生物学的試料の成分を抽出および精製するための方法
生物学的試料から成分を溶離および中和する2段階プロセスで生物学的試料の成分を抽出および精製するための方法を提供する。溶離および中和ステップを別々にすると、バッファーのpHの調整を用いることにより所望の成分の抽出および精製が改善される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年6月29日出願の米国特許仮出願第60/929512号明細書および2007年7月2日出願の米国特許仮出願第60/929544号明細書の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、概ね、生物学的試料から、核酸、タンパク質、および他の生物学的分子などの生物学的物質を抽出するのに有用な組成物および方法に関する。より詳しくは、本発明は、生物学的試料からの核酸およびタンパク質の分離および精製に関する。
【背景技術】
【0003】
以下の考察において、ある論文および方法を、背景技術および序文の目的で記載する。本明細書に含まれないものは、先行技術の「承認」と解釈されたい。出願人は、必要に応じて、適用法令の規定により、本明細書において参照する論文および方法は先行技術を構成しないことを実証する権利を明らかに保有する。
【0004】
診断的および生化学的方法において、抽出または精製された、核酸などの細胞成分へのアクセス、および抽出または精製された形態のタンパク質へのアクセスは必須である。核酸へのアクセスは、核酸の配列決定、核酸のハイブリッド形成による特定の核酸配列の直接的検出、および核酸配列の増幅技術などの方法において必要とされる。したがって、核酸を抽出および精製するための方法は、核酸への望ましいアクセスを実現するために、簡単、迅速でなければならず、さらなる試料の操作を、あるとしてもほとんど必要としないものでなければならない。これらの特徴を全て備えた方法は、試料調製の自動化において特に魅力的であり、研究および診断試験の目標である。精製された形態のタンパク質へのアクセスは、排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、分画沈降などの技術によって達成される。しかし、これらの方法は、様々な理由で面倒である。例えば、沈降技術は依然として大雑把かつ自動化が困難であり、許容できない試料の喪失をもたらすことが多く、クロマトグラフィーは高価で時間がかかる。
【0005】
常磁性粒子を用いた核酸の精製および操作のための効果的な方法は、各々その全文が参照によって本明細書に組み入れられる、特許文献1(「138」)および特許文献2(「160」)に開示されている。そこで使用されている常磁性粒子は、生物学的試料中の核酸に可逆的に結合し、生物学的試料中のいくつかの他の成分からの核酸の分離を可能にしている。分離後は、結合した核酸を、溶離/中和バッファーによって常磁性粒子から切り離す。次いで、常磁性粒子を、核酸を含有する溶離/中和バッファーから除去する。核酸を含有するバッファーは、ハイブリッド形成、制限処理、標識化、逆転写、および増幅など、分離した核酸をさらに操作する場合に使用することができる。
【0006】
粗製の生物学的試料からの迅速な分画によるタンパク質の精製は、その全文が参照によって本明細書に組み入れられる、特許文献3(「0056」)に開示されている。生物学的試料中のタンパク質は、生物学的試料中のタンパク質分子を常磁性粒子に可逆的に結合させることによって分離される。試料をさらに処理して、より純粋な形態のタンパク質試料、または選択されたタンパク質を含まない試料を得ることもできる。試料からの核酸およびタンパク質などの生物学的試料または成分の分離および単離を向上させる方法があれば、診断的および生化学的方法への生成物の利用可能性が改善されるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,973,138号明細書
【特許文献2】米国特許第第6,433,160号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0030056号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0157218号明細書
【特許文献5】国際公開第96/18731号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Littleら、Clin Chem、1999年、45巻、777〜784頁
【非特許文献2】Nyczら、Anal Biochem、1998年、259巻、226〜234頁
【非特許文献3】Nadeauら、Anal Biochem、1999年、276巻、177〜187頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、生物学的試料の成分を抽出および精製する方法を対象とする。したがって、本発明のある実施形態の一態様は、生物学的試料からの、核酸、タンパク質、および他の生物学的分子の抽出に有用な方法を提供することである。
【0010】
本発明のある実施形態の別の態様は、簡単、迅速であり、さらなる試料の操作を、あるとしてもほとんど必要としない、生物学的試料の成分を抽出および精製するための方法を提供することである。
【0011】
本発明のある実施形態のさらなる一態様は、生物学的試料の成分の分離および単離の効率を向上させる方法を提供することである。
【0012】
本発明のある実施形態の別の態様は、生物学的試料の成分の抽出を最適化するための改善されたプロセスを提供することである。これらの最適化された抽出プロセスは、さらなる診断的および生化学的方法のために、核酸および精製されたタンパク質などの成分を分離および回収する能力を大幅に増大する。
【0013】
本発明のある実施形態の別の態様は、成分を分離および回収する能力を増大する2段階の溶離および中和プロセスで、生物学的試料の成分を抽出および精製する方法を提供することである。
【0014】
本発明の実施形態は、標的の生物学的成分を溶離および中和するためのバッファーのpH調整を用いて、生物学的試料から成分を抽出および精製する方法を提供する。
【0015】
本発明の実施形態は、生物学的試料から、生物学的分子、オルガネラ、および細胞などの生物学的試料の成分を抽出および精製する方法を行うためのキットも含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例7の結果を示す図である。
【図2】実施例7の結果を示す図である。
【図3】実施例7の結果を示す図である。
【図4】実施例7の結果を示す図である。
【図5】実施例7の結果を示す図である。
【図6】実施例7の結果を示す図である。
【図7】実施例7の結果を示す図である。
【図8】実施例7の結果を示す図である。
【図9】実施例8の結果を示す図である。
【図10】実施例8の結果を示す図である。
【図11】実施例8の結果を示す図である。
【図12】実施例8の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、概ね、生物学的試料の成分を抽出および精製する方法を対象とする。本発明は、生物学的試料から核酸を抽出する方法を記載するものであり、抽出した核酸は、ハイブリッド形成、制限処理、標識化、逆転写、および増幅の方法などの手段によってさらに操作することができる。さらに、本発明は、タンパク質を生物学的試料から分離および精製する方法を記載するものである。本明細書に記載する方法は、核酸、タンパク質、および他の生物学的分子の生物学的試料からの抽出を最適化するための改善されたプロセスを表す。これらの最適化された抽出プロセスは、さらなる診断的および生化学的方法のために、核酸、精製されたタンパク質、および他の生物学的分子の分離および回収を大幅に増大する。
【0018】
本明細書で用いられる「精製する」および「精製」の語は、抽出する/抽出、単離する/単離、および濃縮する/濃縮も含み、絶対的な純度を必要としないが、代わりに、生物学的試料の少なくとも1つの成分の一部または全てを切り離すことだけを必要とする。実際には、実行者が、約80%またはそれを超え、好ましくは80%、90%、95%またはそれを超えた純度に精製することを仮定する。
【0019】
本発明に従って使用される生物学的試料、例えば、臨床試料、法医学試料、または環境試料は、好ましくは核酸を含有する、任意の生物学的物質であってよい。これらの試料は、原核細胞および真核細胞、ウイルス、バクテリオファージ、マイコプラズマ、プロトプラスト、ならびにオルガネラ、もしくはこれらの任意の部分を含む、任意のウイルス物質または細胞物質を含有していてよい。本明細書において用いられる生物学的試料の成分は、生物学的物質および(1つまたは複数の)生物学的分子を含む、試料の任意の部分であってよい。このような生物学的物質は、全てのタイプの哺乳動物細胞および非哺乳動物細胞、植物細胞、藻類(ラン藻類を含む)、真菌、細菌、酵母、原虫、ならびにウイルスを含むことができる。本発明の実施形態を用いて、核酸、タンパク質、炭水化物、オルガネラ、細胞、またはこれらの組成物の部分などの生物学的分子を抽出することができる。生物学的物質の代表例には、血液および血液由来の生成物、例えば、全血、血漿、および血清;臨床検体、例えば、精液、尿、糞便、喀痰、組織、細胞培養物および細胞懸濁物、鼻咽頭の吸引液、ならびに子宮頸管内、膣、眼、喉、および口内のスワブを含めたスワブ;ならびに他の生物学的物質、例えば、指爪および足爪、皮膚、毛髪、および脳脊髄液または他の体液が含まれる。環境試料には、土壌、水、空気、懸濁流出液、粉末、および他の核酸含有物質の供給源が含まれる。
【0020】
本発明の生物学的試料を前処理して、抽出のために核酸の生物学的試料中への放出を確実にすることができる。この目的の生物学的試料の前処理は、その全文が参照によって本明細書に組み入れられる、特許文献4(「7218」)に記載されている。「7218」において開示されているように、前処理のプロセスにおいてタンパク質変性剤を用いることが好ましいことがある。本発明において有用なタンパク質変性剤には、水酸化カリウム(KOH)など、pHの上昇を引き起こす(1つまたは複数の)薬剤が含まれる。
【0021】
本発明の核酸は、「138」および「160」の方法によって開示されるように、常磁性粒子に可逆的に結合させることが好ましい。「138」および「160」において、酸性の環境において、本発明の常磁性粒子は、特許文献5において教示されているアニオン性界面活性剤を必要とせずに、核酸分子に可逆的に結合する。本明細書で用いられる(1つまたは複数の)常磁性粒子の語は、「138」および「160」に記載されている(1つまたは複数の)粒子を意味する。
【0022】
本発明の意味の範囲内で、常磁性粒子に結合した核酸を他の生物学的試料の成分から分離するための方法ステップは、「138」および「160」に記載されている方法ステップであるのが好ましい。
【0023】
