説明

生物活性表面を有する物品およびそれらの無溶媒調製法

生物活性表面を有する物品を調製するための方法であって、基板を処理して遊離反応基を形成すること、処理基板上にモノマーを沈着すること、および沈着モノマー上に生物学的機能分子を共有結合的に固定化することを含む方法。追加の実施形態には、無溶媒環境において処理基板上にモノマーを沈着するための方法が含まれる。他の実施形態には、本明細書に記載されている方法を用いて調製される表面を有する物品が含まれる。追加の実施形態には、本明細書に記載されている方法を用いて調製される物品が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により本明細書に組み込まれている、2004年5月14日に出願した米国特許仮出願第60/570,816号明細書の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、一般的には、生物活性表面を有する物品、ならびに無溶媒調製法に関する。
【0003】
本発明は、より詳細には、遊離反応基を有する基板の表面上へのモノマーの無溶媒沈着により生物活性表面を有する物品を調製し、次いでモノマー沈着基板上に生物学的機能分子を共有結合的に固定化することに関する。
【背景技術】
【0004】
非生物起源のいかなる表面も、生体組織または血液と接触させた場合、一連の望ましくない反応を起こす。最もよく知られている反応は、血小板および血栓の形成を導く血漿凝固系を活性化する血液接触材料によりもたらされる反応である。生体組織における異種表面は、補体系および単核細胞系を活性化し、それによって炎症反応を引き起こす。これらの望ましくない反応を克服するため、表面は、in vivoでの使用に先立って生体適合性にされていなければならない。
【0005】
生体適合性表面、すなわち、生物学的環境において安定である表面の重要性は、よく知られており、何年にもわたり様々なアプローチを通じて追求されてきた。生体適合性表面は、長期間にわたって埋め込まれなければならない医療機器に必要である。一般的に言えば、生体適合性特性は、医療機器、特に、血液を含む組織と接触する医療機器が埋め込まれるか、さもなければ医療処置などの間に使用される場合、それらの表面に生物活性物質を取り付けようと試みることにより増強されることはよく知られている。さらに、血液または他の体液中で遭遇するように、湿潤環境中で生物活性物質を洗脱させることが望ましくないことがある。
【0006】
さらに、in vitro環境において生体適合性表面を使用することは同様に望ましい。生体適合性表面を使用し、in vivo環境を模倣するかin vivo環境に近づけ、例えば、in vitroでの細胞の生存、増殖または分化を促進することができる。さらに、生体適合性表面をin vitro環境において使用し、被験者への投与に先立って、細胞または組織上で薬物、薬物候補、タンパク質、変異タンパク質などの分子の効果をスクリーニングすることができる。
【0007】
生体適合性表面を調製することへの多くのアプローチは、体液または細胞培養液と遭遇する表面としてポリマー表面を利用し、次いで、様々な手順に従ってそれらのポリマー表面を処理することに集中している。他のアプローチは、埋め込みなどの間に体液と接触することが意図されている金属表面を処理している。
【0008】
一般的に言えば、実施または試みられてきた処理のタイプは、3つの広義のカテゴリーに入る。1つは、医療機器表面のプラズマ放電処理を含む。もう1つは、処理条件(高温など)の下で表面を特異的化学成分と接触させるための浸漬または類似の手段を含み、これらは、プラズマ放電処理より簡単である。通常、第3の一般的タイプの処理は、十分な酸化物層が結合のために提供されるまで、表面(通常は金属)を化学的に酸化するものである。
【0009】
生体適合性表面を作り出すための現行の方法は、液相化学反応を利用しており、表面上にコーティングされる成分(モノマー)は、溶媒に溶かされる。しかしながら、溶媒は、多くの場合、処理されている表面に悪影響を与えるか、あるいは、固定化されている生物活性分子に悪影響を与えるか変性させることがある。例えば、プラスチックを生体適合性にしようとする場合、有機溶媒の使用は、プラスチック表面を破壊することがある。
【0010】
【特許文献1】欧州特許第404,097号明細書
【特許文献2】国際公開第93/11161号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願第10/721,797号
【特許文献4】米国特許出願公開第20030153026号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第20040234962号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第20030134346号明細書
【特許文献7】米国特許第6,277,627号明細書
【特許文献8】米国特許第6,855,556号明細書
【非特許文献1】Kabat et al., “Sequences of Proteins of Immunological Interest” 5th Ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md., (1991)
【非特許文献2】Zapata et al., Protein Eng., 8(10): 1057-1062, (1995)
【非特許文献3】Remington's Pharmaceutical Sciences (16th ed., Osol, A., Ed., Mack, Easton Pa. (1980)
【非特許文献4】Journal of Spacecraft and Rockets, 31(4):656-664 (1994)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、溶媒を使用することなく表面を処理する方法が当技術分野では必要である。さらに、これらの処理表面を、in vivoまたはin vitro環境における使用のために生体適合性にすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、生物活性表面を含む物品を提供し、この物品は、基板、基板上のモノマー沈着層を含み、モノマー沈着層は、実質的に均一な厚さでありかつ実質的に無欠陥である。また、表面は、モノマー沈着層と共有結合している生物学的機能分子を有する。基板は、例えば、ガラス、金属、プラスチック、セラミックまたはヒドロゲルを含むことができる。一実施形態において、基板上に沈着されるモノマーは、アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)であり、生物学的機能分子は、ヒアルロン酸である。
【0013】
また、本発明は、生物活性表面を有する物品を製造する方法を提供する。本発明の方法は、基板を処理し、基板の表面上に遊離反応基を形成すること、および無溶媒環境において処理表面上にモノマーを沈着することを含む。無溶媒環境におけるモノマーの沈着は、実質的に無欠陥でありかつ実質的に均一な厚さであるモノマー沈着層をもたらす。いったん処理表面上にモノマーが沈着されたら、生物活性表面を持つ物品を提供するために生物学的機能分子をそれに共有結合させる。ある特定の実施形態において、処理表面上に沈着されるモノマーは、APTMSである。また、本発明は、これらの「無溶媒」法により製造される物品を提供し、基板は、非金属である。一実施形態において、遊離反応基を作り出すために基板を処理する方法には、プラズマ処理が含まれ、モノマーは、気相沈着を介して処理基板上に沈着される。
【0014】
また、本発明は、生物活性表面を有する物品を提供し、この物品は、基板、基板上に沈着された層を含み、層は、実質的に均一な厚さでありかつ実質的に無欠陥であり、モノマーおよびヒドロキシルに富んだポリマーを含む。また、表面は、ヒドロキシルに富んだ層およびモノマー層と共有結合している生物学的機能分子を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本明細書に開示されている様々な実施形態は、生物活性表面を有する物品を調製するための方法であって、基板を処理して遊離反応基を形成すること、処理基板上にモノマーを沈着すること、および沈着モノマー上に生物学的機能分子を共有結合的に固定化することを含む方法に関する。追加の実施形態には、無溶媒環境において処理基板上にモノマーを沈着するための方法が含まれる。他の実施形態には、本明細書に記載されている方法を用いて調製される表面を有する物品が含まれる。
【0016】
