説明

生物活性金属イオンデリバリー用および歯再石灰化用リンタンパク質調製物

本発明は、一態様において、(a)有効量の生物活性金属イオン源、(b)カゼインまたはカゼイン塩の部分加水分解物を部分架橋することにより得られるリンタンパク質調製物、および(c)生理学的に許容できる1つ以上の希釈剤またはキャリアを含む、哺乳動物への生物活性金属イオンデリバリー用組成物を提供する。1つ以上のキャリアまたは希釈剤と組み合わせてそのようなリンタンパク質調製物を有効量含む、哺乳動物における歯エナメルの再石灰化用および/又は歯齲蝕、酸蝕症、歯過敏症、または歯肉炎の治療または予防用組成物も提供する。関連する態様において、本発明は、そのような組成物の使用方法を提供する。そのような組成物および方法の使用に好適な新規なリンタンパク質調製物も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ヒトおよび動物への生物活性金属イオンのデリバリーのための組成物および方法に関する。具体的には、本発明は、歯の再石灰化、および/又は歯齲蝕(dental caries)および/又は酸蝕症(dental erosion)、歯過敏症、または歯肉炎の予防または治療のための組成物および方法にも関する。
【0002】
発明の背景
歯齲蝕(または齲歯(dental decay))および酸蝕症は、多くの国において水供給源にフッ素添加し、かつ、フッ化物練り歯磨き剤を使用しているにも関わらず、未だ広まっている状態である。歯齲蝕は、通常、歯の表面のエナメルで始まるが、歯の硬組織を次第に破壊していくことができる。多くの国において、5歳の子供の約半数がある種の齲蝕を経験している。更に、ある種の人々の群は、職業ゆえに、酸蝕症および/又は齲蝕に特に影響を受けやすいがある。例えば、ワインの味利き人およびしばしばスポーツ飲料を少しづつ飲む優秀なサイクリストなどの運動選手は、歯が低pH飲料に継続的に曝され、これによって歯の表面全体が溶けてしまうことがある。
【0003】
乳製品は、歯齲蝕の進行に対して保護効果を有することが知られている。多くの調査によって、歯エナメルに対して抗齲蝕/再石灰化作用を示すのは主に乳製品のタンパク質成分、具体的にはカゼインであることが示唆されている。更に、カゼイン中の特定の分画の活性ペプチドは、抗齲蝕/再石灰化作用の大きな原因であると同定されている。これらは、カゼインの全重量の約10%を構成するリン酸カルシウム金属イオン封鎖リンペプチドである。これらのペプチドは、コロイド状のカゼインリンペプチド無定形リン酸カルシウム複合体を形成することによってリン酸カルシウムの溶解性を驚くほど増加させる一まとまりのホスホセリル残基[−Ser(P)−Ser(P)−Ser(P)−Glu−Glu]を含む。
【0004】
カゼイン、カゼイン塩、それらの消化産物、または特定のカゼイン由来のリンペプチドを含む齲蝕の阻害および関連する歯の用途における使用のための種々の組成物に関する多くの特許公表物がある。
【0005】
例えば、ニュージーランド特許明細書199891は、齲蝕および歯肉炎阻害量のカゼイン、アルファ−s−カゼイン、またはホスビチンを含む練り歯磨き剤および歯磨き剤を記載している。
【0006】
日本国特許第59152317号は、カゼイン、カゼイン加水分解物、またはそれらの混合物と一緒にムタナーゼ(mutanase)を含む経口用組成物(齲蝕予防用薬物)を記載している。
【0007】
米国特許第5833953号、日本国特許第9002928号、および米国特許第5427769号はすべて、ミセル状カゼインを含む種々の歯齲蝕治療または予防用組成物を記載している。
【0008】
米国特許第5130123号は、カゼイン塩またはカゼイン塩の消化産物のいずれかの水溶性塩を含む齲蝕または歯肉炎阻害用歯磨き組成物を記載している。
【0009】
WO82/03008は、特定のアミノ酸配列を含むリンタンパク質またはリンポリペプチド、具体的にはカゼイン酸ナトリウム、カゼイン酸カルシウム、またはホスビチンを含む齲蝕および歯肉炎阻害用組成物を記載している。
【0010】
日本国特許第4077415号は、好適な賦形剤と組み合わせてカゼインリンペプチドを含む歯石予防用組成物を記載している。
【0011】
米国特許第5015628号は、5〜30個のアミノ酸を有し、特定のアミノ酸配列を含み、かつ、カゼインのトリプシンの消化により得ることができる抗齲蝕性リンペプチドを記載している。
【0012】
WO98/40406は、抗齲蝕効力を有する特定のカルシウムリンペプチド複合体を記載している。該リンペプチドは、Ser(P)のまとまりの配列モチーフ[−Ser(P)−Ser(P)−Ser(P)−Glu−Glu]を含み、アモルファスリン酸カルシウムおよびアモルファスリン酸フッ化カルシウム中で自身の重量を安定化することができると言われている。
【0013】
WO00/06108は、1つ以上の単離および精製されたカゼインタンパク質またはその塩の懸濁液または溶液を含む歯の表面などの生物表面への種々の生物活性成分デリバリー用配合物を記載している。
【0014】
カゼインリンペプチドを含む組成物は、無傷のカゼインを含む組成物と比較して優れた抗齲蝕性/再石灰化活性を有していると報告されている。しかしながら、カゼインリンペプチドを使用することは、所望のリンペプチドを放出するためのカゼインの消化(例えば、酵素トリプシンを用いる)によって、得られた消化産物に苦い香味を与える疎水性ペプチドも放出されるという不利な点を有している。このことは、生産物が許容できる香味を有するため、そのような疎水性ペプチドを除去するための消化産物の分別が必要であることを意味する。あるいは、このことは、カゼイン由来の材料の分画のみを用い、典型的には材料の75%以上が廃棄されることを意味する。
【0015】
本出願人らは、今や、驚くべきことに、カゼインを部分加水分解し、続いて部分加水分解物を部分架橋することにより、未修飾カゼインまたはカゼイン部分加水分解物よりも優れたカルシウム結合および歯再石灰化特性を有するリンタンパク質調製物を得ることができることを見出した。そのようなリンタンパク質調製物は、他の生物活性金属イオンを結合する増大した能力を有することも見出された。
【0016】
日本国特許第4−126039号は、ダイズ、小麦、若しくはスイートコーンから得られるタンパク質またはゼラチン、動物肉、魚肉、若しくはカゼインなどの動物タンパク質などの食品タンパク質を部分的に加水分解し、続いて得られた加水分解ペプチドをグルタミン転移酵素または希釈した酸で処理することによる官能性ペプチドの調製方法を記載している。得られた処理ペプチドは、苦味がないと言われている。しかしながら、日本国特許第4−126039号は、そのようなペプチドのカチオン結合特性を記載しておらず、本明細書に具体的に記載されたカゼインから得られるペプチドも記載していない。
【0017】
WO00/05972およびWO01/0154512は、カゼインまたは重合された加水分解カゼインなどの修飾カゼインをガムのエラストマー成分の一部として含むチューインガム組成物を記載している。しかしながら、これらの公表物は、そのような修飾されたカゼインのカチオン結合特性を記載していない。
【0018】
本発明の目的は、生物活性金属イオンのデリバリーに有用な方法および/又は組成物、並びに歯エナメルの再石灰化および/又は歯齲蝕、酸蝕症、歯過敏症、または歯肉炎の治療または予防のための方法および/又は組成物を提供することであり、従来技術の不利な点を克服するのにいくらか助けとなるか、少なくとも公衆に有用な選択が提供される。
【0019】
発明の概要
第1の態様において、本発明は、有効量の生物活性金属イオン源、カゼインまたはカゼイン塩の部分加水分解物を部分架橋することにより得られるリンタンパク質調製物、および生理学的に許容できる1つ以上の希釈剤またはキャリアを含む、哺乳動物への生物活性金属イオンデリバリー用組成物を提供する。
【0020】
別の態様において、本発明は、有効量の金属イオン源をカゼインまたはカゼイン塩の部分加水分解物の部分架橋により得られたリンタンパク質調製物と組み合わせて含む組成物を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物への生物活性金属イオンのデリバリー方法を提供する。
【0021】
更に態様において、本発明は、哺乳動物への生物活性金属イオンデリバリー用組成物の調製、およびカゼインまたはカゼイン塩の部分加水分解物の部分架橋により得られるリンタンパク質調製物の調製における使用を提供する。
【0022】
金属イオンは2価であることが好ましい。
【0023】
好ましい実施態様において、金属イオンは、カルシウム、鉄、亜鉛、コバルト、銅、およびマグネシウムからなる群から選択される。
【0024】
組成物は、食料品、飲料、または錠剤若しくはカプセル剤などの薬学的ビヒクルの形態の経口用組成物であることが好ましい。
【0025】
組成物のpHは、約6および9の間であることが好ましく、約6.5および8の間であることがことがより好ましく、約6.8および7.7の間であることが更により好ましく、約7および7.5.の間あることがことが最も好ましい。
【0026】
さらなる態様において、本発明は、カゼインまたはカゼイン塩の部分加水分解物を部分架橋することにより得られた有効量のリンタンパク質調製物を1つ以上のキャリアまたは希釈剤と組み合わせて含む、哺乳動物における歯エナメルの再石灰化用および/又は歯齲蝕、酸蝕症、歯過敏症、または歯肉炎の治療または予防用組成物を提供する。
【0027】
さらなる態様において、本発明は、哺乳動物の歯をカゼインまたはカゼイン塩の部分加水分解物を部分架橋することにより得られた有効量のリンタンパク質調製物を含む組成物と接触させる工程を含む、哺乳動物における歯エナメルの再石灰化方法および/又は歯齲蝕、酸蝕症、歯過敏症、または歯肉炎の治療または予防方法を提供する。
【0028】
さらなる態様において、本発明は、哺乳動物における歯エナメルの再石灰化用および/又は歯齲蝕、酸蝕症、歯過敏症、または歯肉炎の治療または予防用組成物の調製、およびカゼインまたはカゼイン塩の部分加水分解物の部分架橋により得られるリンタンパク質調製物の調製における使用を提供する。
【0029】
好ましい実施態様において、組成物は、カルシウムイオン源を更に含む。
【0030】
組成物は、ホスフェートイオン源を含むことが好ましい。
【0031】
組成物は、カルシウムイオンおよびホスフェートイオンの双方を含むことがより好ましく、好都合にはリン酸カルシウムとして加えられる。あるいは、カルシウムイオンおよびホスフェートイオンをリン酸ナトリウムおよび塩化カルシウムとして加えることができる。
【0032】
特に好ましい実施態様において、カルシウムイオン源は、アラミン(ALAMIN)の商標名(登録商標)で入手可能なものなどの天然ミルクカルシウムを含む。
【0033】
カルシウムイオンは、好ましくはリンタンパク質調製物1グラムあたり少なくとも約5mmol、より好ましくは少なくとも約10mmol/g、更により好ましくは少なくとも約20mmol/、より好ましくは少なくとも約30mmol/gのカルシウムイオンのレベルで組成物中に存在する。
【0034】
カルシウムイオンとホスフェートイオンとのモル比は、好ましくは約0.8〜1.2:0.4〜0.8、より好ましくは約1:0.6の範囲である。
【0035】
別の代替実施態様において、組成物は、ストロンチウムイオン源を含む。この実施態様において、組成物は、フッ化物イオン源も含むことが好ましい。
【0036】
ある好ましい実施態様において、組成物は、チーズなどの食料品の形態であり、好都合には加工チーズまたはチューインガムなどの糖菓である。
【0037】
好ましい代替実施態様において、組成物は、口内洗浄剤、または液状歯磨き剤などの歯磨き剤、練り歯磨き剤、粉末、乳濁液、若しくはゲルの形態である。
【0038】
部分加水分解物は、酸カゼイン、レンネットカゼイン、またはカゼイン塩の酵素加水分解により得られることが好ましい。
【0039】
酵素は、トリプシンであることが好ましく、好都合にはウシ由来のトリプシンまたはブタ膵トリプシンである。
【0040】