好ましい一実施形態において、常磁性粒子に結合した核酸分子を、このような環境のpHを上昇させることによって達成される好適な溶離バッファーで溶離することができる。先の方法において、溶離ステップは、一般的に、核酸を常磁性粒子から切り離すために、ならびにハイブリッド形成、制限処理、標識化、逆転写、および増幅などのさらなる操作のために同時に溶液を中和するように設計されているバッファーの添加を含む。中和と別のステップにおいて核酸を常磁性粒子から切り離すことにより、核酸が切り離されるように溶離バッファーのpHを最適化することが可能となり、それにより意外にも、これまでの1段階溶離/中和タイプのバッファーで達成したものに比べて、非結合核酸を分離および回収する能力の向上が達成される。本明細書に記載するように、酸化鉄などの常磁性粒子は、酸性pHでは正味の正電荷で負に荷電した核酸に結合する。中性から塩基性のpHでは、酸化鉄などの常磁性粒子は正に荷電しておらず、核酸を遊離する。常磁性粒子からの核酸の溶離を助けるために用いることができる作用物質には、それだけには限定されないが、塩基性溶液、例えば、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、または電気陰性の核酸が常磁性粒子から切り離されるのに十分な程度に環境のpHを上昇させる任意の化合物が含まれる。
【0024】
核酸を溶離するための条件は、約8から14のpH値とする。核酸鎖の非特異的な自己アニーリングを防ぎ、常磁性粒子からの核酸の遊離を最適化するためには、分解せずにできるだけ高いpHで溶離することが望ましい。高いpHでの溶離、およびDNA:DNA、DNA:RNA、またはRNA:RNAハイブリッドの変性は、ハイブリッド形成、特にプローブハイブリッド形成、または増幅、特に等温核酸増幅法など、一本鎖標的を必要とする下流の適用にも有益である。一本鎖型の標的核酸を維持すると、相補的なプライマーまたはプローブとのハイブリッド形成の前に、引き続き熱変性を行う必要がなくなる。自己アニーリングは、核酸と常磁性粒子の絡み合いそれ自体を促進し、溶離ステップにおける常磁性粒子からの核酸の分離を防ぐ可能性がある。他の粒子タイプでも、溶離後に中和を行う概念を用いることができよう。
【0025】
粒子に結合した核酸は、望ましい結果が得られるまで溶離バッファーで溶離される。例えば、この核酸は、KOHからなる溶離バッファーを添加し混合し、例えば、望ましい結果が得られるまで、吸引し、所与の体積を分配することによって、常磁性粒子から溶離してもよい。この方法はDNAおよびRNAの分離に成功するが、核酸の分解をもたらし得るpH値および/または曝露時間を避けるよう、注意を払わなければならない。
【0026】
このようにして結合した核酸を除去することによって、結合した核酸の最大の放出を達成するようにpHが最適化される。驚くべきことに、別々に溶離ステップを行うこと、およびより高いpH値の使用を可能にすることによって、合わせた溶離/中和バッファーを用いて達成したものに比べて、下流の核酸増幅アッセイにおけるシグナル生成の再現性の増大がもたらされることが見出された。核酸を回収および/または検出する能力の改善は予想外であった。したがって、溶離ステップを中和ステップと別々にすることで、先の取り組みを凌ぐ著しい利点がもたらされる。
【0027】
好ましい一実施形態において、溶離ステップの後に中和バッファーを加えてもよい。中和バッファーは、非結合核酸を含有する溶離溶液のpH値を、下流の適用に応じて、約6から約9の好ましいpH範囲に、より好ましくは約8から約8.5に、最も好ましくは約8.4に調整する。このやり方において非結合核酸を含有する溶液を中和することによって、pH環境は、ハイブリッド形成、制限処理、標識化、逆転写、および増幅などのさらなる核酸の操作に最適化される。これは、さらなる操作に対するpH値の最適化を達成するのに適した任意の中和バッファーを用いて達成することができる。好ましい中和バッファーはビシンであり、以下の実施例において用いられる。代替の中和バッファーには、それだけには限定されないが、トリス、CHES[2−(シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸]、BES[N−N−Bis(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸]、MOPS(4−モルホリンプロパンスルホン酸)、およびリン酸塩が含まれる。本発明の方法において有用な他の中和バッファーは、当業者であれば、過度の実験を必要としないルーチンのスクリーニング方法を用いて容易に確認することができる。
【0028】
試料を中和した後、非結合核酸を含有するpHを最適化した溶液を、例えば、ハイブリッド形成、制限処理、標識化、逆転写、および増幅などのさらなる操作のために移す間に、常磁性粒子を除去する。本明細書に記載するように、常磁性粒子を分離するのに磁力を用いるのが好ましい。
【0029】
本発明の好ましい一実施形態において、精製のために生物学的試料からタンパク質を抽出することができる。抽出は、好ましくは、本明細書に記載するように、生物学的試料における少なくとも1つのタンパク質が、少なくとも1つの常磁性粒子に可逆的に結合することによって達成される。結合した後は、粒子−タンパク質複合体を生物学的試料の非結合成分から分離することが好ましく、試料に対して適用した磁力を使用することによって達成されることが好ましい。次いで、粒子−タンパク質複合体を含有する試料を洗浄し、次いで洗浄物から分離する。次いで、最適化した塩基性pHの溶離バッファーで試料を溶離することによって常磁性粒子からタンパク質を切り離し、溶離試料を得る。これにより、常磁性粒子からのタンパク質の回収を最適化することができる。タンパク質を常磁性粒子から溶離したら、中和バッファーに常磁性粒子を加え、次いで溶離/中和バッファー混合液から分離する。中和した常磁性粒子の除去は、好ましくは、中和したバッファー試料に磁力を印加することによって達成できる。常磁性粒子を、非結合タンパク質を含有する中和バッファーから分離した後、タンパク質を診断的および生化学的方法においてさらに利用することができる。本発明の重要性は、先の方法において用いた溶離/中和ステップを別々にすることによって、非結合タンパク質の回収が向上することである。
【0030】
本発明のさらに別の態様は、それから生物学的物質を抽出するための、生物学的試料を処理するためのキットを提供することである。キットは、本明細書に記載する少なくとも1つのタンパク質変性剤を含むことができる。キットは、水および本明細書に記載するバッファー溶液を含有することができ、常磁性粒子または他の抽出および/もしくは精製用の固体支持体を含むことができ、これらを他箇所に、より詳しく記載する。キットは、生物学的試料を処理およびアッセイするための以下の物品:スワブ、チューブ、およびピペットなどの採取道具、対照、pH指示薬、ならびに温度計の1つまたは複数を含むこともできる。キットは、本発明による方法を実行するのに適する割合の試薬を一緒に混合する容器を含むことができる。試薬容器が、対象の方法を実行する場合に測定ステップを回避する単位量の試薬を含むことが好ましい。本発明のキットは、本明細書に記載するように、核酸を常磁性粒子から放出するのに最適化された溶離バッファーを含むことができる。キットは、本明細書に記載するように、核酸のハイブリッド形成、制限処理、標識化、逆転写、および増幅などの下流の適用を最適化するための中和バッファーを含むことができる。
【0031】
本発明のキットは核酸を反応混合物から抽出する方法と同様、反応混合物も含むことができる。反応混合物は、必要に応じ、特定の実施形態用の少なくとも1つのタンパク質変性剤を含むことができる。反応混合物は、いくつかの実施形態において、バッファー、および酸化鉄、または核酸を精製するための他の固体支持体など、核酸を精製および検出するために対象の反応混合液とともに用いる様々な試薬を含むことができる。
【実施例】
【0032】
次に、本発明を、特定の実施例によってさらに詳しく記載する。以下の実施例は、説明の目的で提供するものであり、いかなる方法でも本発明を限定しようとするものではない。当業者には明らかであるように、本発明が記載される範囲内で様々な変更および改変が可能であり、企図される。以下の実施例は、最適化した核酸の抽出および最適化した操作のために全血および血漿の試料を前処理するための、本発明の組成物および方法の有効性を説明するものである。全血および血漿はタンパク質含量が高いので、核酸抽出用の試料の中では最も難易度が高く、したがって本発明の方法は他の生物学的試料に対しても有効であると思われる。これらの実施例において、酸性の環境における、常磁性粒子に対する核酸分子の可逆的な結合を、本発明にしたがってインタクトな核酸を抽出するための試料の処理に起因する反応混合物からの核酸の単離に用いる。結合のpHは、好ましくは約1から約6.5であり、より好ましくは約1から約4であり、最も好ましくは約2である。溶離のpHは好ましくは約8から約14である。当業者であれば、溶離のpHは、試料の核酸の分解を引き起こさずに、できるだけ高いpHを用いることによって最適化するのが好ましいことを理解するであろう。常磁性粒子の技術は、非特異的に、または配列と無関係に核酸を捕獲する。中和後、pHは、下流の適用に応じて約6.0〜9.0であるのが好ましい。より好ましくはpHが約8から約8.5であり、最も好ましくは約8.4である。
【実施例1】
【0033】
熱単独よりも良好な、アルカリ処理によるDNAの酸化鉄からの溶離
試料を150mM KOHで処理した場合、熱単独よりも良好にDNAを酸化鉄から溶離するか否かを決定するために、本実施例を行った。
本実施例において用いた物質は以下の通りであった。
300mMビシン2×バッファー
試料バッファー
クラミジア(Chlamydia)プライマーウェル
クラミジア増幅ウェル
増幅対照(AC)プライマーウェル
AC増幅ウェル
KOH 150mM
血漿試料
酸化鉄
血漿前処理チューブ(PPT)
血漿前処理チューブ(PPT)中、全血を1100×gで10分間回転することによって、全血から血漿を調製した。体積6mlのプール血漿を調製した。血漿プール1ミリリットルあたりトラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)(CT)基本小体(EB)10000個を加え、これを等体積で2ml遠心管6本中に分配した。別の10mlの細菌懸濁液を、CT EB10000個/mlを有する脱イオン水中に調製し、10×1ml中に分配した。ビシン含有2×試料バッファー300mM中、CT EB10000個/mlを含む、さらなる懸濁液を調製した。
【0034】
酸化鉄40ミリグラムを血漿のチューブ4本中に分配し、酢酸80μlをチューブ2本中に分配し、酢酸300μlを、血漿を含むが酸化鉄を含まないチューブ2本に加えた。全6本のチューブを、105℃のライソライザー(lysolyzer)中に30分間配置した。ライソライゼーション(lysolyzation)後、酸化鉄を含まないチューブ2本に酸化鉄40ミリグラムを加え、酸を含まないチューブ2本に酢酸80μlを加えた。混合し、酸化鉄を回収し、検体のマトリックスを除去した後、粒子を、チューブ1本あたり1mlの脱イオン水で2回洗浄した。各々の条件のチューブ1本を150mM KOH500μlで15分間処理した後、ビシン2×試料バッファー300mMを加えた。対照として、各々の条件からのチューブ1本に、75mM KOH/150mMビシン含有2×試料バッファーを加えた。
【0035】
脱イオン水中CT EB10000個/mlを有する10本のチューブの2本中に、酸化鉄40ミリグラムをスパイクした。酸化鉄を含まないチューブ2本に酢酸80μlを加え、酸化鉄を含むチューブ2本に酢酸300μlを加えた。これらのチューブおよび先の酸処理を行わなかったチューブ4本を、30分間、105℃でライソライズ(lysolyze)した。溶解前に酸化鉄を含んでいたチューブ各々の中に80μlを分配した。残りのチューブに酸化鉄40mgを加え、全てのチューブを、30分間、エンド−オーバー−エンドロッカー(end−over−end rocker)上に配置した。酸化鉄を回収した後、粒子を1ml/チューブの脱イオン水で2回洗浄した。各条件からのチューブ1本を、150mM KOH500μlで15分間処理した後、300mMビシン2×試料バッファーを添加した。対照として、各タイプのチューブ1本に、75mM KOH/150mlビシン2×試料バッファーを加えた。
