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生物学的因子の結晶、高分子ゲルおよび粒子懸濁液を含む持続放出処方物
説明

生物学的因子の結晶、高分子ゲルおよび粒子懸濁液を含む持続放出処方物

【課題】生物学的因子の結晶、高分子ゲルおよび粒子懸濁液を含む持続放出処方物の提供。
【解決手段】本発明は、持続性の生物学的利用能を可能とする、生物学的因子の持続放出性処方物に関する。好ましい生物学的因子としては、骨形態形成タンパク質が挙げられる。本発明の処方物を用いた改善および/または処置ができる疾患としては、骨格組織疾患(例えば、限定ではないが、変形性関節症および他の骨軟骨疾患)が挙げられる。本発明の持続放出性処方物は、最少に血管形成されているかまたは血管形成されていない組織部位(例えば、限定ではないが、関節内、関節間、または半月板内の部位)の処置に、特に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2006年12月21日に出願された米国仮特許出願第60/876,292号の優先権および利益を主張しており、その内容は、本明細書において参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(技術分野)
本発明は、一般に、生物学的因子(BA)、より具体的には、タンパク質;さらに具体的には、生理的溶解度が低いタンパク質;特に、骨形態形成タンパク質(BMP)の送達のための持続放出処方物に関する。これらの処方物は、固体もしくは液体のBA結晶(結晶化溶媒を含むものおよび含まないものの両方)、BA高分子ゲル、またはBA粒子懸濁液を含む組成物である。本発明は、さらに、薬学的組成物を提供し、ならびに、上記処方物および薬学的組成物を、全身的または直接的に、組織(特に疾患(特に変形性関節症および骨軟骨疾患)により影響を受けた関節)に投与する方法を提供する。さらに、本発明は、疾患(特に、変形性関節症および骨軟骨疾患)の処置に使用するための上記処方物および組成物を含むキットに関する。本発明はまた、固体および液体のBA結晶、BA高分子ゲル、ならびにBA粒子懸濁液で損傷または疾患を処置するための方法に関する。
【0003】
(背景)
骨形態形成タンパク質(BMP)は、トランスフォーミング増殖因子β(TGF−β)のスーパーファミリーに属し、多様な一連の細胞プロセスおよび発生プロセス(例えば、パターン形成および組織の特定化、ならびに成体組織における創傷治癒プロセスおよび修復プロセスの促進)を制御する。BMPは、当初、骨および軟骨の形成を誘発するその能力によって単離された。BMPシグナル伝達は、骨折および関連する組織損傷の際に誘発され得、骨の再生および修復をもたらす。
【0004】
これまで、当業者には、BMPの投与を繰り返すことなく長時間にわたり臨床的に有効な用量のBMPを送達するための信頼し得る手段がなかった。実際のところ、タンパク質性のBAの持続的送達は、一般に、依然として未解決の難問である。さらに、タンパク質技術および薬化学における進歩にかかわらず、少なくとも2つの課題が、維持したレベルで重要な生理学的因子を患者に提供することを必要とする臨床家を悩ませ続けている。
【0005】
第一に、ほとんどの治療薬は、経口投与される。しかしながら、経口投与および他の従来の薬物送達方法は、しばしば、高分子薬物には不適切である。なぜなら、高分子薬物の多くは、血流および/もしくは胃腸管において不安定であるか、高用量で毒性であるか、または治療的に有効な濃度範囲(治療域(therapeutic window))が狭いためである。これは、軟骨疾患、骨軟骨疾患および/または関節の疾患もしくは損傷の場合、そのような組織はほとんど血管形成されず、かつ一部の慣用の全身投与態様を用いる処置ができないため、さらに複雑である。さらに、タンパク質は、一般にインビボ半減期が短くかつ/または経口での生物学的利用能は無視できるほど低いため、例えば治療用タンパク質は、典型的には、頻繁な注入により投与される。これは、患者に対してかなりの身体的負担を課し、患者管理に関連した相当な管理費を生ずる。効能、安全性、患者の利便性および患者のコンプライアンスをより大きくするために、タンパク質および他の高分子薬物の改善された持続放出処方物の開発および評価を試みて、多くの努力がなされてきた。少なくとも、1回の投与により持続的な局所放出を可能とする持続放出様式が望ましい。
【0006】
第二に、有効成分をキャリア、ビヒクルまたは他の不活性因子と共に調製する必要性を回避する処方物は、投薬形態の製造に固有の多大な複雑さを排除する。そのような比較的単純な投薬形態の他の利益として、製造費用の低減およびより高い活性収率の可能性が挙げられる。したがって、キャリア、ビヒクルまたは他の不活性因子を必要としない様式は、生物学的活性因子を全身的または局所的に投与するための好ましい代替手段を当業者に提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、生物学的活性因子(特に、高分子(例えば、BMPおよび他のタンパク質性高分子の生物学的薬剤または薬物))の投与に適したさらなる持続送達処方物に対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の概要)
本発明は、BA(特にタンパク質一般)の高次の三次元構造または三次構造を、持続放出性または時限放出性の処方物を調製する際に利用し得るという知見に基づいている。これらの高次構造を保つことにより、個々のタンパク質分子が時間とともに放出されて生物学的に利用可能となり機能的となるBAの貯蔵物が調製され得る。さらに、(特に治療計画における)タンパク質の最適な使用に関するこれまでの制限要因は、医薬製造中およびその後の配送中に直面する化学的変性および物理的変性に対する個々のタンパク質の構造の感受性であった。本発明は、そのような制限を回避し得る。別の制限要因は、生物学的利用能および投与形態の選択(すなわち、全身投与に対して局所投与)への生物学的利用能の依存性に関連し、特に、血液供給が少ないかまたは無視できるほど少ない組織または組織部位(例えば、非石灰化骨格組織(例えば、軟骨)など)の場合に該当する。本発明は、局所(すなわち、移植)または全身(すなわち、皮下または筋肉内)のいずれかにより、持続的に生物学的に利用可能な用量の生物学的因子を当業者が提供することを可能とする。
【0009】
本発明は、固体もしくは液体のBA結晶、BA高分子ゲル、またはBA粒子懸濁液を含む組成物であって、有効量のBAを放出する組成物に関する。「高分子ゲル」とは、本明細書において使用される場合、キャリアゲル(例えば、PLG−PEG)または類似のポリマー組成物の使用をいうのではない。むしろ、「高分子ゲル」は、BAの高分子配列自体に起因すると考えられるゲル化状態および/またはゲル化現象をいう。本発明は、持続放出様式で放出されるようなBA組成物を提供する。本発明はまた、組織部位における移植に特に適するようなBA組成物を提供する。本発明の別の局面において、上記組織部位は、血管形成されている。本発明の一実施形態において、上記組織部位は血管形成されていない。さらなる実施形態において、上記組織部位は関節である。さらなる実施形態において、上記組織部位は、関節間腔(inter−articular space)である。本発明の別の局面において、全身投与に適したBA組成物が提供される。一実施形態において、上記全身投与は、皮下または筋肉内のいずれかである。別の局面において、本発明は、BA結晶組成物、BA高分子ゲル組成物、またはBA粒子懸濁組成物であって、BAがタンパク質性であるものを特徴とする。一実施形態において、上記タンパク質性BAは、最小に可溶性の(minimally soluble)タンパク質である。一実施形態において、上記タンパク質性BAは、生理的pHにおいて実質的に不溶性であるタンパク質である。一実施形態において、上記タンパク質性BAは、TGF−βスーパーファミリータンパク質のメンバーである。本発明の別の実施形態は、TGF−βスーパーファミリータンパク質のBMPサブファミリーのメンバーであるタンパク質性BAを提供する。本発明の一実施形態において、上記タンパク質性BAは、BMP−2(配列番号1)、BMP−4(配列番号3)、BMP−5(配列番号7)、BMP−6(配列番号9)、BMP−7(配列番号11)、GDF−5(配列番号13)、GDF−6(配列番号15)およびGDF−7(配列番号17)である。本発明の別の局面において、上記タンパク質性BAは、BMP−7である。本発明はまた、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、GDF−5、GDF−6またはGDF−7のいずれか1つの配列改変体であるタンパク質性BAを提供する。本発明の別の局面において、上記タンパク質性BAは、保存されたC末端システインリッチドメイン内でBMPサブファミリーのメンバーと、少なくとも約50%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質である。
【0010】
本発明は、さらに、BAの結晶、高分子ゲル、または粒子懸濁液が、エクスビボで形成される組成物を提供する。本発明の別の局面において、上記BA組成物は、放出改変剤をさらに含む。別の実施形態において、上記BA組成物は、増量剤をさらに含む。本発明はまた、組織損傷または疾患を改善するのに有効な量でBA組成物を提供する。一実施形態において、改善されようとする損傷は、石灰化(mineralized)骨格組織損傷または非石灰化骨格組織損傷である。別の実施形態において、改善されようとする損傷または疾患は、代謝性骨疾患、変形性関節症、骨軟骨疾患、関節リウマチ、骨粗鬆症、パジェット病、歯周炎、象牙質形成、軟骨疾患、外傷に誘発された軟骨変性、炎症に誘発された軟骨変性、加齢に関連した軟骨変性、関節軟骨損傷、関節軟骨疾患、全層軟骨疾患、表在性軟骨欠損、全身性エリテマトーデスの後遺症、強皮症の後遺症、歯周組織再生、椎間板ヘルニア、椎間板破裂、椎間板の変性疾患、骨軟骨症、靭帯の損傷、靭帯の疾患、腱の損傷、腱の疾患、滑液包の損傷、滑液包の疾患、滑膜の損傷、滑膜の疾患、半月板組織の損傷、または半月板組織の疾患である。別の実施形態において、改善されようとする損傷または疾患は、肝疾患、肝臓切除(liver resection)、肝切除(hepatectomy)、腎疾患、慢性腎不全、中枢神経系虚血、中枢神経系外傷、神経障害、運動ニューロン損傷、樹状細胞欠乏、樹状細胞異常、パーキンソン病、眼疾患、眼の瘢痕化、網膜の瘢痕化、または胃腸管の潰瘍性疾患である。
【0011】
本発明の方法は、損傷または疾患を処置するのに有効な量でBA結晶、BAゲルまたはBA粒子懸濁液を含む組成物を、全身的または局所的に提供する工程を包含する。本発明の一実施形態において、上記BA組成物は、移植に適している。別の実施形態において、上記BA組成物は、皮下もしくは筋肉内のいずれかに提供される。本発明の別の局面において、上記方法は、血管形成している組織部位にBA組成物を提供する工程を包含する。別の実施形態において、上記方法は、血管形成していない組織部位に上記BA組成物を提供する工程を包含する。本発明の一局面において、上記BA組成物は、関節間腔に移植される。本発明の方法はまた、放出が少なくとも2日間〜7日間持続されるBA組成物を提供する。本発明の方法の別の局面において、BA組成物は、変形性関節症の処置のために有効な約10〜1000μgの量で提供される。本発明はまた、上記に開示される組成物のいずれかを含む薬学的組成物およびキットを提供する。
