説明

生物学的用途のための半導体ナノクリスタルプローブ

【課題】半導体ナノクリスタル化合物を提供すること。
【解決手段】半導体ナノクリスタル化合物であって、1つ以上の親和性分子に連結し得、(1)第一エネルギーの曝露に応答して、第二エネルギーを提供し得る1つ以上の半導体ナノクリスタル、および1つ以上の半導体ナノクリスタルに連結する第一部分および1つ以上の親和性分子に連結し得る第二部分を有する、1つ以上の連結剤を含む。1つ以上の半導体ナノクリスタル化合物であって、1つ以上の親和性分子に連結され、半導体ナノクリスタルプローブに連結され、分析される物質中の1つ以上の検出可能物質と結合し得、第一エネルギーに応答して第二エネルギーを提供し得る。プローブは、狭い波長バンドの電磁放射線を放射し得、そして/あるいは狭いもしくは広いバンド幅の電磁照射供給源、または粒子線により誘発される場合、エネルギーを吸収、散乱、または回折し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、生物学的適用のための半導体ナノクリスタルプローブに関する。ここで、そのプローブは、エネルギーへの曝露に応じて、検出可能なシグナルを提供し得る複数の半導体ナノクリスタルを含む。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の説明)
生物学的システムの蛍光標識は、最近のバイオテクノロジーおよび分析化学で使用される周知の分析ツールである。このような蛍光標識の応用には、医用(および非医用)蛍光顕微鏡、組織学、フローサイトメトリー、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(医学的アッセイおよび研究)、DNA配列決定、イムノアッセイ、結合アッセイ、分離などのような技術が挙げられる。
【0003】
従来、このような蛍光標識には、ある部分に結合した有機色素分子の使用が関与しており、この部分は、次いで、特定の生物学的システムに選択的に結合し、その存在は、次いで、この色素分子の励起によってそれを蛍光放射させることにより、確認される。このような分析システムには、多数の問題がある。第一に、励起した色素分子からの可視波長の光の放射は、通常、広い(broad)放射スペクトルだけでなく、このスペクトルの赤色側での広い放射尾部(tail)の存在により、特徴付けられる。すなわち、全放射スペクトルは、かなり広い(ブロードである)。その結果、この標識分子の広いスペクトル放射および放射尾部に起因して、同時かもしくは異なる時点でさえ、多数の異なる検出可能物質の存在を検出または識別することが困難であるので、分析において、同時または連続的に使用し得る異なる着色有機色素分子の数に関して、厳しい制約がある。他の問題点には、殆どの色素分子が、比較的に狭い吸収スペクトルを有し、それゆえ、複数の波長プローブに対して、縦列(tandem)か連続的かいずれかで使用する複数の励起ビームか、あるいはそうでなければ、異なる波長で各個に励起される一連のプローブの連続的な励起に対して、異なるフィルターで連続的に使用される広いスペクトルの励起源かいずれかを必要とする。
【0004】
色素分子標識の存在で頻繁に遭遇する別の問題点には、光安定性の問題がある。利用可能な蛍光分子は、吸収/放射の励起(104〜108)サイクルを繰り返すと、退色するか、または非可逆的に放射しなくなる。これらの問題点は、しばしば、その試料を光に曝露する時間量を最小にすることにより、そして試料から酸素および/または他のラジカル種を取り除くことにより、克服される。
【0005】
加えて、電子顕微鏡技術によって、これらのシステムの研究に使用されるプローブツールは、蛍光による研究に使用されるプローブとは全く異なる。それゆえ、電子顕微鏡および蛍光の両方用の単一の型のプローブで材料を標識することは、不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、色素分子の特徴である大きな赤色放射尾部の存在なしに、好ましくは、広い(wide)吸収バンドを有しかつ、エネルギーへの曝露に応じて検出可能なシグナルを提供し得る(それにより、多数のこのようなプローブ材料を同時に使用することが可能となり、それぞれは、異なる狭い波長バンドの光を放射する)、および/または放射線を散乱もしくは回折し得る、生物学的用途のための安定なプローブ材料を提供することが望ましい。また、光学および電子顕微鏡の両方により、同じ試料を画像化するのに使用し得る、単一の安定なプローブ材料を提供することも、同様に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、半導体ナノクリスタルプローブを形成するように1つ以上の親和性分子と連結し得る半導体ナノクリスタル化合物を含む。半導体ナノクリスタル化合物は、1つ以上の半導体ナノクリスタルおよび1つ以上の第一連結剤を含む。1つ以上の半導体ナノクリスタルは、エネルギーへの曝露に応じて検出可能なシグナルを提供し得る。ここで、そのような応答は、1つ以上の半導体ナノクリスタルが曝露されるエネルギーの放射および/または吸収ならびに/あるいは散乱もしくは回折を含み得る。検出可能なシグナルを提供する工程に加えてか、またはその工程の代替的なものとして、1つ以上の半導体ナノクリスタルが、エネルギーへの曝露に応じて、エネルギーを1つ以上の近位構造物に移動させ得る。1つ以上の第一連結剤は、1つ以上の半導体ナノクリスタルと連結した第1の部分および1つ以上の第二連結剤または1つ以上の親和性分子のいずれかと連結し得る第2の部分を有する。
【0008】
本発明はさらに、(1)1つ以上の上記半導体ナノクリスタル化合物を1つ以上の親和性分子に結合させることによってか;または(2)1つ以上の上記半導体ナノクリスタル化合物を1つ以上の第二連結剤に結合させること、および1つ以上の第二連結剤を1つ以上の親和性分子に結合させることによってのいずれかによって形成される半導体ナノクリスタルプローブを含み、ここで1つ以上の親和性分子は、材料における1つ以上の検出可能な物質と結合し得る。その結果として、一つの実施形態において、半導体ナノクリスタルプローブは、粒子線または(広いか、または狭いバンド幅の)電磁放射線源のいずれかからのエネルギーを吸収し得、そして励起された場合に、狭い波長帯における検出可能な電磁放射線を放射し得るが、別の実施形態において、半導体ナノクリスタルプローブによって、吸収されるか、または散乱されるか、もしくは回折される粒子線または(広いか、または狭いバンド幅の)電磁放射線源のいずれかからのエネルギーの量は検出可能である(すなわち、吸収、散乱、または回折における変化は検出可能である)。また別の実施形態において、半導体ナノクリスタルプローブは、近位供給源から移動するエネルギーを受容し得、そして/またはエネルギーへの曝露に応じて、エネルギーを1つ以上の近位構造物に移動され得る。
【0009】
本発明はまた、半導体ナノクリスタル化合物を作製するためのプロセスおよび1つ以上の検出可能な物質と結合し得る1つ以上の親和性分子と連結する半導体ナノクリスタル化合物を含む半導体ナノクリスタルプローブを作製するためのプロセスを含む。本発明の半導体ナノクリスタルプローブは、光により反復される励起、上昇された温度に対する曝露、または酸素もしくは他のラジカルへの曝露に関して安定である。
【0010】
本発明は、材料内の検出可能な物質の存在を決定するために、材料(例えば、生物学的材料)を処理するためのプロセスをさらに含み、このプロセスは、処理されるべき材料を半導体ナノクリスタルプローブと接触させる工程、検出可能物質と結合しない半導体ナノクリスタルプローブを材料から除去する光学的工程、次いで、例えば(広いか、または狭いバンド幅の)電磁放射線源または粒子線のいずれかからのエネルギーにその材料を曝露する工程を包含する。次いで、エネルギーへの曝露に応じて、半導体ナノクリスタルプローブによって提供されるシグナルを検出する工程によって、材料内の検出可能な物質の存在を決定する。これは、例えば、半導体ナノクリスタルプローブによるエネルギーの吸収を測定する工程ならびに/あるいは半導体ナノクリスタルプローブによる狭い波長帯の放射線の放射を検出する工程および/または半導体ナノクリスタルプローブによる、エネルギーの散乱もしくは回折を検出する工程によって達成され得、(いずれの場合においても)材料内の検出可能な物質と結合する半導体ナノクリスタルプローブの存在を表示する。
【0011】
本発明は、材料(例えば、生物学的材料)を、1つ以上の近位構造物にエネルギーを移動させるために使用される半導体ナノクリスタルプローブで処理するためのプロセスをさらに含む。このプロセスは、処理されるべき材料を半導体ナノクリスタルプローブと接触させる工程、検出可能な物質と結合しない半導体ナノクリスタルプローブの部分を材料から除去する光学的工程、次いで、例えば(広いか、または狭いバンド幅の)電磁放射線源または粒子線のいずれかからのエネルギーにその材料を曝露する工程を包含する。次の工程では、半導体ナノクリスタルプローブから、1つ以上の近位構造物へエネルギーが移動し、この近位構造物は、エネルギー移動に応じて、検出可能なシグナルを提供するか、化学的変化もしくはコンホメーション変化を起こすか、あるいは1つ以上の第二近位構造物にエネルギーを移動させ得る。
【0012】
検出可能なシグナルを提供するか、またはエネルギーを近位構造物に移動させるための、材料の処理における半導体ナノクリスタルプローブの使用が、複数の、医学的な生物学的適用および非医学的な生物学的適用に適用され得る。半導体ナノクリスタルプローブの例示的適用としては、以下の使用が挙げられる:フローサイトメトリーにおける細胞の表面または内部の物質の検出器としての使用;ハイブリダイゼーション(例えば、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(特に、半導体ナノクリスタルプローブがポリメラーゼ連鎖反応において改変される場合))により核酸配列を検出するための複数の方法における使用;あるいは細胞障害性分子の放出を引き起こし得るエネルギーを移動させるためか、もしくは熱エネルギーを移動させるための使用であって、これらのいずれも特異的に標的化された細胞の死を生じ得る。半導体ナノクリスタルプローブの別の使用は、改変された半導体ナノクリスタルプローブ(ポリメラーゼ連鎖反応による改変の場合と同様)を生じる合成工程に対して処理される前駆体としての使用である。
【0013】
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1) 1つ以上の親和性分子に連結可能であり、かつ近位供給源からの第一エネルギーの曝露に応答して、第二エネルギーを提供し得る、半導体ナノクリスタル化合物であって、該半導体ナノクリスタル化合物が、以下:
a)1つ以上の半導体ナノクリスタルであって、それぞれが、該第一エネルギーの曝露に応答して、該第二エネルギーを提供し得る、半導体ナノクリスタル;および
b)1つ以上の第一連結剤であって、該連結剤の少なくとも一部が、該1つ以上の半導体ナノクリスタルに連結され、該1つ以上の第一連結剤のそれぞれが、(i)1つ以上の第二連結剤または(ii)1つ以上の親和性分子に連結し得る、第一連結剤、
を含む、半導体ナノクリスタル化合物。
(項目2) 項目1に記載の半導体ナノクリスタル化合物であって、ここで、前記近位供給源が、第一の半導体ナノクリスタルである、半導体ナノクリスタル化合物。
(項目3) 項目1に記載の半導体ナノクリスタル化合物であって、ここで、前記1つ以上の第一連結剤の少なくとも1つが、前記1つ以上の半導体ナノクリスタルを連結し得る三次元形状構造を含有する、半導体ナノクリスタル化合物。
(項目4) 項目3に記載の半導体ナノクリスタル化合物であって、ここで、前記三次元形状構造物が、以下に対して透過性であるか、以下を移動させ得るか、または以下に対して透過性でありかつこれらを移動させ得る、媒体を含む、半導体ナノクリスタル化合物:
i)前記1つ以上の半導体ナノクリスタルが曝露される前記第一エネルギー;および
ii)該第一エネルギーの該曝露に応答して、該半導体ナノクリスタルによって提供される前記第二エネルギー。
(項目5) 1つ以上の親和性分子に連結可能であり、かつ第一エネルギーの曝露に応答して、第二エネルギーを提供し得る、半導体ナノクリスタル化合物であって、該半導体ナノクリスタル化合物が、以下:
a)1つ以上の半導体ナノクリスタルであって、それぞれが、該第一エネルギーの曝露に応答して、該第二エネルギーを提供し得る、半導体ナノクリスタル;および
b)1つ以上の第一連結剤であって、該連結剤の少なくとも一部が、該1つ以上の半導体ナノクリスタルに連結され、該1つ以上の第一連結剤のそれぞれが、(i)1つ以上の第二連結剤または(ii)1つ以上の親和性分子に連結し得、ここで、該1つ以上の第一連結剤の少なくとも1つが、該1つ以上の半導体ナノクリスタルを連結し得る三次元形状構造を含む、第一連結剤、
を含む、半導体ナノクリスタル化合物。
(項目6) 近位供給源からの第一エネルギーに応答して、第二エネルギーを提供し得る、半導体ナノクリスタルプローブであって、該半導体ナノクリスタルプローブが、以下:
a)1つ以上の半導体ナノクリスタル化合物;および
b)該1つ以上の半導体ナノクリスタル化合物に連結される1つ以上の親和性分子、
を含む、半導体ナノクリスタルプローブ。
(項目7) 1つ以上の検出可能物質と結合可能であり、かつ近位供給源からの第一エネルギーの曝露に応答して、第二エネルギーを提供し得る、半導体ナノクリスタルプローブであって、該半導体ナノクリスタルプローブが、以下:
a)1つ以上の半導体ナノクリスタルであって、それぞれが、該第一エネルギーの曝露に応答して、該第二エネルギーを提供し得る、半導体ナノクリスタル;
b)該1つ以上の半導体ナノクリスタルが連結される1つ以上の第一連結剤であって、該1つ以上の第一連結剤のそれぞれが、
(i)1つ以上の第二連結剤;または
(ii)1つ以上の親和性分子、
に連結し得る、第一連結剤;および
c)該1つ以上の第二連結剤または該1つ以上の第一連結剤のいずれかに連結される1つ以上の親和性分子であって、該1つ以上の親和性分子のそれぞれが、該1つ以上の検出可能物質に選択的に結合し得る、親和性分子、
を含む、半導体ナノクリスタルプローブ。
(項目8) 項目7に記載の半導体ナノクリスタルプローブであって、ここで、前記1つ以上の半導体のナクリスタルのうちの少なくとも1つが、以下:
a)核;および
b)該核の回りに同心円的に配置される、1つ以上の殻、
を含む、半導体ナノクリスタルプローブ。