部分加水分解は、約7〜約8のpHで行うことが好ましい。
【0041】
加水分解度は、好ましくはペプチド結合の合計数の約3%〜約8%の範囲、より好ましくは約3.5〜約7%(約4%〜約6.5%など)の範囲である。
【0042】
加水分解度は、好ましくはカゼインまたはカゼイン塩の約10%以下、より好ましくは約5%以下が部分加水分解によってpH7において不溶性となるものである。
【0043】
部分加水分解物は、グルタミン転移酵素を用い、好ましくは約7〜約8のpHで、酵素により部分架橋することが好ましい。
【0044】
部分架橋度は、得られるリンタンパク質調製物が、好ましくはタンパク質1グラムあたり約10μmol以上、より好ましくはタンパク質1gあたり約10および約250μmol、より好ましくはタンパク質1gあたり約50および160μmol(タンパク質1gあたり約110および150μmolの間など)の架橋を含むものである。
【0045】
さらなる態様において、本発明は、リンタンパク質調製物がカゼインまたはカゼイン塩の部分加水分解物の部分架橋により得られ、架橋前におけるカゼインまたはカゼイン塩の部分加水分解度がペプチド結合の合計数の約3%〜約8%、より好ましくは約3.5〜約7%(約4%〜約6.5%など)の範囲であり、部分架橋度はリンタンパク質調製物がタンパク質1グラムあたり約10μmol以上、より好ましくはタンパク質1gあたり約10および約250μmol、より好ましくはタンパク質1gあたり約50および160μmol(タンパク質1gあたり約110および150μmolの間など)の架橋を含むものである、新規なリンタンパク質調製物を提供する。
【0046】
本発明は広範には上記の通りであるが、本発明はそれに限定されず、具体例を提供する以下の詳細な説明の実施態様も含む。
【0047】
発明の詳細な説明
上記の通り、本発明は、哺乳動物への生物活性金属イオンのデリバリーのための方法および組成物に関する。本発明は、歯エナメルの再石灰化および/又は歯齲蝕、酸蝕症、歯過敏症、または歯肉炎の治療または予防のための方法および組成物にも関する。関連する態様において、本発明は、そのような方法および組成物に有用な新規なリンタンパク質調製物にも関する。
【0048】
本出願人らは、驚くべくことに、カゼインまたはカゼイン塩を部分的に加水分解し、続いて部分加水分解物を部分架橋することによって、得られるリンタンパク質では、架橋されていない部分加水分解カゼインと比較して、2価カチオンの存在下での溶解性が増加し、かつ、2価カチオンを結合する能力が増加することの双方を見出した。
【0049】
これらの特性により、そのようなリンタンパク質調製物は、ヒトまたは動物への生物活性金属イオン、特に、カルシウム、鉄、亜鉛、コバルト、銅、およびマグネシウムを含む2価カチオン投与用のデリバリービヒクルとして有用なものとなる。リンタンパク質調製物は、有意な量のカチオンと結合することができ、したがってカチオンの塩の溶液中での沈殿を妨げて、溶液中で該塩を維持し、それによってそのバイオアベイラビリティを増大させる。リンタンパク質調製物は未修飾カゼインより高い溶解性を有するので、それらは比較的容易に経口用組成物に導入できることも見出されている。
【0050】
リンタンパク質調製物は、歯エナメルを再石灰化し、それによって酸蝕症または歯齲蝕を治療または予防する特定の用途を有する。如何なる理論に拘束されることを望むものではないが、リンタンパク質調製物のカルシウム(およびリン酸)イオンを可溶化する能力は、少なくとも一部はそれらの歯エナメルの再石灰化能力に原因があり得る。特に、リンタンパク質調製物は、歯エナメル表面の近くの溶液中で高濃度のカルシウムおよびホスフェートイオンを維持することができ、これらのイオンが鉱質除去された歯エナメルの孔に拡散して戻ることが容易となり、したがって再石灰化活性が増加する。リンタンパク質調製物は歯エナメル表面上にコーティングを形成することも見出され、カルシウムおよびホスフェートイオンのアベイラビリティを更に増大させることができる。
【0051】
更に、本出願人らは、驚くべくことに、リンタンパク質調製物が、齲蝕を引き起こす細菌、具体的にはミュータンス連鎖球菌(Streptococus mutans)のエナメル表面への接着を阻害することも見出した。細菌は、齲蝕プロセスを開始するためには歯表面に接着することが必要であるため、細菌の接着の程度を減ずることによって、齲蝕形成の危険性を減ずることができる。したがって、本発明の方法のリンタンパク質調製物は、再石灰化修復機能のみならず、予防機能をも有する。本出願人らは、タンパク質が口腔カンジダ症に関与している酵母C.アルビカンスの接着を阻害することも見出した。
【0052】
本発明に好適なリンタンパク質調製物は、カゼインの部分加水分解物、すなわち、全部ではないがいくつかのペプチド結合が加水分解されたカゼインを部分架橋することにより得ることができる。
【0053】
部分加水分解物を調製するために用いられるカゼインはいずれの形態であることができ、酸カゼイン、レンネットカゼイン、またはカゼイン塩はすべて用いることができる。化合的な加水分解を何ら除外するものではないが、部分加水分解は酵素により水溶液中で行うことがことが好ましい。部分加水分解を行うのに好適な酵素には、トリプシンおよびキモトリプシンなどのプロテアーゼが含まれる。しかしながら、用いる酵素は、トリプシンであることが特に好ましく、好都合にはウシ由来のトリプシンまたはブタ膵トリプシンである。
【0054】
部分加水分解は、用いる酵素に適当な温度およびpHで行うことができる。例えば、ウシ由来のトリプシンを用いる場合、部分加水分解は、約7〜約8のpHおよび約37℃の温度で好都合に行うことができる。このpHでは、カゼインは、反応溶液中に用いられている緩衝液に依存して、カゼイン塩、例えばカゼイン酸ナトリウムとして存在することは十分に理解されている。
【0055】
反応は、所望の加水分解度が達成される酵素およびカゼイン濃度などの適当な条件下で十分な期間行わなければならない。所望の加水分解度が達成されたとき、例えば酵素を変性させる温度(例えば約80℃)に反応混合物を加熱することによって酵素を不活化することにより、反応を好都合にあるいは少なくとも実質的に終了することができる。所望の加水分解度が達成されたら直ぐに後述の部分架橋反応を開始するならば、加水分解反応を完全に終了させることはあまり重要ではない。すなわち、部分架橋反応が行われている間、軽微な量の加水分解が未だ続いている。
【0056】
元のペプチド結合加水分解されたのパーセンテージに関して、約3%〜約8%の範囲、より好ましくは約3.5%〜約7%(約4%〜約6.5%など)の加水分解度を有する部分的に加水分解されたカゼインを生ずる条件下で、部分加水分解を行うことが好ましい。
【0057】
加水分解度は、好ましくはカゼインまたはカゼイン塩の約10%以下、より好ましくは約5%以下が部分加水分解プロセスによってpH7で不溶性となるものである。
【0058】
加水分解度は、当業者に既知である方法、好都合にはTNBS(2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸)法によって測定することができる。
【0059】
部分的に加水分解されたカゼインまたはカゼイン塩の分子量プロフィールは、カゼインの分子量より小さいが、以下の分布より大きいことが好ましい:約1.7%≧30,000Da、22%<30,000Da、および≧21,000Da、22%<21,000Da、および≧12,000Da、54.3%<12,000Da。
【0060】
部分的に加水分解されたカゼインまたはカゼイン塩の分子量プロフィールは、カゼインの分子量より小さいが、以下の分布より大きいことがより好ましい:約9.4%≧30,000Da、48%<30,000Da、および≧21,000Da、11%<21,000Daおよび≧12,000Da、31.6%<12,000Da。
【0061】
部分的に加水分解されたカゼインまたはカゼイン塩の分子量プロフィールは、カゼインの分子量より小さいが、以下の分布より大きいことがより好ましい:約11%≧30,000Da、50%<30,000Da、および≧21,000Da、10%<21,000Da、および≧12,000Da、29%<12,000Da。
【0062】
部分的に加水分解されたカゼインまたはカゼイン塩の分子量プロフィールは、カゼインの分子量より小さいが、以下の分布より大きいことが最も好ましい:約13%≧30,000Da、53%<30,000Da、および≧21,000Da、8%<21,000Da、および≧12,000Da、26%<12,000Da。
【0063】
部分的に加水分解されたカゼインの分子量プロフィールは、好都合には、サイズ排除ゲル濾過により、当業者に既知の方法を用いて測定することができる。例として、部分的に加水分解されたカゼインを好適な溶媒、好都合には6M尿素に溶解し、例えばスーパーデックス(Superdex)20010/30HRカラムを用いた高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC系)を用いてタンパク質分画を分離し、溶出されたタンパク質をUV吸収(好都合には280ηmで)により検出することができる。次いで、タンパク質吸収曲線の積分により、溶出されたタンパク質の分子量分布を計算することができる。当業者は、タンパク質吸収曲線が緩衝液および緩衝液濃度の選択に依存することを十分に理解している。
【0064】
当業者は、反応時間および酵素濃度などの反応条件を適切に変えることにより、所望の加水分解度を有する部分的に加水分解されたカゼインを得ることができることを十分に理解している。例示として、好適な加水分解度を有する部分的に加水分解されたカゼインは、まず10%等電点沈殿カゼイン溶液を50℃においてNaOHにより可溶化してpH7とすることにより得ることができる。次いで、溶液を37℃に冷却し、ブタ膵トリプシン調製物(好適な調製物は、ノボ.4500K(分子量23,400Da、活性4500USP単位/mg)として市販されている)を約0.01%w/wカゼインで加え、15分間インキュベーションする。酵素の不活化は、80℃に加熱し、5分間保持することによって達成することができる。
【0065】
部分的に加水分解されたカゼインが調製されたら直ぐに、それを部分架橋して本発明によるリンタンパク質調製物を形成する。
【0066】
本明細書中で用いられる通り、「架橋」との用語は、カゼインまたはカゼイン塩の部分加水分解物を部分架橋することとの関連で用いる場合、カゼイン分子のアミノ酸残基および/又は部分加水分解物を含むカゼイン分子フラグメントの間の分子間共有結合の形成を意味する。分子間共有結合は、グルタミンおよびリシン残基間の結合、すなわち、グルタミル/リシル共有結合を含むことが好ましい。いくつかの分子内架橋、すなわち、同じカゼイン分子またはカゼインフラグメント上のアミノ酸残基間での架橋が起こる可能性も高いことも十分に理解されている。
【0067】
「部分的」との用語は、「部分架橋」との関連で用いる場合、架橋反応後、すべてのアミノ酸残基が架橋されてはないこと、すなわち、いくつかの架橋されていないアミノ酸残基が残っていることを意味する。
【0068】
本明細書中では、部分架橋度をタンパク質1グラムあたりのマイクロモルの架橋で表す。
【0069】
グルタミル/リシル結合の量に関する部分架橋度は、好都合には、架橋タンパク質を好適な酵素、好都合にはプロナーゼ、ロイシンアミノペプチダーゼ、プロリダーゼ、およびカルボキシペプチダーゼを用いてタンパク質分解消化を行い、続いてタンパク質分解消化産物のHPLCおよびε−(γ−グルタミル)リシン(G−L)ピークの定量を行うことによって、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により決定することができる。
【0070】
部分架橋は、好都合には、リシルオキシダーゼまたはグルタミン転移酵素のいずれかの酵素を用いて酵素によって行うことができる。
【0071】
