生物活性組成物、その製造方法、および生物学的応用
一つ以上の植物から、抽出によって、生物活性な組成物を得る方法であって、
a)粗製完全抽出物、または有効成分に富むフラクション、より具体的には無極性フラクションまたは極性フラクション、を得るために、所与の活性に関して選択した植物またはそれらの部分を別々に、一つ以上の溶媒で処理する工程と、
b)MTT試験に対して代謝活性を示し、そしてその活性の、少なくとも一つの特異的な試験に対して生物活性を示す抽出物またはフラクションを選択する工程と
を含む方法である。
a)粗製完全抽出物、または有効成分に富むフラクション、より具体的には無極性フラクションまたは極性フラクション、を得るために、所与の活性に関して選択した植物またはそれらの部分を別々に、一つ以上の溶媒で処理する工程と、
b)MTT試験に対して代謝活性を示し、そしてその活性の、少なくとも一つの特異的な試験に対して生物活性を示す抽出物またはフラクションを選択する工程と
を含む方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物から得ることが可能な新規生物活性組成物に関する。さらに、所与の活性の視点から選択された植物から抽出してこれらの組成物を得る方法にも関する。さらに、代謝および/またはエネルギー収支の乱れ、いわゆる代謝疾患が原因で発症するヒトまたは動物の病気、とりわけ2型糖尿病を治療するために、これらの組成物を生物学的に応用することにも関する。
【背景技術】
【0002】
ここ30年の間に、先進国では運動不足と栄養の過剰摂取とによって、肥満の発生率が爆発的に高まっている。肥満は、別の代謝症候群または疾患、たとえばX症候群、インスリン耐性、および2型糖尿病などを発症するリスクを高める。世界の糖尿病患者数は約2億人にまで達し、その約90%が2型糖尿病を患っている。この数字は今後25年の間に倍増して、世界の人口の5%を超えるものと推定されている。
【0003】
糖尿病患者は脳および心臓の血管に合併症を発症するリスクが2倍ないし4倍高い。糖尿病患者は、大きな血管に関するこれらの問題に加えて、さらに微小血管が関係するいくつかの合併症、すなわち網膜疾患、神経疾患、および腎疾患を発症する。病気が10年経過すると糖尿病患者の3分の1は、これらの合併症に冒されるが、運動および、特に、栄養の補給を含む適切な食餌療法と、薬物療法とを取り入れることにより、大幅に軽減することができる。
【0004】
代謝疾患の治療に使用できる薬物としては、さまざまな種類のものが存在するが、代謝を構成する過程のいずれか一つに作用する点では共通している。しかしそうであっても、代謝疾患の症候が多様であるということは、とりもなおさず複数の薬物治療が行われることを意味し、そのことは、健常な身体にとって高いコストを払わなければならないばかりでなく、薬物間相互作用による副作用のリスクも高める。治療手段が多数存在しているにもかかわらず、代謝疾患に対する医学的な必要性がきわめて高い理由は、この点にある。
【0005】
代謝疾患に罹っている患者は、30年間、いや40年間にわたってその疾患が進行するのを見ることになる。その間、患者は病状を実感することなく、代謝疾患に罹っている大半の患者は、しばしば副作用の原因であるいくつかの薬剤を組み合わせた治療に頼らざるを得ないほど悪化している。
【0006】
加えて、糖尿病の治療に現在使用されている製品は、真に満足できるようなものではなく、依然と解消されないさまざまな副作用が、その使用を制限している。現在開発が進められている新規薬剤や上市を目前にひかえた製品にもやはり副作用が認められており、さらに満足できる効果的な製品の開発が急がれている。
【0007】
このような理由で、当研究者は、 特に、合成化合物とは対照的に、自然産物と考えられる植物由来の生成物を基礎にした別の解決方法に特別な関心を持ちながら、この領域の研究をつづけている。その結果、植物を基礎にした薬剤および/または植物由来の薬剤を発見すると同時に、植物を基礎にしたサプリメントの確認にも成功した。事実、特定の植物を基礎にしたサプリメントをとりいれた適切な食餌療法を組み合わせることで、代謝疾患、特に肥満および糖尿病の進行を防止できることを明らかにした。
【0008】
世界的なレベルで見ると、約1200種類の植物が代謝疾患、特に2型糖尿病に対して有効であるとされている。しかしほとんどの場合、無毒であるという確証はなされていないし、これらの植物が含有する有効成分も同定されていない、そしてその植物がどのような治療クラスに属しているかを決定し、仮に新しい治療クラスに属するとした場合、それがどのようなクラスかを明らかにするための薬理学的研究も行われていないし、これらの有効成分を技術的経済的に最適な条件で得ることができる抽出方法についても全く記載されていない。
【0009】
このように、これらの植物の効果について詳細な科学的知識が不足していることが、治療への応用を妨げる原因になっている。さらに、ヨーロッパ指令2002/46/CEのフランス版として、サプリメントに関する新しい法令2006−352が発効して以来、最近この分野を取り締まる法の枠が強化されたため、これらの化学的情報がないと、薬効のある食品(nutraceutique)として使用することさえむずかしくなっている。
【0010】
発明者は、正確な化学的データを入手することと、元の活性物質を開発することとを考慮して、植物由来の組成物の、代謝活性に対する効果をミトコンドリアレベルで評価する方法を開発した。最近の研究によって、特にミトコンドリアレベルにおける代謝活性自体の低下が、代謝疾患の進行、特に2型糖尿病の発症過程の中で、早期に観察される主要な乱れの一つであることが明らかにされている[Petersenら]。
【0011】
第一のアプローチに従い、発明者は、合成由来または天然由来の所与の生成物が示す細胞毒性を評価するために広く用いられているMTT試験(2,3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)(Mosmann)が、植物から活性組成物を選択するのに非常に有益な手段となりうることを確認した。
【0012】
この試験は、ミトコンドリア中に含まれている脱水素酵素が、溶液状態で黄色の分子であるMTTを、溶液状態で青色を示すフォルマザンの結晶に変換する能力を有することに基づいている。この試験は、所与の生成物で処理したあとにミトコンドリア中に含まれる脱水素酵素の活性を測定することを可能にし、それゆえ、ミトコンドリアによって作られるATPの量、すなわち細胞ミトコンドリアレベルで代謝活性を表すATPの定量を可能にする。
【0013】
さらに、本発明者は、選ばれた植物の抽出物、フラクションおよび化合物の細胞毒性を測定することだけにとどまらず、独創的な方法でこれらの抽出物、フラクション、および化合物が代謝活性を増進する能力を測定するために、MTT試験を使って、代謝活性に影響を及ぼす力に対して最初の化合物をスクリーニングする方法をも開発した。
【0014】
さらに、本発明者の探求は、ミトコンドリアの機能に影響を及ぼす生物学的標的TGR5を特異的に認識する植物由来の生成物の研究に向けられた。受容体TGR5はGタンパク質共役受容体(以下RCPGと略す)のファミリーに属する。胆汁酸によって活性化される最初の膜受容体が対象となる。TGR5は胆汁酸の特定の内分泌機能を媒介するメディエーターであると記載されている。
【0015】
本発明者は、TGR5発現ベクターおよびレポータープラスミド(たとえばルシフェラーゼに対してコードする遺伝子として)で確実にトランスフェクションしたCHO細胞株を使用し、そのCHO細胞を、植物から得ることができる抽出物および/またはフラクションで処理するか、またはこれらの抽出物またはフラクションから得ることができる分子で処理すると、対照試料に比べて、TGR5の活性が高まることを認めた。「発明の詳細な説明」および「特許請求項」では、これらの抽出物、フラクションおよび分子は、包括的に、「組成物」または「生成物」という用語で示される。
【0016】
本発明に従い、生物学的標的としてTGR5を使用すれば、代謝に対する効果のレベルで特異性の高い生成物を入手することが可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明は、食餌療法を併用しながら、代謝疾患を予防し治療するために有用な新規組成物を得るための、信頼性が高く、かつ実施が容易な方法を提供することに関する。
【0018】
さらに、本発明は、このような組成物を新規生成物として提供することに加え、代謝疾患の治療および予防を目的とした、植物由来の薬剤もしくはサプリメント、または植物性活性物質を製造するために組成物の性質を活用することにも関する。
【0019】
本発明は、特にTGR5のアゴニスト生成物を提供することに関し、そしてヒトおよび動物に対して、特に治療薬、食品、薬効のある食品の分野に、そして広く、代謝障害が関係する疾患、トラブルおおび症候群を予防し治療するために、これらの生成物を応用することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
第一の実施態様によれば、本発明は、
a)所与の活性に関して選択した植物またはそれらの植物の部分を一つ以上の溶媒で別々に処理して、完全抽出物または有効成分に富むフラクション、より具体的には無極性フラクションおよび極性フラクション、を得る工程と、
b)MTT試験に対して代謝活性を示し、そしてその活性の、少なくとも一つの特異的試験に対して生物活性を示す抽出物またはフラクションを選択する工程とを含む、
ことを特徴とする、一つ以上の植物から、抽出によって生物活性な組成物を得る方法に関する。
【0021】
この方法は、前記工程a)およびb)以外に、工程a)および/または工程b)のあとに実施される工程c)を含み、かつその工程c)が、前記抽出物または選択した前記フラクションを分析して、それらが含有する成分を決定し、そしてもし望めば、生物活性の本質を担う一つまたは複数の有効成分を分離、精製することを含むことが有利である。この分析は、さらに具体的には、HPLCのプロファイルによって行われる。
【0022】
活性化合物の同定および分離に対するこの措置は、医薬品開発および薬効のある食品開発の視点から見ると、この種の化合物を合成によって得ることに見通しを与えるものである。
【0023】
工程a)において、植物または植物の部分は、粉砕乾燥したものを微粉末の形で使用するのが好ましい。
【0024】
特に対象となるのは、葉、皮、根、気生部分、果実、種子などである。
【0025】
工程a)には、一般に、一回以上の抽出が含まれ、それらの抽出は、超臨界CO2または有機溶媒、特にアルコール系溶媒(とりわけエタノールまたはメタノール)、シクロヘキサン、または別の無極性溶媒(石油エーテル、ヘプタン)、ジクロロメタン、またはクロロホルムによって行われるが、特定のフラクションを分離するには、これらの複数の溶媒、またはこれらのすべての溶媒を順次使用することができる。
【0026】
工程b)に従い、生物学的効果は認められているが、それらの特性を決定する手段がないため有効に利用することができない植物に対してMTT試験を適用し、これを使用すれば、本発明以前には全く同定されていなかった抽出物およびフラクションを明らかにすることが可能となることは、注目に値しよう。
【0027】
前記方法によって得られる組成物および生成物、抽出物、フラクション、化合物、および分子は新規であり、その意味で、本発明の範囲内に入る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明による植物抽出物のHPLCプロファイルを示す説明図である。
【図2】図2は、本発明による植物抽出物のHPLCプロファイルを示す説明図である。
【図3】図3は、本発明による植物抽出物のHPLCプロファイルを示す説明図である。
【図4】図4は、本発明による植物抽出物のHPLCプロファイルを示す説明図である。
【図5】図5は、本発明による植物抽出物のHPLCプロファイルを示す説明図である。
【図6】図6は、本発明による植物抽出物のHPLCプロファイルを示す説明図である。
【図7】図7は、本発明による植物抽出物のHPLCプロファイルを示す説明図である。
【図8】図8は、本発明による植物抽出物のHPLCプロファイルを示す説明図である。
【図9】図9は、本発明による植物抽出物のMTT試験の結果を示す説明図である。
【図10】図10は、TGR5受容体の活性に対するOlea europaeaフラクションの効果を示す説明図である。
【図11】図11は、TGR5に対して活性なOlea europaeaフラクションのHPLCプロファイルを示す説明図である。
【図12】図12は、Olea europaea抽出物、TGR5に対して活性な成分、オレアノール酸のNMRスペクトルを示す説明図である。
【図13】図13は、TGR5受容体の活性に対するAlchemilla vulgarisフラクションの効果を示す説明図である。
【図14】図14は、TGR5に対して活性なAlchemilla vulgarisフラクションのHPLCプロファイルを示す説明図である。
【図15】図15は、Alchemilla vulgaris抽出物、TGR5に対する活性成分、コロソール酸のNMRスペクトルを示す説明図である。
【図16】図16は、TGR5受容体の活性に対するJuglans regiaフラクションの効果を示す説明図である。
【図17】図17は、TGR5に対して活性なJuglans regiaフラクションのHPLCプロファイルを示す説明図である。
【図18】図18は、TGR5受容体の活性に対するAgrimonia eupatoriaフラクションの効果を示す説明図である。
【図19】図19は、TGR5に対して活性なAgrimonia eupatoriaフラクションのHPLCプロファイルを示す説明図である。
【図20】図20は、TGR5受容体の活性に対するVaccinium myrtillusフラクションの効果を示す説明図である。
