説明

生物活性薬剤を含有するポリマーを含む医療用デバイスおよび方法

インプラントのデザインは薬物を装填したポリマーデバイス、たとえばロッドであり、生物活性薬剤、たとえばクロニジンまたはその誘導体、たとえば塩酸クロニジンの放出を、長期間、たとえば2カ月間、3カ月間、4カ月間、さらには4.5カ月間、制御するように設計される。ポリマーは、好ましくは生分解性ポリマー、たとえばポリ(ラクチド−co−グリコリド)またはポリ乳酸/ポリラクチドである。塩酸塩形の薬物、たとえばクロニジンの使用における挑戦は、水溶性の高いこの薬物の放出を最高4.5カ月間、制御することである。薬物粉末の粒度分布を制御することによりポリマーマトリックス内における薬物分布がより均一になり、かつ制御しうることが見いだされた。したがって、薬物を急速に放出させる大きな凝集物を排除することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮特許出願No.61/046,213、2008年4月18日出願、表題“生物活性薬剤を含有するポリマーを含む医療用デバイスおよび方法”、および米国特許出願No.12/410,151、2009年3月24日出願、表題“生物活性薬剤を含有するポリマーを含む医療用デバイスおよび方法”の出願日の優先権を主張し、これらを本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
薬物などの生物活性薬剤を組織へ送達することができる医療用デバイスは、広範な用途に利用されている。たとえば、薬物を隣接組織へ送達することができる埋込型医療用デバイス(すなわちインプラント)は、疾患の処置から、有害な反応および/または身体によるインプラント拒絶の阻止にまで及ぶ、有利な性能をもたらすように設計することができる。埋込型医療用デバイスは、一般に生物活性薬剤を特定の速度で要望する期間にわたって放出するプロフィールで設計される。
【0003】
ある用途について、埋込型医療用デバイスは、生物活性薬剤(たとえば療法薬)を持続する期間にわたってほぼ一定の速度で放出しうることが望ましい(すなわち持続放出)。しばしば、そのような医療用デバイスは、場合により生物活性薬剤を含有することができる溶剤ベースのコーティングを含み、そのコーティングは生物活性薬剤の放出プロフィールを調節および/または制御することができる。しかし、そのような溶剤ベースのコーティングの付与は、たとえば、特に医療用デバイスがその溶剤によって軟化または溶解する可能性のあるポリマー材料を含有する場合、溶剤が医療用デバイスに対して有害な作用をもつ可能性があるという点で問題となる可能性がある。さらに、特に生物活性薬剤がタンパク質ベースの薬物である場合、溶剤は生物活性薬剤自体に対して有害な作用をもつ可能性もある。さらに、コートされた医療用デバイスにデバイスの作成中または使用中に起きる場合がある損傷は、デバイスの最終性能に有害な影響を及ぼす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生物活性薬剤を放出することができる新規な医療用デバイス、およびそのようなデバイスの製造方法が、依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
インプラントのデザインは薬物を装填したポリマーデバイス、たとえばロッドであり、生物活性薬剤、たとえばクロニジンまたはその誘導体の放出を、長期間、たとえば2カ月間、3カ月間、4カ月間、さらには4.5カ月間、制御するように設計される。ポリマーは、好ましくは生分解性ポリマー、たとえばポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)またはポリ乳酸/ポリラクチド(PLA)である。ある遊離塩基形の薬物、たとえばクロニジンは、その塩基性のため加工に際して望ましくないポリマー分解を引き起こすので、ある態様においては酸性である塩酸塩形が好ましい。塩酸塩形の薬物、たとえばクロニジンの使用における挑戦は、水溶性の高いこの薬物の放出を最高4.5カ月間、制御することである。多数の配合物の鏡検分析は、この薬物が押出しプロセスで集合して大きな凝集物になることを示す。さらに薬物結晶サイズの分析は、製造業者から受け取ったままのこの薬物粉末の粒度分布がきわめて大きいことを示す。薬物粉末の粒度分布を制御することにより、ポリマーマトリックス内における薬物分布がより均一になり、かつ制御しうることが見いだされた。したがって、薬物を急速に放出させる大きな凝集物を排除することができる。
【0006】
噴霧乾燥はそのような小さな狭い分布の粒子を製造しうる既知の1方法である。そのような粒子は、薬物を単独で噴霧乾燥するか、あるいは薬物とポリマーを一緒に噴霧乾燥することにより製造できる。狭い粒度分布をもつ粒子を製造するための他の方法、たとえば超微粉砕、破砕とふるい分け、およびジェットミリングも採用できる。
【0007】
少なくとも1種類の生物活性薬剤を含有するポリマーを含む医療用デバイス、たとえば薬物デポー剤を、本出願において開示する。ある態様において、医療用デバイスは埋込型デバイス(たとえば整形外科用インプラント)である。生物活性薬剤を組織へ送達するためにそのような医療用デバイスを使用する方法も本明細書に開示する。
【0008】
1観点において、本発明は種々の疾患、たとえば疼痛を処置するための埋込型医療用デバイス、たとえば薬物デポー剤に関する。このデバイスは、生分解性ポリマー、およびポリマー内に配置された少なくとも1種類の生物活性薬剤を含有する。ある態様において、ポリマーは10,000Mより高い分子量をもち、約2〜99重量%の量で存在する。生物活性薬剤は約1〜60重量%、より詳細には1〜20重量%、より詳細には8〜12重量%の量で存在し、組成物中に粒子として配置される。少なくとも80%、より詳細には少なくとも90%の粒子が、直径1〜100マイクロメートル、より詳細には直径5〜50マイクロメートル、より詳細には直径約10〜20マイクロメートルの粒度をもつ。
【0009】
ある態様において、埋込型医療用デバイスは、埋込型医療用デバイスを生理的条件下で対象に埋め込んだ後、30、40、50、60日後、および70日後ですら、溶出するのは生物活性薬剤の50%未満である溶出プロフィールをもたらす。他の態様において、このデバイスは、埋込型医療用デバイスを生理的条件下で対象に埋め込んだ後、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110日後、および120日後ですら、溶出するのは生物活性薬剤の80%未満である溶出プロフィールをもたらす。
【0010】
ある態様において、生物活性薬剤はクロニジン(clonidine)、フルオシノロン(fluocinolone)、デキサメタゾン(dexamethasone)およびスリンダク(sulindac)、またはその誘導体からなる群から選択される。1態様において、生物活性薬剤はクロニジン、特に塩酸クロニジン(clonidine hydrochlorideまたはclonidine HCl)である。誘導体は、生物活性である親薬剤を修飾してエステル、アミド、塩、溶媒和物、水和物、異性体、ラセミ体、または原子が置換された他の化合物を形成することができるものを含む。
【0011】
1態様において、ポリマーはポリラクチド−co−グリコリド、ポリラクチド、ポリオルトエステル、およびその組合わせからなる群から選択される。
【0012】
1態様において、ポリマーは非晶質形態をもち、生物活性薬剤は結晶質形態をもつ。
【0013】
他の特定の態様において、医療用デバイスは実質的に円筒形の医療用デバイスである。ある好ましい態様において、実質的に円筒形の医療用デバイスは中実である。本明細書中で用いる用語“ロッド”と“円筒”は、円筒形の物体、すなわち固定した線の周りで平行線を回転させることにより形成される形態をもつ物体を表わすために、互換性をもって用いられる。ある態様において、ロッドまたは円筒は、1、1未満(たとえば0.9、0.7、0.5、0.3、0.1、0.01、またはさらに小さい)または1より大(たとえば1.1、1.5、2、3、5、10、50、100、またはさらに大きい)のアスペクト比(半径を高さで割ったもの)をもつことができる。本明細書中で用いる円筒形物体は中実および/または中空の物体を含むものとする。
【0014】
他の観点において、本発明は埋込型医療用デバイス、たとえば薬物デポー剤の製造方法に関する。この方法は、生物活性薬剤を粉末として供給し、ポリマーを粉末として供給し、生物活性薬剤の粉末とポリマー粉末を混和して粉末混合物を調製し、この粉末混合物を溶融混合して溶融混合物を調製し、そしてこの溶融混合物を押し出して埋込型医療用デバイスを作成する工程を含む。少なくとも80%、詳細には少なくとも90%の生物活性薬剤粒子は、直径1〜100マイクロメートル、より詳細には直径5〜50マイクロメートル、より詳細には直径約10〜20マイクロメートルの粒度をもつ。
【0015】
1態様においては、狭い粒度分布をもつ粒子を得るために、生物活性薬剤を噴霧乾燥する。噴霧乾燥は、生物活性薬剤を液体キャリヤーと混和し、そして混和した液体キャリヤーと生物活性薬剤を、直径約1〜100マイクロメートル、より詳細には直径5〜50マイクロメートル、より詳細には直径約10〜20マイクロメートルの平均粒度をもつ生物活性薬剤の粒子が得られるのに十分な条件下で噴霧乾燥することを含む。
【0016】
ある態様において、生物活性薬剤はクロニジン、フルオシノロン、デキサメタゾンおよびスリンダク、またはその誘導体からなる群から選択される。1態様において、生物活性薬剤はクロニジン、特に塩酸クロニジンである。
【0017】
1態様において、生物活性薬剤はデバイス中に約1〜60重量%、より詳細には約1〜20重量%、より詳細には約8〜12重量%の量で存在する。
【0018】
1態様において、ポリマーはポリラクチド−co−グリコリド、ポリラクチド、ポリオルトエステル、およびその組合わせからなる群から選択される。
【0019】
他の観点において、本発明は生物活性薬剤を組織へ送達する方法に関する。この方法は、前記の医療用デバイスまたは前記の方法により製造した医療用デバイス、たとえば薬物デポー剤を、組織に近接して配置し、そして医療用デバイスに生物活性薬剤を組織へ送達させることを含む。1態様においては、デバイスをロッドとして、疼痛部位または疼痛発生部位に近接して(すなわち神経に近接して)埋め込む。他の態様においては、複数のデバイスを埋め込む。他の態様においては、インプラント(1以上)をカニューレ、たとえば針による送達によって、組織に近接して配置する。
【0020】
他の観点において、本発明は薬物デポー剤に関する。薬物デポー剤は、薬物デポー剤の約80〜95重量%の量で存在する少なくとも1種類の生分解性ポリマー、および薬物デポー剤の約5〜20重量%の量のクロニジンまたはその誘導体を含有する。生分解性ポリマーは、ポリラクチド−co−グリコリド、ポリラクチド、ポリオルトエステル、およびその組合わせからなる群から選択される。クロニジン、好ましくは塩酸クロニジンは薬物デポー剤中に粒子として配置され、それらの粒子のうち少なくとも80%は直径10〜20マイクロメートルの粒度を有する。
【0021】
他の観点において、本発明は薬物デポー剤の製造方法に関する。この方法は、クロニジンまたはその誘導体、好ましくは塩酸クロニジンを粉末として供給し、ポリマーを粉末として供給し、クロニジンまたはその誘導体の粉末とポリマー粉末を混和して粉末混合物を調製し、この粉末混合物を溶融混合して溶融混合物を調製し、そしてこの溶融混合物を押し出して薬物デポー剤を作成することを含む。ポリマーは、ポリラクチド−co−グリコリド、ポリラクチド、ポリオルトエステル、およびその組合わせからなる群から選択される。少なくとも80%のクロニジン粒子は直径10〜20マイクロメートルの粒度をもつ。
【0022】
他の観点において、本発明はクロニジンまたはその誘導体、特に塩酸クロニジンを組織へ送達する方法に関する。この方法は、薬物デポー剤を組織に近接して配置し、そして薬物デポー剤にクロニジンまたはその誘導体を組織へ送達させることを含む。薬物デポー剤は、薬物デポー剤の約80〜95重量%の量で存在する少なくとも1種類の生分解性ポリマー、および薬物デポー剤の約5〜20重量%の量のクロニジンまたはその誘導体を含有する。生分解性ポリマーは、ポリラクチド−co−グリコリド、ポリラクチド、ポリオルトエステル、およびその組合わせからなる群から選択される。クロニジン、好ましくは塩酸クロニジンは薬物デポー剤中に粒子として配置され、それらの粒子のうち少なくとも80%は直径10〜20マイクロメートルの粒度を有する。1態様において、薬物デポー剤を組織に近接して配置した100日後に80%未満の塩酸クロニジンが放出される。
【0023】
さらに、ポリマー中の生物活性薬剤の粒度分布を制御することにより、生物活性薬剤がポリマーセクションに均一に分散するのに十分なほど高く、一方では望ましくないほど高い放出速度を阻止する濃度で、生物活性薬剤をデバイスのポリマーセクションに取り込ませることができる。さらに、ポリマーの材料、特性および濃度、ならびにデバイス中の生物活性薬剤の濃度および粒度の選択を制御することにより、あるいは当業者に理解されている賦形剤の使用により、放出プロフィールを調節することができる。
【0024】
用語“含む”およびその変形は、これらの用語が明細書および特許請求の範囲で出現する箇所を限定する意味をもたない。
【0025】
本明細書中で用いる単数形(“a”、“an”、“the”)、“少なくとも1つ”、および“1以上”は、互換性をもって用いられる。
【0026】
本明細書中で用いる用語“または”は、その使用の概念がそうではないことを明らかに示さない限り、一般に“および/または”を含む意味で用いられる。
【0027】
同様に本明細書中で、終末点による数値の引用は、その範囲内に含まれるすべての数値を含む(たとえば、1〜5は1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0028】