【0036】
全チューブからの溶離物を5分間沸騰させ、溶解物を、BD ProbeTec(商標)トラコーマクラミジアAmplified DNA Assay(非特許文献1)からのマイクロウェルを用いて試験した。
【0037】
【表1】
【0038】
MOTA(Metric Other Than Acceleration)値は、経時の相対的蛍光の曲線下面積を表す。CTアッセイでのポジティブ反応に対して確立されたカットオフは、2000MOTAである。ほとんどの場合において、2段階の溶離プロセスに曝露した可溶化液から、より高いMOTAスコアが得られたことが明らかである。
【実施例2】
【0039】
2段階溶離とともに用いられるより少ない溶離体積
本実施例は、2段階溶離プロセスを用いたRNAの回収を実証するものである。
本実施例において用いた物質は以下の通りであった。
酸化鉄
血漿前処理チューブ(PPT)
30mM KP04
500mM KP04
トリ骨髄芽球症ウイルス逆転写酵素(AMV−RT)
BsoBI制限酵素
GP32タンパク質
ウシ血清アルブミン(BSA)
Bstポリメラーゼ
55%グリセロール
200mMマグネシウム
ジメチルスルホキシド(DMSO)
蛍光検出プローブ
鎖置換増幅(SDA)プライマー
バンパープライマー
デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)
プロテイナーゼK
ホルムアミド
結合性酸
KOH
ビシン
HIV gag遺伝子転写物
血漿を、65Cで20分間、および70Cで10分間、44%ホルムアミドおよび5UプロテイナーゼKで前処理した。酸化鉄および結合性酸180μlを血漿に加えた。次いで、混合物を、HIVgag遺伝子転写物10000コピー/mlでスパイクした。酸化鉄に結合させ、洗浄した後、RNAを、65Cで20分間、80mMまたは100mMいずれかのKOH溶離バッファー120μlで溶離した。残りの溶離物を、192mMまたは230mMいずれかのビシン60μlで中和し、2分間混合した。RNAをAMV−RTで逆転写し、gag特異的プライマーを用いてSDAによって増幅した(非特許文献2)。蛍光検出プローブを用いてリアルタイムで検出を行った(非特許文献3)。
【0040】
【表2】
【0041】
低い方の80mM KOHの濃度を溶離に用いた試料が、より高いMOTA値を生成し、これは標的RNAの増幅/検出がより強力であったことを示していた。高い方の濃度のKOH(100mM)に曝露すると、RNA転写物の加水分解および分解をもたらす可能性がある。したがって、この実験は、複合の生物学的マトリックスからRNAを回収するための2段階溶離プロセスでの酸化鉄抽出の能力を実証するものである。意外なことに、溶離ステップの間、高いpHにRNAを曝露しても、標的の核酸の分解はもたらされなかった。
【実施例3】
【0042】
2ステップ溶離の間の加熱の効果
この実施例は、様々なKOH濃度で溶離する間に加熱すると、RNAの安定性および/または回収および/増幅/検出に影響を及ぼすか否かを決定するために行った。
本実施例において用いた物質は以下の通りであった。
酸化鉄
血漿調製チューブ(PPT)
30mM KP04
500mM KP04
AMV RT
BsoBI制限酵素
GP32タンパク質
ウシ血清アルブミン(BSA)
Bstポリメラーゼ
55%グリセロール
200mMマグネシウム
ジメチルスルホキシド(DMSO)
蛍光検出プローブ
鎖置換増幅(SDA)プライマー
バンパープライマー
デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)
プロテイナーゼK
ホルムアミド
結合性酸
KOH
ビシン
HIV gag遺伝子転写物
血漿を、65Cで20分間、および70Cで10分間、44%ホルムアミドおよび5UプロテイナーゼKで前処理した。酸化鉄および結合性酸180μlを血漿に加えた。次いで、混合物を、HIVgag遺伝子転写物5000コピー/mlでスパイクした。酸化鉄に結合させ、洗浄した後、RNAを、加熱なしで2分間、または65Cで20分間のいずれか、60mM、70mM、または80mMいずれかのKOH溶離バッファー120μlで溶離した。試料を、230mMのビシン60μlと2分間混合することによってすぐに中和した。RNAをAMV−RTで逆転写し、gag特異的プライマーを用いてSDAによって増幅した(非特許文献2)。蛍光検出プローブを用いてリアルタイムで検出を行った(非特許文献3)。
【0043】
【表3】
【0044】
全ての条件下でポジティブのMOTA値(>2000)が得られた。したがって、これらのデータは、KOHに曝露し、その後ビシンで中和することを伴う2段階溶離方法を用いて、加熱を用いずに、酸化鉄からRNAを溶離することが可能であり得ることを示している。加熱なしの手順には、さほど高度ではない機器を必要とするという利点がある。
【実施例4】
【0045】
溶離条件の最適化
この実験は溶離条件を最適化するために行った。
本実施例において用いた物質は以下の通りであった。
酸化鉄
血漿調製チューブ(PPT)
30mM KP04
500mM KP04
AMV RT
BsoBI制限酵素
GP32タンパク質
ウシ血清アルブミン(BSA)
Bstポリメラーゼ
55%グリセロール
200mMマグネシウム
ジメチルスルホキシド(DMSO)
蛍光検出プローブ
鎖置換増幅(SDA)プライマー
バンパープライマー
デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)
プロテイナーゼK
ホルムアミド
結合性酸
KOH
ビシン
HIV gag遺伝子転写物
血漿を、65Cで20分間、および70Cで10分間、44%ホルムアミドおよび5UプロテイナーゼKで前処理した。酸化鉄および結合性酸180μlを血漿に加えた。次いで、混合物を、HIVgag遺伝子転写物10000コピー/mlでスパイクした。酸化鉄に結合させ、洗浄した後、RNAを、65Cで20分間、46mM、55mM、63mM、または80mMいずれかのKOH溶離バッファー120μlで溶離した。次いで、試料を、109mMのビシン60μlで中和し、2分間混合した。RNAをAMV−RTで逆転写し、gag特異的プライマーを用いてSDAによって増幅した(非特許文献2)。検出は、蛍光検出プローブを用いてリアルタイムで生じた(非特許文献3)。
【0046】
【表4】
【0047】
RNAは、2段階溶離手順を用いて血漿から上首尾に回収した。しかし、これらのデータは、増幅/検出に用いたバッファー条件に無関係に、加熱の存在下でRNAを溶離した場合、より高いMOTA値が得られたことを示している。
【実施例5】
【0048】
2段階溶離でのより少ない溶離体積
本実施例は、2段階溶離プロセスでのより少ない溶離体積を評価した。
本実施例において用いた物質は以下の通りであった。
酸化鉄
血漿調製チューブ(PPT)
30mM KP04
500mM KP04
AMV RT
BsoBI制限酵素
GP32タンパク質
ウシ血清アルブミン(BSA)
Bstポリメラーゼ
55%グリセロール
200mMマグネシウム
ジメチルスルホキシド(DMSO)
蛍光検出プローブ
鎖置換増幅(SDA)プライマー
バンパープライマー
デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)
プロテイナーゼK
ホルムアミド
結合性酸
KOH
ビシン
HIV gag遺伝子転写物
血漿を、65Cで20分間、および70Cで10分間、44%ホルムアミドおよび5UプロテイナーゼKで前処理した。酸化鉄および結合性酸180μlを血漿に加えた。次いで、混合物を、HIVgag遺伝子転写物10000コピー/mlでスパイクした。酸化鉄に結合させ、洗浄した後、RNAを、65Cで20分間、50mM、65mM、および80mMいずれかのKOH 120μlで溶離した。次いで、試料を、154mM、192mMまたは230mMいずれかのビシン60μlで中和し、2分間混合した。RNAをAMV−RTで逆転写し、gag特異的プライマーを用いてSDAによって増幅した(非特許文献2)。蛍光検出プローブを用いてリアルタイムで検出を行った(非特許文献3)。
【0049】
【表5】
【0050】
MOTAスコアが高いことによって確認されるように、試験した各条件下で、RNA標的の強い増幅が達成された。これらのデータは、複合の生物学的マトリックスから増幅可能なRNAを回収するための、酸化鉄抽出およびその後の2段階溶離プロセスの有用性を実証している。様々な濃度のKOHに65Cで20分間曝露しても、RNAの加水分解は明らかではなかった。
【実施例6】
【0051】
2段階溶離および中和
本実施例は、1段階方法およびMOTAに対する効果に比べた溶離の分離および中和を詳述するものである。
本実施例において用いた物質は以下の通りであった。
酸化鉄
血漿調製チューブ(PPT)
30mM KP04
500mM KP04
AMV RT
BsoBI制限酵素
GP32タンパク質
ウシ血清アルブミン(BSA)
Bstポリメラーゼ
55%グリセロール
200mMマグネシウム
ジメチルスルホキシド(DMSO)
蛍光検出プローブ
鎖置換増幅(SDA)プライマー
バンパープライマー
デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)
プロテイナーゼK
ホルムアミド
結合性酸
KOH
ビシン
HIV gag遺伝子転写物
血漿を、65Cで20分間、および70Cで10分間、44%ホルムアミドおよび5UプロテイナーゼKで前処理した。酸化鉄および結合性酸180μlを血漿に加えた。次いで、混合物を、HIVgag遺伝子転写物10000コピー/mlでスパイクした。酸化鉄に結合させ、洗浄した後、RNAを、65Cで20分間、50mM、65mM、または80mMいずれかのKOH溶離バッファー400μlで溶離した。溶離物を、100μlおよび300μlの体積に分割し、この各々を異なるビシン含有中和バッファーで中和した(表6)。RNAをAMV−RTで逆転写し、gag特異的プライマーを用いてSDAによって増幅した(非特許文献2)。蛍光検出プローブを用いてリアルタイムで検出を行った(非特許文献3)。
【0052】
【表6】
【0053】
【表7】
【0054】
溶離の間KOH濃度を低減するとMOTAスコアは改善し、RNA標的は強アルカリに長時間曝露することによって部分的に分解され得ることが示唆された。より低濃度のKOHで溶離するとMOTAスコアが改善され、より強力な増幅/検出であることを指摘していた。
【実施例7】
【0055】
標的DNAでの溶離効率
本実施例の目的は、抽出モードにおいてBD Viper(商標)Systemを用いて酸化鉄からのDNAの溶離効率を決定することであった。この試験は、SDA適合性バッファー(pH約8.4)を用いて行った場合、酸化鉄抽出プロセスにおける最終溶離段階の後、増幅可能な標的のDNAが酸化鉄に依然として結合しているか否かを評価するように設計された。先の実験において、酸化鉄をこのpHの溶離バッファーに再曝露した場合、SDA反応ポジティブの蛍光シグナルにおいて試験する第2の溶離物が生じるか否かを決定した。これに対する可能な理由の一つは、オリジナルの抽出の後、微量の溶離バッファーが存在するということであった。この可能性を軽減するために、この実験における抽出チューブには全て、さらなるSDA適合バッファーで再溶離する前に最初の抽出の事象からの残渣の溶離バッファーが除去された。これは、結合しているあらゆるDNAのさらなる溶離を防ぐために脱イオン水(pH4〜5)で酸化鉄を洗浄することによって遂行した。この実験において臨床的なマトリックスは使用しなかった。
