説明

生物検査装置

【課題】本発明の課題は、検体に含まれる生物を測定するために該生物の染色、検体の濃縮、および含有生物の情報取得を簡単な工程で行い、安定した検体中の生物の測定を行い得る生物検査装置を提供することにある。
【解決手段】本発明に関わる生物検査装置は、液体の検体を流しつつ該検体中に存在する生細胞を持つ生物52a1、52a2を染色する染色部20、62、82と、染色が施された検体を流しつつ生物52a1、52a2の濃度を高めるように濃縮する濃縮部30と、濃縮された検体中の生物52a1、52a2を含む個体52の画像情報を取得する個体計測部50と、個体計測部50より出力された個体52の画像情報より生物52a1、52a2の測定を行う制御手段90とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バラスト水中などに含まれる生物の計測を行う生物検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バラスト水とは、船舶が空荷の時に安全確保のための重しとして積載する海水であり、この海水は到着した港で排水されるものである。
近年、国際航路を運行する船舶のバラスト水の国際間の移動に伴い、バラスト水中に含まれる外来生物の移動が,従来の生態系の破壊や海洋汚染を引き起こすとして環境問題になっている。例えば、豪州では、有毒プランクトンによる養殖貝の毒化等が報告されている。
こうした問題に対処するため,2004年2月に、IMO (International Maritime Organization;国際海事機関)において「船舶のバラスト水および沈殿物の規制および管理のための国際条約」(バラスト水管理条約)が採択された。同条約により、段階的にバラスト水を使用する全ての船舶は同条約のバラスト水排出基準を満たすことが義務付けられた。
【0003】
バラスト水排出基準とは、1トンのバラスト水に含まれる最低形状寸法が50μm以上の生細胞をもつ生物が10匹以下であることである。
例えば、図8(a)に示すプランクトンP1の最低形状寸法(最低直径サイズ)とは、胴体部分の最低長さ寸法s1を指し、図8(b)に示す足をもつプランクトンP2の最低形状寸法(最低直径サイズ)とは、同様に、胴体部分の最低長さ寸法s2を指すものである。なお、図8(a)、(b)は、プランクトンの形状寸法を示した図である。
排出するバラスト水が基準を満たしていることを確認する方法であるが、現状では,バラスト水を適当な濃度に濃縮した後、顕微鏡による目視によりプランクトンの形状や生死を判断する手法が一般的である。この手法は高額な検査費用と長時間の検査時間を要する上、検査者の技量によって結果の信頼性が左右される問題があり、さらに、最低直径サイズが50μm以上の生細胞をもつプランクトンについては、最低1mのバラスト水を検査する必要があることから実現性の薄い方法であった。
【0004】
現在まで、液体中の微生物計測の迅速化および簡便化を目的としたさまざまな簡便迅速測定法を実施する計測装置が開発されている。その中でも特に、液体中の微生物を迅速に直接計測する手法として、尿中や血液中に含まれる細胞などの対象粒子の形状情報を取得するために使用されていたイメージングフローサイトメトリ法への注目が高い。
イメージングフローサイトメトリ法は、対象粒子を含む検査液体の流径を細くし、対象粒子を一個ずつ流し画像計測する粒子計測方法である。この方法を用いた微生物測定装置は、1分あたり数ミリリットルの検査液体中に含まれる微生物一個あたりの種別、形状、大きさなどの情報を取得することができる。
【非特許文献1】株式会社アムコ 科学機器部、FlowCAMイメージング・フローサイトメータ、[online]、[平成19年6月20日検索]、インターネット<URL:http://www.amco.co.jp/kagaku/I_flowcam.htm>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のイメージングフローサイトメトリ法は、単位時間当たりの検査液量がもっとも多い粒子計測方法のひとつであるが、最低1m以上の検査液量が必要になるバラスト水中の微生物検査など、大量の液体中の含有生物検査に使用する場合、処理時間を短縮するために濃縮を検査の前に行うことが必須になることは自明である。濃縮の工程において、検査液体中の生物は物理的ダメージをうける可能性が高い。
画像計測を用いた検査工程において、体の部位に欠損が無いことが生物の生死の判断基準のひとつであるため、濃縮工程において生物が物理的ダメージを受けることは,生死に関しての情報の信頼性を低下させる。生物にダメージを与えない濃縮方法を採用するか、もしくは濃縮工程での物理的ダメージによる体の部位の欠損が生死の判断に影響しない方法を採用することが課題の解決に有効である。
【0006】
例えば、生細胞のみを染色する染色剤にて生物を染色する工程を濃縮工程の前に行い、検査において染色の有無を生死の判断基準にすることが考えられる。この方法では、濃縮工程にて生物の体に欠損が生じても、染色の有無によって生死を判断することができる。
濃縮の前に、染色を行うことは生物の検査方法としては一般的に行われている手法であるが、本手法をバラスト水検査装置に適用するにあたり、 1m以上の検査液量が要求されるため、大量の液体を濃縮や検査を行うための時間が長くなることに由来する特殊な課題がある。
1mの処理済バラスト水を濃縮率1000倍で濃縮し、1リットルまで液量を低減しても、続く検査工程における検査が完了する時間は、イメージングフローサイトメトリ法の処理液量が数ミリリットル/minであるため数時間におよぶ。そのため、バラスト水の一部は濃縮後、検査工程に移るまでに数時間の待機時間が必要になる。
【0007】