本明細書で使用する「生物活性表面」は、生物学的環境において特異的相互作用が可能である表面を意味するために使用される。特異的相互作用の例には、細胞表面マーカーなどであるがそれに限定されない標的分子の特異的結合、または1つまたは複数の相補的結合パートナーとの分析物の特異的結合、所与の環境において1つまたは複数の特異的機能を有する作用物質または分子の遊離が含まれるが、これらに限定されるものではない。したがって、生物活性表面を有する物品は、2〜3例を挙げると、光ファイバー、生物学的環境において特定の化合物または化学物質の存在/濃度を検出するバイオセンサー、薬物送達システム、分離膜として、または、例えば、透析において使用することができるバイオセパレーター、カテーテル、ステントおよび所与の環境において細胞表面マーカーと結合するか、あるいは作用物質を放出することができる他の血管移植片または補綴、歯科インプラント、コンタクトレンズ、整形外科用インプラントおよび組織培養実験機器であってよいが、これらに限定されるものではない。したがって、生物活性表面は、特異的にin vitro、in situまたはin vivo条件に関する情報を変更または提供する能力を有することができる。生物活性表面は、生物学的環境において特異的相互作用が可能な1つまたは複数の成分を受け入れることができる材料を含むことができる。したがって、例示的な生物活性表面は、バイオセンサーにおいて機能することができる結合タンパク質を受け入れることができる膨潤性ヒドロゲルを含むことができる。本明細書で使用する「生物学的環境」は、組織、細胞、器官、体液、単細胞生物、多細胞生物、またはそれらの部分を含むか、あるいはそれらを支えることができるin vivo、in situまたはin vitro環境を意味するために使用される。細胞、組織、器官もしくは生物など、またはそれらの部分は、生きていても(代謝的に活性)死んでいても(代謝的に不活性)よい。生物学的環境の例には、in vitro細胞培養環境、生物内または生物上のin vivo環境(インプラントなど)、診断もしくは治療環境、DNAマイクロアレイなどのツールもしくは機械または透析機における血液が含まれるが、これらに限定されるものではない。表面を入れることができる生物学的環境のタイプは、本発明を限定すべきではない。一般に、生物活性表面は、それらが、非汚染性で非特異的沈着物の蓄積に抵抗性であることができるがその必要はなく、in vivo環境に置かれた場合、いかなる免疫反応も起こさないという点で生体適合性であることができる。
【0017】
本発明の生物活性表面を有する物品を調製する方法は、基板を処理し、遊離反応基を形成するものである。本明細書で使用する本発明の方法において使用される基板は、全体または一部において、遊離反応基を形成するために処理を受けることができる任意の基板であることができる。例えば、基板は、全体または一部において、金属または非金属であってよい。非金属基板には、2〜3例を挙げると、ガラス、プラスチック、ケイ素およびセラミックなどの基板が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の一実施形態において、基板は、ガラス、例えばグラスファイバーを含む。本発明の別の実施形態において、基板は、プラスチックを含む。プラスチックにおいて使用される材料の例には、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、ポリエステル、環状オレフィンコポリマー、ポリメチルペンテン、およびポリエチレンが含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明のさらに別の実施形態において、基板は、金属材料、ステンレススチール、ニッケル、銀、白金、金、チタン、タンタル、イリジウム、タングステン、アルミニウム、ニチノール、インコネルなどを含む。さらに別の実施形態において、基板は、ケイ素、炭素または炭素繊維、酢酸セルロース、硝酸セルロースおよびセラミックなどであるがこれらに限定されない他の非金属基板を含む。本発明の方法において使用される基板は、任意の形または寸法であることができるが、ただし、それらの形または寸法は、遊離反応基を形成するためにそれらを処理することを妨げないこととする。例えば、基板は、凍結乾燥ヒドロゲルなどの三次元構築物、あるいはプラスチックもしくはガラスセルまたは組織培養実験機器の表面、あるいは金属ステントであってよい。上記の例から明らかなように、基板は、多孔性であってもなくてもよい。
【0018】
一実施形態において、基板は、基板の表面上に遊離反応基を形成するために処理される。本明細書で使用する「基板」には、任意の二次元または三次元の固体または多孔性の支持体または構造が含まれる。基板は、ガラス、金属、プラスチック、ならびに凍結乾燥された天然または合成ポリマー材料であってよい。本明細書で使用する「処理」または「処理すること」には、遊離反応基を導入する、遊離反応基を接続する、または既存の分子から遊離反応基を作り出す任意のプロセスが含まれる。遊離反応基は、遊離反応基がさらなる化学反応に利用できるように、基板の表面の最上部またはその近くにあることが好ましい。遊離反応基を「導入すること」は、遊離反応基を作成または生成させる任意の手段であり、遊離反応基の作成もしくは形成、または他の化学基の遊離反応基への変換が含まれるが、これらに限定されるものではない。基板上に遊離反応基を作成または生成する手段は、化学的、機械的またはそれらの任意の組合せであることができる。例えば、遊離反応基は、基板に共有結合させることができる。基板を処理する目的で、用語「形成する」または「導入する」は、本明細書において同義的に使用される。本明細書で使用する遊離反応基は、当技術分野において十分に理解されている。したがって、遊離反応基は、単に、第2の化学基と反応することができる化学基である。遊離反応基は、それ自体が全化学物質であるか、全化学物質の一部であってよく、単一原子またはイオンが含まれるが、これらに限定されるものではない。さらに、遊離反応基が反応することができる第2の基は、遊離反応基と同一であるか異なっていることができる。形成することができる遊離反応基の例には、ハロゲン、アミン、アミド、アルデヒド、ビニル、ヒドロキシルおよびカルボキシルが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
処理プロセスには、水の使用を含み、ガラスの表面上に遊離反応基を形成すると考えられるガラス製品を洗浄することなどのプロセスが含まれるが、これに限定されるものではない。さらに、ガラス基板を洗浄することは、ガラスの表面上に存在することがある実質的にすべての有機汚染物質を除去するであろう。
【0020】
処理プロセスの別の例には、実質的にすべての有機汚染物質を除去し、ならびに基板の表面またはその近くにヒドロキシル基などの遊離反応基を形成または作成するための金属ならびにケイ素、ガラス、およびプラスチックなどの非金属基板のプラズマ洗浄が含まれるであろう。プラズマ洗浄において、酸素などのガスは、電界などのエネルギー源に暴露され、イオンおよびフリーラジカルまたは他の反応種を作り出す。プラズマ洗浄は、真空の存在下で行うことができるがその必要はなく、真空の存在は、プラズマ洗浄が行われる温度に影響を及ぼすであろう。当業者は、プラズマ洗浄手順を認識および理解しており、プラズマ洗浄プロセス中の真空の存在は、通常、洗浄が行われる温度を低下させることを理解しているはずである。プラズマ処理と併せて使用されるガスには、酸素、空気、アンモニア、アルゴン、窒素、酸素/四塩化炭素(CF)混合物、およびそれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されるものではない。プラズマ洗浄において使用される1種または複数のガスの正確な化学構造は、当業者にとって通常の最適化の事柄である。また、プラズマ洗浄が行われる温度は、通常の最適化の事柄であり、真空の存在または基板の組成などの条件に応じて変化することがある。しかしながら、一般に、プラズマ洗浄が行われる温度は、約15℃から約200℃である。特に、温度範囲は、約25℃から約50℃である。また、洗浄が行われるプラズマ発生電力密度は、通常の最適化の事柄であり、変化することがある。しかしながら、一般に、プラズマ洗浄が行われる電力密度は、約0.1ワット/リットル(W/L)から約10W/Lである。特に、電力密度は、約1W/Lである。また、洗浄が行われる圧力は、通常の最適化の事柄であり、変化することがある。しかしながら、一般に、プラズマ洗浄が行われる圧力は、約1mTorr(約0.0001kPa)から約1気圧(約100kPa)である。特に、圧力は、約10mTorr(約0.0013kPa)から約500mTorr(約0.07kPa)である。洗浄プロセスの時間は、通常の最適化の事柄であり、変化することがある。しかしながら、一般に、プラズマ洗浄の時間は、約1秒から約60分である。特に、時間は、約20秒から約240秒である。
【0021】
図1を参照すると、処理基板1は、その上に沈着されたモノマー層2aを有する。次の生物活性表面3aは、本明細書に記載されているように、層2aと共有結合させることができる。
【0022】
処理プロセスのさらに別の例には、望ましい遊離反応基に富んでいるポリマーで基板をコーティングすることが含まれるであろう。例えば、望ましい遊離反応基がヒドロキシルである場合、ポリメタクリル酸ヒドロキシエチル(polyHEMA)などであるがこれに限定されないヒドロキシルに富んだポリマーを表面上にコーティングすることができる。例えば、図2を参照すると、ポリHEMAをエタノールに溶かし、基板1の表面上に沈着することができた。次いで、エタノールは蒸発し、薄いヒドロキシルに富んだポリマー層2bをあとに残すであろう。形成したヒドロキシルに富んだ層2bは、「モノマーに富んだ」すなわち「基に富んだ」層3bのプラズマ沈着によりさらに修飾することができる。生物活性表面4bの層3bとのカップリングは、本明細書に記載されているある実施形態を構成する。