【0012】
本発明の上記の特徴および利点、他の特徴および利点、ならびに本発明自体は、以下の図面、説明および特許請求の範囲から、より完全に理解される。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
組織部位における移植に適した組成物であって、該組成物は、生物学的因子を含み、該生物学的因子は、結晶、高分子ゲルまたは粒子懸濁液からなる群より選択され、更に、該生物学的因子は、該組織部位において、該組織部位における損傷または疾患を改善するのに有効な量で持続放出様式で放出される、組成物。
(項目2)
項目1に記載の組成物であって、前記生物学的因子がタンパク質性である、組成物。
(項目3)
項目2に記載の組成物であって、前記生物学的因子が、最小に可溶性のタンパク質である、組成物。
(項目4)
項目3に記載の組成物であって、前記生物学的因子が、生理的pHにおいて実質的に不溶性である、組成物。
(項目5)
項目4に記載の組成物であって、前記生物学的因子が、TGF−βスーパーファミリータンパク質のメンバーである、組成物。
(項目6)
項目5に記載の組成物であって、前記生物学的因子が、BMP−2(配列番号1)、BMP−4(配列番号3)、BMP−5(配列番号7)、BMP−6(配列番号9)、BMP−7(配列番号11)、GDF−5(配列番号13)、GDF−6(配列番号15)およびGDF−7(配列番号17)、ならびにそれらのうちのいずれか1つの配列改変体からなる群より選択される、組成物。
(項目7)
項目5に記載の組成物であって、前記生物学的因子が、BMP−2(配列番号1)、BMP−7(配列番号11)、GDF−5(配列番号13)、GDF−6(配列番号15)およびGDF−7(配列番号17)からなる群より選択される、組成物。
(項目8)
項目5に記載の組成物であって、前記生物学的因子が、GDF−5(配列番号13)、GDF−6(配列番号15)およびGDF−7(配列番号17)からなる群より選択される、組成物。
(項目9)
項目5に記載の組成物であって、前記生物学的因子が、BMP−7(配列番号11)である、組成物。
(項目10)
項目5に記載の組成物であって、前記生物学的因子が、TGF−βスーパーファミリータンパク質のBMPサブファミリーのメンバーである、組成物。
(項目11)
項目10に記載の組成物であって、前記生物学的因子が、保存されたC末端システインリッチドメイン内で、BMPサブファミリーのメンバーと、少なくとも約50%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質である、組成物。
(項目12)
項目4に記載の組成物であって、前記生物学的因子が、TGF−βスーパーファミリータンパク質のメンバーではないタンパク質である、組成物。
(項目13)
項目1に記載の組成物であって、前記生物学的因子が、固体結晶または液晶であり、前記組織部位は、血管形成されているかまたは血管形成されていない、組成物。
(項目14)
項目1に記載の組成物であって、前記生物学的因子が、高分子ゲルであり、前記組織部位は、血管形成されているかまたは血管形成されていない、組成物。
(項目15)
項目1に記載の組成物であって、前記生物学的因子が、粒子懸濁液であり、前記組織部位は、血管形成されているかまたは血管形成されていない、組成物。
(項目16)
項目13、14または15に記載の組成物であって、前記組織部位が、関節である、組成物。
(項目17)
項目13、14、15または16に記載の組成物であって、前記組織部位が、関節間腔である、組成物。
(項目18)
項目17に記載の組成物であって、前記生物学的因子が、BMP−7(配列番号11)である、組成物。
(項目19)
項目1に記載の組成物であって、前記結晶、高分子ゲルまたは粒子懸濁液が、エクスビボで形成される、組成物。
(項目20)
項目1に記載の組成物であって、放出改変剤をさらに含む、組成物。
(項目21)
項目1に記載の組成物であって、増量剤をさらに含む、組成物。
(項目22)
項目1に記載の組成物であって、該組成物が、代謝性骨疾患、変形性関節症、骨軟骨疾患、関節リウマチ、骨粗鬆症、パジェット病、歯周炎、および象牙質形成からなる群より選択される、骨格組織の損傷または疾患を改善するのに有効な量で存在する、組成物。
(項目23)
項目1に記載の組成物であって、該組成物が、変形性関節症、骨軟骨疾患、軟骨疾患、関節リウマチ、外傷に誘発された軟骨変性、炎症に誘発された軟骨変性、加齢に関連した軟骨変性、関節軟骨損傷、関節軟骨疾患、全層軟骨欠損、表在性軟骨欠損、全身性エリテマトーデスの後遺症、強皮症の後遺症、歯周組織再生、椎間板ヘルニア、椎間板破裂、椎間板の変性疾患、骨軟骨症、靭帯の損傷、靭帯の疾患、腱の損傷、腱の疾患、滑液包の損傷、滑液包の疾患、滑膜の損傷、滑膜の疾患、半月板組織の損傷、および半月板組織の疾患からなる群より選択される、非石灰化骨格組織の損傷または疾患を改善するのに有効な量で存在する、組成物。
(項目24)
項目23に記載の組成物であって、該組成物が、外傷に誘発された軟骨変性、炎症に誘発された軟骨変性、関節軟骨損傷、全層軟骨欠損、表層軟骨欠損、椎間板ヘルニア、椎間板破裂、損傷による椎間板の変性、靭帯の損傷、腱の損傷、滑液包の損傷、滑膜の損傷、および半月板組織の損傷からなる群より選択される、組織損傷を改善するのに有効な量で存在する、組成物。
(項目25)
項目22または23に記載の組成物であって、前記疾患が、変形性関節症または骨軟骨疾患である、組成物。
(項目26)
項目1に記載の組成物であって、該組成物が、肝疾患、肝臓切除、肝切除、腎疾患、慢性腎不全、中枢神経系虚血、中枢神経系外傷、神経障害、運動ニューロン損傷、樹状細胞欠乏、樹状細胞異常、パーキンソン病、眼疾患、眼の瘢痕化、網膜の瘢痕化、および胃腸管の潰瘍性疾患からなる群より選択される組織の損傷または疾患を改善するのに有効な量で存在する、組成物。
(項目27)
損傷組織または罹患組織の処置方法であって、該方法は:
損傷組織もしくは罹患組織での、損傷組織もしくは罹患組織の隣接部での、または損傷組織もしくは罹患組織に近傍での、移植に適した組成物を組織部位に供給する工程を包含し、
ここで、該組成物は、結晶、高分子ゲルもしくは粒子懸濁液からなる群より選択される生物学的因子を含み、更に、該生物学的因子が、該組織部位において、該損傷組織もしくは罹患組織を処置するのに有効な量で持続放出様式で放出される、
方法。
(項目28)
項目27に記載の方法であって、前記生物学的因子が、BMP−7(配列番号11)の、結晶、高分子ゲルまたは粒子懸濁液である、方法。
(項目29)
項目27に記載の方法であって、前記生物学的因子が、固体結晶または液晶である、方法。
(項目30)
項目27に記載の方法であって、前記損傷組織または罹患組織が、血管形成されていない組織である、方法。
(項目31)
項目27に記載の方法であって、移植の前記組織部位が、関節間である、方法。
(項目32)
項目27に記載の方法であって、前記罹患組織が、変形性関節症または骨軟骨疾患から生じる、方法。
(項目33)
項目27に記載の方法であって、前記生物学的因子が、少なくとも約2日間〜7日間にわたって持続放出様式で放出される、方法。
(項目34)
項目31に記載の方法であって、前記変形性関節症の処置に有効な量が、約10μg〜約1000μgである、方法。
(項目35)
損傷組織または罹患組織の処置のための薬学的組成物であって、項目1〜26のいずれか1項に記載の組成物および薬学的に受容可能なビヒクルを含む、薬学的組成物。
(項目36)
項目1〜26および項目35のいずれか1項に記載の組成物を備える、キット。
(項目37)
全身性投与に適した組成物であって、該組成物が生物学的因子を含み、該生物学的因子が、結晶、高分子ゲルまたは粒子懸濁液からなる群より選択され、更に、該生物学的因子が、損傷または疾患を改善するのに有効な量で時限放出様式で放出される、組成物。
(項目38)
項目37に記載の組成物であって、全身投与が、皮下または筋肉内のいずれかである、組成物。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、室温にて50mM酢酸(pH4)に移されたBMP−7結晶の1時間後、5時間後、22時間後および96時間後(左から右に)の写真を含む。
【図2】図2は、室温にてリン酸緩衝食塩水(PBS)に移されたBMP−7結晶の1時間後、5時間後、22時間後および96時間後(左から右に)の写真を含む。
【図3】図3は、室温にてウシ滑液に移されたBMP−7結晶の1時間後、5時間後、22時間後および96時間後(左から右に)の写真を含む。
【図4】図4は、50mM酢酸中の遠心濃縮によるBMP−7の高濃度タンパク質ゲルの生成直後の写真を含む。
【図5】図5は、37℃にて、50mM酢酸中で24時間にわたり揺動させた後のBMP−7の高濃度タンパク質ゲルの写真を含む。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(詳細な説明)
本発明は、BMP(例えば、例示のBMPである、BMP−7)が、傷害を受けた軟骨(injured cartilage)、罹患軟骨、損傷を受けた軟骨(damaged cartilage)に対し、関節内投与または半月板内投与の部位における関連の炎症応答または刺激応答なく、改善効果および回復効果を有する持続放出組成物を提供するために処方され得るという知見に基づいている。本発明によれば、BA、好ましくは、タンパク質性因子、最も特定の場合は、BMPが固体もしくは液体の結晶形態であるか、または高分子ゲルもしくは粒子懸濁液として存在する、溶媒または放出改変剤を有するかまたは有さない組成物が提供される。投与された場合、本発明の組成物は、貯蔵物が移植されるかまたは位置する身体部位または組織部位において、BAの持続放出性貯蔵物を提供する。貯蔵物が患者の組織内に存在する場合、BAは、体液、水または他の水性媒体と接触すると、結晶組成物、タンパク質ゲルまたは粒子懸濁液の主として分解、溶解および/または浸出により、持続放出様式および制御様式で放出される。
【0015】
(骨形態形成タンパク質)
上述のように、BMPは、本発明の目的にとって好ましい例示のBAである。BMPは、TGF−βスーパーファミリーに属する。TGF−βスーパーファミリータンパク質は、6つの保存されたシステイン残基により特徴づけられるサイトカインである。ヒトゲノムは、TGF−βスーパーファミリータンパク質をコードする約42個のオープンリーディングフレームを含む。TGF−βスーパーファミリータンパク質は、配列類似性およびそれらのタンパク質が活性化する特定のシグナル伝達経路に基いて、少なくとも、BMPサブファミリーとTGF−βサブファミリーとに分類され得る。BMPサブファミリーとしては、BMP−2、BMP−3(オステオゲニン)、BMP−3b(GDF−10)、BMP−4(BMP−2b)、BMP−5、BMP−6、BMP−7(骨形成タンパク質−1、すなわちOP−1)、BMP−8(OP−2)、BMP−8B(OP−3)、BMP−9(GDF−2)、BMP−10、BMP−11(GDF−11)、BMP−12(GDF−7)、BMP−13(GDF−6、CDMP−2)、BMP−15(GDF−9)、BMP−16、GDF−1、GDF−3、GDF−5(CDMP−1、MP−52)およびGDF−8(ミオスタチン;myostatin)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の目的にとって好ましいスーパーファミリータンパク質としては、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、GDF−5、GDF−6、GDF−7およびMP−52が挙げられる。特に好ましいタンパク質としては、BMP−2、BMP−7、GDF−5、GDF−6、およびGDF−7が挙げられる。最も好ましい例示のBMPは、BMP−7である。BMPは、他の動物種にも存在する。さらに、ヒト集団の異なるメンバー間にはBMP配列中に対立遺伝子・バリエーションがあり、現在までに見出され、特徴づけられたBMP間には種バリエーションがある。本明細で使用される場合、「BMPサブファミリー」、「BMP」、「BMPリガンド」およびそれらの文法上の均等物は、他に特に具体的に示さない限り、BMPサブファミリーメンバーをいう。