本実施例において用いた物質は以下の通りであった。
リン酸カリウム−DMSO−グリセロール(KPDG)試料希釈液(SDA適合バッファー)
抽出チューブ
溶解バッファー
バインディングバッファー
洗浄バッファー
溶離バッファー
BD ProbeTec(商標)CT/GC QX Amplified DNA Assay用プライミングおよび増幅マイクロウェル
トラコーマクラミジア(CT)/淋菌(Neisseria gonnorhea)(GC)生物体(1×105/mLストック)
手順は以下の通りであった。
【0056】
【表8】
【0057】
図1〜8に示した結果は、pH約8.4のKPDGバッファーでの最初の溶離ステップの後も、増幅可能なCT/GC標的DNAが酸化鉄に依然として結合していたことを指摘している。脱イオン水で酸化鉄を洗浄することで、酸化鉄から残りの標的のDNAを溶離せずに、最初の溶離物の痕跡が除去された。さらなるKPDG溶離バッファーで酸化鉄をさらに処理することにより、SDAによって検出可能である標的のDNAをより多く回収することができた。この実験を追跡するために、残りの標的のDNAを酸化鉄から回収するのに、より高いpHの溶離バッファーを評価した。当業者であれば、過度の実験を行わずに、様々なこのようなバッファー条件を評価する能力がある。
【実施例8】
【0058】
2段階溶離MSA
この実験の目的は、運転とViper機器との間の結果の再現性を決定するために、抽出モードにおいてBD Viper(商標)Systemを用いて2段階溶離プロセスに対するMeasurement System Analysisを完成することである。
【0059】
2段階溶離は、抽出チューブに2×KOH溶液(142mM)を加えた後、2×中和溶液を加えてSDAアッセイバッファーを形成することを意味する(2×中和溶液は、0.1%Tween20および0.03%Proclin300を有する251mMビシン、21.8%DMSO、19%グリセロールである)。
この実験において用いた物質は以下の通りであった。
CT/GC試料希釈液5.9L
抽出チューブ 15トレイ
2×中和バッファー250ml
2×KOH(高pH溶離バッファー)250ml
洗浄バッファー(水およびTween)
結合性酸
KOH溶解バッファー
BD ProbeTec(商標)CT/GC QX Amplified DNA Assay用プライミングおよび増幅マイクロウェル
トラコーマクラミジア(CT)105スパイカー2アリコート
淋菌(GC)105スパイカー4アリコート
CT/GCポジティブおよびネガティブの試料を、試料希釈液において調製した。低い標的のプールを15EB/mlのCTおよび50細胞/mlのGCでスパイクした。高い標的のプールを30EB/mlのCTおよび100細胞/mlのGCでスパイクした。スパイクの計算は以下の通りであった。
【0060】
低:CT15EB/ml:105/ml(xml)=15EB/mI(2450ml)==>367.5μlCTスパイク;
GC50細胞/ml:105/ml(xml)=50細胞/ml(2450ml)==>1225μlGCスパイク。
【0061】
高:CT30EB/ml:105/ml(xml)=30EB/ml(2450ml)==>735μlCTスパイク;
GC100細胞/ml:105/ml(xml)=100細胞/ml(2450ml)==>2450μlGCスパイク。
【0062】
CT/GC陰性の試料はスパイクされないままであった。試料を、各チューブから3つの抽出事象に対して3.5ml/チューブで、5個の別々のViperラック中に分注した。各機器での3回の運転全てに対して同じ試料を用いた。試料を、1段階または2段階どちらかの溶離プロトコールを用いて抽出した。簡潔に述べると、KOHを試料に加えて細胞を溶解し、それらの核酸を溶液中に遊離した。次いで、結合性酸を加えてpHを低下させ、酸化鉄の表面上の電荷をおよそ正にし、これは負に荷電しているDNAに結合した。酸化鉄および結合しているDNAを洗浄し、DNAを、KOHへの曝露およびその後のビシンバッファーでの中和を伴う2段階プロセス、またはpH約8.4のビシンおよびKOHの溶液への曝露を伴う1段階プロセスのいずれかにおいて溶離した。次いで、溶離したDNAを、BD ProbeTec(商標)CT/GC QX Amplified DNA Assayを用いて検出した。
【0063】
結果を図9〜12に示すが、これらは抽出した各検体で得られた最大相対的蛍光単位(MaxRFU)を表すものである。MaxRFUが高いほど増幅/検出がより効率的であることを示している。MaxRFUスコアの群が緊密であるほど、システムはより強力である。図9および11において、2段階の低CT試料タイプ(15EB/ml)では、1段階溶離法のものよりも1.46高いCpKをもたらした。図10および12において、2段階の低GC試料タイプ(50細胞/ml)では、1段階溶離法のものよりも0.94高いCpKをもたらした。CpKは能力の指標であり、平均値に関する変動だけではなく平均それ自体のシフトも含む、長期間または大型の試料のデータの変動の尺度である。CpKは、性能の再現性を測定するための定常状態の生成の間に用いられる、共通の測定基準である。
【0064】
2段階溶離プロセスは、CTおよびGCの両方に対して、1段階溶離プログラムよりも良好に行われ、有意に高いCpK値をもたらした。
【0065】
前述の記載は、本発明の好ましい実施形態を目的とするものであるが、当業者であれば他の変形および改変は明らかであり、本発明の精神または範囲から逸脱せずに行うことができることが注目される。さらに、本発明の一実施形態に関連して記載される特徴は、上記に明確に記載されていなくても、他の実施形態に関連して用いることができる。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年6月29日出願の米国特許仮出願第60/929512号明細書および2007年7月2日出願の米国特許仮出願第60/929544号明細書の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、概ね、生物学的試料から、核酸、タンパク質、および他の生物学的分子などの生物学的物質を抽出するのに有用な組成物および方法に関する。より詳しくは、本発明は、生物学的試料からの核酸およびタンパク質の分離および精製に関する。
【背景技術】
【0003】
以下の考察において、ある論文および方法を、背景技術および序文の目的で記載する。本明細書に含まれないものは、先行技術の「承認」と解釈されたい。出願人は、必要に応じて、適用法令の規定により、本明細書において参照する論文および方法は先行技術を構成しないことを実証する権利を明らかに保有する。
【0004】
診断的および生化学的方法において、抽出または精製された、核酸などの細胞成分へのアクセス、および抽出または精製された形態のタンパク質へのアクセスは必須である。核酸へのアクセスは、核酸の配列決定、核酸のハイブリッド形成による特定の核酸配列の直接的検出、および核酸配列の増幅技術などの方法において必要とされる。したがって、核酸を抽出および精製するための方法は、核酸への望ましいアクセスを実現するために、簡単、迅速でなければならず、さらなる試料の操作を、あるとしてもほとんど必要としないものでなければならない。これらの特徴を全て備えた方法は、試料調製の自動化において特に魅力的であり、研究および診断試験の目標である。精製された形態のタンパク質へのアクセスは、排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、分画沈降などの技術によって達成される。しかし、これらの方法は、様々な理由で面倒である。例えば、沈降技術は依然として大雑把かつ自動化が困難であり、許容できない試料の喪失をもたらすことが多く、クロマトグラフィーは高価で時間がかかる。
【0005】
常磁性粒子を用いた核酸の精製および操作のための効果的な方法は、各々その全文が参照によって本明細書に組み入れられる、特許文献1(「138」)および特許文献2(「160」)に開示されている。そこで使用されている常磁性粒子は、生物学的試料中の核酸に可逆的に結合し、生物学的試料中のいくつかの他の成分からの核酸の分離を可能にしている。分離後は、結合した核酸を、溶離/中和バッファーによって常磁性粒子から切り離す。次いで、常磁性粒子を、核酸を含有する溶離/中和バッファーから除去する。核酸を含有するバッファーは、ハイブリッド形成、制限処理、標識化、逆転写、および増幅など、分離した核酸をさらに操作する場合に使用することができる。
【0006】
粗製の生物学的試料からの迅速な分画によるタンパク質の精製は、その全文が参照によって本明細書に組み入れられる、特許文献3(「0056」)に開示されている。生物学的試料中のタンパク質は、生物学的試料中のタンパク質分子を常磁性粒子に可逆的に結合させることによって分離される。試料をさらに処理して、より純粋な形態のタンパク質試料、または選択されたタンパク質を含まない試料を得ることもできる。試料からの核酸およびタンパク質などの生物学的試料または成分の分離および単離を向上させる方法があれば、診断的および生化学的方法への生成物の利用可能性が改善されるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,973,138号明細書
【特許文献2】米国特許第第6,433,160号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0030056号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0157218号明細書
【特許文献5】国際公開第96/18731号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Littleら、Clin Chem、1999年、45巻、777〜784頁
【非特許文献2】Nyczら、Anal Biochem、1998年、259巻、226〜234頁
【非特許文献3】Nadeauら、Anal Biochem、1999年、276巻、177〜187頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、生物学的試料の成分を抽出および精製する方法を対象とする。したがって、本発明のある実施形態の一態様は、生物学的試料からの、核酸、タンパク質、および他の生物学的分子の抽出に有用な方法を提供することである。
【0010】
本発明のある実施形態の別の態様は、簡単、迅速であり、さらなる試料の操作を、あるとしてもほとんど必要としない、生物学的試料の成分を抽出および精製するための方法を提供することである。
【0011】
本発明のある実施形態のさらなる一態様は、生物学的試料の成分の分離および単離の効率を向上させる方法を提供することである。
【0012】
本発明のある実施形態の別の態様は、生物学的試料の成分の抽出を最適化するための改善されたプロセスを提供することである。これらの最適化された抽出プロセスは、さらなる診断的および生化学的方法のために、核酸および精製されたタンパク質などの成分を分離および回収する能力を大幅に増大する。