以上の概要は、開示した本発明のそれぞれの態様またはあらゆる実施形態を記載するためのものではない。以下の記述は具体的な態様をより詳細に例示する。本明細書全体において幾つかの箇所で例のリストにより指針を示し、それらの例は多様な組合わせで使用できる。それぞれの場合、示したリストは代表的なグループとして使われるものであり、完全なリストと解釈すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の医療用デバイスの態様の代表的な図である。
【図2】図2は、実施例4に記載したように、3つの異なる方法で製造した埋込型医療用デバイスのPLGAペレットからの塩酸クロニジンのインビトロ放出速度を比較するグラフである。実施例3からの第1配合物、すなわち粉砕して粉末にしたPLGA8515および製造業者から受け取ったまま使用した塩酸クロニジンを含有するものを三角形で表わし、第2配合物、すなわち粉砕したPLGA8515および実施例1からの噴霧乾燥した塩酸クロニジンを含有するものを四角形で表わし、第3配合物、すなわち実施例2からの噴霧乾燥した塩酸クロニジン/PLGA8515を含有するものを菱形で表わす。
【図3】図3a、3bおよび3cは、実施例3の記載に従ってToF−SIMSにより分析したポリマーペレット内における薬物分布を示す。図3aは、実施例2の記載に従って噴霧乾燥した塩酸クロニジン/PLGAを含有する、実施例3からの配合物を表わす。図3bは、実施例1の記載に従って噴霧乾燥した塩酸クロニジンおよび粉砕して粉末にしたPLGAを含有する、実施例3からの配合物を表わす。図3cは、粉砕して粉末にしたPLGAおよび製造業者から受け取ったまま使用した塩酸クロニジンを含有する、実施例3からの配合物を表わす。
【図4】図4は、実施例5で製造した薬物含有ペレットからの塩酸クロニジンのインビトロ放出速度を比較するグラフである。キャリヤーポリマーとしてPLGA8515を含有する実施例5からの配合物を白いデータ点で表わし、キャリヤーポリマーとしてPLAを含有する実施例5からの配合物を黒いデータ点で表わす。装填量20%の塩酸クロニジンを含有する配合物を三角形で表わし、装填量10%の塩酸クロニジンを含有する配合物を四角形で表わし、装填量5%の塩酸クロニジンを含有する配合物を菱形で表わす。
【図5】図5a、5b、5cおよび5dは、実施例5の記載に従ってToF−SIMSにより分析したポリマーペレット内における薬物分布を示す。図5aは、5%の塩酸クロニジンおよび95%のPLAを含有する配合物を表わし、図5bは、10%の塩酸クロニジンおよび90%のPLAを含有する配合物を表わし、図5cは、5%の塩酸クロニジンおよび95%のPLGA8515を含有する配合物を表わし、図5dは、10%の塩酸クロニジンおよび90%のPLGA8515を含有する配合物を表わす。
【図6】図6は、実施例7で製造した薬物含有ペレットからの塩酸クロニジンのインビトロ放出速度を比較するグラフである。キャリヤーポリマーとしてのPLA 95%および5マイクロメートル未満の粒度をもつ塩酸クロニジン5%を含有する実施例7からの配合物を四角形で表わす。キャリヤーポリマーとしてのPLA 95%および10ミクロン〜500ミクロンの粒度をもつ塩酸クロニジン5%を含有する実施例7からの配合物を三角形で表わす。
【図7】図7は、実施例7で製造した薬物を含有するペレットからの塩酸クロニジンのインビトロ放出速度を比較するグラフである。キャリヤーポリマーとしてのPLA 90%および5マイクロメートル未満の粒度をもつ塩酸クロニジン10%を含有する実施例7からの配合物を中空四角形で表わす。キャリヤーポリマーとしてのPLA 90%および10ミクロン〜500ミクロンの粒度をもつ塩酸クロニジン10%を含有する実施例7からの配合物を中空三角形で表わす。
【図8】図8は、ポリマー添加前の実施例7の配合物に関する粒度分布の棒グラフを示す。中空の棒は10〜50マイクロメートルのサイズのクロニジン粒子であり、陰影付き棒は5マイクロメートル未満のクロニジン粒度である。
【図9】図9は、実施例7で製造したポリマーペレット内の薬物分布を走査型電子顕微鏡写真により分析したものを示す。上左パネルは、キャリヤーポリマーとしてのPLA 95%および5マイクロメートル未満の粒度をもつ塩酸クロニジン5%を含有する配合物を表わす。下左パネルは、キャリヤーポリマーとしてのPLA 95%および10マイクロメートル〜50マイクロメートルの粒度をもつ塩酸クロニジン5%を含有する。上右パネルは、キャリヤーポリマーとしてのPLA 90%および5マイクロメートル未満の粒度をもつ塩酸クロニジン10%を含有する配合物を表わす。下右パネルは、キャリヤーポリマーとしてのPLA 90%および10マイクロメートル〜50マイクロメートルの粒度をもつ塩酸クロニジン5%を含有する。
【図10】図10は、ポリマー添加および噴霧乾燥の前の実施例3の配合物に関するクロニジン粒度分布の棒グラフを示す。中空の棒は噴霧乾燥した粉砕PLGA8515配合物中に用いた製造業者から受け取ったままのクロニジンの粒度であり、陰影付き棒は噴霧乾燥した粉砕PLGA8515配合物中に用いたクロニジンの粒度である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
少なくとも1種類の生物活性薬剤を含有するポリマーを含む医療用デバイスの1態様を図1に示す。図1は、医療用デバイス100が円筒形である態様を示す。ただし、医療用デバイス100は希望するいずれかの形状をもつことができ(たとえば、立方体、斜方体、円錐体、角錐体、球体、楕円体、四面体、ペレット、多面体、他の規則的形状、他の不規則的形状など)、その形状は一般にその医療用デバイスを使用する用途に依存することを理解すべきである。たとえば、図1に示す円筒形デバイスは整形外科用インプラント(たとえば薬物デポー剤)として使用できる。
【0031】
医療用デバイス100は、ポリマー10、好ましくは有機ポリマーを含む。ポリマー10は熱可塑性ポリマーまたは熱硬化性ポリマーであってもよい。ポリマー10は、結晶質、半結晶質または非晶質であってよく、好ましくは非晶質である。
【0032】
ポリマーは医療用デバイス中に約2〜99重量%、より詳細には約20〜95重量%、より詳細には約50〜95重量%、より詳細には約60〜95重量%、より詳細には約70〜95重量%、より詳細には約80〜95重量%、より詳細には約80〜90重量%の量で存在する。
【0033】
多様な態様において、医療用デバイス(たとえば薬物デポー剤)は生体吸収性(bioabsorbable)および/または生分解性(biodegradable)バイオポリマーを含むことができ、これらは生物活性薬剤の即時放出または持続放出をもたらすことができる。適切な持続放出バイオポリマーの例には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:ポリ(アルファ-ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGAまたはPLG)、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PG)、ポリ(アルファ−ヒドロキシ酸)のポリエチレングリコール(PEG)コンジュゲート、ポリオルトエステル、ポリアスピリン(polyaspirin)、ポリホスファゲン(polyphosphagene)、コラーゲン、デンプン、α化デンプン、ヒアルロン酸、キトサン、ゼラチン、アルギネート、アルブミン、フィブリン、ビタミンE類似体、たとえばアルファトコフェリルアセテート、d−アルファトコフェリルスクシネート、D,L−ラクチドもしくはL−ラクチド、,−カプロラクトン、デキストラン、ビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(PVA)、PVA−g−PLGA、PEGT−PBTコポリマー(ポリアクティブ(polyactive))、メタクリレート、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、PEO−PPO−PEO(プルロニック(pluronic))、PEO−PPO−PAAコポリマー、PLGA−PEO−PLGA、PEG−PLG、PLA−PLGA、ポロキサマー(poloxamer)407、PEG−PLGA−PEGトリブロックコポリマー、SAIB(スクロースアセテートイソブチレート)、またはその組合わせ。
【0034】
ポリマーは多孔質または非孔質であってよい。本明細書中で用いる“多孔質”は、少なくとも50%の気孔率、好ましくは少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくはさらに95%、またはそれ以上の気孔率をもつ物体を表わすために用いられる。本明細書中で用いる“非孔質”は、50%未満の気孔率、好ましくは最大で45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、もしくはさらに0%の気孔率をもつ物体を表わすために用いられる。本明細書中で用いる“気孔率(void volume)”は、占められていない空間を意味し、気孔率パーセントは試料の密度を完全緻密ポリマーの密度で割ることによって簡便に判定することができる。
【0035】
ポリマー10は、生体内安定性(biostable)または生分解性であってよい。本明細書中で用いる“生分解性”と“生物侵食性(bioerodible)”は互換性をもって用いられ、たとえば生理的環境に曝露された際に破壊される傾向をもつものを含めた材料を広く含むものとする。当技術分野で既知の生分解性および/または生物侵食性ポリマーには、たとえば線状脂肪族ポリエステルホモポリマー(たとえばポリグリコリド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、およびポリヒドロキシブチレート)およびコポリマー(たとえば、ポリ(グリコリド−co−ラクチド)、ポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)、ポリ(グリコリド−co−トリメチレンカーボネート)、ポリ(乳酸−co−リジン)、ポリ(ラクチド−co−ウレタン)、ポリ(エステル−co−アミド));ポリアンヒドリド;ポリケタール;およびポリ(オルトエステル)が含まれる。
【0036】
図1に示すように、生物活性薬剤20(点で示す)はポリマー10内に配置される。ポリマーは療法薬を保持するように示されている。本明細書中で用いる“配置”は、分散、溶解、懸濁、または他の形で少なくとも部分的にその内部または上に含有されることを含むと広く解釈すべきものとする。
【0037】
ポリマー10は、場合により、それに配置された第2の生物活性薬剤を含有することができる。ポリマー10中の第2の生物活性薬剤の濃度は、ポリマー10中の第1の生物活性薬剤の濃度と同一または異なる可能性がある。
【0038】
埋め込まれた医療用デバイスは、生物活性薬剤が長期間にわたって放出される溶出プロフィールをもたらす。たとえば、埋込型医療用デバイスを生理的条件下で対象に埋め込んだ後、20、30、40、50、60、70、80日後、および90日後ですら、溶出するのは生物活性薬剤の50%未満である。他の例として、医療用デバイスを生理的条件下で対象に埋め込んだ後、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110日後、および120日後ですら、溶出するのは生物活性薬剤の80%未満である。
【0039】
生物活性薬剤を図1に示す医療用デバイスのポリマー10中に多様な方法で配置することができる。たとえば、ポリマーの粒子と少なくとも1種類の生物活性薬剤を混和して混合物を調製し、この混合物を加工して、生物活性薬剤が内部に配置されたポリマー複合材料を得ることにより、デバイスを作成することができる。生物活性薬剤は医療用デバイス中に約1〜60重量%、より詳細には1〜20重量%、よりさらに詳細には8〜12重量%の量で存在する。
【0040】
ポリマー粒子は、当業者に既知の多様な方法により得ることができる。好ましくは、液体窒素を用いてポリマーを凍結することにより、および機械的ミリング装置を用いることにより、ポリマーを粉砕して要望するサイズの粒子を得ることができる。他の方法には、たとえばポリマーに対する非溶剤を用いる粒子の沈殿、噴霧乾燥、流動床コーティング、ホットメルト沈殿、および/または要望する粒度を達成しうる他の方法が含まれる。特定の態様において、ポリマー粒子は少なくとも10マイクロメートル、好ましくは少なくとも60マイクロメートルの平均サイズをもつ。特定の態様において、ポリマー粒子は最大で10マイクロメートル、好ましくは最大で100マイクロメートルの平均サイズをもつ。本明細書中で用いる粒度は、球状粒子の直径、および他の形状の粒子の最長寸法を表わす。
【0041】
