説明

生物活性ケラチンタンパク質

【課題】外傷治療過程を補助する改良された包帯を提供する。
【解決手段】生物学的に活性なペプチドを含む組成物を開示する。ヒト毛髪ケラチンタンパク質または羊毛ケラチンタンパク質由来のフラグメントから活性なペプチドを単離する。組成物は、薬学的に適用または局所適用のために、または化粧調製物中で使用するために調製し得る。これらのペプチドの活性は、公知の線維芽細胞成長因子と比較して皮膚線維芽細胞の成長を刺激する能力により示された。従って、このペプチドを含む組成物は、傷害を受けた組織および皮膚、老化した組織および皮膚、または疾患の組織および皮膚を含む状態の処置に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本願は、同時係属する米国仮出願番号60/352,396(2002年1月28日出願)に対する優先権を主張する。この米国仮出願の開示は、その全体が、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(連邦政府によって後援された研究または開発に関する記述)
該当なし
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
慢性的な外傷は、外科手術、延長されたベッド療養、外傷を含む様々な事象により引き起こされ得る。一部層の外傷は、2度熱傷、擦過傷および植皮ドナー部位を含み得る。これらの外傷の治療は、問題があり得、糖尿病または慢性病の場合には、特に問題があり得る。全層の外傷は、皮膚が残らず、外傷、糖尿病(例えば、下腿潰瘍)および静脈鬱滞の結果となり得、下肢の全層の潰瘍を引き起こし得る。全層の外傷は、非常にゆっくり治癒するか、または全く治癒しない傾向がある。創傷包帯の使用を含む適切な外傷治療技術は、慢性的な外傷を首尾よく取扱うために極めて重要である。慢性的な外傷は、年に推定400万人の人々が発症していて、その結果、健康管理コストは、数十億ドルになっている。非特許文献1。
【0004】
外傷−治療プロセスは、細胞レベルで、複雑な一連の生物学的相互作用を含み、そのプロセスは、3相に分類し得る:ホメオスタシスおよび炎症;肉芽組織形成および再上皮化;ならびに再構築。非特許文献2。ケラチノサイト(ケラチンを生産し、含有する表皮細胞)は、外傷の端から外傷を覆うように移動する。成長因子(例えば、形質転換成長因子−β(TGF−β)は、移動プロセスの刺激に、重要な役割を演じる。移動は、最適には、湿性層の覆いの下で生じる。ケラチンが上皮化に必要であることも見出されている。特に、K5型ケラチンおよびK14型ケラチンは、生成した表皮細胞の下で発見され、K1型およびK10型は、分化した細胞の上において発見されている。非特許文献3。K6型ケラチンおよびK10型ケラチンは、治療する外傷には存在するが、健康な皮膚には存在しないと考えられている。ケラチンは、全ての上皮細胞型の主要な構造タンパク質であり、外傷の治療に主要な役割を演じているようである。
【0005】
慢性的外傷については、理想的ではないけれども、閉塞性包帯、非付着性包帯、吸収性包帯およびシート、フォーム、粉末、ジェルの形態の包帯を含めて、いくつかの創傷包帯が、現在市場に出回っている。非特許文献4。
【0006】
外傷治療過程を補助する改良された包帯を提供するための試みが、生物学的材料(例えば、成長因子)を用いてなされてきた。これらの生物学的製剤は、適切な送達ビヒクルの欠如のために、非常に高価であることがわかっており、慢性的な外傷治療過程の加速において、それらのコストと比較して、最低の臨床的な妥当性しか示さなかった。重度の全層の外傷の場合、自家移植片(患者の身体からの皮膚移植片)がしばしば使用される。移植片は非抗原性であるが、さらなる外傷を作り出す、患者の身体のドナー部位から回収されなければならず、さらなる外傷が形成される。さらに、自己組織の利用可能性は、適切ではない。ドナー部位が選択肢ではない場合、同種移植(患者以外のドナーから皮膚を移植する)もまた、使用される。同種移植は、本質的に、「創傷包帯」を提供し、該創傷包帯は、含水性の、水透過性層を提供するが、通常2週間以内に患者に拒絶され、新規の表皮の一部とはならない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】T.Phillips、O.KehindeおよびH.Green「培養した表皮の移植を用いた皮膚潰瘍の処置」J.Am.Acad.Dermatol.21巻、pp.191−199(1989)
【非特許文献2】R.A.F.Clark、「皮膚組織の回復:基礎的生物学的考察」J.Am.Acad.Dermatol.13巻、pp.701−725(1985)
【非特許文献3】I.K.Cohen、R.F.DieglemanおよびW.J.Lindblad(編)、外傷治療:生物化学的および臨床的側面、W.W.Saunders Company、1992
【非特許文献4】S.Thomas、外傷の取扱いおよび包帯法、The Pharmaceutical Press、London、1990
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(要旨)
本開示は、ケラチンタンパク質に由来する特定のペプチドが生物学的活性を示すという驚くべき発見から生じる。これらのペプチドの活性は、公知の線維芽細胞成長因子と比較して皮膚線維芽細胞の成長を刺激する能力により示された。従って、このペプチドを含む組成物は、傷害を受けた組織および皮膚、老化した組織および皮膚、または疾患の組織および皮膚を含む状態の処置に有用である。皮膚組織および骨組織を含む組織成長および組織修復が挙げられるが、これらに限定されない適用において、これらのペプチドを含む組成物もまた、サイトカイン様ペプチドの活性に起因して、組織成長または細胞成長の刺激に有用であると予期される。活性ペプチドのアミノ酸配列は、ペプチドが様々なヒト毛髪のケラチンタンパク質および羊毛のケラチンタンパク質に見られる39のアミノ酸の領域に由来することを示す。この保存された断片は、コンセンサス中のいくつかの位置において、1つのアミノ酸交換を含む。特許請求の範囲に記載の組成物は、一つ一つの配列変異を組み込んだ4〜39のアミノ酸長のペプチドを含む。
【0009】
従って、本発明の開示は、好ましい実施形態中に記載され得、一つ以上の生物学的に活性なペプチドを含む組成物として記載され得、組成物中では、ペプチドは、約4〜約39アミノ酸長であり、SEQ ID NO:1〜32として本明細書に開示されたペプチド中の隣接する配列として存在する。ペプチドは、天然の供給源からの単離、組換え体の生成または化学合成を含む、当該分野において公知である任意の方法により生成され得る。天然の供給源としては、天然に、とりわけヒト毛髪、動物毛、羊毛、毛皮、爪、蹄、角、くちばし、皮膚および羽毛に存在するケラチンタンパク質を含み得る。組換え体により生成したペプチドもまた、細菌宿主細胞または、真核生物の宿主細胞中に発現し得る。
【0010】
本開示の別の実施形態は、本明細書に開示され、前段落に記載された任意のペプチドをコードする単離された核酸分子である。そして、さらに詳細には、本明細書中でSEQ ID NO:1〜32と名付けたペプチド中の隣接するアミノ酸配列として存在する、約4〜約39のアミノ酸由来の任意のペプチドをコードする単離された核酸分子である。このようなペプチドは、SEQ ID NO:1〜6270として本明細書中に包括的に開示された全てのペプチドを含む。単離された核酸配列または核酸分子は、ケラチンタンパク質をコードする天然に存在する核酸配列のフラグメントであり得、または、例えば、遺伝子コード中の重複性に起因して、開示されたペプチドをコードするこのような配列の変異であり得る。あるいは、核酸分子は、発現し得る所望のアミノ酸配列に基づいて化学的に合成し得る。単離された核酸配列または核酸分子は、好ましくは、適切な宿主細胞中でのペプチドの発現を方向づける能力のある発現ベクターを含むベクター中に含まれる。宿主細胞は、好ましくは、細菌細胞または真核細胞であり得る。本発明の開示の特定の実施形態は、記載された核酸断片を含むベクターおよびそれらのベクターを含む宿主細胞である。