(項目9) 1つ以上の検出可能物質と結合可能であり、かつ第一エネルギーの曝露に応答して、第二エネルギーを提供し得る、半導体ナノクリスタルプローブであって、該半導体ナノクリスタルプローブが、以下:
a)1つ以上の半導体ナノクリスタルであって、それぞれが、該第一エネルギーの曝露に応答して、該第二エネルギーを提供し得る、半導体ナノクリスタル;
b)1つ以上の第一連結剤であって、該1つ以上の第一連結剤の少なくとも1つが、該1つ以上の半導体ナノクリスタルを連結し得る三次元形状構造を含み、該1つ以上の第一連結剤のそれぞれが、
(i)1つ以上の第二連結剤;または
(ii)1つ以上の親和性分子、
に連結し得る、第一連結剤;および
c)該1つ以上の第二連結剤または該1つ以上の第一連結剤のいずれかに連結される1つ以上の親和性分子であって、該1つ以上の第一親和性分子のそれぞれが、該1つ以上の検出可能物質に選択的に結合し得る、親和性分子、
を含む、半導体ナノクリスタルプローブ。
(項目10) 項目6、7または9に記載の改変された半導体ナノクリスタルプローブであって、ここで、前記1つ以上の親和性分子が、核酸の1つ以上の鎖を含む、半導体ナノクリスタルプローブ。
(項目11) 項目6、7または9に記載の半導体ナノクリスタルプローブであって、ここで、前記1つ以上の親和性分子が、1つ以上の第一タンパク質分子を含む、半導体ナノクリスタルプローブ。
(項目12) 項目6、7または9に記載の半導体ナノクリスタルプローブであって、ここで、前記1つ以上の親和性分子が、1つ以上の小分子を含む、半導体ナノクリスタルプローブ。
(項目13) 項目9に記載の半導体ナノクリスタルプローブであって、ここで、前記三次元形状構造物が、以下に対して透過性であるか、以下を移動させ得るか、または以下に対して透過性でありかつこれらを移動させ得る、媒体を含む、半導体ナノクリスタルプローブ:
i)前記1つ以上の半導体ナノクリスタルが曝露される前記第一エネルギー;および
ii)該第一エネルギーの該曝露に応答して、該半導体ナノクリスタルによって提供される前記第二エネルギー。
(項目14) 項目9に記載の半導体ナノクリスタルプローブであって、ここで、前記1つ以上の親和性分子のそれぞれが、核酸の1つ以上の鎖の分子を含み、そして前記1つ以上の検出可能物質のそれぞれが、該プローブが結合する核酸の1つ以上の鎖の分子を含む、半導体ナノクリスタルプローブ。
(項目15) 半導体ナノクリスタル化合物を形成するためのプロセスであって、該半導体ナノクリスタル化合物が、1つ以上の親和性分子に連結可能であり、かつ第一エネルギーの曝露に応答して、第二エネルギーを提供し得、該プロセスが、以下:
a)1つ以上の半導体ナノクリスタルであって、それぞれが、該第一エネルギーの曝露に応答して、該第二エネルギーを提供し得る、半導体ナノクリスタル;および
b)1つ以上の第一連結剤、
を一緒に連結する工程を包含し、
ここで、該1つ以上の半導体ナノクリスタルを該1つ以上の第一連結剤に連結する工程が、さらに、該1つ以上の半導体ナノクリスタルを、該1つ以上の第一連結剤を含む1つ以上の三次元形状構造物に連結する工程を包含する、プロセス。
(項目16) 半導体ナノクリスタルプローブを形成するためのプロセスであって、該半導体ナノクリスタルプローブが、1つ以上の検出可能物質と結合し得、かつ第一エネルギーの曝露に応答して、第二エネルギーを提供し得、該プロセスが、以下:
a)1つ以上の第一連結剤と1つ以上の半導体ナノクリスタルとを連結する工程であって、該半導体ナノクリスタルのそれぞれが、該第一エネルギーの曝露に応答して、該第二エネルギーを提供し得る、工程;および
b)該1つ以上の第一連結剤を以下:
i)1つ以上の第二連結剤;または
ii)該1つ以上の検出可能物質に選択的に結合し得る、1つ以上の親和性分子、
のいずれかに連結する工程;ならびに
c)該1つ以上の第一連結剤が、該1つ以上の第二連結剤に連結する場合、該1つ以上の親和性分子を該1つ以上の第二連結剤に連結する工程、
を包含し、
ここで、該1つ以上の半導体ナノクリスタルを該1つ以上の第一連結剤に連結する工程が、さらに、該1つ以上の半導体ナノクリスタルを、該1つ以上の第一連結剤を含む1つ以上の三次元形状構造物に連結する工程を包含する、プロセス。
(項目17) 1つ以上の半導体ナノクリスタルプローブを物質に導入することによって、該物質を処理するためのプロセスであって、該プロセスが、以下:
a)該物質と1つ以上の半導体ナノクリスタルプローブを接触させる工程であって、該1つ以上半導体ナノクリスタルプローブがそれぞれ、以下:
i)1つ以上の半導体ナノクリスタルであって、それぞれが、第一エネルギーの曝露に応答して、第二エネルギーを提供し得る、半導体ナノクリスタル;
ii)該1つ以上の半導体ナノクリスタルが連結される1つ以上の第一連結剤であって、該1つ以上の第一連結剤のそれぞれが、
a)1つ以上の第二連結剤;または
b)1つ以上の親和性分子
に連結し得る、第一連結剤;および
iii)1つ以上の親和性分子であって、該親和性分子が、該1つ以上の第二連結剤または該1つ以上の第一連結剤のいずれかに連結される、親和性分子、を含む、工程、
b)該物質中の該1つ以上の半導体ナノクリスタルプローブを、該第一エネルギーに曝露する工程であって、これによって、該第二エネルギーが、該1つ以上の半導体ナノクリスタルプローブ中の該1つ以上の半導体ナノクリスタルによって提供される、工程;
c)該第二エネルギーを、該1つ以上の半導体ナノクリスタルプローブから1つ以上の第一近位構造物に移動させる工程;ならびに
d)該1つ以上の近位構造物によって提供される検出可能な信号を検出する工程、
を包含する、プロセス。
(項目18) 項目17に記載の物質を処理するためのプロセスであって、ここで、前記1つ以上の第一近位構造物の少なくとも1つが、前記1つ以上の半導体ナノクリスタルプローブから該1つ以上の第一近位構造物に移動する前記第二エネルギーに応答して、化学変化を受ける、プロセス。
(項目19) 物質中の1つ以上の検出可能物質の存在を測定するために、1つ以上の半導体ナノクリスタルプローブを使用して該物質を処理するためのプロセスであって、該プロセスが、以下:
a)該物質と1つ以上の半導体ナノクリスタルプローブとを接触する工程であって、該1つ以上の半導体ナノクリスタルがそれぞれ、以下、
i)1つ以上の半導体ナノクリスタルであって、それぞれが、第一エネルギーの曝露に応答して、第二エネルギーを提供し得る、半導体ナノクリスタル、
ii)該1つ以上の半導体ナノクリスタルが連結される1つ以上の第一連結剤であって、該1つ以上の第一連結剤のそれぞれが、
1)1つ以上の第二連結剤;または
2)1つ以上の親和性分子、
に連結し得、そして
3)1つ以上の親和性分子が、該1つ以上の第二連結剤または該1つ以上の第一連結剤のいずれかに連結され、該1つ以上の親和性分子のそれぞれが、該1つ以上の検出可能物質に選択的に結合し得る、第一連結剤、
を含む、工程;
b)該1つ以上の半導体ナノクリスタルプローブを該第一エネルギーに曝露する工程;および
c)該第二エネルギーを検出する工程であって、該第二エネルギーが、該物質中の該1つ以上の検出可能物質に結合される該1つ以上の半導体ナノクリスタルプローブ中の該1つ以上の半導体ナノクリスタルによって提供される、工程、
を包含し、
ここで、該物質が、以下:
i)該物質が曝露される該第一エネルギー、および
ii)該第一エネルギーの曝露に応答して該1つ以上の半導体ナノクリスタルプローブによって提供される該第二エネルギー、
に対して透過性の1つ以上の区画を通して流れる、プロセス。
(項目20) 項目19に記載の物質を処理するためのプロセスであって、ここで、前記第一エネルギーが、1つ以上の近位供給源から前記1つ以上の半導体ナノクリスタルプローブへ移動する、プロセス。
(項目21) 項目20に記載の物質を処理するためのプロセスであって、ここで、前記第二エネルギーが、前記1つ以上の近位供給源の少なくとも1つの濃度を示す、プロセス。
(項目22) 項目20に記載の物質を処理するためのプロセスであって、ここで、前記第二エネルギーが、前記1つ以上の近位供給源の少なくとも1つと前記1つ以上の半導体ナノクリスタルプローブの少なくとも1つとの間の距離を示す、プロセス。
(項目23) 項目20に記載の物質を処理するためのプロセスであって、ここで、前記1つ以上の半導体ナノクリスタルが曝露される前記第一エネルギーが、前記1つ以上の近位供給源とは別のエネルギー供給源から、該1つ以上の近位供給源を通して伝達される、プロセス。
(項目24) 項目19に記載の物質を処理するためのプロセスであって、ここで、前記1つ以上の第一連結剤の少なくとも1つが、三次元構造を含む、プロセス。
(項目25) 物質中の1つ以上の検出可能物質の存在を測定するために該物質を処理するためのプロセスであって、該プロセスが、以下:
a)該物質を、1つ以上の半導体ナノクリスタルプローブと接触させる工程であって、該半導体ナノクリスタルプローブが、存在する場合、該物質中の該1つ以上の検出可能物質と結合し得、かつエネルギーの曝露に応答して、1つ以上の検出可能なシグナルを提供し得、該1つ以上の半導体ナノクリスタルプローブが、以下:
i)1つ以上の半導体ナノクリスタルであって、それぞれがエネルギーの曝露に応答して検出可能なシグナルを提供し得る、半導体ナノクリスタル;
ii)該1つ以上の半導体ナノクリスタルが連結される1つ以上の第一連結剤であって、該1つ以上の第一連結剤のそれぞれが、以下:
1)1つ以上の第二連結剤;または
2)1つ以上の親和性分子、
に連結し得る、第一連結剤;および
iii)1つ以上の親和性分子であって、該1つ以上の親和性分子が、該1つ以上の第二連結剤または該1つ以上の第一連結剤のいずれかに連結され、該1つ以上の親和性分子のそれぞれが、該1つ以上の検出可能物質に選択的に結合し得る、親和性分子、
を含む、工程;
b)該物質から、該1つ以上の検出可能物質に結合されない任意の該半導体ナノクリスタルプローブを、必要に応じて除く工程;ならびに
c)該物質をエネルギーに曝露する工程であって、該エネルギーによって、該1つ以上の半導体ナノクリスタルが、該エネルギーに応答して、該物質中の該1つ以上の検出可能物質の存在を示す1つ以上の検出可能なシグナルを提供し得る、工程;ならびに
d)該1つ以上の半導体ナノクリスタルプローブ中の該1つ以上の半導体ナノクリスタルによって提供される該1つ以上の検出可能なシグナルを検出する工程、
を包含する、プロセス。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の半導体ナノクリスタル化合物のブロックダイアグラムである。
【図2】図2は、本発明の半導体ナノクリスタルプローブのブロックダイアグラムである。
【図3】図3は、本発明の半導体ナノクリスタルプローブと検出可能物質との間の親和性を示すブロックダイアグラムである。
【図4】図4は、本発明の半導体ナノクリスタルプローブを形成するプロセスを例示するフローシートである。
【図5】図5は、生物学的材料のような材料中の検出可能物質の存在を検出する際の、本発明の半導体ナノクリスタルプローブの典型的な使用を例示するフローシートである。
【図6】図6は、近位構造物にエネルギーを移動させる際の、本発明半導体ナノクリスタルプローブの典型的な使用を例示するフローシートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
本発明は、1つ以上の第二連結剤または1つ以上の親和性分子のいずれかと連結し得、そしてエネルギーへの曝露に応じて検出可能シグナルを提供し得る半導体ナノクリスタル化合物を含む。次いで、半導体ナノクリスタル化合物は、(1)1つ以上の半導体ナノクリスタル(それぞれが、エネルギーへの曝露に応じて検出可能なシグナルを提供し得る);および(2)1つ以上の第一連結剤(それぞれが、その半導体ナノクリスタルと連結される第1の部分および1つ以上の第二連結剤もしくは1つ以上の親和性分子のいずれかと連結し得る第2の部分を有する)を含む。
【0016】
本発明はまた、1つ以上の検出可能な物質と結合し得、かつエネルギーへの曝露に応じて検出可能なシグナルを提供し得る半導体ナノクリスタルプローブを形成するように、(1つ以上の第一連結剤を介してか、または1つ以上の第一連結剤と順に連結される1つ以上の第二連結剤を介して)1つ以上の親和性分子と結合した上記の半導体ナノクリスタル化合物を含む。上記のように、材料内の検出可能物質の存在を決定するために、この半導体ナノクリスタルプローブを用いる材料(代表的に生物学的材料)の処理、およびこの処理された材料のエネルギーへの引き続く曝露は、検出可能なシグナルを提供する検出可能な物質と結合した半導体ナノクリスタルプローブにおいて、半導体ナノクリスタルを生じる。この検出可能なシグナル(例えば、狭い波長帯の電磁放射の吸収および/または放射ならびに/あるいは散乱もしくは回折の変化)は、(いずれの場合においても)材料の中の、半導体ナノクリスタルプローブと結合した検出可能な物質の存在を示す。
【0017】
本発明はまた、半導体ナノクリスタル化合物を作製するためのプロセス、および1つ以上の検出可能な物質と結合し得る1つ以上の親和性分子と連結した半導体ナノクリスタル化合物を含む半導体ナノクリスタルプローブを作製するためのプロセスを含む。
【0018】
本発明はさらに、材料の中の1つ以上の検出可能な物質の存在を決定するために、材料(例えば、生物学的材料)を処理するためのプロセスを含み、そのプロセスは、(1)材料と半導体ナノクリスタルプローブとを接触させる工程、(2)検出可能な物質と結合しない半導体ナノクリスタルプローブを材料から(必要に応じて)除去する工程、(3)エネルギー(例えば、上記のような電磁エネルギー源または粒子線)へその材料を曝露する工程、(この半導体ナノクリスタルが、このエネルギーに対する応答を提供し得、材料における検出可能な物質と結合した半導体ナノクリスタルプローブの存在を示す)、および(4)半導体ナノクリスタルプローブにおける半導体ナノクリスタルにより提供されるシグナルを検出する工程を包含する。
【0019】
本発明はさらに、半導体ナノクリスタルプローブを使用して、材料(例えば、生物学的材料)を処理するためのプロセスを含み、このプロセスは、(1)材料を半導体ナノクリスタルプローブと接触させる工程、(2)その材料から検出可能な物質と結合しない半導体ナノクリスタルプローブを(必要に応じて)除去する工程、(3)その材料を、エネルギーへの曝露に応じて、1つ以上の半導体ナノクリスタルプローブから、1つ以上の近位構造物へのエネルギーの移動を引き起こし得るエネルギー(例えば、電磁エネルギー源または粒子線)に曝露する工程、および(4)1つ以上の半導体ナノクリスタルプローブから1つ以上の近位構造物へエネルギーを移動させる工程を包含する。
