説明

生物学的試料中の複数の標的の検出

生物学的試料中の複数の標的を検出するための方法が提供される。本方法は、生物学的試料を複数の標的結合性プローブに接触させて複数の標的結合プローブを形成する段階、標的結合プローブの1以上を生物学的試料に共有結合させる段階、及び標的結合プローブからのシグナルを順次に観測する段階を含んでいる。複数の標的を検出するための関連キット及び装置も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、生物学的試料中の複数の標的を検出するための方法、キット及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的試料を分析してその特性を確認すること及び様々な生物学的標的に関する情報を得ることは、生物学及び医学の両方において要求されている。とりわけ、生物学的標的の存在、不存在、濃度及び/又は空間分布を検出するために生物学的試料を分析するには、各種の方法が使用できる。例えば、組織学的切片又は細胞学的標本におけるタンパク質の検出は、組織化学、免疫組織化学(IHC)又は免疫蛍光法を用いて実施できる。
【0003】
しかし、生物学的試料中の標的を検出するための既存技法の多くには、感度、精度及び/又は多重化能力の点で制約がある。特に、単一の生物学的試料中の複数の標的の検出は、多くの場合、一度にほんのわずかな数の標的(約4〜5の標的)を検出することに限定される。例えば、免疫蛍光アッセイに際して単一の組織試料中で正確に検出できる標的の数は、重なり合ったシグナルを分解するための蛍光ベース検出システムの感度によって制限される。したがって、すべての関連標的に関する情報を得るためには、供給源からの追加の生物学的試料がしばしば必要となることがある。
【0004】
複数の生物学的試料の分析は、生物学的試料中の複数の異なる標的の相対特性(例えば、存在、不存在、濃度及び/又は空間分布)を正確に決定する能力を制限する。その上、場合によっては、分析のために限られた量の試料しか利用できないことがある。したがって、個々の生物学的試料を分析して生物学的試料中の複数の異なる標的を検出できる方法、薬剤及び装置が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
国際公開第2008/064067号パンフレット
【発明の概要】
【0006】
生物学的試料中の複数の標的を検出するための方法は、一般に、生物学的試料を複数の標的結合性プローブに接触させて複数の標的結合プローブを形成する段階、標的結合プローブの1以上を生物学的試料に共有結合させる段階、及び複数の標的結合プローブの第1組からの第1組のシグナルを観測する段階を含んでいる。本方法はさらに、観測されたシグナルを修飾する段階、続いて複数の標的結合プローブの第2組から第2組のシグナルを発生させる段階、及び第2組のシグナルを観測する段階を含んでいる。
【0007】
生物学的試料中の複数の標的を検出するための方法の追加の例は、一般に、生物学的試料を複数の標的結合性プローブに接触させて複数の標的結合プローブを形成する段階、標的結合プローブの1以上を生物学的試料に共有結合させる段階、複数の標的結合プローブの第1組から第1組のシグナルを発生させる段階、及び第1組のシグナルを観測する段階を含んでいる。本方法はさらに、観測されたシグナルを修飾する段階、複数の標的結合プローブの第2組から第2組のシグナルを発生させる段階、及び第2組のシグナルを観測する段階を含んでいる。
【0008】
生物学的試料中の複数の標的を検出するための方法の他の例は、生物学的試料を複数の標的結合性プローブに接触させて複数の標的結合プローブを形成する段階、標的結合プローブの1以上を生物学的試料に共有結合させる段階、標的結合プローブを、複数の標的結合プローブの第1組と結合しかつ第1組のシグナルを発生させることができる第1組のシグナル発生プローブに接触させる段階、及び第1組のシグナルを観測することで複数の標的の第1組を検出する段階を含んでいる。本方法はさらに、観測された第1組のシグナルを修飾する段階を含んでいる。複数の標的結合プローブの以後の組と結合しかつ以後の組のシグナルを発生させることができる以後の組のシグナル発生プローブを用いて接触段階、検出段階及び修飾段階を複数回繰り返すことで複数の標的の以後の組を検出することができる。
【0009】
生物学的試料中の複数の多重標的を検出するためのキットは、一般に、複数の標的結合性プローブであって、各々の標的結合性プローブがシグナルを発生することができる標的結合性プローブ、及び1以上の標的結合性プローブから発生されるシグナルを修飾することができる1種以上の化学薬剤を含んでいる。複数の標的結合性プローブの1以上は、さらに標的又は標的の近傍に位置する分子に対して架橋することができる。
【0010】
生物学的試料中の複数の標的を検出するための装置は、一般に、試料取扱いシステム、試薬分配システム、プローブ架橋システム及びシグナル検出システムを含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の上記その他の特徴、態様及び利点は、添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読んだ場合に一層よく理解されよう。添付の図面中では、図面全体を通じて類似の部分は同一の符号で示されている。
【図1】図1は、本発明の一実施形態を示す流れ図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態を示す流れ図である。
【図3】図3は、ストレプトアビジン被覆プレートに対するシアニン色素標識DNAオリゴマー(Cy3−T20−SFAD又はCy3−T20−SDAD)の架橋を示している。
【図4】図4は、細胞に対するシアニン色素標識DNAオリゴマー(Cy3−T20−NH2又はCy3−T20−SANPAH)の相互作用を示している。
【図5】図5は、プローブの同時添加及びそれに続く標的結合プローブの順次検出による組織試料中のポリ(A)mRNA及びU6 snRNAプローブの多重化検出を示す画像である。
【図6】図6は、プローブの同時添加及びそれに続く架橋と標的結合プローブの順次検出による組織試料中のb−アクチン及びU6プローブの多重化検出を示している。
【図7】図7は、本発明の一実施形態に係る例示的な装置を模式的に示すブロック図である。
【図8】図8は、本発明の一実施形態に係る例示的な組織病理学システムを模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
特許請求される発明の主題を一層明確で簡潔に記載しかつ指摘するため、以下の説明及び添付の特許請求の範囲中で使用される特定の用語に関して以下に定義を示す。明細書全体を通じ、特定の用語の例示は非限定的な例と見なすべきである。
【0013】
“a”、“an”及び“the”を伴う単数形で記載したものであっても、前後関係から明らかでない限り、複数の場合も含めて意味する。本明細書及び特許請求の範囲の全体を通じて使用される概略表現用語は、それが関係する基本機能の変化を生じることなしに変動することが許容される任意の数量表現を修飾するために適用できる。したがって、「約」のような用語で修飾された値は、明記された厳密な値に限定すべきでない。場合によっては、概略表現用語は値を測定するための計器の精度に対応することがある。同様に、「含まない(free)」という語句はある用語と組み合わせて使用することができるが、これは修飾された用語を含まないと見なされる限りは実質的でない数又は微小な量を含み得る。必要な場合には範囲が示されているが、これらの範囲はその中に入るすべての部分範囲を包含する。
【0014】
本明細書中で使用する「生物学的試料」という用語は、生物学的由来の試料又はかかる生物学的由来の試料から導かれる試料をいう。生物学的試料は、インビボ試料又はインビトロ試料であり得る。生物学的試料は、原核生物由来のものでも真核生物由来のものでもよい。例えば、生物学的試料は、細菌、真菌、原生動物、昆虫、魚類、鳥類、爬虫類、哺乳類(例えば、マウス、ラット、ウシ、イヌ、ロバ、モルモット又はウサギ)或いは霊長類(例えば、チンパンジー又はヒト)のような生物学的被験体に由来し得る。
【0015】
生物学的試料は、各種の方法によって生物学的被験体から得るか又は導くことができる。例えば、生物学的試料は、哺乳動物(例えば、ヒト)から分離された組織又は細胞、生物学的試料の切片(例えば、器官又は組織の断片部分)、或いは生物学的試料からの抽出物(例えば、血液、血漿、血清又は尿のような体液から抽出される抗原)を含み得る。生物学的試料の非限定的な例には、細胞、細胞破片、組織、組織切片、器官又は体液がある。生物学的試料は、例えばブロット又はアッセイにおいて、固体担体上に固定化することができる。例えば、生物学的試料は膜、紙、ガラススライド、マイクロタイタープレート又はELISAプレート上に固定化することができる。
【0016】
「核酸」という用語は、任意のデオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)(例えば、染色体核酸、ミトコンドリア核酸、ウイルス核酸又は細菌核酸)或いはこれらの類似体を含むものとする。「核酸」という用語は、二本鎖核酸分子のいずれかの鎖又は両方の鎖を包含する。核酸は天然核酸でも合成核酸でもよい。
【0017】
本明細書中で使用する「標的」という用語は、一般に、生物学的試料中に存在する場合に検出又は分析できる生物学的試料の成分(例えば、タンパク質又は核酸のような生物学的分子、エピトープのような生物学的分子の一部、或いは生物学的構造)をいう。標的は、それに対する天然の標的結合成分(例えば、標的抗原に対する抗体)が存在するか、或いはそれに対する標的結合成分(例えば、標的受容体に対するリガンドのような合成小分子結合剤)を製造できる任意の物質であり得る。好適な標的の非限定的な例には、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、核酸(例えば、DNA又はRNA)、多糖(例えば、レクチン又は糖類)、脂質、リガンド、受容体、抗体、アフィボディ、抗原、アプタマー、ハプテン、ホルモン、酵素、酵素基質及びこれらの組合せがある。
【0018】
本明細書中で使用する「複数の標的」又は「複数の異なる標的」という用語は、2以上の異なる標的をいう。例えば、生物学的試料中の複数の標的は生物学的試料中の複数の抗原をいうことがあり、この場合の複数の抗原は2以上の抗原(例えば、抗原A及び抗原Bの混合物)を含む。一般に、複数の標的は2組以上の異なる標的を含み、各組の異なる標的は1以上の標的を含んでいる。2組の異なる標的は、同じタイプのバイオマーカー(例えば、2組の異なる抗原であって、第1組は抗原Aからなり、第2組は抗原Bからなるもの)を含んでいてもよいし、或いは異なるタイプのバイオマーカー(例えば、第1組はRNAからなり、第2組はDNAからなるもの)を含んでいてもよい。各組の異なる標的は、しばしば2以上の標的を含み得る。
【0019】
本明細書中で使用する「標的結合性プローブ」という用語は、標的と特異的に結合し得る成分をいう。標的結合性プローブは、標的が生物学的試料中に存在する場合、標的を検出又は分析するために使用できる。標的結合性プローブは、1以上の標的結合部分を含む。標的結合部分は、標的に対する天然の特異的結合剤、天然の特異的結合剤から導かれる部分、又は標的と特異的に結合する合成部分であり得る。例えば、標的抗原を検出するための標的結合性プローブは、標的抗原に対して特異的な抗体から導くことができる。標的結合性プローブはさらに、シグナル発生部分、マスクされたシグナル発生部分、架橋部分、又は標的結合部分と(共有的又は非共有的に)結合した独立に検出可能な部分を含み得る。多くの場合、標的結合性プローブは、標的の離散化学部分又は標的の構造成分の分子認識(例えば、タンパク質の特異的三次元構造の分子認識)によって標的と結合する。標的結合性プローブの好適な例には、特に限定されないが、DNA、RNA、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、修飾オリゴヌクレオチド(例えば、修飾塩基、修飾糖部分又は修飾リン酸部分を有するオリゴヌクレオチド)、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、アフィボディ、ハプテン、リガンド及びアプタマーがある。
【0020】
本明細書中で使用する「特異的結合」という用語は、他の非パートナー分子に対する認識が実質的に低いのに比べ、2種の分子(パートナー分子)の一方が他方を特異的に認識することをいう。一般に、結合事象の特異性は、パートナー分子中の特異的分子認識部位に由来する。かかる分子は、2種のパートナー分子間の特異的認識を引き起こす認識部位をその表面上又はそのキャビティ内に有し得る。分子認識は、静電相互作用、水素結合、疎水的相互作用又はこれらの相互作用の組合せによって生じ得る。特異的結合相互作用の例には、特に限定されないが、抗体−抗原相互作用、酵素−基質相互作用、相補的核酸配列ハイブリダイゼーション、リガンド−受容体相互作用などがある。標的結合性プローブは、それぞれの標的に対して特異的に結合するように選択される。
【0021】
本明細書中で使用する「シグナルジェネレーター」又は「シグナル発生部分」という用語は、検出可能なシグナルを提供又は発生する分子をいう。シグナルジェネレーターは、(例えば、発蛍光団からの蛍光シグナルのように)検出可能なシグナルを発生させるために予め何らかの化学的又は構造的修飾を必要とすることなしに検出可能なシグナルを本質的に提供し得るか、或いは(例えば、酵素−基質反応によって酵素から発生されるシグナルのように)他の適当な成分との相互作用によって検出可能なシグナルを発生し得る。検出可能なシグナルとしては、光学信号、電気信号、音響信号及び放射性信号が挙げられる。検出可能なシグナルは、分光測定、分光分析又は目視検査のような1以上の検出技法を用いて観測できる。好適なシグナルジェネレーターの例には、特に限定されないが、発色団、発蛍光団、ラマン活性タグ、放射性標識、酵素及びこれらの組合せがある。
【0022】
本明細書中で使用する「マスクされたシグナルジェネレーター」という用語は、シグナルジェネレーターの検出可能なシグナルがマスクされている前駆体シグナルジェネレーター(プロ−シグナルジェネレーター)をいう。マスキングは、シグナル特性の1以上を変化させることがある。マスキングは、シグナルの完全/部分的な除去、シグナルピークのシフト、シグナル強度の低下、又はシグナル周波数のシフトをもたらすことがある。マスクされたシグナル発生部分は、アンマスキングすればシグナルジェネレーターに転化させることができる。例えば、マスクされたシグナル発生部分を有する標的結合性プローブは、消光された発蛍光団(マスクされたシグナル発生部分)とカップリングされた抗体(標的結合性プローブ)を含むことができる。マスクされたシグナル発生部分(マスクされた発蛍光団)としてドナー−アクセプター発蛍光団ペア(例えば、発蛍光団−消光剤ペア)をしようすることができ、この場合にはドナーの蛍光はアクセプターへの共鳴エネルギー移行によって消光される。ドナーとアクセプターとの距離の変更又はアクセプターの除去によってドナー発蛍光団をアンマスキングすることができ、次いでドナーからの蛍光を観測することができる。
