説明

生物学的薬剤の体内分布を改変させるための組成物および方法

【課題】生物製剤(特に、ポリおよびオリゴヌクレオチド)の送達のための標的づけられた薬物送達系、薬学的薬剤をインビボで標的部位へ送達するための新規の組成物、薬物のバイオアベイラビリティを増大させ、そして毒性を減少させて薬学的薬剤を送達する方法を提供すること。
【解決手段】生物学的薬剤を特定の組織部位へ送達するための方法であって、以下の工程:
タンパク質でカプセル化され、不溶性ガスを充填された複数の微小泡の溶液を形成する工程であって、上記微小泡は上記生物学的薬剤と結合される、工程;上記溶液を動物へ投与する工程;その結果、上記タンパク質が、上記タンパク質のバイオプロセシング部位へ上記微小泡結合薬剤を導き、そして上記微小泡の消散の際に上記薬剤を放出する工程
を包含する、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、生理活性物質の送達のための新規かつ改善された薬学的組成物および方法に関する。本発明の方法および組成物はいくつかの薬剤とともに使用され得、生物学的に活性な物質の部位特異的送達を達成し得る。これは、薬物、特に標的づけられた器官で治療濃度を達成することにおける問題に悩まされるオリゴヌクレオチドのような薬剤を用いた場合、より低い用量および改善された効力を可能にし得る。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
薬物送達技術は、薬物のアベイラビリティーを増大させ、薬物用量を減少させ、そして結果的に薬物に誘導される副作用を減少させるために、全ての薬物療法の処方において使用される。これらの技術は体内での薬物の放出の制御、調節、および標的化に役立つ。目標は、より少ない頻度の薬物投与を提供すること、全身循環においてまたは特定の標的器官部位で薬物の治療的レベルを定常かつ連続的に維持すること、望ましくない副作用の減少を達成すること、および所望する治療的利点を実現するために必要な量および用量濃度の減少を促進することであった。
【0003】
現在まで、薬物送達系は、タンパク質、多糖類、合成ポリマー、赤血球、DNAおよびリポソームに基づく薬物キャリアーを含んでいる。モノクローナル抗体、遺伝子治療ベクター、タキソールのような抗ガン剤、ウイルスに基づく薬物、ならびにオリゴおよびポリヌクレオチドのような新世代の生物学的製剤は、送達に関していくつかの問題を示している。実際に、薬物送達は、その初期の可能性は限定されないようであるが、その治療的パラメーターが完全な利点の実現を妨げてきたこれらの生物製剤の治療的使用を主流とするための主要なハードルであり得る。
【0004】
ヌクレアーゼ耐性を付与するために化学的に修飾された合成オリゴデオキシリボヌクレオチドは、薬物療法への本質的に異なったアプローチを表す。現在までの最も一般的な適用は、特定の標的化されたmRNA配列に相補的な配列を有するアンチセンスオリゴである。治療へのアンチセンスオリゴヌクレオチドアプローチは、非常に単純かつ特異的な薬物設計の概念を含む。この概念では、オリゴは翻訳のプロセスまたはより初期のプロセシング事象において機械的な介入を生じる。このアプローチの利点は、比較的低い用量において反映するにちがいない遺伝子特異的作用、および最小の標的づけられていない副作用に対する可能性である。
【0005】
ポリヌクレオチドのホスホロチオエートアナログは、非架橋リガンドの1つがイオウであるキラルヌクレオシド間結合を有する。ホスホロチオエートアナログは、インビトロおよびインビボでの両方を含む生物学的研究において現在最も一般に用いられるアナログである。ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドの最も明らかな不利益には、十分量の高品質材料を調製するための高コスト、およびタンパク質への非特異的結合が挙げられる。それ故、アンチセンスアプローチの第1の利点(低用量および最小限の副作用)は、期待した程ではない。
【0006】
オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドに関する薬物送達の努力は、2つの主要な挑戦、細胞内へのオリゴヌクレオチドのトランスフェクションおよびインビボでのオリゴヌクレオチドの分布の改変に焦点を当てられている。
【0007】
トランスフェクションは、インビトロでの細胞性取り込みの増強を含む。取り込みの改善のための生物学的アプローチには、再構成ウイルスおよび偽ビリオンのようなウイルスベクター、ならびにリポソームのような化学薬品が挙げられる。生体内分布を改善するための方法は、カチオン性脂質のようなものに焦点を当てられている。カチオン性脂質は、正に荷電した脂質が、ほとんどの細胞の負に荷電した表面に誘引されることにより、薬物の細胞性取り込みを増加させると想定される。
【0008】
リポフェクションおよびDC−コレステロールリポソームは、カテーテルにより投与される場合、インビボで血管細胞への遺伝子移入を増強することが報告されている。カチオン性脂質DNA複合体はまた、気管内投与後、マウス肺への有効な遺伝子移入を生じることが報告されている。
【0009】
オリゴヌクレオチドのカチオン性リポソーム送達もまた達成されたが、肺および肝臓への改変された分布が経験された。アシアロ糖タンパク質ポリ(L)リジン複合体は、センダイウイルスコートタンパク質含有リポソームとの複合体化と同様に、限られた成功に終わっている。しかし、毒性および生体内分布は、重要な問題のままである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記から、生物製剤(特に、ポリおよびオリゴヌクレオチド)の送達のための標的づけられた薬物送達系は、これらの薬物が最大の潜在能力を達成するために必要とされる。
【0011】
本発明の1つの目的は、薬学的薬剤をインビボで標的部位へ送達するための新規の組成物を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、薬物のバイオアベイラビリティを増大させ、そして毒性を減少させて薬学的薬剤を送達する方法を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、以下の本発明の説明から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の要旨
本発明に従えば、生物学的に活性な薬剤を送達するための新たな方法および組成物が開示される。この組成物および方法は、送達の問題に悩んでいる治療剤または診断剤(例えば、オリゴヌクレオチド)のような薬剤および伝統的な薬剤を送達するために使用され得、そしてそれぞれの有効な投与量を劇的に減少させ得、すなわち、治療指数を増大し、そしてバイオアベイラビリティを改善する。このことは、次いで、薬物の細胞傷害性および副作用を減少させ得る。
