これによって、その細胞の生存期間にわたって宿主細胞の遺伝子間にそのウイルスの遺伝子を取り込む。遺伝子導入用に修飾したウイルスでは、ドナー遺伝子(例えば、ヒト化モノクローナル抗体)をウイルスゲノムに挿入する。追加の修飾をウイルスに施して、感染性又は向性(例えば、シュードタイピング)を改善し、複製能力を低減又は排除し、免疫原性を低減する。新たに導入される哺乳動物遺伝子は、感染宿主細胞又は生物中で発現され、欠陥宿主遺伝子を交換する場合、欠陥遺伝子によって引き起こされる状態又は疾患を改善する可能性がある。アデノウイルス及びレトロウイルス(レンチウイルスを含む)は、以下で論じるように、遺伝子改変する能力及びこれらのウイルスのライフサイクルを利用する能力のため、遺伝子治療用途の特に魅力的なモダリティである。
【0052】
アデノウイルス
組換えアデノウイルスベクターは、HUCPVC中でのポリペプチド(例えば、抗体、サイトカイン、又は凝固因子)又はオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)の発現に有意ないくつかの利点を与える。ウイルスは非常に高い力価で調製することができ、非複製細胞に感染し、対象とする注射又はかん流後in vivoで標的細胞の高有効性及び高レベルの形質導入をもたらす可能性がある。さらに、アデノウイルスは宿主ゲノムにそれらのDNAを組み込まないので、この遺伝子治療モダリティは自発性増殖障害を誘導する低いリスクを有する。動物モデルでは、アデノウイルス遺伝子導入は、約1週間にわたって高レベルの発現を仲介することが一般に分かっている。導入遺伝子発現の期間は延長することができ、異所性発現は組織特異的プロモーターを使用することによって低減することができる。アデノウイルスベクター自体の分子工学における他の改善点は、より持続的な導入遺伝子発現及び少ない炎症をもたらしている。これは、追加の初期アデノウイルス遺伝子に特異的突然変異を有するいわゆる「第二世代」ベクター、及びcre−lox戦略(Engelhardtら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA91:6196〜6200(1994)及びKochanekら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA93:5731〜5736(1996))を使用して事実上全てのウイルス遺伝子が欠失した「ガットレス」ベクターで見られる。さらに、非病原性パルボウイルス由来の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を使用して、ポリペプチド又はオリゴヌクレオチドを発現させることが可能である。これらのベクターは細胞の免疫応答をほとんど誘導せず、大部分の系で数カ月間持続する導入遺伝子発現をもたらすからである。組織特異的プロモーターの取り込みは、再度有益である。
【0053】
レトロウイルス
対象又は細胞にポリペプチド又はオリゴヌクレオチドを送達するのに有用な他のウイルスベクターは、レンチウイルスを含めたレトロウイルスである。アデノウイルスと対照的に、レトロウイルス中の遺伝物質はRNA分子の形状であり、一方それらの宿主の遺伝物質はDNAの形状である。レトロウイルスが宿主細胞に感染すると、それはそのRNA及びいくつかの酵素を細胞中に導入する。レトロウイルス由来のこのRNA分子は、逆転写と呼ばれるプロセスによって、そのRNA分子から二本鎖DNAコピー(プロウイルス)を生成する。細胞核への輸送後、プロウイルスDNAを宿主染色体に組み込み、感染細胞のゲノム及び生じる可能性がある任意の子孫細胞を恒久的に改変する。HUCPVCなどの細胞中にポリペプチド又はオリゴヌクレオチドをコードする遺伝子を恒久的に導入する能力は、遺伝子治療に使用するレトロウイルスを明確にする特徴である。レトロウイルスは、レンチウイルス、ウイルス感染及びプロウイルスの組み込みを容易にするためのいくつかの補助タンパク質を含むヒト免疫不全ウイルス(HIV)を含めたウイルスのファミリーを含む。
【0054】
遺伝子治療用のレトロウイルスの使用に関する1つの問題は、インテグラーゼ酵素が、宿主ゲノム中のいずれか任意の位置にウイルスの遺伝物質を挿入する可能性があることである。遺伝物質が宿主細胞の原型遺伝子の1つの中央に偶然挿入される場合、この遺伝子は妨害され得る(例えば、挿入突然変異)。遺伝子が偶然に細胞分裂を制御する遺伝子である場合、制御不能な細胞分裂(例えば、癌)が起こる可能性がある。ジンクフィンガーヌクレアーゼを利用することにより、又はβ−グロビン遺伝子座制御領域などの特定配列を封入して組み込み部位を特異的染色体部位に誘導することにより、この問題は近年対処され始めてきている。この考慮事項にもかかわらず、レトロウイルス及びレンチウイルスには遺伝子治療用途に関する相当な有用性がある。現在の「第三世代」レンチウイルスベクターは、哺乳動物細胞に関する、完全な複製不全、広範囲の向性、及び増大した遺伝子導入能力を特徴とする(Mangeat、B.及びTrono、D.、「レンチウイルスベクター及びアンチレトロウイルスの内因性免疫(Lentiviral vectors and antiretroviral intrinsic immunity)」、Human Gene Therapy 16(8):913〜920(2005)及びWiznerowicz、M.及びTrono、D.、「治療、基礎研究及びバイオテクノロジーのためのHIVの利用(Harnessing HIV for therapy,basic research and biotechnology)」、Trends Biotechnol.23(1):42〜7(2005)を参照)。例えば水泡性口内炎ウイルス糖タンパク質(VSV−G)又はネコ内因性ウイルスRD114エンベロープ糖タンパク質でシュードタイピングしたレンチウイルスを使用して、HUCPVCを形質導入することができる(例えば、Zhangら、「修飾型RD114エンベロープ糖タンパク質でシュードタイピングしたレンチウイルスの使用による、骨髄由来間葉系幹細胞の形質導入(Transduction of bone−marrow−derived mesenchymal stem cells by using lentivirus vectors pseudotyped with modified RD 114 envelope glycoproteins)」、J.Viral.78(3):1219〜1229(2004)を参照)。参照として本明細書に組み込まれる米国特許第5,919,458号、米国特許第5,994,136号、及び米国特許第7,198,950号は、標的細胞を遺伝子改変するためのレンチウイルスの生成及び使用を記載する。
【0055】
他のウイルスベクター
アデノウイルス及びレトロウイルスベクター以外に、対象又は細胞に望ましいポリペプチド又はオリゴヌクレオチドをコードするDNAベクター(例えば、プラスミド)を導入するために使用することができる、他のウイルスベクター及び技法が当技術分野で知られている。これらは、例えば、Wattanapitayakul及びBauer(Biomed.Pharmacother54:487〜504(2000)、及びその中の引用によって記載されたものを含む。
【0056】
トランスフェクション
裸DNA及びオリゴヌクレオチド
ポリペプチド(例えば、抗体、サイトカイン、又はホルモン)又はRNA干渉分子(例えば、siRNA又はshRNA)をコードする裸DNA又はオリゴヌクレオチド(例えば、プラスミドなどのDNAベクター)を使用して、HUCPVCを遺伝子改変することもできる。これは非ウイルストランスフェクションの最も簡単な方法である。裸DNAプラスミドの筋肉内注射を使用して実施した臨床試験にはいくつかの成功があるが、しかしながら、トランスフェクションの他の方法と比較して発現は低くなっている。エレクトロポレーション、及び高圧ガスを使用してDNAコーティング金粒子を細胞に撃ちつける「遺伝子ガン」の使用などの、裸DNAを送達するための他の有効な方法が存在する。
【0057】
リポプレックス及びポリプレックス
HUCPVCへのDNAベクター(例えば、プラスミド)の送達を改善するために、DNAは損傷から保護することができ、細胞中へのその進入は容易にすることができる。リポプレックス及びポリプレックスは、トランスフェクションプロセス中の望ましくない分解から導入DNAを保護する能力を有する。プラスミドDNAは、ミセル又はリポソームのような組織構造に脂質を用いて覆うことができる。組織構造がDNAと複合体形成するとき、それはリポプレックスと呼ばれる。3タイプの、アニオン性(負に帯電した)、中性、又はカチオン性(正に帯電した)脂質が存在する。カチオン性脂質を利用するリポプレックスは、遺伝子導入に関する有用性が証明されている。カチオン性脂質は、それらの正電荷のため、負に帯電したDNAと自然に複合体形成する。さらにそれらの電荷の結果として、それらは細胞膜と相互作用し、リポプレックスのエンドサイトーシスが起こり、DNAは細胞質中に放出される。カチオン性脂質は、細胞によるDNAの分解に対しても保護する。
【0058】
ポリマーとDNAの複合体はポリプレックスと呼ばれる。大部分のポリプレックスはカチオン性ポリマーからなり、それらの生成はイオン性相互作用によって制御される。ポリプレックスとリポプレックスの作用の方法の間の1つの大きな違いは、ポリプレックスはそれらのDNA充填物を細胞質中に放出することができないので、この目的のため、不活化ウイルスが必ず生じるように(エンドサイトーシス中に作製されるエンドソームを溶かすために)エンドソーム溶解剤とコトランスフェクトされることである。しかしながら、これが常に当てはまるわけではない。ポリエチレンイミンなどのポリマーには、キトサン及びトリメチルキトサンと同様に、それら独自のエンドソーム破壊法がある。
【0059】
ハイブリッド法
欠点を有する遺伝子導入のそれぞれの方法のため、2つ以上の技法を組み合わせて開発されたいくつかのハイブリッド法が存在している。例えば、ビロソームは、リポソームと不活化ウイルスを組み合わせる。この手法は、ウイルス単独法又はリポソーム単独法のいずれかよりも、呼吸上皮細胞においてより有効な遺伝子導入をもたらすことが示されている。他の方法は、他のウイルスベクターとカチオン性脂質を混合すること、又はウイルスをハイブリダイズすることを含む。これらの方法のそれぞれを使用して、HUCPVCへのDNAベクター(例えば、プラスミド)の導入を容易にすることができる。
