説明

生物汚染の除去方法

【課題】足場を組むことなく、地上から高い場所まで広範囲にわたり、建物の外装に付着した生物汚染を除去できる生物汚染の除去方法の提供。
【解決手段】建物の外装に付着した生物汚染を除去する方法であって、2m以上の長柄に取り付けられた圧送ローラーを用いて殺菌剤を外装に塗布する殺菌剤塗布工程と、前記殺菌剤塗布工程の後に、2m以上の長柄に取り付けられた圧送ローラーを用いて外装に塗布された殺菌剤を水洗浄する洗浄工程とを含むことを特徴とする生物汚染の除去方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外装に付着した生物汚染の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅などの建物の外装は、経年によって藻類、コケ類、カビ類などの生物汚染が付着する場合がある。特に、日が当たりにくく、湿度が高い環境(例えば北向きに面した外壁など)において、生物汚染は発生しやすい。
【0003】
従来、生物汚染を除去する際には、ハンドローラー等を用いて外装に殺菌剤を塗布し、さらに水洗浄していた。
ところで、建物の2階部分などの高い場所で作業を行う場合には、足場を組み、その足場に上って作業を行うのが一般的である(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−126602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、足場に上って除去作業する場合、以下のような問題があった。
(1)除去作業の前後において足場を組む工程と、足場を解体する工程が必要となるため、全工程を終えるまでに時間やコストがかかる。
(2)高所作業になるため、地上での作業に比べて作業者に負担がかかりやすい。
(3)殺菌剤や洗浄液(水など)を足場に運ぶ必要があり、また、これらを補給するたびに足場を上り下りする必要があるため、手間がかかる。
(4)足場の組立時や解体時に発生する金属のぶつかる音や、作業者が足場を動き回る音、建物の周りに足場があること、さらにその足場を他人が動き回ることは、特にその建物の住民にとって不快なものとなりやすい。
【0006】
本発明は上記事情を鑑みてなされたもので、足場を組むことなく、地上から高い場所まで広範囲にわたり、建物の外装に付着した生物汚染を除去できる生物汚染の除去方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の生物汚染の除去方法は、建物の外装に付着した生物汚染を除去する方法であって、2m以上の長柄に取り付けられた圧送ローラーを用いて殺菌剤を外装に塗布する殺菌剤塗布工程と、前記殺菌剤塗布工程の後に、2m以上の長柄に取り付けられた圧送ローラーを用いて外装に塗布された殺菌剤を水洗浄する洗浄工程とを含むことを特徴とする。
また、前記洗浄工程の後に、2m以上の長柄に取り付けられた圧送ローラーを用いて抗菌剤を外装に塗布する抗菌剤塗布工程を含むことが好ましい。
さらに、前記殺菌剤が、次亜塩素酸水溶液であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の生物汚染の除去方法によれば、足場を組むことなく、地上から高い場所まで広範囲にわたり、建物の外装に付着した生物汚染を除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の生物汚染の除去方法に用いる塗布装置の一例を模式的に示す概略構成図である。
【図2】塗布装置に備わる圧送ローラーの他の例を模式的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の生物汚染の除去方法の一例について、詳細に説明する。
本発明の生物汚染の除法方法は、殺菌剤塗布工程と、洗浄工程と、抗菌剤塗布工程とを有する。
なお、本発明の除去対象となるものは、外壁や屋根などの建物の外装に付着した、藻類、コケ類、カビ類などの生物汚染である。
【0011】
<殺菌剤塗布工程>
殺菌剤塗布工程は、2m以上の長柄に取り付けられた圧送ローラーを用いて、殺菌剤を外装に塗布する工程である。殺菌剤塗布工程では、例えば図1に示す塗布装置を用いて殺菌剤を塗布する。
ここで、図1に示す塗布装置1について説明する。
この例の塗布装置1は、2m以上の長柄10と、該長柄10に取り付けられた圧送ローラー20と、長柄10を介して液(殺菌剤など)を圧送ローラー20に供給する供給手段30とを備えて構成している。
【0012】
長柄10は、供給手段30から供給された液が通過できるように、中空状となっている。