【0013】
本発明のある実施形態の別の態様は、成分を分離および回収する能力を増大する2段階の溶離および中和プロセスで、生物学的試料の成分を抽出および精製する方法を提供することである。
【0014】
本発明の実施形態は、標的の生物学的成分を溶離および中和するためのバッファーのpH調整を用いて、生物学的試料から成分を抽出および精製する方法を提供する。
【0015】
本発明の実施形態は、生物学的試料から、生物学的分子、オルガネラ、および細胞などの生物学的試料の成分を抽出および精製する方法を行うためのキットも含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例7の結果を示す図である。
【図2】実施例7の結果を示す図である。
【図3】実施例7の結果を示す図である。
【図4】実施例7の結果を示す図である。
【図5】実施例7の結果を示す図である。
【図6】実施例7の結果を示す図である。
【図7】実施例7の結果を示す図である。
【図8】実施例7の結果を示す図である。
【図9】実施例8の結果を示す図である。
【図10】実施例8の結果を示す図である。
【図11】実施例8の結果を示す図である。
【図12】実施例8の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、概ね、生物学的試料の成分を抽出および精製する方法を対象とする。本発明は、生物学的試料から核酸を抽出する方法を記載するものであり、抽出した核酸は、ハイブリッド形成、制限処理、標識化、逆転写、および増幅の方法などの手段によってさらに操作することができる。さらに、本発明は、タンパク質を生物学的試料から分離および精製する方法を記載するものである。本明細書に記載する方法は、核酸、タンパク質、および他の生物学的分子の生物学的試料からの抽出を最適化するための改善されたプロセスを表す。これらの最適化された抽出プロセスは、さらなる診断的および生化学的方法のために、核酸、精製されたタンパク質、および他の生物学的分子の分離および回収を大幅に増大する。
【0018】
本明細書で用いられる「精製する」および「精製」の語は、抽出する/抽出、単離する/単離、および濃縮する/濃縮も含み、絶対的な純度を必要としないが、代わりに、生物学的試料の少なくとも1つの成分の一部または全てを切り離すことだけを必要とする。実際には、実行者が、約80%またはそれを超え、好ましくは80%、90%、95%またはそれを超えた純度に精製することを仮定する。
【0019】
本発明に従って使用される生物学的試料、例えば、臨床試料、法医学試料、または環境試料は、好ましくは核酸を含有する、任意の生物学的物質であってよい。これらの試料は、原核細胞および真核細胞、ウイルス、バクテリオファージ、マイコプラズマ、プロトプラスト、ならびにオルガネラ、もしくはこれらの任意の部分を含む、任意のウイルス物質または細胞物質を含有していてよい。本明細書において用いられる生物学的試料の成分は、生物学的物質および(1つまたは複数の)生物学的分子を含む、試料の任意の部分であってよい。このような生物学的物質は、全てのタイプの哺乳動物細胞および非哺乳動物細胞、植物細胞、藻類(ラン藻類を含む)、真菌、細菌、酵母、原虫、ならびにウイルスを含むことができる。本発明の実施形態を用いて、核酸、タンパク質、炭水化物、オルガネラ、細胞、またはこれらの組成物の部分などの生物学的分子を抽出することができる。生物学的物質の代表例には、血液および血液由来の生成物、例えば、全血、血漿、および血清;臨床検体、例えば、精液、尿、糞便、喀痰、組織、細胞培養物および細胞懸濁物、鼻咽頭の吸引液、ならびに子宮頸管内、膣、眼、喉、および口内のスワブを含めたスワブ;ならびに他の生物学的物質、例えば、指爪および足爪、皮膚、毛髪、および脳脊髄液または他の体液が含まれる。環境試料には、土壌、水、空気、懸濁流出液、粉末、および他の核酸含有物質の供給源が含まれる。
【0020】
本発明の生物学的試料を前処理して、抽出のために核酸の生物学的試料中への放出を確実にすることができる。この目的の生物学的試料の前処理は、その全文が参照によって本明細書に組み入れられる、特許文献4(「7218」)に記載されている。「7218」において開示されているように、前処理のプロセスにおいてタンパク質変性剤を用いることが好ましいことがある。本発明において有用なタンパク質変性剤には、水酸化カリウム(KOH)など、pHの上昇を引き起こす(1つまたは複数の)薬剤が含まれる。
【0021】
本発明の核酸は、「138」および「160」の方法によって開示されるように、常磁性粒子に可逆的に結合させることが好ましい。「138」および「160」において、酸性の環境において、本発明の常磁性粒子は、特許文献5において教示されているアニオン性界面活性剤を必要とせずに、核酸分子に可逆的に結合する。本明細書で用いられる(1つまたは複数の)常磁性粒子の語は、「138」および「160」に記載されている(1つまたは複数の)粒子を意味する。
【0022】
本発明の意味の範囲内で、常磁性粒子に結合した核酸を他の生物学的試料の成分から分離するための方法ステップは、「138」および「160」に記載されている方法ステップであるのが好ましい。
【0023】
好ましい一実施形態において、常磁性粒子に結合した核酸分子を、このような環境のpHを上昇させることによって達成される好適な溶離バッファーで溶離することができる。先の方法において、溶離ステップは、一般的に、核酸を常磁性粒子から切り離すために、ならびにハイブリッド形成、制限処理、標識化、逆転写、および増幅などのさらなる操作のために同時に溶液を中和するように設計されているバッファーの添加を含む。中和と別のステップにおいて核酸を常磁性粒子から切り離すことにより、核酸が切り離されるように溶離バッファーのpHを最適化することが可能となり、それにより意外にも、これまでの1段階溶離/中和タイプのバッファーで達成したものに比べて、非結合核酸を分離および回収する能力の向上が達成される。本明細書に記載するように、酸化鉄などの常磁性粒子は、酸性pHでは正味の正電荷で負に荷電した核酸に結合する。中性から塩基性のpHでは、酸化鉄などの常磁性粒子は正に荷電しておらず、核酸を遊離する。常磁性粒子からの核酸の溶離を助けるために用いることができる作用物質には、それだけには限定されないが、塩基性溶液、例えば、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、または電気陰性の核酸が常磁性粒子から切り離されるのに十分な程度に環境のpHを上昇させる任意の化合物が含まれる。
【0024】
核酸を溶離するための条件は、約8から14のpH値とする。核酸鎖の非特異的な自己アニーリングを防ぎ、常磁性粒子からの核酸の遊離を最適化するためには、分解せずにできるだけ高いpHで溶離することが望ましい。高いpHでの溶離、およびDNA:DNA、DNA:RNA、またはRNA:RNAハイブリッドの変性は、ハイブリッド形成、特にプローブハイブリッド形成、または増幅、特に等温核酸増幅法など、一本鎖標的を必要とする下流の適用にも有益である。一本鎖型の標的核酸を維持すると、相補的なプライマーまたはプローブとのハイブリッド形成の前に、引き続き熱変性を行う必要がなくなる。自己アニーリングは、核酸と常磁性粒子の絡み合いそれ自体を促進し、溶離ステップにおける常磁性粒子からの核酸の分離を防ぐ可能性がある。他の粒子タイプでも、溶離後に中和を行う概念を用いることができよう。
【0025】
粒子に結合した核酸は、望ましい結果が得られるまで溶離バッファーで溶離される。例えば、この核酸は、KOHからなる溶離バッファーを添加し混合し、例えば、望ましい結果が得られるまで、吸引し、所与の体積を分配することによって、常磁性粒子から溶離してもよい。この方法はDNAおよびRNAの分離に成功するが、核酸の分解をもたらし得るpH値および/または曝露時間を避けるよう、注意を払わなければならない。
【0026】
このようにして結合した核酸を除去することによって、結合した核酸の最大の放出を達成するようにpHが最適化される。驚くべきことに、別々に溶離ステップを行うこと、およびより高いpH値の使用を可能にすることによって、合わせた溶離/中和バッファーを用いて達成したものに比べて、下流の核酸増幅アッセイにおけるシグナル生成の再現性の増大がもたらされることが見出された。核酸を回収および/または検出する能力の改善は予想外であった。したがって、溶離ステップを中和ステップと別々にすることで、先の取り組みを凌ぐ著しい利点がもたらされる。
【0027】
好ましい一実施形態において、溶離ステップの後に中和バッファーを加えてもよい。中和バッファーは、非結合核酸を含有する溶離溶液のpH値を、下流の適用に応じて、約6から約9の好ましいpH範囲に、より好ましくは約8から約8.5に、最も好ましくは約8.4に調整する。このやり方において非結合核酸を含有する溶液を中和することによって、pH環境は、ハイブリッド形成、制限処理、標識化、逆転写、および増幅などのさらなる核酸の操作に最適化される。これは、さらなる操作に対するpH値の最適化を達成するのに適した任意の中和バッファーを用いて達成することができる。好ましい中和バッファーはビシンであり、以下の実施例において用いられる。代替の中和バッファーには、それだけには限定されないが、トリス、CHES[2−(シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸]、BES[N−N−Bis(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸]、MOPS(4−モルホリンプロパンスルホン酸)、およびリン酸塩が含まれる。本発明の方法において有用な他の中和バッファーは、当業者であれば、過度の実験を必要としないルーチンのスクリーニング方法を用いて容易に確認することができる。
【0028】
試料を中和した後、非結合核酸を含有するpHを最適化した溶液を、例えば、ハイブリッド形成、制限処理、標識化、逆転写、および増幅などのさらなる操作のために移す間に、常磁性粒子を除去する。本明細書に記載するように、常磁性粒子を分離するのに磁力を用いるのが好ましい。
【0029】
本発明の好ましい一実施形態において、精製のために生物学的試料からタンパク質を抽出することができる。抽出は、好ましくは、本明細書に記載するように、生物学的試料における少なくとも1つのタンパク質が、少なくとも1つの常磁性粒子に可逆的に結合することによって達成される。結合した後は、粒子−タンパク質複合体を生物学的試料の非結合成分から分離することが好ましく、試料に対して適用した磁力を使用することによって達成されることが好ましい。次いで、粒子−タンパク質複合体を含有する試料を洗浄し、次いで洗浄物から分離する。次いで、最適化した塩基性pHの溶離バッファーで試料を溶離することによって常磁性粒子からタンパク質を切り離し、溶離試料を得る。これにより、常磁性粒子からのタンパク質の回収を最適化することができる。タンパク質を常磁性粒子から溶離したら、中和バッファーに常磁性粒子を加え、次いで溶離/中和バッファー混合液から分離する。中和した常磁性粒子の除去は、好ましくは、中和したバッファー試料に磁力を印加することによって達成できる。常磁性粒子を、非結合タンパク質を含有する中和バッファーから分離した後、タンパク質を診断的および生化学的方法においてさらに利用することができる。本発明の重要性は、先の方法において用いた溶離/中和ステップを別々にすることによって、非結合タンパク質の回収が向上することである。
【0030】