【0016】
TGF−βサブファミリーとしては、TGF(例えば、TGF−β1、TGF−β2およびTGF−β3)、アクチビン(例えば、アクチビンA)およびインヒビン、マクロファージ阻害性サイトカイン−1(MIC−1)、ミュラー管阻害物質、抗ミュラー管ホルモン、ならびにグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書において使用される場合、「TGF−βサブファミリー」、「TGF−β」、「TGF−βリガンド」、およびそれらの文法上の均等物は、他に特に具体的に示さない限り、TGF−βサブファミリーメンバーをいう。
【0017】
TGF−βスーパーファミリーは、次に、システインノット(knot)サイトカインスーパーファミリーのサブセットである。システインノットサイトカインスーパーファミリーのさらなるメンバーとしては、血小板由来増殖因子(PDGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、胎盤増殖因子(PIGF)、ノギン(noggin)、ニューロトロフィン(BDNF,NT3、NT4およびβNGF)、ゴナドトロピン、フォリトロピン、ルトロピン、インターロイキン−17、およびコアギュローゲン(coagulogen)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
これらの配列ならびにそれらの化学的改質および物理的性質を開示する刊行物としては、BMP−7およびOP−2(米国特許第5,011,691号;米国特許第5,266,683号;Ozkaynak et al.,EMBO J.,9,pp.2085−2093(1990);OP−3(国際公開第94/10203号(PCT/US93/10520))、BMP−2、BMP−4(国際公開第88/00205号;Wozney et al.,Science,242,pp.1528−1534(1988))、BMP−5およびBMP−6(Celeste et al.,PNAS,87,9843−9847(1990)),Vgr−1(Lyons et al.,PNAS,86,pp.4554−4558(1989));DPP(Padgett et al.,Nature,325,pp.81−84(1987));Vg−1(Weeks,Cell,51,pp.861−867(1987));BMP−9(国際公開第95/33830号(PCT/US95/07084);BMP−10(国際公開第94/26893号(PCT/US94/05290);BMP−11(国際公開第94/26892号(PCT/US94/05288);BMP−12(国際公開第95/16035号(PCT/US94/14030);BMP−13(国際公開第95/16035号(PCT/US94/14030);GDF−1(国際公開第92/00382号(PCT/US91/04096)およびLee et al.,PNAS,88,pp.4250−4254(1991));GDF−8(国際公開第94/21681号(PCT/US94/03019);GDF−9(国際公開第94/15966号(PCT/US94/00685);GDF−10(国際公開第95/10539号(PCT/US94/11440);GDF−11(国際公開第96/01845号(PCT/US95/08543);BMP−15(国際公開第96/36710号(PCT/US96/06540);MP−121(国際公開第96/01316号(PCT/EP95/02552);GDF−5(CDMP−1、MP52)(国際公開第94/15949号(PCT/US94/00657号)、国際公開第96/14335号(PCT/US94/12814)および国際公開第93/16099号(PCT/EP93/00350));GDF−6(CDMP−2、BMP13)(国際公開第95/01801号(PCT/US94/07762)、国際公開第96/14335号および国際公開第95/10635号(PCT/US94/14030));GDF−7(CDMP−3、BMP12)(国際公開第95/10802号(PCT/US94/07799)、および国際公開第95/10635号(PCT/US94/14030))が挙げられる。上記刊行物は、本明細書において参考として援用される。
【0019】
本明細書において使用される場合、「TGF−βスーパーファミリーメンバー」または「TGF−βスーパーファミリータンパク質」は、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)スーパーファミリーのメンバーとして当業者に公知のタンパク質を意味する。構造的には、そのようなタンパク質は、疎水性シグナル配列、数百アミノ酸のN末端プロ領域、ならびに可変N末端領域および高度に保存されたC末端領域(保存された6個または7個のシステイン骨格を有する特徴的なシステインモチーフを伴う約100アミノ酸を含む)を含む成熟ドメインを含む大きな前駆体ポリペプチド鎖として発現されるホモダイマーまたはヘテロダイマーである。これらの構造的に関連したタンパク質は、種々の発生事象に関与するものとして特定された。
【0020】
用語「形態形成タンパク質」は、TGF−βスーパーファミリータンパク質に属するタンパク質であって真の形態形成活性を有するものをいう。例えば、そのようなタンパク質は、前駆細胞を誘導して増殖させ得、かつ/または、局所の環境的合図に依存して軟骨、骨、腱、靭帯、神経、またはその他の種類の分化組織の形成に至る分化経路における事象のカスケードを開始させ得る。したがって、本発明において有用な形態形成タンパク質は、異なる環境においては異なる行動をとり得る。特定の実施形態において、本発明の形態形成タンパク質は、ホモダイマー種またはヘテロダイマー種であり得る。
【0021】
用語「骨形成タンパク質(OP)」は、形態形成タンパク質であって、さらに前駆細胞を誘導して軟骨および/または骨を形成させ得るものをいう。上記骨は、膜内骨または軟骨内骨であり得る。大多数の骨形成タンパク質が、BMPサブファミリーのメンバーであり、したがって、BMPでもある。しかしながら、その逆は真実ではあり得ない。本発明によれば、DNA配列相同性またはアミノ酸配列同一性により同定されたBMPもまた、機能バイオアッセイにおいて骨形成タンパク質であると証明可能な骨形成活性または軟骨形成活性を有さなければならない。適切なバイオアッセイは、当該技術分野において周知である;特に有用なバイオアッセイは、異所骨形成アッセイ(例えば、米国特許第5,011,691号;米国特許第5,266,683号参照)である。
【0022】
構造的には、BMPは、二量体のシステインノットタンパク質である。各BMPモノマーは、複数の分子内ジスルフィド結合を含む。さらなる分子間ジスルフィド結合が、大多数のBMPにおける二量体化を媒介する。BMPは、ホモダイマーを形成し得る。一部のBMPは、ヘテロダイマーを形成し得る。BMPは、1本の長いプロドメイン、1つ以上の切断部位、および1つの成熟ドメインを含むプロタンパク質として発現される。上記プロドメインは、BMPの正確なフォールディングおよびプロセシングを助けると考えられる。さらに、全てではないが一部のBMPにおいて、プロドメインは、成熟ドメインと非共有結合し得、かつインヒビターとして作用し得る(例えば、Thies et al.,(2001)Growth Factors 18:251−259)。
【0023】
BMPは、一本の長いプロドメイン、1つ以上の切断部位、および1つの成熟ドメインを含むプロプロテインとして天然で発現される。次いで、このプロプロテインは、細胞機構により処理されて、二量体の成熟BMP分子を生ずる。上記プロドメインは、BMPの正確なフォールディングおよびプロセシングを助けると考えられる。さらに、全てではないが一部のBMPにおいて、プロドメインは、成熟ドメインと非共有結合し得、かつシャペロンおよびインヒビターとして作用し得る(例えば、Thies et al.,(2001)Growth Factors 18:251−259)。
【0024】
BMPダイマーが2つのI型セリン/トレオニンキナーゼレセプターおよび2つのII型セリン/トレオニンキナーゼレセプターと結合する時に、BMPシグナル伝達が始まる。I型レセプターとしては、ALK−1、ALK−2(ActRlaまたはActRIとも呼ばれる)、ALK−3(BMPRIaとも呼ばれる)、およびALK−6(BMPRIbとも呼ばれる)が挙げられるが、これらに限定されない。II型レセプターとしては、ActRIIa(ActRIIとも呼ばれる)、ActRIIb、およびBMPRIIが挙げられるが、これらに限定されない。ヒトゲノムは、レセプターセリン/トレオニンキナーゼファミリーの12メンバー(7つのI型レセプターおよび5つのII型レセプターを含む)を含み、これらのメンバーは全て、TGF−βシグナル伝達に関与する(Manning et al.,2002、この刊行物の開示は、本明細書において参考として援用される)。BMP結合に続き、II型レセプターはI型レセプターをリン酸化し、I型レセプターは、Smadファミリー転写因子のメンバーをリン酸化し、Smadは、細胞核に移動し、多数の遺伝子の発現を活性化する。
【0025】
BMPはまた、インヒビター、可溶性レセプター、およびデコイレセプター(BAMBI(BMPおよびアクチビン膜結合インヒビター)、BMPER(BMP結合内皮細胞前駆体由来調節因子)、ケルベロス(Cerberus)、コルディン(cordin)、コルディン様、ダン(Dan)、ダンテ(Dante)、フォリスタチン、フォリスタチン関連タンパク質(FSRP)、エクトディン(ectodin)、グレムリン(gremlin)、ノギン(noggin)、ダンおよびケルベロスと関連するタンパク質(PRDC)、スクレロスチン(sclerostin)、スクレロスチン様、ならびに子宮感作関連遺伝子−1(USAG−1)が挙げられるが、これらに限定されない)と相互作用する。さらに、BMPはコレセプターと相互作用し得、例えばBMP−2およびBMP−4は、コレセプターDRAGON(Samad et al.(2005)J.Biol.Chem.)および細胞外マトリックス成分(例えば、へパリンサルフェートおよびヘパリン)(Irie et al.(2003)Biochem.Biophys.Res.Commun.308:858−865)と結合する。
【0026】