長柄10の長さ(全長)は2m以上であり、4m以上が好ましい。長柄10の長さが2m以上であれば、足場を組むことなく、地上から高い場所まで広範囲にわたり、外装に液(殺菌剤など)を容易に塗布できる。ただし、長柄10が長すぎると取り扱いにくくなる。従って、長柄10の長さは6m以下が好ましい。
また、長柄10の内径は5〜15mmが好ましく、8〜10mmがより好ましい。一方、長柄10の外径は10〜20mmが好ましく、13〜17mmがより好ましい。
【0013】
長柄10としては、供給手段30から供給された液が圧送ローラー20に届くように、内部を通過できるものであれば特に限定されないが、アルミニウム製パイプ、スチール製パイプ、ポリプロピレンなどのプラスチック製パイプ、金属パイプなどが挙げられる。中でも、腐食しにくく、また、軽量であるため作業性に優れるという点でアルミニウム製パイプが好ましい。
これらパイプは、長さが可変(伸縮可能)なパイプでもよいし、長さが固定されているパイプでもよい。
【0014】
図1に示す塗布装置1の長柄10は、2本のパイプ11を連結して構成されているが、本発明に使用できる長柄10はこれに限定されない。例えば長柄10は1本のパイプ11で構成されていてもよいし、3本以上のパイプ11を連結して構成されていてもよく、液を塗布する外装の高さに応じて、パイプ11を連結したり外したりして、長柄10の全長が上記範囲内になるように調節すればよい。また、伸縮可能なパイプを用いて、長柄10の全長を調節してもよい。
【0015】
圧送ローラー20は、回転可能な円筒状のローラー部21と、該ローラー部21を支持する支持部22とで構成されている。
ローラー部21の表面の材質としては、アクリル、ポリエステル、ポリウレタン、ナイロンなどが挙げられる。これらの中でもアクリルが好ましい。また、ローラー部21の毛丈は5〜40mmが好ましく、10〜15mmがより好ましい。
ローラー部21の長さは50〜250mmが好ましく、150〜210mmがより好ましい。
ローラー部21の直径は15〜30mmが好ましく、20〜25mmがより好ましい。
【0016】
支持部22は、ローラー部21と長柄10とを連結するものであり、液が通過できるように中空状となっている。
支持部22の材質としては特に制限されないが、アルミニウム、スチール、ポリプロピレンなどのプラスチック、金属などが挙げられる。中でも、腐食しにくく、また、軽量であるため作業性に優れるという点でアルミニウムが好ましい。
【0017】
なお、図1に示す圧送ローラー20は、ローラー部21の一端に支持部22が接続され、ローラー部21が片側から支持されているが、本発明に使用できる圧送ローラー20はこれに限定されない。例えば図2に示すように、ローラー部21の両端に支持部22が接続され、ローラー部21が両側から支持されていてもよい。
図1や図2に示すような圧送ローラー20としては、市販品を使用できる。
【0018】
供給手段30は、長柄10に接続された把持部31と、液を貯蔵するタンク32と、ポンプ33と、コンプレッサー34と、把持部31とポンプ33、およびポンプ33とコンプレッサー34とをそれぞれ連結するホース35とで構成されている。
【0019】
把持部31には、レバー31aが取り付けられ、圧送ローラー20に供給する液の量を調節できるようになっている。
ポンプ33およびコンプレッサー34としては、タンク32に貯蔵された液を吸い上げ、圧送ローラー20に液を供給できるものであれば、特に制限されない。
【0020】
このような塗布装置1を用いて、生物汚染が付着した外装に殺菌剤を塗布する。
具体的には、把持部31のレバー31aにて液量を調節しながら、ポンプ33およびコンプレッサー34にてタンク32から殺菌剤を吸い上げ、圧送ローラー20のローラー部21から染み出た殺菌剤を、ローラー部21を回転させながら外装に塗布する。
【0021】
殺菌剤としては、例えば次亜塩素酸(次亜塩素酸塩を含む)などの塩素系、臭化ナトリウムなどの臭素系、ベンザルコニウム塩化物などの四級アンモニウム塩系、過酸化水素水などが挙げられる。これらの中でも殺菌力、作業性の観点から次亜塩素酸、中でも次亜塩素酸ナトリウムが好ましく、特に0.5〜10質量%の次亜塩素酸水溶液が好ましい。次亜塩素酸水溶液の濃度は1.5〜3.0質量%がより好ましい。
【0022】
<洗浄工程>
洗浄工程は、殺菌剤塗布工程の後に、2m以上の長柄に取り付けられた圧送ローラーを用いて、外装に塗布された殺菌剤を水洗浄する工程である。洗浄工程では、例えば図1に示す塗布装置1を用いて殺菌剤を水洗浄する。
【0023】
