生物学的粒子を収集する方法、チップ、装置、及びシステム
本発明は、生物学的粒子を収集するための方法、チップ、装置、及びシステムに関係している。本方法は、帯電した電極に対する生物学的粒子の静電吸着を利用しており、好ましくは、気体サンプルに関して機能する。この方法、チップ、装置、及びシステムは、例えば、空気サンプルからの細菌胞子やウイルスなどの病原粒子の収集に有用であり、この結果、収集された生物学的粒子を分析可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的粒子を収集する方法、チップ、装置、及びシステムに関するものである。この方法は、帯電した電極に対する生物学的粒子の静電吸着を利用しており、好ましくは、気体サンプルに関して機能する。
【背景技術】
【0002】
自然な又は意図的な伝染病を引き起こす能力を有する空気中の病原体の迅速な検出を円滑に実行するには、生物学的物質を含む粒子を更なる分析に適した形態において、空気中から直接的に収集することが最も重要である。通常、1つ又は複数の生物学的有機体を含むか、又は、これらから構成される、粒子(生体粒子)は、空気(のサンプル)を多孔性のフィルタに通すことによって捕獲される。選択した範囲のサイズの粒子を分別するべく、一連のフィルタを使用して適切なサイズの粒子を選択した後に、これらを収集装置(アンダーセン・サンプラ)内の培養培地プレートに収集し、このプレート上で培養可能である。
【0003】
生体粒子が、生きている有機体又は胞子を含んでいる際には、それらを培地プレート上において増殖可能であり(コロニー)、次いで、これを収集し、容易に分析可能である。但し、研究者は、コロニー(コロニー形成単位(Colony Forming Unit:CFU))が可視状態になるまで待たなければならず、培養対象の有機体によって左右されるが、これには数日から数週間の時間を所要し得る。更には、対象の生物学的有機体が、培養培地上で繁殖しないという可能性も存在している。又、対象の粒子がフィルタリングシステムによって捕獲されてしまい、又は、付着してしまい、この結果、検出されないという可能性も存在している。
【0004】
サンプルの損失を補償するべく、システムを通じて大量の空気を処理する必要がある。フィルタサンプリングと組み合わせて使用可能な補完的な方法は、例えば、粒子の初期濃縮を円滑に実行するサイクロンやその他の渦巻タイプの気体サンプラを使用することによって所与の空気容積内の粒子数を極大化するという方法である。この技法を使用して粒子を液体容積内に濃縮し、様々な異なる微生物学的、生化学的、及び分子的な分析のために、捕獲された生体粒子に対する即時アクセスを付与することも行われている。
【0005】
粒子の液体内への注入には、液体の加熱と蒸発を伴い、且つ、捕獲プロセスにおいてシステムが乾燥することを防止するべく、しばしば、大量の液体(1mlを上回る)が必要とされる。この後に、この液体を遠心分離法によって処理することにより、サンプルの最終的な濃縮物を生成可能である。
【0006】
生体粒子のサンプリングは、「空気から空気」法、「空気から表面」法、又は「空気から液体」法によって実行可能である。液体法は、0℃を下回る温度における冷凍現象に起因して面倒なものとなる可能性を有している。サンプリングの主要なパラメータは、そのサンプリング技術のサンプリング容積、捕獲効率、及び濃縮効率である。標準的なサイクロンは、毎秒1m3の空気を採取し、捕獲した粒子を1〜2mlの流体に濃縮する能力を有しており、これは、生化学的分析にとって、大きな容積である。この範囲の容積は、96ウェルのプレートを満たし、且つ、約14ユーロ/プレート/秒に等しい試薬を消費することになろう。サイクロンによる迅速な空気サンプリングの利点が、これに続くサンプルの調整によって損なわれるのは明らかである。
【0007】
1つの方法においては、空気中の生物学的粒子の静電沈降を利用することにより、従来のマイクロスケールの装置内において寒天プレート上に細菌をサンプリングし(Mainelis他(2002a)及びMainelis他(2002b))、且つ、歯科医療設備を浄化している(Iversen及びTolo(1975))。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、空気サンプルなどの気体サンプルから生物学的粒子を直接的に収集する方法、チップ、装置、及びシステムの提供に関するものである。
【0009】
本発明の別の目的は、大量の気体サンプルから格段に小さな容積に生物学的粒子を濃縮する、即ち、生物学的粒子の濃度を増大させる方法、チップ、装置、及びシステムの提供に関するものである。
【0010】
本発明の更に別の目的は、生物学的粒子の収集と濃縮を、同一構造内において、且つ、好ましくは、同一段階において、実行する方法、チップ、装置、及びシステムの提供に関するものである。
【0011】
本発明の更に別の目的は、収集された生物学的粒子の更なる分析を容易に実行可能な方法、チップ、装置、及びシステムの提供に関するものである。
【0012】
本発明の更なる目的は、収集された生物学的粒子の更なる分析を容易に実行可能な方法、チップ、装置、及びシステムの提供に関するものである。
【0013】
又、本発明の目的は、高い捕獲効率によって生物学的粒子を収集する方法、チップ、装置、及びシステムの提供に関するものである。
【0014】
本発明のその他の目的については、以下の説明及び例を参照することによって明らかとなろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、歩留まりを極大化し、且つ、随伴する段階の数を極小化して、サンプル収集の濃縮物への最適化を実現するべく、収集されたサンプルを培地又は液体に適用することなしに、大容量の空気を処理可能な方法、チップ、装置、及びシステムに関するものである。本発明は、最大毎分数百mLの空気の流れを実現する、例えば、微細構造(即ち、チップ)内において実行される、静電粒子収集を伴う生物学的収集システムを開示している。本発明によれば、非常に高い効率により、且つ、様々な後続の分析に非常に好適な形態において、生物学的粒子を捕獲可能である。
【0016】
本発明の最も重要な特徴は、この結果、例えば、空気サンプルから生物学的粒子を濃縮可能であるという点にある。現在使用されている液体に基づいたマイクロシステム、即ち、チップ又はバイオチップ、は、本質的に、マイクロリットルレベルのサイズの液体サンプルを処理する能力しか有していないため、この特徴は、重要である。即ち、マイクロシステムは、例えば、1〜2ml/sを生成するサイクロンから採取される液体サンプルを処理するのには、適していないのである。本発明により、生物学的粒子のサンプリングをマイクロシステム内において直接的に実行する場合には、マイクロシステムは、バイオエアロゾルサンプリング技術として有用なものとなる。
【0017】
本発明の一態様は、空気から生物学的粒子を収集する方法に関するものであり、この方法は、(1)サンプルチャンバと第1及び第2電極を提供する段階であって、サンプルチャンバの少なくとも一部が第1及び第2電極の間に位置するように、第1及び第2電極とサンプルチャンバを配置する、段階と、(2)サンプルチャンバ内に気体サンプルを提供する段階と、(3)第1及び第2電極間に電界を印加することにより、サンプルチャンバ内における気体サンプル内の生物学的粒子の静電収集を支援する段階と、を有している。
【0018】
本発明の好適な一実施例においては、本方法は、(4)気体チャンバ内において収集された生物学的粒子を第1液体試薬と接触させる段階を更に有している。
【0019】
本発明の好適な一実施例においては、本方法は、(5)収集された生物学的粒子に対して更なる分析を適用する段階を更に有している。従って、この実施例においては、本方法の目的は、生物学的粒子の収集だけではなく、その分析などをも含んでいる。
【0020】
本発明の別の態様は、生物学的粒子を収集するサンプルチャンバを有するチップに関するものであり、このチップは、周囲の空気と流体接続状態にある第1開口部と、装置との流体接続を形成するための第2開口部と、を有し、且つ、気体サンプルを有するサンプルチャンバと、サンプルチャンバの対向する側部上に配置された第1及び第2電極と、を有している。
【0021】
本発明の更なる態様は、チップ内において生物学的粒子を収集する装置に関するものである。この装置は、例えば、空気サンプリング装置、又は気体サンプルから生物学的粒子を収集する装置であってよい。本装置は、好ましくは、装置と機能的に関連付けられるようにチップを配置するチップサイトと;第1電位を第1電極に、且つ、第2電位を第2電極に印加し、この結果、第1及び第2電極間に電位差及び電界を生成することにより、サンプルチャンバ内における気体サンプルからの生物学的粒子の静電収集を支援する段階と、気体チャンバ内の収集された生物学的粒子を第1液体試薬と接触させる段階と、収集された生物学的粒子の更なる分析を実行する段階と、から構成された群から選択された1つ又は複数の動作を装置が実行することを実現するソフトウェアを有するプログラム可能なユニットと;を有している。
【0022】
本発明の更に別の態様は、生物学的粒子を収集するシステムに関するものであり、このシステムは、本明細書に定義されている装置と機能的に関連付けされた本明細書に定義されているチップを有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付の図面を参照し、本発明のいくつかの実施例について説明する。
【0024】
本発明の一態様は、空気から生物学的粒子を収集する方法に関するものであり、この方法は、(1)サンプルチャンバと第1及び第2電極を提供する段階であって、少なくともサンプルチャンバの一部が第1及び第2電極の間に位置するように第1及び第2電極とサンプルチャンバが配置される、段階と、(2)サンプルチャンバ内に気体サンプルを提供する段階と、(3)第1及び第2電極間に電界を印加することより、サンプルチャンバ内における気体サンプル内の生物学的粒子の静電収集を支援する段階と、を有している。
【0025】
本発明の一実施例においては、本方法は、気体の流れ(例えば、気体サンプルの提供に使用される気体の流れ)を終了させる段階を更に有している。
【0026】
本発明の好適な実施例においては、本方法は、(4)サンプルチャンバ内において収集された生物学的粒子を第1液体試薬と接触させる段階を更に有している。
【0027】
本発明の好適な実施例においては、本発明は、(5)収集された生物学的粒子に更なる分析を適用する段階を更に有している。従って、この実施例においては、本方法の目的は、生物学的粒子の収集のみならず、その分析及び/又は検出をも含んでいる。
【0028】
従って、本方法は、段階(1)、(2)、(3)、及び(4)、或いは、段階(1)、(2)、(3)、及び(5)、或いは、段階(1)、(2)、(3)、(4)、及び(5)などの順序で、段階(1)、(2)、及び(3)を有することができる。
【0029】
本発明によれば、「生物学的粒子の収集」という文言は、気体サンプルが流体によって置換された際に、生物学的粒子がサンプルチャンバ内に留まるように、サンプルチャンバ内において粒子を収集すること、即ち、サンプルチャンバ内に生物学的粒子を保持することに関するものである。通常、この収集は、生物学的粒子に対して作用する電界の静電気力によって実行される。
【0030】
「X及び/又はY」という文脈において使用される「及び/又は」という文言は、「X」又は「Y」、或いは、「X及びY」として解釈されたい。
【0031】
本発明によれば、「生物学的粒子」という用語は、例えば、微生物及び/又はウイルス及び/又はこれらの断片を有する粒子に関するものである。
【0032】
「気体サンプル」という用語は、1つ又は複数の気体と、恐らくは、生物学的粒子をも有するサンプルに関するものである。気体サンプルは、例えば、環境的な空気のサンプルや、土、砂、埃、又は未確認の粉などの粉状物質の真空吸引によって結果的に得られる空気のサンプルなどの気体サンプルであってよい。調査対象の気体サンプルは、微生物を含む、又は、含む可能性を有する、呼気サンプルを吐き出す人間に由来するものであってもよい。
【0033】
本発明によれば、「サンプルチャンバ」、「コンテナ」、及び「反応チャンバ」という用語は、相互交換可能に使用されている。
【0034】
本発明の好適な実施例においては、サンプルチャンバは、チップ、即ち、カートリッジ又はバイオチップから成っている。サンプルチャンバは、例えば、本明細書に定義されているチップから成っている。
【0035】
本発明の好適な一実施例においては、サンプルチャンバは、チップ、即ち、カートリッジ又はバイオチップから成っている。通常、チップは、使い捨て可能なユニットであり、これは、一回だけの使用を意味している。
【0036】
好適な一実施例においては、第1及び第2電極は、サンプルチャンバの対向する側部上に配置されている。
【0037】
本発明の一実施例においては、気体サンプルがサンプルチャンバを通じて流れている際に、気体サンプルから生物学的な粒子を収集している。別の実施例においては、捕獲効率を向上させるべく、気体サンプルがサンプルチャンバを通じて再循環している際に、即ち、気体サンプルがチャンバを複数回にわたって通過している際に、気体サンプルから生物学的粒子を収集している。例えば、再循環する際には、気体サンプルは、少なくとも2回、3回、4回、5回、10回、15回、20回、30回、40回、50回、又は75回など、少なくとも100回にわたってサンプルチャンバを通じて流れることができる。気体サンプルは、例えば、2〜50回、50〜100回、又は100〜200回など、2〜200回の範囲内の回数にわたって、サンプルを通じて流れることができる。
【0038】
本発明の一実施例においては、気体サンプルは、気体の流れを利用することにより、サンプルチャンバ内に提供される。生物学的粒子を収集する際には、気体の流れは、通常、好ましくは、約5〜1000mL/分の範囲内の流速を具備している。
【0039】
一実施例においては、気体サンプルから生物学的粒子を収集する前に、気体の流れを終了させている。
【0040】
通常、サンプルチャンバ内の気体サンプルの少なくとも一部が第1及び第2電極の間に位置し、又は、これらの間を流れている。例えば、気体サンプルの容積の少なくとも50、60、70、80、90、95、97.5、99、99.5、又は99.9%が第1及び第2電極の間に位置し、又は、これらの間を流れたり、気体サンプルの容積の少なくとも100%が第1及び第2電極の間に位置し、又は、これらの間を流れている、など、気体サンプルの容積の少なくとも40%が第1及び第2電極の間に位置し、又は、これらの間を流れている。
【0041】
第1及び第2電極間に印加する電界については、後程、更に詳述する。
【0042】
本発明の好適な一実施例においては、サンプルチャンバの収集された生物学的粒子を第1液体試薬と接触させている。生物学的粒子が、まだ第1及び第2電極間に位置している際に生物学的粒子を接触させるほうが好ましいであろう。
【0043】
第1液体試薬は、プライマー、核酸、ヌクレオチド三燐酸塩、及び核酸ポリメラーゼから構成される群から選択された、1つ又は複数の試薬を有することができる。
【0044】
第1液体試薬は、2−メルカプトエタノール、例えば、10mMの濃度のもの、BSA、例えば、1mg/mlの濃度のもの、及び/又は界面活性剤、例えば、0.5%〜6%(w/v)の濃度のもの、などの添加剤を更に有することができる。界面活性剤は、Triton X−100、Triton X−114、NP−40、Tween20、Tween80、及びこれらに類似した非イオン性界面活性剤から構成された群から選択可能である。
【0045】
第1液体試薬は、5’−3’エキソヌクレアーゼ分解性オリゴ核酸プローブを更に有することが可能であり、この核酸プローブの分解の結果、酸化還元活性成分が放出される。
【0046】
酸化還元活性成分は、例えば、フェロセンなどのメタロセンであってよい。
【0047】
本発明によれば、「核酸」、「核酸配列」、又は「核酸分子」という用語は、広範に解釈することを要し、これらは、例えば、リボ核酸(RNA)又はデオキシリボ核酸(DNA)のオリゴマー又はポリマー、或いは、これらのミメティクスを有することができる。この用語は、自然起源の核酸塩基、糖、及び共有インターヌクレオシド(バックボーン)結合を有する分子、並びに、同様に機能する非自然起源の核酸塩基、糖、及び共有インターヌクレオシド(バックボーン)結合を有する分子、又はこれらの組み合わせを含んでいる。このような変更又は置換された核酸は、例えば、ターゲット核酸分子の親和性の向上やヌクレアーゼ及びその他の酵素の存在安定性の向上などの望ましい特性に起因し、本来の形態よりも好ましいものであり、この文脈において、これらを「核酸アナローグ(nucleic acid analogue)」又は「核酸ミミック(nucleic acid mimic)」という用語で表現する。核酸ミミックの好ましい例は、分子又は機能的に類似の核酸誘導体を有するペプチド核酸(PNA−)、ロックされた核酸(LNA−)、キシロ−LNA−、ホスホロチオエート−、2’−メトキシ−、2’−メトキシエトキシ−、モルホリノ−、及びホスホラミデート−である。
【0048】
本発明によれば、「プライマー」という用語は、5〜20個、20〜50個、及び50〜100個のヌクレオチドなど、5〜100個の範囲内のヌクレオチドを有する核酸分子に関係している。好適な実施例においては、プライマーは、5〜10個、10〜20個、20〜30個、及び30〜40個のヌクレオチドなど、5〜40個の範囲内のヌクレオチドを有している。
【0049】
「核酸ポリメラーゼ」という用語は、好ましくは熱安定性を有する、即ち、酵素が、テンプレートに対して相補的なプライマー拡張生成物の形成に触媒作用を及ぼし、且つ、ダブルストランドテンプレート核酸の変性を実現するのに必要な時間にわたって上昇した温度に晒された際に不可逆的に変性しない、DNA−又はRNA−依存DNAポリメラーゼ酵素に関係している。一般に、合成は、それぞれのプライマーの3’端部において始まり、テンプレートのストランドに沿って5’から3’の方向に進行する。熱安定性を有するポリメラーゼは、Thermus flavus、T. ruber、T. thermophilus、T. aquaticus、T. lacteus、T. rubens、Thermococcus litoralis、Pyrococcus furiosus、Bacillus Stearothermophilus、及びMethanothermus fervidusなどの好熱性又はカルドアクティブ(caldoactive)な系統から隔離されている。但し、酵素が補充される場合には、熱安定性を有していないポリメラーゼを核酸増幅に使用することも可能である。
【0050】
収集された生物学的粒子に適用可能な更なる分析は、例えば、生物学的物質の抽出などの前処理段階を伴うことができよう。本発明の好適な実施例においては、生物学的粒子の抽出は、「Method, chip, device and system for extraction of biological material」という名称の同時係属中のPCT特許出願第XXXXXXXX号に従って実行される。この内容は、本引用により、本明細書に包含される。PCT特許出願第XXXXXXXX号明細書に記述されているように、遺伝物質などの生物学的物質は、生物学的粒子を第1液体試薬などの液体と接触させた後に、生物学的粒子を交番電界に露出させることにより、生物学的粒子から抽出可能である。交番電界は、大部分の生物学的粒子を破裂させ、場合によっては、細菌胞子をも破裂させることが可能であり、更なる分析のために、生物学的粒子から生物学的物質が放出される。
【0051】
放出された生物学的物質の更なる分析は、ELISA、たんぱく質分離、たんぱく質精製などのプロセスをも包含可能である。放出された遺伝物質に関する更なる分析は、制限酵素による培養、PCRプロセスなどの核酸増幅、電気泳動、並びに、例えば、蛍光検出や電気化学的検出などの検出を包含可能である。PCRプロセス及び検出は、例えば、「Method, kit and system for enhanced nested PCR」という名称の同時係属中のPCT特許出願第YYYYYYY号に記述されている方法に従い、且つ、これに記述されているキットを使用することによって実行可能である。この内容は、本引用により、本明細書に包含される。
【0052】
本発明の一実施例によれば、第1及び/又は第2電極は、実質的に、シート、プレート、ディスク、ワイヤ、ロッド、又はこれらの任意の組み合わせから構成された群から選択された形態を具備している。現時点においては、少なくとも1つの電極がシートの形態を具備していることが好ましく、第1及び第2電極の両方がシートの形態を具備していることが更に好ましい。
【0053】
本発明の一実施例においては、第1及び第2電極は、最大15mm、10mm、9mm、8mm、7mm、6mm、5mm、又は、最大4mmなど、好ましくは、最大で20mmだけ、更に好ましくは、最大で3mmだけ、並びに、最大0.3mm、0.2mm、0.1mm、最大0.05mmなど、尚更に好ましくは、最大で0.5mmだけなど、最大で20mmの距離だけ離隔している。
【0054】
例えば、第1及び第2電極は、0.05〜0.1、0.1〜0.2、0.2〜0.3、0.3〜0.4、0.4〜0.5、0.5〜1、1〜2、2〜5、5〜10、又は10〜15mm、並びに、15〜20mmの範囲など、0.05〜20mmの範囲内の距離だけ離隔可能である。
【0055】
通常、第1及び第2電極は、少なくとも0.03mm又は0.05mmなど、少なくとも0.02mmの距離だけ離隔可能である。
【0056】
この文脈においては、「生物学的粒子」という用語は、例えば、微生物及び/又はウイルス及び/又はその断片を有する粒子に関係している。
【0057】
微生物は、例えば、原始微生物、真正細菌性微生物、又は真核性微生物から構成された群から選択可能である。
【0058】
例えば、微生物は、細菌、細菌胞子、ウイルス、菌、菌類胞子から構成された群から選択可能である。
【0059】
本発明の好適な実施例においては、微生物は、空気中の微生物である。
【0060】
細菌性粒子は、植物胞子又はこの断片を有することも可能である。
【0061】
本発明の好適な実施例においては、微生物は、細菌胞子である。
【0062】
例えば、細菌胞子は、バシラス属及び/又はクロストリジウム属から選択された細菌によって形成可能である。
【0063】
本発明の好適な実施例においては、細菌胞子は、炭素菌によって形成される胞子である。細菌性粒子は、例えば、炭素菌によって形成される細菌胞子を有することができる。又、細菌性粒子は、基本的に、炭素菌によって形成される1つ又は複数の細菌胞子から構成することも可能である。
【0064】