【0023】
処理プロセスの別の例は、基板上のモノマーの架橋である。例えば、上述のプラズマ洗浄パラメータのいずれかを、例えば、HEMAモノマーを架橋するために最適化し、基板上にポリHEMAに富んだ層を作り出すことができる。基板上の架橋したHEMAモノマーは、依然として、これらの基板の表面上にヒドロキシルに富んだ層を形成することができる。
【0024】
処理プロセスのいずれかを、基板を「処理すること」が1つまたは複数の処理プロセスを含むように、お互いと組み合わせて基板を処理することができる。処理プロセスは、逐次に、並行に、または逐次プロセスと並行プロセスを組み合わせて行うことができる。例えば、ガラス基板は、水およびプラズマ洗浄処理を用いて処理することができる。さらに、処理のタイプは、処理されている基板によって異なることがある。例えば、有効であるが、プラズマ処理は、プラスチック基板で用いる最適な処理プロセスというわけではない。対照的に、プラズマ処理は、ガラスおよび金属基板には理想的とすることができる。再び図1を参照すると、基板1のプラズマ処理には、層2aとして描かれる、HEMAのモノマーとアルコキシアミノアルキルシランの同時プラズマ沈着、または逐次沈着が交互に含まれてよく、次いで、次の生物活性表面3aは、本明細書に記載されているように層2aと共有結合させることができる。
【0025】
別の実施形態において、本発明の方法は、処理基板上へのモノマーの沈着を必要とする。モノマーの沈着は、基板上に少なくとも1つの単層の形成をもたらすか、あるいは基板上に重合したモノマー層をもたらすことがある。また、モノマーの沈着は、基板上にいくつかの単層の形成をもたらすことがある。本明細書に記載されている方法の沈着および処理プロセスは、同時に、または別々に行うことができる。「モノマーに富んだ基板」すなわち「基に富んだ基板」は、基板が、沈着後のモノマーまたは化学基の重合の状態に関係なく、沈着後に、基板の表面上に通常見いだされるよりも多くの望ましいモノマー、またはそれらの化学基を含むことを示すために使用される。同じように、「モノマー沈着基板」または「沈着されたモノマー」は、基板上への沈着後の重合の状態に関係なく、モノマーが基板上に沈着されたことを示すために使用される。したがって、本明細書に記載されている本発明の実施形態は、基板の表面が、調製方法または沈着プロセスの開始に先立って、望ましいモノマー、またはその化学基を含んでいてもいなくてもよい方法を包含する。モノマーは、アミン(−NH)、クロロ(−Cl)などのハロゲン、スルフヒドリル(−SH)、エポキシド、グリシジル、シアノ(CN)、アクリレート、およびビニル(−CH=CH)が含まれるが、これらに限定されない化学基を含むことができる。一実施形態において、沈着されるモノマーは、アミン基を含む。明らかなように、例えば、「アミンに富んだ基板」は、沈着後に、基板の表面上に通常見いだされるよりも多くのアミン基を含む基板を意味するために使用される。沈着プロセスにおいて使用されるモノマーは、例えば、任意のアルコキシシランであってよく、ここで、シランモノマーは、アミン(−NH)、クロロ(−Cl)、スルフヒドリル(−SH)、カルボキシル(−COOH)、エポキシド、グリシジル、シアノ(CN)、アクリレート、およびビニル(−CH=CH)などの化学基で終了している。モノマーの選択は、基板を富化する望ましい基によって異なるはずである。
【0026】
本発明の「モノマー沈着基板」は、二次元または三次元であることができる。用語「二次元」および「三次元」は、当技術分野であるように使用され、一般的に、それぞれ、平坦な無構造基板または非平坦な構造を意味するために使用される。本発明の方法には、生物学的機能分子の付加に先立って、モノマー沈着基板に三次元性を付与するためのプロセスが含まれる。したがって、モノマー沈着基板、例えば、シラン沈着基板に本発明の目的で三次元性が付与された場合、「モノマー沈着基板」は、三次元構造を含むであろう。
【0027】
本発明の一実施形態において、アミン末端シランは、処理基板上に沈着される。この場合、基板は、「シラン沈着」基板と考えられるであろう。アミノ末端シランは、一般式NH−R−Si−(OR’)であり、ここで、Rは、低級脂肪族基であり、R’は、Hおよび/または同一または異なる低級アルキルまたはフェニル基であり、nは、1、2または3である。一実施形態において、R’は、メチルであり、nは、3である。当然のことながら、置換は、アミノ官能性シランに、それ自体が繰り返しアミノ部分を含むことができるポリマーまたはオリゴマー骨格が含まれる場合、アミノ基において起こることがある。例示的なアミノ官能性シランには、N−(2−アミノエチル−3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)、および3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)が含まれるが、これらに限定されるものではない。アミノ官能性ポリマーシランの例は、N−(トリメトキシシリルプロピル)ポリエチレンイミンであり、これは、トリメチルシリルプロピル置換のポリエチレンイミンである。
【0028】
「モノマーに富んだ基板」すなわち「基に富んだ基板」をもたらすモノマーの沈着は、無溶媒環境で行われる。本明細書において、「無溶媒環境」は、その上にモノマーが沈着される基板が、沈着プロセス中に液相と相互作用しないことを意味するために使用される。言い換えれば、モノマーの沈着は、液体中に基板を浸漬するか、あるいは液体で基板をコーティングするような液相を利用する方法以外の方法を含む。しかしながら、溶媒は、本明細書に記載されている方法の他の部分で使用することができる。当技術分野において十分に理解されているように、本明細書において、「溶媒」は、溶質の有無に関わらず、任意の水性系または有機系液体を意味するために使用される。有機溶媒の例には、水ならびにエタノール、メタノールおよびイソプロパノールなどのアルコールが含まれるが、これらに限定されるものではない。無溶媒環境の例には、気相、超臨界相、および化合物のプラズマ相が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
沈着プロセスは、モノマーの沈着をもたらす任意のプロセスであることができるが、ただし、液体溶媒は、基板と接触しないこととする。モノマーの沈着は、沈着されているモノマーの重合をもたらすことがあるが、その必要はない。したがって、本明細書に記載されている本発明のすべての実施形態において、モノマーの沈着は、重合モノマー層を形成することになってもならなくてもよい。そのようなプロセスの一般例には、化学気相沈着、物理気相沈着、または物理支援化学気相沈着を含むがそれに限定されない物理気相沈着と化学気相沈着の組合せが含まれるが、これらに限定されるものではない。一般に、化学あるいは物理の気相沈着は、ガス分子の固体被膜または層への変換である。
【0030】
一般に、化学気相沈着は、基板の表面近くで高温にてガス状反応物間の1種または複数の化学反応において、沈着される分子または化学基が形成されるプロセスである。化学気相沈着の例には、プラズマ支援化学気相沈着(PEVD)、大気圧化学気相沈着(APCVD)、低圧化学気相沈着(LPCVD)、光化学気相沈着(PCVD)、レーザー化学気相沈着(LCVD)、有機金属化学気相沈着(MOCVD)、化学ビームエピタキシー(CBE)および化学気相浸透(CVI)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
典型的な化学気相沈着プロセスにおいて、キャリアガス中で希釈することができる反応ガスは、室温にて反応チャンバーに入り、沈着基板に接近しながら加熱することができる。ガスまたはガス混合物それ自体を加熱するか、ガスまたはガス混合物を加熱基板上に置くことができる。プラズマ沈着が行われる温度は、通常の最適化の事柄であり、真空の存在または基板の組成などの条件に応じて変化することができる。しかしながら、一般に、プラズマ沈着が行われる温度は、約15℃から約200℃である。特に、温度範囲は、約25℃から約50℃である。また、沈着が行われるプラズマ発生電力密度は、通常の最適化の事柄であり、変化することがある。しかしながら、一般に、プラズマ沈着が行われる電力密度は、約0.1ワット/リットル(W/L)から約10W/Lである。特に、電力密度は、約1W/Lである。沈着が行われる圧力は、通常の最適化の事柄であり、変化することがある。しかしながら、一般に、プラズマ沈着が行われる圧力は、通常、約1mTorr(約0.0001kPa)から約1気圧(約100kPa)である。特に、圧力は、約10mTorr(約0.0013kPa)から約500mTorr(約0.07kPa)である。沈着プロセスの時間は、通常の最適化の事柄であり、変化することがある。しかしながら、一般に、プラズマ沈着の時間は、約1秒から約60分である。特に、時間は、約20秒から約240秒である。プロセスおよび動作条件に応じて、反応ガスは、基板に達する前に気相において均一な化学反応を受けることができる。
