説明

生物学的障壁を横切る透過を促進し得る組成物

本発明は、疎水性媒体中に浸漬された、水溶性組成物に含まれた1つ以上のエフェクターを含む、新規の透過性組成物に関する。本発明はまた、罹患した被験体にこのような透過性組成物を投与することによって、疾患を処置または予防する方法に関する。本発明は、水溶性組成物中に含まれる治療有効量の少なくとも1つのエフェクターを含む組成物であって、該水溶性組成物が、少なくとも1つの膜流動化剤とともに疎水性媒体中に浸漬され、かつ、該組成物が、該少なくとも1つのエフェクターを、生物学的障壁を通って効率的に転位させる能力がある、組成物、を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的障壁を横切るエフェクターの効率的な転位を可能にする新規の透過組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的障壁を横切って目的の物質の効率的な移動を可能にする技術は、バイオテクノロジーの分野においてかなりの興味が持たれている。例えば、このような技術は,密着結合により調節される生物学的障壁(すなわち、腸管上皮および呼吸上皮を含む粘膜上皮、ならびに血液脳関門を含む脈管上皮)を横切る、種々の異なる物質の輸送のために用いられ得る。
【0003】
腸管上皮は、経口的に投与される化合物(例えば、薬物およびペプチド)の体循環への吸収に対する主要な障壁の役割を果たす。この障壁は、単層の円柱上皮細胞(主に、腸細胞、杯状細胞、内分泌細胞、およびパネート細胞)から構成され、これらの細胞は、密着結合によりその先端面で結合される。Madaraら、PHYSIOLOGY OF THE GASTROINTESTINAL TRACT;第2版、Johnson編、Raven Press,New York,1251−66頁(1987)を参照のこと。
【0004】
腸管腔中に存在する化合物は、能動輸送もしくは促進輸送、受動的な細胞間輸送、または受動的な傍細胞輸送を介して血流に入り込み得る。能動輸送または促進輸送は、細胞キャリアを介して起こり、タンパク質や糖のような複合分子の低分子量分解産物(例えば、アミノ酸、五炭糖、および六炭糖)の輸送に限定される。受動的な経細胞輸送は、頂端膜および側底膜の両方を通る分子の隔壁を必要とする。このプロセスは、比較的小さい疎水性化合物に限定される。Jackson,PHYSIOLOGY OF THE GASTROINTESTINAL TRACT;第2版、Johnson編、Raven Press,New York,1597−1621頁(1987)を参照のこと。結果として、能動機構または促進機構によって輸送されるこれらの分子を例外として、より大きく、より親水性の分子の吸収は、大部分は傍細胞経路に限定される。しかし、傍細胞経路を介する分子の侵入は、主に密接結合の存在により制限される。Gumbiner,Am.J.Physiol.,253:C749−C758(1987);Madara,J.Clin.Invest.,83:1089−94(1989)を参照のこと。
【0005】
密接結合を「緩める」ことにより傍細胞輸送を増大させる方法を見出すことに、かなりの注目が向けられてきた。傍細胞輸送への制限を克服するための1つのアプローチは、生物学的に活性な成分を吸収増強剤とともに混合して共投与することである。一般に、腸管/呼吸器の吸収促進剤としては、カルシウムキレート剤(例えば、クエン酸塩およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA));界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、胆汁酸塩、パルミトイルカルニチン、および脂肪酸のナトリウム塩)が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、カルシウムをキレート化することにより密接結合を崩壊させることが知られているEDTAは、嚢胞性線維症を有する患者における気道呼吸上皮への遺伝子輸送の効率を高める。非特許文献1を参照のこと。しかし、これらの方法の全てに対する1つの欠点は、これらの方法が、胃腸内腔または気道内腔に偶然存在する任意の隣接する分子の無差別な透過を促進することである。さらに、これらの腸管/呼吸器の吸収促進剤の各々は、生物学的障壁を横切る種々の分子の吸収を促進する手段としてのこれらの一般的な有用性を制限する性質を有する。
【0006】
さらに、きつい界面活性剤を使用することで、これらの薬剤の強力な溶解性により、安全に関する懸念を生じる。具体的には、腸管上皮および呼吸上皮は、敵対的外部からの毒素、細菌およびウイルスの侵入に対する障壁を提供する。従って、界面活性剤を用いた上皮の剥離の可能性、ならびに上皮修復の増加により生じる潜在的な合併症が、腸管/呼吸器の吸収促進剤としての界面活性剤の使用についての安全上の懸念を生じる。
【0007】
カルシウムキレート剤が、腸管/呼吸器の吸収促進剤として用いられる場合、Ca+2欠乏は、密接結合に直接作用せず、むしろ細胞内の全体的な変化を誘導し、この変化としては、アクチンフィラメントの破壊、接着結合の破壊、細胞接着の低下、およびプロテインキナーゼの活性化が挙げられる。非特許文献2を参照のこと。さらに、代表的なカルシウムキレート剤は粘膜表面へのみアクセスし、管腔のCa+2濃度は変動し得るので、一般に、Ca+2レベルを低下させるのに十分な量のキレート剤を投与して、急速な、可逆性の、かつ再現可能な様式で密接結合の開放を誘導することはできない。
【0008】
さらに、Clostridium difficile毒素AおよびBのようないくつかの毒素は、傍細胞透過性を不可逆的に増大させるようであり、従って、密着結合複合体の破壊に関与する。非特許文献3;非特許文献4を参照のこと。コレラ菌閉塞帯毒素(ZOT)のような他の毒素は、細胞間密着結合の構造を調節する。結果として、非選択的様式においてはまだ、腸粘膜がより透過性になる。非特許文献5;特許文献1を参照のこと。この操作はまた、下痢を引き起こし得る。
【0009】
生物活性ペプチドおよびタンパク質の経口送達は、苛酷な胃腸環境に影響を受けやすく、酵素分解および化学変性を生じるため、特に注目を集めてきた。種々の薬物送達ビヒクル、とりわけ、リポソーム、脂質ナノ粒子またはポリマーナノ粒子、およびマイクロエマルジョンが用いられてきた。これらの薬物送達ビヒクルは、主にそれらが提供する保護作用によって、特定の薬物の経口バイオアベイラビリティを改善している。しかしながら、これらのビヒクルは、上皮性関門の不浸透性の性質を解決しない。従って、最適な薬物について、吸収は5%を超えず、最小限の治療の目的を達成できない。
【0010】
従って、ポリペプチド、高分子薬物および他の治療剤のような大きな生物活性分子の送達のために種々の生物学的障壁を標的化する、効率的な、特異的な、非侵襲性の、低リスクの手段の必要性が残っている。
【特許文献1】米国特許第5,827,534号明細書
【非特許文献1】Wangら、Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.(2000)22:p.129−138
【非特許文献2】Citi,J.Cell Biol.(1992)117:p.169−178
【非特許文献3】Hechtら、J.Clin.Invest.(1988)82:p.1516−24
【非特許文献4】FiorentiniおよびThelestam,Toxicon(1991)29:p.543−67
【非特許文献5】Fasanoら、Proc.Nat.Acad.Sci.,USA(1991)8:p.5242−46
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明は、生物学的障壁に不浸透性の治療的活性分子(すなわち、エフェクター)を、このような分子を水溶性組成物中に含むことによって、効率的に転位させるための組成物を提供する。1つの実施形態において、水溶性組成物は、疎水性媒体中に浸漬され得る。あるいは、水溶性溶液をまず凍結乾燥し、次いで、疎水性媒体中に懸濁し得る。本発明はまた、生物学的障壁を横切る前記少なくとも1つのエフェクターの転位を増強させるための、膜流動化剤の使用に関する。
【0012】
「有効な転位」または「効率的な転位」とは、本明細書中で使用される場合、組成物を生物学的障壁に導入し、その結果、生物学的障壁を横切るエフェクターの転位を、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、さらにより好ましくは少なくとも20%生じることを意味する。
【0013】
本明細書中で使用される場合、「透過組成物」は、少なくとも1つの膜流動化剤を用いて、生物学的障壁を横切る物質(例えば、少なくとも1つのエフェクター)の有効な転位を促進する、疎水性媒体中に浸漬された水溶性組成物の任意の組成物を含む。用語「水溶性組成物」とは、本明細書中で使用される場合、親水性または部分的に親水性の溶媒中に可溶化され得る組成物をいう。親水性または部分的に親水性の溶媒は、水、またはモノアルコール、ジアルコール、もしくはトリアルコールのような非水溶媒からなり得る。適切なモノアルコールの例としては、エタノール、プロパノール、イソプロパノールおよびブタノールが挙げられるが、これらに限定されない。ジアルコールの例としては、プロピレングリコールが挙げられるが、これに限定されない。トリアルコールの例としては、グリセロールが挙げられるが、これに限定されない。
【0014】
本発明の方法および組成物によれば、水溶性組成物は、疎水性媒体中に浸漬される。あるいは、水溶性溶液は、まず凍結乾燥され、次いで、疎水性媒体中に懸濁される。疎水性媒体は、脂肪族分子、環状分子、または芳香族分子からなり得る。適切な脂肪族疎水性媒体の例としては、鉱油(例えば、パラフィン)、脂肪酸、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、エーテル、およびエステルが挙げられる。トリグリセリドの例としては、長鎖脂肪酸トリグリセリド、中鎖脂肪酸トリグリセリド、および短鎖脂肪酸トリグリセリドが挙げられる。例えば、長鎖脂肪酸トリグリセリドはヒマシ油であり得、そして短鎖脂肪酸トリグリセリドはグリセリルトリブチレートであり得る。適切な環状の疎水性媒体の例としては、テルペノイド、コレステロール、コレステロール誘導体(例えば、コレステロール硫酸)および脂肪酸のコレステロールエステルが挙げられるが、これらに限定されない。芳香族疎水性媒体の例としては、ベンジルベンゾエートが挙げられるが、これに限定されない。
【0015】
透過組成物には、膜流動化剤がさらに追加される。用語「膜流動化剤」とは、本明細書中で使用される場合、流動性を増加させ、かつ、生体膜中の脂質のオーダーを減少させる分子をいう。例えば、膜流動化剤は、直鎖アルコール、分枝鎖アルコール、環状アルコール、または芳香族アルコールであり得る。適切な直鎖アルコールの例としては、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、およびドデカノールが挙げられるが、これらに限定されない。分枝鎖アルコールの例としては、ゲラニオールおよびフェイムソールが挙げられるが、これらに限定されない。環状アルコールの例としては、メントールが挙げられるが、これに限定されない。適切な芳香族アルコールの例としては、ベンジルアルコール、4−ヒドロキシ桂皮酸、およびフェノール化合物が挙げられるが、これらに限定されない。フェノール化合物の例としては、フェノール、m−クレゾール、およびm−クロロクレゾールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
本明細書中で使用される場合、用語「生物学的障壁」は、原形質膜のような生体膜、ならびに密着結合(または閉鎖結合)によって封鎖される任意の生物学的構造、例えば、粘膜上皮または血管上皮(胃腸上皮または呼吸上皮が挙げられるが、これらに限定されない)、および血液脳関門を含むことを意味する。さらに、上皮細胞または内皮細胞のような細胞を含む組織において、生物学的障壁を横切って転位が起こり得ることを当業者は認識する。
【0017】
本発明はまた、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤を含む透過組成物、またはその組み合わせを提供する。種々の実施形態において、本発明の組成物は、カプセル内に含まれ得るか、または錠剤、乳剤、クリーム、軟膏、坐薬またはスプレー式点鼻薬の形態をとり得る。
【0018】
透過組成物は、少なくとも1つのエフェクターを含む。この少なくとも1つのエフェクターは、核酸、グリコサミノグリカン、タンパク質、ペプチド、または薬学的に活性な因子、例えばホルモン、成長因子、内分泌物、神経栄養因子、抗凝血剤、生物活性分子、毒素、抗生物質、抗真菌薬、抗病原性薬剤、抗原、抗体、モノクローナル抗体、抗体フラグメント、可溶性レセプター、免疫調節薬、ビタミン、抗悪性腫瘍薬、酵素、性腺刺激ホルモン、サイトカイン、または他の治療薬が挙げられるが、これらに限定されない、治療的に活性な不透過性分子であり得る。例えば、不透過性化合物として作用するグリコサミノグリカンとしては、ヘパリン、ヘパリン誘導体、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、およびヒアルロン酸が挙げられるが、これらに限定されない。ヘパリン誘導体の例としては、エノキサパリン、ダルテパリン、チンザパリン、およびフォンダパリヌクスのような低分子ヘパリンが挙げられるが、これらに限定されない。不透過性分子として役立つ核酸としては、特定のDNA配列(例えば、コード遺伝子)、特定のRNA配列(例えば、RNAアプタマー、アンチセンスRNAまたは特定の抑制性RNA(RNAi))、ポリCpG、または核酸のポリI:C合成ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。他の適切なタンパク質としては、インスリン、エリトロポイエチン(EPO)、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)、メラニン細胞刺激ホルモン(αMSH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、副甲状腺ホルモンアミノ酸1−34(PTH(1−34))、成長ホルモン、ペプチドYYアミノ酸3−36(PYY(3−36))、カルシトニン、インターロイキン−2(IL−2)、α1−抗トリプシン、顆粒球/単球コロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、T20、抗TNF抗体、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、エンケファリン、ダラーギン(dalargin)、キョートルフィン、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、ヒルジン、ヒルログ、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アナログ、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、酢酸グラチラマー、および神経栄養因子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
適切なエフェクターとしてはまた、ビタミンB12、ビスホスホネート、タキソール、カスポファンギン、またはアミノグリコシド抗生物質からなる群より選択される、薬学的に活性な因子が挙げられる。
【0020】