本発明の別の態様は、生物学的粒子を収集するサンプルチャンバを有するチップに関係しており、このチップは、周囲の空気と流体接続状態にある第1開口部と、装置と流体接続状態を形成するための第2開口部と、を有し、且つ、気体サンプルを有するサンプルチャンバと、サンプルチャンバの対向する側部上に配置された第1及び第2電極と、を有している。
【0065】
本発明の好適な実施例においては、チップは、第1及び第2電極に付着した生物学的粒子を更に有している。
【0066】
本発明の別の実施例においては、第1及び第2電極の電位は、1〜10マイクロメートルの範囲内の有効長を具備する生物学的粒子の場合に少なくとも50%の捕獲効率をもたらすように選択されている。
【0067】
更に、本発明の更なる一実施例においては、第1及び第2電極の電界は、1〜10マイクロメートルの範囲内の有効長を具備する生物学的粒子の場合に少なくとも50%の捕獲効率をもたらすように選択されている。
【0068】
電界の強度は、50V/mm、100V/mm、200V/mm、300V/mm、400V/mm、500V/mm、600V/mm、700V/mm、800V/mm、900V/mm、1000V/mm、1100V/mm、1200V/mm、1300V/mm、1400V/mm、1500V/mm、1600V/mm、1700V/mm、1800V/mm、1900V/mm、2000V/mmからなる群から選択可能である。
【0069】
例えば、電界の強度は、50〜100、100〜200、200〜300、300〜400、400〜500、500〜750、750〜1000、1000〜1200V/mm、1200〜1500V/mmの範囲内、並びに、1500〜2000V/mmの範囲内など、50〜2000V/mmの範囲内であってよい。
【0070】
本発明の好適な実施例においては、第1及び第2電極は、それぞれ、負及び正、又は、この逆、に帯電している。例えば、2つの電極の電位差が400Vである場合には、負に帯電した電極は、接地に対して−200Vの電位を具備可能であり、正に帯電した電極は、接地に対して200Vの電位を具備可能である。電界は、理論的な電界、即ち、第1及び第2電極間の電位差を第1及び第2電極間の最小距離によって除算したもの、であることが好ましい。
【0071】
サンプルチャンバを有するチップのサンプルチャンバの捕獲効率は、第1及び第2電極の設計及びこれらの間の距離、サンプルチャンバの構造及び材料、並びに、第1及び第2電極に印加される電位によって左右される。
【0072】
本発明の非常に好適な実施例においては、第1電極の第1電位及び第2電極の第2電位と、従って、第1及び第2電極間の電界は、1〜10マイクロメートルの範囲内の有効長を具備する生物学的粒子の場合に、少なくとも70%、好ましくは、少なくとも80%、並びに、更に好ましくは、少なくとも90%の捕獲効率など(少なくとも95%、97.5%、99%、99.5%、又は99.9%、約100%など)、少なくとも50%の捕獲効率をもたらすように選択されている。
【0073】
捕獲効率は、例4の標準化された方法に従って判定されることが好ましい。
【0074】
本発明によれば、粒子の「有効長」という用語は、粒子の空気力学的な直径であり、例えば、レーザー光散乱によって計測されるものである(O’Brien他(1986))。粒子の空気力学的な直径dpaは、次式によって推定可能である。
【0075】
dpa=dps・√ρp
【0076】
ここで、dpsは、Stoke直径(単位:μm)であり、ρpは、粒子密度(単位:g/cm3)である。
【0077】
本発明のチップは、第1開口部を有するサンプルチャンバを有している。
【0078】
第1開口部は、サンプルチャンバ内にサンプルを導入するべく使用可能である。第1開口部は、例えば、周囲の空気などのサンプルと流体接続状態にあってよい。或いは、この代わりに、第1開口部は、1つ又は複数の弁に接続されており、これらの弁を開くことによってサンプルチャンバをサンプルと流体接続状態にすることも可能である。
【0079】
本発明の重要な実施例においては、サンプルチャンバ、例えば、チップのサンプルチャンバは、第2開口部を有している。第2開口部は、例えば、サンプルチャンバの空気又はサンプルの排出を実現することにより、サンプルチャンバ内への新しいサンプルの導入を円滑に実行するべく使用可能である。又、第2開口部を使用し、サンプルチャンバ内に第1液体試薬を導入することも可能である。或いは、この代わりに、第1開口部を介して、第1液体試薬をサンプルチャンバ内に供給することも可能である。
【0080】
サンプルチャンバ、例えば、チップのサンプルチャンバは、通常、マイクロスケールのサンプルチャンバである。本発明の一実施例においては、サンプルチャンバの容積は、最大400μL、300μL、200μL、100μL、50μL、25μL、15μL、10μL、5μL、4μL、3μL、又は最大2μL、並びに、最大1μLなど、最大で500μLである。例えば、サンプルチャンバの容積は、最大400nL、300nL、200nL、100nL、50nL、25nL、15nL、10nL、5nL、4nL、3nL、又は最大2nL、並びに、最大1nLなど、最大で500nLである。
【0081】
通常、サンプルチャンバの容積は、少なくとも10nLである。本発明の好適な実施例においては、サンプルチャンバの容積は、5μL〜30μLなど、1μL〜50μLの範囲内である。
【0082】
本発明の一実施例においては、対向する壁のペア間の最小距離は、最大15mm、10mm、8mm、6mm、4mm、3mm、又は2mm、並びに、最大1mmなど、最大で20mmである。例えば、対向する壁のペア間の最小距離は、最大600μm、500μm、400μm、300μm、200μm、100μm、50μm、25μm、15μm、10μm、5μm、4μm、3μm、又は最大2μm、並びに、最大1μmなど、最大で800μmである。
【0083】
通常、対向する壁のペア間の最小距離は、少なくとも5μmである。本発明の好適な実施例においては、対向する壁のペアの最小距離は、100μm〜400μm又は150〜350μmなど、50μm〜500μmの範囲内である。
【0084】
本発明の一実施例においては、サンプルチャンバ、例えば、チップのサンプルチャンバ、の長さは、1mm〜10mm、10mm〜20mm、20mm〜30mm、30mm〜40mm、又は40mm〜50mmの範囲内など、1mm〜50mmの範囲内である。好適な実施例においては、サンプルチャンバの長さは、3mm〜7mm又は4mm〜6mmなど、2mm〜8mmの範囲内である。例えば、サンプルチャンバの長さは、約4.5mmであってよい。
【0085】
本発明の一実施例においては、サンプルチャンバ、例えば、チップのサンプルチャンバ、の幅は、0.2mm〜1mm、1mm〜3mm、3mm〜5mm、5mm〜7mm、又は7mm〜10mmの範囲内など、0.2mm〜10mmの範囲内である。好適な実施例においては、サンプルチャンバの幅は、0.5mm〜1.5mm又は0.75mm〜1.25mmなど、0.2mm〜2mmの範囲内である。例えば、サンプルチャンバの幅は、約1mmであってよい。
【0086】
本発明の一実施例においては、サンプルチャンバ、例えば、チップのサンプルチャンバ、の高さは、100μm〜1mm、200μm〜900μm、300μm〜800μm、500μm〜700μmの範囲内など、50μm〜2mmの範囲内である。好適な実施例においては、サンプルチャンバの高さは、200μm〜300μmなど、100μm〜400μmの範囲内である。
【0087】
本発明の一実施例においては、サンプルチャンバ、例えば、チップのサンプルチャンバ、の長さは、約4.5mmであり、サンプルチャンバの幅は、約1mmであり、サンプルチャンバの高さは、約300μmである。
【0088】
本発明の一実施例においては、チップは、第1及び第2電極を更に有している。
【0089】
第1及び/又は第2電極は、異なる形状又は寸法を具備可能である。例えば、第1及び/又は第2電極は、実質的に、シート、プレート、ディスク、ワイヤ、ロッド、又はこれらの組み合わせからなる群から選択された形態を具備可能である。
【0090】
本発明の好適な実施例においては、第1及び第2電極は、例えば、シート状の電極であってよい。
【0091】
本発明の好適な実施例においては、第1電極及び第2電極は、互いに対向している。例えば、これらは、サンプルチャンバの対向する側部上に配置可能である。
【0092】
第1電極及び/又は第2電極は、例えば、サンプルチャンバ内に独立して立設されているか、或いは、サンプルチャンバの壁の1つ又は複数のものに装着された状態でサンプルチャンバ内に配置可能である。
【0093】
第1及び/又は第2電極は、1つ又は複数のサンプルチャンバ壁内に埋め込み可能である。例えば、第1及び第2電極は、サンプルチャンバ壁内に埋め込み可能である。或いは、この代わりに、第1及び/又は第2電極は、1つ又は複数のチップの外部表面に配置することも可能である。
【0094】
好ましくは、第1電極及び第2電極は、サンプルチャンバの対向する側部上に配置される。
【0095】
第1及び第2電極間の電位差は、均一又は異なるサイズの粒子が表面上に捕獲され、或いは、対象粒子の選択又は捕獲に対応可能な所与の方向に偏向されることになる、範囲内のものであってよい。
【0096】
例えば、第1電極及び/又は第2電極などの電極は、いくつかの異なる材料から形成可能である。通常、電極は、金属又は合金から形成される。第1及び第2電極は、例えば、銀、金、白金、銅、炭素、鉄、黒鉛、クロム、ニッケル、コバルト、チタニウム、水銀、又はこれらの合金から構成される群から選択された金属を有することができる。
【0097】
電極が、導電性の液体を有し、場合によっては、導電性の液体から構成される、というケースを想起することも可能である。導電性の液体は、例えば、水銀であってよい。
【0098】
電極の寸法及び/又は構造は、通常、サンプルチャンバの寸法及び/又は構造によって左右される。電極の長さ及び幅は、サンプルチャンバの長さ及び幅と同程度の大きさを有している。
【0099】
電極は、導電性材料からなる数原子レイヤのコーティングなどにより、薄く形成可能である。
【0100】
本発明の一実施例においては、電極、例えば、第1及び/又は第2電極、は、0.001μm〜1μm、1μm〜20μm、20μm〜200μm、及び200μm〜2000μmなど、0.001μm〜2000μmの範囲内の厚さを具備している。
【0101】
本発明の実施例においては、チップのサンプルチャンバは、例えば、酸化還元活性成分、例えば、プローブから放出されるもの、の存在又は不存在を検出するための2つ又は3つの検出電極などの検出電極の組を更に有している。2つの検出電極は、それぞれ、作用電極と対向電極として機能可能である。検出電極の組は、基準電極を更に有することができる。通常、検出電極は、金属又は合金から形成される。電極は、例えば、炭素、銀、金、又は白金から構成された群から選択された材料を有することができる。検出の後に、電極は、電極表面上における膜形成の害を受ける可能性を有している。分解したプローブの更なる検出を実現するべく、更なる検出電極の組をチップのサンプルチャンバ内に配置可能である。
【0102】
本発明の一実施例においては、第1及び第2電極は、検出電極の組であってよい。
【0103】
本発明の好適な実施例においては、チップは、温度検知素子を更に有しており、これは、例えば、正の温度係数(PTC)を有する感熱金属に基づいた抵抗器(サーミスタ)であってよい。即ち、サーミスタは、環境温度の上昇に伴って電気抵抗値の増大を、そして、温度の減少に伴って電気抵抗値の減少を示す。
【0104】
サーミスタは、例えば、銅、ニッケル、鉄、アルミニウム、白金、又はこれらの合金を有する材料のグループから選択可能である。
【0105】
サーミスタは、様々な形状又は寸法を具備可能である。例えば、サーミスタは、実質的に、シート、プレート、ディスク、ワイヤ、又はロッドの群から選択れた形態を具備可能である。
【0106】
サーミスタは、例えば、ワイヤ形態の電極であってよい。
【0107】
加熱電極は、様々な形状又は寸法を具備可能である。例えば、加熱電極は、実質的に、シート、プレート、ディスク、ワイヤ、又はロッドの群から選択された形態を具備可能である。
【0108】
本発明の好適な実施例においては、加熱電極は、例えば、シート状の電極であってよい。本発明の好適な実施例においては、加熱電極は、反応チャンバの少なくとも1つの側部からの加熱を実現するべく配置可能である。
【0109】
更に別の実施例においては、1つ又は複数の補助的な加熱電極を反応チャンバの対向する側部上に配置可能である。
【0110】
加熱電極は、好ましくは、ニッケル−クロム(NiCr)、鉄−クロム−アルミニウム(FeCrAl)、鉄−ニッケル−クロム(FeNiCr)、又はその他の加熱素子合金の群から選択された導電性材料から製造されている。
【0111】
本発明の好適な実施例においては、チップは、チップの電極と電気的な接触状態にある1つ又は複数の導電性接触パッドを有している。チップは、第1電極と電気的な接触状態にある導電性接触パッドを有することができる。チップは、第2電極と電気的な接触状態にある導電性接触パッドを有することができる。チップは、加熱電極の各端部と電気的な接触状態にある2つの導電性接触パッドを有することができる。チップは、検出電極の組の中の各電極と電気的な接触状態にある2つ又は3つの導電性接触パッドを有することができる。
【0112】
図11には、2つの模範的なチップの実施例が示されている。図11(A)においては、チップ(1)は、サンプルチャンバ(2)と、第1電極(3)と、第2電極(4)と、を有している。第1電極(3)は、チップの上部(5)に装着されており、第2電極(4)は、チップの下部(6)に装着されている。第1及び第2電極は、いずれも、サンプルチャンバ(2)の液体コンテンツの望ましくない電気分解を防止するべく、電気的に絶縁性を有するレイヤ(7)によってカバーされている。加熱電極が、第2電極上の絶縁レイヤ内に埋め込まれている。サンプルチャンバは、チップ(1)の第1部分(5)と第2部分(6)の間に挟持されているスペーサ部分(9)を介して形成されている。検出電極と温度検知素子の組は、図11には示されていない。
【0113】
チップ及びサンプルチャンバの更なる実施例が図1〜8に示されている。
【0114】
チップは、多種多様の材料を有することができる。これは、例えば、プラスチックなどの有機ポリマー、金属、シリコンなどの半導体、ガラス、セラミックなどを有することができる。
【0115】
図11との関連においては、第1及び第2部分は、例えば、プラスチック、シリコンなどの半導体、ガラス、又はセラミックなどの材料を有することができよう。第1及び第2電極は、例えば、金又は銅などの金属を有することができよう。絶縁レイヤは、例えば、SiO2やポリイミドの膜であってよかろう。加熱電極は、例えば、NiCr電極であってよく、スペーサレイヤは、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)エラストマの成型品であってよい。
【0116】
図11(B)の場合には、第1及び第2電極は、チップ内に含まれておらず、例えば、チップを作動させる装置に含まれている。
【0117】
チップは、1つのサンプルチャンバのみを有することも可能であり、或いは、複数のサンプルチャンバを有することもできる。
【0118】
チップは、通常、0.5mm〜50mmの範囲内、好ましくは、2mm〜8mmの範囲、の厚さを具備している。
【0119】
チップは、通常、10mm〜500mmの範囲内、好ましくは、40mm〜200mmの範囲、の長さ又は直径を具備している。
【0120】
チップは、通常、5mm〜200mmの範囲内、好ましくは、20mm〜100mmの範囲、の幅を具備している。
【0121】
本発明の更なる態様は、チップ内において生物学的粒子を収集する装置に関係している。この装置は、例えば、空気サンプリング装置、又は気体サンプルから生物学的粒子を収集する装置であってよい。本装置は、好ましくは、装置と機能的に関連付けられるようにチップが配置されるチップサイトと;第1電位を第1電極に、且つ、第2電位を第2電極に印加し、この結果、第1及び第2電極間に電位差と電界をもたらすことにより、サンプルチャンバ内における気体サンプルからの生物学的粒子の静電収集を支援する段階と、サンプルチャンバ内の収集された生物学的粒子を第1液体試薬と接触させる段階と、収集された生物学的粒子の更なる分析を実行する段階と、から構成される群から選択された1つ又は複数の動作を装置が実行することを実現するソフトウェアを有するプログラム可能なユニットと;を有している。
【0122】
この文脈において、「機能的に関連付けられている」という文言は、チップに影響を与える1つ又は複数の動作を装置が実行できるようにチップが装置と関連付けられていることを意味している。
【0123】
本発明の一実施例においては、装置がサンプルチャンバのコンテンツの電界に影響を与えることができる際に、チップは装置と機能的に関連付けられている。
【0124】
本発明の一実施例においては、チップの少なくとも1つの電極の電位を装置が制御可能である際に、チップは装置と機能的に関連付けられている。例えば、装置がチップの第1電極及び/又は第2電極の電位を制御可能である際に、装置はチップと機能的に関連付けられている。
【0125】
機能的に関連付けられているということは、チップのサンプルチャンバが、流れ制御手段と流体伝達状態にあるということを更に包含可能である。
【0126】
本発明の一実施例においては、本装置は、第1及び第2電極を有しており、チップが機能的に関連付けられている際に、第1及び第2電極間の電界は、サンプルチャンバ内における気体サンプルの生物学的粒子の収集を支援する。この実施例においては、チップが第1及び第2電極を有することは必須条件ではない。
【0127】
本装置は、例えば、流れ生成手段、プログラム可能なユニット、及び/又は第1及び第2電極に対して電力を供給する電源を更に有することができる。
【0128】
本発明の一実施例においては、チップは、チップサイトを介して装置と機能的に関連付けられている。チップサイトは、例えば、チップポートと装置ポート間の接合によって空気及び液体の漏れを除去することを保証する接続材料及びガスケットの両方として機能するプラスチックインターフェイスを有することができる。チップサイトは、例えば、チップを受け入れる表面及び/又はクレードルを有することができる。通常、チップサイトは、少なくとも1つの導電性接触パッドを有している。好ましくは、チップサイトは、チップの第1電極との電気的な接触を提供する少なくとも1つの導電性接触パッドと、チップの第2電極との電気的な接触を提供する導電性接触パッドと、を有している。
【0129】
プログラム可能なユニットは、動作の前、最中、及び/又は後において装置の制御、監視、及び/又は操作を円滑に実行するべく適合された、例えば、ソフトウェアなどの好ましくはコンピュータによって判読可能な、命令を含んでいる。
【0130】
プログラム可能なユニットは、好ましくは、関連付けられたデータストレージ手段内に保存されている1つ又は複数のコンピュータプログラムを具備する少なくとも1つのコンピュータを有しており、このコンピュータシステムは、装置を制御するべく適合されている。プログラム可能なユニットは、本発明の文脈においては、汎用コンピュータ、パーソナルコンピュータ(PC)、PLC(Programmable Logic Control)ユニット、soft−PLC(soft Programmable Logic Control)ユニット、hard−PLC(hard Programmable Logic Control)ユニット、産業用のパーソナルコンピュータ、又は専用のマイクロプロセッサからなる群から選択可能であるが、但し、これらに限定されない。
【0131】
又、本発明は、関連付けられたデータストレージ手段を具備する少なくとも1つのコンピュータを有するコンピュータシステムが、動作の前、最中、及び/又は後に装置を制御、監視、及び/又は操作できるようにするべく適合されたコンピュータプログラムプロダクトにも関係している。又、本発明は、関連付けられたデータストレージ手段を具備する少なくとも1つのコンピュータを有するコンピュータシステムが、動作の前、最中、及び/又は後に装置を制御、監視、及び/又は操作できるようにするルーチンの組を内部に保存しているコンピュータ可読媒体にも関係している。
【0132】
動作の前、最中、及び/又は後に装置を制御、監視、及び/又は操作するプログラム可能なユニットは、好ましくは、北極の気候、熱帯の気候、及び戦闘環境、特に、原子的、生物学的、及び/又は化学的戦争(ABC戦争)に晒されている戦闘ゾーン、などの過酷な状態における動作に適合されている。好ましくは、プログラム可能なユニットは、この種のユニットに適用される軍事仕様に準拠している。
【0133】
本発明の一実施例においては、ソフトウェアを有するプログラム可能なユニットは、チップが装置と機能的に関連付けられているかどうかを装置がチェックすることを、更に実現する。
【0134】
ソフトウェアを有するプログラム可能なユニットは、サンプルチャンバ内に気体サンプルを提供する段階と;第1電極に第1電位を、且つ、第2電極に第2電位を提供し、この結果、第1及び第2電極間に電位差と電界をもたらすことにより、サンプルチャンバ内における気体サンプルからの生物学的粒子の静電収集を支援する段階と;収集された生物学的粒子を第1液体試薬と接触させる段階と;更なる分析を実行する段階と;から構成された群から選択された2つ、3つ、又は4つの動作などの1つ又は複数の動作を装置が実行することを更に実現可能である。
【0135】
ソフトウェアを有するプログラム可能なユニットは、例えば、気体サンプルを提供する流れ生成手段を作動させることにより、装置がサンプルチャンバ内に気体サンプルを提供することを実現可能である。
【0136】
ソフトウェアを有するプログラム可能なユニットは、例えば、装置が、第1電位を第1電極に、且つ、第2電位を第2電極に印加することを実現可能である。
【0137】
ソフトウェアを有するプログラム可能なユニットは、例えば、液体試薬を提供する流れ生成手段を作動させると共に/又は流れ制御手段を作動させることにより、装置が、収集された生物学的粒子を第1液体試薬と接触させることを実現可能である。
【0138】
ソフトウェアを有するプログラム可能なユニットは、例えば、少なくとも2つの電極、例えば、前述の第1及び第2電極又は交番電界専用の電極の別の組、の電位を変調することによって、装置がサンプルチャンバ内の交番電界に反応混合物を露出させることを実現することにより、第1液体試薬と接触した収集済みの生物学的粒子に対して更なる分析が適用されることを実現可能である。
【0139】
ソフトウェアを有するプログラム可能なユニットは、例えば、前述の加熱電極を作動させることによって、装置がターゲット核酸配列の核酸増幅を実行することを実現することにより、第1液体試薬と接触した収集済みの生物学的粒子に更なる分析が適用されることを実現可能である。
