説明

生物標的用のエフェクター分子を伴うポリエーテルポリオールデンドロン複合体

本発明の対象は、特定のポリエーテルポリオールデンドロン部位、少なくとも1つの特定の蛍光エフェクター分子(E)を含んでなる、ポリエーテルポリオールデンドロン複合体である。かかるポリエーテルポリオールデンドロン複合体は、診断及び治療のために使用でき、それにより少なくとも1つの特定の蛍光エフェクター分子の光学的特性が、ポリエーテルポリオールデンドロン複合体への付加により向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、特定のポリエーテルポリオールデンドロン部位、少なくとも1つの特定の蛍光エフェクター分子(E)を含んでなる、ポリエーテルポリオールデンドロン複合体である。かかるポリエーテルポリオールデンドロン複合体は、診断及び治療のために使用でき、それにより少なくとも1つの特定の蛍光エフェクター分子の光学的特性が、ポリエーテルポリオールデンドロン複合体への付加により向上する。
【背景技術】
【0002】
標的薬物送達は、タンパク質、抗体及びペプチド等の生物分子を、薬物及び治療効果を有する他の分子のための担体として利用する。これらの生物複合体の有望性は、親薬物の副作用の最小化を試みながら、疾患のある標的組織のための薬物の選択性の向上することである。これまで、このような様々な生物複合体が、臨床試験に入りそして承認された(McCarron PA et al, Molecular Interventions 2005, 5, 368)。
【0003】
生物複合体の合成における主要な障害は、生体分子を伴うエフェクター分子の物理化学的相互作用である。一方では、生体分子の標的結合特性、安定性、及び溶解性は、化学修飾後に維持される必要があり、他方では、輸送される多数のエフェクター分子が、最も効果的なペイロード送達を達成するように結合する必要がある。分子運搬のための薬物複合体のために使用されるリンカー化学の性質は、得られる特性に重要な影響を及ぼしている。リンカーの特性は、例えば、担体分子上の薬物の位置、担体1分子当たりの数、及び親水性度合いに基づく担体分子との相互作用を決定する。第二に、リンカーは安定であるか、又は低pH又は酵素(エステラーゼ、プロテアーゼ)のいずれかにより切断されてよい。"Bioconjugate Techniques"(G. Hermanson, Academic Press, 1996)において、リンカー化学について総合的に記載されている。
【0004】
蛍光色素について、ペプチド構造への結合により蛍光消光がもたらされることは、よく知られている(Bouteiller C, Bioconj. Chem 2007, 18, 1303-1317, Tung CH, Biopolymers 2004, 76, 391-403)。
【0005】
抗体及びタンパク質への結合後、光線感作物質がの吸収が損失し(例えばWO 2007/042775、図28)且つ励起後の一重項酸素を作り出す効率の低下を呈する(例えば、Steffiova K. et al., Curr Med Cliem 2007, 14, 2110-2125)。より多数の光線感作物質の抗体への結合により不溶性になり(例えば、上記の4分子、m−THPCからMab、Cane、Res.1999, 59, 1505-1513)、且つ結合は、抗体の配列における様々な位置で非特異的且つ統計的に発生する。かかるエフェクター分子の生物標的分子、例えば抗体における不明確な位置への直接結合は、その標的への標的分子の親和性の低下をもたらし、且つ標識タンパク質の溶解性を不十分にする。不溶性が不十分な場合は、標識タンパク質を再溶解するために、DMSO等の有機溶媒の付加が必要である。しかしながらこれは、有機溶媒の毒性により不利である。蛍光色素は、タンパク質構造の存在下でも、強力な分子相互作用を呈し、それにより凝集するか、複雑な構造を形成する傾向が高い。その結果、かかる蛍光色素の光学的特性、特に蛍光量子収率及び一重項酸素収率は悪化する。
【0006】
高分子超分岐ポリグリセロールは、薬物溶解化、輸送、及び送達のための成分として、並びに物質科学において、例えば、Haag R et al. (J. Am. Chem. Soc. 2000; 122:2954-2955), Haag R et al. (Angew Chem Int Ed Engl 2006 45:1198-215), Frey H (J Biotechnol 2002, 90:257-67)に、広い多用途性が記載されている。かかる超分岐ポリグリセロールは、重合手法により作製され、そのため単一の確定した分子量ではない。
【0007】
WO 2005/023844は、両親媒性分子のための修飾因子として、確定したポリグリセロールデンドリマーを記載する。
【0008】
確定したポリエーテルの他の例には、C4単位を使用した、Yang M (JACS 2005, 127, 15107)、Fulton DA (Chem Commun 2005, 474)、及びGrayson SM (JACS 2000, 122, 10339)がある。
【0009】
Kolhe P et al. (Pharrn. Res. 2004, 21, 2185)は、薬物イブプロフェン及び蛍光色素フルオレセイン−イソチオシアネートで標識したポリエーテル(C4単位)について発表した。そこに記載されるポリグリセロールは、構造的に明確でない。色素の光学的特性に対する影響は記載されていなかった。
【0010】
ポリマーと造影剤との組み合わせは、主に磁気共鳴映像法のための試薬、例えばGd−錯体[Caruthers SD et al., Methods MoI Med. 2006, 124:387-400]等が繰り返し報告されている。光学的エフェクター分子を含んでなる各々のシステムは知られていない。
【0011】
EP 1 666 486 A1は、グリセロール誘導体で改変された疎水性又は両親媒性の化合物について記載する。ここで、当該グリセロール誘導体は、分岐ポリエーテル構造の状態を有する。薬物担体として機能できるグリセロール誘導体で修飾された疎水性又は両親媒性化合物の微粒子が記載されており、ここで、当該薬物は、微粒子における非共有的に保持されるか、又は封入される。
【0012】
WO 2008/015015は、樹状ポリグリセロールスルフェート及びスルホネート、及び炎症疾患のためのその使用について記載する。樹状ポリグリセロールスルフェート及びスルホネートは、シグナル伝達分子を積載してもよいし、又はシグナル伝達分子をそこに結合させてもよい。シグナル伝達分子を樹状ポリグリセロールスルフェート及びスルホネートに積載又は結合させる方法は記載されておらず、且つかかる化合物の物理的特徴も記載されていない。Jaszberenyi et al., J Biol Inorg Chem (2007), 12, 406-420には、Gd3+−積載ポリアミドアミン及び超分岐デンドリマーの物理化学及びMRI特性が記載されている。
【0013】
Fulton et al., Chem Commun (2005), 474-476には、樹状ガドリニウム錯体における効率的な緩和能向上、及び中程度の分子量複合体における有効な運動結合が記載されている。
【0014】
Grayson et al., J Am Chem Soc (2000), 122, 10335-10344には、脂肪族ポリエーテルデンドロンの合成及び表面機能化が記載されている。
【0015】
Lumann et al., Chem Eur J (2003), 9, 5618-5626には、ポリ(グリセロール−コハク酸)樹状巨大分子の収束が記載されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明の目的は、光学的エフェクター分子のための向上した複合体プラットフォームを提供することであった。驚くべきことに、ポリエーテルポリオールに基づく樹状分子の新規なクラスが、蛍光色素(診断エフェクター)及び光線感作物質(治療エフェクター)のクラスに由来する光学的エフェクター分子のための複合体プラットフォームとして特に適することがわかった。これらのポリエーテルポリオールデンドロンは、単分散であっても、又は完全な合成デンドロンであってもよい。かかる複合体は、凝集の最小化、向上した親水性、及び水性媒体中での向上した溶解性、ならびに、ポリエーテルポリオールの樹状構造を介して生物標的分子に、1以上のエフェクター分子を同時に複合化する能力を呈する。生体分子の構造によって、当該ポリエーテルポリオール複合体は、単一の合成ステップにおいて、生体分子中の明確な位置との結合に適する。これにより、生体分子の活性を邪魔する全生体分子構造にわたり、統計的に置かれるのではなく、明確な位置に置かれる、一多重エフェクター分子を運搬する生物標的分子と複合化することになる。
【0017】
ポリエーテルポリオールは、エフェクター−ポリエーテルポリオール複合体の状態で、溶液中において、その環境とエフェクターとの相互作用を最適化できることがわかっていた。本発明によると、驚くべきことに、ポリエーテルポリオールデンドロンは、診断的エフェクター分子(向上した蛍光量子収率)、並びに治療エフェクター分子(向上した一重項酸素収率)の有利な特性とともに、向上した水溶解性、水性溶液からの沈殿の阻止をもたらすことがわかった。
【0018】
さらに、ポリエーテルポリオールデンドロン及び蛍光色素の複合体の、生物標的分子、特にペプチド及び抗体への共有的付加は、生物標的分子の有利な特性をもたらすことがわかった。シアニン色素−ポリエーテルポリオール複合体での抗体の標識後、得られた標識化タンパク質の安定性及び可溶性は、対応する色素単独で標識した同じ抗体と比較して向上した。エフェクター−ポリエーテルポリオール複合体と同様に、生物標的分子とのポリエーテルポリオールデンドロン複合体は、抗体と複合化させた場合、診断的エフェクター分子(向上した蛍光量子収率)及び治療エフェクター分子(向上した一重項酸素収率)の有利な特性とともに、向上した水溶解性、及び有機溶媒の阻止をもたらす。
【0019】
さらなる対象は、放射診断又は放射治療エフェクター等の放射金属器レートとのさらなる複合体である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本明細書に含まれる図面は、本出願の範囲を限定する意図はないと解すべきである。示されるコア単位、構成要素単位、外部単位、基R1及びR2、並びにサブユニットの連結性及びデンドロン世代の数は、本発明の理解を促進する単なる例示的な実施例である。
【0021】
【図1】図1は、デンドロン世代a)1、b)2、c)3及びd)4の特定のポリエーテルポリオール(ここではポリグリセロール)デンドロン部位の図式的表示である。示されるデンドロンは、完全であり、これらの全ては、構成要素/外部単位の可能な最大数を含んでなる。本明細書に示される外部単位は、構造的にグリセロールに由来し、且つ2位でヒドロキシル基を介して連結する。
【図2】図2は、デンドロン世代a)1、b)2、c)3及びd)4の特定のポリエーテルポリオール(ここではポリグリセロール)デンドロン部位の図式的表示である。示されるデンドロンは、完全であり、これらの全ては、構成要素/外部単位の可能な最大数を含んでなる。本明細書に示される外部単位は、構造的にグリセロールに由来し、且つ1位でヒドロキシル基を介して連結する。
【図3】図3は、デンドロン世代a)1、b)2、c)3及びd)4の特定のポリエーテルポリオール(ここではポリグリセロール)デンドロン部位の図式的表示である。各々の場合において、光学的エフェクター分子(E)は、リンカー分子(L;ここでは、L1)を介してコア単位と結合する。本明細書に示される外部単位は、構造的にグリセロールに由来し、且つ2位でヒドロキシル基を介して連結する。
【図4】図4は、図3に類似し、これにより外部単位は、1位のヒドロキシル基を介して連結する。
【図5】図5は、デンドロン世代a)0及び1、b)1及び1、c)1及び2、d)2及び2、並びにe)2及び3の、特定のポリエーテルポリオール(ここではポリグリセロール)デンドロン部位を含んでなる、特定のポリエーテルポリオール(ここではポリグリセロール)デンドロン複合体の図式的表示である。各々の場合において、光学的エフェクター分子(E)は、リンカー分子(L;ここではL2及びL1)を介して各々のコア単位へ連結する。本明細書に示される外部単位は、構造的にグリセロールに由来し、且つ2位でヒドロキシル基を介して連結する。
【図6】図6は、図5に類似し、これにより外部単位は、1位のヒドロキシル基を介して連結する。
【図7】図7は、デンドロン世代a)1、b)2、c)3及びd)4の特定のポリエーテルポリオール(ここではポリグリセロール)デンドロン複合体の図式的表示である。各々の場合、生物標的分子(B)は、リンカー分子(L;ここでは、L1)を介してコア単位と結合する。本明細書に示される外部単位は、構造的にグリセロールに由来し、且つ2位でヒドロキシル基を介して連結する。a)〜d)に示される官能基R2は、独立に、光学的エフェクター分子(E)、又は光学的エフェクター分子(E)を含んでなるデンドロン部位により置換されてよく、2つの可能な例はe)に示され、ここで(E)は、リンカー基(L;ここでは、L3)を介して結合する。