【0015】
本発明は、生物的薬剤と、不溶性ガスをカプセル化するタンパク質殻微小泡として形成されるフィルム形成性タンパク質との結合を使用する。組成物は、非経口投与のための複数の微小泡の水性懸濁物として調製される。アルブミンかまたは他のそのようなタンパク質でカプセル化された微小泡との生物製剤の結合は、このタンパク質と伝統的に相互作用するものを含む代替物への生物製剤の標的づけられた送達を可能にし得る。
・本発明はさらに、以下を提供し得る:
・(項目1) 生物学的薬剤を特定の組織部位へ送達するための方法であって、以下の工程:
タンパク質でカプセル化され、不溶性ガスを充填された複数の微小泡の溶液を形成する工程であって、上記微小泡は上記生物学的薬剤と結合される、工程;上記溶液を動物へ投与する工程;その結果、上記タンパク質が、上記タンパク質のバイオプロセシング部位へ上記微小泡結合薬剤を導き、そして上記微小泡の消散の際に上記薬剤を放出する工程
を包含する、方法。
・(項目2) 上記タンパク質が、アルブミン、ヒトγグロブリン、ヒトアポトランスフェリン、βラクトースおよびウレアーゼからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
・(項目3) 上記タンパク質がアルブミンである、項目1に記載の方法。
・(項目4) 上記不溶性ガスが、ペルフルオロメタン、ペルフルオロエタン、ペルフルオロプロパン、ペルフルオロブタン、およびペルフルオロペンタンからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
・(項目5) 上記ガスがペルフルオロプロパンである、項目4に記載の方法。
・(項目6) 上記微小泡が、以下の工程:
5重量%から50重量%のデキストロースで約2倍〜約8倍に希釈された、約2重量%から約10重量%のヒト血清アルブミンを含む水性溶液を混合する工程;および上記溶液を超音波ホーンに曝露して上記溶液中の微粒子部位で空洞を作製し、それによって直径約0.1〜10ミクロンの安定な微小泡を作製する工程
により形成される、項目1に記載の方法。
・(項目7) デキストロースでのアルブミンの上記希釈が3倍希釈である、項目6に記載の方法。
・(項目8) 上記ヒト血清アルブミンが5重量%溶液である、項目6に記載の方法。
・(項目9) 上記デキストロースが5重量%溶液である、項目6に記載の方法。
・(項目10) 上記タンパク質がアルブミンであり、上記生物学的薬剤が、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、リボザイム、ナプロキセン、ピロキシカム、ワルファリン、フロセミド、フェニルブタゾン、バルプロ酸、スルフィソキサゾール、セフトリアキソン、ミコナゾールからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
・(項目11) 上記生物学的薬剤がオリゴヌクレオチドである、項目10に記載の方法。
・(項目12) 上記オリゴヌクレオチドがホスホロチオエートオリゴヌクレオチドである、項目11に記載の方法。
・(項目13) 上記ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドがアンチセンスオリゴヌクレオチドである、項目12に記載の方法。
・(項目14) 上記標的部位が、上記動物の肝臓および腎臓である、項目2に記載の方法。
・(項目15) 標的部位に対する生物学的薬剤の送達のための組成物であって、タンパク質でカプセル化された、不溶性ガスを充填された複数の微小泡を含む水性懸濁液;上記タンパク質に結合された生物学的薬剤を含む、組成物。
・(項目16) 上記タンパク質が、アルブミン、ヒトγグロブリン、ヒトアポトランスフェリン、βラクトース、およびウレアーゼからなる群より選択される、項目15に記載の組成物。
・(項目17) 上記タンパク質がアルブミンである、項目15に記載の組成物。
・(項目18) 上記ガスがペルフルオロカーボンガスである、項目15に記載の組成物。
・(項目19) 上記ガスが、ペルフルオロメタン、ペルフルオロエタン、ペルフルオロプロパン、ペルフルオロブタン、およびペルフルオロペンタンからなる群より選択される、項目15に記載の組成物。
・(項目20) 上記ガスがペルフルオロブタンである、項目19に記載の組成物。
・(項目21) 上記ガスがペルフルオロプロパンである、項目19に記載の組成物。
・(項目22) 上記タンパク質がアルブミンであり、上記生物学的薬剤が、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、リボザイム、ナプロキセン、ピロキシカム、ワルファリン、フロセミド、フェニルブタゾン、バルプロ酸、スルフィソキサゾール、セフトリアキソン、ミコナゾールからなる群より選択される、項目15に記載の組成物。
・(項目23) 上記生物学的薬剤がオリゴヌクレオチドである、項目22に記載の組成物。
・(項目24) 標的部位に対するヌクレオチドに基づく生物学的薬剤の送達のための組成物であって、アルブミンでカプセル化された、不溶性ガスを充填された複数の微小泡、および上記アルブミン微小泡に結合されたヌクレオチドに基づく生物学的薬剤を含む、組成物。
・(項目25) 上記微小泡が直径0.1〜10ミクロンである、項目24に記載の組成物。
・(項目26) 上記ガスがペルフルオロカーボンガスである、項目24に記載の組成物。
・(項目27) ヌクレオチドに基づく生物学的薬剤を動物の腎臓および肝臓へ送達するための方法であって、以下の工程:アルブミンでカプセル化された、不溶性ガス充填された複数の微小泡を含む溶液を形成する工程であって、ここで上記微小泡が上記ヌクレオチドに基づく生物学的薬剤に結合されている工程;および、上記溶液を動物へ投与する工程;その結果、上記アルブミンでカプセル化された、不溶性ガスを充填された微小泡が、上記肝臓および上記腎臓へ取り込まれ、そして上記微小泡が消散する際に、上記生物学的薬剤を放出する工程、を包含する、方法。
・(項目28) 上記核酸生物学的薬剤が、アンチセンスオリゴヌクレオチド、抗遺伝子オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチドプローブ、またはヌクレオチドベクターからなる群より選択される、項目1に記載の方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
発明の詳細な説明