本明細書において企図される場合、用語「BMP」は、DNA相同性およびアミノ酸配列同一性に基づいて規定されるTGF−βスーパーファミリータンパク質のBMPサブファミリーに属するタンパク質をいう。本発明によれば、タンパク質は、BMPサブファミリーを特徴づける保存されたC末端システインリッチドメイン内で公知のBMPサブファミリーメンバーと、少なくとも50%のアミノ酸配列同一性を有する場合に、BMPサブファミリーに属する。BMPサブファミリーのメンバーは、全体として、50%未満のDNA配列同一性またはアミノ酸配列同一性を有し得る。本明細書において使用される場合、用語「BMP」は、アミノ酸配列改変体、ドメインを交換した改変体、天然に存在する骨形態形成タンパク質の切断物(truncation)および活性フラグメント、ならびに2つの異なるモノマーBMPペプチドから形成されるヘテロダイマータンパク質(例えば、BMP−2/7ヘテロダイマー;BMP−4/7ヘテロダイマー;BMP−2/6ヘテロダイマー;BMP−2/5ヘテロダイマー;BMP−4/7ヘテロダイマー;BMP−4/5ヘテロダイマー;およびBMP−4/6ヘテロダイマー)であるタンパク質をさらにいう。適切なBMP改変体およびヘテロダイマーとしては、米国特許出願公開第2006/0235204号;国際公開第07/087053号;国際公開第05/097825号;国際公開第00/020607号;国際公開第00/020591号;国際公開第00/020449号;国際公開第05/113585号;国際公開第95/016034号および国際公開第93/009229号に記載されるものが挙げられる。
【0027】
骨成長を促進するために、本発明のBAは、骨誘導(osteoinductive)物質または骨伝導(osteoconductive)物質であり得る。適切な骨成長促進因子としては、例えば、BMPまたはBMP由来のアナログが挙げられる。本明細書において使用される場合、用語「薬物」、「医薬」、または「生物学的因子」/「BA」(すなわち、生物学的活性因子)は、体内で局所的または全身的に作用する、生物学的、生理学的、または薬理学的に活性な物質を、制限なく包含する。BAは、疾患または病気の処置、予防、診断、治癒または緩和のために使用される物質、身体の構造もしくは機能に影響を及ぼす物質、または所定の生理的環境に置かれた後に徐々に生物学的に活性になるかもしくはより活性になるプロドラッグである。結晶、ゲル、粒子懸濁液、または薬学的組成物から、隣接する組織または流体へと放出され得る種々の形態のBAが使用され得る。BAは、水溶性であり、好ましくは、非常に僅かに水溶性であり、さらにより好ましくは、実質的に生理学的に不溶性であり、そして、キャリア、ビヒクルまたはポリマー組成物を通じて拡散可能である。BAは、酸性塩、塩基性塩または両性塩のうちの1つまたはそれらの組み合わせであり得る。BAは、非イオン性分子、極性分子、非極性分子、または水素結合し得る分子錯体のうちの1つまたはそれらの組み合わせであり得る。BAは、例えば、非荷電分子、分子錯体、塩、エーテル、エステル、アミド、ポリマー薬物コンジュゲートの形態または他の形態の組成物に含まれて、有効な生物学的もしくは生理学的活性を提供し得る。
【0028】
当業者にとって、水性環境において放出され得るあらゆるBAを、記載された薬学的組成物において利用し得る。好ましい実施形態において、BAはタンパク質性である。別の好ましい実施形態において、BAは、最小に可溶性である。より好ましい実施形態において、BAは、実質的に生理学的に不溶性である。さらに好ましい実施形態において、BAは、生理的pHにおいて実質的に不溶性である。別の好ましい実施形態において、上記BAは、インビボでの活性なBAの有効な放出を、投与後に1時間、より好ましくは、24時間、より好ましくは、48時間、さらにより好ましくは、1週間、さらにより好ましくは、1か月間、なおさらにより好ましくは、数か月間持続し得る、結晶、高分子ゲルまたは粒子懸濁液として調製または製造されたBAである。特定の好ましい実施形態において、BAは、エクスビボで結晶、高分子ゲルまたは粒子懸濁液として調製または製造され、その後にのみ個体に投与され、したがって、インビボでの活性なBAの有効な放出を、投与後に1時間、より好ましくは、24時間、より好ましくは、48時間、さらにより好ましくは、1週間、なおさらに好ましくは、1か月間、一層さらにより好ましくは、数か月間、持続し得る貯蔵物を個体において作製する。好ましい実施形態において、BAは、実質的に生理学的に不溶性であるタンパク質である。さらにより好ましい実施形態において、BAは、生理的pHにおいて実質的に不溶性であるタンパク質である。別の好ましい実施形態において、BAは、コンフォメーションが固定されたタンパク質である。さらにより好ましい実施形態において、BAは、三次構造および/または四次構造のコンフォメーションの動きが共有結合により制限されるタンパク質である。好ましい実施形態において、上記共有結合は、ジスルフィド架橋である。より特に好ましい実施形態において、BAはTGF−βスーパーファミリーのメンバーである。さらにより特に好ましい実施形態において、BAは、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、GDF−5、GDF−6、GDF−7、ならびにそれらのあらゆる全ての改変体およびホモログからなる群より選択される。例えば、有用なBMPは、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、GDF−5、GDF−6またはGDF−7のC末端システインドメインと少なくとも50%、好ましくは、少なくとも60%、より好ましくは、少なくとも70%、および最も好ましくは、少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を共有する、ホモログまたは改変体である配列を含むものを包含する。本明細書において企図される場合、好ましいBMPは、あらゆるそのようなBMPの生物学的に活性な改変体(保存的アミノ酸置換を含む改変体を包含する)を包含する。本発明が必要とすることは、これらの改変体がネイティブ型に匹敵する生物学的活性を保持することのみである。本明細書において使用される場合、用語「BMP関連タンパク質」は、上述のタンパク質のいずれか1つまたは全てを意味する。
【0029】
本明細書において有用な形態形成タンパク質は、あらゆる公知の天然に存在するネイティブタンパク質(それらの対立遺伝子の系統学的対応物および他の改変体を包含する)を包含する。これらの改変体は、ネイティブタンパク質の、様々なグリコシル化パターンを有する形態、様々なN末端を有する形態、および活性な切断形態または変異形態を包含する。有用な形態形成タンパク質はまた、生合成により生成されるもの(例えば、「ムテイン」または「変異タンパク質」)、および一般的な形態形成ファミリータンパク質の新しく形態形成的に活性なメンバーであるものを包含する。
【0030】
また、種々の形態のBAが使用され得る。これらは、非荷電分子、分子錯体、塩、エーテル、エステル、アミドなどの形態であって、体内に注射された時に生物学的に活性化される形態を、制限なく包含する。好ましいBAとしては、治療活性または予防活性を有するタンパク質(酵素、増殖因子、成長因子、ホルモン、分化因子、サイトカイン、ケモカイン、および抗体を包含する)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
(処置の方法)
本発明は、さらに、疾患(特に、疾患(特に、変形性関節症および骨軟骨疾患)により影響を受けた関節)の処置のための方法を提供する。本発明の方法は、1種以上のBAゲル、BA結晶、もしくはBA粒子懸濁液を個体に投与する工程、または1種以上のBAゲル、BA結晶、もしくはBA粒子懸濁液で個体を処置する工程を包含する。好ましい実施形態において、上記方法は、1種以上のBAゲル、BA結晶、またはBA粒子懸濁液を投与する工程、および上記に開示される通りの1種以上のさらなる生物学的活性因子もまた投与する工程を包含する。特に好ましい実施形態において、上記方法は、BMPゲル、BMP結晶、もしくはBMP粒子懸濁液を個体に投与する工程、またはBMPゲル、BMP結晶、もしくはBMP粒子懸濁液で個体を処置する工程を包含する。さらにより特に好ましい実施形態において、上記方法は、BMP−7ゲル、BMP−7結晶、もしくはBMP−7粒子懸濁液で個体を処置する工程、またはBMP−7ゲル、BMP−7結晶、もしくはBMP−7粒子懸濁液を個体に投与する工程を包含する。本発明の方法はまた、BAゲル、BA結晶、もしくはBA粒子懸濁液を含み、かつ本明細書において上記に開示される一種以上の他の賦形剤もしくは薬剤(放出改変剤、可塑剤、キャリア、撓み性(pliability)改変剤、張度改変剤、共に局在される(co−localized)pH改変剤、または薬学的に受容可能な溶媒および薬学的に受容可能なビヒクルが挙げられるが、これらに限定されない)を含む薬学的組成物の個体への投与、またはそのような薬学的組成物での個体の処置を包含し得る。本発明の方法はまた、予め沈澱させた量のBA(特にBMP)を、BAゲル、BA結晶、またはBA粒子懸濁液と共に、個体に共投与することを包含する。本明細書において使用される場合、「予め沈殿させた」は、個体への投与の前、したがって、個体内でのインビボBA貯蔵物の作製前に、エクスビボで沈殿させたBAをいう。本発明の方法は、体内のどこか、好ましくは、骨格組織部位、好ましくは、非血管形成組織部位、好ましくは、非石灰化骨格組織、好ましくは、関節、好ましくは、関節間腔、より好ましくは、関節軟骨、より好ましくは、滑膜腔、より好ましくは、半月板への投与を包含し得る。多数の要因(適応症、疾患の病状、および個体の身体的特徴が挙げられるが、これらに限定されない)を考慮して、個体の処置を最適化するために本発明の処置方法および投与方法を改変または変更し得ることを、当業者は理解する。
【0032】
(治療的介入)
上記に説明されるように、本発明はまた、本発明の処方物または薬学的組成物を投与することによる処置の方法を提供する。任意の特定のBAの場合、本明細書において企図されるBAの処方物が、このBAが有効である任意の公知または潜在的な状態を処置または予防するために使用され得る。例えば、本発明のBMP処方物は、結合組織(例えば骨および軟骨)の疾患または損傷を患っている患者を処置するために使用され得る。さらに、下記のように、本発明のBMP処方物は、他の組織の疾患または損傷を処置するために使用され得る。
【0033】
BMPは、骨または軟骨とは異なる哺乳類における種々の組織について、骨形態形成および組織形態形成の発生カスケード(developmental cascade)を誘導し得る。この形態形成活性は、前駆細胞の増殖および分化を誘導する能力、ならびに骨、軟骨、非石灰化骨格または結合組織、および他の成体組織の形成をもたらす事象の進行を通して、分化した表現型を支持および維持する能力を包含する。
【0034】