【0020】
(a. 定義)
本明細書中の「ナノメータークリスタル」または「ナノクリスタル」との用語の使用は、約20ナノメーター(nm)または20×10-9メーター(200オングストローム)以下の平均断面、好ましくは、約10nm(100オングストローム)以下の平均断面を有し、そして約1nmの最小平均断面を有する有機または無機結晶粒子、好ましくは単結晶粒子を意味するが、ある場合には、それより小さい平均断面のナノクリスタル、すなわち、約0.5nm(5オングストローム)まで小さいものが受容可能である。典型的には、ナノクリスタルは、約1nm(10オングストローム)〜約10nm(100オングストローム)のサイズの範囲の平均断面を有する。
【0021】
用語「半導体ナノクリスタル」の使用は、励起の際に電磁放射線を放射し得る第II族−第VI族および/または第III族−第V族の半導体化合物のナノメータークリスタル、すなわち、ナノクリスタルを意味するが、第IV族半導体(例えば、ゲルマニウムもしくはケイ素)の使用または有機半導体の使用は、一定の条件下では、実行可能であり得る。
【0022】
本明細書中で使用される場合、用語「照射」は、電磁放射(X線、ガンマ、紫外、可視、赤外、およびマイクロ波の照射を含む);ならびに粒子放射(電子ビーム、βおよびα粒子の照射を含む)を含むことを意味する。
【0023】
用語「エネルギー」は、電磁放射、粒子放射および蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を含むことを意図する。本明細書中で使用される場合、用語「第一エネルギー」とは、半導体ナノクリスタルに曝露されるエネルギーを意味する。用語「第二エネルギー」の使用は、半導体ナノクリスタル化合物内で、または半導体ナノクリスタルプローブ内で、第一エネルギーへの曝露に応じて半導体ナノクリスタルによって提供されるエネルギーを意味する。同じ「第一エネルギー」に曝露される場合、異なるナノクリスタルが互いに異なる「第二エネルギー」をそれぞれ提供することに注意すべきである。用語「第二エネルギー」の使用は、複数の半導体ナノクリスタルと関連して使用される場合、同じ第二エネルギーか、または複数の異なる第二エネルギーのいずれかをいうことが理解される。
【0024】
用語「エネルギー移動」の使用は、放射性または非放射性の経路によって、1つの原子または分子から、別の原子または分子へのエネルギーの移動を意味する。
【0025】
用語「近位供給源」は、別の原子または分子または他の任意の物質にエネルギーを移動させ得、そして/またはこれらから移動するエネルギーを受け取り得る原子、分子または他の任意の物質を意味する。
【0026】
本明細書中で使用される場合、用語「近位構造物」は、別の原子または分子または他の任意の物質(半導体ナノクリスタルプローブを含む)から移動するエネルギーを受け取り得る原子、分子または他の任意の物質(例えば、ポリマー、ゲル、脂質二分子層、および半導体ナノクリスタルプローブに直接結合する任意の物質)であり得る。
【0027】
用語「狭い波長バンド」の使用は、半導体ナノクリスタルの電磁放射線放射に関して、約40nmを超えず、そして好ましくは、約20nmを超えない幅であって、そして中心の回りに対称的な放射の波長バンドを意味し、これは、典型的な色素分子の約100nmの放射バンド幅とは対照的であり、この色素分子は、さらに100nm程度にバンド幅が伸び得る赤色尾部を有する。言及したバンド幅は、半ピーク高さ(FWHM)での放射幅の測定により決定され、200nm〜2000nmの範囲が適切であることに注目すべきである。
【0028】
用語「広い波長バンド」の使用は、半導体ナノクリスタルの電磁放射線吸収に関して、開始放射(開始放射は、半導体ナノクリスタルによって吸収され得る最も長い波長(最も小さなエネルギー)の放射であることが理解される)の波長以下の波長を有する放射の吸収を意味し、これは、この放射の「狭い波長バンド」近傍であるが、それより僅かに高いエネルギーで、起こる。これは、色素分子の「狭い吸収バンド」(これは、高いエネルギー側の放射ピーク近傍で発生するが、その波長から急速に低下する)と対照的であり、そしてこれはしばしば、発光より100nm以上の波長で、無視できる。
【0029】
本明細書中で使用される場合、用語「検出可能なシグナル」は、半導体ナノクリスタルの、電磁放射(可視または赤外または紫外光および熱放射を含む)による放射;ならびに任意の他のシグナルまたは半導体ナノクリスタルの、照射への曝露に対する散乱(回折を含む)および/または吸収を証明する半導体ナノクリスタルから発生されるシグナルの変化を含むことを意味する。
【0030】
用語「検出可能物質」の使用は、材料(例えば、生物学的材料)内でのその存在または不在が、本発明の半導体ナノクリスタルプローブの使用により確認され得る存在物(entity)または基(group)または基のクラスを意味する。
【0031】
用語「親和性分子」の使用は、本発明の半導体ナノクリスタルプローブの部分であって、分析される材料(例えば、生物学的材料)内で、1つ以上の検出可能物質(もし、存在するなら)と選択的に結合し得る、原子、分子または他の部分を含むことを意味する。
【0032】
本明細書中で使用される場合、用語「小分子」(親和性分子または検出可能物質のいずれかについて)は、無機または有機の任意の原子または分子(約10,000ダルトン(グラム/モル)未満の分子量を有する生体分子を含む)である。
【0033】
用語「連結剤」の使用は、1つ以上の半導体ナノクリスタルに連結でき、かつ1つ以上の親和性分子または1つ以上の第二連結剤にも連結し得る物質を意味する。
【0034】
用語「第一連結剤」の使用は、(1)1つ以上の半導体ナノクリスタルに連結し得、そして1つ以上の親和性分子にも結合し得るか;または(2)1つ以上の半導体ナノクリスタルに結合でき、そして1つ以上の第二連結剤にも連結し得るかの、いずれかの物質を意味する。
【0035】
用語「第二連結剤」の使用は、1つ以上の親和性分子に連結し得、そして1つ以上の連結剤にも連結し得る物質を意味する。
【0036】
本明細書中で、用語「三次元構造」の使用は、その形状に無関係に、構造の3つの交互に垂直の主軸に沿う厚さが10nmよりも大きい、任意の構造を規定することを意図する。
【0037】
本明細書中での用語「サブ構造物」の使用は、三次元構造の2つまたはそれより多くの部分の1つを意味する。
【0038】
用語「連結する(link)」および「連結(linking)」は、直接的か、または本明細書中で連結剤(連結剤と親和性分子との間の第二連結剤を含む)として特定された1つ以上の部分を介するかのいずれかで、1つ以上の親和性分子と1つ以上の半導体ナノクリスタルとの間の接着を述べることを意味する。接着は、任意の種類の結合(共有結合、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス力または機械的結合などが挙げられるが、これらに限定されない)を含み得る。
【0039】
用語「結合する(bond)」および「結合(bonding)」は、親和性分子と検出可能物質との間の接着を述べることを意味している。接着は、任意の種類の結合(共有結合、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス力または機械的結合などが挙げられる、これらに限定されない)を含み得る。
【0040】
本明細書中で使用する場合、用語「半導体ナノクリスタル化合物」は、1つ以上の第一連結剤に連結されており、かつ1つ以上の第二連結剤または1つ以上の親和性分子のいずれかに連結し得る1つ以上の半導体ナノクリスタルを規定することを意図する。一方、用語「半導体ナノクリスタルプローブ」は、1つ以上の親和性分子に連結した半導体ナノクリスタル化合物を規定することを意図する。
【0041】
本明細書中で使用する場合、用語「ガラス」は、ケイ素、ホウ素および/またはリン、あるいはそれらの混合物の1種以上の酸化物、ならびに1種以上のケイ酸金属塩、ホウ酸金属塩またはリン酸金属塩をそこに任意に含入させることを含むことを意味する。
【0042】
(b.半導体ナノクリスタル)
本発明を実施する際に有用な半導体ナノクリスタルには、第II−VI族半導体(例えば、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSeおよびHgTe)のナノクリスタル、ならびにこれらの混合組成物;ならびに第III−V族半導体(例えば、GaAs、InGaAs、InPおよびInAs)ならびにこれらの混合組成物のナノクリスタルが挙げられる。上述のように、第IV族半導体(例えば、ゲルマニウムもしくはケイ素)の使用または有機半導体の使用は、一定の条件下では、実行可能であり得る。半導体ナノクリスタルはまた、上記の第III−V属化合物、第II−VI属化合物、第IV元素およびこれらの組合わせあからなる群から選択される2つ以上の半導体を含む合金を含み得る。
【0043】
第III−V族半導体のナノメータークリスタルの形成は、同時係属中で本願と同一人に譲渡されたAlivisatosら、米国特許第5,571,018号;Alivisatosら、米国特許第5,505,928号;およびAlivisatosら、米国特許第5,262,357号(これらはまた、第II−VI族半導体ナノクリスタルの形成を記載し、そしてこれもまた、本発明の譲受人に譲渡された)に記述されている。これらにはまた、結晶成長停止剤を用いて、形成中の半導体ナノクリスタルのサイズを制御することもまた、記述されている。Alivisatosら、米国特許第5,571,018号、およびAlivisatosら、米国特許第5,262,357号の教示内容は、それぞれ、具体的に本明細書中で参考として援用される。
【0044】
1つの実施形態において、ナノクリスタルは、核(core)/殻(shell)配置で使用され、ここで、第一の半導体ナノクリスタルは、例えば、約20Å〜約100Åの範囲の直径の核を形成し、別の半導体ナノクリスタル物質の殻は、核ナノクリスタルの上に、例えば、1〜10単分子層(monolayer)の厚さまで成長する。例えば、1〜10単分子層の厚さのCdSの殻が、CdSeの核の上にエピタキシャルに成長する場合、室温での光ルミネセンスの量子収量が著しく増加する。このような核/殻ナノクリスタルの形成は、本発明者の1人と他者との文献である「Epitaxial Growth of Highly Luminescent CdSe/CdS Core/Shell Nanocrystals with Photostability and
Electronic Accessibility」の表題で、Peng、Schlamp、Kadavanich、およびAlivisatos、Journal of the American Chemical Society発行、第119巻、第30号、1997、7019〜7029ページにさらに詳しく記載されており、その内容は、本明細書中で具体的に参考として援用される。
【0045】
本発明で使用される半導体ナノクリスタルは、広い波長バンドにわたる放射を吸収する能力を有する。この波長バンドは、ガンマ放射からマイクロ波放射の範囲を含む。さらに、これらの半導体ナノクリスタルは、約40nm以下、好ましくは約20nm以下の狭い波長バンド内の放射を放射する能力を有し、それにより、同じエネルギー源に曝露される場合、放射光の波長において重なりのない(もしくは少量重なる)異なる半導体ナノクリスタルを有する、複数の異なる色の半導体ナノクリスタルプローブを同時に使用することを可能にする。半導体ナノクリスタルの吸収および発光特性の両方が、狭い吸収波長バンド(例えば、約30〜50nm)、および広い発光波長バンド(例えば、約100nm)、および広い放射尾部(例えば、さらに100nm)を、スペクトルの赤部に有する色素分子を超える利点として役立ち得る。色素のこれらの特性の両方は、同じエネルギー源に曝露される場合、複数の異なる色の色素を使用するための能力を損なう。
【0046】
さらに、半導体ナノクリスタルから放射される光の狭い波長バンドの周波数または波長は、例えばサイズのような半導体ナノクリスタルの物理的特性にしたがって、さらに選択され得る。上記の実施形態を使用して形成される半導体ナノクリスタルによって放出される光の波長バンドは、(1)核のサイズ、または(2)核のサイズおよび殻のサイズのいずれかによって、半導体ナノクリスタルの核および殻の組成物に依存して決定され得る。例えば、CdSeの3nmの核およびCdSの2nmの厚さの殻から構成されるナノクリスタルは、ピーク強度の波長が600nmの光の狭い波長バンドを放出する。対照的に、CdSeの3nmの核およびZnSの2nmの厚さの殻から構成されるナノクリスタルは、ピーク強度の波長が560nmの光の狭い波長バンドを放射する。
【0047】
半導体ナノクリスタルの放射波長を選択的に操作するために、半導体ナノクリスタルのサイズを変更するための複数の代替が存在する。これらの代替には:(1)ナノクリスタルの組成物の変化、および(2)同心性の殻の形成において、ナノクリスタルの核の周りの複数の殻の追加が挙げられる。異なる波長はまた、異なる殻でそれぞれ異なる半導体ナノクリスタルを使用することによって(すなわち、複数の同心性の殻のそれぞれにおいて同じ半導体ナノクリスタルを使用しないことによって)、多殻型半導体ナノクリスタルにおいて得られ得ることに注意すべきである。
【0048】
半導体ナノクリスタルの組成物、または合金の変化による放射波長の選択は、当該分野においては月並みである。例示のように、CdS半導体ナノクリスタルが400nmの放射波長を有する場合、530nmの放射波長を有するCdSe半導体ナノクリスタルと合金化され得る。ナノクリスタルがCdSおよびCdSeの合金を用いて調製される場合、複数の等しいサイズのナノクリスタルからの放射の波長は、ナノクリスタル中に存在するSeに対するSの比に依存して、400nm〜530nmで連続的に調整され得る。同じサイズの半導体ナノクリスタルを維持しながら、異なる放射波長から選択する能力は、均一なサイズの半導体ナノクリスタルを必要とする適用(すなわち、例えば全ての半導体ナノクリスタルが、立体的な制限のある適用において使用される場合、非常に小さな寸法を有することを必要とする適用)において重要であり得る。
【0049】
(c.親和性分子)