超音波画像化は、治療手順を補助するための診断道具として長らく使用されてきた。これは、音波エネルギーが、画像を生成するために、目的の場所に集中され、そして反射され得るという原理に基づく。一般的に、超音波トランスデューサーは造影されるべき場所の上にある体表に配置され、そして音波の生成と受信により産生される超音波エネルギーが伝達される。超音波エネルギーはトランスデューサーに反射して戻り、そこで超音波画像に変換される。反射されたエネルギーの特徴の量は、組織の音響特性に依存し、そしてエコー源性の造影剤は、目的の場所での超音波エネルギーの創出および受信される画像の改善のために好ましく使用される。超音波造影検査装置の考察については、DeJongおよび「Acoustic Properities of Ultrasound Contrast Agents」,CIP−GEGEVENS KONINKLIJKE BIBLIOTHEEK,DENHAG(1993),120頁以下参照のこと。
【0017】
超音波造影心臓図検査は、心臓内構造の描写、弁の能力の評価、および心臓内短絡の実証のために使用されている。心筋超音波造影検査(MCE)は、ヒトにおける冠状動脈血流予備力の測定に使用されている。MCEは、心筋灌流の相対的変化を評価するためおよび危険な場所を描写するための安全かつ有用な技術であることが見出されている。
【0018】
超音波振動はまた、種々の医薬の吸収を増加させるための医学分野において治療的レベルで使用されている。例えば、日本国特許公開公報第52−115591号は、医薬の経皮吸収が超音波振動により増強されることを開示する。米国特許第4,953,565号および第5,007,438号もまた、超音波振動の補助による医薬の経皮吸収の技術を開示する。米国特許第5,315,998号は、医薬を拡散および浸透させるための、超音波エネルギーと組み合わせた微小泡を含む薬物療法のためのブースターを開示する。これは、結合された生理活性薬剤の放出を達成するためによりずっと短時間の照射で診断レベルの超音波を使用する本発明とは対照的に、20分間までの治療レベルの超音波の使用を開示する。
【0019】
出願人は、伝統的な診断用超音波療法造影剤が、特に指示された目的の部位で治療薬剤を放出し、それによって薬物分布を改変するための特異的標的化送達デバイスとして用いられ得ることを実証している。驚くべきことに、この目的は、造影剤単独で、そしていずれの診断的超音波も使用することなく達成され得る。
【0020】
本発明の薬学的組成物は、0.1〜10ミクロンの直径を有する不溶性ガスの微小泡を含む液体懸濁物を含む。この微小泡は、ガスの微小泡を液体中に捕獲(entrap)することにより形成される。微小泡は、フルオロカーボンまたは6フッ化イオウガスのような種々の不溶性ガスから作製される。液体は、微小泡を形成し得る任意の液体を含む。一般に、任意の不溶性ガスが使用され得る。それは、体温でガス状であり、そして非毒性でなければならない。ガスはまた、薬学的組成物が超音波処理されて微小泡を形成する場合、平均サイズ直径約0.1〜10ミクロンの安定な微小泡を形成しなければならない。一般に、ペルフルオロメタン、ペルフルオロエタン、ペルフルオロプロパン、ペルフルオロブタン、ペルフルオロペンタンのようなペルフルオロカーボンガスが好ましい。これらのガスのうち、ペルフルオロプロパンおよびペルフルオロブタンが特に好ましい。なぜなら、それらはヒトにおける眼内接種についての安全が実証されているからである。これらは、網膜剥離を安定化するために、ヒト研究において、眼内接種について使用されている(WongおよびThompson,Opthamology 95:609−613)。眼内ペルフルオロプロパンでの処置は、この疾患の処置のための標準的看護であると考えられる。ガスはまた、血管の内部雰囲気においてすぐに拡散する窒素または酸素より低い拡散係数および血液溶解性を有すべきである。
【0021】
6フッ化イオウのような他の不活性ガスもまた、それらが窒素または酸素より低い拡散係数および血液溶解性を有する場合、本発明に有用である。本発明の薬剤は、宿主の末梢投与のために薬学的に有効な投与形態に処方される。一般的にこのような宿主はヒト宿主であるが、イヌまたはウマのような他の哺乳動物宿主もまた、この治療に供され得る。
【0022】
本発明の薬学的液体組成物は、微小泡がフィルム形成性タンパク質コーティングにより安定化されている液体を使用する。適切なタンパク質は、アルブミン、ヒトγグロブリン、ヒトアポトランスフェリン、βラクトースおよびウレアーゼのような天然に生じるタンパク質を含む。本発明は、好ましくは、天然に生じるタンパク質を使用するが、合成タンパク質もまた使用され得る。好ましくは、ヒト血清アルブミンである。
【0023】
先に記載のタンパク質と組合せた薬学的に受容可能な糖類(例えば、デキストロース)の混合物を含む水溶液を用いることもまた随意である。好ましい実施態様において、本発明の薬学的液体組成物は、市販のアルブミン(ヒト)(U.S.P.溶液(一般に、5重量%または25重量%の滅菌水溶液として供給される))および市販のデキストロース(U.S.P.静脈内投与用)の超音波処理混合物である。この混合物は、周囲条件(すなわち、室温および大気圧)下で超音波処理され、そして超音波処理中に不溶性ガス(99.9重量%)を灌流される。
【0024】
最も好ましい実施態様において、薬学的液体組成物は、5重量%〜50重量%のデキストロースの2倍〜8倍希釈物および2重量%〜10重量%のヒト血清アルブミンを含む。本発明の例示的な他の糖類溶液は、(例えば、ヘキソース糖、デキストロース、もしくはフルクトースまたはそれらの混合物のような式C12を有する)単糖類水溶液、(例えば、スクロース、ラクトース、もしくはマルトースまたはそれらの混合物のような式C122211を有する)二糖類水溶液、あるいは多糖類水溶液(例えば、アミラーゼもしくはデキストランまたはそれらの混合物のような式C10(n)を有する可溶性澱粉(ここで、nは20と約200との間の整数である))である。
【0025】
微小泡は、代表的には超音波処理ホーン(horn)を用いる超音波処理によって形成される。超音波エネルギーによる超音波処理は、その液体中のガスの粒子状物質部位でデキストロースアルブミン溶液内に空洞化を生じる。これらの空洞化部位は、最終的には共鳴し、そして非崩壊性で安定な小さな微小泡(約7ミクロンのサイズ)を産生する。通常、約5ミクロンと約6ミクロンとの間の微小泡の約4×10Mより大きい濃度を産生する超音波処理条件が好ましい。一般に、混合物は、不溶性ガスを灌流しながら約80秒間超音波処理される。
【0026】
