説明

生物発電用電子メディエーター、生物発電用アノード及びこれらを利用する発電方法及び発電装置

【解決課題】 連続運転においても大きな電流密度を得ることができる有機性物質を利用する発電方法及び装置を提供する。
【解決手段】 嫌気性条件下で生育可能な微生物、有機性物質を含有する溶液もしくは懸濁液、電子メディエーター及びアノード1を含む嫌気性域4と、分子状酸素及びカソード3を含む好気性域5と、嫌気性域4及び好気性域5とを画定する隔膜2と、を具備し、アノード1及びカソード3を電力利用機器に電気的に接続して閉回路6を形成し、嫌気性域4内での有機性物質を電子供与体とする微生物の酸化反応と好気性域5内での酸素を電子受容体とする還元反応とを利用する発電装置。電子メディエーター又はアノードには、塩基性官能基が存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嫌気性条件下における微生物による有機性物質の酸化反応を利用した発電方法及び発電装置に関する。特に、本発明は、嫌気性条件下における微生物による有機性物質の酸化反応を利用した生物発電に用いることができる生物発電用電子メディエーター、生物発電用アノード及びこれらを利用した発電方法及び発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機性物質から利用可能なエネルギーを取り出す方法としては、有機性物質の燃焼による熱エネルギーの採取、メタン発酵によるメタンの採取、その他嫌気性発酵などの微生物を利用した電気エネルギーの採取などの方法がある。しかし、有機性物質の燃焼による熱エネルギーの採取については、有機性物質は多くの場合、含水率が高いので、脱水、乾燥のために多くのエネルギーを必要とする。メタン発酵は、含水率の高い有機性廃棄物質からエネルギーを取り出すことができる優れた方法であるが、得られたメタンは、ガスタービン、燃料電池、ボイラなどのエネルギー変換装置を介さなければ電気エネルギーや熱エネルギーとして利用できない。さらには、ガスタンク、ガス改質器などの周辺設備を必要とするために装置が複雑であって、一般家庭のような少量の廃棄物からエネルギーを採取するには適さないといった問題があった。
【0003】
微生物を利用して電気エネルギーを直接取り出す方法は、他のエネルギー変換過程を介在させることなく、電気エネルギーを直接採取できるために、装置が大掛かりにならず、小規模廃棄物にも適応の可能性があるという点で有望な方法である。また、メタン発酵よりも高いエネルギー回収効率が得られる可能性があるという点でも有望な方法である。
【0004】
これまで研究されてきた微生物を利用する発電方法としては、アノードとカソードとを閉回路として導通させることで、アノード周辺の電子供与体からの電子をカソード周辺の電子受容体(主に溶存酸素)に供与して電流を得る方法が報告されている。
【0005】
しかし、従来の微生物を利用した発電方法及び装置においては、電子メディエーターの使用の有無にかかわらず、数日〜数ヶ月にわたる連続運転において、非常に小さな電流密度が得られるだけであった。還元型の電子メディエーター濃度を増加させた条件では、初期(数分以内)には大きな電流密度が得られるものの、それ以降連続して大きな電流密度を得ることが困難であった。この理由は、嫌気性微生物の代謝反応が溶存酸素によって阻害されることによるものと考えられ、嫌気性微生物を含む環境中への溶存酸素の導入を減少させるべく以下のような技術が開発されている。
【0006】
特開2000−133327号公報(特許文献1)によれば、アノード周辺のみならずカソード周辺にも微生物を存在させ、「負極溶液では微生物が排水中の有機物を資化して高エネルギー物質を産生し、これより電子メディエーターを介して電子を負極に引き渡す一方で、正極では電子メディエーターを介してこの電子を微生物に供給し、微生物内でエネルギーとして消費させる」方法が紹介されている。
【0007】
特開2000−133326号公報(特許文献2)によれば、「ナトリウムイオン導電体を正極溶液と負極溶液との隔壁に用いることにより閉回路形成のためのイオン伝達性を達成し、かつナトリウムイオン導電体の低ガス透過性により正極溶液の電子受容体に酸素を用いることを可能とする」方法が紹介されている。
【0008】
米国特許第4652501号明細書(特許文献3)によれば、微生物に電子メディエーターを加えて、微生物を飢餓状態に維持することによって効率よく電子を取り出す方法が提案されている。
【0009】
しかしながら、実際にはこれらの方法を用いても、連続して大きな電流密度を得ることは困難であり、生物発電は実用化に至っていない。これは、溶存酸素の問題が解消され、嫌気性微生物の代謝反応によって還元型の電子メディエーターが効率よく供給されたとしても、連続運転時においてアノード近傍のpHが低下してしまうと今度はアノードでの酸化反応が電流発生効率を低下させてしまうためであると考えられる。
【特許文献1】特開2000−133327号公報
【特許文献2】特開2000−133326号公報