グルタミン転移酵素を用い、重合を約7および8の間のpHにおいて行うことが特に好ましい。部分架橋は、所望の架橋度が起こる条件下および十分な期間行うことが望ましい。反応は、得られるリンタンパク質調製物中の架橋度が、タンパク質1グラムあたり約10μmol以上、より好ましくはタンパク質1グラムあたり約10および約250μmolの間、より好ましくはタンパク質1グラムあたり約50および160μmolの間(タンパク質1グラムあたり約110および150μmolの間など)の架橋を含むこととなる条件下で行うことが好ましい。
【0072】
この場合でも、所望の架橋度が達成されたら直ぐに、典型的には酵素を変性させるのに十分な温度(例えば約80℃)に約5分間反応混合物を加熱することによって酵素を不活化することにより反応を終了することができる。部分架橋および酵素の不活化の完了後、得られたリンタンパク質含有溶液を透析またはダイアフィルトレーションして、任意の残留低分子量ペプチドおよび塩を好都合には約10,000〜約14,000Daの分子量カットオフを有する膜を用いて除去することも一般的に好ましい。精製リンタンパク質含有溶液を凍結乾燥または噴霧乾燥して固体形態のリンタンパク質調製物を得ることができる。
【0073】
任意の市販されているグルタミン転移酵素供給源を用いて、部分架橋を行うことができる。例として、好適な酵素は、アクティバ(Activa)MPとして味の素社から市販されている1%グルタミン転移酵素調製物である。
【0074】
あるいは、プラステイン反応(当業者に既知である酵素反応である)を用いることができる。架橋は、ペルオキシダーゼおよび過酸化水素を用いてチロシン残基間で行うこともできる。
【0075】
カゼイン部分加水分解物の部分架橋を酵素により行うことが好ましいが、二官能性アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)などの好適な試薬を用いた化学的方法による部分架橋を除外するものではない。
【0076】
当業者は、反応時間および酵素濃度などの反応条件を適切に変えることによって所望の架橋度を有するリンタンパク質調製物を得ることができることを十分に理解している。
【0077】
例として、好適な架橋度を有するリンタンパク質調製物は、上記の通りに調製された部分的に加水分解されたカゼインを、グルタミン転移酵素調製物(味の素社から市販されているアクティバMP)を4.5%w/wカゼインの比で加え、反応混合物を40℃で18時間インキュベーションすることで処理して得ることができる。
【0078】
リンタンパク質調製物を、ヒトおよび動物への生物活性金属イオン、特に2価金属イオンのデリバリーに好適な組成物に導入することができる。そのような組成物は、錠剤またはカプセル剤などの薬学的ビヒクルの形態であることができる。リンタンパク質調製物を生理学的に有用な量の生物活性金属イオン源および1つ以上の生理学的に許容できるキャリアまたは希釈剤と組み合わせて含む錠剤またはカプセル剤は、当業者に既知である標準方法を用いて調製することができる。本発明の組成物に導入される生物活性金属イオン源の所望の量、すなわち有効量は、対象の特定のカチオンおよび組成物の対象となる哺乳動物によって必要となる量、例えば、鉄、亜鉛、マンガン、モリブデン、銅、クロムのように微量の鉱質であるか、あるいはカルシウのようにより多量に必要となるかに依存して変わる。
【0079】
あるいは、リンタンパク質調製物を投与することが望まれる生物活性金属イオン源と組み合わせて食料品または飲料に導入することができる。例えば、リンタンパク質調製物を有効量のカルシウム供給源(リン酸カルシウムなど)または鉄と組み合わせて含む組成物をそれぞれカルシウムまたは鉄の補充が必要なヒトまたは動物に投与することができる。
【0080】
リンタンパク質調製物は、歯を再石灰化する、および酸蝕症、歯齲蝕、歯過敏症、または歯肉炎治療または予防する特定の用途も有する。
【0081】
そのような用途に有用であり、かつ、歯をリンタンパク質調製物と接触させるのに好適な組成物は、多くの形態をとることができる。例えば、そのような組成物は、リンタンパク質を含む口内洗浄剤、液状歯磨き剤などの歯磨き剤、練り歯磨き剤、粉末、乳濁液、またはゲルなどの形態をとることができる。あるいは、リンタンパク質調製物は、チーズ(例えば、加工チーズ)などの食料品またはチューインガムなどの糖菓に導入することができる。
【0082】
リンタンパク質調製物に加えて、そのような組成物はカルシウムイオン源を含むことが好ましく、ホスフェートイオン源も含むことが好ましい。例えば、リン酸カルシウムを組成物中に含ませることができる。カルシウムおよびホスフェートイオンは唾液中に存在しているが、リンタンパク質のカルシウム結合特性を利用し、歯エナメルと接触するカルシウムおよびホスフェートイオンの濃度を最大にするため、これらのイオン源を導入することが好ましい。
【0083】
カルシウムイオンが、タンパク質調製物1グラムあたり少なくとも約5mmol(少なくとも約10mmolなど、約20mmolなど、約30mmolなど)のカルシウムイオンリンのレベルで組成物中に存在することが特に好ましい。カルシウムイオンとホスフェートイオンとのモル比は、好ましくは約0.8〜1.2:0.4〜0.8、より好ましくは約1:0.6の範囲である。
【0084】
いくつかの特に好ましい実施態様において、カルシウムイオン源は、カルシウムが一般的にはカルシウムヒドロキシアパタイトの形態である天然ミルクリン酸カルシウムを含む。天然ミルクリン酸カルシウムは市販されており、特に好ましい実施態様は、カルシウム、ホスフェート、更にタンパク質、ラクトース、脂肪、水分、ナトリウム、カリウム、および塩化物を以下の典型的な割合で含みているラミニンの商品名(登録商標)でニュージーランドミルク生産物社から市販されているものである:
ミネラル含量合計70%(w/w):28%カルシウムおよび48%ホスフェート
タンパク質(Nx6.38) 7%
ラクトース 4%
脂肪 1%
遊離水分 3%
結合水分 8%
カルシウム 28,000mg/100g
リン 16,000mg/100g
ナトリウム 400mg/100g
カリウム 300mg/100g
塩化物 100mg/100g
【0085】
天然ミルクリン酸カルシウムは、当業者に既知である方法、典型的には、酸ホエー浸透液を清澄および低温殺菌し、浸透液を冷却して限外濾過し、続いて加熱し、pH調整し、高温で保持し、その結果、リン酸カルシウムを含む鉱質が沈殿し、該沈殿物を回収することにより得ることができる。
【0086】
別の好適な天然ミルクリン酸カルシウム供給源は、DMVインターナショナル社(DMV International.)からラクトバル(Lactoval)(登録商標)の商標名の下で市販されている生産物である。
【0087】
組成物に含ませることができる他のアニオンには、フッ化物およびフロオロホスフェートが含まれる。
【0088】
別の実施態様において、組成物は、カルシウムイオンに加えて、あるいはカルシウムイオンに代えて、ストロンチウムイオン源を含むことができる。そのような組成物は、歯過敏症の治療に特に有用である。
【0089】
本発明の組成物のpHは、生物活性金属イオンデリバリー用または上記の歯の用途用のいずれの組成物の形態においても、約6および9の間で緩衝化されることが一般的に好ましく、より好ましくは約6.5および8の間、更により好ましくは約6.8および7.7の間、最も好ましくは約7および7.5.の間で緩衝化される。
【0090】
本発明の一実施態様において、上記のリンタンパク質調製物を天然ミルクリン酸カルシウムと組み合わせて含む加工チーズ生産物を提供する。本発明のこの実施態様において、生産物は、食餌カルシウム供給源としておよび再石灰化/抗齲蝕性性質を有することの両方の働きをすることは十分に理解される。
【0091】
生産物の加工チーズ成分は、生産物の約90〜約98重量%(約94〜約96重量%など)、典型的には約95重量%の量で存在することが好ましい。リンタンパク質調製物は、典型的には、生産物の約0.5〜約3重量%(約1〜約2%など)、典型的には約1.2〜約1.6重量%を含むことができる。天然ミルクリン酸カルシウムは、典型的には、生産物の約0.5%〜約4.5重量(約2〜約3.5%など)、典型的には約2.5%〜約3重量%を含むことができる。
【0092】
本発明の別の特定の実施態様において、本明細書中に記載されたリンタンパク質調製物を天然ミルクカルシウム、好都合には市販されているアラミン(登録商標)と組み合わせて含む乳濁液の形態の組成物を提供する。リンタンパク質調製物は、好都合には、乳濁液の約1%〜約15重量%(約5%〜約12%など)、典型的には約9%〜11%の量で存在することができる。天然ミルクリン酸カルシウムは、乳濁液の約3%〜約12重量%(約5%〜約10%など)、典型的には約6〜約9重量%の量で存在することができる。乳濁液は、乳化剤、増粘剤、香味剤、および甘味料などの1つ以上の追加の成分を含むことが好ましい。そのような追加の成分は、歯の使用のための乳濁液タイプの配合物における使用に好適なものとして、当業者が選択することができる。
【0093】
以下の非限定的な実施例を参照して、本発明をより詳細に記載する。
【0094】
実施例
実施例1
リンタンパク質調製物およびカルシウム結合
トリプシン加水分解
10%等電点沈殿カゼイン溶液を50℃においてNaOHにより可溶化してpH7.0とした。可溶性となったら直ぐ、溶液を37℃に冷却し、ウシ由来のトリプシン(ノボ社(Novo))を0.01〜0.2%w/wカゼインで加え、最高で2時間インキュベーションし、次いで80℃に加熱し、5分間保持した。
【0095】
ロット番号 酵素濃度 加水分解時間 加水分解度
%重量/重量カゼイン /分
MAP10
ロット5 0.01 15 5.7
ロット6 0.01 30 6.0
ロット7 0.01 45 6.3
ロット1 0.01 60 7.0
【0096】
リンタンパク質調製物の分子量プロフィールを、以下の通り、ゲル濾過によって決定した。6M尿素中50mMリン酸ナトリウムを含むpH7.5の1%タンパク質溶液を緩衝液として調製した。この溶液を10000×gで10分間遠心分離し、0.2μmフィルターを通過させた。試料体積500μlをスーパーデックス20010/30HRカラムを備えたファルマシア社(Pharmacia)FPLCの100μl試料ループに注入した。用いた流し緩衝液は50mMリン酸ナトリウムを含むpH7.5の6M尿素であり、流量は0.5ml/分とした。検出は、UV吸収(280ηm)によるものとした。タンパク質吸収曲線を積算し、恣意で以下の4つの分子量の群に分けた:1)約30,000ダルトンより大きい、2)約30,000ダルトンより小さく、約21,000ダルトンより大きい、3)約21,000ダルトンより小さく、約12,000ダルトンより大きい、4)約12,000ダルトンより小さい。
【0097】
ロット5、6、および1の%分布として表したロット5、6、7、および1の分子量プロフィール(部分加水分解後)
分子量範囲 ロット番号
5 6 7 1
≧30,000 13.66 11.66 9.4 9.84
<30,000、≧21,000 53.74 50.78 49.13 48.87
<21,000、≧12,000 7.58 9.99 11.37 10.92
<12,000 25.02 27.57 30.1 30.37
【0098】
グルタミン転移酵素処理
pHを7.0に再調整し(必要な場合)、グルタミン転移酵素(市販の1%調製物、味の素社)を4.5%w/wカゼインの比で加え、40℃で所望の期間インキュベーションした。
酵素の不活化は、80℃に加熱し、5分間保持することにより行った。修飾タンパク質の溶液を凍結乾燥した。
【0099】
μmol架橋/gタンパク質として表したグルタミン転移酵素による処理後に形成されたの架橋数
ロット番号 架橋時間(時)
1 6 18
ロット5 50 98 168
ロット6 51 90 152
ロット7 55 95 150
ロット1 57 109 159
【0100】
タンパク質調製物のカルシウム結合能の測定