調製の第2の方法は、超音波処理の前に15±2mlの超音波処理デキストロースアルブミンを8±2mlのペルフルオロカーボンガスとともに手で撹拌することを含む。次に、超音波処理を80±5秒間行う。
【0027】
微小泡は、経肺通過に十分であるために、10ミクロン未満で0.1ミクロンより大きな平均直径を有さなければならないので、これらの微小泡サイズは、特に理想的であり、そして静脈内注射後および標的部位への移行の間に微小泡内のガスの顕著な拡散を妨げるために十分安定でなければならない。次に、微小泡は薬物が微小泡と結合するように、薬物と共にインキュベートされる。全く予期しないことに、造影剤中で先に使用したような微小泡の形態のフィルム形成性タンパク質が、薬物への結合の能力を保持していることが実証された。これは、伝統的には、微小泡造影剤の形成において、タンパク質の球体は変性タンパク質から作製されると考えられていたので、驚くべきことである。出願人は、空気の代わりに不溶性ガスが微小泡に使用される場合、超音波エネルギーのほとんどがガスにより吸収され、そしてタンパクは結合活性を維持することを実証している。空気を充填した微小泡は、結合能力を維持せず、そして本発明の方法において使用され得ない。
【0028】
治療は、直径約0.1から10ミクロンのタンパク質微小泡に結合された薬学的組成物の使用を含む。本発明は、診断的超音波画像法に伝統的に使用される薬剤を使用する。
【0029】
本発明において有用な治療的薬剤は、フィルム形成性タンパク質との結合能力によって選択される。例えば、フィルム形成性タンパク質がアルブミンである場合、治療的または診断的薬剤は、オリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンスもしくは抗遺伝子)、ポリヌクレオチド(例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、プラスミドベクター、もしくはプローブ)、またはリボザイムを含み得る。これらは全てアルブミンと結合し得、したがって微小泡と結合体を形成し得る。部位1(結合能を保持する)でアルブミンと結合し、それゆえアルブミン実施態様において本発明の方法および組成物に有用である薬物のリストを以下に示す:
【0030】
【化1】

非ステロイド性抗炎症剤
*患者間の変動性を示す
特に部位1でアルブミンと結合する他の薬物もまた、この実施態様において有用であり、そして例えば、四半期毎に更新されるBerney Olinにより公表される「Drug Information」または「Facts and Comparisons」のような当業者に標準的なDrug Interaction and Pharmacology試験を通じて、当業者により確認され得る。他のこのような参考文献は、当該分野において広範に入手可能である。適切なタンパク質−治療剤の組合せを決定するためのアッセイが本明細書中に開示され、そして任意の組合せを、本発明の方法と作用する能力について試験するために求められ得る。
【0031】
本発明の好ましい実施態様によれば、タンパク質でコートした不溶性ガスの微小泡は、オリゴヌクレオチドと安定な結合体を形成することが見出されている。次いで、オリゴと結合した泡が動物へ導入され、そしてタンパクコーティングが結合薬剤を相互作用の部位へ指向させる。究極的に、泡が消散するので、薬剤は組織部位で放出される。
【0032】
これは、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチド治療に特に関連する。なぜなら、効果的なアンチセンス、抗遺伝子、またはウイルスもしくはプラスミドのヌクレオチド送達を用いる遺伝子治療に対する主な障害は、治療効果を達成するために十分に高い濃度で標的部位へ到達するための治療剤の能力であるからである。治療部位は、特定腫瘍の位置、差動的遺伝子活性化のために特定の遺伝子産物を発現する器官、傷害または血栓の部位、治療剤のさらなるプロセシングおよび分配のための部位などのようなものを含み得る。一般に、標的部位は、フィルム形成性タンパク質のバイオプロセシングに基づいて選択される。例えば、腎臓および肝臓はアルブミンを取り込み、そしてアルブミン微小泡は、結合された生理活性薬剤の投与をこれらの領域へ特異的に指向させるために使用され得る。他のフィルム形成性タンパク質の代謝およびバイオプロセシングは、Bertram G.Katzungによる「Basic and Clinical Pharmacology」(関連する開示が参考として援用される)のような標準的な薬理学の教科書により容易に得られ得る。
【0033】
本発明の送達治療を実施するための好ましい方法は、本発明の薬学的液体薬剤を得ること、静脈内注射により、静脈内的(i.v.注入)、経皮的、または筋内的に宿主へこの薬剤を導入することを含む。次いで、微小泡は動物内でプロセシングされ、そして微小泡をコートしたフィルム形成性タンパク質に従って取り込まれ、そして相互作用される。究極的に、泡は、タンパク質のプロセシング部位で消散して生理活性剤を送達する。
【0034】
生理活性薬剤の微小泡結合体が、標的化送達プロトコルにおいて、標的部位への超音波の適用による生物製剤の送達と共に使用され得ることが出願人により先に示されている。この超音波の適用は、超音波場と相互作用して標的部位で微小泡の空洞化および生物製剤の究極的な放出を生じる。全く予期しなかったことに、出願人は、現在、超音波の適用が、タンパク質コーティングのバイオプロセシング部位への生物製剤の標的化送達のために必要でないことを発見している。タンパク質は、プロセシング部位へ微小泡および結合体を輸送(traffic)し、そして結合し、そして泡が消散するにつれて、オリゴまたは他の生物製剤が放出され、生物製剤の一部がその生物学的効果を達成することを可能にする部位と相互作用する。
【0035】
好ましい実施態様において本発明の薬剤は、超音波処理された3倍希釈の5%ヒト血清アルブミンと5%デキストロースから構成される、ペルフルオロカーボンで増強された超音波処理デキストロースアルブミン溶液である。超音波処理の間、溶液は、約80秒間ペルフルオロカーボンガスを灌流され、それによって微小泡ガスの溶解性および拡散率をより低くする。得られた微小泡は、少なくとも約120±5分間室温で濃縮され、そこで過剰の溶液は超音波処理シリンジに沈下させる。次いで、微小泡は治療的薬剤へ曝露され、そしてそのような薬剤が微小泡へ結合するように相互作用させる。次に、結合された微小泡は滅菌シリンジへ移され、そして非経口的に哺乳動物へ、好ましくは薬剤活性の標的部位の近くへ導入される。
【0036】