【特許文献3】米国特許第4652501号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、連続運転においても大きな電流密度を得ることができる有機性物質を利用する発電方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従来、嫌気槽内での反応律速因子としては電子メディエーターの濃度が重要であると考えられていた。すなわち、電子メディエーターの濃度が濃いほど単位時間あたりに電極(アノード)と反応する電子メディエーター分子の数が増加するので電流密度は増加すると考えられていた。しかし、実際には、アノードと電子メディエーターとが接触してもpHが低い場合には殆どの電子メディエーターが反応せず、電流密度の大幅な増加はみられない。
【0012】
本発明者らは鋭意研究の結果、有機性物質を利用する発電方法、特に有機性物質を電子供与体とする嫌気性微生物による酸化反応及び酸素を電子受容体とする還元反応を利用する発電方法において、全体の反応速度の律速因子がアノードでの酸化反応であることを知見し、本発明に至った。
【0013】
微生物内での代謝反応は酵素反応であるため、ある程度の水素イオン濃度変化に対して緩衝能力がある。一方、アノードでの酸化反応は化学反応であり、水素イオン濃度の影響を受けやすい。すなわち、アノードでの酸化反応は、下記式(1)に示すように、電子メディエーター濃度、水素イオン濃度によって決定される。
【0014】
【化1】

(式中、Mediator Redは還元型の酸化還元物質を示し、Mediator ox は酸化型の酸化還元物質を示し、e- は電子を示し、H+ は水素イオンを示す)
このときの平衡定数Kは、下記式(2)で表される。
【0015】
【化2】

上記式(1)において放出される電子は、アノードから系外へ排出されるので、電子メディエーター以外では、水素イオン濃度がアノードでの反応に大きく寄与する因子となる。この原理によると、水素イオン濃度が高くなると、酸化型の酸化還元物質濃度は低く抑制されるため反応は容易に平衡に達してしまい、電流が流れなくなる。アノードにおいては、式(1)に示したように発電に伴って水素イオンが発生するため、アノード区画(嫌気性域)の水素イオン濃度は常に上昇する傾向にあり、式(1)の反応がすぐに平衡に達してしまう。
【0016】
アノードでの嫌気性微生物による有機性物質の酸化反応及びカソードでの還元反応を利用する発電方法においては、嫌気性域内のアノード周辺にて水素イオンが発生し続け、好気性域内のカソード周辺にて電子、水素イオン及び酸素を用いて水が生成される。ところが、隔膜によってアノードとカソードとが隔離されているために、水素イオンはカソード周辺に移動しにくく、嫌気性域内では水素イオンが過剰になってしまう。
【0017】
式(1)で表されるように、酸化型の電子メディエーターを還元する反応は水素イオン濃度が高いほど進みやすく、還元型の電子メディエーターを酸化する反応は水素イオン濃度が低いほど進みやすい。よって、嫌気性域内、特にアノード近傍の水素イオン濃度を低く維持することで、アノードでの酸化反応を効率よく且つ持続させて行うことができ、連続運転時にも大きな電流密度を得ることができるようになる。
【0018】
このような発電方法において、嫌気性域内のアノードで発生した水素イオンが隔膜を介して隔てられた好気性域に効果的に移動するためには、両域間において水素イオン濃度差又は電位勾配が必要である。しかしながら、嫌気性微生物による有機性物質の酸化反応を利用するには嫌気性域側にアノードを設けるために、嫌気性域は負に荷電しており、正の電荷を持つ水素イオンがカソードを含む好気性域に移動するための電位勾配とは逆方向の勾配が形成される。そのため、水素イオンの移動は水素イオン自身の濃度に依存することになり、カソードを含む好気性域に水素イオンを移動させるためには、両域間の水素イオン濃度差を十分に大きくすることが必要である。
【0019】
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものであって、嫌気性域内の水素イオン濃度が上昇した状態であっても、アノードでの還元型メディエーターの酸化反応速度の低下を防ぐことができる、微生物を利用して含水有機性物質を分解して電気エネルギーを得る生物発電方法及び生物発電装置並びにこのような生物発電に用いるための生物発電用電子メディエーター及びアノードに関する。
【0020】
上述したように、水素イオンを嫌気性域から好気性域に効率的に移動させ、反応液の電気抵抗を低下させるためには、両域間の水素イオン濃度差を十分に大きくすることが必要である。すなわち、隔膜の嫌気性域側の水素イオン濃度を上昇させる必要がある。一方、上述したように嫌気性域において還元型の電子メディエーターを酸化する反応は、水素イオン濃度が低いほど進みやすい。本発明においては、アノード表面もしくは電子メディエーターに塩基性官能基を導入することによって、嫌気性域の水素イオン濃度が上昇した状態でも、アノード表面における電子メディエーターの酸化反応時にアノード表面近傍の水素イオン濃度の上昇を抑制することができ、上述した2つの条件を同時に満たすことができる。すなわち、嫌気性域の液相の水素イオン濃度が上昇した状態であっても、塩基性官能基を導入したアノード表面または電子メディエーターにおいては、該塩基性官能基が水素イオンを取り込んで水素イオン濃度を低下させるため、電子メディエーターが酸化されるミクロな反応場においては、水素イオン濃度の上昇を抑制し、上記式(1)における右方向の反応(酸化反応)を促進することができる。