【0032】
通常、物理気相沈着には、沈着される化学基を含むプラズマを基板に衝突させることが含まれる。通常、エネルギー源は、ガスに向けられ、ガス状のイオンまたはフリーラジカルを作り出す。物理気相沈着の例には、真空蒸発、イオンプレーティング、イオンインプランテーション、スパッタリングおよび分子ビームエピタキシー(MBE)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
本発明の一実施形態において、沈着プロセスは、プラズマ支援化学気相沈着(PEVD)を含む。プラズマ支援化学気相沈着は、化学気相沈着の一タイプであり、沈着されるモノマーまたは化学基は、高エネルギー電子、陽イオンおよび陰イオン、高エネルギー光子、準安定、およびラジカルなどの、プラズマ中で形成される様々なエネルギー種の作用により化学的反応性にされる。
【0034】
また、本発明の方法には、「基に富んだ」基板上への生物学的機能分子の固定化が含まれることが好ましい。本発明の方法は、必要とすることもあるが、生物学的機能分子とモノマーを溶液中で一緒にすることを必要としない。基板上に沈着されている化学基と反応することができ、物品の表面を生体適合性および/または生物活性にすることができるいかなる分子も、「生物学的機能分子」と考えられる。本明細書で使用する「生体適合性分子」は、表面を生体適合性にすることができる任意の分子であり、生物学的機能分子と考えられる。本明細書で使用する生体適合性表面は、生物学的環境において安定であり、細胞接着および汚染に抵抗性があり、in vivo環境においていかなる免疫原性応答も引き起こさない表面である。同様に、「生物活性」である分子も、生物学的機能分子と考えられる。本明細書で使用する生物活性分子は、結合分子、受容体、抗体、または酵素などであるがそれらに限定されない標的分子またはリガンドとの特異的相互作用が可能な任意の分子である。生物学的機能分子の例には、単糖、二糖、多糖、アミノ酸、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、プロテオグリカン、糖タンパク質、核酸、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、脂質、脂肪酸、他の天然または合成ポリマー、および薬物または薬物候補などの低分子量化合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。表面を生体適合性にする生物学的機能分子の具体例には、ヒアルロン酸(HA)、アルギネート(AA)、ポリエチレングリコール(PEG)、メタクリル酸ヒドロキシエチル、ポリラクチド、ポリグリコール酸、メタクリレート、アクリレート、およびそれらのコポリマーが含まれるが、これらに限定されるものではない。コポリマーの具体例には、メタクリレート−メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリレート−メタクリル酸ヒドロキシエチル、およびアクリレート−メタクリレート−メタクリル酸ヒドロキシエチルコポリマーが含まれる。表面を生物活性にする生物学的機能分子の具体例には、コラーゲンおよびラミニンなどの細胞外マトリックス分子、ヘパリンまたはヘパラン硫酸などの抗凝血物質、抗体、およびそれらの断片、酵素またはそれらの断片、およびペリプラズム結合タンパク質(PBP)、発光性標識されたペリプラズム結合タンパク質(PBP)などの結合分子、またはそれらの断片が含まれるが、これらに限定されるものではない。生物学的機能分子は、物品の表面を同時に生体適合性および生物活性にすることができる。また、2種以上のタイプの生物学的機能分子を、本発明の物品のある実施形態上に固定化することができる。例えば、本発明の物品は、物品の表面を生物活性にするためにモノマー沈着基板に結合している異なる生物学的機能分子の他に、物品の表面を生体適合性にするためにモノマー沈着基板に結合している1つの生物学的機能分子を含むことができる。そのような状況において、生物学的機能分子のうちの1つだけは、モノマー沈着基板に共有結合していなければならない。任意の追加生物学的機能分子を、モノマー沈着基板への分子の共有結合により直接的に、またはある生物学的機能分子の別の生物学的機能分子との共有結合によるなど、間接的に結合させることができる。ある生物学的機能分子の別の分子との間接的結合は、共有結合または非共有結合であることができるが、ただし、生物学的機能分子のうちの少なくとも1つは、モノマー沈着基板に共有結合しているものとする。例えば、薬物または他の化合物をカプセル化することができ、このカプセル化された薬物または化合物を、モノマー沈着基板に結合させ、制御放出装置を調製することができる。生物活性分子のお互いとの結合の性質は、物品の条件または使用によって異なることがある。例えば、モノマー沈着基板を含む物品は、生物活性物質の別の生体適合性物質との共有結合が望ましくないか、あるいは実用的ではないかもしれないような制御放出環境において使用することができる。
【0035】
本明細書で使用する「PBP」は、そのアミノ酸配列(一次構造)よりはむしろ三次元立体配置(三次構造)を特徴とするペリプラズム結合タンパク質であり、ローブ−ヒンジ−ローブ領域を特徴とする。通常、PBPは、PBPのローブ間のクレフト領域内で特異的に分析物と結合する。さらに、クレフト領域における分析物の結合は、分析物の検出を可能にするPBPの立体構造変化を引き起こす。ペリプラズム結合タンパク質には、本明細書に記載されている構造的特徴を有する任意のタンパク質が含まれ、PBPの特徴的なローブ−ヒンジ−ローブ構造を決定するためにタンパク質の三次元構造を分析することは、当業者の能力の十分範囲内にある。PBPの例には、グルコース−ガラクトース結合タンパク質(GGBP)、マルトース結合タンパク質(MBP)、リボース結合タンパク質(RBP)、アラビノース結合タンパク質(ABP)、ジペプチド結合タンパク質(DPBP)、グルタミン酸結合タンパク質(GluBP)、鉄結合タンパク質(FeBP)、ヒスチジン結合タンパク質(HBP)、リン酸結合タンパク質(PhosBP)、グルタミン結合タンパク質、オリゴペプチド結合タンパク質(OppA)、またはそれらの誘導体、ならびに、ペリプラズム結合タンパク質様I(PBP様I)およびペリプラズム結合タンパク質様II(PBP様II)として知られているタンパク質のファミリーに属する他のタンパク質が含まれるが、これらに限定されるものではない。PBP様IおよびPBP様IIタンパク質は、平行βシートおよび隣接するαヘリックスからなる2つの類似したローブドメインを有する。グルコース−ガラクトース結合タンパク質(GGBP)は、PBP様Iファミリーのタンパク質に属し、一方、マルトース結合タンパク質(MBP)は、PBP様IIファミリーのタンパク質に属する。リボース結合タンパク質(RBP)も、PBPファミリーのタンパク質の一員である。上記に開示されているペリプラズム結合タンパク質には、発光性標識されたペリプラズム結合タンパク質が含まれるが、これに限定されるものではない。発光性標識は、結合タンパク質と結合している任意の分子またはその断片であり、標識は、光を受けた場合、分析物濃度のあらゆる変化を含む分析物のタンパク質との結合によるその波長、強度、寿命、エネルギー移動効率、および/または分極の検出可能な変化が可能である。
【0036】
本明細書で使用する用語「抗体」は、抗原結合領域を有する任意の抗体様分子を指すために使用され、Fab’、Fab、F(ab’)などの抗体断片、単一ドメイン抗体(DAB)、Fv、scFv(単鎖Fv)、直線状抗体、二重特異性抗体(diabody)などが含まれるが、これらに限定されるものではない。様々な抗体をベースとした構築物および断片を調製および使用するための技法は、当技術分野においてよく知られている(参照により本明細書に組み込まれている非特許文献1参照)。特に、二重特異性抗体については、他にも記載されており(各々が参照により本明細書に組み込まれている特許文献1および特許文献2参照)、一方、直線状抗体については、他にも記載されている(参照により本明細書に組み込まれている非特許文献2参照)。
【0037】
本明細書で使用する「酵素またはその断片」には、基質または分析物を特異的に認識することを担う酵素の部分が含まれる。酵素またはその断片は、触媒活性を有する必要はないが、ただし、酵素またはその断片は、少なくともある程度の特異性で分析物または基質を認識することができることとする。
【0038】
「基に富んだ」基板上への生物学的機能分子の固定化には、当技術分野においてよく知られている典型的な化学反応が含まれる。固定化は、共有結合をもたらす任意の反応を介し、共有結合による。したがって、分子の共有結合固定化をもたらす任意の化学反応、例えば、EDC/NHSカルボジイミド化学反応は、本発明の企図した範囲内にある。化学反応の例には、縮合、加水分解、抱合、レドックス、および還元アミノ化反応が含まれるが、これらに限定されるものではない。分子を固定化するために使用される化学反応タイプは重要ではないが、ただし、反応は、基に富んだ基板上へ共有結合的に分子を固定化するように設計される。例えば、アルデヒド(−COH)を含む酸化された多糖は、シアノ水素化ホウ素などの強力な還元剤を利用する還元アミノ化反応を介してアミンに富んだ基板へ共有結合的に固定化することができる。