本発明の半導体ナノクリスタルプローブの一部を形成する特定の親和性分子は、(例えば、生物学的材料内でのその存在または不在を確認すべき)特定の検出可能物質に対するその親和性に基づいて、選択される。基本的には、親和性分子は、特定の検出可能物質を特異的に認識し得る1つ以上の半導体ナノクリスタル化合物に連結され得る任意の分子を包含し得る。一般に、検出可能物質の特異的な認識を提供するための、色素分子と組み合わせて、従来技術で有用な任意の親和性分子は、本発明の半導体ナノクリスタルプローブの形成に有用であることが見出される。このような親和性分子には、例示のみの目的として、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、核酸(単量体状およびオリゴマー状の両方)、タンパク質、多糖類、および小分子(例えば、糖類、ペプチド、薬物およびリガンド)のような種類の物質が挙げられる。このような親和性分子のリストは、公開された文献、例えば例示の目的として、「Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals」(第6版)(R.P.Hauglandによる、Molecular Probes,Inc.から入手可能)にて、入手し得る。
【0050】
(d.連結剤)
本発明の半導体ナノクリスタルプローブは、通常、有機材料内での1種以上の検出可能物質の検出、特に、生物学的材料内での1種以上の検出可能物質の検出に関して、有用性が分かっている。これは、有機/生物学的材料中の検出可能物質の存在がその後確認され得るように、半導体ナノクリスタルプローブを検出可能物質に結合する上記親和性分子または部分が、半導体ナノクリスタルプローブ中に存在することを必要とする。しかし、半導体ナノクリスタルは無機であるので、これらは、親和性分子に直接結合しない可能性がある。従って、この場合には、無機半導体ナノクリスタルを半導体ナノクリスタルプローブ中の親和性分子に連結し得る何らかのタイプの連結剤が、半導体ナノクリスタルプローブ内に存在しなければならない。この連結剤は、1つ以上の半導体ナノクリスタルを1つ以上の親和性分子に連結する、1つ以上の連結剤の形態であり得る。あるいは、2つの種類の連結剤が利用され得る。1つ以上の第一連結剤は、1つ以上の半導体ナノクリスタルに連結され得、また1つ以上の第二連結剤に連結され得る。1つ以上の第二連結剤は、1つ以上の親和性分子、および1つ以上の第一連結剤に連結され得る。
【0051】
半導体ナノクリスタルが連結剤を介して親和性分子に連結し得る1つの形式には、連結剤(例えば、3−メルカプトプロピル−トリメトキシシランなどの置換シラン)を用いて、半導体ナノクリスタルをガラス(例えば、シリカ(SiOx、ここで、x=1〜2))の薄層でコートして、ナノクリスタルをガラスに連結することによる。ガラスコーティングされた半導体ナノクリスタルは、次いで、連結剤、例えば、3−アミノプロピル−トリメトキシシランなどのアミンでさらに処理され得、これは、このガラスコートされた半導体ナノクリスタルを親和性分子に連結するように作用する。すなわち、ガラスコートされた半導体ナノクリスタルは、次いで、親和性分子に連結され得る。最初の半導体ナノクリスタル化合物がまた、親和性分子に効果的に連結するために、製造した後に化学的に修飾され得ることは、本発明の考慮の範囲内である。種々の文献には、この目的に使用され得る標準的な種類の化学材料が要約されており、特に、「Handbook of Fluorescent Probes and Research
Chemicals」(6版)(R.P. Hauglandによる、Molecular Probes, Inc.から入手可能)、および「Bioconjugate Techniques」の教本(Greg Hermansonによる、Academic Press、New Yorkから入手可能)がある。
【0052】
半導体ナノクリスタルを、ガラスの薄層でコートし得る場合、このガラスは、例えば、約0.5nm〜約10nmの範囲、好ましくは、約0.5nm〜約2nmの範囲の厚さを有するシリカガラス(SiOx、ここで、x=1〜2)を含み得る。
【0053】
半導体ナノクリスタルは、まず、ナノクリスタルを界面活性剤(例えば、トリス−オクチル−ホスフィンオキシド)でコートし、次いで、界面活性剤でコートされたナノクリスタルを、連結剤(例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)の塩基性メタノール溶液に溶解し、続いて部分的に加水分解し、続いてガラス親和性分子連結剤(例えば、アミノプロピルトリメトキシシラン;これは、ガラスに連結し、そして親和性分子との連結を形成するように機能する)の添加により、シリカなどの薄いガラスのコーティングでコートされる。
【0054】
連結剤が、半導体ナノクリスタル上でのガラスコーティングの使用を包含しない場合、これは、特定の親和性分子に依存して、多数の異なる材料を含み得、これは、順に、分析される検出可能物質のタイプに依存する。個々の連結剤は、個々の半導体ナノクリスタルに連結するのに使用され得るものの、同じ半導体ナノクリスタルに1個以上の連結剤を結合してもよく、逆もまた同様であること;あるいは複数の連結剤を使用して複数の半導体ナノクリスタルを連結し得ることも本発明の考慮の範囲内であることもまた、注目されるべきである。さらに、第一および第二の連結剤が使用される場合には、1つ以上の第一連結剤は、同一の第二連結剤に連結され得るか、または1つ以上の第二連結剤は、同一の第一連結剤に連結され得る。
【0055】
プローブ内にて、半導体ナノクリスタル(またはナノクリスタル上のガラスコーティング)および親和性分子の両方に連結するのに使用され得る連結剤のタイプの少数の例を、以下の表に例示するが、これがすべてのリストであることは意図されないことが理解される:
【0056】
【化1】

さらに、個々のナノクリスタル(またはナノクリスタルの群)の周りにカプセル化ネットまたは連結を形成するために、複数の重合可能連結剤が一緒に使用され得ることに注目すべきである。このことは、特定の連結剤がナノクリスタルとの強固な結合を形成できない場合に、特に重要である。このような様式で共に結合して、連結剤のネットワークでナノクリスタルを取り囲み得る連結剤の例としては、以下が挙げられるが、それらに限定されない:ジアセチレン、スチレン−ブタジエン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、アクリルアミド、ビニル、スチリル、および前記酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化リン、ケイ酸塩、ホウ酸塩およびリン酸塩、ならびに上記の少なくともいくつかの重合形態。
【0057】
(e.三次元構造連結剤を有する化合物およびプローブ)
1つの実施形態において、連結剤(上記の多数のものを含む)は、三次元構造(これは、有機物でも無機物でもいずれでもよく、そして固体(多孔質もしくは非多孔質)または中空のいずれでもよい)において、またはその三次元構造として、使用され得る。先行技術において、ラテックス球内に埋包された色素分子の診断用途のための使用は、十分に確立されている。恐らく、最も通常の用途は、1つ以上の色素分子を使用してラテックス球を選択的に着色すること、次いでこの球を多数の目的のタンパク質でコーティングすることを包含する。
【0058】
このような三次元連結剤構造(これは、最も容易に球として概念化され得る)を、本発明の化合物およびプローブにおいて利用することは、このような連結剤に、1つより多い半導体ナノクリスタル、ならびに1つ以上の親和性分子(直接または第二の連結剤を介してのいずれかで)を結合することを可能にするという利点を追加する。この三次元の連結剤構造は、本明細書中以下で、プローブ(半導体ナノクリスタル、連結剤、および親和性分子)の一部として記載され、記載される構造が、化合物(半導体ナノクリスタルおよび連結剤)ならびにプローブの形成に適用されることが理解される。
【0059】
1つ以上の半導体ナノクリスタルが三次元連結剤構造に結合している、化合物またはプローブの利点は、多数の区別可能なプローブを同時に使用する能力にある。例えば、放射線への曝露に応答してプローブによって提供される、検出可能なシグナルとして、可視光の発光を使用する場合には、各々がそれぞれ異なる発光色の単一の半導体ナノクリスタルを含む、複数の区別可能なプローブ(例えば、青色プローブ、緑色プローブ、赤色プローブ)が、同時に使用され得る。さらに、各プローブが複数の半導体ナノクリスタルを含み、全てが同一のプローブにおいて単一の三次元連結剤に結合する場合には、さらに多数の区別可能なプローブが同時に使用され得る(例えば、青−緑プローブ、緑−赤プローブ、青−赤プローブ、青−緑−赤プローブ)。三次元の連結剤構造に結合した半導体ナノクリスタルの組み合わせのなおさらなる増加は、異なる強度の検出可能シグナルを提供するために、同一のプローブ内で三次元連結剤に結合する、個別に発光する半導体ナノクリスタルの数を変化させること(例えば、第二の青色発光半導体ナノクリスタルを、青−赤プローブに添加して、青−青−赤プローブを得ること、または別の赤色発光半導体ナノクリスタルを青−赤プローブに添加して、青−赤−赤プローブを達成すること)によって、達成され得る。このことは、同時に区別可能なプローブの総数をさらに増加させる。同様の利点は、プローブ内の半導体ナノクリスタルにより提供される検出可能なシグナル(単数または複数)が、このプローブを放射線に曝露することから生じる散乱(回折を含む)または吸収から生じる場合に、得られ得る。
【0060】
単一の三次元構造の連結剤への複数の半導体ナノクリスタルの組み込みと同様に、複数の親和性分子が、同一の三次元連結剤構造に連結されて、複数の検出可能構造(検出可能構造の組合せを含む)が、各半導体ナノクリスタルプローブによって、区別してかつ同時に検出されることを可能にし得る。
【0061】
ダウン症候群の研究における各半導体ナノクリスタルプローブでの複数の親和性分子の使用の例において、ヒトの身体内の特定の染色体(例えば、染色体21)に存在するDNA配列のサブセットは、複数の別個の一本鎖DNAフラグメントの形態で、1つ以上の赤色発光ナノクリスタルに連結する三次元構造の連結剤に付着される場合に、半導体ナノクリスタルプローブの親和性分子として作用し得る。異なる染色体(例えば、染色体3)に存在するDNA配列のサブセットは、1つ以上の緑色発光ナノクリスタルに連結される異なる三次元構造の連結剤に同様に付着される場合に、別のプローブの一本鎖DNA親和性分子として作用し得る。ヒト患者由来の全DNAサンプルを含有する材料(または、羊水穿刺サンプル)(ここで、1つ以上の検出可能な物質が、一本鎖DNAの形態で存在する)は、これらの半導体ナノクリスタルプローブで処理され得、プローブの一本鎖DNA親和性分子の、一本鎖DNA検出可能物質との結合を生じる。この結合は、二本鎖DNA(1つまたは両方のプローブにおいて)の形成を生じ、DNAサンプル中での1つ以上のDNA配列(すなわち、一本鎖DNA検出可能物質により表されるDNA配列)の存在を指標する。この工程は、一本鎖DNA親和性分子の、一本鎖DNA検出可能物質との結合を、例えば、この材料(これは、検出可能な物質を含み、そして半導体ナノクリスタルプローブで処理されている)に二本鎖DNA結合色素分子(これは、青色蛍光を発し得る)を添加することによって検出する工程に従い得る。半導体ナノクリスタルプローブ上に存在する、二本鎖DNA結合色素分子の量(青色蛍光の量により決定される)は、この半導体ナノクリスタルプローブに会合する二本鎖DNAの量を指標し得る。従って、染色体21由来のDNAを含有するプローブからの青色蛍光は、染色体21由来の一本鎖DNA親和性分子の、染色体21由来の相補的な一本鎖DNA検出可能物質との、二本鎖DNAを形成する結合を指標する;そして染色体3由来のDNAを含有するプローブからの青色蛍光は、染色体3由来の一本鎖DNA親和性分子の、染色体3由来の相補的な一本鎖DNA検出可能物質との、二本鎖DNAを形成する結合を指標する。
【0062】
ダウン症候群に関するこの研究において、染色体3由来の一本鎖DNA親和性分子を含む半導体ナノクリスタルプローブ(これは、緑色光を発する)は、参照プローブとして作用し得、ここで、発光する緑色光対発光する青色光の比は、半導体ナノクリスタルプローブ上に存在する二本鎖DNAの相対量を表す。染色体21由来の一本鎖DNA親和性分子を含む半導体ナノクリスタルプローブ(これは、赤色光を発する)は、試験プローブとして作用し得、ここで、発光される赤色光対発光される青色光(試験プローブから)の比は、参照プローブからの緑色光対青色光の比と比較され得る。試験比と参照比との間の差異は、試験染色体(染色体21)の過剰または少ないコピーを指標し得、この場合には、ダウン症候群を指標する。同時に実施され得るような試験の数は、複数の色を複数の半導体ナノクリスタルプローブの各々において使用することによって、有意に増加し得る。
【0063】
上述のように、三次元の連結剤構造は、有機構造を含んでも無機構造を含んでもよく、そして多孔質または非多孔質の固体であっても、中空であってもよい。三次元の連結剤構造が多孔質(または非多孔質)固体である場合には、半導体ナノクリスタルがその中に埋包され得、一方半導体ナノクリスタルは、中空の三次元連結剤構造内にはカプセル化され得る。材料の選択が何であれ、半導体ナノクリスタルが連結剤の三次元構造の内部に(例えば、「ポリマースフィア」内に)組込まれる場合にはいつでも、連結剤を含む材料は、(1)第一エネルギーがエネルギー源から1つ以上の半導体ナノクリスタルに移動することを可能にし(半導体ナノクリスタルをエネルギーに曝露する)、そして(2)1つ以上の半導体ナノクリスタルによって第一エネルギーへの曝露に応答して提供される第二エネルギーが、検出されるかまたは近位構造に移動するかのいずれかを可能にする、の両方でなければならないことが適切である。これらのエネルギーの移動は、第一および/または第二のエネルギーに対して透明である三次元連結剤によって、ならびに/あるいは第一および/または第二のエネルギーを、この半導体ナノクリスタルプローブが検出可能なシグナルを提供するか、もしくはエネルギーへの曝露に応答して近位構造にエネルギーを移動させるかのいずれかを依然として可能にする形態で、保存し得る三次元連結剤によって、達成され得る。
【0064】