【0023】
本明細書中で使用する「独立に検出可能な部分」という用語は、直接アッセイ又は間接アッセイによって検出できる部分をいう。直接アッセイによって検出するためには、独立に検出可能な部分はシグナルジェネレーターを含むべきである(即ち、それは検出可能なシグナルを提供/発生すべきである)。独立に検出可能な部分が単独で検出可能なシグナルを生じない場合、又はそれがマスクされたシグナル発生部分を含む場合には、独立に検出可能な部分を検出するために間接アッセイを使用する必要がある。そのような場合、独立に検出可能な部分は、例えば、それをシグナル発生部分と結合するか、或いはシグナル発生部分をアンマスキングすることで検出できる。
【0024】
本明細書中で使用する「相関させる」という用語は、性能及び/又は成績を何らかの方法で比較又は分析はることで、相関させるべき事象間の相互関係又は相反関係を確定することをいう。
【0025】
「インサイチュ」という用語は、元の場所又は自然のままの場所で起こる事象をいう。例えば、インサイチュは、インタクトな器官又は組織で、或いは器官又は組織の代表的な部分で起こる事象を表すことができる。標的のインサイチュ分析は、多くの場合、標的がその起源部位から取り除かれた場合に失われることがある文脈情報を提供する。標的のインサイチュ分析は、生物、器官、組織試料又は細胞培養物を含む各種の源に由来する細胞、組織又は組織切片に関して実施できる。したがって、細胞又は組織における標的のインサイチュ分析とは、全細胞又は組織試料中にある標的結合プローブの分析であって、標的結合プローブが細胞内に残存している場合を述べている。インサイチュ分析を実施する際、細胞膜は完全にインタクトであっても部分的にインタクトであってもよい。さらに、本方法を使用すれば、固定、未固定又は凍結状態の細胞又は組織試料中において標的をインサイチュで分析できる。
【0026】
「シグナルを観測する」という用語は、シグナルを検出、特性決定又はモニタリングすることをいう。シグナルジェネレーターからのシグナルは、検出システム又はイメージングシステムを用いて観測できる。例えば、生物学的試料からのシグナルの観測は、生物学的試料の画像を捕獲することで実施できる。使用する検出システム又はイメージングシステムの性質は、シグナルジェネレーターによって発生されるシグナルの性質に依存する。シグナルを観測するために使用できる検出/イメージングシステムの非限定的な例には、電子スピン共鳴(ESP)システム、電荷結合素子(CCD)システム(例えば、放射性同位体用)、光学システム(例えば、光学イメージング、蛍光イメージング、共焦点イメージング)、電気システム、写真フィルムシステム、化学発光システム、酵素検出システム、原子間力顕微鏡(AFM)システム、走査型トンネル顕微鏡(STM)検出システム、近赤外視野システム及び全内部反射(TIR)システムがある。シグナルの観測には、シグナルの目視観察も含まれる。
【0027】
本方法の1以上は、特に限定されないが、検体検出、疾患検出、疾患モニタリング、治療モニタリング、疾患予測、組織化学、細胞化学、免疫化学、免疫組織化学又は免疫蛍光法のような分析、診断又は予後診断用途で使用することができる。例えば、本方法は組織化学、免疫組織化学又は免疫蛍光法の分野で特に有用であり得る。
【0028】
本方法は、単一の生物学的試料中の複数の標的を検出するために使用できる。複数の標的の検出は、複数の標的の存在、不存在、位置及び/又は量を確認することを含み得る。本方法は、複数の標的を検出するために単一の検出チャンネルを使用できる。若干の実施形態では、本方法は生物学的試料のインビトロ分析のために使用できる。若干の実施形態では、本方法は生物学的試料のインビボ分析のために使用できる。
【0029】
本方法は、同一の生物学的試料中における複数の標的の検出を可能にする。同一の生物学的試料中の標的の検出はまた、生物学的試料中の標的に関する空間情報を求めるためにも使用できる。本方法は、分析のために限られた量の生物学的試料しか利用できない場合、或いは同一試料を複数の分析のために処理しなければならない場合の分析用途において有用である。同一試料中の異なる標的を検出するために同一の検出チャンネルを複数回使用し、複数の標的の分析のための化学要件を少なくすることができる。本方法はまた、重なり合ったシグナルを分解するのに制約があるため、通常の検出方法では限られた数の標的しか検出できない場合にも有用である。例えば、通常の蛍光ベース検出アッセイでは、同時に検出できる標的の数は約4に限定されることがある。これは、励起波長及び発光波長特性に基づいて4を超える蛍光シグナルを分解することはできないからである。本発明の方法はこの制約を克服するために役立ち、複数の標的(例えば、4を超える標的)の検出を可能にする。本方法は、異なるタイプの細胞又は組織の比較、異なる発生段階の比較、疾患又は異常の存在の検出、或いは疾患又は異常のタイプの決定に役立ち得る複数の標的を検出するために使用できる。
【0030】
本方法はさらに、既にイメージング可能である標識を有する標的結合性プローブと共に、イメージングのために活性化し得る活性化可能な標識(例えば、シグナルジェネレーター)を有する標的結合性プローブを使用することで標的の検出の多重度を高める手段を提供する。これは、2種以上の標的結合剤/検出剤の同時使用を可能にする。その一方が直接に検出されるのに対し、他方は活性化後においてのみ検出可能であり、これは同じ検出チャンネルを検出のために再使用することを可能にする。本方法は、既に活性な標識をイメージングした後に活性化し得る活性化可能な標識を活性な標識と共に使用することを記載している。また、標識が異なる検出チャンネルで検出されるならば同じ条件下で、或いは検出のために同一の検出チャンネルが使用されるならば異なる条件下でそれぞれ活性化し得る複数の活性化可能な標識を使用することも可能である。既にイメージング可能な標識は、適当なリンカー及び保護基化学を用いて、活性化可能な標識が活性化される前又はそれと同時に開裂除去すればよい。本発明はさらに、様々な濃度で存在し得る複数の特異的分子を検出するためにシグナルを増幅する方法を記載している。様々な増幅レベルを達成するため、複数の増幅方法を同時に使用することができる。本発明の別の特徴は、多重標識オリゴヌクレオチド又はポリマー及び/又はインサイチュ重合を用いる多重化フォーマットでのシグナル増幅である。
【0031】
生物学的試料には、特に限定されないが、血液、血漿、血清、唾液、脳脊髄液、胸膜液、乳、リンパ液、痰、精液、尿、糞、涙液、唾液、注射針吸引物、皮膚や気道や腸管や尿生殖路の外部切片、腫瘍、器官、細胞培養物、細胞培養物成分、組織試料、組織切片、全細胞、細胞成分、サイトスピン(cytospin)及び細胞塗抹標本がある。生物学的試料は固体又は液体の形態で存在していてよく、凍結試料、固定試料、染色試料又は前処理試料からなり得る。生物学的試料はさらに、防腐剤、抗凝固剤、緩衝剤、固定剤、栄養素、抗生物質などの化合物をを含んでいてもよく、これらは天然状態の試料中に本来混在していないものであってもよい。生物学的試料はそのままで(即ち、検査対象標的の回収及び/又は単離なしに)分析してもよいし、或いは分析に先立って標的の回収及び/又は単離に付してもよい。
【0032】
生物学的試料は全細胞からなり得る。細胞は一次細胞、培養細胞又は細胞株であり得る。生物学的試料は、幹細胞(例えば、成体幹細胞又は胚性幹細胞)、脱分化体細胞、再プログラム化細胞又は誘導多能性細胞からなり得る。幹細胞は全能性、多分化能性又は多能性であり得る。
【0033】
生物学的試料は組織試料からなり得る。組織試料は、類似の機能を有し得る、生物学的被験体から得られた類似細胞(必ずしも同一の細胞ではないが、同じ起源からの細胞である)の集合体を含んでいる。例えば、ヒト組織には、特に限定されないが、上皮組織(例えば、皮膚、気道若しくは生殖路の表面、又は消化管の内層)、結合組織(例えば、血管、骨又は軟骨)、筋肉組織(内臓筋若しくは平滑筋、骨格筋又は心筋)及び神経組織(例えば、脳、脳神経又は脊髄)がある。組織試料は、生物学的被験体の妊娠中(出生前)又は発育中の任意の時点において、新鮮な又は保存された(例えば、固定又は凍結された)器官、吸引物、生検材料、血液、血液成分或いは体液(例えば、脳脊髄液、羊水、腹膜液又は間質液)から得ることができる。
【0034】
組織試料は組織の薄片スライス又はその一部(組織切片)であってよく、これらは正常組織(例えば、結腸、乳房又は前立腺の組織切片)又は罹患組織(例えば、結腸腺癌)から得ることができる。組織切片は、約1〜約100マイクロメートル(μm)、又は約1〜約50μm、又は約2〜約25μm、又は約3〜約5μmの範囲内の厚さを有し得る。組織試料の同一切片を採取して分析に付することで、形態学的レベル又は分子レベルで異なる2組以上の標的を検出することができる。若干の実施形態では、組織試料の複数の切片を分析することで複数の標的を検出できる。組織試料は、マイクロアレイ(例えば、乳房マイクロアレイ)の形態で供給できる。
【0035】
若干の実施形態では、生物学的試料中の複数の標的を検出する方法は、生物学的試料中の複数の標的の順次検出を含んでいる。最初に、複数の標的結合性プローブを生物学的試料に同時に添加して複数の標的結合プローブを形成する。次いで、1以上の標的結合プローブを生物学的試料に共有結合させる。次いで、標的結合プローブを検出することで複数の標的を順次に検出する。1以上の方法は、試料を複数の標的結合性プローブに接触させて複数の標的結合プローブを形成する段階、標的結合プローブの1以上を生物学的試料に共有結合させる段階、複数の標的結合プローブの第1組からの第1組のシグナルを観測する段階、観測されたシグナルを修飾する段階、複数の標的結合プローブの第2組から第2組のシグナルを発生させる段階、及び第2組のシグナルを観測する段階を含み得る
本方法は、一般に、複数の多重組の標的結合性プローブを生物学的試料に適用する段階、標的結合プローブの1以上を生物学的試料に共有結合させる段階、複数の標的の第1組からの第1組のシグナルを観測することで生物学的試料中の複数の標的の第1組を検出する段階、観測された第1組のシグナルを修飾する段階、及び(複数の標的の第2組から第2組のシグナルを発生させ、第2組のシグナルを観測することで)生物学的試料中の複数の標的の第1組を検出する段階を含んでいる。本方法はさらに、複数の標的の第2組からの観測されたシグナル(即ち、第2組のシグナル)を修飾し、続いて生物学的試料中の複数の標的の第3組を検出する段階を繰り返すことを含み得る。上記の方法段階を(複数の標的の第4組、第5組及び第n組を検出するために)複数回繰り返すことで、生物学的試料中の複数の標的の大部分又は全部を検出することができる。若干の実施形態では、かかる段階を約100回繰り返すことで約100組(即ち、n=100)の標的が検出される。第1組のシグナル及び以後の組のシグナルはいずれも同じタイプのもの(例えば、蛍光シグナル)であってもよいし、或いは相異なるタイプのものであってもよい(例えば、第1組は蛍光シグナルであり、第2組は吸収シグナルであってよい)。第1組のシグナル及び以後の組のシグナルは単一の検出チャンネルを使用してもよいし、或いは複数の検出チャンネルを使用してもよい。
【0036】
若干の実施形態では、生物学的試料中の複数の標的は2組以上の異なる標的を含み、各組の異なる標的は1以上の標的を含んでいる。2組の異なる標的は、同じタイプのバイオマーカー(例えば、2組の異なる抗原であって、第1組は抗原Aからなり、第2組は抗原Bからなるもの)を含んでいてもよいし、或いは異なるタイプのバイオマーカー(例えば、第1組は抗原Aからなり、第2組はDNAからなるもの)を含んでいてもよい。若干の実施形態では、複数の標的は複数組の異なる標的を含み得る。標的は生物学的試料の表面上(例えば、組織学的切片、DNAマイクロアレイ、タンパク質マイクロアレイ、懸濁状態の細胞、細胞学的塗抹標本又は固体支持体(例えば、ゲル、ブロット、ガラススライド、ビーズ又はELISAプレート)の表面上)に存在していてもよいし、或いは内部に埋め込まれていてもよい(例えば、インサイチュ検出用細胞中のRNA又はDNA標的)。標的は、特定の細胞タイプ(例えば、未分化幹細胞に対する分化幹細胞)に特有のものであってもよいし、或いは特定の疾患状態又は医学的状態に特有のものであってもよい。好適な標的には、特に限定されないが、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、核酸(例えば、デオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA))、多糖(例えば、レクチン又は糖類)、脂質、リガンド、受容体、抗体、アフィボディ、抗原、アプタマー、ハプテン、脂質、ホルモン、酵素、酵素基質及びこれらの組合せがある。
【0037】
本方法は、特に限定されないが、予後診断標的、ホルモン又はホルモン受容体標的、リンパ系標的、腫瘍組織標的、細胞周期関連標的、神経組織標的又は分化クラスター(CD)標的或いはこれらの組合せを含む複数の異なる標的を検出するために使用できる。標的の非限定的な例には、セントロメアタンパク質F(CENP−F)、ギアンチン、インボルクリン、ラミンA&C(XB 10)、LAP−70、ムチン、核膜孔複合タンパク質、pl80ラメラ体タンパク質、ラン(ran)、カテプシンD、Ps2タンパク質、Her2−neu、P53、S100、上皮標的抗原(EMA)、TdT、MB2、MB3、PCNA及びKi67がある。
【0038】
腫瘍組織標的の非限定的な例としては、乳癌バイオマーカー(例えば、ER、PR、Her2、CA 15−3、CA 27.29、CEA、uPA、PAI−1又はKi−67)、結腸直腸癌バイオマーカー(例えば、CEA、CA 19−9、チミジル酸シンターゼ又はCA125)、肺癌バイオマーカー(例えば、NSE、CEA、CYFRA 21−1、IMP3、TPA、proGRP、TTF、D2−40、ポドプラニン、サイトケラチン20、クロモグラニンA又は血清アミロイドA)、前立腺癌バイオマーカー(例えば、PSA、PCA3、uPM3、hk2又はPSMA)或いは肝臓癌バイオマーカー(例えば、AFP)のようなバイオマーカーが挙げられる。
【0039】