【図8】図8は、デンドロン世代a)1、b)2、及びc)3の特定のポリエーテルポリオール(ここではポリグリセロール)デンドロン複合体の図式的表示である。各々の場合、生物標的分子(B)は、リンカー分子(L;ここでは、L1)を介してコア単位と結合する。本明細書に示される外部単位は、構造的にグリセロールに由来し、且つ1位でヒドロキシル基を介して連結する。a)〜c)に示される官能基R2は、独立に、光学的エフェクター分子(E)、又は光学的エフェクター分子(E)を含んでなるデンドロン部位により置換されてよく、4つの可能な例はe)に示され、ここで(E)は、リンカー基(L;ここでは、L3)を介して結合する。
【図9】図9は、デンドロン世代a)1、b)2、c)3及びd)4の特定のポリエーテルポリオール(ここではポリグリセロール)デンドロン複合体の図式的表示である。各々の場合、生物標的分子(B)は、リンカー分子(L;ここでは、L1及びL2)を介してコア単位と結合する。本明細書に示される外部単位は、構造的にグリセロールに由来し、且つ2位でヒドロキシル基を介して連結する。
【図10】図10は、図9に類似し、これにより外部単位は、1位のヒドロキシル基を介して連結する。
【図11】図11は、a)完全なポリエーテルポリオール、及びb)非完全なポリエーテルポリオールの図式的表示である。
【図12】図12は、本発明で使用できる例示的色素の図式的表示であり;a)インドシアニングリーン;b)本発明によるインドシアニングリーンの誘導体、である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の対象は、
a)ポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)
b)蛍光色素又は光線感作物質を含んでなる群から選択される少なくとも1つのエフェクター部位(E)、又は放射性金属錯体もしくは放射性金属キレートを含んでなる群から選択される放射活性エフェクター部位、
を含んでなり、
ここで、前記ポリペプチドエーテルポリオールデンドロン部位(D)は、C3−C5炭化水素骨格、少なくとも1つの官能基R1を含んでなり、及び2つのヒドロキシル基であって、その各々に樹状的に反復する構成要素単位のn=1〜10世代が共有結合できるヒドロキシル基をさらに有するコア単位からなり、それにより当該構成要素単位は、C3−C5炭化水素骨格及び2つのヒドロキシル基をさらに含んでなり、ここで、構成要素の最外部世代のヒドロキシル基(外部単位又はシェル)は、1又は複数の独立に選択された官能基R2により置換され、
ここで、前記構成要素単位は、全て同じ種類であっても、異なる単位の1以上の種類から選択されてもよく、
ここで、前記最外部単位は、全て同じ種類であっても、異なる単位の1以上の種類から選択されてもよく、且つ
ここで、前記デンロドロン複合体は、(E)が蛍光色素である場合、水性媒体中の蛍光量子収率が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、最も好ましくは少なくとも20%を呈し、且つ(E)が光線感作物質の場合、水性媒体中の一重項の酸素量子収率が少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%を呈する、
ポリエーテルポリオールデンドロン複合体である。
【0023】
本発明の別の対象は、
a)ポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)
b)蛍光色素又は光線感作物質、及び任意に、放射性金属錯体もしくは放射性金属キレートの群から選択される放射活性エフェクター部位の群から選択される、少なくとも1つのエフェクター部位(E)、
を含んでなり、
ここで、前記ポリペプチドエーテルポリオールデンドロン部位(D)は、C3−C5炭化水素骨格、少なくとも1つの官能基R1を含んでなり、及び2つのヒドロキシル基であって、その各々に樹状的に反復する構成要素単位のn=1〜10世代が共有結合できるヒドロキシル基をさらに有するコア単位からなり、それにより当該構成要素単位は、C3−C5炭化水素骨格及び2つのヒドロキシル基をさらに含んでなり、ここで、構成要素の最外部世代のヒドロキシル基(外部単位又はシェル)は、1又は複数の独立に選択された官能基R2により置換され、
ここで、前記構成要素単位は、全て同じ種類であっても、異なる単位の1以上の種類から選択されてもよく、
ここで、前記最外部単位は、全て同じ種類であっても、異なる単位の1以上の種類から選択されてもよく、且つ
ここで、前記デンロドロン複合体は、(E)が蛍光色素である場合、水性媒体中の蛍光量子収率が少なくとも5%を呈し、且つ(E)が光線感作物質の場合、水性媒体中の一重項の酸素量子収率が少なくとも30%を呈し、
ここで、少なくとも1つのエフェクター分子(E)は、UV/可視(400〜800nm)又は近赤外(700〜1000nm)スペクトル領域での蛍光放射を伴う蛍光色素を含んでなる、光学的エフェクター分子であるか、又は
少なくとも1つのエフェクター分子(E)は、UV/可視(400〜800nm)又は近赤外(700〜1000nm)スペクトル領域での励起後、光線療法の効果を有する光線感作物質を含んでなる、治療機能を有する光学的エフェクター分子であり、
ここで、少なくとも1つのエフェクター分子(E)は、官能基R1又はR2と共有結合する、
ポリエーテルポリオールデンドロン複合体である。
【0024】
本発明のデンドロン部位の例示的な表示は、図1及び2に描かれている。しかしながら、本発明のデンドロンは、これらの図に示される特定の実施態様に限定されることは決してない。
【0025】
好ましい実施態様によれば、ポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)は、完全に合成される。
【0026】
完全に合成されるとは、デンドロンの正確な構造が、所望の状態において耐容されてよいように、デンドロン構造がより小さな単位(合成、半合成、又は天然起源があり得る)から合成的に組み上げられることを意味する。
【0027】
3炭化水素骨格が好ましい。
【0028】
より好ましい実施態様によれば、ポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)は、単分散ポリエーテルポリオールデンドロンである。
【0029】
「単分散」なる用語は、デンドリマー化学の分野において一般的に理解される意味で使用される。これは、所与のデンドリマー又はデンドロンが、狭い分子量分布を有し、ここで明確な分子量の1つの特定の種が主に存在する。より具体的には、当該1つの特定の種は、デンドリマー又はデンドロンの総量に基づいて、90%以上の比率、好ましくは95%以上で存在する。
【0030】
別のより好ましい実施態様によれば、当該ポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)は、完全なポリエーテルポリオールデンドロンである。
【0031】
「完全なデンドロン」なる用語は、単分散で、高度に合成されたデンドロンであり、ここで全てのデンドロン世代が、理論的に可能な構成要素単位の最大数を含有する。図11aは、かかる完全デンドロンの図式的表示である。比較として、図11bは、非完全なデンドロンの図式的表示である。
【0032】
別のより好ましい実施態様によれば、ポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)は、分子量が70〜6000g/mol、さらにより好ましくは200〜4000、よりさらに好ましくは300〜3000g/molである。
【0033】
別のより好ましい実施態様によれば、ポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)に関連する整数nの値は、2〜8、より好ましくは2〜5、最も好ましくは3又は4である。
【0034】
別のより好ましい実施態様によれば、少なくとも1つの官能基R1は、−OH、−OSO3H、−OSO3Na、−NH2−、−N3、−COOH、−SH、−SO3-、−C≡C、−C1-20−アルキル、−CONH−C1-20−アルキル、−NHC(O)−C1-20−アルキル及び−O−C1-20−アルキルを含んでなる群から独立に選択され、
ここで、前記C1-20−アルキル基は、分岐型又は直鎖型のアルキル基であり、ここで1又は複数の(好ましくは1〜3個の)非連続的メチレン基は、O、S、NH、C(O)NH、SO2、SO、アリール、エテン又はエチンを含んでなる群から選択される基により置換されてよく、且つ
ここで、前記アルキルは、−OH、−OSO3H、−OSO3Na、−NH2、N3、−COOH、−SH、−SO3-、−C≡Cを含んでなる群から選択される少なくとも1つの(好ましくは1〜3個の)基で置換される。
【0035】
別のより好ましい実施態様によれば、官能基R2は、−OH、−OSO3H、−OSO3Na、−NH2−、−N3、−COOH、−SH、−SO3-、−C≡C、−C1-20−アルキル、−CONH−C1-20−アルキル、−NHC(O)−C1-20−アルキル及び−O−C1-20−アルキルを含んでなる群から独立に選択され、
ここで前記C1-20−アルキル基は、分岐型又は直鎖型のアルキル基であり、ここで1又は複数の(好ましくは1〜3個の)非連続的メチレン基は、O、S、NH、C(O)NH、SO2、SO、アリール、エテン又はエチンを含んでなる群から選択される基により置換されてよく、且つ
ここで、前記アルキルは、−OH、−OSO3H、−OSO3Na、−NH2、N3、−COOH、−SH、−SO3-、−C≡Cを含んでなる群から選択される少なくとも1つの(好ましくは1〜3個の)基で置換される
【0036】
上記の基R1及びR2から、さらにより好ましい基の組み合わせは、R1=−OH、R2は上記から選択される;並びにR1が、−OH、−NH2、−C1-12−アルキル−NH2、−O−C1-12アルキル−NH2、−COOH、−C1-12アルキル−COOH、−O−C1-12アルキル−COOH、−SH、−C1-12アルキル−SH、−O−C1-12アルキル−SHから選択され、R2=OHである。
【0037】
1=1つの−NH2又は−COOHで置換される−O−C1-6−アルキル、R2=−OHであることがさらにより好ましい。
【0038】
本発明との関連で言及される基R1及びR2は、さらなる分子(例えば、(D)、(E)、(L)又は(B))の反応基と共有結合でき、これにより、ジスルフィド、アミド、アミン、エーテル、チオエーテル、チオエステル、カルボキシエステル、スルホニルエステル、スルホニルエステル、スルホンアミド、尿素、カルバメート、チオカルバメート、トリアゾールから選択される基が得られる。
【0039】
別の実施態様によれば、コア単位は、1つの官能基R1を有する。
【0040】
別のより好ましい実施態様によれば、コア単位、構成要素単位、及び外部単位は、構造的にグリセロールに由来し、これにより、コア単位において、グリセロールのOH基の1つは、上記の基R1により置換され、且つこれにより、外部単位において、OH基の2つが、上記の独立に選択される基R2により置換される。得られたデンドロンは、これによりポリグリセロールのように見える可能性がある。
【0041】
ポリエーテル単位(これはより好ましい実施態様によれば、グリセロールである)から構成される、本発明のポリエーテルポリオールデンドロンは、ポリエーテルポリオール単位のヒドロキシル基の反応に基づいて、多数のエーテル結合を含んでなることは、当業者に理解されるはずである(図式的表示で実施例1と比較して)。
【0042】
別の実施態様によれば、ポリエーテルポリオールデンドロン(D)において、デンドロン世代の各々における構成要素単位は、全て同じ種類であっても、異なるデンドロン世代において異なる種類であってもよい。
【0043】
別のより好ましい実施態様によれば、ポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)における構成要素単位は、全て同じ種類である。
【0044】
別の好ましい実施態様によれば、ポリエーテルポリオールデンドロンにおける外部単位が、1以上の官能基R2を有し、かかる基R2は互いに異なる。
【0045】
別のより好ましい実施態様によれば、ポリエーテルポリオールデンドロン部位における外部単位は、2つの官能基R2を有する。
【0046】
別のより好ましい実施態様によれば、ポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)における外部単位は、全て同じ種類である。
【0047】
さらに別の好ましい実施態様によれば、少なくとも1つのエフェクター分子(E)は、UV/可視(400〜800nm)又は近赤外(700〜1000nm)スペクトル領域での蛍光放射を伴う蛍光色素を含んでなる、診断機能を有する光学的エフェクター分子である。