【0011】
開示の特定の実施形態において、ペプチドは、薬理学的に受容可能なキャリア中に含まれるかまたは結合している。本明細書中で使用される場合、「薬理学的に受容可能なキャリア」とは、任意の、および全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。薬理学的に活性な物質のためのこのような培地および薬剤の使用は、当該分野において周知である。このペプチド構成要素と不適合な任意の従来的な培地または薬剤を除いては、治療的組成物または化粧組成物中でのその使用が検討される。
【0012】
薬理学的組成物は、好ましくは、獣医学の被験体またはヒト被験体への投与のために処方され、および、必要に応じて経口投与、局所性投与または眼性投与のために処方され得る。同様に、特許請求の範囲に記載の組成物は、移植のために処方され得、移植物内に移植される、または含まれる表面にコーティングされ得る。さらに、特定の好ましい実施形態においては、組成物は、外傷への適用のために処方される。特定の実施形態では、特許請求の範囲に記載の組成物は、火傷の、老化した、しわのよった、傷跡のある皮膚のために処方され、そしてまた、痛み、火傷またはかゆみの軽減に有用である。特定の実施形態においては、本発明で開示した組成物を含むペプチドは、胃腸、肛門、膣、耳、眼、肺、鼻、口または泌尿生殖器の上皮組織の処置のために処方される。前記処置としては、例えば、クローン病、皮膚移植または、糖尿病性潰瘍を含む潰瘍の処置が挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
開示したペプチドの生物学的活性は、研究手段として利点のある、または細胞成長活性化または阻害、もしくはサイトカイン様活性を含む、組成物のヒトレシピエントまたは動物レシピエントの利点に対して利点がある任意の活性であり得る。サイトカイン様活性は、好ましくは細胞分化、細胞増殖、細胞接着、細胞形態への効果、細胞移動、炎症反応、血管形成、細胞死などである。開示したペプチドは、また、例えば、損傷を受けた皮膚の治療活性を増強するための他の成長因子とも組み合わせ得る。次いで、特定の実施形態においては、組成物は、成長因子(例えば、表皮成長因子(EGF)、形質転換成長因子α(TGF−a)、繊維芽細胞成長因子(FGF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、血小板由来成長因子(PDGF)または任意の組み合わせのこれらの混合物)と組合わせて、SEQ ID NO:1〜32と名付けたペプチド由来の任意のペプチドを含み得る。
【0014】
本発明の開示のさらなる好ましい実施形態は、ペプチドまたは複数のペプチドが細菌の成長を阻害するために効果的な量で存在する、開示したペプチドを含む組成物である。本発明者により、開示したペプチドを含む溶液が、細菌の成長に汚染されることのない時間の延長された期間を「棚上げされた」状態にし得ることが観察されてきた。従って、組成物は、細菌汚染の阻害または細菌成長の阻害に効果的であると予期される。
【0015】
特定の実施形態において、本発明で開示した組成物は、化粧品として処方し得る。化粧調製物は、粉末、ローション、ヒドロゲル、油、エマルション、ペースト、光沢剤またはクリームの形態であり得る。化粧品は、必要に応じて着色剤および/またはフレグランスを含み得る。
【0016】
本発明で開示した組成物は、女性および男性の両方に対する全ての種類の皮膚化粧品に実質的に利点を有して、使用され得る。これらとしては、保湿剤、防臭剤、老化防止/皮膚手入れ調製物、洗剤および化粧液、アイ・ケア調製物、リップ・ケア調製物、指の爪ケア調製物、足指の爪ケア調製物、頭皮ケア調製物、日焼けケア調製物、ならびにハンドケア調製物およびボディケア調製物として処方された調製物が挙げられ得るが、これらに限定されない。さらに、皮膚損傷(例えば、化学薬品による剥離、日焼け、脱毛刺激、かみそり−ひげそり傷および擦過傷、毛髪のパーマおよび毛髪のストレートパーマ由来の頭皮刺激など)に対する、開示されたペプチドを含むアフターケア生成物は、化粧品界において、多くの需要のある隙間を埋める。多くの水性化粧製品は、それらの毎日の使用の間、皮膚治療の継続を提供するために、開示された組成物を用いて補強され得る。開示されたペプチド組成物は、また、例えばヘアケア製品(例えば、シャンプー)における使用も見出した。皮膚に対する利点のために、シャンプーおよびコンディショナーは、頭皮にペプチドを送達するための効率的な方法であると予期される。
【0017】
本明細書で開示されたペプチドを含む組成物は、細胞成長骨格または組織成長骨格もまた、含み得る。組織成長骨格は、好ましくは、脊髄移植物、骨成長骨格、上皮組織の成長のための骨格、包帯、不織シートまたは織り込まれたシートとして定義され得る。不織シートまたは織り込まれたシートは、天然のケラチンに由来するケラチンであることまたは、天然のケラチンを含むことが好ましく、該シートは、羊毛の詰め物、織り込まれたケラチン、ポリマーシートに結合したケラチンまたは架橋ケラチンを含むことが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、組織成長骨格は、ペプチドを含む外皮または、金属移植物、シリコーン移植物またはポリマー移植物の表面に被覆するか結合するかしたペプチドを含み得る。
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1)
4〜39アミノ酸長の、単離された生物活性ペプチドを含有する組成物であって、該ペプチドが、SEQ ID NO:1〜32の任意のアミノ酸配列または任意のそれらの断片を含有する、組成物。
(項目2)
請求項1に記載の組成物であって、ここで、前記ペプチドがN末端に結合したアセチルを含有する、組成物。
(項目3)
請求項1に記載の組成物であって、ここで、前記ペプチドがC末端に結合したアミドを含有する、組成物。
(項目4)
請求項1に記載の組成物であって、以下のアミノ酸配列:
【数1】


またはそれらの組み合わせを有する1つ以上のペプチドを含有する、組成物。
(項目5)
請求項1に記載の組成物であって、ここで、前記組成物が、粉末、ローション、ヒドロゲル、油、エマルション、ペースト、光沢剤またはクリームである、組成物。
(項目6)
請求項1に記載の組成物であって、ここで、前記組成物が創傷包帯中に処方される、組成物。
(項目7)
請求項6に記載の組成物であって、ここで、前記創傷包帯がケラチン由来生成物を含有するシートである、組成物。
(項目8)
請求項6に記載の組成物であって、ここで、前記創傷包帯が絆創膏である、組成物。
(項目9)
請求項1に記載の組成物であって、ここで、前記ペプチド組成物が組織工学骨格の構成要素である、組成物。
(項目10)
請求項9に記載の組成物であって、ここで、前記組織工学骨格が、不溶性物質を含有し、該不溶性物質の少なくとも一部はケラチン生成物から入手される、組成物。
(項目11)
請求項1に記載の組成物であって、ここで、前記組成物がヒドロゲル中に含有される、またはヒドロゲルと結合している組成物。
(項目12)
請求項11に記載の組成物であって、ここで、前記ヒドロゲルがケラチン送達ヒドロゲルを含有する、組成物。
(項目13)
ヒト被験体または動物被験体の皮膚への局所適用のための組成物であって、該組成物が請求項1に記載の組成物を含有し、ここで、該組成物がローション、ゲル、ペースト、クリームまたは水溶液中に含まれる、組成物。
(項目14)
請求項13に記載の組成物であって、損傷上皮組織への局所適用のための組成物。
(項目15)