三次元連結剤が有機材料を含む場合には、この有機材料は、例えば、1つ以上の樹脂またはポリマーを含み得る。この半導体ナノクリスタルは、三次元の連結剤に、半導体ナノクリスタルを樹脂もしくはポリマーと物理的に混合することによって連結され得るか、またはモノマーの重合の前にモノマーと混合されてポリマーを形成し得る。あるいは、半導体ナノクリスタルは、モノマーまたは樹脂もしくはポリマーのいずれかと共有結合することによって三次元連結剤に連結され得るか、あるいは半導体ナノクリスタルは、吸着(外部への接着)または吸収(少なくとも部分的に内部に埋包される)によって、三次元連結剤に連結され得る。有機三次元連結剤として使用され得るポリマーの例としては、ポリ酢酸ビニル、スチレン−ブタジエンコポリマー、ポリアクリレート、およびスチレン−ジビニルベンゼンコポリマーが挙げられる。1つより多いポリマー鎖が、三次元連結剤に存在し得、そして1つより多い種類のポリマーが、三次元連結剤において使用され得る。最終製品は、中実構造、中空構造、または半固体多孔質構造であり得る。
【0065】
三次元連結剤構造物が無機材料を含む場合、ガラス球のようなガラス構造物が、本明細書中の1以上の半導体ナノクリスタルをカプセル化するために使用される透明構造物に含まれ得る。この半導体ナノクリスタルは、低融点のガラスの粒子と混合され得、次いで、この混合物を加熱して、所望の三次元構造物(例えば、球体)を形成する。あるいは、多孔質ガラス(例えば、多孔質石英ガラス)は、所望の形状に形成され(または、多孔質コーティングとして固体基板上に適用され)、続いて、連結剤構造物の細孔に半導体ナノクリスタルを取り込み得る。以前に記載したガラスコーティング半導体ナノクリスタルをまた改変して、例えば、このような半導体ナノクリスタルの核をコーティングするガラスを提供するか、または同じもしくは異なる半導体ナノクリスタルを含む、このような複数のガラスコーティング半導体ナノクリスタルを三次元の塊に焼結することによって、本発明の実施形態の三次元連結剤構造物を提供し得る。
【0066】
区別可能に使用され得る三次元構造プローブの数のさらなる増加は、この三次元構造プローブの複数の構造物の1つに1以上の同じ半導体ナノクリスタルを配置し、そして多数の独特の同定可能なプローブを形成させるような形式で、このプローブの種々の構造物を組織化することから生じ得る。例えば、単一のプローブにおいて、この三次元構造連結剤は、第一サブ構造物を含む第一ポリマー中の第一半導体ナノクリスタル、および第二サブ構造物を含む第一サブ構造物と混合不可能な第二ポリマー中の第二半導体ナノクリスタルを含み得る。
【0067】
これらのサブ構造物の配置の1例は、オニオン(onion)の種々の層と類似の様式である。このような構造において、種々のサブ構造物層に位置された、いくつかの特異な発光半導体ナノクリスタルの異なる配置は、互いに区別され得る。従って、青色の半導体ナノクリスタルの内部核を含み、赤色の半導体ナノクリスタルの第一サブ構造物層によってカプセル化され、緑色の半導体ナノクリスタルの第二サブ構造物層によってカプセル化されたプローブは、緑色の半導体ナノクリスタルの内部核を含み、青色の半導体ナノクリスタルの第一構造物層によってカプセル化され、赤色の半導体ナノクリスタルの第二構造物層によってカプセル化されるプローブと区別され得る。従って、半導体ナノクリスタルプローブの異なる構造物を配置することによって、同時に使用され得る区別可能なプローブの数をさらに増加させる。
【0068】
さらに、サブ構造物が異なる配置で組み立てられる種々のプローブが、区別され得る。例えば、オニオン様配置で配置された、赤色、緑色および青色の半導体ナノクリスタルサブ構造物を含むプローブは、サッカーボール様配置で配置された、赤色、緑色および青色の半導体ナノクリスタルサブ構造物を含む、プローブと区別され得る。
【0069】
従って、プローブにおいて、半導体ナノクリスタルの多数の異なる処置が存在し、結果として非常に多数の区別可能なプローブを生じる。これらの処置は、以下の工程を含む:プローブ中の異なる半導体ナノクリスタルの組み合わせを変える工程、プローブ中の類似および異なる半導体ナノクリスタルの濃度を変える工程、半導体ナノクリスタルをプローブの複数のサブ構造物に組み込む工程、ならびにプローブ中に半導体ナノクリスタルを含むこのような構造物の配置を換える工程。
【0070】
複数のナノクリスタルおよび/または複数の親和性分子を、単一プローブに取り込むことにより、種々の核酸配列のためのスクリーニングにおいて、定常相としてプローブを使用することを実証し得、ここで、分析される材料中の核酸配列は、移動相を構成する。
【0071】
半導体ナノクリスタルと、類似または改変された発光波長との独特の組み合わせを各々含み得る、複数のプローブが調製され得る。1以上の公知の核酸配列を含む、1以上の親和性分子の独特な組み合わせは、独特な半導体ナノクリスタルの組み合わせを有する各プローブと関連している。この状況において、用語「核酸配列」は、一本鎖または二本鎖リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA)分子あるいはそれらの化学的誘導体または同位体的誘導体を含むことが、理解されるべきであり、各分子は、2以上の核酸モノマーを含む。ここで、分析される移動相材料中の検出可能な物質を含む、複数の未同定の核酸配列は、上記の複数のプローブに曝露され得る(例えば、定常相のプローブ上を流され得る)。
【0072】
検出、すなわち、プローブに結合された移動相中の核酸配列の同定は、2つの局面を含む。まず、結合物を生じることが、確実にされなければならない。第2に、どのプローブが、それにプローブのどの核酸配列(単数または複数)(親和性分子)が、分析される核酸配列に結合するかの同定が、確実にされなければならない。結合物自体は、分析される核酸配列の全てに前もって結合された標識(例えば、色素分子)の検出によって決定され得る。結合が生じた場合、この標識の存在は、特定のプローブ(単数または複数)に空間的に対応する。核酸配列(単数または複数)の型の同定は、この結合に含まれるプローブ(単数または複数)内の半導体ナノクリスタルの独特の組み合わせに対応するシグナルの検出によって決定され得る。例えば、分析されるプローブおよび材料は、移動相の核酸配列と結合する特定のプローブ(単数または複数)と色素分子の両方からの検出可能なシグナルを得る型の放射線に曝露され得る。次いで、色素分子と半導体ナノクリスタルの両方からのシグナルの空間的に同定可能なグループが、検出され得る。同定される核酸配列から発光する第一シグナルは、任意の配列型の結合された核酸配列(単数または複数)の存在を意味する。このプローブ(およびここで半導体ナノクリスタル)から発光する第二検出可能シグナルは、このプローブの親和性分子を形成する公知の型の核酸配列(単数または複数)によって、プローブに結合される核酸配列(単数または複数)の型を同定する。
【0073】
例えば、分析される材料およびプローブは、色素が励起可能であり、そしてまたこのプローブにおいて半導体ナノクリスタルを励起する振動数のレーザー光源からの電磁放射線に曝露され得る。この色素分子およびプローブ(単数または複数)から得られる検出可能なシグナルは、結合された核酸配列の存在(色素分子からの光)およびそこに結合される特定のプローブの同定(プローブでの半導体ナノクリスタルからの光)を示す1以上の振動数の可視光の発光であり得る。色素分子の発光とプローブ発光の両方の空間的な位置が、一致する場合、このことは、検出された振動数の光を発光するような公知の特定のプローブに結合された特定の核酸配列の存在を示す。
【0074】
従って、分析される移動相からの1以上の核酸配列に一旦結合すると、複数の類似または異なるプローブが、次いで、各プローブに存在する半導体ナノクリスタルの独特の組み合わせに従って同定され得る。このプローブは、順々または同時のいづれかで同定され得る。次いで、各プローブの同定は、各プローブの表面上の親和性分子を含む公知の核酸分子配列によって、独特の核酸配列またはプローブに結合される核酸配列の組み合わせの同定を可能にする。この方法において、多数の異なる核酸配列は、迅速にスクリーニングされ、そして同定され得る。
【0075】
独特で公知の核酸配列(単数または複数)を含む、各親和性分子は、分析されるべき特定の未同定の核酸配列(単数または複数)に特異的に結合し、従って、正確に同定を成すことが、意図される一方で、他の使用が意図され得ることに注目すべきである。例えば、親和性分子部分として、関連する未同定の核酸配列の全グループと結合可能な特定の公知の核酸配列(単数または複数)を有するプローブが、デザインされ得、従って、広範な同定またはスクリーニング試薬としてのプローブの使用を可能にする。
【0076】
(f.プローブへのエネルギーの曝露および発光/吸収/散乱の検出)
半導体ナノクリスタルプローブへのエネルギーの曝露の際、エネルギーのいくらかまたは全ては、半導体ナノクリスタルプローブに移動し得る。このエネルギーの曝露に応答して、この半導体ナノクリスタルプローブは、複数の検出可能なシグナルを提供し得る。これらの検出可能なシグナルとしては、以下が挙げられる(1)電磁放射線の発光、(2)放射線の吸収、および(3)散乱(放射線の回折を含む)。
【0077】
この半導体ナノクリスタルプローブの発光特性は、複数の適用に非常に有用であり得る。以上に記載したように、本発明の半導体ナノクリスタルプローブは、広範なバンド幅で励起され得、さらに先行分野で使用される色素分子と対照的に、狭い波長のバンドでの発光を示す。従って、x線〜紫外線〜可視光線〜赤外線の範囲の波長の電磁放射線を使用して、プローブの半導体ナノクリスタルを励起し得る。さらに、半導体ナノクリスタルは、電子ビーム(e−ビーム)のような特定のビームでの照射により励起可能である。さらに、半導体ナノクリスタルが発光可能である広範なバンド幅のために、いくつかのプローブ(例えば、異なる周波数で光を発するいくつかのプローブ)の同時の励起のために共通の励起源を使用し得、従って、同時に励起すること、ならびに例えば、試験される材料中でいくつかの検出可能な物質の存在を示す、いくつかのプローブの存在を検出することを可能にする。
【0078】
従って、例えば、所与の振動数(例えば、青色光)のレーザ照射源を使用して、第二周波数(例えば、赤色光)の放射線を発光し得る可能な第一半導体ナノクリスタルプローブを励起し得、これは、照射される物質中に、特定の赤色光発光半導体ナノクリスタルプローブが結合した第一検出可能物質の存在を示す。同時に、同じ青色光レーザ源がまた、第3振動数(例えば、緑色光)の放射線を発光し得る、第二半導体ナノクリスタルプローブ(同じ材料中)を励起し得、これは、照射された材料中に特定の緑色光発光半導体ナノクリスタルプローブが結合した第二検出可能物質の存在を示す。従って、先行技術と異なり、多励起源を使用することを必要とせず(本発明の半導体ナノクリスタルプローブが、励起し得る広範なバンド幅のため)、そして各プローブの特定の半導体ナノクリスタルの発光の狭いバンドにより、発光した放射線を検出するためにのシークエンスおよび/またはエラボレートフィルタリング(elaborate filtering)の排除を可能にする。
【0079】
放射線に応答して、半導体ナノクリスタルプローブによって提供される別の検出可能なシグナルは、吸収である。半導体ナノクリスタルプローブ(生物学的材料中で検出可能な物質に結合される)の存在は、半導体ナノクリスタルプローブによる放射線の吸収の検出によって示され得る。半導体ナノクリスタルプローブが、このような広範な吸収波長バンドを有するので、半導体ナノクリスタルのプローブの検出は、検出プロセスの使用条件に従って、広範な波長で実施され得る。例えば、多くの生物学的材料は、可視光線および紫外線を強く吸収するが、x線放射線を強く吸収しない。このような検出可能な材料を含む生物学的材料は、半導体ナノクリスタルプローブを用いて処理され得る。次いで、検出可能な物質と結合した半導体ナノクリスタルプローブの存在は、x線の吸収の検出によって示され得る。
【0080】
本発明の半導体ナノクリスタルプローブはまた、エネルギーの曝露に応答して、検出可能な散乱シグナルを提供し得る。この検出可能な散乱シグナルは、回折シグナルであり得る。従って、例えば、半導体ナノクリスタルプローブと処理される材料内での検出可能物質の存在(ここで、半導体ナノクリスタルプローブで、検出可能な物質に結合している)は、材料を放射線に曝露する際に、散乱断面積または放射線の回折の変化の検出によって同定され得る。
【0081】
本発明の半導体ナノクリスタルプローブはまた、放射線に応答して検出可能なシグナルを提供する代わりに、エネルギーを近位構造物に移動させるような方法で、使用され得る。次いで、このエネルギー移動に応答して、近位構造物は、(1)検出可能なシグナルを提供するか、(2)化学的変化または構造的な変化を受けるか、(3)第二近位構造物にエネルギーを移動させるか、または(4)そのいずれかの組み合わせであり得る。このことは、上記の方法のいずれかによって、半導体ナノクリスタルおよびこの材料を共に導入することによって達成され得、次いで、材料にエネルギーを曝露する。前述のプローブから近位構造物へのエネルギーの移動と対照的に、(以下に記載されるような)近位源からプローブへエネルギーを移動させるために近位源が使用され得ることに注目すべきである。
【0082】
(g.プローブの一般的使用)
一般に、プローブは、材料を処理する際に使用され、例えば、水溶液(例えば、生理食塩水)のような適切なキャリア中に分散されたプローブを、材料に導入することによって検出可能な物質の存在を決定し、プローブの親和性分子がこの検出可能な物質に結合するのを可能にし得る(このような検出可能な物質が材料中に存在する場合)。プローブを材料に導入した後、結合していないプローブは、必要に応じて、この材料から除去され、結合したプローブのみが残り得る。いずれの場合においても、この材料(およびその中のプローブ)は、エネルギー源(これによりプローブ(単数または複数)は検出可能なシグナルを提供し得る)に曝され得る。結合していないプローブが除去されなかった場合、結合したプローブの存在は、複数の方法によって決定され(そして、結合していないプローブと区別され)得、この方法は、結合していない半導体ナノクリスタルプローブのランダムな分散(空間的にランダムな検出可能なシグナルを生じる)とは対照的に、結合したプローブの局在化の結果として生じるより強い検出可能なシグナルの空間的な分離を決定する工程を包含する。
【0083】