本明細書中で使用される場合、「不透過性分子」は、生物学的障壁(例えば、細胞膜または密着結合)を効率的に横切ることのできない分子である。代表的には、本発明の不透過性分子は、分子量が200ダルトンよりも大きい分子である。アニオン性の不透過性分子は、好ましくは多糖(すなわち、グリコサミノグリカン、核酸、または正味の負電荷を持つタンパク質)であり、一方、カチオン性の不透過性分子は、好ましくは正味の正電荷を持つタンパク質である。
【0021】
タンパク質の正味電荷は、以下の2つの因子によって決定される:1)塩基性アミノ酸に対する酸性アミノ酸の総数、および2)正の残基または負の残基を露出する特定の溶媒pH環境。本明細書中で使用される場合、「正味の正電荷または正味の負電荷を持つタンパク質」は、非変性pH環境下で、正味の正電荷または正味の負電荷を持つタンパク質である。例えば、インターフェロンβは、23個の正に帯電した残基(リジンおよびアルギニン)、および18個の負に帯電した残基(グルタミン酸残査またはアスパラギン酸残査)を含むタンパク質である。したがって、中性または酸性のpH環境下では、インターフェロンβは、正味の正電荷を持つタンパク質を構成する。反対に、インスリンは、2つの正に帯電した残基、1つのリジンおよび1つのアルギニン、ならびに4つの負に帯電したグルタミン酸残基を含む、51アミノ酸のタンパク質である。従って、中性または塩基性のpH環境下では、インスリンは、正味の負電荷を持つタンパク質を構成する。一般に、すべてのタンパク質は、そのアミノ酸組成にかかわらず、そのpH環境および/または溶媒環境によって、「正味の負電荷を持つタンパク質」または「正味の正電荷を持つタンパク質」とみなされ得ることを当業者は認識する。例えば、異なる溶媒は、溶媒pHによって、負の側鎖または正の側鎖を露出し得る。
【0022】
本発明の水溶性組成物は、タンパク質構造の安定剤をさらに含み得る。「タンパク質構造の安定剤」とは、本明細書中で使用される場合、例えば、ポリカチオンの分子、ポリアニオンの分子、および非荷電ポリマーのような、水性または非水性条件下でタンパク質構造を安定化し得る任意の化合物をいう。タンパク質安定剤として機能し得るポリカチオンの分子の1つの例は、スペルミンのようなポリアミンである。タンパク質安定剤として機能し得るポリアニオンの分子の例としては、フィチン酸および硫酸化ショ糖(sucrose octasulfate)が挙げられるが、これらに限定されない。タンパク質安定剤として機能し得る非荷電ポリマーの非限定的な例としては、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールが挙げられる。
【0023】
本発明の水溶性組成物は、両親媒性の対イオンをさらに含み得る。対イオンとしては、例えば、アニオン性またはカチオン性の両親媒性分子が挙げられる。1つの実施形態において、本発明のアニオン性またはカチオン性の対イオンは、負に(アニオン性)または正に(カチオン性)帯電し、かつ疎水性部分を含み得るイオンである。適切な条件下では、アニオン性またはカチオン性の対イオンは、それぞれ、カチオン性またはアニオン性の不透過性分子と静電的相互作用を確立し得る。このような複合体の形成は、電荷中和を引き起こし得、それによって、対イオンが本来疎水性である場合には、疎水性をさらに有する、新しい非荷電体を生成する。
【0024】
企図されるカチオン性の対イオンとしては、ベンザルコニウム誘導体のような第4級アミン誘導体が挙げられる。適切な第4級アミンは、疎水性残基で置換され得る。一般に、本発明によって企図される第4級アミンは、以下の構造:1−R1−2−R2−3−R3−4−R4−N(式中、R1、2、3、または4は、アルキル誘導体またはアリール誘導体である)を有する。さらに、第4級アミンは、イミダゾリウム誘導体、ピリジニウム誘導体、ホスホニウム化合物またはテトラアルキルアンモニウム化合物のようなカチオンを形成するイオン液体であり得る。例えば、イミダゾリウム誘導体は、R1およびR2が炭素数1〜12の直鎖または分枝鎖アルキルである場合には、1−R1−3−R2−イミダゾリウムの一般構造を有する。このようなイミダゾリウム誘導体は、例えば、ハロゲンまたはアルキル基によってさらに置換され得る。具体的なイミダゾリウム誘導体としては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウム、1−メチル−3−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)−イミダゾリウム、1,3−ジメチルイミダゾリウム、および1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
R1が炭素数1〜12の直鎖または分枝鎖アルキルであり、R2がHあるいは炭素数1〜12の直鎖または分枝鎖アルキルである場合、ピリジニウム誘導体は、1−R1−3−R2−ピリジニウムの一般構造を有する。このようなピリジニウム誘導体は、例えばハロゲンまたはアルキル基によってさらに置換され得る。ピリジニウム誘導体としては、3−メチル−1−プロピルピリジニウム、1−ブチル−3−メチルピリジニウム、および1−ブチル−4−メチルピリジニウムが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中に記載されるカチオンを形成するイオン液体は、水溶性塩の構成要素でもあり得る。
【0026】
適切なアニオン性の対イオンは、カルボン酸アニオン、スルホン酸アニオンまたはホスホン酸アニオンのような、負に帯電した残基を有するイオンであり、さらに疎水性部分を含み得る。このようなアニオン性の対イオンの例としては、ドデシル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホサクシネートおよび有機酸から誘導される他のアニオン性の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
本発明の透過組成物はまた、界面活性剤を含み得る。適切な界面活性剤としては、イオン性および非イオン性の界面活性剤が挙げられる。イオン性の界面活性剤は、脂肪酸塩、レシチン、または胆汁酸塩であり得る。脂肪酸塩の例としては、オクタン酸ナトリウム、デカン酸ナトリウム、およびドデカン酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。非イオン性の界面活性剤の非限定的な例としては、クレモフォア、ポリエチレングリコール脂肪アルコールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、Solutol HS15、またはポロキサマーが挙げられる。ソルビタン脂肪酸エステルの例としては、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、およびソルビタンモノパルミテートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
本発明の透過組成物はまた、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、またはカーボポールのような粘着性ポリマーを含み得る。さらに、本発明の透過組成物はまた、モノグリセリドを含み得る。モノグリセリドの例としては、グリセリルモノオクタノエート、グリセリルモノデカノエート、グリセリルモノラウレート、グリセリルモノミリステート、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノパルミテート、およびグリセリルモノオレエートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
1つの実施形態において、本発明の透過組成物は、ヒマシ油などの植物油中、あるいは中鎖脂肪酸トリグリセリドまたはグリセリルトリブチラートとヒマシ油の混合物中のオクタノールおよびゲラニオールで浸漬されたスペルミン、ポリビニルピロリドン、およびドデカン酸ナトリウムとともに、少なくとも1つのエフェクターを含む。本組成物はさらに、ソルビタンモノパルミテートおよび/またはグリセリルモノオレエートおよび/またはメチルセルロースおよび/またはコレステロール硫酸を含み得る。
【0030】
本発明の透過組成物は、さらに保護剤を含み得る。保護剤の例は、プロテアーゼインヒビターである。本透過組成物に添加され得る適切なプロテアーゼインヒビターは、Bernkop−Schnurchら、J.Control.Release,52:1−16(1998)に記載される。これらのインヒビターとしては、例えば、アプロチニン、Bowman−Birkインヒビター、大豆トリプシンインヒビター、ニワトリオボムコイド、ニワトリオボインヒビター、ヒト膵臓トリプシンインヒビター、メシル酸カモスタット、フラボノイドインヒビター、アンチパイン、ロイペプチン、p−アミノベンズアミジン、AEBSF、TLCK、APMSF、DFP、PMSF、ポリ(アクリレート)誘導体、キモスタチン、ベンジルオキシカルボニル−Pro−Phe−CHO、FK−448、糖−ビフェニルボロン酸複合体、β−フェニルプルピオネート、エラスタチナール、メトキシスクシニル−Ala−Ala−Pro−Val−クロロメチルケトン(MPCMK)、EDTA、およびキトサン−EDTA結合体のような、管腔に分泌されるプロテアーゼのインヒビターが挙げられる。適切なプロテアーゼインヒビターとしてはまた、膜結合プロテアーゼのインヒビター(例えば、アミノ酸、ジ−およびトリペプチド、アマスタチン、ベスタチン、ピューロマイシン、バシトラシン、フォスフィン酸ジペプチドアナログ、α−アミノボロン酸誘導体、グリココール酸−Na、1,10−フェナントロリン、アシビシン、L−セリン−ボラート、チオルファン、およびホスホラミドン)が挙げられる。
【0031】
好ましい組成物は、例えば、腸溶錠およびゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセルを含み、これらは、活性成分と共に以下を含む:a)希釈剤(例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース、および/またはグリシン);b)プロテアーゼインヒビター(例えば、アプロチニンまたはトラジロール);c)潤滑剤(例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸、そのマグネシウム塩もしくはカルシウム塩、ポロキサマーおよび/またはポリエチレングリコール);錠剤についてはまた、d)結合剤(例えば、珪酸アルミニウムマグネシウム、デンプンペースト、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン);e)イオン性界面活性剤(例えば、ポロキサマー、Solutol HS15、クレモフォア、リン脂質および胆汁酸)、所望の場合、f)崩壊剤(例えば、デンプン、寒天、アルギン酸もしくはそのナトリウム塩、または発泡性混合物;ならびに/あるいはg)吸収剤、着色料、香料および甘味料。坐剤は、脂肪のエマルジョンまたは懸濁液から有利に調製される。これらの組成物は、滅菌され得、そして/またはアジュバント(例えば、保存剤、還元剤(例えば、NAC(N−アセチル−L−システイン))、安定剤、湿潤剤もしくは乳化剤、溶液プロモーター、浸透圧を調節するための塩および/もしくは緩衝剤)を含み得る。さらに、これらは、他の治療的に価値のある物質も含み得る。これらの組成物は、従来の混合、造粒、またはコーティング方法に従って調製され、そして約0.001〜75%、好ましくは、約0.01〜10%の活性成分を含む。
【0032】
これらの組成物は、以下からなる群より選択される、少なくとも2種の物質の混合物をさらに含み得る:非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤、粘着性ポリマー、モノグリセリド、プロテアーゼインヒビター、スルホヒドリル基状態変性剤、および酸化防止剤。例えば、非イオン性界面活性剤は、ポロキサマー、クレモフォア、ポリエチレングリコール脂肪アルコールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステルまたはSolutol HS 15であり得;イオン性界面活性剤は、脂肪酸塩であり得;粘着性ポリマーは、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)またはカーボポールであり得;モノグリセリドは、グリセリルモノオクタノエート、グリセリルモノデカノエート、グリセリルモノラウレート、グリセリルモノミリステート、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノパルミテート、またはグリセリルモノオレエートであり得;プロテアーゼインヒビターは、アプロチニン、Bowman−Birkインヒビター、大豆トリプシンインヒビター、ニワトリオボムコイド、ニワトリオボインヒビター、ヒト膵臓トリプシンインヒビター、メシル酸カモスタット、フラボノイドインヒビター、アンチパイン、ロイペプチン、p−アミノベンズアミジン、AEBSF、TLCK、APMSF、DFP、PMSF、ポリ(アクリレート)誘導体、キモスタチン、ベンジルオキシカルボニル−Pro−Phe−CHO、FK−448、糖−ビフェニルボロン酸複合体、β−フェニルプルピオネート、エラスタチナール、メトキシスクシニル−Ala−Ala−Pro−Val−クロロメチルケトン(MPCMK)、EDTA、キトサン−EDTA結合体、アミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、アマスタチン、ベスタチン、ピューロマイシン、バシトラシン、フォスフィン酸ジペプチドアナログ、α−アミノボロン酸誘導体、グリココール酸−Na、1,10−フェナントロリン、アシビシン、L−セリン−ボラート、チオルファン、およびホスホラミドンであり得;スルホヒドリル基状態変性剤は、N−アセチル−L−システイン(NAC)またはジアミドであり得;そして/または酸化防止剤は、トコフェロール、デテロキシムメシレート(deteroxime mesylate)、メチルパラベン、エチルパラベン、およびアスコルビン酸からなる群より選択され得る。
【0033】
本発明はまた、本発明の治療的または予防的に有効な量の組成物を含む1つ以上の容器を有するキットを提供する。
【0034】
本薬学的組成物を作製および使用する方法も、本発明の範囲内である。
【0035】
本発明はまた、本発明の組成物を用いて、生物学的障壁を横切って少なくとも1つのエフェクターを効率的に転位する方法に関する。例えば、少なくとも1つのエフェクターが水溶性組成物中に含まれ得、この水溶性組成物は、その後必要に応じて凍結乾燥され、本発明に従って疎水性媒体中に浸漬されて組成物を形成し、次いで、この組成物は生物学的障壁に導入され得、それによって、エフェクターを、生物学的障壁を横切って効率的に転位させる。
【0036】
また、疾患または病理学的状態を処置または予防するのに有効な量の本発明の組成物を、このような処置または予防が所望される被験体に投与することによって、その疾患または病理学的状態を処置または予防する方法も記載される。例えば、処置されるべき疾患または状態としては、以下が挙げられ得るがこれらに限定されない:内分泌障害(糖尿病、不妊症、ホルモン欠損症および骨粗鬆症を含む);眼科障害;神経変性障害(アルツハイマー病および他の痴呆の形態、パーキンソン病、多発性硬化症、ならびにハンティングトン病を含む);心臓血管障害(アテローム性動脈硬化症、凝固亢進状態および凝固低下状態、冠状動脈疾患、ならびに脳血管事象を含む);代謝障害(肥満およびビタミン欠乏症を含む);腎障害(腎不全を含む);血液学的障害(種々の要素の貧血を含む);免疫学的およびリウマチ学的障害(自己免疫性疾患、および免疫不全を含む);感染症(ウイルス、細菌、真菌および寄生虫感染症を含む);腫瘍性疾患;ならびに多因子性障害(不能症、慢性疼痛、うつ病、種々の線維症状態、および低身長を含む)。