【0140】
ソフトウェアを有するプログラムユニットは、例えば、装置が、増幅されたターゲット核酸配列の存在を計測すること及び/又は差動パルスボルタンメトリに関係した検出電極を作動させることによって、ターゲット核酸配列の増幅から結果的に得られる生成物を計測することを実現することにより、第1液体試薬と接触した収集済みの生物学的粒子に更なる分析が適用されることを実現可能である。
【0141】
本発明の好適な実施例においては、本装置は、サンプルチャンバの第1及び第2電極間に電界を印加するための装置とチップ間の電気的インターフェイスを更に有している。
【0142】
本装置は、基準信号、即ち、生物学的粒子を伴っていないサンプルを有する又は所与の明確に定義された量の生物学的粒子を有するサンプルからの信号、を更に計測可能である。基準信号は、例えば、サンプリングチャンバとは離れた別のチャンバ、例えば、チップの別の場所に配置されたチャンバ又は別のチップに配置されたチャンバ、から取得可能である。
【0143】
本装置は、内部電源を更に有することができる。内部電源は、例えば、電池を有することができる。PCR反応の際に利用されるエネルギー量は、PCRサイクルの最低及び最高温度間において流体サンプルの容積に等しい容積の水を加熱するのに必要な熱量として推定可能である。この温度差は、約50Kであり、従って、1サイクル当たりに伝達される熱は、30μLのサンプル容積の場合に約6ジュールである。例えば、60サイクルにわたる稼動の場合には、1つのPCR反応における合計エネルギー消費量は、60*6=360ジュールに達する。商用のサーモサイクラに匹敵するランピング時間(即ち、2℃/秒)を使用する場合に必要な電力は、360*2/50=14.4Wである。
【0144】
電池の電圧は、電池の定格電圧であると見なしている。例えば、ニッケル−カドミウム(NiCd)及びニッケル−金属水素化物(NiMH)電池の場合には、1.2V/セルであり、大部分のリチウム−イオン(Li−ion)電池の場合には、3.6V/セルである。電池の電荷容量は、通常、ミリアンペア−時間(mAh)の観点において与えられ、C定格として表現される。例えば、1200mA−時間のC定格を有する電池の1Cの負荷電流は、1200mAである。流出する負荷電流が0.1C未満である際には、電池は、理想的である、即ち、一定のエネルギー容量を有している)と見なすことができる(Linden D.(1984)。従って、例えば、10.8Vを供給する電池を使用して14.4Wの電力出力を供給する際には、エネルギー容量を劇的に低減するピーク電力消費量を回避するべく、この電池のC定格は、14.4/(10.8*0.1)=13300mAhの範囲内にある必要がある。
【0145】
このエネルギー消費量と電力供給を可能にすると共に真の携帯性を保証するべく、充電式の電池が好ましい。本発明の好適な実施例においては、充電式の電池は、ニッケル金属水素化物(NiMH)に基づいた電池とリチウム−イオン(Li−ion)に基づいた電池からなる群から選択されている。
【0146】
又、内部電源は、例えば、携帯型発電機などの発電機を有することも可能である。携帯型発電機は、外部電源として利用可能である。携帯型発電機は、ソーラーモジュール、電池充電器(例えば、AC又は自動車電池充電器)、燃料燃焼発電機、又はこれらに類似したものから充電することも可能であり、或いは、単純に、これらから構成することも可能である。
【0147】
或いは、この代わりに、例えば、電池によるバックアップによって補完されるものなどの外部電源からの電力を装置に提供することも可能である。
【0148】
本発明の一実施例においては、本装置は、例えば、チップ内のサンプルチャンバ内に気体サンプルを提供すると共に、チップが装置内に挿入された際に、サンプルチャンバの第2開口部と流体接続状態となる流れ生成手段を更に有している。
【0149】
流れ生成手段は、ピストンポンプ、メンブレインポンプ、又は容積型ポンプなどのポンプを有することができる。
【0150】
本発明の一実施例においては、ポンプは、サンプリングの際に、(10mL/min〜500mL/minの範囲内の)適切な気体の流れをチップを通じて供給可能である。好ましくは、ポンプは、サイズが小さく、軽量であり、流れに脈動が伴っておらず、モーター極性の変更によって媒体の流れを反転可能であり、電圧の制御によって流量を調節可能であるという中の1つ又は複数の基準を満足するべく選択する必要がある。
【0151】
本発明の一実施例においては、流れ生成手段は、試薬の小滴を生成するインクジェットディスペンサ又は類似のマイクロディスペンシング装置を有することができる。
【0152】
本発明の一実施例においては、気体サンプルは、チップを通じた受動的な流れによって提供可能である。この場合には、チップとサンプリング対象である周囲の空気間に速度差が必要となる。これを実現するための条件は、チップが空気中を移動する場合に満足される。例えば、第1開口部が周囲の空気と流体接続状態となるように、最適には、飛行方向に対向する状態で、飛行機上に取り付けられた場合がこれに相当する。或いは、この代わりに、空気に対して速度を具備していないチップの周囲を空気が移動している場合にも、この条件は満たされる。例えば、通気孔内に取り付けられている場合がこれに相当する。
【0153】
本発明の一実施例においては、本装置は、流れ、例えば、サンプルチャンバを通じた流れなど、を制御する手段を更に有している。
【0154】
流れは、例えば、液体の流れ及び/又は気体の流れであってよい。
【0155】
流れを制御する手段は、通常、1つ又は複数の弁を有している。弁は、例えば、逆止め弁、双方向弁、多位置弁、及びピンチ弁から構成される群から選択可能である。
【0156】
弁は、例えば、微細に製造された弁であってよく、一実施例においては、弁は、チップ内に内蔵されている。
【0157】
本発明の一実施例においては、インクジェットマイクロディスペンシング技術を使用して第1試薬液体を供給可能である。反応チャンバ内に液体をマイクロディスペンシングできるように、第1液体試薬又は第1液体試薬の別個の成分を有する1つ又は複数のコンパートメントを含むインクジェットカートリッジを取り付けている。
【0158】
本発明の更に別の実施例においては、第1液体試薬又はその別個の成分は、プラスチックポリマーから構成された密封された封筒内にカプセル化されている。プラスチックポリマーの封筒は、適切な電流の印加によるプラスチックポリマーの溶解と、これに続くカプセル化された液体のチップ内への放出を実現する組み込み型の加熱電極を具備している。更に別の実施例においては、密封されたプラスチックポリマー封筒からの液体の放出は、例えば、封筒を鋭利な物体によって破裂させるなどの封筒の機械的又は物理的な破裂によって実現可能である。
【0159】
本発明の一実施例においては、本装置は、結果の視覚的な読み取りを実現するディスプレイを具備可能である。ディスプレイは、発光源(LED、電球、又はこれらに類似したもの)、スクリーン、デジタル的な読み出し、又はこれらの任意の組み合わせの形態であってよい。本発明の更に別の実施例においては、読み出した情報をオーディオ信号の形態で伝達可能である。
【0160】
本発明の好適な実施例においては、本装置は、無線通信を実現するコンポーネントを有している。無線通信の例は、802.11モバイル無線LAN、セルラー、Bluetooth(登録商標)、GPS、及びUltra Widebandである。通信は、例えば、装置からのデータ伝送又は装置へのデータ伝送などの一方通行であってもよく、或いは、通信は、これらの組み合わせ、即ち、双方向、であってもよい。確立された通信を装置間通信に更に拡張可能である。即ち、1つの装置が別の装置のサンプリングの開始をトリガし、これにより、例えば、エアロゾル雲の発達状況の監視の円滑な実行を実現するアドホックネットワークの確立である。
【0161】
本発明の好適な実施例においては、本装置は、軽量及び/又は携帯型の装置である。
【0162】
本発明の一実施例においては、本装置は、最大8kg、6kg、4kg、3kg、又は2kg、並びに、最大1kgなど、最大で10kgの重さである。本装置は、最大600g、500g、400g、300g、200g、150g、100g、80g、60g、50g、40g、30g、20g、10g、又は5g、並びに、最大1gなど、最大で800gの重さであることが更に好ましいであろう。
【0163】
通常、本装置は、20g〜50g、50g〜100g、100g〜250g、250g〜500g、又は500g〜1000gなど、20g〜1kgの範囲内の合計重量を具備している。
【0164】
本発明の好適な実施例においては、本装置は、サンプルチャンバの第1及第2電極間に静電界を印加するための装置とチップ間の電気的インターフェイスを更に有している。
【0165】
本発明の一実施例においては、本装置は、第1及び第2電極を有しており、チップが機能的に関連付けられている場合に、第1及び第2電極間の電界は、サンプルチャンバ内における気体サンプルの生物学的粒子の収集を支援する。この実施例においては、チップが第1及び第2電極を有することは必須条件ではない。
【0166】
本発明の一実施例においては、本装置は、例えば、チップのサンプルチャンバ内に気体サンプルを供給すると共に、チップが装置に挿入された際にサンプルチャンバの第2開口部と流体接続状態となる流れ生成手段を更に有している。
【0167】
又、本装置は、第1液体試薬を受領及び/又は保持する第1試薬チャンバを有することもできる。通常、第1試薬チャンバは、少なくとも1つの開口部を具備しており、この開口部は、チップが装置と機能的に関連付けられた際にサンプルチャンバと流体接続状態となる。或いは、この代わりに、第1試薬チャンバの少なくとも1つの開口部は、例えば、流れを制御する手段を使用することによってサンプルチャンバと流体接続状態となる。又、第1試薬チャンバは、保存の際に除去可能な障壁によって閉鎖可能であり、この障壁は、装置を使用する際に、可逆的又は不可逆的に除去される。
【0168】
本発明の更に別の態様は、生物学的粒子を収集するシステムに関係しており、このシステムは、本明細書に定義されている装置と機能的に関連付けられた本明細書に定義されているチップを有している。
【0169】
本発明の一実施例においては、本システムのチップと装置は、統合されており、これは、互いに物理的に分離されないことを意味している。本発明の一実施例においては、本システムのチップと装置は、チップ又は装置の損傷を伴うことなしには互いに物理的に分離できないように統合されている。
【0170】
本発明の重要な一実施例においては、本システムは、使い捨て可能なシステムであり、これは、例えば、1回だけ使用されることを意味している。
【0171】
別の重要な実施例においては、本システムのチップは、使い捨て可能であるが、装置は、再使用可能である。
【0172】
本発明の特定の態様は、気体サンプルからの生体粒子(生きている又は生きていない微生物を含む又は有する粒子)の収集及び濃縮の円滑な実行を目的とする方法及び微細構造を包含している。
【0173】
本発明の目的は、生体粒子の効率的且つ迅速なサンプリングの実行にある。この目的は、空気の流れに対する誘発電界の複合的な使用法を有する方法及び構造によって実現される。この使用法は、電圧によって可変であると共に可変時間において印加可能な電界を作用させる電極の組を包含した構造と、使用法の最適化されたパラメータ設定の組と、から構成されている。
【0174】
本発明は、装置を通過する空気の流れに対して角度を有する又は垂直の電界の印加を実現する方法及び装置について開示しており、この方法の結果として、生体粒子が、装置内において収集及び濃縮される。
【0175】
添付の図面に示されているように、本発明は、気体サンプル内の微生物をサンプリング及び濃縮する方法、装置、及びシステムに関係している。この方法及びシステムによれば、後続の適切な手段によって微生物を検出可能である。検出段階は、当業者には明らかな適切な検出手段により、適切な方式において実行可能である。
【0176】
広く表現すれば、本発明によるサンプリング及び濃縮方法は、基本的に、装置を通じて循環している空気の流れに対して角度を有して又はこれに垂直に印加された電界によるトラップ又は捕獲に関係している。
【0177】
本発明の特定の実施例においては、添付の図面に示されているように、装置は、チャンバと、好ましくはプレート電極である2つの対向配置された電極と、を有している。調査対象の気体サンプルは、チャンバを通過するが、図7及び図8に示されているように、このチャンバは、気体サンプルをチャンバ内に受け入れるための吸入口と、気体サンプルをチャンバから放出する排出口と、を具備しており、気体サンプルは、吸入口から排出口に向かって、このチャンバを通じて循環する。又、図示されているように、吸入口と排出口の間のチャンバ内には、電極が配置されており、これらの電極は、電位を具備することにより、気体サンプルから微生物を捕獲しつつ、気体サンプルの通過を許容する。
【0178】
本発明の特定の実施例によれば、図3に明示されているように、電極は、装置を通じて循環する空気の流れに対して垂直に配置された2つのプレート電極を具備するアセンブリから構成されている。
【0179】
本発明の別の特定の実施例においては、図2に明示されているように、電極は、装置を通じて循環する空気の流れに対して垂直に配置されたワイヤ電極と1枚のプレート電極を具備するアセンブリから構成されている。
【0180】
本発明の更なる特定の実施例においては、図1に明示されているように、電極は、装置を通じて循環する空気の流れに対して垂直に配置された1つ又は複数のポイント電極と1枚のプレート電極を具備するアセンブリから構成されている。
【0181】
当業者には明らかように、いずれの場合にも、本発明によれば、本装置は、調査対象の気体環境から採取された気体サンプル内の微生物の存在を検出するシステム内において使用される。
【0182】
本発明の別の特殊な実施例においては、システム及びそのコンポーネントは、好ましくは、細菌(例えば、Bacillus spp.、Clostridium spp.、Legionella spp.、E. coli O157:H7、Neisseria spp.、Mycobacterium tuberculosis)、菌類(例えば、Aspergillus flavus、fumigatus、Niger、Histoplagma capsulatum、Coccidioides imitis)、ウイルス(例えば、天然痘、インフルエンザウイルス、風疹ウイルス)、及びこれらに類似したものなどの微生物をサンプリング及び濃縮するべく考案されている。
【0183】
本発明の特定の実施例が、図3に示されている。この図は、空気監視ユニットとして機能する装置の一例を示している。図3に示され、且つ、図7及び図8にも例示されているユニットは、病院、学校、産業、家庭、公的建物、農園、及びこれらに類似したものなどの施設の空気環境内に存在し得る、有害な微生物をサンプリング及び濃縮するのに特に有用である。動作の際には、この空気サンプリング装置は、検査対象である対応した施設の空気をサンプリングするべく、継続的な方式により、動作可能に接続されることが好ましい。
【0184】
空気サンプリング装置は、好ましくは、空気吸入口、吸入口弁、ハウジング、電源、排出口弁、空気ポンプ、空気排出口、制御回路基板(図示されてはいない)、システムの様々なコンポーネントから制御基板に向かうリレーワイヤ、及びシステムのハウジング及びその他のコンポーネント用の支持部を含んでいる。
【0185】
空気サンプリング装置は、通常、以下のように機能する。即ち、ポンプが、好ましくは、約5〜1000ミリリットル/分(ml/min)の範囲内の特定の吸引流速を空気の吸入口に、次いで、サンプリングチャンバ内に提供する。当業者には明らかなように、その他の適切な流速を本発明と共に使用可能である点に言及しておくことは有益である。又、調査対象の気体サンプルは、微生物を含む又は含む可能性が高い呼気サンプルを吐き出す人間から由来したものであってもよい。
【0186】
いずれの場合にも、調査対象の気体サンプルが気体環境或いは微生物を含む又は含む可能性が高い呼気を吐き出す人間から到来するかどうかとは無関係に、気体サンプルは、空気吸入口により、装置のサンプリングチャンバ内に導かれる。診断システムに習熟した熟練者であれば、微生物がサンプリング及び濃縮された後に、その微生物の識別に結びつくサンプリング済みの微生物を検出するための様々な方式を容易に見出すであろう。
【0187】
好ましくは、本装置は、ポリマー、シリカ、ガラス、金属、及びセラミックから構成される材料の群から製造される。
【0188】
本発明は、サンプリング技術の分野における従来技術に対する大きな改善であり、この結果、バイオチップ上における静電沈降を適切に実施可能であり、且つ、空気から生体粒子を直接的に捕獲するための低コストであって、安定し、且つ、十分に制御された手段が提供されることが理解されよう。バイオチップ内における捕獲効率は、容易に80%に達し、且つ、電圧を上げることにより、更に向上させることも可能であることが明らかである(図9を参照されたい)。EP(Electrostatic Precipitation:静電沈降)チップの動作の継続によって単一の捕獲及び濃縮段階が提供され、これは、最新技術の重要な改善である。
【0189】
但し、本発明は、主に、様々な環境から採取された気体サンプル内の微生物をサンプリングするべく設計されたものであり、この点は、以下の説明を参照することによって容易に理解され、且つ、当業者には明らかであろう。このことから、「空気」、「ダクト」、「換気」、「空気監視ユニット」、及びこれらに類似した表現は、本発明の範囲を限定するものと解釈されてはならず、これらは、本発明を使用可能あると共に本発明が有用であり得るすべてのその他の種類の事物を包含している。
【0190】
更には、添付の図面に示されている本発明の好適な実施例は、弁、ポンプ、制御回路基板などの様々なコンポーネントを有しており、且つ、本発明のサンプリング装置/システムの好適な実施例及び示されている対応する部品は、本明細書に説明及び図示されている特定の幾何学的構成から構成されてはいるが、これらのコンポーネント及び形状のすべてが、本発明にとって不可欠であるわけではなく、従って、これらは、制限を意図するものとして解釈してはならない(即ち、本発明の範囲を制限するものとして解釈してはならない)。当業者には明らかなように、本発明の範囲を逸脱することなしに、簡潔に後述するように、その他の適切なコンポーネント、並びに、その他の適切な幾何学的構成を本発明によるサンプリング装置/システムに使用することも可能であることを理解されたい。
【0191】
以上、本発明のいくつかの実施例について説明したが、本発明には更なる変更を加えることが可能であり、本出願は、本発明の原理に全般的に準拠しており、本発明が属する技術分野の知識又は慣行に含まれる本開示からの逸脱を含み、前述の不可欠な特徴にも当て嵌まり、且つ、添付の請求項に定義されている本発明の範囲内に属する本発明のあらゆる変形、使用法、又は適合を包含することを意図していることを理解されたい。
【0192】
本発明は、様々な目的又は使用法に使用可能である。例えば、本発明は、空気中の生きている(生長している)細菌を検出するべく使用可能である。装置を換気ダクト内に設置し、数日又は数週間の期間にわたって電源投入可能である。細菌を捕獲電極によって捕獲した後に、当業者には既知の後続の方法によって検出可能であろう。
【0193】
又、本発明は、炭素菌胞子などの胞子を検出するべく使用することも可能であろう。装置を換気ダクト内に設置し、数日又は数週間の期間にわたって電源投入可能であろう。細菌を捕獲電極によって捕獲した後に、当業者には既知の後続の方法によって検出することができよう。
【0194】
更には、本発明は、適切なカウント法を使用することにより、様々なサイズの粒子をサンプリングするべく使用することも可能であろう。具体的には、空気ダクト、換気システム、空気清浄機、エアコン、真空掃除機内の微生物の検出と、隔離された部屋、製薬及び医療用のクリーンルームなどの内部の微生物の検出のために使用可能であろう。
【0195】
又、本発明は、装置を、例えば、換気扇のマスクに直接接続することにより、患者に影響を及ぼす、生きている病原体を検出するべく使用することも可能である。
【0196】
本発明の特殊な態様は、生物学的粒子を収集するマイクロスケールの装置に関係しており、この装置は、サンプリング対象の空気とインパクトコレクタ間に空気の流れを生成する能力を提供する吸入開口部と、インパクトコレクタとインパクトコレクタの外部の間に空気の流れを生成する能力を提供する排出開口部と、を具備するインパクトコレクタであって、吸入又は排出口は、吸入開口部から排出開口部に向かってインパクトコレクタを通じて気体サンプルを吸引する気流生成手段に結合されており、インパクトコレクタは、吸入開口部と排出開口部の間のインパクトコレクタ内に配置された収集コンポーネントを具備しており、この収集コンポーネントは、並列に配置されると共に電流を導く能力を有する材料によってコーティングされた又はこの材料から構成されら表面又は表面の少なくとも一部を具備する複数の電極から構成されている、インパクトコレクタを有している。
【0197】
本発明の特定の実施例においては、パラレル電極により、装置を通過する気流に対して角度を有する又は垂直の電界を生成可能であり、この結果、サンプリングされた空気内に存在している粒子を帯電させて正又は負に帯電した電極に吸着させることにより、捕獲が円滑に実行される。
【0198】
本発明の特定の実施例においては、電極は、100V/mmと1500V/mmの間の強度の電界を生成する。
【0199】
本発明の特定の実施例においては、すすぎ用の流体と、生物学的粒子を保持する流体をマイクロスケールの装置を通じて吸引する手段と、を使用することにより、装置から生物学的粒子をすすぎ落としている。
【0200】
本発明の特定の実施例においては、生物学的粒子を保持する流体を収集する段階は、生物学的粒子の存在について流体を調査できるように流体をリザーバ内に導く段階を有している。
【0201】
本発明によれば、本発明の態様の中の1つのものの文脈において説明されている実施例及び特徴は、本発明のその他の態様にも当て嵌まることに留意されたい。
【0202】
(例)
以下の例は、本発明の広範の適用可能性を例示するものであり、その範囲を限定することを意図するものではない。本発明の精神及び範囲を逸脱することなしに、変更及び変形を実施可能である。尚、本発明の試験を実施する際には、本明細書に記述されているものに類似した又は等価な任意の方法及び材料を使用可能であるが、好適な方法及び材料について説明することとする。
【0203】
(例1:材料及び方法)