請求項14に記載の組成物であって、ここで、前記損傷上皮組織が外傷、発疹、おむつかぶれ、火傷、日焼け、切り傷、擦過傷、刺し傷、創傷、褥瘡、潰瘍またはしわのよった皮膚を含む、組成物。
(項目16)
請求項13に記載の組成物であって、ここで、前記ペプチド濃度が約100μg/ml〜約1×10−6μg/mlである、組成物。
(項目17)
請求項1に記載の組成物であって、皮膚への化粧品用途のための組成物。
(項目18)
請求項17に記載の組成物であって、ここで、前記組成物が保湿剤、防臭剤、老化防止/皮膚手入れ調製物、洗剤、化粧液、アイ・ケア組成物、リップ・ケア組成物、指の爪ケア組成物、足指の爪ケア組成物、頭皮ケア組成物、日焼けケア組成物、ハンドケア組成物またはボディケア組成物である、組成物。
(項目19)
請求項17に記載の組成物であって、ここで、前記組成物が皮膚損傷のためのアフターケア製品である、組成物。
(項目20)
請求項19に記載の組成物であって、ここで、前記皮膚損傷が化学薬品による剥離、脱毛刺激、かみそり−ひげそり傷、擦過傷、ヘア・トリートメント由来の頭皮刺激である、組成物。
(項目21)
請求項17に記載の組成物であって、ここで、前記組成物が水性化粧品である、組成物。
(項目22)
請求項17に記載の組成物であって、ここで、前記組成物が頭髪用化粧品である、組成物。
(項目23)
請求項22に記載の組成物であって、ここで、前記製品がシャンプーまたはヘアコンディショナーである、組成物。
(項目24)
請求項1の組成物を含む創傷包帯であって、ここで、前記組成物がシートの包帯、フィルムの包帯または布の包帯中に含まれるかまたは付着している、創傷包帯。
(項目25)
請求項24に記載の創傷包帯であって、ここで、前記包帯がケラチン誘導体を含む、創傷包帯。
(項目26)
請求項24に記載の創傷包帯であって、ここで、該創傷包帯が絆創膏である、創傷包帯。
(項目27)
請求項24に記載の創傷包帯であって、ここで、前記包帯が毛織物または綿織物を含む、創傷包帯。
(項目28)
請求項24に記載の創傷包帯であって、ここで、前記包帯が織り込まれたケラチンシートである、創傷包帯。
(項目29)
請求項24に記載の創傷包帯であって、ここで、前記包帯が、水不溶性ケラチンを含む不織シートかまたは不織フィルムである、創傷包帯。
(項目30)
請求項14に記載の組成物であって、ここで、前記上皮組織が、皮膚の上皮組織、鼻の上皮組織、口の上皮組織、胃腸の上皮組織、肛門の上皮組織、膣の上皮組織、耳の上皮組織、眼の上皮組織、肺の上皮組織または泌尿生殖器の上皮組織である、組成物。
(項目31)
ケラチン由来シート材料、ケラチン由来多孔性材料またはケラチン由来ヒドロゲルを含む細胞成長骨格であって、ここで、さらに、請求項1に記載の組成物を前記細胞成長骨格中に含むかまたは付着している、細胞成長骨格。
(項目32)
請求項31に記載の細胞成長骨格であって、さらに脊髄移植物、骨成長骨格、上皮組織の成長のための骨格、包帯、不織シートまたは織られたシートとして規定された、細胞成長骨格。
(項目33)
請求項32に記載の細胞成長骨格であって、ここで、前記不織シートまたは織り込まれたシートが、羊毛の詰め物、織り込まれたケラチン、ポリマーシートに結合したケラチンまたは架橋ケラチンを含む、細胞成長骨格。
(項目34)
請求項31に記載の細胞成長骨格であって、さらに、ペプチドを含有する外皮を含む、細胞成長骨格。
(項目35)
請求項31に記載の細胞成長骨格であって、金属移植物、シリコーン移植物またはポリマー移植物の表面に結合するか、または、付着しているペプチドを含む、細胞成長骨格。
(項目36)
4〜39アミノ酸長の、単離された生物活性ペプチドを含有する組成物であって、該ペプチドが、アミノ酸配列LGD、DLN、APTV、SEQ ID NO:67またはLNVEV、SEQ ID NO:117を含む、組成物。
(項目37)
請求項36に記載の組成物であって、ここで、前記組成物が細胞増殖の活性剤である、組成物。
(項目38)
請求項36に記載の組成物であって、ここで、前記細胞が皮膚細胞であるかまたは骨細胞である、組成物。
(項目39)
請求項36に記載の組成物であって、ここで、細胞が線維芽細胞、ケラチノサイトまたは骨芽細胞である、組成物。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(詳細な説明)
本発明の開示は、豊富な、および再生可能な源に由来する生物学的活性ペプチドの新規のファミリーを提供する。多数のインビトロの細胞培養研究において、本発明者らは、ケラチン由来ペプチドの細胞増殖活性が、FGF、KGF、EGFおよびPDGFを含む、ほぼ全ての公知の成長因子を模倣することを示した。動物におけるインビボの研究は、これらのペプチドが強力な抗刺激剤であり、それらが、外傷の治療を促進する、および/または、加速することを示した。さらに、これらのペプチドは、ヒト志願者に局所的に適用した場合、皮膚防御特性を顕著に回復し、老化した皮膚を顕著に若返らせる。これらの初期の発見に基づいて、これらのケラチン由来ペプチドが、哺乳動物における細胞増殖および細胞分化の両方に効果的な「強力な」細胞アクチベーターであると断定された。そして、それらは、医学界および化粧品界において、複数の用途を有すると断定された。
【0019】
天然の源(例えば、ヒト毛髪または羊毛)から単離された場合、この生物学的活性ペプチドは、各原料から一つ以上の可溶性ペプチド画分を産生し得る。これらの画分は、それらの平均分子量および酸溶解性が、大部分は互いに異なるように見える。全ての画分は、ほとんどの化粧品処方について使用される中性に近いpH範囲で、容易に溶解する。ヒト線維芽細胞を用いた細胞培養研究において、ペプチド調製物は、100μg/mL〜0.001μg/mLの濃度において、細胞増殖の有意な活性を示す。前記データおよび公知の生物活性ペプチドの活性にもとづいて、ペプチド組成物は、0.0001μg/mL〜0.00001μg/mLの範囲において活性であると予期される。特定の化粧品処方物は、これらのペプチドの皮膚への送達、および/または、皮膚を通しての送達に影響し得るが、このインビトロの細胞培養結果は、細胞活性化に対するペプチドの有用な濃度は、1%未満、または、0.4%未満、0.1%未満、0.01%未満または、さらに0.001%未満であり得ることを示唆する。
【0020】
上に言及したインビトロの研究およびインビボの研究に加えて、ヒト実験に対する機会が利用可能な場合、開示されたペプチドに関してさらなる事例情報を収集した。これらの研究から、ペプチド組成物は、抗炎症性および抗細菌性であることが予期され、外傷治療部位において、痛みを仲介することが予期された。さらに、ペプチド組成物の皮膚火傷(化学火傷および日焼けを含む)への適用は、治療を促進し、および不快感を最小限にする。
【0021】
本発明の開示は、本明細書で開示された特定のペプチド断片が、特定の型の生物学的細胞および特に皮膚線維芽細胞の成長に対する効果により、主に、インビトロの研究で示された、有益な生物学的活性を有するという驚くべき発見から生じる。組成物を含む開示されたペプチドの、繊維芽細胞の成長を刺激するかまたは阻害するかする、特定の能力のために、組成物は、上皮組織または結合組織の老化、損傷または症状の治療に関連する適用において、特別の有用性を見出す。
【0022】
このペプチド組成物のサイトカイン様特性は、一般にケラチン組織における治療、修復および細胞成長の促進のために使用され得る。ペプチドは、損傷を受けた皮膚および皮膚外傷(例えば、おむつかぶれ、日焼けを含む火傷、切り傷、擦過傷、刺し傷、褥瘡を含む創傷、糖尿病性潰瘍を含む潰瘍および他の皮膚傷害または皮膚刺激を含む)の処置のために使用され得る。ペプチド組成物は、また、老化した皮膚、衰弱した皮膚または損傷を受けた皮膚(例えば、しわのよった皮膚を含む)のために使用され得る。特定の適用は、外部皮膚中または表皮層組織中、口の組織中、肺組織中、胃腸組織中または脊髄組織中の損傷を受けた組織の処置を含む。
【0023】