例えば、BMPは、代謝性骨疾患における骨量の減少を予防し、かつ/または骨量を増加させる処置のために使用され得る。骨形成タンパク質を用いて代謝性骨疾患における骨量の減少を予防しかつ/または骨量を増加させるための処置の一般的な方法は、米国特許第5,674,844号に開示されており、その開示内容は、本明細書において参考として援用される。本発明のBMPは、歯周組織再生のために使用され得る。骨形成タンパク質を用いる歯周組織再生のための一般的な方法は、米国特許第5,733,878号に開示されており、その開示内容は、本明細書において参考として援用される。BMPは、肝再生のために使用され得る。骨形成タンパク質を用いる肝再生のための一般的な方法は、米国特許第5,849,686号に開示されており、その開示内容は、本明細書において参考として援用される。BMPは、慢性腎不全の処置のために使用され得る。骨形成タンパク質を用いる慢性腎不全の処置のための一般的な方法は、米国特許第6,861,404号に開示されており、その開示内容は、本明細書において参考として援用される。BMPは、中枢神経系虚血後または中枢神経系外傷後の機能回復を向上させるために使用され得る。骨形成タンパク質を用いて中枢神経系虚血後または中枢神経系外傷後の機能回復を向上させるための一般的な方法は、米国特許第6,407,060号に開示されており、その開示内容は、本明細書において参考として援用される。BMPは、樹状細胞の成長(dendritic growth)を誘導するために使用され得る。骨形成タンパク質を用いて樹状細胞の成長を誘導するための一般的な方法は、米国特許第6,949,505号に開示されており、その開示内容は、本明細書において参考として援用される。BMPは、神経細胞接着を誘導するために使用され得る。骨形成タンパク質を用いて神経細胞接着を誘導するための一般的な方法は、米国特許第6,800,603号に開示されており、その開示内容は、本明細書において参考として援用される。BMPは、パーキンソン病の処置および予防のために使用され得る。骨形成タンパク質を用いるパーキンソン病の処置および予防のための一般的な方法は、米国特許第6,506,729号に開示されており、その開示内容は、本明細書において参考として援用される。
【0035】
さらに、BMPは、罹患または損傷した哺乳動物組織を修復するために使用され得る。罹患または損傷をしていても、その場所の既存の組織が、前駆細胞の増殖および組織特異的分化を可能にする適切なマトリックスを提供する。加えて、損傷した組織または罹患した組織の場所、特に、外科的手段によってさらに攻撃された場所は、形態形成を許容する環境を提供する。
【0036】
BMPはまた、損傷後の瘢痕組織形成を防止または実質的に阻害するために使用され得る。BMPは、移動性線維芽細胞の非分化結合組織への凝集を妨げ、その場所における組織形態形成を誘導し得る。例えば、BMPは、部分肝切除後の実質的に損傷した肝組織の、タンパク質に誘導される形態形成のために使用され得る。
【0037】
別の例として、BMPは、象牙質形成を誘導するためにも使用され得る。損傷に対する歯髄組織の予期し得ぬ応答が、これまでの歯学における基本的な臨床的課題である。さらに別の例として、BMPは、中枢神経系(CNS)に対する再生効果を誘導し得、その修復は、ラット脳穿刺モデルを用いて評価され得る。
【0038】
骨格障害の場合、多数の要因(外傷性および炎症性の疾患を包含する)が、哺乳動物における軟骨変性の原因となるか、またはそれに寄与し得る。炎症性応答の影響から生じる細胞への傷害が、関節の疾患(例えば、関節リウマチ(RA)および変形性関節症(OA))における軟骨機能の低下または軟骨機能の喪失の原因であるとされてきた。加えて、自己免疫疾患(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)および強皮症)もまた、結合組織の変性によって特徴づけられ得る。一部の軟骨変性疾患(例えば、変形性関節症(OA))の場合、関節軟骨の正常な老化を病的なOAプロセスに変える機構は、現在のところ知られていない。上述の疾患の各々は、本発明の物質および方法で効果的に処置され得る。
【0039】
先に述べたように、本発明のBMP処方物は、骨格の疾患または損傷を処置するために効果的に使用され得る。例えば、これらの処方物は、骨折(例えば、開放骨折または閉鎖骨折)を処置するために使用され得る。閉鎖骨折の処置に関し、上記処方物は、好ましくは、骨折部位に注射される。開放骨折、臨界サイズの欠損、または永続的な骨癒合不全に関しては、上記処方物は、骨折部位に外科的移植により投与され得る。両方の場合について、上記処方物は、単独で、または適切なキャリア、マトリックス、もしくは足場(例えば、骨セメント、リン酸カルシウム材料、ゲル材料、もしくはコラーゲンマトリックス)と組み合わせて投与され得る。適切なキャリア、マトリックス、および足場としては、米国特許第6,919,308号;米国特許第6,949,251号;および米国特許第7,041,641号に開示されているものが挙げられる。
【0040】
好ましい実施形態において、本発明のBMP処方物は、軟骨分解または軟骨欠損を生ずる疾患または損傷を処置するために使用され得る。例えば、上記処方物は、軟骨欠損部位(例えば、変性椎間板、または他の線維軟骨組織(腱、靭帯、または半月板を包含する))に適用され得る。そのような方法は、米国特許第6,958,149号に示されている。本発明の処方物はまた、公開されたPCT出願WO05/115438に示されるように、関節軟骨(例えば、関節(例えば、滑膜関節(膝、肘、臀部、または肩を包含する)の軟骨内層))の欠損または変性を処置するために使用され得る。この実施形態において、処方物は、好ましくは関節の滑膜腔に注射される。別の実施形態において、本発明の処方物は、関節軟骨欠損部位(例えば、関節における軟骨欠損または骨軟骨欠損)を処置するために使用される。そのような関節軟骨欠損は、疾患過程(例えば、変形性関節症または関節リウマチ)の結果か、関節の損傷のせいであり得る。この実施形態において、処方物は、関節腔に注射されてもよく、または外科的に移植されてもよい。例えば、処方物は、単独か、あるいは1種以上のさらなる活性因子、支持マトリックスもしくは足場、または骨髄間質細胞と組み合わせて、欠損内に置かれ得る。上記処方物は、必要に応じ、適切な被覆剤(例えば、筋肉弁または生体吸収性膜(例えば、コラーゲン膜))で被覆され得る。
【0041】
(処方および投与)
本発明のBA、特に、BMPは、薬学的組成物の一部として、それを必要とする哺乳動物(好ましくは、ヒト)への投与のために処方され得る。上記組成物は、注射器による、結晶、ゲル、または粒子懸濁液の、直接注射または直接注入を包含するがこれらに限定されない手段によって投与され得る。さらに、結晶、ゲル、または懸濁液は、直接外科的移植、内視鏡検査法、カテーテル法、または洗浄を包含するがこれらに限定されない手段により組織に導入され得る。手術中に適用される場合、上記組成物は、組織上に流されてもよく、組織上に噴霧されてもよく、組織上に塗布されてもよく、または当該技術分野の技術範囲内の任意の他の手段により適用されてもよい。本発明のBA結晶組成物、BA高分子ゲル組成物、およびBA粒子懸濁組成物の全身投与もまた、企図される。好ましい実施形態において、上記BA組成物は、皮下に投与される。別の好ましい実施形態において、上記BA組成物は、筋肉内に投与される。
【0042】
本発明の組成物および処方物は、血管形成されている組織部位および血管形成されていない組織部位の両方の内部での、または内部への、使用、移植、注射、適用、または投与も可能である。好ましい実施形態において、BAゲル、BA結晶、またはBA粒子懸濁液が、血管形成されていない組織部位において、適用されるか、投与されるか、注射されるか、移植されるか、または使用される。本明細書において使用される場合、「血管形成されていない」は、血管形成が最少であるかまたは存在しない、組織または組織部位をいう。そのような血管形成されていない組織部位としては、関節、好ましくは、関節間腔、好ましくは、半月板が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
上記組成物は、適切なキャリアまたは増量剤(生体適合性油(例えば、ゴマ油)、ヒアルロン酸、シクロデキストリン、ラクトース、ラフィノース、マンニトール、カルボキシメチルセルロース、熱反応性ゲル、化学反応性ゲル、スクロースアセテートイソブチレートが挙げられるが、これらに限定されない)中で、またはこれらと共に投与され得る。本発明の実施に最も適う増量剤またはキャリアが、本明細書において開示されるBAの濃縮投薬形態の送達を容易にすること(投薬容量としては、20μl以下の容量が挙げられるが、これに限定されない)を、当業者は理解する。本発明のBA高分子ゲルが、エマルジョンまたはミクロエマルジョンとして投与され得ることも、当業者は理解する。ミクロエマルジョンまたはエマルジョンと共に使用するための最適な懸濁媒体または増量媒体(水性ベースまたは油性ベースのいずれか)およびBA結晶の維持にとって最適な増量/懸濁媒体もまた、当業者により容易に理解され得る。本発明の特に好ましい実施形態において、生理的pHで実質的に不溶性の本発明のBAと共に増量剤を使用して、BA結晶またはBAゲルの溶解を増大させ得、その結果、増量剤は、BAの放出に対する障壁として典型的に作用する。さらに特に好ましい実施形態において、BAはBMP−7である。本発明の上述の実施形態の実施、ならびにインビボでのBA貯蔵物の持続的で有効な投薬後放出を提供すると当業者が認識する本発明のあらゆる全ての変形および改変体の実施は、当該技術分野の技術範囲内にある。
【0044】
なおさらに、本発明のBMP固体結晶、BMP液晶、BMP高分子ゲル、およびBMP粒子懸濁液は、それを必要とする哺乳動物に対し、単独で、または組織形態形成に対して有益な効果を有することが知られる別の物質と組み合わせて投与され得る。そのような物質(本明細書においては、コファクター)の例としては、組織修復および組織再生を促進し、かつ/または炎症を阻害する物質が挙げられるが、これらに限定されない。骨粗鬆症の個体において骨組織増殖を刺激するための有用なコファクターの例としては、例えば、ビタミンD、カルシトニン、プロスタグランジン、副甲状腺ホルモン、デキサメタゾン、エストロゲン、およびIGF−IまたはIGF−IIが挙げられるが、これらに限定されない。神経組織修復および神経組織再生のための有用なコファクターとしては、神経成長因子を挙げ得るが、これらに限定されない。他の有用なコファクターとしては、症状緩和コファクター(防腐剤、抗生物質、抗ウイルス剤、および抗真菌剤、鎮痛剤、ならびに麻酔剤が挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられる。
【0045】
当業者に理解されるように、治療組成物に記載される化合物の濃度は、多数の要因(投与されようとする薬物の投薬量、使用される化合物の化学的性質(例えば、疎水性)、および投与経路を、制限なく包含する)に依存して変化する。投与されようとする薬物の好ましい投薬量もまた、変数(疾患の種類および程度、組織の減少または欠損、特定の患者の総合的な健康状態、選択される化合物の相対的な生物学的効力、化合物の処方、処方物中の賦形剤の存在および種類、ならびに投与経路が挙げられるが、これらに限定されない)に依存するようである。本発明の治療分子は、個体に対し、典型的な用量は1日当たり体重1kg当たり約10ng〜約1gの範囲であるが、体重1kg当たり約0.1mg〜100mgの好ましい用量範囲、および1用量当たり10μg〜1000μgのより特に好ましい投薬量範囲で提供され得る。特に好ましい実施形態において、10μg〜1000μgの用量のBMP−7結晶、BMP−7ゲル、またはBMP−7粒子懸濁液が、変形性関節症を患う個体に投与される。本発明の有効な用量が、多数の要因(適応症、疾患の病理、および個体の身体特性が挙げられるが、これらに限定されない)に照らして改変され得ることを、当業者は理解する。何らかのまたは全ての上述の要因を考慮して、用量を変更、修正、または最適化することも、明らかに、当該技術分野の技術範囲にある。