【図21】図21は、TGR5に対して活性なVaccinium myrtillusフラクションのHPLCプロファイルを示す説明図である。
【図22】図22は、TGR5受容体の活性に対するObetia radulaフラクションの効果を示す説明図である。
【図23】図23は、TGR5に対して活性なObetia radulaフラクションのHPLCプロファイルを示す説明図である。
【図24】図24は、脂肪食を与えられたマウスに対するブドウ糖負荷試験(IPGTT)に対するオレアノール酸(OA)、コロソール酸(AVA)、およびTGR5に対して活性なJuglans regia(JRL)フラクションの効果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、抗糖尿活性を有し、特に2型糖尿病の予防と治療に有用な組成物の取得に、本発明を適用することにより、本発明を詳細に説明する。
【0030】
この目的の中では、前記工程b)に従って行われる生物学的試験は、抗糖尿活性、具体的にはインスリンの分泌を決定する方法である。
【0031】
上で述べた点から好ましい組成物および生成物は、次にあげる属および種:Strychnos myrtoides,Obetia radula,Trema orientalis,Sclerocarya birrea,Voacanga thouarsii Moringa oleifera(=Moringa moringa,Moringa pterygosperma,Guilandina moringa), Agrimonia eupatoria,Arctium majus=Lappa major,Alchemilla vulgaris,Phaseolus vulgaris,Vaccinium myrtillus,Cichorium intybus,Cynara scolymus,Geranium robertianum,Juglans regia,Kalanchoe crenata,Leptodenia madagascariensis,Morus nigra,Olea europaea,Rubus fructicosus,Spathodea campanulataの中から選択される植物から得ることが可能である。
【0032】
有利な組成物および生成物は、次にあげる属:Strychnos,betia,Trema,Sclerocarya,Voacanga,Moringa,Agrimonia,Arctium,Alchemilla,Phaseolus,Vaccinium,Cichorium,Cynara,Geranium,Juglans,Kalanchoe,Leptodenia,Morus,Olea,Rubus,Spathodeaの中から選択される植物から得ることが可能であることを特徴とするものである。
【0033】
特に好ましい組成物および生成物は、次にあげる科:Loganiaceae,Urticaceae,Ulmaceae,Anacardiaceae,Apocynaceae,Moringaceae,Rosaceae,Asteraceae,Fabaceae,Ericaceae,Geraniacaea,Juglandacaea,Crassulaceae,Oleaceae,Bignoniaceaの中から選択される植物から得ることが可能である。
【0034】
特に好ましい別の組成物は:Trema orientalis Ulmaceae,Strychnos myrtoides Loganiaceae,Obetia radula Urticaceae,Vaccinium myrtillus Ericaceae,Sclerocarya birrea Anacardiaceae,Agrimonia eupatoria Rosaceae,Alchemilla vulgaris Rosaceae,およびOlea europaea Oleaceaeのフラクション(それらのHPLCプロファイルは図1〜図8にそれぞれ示す)、およびこれらのフラクションに由来する生物活性化合物である。
【0035】
別の実施態様によれば、本発明は、これらの植物から得ることが可能な生成物、たとえば抽出物、フラクション、および/または分子を、特にTGR5の特異的アゴニストとして使用することに関する。
【0036】
前記生成物の作用機構の解明が、具体的な応用の開発を可能にしてくれることを考えると、それを基礎にした本発明のこの態様が、いかに独創的であるかが推し量ることができる。
【0037】
本発明に従う使用において機能を発揮する生成物は、TGR5のアゴニストであることが知られている胆汁酸とは異なる化学構造をしていること、CE50が、TGR5の天然リガンドである、たとえばリトコール酸(LCA)のそれより大きいか等しいこと、および核内受容体であるFXRを活性化しないこと、を特徴とする生物活性生成物である。加えて、これらの生成物は、メタボリックシンドロームのマウスモデルに対して、脂肪性食物によって引き起こされる体重増加の緩和をもたらし、さらに、同マウスモデルに対して、副睾丸皮下脂肪の質量減少ももたらす。また、これらの生成物は耐糖能の改善をももたらす。
【0038】
この特異的な効果によって、肥満、メタボリックシンドローム(またはX症候群)または2型糖尿病などの病気を予防し、あるいはこれらの病気に罹った患者を治療するのに特に好適であることが明らかになる。
【0039】
本発明によりTGR5アゴニストとして使用される生成物は、さらに特に、Olea europaea,Alchemilla vulgaris,Juglans regia,Agrimonia eupatoria,Vaccinium myrtillus,およびObetia radulaを含む群から選択される植物から得ることが可能である。
【0040】
TGR5を活性化する効果を考慮して特に好ましい分子には5環系トリテルペンが含まれる。
【0041】
その中でもオレアナン型5環系トリテルペン、たとえばオレアノール酸、ウルサン型5環系トリテルペン、たとえばコロソール酸、またはルパン型5環系トリテルペンがさらに重要である。
【0042】
今のところ、オリーブの葉が示す抗高血圧および低血糖特性が、唯一オレウロペインによるものとされていることを考えれば、オレアノール酸の抗高血糖、抗高インスリン血効果と、肥満に対する効果とが明らかにされたことは、特に驚くべきことである。
【0043】
本発明による前記TGR5アゴニストは、毒性がきわめて低く、有害な副作用を起こさないため有利である。
【0044】
従って、本発明は、広く、前記組成物および生成物、すなわち本発明の抽出物、フラクション、および化合物を有効利用することに関する。
【0045】
かくして、第一の実施態様によれば、本発明は、有効量の、少なくとも一つの組成物または生成物と、医薬的に許容される賦形剤とを含むことを特徴とする、新規医薬組成物に関する。
【0046】
本発明は、代謝が関係するトラブル/代謝症候群、その中でも特に肥満および/または関連する疾患、たとえばX症候群(メタボリックシンドローム)、2型糖尿病の予防および/または治療を目的とした薬剤の製造に、生物活性な前記組成物および生成物を使用することにも関する。
【0047】
一つの実施態様において、本発明は、ウルサン型5環系トリテルペン、オレアナン型5環系トリテルペン、またはルパン型5環系トリテルペンを使用することに関する。
【0048】
別の一つの実施態様において、本発明は、特に、2型糖尿病、肥満および/またはメタボリックシンドロームの予防および/または治療に、前記抽出物またはフラクション、またはコロソール酸を使用することに関する。
【0049】
さらに別の一つの実施態様において、本発明は、肥満または糖尿病、特に2型糖尿病、および/またはメタボリックシンドロームの予防および/または治療に、前記抽出物またはフラクション、またはオレアノール酸を使用することに関する。
【0050】
本発明の薬剤は、経口、局所、または注射による投与に対して、ガレノス製剤の形で供するのが有利である。
【0051】
経口投与の場合、医薬組成物は、特に圧縮錠剤、錠剤、ゼラチンカプセル剤、顆粒剤、滴剤、シロップ剤、アルコール性シロップ剤の形で供される。
【0052】
局所投与の場合、医薬組成物は、クリーム、乳剤、ローション、油剤またはパッチの形で供するのが有利である。
【0053】
好適なガレノス配合剤にはエアロゾルが含まれる。
【0054】
注射投与の場合、医薬組成物は、静脈、皮下または筋肉内注射が可能なアンプル入り注射液として供され、滅菌液または滅菌が可能な液、あるいはさらに懸濁液または乳剤から調製される。
【0055】
剤形が異なる場合および毎日使用する場合の用量は、古典的な方法により、治療すべき効果のタイプによって定められる。
【0056】
一例をあげれば、前記アゴニストをベースとする前記薬剤の場合は、0.1mgないし5g/日の割合で投与される。
【0057】
抗高血糖、抗高インスリン血効果および体重増加に対する前記生成物の効果は、ダイエットの形で生かすのが有利である。
【0058】
かくして、第二の実施態様によれば、本発明は、薬効のある食品に適用するために、たとえば有効量の、少なくとも一つの前記組成物または生成物と、賦形剤とを含むことを特徴とする、サプリメントに関する。
【0059】
かくして、本発明は、特にヒト(成人または小児)または動物用サプリメントとして前記TGR5のアゴニストを使用することに関する。
【0060】
本発明のサプリメントは、食品を調製する間、またはそれを包装するときに加えるか、あるいはすでに前記生成物を配合しおわった調製品を使用するときに食品に加えて、所望の補給を行うことができる。
【0061】
本発明のサプリメントは、服用可能な形、たとえばゼラチンカプセル、カプセル、注入液、ガム剤、散剤、圧縮錠剤、ゼラチンカプセル、煎薬などの形で供することもできるが、ここに挙げたものだけに限定されるものではない。
【0062】
これまで述べてきたことを総括すると、本発明は代謝疾患を予防するためのもう一つの方法を提案するものである。なぜなら、天然由来のこれらの生成物はよりよい生活の質に関係しており、他方で、これらの生成物は、しばしば伝統的な薬局方の中で一世紀以上にわたって使用されつづけており、副作用は、知り尽くされているからである。
【実施例】
【0063】
次に、本発明の詳細な実施方法を記述し、それによって本発明のその他の特徴および利点を説明する。ここにあげた実施例は、本発明を説明するためのものであって、これによって本発明の範囲が限定されるものではない。これらの実施例の中で行われる参照は以下のとおり:
−A:図1〜図9、本発明による植物抽出物のHPLCプロファイル(図1から図8まで)およびMTT試験の結果(図9)を示す。
−B:図10〜図24、6種類の植物(Olea europaea,Alchemilla vulgaris,Juglans regia,d‘Agrimonia eupatoria,Vaccinium myrtillus,Obetia radula)の抽出物のフラクションに対して得られた結果を示す。
−図10:TGR5受容体の活性に対するOlea europaeaフラクションの効果
−図11:TGR5に対して活性なOlea europaeaフラクションのHPLCプロファイル
−図12:Olea europaea抽出物、TGR5に対して活性な成分、オレアノール酸のNMRスペクトル
−図13:TGR5受容体の活性に対するAlchemilla vulgarisフラクションの効果
−図14:TGR5に対して活性なAlchemilla vulgarisフラクションのHPLCプロファイル
−図15:Alchemilla vulgaris抽出物、TGR5に対する活性成分、コロソール酸のNMRスペクトル
−図16:TGR5受容体の活性に対するJuglans regiaフラクションの効果
−図17:TGR5に対して活性なJuglans regiaフラクションのHPLCプロファイル
−図18:TGR5受容体の活性に対するAgrimonia eupatoriaフラクションの効果
−図19:TGR5に対して活性なAgrimonia eupatoriaフラクションのHPLCプロファイル
−図20:TGR5受容体の活性に対するVaccinium myrtillusフラクションの効果
−図21:TGR5に対して活性なVaccinium myrtillusフラクションのHPLCプロファイル
−図22:TGR5受容体の活性に対するObetia radulaフラクションの効果
−図23:TGR5に対して活性なObetia radulaフラクションのHPLCプロファイル
−図24:脂肪食を与えられたマウスに対するブドウ糖負荷試験(IPGTT)に対するオレアノール酸(OA)、コロソール酸(AVA)、およびTGR5に対して活性なJuglans regia(JRL)フラクションの効果
実施例A
材料および方法
植物
【0064】
抽出にかける微粉末を得るため、乾燥した植物の部分(葉、根など)を粉砕する。
抽出−精製
【0065】
極性溶媒または無極性溶媒を使用し、前記粉末を濾過または浸出または超音波照射して抽出する。溶媒として、シクロヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、酢酸エチル、ブタノール、エタノール、メタノール、水、またはこれらの異なる溶媒の混合物を使用することができる。抽出物は2ないし10%の収率で得られる。抽出物は減圧下で蒸発乾固させる。次に、液−液抽出を行うか、溶媒の極性を上げながら順次抽出してフラクションに分ける。特に、吸着クロマトグラフィ、排除クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、または分別結晶化によってフラクションに分ければ純粋な化合物を得ることができる。
クロマトグラフィ分析
【0066】
