生物学的流体、フロー型反応器において微生物を不活性化するための方法およびバッチ式反応器中の微生物を効果的に不活性化するために総光線量を制御する方法
【課題】生物学的液体の中に、特に不透明な生物学的液体の中に含有されている微生物を、望ましくは、対象となる生物活性物質に影響を与えることなく効果的に不活性化する方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、生物学的液体、望ましくは不透明な液体の中に存在する微生物を不活性化するための、1つ以上の光源からの単色又は多色光の実効線量を算定する方法に関する。加えて、フロー型反応器中で生物学的液体の中の微生物を不活性化する方法を提供する。さらに、本発明は、1つ以上の温調付き光源を具えた有用な流通反応器を提供する。本発明は、1つ以上の光源から放射された単色又は多色光の総光線量を制御し、バッチ反応器中の生物学的液体に存在する微生物を効果的に不活性化する方法をさらに提供する。
【解決手段】本発明は、生物学的液体、望ましくは不透明な液体の中に存在する微生物を不活性化するための、1つ以上の光源からの単色又は多色光の実効線量を算定する方法に関する。加えて、フロー型反応器中で生物学的液体の中の微生物を不活性化する方法を提供する。さらに、本発明は、1つ以上の温調付き光源を具えた有用な流通反応器を提供する。本発明は、1つ以上の光源から放射された単色又は多色光の総光線量を制御し、バッチ反応器中の生物学的液体に存在する微生物を効果的に不活性化する方法をさらに提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、生物学的流体、望ましくは不透明な液の中に存在する微生物を不活性化するための、1つ以上の光源からの単色又は多色光の実効線量を算定する方法に関する。加えて、フロー型反応器中で生物学的流体の中の微生物を不活性化する方法を提供する。さらに、本発明は、1つ以上の温調付き光源を具えた有用なフロー型反応器を提供する。また、本発明は、1つ以上の光源から放射された単色又は多色光の総光線量を制御し、バッチ反応器中の生物学的流体に存在する微生物を効果的に不活性化する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
栄養摂取、化粧品、診断又は治療用途の生物学的流体などの流体の照射殺菌処理は、微生物を不活性化させるためのアプローチとして広く研究されている。現在調査されている照射処理の例として、短波紫外光、長波紫外光、又は可視光線と光感作化合物との組み合わせ、及び広域スペクトル高輝度のフラッシュ光がある。
【0003】
例えば、サルモネラ菌種、Listeria monocytogenes、マイコバクテリア、又は腸管出血性大腸菌株O157:H7のような食品を腐らせる微生物は、ミルク又はフルーツジュース、発酵飲料、及びこれらから作られた加工飲料といった流体を容易に汚染し得る。微生物による汚染の別の例として、医薬品を得るための生物学的流体、例えば、血液及びその派生品、又は細胞培養上清もしくは溶解物に、原虫、バクテリア、及びウイルスが存在し、このため医薬品の摂取者にこれらの微生物を感染させる可能性がある。
【0004】
こういった微生物を不活性化するために、小さな実験室規模では、バッチ式の光不活性化反応器が開発されてきた。このような光不活性化反応器は、通常、キャビティの周りにランプを配置して構築される。サンプルは、光透過性容器のキャビティに挿入され、所定の時間光に曝される。さらに、均一な曝露を確実にするため攪拌されることになろう。コネチカット州ブランフォードのSouthern New England Ultraviolet Company社が製造しているシリンダ型の「Rayonet」及び「Rayonette」反応器、及びカナダ、オンタリオ州オタワのLuzchem Research Inc.社が製造している光チャンバ光不活性化反応器は、こういった光不活性化反応器の典型例である。
【0005】
汚染除去をするための大量の流体の曝露を非常に効果的で確実なものとするために、さまざまなフロー型反応器が設計されてきた。これらは、流体を薄い膜又は薄い層に広げて自己吸収による光強度の損失を最小限に抑えるか、あるいは縦方向に流れる流体に横向きの混合動作を加え、どの体積部分も光のあたる外側の薄い液層に導くことによって均等な照射を実現している。
【0006】
Cillet−Fauquetらは(2004年)、脳心筋炎ウイルスをスパイクしたサンプルを用い、生物学的線量測定又は自家用の化学光量測定を適用して、バクテリア及びウイルスを不活性化するためのフロー型UV−C照射方法を説明しているが、そのさらなる詳細は提示されていない。
【0007】
前記のようなフロー型照射装置が今までに構築されてきており、例えば、チューブ型の光源の周りを軸方向に回転し、内壁上で液体を自由流動する薄い膜に広げる傾斜チューブ(Habel及びSockrider,1947年)、流れを薄い層に絞る平坦で透明なセル、又はチューブ型の光源に巻きついた透明ならせん状チューブ(Oppenheimerら、1959年)などがある。直径が光の透過深さを超えるフロー型装置では、コイル内のディーン渦によって、もしくは、バッフルのようなチューブ内の静止混合器によって、又は、2つの逆向き流のシリンダの間にトロイダル・テイラー渦を生じさせ、その間にある環状ギャップに液体を流すことによって、横方向の混合を行うことができる。
【0008】
光の透過が限られている場合には、特許文献1及び特許文献2に記載されているように、液体を薄膜に広げて光源を通過させることができる。光の透過深さより深い液体層では、原則として、横方向混合を、能動的にあるいは受動的に発生させることができる。
【0009】
能動的混合を起こすためのよく知られた原理は、同心で逆向き流の回転シリンダ表面の間でテイラー渦を発生させることである。これらのテイラー渦は縦方向の流れに重畳され、その結果は、テイラー・ゲルトラー渦として知られる流れが得られる。特許文献3は、静止した外部透明壁と回転する内部シリンダとを有する、円筒型UV−C透明フロー型のセルを開示している。この中間の液層において、セルを通って流れる液体はテイラー渦の逆流によって混合される。連続波又はパルスのレーザUV源が、照射光線として開示されている。
【0010】
能動的混合を目的とする別の装置に、アルキメデス・スクリューに基づくフロー型反応器があり、回転スクリューで送られる液体はコイルの中で混合される(Della Contrada、2004年)。
受動的な混合生成は、流れの中の発生乱流、又は静止した混合バッフルのような流れ障害物によって実現できる。従来の不活性化装置の設計は、チューブ型ランプ(又はその外包チューブ)の外部壁と同心の照射反応器の内部壁との間の環状ギャップを通る流体流に基づくものである。このような薄層の照射装置は、例えば、オーストリア、ゼーワルヘンのWedeco−Vista GmbH社から市販品として入手できる。
【0011】
受動的横方向混合の別の効果的技法として、湾曲したチューブの中、特にらせん状に巻かれたチューブ中でのディーン渦の発生がある。例として、ミルクのような高い吸収性のある流体の消毒のためのコイル反応器の記載が既にあり、この装置では複数の低圧水銀蒸気ランプの周りを石英ガラスコイルが縦方向に巻き包んでいる(Bayha、1952年)。ワクチン中のウイルス及び他の生物学的流体の光感作不活性化のために、同様なコイル反応器がホウケイ酸ガラスで製作されており、該コイルは白熱フィラメントランプの周りに取り付けられている(Hiatt、1960年)。コイルは光透過性の水ジャケットで冷却される。特殊な技能が要ること、及びホウケイ酸ガラスや石英ガラスの脆さによって、このような従来のチューブ型の反応器の使用には制限があるが、UV透過性、UV耐久性があり化学的に不活性なフッ素重合体が利用できるので、こういったフロー型反応器の設計及びスケールアップはやり易くなっている。コイルは、通常は低圧水銀ランプの同心チューブ型光源の周りに巻かれており、流体流に重畳されるディーン渦によって横方向の混合が行われる。こういったらせん状外包型反応器が特許文献4に記載されている。該反応器を通して送られる溶液が受ける線量は、シュウ酸鉄光量測定によるランプ輝度測定、吸光度、及び滞留時間から計算された(Wangら、2004年)。
【0012】
今までに、放射中の有効な光エネルギーを測定するためにいくつかの試みがされてきた。光エネルギーは、感光電子センサ、又は光の光子の作用による光化学反応、もしくは生物学的流体自体に存在するか又はこれに加えた指標微生物の不活性化度のどれによっても測定することができる。他の理論的方法には、単に単位量の被曝時間に輝度を乗じて線量を計算する数学モデル、又はもっと洗練されたアプローチとして、流れモデリングによる滞留時間及び線量を解く数学モデルがある。
【0013】
化学光量測定では、光化学反応混合物に対する光の効果度を測定する(Kuhnら1989年;Favaro、1989年)。一般に、確立された光化学アクチノメーターは、量子収量及び温度特性が分かっていれば、再現性及び安定性において電子デバイスを凌駕し得る。もっとも好都合には、例えば、分光放射計又は化学センサなどによってオンラインで光化学反応の生成物質を測定すればよい(Gauglitz、1983年)。
【0014】
望ましいアプローチとして、測定波長における光量測定の対象である溶液全体の不透過性を利用し、光化学反応がごく表面だけで起こるようにする(Kuhnら、1989年;Favaro、1998年)。従って十分に高い反応物質濃度が望ましい。
【0015】
インフルエンザウイルスを不活性化するためのワクチンのフロー型UV反応器では、ウリジンアクチノメーターを使ってランプ輝度の測定が行われた(Zeleznova、1979年)。
【0016】
テイラー渦発生デバイスも、均一及び不均一な光化学処理のための光化学反応器として検討されてきた(Sczwchwskiら、1995年;Forney及びPierson、2003年)。該反応器の光量計検査には、シュウ酸鉄、あるいはヨウ化物/ヨウ素酸塩アクチノメーターが使われた。しかし、ヨウ化物溶液中の有効線量を測定するための吸光度の適合較正は、実施もされず、提起もされなかった(Forney及びPierson、2003年)。
【0017】
UV−C測定に対し、従来からあるアクチノメーターは、ウラニルシュウ酸塩(Bowen、1949年;Kuhnら、1989年)及びシュウ酸鉄アクチノメーターであるが、前者の使用はウラン放射能毒性があるため、後者はUV−B、UV−A及び可視光線に対する感受性があるため制限がある(Kirk及びNamasivayam、1983年)。また、トリフェニルメタン色素の亜硫酸水素付加物又はシアン化水素付加物もUV−C感受性のあるアクチノメーターとしてよく知られている。例えば、エタノールに溶解された無色のマラカイトグリーン・ロイコシアン化物は、長波UV又は可視光線に対する感受性を示さないが、緑色の光生成物はUV−Cの範囲で吸収性を増す(Calvert及びRechen、1952年;Fisherら、1967年)。メタノール中のアゾベンゼン(Actinochrome 2R 245/440)(Gauglit及びHubig、1981、1984,1985年)、及びヘテロコエルジアントロン・エンドペロキシド(Actinochrome 1R 248/334)の場合、光量測定溶液の再使用が可能になる(Brauer及びSchmit、1983年)。有機溶剤に溶解させたこれら有機複合化合物の品質の良さにかかわらず、光量測定物質及び溶液は毒性がなく有害でないことが前提とされている。
【0018】
20世紀の初めさまざまな紫外線ランプが入手できるようになった直後から、酸性ヨウ化物溶液が化学アクチノメーターとして使われだした(Bering及びMeyer、1912年)。0.05と量子収量が低いため、電子除去剤として亜酸化窒素(N2O)が使われるようになった(Dainton及びSills、1960年;Rahn、1993年)。さらに最近のアプローチである不透明UV−C光量測定は、ヨウ素酸塩で安定化したヨウ化物の光分解である(Rahn、1997年;Rahnら、1999,2003年)。253.7nmのヨウ化物光分解で形成された三ヨウ化物は、352nm又はこれより大きな波長(375nm、400nm)の分光光度法で測定される。このシステムには、300nmを超える波長に対し無感受性である利点がある。
【0019】
アクチノメーター液の使用については、アクチノメーター液を含むフロー型又は静止式プローブでUVセンサを置き換え、照射反応器に挿入することが提案されている。濃縮されたアクチノメーター液、例えば、特許文献5によるヨウ化物/ヨウ素酸塩アクチノメーター、又はウリジン溶液(Schulzら、2001年)を、ランプからUV光を受光するUV透明性のチューブを通して送るか、又はUVランプに面した透明な窓があるセルの中に収納し、所定時間曝露して、その後に光生成物を分光光度計で測定する。しかし、これらのセンサはそれらに入射した照射のごく一部しか測定せず、照射反応器内に収納されている間に照射される流体に対する実効平均フルエンス(光線量)を測定するのではない。
【0020】
フロー型UV−C照射による、果汁、ジュース及び植物飲料中の微生物の「非加熱殺菌」のため、水溶性のトリフェニルメタン色素(4,4’,4”−トリス−ジ−β−ヒドロキシエチルアミノトリフェニル・アセトニトリル)を、添加アクチノメーター物質として使用することが記載されている(Koutchma及びAdhikari、2002年)。この処理を実験するための設備が市販されており、例えば、ニューヨーク州、マセドンのEPE Inc.が製造している「Cider−Sure」や「Sap Steady」薄膜照射装置、又はカリフォルニア州、フォールブロックのSalor Inc.が製造している「Light Process System」コイルチューブ照射装置がある。果物を絞って得たジュース類は、懸濁粒子による高い濁度及び溶解されたフェノール化合物及びアスコルビン酸による高いUV−C吸収度を示し、また、たんぱく溶液に近い粘度を示す。清浄化されたりんごジュースは、253.7nmで9/cmの吸収係数を有する。アクチノメーター物質は、高い吸収性のあるジュースに加えられ、非吸収懸濁液中の微生物の絶対UV不活性化反応速度の測定のために使われるような平行ビーム装置の中で照射される(Bolton及びLinden、2003年)。アクチノメーター光生成物の吸収は600nmで増大するが、実際は、加えられたアクチノメーター物質は、全吸収に対する吸収部分に対応する光量部分を受光するだけである。次いで、加えられたアクチノメーター色素の破壊度から有効線量を計算する。190mJ/cm2の「吸収線量」から、シャーレ中のりんごジュース中の大腸菌K12の不活性化は3log10コロニー形成単位(cfu)/mL以下と推測できるので、サンプルにアクチノメーター物質を加えたこと自体が、有効線量について明らかに誤った結果をもたらしている。非吸収懸濁液中では、約10mJ/cm2で、5log10cfu/mLの大腸菌が不活性化される(Wright及びSakamoto、1999年)。但し、溶液中での有効線量と、微生物に当たる有効線量とが同じである必要がある。従って、既に吸収性のある媒体にアクチノメーター物質を加えるという提案では、正確な有効線量を測定することはできない。
【0021】
光不活性化可能な微生物を用いた生物線量測定は、血漿を照射する際の適用線量を測定する最初の方法であった。但し、Aerobacter aerogenes(肺炎桿菌の昔の名称)を使った該線量測定の詳細については示されていない。さらに、S13及びファイX(ファイ・カイ)174のようなミクロウイルス科の一本鎖DNAのバクテリオファージが、UV照射線量の増大に従ってリニアな力価の減少を示す。バクテリオファージ(例、ファイX174又は一本鎖RNAのバクテリオファージMS2)の不活性化、又は枯草菌胞子の不活性化に基づいた生物線量測定が、フロー型紫外線水殺菌装置の試験のために開発されてきた。9W UV−Cランプの0.225mW/cm2の放射照度の均一な照射野において、33mmのシャーレ中で水平攪拌されている希釈されたUV透過性の緩衝懸濁液中の、バクテリオファージ・ファイX174の線量依存的無減衰不活性化率は、−0.44(log10cfu/mL)/(mJ/cm2)と算定された(Anderleら、2004年)。
【0022】
フルーツジュースに使われる商用の薄層照射装置「CiderSure」(ニューヨーク州ロチェスターのFPE Inc.社製造)は、基本的には、外部のステンレス鋼チューブと内部の石英チューブとで構成されており、双方とも中心部のチューブ型のUV光源と同心で平行に装着されており、流体は両者の間の環状ギャップを通って縦方向に流れる。あらゆる種類のフルーツジュース及び果汁に対し、>5log10コロニー形成単位/mLの大腸菌O157:H7を削減するのに要する流速に調整するように、生物線量測定によって確認がされている。さらに、時間による光強度低下が、流速是正によって補償されている、というのは、通常、線量Hは、輝度E×滞留時間t(FDA 2000)として想定されているからである。しかし、この生物学的線量測定による妥当性確認だけで、フロー型反応器を最適化し、滞留時間のバラツキ低減を実現してこれにより流体に対する過度な照射を回避できるものではない。栄養流体であってもこのような過剰照射は避けるべきである、なぜなら、UVの過剰被曝は望ましくない異臭を発生させ製品を不味くすることがあるからである。
【0023】
しかしながら、前記のすべてのフロー型装置について、レオロジー的及び技術的に乗り越えられない限界がある。照射区間に入ったあらゆる流通部分は、より早く流れ、滞留時間が短いためにより低い線量を受光する部分と、より遅く流れより高い線量を受光するテール部分と、その間にある流れ部分とに縦方向に分かれる。米国特許6,576,201号の図7には、滞留時間の分布がテイラー渦発生セル中の内部シリンダの回転速度により決まる例が示されている。線量が低すぎると、活性微生物の減滅が不完全になり、不完全な不活性化になりかねない。線量が高すぎると、ジュース中のビタミン及び風味、血液製剤中のたんぱく質、又はワクチン中の抗原のような対象となる物質を壊してしまうことになる。従って、照射処理を最適化し、すべての標的微生物を減滅するのに十分効果的であって、すべての対象物質を保存するのに安全な処理にすることが望ましい。そこで、このような処理を最適化する方法が特に望まれる。
【0024】
前記のフロー型及びバッチ式反応器の別の技術上の限界は、使われる光源のエージングであり、動作寿命期間中に当初の光出力水準を失う可能性があることである。この影響を補償するため、内蔵カウンターを使って一定で再現性のある光量での曝露を確実にするのだが、照射される溶液の吸光度とは関係なしに行われる(Rideal及びRoberts、1951年)。さらに、操作中、少なくとも1つの光源が故障することによって、不活性化が停止することがある。このような劣化及び/又は機能停止は、電子感光センサだけでも検知されるが、処理対象流体への実効光線量に対する効果を判断するには、こういった線量を測定し、ランプ輝度、吸光度、及び線量低下の関係を明確にし、流速のような他の工程変数を変更することによって、こういった劣化を補償する必要があろう。また、これらの装置については、特定の時間間隔で再設定し、一貫性があり効果的な動作を確実にする必要がある。従って、生物学的流体中の微生物の光不活性化作業でのこういった光照射の変動を、望ましくは、バッチ式反応器中の照射対象生物学的流体の吸光度に関連させて、測定、制御、補償する方法、また、光照射の変動にかかわらず、不活性化処理を効率的に実施するための制御方法が、特に求められている。
【0025】
加えて、バッチ式反応器及びフロー型反応器のような照射装置の作動中、光源は相当な量の温度エネルギーを発生させる。これによるランプの過熱は光放射に大きな変動をもたらす。例えば、低圧Hg蒸気ランプでは、ランプ出力の主要部分は熱に変換され、三分の一位だけが光放射になる。低圧Hg蒸気ランプが60℃を越えてオーバーヒートすることはほとんどないが、温度感受性の高い処理物質は、そう高くない温度でも損傷を受けることがある。光不活性化反応器中の液流路を直接冷却するだけでは、ランプの温度調整はされず輝度も安定せず、輝度を安定化するためランプ電圧を調整しても、こういった過剰熱である熱が除去されることはない。こういった点から、光源の熱発生に起因する光照射の変動を低減することができ、望ましくはランプの温度を基本的に一定に又は少なくとも低い変動内に保つことのできるような、フロー型反応器の開発が特に求められていよう。このような温度安定化については、特許文献6(Bensei、1956年)で開示された6ランプの遠心分離膜照射装置だけが試みており、ここでは各ランプの水冷除熱パイプが過剰熱を除去している。ディル照射装置(特許文献1)、バッフル又は他の静止型混合機能を具えた、チューブ型照射装置(特許文献7)又はらせん状チューブ型照射装置(特許文献8)を含む他のフロー型照射装置が開示されているが、直接的なランプ温度安定化のないものだけが明らかに意図されている。特許文献7では、補助空気流冷却(通風)が想定されているが、直接流体による温度安定化よりも効果は低い。これの効果は周囲の空気温度に依存することになる。自由流の薄膜を照射する装置では、冷却用空気流が、生物学的流体中の水分を蒸発させる可能性がある。液体によるランプ温度の安定化によって、ならし時間なしに最大の殺病原体輝度で、例えば、低圧Hg蒸気ランプを41.5℃、最大UV−C(23.7nm)で、直ちに運転できることが確保され、また、例えば、生物学的流体に吸収され、過剰熱に変換されてしまうような白熱光源からの赤外照射をカットすることができる。
【0026】
1960年に、薄膜UV−C照射ワクチン技術の第一人者の一人は次のように述べている、「ウイルス不活性化そのものに関与したエネルギーの絶対量を計算するためには、ウイルス及び培養媒体に吸収された紫外線エネルギーの相対量を計量化するための何らかの方法が必要である。これがまだ出来ておらず、さらに、絶対曝露量は、粘度、温度、表面張力、及び流れの摩擦抵抗などいくつかの可変ファクターに依存する」(Tayler、1960年)。こういったタンパク質溶液又はウイルス懸濁液は、通常澄んでいるか又は薄い乳白色コロイドであるが、液中にろ過可能な固体の懸濁物を含む流体もある。水中のKlebsiella aerogenesバクテリアの不活性化に対するさまざまな粘土鉱物の影響の調査によれば、UV吸収性粘土はバクテリアを保護するが、UV散乱性の粘土にはそのような効果はないことが実証されている(Bitton、1972年)。最近、混濁したリンゴ液と澄んだ林檎ジュースについて、こういった懸濁液の濁度には、分光光度計での測定が見かけ上似たような吸光度でも、混濁した液中の微生物は澄んだ流体のものよりも速く不活性化されるといった効果があることが示されている(Koutchmaら、2004年)。絶対曝露量は、おそらく、溶液中の粒子に散乱された光部分にも依存している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】米国特許第5,567,616号明細書
【特許文献2】米国特許第6,546,967号明細書
【特許文献3】米国特許第6,576,201号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0049809号明細書
【特許文献5】米国特許第6,596,542号明細書
【特許文献6】米国特許第2,725,482号明細書
【特許文献7】米国特許第6,586,172号明細書
【特許文献8】国際公開第02/38191号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
今までのところ、流体サンプル中の微生物に対する光化学的実効線量の算定については、どの科学論文にも又は特許論文にも発表されていない。従って、生物学的流体中、特に不透明な生物学的流体中に含有される微生物を不活性化するための実効線量を算定する方法、望ましくはフロー型反応器において該算定を行なう方法が求められている。加えて、生物学的流体の中に、特に不透明な生物学的流体の中に含有されている微生物を、望ましくは、対象となる生物活性物質に影響を与えることなく効果的に不活性化する方法を提供することが目標となる。
【課題を解決するための手段】
【0029】
(発明の要旨)
前述した技術的問題の解決は、特許請求の範囲に特色を明らかにした実施形態、具体的には、本発明の第一様態、すなわち、生物学的流体中に存在する微生物を不活性化するための、1つ以上の光源からの単色又は多色光の実効線量を算定する方法を提供することによって達成され、該方法は線量測定液に対する単色又は多色光の効果を測定する方法を包含し、不活性化はフロー型反応器で実施される。
【0030】
別の様態により、フロー型反応器中の生物学的流体の中の微生物を不活性化する方法を提供し、該方法には、1つ以上の光源からの単色又は多色光の実効線量を生物学的流体に照射する工程が含まれ、該実効線量は、前記の章及び以下に記載した方法によって算定される。
【0031】
別の様態により、不透明な生物学的流体中に存在する微生物を不活性化するための、1つ以上の光源からの単色又は多色光の実効線量を算定する方法を提供し、該方法は、使用する光不活性化光波長における、対象生物学的流体の濁度に、又は生物学的流体の濁度と吸光度とに、又は生物学的流体の濁度と粘度とに、又は生物学的流体の濁度と吸光度と粘度とに、又は生物学的流体の吸光度に、又は生物学的流体の粘度と吸光度とに適合させた線量測定液に対し、i)入射光のごく一部のみを吸収するよう十分薄くした光路長の層中の線量測定液に対し、測定可能な程度の物理的又は化学的変化を生じさせるための所定フルエンス(光線量)が得られるように、所定の設定放射照度を所定時間照射し、ii)光照射反応器中の該線量測定液への該光照射の実施中又はその後に測定された変化の程度に対応する線量を読み取ることによる光線量較正に基づき、単色又は多色光の効果を測定する工程を包含し、工程i)は工程ii)の前に、又はその逆に実施される。
【0032】
別の様態により、不透明な生物学的流体中の微生物を不活性化する方法を提供し、該方法は、1つ以上の光源からの単色又は多色光の実効線量を生物学的流体に照射する工程を包含し、該実効線量は、前記の項の記載及び以下に詳細を説明する方法により算定される。
【0033】
さらに別な様態により、UV光不活性化フロー型反応器を提供し、該装置では1つ以上の光源は外包温度自動調節装置に収納されており、該装置は温度調整され、原則として光透過性のある流体が流動してランプからの熱を除去し、これにより本質的にランプ輝度の一定性を確実にする。
【0034】
加えて、1つ以上の光源から放射される単色又は多色光の総光線量を制御して、バッチ式反応器中の生物学的流体の中に存在する微生物を効果的に不活性化する方法をさらに提供し、該方法には、
a)生物学的流体の中に存在する微生物を不活性化するための単色又は多色光の実効線量に基づき、バッチ式反応器中の微生物を効果的に不活性化するため必要な吸収依存性照射源の標的総光線量、照射光線量率及び照射時間を算定する工程と、
b)バッチ式反応器中の生物学的流体の中に存在する微生物を不活性化する間の照射光線量率と照射時間を記録する工程と、
c)工程b)での測定値に基づいて、吸収依存性照射源総光線量を計算する工程と、
d)工程c)で算定された吸収依存性照射源総光線量を工程a)で算定された吸収依存性照射源の標的総光線量と比較する工程と、
e)該吸収依存性照射源総光線量が、該吸収依存性照射源の標的総光線量以上になったならば、生物学的流体の光への曝露を停止する工程とが含まれる。
【0035】
本発明の他の目的、特質及び利点は、後記の説明で明確になる。但し、詳細説明及び個別実施例は、本発明の好適な実施形態を表しており、例示目的のためだけのものである。また、この詳細説明から、当業者にとって、本発明の精神及び範囲内におけるさまざまな変更及び変形が明らかになる。
本発明は例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
生物学的流体の中に存在する微生物を不活性化するための、1つ以上の光源からの単色又は多色光の実効線量を算定する方法であって、該方法は、線量測定液に対する該単色又は多色光の効果を測定する工程であって、ここで、該不活性化はフロー型反応器で実施される工程を包含する、方法。
(項目2)
項目1に記載の方法であって、該方法は、使用される光不活性化波長において上記生物学的流体の吸光度、又は該生物学的流体の吸光度と粘度とに適合させた線量測定液に対し、i)入射光のごく一部のみを吸収するように十分薄くした光路長の層の中の該線量測定液に対し、測定可能な程度の物理的又は化学的変化を生じさせる所定フルエンス(光線量)が与えられるように、所定設定の放射照度で所定時間照射し、そしてii)光照射反応器中の該線量測定液への該光照射の実施中又はその後に測定された変化の程度に対応する該線量を読み取ることによる光線量校正に基づき、単色又は多色光の効果を測定する工程であって、ここで、工程i)は工程ii)の前に、又はその逆に実施される工程を包含する、方法。
(項目3)
項目2に記載の方法であって、上記光路長に沿って上記入射照度の100%以下が吸収される、方法。
(項目4)
項目2に記載の方法であって、上記光路長に沿って上記入射照度の50%以下が吸収される、方法。
(項目5)
項目2に記載の方法であって、上記所定フルエンスは、上記所定の放射照度を変化させ、そして/又は、上記フロー型反応器中の上記生物学的流体の流速によって決定される所定時間を変化させることによって変更され得る、方法。
(項目6)
項目1に記載の方法であって、活性微生物への照射の前又は間、あるいは前及び間にスパイクされた上記生物学的流体に対して照射する工程の、前および後、あるいは前、間および後に該活性微生物の数を滴定することによって、上記線量分布を算定する工程をさらに包含する、方法。
(項目7)
項目1に記載の方法であって、照射線量を算定するために、上記照射の間に上記1つ以上の光源の輝度をモニタリングする工程をさらに包含する、方法。
(項目8)
項目1に記載の方法であって、上記光が、UV範囲である、方法。
(項目9)
項目1に記載の方法であって、上記線量測定液は、アルカリ金属ヨウ化物、アルカリ土類金属ヨウ化物、アンモニウムヨウ化物、水溶性ウリジンリン酸、安息香酸アルカリ金属塩、安息香酸アルカリ土類金属塩、安息香酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸アルカリ金属塩、ペルオキソ二硫酸アルカリ土類金属塩、ペルオキソ二硫酸アンモニウム塩、tert−ブタノール、ポリビニルピロリドン、ベントナイト、マイカ、モンモリロナイト、ノントロナイト、ヘクトライト、カオリナイト、ハロイサイト、ジッカイト、粘土鉱物、チョーク、シリカ、ヒュームドシリカ、重晶石、石こう、タルカム、マグネシア、アルミナ、オキシ塩化ビスマス、酸化亜鉛、アルカリ土類硫酸塩、アルカリ土類炭酸塩、アルカリ土類リン酸塩、アルカリ土類ヒドロキシリン酸塩、アルカリ土類ハロゲンリン酸塩、不溶性ケイ酸塩、不溶性アルミノケイ酸塩、不溶性炭酸塩、不溶性硫酸塩、不溶性リン酸塩、不溶性ヒドロキシルリン酸塩、リン酸ハロゲン、ペルフルオロ炭化水素又はその誘導体、ペルフルオロカルボン酸又はその塩、及びポリビニルポリピロリドンからなる群より選択される因子又は因子の組み合わせを含む、方法。
(項目10)
項目1に記載の方法であって、上記線量測定液は、希釈ヨウ化カリウム−ヨウ素酸カリウムアクチノメーターを含む、方法。
(項目11)
項目1に記載の方法であって、上記線量測定液は、希釈ヨウ化カリウム−ヨウ素酸カリウム/ポリビニルピロリドンアクチノメーターを含む、方法。
(項目12)
項目1に記載の方法であって、上記線量測定液は、希釈安息香酸ナトリウムアクチノメーターを含む、方法。
(項目13)
項目1に記載の方法であって、上記線量測定液は、希釈ペルオキソ二硫酸カリウム/tert−ブタノールアクチノメーターを含む、方法。
(項目14)
項目1に記載の方法であって、上記微生物は、モネラ界の種、モネラ界の種の胞子、菌類界の種、菌類界の種の胞子、原核生物、真核生物、及びウイルスからなる群より選択される、方法。
(項目15)
項目1に記載の方法であって、上記ウイルスは、パルボウイルス科ウイルス、微小マウスウイルス、イヌパルボウイルス、ウシパルボウイルス、ブタパルボウイルス、ネコパルボウイルス、サーコウイルス科(circoviridae)ウイルス、サーシノウイルス科(circinoviridae)ウイルス、ピコルナウイルス科ウイルス、A型肝炎ウイルス、及び脳心筋炎ウイルス、アネロウイルス科ウイルス、脳心筋炎ウイルス、エンテロウイルス科RNAウイルス、ミクロウイルス科DNAバクテリオファージ、及びレビウイルス科RNAバクテリオファージからなる群より選択される、方法。
(項目16)
項目1に記載の方法であって、該方法は、少なくとも1つの他の殺菌及び/又は微生物不活性化法と組み合わせて実施される、方法。
(項目17)
項目1に記載の方法であって、上記生物学的流体は、該流体の生物活性の損傷及び/又は損失を減らすために少なくとも1つの添加物を含む、方法。
(項目18)
項目1に記載の方法であって、該方法は、溶剤洗浄処理とともに実施される、方法。
(項目19)
項目6に記載の方法であって、生物学的流体中に存在する微生物を不活性化するための上記光の実効線量は、該生物学的流体中の上記活性微生物の少なくとも約99.9%を不活性化する線量である、方法。
(項目20)
項目1に記載の方法であって、上記生物学的流体は、ミルク、乳漿、乳製品、ミルク由来の製品、フルーツジュース、果物由来の製品、野菜ジュース、野菜由来の製品、自然植物汁液、遺伝子組み換え植物汁液、合成飲料、加工飲料、発酵飲料、アルコール飲料、血液、血漿、血漿画分、血清、血液由来の流体、血漿由来の流体、血清由来の流体、タンパク質画分を含有する流体、脊髄液、脳液、リンパ液、唾液、精液、尿、原核細胞培養上清、真核細胞培養上清、原核細胞溶解物、真核細胞溶解物、外用治療用途のために意図される流体、腸内治療用途のために意図される流体、非経口治療用途のために意図される流体、外用化粧用途のために意図される流体、及び診断用途のために意図される流体からなる群より選択される、方法。
(項目21)
不透明な生物学的流体の中に存在する微生物を不活性化するための、1つ以上の光源からの単色又は多色光の実効線量を算定する方法であって、該方法は、使用される光不活性化波長において該生物学的流体の濁度、該生物学的流体の濁度と吸光度、該生物学的流体の濁度と粘度、該生物学的流体の濁度と吸光度と粘度、該生物学的流体の吸光度、又は該生物学的流体の粘度と吸光度とに適合させた線量測定液に対し、i)入射光のごく一部のみを吸収するように十分薄くした光路長の層の中の該線量測定液に対し、測定可能な程度の物理的又は化学的変化を生じさせる所定フルエンス(光線量)が与えられるように、所定設定の放射照度で所定時間照射し、そしてii)光照射反応器中の該線量測定液への該光照射の実施中又はその後に測定された変化の程度に対応する該線量を読み取ることによる光線量校正に基づき、単色又は多色光の効果を測定する工程であって、ここで、工程i)は工程ii)の前に、又はその逆に実施される工程を包含する、方法。
(項目22)
項目21に記載の方法であって、上記光路長に沿って上記入射照度の100%以下が吸収される、方法。
(項目23)
項目21に記載の方法であって、上記光路長に沿って上記入射照度の50%以下が吸収される、方法。
(項目24)
項目21に記載の方法であって、上記生物学的流体はフロー型反応器中で不活性化され、上記所定フルエンスは、上記所定の放射照度を変化させ、そして/又は、該フロー型反応器中の該生物学的流体の流速によって決定される所定時間を変化させることによって変更され得る、方法。
(項目25)
項目21に記載の方法であって、活性微生物への照射の前又は間、あるいは前及び間にスパイクされた上記生物学的流体に対して照射する工程の、前および後、あるいは前、間および後に該活性微生物の数を滴定することによって、上記線量分布を算定する工程をさらに包含する、方法。
(項目26)
項目21に記載の方法であって、照射線量を算定するために、照射の間に上記1つ以上の光源の輝度をモニタリングする工程をさらに包含する、方法。
(項目27)
項目21に記載の方法であって、上記光は、UV範囲である、方法。
(項目28)
項目21に記載の方法であって、上記線量測定液は、アルカリ金属ヨウ化物、アルカリ土類金属ヨウ化物、アンモニウムヨウ化物、水溶性ウリジンリン酸、安息香酸アルカリ金属塩、安息香酸アルカリ土類金属塩、安息香酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸アルカリ金属塩、ペルオキソ二硫酸アルカリ土類金属塩、ペルオキソ二硫酸アンモニウム塩、tert−ブタノール、ポリビニルピロリドン、ベントナイト、マイカ、モンモリロナイト、ノントロナイト、ヘクトライト、カオリナイト、ハロイサイト、ジッカイト、粘土鉱物、チョーク、シリカ、ヒュームドシリカ、重晶石、石こう、タルカム、マグネシア、アルミナ、オキシ塩化ビスマス、酸化亜鉛、アルカリ土類硫酸塩、アルカリ土類炭酸塩、アルカリ土類リン酸塩、アルカリ土類ヒドロキシリン酸塩、アルカリ土類ハロゲンリン酸塩、不溶性ケイ酸塩、不溶性アルミノケイ酸塩、不溶性炭酸塩、不溶性硫酸塩、不溶性リン酸塩、不溶性ヒドロキシルリン酸塩、リン酸ハロゲン、ペルフルオロ炭化水素又はその誘導体、ペルフルオロカルボン酸又はその塩、及びポリビニルポリピロリドンからなる群より選択される因子又は因子の組み合わせを含む、方法。
(項目29)
項目21に記載の方法であって、上記線量測定液は、希釈ヨウ化カリウム−ヨウ素酸カリウムアクチノメーターを含む、方法。
(項目30)
項目21に記載の方法であって、上記線量測定液は、希釈ヨウ化カリウム−ヨウ素酸カリウム/ポリビニルピロリドンアクチノメーターを含む、方法。