【0037】
本明細書中に記載される活性化合物および塩の投与は、治療薬に認められた投与様式のいずれによって行なわれてもよい。これらの方法としては、経口、口腔、肛門、直腸、気管支、肺、経鼻、舌下腺、眼窩内、非経口、経皮、または局所の投与様式が挙げられる。
【0038】
また、本明細書中に記載される組成物を生成する方法も、本発明に含まれる。例えば、エフェクターを含む水溶性組成物は、親水性または部分的に親水性の溶媒中に溶解または懸濁され得、これは、膜流動化剤とともに疎水性媒体中にさらに浸漬され、それによって組成物を生成する。あるいは、エフェクター、またはエフェクター、タンパク質安定剤および/もしくは対イオンの任意の組み合わせを含む水溶性組成物は、一緒に凍結乾燥され得、次いで疎水性媒体中に膜流動化剤とともに懸濁され得る。一般に、水溶性組成物全体は、まず凍結乾燥され得、次いで、疎水性媒体中に懸濁され得る。組成物の他の成分もまた、必要に応じて凍結乾燥され得るか、または凍結乾燥された材料の再構成の間に添加され得る。
【0039】
ワクチン接種を必要とする被験体に、有効量の本発明の組成物(そのエフェクターは、ワクチン接種が所望される抗原を含む)を投与する工程を包含する、粘膜(すなわち、経口、経鼻、直腸、膣、または気管支)ワクチン接種の方法もまた提供される。1つの実施形態において、エフェクターは、炭疽に対するワクチンに用いる保護抗原(PA)であり得る。別の実施形態において、エフェクターは、B型肝炎に対するワクチンに用いるB型肝炎表面抗原(HBs)であり得る。
【0040】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の添付の記載に示されている。本明細書中に記載される方法および材料と類似または等価な、いかなる方法および材料も、本発明の実施または試験において使用され得るが、好ましい方法および材料が、次に記載される。本発明の他の特徴、目的、および利点は、本明細書および特許請求の範囲から明らかである。本明細書および添付の特許請求の範囲において、その文脈が明らかに別のものを指示しない限り、単数形は、複数の対象を含む。他に定義されなければ、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書中で引用される全ての特許および刊行物は、参考として援用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
(発明の詳細な説明)
本発明は、薬物および他の治療剤の生物学的障壁を横切る送達のために、種々の組織(特に、上皮細胞および内皮細胞を含む組織)を特異的に標的化する、透過のための組成物を提供する。当該分野で公知の既存の輸送系は、非常に制限されるので一般的な用途ではない。なぜなら、これらの系は非効率的であり、活性物質の生物学的特性を変更し、標的細胞に障害を生じさせ、生物学的障壁を不可逆的に破壊し、そして/またはヒト被験体において使用するには高すぎる危険性をもたらすからである。本発明の1つの実施形態において、組成物は、水溶性組成物中に不透過性エフェクターを膜流動化剤とともに含む。この複合体は、必要に応じて凍結乾燥され、次いで、疎水性媒体中に浸漬され得る。少なくとも1つのエフェクターを含む水溶性組成物またはその凍結乾燥物を疎水性媒体中に浸漬することにより、結果として、エフェクターおよび透過促進化合物の間の密接かつユニークな会合を生じ、それによって、かつて不透過性であったエフェクターが、生物学的障壁を横切って効率的に転位することが可能になる。本発明の組成物は、上皮性関門を横切って少なくとも5%(好ましくは10%、または20%)の少なくとも1つのエフェクターの転位を可能にするような、組成物の有効性によって規定され得る。この有効性は、当該分野で公知の他の組成物(代表的には、わずか約1〜3%のエフェクターの転位を可能にするにすぎない)の有効性よりも大きい。
【0042】
本発明の組成物は、生物学的障壁を横切るエフェクターの転位を選択的に可能にする。疎水性媒体は遮蔽としての機能を果たし、それによって、隣接する分子(例えば、タンパク質、毒素、または他の「バイスタンダー」分子)が少なくとも1つのエフェクターと共に生物学的障壁を通って同時転位するのを防ぐ。
【0043】
近年、多くの新薬(なかでも、ペプチドおよびタンパク質治療法)が開発され、かつ認可されてきている。他の多くの新薬が、臨床実験の進行段階にある。しかしながら、これらの急速に発展している治療薬にとって満足のいく送達系の開発は、遅れをとっている。これらの新規の薬物は、消化管吸収速度が非常に低く、かつ、これらの多くはインビボでの半減期が短いので、注入または頻繁な注射によるこれらの薬物の送達がしばしば必要になる。
【0044】
ナノおよびミクロ粒子を用いて、不十分に吸収された薬物の経口バイオアベイラビリティを増強するか、または粘膜免疫応答を誘導することに一部成功した。Adv.Drug Del.Rev.,34:221−233(1998)の中のDelieによる総説を参照のこと。ナノ粒子は、経口の薬物送達に有望なコロイド状の高分子薬物キャリアとして作製され得る。これらのポリマーの投薬形態は、組織への持続的かつ連続的な送達、分解系酵素に対するカプセル化および保護、ならびに部位特異的な送達を増強するという長所がある。巨大分子(例えば、ホルモン)は、高分子粒子の中に取り込まれている。経口ヘパリン負荷高分子ナノ粒子の評価については、Jiaoら、Circulation,105:230−235(2002)を参照のこと。
【0045】
新しい経口投薬形態の開発において、脂質ベースの系の開発に特に重点が置かれてきた。薬物の可溶化系および吸収促進系としてのマイクロエマルジョンの開発に、大きな焦点が当てられてきた。Pharm.Res.,11(10):1385−1390(1994)の中のConstantinidesらによる総説を参照のこと。
【0046】
一般に用いられるマイクロエマルジョンは、熱力学的に安定な分散物の1つの液相が別の液相中に入ったものであり、これは、少なくとも3つの成分(油、水、および界面活性剤)の組み合わせを含む。油中水(w/o)および水中油(o/w)の両方のマイクロエマルジョンが、薬物の経口バイオアベイラビリティを高めるために提案されている。これらのマイクロエマルジョンは、薬物可溶化および酵素加水分解に対する保護の改善、ならびに界面活性剤に誘導された膜透過性変化により得られる吸収の増強の可能性を提供する。例えば、油中水マイクロエマルジョン中のインスリンの経口放出および生物活性は、WatnasirichaikulらによってJ.Pharm.Pharm.,54:473−480(2002)に記載される。
【0047】
上記のように、本発明の透過組成物は、疎水性媒体中に浸漬された水溶性組成物中に少なくとも1つのエフェクターを含み、これは、生物学的障壁を横切る少なくとも1つのエフェクターの有効な転位を促進する。エマルジョンと異なり、水が処方物の本質的な構成要素である場合、水溶性組成物は本発明によれば、水中か、または例えばモノアルコール、ジアルコール、もしくはトリアルコールのような非水媒体中のいずれかに溶解され得る。さらに、本発明による水溶性組成物は、疎水性媒体中に懸濁する前に、凍結乾燥によって完全にエバポレートされ得る。
【0048】
さらに、油中水(w/o)および水中油(o/w)マイクロエマルジョンとは異なり、界面活性剤の使用が必須の場合、本発明の透過組成物は経口送達系を提供し、それによって界面活性剤の添加は任意である。
【0049】
適切な疎水性媒体は、例えば、脂肪族分子、環状分子、または芳香族分子を含み得る。適切な脂肪族疎水性媒体の例としては、鉱油(例えば、パラフィン)、脂肪酸、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、エーテル、およびエステルが挙げられるが、これらに限定されない。トリグリセリドの例としては、長鎖脂肪酸トリグリセリド、中鎖脂肪酸トリグリセリド、および短鎖脂肪酸トリグリセリドが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、長鎖脂肪酸トリグリセリドはヒマシ油であり得、そして短鎖脂肪酸トリグリセリドはグリセリルトリブチラートであり得る。適切な環状の疎水性媒体としては、テルペノイド、コレステロール、コレステロール誘導体(例えば、コレステロール硫酸)、および脂肪酸のコレステロールエステルが挙げられるが、これらに限定されない。芳香族疎水性媒体の非限定的な例としては、ベンジルベンゾエートが挙げられる。
【0050】
本発明によって企図される透過組成物の1つの例としては、水に溶解されたインスリンが挙げられ、これは、次いで凍結乾燥されて、ヒマシ油かまたはヒマシ油と中鎖脂肪酸トリグリセリド(「MCT」)もしくはグリセリルトリブチラートを組み合わせたものに浸漬される。例えば、オクタノールおよびゲラニオールのような膜流動化剤も、エフェクターの転位をさらに促進するために、疎水性媒体中に含まれ得る。
【0051】
さらなる実施形態において、本発明の組成物は、膜流動化剤を用いる。例えば、膜流動化剤は、直鎖アルコール、分枝鎖アルコール、環状アルコール、または芳香族アルコールであり得る。適切な直鎖アルコールの例としては、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、およびドデカノールが挙げられるが、これらに限定されない。分枝鎖アルコールの非限定的な例としては、ゲラニオールおよびファルネソールが挙げられる。環状アルコールの例としては、メントールが挙げられる。適切な芳香族アルコールの例としては、ベンジルアルコール、4−ヒドロキシ桂皮酸、およびフェノール化合物が挙げられる。フェノール化合物の例としては、フェノール、m−クレゾール、およびm−クロロクレゾールが挙げられる。
【0052】
上記のように、膜流動化剤は流動性を増加させ、生体膜中の脂質のオーダーを減少させる。この膜の動力学の変化は、蛍光性の膜プローブ(例えば、1,6−ジフェニル−1,3,5−ヘキサトリエン)の定常状態の異方性の減少によって検出され得る。n−アルコール、すなわちn−アルカノールは、公知の膜流動化剤である。その両親媒性に起因して、リン脂質の極性頭部の近くにあるヒドロキシル部分と、リン脂質の脂肪アシル鎖の間に介在する脂肪族鎖とに、膜脂質二重層を区分する。アルカノールの鎖長が大きいほど、より深部まで二重層を浸透するので、二重層のオーダーおよび動力学に対して様々な程度に影響を及ぼす。Zavoicoら、Biochim.Biophys Acta,812:299−312(1985)を参照のこと。
【0053】
特に、この文献は、膜流動性の誘導と傍細胞経路を増強する能力との間に何の相関関係も認められないので、膜流動化剤を使用せずに傍細胞輸送を増強させることを教示する。Ouyangら、J.Med.Chem.,45:2857−2866(2002)を参照のこと。
【0054】
別の実施形態において、本発明の組成物は、タンパク質構造の安定剤をさらに含む。上記のように、タンパク質構造の安定剤は、水性または非水性条件下でタンパク質構造を安定化する化合物である。タンパク質構造の安定剤は、フィチン酸および硫酸化ショ糖のようなポリアニオンの分子、またはスペルミンのようなポリカチオンの分子であり得る。ポリビニルピロリドン(polyniylpyrrolidone)およびポリビニルアルコールのような非荷電ポリマーもまた、適切な安定剤である。
【0055】
フィチン酸およびその誘導体は、数種のタンパク質に高い親和性で結合することが知られている生物活性化合物である。フィチン酸は、シクロヘキサン環に結合された6つのリン酸残基を含み、これによって、アルギニンの複数のグアニジニウム基に結合し得る。例えば、Filikovら、J.Comput.Aided Mol.Des.12:229−240(1998)を参照のこと。
【0056】
本明細書中に記載されるように、本発明の両親媒性の、カチオン性またはアニオン性の対イオンは、生物学的障壁を横切る少なくとも1つのエフェクターの有効な転位を可能にするかまたは促進するのに利用され得る。本発明のカチオン性の対イオンは、正に帯電し、さらに疎水性部分を含み得るイオンである。本発明のアニオン性の対イオンは、負に帯電し、さらに疎水性部分を含み得るイオンである。適切な条件下では、カチオン性またはアニオン性の対イオンは、それぞれ、アニオン性またはカチオン性の不透過性分子と静電的相互作用を確立し得る。このような複合体の形成は電荷中和を引き起こし得、それによって、対イオンが本来疎水性である場合には、疎水性をさらに有する、新しい非荷電体を生成する。
【0057】
本明細書中に記載される透過組成物の使用により、多種多様な治療分子の高い再現性、広範かつ簡単な適用が可能となり、そして、生物体の生物学的障壁を通る非常に効率的な送達が可能となる。従って、これらの組成物は、核酸を含む多くの巨大分子の効率的な送達のために、リポソームまたはウイルスのような従来の輸送体を改良する可能性を有する。本発明の方法は、水溶性組成物中に含まれるエフェクター(この水溶性組成物は、必要に応じて凍結乾燥され、続いて疎水性媒体中に浸漬される)を使用することによって、生物学的障壁を横切って巨大分子を効率的に輸送する透過組成物を生成する。
【0058】
本発明の組成物は、もとのままの生物活性物質(すなわち、エフェクター)の有効な、非侵襲性の送達を示すので、多くの用途がある。例えば、本発明の組成物は、糖尿病の処置に用いられ得る。血流中のインスリン値は、厳密に調節されなければならない。本発明の組成物は、インスリンを、例えば粘膜上皮を横切って、高収率で送達するのに用いられ得る。当該分野で既知の他の非侵襲性のインスリン送達方法は、代表的に1〜4%の収率を有し、かつ、吸収されるインスリンの量に容認し得ないばらつきを生じる。高血糖値のための別の処置としては、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)の使用が挙げられる。GLP−1は、食物注入の際に胃腸管中に内因的に分泌される、強力なホルモンである。GLP−1の重要な生理作用は、グルコース依存性の様式でインスリンの分泌を増大することにより、糖尿病状態の処置を可能にすることである。
【0059】
さらに、これらの組成物はまた、アテローム性動脈硬化症ならびに血栓および塞栓の形成(例えば、心筋梗塞および脳血管発作)によって生じる状態を処置するのに用いられ得る。具体的には、これらの組成物は、粘膜上皮を横切ってヘパリンまたは低分子量ヘパリンを送達するのに用いられ得る。ヘパリンは、確立された有効かつ安全な抗凝血剤である。しかしながら、ヘパリンの治療的用途は、非経口投与の必要性によって制限される。これまで、腸からのヘパリン吸収の増大の方向への成功は限られており、持続性の全身性抗凝血効果は達成されていない。
【0060】
本発明の組成物はまた、血液学的な成長因子の投与に影響を受けやすい血液病および欠乏状態を処置するのに用いられ得る。例えば、エリスロポエチンは、赤血球産生を促進する糖タンパク質である。エリスロポエチンは腎臓で産生され、骨髄中の赤血球前駆体の分裂および分化を促進する。一般に、低酸素症および貧血は、内因的にエリスロポエチンの産生を増加させ、次いで、エリスロポエチンが赤血球産生を促進する。しかしながら、慢性腎不全(CRF)の患者は、エリスロポエチンの産生に障害がある。このエリスロポエチン欠乏が、貧血の根本原因である。組換えEPOは、透析を受けている患者、ならびに定期的な透析を必要としない患者を含む、CRFの貧血症の患者における赤血球産生を促進する。EPOによって処置されるさらなる貧血状態としては、ジドブジン処置されたHIV感染患者、および化学療法を受けている癌患者が挙げられる。癌患者において観察される貧血は、疾患自体に関連し得るか、または同時に投与された化学治療薬の影響に関連し得る。