予後診断標的の好適な例としては、特に限定されないが、ガラクトシルトランスフェラーゼII、ニューロン特異的エノラーゼ、プロトンATPアーゼ2及び酸性ホスファターゼが挙げられる。ホルモン、ホルモン調節性及びホルモン受容体標的としては、特に限定されないが、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、副腎皮質刺激ホルモン、前立腺特異的抗原(PSA)、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、アンドロゲン受容体、gC1q−R/p33補体受容体、IL−2受容体、p75ニューロトロフィン受容体、PTH受容体、甲状腺ホルモン受容体及びインスリン受容体が挙げられる。
【0040】
リンパ系標的の好適な例としては、特に限定されないが、α−1−アンチキモトリプシン、α−1−アンチトリプシン、B細胞標的、bcl−2、bcl−6、Bリンパ球抗原36kD、BM1(骨髄標的)、BM2(骨髄標的)、ガレクチン−3、グランザイムB、HLAクラスI抗原、HLAクラスII(DP)抗原、HLAクラスII(DQ)抗原、ヒト好中球デフェンシン、免疫グロブリンA、免疫グロブリンD、免疫グロブリンG、免疫グロブリンM、κ軽鎖、κ軽鎖、λ軽鎖、リンパ球/組織球抗原、マクロファージ標的、ムラミダーゼ(リゾチーム)、p80未分化リンパ腫キナーゼ、プラズマ細胞標的、分泌性白血球プロテアーゼインヒビター、T細胞抗原受容体(JOVI1)、T細胞抗原受容体(JOVI3)、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ及び非クラスター化B細胞標的が挙げられる。
【0041】
腫瘍組織標的としては、特に限定されないが、αフェトプロテイン、アポリポプロテインD、BAG−1(RAP46タンパク質)、CA19−9(シアリルルイスA)、CA50(癌腫関連ムチン抗原)、CA125(卵巣癌抗原)、CA242(腫瘍関連ムチン抗原)、クロモグラニンA、クラスタリン(アポリポタンパク質J)、上皮膜抗原、上皮関連抗原、上皮特異的抗原、グロス嚢胞症体液タンパク質−15、肝細胞特異的抗原、ヘレグリン、ヒト胃ムチン、ヒト乳脂肪球、MAGE−1、マトリックスメタロプロテイナーゼ、メランA、黒色腫標的(HMB45)、メソセリン、メタロチオネイン、小眼球症転写因子(MITF)、Muc−1コア糖タンパク質、Muc−1糖タンパク質、Muc−2糖タンパク質、Muc−5AC糖タンパク質、Muc−6糖タンパク質、ミエロペルオキシダーゼ、Myf−3(横紋筋肉腫標的)、Myf−4(横紋筋肉腫標的)、MyoD1(横紋筋肉腫標的)、ミオグロビン、nm23タンパク質、胎盤アルカリホスファターゼ、プレアルブミン、前立腺特異的抗原、前立腺酸ホスファターゼ、前立腺インヒビンペプチド、PTEN、腎細胞癌腫標的、小腸ムチン抗原、テトラネクチン、甲状腺転写因子−1、マトリックスメタロプロテイナーゼ1の組織インヒビター、マトリックスタロプロテイナーゼ2の組織インヒビター、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質−1、ビリン及びフォンビルブラント因子が挙げられる。
【0042】
細胞周期関連標的の非限定的な例には、アポトーシスプロテアーゼ活性化因子−1、bcl−w、bcl−x、ブロモデオキシウリジン、cdk活性化キナーゼ(CAK)、細胞アポトーシス感受性タンパク質(CAS)、カスパーゼ2、カスパーゼ8、CPP32(カスパーゼ3)、CPP32(カスパーゼ3)、サイクリン依存性キナーゼ、サイクリンA、サイクリンB1、サイクリンD1、サイクリンD2、サイクリンD3、サイクリンE、サイクリンG、DNA断片化因子(N末端)、Fas(CD95)、Fas関連デスドメインタンパク質、Fasリガンド、Fen−1、IPO−38、Mcl−1、ミニ染色体維持タンパク質、ミスマッチ修復タンパク質(MSH2)、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ、増殖細胞核抗原、p16タンパク質、p27タンパク質、p34cdc2、p57タンパク質(Kip2)、p105タンパク質、Stat 1α、トポイソメラーゼI、トポイソメラーゼIIα、トポイソメラーゼIIIα及びトポイソメラーゼIIβがある。
【0043】
神経組織標的としては、特に限定されないが、αBクリスタリン、α−インターネキシン、αシヌクレイン、アミロイド前駆体タンパク質、βアミロイド、カルビンジン、コリンアセチルトランスフェラーゼ、興奮性アミノ酸トランスポーター1、GAP43、グリア原線維酸性タンパク質、グルタミン酸受容体2、ミエリン塩基性タンパク質、神経成長因子受容体(gp75)、神経芽細胞腫標的、ニューロフィラメント68kD、ニューロフィラメント160kD、ニューロフィラメント200kD、ニューロン特異的エノラーゼ、ニコチン性アセチルコリン受容体α4、ニコチン性アセチルコリン受容体β2、ペリフェリン、タンパク質遺伝子産物9、S−100タンパク質、セロトニン、SNAP−25、シナプシンI、シナプトフィジン、タウ、トリプトファンヒドロキシラーゼ、チロシンヒドロキシラーゼ及びユビキチンが挙げられる。
【0044】
クラスター分化標的の好適な例には、特に限定されないが、CD1a、CD1b、CD1c、CD1d、CD1e、CD2、CD3δ、CD3ε、CD3γ、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8α、CD8β、CD9、CD10、CD11a、CD11b、CD11c、CDw12、CD13、CD14、CD15、CD15s、CD16a、CD16b、CDw17、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD25、CD26、CD27、CD28、CD29、CD30、CD31、CD32、CD33、CD34、CD35、CD36、CD37、CD38、CD39、CD40、CD41、CD42a、CD42b、CD42c、CD42d、CD43、CD44、CD44R、CD45、CD46、CD47、CD48、CD49a、CD49b、CD49c、CD49d、CD49e、CD49f、CD50、CD51、CD52、CD53、CD54、CD55、CD56、CD57、CD58、CD59、CDw60、CD61、CD62E、CD62L、CD62P、CD63、CD64、CD65、CD65s、CD66a、CD66b、CD66c、CD66d、CD66e、CD66f、CD68、CD69、CD70、CD71、CD72、CD73、CD74、CDw75、CDw76、CD77、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CD84、CD85、CD86、CD87、CD88、CD89、CD90、CD91、CDw92、CDw93、CD94、CD95、CD96、CD97、CD98、CD99、CD100、CD101、CD102、CD103、CD104、CD105、CD106、CD107a、CD107b、CDw108、CD109、CD114、CD115、CD116、CD117、CDw119、CD120a、CD120b、CD121a、CDw121b、CD122、CD123、CD124、CDw125、CD126、CD127、CDw128a、CDw128b、CD130、CDw131、CD132、CD134、CD135、CDw136、CDw137、CD138、CD139、CD140a、CD140b、CD141、CD142、CD143、CD144、CDw145、CD146、CD147、CD148、CDw149、CDw150、CD151、CD152、CD153、CD154、CD155、CD156、CD157、CD158a、CD158b、CD161、CD162、CD163、CD164、CD165、CD166及びTCR−ζがある。
【0045】
生物学的試料中の複数の標的は、標的結合部分を介して標的と結合し得る複数のプローブ(標的結合性プローブ)を使用することで検出される。複数の標的結合性プローブは複数組のプローブを含んでいて、各組のプローブは別の組から構造的又は機能的に異なるものであり得る。標的結合性プローブは、標的結合性プローブを生物学的試料に接触させ、続いてこれらをインキュベートすることで標的に結合される。標的結合性プローブの結合のために標的をアクセス可能にするため、生物学的試料の予備的な処理(例えば、抗原の回収)が必要となることがある。標的結合性プローブが標的に結合した場合、標的の検出は標的結合プローブを検出することで達成できる。標的結合性プローブはシグナルジェネレーターを含んでいてもよいし、或いは含まなくてもよい。標的結合性プローブがシグナルジェネレーターを含む場合には、標的の検出はシグナルジェネレーターからのシグナルを観測することで達成できる。標的結合性プローブがシグナルジェネレーターを含まない場合には、標的の検出を可能にするため、標的結合プローブと特異的に結合するシグナル発生部分を標的結合プローブに結合すればよい。
【0046】
若干の実施形態では、標的結合性プローブは標的結合部分から導かれる単位及び独立に検出可能な部分を含んでいる。独立に検出可能な部分は、発蛍光団、発色団、ラマンタグ、表面増強ラマン分光法(SERS)タグ、表面増強共鳴ラマン分光法(SERRS)タグ又は放射性同位体のようなシグナルジェネレーターであり得る。若干の実施形態では、独立に検出可能な部分は、直接アッセイを用いて検出できる部分からなる。例えば、独立に検出可能な部分は、特異な核酸配列、ハプテン、酵素又はこれらの組合せであり得る。若干の実施形態では、独立に検出可能な部分はマスクされたシグナル発生部分からなる。マスクされたシグナル発生部分の例には、特に限定されないが、マスクされた発蛍光団、マスクされた発色団、マスクされたラマンタグ、マスクされたSERSタグ、マスクされたSERRSタグ及びこれらの組合せがある。マスクされた発蛍光団は、ドナー−アクセプター発蛍光団ペア(例えば、フルオレセイン−ローダミンペア)、消光された発蛍光団(例えば、金属又は有機部分によって消光されたもの)又は極性感受性発蛍光団(例えば、Prodan(6−プロピオニル−2−ジメチルアミノナフタレン)、Paldan(6−パルミトイル−2−ジメチルアミノナフタレン)又はLauedan(6−ドデカノイル−2−ジメチルアミノナフタレン))からなり得る。
【0047】
独立に検出可能な部分は、共有結合(リンカー部分なしの直接結合又はリンカー部分を介しての結合)或いは非共有的相互作用(例えば、静電相互作用、ファンデルワールス相互作用、双極子−双極子相互作用、水素結合又はこれらの組合せ)によって標的結合部分に結合できる。若干の実施形態では、独立に検出可能な部分は、開裂可能なリンカーを介して標的結合部分に結合される。開裂可能なリンカーは、(例えば、酸化、求核置換、還元又はpH変化によって)開裂し得る開裂可能な共有結合(例えば、S−S結合)を含むか、或いは適当な条件下で解離し得る結合ペア(例えば、相補的核酸又はデチオアビジン−アビジンペア)を含み得る。
【0048】
若干の実施形態では、標的結合性プローブは、標的結合部分、架橋部分及び独立に検出可能な部分を含んでいる。例えば、RNA標的用の標的結合性プローブは3つの領域を含み得る。これらの領域は、標的RNAに対して相補的なオリゴヌクレオチド(即ち、標的結合部分)からなる第1の領域、標的オリゴヌクレオチド(即ち、シグナルジェネレーター)に対して相補的であり得るオリゴヌクレオチド(即ち、独立に検出可能な部分、ジップコード)からなる第2の領域、及び標的結合性プローブを標的RNAの近傍に位置する分子に対して架橋することができる架橋部分を有するオリゴヌクレオチドからなる第3の領域である。架橋部分は、リンカー部分を介して第3の領域中のオリゴヌクレオチドに結合し得る。標的結合性プローブの架橋は、標的結合性プローブを適当な開始剤(例えば、光又は化学薬剤)に暴露することで開始させることができる。標的結合部分、架橋部分及び独立に検出可能な部分は、標的結合性プローブ中に任意の順序で配置することができる。例えば、若干の実施形態では、標的結合部分を架橋部分及び独立に検出可能な部分の両方に直接結合することができる。他の例では、標的結合部分を架橋部分に直接結合し、次いで架橋部分を独立に検出可能な部分に直接結合することができる。別の例では、標的結合部分を独立に検出可能な部分に直接結合し、次いで独立に検出可能な部分を架橋部分に直接結合することができる。
【0049】
標的結合プローブは、独立に検出可能な部分の性質に応じて直接又は間接に検出できる。例えば、独立に検出可能な部分が単独で検出可能なシグナル(例えば、光学信号又は放射性信号)を与える場合には、直接検出方法が使用できる。独立に検出可能な部分が単独で検出可能なシグナルを与えない場合には、標的結合プローブを検出するために予備的なシグナル発生段階が必要となることがある(間接検出)。例えば、独立に検出可能な部分が核酸配列である場合には、それを標識された相補的核酸配列とハイブリダイズし、次いで標識からのシグナルを観測することでハイブリダイゼーション複合体を検出すればよい。
【0050】
若干の実施形態では、生物学的試料中の複数の標的は、標的結合性プローブを同時に適用し、続いて標的結合プローブを順次に検出することで検出される。複数の標的は2組以上の異なる標的を含み、各組の異なる標的は1以上の標的を含んでいる。複数の標的結合プローブは2組以上の異なる標的結合プローブを含み、各組の異なる標的結合プローブは1以上の標的結合プローブを含んでいる。一例では、本方法は、生物学的試料を複数の標的結合性プローブに接触させて複数の標的結合プローブを形成する段階を含んでいる。次いで、標的結合プローブの1以上が生物学的試料に共有結合される。次いで、複数の異なる組の標的結合プローブが一度に1組ずつ順次に検出される。最初に、複数の標的結合プローブの第1組からの第1組のシグナルを観測すればよい。この第1組のシグナルは、互いに識別できないシグナルを含んでいてもよいし、或いはスペクトル差又はシグナルタイプに基づいて互いに識別できるシグナルを含んでいてもよい。次いで、観測されたシグナルが修飾される。シグナルは、漂白(例えば、光漂白又は化学漂白)のような任意のシグナル修飾方法を用いて修飾できる。次に、複数の標的結合プローブの第2組から第2組のシグナルを発生させ、続いて第2組のシグナルを観測すればよい。本方法はさらに、観測されたシグナル(即ち、第2組のシグナル)を修飾し、複数の標的結合プローブから第3組のシグナルを発生させ、続いて第3組のシグナルを観測する段階を含み得る。「観測されたシグナルを修飾する」段階及び以後の組のシグナルを「発生させ、続いて観測する」段階を複数の標的結合プローブの第4組、第5組及び第n組に関して複数回繰り返すことで、第4組、第5組及び第n組のシグナルを観測することができる。潜在的には、この方法を用いることで、無限数(この場合、nの整数値はn=6からn=∞にまでわたり得る。)の標的を順次に検出することができる。観測されたシグナルの修飾に際しては、観測されたシグナルのすべてを修飾することは必要でない場合がある。観測されたシグナルの1以上を修飾せずに保存してもよい。その場合、1以上の保存されたシグナルは同時記録又は比較分析のために利用できる。本方法はさらに、観測されたシグナルを生物学的試料中の複数の標的の検出と相関させる段階を含み得る。