一方、染色後に濃縮工程でダメージを受け死んだ生物は、生細胞が死細胞になり、生物の細胞中に選択的に取り込まれた色素は検査時間中に細胞膜上の細孔から細胞外へ拡散する。生物の染色に使用される色素の分子直径は0.数nm〜数nm程度であることから,色素の平均二乗変位は,数十μm/secとなるため,細胞の細孔の大きさや数によるが,次の工程に進むまでの待機時間中に,色素が細胞外へ拡散することにより、染色状態が劣化する可能性が高いため、生死に関しての情報を染色の有無で判断することが困難になる。
本発明は上記実状に鑑み、バラスト水中などの検体に含まれる生物を測定するために該生物の染色、検体の濃縮、および含有生物の情報取得を簡単な工程で行い、安定した検体中の生物の測定を行い得る生物検査装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく、本発明に関わる生物検査装置は、液体の検体を流しつつ該検体中に存在する生細胞を持つ生物を染色する染色部と、染色が施された検体を流しつつ生物の濃度を高めるように濃縮する濃縮部と、濃縮された検体中の生物を含む個体の画像情報を取得する個体計測部と、個体計測部より出力された個体の画像情報より生物の測定を行う制御手段とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、検体の液体中の生物の染色工程、液体中の生物の濃縮工程、液体中の生物の情報取得の工程等をフロー方式で行えるため、各方式をバッチ方式で行う手法と比べ、ひとつの工程を終えた検体の一部が次の工程に進むまでの待機時間を大幅に短縮、または0とでき、待機時間での染色の状態の劣化を防ぐことが可能で、安定した生物の生死の情報を取得することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
本発明を適用した実施形態の生物検査装置1は、プランクトン等の生物を含む1m以上の液体検体について、生細胞を持つ最低直径サイズ50μm以上を有する生物の個数計測等を行う装置である。なお、生細胞を持つ生物の最低直径サイズとは、該生物の胴体部の最も短い寸法をいう。
以下、この生物検査装置1による生細胞をもつ生物の個数計測等の測定について詳細に説明する。
【0011】
<<生物検査装置1の構成>>
図1は、本発明を適用した生物検査装置1の基本システム図である。
図1に示すように、生物検査装置1は、各工程での処理を行う主要部として、検体とこの検体中の生細胞を持つ生物を染色する染色液とを流しながら混合し染色を行うための流れ式染色装置20と、検体を流しながら一定範囲の大きさをもつ生物を含む検体の濃縮を行うための流れ式濃縮装置30と、検体を流しながら一定範囲の大きさ以外の生物を除去するための流れ式精製手段40と、検体を流しながら検体中の粒子の画像情報を取得するための流れ式粒子計測手段50とを具備している。
この生物検査装置1における各工程での処理は、待ち時間がなく進行するフロー処理で行われ、検体用水槽81に貯留される計測対象の検体は、検体用水槽81から矢印a1、a2、a3、a4に示すように、流れ式染色装置20、流れ式濃縮装置30、流れ式精製手段40、流れ式粒子計測手段50の順に流動し、所定の測定が行われる。
【0012】
上述の処理前の染色液等の生物検査装置1で使用する液体を貯留するための水槽として、生物検査装置1は、検査前の検体を貯留するための検体用水槽81と、流れ式染色装置20で使用する染色液を貯めるための染色液用水槽82と、流れ式精製手段40にて精製に使用される精製液体を貯留するための精製液体用水槽83とを備えている。
一方、処理後に廃棄される液体を貯留するための廃棄水槽として、流れ式濃縮装置30にて廃棄される液体を貯留するための濃縮後廃棄水槽86と、流れ式精製手段40にて除去された生物を含む粒子を含有する液体を貯留するための精製後廃棄水槽87と、流れ式粒子計測手段50による粒子計測が終了した検体の廃液を貯留するための計測後廃棄水槽88とを備えている。
【0013】
また、検体、染色液、精製液体などの送液をそれぞれ連続的に行うための連続供給手段として、生物検査装置1は、検体用水槽81から流れ式染色装置20へ検体を連続的に供給する検体連続供給手段61と、染色液用水槽82から流れ式染色装置20へ染色液を連続的に供給する染色液連続供給手段62と、精製液体用水槽83から流れ式精製手段40へ精製液体を連続的に供給する精製液体連続供給手段63とを具えている。なお、連続供給手段61、62、63として、本実施形態ではポンプを用いているが、送液を行えるものであれば、ポンプ以外の機械を用いてもよい。
また、検体や染色液などの送液の流量を制御するためのバルブとして、生物検査装置1は、図1に示すように、流れ式濃縮装置30と流れ式精製手段40を連結する管の通過液量を制御するための濃縮装置−精製手段間バルブ71と、流れ式濃縮装置30と濃縮後廃棄水槽86を連結する管の通過液量を制御するための濃縮装置−濃縮廃棄水槽間バルブ72と、流れ式精製手段40と流れ式粒子計測手段50を連結する管の通過液量を制御するための精製手段−粒子計測手段間バルブ73と、流れ式精製手段40と精製後廃棄水槽87を連結する管の通過液量を制御するための精製手段−精製廃棄水槽間バルブ74とを有している。
【0014】
前記した構成の生物検査装置1は、制御手段として制御装置90を有しており、該制御装置90は、各装置20、30および手段40、50、連続供給手段61、62、63、およびバルブ71、72、73、74に制御信号等を出力し制御するとともに、流れ式粒子計測手段50により得られた粒子情報の解析を行っている。また、この制御装置90の解析結果を出力するために、液晶ディスプレイ、プリンタ等の出力装置91を備えている。
なお、生物検査装置1は、濃縮後廃棄水槽86および精製後廃棄水槽87に廃棄された廃液から使用済みの染色液を精製し再利用する染色液精製部89を有しており、逆浸透膜(RO膜(Reverse Osmosis Membrane))により廃液中に溶け込んだ染色液を精製後、染色液用水槽82に戻し、再利用している。