抽出物、濃縮フラクション、大まかに精製したフラクション、または純粋な化合物を逆相カラム高圧クロマトグラフィ(RP−CLHP)にかけて分析する。固定相としては、特に粒径が5ないし10のC8またはC18グラフトシリカが使用される。溶離液としては、特に、メタノールまたはアセトニトリルを加えた酸性水(pH3)が使用される。グラジエントを使用し少なくとも60分かけて98%酸性水から0%酸性水まで変化させる。
MTT試験
【0067】
この試験に使用した膵臓の形質転換INS1細胞株は、ヨーロッパ糖尿病センター(Hautepierre、フランス)から提供されたものである。細胞を96穴プレートに3・103/穴の密度で播種し、ウシ胎児血清を添加した(10%)RPMI 1640培地で培養する。その細胞を各植物抽出物(200μg/ml)で24時間処理し、つづいてMTT試験にかける:MTT(2 3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)はテトラゾリウム塩の形をしており、培地で希釈すると黄色溶液を与える。テトラゾリウム環は、培地中で、生細胞の活性なミトコンドリア脱水素酵素によってのみ切断され、紫色の不溶性ホルマザンに変換される。死細胞はこの変化を引き起こすことができない。MTT溶液(最終濃度0.5mg/ml)を細胞に添加し、4時間インキュベーションする。つづいて、生成したホルマザンの結晶を吸引しないように注意しながら、培地を吸引し、結晶をDMSO 100μlに溶解する。溶解した物質を分光光度法によって測定し、生成した色素の濃度に比例する光学密度を得る。分光光度計のバックグラウンドノイズを消去したのち、各穴の光学密度を540〜630で測定する。結果は対照試料(DMSOのみ)に対するパーセンテージで表示する。
インスリン分泌試験
【0068】
ブタ膵臓のランゲルハンス島はヨーロッパ糖尿病センター(Hautepierre,フランス)から入手する。24穴プレートにランゲルハンス島細胞を100個/穴の密度で播種し、ウシ胎児血清を添加した(10%)RPMI 1640培地で培養する。細胞を各植物の抽出物(200μg/ml)で60分間処理したのち、Elisaキット(Mercodia)により、メーカーの説明書に従ってインスリン分泌量を測定する。結果は対照試料(DMSOのみ)に対するパーセンテージで表示する。
実施例1A:代謝活性に対する選ばれた植物の効果の検討
【0069】
INS1細胞を、エタノール、メタノールまたはジクロロメタンで抽出して得られた植物抽出物200μg/mlで24時間処理した。MTT変換率を計算して抽出物の効果を対照試料に対するパーセンテージで表示した。
【0070】
得られた結果を表1に示す:エタノール抽出物(全面抽出)、メタノール抽出物(極性化合物に富む)およびジクロロメタン抽出物(無極性化合物に富む)。表の中のEtOH=エタノールフラクション;MeOH=メタノールフラクション;DCM=ジクロロメタンフラクション。
【0071】
【表1】
これらの結果を検査すると、選ばれたすべての植物が細胞の代謝活性に対して有効であることが証明される。
実施例2A:HPLCのプロファイル
【0072】
生物活性に関して抽出物のクロマトグラフパターンを得るため、活性なフラクションをRP−HPLCにかける。図1〜図8はTrema orientalis,Strychnos myrtoides,Obetia radula,Vaccinium myrtillus,Sclerocarya birrea,Agrimonia eupatoria,Alchemilla vulgarisおよびOlea europaeaのエタノールフラクションをそれぞれRP−HPLCにかけて得られたプロファイルである。
【0073】
次に、フラクションをセミ分取RP−HPLCで精製し、それから有効成分を確認、同定するためMTT試験にかけた。この試験を行うため、INS1細胞を植物抽出物100,200,400または800μg/mlで24時間処理した。Trema orientalisで得られた結果の一例を図9に示す。図の中で使用されている略号の意味は次のとおりである:TC:ブランク細胞のみ;DMSO:ブランク細胞のみ+溶媒(DMSO);A−J:セミ分取RP−HPLCにかけたのち得られたフラクション(フラクションの詳細は図1を参照)。560nmで光学密度を測定して得られた転化率を示す。
実施例3A:インスリンの分泌に対する、選ばれた植物の抽出物の効果
【0074】
2型糖尿病の治療に対しては4つの抗糖尿病治療クラスがある。それらの中で、スルホニル尿素は米国において2型糖尿病治療の灯台的な薬剤である。スルホニル尿素は膵臓のインスリン分泌を促進し、その面から高血糖を予防する。選ばれた植物は細胞の代謝に対して活性なので、その活性物質が4つの治療クラスのいずれか1つ、とりわけスルホニル尿素に属するか否かを決定するため、ブタLangherans島に対するインスリン分泌試験によって、これらの抽出物の活性を確認した。
【0075】
ブタLangherans島を植物の抽出物200μg/mlで60分間処理した。インスリンの分泌をELISA試験によって測定し、抽出物の効果は対照試料に対するパーセンテージで表示する。
【0076】
結果を次表2に示す。この表でEtOH、MeOHおよびDCMは、それぞれエタノール抽出物(全面抽出)、メタノール抽出物(極性化合物に富む)およびジクロロメタン抽出物(無極性化合物に富む)を意味する。
【0077】
【表2】
実施例B
生成物および方法
生成物
【0078】
オレアノール酸はExtrasynthese社(Genay、フランス)の製品、そしてオレウロペインおよびリトコール酸はSigma−Aldrich社(Saint−Quentin Fallavier、フランス)の製品である。
植物からの抽出
【0079】
エタノール抽出に対しては、空気中で乾燥し粉砕したオリーブ(Olea europaea L. Oleaceae、 PhytoEst、フランス)の葉10gを80%エタノール水溶液に室温で3時間浸漬して徹底的に抽出する。つづいて混合物を吸引濾過し、濾液を減圧濃縮する。
【0080】
ジクロロメタンおよびメタノールによる抽出に対しては、自動ソクスレー抽出器(2055 Aventi Soxtex、 Foss Tecator)を使用して、粉砕した植物材料(10〜20g)をシクロヘキサン(100mL)、ジクロロメタン(100mL)およびメタノール(100mL)で順次抽出する。
【0081】
このプロトコルによれば、3つのタイプ抽出物を得ることができ、各抽出物中には親油性のきわめて高い無極性および極性の植物成分が濃縮されている。
【0082】
溶媒を減圧下に蒸発させて除去し、残留物はそれぞれ重さを秤ったのち、使用するまで冷凍庫に保存する。
HPLCによる分析
【0083】
各抽出物の分析プロファイルを得るため、残留物(5mg/mL)のメタノール溶液をHPLC分析(Varian Pro Star)にかけ、検出にはDAD検出器(Varian)を、そしてカラムには逆相カラム(Nucleodur 100−10−C18,250/4,6,Macherey−Nagel)を使用する。
【0084】
溶離には、アセトニトリルと、酸性にした水(0.1%トリフルオロ酢酸)との混合物を使用する。
【0085】
分析条件:流量は1mL/分とし、グラジエント条件は次のとおり:H2O/CH3CN(20:80)で30分間、CH3CN(100%)で5分間、そしてH2O/CH3CN(20:80)で5分間。LC/MS(Agilent 1200SL)による分析では、検出波長を254nmとし、200〜500nmの波長範囲でPDAを記録する。分析は、エレクトロスプレイによるイオン化(ESI)のインターフェイスにAPCI(Application Layer Protocol Control Information(応用層プロトコル制御情報))を連結して、ネガティブモードで行う。
NMR分析
【0086】
1Hの分析には300MHzのDPX300型NMR分析装置を使用する。化学シフトはδ値(ppm)で表示し、ピリジン−d5C5D5Nの溶媒ピーク7.58を基準にする。
ルシフェラーゼ試験によるTGR5活性の定量
【0087】
チャイニーズハムスターの卵巣細胞(CHO)はATCC(Manassas, Virginie)から入手し、ウシ胎児血清(SVF)10%(v/v)、非必須アミノ酸100μM(AANE)、ペニシリン100単位/mLおよびストレプトマイシン硫酸塩100μg/mLを添加したα最少必須培養液(α−MEM)に保存する。
【0088】
TGR5の活性を定量するため、Lipofectamine 2000を使用し、TGR5発現ベクタープラスミド(pCMVSPORT6/TGR5)3.8μg、発現がcAMP Response Element(CRE,pCRE−Luc)によって制御されるルシフェラーゼレポータープラスミド3.8μg、およびネオマイシン抵抗性遺伝子発現プラスミド(pcDNA3.1(+))0.4μgで、CHO細胞をトランスフェクトして得られる安定細胞株を使用する。トランスフェクトされた細胞はG418硫酸塩400μg/mLで選び出し、96穴プレートで各クローンをそれぞれ独立に培養する。TGR5を発現するCHO細胞をリトコール酸(LCA)または植物抽出物10μMで処理し、それからルシフェラーゼの定量にかける[Picardら]。ルミネセンスは、Centro XS3 LB960(Berthold Technologies、 Bad Wildbad、ドイツ)で測定する。
ルシフェラーゼによるFXRの定量
【0089】
植物抽出物のFXR活性を評価するには、Lipofectamine 2000を使用し、各穴にhFXR発現ベクタープラスミド(pCMX−hFXR)25ng、マウス(m)のαレキシノイド受容体(RXRα)発現ベクタープラスミド(pCMX−mRXRα)25ng、ルシフェラーゼレポーター(pEcREx7−Luc)、および内部標準として使用するpCMVβ50ngを加え、COS1細胞(ATCC)にトランスフェクトする。
【0090】
トランスフェクションから約18時間が経過したら、細胞と、濃度が異なる各抽出物とを新しいMEM(またはDMEM)で5時間インキュベートする。この処理が終わったら細胞を溶解し、前記Picardらの方法に従って、規格化ルシフェラーゼ活性を決定する。
動物および給餌方法
【0091】
Charles Riverから入手した6週齢のオスのC57BL/6ラットを使用する。
【0092】
糖質に富むバランスのとれた普通食(SAFE,D04)および脂質に富む食餌(60%Kcal Fat, D12492)は、Research Diets社(New Brunswick,ニュージャージ)から入手する。
【0093】
マウスは、4ないし5頭ずつをケージに入れ、安定した温度で、昼と夜をそれぞれ12時間とするサイクルで、食餌と水が自由に摂取できる状態に置かれる。マウスは、バランスの取れた普通食(n=5)の食餌条件か、脂質に富む食餌条件(n=32)で10週間飼育される。脂質に富む食餌条件で10週間飼育されるマウスは8頭ずつ4つのグループに分けられ、一つのグループは脂質だけに富む食餌条件で飼育され、別の一つのグループには、オレアノール酸が100mg/kg/日の割合で添加された同じ食餌が与えられ(全試験期間にわたって食餌の吸収量を測定し、安定した量が維持されるように化合物の量を調節する)、さらに別の一つのグループには、コロソール酸が100mg/kg/日の割合で添加された同じ食餌が与えられ、最後に残ったグループにはJuglans regiaの活性フラクションが100mg/kg/日の割合で添加された同じ食餌が与えられる。体重および食餌の吸収量を2日につき1日決定する。この実験は倫理規定に従って行われる。
ブドウ糖負荷試験
【0094】
この試験は10時間絶食状態に置いたマウスに対して行われる。血糖は携帯型グルコメーターで監視する(Maxi Kit Glucometer4、Bayer Diagnostic)。この試験は、ブドウ糖を2g/(kg体重)含む滅菌液を腹腔内に注射することにより行う。0、15、30、45、60、90、120、150および180分の時点で尾部静脈から血液を採取し、血糖値を評価する。
実施例1B: Olea europaea由来TGR5アゴニストの同定
・Olea europaeaの葉からの抽出
エタノールによる全面抽出物、DCM(ジクロロメタン)抽出物およびMeOH(メタノール)抽出物
【0095】
CHO−TGR5細胞のルシフェラーゼ試験において、TGR5の活性化がLCA(正のブランクとして使用)で観察されるのと類似する完全抽出物を最初に選択した。
【0096】
疎水性分子に富む抽出物(DCMによる抽出)または親水性分子に富む抽出物(MeOH)の試験を行いながら、有効成分の分離を探索する。Olea europaeaの場合、活性の大部分がDCM抽出物中に存在する。
疎水性抽出物の分画
【0097】
抽出物の疎水性フラクションの分画は、分取逆相HPLCまたは薄層クロマトグラフィを使って追跡される。1から10までの番号を付けた10個のフラクションを分取し、1.5,5,15および50μg/mLの各量に対して、CHO−TGR5におけるルシフェラーゼ活性を、LCAおよびオレウロペインのルシフェラーゼ活性を比較対照として測定する。
【0098】
図10が示すように、活性が見られるのはフラクション6〜9のみである。オレウロペインの場合、1.5から50μg/mLまでの範囲で、TGR5に対してアゴニストとしての効果が全く見られない。これらのデータは、Olea europaeaのDCM抽出物に含まれる活性分子が、オレウロペインとは異なっていることを示している。
・フラクション7の活性分子
【0099】