水溶性タンパク質溶液の超音波処理により形成された微小泡が、予め決定された領域の音響特性を変化させるために哺乳動物へ導入され、次いで、その領域を超音波スキャンして医学的手法における使用のために画像を得る、超音波画像化の方法は周知である。例えば、米国特許第4,572,203号、米国特許第4,718,433号、および米国特許第4,774,958号を参照のこと(それぞれの内容は本明細書中に参考として援用される。)
本発明の新規の改善は、標的化送達系の一部としての薬学的な組成物としての造影剤のこれらのタイプの使用である。
【0037】
本発明は、いくつかの薬物の生体内分布を改変することにより効率および治療活性を劇的に改善することが示されている。このいくつかの薬物には、最も著しくは、効果的でない薬理学的パラメーター(高クリアランス速度および毒性を含む)に伝統的に悩まされているアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれる
このことは、微小泡治療が、有益な結果を達成するに必要な用量および濃度の特定の治療剤におそらく耐性であり得ないヒトの毒性効果を減少させ得るので、特に重要である。
【0038】
ヒト血清アルブミンのようなタンパク質物質は体内で容易に代謝され、そして体外へ排泄され、それゆえ人体に有害ではない。さらに、微小泡中にトラップされたガスは極めて小さく、そして血液中に容易に溶解され、ペルフルオロプロパンおよびペルフルオロブタンは、ヒトにおいて安全であることが長らく公知である。その両方が、ヒトにおいて網膜剥離を安定化するための眼内注射に使用されてきた。WongおよびThompson,Ophthalmology 95:609−613。従って、本発明の抗血栓剤は、患者に対して極度に安全かつ非毒性である。
【0039】
本発明は、究極的に標的細胞において遺伝子発現を改変するために、遺伝子治療ベクターの形態でのヌクレオチド配列の送達、あるいはアンチセンスまたはアンチジーンストラテジーに特に有用である。
【0040】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的タンパク質の合成を特異的に阻害する能力によって、研究および治療における可能性のある道具を代表する。これらのオリゴの主要な理論的利点は、細胞の1つの部位への結合に関する潜在的な特異性である。本発明の1つの実施態様によれば、少なくとも6ヌクレオチドで、好ましくは、内在性のタンパク質の転写または翻訳のプロセスを妨害するDNA(抗遺伝子)またはRNA(アンチセンス)に対し相補的な合成オリゴヌクレオチドが提供される。
【0041】
オリゴヌクレオチド合成のためのいずれの公知方法も、オリゴヌクレオチドの調製に使用され得る。それらは、applied biosystems,Inc.,DNA合成機(モデル380B)のような任意の市販の自動核酸合成機を使用して最も都合よく調製される。製造者のプロトコルに従って、ホスホロアミダイト化学を使用する。After biosystems (Foster City,CA)。StekおよびZahn J.Chromatography,326:263−280およびApplied Biosystems,DNA合成機,User Bulletin,モデル380A−380B−381A−391−EP,1989年12月に記載の方法に従って、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは合成されそして精製された。オリゴは当業者に公知の方法により細胞へ導入される。Inversonら,「Anti−Cancer Drug Design」,1991,6531−6538(本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。
【0042】
オリゴヌクレオチド治療の伝統的な制限は、血中および体の細胞で見出されるエンドヌクレアーゼおよびエキソヌクレアーゼに対して実質的に耐性であるオリゴヌクレオチドアナログの調製であった。非改変オリゴが有効であることが示される一方、これらのオリゴに対するいくつかの改変が、これらの問題を軽減するのを助けている。
【0043】
本発明の改変ヌクレオチドまたは関連ヌクレオチドは、核酸塩基、糖部分、ヌクレオシド間リン酸結合の1つ以上の改変、またはこれらの部位での改変の組合せを含み得る。ヌクレオシド内リン酸結合は、(混合骨格改変オリゴヌクレオチドを産生するための)ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、ホスホロジチオエート、およびこのような同様の結合の組合せであり得る。改変は、オリゴヌクレオチド分子の内部または末端に存在し得、そして例えば、コレステロール、アミノ基と末端リボース、デオキシリボースとの間の種々の数の炭素残基を有するジアミン化合物、および切断するか、あるいは反対の鎖と架橋するか、または酵素もしくはゲノムに結合する他のタンパク質と会合するリン酸の改変のようなヌクレオシド内リン酸結合のさらなる分子を含み得る。
【0044】
これらの改変は、細胞内での酵素的分解からのオリゴの遮蔽を伝統的に助ける。上記の改変のいずれもが、本発明の方法で使用され得る。しかし、好ましい実施態様において、改変はホスホロチオエートオリゴヌクレオチドである。
【0045】
以下の実施例は、例示目的のためのみであり、そしていかなる方法でも本発明の限定を意図しない。多数の他のタンパク質−生理活性薬剤の組合せが本発明において使用され得、そして本明細書中でなお意図されることが、当業者によって理解される。例えば、フィルム形成性タンパク質がトランスフェリンである場合、生理活性薬剤は任意のトランスフェリン結合薬理物(pharmacologic)であり得る。
【0046】
以下の実施例の全てにおいて、全ての部分および割合は、他に断らないかぎり重量により、全ての希釈は容積による。
【実施例】
【0047】
実施例1
ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド合成
鎖伸長合成を、ABIモデル391DNA合成機(Perkin Elmer,Foster City,CA)の1μモルカラム支持体で行うかまたはLynx Therapeutics,Inc.(Hayward CA)により提供された。1μモル合成は、ABI user Bulletin 58に従って、シアノエチルホスホロアミダイトおよびテトラエチルチウラムジスルフィドでの硫化を使用した。
【0048】
放射標識したオリゴヌクレオチドは、Glen Research(Bethesda,MD)によって、ホスホン酸水素物質として合成された。5’−TAT GCT GTG CCG GGG TCT TCG GGC 3’(c−mybに対し相補的な24マー)(配列番号2)および5’TTAGGG 3’(配列番号3)の配列を有する均一に35S標識したPS−ODNを、0.5mlの最終容量で、ペルフルオロカーボンに曝露した超音波処理デキストロースアルブミン微小泡溶液とともに30分間、37℃でインキュベートした。溶液を、泡が上部まで昇り得るように静置し、そして100μlを底部の透明な溶液から取り出し、そして100μlを、微小泡を含む上部から取り出した。