なお、染色液精製部89は、濃縮後廃棄水槽86に廃棄された廃液から使用済みの染色液を精製し再利用する第1の染色液精製部と、精製後廃棄水槽87に廃棄された廃液から使用済みの染色液を精製し再利用する第2の染色液精製部とに分けて構成することも可能である。
【0015】
<<生物検査装置1の各工程での処理>>
次に、生物検査装置1の各工程での処理について説明する。
図2(a)は、流れ式染色装置20の内部構造を示す平面概念図であり、図2(b)は、図2(a)の流れ式染色装置20のA−A線断面図である。
図1に示すように、計測対象の検体用水槽81に貯留される検体は、検体用水槽81から検体連続供給手段61を用いて、矢印a1のように、流れ式染色装置20へ流され、図2に示すように、検体流入口22より、矢印a20のように染色槽26内に流入する。
一方、生細胞をもつ生物を染色するための染色液は、図1に示す染色液用水槽82から、染色液連続供給手段62を用いて流れ式染色装置20に供給され、図2(b)に示す染色液流入口23より、矢印a21のように流れ式染色装置20内に流入する。
【0016】
図2(b)に示すように、染色液流入口23より流れ式染色装置20内に流入した染色液は、複数の染色液噴出し口21、21、…を矢印a22のように染色槽26内に通流し、染色槽26内の検体と混合する。こうして、検体と染色液とが、染色槽26内で混合した後、図2(a)に示すように、混合流路管24を矢印a23のように流れる間に、検体中の生細胞をもつ生物は染色液により染色される。
この検体中の生細胞をもつ生物の染色時間は、油圧シリンダ等の混合流路管駆動装置25により、混合流路管24の一部を移動し混合流路管24の全長を変更し、隣接する下流の流れ式濃縮装置30(図1参照)までの流動時間を変更することにより、適宜調整することが可能である。
ここで、混合流路管駆動装置25は、例示した油圧シリンダ以外にモータの駆動力を減速機構を用いて混合流路管24を移動する機構でもよく、混合流路管24の一部を移動し、その全長を変更できる機構であれば、種々の機構を採用し得ることは言うまでもない。
【0017】
本実施形態では、検体と染色液の混合比を、検体1000リットルに対して染色液5g、言い換えれば、染色液1gを検体200,000ミリリットルに混ぜ、混合時間を5分としているが、この混合時間は、検体の状態に応じて制御装置90により自動的に決定し制御される。例えば、測定対象の検体中に既知の生細胞をもつ生物を入れて流し、その染色度合いを流れ式粒子計測手段50の画像情報から得て、混合時間を制御装置90により自動的に決定し制御してもよい。
ここで、染色液としては、ニュートラルレッドやメチルブルーなどの生細胞に選択的に取り込まれる色素、すなわち生細胞のみを染色する色素を使用する。
【0018】
上述の如く、図2(a)の矢印a23のように、混合流路管24を通過して、染色が行われた流れ式染色装置20内の染色された検体を含む二液の混合液は、図1の矢印a2に示すように、下流に続く流れ式濃縮装置30へ流入する。
図3は、流れ式濃縮装置30の内部構造を示す断面概念図である。
図3に示すように、流れ式染色装置20で染色された検体は、流れ式濃縮装置流入口31より、矢印a30のように流れ式濃縮装置30内に流入し,濃縮装置−精製手段間バルブ71(図1参照)と流れ式濃縮装置−濃縮後廃棄水槽間バルブ72(図1参照)の通過液量の比に従って分流され、濃縮液流出口34と濾過液流出口35とに分かれ流出する。
【0019】
流れ式濃縮装置流入口31と濾過液流出口35の間には、孔径50μmのフィルタ32が設けられ、流れ式濃縮装置30内に流入した50μmより大きい寸法をもつ粒子は、フィルタ32に阻まれ、矢印a31のように濃縮液流出口34に流動する一方、流れ式濃縮装置30内に流入した50μmより小さい寸法をもつ粒子は、矢印a32のようにフィルタ32を通過して濾過液流出口35に流動する。
流れ式濃縮装置30における検体の濃縮率は、濃縮装置−精製手段間バルブ71と濃縮装置−濃縮廃棄水槽間バルブ72の通過水量の比で決定する。
【0020】
なお、本実施形態では,濃縮率を1000倍に設定するが、検体の状態により、制御装置90によりフィードバックがかけられ、最適な濃縮率に自動的に決定される。何故なら、検体であるバラスト水の状態で染色度合いが変わるので、例えば、染まり過ぎると死んでいる生物までも染めてしまうので、このようなフィードバックが行われる。なお、このフィードバックは、流れ式粒子計測手段50により画像情報を取得し、該画像情報から制御装置90により染色度合いを判断して行なうことができる。
ここで、濃縮率を1000倍に設定するためには、例えば、濃縮装置−精製手段間バルブ71(図1参照)と流れ式濃縮装置−濃縮後廃棄水槽間バルブ72(図1参照)の通過液量の比を、1:10とした図3に示す流れ式濃縮装置30を10段階設けることにより、実現できる。
【0021】
また、本実施形態では孔径50μmのフィルタ32を備えた流れ式濃縮装置30を利用しているが、孔径が異なる流れ式濃縮装置を生物検査装置1に並列に複数設け、検体の状態に応じ切り替える構成を採用してもよい。
図3に示すように、流れ式濃縮装置30内を流れる粒子の一部は、フィルタ32上に吸着するが、フィルタ32のろ過面の方向に生じている矢印a31で示す流れ、すなわちフィルタ32のろ過面の方向に沿った流れがフィルタ32上に吸着した粒子をはがす効果があるため、粒子のフィルタ32への吸着による粒子数の減少を抑えることができる。
ここで、検体の流れ式濃縮装置30への流入量が減少した場合、フィルタ32のろ過面方向(矢印a31方向)の流速が弱まり,フィルタ32上に吸着した粒子をはがす力が弱まる。
しかし、油圧シリンダ等の可変壁駆動装置37により、矢印a39のように容量可変壁36を動かし、流れ式濃縮装置30の容量を減少させることにより、検体の流速を一定に保つことが可能である。