ペプチド含有組成物を、皮膚または歯ぐきへの適用のための粉末、ローション、ヒドロゲル、油、エマルション、ペースト、クリームまたはゲルとして処方し得、または、エアゾール、移植物、移植物のコーティングまたは組織成長のための骨格材料として処方し得る。例えば、ペプチド組成物は、織り込まれたシート材料かまたは不織シート材料、またはヒドロゲルに吸収されて、または生体適合性外被材料中に含まれ得る。
【0024】
(ペプチドの調製)
特定の実施形態において、開示されたペプチドは、天然に存在する源(例えば、ヒト毛髪または羊毛)から単離され得る。特許請求の範囲に記載のペプチドを含む少量のサンプル組成物を調製する好ましい方法は、後に記載する。言うまでもなく、この調製は、より大きな商業的な量の組成物を得るために、より大きな規模で行い得る。
【0025】
ケラチン基材由来の組成物を含むペプチドを生成する一般的な方法は、不溶性かつ不活性のケラチンを構成するジスルフィド結合を実質的に切断するために、酸化剤を用いたケラチン基材の酸化を含む。使用され得る酸化剤の例としては、過酸化水素、過酢酸、過炭酸、過硫酸、二酸化塩素、過酸化ナトリウムおよび過酸化カルシウム、過ホウ酸ナトリウムおよび過ホウ酸カルシウムならびに次亜塩素酸ナトリウムおよび次亜塩素酸カルシウムが挙げられるが、これらに限定されない。酸化された毛髪は、ろ過し、ろ液を収集し、その後塩基を用いて中和した。中和したろ液由来の水溶性ペプチドを、ろ液を水混和性有機溶媒(例えば、メタノール)に混合することにより、溶液から沈殿し得る。あるいは、酸化ケラチンは、ケラチン材料のより大きな分画を得るために、希釈水性アルカリに、部分的にまたは完全に溶解し得、固体を除去するためにろ過し得、そして、ろ液は、酸性化または非溶媒(例えば、エタノールまたはメタノール)を添加することにより沈殿し得る。沈殿物は、ろ過により収集し、収集ろ液を乾燥した。
【0026】
さらなる特定のプロトコルは、以下のとおりである:
(熱方法)
・洗浄後の切ったケラチン基材(毛髪、洗い上げた、非漂白の、または非染色の0.25〜0.5インチ長の羊毛)を100g、攪拌機およびガスアダプターを含む3L RBフラスコに秤量する。
【0027】
・1565mLの蒸留した、脱イオン(DI)水を添加する。
【0028】
・110mLの30%Hを添加する。
【0029】
・加熱し、攪拌しながら還流する。
【0030】
・約2時間還流し、攪拌する。
【0031】
・ヒートマントルを取り除く。
【0032】
・攪拌を継続し、50℃以下まで冷却して安定化させ、ブフナー漏斗および高速フィルターペーパーを用いてろ過する。
【0033】
・250mLの高温の(約50℃)DI水を用いて、ろ液を2度リンスする。
【0034】
・以下のさらなるプロセスのために、酸化ケラチンろ過物(中間物A)を保存する。
【0035】
・ろ過物をほぼ室温まで冷却する。
【0036】
・ろ過物を、約3N NHOHを使用して、pH=7.0±0.2に中和する。
【0037】
・真空アスピレーターを用いて、約165mLに濃縮する。
【0038】
・ほぼ凍結するまで冷却する。
【0039】
・冷凍庫で冷却した1LのMeOH中に沈殿させる。
【0040】
・中−高速濾紙を用いたブフナー漏斗中でただちにろ過し、ろ過物を2〜250mLの
冷凍庫で冷却したMeOHを用いて洗浄する。
【0041】
(代替法)
・全混合物を冷凍庫中で一晩保存し、安定させるために沈殿させる。
【0042】
・過剰のMeOHをデカントする。
【0043】
・中−高速濾紙を用いたブフナー漏斗中で残りの混合物をろ過し、ろ過物を2〜250mLの冷蔵庫で冷却したMeOHを用いて洗浄する。
【0044】
・ろ紙上のろ過物を真空乾燥機中で一晩乾燥させる。
【0045】
・乾燥材料をろ紙から乳鉢に注意深くかき取り、必要な場合、ペーストを粉砕する。
【0046】
・生成物をラベリングした、テフロン(登録商標)で裏打ちしたキャップを備えたガラス・ジャー中に秤量し、ケラチン基質に基づいて産出したSKP%(可溶性ケラチンペプチド)を記録し、室温で生成物を保存する。
【0047】
(増強されたペプチド産出)
・酸化されたケラチンろ過物(上記熱過程由来の中間物A)を5Lビーカーに入れ、0.1Nの水酸化アンモニウムを4L添加し、室温で24時間攪拌する。
【0048】
・溶液をろ過し、ろ過物を廃棄する。
【0049】
・ろ過するために、一定攪拌しながら氷酢酸滴を添加し、pH4にして、酸不溶性ペプチドを沈殿させる。ブフナー漏斗中でろ過し、ろ過物を保存する(酸溶解性γ画分)。
【0050】
・ろ過物(酸不溶性α画分)を1Lの水を用いて洗浄し、洗液を廃棄する。ろ過物を2Lの0.01N水酸化アンモニウム中に再溶解し、この溶液を定常攪拌しながら、10mLの酢酸を含む4Lのエタノールに添加する。ブフナー漏斗を用いてろ過し、ろ液を廃棄する。
【0051】
・ろ過物を1Lのエタノールを用いて洗浄し、ろ過物(αペプチド)を加温真空乾燥機中で乾燥する。
【0052】
・乾燥材料をろ紙から注意深くかき取り、「αペプチド」とラベリングしたガラス・ジャー中に保存する。
【0053】
・第1工程由来の酸可溶性γろ液を取り出し、真空中で約200mLに濃縮する。γペプチドを沈殿させるために、定常攪拌しながら2Lのエタノール中に、濃縮物を注ぐ。
【0054】
・ブフナー漏斗を用いたろ過により、γペプチドを回収し、ろ液を廃棄する。
【0055】
・ろ過物を1Lのエタノールに懸濁し、残りの酢酸アンモニウムを溶解させるために、2時間攪拌する。ブフナー漏斗を用いてろ過し、ろ過物を廃棄し、その後、ろ過物を加温真空乾燥機中で乾燥する。
【0056】
・乾燥材料をろ紙から注意深くかき取り、「γペプチド」とラベリングしたガラス・ジャー中に保存する。
【0057】
特定の実施形態において、開示された組成物中のペプチドは、当該分野で周知の方法によって、化学的に合成し得る。固相ペプチド合成は、支持体または固相ペプチド樹脂に固着する間の、ペプチド鎖の段階的な構築を含む。2つの一般的に周知の、ペプチドの固相合成方法がある。
【0058】
メリフィールド法として公知の第1の方法は、アミノ酸または基礎単位としてのペプチド残基の結合を介してペプチドが合成されるように、カルボキシル基によりC末端アミノ酸を保持する固相支持体または樹脂を使用する。樹脂に結合したペプチドのN末端は、非ブロック化され、N保護アミノ酸が通常は結合剤とともに添加される。活性化剤は、速度および選択性を改善するために使用し得る。ペプチド結合を形成した後、保護基を除去し、必要な場合、全てのアミノ酸が、所望の配列中のペプチドに添加されるまで周期を繰り返す。
【0059】
化学合成の第2の方法は、「逆メリフィールド」法としても公知の「ポリマー試薬合成」である。この技術は、一連のカラム中で固体支持体に結合し、ペプチドまたはアミノ酸配列を形成するために、カラムを介してアミノ酸残基またはペプチド残基を通過させる試薬を含む。
【0060】
特定の実施形態においては、ペプチドは、開示したペプチドをコードする単離した核酸分子から組換え的に生成し得る。例えば、本発明の開示は、組換えクローニングおよびDNAならびに組換えベクターを有する宿主細胞を含む発現ベクターを提供する。DNAによりコードされる開示されたペプチドを調製するためにDNAを含む発現ベクターを使用し得る。ペプチドを生成する方法は、ペプチドの発現を促進し、次いで、培養由来の発現されたペプチドを回復する条件下で、ペプチドをコードする組換え発現ベクターを用いて形質転換した宿主細胞の培養を含む。発現したペプチドを生成する方法は、例えば使用された宿主細胞の型および特定の調製に必要な精製レベルのような因子により異なることを当業者は認識する。本発明のペプチド組成物は、細胞培養または組織培養の粗抽出物を含む任意の有用な精製度であり得ることが理解される。
【0061】