【0021】
したがって、本発明の第1の側面によれば、嫌気性条件下で生育可能な微生物、有機性物質を含有する溶液もしくは懸濁液、電子メディエーター及びアノードを含む嫌気性域と、分子状酸素及びカソードを含む好気性域と、該嫌気性域及び該好気性域とを画定する隔膜と、を具備し、該アノード及び該カソードを電力利用機器に電気的に接続して閉回路を形成し、該嫌気性域内での有機性物質を電子供与体とする微生物の酸化反応と該好気性域内での酸素を電子受容体とする還元反応とを利用して発電する発電方法に用いる電子メディエーターであって、塩基性官能基を有することを特徴とする生物発電用電子メディエーターが提供される。
【0022】
本発明の第2の側面によれば、嫌気性条件下で生育可能な微生物、有機性物質を含有する溶液もしくは懸濁液、電子メディエーター及びアノードを含む嫌気性域と、分子状酸素及びカソードを含む好気性域と、該嫌気性域及び該好気性域とを画定する隔膜と、を具備し、該アノード及び該カソードを電力利用機器に電気的に接続して閉回路を形成し、該嫌気性域内での有機性物質を電子供与体とする微生物の酸化反応と該好気性域内での酸素を電子受容体とする還元反応とを利用して発電する発電方法に用いるアノードであって、電極基材表面に塩基性官能基を有することを特徴とする生物発電用アノードが提供される。
【0023】
また本発明の第3の側面によれば、上述の生物発電用電子メディエーター及び/又は生物発電用アノードを利用する発電方法が提供される。
さらに本発明の第4の側面によれば、上述の生物発電用電子メディエーター及び/又は生物発電用アノードを具備する発電装置が提供される。
【0024】
本発明において用いることができる塩基性官能基としては、第4級アンモニウム基(−NR3+OH-)や第1〜3級アミノ基(−NH2、−NHR、−NR2)及びこれらの誘導体からなる群より選ばれる塩基性官能基を挙げることができる。
【0025】
【化3】

生物発電に用いる電子メディエーターは、酸化体、還元体の形態をとることができる物質であることが好ましく、例えば、ジアゾ化合物、鉄イオン、マンガンイオン、ポルフィリン構造を持つ化合物、ナフトキノン骨格を持つ化合物、アントラキノン骨格を持つ化合物が好ましい。特に、pH7における標準電極電位(E0’)が−0.13Vから−0.28Vの範囲内にあり酸化型、還元型いずれの状態においても環境中で安定であるような物質であって、利用する微生物の呼吸を阻害せず、且つ、微生物によって容易に還元されうるものを好ましく用いることができる。標準電極電位範囲の下限値である−0.28Vは硫黄還元菌等の有する電子伝達系の末端還元酵素群の持つ標準電極電位に近く、この値に近い標準電極電位を持つ電子メディエーターは効率的な生物発電のために有効な触媒となり得る。電子メディエーターの電位がこの値よりも低くなると、硫黄還元菌等の微生物は該電子メディエーターに対し効率的に電子伝達を行うことが困難となる。一方、電子メディエーターの電位が極端に高くなり−0.13Vを超えてくると、末端還元酵素と電子メディエーター間の電位差が大きくなるため生物学的な電子伝達が困難である可能性が高い。その上、発電効率を高めるためにはカソードの酸素還元反応に対してアノード側でできるだけ大きな電位差を生じさせることが求められるが、電子メディエーターの電位が上記の範囲よりも高い場合は、アノード側での微生物から電子メディエーターへの電子伝達に際して0.15V以上の電位差を損失してしまい、エネルギー損失が大きくなる。
【0026】
よって、本発明の生物発電用電子メディエーターとしては、アントラキノン−2−カルボン酸(AQC)、アントラキノン−2−スルホン酸(AQS)、アントラキノンジスルホン酸(AQDS)、2−エチルアントラキノン(EAQ)、2−メチル−1,4−ナフトキノン(MNQ)、2,3−ジメチル−1,4−ナフトキノン(DMNQ)、ラパコール(LpQ)、1,2−ナフトキノン−4−スルホン酸(NQS)、2,3,5−トリメチルベンゾキノン(TMABQ)およびこれらの誘導体に塩基性官能基を導入して得られる物質や、1−アミノアントラキノン(AAQ)、1,5−ジアミノアントラキノン(DAAQ)、1,5−ジアミノアントラキノン−2−スルホン酸(DAAQS)、1,5−ジアミノアントラキノンジスルホン酸(DAAQ DS)、2−メチル−5−アミノ−1,4−ナフトキノン(MANQ)、2−ブロモ−3−メチル−5−アミノ−1,4−ナフトキノン(BrMANQ)、2,3−ジメチル−5−アミノ−1,4−ナフトキノン(DMANQ)及び2−ヒドロキシ−3−(3−メチル−2−ブテニル)−5−アミノ−1,4−ナフトキノン(ALpQ)からなる群より選択されるアミノ基を有する塩基性の電子メディエーターを好ましく挙げることができる。
【0027】
また、本発明の生物発電用アノードとしては、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、VGCF(気相成長炭素繊維)、金、白金およびTiO2やSnO2のような金属酸化物または金属酸化物で被覆した金属などの電極基材に塩基性官能基を導入したアノードを好ましく挙げることができる。
【0028】