【0060】
デンドリマー
デンドリマーを使用してHUCPVCを遺伝子改変することもできる。デンドリマーは、球形を有する高度に分岐したマクロ分子である。粒子の表面は多くの方法で官能化することができ、生成する構築体の性質の多くはその表面によって決定される。特に、カチオン性デンドリマー(即ち、正の表面電荷を有するデンドリマー)を構築することができる。DNAプラスミドなどの遺伝物質の存在下では、電荷の相補性は核酸とカチオン性デンドリマーの一時的結合をもたらす。その目的地に到達すると、デンドリマー核酸複合体は次いでエンドサイトーシスによってHUCPVCに取り込まれる。
【0061】
生物学的及び化学的作用物質
本発明の方法は、生物学的又は化学的作用物質に曝されているか又はそれらに曝されるリスクが高い対象(例えば、軍事関係者などのヒト)への、遺伝子改変されたHUCPVCの投与をもたらす。
【0062】
細菌
本発明の方法を使用して、対象(例えば、ヒト)中の細菌感染を治療又は予防することができる。ヒトの疾患又は病状を引き起こす細菌には、緑膿菌、ネズミチフス菌、大腸菌、肺炎桿菌、ブルセラ菌、鼻疽菌、ペスト菌、及び炭疽菌があるが、これらだけには限られない。
【0063】
ウイルス
本発明の方法を使用して、対象(例えば、ヒト)中のウイルス感染を治療又は予防することができる。ヒトの疾患又は病状を引き起こすウイルスには、フラビウイルス(例えば、ギャドゲッツガリーウイルス、カダムウイルス、キャサヌール森林病ウイルス、ランガットウイルス、オムスク出血熱ウイルス、ポワッサンウイルス、ロイヤルファームウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、跳躍病ウイルス、ミーバンウイルス、サウマレズリーフウイルス、チュレニーウイルス、アロアウイルス、デングウイルス、ケドウゴウウイルス、カシパコアウイルス、コウタンゴウイルス、日本脳炎ウイルス、マーレーバレー脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、ウスツウイルス、西ナイルウイルス、ヤオンデウイルス、ココベラウイルス、バガザウイルス、イレウスウイルス、イスラエルターキー髄膜脳脊髄炎ウイルス、ウンタヤウイルス、テンバスウイルス、ジカウイルス、バンジウイルス、ボウボウイウイルス、エッジヒルウイルス、ジュグラウイルス、サボヤウイルス、セピックウイルス、ウガンダSウイルス、ウェセルスブロンウイルス、黄熱病ウイルス、エンテベコウモリウイルス、ヨコセウイルス、アポイウイルス、カウボンリッジウイルス、フティアパウイルス、モドックウイルス、サルビージャウイルス、サンペルリタウイルス、ブカラサコウモリウイルス、カーレー島ウイルス、ダカーコウモリウイルス、モンタナミオチス白質脳炎ウイルス、プノンペンコウモリウイルス、及びリオブラボーウイルス)、トガウイルス(例えば、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、東部ウマ脳炎ウイルス(EEE)、及び西部ウマ脳炎ウイルス(WEE))、フィロウイルス(例えば、エボラウイルス(例えば、コートジボワール、レストン、スーダン、ウガンダ、及びザイール菌株)、マールブルグウイルス(例えば、アンゴラ、Ci67、ムソク、ポップ、及びラブニナ菌株))、ポキシウイルス(例えば、天然痘ウイルス、ワクシニアウイルス)、アリーナウイルス(例えば、ラッサウイルス(例えば、ジョサイア、LP、及びGA391菌株)、アイピーウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、モバラウイルス、モペイアウイルス、アマパリウイルス、フレクサルウイルス、グアナリトウイルス、フニンウイルス、ラチノウイルス、マチュポウイルス、オリベロスウイルス、パラナウイルス、ピキンデウイルス、ピリタルウイルス、サビアウイルス、タカリベウイルス、タミアミウイルス、及びホワイトウォーターアロヨウイルス)、ブンヤウイルス(例えば、シンノンブレウイルス、ハンターンウイルス、リフトバレー熱ウイルス、クリミアコンゴ出血熱ウイルス、及びナイロビウイルス(例えば、ドゥグベウイルス))、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、及びカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV))、オルトミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルスA(例えば、H5N1鳥インフルエンザウイルス)、B、及びCなどのインフルエンザウイルス)、コロナウイルス(例えば、重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルス)、及びラブドウイルス(例えば、狂犬病ウイルス及び水泡性口内炎ウイルス(VSV))があるが、これらだけには限られない。
【0064】
真菌
本発明の方法を使用して、対象(例えば、ヒト)中の真菌感染を治療又は予防することができる。ヒトの疾患又は病状を引き起こす真菌には、アスペルギルス、ブラストミセスデルマチチジス、カンジダ、コクシジオイデスイミティス、クリプトコッカスネオフォルマンス、ヒストプラズマカプスラーツム変種カプスラーツム、パラコクシジオイデスブラジリエンシス、スポロトリクスシェンキイ、及び接合菌網種(例えば、アブシディアコリンビフェラ、リゾムコールプシラス、及びリゾプスアルヒザス)があるが、これらだけには限られない。
【0065】
寄生虫
本発明の方法を使用して、対象(例えば、ヒト)中の寄生虫感染を治療又は予防することができる。ヒトの疾患又は病状を引き起こす寄生虫には、トキソプラズマ原虫、熱帯熱マラリア原虫(三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、及び四日熱マラリア原虫)、トリパノソーマ種、及びレジオネラ種があるが、これらだけには限られない。
【0066】
化学的作用物質(毒素)
本発明の方法を使用して、哺乳動物(例えば、ヒト)の化学的作用物質(例えば、毒素、化学兵器、又は発疱剤)への曝露によって引き起こされる疾患、症状、又は状態を治療又は予防することができる。哺乳動物の疾患又は病状を引き起こす化学的作用物質には、リシン、ジフテリア毒素、大腸菌腸毒素、コレラ菌腸毒素、ブドウ球菌腸毒素、連鎖球菌腸毒素、ボツリヌス毒素、サキシトキシン、ナイトロジェンマスタード(例えば、ビス(2−クロロエチル)エチルアミン)、ルイサイト(例えば、2−クロロビニルジクロロアルシン)、硫黄マスタード(例えば、2−クロロエチルクロロメチルスルフィド及びビス(2−クロロエチル)スルフィド)、サリン(GB;O−イソプロピルメチルホスホノフロリデート)、シクロサリン(GF)、ソマン(GD;O−ピナコリルメチルホスホノフロリデート)、タブン(GA;O−エチル、n,n−ジメチルホスホラミドシアニデート)、VX(O−エチルS−2−ジイソプロピルアミノエチルメチルホスホノチオレート)、アミトン、PFIB、3−キヌクリジニルベンジレート、ホスゲン、ジホスゲン、塩化シアン、シアン化水素、クロロピクリン、及びアセチルコリンエステラーゼ阻害剤(例えば、ノビコック剤)があるが、これらだけには限られない。
【0067】
本発明の遺伝子改変されたHUCPVCで治療することができる対象
病原体又は毒素などの生物学的又は化学的作用物質を用いた攻撃を治療、阻害、低減、又は予防するための本発明の方法による、遺伝子改変されたHUCPVCの投与から恩恵を被ることができる対象。これらの対象は、例えば、鳥類(例えば、ニワトリ、シチメンチョウ、ガチョウ、アヒル、ライチョウ、ハクチョウ、クジャク、イエバト、ハト、及びキジなどの家禽類)、は虫類(例えば、ヘビ及びトカゲ)、両生類(例えば、カエル及びサンショウウオ)、哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、サル、チンパンジー、類人猿)、有蹄動物(例えば、ウマ、ウシ、ヤギ、ブタ、ヒツジ、ロバ、及びシカ)、イヌ、及びネコなどの脊椎動物を含む。
【0068】
投薬及び投与
本発明は、治療有効量の1つ又は複数のポリペプチド(例えば、抗体、サイトカイン、又はホルモン)又はオリゴヌクレオチド(例えば、siRNA)を発現する、遺伝子改変されたHUCPVCを提供する。遺伝子改変されたHUCPVCは、予防又は治療的処理のための、非経口(例えば、筋肉内、皮下、及び静脈内)、鼻腔内、局所、経口、又は経皮手段などによる局部投与を対象にする。一般に、遺伝子改変されたHUCPVCは、疾患により罹患した領域に非経口(例えば、静脈内、筋肉内、又は皮下注射により)投与又は動脈内注射する。追加の投与経路には、血管内、動脈内、腹腔内、心室内、硬膜内、及び鼻腔、眼部、強膜内、軌道内、直腸、局所、又はエアロゾル吸入投与がある。
【0069】
遺伝子改変されたHUCPVCは、予防又は治療的処理のために投与することができる。予防用途では、遺伝子改変されたHUCPVCを、臨床的に決定された素因又は病原体又は化学的作用物質(例えば、化学的作用物質)による攻撃に対する増大した感受性を有する、対象(例えば、ヒト)に投与する。例えば、遺伝子改変されてブチリルコリンエステラーゼ(BChE)を発現するHUCPVCを、BChE遺伝子に関して劣性ホモ接合である対象(例えば、兵士)に投与して、化学的作用物質による攻撃を治療又は予防することができる。遺伝子改変されたHUCPVCにおいて発現されるBChEポリペプチドは、いくつかの化学的作用物質を代謝することができるからである。
【0070】
遺伝子改変されたHUCPVCは、微生物病原体又は化学的作用物質による攻撃によって引き起こされる臨床疾患の発症を遅延、低減、又は好ましくは予防するのに十分な量、対象(例えば、ヒト)に投与することができる。治療用途では、遺伝子改変されたHUCPVCを、これらの作用物質の症状を治癒する又は少なくとも部分的に抑えるのに十分な量、微生物病原体又は化学的作用物質への曝露による感染に既に罹患している対象(例えば、兵士)に投与する。この目的を果たすのに適したHUCPVCの数を「治療有効用量」として定義する。この使用に有効な量は、疾患又は状態の重度、並びに患者の体重及び一般的状態に依存する可能性がある。本発明の方法により単回又は複数回用量で対象に投与する遺伝子改変されたHUCPVCの合計数は例えば101、102、103、104、105、106、107、108、109個、又はより多くの細胞であってよいが、有効用量はおそらく投与当たり103〜107個の細胞の範囲に存在する。遺伝子改変されたHUCPVCは、単回用量でその必要性がある対象に投与することが好ましい。遺伝子改変されたHUCPVCは、初回用量として、次に1時間、1日、1週間、1カ月、又は2カ月間隔の1回又は複数回の追加投与で施用することもできる。比較的短期間にわたりボーラスとして又は注入のいずれかにより、単回用量として対象に投与する遺伝子改変されたHUCPVCの全有効用量は、複数回用量をより長期間にわたり投与する(例えば、4〜6、8〜12、14〜16、若しくは18〜24時間毎、又は2〜4日毎、1〜2週間毎、月に1回、又は2カ月に1回の投与)分割治療プロトコルを使用して投与することができる。或いは、血液中の治療有効濃度を維持するのに十分な連続的静脈内注入が企図される。