【0049】
微小泡薬剤の調製
5%ヒト血清アルブミンおよび5%デキストロースを商業的供給源より得た。5%デキストロース3および5%ヒト血清アルブミン1の割合(総量16ml)で35ml Monojetシリンジ中へ吸引した。各デキストロースアルブミン試料を、8±2mlのフルオロカーボンガス(デカフルオロブタン;分子量238g/mole)または8±2mlの大気のいずれかと共に手で振盪し、次に試料を20キロヘルツで80±5秒間、電気機械的な超音波処理に曝露した。このように生成されたペルフルオロカーボン曝露超音波処理デキストロースアルブミン(PESDA)微小泡の4つの連続した試料の平均サイズは、血球計数器を用いて測定した場合、4.6±0.4ミクロンであり、そして平均濃度は、Coulter計数器により測定した場合、1.4×10泡/mlであった。次いで、微小泡の溶液を、1000倍量過剰の5%デキストロース中で洗浄して、微小泡に会合していないアルブミンを除去した。微小泡を上昇させるために4時間静置した。次いで、下部溶液を除いて洗浄された泡を残し、次いで、洗浄された泡を0.9%塩化ナトリウムと混合した。
【0050】
結合アッセイ
放射活性24マーPS−ODNを、PESDAの洗浄された溶液および大気で超音波処理されたデキストロースアルブミン(RA−SDA)微小泡へ5nMの濃度で添加した。非放射活性PS−ODN 20マーを、一連の増加する濃度(0、3.3、10、32.7、94.5、167、および626μM)で、放射活性24マーを含むチューブへ添加した。泡の懸濁液を反転により混合し、そして37℃で60分間インキュベートする。
【0051】
放射活性の測定
溶液中の放射活性を、液体シンチレーションカウンター(モデルLSC7500; Beckman Instruments GmbH,Munich,Germany)において液体シンチレーション計測により決定した。試料量は100μlであり、これに5mlのHydrocount生分解性シンチレーションカクテルを添加し、そして混合した。試料を、各実験の後に直ちに計測し、次いで化学発光および消光の影響を減少させるために24時間後に再び計測した。
【0052】
フローサイトメトリー
大気含有超音波処理デキストロースアルブミン微小泡とペルフルオロカーボン含有超音波処理デキストロースアルブミン微小泡とでPS−ODNとの結合の均一性を、フローサイトメトリーにより決定した。微小泡の溶液を1000倍過剰量の滅菌生理食塩水で洗浄した。3群の試料を、三連で以下のように調製した;A群(コントロール)、100μLの微小泡を900μLの生理食塩水へ添加した;B群、100μlの微小泡を900μLの生理食塩水へ添加し、そして2μLのFITC標識化20マーを添加した(最終20マー濃度は151 nMである);ならびにC群,100μLの微小泡を800μLの生理食塩水、2μLのFITC標識化20マー、および100μLの非標識20マー(最終濃度は151nMである)へ添加した。インキュベーションを、すべて20分間室温で行った。
【0053】
洗浄微小泡懸濁液を、滅菌生理食塩水(Baxter)で希釈し、次いで、FITC標識化PS−ODNとともにインキュベートした。フローサイトメトリー分析を、100 mW空冷アルゴンレーザーならびにLysis II獲得および解析ソフトウエアを備えたFACStar Plus(Becton Dickinson)を使用して実施した。リストモードのデータを、最低10の採集された微小泡について使用し、そして各試料について独立分析を用いた。
【0054】
研究プロトコル
本発明者らが先に記載したチャンバー(Mor−Avi V .ら「Stability of Albunex microspheres under ultrasonic irradiation; and in vitro study.」J Am Soc Echocardiology 7:S29,1994)と類似している可変性流動ミクロスフェアスキャニングチャンバーを、研究のために開発した。このシステムは、Masterflexフローシステム(Microgon,Inc.,Laguna Hills California)に接続された円形スキャニングチャンバーからなる。スキャニングチャンバーを、水を満たしたチャンバーにより各々の端で囲い、そして音響的透過材料により各々の端で結合させた。PS−ODN標識PESDA微小泡(0.1ml)を、スキャニングチャンバーの近位へボーラスとして1秒間注入し、次いでこれをプラスチック管を通して水道水で満たしたスキャニングチャンバー内へ100ml/分の制御された流速で流した。泡がスキャニングチャンバーを通るように、2.0メガヘルツのスキャナー周波数、1.2メガパスカルのピーク陰圧を、通常の30ヘルツのフレームレートで超音波を送達するかまたは止めるかのいずれかに設定した。スキャニングチャンバーを通した後、次いで、溶液を、同じサイズのプラスチック管を通して目盛り付きシリンダー内へ通した。最初の10mlは捨てた。これに続いて、次の10mlを、採取チューブ内へ入るようにした。溶出した微小泡を含む採取チューブを、上端の微小泡を試料のより低い部分に存在するどのような遊離オリゴヌクレオチドからも分離するために静置した。次いで、溶出液の上方および下方の操作の両方からの滴を、血球計数器スライドへ置き、そして10倍の拡大率を用いて分析した。次いで、これらのスライドの写真を作製し、次いで、36cmの領域にわたって微小泡の数を、手で計測した。次いで、残存する溶出液の上層および下層を下記と同様の方式によるフローサイトメトリーを用いてオリゴヌクレオチド含有量を分析するために使用した。
【0055】
種々のオリゴヌクレオチド溶液へ曝露する微小泡サンプルを、ホルムアミドおよびEDTAの溶液と共に15(v/v)で混合し、そして95℃で5分間加熱した。次いで、これらのサンプルを、20%ポリアクリルアミドゲルを用いたApplied Biosystemsモデル373A DNAシーケンサーで調べた。データは、曲線下の蛍光強度領域決定され得るように、GeneScannerソフトウェアで獲得した。
【0056】
実施例2
PESDA微小泡対RA−SDA微小泡のホスホロチオエートオリゴヌクレオチド結合
PS−ODNのPESDA微小泡の上層ならびに泡でない洗浄された(アルブミンを含まない)および非洗浄(非泡アルブミン含有)の下層との分離を、液体シンチレーション計測による計測値として表1に示す。