【0051】
複数組の標的結合プローブが(例えば、スペクトル差又はシグナルタイプに基づいて)互いに分解できる互いに識別可能なシグナルを生じる場合、本方法は複数組の標的結合プローブのバッチを順次に検出できる。例えば、蛍光シグナルを発生する標的結合プローブの順次検出は、4組の異なる標的結合プローブの各々からの蛍光が互いに分解可能であれば、(例えば、4チャンネル検出を用いて)4組の異なる標的結合プローブの第1バッチを一度に検出することで実施できる。4組の異なる標的結合プローブの第1バッチからのシグナルを観測した後、観測されたシグナルが修飾される。これに続いて、4組の異なる標的結合プローブの第2バッチからシグナルを発生させ、発生されたシグナルを観測することで、4組の異なる標的結合プローブの第2バッチを検出できる。一般に、各バッチにおいて一度に検出できる異なる標的結合プローブの組数は、シグナルを観測し、各組のシグナルを互いに分解するために使用される装置の能力に依存する。シグナルは、重なり合わないスペクトル特性、適切なシグナルタイプ(例えば、蛍光シグナル及び放射性シグナル)又は生物学的試料中での異なる局在(例えば、細胞質からのシグナル及び核からのシグナル)のため、互いに分解可能である場合がある。これらの段階は、異なる標的結合プローブのすべてが順次に検出されるまで繰り返すことができる。
【0052】
若干の実施形態では、標的結合性プローブを生物学的試料に接触させた後、生物学的試料を標的に対する標的結合性プローブの特異的結合のために十分な時間にわたってインキュベートすることができる。インキュベーションは、室温で約5分間乃至約16時間実施するか、或いは4℃で約16時間実施すればよい。インキュベーション温度及びインキュベーション時間は、主として、使用する標的結合性プローブの機能的及び/又は構造的特性(例えば、オリゴヌクレオチドプローブの融解温度(Tm))に依存する。標的結合部分は、特に限定されないが、静電相互作用、ファンデルワールス相互作用、双極子−双極子相互作用又は水素結合を含む非共有的相互作用によって標的に結合し得る。本方法は、任意には、さらに標的に結合し得なかった標的結合性プローブを除去する段階を含み得る。非結合プローブの除去は、生物学的試料を適当な緩衝液で洗浄することで達成できる。
【0053】
複数の標的結合性プローブは、生物学的試料に共有結合し得る1以上の標的結合性プローブを含み得る。若干の実施形態では、複数の標的結合性プローブのすべてが生物学的試料に共有結合し得る。生物学的試料に対する標的結合性プローブの共有結合は、標的それ自体を介して又は標的の近傍に位置する分子を介して行うことができる。一般に、複数の標的結合性プローブを生物学的試料に接触させてインキュベートする。多くの場合、複数の標的結合性プローブは最初は物理的相互作用(即ち、水素結合、ファンデルワールス相互作用などの非共有的相互作用)により標的に結合して複数の標的結合プローブを生成する。適当な条件下では、複数の標的結合プローブの1以上が次いで標的それ自体に共有結合し得るか、或いは標的の近傍に位置する分子に共有結合し得る。標的又は標的の近傍に位置する分子に対する標的結合性プローブの共有結合は、直接カップリング(例えば、タンパク質又は核酸の架橋)によって達成し得るか、或いはリンカー部分を介して(例えば、二官能性リンカー部分を介して)達成し得る。共有結合がリンカー部分を介して実施される場合、リンカーの長さは、生物学的細胞の寸法に比べて微小(例えば、約5〜約50Å)となるように選択される。かくして、たとえ標的結合性プローブが標的の近傍に位置する分子に対して架橋しても、結合プローブの位置は標的の位置と事実上同じであり得る。共有カップリングは、不可逆的な共有結合(例えば、C−C結合)、可逆的な結合(例えば、S−S結合の形成)又は開裂可能な結合(例えば、開裂可能なリンカーを介してのカップリング)からなり得る。共有カップリングは、光架橋或いはエステル、アミド又はチオエーテル結合形成を介しての化学架橋によって達成し得る。標的に対する標的結合性プローブの共有結合は、複数の標的を検出するための次の方法段階を実施しながら標的のシグナチュアを保持するために役立ち得る。シグナチュアという用語は、標的が後続の操作において破壊されても、最初に標的と選択的に結合して所定の場所に架橋された標的結合プローブの存在から試料中におけるその存在が推論できることを意味する。標的に対する標的結合性プローブの共有結合は、標的がシグナル発生及びシグナル修飾のために使用されることがある化学薬剤に対して感受性を有し得る場合に特に重要である。例えば、RNA標的は観測されたシグナルの修飾のために使用されることがある化学薬剤に対して感受性を有し得る。そのため、複数のRNA結合プローブからのシグナルを観測することで複数の異なるRNA標的を検出する際、第1組及び/又は第2組のRNA標的からシグナルを発生させ又は観測されたシグナルを修飾する場合に以後の組のRNA標的が破壊される可能性が存在する。しかし、RNA結合性プローブが標的RNA又は標的RNAの近傍の分子に対して架橋されれば、後続の操作においてRNA標的が破壊されても、最初に標的RNAと選択的に結合して所定の場所に架橋された結合プローブ(標的RNAに結合したもの又は生物学的試料に結合したもの)の存在から、試料中におけるその存在が推論できる。実際、若干の例では、標的結合プローブを生物学的試料に架橋した後に生物学的試料をRNアーゼで処理してすべての細胞RNAを破壊することが有益であり得る。その上、標的結合性プローブが生物学的試料に架橋されていれば、一層厳しい洗浄条件を用いて未結合の標的結合性プローブを除去することができる。このような手順は、生物学的試料中の複数のRNA標的を検出しながらシグナル−ノイズ比を高める。
【0054】
複数の標的結合プローブの第1組からの第1組のシグナルは、直接又は間接に観測することができる。直接アッセイを使用する場合、複数の標的結合性プローブの第1組(即ち、複数の標的の第1組と結合して第1組の標的結合プローブを形成するプローブの組)は、標的結合部分から導かれる単位及び独立に検出可能な部分を含んでいる。この場合、独立に検出可能な部分は単独で観測可能なシグナルを生じることができる(即ち、独立に検出可能な部分はシグナルジェネレーターを含んでいる)。
【0055】
若干の実施形態では、第1組の標的結合性プローブは、シグナルジェネレーター(例えば、発蛍光団、発色団、放射性同位体、酵素又はラマン活性部分)で標識された標的結合部分(例えば、抗体、核酸、アプタマー、アフィボディ又はハプテン)を含み得る。シグナルジェネレーターは、直接に検出又は可視化できる観測可能なシグナルを生じる。例えば、第1組の標的結合性プローブが標的結合性プローブに結合された発蛍光団を有する場合、標的に結合すると、発蛍光団からの蛍光シグナルを観測することで標的結合プローブを検出できる。シグナルジェネレーターは、観測可能なシグナルを本質的に生じるか(例えば、蛍光発生シグナルジェネレーター)、或いは適当な基質との相互作用(例えば、酵素系シグナルジェネレーターに関する酵素−基質反応)によって生じることができる。
【0056】
第1組の標的結合プローブの間接検出は、第1組の標的結合性プローブが単独で観測可能なシグナルを提供しない場合に使用される。若干の実施形態では、これはシグナル発生部分を第1組の標的結合プローブに結合することで達成できる。例えば、第1組の標的結合性プローブは未標識の一次プローブ(例えば、一次抗体)からなり得るが、これを用いて生物学的試料中の第1組の標的(例えば、抗原)に結合することができる。次いで、標識二次プローブ(例えば、標識二次抗体)を用いて標的結合一次プローブを標識することができる。次いで、(一次プローブに結合された)標識二次プローブからのシグナルを観測することで、標識された標的結合一次プローブを検出すればよい。次いで、標識一次プローブの検出を生物学的試料中の第1組の標的の存在と相関させることができる。一次プローブを複数の二次プローブで標識することでシグナル−ノイズ比を向上させることができるので、間接アッセイは検出の感度を高めるため効果的に使用できる。
【0057】
第1組の標的結合プローブからの第1組のシグナルを直接又は間接に観測した後、観測されたシグナルを修飾する。シグナル修飾は、1以上のシグナル特性の変化を含み得る。例えば、シグナル修飾としては、特に限定されないが、シグナル強度の減少、シグナルピークのシフト、共鳴周波数の変化、及びシグナルの除去(シグナル破壊)が挙げられる。観測されたシグナルの修飾は、以後の組の標的結合プローブの検出に際してシグナル(既に観測されたシグナル及び観測すべきシグナル)が重なり合うのを回避するために役立つ。
【0058】
観測されたシグナルを修飾するためには、漂白(例えば、光漂白又は化学漂白)、消光(例えば、蛍光を消光するための金属イオン)又は金属イオン封鎖(例えば、キレーターの使用)のような任意のシグナル修飾方法が使用できる。若干の実施形態では、化学薬剤を適用することで観測されたシグナルが修飾される。観測されたシグナルを修飾するために有用である好適な化学薬剤には、特に限定されないが、pHを変更する薬剤(例えば、酸又は塩基)、求核試薬、求電子試薬、酸化剤、還元剤及びこれらの組合せがある。例えば、塩基性pHにおいて200mM NaHCO3中の3%H22を使用することで、シアニン(例えば、Cy3又はCy5)色素の蛍光を修飾できる。
【0059】
第1組の標的結合プローブからの第1組のシグナルを観測し、続いてそれを修飾した後、第2組及び以後の組の標的結合プローブからのシグナルを観測することができる。第2組及び以後の組の標的結合プローブは間接アッセイによって検出される。これは、第2組及び以後の組の標的結合性プローブが、本質的に観測可能なシグナルを生じないように選択されているからである。そのため、第2組及び以後の組の標的結合プローブからのシグナルを発生させるためには、先行するシグナル発生段階が必要となる。これは、第2組及び以後の組の標的結合プローブにシグナル発生部分を結合し、シグナル発生部分からのシグナルを観測することで達成できる。
【0060】
若干の実施形態では、第2組及び以後の組の標的結合性プローブは、標的結合部分から導かれる単位及び独立に検出可能な部分を含んでいる。この場合、独立に検出可能な部分は単独で観測可能なシグナルを生じない。例えば、独立に検出可能な部分は、特異な核酸配列、ハプテン、酵素又はこれらの組合せからなり得る。標的結合プローブは、シグナル発生部分(例えば、標識)を独立に検出可能な部分に結合することで間接にアッセイできる。例えば、独立に検出可能な部分としてハプテンを有する標的結合プローブは、標識された抗ハプテンを(ハプテン−抗ハプテン相互作用によって)標的結合プローブに結合し、次いで標識からのシグナルを観測することで検出できる。
【0061】
若干の実施形態では、標的結合性プローブの同時適用及びそれに続く順次検出は、2組の標的を検出するために使用できる。しかし、本方法を繰り返して使用すれば、同一の生物学的試料(例えば、同一の組織切片)中の3組以上の標的を検出できる。検出できる標的数(即ち、異なる標的の組数)の上限は、多くの場合、使用する生物学的試料のタイプ、並びにシグナル発生及びシグナル修飾のために使用する化学に依存する。苛酷な方法は、方法段階を数回繰り返した後には生物学的試料の健全性に影響を及ぼすことがある。しかし、適当な(苛酷でない)温和な条件を選択すれば、生物学的試料の健全性を損なうことなく、方法段階を効果的に使用して多数の標的(例えば、10〜100組の標的)を検出できる。
【0062】
観測されたシグナルは、複数の標的の検出と相関させることができる。若干の実施形態では、コンピューター支援手段を用いて観測段階及び相関段階の1以上を実施することができる。相関は、(例えば、目視相関のように)手動的に実施してもよく、(例えば、多少のユーザー介入を伴いながら相関アルゴリズムを用いて)半自動化してもよく、或いは(例えば、いかなるユーザー介入も伴わないコンピューター/ロボットによってコンピューター読取り可能な媒体中の相関アルゴリズムを用いて)完全に自動化してもよい。シグナルが観測されてデジタル画像の形態で記憶される実施形態では、画像のコンピューター支援分分析を行うことができる。コンピューター支援スーパーインポジションを用いて画像(例えば、標結合性プローブからのシグナル及び形態学的染色)を重ね合わせることで、生物学的試料の完全な情報(例えば、トポロジー情報及び/又は相関情報)を得ることができる。
【0063】
観測されたシグナル(例えば、第1組、第2組又は以後の組のシグナル及び/又はこれらの組合せ)を分析することで、生物学的試料に関する様々な情報を得ることができる。例えば、第1組のシグナルの有無は生物学的試料中における(第1組の標的結合性プローブと結合し得る)第1組の標的の有無を表すことができる。同様に、第2組のシグナルの有無は生物学的試料中における(第2組の標的結合性プローブと結合し得る)第2組の標的の有無を表すことができる。複数の標的結合性プローブを用いて複数の標的を分析し得る用途に関しては、特定組の標的結合性プローブに対する特定シグナルの有無は生物学的試料中における対応標的の有無を表すことができる。
【0064】
若干の実施形態では、シグナルの強度値(例えば、蛍光強度)を観測し、測定し、生物学的試料中の標的の量と相関させることができる。標的の量とシグナル強度との相関は、較正標準を用いて決定できる。若干の実施形態では、第1及び第2のシグナルの強度値を測定し、それぞれの標的量と相関させることができる。2つのシグナル強度を比較することで、第1の標的及び第2の標的の(お互いの又は対照に対する)相対量を確かめることもできる。同様に、複数の標的結合性プローブを用いて複数の標的を分析する場合には、複数の標的結合性プローブの各々からのシグナルの異なる強度を測定して相関させることで、生物学的試料中の異なる標的の相対量を決定できる。
【0065】
若干の実施形態では、1以上の対照試料を使用し、対照試料に関連した生物学的試料中のシグナルの有無を観測する(即ち、検査対象の生物学的試料と対照に対して観測する)ことで、生物学的試料に関する特定の情報を得ることができる。例えば、罹患組織試料を正常組織試料と比較することで、罹患組織試料中にのみ存在する(又は存在しない)標的に関する情報を得ることができる。同様に、検査対象試料と1以上の対照との間でシグナル強度を比較することで、検査対象試料中における標的の差別的発現に関する情報を得ることができる。