【0071】
本発明の方法により対象(例えば、ヒト)に投与する遺伝子改変されたHUCPVCの治療有効量は、当業者によって決定することができる。考慮することができる要因には、例えば、対象の年齢、体重、条件(例えば、対象が曝されているか又は曝される可能性がある作用物質の型、対象に対する生物学的又は化学的作用物質(例えば、病原体感染又は毒素)の影響の重度)、及び生物学的又は化学的作用物質への曝露のレベルの個々の違いがある。生物学的又は化学的作用物質への曝露は、十分特徴付けられた生理学的マーカーを使用して決定することができる(例えば、参照としてその全容が本明細書に組み込まれる、Black and Nort、Chemical Warfare Agents、第2版(第2版)、John Wiley & Sons、Ltd.、2007中の「化学兵器への曝露の生物学的マーカー(Biological Markers of Exposure to Chemical Warfare Agents)」を参照)。
【0072】
本発明は、対象(例えば、ヒト)への第二の遺伝子改変されたHUCPVC集団の同時投与を提供し、その中で第二のHUCPVC集団は、予防又は治療用途の1つ又は複数の異なるポリペプチド又はオリゴヌクレオチドを発現する。或いは、HUCPVCではない1つ又は複数の間葉系幹細胞(MSC)を投与することができる。この場合、MSCを遺伝子改変して、ポリペプチド又はオリゴヌクレオチドを発現させることが可能である。しかしながら、同時又は同じ方法で、HUCPVC又はMSC集団の両方を投与することは必ずしも必要ではない。いくつかの場合、第二集団の投与は、第一集団の投与期間の終了後すぐに始めることができ、又は逆も同様である。このような2投与期間の間の時間のギャップは、1日から、1週間まで、1カ月以上まで変わる可能性がある。いくつかの場合、2つの遺伝子改変されたHUCPVC集団を最初に同時投与し、続いて後の期間に個々に投与することができる(例えば、特定のウイルスの血清型又は菌株に対して防御性がある1つのモノクローナル抗体を個別に発現する2つ以上のHUCPVC集団の投与)。さらに、HUCPVC集団を修飾して、予防又は治療用途の2つ以上のポリペプチド又はオリゴヌクレオチドを発現させることが可能であり、したがって複数回投与の必要性を除去することが可能である。
【0073】
有効量を含む本発明の組成物の単回又は複数回(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20又はそれより多くの)投与は、治療する臨床医(例えば、医師又は獣医師)によって選択される用量レベル及びパターンで実施することができる。投薬及び投与スケジュールは、感染性微生物又は化学的作用物質への曝露の重度又は可能性に基づいて決定及び調節することができる。さらに、遺伝子改変されたHUCPVCを投与した対象(例えば、哺乳動物、ヒト(例えば、兵士)など)は、臨床医によって一般に実施される方法又は本明細書に記載する方法によって、治療の経過を通じてモニターすることができる。
【0074】
1つ又は複数の生理的に許容される賦形剤又は担体を、適切な製剤用の組成物中に含めることもできる。本発明中で使用するのに適した製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Philadelphia、PA、第17版、1985中に見られる。薬剤送達のための方法の簡単な総説に関しては、Langer、Science249:1527〜1533、1990を参照。
【0075】
他の治療レジメン
本発明は、遺伝子改変されたHUCPVCと組み合わせた1つ又は複数の治療剤(例えば、抗ウイルス化合物などの抗菌剤)の同時投与を提供する。例えば、追加の治療剤を、このような治療剤に有効であることが知られている濃度で、本明細書に記載する遺伝子改変されたHUCPVCと共に投与することができる。特に有用な治療剤には、例えば、サイトカイン、抗ウイルス剤、免疫促進剤、免疫抑制剤、及び予防接種ワクチンがある。
【0076】
いくつかの場合、遺伝子改変されたHUCPVC及び追加の治療剤を、少なくとも1時間、2時間、4時間、6時間、10時間、12時間、18時間、24時間、3日間、7日間、14日間、又は1カ月間隔で投与する。それぞれの成分の用量及び投与の頻度は独立に調節することができる。本明細書に記載する追加の治療剤は、例えば、従来の薬学的に許容される担体中で追加の活性又は不活性成分と混合することができる。医薬担体は、対象への本発明の組成物の投与に適した、任意の適合性がある、非毒性の物質であってよい。薬学的に許容される担体には、例えば、水、生理食塩水、バッファー、及び例えばMerck Index、Merck & Co.、Rahway、New Jersey中に記載された他の化合物がある。徐放製剤又は徐放装置も連続投与に使用することができる。追加の治療レジメンは、治療する対象のライフスタイルの変更を含めた、他の療法を含むことができる。
【0077】
サイトカイン
サイトカインは追加の治療剤として、又は遺伝子改変されたHUCPVCとの組み合わせのいずれかで使用することができる。例示的なサイトカインは、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、G−CSF、IL−15、GM−CSF、OSM、LIF、IFN−γ、IFN−α、IFN−β、TNF−α、TNF−β、LT−β、IL−8、MCP−1、MIP−α、MIP−β、RANTES、TGF−β、IL−1α、IL−1β、IL−lRA、及びMIFである。
【0078】
抗ウイルス剤
遺伝子改変されたHUCPVCとの組み合わせ、又は個別投与のいずれかで、抗ウイルス剤を追加の治療剤として使用することができる。例示的な抗ウイルス剤は、アバカビル、アシクロビル、アシクロビル、アデフォビル、アマンタジン、アンプレナビル、アルビドール、アタザナビル、アトリプラ、ブリブジン、シドフォビル、コンビビル、ダルナビル、デラビルジン、ジダノシン、ドコサノール、エドクスジン、エファビレンツ、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカビル、侵入阻害剤、ファムシクロビル、多剤混合薬、フォミビルセン、フォサムプレナビル、フォスカルネット、フォスフォネット、融合阻害剤、ガンシクロビル、ガルダシル、イバシタビン、イムノビル、イドクスリジン、イミクイモド、インジナビル、イノシン、インテグラーゼ阻害剤、インターフェロンIII型、インターフェロンII型、インターフェロンI型、インターフェロン、ラミブジン、ロピナビル、ロビリド、MK−0518、マラビロック、モロキシジン、ネルフィナビル、ネビラピン、ネクサバール、ヌクレオシド類似体、オセルタミビル、ペンシクロビル、ペラミビル、プレコナリル、ポドフィロトキシン、プロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、リバビリン、リマンタジン、リトナビル、サクイナビル、スタブジン、相乗作用促進剤、テノフォビル、テノフォビルジソプロキシル、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、ツルバダ、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ビクリビロック、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル、及びジドブジンである。例示的な抗ウイルス剤は、例えば参照として本明細書に組み込まれる、米国特許第6,093,550号及び米国特許第6,894,033号中に挙げられている。
【0079】
免疫促進剤
本発明の組成物を免疫促進剤又はアジュバントと同時投与する場合、医薬組成物の免疫原性を有意に改善することが可能である。例示的な免疫促進剤には、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、QS21、Quil A(並びにその誘導体及び相補体)、リン酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、糖脂質類似体、アミノ酸のオクトデシルエステル、ムラミルジペプチド、ポリホスファゼン、リポタンパク質、ISCOMマトリクス、DC−Chol、DDA、サイトカイン、並びに他のそれらのアジュバント及び誘導体がある。免疫系の細胞を刺激又は同時刺激することができる他の分子には、CD40L(CD154)、FasL、CD27L、CD30L、4−1BBL、CD28、CD25、B7.1、B7.2、及びOX40Lがある。
【0080】
免疫抑制剤