生物活性薬剤を粒子として供給することができ、あるいは粉砕して少なくとも1種類の生物活性薬剤の粒子にすることができる。生物活性薬剤の粒子は当業者に既知の多様な方法により得ることができる。具体的な方法には、たとえば機械的操作(たとえば乳鉢と乳棒、乾式ミリング)、噴霧乾燥、ジェットミリング、凍結乾燥、溶剤沈殿、ホットメルト沈殿、流動床コーティング、超微粉砕、および/または要望する粒度を達成しうる他の方法が含まれる。好ましい態様においては、生物活性薬剤を噴霧乾燥する。特定の態様において、生物活性薬剤の粒子は少なくとも5マイクロメートル、好ましくは少なくとも10マイクロメートルの平均サイズをもつ。特定の態様において、生物活性薬剤の粒子は最大で50マイクロメートル、好ましくは最大で30マイクロメートルの平均サイズをもつ。特定の態様において、少なくとも60%、より詳細には少なくとも70%、より詳細には少なくとも80%、より詳細には少なくとも90%、よりさらに詳細には少なくとも95%の生物活性薬剤の粒子が、直径約1〜100マイクロメートル、より詳細には直径約5〜50マイクロメートル、より詳細には直径約10〜50マイクロメートル、より詳細には直径約10〜30マイクロメートル、よりさらに詳細には直径約10〜20マイクロメートルである。ある態様において、生物活性薬剤は約20〜約30マイクロメートルの粒度をもち、その際、少なくとも50%、より詳細には少なくとも70%、より詳細には少なくとも80%、より詳細には少なくとも90%、よりさらに詳細には少なくとも95%、より詳細には少なくとも99%の粒子がこのサイズ範囲にある。ある態様において、少なくとも50%、より詳細には少なくとも70%、より詳細には少なくとも80%、より詳細には少なくとも90%、よりさらに詳細には少なくとも95%、より詳細には少なくとも99%の粒子が、実質的に球状の形態、または球形、たとえば噴霧乾燥により達成できるものである。残りの粒子は非球形であってよい。本明細書中で用いる実質的に球状の形態には、表面に多数の突起および/または穴を含まない平滑な丸い形状の粒子が含まれる。実質的に球状の形態の例には、球形、回転楕円形、小球形、丸形などが含まれるが、これらに限定されない。非球形には、表面に多数の突起および/または穴をもつ不規則な形状の粒子が含まれる。そのような形状には方形、方形に近いもの、長方形、針、ロッド、フレークなどが含まれる。
【0042】
医療用デバイスは他の有効成分、界面活性剤、賦形剤、造影剤もしくは他の成分、またはその組合わせをも含有することができる。他の有効成分、界面活性剤、賦形剤、造影剤もしくは他の成分、またはその組合わせが配合物中にある場合、ある態様において、これら他の化合物またはその組合わせは医療用デバイスの20重量%未満、19重量%未満、18重量%未満、17重量%未満、16重量%未満、15重量%未満、14重量%未満、13重量%未満、12重量%未満、11重量%未満、10重量%未満、9重量%未満、8重量%未満、7重量%未満、6重量%未満、5重量%未満、4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、または0.5重量%未満を構成する。
【0043】
次いで、ポリマーの粒子および少なくとも1種類の生物活性薬剤の粒子を混合することができる。好ましい混合方法には、溶剤の使用を必要としないもの、たとえば乾式混合(たとえば乳鉢と乳棒の使用)が含まれる。湿式混合法も、要望する粒度範囲を含みかつ許容できる残留溶剤レベルをもつ均一な最終乾燥混合物がそれらにより生成する限り、採用できる。
【0044】
次いで、ポリマーの粒子および少なくとも1種類の生物活性薬剤の粒子の混合物を加工(たとえば溶融)および付形することができる。混合物は、混合物の加熱、混合物の加圧、または両方により加工することができる。医療用デバイスを作成するための加工法には、成形法(たとえば射出成形、回転成形など)、押出し法(たとえば押出し、同時押出し、多層押出しなど)およびキャスティングが含まれる。熱可塑性材料を用いる場合、粒子混合物を加熱することにより溶融混合物を調製し、これを場合により種々の添加剤、たとえば賦形剤と混合して、溶融混合物にすることができる。材料をこの様式で混合することができる装置には、たとえば一軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、バンバリーミキサー、高速ミキサー、ロスケトル(ross kettle)などの装置が含まれる。
【0045】
場合により、混合物を型に装入し、加熱、加圧または両方により、混合物を加工することができる。混合物を粒子が互いに溶融および/または融着するのに十分な温度に加熱することができる。
【0046】
粒子が互いに溶融および/または融着するのに十分な具体的温度は、当業者が容易に判定することができ、一般に、たとえばポリマーの転移温度(たとえばガラス転移温度、T、および/または結晶融解温度)および分子量を含めた、ポリマー粒子のポリマー特性に特に依存するであろう。たとえば、粒子が互いに溶融および/または融着するのに十分な温度は、一般にポリマーのTより20℃高くてよい。同様な方法でポリマー粒子を加工して医療用デバイスの他のセクションを得ることができ、それらには生物活性薬剤が配置されていてもよく、配置されていなくてもよい。
【0047】
次いでこの溶融混合物から医療用デバイスを形成する。型を用いる態様においては、デバイスは型内で形成される。押出機を用いる態様においては、混合物を押し出していずれかの要望する幾何学的形状にすることができ、次いで要望する長さに切断することができる。押し出されたセクションは医療用デバイスであってもよく、あるいは医療用デバイスの1構成要素であってもよく、次いでこれを他の構成要素と組み合わせることができる。具体的には、混合物をダイから押し出して、直径および長さに関して要望する寸法をもつある幾何学的形状、たとえば円筒を作成する。
【0048】
あるいは、当技術分野で既知の方法によりデバイスを作成することができる。たとえば、ポリマーおよび/または生物活性薬剤を溶剤に溶解、分散または懸濁し、続いて溶剤を除去することができる;ただし、薬物は薬物に溶解しない。
【0049】
本明細書中で用いる“生物活性薬剤”は、生物系、たとえば生細胞、組織、臓器および生物において応答を誘発することができるいずれかの薬剤であると広く解釈すべきものとする。生物活性薬剤には天然薬剤および/または合成薬剤を含めることができる。したがって生物活性薬剤は、対象において疾患の診断、治癒、緩和、治療もしくは予防、または要望する身体的もしくは精神的発達および状態の増進のために用いることを意図する、いずれかの物質を含むものとする。本明細書中で用いる用語“対象”は、ヒト、ヒツジ、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ラット、マウス、鳥類、爬虫類、魚類、昆虫類、クモ類、原生生物(たとえば原虫)、および原核細菌を含むと解釈される。好ましくは、対象はヒトまたは他の哺乳動物である。
【0050】
好ましいクラスの生物活性薬剤には薬物が含まれる。本明細書中で用いる用語“薬物”は、いずれかの療法薬を意味する。適切な薬物には、限定ではないが、無機薬物および有機薬物が含まれ、末梢神経、アドレナリン受容体、コリン受容体、神経系、骨格筋、心血管系、平滑筋、血液循環系、シナプス部位、神経−効果器接合部位、内分泌系、ホルモン系、免疫系、生殖器系、骨格系、オートコイド系、消化器系および排出系(泌尿器系を含む)、ヒスタミン系などに対して作用する薬物が含まれる。本明細書に開示する組成物を用いて、そのような状態その他を有利に処置することができる。
【0051】
適切な薬物には、たとえばポリペプチド(これは本明細書中でL−またはD−アミノ酸のいずれかの長さのポリマーを包含するために用いられ、これにはペプチド、オリゴペプチド、タンパク質、酵素、ホルモンなどが含まれる)、ポリヌクレオチド(これは本明細書中で核酸のいずれかの長さのポリマーを包含するために用いられ、これにはオリゴヌクレオチド、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖および二本鎖RNA、DNA/RNAキメラなどが含まれる)、糖類(たとえば、単糖類、二糖類、多糖類、およびムコ多糖類)、ビタミン、ウイルス性薬剤、および他の生物材料、放射性核種などが含まれる。例には下記のものが含まれる:抗血栓形成薬および抗凝固薬、たとえばヘパリン、クマジン、プロタミンおよびヒルジン;抗菌薬、たとえば抗生物質;抗新生物薬および抗増殖薬、たとえばエトポシド(etoposide)、ポドフィロトキシン(podophylotoxin);抗血小板薬:アスピリンおよびジピリダモール(dipyridamole)を含む;細胞分裂抑制薬(細胞毒)および代謝拮抗薬、たとえばメトトレキセート(methotrexate)、コルヒチン(colchicine)、アザチオプリン(azathioprine)、ビンクリスチン(vincristine)、ビンブラスチン(vinblastine)、フルオロウラシル(fluorouracil)、アドリアマイシン(adriamycin)、およびミュータマイシン(mutamycin)核酸;抗糖尿病薬、たとえばマレイン酸ロシグリタゾン(rosiglitazone maleate);ならびに抗炎症薬。本発明に用いるための抗炎症薬には、グルココルチコイド類、それらの塩類およびそれらの誘導体、たとえばコルチゾール(cortisol)、コルチゾン(cortisone)、フルドロコルチゾン(fludrocortisone)、プレドニゾン(Prednisone)、プレドニゾロン(Prednisolone)、6α−メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン(triamcinolone)、ベタメタゾン(betamethasone)、デキサメタゾン(dexamethasone)、ベクロメタゾン(beclomethasone)、アクロメタゾン(aclomethasone)、アムシノニド(amcinonide)、クレベタゾール(clebethasol)、およびクロコルトロン(clocortolone)が含まれる。
【0052】
好ましいクラスの薬物には、たとえばプラスミドDNA、遺伝子、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび他のアンチセンス薬剤、ペプチド、タンパク質、タンパク質類似体、siRNA、shRNA、miRNA、リボザイム、DNA酵素、および他のDNAベースの薬剤、ウイルスベクターおよび非ウイルスベクター、リポゾーム、細胞、幹細胞、抗新生物薬、抗増殖薬、抗血栓形成薬、抗凝固薬、抗血小板薬、抗生物質、抗炎症薬、細胞分裂抑制薬、免疫抑制薬、増殖因子、サイトカイン、ホルモン、およびその組合わせが含まれる。好ましい薬物の例は、骨形態形成タンパク質(BMP)であり、たとえば組換えヒト骨形態形成タンパク質(rhBMP−2)が含まれる。
【0053】
適切な薬物は下記を含めた多様な用途をもつことができるが、これらに限定されない:抗痙攣薬、鎮痛薬、抗パーキンソン病薬、抗炎症薬(たとえばイブプロフェン(ibuprofen)、フェンブフェン(fenbufen)、コルチゾン(cortisone)など)、カルシウムアンタゴニスト、麻酔薬(たとえばベノキシネート(benoxinate)、ベンゾカイン(benzocaine)、プロカイン(procaine)など)、抗生物質(たとえばシプロフロキサシン(ciprofloxacin)、ノルフロキサシン(norfloxacin)、クロフォクトール(clofoctol)など)、抗マラリア薬、駆虫薬、抗高血圧症薬、抗ヒスタミン薬、解熱薬、アルアァ−アドレナリンアゴニスト、アルアァ−遮断薬、殺菌薬、抗菌薬、気管支拡張薬、ベータ−アドレナリン遮断薬、避妊薬、心血管薬、カルシウムチャンネル阻害薬、抑制薬、診断薬、利尿薬、電解質、酵素、催眠薬、ホルモン、血糖降下薬、血糖上昇薬、筋収縮薬、筋弛緩薬、抗新生物薬、糖タンパク質、核タンパク質、リポタンパク質、眼薬、精神興奮薬、鎮静薬、ステロイド類、交感神経様作用薬、副交感神経様作用薬、精神安定薬、尿路薬、ワクチン、膣薬、ビタミン、コラーゲン、ヒアルロン酸、非ステロイド系抗炎症薬、アンギオテンシン変換酵素、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、多糖類など。
【0054】
特定の好ましい態様は、下記からなる群から選択される薬物を含む:インドメタシン(indomethacin)、スリンダク(sulindac)、ジクロフェナル(diclofenal)、エトドラク(etodolac)、メクロフェネート(meclofenate)、メフェナム酸(mefenamic acid)、ナムブネトン(nambunetone)、ピロキシカム(piroxicam)、フェニルグタゾン(phenylgutazone)、メロキシカム(meloxicam)、デキサメタゾン(dexamethoasone)、ベタメタゾン(betamethasone)、ジプロピオネート(dipropionate)、二酢酸ジフロルサゾン(diflorsasone diacetate)、プロピオン酸クロベタゾール(clobetasol propionate)、プロピオン酸ガロベタゾール(galobetasol propionate)、アムシノミド(amcinomide)、二プロピオン酸ベクロメタゾン(beclomethasone dipropionate)、フロオシノミド(fluocinomide)、吉草酸ベタメタゾン(betamethasone valerate)、トリアムシノロンアセトニド(triamcinolone acetonide)、ペニシラミン(penicillamine)、ヒドロキシクロロキン(hydroxychloroquine)、スルファサラジン(sulfasalazine)、アザチオプリン(azathioprine)、ミノサイクリン(minocycline)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)、メトトレキセート(methotrexate)、サイクロスポリン(cyclosporine)、レフルノミド(leflunomide)、エタネルセプト(etanercept)、インフィキシマブ(infliximab)、アスコマイシン(ascomycin)、ベータ−エストラジオール(beta-estradiol)、ロシグリタゾン(rosiglitazone)、トログリタゾン(troglitazone)、ピオグリタゾン(pioglitazone)、S−ニトロソグルタチオン(S-nitrosoglutathione)、グリオトキシンG(gliotoxin G)、パネポキシドン(panepoxydone)、シクロエポキシドンテポキサリン(cycloepoxydon tepoxalin)、クルクミン(curcumin)、プロテアソーム阻害薬(たとえばボルテゾミブ(bortezomib)、ジペプチドボロン酸(dipeptide boronic acid)、ラクタシスチン(lactacystin)、ビスホスホネート(bisphosphonate)、ゾレンドロネート(zolendronate)、エポキソマイシン(epoxomicin))、アンチセンスc−myc、セレコキシブ(celocoxib)、バルデコキシブ(valdecoxib)、またはその組合わせ。