(項目31)
項目21に記載の方法であって、上記線量測定液は、希釈安息香酸ナトリウムアクチノメーターを含む、方法。
(項目32)
項目21に記載の方法であって、上記線量測定液は、希釈ペルオキソ二硫酸カリウム/tert−ブタノールアクチノメーターを含む、方法。
(項目33)
項目21に記載の方法であって、上記線量測定液は濁度生成因子を含む、方法。
(項目34)
項目21に記載の方法であって、上記微生物は、モネラ界の種、モネラ界の種の胞子、菌類界の種、菌類界の種の胞子、原核生物、真核生物、及びウイルスからなる群より選択される、方法。
(項目35)
項目21に記載の方法であって、上記ウイルスは、パルボウイルス科ウイルス、微小マウスウイルス、イヌパルボウイルス、ウシパルボウイルス、ブタパルボウイルス、ネコパルボウイルス、サーコウイルス科ウイルス、サーシノウイルス科ウイルス、ピコルナウイルス科ウイルス、A型肝炎ウイルス、及び脳心筋炎ウイルス、アネロウイルス科ウイルス、脳心筋炎ウイルス、エンテロウイルス科RNAウイルス、ミクロウイルス科DNAバクテリオファージ、及びレビウイルス科RNAバクテリオファージからなる群より選択される、方法。
(項目36)
項目21に記載の方法であって、該方法は、少なくとも1つの他の殺菌又は微生物不活性化法と組み合わせて実施される、方法。
(項目37)
項目21に記載の方法であって、上記生物学的流体は、該流体の生物活性の損傷及び損失を減らすために少なくとも1つの添加物を含む、方法。
(項目38)
項目21に記載の方法であって、該方法は、溶剤洗浄処理とともに実施される、方法。
(項目39)
項目25に記載の方法であって、生物学的流体中に存在する微生物を不活性化するための上記光の実効線量は、該生物学的流体中の上記活性微生物の少なくとも約99.9%を不活性化する線量である、方法。
(項目40)
項目21に記載の方法であって、上記生物学的流体は、フロー型反応器中で不活性化される、方法。
(項目41)
項目21に記載の方法であって、上記生物学的流体は、ミルク、乳漿、乳製品、ミルク由来の製品、フルーツジュース、果物由来の製品、野菜ジュース、野菜由来の製品、自然植物汁液、遺伝子組み換え植物汁液、合成飲料、加工飲料、発酵飲料、アルコール飲料、血液、血漿、血漿画分、血清、血液由来の流体、血漿由来の流体、血清由来の流体、タンパク質画分を含有する流体、脊髄液、脳液、リンパ液、唾液、精液、尿、原核細胞培養上清、真核細胞培養上清、原核細胞溶解物、真核細胞溶解物、外用治療用途のために意図される流体、腸内治療用途のために意図される流体、非経口治療用途のために意図される流体、外用化粧用途のために意図される流体、及び診断用途のために意図される流体からなる群より選択される、方法。
(項目42)
UV光不活性化フロー型反応器であって、1つ以上の光源が外包温度自動調節装置に入れられており、温度調節されて本質的に光透過性の液体が、該外包温度自動調節装置を流れてランプから熱を除去し、これにより本質的に一定のランプ輝度を確実にする、UV光不活性化フロー型反応器。
(項目43)
項目42によるフロー型反応器であって、該フロー型反応器は、重力作動の薄膜生成型、乱流能動混合流型、遠心分離作動薄膜生成型、コイル管型、バッフル管型、静止混合管型、乱流静止混合流管型、層流管型、及び乱流流管型からなる群より選択される反応型である、フロー型反応器。
(項目44)
バッチ式反応器中の生物学的流体の中に存在する微生物を効果的に不活性化するための1つ以上の光源から放射される単色又は多色光の総光線量を制御する方法であって、
a)該バッチ式反応器中の該微生物を効果的に不活性化するために必要な、該生物学的流体の中に存在する微生物を不活性化するための単色又は多色光の実効線量に基づく吸収依存性の照射源標的総光線量、照射光線量率、及び照射時間を算定する工程;
b)該バッチ式反応器中の該生物学的流体の中に存在する該微生物の不活性化の間、該照射光線量率及び該照射時間を記録する工程;
c)工程b)における測定値に基づいて該吸収依存性の照射源総光線量を計算する工程;
d)工程c)で算定した該吸収依存性の照射源総光線量を、工程a)で算定した該吸収依存性の照射源標的総光線量と比較する工程;ならびに
e)一旦、該吸収依存性の照射源総光線量が該吸収依存性の照射源標的総光線量以上になると、該生物学的流体の光への曝露を停止する工程
を包含する、方法。
(項目45)
項目44に記載の上記吸収依存性の照射源総光線量を制御する方法であって、該方法は、照射光線率の変動、及び/又は上記1つ以上の光源の少なくとも1つの中間の停止にかかわらず、上記吸収依存性の照射源総光線量が、本質的に上記吸収依存性の照射源標的総光線量に等しくなるまで、続けられる、方法。
(項目46)
項目44に記載の方法であって、上記実効線量は、線量測定液に対する上記単色又は多色光の効果を測定することにより算定され、該方法は、使用される光不活性化波長において上記生物学的流体の濁度、該生物学的流体の濁度と吸光度、該生物学的流体の濁度と粘度、該生物学的流体の濁度と吸光度と粘度、該生物学的流体の吸光度、又は該生物学的流体の吸光度と濁度とに適合させた線量測定液に対し、i)入射光のごく一部のみを吸収するように十分薄くした光路長の層の中の該線量測定液に対し、測定可能な程度の物理的又は化学的変化を生じさせる所定フルエンス(光線量)が与えられるように、所定設定の放射照度で所定時間照射し、そしてii)光照射反応器中の該線量測定液への該光照射の実施中又はその後に測定された変化の程度に対応する線量を読み取ることによる光線量校正に基づき、単色又は多色光の効果を測定する工程であって、ここで、工程i)は工程ii)の前に、又はその逆に実施される工程を包含する、方法。
(項目47)
項目44に記載の方法であって、上記照射光線量率及び上記照射時間の記録は、少なくとも1つの電子放射計、少なくとも1つのチャート式記録計、及び/又は少なくとも1つの合計カウンターを使って実施される、方法。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、吸収係数とヨウ化物/ヨウ素酸塩濃度との線形関係を示す(実施例1参照)。
【図2】図2は、粘度の増加とポリビニルピロリドンの濃度との非線形関係を示す(実施例1参照)。
【図3】図3は、2.5/cmモデル溶液に対する較正プロットを示す(実施例1参照)。
【図4】図4は、4.5/cm、7.5/cm、10/cmモデル溶液に対する較正プロットを示す(実施例1参照)。
【図5】図5は、定義された分子吸光度を持つモデル溶液と、及び同じ溶液に2gのベントナイト/Lを入れて、懸濁粒子による濁度を加えたものとの較正プロットを示す(実施例10参照)。
【図6】図6は、吸収係数と濃度との線形関係を示す(実施例10参照)。
【図7】図7は、粘度の増加とポリビニルピロリドンの濃度との非線形関係を示す(実施例10参照)。
【図8】図8は、適用表面線量による吸収率増加と、Kl/KlO3濃度による感度の増大とを示す(実施例10参照)。
【図9】図9は、PVPでの感度の改良を示す(実施例10参照)。
【図10】図10は、ランプ輝度の変化を示す(実施例15参照)。
【図11】図11は、線量の増加を、y軸定数として表した誤差とともに示す(実施例15参照)。
【図12】図12は、本発明の典型的較正装置を示す。(実施例17参照)。
【図13】図13は、温度調整ランプ取付け品の断面図をランプ輝度センサ及び温度センサとともに示す(実施例18参照)。
【図14】図14は、温度調整液とともに用いる、チューブ型ランプの温度調整の配置の断面図を示す(図14a及び14b)。
【発明を実施するための形態】
【0037】
添付の図面は、本明細書に組み込まれてその一部を構成しており、本発明の1つの実施形態を図示し、前記の一般的記述及び以下に記載するこの実施形態の詳細解説とともに、本発明の原理を説明する役割を果たす。しかして、本発明、その目的及び利点をさらに完全に理解するため、添付図面と関連させ以下に説明を述べる。
【0038】
(発明の詳細な説明)
第1の様態において、本発明は、生物学的流体中に存在する微生物を不活性化するために、1つ以上の光源からの単色又は多色光の実効線量を算定する方法を提供し、該方法は、線量測定液に対する単色又は多色光の効果を測定する工程を包含し、不活性化はフロー型反応器の中で行われる。望ましくは、線量測定液に対する光の効果は、使用される不活性化光波長に対する対象生物学的流体の吸光度、又は生物学的流体の吸光度及び粘度に適合させた線量測定液に対し、i)入射光のごく一部のみを吸収するよう十分薄くした光通過層中の線量測定液に対し、測定可能な程度の物理的又は化学的変化を生じさせるための所定フルエンス(光の線量)が得られるように、所定放射照度を所定時間照射し、ii)光照射反応器中の該線量測定液への該光照射の実施中又はその後に測定された変化の程度に対応する線量を読み取ることによる光線量較正に基づき、単色又は多色光の効果を測定する工程を包含する方法によって算定され、工程i)は工程ii)の前に、又はその逆に実施される。好適な実施形態を実施例1、2、及び17に提示する。
【0039】
微生物とは、モネラ界の種、モネラ界の種の胞子、菌類界の非病原性微生物種、菌類界の種の胞子、古細菌、原核生物類、望ましくはバクテリア、真核生物類、ウイルス及びバクテリオファージから選んだ任意の微生物をいい、これら又は類似の微生物が殺菌され、又はその活動が低下されることを確実にする。望ましくは、ウイルス類は、パルボウイルス科ウイルス、微小マウスウイルス(MMV)、イヌパルボウイルス(CPV)、ウシパルボウイルス(BPV)、ブタパルボウイルス(PPV)、ネコパルボウイルス(FPV)、サーコウイルス科(circoviridae)ウイルス、サーシノウイルス科(circinoviridae)ウイルス、ピコルナウイルス科ウイルス、好ましくは、A型肝炎ウイルス(HAV)、及び脳心筋炎ウイルス(EMV)、アネロウイルス科ウイルス、脳心筋炎ウイルス(EMV)、エンテロウイルス科RNAウイルス、ミクロウイルス科DNAバクテリオファージ、及びレビウイルス科RNAバクテリオファージから選択される。望ましい微生物は、脂質エンベロープのある一本鎖又は二重本鎖ウイルス、脂質エンベロープのある又はないウイルスである。
【0040】
生物学的流体とは、任意の自然又は加工生物学的流体をいい、こういった生物学的流体には、ミルク、乳漿及びミルクたんぱく質画分、及び全血液及び画分、血液製剤、血漿、血漿画分、血清、血液由来の流体、血漿由来の流体、血清由来の流体、タンパク質画分を含有する流体、脳脊髄液、リンパ液、唾液、精液、尿、原核細胞培養上清、真核細胞培養上清、原核細胞溶解物、真核細胞溶解物、又は前記のような液体の派生物が含まれる。
【0041】
本発明による特に望ましい生物学的流体は治療用流体であって、これは外用、経腸、又は非経口の治療用途に意図された任意の流体をいい、基本的には、不活性化光波長の透過性がなく、光不活性化照射エネルギーの過度の被曝量に敏感である。これらの流体には、血液、血液製剤、血漿、血漿画分、血清、ならびに血液、血漿及び血清から得られた流体が含まれる。水、生理食塩水、乳酸リンゲル液、又はグルコース溶液のような透明で澄んだ流体は、過剰放射に耐え、必ずしも正確な光曝露量を必要としない。
【0042】
本発明による特に望ましい別の生物学的流体は化粧用流体であって、外用に意図された任意の流体をいい、基本的には、不活性化光波長に対し不透過、すなわち吸光性又は混濁、あるいは吸光性で且つ混濁しており、過度の光不活性化照射エネルギー被曝量に敏感である。アルコール水香水のような透明で澄んだ流体は過剰放射に耐えることができ、必ずしも正確な光曝露量を必要としない。
【0043】
本発明による特に望ましいさらに別の生物学的流体は栄養用流体であって、望ましくは栄養摂取又は渇きの癒し又は元気回復用として、経口又は経鼻摂取を意図された任意の流体をいい、基本的には、不活性化光波長に対し不透過、すなわち吸光性又は混濁、あるいは吸光性で且つ混濁していて、過度の光不活性化照射エネルギー被曝量に対し敏感であり、これには、ミルク、乳漿、乳製品、ミルク由来の製品、フルーツジュース、果物由来の製品、野菜ジュース、野菜由来の製品、自然植物汁液、遺伝子組み換え植物汁液、合成飲料、加工飲料、発酵飲料、及びアルコール飲料が含まれる。水道水、瓶詰ミネラルウォーター、又は水にクエン酸、炭酸ガス及び砂糖を溶かして作ったレモネードのような透明な流体は、一般に過剰放射に耐え、必ずしも正確な光曝露量を必要としない。
【0044】
本発明による特に望ましい別の生物学的流体は診断用流体又はこれから得られた流体、すなわち、抗体溶液又はその成分を含有する液体のような診断液および診断液キットである。蒸留水、無機食塩緩衝水、又は凝血原塩化カルシウム溶液のような透明な診断用流体は過剰放射に耐えることができ、必ずしも正確な光曝露量を必要としない。
【0045】
本発明による生物学的流体は、望ましくは、病原体光不活性化反応器中の光路長に沿って光強度が容易に減衰されるような程度に、殺病原体光を減衰するような生物学的流体である。この減衰は、生物学的流体中に含まれるアミノ酸、タンパク質、ヌクレオチド、核酸、又は色素のような分子発色団、もしくは、光線感作物質又は光防剤のような添加物質の分子発色団、もしくは、光散乱性および吸収性の高分子及び懸濁粒子による混濁、もしくは、これらすべての寄与パラメータの組み合わせに起因するものであり得る。この減衰程度は光路長に依存する。1/cmの常用対数吸収係数を持つ流体は、薄い0.5mmの液層中では入射光の5.5%しか吸収せず、従って基本的には透明流体としてふるまうが、10cmの深い液層中では入射光の95.7%を吸収することになる。反応器の光路長沿いの入射光を、望ましくは約5%を越えて、望ましくは約10%を越えて、さらに望ましくは約20%を越えて減衰させる一切の流体に対しては、化学的な線量測定を行って、本発明により有効線量を算定することが必要になる。指数的光減衰度によれば、初期の輝度は、当初輝度が50%に減少する半減光路長d1/2を10回繰り返した後には、ほぼ消滅の1/1024になってしまう。望ましくは、UV病原体不活性化に使われる生物学的流体は、ワクチン用の血清不含有細胞の培養上清(a253.7=5/cm、d1/2=0.06mm)、プロトロンビン複合体溶出液(Brummelhuis、1980年)(a253.7=7.5/cm、d1/2=0.04mm)、りんごジュースのようなフルーツジュース(a253.7=10/cm、d1/2=0.03mm)、又は血漿(a253.7=25/cm、d1/2=0.012mm)といった 約253.7nmのUV光に対して高度に不透過性の流体である。このことは、約6mm、望ましくは約4mm、さらに望ましくは3mm、もっと望ましくは約1.2mm進んだ後、入射UV光のエネルギーは、基本的には完全に消耗されつくし、これらの生物学的流体が非常に不透明であることを意味する。
【0046】
生物学的流体には、自然に又は人為的に添加された物質を含有するものがあり得、これら含有物は、微生物の核酸への光損傷を促進も抑止もしないが、光照射、とりわけUV光照射に対し、例えば、ルチンのようなフラボノイド(Erdman、1956年、世界公開第94/28210号)、アスコルビン酸のようなビタミン(Erdman、1956年)、及びクレアチニン(日本第11286543−A号)といった反応性のある酸素ラジカル抑制物質として作用することによって、対象となる成分を保存するための有益な保護効果を発揮する。但し、これらの添加物質により、使用波長において余分な吸光が加わる場合、適用される光線量で該余分な吸光が補償されなければ実際に微生物に到達する殺病原体光エネルギーが小さすぎることにもなろう。過剰なエネルギー適用は容易にタンパク質を損傷する。従って、微生物の十分な不活性化に必要なUV又は可視光線の線量が過剰にならないように、実施例1、2、11、12、及び15から17に詳述するように、できる限り正確に計算しなければならない。
【0047】
光、単色光、又は多色光は、電磁気スペクトル中の、望ましくはUV及び可視光線の波長及び周波数範囲内のエネルギーをいう。
【0048】
本発明によって用いたような微生物を不活性化する光化学的方法には、以下による照射が含まれる:
約200から約280nmの間のUV−C域の、望ましくは、約265nmの核酸の最大感受性に近い殺菌力のある波長の短波紫外線光、
約280から約320nmの間のUV−B域の中波紫外線光、
約320から約400nmの間のUV−A域の長波紫外線光、又は少なくとも1つの自然の又は添加された光線感作物質の存在の下で、約400から700nmの間の可視光線、もしくは前記の波長域のパルス単色コヒーレント光または非コヒーレント光、又は広域スペクトルパルス光。望ましくは、これらの光は連続的に放射される。
【0049】
生物学的流体中に存在する微生物を不活性化するための実効光線量を算定する該方法の好適な実施形態によれば、光路長に沿って、入射光の約100%、望ましくは約80%、望ましくは約60%、望ましくは約50%、望ましくは約30%又はそれ以下が吸収される。
【0050】
このような生物学的流体に吸収される光の量は、定義された波長l、及び通常は1cmの光路長dにおける透過率又は吸光度として表される。透過率Tは100%を超えることはなく、これから常用対数吸光度Aは、A=−log10Tによって計算され、d=1cmに対して、Aは、単位1/cmの常用対数吸収係数alとなる。最も殺菌力のある265nm周辺の短波紫外線では、吸収によって光の最大貫通深さが1mm未満に低減されることがある。
【0051】
本発明の方法及び反応器に用いられる光源は、通常チューブ型で、金属蒸気放電ランプを基としている。低圧金属蒸気ランプは、少量の熱を発生させるだけで、熱、特に過剰熱に敏感なものがある生物学的流体に対して望ましい。このようなランプからの放射は、589nmのオレンジ光を持つ低圧ナトリウム蒸気ランプ、又は253.7nmのUV−C光を持つ低圧水銀蒸気ランプからの放射のように、望ましくは単色である。また、後者は、内側をリン光体でコートし、例えば、蛍光白色、actinic blue+UVA、ブラックライト UV−A又はUV−Bの広域又は狭域放射スペクトルを得ることができる。本発明に適した他の殺病原体光源には、中圧及び高圧金属蒸気ランプ、フラッシュ放電管、水中アーク灯、レーザ、エキシマーランプ、発光ダイオード、白熱ランプなどが含まれる。
【0052】
分光光度計で測定したこのような生物学的流体の全体吸光度は、分子発色団による分子吸光、及び、混濁の加わった、不透明、曇った、又は濁った流体、すなわち光が散乱し減衰している場合は、コロイド的に分散した分子及び懸濁した粒子から成っていることもある。ろ過されていない混濁した果汁のような吸収性溶液中の粒子(例、細胞残屑)の懸濁に対し、該無ろ過果汁の吸光度から、清浄ろ過した果汁の吸光度を差し引いて濁度を測定することができる(実施例10参照)。
【0053】
光感作物質は、ソラレン及びその誘導体のような微生物に直接作用するか、あるいは、溶解酸素からの一重項酸素又は溶媒からの溶媒和電子のような、溶液中に存在する別の成分から反応性分子を発生させる物質である。後者の光感作物質の種類には、フエノチアジン色素、アクリジン、フラビン、ポルフィリン、及びフタロシアニンが含まれる。
【0054】
光に対する微生物の感受性は、そのゲノムのサイズ、その核酸の種類、及び被った光損傷の修復能力如何による。一般にかび及びバクテリアの胞子、及び真核細胞は最も抵抗性が高く、ウイルス類はこれより低く、植物性バクテリアはもっとも感受性が高い。従って、微生物の活性をおよそ所望程度のレベルまで低下させるのに必要なフルエンスは、微生物ごとに異なる。フルエンスは、ある面積、例えば、微生物の断面積に入射するエネルギーであり、曝露に際しては入射エネルギーのごく一部しか吸収、使用されない(Bolton、1999年)。光線量という用語も、フルエンスの代わりによく使われる。
【0055】
微生物を、非吸収性の懸濁液中で、既知のフルエンス率(面積あたりの光パワー)で所定時間照射する場合、微生物に適用された光線量を計算でき、線量依存的不活性化率を算定することができる(Blton及びLinden、2003年)。このようにして、多くの微生物に対する不活性化率定数が算定されてきており、その一部は微生物の光化学処理工程の効率を示す指標として用いられている。
【0056】
しかしながら、生物学的流体は、タンパク質、ビタミン、及びフェノール化合物、又は脂肪リポソーム及び細胞残屑のような、流体に付随し、殺病原体効果のある光を吸収し得る物質又はこれを散乱し得る粒子を含有している場合がある。入射光のほとんどは、これらの付随物質に費消され、又は粒子に遮蔽され、光の一部だけが実際に標的微生物に到達し効果をだす。従って、こういった生物学的流体中のこういった微生物を所望程度のレベルに不活性化するため必要な照射時間は、非吸収性の水生懸濁液中のその微生物の同じ不活性化を達成する時間を上回り、本発明による方法の活用を取り入れることができる。
【0057】
幅広い数の自然のスクリーニング化合物が、激しい高エネルギー光の有害な影響から生物を守っている。但し、これらは、光が発生させるラジカル又は励起分子を捕捉して緩和してくれることだけでなく、単に、光生物学的に活性な光スペクトルを吸収してくれることにもよるであろう。このような保護をしてくれると推定される、例えば、フラボノイド又はアスコルビン酸のような反応性酸素種の緩和物質の添加物を、透明な、又は既に吸収性のある本発明による生物学的流体に加えると、該添加物が殺菌波長を吸収する場合、これによる追加吸光が生じ、光の貫通度は低減され得る。りんごジュースに添加した0.1又は0.5%のアスコルビン酸を平坦な0.2mm深さのフロー型キュベットに入れ、ハノビア・バイオステリトロン・ランプに曝すと、微生物に対する滞留時間依存的な不活性化率は、添加物なしのジュースに比べ、約50%及び約20%減少した(Mackら、1959年)。
【0058】
本発明の好適な実施形態において、化学的線量測定を用いて実効線量を測定する。線量測定液は反応剤から調合された溶液で、測定対象の波長で十分な光化学反応を受け、これにより測定可能な光反応物を生成する。光生成物については、溶液の吸収係数に関連して薄い層の中で十分な感度を持って測定することができ、この層には入射する照射のごく一部しか吸収されず、層の面積に照射する光エネルギーは実質上は無吸収で通過するので、これにより、フルエンスの算定が可能となる。好適な実施形態が、実施例1〜6、10〜13、及び15〜17に提示されている。
【0059】
いくつかの化学アクチノメーターが一般的に知られており本発明に十分使える。例えば、UV−C照射に適した線量測定液を、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びヨウ化物のアンモニウム塩、及び水溶性ウリジンリン酸からなる群より選択することができる。
【0060】
本発明の特質は、微生物の光不活性化のため使用する装置の検証方法を、照射波長において所定の吸光度を持つ、もしくは、望ましくは照射波長において微生物不活性化のため光照射される生物学的流体の吸光度、または吸光度および粘度の両方に適合させた所定の吸光度および所定の粘度を持つ線量測定液に用いることができることである。
【0061】
特に、高濃度すなわち高度に吸収性のある生物学的流体に適したいくつかのUV−C感受性の化学的線量計を本発明に使用することができる。例えば、以下に限らないが、望ましくは、≧6.96mMのKI及び≧1.16mMのKIO3を含有する希釈ヨウ化物カリウム−ヨウ素酸塩カリウムのアクチノメーターは、以下に限らないが、例えば、a253.7が少なくとも約2/cm、高い量子収量、及び三ヨウ化物の高い比吸収係数を持つような生物学的流体の吸光度に対応する高い吸光度を有する。この線量測定液については、対応するヨウ化物カリウム及びヨウ素酸塩カリウムの濃度によって、以下に限らないが、望ましくは、吸収係数a253.7が少なくとも2/cmの生物学的流体の吸収係数に適合するように調合でき、薄層のキュベット中で、以下に限らないが、約0.1から約1mmの光路長、望ましくは約0.1から約0.7mmの光路長、さらに望ましくは約0.1から約0.5mmの光路長、さらに望ましくは約0.1から約0.3mmの光路長、さらに望ましくは約0.3から約1mmの光路長、さらに望ましくは約0.5から約1mmの光路長、さらに望ましくは、約0.7から約1mmの光路長で使用可能なように調合することができる。ポリビニルピロリドン(PVP)は、三ヨウ化物に対する安定化効果があることで知られているが、これを添加することによって、ヨウ化物/ヨウ素酸塩溶液の感度が向上し、タンパク質溶液の粘度と非常によく合致し得る。
【0062】
特に、低濃度、すなわち低吸収性の生物学的流体に適した別の好適なUV−C感受性の化学線量計は、安息香酸ナトリウムアクチノメーターで、これは薄層の蛍光セル中の光生成物の蛍光光度測定を可能にし、これを希釈して、以下に限らないが、望ましくは少なくとも約1×10mmの光路長を持つ薄層の蛍光キュベットにおいて、以下に限らないが、例えば、約0.1/cmから約2/cm、望ましくは約0.4/cmから約2/cm、さらに望ましくは約0.8/cmから約2/cm、望ましくは約1.2/cmから約2/cm、さらに望ましくは約1.6/cmから約2/cmの吸収係数a253.7に合わせることができる。
【0063】
特に、非常に低い濃度、すなわちほとんど非低吸収性の生物学的流体に適したさらに別の好適なUV−C感受性の化学線量計は、ペルオキソ二硫酸カリウム/tert−ブタノールアクチノメーターで、これも希釈して、以下に限らないが、望ましくは約0.5/cmまでの吸収係数a253.7に合わせることができる。線量測定液は、以下に限らないが、0.5から1cm、望ましくは約0.7から約1cmの路長を有するキュベット中で望ましくは用いられる。光生成物である水素イオンを、適当な、望ましくは小型化したpH電極を浸漬させpHメーターを使って測定することができる。
【0064】
本発明の好適な実施形態において、線量測定液には、アルカリ金属ヨウ化物、アルカリ土類金属ヨウ化物、アンモニウムヨウ化物、水溶性ウリジンリン酸、安息香酸アルカリ金属塩、安息香酸アルカリ土類金属塩、安息香酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸アルカリ金属塩、ペルオキソ二硫酸アルカリ土類金属塩、ペルオキソ二硫酸アンモニウム塩、tert−ブタノール、ポリビニルピロリドン、ベントナイト、マイカ、モンモリロナイト、ノントロナイト、ヘクトライト、カオリナイト、ハロイサイト、ジッカイト、粘土鉱物、チョーク、シリカ、ヒュームドシリカ、重晶石、石こう、タルカム、マグネシア、アルミナ、オキシ塩化ビスマス、酸化亜鉛、アルカリ土類硫酸塩、アルカリ土類炭酸塩、アルカリ土類リン酸塩、アルカリ土類ヒドロキシリン酸塩、アルカリ土類ハロゲンリン酸塩、不溶性ケイ酸塩、不溶性アルミノケイ酸塩、不溶性炭酸塩、不溶性硫酸塩、不溶性リン酸塩、不溶性ヒドロキシルリン酸塩、リン酸ハロゲン、ペルフルオロ炭化水素又はその誘導体、ペルフルオロカルボン酸又はその塩、及びポリビニルポリピロリドンなどの因子又は因子の組み合わせを含めることができる。
【0065】
望ましくは、線量測定液には、希釈ヨウ化カリウム−カリウムヨウ素酸塩アクチノメーター、希釈ヨウ化カリウム−カリウムヨウ素酸塩−ポリビニルピロリドンアクチノメーターを含めることができ、望ましくは、これら線量測定液は、使用される光不活性化波長における対象生物学的流体の吸光度、又は該生物学的流体の吸光度と粘度とに合わせられている。
【0066】
対象生物学的流体の濁度は全体の吸光度に寄与している可能性があり、これに合わせる必要がある場合、以下に限らないが、ベントナイト、モンモリロナイト、マイカ、モンモリロナイト、ノントロナイト、ヘクトライト、カオリナイト、ハロイサイト、ジッカイト、他の任意の妥当な粘土鉱物、シリカ、ヒュームドシリカ、チョーク、石こう、重晶石のような鉱物、又は、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)のようなポリマーを含む適当な濁度原因添加物を、希釈し、吸光度及び/又は粘度を適合させたヨウ化カリウム−カリウムヨウ素酸塩−ポリビニルピロリドンアクチノメーター、又は他の任意の妥当なアクチノメーターに加えればよい。望ましくは、線量測定液には、希釈安息香酸ナトリウムアクチノメーターを含めることができる。さらに望ましくは、線量測定液には、希釈し、吸光度を適合させたペルオキソ二硫酸カリウム/tert−ブタノールアクチノメーターをも含めることができる。
【0067】
線量測定薬剤は、かなり過剰に存在する小さな溶解分子で、容易に照射域に拡散することになる。したがって、線量測定薬剤は、入射光の光子によって光化学反応生成物に変換される。基本的に一定の輝度で作動しているランプによって、同一数の光子が反応器の処理品を照射し、基本的には同一の実効線量(mJ/cm2)を所定の時間間隔で適用し、特定の化学的線量率((mJ/cm2)/分)をもたらすことになる。ランプの輝度を考慮に入れて、照射された全体のランプ線量を制御することができる。バクテリオファージ又はウイルスを含んだタンパク質溶液に対する線量率は、望ましくは、所定の吸光度及び粘度に対し基本的には同一となろう。
【0068】
生物サンプル溶液の常用対数吸収係数については、分光光度計の測定範囲内に吸光度を保つのに十分な薄さのキュベットに入れて分光光度計で測定することができる。吸収係数は、結果を光路長(通常、センチメーター)で除算して計算し、自然対数吸収係数は常用対数吸収係数に10の自然対数を乗じて計算する。
【0069】
粘度については、技術的に一般に知られているように、毛細管粘度計の流れ時間を測定しその結果にその毛細管粘度計の定数を乗じて算定することができる。
【0070】
吸光度を適合させた希釈アクチノメーター液とともに使う薄層キュベットの光路長については、望ましくは、小さくして入射光の小部分だけがキュベット内で吸収されるようにすることができる。
【0071】
このような薄層中の部分的吸収用の希釈光量測定液を使用して較正することによって、望ましくは、可能な最大の精度を持ってフルエンスを適用することができる。例えば、253.7nmにおいて常用吸収係数、a253.7=15/cmを持つ溶液の0.02cmのキュベット中での吸収率が27.3%、又は、a253.7=2/cmを持つ溶液の0.1cmのキュベット中での吸収率が19.9%であるとする。このことは、光路長を通った実効線量は、前者に対しては入射照度エネルギーの72.7%であり、後者に対しては80.1%であることを意味している(Morowitz、1950年)。従って、第一サンプルに対するモロウィッツ補正係数は72.7%であり、第二に対しては80.1%である。このように自己吸収誤差は簡単に計算して補正することができる。正確な較正のため、一般に50%より低いモロウィッツ補正係数は使わないことが望ましく、このことは、キュベットの光路長は、光強度が初期値の25%減ずる距離を越えないようにすべきということである。
【0072】
線量測定較正プロットを設定するため、既知の照度を持つ光源を、例えば、高濃度で十分な吸収性のあるアクチノメーター液を使って、電子放射測定、分光放射測定、又は化学光量測定によって測定することができる。光源からの入射照度を設定した後、希釈して吸光度を適合させた、又は吸光度と粘度とを適合させた線量測定液を含むキュベットを、所定の配置及び照度で所定時間照射して所定の表面線量を適用し、得られる光量測定信号を測定し光線量と対比してプロットする。
【0073】
この校正を、例えば、ランプと、キュベットを所定の曝露時間曝すための光路内のシャッターと、光路の端にランプと平行して装着されたキュベットとを使って行うことができる。このようなシャッターを、例えば、写真カメラのフィルム面のシャッターのように使用し、シャッターメカニズムを、機械的時計仕掛け、又は望ましくは電子発振器によって正確に制御する。発振器駆動のシャッター及び固定されたキュベットの位置により、再現性があり精度あるキュベットの曝露を確実にする。これを、市販されている35mm又は中版フィルム単眼レンズ・レフレックス又は距離計カメラ本体に、ランプ固定具をカメラのレンズ・マウントに取り付け、カメラの後部まで伸びた開口部にキュベットを取り付け、カメラを改造して実現できる。望ましくは、カメラ後部の開口部自体がキュベットの全表面を照射できるような寸法である必要があり、開口部の縁はコリメータの一部として機能する。ランプ輝度及び光量測定量子収量の安定性を向上させるため、挿入したランプ及びキュベットを、ファン、循環液、又はペルチェ素子のようなデバイスを使って温度調節することができる。
【0074】
校正の対象装置には、望ましくは、光源と、コリメータ開口の中に光を照射するための光出口開口部と、シャッターと、キュベット又は線量測定液を収納した光学セルに光を照射するための光入口開口部を備え温度調節されたハウジングに装着された、キュベット・スロットとを含めることができよう。望ましくは、放射感知センサの取り付け部には温度調節されたマウントを具えることができ、光源からの光は、シャッターを通ってキュベット上、及び開口部を通ってセンサ入り口ウィンドウの双方へ同時に照射され、較正プロセスによって光源をモニタリングし、あるいは同時に曝露されたキュベット又は光学セルの中に収納されている、最新技術によるアクチノメーター液と対比することによってこういったセンサの時間定数特性を点検する。非常に望ましくは、精度のあるタイマーでシャッターを駆動し、キュベット又は光学セルに対する正確で再現性のある曝露時間を実現する。図12に好適な較正装置を示す。望ましくはハウジング(U)に装着されたチューブ型ランプ(T)は、望ましくは温度調節されるか又は電流安定化され、非常に望ましくは温度調節され且つ電流安定化されており、較正プロセスを通して基本的には一定の光照射を実現する。図12に示すように、望ましくは温度調節はランプを通って流れる光透過性の液体によって行われる。ランプからの矢印で示されている光は、開口部(V)を通り、時間制御で開かれるシャッター(W)を通過して、キュベットの上に照射され、該キュベットはホルダ内の最大スペースより薄い場合、距離調整器と一緒に、望ましくは温度調節されているキュベットホルダ(X)挿入されている。キュベットはアクチノメーター液又はモデル線量測定液を収納しており、シャッターの開いている間、精度よく正確に曝露を受ける。任意の開口部(Y)は、開口部(V)と違った場所に、だが望ましくは、ランプから光が両方の開口部(V及びY)に空間的に同じように照射するような場所に設置され、電子センサ(Z)を収容しており、該センサは、以下に限らないが、望ましくは、反応器の放射測定に使われるセンサの1つであって、望ましくは、キュベット・ホルダ(X)による光量測定と、センサ(Z)による放射測定とによって同時に測定された輝度の比率に基づいてセンサを再較正する的確な方法を備えている。また、センサ(Z)を使って、較正曝露の間ランプ輝度をモニタリング、記録し、この較正曝露の間にランプ輝度が変化した場合には、その後の輝度補正を行うことができる。また、このような較正用装置の使用が実施例17に記載されており、これを、ランプから放射された光をアクチノメーター・キュベットと放射感知センサとが同時に測定できるように、放射感知センサのマウントをランプ装着治具に取付けることによって、放射感知センサを点検し再較正するために用いることもできる。
【0075】
生物学的流体の中に存在する微生物を不活性化するための、光の実効線量を算定する方法の好適な実施形態によれば、設定フルエンスを、フロー型反応器中の生物学的流体の流速に応じた設定照度及び/又は設定時間を変更することによって変えることができる。また、放射される光の波長又は波長のスペクトルを変更することによっても設定フルエンスを変えることができる。というのは、所与の光放射強度における、照射ベースの不活性化に対する微生物の感受性は、光の波長又は波長のスペクトルの関数だからでもある。
【0076】
より高い流速を達成するため、前記薄層照射装置のメーカーWedeco Visa AG社は、いくつかの単独照射装置を直列につなぐか、あるいはこれらを並列構成にして使うことによって流通能力を増加させることを推奨している。線量については、より低い流速を用いてより長い滞留時間にするか、又は基本的に一定流速で照射装置の数を増やしを直列につなぐことによって増加させることができる。らせん状流れガイドを環状ギャップに挿入して、流量特性を改善することができる(Harrington及びHills、1968年)。バッフルによる受動的混合が、米国特許第6,586,172号に記載された血液処理装置の中に使われており、これではUVランプからの熱の除去のため補助エアフロー冷却が使われている。
【0077】
この点で、より高い混合度によるさらに効率的な方法は、滞留時間の分布幅を狭め、不活性化率を増大することであろう。このようなより高い混合度は、以下に限らないが、例えば、バッフルによる受動的効果、又は動的なテイラー渦又はディーン渦の生成のように、縦方向の流れに対し横断方向の混合を負荷することによって達成できる。
【0078】
実効光線量を測定するために、例えば、処理対象品の容積と等しい容積の線量測定液を、照射装置中で照射し、所定の時間に少量のサンプルを抜き取って薄層キュベットに満たし、光生成反応生成物を測定する。使用した照射線量測定液から得られた信号を記録し、対応する較正プロットと対比する。次いで、較正プロットから線量を読み取る。これに換えて、実効光線量を測定する少なくとも1つの手段を反応器中に組み込む。フロー型反応器の場合、このような手段を、照射不活性化ゾーンの前後に取り付けるとよい。
【0079】
吸収度と粘度とを適合させた、又は吸収度と濁度と粘度とを適合させた化学的線量測定によるUV−C照射装置の較正を、例えば、らせんコイル状のUV透過性のチューブを照射低圧Hg蒸気ランプの周りに巻きつけたような、非常に単純なUV流通照射装置に対して実験的に実施することができる。