実験装置内のチップ上に胞子を捕獲するのに使用される電圧生成器(以下を参照されたい)を制御するGPIBソフトウェアは、具体的には、デンマークのNorresundbyに所在するRTX Telecom A/S社によって開発されたものである。TSI社(米国ミネソタ州Shoreviewに所在するTSI Inc.)の3321型粒子サイズ分析器をTSI社のソフトウェアであるAerosol Instrument Managerによって制御した。Fenix LaserをWinmark Proのバージョン4.0.0ビルド3773(米国ワシントン州Mukilteoに所在するSynrad software社)を使用して制御した。
【0204】
400パルス/秒及び5〜10%の範囲内のパワー強度により、1200dpiでレージングプロセスを稼動させた。必要なチャネルの深さに応じて、オーバーラップするマーキングの数を1〜10の間の数に設定した(10の場合には、深いチャネルが得られ、1の場合には、20〜30μmの深さの非常に浅い除去が得られる)。切除によって材料が掘り取られるに伴ってレーザーの焦点が失われることに起因し、非常に深いチャネル(>800μm)は、形状が凹形になる傾向を有している。GPIBによって制御される1250V−25WのPS310型高電圧電源は、Stanford Research Systems社(米国カリフォルニア州Sunnyvaleに所在するStanford Research Systems, Inc.)から購入した。100〜1200Vの範囲内の電圧を生成するべく、この電源を利用した。
【0205】
63m3のステンレススチールによってカプセル化されたエアロゾル室内において実行される実験に使用するEPチップの電圧及びポンプ制御装置は、デンマークのNorresundbyに所在するRTX Telecom A/S社によって開発されたものである。セットアップコンバータにより、4個の1.5Vの標準AA電池から250Vを供給し、このパワーによって空気ポンプをサポートした。
【0206】
Furgut社(ドイツのTannheimに所在するErich Furgut)のモデルDC06/03f型真空ポンプを利用してEPチップ内における空気の吸引を仲介した。DC06/03f形装置は、220〜330mAを利用して6Vで稼動し、180mbarの最大圧力差に対して1.0l/minの空気を供給し、30gの合計重量を具備していた。このポンプの利点は、サイズが小さく、軽量であり、流れに脈動がなく、モーター極性の変更によって媒体の流れを反転可能であり、電圧の制御によって流量を調節可能あるという点にある。
【0207】
3321型Aerosol Particle Sizer(3321APS)(米国のミネソタ州Shoreviewに所在するTSI Inc.)は、空気力学的なサイズと相対的な光散乱強度という2つの計測値を提供する。これは、0.5〜20μmの空気力学的な直径のサイズ設定により、0.37〜20μmの範囲内の粒子を高分解能で検出する。この装置は、空気力学的なサイズをリアルタイムで計測する。この装置を5l/minの気流に対して設定した。
【0208】
実験に利用されるエアロゾルチャンバは、Mikrolab社(デンマークのHojbjergに所在するMikrolab Aarhus A/S)によって製造されたものであり、デンマークのCopenhagenに所在するThe Institute of Occupational Healthのご好意で提供して頂いた。この50リットルのチャンバは、チャンバ全体が0〜60rpmの速度で回転可能なローター構造上に取り付けられたステンレススチールから製造されている。コアチャンバは、3つの部分(2つの端部と1つのシリンダ)に分離可能であった。両方の端部を5つのハンドルによって堅固に固定した。組み立ての前に、胞子物質をシリンダ内に配置した。チャンバがオープン状態にある際に、ポンプシステムは、図5に示されているノズルの排出口を有するチャンバの背面から、制御された温度及び湿度を有する空気をチャンバを通じて吹き出すことができた。ノズルは、空気の流れを2つに分割する2分割金属チューブ(図5を参照されたい)に接続可能であった。1つは、HEPAフィルタリングされた出力に向かっており、もう1つの小さいほうは、チップに挿入されている。2分割金属チューブに接続されたPMMAチップが、エアロゾルチャンバからの出力ノズルにインターフェースしていた。図の右上側に示されている金属チューブは、2つのオーバーラップするWhatman社(英国のケント州Maidstoneに所在するWhatman International Ltd.)の高品質フィルタペーパー(Grade 2V、気孔サイズ8μm)を具備した低圧区域に挿入されている。
【0209】
顕微鏡スライドによって生成されたサンプルチャンバが、2分割金属チューブにインターフェイスしており、エアロゾルチャンバの排出口ノズルに接続していた(図6を参照されたい)。このインターフェイスは、0.5mmの内部直径のテフロン(登録商標)チューブによって実現されている。テフロン(登録商標)チューブを2成分エポキシによってガラスに接着し、一晩にわたって硬化させた。流れ、温度、及び湿度を制御するにより、特定の温度及び湿度を有する特定の制御された量の空気がエアロゾルチャンバに進入することを実現した。空気の温度は、26℃であり、湿度は50%であった。
【0210】
25ワットのRF励起型パルスCO2レーザーである48−2型のFenix Laser(米国ワシントン州Mukilteoに所在するSynrad, Inc.)は、27×27cmの公称フィールドと74±1cmの作動距離を有する80mmレンズ(レンズの焦点距離)を有していた。スポットサイズは、116μmであった。CO2ガス混合物は、10.6μm又はこの近傍の出力波長を提供する。Fenix Laserレンズシステムは、フラットフィールドの原理を使用することにより、マーキングプロセスにおいて高い品質と均一性を付与している。BD加熱オーブン(ドイツのTuttlingenに所在するBinder GmbH)内において、PMMA部品の迅速な熱接合(以下を参照されたい)を120〜200℃の温度において実行した。
【0211】
(消耗品)
PMMA(Poly−Methyl−meth−Acrylate)プレート(デンマークのRoskildeに所在するRIAS A/SのRiacryl)は、透明であり(90%を上回る透過率)、優れたUV安定性、低い吸水性、及び高い磨耗抵抗力を具備している。PMMAを利用し、レーザー除去によって微小構造を製造した(Johnson他(2001))。この材料は、ポリ(エチレン−テレフタレート−グリコール)、ポリ(ビニルクロライド)、及びポリ(カーボネート)などのその他の材料と比べて、除去プロセスに対して化学的な不活性を有している(Pugmire他(2002))。更には、この材料は、ラブオンチップシステムとして特徴付けられる複雑で統合された微小流体システムを構築するのに適していることが証明されている(Johnson他(2001))。この材料は、電界に露出した際に、ほとんどジュール加熱を示さず、DNA分離に利用可能である(Chen及びChen(2000)、Sung他(2001))。
【0212】
異なるPMMA設計を製造し、160〜200℃の迅速な熱接合によって互いに適切にアニーリングした。Mikrolab Aarhus A/S社によって開発されたプロトタイプアライメントツールによってアライメントを実現し、PMMAプレートの隅に0.2〜0.5μlのシアノアクリレートを配置することにより、迅速な熱接合の前に、アライメントを接着接合によって固定した。接着接合部を微細構造のサイトから離隔させておけば、少量の接着剤は、能動的微細構造部品の近傍における熱接合プロセスを妨害しないことが判明した。高温の迅速な熱接合により、アライメントと微細構造自体の両方の損傷が観察される熱融合接合に対するニーズが除去された。
【0213】
4−メチル−ペンタン−2−ワン内に銀粒子を含むElectrodag 1415Mを使用し、導電性コーティングを施した。この導電性流体をアセトンによって1:1で希釈することにより、コーティングの厚さを低減した。
【0214】
(例2:胞子の収集)
(材料)
エアロゾル試験において使用した粉状のバシラス胞子(Biobit WP、湿潤可能パウダ)は、Bacillus thuringiensis Subsp. Kurstakiを含んでいた(米国イリノイ州のNorth Chicagoに所在するAbbott Laboratories)。希釈シリーズの平板培養検定に基づいて、パウダの胞子濃度を3.2x109胞子/g(即ち、コロニー形成単位:CPF)に、そして、密度を0.86g/cm3(=860kg/m3)に決定した。
【0215】
(粒子分析器のソフトウェア)
TSI Inc.社(TSI Inc., 500 Cardigan Road, Shoreview, MN 55126−3996, USA)の3321型粒子サイズ分析器をTSI社のソフトウェアであるAerosol Instrument Managerによって制御した。
【0216】
(実験のセットアップ)
1mmの電極距離を具備する静電沈降装置により、胞子捕獲実験の組を実行した。流れは、10分のサンプリング期間にわたって2l/minと記録され、合計粒子濃度は、26mg/m3と推定された(幾何学平均が1.53±1.96μmであり、これは、合計3304290個の粒子を表している)。
【0217】
それぞれの実験からのデータは、それぞれが30秒の9つのサンプル期間から構成されている。最初の3つのサンプル期間は、制御サンプルの安定性を示すプレコントロールであり、この場合に、装置の電極上の電圧は0ボルトである。次の3つの30秒のサンプルは、100〜1200ボルト(−50V/+50V〜−600V/+600V)の捕獲電圧に設定された装置の電界によって実行されている。
【0218】
最後の3つの30秒のサンプル期間は、ポストコントロールであり、装置の電極上の電圧は0ボルトに戻されている。
【0219】
粒子カウンタが、プロトタイプを通過する粒子をカウントしている。従って、粒子の捕獲は、プレ及びポストコントロールにおける粒子数の減少によって示される。
【0220】
(結果)
図9に示されているように、捕獲効率は、電極電圧の上昇に伴って上昇している。
【0221】
様々なサイズの断片のサンプリング効率を取得し、これらをサンプリング電極の印加電圧に対してプロットした図10から、0.542、1.037、1.596、又は2.129μmの幾何学的平均を有する胞子の捕獲効率に、大きな差が存在していないことがわかる。
【0222】
(例3:捕獲効率の判定方法)
(標準化された生物学的粒子の準備)
約109胞子/gを含む100mgのBiobit Bacillus thuringiensis subsp. kurstaki(米国のLivertyvilleに所在するValent BioSciences Corp)を、脱塩された1mlの水中に再懸濁させ、90秒にわたって12000rpmにおいて遠心分離する。浮遊物を破棄する。この手順を4回にわたって反復する。最後の再懸濁の前に、1ミリリットル当たりのコロニー形成単位(CFU)の数を判定するべく、サンプルを回収する。チューブは、水気を取るために、乾燥するまで、例えば、真空内に残しておく。
【0223】
希釈シリーズをLB−寒天プレート(Luria Bertani基板;10.0gのトリプトン、5.0gの酵母エキス、10.0gのNaCl、1.0リットルのH2O−PH=7.0内に再懸濁された15.0gの寒天)上に配置し、一晩にわたって30℃において培養し、視覚的なコロニーに関して検査する。CFUの数により、パウダ内の胞子を判定可能である。
【0224】
(捕獲効率の計測)
洗浄され乾燥したBacillus thuringiensis胞子を適切なエアロゾルチャンバ内においてエアロゾル化することにより、結果的に1リットル当たり約104〜105胞子の胞子濃度を得る。捕獲効率の判定対象であるチップ/サンプリングチャンバを装置に接続し、これにより、機能的に関連付ける。次いで、チップ/サンプリングチャンバをエアロゾルチャンバに接続し、エアロゾルをチップのサンプルチャンバを通じて約50mL/分の空気の流れによって吸引する。例えば、TSI Inc.社(TSI Inc., 500 Cardigan Road, Shoreview, MN 55126−3996, USA)の3321型分析器などの粒子カウンタをチップの排出口に接続し、チップから排出されるサイズが1〜10μmの範囲内の胞子の数をカウントする。
【0225】
まず、第1及び第2電極の電位を接地に設定した状態で、エアロゾルを吸引することにより、25mLのエアロゾルの胞子の数を計測する。計測された胞子の数を制御値Ncとして使用する。
【0226】
次いで、選択した電位を第1及び第2電極に印加し、別の25mlのエアロゾルをチップを通じて吸引し、吸引の際にチップ内に存在する胞子の数を計測する。この値をNsと呼ぶ。
【0227】
選択した電位におけるチップ/サンプリングチャンバの捕獲効率は、(Nc−Ns)/Nc*100%として算出される。
【0228】
(参照文献)
〔Mainelis他(2002a)〕
Mainelis G、Gorny RL、Reponen T、Trunov M、Grinshpun SA、Baron P、Yadav J、Willeke Kによる「Effect of electrical charges and fields on injury and viability of airborne bacteria」(2002年、Biotechnol Bioeng.、79;229−41)
〔Mainelis他(2002b)〕
Mainelis G、Adhikari A、Willeke K、Lee SA、Reponen T、及びGrinshpun SAによる「Collection of Airborne Microorganisms by a New Electrostatic Precipitator」(2002年、Journal of Aerosol Science、33:1417−143)
〔Iversen及びTolo〕
Invesen DB、Tolo Kによる「Electrostatic air filters for dental practice」(1975年、Nor Tannlaegeforen Tid.、85:446−8)
〔Johnson他〕
Johnson RD、Badr IH、Barrett G、Lai S、Lu Y、Madou MJ、Bachas LGによる「Development of a fully integrated analysis system for ions based on ion−selective optodes and centrifugal microfluidics」(2001年、Anal chem.,73:3940−6)
〔Pugmire他(2002)〕
Pugmire DL、Waddell EA、Haasch R、Tarlov MJ、Locascio LEによる「Surface characterization of laser−ablated polymers used for microfluidics」(2002年、Anal Chem.、74:871−8)
〔Chen及びChen〕
Chen YH、Chen SHによる「Analysis of DNA fragments by microchip electrophoresis fabricated on poly(methyl methacrylate) substrates using a wire−imprinting method」(2000年、Electrophoresis、21:165−70)
〔Sung他〕
Sung WC、Lee GB、Tzeng CC、Chen SHによる「Plastic microchip electrophoresis for genetic screening; the analysis of polymerase chain reactions products of fragile X (CGG)n alleles」(2001年、Electrophoresis、22:1188−93)
〔O’Brien他〕
O’Brien D、Baron P、Willeke Kによる「Size and concentration measurement of an industrial aerosol」(1986年、Am Ind Hyg Assoc J.、47:386−92)
【図面の簡単な説明】
【0229】
【図1】プレート又はシート状の電極と4つのポイント電極を有するサンプルチャンバを示している。
【図2】プレート又はシート状の電極とワイヤ電極を有するサンプルチャンバを示している。
【図3】2つのプレート又はシート状の電極を有するサンプルチャンバを示している。
【図4】サンプルチャンバの断面を示している。
【図5】装置と機能的に関連付けられたチップの一実施例を示している。
【図6】ガラスに基づいたチップの一実施例の断面を示している。
【図7】PMMAに基づいたチップの一実施例の断面を示している。
【図8】7つのサンプルチャンバを有するチップの一実施例を示している。
【図9】電界の関数として捕獲効率のプロットを示している。
【図10】粒子サイズとは無関係な捕獲効率のプロットを示している。
【図11】チップの2つの実施例を示している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的粒子を収集する方法、チップ、装置、及びシステムに関するものである。この方法は、帯電した電極に対する生物学的粒子の静電吸着を利用しており、好ましくは、気体サンプルに関して機能する。
【背景技術】
【0002】
自然な又は意図的な伝染病を引き起こす能力を有する空気中の病原体の迅速な検出を円滑に実行するには、生物学的物質を含む粒子を更なる分析に適した形態において、空気中から直接的に収集することが最も重要である。通常、1つ又は複数の生物学的有機体を含むか、又は、これらから構成される、粒子(生体粒子)は、空気(のサンプル)を多孔性のフィルタに通すことによって捕獲される。選択した範囲のサイズの粒子を分別するべく、一連のフィルタを使用して適切なサイズの粒子を選択した後に、これらを収集装置(アンダーセン・サンプラ)内の培養培地プレートに収集し、このプレート上で培養可能である。
【0003】
生体粒子が、生きている有機体又は胞子を含んでいる際には、それらを培地プレート上において増殖可能であり(コロニー)、次いで、これを収集し、容易に分析可能である。但し、研究者は、コロニー(コロニー形成単位(Colony Forming Unit:CFU))が可視状態になるまで待たなければならず、培養対象の有機体によって左右されるが、これには数日から数週間の時間を所要し得る。更には、対象の生物学的有機体が、培養培地上で繁殖しないという可能性も存在している。又、対象の粒子がフィルタリングシステムによって捕獲されてしまい、又は、付着してしまい、この結果、検出されないという可能性も存在している。
【0004】
サンプルの損失を補償するべく、システムを通じて大量の空気を処理する必要がある。フィルタサンプリングと組み合わせて使用可能な補完的な方法は、例えば、粒子の初期濃縮を円滑に実行するサイクロンやその他の渦巻タイプの気体サンプラを使用することによって所与の空気容積内の粒子数を極大化するという方法である。この技法を使用して粒子を液体容積内に濃縮し、様々な異なる微生物学的、生化学的、及び分子的な分析のために、捕獲された生体粒子に対する即時アクセスを付与することも行われている。
【0005】
粒子の液体内への注入には、液体の加熱と蒸発を伴い、且つ、捕獲プロセスにおいてシステムが乾燥することを防止するべく、しばしば、大量の液体(1mlを上回る)が必要とされる。この後に、この液体を遠心分離法によって処理することにより、サンプルの最終的な濃縮物を生成可能である。
【0006】
生体粒子のサンプリングは、「空気から空気」法、「空気から表面」法、又は「空気から液体」法によって実行可能である。液体法は、0℃を下回る温度における冷凍現象に起因して面倒なものとなる可能性を有している。サンプリングの主要なパラメータは、そのサンプリング技術のサンプリング容積、捕獲効率、及び濃縮効率である。標準的なサイクロンは、毎秒1m3の空気を採取し、捕獲した粒子を1〜2mlの流体に濃縮する能力を有しており、これは、生化学的分析にとって、大きな容積である。この範囲の容積は、96ウェルのプレートを満たし、且つ、約14ユーロ/プレート/秒に等しい試薬を消費することになろう。サイクロンによる迅速な空気サンプリングの利点が、これに続くサンプルの調整によって損なわれるのは明らかである。
【0007】
1つの方法においては、空気中の生物学的粒子の静電沈降を利用することにより、従来のマイクロスケールの装置内において寒天プレート上に細菌をサンプリングし(Mainelis他(2002a)及びMainelis他(2002b))、且つ、歯科医療設備を浄化している(Iversen及びTolo(1975))。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、空気サンプルなどの気体サンプルから生物学的粒子を直接的に収集する方法、チップ、装置、及びシステムの提供に関するものである。
【0009】
本発明の別の目的は、大量の気体サンプルから格段に小さな容積に生物学的粒子を濃縮する、即ち、生物学的粒子の濃度を増大させる方法、チップ、装置、及びシステムの提供に関するものである。
【0010】
本発明の更に別の目的は、生物学的粒子の収集と濃縮を、同一構造内において、且つ、好ましくは、同一段階において、実行する方法、チップ、装置、及びシステムの提供に関するものである。
【0011】
本発明の更に別の目的は、収集された生物学的粒子の更なる分析を容易に実行可能な方法、チップ、装置、及びシステムの提供に関するものである。
【0012】
本発明の更なる目的は、収集された生物学的粒子の更なる分析を容易に実行可能な方法、チップ、装置、及びシステムの提供に関するものである。
【0013】
又、本発明の目的は、高い捕獲効率によって生物学的粒子を収集する方法、チップ、装置、及びシステムの提供に関するものである。
【0014】
本発明のその他の目的については、以下の説明及び例を参照することによって明らかとなろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、歩留まりを極大化し、且つ、随伴する段階の数を極小化して、サンプル収集の濃縮物への最適化を実現するべく、収集されたサンプルを培地又は液体に適用することなしに、大容量の空気を処理可能な方法、チップ、装置、及びシステムに関するものである。本発明は、最大毎分数百mLの空気の流れを実現する、例えば、微細構造(即ち、チップ)内において実行される、静電粒子収集を伴う生物学的収集システムを開示している。本発明によれば、非常に高い効率により、且つ、様々な後続の分析に非常に好適な形態において、生物学的粒子を捕獲可能である。
【0016】