【0066】
若干の実施形態では、例えば形態学的染色又は区画染色を用いて、生物学的試料中におけるシグナルの位置又は2以上のシグナルの相対位置を求めることができる。シグナルの位置を生物学的試料中における標的の位置と相関させれば、生物学的試料中における複数の異なる標的の局在に関する情報を得ることができる。シグナルの強度値及びシグナルの位置を相関させれば、生物学的試料中における異なる標的の局在及び濃度に関する情報を得ることができる。例えば、ある種の標的は核内よりも細胞質中で多く発現されることがあり、或いはその逆のこともある。標的の相対的な局在及び量に関する情報は、2以上のシグナルの位置及び強度値を比較して得ることができる。
【0067】
若干の実施形態では、生物学的試料を複数の標的結合性プローブに接触させるのに先立って生物学的試料を観測する(例えば、イメージングする)ことで、バックグラウンドシグナルシグナチュアに関する情報を得ることができる。バックグラウンドシグナルシグナチュアは、標的結合プローブ(例えば、第1組、第2組及び/又は第n組の標的結合プローブ)から観測されたシグナルを標的の検出と相関させる前に観測されたシグナルからを差し引けばよい。本方法はさらに、1以上のシグナル修飾段階後に生物学的試料を観測することで残留シグナルシグナチュアに関する情報を得る段階を含み得る。生物学的試料は、各シグナル修飾段階後に観測してもよい。残留シグナルシグナチュアを用いてシグナル修飾効率(例えば、漂白効率)を特徴づけ、シグナル修飾剤の選択、インキュベーション時間及び/又はインキュベーション温度についてシグナル修飾段階を微調整することができる。残留シグナルシグナチュアはまた、以後の標的結合プローブから観測されるシグナルを基準化するためにも使用できる。残留シグナルシグナチュアは、以後の標的結合プローブから観測されたシグナルを標的の検出と相関させる前に観測されたシグナルからを差し引けばよい。
【0068】
若干の実施形態では、複数の標的結合性プローブを用いることで生物学的試料中の複数の標的を検出できるが、この場合に複数の標的結合性プローブのすべてを間接アッセイによって検出することができる。一例では、本方法は、試料を複数の標的結合性プローブに接触させて複数の標的結合プローブを形成する段階、複数の標的結合プローブの第1組から第1組のシグナルを発生させる段階、第1組のシグナルを観測する段階、観測されたシグナルを修飾する段階、複数の標的結合プローブの第2組から第2組のシグナルを発生させる段階、第2組のシグナルを観測する段階、及び観測されたシグナルを複数の標的の検出と相関させる段階を含んでいる。本方法はさらに、観測されたシグナルを修飾する段階、複数の標的結合プローブの第3組、第4組及び第n組に関して新しい組のシグナルを複数回発生させ、発光された第3組、第4組及び第n組のシグナルを観測する段階を含み得る。上述した方法における標的結合性プローブは、単独でシグナルを生じることができない。したがって、標的結合性プローブが標的に結合した後、標的結合プローブからのシグナルを観測する前に先行するシグナル発生段階が必要となる。
【0069】
若干の実施形態では、シグナルは生物学的試料をイメージングすることで観測される。試料を複数の標的結合性プローブに接触させるのに先立って、又は複数の標的結合プローブの第1組から第1組のシグナルを発生させるのに先立って、生物学的試料をイメージングすることでバックグラウンドシグナルシグナチュアを得ることができる。若干の実施形態では、本方法はシグナル処理段階を含み得る。例えば、バックグラウンドシグナルシグナチュアは以後のシグナル観測段階で観測されるシグナルから差し引くことができる。シグナル処理段階は、観測されたシグナルを複数の標的の検出と相関させる段階に先立って又はその進行中に実施できる。
【0070】
若干の実施形態では、生物学的試料中の複数の核酸標的を検出できる。複数の核酸標的は、少なくとも2組(第1組及び第2組)の異なる標的を含み得る。複数の標的は、2組のDNA標的、2組のRNA標的、或いは1組のDNA標的及び1組のRNA標的を含み得る。若干の実施形態では、1組の標的は2以上の異なる標的の混合物(例えば、2種のDNAの混合物、2種のRNAの混合物、又はDNA標的とRNA標的との混合物)からなり得る。
【0071】
複数の標的結合性プローブと接触させる場合、第1組の標的は第1組のプローブと結合する。この場合、第1組のプローブは第1組の条件下で第1組のシグナルを発生できる。例えば、生物学的試料中のRNA標的を(第1組のRNA標的と結合する)第1組のRNA結合性プローブを含む複数のプローブと接触させることで、第1組のRNA標的結合プローブを生成することができる。この第1組のRNA結合プローブ全体は、第1組の条件下で第1組のシグナルを発生できる。本方法はさらに、標的結合プローブからシグナルを発生させるのに先立ち、標的に結合していない標的結合性プローブを除去する段階を含み得る。若干の実施形態では、標的それ自体又は標的の近傍に位置する分子若しくは構造への共有カップリングにより、標的結合プローブの1以上を生物学的試料に共有結合させることができる。このような場合には、標的結合プローブを生物学的試料に共有結合させるのに先立ち、標的に結合していない標的結合性プローブの除去を実施すればよい。第1組のRNA結合性プローブは、標的結合部分及び独立に検出可能な部分を含む核酸(例えば、DNA、RNA、LNA又はPNA)プローブであり得る。例えば、標的結合性プローブは、(第1組の標的中の)標的RNA配列の少なくとも一部に対して相補的な配列及び間接アッセイで独立に検出できる特異な配列を含むDNAプローブであり得る。DNAプローブは生物学的試料と共に、適当なハイブリダイゼーション条件下で、DNAプローブ配列と相補的な標的RNA配列との選択的ハイブリダイゼーションのために十分な時間にわたってインキュベートすればよい。本方法はさらに、ハイブリダイズしたDNAプローブを、標的RNA配列又は標的RNA配列の近傍に位置する分子/構造に対して架橋する段階を含み得る。標的結合プローブは、特異な配列を分析することで検出できる。例えば、特異な配列に対して相補的である十分な配列を有する標識核酸配列(例えば、DNA、RNA、PNA又はLNA)を用いて標的結合プローブを標識すればよい。標識は、生物学的試料を標識された相補的核酸配列と共にハイブリダイゼーション条件下で、順次ハイブリダイゼーションのために十分な時間にわたってインキュベートすることで実施できる。標識としては、特に限定されないが、発色団、発蛍光団、ナノ粒子、ラマン活性部分、SERS活性部分、SERRS活性部分などがある。次いで、標識からのシグナルを観測する(例えば、イメージングする)ことで標的結合プローブを検出すればよい。特異な核酸配列はまた、シグナル増幅方法(例えば、多数の独立に検出可能な部分(例えば、核酸配列)を含み、独立に検出可能な部分の各々からシグナルを発生するナノ粒子とのハイブリダイゼーション)を含む間接アッセイによっても分析できる。
【0072】
生物学的試料中の複数の標的を検出するための方法の別の例は、生物学的試料を複数の標的結合性プローブに接触させて複数の標的結合プローブを形成する段階、標的結合プローブの1以上を生物学的試料に共有結合させる段階、標的結合プローブを、複数の標的結合プローブの第1組と結合することができかつ第1組のシグナルを発生することができる第1組のシグナル発生プローブに接触させる段階、第1組のシグナルを観測することで複数の標的の第1組を検出する段階、観測された第1組のシグナルを修飾する段階、並びに以後の組のシグナル発生プローブを用いてシグナルを発生させる段階及び観測されたシグナルを修飾する段階を複数回繰り返すことで複数の標的の以後の組を検出する段階を含んでいる。観測されたシグナルを修飾するためには化学薬剤を適用すればよい。以後の組のシグナル発生プローブは、複数の標的結合プローブの以後の組と結合することができかつ以後の組のシグナルを発生することができる。若干の実施形態では、これらの段階を10回、25回、50回又は100回繰り返すことで、10組の標的、25組の標的、50組の標的、又は100組の標的を検出することができる。
【0073】
複数の標的は、DNA、RNA、タンパク質又はこれらの組合せからなり得る。若干の実施形態では、複数の標的は複数の異なるRNAからなる。検出できる標的RNAの非限定的な例には、リボソームRNA(rRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA(tRNA)、小干渉RNA(siRNA)、転移メッセンジャーRNA(tmRNA)、piwi−相互作用RNA(piRNA)、非コーディングRNA、調節RNA、CRISPR RNA、小核RNA(snRNA)、小核小体RNA(snoRNA)、RNアーゼ−P−RNA、PUT RNA、リボザイム及びマイクロRNA(miRNA)がある。若干の実施形態では、複数の標的はインサイチュで検出される。本方法は、例えば、新生RNA転写物のインサイチュイメージングによって転写開始部位又は差別的遺伝子調節を検出するために使用できる。
【0074】
生物学的試料中の複数の標的を検出するための上述した方法は、複数の標的の複数バッチを検出するために使用できる。この場合、複数の標的の各バッチは複数の標的の多重組を含んでいる。例えば、生物学的試料中の複数の核酸(多重組の異なる核酸)及び複数のタンパク質(多重組の異なるタンパク質)は、複数の標的の2つのバッチを構成し得る。最初に、標的結合性プローブの同時添加及びそれに続く標的結合プローブの順次検出により、生物学的試料中の複数の核酸(例えば、第1組のDNA及び第2組のRNAのような2組の異なる核酸)を検出できる。次いで、複数のタンパク質の検出(例えば、第1組のタンパク質A及び第2組のタンパク質Bの検出)を実施できる。例えば、複数の核酸結合性プローブ(即ち、DNA結合性プローブ及びRNA結合性プローブ)を生物学的試料に適用して複数の標的核酸結合プローブ(第1組のDNA結合プローブ及び第2組のRNA結合プローブ)を形成すればよい。次いで、第1組のDNA結合プローブからのシグナルを(DNA結合プローブが単独でシグナルを発生するか否かに応じて直接アッセイ又は間接アッセイにより)検出すればよい。次いで、観測されたシグナルを修飾し、続いて複数のRNA結合プローブからの第2組のシグナルを発生させればよい。(第2組の核酸とハイブリダイズする標的結合性プローブは単独では検出可能なシグナルを生じないように選択されているので、かかるシグナルは第2組の標的結合プローブから発生させる必要がある。)次いで、RNA結合プローブから発生したシグナルを観測すればよい。複数の多重組の核酸標的の検出を実施した後、本方法を用いて複数の多重組のタンパク質を検出することができる。標的タンパク質A及びBに結合し得る複数の標的結合性プローブ(例えば、抗体A及び抗体B)を適用すればよい。次いで、抗体Aからのシグナルを観測することで、タンパク質Aに結合した抗体Aを直接又は間接アッセイによって検出すればよい(第1組のタンパク質)。次いで、観測されたシグナルを修飾すればよい。次に、タンパク質Bに結合した抗体Bからのシグナルを発生させ、続いて発生されたシグナルを観測する。次いで、観測されたシグナルをタンパク質Aの組及びタンパク質Bの組の検出と相関させることができる。
【0075】
1以上の方法段階は手動的に実施してもよいし、或いは自動化し、自動システムを用いて実施してもよい。若干の実施形態では、すべての方法段階が自動システムを用いて実施できる。
【0076】
若干の実施形態では、本発明の方法を使用して生物学的試料中の複数の標的を検出するための装置が提供される。本装置は、試料取扱いシステム、試薬分配システム、プローブ架橋システム、及びシグナル検出システムを含んでいる。本装置は、生物学的試料を複数の標的結合性プローブに接触させて複数の標的結合プローブを形成する段階、任意には複数の標的結合プローブの1以上を共有結合によって生物学的試料に結合させる段階、複数の標的結合プローブの第1組からの第1組のシグナルを観測する段階、観測されたシグナルを修飾する段階、複数の標的結合プローブの第2組から第2組のシグナルを発生させる段階、及び第2組のシグナルを観測する段階を含む方法を用いて生物学的試料中の複数の標的を検出するように動作可能であり得る。試料取扱いシステムは、試料を保持するためのプラットホーム(例えば、組織切片スライドを保持するための顕微鏡ステージ)、及び1種以上の試薬を試料に入出力するためのポートを含み得る。試料取扱いシステムはさらに、インキュベーションパラメーター(例えば、温度、圧力)を制御するために使用できるインキュベーションシステムを含み得る。試料取扱いシステムは、一体化された試料保持プラットホーム、一体化された試薬流入流出用ポート及び/又は一体化されたインキュベーションシステムを有するフローセルとして構成できる。試薬分配システムは、1種以上の試薬を収容できる1以上の試薬リザーバー、及び試料取扱いシステムに位置する試料に試薬を分配する手段を含み得る。試薬は、スライドホルダー上のポートへのピペット注入、又はスライドホルダーと試薬分配システムとを連結するチューブを通してのポンプ輸送によって試料に分配することができる。シグナル検出システムは、光源(例えば、顕微鏡光源)及びシグナルキャプチャリングシステムを含み得る。例えば、シグナル検出システムは、光源を有する顕微鏡、及び生物学的試料の画像のデジタルキャプチャリングのためのカメラ(例えば、CCDカメラ)を含み得る。プローブ架橋システムは、規定の時間にわたって規定波長の光を放射するように制御できる光源を含み得る。シグナル検出システムが光源を含む場合、プローブ架橋システムは同じ光源を使用するように構成できる。若干の実施形態では、プローブ架橋システムはシグナル検出システムの一部として構成できる。
【0077】
本装置は、(いかなるオペレーターの介入もなくして)完全に自動化することができ、或いは試料取扱いシステム、プローブ架橋システム、試薬分配システム及びシグナル検出システムの1以上がオペレーターの介入なしに動作可能であるように半自動化することができる。本装置は、中央処理ユニット、メモリー、コントローラーユニット及び/又はディスプレイデバイスを含み得る。ディスプレイデバイスは、観測されたシグナル(例えば、生物学的試料の画像)を表示するために使用できる。コントローラーユニットは、中央処理ユニット、試料取扱いシステム、試薬分配システム、プローブ架橋システム及びシグナル検出システムの1以上と通信可能であり得る。通信は一方向通信又は二方向通信であり得る。コントローラーユニットは、(アルゴリズムによる)所定の命令セットを用いて動作可能であり得る。二方向通信を使用する場合、所定の命令セットは、中央処理ユニット、試料取扱いシステム、試薬分配システム、プローブ架橋システム及びシグナル検出システムのいずれかからのフィードバックに応じて調整すればよい。