【0048】
より好ましくは、診断的機能を有する光学的エフェクター分子は、NBD、フルオレセイン、ローダミン、ペリレン色素、インドジカルボシアニン色素、インドトリカルボシアニン色素、メロシアニン色素、フタロシアニン、ナフタロシアニン、トリフェニルメチン色素、クロコニウム色素、スクアリリウム色素、ベンゾフェノキサジン色素、ベンゾヘノチアジン色素、及びその誘導体を含んでなる群から選択される。
【0049】
さらにより好ましくは、診断的機能を有する光学的エフェクター分子は、ポリメチン色素、インドカルボシアニン色素、インドジカルボシアニン色素、インドトリカルボシアニン色素、メロシアニン色素、フタロシアニン、ナフタロシアニン、トリフェニルメチン色素、クロコニウム色素、スクアリリウム色素、及びその誘導体を含んでなる群から選択される。
【0050】
さらにより好ましくは、診断的機能を有する光学的エフェクター分子は、インドカルボシアニン、インドジカルボシアニン、インドトリカルボシアニン色素、及びその誘導体を含んでなる群から選択される。
【0051】
最も好ましくは、診断的機能を有する光学的エフェクター分子は、インドシアニングリーン(ICG)及びその誘導体の構造的要素を含んでなる、蛍光色素である。
【0052】
これにより、ICGの誘導体は、好ましくは、構造的には以下の通りに記載される。
a)インドール窒素における、1又は2つのスルホブチル鎖の−C1-6−アルキル−R2による置換、ここでR2は上記の通りである;及び/又は
b)中央炭素原子での、R3で置換されたポリメチン鎖によるポリメチン鎖の置換、ここで2つの隣接する炭素原子は、ポリメチン鎖の3つの炭素原子と一緒に5又は6員環を形成し、ここで、R3は−C1-6−アルキル−R2、−フェニル−C1-6−アルキル−R2、−S−フェニル−C1-6−アルキル−R2、を含んでなる群から選択され、ここでR2は、上記の通りである、及び/又は
c)−SO3-Na+、−COOH又は−OHから独立に選択される1又は複数の基での、外部ベンジドール環の置換。かかる誘導体の構造は、図12に例示され、これはICG及び本発明の誘導体の構造を示す。
【0053】
ポリメチン鎖は、中央炭素原子に、上記の残基R3を有することがより好ましく、ここでR2は−COOH又は−SO3-Na+であり、且つ2つの隣接する炭素原子は、ポリメチン鎖の3つの炭素原子と一緒に5又は6員環を形成する。
【0054】
本発明で使用できる、診断機能を有する光学的エフェクター分子をもたらす合成経路の例は、"Topics in Applied Chemistry: Infrared absorbing dyes" Ed. M. Matsuoka, Plenum, N.Y. 1990, "Topics in Applied Chemistry: The Chemistry and Application of Dyes", Waring et al., Plenum, N.Y., 1990, J. Org. Chem, 60: 2391-2395 (1995), Lipowska et al. Heterocyclic Comm. 1 : 427-430 (1995), Fabian et al. Chem. Rev. 92: 1197 (1992), WO 96/23525, Strekowska et al. J. Org. Chem. 57: 4578-4580 (1992), Bioconjugate Chem. 16:1275-128 (2005)において公開されている。
【0055】
さらに別の好ましい実施態様によれば、少なくとも1つのエフェクター分子(E)は、UV/可視(400〜800nm)又は近赤外(700〜1000nm)スペクトル領域での励起後、光線療法有効性を有する光線感作物質を含んでなる、治療機能を有する光学的エフェクター分子である。
【0056】
より好ましくは、光線感作物質は、テトラピロール、ポルフィリン、サッフィリン(sapphyrins)、クロリン、テトラフェニルポルフィリン、テトラフェニルクロリン、バクテリオクロリン、テトラフェニルバクテリオクロリン、フェオホルビド(pheophorbide)、バクテリオフェオホルビド、ピロフェオホルビド、バクテリオピロフェオホルビド、プルプリニミド(purpurinimide)、バクテリオプルプリンイミド、ベンゾプルリリン(benzoporpliyrin)、フタロシアニン、ナフトリアロシアニン、及びその誘導体を含んでなる群から選択される。
【0057】
さらにより好ましくは、光線感作物質は、フェオホルビド(pheophorbide)a,ピロフェオホルビドa、3−アセチルフェオホルビドa、3−アセチルピロフェオホルビドa,プルプリン−18−N−アルキルイミド、プルプリン−18−N−ヒドロキシルイミド、3−アセチルプルプリン−18−N−アルキルイミド、3−アセチルプルプリン−18−N−ヒドロキシルイミド、及びクロリンe6、Sn−クロリンe6、m−テトラヒドロキシフェニルクロリン(m−THLC)及びベンゾポルフィリン誘導体、ベンゾポルフィリン誘導体モノ酸(BPD−NA、ベルテポルフィン(verteporfin))を含んでなる群から選択される。
【0058】
またさらにより好ましくは、光線感作物質は、フェオホルビドa、ピロフェオホルビドa、3−アセチルフェオホルビドa、3−アセチルピロフェオホルビドa、プルプリン−18−N−アルキルイミド、プルプリン−18−N−ヒドロキシルイミド、3−アセチルプルプリン−18−N−アルキルイミド、3−アセチルプルプリン−18−N−ヒドロキシルイミド、及びクロリンe6、及びベンゾポルフィリン誘導体、ベンゾポルフィリン誘導体モノ酸(BPD−NA、ベルテポルフィン)を含んでなる群から選択される。
【0059】
最も好ましくは、光線感作物質は、フェオホルビドa、ピロフェオホルビドa、プルプリン−18−N−アルキルイミド、プルプリン−18−N−ヒドロキシルイミド、及びクロリンe6、ベルテポルフィンを含んでなる群から選択される。
【0060】
別の好ましい実施態様によれば、光線感作物質は、2つの構造的要素を有し、これは、2つのポリエーテルポリオールデンドロンでの修飾を可能にする。例えば、フェオホルビドa、ピロフェオホルビドa、及びプルプリンイミドは、そのカルボン酸基に加えて、3位にビニル基を有し、これは独立に修飾することも、さらなる分子(例えば、(D)、(E)、(L)又は(B))で修飾することも可能である。
【0061】
本発明において使用できる光線感作物質をもたらす合成経路の例は、WO 2003/028628, US 2005/0020559, Zheng G et al, J Med Chem 2001, 44, 1540-1559; Li G et al., J. Med. Chem. 2003, 46, 5349-5359; Lunardi CN et al., Curr Org Chem 2005, 9, 813-821; Chen Y et al., Curr Org Chem 2004, 8, 1105-1134において公開されている。
【0062】
さらなる別の好ましい実施態様によれば、任意に、少なくとも1つのエフェクター分子(E)は、放射性核種、及びテトラアザシクロドデカンキレート及び大環状又は開鎖のアミノカルボン酸から選択されるキレート構造を含んでなる放射標識錯体である。
【0063】
より好ましくは、放射性標識複合体は、
1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N',N",N'"−テトラ酢酸(DOTA)、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N',N"−トリ酢酸(DO3A)、1−オキサ−4,7,10−トリアザシクロドデカン−N,N',N"−トリ酢酸(OTTA)、トランス(1,2)−シクロヘキサノジエチレントリアミン−ペンタ酢酸(CDTPA)、N,N,N',N",N"−ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、エチレンジアミン−テトラ酢酸(EDTA)、N−(2−ヒドロキシ)エチレン−ジアミントリ酢酸、ニトリロトリ酢酸(NTA)、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)グリシン、及びその誘導体を含んでなる群から選択されるキレート剤、及び
90Y、99mTc、111In、47Sc、67Ga、51Cr、177mSn、67Cu、167mTm、97Ru、188Re、177Lu、199Au、203Pb、141Ce、86Y、94mTc、110mIn、68Ga、64Cuから選択される放射性核種、を含んでなる。
【0064】
さらにより好ましくは、放射性標識複合体は、
1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N',N",N'"−テトラ酢酸(DOTA)、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N',N"−トリ酢酸(DO3A)、N,N,N',N",N"−ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、及び
90Y、99mTc、111In、68Ga、86Y、64Cuから選択される放射性核種、を含んでなる。
【0065】
最も好ましくは、放射性標識複合体は、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N',N",N'"−テトラ酢酸(DOTA)、及び111In、68Ga、86Y、64Cuから選択される放射性核種、を含んでなる。
【0066】
別の特に好ましい実施態様によれば、ポリエーテルポリオールデンドロン複合体は、1又は複数の生物標的分子(B)をさらに含んでなる。
【0067】
さらにより特に好ましくは、1又は複数の生物標的分子(B)は、ペプチド、ペプチド模倣分子、抗体もしくはその断片、抗体模倣物(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fabc、Facb;単鎖抗体、例えば、単鎖Fvs(scFvs);及び二重特異性抗体)、タンパク質、オリゴヌクレオチド、ペプチド−オリゴヌクレオチド、炭水化物を含んでなる群から独立に選択される。
【0068】
最も好ましくは、1又は複数の生物標的分子(B)は、抗体、抗体模倣物、ペプチド、及びペプチド模倣分子を含んでなる群から独立に選択される。
【0069】
本発明との関連で、生物標的分子は、標的分子に対する高い結合親和性を呈するポリペプチド構造又は炭水化物構造に基づく分子である。これらの標的分子、例えば、タンパク質、ポリ炭水化物、又は核酸分子等は、哺乳類の体の疾患のある組織に存在する。これにより、特定の組織もしくは細胞区画における通常のその存在、位置、発現量、修飾パターン(例えば、アルキルホスホリル、スルホニル基等)、3次又は4次構造は、症状特異的な方法に応じて変化する。したがって、当該標的分子の存在及び/又は量の検出は、上記の標的分子へ連結する特定の症状への診断として機能することができる。これにより、標的分子は、診断される哺乳類対象由来であっても、又は外部供給源、例えば感染体、例えば真菌、ウイルス又は寄生虫由来であってもよい。これにより、症状は、医療的症状又は疾患に特定される。生物標的分子は、哺乳類の体に投与後、この標的分子へ結合している。標的分子と生物標的分子との間の結合は、結合親和性定数により特徴づけされ、好ましくは1μM未満の値、より好ましくは100nM未満、さらにより好ましくは10nM未満の値であるべきである。
【0070】
好適な抗体、抗体断片、及び抗体模倣物は、例えば、血管形成標的に対する結合成分を有するものである。これらの生物標的分子は、新規に形成された脈管構造及び脈管形成構造体において発現される受容体に対するリガンドである。例としては、ED−B−フィブロネクチンに対する抗体がある(Cancer Res. 1999, 59:347-352; EP 0 344 134 B1, WO 97/45544 A1, WO 99/5857 A2, WO 01/62800 A1に記載がある)。特に好ましいものは、L19、E8、AP38及びAP39である。抗体の別の種類は、VEGF受容体(VEGF−1、VEGF−2及びVEGF−3)に対するリガンド、例えば、ベバシズマブ(Avastin(商標)、rhumAb−VEGF)、ラニビズマブ(Lucentis(商標))、mAb 6.12、IMC−2C6、IMC−1121、HF4−3C5、KM−2550、及びSalgaller ML (2003) Current Opinion in Molecular Therapeutics 5(6):657-667がある。その他の抗体は、エンドグリン(CD−105)に結合し、例えばSN6h、SN6、SN6a、SN6j、P3D1、P4A4、44G4、GRE、E−9、CLE−4、RMAC、PN−E2、MAEND3、TEC4、TEC11、A11、8E11がある。