【0061】
貧血の別の広く知られた原因は、ビタミンB12の欠乏によって引き起こされる悪性貧血である。胃腸管におけるビタミンB12吸収の複雑な機構は、内因子の分泌および内因子への結合に関与する。このプロセスは、悪性貧血患者において異常があり、その結果、ビタミンB12吸収の欠如および貧血を生じる。本発明の透過組成物は、ビタミンB12を、粘膜上皮を横切って高収率で送達するのに用いられ得る。
【0062】
コロニー刺激因子は、特異的な細胞表面レセプターに結合して、増殖、分化、コミットメント、および一部の終末細胞の機能的活性化を促進することによって、造血細胞に作用する糖タンパク質である。顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)は、骨髄内の好中球の産生を調節し、好中球前駆細胞の増殖、分化および選択された終末細胞の機能的活性化(呼吸バーストに関与する細胞代謝、抗体依存性死滅、および細胞表面抗原に関与するいくつかの機能の発現の増加をプライムする、貪食能の増強を含む)に影響を及ぼす。癌患者において、組換え顆粒球コロニー刺激因子は、種々の化学療法レジメンを受けた後の好中球数の回復を加速させ、従って、危険な感染を予防するのに安全かつ有効であることが示されている。G−CSFはまた、骨髄移植後に投与された場合、骨髄回復を短縮し得る。
【0063】
本発明の組成物はまた、種々の徴候に対してモノクローナル抗体を投与するのに用いられ得る。例えば、腫瘍壊死因子(TNF)のシグナルをブロックする抗体の投与は、関節リウマチ(RA)、多関節性の若年性関節リウマチ(JRA)のような病的な炎症プロセス、ならびに結果として生じる関節病理を処置するのに用いられ得る。
【0064】
さらに、本発明の組成物は、骨粗鬆症を処置するのに用いられ得る。組換え副甲状腺ホルモン(PTH)の注射において生じるような、PTHへの間欠的な曝露により、副甲状腺機能亢進症で見られるような、増大したPTHレベルへの持続的な曝露によって誘導される周知の異化反応ではなく、同化の応答をもたらすことが最近示された。従って、PTHの非侵襲性の投与は、骨粗鬆症を含む種々の欠乏状態における骨質量の増加に有益である。Fox,Curr.Opin.Pharmacol.,2:338−344(2002)を参照のこと。
【0065】
現在のところ、エフェクターの送達(例えば、血流へのインスリン、エリスロポエチン、またはヘパリンの送達)は、静脈内注射または筋肉内注射のような侵襲性の技術を必要とする。本発明の組成物の1つの利点は、本発明の組成物が、例えば、経口、口腔、経鼻、直腸、吸入、吹送、経皮、または沈着を含む非侵襲性の投与によって、生物学的障壁を横切ってこのようなエフェクターを送達し得ることである。さらに、本発明の組成物のさらなる利点は、本発明の組成物が、血液脳関門を横切ることが可能であり得、それによって、エフェクターを中枢神経系(CNS)に送達し得ることである。
【0066】
本発明の組成物は、生物学的障壁、特に、密着結合によって封鎖された細胞を通過するかまたはこれらの細胞の間を横切る物質(例えば、エフェクター)の効率的な通過、転位、または透過を促進する。転位は、疎水性組成物中に組み込まれた放射活性タグ化プローブもしくは色素および/または蛍光プローブもしくは色素のような造影化合物と、例えば、Schilfgaardeら、Infect.and Immun.,68(8):4616−23(2000)に記載のパラサイトーシス(paracytosis)アッセイとの併用を含む、当業者に公知の任意の方法によって検出および定量化され得る。一般に、パラサイトーシスアッセイは、以下の工程により行われる:a)本発明に記載される組成物とともに細胞層をインキュベートする工程;b)細胞層の横断面を作製する工程;およびc)エフェクター、または本発明の組成物の任意の他の成分の存在を検出する工程。この検出工程は、固定細胞切片を本発明の組成物の成分に対する標識抗体とともにインキュベートし、続いて、成分と標識抗体との間の免疫反応を検出することによって実施され得る。あるいは、これらの組成物の成分は、成分の傍細胞部位を直接可視化するために、放射性標識、または蛍光標識もしくは色素を用いて標識され得る。さらに、バイオアッセイを用いて、組成物の転位をモニターし得る。例えば、組成物中に含まれるインスリンのような生物活性分子を用いて、血糖値の低下を測定し得る。
【0067】
「有効な転位」または「効率的な転位」とは、本明細書中で使用される場合、組成物を生物学的障壁に導入し、その結果、生物学的障壁を横切るエフェクターの転位を、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、さらにより好ましくは少なくとも20%生じることを意味する。
【0068】
本明細書中で使用される場合、用語「エフェクター」とは、例えば、生物学的因子、治療薬、医薬品、または診断用薬として機能する、任意の不透過性分子または化合物をいう。アニオン性の不透過性分子は、種々の起源に由来し、そして特に、ヒト、ウイルス、動物、真核生物または原核生物、植物、あるいは合成起源などに由来する、核酸(リボ核酸、デオキシリボ核酸)からなり得る。目的の核酸は、例えば単純な微量ヌクレオチドからゲノムフラグメントに及ぶ種々のサイズの核酸、または全ゲノムであり得る。この核酸は、ウィルスゲノムまたはプラスミドであり得る。
【0069】
あるいは、目的のエフェクターはまた、例えば、酵素、ホルモン、内分泌物、グリコサミノグリカン、サイトカイン、アポリポタンパク質、成長因子、生物活性分子、抗原、または抗体などのようなタンパク質であり得る。グリコサミノグリカンとしては、ヘパリン、ヘパリン誘導体、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、およびヒアルロン酸が挙げられるが、これらに限定されない。ヘパリン誘導体の例としては、エノキサパリン、ダルテパリン、チンザパリン、およびフォンダパリヌクスのような低分子ヘパリンが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中で使用される場合、用語「生物活性分子」は、生細胞、組織、または生物体全体からの応答に影響を及ぼすか、またはこのような応答を誘発する化合物をいう。生物活性分子の非限定的な例は、タンパク質である。生物活性分子の他の例としては、インスリン、エリスロポエチン(EPO)、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)、メラニン細胞刺激ホルモン(αMSH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、副甲状腺ホルモンアミノ酸1−34(PTH(1−34))、成長ホルモン、ペプチドYYアミノ酸3−36(PYY(3−36))、カルシトニン、インターロイキン−2(IL−2)、α−抗トリプシン、顆粒球/単球コロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、T20、抗TNF抗体、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、エンケファリン、ダラーギン、キョートルフィン、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、ヒルジン、ヒルログ、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アナログ、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、酢酸ガラティラメル、および神経栄養因子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
さらに、エフェクターは、例えば、毒素、治療薬、または抗病原体剤(例えば、抗生物質、抗ウイルス薬、抗真菌薬、または駆虫剤)のような、薬学的に活性な因子であり得る。目的のエフェクターは、それ自体が、直接活性であってもよく、あるいは組成物によって、別の物質によって、または環境要因によって、インサイチュで活性化されてもよい。適切な薬学的に活性な因子の例としては、ビタミンB12、ビスホスホネート、タキソール、カスポファンギン、またはアミノグリコシド抗生物質が挙げられる。
【0071】
用語「薬学的に活性な因子」および「治療薬」は、生物体に投与される場合、検出可能な薬理効果および/または生理的効果を誘導する化学物質または化合物をいうために、本明細書中で交換可能に用いられる。
【0072】
本発明による組成物は、これらの組成物の透過能が、組成物中に含まれるエフェクターの性質から実質的に独立しているという事実を特徴とする。
【0073】
本発明による「対イオン」としては、アニオン性またはカチオン性の両親媒性分子(すなわち、極性と無極性の両方のドメイン、または親水性と疎水性の両方の性質を有する分子)も含み得る。本発明のアニオン性またはカチオン性の対イオンは、負に(アニオン性)または正に(カチオン性)帯電し、かつ疎水性部分を含み得るイオンである。適切な条件下では、アニオン性またはカチオン性の対イオンは、それぞれ、カチオン性またはアニオン性の不透過性分子と静電的相互作用を確立し得る。このような複合体の形成は電荷中和を引き起こし得、それによって、対イオンが本来疎水性である場合には、疎水性をさらに有する、新しい非荷電体を生成する。
【0074】
適切なアニオン性の対イオンは、カルボン酸アニオン、スルホン酸アニオンまたはホスホン酸アニオンのような負に帯電した残基を有するイオンであり、さらに疎水性部分を含み得る。このようなアニオン性の対イオンの例としては、ドデシル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホサクシネート、および有機酸から誘導される他のアニオン性化合物が挙げられる。
【0075】
イオン液体は、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオンのようなカチオン、およびBF、PFのようなアニオンからなる塩であり、比較的低温で液体である。イオン液体は、特徴的に、広範囲の温度領域にわたって液体状態にあり、高いイオン伝導率を有する。イオン液体が反応溶媒として用いられる場合、溶質はイオンのみによって溶媒和され、従って、水または通常の有機溶媒が用いられる場合とは全く異なる環境を作り出す。これによって高選択性が可能になり、これらの用途は着実に拡大している。
【0076】
適切なカチオン性の対イオンとしては、第4級アミン誘導体(例えば、ベンザルコニウム誘導体または他の第4級アミン)が挙げられ、これは疎水性残基で置換され得る。一般に、本発明によって企図される第4級アミンは、以下の構造を有する:1−R1−2−R2−3−R3−4−R4−N(式中、R1、R2、R3、またはR4は、アルキまたはアリール誘導体である)。さらに、第4級アミンは、例えばイミダゾリウム誘導体、ピリジニウム誘導体、ホスホニウム化合物またはテトラアルキルアンモニウム化合物のような、カチオンを形成するイオン液体であり得る。
【0077】
例えば、イミダゾリウム誘導体は、1−R1−3−R2−イミダゾリウムの一般構造(式中、R1およびR2は、炭素数1〜12の直鎖または分枝鎖アルキルであり得る)を有する。このようなイミダゾリウム誘導体は、例えばハロゲンまたはアルキル基でさらに置換され得る。特定のイミダゾリウム誘導体としては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウム、1−メチル−3−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)−イミダゾリウム、1,3−ジメチルイミダゾリウム、および1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
ピリジニウム誘導体は、1−R1−3−R2−ピリジニウム(式中、R1は、炭素数1〜12の直鎖または分枝鎖アルキルであり、そしてR2は、Hまたは炭素数1〜12の直鎖もしくは分枝鎖アルキルである)の一般構造を有する。このようなピリジニウム誘導体は、例えばハロゲンまたはアルキル基でさらに置換され得る。ピリジニウム誘導体としては、3−メチル−1−プロピルピリジニウム、1−ブチル−3−メチルピリジニウム、および1−ブチル−4−メチルピリジニウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
本発明の透過組成物は、界面活性剤をさらに含み得る。上記のように、適切な界面活性剤としては、イオン性および非イオン性界面活性剤が挙げられる。イオン性界面活性剤の例は、脂肪酸塩、レシチン、および胆汁酸塩である。脂肪酸塩の例は、オクタン酸ナトリウム、デカン酸ナトリウム、およびドデカン酸ナトリウムである。非イオン性界面活性剤の例としては、クレモフォア、ポリエチレングリコール脂肪アルコールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、Solutol HS15、またはポロキサマーが挙げられる。ソルビタン脂肪酸エステルの例としては、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、およびソルビタンモノパルミテートが挙げられる。
【0080】
本発明の透過組成物はまた、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、またはカーボポールのような粘着性ポリマーも含み得る。このような粘着性ポリマーは、処方物の統合を補助し、かつ/または処方物の粘膜表面への付着を補助し得る。さらに、本発明の透過組成物はまた、モノグリセリドを含み得る。モノグリセリドの例としては、グリセリルモノオクタノエート、グリセリルモノデカノエート、グリセリルモノラウレート、グリセリルモノミリステート、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノパルミテート、およびグリセリルモノオレエートが挙げられる。
【0081】
本発明の透過組成物は、さらに保護剤を含み得る。保護剤の例は、プロテアーゼインヒビターである。本透過組成物に添加され得る適切なプロテアーゼインヒビターは、Bernkop−Schnurchら、J.Control.Release,52:1−16(1998)に記載される。これらのインヒビターとしては、例えば、アプロチニン、Bowman−Birkインヒビター、大豆トリプシンインヒビター、ニワトリオボムコイド、ニワトリオボインヒビター、ヒト膵臓トリプシンインヒビター、メシル酸カモスタット、フラボノイドインヒビター、アンチパイン、ロイペプチン、p−アミノベンズアミジン、AEBSF、TLCK、APMSF、DFP、PMSF、ポリ(アクリレート)誘導体、キモスタチン、ベンジルオキシカルボニル−Pro−Phe−CHO、FK−448、糖−ビフェニルボロン酸複合体、β−フェニルプルピオネート、エラスタチナール、メトキシスクシニル−Ala−Ala−Pro−Val−クロロメチルケトン(MPCMK)、EDTA、およびキトサン−EDTA結合体のような、管腔に分泌されるプロテアーゼのインヒビターが挙げられる。適切なプロテアーゼインヒビターとしてはまた、膜結合プロテアーゼのインヒビター(例えば、アミノ酸、ジ−およびトリペプチド、アマスタチン、ベスタチン、ピューロマイシン、バシトラシン、フォスフィン酸ジペプチドアナログ、α−アミノボロン酸誘導体、グリココール酸−Na、1,10−フェナントロリン、アシビシン、L−セリン−ボラート、チオルファン、およびホスホラミドン)が挙げられる。