【0078】
試料取扱いシステムは、生物学的試料を保持するためのプラットホームを含み得る。プラットホームは、静止していてもよいし、或いは生物学的試料を輸送するためにある位置から別の位置まで移動してもよい。試薬分配システムは、試薬分配システムが、1以上の標的結合性プローブを含む1種以上の試薬溶液を生物学的試料に分配するために使用できる。例えば、試薬分配システムを用いて複数の標的結合性プローブを含む試薬溶液を生物学的試料上に分配することで、生物学的試料を複数の標的結合性プローブに接触させることができる。若干の実施形態では、試薬分配システムは、それぞれが1以上の標的結合性プローブを含む複数の試薬溶液を(同時に又は順次に)分配するために使用できる。試薬分配システムはまた、標的に結合されない標的結合性プローブを除去するために使用できる洗浄溶液、生物学的試料を非特異的結合からブロックするためのブロッキング溶液、或いはプローブ架橋、洗浄及び/又はシグナル検出のために必要となることがある他の試薬を分配するためにも使用できる。若干の実施形態では、試薬分配システムは、1組の標的に関する観測されたシグナルを修飾するための化学薬剤を含む試薬溶液を分配するために使用できる。
【0079】
若干の実施形態では、生物学的試料中の複数の多重標的を検出するためのキットが提供される。本キットは、一緒にパッケージされている、上述した方法を実施するために必要となることがある1種以上の試薬を含み得る。例えば、本キットは、複数の標的結合性プローブ及び未結合の標的結合性プローブを洗浄するための緩衝液を含み得る。本キットは、シグナルを発生することができかつ標的又は標的の近傍に位置する分子に対して架橋することができる標的結合性プローブ、及び発生されるシグナルを修飾することができる化学薬剤を含み得る。一例では、本キットは、生物学的試料に架橋することができる蛍光標識標的結合性プローブ(例えば、蛍光標識抗体)、及び蛍光標識からの蛍光を破壊することができる化学薬剤を含んでいる。本キットはまた、架橋反応のために必要となることがある試薬も含み得る。本キットはさらに、キット中に存在する成分及び/又はキット中に存在する成分を用いて必要な方法段階を実施するためのプロトコルを詳述した使用説明書を含み得る。
【0080】
一例では、生物学的試料中の複数の多重標的を検出するためのキットは、複数の標的結合性プローブであって、各々の標的結合性プローブがシグナルを発生することができかつ1以上の標的結合性プローブが標的又は標的の近傍に位置する分子に対して架橋することができる標的結合性プローブ、及び1以上の標的結合性プローブから発生されるシグナルを修飾することができる1種以上の化学薬剤を含んでいる。複数の標的結合性プローブは、2つの異なる標的に結合し得る2組以上の異なる標的結合性プローブを含み得る。例えば、本キットは、区画バイオマーカー(例えば、核内に存在するバイオマーカー)と特異的に結合する第1組の標的結合性プローブ、及び疾患マーカー(例えば、癌バイオマーカー)と特異的に結合する第2組の標的結合性プローブを含み得る。若干の実施形態では、ただ1種の化学薬剤を用いてすべての標的結合性プローブから発生されるシグナルを修飾することができる。しかし、本キットは、キット中の各標的結合性プローブから発生されるシグナルを修飾するための複数の化学薬剤を含むことも可能である。
【0081】
本方法は、同一の生物学的試料からの複数(例えば、潜在的には無限数)の標的(例えば、疾患マーカー)の正確で信頼可能な分析を容易にする。複数の標的の検出は、生物学及び医学における分析、診断、治療又は予後診断用途で有用であり得る。例えば、患者からの細胞又は組織試料を分析するための方法は、診断的に(例えば、特定の疾患を有する患者、特定の毒素に暴露された患者、又は特定の治療若しくは臓器移植によく応答している患者を同定するために)及び予後診断的に(例えば、特定の疾患を発症する可能性がある患者、特定の治療によく応答する患者、又は特定の臓器移植を受容する患者を同定するために)使用することができる。
【実施例】
【0082】
特記しない限り、実施例中に記載される薬剤は、一般の化学薬品供給業者から商業的に入手可能である。実施例セクションで使用される若干の略語は、以下に示すような意味を有する。「mg」:ミリグラム、「ng」:ナノグラム、「pg」:ピコグラム、「fg」:フェムトグラム、「ag」:アットグラム、「zg」:ゼプトグラム、「μL」:マイクロリットル、「mL」:ミリリットル、「mg/mL」:ミリグラム/ミリリットル、「mM」:ミリモル濃度、「μM」:マイクロモル濃度、「pM」:ピコモル濃度、「nmol」:ナノモル、「mmol」:ミリモル、「pmol」:ピコモル、「ms」:ミリ秒、「min」:分、「h」:時間、及び「℃」:摂氏温度。
【0083】
図1は、本発明の一実施形態に係る方法段階を模式的に示す流れずである。図は、2組の標的結合性プローブの同時適用及びそれに続く各組の標的結合プローブの順次検出による2組の異なる標的の検出を示している。本方法は、複数の異なる標的結合性プローブを生物学的試料に適用する段階(12)を含んでいる。複数の標的結合性プローブは、順次に検出できる複数組の標的結合性プローブ(例えば、2組の標的結合性プローブ)を含んでいる。接触及びそれに続くインキュベーションの後、複数の標的結合性プローブは複数の異なる標的に結合する。次いで、標的結合性プローブを生物学的試料に架橋する(共有結合させる)(14)。生物学的試料に対する標的結合プローブの共有結合は、標的を介して行ってもよいし(即ち、プローブを標的に対して架橋する)、或いは標的の近傍に位置する分子を介して行ってもよい(例えば、プローブを近くのタンパク質に対して架橋する)。複数の標的結合性プローブを複数の異なる標的(例えば、2組の標的)に結合した後、複数の標的結合プローブを順次に検出することで複数の標的を順次に検出できる。複数の標的結合プローブの第1組がシグナルジェネレーターを含むならば、追加のシグナル発生段階の必要なしにシグナルジェネレーターからのシグナルを観測することができる(20)。しかし、複数の標的結合プローブの第1組が単独でシグナルを放出しなければ、追加のシグナル発生段階が必要となることがある。一実施形態では、これはシグナルジェネレーターを複数の標的結合プローブの第1組に結合することで達成される(18)。次いで、複数の標的結合プローブの第1組からのシグナルを観測すればよい(20)。第1組の標的結合プローブからのシグナルを(例えば、イメージングによって)観測した後、観測されたシグナルを修飾する(例えば、除去する)(22)。第1組の標的結合プローブからの観測されたシグナルを修飾した後、複数の標的結合プローブの第2組からシグナルを発生させる(24)。次いで、発生されたシグナルを観測して第2組の標的結合プローブを検出すればよい(26)。
【0084】
図2は、複数(例えば、第1組、第2組及び第n組(「n」の整数値は1〜100の範囲内にあり得る。))の異なる標的を検出するための、本発明の一実施形態に係る方法段階を模式的に示している。本方法は、複数の異なる標的結合性プローブを生物学的試料に適用する段階(32)を含んでいる。複数の標的結合性プローブは、順次に検出できる複数組(例えば、第1組、第2組及び第n組(「n」の整数値は1〜100の範囲内にあり得る。))の標的結合性プローブを含んでいる。複数の標的結合性プローブを複数の異なる標的に結合した後、複数の標的結合プローブを順次に検出することで複数の標的を順次に検出できる。生物学的試料への接触及びそれに続くインキュベーションの後、複数の標的結合性プローブは複数の異なる標的に結合する。次いで、標的結合性プローブを生物学的試料に架橋すればよい(例えば、共有結合させればよい)(34)。標的結合性プローブを生物学的試料に対して共有結合させるためには、任意の共有カップリング方法が使用できる。例えば、アミド結合、エステル結合、ジスルフィド結合、炭素−炭素結合などにより、標的結合性プローブを生物学的試料に対して共有カップリングさせることができる。複数の標的結合プローブの第1組がシグナルジェネレーターを含むならば、追加のシグナル発生段階の必要なしにシグナルジェネレーターからのシグナルを観測することができる(40)。しかし、複数の標的結合プローブの第1組が単独でシグナルを放出しなければ、追加のシグナル発生段階が必要となることがある。一実施形態では、これはシグナルジェネレーターを複数の標的結合プローブの第1組に結合することで達成される(38)。次いで、生物学的試料のイメージングにより、複数の標的結合プローブの第1組からのシグナルを観測すればよい(40)。第1組の標的結合プローブからのシグナルをイメージングによって観測した後、観測されたシグナルを修飾する(42)。次いで、複数の標的結合プローブの第2組から第2組のシグナルを発生させる(44)。第2組のシグナルは、第1組のシグナルと同じであってもよいし、同じでなくてもよい。次いで、生物学的試料のイメージングにより、第2組のシグナルを観測する(46)。観測後、この第2組のシグナルを修飾する(例えば、化学薬剤の適用によって破壊するか、又は光漂白する)(47)。シグナル発生、修飾及び観測の方法段階を複数回繰り返すことで、以後の組の標的結合プローブからシグナルを発生させ、以後の組の標的結合プローブをイメージングすることができる(48)。次いで、観測されたシグナルを生物学的試料中の複数の標的の検出と相関させればよい(49)。相関段階は、各組の標的結合プローブからの各組のシグナルを観測した直後に実施してもよいし、或いはすべての標的結合プローブからのすべてのシグナルを観測した後に実施してもよい。
【0085】
実施例1
架橋剤で修飾されたシアニン色素標識DNAオリゴマー(Cy3−T20−SFAD)を次のようにして合成した。Cy3−T20−NH2(3’−末端がアミノ修飾リンカーで標識されかつ5’−末端がCy3(商標)色素で標識されたチミジン単位数20のチミジンオリゴマー、Integrated DNA Technologies社(米国)から商業的に入手した)を10×PBS(リン酸緩衝食塩水)に溶解した溶液10μL(31.9nmol)を80μLの水及び10μLの1M NaHCO3/Na2CO3緩衝液(pH8.4)で希釈した。これに、スルホスクシンイミジル−[ペンタフルオロアジドベンズアミド]エチル−1,3−ジチオプロピオネート(スルホ−SFAD、ThermoFisher Scientific Inc.(米国イリノイ州)から商業的に入手した)の10mM DMSO溶液(20当量)を添加した。混合溶液を室温で約1〜2時間撹拌した。カラム供給業者から提供されたプロトコルを用いて、粗混合物をNAP−10カラム(GE Healthcare社(米国))上で精製した。
【0086】
スルホ−SFADは、14.6Åの長さを有するジスルフィドスペーサーアームの両端にアミン反応性スルホ−N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)及び光活性化可能なテトラフルオロフェニルアジドを含むヘテロ二官能性架橋剤である。NHSエステルは、pH7〜9の緩衝液中で第一アミノ基と効率的に反応して安定なアミド結合を形成する。UV光(300〜370nm)に暴露された場合、ペルフルオロフェニルアジドは、活性炭素−水素結合(C−H)中に挿入し又は不飽和炭素鎖に付加することができる極めて反応性の高いニトレン基を生じる。ペルフルオロアリールニトレンは急速に反応し、非フッ素化アリールアジドより高い効率でC−H結合中に非特異的に挿入される。
【0087】
実施例2
架橋剤で修飾されたシアニン色素標識DNAオリゴマー(Cy3−T20−SDAD)を次のようにして合成した。Cy3−T20−NH2(3’−末端がアミノ修飾リンカーで標識されかつ5’−末端がCy3(商標)色素で標識されたチミジン単位数20のチミジンオリゴマー、Integrated DNA Technologies社(米国)から商業的に入手した)を10×PBS(リン酸緩衝食塩水)に溶解した溶液10μL(31.9nmol)を80μLの水及び10μLの1M NaHCO3/Na2CO3緩衝液(pH8.4)で希釈した。これに、スルホスクシンイミジル2−([4,4’−アジペンタンアミド]エチル)−1,3’−ジチオプロピオネート(スルホ−SDAD、ThermoFisher Scientific Inc.(米国イリノイ州)から商業的に入手した)の10mM水溶液(20当量)を添加した。混合溶液を室温で1〜2時間撹拌した。カラム供給業者から提供されたプロトコルを用いて、粗混合物をNAP−10カラム(GE Healthcare社(米国))上で精製した。
【0088】
スルホ−SDADは、13.5Åの長さを有するジスルフィドスペーサーアームの両端にアミン反応性スルホ−N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)及び光活性化可能なジアジリン部分を含むヘテロ二官能性架橋剤である。NHSエステルは、pH7〜9の緩衝液中で第一アミノ基と効率的に反応して安定なアミド結合を形成する。長波UV光(330〜370nm)によるジアジリンの光活性化は、反応性のカルベン中間体を生み出す。かかる中間体は、スペーサーアーム長さに相当する距離にあるアミノ酸側鎖又はペプチド主鎖との付加反応を通じて共有結合を形成し得る。
【0089】
実施例3
架橋剤で修飾されたシアニン色素標識DNAオリゴマー(Cy3−T20−SANPAH)を次のようにして合成した。Cy3−T20−NH2(3’−末端がアミノ修飾リンカーで標識されかつ5’−末端がCy3(商標)色素で標識されたチミジン単位数20のチミジンオリゴマー、Integrated DNA Technologies社(米国)から商業的に入手した)を10×PBS(リン酸緩衝食塩水)に溶解した溶液10μL(31.9nmol)を80μLの水及び10μLの1M NaHCO3/Na2CO3緩衝液(pH8.4)で希釈した。これに、N−スルホスクシンイミジル−6−(4’−アジド−2’−ニトロフェニルアミノ)ヘキサノエート(スルホ−SANPAH、ThermoFisher Scientific Inc.(米国イリノイ州)から商業的に入手した)の20mM水溶液(50当量)を添加した。混合溶液を室温で1〜2時間撹拌した。カラム供給業者から提供されたプロトコルを用いて、粗混合物をNAP−10カラム(GE Healthcare社(米国))上で精製した。
【0090】
スルホ−SANPAHは、18.2Åのスペーサーアーム長さを有する水溶性のヘテロ二官能性架橋剤である。スルホ−SANPAH架橋試薬は、第一アミンと反応するNHSエステル及び320〜350nmで光反応性を示すニトロフェニルアジド基を含んでいる。
【0091】
実施例4