水中でタンパク質を再懸濁し、一定のpHの下でカルシウムおよびホスフェートイオンを設定比で加え、不溶性の物質(塩およびタンパク質)を除去し、次いで可溶性の結合していない塩を除去し、可溶性タンパク質に結合しているカルシウムの量を決定することにより、タンパク質のカルシウム結合能を決定した。実験の詳細は以下の通りであった。
【0101】
タンパク質の1%溶液をミリQ水に溶解し、1時間放置して確実に完全に水和させた。塩化カルシウムを0mM、10mM、20mM、30mM、40mM、および50mMのレベルで加え、よく混合しながら25℃で1時間インキュベーションした。リン酸ナトリウムを0.6のモル比でカルシウムに加えた。実験全体にわたって、NaOH溶液を用いてpHを7.0で維持した。試料をよく混合しながら25℃で6〜10時間インキュベーションした。インキュベーション後、試料を10000×gで10分間遠心分離し、0.2μmナイロンフィルターを通して濾過し、2部に分けた。
【0102】
試料の一方の部を2ml試料ループに注入し、セファデックス(Sephadex)G−25(Vt=25ml)脱塩カラムを備えるファルマシアFPLCにローディングした。流し用緩衝液はpH7の10mMHEPESであり、流量を2ml/分とし、検出はUV吸収(280ηm)、伝導率、およびpHによって行なった。タンパク質ピークを収集し、カルシウム濃度を原子吸収分光法(AAS)により決定した。
【0103】
他方の部を用いて、フォリンタンパク質アッセイによって可溶性のタンパク質含量を決定した。
【0104】
初期タンパク質1グラムあたりのmgCa2+として表したグルタミン転移酵素処理前(0時間)および処理後(1、6、または18時間)のロット5のカルシウム結合能
加えたCa2+のmmol グルタミン転移酵素で処理した時間
0 1 6 18
30 3.2 7.3 24.2 31.2
40 1.1 1.2 34.7 37.6
【0105】
初期タンパク質1グラムあたりのmgCa2+として表したグルタミン転移酵素処理前(0時間)および処理後(1、6、または18時間)のロット6のカルシウム結合能
加えたCa2+のmmol グルタミン転移酵素で処理した時間
0 1 6 18
30 9.3 32.3 32.1 40.2
40 0.0 2.6 7.1 4.2
【0106】
初期タンパク質1グラムあたりのmgCa2+として表したグルタミン転移酵素処理前(0時間)および処理後(1、6、または18時間)のロット7のカルシウム結合能
加えたCa2+のmmol グルタミン転移酵素で処理した時間
0 1 6 18
30 16.1 24.6 28.5 32.0
40 3.0 2.4 なし 7.4
【0107】
初期タンパク質1グラムあたりのmgCa2+として表したグルタミン転移酵素処理前(0時間)および処理後(1、6、または18時間)のロット1のカルシウム結合能
加えたCa2+のmmol グルタミン転移酵素で処理した時間
0 1 6 18
30 24.6 16.0 21.9 36.4
40 2.4 1.9 6.1 21.1
【0108】
初期タンパク質1グラムあたりのmgCa2+として表したカゼイン塩のカルシウム結合能
加えたCa2+のmmol 結合したCa2+のmg
0 0.0
5 2.8
10 2.3
15 1.7
【0109】
上記の異なるタンパク質は、カゼインの加水分解度の範囲(ロット5で加水分解が最も少なく、ロット1で加水分解が最も多い)、およびグルタミン転移酵素による加水分解産物の架橋の範囲(0時間で架橋なし、18時間で最も多い架橋)を表す。ロット5のタンパク質がCa2+により引き起こされる沈殿に最も抵抗性であり、40mgCa/gタンパク質ローディングした最大に近いカルシウムは40mMのCa2+溶液中で未だ可溶なままであった。
【0110】
カゼインの加水分解度が大きくなるに従って、タンパク質は、多大なTg架橋後でも、より高いCa2+濃度の存在下での沈殿に対して抵抗性が小さくなった。非架橋試料はいずれも沈殿に抵抗性ではなく、すべての試料において架橋が大きくなるに従って抵抗性も増した。
【0111】
天然カゼインのCa2+結合能は、最後の表で実証されている。天然カゼインは、Ca2+濃度が増加に従って速やかに沈殿し、Ca2+の5mMでちょうど2.8mgCa2+/gカゼインの最大の結合を有する。
【0112】
カゼイン塩の結果は、部分架橋された加水分解カゼインの溶解性/結合の驚くべき性質によって、未修飾カゼイン塩と同様の(あるいはカゼイン塩より大きい)平均分子量を有するタンパク質が実質的により多くのカルシウムイオンを結合し、かつ、可溶なままとすることを例証している。
【0113】
実施例2
リンタンパク質の調製
トリプシン加水分解
トリプシン加水分解
10%等電点沈殿カゼイン溶液を50℃においてNaOHにより可溶化してpH7.0とした。可溶性となったら直ぐ、溶液を37℃に冷却し、ウシ由来のトリプシン(ノボ.4500K、分子量23,400Da、活性4500USP単位/mg)を0.01w/wのカゼインで加え、15分間インキュベーションした。酵素の不活化は、80℃に加熱し、5分間保持することにより行った。
【0114】
ロット5の分子量プロフィール
分子量範囲
>30,000 13.66
<30,000、>21,000 53.74
<21,000、12,000 7.58
<12,000 25.02
【0115】
グルタミン転移酵素処理
pHを7.0に再調整し(必要な場合)、グルタミン転移酵素(市販の1%調製物、アクティバMP、味の素社)を4.5%w/wカゼインの比で加え、40℃で18時間インキュベーションした。酵素の不活化は、80℃に加熱し、5分間保持することにより行った。30,000Daより大きい分子量の材料が100%増加した。
【0116】
実施例3
歯再石灰化(硬化(hardening))
3つの生産物の再石灰化(硬化)ポテンシャルを決定した。生産物は、ヒト唾液、カゼイン塩溶液、および部分的に加水分解されたカゼインの部分架橋により得られるリンタンパク質調製物とした。生産物の再石灰化効力は、処理後に調節された酸エッチングを施したヒトエナメルの硬度の回復を測定することによって決定した。
【0117】
エナメル調製物
ヒト未萌出3モル比をすべての実験で用いた。抽出後、歯をアニラック(anylac)ブラシおよび脱イオン水により機械的に清浄し、必要になるまで10%緩衝化ホルマリン溶液(pH7.0)中で4℃で保存した。
【0118】
使用前、歯を十分にすすぎ、縦方向に切断し、次いでエポキシ樹脂に埋包した(アラルダイト)。各被検物を、流水下、次第に240〜600グリットとなる炭化ケイ素グリットを用いて、ガラスプレート上において手で細かくした。細研磨は、回転研摩機上で、被検物を湿らせておくために蒸留水を用いて、8インチのラップ(Laps)を用いて、3μmのダイアモンド研摩材で5分間、1μmのダイアモンド研摩材で更に5分間行った。各研磨処理の間、超音波用浴を用いて残骸を除去した。被検物を解剖顕微鏡(15×)下で評価し、ヒビ、キズ、発達上の欠陥、または抽出の損傷のいずれの証拠を有するものを除いた。選択した試料を10%緩衝ホルマリン溶液(pH7.0)中で4℃において必要となるまで保存した。
【0119】
エナメル鉱質除去
研磨された無傷のエナメル被検物を1%(w/v)クエン酸25ml中、37℃で10分間個々に鉱質除去して、腐食した外傷を作り出した。鉱質除去後、被検物を脱イオン水で十分に洗浄し、次の工程前に脱イオン水中で保存した。溶液のpHは2.3であった。
【0120】
再石灰化
再石灰化生産物の調製
唾液:顎下腺唾液を健康なボランティアから集め、10mmol/Lのナトリウムアジドを加えた。再石灰化手順において、24ミリリットルの唾液を各被検物に用いた。
【0121】
10%カゼイン塩溶液(CN−60Ca):CN−60Caは、36mmol/Lの(PO43-(pH9.0)、60mmol/LのCa2+、および10%(w/v)乳酸カゼインを含むものであった。溶液を磁気撹拌機を用いて室温で十分に混合した。水浴中で50℃で15分間インキュベーションし、室温に冷却した後、10mmol/Lのナトリウムアジドを保存剤として加え、次いで10%(w/v)NaOHによりpH7.5に調整した。
【0122】
10%リンタンパク質溶液(PC−60Ca):PC−60Caは、36mmol/Lの(PO43-(pH9.0)、60mmol/LのCa2+、および部分的に加水分解されたカゼイン塩の部分架橋により得られた10%(w/v)リンタンパク質調製物(PC)から成るものであった。リンタンパク質調製物は、実施例2に記載される通り、約4%の加水分解度を有するカゼイン塩溶液をグルタミン転移酵素により処理することにより得た。他の条件は、CN−60Ca7.5について記載した通りとした。
【0123】
エナメル再石灰化プロトコル
選択した被検物を別々の再石灰化溶液中で処理した。被検物を、個々に密封された80mlビーカー中、フレッシュな再石灰化溶液40ml(一定の振盪下)に37℃において4時間浸漬した。CN60Caも16時間インキュベーションした。
【0124】
鉱質除去/再石灰化の評価
表面微小硬度(SMH)評価
エナメルのブロックの表面微小硬度(SMH)を、ビッカース(Vickers)ダイアモンドを用いて、20秒間で200gの荷重の下、レイズ・ミニロード(Leitz MiniLoad)硬度機器により測定した。被検物を硬度機器の化合物ステージへの圧子に対して垂直に保持した。表面硬度決定のために、15個の押込み(indentations)を個々の被検物の各表面上で平均化した(ダイヤモンド圧子の規格化後、および400倍の倍率を用いる)。
【0125】
エナメルの押込み長さの少なくとも2倍の距離を押込み間で保ち、隣接する押込みの間の相互作用を最小にした。SMHの読み取りを、以下の通りの3段階のエナメル鉱質除去/再石灰化モデルで行った:(1)鉱質除去溶液(DS)への暴露前、(2)DS(1%クエン酸)への暴露および軟化後、および(3)再石灰化溶液または対照溶液への暴露後。SMHの初期検査後(段階1)、各被検物にDS中で37℃で10分間鉱質除去を行なった。各被検物を溶液25mlに個々に浸漬した。次いで、暴露後に被検物を溶液から取り除き、脱イオン水中で十分に洗浄し、3mmの濾紙で吸い取って乾燥し、SMHの再検査を行なった(段階2)。選択した再石灰化処理の後、被検物を溶液から取り除き、脱イオン水中で十分に洗浄し、再度吸い取り乾燥し、SMHの再試験を行なった(段階3)。ベースラインSMH値(段階1)および再硬化値(段階3)をそれぞれ軟化値(段階2)から差し引くことにより、DSおよび異なる再石灰化溶液の軟化および再硬化ポテンシャルを各被検物について計算した。
【0126】
測定したSMHおよび2つのダイアモンドのビッカース押込み平均の長さの間の関係を式1:SMH(kg/mm2)=1854×P/d2[1](式中、Pは、荷重(グラム)であり、dは、測定された押込みの対角線の平均の長さ(ミクロン)である)により決定した。SMHの数は、本研究で用いたレイズ・ミニロード硬度機器による顕微鏡測定から直接得たものである。鉱質除去および再石灰化された被検物についてSMH数を一様目盛で定量的に比較するために、SMH前後の測定を軟化したSMHおよび達成された再石灰化の量の間の変化の収率に比例する値に変換することが必要であった。これらの2つの結果の間の比較のため、式2:R(%)=[(PSMH)3−(PSMH)2]/[100−(PSMH)2]×100%[2](式中、PSMH3およびPSMH2は以下のように意味となる:PSMH3=[段階3のSMH/段階1のSMH]×100%、PSMH2=[段階2のSMH/段階1のSMH]×100%)を用いて、再石灰化効果の違いを計算した。
【0127】
したがって、式2中のRは、本研究における段階3の再硬化収率、再石灰化収率、または回復収率である。
【0128】
結果
表1.エッチングされたエナメル表面に対する顎下腺唾液、カゼイン塩溶液、およびリンタンパク質調製物(部分的に加水分解されたカゼインの部分架橋により得られる)の効果
【表1】

N=15(各被検物)
段階1:初段階での微小硬度試験
段階2:10分間の1.0%クエン酸エッチング後の微小硬度試験
段階3:処理群:再石灰化溶液による処理後の微小硬度試験
*段階2のすべての値は、段階1の値より有意に小さかった(P<0.001)。