任意の適切な発現系を使用し得る。ベクターは、適切な転写調節ヌクレオチド配列または翻訳調節ヌクレオチド配列(例えば、哺乳動物、細菌、ウイルスまたは昆虫の遺伝子に由来する)に作動可能に連結された、本発明のペプチドをコードするDNAを含む。調節配列の例としては、転写プロモーター、オペレーターまたはエンハンサー、mRNAリボソーム結合部位ならびに、転写および翻訳の開始および終結を制御する適切な配列が挙げられる。調節配列がDNA配列に機能的に関係する場合、ヌクレオチド配列は、作動可能に連結されている。従って、プロモーターヌクレオチド配列がDNA配列の転写を制御する場合、プロモーターヌクレオチド配列は、作動可能にDNA配列に連結されている。所望の宿主細胞において、複製する能力を与える複製の開始点および形質転換体を同定する選択遺伝子は、一般に、発現ベクターに組み込まれる。
【0062】
さらに、適切なシグナルペプチド(天然の、または異種の)をコードする配列は、発現ベクターに組み込まれ得る。シグナルペプチドに対するDNA配列(分泌リーダー)を、本発明の核酸配列に対するフレーム内に融合し得る。故に、DNAは最初に転写され、mRNAは、シグナルペプチドを含む融合タンパク質に翻訳される。意図する宿主細胞において機能するシグナルペプチドは、ペプチドの細胞外への分泌を促進する。シグナルペプチドは、細胞由来のペプチドの分泌に基づいて、ペプチドから切断される。
【0063】
ペプチドの発現のために適した宿主細胞としては、原核生物、酵母または高等真核生物を含む。原核生物宿主細胞(例えば、細菌細胞)は、一般に宿主細胞としての使用には好ましい。細菌、真菌、酵母および哺乳動物の細胞宿主を含む、使用のための適切なクローニングベクターおよび発現ベクターは、例えば、Pouwelsら、Cloning Vectors:A Laboratory Manual、Elsevier、New York、(1985)に記載される。無細胞翻訳系もまた、本明細書で開示したDNA構築物由来のRNAを使用して、ペプチドの生成のために使用し得る。
【0064】
原核生物としては、グラム陰性生物またはグラム陽性生物を含む。形質転換のための適した原核宿主細胞としては、例えば、E.coli、Bacillus subtilis、Salmonella typhimuriumおよびPseudomonas属、Steptomyces属およびStaphylococcus属内の種々の他の種類が挙げられる。原核宿主細胞(例えば、E.coli)内では、ペプチドは、原核宿主細胞中で組換えペプチドの発現を促進するために、N末端メチオニン残基を含み得る。N末端Metは、発現した組換えペプチドから切断され得る。
【0065】
原核宿主細胞中で使用される発現ベクターは、一般に一つ以上の表現型選択マーカー遺伝子を含む。例えば、表現型選択マーカー遺伝子は、抗生物質耐性を与える、または独立栄養性の必要条件を供給するタンパク質をコードする遺伝子である。原核生物宿主細胞のための有用な発現ベクターの例としては、市販のプラスミドに由来する発現ベクター(例えば、クローニングベクターpBR322(ATCC37017))が挙げられる。pBR322は、アンピシリンおよびテトラサイクリン耐性遺伝子を含み、従って、形質転換した細胞を同定するための容易な方法を提供する。適切なプロモーターおよびDNA配列をpBR322ベクターに挿入する。他の市販のベクターとしては、例えば、pKK223−3(Pharmacia Fine Chemicals、Uppsala、Sweden)およびpGEM1(Promega Biotec、Madison、WI、USA)が挙げられる。
【0066】
組換え原核宿主細胞発現ベクターとして一般に使用されるプロモーター配列としては、β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクトースプロモーター系(Changら、Nature 275:615、1978;およびGoeddelら、Nature 281:544,1979))、トリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddelら、Nucl.Acids.Res.8:4057、1980およびEP−A−36776)およびtacプロモーター系(Maniatis、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、p.412、1982)が挙げられる。特定の有用な原核宿主細胞発現系は、ファージλPプロモーターおよびcI857ts不耐熱性リプレッサー配列を用いる。American Type Culture Collectionから入手した、λPプロモーターの誘導体を組み込んだプラスミドベクターは、pHUB2プラスミド(E.coli JMB9族に属する、ATCC37092)およびpPLc28プラスミド(E.coli RR1に属する、ATCC53082)を含む。
【0067】
あるいは、ペプチドは、酵母宿主細胞中で発現し得、好ましくは、Saccharomyces属(例えば、S.cerevisiae)由来の酵母宿主細胞中で発現し得る。酵母の他の属(例えば、PichiaまたはKluyveromyces)もまた使用し得る。酵母ベクターは、多くの場合、2μ酵母プラスミド、自発的な反復配列(ARS)、プロモーター領域、ポリアデニル化のための配列、転写終結のための配列および選択的マーカー遺伝子由来の複製起源配列を含む。酵母ベクターに対して適したプロモーター配列としては、とりわけ、メタロチオネイン、3−ホスホグリセラート キナーゼ(Hitzemanら、J.Biol.Chem.255:2073、1980)または他の糖分解酵素(Hessら、J.Adv.Enzyme Reg.7:149、1968;およびHollandら、Biochem.17:4900、1978)(例えば、エノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸 デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルベート デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセレート ムターゼ、ピルベート キナーゼ、トリセホスフェート イソメラーゼ、ホスホ−グルコース イソメラーゼおよびグルコキナーゼ)が挙げられる。酵母の発現において使用される他の適したベクターおよびプロモーターは、さらにHitzeman、EPA−73、657に記載される。別の選択肢としては、Russellら(J.Biol.Chem.258:2674、1982)およびBeierら(Nature 300:724、1982)に記載されるグルコース抑制性ADH2プロモーターが挙げられる。酵母およびE.coliの両方において複製し得るシャトルベクターは、E.coliにおける選択および複製のための、pBR322由来のDNA配列(Amp遺伝子および複製起点)を上記酵母ベクター中に挿入することにより構築され得る。
【0068】
酵母α因子リーダー配列は、ペプチドの分泌を方向付けるするために、使用され得る。α因子リーダー配列は、多くの場合、プロモーター配列と構造遺伝子配列との間に挿入される。Kurjanら、Cell 30:933、1982およびBitterら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:5330、1984を参照のこと。組換えペプチドの酵母宿主からの分泌を促進するために適した他のリーダー配列は、当業者に公知である。リーダー配列は、1つ以上の制限部位を含むために、その3’末端近辺で改変され得る。このことは、リーダー配列の構造遺伝子への融合を促進する。
【0069】
酵母形質転換プロトコルは、当業者に公知である。1つのそのようなプロトコルは、Hinnenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:1929、1978により記載されている。Hinnenらのプロトコルは、0.67%酵母窒素塩基、0.5%カザミノ酸、2%グルコース、10mg/mlアデニンおよび20mg/mlウラシルからなる選択培地中でTrp形質転換体を選択する。