【0046】
本発明のパラメータおよび条件に従って、BAの放出を制御し得る。特に、本発明に従う移植物、移植可能物、デバイスなどからのBAの放出の速度および程度を、ポリマーの種類および分子量のバリエーション、速度改変剤の使用、可塑剤および浸出可能剤の使用、ならびに熱可塑性ポリマーおよびBAの濃度および種類により制御し得る。
【0047】
速度改変剤、可塑剤、および浸出可能剤を、BAの放出速度を管理するため、および必要に応じてそれらが含まれるマトリックスの撓み性を管理するために含み得る。速度改変剤は、マトリックスに組み込まれる速度改変剤の性質に依存して、放出速度を上昇または遅延させ得る。公知の可塑剤、およびポリマー系における二次的な擬結合に適した有機化合物が、速度改変剤として、そしてまた、撓み性改変剤および浸出剤として許容され得る。一般に、これらの薬剤は、モノカルボン酸エステル、ジカルボン酸エステル、トリカルボン酸エステル、ジオールおよびポリオール、ポリエーテル、非イオン性界面活性剤、脂肪酸、脂肪酸エステル、油(例えば、植物油)などである。マトリックス内のそのような薬剤の濃度は、マトリックスの総重量に対し、60重量%まで、好ましくは、30重量%まで、より好ましくは、15重量%までの量の範囲であり得る。一般に、これらの速度改変剤、浸出剤、可塑剤、および撓み性改変剤、ならびにそれらの用途は、米国特許第5,702,716号および米国特許第5,447,725号に記載されており、これらの開示内容は、本明細書において参考として援用される。ただし、使用されようとするポリマーは、生体適合性および/または生分解性である。本発明がBAの可溶化速度、またはBAのための任意のキャリアの分解速度もしくは浸出速度を上昇させ得る当該技術分野の範囲内のあらゆる全ての因子を含むことを、当業者は理解する。したがって、本発明の実施に適う他の因子としては、共に局在されるpH改変剤および張度改変剤が挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましい実施形態において、本発明の組成物は、BAの可溶化速度を実質的に上昇させる濃度または量で提供される、共に局在されるpH改変剤または張度改変剤を含む。別の好ましい実施形態において、本発明の組成物は、キャリアの分解速度または浸出速度を実質的に上昇させる濃度または量で提供される共に局在されるpH改変剤または張度改変剤を含む。多数の要因(所望される放出速度、キャリア(もしあれば)の性質、適応症、疾患の病理、および個体の身体特性が挙げられるが、これらに限定されない)を考慮して、本発明の速度改変剤、浸出剤、可塑剤、撓み性改変剤、pH改変剤、および張度改変剤の、置換、改変、性質または濃度の変更、および最適化をし得ることを、当業者は理解する。
【0048】
固体もしくは液体のタンパク質結晶、結晶処方物、高分子ゲルの制御溶解、または任意の処方物の構成成分の放出を、多数の要因(結晶、粒子またはゲルの表面積;上記結晶、粒子、またはゲルの大きさ;上記の結晶、粒子またはゲルの形状;任意の賦形剤成分の濃度;任意の賦形剤成分の数および性質;任意の賦形剤成分の分子量;ならびに上述の任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない)により、制御し得る。
【0049】
有機溶媒、水、または任意の他の流体は、任意の手段(窒素、空気、もしくは不活性ガスを用いた乾燥;真空オーブン乾燥;凍結乾燥;揮発性有機溶媒での洗浄、それに続くエバポレーション;換気フードにおけるエバポレーション;湿った結晶上へ気体流を通過させることであって、ガスは、窒素、希ガス、二酸化炭素、空気、もしくはそれらの組み合わせであること;または、保管および送達のための生体適合性溶媒もしくは水性ベースの系への交換が挙げられるが、これらに限定されない)により結晶から除去され得る。
【0050】
本発明の結晶、ゲル、または粒子懸濁液の処方物は、結晶、ゲル、または懸濁液と、1種以上の成分または賦形剤(糖および生体適合性ポリマーを包含する)との組み合わせを含み得る。賦形剤の例は、American Pharmaceutical AssociationおよびPharmaceutical Society of Great Britainにより共同で出版されたHandbook of Pharmaceutical Excipientsに記載されている。本出願の目的のため、「処方物」は、「結晶処方物」を包含する。さらに、「処方物」は、「タンパク質結晶処方物」、「タンパク質ゲル処方物」、および「タンパク質懸濁処方物」を包含する。
【0051】
本明細書において使用される場合、「薬学的に有効な量」は、BA結晶、BA高分子ゲル、またはBA粒子懸濁液の量であって、それがある期間にわたって生体に投与される生体における状態を処置するのに有効な量を意味する。
【0052】
本発明の処方物および薬学的組成物の製造および使用において用い得る賦形剤としては、酸性化剤(例えば、酢酸、氷酢酸、クエン酸、フマル酸、塩酸、希塩酸、リンゴ酸、硝酸、リン酸、希リン酸、硫酸、酒石酸);アルコール変性剤(例えば、安息香酸デナトニウム、メチルイソブチルケトン、八酢酸スクロース);アルカリ化剤(例えば、強アンモニア溶液、炭酸アンモニウム、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、トロラミン);消泡剤(例えば、ジメチコーン、シメチコン);抗微生物保存剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンザルコニウム溶液、塩化ベンゼトニウム(benzelthonium chloride)、安息香酸、ベンジルアルコール、ブチルパラベン、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、クロロクレゾール、クレゾール、デヒドロ酢酸、エチルパラベン、メチルパラベン、メチルパラベンナトリウム、フェノール、フェニルエチルアルコール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、プロピルパラベン、プロピルパラベンナトリウム、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸、チメロサール、チモール);抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル(acorbyl palmitate)、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、二酸化硫黄(sufur dioxide)、トコフェロール、トコフェロール賦形剤);緩衝剤(例えば、酢酸、炭酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、ホウ酸、クエン酸、乳酸、リン酸、クエン酸カリウム、メタリン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム溶液、二塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム);キレート剤(例えば、エデト酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸および塩、エデト酸);コーティング剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、エチルセルロース、ゼラチン、薬学的光滑剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸コポリマー、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニル酢酸フタレート、シェラック、スクロース、二酸化チタン、カルナウバ蝋、微結晶蝋、ゼイン);顔料(例えば、黄褐色、赤、黄、黒または混色、酸化鉄(III));錯化剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸および塩(EDTA)、エデト酸、ゲンチシン酸エタノールアミド(gentisic acid ethanolmaide)、硫酸オキシキノリン);乾燥剤(dessicant)(例えば、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、二酸化ケイ素);乳化および/または可溶化剤(例えば、アカシア、コレステロール、ジエタノールアミン(補助剤)、グリセリルモノステアレート、ラノリンアルコール、レシチン、モノグリセリド、ジグリセリド、モノエタノールアミン(補助剤)、オレイン酸(補助剤)、オレイルアルコール(安定剤)、ポロキサマー(poloxamer)、ステアリン酸ポリオキシエチレン50、ポリオキシル35ヒマシ油(polyoxyl 35 caster oil)、ポリオキシル40水素化ヒマシ油、ポリオキシル10オレイルエーテル、ポリオキシル20セトステアリルエーテル、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、二酢酸プロピレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ステアリン酸、トロラミン、乳化蝋);濾過助剤(例えば、粉末セルロース、精製ケイ質土);流動促進剤(glidant)および/または固化防止剤(例えば、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、コロイド状二酸化ケイ素、滑石);湿潤剤(humectant)(例えば、グリセリン、へキシレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール);可塑剤(例えば、ヒマシ油、ジアセチル化モノグリセリド、フタル酸ジエチル、グリセリン、モノアセチル化モノグリセリド、ジアセチル化モノグリセリド、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル);ポリマー膜(例えば、酢酸セルロース);溶媒(例えば、アセトン、酢酸、アルコール、希釈アルコール、抱水アミレン水和物、安息香酸ベンジル、ブチルアルコール、四塩化炭素、クロロホルム、トウモロコシ油、綿実油、酢酸エチル、グリセリン、へキシレングリコール、イソプロピルアルコール、メチルアルコール、塩化メチレン、メチルイソブチルケトン、鉱油、ラッカセイ油、ポリエチレングリコール、炭酸プロピレン、プロピレングリコール、ゴマ油、注射用水、注射用滅菌水、潅注用滅菌水、精製水);吸着剤(例えば、粉末セルロース、木炭、精製ケイ質土、および二酸化炭素吸着剤);硬化剤(例えば、水素化ヒマシ油、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、セチルエステル蝋、硬性脂肪、パラフィン、ポリエチレン賦形剤、ステアリルアルコール、乳化蝋、白蝋、黄蝋);懸濁化および/または増粘剤(例えば、アカシア、寒天、アルギン酸、モノステアリン酸アルミニウム、ベントナイト、精製ベントナイト、マグマベントナイト、カルボマー934p、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム12、カラギーナン、微結晶およびカルボキシメチルセルロースナトリウムセルロース、デキストリン、ゼラチン、グァーガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、メチルセルロース、ペクチン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポビドン、アルギン酸プロピレングリコール、二酸化ケイ素、コロイド状二酸化ケイ素、アルギン酸ナトリウム、トラガカントゴム、キサンタンガム);ならびに湿潤(wetting)および/または可溶化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、ドキュセートナトリウム、ノンオキシノール9、ノンオキシノール10、オクトキシノール9、ポロキサマー、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40、水素化ヒマシ油、ステアリン酸ポリオキシル50、ポリオキシル10オレイルエーテル、ポリオキシル20、セトステアリルエーテル、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、チロキサポール)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