**処理群では、段階3の値は、段階2の値よりも有意に大きかった(P<0.001)。
***対照群では、段階3の値は、段階2値よりも有意に大きくはなかった。
【0129】
エッチングされたエナメル表面に対する唾液の効果
表1により、ヒト顎下腺唾液は4時間の処理後にエッチングされたエナメルのSMH数を有意に増加させることを示している。酸エッチング後の相対SMHは元の値の77.3%に減少し(段階2)、唾液による16時間の処理後、これは91.9%に増加した(段階3)。再石灰化収率(R)の平均は65.5%であった。
【0130】
10%カゼイン塩(CN)のエッチングされたエナメル表面に対する効果
有意な再硬化が見出される前に、10%カゼイン塩溶液(CN−60Ca7.5)による16時間の処理が必要であり、4時間の群では効果が観察されなかった。16時間処理後、SMH数は、4つの被検物うち3つで有意に増加した(それぞれ、P=0.001、P<0.003、P=0.015)(表1)。酸エッチング後、相対SMHは元の値の80.6%に減少し(段階2)、カゼイン塩溶液による16時間の処理後、これは86.5%に増加した(段階3)。Rの平均は32.1%であった。
【0131】
部分的に加水分解されたカゼインの部分架橋により得られるリンタンパク質(PC)のエッチングされたエナメル表面に対する効果
表1は、36mmol/Lの(PO43-、60mmol/LのCa2+とともに部分的に加水分解されたカゼインの部分架橋により得られるリンタンパク質調製物(PC)による処理後のエナメル表面のSMH数の変化を示す。すべての10個の被検物とともにPC−60Ca中で4時間インキュベーションした後のエッチングされたエナメルのSMH数は有意に増加した。被検物のうち7つは、ほどんど初期(エッチング前)のSMH値に戻った。PC−60Caによる処理後、SMH数は、2つの試験において、初期レベルのSMH数より有意に高かった(20%)(P=0.012)。
【0132】
酸エッチング後、相対SMHは元の値の78.3%に減少し(段階2)、PC溶液による4時間の処理後、これは98.2%に増加した(段階3)。再石灰化収率(R)は92.1%(n=10)であった。
【0133】
酸エッチングされたエナメルをCa2+なしのリンタンパク質溶液(PC−Caなし)またはリンタンパク質調製物なしのリン酸カルシウム緩衝液(PC−60Caなし)に曝すことによっては、硬度の有意な回復はなかった(表1)。
【0134】
エッチングされたエナメル表面の回復収率に対する異なる再石灰化溶液の性能の概要
エナメル再石灰化収率を図1に示す。溶液間の再石灰化収率の違いは明らかであった。PC−60Caは、他のものよりも明確に大きい再石灰化ポテンシャルを生じた。
【0135】
走査型電子顕微鏡(SEAP)による鉱質除去および再石灰化評価
エッチング前における走査型電子顕微鏡によるエナメル表面の検査では、表面が滑らかであることが示された(図2)。対照的に、無傷のエナメルの酸エッチングによっては、(1)表面エナメルの損失、(2)歯の表面の荒面化に起因する歯の表面積の増加、および(3)表面の不活性エナメル除去後におけるより活性な表面の暴露がもたらされることが見出された(図3)。
【0136】
PC−60Caによる処理後、エッチングされたエナメル表面が、よくある桿形状の生成物とともに比較的滑らかで高密度のコーティングで被覆された。ほとんどの領域において、程々に一様な表面コーティングが、長さ0.5〜1μmの接着性反応生成物とともに存在していた。コーティングは、エナメルプリズムを不明瞭にするのに十分に高密度であった。沈着物の分布は比較的均一であり、ほとんどすべてのエナメル表面を沈着物が覆っていた(図4)。小さな桿形状の生成物はリンタンパク質−リン酸カルシウム複合体(PCCPC)であると推測されたが、形態学的外観だけでは化合物が同定されない。多くの桿形状の生成物が鉱質除去した小柱間領域に存在していることが分かる。
【0137】
議論
鉱質除去したエナメル表面を再石灰化溶液に暴露することにより、微小硬度の回復が示された。これは、リン酸カルシウム含量の部分的な修復を示し得る。正味の結果は、小柱内および小柱間の空間の充填であり、該充填はSEM形態学的観察により直接に評価され、押込み長さ測定で間接的に評価される。これらのSEMにおけるエナメル表面の間隙率の減少により、試験表面への圧子の入り込みに対する抵抗性が増加し、このことは押込み長さがより小さくなったことによって示され、再石灰化が起こったことを示唆している。
【0138】
エッチングされたエナメル表面に対する唾液の再石灰化効果
唾液の再石灰化能力がかなり報告されている通り(Koulourides et al. 1965, Leach et al. 1989, Peretz et al., 1990)、唾液によってエッチングされたエナメルの再硬化が生じることが期待された。唾液は、「歯の血流」と記載することができ、鉱質およびタンパク質に富み、カルシウムおよびホスフェートイオンに関して過飽和である。唾液は、歯を取り囲んで浴に浸け、エナメル表面にイオンを絶え間なく供給する(Peretz et al., 1990)。清浄にされたエナメルが唾液によって濡れているとき、唾液由来の特定のタンパク質(スタテリンおよびプロリンに富むタンパク質など)が歯表面上に吸着し、唾液被膜または獲得被膜を形成する。これらの2つのタンパク質群は、唾液からのカルシウムおよびリン酸の一次(自発的spontaneous)および/又は二次沈殿(結晶成長)を阻害すると考えられる。ヒト唾液はリン酸カルシウム塩に関して過飽和であるゆえ、これは口腔中での必要かつ重要な活性であるようである。これらの沈殿阻害物質により、唾液が過飽和の状態で保たれる。皮膜は、拡散バリアとして働くことによりエナメルの保護に重要な役割を果たす。
【0139】
エッチングまたは齲蝕性外傷は、平衡が乱れ、かつ、鉱質の正味の損失が起こったエナメル表面上の特定の位置で起こる。表面エナメル、唾液、および獲得被膜の物理的性質は、体内の他の系で存在している防御機構と類似していると考えることができる。
【0140】
エッチングされたエナメル表面に対する部分的に加水分解されたカゼインの部分架橋により得られるリンタンパク質(PC)およびカゼインの再石灰化効果
実験条件下において、PCおよびカゼインは、SEMによる微小硬化試験によって評価した際、エッチングされたエナメル表面上でコーティングされ、該表面へ導入され、該表面を再硬化することが示された。エッチングされたエナメルのSEM数により、PC溶液による処理後ではほとんど完全に回復することが示された。SEMにより、高密度コーティング層がエナメル表面上に沈殿し、10分間の水洗浄後でさえも除去に対して抵抗性であることが示された。しかしながら、表面エナメルの結晶性は、本研究で用いるSEM法によって決定することができない。
【0141】
カゼイン塩はPCほど効果的ではなく、有意な再硬化を成すのに16時間の処理時間を必要とする。この主な理由は、カルシウムおよびホスフェートイオンの存在下ではカゼイン塩の溶解性が低いことであると信じられた。
【0142】
PCカルシウムおよびホスフェートイオンを用いたときにエナメルの再硬化が上手くいった。3つの成分(リンタンパク質、カルシウム、およびホスフェート)のうち1つでも省くと再石灰化現象が観察されなかった。期間および化学的条件(口環境では条件はより複雑である)は経験に基づくが、鍵となる結論は鉱質除去および再石灰化がこのモデル系で起こったことである。
【0143】
カルシウムおよびホスフェートイオンと関連した(in conjunction with)リンタンパク質の高い再石灰化能力の可能性ある理由は、次の通りである:1)加水分解プロセスに続く部分架橋プロセスによって、カゼイン塩の安定性よりも大きな安定性を有するタンパク質が生ずる。加水分解処理に続く部分架橋処理は、カゼインの自己会合性を妨害するようであり、そのミセル形成傾向を阻害するようである。この自己会合傾向の減少ゆえに、タンパク質は、高いレベルのカルシウムおよびリン酸の存在下で可溶性を維持する。2)リン酸カルシウムに富むリンタンパク質は、PC溶液の主な成分である。PCによるエナメル再石灰化の促進は、カルシウムおよびホスフェートイオンを可溶化するタンパク質が少なくとも一部カゼインの再石灰化活性の原因になっていることとと一致する。PCによって溶液中のカルシウムイオンの溶解性が増加し、エッチングされたエナメル表面の孔中への利用可能な遊離カルシウムイオンの濃度がより高くなり、再石灰化活性が容易になったと考えられる。3)如何なる理論に拘束されることを望むものではないが、部分的に加水分解されたカゼインの部分架橋により得られたリンタンパク質の再石灰化モデルは、エッチングされたエナメル表面上でコーティングし、該表面に導入する能力に関連することができる。PCは、リン酸カルシウムおよびヒドロキシアパタイトを非常に強く結合する近く位置しているホルホセリル残基群を含む。タンパク質のこれらの部分は、エナメル表面とカルシウム架橋を形成し、イオン相互作用し、水素結合することができるであろう。ヒドロキシアパタイト表面に結合する際に、タンパク質コーティングは、結晶格子中の鉱質除去領域への再石灰化または再沈着での使用に利用可能なカルシウムイオンを放出するリザーバーとして働くことができる。本研究で示される通り、カゼインリンタンパク質−リン酸カルシウム粒子は、カルシウム放出結合系のエナメル表面上に存在し、エナメル表面上で可能性ある保護沈着を形成する。カゼインリンタンパク質−リン酸カルシウム複合体(CPPCPC)由来のカルシウムイオンの溶解およびエナメル中の孔への拡散が起こったのかもしれない。
【0144】
実施例4
リンタンパク質(MAP112)の調製
トリプシン加水分解
55キログラムのナトリウムカゼイン塩を50℃の脱イオン水に分散し、最終濃度522Lとした。溶液を37℃に冷却し、pHをNaOHにより7.06に調整し、ブタ由来のトリプシン(ノボ.4500K、分子量23,400Da、活性4500USP単位/mg)を0.01%w/wカゼインで加え、5分間インキュベーションした。溶液をに80℃に加熱し、5分間保持し、45℃に冷却した。
【0145】
加水分解後の分子量プロフィール
分子量範囲 パーセンテージ
≧30,000 10.7
<30,000、≧21,000 57.8
<21,000、≧12,000 15.7
<12,000 15.8
【0146】
グルタミン転移酵素処理
pHを7.0に再調整し、グルタミン転移酵素(市販の1%調製物、アクティバMP、味の素社)を4.5%w/wカゼインの比で加え、15時間インキュベーションした(インキュベーションの最後の温度は32℃であった)。溶液を80℃に加熱し、5分間保持した。溶液を1000Lに希釈し、5℃に冷却した。溶液を最終濃度20%の固体が得られるまで限外濾過し、次いで噴霧乾燥した。30,000Daより大きい分子量材料が100%増加し、タンパク質中の架橋の数は92μmolであった。
【0147】
実施例5
穏やかな腐食モデルに従ったエナメルの再石灰化
酢酸ベースの系を用いて、腐食の進行性がよりり少ない第2の酸腐食モデルを調べた。
【0148】
方法
エナメルは、実施例3のようにして調製した。
【0149】
鉱質除去溶液の調製
24および48時間鉱質除去溶液
0.1mol/L酢酸を有するpH4.5およびpH4.8の2つの鉱質除去溶液を調製し、pHをNaOHで調整した。ヒドロキシアパタイト(HA)750mg/Lおよび500mg/LをそれぞれpH4.5およびpH4.8の鉱質除去溶液に加えた。ナトリウムアジド(0.05g/L)を保存剤として各溶液に加え、ボトルを箔でラッピングし、必要になるまで4℃で保存した。
【0150】
72時間鉱質除去溶液
750mg/Lおよび1.0g/LのHAをそれぞれpH4.5およびpH4.8の鉱質除去溶液に加えたことを除き、上記の試料と同じ試料調製手順である。
【0151】
再石灰化溶液の調製