上述したような電子メディエーター又はアノードに塩基性官能基を導入する方法としては、電子メディエーターの酸化還元を阻害しないような付加方法であり、水溶液中で安定で微生物による分解を受けにくい結合方法であることが好ましい。これらの条件を満たす導入方法としては、有機合成において一般的に使われる方法を用いることができ、例えばアミド結合を用いる方法、ホフマン転位を利用する方法がある。また、アノードが金または白金被覆素材である場合には金または白金−硫黄結合を、金属酸化物である場合にはシランカップラー剤を用いたカップリング反応を好ましく利用することができる。好ましい塩基性官能基導入方法をまとめて下記表1に示す。表1の中で、塩基性官能基の部分はAmineの略号で、反応に直接関与しない官能基および炭素骨格(窒素原子や酸素原子を含んでも良く、更なる置換基を有しても良く、また5員環や6員環を形成してもよい)はRの略号で表記する。
【0029】
【表1】

したがって、本発明において、電子メディエーターまたはアノード電極素材に塩基性官能基を導入するには、使用する電子メディエーター、電極および塩基性官能基導入試薬の組み合わせに応じて、表1に示す方法から適切な導入方法を選択することができる。
【0030】
例えば、塩基性官能基導入の方法としては、硝酸/硫酸混液(混酸)を用いてニトロ基を導入した後、これを亜鉛末または水素化リチウムアルミニウムで還元してアミノ化する方法を用いてアミノ基を導入する方法を好ましく用いることができる。また、カルボキシ基を持つアントラキノン−2−カルボン酸(AQC)およびその誘導体の場合、最初にアミノプロピルフタルイミドをジシクロヘキシルカルボジイミドの存在下で縮合させ、これにヒドラジンを反応させてフタルイミドを加水分解することによりアミノ基を導入することもできる。さらに、スルホン酸基を持つアントラキノン−2−スルホン酸(AQS)、アントラキノンジスルホン酸(AQDS)、1,2−ナフトキノン−4−スルホン酸(NQS)及びこれらの誘導体の場合には、オキザリルクロリドまたはスルホラン及びオキシ塩化リンと反応させることによりスルホン酸基を酸クロリド化し、これにアミノプロピルフタルイミドを縮合させ、さらにヒドラジンを反応させてフタルイミドを加水分解することによりアミノ基を導入することもできる。また、グラファイト電極(ベンゼン環を有する)に塩基性官能基導入試薬として1,3−プロパンジアミンを使用してアミノ基を導入する場合には、電極を予め電解酸化してカルボキシ基を形成させ、このカルボキシ基をDMF共存下でオキサリルクロリドにより酸クロリド化し、これをジクロロメタンで洗浄後、テトラヒドロフラン溶媒中で1,3−プロパンジアミンと12時間室温条件で反応させることにより、グラファイト電極にアミノ基を導入することができる。
【0031】
本発明において、アミノ基に代表される塩基性官能基の導入は、電子メディエーター及びアノードの標準電極電位を低下させるため、このような操作によって水素イオン濃度を抑制するとともに、標準電極電位を好ましい電位である−0.13V〜−0.28Vの範囲内になるよう調整することが可能である。実際には、塩基性官能基導入後の電子メディエーター又はアノードを用いてサイクリックボルタンメトリまたは電位シフト試験を行うことにより、アノード又は電子メディエーターのE0’値を測定、評価することができるので、この測定結果に従って、さらに導入する官能基の種類を決定することもできる。
【0032】
また、本発明によれば、電子メディエーターを電極基材表面に固定化してなる生物発電用アノードが提供される。電子メディエーターをアノード表面に固定化するには、電子メディエーターの酸化還元を阻害したり、電子メディエーターの標準電極電位を大きく変動させてしまうことがないような固定化方法を用いることが好ましい。さらに、電子メディエーターとアノード表面の電極素材とは導電性を有するような形態で結合されていることが好ましい。また、電子メディエーターとアノード表面の電極素材との結合は、水環境中で安定で、容易に分解されない形態であることが望ましい。例えば、アノードとしてグラファイト電極を使用し、電子メディエーターとしてAQC(アントラキノン−2−カルボン酸)を使用する場合には、AQCが有するカルボキシ基を利用した結合方法を好ましく選択することができる。具体的には、アノード表面のグラファイトを電解酸化、硝酸酸化又は高温空気酸化によって開裂させて末端をカルボン酸とし、これに塩化チオニルなどを反応させて酸クロリドを生成させる。次いで、得られた酸クロリドにアンモニアを反応させて、カルボン酸アミドを生成させる。さらに、得られたカルボン酸アミドをホフマン転位反応によりアミノ基に転位させる。このように処理したグラファイトに、ジシクロヘキシルカルボジイミド共存下で、AQCを反応させると、AQCのカルボキシ基とグラファイトのアミノ基とのアミド結合が形成され、AQCをグラファイトに安定に固定化することができる。このようにグラファイトに予めアミノ基を導入してからAQCを固定化させれば、固定化されたAQCのカルボキシ基はアミド結合に使用され、かつ結合に使われずに余ったアミノ基は塩基性を示すので、AQC固定化後のアノードは全体として塩基性を示し、本発明の目的とする条件を満たす。
【0033】