【0080】
アクチノメーター液を使った化学的な線量測定によって、薄層キュベットに満たされたサンプル量に適用された光線量の平均(フルエンス)を測定することができる。光化学反応物質は、通常、過剰に存在し、光化学反応の生成物の一切の局所的増加はすぐに混合され希釈され、反応生成物の濃度は、適用された光子の数に対して理想的にリニアな比率で増加する。
【0081】
一般的には、同一数の光子は、容積又は力価あたり残存する活性な微生物の同一割合を不活性化することになり、該力価の減少は、対数単位でいずれもリニアである。さらに、光強度が局所的に過剰であっても活性な微生物の数をゼロ未満にすることはできないが、局所的に不十分な光線量は、サンプル中に多数の活性な残存微生物の存在を残すことになる。
【0082】
望ましくは、本方法は、照射中、1つ以上の光源の輝度をモニタリングして照射線量を算定する工程をさらに含む。さらに望ましくは、光はUVの範囲、望ましくはUV−Cの範囲内である。光源の放射測定モニタリングは、フロー型装置に対する従来からの措置である。ランプ出力を連続的にモニタリングし信号を表示又は記録することができる。有利には、処理対象流体によって光源と放射感知センサとの間の光路が不透明化しないようにして、流体が光の強度を減衰しないようにする。設計上の制限によりこのような減衰が避けられない場合、望ましくは、流体を照射する前と後とに、無減衰のランプ輝度を測定し、平均輝度が計算できるようにする必要がある。
【0083】
線量測定較正プロットを設定するために、化学線量測定液を所定の深さの薄膜に広げ、入射光のごく一部だけしか吸収されないようにする。膜はある量の光に曝露され、化学種の変換により、相当な計量可能な変化を受け、光吸収又は所定波長の蛍光放射、又はpH増大を引き起こす。光量信号は測定され光線量に対比してプロットされる。
【0084】
次いで、対応する溶液を、混合されたバッチ液量中で照射することができ、液を抜き取り光反応生成物を測定する。照射された線量測定液から得られた信号は記録され、対応する較正プロットと対比される。これにより線量測定較正プロットにおける信号増加に対応する実効線量が得られる。次いで線量増加を照射時間単位で除して線量率を計算する。実効線量は前記で定義した線量である。
【0085】
線量測定液は、標的たんぱく質溶液をシミュレートしている、すなわち、線量測定液は、所定の波長でタンパク質と同一の吸光度、また望ましくは同一の粘度を有する。光で形成された、例えば三ヨウ化物のような化学種の変換物の測定を実効UV線量と相関づけることができる。化学線量測定により、異なった吸光度を持つタンパク質溶液が、同じ実効標的UV線量を受けることを確実にする。詳細については実施例1から5及び6を参照のこと。
【0086】
生物学的流体の中に存在する微生物を不活性化するための、光の実効線量を算定する方法の好適な実施形態によれば、該方法は、活性微生物を照射する前又は処理中、もしくは前及び処理中に活性微生物をスパイクされた生物学的流体に対し照射の前と後とに、又は、前と処理中と後とに活性のある微生物の数を決定(titration)することによって線量分布を算定する工程をさらに含む。別の実施形態において、生物学的な実効光線量(フルエンス)を生物線量測定で算定、すなわち微生物の光不活性化度によって算定する。生物線量測定は、バッチ式にもフロー型照射装置でも実施することができ、従来から、滞留時間の分布(Qialls及びJohnson、1983年)及び光線量の分布(Cabaj及びSommer、2000年)の測定に適した方法として使われてきた。好適な実施形態が実施例3から6、及び12から17に記載されている。
【0087】
好適な実施形態において、生物線量測定を化学線量測定と組み合わせて混合効率を算定することができる。(実施例3から6、及び12から17参照)。
【0088】
望ましくは、本発明による生物学的流体は、分類学的モネラ界の種、モネラ界の種の胞子、菌界の非病原性又は微生物種、菌界の種の胞子、古細菌、原核生物、望ましくはバクテリア、真核生物、ウィルスから選択された微生物を含有し得、こういった又は類似の微生物が殺菌され又は活性を減ずるのを確実にすることができ、バクテリオファージも含めることができる。
【0089】
望ましくは、ウイルス類は、パルボイルス科ウイルス、微小マウスウイルス(MMV)、イヌパルボウイルス(CPV)、ウシパルボウイルス(BPV)、ブタパルボウイルス(PPV)、ネコパルボウイルス(FPV)、サーコウイルス科ウイルス、サーシノウイルス科ウイルス、ピコルナウイルス科ウイルス、望ましくはA型肝炎ウイルス(HAV)、脳心筋炎ウイルス(EMC)、アネロウイルス科ウイルス、エンテロウイルス科RNAウイルス、ミクロウイルス科DNAバクテリオファージ、及びレビウイルス科RNAバクテリオファージから選択される。
【0090】
本発明による光不活性化処理にかけられる生物学的流体中の、タンパク質及び他の重要な生物分子のような対象成分が保存されることを確実にするために、タンパク質又は例えばビタミンの生物活性を、実施例4に記載したエラスターゼ阻害分析、又は実施例13及び16に記載したアミド分解性FX分析のような当該分野で一般に知られた、そのような検体についての機能分析を使って測定することができる。これらの活性分析検体を望ましくは生物線量測定液に含めることができる。望ましくは、生物学的流体の吸光度、粘度及び/又は濁度を、添加活性分析検体を含む生物線量測定液が、活性分析検体を該生物学的流体に加えた後で決定された生物学的流体の吸光度、粘度及び/又は濁度と適合するように調整する。このような分析によって、汚染微生物を効果的に不活性化しながら、生物学的流体及び/又はその対象成分が望ましい生物活性を保持することを確実にする。
【0091】
バクテリオファージ、ウィルス、及びバクテリアのような微生物の活性は、理論的には指数的に減衰する。これは所与の線量は、活性微生物を同一の比率で不活性化する、例えば、1mJ/cm2が初期の力価を1/10に減ずるならば、2mJ/cm2では1/100に、3mJ/cm2では1/1000に、といった具合である。もしすべての微生物を、一回だけ照射ゾーンを移動させ等しく曝露したとするならば、すべての微生物が不活性化打撃を受けることになろう。しかしながら、一本鎖のDNAバクテリオファージのような最小の微生物でさえ、タンパク質と比較すると大きな粒子(約25nm)であり、対流及びタンパク質溶液の流れで移動する。反応器中で、所定の時間間隔の間に一部の微生物は照射ゾーンに数回移送され、他は一回だけ、別のものはまったく移送されない。そこで、化学的に測定された線量率に基づく不活性化率は混合により増大する。これにより、微生物の不活性化が速く進むほど、必要な照射時間は短くなり必要な実効線量は小さくなり、従って、望ましくはタンパク質又は他の生物活性は高い混合効率で保持されることになる。
【0092】
活性微生物への照射の前又は処理中に、又は前と処理中とにスパイクされた生物学的流体の微生物力価による生物線量測定不活性化は、UV照射の前、処理中及び/又は後に測定される。これを、例えば、活性バクテリアの残存コロニー数、又はまだ生存しているバクテリオファージの数に対応する溶解バクテリアのプラークを数えることで実施することができる。次いで、コロニー又はプラーク形成単位(それぞれcfu及びpfu)としての活性微生物の力価は、シャーレの上で決定した希釈サンプルのmL量あたりのlog10((cfu又はpfu)×10希釈度)として計算される。
【0093】
生物線量測定によって、異なったタンパク質溶液に対し、ファージ不活性化率(log[不活性化ファージ数]/実効UV線量)が近似しているか基本的に同様であれば、これらが基本的には同じ混合効率で同じ実効線量で照射されたとの実証が可能になる。生物線量測定は、各種サンプルが、微生物又はその宿主に対しいかなる毒性又は阻害性物質をも含有しない場合、それらサンプルの検証に特に適している。したがって、生物線量測定は、ほとんどすべての生物学的流体に用いることができる。
【0094】
本発明の別の好適な実施形態において、前記に定義したように微生物を使って生物線量測定を行うことができる。
【0095】
例えば、薄いフィルム又は横断方向に混合するチューブ型反応器の中で生物学的流体を照射することができる。光線量が直接流体の表面を照射しない場合、流体を含む導管の光照射不活性化ゾーンの材料は、基本的には、光不活性化波長に対して透過性がなければならない。約350nmより小さな波長のUV光に対してはホウケイ酸ガラス、約300nmより小さな波長のUV光に対しては、鉄分を含まないホウケイ酸ガラス、リン酸ガラス、高珪酸ガラス、又は溶融石英ガラスのような特殊ガラスが、十分な透過性を有しており、一部の特殊プラスチック、望ましくはフルオロポリマーなども特に選好されている。このように、多様な微生物光不活性化反応器を設計していろいろな不透明さの流体をいろいろな流速で処理することができる。少なくとも1つの添加物を流体に含めて、該流体中の対象生物活性又は物質の損傷又は減損を減らすことができる。
【0096】
本発明によって実効線量を算定する方法の好適な実施形態において、該方法を、少なくとも1つの他の殺菌又は微生物不活性化法と組み合わせて実施することができる。以下に限らないが、加熱及び非加熱による方法、又は化学保存剤の添加など、さまざまな不活性化、殺菌、消毒、又は保存の方法が知られている。いろいろな種類の微生物が、いろいろな処理に対しいろいろな感受性を持っていることがある。従って、多くの場合、存在するすべての異なるウィルスの不活性化を確実にするために、各種の処理を組み合わせることが必要になる。本発明の照射処理の具体的な利点は、他の一般に利用可能な処理方法に対して抵抗性のある特定の種類のウィルスでも照射処理に対しては感受性があるということである。
【0097】
別の実施形態において、本発明による実効線量算定方法は、様々な他の知られた生物学的流体の殺菌及びウィルスの不活性化法と組み合わせて使われる。当該分野ではさまざまな方法がよく知られており、これには、従来からの湿熱処理、又は、一般にアルブミンに用いられるような、安定剤入り又はなしで、所定時間の間昇温状態で流体を保温するなどの低温殺菌が含まれる。違った方法には、第VIII因子のような成分に用いられる、凍結乾燥した流体成分を所定時間の間昇温状態で保温するなどの乾燥熱処理が含まれる。別の方法には、限外ろ過及び洗浄溶剤処理が含まれる。この方法では、流体は、1%トリ(n−ブチル)リン酸(TNBT)及び1%Triton(登録商標)X−100又はTween(登録商標)80のような洗浄溶剤系と完全に混合され、所定時間の間一緒にインキュベートされた後、洗浄溶剤系は疎水性クロマトグラフィーによって便利に除去される。洗浄溶剤処理の詳細は、世界公開第94/28120号;及び米国特許番号第4,946,648号、;同第4,481,189号;及び同第4,540,573号に記載されている。
【0098】
本発明によって実効線量を算定する方法の別の実施形態において、本方法は洗浄溶剤処理と組み合わせて用いられる。溶剤洗浄処理の1つの特質は、処理される流体の吸光度の大きな増大をもたらすことである。従って、相対的に高い吸光度の流体で効果的なウィルス不活性化を達成する本発明の能力は特に利点となる。
【0099】
本発明によって実効線量を算定する方法の別の実施形態において、生物学的流体は、該流体の生物活性の損傷又は減損を低減するため、少なくとも1つの添加物を含む。細胞を損傷から保護するためのビタミンE、血漿成分の機能活性の減損を防止するアスコルビン酸、及び、ヒスチジン、ルチン、クエルセチンおよび他のフラボノイドなどのフリーラジカル及び活性型酸素の抑制剤、及び、血液成分の機能活性の減損を低減するための、マンニトールを含む糖アルコール及びアミノ酸のような他の安定剤といった、この種類のさまざまな保護添加物が知られている。一重項酸素の生成には溶解酸素が必要なので、例えば、照射前に排気し、照射中の空気を不活性ガス例えば窒素で置き換えるなどして、溶液中に溶けた酸素を除去することにより、対象物質に有益な影響を及ぼすことができる。保護添加物が照射対象の微生物の感受性に影響を与える場合、微生物を不活性化するための実行線量に対する保護添加物の影響を取り入れるため、線量測定は例えば実施例16に記載したような調整をすることができる。
【0100】
本発明の方法によれば、実効線量とは、基本的には、生物学的流体中に存在する微生物のすべて、望ましくは少なくとも99.9%、さらに望ましくは99.99%、まださらに望ましくは99.999%を不活性化する線量である。さらにもっと望ましくは、該方法がフロー型反応器で作動することである。好適な実施形態が実施例2,5,6,11,15及び17に提示されている。
【0101】
本発明の別の様態によれば、不透明な生物学的流体の中に存在する微生物を不活性化するための、1つ以上の光源からの単色又は多色光の実効線量を算定する方法を提供し、該方法は、使用される光不活性化波長における生物学的流体の濁度に、又は生物学的流体の濁度と吸光度とに、又は生物学的流体の濁度と粘度とに、又は生物学的流体の濁度と吸光度と粘度とに、又は生物学的流体の吸光度に、又は生物学的流体の粘度と吸光度とに適合させた線量測定液に対し、i)十分に薄い光路長の層中の線量測定液を照射し、所定の規定照度で所定時間適用される入射光のごく一部を吸収させ、測定可能な程度の物理的又は化学的変化を発生させる所定フルエンス(光線量)を適用する工程と、ii)光照射の途中又は後に測定された、光照射反応器中の線量測定液の変化の程度に対応する線量を読み取る工程とによる光線量較正に基づいて、単色又は多色光の効果を測定する工程を包含し、工程i)は工程ii)の前に、又はその逆に実施される。
【0102】
好適な実施形態において、生物学的流体は、前記に定義したような流体である。
【0103】
本発明の目的の範囲内において、不透明な生物学的流体とは、望ましくは、見かけは澄んで又はかすんでいるが、光路すなわち光ビームに沿って散乱する光を表すコロイド状の生物学的流体に関する。望ましくは、コロイド状生物学的流体は、約0.1nmから約100nmの間の、望ましくは約1nmから約100nmの間の、もっと望ましくは約10nmから約50nmの間のサイズのコロイド状に分散された粒子を含む。まださらに望ましくは、光散乱は、散乱光が病原体光不活性化に寄与できるように、コロイド生物学的流体に含有されコロイド状に分散する高分子の分子吸収最大近くまで間で高められる。タンパク質溶液のような好適なコロイド状生物学的流体については、非吸収波長における濁度の測定値から吸収波長への外挿によって、全体吸光度のうち濁度の寄与による部分を外挿することができる。次いで、分光光度で測定した全吸光度から外挿した濁度を差し引いて分子吸光度を計算する必要がある。コロイド状生物学的流体中のこういったコロイド分散の散乱特性をシミュレートするため、沈降によって、粘土鉱物のような前記下混濁要因となる物質を分画することができ、所望の粒子部位の画分を使って線量測定モデル液の濁度を適合させることができよう。
【0104】
不透明生物学的流体が、少なくとも約100nmの粒子サイズを持つ懸濁粒子を含む生物学的流体であればまださらに望ましく、これはこの分野では一般に知られており、前記で説明したものである。りんご汁又はシトラス又は野菜ジュースなどのこういった生物学的流体の濁度は、例えば、ろ過又は遠心分離によって懸濁した粒子を除去する前後の吸光度測定によって算定することができる。懸濁粒子が一切ない清浄化された溶液の吸光度は、分子発色団によるものである。混濁した流体と清浄化された流体との間の測定された吸光度の差が濁りである。
【0105】
また、不透明生物学的流体が、水中脂肪型エマルジョンであるミルクのような液体エマルジョンであるのも望ましく、これは、濁度が全体の光減衰にもっとも寄与するような形で光を散乱させる。前記のような試薬を含むUV線量測定モデル・エマルジョンとしては、化学的に不活性でUV透過性のある乳化剤及び乳化液体、望ましくはペルフルオロカルボン酸塩及びペルフルオロ炭化水素又はこれらの派生物が必要となろう。
【0106】
線量測定液を、不透明な生物学的流体の吸光度及び濁度に合わせ調整するため、最初の工程として光不活性化使用波長における不透明生物学的流体の吸光度を測定する(混濁による吸光度)。次いで、望ましくはろ過によって生物学的流体の混濁成分を除去した後、再度、光不活性化波長における該生物学的流体の吸光度を測定する(非混濁吸光度)。光不活性化波長において、該非混濁吸収値に適合させた吸収値を持つ線量測定液を調合する。望ましくは、該線量測定液の粘度値も生物学的流体の粘度に適合させ、流体中の混濁成分は除去されている。このような線量測定液の調合の詳細については前記している。続いて、前に詳記した混濁要因になる物質を加え、線量測定液の吸光度値が、光不活性化波長において対象混濁吸光度に適合するようにする。このような線量測定液の較正及び本発明の好適な実施形態のさらなる詳細を実施例4及び10から得ることができる。
【0107】
不透明な生物学的流体の中に存在する微生物を不活性化するための光の実効線量を算定する方法の好適な実施形態によれば、入射放射照度の約100%、望ましくは約80%、望ましくは約60%、望ましくは約50%、望ましくは約30%、又はこれ以下が光路長に沿って吸収される。
【0108】
別の好適な実施形態によれば、設定フルエンスについては、前記のように変更することができる。望ましくは、本方法は、照射中1つ以上の光源の輝度をモニタリングし照射線量を算定する工程をさらに含む。さらに望ましくは、光はUVの範囲である。このようなモニタリングについても前記で詳細を説明した。
【0109】
望ましくは、不透明な生物学的流体の中に存在する微生物を不活性化するための、光の実効線量を算定する方法は、前に詳記したように、照射の前又は処理中、もしくは前と処理中とに生存能力のある微生物をスパイクされた生物学的流体に対する照射の前及び後、又は、前、処理中及び後に、生存能力のある微生物の数の滴定によって線量分布を測定する工程をさらに含む。別の実施形態において、生物学的な実効光線量(フルエンス)は、生物線量測定、望ましくは、前に詳細を記載したように、化学線量測定と生物線量測定との組み合わせで算定される。望ましくは、本方法は、前に詳記したように、照射の間1つ以上の光源の輝度をモニタリングし、照射線量を算定する工程をさらに含む。さらに望ましくは、光はUV範囲、さらになお望ましくはUV−Cの範囲である。
【0110】
望ましくは、線量測定液は、前記で詳細を説明した溶液である。
【0111】
さらになお望ましくは、線量測定液には、希釈ヨウ化カリウム−ヨウ素酸カリウムアクチノメーター、又は希釈ヨウ化カリウム−ヨウ素酸カリウム/ポリビニルピロリドンアクチノメーター、又は希釈安息香酸ナトリウムアクチノメーター、又は希釈ペルオキソ二硫酸カリウム/tert−ブタノールアクチノメーターが含まれる。
【0112】
線量測定液が、前に記載した混濁要因物質を含有していればさらに望ましい。前記及び実施例4と10とで詳細を説明しているように、線量測定液は、望ましくは、光不活性化波長において、生物学的流体の吸光度に、又は吸光度と濁度とに、又は吸光度と粘度と濁度とに調整される。
【0113】
また、本発明の方法によって使用可能な微生物についても前に説明した。
【0114】
望ましくは、不透明な生物学的流体の中に存在する微生物を不活性化するための光の実効線量を算定する方法を、先に説明した少なくとも1つの他の殺菌又は微生物不活性化方法と組み合わせて実施することができる。さらに望ましくは、前記のように、生物学的流体は、該流体の生物活性の損傷及び減損を低減するための少なくとも1つの添加物を含む。さらになお望ましくは、前に示したように、該方法では溶媒界面活性剤処理が行われる。
【0115】
本発明の方法による実効線量とは、前記で定義した線量である。
【0116】
まださらに望ましいのは、本方法がフロー型反応器、望ましくは1つ以上の光源からの単色又は多色光の実効線量を生物学的流体に照射する工程を包含し、前記及び実施例3,5,16及び17に詳細を記した方法で実効線量が算定されることである。
【0117】
さらに、本発明の別の様態において、不透明な生物学的流体中の微生物の不活性化の方法を提供し、該方法は、1つ以上の光源からの単色又は多色光の実効線量を生物学的流体に照射する工程を包含し、該実効線量は、前に詳記した方法によって算定される。このような方法は、任意の種類の照射反応器において、望ましくは、バッチ式反応器又はフロー型反応器において作動させることができる(実施例3から6、12,13、及び15から17を参照)。
【0118】
望ましくは、実効線量の測定方法及び不活性化の方法には、UV光不活性化フロー型反応器が用いられ、この中では、1つ以上の光源は外包温調装置に包まれ、温度調節され基本的には光透過性の液体が外包温調装置を通って流れ、ランプから熱を除去し、これにより基本的には一定したランプ輝度を確実にする。望ましくは、該フロー型反応器は重力作動の薄膜生成型、乱流能動混合流型、遠心分離作動薄膜生成型、コイル管型、バッフル管型、静止混合管型、乱流静止混合流管型、層流管型、及び乱流流管型の中から選択される。これらすべてについて、後記で詳細を説明する。
【0119】
本発明のさらに別の様態において、UV光不活性化フロー型反応器を提供し、この中では、1つ以上の光源は外包温調装置に包まれ、温度調節され基本的には光透過性の液体が外包温調装置を通って流れ、ランプから熱、望ましくは過剰熱を除去し、これにより基本的には一定したランプ輝度を確実にする。望ましくは、液体の膜は生物学的流体の膜である。さらに望ましくは、1つ以上の光源から放射される光を使って生物学的流体を光不活性化する。望ましくは、外包温調装置は、UV透過性で、UV耐久性があり、基本的には化学的に不活性な石英ガラス、望ましくはホウケイ酸塩ガラス、及び、例えばフッ化ポリマーのような透明で、UV耐久性があり、基本的に化学的に不活性なポリマーを含む又はこれらから成る材料で構成される。
【0120】
本発明で言う過剰熱は、望ましくは、反応器中の、望ましくは反応器中の光路中の生物学的流体を、流体中成分の望ましくない活性化又は生物活性の減損、ついには不加逆の変性を引き起こすような温度に加熱するのに十分な、一切の温度又は赤外線エネルギーということになろう。この温度は流体の組成及び安定剤の存在に依存し得る。ほとんどの酵素及び凝固タンパク質に対して、普通約37℃の生理的至適温度まで生物学的流体を加熱すると望ましくない活性化が生じその後の消耗につながる可能性がある。さらに望ましくは、過剰熱とは不安定になったほとんどの血漿タンパク質が凝集するような反応器中の生物学的流体の温度、すなわち約55から約60℃、又はこれより高い温度をいう。過熱された果物ジュースなどでは異臭が生じることがある。
【0121】
望ましくは、本発明によるフロー型反応器は、前に詳記したように、Dill照射器のような重力作動の薄膜生成型、コイル管型(Bayha、1951年)、チューブ型を含むバッフル他の静止混合素子、乱流静止混合流管型、層状流管型、及び乱流流管型からなる群の中から選択された反応器の型である。
【0122】
本発明によるフロー型反応器は、ランプ輝度の安定化を提供し、照射プロセスを通して基本的には一定の放射力を実現し、技術的に知られた反応器にかかわる放射照度の変動を低減する(実施例7、8、及び13)。光照射を安定化させるさらなる手段には、電圧調整が含まれ(Cortelyouら、1964年)、これを自動温調と組み合わせて使うことができる。但し、本発明のフロー型反応器で説明したように、光源の直接的自動温度調節は、基本的には、一定のランプ輝度、及び熱、望ましくは過剰熱除去の双方を確かにする。望ましくは、純水(蒸留水又は脱イオン水)又は他の任意の光透過性で光不感受性の、毒性のない不燃性液体によって温度調節を行う。また、望ましくは、温調外包中の温調液の温度及び/または流速は、測定された、所望のランプ温度からの温度逸脱に応じて調整するのがよく、これにより、標的温度からの実際のランプ温度の外れの程度に応じてランプ冷却の程度を調節することができる。
【0123】
また、望ましくは、攪拌バッチ反応器、もしくは能動又は静止的混合フロー型反応器のような、光の貫通深さを越える流体の深さの反応器に対しても光源を使用する。
【0124】
本発明のフロー型反応器の好適な実施形態による、低圧金属蒸気ランプを液体で温度調整する2つのモードが、図14a及び14bに紹介されており、それぞれの構造の断面図が示されている。放射ランプの全表面を液体温調することによって、最新技術の金属パイプ熱冷却で可能なように、低温部に金属蒸気が凝結するのを防止して、ランプ壁の均等な温度分布を確実し(Benesi、1956年)、また、エア換気ベースのランプ冷却によるランプへの塵埃の堆積を防止する(米国特許第6,586,172号)。
【0125】
図14aでは、チューブ型ランプ(A)は内側外包チューブ(B)及び外側外包チューブ(C)に囲まれており、これらは望ましくは同心に装着され殺病原体光不活性化光の波長において十分に透過性のある材料で製作されている。ランプ(A)と内側外包チューブ(B)との間は、望ましくは、ガスで満たされるかあるいは真空になったギャップ(D)があり、その幅を選択して、十分に透明な温調液(E)の温度を最適化することができ、液は内側外包チューブ(B)と外側外包チューブ(C)との間のギャップを通って流れ、生物学的流体の過熱を防止する。流体を運ぶギャップ(E)の幅を最適化して、所望の用途の必要性に応じて効率的な熱の除去確実にすることができる。この配置は、米国特許出願公開第2003/0049809号に記載されているようならせんチューブ型フロー型反応器には特に望ましく、これにおいては、望ましくは、同心の管状流導管は、ランプの外包チューブに直接、又は望ましくは非常に近接して取り付けられる。また、この構造は、高輝度Hgアマルガムランプを使用する場合非常に望ましく、該ランプは、通常の低圧Hgランプに比して、閾値のUV−c(253.7nm)表面放射照度を放射する。しかしながら、約80℃の最適なランプ壁温度では、こういった高い、変性を起こす温度から生物学的流体を効果的に保護することが必要となろう。温調液(E)の熱伝達効率を決めるギャップ幅(D)を最適化することによって、このような保護を達成することができる。
【0126】
別の好適な実施形態において、内側外包チューブとエア・ギャップを取り除き、ランプ(A)と外側外包チューブ(C)との間のギャップを流れる温調液(E)によってランプ(A)の直接的温度調節を達成する簡単な構造(図14b)を提供する。この構造は、ランプから照射反応器に十分な温度絶縁距離が取られ、処理対象生物学的流体の過熱が防止されていれば、40℃周辺のランプ壁温度で最大のUV−C(235.7nm)表面照度を放射する低圧Hg蒸気ランプに対して特に望ましい。
【0127】
非常に望ましくは、Dill照射装置及びその派生装置のような重力作動薄膜照射装置、もしくは、らせん状チューブ又はらせん状外包照射装置は、これら反応器の照射に使用される光源が、流動液で温度調節されていれば、基本的には一定の光強度で、対象品を過剰加熱することなくもっと安全で穏やかに作動させよう。さらに望ましくは、光源のこのような流動液による温度調節は、攪拌バッチ反応器、又は能動的又は受動的混合フロー型反応器のような、液の深さが光の貫通深さを越える反応器にも使用される。
【0128】
任意の所与UV線量をmJ/cm2単位で測定することができる。照射線量は、時間経過での総ランプ出力である。しかしながら、この照射線量の一部しか、化学線量測定及びバクテリオファージの不活性化に有効とならない。例えば、30Lのバッチ式反応器は、実効標的線量の約1000倍よりも高い照射ランプ線量を必要とすることがある。前記で示したように、化学線量測定による有効線量算定は照射時間にも適用される。ランプ出力をわずかに変更するような場合には、照射線量で照射時間を代替することができる。これは、モデル線量測定液の照射作動中のランプ輝度を記録することによって算定される。殺ウイルス実効標的線量を算定しておいて、照射時間中の輝度測定値を合算しながら、該実効標的線量に相当するランプの放射標的線量を得る。照射ランプの線量による処理制御によって、ランプ出力の変化を補償し本方法の精度を増加させることができる。
【0129】
本発明の別の態様において、バッチ式反応器中の生物学的流体の中に存在する微生物を効果的に不活性化するための、1つ以上の光源から放射される単色又は多色光の総光線量を制御する方法を提供し、該方法は、
a)生物学的流体の中に存在する微生物を不活性化するための単色又は多色光の実効線量、バッチ式反応器中の微生物を効果的に不活性化するのに必要な照射光線量率、及び照射時間に基づいて、吸収依存性照射源の標的総光線量を算定する工程と、
b)バッチ式反応器中の生物学的流体の中に存在する微生物の不活性化の間の照射光線量率及び照射時間を記録する工程と、
c)工程b)の測定値に基づいて、吸収依存性照射源の総光線量を計算する工程と、
d)工程c)で算定された吸収依存性照射源の総光線量を、工程a)で算定された吸収依存性照射源の標的総光線量と比較する工程と、
e)該吸収依存性照射源の総光線量が該吸収依存性照射源の標的総光線量以上ならば生物学的流体の光曝露を停止する工程とを含む方法である。望ましくは、照射光線量率の変動及び/又は1つ以上の光源の少なくとも1つの中途での電源オフのいかんにかかわらず、吸収依存性照射源の総光線量が吸収依存性照射源の標的総光線量と基本的に等しくなるまで本方法を継続する。さらに望ましくは、少なくとも1つの電子放射計、少なくとも1つのチャート式記録計、及び/又は少なくとも1つの合計カウンターを使って照射光線量率及び照射時間を記録する。
【0130】
本方法の好適な実施形態が実施例7、8、及び15に記載されている。また、望ましくは、本方法は照射の変動を明示する。
【0131】
標的総光線量は、望ましくは次のように算定することができる。まず、異なる吸収係数を持つ各種のモデル線量測定液を使ってバッチ式反応器を検証し、所与の実効線量を得るため必要な実効線量率((mJ/cm2)/分単位)、照射光線量率((mJ/cm2)/分単位)、及び照射時間を算定する。生物学的流体中に存在する微生物を不活性化するための単色又は多色光の実効線量は、前記で詳細を説明したように、望ましくは化学的線量測定によって測定される。次いで、次の項に詳記するように、照射光線量率及び照射時間をモニタリングする。吸収依存性照射源の総光線量は、照射時間を通して増加した放射計の合計信号で計算される。一般に、照射光線量率は化学的線量率より桁違いに高い、というのは、放射計センサは、実質的に、吸収媒体に一切減衰されていないUV光を受光するからである。所与の吸収依存性照射源の標的総光線量に対する生物学的流体中での実効照射時間に、吸収依存性照射源の光線量率を乗じ、照射パラメータとして吸収依存性の照射源標的総光線量を計算する。
【0132】
前記及び実施例7及び8で詳述するように、望ましくは、照射光線量率及び照射時間の記録は、少なくとも1つの電子放射計、少なくとも1つのチャート式記録計、及び/又は少なくとも1つの合計カウンターを使って行われる。ランプ出力(照射光線量率)を連続的にモニターし、シグナルを表示又は記録することができる。有利には、処理対象流体によって光源と放射感知センサとの間の光路が不透明化して流体が光の強度を減衰しないようにする。設計上の制約からこのような減衰が避けられない場合、平均輝度が計算できるように、無減衰のランプ輝度を、望ましくは流体への照射の前と後とに測定する必要がある。電子放射計は、望ましくはドリフト非感受性の光電放射測定センサを含む。このような記録により、照射時間を通しての照射光線量率の測定値に基づいて吸収依存性の照射源総光線量の計算が可能になる。照射が変動し、又は一時的に中断されたとしても、こういった設定により、生物学的流体がさらされた吸収依存性の照射源総光線量の精度ある算定が可能になる。好適な実施形態において、吸収依存性の照射源総光線量を吸収依存性の照射源標的総光線量と対比することによって、生物学的流体が、基本的には、微生物を効果的に不活性化するに足る実効照射線量を受けたことを確実にし、同時に、基本的には、生物学的流体が照射に過度に曝されて影響を受けないことを該方法によって望ましくは確実にするように、照射不活性化を停止できる時点を算定又は予測すらすることが可能になる。この目的で、吸収依存性の照射源総光線量を吸収依存性の照射源標的総光線量と比較する手段を、生物学的流体を照射するため採用した光源の電源を切るスイッチに連結することができる。また、これに換えて、生物学的流体の照射への曝露を停止する他の任意の効果的手段も適切であり、技術的に一般に知られている。
【0133】
望ましくは、照射光線量率の変動及び/又は1つ以上の光源の少なくとも1つの中途での電源オフのいかんにかかわらず、対応する吸収依存性照射源の総光線量が吸収依存性照射源の標的総光線量と基本的に等しくなるまで本方法を継続する。また、このような吸収依存性照射源の標的総光線量を、いろいろ異なった吸光度に対して算定された吸収依存性照射源の標的総光線量の間での補間法によって導き出すこともできる。この方法については実施例6及び7で詳しく説明する。
【0134】
バッチ照射のフロー型照射法に対する利点は、すべての微生物の効果的不活性化が達成されるまで、混合によって、全バッチ量を平均輝度に曝露することである(Brooks、1920年)。
【0135】
バッチ式照射反応器には、光不活性化殺病原体波長において基本的に十分透明な材料で少なくとも部分的に製作され、外部に装着された光源から照射を受ける流体取扱容器、あるいは、液の表面の上方に装着された光源、又は流体に浸漬された光源によって、収容流体量を照射する流体槽が含まれる。全体液量を攪拌、混合してすべての容積部分が光不活性化殺病原体光に、基本的には効果的且つ均一に曝露されることを確実にする。今のところ、適切な処理の検証方法及び制御方法がないため、このような反応器は実用化されていない。
【0136】
望ましくは、外部の光源は、ランプ・センサが処理対象流体の吸収によって妨害されることなく、基本的には無減衰の光強度を受光するようにして、照射容器上に光を照射し、ランプ輝度測定は、望ましくは連続的に行われる。放射測定標的ランプ線量は、タンパク質溶液の吸収に対してリニアな比率で増加する。ランプをより低い輝度で作動すると、放射測定標的ランプ線量に到達するのにより長い照射時間がかかることになる。
【0137】
以下の実施例は、本発明の実施形態を説明するものであるが、いかなる点においても本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0138】
(実施例1:高希釈のヨウ化物/ヨウ素酸塩アクチノメーター液の吸収係数、及びヨウ化物/ヨウ素酸塩アクチノメーター液の線量測定反応)
0.01Mのホウ酸塩緩衝液中に、0.24MのKI及び0.04MのKIO3を含有するpH=9.25の溶液を、0.01Mのホウ酸塩緩衝液で0.2倍、0.4倍、0.6倍及び0.8倍の濃度に希釈し、0.1mmのキュベット中で吸収を測定した。図1に、吸収係数がリニアな比率(a253.7=69/cm×希釈係数)で濃度に依存することを示す。
【0139】
1Lの0.01Mのホウ酸塩緩衝液中に10gのポリビニルピロリドンK90(PVP K90;平均モル質量360000Da)、及び0.1Mのホウ酸塩緩衝液中に50gのPVP K25(平均モル質量29000Da)を含有する溶液を、対応する緩衝液で0.2倍、0.4倍、0.6倍及び0.8倍の濃度に希釈し、希釈物及び緩衝液の粘度を、22.8℃に温度調節したショット0.40mmウベローデ毛細管粘度計で測定した。図2から、粘度は非リニアな比率で濃度とともに上昇することが分かる。
【0140】
常用対数吸収係数がa253.7=2.5/cmで粘度1cp(0.00852MのKI+0.00142MのKIO3+1.543gのPVP K25/L)の線量測定液、4.5/cmで1cp(0.01548MのKI+0.00258MのKIO3+1.543gのPVP K25/L)の液、7.5/cmで1cp(0.02591MのKI+0.00432MのKIO3+1.543gのPVP K25/L)の液、及び10/cmで1.25cp(0.03478MのKI+0.00580MのKIO3+1.916gのPVP K90/L)の液をpH9.25の0.1Mホウ酸塩緩衝液中に調合し、実施例18及び前記で説明した較正装置中の薄層キュベット(2.5/cmに対しては0.5mm、4.5/cm、7.5/cm、及び10/cmに対しては0.2mm)に入れ、漸増的に曝露して、較正プロットを採取した。モロウィッツ補正係数(Morowitz、1950年)を適用して、モデル溶液を含む薄層キュベット中での自己吸収を補正した。図3は2.5/cmモデル液の較正プロットを示し、図4は4.5/cm、7.5/cm、及び10/cmのモデル液の較正プロットを示す。
【0141】
(実施例2:らせん状フロー型反応器における実効照射線量の算定)
23mm径の外包チューブ中に11WのUV−Cランプを具えた水タンクUV殺菌用浮遊浸漬ランプ(Microfloat 1/0、ドイツ、カールスルーエ、Aqua Concept GmbH社)では、上下逆に装着された巻き径7/8インチ(2.22cm)、管径5mm、壁厚さ0.63mmで、長さ17.5cmのフッ化ポリマー・コイル(イタリア、ボレートのSolvay Solex S.p.A社が生産したHyflon MFAから米国ペンシルベニア州プリマス・ミーティングのMarkel Corp社が製造したもの)がランプ周りに固く巻かれ、15cmの照射長は完全にコイルで覆われていた。コイルの中間に装着された、可視光不感知のUVC−TLBセンサを具えたDr Groebel UV−ElektronikRM−12Radiometerを使って、線量測定の開始前および終了の後に脱イオン水でコイルをすすぎ洗いしたときにランプ輝度を点検した。ISM719の3ローラーポンプヘッドと、5mmID×1.5mm壁厚のシリコンラバー・チュービングとを具えたIsmatec BVP蠕動ポンプを使って、モデル溶液を、100,200,300,400,500、及び600mL/分の流速で、該コイル・チューブを通して送流し、0.2mmキュベット中の367nm波の吸収から較正プロットを読み取った。