【0022】
なお、可変壁駆動装置37は、例示した油圧シリンダ以外にモータの駆動力を減速機構を用いて容量可変壁36を移動する機構でもよく、容量可変壁36を移動し、流れ式濃縮装置30の容量を変更できる機構であれば、種々の機構を採用し得ることは勿論である。
一方、流れ式濃縮装置30におけるフィルタ32によるろ過後の図3の矢印a32に示す濾液は、濃縮装置−濃縮廃棄水槽間バルブ72を介して、濃縮後廃棄水槽86(図1参照)に廃棄される。
続いて、図1に示すように、流れ式濃縮装置30を通過した50μmより大きい寸法をもつ粒子を含む検体が、矢印a3のように、濃縮装置−精製手段間バルブ71を介して、流れ式精製手段40に流入する。この流れ式精製手段40は、流れ式濃縮装置30と同様の構造を有している(図3参照)。
【0023】
この流れ式精製手段40において、流れ式濃縮装置30を通過した50μmより大きい寸法をもつ粒子を含む検体に、精製液体用水槽83から粒子を含まない精製液体を供給し全粒子の濃度を、一旦低下させ、再度、フィルタで余分なゴミ、粒子等を除き濃縮を行うことで相対的に上記フィルタ32の孔径より大きい粒子の割合を増加させる。すなわち、検体中の50μmより大きい寸法をもつ粒子の純度を高め、検体の精製を行う。
一方、流れ式精製手段40におけるフィルタによりろ過された濾液は、図1に示すように、精製手段−精製廃棄水槽間バルブ74を介して、精製後廃棄水槽87に廃棄される。
こうして、流れ式精製手段40において精製された検体は、図1の矢印a4に示すように、流れ式精製手段40から流出し、精製手段−粒子計測手段間バルブ73を介して、流れ式粒子計測手段50内に流入する。
【0024】
図4は、流れ式粒子計測手段50の構成を示した断面概念図である。
図4に示すように、流れ式粒子計測手段50は、検体中の粒子に当てるレーザ光54を出力するレーザ装置53と、検体中の粒子に当ったレーザ光54を受光する散乱光受光装置55と、撮影範囲56に流れた該粒子を撮影する撮影装置57とを有している。
図1に示す流れ式精製手段40を通過した検体は、図4の矢印a4に示すように、流れ式粒子計測手段50に流入し、計測流路51を矢印a50のように流動し、この流動する間に検体に対する計測が、下記のように行われる。
まず、レーザ装置53と散乱光受光装置55とを用いて、粒子52が撮影範囲56へ流入することを、予め検知する。すなわち、粒子52がレーザ装置53から出力されるレーザ光54を横切るときに粒子52から発生する散乱光を散乱光受光装置55が検知し、粒子52の通過を検知する。
【0025】
ここで、レーザ光54の位置から撮影範囲56(図4中に破線で示す)まで流動する時間tは、検体の流速により決まるので、流速より求めた時間t後に撮影範囲56の画像を取得することにより、撮影範囲56に入った粒子52の画像情報を撮影装置57により撮影し取得できる。なお、粒子52の通過を検知する方法は、コールターカウンタのような電気的手法であってもよい。
ここで、粒子52がレーザ光54を通過する時間は,粒子52全体がレーザ光54を通過することから粒子52の大きさに比例するため、通過時間に応じ撮影範囲の大きさを調整するオートズーム機構を、撮影装置57は備えている。
なお、粒子52が長形のものである場合、粒子52は検体の流れにより力を受けるため、流れに沿う態様、すなわち、流れ方向と粒子52の長手方向が同方向を向いて流れることになる。
【0026】
そのため、検体中の粒子52がレーザ光54を通過する情報を含む信号を散乱光受光装置55から制御装置90(図1参照)が入力し、該制御装置90において、粒子52がレーザ光54を通過する時間情報から粒子52の最大長を解析することができる。
そして、制御装置90により、粒子52の通過時間、すなわち粒子52の最大長に応じて、撮影装置57における撮影範囲56の大きさ、すなわち視野の大きさを自動的に調整するオートズーム機構を稼動制御することにより、測定対象に応じた撮影が可能となっている。
こうして、粒子52の通過を検知した時刻から撮影範囲56に流入する算出した時間t後、計測流路51を流れる検体中の粒子52が撮影範囲56に流入した際に撮影装置57によって撮影を行い、粒子52の画像情報を取得する。
続いて、取得した画像情報は、撮影装置57から画像情報信号として制御装置90に出力され、この制御装置90にて取得された画像情報から、染色の有無によって粒子52の一つである生物の生死、該生物のサイズ等が測定される。
【0027】
図5は、粒子52の一つである生物のプランクトン52a1、52a2、52a3の生死判定を行うための判定データを示した図である。
例えば、画像情報における粒子の一つであるプランクトンが、図5(a)に示す染色(胴体部の点で示す)されたプランクトン52a1に該当する場合、または図5(b)に示す染色(胴体部の点で示す)されたプランクトン52a2に該当する場合には、生と判定される。一方、図5(c)に示す染色されない(胴体部の点無し)プランクトン52a3に該当する場合には、死と判定される。
なお、図5(b)に示すプランクトン52a2の二点鎖線で示す足52a21の欠損は、流れ式濃縮装置30または流れ式精製手段40における濃縮時に起きたものである。
【0028】
<<測定を終了するときの制御方法>>
次に、生物検査装置1において、測定を終了するときの制御装置90による(図1参照)制御方法を、図6を用いて説明する。なお、図6は、測定を終了するときの制御装置90の制御方法を示す流れ図である。
まず、図6のS1において、総処理液量VN、例えばバラスト水の総処理液量を表す変数VNに0を設定し、また、生細胞をもつとともに特定範囲の大きさの粒子52の数を表す変数nNに0を設定する。なお、特定範囲とは、最低直径サイズ50μm以上の生物をいうが、この特定範囲は任意に定め得ることは勿論である。