【0071】
好適なペプチド及びペプチド模倣物は、Gタンパク質共役受容体に結合するもの、例えば、ソマトスタチン受容体、ボンベシン受容体、ニューロスタチン受容体、VIP受容体、ニューロペプチドY受容体;並びに、インテグリン(RGD−ペプチド及びペプチド模倣物)に結合するもの、uPA−受容体(upAR)、VEGF受容体、EGFがある。
【0072】
好ましい実施態様によれば、少なくとも1つのエフェクター分子(E)は、コア単位の官能基R1及び/又は1又は複数のシェル単位の1又は複数の官能基R2へ共有結合し、ここで1又は複数の生物標的分子(B)は、コア単位の官能基R1及び/又は1又は複数のシェル単位に共有結合することができる。
【0073】
(E)がコア単位の官能基R1に共有結合する、デンドロン複合体の例示的な表示は、図3及び4に描かれる。
【0074】
別の好ましい実施態様によれば、少なくとも1つのエフェクター分子(E)は、コア単位の官能基R1及び/又は1又は複数のシェル単位の1又は複数の官能基R2に共有結合し、ここで、1つの生物標的分子(B)は、コア単位の官能基R1に共有結合できる。
【0075】
別の好ましい実施態様によれば、1のエフェクター分子(E)は、1又は複数のポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)のコア単位の官能基R1に共有結合し、ここで1の生物標的分子(B)は、当該エフェクター分子(E)に共有結合でき、且つここで基R1及びR2、ポリエーテルポリオールデンドロン部位のコア単位及び構成要素単位、及び整数nは、各々独立に、第一ポリエーテルポリオールデンドロン部位とさらなるポリエーテルポリオールデンドロン部位とで、同じであっても、異なってもよく、これにより、さらなるデンドロン部位の整数nは0でもよい。かかるデンドロン複合体の例示的な表示は、図9及び10に描かれ、これにより、これらの図において、1つのデンドロン部位しか持たない例が描かれているが、これは上記の開示に対して非限定的なものと解するべきである。
【0076】
ある場合には、かかるポリエーテルポリオールデンドロン複合体が、1以上のデンドロン部位(D)を含んでなる場合、ポリエーテルポリオールデンドロン複合体は、好ましくは2〜8、より好ましくは2〜4、最も好ましくは2のデンドロン部位(D)を含んでなる。
【0077】
別の好ましい実施態様によれば、1のエフェクター分子(E)は、第二ポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)のコア単位の官能基R1に共有結合し、ここで、当該第二デンドロン部位における整数nは0でもよく、ここで得られた複合体の1又は複数の分子は、請求項1に記載の第一ポリエーテルポリオールデンドロン部位の1又は複数のシェル単位の1又は複数の官能基R2と共有結合し、ここで1の生物標的分子(B)は、第二ポリエーテルポリオールデンドロン部位のコア単位の官能基R1と共有結合でき、且つ官能基R1及びR2、ポリエーテルポリオールデンドロン部位のコア単位及び構成要素単位、及び整数nは、独立に、第一ポリエーテルポリオールデンドロン部位と第二ポリエーテルポリオールデンドロン部位とで、同じであっても、異なってもよい。かかるデンドロン複合体の例示的な表示は、図7及び8に描かれる。
【0078】
別の好ましい実施態様によれば、請求項1の1以上のポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)は、コア単位のその各々の基R1を介して、1のエフェクター分子(E)と共有結合し、ここで1又は複数の生物標的分子(B)は、1又は複数のポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)の1又は複数のシェル単位の1又は複数の官能基R2と共有結合でき、且つここで、官能基R1及びR2、ポリエーテルポリオールデンドロン部位のコア単位及び構成要素単位、及び整数nは、独立に、各ポリエーテルポリオールデンドロン部と、同じであっても、異なってもよく、且つここで1つ以外の全てのデンドロン部位における整数nは0でもよい。かかるデンドロン複合体の例示的な表示は、図5及び6に描かれる。
【0079】
デンドロン複合体が、1以上のポリエーテルポリオールデンドロン部位を含んでなる上記の場合において、整数nが0であるさらなるデンドロン部位のコア単位が、前記さらなるデンドロン部位のコア単位の2つのヒドロキシル基が官能基R2により独立に置換されるようになっていてもよい。かかるデンドロン複合体の例示的な表示として、図5a)及び6a)を比較でき、ここで整数nは、1のデンドロン部位について0である。
【0080】
別のより好ましい実施態様によれば、1以上のポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)を含んでなるデンドロン複合体について、R1は、当該ポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)の各々と同じである。
【0081】
別のより好ましい実施態様によれば、1以上のポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)を含んでなるデンドロン複合体について、R2は、当該ポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)の各々と同じである。
【0082】
これは、個別の外部単位において、1以上の基R2は、互いに独立に選択されるが、R2基の選択は、外部単位の全てと同じであることをさらに意味する。
【0083】
別のより好ましい実施態様によれば、1以上のポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)を含んでなるデンドロン複合体について、コア単位は、当該ポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)の各々と同じである。
【0084】
別のより好ましい実施態様によれば、1以上のポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)を含んでなるデンドロン複合体について、構成要素単位は、当該ポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)の各々と同じである。
【0085】
別のより好ましい実施態様によれば、1以上のポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)を含んでなるデンドリマー複合体について、整数nは、当該ポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)の各々と異なる。
【0086】
さらに別の実施態様によれば、1以上のポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)を含んでなるデンドリマー複合体について、整数nは、当該ポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)の各々と同じである。
【0087】
さらなる実施態様によれば、ポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)、少なくとも1つのエフェクター分子(E)、及び存在する場合、生物標的分子(B)は、直接結合、脂肪族C1-20炭化水素鎖から独立に選択されるリンカー単位(L)により共有結合し、ここで、任意に、1〜5個の非連続的メチレン基は、−O−、−S−、−C(O)−、C(O)NH−、−NHC(O)−、−NHC(O)NH−、−C(O)O−、−OC(O)O−、−SO2-、−O−マレインイミド−、−O−スクシンイミド−、トリアゾール、アリール、エテン及びエチンを含んでなる群から選択される基により置換されてよく、且つ前記脂肪族C1-20炭化水素鎖は、OH、COOH、−O−C1-6−アルキル又はフェニルを含んでなる群から選択される1又は複数の基で任意に置換できる。
【0088】
好ましくは、リンカー単位(L)は、脂肪族C1-20炭化水素鎖から独立に選択され、ここで、炭素原子の少なくとも1つは、−O−、−S−、−C(O)NH−を含んでなる群から選択される基で置換され、且つ前記炭化水素は、任意にOHで置換されてよい。
【0089】
本発明のポリエーテルポリオールデンドロン複合体の製造のための好適なポリエーテルポリオールデンドロン複合体前駆体は、本発明のポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)、コア単位の官能基R1と共有結合する本発明の少なくとも1つのエフェクター部位(E)、及び/又は前記ポリエーテルポリオールデンドロン部位の1又は複数のヒドロキシル基を含んでなる前駆体であり、ここで前記コア単位は、生物標的分子(B)、もしくは第二ポリエーテルポリオールデンドロンに対する複合体のための反応基Xをさらに含んでなる。
【0090】
本発明のポリエーテルポリオールデンドロ製造のための、別の好適なポリエーテルポリオールデンドロン複合体前駆体は、本発明のポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)、コア単位の官能基R1と共有結合する少なくとも1つ生物標的分子(B)、及び/又はポリエーテルポリオールデンドロン部位のシェル単位の1又は複数のヒドロキシル基を含んでなる前駆体であり、ここで、前記コア単位は、本発明のエフェクター部位(E)、もしくは第二ポリエーテルポリオールデンドロンに対する複合体のための反応基Xをさらに含んでなる。
【0091】
好ましくは、上記のポリエーテルポリオールデンドロン複合体前駆体において、反応基Xは、窒素、アミノ、ヒドロキシ、チオール、マレイミド、マレイミドアシルアミノ、ピリジニル−ジスルフィド、ビニルスルホン、ブロモアセチル、ヨードアセチル、ブロモアセチルアミド、ヨードアセチルアミド、イソチオシアネート、イソシアネート、ヒドラジン、ヒドラジド、混合無水物、活性化エステル、インサイチュ活性化エステル、カルボン酸−n−ヒドロキシスクシンイミジルエステル、カルボン酸p−ニトロフェニルエステル、カルボン酸−n−ヒドロキシスクシンイミジルエステル、カルボン酸p−ニトロフェニルエステル、塩化スルホニル、アジド、チオベンジルエステル、アリールボランを含んでなる群から選択される。
【0092】
本発明の別の実施態様は、本出願で開示される、1又は複数のポリエーテルポリオールデンドロン複合体又はポリエーテルポリオールデンドロン複合体前駆体を含んでなるキットである。
【0093】
本発明の別の実施態様は、治療又は診断目的のための、本発明のポリエーテルポリオールデンドロン複合体である。
【0094】
本発明の別の実施態様は、腫瘍、腫瘍転移、アテローム硬化症、炎症、(好ましくは、リウマチ様関節炎、変形性関節症)、眼疾患、前癌状態、化生、過形成、及び良性病変(好ましくは、良性前立腺肥大)に関連する疾患状態又は症状を含んでなる群から選択される疾患状態又は症状における、治療又は診断目的のための、本発明のポリエーテルポリオールデンドロン複合体である。
【0095】
本発明により診断できるその他の腫瘍は、胃腸又は結腸直腸管、肝臓、膵臓、腎臓、袋嚢、甲状、前立腺、子宮内膜、卵巣、精嚢、メラノーマ、異形成口腔粘膜、侵襲性口腔癌、小細胞又は非小細胞肺癌のマリグノーマ(malignoma);乳房腫瘍、例えば、ホルモン依存性乳癌、ホルモン非依存性乳癌;移行性及び鱗状の細胞癌;精神性悪性腫瘍、例えば、神経芽腫、グリオーム、星状細胞腫、骨肉腫、骨髄腫;軟組織肉腫;血管腫(hemangioama)及び内分泌系腫瘍、例えば、下垂体腺腫、褐色細胞腫、パラガングリオーマ、血瘤論理性悪性腫瘍(haemato logical malignancy)、例えば、リンパ腫及び白血病、又は上記の腫瘍うちの1つに由来する転移、から選択される。特に好ましい腫瘍は、乳房、子宮頸部、前立腺、精嚢の腫瘍であり、ここで前記器官/組織から進行した腫瘍は、体外から、又は内視鏡的手法で容易に接近可能である。
【0096】
眼疾患は、例えば、トラコーマ、早期網膜症、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障及び加齢性黄斑変性を含んでなる群から選択されてよい。加齢性黄斑変性の診断及び治療が好ましい。
【0097】
本発明の別の好ましい実施態様は、前立腺癌、良性前立腺肥大、加齢性黄斑変性及び乳癌から選択される病状又は症状における治療又は診断目的のための、本発明のポリエーテルポリオールデンドロン複合体である。
【0098】
これに関連して、好ましい診断的応用は、当該デンドロン複合体の診断的エフェクター分子(E)の励起光で注目の領域を照らすことにより、身体の領域の蛍光画像を取得することにより行われ、且つ発光検出装置を用いて蛍光放射画像の捕捉する、インビボ(in vivo)診断である。