なお、AQC(またはその他の酸クロリド化可能な電子メディエーター、例えばアントラキノン−2−スルホン酸(AQS)、1,5−ジアミノアントラキノン−2−スルホン酸(DAAQS)、アントラキノンジスルホン酸(AQDS)、1,5−ジアミノアントラキノンジスルホン酸(DAAQ DS)、1,2−ナフトキノン−4−スルホン酸(NQS)およびこれらの誘導体)を固定した後のアノードが塩基性を示すためには、アノード表面の塩基性官能基(アミノ基)よりも少ない量の電子メディエーターを反応させ、固定化後に塩基性官能基(アミノ基)が余るように調整する必要がある。具体的には、電子メディエーター固定化後のアノード表面積あたりの残留塩基性官能基(アミノ基)密度が10mmol/m2以上あることが好ましい。塩基性官能基密度の測定は、塩基性官能基導入アノード基材及び未処理のアノード基材(ブランク)をそれぞれ、2.5mmol/L H2SO4水溶液200mLに浸してスターラーで攪拌しながら12時間中和反応させ、反応終了後、アノード基材を取り出し、フェノールフタレイン−メタノール溶液(1g/L)0.2mLを加え、0.1mmol/L NaOH水溶液で滴定する(終点はpH8.5)ことによって行うことができる。アノード基材上の塩基性官能基の密度は、下記式のように計算できる。
【0034】
【数1】

また、塩基性官能基を有する電子メディエーターをアノード表面に固定化する場合は、アノード基材側には塩基性官能基(アミノ基)を導入しなくとも良い。この場合でも同様に、電子メディエーター固定化後のアノード面積あたりの塩基性官能基導入密度が10mmol/m2以上あることが好ましい。
【0035】
なお、塩基性官能基を有しない電子メディエーターをアノード表面に固定化することもできるが、この場合は、予めアノード表面に塩基性官能基を導入しておくことが望ましい。
【0036】
本発明で用いることができるアノード電極基材は、微生物から電子メディエーターおよび電極への電子伝達反応を促進するため、なるべく広い面積を持ち、効率よく微生物と接触することができる形態及び寸法であることが望ましい。アノードの反応表面積を増加させて反応性を高めるためには、アノードを構成する電極素材を粉末状とし、樹脂バインダで結着させて、電極を多孔質とすることが好ましい。しかしながら、有機性物質を長期間にわたって連続的に処理する装置の場合、有機性物質中及びアノード表面において嫌気性微生物が連続的に増殖することから、あまりにも細密な3次元網目構造状、細いチューブ状または隙間の狭い積層板状の構造のアノード電極を用いると微生物菌体による流路の閉塞、片流れ、デッドゾーンの形成等により有機性物質の分解及び発電効率が低下することが考えられる。このため、アノードの形態は金網状、多孔質または表面に凹凸または襞がある一次構造であって、3次元網目状、チューブ状または積層板状の空間(有機性物質溶液または懸濁液が流入してくる流路)を持つ2次構造を形成しており、かつ上記流路は処理対象となる有機性物質の流動性に応じて数mmから数cmの開度を持つことが望ましい。また、用途に応じて、経時的に上記流路を水洗または空洗して余剰の微生物菌体及び菌体外分泌物を除去することが望ましい。この時、空洗に使用する気体に酸素が含まれると嫌気性域内の嫌気性微生物に悪影響を及ぼす可能性があるため、不活性ガスまたは反応容器中で発生した嫌気性のガスを利用することが望ましい。
【0037】
本発明の発電方法において、アノードを含む嫌気性域での反応は、主に微生物の嫌気呼吸による有機性物質を電子供与体とする酸化反応である。有機性物質由来の電子は、微生物体内の電子伝達系及び電子メディエーターを介して、最終的にアノードに受け渡される。
【0038】
本発明において用いることができる微生物としては、嫌気性条件において本発明で用いられる電子メディエーターを還元可能な微生物であることが好ましく、例えば、硫黄還元菌、酸化鉄(III)還元菌、脱塩素菌などを好ましく挙げることができる。例えばDesulfuromonassp.、Desulfitobacterium sp.、Geobivrio thiophilus sp.、Clostridium thiosulfatireducens sp.、Acidithiobacillus sp.、Thermoterrabacterium ferrireducens sp.、Geothrix sp.、Geobacter sp.、Geoglobus sp.、Shewanella putrefaciens sp.などを特に好ましく用いることができる。これらの微生物は有機性物質溶液(または懸濁液)中において主要な微生物ではないことが多いため、本発明の方法の開始時に、これらの微生物を嫌気性域に植菌し、アノード表面にこれらの微生物が主に付着している状態を形成することが好ましい。したがって、これらの微生物を優占的に嫌気性域内で増殖させるために、電極に電子を渡すことによる呼吸反応(電極呼吸)が酸発酵やメタン発酵よりもエネルギー的に有利である場の面積を大きくすべきであり、具体的には、嫌気性域内のアノード表面積をなるべく大きくすることが好ましい。また、立ち上げ運転時には嫌気性域内にこれらの微生物の増殖に適当な培地を供給することが望ましく、さらにアノードの電位を高く維持することにより、これらの微生物の増殖を促すことがより望ましい。これらの微生物(群)を前培養するかもしくは嫌気性域内で培養するために用いる培地として、スラリー状の硫黄、酸化鉄(III)などを電子受容体とする培地が各種報告されており、例えばHandbook of Microbial Media (Atlasら1997, CRC Press)に記載されているAncylobacter/Spirosoma培地、Desulfuromonas培地、Fe(III) Lactate Nutrient培地などを好ましく用いることができる。これらの培地組成を下記表2〜4に示す。