本発明のさらに別の態様は、それから生物学的物質を抽出するための、生物学的試料を処理するためのキットを提供することである。キットは、本明細書に記載する少なくとも1つのタンパク質変性剤を含むことができる。キットは、水および本明細書に記載するバッファー溶液を含有することができ、常磁性粒子または他の抽出および/もしくは精製用の固体支持体を含むことができ、これらを他箇所に、より詳しく記載する。キットは、生物学的試料を処理およびアッセイするための以下の物品:スワブ、チューブ、およびピペットなどの採取道具、対照、pH指示薬、ならびに温度計の1つまたは複数を含むこともできる。キットは、本発明による方法を実行するのに適する割合の試薬を一緒に混合する容器を含むことができる。試薬容器が、対象の方法を実行する場合に測定ステップを回避する単位量の試薬を含むことが好ましい。本発明のキットは、本明細書に記載するように、核酸を常磁性粒子から放出するのに最適化された溶離バッファーを含むことができる。キットは、本明細書に記載するように、核酸のハイブリッド形成、制限処理、標識化、逆転写、および増幅などの下流の適用を最適化するための中和バッファーを含むことができる。
【0031】
本発明のキットは核酸を反応混合物から抽出する方法と同様、反応混合物も含むことができる。反応混合物は、必要に応じ、特定の実施形態用の少なくとも1つのタンパク質変性剤を含むことができる。反応混合物は、いくつかの実施形態において、バッファー、および酸化鉄、または核酸を精製するための他の固体支持体など、核酸を精製および検出するために対象の反応混合液とともに用いる様々な試薬を含むことができる。
【実施例】
【0032】
次に、本発明を、特定の実施例によってさらに詳しく記載する。以下の実施例は、説明の目的で提供するものであり、いかなる方法でも本発明を限定しようとするものではない。当業者には明らかであるように、本発明が記載される範囲内で様々な変更および改変が可能であり、企図される。以下の実施例は、最適化した核酸の抽出および最適化した操作のために全血および血漿の試料を前処理するための、本発明の組成物および方法の有効性を説明するものである。全血および血漿はタンパク質含量が高いので、核酸抽出用の試料の中では最も難易度が高く、したがって本発明の方法は他の生物学的試料に対しても有効であると思われる。これらの実施例において、酸性の環境における、常磁性粒子に対する核酸分子の可逆的な結合を、本発明にしたがってインタクトな核酸を抽出するための試料の処理に起因する反応混合物からの核酸の単離に用いる。結合のpHは、好ましくは約1から約6.5であり、より好ましくは約1から約4であり、最も好ましくは約2である。溶離のpHは好ましくは約8から約14である。当業者であれば、溶離のpHは、試料の核酸の分解を引き起こさずに、できるだけ高いpHを用いることによって最適化するのが好ましいことを理解するであろう。常磁性粒子の技術は、非特異的に、または配列と無関係に核酸を捕獲する。中和後、pHは、下流の適用に応じて約6.0〜9.0であるのが好ましい。より好ましくはpHが約8から約8.5であり、最も好ましくは約8.4である。
【実施例1】
【0033】
熱単独よりも良好な、アルカリ処理によるDNAの酸化鉄からの溶離
試料を150mM KOHで処理した場合、熱単独よりも良好にDNAを酸化鉄から溶離するか否かを決定するために、本実施例を行った。
本実施例において用いた物質は以下の通りであった。
300mMビシン2×バッファー
試料バッファー
クラミジア(Chlamydia)プライマーウェル
クラミジア増幅ウェル
増幅対照(AC)プライマーウェル
AC増幅ウェル
KOH 150mM
血漿試料
酸化鉄
血漿前処理チューブ(PPT)
血漿前処理チューブ(PPT)中、全血を1100×gで10分間回転することによって、全血から血漿を調製した。体積6mlのプール血漿を調製した。血漿プール1ミリリットルあたりトラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)(CT)基本小体(EB)10000個を加え、これを等体積で2ml遠心管6本中に分配した。別の10mlの細菌懸濁液を、CT EB10000個/mlを有する脱イオン水中に調製し、10×1ml中に分配した。ビシン含有2×試料バッファー300mM中、CT EB10000個/mlを含む、さらなる懸濁液を調製した。
【0034】
酸化鉄40ミリグラムを血漿のチューブ4本中に分配し、酢酸80μlをチューブ2本中に分配し、酢酸300μlを、血漿を含むが酸化鉄を含まないチューブ2本に加えた。全6本のチューブを、105℃のライソライザー(lysolyzer)中に30分間配置した。ライソライゼーション(lysolyzation)後、酸化鉄を含まないチューブ2本に酸化鉄40ミリグラムを加え、酸を含まないチューブ2本に酢酸80μlを加えた。混合し、酸化鉄を回収し、検体のマトリックスを除去した後、粒子を、チューブ1本あたり1mlの脱イオン水で2回洗浄した。各々の条件のチューブ1本を150mM KOH500μlで15分間処理した後、ビシン2×試料バッファー300mMを加えた。対照として、各々の条件からのチューブ1本に、75mM KOH/150mMビシン含有2×試料バッファーを加えた。
【0035】
脱イオン水中CT EB10000個/mlを有する10本のチューブの2本中に、酸化鉄40ミリグラムをスパイクした。酸化鉄を含まないチューブ2本に酢酸80μlを加え、酸化鉄を含むチューブ2本に酢酸300μlを加えた。これらのチューブおよび先の酸処理を行わなかったチューブ4本を、30分間、105℃でライソライズ(lysolyze)した。溶解前に酸化鉄を含んでいたチューブ各々の中に80μlを分配した。残りのチューブに酸化鉄40mgを加え、全てのチューブを、30分間、エンド−オーバー−エンドロッカー(end−over−end rocker)上に配置した。酸化鉄を回収した後、粒子を1ml/チューブの脱イオン水で2回洗浄した。各条件からのチューブ1本を、150mM KOH500μlで15分間処理した後、300mMビシン2×試料バッファーを添加した。対照として、各タイプのチューブ1本に、75mM KOH/150mlビシン2×試料バッファーを加えた。
【0036】
全チューブからの溶離物を5分間沸騰させ、溶解物を、BD ProbeTec(商標)トラコーマクラミジアAmplified DNA Assay(非特許文献1)からのマイクロウェルを用いて試験した。
【0037】
【表1】
【0038】
MOTA(Metric Other Than Acceleration)値は、経時の相対的蛍光の曲線下面積を表す。CTアッセイでのポジティブ反応に対して確立されたカットオフは、2000MOTAである。ほとんどの場合において、2段階の溶離プロセスに曝露した可溶化液から、より高いMOTAスコアが得られたことが明らかである。
【実施例2】
【0039】
2段階溶離とともに用いられるより少ない溶離体積
本実施例は、2段階溶離プロセスを用いたRNAの回収を実証するものである。
本実施例において用いた物質は以下の通りであった。
酸化鉄
血漿前処理チューブ(PPT)
30mM KP04
500mM KP04
トリ骨髄芽球症ウイルス逆転写酵素(AMV−RT)
BsoBI制限酵素
GP32タンパク質
ウシ血清アルブミン(BSA)
Bstポリメラーゼ
55%グリセロール
200mMマグネシウム
ジメチルスルホキシド(DMSO)
蛍光検出プローブ
鎖置換増幅(SDA)プライマー
バンパープライマー
デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)
プロテイナーゼK
ホルムアミド
結合性酸
KOH
ビシン
HIV gag遺伝子転写物
血漿を、65Cで20分間、および70Cで10分間、44%ホルムアミドおよび5UプロテイナーゼKで前処理した。酸化鉄および結合性酸180μlを血漿に加えた。次いで、混合物を、HIVgag遺伝子転写物10000コピー/mlでスパイクした。酸化鉄に結合させ、洗浄した後、RNAを、65Cで20分間、80mMまたは100mMいずれかのKOH溶離バッファー120μlで溶離した。残りの溶離物を、192mMまたは230mMいずれかのビシン60μlで中和し、2分間混合した。RNAをAMV−RTで逆転写し、gag特異的プライマーを用いてSDAによって増幅した(非特許文献2)。蛍光検出プローブを用いてリアルタイムで検出を行った(非特許文献3)。
【0040】
【表2】
【0041】
低い方の80mM KOHの濃度を溶離に用いた試料が、より高いMOTA値を生成し、これは標的RNAの増幅/検出がより強力であったことを示していた。高い方の濃度のKOH(100mM)に曝露すると、RNA転写物の加水分解および分解をもたらす可能性がある。したがって、この実験は、複合の生物学的マトリックスからRNAを回収するための2段階溶離プロセスでの酸化鉄抽出の能力を実証するものである。意外なことに、溶離ステップの間、高いpHにRNAを曝露しても、標的の核酸の分解はもたらされなかった。
【実施例3】
【0042】
2ステップ溶離の間の加熱の効果
この実施例は、様々なKOH濃度で溶離する間に加熱すると、RNAの安定性および/または回収および/増幅/検出に影響を及ぼすか否かを決定するために行った。
本実施例において用いた物質は以下の通りであった。
酸化鉄
血漿調製チューブ(PPT)
30mM KP04
500mM KP04
AMV RT
BsoBI制限酵素
GP32タンパク質
ウシ血清アルブミン(BSA)
Bstポリメラーゼ
55%グリセロール
200mMマグネシウム
ジメチルスルホキシド(DMSO)
蛍光検出プローブ
鎖置換増幅(SDA)プライマー
バンパープライマー
デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)
プロテイナーゼK
ホルムアミド
結合性酸
KOH
ビシン
HIV gag遺伝子転写物
血漿を、65Cで20分間、および70Cで10分間、44%ホルムアミドおよび5UプロテイナーゼKで前処理した。酸化鉄および結合性酸180μlを血漿に加えた。次いで、混合物を、HIVgag遺伝子転写物5000コピー/mlでスパイクした。酸化鉄に結合させ、洗浄した後、RNAを、加熱なしで2分間、または65Cで20分間のいずれか、60mM、70mM、または80mMいずれかのKOH溶離バッファー120μlで溶離した。試料を、230mMのビシン60μlと2分間混合することによってすぐに中和した。RNAをAMV−RTで逆転写し、gag特異的プライマーを用いてSDAによって増幅した(非特許文献2)。蛍光検出プローブを用いてリアルタイムで検出を行った(非特許文献3)。
【0043】
【表3】
【0044】
全ての条件下でポジティブのMOTA値(>2000)が得られた。したがって、これらのデータは、KOHに曝露し、その後ビシンで中和することを伴う2段階溶離方法を用いて、加熱を用いずに、酸化鉄からRNAを溶離することが可能であり得ることを示している。加熱なしの手順には、さほど高度ではない機器を必要とするという利点がある。
【実施例4】
【0045】
溶離条件の最適化
この実験は溶離条件を最適化するために行った。
本実施例において用いた物質は以下の通りであった。
酸化鉄
血漿調製チューブ(PPT)
30mM KP04
500mM KP04
AMV RT
BsoBI制限酵素
GP32タンパク質
ウシ血清アルブミン(BSA)
Bstポリメラーゼ
55%グリセロール
200mMマグネシウム
ジメチルスルホキシド(DMSO)
蛍光検出プローブ
鎖置換増幅(SDA)プライマー
バンパープライマー
デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)
プロテイナーゼK
ホルムアミド
結合性酸
KOH
ビシン
HIV gag遺伝子転写物
血漿を、65Cで20分間、および70Cで10分間、44%ホルムアミドおよび5UプロテイナーゼKで前処理した。酸化鉄および結合性酸180μlを血漿に加えた。次いで、混合物を、HIVgag遺伝子転写物10000コピー/mlでスパイクした。酸化鉄に結合させ、洗浄した後、RNAを、65Cで20分間、46mM、55mM、63mM、または80mMいずれかのKOH溶離バッファー120μlで溶離した。次いで、試料を、109mMのビシン60μlで中和し、2分間混合した。RNAをAMV−RTで逆転写し、gag特異的プライマーを用いてSDAによって増幅した(非特許文献2)。検出は、蛍光検出プローブを用いてリアルタイムで生じた(非特許文献3)。
【0046】
【表4】
【0047】
RNAは、2段階溶離手順を用いて血漿から上首尾に回収した。しかし、これらのデータは、増幅/検出に用いたバッファー条件に無関係に、加熱の存在下でRNAを溶離した場合、より高いMOTA値が得られたことを示している。
【実施例5】
【0048】
2段階溶離でのより少ない溶離体積
本実施例は、2段階溶離プロセスでのより少ない溶離体積を評価した。
本実施例において用いた物質は以下の通りであった。
酸化鉄
血漿調製チューブ(PPT)
30mM KP04
500mM KP04
AMV RT
BsoBI制限酵素
GP32タンパク質
ウシ血清アルブミン(BSA)
Bstポリメラーゼ
55%グリセロール
200mMマグネシウム
ジメチルスルホキシド(DMSO)
蛍光検出プローブ
鎖置換増幅(SDA)プライマー
バンパープライマー
デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)
プロテイナーゼK
ホルムアミド
結合性酸
KOH
ビシン
HIV gag遺伝子転写物
血漿を、65Cで20分間、および70Cで10分間、44%ホルムアミドおよび5UプロテイナーゼKで前処理した。酸化鉄および結合性酸180μlを血漿に加えた。次いで、混合物を、HIVgag遺伝子転写物10000コピー/mlでスパイクした。酸化鉄に結合させ、洗浄した後、RNAを、65Cで20分間、50mM、65mM、および80mMいずれかのKOH 120μlで溶離した。次いで、試料を、154mM、192mMまたは230mMいずれかのビシン60μlで中和し、2分間混合した。RNAをAMV−RTで逆転写し、gag特異的プライマーを用いてSDAによって増幅した(非特許文献2)。蛍光検出プローブを用いてリアルタイムで検出を行った(非特許文献3)。
【0049】
【表5】
【0050】
MOTAスコアが高いことによって確認されるように、試験した各条件下で、RNA標的の強い増幅が達成された。これらのデータは、複合の生物学的マトリックスから増幅可能なRNAを回収するための、酸化鉄抽出およびその後の2段階溶離プロセスの有用性を実証している。様々な濃度のKOHに65Cで20分間曝露しても、RNAの加水分解は明らかではなかった。
【実施例6】
【0051】
2段階溶離および中和
本実施例は、1段階方法およびMOTAに対する効果に比べた溶離の分離および中和を詳述するものである。
本実施例において用いた物質は以下の通りであった。
酸化鉄
血漿調製チューブ(PPT)
30mM KP04
500mM KP04
AMV RT
BsoBI制限酵素
GP32タンパク質
ウシ血清アルブミン(BSA)
Bstポリメラーゼ
55%グリセロール
200mMマグネシウム
ジメチルスルホキシド(DMSO)
蛍光検出プローブ
鎖置換増幅(SDA)プライマー
バンパープライマー
デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)
プロテイナーゼK
ホルムアミド
結合性酸
KOH
ビシン
HIV gag遺伝子転写物
血漿を、65Cで20分間、および70Cで10分間、44%ホルムアミドおよび5UプロテイナーゼKで前処理した。酸化鉄および結合性酸180μlを血漿に加えた。次いで、混合物を、HIVgag遺伝子転写物10000コピー/mlでスパイクした。酸化鉄に結合させ、洗浄した後、RNAを、65Cで20分間、50mM、65mM、または80mMいずれかのKOH溶離バッファー400μlで溶離した。溶離物を、100μlおよび300μlの体積に分割し、この各々を異なるビシン含有中和バッファーで中和した(表6)。RNAをAMV−RTで逆転写し、gag特異的プライマーを用いてSDAによって増幅した(非特許文献2)。蛍光検出プローブを用いてリアルタイムで検出を行った(非特許文献3)。
【0052】
【表6】
【0053】
【表7】
【0054】
溶離の間KOH濃度を低減するとMOTAスコアは改善し、RNA標的は強アルカリに長時間曝露することによって部分的に分解され得ることが示唆された。より低濃度のKOHで溶離するとMOTAスコアが改善され、より強力な増幅/検出であることを指摘していた。
【実施例7】
【0055】
標的DNAでの溶離効率
本実施例の目的は、抽出モードにおいてBD Viper(商標)Systemを用いて酸化鉄からのDNAの溶離効率を決定することであった。この試験は、SDA適合性バッファー(pH約8.4)を用いて行った場合、酸化鉄抽出プロセスにおける最終溶離段階の後、増幅可能な標的のDNAが酸化鉄に依然として結合しているか否かを評価するように設計された。先の実験において、酸化鉄をこのpHの溶離バッファーに再曝露した場合、SDA反応ポジティブの蛍光シグナルにおいて試験する第2の溶離物が生じるか否かを決定した。これに対する可能な理由の一つは、オリジナルの抽出の後、微量の溶離バッファーが存在するということであった。この可能性を軽減するために、この実験における抽出チューブには全て、さらなるSDA適合バッファーで再溶離する前に最初の抽出の事象からの残渣の溶離バッファーが除去された。これは、結合しているあらゆるDNAのさらなる溶離を防ぐために脱イオン水(pH4〜5)で酸化鉄を洗浄することによって遂行した。この実験において臨床的なマトリックスは使用しなかった。
本実施例において用いた物質は以下の通りであった。
リン酸カリウム−DMSO−グリセロール(KPDG)試料希釈液(SDA適合バッファー)
抽出チューブ
溶解バッファー
バインディングバッファー
洗浄バッファー
溶離バッファー
BD ProbeTec(商標)CT/GC QX Amplified DNA Assay用プライミングおよび増幅マイクロウェル
トラコーマクラミジア(CT)/淋菌(Neisseria gonnorhea)(GC)生物体(1×105/mLストック)
手順は以下の通りであった。
【0056】
【表8】
【0057】
図1〜8に示した結果は、pH約8.4のKPDGバッファーでの最初の溶離ステップの後も、増幅可能なCT/GC標的DNAが酸化鉄に依然として結合していたことを指摘している。脱イオン水で酸化鉄を洗浄することで、酸化鉄から残りの標的のDNAを溶離せずに、最初の溶離物の痕跡が除去された。さらなるKPDG溶離バッファーで酸化鉄をさらに処理することにより、SDAによって検出可能である標的のDNAをより多く回収することができた。この実験を追跡するために、残りの標的のDNAを酸化鉄から回収するのに、より高いpHの溶離バッファーを評価した。当業者であれば、過度の実験を行わずに、様々なこのようなバッファー条件を評価する能力がある。
【実施例8】
【0058】
2段階溶離MSA
この実験の目的は、運転とViper機器との間の結果の再現性を決定するために、抽出モードにおいてBD Viper(商標)Systemを用いて2段階溶離プロセスに対するMeasurement System Analysisを完成することである。
【0059】
2段階溶離は、抽出チューブに2×KOH溶液(142mM)を加えた後、2×中和溶液を加えてSDAアッセイバッファーを形成することを意味する(2×中和溶液は、0.1%Tween20および0.03%Proclin300を有する251mMビシン、21.8%DMSO、19%グリセロールである)。
この実験において用いた物質は以下の通りであった。
CT/GC試料希釈液5.9L
抽出チューブ 15トレイ
2×中和バッファー250ml
2×KOH(高pH溶離バッファー)250ml
洗浄バッファー(水およびTween)
結合性酸
KOH溶解バッファー
BD ProbeTec(商標)CT/GC QX Amplified DNA Assay用プライミングおよび増幅マイクロウェル
トラコーマクラミジア(CT)105スパイカー2アリコート
淋菌(GC)105スパイカー4アリコート
CT/GCポジティブおよびネガティブの試料を、試料希釈液において調製した。低い標的のプールを15EB/mlのCTおよび50細胞/mlのGCでスパイクした。高い標的のプールを30EB/mlのCTおよび100細胞/mlのGCでスパイクした。スパイクの計算は以下の通りであった。
【0060】
低:CT15EB/ml:105/ml(xml)=15EB/mI(2450ml)==>367.5μlCTスパイク;
GC50細胞/ml:105/ml(xml)=50細胞/ml(2450ml)==>1225μlGCスパイク。
【0061】
高:CT30EB/ml:105/ml(xml)=30EB/ml(2450ml)==>735μlCTスパイク;
GC100細胞/ml:105/ml(xml)=100細胞/ml(2450ml)==>2450μlGCスパイク。
【0062】
CT/GC陰性の試料はスパイクされないままであった。試料を、各チューブから3つの抽出事象に対して3.5ml/チューブで、5個の別々のViperラック中に分注した。各機器での3回の運転全てに対して同じ試料を用いた。試料を、1段階または2段階どちらかの溶離プロトコールを用いて抽出した。簡潔に述べると、KOHを試料に加えて細胞を溶解し、それらの核酸を溶液中に遊離した。次いで、結合性酸を加えてpHを低下させ、酸化鉄の表面上の電荷をおよそ正にし、これは負に荷電しているDNAに結合した。酸化鉄および結合しているDNAを洗浄し、DNAを、KOHへの曝露およびその後のビシンバッファーでの中和を伴う2段階プロセス、またはpH約8.4のビシンおよびKOHの溶液への曝露を伴う1段階プロセスのいずれかにおいて溶離した。次いで、溶離したDNAを、BD ProbeTec(商標)CT/GC QX Amplified DNA Assayを用いて検出した。
【0063】
結果を図9〜12に示すが、これらは抽出した各検体で得られた最大相対的蛍光単位(MaxRFU)を表すものである。MaxRFUが高いほど増幅/検出がより効率的であることを示している。MaxRFUスコアの群が緊密であるほど、システムはより強力である。図9および11において、2段階の低CT試料タイプ(15EB/ml)では、1段階溶離法のものよりも1.46高いCpKをもたらした。図10および12において、2段階の低GC試料タイプ(50細胞/ml)では、1段階溶離法のものよりも0.94高いCpKをもたらした。CpKは能力の指標であり、平均値に関する変動だけではなく平均それ自体のシフトも含む、長期間または大型の試料のデータの変動の尺度である。CpKは、性能の再現性を測定するための定常状態の生成の間に用いられる、共通の測定基準である。
【0064】
2段階溶離プロセスは、CTおよびGCの両方に対して、1段階溶離プログラムよりも良好に行われ、有意に高いCpK値をもたらした。
【0065】