【0039】
また、本発明の方法実施形態には、機能分子の共有結合固定化に先立ち、または伴い、基板または任意の次の層に三次元構造を付与する任意選択のプロセスが含まれていてもよい。モノマー沈着基板の上、またはそれと併せた三次元構造の形成は、そのような構造を付与する共有結合した化合物または組成物の付加により実現することができる。基板上に三次元構造を付与する物質は、本明細書に定義されているように、生物学的に機能性であってよい。例えば、モノマー沈着基板に三次元構造を付与することができる化合物または組成物には、アルギネート、ヒアルロン酸、ポリラクチド、ポリHEMA、ポリグリコール酸、ポリエチレングリコール、およびアクリレート、またはそれらのコポリマーが含まれるが、これらに限定されるものではない。基板上に三次元構造を付与する物質は、共有結合によってモノマー沈着基板に結合することができ、モノマー沈着基板に物質を共有結合するように設計されている任意のタイプの反応により結合させることができる。基板上に付与される「三次元性」は、例えば、モノマー沈着基板の表面積を増加させるため、または薬物などの物質の制御放出のための環境を作り出すために使用される多孔性または格子形構造を含むことができる。そのためには、薬物または他の化合物をカプセル化し、カプセル化された薬物または化合物を、コーティングされた多孔性または非多孔性モノマー沈着基板へ間接的に結合させることができる。化合物をカプセル化するのに有用なカプセル化材料の例には、「ポリラクチド」と一般的に呼ばれている、乳酸およびグリコール酸のポリマーもしくはコポリマー、またはそのようなポリマーおよび/またはコポリマーの混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
例えば、モノマー沈着基板に直接的または間接的に結合される化合物は、薬学的に有用な組成物を調製するための知られている方法であって、これらの材料、またはそれらの機能誘導体を、薬学的に許容できるキャリアビヒクルとの混合物として混ぜ合わせる方法に従って製剤化することができる。適当なビヒクルおよびそれらの製剤化については、記載されている(例えば、非特許文献3参照)。効果的投与に適している薬学的に許容できる組成物を形成するため、そのような組成物は、適当量のキャリアビヒクルと一緒に有効量の作用物質を含有するものとする。
【0041】
追加的な薬学的方法を用い、作用の持続期間を制御することができる。制御放出調製物は、作用物質を複合体化または吸収するためのポリマーの使用により得ることができる。制御された送達は、適切な巨大分子(例えば、ポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニル、ピロリドン、エチレン酢酸ビニル、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、または硫酸プロタミン)および巨大分子の濃度ならびに放出を制御するための組入の方法を選択することにより行うことができる。制御放出調製物により作用の持続時間を制御するための別の可能な方法は、ポリエステル、ポリアミノ酸、ヒドロゲル、ポリ(乳酸)またはエチレン酢酸ビニルコポリマーなどのポリマー材料の粒子中に化合物を組み入れることである。あるいは、ポリマー粒子中にこれらの作用物質を組み入れる代わりに、例えば、コアセルベーション技法または界面重合により調製されるマイクロカプセル、例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−マイクロカプセルおよびポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセルに、あるいはコロイド薬物送達システム、例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル、あるいはマクロエマルジョンにこれらの材料を封入することが可能である。そのような技法は、開示されている(非特許文献3参照)。
【0042】
三次元であるか否かに関らず、本発明の好ましい実施形態による物品は、バイオセンサーとして使用することができる。例えば、グルコースセンサーは、光ファイバーの一方の端、例えば、遠位末端で調製することができ、他方の端は、蛍光検出装置に連結される(参照により本明細書に組み込まれている、2003年11月26日に出願された特許文献3参照)。先ず、以下の実施例1におけるように、ファイバーの検出(遠位)末端の少なくとも一部を、APTMSなどのモノマーでコーティングすることができ、次いで、アルギネートなどのポリマーマトリックスを、モノマー層に結合させることができる。次いで、「センシング素子」、例えば、グルコースオキシダーゼまたはグルコース−ガラクトース結合タンパク質を含むがこれらに限定されないグルコース結合タンパク質などの生物学的機能分子を、アルギネートに共有結合させるか、あるいはアルギネート内に封入することができる。ある具体的実施形態において、センシング素子は、発光性標識を含むペリプラズム結合タンパク質である。以下の実施例3を参照されたい。
【0043】
一実施形態において、グラスファイバーは、バイオセンサーにおいて使用され、シリカコア、シリカクラッディング、およびポリイミド緩衝剤を含む。ファイバー直径は、約100μmから約750μmであることができる。特に、ファイバー径は、約400/440/470μmであることができ、スラッシュは、それぞれ、コア/クラッディング/緩衝剤の外側から測定される直径を意味する。
【0044】
また、別の実施形態は、本明細書に記載されている方法を用いて調製されたモノマー沈着基板または生物活性表面を含む物品に関する。以前に議論したように、本発明の方法に従って調製される基板は、調製することができる任意の基板であることができる。さらに、追加の実施形態は、単独またはバイオセンサーなどの物品の一部としてモノマー沈着基板を用いる方法にも関する。例えば、本発明の一実施形態は、本明細書に記載されている方法を用いて調製されたモノマー沈着基板またはモノマー沈着基板を含む物品を用い、生物学的作用物質、または疑わしい作用物質の効果をスクリーニングする方法に関する。実際に、モノマー沈着基板またはモノマー沈着基板を含む物品を用い、in vitro、in situ、またはin vivo環境における細胞または組織の生存、増殖および/または分化に影響を及ぼすことができるか、あるいは影響を及ぼすことができる疑いのある様々な作用物質の効果をスクリーニングすることができる。別の例として、モノマー沈着基板またはモノマー沈着基板を含む物品を用い、in vitroまたはin vivo環境における細胞または組織の生存、増殖および/または分化に対する薬物または薬物候補の効果をスクリーニングすることができる。さらに、モノマー沈着基板またはモノマー沈着基板を含む物品を、疾患の治療を必要とする被験者において疾患を治療する方法において使用することができる。例えば、一実施形態において、アテローム性動脈硬化症などであるがこれに限定されない心血管疾患の治療は、その表面が本明細書に記載されている方法に従って調製されたステントまたは他のインプラントの使用を含む。これらのステントまたはインプラントは、抗凝固剤などの生物学的機能分子を含むことは言うまでもない。また、モノマー沈着基板またはモノマー沈着基板を含む物品は、透析機におけるなどの診断または治療環境において使用することができる。モノマー沈着基板またはモノマー沈着基板を含む物品は、例えば、インスリンまたはグルコースなどの特定の標的分子を検出するための方法において使用することができるため、バイオセンサーとして使用することができる。例えば、結合する標的分子に反応してシグナルを生成する生物学的機能分子を、モノマー沈着基板に固定化することができる。そのために、生物学的機能分子を、モノマー沈着基板に直接的または間接的に固定化することができる。モノマー沈着基板上に生物学的機能分子を固定化する方法は、本発明の範囲を限定してはならない。シグナルは、in vitro、in situ、またはin vivo環境で生成される。
【0045】
本発明の方法により調製されるモノマー沈着基板は、基板の表面上に実質的に均一な厚さの重合モノマーの層を有することが好ましい。伝統的な湿式化学方法を用いると、このような均一性は、生物活性表面を有する物品を調製する際に制御、予測または再現することは不可能である。実際に、基板の表面上にモノマーを沈着するための伝統的な湿式化学技法は、通常、裸のコーティングされていない領域が表面の至る所に存在するような全体として非均一なコーティングをもたらす。実際に、伝統的な技法に従って調製される表面を持つ物品の走査電子顕微鏡写真は、「斑点のある」極めてむらのある形態を示す。したがって、伝統的な化学反応を用いると、モノマー層の厚さは、表面のある領域において100%まで(コーティングされていない領域に対して厚さ数ミクロン)変化することができる。しかしながら、本方法により、生物学的機能分子が結合される1つまたは複数のモノマー層の厚さは、より均一である。一実施形態において、重合モノマーの層の厚さは、別の領域に比べて、どの1つの領域においても70%未満の変化である。特に、同一基板表面上の沈着モノマー層間の変動は、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、さらに10%または5%未満変化することがある。