驚くべきことに、活性なフラクション7は高い純度を示す。UVによる検出では保持時間が21.9分の主要ピークしか現れない(図11)。フラクション7のLC/MS分析から、455.3g/molにこの分子の分子量を確認することができる。この分析はネガティブモードで行われ、そのことはこの分子が水素プロトンを欠いていることを意味する。したがって、456ないし457g/mol付近に検出される主要ピークから真の分子量が推定される。フラクション7の同定はNMRで分析することによって最終的な決着を見る(図12)。得られたスペクトルはトリテルペノイド型分子の特徴を示す。HPLC、LC/MSおよびNMR分析データと、オリーブの葉のすでに記載されているトリテルペンに関して使用できるデータとを組み合わせると、フラクション7の分子はオレアノール酸と結論される。この同定は、HPLC分析で市販の比較試料(Extrasynthese、Genay、フランス)と一緒に注入することによっても確認されるし、得られたNMRスペクトルと、すでに報告されているオレアノール酸のNMRスペクトル[Seebacherら]とを比較することによっても確認される。ヒトTGR5ルシフェラーゼ活性試験で得られたCE50値、1.42μMは、TGR5の天然リガンドであるLCAに対して得られたCE50値、0.89μMと比較可能な値である。
・TGR5に対するオレアノール酸の選択性の研究
【0100】
次に、オレアノール酸の生物活性を説明する中で胆汁酸核内受容体の可能性を完全に排除するため、FXR依存性レポーター遺伝子(ルシフェラーゼ)を定量し、オレアノール酸がFXRを活性化するか否かを決定する。得られた結果は、オレアノール酸がFXRを活性化しないことを裏づけており、このトリテルペンがTGR5の選択的アゴニストであって、TGR5とFXRとを同時に活性化する胆汁酸とは全く異なっていることを示している。
実施例2B:Alchemilla vulgarisから得られるTGR5アゴニストの同定
【0101】
Olea europaeaの場合と同様に操作し、抽出物およびフラクションを調製する。
【0102】
DCM抽出物のフラクションに対して得られた結果を図13に示す。
【0103】
TGR5試験でフラクション9がきわめて強い反応を示すことが確認される。
【0104】
このフラクションのHPLCプロファイルを図14に示す。
【0105】
図15はフラクション9に含まれる活性分子、コロソール酸のNMRスペクトルである。
実施例3B:Juglans regiaから得られるTGR5アゴニストの同定
【0106】
Olea europaeaに関する実施例1の記載と同様に操作する。
【0107】
DCM抽出物のフラクションに対して得られた結果を図16に示す。この図から、フラクション7,8および9が強い活性を示すことがわかる。これらのフラクションを一つに合わせたもののHPLCプロファイルを図17に示す。
実施例4B:Agrimonia eupatoriaから得られるTGR5アゴニストの同定
【0108】
Olea europaeaに関する実施例1の記載と同様に操作する。
【0109】
DCM抽出物の8個のフラクションに対して得られた結果を図18に示す。この図から、フラクション4が強い活性を示すことがわかる。これらのフラクションのHPLCプロファイルを図19に示す。
実施例5B:Vaccinium mvrtillusから得られるTGR5アゴニストの同定
【0110】
実施例1の記載と同様に操作する。
【0111】
DCM抽出物の9個のフラクションについて得られた結果を図20に示す。この図からフラクション3、5、6、7、および8が、LCAのそれより高い活性を示し、その中でもフラクション6が特に高い活性を示す。
【0112】
このフラクションのHPLCプロファイルを図21に示す。
実施例6B:Obetia radulaから得られるTGR5アゴニストの同定
【0113】
実施例1の記載と同様に操作する。
【0114】
DCM抽出物の8個のフラクションについて得られた結果を図22に示す。この図からフラクション3、4および6がLCAより高い活性を示し、その中でもフラクション6が特に高い活性を示す。
【0115】
このフラクションのHPLCプロファイルを図23に示す。
実施例7B:脂肪食ラットの耐糖能に対する植物抽出物活性フラクションの効果
【0116】
メタボリックシンドロームのマウスモデル、すなわち脂肪食を与えられたマウスを用いて、本発明による植物抽出物活性フラクションの効果を評価した。植物抽出物による治療を始める前の10週間にわたって、バランスのとれた普通食か、脂肪に富む食餌をC57BL/6マウスに与える。この期間中に脂肪食を与えられたマウスは、エネルギー供給の類似の増加に伴って、50%の体重増加を示す。
【0117】
Olea(OA)、Alchemilla(AVA)およびJuglans(JRL)のフラクションによる治療の期間が終わる時点(14日)で、下表3に示す臨床パラメーターが得られる。
【0118】
【表3】
体重増加を抑制する傾向が認められると同時に、副睾丸の皮下脂肪の質量減少も観察され、活性フラクションがエネルギー代謝に影響を及ぼすことが示唆される。
【0119】
これらの実験では、治療開始前の10週間の間、脂肪に富む食餌が続けられることを測ることになる。したがって、この実験は体重の過大な増加およびインスリン抵抗性を防止するというより、むしろ矯正する能力を対象とする。
【0120】
図24の結果は、これらのフラクションが、脂肪食を与えられたマウスの代謝ホメオスタシスを改善する能力を持つことを示す。特に、脂肪に富む食餌モデルに誘発され、前糖尿病効果を引き起こすインスリン抵抗性が矯正される:実際に、本発明の活性フラクションで14日間治療したあとで、腹腔内を通して高血糖症を引き起こす実験(IPGTT)を行う。IPGTTの前の平均血糖値は、普通食群、脂肪に富む食餌群、脂肪+オレアノール酸に富む食餌群、脂質+コロソール酸に富む食餌群、および脂質およびJRLに富む食餌群で、それぞれ103±7、154±5、144±18、141±2、および159±3mg/dLである。IPGTT曲線は、脂肪に富む食餌を摂取すると、耐糖能の低下とインスリン抵抗性とが誘発されることをはっきりと示している(図24)。マウスを植物の活性フラクションで治療すると、この耐糖能は部分的に矯正される。
【0121】
このように、本発明は特異性の高い強力なTGR5アゴニストを提供し、そして、得られた結果は、それらの分子が、純粋なフラクションおよび/または富むフラクションであることに応じて、強い活性を示すことを証明している。
【0122】
[参照文献]
KF Petersen, S Dufour, D Befroy, R Garcia, and GI Shulman. N Engl J Med, 350: 664−671 (2004)
KF Petersen, D Befroy, S Dufour, J Dziura, C Ariyan, DL Rothman, L DiPietro, GW Cline and GI Shulman. Science, 300 : 1140−1142 (2003).
T Mosmann, J Immunol Methods, 65(l−2):55−63 (1983).
F. Picard, M. Gehin, M.C. Annicotte, S. Rocchi, M.F. Champy, B.W. O≡Malley, P. Chambon, et J. Auwerx. SRC−1 and TIF2 control energy balance between white and brown adipose tissues. Cell 111 (2002) 931−941.
W. Seebacher, N. Simic, R. Weiss, R. Sat, et O. Kunert. Magn. Reson. Chem. 41 (2003) 636−638.
【技術分野】
【0001】
本発明は植物から得ることが可能な新規生物活性組成物に関する。さらに、所与の活性の視点から選択された植物から抽出してこれらの組成物を得る方法にも関する。さらに、代謝および/またはエネルギー収支の乱れ、いわゆる代謝疾患が原因で発症するヒトまたは動物の病気、とりわけ2型糖尿病を治療するために、これらの組成物を生物学的に応用することにも関する。
【背景技術】
【0002】
ここ30年の間に、先進国では運動不足と栄養の過剰摂取とによって、肥満の発生率が爆発的に高まっている。肥満は、別の代謝症候群または疾患、たとえばX症候群、インスリン耐性、および2型糖尿病などを発症するリスクを高める。世界の糖尿病患者数は約2億人にまで達し、その約90%が2型糖尿病を患っている。この数字は今後25年の間に倍増して、世界の人口の5%を超えるものと推定されている。
【0003】
糖尿病患者は脳および心臓の血管に合併症を発症するリスクが2倍ないし4倍高い。糖尿病患者は、大きな血管に関するこれらの問題に加えて、さらに微小血管が関係するいくつかの合併症、すなわち網膜疾患、神経疾患、および腎疾患を発症する。病気が10年経過すると糖尿病患者の3分の1は、これらの合併症に冒されるが、運動および、特に、栄養の補給を含む適切な食餌療法と、薬物療法とを取り入れることにより、大幅に軽減することができる。
【0004】
代謝疾患の治療に使用できる薬物としては、さまざまな種類のものが存在するが、代謝を構成する過程のいずれか一つに作用する点では共通している。しかしそうであっても、代謝疾患の症候が多様であるということは、とりもなおさず複数の薬物治療が行われることを意味し、そのことは、健常な身体にとって高いコストを払わなければならないばかりでなく、薬物間相互作用による副作用のリスクも高める。治療手段が多数存在しているにもかかわらず、代謝疾患に対する医学的な必要性がきわめて高い理由は、この点にある。
【0005】
代謝疾患に罹っている患者は、30年間、いや40年間にわたってその疾患が進行するのを見ることになる。その間、患者は病状を実感することなく、代謝疾患に罹っている大半の患者は、しばしば副作用の原因であるいくつかの薬剤を組み合わせた治療に頼らざるを得ないほど悪化している。
【0006】
加えて、糖尿病の治療に現在使用されている製品は、真に満足できるようなものではなく、依然と解消されないさまざまな副作用が、その使用を制限している。現在開発が進められている新規薬剤や上市を目前にひかえた製品にもやはり副作用が認められており、さらに満足できる効果的な製品の開発が急がれている。
【0007】
このような理由で、当研究者は、 特に、合成化合物とは対照的に、自然産物と考えられる植物由来の生成物を基礎にした別の解決方法に特別な関心を持ちながら、この領域の研究をつづけている。その結果、植物を基礎にした薬剤および/または植物由来の薬剤を発見すると同時に、植物を基礎にしたサプリメントの確認にも成功した。事実、特定の植物を基礎にしたサプリメントをとりいれた適切な食餌療法を組み合わせることで、代謝疾患、特に肥満および糖尿病の進行を防止できることを明らかにした。
【0008】
世界的なレベルで見ると、約1200種類の植物が代謝疾患、特に2型糖尿病に対して有効であるとされている。しかしほとんどの場合、無毒であるという確証はなされていないし、これらの植物が含有する有効成分も同定されていない、そしてその植物がどのような治療クラスに属しているかを決定し、仮に新しい治療クラスに属するとした場合、それがどのようなクラスかを明らかにするための薬理学的研究も行われていないし、これらの有効成分を技術的経済的に最適な条件で得ることができる抽出方法についても全く記載されていない。
【0009】
このように、これらの植物の効果について詳細な科学的知識が不足していることが、治療への応用を妨げる原因になっている。さらに、ヨーロッパ指令2002/46/CEのフランス版として、サプリメントに関する新しい法令2006−352が発効して以来、最近この分野を取り締まる法の枠が強化されたため、これらの化学的情報がないと、薬効のある食品(nutraceutique)として使用することさえむずかしくなっている。
【0010】
発明者は、正確な化学的データを入手することと、元の活性物質を開発することとを考慮して、植物由来の組成物の、代謝活性に対する効果をミトコンドリアレベルで評価する方法を開発した。最近の研究によって、特にミトコンドリアレベルにおける代謝活性自体の低下が、代謝疾患の進行、特に2型糖尿病の発症過程の中で、早期に観察される主要な乱れの一つであることが明らかにされている[Petersenら]。
【0011】
第一のアプローチに従い、発明者は、合成由来または天然由来の所与の生成物が示す細胞毒性を評価するために広く用いられているMTT試験(2,3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)(Mosmann)が、植物から活性組成物を選択するのに非常に有益な手段となりうることを確認した。
【0012】
この試験は、ミトコンドリア中に含まれている脱水素酵素が、溶液状態で黄色の分子であるMTTを、溶液状態で青色を示すフォルマザンの結晶に変換する能力を有することに基づいている。この試験は、所与の生成物で処理したあとにミトコンドリア中に含まれる脱水素酵素の活性を測定することを可能にし、それゆえ、ミトコンドリアによって作られるATPの量、すなわち細胞ミトコンドリアレベルで代謝活性を表すATPの定量を可能にする。
【0013】
さらに、本発明者は、選ばれた植物の抽出物、フラクションおよび化合物の細胞毒性を測定することだけにとどまらず、独創的な方法でこれらの抽出物、フラクション、および化合物が代謝活性を増進する能力を測定するために、MTT試験を使って、代謝活性に影響を及ぼす力に対して最初の化合物をスクリーニングする方法をも開発した。
【0014】
さらに、本発明者の探求は、ミトコンドリアの機能に影響を及ぼす生物学的標的TGR5を特異的に認識する植物由来の生成物の研究に向けられた。受容体TGR5はGタンパク質共役受容体(以下RCPGと略す)のファミリーに属する。胆汁酸によって活性化される最初の膜受容体が対象となる。TGR5は胆汁酸の特定の内分泌機能を媒介するメディエーターであると記載されている。
【0015】