【0057】
【化2】

これらのデータは、微小泡に結合していない洗浄さていれない溶液中のアルブミンが、PS−ODNの分離が微小泡(上層)と周囲の溶液(下層;p=HS)との間で同等であるように、PS−ODNへ結合することを示す。非微小泡結合アルブミン(表1中の洗浄された泡)の除去はPS−ODNのPESDA微小泡との有意な分離を示さない(TTAGGG PS−ODNに対して1.67およびc−myb PS−ODNに対する2.16)。表1中に報告される実験における全放射活性の回収率は、添加された放射活性の96%であり、これは100%と有意には異ならない。
【0058】
PS−ODNの洗浄された微小泡への結合の親和性を、漸増量の過剰な非放射活性のPS=ODNを結合部位に対する競合的リガンドとして添加することによって評価した。この場合、配列5’−d(CCC TGC TCC CCC CTG GCT CC)−3’(配列番号4)を有する20マーPS−ODNを使用して、放射活性24マー置換した。洗浄微小泡実験におけるアルブミンタンパク質濃度は、Bradford Assay(Bradford Mら「A Rapid and Sensitive Method for the quantification of microgram quantities of protein utilizing the principle of protein−dye binding」anal.Bioche,.72:248,1976)により決定した場合、0.28±0.04 mg/mlであった。観察した結合データは、図1にLineweaver Burkeプロットとして示す。微小泡への結合についての(2連で行った7つの濃度に対して計算した)平衡解離定数Kは、1.76×10−5Mであった。
【0059】
FITC標識微小泡の分布を表2に提供する。
【0060】
【化3】

PE=パーセント事象
MI=平均強度
SE=標準誤差
この平均がコントロールと有意に異なることを示す、P<0.001
この平均が151nMと有意に異なることを示す、P<0.001。
【0061】
過剰の非標識PS−ODNを含む試料中の平均蛍光強度における有意な減少は、微小泡への結合が飽和性であることを示す。結果的に、結合が飽和的であるので、PS−ODNの微小泡表面への非特異的相互作用が制限される。PS−ODNの洗浄PESDA微小泡へのGaussian分布は、これらの微小泡上のアルブミンが、オリゴヌクレオチドに対するその結合部位を保持していることを示した。洗浄RA−SDAに対するGaussian分布の非存在は、これらの微小泡の超音波処理の間に、このオリゴヌクレオチドに対するアルブミン結合部位1の消失を生じていることを示した。特にオリゴヌクレオチドに関するアルブミンの結合特性の考察は、Kumar,Shashiら「Characterization of Binding Sites,Extent of Binding,and Drug Interactions of Oligonucleotides with Albumin」Antisence Resarch and Development 5: 131−139(1995)(その開示は、明細書によって参考として援用される)を参照のこと。
【0062】
上記から、PS−ODNがPESDA微小泡におけるアルブミンへ結合する。これは、アルブミン上の結合部位1が電気機械的超音波処理によるこれらの泡の産生後、生物学的活性であることを示すことが理解され得る。この結合部位親和性は、電気機械学的超音波処理をルームサー(room sir)を用いてのみ実施した場合に、失われる。さらに、PESDA微小泡に結合していないアルブミンの洗浄による除去は、微小泡を有するPS−ODNの有意な分離を示す(表1)。これらの観察は、アルブミンの変性が、空気の存在下での超音波処理で示唆されているように超音波処理の間にペルフルオロカーボン含有デキストロースアルブミン溶液で生じないことを実証する。PESDA微小泡中のアルブミン(特に、部位1で)の保持された生理活性を、結合部位に対する競合的リガンドとして漸増量の過剰の非放射活性PS−ODNの存在下におけるPS−ODNの洗浄PESDA微小泡への結合の親和性により確かめた(表2)。過剰の非標識PS=−ODNを含む試料中の平均蛍光強度における顕著な減少は、微小泡への結合が飽和性であることを示す。
【0063】
実施例3
アンチセンスオリゴの微小泡送達を介する改変された生体内分布
本発明に従って、アンチセンスホスホロチオエートオリゴヌクレオチドを、フェノバルビタールの代謝を改変するためにチトクロームP450 IIB1遺伝子配列に対して設計した。オリゴヌクレオチドを、より以前に記載されたように、ペルフルオロプロパン曝露超音波処理デキストロースアルブミン微小泡(PESDA)に結合させ、そしてラットへ静脈内へ送達した。オリゴヌクレオチドを、ラットチトクロームP450 IIB1の公知の配列に従って合成し、そしてこのオリゴヌクレオチドは以下の配列を有した:
GGAGCAAGATACTGGGCTCCAT(配列番号5)
AAAGAAGAGAGAGAGCAGGGAG(配列番号6)
全ての研究についてオスSprague−Dawleyラット(Sasco,Omaha)を使用し、そしてこれらは210から290グラムの間の体重であった。これらを、 AAALACが動物供給施設を承認したUniversity of Nebraska Medical Centerで動物舎(quarters)において収容した。動物を、12時間の明/暗周期に曝し、そしてPurinaラットが自由に固形飼料および水道水に接近できるようにした。
【0064】
PBを有する群中のラットを、フェノバルビタール(Mallinckrodt,St.Louis)を80ml/kg/日×2日で腹腔内へ注射した。PB注射を、ODN微小泡注射と同時に与えた。ホスホロチオエートODN注射は1ml/kg/日×2日であった。睡眠時間を最初の注射後48時間で測定した。ラットを、毎日新しく組み合わせた100ml/kgのヘキソバルビタール(Sigma,St.Louis)で腹腔内に注射した。この注射の量は、1ml/kg体重である。
【0065】
各ラットを、100mg/kgのヘキソバルビタールで腹腔内に注射した。動物がまだヘキソバルビタールからの鎮静中であることを保証するために動物を上向きにした。睡眠時間は、それらが上向きにされた時間から反転する時間までとして規定する。一覧表にされた睡眠時間は、群における各動物の平均±標準偏差である。
【0066】
結果は、微小泡を結合したオリゴヌクレオチドの送達は薬物の有効性を非常に改善することを示す。オリゴの1/20番目の用量を与えたラットは、50分以上の睡眠時間を経験した。これは、おおよそ13分の睡眠時間を有する微小泡に結合されていないオリゴと比較される。