(生物活性共因子(bioactive co−agent))
本発明はまた、本発明のBA結晶組成物、BAゲル組成物、またはBA粒子懸濁組成と共に投与(co−administer)され得る「生物活性共因子」を企図し、この「生物活性共因子」としては、同化剤、制酸薬、抗喘息剤、抗コレステロール血症剤(anti−cholesterolemic agent)および抗脂質剤、抗凝固薬、抗痙攣薬、止瀉薬、制吐薬、抗感染剤(例えば、抗細菌剤および抗微生物剤が挙げられる)、抗炎症剤、抗躁病剤、代謝拮抗剤、抗嘔吐薬、抗新生物剤、抗骨吸収剤、抗肥満剤、解熱薬および鎮痛剤、抗痙攣剤、抗血栓剤、鎮咳剤、抗尿酸血症剤(anti−uricemic agent)、抗狭心症剤、抗ヒスタミン薬、食欲抑制薬、生物製剤、脳血管拡張薬、冠状動脈拡張薬、気管支拡張薬、細胞毒性剤、鬱血除去薬、利尿薬、診断剤、赤血球生成促進剤、去痰薬、胃腸鎮静薬、血糖上昇剤、睡眠薬、血糖降下剤、免疫調節剤、イオン交換樹脂、緩下薬、ミネラルサプリメント、粘液溶解剤、神経筋薬、末梢血管拡張薬、向精神薬、鎮静薬、興奮薬、甲状腺剤および抗甲状腺剤、組織増殖剤、子宮弛緩薬、ビタミン、または抗原物質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
より特定すると、本発明の結晶、ゲル、または粒子懸濁液との共投与にとって好ましい生物活性共因子としては、アンドロゲンインヒビター、多糖、増殖因子、成長因子、ホルモン、ビスホスホネート、抗血管形成因子、デキストロメトルファン、臭化水素酸デキストロメトルファン、ノスカピン、クエン酸カルベタペンタン、塩酸クロフェジアノール、マレイン酸クロルフェニラミン、酒石酸フェニンダミン、マレイン酸ピリラミン、コハク酸ドキシラミン、クエン酸フェニルトロキサミン、塩酸フェニレフリン、塩酸フェニルプロパノールアミン、塩酸プソイドエフェドリン、エフェドリン、リン酸コデイン、硫酸コデインモルヒネ(codeine sulfate morphine)、ミネラルサプリメント、コレスチラミン(cholestryramine)、N−アセチルプロカインアミド、アセトアミノフェン、アスピリン、イブプロフェン、塩酸フェニルプロパノールアミン、カフェイン、グアイフェネシン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、アミノ酸、ホルモン、インターフェロン、サイトカイン、およびワクチンが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の結晶組成物、ゲル組成物、および粒子懸濁組成物と共に投与され得る他の代表的な生物活性共因子としては、ペプチド薬物、タンパク質薬物、脱感作物質、抗原、抗感染剤(例えば、抗生物質、抗微生物剤、抗ウイルス物質、抗細菌物質、抗寄生虫物質、抗真菌物質、およびそれらの組み合わせ)、抗アレルギー性物質、アンドロゲン性ステロイド、鬱血除去薬、睡眠薬、ステロイド性抗炎症剤、抗コリン作用薬、交感神経興奮薬、鎮静薬、縮瞳薬、精神賦活薬(psychic energizer)、精神安定薬、ワクチン、エストロゲン、月経前期剤、体液因子(humoral agent)、プロスタグランジン、鎮痛薬、鎮痙薬、抗マラリア薬、抗ヒスタミン薬、心臓作用剤、非ステロイド性抗炎症剤、抗パーキンソン病剤、抗高血圧剤、βアドレナリン遮断剤、栄養剤、およびベンゾフェナントリジンアルカロイドが挙げられるが、これらに限定されない。生物活性共因子は、さらに、興奮薬、鎮静薬、睡眠薬、鎮痛薬、抗痙攣薬などとして作用し得る物質であり得る。
【0055】
生物活性共因子はまた、細胞および組織の増殖および生存を促進し得るか、または機能的細胞(例えば、血球、ニューロン、筋肉、骨髄、骨の細胞および組織など)の活性を増大させ得る、物質またはその代謝前駆体であり得る。例えば、本発明の結晶組成物、ゲル組成物、または粒子懸濁組成物と共に投与され得る生物活性共因子は、神経成長促進物質(例えば、ガングリオシド、フォスファチジルセリン、神経成長因子、脳由来神経栄養因子)を、制限なく包含し得る。生物活性共因子はまた、軟結合組織または線維性結合組織の増殖因子(例えば、一部の例を挙げると、繊維芽細胞増殖因子、上皮増殖因子、内皮細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、インシュリン様増殖因子、歯周靭帯細胞増殖因子)であり得る。
【0056】
(結晶性)
高分子(タンパク質を包含する)の結晶化は、それらの保管、およびそれらのインビボ送達において大きな助けとなり得る。しかしながら、母液の外で安定な高分子結晶を大量に調製する方法は非常に少ないため、これらの結晶の安定性は、数多くの課題を提示し得る。特に、タンパク質結晶は、極めて脆弱であり、多量の溶媒を含むため、より注意して取り扱わなければならない。通常用いられる1つの技術は、母液からの結晶の分離および毛細管へのその挿入と、結晶の水和を維持するための少量の母液を伴う、例えば、歯科用蝋またはシリコーングリースを用いた引き続いてのその管の気密密閉を可能とする(McPherson,A.,Preparation and Analysis of Protein Crystals,Robert E.Krieger Publishing,Malabar,p.214(1989))。高分子結晶はまた、当該技術分野において周知の方法を用いて低温で維持され得る。結晶の調製と引き続いての急速な冷却により、水性媒体内の氷格子の形成を妨げ得る。通常形成される氷の代わりに、結晶を傷つけることなく包む硬いガラスが形成される。結果として生じる結晶は、結晶の崩壊を妨げるために100Kで保管される(Rodgers,D.W.,Methods in Enzymology(Eds.,Carter,C.W.およびSweet,R.M.)Academic Press,v.276,p.183(1997))。この技術は母液の外の結晶の保管を可能にするが、100K以下の温度での結晶の維持を必要とする。
【0057】
また、乾燥結晶は、物質の急速冷却を要する技術である凍結乾燥により調製され得る。このことは、この技術の適用を、そのような冷凍条件下で安定な生成物への適用に制限する。この技術は、水溶液を最初に−40℃と−50℃との間の温度で冷凍することを必要とする。氷の形成はタンパク質結晶格子を潜在的に破壊し得るため、結果として生じた氷は、次いで、真空下で除去される。
【0058】
最適には、結晶性高分子は、好都合な保管のために、周囲温度で安定であるべきである。結晶性高分子(特に、結晶性タンパク質)は、治療薬およびワクチンとしての使用に特に有利である。本発明は、固体粒子であるかまたは非水性溶媒中に分散させた、結晶性BA(特に、結晶性タンパク質、中でも特に、結晶性BMP)の処方物および組成物を提供する。本発明の一実施形態において、本発明のBA組成物は、母液の代わりに非水性溶媒を含む。本発明の別の実施形態において、結晶性BAのスラリーは、第一溶媒を回転させて除き、第二有機溶媒を用いて残った結晶性BA固体を洗浄して水分を除去し、続いて非水性溶媒をエバポレーションすることにより固体にされ得る。
【0059】
タンパク質結晶の調製及び維持を最適化するために、タンパク質結晶生成プロセスの過程にある間、潜在的にはポリマー性キャリアに被包させて母液中に結晶を残し得る。ポリマー加工条件は、タンパク質の結晶化において用いられる化合物(塩、PEG、および有機溶媒が挙げられるが、これらに限定されない)の多くと適合性である。母液内の結晶溶解が、条件(pH;温度;金属イオン(例えば、Zn、Cu、およびCa)の存在;および沈殿物の濃度を包含するが、これらに限定されない)により制御され得ることも、当業者は理解する。これらの条件を変えることにより、結晶の溶解を数時間にわたって減速させ得ることも、当業者は認識する。さらに、微粒子形成のプロセスが、非常に早く、標準的には完了するまでに数秒間から数分間かかることも、当業者は理解する。さらにまた、濾過を用いて母液を除去して結晶性ペーストを残し、この結晶性ペーストを真空下において空気により乾燥させ、混和性の有機溶媒で洗浄し、かつ/または凍結乾燥により乾燥させて、乾燥結晶を残し得る。結晶(タンパク質結晶を包含する)を化学的に架橋して、水性媒体に溶解する傾向、さらには非水性媒体に溶解する傾向さえも、大きく低減し得るかまたは完全に排除し得ることも、当業者は理解する。結晶化プロセスの間に結晶の大きさまたは形を操作または制御することにより、非晶質タンパク質と比較して、異なる溶解動態を有する、したがって、異なる持続放出プロファイルを有する様々な結晶形態が生じることもまた、当該技術分野の範囲内である。
【0060】
本発明の別の実施形態においては、賦形剤を母液以外の溶液に溶解させ、BA結晶を母液から除去し、賦形剤溶液に懸濁させる。
【0061】
高分子(例えば、BA)は、低い溶解度を有し、かつコンフォメーションが比較的固定された三次構造および/または四次構造を有する場合、その高分子は結晶化がより容易であり、より安定な結晶およびゲルを生じさせることも、当業者は理解する。特に、強力な相互作用(三次構造間または多量体におけるポリペプチド間の共有結合が挙げられるが、これらに限定されない)を有するタンパク質は、例えば、そのような相互作用を有さないタンパク質よりも低いコンフォメーション自由度を有する。低減したコンフォメーションの可動性により、タンパク質は結晶化およびゲル形成を助け得る局所的配列(local