【0082】
また、本明細書中に記載される組成物を生成する方法も、本発明に含まれる。例えば、1つの実施形態において、エフェクターは、親水性または部分的に親水性の溶媒中に溶解または懸濁され得、これは、膜流動化剤とともに疎水性媒体中にさらに浸漬され、それによって、本発明で企図される組成物を形成する。あるいは、エフェクター、または水溶性組成物を形成するエフェクターとタンパク質安定剤の任意の組み合わせは、一緒に凍結乾燥され得、次いで疎水性媒体中に膜流動化剤とともに懸濁され得る。組成物の他の成分もまた、必要に応じて凍結乾燥され得るか、または凍結乾燥された材料の再構成の間に添加され得る。
【0083】
血液の循環におけるタンパク質の半減期を長くするために、タンパク質がさらに化学的に修飾され得ることは、当業者に周知である。非限定的な例として、ポリエチレングリコール(PEG)残基を、本発明のエフェクターに付着させ得る。生体分子とPEGの結合体化(ペグ化として公知のプロセス)は、タンパク質の循環半減期を増加させる確立した方法である。ポリエチレングリコールは、流体力学的体積が大きいので、ペグ化分子の周りにシールドを作り、それによって、ペグ化分子を腎クリアランス、酵素分解、ならびに免疫系の細胞による認識から保護する、無毒の水溶性ポリマーである。
【0084】
「親」分子の生物活性と同じであるかまたはそれよりも大きい生物活性を有するペグ化分子(例えば、薬物、タンパク質、薬剤、酵素など)を生成するために、薬剤特異的なペグ化の方法が、近年用いられている。これらの薬剤は、ペグフィルグラスチムのクリアランスの自己調節、ペグ化インターフェロンアルファ−2aの吸収半減期の延長などの、別個のインビボにおける薬物動態学的および薬力学的特性を有する。ペグ化分子は、患者にとってより簡便でありかつより受容可能な服薬スケジュールを有し、患者の生活の質に有益な効果を有し得る。(例えば、Yowell S.L.ら、Cancer Treat Rev 28、補遺A:3−6(2002年4月)を参照のこと)。
【0085】
本発明はまた、生物学的障壁と、この障壁を通って効率的な透過を可能にするのに十分な量の本発明の組成物とを接触させる方法を含む。本発明の組成物は、インビトロで、エキソビボで、またはインビボで、提供され得る。さらに、本発明による組成物は、含まれる物質の生物活性を改善することが可能であり得る。従って、本発明の別の目的は、エフェクターの生物活性を増大するために組成物を用いる方法である。
【0086】
本発明はまた、透過組成物のエフェクターに加えて、薬学的に受容可能な塩基または酸付加塩、水和物、エステル、溶媒和化合物、プロドラッグ、代謝物質、立体異性体、またはその混合物を提供する。本発明はまた、薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤、プロテアーゼインヒビター、界面活性剤、または賦形剤と関連して透過組成物を含む、薬学的処方物を含む。界面活性剤としては、例えば、ポロキサマー、Solutol HS15、クレモフォア、リン脂質、または胆汁酸/塩が挙げられる。
【0087】
用語「薬学的に受容可能な塩」に包含される塩は、本発明の化合物の無毒な塩をいい、これらの塩は、一般に、遊離塩基を適切な有機もしくは無機の酸または溶媒と反応させて、本明細書中に記載される化合物の「薬学的に受容可能な酸付加塩」を生成することによって調製される。これらの化合物は、遊離塩基の生物学的効果および特性を保持する。このような塩の代表的な例としては、例えば、アセテート、アンソナート(4,4−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホネート)、ベンゼンスルホネート、ベンゾアート、バイカーボネート重炭酸塩、重硫酸塩、酒石酸水素塩、ボラート、ブロミド、ブチラート、エデト酸カルシウム、カンシラート、カーボネート、クロリド、シトレート、クラブラリアート(clavulariate)、二塩化水素化物、エデト酸塩、エジシラート、エストレート、エシレート、フマレート、グルセプテート、グルコナート、グルタメート、アルサニル酸グリコリル、ヘキサフルオロホスフェート、レゾルシン酸ヘキシル、ヒドラバミン、ヒドロブロミド、ハイドロクロライド、ヒドロキシナフトアート、ヨウ化物、イソチオネート、ラクテート、ラクトビオナート、ラウレート、マレート、マレアート、マンデラート、メシレート、臭化メチル、硝酸メチル、硫酸ジメチル、粘液酸、ナプシラート、ナイトレート、N−メチルグルカミンアンモニウム塩、3−ヒドロキシ−2−ナフトアート、オレアート、オキサレート、パルミテート、パモエート(1,1−メチレン−ビス−2−ヒドロキシ−3−ナフトアート、エンボナート)、パントテナート、ホスフェート/ジホスフェート、ピクラート、ポリガラクツロン酸塩、プロピオネート、p−トルエンスルホネート、サリチレート、ステアレート、塩基性酢酸塩、スクシナート、スルフェート、スルホサリチラート(sulfosaliculate)、スラマート(suramate)、タンナート、タルトレート、テオクラート、トシラート、トリエチオジド、および吉草酸塩のような、水溶性および不水溶性の塩が挙げられる。
【0088】
本発明の方法によれば、患者(すなわち、ヒトまたは動物)は、薬理学的または治療的に有効な量の本発明の組成物で処置され得る。本明細書中で使用される場合、用語「薬理学的または治療的に有効な量」とは、研究者または臨床医によって探求される組織、系、動物またはヒトの生物学的応答または医学的応答を誘発する薬物または医薬品(エフェクター)の量を意味する。
【0089】
本発明はまた、生物学的障壁を横切って目的のエフェクターを導入するのに適した薬学的組成物を含む。これらの組成物は、好ましくは内服に適し、薬理学的に活性な本発明の化合物の有効量を、単独か、または1つ以上の薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて含む。これらの化合物は、たとえあったとしても非常に低い毒性を有するという点で、特に有用である。
【0090】
好ましい薬学的組成物は、腸溶性の錠剤およびゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース(「HPMC」)カプセルであり、活性成分と共に以下を含む:a)希釈剤(例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび/またはグリシン);b)プロテアーゼインヒビター(アプロチニン、Bowman−Birkインヒビター、大豆トリプシンインヒビター、ニワトリオボムコイド、ニワトリオボインヒビター、ヒト膵臓トリプシンインヒビター、メシル酸カモスタット、フラボノイドインヒビター、アンチパイン、ロイペプチン、p−アミノベンズアミジン、AEBSF、TLCK、APMSF、DFP、PMSF、ポリ(アクリレート)誘導体、キモスタチン、ベンジルオキシカルボニル−Pro−Phe−CHO;FK−448、糖−ビフェニルボロン酸複合体、β−フェニルプルピオネート、エラスタチナール、メトキシスクシニル−Ala−Ala−Pro−Val−クロロメチルケトン(「MPCMK」)、EDTA、キトサン−EDTA結合体、アミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、アマスタチン、ベスタチン、ピューロマイシン、バシトラシン、フォスフィン酸ジペプチドアナログ、α−アミノボロン酸誘導体、グリココール酸−Na、1,10−フェナントロリン、アシビシン、L−セリン−ボラート、チオルファン、およびホスホラミドンが挙げられるが、これらに限定されない);c)潤滑剤(例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸、そのマグネシウム塩もしくはカルシウム塩、ポロキサマーおよび/またはポリエチレングリコール);錠剤についてはまた、d)結合剤(例えば、珪酸アルミニウムマグネシウム、デンプンペースト、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン);所望の場合、e)崩壊剤(例えば、デンプン、寒天、アルギン酸もしくはそのナトリウム塩、または発泡性混合物;ならびに/あるいはf)吸収剤、着色料、香料および甘味料。これらの組成物は、滅菌され得、そして/またはアジュバント(例えば、保存剤、安定剤、湿潤剤もしくは乳化剤)、溶液プロモーター、浸透圧を調節するための塩および/もしくは緩衝剤を含み得る。さらに、これらは、他の治療的に価値のある物質も含み得る。これらの組成物は、それぞれ、従来の混合、造粒、またはコーティング方法に従って調製され、そして約0.001〜75%、好ましくは、約0.01〜10%の活性成分を含む。
【0091】
本明細書中に記載される活性化合物および塩の投与は、治療薬に認められた投与様式のいずれによって行なわれてもよい。これらの方法としては、経口、口腔、肛門、直腸、気管支、肺、経鼻、舌下腺、眼窩内、非経口、経皮、または局所の投与様式が挙げられる。本明細書中で使用される場合「非経口」とは、消化管以外のある経路を介して、例えば、皮下に、筋肉内に、眼窩内に(すなわち眼窩の中に、または眼球の後ろに)、嚢内に、脊髄内に、胸骨内に(intrasternally)、あるいは静脈内に投与される注射剤をいう。
【0092】
意図される投与様式によって、組成物は、固体、半固体または液体の投薬形態(例えば、錠剤、乳剤、クリーム、軟膏剤、坐剤、丸薬、徐放性カプセル、散剤、液体、懸濁液、スプレー、エアロゾルなど)であり得、好ましくは単位投薬であり得る。これらの組成物は、有効量の活性化合物またはその薬学的に受容可能な塩を含み、さらに、薬学で慣習的に用いられるような、任意の従来の薬学的賦形剤および他の医学または薬学の薬物もしくは薬剤、キャリア、アジュバント、希釈剤、プロテアーゼインヒビターなども含み得る。
【0093】
固形組成物については、医薬品等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどを含む賦形剤が用いられ得る。上に規定された活性化合物はまた、キャリアとして、例えばポリアルキレングリコール(例えば、プロピレングリコール)を用いて、坐剤として処方されてもよい。
【0094】
液体組成物は、例えば、溶解、分散、乳化などを行うことによって調製され得る。活性化合物は、例えば、水、生理食塩水、水性デキストロース、グリセロール、プロピレングリコール、エタノールなどのような薬学的に純粋な溶媒中に溶解されるか、またはこのような溶媒と混合されることによって、溶液または懸濁液を形成する。
【0095】
所望であれば、投与される薬学的組成物はまた、少量の無毒な補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、および他の物質(例えば、酢酸ナトリウム、オレイン酸トリエタノールアミンなど)を含んでもよい。
【0096】
当業者は、本発明の透過組成物が、粘膜ワクチン接種(すなわち、エフェクターとして役立つ、ワクチン接種が所望される抗原を含む、経口、経鼻、直腸、膣、または気管支ワクチン)にも用いられ得ることを認識する。このようなワクチンは、所望の抗原配列を含む組成物(炭疽菌の保護抗原(PA)成分、またはB型肝炎のB型肝炎表面抗原(HB)が挙げられるが、これらに限定されない)を含み得る。次いで、この組成物は、ワクチン接種を必要とする被験体に、経口的または経鼻的に投与され得る。粘膜ワクチン接種のための組成物は、ヒトおよび他の動物にも投与され得る。これらは一般に「被験体」または「患者」と呼ばれる。このような動物としては、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ニワトリのような家畜、ならびにまたネコ、イヌ、および獣医医療を受ける任意の他の動物が挙げられる。
【0097】
「抗原」は、免疫応答を刺激し得る分子または分子の一部であり、さらに動物またはヒトがその抗原のエピトープに結合し得る抗体を産生するのを誘導し得る。「エピトープ」は、主要組織適合複合体(「MHC」)分子に認識されかつ結合され得、そしてT細胞に認識され得るかまたは抗体に結合され得る、任意の分子の一部である。代表的な抗原は、1つまたは1つ以上のエピトープを有し得る。特異的認識は、抗原が、他の抗原によって惹起され得る多数の他の抗体とは反応せず、その抗原に対応するMHCおよびT細胞、または抗体と、選択性の高い様式で反応することを示す。
【0098】
ペプチドは、MHCに結合してT細胞に認識されるか、またはペプチド内に含まれる特異的エピトープの認識(または正確な適合)によって抗体に結合する場合、T細胞または抗体と「免疫学的に反応性」である。免疫学的反応性は、T細胞応答をインビトロで測定することによって、より詳細には、抗体結合の速度論によってか、または抗体もしくはT細胞応答が指向されるエピトープを含む公知のペプチドを拮抗剤として用いた結合の競合によって、決定され得る。
【0099】
ペプチドがT細胞と、または抗体と免疫学的に反応性であるか否かを決定するために用いられる技術は、当該分野で公知である。ペプチドは、インビトロアッセイおよびインビボアッセイによって、効力についてスクリーニングされ得る。このようなアッセイは、ペプチドを用いた動物(例えば、マウス、ウサギまたは霊長類)の免疫化、および得られた抗体力価の評価を用いる。
【0100】
このような抗体は、種々の病原体に対する防御の第一線としての機能を果たすので、対応する抗原に対する分泌抗体(IgA)の産生を惹起し得るワクチンも、本発明に含まれる。ワクチン接種は種々の方法(例えば、経口的に、局所的に、または非経口的に、すなわち、皮下に、腹腔内に、ウイルス感染によって、血管内に、など)で投与され得るが、粘膜ワクチン接種は、非侵襲性の投与経路の利点を有し、分泌抗体を得るための免疫化の好ましい手段である。
【0101】
本発明の組成物は、錠剤、カプセル剤(各々、持続放出性および徐放性処方物を含む)、丸薬、散剤、顆粒剤、エリキシル剤、チンキ剤、懸濁液、シロップ剤、クリーム、スプレー剤および乳剤のような経口投薬形態で投与され得る。本発明の組成物はまた、スプレー剤、ゲル剤、乳剤またはクリームのような経鼻投薬形態で投与され得る。
【0102】
化合物を利用する投薬レジメンは、患者のタイプ、種、年齢、体重、性別および病状;処置される状態の重症度;投与経路;患者の腎および肝機能;ならびに用いられる特定の化合物またはその塩を含む、種々の因子に従って選択される。通常の熟練した医師または獣医師であれば、状態の進行を抑制するか、対抗するかまたは阻止するのに必要な薬物の有効量を容易に決定しかつ処方し得る。
【0103】
本発明の経口投薬量は、指示された作用に用いられる場合、0.001、0.0025、0.005、0.01、0.025、0.05、0.1、0.25、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100.0、250.0、500.0または1000.0mgの活性成分を含む分割錠またはカプセルの形態で提供され得る。
【0104】