治療する個体の免疫系を抑制して、例えば、感染と関係がある免疫病(例えば、デング出血熱症候群)を予防すること、又は毒素への曝露と関係がある炎症を低減することは望ましい可能性がある。免疫抑制剤を使用して、宿主による投与したHUCPVCの拒絶を減らし、それによってin vivoでのこれらの細胞の寿命を増大することも可能である。例示的な免疫抑制剤には、アベチムス、デフォロリムス、エベロリムス、グスペリムス、ピメクロリムス、シロリムス、タクロリムス、テミシロリムス、アナキンラ、アザチオプリン、シクロスポリン、レフルノミド、メトトレキセート、マイコフェノール酸、及びサリドマイドがある。TNF阻害剤(例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリツマブペゴール)、アレムツズマブ、アフェリモマブ、アセリズマブ、アトリズマブ、アトロリムマブ、バシリキシマブ、ベリムマブ、ベルチリムマブ、セデリズマブ、クレノリキシマブ、ダクリズマブ、ドルリモマブアリトックス、ドルリキシズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、エルシリモマブ、エルリズマブ、ファラリモマブ、フォントリズマブ、ガリキシマブ、ガンテネルマブ、ガビリモマブ、ゴリムマブ、ゴミリキシマブ、イバリズマブ、イノリモマブ、イピリムマブ、ケリキシマブ、レブリリズマブ、レルデリムマブ、ルミリキシマブ、マスリモマブ、メポリズマブ、メテリムマブ、モロリムマブ、ムロモナブ−CD3、ナタリズマブ、ネレリモマブ、オクレリズマブ、オズリモマブ、オマリズマブ、オテリキシズマブ、パスコリズマブ、ペキセリズマブ、リツキスマブ、レスリズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、シプリズマブ、タリズマブ、テリモマブアリトックス、テネリキシマブ、テプリズマブ、トシリズマブ、トラリズマブ、バパリキシマブ、ベパリモマブ、ビシリズマブ、ザノリムマブ、ジラリムマブ、及びゾリモマブアリトックスを含めた、免疫抑制を引き起こす多くのモノクローナル抗体も当技術分野で知られている。
【実施例】
【0081】
以下の実施例は本発明を例示するためのものである。これらは決して本発明を限定することを意味しない。
【0082】
(例1)
ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)E2抗原に対するヒト化モノクローナル抗体を発現するHUCPVC。
生物学的兵器作用物質としてのVEEVの歴史
全3個のウマ脳炎熱ウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、西部ウマ脳炎ウイルス(WEE)、及び東部ウマ脳炎ウイルス(EEE)は、潜在的な生物学的兵器作用物質である。ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)は、その感染力(わずか10〜100ビリオンが人間に感染するのに必要とされる)及び身体機能を奪う作用物質としての有効性のため、兵器において使用するのに特に魅力的な作用物質である。VEEV感染が致命的であることは希であるが、インフルエンザと類似した重症を引き起こし、したがって診断するのが困難である可能性がある。脳炎熱は、脳の炎症及び神経系障害などの長期の副作用を引き起こす。VEEVを使用した考えられる生物攻撃は噴霧経路によるものであろうが、VEEVはアルボウイルスであるので蚊が最も活発である期間中に最も有効であろう。VEEVは安定した液状又は乾燥形で散布することも可能である。
【0083】
米国が兵器化したVEEVは、その生物兵器プログラムの終了前は攻撃的な身体機能を奪う作用物質であった。ソビエト連邦も身体機能を奪う作用物質としてVEEVを兵器化した。ソビエトの科学者は、天然痘ウイルスへのVEEVゲノムのスプライシングも実験した。その結果は、顕微鏡下では天然痘ウイルスに類似しているがその宿主中で異なる症状をもたらす組換え天然痘−VEEキメラウイルスであった。1959年、VEEVを含有する凍結乾燥バイアルがソビエトの医療関係者によって偶然落下し、20人の研究スタッフが感染状態になった。この研究室の事故及び他のVEEVの自然に起こった大発生は、噴霧VEEVの感染性を実証する。
【0084】
遺伝子ペイロード:ヒト化抗E2/VEEV抗体
1A4A1のヒトIgG1重鎖定常領域及び単鎖断片可変抗体をコードした、組換え遺伝子融合体(pRSmA116huFc)を生成した(Huら、「ベネズエラウマ脳炎ウイルスに対するネズミモノクローナル抗体のヒト化及び哺乳動物における発現(Humanization and mammalian expression of a murine monoclonal antibody against Venezuelan equine encephalitis virus)」Vaccine25:3210〜3214(2007))。ネズミモノクローナル抗体1A4A1は、VEEVのエンベロープ糖タンパク質E2の保存された中和エピトープを認識することが示されている(Roehrigら、「ベネズエラウマ脳脊髄炎(TC085)ウイルスのE2糖タンパク質上の中和部位は、多数の立体配座が安定したエピトープで構成される(The neutralizing site on the E2 glycoprotein of Venezuelan equine encephalomyelitis (TC085) virus is composed of multiple conformationally stable epitopes)」Virology142:347〜356(1985))。この遺伝子融合体を、アデノ随伴ウイルス(AAV)の転写制御の下に置いて、ヒト細胞中で高レベルの構成的発現を誘導した。
【0085】
In Vitroでの抗E2VEEV組換え抗体産生の評価
HUCPVCを培養し(例えば、Ennisら(2008)を参照)、pAAV−RsmA116huFcを形質導入してモノクローナル抗体1A4A1の発現を可能にする。さらなる実験(例えば、ELISA)によって遺伝子改変されたHUCPVCが産生することができる組換え抗体の量を確認し、この発現の長さを記載する。さらに、結合試験を実施して、組換え抗体の生物活性及びVEEVビリオンを中和するそれらの能力を確認する。
【0086】
In Vivoでの抗体産生、薬物動態及び有効性
生物活性がある抗VEEV抗体を分泌することが示されている安定したHUCPVCトランスフェクタントを、静脈内、筋肉内、又は皮下投与によってマウスに導入する。免疫正常マウスを使用する。骨髄基質由来の生物学的に類似した細胞はin vivoで異種として使用するとき拒絶されず(Plotnikovら、「異種移植成体ヒト間葉系幹細胞は、イヌの心臓中で持続性生物学的ペースメーカー機能の基盤となる(Xenografted adult human mesenchymal stem cells provide a platform for sustained biological pacemaker function in canine heart)」Circulation116:706〜713(2007))、ラット中でのHUCPVCを用いた準備作業は拒絶を示さないからである(非公開データ)。一連の血清サンプルを抗VEEV抗体の量、質、及び寿命に関して評価する。
【0087】
病原体の攻撃の実験
抗VEEVMAbの治療レベルを治療したマウスにおいて確認した後、マウスを鼻腔内VEEV攻撃で攻撃して、標準的な方法を使用して発現したMAbの予防効果を測定する。
【0088】
(例2)
エボラウイルス糖タンパク質(GP)を発現して防御免疫応答を刺激するHUCPVC。
遺伝子ペイロード:エボラウイルス(ザイール菌株)の糖タンパク質
ザイールエボラウイルス菌株メインガ(ZEBOV)の糖タンパク質(GP)を発現するrVSVベクターを作製する(例えば、Garbuttら、J Virol.78:5458〜65、2004、及びJonesら、Nat Med11:786〜90、2005を参照)。具体的には、バクテリオファージT7プロモーター配列、VSVリーダー配列、肝炎ウイルスデルタウイルスリボザイム配列、及びT7ターミネーター配列と隣接する、5つのVSV遺伝子(核タンパク質(N)、リンタンパク質(P)、マトリクスタンパク質(M)、糖タンパク質(G)、及びポリメラーゼ(L))を含有するプラスミドを利用する。G遺伝子とL遺伝子の間には、発現されるエボラウイルス糖タンパク質用の転写開始及び停止シグナルと隣接する、特有のリンカー部位(Xho−NheI)が存在する。培養したHUCPVCに、様々な感染多重度でpVSV/エボラGPベクターを形質導入する。
【0089】
In Vitroでの糖タンパク質産生及び抗原性の評価
形質導入したHUCPVCを、ELISA、ウエスタンブロット、ドットブロット、又は免疫沈降などの、標準的なイムノブロッティング分析を使用してエボラGPの発現に関して試験する。
【0090】
混合リンパ球反応、リンパ球増殖アッセイ、及び細胞毒性アッセイ(例えば、クロム遊離又はIFN−ガンマELISPOT)を使用して、培養中のリンパ球を刺激するために使用したときの、発現したエボラGPの抗原性を決定する。
【0091】
In Vivoでの糖タンパク質の産生、薬物動態及び有効性
in vitroでのGP発現及び抗原性の確認によって、培養したHUCPVCをマウスに静脈内及び腹腔内投与して抗GP免疫を初回抗原刺激する。免疫処置後1週間間隔で、マウスを屠殺し、脾臓及びリンパ節(例えば、液窩、鼠径、及び上腕)を採取する。前に記載したリンパ球増殖及び細胞毒性アッセイを使用して、適応的抗GP免疫応答(例えば、T細胞及び中和抗体)の幅及び有効性を決定する。
【0092】
(例3)
インターフェロンを発現して多くの異なるウイルスに対する広範囲の防御をもたらすHUCPVC。
患者(例えば、兵士)に投与するHUCPVC中でのインターフェロンの組換え発現は、多くの異なるウイルス(例えば、出血熱ウイルス)に対する広範囲の防御をもたらすことができる。遺伝子改変されたHUCPVCによって産生されるインターフェロン(IFN)は、病原性ウイルスに曝された又は感染した患者によって予防的又は治療的に使用され得る。治療剤として投与するとき、IFNは短いin vivo半減期を示す。1つ又は複数のIFN(例えば、IFN−α)を発現させるための遺伝子改変されたHUCPVCの投与は、IFNの持続放出及び送達をもたらすことによってこの欠点を克服する。IFNの標準的な臨床投与は、IFNの迅速な消失動態のために頻繁な注射又は修飾(例えば、ペグ化)を必要とする。この実施例では、遺伝子改変されたHUCPVCを使用してIFN−αを提供することにより、この問題を克服する。
【0093】
遺伝子ペイロード:インターフェロンα(IFN−α)
インターフェロン−αをコードするレトロウイルスベクター(例えば、レンチウイルス)をHUCPVCに形質導入する。HUCPVC染色体中へのプロウイルスDNAの組み込みによって、構成的活性プロモーター(例えば、CMVプロモーター)を使用してIFN−αの発現及び分泌を誘導する。
【0094】
In VitroでのIFN−α産生の評価