【0099】
好ましい治療的応用は、光線力学的治療(PDT)であり、これはデンドロン複合体における治療的エフェクター分子(E)の光毒性(光感作)を誘導し、そしてその結果、局所細胞毒性一重項酸素及び/又はラジカルが、細胞死及び治療有効性をもたらす。
【0100】
本発明の別の実施態様は、本発明のポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)の合成であり、ここで、当該ポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)は、収束的合成においてシェルからコアへ連続的に組み上げられ、
ここで、2つの構成要素単位は、コア単位の官能基R2、又はさらなる構成要素と結合し、これにより、コア単位の官能基R2、又はさらなる構成要素と再び結合できるデンドロン部位前駆体が得られ、これにより、所望の世代数を有するデンドロン部位を得るために、当該プロセスが繰り返され、そして、各合成ステップにおいて、成長するデンドロン部位の外部R2基の数が倍増する。
【0101】
かかるデンドロン部位前駆体の例は、市販のチオグリセロールにより表され、且つここでR1=R2=OHである。
【0102】
本発明のさらなる実施態様は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)を組み上げるステップ、ここで当該ポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)は、収束的合成において、シェルからコアへと連続的であり、ここで2つの構成要素単位は、コア単位の官能基R2か、C3−C5炭化水素骨格を含んでなるコア単位か、少なくとも1つの官能基R1か、又はさらなる構成要素単位と結合し、これにより、コア単位の官能基R2、又はさらなる構成要素と再び結合できるデンドロン部位前駆体が得られ、これにより、当該プロセスを、所望の世代数でデンドロン部位を得るために反復し、それにより、各合成ステップにおいて成長するデンドロン部位の外部R2基の数を倍増させ、且つ
基R1及び/又はR2が、以前の請求項のいずれか1項に記載のエフェクター分子(E)の反応基、又は以前の請求項のいずれか1項に記載のリンカー単位(L)の反応基に共有結合するステップをさらに含んでなり、ここで、ジスルフィド、アミド、アミン、エーテル、チオエーテル、チオエステル、カルボキシエステル、スルホニルエステル、スルホンアミド、尿素、カルバメート、チオカルバメート、チアゾールから選択される基が得られ、及びここで、上記のステップにおいてリンカー単位(L)が結合すると、以前の請求項のいずれか1項に記載のエフェクター分子(E)は、当該リンカー単位(K)にさらに結合する。
【0103】
本発明のポリエーテルポリオールデンドロン部位の合成は、当該ポリエーテルポリオールデンドロン部位が、分岐的合成においてコアからシェルへと連続的に組み上げられ、これにより各新規な世代について、構成単位要素のR2基はOH基であり、この各々が、さらなる構成単位要素と反応し、ここで当該反応基は、改変され新規なOH基を形成してもよく、これにより、この方法は、所望の世代数を有するデンドロン部位を得るために反復されてよく、そして、各合成ステップにおける成長するデンドロン部位の外部R2基の数が倍増することは、当業者に明らかである。最終ステップにおいて、外部構成単位を付加する。
【0104】
上記の収束的及び分岐的合成の方法は、より小さいデンドロン部位前駆体を分岐的合成で合成し、その後このうちの2つの分子を、デンドロン部位(又は前駆体)を得るために、上記の収束的アプローチによりコア単位又は構成要素単位に連結するように組み合わせてもよく、ここで、外部R2基の数は、当該より小さいデンドロン部位前駆体と比較して倍増する。
【0105】
本発明の別の実施態様は、反応基Xと、1又は複数の生物標的部位(B)又は1又は複数のエフェクター分子(E)との間に共有結合を形成する、1又は複数の生物標的分子(B)又はエフェクター分子(E)への本発明の前駆体の複合による、本発明のポリエーテルポリオールデンドロン複合体の合成である。これにより、当該共有結合は、好ましくは、チオール、ヒドロキシ、アミン、又はヒスチジンから選択される。
【0106】
以下に、本発明に関連して使用される複数の表現の意味をさらに説明する。
【0107】
「樹状的に反復する」なる用語は、反復する分子単位が、ポリマー分子を組み上げるために使用され、それにより反復する分子単位の各々が、さらなる分子が連結できる多数の基を含んでなることを記載するために使用される。得られたポリマー分子は、木の枝又は根と同様に、分岐的又は樹状的構造と似ている。図11は、デンドロンの図式的表示である。
【0108】
デンドロン部位(D)のシェルと結合する場合、エフェクター分子(E)及び/又は生物標的分子(B)は、外部単位の特定基R2と結合する必要はないが、外部単位の基R2において統計的に広がる。有機化学の知識を有する当業者は、(E)及び/又は(B)の平均数は、デンドロン複合体の製造プロセスにおいて、(E)及び/又は(D)に対する(B)の適切な比率を選択することにより調整できることを理解するはずである。
【0109】
本発明のポリエーテルポリオールデンドロン複合体は、その高いバイオアベイラビリティ、その生物適合性及びその分解に対する安定性のため、本明細書に記載の目的に、特によく適する。本発明のポリエーテルポリオールデンドロン複合体に付加した蛍光分子は、それぞれ蛍光量子収率又は一重項酸素収率の増加を呈する。
【0110】
1以上のエフェクター分子は、本発明のポリエーテルポリオールデンドロン部位に付加できる。ポリエーテルポリオールデンドロンの堅く、高度に分岐した構造のために、エフェクター分子の凝集は、効率的に阻害される。その後、複数のエフェクターのかかる複合体は、生物標的分子に結合してもよい。これにより、ポリエーテルポリオールは、エフェクターの分子相互作用を最小化する効果を有し、且つ多数のエフェクター分子の付加的効果が十分に引き出され得る。さらに、生物標的分子への、1又は複数のエフェクターを運搬する容易に調製される樹状的分子の複合は、生物標的分子の好ましい位置への直接的結合を可能にする(例えば、タンパク質におけるシステインでの、マレイミド要素を介するカップリングにより)。樹状単位の高度な親水性により、得られた複合体の溶解性は負の影響を及ぼさない。
【0111】
診断的画像化応用において、より高度な蛍光シグナルが、より良好なインビボでのシグナル対ノイズ比をもたらし、それにより、病変検出、特に当該病変がより深部の組織領域に位置する場合の検出の向上をもたらしてもよい。より高度な蛍光効果の利益として、患者へより低用量の複合体又は色素誘導体を適用することが可能である。光線力学的治療応用において、より高い一重項酸素収率は、光照射及び光線力学的治療による病変(腫瘍、炎症)の、より有効な治療が可能になる。より深部の組織及びより高容量において、治療する病変の治癒が可能である。
【実施例】
【0112】
合成:
蛍光色素の合成:
例は、"Topics in Applied Chemistry; Infrared absorbing dyes" Ed. M. Matsuoka, Plenum, N.Y. 1990, "Topics in Applied Chemistry: The Chemistry and Application of Dyes", Waring et al, Plenum, N. Y., 1990, Cytometry 10:3-10 (1989); Cytometry 11 :418-430 (1990); Cytometry 12:723-730 (1991); Bioconjugate Chem. 4:105-11 (1993); Bioconjugate Chem. 7:356-62 (1996); J. Org. Chem. 60: 2391-2395 (1995), Heterocyclic Comm. 1 : 427-430 (1995), Chem. Rev. 92: 1197 (1992), WO 96/23525, J. Org. Chem. 57: 4578-4580 (1992), Bioconjugate Chem. 16:1275-128 (2005); WO 00/71162, WO 01/52746, WO 01/52743、で公開されている。
【0113】
光線感作物質の合成:
例は、WO 03/028628, US 2005/0020559 , Zheng G et al, J Med Chem 2001, 44, 1540-1559; Li G et al., J. Med. Chem. 2003, 46, 5349-5359; Lunardi CN et al., Curr Org Chem 2005, 9, 813-821; Chen Y et al., Curr Org Chem 2004, 8, 1105-1134、で公開されている。
【0114】
実施例1:
蛍光シアニン色素発色団 ビス−1,1'−(4−スルホブチル)インドトリカルボシアニン−5−カルボン酸ナトリウム塩とのポリグリセロールデンドロン複合体の合成
【0115】
実施例1a:
トリグリセロールのアセタール保護:トリグリセロール(60 g, 0.25 mol)を穏和に加熱し、液体の一貫性を得る。2,2−ジメトキシプロパン(150 mL, 1.25 mol)を添加し、その後、p−トルエンスルホン酸(PTSA)(3.0 g, 25 mmol)をゆっくりと添加する。反応を30〜40℃で一晩行う。攪拌後30分で、均一な溶液が得られる。得られた黄/オレンジ色の溶液を、トリエチルアミン(25 mmol)の添加により中和し、その後30分間室温で攪拌する。その後、溶媒を真空中で蒸発させ、且つ残存する粗製液体を、シリカゲルでの濾過を介して精製し(酢酸エチル/ヘキサン1;2、2;1、6;1)、淡黄色オイルとして78%で化合物[Gn]−OHを得る。この化合物は、その後の[Gn]−OH世代の段階的合成のための第一構成要素[G1.0]−OHである。
【0116】
実施例1b:
鉱物油中の、[Gn]−OH(Cl当たり1.05当量)、60 % NaH (OH当たり、2.5当量)、触媒量の[15]クラウン−5及び新たに蒸留乾燥したTHFを、Ar雰囲気下、乾燥した2首丸底フラスコに入れる。40℃で2〜3時間攪拌後、1.0当量の二塩化メタリル、触媒量のKI及び[18]クラウン−6を、溶液中に添加する。混合物を還流下で12時間攪拌する。室温まで冷却後、反応を蒸留水で停止させ、且つジクロロメタンで抽出する。その後、有機層をNa2SO4で乾燥させ、溶媒を真空下で除去する。残存物の精製を、2−プロパノール/n−ヘキサンを溶出液とするHPLCで達成し、所望の産物を高収率で得る。[G2.0]−エン−収率99%、[G3.0]−エン−収率94%、[G4.0]−エン−収率92%、[G5.0]−エン−収率68%。
【0117】
実施例1c:
塩化メタリルとの反応後(実施例1b)、次のデンドロン世代をさらに組み上げる前に、外メチレン(exomethylene)基を、ヒドロキシル基([Gn]−OH)に転移させる必要がある。[Gn]−エン(1.0当量)を、乾燥メタノール/ジクロロメタン1:1(c=0.13 moI/L)に溶解させ、且つ−78℃に冷却する。それが青色に変色するまで、溶液中にオゾンをバブリングした。酸素の激しい流れを使用して過剰なオゾンを除去後、水素化ホウ素ナトリウム(10.0当量)を添加する。12時間の攪拌中、混合物を室温までゆっくりと温め、その後、飽和NH4Clの添加により停止させ、1時間攪拌する。相を分離し、水層をCH2Cl2で抽出する。混合した有機層を水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過する。溶媒の蒸発により、標的化合物を純粋な状態で得る。[G2.0]−OH−>99%、[G3.0]−OH−>99%、[G4.0]−OH−>99%、[G5.0]−OH−>99%。
【0118】
実施例1d:
アジド修飾デンドロンの合成:氷浴中で0℃に冷却した、トルエン中の[Gn]−OH(1.0当量)及びトリエチルアミン(1.1〜1.5当量)の溶液に、塩化メタンスルホニル(1.5当量)を添加する。反応の進行をTLCでモニタリングした。完了後、沈殿物を濾過し、混合物を真空下で濃縮して、最終生成物をオイルとして得た(100%)。粗生成物を、次の反応に使用する。乾燥DMF中の[Gn]−OMs(1.0当量)の溶液に、5.0当量のアジ化ナトリウムを添加した。アルゴン下、120℃で3時間攪拌後、過剰のNaN3を濾別し、DMFを凍結蒸留(cryodestillation)により高真空下で除去する。粗生成物を、シリカゲルの薄層での濾過により精製する(酢酸エチル/ヘキサン)。2ステップにわたる非常に高収率で、明黄色で粘稠性オイルとして、[Gn]−N3を得る。[G2.0]−N3−96%、[G3.0]−N3−>99%、[G4.0]−N3−91%、[G5.0]−N3−>99%。
【0119】
【化1】