本発明の化合物は、1日1回の用量で投与されてもよく、あるいは1日の総投薬量を1日に2回、3回または4回の分割量で投与されてもよい。さらに、好ましい本発明の化合物は、適切なバッカルビヒクルを局所的に用いることによって口腔内投与の形態で、適切なエアロゾル剤または吸入剤によって気管支投与の形態で、適切な鼻腔内ビヒクルを局所的に用いることによって鼻腔内投与の形態で、あるいは当業者に周知の経皮パッチの形態を用いる経皮経路によって、投与され得る。経皮送達系の形態で投与されると、投薬の投与は、当然、投薬レジメンの間中、断続的ではなく連続的である。他の好ましい局所用の調製物としては、クリーム、軟膏剤、ローション剤、エアゾルスプレーおよびゲルが挙げられ、これらの調製物中の活性成分の濃度は、0.001%〜50%(w/wまたはw/v)の範囲で変動する。
【0105】
本明細書中に詳細に記載される化合物は、活性成分を形成し得、そして代表的には、意図される投与形態、すなわち、経口錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、シロップ剤などに対して適切に選択された、適切な薬学的希釈剤、賦形剤またはキャリア(本明細書中で「キャリア」材料とまとめて呼ばれる)と混合して、従来の薬務に合わせて投与される。
【0106】
例えば、錠剤またはカプセルの形態での経口投与については、活性な薬物成分は、エタノール、プロピレングリコール、グリセロール、水などのような経口の無毒の薬学的に受容可能な不活性キャリアと組み合わせられ得る。さらに、所望されるかまたは必要な場合、適切な結合剤、潤滑剤、プロテアーゼインヒビター、崩壊剤および着色剤も、混合物中に組み込まれ得る。適切な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、天然の糖、例えばグルコースまたはβ−ラクトース、コーン甘味料、天然および合成ゴム、例えばアラビアゴム、トラガカントゴムまたはアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポロキサマー、ポリエチレングリコール、ワックスなどが挙げられる。これらの投薬形態に用いられる潤滑剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。崩壊剤としては、非限定的に、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが挙げられる。
【0107】
本発明の化合物はまた、標的化可能な薬物キャリアとしての可溶性ポリマーと結合され得る。このようなポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ピラン共重合体、ポリヒドロキシプロピル−メタクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシエチルアスパナミドフェノール(polyhydroxyethylaspanamidephenol)、またはパルミトイル残基で置換されるポリエチレンオキシドポリリシンが挙げられる。さらに、本発明の化合物は、薬物の徐放を達成するのに有用な生分解性ポリマーのクラス(例えば、ポリ乳酸、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレートおよび架橋したかまたは両親媒性のヒドロゲルのブロックコポリマー)に結合され得る。
【0108】
上記組成物のいずれも、0.001〜99%、好ましくは0.01〜50%の活性化合物を活性成分として含み得る。
【0109】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態をより完全に説明するために示される。これらの実施例は、本発明の範囲(添付の特許請求の範囲によって規定される)の限定としていかなるようにも解釈されるべきではない。
【実施例】
【0110】
(実施例1 上皮性関門を横切るインスリンの有効な転位を可能にするための本発明の組成物の利用)
a)ラットにおける血糖値の測定:
本発明によって企図される組成物は、NaOHを含む再蒸留水(「DDW」)中に、ヒトインスリンをスペルミンおよびフィチン酸とともに溶解することによって調製した。次いで、この溶液を凍結乾燥し、そして鉱油、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)油およびヒマシ油の混合物中に、ドデカン酸ナトリウム(SD)、オクタノールおよびゲラニオールとともに懸濁した。成分および濃度を表1に詳述する。
【0111】
【表1】

8匹の雄性SDラット(175〜200g)を、実験前に18時間絶食させた。これらの動物を2群に分け、体重100g当たり85%ケタミン、15%キシラジンの溶液0.1mlで麻酔した。各調製物を筋肉内に(100μl/ラット、1.11IUのインスリンを含む)または直腸内に(100μl/ラット、2.8IUのインスリンを含む)のいずれかで投与した。直腸投与は、ソフトコーティングによって保護されたプラスチックのカニューレ(canule)を直腸の開口部を通して2cmの深さまで穏やかに挿入することによって行なった。投与後の種々の時間間隔で、尾の先端から採取した血液サンプル中の血糖値を測定した(図1を参照のこと)。
【0112】
図1に見られるように、組成物を直腸内に投与した後、グルコース値は徐々にかつ著しく低下し、これは、腸から血流中へのインスリン吸収を示している。
【0113】
b)ラットにおける血清インスリン値の測定:
組成物は、NaOHを含むDDW中に、ヒトインスリンをスペルミンおよびフィチン酸とともに溶解することによって調製した。次いで、この溶液を凍結乾燥し、そして鉱油、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)油およびヒマシ油の混合物中に、ドデカン酸ナトリウム(SD)、オクタノールおよびゲラニオールとともに懸濁した。成分および濃度を表2に詳述する。
【0114】
【表2】

8匹の雄性SDラット(175〜200g)を、実験前に18時間絶食させた。これらの動物を2群に分け、体重100g当たり85%ケタミン、15%キシラジンの溶液0.1mlで麻酔した。各調製物を筋肉内に(100μl/ラット、1.11IUのインスリンを含む)または直腸内に(100μl/ラット、2.8IUのインスリンを含む)のいずれかで投与した。直腸投与は、ソフトコーティングによって保護されたプラスチックのカニューレを直腸の開口部を通して2cmの深さまで穏やかに挿入することによって行なった。投与後の種々の時間間隔で、尾の先端から採取した血液サンプル中の血糖値を測定した。さらに、インスリンラジオイムノアッセイを行なって、血清中のインスリン値を評価した(表3を参照のこと)。
【0115】
【表3】

血糖値は、腸から血流中に吸収されるインスリンの量に関連して(すなわち、吸収されるインスリンの量に相関する量で)低下する。従って、この薬物送達系は、インスリン注射の必要性に置き換わることができ、それによって、糖尿病患者に効率的で、安全で、かつ簡便な投与経路を提供する。
【0116】
c)ブタにおける血糖値および血清インスリン値の測定:
組成物は、NaOHを含むDDW中に、ヒトインスリンをスペルミンおよびポリビニルピロリドン(PVP−40)、ドデカン酸ナトリウム(SD)およびメチルセルロース(MC−400)とともに溶解することによって調製した。次いで、この溶液を凍結乾燥し、そして中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)油およびヒマシ油にさらにソルビタンモノパルミテート(Span−40)を含む混合物中に、オクタノールおよびゲラニオールとともに懸濁した。成分および濃度を表4に詳述する。
【0117】
【表4】

6匹の雌性ミニブタ(45〜50kg)を、実験前に18時間絶食させた。これらの動物を2群に分け、体重1kg当たり66%ケタミン、33%キシラジンの溶液0.3mlで麻酔した。血液採取を容易にするために、上大静脈に経皮的にカニューレを挿入した。各調製物を筋肉内に(0.22IU/kgインスリン)または直腸内に(1.1IU/kgインスリン)のいずれかで投与した。直腸投与は、プラスチックシリンジを直腸の開口部を通して2cmの深さまで穏やかに挿入することによって行なった。投与後の種々の時間間隔で血糖値を測定し、そしてインスリンラジオイムノアッセイを行なって、血清中のインスリン値を評価した(表5を参照のこと)。
【0118】
【表5】

表5に見られるように、組成物を直腸内に投与した後、グルコース値は、血清インスリン値の上昇と同時に、徐々にかつ著しく低下し、これは、腸から血流中へのインスリン吸収を示している。
【0119】
d)ストレプトゾトシン誘導性の糖尿病ラットにおける血糖値および血清インスリン値の測定:
組成物は、ヒトインスリンを、NaOH、オクタノールおよびゲラニオールを含むDDW中に、スペルミン、ポリビニルピロリドン(PVP−40)、およびドデカン酸ナトリウム(SD)とともに溶解することによって調製した。次いで、この溶液を凍結乾燥し、そして中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)油およびヒマシ油にさらにソルビタンモノパルミテート(Span−40)、メチルセルロース(MC−400)、およびグリセリルモノオレエート(GMO)を含む混合物中に、さらなる量のオクタノールおよびゲラニオールとともに懸濁した。成分および濃度を表6に詳述する。成分および濃度を表6に詳述する。
【0120】
【表6】

6匹の雄性SDラット(200〜250g)の尾静脈にストレプトゾトシン(50mg/kg)を静脈注射することによって、インスリン依存性の糖尿病を誘導した。糖尿病状態を、ストレプトゾトシン注射の72時間後に、300〜400mg/dLの空腹時血糖値の測定によって確認した。
【0121】
5匹のこのような糖尿病ラットを、実験前に18時間絶食させた。これらの動物を2群に分け、体重100g当たり85%ケタミン、15%キシラジンの溶液0.1mlで麻酔した。各調製物を筋肉内に(100μl/ラット、0.56IUのインスリンを含む)または直腸内に(100μl/ラット、11.2IUのインスリンを含む)のいずれかで投与した。直腸投与は、ソフトコーティングによって保護されたプラスチックのカニューレを直腸の開口部を通して2cmの深さまで穏やかに挿入することによって行なった。投与後の種々の時間間隔で、尾の先端から採取した血液サンプル中の血糖値を測定した。さらに、インスリンラジオイムノアッセイを行なって、血清中のインスリン値を評価した(表7を参照のこと)。
【0122】
【表7】

表7に見られるように、組成物を直腸内に投与した後、グルコース値は、血清インスリン値の上昇と同時に、徐々にかつ著しく低下し、これは、腸から血流中へのインスリン吸収を示している。
【0123】
(実施例2 上皮性関門を横切るヘパリンの有効な転位を可能にするための本発明の組成物の利用)
本研究に用いられる組成物は、NaOHを含むDDW中に、分画されていないヒトヘパリンを、スペルミンおよびドデカン酸ナトリウムとともに溶解することによって調製した。次いで、この溶液を凍結乾燥し、そして中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)油およびヒマシ油にさらにソルビタンモノパルミテート(Span−40)、メチルセルロース(MC−400)、グリセリルモノオレエート、およびプルロニック(F−127)を含む混合物中に、オクタノールおよびゲラニオールとともに懸濁した。成分および濃度を表8に詳述する。
【0124】
【表8】

5匹の雄性CB6/F1マウス(9〜10週齢)を2群に分け、体重10g当たり85%ケタミン、15%キシラジンの溶液0.01mlで麻酔した。各調製物を腹腔内に(100μl/マウス、0.2mgのヘパリンを含む)または直腸内に(100μl/ラット、1mgのヘパリンを含む)のいずれかで投与した。直腸投与は、ソフトコーティングによって保護されたプラスチックのカニューレを1cmの深さまで直腸の開口部を通して穏やかに挿入することによって行なった。投与後の種々の時間間隔で、尾の先端からガラス毛細管中に採取した血液サンプル中の凝固時間を測定した(表9を参照のこと)。
【0125】
【表9】

凝固時間値は、腸から血流中に吸収されるヘパリンの量に関連して(すなわち、吸収されるヘパリンの量に相関する量で)増加する。従って、この薬物送達系は、ヘパリン注射の使用の代わりになる。
【0126】
実施例3 上皮性関門を横切るインターフェロンαの有効な転位を可能にするための本発明の組成物の利用。
【0127】
本発明によって企図される組成物は、NaOHを含むDDW中に、ヒトインターフェロンαを、スペルミン、ポリビニルピロリドン(PVP−40)およびドデカン酸ナトリウム(SD)とともに溶解することによって調製した。次いで、この溶液を凍結乾燥し、そして中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)油およびヒマシ油にさらにソルビタンモノパルミテート(Span−40)、メチルセルロース(MC−400)、およびグリセリルモノオレエート(GMO)を含む混合物中に、オクタノールおよびゲラニオールとともに懸濁した。成分および濃度を表10に詳述する。
【0128】
【表10】

6匹の雄性SDラット(175〜200g)を2群に分け、体重100g当たり85%ケタミン、15%キシラジンの溶液0.1mlで麻酔した。次いで、外頸静脈を、覆っている皮膚を取り除くことによって露出させた。これらの組成物を経鼻的に(25μl/ラット、2.5mcgのインターフェロン−αを含む)または直腸内に(50μl/ラット、5mcgのインターフェロン−αを含む)のいずれかで投与した。経鼻投与は、外鼻孔全体に組成物を塗布することによって行なった。直腸投与は、ソフトコーティングによって保護されたプラスチックのカニューレを直腸の開口部を通して2cmの深さまで穏やかに挿入することによって行なった。血液サンプルを、投与後の種々の時間間隔で、頚静脈から採取した(図2〜3を参照のこと)。ELISAイムノアッセイによるIFN−αの検出のために、血清を分析した。
【0129】
図2〜3に見られるように、IFN−αの経鼻および直腸投与のいずれによっても、血流中に高いIFN−α値をもたらし、これは、腸から血流中へのインターフェロン−α吸収を示している。
【0130】
比較として、各ラットに同量のIFN−αを用いた、リン酸緩衝生理食塩水中に溶解したIFN−αの直腸投与の結果も、図2に示す。これらの結果から、血流中にIFN−αは示されず、従って腸からの吸収は検出されない。
【0131】
(実施例4 上皮性関門を横切るGLP−1の有効な転位を可能にするための本発明の組成物の利用)
組成物は、NaOHを含むDDW中に、ヒトGLP−1を、スペルミン、ポリビニルピロリドン(PVP−40)、ドデカン酸ナトリウム、およびメチルセルロース(MC−400)とともに溶解することによって調製した。次いで、この溶液を凍結乾燥し、そして中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)油およびヒマシ油にさらにソルビタンモノパルミテート(Span−40)を含む混合物中に、オクタノールおよびゲラニオールとともに懸濁した。成分および濃度を表11に詳述する。コントロール組成物は、GLP−1無しで、上記のように調製した。
【0132】
【表11】

6匹の雄性SDラット(175〜200g)を、実験前に18時間絶食させた。これらの動物を3群に分け、各動物に、50%グルコース水溶液からの200mgのグルコースを強制経口投与した。10分後に、各調製物を腹腔内に(50μl/ラット、25mcgのGLP−1を含む)または直腸内に(200μl/ラット、100mcgのGLP−1を含む)のいずれかで投与した。直腸投与は、ソフトコーティングによって保護されたプラスチックのカニューレを直腸の開口部を通して2cmの深さまで穏やかに挿入することによって行なった。投与後の種々の時間間隔で、尾の先端から採取した血液サンプル中の血糖値を測定した(図4を参照のこと)。