形質導入したHUCPVCを、ELISA、ウエスタンブロット、ドットブロット、又は免疫沈降などの、標準的なイムノブロッティング分析を使用してIFN−αの発現に関して試験する。IFN−αの活性は、Foserら、「モノペグ化インターフェロン−α−2a異性体の改善された生物及び転写活性(Improved biological and transcriptional activity of monopegylated interferon−alpha−2a isomers)」、The Pharmacogenomics Jour.3:312〜319(2003)によって記載されたのと同様の抗増殖アッセイによって確認する。
【0095】
In VivoでのIFN−αの産生、薬物動態及び有効性
in vitroでのIFN−αの発現及び活性の確認によって、培養したHUCPVCをマウスに静脈内又は腹腔内投与する。予防効果の試験のため、ウイルス(例えば、LCMV)とのHUCPVC投与後1週間マウスを攻撃する。さらに、数匹のマウスに、遺伝子改変されたHUCPVCの投与前に1週間ウイルス(例えば、LCMV)を感染させて、これらの細胞の治療可能性を評価する。血清サンプルから導かれるウイルス力価は実験の経過中に計算し、HUCPVC/IFN−α治療を与えなかったマウスに対してプロットしてin vivoでの有効性を決定する。
【0096】
他の実施形態
本発明をその具体的な実施形態に関して記載してきたが、さらなる変更形態が可能であり、本出願は、一般に本発明の原理に従い、本発明が属する技術分野内の既知又は慣例の範囲内にある本開示から逸脱するようなものを含めた、本発明の任意の変形、使用、又は適用を包含することを目的とし、本明細書中で前に述べた必要な特徴に適合させることが可能であることは理解されよう。
【0097】
本明細書中で言及する全ての刊行物及び特許出願は、それぞれ独立した刊行物又は特許出願が参照としてそれらの全容が本明細書に組み込まれることが具体的且つ個別に示される場合と同じ程度で、参照として本明細書に組み込まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的又は化学的作用物質からの攻撃に対して対象を保護するための方法であって、遺伝子改変されていないヒト臍帯血管周囲細胞(HUCPVC)と比較して該HUCPVC中でのオリゴヌクレオチド又はポリペプチドの発現が増大するように遺伝子改変されたHUCPVCを対象に投与することを含み、該HUCPVCが前記生物学的又は化学的作用物質から該対象を保護する、上記方法。
【請求項2】
前記対象が脊椎動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脊椎動物が哺乳動物である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記哺乳動物がヒトである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記HUCPVCが前記対象にとって同種異系又は異種である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記生物学的作用物質が病原体である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記病原体が細菌、ウイルス、真菌、又は寄生虫である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記細菌が緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、大腸菌(Escherichia coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、ブルセラ菌(Bruscella)、鼻疽菌(Burkholderia mallei)、ペスト菌(Yersinia pestis)、及び炭疽菌(Bacillus anthracis)から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ウイルスが、ギャドゲッツガリーウイルス(Gadgets Gully virus)、カダムウイルス(Kadam virus)、キャサヌール森林病ウイルス、ランガットウイルス、オムスク出血熱ウイルス、ポワッサンウイルス、ロイヤルファームウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、跳躍病ウイルス、ミーバンウイルス(Meaban virus)、サウマレズリーフウイルス(Saumarez Reef virus)、チュレニーウイルス(Tyuleniy virus)、アロアウイルス、デングウイルス、ケドウゴウウイルス(Kedougou virus)、カシパコアウイルス(Cacipacore virus)、コウタンゴウイルス(Koutango virus)、日本脳炎ウイルス、マーレーバレー脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、ウスツウイルス、西ナイルウイルス、ヤオンデウイルス、ココベラウイルス、バガザウイルス、イレウスウイルス、イスラエルターキー髄膜脳脊髄炎ウイルス、ウンタヤウイルス、テンバスウイルス、ジカウイルス、バンジウイルス、ボウボウイウイルス(Bouboui virus)、エッジヒルウイルス、ジュグラウイルス、サボヤウイルス、セピックウイルス、ウガンダSウイルス、ウェセルスブロンウイルス、黄熱病ウイルス、エンテベコウモリウイルス、ヨコセウイルス、アポイウイルス、カウボンリッジウイルス(Cowbone Ridge virus)、フティアパウイルス、モドックウイルス、サルビージャウイルス(Sal Vieja virus)、サンペルリタウイルス、ブカラサコウモリウイルス、カーレー島ウイルス、ダカーコウモリウイルス、モンタナミオチス白質脳炎ウイルス、プノンペンコウモリウイルス、及びリオブラボーウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、東部ウマ脳炎ウイルス(EEE)、西部ウマ脳炎ウイルス(WEE)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、天然痘ウイルス、ワクシニアウイルス、ラッサウイルス、アイピーウイルス(Ippy virus)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、モバラウイルス(Mobala virus)、モペイアウイルス、アマパリウイルス、フレクサルウイルス(Flexal virus)、グアナリトウイルス、フニンウイルス、ラチノウイルス、マチュポウイルス、オリベロスウイルス(Oliveros virus)、パラナウイルス、ピキンデウイルス、ピリタルウイルス(Pirital virus)、サビアウイルス、タカリベウイルス、タミアミウイルス、及びホワイトウォーターアロヨウイルス、シンノンブレウイルス、ハンターンウイルス、リフトバレー熱ウイルス、クリミアコンゴ出血熱ウイルス、ドゥグベウイルス(Dugbe virus)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)、インフルエンザウイルスA、H5N1鳥インフルエンザウイルス、インフルエンザウイルスB、インフルエンザウイルスC、重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルス、狂犬病ウイルス、及び水泡性口内炎ウイルス(VSV)から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記真菌がアスペルギルス(Aspergillus)、ブラストミセスデルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、カンジダ(Candida)、コクシジオイデスイミティス(Coccidioides immitis)、クリプトコッカスネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラズマカプスラーツム変種カプスラーツム(Histoplasma capsulatum var.capsulatum)、パラコクシジオイデスブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)、スポロトリクスシェンキイ(Sporothrix schenckii)、接合菌網種(Zygomycetes spp.)、アブシディアコリンビフェラ(Absidia corymbifera)、リゾムコールプシラス(Rhizomucor pusillus)、及びリゾプスアルヒザス(Rhizopus arrhizus)から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記寄生虫がトキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)、卵形マラリア原虫(P.ovale)、四日熱マラリア原虫(P.malariae)、トリパノソーマ種(Trypanosoma spp.)、及びレジオネラ種(Legionella spp.)