半導体ナノクリスタルプローブの材料への添加の代替として、この材料はキャリア(例えば、水溶液)中にあり得、そしてこの材料は、半導体ナノクリスタルプローブを含む区画に導入され得る。この半導体ナノクリスタルプローブは、単独で、キャリア中に存在し得るか、または固体支持体に結合され得る。この材料内の検出可能物質の存在は、プローブの親和性分子の検出可能物質への結合を示し得る任意の方法によって決定され得る。これは、例えば、この材料の成分を分離し、そしてこの材料の成分を照射に暴露することによって、達成され得、ここで、半導体ナノクリスタルプローブが存在する場合、これは照射への暴露に応答して、検出可能なシグナルを提供し得る。
【0084】
上記のキャリアは、半導体ナノクリスタルプローブとの反応性がほとんどないかまたは全くなく、そして半導体ナノクリスタルプローブの保存および処理されるべき材料へのこのプローブの適用を可能にする、任意タイプの物質である。このような材料はしばしば、生物学的に由来する水溶液由来の水溶液(例えば、血液由来の血漿)を含む、多くのタイプの水溶液を含む液体である。他の液体には、アルコール、アミン、および半導体ナノクリスタルプローブの成分と反応せず、その解離も起こさない、任意の他の液体が挙げられる。このキャリアはまた、材料中の検出可能物質と共に、プローブにより実施されている処理または分析を妨害しない物質を含む。
【0085】
本発明の半導体ナノクリスタルプローブのさらなる用途は、1つ以上の空間的に近位の供給源から移動したエネルギーに応答して、検出可能シグナルを提供することである。この文脈において、「エネルギー移動」とは、以下の(1)または(2)のいずれかによる、一方の原子、分子または任意の他の物質(例えば、ポリマー、ゲル、脂質二分子層など)から、別の原子、分子、または任意の他の物質へのエネルギーの移動を意味する:(1)放射経路(例えば、第1の原子または分子による放射の放出、続く散乱(回折を含む)、および/または第2の原子または分子による放出された放射の吸収);または(2)非放射経路(例えば、第1の原子または分子から第2の原子または分子への蛍光共鳴エネルギー移動、すなわちFRET)。用語「近位供給源」とは、別の原子または分子あるいは任意の他の物質にエネルギーを移動し、そして/またはこれらから移動したエネルギーを受け取り得る、原子、分子または他の物質を意味する。用語「空間的に近位の供給源」とは、エネルギーを近位供給源から半導体ナノクリスタルプローブへ移動し得るに十分接近した間隔の近位の供給源を意味する。例えば、FRETの場合において、空間的に近位供給源は、半導体ナノクリスタルプローブから10nm以下の間隔を空けられた近位供給源を含む。放射性エネルギーの移動の場合において、空間的に近位の供給源は、半導体ナノクリスタルプローブから1μm以下の間隔をあけられた近位供給源を含む。
【0086】
近位供給源から半導体ナノクリスタルプローブへ移動するエネルギーは、この近位供給源から発生し得る(例えば、近位供給源内の原子(単数または複数)の放射性崩壊)か、または、以下に説明されるように、近位供給源から離れたエネルギー源による励起の結果として生じ得る(例えば、レーザーによる近位供給源の色素分子の励起)。例示のエネルギー移動の放射経路は、(近位供給源の)放射性核種から半導体ナノクリスタルプローブへのγ放射の移動である。移動したγ放射は、次いで、半導体ナノクリスタルプローブに吸収され得、このプローブは、γ放射の吸収に応答して、電磁放射線の検出可能な放射シグナルを提供する。例示の非放射性経路は、以下に記載されるように、外部から励起された近位供給源からのFRETによる半導体ナノクリスタルの活性化である。
【0087】
このような空間的に近位のエネルギー移動は、近位供給源の濃度、ならびにプローブから近位供給源の距離を測定する際に有用であり得る。空間的に近位のエネルギー移動はまた、エネルギーが移動する供給源を、プローブに対して空間的に近位にする事象の検出において、使用され得る。
【0088】
半導体ナノクリスタルプローブを使用する、空間的に近位のエネルギー移動の1つの例は、濃度の指標としてであり、ここで半導体ナノクリスタルプローブは、本質的に、エネルギー移動レポーターとして働く。すなわち、半導体ナノクリスタルプローブは、例えば、検出可能な放射シグナルを提供し得、その強度は、エネルギーが移動される近位供給源の局所的な濃度の関数である。
【0089】
これにより、プローブは、エネルギーが移動する近位供給源の濃度を決定するために使用され得る。この方法の可能な用途は、パルス−チェイス実験を使用して特定の長さの時間の間、細胞によって合成される、亜鉛フィンガータンパク質(例えば、RAG1タンパク質)の量を測定することである。細胞混合物は、増殖培地に放射性亜鉛イオンを添加しながらパルスされ得、そして特定の長さの時間の後、この放射性亜鉛イオンに対して大過剰の(例えば、100倍より多い)非放射性亜鉛イオンを添加することによってチェイスされ得る。このようなパルス−チェイス実験により、パルスとチェイスとの間の特定の長さの時間の間に合成される亜鉛含有タンパク質のみに取り込まれる1つ以上の放射性亜鉛イオンが生じる。次いで、この細胞は溶解されて、1つ以上の亜鉛含有タンパク質を含む可溶性細胞抽出物を生じ得る。次いで、特定の亜鉛フィンガータンパク質に選択的に結合する親和性分子(例えば、抗体)を含む半導体ナノクリスタルプローブが、この可溶性細胞抽出物に添加され、この半導体ナノクリスタルプローブが特定の亜鉛フィンガータンパク質に結合され得る。1つ以上の放射性亜鉛イオンを含み、かつ半導体ナノクリスタルプローブに結合された、エネルギーが移動する近位供給源として働く、特定の亜鉛フィンガータンパク質の濃度は、結合した特定の亜鉛フィンガータンパク質の放射性亜鉛イオンから移動したエネルギーに応答して、半導体ナノクリスタルプローブによって提供される検出可能なシグナルによって示され得る。
【0090】
半導体ナノクリスタルプローブを使用する空間的に近位のエネルギー移動の別の例示は、距離の指標としてである。半導体ナノクリスタルプローブからの検出可能なシグナル(例えば、放射)の強度は、半導体ナノクリスタルプローブと、エネルギーが移動する近位供給源との間の距離(ただし、この距離は、約1μm未満である)の関数である。従って、半導体ナノクリスタルプローブによって提供される検出可能なシグナルは、半導体ナノクリスタルプローブとエネルギーが移動する近位供給源との間の距離の指標として役立ち得る。このための可能な用途は、細胞内の多サブユニット複合体の(例えば、転写開始複合体、リボソーム、脂質−リポタンパク質複合体など)個々のサブユニットの空間的な近さを決定する能力におけるものである。例えば、半導体ナノクリスタルプローブは、リボソームのタンパク質サブユニットと結合し得、一方、リボソームのRNAサブユニットは、放射性リン原子で標識され得、この放射性リン原子は、エネルギーが移動する近位供給源として役立つ(この例示において、近位供給源から半導体ナノクリスタルプローブに移動するエネルギーは、近位供給源から発生する)。検出可能なシグナルの放射の強度は、半導体ナノクリスタルプローブと、エネルギーが移動する近位供給源との間の距離の関数であるため、タンパク質サブユニットに結合した半導体ナノクリスタルプローブによって提供されるシグナルは、半導体ナノクリスタルプローブに結合されたタンパク質サブユニットの部分と、エネルギーが移動する放射性リン原子を含むRNAの部分との間のおよその距離を示す。
【0091】
半導体ナノクリスタルプローブの空間的に近位のエネルギー移動の使用はまた、事象の発生を検出するために利用され得る。この事象は、例えば、エネルギーが移動する供給源を、半導体ナノクリスタルプローブに対して空間的に近位に位置し得る。検出可能なシグナルは、エネルギーが移動する近位供給源と半導体ナノクリスタルプローブとの間の距離の関数であるため、この半導体ナノクリスタルプローブにより提供されるシグナルは、この供給源を、エネルギーを近位供給源から半導体ナノクリスタルプローブまで移動し得るのに十分に近位(約10nm未満)にする事象を反映する情報を生じ得る。例示として、半導体ナノクリスタルプローブは、甲状腺ホルモンレセプター分子と結合し得る。チロキシンのような甲状腺ホルモンは、放射性ヨウ素原子で標識され得、この放射性ヨウ素原子は、エネルギーが移動する供給源として役立つ。チロキシンを甲状腺ホルモンレセプターに結合させる事象はまた、チロキシン中の放射性ヨウ素原子を、半導体ナノクリスタルプローブに対して空間的に近位にする。従って、この結合事象は、エネルギーを、放射性ヨウ素原子から半導体ナノクリスタルプローブに移動させ、このプローブは、エネルギー移動に応答して検出可能なシグナルを提供し得る。従って、検出可能な応答は、チロキシンが甲状腺ホルモンレセプターに結合しているという事象の指標として役立つ。
【0092】
1つ以上の近位供給源から1つ以上の半導体ナノクリスタルプローブに移動したエネルギーは、近位供給源から発生し得る(近位供給源内の原子(単数または複数)の放射性崩壊の例の場合)か、または近位供給源から離れたエネルギー源による、1つ以上の近位供給源の励起の結果として生じ得るかのいずれかである。用語「近位供給源から離れたエネルギー源」とは、エネルギーを近位供給源に移動させる任意の放射または任意の他のエネルギーの、供給源を意味する。1つ以上の近位供給源から離れたエネルギー源は、エネルギーが半導体ナノクリスタルプローブに移動する近位供給源に対して、空間的に遠位であるかまたは空間的に近位であるかのいずれかであり得る。従って、エネルギーは、空間的に遠位のエネルギー源(例えば、レーザービームまたは粒子線)から移動し得るか;またはエネルギーは、第2の空間的に近位の供給源から移動し得、この第二近位供給源から、移動したエネルギーが発生し得るか、またはこの第二近位供給源から離れたエネルギー源による励起の結果として生じ得るかのいずれかである。例えば、レーザービームを使用して、第二近位供給源を励起し得、次いで、この第二近位供給源は、第一近位供給源を励起し、そしてこの第一近位供給源は、半導体ナノクリスタルプローブを励起するか;または第二近位供給源は、半導体ナノクリスタルプローブを励起する第一近位供給源を励起する放射性原子であり得る。2つより多くの近位のエネルギー源が、カスケージング効果で、エネルギーを移動するために利用され得ることが理解される。別個の供給源による近位供給源の励起の経路に関与するのは、その別個の供給源が、近位供給源が粒子線に曝された場合に、近位供給源内で核事象を生じ得る粒子線である場合である。次いで、近位供給源は、近位供給源を粒子線に曝すことにより生じる核事象の結果として、エネルギーを半導体ナノクリスタルプローブに移動させ得る。
【0093】
近位供給源の励起が、別個のエネルギー源(例えば、レーザービーム)から移動されるエネルギーの結果として生じる場合、近位供給源から半導体ナノクリスタルプローブへのエネルギー移動は、上記のように、FRETによって達成され得る。従って、近位供給源から離れたエネルギー源(例えば、レーザー)は、近位供給源を励起し得る。近位供給源が、半導体ナノクリスタルプローブから約10nm未満である場合、この近位供給源は、励起状態からの緩和の結果として、蛍光共鳴エネルギー移動により、半導体ナノクリスタルプローブへエネルギーを移動し得る。次いで、半導体ナノクリスタルプローブは、近位分子からのエネルギー移動に応答して、検出可能なシグナル(例えば、電磁放射)を提供し得る。近位エネルギー源から離れたエネルギー源による近位分子の励起、および近位供給源からプローブへのエネルギー移動の経路としてのFRETの使用の両方の例示は、前に記載されたリボソームの例からもたらされ得る。近位供給源として放射性リン原子で標識したリボソームのRNAサブユニットを使用した前の例とは反対に、色素分子は、放射性リン原子の代わりに、RNAサブユニットに結合され得る。次いで、結合した色素分子を有する近位供給源のRNAサブユニットは、別個の供給源(例えば、レーザービーム)によって励起され得る。この励起された近位供給源のRNAサブユニットは、非放射性エネルギー移動経路(例えば、FRET)を経由して、半導体ナノクリスタルプローブにエネルギーを移動し得、この半導体ナノクリスタルプローブは、近位供給源のRNAサブユニットから移動したエネルギーに応答して、検出可能なシグナルを提供し得る。
【0094】
エネルギーを半導体ナノクリスタルプローブに移動させるための近位供給源の使用は、近位供給源が複数の半導体ナノクリスタルプローブにエネルギーを移動させることを可能にする様式で改変され得る。例示によって、近位分子としての色素分子で標識されたRNA分子を使用する以前の例において、複数のRNA分子が標識され得、それぞれは、異なって放射する半導体ナノクリスタルプローブを有する。蛍光共鳴エネルギーは、色素分子から1つ以上の異なって放射する半導体ナノクリスタルプローブに移動され得る。次いで、1つ以上の異なって放射する半導体ナノクリスタルプローブによって提供される検出可能なシグナルは、色素と1つ以上の半導体ナノクリスタルプローブとの間の近接を意味する。
【0095】
特定の波長放射の半導体ナノクリスタルが、特定のプローブの使用のために選択され得るので、半導体ナノクリスタルプローブは、例えば、近位供給源からのγ放射を放射する放射性原子に曝露され得、そして、半導体ナノクリスタルプローブからの放射の波長は、近位供給源からのγ放射への曝露に応答して、半導体ナノクリスタルプローブ内の半導体ナノクリスタルの性質に従って、紫外線放射であるように選択され得る。あるいは、近位供給源からの、例えば、γ放射への曝露に応答して、半導体ナノクリスタルの放射の波長は、赤色光であるように選択され得る。同一の放射への曝露に応答して、複数かつ選択可能な異なる放射を提供する能力は、複数の異なって放射する半導体ナノクリスタルプローブが同時に利用されることを可能にする。それぞれが、異なる波長の電磁放射を放射する複数のプローブの同時使用は、例えば、特定の半導体ナノクリスタルプローブと供給源(ここから、エネルギーが半導体ナノクリスタルプローブに移動される)との間の近位が、半導体ナノクリスタルプローブからの特定の波長の放射によって決定され得る構成において使用され得る。例えば、半導体ナノクリスタルプローブが放射する可視光において異なる3つの半導体ナノクリスタルプローブ(例えば、青、緑、および赤の放射半導体ナノクリスタルプローブ)は、分子の会合の部分(例えば、小器官)に結合され得る。1つの特定の半導体ナノクリスタルプローブに対して近位にある結合された(それによって、近位供給源として作用する)放射性原子を有する特定の分子の存在は、特定の色の放射を生じ、特定の分子と特定の半導体ナノクリスタルプローブとの間の近位およおびその関連した親和性分子を示す。
【0096】
複数の半導体ナノクリスタルの使用に類似して、エネルギーを1つ以上の半導体ナノクリスタルプローブに移動することが可能な複数の近位供給源を使用することが可能である。