本発明者は、TGR5発現ベクターおよびレポータープラスミド(たとえばルシフェラーゼに対してコードする遺伝子として)で確実にトランスフェクションしたCHO細胞株を使用し、そのCHO細胞を、植物から得ることができる抽出物および/またはフラクションで処理するか、またはこれらの抽出物またはフラクションから得ることができる分子で処理すると、対照試料に比べて、TGR5の活性が高まることを認めた。「発明の詳細な説明」および「特許請求項」では、これらの抽出物、フラクションおよび分子は、包括的に、「組成物」または「生成物」という用語で示される。
【0016】
本発明に従い、生物学的標的としてTGR5を使用すれば、代謝に対する効果のレベルで特異性の高い生成物を入手することが可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明は、食餌療法を併用しながら、代謝疾患を予防し治療するために有用な新規組成物を得るための、信頼性が高く、かつ実施が容易な方法を提供することに関する。
【0018】
さらに、本発明は、このような組成物を新規生成物として提供することに加え、代謝疾患の治療および予防を目的とした、植物由来の薬剤もしくはサプリメント、または植物性活性物質を製造するために組成物の性質を活用することにも関する。
【0019】
本発明は、特にTGR5のアゴニスト生成物を提供することに関し、そしてヒトおよび動物に対して、特に治療薬、食品、薬効のある食品の分野に、そして広く、代謝障害が関係する疾患、トラブルおおび症候群を予防し治療するために、これらの生成物を応用することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
第一の実施態様によれば、本発明は、
a)所与の活性に関して選択した植物またはそれらの植物の部分を一つ以上の溶媒で別々に処理して、完全抽出物または有効成分に富むフラクション、より具体的には無極性フラクションおよび極性フラクション、を得る工程と、
b)MTT試験に対して代謝活性を示し、そしてその活性の、少なくとも一つの特異的試験に対して生物活性を示す抽出物またはフラクションを選択する工程とを含む、
ことを特徴とする、一つ以上の植物から、抽出によって生物活性な組成物を得る方法に関する。
【0021】
この方法は、前記工程a)およびb)以外に、工程a)および/または工程b)のあとに実施される工程c)を含み、かつその工程c)が、前記抽出物または選択した前記フラクションを分析して、それらが含有する成分を決定し、そしてもし望めば、生物活性の本質を担う一つまたは複数の有効成分を分離、精製することを含むことが有利である。この分析は、さらに具体的には、HPLCのプロファイルによって行われる。
【0022】
活性化合物の同定および分離に対するこの措置は、医薬品開発および薬効のある食品開発の視点から見ると、この種の化合物を合成によって得ることに見通しを与えるものである。
【0023】
工程a)において、植物または植物の部分は、粉砕乾燥したものを微粉末の形で使用するのが好ましい。
【0024】
特に対象となるのは、葉、皮、根、気生部分、果実、種子などである。
【0025】
工程a)には、一般に、一回以上の抽出が含まれ、それらの抽出は、超臨界CO2または有機溶媒、特にアルコール系溶媒(とりわけエタノールまたはメタノール)、シクロヘキサン、または別の無極性溶媒(石油エーテル、ヘプタン)、ジクロロメタン、またはクロロホルムによって行われるが、特定のフラクションを分離するには、これらの複数の溶媒、またはこれらのすべての溶媒を順次使用することができる。
【0026】
工程b)に従い、生物学的効果は認められているが、それらの特性を決定する手段がないため有効に利用することができない植物に対してMTT試験を適用し、これを使用すれば、本発明以前には全く同定されていなかった抽出物およびフラクションを明らかにすることが可能となることは、注目に値しよう。
【0027】
前記方法によって得られる組成物および生成物、抽出物、フラクション、化合物、および分子は新規であり、その意味で、本発明の範囲内に入る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明による植物抽出物のHPLCプロファイルを示す説明図である。
【図2】図2は、本発明による植物抽出物のHPLCプロファイルを示す説明図である。
【図3】図3は、本発明による植物抽出物のHPLCプロファイルを示す説明図である。
【図4】図4は、本発明による植物抽出物のHPLCプロファイルを示す説明図である。
【図5】図5は、本発明による植物抽出物のHPLCプロファイルを示す説明図である。
【図6】図6は、本発明による植物抽出物のHPLCプロファイルを示す説明図である。
【図7】図7は、本発明による植物抽出物のHPLCプロファイルを示す説明図である。
【図8】図8は、本発明による植物抽出物のHPLCプロファイルを示す説明図である。
【図9】図9は、本発明による植物抽出物のMTT試験の結果を示す説明図である。
【図10】図10は、TGR5受容体の活性に対するOlea europaeaフラクションの効果を示す説明図である。
【図11】図11は、TGR5に対して活性なOlea europaeaフラクションのHPLCプロファイルを示す説明図である。
【図12】図12は、Olea europaea抽出物、TGR5に対して活性な成分、オレアノール酸のNMRスペクトルを示す説明図である。
【図13】図13は、TGR5受容体の活性に対するAlchemilla vulgarisフラクションの効果を示す説明図である。
【図14】図14は、TGR5に対して活性なAlchemilla vulgarisフラクションのHPLCプロファイルを示す説明図である。
【図15】図15は、Alchemilla vulgaris抽出物、TGR5に対する活性成分、コロソール酸のNMRスペクトルを示す説明図である。
【図16】図16は、TGR5受容体の活性に対するJuglans regiaフラクションの効果を示す説明図である。
【図17】図17は、TGR5に対して活性なJuglans regiaフラクションのHPLCプロファイルを示す説明図である。
【図18】図18は、TGR5受容体の活性に対するAgrimonia eupatoriaフラクションの効果を示す説明図である。
【図19】図19は、TGR5に対して活性なAgrimonia eupatoriaフラクションのHPLCプロファイルを示す説明図である。
【図20】図20は、TGR5受容体の活性に対するVaccinium myrtillusフラクションの効果を示す説明図である。
【図21】図21は、TGR5に対して活性なVaccinium myrtillusフラクションのHPLCプロファイルを示す説明図である。
【図22】図22は、TGR5受容体の活性に対するObetia radulaフラクションの効果を示す説明図である。
【図23】図23は、TGR5に対して活性なObetia radulaフラクションのHPLCプロファイルを示す説明図である。
【図24】図24は、脂肪食を与えられたマウスに対するブドウ糖負荷試験(IPGTT)に対するオレアノール酸(OA)、コロソール酸(AVA)、およびTGR5に対して活性なJuglans regia(JRL)フラクションの効果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、抗糖尿活性を有し、特に2型糖尿病の予防と治療に有用な組成物の取得に、本発明を適用することにより、本発明を詳細に説明する。
【0030】
この目的の中では、前記工程b)に従って行われる生物学的試験は、抗糖尿活性、具体的にはインスリンの分泌を決定する方法である。
【0031】
上で述べた点から好ましい組成物および生成物は、次にあげる属および種:Strychnos myrtoides,Obetia radula,Trema orientalis,Sclerocarya birrea,Voacanga thouarsii Moringa oleifera(=Moringa moringa,Moringa pterygosperma,Guilandina moringa), Agrimonia eupatoria,Arctium majus=Lappa major,Alchemilla vulgaris,Phaseolus vulgaris,Vaccinium myrtillus,Cichorium intybus,Cynara scolymus,Geranium robertianum,Juglans regia,Kalanchoe crenata,Leptodenia madagascariensis,Morus nigra,Olea europaea,Rubus fructicosus,Spathodea campanulataの中から選択される植物から得ることが可能である。
【0032】
有利な組成物および生成物は、次にあげる属:Strychnos,betia,Trema,Sclerocarya,Voacanga,Moringa,Agrimonia,Arctium,Alchemilla,Phaseolus,Vaccinium,Cichorium,Cynara,Geranium,Juglans,Kalanchoe,Leptodenia,Morus,Olea,Rubus,Spathodeaの中から選択される植物から得ることが可能であることを特徴とするものである。
【0033】
特に好ましい組成物および生成物は、次にあげる科:Loganiaceae,Urticaceae,Ulmaceae,Anacardiaceae,Apocynaceae,Moringaceae,Rosaceae,Asteraceae,Fabaceae,Ericaceae,Geraniacaea,Juglandacaea,Crassulaceae,Oleaceae,Bignoniaceaの中から選択される植物から得ることが可能である。
【0034】
特に好ましい別の組成物は:Trema orientalis Ulmaceae,Strychnos myrtoides Loganiaceae,Obetia radula Urticaceae,Vaccinium myrtillus Ericaceae,Sclerocarya birrea Anacardiaceae,Agrimonia eupatoria Rosaceae,Alchemilla vulgaris Rosaceae,およびOlea europaea Oleaceaeのフラクション(それらのHPLCプロファイルは図1〜図8にそれぞれ示す)、およびこれらのフラクションに由来する生物活性化合物である。
【0035】
別の実施態様によれば、本発明は、これらの植物から得ることが可能な生成物、たとえば抽出物、フラクション、および/または分子を、特にTGR5の特異的アゴニストとして使用することに関する。
【0036】
前記生成物の作用機構の解明が、具体的な応用の開発を可能にしてくれることを考えると、それを基礎にした本発明のこの態様が、いかに独創的であるかが推し量ることができる。
【0037】
本発明に従う使用において機能を発揮する生成物は、TGR5のアゴニストであることが知られている胆汁酸とは異なる化学構造をしていること、CE50が、TGR5の天然リガンドである、たとえばリトコール酸(LCA)のそれより大きいか等しいこと、および核内受容体であるFXRを活性化しないこと、を特徴とする生物活性生成物である。加えて、これらの生成物は、メタボリックシンドロームのマウスモデルに対して、脂肪性食物によって引き起こされる体重増加の緩和をもたらし、さらに、同マウスモデルに対して、副睾丸皮下脂肪の質量減少ももたらす。また、これらの生成物は耐糖能の改善をももたらす。
【0038】
この特異的な効果によって、肥満、メタボリックシンドローム(またはX症候群)または2型糖尿病などの病気を予防し、あるいはこれらの病気に罹った患者を治療するのに特に好適であることが明らかになる。
【0039】
本発明によりTGR5アゴニストとして使用される生成物は、さらに特に、Olea europaea,Alchemilla vulgaris,Juglans regia,Agrimonia eupatoria,Vaccinium myrtillus,およびObetia radulaを含む群から選択される植物から得ることが可能である。
【0040】
TGR5を活性化する効果を考慮して特に好ましい分子には5環系トリテルペンが含まれる。
【0041】
その中でもオレアナン型5環系トリテルペン、たとえばオレアノール酸、ウルサン型5環系トリテルペン、たとえばコロソール酸、またはルパン型5環系トリテルペンがさらに重要である。
【0042】
今のところ、オリーブの葉が示す抗高血圧および低血糖特性が、唯一オレウロペインによるものとされていることを考えれば、オレアノール酸の抗高血糖、抗高インスリン血効果と、肥満に対する効果とが明らかにされたことは、特に驚くべきことである。
【0043】
本発明による前記TGR5アゴニストは、毒性がきわめて低く、有害な副作用を起こさないため有利である。
【0044】
従って、本発明は、広く、前記組成物および生成物、すなわち本発明の抽出物、フラクション、および化合物を有効利用することに関する。
【0045】
かくして、第一の実施態様によれば、本発明は、有効量の、少なくとも一つの組成物または生成物と、医薬的に許容される賦形剤とを含むことを特徴とする、新規医薬組成物に関する。
【0046】
本発明は、代謝が関係するトラブル/代謝症候群、その中でも特に肥満および/または関連する疾患、たとえばX症候群(メタボリックシンドローム)、2型糖尿病の予防および/または治療を目的とした薬剤の製造に、生物活性な前記組成物および生成物を使用することにも関する。
【0047】
一つの実施態様において、本発明は、ウルサン型5環系トリテルペン、オレアナン型5環系トリテルペン、またはルパン型5環系トリテルペンを使用することに関する。