同時に、制御装置90において、単位時間当たりの連続供給手段61の供給液量に基づいて総処理液量VNを算出する総処理液量VNの計測を開始する。
なお、総処理液量VNの計測は、検体用水槽81と連続供給手段61間の配管に流量センサ(図示せず)を設け、この流量センサにより総処理液量VN、例えばバラスト水の総処理液量の計測を開始してもよい。
【0029】
続いて、図6のS2において、図4に示すように、流れ式粒子計測手段50を用いて検体中の粒子52の画像情報を取得する。
続いて、図6のS3において、流れ式粒子計測手段50からの粒子52の画像情報に基づいて、制御装置90において、粒子52の一つである生物の生死が判定される。なお、粒子52の一つである生物の生死の判定は、例えば、前記の図5に図示した方法によって判定される。
続いて、図6のS4において、取得した画像情報の粒子の一つである生物が生きているか否か、すなわち、該生物が生細胞を持っているか否かが判断される。
取得した画像情報の粒子52の一つである生物が生きていない、すなわち、該生物が生細胞を持っていない場合(図6のS4においてNo)、該生物の測定は停止され、図6のS2に移行する。
【0030】
取得した画像情報の粒子52の一つである生物が生きている、すなわち、該生物が生細胞を持っている場合(図6のS4においてYes)、図6のS5において、流れ式粒子計測手段50からの粒子52の画像情報に基づいて、制御装置90において、粒子52の一つである生物の最低直径サイズが計測される。
なお、粒子52の一つである生物の最低直径サイズとは、該生物の外形状の胴体部分の最も短い長さの部分の長さ寸法をいう。
例えば、図5(a)に示すプランクトン52a1の最低直径サイズとは、プランクトン52a1の外形状の胴体部分d1の最も短い長さの部分の長さ寸法をいい、また、図5(b)に示すプランクトン52a2の最低直径サイズとは、プランクトン52a2の外形状の胴体部分d1の最も短い長さの部分の長さ寸法をいう。
【0031】
ここで、図5(a)に示す胴体部分d1の最も短い長さの部分の長さ寸法とは、胴体部分d1の図5(a)の紙面に垂直な方向の寸法等の場合がある。同様に、図5(b)に示す胴体部分d2の最も短い長さの部分の長さ寸法とは、胴体部分d2の図5(b)の紙面に垂直な方向の寸法等の場合がある。
図8(a)に示すプランクトンP1の最低直径サイズとは、胴体部分の最も短い長さの部分の最低長さ寸法s1を指し、図8(b)に示す足をもつプランクトンP2の最低直径サイズとは、胴体部分の最も短い長さの部分の最低長さ寸法s2を指すものである。
続いて、図6のS6において、粒子52のうちの生きた生物の最低直径サイズが50μm以上か否か判断される。
【0032】
粒子52のうちの生きた生物の最低直径サイズが50μm未満の場合(図6のS6においてNo)、該生物の測定は停止され、図6のS2に移行する。
一方、粒子52のうちの生きた生物の最低直径サイズが50μm以上の場合(図6のS6においてYes)、図6のS7において、生細胞をもつとともに特定範囲の大きさの粒子の数nN=nN+1の演算を行い、生細胞をもつとともに特定範囲の大きさの粒子の数nNをカウントする。
【0033】
続いて、図6のS2に移行し、図6のS2からS7までの処理を繰り返す。
同時に、図6のS8において、nNが規定数以上か、または、それまでの総処理液量VNが規定液量以上か判断される。なお、規定数は、例えば、10個の場合であり、総処理液量VNは、例えば、1トンのバラスト水の場合である。
Nが規定数未満であり、かつ、それまでの総処理液量VNが規定液量未満の場合(図6のS8でNo)、図6のS2に移行し測定が続行され、S2〜S7を経て図6のS8の判断が繰り返される。
一方、nNが規定数以上か、または、それまでの総処理液量VNが規定液量以上の場合(図6のS8でYes)、図6のS9において、制御装置90は検査終了と判断し、検体連続供給手段61、染色液連続供給手段62等に停止指示を送信し測定を終了する。
また、図6のS2に移行し測定が続行され図6のS8の判断が繰り返された場合も、図6のS8でYesと判断された場合、図6のS9に移行し、制御装置90は検査終了と判断し、検体連続供給手段61、染色液連続供給手段62等に停止指示を送信し測定を終了する。
【0034】
<<濃縮率の制御方法>>
次に、生物検査装置1における制御装置90による濃縮率の制御方法について、図7を用いて説明する。なお、図7は、濃縮率の制御方法の制御フロー示す図である。
まず、図7のS1において、N番目の粒子52をカウントする変数、すなわち画像情報の取得回数を表す変数Iに0を設定する。なお、Nとはヒストグラム(度数分布図)を作成するための任意の正の整数であって、任意に設定可能である。
続いて、図7のS2において、流れ式粒子計測手段50が粒子52の画像情報を取得し、かつ、画像情報の取得の度に画像情報の取得回数IをカウントするI=I+1の演算を行う。なお、粒子52の取得した画像情報から、粒子52の大きさ等で選別して上記演算を行ってもよい。
【0035】
続いて、図7のS3において、流れ式粒子計測手段50がN番目以上の粒子52を計測したか否か、判断される。
流れ式粒子計測手段50が計測した粒子52がN番目未満の場合(図7のS3でNo)、図7のS2に移行する。
一方、流れ式粒子計測手段50が計測した粒子52がN番目に達した場合(図7のS3でYes)、図7のS4において、N−a番目の粒子52からN番目の粒子52を計測するまでの通過液量vと各粒子52の最低直径サイズの情報から単位液量あたりの粒子52の最低直径サイズのヒストグラム(度数分布図)を求める。なお、aは、Nより小さい正の整数であってN−aで表される度数が有効なヒストグラムを作成できるような任意の正の整数である。また、粒子52の最低直径サイズとは、前述したように、粒子52の外形状の胴部分の最も短い長さの部分の長さ寸法である。
【0036】