本発明の最も重要な特徴は、この結果、例えば、空気サンプルから生物学的粒子を濃縮可能であるという点にある。現在使用されている液体に基づいたマイクロシステム、即ち、チップ又はバイオチップ、は、本質的に、マイクロリットルレベルのサイズの液体サンプルを処理する能力しか有していないため、この特徴は、重要である。即ち、マイクロシステムは、例えば、1〜2ml/sを生成するサイクロンから採取される液体サンプルを処理するのには、適していないのである。本発明により、生物学的粒子のサンプリングをマイクロシステム内において直接的に実行する場合には、マイクロシステムは、バイオエアロゾルサンプリング技術として有用なものとなる。
【0017】
本発明の一態様は、空気から生物学的粒子を収集する方法に関するものであり、この方法は、(1)サンプルチャンバと第1及び第2電極を提供する段階であって、サンプルチャンバの少なくとも一部が第1及び第2電極の間に位置するように、第1及び第2電極とサンプルチャンバを配置する、段階と、(2)サンプルチャンバ内に気体サンプルを提供する段階と、(3)第1及び第2電極間に電界を印加することにより、サンプルチャンバ内における気体サンプル内の生物学的粒子の静電収集を支援する段階と、を有している。
【0018】
本発明の好適な一実施例においては、本方法は、(4)気体チャンバ内において収集された生物学的粒子を第1液体試薬と接触させる段階を更に有している。
【0019】
本発明の好適な一実施例においては、本方法は、(5)収集された生物学的粒子に対して更なる分析を適用する段階を更に有している。従って、この実施例においては、本方法の目的は、生物学的粒子の収集だけではなく、その分析などをも含んでいる。
【0020】
本発明の別の態様は、生物学的粒子を収集するサンプルチャンバを有するチップに関するものであり、このチップは、周囲の空気と流体接続状態にある第1開口部と、装置との流体接続を形成するための第2開口部と、を有し、且つ、気体サンプルを有するサンプルチャンバと、サンプルチャンバの対向する側部上に配置された第1及び第2電極と、を有している。
【0021】
本発明の更なる態様は、チップ内において生物学的粒子を収集する装置に関するものである。この装置は、例えば、空気サンプリング装置、又は気体サンプルから生物学的粒子を収集する装置であってよい。本装置は、好ましくは、装置と機能的に関連付けられるようにチップを配置するチップサイトと;第1電位を第1電極に、且つ、第2電位を第2電極に印加し、この結果、第1及び第2電極間に電位差及び電界を生成することにより、サンプルチャンバ内における気体サンプルからの生物学的粒子の静電収集を支援する段階と、気体チャンバ内の収集された生物学的粒子を第1液体試薬と接触させる段階と、収集された生物学的粒子の更なる分析を実行する段階と、から構成された群から選択された1つ又は複数の動作を装置が実行することを実現するソフトウェアを有するプログラム可能なユニットと;を有している。
【0022】
本発明の更に別の態様は、生物学的粒子を収集するシステムに関するものであり、このシステムは、本明細書に定義されている装置と機能的に関連付けされた本明細書に定義されているチップを有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付の図面を参照し、本発明のいくつかの実施例について説明する。
【0024】
本発明の一態様は、空気から生物学的粒子を収集する方法に関するものであり、この方法は、(1)サンプルチャンバと第1及び第2電極を提供する段階であって、少なくともサンプルチャンバの一部が第1及び第2電極の間に位置するように第1及び第2電極とサンプルチャンバが配置される、段階と、(2)サンプルチャンバ内に気体サンプルを提供する段階と、(3)第1及び第2電極間に電界を印加することより、サンプルチャンバ内における気体サンプル内の生物学的粒子の静電収集を支援する段階と、を有している。
【0025】
本発明の一実施例においては、本方法は、気体の流れ(例えば、気体サンプルの提供に使用される気体の流れ)を終了させる段階を更に有している。
【0026】
本発明の好適な実施例においては、本方法は、(4)サンプルチャンバ内において収集された生物学的粒子を第1液体試薬と接触させる段階を更に有している。
【0027】
本発明の好適な実施例においては、本発明は、(5)収集された生物学的粒子に更なる分析を適用する段階を更に有している。従って、この実施例においては、本方法の目的は、生物学的粒子の収集のみならず、その分析及び/又は検出をも含んでいる。
【0028】
従って、本方法は、段階(1)、(2)、(3)、及び(4)、或いは、段階(1)、(2)、(3)、及び(5)、或いは、段階(1)、(2)、(3)、(4)、及び(5)などの順序で、段階(1)、(2)、及び(3)を有することができる。
【0029】
本発明によれば、「生物学的粒子の収集」という文言は、気体サンプルが流体によって置換された際に、生物学的粒子がサンプルチャンバ内に留まるように、サンプルチャンバ内において粒子を収集すること、即ち、サンプルチャンバ内に生物学的粒子を保持することに関するものである。通常、この収集は、生物学的粒子に対して作用する電界の静電気力によって実行される。
【0030】
「X及び/又はY」という文脈において使用される「及び/又は」という文言は、「X」又は「Y」、或いは、「X及びY」として解釈されたい。
【0031】
本発明によれば、「生物学的粒子」という用語は、例えば、微生物及び/又はウイルス及び/又はこれらの断片を有する粒子に関するものである。
【0032】
「気体サンプル」という用語は、1つ又は複数の気体と、恐らくは、生物学的粒子をも有するサンプルに関するものである。気体サンプルは、例えば、環境的な空気のサンプルや、土、砂、埃、又は未確認の粉などの粉状物質の真空吸引によって結果的に得られる空気のサンプルなどの気体サンプルであってよい。調査対象の気体サンプルは、微生物を含む、又は、含む可能性を有する、呼気サンプルを吐き出す人間に由来するものであってもよい。
【0033】
本発明によれば、「サンプルチャンバ」、「コンテナ」、及び「反応チャンバ」という用語は、相互交換可能に使用されている。
【0034】
本発明の好適な実施例においては、サンプルチャンバは、チップ、即ち、カートリッジ又はバイオチップから成っている。サンプルチャンバは、例えば、本明細書に定義されているチップから成っている。
【0035】
本発明の好適な一実施例においては、サンプルチャンバは、チップ、即ち、カートリッジ又はバイオチップから成っている。通常、チップは、使い捨て可能なユニットであり、これは、一回だけの使用を意味している。
【0036】
好適な一実施例においては、第1及び第2電極は、サンプルチャンバの対向する側部上に配置されている。
【0037】
本発明の一実施例においては、気体サンプルがサンプルチャンバを通じて流れている際に、気体サンプルから生物学的な粒子を収集している。別の実施例においては、捕獲効率を向上させるべく、気体サンプルがサンプルチャンバを通じて再循環している際に、即ち、気体サンプルがチャンバを複数回にわたって通過している際に、気体サンプルから生物学的粒子を収集している。例えば、再循環する際には、気体サンプルは、少なくとも2回、3回、4回、5回、10回、15回、20回、30回、40回、50回、又は75回など、少なくとも100回にわたってサンプルチャンバを通じて流れることができる。気体サンプルは、例えば、2〜50回、50〜100回、又は100〜200回など、2〜200回の範囲内の回数にわたって、サンプルを通じて流れることができる。
【0038】
本発明の一実施例においては、気体サンプルは、気体の流れを利用することにより、サンプルチャンバ内に提供される。生物学的粒子を収集する際には、気体の流れは、通常、好ましくは、約5〜1000mL/分の範囲内の流速を具備している。
【0039】
一実施例においては、気体サンプルから生物学的粒子を収集する前に、気体の流れを終了させている。
【0040】
通常、サンプルチャンバ内の気体サンプルの少なくとも一部が第1及び第2電極の間に位置し、又は、これらの間を流れている。例えば、気体サンプルの容積の少なくとも50、60、70、80、90、95、97.5、99、99.5、又は99.9%が第1及び第2電極の間に位置し、又は、これらの間を流れたり、気体サンプルの容積の少なくとも100%が第1及び第2電極の間に位置し、又は、これらの間を流れている、など、気体サンプルの容積の少なくとも40%が第1及び第2電極の間に位置し、又は、これらの間を流れている。
【0041】
第1及び第2電極間に印加する電界については、後程、更に詳述する。
【0042】
本発明の好適な一実施例においては、サンプルチャンバの収集された生物学的粒子を第1液体試薬と接触させている。生物学的粒子が、まだ第1及び第2電極間に位置している際に生物学的粒子を接触させるほうが好ましいであろう。
【0043】
第1液体試薬は、プライマー、核酸、ヌクレオチド三燐酸塩、及び核酸ポリメラーゼから構成される群から選択された、1つ又は複数の試薬を有することができる。
【0044】
第1液体試薬は、2−メルカプトエタノール、例えば、10mMの濃度のもの、BSA、例えば、1mg/mlの濃度のもの、及び/又は界面活性剤、例えば、0.5%〜6%(w/v)の濃度のもの、などの添加剤を更に有することができる。界面活性剤は、Triton X−100、Triton X−114、NP−40、Tween20、Tween80、及びこれらに類似した非イオン性界面活性剤から構成された群から選択可能である。
【0045】
第1液体試薬は、5’−3’エキソヌクレアーゼ分解性オリゴ核酸プローブを更に有することが可能であり、この核酸プローブの分解の結果、酸化還元活性成分が放出される。
【0046】
酸化還元活性成分は、例えば、フェロセンなどのメタロセンであってよい。
【0047】
本発明によれば、「核酸」、「核酸配列」、又は「核酸分子」という用語は、広範に解釈することを要し、これらは、例えば、リボ核酸(RNA)又はデオキシリボ核酸(DNA)のオリゴマー又はポリマー、或いは、これらのミメティクスを有することができる。この用語は、自然起源の核酸塩基、糖、及び共有インターヌクレオシド(バックボーン)結合を有する分子、並びに、同様に機能する非自然起源の核酸塩基、糖、及び共有インターヌクレオシド(バックボーン)結合を有する分子、又はこれらの組み合わせを含んでいる。このような変更又は置換された核酸は、例えば、ターゲット核酸分子の親和性の向上やヌクレアーゼ及びその他の酵素の存在安定性の向上などの望ましい特性に起因し、本来の形態よりも好ましいものであり、この文脈において、これらを「核酸アナローグ(nucleic acid analogue)」又は「核酸ミミック(nucleic acid mimic)」という用語で表現する。核酸ミミックの好ましい例は、分子又は機能的に類似の核酸誘導体を有するペプチド核酸(PNA−)、ロックされた核酸(LNA−)、キシロ−LNA−、ホスホロチオエート−、2’−メトキシ−、2’−メトキシエトキシ−、モルホリノ−、及びホスホラミデート−である。
【0048】
本発明によれば、「プライマー」という用語は、5〜20個、20〜50個、及び50〜100個のヌクレオチドなど、5〜100個の範囲内のヌクレオチドを有する核酸分子に関係している。好適な実施例においては、プライマーは、5〜10個、10〜20個、20〜30個、及び30〜40個のヌクレオチドなど、5〜40個の範囲内のヌクレオチドを有している。
【0049】
「核酸ポリメラーゼ」という用語は、好ましくは熱安定性を有する、即ち、酵素が、テンプレートに対して相補的なプライマー拡張生成物の形成に触媒作用を及ぼし、且つ、ダブルストランドテンプレート核酸の変性を実現するのに必要な時間にわたって上昇した温度に晒された際に不可逆的に変性しない、DNA−又はRNA−依存DNAポリメラーゼ酵素に関係している。一般に、合成は、それぞれのプライマーの3’端部において始まり、テンプレートのストランドに沿って5’から3’の方向に進行する。熱安定性を有するポリメラーゼは、Thermus flavus、T. ruber、T. thermophilus、T. aquaticus、T. lacteus、T. rubens、Thermococcus litoralis、Pyrococcus furiosus、Bacillus Stearothermophilus、及びMethanothermus fervidusなどの好熱性又はカルドアクティブ(caldoactive)な系統から隔離されている。但し、酵素が補充される場合には、熱安定性を有していないポリメラーゼを核酸増幅に使用することも可能である。
【0050】
収集された生物学的粒子に適用可能な更なる分析は、例えば、生物学的物質の抽出などの前処理段階を伴うことができよう。本発明の好適な実施例においては、生物学的粒子の抽出は、「Method, chip, device and system for extraction of biological material」という名称の同時係属中のPCT特許出願第XXXXXXXX号に従って実行される。この内容は、本引用により、本明細書に包含される。PCT特許出願第XXXXXXXX号明細書に記述されているように、遺伝物質などの生物学的物質は、生物学的粒子を第1液体試薬などの液体と接触させた後に、生物学的粒子を交番電界に露出させることにより、生物学的粒子から抽出可能である。交番電界は、大部分の生物学的粒子を破裂させ、場合によっては、細菌胞子をも破裂させることが可能であり、更なる分析のために、生物学的粒子から生物学的物質が放出される。
【0051】
放出された生物学的物質の更なる分析は、ELISA、たんぱく質分離、たんぱく質精製などのプロセスをも包含可能である。放出された遺伝物質に関する更なる分析は、制限酵素による培養、PCRプロセスなどの核酸増幅、電気泳動、並びに、例えば、蛍光検出や電気化学的検出などの検出を包含可能である。PCRプロセス及び検出は、例えば、「Method, kit and system for enhanced nested PCR」という名称の同時係属中のPCT特許出願第YYYYYYY号に記述されている方法に従い、且つ、これに記述されているキットを使用することによって実行可能である。この内容は、本引用により、本明細書に包含される。
【0052】
本発明の一実施例によれば、第1及び/又は第2電極は、実質的に、シート、プレート、ディスク、ワイヤ、ロッド、又はこれらの任意の組み合わせから構成された群から選択された形態を具備している。現時点においては、少なくとも1つの電極がシートの形態を具備していることが好ましく、第1及び第2電極の両方がシートの形態を具備していることが更に好ましい。
【0053】
本発明の一実施例においては、第1及び第2電極は、最大15mm、10mm、9mm、8mm、7mm、6mm、5mm、又は、最大4mmなど、好ましくは、最大で20mmだけ、更に好ましくは、最大で3mmだけ、並びに、最大0.3mm、0.2mm、0.1mm、最大0.05mmなど、尚更に好ましくは、最大で0.5mmだけなど、最大で20mmの距離だけ離隔している。
【0054】
例えば、第1及び第2電極は、0.05〜0.1、0.1〜0.2、0.2〜0.3、0.3〜0.4、0.4〜0.5、0.5〜1、1〜2、2〜5、5〜10、又は10〜15mm、並びに、15〜20mmの範囲など、0.05〜20mmの範囲内の距離だけ離隔可能である。
【0055】
通常、第1及び第2電極は、少なくとも0.03mm又は0.05mmなど、少なくとも0.02mmの距離だけ離隔可能である。
【0056】
この文脈においては、「生物学的粒子」という用語は、例えば、微生物及び/又はウイルス及び/又はその断片を有する粒子に関係している。
【0057】
微生物は、例えば、原始微生物、真正細菌性微生物、又は真核性微生物から構成された群から選択可能である。
【0058】
例えば、微生物は、細菌、細菌胞子、ウイルス、菌、菌類胞子から構成された群から選択可能である。
【0059】
本発明の好適な実施例においては、微生物は、空気中の微生物である。
【0060】
細菌性粒子は、植物胞子又はこの断片を有することも可能である。
【0061】
本発明の好適な実施例においては、微生物は、細菌胞子である。
【0062】
例えば、細菌胞子は、バシラス属及び/又はクロストリジウム属から選択された細菌によって形成可能である。
【0063】
本発明の好適な実施例においては、細菌胞子は、炭素菌によって形成される胞子である。細菌性粒子は、例えば、炭素菌によって形成される細菌胞子を有することができる。又、細菌性粒子は、基本的に、炭素菌によって形成される1つ又は複数の細菌胞子から構成することも可能である。
【0064】
本発明の別の態様は、生物学的粒子を収集するサンプルチャンバを有するチップに関係しており、このチップは、周囲の空気と流体接続状態にある第1開口部と、装置と流体接続状態を形成するための第2開口部と、を有し、且つ、気体サンプルを有するサンプルチャンバと、サンプルチャンバの対向する側部上に配置された第1及び第2電極と、を有している。
【0065】
本発明の好適な実施例においては、チップは、第1及び第2電極に付着した生物学的粒子を更に有している。
【0066】
本発明の別の実施例においては、第1及び第2電極の電位は、1〜10マイクロメートルの範囲内の有効長を具備する生物学的粒子の場合に少なくとも50%の捕獲効率をもたらすように選択されている。
【0067】
更に、本発明の更なる一実施例においては、第1及び第2電極の電界は、1〜10マイクロメートルの範囲内の有効長を具備する生物学的粒子の場合に少なくとも50%の捕獲効率をもたらすように選択されている。
【0068】
電界の強度は、50V/mm、100V/mm、200V/mm、300V/mm、400V/mm、500V/mm、600V/mm、700V/mm、800V/mm、900V/mm、1000V/mm、1100V/mm、1200V/mm、1300V/mm、1400V/mm、1500V/mm、1600V/mm、1700V/mm、1800V/mm、1900V/mm、2000V/mmからなる群から選択可能である。
【0069】
例えば、電界の強度は、50〜100、100〜200、200〜300、300〜400、400〜500、500〜750、750〜1000、1000〜1200V/mm、1200〜1500V/mmの範囲内、並びに、1500〜2000V/mmの範囲内など、50〜2000V/mmの範囲内であってよい。
【0070】
本発明の好適な実施例においては、第1及び第2電極は、それぞれ、負及び正、又は、この逆、に帯電している。例えば、2つの電極の電位差が400Vである場合には、負に帯電した電極は、接地に対して−200Vの電位を具備可能であり、正に帯電した電極は、接地に対して200Vの電位を具備可能である。電界は、理論的な電界、即ち、第1及び第2電極間の電位差を第1及び第2電極間の最小距離によって除算したもの、であることが好ましい。
【0071】
サンプルチャンバを有するチップのサンプルチャンバの捕獲効率は、第1及び第2電極の設計及びこれらの間の距離、サンプルチャンバの構造及び材料、並びに、第1及び第2電極に印加される電位によって左右される。
【0072】
本発明の非常に好適な実施例においては、第1電極の第1電位及び第2電極の第2電位と、従って、第1及び第2電極間の電界は、1〜10マイクロメートルの範囲内の有効長を具備する生物学的粒子の場合に、少なくとも70%、好ましくは、少なくとも80%、並びに、更に好ましくは、少なくとも90%の捕獲効率など(少なくとも95%、97.5%、99%、99.5%、又は99.9%、約100%など)、少なくとも50%の捕獲効率をもたらすように選択されている。
【0073】
捕獲効率は、例4の標準化された方法に従って判定されることが好ましい。
【0074】
本発明によれば、粒子の「有効長」という用語は、粒子の空気力学的な直径であり、例えば、レーザー光散乱によって計測されるものである(O’Brien他(1986))。粒子の空気力学的な直径dpaは、次式によって推定可能である。
【0075】
dpa=dps・√ρp
【0076】
ここで、dpsは、Stoke直径(単位:μm)であり、ρpは、粒子密度(単位:g/cm3)である。
【0077】
本発明のチップは、第1開口部を有するサンプルチャンバを有している。
【0078】
第1開口部は、サンプルチャンバ内にサンプルを導入するべく使用可能である。第1開口部は、例えば、周囲の空気などのサンプルと流体接続状態にあってよい。或いは、この代わりに、第1開口部は、1つ又は複数の弁に接続されており、これらの弁を開くことによってサンプルチャンバをサンプルと流体接続状態にすることも可能である。
【0079】
本発明の重要な実施例においては、サンプルチャンバ、例えば、チップのサンプルチャンバは、第2開口部を有している。第2開口部は、例えば、サンプルチャンバの空気又はサンプルの排出を実現することにより、サンプルチャンバ内への新しいサンプルの導入を円滑に実行するべく使用可能である。又、第2開口部を使用し、サンプルチャンバ内に第1液体試薬を導入することも可能である。或いは、この代わりに、第1開口部を介して、第1液体試薬をサンプルチャンバ内に供給することも可能である。
【0080】
サンプルチャンバ、例えば、チップのサンプルチャンバは、通常、マイクロスケールのサンプルチャンバである。本発明の一実施例においては、サンプルチャンバの容積は、最大400μL、300μL、200μL、100μL、50μL、25μL、15μL、10μL、5μL、4μL、3μL、又は最大2μL、並びに、最大1μLなど、最大で500μLである。例えば、サンプルチャンバの容積は、最大400nL、300nL、200nL、100nL、50nL、25nL、15nL、10nL、5nL、4nL、3nL、又は最大2nL、並びに、最大1nLなど、最大で500nLである。
【0081】
通常、サンプルチャンバの容積は、少なくとも10nLである。本発明の好適な実施例においては、サンプルチャンバの容積は、5μL〜30μLなど、1μL〜50μLの範囲内である。
【0082】
本発明の一実施例においては、対向する壁のペア間の最小距離は、最大15mm、10mm、8mm、6mm、4mm、3mm、又は2mm、並びに、最大1mmなど、最大で20mmである。例えば、対向する壁のペア間の最小距離は、最大600μm、500μm、400μm、300μm、200μm、100μm、50μm、25μm、15μm、10μm、5μm、4μm、3μm、又は最大2μm、並びに、最大1μmなど、最大で800μmである。
【0083】
通常、対向する壁のペア間の最小距離は、少なくとも5μmである。本発明の好適な実施例においては、対向する壁のペアの最小距離は、100μm〜400μm又は150〜350μmなど、50μm〜500μmの範囲内である。
【0084】