【0055】
特定の好ましい態様は、下記からなる群から選択される薬物を含む:ポドフィロトキシン(podophyllotoxin)、ミコフェノール酸(mycophenolic acid)、テニポシド(teniposide)、エトポシド(etoposide)、trans−レチノイン酸(trans-retinoic acids)、9−cisレチノイン酸、13−cisレチノイン酸、ラパマイシン(rapamycin)、ラパログ(rapalog)(たとえばエベロリムス(Everolimus)、ABT−578)、カンプトテシン(camptothecin)、イリノテカン(irinotecan)、トポテカン(topotecan)、タクロミルス(tacromilus)、ミトラマイシン(mithramycin)、ミトブロニトール(mitobronitol)、チオテパ(thiotepa)、トレオスルファン(treosulfan)、エストラムスティング(estramusting)、クロルメチン(chlormethine)、カルムスチン(carmustine)、ロムスチン(lomustine)、ブスルタン(busultan)、メファラン(mephalan)、クロラムブシル(chlorambucil)、イホスファミド(ifosfamide)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)、ドキソルビシン(doxorubicin)、エピルビシン(epirubicin)、アクラルビシン(aclarubicin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ミトサントロン(mitosanthrone)、ブレオマイシン(bleomycin)、セペシタビン(cepecitabine)、シタラビン(cytarabine)、フルダラビン(fludarabine)、クラドリビン(cladribine)、ゲムタビン(gemtabine)、5−フルオロウラシル(5-fluorouracil)、メルカプトプリン(mercaptopurine)、チオグアニン(tioguanine)、ビンブラスチン(vinblastine)、ビンクリスチン(vincristine)、ビンデシン(vindesine)、ビノレルビン(vinorelbine)、アムサクリン(amsacrine)、ベキサロテン(bexarotene)、クリサンタスパス(crisantaspase)、デカルバシン(decarbasine)、ヒドロシカルバミド(hydrosycarbamide)、ペントスタチン(pentostatin)、カルボプラチン(carboplatin)、シスプラチン(cisplatin)、オキシプラチン(oxiplatin)、プロカルバジン(procarbazine)、パクリタキセル(paclitaxel)、ドセタキセル(docetaxel)、エポチロンA(epothilone A)、エポチロンB、エポチロンD、バキシリキシマブ(baxiliximab)、ダクリズマブ(daclizumab)、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、メイタンシン(maytansine)、およびその組合わせ。
【0056】
特定の好ましい態様は、下記からなる群から選択される薬物を含む:サリチル酸、フェンブフェン(fenbufen)、コルチゾン(cortisone)、イブプロフェン(ibuprofen)、ジフルニサール(diflunisal)、スリンダク(sulindac)、ジフルプレドネート(difluprednate)、プレドニゾン(prednisone)、メドリゾン(medrysone)、アセマタシン(acematacin)、インドメタシン(indomethacin)、メロキシカム(meloxicam)、カンプトテシン(camptothecin)、ベノキシネート(benoxinate)、ベンゾカイン(benzocaine)、プロカイン(procaine)、シプロフロキサシン(ciprofloxacin)、ノルフロキサシン(norfloxacin)、クロフォクトール(clofoctol)、デキサメタゾン(dexamethasone)、フロオシノロン(fluocinolone)、ケトロラク(ketorolac)、ペントキシフィリン(pentoxifylline)、ラパマイシン(rapamycin)、ABT−578、ガパペンチン(gabapentin)、バクロフェン(baclofen)、スルファサラジン(sulfasalazine)、ブピバカイン(bupivacaine)、スリンダク(sulindac)、クロニジン(clonidine)、エタネルセプト(etanercept)、ペグスネルセプト(pegsunercept)、またはその組合わせ。
【0057】
以下のタイトルは開示内容を決して限定するためのものではない;いずれかのタイトル下の態様を他のいずれかのタイトル下の態様と組み合わせて使用できる。
【0058】
クロニジン
1態様において、生物活性薬剤はクロニジン(clonidine)を含む。クロニジンに言及する場合、別途明記しない限り、または状況から明らかでない限り、本発明者らはクロニジンの医薬的に許容できる塩または誘導体にも言及していると理解される。クロニジンについて周知である市販塩の例のひとつは、それの塩酸塩である。医薬的に許容できる有望な塩類の他の若干例には、実質的にその化合物の毒性を増大させない塩を形成する酸および塩基の塩、たとえばアルカリ金属、たとえばマグネシウム、カリウムの塩、およびアンモニウム塩、鉱酸、たとえば、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸および硫酸の塩、ならびに有機酸、たとえば酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、グロン酸、コハク酸、アリールスルホン酸、たとえばp−トルエンスルホン酸の塩などが含まれる。
【0059】
さらに、クロニジンに言及する場合、有効成分は塩形だけでなく、塩基形(すなわち遊離塩基)であってもよい。多様な態様において、それが塩基形である場合、それをPLGAまたはPLAについて行われる可能性のある熱加工または溶剤加工に際してみられる場合がある著しいポリマー分解が生じない条件下で、ポリマーと組み合わせることができる。限定ではないが、たとえばクロニジンにポリ(オルトエステル)を配合する場合、クロニジン塩基配合物を用いるのが望ましい可能性がある。これに対し、クロニジンにPLGAを配合する場合、塩酸塩形を用いるのが望ましい可能性がある。
【0060】
1態様において、クロニジンは2,6−ジクロロ−N−2−イミダゾリジニルデンベンズアミドである。クロニジンまたはその医薬的に許容できる塩は、種々の製薬業者から入手できる。
【0061】
投与量は約0.0005から約900μg/日までであってよい。さらにクロニジンの投与量には下記のものが含まれる:約0.0005から約900μg/日まで;約0.0005から約500μg/日まで;約0.0005から約250μg/日まで;約0.0005から約100μg/日まで;約0.0005から約75μg/日まで;約0.001から約70μg/日まで;約0.001から約65μg/日まで;約0.001から約60μg/日まで;約0.001から約55μg/日まで;約0.001から約50μg/日まで;約0.001から約45μg/日まで;約0.001から約40μg/日まで;約0.001から約35μg/日まで;約0.0025から約30μg/日まで;約0.0025から約25μg/日まで;約0.0025から約20μg/日まで;約0.0025から約15μg/日まで;約0.0025から約10μg/日まで;約0.0025から約5μg/日まで;約0.0025から約2.5μg/日まで。他の態様において、クロニジンの投与量は約0.005から約15μg/日までである。他の態様において、クロニジンの投与量は約0.005から約10μg/日までである。他の態様において、クロニジンの投与量は約0.005から約5μg/日までである。他の態様において、クロニジンの投与量は約0.005から2.5μg/日までである。他の態様において、クロニジンの量は40〜600μg/日である。他の態様において、クロニジンの量は200〜400μg/日である。
【0062】
多様な態様において、下記のものを含む医薬配合物が提供される:クロニジン、その際、クロニジンは配合物の約1重量%から約20重量%までを構成する;および少なくとも1種類の生分解性ポリマー。ある態様において、クロニジンは配合物の約3重量%から20約重量%まで、約3重量%から約18重量%まで、約5重量%から約15重量%まで、約7.5重量%から約12.5重量%までを構成する。たとえば、5%〜15%クロニジン組成物を用いる場合、267グラム/モル比をもつ約80キロダルトンのポリマーを使用する際には、クロニジンとポリマーのモル比は約16〜52であろう。
【0063】
ある態様において、少なくとも1種類の生分解性ポリマーはポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)もしくはポリ(オルトエステル)(POE)またはその組合わせを含む。ポリ(ラクチド−co−グリコリド)は、ポリグリコリド(PGA)とポリラクチドの混合物を含むことができ、ある態様においてはこの混合物中にポリグリコリドよりポリラクチドがより多量にある。多様な態様において、100%のポリラクチドおよび0%のポリグリコリド;95%のポリラクチドおよび5%のポリグリコリド;90%のポリラクチドおよび10%のポリグリコリド;85%のポリラクチドおよび15%のポリグリコリド;80%のポリラクチドおよび20%のポリグリコリド;75%のポリラクチドおよび25%のポリグリコリド;70%のポリラクチドおよび30%のポリグリコリド;65%のポリラクチドおよび35%のポリグリコリド;60%のポリラクチドおよび40%のポリグリコリド;55%のポリラクチドおよび45%のポリグリコリド;50%のポリラクチドおよび50%のポリグリコリド;45%のポリラクチドおよび55%のポリグリコリド;40%のポリラクチドおよび60%のポリグリコリド;35%のポリラクチドおよび65%のポリグリコリド;30%のポリラクチドおよび70%のポリグリコリド;25%のポリラクチドおよび75%のポリグリコリド;20%のポリラクチドおよび80%のポリグリコリド;15%のポリラクチドおよび85%のポリグリコリド;10%のポリラクチドおよび90%のポリグリコリド;5%のポリラクチドおよび95%のポリグリコリド;ならびに0%のポリラクチドおよび100%のポリグリコリドがある。
【0064】
ポリラクチドとポリグリコリドの両方を含む多様な態様において、少なくとも95%のポリラクチド;少なくとも90%のポリラクチド;少なくとも85%のポリラクチド;少なくとも80%のポリラクチド;少なくとも75%のポリラクチド;少なくとも70%のポリラクチド;少なくとも65%のポリラクチド;少なくとも60%のポリラクチド;少なくとも55%;少なくとも50%のポリラクチド;少なくとも45%のポリラクチド;少なくとも40%のポリラクチド;少なくとも35%のポリラクチド;少なくとも30%のポリラクチド;少なくとも25%のポリラクチド;少なくとも20%のポリラクチド;少なくとも15%のポリラクチド;少なくとも10%のポリラクチド;または少なくとも5%のポリラクチドがある;バイオポリマーの残りはポリグリコリドである。
【0065】
ある態様において、下記のものを含む医薬配合物が提供される:クロニジン、その際、クロニジンは塩酸塩の形であり、配合物の約1重量%から約20重量%までを構成する;および少なくとも1種類の生分解性ポリマー、その際、少なくとも1種類の生分解性ポリマーはポリ(ラクチド−co−グリコリド)(またはポリ(乳酸−co−グリコール酸))もしくはポリ(オルトエステル)またはその組合わせを含み、この少なくとも1種類の生分解性ポリマーは配合物の少なくとも80%を構成する。
【0066】
ある態様において、クロニジンの装填量は約5重量%から約10重量%までである。ある態様において、この装填量は約10重量%から約20重量%までである。
【0067】
ある態様においては、より高いクロニジン装填量、たとえば少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%がある。
【0068】
ある態様において、配合物はわずかに剛性であり、種々の長さ、幅、直径などをもつ。たとえば、特定の配合物は0.50mmの直径および4mmの長さをもつことができる。
【0069】
ある態様において、クロニジンは2〜3μg/日の速度で少なくとも3日間放出される。ある態様において、この放出速度は少なくとも10日間、少なくとも15日間、少なくとも25日間、少なくとも50日間、少なくとも90日間、少なくとも100日間、少なくとも135日間、少なくとも150日間、または少なくとも180日間、持続する。ある態様については、バイオポリマーを配合した300〜425マイクログラムのクロニジンをある者の標的組織またはその付近に埋め込む。標的部位を三角法で定める(triangulate)複数の部位にクロニジンを埋め込む場合、ある態様において各部位におけるクロニジンの全量は全量300〜425マイクログラムの一部である。たとえば、1つの部位に324マイクログラムの単一量を、またはその組織部位を三角法で定める2つの部位に162マイクログラムの2つの別個の量を、または3つの部位に108マイクログラムの3つの別個の量を埋め込むことができる。生物に対して有害な量未満に全量を制限することが重要である。しかし、ある態様において、複数の部位がある場合に各部位は単一適用で投与する可能性のある全量より少量を含むことができるが、各部位は独立して放出プロフィールをもち、したがって持続放出が十分な期間にわたって確実に行なわれるようにバイオポリマーの濃度および物質を調整すべきであることを覚えておくのが重要である。