ここで、通過液量vは、流れ式粒子計測手段50の直前に流量センサ(図示せず)を設けて測定してもよいし、或いは、制御装置90において、単位時間当たりの連続供給手段61、62、63の供給液量とバルブ72、73、74の通過液量とを用いて算出してもよい。
続いて、図7のS5において、求めたヒストグラムから、特定範囲の最低直径サイズをもつ粒子52の濃度Cと特定範囲外の最低直径サイズをもつ粒子52の濃度Cを算出する。なお、特定範囲とは、本実施形態の場合、最低直径サイズ50μm以上としているが、この特定範囲が任意に定め得ることは言うまでもない。
続いて、図7のS2に移行し、S2からS5の処理が繰り返される。
同時に、図7のS6において、特定範囲の最低直径サイズをもつ粒子の濃度Cが最低規定濃度以上かつ最高規定濃度以下か否か判断される。
【0037】
特定範囲の最低直径サイズをもつ粒子の濃度Cが最低規定濃度未満または最高規定濃度を超える場合、すなわち、特定範囲の最低直径サイズをもつ粒子の濃度Cが所定の測定条件範囲内から外れた場合には(図7のS6でNo)、図7のS7において、制御装置90(図1参照)は、Cを所定の範囲内にするために、連続供給手段61、62、63(図1参照)に供給液量の指示を出し、バルブ71、72、73、74(図1参照)に通過液量の指示を出し、また、流れ式濃縮装置30(図1、図3参照)に濃縮率の変更指示を出すとともに、流れ式精製手段40に精製率の変更指示を出す。
例えば、粒子の濃度Cが最低規定濃度未満の場合には、連続供給手段61、62、63に供給液量の増量の指示を出し、また、バルブ71、72、73、74に通過液量の増量の指示を出し、また、図3に示す流れ式濃縮装置30において可変壁駆動装置37によって濃縮装置室39の容量を小さくする、また、流れ式精製手段40において精製率を上げる等して濃縮率を上げる調整を行う。
【0038】
逆に、特定範囲の最低直径サイズをもつ粒子の濃度Cが最高規定濃度を超える場合には、連続供給手段61、62、63に供給液量の減量の指示を出し、また、バルブ71、72、73、74に通過水量の減量の指示を出し、また、図3に示す流れ式濃縮装置30において可変壁駆動装置37によって濃縮装置室39の容量を大きくする、また、流れ式精製手段40において精製率を下げる等して濃縮率を下げる調整を行う。
続いて、この図7のS7の処理を行った後、図7のS6に移行する。
一方、図7のS6において、特定範囲の最低直径サイズをもつ粒子の濃度Cが最低規定濃度以上かつ最高規定濃度以下の場合、すなわち、Cが所定の測定条件の範囲内の場合は(図7のS6でYes)、図7のS8に移行し、特定範囲外の最低直径サイズをもつ粒子の濃度Cが最低規定濃度以上かつ最高規定濃度以下か否か判断される。
なお、特定範囲とは、本実施形態の場合、前記したように、最低直径サイズ50μm以上としている。
【0039】
特定範囲外の最低直径サイズをもつ粒子の濃度Cが最低規定濃度未満または最高規定濃度を超える場合、すなわち、Cが所定の測定条件の範囲内から外れたときには(図7のS8でNo)、図7のS9に移行し、制御装置90(図1参照)は、Cを所定の範囲内にするために連続供給手段61、62、63(図1参照)に供給液量の指示を出し、また、バルブ71、72、73、74(図1参照)に通過液量の指示を出し、また、流れ式精製手段40(図1、図3参照)に精製率の変更指示を出し、また、流れ式精製手段40に精製率の変更指示を出す。そして、図7のS8に移行し、S8の判断を繰り返す。
一方、図7のS8において、特定範囲外の最低直径サイズをもつ微粒子の濃度Cが最低規定濃度以上かつ最高規定濃度以下の場合、すなわち、Cが所定の測定条件の範囲内の場合には(図7のS8でYes)、図7のS10に移行し、測定を続行する。
【0040】
以上が、生物検査装置1における濃縮率の制御方法である。
前記構成によれば、液体検体中の生物を含む生物の染色工程,濃縮工程,生物の情報取得の各工程を自動化したため,検査者の作業負担が軽減され、測定結果への検査者の技量の影響を小さくすることができ、また、安定した測定結果を得ることが可能である。
さらに、各工程をフロー方式で一貫して行うため,各方式をバッチ方式で行う従来の手法と比べ,ひとつの工程を終えたバラスト水の一部が次の工程に進むまでの待機時間を0(ゼロ)、すなわち無くすことができる。そのため、待ち時間での染色された生物の染色の劣化を防ぐことができ、安定した生死の情報を取得可能である。
【0041】
なお、本実施形態では、検体中に含まれる粒子として、生物のプランクトン、非生物の物等を例示して説明を行ったが、特許請求の範囲に記載した個体に相当するものとして、検体中に含まれる粒子以外の更に大きなサイズの個体である生物、非生物等の物体を広く含み適用されるものである。例えば、この生物としては、例示したプランクトン以外に、カニの幼虫、ちりめんじゃこなどの魚類、タコなどの水生の軟体動物等の大きなサイズの生物が広く含まれ、プランクトンに限定されるものではない。
なお、本実施形態では、流れ式精製手段40を設ける場合を例示して説明したが、流れ式精製手段40は、測定対象の生物の濃度を高めるためのものであるから、流れ式精製手段40を設けず構成してもよい。
【0042】
また、測定対象が大きなもの、例えば、カニの幼虫を対象に測定する場合には、流れ式濃縮装置30のフィルタ32の目および流れ式精製手段40のフィルタの目を大きくするとともに、前記したように、撮影装置57のオートズーム機構を用いてレンズの視野範囲を拡大して撮影が可能である。
なお、撮影装置57におけるオートズーム機構に代えて、視野範囲の異なるレンズを複数設け、測定対象の大きさに応じて、適切なレンズに切り替える構成とすることもでき、また、撮影装置57において、視野範囲の異なる複数のレンズとオートズーム機構を組み合わせて構成し、よりフレキシブルな撮影装置とすることも可能である。