【0133】
図4に見られるように、直腸内投与されたGLP−1は、非経口投与されたGLP−1と同程度に、コントロール動物において見られる血糖値の上昇を軽減し、これは、腸から血流中への吸収を示している。
【0134】
(実施例5 粘膜ワクチン接種のための組成物の利用)
粘膜ワクチン接種に用いられる組成物は、所望の抗原配列(すなわち、炭疽菌のPA抗原)、およびタンパク質安定剤(すなわち、スペルミンおよびフィチン酸)を含み、これを溶解し、次いで、ポリビニルピロリドンおよび界面活性剤(すなわち、ドデカン酸Na)のようなさらなる成分と一緒に凍結乾燥し、次いで、膜流動化剤(すなわち、オクタノールおよびゲラニオール)とともに、疎水性媒体(すなわち、MCT油またはグリセリルトリブチラートおよびヒマシ油の混合物)中に懸濁し得る。組成物のさらなる可能な成分が記載されている。このような組成物は、ワクチン接種を必要とする被験体に、経鼻投与または経口投与し得る。
【0135】
この方法により、簡単かつ迅速なワクチン接種が、それを必要とする多くの個体群に可能になる。この方法の別の利点は、高い力価のIgA抗体の産生、および抗原に曝露される部位である上皮粘膜にIgA抗体が引き続き存在することである。
【0136】
ワクチン接種の効力は、特異的抗体力価(特にIgAに対する)の測定によって、および刺激に対する免疫応答(例えば、抗原の皮下投与に対する皮膚過敏症反応による)の測定によって実証され得る。
【0137】
(他の実施形態)
本発明の特定の実施形態の以上の詳細な記載から、上皮性および内皮性の関門を横切るユニークな転位方法が記載されたことは明らかなはずである。特定の実施形態は、本明細書中に詳細に開示されたが、これは単に例示の目的で例としてなされたものであり、以下に添付の特許請求の範囲に関して限定することを意図するものではない。特に、特許請求の範囲によって規定されるような本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の置き換え、変更および改変が本発明に対してなされ得ることが、本発明者らによって企図されている。例えば、具体的なタイプの組織の選択、または転位される具体的なエフェクターは、本明細書中に記載される実施形態についての知識を有する当業者にとって日常的に扱う事項であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】図1は、本発明の透過組成物を用いて、ラットの腸を横切ってインスリンを転位させた結果として、血糖値が漸進的かつ顕著に低下したことを示す。調製物を筋肉内または直腸内のいずれかに投与し、その後、血糖値を種々の時間間隔で測定した。
【図2】図2は、本発明の透過組成物を用いて、ラットの腸を横切ってインターフェロンαを転位させた結果として、リン酸緩衝生理食塩水中のインターフェロンαのコントロール溶液と比較して、血流中に顕著な濃度のインターフェロンαが検出されたことを示す。調製物を直腸内に投与し、その後、血清サンプルを種々の時間間隔で採取した。
【図3】図3は、本発明の透過組成物を用いて、ラットの鼻粘膜を横切ってインターフェロンαを転位させた結果として、血流中に顕著な濃度のインターフェロンαが検出されたことを示す。調製物を経鼻的に投与し、その後、血清サンプルを種々の時間間隔で採取した。
【図4】図4は、本発明の透過組成物を用いて、腸を横切ってGLP−1を転位させた結果として、ラットにおける経口グルコースチャレンジに対する応答が減衰したことを示す。ラットに経口グルコース負荷を与え、次いで、調製物、およびGLP−1を含まないコントロール調製物を、腹腔内または直腸内のいずれかに投与し、その後、血糖値を種々の時間間隔で測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性組成物中に含まれる治療有効量の少なくとも1つのエフェクターを含む組成物であって、該水溶性組成物が、少なくとも1つの膜流動化剤とともに疎水性媒体中に浸漬され、かつ、該組成物が、該少なくとも1つのエフェクターを、生物学的障壁を通って効率的に転位させる能力がある、組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つのエフェクターの少なくとも5%が、前記生物学的障壁を横切って転位される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つのエフェクターの少なくとも10%が、前記生物学的障壁を横切って転位される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つのエフェクターの少なくとも20%が、前記生物学的障壁を横切って転位される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記水溶性組成物が、水、モノアルコール、ジアルコール、トリアルコール、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される親水性または部分的に親水性の溶媒中に可溶化される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記モノアルコールが、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ジアルコールが、プロピレングリコールである、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記トリアルコールがグリセロールである、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
前記疎水性媒体が、脂肪族分子、環状分子、芳香族分子、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記脂肪族疎水性媒体が、鉱油、パラフィン、脂肪酸、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、エーテル、およびエステルからなる群より選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記トリグリセリドが、長鎖トリグリセリド、中鎖トリグリセリド、短鎖トリグリセリド、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記トリグリセリドが、ヒマシ油である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記短鎖トリグリセリドが、グリセリルトリブチラートである、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記環状の疎水性媒体が、テルペノイド、コレステロール、コレステロール誘導体、および脂肪酸のコレステロールエステルからなる群より選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項15】
前記コレステロール誘導体が、コレステロール硫酸である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記芳香族疎水性媒体が、ベンジルベンゾエートである、請求項9に記載の組成物。
【請求項17】
前記膜流動化剤が、直鎖アルコール、分枝鎖アルコール、環状アルコール、芳香族アルコール、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記直鎖アルコールが、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記分枝鎖アルコールが、ゲラニオールまたはファルネソールである、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
前記環状アルコールが、メントールである、請求項17に記載の組成物。
【請求項21】
前記芳香族アルコールが、ベンジルアルコール、4−ヒドロキシ桂皮酸およびフェノール化合物からなる群より選択される、請求項17に記載の組成物。
【請求項22】
前記フェノール化合物が、フェノール、m−クレゾール、m−クロロクレゾール、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記少なくとも1つのエフェクターが、不透過性分子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
前記不透過性分子が、タンパク質、ペプチド、多糖、核酸、または核酸類似物である、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記多糖が、ヘパリン;ヘパリン誘導体;ヘパラン硫酸;コンドロイチン硫酸;デルマタン硫酸;ヒアルロン酸;およびそれらの薬学的に受容可能な塩からなる群より選択されるグリコサミノグリカンである、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記ヘパリン誘導体が、エノキサパリン、ダルテパリン、フォンダパリヌクス、およびチンザパリンからなる群より選択される低分子量ヘパリンである、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記核酸または核酸類似物が、DNA、DNA類似物、RNA、またはRNA類似物からなる群より選択される、請求項24に記載の組成物。
【請求項28】
前記不透過性分子が、インスリン;エリスロポエチン(EPO);グルカゴン様ペプチド1(GLP−1);メラニン細胞刺激ホルモン(αMSH);副甲状腺ホルモン(PTH);副甲状腺ホルモンアミノ酸1−34(PTH(1−34));成長ホルモン;カルシトニン;ペプチドYYアミノ酸3−36(PYY(3−36));インターロイキン−2(IL−2);α1−抗トリプシン;顆粒球/単球コロニー刺激因子(GM−CSF);顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF);T20;抗TNF抗体;インターフェロンα;インターフェロンβ;インターフェロンγ;黄体形成ホルモン(LH);卵胞刺激ホルモン(FSH);エンケファリン;ダラーギン;キョートルフィン;塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF);ヒルジン;ヒルログ;黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アナログ;脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP);酢酸ガラティラメル;および神経栄養因子からなる群より選択される生物活性分子である、請求項23に記載の組成物。
【請求項29】
前記不透過性分子が、ホルモン;成長因子;内分泌物、神経栄養因子;抗凝血剤;生物活性分子;毒素;抗生物質;抗真菌薬;抗病原体剤;抗原;抗体;モノクローナル抗体;抗体フラグメント;免疫調節薬;可溶性レセプター;ビタミン;抗悪性腫瘍薬;酵素;および治療薬からなる群より選択される薬学的に活性な因子である、請求項23に記載の組成物。
【請求項30】
前記薬学的に活性な因子が、ビタミンB12、ビスホスホネート、タキソール、カスポファンギン、またはアミノグリコシド系抗生物質からなる群より選択される、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記エフェクターが、少なくとも1つの化学修飾をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項32】
前記少なくとも1つのエフェクターが、インスリン;エリスロポエチン(EPO);グルカゴン様ペプチド1(GLP−1);メラニン細胞刺激ホルモン(αMSH);副甲状腺ホルモン(PTH);副甲状腺ホルモンアミノ酸1−34(PTH(1−34));成長ホルモン;カルシトニン;ペプチドYYアミノ酸3−36(PYY(3−36));インターロイキン−2(IL−2);α1−抗トリプシン;顆粒球/単球コロニー刺激因子(GM−CSF);顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF);T20;抗TNF抗体;インターフェロンα;インターフェロンβ;インターフェロンγ;黄体形成ホルモン(LH);卵胞刺激ホルモン(FSH);エンケファリン;ダラーギン;キョートルフィン;塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF);ヒルジン;ヒルログ;黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アナログ;脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP);酢酸ガラティラメル;および神経栄養因子からなる群より選択される、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記化学修飾が、前記エフェクターに結合した1つ以上のポリエチレングリコール残基を含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項34】
前記水溶性組成物が、ポリカチオンの分子、ポリアニオンの分子、非荷電ポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるタンパク質構造の安定剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項35】
前記ポリカチオンの分子が、ポリアミンである、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記ポリアミンが、スペルミンである、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記ポリアニオンの分子が、フィチン酸および硫酸化ショ糖からなる群より選択される、請求項34に記載の組成物。
【請求項38】
前記非荷電ポリマーが、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールからなる群より選択される、請求項34に記載の組成物。
【請求項39】
前記水溶性組成物が、アニオン性またはカチオン性の両親媒性対イオンをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項40】
前記アニオン性の両親媒性分子が、カルボキシレート、スルホネートおよびホスホネートアニオンからなる群より選択される有機酸を含み、かつ、該アニオン性の両親媒性分子が、疎水性部分をさらに含む、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
前記アニオン性の対イオンが、ドデシル硫酸ナトリウムおよびジオクチルスルホサクシネートからなる群より選択される、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記カチオン性の両親媒性分子が、疎水性部分を含む第4級アミンである、請求項39に記載の組成物。
【請求項43】
前記第4級アミンが、以下の一般構造:
【化1】

を有し、R1、R2、R3およびR4は、アルキルまたはアリール残基である、
請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