【0142】
【表1−1】
【0143】
【表1−2】
UV線量の流速の逆数(=分/mL単位の滞留時間)に対する相関はリニアで、相関係数はR2>0.999である。
【0144】
(実施例3:化学線量測定及び生物線量測定に基づく、MFA中でのウイルス不活性化のためのヒト血清アルブミン及びα1抗トリプシンの照射)
ヒト血清アルブミン(20%)を、20mMのリン酸塩で緩衝した0.15MのNaCl(リン酸緩衝塩水、PBS)で希釈し、バクテリオファージPhi−X174溶解物(約1×109プラーク形成単位(PFU/mL)を1:100のスパイク比率(v/v)添加して、吸収係数a253.7=7.5/cm及び粘度1.05cpのタンパク質溶液を得た。該溶液を実施例2で述べたMFAコイルを通してポンプ送流した。実施例2のようにしてランプ輝度を測定した(平均輝度11.40mW/cm2)。0.9mLサンプル溶液のPhi−X174の力価は10倍段階希釈した後、宿主バクテリアの滴定によって測定した。不活性化率については、少なくとも10から200の溶解細胞プラークのあるシャーレから計算した。適用した線量は放射強度(照射量/線量測定量)比によって補正した。
【0145】
【表2】
線量に応じたバクテリオファージの力価から、−0.3369log10pfu/(mJ/cm2)の線量依存的不活性化率を実現することが分かる。
【0146】
血漿からヒトα1抗トリプシン(α1−プロテイナーゼ阻害物質、ARALAST(登録商標))を精製取得して、吸収係数a253.7=4.5/cmまで希釈した。バクテリオファージのスパイク比は1:100(v/v)とした。平均ランプ輝度は11.45mW/cm2であった。適用線量は放射測定強度比から補正計算した(照射量/線量測定量)。抗トリプシンの活性度については、好中球エラスターゼ阻害分析によって算定した。
【0147】
【表3】
フロー型照射処理に化学線量測定及び生物線量測定を用いることによって、標的微生物の完全な不活性化を達成する最低線量の算定が可能なことが分かる。
【0148】
(実施例4:化学線量測定によった、MFAコイル中でのUV低温殺菌りんごジュースの照射)
りんごジュース(a253.7=10.1/cm、η=1.25cp)を購入し低温殺菌した。食品級品質の新鮮なベーカー酵母(サッカロマイセス・セレヴィシェ)を購入し、100mgの新鮮なベーカー酵母を50mLのりんごジュースに植え付け37℃で3時間培養した。低温殺菌したりんごジュースに該酵母懸濁液を(9.5mLを950mLのジュースに)混合し、100,150、及び200mL/分の流速でこれを照射した。平均ランプ輝度は11.46mW/cm2であった。150mL/分に対する線量は実施例2で得られた結果から補間推定した。適用線量は放射測定強度比から補正計算した(実施例2の照射量/線量測定量)。橙黄色血清寒天中の酵母細胞を周辺光で滴定し、残存する伝染力を、50mLの未照射と照射済みりんごジュースを37℃で72時間まで培養する発酵試験で測定した。未照射及び照射済みサンプルの風味を評価した(基準=低温殺菌りんごジュース)。
【0149】
【表4】
これらの結果から、高いUV−C吸収性のあるりんごジュース中の>5log10cfu/mLのベーカー酵母を不活性化するのに必要な、>40mJ/cm2の比較的高い線量については化学線量測定によって正確に評価できることが分かる。
【0150】
(実施例5:テイラー渦生成フロー型反応器の評価に対する線量測定及び生物線量測定の使用)
外部石英チューブ(内径7cm、壁厚2.7mm、高さ13.2cm)、及び全体容積196.1mLの同心回転内部ステンレス鋼シリンダ(直径54.85mm)を具えたテイラー渦反応器を、各々が背部のステンレス鋼反射板とともに石英外包チューブ中に装着され、同心の内部石英窓を持つ同心トロイダル水槽中に浸漬された6つまでの低圧水銀ランプで側面から照射した。垂直に装着されたセルを上方に通過する液体の流速を、Watoson−Marlow 505U蠕動ポンプを使って調整することができた。また、シリンダの回転速度も調整可能であった。温度調整装置からの冷却水をランプの外包水槽を通して送流し、ランプ温度及びUV−C出力を基本的には一定に保った。実験パラメータの各変更の後、サンプルを抜き取る前に、5セル分の容積をセルを通して送流した。
【0151】
流速を変更し回転速度は一定の60rpmに保った。実施例2で得たモデル溶液を使ってUV線量を測定した。6つのランプで60rpmにおいて、図5に示した下記の線量が測定された。
【0152】
【表5】
滞留時間(=1/流速)と線量との間の相関はリニアでなく、低い流速で高い回転速度では、(米国特許第6,576,201の図7に示されているように)高ペースの滞留時間分散増大が見られた。
【0153】
実施例2のモデル溶液(a253.7=10/cm、h=1.25cp)をセルを通して送流し、流速を一定に保ち、内部シリンダ回転速度は変化させながら6つのランプで照射した。その結果を表6に示す。
【0154】
【表6】
実施例2のモデル溶液(a253.7=7.5/cm、η=1.25cp)をセルを通して送流し、流速を192mL/分で一定に保ち、内部シリンダ回転速度は変化させながら6つのランプで照射した。次いで、実施例3に記載した、バクテリオファージをスパイクしたアルブミン溶液を照射し、バクテリオファージの力価を滴定測定した。その結果を表7に示す。
【0155】
【表7】
同じモデル溶液を、テイラー・セルを通し流速を変化させ、60rpmの一定回転速度で送流した。線量を測定し、滞留時間とリニアな相関が得られた。次いで、実施例3に記載したバクテリオファージ・スパイク・アルブミン溶液を照射し、バクテリオファージの力価を滴定測定した。線量測定及びバクテリオファージ照射中に、6つのランプの平均ランプ輝度を測定し、放射測定補正係数を計算した。その結果を表8に示す。
【0156】
【表8】
バクテリオファージ照射中の実効線量を計算するため、線量測定において測定された線量に乗ずる必要のある、放射測定補正係数は1.011と算定された。
【0157】
【表9】
表9に示された対応バクテリオファージ力価から、およそ−0.2(log10pfu/mL)/(mJ/cm2)の線量依存的不活性化率が達成されることが分かる。
【0158】
同様な実験を、モデル溶液(a253.7=2.6/cm、η=1cp)に対し2つだけのランプを使って行った。次いで、同じ吸収度と粘度とを持つ、バクテリオファージ・スパイク・アルブミン溶液に照射した。放射測定補正係数(バクテリオファージ溶液/線量測定)は0.988であった。その結果を表10に示す。
【0159】
【表10】
対応モデル溶液の線量測定に基づき、バクテリオファージ・スパイク・アルブミン溶液(a253.7=4.5/cm、η=1.05cp)に対し、192mL/分の一定流速で内部シリンダ回転速度を変化させながら同様な実験を行った。ここでは、最初にセルから出てくる液量からさらなるサンプルを抜き取った(これは滞留時間が短いためより低い線量しか受けていない)。その結果を表11に示す。
【0160】
【表11】
化学線量測定と生物線量測定とを組み合わせた線量測定で得られた結果から、これらの方法を組み合わせて用いることによって(米国特許第6,576,201号の図7に示されているような)滞留時間の分散を測定可能なことが分かる。
【0161】
(実施例6:化学線量測定、生物線量測定、及び放射測定を使ったバッチ反応器の検証)
シリンダ型の石英チューブ(内径25cm、壁厚5mm、長さ75cm)と、ステンレス鋼から圧延され、注入ポート及びサンプリングポートを具えた平坦な上部蓋及び膨らんだ底部と、3枚羽のプロペラ及び各々の羽の外側縁にワイパー羽を持つ積層プロペラ攪拌装置とを具えた、大規模な微生物不活性化用大型光不活性化反応器を、実施例18に記載するように、ランプ収容器に装着された水冷温調された10個のUV−Cランプ(Philips TUV 55W HO)で取り巻き、各ランプをDr.Groebel UVC−SE放射測定センサでモニタリングした。この反応器の最大処理能力は30Lである。各ランプの放射測定センサを使ってランプ出力をチャート型記録計に記録し、初回作動設定の100%に対し相対ランプ出力に正規化した。
【0162】
該30Lの光不活性化反応器で、同じ吸光度及び粘度のモデル溶液で線量測定較正した後、バクテリオファージPhiX174をスパイクしたアルブミン溶液(a253.7=7.1/cm、η=1.05cp)を照射した。攪拌速度は90rpmに設定した。これにより、1.1634mJ/cm2の線量率が得られ、バクテリオファージ不活性化サンプルを、2分8秒ごとに17分4秒まで、すなわち、2.48mJ/cm2の線量増加工程で約20mJ/cm2の標的線量になるまで採取した。サンプルは底部サンプリング・ポートと最上部サンプリング・ポートとから同時に抜き取り、混合の均質性を調査した。その結果を表12に示す。
【0163】
【表12】
>10pfu/0.9mLのバクテリオファージ力価から、−0.3940log10(pfu/mL)/(mJ/cm2)の最上部不活性化率と、−0.3912log10(pfu/mL)/(mJ/cm2)の底部不活性化率が測定された。平均で−0.3926log10(pfu/mL)/(mJ/cm2)の線量依存的不活性化率は、実施例3の−0.3369log10pfu/(mJ/cm2)のフロー型不活性化率及び実施例4の約−0.2log10pfu/(mJ/cm2)のフロー型不活性化率と比較して良好な均質性と効果的な混合および狭い線量分布とを示している。−0.44log10pfu/(mJ/cm2)の無減衰バクテリオファージ不活性化率と比較して、該バッチ式照射は、最も効果的な混合によって、微生物の最も均質で均等なUV−C光への曝露を示している。
【0164】
基本的にはサンプリング・ポートのある平坦なプラスチックの上部蓋と膨らんだプラスチック底部とを持つシリンダ型石英容器(内径7cm、壁厚3mm、高さ13cm)で構成され、内壁近辺ワイパー羽をもつ積層羽根車攪拌装置(2枚羽で攪拌速度調整可能)を具えた実験スケールの微生物不活性化用光不活性化反応器を、側面から2つの10W低圧水銀ランプで照射した。この反応器の最大処理能力は450mLである。ランプ輝度は、デジタル二重センサ放射計(UVC−SEセンサ付きのDr.Groebel UV−Electronik RM21)を使ってコンピュータに記録した。生物線量測定による照射中における線量増分については、生物線量測定サンプリング時間間隔中のランプ線量増分に化学線量測定による線量率を乗じ、その結果を線量測定較正で得られたランプ線量率で除して計算した。
【0165】
該450mL光不活性化反応器で、実施例3と同じバクテリオファージをスパイクした抗トリプチン溶液を、実施例2で使ったのと同じモデル溶液による線量測定較正の後照射した。線量率は2.5989(mJ/cm2)/分であり、サンプルは、1分1秒間隔で8分8秒まで採取した。20mJ/cm2の線量でのエラステーゼ阻害活性は、未照射溶液の97%であった。この結果を表13に示す。
【0166】
【表13】
−0.4406log10(pfu/mL)/(mJ/cm2)の線量依存的不活性化率は良好な均質性と効果的な混合とを示しており、狭い線量分布は、実施例3に記載したフロー型方法の17.34mJ/cm2に比べ、12.24mJ/cm2であっても、−5.53log10pfu/mLの削減に明らかに寄与している。
【0167】
(実施例7:ランプ故障に対し安全で堅牢な処理を確実にするための、化学線量測定と放射測定との組合わせ使用による30L反応器の吸収依存性照射源の標的総光線量の算定)
実施例5に記載した30Lの反応器であるが、9つの個別にオンオフ可能な、反射板を具えた温調付きランプを、10種のモデル線量測定液(a253.7=1/cmの増加工程で3/cmから12/cmまで、η=1.15cp)と4つのランプとで検証し、実効率((mJ/cm2)/分単位)、照射光線量率((mJ/cm2)/分単位)、及び20mJ/cm2の実効線量に必要な照射時間を算定した。ランプ照射強度を電子放射計を使ってモニタリングしチャート式記録計で記録し、合計カウンターを設置し照射中すべての放射計からの信号を積算した。吸収依存性照射源の総光線量は、照射時間ともに増加する放射計信号和として計算される。照射光線量率は化学的線量率よりも桁違いに大きい、というのは、放射計センサは、実質的に、任意の吸収媒体に一切減衰されていないUV光を受光するからである。液中における所与の標的実効線量、例えば20mJ/cm2を得るための照射時間に、照射光線量率を乗じて、照射パラメータとして吸収依存性の照射源標的総光線量を計算する。その結果を表14に示す。
【0168】
【表14】
表14から、ランプの吸収依存性の照射源総光線量は、Hランプ=5058.9×a253.7−1413の式で表した吸光度とリニアな関係で相関しており、相関係数は1に近いR2=0.9972である。吸収依存性の照射源標的総光線量それ自体は照射中の輝度の任意の変化から独立したものであり、従って、適切な標的線量が適用されたことを確実にするための堅牢な照射処理の理想的パラメータである。照射処理は、吸収依存性の照射源総光線量によって制御され、これが、検証範囲のあらゆる吸光度に対して補間された所定吸収依存性の照射源標的総光線量に達したならば、ランプは消灯され照射は終了する。
【0169】
(実施例8:吸収依存性の照射源標的総光線量の制御による照射処理中のランプの故障の模擬、及び溶液中に正しく適用された標的実効線量の実証)
実施例5に記載したように、30L反応器中で、モデル溶液(a253.7=8/cm、η=1.15cp)を照射した。2回の実験を実施し、10分後に4つのランプの1つを消灯し、その代わりに別のランプを点灯するか、あるいはそれは使わず3つのランプだけで終了するようにした。照射光線量率を化学線量測定で算定し、実施例6に記載した検証における式により計算された吸収依存性の照射源標的総光線量がHランプ=39058mJ/cm2に達したならば、これらランプを消灯し、サンプルを採取して溶液中の実効線量を算定した。
【0170】
10分後にそのランプを別のランプを置き換えた最初の実験では、16分43秒後に吸収依存性の照射源総光線量が達成され、モデル溶液中では19.7mJ/cm2の線量が測定された。代替ランプなしの第二の実験では、19分55秒後に吸収依存性の照射源総光線量が達成され、モデル溶液中では19.9mJ/cm2の線量が測定された。
【0171】
照射時間後に測定する実効線量は、所定の吸収依存性の照射源標的総光線量を達成するために必要なものであるが、これから、所定の吸収依存性の照射源標的総光線量による制御を使った処理は、照射処理中のランプの故障に対して感受性がなく堅牢であることが分かる、これというのは、吸収依存性照射源標的総光線量は正確な実効線量の適用を確実にするからである。
【0172】
(実施例9:高い及び低い分子吸光度を持つ混濁流体の吸収及び濁度に適合させるための、モデル溶液の調整)
天然の混濁したりんご果汁を0.22μmの注射器フィルタでろ過した。253.7nmにおける未ろ過の果汁の吸光度は18/cmであったが、ろ過され澄んだ果汁は10.4/cmしかなく、双方とも粘度は1.25cpであった。
【0173】
ろ過した果汁(a253.7=10.4/cm、η=1.25cp)の吸光度と粘度に適合させたいヨウ化物/ヨウ素酸塩/PVPモデル溶液に、ベントナイトを加え混濁果汁の濁度に適合させた。2gのベントナイト成分量は7.6/cmの濁度を加えることが分かった。結果を表15に示す。
【0174】
【表15−1】
【0175】
【表15−2】
図5に描かれた較正プロットは、混濁液のわずかの感度低下を示したが、これには、吸光度及び濁度の双方に対してモロウィッツ補正係数(Morowitz、1950年)を適用した。2.6/cmの吸収係数及び1cpの粘度を持つ溶液(=1.534gPVP K25/L)に対し、ベントナイト2g/Lを加えて、全体で9.3/cmの吸光度を得た。図5から分かるように、較正プロットにも関連する差異はなかった。100mLの澄んだモデル溶液及び濁ったモデル溶液を、実施例5に記載したのと同じランプ・ハウジング中に挿入した4cmの攪拌石英試験管中で2つ又は1つの対向ランプを用いて照射した。40分の照射時間中4分毎に1mLのサンプルを採取した。各照射中にランプ輝度を記録し、18/cm溶液の第二照射は、10.4/cm溶液の第一照射の1.0416倍のランプ照度であり、9.3/cm溶液の第二照射は、2.6/cm溶液の第一照射の0.9928倍のランプ輝度であった。線量率は、理論的には吸収係数の逆数1/aに依存するが、10.4/cmの100%に対し18/cmの57%、又は2.6/cmの100%に対し9.3/cmの28%といったような期待通りの差異は示さず、違いは、(2つランプの場合)10.4/cmの1.748(mJ/cm2)/分に対し、18.0/cmの1.603(mJ/cm2)/分割る1.0416=1.539(mJ/cm2)/分、すなわち高い分子吸光度を持つ混濁溶液に対しては88%、及び(1つランプの場合)2.6/cmの3.415(mJ/cm2)/分に対し、1.854(mJ/cm2)/分割る0.9928=1.868(mJ/cm2)/分、すなわち低い分子吸光度を持つ混濁溶液に対しては55%であった。このことは、濁度が増加すると光を溶液中に散乱すること実証しておりこれは化学線量測定で計測可能である。
【0176】
(実施例10:高希釈のヨウ化物/ヨウ素酸塩アクチノメーター液の吸収係数、ヨウ化物/ヨウ素酸塩アクチノメーター液の線量測定反応、及びUV−C生成3ヨウ化物のポリビニルピロリドンによる安定化)
0.01Mのホウ酸塩緩衝液中に0.24MのKI及び0.04Mを含有するpH=9.25の溶液を、0.01Mのホウ酸塩緩衝液で0.2倍、0.4倍、0.6倍及び0.8倍濃度に希釈し、0.1mmのキュベット中で吸収を測定した。図6は、吸収係数がリニアな比率(a253.7=69/cm×希釈係数)で濃度に依存することを示している。
【0177】
1Lの0.01Mホウ酸塩緩衝液中に10gのポリビニルピロリドンK90(PVP K90;平均分子質量360000Da)を含有する溶液を、0.2倍、0.4倍、0.6倍及び0.8倍濃度に希釈し、該希釈液及び緩衝液の粘度を、22.8℃に温度調節したショット0.40mmウベローデ毛細管粘度計で測定した。図7から、濃度とともに非リニアな率で粘度が上昇することが分かる。
【0178】
0.01Mのホウ酸塩緩衝液中に0.24MのKI及び0.04Mを含有しpH=9.25の原液の希釈液を、253.7nmで所定の6.1/cm(0.0212MのKI+0.0035MのKIO3+0.95gPVP K90/L; DEAEセファデックス・アニオン交換ゲルからのプロトロンビン複合体溶出液に対するもの(Brummelhuis、1980年))及び16/cm(0.06MのKI+0.01MのKIO3+6.25gPVP K90/L; フィブリノゲン2.5%(w/v)溶液に対するもの)の吸収度に調合し、0.2mmのキュベットに満たした。線量測定液を満たしたキュベットを、CAMAG TLCランプの下の、既知の放射照度(Rahnアクチノメーターで測定)のキュベット位置に所定の時間置いて薄層較正を行った。367nmで吸光度を測定した。図8から、適用される表面線量に応じて吸光度が増加すること、KI/KIO3の濃度とともに感度が増加することが分かる。
【0179】
0.01Mのホウ酸塩緩衝液中に0.06MのKI及び0.01MのKIO3を含有し、pH=9.25で、a253.7=16/cmの吸収係数を持つ線量測定液と、同じKI及びKIO3濃度及び6.25gポリビニルピロリドン(PVP)K90/Lを有する溶液とを調合した。線量測定液を満たした0.2mmのキュベットを、前記のようにCAMAG TLCランプの下に所定の時間置いて薄層較正を行った。352nm(KI+KIO3のみ)又は367nm(KI+KIO3+PVP)で吸光度を測定した。図9から、PVPが本方法の感度を向上することが分かる。
【0180】
(実施例11:固定配置のアクチノメーター線量測定液を有するバッチ光不活性化反応器における照射時間の算定)
2.1/cm(0.0072MのKI+0.0012MのKIO3+0.5gPVP K90/L; FVIII濃縮液に対するもの)、6.1/cm(実施例10を参照)、10/cm(0.0346MのKI+0.0058MのKIO3+1.21gPVP K90/L; 免疫グロブリンG2%(W/V)溶液に対するもの)及び16/cm(実施例10を参照)の常用対数吸収係数a253.7を持つ線量測定液を調合し、実施例6に記載したように較正プロットを記録した。直径4cmの石英試験管に100mLの線量測定液を満たし、磁気攪拌装置の磁気攪拌バーでかき混ぜ、研磨されたステンレスの反射板を供えた2つの低圧水銀蒸気ランプの間で照射した。所定の間隔でサンプルを採取し0.2mmのキュベットに満たして分光光度を測定し、較正プロットから線量を読み取った。次いで、(mJ/cm2)/分単位で線量率と、線量率の逆数、すなわち分/(mJ/cm2)として単位占領あたりの比照射時間とを計算した。その結果を表16に示す。吸収係数と(比)照射時間との関係を表す定数k1を計算することができる。
t=k1×a
【0181】
【表16】
比照射時間の吸収係数への依存の直線回帰を計算すると、R2=0.989の直線相関が得られる。この結果は、薄膜較正による、吸収度と粘度とを適合させたモデル溶液に基づく線量測定が、攪拌バッチ式光不活性化反応器の検証に適していることを実証している。
【0182】
(実施例12:薄層バッチ式照射でのMMV及びPhi−X174の不活性化)
細胞培養の上清から採取したMMV原液(約108組織培養伝染性量(TCID50)/mL)及び大腸菌中の繁殖から採取したバクテリオファージPhi−X174の溶解物(約1×109プラーク形成単位(PFU)/mL)を20mLのリン酸塩で緩衝した0.15MのNaCl(リン酸緩衝塩水、PBS)中に希釈し、2.5mLを32mmのポリスチレンのシャーレに入れ水平方向にゆすりながらCAMAG TLCランプの下で、いろいろなUV−C線量で照射した。可視光不感知のUV−Cセンサを具えたDr Groebel RM−21放射計を使ってサンプル表面距離の放射照度を測定し、分光光度計で溶液の自己吸収を測定して実効フルエンス(UV線量)に補正した(Morowitz、1950年)。MMVとPhi−X174との力価を、それぞれ宿主細胞培養物とホスト・バクテリアとを使って滴定により算定した。その結果を表17に示す。
【0183】
【表17】
4cmの攪拌バーがついた100mLの石英のビンに、80mLのMMV又はPhi−X174をスパイクしたタンパク質溶液(プロトロンビン複合体DEAEセファデックス溶出液、α253.7=6.9/cm)を満たし磁気攪拌装置の上に置いて、約250rpmで攪拌しながら側面からCAMAG TLCランプで照射した。実施例11に記載したモデル溶液(α253.7=6.9/cm)を使って較正を行った。ウイルス又はバクテリオファージ滴定用のサンプルについては、線量率測定の後、計算された時間間隔で採取し、滴定により生存する感染性ウイルス又はバクテリオファージの力価を算定した。その結果を表18に示す。
【0184】
【表18】
Phi−X174及びMMVの不活性化率から、253.7nmのUV−C光に対するこれらの感受性は類似していると推定できる。これにより、Phi−X174を生物線量測定計として使用することにした。また、微生物を照射ゾーンへ確実に移送をする効果的な混合方法によって、バッチ攪拌式装置中のUV−C吸収性液体に対する不活性化率はどれもほとんど同じであることが分かる。
【0185】
(実施例13:線量測定及び生物線量測定の使用による攪拌式バッチ反応器の最適化)
実施例6に記載した、積層羽根車攪拌装置(3枚羽で攪拌速度調整可能)を具えた450mLのバッチ式反応器(内径7cm、壁厚3mm、高さ14cm)を、各々が2本の同心の石英チューブの外包中に装着し後方にステンレス鋼の反射板を具えた2つの低圧水銀ランプで側面から照射した。ランプ外包を通して温調装置からの冷却水を送流し、ランプ温度とUV−C出力を一定に維持した。
【0186】
攪拌速度を、分あたり60回転(rpm)(低速攪拌)、150rpm(中速攪拌)、及び240rpm(高速攪拌)に調整した。バクテリオファージをスパイクしたプロトロンビン複合体溶出液に対して吸収度及び粘度を適合させたモデル溶液(a253.7=8.0/cm、η=1.15cp、0.1Mのホウ酸塩緩衝液に27.83mMのKI、4.64mMのKIO3、1.3gPVP K90/Lを含有させた溶液、pH=9.25)450mLの照射に対するUV線量率を実施例11に記載した方法で算定した。ホウ酸濃度については文献に記載された濃度(0.01M)より高いホウ酸塩濃度(≧0.1M)が、線量測定溶液のより高い感受性と良好な安定性をもたらすことが判明した。バクテリオファージ・スパイク・プロトロンビン複合体溶出液を照射し、実施例12に記載したようにバクテリオファージの不活性化を算定した。追加パラメータとして凝固因子X(FX)の活性をアミド分解分析を用いて、0、10、15、20、25、50、75、及び100mJ/cm2の線量について測定した。その結果を表19に示す。
【0187】
【表19】
この実験から、ウイルス不活性化用バッチ光不活性化反応器の最適化はモデル溶液の線量測定及び生物線量測定によって実施できることが分かる、というのは、双方の検証方法とも混合の効果についての情報をもたらすからである。また、タンパク質溶液の可能な最高な攪拌速度(泡の生成を回避して)において、最速の微生物不活性化が達成するだろうことも明白である。このような最適化の利点は、最も効果的混合法によって、標的線量、例えば標的線量20mJ/cm2におけるウイルス不活性化に対する安全マージンを最高にし、または、標的線量を下げてさらなるタンパク質の生物活性を保存することができる。
【0188】
(実施例14:化学線量測定、生物線量測定、及び放射測定を使った、プロントロビン複合体溶出液のバッチ照射に対する検証及びプロセスのモニタリング)
実施例6に記載した、3枚羽の羽根車と各々の外側羽根縁にワイパー羽とを持つ積層羽根車攪拌器を備えた30Lのウイルス不活性化用光不活性化装置を、実施例18に記載したように、温度調節されたランプ・ボックスに装着され、各々がDR.Groebel UVC−SE放射測定センサでモニタリングされている10ヶの水冷温調UV―Cランプ(Philips TUV 55W HO)で取り囲んだ。放射測定センサを使って各ランプにつきランプ出力をチャート式記録計に記録し、最初の実験時の設定100%に対して相対ランプ出力に正規化した。
【0189】
29.5Lのプロントロンビン複合体溶出液を、大腸菌から採取したPhi−174による溶解液(約4×109pfu/mL)0.5Lでスパイクした。得られた溶液の吸収係数は、a253.7=6.0/cmであった。ウイルス不活性化実験に先立って、実施例11に記載したような、吸収度と粘度とを適合させ、0.1Mのホウ酸塩中に20.87mMのKI、3.48mMのKIO3、及び1.304gPVP K90/Lを含有させた、pH=9.25のモデル溶液を使い、90rpm攪拌速度で、最初の実験のバクテリオファージ照射線量率に対し98.5%であるランプ線量率で、1.3435(mJ/cm2)/分の線量率で反応器の線量率を算定した。20mJ/cm2の標的線量に対して14分の照射時間を算定し、基本的には一定の線量率を想定した。故障光源のランプ出力の影響を実証するために、三回目の実験においてランプ温度を28℃から24.5℃に低下させ、ランプ出力を最高値の約90%に低減した。Phi−X174の不活性化率は(一定の線量率想定に基づいて)は、実施例12に記載したように算定され、(log(pfu/mL))/(mJ/cm2)で表した。その結果を表20に示す。
【0190】
【表20】
ランプ出力はバッチ照射プロセスのパラメータであり、線量測定線量率及び生物線量測定不活性化率の双方とも、ランプ出力に対して正規化する必要があることが分かる。
【0191】
(実施例15:線量測定及び放射測定で算定された放射測定標的線量に基づく、タンパク質溶液のバッチ照射工程の設計)
実施例6に記載した450mLの光不活性化反応器について、6.0/cm、7.0/cm、8.0/cm、9.0/cm、及び10.0/cmの吸収係数を持つモデル溶液の照射に対する線量率及び照射時間を検証した。450mLのサンプル容積を200rpmで攪拌した。ランプの電源をオンにし、3、6、9,12,15,18,21、及び24分に採取したモデルサンプル液の測定によって線量率を算定した。コンピュータに接続された二重ヘッド放射計を使ってランプ輝度をモニタリングし記録した。
【0192】
図10は、ランプ輝度はスイッチを入れてから3分後に最大値に達すること、およびこの最初の3分の間に適用される線量は、その後の3分の時間間隔で適用される基本的には一定に増加する線量よりも低いことを示している。図11は、ゼロより低いy軸定数として表されたエラーのある対応線量増加を示している。従って、線量率等式のy軸定数を標的線量(20mJ/cm2)に加えて、補正拡張標的線量を得、該拡張標的線量を線量率で除して照射時間を計算し、1秒間隔でランプ照度(mW/cm2)を測定し照射時間を通してこれを合計し、吸収係数に応じた標的放射測定ランプ線量(mJ/cm2)を得た。その結果を表21に示す。定数k2を計算することができる。
Q=k2×a
【0193】
【表21】
前記の表から、放射測定標的ランプ線量は、吸収係数とともにリニアな比率で増加することが分かる(R2=0.996)。
【0194】
(実施例16:光変性からの保護剤として試験したアスコルビン酸塩のUV−C吸収効果に対する線量測定補償)
FEIBA DEAEセファデックスG50溶出液(18.2mgタンパク質/mL)にアスコルビン酸ナトリウムを、1ミリモル/Lの濃度まで添加した。アスコルビン酸塩を加えたFEIBA溶出液の吸収係数a253.7は、元の溶出液の7.3/cmに対し、16/cmであった。
【0195】
化学線量測定のため、0.0254MのKI、0.0042MのKIO3、及び1.61gPVP K90/Lを含有する0.1Mホウ酸塩緩衝液を含み、pH=9.25(a253.7=7.3cmに対し)のモデル溶液、及び、0.06MのKI、0.01MのKIO3、及び1.61gPVP K90/Lを含有する0.1Mホウ酸塩緩衝液を含み、pH=9.25(a253.7=16/cmに対し)のモデル溶液を調合し、0.2mmの薄層キュベットによって較正プロットを記録し、溶液110mLを、実施例11に記載したバッチ式光不活性化反応器を使って、1本ランプ(a253.7=7.3/cmに対し、1.41(mJ/cm2)/分の線量率で)及び2本ランプ(a253.7=16cmに対し、1.33(mJ/cm2)/分の線量率で)で照射した。元のFEIBA溶出液及びアスコルビン酸塩添加のFEIBA溶出液をそれぞれの線量率で照射し、サンプルを、5、10、15、20、25、30、及び35mJ/cm2の時点で採取した。ファクターX(FX)活性については、実施例13のように算定した。その結果を表22に示す。
【0196】
【表22】
前記の表より、元のFEIBA溶出液とアスコルビン酸塩添加のFEIBA溶出液との間のFX不活性化率(U FX/(mJ/cm2))には適正な差異がないことが分かる。従って、アスコルビン酸は、それ自体は高度のUV−C吸収性を持つが、FXタンパク質に対する光防護をする機能はない。明らかにしたように、このような添加物によるUV−C吸光度の増大は、説明したような吸光度を適合した化学線量測定によって簡単に補償することができる。
【0197】
(実施例17:ランプ輝度及び量子収量を安定化した暴露時間制御の較正装置による線量測定液の較正)
薄層キュベット中の線量測定液の再現性と精度のある曝露のため、水冷温調ジャケット付きのキュベット・スロットを、単眼レンズレフレックスカメラのヒンジ連結された背部に装着し、この背部に開口部を設けカメラのシャッターを通してキュベットを曝露した。カメラのレンズの差し込み口金を、水冷温調石英ガラス・ジャケット中の低圧水銀蒸気ランプを収納したランプ・ハウジングのフランジに装着した。
【0198】
ランプをその最大UV−C出力で動作できるように、ランプの温調温度を外部に循環する水冷温調で制御した。キュベット・スロットの温度は、Rahn(1997年)に述べたようなヨウ化物/ヨウ素酸塩アクチノメーターの所定量子収量範囲内に設定し、外部の循環水冷却器によって制御した。カメラのシャッターを1秒の曝露時間に設定し、シャッター精度については、コンピュータのサウンドカードのマイクロフォン・プラグにつないだ光ダイオードを使って測定した。シャッターは、一定の曝露時間1.000±0.002秒を維持していることが分かった。
【0199】
キュベットの入射窓での実効放射照度を算定するために、0.6Mヨウ化物/0.1Mヨウ素酸塩のアクチノメーター液(Rahn、1997年)は、すべての入射光子を完全に吸収するが、これを0.2mmのキュベットに満たし、温度調節したキュベット・スロット中で、増加的に1、2、及び3秒の間曝露し、基本的には、一定の量子収量を確実にした。曝露の前に、分光光度計の352nmにおける吸光度をゼロに設定し、各曝露工程の後に、分光光度計で352nmにおける吸光度の増加を測定した。吸光度の増加から、三ヨウ化物の濃度を、温度依存性の量子収量から、入射光子の数を、光子のエネルギーとキュベットの横断面積とから放射照度Eを計算した。このように、E(mW/cm2単位)は、曝露時間t(秒単位)における吸光度増加Dabs、キュベット表面積A(cm2単位)及びキュベット容積V(L単位)、光路長dにおける吸光係数e(0.01cmに対して264.5)、253.7nmにおけるエネルギーW/アインシュタイン=471528J、及び21℃での量子収量Φ=0.7545(Rahn、1997年)から、式E=(Δabs×V×W×1000)/(e×A×Φ×t)によって計算することができる。そこで、曝露時間1秒後の0.0392の吸光度増加は、0.9262mW/cm2の放射照度に相当し、累積2秒後の0.0781の累積吸光度増加は、0.9227mW/cm2の放射照度に相当し、3秒後の0.1170の累積吸光度増加は、0.9215mW/cm2の放射照度に相当した。平均放射照度は0.9235mW/cm2で、標準偏差は0.0020であり、このことは、電子制御シャッターにより、較正について非常に正確な曝露がなされることを実証した。
【0200】
UV−C吸光度a253.7=6.5/cmで粘度1.16cpに合致する線量測定液を0.2mmのキュベットに満たし、3秒の増加工程で75秒まで曝露した。各曝露の増加の後で、未照射液を空試験値として、367nmにおける吸光度増加を読み取った。得られた較正プロットは二次方程式と相関した。該式では367nmにおける吸光度は、曝露フルエンスH如何による。その結果を表23に示す。
abs(367nm、0.2mm)=A×H2+B×H+C
【0201】
【表23】
1に近い相関係数R2は、電子制御シャッターを使って記録された較正プロットの精度を示している。該二次方程式のさらなる利点は、例えば実施例18に記載したような線量率測定において、算定される吸収値に対してこの方程式で妥当な解が容易に計算できることである。また、較正プロットをセグメント化し、このような二次方程式を、各セグメントに対する二次方程式を計算し、可能な限り1に近い相関R2を得ることができる。このような較正装置の実施例を図12に提示する。
【0202】
(実施例18:実施例2、4〜6、13、及び14に記載した反応器中で使用可能な、UVランプの温度安定化)
同心の温調外包石英ガラスチューブ(3)中に3つのランプ(2)を収納するステンレス鋼のハウジング(1)を具えたランプ・ボックスに、温調水が石英ガラス外包チューブ(3)とステンレス鋼壁(1)との間のギャップを流れるようにして、Philips TUV55 HOランプ(55W、直径28mm、長さ900mm)を搭載した。各ランプをDr.Groebel UVC−SE放射測定センサ(4)でモニタリングし、PT100プローブ(5)で温度を測定する。スチール・ハウジングの前側には、石英ガラスの窓があり、これを通してUV−C光が反応器の容器を照射する。石英チューブは、30mmの内径及び3mmの壁厚を持つ。循環冷却装置から6L/分の速度で水を送流した。温度を15℃から30℃まで上昇させ、約0.5℃間隔で光強度を測定した。その結果を表24に示す。
【0203】
【表24】
27℃で最高の輝度が得られ、冷却水の温度を40℃近辺にする必要のある直接温度調節と対照的に、これは穏やかな温度であり製品を過熱することはないであろう。ランプ表面と温調外包の内部チューブとの間のエアギャップ、及び水の流量を増すことによって、さらに低い温度でも最高のランプUV−C輝度を確かにする効果を得ることができる。このような温調されたランプの周り又は隣りに設置することによって、あらゆる種類のフロー型反応器又はバッチ式反応器を、熱による、特に過剰熱による製品の損傷の危険なしに作動することができる。
【0204】
【数1】
【0205】
【数2】
【0206】
【数3】
【0207】
【数4】
【0208】
【数5】
【0209】
【数6】
さらなる利点、特徴および改変は、当業者が容易に想到する。従って、本発明の広範な局面において本発明は、本明細書中に示され、記載される特定の説明および代表的な装置に限定されない。従って、種々の改変が、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物により定義される一般的な発明の概念の精神または範囲から逸脱せずになされ得る。
【0210】