【0070】
ある態様においては、クロニジンまたは塩酸クロニジンおよびポリマーを含む薬物デポー剤が提供され、その際、ポリマーは多様な態様のうち1以上であり、薬物デポー剤はポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、D−ラクチド、D,L−ラクチド、L−ラクチド、D,L−ラクチド−ε−カプロラクトン、D,L−ラクチド−グリコリド−ε−カプロラクトン、またはその組合わせを含む。
【0071】
複数のペレットを用いる場合、ペレット数は、適切なサイズのペレット(たとえば直径0.5mm×長さ4mm)中に装填する薬物の量、および薬物の必要量を基準とする(たとえば325μgのクロニジン(3ペレット))。ある態様において、ポリマーはボーラス量の化合物を最初の数日間(約5日間)にわたって放出し、それがおさまった後にクロニジンを135日間放出する。
【0072】
ある態様において、本発明のポリマーデポー剤は、2.5倍を超える薬物を送達する皮下注射と同等な有効成分の有効性を提供することができる。
【0073】
フルオシノロン
1態様において、医療用デバイスは抗炎症薬を含み、これはフルオシノロン(fluocinolone)またはその医薬的に許容できる塩、たとえばアセトニド塩を含む。フルオシノロンは、種々の製薬業者から入手できる。フルオシノロンの投与量は約0.0005から約100μg/日までであってよい。さらにフルオシノロンの投与量には下記のものが含まれる:約0.0005から約50μg/日まで;約0.0005から約25μg/日まで;約0.0005から約10μg/日まで;約0.0005から約5μg/日まで;約0.0005から約1μg/日まで;約0.0005から約0.75μg/日まで;約0.0005から約0.5μg/日まで;約0.0005から約0.25μg/日まで;約0.0005から約0.1μg/日まで;約0.0005から約0.075μg/日まで;約0.0005から約0.05μg/日まで;約0.001から約0.025μg/日まで;約0.001から約0.01μg/日まで;約0.001から約0.0075μg/日まで;約0.001から約0.005μg/日まで;約0.001から約0.025μg/日まで;および約0.002μg/日。他の態様において、フルオシノロンの投与量は約0.001から約15μg/日までである。他の態様において、フルオシノロンの投与量は約0.001から約10μg/日までである。他の態様において、フルオシノロンの投与量は約0.001から約5μg/日までである。他の態様において、フルオシノロンの投与量は約0.001から2.5μg/日までである。ある態様において、フルオシノロンの量は40〜600μg/日である。ある態様において、フルオシノロンの量は200〜400μg/日である。
【0074】
デキサメタゾン
1態様において、医療用デバイスは抗炎症薬を含み、これはデキサメタゾン(dexamethasone)遊離塩基または酢酸デキサメタゾンを含み、(8S,9R,10S,11S,13S,14S,16R,17R)−9−フルオロ−11,17−ジヒドロキシ−17−(2−ヒドロキシアセチル)−10,13,16−トリメチル−6,7,8,11,12,14,15,16オクタヒドロシクロペンタ[a]−フェナントレン−3−オンとも呼ばれ、またはその医薬的に許容できる塩であり、これは種々の製造業者から入手できる。
【0075】
多様な態様において、デキサメタゾンはデポー剤から約10pg〜約80mg/日、約2.4ng/日〜約50mg/日、約50ng/日〜約2.5mg/日、約250ng/日〜約250ug/日、約250ng/日〜約50ug/日、約250ng/日〜約25ug/日、約250ng/日〜約1ug/日、約300ng/日〜約750ng/日、または約0.50ug/日の量で放出することができる。多様な態様において、投与量は約0.01〜約10μg/日、または約1ng〜約120μg/日である。
【0076】
例示態様のひとつにおいて、デキサメタゾンはリン酸デキサメタゾンナトリウムである。
【0077】
GED
1態様において、医療用デバイスは療法薬であるGED(グアニジノエチルジスルフィド)を含み、これは抗炎症性をもつ誘導性一酸化窒素シンターゼ阻害薬である。GEDはそれの炭酸水素塩形であってもよい。
【0078】
GEDの投与量は約0.0005μg/日から約100mg/日までであってよい。さらにGEDの投与量には下記のものが含まれる:約0.0005μg/日から約50mg/日まで;約0.0005μg/日から約10mg/日まで;約0.0005μg/日から約1mg/日まで;約0.0005から約800μg/日まで;約0.0005から約50μg/日まで;約0.001から約45μg/日まで;約0.001から約40μg/日まで;約0.001から約35μg/日まで;約0.0025から約30μg/日まで;約0.0025から約25μg/日まで;約0.0025から約20μg/日まで;および約0.0025から約15μg/日まで。他の態様において、GEDの投与量は約0.005から約15μg/日までである。他の態様において、GEDの投与量は約0.005から約10μg/日までである。他の態様において、GEDの投与量は約0.005から約5μg/日までである。他の態様において、GEDの投与量は約0.005から約2.5μg/日までである。ある態様において、GEDの量は40〜600μg/日である。ある態様において、GEDの量は200〜400μg/日である。
【0079】
例示態様のひとつにおいて、GEDの投与量は0.5〜4mg/日である。他の例示態様において、GEDの投与量は0.75〜3.5mg/日である。
【0080】
ロバスタチン
1態様において、医療用デバイスは抗炎症薬を含み、これはロバスタチン(lovastatin)を含む。ロバスタチンは、種々の製造業者から多様な形態(たとえば注射剤、散剤など)で入手できるスタチンである。たとえば、ロバスタチンはMerckからMevacor(登録商標)として得ることができる(参照:U.S.Pat.No.4,231,938;その開示内容全体を本明細書に援用する)。ロバスタチンの医薬的に許容できる適切な塩類には、たとえば下記の塩基から誘導される1種類以上の化合物が含まれる:水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、1−デオキシ−2−(メチルアミノ)−D−グルシトール、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化鉄(II)もしくは水酸化鉄(III)、水酸化アンモニウム、または有機アミン、たとえばN−メチルグルカミン、コリン、アルギニンなど、またはその組合わせ。ロバスタチンの医薬的に許容できる適切な塩類には、たとえばそのリチウム、カルシウム、ヘミカルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄(II)もしくは鉄(III)塩、またはその組合わせが含まれる。
【0081】
多様な態様において、療法有効量のロバスタチンは、1日当たり約0.1pgから約2000mgまで、たとえば0.1ngから1000mg、500mg、100mg、50mg、25mg、10mg、1mg、50μg、25μg、10μg、1μg、500ng、250ng、100ng、75ng、50ng、25ng、15ng、10ng、5ng、または1ngまでのロバスタチンを含む。多様な態様において、投与量はたとえば約3ng/日から0.3μg/日までであってもよい。
【0082】
モルヒネ
1態様において、医療用デバイスは鎮痛薬を含み、これはモルヒネ(morphine)を含む。モルヒネは(5α,6α)−7,8−ジデヒドロ−4,5−エポキシ−17−メチルモルフィナン−3,6−ジオールとも呼ばれ、化学式C1719NOをもつ。モルヒネおよびその医薬的に許容できる塩は、種々の製造業者から入手できる。例示態様のひとつにおいて、モルヒネは硫酸モルヒネまたは塩酸モルヒネを含む。
【0083】
モルヒネの投与量は、1日当たり0.1mgから1000mgまでであってよい。たとえば、モルヒネの投与量は、たとえば1日当たり0.1mg〜2mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mg、200mgのモルヒネであってもよい。
【0084】
トラマドール
1態様において、医療用デバイスは鎮痛薬を含み、これはトラマドール(tramadol)を含む。トラマドールは(±)シス−2−[(ジメチルアミノ)メチル]−1−(3−メトキシフェニル)シクロヘキサノール塩酸塩であり、化学式C1625NOをもつ。トラマドールまたはその医薬的に許容できる塩は、種々の製造業者から入手できる。多様な態様において、塩酸トラマドールを用いた。
【0085】
トラマドールの投与量は、1日当たり0.01mgから500mgまでであってよい。たとえば、トラマドールの投与量は、たとえば1日当たり0.1mg〜2mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mg、200mg、または500mgのトラマドールであってもよい。
【0086】
1態様において、薬物デポー剤は2.5〜30mg/kg/日を放出するのに十分なトラマドールを含有する。他の態様において、薬物デポー剤は3〜27.5mg/kg/日を放出するのに十分なトラマドールを含有する。
【0087】
多様な態様において、デポー剤は、少なくとも1種類の鎮痛薬および少なくとも1種類の抗炎症薬の即時放出または持続放出をもたらすことができる生体吸収性および/または生分解性バイオポリマーを含むことができる。適切な持続放出バイオポリマーの例には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:ポリ(アルファ-ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGAまたはPLG)、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PG)、ポリ(アルファ−ヒドロキシ酸)のポリエチレングリコール(PEG)コンジュゲート、ポリオルトエステル、ポリアスピリン(polyaspirin)、ポリホスファゲン(polyphosphagene)、コラーゲン、デンプン、α化デンプン、ヒアルロン酸、キトサン、ゼラチン、アルギネート、アルブミン、フィブリン、ビタミンE類似体、たとえばアルファトコフェリルアセテート、d−アルファトコフェリルスクシネート、D,L−ラクチドもしくはL−ラクチド、,−カプロラクトン、デキストラン、ビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(PVA)、PVA−g−PLGA、PEGT−PBTコポリマー(ポリアクティブ)、メタクリレート、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、PEO−PPO−PEO(プルロニック)、PEO−PPO−PAAコポリマー、PLGA−PEO−PLGA、PEG−PLG、PLA−PLGA、ポロキサマー407、PEG−PLGA−PEGトリブロックコポリマー、SAIB(スクロースアセテートイソブチレート)、またはその組合わせ。当業者に自明のとおり、mPEGをPLGAの可塑剤として使用できるが、他のポリマー/賦形剤を用いて同じ効果を達成できる。mPEGは、得られる配合物に展性を付与する。
【0088】
多様な態様において、医療用デバイス(たとえば薬物デポー剤)は、少なくとも1種類の鎮痛薬および少なくとも1種類の抗炎症薬の即時放出または持続放出をもたらすことができる生体吸収性および/または生分解性バイオポリマーを含むことができる。適切な持続放出バイオポリマーの例には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:ポリ(アルファ-ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGAまたはPLG)、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PG)、ポリ(アルファ−ヒドロキシ酸)のポリエチレングリコール(PEG)コンジュゲート、ポリオルトエステル、ポリアスピリン、ポリホスファゲン、コラーゲン、デンプン、α化デンプン、ヒアルロン酸、キトサン、ゼラチン、アルギネート、アルブミン、フィブリン、ビタミンE類似体、たとえばアルファトコフェリルアセテート、d−アルファトコフェリルスクシネート、D,L−ラクチドもしくはL−ラクチド、,−カプロラクトン、デキストラン、ビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(PVA)、PVA−g−PLGA、PEGT−PBTコポリマー(ポリアクティブ)、メタクリレート、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、PEO−PPO−PEO(プルロニック)、PEO−PPO−PAAコポリマー、PLGA−PEO−PLGA、PEG−PLG、PLA−PLGA、ポロキサマー407、PEG−PLGA−PEGトリブロックコポリマー、SAIB(スクロースアセテートイソブチレート)、またはその組合わせ。当業者に自明のとおり、mPEGをPLGAの可塑剤として使用できるが、他のポリマー/賦形剤を用いて同じ効果を達成できる。
【0089】
薬物は、結晶質、半結晶質または非晶質、好ましくは結晶質であってよい。
【0090】