【0048】
別の一つの実施態様において、本発明は、特に、2型糖尿病、肥満および/またはメタボリックシンドロームの予防および/または治療に、前記抽出物またはフラクション、またはコロソール酸を使用することに関する。
【0049】
さらに別の一つの実施態様において、本発明は、肥満または糖尿病、特に2型糖尿病、および/またはメタボリックシンドロームの予防および/または治療に、前記抽出物またはフラクション、またはオレアノール酸を使用することに関する。
【0050】
本発明の薬剤は、経口、局所、または注射による投与に対して、ガレノス製剤の形で供するのが有利である。
【0051】
経口投与の場合、医薬組成物は、特に圧縮錠剤、錠剤、ゼラチンカプセル剤、顆粒剤、滴剤、シロップ剤、アルコール性シロップ剤の形で供される。
【0052】
局所投与の場合、医薬組成物は、クリーム、乳剤、ローション、油剤またはパッチの形で供するのが有利である。
【0053】
好適なガレノス配合剤にはエアロゾルが含まれる。
【0054】
注射投与の場合、医薬組成物は、静脈、皮下または筋肉内注射が可能なアンプル入り注射液として供され、滅菌液または滅菌が可能な液、あるいはさらに懸濁液または乳剤から調製される。
【0055】
剤形が異なる場合および毎日使用する場合の用量は、古典的な方法により、治療すべき効果のタイプによって定められる。
【0056】
一例をあげれば、前記アゴニストをベースとする前記薬剤の場合は、0.1mgないし5g/日の割合で投与される。
【0057】
抗高血糖、抗高インスリン血効果および体重増加に対する前記生成物の効果は、ダイエットの形で生かすのが有利である。
【0058】
かくして、第二の実施態様によれば、本発明は、薬効のある食品に適用するために、たとえば有効量の、少なくとも一つの前記組成物または生成物と、賦形剤とを含むことを特徴とする、サプリメントに関する。
【0059】
かくして、本発明は、特にヒト(成人または小児)または動物用サプリメントとして前記TGR5のアゴニストを使用することに関する。
【0060】
本発明のサプリメントは、食品を調製する間、またはそれを包装するときに加えるか、あるいはすでに前記生成物を配合しおわった調製品を使用するときに食品に加えて、所望の補給を行うことができる。
【0061】
本発明のサプリメントは、服用可能な形、たとえばゼラチンカプセル、カプセル、注入液、ガム剤、散剤、圧縮錠剤、ゼラチンカプセル、煎薬などの形で供することもできるが、ここに挙げたものだけに限定されるものではない。
【0062】
これまで述べてきたことを総括すると、本発明は代謝疾患を予防するためのもう一つの方法を提案するものである。なぜなら、天然由来のこれらの生成物はよりよい生活の質に関係しており、他方で、これらの生成物は、しばしば伝統的な薬局方の中で一世紀以上にわたって使用されつづけており、副作用は、知り尽くされているからである。
【実施例】
【0063】
次に、本発明の詳細な実施方法を記述し、それによって本発明のその他の特徴および利点を説明する。ここにあげた実施例は、本発明を説明するためのものであって、これによって本発明の範囲が限定されるものではない。これらの実施例の中で行われる参照は以下のとおり:
−A:図1〜図9、本発明による植物抽出物のHPLCプロファイル(図1から図8まで)およびMTT試験の結果(図9)を示す。
−B:図10〜図24、6種類の植物(Olea europaea,Alchemilla vulgaris,Juglans regia,d‘Agrimonia eupatoria,Vaccinium myrtillus,Obetia radula)の抽出物のフラクションに対して得られた結果を示す。
−図10:TGR5受容体の活性に対するOlea europaeaフラクションの効果
−図11:TGR5に対して活性なOlea europaeaフラクションのHPLCプロファイル
−図12:Olea europaea抽出物、TGR5に対して活性な成分、オレアノール酸のNMRスペクトル
−図13:TGR5受容体の活性に対するAlchemilla vulgarisフラクションの効果
−図14:TGR5に対して活性なAlchemilla vulgarisフラクションのHPLCプロファイル
−図15:Alchemilla vulgaris抽出物、TGR5に対する活性成分、コロソール酸のNMRスペクトル
−図16:TGR5受容体の活性に対するJuglans regiaフラクションの効果
−図17:TGR5に対して活性なJuglans regiaフラクションのHPLCプロファイル
−図18:TGR5受容体の活性に対するAgrimonia eupatoriaフラクションの効果
−図19:TGR5に対して活性なAgrimonia eupatoriaフラクションのHPLCプロファイル
−図20:TGR5受容体の活性に対するVaccinium myrtillusフラクションの効果
−図21:TGR5に対して活性なVaccinium myrtillusフラクションのHPLCプロファイル
−図22:TGR5受容体の活性に対するObetia radulaフラクションの効果
−図23:TGR5に対して活性なObetia radulaフラクションのHPLCプロファイル
−図24:脂肪食を与えられたマウスに対するブドウ糖負荷試験(IPGTT)に対するオレアノール酸(OA)、コロソール酸(AVA)、およびTGR5に対して活性なJuglans regia(JRL)フラクションの効果
実施例A
材料および方法
植物
【0064】
抽出にかける微粉末を得るため、乾燥した植物の部分(葉、根など)を粉砕する。
抽出−精製
【0065】
極性溶媒または無極性溶媒を使用し、前記粉末を濾過または浸出または超音波照射して抽出する。溶媒として、シクロヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、酢酸エチル、ブタノール、エタノール、メタノール、水、またはこれらの異なる溶媒の混合物を使用することができる。抽出物は2ないし10%の収率で得られる。抽出物は減圧下で蒸発乾固させる。次に、液−液抽出を行うか、溶媒の極性を上げながら順次抽出してフラクションに分ける。特に、吸着クロマトグラフィ、排除クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、または分別結晶化によってフラクションに分ければ純粋な化合物を得ることができる。
クロマトグラフィ分析
【0066】
抽出物、濃縮フラクション、大まかに精製したフラクション、または純粋な化合物を逆相カラム高圧クロマトグラフィ(RP−CLHP)にかけて分析する。固定相としては、特に粒径が5ないし10のC8またはC18グラフトシリカが使用される。溶離液としては、特に、メタノールまたはアセトニトリルを加えた酸性水(pH3)が使用される。グラジエントを使用し少なくとも60分かけて98%酸性水から0%酸性水まで変化させる。
MTT試験
【0067】
この試験に使用した膵臓の形質転換INS1細胞株は、ヨーロッパ糖尿病センター(Hautepierre、フランス)から提供されたものである。細胞を96穴プレートに3・103/穴の密度で播種し、ウシ胎児血清を添加した(10%)RPMI 1640培地で培養する。その細胞を各植物抽出物(200μg/ml)で24時間処理し、つづいてMTT試験にかける:MTT(2 3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)はテトラゾリウム塩の形をしており、培地で希釈すると黄色溶液を与える。テトラゾリウム環は、培地中で、生細胞の活性なミトコンドリア脱水素酵素によってのみ切断され、紫色の不溶性ホルマザンに変換される。死細胞はこの変化を引き起こすことができない。MTT溶液(最終濃度0.5mg/ml)を細胞に添加し、4時間インキュベーションする。つづいて、生成したホルマザンの結晶を吸引しないように注意しながら、培地を吸引し、結晶をDMSO 100μlに溶解する。溶解した物質を分光光度法によって測定し、生成した色素の濃度に比例する光学密度を得る。分光光度計のバックグラウンドノイズを消去したのち、各穴の光学密度を540〜630で測定する。結果は対照試料(DMSOのみ)に対するパーセンテージで表示する。
インスリン分泌試験
【0068】
ブタ膵臓のランゲルハンス島はヨーロッパ糖尿病センター(Hautepierre,フランス)から入手する。24穴プレートにランゲルハンス島細胞を100個/穴の密度で播種し、ウシ胎児血清を添加した(10%)RPMI 1640培地で培養する。細胞を各植物の抽出物(200μg/ml)で60分間処理したのち、Elisaキット(Mercodia)により、メーカーの説明書に従ってインスリン分泌量を測定する。結果は対照試料(DMSOのみ)に対するパーセンテージで表示する。
実施例1A:代謝活性に対する選ばれた植物の効果の検討
【0069】
INS1細胞を、エタノール、メタノールまたはジクロロメタンで抽出して得られた植物抽出物200μg/mlで24時間処理した。MTT変換率を計算して抽出物の効果を対照試料に対するパーセンテージで表示した。
【0070】
得られた結果を表1に示す:エタノール抽出物(全面抽出)、メタノール抽出物(極性化合物に富む)およびジクロロメタン抽出物(無極性化合物に富む)。表の中のEtOH=エタノールフラクション;MeOH=メタノールフラクション;DCM=ジクロロメタンフラクション。
【0071】
【表1】
これらの結果を検査すると、選ばれたすべての植物が細胞の代謝活性に対して有効であることが証明される。
実施例2A:HPLCのプロファイル
【0072】
生物活性に関して抽出物のクロマトグラフパターンを得るため、活性なフラクションをRP−HPLCにかける。図1〜図8はTrema orientalis,Strychnos myrtoides,Obetia radula,Vaccinium myrtillus,Sclerocarya birrea,Agrimonia eupatoria,Alchemilla vulgarisおよびOlea europaeaのエタノールフラクションをそれぞれRP−HPLCにかけて得られたプロファイルである。
【0073】
次に、フラクションをセミ分取RP−HPLCで精製し、それから有効成分を確認、同定するためMTT試験にかけた。この試験を行うため、INS1細胞を植物抽出物100,200,400または800μg/mlで24時間処理した。Trema orientalisで得られた結果の一例を図9に示す。図の中で使用されている略号の意味は次のとおりである:TC:ブランク細胞のみ;DMSO:ブランク細胞のみ+溶媒(DMSO);A−J:セミ分取RP−HPLCにかけたのち得られたフラクション(フラクションの詳細は図1を参照)。560nmで光学密度を測定して得られた転化率を示す。
実施例3A:インスリンの分泌に対する、選ばれた植物の抽出物の効果
【0074】
2型糖尿病の治療に対しては4つの抗糖尿病治療クラスがある。それらの中で、スルホニル尿素は米国において2型糖尿病治療の灯台的な薬剤である。スルホニル尿素は膵臓のインスリン分泌を促進し、その面から高血糖を予防する。選ばれた植物は細胞の代謝に対して活性なので、その活性物質が4つの治療クラスのいずれか1つ、とりわけスルホニル尿素に属するか否かを決定するため、ブタLangherans島に対するインスリン分泌試験によって、これらの抽出物の活性を確認した。
【0075】
ブタLangherans島を植物の抽出物200μg/mlで60分間処理した。インスリンの分泌をELISA試験によって測定し、抽出物の効果は対照試料に対するパーセンテージで表示する。
【0076】
結果を次表2に示す。この表でEtOH、MeOHおよびDCMは、それぞれエタノール抽出物(全面抽出)、メタノール抽出物(極性化合物に富む)およびジクロロメタン抽出物(無極性化合物に富む)を意味する。
【0077】
【表2】
実施例B
生成物および方法
生成物
【0078】
オレアノール酸はExtrasynthese社(Genay、フランス)の製品、そしてオレウロペインおよびリトコール酸はSigma−Aldrich社(Saint−Quentin Fallavier、フランス)の製品である。
植物からの抽出
【0079】
エタノール抽出に対しては、空気中で乾燥し粉砕したオリーブ(Olea europaea L. Oleaceae、 PhytoEst、フランス)の葉10gを80%エタノール水溶液に室温で3時間浸漬して徹底的に抽出する。つづいて混合物を吸引濾過し、濾液を減圧濃縮する。
【0080】
ジクロロメタンおよびメタノールによる抽出に対しては、自動ソクスレー抽出器(2055 Aventi Soxtex、 Foss Tecator)を使用して、粉砕した植物材料(10〜20g)をシクロヘキサン(100mL)、ジクロロメタン(100mL)およびメタノール(100mL)で順次抽出する。
【0081】
このプロトコルによれば、3つのタイプ抽出物を得ることができ、各抽出物中には親油性のきわめて高い無極性および極性の植物成分が濃縮されている。
【0082】
溶媒を減圧下に蒸発させて除去し、残留物はそれぞれ重さを秤ったのち、使用するまで冷凍庫に保存する。
HPLCによる分析
【0083】
各抽出物の分析プロファイルを得るため、残留物(5mg/mL)のメタノール溶液をHPLC分析(Varian Pro Star)にかけ、検出にはDAD検出器(Varian)を、そしてカラムには逆相カラム(Nucleodur 100−10−C18,250/4,6,Macherey−Nagel)を使用する。
【0084】
溶離には、アセトニトリルと、酸性にした水(0.1%トリフルオロ酢酸)との混合物を使用する。
【0085】