【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
【表4】

さらに、これらの微生物のうち、硫黄還元菌はその最終電子受容体である硫黄の標準電極電位が−0.28Vと非常に低い物質であるため、酸化鉄(III)還元菌よりも低い電位を持つ電子メディエーターに電子伝達を行うことができ、エネルギー的にも有利である。このような硫黄還元活性を持つ菌としては、Desulfuromonas sp.、Desulfitobacterium sp.、Acidithiobacillussp. (いずれもATCCまたはNITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構)にて購入可能)などを好ましく挙げることができる。
【0042】
本発明において用いることができる有機性物質は、分子状酸素を嫌気性域内に持ち込まないように、液体状または懸濁液、あるいは固形分の間隙が水で飽和している状態であることが望ましい。嫌気性域内での有機性物質の酸化反応は主に微生物による呼吸反応によって触媒されることから、嫌気性域内に投入される有機性物質は固形分の粒径が小さく、水中に良く溶解または分散可能で、低分子であることが望ましく、また、微生物にとって易分解性の物質であることが望ましい。使用する有機性物質の種類によりこれらの条件が満たされない場合には、物理的、化学的または生物学的な前処理を行って有機性物質の微生物分解性を高めることができる。そのような方法としては、例えば、粉砕機による破砕、熱分解、超音波処理、水熱分解、オゾン処理、次亜塩素酸塩処理、過酸化水素処理、硫酸処理、微生物による加水分解、酸生成、低分子化処理が考えられる。これらの前処理に要するエネルギーは、前処理による主反応容器での発電エネルギーの向上とのバランスを考え、最適な前処理条件を選ぶことができる。本発明において用いることができる有機性物質としては、たとえば、廃水、廃液、屎尿、食品廃棄物、その他の有機性廃棄物又は汚泥、有機酸(酢酸、乳酸など)、糖類(グルコースなど)、蛋白質、セルロースなどを好ましく挙げることができる。
【0043】
本発明の発電方法において、カソードを含む好気性域での反応は、酸素を電子受容体とする還元反応である。
本発明において用いることができるカソードとしては、カソードの少なくとも一部を、構造体内に空隙を有する導電性の多孔質材料、網状又は繊維材料で構成したカソード(図1参照)を好ましく挙げることができる。このような構造とすることにより、空隙中に水/空気の接触界面、すなわち空気(酸素)と水とを隣接させる場を構築し、空気中の酸素および水面の水に接触する効率を高めて、空気中の酸素の還元反応(電極反応)を促進することができる。例えば、微細孔を有する導電性の多孔質材料(空気拡散層、カーボンペーパーなど)に、樹脂バインダを含浸させ触媒を担持した導電性粒子(触媒層、カーボン、不活性金属、金属酸化物など)を結着したものをカソード(空気極)として用いることで、一方では導電性粒子からなる孔において毛細管現象及び表面の親水性により水を吸い上げ、一方では樹脂バインダからなる孔において水を撥水し空気を導入することにより、微細孔内部に3次元的な水/空気の接触界面を形成させて、空気中の酸素と水とを効率良く接触させて酸素の還元反応を促進することができる。また、カソードにおいて発生する余剰の水分(通常の場合、発生した水酸化物イオンおよびイオン交換膜を介して供給されるアルカリ金属などの対イオンを含みアルカリ性を呈する)は、カソードの触媒層および空気拡散層が水を撥水するため好気性域側に押し出される。この作用によって触媒層の微細孔が水で飽和してしまうのを防ぐことができ、水/空気の接触界面を微細孔内部において3次元的に維持することができる。また、後述するように好気性域側に排出されたアルカリ性水を回収して嫌気性域に注入することができる。この操作により、嫌気性域の水素イオン濃度が極端に上昇して微生物の呼吸活性を阻害したり、導入した塩基性官能基の中和能力を越えてしまったりするのを防ぐことができる。また、嫌気性域から失われた各種陽イオンを補給する効果もある。
【0044】
カソードの触媒層に担持させる触媒としては、白金族元素、銀、遷移金属元素から選ばれる少なくとも一種類を含有する合金あるいは化合物からなる触媒を用いることが好ましく、空気中の酸素の還元反応(電極反応)を促進することができるものである。白金族元素とは白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)またはイリジウム(Ir)を指し、いずれも電極触媒として有効である。また、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、チタン酸化物をドープした銀粉末を担持したもの、ファーネスブラック又はコロイド状グラファイトに銀を担持したもの、鉄(Fe)、コバルト(Co)、フタロシアニン、ヘミン、ペロブスカイト、Mn4N、金属ポルフィリン、MnO2、バナジン酸塩、またはY2O3−ZrO2複合酸化物を用いたものなども電極触媒として好ましく用いることができる。