また、本実施形態では、生物の測定として、生物の最低直径サイズの計測および生物の生死の判定を行う場合を例示して説明を行ったが、これ以外の生物のサイズの計測等、生物の最低直径サイズおよび生物の生死の判定以外の測定を行うことも可能である。
【0043】
<<種々の実施形態>>
ところで、以下の構成が可能である。
第1の生物検査装置は、少なくとも、液体の検体を流しつつ該検体中に存在する生細胞を持つ生物を染色する染色部と、染色が施された検体を流しつつ生物の濃度を高めるように濃縮する濃縮部と、濃縮された検体中の生物を含む個体の画像情報を取得する個体計測部と、個体計測部より出力された個体の画像情報より生物の測定を行う制御手段とを備えている。
第1の生物検査装置の構成によれば、生細胞を持つ生物を死滅させることなく、フロー処理で該生物の測定が行え、待ち時間での染色の劣化を防ぎ、安定した生物の幅広い測定を行える。
【0044】
第2の生物検査装置は、第1の生物検査装置において、上記生物の測定は、生物の形状の計測と生物の染色状態の有無からの該生物の生死の判定とできる。
第2の生物検査装置の構成によれば、バラスト水の国際条約に適合するかの測定等が可能である。
【0045】
第3の生物検査装置は、第1の生物検査装置において、濃縮部と個体計測部間に濃縮部から送られた検体を流しつつ生物を含まない精製液体を供給した後に濃縮を行い生物の濃度を更に高める精製部を備えている。
第3の生物検査装置の構成によれば、精製部を備えるので、測定対象の生物の濃度を高めることが可能である。
【0046】
第4の生物検査装置は、第1の構成において、染色部、濃縮部、個体計測部の順番に検体を搬送する検体搬送手段と、該検体搬送手段による検体の搬送およびその停止を制御する搬送制御手段とを、備えている。
第4の生物検査装置の構成によれば、検体の搬送および搬送の停止が適宜可能である。
【0047】
第5の生物検査装置は、第3の生物検査装置において、濃縮部から精製部への検体の流量を制御する濃縮部−精製部間流量制御手段と、該濃縮部−精製部間流量制御手段を制御する第1流量制御手段とを備えている。
第5の生物検査装置の構成によれば、濃縮部から精製部への流量の制御を行える。
【0048】
第6の生物検査装置は、第3の生物検査装置において、精製部から個体計測部への流量を制御する精製部−個体計測部間流量制御手段と、該精製部−個体計測部間流量制御手段を制御する第2流量制御手段とを備えている。
第6の生物検査装置の構成によれば、精製部から個体計測部への流量の制御を行える。
【0049】
第7の生物検査装置は、第1の生物検査装置において、濃縮部は、最低直径サイズが50μm以上の生物を濃縮する。
第7の生物検査装置の構成によれば、最低直径サイズが50μm以上の生物を濃縮して、最低直径サイズが50μm以上の生物の測定を行える。
【0050】
第8の生物検査装置は、第3の生物検査装置において、精製部は、最大直径サイズが50μm未満の生物を取り除いている。
第8の生物検査装置の構成によれば、精製部は、最大直径サイズが50μm未満の生物を取り除き、最大直径サイズが50μm以上の生物の濃度を高めることが可能である。
【0051】
第9の生物検査装置は、第1の生物検査装置において、検体の量は、1m以上としている。
第9の生物検査装置の構成によれば、例えば、1トン以上のバラスト水を1000倍に濃縮して、検体の量を1m以上として生物の測定を行える。
【0052】
第10の生物検査装置は、第1の生物検査装置において、検体の流動量を求める流動量取得手段を備え、制御手段が、生細胞をもつ最低直径サイズ50μm以上の生物の数を計測し、流動量取得手段により取得した検体の流動量が1mに達するまでに10個計測した場合、測定を終了している。
第10の生物検査装置の構成によれば、1トンの検体、例えば、バラスト水を1000倍に濃縮して、1トンの検体中に生細胞をもつ最低直径サイズ50μm以上の生物が10個いるか否か、測定できる。
【0053】
第11の生物検査装置は、第1の生物検査装置において、検体の流動量を求める流動量取得手段を備え、制御手段は、流動量取得手段で取得した単位液量あたりの個体の最低直径サイズについての度数を計測し、該度数から濃縮部の濃縮率を決定している。
第11の生物検査装置の構成によれば、検体の単位液量あたりの個体の最低直径サイズについての度数を計測し、該度数から濃縮部の濃縮率を決定するので、検体の単位液量あたりの個体の最低直径サイズについての度数に応じて濃縮率を決定し、生物の測定を行える。
【0054】
第12の生物検査装置は、第3の生物検査装置において、検体の流動量を求める流動量取得手段を備え、制御手段は、流動量取得手段で取得した単位液量あたりの個体の最低直径サイズについての度数を計測し、該度数から精製部の精製率を決定している。
第12の生物検査装置の構成によれば、流動量取得手段で取得した単位液量あたりの個体の最低直径サイズについての度数を計測し、該度数から前記精製部の精製率を決定するので、検体の単位液量あたりの個体の最低直径サイズについての度数に応じて、検体の濃度を高め、測定を行える。
【0055】
第13の生物検査装置は、第1の生物検査装置において、濃縮部より廃棄された液体中から染色部より検体に供給された染色液を回収する第1染色液精製部を備えている。
第13の生物検査装置の構成によれば、第1染色液精製部によって濃縮部より廃棄された液体中の染色液を回収するので、染色液を有効に利用することができる。
【0056】
第14の生物検査装置は、第3の生物検査装置において、精製部より廃棄された液体中から染色部より検体に供給された染色液を回収する第2染色液精製部を備えている。
第14の生物検査装置の構成によれば、第2染色液精製部によって精製部より廃棄された液体中の染色液を回収するので、染色液を有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に関わる実施形態の生物検査装置の基本システムを示す図である。