前述の記載は、本発明の好ましい実施形態を目的とするものであるが、当業者であれば他の変形および改変は明らかであり、本発明の精神または範囲から逸脱せずに行うことができることが注目される。さらに、本発明の一実施形態に関連して記載される特徴は、上記に明確に記載されていなくても、他の実施形態に関連して用いることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)生物学的試料の少なくとも1つの成分を少なくとも1つの常磁性粒子に可逆的に結合させるステップと、
(ii)少なくとも1つの常磁性粒子結合成分を、生物学的試料の非結合成分から分離するステップと、
(iii)少なくとも1つの常磁性粒子結合成分を洗浄するステップと、
(iv)少なくとも1つの常磁性粒子結合成分を洗浄物から分離するステップと、
(v)少なくとも1つの常磁性粒子結合成分をpH溶離バッファーで溶離することによって、少なくとも1つの常磁性粒子から少なくとも1つの成分を切り離して、溶離試料を得るステップと、
(vi)溶離した試料を中和して、最適化されたバッファーを得るステップと
を含み、切り離すステップは中和するステップと別であることを特徴とする、生物学的試料の成分を抽出するための方法。
【請求項2】
生物学的試料は、臨床試料、法医学試料、または環境試料であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
生物学的試料は、土壌、水、空気、懸濁流出液、または粉末を含む環境試料であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
生物学的試料の成分は、ウイルス物質または細胞物質を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
細胞物質は、原核細胞、真核細胞、バクテリオファージ、マイコプラズマ、プロトプラスト、またはオルガネラを含むことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
細胞物質は、哺乳動物細胞、非哺乳動物細胞、植物細胞、藻類、真菌、細菌、酵母、または原虫を含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
生物学的試料の成分は、核酸、タンパク質、炭水化物、オルガネラ、または細胞であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
生物学的試料の成分は核酸であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
生物学的試料の成分はタンパク質であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
生物学的試料は、細胞を溶解するために前処理されていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記溶離は、pH溶離バッファーでpHを上昇させることを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
溶離バッファーのpHは約8から14であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
pH溶離バッファーは塩基性溶液であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
塩基性溶液は、少なくとも1つの常磁性粒子に結合した、生物学的試料の少なくとも1つの成分が、少なくとも1つの常磁性粒子から切り離されるのに十分な程度に環境のpHを上昇させる任意の化合物を含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
塩基性溶液は、水酸化カリウム(KOH)または水酸化ナトリウム(NaOH)であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
塩基性溶液は水酸化カリウム(KOH)であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記中和は中和バッファーの添加を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
中和バッファーは、ビシン、トリス、CHES[2−(シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸]、BES[N−N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸]、MOPS(4−モルホリンプロパンスルホン酸)、またはリン酸塩であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
中和バッファーはビシンであることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記中和バッファーはpHを低下させることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
pHは約6から9であることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
pHは約8から8.5であることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
pHは約8.4であることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項1】
(i)生物学的試料の少なくとも1つの成分を少なくとも1つの常磁性粒子に可逆的に結合させるステップと、
(ii)少なくとも1つの常磁性粒子結合成分を、生物学的試料の非結合成分から分離するステップと、
(iii)少なくとも1つの常磁性粒子結合成分を洗浄するステップと、
(iv)少なくとも1つの常磁性粒子結合成分を洗浄物から分離するステップと、
(v)少なくとも1つの常磁性粒子結合成分をpH溶離バッファーで溶離することによって、少なくとも1つの常磁性粒子から少なくとも1つの成分を切り離して、溶離試料を得るステップと、
(vi)溶離した試料を中和して、最適化されたバッファーを得るステップと
を含み、切り離すステップは中和するステップと別であることを特徴とする、生物学的試料の成分を抽出するための方法。
【請求項2】
生物学的試料は、臨床試料、法医学試料、または環境試料であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
生物学的試料は、土壌、水、空気、懸濁流出液、または粉末を含む環境試料であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
生物学的試料の成分は、ウイルス物質または細胞物質を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
細胞物質は、原核細胞、真核細胞、バクテリオファージ、マイコプラズマ、プロトプラスト、またはオルガネラを含むことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
細胞物質は、哺乳動物細胞、非哺乳動物細胞、植物細胞、藻類、真菌、細菌、酵母、または原虫を含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
生物学的試料の成分は、核酸、タンパク質、炭水化物、オルガネラ、または細胞であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
生物学的試料の成分は核酸であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
生物学的試料の成分はタンパク質であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
生物学的試料は、細胞を溶解するために前処理されていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記溶離は、pH溶離バッファーでpHを上昇させることを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
溶離バッファーのpHは約8から14であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
pH溶離バッファーは塩基性溶液であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
塩基性溶液は、少なくとも1つの常磁性粒子に結合した、生物学的試料の少なくとも1つの成分が、少なくとも1つの常磁性粒子から切り離されるのに十分な程度に環境のpHを上昇させる任意の化合物を含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
塩基性溶液は、水酸化カリウム(KOH)または水酸化ナトリウム(NaOH)であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
塩基性溶液は水酸化カリウム(KOH)であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記中和は中和バッファーの添加を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
中和バッファーは、ビシン、トリス、CHES[2−(シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸]、BES[N−N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸]、MOPS(4−モルホリンプロパンスルホン酸)、またはリン酸塩であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
中和バッファーはビシンであることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記中和バッファーはpHを低下させることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
pHは約6から9であることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
pHは約8から8.5であることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
pHは約8.4であることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2010−532483(P2010−532483A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515225(P2010−515225)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/068807
【国際公開番号】WO2009/006417
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/068807
【国際公開番号】WO2009/006417
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]