タンパク質に対するDNAプローブの架橋を調べるため、架橋官能基を有するシアニン色素標識DNAオリゴマー(Cy3−T20−SFAD又はCy3−T20−SDAD)をストレプトアビジンと接触させた。Cy3−T20−SFAD及びCy3−T20−SDADは、架橋官能基の点でのみ互いに異なっている。架橋官能基を有しないシアニン色素標識DNAオリゴマー(Cy3−T20−NH2)を対照として使用した。反応は三重反復試験で実施し、各オリゴマーについて2組の実験を行った(即ち、2組の3ウェル/オリゴマー)。各反応に関し、マイクロタイタープレート(Reacti−Bind(高結合容量)プレート、ThermoFisher Scientific社(米国イリノイ州)から商業的に入手した)のストレプトアビジン被覆ウェルにCy3標識オリゴマー(100μL/ウェル、1μM又は0.1μM)を添加した。(各オリゴマーについての三重反復試験で)1組はUV光に20分間暴露した一方、(各オリゴマーについての三重反復試験で)別の組は暗所に保った。反応後、過剰の試薬を除去し、ウェルを1×PBSで3回洗浄した。次いで、ウェルに100μLの1×PBSを補給し、Tecanプレートリーダー上でマイクロタイタープレートを読んだ(励起波長は544nmであり、発光波長は595nmであった)。各組を各オリゴマーの2種の濃度(1μM及び0.1μM)について実施し、相対蛍光カウントを比較した。
【0092】
図3は、Cy3−T20−SFAD及びCy3−T20−SDADの2種の濃度において、各組に関する平均蛍光カウントを示している。図3は、UV光に暴露した場合、ストレプトアビジンに対するCy3−T20−SFADオリゴマーの顕著な架橋を示している。実験のために1μMのCy3−T20−SFADを使用した場合、0.44%のCy3−T20−SFADがストレプトアビジンに架橋した。0.1μMの濃度を使用した場合、0.15%のCy3−T20−SFADがストレプトアビジンに架橋した。暗所で実施した場合(対照)、Cy3−T20−SFADの架橋はかなり減少した。対照オリゴマー及びCy3−T20−SDADはUV露光試料と非露光試料との間で有意差を示さなかった。
【0093】
実施例5
細胞に対するDNAプローブの架橋を調べるため、シアニン色素標識DNAオリゴマー(Cy3−T20−SANPAH又はCy3−T20−NH2(対照))を細胞と共にインキュベートした。Cy3−T20−SANPAHは、細胞タンパク質と反応する(かくしてプローブを架橋する)ことができるアジド官能基を含んでいる。対照プローブ(Cy3−T20−NH2)はいかなる架橋官能基も含んでいない。
【0094】
25nM濃度の各オリゴマーに関し、2組の反応を実施した。脱パラフィン及び2段階媒体抗原回収プロトコルとしてVentana Discoveryシステムのプロトコルを用いて、(Cell Signaling Technology Inc.(米国マサチューセッツ州)から商業的に入手した)LNCap(アンドロゲン感受性ヒト前立腺腺癌細胞)ペレットスライドを脱パラフィンし、抗原をVentana自動染色機上に回収した。スライドを洗浄剤(1回)、水(3回)及び1×PBS(1回)で洗浄した。各反応に関し、300μLのオリゴマー溶液を各スライド上に配置し、スライドを暗所で1時間インキュベートした。(各オリゴマーに関して)1組はUV光(トランスイルミネーター)に40分間暴露した一方、(各オリゴマーに関して)別の組は暗所に放置した。反応後、過剰の試薬を除去し、スライドを1×PBSで10分間洗浄した。さらに、スライドを1×PBSで洗浄し、DAPI(1μg/mL、2.86μM)で5分間染色した。次いで、スライドをDAPI溶液から取り出し、Vectashieldを用いてマウントし、イメージングに付した。イメージングは、20msのCy3露光を用いてZeissイメージャー上で実施した。
【0095】
図4は、各組に関する平均蛍光カウントを示している。UV光下でCy3−T20−SANPAHと共にインキュベートしたスライドは、他のものに比べて高い蛍光カウントを示した。これは、オリゴマーCy3−T20−SANPAHがUV露光下で細胞に架橋したことを明確に表している。他の組ではわずかな染色が認められた。スライドを1×PBS中に配置することでカバースリップを取り除き、スライドを0.5×SSCと共に40℃で一晩インキュベートした。1×PBSで洗浄(ON洗浄)した後、スライドをZeiss上に装着してイメージングした。Cy3露光時間は20msに保った。図4は、各組に関する平均蛍光カウントを示している。図4は、架橋剤とコンジュゲートしたオリゴマー及び露光を使用したスライドのみが良好なシグナルを生じることを明確に示している。これは定量分析によって確認される。
【0096】
実施例6
標的結合性プローブの同時添加及びそれに続く標的結合プローブの順次検出により、組織試料中のポリ(A)mRNA及びU6 snRNAプローブの多重化検出を次のようにして実施した。全ポリ(A)mRNA及びU6 snRNAプローブを検出するため、5’−ビオチン標識LNA(商標)mRNAインサイチュハイブリダイゼーションプローブPolyT(25)Vn(Exiqon社(米国)から商業的に入手した)及び5’−ジゴキシゲニン標識miRCURY LNA(商標)検出プローブU6 hsa/mmu/mo(Exiqon社(米国)から商業的に入手した)をそれぞれ使用した。ヒト結腸癌組織試料を含むスライドをヒストチョイス(histochoice)(AMRESCO社(米国)から商業的に入手した)中で脱パラフィンし、減少する量のエタノールで15分間再水和化した。次いで、組織試料を1×PBS、1×PBS中の0.3%Triton X−100(wt/wt%)、続いて1×PBSで洗浄した。次いで、組織試料を50%、70%、95%及び100%エタノール(水中v/v%)の各々で10分間脱水し、20分間風乾した。ハイブリダイゼーション緩衝液(50%ホルムアミド、2×SSC、500μg/ml酵母tRNA、0.1%Tween−20)中にPolyT(25)Vn及びU6 hsa/mmu/mo(25nM)を含む溶液を適用した。プローブを95℃の温度ブロック中で10分間加熱し、短時間遠心し、組織試料に適用した。次いで、組織試料をカバーガラスで覆い、密封した。次いで、スライドを加湿チャンバー内において37℃で12時間インキュベートした。ハイブリダイゼーション後、組織試料を2×SSCで5分間、0.5×SSCで5分間、及び67℃の0.5×SSCで10分間洗浄した。
【0097】
次いで、組織試料を1×PBSで洗浄し、3%BSA PBS(wt/wt%)中のCy3標識ストレプトアビジン(Jackson Immunolabs社(米国))と共に室温で30分間インキュベートし、Cy3フィルターキューブを用いてZeiss顕微鏡上でイメージングした。図5(試料1)はCy3チャンネル内に強いシグナルを示し、ポリ(A)mRNAの検出を表している。ポリ(A)mRNAの検出後、スライドを200mM NaHCO3中の塩基性3%H22(化学漂白溶液)で15分間処理した。スライドを1×PBSですすぎ、もう一度200mM NaHCO3中の3%H22で20分間処理し、続いて1×PBSですすいだ。次いで、スライドをすべてのチャンネルでイメージングした。図5(試料2)は、化学漂白溶液での処理後に大部分のCy3シグナルが漂白されたことを示している。最後に、スライドをローダミン標識抗ジゴキシゲニン抗体(Roche社(米国))と共にインキュベートすることでU6転写物を検出した。Cy3フィルターキューブを用いたイメージングによってスライドを観測した。図5(試料3)はCy3チャンネル内に強いシグナルを示し(ローダミン蛍光がCy33蛍光に重なっている)、U6 snRNA転写物の検出を表している。ジゴキシゲニン標識U6 hsa/mmu/moプローブは、組織試料に化学漂白を施した後にも試料中に保持された。
【0098】
実施例7
架橋剤で修飾されたシアニン標識5’−Cy3−b−アクチン−LNA−AmM−SANPAH(構造1に示す、ヌクレオチド記号後の星印(*)はそのヌクレオチドがロックド核酸(LNA)ヌクレオチドであることを表す)を次のようにして合成する。
【0099】
【化1】

5’−Cy3−b−アクチン−LNA−AmMオリゴヌクレオチドを5×PBSに溶解した溶液20μL(14.13nmole)を70μLの水及び10μLの1M NaHCO3/Na2CO3(pH8.4)緩衝液と混合した。2mgのスルホ−SANPAH(ThermoFisher Scientific Inc.(米国イリノイ州))を203μLの水に溶解することで、スルホ−SANPAHの20mM溶液を調製した。この溶液35.3μL(50当量)を撹拌しながらオリゴヌクレオチド溶液に添加した。暗所で2時間撹拌した後、混合物を冷蔵庫内に12時間貯蔵した。製造業者のプロトコルを用いて、PD−10カラム(GE Healthcare社(米国))上で精製を行った。ピンク色の物質を(画分1中に)集め、HPLCによって分析した。主ピークが生成物(純度約91%)に相当し、非修飾オリゴヌクレオチドが主な不純物であった。
【0100】
実施例8
架橋剤で修飾されたビオチン標識5’−ビオチン−U6−LNA−AmM−SANPAH(構造2に示す、ヌクレオチド記号後の星印(*)はそのヌクレオチドがロックド核酸(LNA)ヌクレオチドであることを表す)を次のようにして合成する。
【0101】
【化2】

5’−ビオチン−U6−LNA−AmMオリゴヌクレオチドを5×PBSに溶解した溶液20μL(22.04nmole)を70μLの水及び10μLの1M NaHCO3/Na2CO3(pH8.4)緩衝液と混合した。2mgのスルホ−SANPAH(ThermoFisher Scientific Inc.(米国イリノイ州))を203μLの水に溶解することで、スルホ−SANPAHの20mM溶液を調製した。この溶液55.1μL(50当量)を撹拌しながらオリゴヌクレオチド溶液に添加した。暗所で2時間撹拌した後、混合物を冷蔵庫内に12時間貯蔵した。製造業者のプロトコルを用いて、PD−10カラム上で精製を行った。無色の物質を(画分1中に)集め、HPLCによって分析した。1つのピークのみが認められ、それは所望の生成物に相当していた。
【0102】
実施例9
プローブ(5’−Cy3−b−アクチン−LNA−AmM−SANPAH及び5’−ビオチン−U6−LNA−AmM−SANPAH)の同時添加及びそれに続くプローブの架橋と順次検出により、組織試料中のb−アクチン及びU6プローブの多重化検出を次のようにして実施した。ヒト扁桃組織を含むスライドをヒストチョイス(AMRESCO社(米国))中で脱パラフィンし、次いで減少する量のエタノール及びTriton X−100(PBS中0.3%)で15分間再水和化した。次いで、組織を1×PBSで洗浄した。ハイブリダイゼーション緩衝液(2×SSC/50%ホルムアミド/5%デキストラン硫酸)中に5’−Cy3−b−アクチン−LNA−AmM−SANPAH及び5’−ビオチン−U6−LNA−AmM−SANPAHプローブ(各25nM)を含む溶液を適用した。DR180トランスイルミネーターを室温で用いて、プローブを組織に40分間架橋した。次いで、スライドを1×PBSで洗浄し、DAPIで染色し、Cy3、Cy5及びDAPIキューブを用いてZeiss顕微鏡上でイメージングした。図6はCy3チャンネル内に強いシグナルが認められたことを示していて、これはb−アクチンプローブの存在を表している(段階1)。予想される通り、Cy5チャンネル内には弱い試料自己蛍光以外のシグナルは存在しなかった。b−アクチンプローブの観測後、スライドを200mM NaHCO3中の塩基性3%H22で20分間処理した。スライドをPBSですすぎ、もう一度200mM NaHCO3中の3%H22で20分間処理し、続いてPBSですすいだ。次いで、すべてのチャンネルで画像を記録した。画像は大部分のCy3シグナルの漂白を示した(段階2)。多少の残留シグナルが認められたが、これは内因性の自己蛍光又は不完全な漂白に原因するものかもしれない。最後に、スライドをCy5標識ストレプトアビジンと共にインキュベートすることで(U6結合ビオチニル化プローブである5’−ビオチン−U6−LNA−AmM−SANPAHプローブの検出を通じて)U6プローブを検出した。スライドをイメージングによって観測した。イメージングはCy5チャンネル内に強いシグナルを示し(段階3)、これは試料に漂白サイクルを施した後にもビオチニル化プローブが試料中に保持されたことを表している。
【0103】
図7は、本発明の一実施形態に係る、生物学的試料中の複数の異なる標的を検出するための装置(50)のブロック図である。本装置は、試料取扱いシステム(62)、試薬分配システム(64)、光源(66)及びシグナル検出システム(60)を含んでいる。光源は、プローブ架橋システム並びにシグナル検出システム容量光源として働く。図示された装置(50)はさらに、メモリー及びプロセッサー(54)を有するコンピューター(52)、コントローラーユニット(58)並びにディスプレイ(56)を含んでいる。図中では、矢印は通信リンクを表し、双頭矢印は相互通信リンクを表し、点線矢印は任意の通信リンクを表す。
【0104】
コントローラーユニットは、コンピューター(52)、試料取扱いシステム(62)、試薬分配システム(64)、光源(66)及びシグナル検出システム(60)の1以上と通信することができる。通信は一方向通信又は二方向通信であり得る。試料取扱いシステム(62)、光源(66)、試薬分配システム(64)及びシグナル検出システム(60)は、複数の標的を検出するためのシグナル/プロトコルを制御コントローラーユニット(58)によって制御できる。その上、シグナル検出システム(60)はコントローラー(58)にカップリングされていて、後者はシグナルの取得を指令することができる。コントローラー(58)はまた、試料取扱いシステム(62)、光源(66)などの初期調整のような各種の機能を実行することもできる。一般に、コントローラー(58)は装置の動作を指令することで、複数の標的を検出するための方法の段階を実行し、取得されたデータを処理する。コントローラー(58)はまた、通例は汎用又は特定用途向けデジタルコンピューターに基づくシグナル処理回路、コンピューターによって実行されるプログラム及びルーチンを記憶するための関連メモリー回路なども含み得る。
【0105】
通例、コンピューター(52)はコントローラー(58)にカップリングされているか、或いはそれを組み込んでいる。シグナル検出システム(60)によって収集されたデータは、以後の処理及び再構成のため、直接に又はコントローラー(58)を介してコンピューター(52)に送信し得る。コンピューター(52)は、コンピューター(52)によって処理されたデータ又はコンピューター(52)によって処理されるべきデータを記憶し得るメモリーを含むか、或いはそれを組み込むことができる。かかる例示的なシステ