医療用デバイス(たとえば埋込型医療用デバイス)は、広範なポリマーを用いて製造できる。好ましいポリマーには下記を含めることができるが、これらに限定されない:ポリウレタン(たとえばポリエーテル−ウレタン、ポリエステル−ウレタン、およびポリカプロラクトン−ウレタン)、ポリウレア、ポリウレタン−ウレア、ポリエステル(たとえばポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスルホン、ポリイミド、ポリアミド、エポキシ、ポリアセタール、ポリケタール、ポリ(オルトエステル)、ビニルポリマー、ポリアンヒドリド、ポリトリアゾール、シリコーンゴム、天然ゴム、ゴムラテックス、合成ゴム、ポリエーテル−ポリアミドブロックコポリマー、ポリエステル−ポリエーテルブロックコポリマー、ならびにその組合わせおよび/またはコポリマー。ポリエステルの例には、たとえば線状脂肪族ポリエステルホモポリマー(たとえばポリグリコリド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、およびポリヒドロキシブチレート)およびコポリマー(たとえば、ポリ(グリコリド−co−ラクチド)、ポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)、ポリ(グリコリド−co−トリメチレンカーボネート)、ポリ(乳酸−co−リジン)、ポリ(ラクチド−co−ウレタン)、ポリ(エステル−co−アミド))が含まれる。ポリエチレングリコールホモポリマーおよびコポリマーは、同様に単独で、または前記の他のいずれかのポリマーと併せて使用できる。
【0091】
多様な態様において、ポリマーの分子量は広範な数値であってよい。ポリマーの平均分子量は約10,000から約1,000,000まで;または約20,000から約500,000まで;または約50,000から約500,000まで;または約50,000から約200,000まで;または約50,000から100,000までである。
【0092】
どの生物活性薬剤およびポリマーを使用するかを決定する際には、適合性および活性に関する幾つかの要因を考慮すべきである。たとえば、親水性薬剤は水性環境で速やかに放出される傾向があり、疎水性薬剤は放出されるとしても遅い傾向がある。しかし、ある疎水形の目的薬物は、それらの塩基性のため加工中にポリマーを分解するので、ポリマーと共に加工するためには薬剤を親水形で用いることが必要である。たとえばクロニジンは塩基形では疎水性であるが、塩形、たとえば塩酸クロニジンは親水性である。したがって、塩基性に対して感受性である分解性ポリマー系を用いる場合、加工中にポリマーが早期に分解するのを避けるために親水形の薬剤を用いるのが好ましい可能性がある。あるポリマーは酸性または塩基性環境で分解し、特定の薬剤との適合性が影響を受ける可能性がある。たとえば、ポリオルトエステルは酸性環境(7未満のpH)で分解する傾向があり、PLGAは塩基性環境(9より高いpH)および高酸性環境(約4未満のpH)で分解する傾向がある。したがって、わずかに酸性である塩酸クロニジン(約5のpH)などの薬剤を用いる場合、加工中にポリマーが早期に分解するのを避けるためにPLGAを用いるのが好ましい可能性がある。
【0093】
埋込型医療用デバイス、たとえば薬物デポー剤を用いて、生物活性薬剤を対象の組織へ送達することができる。前記の医療用デバイスまたは前記の方法で製造した医療用デバイスを組織に近接して配置し、生物活性薬剤を組織へ放出させる。特定の態様においては、医療用デバイスを疼痛、特に坐骨神経痛の処置に用いる。デバイスを、処置すべき領域、たとえば疼痛領域または疼痛発生領域、たとえば神経に近接して配置する。1態様においては、1以上のデバイスをロッドまたは一連のロッドとして疼痛部位または疼痛発生部位に近接して(すなわち神経に近接して)埋め込む。
【0094】
医療用デバイスが薬物デポー剤である場合、ある態様において、薬物デポー剤はデポー剤から薬物を放出させる細孔をもつ。この薬物デポー剤は、体液がデポー剤中において薬物を排除するのを可能にするであろう。しかし、デポー剤中への細胞の浸潤は、デポー剤の細孔のサイズにより阻止されるであろう。この方法で、ある態様において、デポー剤が組織骨格として機能して組織を増殖させるべきではない。むしろ、薬物デポー剤は単に薬物送達のために利用されるであろう。ある態様において、薬物デポー剤中の細孔は250ミクロン未満なしい500ミクロンであろう。この細孔サイズは、細胞が薬物デポー剤に浸潤して骨格形成細胞を生成するのを阻止するであろう。したがって、この態様において、体液が薬物デポー剤に進入するのに伴って薬物は薬物デポー剤から溶出するが、細胞が進入するのは阻止されるであろう。ある態様において、細孔がほとんどまたは全く無い場合、薬物は人体内での酵素の作用により、加水分解作用により、および/または他の類似の機序により薬物デポー剤から溶出するであろう。
【0095】
本発明のインプラント(1以上)を幾つかの方法のいずれかによって組織に近接して配置することができる。1態様においては、医療用デバイスをカニューレ、たとえば針により対象内へ送達する。その有益性は、切開術または開腹術の必要がなく、外傷が少ないことである。他の態様においては、医療用デバイスを開腹切開術により対象内へ送達する。術後痛などの問題の処置のために、外科処置の実施後に医療用デバイスを埋め込むことができる。医療用デバイスは、外科処置後に外科切開部を閉じる前に埋め込むことができる。
【0096】
生理的条件下で対象に埋め込まれると、デバイスは生物活性薬剤をある期間にわたって放出するであろう。たとえば埋め込まれた医療用デバイスは、医療用デバイスを対象に埋め込んだ後、20、30、40、50、60、70、80日後、および90日後ですら、放出するのは生物活性薬剤の50%未満であるように、生物活性薬剤を放出するであろう。詳細には、医療用デバイスを対象に埋め込んだ後、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110日後、および120日後ですら、溶出するのは生物活性薬剤の80%未満である。
【0097】
医療用デバイス中のポリマーおよび他のすべての成分が生分解性である場合、医療用デバイスは簡単に分解し、または対象に吸収されることができ、したがってインプラントの取出し(explantation)は必要ない。医療用デバイス中のポリマーおよび他のすべての成分が生体安定性である場合、生物活性薬剤が送達された後にインプラントの取出しが必要な可能性がある。
【0098】
本発明を以下の実施例により説明する。具体的な例、材料、量および方法は、本明細書中に述べた本発明の範囲および精神に従って広く解釈すべきであることを理解すべきである。
【実施例】
【0099】
薬物装填ペレット製造方法の比較
材料
85:15のラクチド対グリコリドモル比、0.70の固有粘度、およびエステル末端キャップ付きポリマー鎖末端をもつポリ(d,l ラクチド−co−グリコリド)(PLGA8515)をLakeshore Biomaterials(アラバマ州バーミンガム)から購入した。塩酸クロニジンをSpectrum Chemicals(カリフォルニア州ガーデナ)から購入した。メタノールおよびアセトンをSigma−Aldrichから購入した。
【0100】
実施例1:噴霧乾燥塩酸クロニジンの調製
塩酸クロニジンをメタノールに溶解して12%(w/w)溶液を得た。この溶液を、Buchi B−290小型噴霧乾燥機(Buchi Laboratorium AG,スイス)で120kHz Sono−Tek超音波ノズル(Sono−Tek Corp.,ニューヨーク州ミルトン)を用いて噴霧乾燥した。操作パラメーターを下記のとおり設定した:装入温度(70℃)、アスピレーター(80%)、窒素装入(50mm)、スプレー流速(80mL/時)および超音波発生装置(0.8ワット)。噴霧乾燥した粉末を採集し、さらに24時間、70℃および15mmHgの真空で乾燥させた。
【0101】
実施例2:噴霧乾燥した塩酸クロニジン/PLGA8515の調製
塩酸クロニジンおよびPLGA8515の両方を個別にアセトンに溶解して、2%(w/w)溶液を得た。10%の塩酸クロニジン溶液および90%のPLGA8515溶液の混合物をBuchi噴霧乾燥機で乾燥させた。操作パラメーターを下記のとおり設定した:装入温度(60℃)、アスピレーター(80%)、窒素装入(50mm)、スブレー流速(80mL/時)および超音波発生装置(0.8ワット)。噴霧乾燥した粉末を採集し、さらに24時間、30℃および15mmHgの真空で乾燥させた。
【0102】
実施例3:溶融押出しロッドの製造
塩酸クロニジンについて異なる調製方法をもつ3種類の配合物を溶融押出しのために調製した。第1配合物は、80マイクロメートルのふるいフィルターを備えたRetsch(Retsch GmbH,ドイツ)ローターミルを用いて粉砕して粉末にしたPLGA8515、および製造業者から受け取ったまま用いた塩酸クロニジンを含有していた。第2配合物は、粉砕したPLGA8515および実施例1からの噴霧乾燥した塩酸クロニジンを含有していた。第3配合物は、実施例2からの噴霧乾燥した塩酸クロニジン/PLGA8515を含有していた。それぞれの配合物は10%(w/w)の塩酸クロニジンおよび90%(w/w)のPLGA8515を含有していた。これらの配合物をスパーテルで乾式混合した後、120℃および30RPMに設定したHaake Mini−Lab二軸スクリュー押出機(Thermo Fischer Scientific,マサチュセッツ州ワルサム)に供給した。ロッドを直径0.75mmのダイから押し出した。
【0103】
顕微鏡分析
実施例3のロッドについて、ULVAC−PHI TRIFT III計測器(ミネソタ州チャンハッセン)を用いてTOF−SIMSデータ取得を行なった。分析に際して、計測器に質量フィルター処理した22keV Au液体金属イオン源を用い、これを600pAのDCで操作した。一次イオンビームを11kHzの周波数、12nsのパルス幅で脈動させた。一次イオンの全量を定常極限1013イオン/cm未満に維持した;したがって、分析深度は<2nmであった。低エネルギー電子を表面に流すことにより電荷補償に用いた。陽イオンおよび陰イオン“粗”データファイルをすべての試料について取得した。各ロッドの外面を直接分析した。各ロッドをレーザーブレードで切断した後、その断面を同様に分析した。
【0104】
実施例4:インビトロ薬物溶出試験
実施例3からのロッドをレーザーブレードで長さ1mm×直径約1mmに切断した。20mgのペレットを薬物溶出試験のために20mLのシンチレーションバイアルに入れた。ペレットを10mLのリン酸緩衝化生理食塩水pH7.4(Hyclone,0.0067M)中で37℃において穏やかな撹拌下にインキュベートした。予め選定した時点で緩衝液を分析のために取り出し、新鮮な緩衝液と交換した。薬物含量を226nmでMolecular Devices SpectraMax M2(カリフォルニア州サニーベール)プレートリーダーにより定量した。
【0105】
結果
図2は、実施例3で製造した薬物含有PLGA8515ペレットからの塩酸クロニジンのインビトロ溶出速度の比較を示す。実施例3からの第1配合物、すなわち粉砕して粉末にしたPLGA8515および製造業者から受け取ったまま使用した塩酸クロニジンを含有するものを三角形で表わす。この薬物デポー剤またはデバイスは、クロニジンを40日の期間にわたって放出し、10日毎にそれの薬物装填量の約5〜10%、または1日につきそれの薬物装填量の約0.25〜2%を放出する。70%の薬物が40日で薬物デポー剤から放出される。累積放出%(溶出薬物理論値%としても知られる)は、放出された薬物の重量尺度での測定量を理論重量で割ったものである。したがって、薬物デポー剤をゼロ日目、次いでそれ以後の日に秤量して、グラフに示す累積放出%を求める。
【0106】
第1配合物は噴霧乾燥され、ポリマーはその後粉砕されなかった。その溶出プロフィールを菱形で表わす。この配合物は第2配合物より速やかな放出速度をもっていた;第2配合物と比較した場合、若干の粒子は球形であり、第1配合物の粒度は100ミクロンよりサイズが小さいからである。第2配合物、すなわち粉砕したPLGA8515および実施例1からの噴霧乾燥した塩酸クロニジンを含有するものを四角形で表わす。この薬物デポー剤またはデバイスは、クロニジンを120日の期間にわたって放出し、10日毎当たりそれの薬物装填量の約5〜10%、または1日につきそれの薬物装填量の約0.25〜2%を放出する。この放出は、約20〜90日目にわたってきわめて一定であり、この間に約40%の薬物が放出される。この薬物デポー剤は、120日間かけて薬物デポー剤から90%の薬物を放出する。ポリマーの粉砕によって、より不規則な形状の粒子が生成する。第2配合物中の若干の粒子のサイズは100ミクロンより大きく、この配合物は一般に第1および第3配合物より低速で放出した。一般に、より大きい粒子がまず溶解し、したがってポリマーから薬物が速やかに放出されると考えるであろうから、これは意外である。この場合、より大きい粒子が放出を延長させる。第3配合物、すなわち実施例2からの噴霧乾燥した塩酸クロニジン/PLGA8515(粉砕しないもの)を含有するものを菱形で表わす。この薬物デポー剤は第1および第2配合物と対比してより速やかな放出プロフィールをもち、この場合30日以内に90%の薬物が放出される。この薬物デポー剤はボーラス効果をも備えており、この場合、最高45%の薬物が5日以内にデポー剤から放出される。
【0107】
これらの配合物は、ポリマーマトリックス中に均一に分布した薬物を含有していた。薬物粉末の粒度分布を制御することにより、ポリマーマトリックス内の薬物分布はより均一になり、かつ制御しうることが見いだされた。
【0108】