MAP112タンパク質(実施例4に記載の通りに調製したもの)25グラムを蒸留水300mLに分散した。2M塩化カルシウム溶液を滴下して加え、次いで30分間後、60mmolのCa2+および36mmolのPO43-の最終濃度となるようにリン酸ナトリウム(Na2HPO4)を加えた。4M NaOHを用いてpHを7.0に調整し、合計で体積(500ml)とした。ナトリウムアジド(0.05g/L)を保存剤として各溶液に加え、ボトルを箔でラッピングし、必要になるまで4℃で保存した。
【0152】
エナメル鉱質除去プロトコル
被検物を、鉱質除去溶液25ml中(継続的な振盪の下、暗闇において)、25℃で24時間、48時間、および72時間鉱質除去した。
【0153】
エナメル再石灰化プロトコル
鉱質除去したエナメルブロックを60mmol/LのCaイオンおよび36mmol/Lのホスフェートイオンを含むMAP112タンパク質溶液中で再石灰化した。エナメルブロックを暗闇において、25℃で、種々の期間再石灰化溶液25mlに(継続的な振盪の下)浸漬した。再石灰化溶液は、3日おきに変えた。
【0154】
エナメルの変化の評価
微小硬度
未処理のエナメル、鉱質除去後のエナメル、および再石灰化中の期間におけるエナメルについて、微小硬度を実施例3のように測定した。
【0155】
結果
鉱質除去の際、すべての試料で表面微小硬度(SMH)の減少が示され、pH4.8溶液よりもpH4.5溶液で大きな減少が示された。表面の変化は光学顕微鏡で確認した。グラフの再石灰化部分を調べたとき、すべての試料でSMHがゆっくり増加していることが分かった。実施例3で論述した通り、エナメルの鉱質含量はSMHと強い正の関係を示す。
【0156】
実施例6
齲蝕様の欠陥を引き起こすために処理されたエナメルの再石灰化
エナメルを実施例3のように調製した。
【0157】
鉱質除去溶液の調製
鉱質除去溶液をWhite DJの方法(Use of synthetic polymer gels for artificial carious lesion preparation. Caries Res 21 (3):228-242, 1987)に従って調製した。
【0158】
0.2%ポリアクリル酸(カーボポル(carbopol)C907)および0.lmol/Lの乳酸を含むポリアクリル酸/乳酸塩溶液を以下の通りに調製した。ポリアクリル酸(1g)を室温で蒸留水350mlに溶解し、ポリアクリル酸が分散した後に乳酸溶液(87.5%)4.29mlを加え、pHを4.80(4M NaOH)に調整し、合計で体積(500ml)とし、溶液を500mlのスコット(Schott)ボトルに移した。ナトリウムアジド(0.05g/L)を保存剤として各溶液に加え、ボトルを箔でラッピングし、必要になるまで4℃で保存した。
【0159】
0.2%ポリアクリル酸(カーボポルC907)および0.1mol/Lの乳酸を含む、ヒドロキシアパタイト、ポリアクリル酸/乳酸飽和溶液を以下の通りに調製した。ポリアクリル酸(1g)を室温で蒸留水350mlに溶解し、ポリアクリル酸が分散した後に乳酸溶液(87.5%)4.29mlを加え、続いてヒドロキシアパタイト3.7gを加え、pHを4.80(4M NaOH)に調整し、合計で体積(500ml)とし、溶液を500mlのスコットボトルに移した。ナトリウムアジド(0.05g/L)を保存剤として各溶液に加え、ボトルを箔でラッピングし、必要になるまで4℃で保存した。
【0160】
最後の鉱質除去溶液を、ヒドロキシアパタイトカーボポル/乳酸飽和溶液をヒドロキシアパタイトのないカーボポル/乳酸溶液で希釈することにより、鉱質除去の直前に調製した。
【0161】
ヒドロキシアパタイトカーボポル/乳酸飽和溶液約55mlを2500rpmで20分間遠心分離し、上清50mLを回収し、ヒドロキシアパタイトのないカーボポル/乳酸溶液50mと混合した。pHを4.8に調整した。
【0162】
3つの異なるカルシウムレベルの再石灰化溶液の調製
MAP112タンパク質25gの3つのロットを蒸留水300mLに分散した。2M塩化カルシウム溶液を滴下して加え、次いで30分間後にリン酸ナトリウム(Na2HPO4)を以下の表に従って加えた:
【表2】

【0163】
ヒドロキシアパタイト(500mg/L)を各溶液に加え、4M NaOHを用いてpHを7.0に調整し、合計で体積(500ml)とした。ナトリウムアジド(0.05g/L)を保存剤として各溶液に加え、ボトルを箔でラッピングし、必要になるまで4℃で保存した。
【0164】
エナメル鉱質除去プロトコル
被検物を、鉱質除去溶液25ml中(継続的な振盪の下、暗闇において)、25℃で96時間鉱質除去した。
【0165】
エナメル再石灰化プロトコル
エナメルブロックを30、45、60、または75mmolのCaイオンを含むMAP112タンパク質溶中で再石灰化した。エナメルブロックを、暗闇において、25℃で、種々の期間、再石灰化溶液25mlに(継続的な振盪の下)浸漬した。
【0166】
エナメルの変化の評価
微小硬度
未処理のエナメル、鉱質除去後のエナメル、および再石灰化中の期間におけるエナメルについて、微小硬度を実施例3のように測定した。
【0167】
実施例7
連鎖球菌ミュータンス接着アッセイ法
連鎖球菌ミュータンスNCTC10449を脳/ハート・インフュージョンを含むトライポン(trypone)/酵母抽出培地で増殖し、[3H]チミジンで放射性標識した。ヒドロキシアパタイトビーズ(20mg、バイオラッド社(Biorad))をKCl緩衝液中で水和し(Cannon et al., 1995)、次いでプールしたヒト唾液(30%v/vKC1緩衝液)とともにインキュベーションした。ビーズをKCL緩衝液で洗浄し、次いで唾液でコーティングされたヒドロキシアパタイトビーズを放射性標識したS.ミュータンス細胞とともにインキュベーションした。非接着S.ミュータンス細胞をKCl緩衝液で洗浄することによってビーズから取り除き、次いでSHAビーズに接着した各アッセイに加えられた細胞のパーセンテージを計算した。
【0168】
MAP111リンタンパク質(DH5.0、140μmol架橋/gタンパク質)を0.001%、0.01%、0.1%、1.0%、および10.0%(KCl緩衝液中)の濃度で加えた。接着に対するリンタンパク質の効果を、リンタンパク質を含みないアッセイに対して計算した。
【0169】
各アッセイを3つ組で行い、各実験を3時間行った。
【0170】
タンパク質は、0.01%の低い濃度においてS.ミュータンスの接着を効果的に阻害し、0.001%タンパク質において接着の約40%阻害を更に達成したことが図14から分かる。齲蝕プロセスを開始するためには、S.ミュータンスは歯の表面に接着する必要がある。したがって、接着するS.ミュータンスの数を減少させることにより、齲蝕形成の危険性を減少することができる。これらのアッセイの結果は、タンパク質が予防機能も有していることを例証している。
【0171】
参照:Cannon, R.D., Nand, A.K. and Jenkinson, H. F. (1995) Adherence of Candidaalbicans to human salivary components adsorbed to hydroxyapatite. Microbiology 141: 213-219。
【0172】
実施例8
リンタンパク質調製物の鉄結合能の測定
タンパク質を水に再懸濁し、一定のpH下でFeCl2を加え、不溶性材料(塩およびタンパク質)を除去し、次いで可溶性の結合していない塩を除去し、可溶性のタンパク質に結合しているカルシウムの量を決定することにより、タンパク質の鉄結合能を決定した。実験の詳細は以下の通りであった。
【0173】
タンパク質の1%溶液をミリQ水に溶解し、1時間放置して確実に完全に水和させた。塩化鉄を0mM、10mM、30mM、40mM、および50mMのレベルで加え、よく混合しながら25℃で1時間インキュベーションした。実験全体にわたって、NaOH溶液を用いてpHを7.0で維持した。試料をよく混合しながら25℃で6〜10時間インキュベーションした。インキュベーション後、試料を10000×gで10分間遠心分離し、0.2μmナイロンフィルターを通して濾過した。
【0174】
試料を2mlの試料ループに注入し、セファデックスG−25(Vt=25ml)脱塩カラムを備えるファルマシアFPLCにローディングした。running緩衝液はpH7の10mMHEPESとし、流量を2ml/分とし、検出はUV吸収(280ηm)、伝導率、およびpHによって行なった。タンパク質ピークを収集し、鉄濃度を原子吸収分光法(AAS)により決定した。
【0175】
Tgによる18時間の架橋後のロット6の鉄結合能。mgFe2+/g初期タンパク質、およびmgFe2+/g可溶性のタンパク質として表す。
[Fe2+] mgFe2+/gタンパク質 mgFe2+/gタンパク質
(合計) (可溶性)
0mM 0.0 0.0
10mM 2.9 6.4
30mM 3.5 13.8
40mM 3.7 19.5
【0176】
Fe2+は、ロット6(18時間、Tgリンタンパク質調製物)に最大3.7mgFe2+/gタンパク質で結合することが見出された。可溶性を維持しているタンパク質のうち、Fe2+は約20mgFe2+/g可溶性タンパク質で結合した。
【0177】
リンタンパク質の亜鉛、鉄II、およびマグネシウム結合能
加えたイオンmmol 亜鉛 イオン鉄II マグネシウムイオン
5 22.22 1.7 4.6
10 41.0 44.8 5.4
15 43.0 44.0 5.4
【0178】
実施例9
リンタンパク質強化加工チーズ
以下の2つの加工チーズを調製した:
%重量/重量
配合物 1 2
加工チーズ 95.60 95.42
MAP(リンタンパク質) 1.34 1.34
天然ミルクリン酸カルシウム 2.87 2.86
塩化カルシウム 0.00 0.19
水 0.19 0.19
【0179】
チーズを、ブラベンダー(Brabender)W50ミキサー中、45℃および50RPMで調製した。加工チーズ(1cm3立方体)を約60秒間にわたってミキサーに供給し、水を加え、3分間混合した。予めブレンドした天然ミルクリン酸カルシウムおよびMAP112を加え、10分間混合した。ミキサーを停止し、チーズ混合物を取り除き、ブロックに形成し、食品包装用フィルムでラッピングし、必要になるまで5℃で保存した。
【0180】
修飾された加工チーズの再石灰化ポテンシャル
エナメルを実施例3のように調製し、鉱質除去を実施例6のように行い、チーズスラリー調製物を再石灰化溶液の代わりに用いたことを除いて再石灰化を実施例6の通りとした。微小硬度を実施例3のように測定した。
【0181】
チーズスラリー調製物
修飾された加工チーズは、約20%タンパク質(該タンパク質のほとんどすべてがカゼインである)を含みた。25グラムの修飾された加工チーズを重量測定し、蒸留水144mlと室温で5分間ブレンドした(ワーリング・ブレンダー(Waring Blender)、高速)。チーズスラリーを4,350gで20分間遠心分離し、水溶液(中間層)および脂肪上清を注意深く分液フラスコに移した。混合物を分離させたままにし、水相を取り除いた。ナトリウムアジド(0.05g/L)を保存剤として各溶液に加え、ボトルを箔でラッピングし、必要になるまで4℃で保存した。
【0182】
結果微小硬度
鉱質除去によって表面硬度が良好に減少し、先に言及した通り、これはエナメル鉱質濃度との相関性が強い。再石灰化の際に、SMHのゆっくりとした増加が見られる。このSMHの増加は、エナメルが再石灰化されていっていることを示唆している。
【0183】
実施例10
再石灰化乳濁液の配合
成分 %重量/重量
リンタンパク質MAP112 10.00
天然ミルクリン酸カルシウム(アラミン) 7.50
ソルビトール 4.50
GMS400V 1.00
プロピルパラベン 0.075
メチルパラベン 0.025
中間鎖トリグリセリド 7.50
グリセロール 1.00
デリオス(Delios)S 30.00
キサンタンガム溶液(0.1%) 38.30
ハッカ油 0.074
【0184】
方法