【0120】
実施例1e:シアニン色素とのデンドロン複合体への、デンドロンアジド(実施例1d)のクリックカップリングの一般的手法:
【0121】
【化2】

【0122】
THFに溶解した、1.0当量の[Gn]−N3、及び1.1当量のビス−1,1'−(4−スルホブチル)インドトリカルボシアニン−5−カルボン酸プロパルギルアミド(1,1'−(4−スルホブチル)インドトリカルボシアニン−5−カルボン酸、Bioconjugate Chem 12, 2001, 44-50、及び一般手法によるプロパルギルアミンから得る)に、0.3当量のDIPEA(ジイソプロピルエチルアミン)を添加する。次に、0.3当量のアスコルビン酸ナトリウム及び15 mol%の銅(II)硫酸五水和物を、反応混合物に添加する。THF:H2O混合物を、1:1(v/v)にする必要がある。異種混合物を、室温で48時間勢いよく混合し、真空中で濃縮し乾燥させる。アセタール保護基を除去するために、残存物をメタノール中に溶解し、HClで酸性化し、且つ24時間攪拌した。蒸発後、粗製物質を、逆相クロマトグラフィにより直接精製し(RP−18 Merck Licroprep、水/メタノール)、青色凍結乾燥物として生成物を得る(収率67〜85%)。
【0123】
実施例2:
蛍光シアニン色素発色団 ビス−1,1'−(4−スルホブチル)ベンズインドトリカルボシアニンナトリウム塩(インドシアニングリーン誘導体)とのポリグリセロールデンドロン複合体の合成
【0124】
【化3】

【0125】
ポリグリセロールアミン[Gn]−NH2を、実施例1に記載した通り、及びアジドからアミンへの変換についての公開された手法(Roller S et al., Molecular Diversity 2005, 9: 305-316)により得た。中央のシクロヘキシルブリッジ及びカルボキシエチルチオ−リンカーを有するインドシアニングリーン誘導体を、Hilderbrand SA(Bioconjugate Chein. 2005, 16, 1275-128)により、市販のIR−820から得る。乾燥DMF中の、25 mgの本誘導体(0.027 mmol)、12 mgのHATU(0.032 mmol)、85 mgのDIPEA(0.065 mmol)の溶液を、15分間攪拌し、且つDMF中のアセタール保護[G2.0]−アミン(38 mg, 0.054 mmol)溶液で処理する。得られる混合物を、25℃で48時間攪拌し、ジエチルエーテルの添加により生成物が沈殿した。残存物をメタノールに溶解し、且つ8時間50℃で、イオン交換樹脂Dowex 50Wと共に攪拌し、アセタール保護基を除去する。Dowex樹脂を濾別後、溶液を蒸発乾固し、生成物を逆相クロマトグラフィで単離する(RP−18 Merck Licroprep、水/メタノール):全体の収率34%。
【0126】
実施例3:
ペリレン色素とのポリグリセロールデンドロン複合体の合成
【0127】
【化4】

【0128】
ポリグリセロールアミン[Gn]−NH2は、実施例1に記載した通り、及びアジドからアミンへの変換についての公開された手法(Roller S et al., Molecular Diversity 2005, 9: 305-316)により得た。100 mg (0.18 mmol)のポリグリセロールアミン([Gn]−アミン)、30 mgのペリレン無水物(0.08 mmol)及び500 mgのイミダゾールを140℃まで3.5時間加熱し、その後、室温まで冷却する。残存する固体を水に溶解し、赤から紫色の溶液を得て、これを3日にわたり水(MWC500)で透析し、102 mg(92%変換率)の非晶質の暗紫色固体を得る。
【0129】
【化5】

【0130】
実施例4:
蛍光シアニン色素発色団 ビス−1,1'−(4−スルホブチル)インドトリカルボシアニン−5,5'−ジカルボン酸ナトリウム塩とのポリグリセロールデンドロン複合体の合成及び蛍光量子収率
【0131】
実施例4a:
蛍光シアニン色素発色団 ビス−1,1'−(4−スルホブチル)インドトリカルボシアニン−5,5'−ジカルボン酸ナトリウム塩とのポリグリセロールデンドロン複合体の合成
【0132】
【化6】

【0133】
ポリグリセロールアミン[Gn]−NH2は、実施例1に記載した通り、及びアジドからアミンへの変換についての公開された手法(Roller S et al., Molecular Diversity 2005, 9: 305-316)により得た。ビス−1,1'−(4−スルホブチル)インドトリカルボシアニン−5,5'−ジカルボン酸ナトリウム塩を、Licha et al., Photochem Photobiol 2000, 72, 392- 398により合成した。
乾燥DMF中の、50 mgのビス−1,1'−(4−スルホブチル)インドトリカルボシアニン−5,5'−ジカルボン酸ナトリウム塩(0.063 mmol)、48 mgのHATU(0.13 mmol)、34 mgのDIPEA(0.26 mmol)の溶液を15分間攪拌し、且つDMF中のアセタール保護[G2.0]−アミン(114 mg, 0.162 mmol)溶液で処理する。得られる混合物を、40℃で72時間攪拌し、ジエチルエーテルの添加により生成物が沈殿した。残存物をメタノールに溶解し、且つ8時間50℃で、イオン交換樹脂Dowex 50Wと共に攪拌し、アセタール保護基を除去する。Dowex樹脂を濾別後、溶液を蒸発乾固し、生成物を逆相クロマトグラフィで単離する(RP−18 Merck Licroprep、水/メタノール):全体の収率54%。
【0134】
実施例4b:
蛍光シアニン色素発色団 ビス−1,1'−(4−スルホブチル)インドトリカルボシアニン−5,5'−ジカルボン酸ナトリウム塩とのポリグリセロールデンドロン複合体の蛍光量子収率
【0135】
蛍光量子収率:
デンドロン色素(実施例4a) 0.13(PBS);0.18(MeOH)
前駆体色素: 0.07(PBS);0.14(MeOH)
【0136】
実施例5:
プルプリン(purpurin)−18由来の光線感作物質プルプリンイミドとのポリグリセロールデンドロン複合体の合成
【0137】
【化7】

【0138】
50 mg (0.089 mmol)のプルプリン−18(J Med Chem 2001, 44, 1540-1559)及び35 mgのポリグリセロールアミン(アセタール保護[G2.0]−アミン、実施例2を参照)を実施例3に記載の通りイミダゾールの存在下で反応させる。混合物を、ジクロロメタンで希釈し、ブラインで洗浄し、且つ蒸発乾固する。個体を、10 mLのメタノールに溶解し、Dowex−50Wを添加し、混合物を12時間60℃で攪拌する。およそ2〜3mLまで蒸発後、ジエチルエーテル(20 mL)を添加し、そして得られる沈殿物を濾過により回収した。逆相クロマトグラフィによる精製し(RP−18 Merck Licroprep、水/アセトニトリル、0.01%TFA含有)、凍結乾燥後、24 mgの生成物(25 %)を、緑色固体として得た;MS MALDI 1082, 1105。
【0139】
実施例6:
還元アミノ化を介する光線感作物質 3−ホルミルピロフェオホルビドaとのポリグリセロールデンドロン複合体の合成
【0140】
【化8】