図3a、3bおよび3cは、実施例3の記載に従ってToF−SIMSにより分析したポリマーペレット内における薬物分布を示す。図3aは、実施例2の記載に従って噴霧乾燥した塩酸クロニジン/PLGA(粉砕しないもの)を含有する、実施例3からの配合物を表わす。図3bは、実施例1の記載に従って噴霧乾燥した塩酸クロニジンおよび粉砕して粉末にしたPLGAを含有する、実施例3からの配合物を表わす。図3cは、粉砕して粉末にしたPLGAおよび製造業者から受け取ったまま使用した塩酸クロニジンを含有する、実施例3からの配合物を表わす。図2に示す薬物放出プロフィールと図3a、3bおよび3cに示す薬物分布の比較により、薬物粒度が放出に及ぼす影響が証明される。各スライドは、ポリマー全体にわたる均一な分布を示す;ボイドやポケットがなく、ポリマーのみでなることを示すからである。図3aに示すように、噴霧乾燥した塩酸クロニジン/PLGA8515を含むペレット中にみられる小さい薬物粒子は最も速やかに薬物を放出し、一方、図3bに示すように、薬物が噴霧乾燥されており、粉砕されたポリマーを含有し、より大きい薬物粒子(3aと比較して)をもつ配合物は、最も長い期間にわたって薬物を放出した。噴霧乾燥処理により若干の粒子は球形になり、一方、粉砕処理により若干の粒子は不規則な形状または粗面になる。より大きい粒度をもつ配合物(図2にボトルとして示す)は、噴霧乾燥配合物(粉砕ポリマーを含まない)より低速で放出した。より大きい粒子が溶解するのに伴って、ポリマーから薬物がより速やかに放出されると考えるであろうから、これは意外である。
【0109】
製造業者からの塩酸クロニジンをそのまま用いた配合物(図3cに示すもの)は、画像の分析により判定して若干のきわめて大きい薬物粒子(>100マイクロメートル)および大きい粒度分布(5〜150マイクロメートル)をもっていた。2つの噴霧乾燥配合物はきわめて狭い粒度分布をもっていた。噴霧乾燥した塩酸クロニジン/PLGA8515配合物は、画像の分析により判定して約1〜5マイクロメートルの薬物粒度分布をもっていた(図3a)。噴霧乾燥塩酸クロニジン−粉砕PLGA8515配合物は、画像の分析により判定されるように、約10〜20マイクロメートルの薬物粒度分布をもっていた(図3b)。より大きい粒度をもつこの噴霧乾燥配合物は、ポリマーからの薬物放出速度がより低速であった。より大きい粒子が溶解するのに伴って、ポリマーから薬物がより速やかに放出されると考えるであろうから、これは意外である。
【0110】
10%(w/w)塩酸クロニジン配合物の制御された長期間の薬物放出のために最適な薬物粒度範囲は10〜20マイクロメートルであると判定された。この配合物は、他の配合物と比較して最も低い1日目の薬物バーストおよび長期間の薬物放出を備えていた。
【0111】
薬物装填ペレットの配合物の比較
材料
85:15のラクチド対グリコリドモル比、0.70の固有粘度、およびエステル末端キャップ付きポリマー鎖末端をもつポリ(d,l ラクチド−co−グリコリド)(PLGA8515)をLakeshore Biomaterialsから購入した。0.76の固有粘度、およびエステル末端キャップ付きポリマー鎖末端をもつポリ(d,l ラクチド)(PLA)を同様にLakeshore Biomaterialsから購入した。噴霧乾燥した塩酸クロニジンを実施例1の記載と同様にして製造した。
【0112】
実施例5:溶融押出しロッドの製造
塩酸クロニジン薬物装填量5%(w/w)、10%(w/w)および20%(w/w)をもつ3種類の配合物を、PLGA8515との溶融押出しおよびPLAとの溶融押出しのために調製した(合計6種類の配合物)。各配合物は、実施例1の記載に従って、80マイクロメートルのふるい分けフィルターを備えたRetsch(Retsch GmbH,ドイツ)ローターミルを用いて粉砕して粉末にしたポリマー、および噴霧乾燥した塩酸クロニジンを含有していた。すべての配合物をスパーテルで乾式混合した後、120℃および30RPMに設定したHaake Mini−Lab二軸スクリュー押出機(Thermo Fischer Scientific,マサチュセッツ州ワルサム)に供給した。ロッドを直径0.75mmのダイから押し出し、手で引っ張って約0.7〜0.8mmの最終直径を得た。
【0113】
顕微鏡分析
実施例5からの材料について、ULVAC−PHI TRIFT III計測器(ミネソタ州チャンハッセン)を用いてTOF−SIMSデータ取得を行なった。分析に際して、計測器に質量フィルター処理した22keV Au液体金属イオン源を用い、これを600pAのDCで操作した。一次イオンビームを11kHzの周波数、12nsのパルス幅で脈動させた。一次イオンの全量を定常極限1013イオン/cm未満に維持した;したがって、分析深度は<2nmであった。低エネルギー電子を表面に流すことにより電荷補償に用いた。陽イオンおよび陰イオン“粗”データファイルをすべての試料について取得した。各ロッドの外面を直接分析した。各ロッドをレーザーブレードで切断した後、その断面を同様に分析した。
【0114】
実施例6:インビトロ薬物溶出試験
実施例5からのロッドを、対応する薬物装填量20%、10%および5%に応じて剃刀のブレード(razor blade)で長さ0.75mm、1.5mmおよび3.0mmに切断した。各配合物から10個のペレットを薬物溶出試験のために20mLのシンチレーションバイアルに入れた。ペレットを5mLのリン酸緩衝化生理食塩水pH7.4(Hyclone,0.0067M)中で37℃において穏やかな撹拌下にインキュベートした。予め選定した時点で緩衝液を分析のために取り出し、新鮮な緩衝液と交換した。薬物含量を226nmでMolecular Devices SpectraMax M2(カリフォルニア州サニーベール)プレートリーダーにより定量した。
【0115】
結果
図4は、実施例5で製造した薬物含有ペレットからの塩酸クロニジンのインビトロ溶出速度の比較を示す。キャリヤーポリマーとしてPLGA8515を含有する実施例5からの配合物を白いデータ点で表わし、キャリヤーポリマーとしてPLAを含有する実施例5からの配合物を黒いデータ点で表わす。装填量20%の塩酸クロニジンを含有する配合物を三角形で表わし、装填量10%の塩酸クロニジンを含有する配合物を四角形で表わし、装填量5%の塩酸クロニジンを含有する配合物を菱形で表わす。
【0116】
20%の塩酸クロニジンをDL PLA中に含有する配合物、または20%のクロニジンをPLGA8515中に含有する配合物は、約90%のクロニジンを約120日の期間にわたって放出し、約20%を最初の数日以内に、次いで約80%を20日間にわたって放出した。この放出は、約30〜120日目にわたってきわめて直線的または一定である。この高い薬物装填(20%)は、より多量の薬物をデポー剤から測定期間にわたって放出させた。
【0117】
10%の塩酸クロニジンをDL PLA中に含有する配合物、または10%のクロニジンをPLGA8515中に含有する配合物は、約85%のクロニジンを約120日の期間にわたって放出し、約10〜15%を最初の数日以内に、次いで約60%を40日間にわたって放出した。この放出は、約60〜120日目にわたって直線的または一定である。10%の薬物装填は、20%の薬物装填と比較して、より少量の薬物をデポー剤から測定期間にわたって放出させた。
【0118】
5%の塩酸クロニジンをPLGA8515中に含有する配合物は、約70%のクロニジンを約100日の期間にわたって放出し、約10%を最初の数日以内に、次いで約12%〜70%を80〜100日目に放出した。5%の薬物装填は、10%または20%の薬物装填と比較して、より少量の薬物をデポー剤から測定期間にわたって放出させた。5%の塩酸クロニジンをDL PLA中に含有する配合物は、約55%のクロニジンを約120日の期間にわたって放出し、約5%を最初の数日以内に、次いで約5〜約10%を5〜10日毎に放出した。この5%の薬物装填は、10%または20%の薬物装填と比較して、より少量の薬物をデポー剤から測定期間にわたって放出させ、かつ5%クロニジンPLGA8515配合物について90日目に開始するスパイクと比較して放出が徐々に増加した。
【0119】
図5a、5b、5cおよび5dは、実施例5の記載に従ってToF−SIMSにより分析したポリマーペレットまたは薬物デポー剤内における薬物分布を示す。図5aは、5%の塩酸クロニジンおよび95%のPLAを含有する配合物を表わし、図5bは、10%の塩酸クロニジンおよび90%のPLAを含有する配合物を表わし、図5cは、5%の塩酸クロニジンおよび95%のPLGA8515を含有する配合物を表わし、図5dは、10%の塩酸クロニジンおよび90%のPLGA8515を含有する配合物を表わす。図4に示す薬物放出速度と図5a、5b、5cおよび5dにみられる薬物分布の比較により、噴霧乾燥した薬物はすべてのポリマーマトリックス内に良好に分布していることが証明され、これによりポリマー組成は薬物の分布にほとんどまたは全く依存しないことが示される。実施例4の場合と同様に、ポリマーマトリックス内の薬物の粒度は、画像の分析により判定されるようにほぼ10〜20マイクロメートルの直径であった。この溶出およびイメージングの結果は、薬物装填量および/またはポリマー組成を変化させることにより薬物放出がいかに調整可能であるかを証明する。粒子はポリマー全体に均一に分布していた。噴霧乾燥処理により若干の粒子が球形になる。
【0120】
実施例7
材料
0.76の固有粘度、およびエステル末端キャップ付きポリマー鎖末端をもつポリ(d,l ラクチド)を同様にLakeshore Biomaterialsから入手した。塩酸クロニジンをSpectrum Chemicalsから入手し、Micron Technologies(ペンシルベニア州エクストン)でジェットミリングして多様な粒度にした。ジェットミリングした塩酸クロニジンを次いで10〜50マイクロメートルおよび<5マイクロメートルの最終粒度にふるい分けした。
【0121】
方法
溶融押出しロッドの製造
塩酸クロニジン薬物装填量5%(w/w)、10%(w/w)、ならびに薬物粒度10〜50マイクロメートルおよび<5マイクロメートルをもつ4種類の配合物を、PLAとの溶融押出しのために調製した。各配合物は、実施例1の記載と同様に80マイクロメートルのふるい分けフィルターを備えたRetsch(Retsch GmbH,ドイツ)ローターミルを用いて粉砕して粉末にしたポリマー、およびジェットミリングした塩酸クロニジンを含有していた。すべての配合物をスパーテルで乾式混合した後、120℃および30RPMに設定したHaake Mini−Lab二軸スクリュー押出機(Thermo Fischer Scientific,マサチュセッツ州ワルサム)に供給した。ロッドを直径0.50mmのダイから押し出し、手で引っ張って約0.5〜0.6mmの最終直径を得た。
【0122】
顕微鏡分析
薬物装填ロッドの形態を、ミクロトーム切断した試料の走査型電子顕微鏡(SEM)により評価する。試料の調製のために、ロッドを6℃に冷却し、ガラスまたはダイヤモンドのブレード(Microstar MS1 Cryo Ultramicrotome,テキサス州ハンツビル)で切断する。ロッドのミクロトーム切断面を次いでAuおよびPdでスパッターコートして、SEMイメージング用の導電面を形成する。SEM(JEOL JSM−5900LV,マサチュセッツ州ピーボディー)を10kVで作動させ、種々の倍率の多数の顕微鏡写真を撮影する。全体像はロッド全体を捕らえ、巨視的な特徴を評価することができる。試料の微細な特徴を解明するために、より高い他の倍率の画像を撮影する。この系をイメージングする際には後方散乱イメージングが最も有用なことが証明された;Clを含有する薬物はより低い原子量のポリマーとの著しいコントラストをもつからである。
【0123】
インビトロ薬物溶出試験
ロッドを剃刀のブレードで4mmの長さに切断し、薬物溶出試験のために20mLのシンチレーションバイアルに入れた。ペレットを1.7mLのリン酸緩衝化生理食塩水pH7.4(Hyclone,0.00067M)中で37℃において穏やかな撹拌下にインキュベートした。予め選定した時点で緩衝液を分析のために取り出し、新鮮な緩衝液と交換した。薬物含量を226nmでMolecular Devices SpectraMax M2(カリフォルニア州サニーベール)プレートリーダーにより定量した。
【0124】
薬物の粒度測定
塩酸クロニジンをアセトンに懸濁させ、濁った懸濁液(約10mg/4mL)を得た。この懸濁液を、Horiba Instruments Partica LA−950レーザー回折粒度分析計用のフラクションセルホルダーに、透過率%が80〜90%に達するまでピペットで装入した。
【0125】
図6は、実施例7で製造した薬物を含有するペレットからの塩酸クロニジンのインビトロ放出速度を比較するグラフである。キャリヤーポリマーとしてのPLA 95%および5マイクロメートル未満の粒度をもつ塩酸クロニジン5%を含有する実施例7からの配合物を四角形で表わす。クロニジン粒子はジェットミリングされ、したがってそれらはランダムな形状をもっていた(たとえば、あるものは不規則な表面の粒子、あるものは平滑な粒子)。この配合物は、きわめて小さい5マイクロメートル未満の粒度をもつクロニジン粒子を含み、このため薬物はポリマーから速やかに放出した。約10%の薬物が7日以内に放出され、約35%の薬物が14日間で放出され、約60%の薬物が21日間で放出され、約70%の薬物が28日間で放出された。28日から56日目までほぼ直線的な放出がみられた。ほぼ80%の薬物が56日間でポリマーから放出された。一般に、小さい粒度は、より大きい10〜50マイクロメートルの粒度と比較して、測定期間にわたってポリマー(たとえばデポー剤)からより速やかな薬物放出を生じた。
【0126】