【0045】
本発明において、好気性域において電子受容体として機能する分子状酸素は、水溶液中の溶存酸素として又は酸素を含む空気として供給することができる。また、好気性域においては、カソードの過電圧を低く抑えるために、酵素、たとえばオキシダーゼ類や、酸化還元物質、たとえばフェリシアン化カリウムなどを触媒または電子伝達媒体として添加してもよい。これらの触媒または電子伝達媒体を用いることによりカソード表面で直接酸素を還元する必要がなくなるため、白金等の高価な触媒の使用量を削減又は無用にすることができる。
【0046】
本発明において、カソード及びアノードは電力利用機器と電気的に接続して閉回路を形成する。一方、有機性物質の還元能を無駄なく電気エネルギーとして取り出すためには、有機性物質が酸化剤(被還元物質)と接触して還元能を消費させないよう、有機性物質と空気中の酸素が接触しないように両者を隔離する必要がある。これらの条件を同時に満たすため、カソードを含む好気性域とアノードを含む嫌気性域とを隔膜、例えば固体高分子電解質膜で隔てることが望ましいが、少なくとも酸素の透過を制限する導電性を妨げない膜であれば隔膜として使用できる。このような構造をとることにより、カソードは空気中の酸素と容易に接触することができ、また隔膜中に存在する水を介して水素イオンの受給または水酸化物イオンの排出を行うことができる。また、隔膜はできるだけ好気性域からの酸素を透過しないものがよく、嫌気性域に酸素が浸透して有機性物質の還元能を低下させることを防ぐことが望ましい。
【0047】
本発明において用いることができる隔膜としては、スルホン酸基を有するフッ素樹脂系イオン交換膜を好ましく挙げることができる。スルホン酸基は親水性があり、高い陽イオン交換能を持つ。また、より安価な電解質膜として主鎖部のみをフッ素化したフッ素樹脂系イオン交換膜や、炭化水素系膜も利用できる。このようなイオン交換膜としては、例えばIONICS製NEPTON CR61AZL-389、トクヤマ製NEOSEPTA CM-1または同CMB、旭硝子製Selemion CSVなどの市販製品を好ましく用いることができる。また水酸化物イオン用の交換膜としては、第4級アンモニウム基を有する水酸化物イオン(陰イオン)交換膜が好ましく用いられる。このようなイオン交換膜としては、例えばIONICS製NEPTON AR103PZL、トクヤマ製NEOSEPTA AHA、旭硝子製Selemion ASVなどの市販製品を好ましく用いることができる。
【0048】
カソードでの酸素の還元には水素イオン及び水の供給が必要であるが、アノードで発生した水素イオンをカソードへ供給して電気的なチャージバランスをとる場合は上述した陽イオン交換膜を用い、カソードで発生した水酸化物イオンをアノードへ供給して電気的なチャージバランスをとる場合は陰イオン交換膜を用いることが好ましい。
【0049】
水素イオンまたは水酸化物イオンの移動効率を高めるためにはアノード、カソードと隔膜との間の距離はなるべく短いほうが良く、装置構造上可能であれば両者は接合していることが望ましい。特に、隔膜(電解質膜)の一部がカソード電極の多孔質構造内部に網目状に侵入して結合している場合、多孔質構造に含まれる空気と電解質膜に含まれる水とで形成される水/空気界面の面積が飛躍的に増大するので、空気中の酸素を還元する反応効率が増大して発電性能を高めることができる。
【0050】
本発明は、上述の発電方法を行うことができる発電装置にも関する。本発明の発電装置は、嫌気性条件下で生育可能な微生物及び有機性物質を含有する溶液又は懸濁液および電子メディエーターとアノードとを含む嫌気性域と、カソードと分子状酸素とを含む好気性域と、該嫌気性域及び該好気性域を画定し、該嫌気性域と該好気性域との間での物質移動を可能とする隔膜と、該アノードと該カソードとを電力利用対象物に電気的に接続して形成された閉回路と、を具備し、該嫌気性域内での有機性物質を電子供与体とする微生物の酸化反応と、該好気性域内での酸素を電子受容体とする還元反応と、を利用する微生物による発電装置であって、該アノード表面及び/または該電子メディエーターに塩基性官能基が導入されていることを特徴とする。
【好ましい実施の形態】
【0051】
以下、添付図面を参照しながら、本発明による発電装置をより具体的に説明する。以下の記載は、本発明の技術思想を具現化する幾つかの具体的形態を説明するもので、本発明はこの記載に限定されるものではない。
【0052】
図2は本発明の一態様に係る発電ユニットの具体例である。例えば、図2に示す本発明の発電装置の一具体例は、電子メディエーターが固定化されているアノード1を含む嫌気性域4、隔膜(電解質膜)2、および多孔質カソード3を含む好気性域5が三重の筒状体をなすことによって構成される。筒状体の最内隔空間形態である嫌気性域4に嫌気性条件下で生育可能な微生物及び有機性物質(「基質」ともいう)を含む溶液又は懸濁液を流し、筒状体の最外隔空間形態である好気性域5には分子状酸素を含む空気を存在させる。好気性域5には、分子状酸素を供給する手段(図示せず)が設けられている。好気性域5内に配置されている多孔質カソードは、カソードの少なくとも一部が、構造体内に空隙を有する導電性の多孔質材料、網状又は繊維状材料によって形成されている。嫌気性域4と好気性域5とを隔離する隔膜2は、物質交換係数が大きな隔膜、たとえばDuPont社製のNafion、アストム社製ネオセプタなどの固体高分子電解質膜で構成されている。