洗浄工程を行う際は、殺菌剤塗布工程で用いた塗布装置と同じ装置を用いてもよいし、殺菌剤塗布工程で用いた塗布装置の圧送ローラーを付け替えて用いてもよい。
【0024】
洗浄工程に用いる水としては、水道水を使用できる。また、このときの水の温度については特に制限されない。
【0025】
<抗菌剤塗布工程>
本発明の生物汚染の除去方法は、上記洗浄工程の後に、外装が再び藻類、コケ類、カビ類などで汚染されないように、抗菌剤を外装に塗布する抗菌剤塗布工程を含むことが好ましい。
抗菌剤塗布工程は、洗浄工程の後に、2m以上の長柄に取り付けられた圧送ローラーを用いて、抗菌剤を外装に塗布し、外装を抗菌処理する工程である。抗菌剤塗布工程では、例えば図1に示す塗布装置1を用いて抗菌剤を塗布する。
抗菌剤塗布工程を行うことで、洗浄後の外装に生物汚染が再付着するのを抑制できる。
【0026】
抗菌剤塗布工程を行う際は、殺菌剤塗布工程で用いた塗布装置と同じ装置を洗浄工程に引き続き用いてもよいし、殺菌剤塗布工程や洗浄工程で用いた塗布装置の圧送ローラーを付け替えて用いてもよい。
【0027】
抗菌剤としては公知のものを使用でき、例えば2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、N−n−ブチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン等のイソチアゾリン系;3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(DCMU)、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1−メチル−1−メトキシ尿素、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1−(2−メチルシクロヘキシル)、3−フェニル−1−(2−メチルシクロヘキシル)尿素、3−(フェニルジメチルメチル)−1−(4−メチルフェニル)尿素等の尿素系;2−クロロ−4,6−ビス(エチルアミノ)−1,3,5−トリアジン、2−クロロ4−エチルアミノ−6−イソプロピルアミノ−1,3,5−トリアジン、2−メチルチオ−4,6−ビス(エチルアミノ)−S−トリアジン、2−メチルチオ−4−エチルアミノ−6−イソプロピルアミノ−S−トリアジン、2−メチルチオ−4,6−ビス(イソプロピルアミノ)−S−トリアジン、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−S−トリアジン、N’−t−ブチル−N−シクロプロピル−6−(メチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミン等のトリアジン系;テトラメチルチウラムジサルファイド、テトラエチルチウラムジサルファイド、テトライソプロピルチウラムジサルファイド、ジピロリゾルチウラムジサルファイド、ポリエチレンチウラムジサルファイド等のチウラムジサルファイド系;2−(4−チアジル)ベンズイミタゾール、2−(カルボメトキシアミノ)ベンズイミダゾール等のベンズイミダゾール系;2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン等のピリジン系;ジンク−2−ピリチンチオール−1−オキサイド等のジンクピリチオン系;2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール等のチアゾール系;有機ハロゲン系、有機金属系、ハロアルキルチオ系、フェニルフェノール系の防藻剤又は防カビ剤が挙げられる。
これら抗菌剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、外装に塗布した際の透明性(色残りしにくく、外装の意匠に影響しにくい。)、防藻・防カビ効果の持続性の観点からトリアジン系とイソチアゾリン系の併用がより好ましい。
【0028】
以上説明した本発明の生物汚染の洗浄方法によれば、2m以上の長柄に取り付けられた圧送ローラーを用いて、生物汚染が付着した外装に殺菌剤を塗布するので、足場を組むことなく、地上から高い場所まで広範囲にわたり、建物の外装に付着した生物汚染を除去できる。
従って、足場の組立や解体の手間が省けるため、作業時間や作業コストを削減できる。また、作業者は足場に上る必要がないので、地上での作業が可能となり負担が軽減されるとともに、殺菌剤や洗浄液などを足場に運ぶ手間も省ける。加えて、足場を組む必要がないので、騒音などを軽減でき、住民の不快感を和らげることができる。
【0029】