【0097】
エネルギーが、1つ以上の近位供給源から1つ以上の半導体ナノクリスタルプローブへ移動されるプロセスに類似して、エネルギーはまた、半導体ナノクリスタルプローブのエネルギーへの曝露に応答して、1つ以上の半導体ナノクリスタルプローブから1つ以上の近位構造物に移動される。本明細書中で使用される場合、用語「近位構造物」は、原子、分子、または任意の他の物質(例えば、ポリマー、ゲル、脂質二分子層、および半導体ナノクリスタルプローブに直接結合した任意の物質)であり得、それらは、別の原子または分子あるいは別の物質(半導体ナノクリスタルプローブを含む)から移動されたエネルギーを受容し得る。半導体ナノクリスタルプローブから移動されたエネルギーに応答して、近位構造は、(1)検出可能なシグナルを提供し得るか、(2)化学的および/またはコンフォメーション変化を受け得るか、(3)1つ以上の第二近位構造物にエネルギーを移動させ得るか、または(4)それらの任意の組み合わせであり得る。本明細書中で使用される場合、「第二近位構造物」は、半導体ナノクリスタルプローブからのエネルギーを受容する第一近位構造物から移動される近位構造物である。第一近位構造物から移動されたエネルギーに応答して、第二近位構造物は、(1)検出可能なシグナルを提供し得るか、(2)化学的および/またはコンフォメーション変化を受け得るか、(3)1つ以上の第三近位構造物(ここで、「第三近位構造物」は、エネルギーが第二近位構造物から移動された構造物である)にエネルギーを移動させ得るか、または(4)それらの任意の組み合わせであり得る。近位構造物間のエネルギー移動は、カスケージング効果において、第三近位構造物を越えてさらに延長され得ることが理解される。
【0098】
検出可能なシグナルを提供する近位構造物にエネルギーを移動させるための半導体ナノクリスタルプローブの使用の例示は以下の通りである。半導体ナノクリスタルプローブを使用して、広い波長バンドの放射にわたる励起に応答して、青色の範囲の可視光の狭い波長バンドの放射を提供し得る。この半導体ナノクリスタルプローブが、色素分子と空間的に近位である場合(本明細書中で、色素分子は、近位構造物として作用する)、この色素分子は、半導体ナノクリスタルプローブからのエネルギーの移動の際に励起され得る。次いで、励起された色素分子は、半導体ナノクリスタルからのエネルギー移動による励起に応答して、検出可能な赤色光放射を提供し得る。
【0099】
半導体ナノクリスタルプローブから移動されたエネルギーに応答して、化学的な変化を受ける位近構造物にエネルギーを移動するための半導体ナノクリスタルプローブの使用の例示は、共有結合を壊すための半導体ナノクリスタルの使用である。半導体ナノクリスタルプローブは、エネルギーに曝露され得、次いで、エネルギーへの曝露に応答して、エネルギーを近位構造物に移動し得る。移動されたエネルギーは、例えば、電磁放射であり得、この電磁放射は、近位構造物の共有結合の光分解性切断(すなわち、光分解)を誘起し得る。光分解のこの作用はまた、近位構造の一部分の脱離を生じる。この近位構造物の脱離された一部分は、例えば、細胞傷害性特性を有する分子のような治療目的のために使用される分子であり得る。共有結合を壊すための、この半導体ナノクリスタルプローブの使用は、半導体ナノクリスタルプローブを放射に曝露する程度に従って、線量特異的な様式で、制御され得る。半導体ナノクリスタルプローブの放射への曝露のこの制御は、近位構造物に移動されたエネルギーの制御を生じ、これは、共有結合の光分解性切断を制御し、そして最終的に、近位構造物の一部分の脱離を制御する。さらに、近位構造物の一部分は、半導体ナノクリスタルプローブの1つ以上の親和性分子の特異性に従って、空間的に特異的な様式で脱離され得る。
【0100】
近位構造物における共有結合を壊すための、この半導体ナノクリスタルプローブの使用は、半導体ナノクリスタルプローブに移動されるエネルギーが、半導体ナノクリスタルプローブを取り囲む物質に対して透明である長波長を有する場合、特に有効であり得る。例えば、半導体ナノクリスタルプローブは、700nmの波長(赤外線放射)で放射するレーザーからの電磁放射に曝露され得る。生物学的物質のような物質は、700nmでの放射をほとんど吸収しないが、半導体ナノクリスタルプローブは、700nmでの放射を吸収し得る。活性化のために紫外線放射を必要とすることは、光分解性切断に一般的である。本発明の半導体ナノクリスタルプローブの利点は、2光子吸収と称されるプロセスの結果として赤外線放射に曝露される場合、それが、紫外線放射に対応するエネルギーを移動させることによって、なされ得ることである。2光子吸収は、半導体ナノクリスタルプローブが、放射の2つの量子(すなわち、2つの光子)を同時に吸収する様式で、放射に曝露される場合に、起こり得、そして、半導体ナノクリスタルプローブの励起の得られたレベルは、それが、放射の1つの量子を吸収する場合に、半導体ナノクリスタルプローブが有するものより、2倍も大きい励起のレベルである。放射のエネルギーと波長との間の物理的関係(E=hc/λ、ここで、Eはエネルギーであり、hおよびcは定数であり、そしてλは波長である)によって、励起のレベル(特定の波長を有する放射の第1のタイプの2つの量子に対応する)は、第1のタイプの放射の波長の半分の波長を有する第2のタイプの放射の1つの量子の吸収によって引き起こされる励起のレベルに対応する。従って、半導体ナノクリスタルプローブが、700nmの波長の2つの光子を同時に吸収する場合、半導体ナノクリスタルプローブの励起レベルは、約350nmの波長を有する1つの光子を吸収する半導体ナノクリスタルプローブの励起レベルと同じである。従って、2つの光子吸収によって励起される半導体ナノクリスタルプローブは、例えば、半導体ナノクリスタルプローブが曝露される放射の波長よりも短い波長を有する電磁放射を放射することによって、エネルギーを移動し得る。
【0101】
この2光子吸収の使用の例示として、半導体ナノクリスタルプローブ(ガン性細胞または組織の存在を代表する1つ以上の検出可能な物質に特異的に結合し得る1つ以上の親和性分子を含む)は、700nmで放射する赤外線レーザーからの放射に曝露され得る。次いで、この半導体ナノクリスタルプローブは、赤外線放射(2光子吸収のプロセスを介して)によって、励起され得、次いで、紫外線放射(これは、より短い波長(例えば、350nm)を有する)を放射し得る。次いで、紫外線領域のこの放射された放射(または、ある他のプロセスによって(例えば、FPETによって)移動されたエネルギー)は、近位構造物における光分解性切断を引き起こし得、このことは、近位構造物から脱離され、そしてガン性細胞または組織に対して毒として作用する細胞傷害性分子を生じる。
【0102】
化学的またはコンフォメーション変化を受ける近位構造物において生じる近位構造物に半導体ナノクリスタルプローブから移動されたエネルギーに対する応答の別の例示は、半導体ナノクリスタルプローブから近位構造物に移動されたエネルギーが熱エネルギーである場合に生じ得る。この熱エネルギーの移動は、タンパク質の熱誘起変性のようなコンホメーション変化を生じ得る。半導体ナノクリスタルプローブは、半導体ナノクリスタルプローブを取り囲む物質によって吸収されない放射を吸収することができ得る。半導体ナノクリスタルプローブの放射への曝露に応答して、半導体ナノクリスタルプローブは、熱エネルギーを近位構造に移動させ得、半導体ナノクリスタルプローブに対して近位にある構造物の局所的な加熱を生じる。この局所的な加熱に応答して、近位構造物は、(1)化学的またはコンホメーション変化を受け得、そして/または(2)エネルギーを第二近位構造物に移動させ得る。従って、物質の放射への曝露(その放射に対して、物質は透明である)は、物質内の局所的な加熱を生じ得る。次いで、半導体ナノクリスタルプローブから近位構造物に移動された熱エネルギーは、近位構造物における化学的またはコンホメーション変化を生じ得、そして/または熱エネルギーのいくつかまたは全てが、第二近位構造物に移動され得、この第二近位構造物自体は、化学的またはコンホメーション変化を受け得、そして/またはいくつかまたは全ての熱エネルギーを第三近位構造物に移動させ得るなど。光分解的に脱離された細胞傷害性分子の例におけるように、熱エネルギーの移動を引き起こすための半導体ナノクリスタルプローブの使用は、半導体ナノクリスタルプローブが放射に曝露される程度に従って、線量特異的様式で制御され得る。さらに、熱エネルギーは、半導体ナノクリスタルプローブの1つ以上の親和性分子の特異性に従って、空間特異的様式で移動さ得る。
【0103】
放射への曝露に応答して、半導体ナノクリスタルプローブから近位構造物に移動された熱エネルギーの量は、ナノクリスタルの高い安定度および大きな吸光率係数特性に起因する大量の局所加熱を生成するのに十分であり得る。起こり得るある程度の局所加熱の特定の例において、半導体ナノクリスタル(これは、赤外線放射を放射する)が、組織1グラム当たり約0.0001グラムの半導体ナノクリスタルの濃度で組織に存在し、これらのナノクリスタルが、紫外線励起供給源(すなわち、紫外線励起エネルギーで励起し得る2光子吸収供給源)に曝露される場合、放射への曝露に応答して、1,000,000回の光周期(飽和レーザーに対する約1秒の曝露)にわたって、これらの半導体ナノクリスタルによって移動される熱エネルギーは、約25℃付近の温度において組織を増殖させ得る。この大量の局所加熱は、例えば、局所的な細胞および組織を殺傷するのに十分なほど大きくあり得;それによって、熱エネルギーを移動させるための、この半導体ナノクリスタルプローブの使用は、ガン性細胞または他の悪性細胞および組織の処置に適用され得る。
【0104】
1つ以上の半導体ナノクリスタルプローブから1つ以上の近位構造物へのエネルギー移動は、先に記載された、1つ以上の近位供給源から1つ以上の半導体ナノクリスタルプローブへのエネルギーの移動のいずれかに類似の様式で起こり得る。それによって、半導体ナノクリスタルプローブは、エネルギーを近位構造物に、放射性または非放射性(例えば、FRET)経路によって、移動させ得る。半導体ナノクリスタルプローブから近位構造物に、放射性経路によって、移動されたエネルギーは、粒子および電磁放射を含み得る。半導体ナノクリスタルプローブから近位港構造物へのエネルギー移動は、半導体ナノクリスタルプローブとは分離されたエネルギー供給源から移動されたエネルギーの結果として、起こり得る。半導体ナノクリスタルプローブから分離されたこのエネルギー供給源は、上記のように、空間的に離れたエネルギー供給源(例えば、レーザービームまたは粒子線)であり得るか;または、このエネルギーは、空間的に近位な供給源から移動され得るかのいずれかであり得る。これは、例えば、空間的に離れたエネルギー供給源を含み、この供給源は、エネルギーを空間的に近位の供給源に移動させ得、エネルギーを半導体ナノクリスタルプローブに移動させ得、エネルギーを近位構造物に移動させ得る。
【0105】
半導体ナノクリスタルプローブのエネルギーへの曝露を含むプロセスにおける半導体ナノクリスタルプローブの使用の前に、この半導体ナノクリスタルプローブは、さらなる合成工程に供され得る前駆体として使用され得る。これらのさらなる合成工程は、改変された半導体ナノクリスタルプローブの形成を生じ、この改変された半導体ナノクリスタルプローブは、前駆体半導体ナノクリスタルプローブの親和性分子と異なる親和性分子を有する。例えば、半導体ナノクリスタルプローブは、その親和性分子部分として1つ以上の核酸モノマーを有し、DNAを大量に合成するためのプロセス(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR))における前駆体(プライマー)として作用し得;そして最終PCR生成物は、前駆体半導体ナノクリスタルプローブの親和性分子より多数の核酸モノマーを有する親和性分子を有する改変半導体ナノクリスタルプローブであり得る。半導体ナノクリスタルプローブが供され得る合成工程としては、例えば、核酸合成(用語「核酸合成」の使用により、核酸モノマーを使用する核酸鎖を合成する任意の酵素的プロセスを意味する)の任意の方法が挙げられる。任意のこのような核酸合成(上記のPCRの場合を含む)において、前駆体半導体ナノクリスタルプローブは、半導体ナノクリスタルプローブの1つ以上の親和性分子部分として、1つ以上の核酸鎖を含み、各々の核酸鎖は、前駆体半導体ナノクリスタルがPCRのような核酸合成反応におけるプライマーとして使用され得るのに十分な多数の核酸モノマーを含む(核酸鎖は、しばしば1〜約50個の核酸モノマーを有する)。用語「核酸鎖」は、複数の単鎖もしくは二重鎖のリボ核酸(RNA)分子もしくはデオキシリボ核酸(DNA)分子またはそれらの化学的誘導体もしくは同位体誘導体を含み、各々の分子は2つ以上の核酸モノマーを含むと理解されるべきである。この核酸鎖親和性分子部分は、所望の核酸合成(鎖は、前駆体(すなわちプライマー)より1つ多い核酸モノマーの長さから、500,000核酸モノマーの長さまで、または所望の場合より多くまで変化し得る)の配列にしたがって核酸モノマーを付加することにより核酸鎖を伸長することにより改変され得る。この改変された半導体ナノクリスタルプローブは、任意の半導体ナノクリスタルプローブの全ての特性および潜在的な用途を有すると理解される。すなわち、改変された半導体ナノクリスタルプローブは、エネルギーへの曝露に応答して1つ以上の検出可能物質と結合し得、かつ検出可能なシグナルを生じ得る。これには、例えば、複数の核酸ベースアッセイ(DNA配列決定アッセイならびに蛍光インサイチュハイブリダイゼーションおよび比較ゲノムハイブリダイゼーションのようなハイブリダイゼーションアッセイを含む)における蛍光マーカーとしての改変された半導体ナノクリスタルプローブ(改変されたDNA配列を有する親和性分子を含む)の使用も含まれ得る。
【0106】
本発明の半導体ナノクリスタルプローブ(または半導体ナノクリスタル化合物)の別の利点は、上昇温(elevated temperature)を含む任意のプロセスにある。本明細書中で使用される場合、「上昇温」は、室温(約25℃)から特定の半導体ナノクリスタルプローブが熱分解を受ける温度までの温度を含むと理解される。これは代表的に、約150℃の温度か、または100℃ほどの低い温度で起こり得る。半導体ナノクリスタルの高度の熱的安定性のために、半導体ナノクリスタルプローブ(または半導体ナノクリスタル化合物)は、上昇温での使用に耐え得る。この使用には、熱循環工程(すなわち、上述のPCRのように低温と高温との間で温度が循環される1つ以上の工程を含むプロセス)を包含するプロセスにおける使用が含まれる。例えば、上記で議論されたように、前駆体半導体ナノクリスタルプローブは、PCRにおいて使用され得、このPCRは、低温(DNA合成工程)と高温(DNA鎖分離工程)との間で温度が循環される複数の工程を必要とする。PCR反応混合物の高温は、約95℃であり得、この温度で多くの色素分子が分解する。半導体ナノクリスタルプローブの熱的安定性により、PCRの熱循環に耐えることを可能にする。