本発明の一実施例においては、サンプルチャンバ、例えば、チップのサンプルチャンバ、の長さは、1mm〜10mm、10mm〜20mm、20mm〜30mm、30mm〜40mm、又は40mm〜50mmの範囲内など、1mm〜50mmの範囲内である。好適な実施例においては、サンプルチャンバの長さは、3mm〜7mm又は4mm〜6mmなど、2mm〜8mmの範囲内である。例えば、サンプルチャンバの長さは、約4.5mmであってよい。
【0085】
本発明の一実施例においては、サンプルチャンバ、例えば、チップのサンプルチャンバ、の幅は、0.2mm〜1mm、1mm〜3mm、3mm〜5mm、5mm〜7mm、又は7mm〜10mmの範囲内など、0.2mm〜10mmの範囲内である。好適な実施例においては、サンプルチャンバの幅は、0.5mm〜1.5mm又は0.75mm〜1.25mmなど、0.2mm〜2mmの範囲内である。例えば、サンプルチャンバの幅は、約1mmであってよい。
【0086】
本発明の一実施例においては、サンプルチャンバ、例えば、チップのサンプルチャンバ、の高さは、100μm〜1mm、200μm〜900μm、300μm〜800μm、500μm〜700μmの範囲内など、50μm〜2mmの範囲内である。好適な実施例においては、サンプルチャンバの高さは、200μm〜300μmなど、100μm〜400μmの範囲内である。
【0087】
本発明の一実施例においては、サンプルチャンバ、例えば、チップのサンプルチャンバ、の長さは、約4.5mmであり、サンプルチャンバの幅は、約1mmであり、サンプルチャンバの高さは、約300μmである。
【0088】
本発明の一実施例においては、チップは、第1及び第2電極を更に有している。
【0089】
第1及び/又は第2電極は、異なる形状又は寸法を具備可能である。例えば、第1及び/又は第2電極は、実質的に、シート、プレート、ディスク、ワイヤ、ロッド、又はこれらの組み合わせからなる群から選択された形態を具備可能である。
【0090】
本発明の好適な実施例においては、第1及び第2電極は、例えば、シート状の電極であってよい。
【0091】
本発明の好適な実施例においては、第1電極及び第2電極は、互いに対向している。例えば、これらは、サンプルチャンバの対向する側部上に配置可能である。
【0092】
第1電極及び/又は第2電極は、例えば、サンプルチャンバ内に独立して立設されているか、或いは、サンプルチャンバの壁の1つ又は複数のものに装着された状態でサンプルチャンバ内に配置可能である。
【0093】
第1及び/又は第2電極は、1つ又は複数のサンプルチャンバ壁内に埋め込み可能である。例えば、第1及び第2電極は、サンプルチャンバ壁内に埋め込み可能である。或いは、この代わりに、第1及び/又は第2電極は、1つ又は複数のチップの外部表面に配置することも可能である。
【0094】
好ましくは、第1電極及び第2電極は、サンプルチャンバの対向する側部上に配置される。
【0095】
第1及び第2電極間の電位差は、均一又は異なるサイズの粒子が表面上に捕獲され、或いは、対象粒子の選択又は捕獲に対応可能な所与の方向に偏向されることになる、範囲内のものであってよい。
【0096】
例えば、第1電極及び/又は第2電極などの電極は、いくつかの異なる材料から形成可能である。通常、電極は、金属又は合金から形成される。第1及び第2電極は、例えば、銀、金、白金、銅、炭素、鉄、黒鉛、クロム、ニッケル、コバルト、チタニウム、水銀、又はこれらの合金から構成される群から選択された金属を有することができる。
【0097】
電極が、導電性の液体を有し、場合によっては、導電性の液体から構成される、というケースを想起することも可能である。導電性の液体は、例えば、水銀であってよい。
【0098】
電極の寸法及び/又は構造は、通常、サンプルチャンバの寸法及び/又は構造によって左右される。電極の長さ及び幅は、サンプルチャンバの長さ及び幅と同程度の大きさを有している。
【0099】
電極は、導電性材料からなる数原子レイヤのコーティングなどにより、薄く形成可能である。
【0100】
本発明の一実施例においては、電極、例えば、第1及び/又は第2電極、は、0.001μm〜1μm、1μm〜20μm、20μm〜200μm、及び200μm〜2000μmなど、0.001μm〜2000μmの範囲内の厚さを具備している。
【0101】
本発明の実施例においては、チップのサンプルチャンバは、例えば、酸化還元活性成分、例えば、プローブから放出されるもの、の存在又は不存在を検出するための2つ又は3つの検出電極などの検出電極の組を更に有している。2つの検出電極は、それぞれ、作用電極と対向電極として機能可能である。検出電極の組は、基準電極を更に有することができる。通常、検出電極は、金属又は合金から形成される。電極は、例えば、炭素、銀、金、又は白金から構成された群から選択された材料を有することができる。検出の後に、電極は、電極表面上における膜形成の害を受ける可能性を有している。分解したプローブの更なる検出を実現するべく、更なる検出電極の組をチップのサンプルチャンバ内に配置可能である。
【0102】
本発明の一実施例においては、第1及び第2電極は、検出電極の組であってよい。
【0103】
本発明の好適な実施例においては、チップは、温度検知素子を更に有しており、これは、例えば、正の温度係数(PTC)を有する感熱金属に基づいた抵抗器(サーミスタ)であってよい。即ち、サーミスタは、環境温度の上昇に伴って電気抵抗値の増大を、そして、温度の減少に伴って電気抵抗値の減少を示す。
【0104】
サーミスタは、例えば、銅、ニッケル、鉄、アルミニウム、白金、又はこれらの合金を有する材料のグループから選択可能である。
【0105】
サーミスタは、様々な形状又は寸法を具備可能である。例えば、サーミスタは、実質的に、シート、プレート、ディスク、ワイヤ、又はロッドの群から選択れた形態を具備可能である。
【0106】
サーミスタは、例えば、ワイヤ形態の電極であってよい。
【0107】
加熱電極は、様々な形状又は寸法を具備可能である。例えば、加熱電極は、実質的に、シート、プレート、ディスク、ワイヤ、又はロッドの群から選択された形態を具備可能である。
【0108】
本発明の好適な実施例においては、加熱電極は、例えば、シート状の電極であってよい。本発明の好適な実施例においては、加熱電極は、反応チャンバの少なくとも1つの側部からの加熱を実現するべく配置可能である。
【0109】
更に別の実施例においては、1つ又は複数の補助的な加熱電極を反応チャンバの対向する側部上に配置可能である。
【0110】
加熱電極は、好ましくは、ニッケル−クロム(NiCr)、鉄−クロム−アルミニウム(FeCrAl)、鉄−ニッケル−クロム(FeNiCr)、又はその他の加熱素子合金の群から選択された導電性材料から製造されている。
【0111】
本発明の好適な実施例においては、チップは、チップの電極と電気的な接触状態にある1つ又は複数の導電性接触パッドを有している。チップは、第1電極と電気的な接触状態にある導電性接触パッドを有することができる。チップは、第2電極と電気的な接触状態にある導電性接触パッドを有することができる。チップは、加熱電極の各端部と電気的な接触状態にある2つの導電性接触パッドを有することができる。チップは、検出電極の組の中の各電極と電気的な接触状態にある2つ又は3つの導電性接触パッドを有することができる。
【0112】
図11には、2つの模範的なチップの実施例が示されている。図11(A)においては、チップ(1)は、サンプルチャンバ(2)と、第1電極(3)と、第2電極(4)と、を有している。第1電極(3)は、チップの上部(5)に装着されており、第2電極(4)は、チップの下部(6)に装着されている。第1及び第2電極は、いずれも、サンプルチャンバ(2)の液体コンテンツの望ましくない電気分解を防止するべく、電気的に絶縁性を有するレイヤ(7)によってカバーされている。加熱電極が、第2電極上の絶縁レイヤ内に埋め込まれている。サンプルチャンバは、チップ(1)の第1部分(5)と第2部分(6)の間に挟持されているスペーサ部分(9)を介して形成されている。検出電極と温度検知素子の組は、図11には示されていない。
【0113】
チップ及びサンプルチャンバの更なる実施例が図1〜8に示されている。
【0114】
チップは、多種多様の材料を有することができる。これは、例えば、プラスチックなどの有機ポリマー、金属、シリコンなどの半導体、ガラス、セラミックなどを有することができる。
【0115】
図11との関連においては、第1及び第2部分は、例えば、プラスチック、シリコンなどの半導体、ガラス、又はセラミックなどの材料を有することができよう。第1及び第2電極は、例えば、金又は銅などの金属を有することができよう。絶縁レイヤは、例えば、SiO2やポリイミドの膜であってよかろう。加熱電極は、例えば、NiCr電極であってよく、スペーサレイヤは、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)エラストマの成型品であってよい。
【0116】
図11(B)の場合には、第1及び第2電極は、チップ内に含まれておらず、例えば、チップを作動させる装置に含まれている。
【0117】
チップは、1つのサンプルチャンバのみを有することも可能であり、或いは、複数のサンプルチャンバを有することもできる。
【0118】
チップは、通常、0.5mm〜50mmの範囲内、好ましくは、2mm〜8mmの範囲、の厚さを具備している。
【0119】
チップは、通常、10mm〜500mmの範囲内、好ましくは、40mm〜200mmの範囲、の長さ又は直径を具備している。
【0120】
チップは、通常、5mm〜200mmの範囲内、好ましくは、20mm〜100mmの範囲、の幅を具備している。
【0121】
本発明の更なる態様は、チップ内において生物学的粒子を収集する装置に関係している。この装置は、例えば、空気サンプリング装置、又は気体サンプルから生物学的粒子を収集する装置であってよい。本装置は、好ましくは、装置と機能的に関連付けられるようにチップが配置されるチップサイトと;第1電位を第1電極に、且つ、第2電位を第2電極に印加し、この結果、第1及び第2電極間に電位差と電界をもたらすことにより、サンプルチャンバ内における気体サンプルからの生物学的粒子の静電収集を支援する段階と、サンプルチャンバ内の収集された生物学的粒子を第1液体試薬と接触させる段階と、収集された生物学的粒子の更なる分析を実行する段階と、から構成される群から選択された1つ又は複数の動作を装置が実行することを実現するソフトウェアを有するプログラム可能なユニットと;を有している。
【0122】
この文脈において、「機能的に関連付けられている」という文言は、チップに影響を与える1つ又は複数の動作を装置が実行できるようにチップが装置と関連付けられていることを意味している。
【0123】
本発明の一実施例においては、装置がサンプルチャンバのコンテンツの電界に影響を与えることができる際に、チップは装置と機能的に関連付けられている。
【0124】
本発明の一実施例においては、チップの少なくとも1つの電極の電位を装置が制御可能である際に、チップは装置と機能的に関連付けられている。例えば、装置がチップの第1電極及び/又は第2電極の電位を制御可能である際に、装置はチップと機能的に関連付けられている。
【0125】
機能的に関連付けられているということは、チップのサンプルチャンバが、流れ制御手段と流体伝達状態にあるということを更に包含可能である。
【0126】
本発明の一実施例においては、本装置は、第1及び第2電極を有しており、チップが機能的に関連付けられている際に、第1及び第2電極間の電界は、サンプルチャンバ内における気体サンプルの生物学的粒子の収集を支援する。この実施例においては、チップが第1及び第2電極を有することは必須条件ではない。
【0127】
本装置は、例えば、流れ生成手段、プログラム可能なユニット、及び/又は第1及び第2電極に対して電力を供給する電源を更に有することができる。
【0128】
本発明の一実施例においては、チップは、チップサイトを介して装置と機能的に関連付けられている。チップサイトは、例えば、チップポートと装置ポート間の接合によって空気及び液体の漏れを除去することを保証する接続材料及びガスケットの両方として機能するプラスチックインターフェイスを有することができる。チップサイトは、例えば、チップを受け入れる表面及び/又はクレードルを有することができる。通常、チップサイトは、少なくとも1つの導電性接触パッドを有している。好ましくは、チップサイトは、チップの第1電極との電気的な接触を提供する少なくとも1つの導電性接触パッドと、チップの第2電極との電気的な接触を提供する導電性接触パッドと、を有している。
【0129】
プログラム可能なユニットは、動作の前、最中、及び/又は後において装置の制御、監視、及び/又は操作を円滑に実行するべく適合された、例えば、ソフトウェアなどの好ましくはコンピュータによって判読可能な、命令を含んでいる。
【0130】
プログラム可能なユニットは、好ましくは、関連付けられたデータストレージ手段内に保存されている1つ又は複数のコンピュータプログラムを具備する少なくとも1つのコンピュータを有しており、このコンピュータシステムは、装置を制御するべく適合されている。プログラム可能なユニットは、本発明の文脈においては、汎用コンピュータ、パーソナルコンピュータ(PC)、PLC(Programmable Logic Control)ユニット、soft−PLC(soft Programmable Logic Control)ユニット、hard−PLC(hard Programmable Logic Control)ユニット、産業用のパーソナルコンピュータ、又は専用のマイクロプロセッサからなる群から選択可能であるが、但し、これらに限定されない。
【0131】
又、本発明は、関連付けられたデータストレージ手段を具備する少なくとも1つのコンピュータを有するコンピュータシステムが、動作の前、最中、及び/又は後に装置を制御、監視、及び/又は操作できるようにするべく適合されたコンピュータプログラムプロダクトにも関係している。又、本発明は、関連付けられたデータストレージ手段を具備する少なくとも1つのコンピュータを有するコンピュータシステムが、動作の前、最中、及び/又は後に装置を制御、監視、及び/又は操作できるようにするルーチンの組を内部に保存しているコンピュータ可読媒体にも関係している。
【0132】
動作の前、最中、及び/又は後に装置を制御、監視、及び/又は操作するプログラム可能なユニットは、好ましくは、北極の気候、熱帯の気候、及び戦闘環境、特に、原子的、生物学的、及び/又は化学的戦争(ABC戦争)に晒されている戦闘ゾーン、などの過酷な状態における動作に適合されている。好ましくは、プログラム可能なユニットは、この種のユニットに適用される軍事仕様に準拠している。
【0133】
本発明の一実施例においては、ソフトウェアを有するプログラム可能なユニットは、チップが装置と機能的に関連付けられているかどうかを装置がチェックすることを、更に実現する。
【0134】
ソフトウェアを有するプログラム可能なユニットは、サンプルチャンバ内に気体サンプルを提供する段階と;第1電極に第1電位を、且つ、第2電極に第2電位を提供し、この結果、第1及び第2電極間に電位差と電界をもたらすことにより、サンプルチャンバ内における気体サンプルからの生物学的粒子の静電収集を支援する段階と;収集された生物学的粒子を第1液体試薬と接触させる段階と;更なる分析を実行する段階と;から構成された群から選択された2つ、3つ、又は4つの動作などの1つ又は複数の動作を装置が実行することを更に実現可能である。
【0135】
ソフトウェアを有するプログラム可能なユニットは、例えば、気体サンプルを提供する流れ生成手段を作動させることにより、装置がサンプルチャンバ内に気体サンプルを提供することを実現可能である。
【0136】
ソフトウェアを有するプログラム可能なユニットは、例えば、装置が、第1電位を第1電極に、且つ、第2電位を第2電極に印加することを実現可能である。
【0137】
ソフトウェアを有するプログラム可能なユニットは、例えば、液体試薬を提供する流れ生成手段を作動させると共に/又は流れ制御手段を作動させることにより、装置が、収集された生物学的粒子を第1液体試薬と接触させることを実現可能である。
【0138】
ソフトウェアを有するプログラム可能なユニットは、例えば、少なくとも2つの電極、例えば、前述の第1及び第2電極又は交番電界専用の電極の別の組、の電位を変調することによって、装置がサンプルチャンバ内の交番電界に反応混合物を露出させることを実現することにより、第1液体試薬と接触した収集済みの生物学的粒子に対して更なる分析が適用されることを実現可能である。
【0139】
ソフトウェアを有するプログラム可能なユニットは、例えば、前述の加熱電極を作動させることによって、装置がターゲット核酸配列の核酸増幅を実行することを実現することにより、第1液体試薬と接触した収集済みの生物学的粒子に更なる分析が適用されることを実現可能である。
【0140】
ソフトウェアを有するプログラムユニットは、例えば、装置が、増幅されたターゲット核酸配列の存在を計測すること及び/又は差動パルスボルタンメトリに関係した検出電極を作動させることによって、ターゲット核酸配列の増幅から結果的に得られる生成物を計測することを実現することにより、第1液体試薬と接触した収集済みの生物学的粒子に更なる分析が適用されることを実現可能である。
【0141】
本発明の好適な実施例においては、本装置は、サンプルチャンバの第1及び第2電極間に電界を印加するための装置とチップ間の電気的インターフェイスを更に有している。
【0142】
本装置は、基準信号、即ち、生物学的粒子を伴っていないサンプルを有する又は所与の明確に定義された量の生物学的粒子を有するサンプルからの信号、を更に計測可能である。基準信号は、例えば、サンプリングチャンバとは離れた別のチャンバ、例えば、チップの別の場所に配置されたチャンバ又は別のチップに配置されたチャンバ、から取得可能である。
【0143】
本装置は、内部電源を更に有することができる。内部電源は、例えば、電池を有することができる。PCR反応の際に利用されるエネルギー量は、PCRサイクルの最低及び最高温度間において流体サンプルの容積に等しい容積の水を加熱するのに必要な熱量として推定可能である。この温度差は、約50Kであり、従って、1サイクル当たりに伝達される熱は、30μLのサンプル容積の場合に約6ジュールである。例えば、60サイクルにわたる稼動の場合には、1つのPCR反応における合計エネルギー消費量は、60*6=360ジュールに達する。商用のサーモサイクラに匹敵するランピング時間(即ち、2℃/秒)を使用する場合に必要な電力は、360*2/50=14.4Wである。
【0144】
電池の電圧は、電池の定格電圧であると見なしている。例えば、ニッケル−カドミウム(NiCd)及びニッケル−金属水素化物(NiMH)電池の場合には、1.2V/セルであり、大部分のリチウム−イオン(Li−ion)電池の場合には、3.6V/セルである。電池の電荷容量は、通常、ミリアンペア−時間(mAh)の観点において与えられ、C定格として表現される。例えば、1200mA−時間のC定格を有する電池の1Cの負荷電流は、1200mAである。流出する負荷電流が0.1C未満である際には、電池は、理想的である、即ち、一定のエネルギー容量を有している)と見なすことができる(Linden D.(1984)。従って、例えば、10.8Vを供給する電池を使用して14.4Wの電力出力を供給する際には、エネルギー容量を劇的に低減するピーク電力消費量を回避するべく、この電池のC定格は、14.4/(10.8*0.1)=13300mAhの範囲内にある必要がある。
【0145】
このエネルギー消費量と電力供給を可能にすると共に真の携帯性を保証するべく、充電式の電池が好ましい。本発明の好適な実施例においては、充電式の電池は、ニッケル金属水素化物(NiMH)に基づいた電池とリチウム−イオン(Li−ion)に基づいた電池からなる群から選択されている。
【0146】
又、内部電源は、例えば、携帯型発電機などの発電機を有することも可能である。携帯型発電機は、外部電源として利用可能である。携帯型発電機は、ソーラーモジュール、電池充電器(例えば、AC又は自動車電池充電器)、燃料燃焼発電機、又はこれらに類似したものから充電することも可能であり、或いは、単純に、これらから構成することも可能である。
【0147】
或いは、この代わりに、例えば、電池によるバックアップによって補完されるものなどの外部電源からの電力を装置に提供することも可能である。
【0148】
本発明の一実施例においては、本装置は、例えば、チップ内のサンプルチャンバ内に気体サンプルを提供すると共に、チップが装置内に挿入された際に、サンプルチャンバの第2開口部と流体接続状態となる流れ生成手段を更に有している。
【0149】
流れ生成手段は、ピストンポンプ、メンブレインポンプ、又は容積型ポンプなどのポンプを有することができる。
【0150】
本発明の一実施例においては、ポンプは、サンプリングの際に、(10mL/min〜500mL/minの範囲内の)適切な気体の流れをチップを通じて供給可能である。好ましくは、ポンプは、サイズが小さく、軽量であり、流れに脈動が伴っておらず、モーター極性の変更によって媒体の流れを反転可能であり、電圧の制御によって流量を調節可能であるという中の1つ又は複数の基準を満足するべく選択する必要がある。
【0151】
本発明の一実施例においては、流れ生成手段は、試薬の小滴を生成するインクジェットディスペンサ又は類似のマイクロディスペンシング装置を有することができる。
【0152】
本発明の一実施例においては、気体サンプルは、チップを通じた受動的な流れによって提供可能である。この場合には、チップとサンプリング対象である周囲の空気間に速度差が必要となる。これを実現するための条件は、チップが空気中を移動する場合に満足される。例えば、第1開口部が周囲の空気と流体接続状態となるように、最適には、飛行方向に対向する状態で、飛行機上に取り付けられた場合がこれに相当する。或いは、この代わりに、空気に対して速度を具備していないチップの周囲を空気が移動している場合にも、この条件は満たされる。例えば、通気孔内に取り付けられている場合がこれに相当する。
【0153】
本発明の一実施例においては、本装置は、流れ、例えば、サンプルチャンバを通じた流れなど、を制御する手段を更に有している。
【0154】
流れは、例えば、液体の流れ及び/又は気体の流れであってよい。
【0155】
流れを制御する手段は、通常、1つ又は複数の弁を有している。弁は、例えば、逆止め弁、双方向弁、多位置弁、及びピンチ弁から構成される群から選択可能である。
【0156】
弁は、例えば、微細に製造された弁であってよく、一実施例においては、弁は、チップ内に内蔵されている。
【0157】
本発明の一実施例においては、インクジェットマイクロディスペンシング技術を使用して第1試薬液体を供給可能である。反応チャンバ内に液体をマイクロディスペンシングできるように、第1液体試薬又は第1液体試薬の別個の成分を有する1つ又は複数のコンパートメントを含むインクジェットカートリッジを取り付けている。