さらに、外装に塗布した殺菌剤を洗浄する際や、洗浄後に外装を抗菌処理する際にも2m以上の長柄に取り付けられた圧送ローラーを用いることで、洗浄液(水)や抗菌剤が周囲に飛び散るのを防止できる。
【0030】
なお、上述したように、生物汚染を除去する際は、1台の塗布装置を用いて殺菌剤塗布工程、洗浄工程、抗菌剤塗布工程の各工程を行ってもよいし、各工程で塗布装置の圧送ローラーを付け替えて用いてもよいし、各工程に併せて塗布装置を換えてもよい。
【0031】
本発明の除去対象となる建物の外装の高さについては特に制限されないが、本発明の生物汚染の除去方法は、高さ8m以下の外装に適しており、特に5m以下の外装に好適である。
【実施例】
【0032】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これにより本発明は限定されない。
【0033】
[試験例1]
一戸建て住宅1階の北側に面した外壁(約50m)において、地上から20cm〜3.0mの高さに発生した生物汚染(藻類・カビ類)を以下のようにして除去した。なお、除去作業には、図1に示す塗布装置1を用いた。ただし、試験例1で用いた塗布装置1の長柄10は、1本のパイプ11(長さ:2m)で構成されている。また、殺菌剤として、次亜塩素酸1.5質量%水溶液を用いた。
【0034】
まず、図1に示す塗布装置1を用い、タンク32に貯蔵された殺菌剤をポンプ33およびコンプレッサー34で吸い上げ、外壁上の生物汚染を目視にて確認しながら、生物汚染が除去されるまで圧送ローラー20のローラー部21を回転させながら外壁に殺菌剤を塗布した(殺菌剤塗布工程)。
ついで、タンク32内の液を殺菌剤から水に変更し、外壁に塗布した殺菌剤がなくなるまで、殺菌剤塗布工程で使用した塗布装置1を用いて水洗浄した(洗浄工程)。
ついで、タンク32内の液を水から抗菌剤(トリアジン系防藻剤とイソチアゾリン系防カビ剤の混合水溶液)に変更し、殺菌剤塗布工程で使用した塗布装置1を用いて、外壁にムラなく抗菌剤を塗布して抗菌処理した(抗菌剤塗布工程)。なお、各工程では、塗布装置1の圧送ローラー20は交換しなかった。
その結果、1階の外壁に付着した生物汚染を容易に除去できた。
【0035】
[実施例1]
一戸建て住宅2階の北側に面した外壁(約50m)において、地上から3.5〜5.0mの高さに発生した生物汚染を除去対象とし、2mのパイプ11が2本連結してなる長柄10を備えた塗布装置1を用いた以外は、試験例1と同様にして各工程を行い、生物汚染を除去した。
その結果、足場を組むことなく、2階の外壁に付着した生物汚染を、1階部分(試験例1)と同様に地上から容易に除去できた。
【0036】
以上の実施例1の結果より、本発明の生物汚染の除去方法であれば、足場を組むことなく、地上から高い場所まで広範囲にわたり、建物の外装に付着した生物汚染を除去できることが示された。
【符号の説明】
【0037】
1:塗布装置、10:長柄、11:パイプ、20:圧送ローラー、21:ローラー部、22:支持部、30:供給手段、31:把持部、31a:レバー、32:タンク、33:ポンプ、34:コンプレッサー、35:ホース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外装に付着した生物汚染を除去する方法であって、
2m以上の長柄に取り付けられた圧送ローラーを用いて殺菌剤を外装に塗布する殺菌剤塗布工程と、
前記殺菌剤塗布工程の後に、2m以上の長柄に取り付けられた圧送ローラーを用いて外装に塗布された殺菌剤を水洗浄する洗浄工程とを含むことを特徴とする生物汚染の除去方法。
【請求項2】
前記洗浄工程の後に、2m以上の長柄に取り付けられた圧送ローラーを用いて抗菌剤を外装に塗布する抗菌剤塗布工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の生物汚染の除去方法。
【請求項3】
前記殺菌剤が、次亜塩素酸水溶液であることを特徴とする請求項1または2に記載の生物汚染の除去方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−217930(P2012−217930A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86319(P2011−86319)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000224123)藤倉化成株式会社 (124)
【出願人】(592155005)フジケミ東京株式会社 (1)
【Fターム(参考)】