【0067】
ラットを、究極的にはエチルエーテルを使用して屠殺し、そしてミクロソームをFranklinおよびEstabrook(1971)により記載されるように調製した。肝臓を、12mlの4%生理食塩水で門脈を介して灌流し、次いで動物から取り出した。肝臓を刻み、0.25Mのショ糖(Sigma)中でホモジナイズし、そしてSorvall RC2−B遠心機(Dupont,Wilmington,DE)において4℃にて20分間8000×gで遠心分離した。上清を取っておき、そして0.25Mショ糖中に再懸濁し、そしてSorvall OTD55B超遠心機(Dupont)において4℃にて45分間100,000×gで遠心分離した。ペレットを1.15% KCL(Sigma)中に再懸濁し、そして4℃にて1時間100,000×gで遠心分離して最終的なペレットを等量の緩衝液(10mM Tris酢酸、1mM EDTA,20%グリセロール;Sigma)に再懸濁し、そして−80℃で凍結した。
【0068】
タンパク質濃度を、Bradfordアッセイ(Bradford,1976)により決定した。ホモジネートの80μlのアリコートを96ウェルプレート(Becton Dickinson Labware,Lincoln Park,NJ)に添加した。次いで、20μlのBradford試薬(Bio−Rad,Richmond,CA)を添加し、そしてプレートをマイクロプレートリーダー(Molecular Devices,Newport MN)により595nmで読みとった。データを、既知の濃度のウシ血清アルブミン(Sigma)で作製された検量線と比較した。
【0069】
CYP IIB1含有量を、ペントキシレゾルフィン O−脱アルキル化(PROD)活性により決定した(Burkeら、1985)。各ミクロソーム試料について、1mlの0.1Mリン酸カリウム緩衝液中の1mgのタンパク質、1mlの2μM 5−ペントキシレゾルフィン(Pierce,Rockford,IL)、および17μlの60mM NADPHを混合し、10分間37℃でインキュベートした。次いで、混合物を、2mlキュベットへ添加し、そして530nmの励起波長および585nmの発光波長を使用してRF5000U分光光度計(Shimadzu,Columbia,MD)により読みとった。未知の濃度を、レゾルフィン(Pierce,Rockford,IL)スタンダードの検量線から計算した。結果を、nmolレゾルフィン/mgタンパク質/分で記録した。
【0070】
CYP IIB1タンパク質の直接測定を、CYP IIB1タンパク質を指向する抗体を使用するELISAアッセイにより決定した(SchuursおよびVan Weeman,1977)。1のウェルあたり50μgの肝臓を、96ウェルnunc−免疫プレート(InterMed,Skokie,IL)で一晩、100μlの0.35% 重炭酸ナトリウム緩衝液中に置いた。ミクロソームをPBS中の1%ウシ血清アルブミン(PBS/BSA)で3回洗浄し、そして200μlのPBS/BSAを用いて37℃で1時間インキュベートした。PBS/BSAを除き、そして50μlのCYP IIB1抗体(Oxygene,Dallas)を添加し、そして37℃で1時間インキュベートした。ミクロソームを、生理食塩水/tween 20(Sigma)で5回洗浄し、そして50μlの西洋ワサビペルオキシダーゼ抗体(Biorad)を添加した。ミクロソームを、37℃で1時間インキュベートし、生理食塩水/tween 20(Sigma)で5回そして85%生理食塩水で2回洗浄した。100μlの西洋ワサビペルオキシダーゼ基質(Kirkegaard & Perry Labs,Gaithersburg,MD)を添加し、そしてプレートを、マイクロプレートリーダー(Molecular Devices)において405nmで1時間、連続的に読みとった。結果を、mOD/分における西洋ワサビペルオキシダーゼ活性として記録した。
【0071】
結果は、オリゴ結合微小泡がオリゴを肝臓および腎臓へ導くことを実証した。これらは、フェノバルビタール代謝の部位である。以前に記載のように、100mg/kgのHBを、各動物に対してPBおよび/またはODNでの処置の2日の終わりで静脈内へ注射した。コントロールラットは約23分の睡眠時間を有した。PBは、約11.4±4.5分の睡眠時間の有意な減少を有した。結果として、PBはCYP IIB1 mRNAを刺激し、CYP IIB1によりヒドロキシル化されるヘキソバルビタールはよりすばやく代謝され、そしてその鎮静効果は減少した。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、PS−ODNとのPESDA微小泡の結合データのLineweaver−Burkeプロットである。(2連で行われた7つの濃度について計算された)微小泡への結合の平衡解離定数Kは、1.76 × 10−5Mであった。(r=0.999; Y−int=0.0566; 7濃度)。これは、Srinivasan SKら,「Characterization of binding sites,extent of binding,and drug interactions of oligonucleotides with albumin」 (Antisen Res.Dev.5:131,1995)に以前に報告された、配列5’d(AACGTTGAGGGGCAT)−3’(配列番号1)を有する15マーPS−ODNとヒト血清アルブミンとの結合に関して、3.7〜4.8 × 10−5Mの溶液において観察された範囲とほぼ同じであった。
【0073】
(配列表)
【化4】

【0074】
【化5】

【0075】
【化6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。

【図1】
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【公開番号】特開2009−29810(P2009−29810A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191487(P2008−191487)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【分割の表示】特願平10−504205の分割
【原出願日】平成9年6月20日(1997.6.20)
【出願人】(507282004)ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ネブラスカ (3)
【Fターム(参考)】