乾燥成分(MAP、アラミン、ソルビトール、メチル、およびプロピルパラベン)をブレンドし、マルチトールシロップおよびキサンタンガム溶液を分散した。GMSおよびグリセロールを約80℃に加熱し(溶融するまで)、中間鎖トリグリセリドを加え、混合物の塊がなくなるまで加熱を維持した。水相を約70℃に加熱し、攪拌を継続しながら水相に油相を加えた。ハッカ油を加え、混合物を90℃に加熱し(5分間保持し)、次いで均質化した(ウルトラツレックス(Ultraturrex))。混合物を清浄な滅菌ボトル中にに温めて満たし、96%エタノールですすぎ、患者が必要とするまで5℃で保存した。
【0185】
患者により、彼らの口の内側に乳濁液が良好なコーティングを与え、良好な湿気を与えることが見出された。
【0186】
実施例11
カンジダアルビカンス接着アッセイ
A.方法
カンジダアルビカンスATCC10261をGSB培地(グルコース、塩、ビオチン、Cannon et al, 1995)で増殖させ、[35S]メチオニンで放射性標識した。ヒドロキシアパタイトビーズ(20mg、バイオラッド社)をKCl緩衝液中で水和し(Cannon et al, 1995)、次いでプールしたヒト唾液(30%v/vKCl緩衝液)とともにインキュベーションした。ビーズをKCL緩衝液で洗浄し、次いで唾液でコーティングされたヒドロキシアパタイトビーズを放射性標識したC.アルビカンス細胞とともにインキュベーションした。非接着C.アルビカンス細胞をKCl緩衝液で洗浄することによりビーズから取り除き、次いでSHAビーズに接着した各アッセイに加えられた細胞のパーセンテージを計算した。
【0187】
MAP111タンパク質(DH5.0、140μmol架橋/gタンパク質)を0.1%、1.0%、および10.0%(KCl緩衝液中)の濃度で加えた。接着に対するMAPタンパク質の効果を、MAPタンパク質を含みないアッセイに対して計算した。
【0188】
各アッセイを3つ組で行い、各実験を3時間行った。
【0189】
B.結果
タンパク質は0.1%の低い濃度においてカンジダアルビカンスの接着を阻害することが図13から分かる。阻害は用量に依存しているように思われる。
【0190】
参照:Cannon, R.D., Nand, A.K. and Jenkinson, H. F. (1995) Adherence of Candidaalbicans to human salivary components adsorbed to hydroxyapatite. Microbiology 141: 213-219。
【0191】
高速液体クロマトグラフィーを用いた架橋度の決定
以下の方法を用いて、リンタンパク質調製物の架橋度をグルタミル/リシル結合の数で決定した。
【0192】
化学物質および試薬
ε−(γ−グルタミル)リシン(G−L)およびトリフロオロ酢酸(TFA、タンパク質配列決定等級)、プロリダーゼ(ブタ腎)、ロイシンアミノペプチダーゼ、およびブタ腎由来のサイトソル、カルボキシペプチダーゼA(ウシ膵)、およびプロナーゼ(ストレプトミセス・グリセウス(Streptomyces griseus))、およびTRIS[トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン]をシグマ・ケミカル社(Sigma Chem. Co.)(シドニー、オーストラリア)から購入した。アセトニトリル(HPLC等級)をバイオラボ社(Biolab)(クリストチャーチ、ニュージーランド)から購入した。
【0193】
架橋されたタンパク質のタンパク質分解消化
タンパク質試料の48〜50mgアリコートをガラス試験管(全体積15mL)中で重量測定した。チモールの結晶および0.2Mトリス(pH8.0、HCl)2mlを加え、溶液をボルテックスし、次いで40℃で1時間インキュベーションしてタンパク質を分散させた。プロナーゼ(0.4U/mgタンパク質)のアリコートを混合物に加え、次いで37℃で24時間インキュベーションした。プロナーゼの別の同じサイズのアリコートを加えることにより、プロナーゼ消化を更に24時間継続した。100℃(水浴)で10分間加熱することによりプロナーゼを不活化した後、ロイシンアミノペプチダーゼ(0.4U/mgタンパク質)を加えて消化を継続し、プロナーゼインキュベーションの場合と同様にして溶液を処理した。プロリダーゼ(0.45U/mgタンパク質)、次いでカルボキシペプチダーゼA(0.2U/mgタンパク質)を用いて消化を継続した。最終的な不活化後、混合物を超純水(ミリQ水精製系)(ミリポア、ノース・ライド、オーストラリア)で希釈して7.5gとした。
【0194】
G−LのHPLC分析
HPLC系は、ICI機器1210UV/Vis検出器に接続されたディオネックス(Dionex)GP40勾配ポンプ溶媒デリバリー系から構成されていた。データをITNS取得学会より得て、AZURクロマトグラフィーソフトウェア型式1.1を用いて分析した。試料(100μl)をガードカラム(C18ODS、4mm×3.0mmID)(フェノメネックス社(Phenomenex))および2μmプレフィルターに接続されたイナートシル(Inertsil)ODS−2カラム(5μmmol、150×7.6mm)(フェノメネックス社、オークランド、ニュージーランド)上で分離した。分析は2.5℃で行った。移動相は、0.1%TFA(v/v)(溶媒A)および0.1%TFA(v/v)を含むアセトニトリル(溶媒B)とした。溶媒プログラムは以下の通りとした:100%溶媒A(20分間)、0%〜100%溶媒B(20〜25分)、100%溶媒B(25〜50分)。検出器の波長を210nmに設定し、流量は1.0ml/分とした。
【0195】
タンパク質分解消化由来のすべての試料を0.45μmミレックス(Millex)−HAミリポアフィルターユニット上で濾過した。試料200μlを蒸留水100μlおよび100μ1TFA(2%w/w)と混合した。G−Lピークを標準の溶出時間と比較することによって同定し、G−L標準溶液を試料に標準添加することによって確認した。
【0196】
実施例13
部分的に加水分解されたカゼインの加水分解度の決定方法
試料は、蒸留水中の0.1%または1%タンパク質(w/v)溶液のいずれかとして調製した。試料の100μlアリコートを0.2125Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.20)800μlに加えた。これに0.1%TNBS試薬800μlを加え、試薬をよく混合し、箔でラッピングし、蓋をした水浴中で50℃でインキュベーションした。正確に60分後、100mMのHCl1600μlを加えることによって反応を終了し、試料を30分間室温に冷やしたままとした後、緩衝液/TNBSブランクに対する吸光度を340ηmで読み取った。
【0197】
産業上の用途
本発明の方法および組成物は、哺乳動物にカルシウムおよび鉄などの生物活性金属イオンをデリバリーすることにおける用途を見出すと信じる。本発明は、歯の再石灰化および/又は歯齲蝕、酸蝕症、歯の過敏、または歯肉炎の予防または治療用組成物における特定の用途が見出されることも期待される。
【0198】
本発明は、カゼインの部分加水分解から得られたリンペプチドを含む歯再石灰化/抗齲蝕性組成物(米国特許第5015628号に記載されるものなど)よりもある種有利な点を有すると信じる。具体的には、生産物が許容できる香味を有するためには取り除くことが必要である苦味の疎水性ペプチドを含むカゼイン部分加水分解物とは対照的に、本発明で用いられるリンタンパク質調製物はきれいな香味を有する。更に、本発明のリンタンパク質調製物は、カゼイン由来のタンパク質の性質を有する材料の大部分を利用し(単にカゼインリンペプチドを含む割合ではない)、それによって廃棄量を減少する。
【0199】
本発明で用いられるリンタンパク質調製物は、未修飾カゼインまたはカゼイン塩を含む再石灰化/抗齲蝕性組成物よりも有利な点を有し、具体的には、リンタンパク質調製物のカルシウム結合および歯再石灰化特性は、少なくとも好ましい実施態様において、カゼインの該特性よりも有意に大きいと信じる。更に、リンタンパク質調製物は、比較的可溶性であり、未修飾カゼインより低い粘性を有し、それによってそれらを組成物に導入するこが容易になる。
【0200】
本発明を特定の実施態様を参照して記載したが、特許請求の範囲で定義された本発明の範囲を逸脱することなく、多くの変型および改変をなすことができることを当業者は十分に理解している。
【図面の簡単な説明】
【0201】
ここで、付随の図面を参照して、本発明をより詳細に記載する。
【図1】図1は、3つの異なる再石灰化溶液、すなわち、唾液、10%カゼイン塩溶液、および10%部分架橋された加水分解カゼイン塩溶液による酸エッチングされた歯エナメルの処理後のエナメル再石灰化の収率を示す(実施例3に記載の通り)。
【図2】図2は、酸エッチング前の歯エナメル表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】図3は、酸エッチング後の歯エナメル表面走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】図4は、酸エッチングおよび重合された加水分解カゼイン塩溶液による処理の双方の後における歯エナメル表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】図5は、0.1mol/L酢酸(pH4.5)中で24時間鉱質除去処理し、続いて60mmol/Lカルシウムイオンおよび36mmol/Lホスフェートイオンを含むMAP112リンタンパク質溶液中で再石灰化した後のエナメルの微小硬度の変化を示す。
【図6】図6は、0.1mol/L酢酸(pH4.5)中で48時間鉱質除去処理し、続いて60mmol/Lカルシウムイオンおよび36mmol/Lホスフェートイオンを含むMAP112リンタンパク質溶液中で再石灰化した後のエナメルの微小硬度の変化を示す。
【図7】図7は、0.1mol/L酢酸(pH4.5)中で72時間鉱質除去処理し、続いて60mmol/Lカルシウムイオンおよび36mmol/Lホスフェートイオンを含むMAP112リンタンパク質溶液中で再石灰化した後のエナメルの微小硬度の変化を示す。
【図8】図8は、0.1mol/L酢酸(pH4.8)中で48時間鉱質除去処理し、続いて60mmol/Lカルシウムイオンおよび36mmol/Lホスフェートイオンを含むMAP112リンタンパク質溶液中で再石灰化した後のエナメルの微小硬度の変化を示す。
【図9】図9は、0.1mol/L酢酸(pH4.5)中で24時間鉱質除去処理し、続いて60mmol/Lカルシウムイオンおよび36mmol/Lホスフェートイオンを含むMAP112リンタンパク質溶液中で再石灰化した後のエナメルの微小硬度の変化を示す。
【図10】図10は、齲蝕様の鉱質除去処理を行い、続いて500mg/mLヒドロキシアパタイトおよび可溶性の塩として添加された異なるレベルのカルシウムおよびホスフェートを含むMAP112溶液中で再石灰化した後のエナメルの微小硬度の変化を示す。
【図11】図11は、ツァイス(Zeiss )直立型共焦点顕微鏡を用いて撮影した鉱質除去した歯エナメルの画像である。エナメルをpH4.8の緩衝液中で96時間鉱質除去した。
【図12】図12は、75mM塩化カルシウムおよび45mMリン酸ナトリウム緩衝液を含むMAP112タンパク質中で再石灰化された鉱質除去した歯エナメルのツァイス共焦点顕微鏡画像の画像である。暴露された六方晶系微構造は、エナメル表面上にカルシウム堆積物が広範囲に残って再石灰化されている。
【図13】図13は、3つの実験にわたってヒドロキシアパタイトビーズへの接着が阻害されたC.アルビカンスのパーセンテージに対するMAPリンタンパク質濃度の効果を示す。
【図14】図14は、3つの実験にわたってヒドロキシアパタイトビーズへの接着が阻害されたS.ミュータンスのパーセンテージに対するMAPリンタンパク質濃度の効果を示す。濃度が増加するにしたがい、接着の%阻害が増加することが分かる。
【図15】図15は、齲蝕様の鉱質除去処理を行い、続いて加工チーズ(リンタンパク質MAP112およびミルクリン酸カルシウムを含む)抽出溶液中で再石灰化した後のエナメルの微小硬度の変化を示す。
【図16】図16は、ツァイス直立型共焦点顕微鏡を用いて撮影した鉱質除去した歯エナメルの画像である。エナメルをpH4.8の緩衝液中で96時間鉱質除去した。