【0046】
また、本方法は、極めて薄くできる実質的に均一な厚さの沈着モノマー層をもたらす。当然の結果として、本発明の方法は、沈着モノマー層の厚さ、または薄さのカスタマイズを可能にする。例えば、本方法は、約100から約1000Åの実質的に均一な厚さで、基板上に重合モノマーの層を沈着することができる。また、本方法は、約1000から約100,000Åの実質的に均一な厚さで、基板表面上に重合モノマーの層を沈着することができる。実質的に均一な厚さであるこの層は、より厚くてもよいことは言うまでもない。
【0047】
また、本方法は、実質的に無欠陥であるモノマー沈着基板またはモノマー沈着基板を含む物品をもたらす。本発明の方法により調製されるモノマー沈着基板またはモノマー沈着基板を含む物品は、実質的に無欠陥である1つまたは複数のモノマー層を有する。本明細書で使用する層またはコーティングにおける「欠陥」は、ピンホール、封入、クラック、空隙などの望ましくない特徴を意味するために使用される。したがって、本発明は、実質的に無欠陥でありかつ実質的に均一な厚さであるモノマーの層(基板上への沈着後に重合していてもしていなくてもよい)を含むモノマー沈着基板またはモノマー沈着基板を含む物品に関する。生物活性表面を有する本発明の物品は、本発明の方法に先立つ基板の組成に関係なく、これらの特性を示す。
【0048】
例えば、ガラスおよびプラスチック基板に本発明の方法を行い、実質的に均一な厚さの沈着モノマー層を有し、実質的に無欠陥であり、すぐに生物学的機能分子を固定化することができる「基に富んだ」、例えば、アミンに富んだ基板を作成することができる。この高度に官能基化されたモノマー沈着基板は、生物学的機能分子を固定化するための沈着重合モノマーの実質的に無欠陥である層を提供する。例えば、本発明の方法を用い、生物学的機能分子の結合に先立って、調製ガラス基板の表面の窒素:ケイ素比(NSR)が少なくとも約0.40であるアミンに富んだガラス基板を調製することができる。特に、NSRは、約0.44であることができる。一実施形態において、1種または複数の生物学的機能分子の付加に先立って、本発明の方法で処理されるガラス基板の表面の窒素含有量は、本明細書に記載されているESCAにより測定して少なくとも約5.0%であることができる。他の実施形態において、窒素含有量は、少なくとも約5.0%、5.5%、6.0%、6.5%、7.0%、7.5%または7.7%である。ある具体的実施形態において、窒素含有量は、少なくとも約5.5%である。基板がガラスである本発明の物品には、細胞培養皿などの実験機器が含まれるが、これに限定されるものではない。本発明に従って調製されるガラス物品の特定の使用は、本発明における限定要素として見なされるべきではない。したがって、プラスチック「ガラス製品」も、本実施形態の範囲内に想定される。
【0049】
また、モノマー沈着基板またはモノマー沈着基板を含む物品は、プラスチックから作成することができる。本明細書において使用されるプラスチックは、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、ポリエステル、環状オレフィンコポリマー、ポリメチルペンテン、およびポリエチレンを含むがこれらに限定されない任意のポリマーから製造することができる。プラスチック基板を含む本発明の物品は、細胞培養フラスコ、皿、マイクロタイタープレートなどの実験機器であってよい。また、プラスチック基板を含む物品は、チュービング、カテーテルおよび薬物送達マトリックスなどの臨床的性質であってよい。さらに、プラスチック基板は、光ファイバーにおいて、または光ファイバーのために使用することができる。言い換えれば、プラスチック基板を有する物品の使用は、本発明における限定要素として見なされるべきではない。
【0050】
本発明の方法により調製されたプラスチック基板は、実質的に均一な厚さでありかつ実質的に無欠陥である沈着重合モノマーの1つまたは複数の層を有するはずで、すぐに生物学的機能分子を固定化することができる。
【0051】
あるいは、モノマー沈着基板またはモノマー沈着基板を含む物品は、例えば、ステントなどの金属から形成することができる。また、本発明のモノマー沈着基板またはモノマー沈着基板を含む物品は、セラミック、ケイ素およびニチノールなどの他の非金属材料からなることができる。今度も、金属または非金属物品の具体的使用は、本発明の限定として見なされるべきではない。本発明の方法により調製された金属基板は、実質的に均一な厚さでありかつ実質的に無欠陥である1つまたは複数の単層を有するはずであり、すぐに追加の機能分子を固定化することができる。
【0052】
本発明のモノマー沈着基板を分析する一方法は、走査電子顕微鏡(SEM)を含む。そのような方法は、本発明の方法が、実質的に均一な厚さでありかつ実質的に無欠陥である1つまたは複数の層を含むモノマー沈着基板をもたらすことを証明することができる。例えば、本発明の方法を用いて調製される表面を有する基板は、伝統的方法で調製される基板と比較した場合、SEMの下で非常に異なる形態を示す。基板の1つまたは複数のモノマー層の厚さの均一性の差は、SEMを用いて容易に明らかになるはずである。さらに、本発明のモノマー沈着基板の欠陥数、またはその欠落数も、SEMの下で明らかになるはずであり、他の方法を用いて調製される基板表面上の欠陥と容易に比較することができる。したがって、SEMを用い、本発明によるモノマー沈着基板を有する物品を分析することができる。
【0053】
しかしながら、本発明の基板表面上の沈着モノマー層の厚さは、SEMによる検出を免れるほど薄いことがある。以前に述べたように、本発明に従って調製される基板上のモノマー層は、約100から約1000Åという薄さであるか、あるいはさらに薄いことがある。そのような状況においては、原子酸素を用いて欠陥を分析することができる。例えば、沈着モノマー層の欠陥は、エッチングプラズマを用いることにより分析することができる。沈着被膜が、基板に比べ、プラズマ放電の反応性成分に対してより抵抗性である場合には、たとえ欠陥が走査電子顕微鏡で見るには小さすぎても、被膜へのプラズマの暴露は、欠陥の位置を明らかにするはずである。反応種は、すべてのピンホールまたは他の欠陥を貫通して基板を弱め、1つまたは複数のコーティングにおいてひどい崩壊を引き起こすはずである。この技術は、参照により本明細書に組み込まれている、DegrohおよびBanksの教示に従う(非特許文献4参照)。DegrohおよびBanksにおいて、プラズマ系において作り出される原子酸素は、低高度地球周回軌道衛星および宇宙ステーション上で使用されるコーティングの欠陥を発見するのに使用される。
【0054】
本発明の一実施形態において、モノマー沈着基板は、紫外、可視、近赤外、および赤外領域の光に対して光学的に透明であるか透明に近いことがある。しかしながら、本明細書に記載されているモノマー沈着基板が光学的に透明であることは必須ではない。本明細書で使用する用語「光学的に透明な」は、透明であるか透明に近いことを意味するために使用される。そのような光学的に透明なモノマー沈着基板を含む物品は、例えば、バイオセンサーとして使用することができる。本明細書に記載されている方法により調製される光学的に透明な基板は、例えば、実質的に無欠陥である実質的に均一な単層を含むためにバイオセンサーの構成要素として使用することができる光ファイバーであることができる。モノマー沈着基板に共有結合的に固定化される生物学的機能分子は、例えば、標的化合物と結合し、標的の結合に反応してシグナルを発するバイオセンシングタンパク質を含むことができる。次いで、この生物活性表面と連動してもたらされるシグナルは、生物活性表面を介し、光ファイバーを通して検出器/読取機に伝達される。
【0055】
他の実施形態において、バイオセンシングタンパク質などの生物学的機能分子を含むセンシング素子は、水に溶けない架橋ポリマー生物活性表面において固定化またはカプセル化される。架橋ポリマー生物活性表面は、その上にプラズマ沈着を有する光ファイバーにアミノ含有シランを共有結合させることができる。本明細書で使用する用語「架橋ポリマー生物活性表面」は、実質的に水に溶けず、関心のある分析物またはリガンドに対して透過性である任意の二次元または三次元構造であってよい。場合により、架橋ポリマー生物活性表面は、他の生体分子からの実質的干渉を防ぎ、実質的に生体適合性であってよい。一実施形態において、架橋ポリマー生物活性表面は、結合タンパク質がある程度の立体構造的および/または配向的移動性を保持することを許す。架橋ポリマー生物活性表面は、複数の層、すなわち結合タンパク質を保持する役目を果たす内層、および透過性を制御しかつ/または生体適合性を得るための1つまたは複数の外層からなることができる。例えば、架橋ポリマー生物活性表面は、記載されている表面のいずれか1つからなってよい(例えば、同時係属の共同所有の特許文献4および特許文献5を参照。それらの全内容は、参照により本明細書に組み込まれるものとする)。固定化は、架橋ポリマー生物活性表面にセンシング素子を共有結合させることにより、または架橋ポリマー生物活性表面内にセンシング素子を物理的に封入することにより行うことができる。架橋ポリマー生物活性表面が、センシング素子を物理的に封入する場合、架橋ポリマー生物活性表面細孔は、センシング素子を保持する大きさである。センシング素子4cが、架橋ポリマー生物活性表面3cに結合し、表面3cが、沈着モノマー層2cに結合し、沈着モノマー層2cが、基板1に結合している一実施形態を示す図3を参照。一実施形態において、センシング素子4cは、例えば、共有結合またはイオン結合を用いて架橋ポリマー生物活性表面3cに結合している。