分析条件:流量は1mL/分とし、グラジエント条件は次のとおり:H2O/CH3CN(20:80)で30分間、CH3CN(100%)で5分間、そしてH2O/CH3CN(20:80)で5分間。LC/MS(Agilent 1200SL)による分析では、検出波長を254nmとし、200〜500nmの波長範囲でPDAを記録する。分析は、エレクトロスプレイによるイオン化(ESI)のインターフェイスにAPCI(Application Layer Protocol Control Information(応用層プロトコル制御情報))を連結して、ネガティブモードで行う。
NMR分析
【0086】
1Hの分析には300MHzのDPX300型NMR分析装置を使用する。化学シフトはδ値(ppm)で表示し、ピリジン−d5C5D5Nの溶媒ピーク7.58を基準にする。
ルシフェラーゼ試験によるTGR5活性の定量
【0087】
チャイニーズハムスターの卵巣細胞(CHO)はATCC(Manassas, Virginie)から入手し、ウシ胎児血清(SVF)10%(v/v)、非必須アミノ酸100μM(AANE)、ペニシリン100単位/mLおよびストレプトマイシン硫酸塩100μg/mLを添加したα最少必須培養液(α−MEM)に保存する。
【0088】
TGR5の活性を定量するため、Lipofectamine 2000を使用し、TGR5発現ベクタープラスミド(pCMVSPORT6/TGR5)3.8μg、発現がcAMP Response Element(CRE,pCRE−Luc)によって制御されるルシフェラーゼレポータープラスミド3.8μg、およびネオマイシン抵抗性遺伝子発現プラスミド(pcDNA3.1(+))0.4μgで、CHO細胞をトランスフェクトして得られる安定細胞株を使用する。トランスフェクトされた細胞はG418硫酸塩400μg/mLで選び出し、96穴プレートで各クローンをそれぞれ独立に培養する。TGR5を発現するCHO細胞をリトコール酸(LCA)または植物抽出物10μMで処理し、それからルシフェラーゼの定量にかける[Picardら]。ルミネセンスは、Centro XS3 LB960(Berthold Technologies、 Bad Wildbad、ドイツ)で測定する。
ルシフェラーゼによるFXRの定量
【0089】
植物抽出物のFXR活性を評価するには、Lipofectamine 2000を使用し、各穴にhFXR発現ベクタープラスミド(pCMX−hFXR)25ng、マウス(m)のαレキシノイド受容体(RXRα)発現ベクタープラスミド(pCMX−mRXRα)25ng、ルシフェラーゼレポーター(pEcREx7−Luc)、および内部標準として使用するpCMVβ50ngを加え、COS1細胞(ATCC)にトランスフェクトする。
【0090】
トランスフェクションから約18時間が経過したら、細胞と、濃度が異なる各抽出物とを新しいMEM(またはDMEM)で5時間インキュベートする。この処理が終わったら細胞を溶解し、前記Picardらの方法に従って、規格化ルシフェラーゼ活性を決定する。
動物および給餌方法
【0091】
Charles Riverから入手した6週齢のオスのC57BL/6ラットを使用する。
【0092】
糖質に富むバランスのとれた普通食(SAFE,D04)および脂質に富む食餌(60%Kcal Fat, D12492)は、Research Diets社(New Brunswick,ニュージャージ)から入手する。
【0093】
マウスは、4ないし5頭ずつをケージに入れ、安定した温度で、昼と夜をそれぞれ12時間とするサイクルで、食餌と水が自由に摂取できる状態に置かれる。マウスは、バランスの取れた普通食(n=5)の食餌条件か、脂質に富む食餌条件(n=32)で10週間飼育される。脂質に富む食餌条件で10週間飼育されるマウスは8頭ずつ4つのグループに分けられ、一つのグループは脂質だけに富む食餌条件で飼育され、別の一つのグループには、オレアノール酸が100mg/kg/日の割合で添加された同じ食餌が与えられ(全試験期間にわたって食餌の吸収量を測定し、安定した量が維持されるように化合物の量を調節する)、さらに別の一つのグループには、コロソール酸が100mg/kg/日の割合で添加された同じ食餌が与えられ、最後に残ったグループにはJuglans regiaの活性フラクションが100mg/kg/日の割合で添加された同じ食餌が与えられる。体重および食餌の吸収量を2日につき1日決定する。この実験は倫理規定に従って行われる。
ブドウ糖負荷試験
【0094】
この試験は10時間絶食状態に置いたマウスに対して行われる。血糖は携帯型グルコメーターで監視する(Maxi Kit Glucometer4、Bayer Diagnostic)。この試験は、ブドウ糖を2g/(kg体重)含む滅菌液を腹腔内に注射することにより行う。0、15、30、45、60、90、120、150および180分の時点で尾部静脈から血液を採取し、血糖値を評価する。
実施例1B: Olea europaea由来TGR5アゴニストの同定
・Olea europaeaの葉からの抽出
エタノールによる全面抽出物、DCM(ジクロロメタン)抽出物およびMeOH(メタノール)抽出物
【0095】
CHO−TGR5細胞のルシフェラーゼ試験において、TGR5の活性化がLCA(正のブランクとして使用)で観察されるのと類似する完全抽出物を最初に選択した。
【0096】
疎水性分子に富む抽出物(DCMによる抽出)または親水性分子に富む抽出物(MeOH)の試験を行いながら、有効成分の分離を探索する。Olea europaeaの場合、活性の大部分がDCM抽出物中に存在する。
疎水性抽出物の分画
【0097】
抽出物の疎水性フラクションの分画は、分取逆相HPLCまたは薄層クロマトグラフィを使って追跡される。1から10までの番号を付けた10個のフラクションを分取し、1.5,5,15および50μg/mLの各量に対して、CHO−TGR5におけるルシフェラーゼ活性を、LCAおよびオレウロペインのルシフェラーゼ活性を比較対照として測定する。
【0098】
図10が示すように、活性が見られるのはフラクション6〜9のみである。オレウロペインの場合、1.5から50μg/mLまでの範囲で、TGR5に対してアゴニストとしての効果が全く見られない。これらのデータは、Olea europaeaのDCM抽出物に含まれる活性分子が、オレウロペインとは異なっていることを示している。
・フラクション7の活性分子
【0099】
驚くべきことに、活性なフラクション7は高い純度を示す。UVによる検出では保持時間が21.9分の主要ピークしか現れない(図11)。フラクション7のLC/MS分析から、455.3g/molにこの分子の分子量を確認することができる。この分析はネガティブモードで行われ、そのことはこの分子が水素プロトンを欠いていることを意味する。したがって、456ないし457g/mol付近に検出される主要ピークから真の分子量が推定される。フラクション7の同定はNMRで分析することによって最終的な決着を見る(図12)。得られたスペクトルはトリテルペノイド型分子の特徴を示す。HPLC、LC/MSおよびNMR分析データと、オリーブの葉のすでに記載されているトリテルペンに関して使用できるデータとを組み合わせると、フラクション7の分子はオレアノール酸と結論される。この同定は、HPLC分析で市販の比較試料(Extrasynthese、Genay、フランス)と一緒に注入することによっても確認されるし、得られたNMRスペクトルと、すでに報告されているオレアノール酸のNMRスペクトル[Seebacherら]とを比較することによっても確認される。ヒトTGR5ルシフェラーゼ活性試験で得られたCE50値、1.42μMは、TGR5の天然リガンドであるLCAに対して得られたCE50値、0.89μMと比較可能な値である。
・TGR5に対するオレアノール酸の選択性の研究
【0100】
次に、オレアノール酸の生物活性を説明する中で胆汁酸核内受容体の可能性を完全に排除するため、FXR依存性レポーター遺伝子(ルシフェラーゼ)を定量し、オレアノール酸がFXRを活性化するか否かを決定する。得られた結果は、オレアノール酸がFXRを活性化しないことを裏づけており、このトリテルペンがTGR5の選択的アゴニストであって、TGR5とFXRとを同時に活性化する胆汁酸とは全く異なっていることを示している。
実施例2B:Alchemilla vulgarisから得られるTGR5アゴニストの同定
【0101】
Olea europaeaの場合と同様に操作し、抽出物およびフラクションを調製する。
【0102】
DCM抽出物のフラクションに対して得られた結果を図13に示す。
【0103】
TGR5試験でフラクション9がきわめて強い反応を示すことが確認される。
【0104】
このフラクションのHPLCプロファイルを図14に示す。
【0105】
図15はフラクション9に含まれる活性分子、コロソール酸のNMRスペクトルである。
実施例3B:Juglans regiaから得られるTGR5アゴニストの同定
【0106】
Olea europaeaに関する実施例1の記載と同様に操作する。
【0107】
DCM抽出物のフラクションに対して得られた結果を図16に示す。この図から、フラクション7,8および9が強い活性を示すことがわかる。これらのフラクションを一つに合わせたもののHPLCプロファイルを図17に示す。
実施例4B:Agrimonia eupatoriaから得られるTGR5アゴニストの同定
【0108】
Olea europaeaに関する実施例1の記載と同様に操作する。
【0109】
DCM抽出物の8個のフラクションに対して得られた結果を図18に示す。この図から、フラクション4が強い活性を示すことがわかる。これらのフラクションのHPLCプロファイルを図19に示す。
実施例5B:Vaccinium mvrtillusから得られるTGR5アゴニストの同定
【0110】
実施例1の記載と同様に操作する。
【0111】
DCM抽出物の9個のフラクションについて得られた結果を図20に示す。この図からフラクション3、5、6、7、および8が、LCAのそれより高い活性を示し、その中でもフラクション6が特に高い活性を示す。
【0112】
このフラクションのHPLCプロファイルを図21に示す。
実施例6B:Obetia radulaから得られるTGR5アゴニストの同定
【0113】
実施例1の記載と同様に操作する。
【0114】
DCM抽出物の8個のフラクションについて得られた結果を図22に示す。この図からフラクション3、4および6がLCAより高い活性を示し、その中でもフラクション6が特に高い活性を示す。
【0115】
このフラクションのHPLCプロファイルを図23に示す。
実施例7B:脂肪食ラットの耐糖能に対する植物抽出物活性フラクションの効果
【0116】
メタボリックシンドロームのマウスモデル、すなわち脂肪食を与えられたマウスを用いて、本発明による植物抽出物活性フラクションの効果を評価した。植物抽出物による治療を始める前の10週間にわたって、バランスのとれた普通食か、脂肪に富む食餌をC57BL/6マウスに与える。この期間中に脂肪食を与えられたマウスは、エネルギー供給の類似の増加に伴って、50%の体重増加を示す。
【0117】
Olea(OA)、Alchemilla(AVA)およびJuglans(JRL)のフラクションによる治療の期間が終わる時点(14日)で、下表3に示す臨床パラメーターが得られる。
【0118】
【表3】
体重増加を抑制する傾向が認められると同時に、副睾丸の皮下脂肪の質量減少も観察され、活性フラクションがエネルギー代謝に影響を及ぼすことが示唆される。
【0119】
これらの実験では、治療開始前の10週間の間、脂肪に富む食餌が続けられることを測ることになる。したがって、この実験は体重の過大な増加およびインスリン抵抗性を防止するというより、むしろ矯正する能力を対象とする。
【0120】
図24の結果は、これらのフラクションが、脂肪食を与えられたマウスの代謝ホメオスタシスを改善する能力を持つことを示す。特に、脂肪に富む食餌モデルに誘発され、前糖尿病効果を引き起こすインスリン抵抗性が矯正される:実際に、本発明の活性フラクションで14日間治療したあとで、腹腔内を通して高血糖症を引き起こす実験(IPGTT)を行う。IPGTTの前の平均血糖値は、普通食群、脂肪に富む食餌群、脂肪+オレアノール酸に富む食餌群、脂質+コロソール酸に富む食餌群、および脂質およびJRLに富む食餌群で、それぞれ103±7、154±5、144±18、141±2、および159±3mg/dLである。IPGTT曲線は、脂肪に富む食餌を摂取すると、耐糖能の低下とインスリン抵抗性とが誘発されることをはっきりと示している(図24)。マウスを植物の活性フラクションで治療すると、この耐糖能は部分的に矯正される。
【0121】
このように、本発明は特異性の高い強力なTGR5アゴニストを提供し、そして、得られた結果は、それらの分子が、純粋なフラクションおよび/または富むフラクションであることに応じて、強い活性を示すことを証明している。
【0122】
[参照文献]
KF Petersen, S Dufour, D Befroy, R Garcia, and GI Shulman. N Engl J Med, 350: 664−671 (2004)
KF Petersen, D Befroy, S Dufour, J Dziura, C Ariyan, DL Rothman, L DiPietro, GW Cline and GI Shulman. Science, 300 : 1140−1142 (2003).
T Mosmann, J Immunol Methods, 65(l−2):55−63 (1983).
F. Picard, M. Gehin, M.C. Annicotte, S. Rocchi, M.F. Champy, B.W. O≡Malley, P. Chambon, et J. Auwerx. SRC−1 and TIF2 control energy balance between white and brown adipose tissues. Cell 111 (2002) 931−941.