全ての刊行物および全ての米国特許および外国特許ならびに特許出願を含む、本明細書中に引用される全ての参考文献は、特定および全体が本明細書中に参考として援用される。明細書および実施例は、添付の特許請求の範囲により示される本発明の真の範囲および精神の例示のみであるとみなされることが意図される。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、生物学的流体、望ましくは不透明な液の中に存在する微生物を不活性化するための、1つ以上の光源からの単色又は多色光の実効線量を算定する方法に関する。加えて、フロー型反応器中で生物学的流体の中の微生物を不活性化する方法を提供する。さらに、本発明は、1つ以上の温調付き光源を具えた有用なフロー型反応器を提供する。また、本発明は、1つ以上の光源から放射された単色又は多色光の総光線量を制御し、バッチ反応器中の生物学的流体に存在する微生物を効果的に不活性化する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
栄養摂取、化粧品、診断又は治療用途の生物学的流体などの流体の照射殺菌処理は、微生物を不活性化させるためのアプローチとして広く研究されている。現在調査されている照射処理の例として、短波紫外光、長波紫外光、又は可視光線と光感作化合物との組み合わせ、及び広域スペクトル高輝度のフラッシュ光がある。
【0003】
例えば、サルモネラ菌種、Listeria monocytogenes、マイコバクテリア、又は腸管出血性大腸菌株O157:H7のような食品を腐らせる微生物は、ミルク又はフルーツジュース、発酵飲料、及びこれらから作られた加工飲料といった流体を容易に汚染し得る。微生物による汚染の別の例として、医薬品を得るための生物学的流体、例えば、血液及びその派生品、又は細胞培養上清もしくは溶解物に、原虫、バクテリア、及びウイルスが存在し、このため医薬品の摂取者にこれらの微生物を感染させる可能性がある。
【0004】
こういった微生物を不活性化するために、小さな実験室規模では、バッチ式の光不活性化反応器が開発されてきた。このような光不活性化反応器は、通常、キャビティの周りにランプを配置して構築される。サンプルは、光透過性容器のキャビティに挿入され、所定の時間光に曝される。さらに、均一な曝露を確実にするため攪拌されることになろう。コネチカット州ブランフォードのSouthern New England Ultraviolet Company社が製造しているシリンダ型の「Rayonet」及び「Rayonette」反応器、及びカナダ、オンタリオ州オタワのLuzchem Research Inc.社が製造している光チャンバ光不活性化反応器は、こういった光不活性化反応器の典型例である。
【0005】
汚染除去をするための大量の流体の曝露を非常に効果的で確実なものとするために、さまざまなフロー型反応器が設計されてきた。これらは、流体を薄い膜又は薄い層に広げて自己吸収による光強度の損失を最小限に抑えるか、あるいは縦方向に流れる流体に横向きの混合動作を加え、どの体積部分も光のあたる外側の薄い液層に導くことによって均等な照射を実現している。
【0006】
Cillet−Fauquetらは(2004年)、脳心筋炎ウイルスをスパイクしたサンプルを用い、生物学的線量測定又は自家用の化学光量測定を適用して、バクテリア及びウイルスを不活性化するためのフロー型UV−C照射方法を説明しているが、そのさらなる詳細は提示されていない。
【0007】
前記のようなフロー型照射装置が今までに構築されてきており、例えば、チューブ型の光源の周りを軸方向に回転し、内壁上で液体を自由流動する薄い膜に広げる傾斜チューブ(Habel及びSockrider,1947年)、流れを薄い層に絞る平坦で透明なセル、又はチューブ型の光源に巻きついた透明ならせん状チューブ(Oppenheimerら、1959年)などがある。直径が光の透過深さを超えるフロー型装置では、コイル内のディーン渦によって、もしくは、バッフルのようなチューブ内の静止混合器によって、又は、2つの逆向き流のシリンダの間にトロイダル・テイラー渦を生じさせ、その間にある環状ギャップに液体を流すことによって、横方向の混合を行うことができる。
【0008】
光の透過が限られている場合には、特許文献1及び特許文献2に記載されているように、液体を薄膜に広げて光源を通過させることができる。光の透過深さより深い液体層では、原則として、横方向混合を、能動的にあるいは受動的に発生させることができる。
【0009】
能動的混合を起こすためのよく知られた原理は、同心で逆向き流の回転シリンダ表面の間でテイラー渦を発生させることである。これらのテイラー渦は縦方向の流れに重畳され、その結果は、テイラー・ゲルトラー渦として知られる流れが得られる。特許文献3は、静止した外部透明壁と回転する内部シリンダとを有する、円筒型UV−C透明フロー型のセルを開示している。この中間の液層において、セルを通って流れる液体はテイラー渦の逆流によって混合される。連続波又はパルスのレーザUV源が、照射光線として開示されている。
【0010】
能動的混合を目的とする別の装置に、アルキメデス・スクリューに基づくフロー型反応器があり、回転スクリューで送られる液体はコイルの中で混合される(Della Contrada、2004年)。
受動的な混合生成は、流れの中の発生乱流、又は静止した混合バッフルのような流れ障害物によって実現できる。従来の不活性化装置の設計は、チューブ型ランプ(又はその外包チューブ)の外部壁と同心の照射反応器の内部壁との間の環状ギャップを通る流体流に基づくものである。このような薄層の照射装置は、例えば、オーストリア、ゼーワルヘンのWedeco−Vista GmbH社から市販品として入手できる。
【0011】
受動的横方向混合の別の効果的技法として、湾曲したチューブの中、特にらせん状に巻かれたチューブ中でのディーン渦の発生がある。例として、ミルクのような高い吸収性のある流体の消毒のためのコイル反応器の記載が既にあり、この装置では複数の低圧水銀蒸気ランプの周りを石英ガラスコイルが縦方向に巻き包んでいる(Bayha、1952年)。ワクチン中のウイルス及び他の生物学的流体の光感作不活性化のために、同様なコイル反応器がホウケイ酸ガラスで製作されており、該コイルは白熱フィラメントランプの周りに取り付けられている(Hiatt、1960年)。コイルは光透過性の水ジャケットで冷却される。特殊な技能が要ること、及びホウケイ酸ガラスや石英ガラスの脆さによって、このような従来のチューブ型の反応器の使用には制限があるが、UV透過性、UV耐久性があり化学的に不活性なフッ素重合体が利用できるので、こういったフロー型反応器の設計及びスケールアップはやり易くなっている。コイルは、通常は低圧水銀ランプの同心チューブ型光源の周りに巻かれており、流体流に重畳されるディーン渦によって横方向の混合が行われる。こういったらせん状外包型反応器が特許文献4に記載されている。該反応器を通して送られる溶液が受ける線量は、シュウ酸鉄光量測定によるランプ輝度測定、吸光度、及び滞留時間から計算された(Wangら、2004年)。
【0012】
今までに、放射中の有効な光エネルギーを測定するためにいくつかの試みがされてきた。光エネルギーは、感光電子センサ、又は光の光子の作用による光化学反応、もしくは生物学的流体自体に存在するか又はこれに加えた指標微生物の不活性化度のどれによっても測定することができる。他の理論的方法には、単に単位量の被曝時間に輝度を乗じて線量を計算する数学モデル、又はもっと洗練されたアプローチとして、流れモデリングによる滞留時間及び線量を解く数学モデルがある。
【0013】
化学光量測定では、光化学反応混合物に対する光の効果度を測定する(Kuhnら1989年;Favaro、1989年)。一般に、確立された光化学アクチノメーターは、量子収量及び温度特性が分かっていれば、再現性及び安定性において電子デバイスを凌駕し得る。もっとも好都合には、例えば、分光放射計又は化学センサなどによってオンラインで光化学反応の生成物質を測定すればよい(Gauglitz、1983年)。
【0014】
望ましいアプローチとして、測定波長における光量測定の対象である溶液全体の不透過性を利用し、光化学反応がごく表面だけで起こるようにする(Kuhnら、1989年;Favaro、1998年)。従って十分に高い反応物質濃度が望ましい。
【0015】
インフルエンザウイルスを不活性化するためのワクチンのフロー型UV反応器では、ウリジンアクチノメーターを使ってランプ輝度の測定が行われた(Zeleznova、1979年)。
【0016】
テイラー渦発生デバイスも、均一及び不均一な光化学処理のための光化学反応器として検討されてきた(Sczwchwskiら、1995年;Forney及びPierson、2003年)。該反応器の光量計検査には、シュウ酸鉄、あるいはヨウ化物/ヨウ素酸塩アクチノメーターが使われた。しかし、ヨウ化物溶液中の有効線量を測定するための吸光度の適合較正は、実施もされず、提起もされなかった(Forney及びPierson、2003年)。
【0017】
UV−C測定に対し、従来からあるアクチノメーターは、ウラニルシュウ酸塩(Bowen、1949年;Kuhnら、1989年)及びシュウ酸鉄アクチノメーターであるが、前者の使用はウラン放射能毒性があるため、後者はUV−B、UV−A及び可視光線に対する感受性があるため制限がある(Kirk及びNamasivayam、1983年)。また、トリフェニルメタン色素の亜硫酸水素付加物又はシアン化水素付加物もUV−C感受性のあるアクチノメーターとしてよく知られている。例えば、エタノールに溶解された無色のマラカイトグリーン・ロイコシアン化物は、長波UV又は可視光線に対する感受性を示さないが、緑色の光生成物はUV−Cの範囲で吸収性を増す(Calvert及びRechen、1952年;Fisherら、1967年)。メタノール中のアゾベンゼン(Actinochrome 2R 245/440)(Gauglit及びHubig、1981、1984,1985年)、及びヘテロコエルジアントロン・エンドペロキシド(Actinochrome 1R 248/334)の場合、光量測定溶液の再使用が可能になる(Brauer及びSchmit、1983年)。有機溶剤に溶解させたこれら有機複合化合物の品質の良さにかかわらず、光量測定物質及び溶液は毒性がなく有害でないことが前提とされている。
【0018】
20世紀の初めさまざまな紫外線ランプが入手できるようになった直後から、酸性ヨウ化物溶液が化学アクチノメーターとして使われだした(Bering及びMeyer、1912年)。0.05と量子収量が低いため、電子除去剤として亜酸化窒素(N2O)が使われるようになった(Dainton及びSills、1960年;Rahn、1993年)。さらに最近のアプローチである不透明UV−C光量測定は、ヨウ素酸塩で安定化したヨウ化物の光分解である(Rahn、1997年;Rahnら、1999,2003年)。253.7nmのヨウ化物光分解で形成された三ヨウ化物は、352nm又はこれより大きな波長(375nm、400nm)の分光光度法で測定される。このシステムには、300nmを超える波長に対し無感受性である利点がある。
【0019】
アクチノメーター液の使用については、アクチノメーター液を含むフロー型又は静止式プローブでUVセンサを置き換え、照射反応器に挿入することが提案されている。濃縮されたアクチノメーター液、例えば、特許文献5によるヨウ化物/ヨウ素酸塩アクチノメーター、又はウリジン溶液(Schulzら、2001年)を、ランプからUV光を受光するUV透明性のチューブを通して送るか、又はUVランプに面した透明な窓があるセルの中に収納し、所定時間曝露して、その後に光生成物を分光光度計で測定する。しかし、これらのセンサはそれらに入射した照射のごく一部しか測定せず、照射反応器内に収納されている間に照射される流体に対する実効平均フルエンス(光線量)を測定するのではない。
【0020】
フロー型UV−C照射による、果汁、ジュース及び植物飲料中の微生物の「非加熱殺菌」のため、水溶性のトリフェニルメタン色素(4,4’,4”−トリス−ジ−β−ヒドロキシエチルアミノトリフェニル・アセトニトリル)を、添加アクチノメーター物質として使用することが記載されている(Koutchma及びAdhikari、2002年)。この処理を実験するための設備が市販されており、例えば、ニューヨーク州、マセドンのEPE Inc.が製造している「Cider−Sure」や「Sap Steady」薄膜照射装置、又はカリフォルニア州、フォールブロックのSalor Inc.が製造している「Light Process System」コイルチューブ照射装置がある。果物を絞って得たジュース類は、懸濁粒子による高い濁度及び溶解されたフェノール化合物及びアスコルビン酸による高いUV−C吸収度を示し、また、たんぱく溶液に近い粘度を示す。清浄化されたりんごジュースは、253.7nmで9/cmの吸収係数を有する。アクチノメーター物質は、高い吸収性のあるジュースに加えられ、非吸収懸濁液中の微生物の絶対UV不活性化反応速度の測定のために使われるような平行ビーム装置の中で照射される(Bolton及びLinden、2003年)。アクチノメーター光生成物の吸収は600nmで増大するが、実際は、加えられたアクチノメーター物質は、全吸収に対する吸収部分に対応する光量部分を受光するだけである。次いで、加えられたアクチノメーター色素の破壊度から有効線量を計算する。190mJ/cm2の「吸収線量」から、シャーレ中のりんごジュース中の大腸菌K12の不活性化は3log10コロニー形成単位(cfu)/mL以下と推測できるので、サンプルにアクチノメーター物質を加えたこと自体が、有効線量について明らかに誤った結果をもたらしている。非吸収懸濁液中では、約10mJ/cm2で、5log10cfu/mLの大腸菌が不活性化される(Wright及びSakamoto、1999年)。但し、溶液中での有効線量と、微生物に当たる有効線量とが同じである必要がある。従って、既に吸収性のある媒体にアクチノメーター物質を加えるという提案では、正確な有効線量を測定することはできない。
【0021】
光不活性化可能な微生物を用いた生物線量測定は、血漿を照射する際の適用線量を測定する最初の方法であった。但し、Aerobacter aerogenes(肺炎桿菌の昔の名称)を使った該線量測定の詳細については示されていない。さらに、S13及びファイX(ファイ・カイ)174のようなミクロウイルス科の一本鎖DNAのバクテリオファージが、UV照射線量の増大に従ってリニアな力価の減少を示す。バクテリオファージ(例、ファイX174又は一本鎖RNAのバクテリオファージMS2)の不活性化、又は枯草菌胞子の不活性化に基づいた生物線量測定が、フロー型紫外線水殺菌装置の試験のために開発されてきた。9W UV−Cランプの0.225mW/cm2の放射照度の均一な照射野において、33mmのシャーレ中で水平攪拌されている希釈されたUV透過性の緩衝懸濁液中の、バクテリオファージ・ファイX174の線量依存的無減衰不活性化率は、−0.44(log10cfu/mL)/(mJ/cm2)と算定された(Anderleら、2004年)。
【0022】
フルーツジュースに使われる商用の薄層照射装置「CiderSure」(ニューヨーク州ロチェスターのFPE Inc.社製造)は、基本的には、外部のステンレス鋼チューブと内部の石英チューブとで構成されており、双方とも中心部のチューブ型のUV光源と同心で平行に装着されており、流体は両者の間の環状ギャップを通って縦方向に流れる。あらゆる種類のフルーツジュース及び果汁に対し、>5log10コロニー形成単位/mLの大腸菌O157:H7を削減するのに要する流速に調整するように、生物線量測定によって確認がされている。さらに、時間による光強度低下が、流速是正によって補償されている、というのは、通常、線量Hは、輝度E×滞留時間t(FDA 2000)として想定されているからである。しかし、この生物学的線量測定による妥当性確認だけで、フロー型反応器を最適化し、滞留時間のバラツキ低減を実現してこれにより流体に対する過度な照射を回避できるものではない。栄養流体であってもこのような過剰照射は避けるべきである、なぜなら、UVの過剰被曝は望ましくない異臭を発生させ製品を不味くすることがあるからである。
【0023】
しかしながら、前記のすべてのフロー型装置について、レオロジー的及び技術的に乗り越えられない限界がある。照射区間に入ったあらゆる流通部分は、より早く流れ、滞留時間が短いためにより低い線量を受光する部分と、より遅く流れより高い線量を受光するテール部分と、その間にある流れ部分とに縦方向に分かれる。米国特許6,576,201号の図7には、滞留時間の分布がテイラー渦発生セル中の内部シリンダの回転速度により決まる例が示されている。線量が低すぎると、活性微生物の減滅が不完全になり、不完全な不活性化になりかねない。線量が高すぎると、ジュース中のビタミン及び風味、血液製剤中のたんぱく質、又はワクチン中の抗原のような対象となる物質を壊してしまうことになる。従って、照射処理を最適化し、すべての標的微生物を減滅するのに十分効果的であって、すべての対象物質を保存するのに安全な処理にすることが望ましい。そこで、このような処理を最適化する方法が特に望まれる。
【0024】
前記のフロー型及びバッチ式反応器の別の技術上の限界は、使われる光源のエージングであり、動作寿命期間中に当初の光出力水準を失う可能性があることである。この影響を補償するため、内蔵カウンターを使って一定で再現性のある光量での曝露を確実にするのだが、照射される溶液の吸光度とは関係なしに行われる(Rideal及びRoberts、1951年)。さらに、操作中、少なくとも1つの光源が故障することによって、不活性化が停止することがある。このような劣化及び/又は機能停止は、電子感光センサだけでも検知されるが、処理対象流体への実効光線量に対する効果を判断するには、こういった線量を測定し、ランプ輝度、吸光度、及び線量低下の関係を明確にし、流速のような他の工程変数を変更することによって、こういった劣化を補償する必要があろう。また、これらの装置については、特定の時間間隔で再設定し、一貫性があり効果的な動作を確実にする必要がある。従って、生物学的流体中の微生物の光不活性化作業でのこういった光照射の変動を、望ましくは、バッチ式反応器中の照射対象生物学的流体の吸光度に関連させて、測定、制御、補償する方法、また、光照射の変動にかかわらず、不活性化処理を効率的に実施するための制御方法が、特に求められている。
【0025】
加えて、バッチ式反応器及びフロー型反応器のような照射装置の作動中、光源は相当な量の温度エネルギーを発生させる。これによるランプの過熱は光放射に大きな変動をもたらす。例えば、低圧Hg蒸気ランプでは、ランプ出力の主要部分は熱に変換され、三分の一位だけが光放射になる。低圧Hg蒸気ランプが60℃を越えてオーバーヒートすることはほとんどないが、温度感受性の高い処理物質は、そう高くない温度でも損傷を受けることがある。光不活性化反応器中の液流路を直接冷却するだけでは、ランプの温度調整はされず輝度も安定せず、輝度を安定化するためランプ電圧を調整しても、こういった過剰熱である熱が除去されることはない。こういった点から、光源の熱発生に起因する光照射の変動を低減することができ、望ましくはランプの温度を基本的に一定に又は少なくとも低い変動内に保つことのできるような、フロー型反応器の開発が特に求められていよう。このような温度安定化については、特許文献6(Bensei、1956年)で開示された6ランプの遠心分離膜照射装置だけが試みており、ここでは各ランプの水冷除熱パイプが過剰熱を除去している。ディル照射装置(特許文献1)、バッフル又は他の静止型混合機能を具えた、チューブ型照射装置(特許文献7)又はらせん状チューブ型照射装置(特許文献8)を含む他のフロー型照射装置が開示されているが、直接的なランプ温度安定化のないものだけが明らかに意図されている。特許文献7では、補助空気流冷却(通風)が想定されているが、直接流体による温度安定化よりも効果は低い。これの効果は周囲の空気温度に依存することになる。自由流の薄膜を照射する装置では、冷却用空気流が、生物学的流体中の水分を蒸発させる可能性がある。液体によるランプ温度の安定化によって、ならし時間なしに最大の殺病原体輝度で、例えば、低圧Hg蒸気ランプを41.5℃、最大UV−C(23.7nm)で、直ちに運転できることが確保され、また、例えば、生物学的流体に吸収され、過剰熱に変換されてしまうような白熱光源からの赤外照射をカットすることができる。
【0026】
1960年に、薄膜UV−C照射ワクチン技術の第一人者の一人は次のように述べている、「ウイルス不活性化そのものに関与したエネルギーの絶対量を計算するためには、ウイルス及び培養媒体に吸収された紫外線エネルギーの相対量を計量化するための何らかの方法が必要である。これがまだ出来ておらず、さらに、絶対曝露量は、粘度、温度、表面張力、及び流れの摩擦抵抗などいくつかの可変ファクターに依存する」(Tayler、1960年)。こういったタンパク質溶液又はウイルス懸濁液は、通常澄んでいるか又は薄い乳白色コロイドであるが、液中にろ過可能な固体の懸濁物を含む流体もある。水中のKlebsiella aerogenesバクテリアの不活性化に対するさまざまな粘土鉱物の影響の調査によれば、UV吸収性粘土はバクテリアを保護するが、UV散乱性の粘土にはそのような効果はないことが実証されている(Bitton、1972年)。最近、混濁したリンゴ液と澄んだ林檎ジュースについて、こういった懸濁液の濁度には、分光光度計での測定が見かけ上似たような吸光度でも、混濁した液中の微生物は澄んだ流体のものよりも速く不活性化されるといった効果があることが示されている(Koutchmaら、2004年)。絶対曝露量は、おそらく、溶液中の粒子に散乱された光部分にも依存している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】米国特許第5,567,616号明細書
【特許文献2】米国特許第6,546,967号明細書
【特許文献3】米国特許第6,576,201号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0049809号明細書
【特許文献5】米国特許第6,596,542号明細書
【特許文献6】米国特許第2,725,482号明細書
【特許文献7】米国特許第6,586,172号明細書
【特許文献8】国際公開第02/38191号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
今までのところ、流体サンプル中の微生物に対する光化学的実効線量の算定については、どの科学論文にも又は特許論文にも発表されていない。従って、生物学的流体中、特に不透明な生物学的流体中に含有される微生物を不活性化するための実効線量を算定する方法、望ましくはフロー型反応器において該算定を行なう方法が求められている。加えて、生物学的流体の中に、特に不透明な生物学的流体の中に含有されている微生物を、望ましくは、対象となる生物活性物質に影響を与えることなく効果的に不活性化する方法を提供することが目標となる。
【課題を解決するための手段】
【0029】
(発明の要旨)
前述した技術的問題の解決は、特許請求の範囲に特色を明らかにした実施形態、具体的には、本発明の第一様態、すなわち、生物学的流体中に存在する微生物を不活性化するための、1つ以上の光源からの単色又は多色光の実効線量を算定する方法を提供することによって達成され、該方法は線量測定液に対する単色又は多色光の効果を測定する方法を包含し、不活性化はフロー型反応器で実施される。
【0030】
別の様態により、フロー型反応器中の生物学的流体の中の微生物を不活性化する方法を提供し、該方法には、1つ以上の光源からの単色又は多色光の実効線量を生物学的流体に照射する工程が含まれ、該実効線量は、前記の章及び以下に記載した方法によって算定される。
【0031】
別の様態により、不透明な生物学的流体中に存在する微生物を不活性化するための、1つ以上の光源からの単色又は多色光の実効線量を算定する方法を提供し、該方法は、使用する光不活性化光波長における、対象生物学的流体の濁度に、又は生物学的流体の濁度と吸光度とに、又は生物学的流体の濁度と粘度とに、又は生物学的流体の濁度と吸光度と粘度とに、又は生物学的流体の吸光度に、又は生物学的流体の粘度と吸光度とに適合させた線量測定液に対し、i)入射光のごく一部のみを吸収するよう十分薄くした光路長の層中の線量測定液に対し、測定可能な程度の物理的又は化学的変化を生じさせるための所定フルエンス(光線量)が得られるように、所定の設定放射照度を所定時間照射し、ii)光照射反応器中の該線量測定液への該光照射の実施中又はその後に測定された変化の程度に対応する線量を読み取ることによる光線量較正に基づき、単色又は多色光の効果を測定する工程を包含し、工程i)は工程ii)の前に、又はその逆に実施される。
【0032】
別の様態により、不透明な生物学的流体中の微生物を不活性化する方法を提供し、該方法は、1つ以上の光源からの単色又は多色光の実効線量を生物学的流体に照射する工程を包含し、該実効線量は、前記の項の記載及び以下に詳細を説明する方法により算定される。
【0033】
さらに別な様態により、UV光不活性化フロー型反応器を提供し、該装置では1つ以上の光源は外包温度自動調節装置に収納されており、該装置は温度調整され、原則として光透過性のある流体が流動してランプからの熱を除去し、これにより本質的にランプ輝度の一定性を確実にする。
【0034】
加えて、1つ以上の光源から放射される単色又は多色光の総光線量を制御して、バッチ式反応器中の生物学的流体の中に存在する微生物を効果的に不活性化する方法をさらに提供し、該方法には、
a)生物学的流体の中に存在する微生物を不活性化するための単色又は多色光の実効線量に基づき、バッチ式反応器中の微生物を効果的に不活性化するため必要な吸収依存性照射源の標的総光線量、照射光線量率及び照射時間を算定する工程と、
b)バッチ式反応器中の生物学的流体の中に存在する微生物を不活性化する間の照射光線量率と照射時間を記録する工程と、
c)工程b)での測定値に基づいて、吸収依存性照射源総光線量を計算する工程と、
d)工程c)で算定された吸収依存性照射源総光線量を工程a)で算定された吸収依存性照射源の標的総光線量と比較する工程と、
e)該吸収依存性照射源総光線量が、該吸収依存性照射源の標的総光線量以上になったならば、生物学的流体の光への曝露を停止する工程とが含まれる。
【0035】
本発明の他の目的、特質及び利点は、後記の説明で明確になる。但し、詳細説明及び個別実施例は、本発明の好適な実施形態を表しており、例示目的のためだけのものである。また、この詳細説明から、当業者にとって、本発明の精神及び範囲内におけるさまざまな変更及び変形が明らかになる。
本発明は例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
生物学的流体の中に存在する微生物を不活性化するための、1つ以上の光源からの単色又は多色光の実効線量を算定する方法であって、該方法は、線量測定液に対する該単色又は多色光の効果を測定する工程であって、ここで、該不活性化はフロー型反応器で実施される工程を包含する、方法。
(項目2)
項目1に記載の方法であって、該方法は、使用される光不活性化波長において上記生物学的流体の吸光度、又は該生物学的流体の吸光度と粘度とに適合させた線量測定液に対し、i)入射光のごく一部のみを吸収するように十分薄くした光路長の層の中の該線量測定液に対し、測定可能な程度の物理的又は化学的変化を生じさせる所定フルエンス(光線量)が与えられるように、所定設定の放射照度で所定時間照射し、そしてii)光照射反応器中の該線量測定液への該光照射の実施中又はその後に測定された変化の程度に対応する該線量を読み取ることによる光線量校正に基づき、単色又は多色光の効果を測定する工程であって、ここで、工程i)は工程ii)の前に、又はその逆に実施される工程を包含する、方法。
(項目3)
項目2に記載の方法であって、上記光路長に沿って上記入射照度の100%以下が吸収される、方法。
(項目4)
項目2に記載の方法であって、上記光路長に沿って上記入射照度の50%以下が吸収される、方法。
(項目5)
項目2に記載の方法であって、上記所定フルエンスは、上記所定の放射照度を変化させ、そして/又は、上記フロー型反応器中の上記生物学的流体の流速によって決定される所定時間を変化させることによって変更され得る、方法。
(項目6)
項目1に記載の方法であって、活性微生物への照射の前又は間、あるいは前及び間にスパイクされた上記生物学的流体に対して照射する工程の、前および後、あるいは前、間および後に該活性微生物の数を滴定することによって、上記線量分布を算定する工程をさらに包含する、方法。
(項目7)
項目1に記載の方法であって、照射線量を算定するために、上記照射の間に上記1つ以上の光源の輝度をモニタリングする工程をさらに包含する、方法。
(項目8)
項目1に記載の方法であって、上記光が、UV範囲である、方法。
(項目9)
項目1に記載の方法であって、上記線量測定液は、アルカリ金属ヨウ化物、アルカリ土類金属ヨウ化物、アンモニウムヨウ化物、水溶性ウリジンリン酸、安息香酸アルカリ金属塩、安息香酸アルカリ土類金属塩、安息香酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸アルカリ金属塩、ペルオキソ二硫酸アルカリ土類金属塩、ペルオキソ二硫酸アンモニウム塩、tert−ブタノール、ポリビニルピロリドン、ベントナイト、マイカ、モンモリロナイト、ノントロナイト、ヘクトライト、カオリナイト、ハロイサイト、ジッカイト、粘土鉱物、チョーク、シリカ、ヒュームドシリカ、重晶石、石こう、タルカム、マグネシア、アルミナ、オキシ塩化ビスマス、酸化亜鉛、アルカリ土類硫酸塩、アルカリ土類炭酸塩、アルカリ土類リン酸塩、アルカリ土類ヒドロキシリン酸塩、アルカリ土類ハロゲンリン酸塩、不溶性ケイ酸塩、不溶性アルミノケイ酸塩、不溶性炭酸塩、不溶性硫酸塩、不溶性リン酸塩、不溶性ヒドロキシルリン酸塩、リン酸ハロゲン、ペルフルオロ炭化水素又はその誘導体、ペルフルオロカルボン酸又はその塩、及びポリビニルポリピロリドンからなる群より選択される因子又は因子の組み合わせを含む、方法。
(項目10)
項目1に記載の方法であって、上記線量測定液は、希釈ヨウ化カリウム−ヨウ素酸カリウムアクチノメーターを含む、方法。
(項目11)
項目1に記載の方法であって、上記線量測定液は、希釈ヨウ化カリウム−ヨウ素酸カリウム/ポリビニルピロリドンアクチノメーターを含む、方法。
(項目12)
項目1に記載の方法であって、上記線量測定液は、希釈安息香酸ナトリウムアクチノメーターを含む、方法。
(項目13)
項目1に記載の方法であって、上記線量測定液は、希釈ペルオキソ二硫酸カリウム/tert−ブタノールアクチノメーターを含む、方法。
(項目14)
項目1に記載の方法であって、上記微生物は、モネラ界の種、モネラ界の種の胞子、菌類界の種、菌類界の種の胞子、原核生物、真核生物、及びウイルスからなる群より選択される、方法。
(項目15)
項目1に記載の方法であって、上記ウイルスは、パルボウイルス科ウイルス、微小マウスウイルス、イヌパルボウイルス、ウシパルボウイルス、ブタパルボウイルス、ネコパルボウイルス、サーコウイルス科(circoviridae)ウイルス、サーシノウイルス科(circinoviridae)ウイルス、ピコルナウイルス科ウイルス、A型肝炎ウイルス、及び脳心筋炎ウイルス、アネロウイルス科ウイルス、脳心筋炎ウイルス、エンテロウイルス科RNAウイルス、ミクロウイルス科DNAバクテリオファージ、及びレビウイルス科RNAバクテリオファージからなる群より選択される、方法。
(項目16)
項目1に記載の方法であって、該方法は、少なくとも1つの他の殺菌及び/又は微生物不活性化法と組み合わせて実施される、方法。
(項目17)
項目1に記載の方法であって、上記生物学的流体は、該流体の生物活性の損傷及び/又は損失を減らすために少なくとも1つの添加物を含む、方法。
(項目18)
項目1に記載の方法であって、該方法は、溶剤洗浄処理とともに実施される、方法。
(項目19)
項目6に記載の方法であって、生物学的流体中に存在する微生物を不活性化するための上記光の実効線量は、該生物学的流体中の上記活性微生物の少なくとも約99.9%を不活性化する線量である、方法。
(項目20)
項目1に記載の方法であって、上記生物学的流体は、ミルク、乳漿、乳製品、ミルク由来の製品、フルーツジュース、果物由来の製品、野菜ジュース、野菜由来の製品、自然植物汁液、遺伝子組み換え植物汁液、合成飲料、加工飲料、発酵飲料、アルコール飲料、血液、血漿、血漿画分、血清、血液由来の流体、血漿由来の流体、血清由来の流体、タンパク質画分を含有する流体、脊髄液、脳液、リンパ液、唾液、精液、尿、原核細胞培養上清、真核細胞培養上清、原核細胞溶解物、真核細胞溶解物、外用治療用途のために意図される流体、腸内治療用途のために意図される流体、非経口治療用途のために意図される流体、外用化粧用途のために意図される流体、及び診断用途のために意図される流体からなる群より選択される、方法。
(項目21)
不透明な生物学的流体の中に存在する微生物を不活性化するための、1つ以上の光源からの単色又は多色光の実効線量を算定する方法であって、該方法は、使用される光不活性化波長において該生物学的流体の濁度、該生物学的流体の濁度と吸光度、該生物学的流体の濁度と粘度、該生物学的流体の濁度と吸光度と粘度、該生物学的流体の吸光度、又は該生物学的流体の粘度と吸光度とに適合させた線量測定液に対し、i)入射光のごく一部のみを吸収するように十分薄くした光路長の層の中の該線量測定液に対し、測定可能な程度の物理的又は化学的変化を生じさせる所定フルエンス(光線量)が与えられるように、所定設定の放射照度で所定時間照射し、そしてii)光照射反応器中の該線量測定液への該光照射の実施中又はその後に測定された変化の程度に対応する該線量を読み取ることによる光線量校正に基づき、単色又は多色光の効果を測定する工程であって、ここで、工程i)は工程ii)の前に、又はその逆に実施される工程を包含する、方法。
(項目22)
項目21に記載の方法であって、上記光路長に沿って上記入射照度の100%以下が吸収される、方法。
(項目23)
項目21に記載の方法であって、上記光路長に沿って上記入射照度の50%以下が吸収される、方法。
(項目24)
項目21に記載の方法であって、上記生物学的流体はフロー型反応器中で不活性化され、上記所定フルエンスは、上記所定の放射照度を変化させ、そして/又は、該フロー型反応器中の該生物学的流体の流速によって決定される所定時間を変化させることによって変更され得る、方法。
(項目25)
項目21に記載の方法であって、活性微生物への照射の前又は間、あるいは前及び間にスパイクされた上記生物学的流体に対して照射する工程の、前および後、あるいは前、間および後に該活性微生物の数を滴定することによって、上記線量分布を算定する工程をさらに包含する、方法。
(項目26)
項目21に記載の方法であって、照射線量を算定するために、照射の間に上記1つ以上の光源の輝度をモニタリングする工程をさらに包含する、方法。
(項目27)
項目21に記載の方法であって、上記光は、UV範囲である、方法。
(項目28)
項目21に記載の方法であって、上記線量測定液は、アルカリ金属ヨウ化物、アルカリ土類金属ヨウ化物、アンモニウムヨウ化物、水溶性ウリジンリン酸、安息香酸アルカリ金属塩、安息香酸アルカリ土類金属塩、安息香酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸アルカリ金属塩、ペルオキソ二硫酸アルカリ土類金属塩、ペルオキソ二硫酸アンモニウム塩、tert−ブタノール、ポリビニルピロリドン、ベントナイト、マイカ、モンモリロナイト、ノントロナイト、ヘクトライト、カオリナイト、ハロイサイト、ジッカイト、粘土鉱物、チョーク、シリカ、ヒュームドシリカ、重晶石、石こう、タルカム、マグネシア、アルミナ、オキシ塩化ビスマス、酸化亜鉛、アルカリ土類硫酸塩、アルカリ土類炭酸塩、アルカリ土類リン酸塩、アルカリ土類ヒドロキシリン酸塩、アルカリ土類ハロゲンリン酸塩、不溶性ケイ酸塩、不溶性アルミノケイ酸塩、不溶性炭酸塩、不溶性硫酸塩、不溶性リン酸塩、不溶性ヒドロキシルリン酸塩、リン酸ハロゲン、ペルフルオロ炭化水素又はその誘導体、ペルフルオロカルボン酸又はその塩、及びポリビニルポリピロリドンからなる群より選択される因子又は因子の組み合わせを含む、方法。
(項目29)
項目21に記載の方法であって、上記線量測定液は、希釈ヨウ化カリウム−ヨウ素酸カリウムアクチノメーターを含む、方法。
(項目30)
項目21に記載の方法であって、上記線量測定液は、希釈ヨウ化カリウム−ヨウ素酸カリウム/ポリビニルピロリドンアクチノメーターを含む、方法。
(項目31)
項目21に記載の方法であって、上記線量測定液は、希釈安息香酸ナトリウムアクチノメーターを含む、方法。
(項目32)
項目21に記載の方法であって、上記線量測定液は、希釈ペルオキソ二硫酸カリウム/tert−ブタノールアクチノメーターを含む、方法。
(項目33)
項目21に記載の方法であって、上記線量測定液は濁度生成因子を含む、方法。
(項目34)
項目21に記載の方法であって、上記微生物は、モネラ界の種、モネラ界の種の胞子、菌類界の種、菌類界の種の胞子、原核生物、真核生物、及びウイルスからなる群より選択される、方法。
(項目35)
項目21に記載の方法であって、上記ウイルスは、パルボウイルス科ウイルス、微小マウスウイルス、イヌパルボウイルス、ウシパルボウイルス、ブタパルボウイルス、ネコパルボウイルス、サーコウイルス科ウイルス、サーシノウイルス科ウイルス、ピコルナウイルス科ウイルス、A型肝炎ウイルス、及び脳心筋炎ウイルス、アネロウイルス科ウイルス、脳心筋炎ウイルス、エンテロウイルス科RNAウイルス、ミクロウイルス科DNAバクテリオファージ、及びレビウイルス科RNAバクテリオファージからなる群より選択される、方法。
(項目36)
項目21に記載の方法であって、該方法は、少なくとも1つの他の殺菌又は微生物不活性化法と組み合わせて実施される、方法。
(項目37)