【0107】
PCRにおける半導体ナノクリスタルプローブの使用に加えて、半導体ナノクリスタルプローブの高度の熱安定性の利点は、上昇温を必要とする任意の他のプロセス(例えば、熱ショック法における使用)、または熱安定生物体もしくは熱安定生物体由来の生体分子を使用する方法へ適用され得る。
【0108】
複数の異なる半導体ナノクリスタルプローブの同時使用の例示は、複数の半導体ナノクリスタルプローブが、フローサイトメトリー分析において使用される場合である。従来技術で使用される場合、フローサイトメトリーは、細胞を含む材料を、1つ以上の色素または親和分子に結合された色素と接触させる工程を含み、これにより、それらの細胞の表面上または内部の特定の分子または物質を検出し得る。細胞の表面上または内部における色素分子の存在(および、従って色素が相互作用する特定の分子の存在)は、区画を通してその材料を流すことにより検出され、この区画は、その材料が曝露されるエネルギー、およびエネルギーへの曝露に応じて色素により発生される検出可能なシグナルの両方に対して透過性である。細胞がこの透過性区画内にあるときに、細胞は、色素に吸収され得るエネルギー(例えば、電磁放射)に曝露される。この色素は、電磁放射への曝露の結果として、検出可能なシグナル(例えば、材料が曝露される波長と異なる波長の電磁放射)を放出する。複数の色素が、細胞の表面上または内部における複数の物質の存在を示すために使用される場合、細胞を含む材料は複数の透過性区画を通って流され得、そして複数の異なる色素の存在は、1度に1つ(すなわち、連続的)または1度に少数(最大3つの同時検出)試験され得る。
【0109】
本発明に従って、色素分子を使用する代わりに、細胞を含む材料が、代わりに半導体ナノクリスタルプローブ(実際には複数のプローブであるが、全て同じ検出可能なシグナルを、エネルギーに応じて発生する)と接触され得る。半導体ナノクリスタルプローブは、存在する場合、細胞の表面上または内部において、1つ以上の検出可能物質と結合し得、この物質に、半導体ナノクリスタルプローブの親和性分子が結合し得る。半導体ナノクリスタルプローブの存在(および、半導体ナノクリスタルプローブが結合される1つ以上の特定の検出可能物質の存在)の検出は、最初に細胞を含む材料を半導体ナノクリスタルプローブに接触させることにより起こり得る。次いで、この材料は、透過性の区画を通して流され、ここで材料は紫外線レーザー放射のようなエネルギーに曝露される。半導体ナノクリスタルプローブの存在は、エネルギーヘの曝露に応じて半導体ナノクリスタルプローブにより発生される検出可能なシグナル(例えば、赤色光の放射)により示され得る。従って、半導体ナノクリスタルプローブにより発生される検出可能なシグナルの検出は、半導体ナノクリスタルプローブが結合される、細胞の表面上または内部における、1つ以上の検出可能物質の存在を示し得る。
【0110】
半導体ナノクリスタルプローブの複数のグループ(各グループは、エネルギーへの曝露に応じて同じ検出可能なシグナルを発生する)の使用は、上記の単一半導体ナノクリスタルプローブの使用と同様の様式で行われ得る。細胞を含む材料は、複数の半導体ナノクリスタルプローブと接触され得、次いでこの材料は、複数の透過性区画を通して流される。各区画において、1つ以上の検出可能物質に結合される特定の半導体ナノクリスタルプローブの存在は、特定の半導体ナノクリスタルプローブにより発生される特定の検出可能なシグナルにより示され得る。しかし、従来技術と異なり、別々の半導体ナノクリスタルプローブの各々は、同じエネルギーに曝露された他の半導体ナノクリスタルプローブにより発生される検出可能なシグナルから識別可能な検出可能なシグナルを、(エネルギーに応じて)発生し得るので、各々1つ以上の異なる検出可能物質に結合される1つより多くの半導体ナノクリスタルプローブの存在は、単一の区画において同時に検出され得る。
【0111】
さらに、細胞の表面上または内部における1つ以上の検出可能物質を検出するための、1つ以上の半導体ナノクリスタルプローブを使用する方法は、透過性の区画を通して材料を流すことを必要としなくてもよく、それにより、半導体ナノクリスタルプローブの用途を、任意のサイトメトリー法(すなわち細胞の表面上または内部における検出可能物質の存在を検出するために使用される任意の方法)に拡張する。細胞含有材料を透過性区画を通して流すことに代わりに、細胞に結合した複数の半導体ナノクリスタルプローブのうちの1つ以上の存在は、空間感受性の様式で、異なる半導体ナノクリスタルプローブからのシグナルを検出し得る任意の技術により検出され得る。このような空間感受性の検出方法としては、例えば、共焦点顕微鏡法および電子顕微鏡法、ならびに上述のフローサイトメトリーが挙げられる。
【0112】
以下の実施例は、本発明の半導体ナノクリスタルプローブの形成をさらに例示するだけでなく、生物学的材料のような材料中の検出可能物質の存在を検出するのにそれらを使用することをさらに例示する役割を果たす。
【0113】
(実施例1)
(連結剤に連結した半導体ナノクリスタルを含む)半導体ナノクリスタル化合物の形成を例示するために、(CH34NOH・5H2Oを用いて、pH 10の、(4−メルカプト)安息香酸の5mM溶液20mlを調製した。この溶液に、トリス−オクチルホスフィンオキシドコートされたCdSe/CdS(核/殻)ナノクリスタル20mgを添加し、そして完全に溶解するまで撹拌した。得られたナノクリスタル/連結剤溶液を、50〜60℃で5時間加熱し、次いで、エバポレートにより、数mlまで濃縮した。次いで、等体積のアセトンを添加し、そしてナノクリスタルを、溶液から均一に沈殿させた。次いで、沈殿物をアセトンで洗浄し、乾燥し、次いで、保存し得る。
【0114】
上記調製された半導体ナノクリスタル化合物は、適切な親和性分子に連結され得、生物学的材料を処理して検出可能物質の存在または不在を決定するための本発明の半導体ナノクリスタルプローブを形成し得る。すなわち、上で調製した半導体ナノクリスタル化合物は、例えば、(親和性分子としての)アビジンまたはストレプトアビジンに連結され得、生物学的材料を処理してビオチンの存在を確認するための半導体ナノクリスタルプローブを形成し得る。あるいは、上記調製された半導体ナノクリスタル化合物は、抗ジゴキシギネンに連結され得、生物学的材料を処理してジゴキシギネンの存在を確認するための半導体ナノクリスタルプローブを形成し得る。
【0115】
(実施例2)
(連結剤に連結したシリカコートされた半導体ナノクリスタルを含む)半導体ナノクリスタル化合物の形成を例示するために、メタノール中の25容量%ジメチルスルホキシドの無水溶液120mlに、3−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン200μlおよび3−(アミノプロピル)−トリメトキシシラン40μlを添加した。そしてこの溶液のpHを、(CH34NOHの25重量%メタノール溶液350μlを用いて、10に調整した。この溶液に、CdSまたはZnSまたはZnS/CdSでコートされたCdSeナノクリスタル(CdSの場合、前記Peng、Schlamp、KadavanichおよびAlivisatosの文献で記述された技術により調製され;あるいはZdSの場合、Dabbousiら、「(CdSe)ZnS Core−Shell Quantum Dots:Synthesis and Characterization of a Size Series of Highly Luminescent Nanocrystals」、Journal of Physical Chemstry B 101 9463−9475頁、1997に記載の技術のような技術により調製される)10mgを溶解し、そして数時間平衡化するように攪拌し、150μlの25重量%(CH34NOHメタノール溶液を含むメタノール200mlで希釈し、次いで30分間加熱還流した。次いでこの溶液を冷却し、そして1.0mlの3−(トリヒドロキシシリル)プロピルメチルホスホネート一ナトリウム塩(42重量%水溶液)および40μlの3−(アミノプロピル)トリメトキシシランを含む、90容量%メタノール、10容量%H2Oの溶液200mlと混合した。この溶液を2時間撹拌し、次いで5分間より短い時間加熱して沸騰させ、次いで冷却した。一旦冷却すると、36mlのメタノール中4mlのクロロトリメチルシラン溶液(これは、(CH34NOH・5H2Oを用いて、pH 10に調整された)をこの溶液と混合し、そして1時間撹拌した。次いで、この溶液を30分間加熱沸騰し、室温まで冷却し、そしてさらに数時間攪拌した。次いで、溶媒を60℃で真空下にて、部分的にエバポレートした。この溶液を、オイル状固体として、アセトンで沈殿させ得る。半導体ナノクリスタル化合物は、次いで、水および種々の緩衝溶液中に再溶解され得、それを親和性分子に連結して、生物学的材料を処理して検出可能物質の存在または不在を決定するための本発明の半導体ナノクリスタルプローブを形成するための準備をする。
【0116】
それゆえ、本発明は、(広いかもしくは狭いバンド幅の)電磁放射または粒子線のいずれかにより励起すると、狭い波長バンドの電磁放射線を放射し得、そして/またはエネルギーを吸収し得、そして/または励起を散乱もしくは回折し得る半導体ナノクリスタルを含む半導体ナノクリスタルプローブを提供する。そのことにより、異なる波長の電磁放射線を放射する多数のこのようなプローブ材料を同時に使用することが可能となり、それにより、所定の材料内にて、多数の検出可能物質の存在を同時に検出することが可能となる。プローブ材料は、光または酸素の存在下で安定であり、広いスペクトルにわたるエネルギーで励起され得、そして狭い放射バンドを有し、生物学的材料のような材料での多数の検出可能物質の同時および/または連続的な検出のための改良された材料およびプロセスを生じる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の親和性分子に連結可能であり、かつ近位供給源からの第一エネルギーの曝露に応答して、第二エネルギーを提供し得る、20ナノメーター以下の断面を有する半導体ナノクリスタル粒子であって、該半導体ナノクリスタル粒子が、1つ以上の第一連結剤を結合しており、該1つ以上の第一連結剤のそれぞれが、(i)1つ以上の第二連結剤または(ii)1つ以上の親和性分子に連結し得る半導体ナノクリスタル粒子
【請求項2】
請求項1に記載の半導体ナノクリスタル粒子であって、ここで、前記粒子が10ナノメーター以下の断面を有する、半導体ナノクリスタル粒子
【請求項3】
請求項1に記載の半導体ナノクリスタル粒子であって、ここで、前記粒子が1ナノメーターから10ナノメーターのサイズの範囲の断面を有する、半導体ナノクリスタル粒子
【請求項4】
1つ以上の親和性分子に連結可能であり、かつ第一エネルギーの曝露に応答して、第二エネルギーを提供し得る、半導体ナノクリスタル化合物であって、該半導体ナノクリスタル化合物が、以下:
a)1つ以上の半導体ナノクリスタルであって、それぞれが、20ナノメーター以下の断面を有し、該第一エネルギーの曝露に応答して、該第二エネルギーを提供し得る、半導体ナノクリスタル;および
b)1つ以上の第一連結剤であって、該連結剤の少なくとも一部が、該1つ以上の半導体ナノクリスタルに連結され、該1つ以上の第一連結剤のそれぞれが、(i)1つ以上の第二連結剤または(ii)1つ以上の親和性分子に連結し得、ここで、該1つ以上の第一連結剤の少なくとも1つが、該1つ以上の半導体ナノクリスタルを連結し得る三次元形状構造を含む、第一連結剤、
を含む、半導体ナノクリスタル化合物。
【請求項5】
近位供給源からの第一エネルギーに応答して、第二エネルギーを提供し得る、半導体ナノクリスタルプローブであって、該半導体ナノクリスタルプローブが、以下:
a)20ナノメーター以下の断面を有する1つ以上の半導体ナノクリスタル粒子;および
b)該1つ以上の半導体ナノクリスタル粒子に連結される1つ以上の親和性分子、
を含む、半導体ナノクリスタルプローブ。
【請求項6】
1つ以上の検出可能物質と結合可能であり、かつ近位供給源からの第一エネルギーの曝露に応答して、第二エネルギーを提供し得る、半導体ナノクリスタルプローブであって、該半導体ナノクリスタルプローブが、以下:
a)1つ以上の半導体ナノクリスタルであって、それぞれが、20ナノメーター以下の断面を有し、該第一エネルギーの曝露に応答して、該第二エネルギーを提供し得る、半導体ナノクリスタル;
b)該1つ以上の半導体ナノクリスタルが連結される1つ以上の第一連結剤であって、該1つ以上の第一連結剤のそれぞれが、
(i)1つ以上の第二連結剤;または
(ii)1つ以上の親和性分子、
に連結し得る、第一連結剤;および
c)該1つ以上の第二連結剤または該1つ以上の第一連結剤のいずれかに連結される1つ以上の親和性分子であって、該1つ以上の親和性分子のそれぞれが、該1つ以上の検出可能物質に選択的に結合し得る、親和性分子、
を含む、半導体ナノクリスタルプローブ。
【請求項7】
請求項に記載の半導体ナノクリスタルプローブであって、ここで、前記1つ以上の半導体のナクリスタルのうちの少なくとも1つが、以下:
a)10ナノメーターから20ナノメーターの直径を有する核;および
b)該核の回りに同心円的に配置される、1つ以上の殻、
を含む、半導体ナノクリスタルプローブ。
【請求項8】
明細書中に記載の半導体ナノクリスタルプローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−275311(P2010−275311A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144289(P2010−144289)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【分割の表示】特願2000−605212(P2000−605212)の分割
【原出願日】平成12年2月28日(2000.2.28)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】