【0158】
本発明の更に別の実施例においては、第1液体試薬又はその別個の成分は、プラスチックポリマーから構成された密封された封筒内にカプセル化されている。プラスチックポリマーの封筒は、適切な電流の印加によるプラスチックポリマーの溶解と、これに続くカプセル化された液体のチップ内への放出を実現する組み込み型の加熱電極を具備している。更に別の実施例においては、密封されたプラスチックポリマー封筒からの液体の放出は、例えば、封筒を鋭利な物体によって破裂させるなどの封筒の機械的又は物理的な破裂によって実現可能である。
【0159】
本発明の一実施例においては、本装置は、結果の視覚的な読み取りを実現するディスプレイを具備可能である。ディスプレイは、発光源(LED、電球、又はこれらに類似したもの)、スクリーン、デジタル的な読み出し、又はこれらの任意の組み合わせの形態であってよい。本発明の更に別の実施例においては、読み出した情報をオーディオ信号の形態で伝達可能である。
【0160】
本発明の好適な実施例においては、本装置は、無線通信を実現するコンポーネントを有している。無線通信の例は、802.11モバイル無線LAN、セルラー、Bluetooth(登録商標)、GPS、及びUltra Widebandである。通信は、例えば、装置からのデータ伝送又は装置へのデータ伝送などの一方通行であってもよく、或いは、通信は、これらの組み合わせ、即ち、双方向、であってもよい。確立された通信を装置間通信に更に拡張可能である。即ち、1つの装置が別の装置のサンプリングの開始をトリガし、これにより、例えば、エアロゾル雲の発達状況の監視の円滑な実行を実現するアドホックネットワークの確立である。
【0161】
本発明の好適な実施例においては、本装置は、軽量及び/又は携帯型の装置である。
【0162】
本発明の一実施例においては、本装置は、最大8kg、6kg、4kg、3kg、又は2kg、並びに、最大1kgなど、最大で10kgの重さである。本装置は、最大600g、500g、400g、300g、200g、150g、100g、80g、60g、50g、40g、30g、20g、10g、又は5g、並びに、最大1gなど、最大で800gの重さであることが更に好ましいであろう。
【0163】
通常、本装置は、20g〜50g、50g〜100g、100g〜250g、250g〜500g、又は500g〜1000gなど、20g〜1kgの範囲内の合計重量を具備している。
【0164】
本発明の好適な実施例においては、本装置は、サンプルチャンバの第1及第2電極間に静電界を印加するための装置とチップ間の電気的インターフェイスを更に有している。
【0165】
本発明の一実施例においては、本装置は、第1及び第2電極を有しており、チップが機能的に関連付けられている場合に、第1及び第2電極間の電界は、サンプルチャンバ内における気体サンプルの生物学的粒子の収集を支援する。この実施例においては、チップが第1及び第2電極を有することは必須条件ではない。
【0166】
本発明の一実施例においては、本装置は、例えば、チップのサンプルチャンバ内に気体サンプルを供給すると共に、チップが装置に挿入された際にサンプルチャンバの第2開口部と流体接続状態となる流れ生成手段を更に有している。
【0167】
又、本装置は、第1液体試薬を受領及び/又は保持する第1試薬チャンバを有することもできる。通常、第1試薬チャンバは、少なくとも1つの開口部を具備しており、この開口部は、チップが装置と機能的に関連付けられた際にサンプルチャンバと流体接続状態となる。或いは、この代わりに、第1試薬チャンバの少なくとも1つの開口部は、例えば、流れを制御する手段を使用することによってサンプルチャンバと流体接続状態となる。又、第1試薬チャンバは、保存の際に除去可能な障壁によって閉鎖可能であり、この障壁は、装置を使用する際に、可逆的又は不可逆的に除去される。
【0168】
本発明の更に別の態様は、生物学的粒子を収集するシステムに関係しており、このシステムは、本明細書に定義されている装置と機能的に関連付けられた本明細書に定義されているチップを有している。
【0169】
本発明の一実施例においては、本システムのチップと装置は、統合されており、これは、互いに物理的に分離されないことを意味している。本発明の一実施例においては、本システムのチップと装置は、チップ又は装置の損傷を伴うことなしには互いに物理的に分離できないように統合されている。
【0170】
本発明の重要な一実施例においては、本システムは、使い捨て可能なシステムであり、これは、例えば、1回だけ使用されることを意味している。
【0171】
別の重要な実施例においては、本システムのチップは、使い捨て可能であるが、装置は、再使用可能である。
【0172】
本発明の特定の態様は、気体サンプルからの生体粒子(生きている又は生きていない微生物を含む又は有する粒子)の収集及び濃縮の円滑な実行を目的とする方法及び微細構造を包含している。
【0173】
本発明の目的は、生体粒子の効率的且つ迅速なサンプリングの実行にある。この目的は、空気の流れに対する誘発電界の複合的な使用法を有する方法及び構造によって実現される。この使用法は、電圧によって可変であると共に可変時間において印加可能な電界を作用させる電極の組を包含した構造と、使用法の最適化されたパラメータ設定の組と、から構成されている。
【0174】
本発明は、装置を通過する空気の流れに対して角度を有する又は垂直の電界の印加を実現する方法及び装置について開示しており、この方法の結果として、生体粒子が、装置内において収集及び濃縮される。
【0175】
添付の図面に示されているように、本発明は、気体サンプル内の微生物をサンプリング及び濃縮する方法、装置、及びシステムに関係している。この方法及びシステムによれば、後続の適切な手段によって微生物を検出可能である。検出段階は、当業者には明らかな適切な検出手段により、適切な方式において実行可能である。
【0176】
広く表現すれば、本発明によるサンプリング及び濃縮方法は、基本的に、装置を通じて循環している空気の流れに対して角度を有して又はこれに垂直に印加された電界によるトラップ又は捕獲に関係している。
【0177】
本発明の特定の実施例においては、添付の図面に示されているように、装置は、チャンバと、好ましくはプレート電極である2つの対向配置された電極と、を有している。調査対象の気体サンプルは、チャンバを通過するが、図7及び図8に示されているように、このチャンバは、気体サンプルをチャンバ内に受け入れるための吸入口と、気体サンプルをチャンバから放出する排出口と、を具備しており、気体サンプルは、吸入口から排出口に向かって、このチャンバを通じて循環する。又、図示されているように、吸入口と排出口の間のチャンバ内には、電極が配置されており、これらの電極は、電位を具備することにより、気体サンプルから微生物を捕獲しつつ、気体サンプルの通過を許容する。
【0178】
本発明の特定の実施例によれば、図3に明示されているように、電極は、装置を通じて循環する空気の流れに対して垂直に配置された2つのプレート電極を具備するアセンブリから構成されている。
【0179】
本発明の別の特定の実施例においては、図2に明示されているように、電極は、装置を通じて循環する空気の流れに対して垂直に配置されたワイヤ電極と1枚のプレート電極を具備するアセンブリから構成されている。
【0180】
本発明の更なる特定の実施例においては、図1に明示されているように、電極は、装置を通じて循環する空気の流れに対して垂直に配置された1つ又は複数のポイント電極と1枚のプレート電極を具備するアセンブリから構成されている。
【0181】
当業者には明らかように、いずれの場合にも、本発明によれば、本装置は、調査対象の気体環境から採取された気体サンプル内の微生物の存在を検出するシステム内において使用される。
【0182】
本発明の別の特殊な実施例においては、システム及びそのコンポーネントは、好ましくは、細菌(例えば、Bacillus spp.、Clostridium spp.、Legionella spp.、E. coli O157:H7、Neisseria spp.、Mycobacterium tuberculosis)、菌類(例えば、Aspergillus flavus、fumigatus、Niger、Histoplagma capsulatum、Coccidioides imitis)、ウイルス(例えば、天然痘、インフルエンザウイルス、風疹ウイルス)、及びこれらに類似したものなどの微生物をサンプリング及び濃縮するべく考案されている。
【0183】
本発明の特定の実施例が、図3に示されている。この図は、空気監視ユニットとして機能する装置の一例を示している。図3に示され、且つ、図7及び図8にも例示されているユニットは、病院、学校、産業、家庭、公的建物、農園、及びこれらに類似したものなどの施設の空気環境内に存在し得る、有害な微生物をサンプリング及び濃縮するのに特に有用である。動作の際には、この空気サンプリング装置は、検査対象である対応した施設の空気をサンプリングするべく、継続的な方式により、動作可能に接続されることが好ましい。
【0184】
空気サンプリング装置は、好ましくは、空気吸入口、吸入口弁、ハウジング、電源、排出口弁、空気ポンプ、空気排出口、制御回路基板(図示されてはいない)、システムの様々なコンポーネントから制御基板に向かうリレーワイヤ、及びシステムのハウジング及びその他のコンポーネント用の支持部を含んでいる。
【0185】
空気サンプリング装置は、通常、以下のように機能する。即ち、ポンプが、好ましくは、約5〜1000ミリリットル/分(ml/min)の範囲内の特定の吸引流速を空気の吸入口に、次いで、サンプリングチャンバ内に提供する。当業者には明らかなように、その他の適切な流速を本発明と共に使用可能である点に言及しておくことは有益である。又、調査対象の気体サンプルは、微生物を含む又は含む可能性が高い呼気サンプルを吐き出す人間から由来したものであってもよい。
【0186】
いずれの場合にも、調査対象の気体サンプルが気体環境或いは微生物を含む又は含む可能性が高い呼気を吐き出す人間から到来するかどうかとは無関係に、気体サンプルは、空気吸入口により、装置のサンプリングチャンバ内に導かれる。診断システムに習熟した熟練者であれば、微生物がサンプリング及び濃縮された後に、その微生物の識別に結びつくサンプリング済みの微生物を検出するための様々な方式を容易に見出すであろう。
【0187】
好ましくは、本装置は、ポリマー、シリカ、ガラス、金属、及びセラミックから構成される材料の群から製造される。
【0188】
本発明は、サンプリング技術の分野における従来技術に対する大きな改善であり、この結果、バイオチップ上における静電沈降を適切に実施可能であり、且つ、空気から生体粒子を直接的に捕獲するための低コストであって、安定し、且つ、十分に制御された手段が提供されることが理解されよう。バイオチップ内における捕獲効率は、容易に80%に達し、且つ、電圧を上げることにより、更に向上させることも可能であることが明らかである(図9を参照されたい)。EP(Electrostatic Precipitation:静電沈降)チップの動作の継続によって単一の捕獲及び濃縮段階が提供され、これは、最新技術の重要な改善である。
【0189】
但し、本発明は、主に、様々な環境から採取された気体サンプル内の微生物をサンプリングするべく設計されたものであり、この点は、以下の説明を参照することによって容易に理解され、且つ、当業者には明らかであろう。このことから、「空気」、「ダクト」、「換気」、「空気監視ユニット」、及びこれらに類似した表現は、本発明の範囲を限定するものと解釈されてはならず、これらは、本発明を使用可能あると共に本発明が有用であり得るすべてのその他の種類の事物を包含している。
【0190】
更には、添付の図面に示されている本発明の好適な実施例は、弁、ポンプ、制御回路基板などの様々なコンポーネントを有しており、且つ、本発明のサンプリング装置/システムの好適な実施例及び示されている対応する部品は、本明細書に説明及び図示されている特定の幾何学的構成から構成されてはいるが、これらのコンポーネント及び形状のすべてが、本発明にとって不可欠であるわけではなく、従って、これらは、制限を意図するものとして解釈してはならない(即ち、本発明の範囲を制限するものとして解釈してはならない)。当業者には明らかなように、本発明の範囲を逸脱することなしに、簡潔に後述するように、その他の適切なコンポーネント、並びに、その他の適切な幾何学的構成を本発明によるサンプリング装置/システムに使用することも可能であることを理解されたい。
【0191】
以上、本発明のいくつかの実施例について説明したが、本発明には更なる変更を加えることが可能であり、本出願は、本発明の原理に全般的に準拠しており、本発明が属する技術分野の知識又は慣行に含まれる本開示からの逸脱を含み、前述の不可欠な特徴にも当て嵌まり、且つ、添付の請求項に定義されている本発明の範囲内に属する本発明のあらゆる変形、使用法、又は適合を包含することを意図していることを理解されたい。
【0192】
本発明は、様々な目的又は使用法に使用可能である。例えば、本発明は、空気中の生きている(生長している)細菌を検出するべく使用可能である。装置を換気ダクト内に設置し、数日又は数週間の期間にわたって電源投入可能である。細菌を捕獲電極によって捕獲した後に、当業者には既知の後続の方法によって検出可能であろう。
【0193】
又、本発明は、炭素菌胞子などの胞子を検出するべく使用することも可能であろう。装置を換気ダクト内に設置し、数日又は数週間の期間にわたって電源投入可能であろう。細菌を捕獲電極によって捕獲した後に、当業者には既知の後続の方法によって検出することができよう。
【0194】
更には、本発明は、適切なカウント法を使用することにより、様々なサイズの粒子をサンプリングするべく使用することも可能であろう。具体的には、空気ダクト、換気システム、空気清浄機、エアコン、真空掃除機内の微生物の検出と、隔離された部屋、製薬及び医療用のクリーンルームなどの内部の微生物の検出のために使用可能であろう。
【0195】
又、本発明は、装置を、例えば、換気扇のマスクに直接接続することにより、患者に影響を及ぼす、生きている病原体を検出するべく使用することも可能である。
【0196】
本発明の特殊な態様は、生物学的粒子を収集するマイクロスケールの装置に関係しており、この装置は、サンプリング対象の空気とインパクトコレクタ間に空気の流れを生成する能力を提供する吸入開口部と、インパクトコレクタとインパクトコレクタの外部の間に空気の流れを生成する能力を提供する排出開口部と、を具備するインパクトコレクタであって、吸入又は排出口は、吸入開口部から排出開口部に向かってインパクトコレクタを通じて気体サンプルを吸引する気流生成手段に結合されており、インパクトコレクタは、吸入開口部と排出開口部の間のインパクトコレクタ内に配置された収集コンポーネントを具備しており、この収集コンポーネントは、並列に配置されると共に電流を導く能力を有する材料によってコーティングされた又はこの材料から構成されら表面又は表面の少なくとも一部を具備する複数の電極から構成されている、インパクトコレクタを有している。
【0197】
本発明の特定の実施例においては、パラレル電極により、装置を通過する気流に対して角度を有する又は垂直の電界を生成可能であり、この結果、サンプリングされた空気内に存在している粒子を帯電させて正又は負に帯電した電極に吸着させることにより、捕獲が円滑に実行される。
【0198】
本発明の特定の実施例においては、電極は、100V/mmと1500V/mmの間の強度の電界を生成する。
【0199】
本発明の特定の実施例においては、すすぎ用の流体と、生物学的粒子を保持する流体をマイクロスケールの装置を通じて吸引する手段と、を使用することにより、装置から生物学的粒子をすすぎ落としている。
【0200】
本発明の特定の実施例においては、生物学的粒子を保持する流体を収集する段階は、生物学的粒子の存在について流体を調査できるように流体をリザーバ内に導く段階を有している。
【0201】
本発明によれば、本発明の態様の中の1つのものの文脈において説明されている実施例及び特徴は、本発明のその他の態様にも当て嵌まることに留意されたい。
【0202】
(例)
以下の例は、本発明の広範の適用可能性を例示するものであり、その範囲を限定することを意図するものではない。本発明の精神及び範囲を逸脱することなしに、変更及び変形を実施可能である。尚、本発明の試験を実施する際には、本明細書に記述されているものに類似した又は等価な任意の方法及び材料を使用可能であるが、好適な方法及び材料について説明することとする。
【0203】
(例1:材料及び方法)
実験装置内のチップ上に胞子を捕獲するのに使用される電圧生成器(以下を参照されたい)を制御するGPIBソフトウェアは、具体的には、デンマークのNorresundbyに所在するRTX Telecom A/S社によって開発されたものである。TSI社(米国ミネソタ州Shoreviewに所在するTSI Inc.)の3321型粒子サイズ分析器をTSI社のソフトウェアであるAerosol Instrument Managerによって制御した。Fenix LaserをWinmark Proのバージョン4.0.0ビルド3773(米国ワシントン州Mukilteoに所在するSynrad software社)を使用して制御した。
【0204】
400パルス/秒及び5〜10%の範囲内のパワー強度により、1200dpiでレージングプロセスを稼動させた。必要なチャネルの深さに応じて、オーバーラップするマーキングの数を1〜10の間の数に設定した(10の場合には、深いチャネルが得られ、1の場合には、20〜30μmの深さの非常に浅い除去が得られる)。切除によって材料が掘り取られるに伴ってレーザーの焦点が失われることに起因し、非常に深いチャネル(>800μm)は、形状が凹形になる傾向を有している。GPIBによって制御される1250V−25WのPS310型高電圧電源は、Stanford Research Systems社(米国カリフォルニア州Sunnyvaleに所在するStanford Research Systems, Inc.)から購入した。100〜1200Vの範囲内の電圧を生成するべく、この電源を利用した。
【0205】
63m3のステンレススチールによってカプセル化されたエアロゾル室内において実行される実験に使用するEPチップの電圧及びポンプ制御装置は、デンマークのNorresundbyに所在するRTX Telecom A/S社によって開発されたものである。セットアップコンバータにより、4個の1.5Vの標準AA電池から250Vを供給し、このパワーによって空気ポンプをサポートした。
【0206】
Furgut社(ドイツのTannheimに所在するErich Furgut)のモデルDC06/03f型真空ポンプを利用してEPチップ内における空気の吸引を仲介した。DC06/03f形装置は、220〜330mAを利用して6Vで稼動し、180mbarの最大圧力差に対して1.0l/minの空気を供給し、30gの合計重量を具備していた。このポンプの利点は、サイズが小さく、軽量であり、流れに脈動がなく、モーター極性の変更によって媒体の流れを反転可能であり、電圧の制御によって流量を調節可能あるという点にある。
【0207】
3321型Aerosol Particle Sizer(3321APS)(米国のミネソタ州Shoreviewに所在するTSI Inc.)は、空気力学的なサイズと相対的な光散乱強度という2つの計測値を提供する。これは、0.5〜20μmの空気力学的な直径のサイズ設定により、0.37〜20μmの範囲内の粒子を高分解能で検出する。この装置は、空気力学的なサイズをリアルタイムで計測する。この装置を5l/minの気流に対して設定した。
【0208】
実験に利用されるエアロゾルチャンバは、Mikrolab社(デンマークのHojbjergに所在するMikrolab Aarhus A/S)によって製造されたものであり、デンマークのCopenhagenに所在するThe Institute of Occupational Healthのご好意で提供して頂いた。この50リットルのチャンバは、チャンバ全体が0〜60rpmの速度で回転可能なローター構造上に取り付けられたステンレススチールから製造されている。コアチャンバは、3つの部分(2つの端部と1つのシリンダ)に分離可能であった。両方の端部を5つのハンドルによって堅固に固定した。組み立ての前に、胞子物質をシリンダ内に配置した。チャンバがオープン状態にある際に、ポンプシステムは、図5に示されているノズルの排出口を有するチャンバの背面から、制御された温度及び湿度を有する空気をチャンバを通じて吹き出すことができた。ノズルは、空気の流れを2つに分割する2分割金属チューブ(図5を参照されたい)に接続可能であった。1つは、HEPAフィルタリングされた出力に向かっており、もう1つの小さいほうは、チップに挿入されている。2分割金属チューブに接続されたPMMAチップが、エアロゾルチャンバからの出力ノズルにインターフェースしていた。図の右上側に示されている金属チューブは、2つのオーバーラップするWhatman社(英国のケント州Maidstoneに所在するWhatman International Ltd.)の高品質フィルタペーパー(Grade 2V、気孔サイズ8μm)を具備した低圧区域に挿入されている。
【0209】
顕微鏡スライドによって生成されたサンプルチャンバが、2分割金属チューブにインターフェイスしており、エアロゾルチャンバの排出口ノズルに接続していた(図6を参照されたい)。このインターフェイスは、0.5mmの内部直径のテフロン(登録商標)チューブによって実現されている。テフロン(登録商標)チューブを2成分エポキシによってガラスに接着し、一晩にわたって硬化させた。流れ、温度、及び湿度を制御するにより、特定の温度及び湿度を有する特定の制御された量の空気がエアロゾルチャンバに進入することを実現した。空気の温度は、26℃であり、湿度は50%であった。
【0210】
25ワットのRF励起型パルスCO2レーザーである48−2型のFenix Laser(米国ワシントン州Mukilteoに所在するSynrad, Inc.)は、27×27cmの公称フィールドと74±1cmの作動距離を有する80mmレンズ(レンズの焦点距離)を有していた。スポットサイズは、116μmであった。CO2ガス混合物は、10.6μm又はこの近傍の出力波長を提供する。Fenix Laserレンズシステムは、フラットフィールドの原理を使用することにより、マーキングプロセスにおいて高い品質と均一性を付与している。BD加熱オーブン(ドイツのTuttlingenに所在するBinder GmbH)内において、PMMA部品の迅速な熱接合(以下を参照されたい)を120〜200℃の温度において実行した。
【0211】
(消耗品)