【0070】
ADH2プロモーター配列を含むベクターにより形質転換された酵母宿主細胞は、「富化」培地中で発現を誘導するために成長し得る。富化培地の例としては、80mg/mlのアデニンおよび80mg/mlウラシルを補充した、1%酵母抽出物、2%ペプトンおよび1%グルコースを含む培地が挙げられる。グルコースが培地中から使い果たされた場合、ADH2プロモーターの抑制解除が生じる。
【0071】
哺乳動物または昆虫の宿主細胞培養系もまた、組換えペプチドを発現させるために使用し得る。昆虫細胞における異種タンパク質の生成のためのバキュロウイルス(Bacculovirus)系は、LuckowおよびSummers、Bio/Technology 6:47(1988)によって総説されている。哺乳動物起源の確立した細胞株もまた、用い得る。適した哺乳動物宿主細胞株の例としては、サル腎臓細胞のCOS−7株(ATCC CRL 1651)(Gluzmanら、Cell 23:175、1981)、L細胞、C127細胞、3T3細胞(ATCC CCL 163)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞およびBHK(ATCC CRL 10)細胞株およびMcMahanらに記載されるアフリカサバンナモンキー腎臓細胞株CV1(ATCC CCL70)由来のCV1/EBNA細胞株(EMBO J.10:2821、1991)が挙げられる。
【0072】
DNAを哺乳動物細胞に導入するための確立した方法は、記載される(Kaufman、R.J.、哺乳動物細胞大規模培養、1990、pp.15〜69)。細胞をトランスフェクトするために、市販の試薬(例えば、リポフェクタミン脂質試薬(Gibco/BRL)またはリポフェクタミン−プラス脂質試薬)を用いたさらなるプロトコルを使用し得る(Felgnerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7413〜7417、1987)。さらに、哺乳動物細胞をトランスフェクトするために、従来的な方法(例えば、Sambrookらに記載される方法(Molecular Cloning:A Laboratory Manual 第2版、1〜3巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989)を用いてエレクトロポレーションを使用し得る。安定な形質転換体の選択は、当該分野で公知の方法(例えば、細胞毒性薬剤に対する耐性)を使用して実施し得る。Kaufmanら、Meth.in Enzymology 185:487−511,1990は、いくつかの選択枠組み(例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)耐性)を記載する。DHFR選択に適した宿主株は、CHO株DX−B11であり得、該株はDHFR欠乏性である(UrlaubおよびChasin、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216〜4220、1980)。DHFR cDNAを発現するプラスミドをDX−B11株に導入し得、その後、プラスミドを含む細胞のみが、適切な選択培地中で増殖し得る。発現ベクター中に組み込み得る選択マーカーの他の例としては、抗生物質(例えば、G418およびハイグロマイシンB)に対する耐性を与えるcDNAが挙げられる。これらの化合物に対する耐性に基づいて、ベクターを有する細胞を選択し得る。
【0073】
哺乳動物宿主細胞発現ベクターのための転写コントロール配列および翻訳コントロール配列は、ウイルスゲノムから摘出し得る。一般に使用されるプロモーター配列およびエンハンサー配列は、ポリオーマウイルス、アデノウイルス2、シミアンウイルス40(SV40)およびヒトサイトメガロ・ウイルスに由来する。SV40ウイルスゲノムに由来するDNA配列(例えば、SV40起源の初期プロモーター部位、後期プロモーター部位、エンハンサー部位、スプイライシング部位およびポリアデニル化部位)は、哺乳動物宿主細胞における構造遺伝子配列の発現のための他の遺伝的要素を提供するために使用し得る。ウイルスの初期プロモーターおよび後期プロモーターは、両方ともウイルスの複製起点も含み得る断片として、ウイルスゲノムから容易に入手できるために、特に有用である(Fiersら、Nature 273:113、1978;Kaufman、Meth.in Enzymology、1990)。より小さな、または、より大きなSV40断片もまた使用し得、ウイルスの複製開始部位が含まれるSV40中に位置する、HindIII部位からBglI部位に向かって伸長する約250bpの配列を提供する。
【0074】
哺乳動物発現ベクター由来の異種遺伝子の発現を改善することを示すさらなるコントロール配列としては、例えばCHO細胞から得た発現増強配列要素(EASE)(Morrisら、Animal Cell Technology、1997、pp.529〜534およびPCT出願WO97/25420)およびアデノウイルス2由来の3部からなるリーダー(TPL)およびVA遺伝子RNA(Gingerasら、J.Biol.Chem.257:13475〜13491、1982)などの要素が挙げられる。ウイルス起源の内部リボソーム侵入部位(IRES)配列は、二シストロンmRNAの効率的な翻訳を可能にする(OhおよびSarnow、Current Opinion in Genetics and Development 3:295〜300、1993;Rameshら、Nucleic Acids Research 24:2697〜2700、1996)。選択マーカー(例えば、DHFR)のための遺伝子により追跡した二シストロンmRNAの一部としての異種cDNAの発現は、宿主のトランスフェクト可能性および異種cDNAの発現を改善することが示されたきた(Kaufman、Meth.in Enzymology、1990)。二シストロンmRNAを用いる例示的な発現ベクターは、pTR−DC/GFP(Mosserら、Biotechniques 22:150〜161、1997に記載される)およびp2A5I(Morrisら、Animal Cell Technology、1997、pp.529〜534に記載される)である。
【0075】
有用な高発現ベクター、pCAVNOTは、Mosleyら、Cell 59:335〜348、1989により記載された。哺乳動物宿主細胞に使用するための他の発現ベクターを、OkayamaおよびBerg(Mol.Cell.Biol.3:280、1983)によって開示されたように構成し得る。C127ネズミ乳腺上皮細胞中の哺乳動物cDNAの安定的に高レベルの発現のための有用な系は、Cosmenらに記載される(Mol.Immunol.23:935、1986)ように実質的に構築され得る。有用な高発現ベクター、PMLSV N1/N4(Cosmanら、Nature 312:768、1984により記載される)は、ATCC39890として寄託されている。さらなる有用な哺乳動物発現ベクターは、EP−A−0367566およびWO91/18982に記載され、参照として本明細書に援用される。さらに別の選択肢としては、ベクターは、レトロウイルスに由来し得る。
【0076】
本明細書の開示は、ペプチドを単離し、精製する方法を含む。本発明に含まれる「単離された」ペプチドは、天然に見出され得る環境と同一の環境中には存在しないペプチドである。本発明に含まれる「精製された」ペプチドまたはそのフラグメントは、本質的に他のタンパク質またはポリペプチドと結合していなく、例えば、組換え発現系の精製産物(例えば、上に記載した精製産物または天然に存在する細胞および/または組織あるいは、天然のケラチンタンパク質が存在する場所における、それらから単離されるペプチドのような非組換え源からの精製産物)である。