【図17】図17は、チーズ抽出中で再石灰化された鉱質除去した歯エナメルのツァイス共焦点顕微鏡画像の画像である。エナメルは、六方晶系微構造の間の領域が広範囲に充填されて再石灰化されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の生物活性金属イオン源(source)、カゼインまたはカゼイン塩の部分加水分解物を部分架橋することにより得られるリンタンパク質調製物(preparation)、および生理学的に許容できる1つ以上の希釈剤またはキャリアを含む哺乳動物への生物活性金属イオンデリバリー用組成物。
【請求項2】
前記金属イオンが2価である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記金属イオンがカルシウム、鉄、亜鉛、コバルト、銅、およびマグネシウムからなる群から選択される請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
経口用組成物であり、食料品、飲料、または薬学的ビヒクルを含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物のpHが約6および約9の間である請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
加工チーズ生産物を含み、前記生物活性金属イオン源が天然ミルクリン酸カルシウムを含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記部分加水分解物が酸カゼイン、レンネットカゼイン、またはカゼイン塩(caseinate)の酵素加水分解により得られた請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記酵素がトリプシンである請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記加水分解度がペプチド結合の合計数の約3%〜約8%の範囲である請求項7または8に記載の組成物。
【請求項10】
前記加水分解度が約3.5%〜約7%の範囲である請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記加水分解度が約4%〜約6.5%の範囲である請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記加水分解度が、前記カゼインまたはカゼイン塩の約10%以下が前記部分加水分解によってpH7において不溶性となるものである請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記加水分解度が、5%以下の前記カゼインまたはカゼイン塩が前記部分加水分解によってpH7において不溶性となるものである請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記部分加水分解物がグルタミン転移酵素を用いて酵素により部分架橋された請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記部分架橋度が、前記得られたリンタンパク質調製物がタンパク質1グラムあたり約10μmol以上の架橋を含むものである請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記部分架橋度が、前記得られたリンタンパク質調製物がタンパク質1グラムあたり約10および約250μmolの間の架橋を含むものである請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記部分架橋度が、前記得られたリンタンパク質調製物がタンパク質1グラムあたり約50および約160μmolの間の架橋を含むものである請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の組成物を前記哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物への生物活性金属イオンのデリバリー方法。
【請求項19】
カゼインまたはカゼイン塩の部分加水分解物を部分架橋することにより得られた有効量のリンタンパク質調製物を1つ以上のキャリアまたは希釈剤と組み合わせて含む、哺乳動物における歯エナメルの再石灰化用および/又は歯齲蝕、酸蝕症、歯過敏症、または歯肉炎の治療または予防用組成物。
【請求項20】
前記部分加水分解物が酸カゼイン、レンネットカゼイン、またはカゼイン塩の酵素加水分解により得られた請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記酵素がトリプシンである請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記加水分解度がペプチド結合の合計数の約3%〜約8%の範囲である請求項19〜21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記加水分解度が約3.5%〜約7%の範囲である請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記加水分解度が約4%〜約6.5%の範囲である請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
前記加水分解度が、前記カゼインまたはカゼイン塩の約10%以下が前記部分加水分解によってpH7で不溶性となるものである請求項19〜24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
前記加水分解度が、約約5%以下の前記カゼインまたはカゼイン塩が前記部分加水分解によってpH7で不溶性となるものである請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記部分加水分解物がグルタミン転移酵素を用いて酵素により部分架橋された請求項19〜26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
前記部分架橋度が、前記得られたリンタンパク質調製物がタンパク質1グラムあたり約10μmol以上の架橋を含む請求項19〜27のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
前記部分架橋度が、前記得られたリンタンパク質調製物がタンパク質1グラムあたり約10および約250μmolの間の架橋を含む請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記部分架橋度が、前記得られたリンタンパク質調製物がタンパク質1グラムあたり約50および約160μmolの間の架橋を含む請求項28に記載の組成物。
【請求項31】
カルシウムイオン源を更に含む請求項19〜30のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項32】
ホスフェートイオン源を更に含む請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
リン酸カルシウムを更に含む請求項30に記載の組成物。
【請求項34】
天然ミルクカルシウムを更に含む請求項30に記載の組成物。
【請求項35】
カルシウムイオンが、リンタンパク質調製物1グラムあたり少なくとも約5mmolのカルシウムイオンのレベルで前記組成物中に存在する請求項31〜34のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項36】
カルシウムイオンが、リンタンパク質1グラムあたり少なくとも約10mmolカルシウムイオンのレベルで前記組成物中に存在する請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記カルシウムイオンと前記ホスフェートイオンとのモル比が約0.8〜1.2:0.4〜0.8の範囲である請求項32〜36のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項38】
前記カルシウムイオンと前記ホスフェートイオンとのモル比が約1:0.6である請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
ストロンチウムイオン源を更に含む請求項19〜30のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項40】
フッ化物イオン源を更に含む請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
口内洗浄剤、歯磨き剤、練り歯磨き剤、粉末、乳濁液、またはゲルを含む請求項19〜40のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項42】
乳濁液を含み、前記リンタンパク質調製物が該乳濁液の約1重量%〜約15重量%の量で存在し、該乳濁液が天然ミルクリン酸カルシウムを該乳濁液の約3%〜約12重量%の量で更に含む請求項19〜33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項43】
食料品または糖菓を含む請求項19〜40のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項44】
哺乳動物の歯を請求項19〜43のいずれか1項に記載の組成物と接触させる工程を含む、哺乳動物における歯エナメルの再石灰化方法および/又は歯齲蝕、酸蝕症、歯過敏症、または歯肉炎の治療または予防方法。
【請求項45】
カゼインまたはカゼイン塩の部分加水分解物を部分架橋することにより得られ、架橋前における前記カゼインまたはカゼイン塩の部分加水分解度がペプチド結合の合計数の約3%〜約8%の範囲であり、前記部分架橋度が前記リンタンパク質調製物がタンパク質1グラムあたり約10μmol以上の架橋を含むものである、リンタンパク質調製物。
【請求項46】
架橋前における前記カゼインまたはカゼイン塩の部分加水分解度が約3.5%〜約7%の範囲である請求項45に記載のリンタンパク質調製物。
【請求項47】
架橋前における前記カゼインまたはカゼイン塩の部分加水分解度が約4%〜約6.5%の範囲である請求項45に記載のリンタンパク質調製物。
【請求項48】
前記部分架橋度が、前記リンタンパク質調製物がタンパク質1グラムあたり約10および約250μmolの間の架橋を含むものである請求項45〜47のいずれか1項に記載のリンタンパク質調製物。
【請求項49】
前記部分架橋度が、前記リンタンパク質調製物がタンパク質1グラムあたり約50および約160μmolの間の架橋を含むものである請求項45〜47のいずれか1項に記載のリンタンパク質調製物。
【請求項50】
前記加水分解度が、前記カゼインまたはカゼイン塩の約10%以下が部分加水分解よってpH7で不溶性となるものである請求項45〜49のいずれか1項に記載のリンタンパク質調製物。
【請求項51】
前記加水分解度が、前記カゼインまたはカゼイン塩の約5%以下が部分加水分解よってpH7で不溶性となるものである請求項45〜49のいずれか1項に記載のリンタンパク質調製物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2006−512303(P2006−512303A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−545097(P2004−545097)
【出願日】平成15年10月20日(2003.10.20)
【国際出願番号】PCT/NZ2003/000232
【国際公開番号】WO2004/035077
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(505144245)
【出願人】(505144256)
【出願人】(505144267)
【出願人】(505144289)
【出願人】(505144290)
【Fターム(参考)】