PMMA(Poly−Methyl−meth−Acrylate)プレート(デンマークのRoskildeに所在するRIAS A/SのRiacryl)は、透明であり(90%を上回る透過率)、優れたUV安定性、低い吸水性、及び高い磨耗抵抗力を具備している。PMMAを利用し、レーザー除去によって微小構造を製造した(Johnson他(2001))。この材料は、ポリ(エチレン−テレフタレート−グリコール)、ポリ(ビニルクロライド)、及びポリ(カーボネート)などのその他の材料と比べて、除去プロセスに対して化学的な不活性を有している(Pugmire他(2002))。更には、この材料は、ラブオンチップシステムとして特徴付けられる複雑で統合された微小流体システムを構築するのに適していることが証明されている(Johnson他(2001))。この材料は、電界に露出した際に、ほとんどジュール加熱を示さず、DNA分離に利用可能である(Chen及びChen(2000)、Sung他(2001))。
【0212】
異なるPMMA設計を製造し、160〜200℃の迅速な熱接合によって互いに適切にアニーリングした。Mikrolab Aarhus A/S社によって開発されたプロトタイプアライメントツールによってアライメントを実現し、PMMAプレートの隅に0.2〜0.5μlのシアノアクリレートを配置することにより、迅速な熱接合の前に、アライメントを接着接合によって固定した。接着接合部を微細構造のサイトから離隔させておけば、少量の接着剤は、能動的微細構造部品の近傍における熱接合プロセスを妨害しないことが判明した。高温の迅速な熱接合により、アライメントと微細構造自体の両方の損傷が観察される熱融合接合に対するニーズが除去された。
【0213】
4−メチル−ペンタン−2−ワン内に銀粒子を含むElectrodag 1415Mを使用し、導電性コーティングを施した。この導電性流体をアセトンによって1:1で希釈することにより、コーティングの厚さを低減した。
【0214】
(例2:胞子の収集)
(材料)
エアロゾル試験において使用した粉状のバシラス胞子(Biobit WP、湿潤可能パウダ)は、Bacillus thuringiensis Subsp. Kurstakiを含んでいた(米国イリノイ州のNorth Chicagoに所在するAbbott Laboratories)。希釈シリーズの平板培養検定に基づいて、パウダの胞子濃度を3.2x109胞子/g(即ち、コロニー形成単位:CPF)に、そして、密度を0.86g/cm3(=860kg/m3)に決定した。
【0215】
(粒子分析器のソフトウェア)
TSI Inc.社(TSI Inc., 500 Cardigan Road, Shoreview, MN 55126−3996, USA)の3321型粒子サイズ分析器をTSI社のソフトウェアであるAerosol Instrument Managerによって制御した。
【0216】
(実験のセットアップ)
1mmの電極距離を具備する静電沈降装置により、胞子捕獲実験の組を実行した。流れは、10分のサンプリング期間にわたって2l/minと記録され、合計粒子濃度は、26mg/m3と推定された(幾何学平均が1.53±1.96μmであり、これは、合計3304290個の粒子を表している)。
【0217】
それぞれの実験からのデータは、それぞれが30秒の9つのサンプル期間から構成されている。最初の3つのサンプル期間は、制御サンプルの安定性を示すプレコントロールであり、この場合に、装置の電極上の電圧は0ボルトである。次の3つの30秒のサンプルは、100〜1200ボルト(−50V/+50V〜−600V/+600V)の捕獲電圧に設定された装置の電界によって実行されている。
【0218】
最後の3つの30秒のサンプル期間は、ポストコントロールであり、装置の電極上の電圧は0ボルトに戻されている。
【0219】
粒子カウンタが、プロトタイプを通過する粒子をカウントしている。従って、粒子の捕獲は、プレ及びポストコントロールにおける粒子数の減少によって示される。
【0220】
(結果)
図9に示されているように、捕獲効率は、電極電圧の上昇に伴って上昇している。
【0221】
様々なサイズの断片のサンプリング効率を取得し、これらをサンプリング電極の印加電圧に対してプロットした図10から、0.542、1.037、1.596、又は2.129μmの幾何学的平均を有する胞子の捕獲効率に、大きな差が存在していないことがわかる。
【0222】
(例3:捕獲効率の判定方法)
(標準化された生物学的粒子の準備)
約109胞子/gを含む100mgのBiobit Bacillus thuringiensis subsp. kurstaki(米国のLivertyvilleに所在するValent BioSciences Corp)を、脱塩された1mlの水中に再懸濁させ、90秒にわたって12000rpmにおいて遠心分離する。浮遊物を破棄する。この手順を4回にわたって反復する。最後の再懸濁の前に、1ミリリットル当たりのコロニー形成単位(CFU)の数を判定するべく、サンプルを回収する。チューブは、水気を取るために、乾燥するまで、例えば、真空内に残しておく。
【0223】
希釈シリーズをLB−寒天プレート(Luria Bertani基板;10.0gのトリプトン、5.0gの酵母エキス、10.0gのNaCl、1.0リットルのH2O−PH=7.0内に再懸濁された15.0gの寒天)上に配置し、一晩にわたって30℃において培養し、視覚的なコロニーに関して検査する。CFUの数により、パウダ内の胞子を判定可能である。
【0224】
(捕獲効率の計測)
洗浄され乾燥したBacillus thuringiensis胞子を適切なエアロゾルチャンバ内においてエアロゾル化することにより、結果的に1リットル当たり約104〜105胞子の胞子濃度を得る。捕獲効率の判定対象であるチップ/サンプリングチャンバを装置に接続し、これにより、機能的に関連付ける。次いで、チップ/サンプリングチャンバをエアロゾルチャンバに接続し、エアロゾルをチップのサンプルチャンバを通じて約50mL/分の空気の流れによって吸引する。例えば、TSI Inc.社(TSI Inc., 500 Cardigan Road, Shoreview, MN 55126−3996, USA)の3321型分析器などの粒子カウンタをチップの排出口に接続し、チップから排出されるサイズが1〜10μmの範囲内の胞子の数をカウントする。
【0225】
まず、第1及び第2電極の電位を接地に設定した状態で、エアロゾルを吸引することにより、25mLのエアロゾルの胞子の数を計測する。計測された胞子の数を制御値Ncとして使用する。
【0226】
次いで、選択した電位を第1及び第2電極に印加し、別の25mlのエアロゾルをチップを通じて吸引し、吸引の際にチップ内に存在する胞子の数を計測する。この値をNsと呼ぶ。
【0227】
選択した電位におけるチップ/サンプリングチャンバの捕獲効率は、(Nc−Ns)/Nc*100%として算出される。
【0228】
(参照文献)
〔Mainelis他(2002a)〕
Mainelis G、Gorny RL、Reponen T、Trunov M、Grinshpun SA、Baron P、Yadav J、Willeke Kによる「Effect of electrical charges and fields on injury and viability of airborne bacteria」(2002年、Biotechnol Bioeng.、79;229−41)
〔Mainelis他(2002b)〕
Mainelis G、Adhikari A、Willeke K、Lee SA、Reponen T、及びGrinshpun SAによる「Collection of Airborne Microorganisms by a New Electrostatic Precipitator」(2002年、Journal of Aerosol Science、33:1417−143)
〔Iversen及びTolo〕
Invesen DB、Tolo Kによる「Electrostatic air filters for dental practice」(1975年、Nor Tannlaegeforen Tid.、85:446−8)
〔Johnson他〕
Johnson RD、Badr IH、Barrett G、Lai S、Lu Y、Madou MJ、Bachas LGによる「Development of a fully integrated analysis system for ions based on ion−selective optodes and centrifugal microfluidics」(2001年、Anal chem.,73:3940−6)
〔Pugmire他(2002)〕
Pugmire DL、Waddell EA、Haasch R、Tarlov MJ、Locascio LEによる「Surface characterization of laser−ablated polymers used for microfluidics」(2002年、Anal Chem.、74:871−8)
〔Chen及びChen〕
Chen YH、Chen SHによる「Analysis of DNA fragments by microchip electrophoresis fabricated on poly(methyl methacrylate) substrates using a wire−imprinting method」(2000年、Electrophoresis、21:165−70)
〔Sung他〕
Sung WC、Lee GB、Tzeng CC、Chen SHによる「Plastic microchip electrophoresis for genetic screening; the analysis of polymerase chain reactions products of fragile X (CGG)n alleles」(2001年、Electrophoresis、22:1188−93)
〔O’Brien他〕
O’Brien D、Baron P、Willeke Kによる「Size and concentration measurement of an industrial aerosol」(1986年、Am Ind Hyg Assoc J.、47:386−92)
【図面の簡単な説明】
【0229】
【図1】プレート又はシート状の電極と4つのポイント電極を有するサンプルチャンバを示している。
【図2】プレート又はシート状の電極とワイヤ電極を有するサンプルチャンバを示している。
【図3】2つのプレート又はシート状の電極を有するサンプルチャンバを示している。
【図4】サンプルチャンバの断面を示している。
【図5】装置と機能的に関連付けられたチップの一実施例を示している。
【図6】ガラスに基づいたチップの一実施例の断面を示している。
【図7】PMMAに基づいたチップの一実施例の断面を示している。
【図8】7つのサンプルチャンバを有するチップの一実施例を示している。
【図9】電界の関数として捕獲効率のプロットを示している。
【図10】粒子サイズとは無関係な捕獲効率のプロットを示している。
【図11】チップの2つの実施例を示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中から生物学的粒子を収集し、且つ、場合に応じて、検出する方法において、
(1)サンプルチャンバと第1及び第2電極を提供する段階であって、前記第1及び第2電極と前記サンプルチャンバは、前記サンプルチャンバの少なくとも一部が前記第1及び第2電極間に位置するように配置される、段階と、
(2)サンプルチャンバ内に気体サンプルを提供する段階と、
(3)第1電位を前記第1電極に、且つ、第2電位を前記第2電極に印加し、この結果、前記第1及び第2電極間に電位差と電界を生成することにより、前記サンプルチャンバ内における前記気体サンプル内の生物学的粒子の静電収集を支援する段階と、
(4)前記サンプルチャンバ内において収集された前記生物学的粒子を第1液体と接触させる段階と、
(5)任意選択により、前記収集された生物学的粒子に対して更なる分析を適用する段階と、
を有する方法。
【請求項2】
前記第1電極の前記第1電位及び前記第2電極の前記第2電位と、従って、前記第1電極と前記第2電極間の前記電界は、1〜10マイクロメートルの範囲内の有効長を具備する生物学的粒子の場合に少なくとも50%の捕獲効率をもたらすように選択されている請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1及び/又は第2電極は、実質的に、シート、プレート、ディスク、ワイヤ、ロッド、ポイント、又はこれらの任意の組み合わせからなる群から選択された形態を具備している請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記第1及び第2電極は、最大で20mm、好ましくは、最大で10mm、更に好ましくは、最大で2mm、更に好ましくは、0.5mmの距離だけ離隔している請求項1乃至3の何れか一項記載の方法。
【請求項5】
前記サンプルチャンバ内の前記気体サンプルの少なくとも一部は、前記第1及び第2電極間に位置し、又は、これらの間を流れる請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記生物学的粒子は、微生物、ウイルス、植物胞子、及びこれらの断片から構成された群から選択されたコンポーネントを有する請求項1乃至5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
微生物は、細菌胞子である請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記細菌胞子は、バシラス属及び/又はクロストリジウム属から選択された細菌によって形成される請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記細菌胞子は、炭素菌によって形成された胞子である請求項8記載の方法。
【請求項10】
生物学的粒子を収集するためのサンプルチャンバを有するチップにおいて、
周囲の空気と流体接続状態にある第1開口部と、装置との流体接続状態を形成するための第2開口部と、を有し、且つ、気体サンプルを有するサンプルチャンバと、
前記サンプルチャンバの対向する側部上に配置された第1及び第2電極と、
任意選択により、前記第1又は第2電極に付着した生物学的粒子と、
を有し、
任意選択により、前記第1電極の第1電位及び前記第2電極の第2電位と、従って、前記第1及び前記第2電極間の電界は、1〜10マイクロメートルの範囲内の有効長を具備する生物学的粒子の場合に少なくとも50%の捕獲効率をもたらすように選択されている、チップ。
【請求項11】
前記電界の強度は、50〜2000V/mmの範囲内である請求項10記載のチップ。
【請求項12】
チップ内において生物学的粒子を収集する装置において、
前記装置と機能的に関連付けられるように前記チップが配置されるチップサイトと、
任意選択により、サンプルチャンバの電極間に電界を印加するための前記装置と前記チップ間の電気的インターフェイスと、
任意選択により、前記チップの前記サンプルチャンバ内に気体サンプルを提供し、且つ、前記チップが前記装置内に挿入された際に前記サンプルチャンバの第2開口部と流体接続状態となる流れ生成手段と、
任意選択により、前記サンプルチャンバを通じた気体の流れ及び/又は前記サンプルチャンバ内へのチャンバからの液体の流れを制御する手段と、
任意選択により、第1液体試薬を受領及び保持する第1試薬チャンバであって、前記チップが前記装置と機能的に関連付けられた際に、前記サンプルチャンバと流体接続状態となる少なくとも1つの開口部を具備している第1試薬チャンバと、
任意選択により、例えば、前記流れ生成手段に対して電力を供給する電源と、
・前記第1及び第2電極間に電界を印加し、前記サンプルチャンバ内における前記気体サンプル内の生物学的粒子の静電捕獲を支援する段階と、・前記サンプルチャンバ内の収集された生物学的粒子を第1液体試薬に接触させる段階と、・前記収集された生物学的粒子の更なる分析を実行する段階と、から構成された群から選択された1つ又は複数の動作を前記装置が実行することを実現するソフトウェアを有するプログラム可能なユニットと、
を有する装置。
【請求項13】
生物学的粒子を収集するシステムにおいて、請求項12記載の装置と機能的に関連付けられた請求項10及び11の中のいずれか一項記載のチップを有するシステム。
【請求項1】
空気中から生物学的粒子を収集し、且つ、場合に応じて、検出する方法において、
(1)サンプルチャンバと第1及び第2電極を提供する段階であって、前記第1及び第2電極と前記サンプルチャンバは、前記サンプルチャンバの少なくとも一部が前記第1及び第2電極間に位置するように配置される、段階と、
(2)サンプルチャンバ内に気体サンプルを提供する段階と、
(3)第1電位を前記第1電極に、且つ、第2電位を前記第2電極に印加し、この結果、前記第1及び第2電極間に電位差と電界を生成することにより、前記サンプルチャンバ内における前記気体サンプル内の生物学的粒子の静電収集を支援する段階と、
(4)前記サンプルチャンバ内において収集された前記生物学的粒子を第1液体と接触させる段階と、
(5)任意選択により、前記収集された生物学的粒子に対して更なる分析を適用する段階と、
を有する方法。
【請求項2】
前記第1電極の前記第1電位及び前記第2電極の前記第2電位と、従って、前記第1電極と前記第2電極間の前記電界は、1〜10マイクロメートルの範囲内の有効長を具備する生物学的粒子の場合に少なくとも50%の捕獲効率をもたらすように選択されている請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1及び/又は第2電極は、実質的に、シート、プレート、ディスク、ワイヤ、ロッド、ポイント、又はこれらの任意の組み合わせからなる群から選択された形態を具備している請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記第1及び第2電極は、最大で20mm、好ましくは、最大で10mm、更に好ましくは、最大で2mm、更に好ましくは、0.5mmの距離だけ離隔している請求項1乃至3の何れか一項記載の方法。
【請求項5】
前記サンプルチャンバ内の前記気体サンプルの少なくとも一部は、前記第1及び第2電極間に位置し、又は、これらの間を流れる請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記生物学的粒子は、微生物、ウイルス、植物胞子、及びこれらの断片から構成された群から選択されたコンポーネントを有する請求項1乃至5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
微生物は、細菌胞子である請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記細菌胞子は、バシラス属及び/又はクロストリジウム属から選択された細菌によって形成される請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記細菌胞子は、炭素菌によって形成された胞子である請求項8記載の方法。
【請求項10】
生物学的粒子を収集するためのサンプルチャンバを有するチップにおいて、
周囲の空気と流体接続状態にある第1開口部と、装置との流体接続状態を形成するための第2開口部と、を有し、且つ、気体サンプルを有するサンプルチャンバと、
前記サンプルチャンバの対向する側部上に配置された第1及び第2電極と、
任意選択により、前記第1又は第2電極に付着した生物学的粒子と、
を有し、
任意選択により、前記第1電極の第1電位及び前記第2電極の第2電位と、従って、前記第1及び前記第2電極間の電界は、1〜10マイクロメートルの範囲内の有効長を具備する生物学的粒子の場合に少なくとも50%の捕獲効率をもたらすように選択されている、チップ。
【請求項11】
前記電界の強度は、50〜2000V/mmの範囲内である請求項10記載のチップ。
【請求項12】
チップ内において生物学的粒子を収集する装置において、
前記装置と機能的に関連付けられるように前記チップが配置されるチップサイトと、
任意選択により、サンプルチャンバの電極間に電界を印加するための前記装置と前記チップ間の電気的インターフェイスと、
任意選択により、前記チップの前記サンプルチャンバ内に気体サンプルを提供し、且つ、前記チップが前記装置内に挿入された際に前記サンプルチャンバの第2開口部と流体接続状態となる流れ生成手段と、
任意選択により、前記サンプルチャンバを通じた気体の流れ及び/又は前記サンプルチャンバ内へのチャンバからの液体の流れを制御する手段と、
任意選択により、第1液体試薬を受領及び保持する第1試薬チャンバであって、前記チップが前記装置と機能的に関連付けられた際に、前記サンプルチャンバと流体接続状態となる少なくとも1つの開口部を具備している第1試薬チャンバと、
任意選択により、例えば、前記流れ生成手段に対して電力を供給する電源と、
・前記第1及び第2電極間に電界を印加し、前記サンプルチャンバ内における前記気体サンプル内の生物学的粒子の静電捕獲を支援する段階と、・前記サンプルチャンバ内の収集された生物学的粒子を第1液体試薬に接触させる段階と、・前記収集された生物学的粒子の更なる分析を実行する段階と、から構成された群から選択された1つ又は複数の動作を前記装置が実行することを実現するソフトウェアを有するプログラム可能なユニットと、
を有する装置。
【請求項13】
生物学的粒子を収集するシステムにおいて、請求項12記載の装置と機能的に関連付けられた請求項10及び11の中のいずれか一項記載のチップを有するシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2007−524097(P2007−524097A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500054(P2007−500054)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【国際出願番号】PCT/DK2005/000133
【国際公開番号】WO2005/083391
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(506290224)トムセン バイオサイエンス アクティーゼルスカブ (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【国際出願番号】PCT/DK2005/000133
【国際公開番号】WO2005/083391
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(506290224)トムセン バイオサイエンス アクティーゼルスカブ (3)
【Fターム(参考)】
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