【0141】
3−ホルミルピロフェオホルビドaは、Photochem Photobiol 81, 2005, 170-176により得る。THF中の、25 mg (0.047 mmol)の3−ホルミルピロフェオホルビドa及び50 mg (0.071 mmol)のテトラアセタール保護[G2.0]−アミンの溶液に、17 mg (0.080 mmol)のナトリウム−トリアセトキシボロヒドライド及び5.4 mg (0.09 mmol)の酢酸(10 mLTHF中1 mLストック溶液の51 μL)を添加する。混合物を48時間室温で攪拌し、水で希釈し、且つ凍結乾燥する。残存物をHCl/メタノールで溶解し、18時間攪拌し、アセタール基を除去する。0.1%のNaOHでpHを7に調節後、当該溶液を凍結乾燥する。得られる固体をHPLCで精製し(逆相、アセトニトリル/水+0.01%TFA)、36 mgの生成物(72%)を得る;MS MALDI 1057。
【0142】
実施例7:
2及び4つの蛍光シアニン色素発色団 ビス−1,1'−(4スルホブチル)インドトリカルボシアニンナトリウム塩との、アミノオキセパノール(aminooxepanol)由来のポリグリセロールデンドロン複合体の合成
【0143】
【化9】

【0144】
実施例7a:
3 g (10 mmol)の(±)−抗−ベンジル−6−ヒドロキシ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキセパン−5−イルカルバメート(Tetrahedron Asymmetry 17, 2006, 3128-3134)、鉱物油中の60%のNaH(1 g, 25 mmol)、触媒量の[15]クラウン−5及び新たに蒸留された乾燥THFを、Ar雰囲気下、2首丸底フラスコに置く。3時間40℃で攪拌後、1.0当量の二塩化メタリル、触媒量のKI及び[18]クラウン−6を、混合物に添加する。混合物を還流下で12時間攪拌する。室温まで冷却後、反応を蒸留水で停止させ、且つジクロロメタンで抽出する。その後、有機層をNa2SO4で乾燥させ、溶媒を真空下で除去する。残存物の精製をフラッシュクロマトグラフィで達成し(シリカゲル;ジクロロメタン/メタノール)、生成物を収率82%で得る。
【0145】
実施例7b:
塩化メタリル(実施例1b)との反応後、次のデンドロン世代を組み上げる前に、外メチレン(exomethylene)基を、ヒドロキシ基([Gn]−OH)に転移する必要がある。反応経路を、実施例1cに記載の通りに行い、高収率で生成物を得る:[G1.0]−OH−91%、[G2.0]−OH−86%。
【0146】
実施例7c:
COOH修飾デンドロンの合成:コアOH−基は、ブロモ酢酸−ブチルエステルで誘導化する。40 mLトルエン/4 mL THF中の1.5 molのGn−OH(1当量)を、100 mgのテトラブチルアンモニウムスルホネート及び30 mLの32%水酸化ナトリウム溶液と混合する。0.54 g (3 mmol)のブロモ酢酸−tertブチルエステルを、1時間以内で添加し、得られる混合物を18時間室温で攪拌する。有機相を分離し、水相をジクロロメタンで抽出する。混合有機相を、NaCl溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発により濃縮する。クロマトグラフィ精製(シリカゲル:ヘキサン/酢酸エチル)は、淡茶気味のオイルとして生成物を得る;[G1.0]−OCH2COOtBu−65%、[G2.0]−OCH2COOtBu−45%。
【0147】
【化10】

【0148】
実施例7d:
Cbz保護基の水素化による遊離アミノ基を有するカルボキシ修飾デンドロンの合成:0.5 gのGn−OCH2COOtBuをメタノールに溶解させる。0.1 gの10%Pd/C−触媒の添加後、混合物をH2−バルーン下で、18時間水素化させる。触媒を濾過により除去し、溶液を蒸発乾固し、明茶色気味固体として生成物を得る:[G1.0]−OCH2COOtBu/アミノ2−98%、[G2.0]−OCH2COOtBu/アミノ4−96%。
【0149】
【化11】

【0150】
実施例7e:
シアン色素1,1'−(4スルホブチル)インドトリカルボシアニン−5−カルボン酸(Bioconjugate Chem 12, 2001, 44-50)との[G1.0]−OCH2COOtBu/アミノ2及び[G2.0]−OCH2COOtBu/アミノ4の複合体:DMF中のシアン色素(100 mg, 0.14 inmol)の溶液を、63 mgのHATU(0.17 mmol)及び75 mgのDPEA(0.42 mol)で処理し、室温で30分攪拌する。この活性化色素に、0.05 mmolの[G1.0]−OCH2COOtBu/アミノ2又は0.02 mmolの[G2.0]−OCH2COOtBu/アミノ4をそれぞれ添加する。反応物を室温で5分、及び40℃で18時間攪拌させる。生成物を粗製物質として、ジエチルエーテルでの沈降させることにより単離し、残存物を2 mLのトリフルオロ酢酸を含有する10 mLのジクロロメタン中で攪拌し、遊離カルボン酸及び遊離OH基を得る。逆相クロマトグラフィ(RP−18 Merck Licroprep、水/メタノール、0.01%TFA含有)によりクロマトグラフ精製を行い、凍結乾燥後、緑色固体として生成物を得る;収率[G1.0]−OCH2COOtBu/シアニン2−55%、[G2.0]−OCH2COOtBu/シアニン4−34%。
【0151】
実施例8:
2つの光線感作物質分子ピロフェオホルビドaとの、アミノオキセパノール由来のポリグリセロールデンドロン複合体の合成
【0152】
【化12】

【0153】
ピロフェオホルビドaとの、[G1.0]−OCH2COOtBu/アミノ2(アセタール保護;実施例7d)の複合体:DMF中のピロフェオホルビドa(100 mg, 0.14 mmol)の溶液を、63 mgのHATU(0.17 mmol)及び75 mgのDIPEA(0.42 mol)で処理し、30分室温で攪拌する。この活性化色素に、25 mg (0.05 mmol)の[G1.0]−OCH2COOtBu/アミノ2を添加し、混合物を24時間40℃で攪拌する。ヘキサン:ジエチルエーテル(3:1)の添加後、沈殿物を遠心分離により回収し、その後、ジクロロメタン/TFA(3:1)中に再溶解し、3時間攪拌し、蒸発乾固させる。この残存物を最終的に10 mL HCl/メタノール中で、24時間50℃で攪拌する。5 mLまで蒸発させ、ジエチルエーテルでの沈降により、粗生成物を得て、これを、フラッシュクロマトグラフィで精製する(シリカゲル;酢酸エチル/ヘキサン);全体収率44 mg(64%)の緑色固体;MALDI MS 1390, 1412。
【0154】
実施例9:
2つの光線感作物質分子ピロフェオホルビドa−実施例6のデンドロンとの、アミノオキセパノール由来のポリグリセロールデンドロン複合体の合成
【0155】
【化13】

【0156】
実施例6の表題化合物との、[G1.0]−OCH2COOtBu/アミノ2の複合体:反応は、実施例8に記載の手法と類似の手法で行ったが、HATUでの第一活性化ステップは、0℃で行う点が異なる。生成物[G1.0]−OCH2COOH−ピロフェオ[G2.0]デンドロン2の最終単離は、HPLCにより達成される(逆相、アセトニトリル/水+0.01%TFA)、MS MALDI 2435, 2456, 2478。
【0157】
実施例10:
IgG抗体及びウシ血清アルブミンを伴う、[G1.0]−OCH2COOH−ピロフェオ[G2.0]デンドロン2(実施例9)との、アミノオキセパノール由来のポリグリセロールデンドロンの複合体
【0158】
実施例10a:
実施例9の表題化合物(20 mg, 8.2 μmol)を、乾燥DMF中に溶解する。この溶液に、8.3 mg (0.04 mmol)のDCC及び9.2 mg (0.08 mmol)のN−ヒドロキシスクシンイミドを添加する。混合物を5時間40℃で攪拌し、ジエチルエーテルを含む遠心分離チューブに注ぎ、得られる沈殿物を遠心分離により回収する。沈降を3サイクル行った後、25 mgの実施例9の粗N−ヒドロキシスクシンイミジルエステルを得て、複合体のために直接使用する。
【0159】
実施例10b:
IgG抗体との複合化:0.5 mgのリン酸緩衝食塩水(PBS、pH 7.4)中の1 mgの抗体(ウシ血清由来のIgG;Sigma, > 95%,塩不存在、粉末)の溶液に、0.1 mL水中、実施例9のN−ヒドロキシスクシンイミジルエステル0.5 mgの溶液の0.067 mmol(32 μL)を入れる。混合物を25℃で24時間、暗中で振とうさせる。精製を、PBSを溶出液として用いるNAP10カラム(Pharmacia)を介する濾過により達成する。コントロールの複合体として、ピロフェオホルビドa−NHS−エステルを、IgGとの複合化のために使用し、IgG−ピロフェオ複合体を得る。
【0160】
実施例10c:
ウシ血清アルブミン(BSA)との複合化:0.5 mgのリン酸緩衝食塩水(PBS、pH 7.4)中の1 mgのBSA(Sigma, fraction V, >98%, 粉末)の溶液に、0.1 mL水中、実施例9のN−ヒドロキシスクシンイミジルエステル0.5 mgの溶液の0. 148 mmol(70 μL)を入れる。混合物を25℃で24時間、暗中で振とうさせる。精製を、PBSを溶出液として用いるNAP10カラム(Pharmacia)を介する濾過により達成する。
コントロールの複合体として、ピロフェオホルビドa−NHS−エステルを、IgGとの複合化のために使用し、BSA−ピロフェオ複合体を得る。
【0161】
実施例10d:
実施例10b及び10cにおいて得られた溶液からの沈降の観察によるPBSにおける溶解性の調査:
IgG−[G1.0]−OCH2COOH−ピロフェオ[G2.0]デンドロン2 72時間まで沈降なし
IgG−ピロフェオ 15分保存後に沈降
BSA−[G1.0]−OCH2COOH−ピロフェオ[G2.0]デンドロン2 72時間まで沈降なし
BSA−ピロフェオ すぐに沈降
【0162】
ペプチドとのポリグリセロールシアニン複合体の合成
【0163】
実施例11a:
ヘキシル架橋メソ−クロロ ビス−1,1'−(4−スルホブチル)−インドトリカルボシアニン−5−カルボン酸ナトリウム塩チオール誘導体[G3.0]−O(CH23−SHの修飾
【0164】
【化14】

【0165】
シアニン色素は、文献における既知の手法に従って合成される。アセタール保護[G3.0]−O(CH23−SHは、アセタール保護[G3.0]−OHから、臭化アリルとヒドロキシ基の反応、その後ラジカル的(radicalic)チオアセチル付加反応によりアリル二重結合の修飾、そしてDOWEX−50Wで保護基の除去を行う。アセタール保護[G3.0]−O(CH23−SHの、シアニン色素との反応は、Bioconjugate Chem. 2005, 16, 1275-128に従って行う。化合物は、52786逆相クロマトグラフィ(RP−18 Merck Licroprep、水/メタノール、0.01%TFA含有)後に高純度で得られる;収率82%。
【0166】
実施例11b:
マレイミドリンカーでの修飾:乾燥DMF中の、45 mgの本誘導体(0.023 mmol)、10 mgのHATU(0.026 mmol)、6.8 mgのDIPEA(0.065 mmol)の溶液を、15分間攪拌し、且つDMF中のマレイミドヘキシルアミン−塩酸(15 mg, 0.065 mmol)溶液で処理する。得られる混合物を、25℃で18時間攪拌し、ジエチルエーテルの添加により生成物が沈殿した。精製は逆相クロマトグラフィ(RP−18 Merck Licroprep、水/アセトニトリル)により行われ、凍結乾燥後、24 mg (49%)を得る。この中間生成物を、3 mLのPBSに溶解させ、kの溶液に、TAT−結合ペプチド H−Gly−Arg−Lys−Lys−Arg−Arg−Gln−Arg−Arg−Arg−Gly−Cys−CONH2(3*TFA塩;20 mg;0.011 mmol)を添加する。混合物を25℃で4時間インキュベートし、凍結乾燥し、その後、HPLC精製(水/アセトニトリル,+0.1% TFA)のために蒸留水に溶解させ、15 mgの生成物を得る;MALDI MS:3691, 3693, 3715。
【0167】
【化15】