キャリヤーポリマーとしてのPLA 95%および10ミクロン〜50ミクロンの粒度をもつ塩酸クロニジン5%を含有する実施例7からの配合物を三角形で表わす。クロニジン粒子はジェットミリングされ、したがってそれらはランダムな形状をもっていた(たとえば、あるものは不規則な表面の粒子、あるものは平滑な粒子)。この配合物は、小さい約10〜50マイクロメートルのクロニジン粒子を含み、薬物をポリマーから速やかに放出させたが、5マイクロメートル未満の配合物ほど速やかな放出ではなかった。約15%の薬物が2日以内に放出され、約20%の薬物が14日間で放出され、約35%の薬物が21日間で放出され、約45%の薬物が28日間で放出された。42日から56日目までほぼ直線的な放出がみられた。約60%の薬物が56日間でポリマーから放出された。一般に、より大きいこの粒度は、他方の配合物のきわめて小さい5マイクロメートル未満の粒度と比較して、測定期間にわたってポリマー(たとえばデポー剤)からより低速での薬物放出を生じた。
【0127】
図7は、実施例7で製造した薬物を含有するペレットからの塩酸クロニジンのインビトロ放出速度を比較するグラフである。キャリヤーポリマーとしてのPLA 90%および5マイクロメートル未満の粒度をもつ塩酸クロニジン10%を含有する実施例7からの配合物を中空四角形で表わす。クロニジン粒子はジェットミリングされ、したがってそれらはランダムな形状をもっていた(たとえば、あるものは不規則な表面の粒子、あるものは平滑な粒子)。この配合物は、10%のクロニジン装填量、および5マイクロメートル未満の粒度をもつきわめて小さいクロニジン粒子を含み、このため図6の配合物と比較してより短い期間で薬物をポリマーから速やかに放出させた。約10%の薬物が3日以内に放出され、約30%の薬物が7日間で放出され、約62%の薬物が14日間で放出され、約80%の薬物が28日間で放出された。28日から56日目までほぼ直線的な放出がみられた。約80%の薬物が56日間でポリマーから放出された。一般に、小さい粒度は、より大きい10マイクロメートル〜50マイクロメートルの粒度と比較して、測定期間にわたってポリマー(たとえばデポー剤)からより速やかな薬物放出を生じた。
【0128】
キャリヤーポリマーとしてのPLA 90%および10マイクロメートル〜50マイクロメートルの粒度をもつ塩酸クロニジン10%を含有する実施例7からの配合物を中空三角形で表わす。この配合物は10%のクロニジン装填量および10マイクロメートル〜50マイクロメートルの粒度をもつクロニジン粒子を含み、このため薬物をポリマーから速やかに放出させた。約12%の薬物が2日以内に放出され、約30%の薬物が14日間で放出され、約60%の薬物が28日間で放出され、約80%の薬物が56日間で放出された。49日から56日目までほぼ直線的な放出がみられた。一般に、より大きい粒度は、他方の配合物のきわめて小さい5マイクロメートル未満の粒度と比較して、測定期間にわたってポリマー(たとえばデポー剤)からより低速での薬物放出を生じた。より大きい粒子が溶解するのに伴って、ポリマーから薬物がより速やかに放出されると考えるであろうから、これは意外である。
【0129】
図8は、ポリマー添加前の実施例7の配合物に関する粒度分布の棒グラフを示す。中空の棒は10〜50マイクロメートルのサイズのクロニジン粒子であり、陰影付き棒は5マイクロメートル未満のクロニジン粒度である。図9に示すように、ポリマー添加後に粒子のサイズはこの範囲内に維持された。
【0130】
図9は、実施例7で製造したポリマーペレット内の薬物分布を走査型電子顕微鏡写真により分析したものを示す。上左パネルは、キャリヤーポリマーとしてのPLA 95%および5マイクロメートル未満の粒度をもつ塩酸クロニジン5%を含有する配合物を表わす。下左パネルは、キャリヤーポリマーとしてのPLA 95%および10マイクロメートル〜50マイクロメートルの粒度をもつ塩酸クロニジン5%を含有する。上右パネルは、キャリヤーポリマーとしてのPLA 90%および5マイクロメートル未満の粒度をもつ塩酸クロニジン10%を含有する配合物を表わす。下右パネルは、キャリヤーポリマーとしてのPLA 90%および10マイクロメートル〜50マイクロメートルの粒度をもつ塩酸クロニジン10%を含有する。処理後ですら、異なる配合物のクロニジンのサイズの相異は5マイクロメートル未満および10〜50マイクロメートルのまま維持された。クロニジン粒子はポリマー全体に均一に分布していた。
【0131】
実施例8
薬物装填ペレット製造方法の比較
薬物の粒度測定
塩酸クロニジンをアセトンに懸濁させ、濁った懸濁液(約10mg/4mL)を得た。この懸濁液を、Horiba Instruments Partica LA−950レーザー回折粒度分析計用のフラクションセルホルダーに、透過率%が80〜90%に達するまでピペットで装入した。
【0132】
図10は、ポリマー添加前の実施例3の配合物に関するクロニジン粒度分布の棒グラフを示す。中空の棒は噴霧乾燥した粉砕PLGA8515配合物中に用いた製造業者から受け取ったままのクロニジン(図2に“ボトル”として示す)の粒度であり、陰影付き棒は噴霧乾燥した粉砕PLGA8515配合物中に用いたクロニジンの粒度である。
【0133】
本発明の詳細な記述および前記の実施例からみて、本発明の幾つかの目的は達成されたことが認められるであろう。
【0134】
本明細書に提示した説明および具体例は、本発明、本発明の原理および本発明の実際の適用を当業者に熟知させるためのものである。当業者は、個々の用途の要件に最も良く合うように本発明を多数の形態で応用および適用することができる。したがって、以上に述べた本発明の具体的な態様は、完全なものまたは本発明を限定するためのものではない。
【符号の説明】
【0135】
100 医療用デバイス
10 ポリマー
20 生物活性薬剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋込型医療用デバイスであって、下記のもの:
埋込型医療用デバイスの約2〜99重量%の量で存在する少なくとも1種類の生分解性ポリマー;
埋込型医療用デバイスの約1〜60重量%の量の少なくとも1種類の生物活性薬剤、その際、生物活性薬剤は組成物中に粒子として配置され、それらの粒子のうち少なくとも80%は直径5〜50マイクロメートルの粒度を有する;
を含む、前記埋込型医療用デバイス。
【請求項2】
埋込型医療用デバイスは、埋込型医療用デバイスを生理的条件下で対象に埋め込んだ後、30日後に生物活性薬剤の50%未満が溶出する溶出プロフィールをもたらす、請求項1に記載の埋込型医療用デバイス。
【請求項3】
埋込型医療用デバイスは、埋込型医療用デバイスを生理的条件下で対象に埋め込んだ後、40日後に生物活性薬剤の50%未満が溶出する溶出プロフィールをもたらす、請求項2に記載の埋込型医療用デバイス。
【請求項4】
埋込型医療用デバイスは、埋込型医療用デバイスを生理的条件下で対象に埋め込んだ後、50日後に生物活性薬剤の50%未満が溶出する溶出プロフィールをもたらす、請求項3に記載の埋込型医療用デバイス。
【請求項5】
埋込型医療用デバイスは、埋込型医療用デバイスを生理的条件下で対象に埋め込んだ後、70日後に生物活性薬剤の50%未満が溶出する溶出プロフィールをもたらす、請求項4に記載の埋込型医療用デバイス。
【請求項6】
埋込型医療用デバイスは、埋込型医療用デバイスを生理的条件下で対象に埋め込んだ後、60日後に生物活性薬剤の80%未満が溶出する溶出プロフィールをもたらす、請求項1に記載の埋込型医療用デバイス。
【請求項7】
埋込型医療用デバイスは、埋込型医療用デバイスを生理的条件下で対象に埋め込んだ後、100日後に生物活性薬剤の80%未満が溶出する溶出プロフィールをもたらす、請求項6に記載の埋込型医療用デバイス。
【請求項8】
生物活性薬剤がクロニジンである、請求項1に記載の埋込型医療用デバイス。
【請求項9】
生物活性薬剤が、塩酸クロニジン、フルオシノロンアセトニド、デキサメタゾンおよびスリンダクからなる群から選択される、請求項1に記載の埋込型医療用デバイス。
【請求項10】
ポリマーが、ポリラクチド−co−グリコリド、ポリラクチド、ポリオルトエステル、およびその組合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の埋込型医療用デバイス。
【請求項11】
ポリマーが非晶質形態を有し、生物活性薬剤が結晶質形態を有する、請求項に記載の埋込型医療用デバイス。
【請求項12】
埋込型医療用デバイスが円筒形ロッドの形状である、請求項1に記載の埋込型医療用デバイス。
【請求項13】
生物活性薬剤が約5〜15重量%の量で存在する、請求項1に記載の埋込型医療用デバイス。
【請求項14】
生物活性薬剤が約8〜12重量%の量で存在する、請求項13に記載の埋込型医療用デバイス。
【請求項15】
少なくとも80%の生物活性薬剤粒子が直径10〜20マイクロメートルの粒度を有する、請求項1に記載の埋込型医療用デバイス。
【請求項16】
少なくとも90%の生物活性薬剤粒子が直径10〜20マイクロメートルの粒度を有する、請求項1に記載の埋込型医療用デバイス。
【請求項17】
埋込型医療用デバイスが疼痛を処置するための薬剤デポー剤である、請求項1に記載の埋込型医療用デバイス。
【請求項18】
埋込型医療用デバイスの製造方法であって、
生物活性薬剤を粉末として供給し、その際、少なくとも80%の粒子が直径5〜50マイクロメートルの粒度を有し;
ポリマーを粉末として供給し;
生物活性薬剤の粉末とポリマー粉末を混和して粉末混合物を調製し;
この粉末混合物を溶融混合して溶融混合物を調製し;そして
この溶融混合物を押し出して埋込型医療用デバイスを作成する;
ことを含む前記方法。
【請求項19】
生物活性薬剤を供給工程の前に噴霧乾燥し、噴霧乾燥が:
生物活性薬剤を液体キャリヤーと混和し;そして
混和した液体キャリヤーと生物活性薬剤を、直径約5〜50マイクロメートルの平均粒度を有する生物活性薬剤の粒子が得られるのに十分な条件下で噴霧乾燥する;
工程を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
生物活性薬剤が塩酸クロニジンである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
生物活性薬剤が、埋込型医療用デバイス中に約1〜60重量%の量で存在する、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
ポリマーが、ポリラクチド−co−グリコリド、ポリラクチド、ポリオルトエステル、およびその組合わせからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも90%の生物活性薬剤の粒子が直径10〜50マイクロメートルの粒度を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも90%の生物活性薬剤の粒子が直径20〜30マイクロメートルの粒度を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
生物活性薬剤を組織へ送達する方法であって、
請求項1に記載の医療用デバイスを組織に近接して配置し;そして
医療用デバイスに生物活性薬剤を組織へ送達させる;
ことを含む前記方法。
【請求項26】
医療用デバイスをロッドとして坐骨神経に近接して埋め込む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
複数の医療用デバイスを埋め込む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
インプラントをカニューレによる送達によって組織に近接して配置する、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
下記のものを含む薬物デポー剤:
薬物デポー剤の約80〜95重量%の量で存在する少なくとも1種類の生分解性ポリマー;その際、生分解性ポリマーはポリラクチド−co−グリコリド、ポリラクチド、ポリオルトエステル、およびその組合わせからなる群から選択される;
薬物デポー剤の約5〜20重量%の量のクロニジンまたはその誘導体;その際、クロニジンまたはその誘導体は薬物デポー剤中に粒子として配置され、その際、それらの粒子のうち少なくとも80%は直径10〜20マイクロメートルの粒度を有する。
【請求項30】
薬物デポー剤の製造方法であって、
クロニジンまたはその誘導体を粉末として供給し、その際、それらの粒子のうち少なくとも80%は直径10〜20マイクロメートルの粒度を有し;
ポリマーを粉末として供給し、その際、ポリマーはポリラクチド−co−グリコリド、ポリラクチド、ポリオルトエステル、およびその組合わせからなる群から選択され;
クロニジンまたはその誘導体の粉末とポリマー粉末を混和して粉末混合物を調製し;
この粉末混合物を溶融混合して溶融混合物を調製し;そして
この溶融混合物を押し出して薬物デポー剤を作成する;
ことを含む前記方法。
【請求項31】
クロニジンまたはその誘導体を組織へ送達する方法であって、
請求項29に記載の薬物デポー剤を組織に近接して配置し;そして
薬物デポー剤にクロニジンまたはその誘導体を組織へ送達させる;
ことを含む前記方法。
【請求項32】
クロニジンが塩酸クロニジンであり、さらに、薬物デポー剤を組織に近接して配置した100日後に塩酸クロニジンの80%未満が放出される、請求項31に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−508790(P2011−508790A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542439(P2010−542439)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/040916
【国際公開番号】WO2009/129439
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(591007804)メドトロニック,インコーポレイテッド (243)
【住所又は居所原語表記】710Medtronic Parkway,Minneapolis,Minnesota 55432,U.S.A
【Fターム(参考)】