から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記化学的作用物質が細菌、ウイルス、真菌、又は寄生虫の毒素である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記毒素がリシン、ジフテリア毒素、大腸菌(E.coli)腸毒素、コレラ菌(Vibrio cholerae)腸毒素、ブドウ球菌(Staphylococcal)腸毒素、連鎖球菌(Streptococcal)腸毒素、及びボツリヌス毒素から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記化学的作用物質が合成又は天然由来である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記化学的作用物質が神経剤、発疱剤、血液剤、及び呼吸器作用物質から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記化学的作用物質がナイトロジェンマスタード、硫黄マスタード、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、及びルイサイトから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記化学的作用物質がサキシトキシン、ビス(2−クロロエチル)エチルアミン、2−クロロビニルジクロロアルシン、2−クロロエチルクロロメチルスルフィド、ビス(2−クロロエチル)スルフィド、サリン(GB)、シクロサリン(GF)、ソマン(GD)、タブン(GA)、VX、アミトン、PFIB、3−キヌクリジニルベンジレート、ホスゲン、ジホスゲン、塩化シアン、シアン化水素、クロロピクリンから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリペプチドが抗体、抗体断片、微生物抗原、サイトカイン又は増殖因子、ホルモン、凝固因子、薬剤耐性又は抗ウイルス耐性ポリペプチド、抗毒素薬、抗酸化剤、受容体又はリガンド、免疫調節因子、検出可能な標識、及び細胞性因子から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞が前記抗体又は抗体断片を合成及び分泌する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体又は抗体断片が組換えであり、又はヒト化されている、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体又は抗体断片がモノクローナルである、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記抗体又は抗体断片が単鎖抗体(scFv)、Fab、Fab’2、scFv、SMIP、ダイアボディ、ナノボディ、アプタマー、又はドメイン抗体である、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記サイトカイン又は増殖因子が腫瘍壊死因子α(TNF−α)、TNF−β、インターフェロン−α(IFN−α)、IFN−β、IFN−γ、インターロイキン1(IL−1)、IL−1β、インターロイキン2〜14、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、RANTES、MIP−1α、形質転換増殖因子−β(TGF−β)、血小板由来増殖因子(PGDF)、インスリン様増殖因子(IGF)、表皮増殖因子(EGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、エリスロポエチン(EPO)、及びトロンボポエチン(TPO)から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記ホルモンがアンギオテンシノゲン、アンギオテンシン、副甲状腺ホルモン(PTH)、塩基性線維芽細胞増殖因子−2、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、バソプレシン、オキシトシン、ソマトスタチン、ガストリン、コレシストキニン、レプチン、心房性ナトリウム利尿ペプチド、エピネフリン、ノルエフィネフリン、ドーパミン、カルシトニン、及びインスリンから選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記凝固因子が第VII因子、第VIII因子、第IX因子、及びフィブリノゲンから選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記酵素がブチリルコリンエステラーゼ(BChE)、アデノシンデアミナーゼ、グルコセレブロシダーゼ、α−1アンチトリプシン、ウイルスチミジンキナーゼ、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ、マンガンスーパーオキシドジスムターゼ(Mn−SOD)、カタラーゼ、銅−亜鉛−スーパーオキシドジスムターゼ(CuZn−SOD)、細胞外スーパーオキシドジスムターゼ(EC−SOD)、グルタチオンリダクターゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、一酸化窒素合成酵素、及びパラオキシナーゼから選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記受容体又はリガンドがT細胞受容体(TCR)、LDL受容体、表面結合免疫グロブリン、可溶性CD4、嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス受容体(CFTR)、及びFc受容体から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
前記免疫調節因子がCTLA−4、VCP、PLIF、LSF−1、Nip、CD200、ウロモジュリン、CD40L(CD154)、FasL、CD27L、CD30L、4−1BBL、CD28、CD25、B7.1、B7.2、及びOX40Lから選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
前記検出可能な標識が緑色蛍光タンパク質(GFP)である、請求項18に記載の方法。
【請求項30】
前記細胞性因子がシトクロムb、ApoE、ApoC、ApoAI、MDR、組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、ヒルジン、β−グロビン、α−グロビン、HbA、ras、src、及びbclから選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項31】
前記オリゴヌクレオチドが、ウイルス複製又は感染を阻害することができるRNA干渉(RNAi)分子から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記RNAi分子が低分子阻害型RNA(siRNA)又はショートヘアピン型RNA(shRNA)分子である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記対象が前記投与の前に前記生物学的又は化学的作用物質に曝されている、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記HUCPVCを含む単回用量の組成物を前記対象に投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記HUCPVCをワクチンとして投与して前記対象を保護する、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記ポリペプチドが、抗原として作用し、それによって前記対象中で前記生物学的又は化学的作用物質に対する免疫応答を発生させる細胞タンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記細胞が前記対象中に1週間を超えて存続する、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記HUCPVCが前記対象中に1カ月を超えて存続する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記HUCPVCが前記対象中に2カ月を超えて存続する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記HUCPVCが前記対象に静脈内、筋肉内、経口、吸入、非経口、腹腔内、動脈内、経皮、舌下、鼻腔、頬側、リポソーム、脂肪、眼部、眼球内、皮下、くも膜下、局所、又は局部投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記HUCPVCが前記対象中での免疫認識を回避する、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記対象に投与当たり101〜1013個のHUCPVCを投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
前記対象に投与当たり103〜108個のHUCPVCを投与する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記HUCPVCが2つ以上のオリゴヌクレオチド又はポリペプチドを発現するように遺伝子改変されている、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
HUCPVCではない少なくとも1つの間葉系幹細胞(MSC)を投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項46】
前記MSCが、遺伝子改変されていないMSCと比較して前記MSC中でのオリゴヌクレオチド又はポリペプチドの発現が増大するように遺伝子改変されている、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記MSCを骨髄、臍帯血、胚卵黄嚢、胎盤、皮膚、又は血液から単離する、請求項42に記載の方法。
【請求項48】
前記対象に1つ又は複数の治療剤を投与することをさらに含み、前記治療剤がHUCPVC治療の予防的又は治療的利益を増強又は延長する、請求項1に記載の方法。
【請求項49】
前記治療剤がサイトカイン、抗ウイルス剤、免疫促進剤、又は免疫抑制剤である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記HUCPVCを、薬学的に許容される担体又は賦形剤と共に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項51】
前記オリゴヌクレオチド又はポリペプチドが前記HUCPVCにとって内因性である、請求項1に記載の方法。
【請求項52】
前記オリゴヌクレオチド又はポリペプチドが前記HUCPVCにとって内因性でない、請求項1に記載の方法。
【請求項53】
前記オリゴヌクレオチド又はポリペプチドが前記MSCにとって内因性である、請求項46に記載の方法。
【請求項54】
前記オリゴヌクレオチド又はポリペプチドが前記MSCにとって内因性でない、請求項46に記載の方法。
【請求項55】
遺伝子改変されていないヒト臍帯血管周囲細胞(HUCPVC)と比較して該HUCPVC中でのオリゴヌクレオチド又はポリペプチドの発現が増大するように遺伝子改変されたHUCPVCを含むキットであって、該HUCPVCが生物学的又は化学的作用物質からの保護をもたらす、上記キット。
【請求項56】
請求項1から54までのいずれか一項に記載の方法で使用するために遺伝子改変されているヒト臍帯血管周囲細胞。