前記第4級アミンが、ベンザルコニウム誘導体である、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
前記対イオンが、カチオンを形成するイオン液体である、請求項39に記載の組成物。
【請求項46】
前記カチオンを形成するイオン液体が、イミダゾリウム誘導体、ピリジニウム誘導体、ホスホニウム化合物およびテトラアルキルアンモニウム化合物からなる群より選択される、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
前記イミダゾリウム誘導体が、1−R1−3−R2−イミダゾリウムの一般構造を有し、ここで、R1およびR2は、炭素数1〜12の直鎖または分枝鎖アルキルである、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
前記イミダゾリウム誘導体が、ハロゲン置換またはアルキル基置換をさらに含む、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
前記イミダゾリウム誘導体が、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム;1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム;1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム;1−メチル−3−オクチルイミダゾリウム;1−メチル−3−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)−イミダゾリウム;1,3−ジメチルイミダゾリウム;および1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムからなる群より選択される、請求項46に記載の組成物。
【請求項50】
前記ピリジニウム誘導体が、1−R1−3−R2−ピリジニウムの一般構造を有し、ここで、R1は、炭素数1〜12の直鎖もしくは分枝鎖アルキルであり、そしてR2は、Hまたは炭素数1〜12の直鎖もしくは分枝鎖アルキルである、請求項46に記載の組成物。
【請求項51】
前記ピリジニウム誘導体が、ハロゲン置換またはアルキル基置換をさらに含む、請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
前記ピリジニウム誘導体が、3−メチル−1−プロピルピリジニウム、1−ブチル−3−メチルピリジニウム、および1−ブチル−4−メチルピリジニウムからなる群より選択される、請求項46に記載の組成物。
【請求項53】
前記カチオンを形成するイオン液体が、水溶性塩の構成要素である、請求項45に記載の組成物。
【請求項54】
前記組成物が、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項55】
前記イオン性界面活性剤が、脂肪酸塩、レシチン、胆汁酸塩、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項54に記載の組成物。
【請求項56】
前記脂肪酸塩が、オクタン酸ナトリウム、デカン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
前記非イオン性界面活性剤が、ポロキサマー、Solutol HS15、クレモフォア、ポリエチレングリコール脂肪アルコールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項54に記載の組成物。
【請求項58】
前記ソルビタン脂肪酸エステルが、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミテート、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項57に記載の組成物。
【請求項59】
前記組成物が、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、およびカーボポールからなる群より選択される粘着性ポリマーをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項60】
前記組成物が、グリセリルモノオクタノエート、グリセリルモノデカノエート、グリセリルモノラウレート、グリセリルモノミリステート、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノパルミテート、グリセリルモノオレエート、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるモノグリセリドをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項61】
少なくとも1つの保護剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項62】
前記保護剤が、アプロチニン;Bowman−Birkインヒビター;大豆トリプシンインヒビター;ニワトリオボムコイド;ニワトリオボインヒビター;ヒト膵臓トリプシンインヒビター;メシル酸カモスタット;フラボノイドインヒビター;アンチパイン、ロイペプチン、p−アミノベンズアミジン;AEBSF;TLCK;APMSF;DFP;PMSF;ポリ(アクリレート)誘導体;キモスタチン;ベンジルオキシカルボニル−Pro−Phe−CHO;FK−448;糖−ビフェニルボロン酸複合体;β−フェニルプルピオネート;エラスタチナール;メトキシスクシニル−Ala−Ala−Pro−Val−クロロメチルケトン(MPCMK);EDTA;キトサン−EDTA結合体;アミノ酸;ジペプチド;トリペプチド;アマスタチン;ベスタチン;ピューロマイシン;バシトラシン;フォスフィン酸ジペプチドアナログ;α−アミノボロン酸誘導体;グリココール酸−Na;1,10−フェナントロリン;アシビシン;L−セリン−ボラート;チオルファン;ホスホラミドン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるプロテアーゼインヒビターである、請求項61に記載の組成物。
【請求項63】
前記組成物が、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤、粘着性ポリマー、モノグリセリド、プロテアーゼインヒビター、スルホヒドリル基状態変性剤、および酸化防止剤からなる群より選択される少なくとも2つの物質の混合物をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項64】
前記非イオン性界面活性剤が、ポロキサマー、クレモフォア、ポリエチレングリコール脂肪アルコールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、またはSolutol HS 15である、請求項63に記載の組成物。
【請求項65】
前記粘着性ポリマーが、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、およびカーボポールからなる群より選択される、請求項63に記載の組成物。
【請求項66】
前記モノグリセリドが、グリセリルモノオクタノエート、グリセリルモノデカノエート、グリセリルモノラウレート、グリセリルモノミリステート、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノパルミテート、グリセリルモノオレエート、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項63に記載の組成物。
【請求項67】
前記イオン性界面活性剤が、脂肪酸塩である、請求項63に記載の組成物。
【請求項68】
前記プロテアーゼインヒビターが、アプロチニン;Bowman−Birkインヒビター;大豆トリプシンインヒビター;ニワトリオボムコイド;ニワトリオボインヒビター;ヒト膵臓トリプシンインヒビター;メシル酸カモスタット;フラボノイドインヒビター;アンチパイン、ロイペプチン、p−アミノベンズアミジン;AEBSF;TLCK;APMSF;DFP;PMSF;ポリ(アクリレート)誘導体;キモスタチン;ベンジルオキシカルボニル−Pro−Phe−CHO;FK−448;糖−ビフェニルボロン酸複合体;β−フェニルプルピオネート;エラスタチナール;メトキシスクシニル−Ala−Ala−Pro−Val−クロロメチルケトン(MPCMK);EDTA;キトサン−EDTA結合体;アミノ酸;ジペプチド;トリペプチド;アマスタチン;ベスタチン;ピューロマイシン;バシトラシン;フォスフィン酸ジペプチドアナログ;α−アミノボロン酸誘導体;グリココール酸−Na;1,10−フェナントロリン;アシビシン;L−セリン−ボラート;チオルファン;ホスホラミドン、およびそれらの種々の混合物からなる群より選択される、請求項63に記載の組成物。
【請求項69】
前記スルホヒドリル基状態変性剤が、N−アセチル−L−システインおよびジアミドからなる群より選択される、請求項63に記載の組成物。
【請求項70】
前記酸化防止剤が、トコフェロール、デテロキシムメシレート、メチルパラベン、エチルパラベン、アスコルビン酸、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項63に記載の組成物。
【請求項71】
薬学的に受容可能な賦形剤、薬学的に受容可能なキャリア、またはそれらの組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項72】
前記水溶性組成物が、必要に応じて凍結乾燥される、請求項1に記載の組成物。
【請求項73】
請求項1に記載の組成物を生成するための方法であって、該方法が、前記少なくとも1つのエフェクターを親水性または部分的に親水性の溶媒中に溶解するかまたは懸濁する工程、および得られた溶液または懸濁液を、膜流動化剤とともに疎水性媒体中に浸漬することによって、該組成物を生成する工程を包含する、方法。
【請求項74】
請求項1に記載の組成物を生成するための方法であって、該方法が、前記水溶性組成物を親水性または部分的に親水性の溶媒中に溶解するかまたは懸濁する工程、該水溶性組成物を凍結乾燥する工程、および該凍結乾燥した物質を膜流動化剤とともに疎水性媒体中に懸濁することによって該組成物を生成する工程を包含する、方法。
【請求項75】
前記凍結乾燥工程が、まずエフェクターを、安定剤または任意の他のキャリアもしくは賦形剤の成分とともに必要に応じて凍結乾燥する工程を代わりに包含する、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
請求項1に記載の組成物を生物学的障壁に導入する工程、および前記少なくとも1つのエフェクターを、該生物学的障壁を横切って転位させる工程を包含する、生物学的障壁を横切って少なくとも1つのエフェクターを転位する方法。
【請求項77】
前記生物学的障壁を横切る転位が、上皮細胞および内皮細胞からなる群より選択される細胞を含む組織内で起こる、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記生物学的障壁が、密着結合および原形質膜からなる群より選択される、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記生物学的障壁が、胃腸粘膜および血液脳関門を含む、請求項76に記載の方法。
【請求項80】
粘膜ワクチン接種の方法であって、該方法が、ワクチン接種を必要とする被験体に請求項1に記載の組成物を投与する工程を包含し、ここで、前記少なくとも1つのエフェクターが、ワクチン接種が所望される抗原を含む、方法。
【請求項81】
前記ワクチン接種が所望される抗原が、炭疽菌に対するワクチンに用いるPAおよびB型肝炎に対するワクチンに用いるHBs抗原からなる群より選択される、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
疾患または病理学的状態を処置または予防する方法であって、該方法が、このような処置または予防が所望される被験体に、請求項1に記載の組成物を、該被験体における該疾患または該病理学的状態を処置または予防するのに十分な量で投与する工程を包含する、方法。
【請求項83】
請求項82に記載の方法であって、前記疾患または前記病理学的状態が、内分泌障害;糖尿病;不妊症;ホルモン欠損症;骨粗鬆症;眼科障害;神経変性障害;アルツハイマー病;痴呆;パーキンソン病;多発性硬化症;ハンティングトン病;心臓血管障害;アテローム性動脈硬化症;凝固亢進状態;凝固低下状態;冠状動脈疾患;脳血管事象;代謝障害;肥満;ビタミン欠乏症;腎障害;腎不全;血液学的障害;種々の要素の貧血;免疫学的およびリウマチ学的障害;自己免疫性疾患;免疫不全;感染症;ウイルス感染;細菌感染;真菌感染;寄生虫感染症;腫瘍性疾患;多因子性障害;不能症;慢性疼痛;うつ病;種々の線維症状態;および低身長からなる群より選択される、方法。
【請求項84】
請求項82に記載の方法であって、前記組成物が、経口;経鼻;経皮;口腔;舌下腺;肛門;直腸;気管支;肺;眼窩内;非経口;および局所からなる群より選択される投与経路によって投与される、方法。
【請求項85】
1つ以上の容器中に、治療的または予防的に有効な量の請求項1に記載の組成物を含む、キット。
【請求項86】
前記組成物が腸溶性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項87】
前記組成物がカプセル内に含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項88】
前記組成物が、錠剤、乳剤、クリーム、軟膏、坐薬、またはスプレー式点鼻薬の形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項89】
スペルミン、ポリビニルピロリドンおよびドデカン酸ナトリウムとともに溶解される治療有効量の少なくとも1つのエフェクターを含む組成物であって、得られた水溶性組成物が凍結乾燥され、次いで、ヒマシ油中かまたは中鎖脂肪酸トリグリセリドもしくはグリセリルトリブチラートとヒマシ油の混合物中に、オクタノールおよびゲラニオールと組み合わせて懸濁され、かつ、該組成物が、該少なくとも1つのエフェクターの生物学的障壁を横切る転位を可能にする、組成物。
【請求項90】
前記組成物が、ソルビタンモノパルミテートをさらに含む、請求項89に記載の組成物。
【請求項91】
前記組成物が、グリセリルモノオレエートをさらに含む、請求項89に記載の組成物。
【請求項92】
前記組成物が、メチルセルロースをさらに含む、請求項89に記載の組成物。
【請求項93】
前記組成物が、コレステロール硫酸をさらに含む、請求項89に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−532629(P2007−532629A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507872(P2007−507872)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【国際出願番号】PCT/IB2005/004183
【国際公開番号】WO2006/097793
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(506344790)キアスマ, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】