【0077】
一つの好ましい実施形態においては、本発明のペプチドまたはフラグメントの精製を補助する別のポリペプチドに対する本発明のペプチドまたはフラグメントの融合を使用して、組換えペプチドまたはフラグメントの精製を達成し得る。このような融合相手としては、ポリHisまたは本明細書で記載した他の抗原性識別ペプチドならびにFc部分が挙げられ得る。
【0078】
(薬学的組成物)
有効量の本発明のペプチドまたはペプチドとの組み合わせを含む、他の構成要素(例えば、生理学的に受容可能な希釈剤、キャリアまたは賦形剤)と組合わせた組成物を、本明細書中に提供する。薬学的に有用な組成物を調製するために使用される公知の方法に従って、ペプチドを処方し得る。それらは、単独の活性物質として、または、希釈剤(例えば、生理食塩水、Tris−HCl、酢酸塩およびリン酸緩衝溶液)、防腐剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール、パラベン)、乳化剤、可溶化剤、アジュバント、および/またはキャリアを含む、既知の指摘により適した他の公知の活性物質を用いて混合物中で組み合わせ得る。ペプチドを、中性の組成物中に、または塩の形態で処方し得る。薬学的に受容可能な塩としては、酸添加塩(ペプチドの遊離アミノ酸基で形成された)および無機酸(例えば、塩化水素酸またはリン酸)を用いて形成された酸添加塩、または有機酸(例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸など)を用いて形成された酸添加塩が挙げられる。遊離カルボキシル基を用いて形成された塩もまた、無機塩基(例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは水酸化第2鉄)および有機塩基(例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなど)に由来し得る。本明細書で開示された組成物を、任意の適切な送達ビヒクル中に処方し得、送達ビヒクルとしては、ヒドロゲル、ローション、水溶液、非水溶液、不織媒体、織り込まれた媒体、組織または細胞成長骨格および粉末が挙げられるが、これらに限定されない。薬学的組成物のための適した処方は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16編、1980、Mack Publishing Company、Easton、PA中に記載されたものを含む。
【0079】
さらに、このような組成物は、ポリエチレングリコール(PEG)、金属イオンまたはポリマー組成物(例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ヒドロゲル、デキストランなど)中に組み込まれたもの、またはリポソーム、マイクロエマルション、ミセル、単層小胞または多層小胞、赤血球ゴーストまたは球晶中に組み込まれたものと複合し得る。このような組成物は、物理的状態、可溶性、安定性、インビボ放出速度およびインビボクリアランス速度に影響し、従って、意図した適用に従って選択される。
【0080】
本発明の組成物を、任意の適した様式(例えば、局所的に、非経口でまたは吸入により)で投与し得る。用語「非経口で」とは、注射(例えば、皮下経路、静脈内経路、または筋肉内経路により)を含み、また、局在化投与(例えば、疾患または傷害の部位に)を含む。移植物からの持続性の放出もまた検討される。関連技術における当業者は、適した投薬量が、例えば、処置すべき疾患の性質、患者の体重、年齢および全身状態ならびに投与経路のような因子に依存して変化することを認識する。仮の投薬量を動物試験に従って決定し得、ヒト投与のための投薬量の規模を技術的に認められた方法に従って実行し得る。
【0081】
特定の好ましい、使用の実施形態において、組成物を含むペプチドを、例えば、傷害上に配置される粉体として処方し得る。ペプチドパウダーもまた、傷害に対して好都合な適用のために、任意の水性溶液、クリーム、ゲルまたは他のビヒクル中に処方し得る。さらに、ペプチド溶液を、傷害に適用するためのギプス中またはポリマー創傷包帯上またはケラチン創傷包帯シート上に組み込み得る。インビトロの試行において、開示されたペプチドを含む組成物は、ヒト皮膚ケラチノサイト、ヒト皮膚線維芽細胞および微小血管内皮細胞の増殖を増強することが示され、従って、外傷治療適用においてペプチドの効力が示された。
【0082】
ペプチドもまた、細胞成長刺激薬として、組織工学骨格(例えば、米国特許第6,110,487号に記載され、参照として本明細書中に援用されたシート)に添加し得る。ペプチドは、太陽または天候による損傷を受けた皮膚の治療を促進すると考えられる。ペプチドを、キャリアローション(例えば、ラノリン)と混合し得、皮膚に適用し得る。また、化粧品に対して、皮膚治療特性を与えるために、ペプチドを化粧品に添加し得る。化粧品基材は、本発明に従って生成されたペプチドの含有に、適していると考えられる。
【0083】
特定の実施形態において、本明細書で開示されたペプチド組成物は、創傷包帯、織り込まれたシートまたは不織シートもしくはフィルム、ヒドロゲル調製物、組織工学骨格、移植物もしくは金属材料またはポリマー材料を含む他の産物に、含まれるか結合されるか、または、接着され得る。このような材料は、同一人の所有する米国特許第5,358,935号、同5,932,552号、同6,274,163号、同6,124,265号、同6,432,435号、同6,316,598号、同6,371,984号、同6,274,155号、同6,270,793号、同6,461,628号および米国特許出願番号第09/815,387号に記載され、その全体が、本明細書中に参考として援用される。
【0084】
(ペプチドを含む組成物)
これまでの研究では、開示されたペプチドを含む粗組成物を、暴露3日後に、ケラチノサイトに対する有糸分裂促進的な効果を研究するために使用してきた。生成した0.5〜10μg/mlのペプチド濃度は、ネガティブコントロールと比較して530ナノメーター(nm)での光学密度(OD)を20%より大きく増加する。一つの例外は、15%より大きい反応を超えて産生する5μg/ml濃度である。これらの研究においてポジティブコントロール、表皮成長因子(EGF25)は、細胞増殖において20%より大きな増加を産生した。類似した研究において、暴露5日後、0.5〜10μg/mlの濃度のペプチドでは、ケラチノサイトの増殖は、25%以上大きくなった。ポジティブコントロール、EGF25もまた、25%より多く増加した。
【0085】
暴露3日後および5日後、ヒト表皮線維芽細胞に対するペプチド組成物の生物学的効果を試験する2番目の研究のセットを行った。暴露3日後、ペプチド組成物は、0.5μg/mlおよび10μg/mlの間の濃度において、細胞増殖において25%より大きな増加を産生した。ポジティブコントロール、ウシ由来線維芽細胞成長因子(bFGF25)は、細胞増殖において30%より大きな増加を産生した。暴露5日後、0.5〜10μg/mlの濃度において、ペプチド組成物は、細胞増殖において9%および12%の間の増加を産生する。ポジティブコントロールは、13%より大きな増加を産生する。
【0086】
ペプチド組成物の表皮線維芽細胞に対する有糸分裂促進的効果を確認する関連したインビトロ試験は、1000μg/ml濃度におけるネガティブコントロールのほぼ150%の濃度まで増加した。より大きな精製度を有する組成物は、有糸分裂効果をネガティブコントロールの1000%を超えて増加した。本研究におけるポジティブコントロール、血小板由来成長因子(PDGF)は、有糸分裂効果をネガティブコントロールのほぼ700%まで増加した。
【0087】