ム50では、大量のデータを記憶するための任意タイプのメモリー構成が使用できることを理解すべきである。その上、メモリーは装置内に位置していてもよいし、或いはデータ、処理パラメーター及び/又は方法実行用のルーチンを記憶するためのネットワークでアクセス可能なメモリー媒体のような遠隔部品を含んでいてもよい。
【0106】
図8は、生物学的試料中の複数の異なる標的を検出するための例示的な組織病理学装置(70)のブロック図である。かかる組織病理学装置は、スライド(86)及びステージング(88)を有する試料取扱いシステム(84)、試薬分配システム(90)、架橋用光源(94)並びに顕微鏡(82)及びCCDカメラ(80)を含むシグナル検出システムを含んでいる。本装置はさらに、中央処理ユニット(74)及びメモリーを有するコンピューター(72)、コントローラーユニット(78)並びにディスプレイデバイス(79)を含み得る。コントローラーユニットは、中央処理ユニット、試料取扱いシステム、試薬分配システム、プローブ架橋システム及びシグナル検出システムの1以上と通信することができる。通信は一方向通信又は二方向通信であり得る。
【0107】
コンピューター(72)は、コントローラー(78)によって可能化される試薬分配、プローブ架橋及びシグナル検出のようなフィーチャーを制御するように構成し得る。さらに、コンピューター(72)は、通例はキーボード及び他の入力装置(図示せず)を備えたオペレーターワークステーション(図示せず)を介してオペレーターから指令及び他のパラメーターを受信するように構成し得る。それにより、オペレーターは入力装置を介してシステム70を制御できる。かくして、オペレーターは、再構成された画像/データ又はシステム(70)に関連する他のデータの観察、イメージングの開始などを行うことができる。
【0108】
オペレーターワークステーション又はコンピューター(72)にカップリングされたディスプレイ(76)は、検出されたシグナル又は再構成画像を観察するために使用できる。さらに、再構成画像は、オペレーターワークステーションにカップリングされ得るプリンター(図示せず)によって印刷することもできる。ディスプレイ(72)及びプリンターはまた、直接に又はオペレーターワークステーションを介して、コンピューター(72)に接続してもよい。オペレーターワークステーションはまた、画像蓄積伝送システムにカップリングすることもできる。オペレーターワークステーションを組織病理学科情報システム又は病院情報システムのような遠隔システム或いは内部又は外部ネットワークにカップリングすれば、異なる場所にいる他者が再構成画像にアクセスできることに注意すべきである。
【0109】
さらに、コンピューター(72)及びオペレーターワークステーションは、標準又は特殊目的のコンピューターモニター及び関連する処理回路を含み得る他の出力装置にカップリングしてもよいことに注意すべきである。さらに、システムパラメーターの出力、画像の観察などのため、1以上のワークステーションをシステム内でリンクすることもできる。一般に、本装置内に供給されるディスプレイ、プリンター、ワークステーション及び類似の装置は、本装置に対してローカルであってもよいし、或いは施設若しくは病院内の他の場所又は全く異なる場所にあって、1以上の構成可能なネットワーク(例えば、インターネット、仮想プライベートネットワークなど)を介してシグナル検出システムにリンクされたもののように、本装置に対してリモートであってもよい。
【0110】
上記の実施例及び実施形態は、本明細書中に記載された本発明を限定するものではなく、本発明の若干の特徴を例示的するものである。これらは、多数のあらゆる可能な実施形態又は実施例から選択された実施形態又は実施例である。本発明は、その技術思想又は本質的な特徴から逸脱することなしに他の特定の形態で実施できる。したがって、添付の特許請求の範囲は本発明の真の技術思想に含まれる修正及び変更のすべてを包含することを理解すべきである。
【符号の説明】
【0111】
12 標的結合性プローブの適用
14 標的結合性プローブの架橋
16 シグナルジェネレーターの有無
18 シグナルジェネレーターの結合
20 第1組からのシグナルの観測
22 第1組からのシグナルの修飾
24 第2組からのシグナル発生
26 第2組からのシグナルの観測

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的試料中の複数の標的を検出する方法であって、
(a)生物学的試料を複数の標的結合性プローブに接触させて複数の標的結合プローブを形成する段階、
(b)標的結合プローブの1以上を生物学的試料に共有結合させる段階、
(c)複数の標的結合プローブの第1組からの第1組のシグナルを観測する段階、
(d)観測されたシグナルを修飾する段階、
(e)複数の標的結合プローブの第2組から第2組のシグナルを発生させる段階、及び
(f)第2組のシグナルを観測する段階
を含んでなる方法。
【請求項2】
さらに、複数の標的結合プローブの第3組、第4組及び第n組に関して段階(d)乃至段階(f)を複数回繰り返して第3組、第4組及び第n組のシグナルを観測することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
さらに、観測されたシグナルを複数の標的の検出と相関させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
複数の標的結合プローブのすべてが生物学的試料に共有結合される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
標的結合プローブが、標的それ自体を介して又は標的の近傍に位置する分子を介して生物学的試料に共有結合される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
標的結合性プローブが、標的結合部分から導かれる単位及び独立に検出可能な部分を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
複数の標的結合プローブの第1組の独立に検出可能な部分がシグナル発生部分を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
シグナル発生部分が発蛍光団、発色団、ラマンタグ、SERSタグ又はこれらの組合せからなる、請求項7記載の方法。
【請求項9】
標的結合部分が開裂可能なリンカーを介して独立に検出可能な部分にカップリングされている、請求項6記載の方法。
【請求項10】
独立に検出可能な部分が特異な核酸配列、ハプテン、酵素又はこれらの組合せからなる、請求項6記載の方法。
【請求項11】
独立に検出可能な部分がマスクされたシグナル発生部分からなる、請求項6記載の方法。
【請求項12】
マスクされたシグナル発生部分が、マスクされた発蛍光団、マスクされた発色団、マスクされたラマンタグ、マスクされたSERSタグ又はこれらの組合せからなる、請求項11記載の方法。
【請求項13】
マスクされたシグナル発生部分をアンマスキングすることで、シグナルが複数の標的結合プローブから発生される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
シグナル発生部分を標的結合プローブの各々と結合することで、シグナルが複数の標的結合プローブから発生される、請求項1記載の方法。
【請求項15】
さらに、接触段階後、標的と結合していない標的結合性プローブを除去する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項16】
さらに、生物学的試料を複数の標的結合性プローブに接触させるのに先立ち、生物学的試料をイメージングしてバックグラウンドシグナルシグナチュアを得る段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
複数の標的の検出が、複数の標的の存在、不存在、位置又は量を確認することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項18】
複数の標的が、オリゴヌクレオチド、核酸、ペプチド、タンパク質、ホルモン、受容体、多糖、脂質及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項19】
複数の標的が複数のリボ核酸から本質的になる、請求項1記載の方法。
【請求項20】
複数の標的が複数のタンパク質から本質的になる、請求項1記載の方法。
【請求項21】
生物学的試料中の複数の標的を検出する方法であって、
(a)生物学的試料を複数の標的結合性プローブに接触させて複数の標的結合プローブを形成する段階、
(b)標的結合プローブの1以上を生物学的試料に共有結合させる段階、
(c)複数の標的結合プローブの第1組から第1組のシグナルを発生させる段階、
(d)第1組のシグナルを観測する段階、
(e)観測されたシグナルを修飾する段階、
(f)複数の標的結合プローブの第2組から第2組のシグナルを発生させる段階、及び
(g)第2組のシグナルを観測する段階
を含んでなる方法。
【請求項22】
さらに、複数の標的結合プローブの第3組、第4組及び第n組に関して段階(d)乃至段階(g)を繰り返して第3組、第4組及び第n組のシグナルを観測することを含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
nの整数値が5〜100の範囲内にある、請求項22記載の方法。
【請求項24】
さらに、観測されたシグナルを複数の標的の検出と相関させることを含む、請求項21記載の方法。
【請求項25】
さらに、第1組のシグナルを発生させるのに先立ち、生物学的試料をイメージングしてバックグラウンドシグナルシグナチュアを得る段階を含む、請求項21記載の方法。
【請求項26】
さらに、相関段階に先立ち、続くシグナル観測段階で観測されたシグナルからバックグラウンドシグナルシグナチュアを減算する段階を含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
生物学的試料中の複数の標的を検出する方法であって、
(a)試料を複数の標的結合性プローブに接触させて複数の標的結合プローブを形成する段階、
(b)標的結合プローブの1以上を生物学的試料に共有結合させる段階、
(c)複数の標的結合プローブを、複数の標的結合プローブの第1組と結合しかつ第1組のシグナルを発生させることができる第1組のシグナル発生プローブに接触させる段階、
(d)第1組のシグナルを観測することで複数の標的の第1組を検出する段階、
(e)観測された第1組のシグナルを修飾する段階、及び
(f)複数の標的結合プローブの以後の組と結合しかつ以後の組のシグナルを発生させることができる以後の組のシグナル発生プローブを用いて段階(c)乃至段階(e)を複数回繰り返すことで複数の標的の以後の組を検出する段階
を含んでなる方法。
【請求項28】
観測された第1組のシグナルが、化学薬剤を適用することで修飾される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
さらに、標的結合プローブを第1組のシグナル発生プローブに接触させるのに先立ち、複数の標的と結合していない標的結合性プローブを除去する段階を含む、請求項27記載の方法。
【請求項30】
さらに、複数の標的の第1組を検出するのに先立ち、複数の標的結合プローブの第1組と結合していない第1組のシグナル発生プローブを除去する段階を含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
複数の標的結合プローブのすべてが、標的それ自体又は標的の近傍に位置する分子に共有結合される、請求項27記載の方法。
【請求項32】
段階(c)乃至段階(f)が最大100回まで繰り返される、請求項27記載の方法。
【請求項33】
複数の標的が、デオキシリボ核酸、リボ核酸、タンパク質及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項27記載の方法。
【請求項34】
複数の標的が複数のリボ核酸から本質的になる、請求項27記載の方法。
【請求項35】
生物学的試料中の複数の多重標的を検出するためのキットであって、
複数の標的結合性プローブであって、各々の標的結合性プローブがシグナルを発生することができかつ1以上の標的結合性プローブが標的又は標的の近傍に位置する分子に対して架橋することができる、標的結合性プローブ、及び
1以上の標的結合性プローブから発生されるシグナルを修飾することができる1種以上の化学薬剤
を含んでなるキット。
【請求項36】
生物学的試料中の複数の標的を検出するための装置であって、
試料取扱いシステム、
試薬分配システム、
プローブ架橋システム、及び
シグナル検出システム
を含んでなる装置。
【請求項37】
試薬分配システムが、1以上の標的結合性プローブを含む1種以上の試薬溶液を分配する、請求項36記載の装置。
【請求項38】
試料取扱いシステム、試薬分配システム、プローブ架橋システム及びシグナル検出システムの1以上がオペレーターの介入なしに動作可能である、請求項36記載の装置。
【請求項39】
(a)生物学的試料を複数の標的結合性プローブに接触させて複数の標的結合プローブを形成する段階、
(b)複数の標的結合プローブの第1組からの第1組のシグナルを観測する段階、
(c)観測されたシグナルを修飾する段階、
(d)複数の標的結合プローブの第2組から第2組のシグナルを発生させる段階、及び
(e)第2組のシグナルを観測する段階
を含む方法を用いて生物学的試料中の複数の標的を検出するように動作可能である、請求項36記載の装置。
【請求項40】
(a)生物学的試料を複数の標的結合性プローブに接触させて複数の標的結合プローブを形成する段階、
(b)標的結合プローブの1以上を生物学的試料に共有結合させる段階、
(c)複数の標的結合プローブの第1組からの第1組のシグナルを観測する段階、
(d)観測されたシグナルを修飾する段階、
(e)複数の標的結合プローブの第2組から第2組のシグナルを発生させる段階、及び
(f)第2組のシグナルを観測する段階
を含む方法を用いて生物学的試料中の複数の標的を検出するように動作可能である、請求項36記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−507941(P2013−507941A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534702(P2012−534702)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065876
【国際公開番号】WO2011/048184
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】