W. Seebacher, N. Simic, R. Weiss, R. Sat, et O. Kunert. Magn. Reson. Chem. 41 (2003) 636−638.
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ以上の植物から、抽出によって、生物活性な組成物を得る方法であって、
a)粗製完全抽出物、または有効成分に富むフラクション、より具体的には無極性フラクションまたは極性フラクション、を得るために、所与の活性に関して選択した植物またはそれらの部分を別々に、一つ以上の溶媒で処理する工程と、
b)MTT試験に対して代謝活性を示し、そしてその活性の、少なくとも一つの特異的な試験に対して生物活性を示す抽出物またはフラクションを選択する工程と
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の工程a)およびb)以外に、工程a)および/または工程b)のあとに実施される工程c)を含み、かつその工程c)が、前記抽出物または選択したフラクションを分析して、それらが含有する成分を決定し、そしてもし望めば、生物活性の本質を担う一つまたは複数の化合物を分離することを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)において、植物または植物の部分が、粉砕、乾燥して得られる微粉末の形で使用されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
植物の部分が、葉、皮、根、気生部分、果実および種子であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程a)が、一つ以上の抽出を含み、そしてそれらの抽出が、CO2または有機溶媒、具体的にはアルコール、シクロヘキサンまたはあらゆる無極性の溶媒、ジクロロメタンまたはクロロホルム、およびこれらの溶媒のいくつか、またはすべての溶媒で行われ、特定のフラクションを分離するためにこれらの溶媒を順次使用することが可能であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程c)に従うフラクションの分析がHPLCによって行われることを特徴とする請求項2ないし5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程b)に従って行われる生物学的試験が、抗糖尿病活性、具体的にはインスリンの分泌に対する活性を決定する試験であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の方法で得ることができる抽出物、フラクションが対象であることを特徴とする生物活性組成物。
【請求項9】
前記抽出物またはフラクションから分離可能な化合物が対象であることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
次にあげる属および種:
Strychnos myrtoides,Obetia radula,Trema orientalis,Sclerocarya birrea,Voacanga thouars i Moringa oleifera(=Moringa moringa,Moringa pterygosperma,Guilandina moringa),Agrimonia eupatoria,Arctium majus(=Lappa major),Alchemilla vulgaris,Phaseolus vulgaris,Vaccinium myrtillus,Cichorium intybus,Cynara scolymus,Geranium robertianum,Juglans regia,Kalanchoe crenata,Leptodenia madagascariensis,Morus nigra,Olea europaea,Rubus fructicosus,Spathodea campanulataの中から選択する植物から得ることが可能であることを特徴とする請求項8または9に記載の組成物。
【請求項11】
次にあげる属:
Strychnos,Obetia,Trema,Sclerocarya,Voacanga,Moringa,Agrimonia,Arctium,Alchemilla,Phaseolus,Vaccinium,Cichorium,Cynara,Geranium,Juglans,Kalanchoe,Leptodenia,Morus,Olea,Rubus,Spathodeaの中から選択する植物から得ることが可能であることを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
次にあげる科:
Loganiaceae,Urticaceae,Ulmaceae,Anacardiaceae,Apocynaceae,Moringaceae,Rosaceae,Asteraceae,Fabaceae,Ericaceae,Geraniacaea,Juglandacaea,Crassulaceae,Oleaceae,Bignoniaceaの中から選択する植物から得ることが可能であることを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
Trema orientalis Ulmaceae,Strychnos myrtoides Loganiaceae,Obetia radula Urticaceae,Vaccinium myrtillus Ericaceae,Sclerocarya birrea Anacardiaceae,Agrimonia eupatoria Rosaceae,Alchemilla vulgaris Rosaceae,およびOlea europaea Oleaceaeから精製されたフラクションが対象である特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
植物から得ることが可能な生成物、たとえば抽出物、フラクションおよび/または分子を、TGR5の特異的アゴニストとして使用すること。
【請求項15】
前記生成物が、植物の抽出物もしくはこれらの抽出物から得ることが可能なフラクション、またはこれらの抽出物もしくはフラクションから得ることが可能な分子であり、そして
−TGR5の天然リガンド、たとえばリトコール酸(LCA)のCE50と等しいか、それより高いCE50を示し、
−FXR核内受容体を活性化せず、
−メタボリックシンドロームのマウスモデルにおいて、脂肪食によって誘発される体重増加の減少と前記モデルの副睾丸皮下脂肪の質量減少とをもたらし、
−耐糖性の向上をもたらす、
ことを特徴とする、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
植物が、Olea europaea,Alchemilla vulgaris,Juglans regia,Agrimonia eupatoria,Vaccinium myrtillus,およびObetia radulaを含む群から選択されることを特徴とする請求項14または15に記載の使用。
【請求項17】
分子が5環系トリテルペンを含むことを特徴とする請求項14ないし16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
分子がオレアナン型5環系トリテルペン、たとえばオレアノール酸を含むことを特徴とする請求項17に記載の使用。
【請求項19】
分子がウルサン型5環系トリテルペン、たとえばコロソール酸を含むことを特徴とする請求項17に記載の使用。
【請求項20】
分子がルパン型5環系トリテルペンを含むことを特徴とする請求項17に記載の使用。
【請求項21】
医薬組成物が、請求項8ないし13のいずれか一項に記載する少なくとも一つの組成物または請求項14ないし20のいずれか一項に記載するアゴニスト、の有効量と、医薬的に許容される賦形剤とを含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項22】
組成物が、経口、経局所または注射による投与のためにガレヌス製剤の形で提供されることを特徴とする請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
医薬組成物が、経口投与するために錠剤、タブレット剤、カプセル剤、顆粒剤、滴剤、シロップ剤、アルコール性シロップ剤の形で提供されるか、またはエアロゾルの形で提供されることを特徴とする請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
医薬組成物が、局所投与するためにガレヌス製剤、たとえば乳剤、クリーム、ローション、油剤、またはパッチなどの形で提供されることを特徴とする請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
注射によって投与するため、医薬組成物が、無菌液または滅菌可能な溶液、あるいはさらに懸濁液またはエマルションから調製される、静脈、皮下または筋肉内注射液の形で提供されることを特徴とする請求項21に記載の組成物。
【請求項26】
糖尿病治療のため、医薬組成物が、請求項8ないし13のいずれか一項に記載する少なくとも一つの組成物または請求項14ないし20のいずれか一項に記載するアゴニスト、の有効量と、医薬的に許容される賦形剤と、を含むことを特徴とする組成物。
【請求項27】
代謝障害、肥満および/またはそれらと関連する疾患、たとえばX症候群(メタボリックシンドローム)、2型糖尿病、を予防および/または治療するためのヒトまたは動物用薬剤を製造するために、請求項14ないし20のいずれか一項に記載のアゴニストを使用すること。
【請求項28】
前記抽出物またはフラクションまたはコロソール酸が、2型糖尿病、肥満および/またはメタボリックシンドロームを予防および/または治療するために使用されることを特徴とする請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記抽出物またはフラクションまたはオレアノール酸が、肥満または糖尿病、具体的には2型糖尿病、および/またはメタボリックシンドロームを予防および/または治療するために使用されることを特徴とする請求項27に記載の使用。
【請求項30】
使用可能な不活性の賦形剤と一緒に、薬効のある食品に応用するため、ヒトおよび動物用サプリメントが、請求項8ないし13のいずれか一項に記載する組成物の少なくとも一つ、または請求項14ないし20のいずれか一項に記載するアゴニスト、の有効量を含むことを特徴とする、ヒトおよび動物用サプリメント。
【請求項31】
サプリメントが、ガム、散剤、錠剤、ゼラチンカプセル、カプセル、浸剤、煎剤の摂取可能な形で供給されることを特徴とする請求項27に記載のサプリメント。
【請求項32】
サプリメントが、食品製造時または食品包装時に添加されるか、あるいはすでに前記生成物と一緒に配合した調合品の使用時に添加されて、所望の補給を可能にすることを特徴とする請求項31または32に記載のサプリメント。
【請求項1】
一つ以上の植物から、抽出によって、生物活性な組成物を得る方法であって、
a)粗製完全抽出物、または有効成分に富むフラクション、より具体的には無極性フラクションまたは極性フラクション、を得るために、所与の活性に関して選択した植物またはそれらの部分を別々に、一つ以上の溶媒で処理する工程と、
b)MTT試験に対して代謝活性を示し、そしてその活性の、少なくとも一つの特異的な試験に対して生物活性を示す抽出物またはフラクションを選択する工程と
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の工程a)およびb)以外に、工程a)および/または工程b)のあとに実施される工程c)を含み、かつその工程c)が、前記抽出物または選択したフラクションを分析して、それらが含有する成分を決定し、そしてもし望めば、生物活性の本質を担う一つまたは複数の化合物を分離することを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)において、植物または植物の部分が、粉砕、乾燥して得られる微粉末の形で使用されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
植物の部分が、葉、皮、根、気生部分、果実および種子であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程a)が、一つ以上の抽出を含み、そしてそれらの抽出が、CO2または有機溶媒、具体的にはアルコール、シクロヘキサンまたはあらゆる無極性の溶媒、ジクロロメタンまたはクロロホルム、およびこれらの溶媒のいくつか、またはすべての溶媒で行われ、特定のフラクションを分離するためにこれらの溶媒を順次使用することが可能であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程c)に従うフラクションの分析がHPLCによって行われることを特徴とする請求項2ないし5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程b)に従って行われる生物学的試験が、抗糖尿病活性、具体的にはインスリンの分泌に対する活性を決定する試験であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の方法で得ることができる抽出物、フラクションが対象であることを特徴とする生物活性組成物。
【請求項9】
前記抽出物またはフラクションから分離可能な化合物が対象であることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
次にあげる属および種:
Strychnos myrtoides,Obetia radula,Trema orientalis,Sclerocarya birrea,Voacanga thouars i Moringa oleifera(=Moringa moringa,Moringa pterygosperma,Guilandina moringa),Agrimonia eupatoria,Arctium majus(=Lappa major),Alchemilla vulgaris,Phaseolus vulgaris,Vaccinium myrtillus,Cichorium intybus,Cynara scolymus,Geranium robertianum,Juglans regia,Kalanchoe crenata,Leptodenia madagascariensis,Morus nigra,Olea europaea,Rubus fructicosus,Spathodea campanulataの中から選択する植物から得ることが可能であることを特徴とする請求項8または9に記載の組成物。
【請求項11】
次にあげる属:
Strychnos,Obetia,Trema,Sclerocarya,Voacanga,Moringa,Agrimonia,Arctium,Alchemilla,Phaseolus,Vaccinium,Cichorium,Cynara,Geranium,Juglans,Kalanchoe,Leptodenia,Morus,Olea,Rubus,Spathodeaの中から選択する植物から得ることが可能であることを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
次にあげる科:
Loganiaceae,Urticaceae,Ulmaceae,Anacardiaceae,Apocynaceae,Moringaceae,Rosaceae,Asteraceae,Fabaceae,Ericaceae,Geraniacaea,Juglandacaea,Crassulaceae,Oleaceae,Bignoniaceaの中から選択する植物から得ることが可能であることを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
Trema orientalis Ulmaceae,Strychnos myrtoides Loganiaceae,Obetia radula Urticaceae,Vaccinium myrtillus Ericaceae,Sclerocarya birrea Anacardiaceae,Agrimonia eupatoria Rosaceae,Alchemilla vulgaris Rosaceae,およびOlea europaea Oleaceaeから精製されたフラクションが対象である特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
植物から得ることが可能な生成物、たとえば抽出物、フラクションおよび/または分子を、TGR5の特異的アゴニストとして使用すること。
【請求項15】
前記生成物が、植物の抽出物もしくはこれらの抽出物から得ることが可能なフラクション、またはこれらの抽出物もしくはフラクションから得ることが可能な分子であり、そして
−TGR5の天然リガンド、たとえばリトコール酸(LCA)のCE50と等しいか、それより高いCE50を示し、
−FXR核内受容体を活性化せず、
−メタボリックシンドロームのマウスモデルにおいて、脂肪食によって誘発される体重増加の減少と前記モデルの副睾丸皮下脂肪の質量減少とをもたらし、
−耐糖性の向上をもたらす、
ことを特徴とする、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
植物が、Olea europaea,Alchemilla vulgaris,Juglans regia,Agrimonia eupatoria,Vaccinium myrtillus,およびObetia radulaを含む群から選択されることを特徴とする請求項14または15に記載の使用。
【請求項17】
分子が5環系トリテルペンを含むことを特徴とする請求項14ないし16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
分子がオレアナン型5環系トリテルペン、たとえばオレアノール酸を含むことを特徴とする請求項17に記載の使用。
【請求項19】
分子がウルサン型5環系トリテルペン、たとえばコロソール酸を含むことを特徴とする請求項17に記載の使用。
【請求項20】
分子がルパン型5環系トリテルペンを含むことを特徴とする請求項17に記載の使用。
【請求項21】
医薬組成物が、請求項8ないし13のいずれか一項に記載する少なくとも一つの組成物または請求項14ないし20のいずれか一項に記載するアゴニスト、の有効量と、医薬的に許容される賦形剤とを含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項22】
組成物が、経口、経局所または注射による投与のためにガレヌス製剤の形で提供されることを特徴とする請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
医薬組成物が、経口投与するために錠剤、タブレット剤、カプセル剤、顆粒剤、滴剤、シロップ剤、アルコール性シロップ剤の形で提供されるか、またはエアロゾルの形で提供されることを特徴とする請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
医薬組成物が、局所投与するためにガレヌス製剤、たとえば乳剤、クリーム、ローション、油剤、またはパッチなどの形で提供されることを特徴とする請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
注射によって投与するため、医薬組成物が、無菌液または滅菌可能な溶液、あるいはさらに懸濁液またはエマルションから調製される、静脈、皮下または筋肉内注射液の形で提供されることを特徴とする請求項21に記載の組成物。
【請求項26】
糖尿病治療のため、医薬組成物が、請求項8ないし13のいずれか一項に記載する少なくとも一つの組成物または請求項14ないし20のいずれか一項に記載するアゴニスト、の有効量と、医薬的に許容される賦形剤と、を含むことを特徴とする組成物。
【請求項27】
代謝障害、肥満および/またはそれらと関連する疾患、たとえばX症候群(メタボリックシンドローム)、2型糖尿病、を予防および/または治療するためのヒトまたは動物用薬剤を製造するために、請求項14ないし20のいずれか一項に記載のアゴニストを使用すること。
【請求項28】
前記抽出物またはフラクションまたはコロソール酸が、2型糖尿病、肥満および/またはメタボリックシンドロームを予防および/または治療するために使用されることを特徴とする請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記抽出物またはフラクションまたはオレアノール酸が、肥満または糖尿病、具体的には2型糖尿病、および/またはメタボリックシンドロームを予防および/または治療するために使用されることを特徴とする請求項27に記載の使用。
【請求項30】
使用可能な不活性の賦形剤と一緒に、薬効のある食品に応用するため、ヒトおよび動物用サプリメントが、請求項8ないし13のいずれか一項に記載する組成物の少なくとも一つ、または請求項14ないし20のいずれか一項に記載するアゴニスト、の有効量を含むことを特徴とする、ヒトおよび動物用サプリメント。
【請求項31】
サプリメントが、ガム、散剤、錠剤、ゼラチンカプセル、カプセル、浸剤、煎剤の摂取可能な形で供給されることを特徴とする請求項27に記載のサプリメント。
【請求項32】
サプリメントが、食品製造時または食品包装時に添加されるか、あるいはすでに前記生成物と一緒に配合した調合品の使用時に添加されて、所望の補給を可能にすることを特徴とする請求項31または32に記載のサプリメント。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公表番号】特表2010−509390(P2010−509390A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536760(P2009−536760)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【国際出願番号】PCT/FR2007/001869
【国際公開番号】WO2008/074935
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(509135832)ユニヴェルシテ ド ストラスブール (2)
【出願人】(509135784)
【出願人】(502071218)サーントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シャーンティフィク(セーエンヌエールエス) (8)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【国際出願番号】PCT/FR2007/001869
【国際公開番号】WO2008/074935
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(509135832)ユニヴェルシテ ド ストラスブール (2)
【出願人】(509135784)
【出願人】(502071218)サーントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シャーンティフィク(セーエンヌエールエス) (8)
【Fターム(参考)】
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