項目21に記載の方法であって、上記生物学的流体は、該流体の生物活性の損傷及び損失を減らすために少なくとも1つの添加物を含む、方法。
(項目38)
項目21に記載の方法であって、該方法は、溶剤洗浄処理とともに実施される、方法。
(項目39)
項目25に記載の方法であって、生物学的流体中に存在する微生物を不活性化するための上記光の実効線量は、該生物学的流体中の上記活性微生物の少なくとも約99.9%を不活性化する線量である、方法。
(項目40)
項目21に記載の方法であって、上記生物学的流体は、フロー型反応器中で不活性化される、方法。
(項目41)
項目21に記載の方法であって、上記生物学的流体は、ミルク、乳漿、乳製品、ミルク由来の製品、フルーツジュース、果物由来の製品、野菜ジュース、野菜由来の製品、自然植物汁液、遺伝子組み換え植物汁液、合成飲料、加工飲料、発酵飲料、アルコール飲料、血液、血漿、血漿画分、血清、血液由来の流体、血漿由来の流体、血清由来の流体、タンパク質画分を含有する流体、脊髄液、脳液、リンパ液、唾液、精液、尿、原核細胞培養上清、真核細胞培養上清、原核細胞溶解物、真核細胞溶解物、外用治療用途のために意図される流体、腸内治療用途のために意図される流体、非経口治療用途のために意図される流体、外用化粧用途のために意図される流体、及び診断用途のために意図される流体からなる群より選択される、方法。
(項目42)
UV光不活性化フロー型反応器であって、1つ以上の光源が外包温度自動調節装置に入れられており、温度調節されて本質的に光透過性の液体が、該外包温度自動調節装置を流れてランプから熱を除去し、これにより本質的に一定のランプ輝度を確実にする、UV光不活性化フロー型反応器。
(項目43)
項目42によるフロー型反応器であって、該フロー型反応器は、重力作動の薄膜生成型、乱流能動混合流型、遠心分離作動薄膜生成型、コイル管型、バッフル管型、静止混合管型、乱流静止混合流管型、層流管型、及び乱流流管型からなる群より選択される反応型である、フロー型反応器。
(項目44)
バッチ式反応器中の生物学的流体の中に存在する微生物を効果的に不活性化するための1つ以上の光源から放射される単色又は多色光の総光線量を制御する方法であって、
a)該バッチ式反応器中の該微生物を効果的に不活性化するために必要な、該生物学的流体の中に存在する微生物を不活性化するための単色又は多色光の実効線量に基づく吸収依存性の照射源標的総光線量、照射光線量率、及び照射時間を算定する工程;
b)該バッチ式反応器中の該生物学的流体の中に存在する該微生物の不活性化の間、該照射光線量率及び該照射時間を記録する工程;
c)工程b)における測定値に基づいて該吸収依存性の照射源総光線量を計算する工程;
d)工程c)で算定した該吸収依存性の照射源総光線量を、工程a)で算定した該吸収依存性の照射源標的総光線量と比較する工程;ならびに
e)一旦、該吸収依存性の照射源総光線量が該吸収依存性の照射源標的総光線量以上になると、該生物学的流体の光への曝露を停止する工程
を包含する、方法。
(項目45)
項目44に記載の上記吸収依存性の照射源総光線量を制御する方法であって、該方法は、照射光線率の変動、及び/又は上記1つ以上の光源の少なくとも1つの中間の停止にかかわらず、上記吸収依存性の照射源総光線量が、本質的に上記吸収依存性の照射源標的総光線量に等しくなるまで、続けられる、方法。
(項目46)
項目44に記載の方法であって、上記実効線量は、線量測定液に対する上記単色又は多色光の効果を測定することにより算定され、該方法は、使用される光不活性化波長において上記生物学的流体の濁度、該生物学的流体の濁度と吸光度、該生物学的流体の濁度と粘度、該生物学的流体の濁度と吸光度と粘度、該生物学的流体の吸光度、又は該生物学的流体の吸光度と濁度とに適合させた線量測定液に対し、i)入射光のごく一部のみを吸収するように十分薄くした光路長の層の中の該線量測定液に対し、測定可能な程度の物理的又は化学的変化を生じさせる所定フルエンス(光線量)が与えられるように、所定設定の放射照度で所定時間照射し、そしてii)光照射反応器中の該線量測定液への該光照射の実施中又はその後に測定された変化の程度に対応する線量を読み取ることによる光線量校正に基づき、単色又は多色光の効果を測定する工程であって、ここで、工程i)は工程ii)の前に、又はその逆に実施される工程を包含する、方法。
(項目47)
項目44に記載の方法であって、上記照射光線量率及び上記照射時間の記録は、少なくとも1つの電子放射計、少なくとも1つのチャート式記録計、及び/又は少なくとも1つの合計カウンターを使って実施される、方法。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、吸収係数とヨウ化物/ヨウ素酸塩濃度との線形関係を示す(実施例1参照)。
【図2】図2は、粘度の増加とポリビニルピロリドンの濃度との非線形関係を示す(実施例1参照)。
【図3】図3は、2.5/cmモデル溶液に対する較正プロットを示す(実施例1参照)。
【図4】図4は、4.5/cm、7.5/cm、10/cmモデル溶液に対する較正プロットを示す(実施例1参照)。
【図5】図5は、定義された分子吸光度を持つモデル溶液と、及び同じ溶液に2gのベントナイト/Lを入れて、懸濁粒子による濁度を加えたものとの較正プロットを示す(実施例10参照)。
【図6】図6は、吸収係数と濃度との線形関係を示す(実施例10参照)。
【図7】図7は、粘度の増加とポリビニルピロリドンの濃度との非線形関係を示す(実施例10参照)。
【図8】図8は、適用表面線量による吸収率増加と、Kl/KlO3濃度による感度の増大とを示す(実施例10参照)。
【図9】図9は、PVPでの感度の改良を示す(実施例10参照)。
【図10】図10は、ランプ輝度の変化を示す(実施例15参照)。
【図11】図11は、線量の増加を、y軸定数として表した誤差とともに示す(実施例15参照)。
【図12】図12は、本発明の典型的較正装置を示す。(実施例17参照)。
【図13】図13は、温度調整ランプ取付け品の断面図をランプ輝度センサ及び温度センサとともに示す(実施例18参照)。
【図14】図14は、温度調整液とともに用いる、チューブ型ランプの温度調整の配置の断面図を示す(図14a及び14b)。
【発明を実施するための形態】
【0037】
添付の図面は、本明細書に組み込まれてその一部を構成しており、本発明の1つの実施形態を図示し、前記の一般的記述及び以下に記載するこの実施形態の詳細解説とともに、本発明の原理を説明する役割を果たす。しかして、本発明、その目的及び利点をさらに完全に理解するため、添付図面と関連させ以下に説明を述べる。
【0038】
(発明の詳細な説明)
第1の様態において、本発明は、生物学的流体中に存在する微生物を不活性化するために、1つ以上の光源からの単色又は多色光の実効線量を算定する方法を提供し、該方法は、線量測定液に対する単色又は多色光の効果を測定する工程を包含し、不活性化はフロー型反応器の中で行われる。望ましくは、線量測定液に対する光の効果は、使用される不活性化光波長に対する対象生物学的流体の吸光度、又は生物学的流体の吸光度及び粘度に適合させた線量測定液に対し、i)入射光のごく一部のみを吸収するよう十分薄くした光通過層中の線量測定液に対し、測定可能な程度の物理的又は化学的変化を生じさせるための所定フルエンス(光の線量)が得られるように、所定放射照度を所定時間照射し、ii)光照射反応器中の該線量測定液への該光照射の実施中又はその後に測定された変化の程度に対応する線量を読み取ることによる光線量較正に基づき、単色又は多色光の効果を測定する工程を包含する方法によって算定され、工程i)は工程ii)の前に、又はその逆に実施される。好適な実施形態を実施例1、2、及び17に提示する。
【0039】
微生物とは、モネラ界の種、モネラ界の種の胞子、菌類界の非病原性微生物種、菌類界の種の胞子、古細菌、原核生物類、望ましくはバクテリア、真核生物類、ウイルス及びバクテリオファージから選んだ任意の微生物をいい、これら又は類似の微生物が殺菌され、又はその活動が低下されることを確実にする。望ましくは、ウイルス類は、パルボウイルス科ウイルス、微小マウスウイルス(MMV)、イヌパルボウイルス(CPV)、ウシパルボウイルス(BPV)、ブタパルボウイルス(PPV)、ネコパルボウイルス(FPV)、サーコウイルス科(circoviridae)ウイルス、サーシノウイルス科(circinoviridae)ウイルス、ピコルナウイルス科ウイルス、好ましくは、A型肝炎ウイルス(HAV)、及び脳心筋炎ウイルス(EMV)、アネロウイルス科ウイルス、脳心筋炎ウイルス(EMV)、エンテロウイルス科RNAウイルス、ミクロウイルス科DNAバクテリオファージ、及びレビウイルス科RNAバクテリオファージから選択される。望ましい微生物は、脂質エンベロープのある一本鎖又は二重本鎖ウイルス、脂質エンベロープのある又はないウイルスである。
【0040】
生物学的流体とは、任意の自然又は加工生物学的流体をいい、こういった生物学的流体には、ミルク、乳漿及びミルクたんぱく質画分、及び全血液及び画分、血液製剤、血漿、血漿画分、血清、血液由来の流体、血漿由来の流体、血清由来の流体、タンパク質画分を含有する流体、脳脊髄液、リンパ液、唾液、精液、尿、原核細胞培養上清、真核細胞培養上清、原核細胞溶解物、真核細胞溶解物、又は前記のような液体の派生物が含まれる。
【0041】
本発明による特に望ましい生物学的流体は治療用流体であって、これは外用、経腸、又は非経口の治療用途に意図された任意の流体をいい、基本的には、不活性化光波長の透過性がなく、光不活性化照射エネルギーの過度の被曝量に敏感である。これらの流体には、血液、血液製剤、血漿、血漿画分、血清、ならびに血液、血漿及び血清から得られた流体が含まれる。水、生理食塩水、乳酸リンゲル液、又はグルコース溶液のような透明で澄んだ流体は、過剰放射に耐え、必ずしも正確な光曝露量を必要としない。
【0042】
本発明による特に望ましい別の生物学的流体は化粧用流体であって、外用に意図された任意の流体をいい、基本的には、不活性化光波長に対し不透過、すなわち吸光性又は混濁、あるいは吸光性で且つ混濁しており、過度の光不活性化照射エネルギー被曝量に敏感である。アルコール水香水のような透明で澄んだ流体は過剰放射に耐えることができ、必ずしも正確な光曝露量を必要としない。
【0043】
本発明による特に望ましいさらに別の生物学的流体は栄養用流体であって、望ましくは栄養摂取又は渇きの癒し又は元気回復用として、経口又は経鼻摂取を意図された任意の流体をいい、基本的には、不活性化光波長に対し不透過、すなわち吸光性又は混濁、あるいは吸光性で且つ混濁していて、過度の光不活性化照射エネルギー被曝量に対し敏感であり、これには、ミルク、乳漿、乳製品、ミルク由来の製品、フルーツジュース、果物由来の製品、野菜ジュース、野菜由来の製品、自然植物汁液、遺伝子組み換え植物汁液、合成飲料、加工飲料、発酵飲料、及びアルコール飲料が含まれる。水道水、瓶詰ミネラルウォーター、又は水にクエン酸、炭酸ガス及び砂糖を溶かして作ったレモネードのような透明な流体は、一般に過剰放射に耐え、必ずしも正確な光曝露量を必要としない。
【0044】
本発明による特に望ましい別の生物学的流体は診断用流体又はこれから得られた流体、すなわち、抗体溶液又はその成分を含有する液体のような診断液および診断液キットである。蒸留水、無機食塩緩衝水、又は凝血原塩化カルシウム溶液のような透明な診断用流体は過剰放射に耐えることができ、必ずしも正確な光曝露量を必要としない。
【0045】
本発明による生物学的流体は、望ましくは、病原体光不活性化反応器中の光路長に沿って光強度が容易に減衰されるような程度に、殺病原体光を減衰するような生物学的流体である。この減衰は、生物学的流体中に含まれるアミノ酸、タンパク質、ヌクレオチド、核酸、又は色素のような分子発色団、もしくは、光線感作物質又は光防剤のような添加物質の分子発色団、もしくは、光散乱性および吸収性の高分子及び懸濁粒子による混濁、もしくは、これらすべての寄与パラメータの組み合わせに起因するものであり得る。この減衰程度は光路長に依存する。1/cmの常用対数吸収係数を持つ流体は、薄い0.5mmの液層中では入射光の5.5%しか吸収せず、従って基本的には透明流体としてふるまうが、10cmの深い液層中では入射光の95.7%を吸収することになる。反応器の光路長沿いの入射光を、望ましくは約5%を越えて、望ましくは約10%を越えて、さらに望ましくは約20%を越えて減衰させる一切の流体に対しては、化学的な線量測定を行って、本発明により有効線量を算定することが必要になる。指数的光減衰度によれば、初期の輝度は、当初輝度が50%に減少する半減光路長d1/2を10回繰り返した後には、ほぼ消滅の1/1024になってしまう。望ましくは、UV病原体不活性化に使われる生物学的流体は、ワクチン用の血清不含有細胞の培養上清(a253.7=5/cm、d1/2=0.06mm)、プロトロンビン複合体溶出液(Brummelhuis、1980年)(a253.7=7.5/cm、d1/2=0.04mm)、りんごジュースのようなフルーツジュース(a253.7=10/cm、d1/2=0.03mm)、又は血漿(a253.7=25/cm、d1/2=0.012mm)といった 約253.7nmのUV光に対して高度に不透過性の流体である。このことは、約6mm、望ましくは約4mm、さらに望ましくは3mm、もっと望ましくは約1.2mm進んだ後、入射UV光のエネルギーは、基本的には完全に消耗されつくし、これらの生物学的流体が非常に不透明であることを意味する。
【0046】
生物学的流体には、自然に又は人為的に添加された物質を含有するものがあり得、これら含有物は、微生物の核酸への光損傷を促進も抑止もしないが、光照射、とりわけUV光照射に対し、例えば、ルチンのようなフラボノイド(Erdman、1956年、世界公開第94/28210号)、アスコルビン酸のようなビタミン(Erdman、1956年)、及びクレアチニン(日本第11286543−A号)といった反応性のある酸素ラジカル抑制物質として作用することによって、対象となる成分を保存するための有益な保護効果を発揮する。但し、これらの添加物質により、使用波長において余分な吸光が加わる場合、適用される光線量で該余分な吸光が補償されなければ実際に微生物に到達する殺病原体光エネルギーが小さすぎることにもなろう。過剰なエネルギー適用は容易にタンパク質を損傷する。従って、微生物の十分な不活性化に必要なUV又は可視光線の線量が過剰にならないように、実施例1、2、11、12、及び15から17に詳述するように、できる限り正確に計算しなければならない。
【0047】
光、単色光、又は多色光は、電磁気スペクトル中の、望ましくはUV及び可視光線の波長及び周波数範囲内のエネルギーをいう。
【0048】
本発明によって用いたような微生物を不活性化する光化学的方法には、以下による照射が含まれる:
約200から約280nmの間のUV−C域の、望ましくは、約265nmの核酸の最大感受性に近い殺菌力のある波長の短波紫外線光、
約280から約320nmの間のUV−B域の中波紫外線光、
約320から約400nmの間のUV−A域の長波紫外線光、又は少なくとも1つの自然の又は添加された光線感作物質の存在の下で、約400から700nmの間の可視光線、もしくは前記の波長域のパルス単色コヒーレント光または非コヒーレント光、又は広域スペクトルパルス光。望ましくは、これらの光は連続的に放射される。
【0049】
生物学的流体中に存在する微生物を不活性化するための実効光線量を算定する該方法の好適な実施形態によれば、光路長に沿って、入射光の約100%、望ましくは約80%、望ましくは約60%、望ましくは約50%、望ましくは約30%又はそれ以下が吸収される。
【0050】
このような生物学的流体に吸収される光の量は、定義された波長l、及び通常は1cmの光路長dにおける透過率又は吸光度として表される。透過率Tは100%を超えることはなく、これから常用対数吸光度Aは、A=−log10Tによって計算され、d=1cmに対して、Aは、単位1/cmの常用対数吸収係数alとなる。最も殺菌力のある265nm周辺の短波紫外線では、吸収によって光の最大貫通深さが1mm未満に低減されることがある。
【0051】
本発明の方法及び反応器に用いられる光源は、通常チューブ型で、金属蒸気放電ランプを基としている。低圧金属蒸気ランプは、少量の熱を発生させるだけで、熱、特に過剰熱に敏感なものがある生物学的流体に対して望ましい。このようなランプからの放射は、589nmのオレンジ光を持つ低圧ナトリウム蒸気ランプ、又は253.7nmのUV−C光を持つ低圧水銀蒸気ランプからの放射のように、望ましくは単色である。また、後者は、内側をリン光体でコートし、例えば、蛍光白色、actinic blue+UVA、ブラックライト UV−A又はUV−Bの広域又は狭域放射スペクトルを得ることができる。本発明に適した他の殺病原体光源には、中圧及び高圧金属蒸気ランプ、フラッシュ放電管、水中アーク灯、レーザ、エキシマーランプ、発光ダイオード、白熱ランプなどが含まれる。
【0052】
分光光度計で測定したこのような生物学的流体の全体吸光度は、分子発色団による分子吸光、及び、混濁の加わった、不透明、曇った、又は濁った流体、すなわち光が散乱し減衰している場合は、コロイド的に分散した分子及び懸濁した粒子から成っていることもある。ろ過されていない混濁した果汁のような吸収性溶液中の粒子(例、細胞残屑)の懸濁に対し、該無ろ過果汁の吸光度から、清浄ろ過した果汁の吸光度を差し引いて濁度を測定することができる(実施例10参照)。
【0053】
光感作物質は、ソラレン及びその誘導体のような微生物に直接作用するか、あるいは、溶解酸素からの一重項酸素又は溶媒からの溶媒和電子のような、溶液中に存在する別の成分から反応性分子を発生させる物質である。後者の光感作物質の種類には、フエノチアジン色素、アクリジン、フラビン、ポルフィリン、及びフタロシアニンが含まれる。
【0054】
光に対する微生物の感受性は、そのゲノムのサイズ、その核酸の種類、及び被った光損傷の修復能力如何による。一般にかび及びバクテリアの胞子、及び真核細胞は最も抵抗性が高く、ウイルス類はこれより低く、植物性バクテリアはもっとも感受性が高い。従って、微生物の活性をおよそ所望程度のレベルまで低下させるのに必要なフルエンスは、微生物ごとに異なる。フルエンスは、ある面積、例えば、微生物の断面積に入射するエネルギーであり、曝露に際しては入射エネルギーのごく一部しか吸収、使用されない(Bolton、1999年)。光線量という用語も、フルエンスの代わりによく使われる。
【0055】
微生物を、非吸収性の懸濁液中で、既知のフルエンス率(面積あたりの光パワー)で所定時間照射する場合、微生物に適用された光線量を計算でき、線量依存的不活性化率を算定することができる(Blton及びLinden、2003年)。このようにして、多くの微生物に対する不活性化率定数が算定されてきており、その一部は微生物の光化学処理工程の効率を示す指標として用いられている。
【0056】
しかしながら、生物学的流体は、タンパク質、ビタミン、及びフェノール化合物、又は脂肪リポソーム及び細胞残屑のような、流体に付随し、殺病原体効果のある光を吸収し得る物質又はこれを散乱し得る粒子を含有している場合がある。入射光のほとんどは、これらの付随物質に費消され、又は粒子に遮蔽され、光の一部だけが実際に標的微生物に到達し効果をだす。従って、こういった生物学的流体中のこういった微生物を所望程度のレベルに不活性化するため必要な照射時間は、非吸収性の水生懸濁液中のその微生物の同じ不活性化を達成する時間を上回り、本発明による方法の活用を取り入れることができる。
【0057】
幅広い数の自然のスクリーニング化合物が、激しい高エネルギー光の有害な影響から生物を守っている。但し、これらは、光が発生させるラジカル又は励起分子を捕捉して緩和してくれることだけでなく、単に、光生物学的に活性な光スペクトルを吸収してくれることにもよるであろう。このような保護をしてくれると推定される、例えば、フラボノイド又はアスコルビン酸のような反応性酸素種の緩和物質の添加物を、透明な、又は既に吸収性のある本発明による生物学的流体に加えると、該添加物が殺菌波長を吸収する場合、これによる追加吸光が生じ、光の貫通度は低減され得る。りんごジュースに添加した0.1又は0.5%のアスコルビン酸を平坦な0.2mm深さのフロー型キュベットに入れ、ハノビア・バイオステリトロン・ランプに曝すと、微生物に対する滞留時間依存的な不活性化率は、添加物なしのジュースに比べ、約50%及び約20%減少した(Mackら、1959年)。
【0058】
本発明の好適な実施形態において、化学的線量測定を用いて実効線量を測定する。線量測定液は反応剤から調合された溶液で、測定対象の波長で十分な光化学反応を受け、これにより測定可能な光反応物を生成する。光生成物については、溶液の吸収係数に関連して薄い層の中で十分な感度を持って測定することができ、この層には入射する照射のごく一部しか吸収されず、層の面積に照射する光エネルギーは実質上は無吸収で通過するので、これにより、フルエンスの算定が可能となる。好適な実施形態が、実施例1〜6、10〜13、及び15〜17に提示されている。
【0059】
いくつかの化学アクチノメーターが一般的に知られており本発明に十分使える。例えば、UV−C照射に適した線量測定液を、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びヨウ化物のアンモニウム塩、及び水溶性ウリジンリン酸からなる群より選択することができる。
【0060】
本発明の特質は、微生物の光不活性化のため使用する装置の検証方法を、照射波長において所定の吸光度を持つ、もしくは、望ましくは照射波長において微生物不活性化のため光照射される生物学的流体の吸光度、または吸光度および粘度の両方に適合させた所定の吸光度および所定の粘度を持つ線量測定液に用いることができることである。
【0061】
特に、高濃度すなわち高度に吸収性のある生物学的流体に適したいくつかのUV−C感受性の化学的線量計を本発明に使用することができる。例えば、以下に限らないが、望ましくは、≧6.96mMのKI及び≧1.16mMのKIO3を含有する希釈ヨウ化物カリウム−ヨウ素酸塩カリウムのアクチノメーターは、以下に限らないが、例えば、a253.7が少なくとも約2/cm、高い量子収量、及び三ヨウ化物の高い比吸収係数を持つような生物学的流体の吸光度に対応する高い吸光度を有する。この線量測定液については、対応するヨウ化物カリウム及びヨウ素酸塩カリウムの濃度によって、以下に限らないが、望ましくは、吸収係数a253.7が少なくとも2/cmの生物学的流体の吸収係数に適合するように調合でき、薄層のキュベット中で、以下に限らないが、約0.1から約1mmの光路長、望ましくは約0.1から約0.7mmの光路長、さらに望ましくは約0.1から約0.5mmの光路長、さらに望ましくは約0.1から約0.3mmの光路長、さらに望ましくは約0.3から約1mmの光路長、さらに望ましくは約0.5から約1mmの光路長、さらに望ましくは、約0.7から約1mmの光路長で使用可能なように調合することができる。ポリビニルピロリドン(PVP)は、三ヨウ化物に対する安定化効果があることで知られているが、これを添加することによって、ヨウ化物/ヨウ素酸塩溶液の感度が向上し、タンパク質溶液の粘度と非常によく合致し得る。
【0062】
特に、低濃度、すなわち低吸収性の生物学的流体に適した別の好適なUV−C感受性の化学線量計は、安息香酸ナトリウムアクチノメーターで、これは薄層の蛍光セル中の光生成物の蛍光光度測定を可能にし、これを希釈して、以下に限らないが、望ましくは少なくとも約1×10mmの光路長を持つ薄層の蛍光キュベットにおいて、以下に限らないが、例えば、約0.1/cmから約2/cm、望ましくは約0.4/cmから約2/cm、さらに望ましくは約0.8/cmから約2/cm、望ましくは約1.2/cmから約2/cm、さらに望ましくは約1.6/cmから約2/cmの吸収係数a253.7に合わせることができる。
【0063】
特に、非常に低い濃度、すなわちほとんど非低吸収性の生物学的流体に適したさらに別の好適なUV−C感受性の化学線量計は、ペルオキソ二硫酸カリウム/tert−ブタノールアクチノメーターで、これも希釈して、以下に限らないが、望ましくは約0.5/cmまでの吸収係数a253.7に合わせることができる。線量測定液は、以下に限らないが、0.5から1cm、望ましくは約0.7から約1cmの路長を有するキュベット中で望ましくは用いられる。光生成物である水素イオンを、適当な、望ましくは小型化したpH電極を浸漬させpHメーターを使って測定することができる。
【0064】
本発明の好適な実施形態において、線量測定液には、アルカリ金属ヨウ化物、アルカリ土類金属ヨウ化物、アンモニウムヨウ化物、水溶性ウリジンリン酸、安息香酸アルカリ金属塩、安息香酸アルカリ土類金属塩、安息香酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸アルカリ金属塩、ペルオキソ二硫酸アルカリ土類金属塩、ペルオキソ二硫酸アンモニウム塩、tert−ブタノール、ポリビニルピロリドン、ベントナイト、マイカ、モンモリロナイト、ノントロナイト、ヘクトライト、カオリナイト、ハロイサイト、ジッカイト、粘土鉱物、チョーク、シリカ、ヒュームドシリカ、重晶石、石こう、タルカム、マグネシア、アルミナ、オキシ塩化ビスマス、酸化亜鉛、アルカリ土類硫酸塩、アルカリ土類炭酸塩、アルカリ土類リン酸塩、アルカリ土類ヒドロキシリン酸塩、アルカリ土類ハロゲンリン酸塩、不溶性ケイ酸塩、不溶性アルミノケイ酸塩、不溶性炭酸塩、不溶性硫酸塩、不溶性リン酸塩、不溶性ヒドロキシルリン酸塩、リン酸ハロゲン、ペルフルオロ炭化水素又はその誘導体、ペルフルオロカルボン酸又はその塩、及びポリビニルポリピロリドンなどの因子又は因子の組み合わせを含めることができる。
【0065】
望ましくは、線量測定液には、希釈ヨウ化カリウム−カリウムヨウ素酸塩アクチノメーター、希釈ヨウ化カリウム−カリウムヨウ素酸塩−ポリビニルピロリドンアクチノメーターを含めることができ、望ましくは、これら線量測定液は、使用される光不活性化波長における対象生物学的流体の吸光度、又は該生物学的流体の吸光度と粘度とに合わせられている。
【0066】
対象生物学的流体の濁度は全体の吸光度に寄与している可能性があり、これに合わせる必要がある場合、以下に限らないが、ベントナイト、モンモリロナイト、マイカ、モンモリロナイト、ノントロナイト、ヘクトライト、カオリナイト、ハロイサイト、ジッカイト、他の任意の妥当な粘土鉱物、シリカ、ヒュームドシリカ、チョーク、石こう、重晶石のような鉱物、又は、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)のようなポリマーを含む適当な濁度原因添加物を、希釈し、吸光度及び/又は粘度を適合させたヨウ化カリウム−カリウムヨウ素酸塩−ポリビニルピロリドンアクチノメーター、又は他の任意の妥当なアクチノメーターに加えればよい。望ましくは、線量測定液には、希釈安息香酸ナトリウムアクチノメーターを含めることができる。さらに望ましくは、線量測定液には、希釈し、吸光度を適合させたペルオキソ二硫酸カリウム/tert−ブタノールアクチノメーターをも含めることができる。
【0067】
線量測定薬剤は、かなり過剰に存在する小さな溶解分子で、容易に照射域に拡散することになる。したがって、線量測定薬剤は、入射光の光子によって光化学反応生成物に変換される。基本的に一定の輝度で作動しているランプによって、同一数の光子が反応器の処理品を照射し、基本的には同一の実効線量(mJ/cm2)を所定の時間間隔で適用し、特定の化学的線量率((mJ/cm2)/分)をもたらすことになる。ランプの輝度を考慮に入れて、照射された全体のランプ線量を制御することができる。バクテリオファージ又はウイルスを含んだタンパク質溶液に対する線量率は、望ましくは、所定の吸光度及び粘度に対し基本的には同一となろう。
【0068】
生物サンプル溶液の常用対数吸収係数については、分光光度計の測定範囲内に吸光度を保つのに十分な薄さのキュベットに入れて分光光度計で測定することができる。吸収係数は、結果を光路長(通常、センチメーター)で除算して計算し、自然対数吸収係数は常用対数吸収係数に10の自然対数を乗じて計算する。
【0069】
粘度については、技術的に一般に知られているように、毛細管粘度計の流れ時間を測定しその結果にその毛細管粘度計の定数を乗じて算定することができる。
【0070】
吸光度を適合させた希釈アクチノメーター液とともに使う薄層キュベットの光路長については、望ましくは、小さくして入射光の小部分だけがキュベット内で吸収されるようにすることができる。
【0071】
このような薄層中の部分的吸収用の希釈光量測定液を使用して較正することによって、望ましくは、可能な最大の精度を持ってフルエンスを適用することができる。例えば、253.7nmにおいて常用吸収係数、a253.7=15/cmを持つ溶液の0.02cmのキュベット中での吸収率が27.3%、又は、a253.7=2/cmを持つ溶液の0.1cmのキュベット中での吸収率が19.9%であるとする。このことは、光路長を通った実効線量は、前者に対しては入射照度エネルギーの72.7%であり、後者に対しては80.1%であることを意味している(Morowitz、1950年)。従って、第一サンプルに対するモロウィッツ補正係数は72.7%であり、第二に対しては80.1%である。このように自己吸収誤差は簡単に計算して補正することができる。正確な較正のため、一般に50%より低いモロウィッツ補正係数は使わないことが望ましく、このことは、キュベットの光路長は、光強度が初期値の25%減ずる距離を越えないようにすべきということである。
【0072】
線量測定較正プロットを設定するため、既知の照度を持つ光源を、例えば、高濃度で十分な吸収性のあるアクチノメーター液を使って、電子放射測定、分光放射測定、又は化学光量測定によって測定することができる。光源からの入射照度を設定した後、希釈して吸光度を適合させた、又は吸光度と粘度とを適合させた線量測定液を含むキュベットを、所定の配置及び照度で所定時間照射して所定の表面線量を適用し、得られる光量測定信号を測定し光線量と対比してプロットする。
【0073】
この校正を、例えば、ランプと、キュベットを所定の曝露時間曝すための光路内のシャッターと、光路の端にランプと平行して装着されたキュベットとを使って行うことができる。このようなシャッターを、例えば、写真カメラのフィルム面のシャッターのように使用し、シャッターメカニズムを、機械的時計仕掛け、又は望ましくは電子発振器によって正確に制御する。発振器駆動のシャッター及び固定されたキュベットの位置により、再現性があり精度あるキュベットの曝露を確実にする。これを、市販されている35mm又は中版フィルム単眼レンズ・レフレックス又は距離計カメラ本体に、ランプ固定具をカメラのレンズ・マウントに取り付け、カメラの後部まで伸びた開口部にキュベットを取り付け、カメラを改造して実現できる。望ましくは、カメラ後部の開口部自体がキュベットの全表面を照射できるような寸法である必要があり、開口部の縁はコリメータの一部として機能する。ランプ輝度及び光量測定量子収量の安定性を向上させるため、挿入したランプ及びキュベットを、ファン、循環液、又はペルチェ素子のようなデバイスを使って温度調節することができる。
【0074】
校正の対象装置には、望ましくは、光源と、コリメータ開口の中に光を照射するための光出口開口部と、シャッターと、キュベット又は線量測定液を収納した光学セルに光を照射するための光入口開口部を備え温度調節されたハウジングに装着された、キュベット・スロットとを含めることができよう。望ましくは、放射感知センサの取り付け部には温度調節されたマウントを具えることができ、光源からの光は、シャッターを通ってキュベット上、及び開口部を通ってセンサ入り口ウィンドウの双方へ同時に照射され、較正プロセスによって光源をモニタリングし、あるいは同時に曝露されたキュベット又は光学セルの中に収納されている、最新技術によるアクチノメーター液と対比することによってこういったセンサの時間定数特性を点検する。非常に望ましくは、精度のあるタイマーでシャッターを駆動し、キュベット又は光学セルに対する正確で再現性のある曝露時間を実現する。図12に好適な較正装置を示す。望ましくはハウジング(U)に装着されたチューブ型ランプ(T)は、望ましくは温度調節されるか又は電流安定化され、非常に望ましくは温度調節され且つ電流安定化されており、較正プロセスを通して基本的には一定の光照射を実現する。図12に示すように、望ましくは温度調節はランプを通って流れる光透過性の液体によって行われる。ランプからの矢印で示されている光は、開口部(V)を通り、時間制御で開かれるシャッター(W)を通過して、キュベットの上に照射され、該キュベットはホルダ内の最大スペースより薄い場合、距離調整器と一緒に、望ましくは温度調節されているキュベットホルダ(X)挿入されている。キュベットはアクチノメーター液又はモデル線量測定液を収納しており、シャッターの開いている間、精度よく正確に曝露を受ける。任意の開口部(Y)は、開口部(V)と違った場所に、だが望ましくは、ランプから光が両方の開口部(V及びY)に空間的に同じように照射するような場所に設置され、電子センサ(Z)を収容しており、該センサは、以下に限らないが、望ましくは、反応器の放射測定に使われるセンサの1つであって、望ましくは、キュベット・ホルダ(X)による光量測定と、センサ(Z)による放射測定とによって同時に測定された輝度の比率に基づいてセンサを再較正する的確な方法を備えている。また、センサ(Z)を使って、較正曝露の間ランプ輝度をモニタリング、記録し、この較正曝露の間にランプ輝度が変化した場合には、その後の輝度補正を行うことができる。また、このような較正用装置の使用が実施例17に記載されており、これを、ランプから放射された光をアクチノメーター・キュベットと放射感知センサとが同時に測定できるように、放射感知センサのマウントをランプ装着治具に取付けることによって、放射感知センサを点検し再較正するために用いることもできる。
【0075】
生物学的流体の中に存在する微生物を不活性化するための、光の実効線量を算定する方法の好適な実施形態によれば、設定フルエンスを、フロー型反応器中の生物学的流体の流速に応じた設定照度及び/又は設定時間を変更することによって変えることができる。また、放射される光の波長又は波長のスペクトルを変更することによっても設定フルエンスを変えることができる。というのは、所与の光放射強度における、照射ベースの不活性化に対する微生物の感受性は、光の波長又は波長のスペクトルの関数だからでもある。
【0076】
より高い流速を達成するため、前記薄層照射装置のメーカーWedeco Visa AG社は、いくつかの単独照射装置を直列につなぐか、あるいはこれらを並列構成にして使うことによって流通能力を増加させることを推奨している。線量については、より低い流速を用いてより長い滞留時間にするか、又は基本的に一定流速で照射装置の数を増やしを直列につなぐことによって増加させることができる。らせん状流れガイドを環状ギャップに挿入して、流量特性を改善することができる(Harrington及びHills、1968年)。バッフルによる受動的混合が、米国特許第6,586,172号に記載された血液処理装置の中に使われており、これではUVランプからの熱の除去のため補助エアフロー冷却が使われている。
【0077】
この点で、より高い混合度によるさらに効率的な方法は、滞留時間の分布幅を狭め、不活性化率を増大することであろう。このようなより高い混合度は、以下に限らないが、例えば、バッフルによる受動的効果、又は動的なテイラー渦又はディーン渦の生成のように、縦方向の流れに対し横断方向の混合を負荷することによって達成できる。
【0078】
実効光線量を測定するために、例えば、処理対象品の容積と等しい容積の線量測定液を、照射装置中で照射し、所定の時間に少量のサンプルを抜き取って薄層キュベットに満たし、光生成反応生成物を測定する。使用した照射線量測定液から得られた信号を記録し、対応する較正プロットと対比する。次いで、較正プロットから線量を読み取る。これに換えて、実効光線量を測定する少なくとも1つの手段を反応器中に組み込む。フロー型反応器の場合、このような手段を、照射不活性化ゾーンの前後に取り付けるとよい。
【0079】
吸収度と粘度とを適合させた、又は吸収度と濁度と粘度とを適合させた化学的線量測定によるUV−C照射装置の較正を、例えば、らせんコイル状のUV透過性のチューブを照射低圧Hg蒸気ランプの周りに巻きつけたような、非常に単純なUV流通照射装置に対して実験的に実施することができる。
【0080】
アクチノメーター液を使った化学的な線量測定によって、薄層キュベットに満たされたサンプル量に適用された光線量の平均(フルエンス)を測定することができる。光化学反応物質は、通常、過剰に存在し、光化学反応の生成物の一切の局所的増加はすぐに混合され希釈され、反応生成物の濃度は、適用された光子の数に対して理想的にリニアな比率で増加する。
【0081】
一般的には、同一数の光子は、容積又は力価あたり残存する活性な微生物の同一割合を不活性化することになり、該力価の減少は、対数単位でいずれもリニアである。さらに、光強度が局所的に過剰であっても活性な微生物の数をゼロ未満にすることはできないが、局所的に不十分な光線量は、サンプル中に多数の活性な残存微生物の存在を残すことになる。
【0082】
望ましくは、本方法は、照射中、1つ以上の光源の輝度をモニタリングして照射線量を算定する工程をさらに含む。さらに望ましくは、光はUVの範囲、望ましくはUV−Cの範囲内である。光源の放射測定モニタリングは、フロー型装置に対する従来からの措置である。ランプ出力を連続的にモニタリングし信号を表示又は記録することができる。有利には、処理対象流体によって光源と放射感知センサとの間の光路が不透明化しないようにして、流体が光の強度を減衰しないようにする。設計上の制限によりこのような減衰が避けられない場合、望ましくは、流体を照射する前と後とに、無減衰のランプ輝度を測定し、平均輝度が計算できるようにする必要がある。