【図2】(a)および(b)は、生物検査装置における流れ式染色装置の内部構造を示す平面概念図、および(a)図の流れ式染色装置のA−A線断面図である。
【図3】生物検査装置における流れ式濃縮装置の内部構造を示す断面概念図である。
【図4】生物検査装置における流れ式粒子計測手段の構成を示した断面概念図である。
【図5】(a)、(b)、および(c)は、粒子の一つであるプランクトンの生死判定を行うための判定データを示した図である。
【図6】生物検査装置による測定を終了するときの制御装置の制御方法を示す流れ図である。
【図7】生物検査装置における濃縮率の制御方法を表す流れ図である。
【図8】(a)および(b)は、プランクトンの形状寸法を示した図である。
【符号の説明】
【0058】
1…生物検査装置、
20…流れ式染色装置(染色部)、
30…流れ式濃縮装置(濃縮部)、
40…流れ式精製手段(精製部)、
50…流れ式粒子計測手段(粒子計測部)、
52…粒子(個体)、
52a1、52a2…プランクトン(生物)、
61…検体連続供給手段(検体搬送手段)、
62…連続供給手段 (染色部)、
63…連続供給手段 (精製部)、
71…濃縮装置−精製手段間バルブ(検体搬送手段、濃縮部−精製部間流量制御手段)、
73…精製手段−粒子計測手段間バルブ(検体搬送手段、精製部−粒子計測部間流量制御手段)、
82…染色液用水槽 (染色部)、
83…精製液体用水槽 (精製部)、
89…染色液精製部(第1染色液精製部、第2染色液精製部)、
90…制御装置(制御手段、搬送制御手段、第1流量制御手段、第2流量制御手段)、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の検体を流しつつ該検体中に存在する生細胞を持つ生物を染色する染色部と、
前記染色が施された検体を流しつつ前記生物の濃度を高めるように濃縮する濃縮部と、
前記濃縮された検体中の前記生物を含む個体の画像情報を取得する個体計測部と、
前記個体計測部より出力された前記個体の画像情報より前記生物の測定を行う制御手段とを
備えたことを特徴とする生物検査装置。
【請求項2】
前記制御手段における生物の測定は、前記生物の形状の計測と前記生物の染色状態の有無からの該生物の生死の判定である
ことを特徴とする請求項1に記載の生物検査装置。
【請求項3】
前記濃縮部と前記個体計測部間に前記濃縮部から送られた前記検体を流しつつ前記生物を含まない精製液体を供給した後に濃縮を行い前記生物の濃度を更に高める精製部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の生物検査装置。
【請求項4】
前記染色部、前記濃縮部、前記個体計測部の順番に前記検体を搬送する検体搬送手段と、
該検体搬送手段による前記検体の搬送およびその停止を制御する搬送制御手段とを、
備えることを特徴とする請求項1に記載の生物検査装置。
【請求項5】
前記濃縮部から前記精製部への前記検体の流量を制御する濃縮部−精製部間流量制御手段と、
該濃縮部−精製部間流量制御手段を制御する第1流量制御手段とを、
備えることを特徴とする請求項3に記載の生物検査装置。
【請求項6】
前記精製部から前記個体計測部への流量を制御する精製部−個体計測部間流量制御手段と、
該精製部−個体計測部間流量制御手段を制御する第2流量制御手段とを、
備えることを特徴とする請求項3に記載の生物検査装置。
【請求項7】
前記濃縮部は、最低直径サイズが50μm以上の生物を濃縮する
ことを特徴とする請求項1に記載の生物検査装置。
【請求項8】
前記精製部は、最大直径サイズが50μm未満の生物を取り除く
ことを特徴とする請求項3に記載の生物検査装置。
【請求項9】
前記検体の量は、1m以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の生物検査装置。
【請求項10】
前記検体の流動量を求める流動量取得手段を備え、
前記制御手段は、生細胞をもつ最低直径サイズ50μm以上の生物の数を計測し、前記流動量取得手段により取得した前記検体の流動量が1mに達するまでに前記数を10個計測した場合、測定を終了する
ことを特徴とする請求項1に記載の生物検査装置。
【請求項11】
前記検体の流動量を求める流動量取得手段を備え、
前記制御手段は、前記流動量取得手段で取得した単位液量あたりの前記個体の最低直径サイズについての度数を計測し、該度数から前記濃縮部の濃縮率を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の生物検査装置。
【請求項12】
前記検体の流動量を求める流動量取得手段を備え、
前記制御手段は、前記流動量取得手段で取得した単位液量あたりの前記個体の最低直径サイズについての度数を計測し、該度数から前記精製部の精製率を決定する
ことを特徴とする請求項3に記載の生物検査装置。
【請求項13】
前記濃縮部より廃棄された液体中から前記染色部により前記検体に供給された前記染色液を回収する第1染色液精製部を備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の生物検査装置。
【請求項14】
前記精製部より廃棄された液体中から前記染色部により前記検体に供給された前記染色液を回収する第2染色液精製部を備えた
ことを特徴とする請求項3に記載の生物検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−85898(P2009−85898A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259330(P2007−259330)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】