【請求項57】
薬学的に許容される担体及び請求項56に記載の遺伝子改変されたヒト臍帯血管周囲細胞を含む医薬組成物であって、該細胞が請求項1から54までのいずれか一項に記載の方法に従って使用するのに有効な用量で存在する、上記医薬組成物。
【請求項1】
生物学的又は化学的作用物質からの攻撃に対して対象を保護するための方法であって、遺伝子改変されていないヒト臍帯血管周囲細胞(HUCPVC)と比較して該HUCPVC中でのオリゴヌクレオチド又はポリペプチドの発現が増大するように遺伝子改変されたHUCPVCを対象に投与することを含み、該HUCPVCが前記生物学的又は化学的作用物質から該対象を保護する、上記方法。
【請求項2】
前記対象が脊椎動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脊椎動物が哺乳動物である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記哺乳動物がヒトである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記HUCPVCが前記対象にとって同種異系又は異種である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記生物学的作用物質が病原体である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記病原体が細菌、ウイルス、真菌、又は寄生虫である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記細菌が緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、大腸菌(Escherichia coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、ブルセラ菌(Bruscella)、鼻疽菌(Burkholderia mallei)、ペスト菌(Yersinia pestis)、及び炭疽菌(Bacillus anthracis)から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ウイルスが、ギャドゲッツガリーウイルス(Gadgets Gully virus)、カダムウイルス(Kadam virus)、キャサヌール森林病ウイルス、ランガットウイルス、オムスク出血熱ウイルス、ポワッサンウイルス、ロイヤルファームウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、跳躍病ウイルス、ミーバンウイルス(Meaban virus)、サウマレズリーフウイルス(Saumarez Reef virus)、チュレニーウイルス(Tyuleniy virus)、アロアウイルス、デングウイルス、ケドウゴウウイルス(Kedougou virus)、カシパコアウイルス(Cacipacore virus)、コウタンゴウイルス(Koutango virus)、日本脳炎ウイルス、マーレーバレー脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、ウスツウイルス、西ナイルウイルス、ヤオンデウイルス、ココベラウイルス、バガザウイルス、イレウスウイルス、イスラエルターキー髄膜脳脊髄炎ウイルス、ウンタヤウイルス、テンバスウイルス、ジカウイルス、バンジウイルス、ボウボウイウイルス(Bouboui virus)、エッジヒルウイルス、ジュグラウイルス、サボヤウイルス、セピックウイルス、ウガンダSウイルス、ウェセルスブロンウイルス、黄熱病ウイルス、エンテベコウモリウイルス、ヨコセウイルス、アポイウイルス、カウボンリッジウイルス(Cowbone Ridge virus)、フティアパウイルス、モドックウイルス、サルビージャウイルス(Sal Vieja virus)、サンペルリタウイルス、ブカラサコウモリウイルス、カーレー島ウイルス、ダカーコウモリウイルス、モンタナミオチス白質脳炎ウイルス、プノンペンコウモリウイルス、及びリオブラボーウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、東部ウマ脳炎ウイルス(EEE)、西部ウマ脳炎ウイルス(WEE)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、天然痘ウイルス、ワクシニアウイルス、ラッサウイルス、アイピーウイルス(Ippy virus)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、モバラウイルス(Mobala virus)、モペイアウイルス、アマパリウイルス、フレクサルウイルス(Flexal virus)、グアナリトウイルス、フニンウイルス、ラチノウイルス、マチュポウイルス、オリベロスウイルス(Oliveros virus)、パラナウイルス、ピキンデウイルス、ピリタルウイルス(Pirital virus)、サビアウイルス、タカリベウイルス、タミアミウイルス、及びホワイトウォーターアロヨウイルス、シンノンブレウイルス、ハンターンウイルス、リフトバレー熱ウイルス、クリミアコンゴ出血熱ウイルス、ドゥグベウイルス(Dugbe virus)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)、インフルエンザウイルスA、H5N1鳥インフルエンザウイルス、インフルエンザウイルスB、インフルエンザウイルスC、重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルス、狂犬病ウイルス、及び水泡性口内炎ウイルス(VSV)から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記真菌がアスペルギルス(Aspergillus)、ブラストミセスデルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、カンジダ(Candida)、コクシジオイデスイミティス(Coccidioides immitis)、クリプトコッカスネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラズマカプスラーツム変種カプスラーツム(Histoplasma capsulatum var.capsulatum)、パラコクシジオイデスブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)、スポロトリクスシェンキイ(Sporothrix schenckii)、接合菌網種(Zygomycetes spp.)、アブシディアコリンビフェラ(Absidia corymbifera)、リゾムコールプシラス(Rhizomucor pusillus)、及びリゾプスアルヒザス(Rhizopus arrhizus)から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記寄生虫がトキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)、卵形マラリア原虫(P.ovale)、四日熱マラリア原虫(P.malariae)、トリパノソーマ種(Trypanosoma spp.)、及びレジオネラ種(Legionella spp.)から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記化学的作用物質が細菌、ウイルス、真菌、又は寄生虫の毒素である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記毒素がリシン、ジフテリア毒素、大腸菌(E.coli)腸毒素、コレラ菌(Vibrio cholerae)腸毒素、ブドウ球菌(Staphylococcal)腸毒素、連鎖球菌(Streptococcal)腸毒素、及びボツリヌス毒素から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記化学的作用物質が合成又は天然由来である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記化学的作用物質が神経剤、発疱剤、血液剤、及び呼吸器作用物質から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記化学的作用物質がナイトロジェンマスタード、硫黄マスタード、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、及びルイサイトから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記化学的作用物質がサキシトキシン、ビス(2−クロロエチル)エチルアミン、2−クロロビニルジクロロアルシン、2−クロロエチルクロロメチルスルフィド、ビス(2−クロロエチル)スルフィド、サリン(GB)、シクロサリン(GF)、ソマン(GD)、タブン(GA)、VX、アミトン、PFIB、3−キヌクリジニルベンジレート、ホスゲン、ジホスゲン、塩化シアン、シアン化水素、クロロピクリンから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリペプチドが抗体、抗体断片、微生物抗原、サイトカイン又は増殖因子、ホルモン、凝固因子、薬剤耐性又は抗ウイルス耐性ポリペプチド、抗毒素薬、抗酸化剤、受容体又はリガンド、免疫調節因子、検出可能な標識、及び細胞性因子から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞が前記抗体又は抗体断片を合成及び分泌する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体又は抗体断片が組換えであり、又はヒト化されている、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体又は抗体断片がモノクローナルである、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記抗体又は抗体断片が単鎖抗体(scFv)、Fab、Fab’2、scFv、SMIP、ダイアボディ、ナノボディ、アプタマー、又はドメイン抗体である、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