【図1a)】

【図1b)】

【図1c)】

【図1d)】

【図2a)】

【図2b)】

【図2c)】

【図2d)】

【図3a)】

【図3b)】

【図3c)】

【図3d)】

【図4a)】

【図4b)】

【図4c)】

【図4d)】

【図5a)】

【図5b)】

【図5c)】

【図5d)】

【図5e)】

【図6a)】

【図6b)】

【図6c)】

【図6d)】

【図6e)】

【図7a)】

【図7b)】

【図7c)】

【図7d)】

【図7e)】

【図8a)】

【図8b)】

【図8c)】

【図8d)】

【図9a)】

【図9b)】

【図9c)】

【図9d)】

【図10a)】

【図10b)】

【図10c)】

【図10d)】

【図11a)】

【図11b)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエーテルポリオールデンドロン複合体であって、
a)ポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)
b)蛍光色素又は光線感作物質の群から選択される少なくとも1つのエフェクター部位(E)、及び任意に放射活性エフェクター部位、又は放射性金属錯体又は放射性金属キレートの群から単独に選択される放射活性エフェクター部位、
を含んでなり、
ここで、前記ポリペプチドエーテルポリオールデンドロン部位(D)は、C3−C5炭化水素骨格、少なくとも1つの官能基R1を含んでなり、及び2つのヒドロキシル基であって、その各々に樹状的に反復する構成要素単位のn=1〜10世代が共有結合できるヒドロキシル基をさらに有するコア単位からなり、それにより当該構成要素単位は、C3−C5炭化水素骨格及び2つのヒドロキシル基をさらに含んでなり、ここで、構成要素の最外部世代のヒドロキシル基(外部単位又はシェル)は、1又は複数の独立に選択された官能基R2により置換され、
ここで、前記構成要素単位は、全て同じ種類であっても、異なる単位の1以上の種類から選択されてもよく、
ここで、前記最外部単位は、全て同じ種類であっても、異なる単位の1以上の種類から選択されてもよく、且つ
ここで、前記デンロドロン複合体は、(E)が蛍光色素である場合、水性媒体中の蛍光量子収率が少なくとも5%を呈し、且つ(E)が光線感作物質の場合、水性媒体中の一重項の酸素量子収率が少なくとも30%を呈し、
ここで、少なくとも1つのエフェクター分子(E)は、UV/可視(400〜800nm)又は近赤外(700〜1000nm)スペクトル領域での蛍光放射を伴う蛍光色素を含んでなる、光学的エフェクター分子であるか、又は
少なくとも1つのエフェクター分子(E)は、UV/可視(400〜800nm)又は近赤外(700〜1000nm)スペクトル領域での励起後、光線治療効果を有する光線感作物質を含んでなる、治療機能を有する光学的エフェクター分子であり、
ここで、少なくとも1つのエフェクター分子(E)は、官能基R1又はR2と共有結合し、且つ
ここで、前記ポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)は、単分散のポリエーテルポリオールデンドロンである、
ポリエーテルポリオールデンドロン複合体。
【請求項2】
前記少なくとも1つの官能基R1は、−H、−OH、−OSO3H、−OSO3Na、−NH2−、−N3、−COOH、−SH、−SO3-、−C≡C、−C1-20−アルキル、−CONH−C1-20−アルキル、−NHC(O)−C1-20−アルキル及び−O−C1-20−アルキルを含んでなる群から独立に選択され、
ここで、前記C1-20−アルキル基は、分岐型又は直鎖型のアルキル基であり、ここで1又は複数の非連続的メチレン基は、O、S、NH、C(O)NH、SO2、SO、アリール、エテン又はエチンを含んでなる群から選択される基により置換されてよく、且つ
ここで、前記アルキルは、−OH、−OSO3H、−OSO3Na、−NH2、N3、−COOH、−SH、−SO3-、−C≡Cを含んでなる群から選択される少なくとも1つの基で置換される、請求項1に記載のポリエーテルポリオールデンドロン複合体。
【請求項3】
前記官能基R2は、−OH、−OSO3H、−OSO3Na、−NH2−、−N3、−COOH、−SH、−SO3-、−C≡C、−C1-20−アルキル、−CONH−C1-20−アルキル、−NHC(O)−C1-20−アルキル及び−O−C1-20−アルキルを含んでなる群から独立に選択され、
ここで前記C1-20−アルキル基は、分岐型又は直鎖型のアルキル基であり、ここで1又は複数の非連続的メチレン基は、O、S、NH、C(O)NH、SO2、SO、アリール、エテン又はエチンを含んでなる群から選択される基により置換されてよく、且つ
ここで、前記アルキルは、−OH、−OSO3H、−OSO3Na、−NH2、N3、−COOH、−SH、−SO3-、−C≡Cを含んでなる群から選択される少なくとも1つの基で置換される、請求項1又は2に記載のポリエーテルポリオールデンドロン複合体。
【請求項4】
前記コア単位、前記構成要素単位、及び前記外部単位が、グリセロールに構造的に由来し、それにより、前記コア単位において、OH基の1つが、請求項2に記載の基R1により置換され、且つそれにより前記外部単位において、OH基の2つが、独立に選択される請求項3に記載のR2により置換される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエーテルポリオールデンドロン複合体。
【請求項5】
少なくとも1つのエフェクター分子(E)が、放射性核種のキレート、及びテトラアザシクロドデカンキレート及び大環状又は開鎖のアミノカルボン酸から選択されるキレート剤を含んでなる放射標識複合体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエーテルポリオールデンドロン複合体。
【請求項6】
c)1又は複数の生物標的分子(B)
をさらに含んでなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリペプチドエーテルポリオールデンドロン複合体。
【請求項7】
c)ペプチド、ペプチド模倣分子、抗体もしくはその断片、抗体模倣物、タンパク質、オリゴヌクレオチド、ペプチド−オリゴヌクレオチド、炭水化物から独立に選択される1又は複数の生物標的分子(B)をさらに含んでなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリエーテルポリオールデンドロン複合体。
【請求項8】
少なくとも1つのエフェクター分子(E)は、コア単位の官能基R1、及び/又は1又は複数のシェル単位の1又は複数の官能基R2に共有結合に共有結合し、且つ、
ここで、1又は複数の生物標的分子(B)は、前記コア単位の官能基R1、及び/又は1又は複数のシェル単位に共有結合できる、
請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリエーテルポリオールデンドロン複合体。
【請求項9】
1つのエフェクター分子(E)は、第二ポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)のコア単位の官能基R1に共有結合し、ここで前記第二デンドロン部位における整数nの値は0でもよく、
ここで、得られた複合体の1又は複数の分子は、請求項1の第一ポリエーテルポリオールデンドロン部位の1又は複数のシェル単位の1又は複数の官能基R2と共有結合し、
ここで、1つの生物標的分子(B)は、第二ポリエーテルポリオールデンドロン部位のコア単位の官能基R1に共有結合してよく、且つ
ここで独立に、基R1及びR2、ポリエーテルポリオールデンドロン部位のコア単位及び構成要素単位、及び整数nは、第一ポリエーテルポリオールデンドロン部位と第二ポリエーテルポリオールデンドロン部位で同じであっても、異なってもよい、
請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリエーテルポリオールデンドロン複合体。
【請求項10】
前記ポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)、少なくとも1つのエフェクター分子(E)、及び存在する場合は、生物標的分子(B)が、直接結合又は脂肪族C1-20炭化水素鎖から独立に選択されるリンカー単位(L)により共有結合し、ここで、任意に、1〜5個の非連続的メチレン基は、−O−、−S−、−C(O)−、C(O)NH−、−NHC(O)−、−NHC(O)NH−、−C(O)O−、−OC(O)O−、−SO2-、−O−マレインイミド−、−O−スクシンイミド−、トリアゾール、アリール、エテン及びエチンを含んでなる群から選択される基により置換されてよく、且つ脂肪族C1-20炭化水素鎖は、OH、COOH、−O−C1-6−アルキル又はフェニルを含んでなる基から選択される1又は複数の基で任意に置換されてよい、請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリエーテルポリオールデンドロン複合体。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の、1又は複数のポリエーテルポリオールデンドロン複合体、又はポリエーテルポリオールデンドロン複合体前駆体を含んでなる、キット。
【請求項12】
治療又は診断目的のための、請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリエーテルポリオールデンドロン複合体。
【請求項13】
腫瘍(好ましくは、前立腺癌、乳癌、肺癌、GI管の癌)、腫瘍転移、アテローム硬化症、炎症、(好ましくは、リウマチ様関節炎、変形性関節症)、眼科学における血管新生、及び良性病変(好ましくは、良性前立腺肥大)に関連する疾患状態又は症状を含んでなる群から選択される疾患状態又は症状における、治療又は診断目的のための、請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリエーテルポリオールデンドロン複合体。
【請求項14】
ポリエーテルポリオールデンドロン複合体の合成であって、
請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)を組み上げるステップ、ここで、当該ポリエーテルポリオールデンドロン部位(D)は、収束的合成においてシェルからコアへと連続的であり、
ここで、2つの構成要素単位は、コア単位の官能基R2か、C3−C5炭化水素骨格を含んでなるコア単位か、少なくとも1つの官能基R1か、又はさらなる構成要素単位と結合し、これにより、コア単位の官能基R2、又はさらなる構成要素と再び結合できるデンドロン部位前駆体が得られ、これにより、当該プロセスを、所望の世代数でデンドロン部位を得るために反復し、それにより、各合成ステップにおいて成長するデンドロン部位の外部R2基の数を倍増させ、且つ
基R1及び/又はR2が、請求項1〜13のいずれか1項に記載のエフェクター分子(E)の反応基、又は請求項1〜13のいずれか1項に記載のリンカー単位(L)の反応基に共有結合するステップをさらに含んでなり、ここで、ジスルフィド、アミド、アミン、エーテル、チオエーテル、チオエステル、カルボキシエステル、スルホニルエステル、スルホンアミド、尿素、カルバメート、チオカルバメート、トリアゾールから選択される基が、得られ、且つここで上記のステップにおいて、リンカー単位(L)が結合すると、請求項1〜13のいずれか1項に記載のエフェクター分子(E)が、前記リンカー単位(L)にさらに結合する、
合成方法。

【図12】
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【公表番号】特表2011−516415(P2011−516415A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−550173(P2010−550173)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/052786
【国際公開番号】WO2009/112488
【国際公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(510040134)ミフェニオン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (4)
【Fターム(参考)】