本発明の開示は、さらに、2つの異なった構成要素に分離し得る精製した調製物を含み、第1の、α−ケラトースは、全ペプチドの約60%を含み、水溶性および酸不溶性である。γケラトースは、酸溶解性であり、水溶性である。毛髪および羊毛由来のαおよびγ画分由来の、種々の濃度の開示されたペプチドの混合物を含む化合物を3日間および5日間表皮線維芽細胞培養に添加した。細胞増殖を定量するために、光学密度技術(OD490)を使用して、細胞反応を測定した。全ての場合において、最高の濃度は、3日間の暴露後、低濃度と比較してより大きな細胞増殖反応を産生した。毛髪および羊毛由来の100μg/ml濃度のペプチドは、細胞増殖において、ネガティブコントロールと比較してそれぞれ約35%および約30%の増加を産生した。
【0088】
ヒト皮膚フィブロブラストもまた、毛髪および羊毛由来のペプチド組成物生成物のα分画およびγ分画に5日間暴露した。ネガティブコントロールは、生理食塩水であり、FGFをポジティブコントロールとして使用した。毛髪および羊毛由来のペプチドのα分画およびγ分画を、1および10μg/ml濃度で含む組成物は、コントロールと比較して、細胞増殖における30%および60%の間の増加を産生した。
【0089】
上に報告したペプチド組成物を分画し、そして、タンデム質量分析法(MS/MS)を使用して、アミノ酸配列を得た。アミノ酸配列データに基づいて、および公知の毛髪および羊毛ケラチンタンパク質と比較して、このペプチドをヒト毛髪ケラチンタンパク質および羊毛ケラチンタンパク質の保存領域に局在させた。これらの配列比較により、生物活性ペプチドは、以下の保存されたコンセンサス配列に由来することが示される:
【0090】
【数2】









































































































































































































































































【0091】
当業者に周知のように、記号(C/S)の使用は、その位置におけるアミノ酸が、CかまたはSかのいずれかであり得ることを意味し、(Q/P)は、その位置おけるアミノ酸が、QかまたはPかのいずれかであり得ることを意味し、(A/T)は、その位置におけるアミノ酸が、AかまたはTかのいずれかであり得ることを意味し、(Q/R)は、その位置におけるアミノ酸が、QかまたはRかのいずれかであり得ることを意味し、および(S/N)は、その位置におけるアミノ酸が、SかまたはNかのいずれかであり得ることを意味する。用語C末端またはカルボキシ末端とは、相互互換に使用され、本明細書中では、当該分野で通常使用されるように使用されることもまた理解される。アミノ酸は、a−カルボン酸、a−アミンおよび側鎖に結合するa−炭素として公知の炭素原子から構成される。ペプチド結合重合においては、一つのアミノ酸由来のアミノ基が、ペプチドポリマー中の隣接するアミノ酸のa−カルボン酸基に結合する。従って、ポリマーは、一つの末端(C末端)に存在する遊離a−カルボン酸および反対の末端(N末端またはアミノ末端)に存在する遊離a−アミン基を含む。組成物の安定性および活性を増加させるために、本明細書中に開示された任意のペプチドを、当該分野で周知のように改変し得る。このような改変としては、ペプチドの適切な末端へのアセチル基またはアミド基の結合が挙げられるが、それらに限定されない。
【0092】
ペプチドは、以下の一文字アミノ酸略語を使用して開示されることを当業者が理解することを理解すべきである。
【0093】
A=Ala=アラニン
R=Arg=アルギニン
N=Asp=アスパラギン
D=Asp=アスパラギン酸
C=Cys=システイン
E=Glu=グルタミン酸
Q=Gln=グルタミン
G=Gly=グリシン
H=His=ヒスチジン
I=Ile=イソロイシン
L=Leu=ロイシン
K=Lys=リジン
M=Met=メチオニン
F=Phe=フェニルアラニン
P=Pro=プロリン
S=Ser=セリン
T=Thr=スレオニン
W=Trp=トリプトファン
Y=Tyr=チロシン
V=Val=バリン
本発明の好ましい実施形態を示すために、以下の実施例は含まれる。本発明の実施においてよく機能するために、発明者によって開示された代表的な技術を付随する、実施例において開示した技術は、従って、その実施のための好ましいモデルを構成すると考えられ得ることを、当業者は、理解すべきである。しかし、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、類似の結果または同様の結果を得る特定の実施形態において、多くの改変がなされ得ることを、本発明の開示の観点から理解すべきである。
【実施例】
【0094】
(実施例1)
ケラチンのコンセンサス配列由来の選択されたペプチドを化学的に合成し、ペプチドの生物活性を実証するために使用した。正常なヒト成体表皮線維芽細胞を線維芽細胞成長培地(CloneticsTM/BioWhittaker、San Diego、CA、USA)中で培養した。5代継代した細胞を、96ウェルプレートのウェルに5×10細胞/ウェルで播種した。試験するペプチド溶液を滅菌水中に約1.5mg/mlで調製した。製造業者(New England Peptide、Inc.、Fitchburg、MS、USA)により推薦されるように、ペプチド溶液が完全にペプチドを溶解するために少量の0.1N NHOHをペプチドに滴下した。溶液に添加したNHOHの容量を記録し、開始濃度を調整するために使用した。線維芽細胞培養培地中で、溶液を100〜0.001μg/mlまで連続的に希釈し、次いで細胞に添加し、5日間培養した。3日目で、試験培地およびコントロール培地を減圧により各ウェルから除去し、新鮮な試験溶液またはコントロール溶液で置換した。サンプルを4つの複製ウェルで評価した。各プレートにおける注意として、プレート間の細胞播種におけるいかなる変化も明らかにするために、ウェルを無作為に選択し、ベースラインコントロールとして使用した。5日後、細胞増殖をCell Titer96(登録商標)細胞増殖アッセイ(Promega Corp.、Madison、WI、USA)を使用して分光光度法で評価した。吸光度値をベースラインコントロールに標準化し、増殖増加百分率(陽性値)または増殖減少百分率(陰性値)として表現した。
【0095】
【表1】


細胞増殖の活性化かまたは阻害かいずれかのための、各ペプチド処方の最適濃度を決定するために、試験濃度をさらに最適化し得ることを理解すべきである。しかし、この実施例中に含まれるデータは、線維芽細胞アッセイにおけるペプチド組成物の活性を示す。試験データは、さらに主題アミノ酸配列LGD、DLN、APTV、SEQ ID NO:67またはLNVEV、SEQ ID NO:117を含むペプチドの類似活性を示す。
【0096】
本明細書に含まれる本発明の多数の利点を、前述の記載中に示した。しかし、この開示が、多くの点で単に例示的であることを理解すべきである。詳細には、特に本発明の精神および範囲内で、試薬、濃度および段階の順序が改変され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【公開番号】特開2010−155859(P2010−155859A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67081(P2010−67081)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【分割の表示】特願2003−564069(P2003−564069)の分割
【原出願日】平成15年1月28日(2003.1.28)
【出願人】(503345514)ケラプラスト テクノロジーズ, リミテッド (3)
【Fターム(参考)】