記サイトカイン又は増殖因子が腫瘍壊死因子α(TNF−α)、TNF−β、インターフェロン−α(IFN−α)、IFN−β、IFN−γ、インターロイキン1(IL−1)、IL−1β、インターロイキン2〜14、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、RANTES、MIP−1α、形質転換増殖因子−β(TGF−β)、血小板由来増殖因子(PGDF)、インスリン様増殖因子(IGF)、表皮増殖因子(EGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、エリスロポエチン(EPO)、及びトロンボポエチン(TPO)から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記ホルモンがアンギオテンシノゲン、アンギオテンシン、副甲状腺ホルモン(PTH)、塩基性線維芽細胞増殖因子−2、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、バソプレシン、オキシトシン、ソマトスタチン、ガストリン、コレシストキニン、レプチン、心房性ナトリウム利尿ペプチド、エピネフリン、ノルエフィネフリン、ドーパミン、カルシトニン、及びインスリンから選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記凝固因子が第VII因子、第VIII因子、第IX因子、及びフィブリノゲンから選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記酵素がブチリルコリンエステラーゼ(BChE)、アデノシンデアミナーゼ、グルコセレブロシダーゼ、α−1アンチトリプシン、ウイルスチミジンキナーゼ、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ、マンガンスーパーオキシドジスムターゼ(Mn−SOD)、カタラーゼ、銅−亜鉛−スーパーオキシドジスムターゼ(CuZn−SOD)、細胞外スーパーオキシドジスムターゼ(EC−SOD)、グルタチオンリダクターゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、一酸化窒素合成酵素、及びパラオキシナーゼから選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記受容体又はリガンドがT細胞受容体(TCR)、LDL受容体、表面結合免疫グロブリン、可溶性CD4、嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス受容体(CFTR)、及びFc受容体から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
前記免疫調節因子がCTLA−4、VCP、PLIF、LSF−1、Nip、CD200、ウロモジュリン、CD40L(CD154)、FasL、CD27L、CD30L、4−1BBL、CD28、CD25、B7.1、B7.2、及びOX40Lから選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
前記検出可能な標識が緑色蛍光タンパク質(GFP)である、請求項18に記載の方法。
【請求項30】
前記細胞性因子がシトクロムb、ApoE、ApoC、ApoAI、MDR、組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、ヒルジン、β−グロビン、α−グロビン、HbA、ras、src、及びbclから選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項31】
前記オリゴヌクレオチドが、ウイルス複製又は感染を阻害することができるRNA干渉(RNAi)分子から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記RNAi分子が低分子阻害型RNA(siRNA)又はショートヘアピン型RNA(shRNA)分子である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記対象が前記投与の前に前記生物学的又は化学的作用物質に曝されている、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記HUCPVCを含む単回用量の組成物を前記対象に投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記HUCPVCをワクチンとして投与して前記対象を保護する、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記ポリペプチドが、抗原として作用し、それによって前記対象中で前記生物学的又は化学的作用物質に対する免疫応答を発生させる細胞タンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記細胞が前記対象中に1週間を超えて存続する、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記HUCPVCが前記対象中に1カ月を超えて存続する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記HUCPVCが前記対象中に2カ月を超えて存続する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記HUCPVCが前記対象に静脈内、筋肉内、経口、吸入、非経口、腹腔内、動脈内、経皮、舌下、鼻腔、頬側、リポソーム、脂肪、眼部、眼球内、皮下、くも膜下、局所、又は局部投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記HUCPVCが前記対象中での免疫認識を回避する、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記対象に投与当たり101〜1013個のHUCPVCを投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
前記対象に投与当たり103〜108個のHUCPVCを投与する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記HUCPVCが2つ以上のオリゴヌクレオチド又はポリペプチドを発現するように遺伝子改変されている、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
HUCPVCではない少なくとも1つの間葉系幹細胞(MSC)を投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項46】
前記MSCが、遺伝子改変されていないMSCと比較して前記MSC中でのオリゴヌクレオチド又はポリペプチドの発現が増大するように遺伝子改変されている、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記MSCを骨髄、臍帯血、胚卵黄嚢、胎盤、皮膚、又は血液から単離する、請求項42に記載の方法。
【請求項48】
前記対象に1つ又は複数の治療剤を投与することをさらに含み、前記治療剤がHUCPVC治療の予防的又は治療的利益を増強又は延長する、請求項1に記載の方法。
【請求項49】
前記治療剤がサイトカイン、抗ウイルス剤、免疫促進剤、又は免疫抑制剤である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記HUCPVCを、薬学的に許容される担体又は賦形剤と共に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項51】
前記オリゴヌクレオチド又はポリペプチドが前記HUCPVCにとって内因性である、請求項1に記載の方法。
【請求項52】
前記オリゴヌクレオチド又はポリペプチドが前記HUCPVCにとって内因性でない、請求項1に記載の方法。
【請求項53】
前記オリゴヌクレオチド又はポリペプチドが前記MSCにとって内因性である、請求項46に記載の方法。
【請求項54】
前記オリゴヌクレオチド又はポリペプチドが前記MSCにとって内因性でない、請求項46に記載の方法。
【請求項55】
遺伝子改変されていないヒト臍帯血管周囲細胞(HUCPVC)と比較して該HUCPVC中でのオリゴヌクレオチド又はポリペプチドの発現が増大するように遺伝子改変されたHUCPVCを含むキットであって、該HUCPVCが生物学的又は化学的作用物質からの保護をもたらす、上記キット。
【請求項56】
請求項1から54までのいずれか一項に記載の方法で使用するために遺伝子改変されているヒト臍帯血管周囲細胞。
【請求項57】
薬学的に許容される担体及び請求項56に記載の遺伝子改変されたヒト臍帯血管周囲細胞を含む医薬組成物であって、該細胞が請求項1から54までのいずれか一項に記載の方法に従って使用するのに有効な用量で存在する、上記医薬組成物。
【公表番号】特表2011−518199(P2011−518199A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505330(P2011−505330)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【国際出願番号】PCT/CA2009/000528
【国際公開番号】WO2009/129616
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(510279158)ティシュー リジェネレイション セラピューティックス、インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【国際出願番号】PCT/CA2009/000528
【国際公開番号】WO2009/129616
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(510279158)ティシュー リジェネレイション セラピューティックス、インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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