ordering)の影響をより大きく受けることになる。さらに、低溶解度を有するタンパク質はまた、凝集する傾向があり、それらの疎水性表面は、例えば過度のファン・デル・ワールス接触を形成し、その接触がタンパク質の局所的配列を促進し、その局所的配列が結晶化およびゲル形成を助け得る。TGF−βスーパーファミリーのタンパク質(特に、BMP)が、他のタンパク質と比較して、コンフォメーションが固定されており、かつ実質的に生理学的に不溶性であり、したがって、本発明の結晶、ゲル、および粒子懸濁液の作製および使用に特に適うことを、当業者は理解する。溶解性およびコンフォメーション固定性の程度を変更することにより結晶の性質および形態を変化させ得ることを当業者は理解し、そのようなタンパク質が最適に結晶化するように条件を修正および変更することも、当該技術分野の技術範囲にある。
【0062】
予め沈殿させた形態と比較して結晶形態の考え得る利点は、持続放出レベルを上昇させ得る低下させた表面積対体積比である。所定の投与量当たりの表面積がより小さいと、沈澱による局所刺激を緩和または低減するので、表面積対体積比が低下した結晶形態はまた、投与部位における組織に対して刺激がより少ないものと思われる。好ましい実施形態において、BA結晶は、12と30との間のゲージを有する注射器を用いて投与され得る。さらにより特に好ましい実施形態において、BA結晶は、16と26との間のゲージを有する注射器を用いて投与され得る。本発明のBA結晶およびBAゲルの表面積/体積比の操作により、当業者の要望に応じて溶解/放出速度を改変し得、このような操作は十分に当該技術分野の技術範囲にあることを、当業者は理解する。
【0063】
本発明はまた、タンパク質を結晶化するために当該技術分野において公知であり慣用される全ての手段(エバポレーションによる濃縮、昇華、拡散勾配技術、およびバッチ技術が挙げられるが、これらに限定されない)の実施も想定する。
【0064】
(タンパク質ゲル)
本発明のタンパク質ゲルは、当業者に公知の多様な異なる緩衝液中の様々なタンパク質濃度のBA(特にBMP)を用い、遠心分離、エバポレーション、溶媒交換、接線流濾過(tangential flow filtration)、および透析を包含するがこれらに限定されない技術により、達成され得る。本明細書において使用される場合、「タンパク質ゲル」は、キャリアゲル(例えば、PLG−PEG)または類似のポリマー組成物の使用をいうのではない。むしろ、「タンパク質ゲル」は、タンパク質性BAの高分子配列自体に起因すると考えられるゲル化状態および/またはゲル化現象をいう。タンパク質ゲルを得るために慣用されるあらゆる全ての技術が本発明に包含されることを当業者は理解し、したがって、当該技術分野において公知の技術により、本発明のあらゆる全てのタンパク質ゲルの実施が可能となる。
【0065】
予め沈殿させた形態と比較してゲル形態の考え得る利点は、持続放出レベルを上昇させ得る低下させた表面積対体積比である。所定の投与量当たりの表面積がより小さい、沈澱による局所刺激を緩和または低減するため、表面積対体積比が低下したゲル形態はまた、投与部位における組織への刺激がより少ない。好ましい実施形態において、本発明のゲルは、BAおよび溶媒からなる。好ましい実施形態において、本発明のタンパク質ゲルは、タンパク質および溶媒からなる。好ましいタンパク質であるBMP−7の例示のタンパク質ゲルを、実施例2に示す。
【0066】
(粒子懸濁液)
本発明の粒子懸濁液は、当業者に公知の多様な異なる緩衝液(水およびリン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられるが、これらに限定されない)中で様々なタンパク質濃度のBA(特にBMP)を用いて達成され得る。安定な粒子懸濁液を得るために慣用されるあらゆる全ての技術が本発明に包含されることを当業者は理解し、したがって、当該技術分野において公知の技術により、本発明のあらゆる全ての粒子懸濁液の実施が可能となる。
【0067】
ゲル懸濁液および結晶懸濁液は、単独の場合および懸濁ビヒクルと組み合わせた場合の両方が企図される。本発明の懸濁ビヒクルは、水性ビヒクルおよび非水性ビヒクルの両方を包含する。本発明により企図される水性溶媒としては、食塩水、カルボキシメチルセルロース(CMC)、およびヒアルロン酸が挙げられるが、これらに限定されない。本発明により企図される非水性ビヒクルとしては、ゴマ油が挙げられるが、これに限定されない。企図される懸濁液としては、沈澱したBAおよび予め沈殿させたBAもまた挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、沈殿したBAまたは予め沈殿させたBAは、凍結乾燥ケーキ(例示以外の目的はない)であり得るタンパク質である。
【0068】
(薬学的組成物)
本発明はまた、疾患(特に、疾患(特に、変形性関節症および骨軟骨疾患)により影響を受けた関節)の処置に有用な薬学的組成物を提供する。本発明の薬学的組成物は、1種以上のBAのゲル、結晶、または粒子懸濁液、および薬学的に受容可能な溶媒、ビヒクル、またはキャリアを含む。好ましい実施形態において、本発明の薬学的組成物は、1種以上のBAゲル、BA結晶、またはBA粒子懸濁液、および1種以上のさらなる生物学的活性因子を含む。特に好ましい実施形態において、上記BAは、BMPである。さらにより特に好ましい実施形態において、上記BAは、BMP−7である。本発明の薬学的組成物は、本明細書において上記に開示される一種以上の他の賦形剤または因子(放出改変剤、可塑剤、キャリア、撓み性改変剤、張度改変剤、または共に局在されるpH改変剤が挙げられるが、これらに限定されない)も含み得る。多数の要因(適応症、疾患の病状、および個体の身体的特徴が挙げられるが、これらに限定されない)を考慮して、個体の処置を最適化するために本発明の薬学的組成物を改変または変更し得ることを、当業者は理解する。
【0069】
(キット)
本発明はまた、疾患(特に、疾患(特に、変形性関節症および骨軟骨疾患)により影響を受けた関節)の処置に有用なキットを提供する。本発明のキットは、1種以上のBAゲル、BA結晶、またはBA粒子懸濁液を含む。好ましい実施形態において、本発明のキットは、1種以上のBAゲル、BA結晶、またはBA粒子懸濁液、および1種以上のさらなる生物学的活性因子を含む。特に好ましい実施形態において、上記BAは、BMPである。さらにより特に好ましい実施形態において、上記BAは、BMP−7である。本発明のキットは、本明細書において上記に開示される一種以上の他の賦形剤または因子(放出改変剤、可塑剤、キャリア、撓み性改変剤、張度改変剤、共に局在されるpH改変剤、または薬学的に受容可能な溶媒および薬学的に受容可能なビヒクルが挙げられるが、これらに限定されない)も含み得る。多数の要因(適応症、疾患の病状、および個体の身体的特徴が挙げられるが、これらに限定されない)を考慮して、個体の処置を最適化するために本発明のキットを改変または変更し得ることを、当業者は理解する。
【実施例】
【0070】
(実施例)
(1.結晶およびタンパク質動態モデリング)
BMP−7結晶は、19℃にて、シッティングドロップトレー(sitting drop tray)において、蒸気拡散法により成長させた。1ウェルには、7.7mg/mLのBMP−7を用いて生成した約0.1mmの大きさの複数の結晶を16%2−メチル−2,4−ペンタンジオール(MPD)および135mMクエン酸ナトリウム(pH4.8)のウェル溶液とともに含ませた。
【0071】
シッティングドロップ結晶化トレーにおいて、35μlの試験溶液をポスト(post
)に入れた。結晶を、3つの溶液(50mM酢酸、リン酸緩衝食塩水(PBS)、およびウシ滑液)の各々に、ループを用いて手動で移動させた。上記3つの各々の溶液中のこれらの結晶を、周囲室温(約19℃)での保管の1時間後、5時間後、22時間後、および96時間後に、立体顕微鏡により観察し、写真に撮った(図1〜図3)。
【0072】
50mM酢酸へと移動させた結晶は、最も安定性が低かった(図1)。移動後の最初の1時間以内に、縁が僅かに溶解したことが認められた。結晶のさらなる溶解が、長期曝露により観察された。
【0073】
結晶をPBSへと移動させた場合、最初の平衡の間に結晶中にひびが少し生じた(図2)。PBSにおける長期保管は、結晶に重大な観察し得る変化を生じなかった。
【0074】
結晶をウシ滑液へと移動させた場合、いくらかの内部亀裂が観察された(図3)。滑液におけるさらなる平衡が結晶の縁を変化させることはないようであった。
【0075】
これらの結果は、そのような結晶が、例えば、軟骨修復を刺激するために膝に持続放出性貯蔵物を提供することを示している。結晶の大きさ(滑膜のMWカットオフよりも大きい)は、膝にこの物質を保持するのを助け、遅い溶解ゆえのタンパク質の延長された送達時間を提供する。
【0076】
BMP結晶の放出プロファイルは、所望の放出動態を与えるように操作され得る。例えば、BMP−7結晶のような予め沈殿させた用量または食塩水中に懸濁された凍結乾燥BMP−7タンパク質を注射することにより、より高い持続放出レベルに達し得、かつより低いCmaxレベルを達成し得る。さらに、放出速度は、可溶化したタンパク質(すなわち、食塩水中に懸濁させ、したがって、放出平衡をずらしたタンパク質)の局所注射により調整され得る。これは、結晶もしくはタンパク質ゲルとの共投与の形態をとってもよく、または結晶もしくはタンパク質ゲルの最初の投与後に二次投与として行われてもよい。
【0077】
(2.高濃度タンパク質ゲル)
BMP−7を含む高濃度タンパク質ゲル(HCPG)は、50mM酢酸中のBMP−7(約40mg/ml)の遠心濃縮により調製された(図4を参照。T=0におけるBMP−7 HCPG)。そのようなゲルがゲル外部に沈澱ハロー(precipitation halo)を示すことが観察され、その沈降ハローは、24時間にわたって(完全にではないが)ゲル内部へと延びた(図5を参照)。HCPGは、容易に製造される自己貯蔵物を提供し、この自己貯蔵物は、関心の部位に直接投与される1mgボーラス中の等量よりも少なくとも10倍高い濃度のBMP−7を含む可溶化表面を有する。
【0078】
(均等物)
本発明は、本発明の精神または本質的な特性から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化され得る。したがって、本発明の実施形態は、例示であり、限定するものとして考えるべきではなく、本発明の範囲は、上述の記載よりもむしろ、別添の特許請求の範囲により示され、したがって、特許請求の範囲の等価の意味および範囲に入る全ての変更が、本発明に包含されることが意図される。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

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【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−79288(P2013−79288A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2013−16463(P2013−16463)
【出願日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【分割の表示】特願2009−542895(P2009−542895)の分割
【原出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(595148888)ストライカー コーポレイション (52)
【氏名又は名称原語表記】STRYKER CORPORATION
【Fターム(参考)】