【0083】
線量測定較正プロットを設定するために、化学線量測定液を所定の深さの薄膜に広げ、入射光のごく一部だけしか吸収されないようにする。膜はある量の光に曝露され、化学種の変換により、相当な計量可能な変化を受け、光吸収又は所定波長の蛍光放射、又はpH増大を引き起こす。光量信号は測定され光線量に対比してプロットされる。
【0084】
次いで、対応する溶液を、混合されたバッチ液量中で照射することができ、液を抜き取り光反応生成物を測定する。照射された線量測定液から得られた信号は記録され、対応する較正プロットと対比される。これにより線量測定較正プロットにおける信号増加に対応する実効線量が得られる。次いで線量増加を照射時間単位で除して線量率を計算する。実効線量は前記で定義した線量である。
【0085】
線量測定液は、標的たんぱく質溶液をシミュレートしている、すなわち、線量測定液は、所定の波長でタンパク質と同一の吸光度、また望ましくは同一の粘度を有する。光で形成された、例えば三ヨウ化物のような化学種の変換物の測定を実効UV線量と相関づけることができる。化学線量測定により、異なった吸光度を持つタンパク質溶液が、同じ実効標的UV線量を受けることを確実にする。詳細については実施例1から5及び6を参照のこと。
【0086】
生物学的流体の中に存在する微生物を不活性化するための、光の実効線量を算定する方法の好適な実施形態によれば、該方法は、活性微生物を照射する前又は処理中、もしくは前及び処理中に活性微生物をスパイクされた生物学的流体に対し照射の前と後とに、又は、前と処理中と後とに活性のある微生物の数を決定(titration)することによって線量分布を算定する工程をさらに含む。別の実施形態において、生物学的な実効光線量(フルエンス)を生物線量測定で算定、すなわち微生物の光不活性化度によって算定する。生物線量測定は、バッチ式にもフロー型照射装置でも実施することができ、従来から、滞留時間の分布(Qialls及びJohnson、1983年)及び光線量の分布(Cabaj及びSommer、2000年)の測定に適した方法として使われてきた。好適な実施形態が実施例3から6、及び12から17に記載されている。
【0087】
好適な実施形態において、生物線量測定を化学線量測定と組み合わせて混合効率を算定することができる。(実施例3から6、及び12から17参照)。
【0088】
望ましくは、本発明による生物学的流体は、分類学的モネラ界の種、モネラ界の種の胞子、菌界の非病原性又は微生物種、菌界の種の胞子、古細菌、原核生物、望ましくはバクテリア、真核生物、ウィルスから選択された微生物を含有し得、こういった又は類似の微生物が殺菌され又は活性を減ずるのを確実にすることができ、バクテリオファージも含めることができる。
【0089】
望ましくは、ウイルス類は、パルボイルス科ウイルス、微小マウスウイルス(MMV)、イヌパルボウイルス(CPV)、ウシパルボウイルス(BPV)、ブタパルボウイルス(PPV)、ネコパルボウイルス(FPV)、サーコウイルス科ウイルス、サーシノウイルス科ウイルス、ピコルナウイルス科ウイルス、望ましくはA型肝炎ウイルス(HAV)、脳心筋炎ウイルス(EMC)、アネロウイルス科ウイルス、エンテロウイルス科RNAウイルス、ミクロウイルス科DNAバクテリオファージ、及びレビウイルス科RNAバクテリオファージから選択される。
【0090】
本発明による光不活性化処理にかけられる生物学的流体中の、タンパク質及び他の重要な生物分子のような対象成分が保存されることを確実にするために、タンパク質又は例えばビタミンの生物活性を、実施例4に記載したエラスターゼ阻害分析、又は実施例13及び16に記載したアミド分解性FX分析のような当該分野で一般に知られた、そのような検体についての機能分析を使って測定することができる。これらの活性分析検体を望ましくは生物線量測定液に含めることができる。望ましくは、生物学的流体の吸光度、粘度及び/又は濁度を、添加活性分析検体を含む生物線量測定液が、活性分析検体を該生物学的流体に加えた後で決定された生物学的流体の吸光度、粘度及び/又は濁度と適合するように調整する。このような分析によって、汚染微生物を効果的に不活性化しながら、生物学的流体及び/又はその対象成分が望ましい生物活性を保持することを確実にする。
【0091】
バクテリオファージ、ウィルス、及びバクテリアのような微生物の活性は、理論的には指数的に減衰する。これは所与の線量は、活性微生物を同一の比率で不活性化する、例えば、1mJ/cm2が初期の力価を1/10に減ずるならば、2mJ/cm2では1/100に、3mJ/cm2では1/1000に、といった具合である。もしすべての微生物を、一回だけ照射ゾーンを移動させ等しく曝露したとするならば、すべての微生物が不活性化打撃を受けることになろう。しかしながら、一本鎖のDNAバクテリオファージのような最小の微生物でさえ、タンパク質と比較すると大きな粒子(約25nm)であり、対流及びタンパク質溶液の流れで移動する。反応器中で、所定の時間間隔の間に一部の微生物は照射ゾーンに数回移送され、他は一回だけ、別のものはまったく移送されない。そこで、化学的に測定された線量率に基づく不活性化率は混合により増大する。これにより、微生物の不活性化が速く進むほど、必要な照射時間は短くなり必要な実効線量は小さくなり、従って、望ましくはタンパク質又は他の生物活性は高い混合効率で保持されることになる。
【0092】
活性微生物への照射の前又は処理中に、又は前と処理中とにスパイクされた生物学的流体の微生物力価による生物線量測定不活性化は、UV照射の前、処理中及び/又は後に測定される。これを、例えば、活性バクテリアの残存コロニー数、又はまだ生存しているバクテリオファージの数に対応する溶解バクテリアのプラークを数えることで実施することができる。次いで、コロニー又はプラーク形成単位(それぞれcfu及びpfu)としての活性微生物の力価は、シャーレの上で決定した希釈サンプルのmL量あたりのlog10((cfu又はpfu)×10希釈度)として計算される。
【0093】
生物線量測定によって、異なったタンパク質溶液に対し、ファージ不活性化率(log[不活性化ファージ数]/実効UV線量)が近似しているか基本的に同様であれば、これらが基本的には同じ混合効率で同じ実効線量で照射されたとの実証が可能になる。生物線量測定は、各種サンプルが、微生物又はその宿主に対しいかなる毒性又は阻害性物質をも含有しない場合、それらサンプルの検証に特に適している。したがって、生物線量測定は、ほとんどすべての生物学的流体に用いることができる。
【0094】
本発明の別の好適な実施形態において、前記に定義したように微生物を使って生物線量測定を行うことができる。
【0095】
例えば、薄いフィルム又は横断方向に混合するチューブ型反応器の中で生物学的流体を照射することができる。光線量が直接流体の表面を照射しない場合、流体を含む導管の光照射不活性化ゾーンの材料は、基本的には、光不活性化波長に対して透過性がなければならない。約350nmより小さな波長のUV光に対してはホウケイ酸ガラス、約300nmより小さな波長のUV光に対しては、鉄分を含まないホウケイ酸ガラス、リン酸ガラス、高珪酸ガラス、又は溶融石英ガラスのような特殊ガラスが、十分な透過性を有しており、一部の特殊プラスチック、望ましくはフルオロポリマーなども特に選好されている。このように、多様な微生物光不活性化反応器を設計していろいろな不透明さの流体をいろいろな流速で処理することができる。少なくとも1つの添加物を流体に含めて、該流体中の対象生物活性又は物質の損傷又は減損を減らすことができる。
【0096】
本発明によって実効線量を算定する方法の好適な実施形態において、該方法を、少なくとも1つの他の殺菌又は微生物不活性化法と組み合わせて実施することができる。以下に限らないが、加熱及び非加熱による方法、又は化学保存剤の添加など、さまざまな不活性化、殺菌、消毒、又は保存の方法が知られている。いろいろな種類の微生物が、いろいろな処理に対しいろいろな感受性を持っていることがある。従って、多くの場合、存在するすべての異なるウィルスの不活性化を確実にするために、各種の処理を組み合わせることが必要になる。本発明の照射処理の具体的な利点は、他の一般に利用可能な処理方法に対して抵抗性のある特定の種類のウィルスでも照射処理に対しては感受性があるということである。
【0097】
別の実施形態において、本発明による実効線量算定方法は、様々な他の知られた生物学的流体の殺菌及びウィルスの不活性化法と組み合わせて使われる。当該分野ではさまざまな方法がよく知られており、これには、従来からの湿熱処理、又は、一般にアルブミンに用いられるような、安定剤入り又はなしで、所定時間の間昇温状態で流体を保温するなどの低温殺菌が含まれる。違った方法には、第VIII因子のような成分に用いられる、凍結乾燥した流体成分を所定時間の間昇温状態で保温するなどの乾燥熱処理が含まれる。別の方法には、限外ろ過及び洗浄溶剤処理が含まれる。この方法では、流体は、1%トリ(n−ブチル)リン酸(TNBT)及び1%Triton(登録商標)X−100又はTween(登録商標)80のような洗浄溶剤系と完全に混合され、所定時間の間一緒にインキュベートされた後、洗浄溶剤系は疎水性クロマトグラフィーによって便利に除去される。洗浄溶剤処理の詳細は、世界公開第94/28120号;及び米国特許番号第4,946,648号、;同第4,481,189号;及び同第4,540,573号に記載されている。
【0098】
本発明によって実効線量を算定する方法の別の実施形態において、本方法は洗浄溶剤処理と組み合わせて用いられる。溶剤洗浄処理の1つの特質は、処理される流体の吸光度の大きな増大をもたらすことである。従って、相対的に高い吸光度の流体で効果的なウィルス不活性化を達成する本発明の能力は特に利点となる。
【0099】
本発明によって実効線量を算定する方法の別の実施形態において、生物学的流体は、該流体の生物活性の損傷又は減損を低減するため、少なくとも1つの添加物を含む。細胞を損傷から保護するためのビタミンE、血漿成分の機能活性の減損を防止するアスコルビン酸、及び、ヒスチジン、ルチン、クエルセチンおよび他のフラボノイドなどのフリーラジカル及び活性型酸素の抑制剤、及び、血液成分の機能活性の減損を低減するための、マンニトールを含む糖アルコール及びアミノ酸のような他の安定剤といった、この種類のさまざまな保護添加物が知られている。一重項酸素の生成には溶解酸素が必要なので、例えば、照射前に排気し、照射中の空気を不活性ガス例えば窒素で置き換えるなどして、溶液中に溶けた酸素を除去することにより、対象物質に有益な影響を及ぼすことができる。保護添加物が照射対象の微生物の感受性に影響を与える場合、微生物を不活性化するための実行線量に対する保護添加物の影響を取り入れるため、線量測定は例えば実施例16に記載したような調整をすることができる。
【0100】
本発明の方法によれば、実効線量とは、基本的には、生物学的流体中に存在する微生物のすべて、望ましくは少なくとも99.9%、さらに望ましくは99.99%、まださらに望ましくは99.999%を不活性化する線量である。さらにもっと望ましくは、該方法がフロー型反応器で作動することである。好適な実施形態が実施例2,5,6,11,15及び17に提示されている。
【0101】
本発明の別の様態によれば、不透明な生物学的流体の中に存在する微生物を不活性化するための、1つ以上の光源からの単色又は多色光の実効線量を算定する方法を提供し、該方法は、使用される光不活性化波長における生物学的流体の濁度に、又は生物学的流体の濁度と吸光度とに、又は生物学的流体の濁度と粘度とに、又は生物学的流体の濁度と吸光度と粘度とに、又は生物学的流体の吸光度に、又は生物学的流体の粘度と吸光度とに適合させた線量測定液に対し、i)十分に薄い光路長の層中の線量測定液を照射し、所定の規定照度で所定時間適用される入射光のごく一部を吸収させ、測定可能な程度の物理的又は化学的変化を発生させる所定フルエンス(光線量)を適用する工程と、ii)光照射の途中又は後に測定された、光照射反応器中の線量測定液の変化の程度に対応する線量を読み取る工程とによる光線量較正に基づいて、単色又は多色光の効果を測定する工程を包含し、工程i)は工程ii)の前に、又はその逆に実施される。
【0102】
好適な実施形態において、生物学的流体は、前記に定義したような流体である。
【0103】
本発明の目的の範囲内において、不透明な生物学的流体とは、望ましくは、見かけは澄んで又はかすんでいるが、光路すなわち光ビームに沿って散乱する光を表すコロイド状の生物学的流体に関する。望ましくは、コロイド状生物学的流体は、約0.1nmから約100nmの間の、望ましくは約1nmから約100nmの間の、もっと望ましくは約10nmから約50nmの間のサイズのコロイド状に分散された粒子を含む。まださらに望ましくは、光散乱は、散乱光が病原体光不活性化に寄与できるように、コロイド生物学的流体に含有されコロイド状に分散する高分子の分子吸収最大近くまで間で高められる。タンパク質溶液のような好適なコロイド状生物学的流体については、非吸収波長における濁度の測定値から吸収波長への外挿によって、全体吸光度のうち濁度の寄与による部分を外挿することができる。次いで、分光光度で測定した全吸光度から外挿した濁度を差し引いて分子吸光度を計算する必要がある。コロイド状生物学的流体中のこういったコロイド分散の散乱特性をシミュレートするため、沈降によって、粘土鉱物のような前記下混濁要因となる物質を分画することができ、所望の粒子部位の画分を使って線量測定モデル液の濁度を適合させることができよう。
【0104】
不透明生物学的流体が、少なくとも約100nmの粒子サイズを持つ懸濁粒子を含む生物学的流体であればまださらに望ましく、これはこの分野では一般に知られており、前記で説明したものである。りんご汁又はシトラス又は野菜ジュースなどのこういった生物学的流体の濁度は、例えば、ろ過又は遠心分離によって懸濁した粒子を除去する前後の吸光度測定によって算定することができる。懸濁粒子が一切ない清浄化された溶液の吸光度は、分子発色団によるものである。混濁した流体と清浄化された流体との間の測定された吸光度の差が濁りである。
【0105】
また、不透明生物学的流体が、水中脂肪型エマルジョンであるミルクのような液体エマルジョンであるのも望ましく、これは、濁度が全体の光減衰にもっとも寄与するような形で光を散乱させる。前記のような試薬を含むUV線量測定モデル・エマルジョンとしては、化学的に不活性でUV透過性のある乳化剤及び乳化液体、望ましくはペルフルオロカルボン酸塩及びペルフルオロ炭化水素又はこれらの派生物が必要となろう。
【0106】
線量測定液を、不透明な生物学的流体の吸光度及び濁度に合わせ調整するため、最初の工程として光不活性化使用波長における不透明生物学的流体の吸光度を測定する(混濁による吸光度)。次いで、望ましくはろ過によって生物学的流体の混濁成分を除去した後、再度、光不活性化波長における該生物学的流体の吸光度を測定する(非混濁吸光度)。光不活性化波長において、該非混濁吸収値に適合させた吸収値を持つ線量測定液を調合する。望ましくは、該線量測定液の粘度値も生物学的流体の粘度に適合させ、流体中の混濁成分は除去されている。このような線量測定液の調合の詳細については前記している。続いて、前に詳記した混濁要因になる物質を加え、線量測定液の吸光度値が、光不活性化波長において対象混濁吸光度に適合するようにする。このような線量測定液の較正及び本発明の好適な実施形態のさらなる詳細を実施例4及び10から得ることができる。
【0107】
不透明な生物学的流体の中に存在する微生物を不活性化するための光の実効線量を算定する方法の好適な実施形態によれば、入射放射照度の約100%、望ましくは約80%、望ましくは約60%、望ましくは約50%、望ましくは約30%、又はこれ以下が光路長に沿って吸収される。
【0108】
別の好適な実施形態によれば、設定フルエンスについては、前記のように変更することができる。望ましくは、本方法は、照射中1つ以上の光源の輝度をモニタリングし照射線量を算定する工程をさらに含む。さらに望ましくは、光はUVの範囲である。このようなモニタリングについても前記で詳細を説明した。
【0109】
望ましくは、不透明な生物学的流体の中に存在する微生物を不活性化するための、光の実効線量を算定する方法は、前に詳記したように、照射の前又は処理中、もしくは前と処理中とに生存能力のある微生物をスパイクされた生物学的流体に対する照射の前及び後、又は、前、処理中及び後に、生存能力のある微生物の数の滴定によって線量分布を測定する工程をさらに含む。別の実施形態において、生物学的な実効光線量(フルエンス)は、生物線量測定、望ましくは、前に詳細を記載したように、化学線量測定と生物線量測定との組み合わせで算定される。望ましくは、本方法は、前に詳記したように、照射の間1つ以上の光源の輝度をモニタリングし、照射線量を算定する工程をさらに含む。さらに望ましくは、光はUV範囲、さらになお望ましくはUV−Cの範囲である。
【0110】
望ましくは、線量測定液は、前記で詳細を説明した溶液である。
【0111】
さらになお望ましくは、線量測定液には、希釈ヨウ化カリウム−ヨウ素酸カリウムアクチノメーター、又は希釈ヨウ化カリウム−ヨウ素酸カリウム/ポリビニルピロリドンアクチノメーター、又は希釈安息香酸ナトリウムアクチノメーター、又は希釈ペルオキソ二硫酸カリウム/tert−ブタノールアクチノメーターが含まれる。
【0112】
線量測定液が、前に記載した混濁要因物質を含有していればさらに望ましい。前記及び実施例4と10とで詳細を説明しているように、線量測定液は、望ましくは、光不活性化波長において、生物学的流体の吸光度に、又は吸光度と濁度とに、又は吸光度と粘度と濁度とに調整される。
【0113】
また、本発明の方法によって使用可能な微生物についても前に説明した。
【0114】
望ましくは、不透明な生物学的流体の中に存在する微生物を不活性化するための光の実効線量を算定する方法を、先に説明した少なくとも1つの他の殺菌又は微生物不活性化方法と組み合わせて実施することができる。さらに望ましくは、前記のように、生物学的流体は、該流体の生物活性の損傷及び減損を低減するための少なくとも1つの添加物を含む。さらになお望ましくは、前に示したように、該方法では溶媒界面活性剤処理が行われる。
【0115】
本発明の方法による実効線量とは、前記で定義した線量である。
【0116】
まださらに望ましいのは、本方法がフロー型反応器、望ましくは1つ以上の光源からの単色又は多色光の実効線量を生物学的流体に照射する工程を包含し、前記及び実施例3,5,16及び17に詳細を記した方法で実効線量が算定されることである。
【0117】
さらに、本発明の別の様態において、不透明な生物学的流体中の微生物の不活性化の方法を提供し、該方法は、1つ以上の光源からの単色又は多色光の実効線量を生物学的流体に照射する工程を包含し、該実効線量は、前に詳記した方法によって算定される。このような方法は、任意の種類の照射反応器において、望ましくは、バッチ式反応器又はフロー型反応器において作動させることができる(実施例3から6、12,13、及び15から17を参照)。
【0118】
望ましくは、実効線量の測定方法及び不活性化の方法には、UV光不活性化フロー型反応器が用いられ、この中では、1つ以上の光源は外包温調装置に包まれ、温度調節され基本的には光透過性の液体が外包温調装置を通って流れ、ランプから熱を除去し、これにより基本的には一定したランプ輝度を確実にする。望ましくは、該フロー型反応器は重力作動の薄膜生成型、乱流能動混合流型、遠心分離作動薄膜生成型、コイル管型、バッフル管型、静止混合管型、乱流静止混合流管型、層流管型、及び乱流流管型の中から選択される。これらすべてについて、後記で詳細を説明する。
【0119】
本発明のさらに別の様態において、UV光不活性化フロー型反応器を提供し、この中では、1つ以上の光源は外包温調装置に包まれ、温度調節され基本的には光透過性の液体が外包温調装置を通って流れ、ランプから熱、望ましくは過剰熱を除去し、これにより基本的には一定したランプ輝度を確実にする。望ましくは、液体の膜は生物学的流体の膜である。さらに望ましくは、1つ以上の光源から放射される光を使って生物学的流体を光不活性化する。望ましくは、外包温調装置は、UV透過性で、UV耐久性があり、基本的には化学的に不活性な石英ガラス、望ましくはホウケイ酸塩ガラス、及び、例えばフッ化ポリマーのような透明で、UV耐久性があり、基本的に化学的に不活性なポリマーを含む又はこれらから成る材料で構成される。
【0120】
本発明で言う過剰熱は、望ましくは、反応器中の、望ましくは反応器中の光路中の生物学的流体を、流体中成分の望ましくない活性化又は生物活性の減損、ついには不加逆の変性を引き起こすような温度に加熱するのに十分な、一切の温度又は赤外線エネルギーということになろう。この温度は流体の組成及び安定剤の存在に依存し得る。ほとんどの酵素及び凝固タンパク質に対して、普通約37℃の生理的至適温度まで生物学的流体を加熱すると望ましくない活性化が生じその後の消耗につながる可能性がある。さらに望ましくは、過剰熱とは不安定になったほとんどの血漿タンパク質が凝集するような反応器中の生物学的流体の温度、すなわち約55から約60℃、又はこれより高い温度をいう。過熱された果物ジュースなどでは異臭が生じることがある。
【0121】
望ましくは、本発明によるフロー型反応器は、前に詳記したように、Dill照射器のような重力作動の薄膜生成型、コイル管型(Bayha、1951年)、チューブ型を含むバッフル他の静止混合素子、乱流静止混合流管型、層状流管型、及び乱流流管型からなる群の中から選択された反応器の型である。
【0122】
本発明によるフロー型反応器は、ランプ輝度の安定化を提供し、照射プロセスを通して基本的には一定の放射力を実現し、技術的に知られた反応器にかかわる放射照度の変動を低減する(実施例7、8、及び13)。光照射を安定化させるさらなる手段には、電圧調整が含まれ(Cortelyouら、1964年)、これを自動温調と組み合わせて使うことができる。但し、本発明のフロー型反応器で説明したように、光源の直接的自動温度調節は、基本的には、一定のランプ輝度、及び熱、望ましくは過剰熱除去の双方を確かにする。望ましくは、純水(蒸留水又は脱イオン水)又は他の任意の光透過性で光不感受性の、毒性のない不燃性液体によって温度調節を行う。また、望ましくは、温調外包中の温調液の温度及び/または流速は、測定された、所望のランプ温度からの温度逸脱に応じて調整するのがよく、これにより、標的温度からの実際のランプ温度の外れの程度に応じてランプ冷却の程度を調節することができる。
【0123】
また、望ましくは、攪拌バッチ反応器、もしくは能動又は静止的混合フロー型反応器のような、光の貫通深さを越える流体の深さの反応器に対しても光源を使用する。
【0124】
本発明のフロー型反応器の好適な実施形態による、低圧金属蒸気ランプを液体で温度調整する2つのモードが、図14a及び14bに紹介されており、それぞれの構造の断面図が示されている。放射ランプの全表面を液体温調することによって、最新技術の金属パイプ熱冷却で可能なように、低温部に金属蒸気が凝結するのを防止して、ランプ壁の均等な温度分布を確実し(Benesi、1956年)、また、エア換気ベースのランプ冷却によるランプへの塵埃の堆積を防止する(米国特許第6,586,172号)。
【0125】
図14aでは、チューブ型ランプ(A)は内側外包チューブ(B)及び外側外包チューブ(C)に囲まれており、これらは望ましくは同心に装着され殺病原体光不活性化光の波長において十分に透過性のある材料で製作されている。ランプ(A)と内側外包チューブ(B)との間は、望ましくは、ガスで満たされるかあるいは真空になったギャップ(D)があり、その幅を選択して、十分に透明な温調液(E)の温度を最適化することができ、液は内側外包チューブ(B)と外側外包チューブ(C)との間のギャップを通って流れ、生物学的流体の過熱を防止する。流体を運ぶギャップ(E)の幅を最適化して、所望の用途の必要性に応じて効率的な熱の除去確実にすることができる。この配置は、米国特許出願公開第2003/0049809号に記載されているようならせんチューブ型フロー型反応器には特に望ましく、これにおいては、望ましくは、同心の管状流導管は、ランプの外包チューブに直接、又は望ましくは非常に近接して取り付けられる。また、この構造は、高輝度Hgアマルガムランプを使用する場合非常に望ましく、該ランプは、通常の低圧Hgランプに比して、閾値のUV−c(253.7nm)表面放射照度を放射する。しかしながら、約80℃の最適なランプ壁温度では、こういった高い、変性を起こす温度から生物学的流体を効果的に保護することが必要となろう。温調液(E)の熱伝達効率を決めるギャップ幅(D)を最適化することによって、このような保護を達成することができる。
【0126】
別の好適な実施形態において、内側外包チューブとエア・ギャップを取り除き、ランプ(A)と外側外包チューブ(C)との間のギャップを流れる温調液(E)によってランプ(A)の直接的温度調節を達成する簡単な構造(図14b)を提供する。この構造は、ランプから照射反応器に十分な温度絶縁距離が取られ、処理対象生物学的流体の過熱が防止されていれば、40℃周辺のランプ壁温度で最大のUV−C(235.7nm)表面照度を放射する低圧Hg蒸気ランプに対して特に望ましい。
【0127】
非常に望ましくは、Dill照射装置及びその派生装置のような重力作動薄膜照射装置、もしくは、らせん状チューブ又はらせん状外包照射装置は、これら反応器の照射に使用される光源が、流動液で温度調節されていれば、基本的には一定の光強度で、対象品を過剰加熱することなくもっと安全で穏やかに作動させよう。さらに望ましくは、光源のこのような流動液による温度調節は、攪拌バッチ反応器、又は能動的又は受動的混合フロー型反応器のような、液の深さが光の貫通深さを越える反応器にも使用される。
【0128】
任意の所与UV線量をmJ/cm2単位で測定することができる。照射線量は、時間経過での総ランプ出力である。しかしながら、この照射線量の一部しか、化学線量測定及びバクテリオファージの不活性化に有効とならない。例えば、30Lのバッチ式反応器は、実効標的線量の約1000倍よりも高い照射ランプ線量を必要とすることがある。前記で示したように、化学線量測定による有効線量算定は照射時間にも適用される。ランプ出力をわずかに変更するような場合には、照射線量で照射時間を代替することができる。これは、モデル線量測定液の照射作動中のランプ輝度を記録することによって算定される。殺ウイルス実効標的線量を算定しておいて、照射時間中の輝度測定値を合算しながら、該実効標的線量に相当するランプの放射標的線量を得る。照射ランプの線量による処理制御によって、ランプ出力の変化を補償し本方法の精度を増加させることができる。
【0129】
本発明の別の態様において、バッチ式反応器中の生物学的流体の中に存在する微生物を効果的に不活性化するための、1つ以上の光源から放射される単色又は多色光の総光線量を制御する方法を提供し、該方法は、
a)生物学的流体の中に存在する微生物を不活性化するための単色又は多色光の実効線量、バッチ式反応器中の微生物を効果的に不活性化するのに必要な照射光線量率、及び照射時間に基づいて、吸収依存性照射源の標的総光線量を算定する工程と、
b)バッチ式反応器中の生物学的流体の中に存在する微生物の不活性化の間の照射光線量率及び照射時間を記録する工程と、
c)工程b)の測定値に基づいて、吸収依存性照射源の総光線量を計算する工程と、
d)工程c)で算定された吸収依存性照射源の総光線量を、工程a)で算定された吸収依存性照射源の標的総光線量と比較する工程と、
e)該吸収依存性照射源の総光線量が該吸収依存性照射源の標的総光線量以上ならば生物学的流体の光曝露を停止する工程とを含む方法である。望ましくは、照射光線量率の変動及び/又は1つ以上の光源の少なくとも1つの中途での電源オフのいかんにかかわらず、吸収依存性照射源の総光線量が吸収依存性照射源の標的総光線量と基本的に等しくなるまで本方法を継続する。さらに望ましくは、少なくとも1つの電子放射計、少なくとも1つのチャート式記録計、及び/又は少なくとも1つの合計カウンターを使って照射光線量率及び照射時間を記録する。
【0130】
本方法の好適な実施形態が実施例7、8、及び15に記載されている。また、望ましくは、本方法は照射の変動を明示する。
【0131】
標的総光線量は、望ましくは次のように算定することができる。まず、異なる吸収係数を持つ各種のモデル線量測定液を使ってバッチ式反応器を検証し、所与の実効線量を得るため必要な実効線量率((mJ/cm2)/分単位)、照射光線量率((mJ/cm2)/分単位)、及び照射時間を算定する。生物学的流体中に存在する微生物を不活性化するための単色又は多色光の実効線量は、前記で詳細を説明したように、望ましくは化学的線量測定によって測定される。次いで、次の項に詳記するように、照射光線量率及び照射時間をモニタリングする。吸収依存性照射源の総光線量は、照射時間を通して増加した放射計の合計信号で計算される。一般に、照射光線量率は化学的線量率より桁違いに高い、というのは、放射計センサは、実質的に、吸収媒体に一切減衰されていないUV光を受光するからである。所与の吸収依存性照射源の標的総光線量に対する生物学的流体中での実効照射時間に、吸収依存性照射源の光線量率を乗じ、照射パラメータとして吸収依存性の照射源標的総光線量を計算する。
【0132】
前記及び実施例7及び8で詳述するように、望ましくは、照射光線量率及び照射時間の記録は、少なくとも1つの電子放射計、少なくとも1つのチャート式記録計、及び/又は少なくとも1つの合計カウンターを使って行われる。ランプ出力(照射光線量率)を連続的にモニターし、シグナルを表示又は記録することができる。有利には、処理対象流体によって光源と放射感知センサとの間の光路が不透明化して流体が光の強度を減衰しないようにする。設計上の制約からこのような減衰が避けられない場合、平均輝度が計算できるように、無減衰のランプ輝度を、望ましくは流体への照射の前と後とに測定する必要がある。電子放射計は、望ましくはドリフト非感受性の光電放射測定センサを含む。このような記録により、照射時間を通しての照射光線量率の測定値に基づいて吸収依存性の照射源総光線量の計算が可能になる。照射が変動し、又は一時的に中断されたとしても、こういった設定により、生物学的流体がさらされた吸収依存性の照射源総光線量の精度ある算定が可能になる。好適な実施形態において、吸収依存性の照射源総光線量を吸収依存性の照射源標的総光線量と対比することによって、生物学的流体が、基本的には、微生物を効果的に不活性化するに足る実効照射線量を受けたことを確実にし、同時に、基本的には、生物学的流体が照射に過度に曝されて影響を受けないことを該方法によって望ましくは確実にするように、照射不活性化を停止できる時点を算定又は予測すらすることが可能になる。この目的で、吸収依存性の照射源総光線量を吸収依存性の照射源標的総光線量と比較する手段を、生物学的流体を照射するため採用した光源の電源を切るスイッチに連結することができる。また、これに換えて、生物学的流体の照射への曝露を停止する他の任意の効果的手段も適切であり、技術的に一般に知られている。
【0133】
望ましくは、照射光線量率の変動及び/又は1つ以上の光源の少なくとも1つの中途での電源オフのいかんにかかわらず、対応する吸収依存性照射源の総光線量が吸収依存性照射源の標的総光線量と基本的に等しくなるまで本方法を継続する。また、このような吸収依存性照射源の標的総光線量を、いろいろ異なった吸光度に対して算定された吸収依存性照射源の標的総光線量の間での補間法によって導き出すこともできる。この方法については実施例6及び7で詳しく説明する。
【0134】
バッチ照射のフロー型照射法に対する利点は、すべての微生物の効果的不活性化が達成されるまで、混合によって、全バッチ量を平均輝度に曝露することである(Brooks、1920年)。
【0135】
バッチ式照射反応器には、光不活性化殺病原体波長において基本的に十分透明な材料で少なくとも部分的に製作され、外部に装着された光源から照射を受ける流体取扱容器、あるいは、液の表面の上方に装着された光源、又は流体に浸漬された光源によって、収容流体量を照射する流体槽が含まれる。全体液量を攪拌、混合してすべての容積部分が光不活性化殺病原体光に、基本的には効果的且つ均一に曝露されることを確実にする。今のところ、適切な処理の検証方法及び制御方法がないため、このような反応器は実用化されていない。
【0136】
望ましくは、外部の光源は、ランプ・センサが処理対象流体の吸収によって妨害されることなく、基本的には無減衰の光強度を受光するようにして、照射容器上に光を照射し、ランプ輝度測定は、望ましくは連続的に行われる。放射測定標的ランプ線量は、タンパク質溶液の吸収に対してリニアな比率で増加する。ランプをより低い輝度で作動すると、放射測定標的ランプ線量に到達するのにより長い照射時間がかかることになる。
【0137】
以下の実施例は、本発明の実施形態を説明するものであるが、いかなる点においても本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0138】
(実施例1:高希釈のヨウ化物/ヨウ素酸塩アクチノメーター液の吸収係数、及びヨウ化物/ヨウ素酸塩アクチノメーター液の線量測定反応)
0.01Mのホウ酸塩緩衝液中に、0.24MのKI及び0.04MのKIO3を含有するpH=9.25の溶液を、0.01Mのホウ酸塩緩衝液で0.2倍、0.4倍、0.6倍及び0.8倍の濃度に希釈し、0.1mmのキュベット中で吸収を測定した。図1に、吸収係数がリニアな比率(a253.7=69/cm×希釈係数)で濃度に依存することを示す。
【0139】
1Lの0.01Mのホウ酸塩緩衝液中に10gのポリビニルピロリドンK90(PVP K90;平均モル質量360000Da)、及び0.1Mのホウ酸塩緩衝液中に50gのPVP K25(平均モル質量29000Da)を含有する溶液を、対応する緩衝液で0.2倍、0.4倍、0.6倍及び0.8倍の濃度に希釈し、希釈物及び緩衝液の粘度を、22.8℃に温度調節したショット0.40mmウベローデ毛細管粘度計で測定した。図2から、粘度は非リニアな比率で濃度とともに上昇することが分かる。
【0140】
常用対数吸収係数がa253.7=2.5/cmで粘度1cp(0.00852MのKI+0.00142MのKIO3+1.543gのPVP K25/L)の線量測定液、4.5/cmで1cp(0.01548MのKI+0.00258MのKIO3+1.543gのPVP K25/L)の液、7.5/cmで1cp(0.02591MのKI+0.00432MのKIO3+1.543gのPVP K25/L)の液、及び10/cmで1.25cp(0.03478MのKI+0.00580MのKIO3+1.916gのPVP K90/L)の液をpH9.25の0.1Mホウ酸塩緩衝液中に調合し、実施例18及び前記で説明した較正装置中の薄層キュベット(2.5/cmに対しては0.5mm、4.5/cm、7.5/cm、及び10/cmに対しては0.2mm)に入れ、漸増的に曝露して、較正プロットを採取した。モロウィッツ補正係数(Morowitz、1950年)を適用して、モデル溶液を含む薄層キュベット中での自己吸収を補正した。図3は2.5/cmモデル液の較正プロットを示し、図4は4.5/cm、7.5/cm、及び10/cmのモデル液の較正プロットを示す。
【0141】
(実施例2:らせん状フロー型反応器における実効照射線量の算定)
23mm径の外包チューブ中に11WのUV−Cランプを具えた水タンクUV殺菌用浮遊浸漬ランプ(Microfloat 1/0、ドイツ、カールスルーエ、Aqua Concept GmbH社)では、上下逆に装着された巻き径7/8インチ(2.22cm)、管径5mm、壁厚さ0.63mmで、長さ17.5cmのフッ化ポリマー・コイル(イタリア、ボレートのSolvay Solex S.p.A社が生産したHyflon MFAから米国ペンシルベニア州プリマス・ミーティングのMarkel Corp社が製造したもの)がランプ周りに固く巻かれ、15cmの照射長は完全にコイルで覆われていた。コイルの中間に装着された、可視光不感知のUVC−TLBセンサを具えたDr Groebel UV−ElektronikRM−12Radiometerを使って、線量測定の開始前および終了の後に脱イオン水でコイルをすすぎ洗いしたときにランプ輝度を点検した。ISM719の3ローラーポンプヘッドと、5mmID×1.5mm壁厚のシリコンラバー・チュービングとを具えたIsmatec BVP蠕動ポンプを使って、モデル溶液を、100,200,300,400,500、及び600mL/分の流速で、該コイル・チューブを通して送流し、0.2mmキュベット中の367nm波の吸収から較正プロットを読み取った。
【0142】
【表1−1】
【0143】
【表1−2】
UV線量の流速の逆数(=分/mL単位の滞留時間)に対する相関はリニアで、相関係数はR2>0.999である。
【0144】
(実施例3:化学線量測定及び生物線量測定に基づく、MFA中でのウイルス不活性化のためのヒト血清アルブミン及びα1抗トリプシンの照射)
ヒト血清アルブミン(20%)を、20mMのリン酸塩で緩衝した0.15MのNaCl(リン酸緩衝塩水、PBS)で希釈し、バクテリオファージPhi−X174溶解物(約1×109プラーク形成単位(PFU/mL)を1:100のスパイク比率(v/v)添加して、吸収係数a253.7=7.5/cm及び粘度1.05cpのタンパク質溶液を得た。該溶液を実施例2で述べたMFAコイルを通してポンプ送流した。実施例2のようにしてランプ輝度を測定した(平均輝度11.40mW/cm2)。0.9mLサンプル溶液のPhi−X174の力価は10倍段階希釈した後、宿主バクテリアの滴定によって測定した。不活性化率については、少なくとも10から200の溶解細胞プラークのあるシャーレから計算した。適用した線量は放射強度(照射量/線量測定量)比によって補正した。
【0145】
【表2】