【0056】
また、本発明の生物活性表面を含む物品は、生物学的環境において変化する条件に反応して、より速い反応時間を示すことがある。本発明の方法は、伝統的技法で調製されるモノマー層よりも薄いモノマー層を持つモノマー沈着基板を含む物品の調製を可能にする。理論に束縛されるわけではないが、本発明のモノマー沈着基板上の1つまたは複数のモノマー層の薄さは、モノマー層を越えるより速い拡散時間を可能にし、すぐ隣の環境の変化に反応してより速い反応時間を可能にする。
【0057】
したがって、本明細書に記載されている方法に従って調製される生物活性表面を有する光ファイバーグルコースバイオセンサーは、迅速な応答時間および回復時間による分析物(例えば、グルコース)の検出を可能にした。特に、緩衝液、血漿および全血などの生物学的環境において様々なグルコース濃度の溶液に暴露されるグルコースバイオセンサーは、グルコース濃度の増加に30秒未満で十分に応答し、グルコース濃度の減少に3分未満で十分に応答した。
【0058】
本明細書に記載されている実施例は、例示の目的であり、決して、本発明の範囲を限定することを意図していない。
【実施例1】
【0059】
ガラス基板上へのアミン含有シランの沈着
重合モノマーでガラス試料をコーティングするためのプラズマ処理プロセスは、直径12インチ(約30cm)で高さ18インチ(約46cm)の直立円筒形真空チャンバー内で行った。ガラス試料は、チャンバーの中央平面に位置する高周波を動力とする直径8インチ(約20cm)の電極上に置いた。約5立方センチメートルのAPTMSの入った直径1インチ(約2.5cm)で高さ2インチ(約5cm)の開放したバイアルを電極上に置いた。初めに、システムを、回転翼粗引ポンプの支援でターボ分子ポンプにより、約8ミリTorr(約0.001kPa)の圧力まで真空排気した。次いで、ポンピングラインのバルブを締め、気化モノマーの圧力を一定の85ミリTorr(約0.01kPa)まで上昇させた。次いで、電極を、22ワットの電力を送るためのマッチング回路と直列で、13.56MHzの高周波発電機により刺激した。このようにして発生させたプラズマを、60秒間操作し、ガラス基板の表面上でモノマー蒸気を被膜に重合させた。
【0060】
処理後、チャンバーを大気圧に戻し、試料を取り出した。SEM写真は、ガラス、ステンレススチール、アルミニウムおよびアルギネート基板上の約150nmまでの膜厚を示した。APTMS沈着基板の電子分光化学分析(ESCA)は、試料が、以下の元素、すなわち酸素、窒素、炭素およびケイ素を含んでいることを示した。表1を参照されたい。
【0061】
【表1】

【0062】
比較すると、対照試料は、酸素、ナトリウム、カリウム、炭素、およびケイ素からなっていた。表2を参照されたい。モノマー自体は、ESCAが通常するように、水素を除いて44.4%炭素、29.6%酸素、8.6%窒素および17.3%ケイ素である。
【0063】
【表2】

【実施例2】
【0064】
ガラス底プレート上の非汚染性表面の調製
実施例1に記載されているように、BD Labware96ウエルガラス底プレート(カタログ番号3537311)をAPTMSプラズマに暴露させた。続いて、多糖(ヒアルロン酸、Lifecore Biomedical)を含む生物活性表面を、水性EDC/NHSカルボジイミドカップリング化学反応を用い、プレートの半数のウエルのプラズマでコーティングされた表面に共有結合させた。MC3T3細胞(マウス、骨芽細胞)を、10%FBSを含有する200μLのαMEM培地中、ウエル当たり10,000個の細胞で96ウエルプレートのすべてのウエルに播種した。APTMSのみでコーティングされたプレートの区画は、顕著な細胞接着および48時間までの増殖を示した。APTMS表面と結合させたHAでコーティングされた半数のプレートは、同じ48時間以内に細胞が接着するのを許さなかった。したがって、接着依存性細胞は、接着できなかったため、本明細書に記載されている方法に従って調製される培養プレート表面上で増殖または広がることができなかった。したがって、この方法により調製される表面および物品は、非汚染性にされた。
【0065】
当然のことながら、この方法は、培養皿、使い捨てプレート、ならびに他の細胞または組織容器および機器への使用が想定され、この方法は、表面、ファイバー、バイオセンサー、微小粒子およびナノ粒子へのタンパク質、抗体、ペプチド、薬物、または小分子の共有結合固定化に容易に適応できる。
【実施例3】
【0066】
グルコースバイオセンサーの調製
グルコースセンサーは、コア径400μmの光ファイバーの一方の端で調製し、他方の端は、蛍光検出装置に連結した。ファイバーの磨き上げたセンシング末端を、実施例1におけるようにAPTMSでコーティングした。アルギネートをベースにしたヒドロゲルマトリックスを含む生物活性表面を、APTMS層に結合させた。アルギネートヒドロゲルマトリックスは、カルボジイミド化学反応を介し、アジピン酸ジヒドラジド(AAD)と共にカルボキシルを介してPronova(商標)UP LVGアルギネートを共有結合的に架橋することにより調製した。Pronova(商標)UP LVGは、その低い粘性および高いグルロン酸対マンヌロン酸比で選択した。2%アルギネート溶液は、アルギネート1グラムを0.1M MES緩衝液(pH 6.0)50mLに溶かし、AAD110mgおよびヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)79mgを加えることにより調製した。溶液は、必要になるまで4℃にて保存することができる。デュアルシリンジ混合技法を用い、アルギネート溶液に、溶液10mL当たり1−エチル−3−(3−ジメチルアミノ−プロピル)カルボジイミド(EDC)145mgを加えた。アルギネート/AAD/HOBt/EDC混合物を、付いている30ゲージの針で1mLのシリンジ中に吸引した。針を準備し、次いで、アルギネートの小さな玉と一緒に、先端部を、APTMSでコーティングされた光ファイバー先端部に付けた。マトリックスは、約2〜5分間で架橋した。ファイバー先端部およびマトリックス集合を水和チャンバーに移し、2時間保存した。2時間の最後に、センシングチップを、過剰のpH 8.5エタノールアミンに15分間入れ、反応をクエンチした。
【0067】
結合タンパク質センシング素子を結合させるため、チップを、蛍光標識されたグルコース−ガラクトース結合タンパク質(GGBP)のPBS緩衝液溶液(53uM、50uL)中で約2時間インキュベートした。このバイオセンサーで使用されるGGBPは、149位のグルタミン酸がシステインで置換され、213位のアラニンがアルギニンで置換され、238位のロイシンがセリンで置換されている(E149C/A213R/L238S)変異GBPとした。変異GGBPタンパク質は、149位でN−((2−ヨードアセトキシ)エチル)−N−メチル)アミノ−7−ニトロベンゾオキサジアゾール(IANBD)により標識した。特許を参照されたい(例えば、全体として参照により組み込まれている特許文献6参照)。しかしながら、注目すべきは、多くの他の変異および標識タンパク質を使用することができる(例えば、参照により組み込まれている特許文献7および特許文献8参照)。センサーは、インキュベーション中、周囲の光から守られた。2時間のインキュベーション後、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)/N−ヒドロキシスルホスクシンイミド(スルホ−NHS)の溶液(200mM/50mM Sigma/Fluka)50uLをインキュベーション管に加えた。40分後、センサーチップを取り出し、1M、pH 8.5エタノールアミン50uLに入れ、反応をクエンチした。エタノールアミン溶液中で20分後、センサーチップをPBS溶液に移し、少なくとも8時間放置し、すべての未反応タンパク質が拡散した。次いで、センサーを新鮮なPBSに移し、使用するまで暗所に保存した。
【0068】
実施例3のグルコースバイオセンサーは、緩衝液、血漿および全血におけるグルコース濃度の変化に応答した。緩衝液および血漿試料のグルコース値は、YSI臨床用グルコースアナライザーにより確かめられた。全血試料(30mM以外)は、Accuchek Glucometerでチェックした。0mMグルコースのすべてのベースライン溶液は、PBS緩衝液である。使用されるグルコース濃度は、ミリモル(mM)である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】基板(1)、沈着モノマー層(2a)、および生物活性表面(3a)を含む本発明の物品のある実施形態の側面図である。