線量に応じたバクテリオファージの力価から、−0.3369log10pfu/(mJ/cm2)の線量依存的不活性化率を実現することが分かる。
【0146】
血漿からヒトα1抗トリプシン(α1−プロテイナーゼ阻害物質、ARALAST(登録商標))を精製取得して、吸収係数a253.7=4.5/cmまで希釈した。バクテリオファージのスパイク比は1:100(v/v)とした。平均ランプ輝度は11.45mW/cm2であった。適用線量は放射測定強度比から補正計算した(照射量/線量測定量)。抗トリプシンの活性度については、好中球エラスターゼ阻害分析によって算定した。
【0147】
【表3】
フロー型照射処理に化学線量測定及び生物線量測定を用いることによって、標的微生物の完全な不活性化を達成する最低線量の算定が可能なことが分かる。
【0148】
(実施例4:化学線量測定によった、MFAコイル中でのUV低温殺菌りんごジュースの照射)
りんごジュース(a253.7=10.1/cm、η=1.25cp)を購入し低温殺菌した。食品級品質の新鮮なベーカー酵母(サッカロマイセス・セレヴィシェ)を購入し、100mgの新鮮なベーカー酵母を50mLのりんごジュースに植え付け37℃で3時間培養した。低温殺菌したりんごジュースに該酵母懸濁液を(9.5mLを950mLのジュースに)混合し、100,150、及び200mL/分の流速でこれを照射した。平均ランプ輝度は11.46mW/cm2であった。150mL/分に対する線量は実施例2で得られた結果から補間推定した。適用線量は放射測定強度比から補正計算した(実施例2の照射量/線量測定量)。橙黄色血清寒天中の酵母細胞を周辺光で滴定し、残存する伝染力を、50mLの未照射と照射済みりんごジュースを37℃で72時間まで培養する発酵試験で測定した。未照射及び照射済みサンプルの風味を評価した(基準=低温殺菌りんごジュース)。
【0149】
【表4】
これらの結果から、高いUV−C吸収性のあるりんごジュース中の>5log10cfu/mLのベーカー酵母を不活性化するのに必要な、>40mJ/cm2の比較的高い線量については化学線量測定によって正確に評価できることが分かる。
【0150】
(実施例5:テイラー渦生成フロー型反応器の評価に対する線量測定及び生物線量測定の使用)
外部石英チューブ(内径7cm、壁厚2.7mm、高さ13.2cm)、及び全体容積196.1mLの同心回転内部ステンレス鋼シリンダ(直径54.85mm)を具えたテイラー渦反応器を、各々が背部のステンレス鋼反射板とともに石英外包チューブ中に装着され、同心の内部石英窓を持つ同心トロイダル水槽中に浸漬された6つまでの低圧水銀ランプで側面から照射した。垂直に装着されたセルを上方に通過する液体の流速を、Watoson−Marlow 505U蠕動ポンプを使って調整することができた。また、シリンダの回転速度も調整可能であった。温度調整装置からの冷却水をランプの外包水槽を通して送流し、ランプ温度及びUV−C出力を基本的には一定に保った。実験パラメータの各変更の後、サンプルを抜き取る前に、5セル分の容積をセルを通して送流した。
【0151】
流速を変更し回転速度は一定の60rpmに保った。実施例2で得たモデル溶液を使ってUV線量を測定した。6つのランプで60rpmにおいて、図5に示した下記の線量が測定された。
【0152】
【表5】
滞留時間(=1/流速)と線量との間の相関はリニアでなく、低い流速で高い回転速度では、(米国特許第6,576,201の図7に示されているように)高ペースの滞留時間分散増大が見られた。
【0153】
実施例2のモデル溶液(a253.7=10/cm、h=1.25cp)をセルを通して送流し、流速を一定に保ち、内部シリンダ回転速度は変化させながら6つのランプで照射した。その結果を表6に示す。
【0154】
【表6】
実施例2のモデル溶液(a253.7=7.5/cm、η=1.25cp)をセルを通して送流し、流速を192mL/分で一定に保ち、内部シリンダ回転速度は変化させながら6つのランプで照射した。次いで、実施例3に記載した、バクテリオファージをスパイクしたアルブミン溶液を照射し、バクテリオファージの力価を滴定測定した。その結果を表7に示す。
【0155】
【表7】
同じモデル溶液を、テイラー・セルを通し流速を変化させ、60rpmの一定回転速度で送流した。線量を測定し、滞留時間とリニアな相関が得られた。次いで、実施例3に記載したバクテリオファージ・スパイク・アルブミン溶液を照射し、バクテリオファージの力価を滴定測定した。線量測定及びバクテリオファージ照射中に、6つのランプの平均ランプ輝度を測定し、放射測定補正係数を計算した。その結果を表8に示す。
【0156】
【表8】
バクテリオファージ照射中の実効線量を計算するため、線量測定において測定された線量に乗ずる必要のある、放射測定補正係数は1.011と算定された。
【0157】
【表9】
表9に示された対応バクテリオファージ力価から、およそ−0.2(log10pfu/mL)/(mJ/cm2)の線量依存的不活性化率が達成されることが分かる。
【0158】
同様な実験を、モデル溶液(a253.7=2.6/cm、η=1cp)に対し2つだけのランプを使って行った。次いで、同じ吸収度と粘度とを持つ、バクテリオファージ・スパイク・アルブミン溶液に照射した。放射測定補正係数(バクテリオファージ溶液/線量測定)は0.988であった。その結果を表10に示す。
【0159】
【表10】
対応モデル溶液の線量測定に基づき、バクテリオファージ・スパイク・アルブミン溶液(a253.7=4.5/cm、η=1.05cp)に対し、192mL/分の一定流速で内部シリンダ回転速度を変化させながら同様な実験を行った。ここでは、最初にセルから出てくる液量からさらなるサンプルを抜き取った(これは滞留時間が短いためより低い線量しか受けていない)。その結果を表11に示す。
【0160】
【表11】
化学線量測定と生物線量測定とを組み合わせた線量測定で得られた結果から、これらの方法を組み合わせて用いることによって(米国特許第6,576,201号の図7に示されているような)滞留時間の分散を測定可能なことが分かる。
【0161】
(実施例6:化学線量測定、生物線量測定、及び放射測定を使ったバッチ反応器の検証)
シリンダ型の石英チューブ(内径25cm、壁厚5mm、長さ75cm)と、ステンレス鋼から圧延され、注入ポート及びサンプリングポートを具えた平坦な上部蓋及び膨らんだ底部と、3枚羽のプロペラ及び各々の羽の外側縁にワイパー羽を持つ積層プロペラ攪拌装置とを具えた、大規模な微生物不活性化用大型光不活性化反応器を、実施例18に記載するように、ランプ収容器に装着された水冷温調された10個のUV−Cランプ(Philips TUV 55W HO)で取り巻き、各ランプをDr.Groebel UVC−SE放射測定センサでモニタリングした。この反応器の最大処理能力は30Lである。各ランプの放射測定センサを使ってランプ出力をチャート型記録計に記録し、初回作動設定の100%に対し相対ランプ出力に正規化した。
【0162】
該30Lの光不活性化反応器で、同じ吸光度及び粘度のモデル溶液で線量測定較正した後、バクテリオファージPhiX174をスパイクしたアルブミン溶液(a253.7=7.1/cm、η=1.05cp)を照射した。攪拌速度は90rpmに設定した。これにより、1.1634mJ/cm2の線量率が得られ、バクテリオファージ不活性化サンプルを、2分8秒ごとに17分4秒まで、すなわち、2.48mJ/cm2の線量増加工程で約20mJ/cm2の標的線量になるまで採取した。サンプルは底部サンプリング・ポートと最上部サンプリング・ポートとから同時に抜き取り、混合の均質性を調査した。その結果を表12に示す。
【0163】
【表12】
>10pfu/0.9mLのバクテリオファージ力価から、−0.3940log10(pfu/mL)/(mJ/cm2)の最上部不活性化率と、−0.3912log10(pfu/mL)/(mJ/cm2)の底部不活性化率が測定された。平均で−0.3926log10(pfu/mL)/(mJ/cm2)の線量依存的不活性化率は、実施例3の−0.3369log10pfu/(mJ/cm2)のフロー型不活性化率及び実施例4の約−0.2log10pfu/(mJ/cm2)のフロー型不活性化率と比較して良好な均質性と効果的な混合および狭い線量分布とを示している。−0.44log10pfu/(mJ/cm2)の無減衰バクテリオファージ不活性化率と比較して、該バッチ式照射は、最も効果的な混合によって、微生物の最も均質で均等なUV−C光への曝露を示している。
【0164】
基本的にはサンプリング・ポートのある平坦なプラスチックの上部蓋と膨らんだプラスチック底部とを持つシリンダ型石英容器(内径7cm、壁厚3mm、高さ13cm)で構成され、内壁近辺ワイパー羽をもつ積層羽根車攪拌装置(2枚羽で攪拌速度調整可能)を具えた実験スケールの微生物不活性化用光不活性化反応器を、側面から2つの10W低圧水銀ランプで照射した。この反応器の最大処理能力は450mLである。ランプ輝度は、デジタル二重センサ放射計(UVC−SEセンサ付きのDr.Groebel UV−Electronik RM21)を使ってコンピュータに記録した。生物線量測定による照射中における線量増分については、生物線量測定サンプリング時間間隔中のランプ線量増分に化学線量測定による線量率を乗じ、その結果を線量測定較正で得られたランプ線量率で除して計算した。
【0165】
該450mL光不活性化反応器で、実施例3と同じバクテリオファージをスパイクした抗トリプチン溶液を、実施例2で使ったのと同じモデル溶液による線量測定較正の後照射した。線量率は2.5989(mJ/cm2)/分であり、サンプルは、1分1秒間隔で8分8秒まで採取した。20mJ/cm2の線量でのエラステーゼ阻害活性は、未照射溶液の97%であった。この結果を表13に示す。
【0166】
【表13】
−0.4406log10(pfu/mL)/(mJ/cm2)の線量依存的不活性化率は良好な均質性と効果的な混合とを示しており、狭い線量分布は、実施例3に記載したフロー型方法の17.34mJ/cm2に比べ、12.24mJ/cm2であっても、−5.53log10pfu/mLの削減に明らかに寄与している。
【0167】
(実施例7:ランプ故障に対し安全で堅牢な処理を確実にするための、化学線量測定と放射測定との組合わせ使用による30L反応器の吸収依存性照射源の標的総光線量の算定)
実施例5に記載した30Lの反応器であるが、9つの個別にオンオフ可能な、反射板を具えた温調付きランプを、10種のモデル線量測定液(a253.7=1/cmの増加工程で3/cmから12/cmまで、η=1.15cp)と4つのランプとで検証し、実効率((mJ/cm2)/分単位)、照射光線量率((mJ/cm2)/分単位)、及び20mJ/cm2の実効線量に必要な照射時間を算定した。ランプ照射強度を電子放射計を使ってモニタリングしチャート式記録計で記録し、合計カウンターを設置し照射中すべての放射計からの信号を積算した。吸収依存性照射源の総光線量は、照射時間ともに増加する放射計信号和として計算される。照射光線量率は化学的線量率よりも桁違いに大きい、というのは、放射計センサは、実質的に、任意の吸収媒体に一切減衰されていないUV光を受光するからである。液中における所与の標的実効線量、例えば20mJ/cm2を得るための照射時間に、照射光線量率を乗じて、照射パラメータとして吸収依存性の照射源標的総光線量を計算する。その結果を表14に示す。
【0168】
【表14】
表14から、ランプの吸収依存性の照射源総光線量は、Hランプ=5058.9×a253.7−1413の式で表した吸光度とリニアな関係で相関しており、相関係数は1に近いR2=0.9972である。吸収依存性の照射源標的総光線量それ自体は照射中の輝度の任意の変化から独立したものであり、従って、適切な標的線量が適用されたことを確実にするための堅牢な照射処理の理想的パラメータである。照射処理は、吸収依存性の照射源総光線量によって制御され、これが、検証範囲のあらゆる吸光度に対して補間された所定吸収依存性の照射源標的総光線量に達したならば、ランプは消灯され照射は終了する。
【0169】
(実施例8:吸収依存性の照射源標的総光線量の制御による照射処理中のランプの故障の模擬、及び溶液中に正しく適用された標的実効線量の実証)
実施例5に記載したように、30L反応器中で、モデル溶液(a253.7=8/cm、η=1.15cp)を照射した。2回の実験を実施し、10分後に4つのランプの1つを消灯し、その代わりに別のランプを点灯するか、あるいはそれは使わず3つのランプだけで終了するようにした。照射光線量率を化学線量測定で算定し、実施例6に記載した検証における式により計算された吸収依存性の照射源標的総光線量がHランプ=39058mJ/cm2に達したならば、これらランプを消灯し、サンプルを採取して溶液中の実効線量を算定した。
【0170】
10分後にそのランプを別のランプを置き換えた最初の実験では、16分43秒後に吸収依存性の照射源総光線量が達成され、モデル溶液中では19.7mJ/cm2の線量が測定された。代替ランプなしの第二の実験では、19分55秒後に吸収依存性の照射源総光線量が達成され、モデル溶液中では19.9mJ/cm2の線量が測定された。
【0171】
照射時間後に測定する実効線量は、所定の吸収依存性の照射源標的総光線量を達成するために必要なものであるが、これから、所定の吸収依存性の照射源標的総光線量による制御を使った処理は、照射処理中のランプの故障に対して感受性がなく堅牢であることが分かる、これというのは、吸収依存性照射源標的総光線量は正確な実効線量の適用を確実にするからである。
【0172】
(実施例9:高い及び低い分子吸光度を持つ混濁流体の吸収及び濁度に適合させるための、モデル溶液の調整)
天然の混濁したりんご果汁を0.22μmの注射器フィルタでろ過した。253.7nmにおける未ろ過の果汁の吸光度は18/cmであったが、ろ過され澄んだ果汁は10.4/cmしかなく、双方とも粘度は1.25cpであった。
【0173】
ろ過した果汁(a253.7=10.4/cm、η=1.25cp)の吸光度と粘度に適合させたいヨウ化物/ヨウ素酸塩/PVPモデル溶液に、ベントナイトを加え混濁果汁の濁度に適合させた。2gのベントナイト成分量は7.6/cmの濁度を加えることが分かった。結果を表15に示す。
【0174】
【表15−1】
【0175】
【表15−2】
図5に描かれた較正プロットは、混濁液のわずかの感度低下を示したが、これには、吸光度及び濁度の双方に対してモロウィッツ補正係数(Morowitz、1950年)を適用した。2.6/cmの吸収係数及び1cpの粘度を持つ溶液(=1.534gPVP K25/L)に対し、ベントナイト2g/Lを加えて、全体で9.3/cmの吸光度を得た。図5から分かるように、較正プロットにも関連する差異はなかった。100mLの澄んだモデル溶液及び濁ったモデル溶液を、実施例5に記載したのと同じランプ・ハウジング中に挿入した4cmの攪拌石英試験管中で2つ又は1つの対向ランプを用いて照射した。40分の照射時間中4分毎に1mLのサンプルを採取した。各照射中にランプ輝度を記録し、18/cm溶液の第二照射は、10.4/cm溶液の第一照射の1.0416倍のランプ照度であり、9.3/cm溶液の第二照射は、2.6/cm溶液の第一照射の0.9928倍のランプ輝度であった。線量率は、理論的には吸収係数の逆数1/aに依存するが、10.4/cmの100%に対し18/cmの57%、又は2.6/cmの100%に対し9.3/cmの28%といったような期待通りの差異は示さず、違いは、(2つランプの場合)10.4/cmの1.748(mJ/cm2)/分に対し、18.0/cmの1.603(mJ/cm2)/分割る1.0416=1.539(mJ/cm2)/分、すなわち高い分子吸光度を持つ混濁溶液に対しては88%、及び(1つランプの場合)2.6/cmの3.415(mJ/cm2)/分に対し、1.854(mJ/cm2)/分割る0.9928=1.868(mJ/cm2)/分、すなわち低い分子吸光度を持つ混濁溶液に対しては55%であった。このことは、濁度が増加すると光を溶液中に散乱すること実証しておりこれは化学線量測定で計測可能である。
【0176】
(実施例10:高希釈のヨウ化物/ヨウ素酸塩アクチノメーター液の吸収係数、ヨウ化物/ヨウ素酸塩アクチノメーター液の線量測定反応、及びUV−C生成3ヨウ化物のポリビニルピロリドンによる安定化)
0.01Mのホウ酸塩緩衝液中に0.24MのKI及び0.04Mを含有するpH=9.25の溶液を、0.01Mのホウ酸塩緩衝液で0.2倍、0.4倍、0.6倍及び0.8倍濃度に希釈し、0.1mmのキュベット中で吸収を測定した。図6は、吸収係数がリニアな比率(a253.7=69/cm×希釈係数)で濃度に依存することを示している。
【0177】
1Lの0.01Mホウ酸塩緩衝液中に10gのポリビニルピロリドンK90(PVP K90;平均分子質量360000Da)を含有する溶液を、0.2倍、0.4倍、0.6倍及び0.8倍濃度に希釈し、該希釈液及び緩衝液の粘度を、22.8℃に温度調節したショット0.40mmウベローデ毛細管粘度計で測定した。図7から、濃度とともに非リニアな率で粘度が上昇することが分かる。
【0178】
0.01Mのホウ酸塩緩衝液中に0.24MのKI及び0.04Mを含有しpH=9.25の原液の希釈液を、253.7nmで所定の6.1/cm(0.0212MのKI+0.0035MのKIO3+0.95gPVP K90/L; DEAEセファデックス・アニオン交換ゲルからのプロトロンビン複合体溶出液に対するもの(Brummelhuis、1980年))及び16/cm(0.06MのKI+0.01MのKIO3+6.25gPVP K90/L; フィブリノゲン2.5%(w/v)溶液に対するもの)の吸収度に調合し、0.2mmのキュベットに満たした。線量測定液を満たしたキュベットを、CAMAG TLCランプの下の、既知の放射照度(Rahnアクチノメーターで測定)のキュベット位置に所定の時間置いて薄層較正を行った。367nmで吸光度を測定した。図8から、適用される表面線量に応じて吸光度が増加すること、KI/KIO3の濃度とともに感度が増加することが分かる。
【0179】
0.01Mのホウ酸塩緩衝液中に0.06MのKI及び0.01MのKIO3を含有し、pH=9.25で、a253.7=16/cmの吸収係数を持つ線量測定液と、同じKI及びKIO3濃度及び6.25gポリビニルピロリドン(PVP)K90/Lを有する溶液とを調合した。線量測定液を満たした0.2mmのキュベットを、前記のようにCAMAG TLCランプの下に所定の時間置いて薄層較正を行った。352nm(KI+KIO3のみ)又は367nm(KI+KIO3+PVP)で吸光度を測定した。図9から、PVPが本方法の感度を向上することが分かる。
【0180】
(実施例11:固定配置のアクチノメーター線量測定液を有するバッチ光不活性化反応器における照射時間の算定)
2.1/cm(0.0072MのKI+0.0012MのKIO3+0.5gPVP K90/L; FVIII濃縮液に対するもの)、6.1/cm(実施例10を参照)、10/cm(0.0346MのKI+0.0058MのKIO3+1.21gPVP K90/L; 免疫グロブリンG2%(W/V)溶液に対するもの)及び16/cm(実施例10を参照)の常用対数吸収係数a253.7を持つ線量測定液を調合し、実施例6に記載したように較正プロットを記録した。直径4cmの石英試験管に100mLの線量測定液を満たし、磁気攪拌装置の磁気攪拌バーでかき混ぜ、研磨されたステンレスの反射板を供えた2つの低圧水銀蒸気ランプの間で照射した。所定の間隔でサンプルを採取し0.2mmのキュベットに満たして分光光度を測定し、較正プロットから線量を読み取った。次いで、(mJ/cm2)/分単位で線量率と、線量率の逆数、すなわち分/(mJ/cm2)として単位占領あたりの比照射時間とを計算した。その結果を表16に示す。吸収係数と(比)照射時間との関係を表す定数k1を計算することができる。
t=k1×a
【0181】
【表16】
比照射時間の吸収係数への依存の直線回帰を計算すると、R2=0.989の直線相関が得られる。この結果は、薄膜較正による、吸収度と粘度とを適合させたモデル溶液に基づく線量測定が、攪拌バッチ式光不活性化反応器の検証に適していることを実証している。
【0182】
(実施例12:薄層バッチ式照射でのMMV及びPhi−X174の不活性化)
細胞培養の上清から採取したMMV原液(約108組織培養伝染性量(TCID50)/mL)及び大腸菌中の繁殖から採取したバクテリオファージPhi−X174の溶解物(約1×109プラーク形成単位(PFU)/mL)を20mLのリン酸塩で緩衝した0.15MのNaCl(リン酸緩衝塩水、PBS)中に希釈し、2.5mLを32mmのポリスチレンのシャーレに入れ水平方向にゆすりながらCAMAG TLCランプの下で、いろいろなUV−C線量で照射した。可視光不感知のUV−Cセンサを具えたDr Groebel RM−21放射計を使ってサンプル表面距離の放射照度を測定し、分光光度計で溶液の自己吸収を測定して実効フルエンス(UV線量)に補正した(Morowitz、1950年)。MMVとPhi−X174との力価を、それぞれ宿主細胞培養物とホスト・バクテリアとを使って滴定により算定した。その結果を表17に示す。
【0183】
【表17】
4cmの攪拌バーがついた100mLの石英のビンに、80mLのMMV又はPhi−X174をスパイクしたタンパク質溶液(プロトロンビン複合体DEAEセファデックス溶出液、α253.7=6.9/cm)を満たし磁気攪拌装置の上に置いて、約250rpmで攪拌しながら側面からCAMAG TLCランプで照射した。実施例11に記載したモデル溶液(α253.7=6.9/cm)を使って較正を行った。ウイルス又はバクテリオファージ滴定用のサンプルについては、線量率測定の後、計算された時間間隔で採取し、滴定により生存する感染性ウイルス又はバクテリオファージの力価を算定した。その結果を表18に示す。
【0184】
【表18】
Phi−X174及びMMVの不活性化率から、253.7nmのUV−C光に対するこれらの感受性は類似していると推定できる。これにより、Phi−X174を生物線量測定計として使用することにした。また、微生物を照射ゾーンへ確実に移送をする効果的な混合方法によって、バッチ攪拌式装置中のUV−C吸収性液体に対する不活性化率はどれもほとんど同じであることが分かる。
【0185】
(実施例13:線量測定及び生物線量測定の使用による攪拌式バッチ反応器の最適化)
実施例6に記載した、積層羽根車攪拌装置(3枚羽で攪拌速度調整可能)を具えた450mLのバッチ式反応器(内径7cm、壁厚3mm、高さ14cm)を、各々が2本の同心の石英チューブの外包中に装着し後方にステンレス鋼の反射板を具えた2つの低圧水銀ランプで側面から照射した。ランプ外包を通して温調装置からの冷却水を送流し、ランプ温度とUV−C出力を一定に維持した。
【0186】
攪拌速度を、分あたり60回転(rpm)(低速攪拌)、150rpm(中速攪拌)、及び240rpm(高速攪拌)に調整した。バクテリオファージをスパイクしたプロトロンビン複合体溶出液に対して吸収度及び粘度を適合させたモデル溶液(a253.7=8.0/cm、η=1.15cp、0.1Mのホウ酸塩緩衝液に27.83mMのKI、4.64mMのKIO3、1.3gPVP K90/Lを含有させた溶液、pH=9.25)450mLの照射に対するUV線量率を実施例11に記載した方法で算定した。ホウ酸濃度については文献に記載された濃度(0.01M)より高いホウ酸塩濃度(≧0.1M)が、線量測定溶液のより高い感受性と良好な安定性をもたらすことが判明した。バクテリオファージ・スパイク・プロトロンビン複合体溶出液を照射し、実施例12に記載したようにバクテリオファージの不活性化を算定した。追加パラメータとして凝固因子X(FX)の活性をアミド分解分析を用いて、0、10、15、20、25、50、75、及び100mJ/cm2の線量について測定した。その結果を表19に示す。
【0187】
【表19】
この実験から、ウイルス不活性化用バッチ光不活性化反応器の最適化はモデル溶液の線量測定及び生物線量測定によって実施できることが分かる、というのは、双方の検証方法とも混合の効果についての情報をもたらすからである。また、タンパク質溶液の可能な最高な攪拌速度(泡の生成を回避して)において、最速の微生物不活性化が達成するだろうことも明白である。このような最適化の利点は、最も効果的混合法によって、標的線量、例えば標的線量20mJ/cm2におけるウイルス不活性化に対する安全マージンを最高にし、または、標的線量を下げてさらなるタンパク質の生物活性を保存することができる。
【0188】
(実施例14:化学線量測定、生物線量測定、及び放射測定を使った、プロントロビン複合体溶出液のバッチ照射に対する検証及びプロセスのモニタリング)
実施例6に記載した、3枚羽の羽根車と各々の外側羽根縁にワイパー羽とを持つ積層羽根車攪拌器を備えた30Lのウイルス不活性化用光不活性化装置を、実施例18に記載したように、温度調節されたランプ・ボックスに装着され、各々がDR.Groebel UVC−SE放射測定センサでモニタリングされている10ヶの水冷温調UV―Cランプ(Philips TUV 55W HO)で取り囲んだ。放射測定センサを使って各ランプにつきランプ出力をチャート式記録計に記録し、最初の実験時の設定100%に対して相対ランプ出力に正規化した。
【0189】
29.5Lのプロントロンビン複合体溶出液を、大腸菌から採取したPhi−174による溶解液(約4×109pfu/mL)0.5Lでスパイクした。得られた溶液の吸収係数は、a253.7=6.0/cmであった。ウイルス不活性化実験に先立って、実施例11に記載したような、吸収度と粘度とを適合させ、0.1Mのホウ酸塩中に20.87mMのKI、3.48mMのKIO3、及び1.304gPVP K90/Lを含有させた、pH=9.25のモデル溶液を使い、90rpm攪拌速度で、最初の実験のバクテリオファージ照射線量率に対し98.5%であるランプ線量率で、1.3435(mJ/cm2)/分の線量率で反応器の線量率を算定した。20mJ/cm2の標的線量に対して14分の照射時間を算定し、基本的には一定の線量率を想定した。故障光源のランプ出力の影響を実証するために、三回目の実験においてランプ温度を28℃から24.5℃に低下させ、ランプ出力を最高値の約90%に低減した。Phi−X174の不活性化率は(一定の線量率想定に基づいて)は、実施例12に記載したように算定され、(log(pfu/mL))/(mJ/cm2)で表した。その結果を表20に示す。
【0190】
【表20】
ランプ出力はバッチ照射プロセスのパラメータであり、線量測定線量率及び生物線量測定不活性化率の双方とも、ランプ出力に対して正規化する必要があることが分かる。
【0191】
(実施例15:線量測定及び放射測定で算定された放射測定標的線量に基づく、タンパク質溶液のバッチ照射工程の設計)
実施例6に記載した450mLの光不活性化反応器について、6.0/cm、7.0/cm、8.0/cm、9.0/cm、及び10.0/cmの吸収係数を持つモデル溶液の照射に対する線量率及び照射時間を検証した。450mLのサンプル容積を200rpmで攪拌した。ランプの電源をオンにし、3、6、9,12,15,18,21、及び24分に採取したモデルサンプル液の測定によって線量率を算定した。コンピュータに接続された二重ヘッド放射計を使ってランプ輝度をモニタリングし記録した。
【0192】
図10は、ランプ輝度はスイッチを入れてから3分後に最大値に達すること、およびこの最初の3分の間に適用される線量は、その後の3分の時間間隔で適用される基本的には一定に増加する線量よりも低いことを示している。図11は、ゼロより低いy軸定数として表されたエラーのある対応線量増加を示している。従って、線量率等式のy軸定数を標的線量(20mJ/cm2)に加えて、補正拡張標的線量を得、該拡張標的線量を線量率で除して照射時間を計算し、1秒間隔でランプ照度(mW/cm2)を測定し照射時間を通してこれを合計し、吸収係数に応じた標的放射測定ランプ線量(mJ/cm2)を得た。その結果を表21に示す。定数k2を計算することができる。
Q=k2×a
【0193】
【表21】
前記の表から、放射測定標的ランプ線量は、吸収係数とともにリニアな比率で増加することが分かる(R2=0.996)。
【0194】
(実施例16:光変性からの保護剤として試験したアスコルビン酸塩のUV−C吸収効果に対する線量測定補償)
FEIBA DEAEセファデックスG50溶出液(18.2mgタンパク質/mL)にアスコルビン酸ナトリウムを、1ミリモル/Lの濃度まで添加した。アスコルビン酸塩を加えたFEIBA溶出液の吸収係数a253.7は、元の溶出液の7.3/cmに対し、16/cmであった。
【0195】
化学線量測定のため、0.0254MのKI、0.0042MのKIO3、及び1.61gPVP K90/Lを含有する0.1Mホウ酸塩緩衝液を含み、pH=9.25(a253.7=7.3cmに対し)のモデル溶液、及び、0.06MのKI、0.01MのKIO3、及び1.61gPVP K90/Lを含有する0.1Mホウ酸塩緩衝液を含み、pH=9.25(a253.7=16/cmに対し)のモデル溶液を調合し、0.2mmの薄層キュベットによって較正プロットを記録し、溶液110mLを、実施例11に記載したバッチ式光不活性化反応器を使って、1本ランプ(a253.7=7.3/cmに対し、1.41(mJ/cm2)/分の線量率で)及び2本ランプ(a253.7=16cmに対し、1.33(mJ/cm2)/分の線量率で)で照射した。元のFEIBA溶出液及びアスコルビン酸塩添加のFEIBA溶出液をそれぞれの線量率で照射し、サンプルを、5、10、15、20、25、30、及び35mJ/cm2の時点で採取した。ファクターX(FX)活性については、実施例13のように算定した。その結果を表22に示す。
【0196】
【表22】
前記の表より、元のFEIBA溶出液とアスコルビン酸塩添加のFEIBA溶出液との間のFX不活性化率(U FX/(mJ/cm2))には適正な差異がないことが分かる。従って、アスコルビン酸は、それ自体は高度のUV−C吸収性を持つが、FXタンパク質に対する光防護をする機能はない。明らかにしたように、このような添加物によるUV−C吸光度の増大は、説明したような吸光度を適合した化学線量測定によって簡単に補償することができる。
【0197】
(実施例17:ランプ輝度及び量子収量を安定化した暴露時間制御の較正装置による線量測定液の較正)
薄層キュベット中の線量測定液の再現性と精度のある曝露のため、水冷温調ジャケット付きのキュベット・スロットを、単眼レンズレフレックスカメラのヒンジ連結された背部に装着し、この背部に開口部を設けカメラのシャッターを通してキュベットを曝露した。カメラのレンズの差し込み口金を、水冷温調石英ガラス・ジャケット中の低圧水銀蒸気ランプを収納したランプ・ハウジングのフランジに装着した。
【0198】
ランプをその最大UV−C出力で動作できるように、ランプの温調温度を外部に循環する水冷温調で制御した。キュベット・スロットの温度は、Rahn(1997年)に述べたようなヨウ化物/ヨウ素酸塩アクチノメーターの所定量子収量範囲内に設定し、外部の循環水冷却器によって制御した。カメラのシャッターを1秒の曝露時間に設定し、シャッター精度については、コンピュータのサウンドカードのマイクロフォン・プラグにつないだ光ダイオードを使って測定した。シャッターは、一定の曝露時間1.000±0.002秒を維持していることが分かった。
【0199】
キュベットの入射窓での実効放射照度を算定するために、0.6Mヨウ化物/0.1Mヨウ素酸塩のアクチノメーター液(Rahn、1997年)は、すべての入射光子を完全に吸収するが、これを0.2mmのキュベットに満たし、温度調節したキュベット・スロット中で、増加的に1、2、及び3秒の間曝露し、基本的には、一定の量子収量を確実にした。曝露の前に、分光光度計の352nmにおける吸光度をゼロに設定し、各曝露工程の後に、分光光度計で352nmにおける吸光度の増加を測定した。吸光度の増加から、三ヨウ化物の濃度を、温度依存性の量子収量から、入射光子の数を、光子のエネルギーとキュベットの横断面積とから放射照度Eを計算した。このように、E(mW/cm2単位)は、曝露時間t(秒単位)における吸光度増加Dabs、キュベット表面積A(cm2単位)及びキュベット容積V(L単位)、光路長dにおける吸光係数e(0.01cmに対して264.5)、253.7nmにおけるエネルギーW/アインシュタイン=471528J、及び21℃での量子収量Φ=0.7545(Rahn、1997年)から、式E=(Δabs×V×W×1000)/(e×A×Φ×t)によって計算することができる。そこで、曝露時間1秒後の0.0392の吸光度増加は、0.9262mW/cm2の放射照度に相当し、累積2秒後の0.0781の累積吸光度増加は、0.9227mW/cm2の放射照度に相当し、3秒後の0.1170の累積吸光度増加は、0.9215mW/cm2の放射照度に相当した。平均放射照度は0.9235mW/cm2で、標準偏差は0.0020であり、このことは、電子制御シャッターにより、較正について非常に正確な曝露がなされることを実証した。
【0200】
UV−C吸光度a253.7=6.5/cmで粘度1.16cpに合致する線量測定液を0.2mmのキュベットに満たし、3秒の増加工程で75秒まで曝露した。各曝露の増加の後で、未照射液を空試験値として、367nmにおける吸光度増加を読み取った。得られた較正プロットは二次方程式と相関した。該式では367nmにおける吸光度は、曝露フルエンスH如何による。その結果を表23に示す。
abs(367nm、0.2mm)=A×H2+B×H+C
【0201】
【表23】
1に近い相関係数R2は、電子制御シャッターを使って記録された較正プロットの精度を示している。該二次方程式のさらなる利点は、例えば実施例18に記載したような線量率測定において、算定される吸収値に対してこの方程式で妥当な解が容易に計算できることである。また、較正プロットをセグメント化し、このような二次方程式を、各セグメントに対する二次方程式を計算し、可能な限り1に近い相関R2を得ることができる。このような較正装置の実施例を図12に提示する。
【0202】
(実施例18:実施例2、4〜6、13、及び14に記載した反応器中で使用可能な、UVランプの温度安定化)
同心の温調外包石英ガラスチューブ(3)中に3つのランプ(2)を収納するステンレス鋼のハウジング(1)を具えたランプ・ボックスに、温調水が石英ガラス外包チューブ(3)とステンレス鋼壁(1)との間のギャップを流れるようにして、Philips TUV55 HOランプ(55W、直径28mm、長さ900mm)を搭載した。各ランプをDr.Groebel UVC−SE放射測定センサ(4)でモニタリングし、PT100プローブ(5)で温度を測定する。スチール・ハウジングの前側には、石英ガラスの窓があり、これを通してUV−C光が反応器の容器を照射する。石英チューブは、30mmの内径及び3mmの壁厚を持つ。循環冷却装置から6L/分の速度で水を送流した。温度を15℃から30℃まで上昇させ、約0.5℃間隔で光強度を測定した。その結果を表24に示す。
【0203】
【表24】
27℃で最高の輝度が得られ、冷却水の温度を40℃近辺にする必要のある直接温度調節と対照的に、これは穏やかな温度であり製品を過熱することはないであろう。ランプ表面と温調外包の内部チューブとの間のエアギャップ、及び水の流量を増すことによって、さらに低い温度でも最高のランプUV−C輝度を確かにする効果を得ることができる。このような温調されたランプの周り又は隣りに設置することによって、あらゆる種類のフロー型反応器又はバッチ式反応器を、熱による、特に過剰熱による製品の損傷の危険なしに作動することができる。
【0204】
【数1】
【0205】
【数2】
【0206】
【数3】
【0207】
【数4】
【0208】
【数5】
【0209】
【数6】
さらなる利点、特徴および改変は、当業者が容易に想到する。従って、本発明の広範な局面において本発明は、本明細書中に示され、記載される特定の説明および代表的な装置に限定されない。従って、種々の改変が、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物により定義される一般的な発明の概念の精神または範囲から逸脱せずになされ得る。
【0210】
全ての刊行物および全ての米国特許および外国特許ならびに特許出願を含む、本明細書中に引用される全ての参考文献は、特定および全体が本明細書中に参考として援用される。明細書および実施例は、添付の特許請求の範囲により示される本発明の真の範囲および精神の例示のみであるとみなされることが意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。
【請求項1】
明細書中に記載の発明。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−66103(P2012−66103A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−250848(P2011−250848)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【分割の表示】特願2007−528664(P2007−528664)の分割
【原出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250848(P2011−250848)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【分割の表示】特願2007−528664(P2007−528664)の分割
【原出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】
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