【図2】基板(1)、ヒドロキシルに富んだ層(2b)、沈着モノマー層(3b)、および生物活性表面(4b)を含む本発明の物品のある実施形態の側面図である。
【図3】基板(1)、モノマーの沈着層(2c)、センシング素子(4c)を持つ生物活性表面(3c)を含む本発明の物品のある実施形態の側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物活性表面を含む物品であって、
a)基板、
b)前記基板上のアミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)層であって、実質的に均一な厚さでありかつ実質的に無欠陥である層、および
c)前記APTMSに共有結合している生物学的機能分子を含むことを特徴とする物品。
【請求項2】
前記基板は、ガラス、金属、プラスチック、ヒドロゲルまたはセラミックであることを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記生物学的機能分子は、単糖、二糖、多糖、アミノ酸、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、プロテオグリカン、糖タンパク質、核酸、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、脂質、脂肪酸、天然ポリマー、合成ポリマー、低分子量化合物およびそれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記生物学的機能分子は、アルギネート、ヒアルロン酸、ポリエチレングリコール、メタクリル酸ヒドロキシエチル、ポリラクチド、ポリグリコール酸およびそれらのコポリマーからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記生物学的機能分子は、ヒアルロン酸であることを特徴とする請求項4に記載の物品。
【請求項6】
前記生物学的機能分子は、前記生物活性表面上に三次元構造を付与することを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記基板は、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアクリルアミド、環状オレフィンコポリマー、ポリメチルペンテン、およびポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1つの化合物からなるプラスチックであることを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記基板は、遊離反応基を含むヒドロキシルに富んだポリマー層をさらに含み、前記APTMS層は、前記ヒドロキシルに富んだポリマー層上に沈着されることを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項9】
前記ヒドロキシルに富むポリマー層は、ポリメタクリル酸ヒドロキシエチル(polyHEMA)であることを特徴とする請求項8に記載の物品。
【請求項10】
光ファイバーであることを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項11】
近位末端および遠位末端を有し、前記APTMS層は、前記ファイバー遠位末端の少なくとも一部の上に存在することを特徴とする請求項10に記載の光ファイバー。
【請求項12】
前記生物学的機能分子は、光ファイバー遠位末端に共有結合しているポリマーマトリックスを含み、前記ポリマーマトリックスは、試料中の標的分析物を検出するためのセンシング素子を受け入れるように形状が決められていることを特徴とする請求項11に記載の光ファイバー。
【請求項13】
前記ポリマーマトリックスは、ヒアルロン酸(HA)、アルギネート(AA)、ポリエチレングリコール(PEG)、メタクリル酸ヒドロキシエチル、ポリラクチド、ポリグリコール酸、メタクリレート、アクリレート、メタクリレート−メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリレート−メタクリル酸ヒドロキシエチル、およびアクリレート−メタクリレート−メタクリル酸ヒドロキシエチルからなる群から選択されることを特徴とする請求項12に記載の光ファイバー。
【請求項14】
請求項12に記載の光ファイバーおよびポリマーマトリックス中に封入されるか、あるいはポリマーマトリックスに接続されるセンシング素子を含むことを特徴とするバイオセンサー。
【請求項15】
前記センシング素子は、少なくとも1つの発光性標識されたペリプラズム結合タンパク質を含むことを特徴とする請求項14に記載のバイオセンサー。
【請求項16】
プラスチックまたはガラスの組織培養容器であることを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項17】
ステントであることを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項18】
請求項1に記載の物品を製造する方法であって、
a)前記基板を処理して前記基板の表面上に遊離反応基を形成すること、
b)無溶媒環境において前記処理基板上に前記APTMS層を沈着すること、および
c)前記APTMS沈着層上に生物学的機能分子を共有結合させて前記物品の生物活性表面を提供することを含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
前記基板を前記処理することは、前記基板を水または酸素プラズマに暴露することを含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記遊離反応基は、ヒドロキシル基であることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項21】
無溶媒環境において前記処理基板上にAPTMS層を沈着することは、気相沈着により行われることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記気相沈着は、化学気相沈着もしくは物理気相沈着または化学気相沈着と物理気相沈着の組合せであることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記気相沈着は、プラズマを含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記基板を前記処理することは、ヒドロキシルに富んだポリマー層で前記基板をコーティングすることを含み、前記ヒドロキシルに富んだポリマー層は、遊離反応基を含み、前記APTMSは、前記ヒドロキシルに富んだポリマー層上に沈着されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項25】
生物活性表面を含む物品であって、
a)非金属基板、
b)無溶媒環境において前記基板上に沈着されたモノマーを含む層であって、実質的に均一な厚さでありかつ実質的に無欠陥である層、および
c)前記モノマーに共有結合している生物学的機能分子を含むことを特徴とする物品。
【請求項26】
前記モノマーは、アミン、クロロ、スルフヒドリル、ブロモ、スルフヒドリル、エポキシド、グリシジル、シアノ、アクリレート、およびビニルからなる群から選択される化学基を含み、前記生物学的機能分子は、前記化学基に共有結合していることを特徴とする請求項25に記載の物品。
【請求項27】
前記化学基は、アミンであることを特徴とする請求項26に記載の物品。
【請求項28】
前記モノマーは、シランであることを特徴とする請求項27に記載の物品。
【請求項29】
前記シランは、アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)、アミノプロピルトリエトキシシラン、または3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)であることを特徴とする請求項28に記載の物品。
【請求項30】
生物活性表面を含む物品であって、
a)基板、
b)無溶媒環境において前記基板上に沈着されたヒドロキシルに富んだポリマーおよびモノマーを含む層、
c)前記層に共有結合している生物学的機能分子を含むことを特徴とする物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−538079(P2008−538079A)
【公表日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513451(P2007−513451)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/017019
【国際公開番号】WO2006/085898
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】