【0053】
嫌気性域4内では、有機性物質を電子供与体とする微生物の酸化反応が進行し、好気性域5内では、酸素を電子受容体とする還元反応が進行する。こうして、アノード1とカソード3の間に電位差が生じる。この状態でアノード1とカソード3とを導線6によって電力利用機器に電気的に接続することにより電位差電流が流れ、一方、電解質膜2を介して嫌気性域4と好気性域5の間でイオンが移動することにより、閉回路が形成される。反応が進行するにつれて、嫌気性域4には水素イオンが発生し、嫌気性域の水溶液は酸性を呈する。一方、好気性域5には水酸化物イオンが発生して好気性域5内に発生する水はアルカリ性溶液となる。
【0054】
さらに、アノード1の嫌気性域4に面した側には、本発明の塩基性官能基を導入した電子メディエーターが固定化されている。塩基性官能基が存在することにより、嫌気性域の液相が酸性を呈する状態においても、アノード1表面の水素イオン濃度の上昇を抑制することができる。
【0055】
好気性域5内に発生するアルカリ性水溶液は、適宜回収して嫌気性域4内へ注入することが好ましい。この操作により、嫌気性域4の水素イオン濃度が極端に上昇して微生物の呼吸活性を阻害したり、導入した塩基性官能基の中和能力を越えてしまったりするのを防ぐことができる。
【0056】
発電ユニットを構成する筒状体の内径は、基質の流動性に応じ、数mmから数cm、場合によっては数十cmに設定することができる。図2に示すような発電ユニットは、適当な材料の支持層またはケーシングで保持することによりその物理的強度を増すことができる。
【0057】
図示した実施形態においては、アノード、隔膜及びカソードを円筒形とする3層構造を採用し、隔膜を介してアノードとカソードとを配置している。このような構成とすることによって、アノード及びカソードの表面積を大きくし、アノードが基質と効率良く接触して基質の動かないデッドゾーンをできるだけ小さくし、アノードとカソードとの間でイオン交換が効率良く行われると同時にアノードとカソードは電気的に絶縁されるので、有機性物質(基質)の電子が効率良くアノードに受け渡される。また、多孔質カソードの空隙中に空気と水との接触界面を存在させた状態で空気と接触させることにより、空気中の酸素および水面の水に接触する効率を高めることができ、電極上での酸素の還元反応を効率良く進行させることができる。
【0058】
図2に示すような三層筒状体の本発明に係る発電装置においては、用途に応じてアノードを含む嫌気性域を外側に、カソードを含む好気性域を内側に配置し、好気性域に空気を流通させる手段を配して該装置を基質液中に設置することで、発電運転を行うこともできる。また、この場合、筒状体を例えばU字型に形成し、両端を基質液の液面から出して、筒内部の空間に空気が流通できるようにしてもよい。このように好気性域を内筒とする構成の場合には、好気性域の内筒の内径を数mm程度またはそれ以下に小さくしても閉塞の生じる心配がない点が有利である。更に、三層筒状体において、内側の筒状体を多孔質カソードを含む好気性域、外側の筒状体をアノードを含む嫌気性域とすると、カソードに比較して外側のアノードの表面積を大きくすることができるので有利である。さらにアノードの表面積を広くするため、アノードの表面に凹凸や襞をもたせることも可能である。一方、カソード側の内径は、反応効率も関係するが、空気が容易に流通するだけの径があれば良く、閉塞の危険性がほとんどないため、内径を数mm程度またはそれ以下まで小さくすることが可能である。また、図2に示すような筒状形態の発電ユニットを複数個並べて発電装置を構成することもできる。例えば、図3には、図2の発電ユニットを3個並べた形態を示す。
[実施例]
以下、実施例により本発明を詳述するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【実施例1】
【0059】
図3に示す実験用の発電装置を用い、アノード(多孔質グラファイト)表面に塩基性官能基を導入した場合(実施例1)と、導入しなかった場合(対照)の発電性能を比較した。
【0060】
発電装置は、1辺の長さ100mm、厚さ10mmのセルフレーム2枚(25、26)を隣接配置し、セルフレームの両側に同寸のセパレーター24を2枚積層させてセパレーター24を両側面とする積層構造体とした。この積層構造体の内部に、アノード1としてカーボンペーパー(Electrochem社EC-TP1-060)、隔膜2として陽イオン交換膜(DuPont製Nafion)及びカソード3として白金を担持したカーボンペーパーをこの順番に接触配置し、燃料電池において一般的に行われるホットプレス法を用いてアノード1、隔膜2、カソード3の順に接着させ、一方のフレーム24とアノード1との間に嫌性域31を、他方のフレーム24とカソード3との間に好気性域32を形成した。この積層構造体を互い違いに3ユニット積層し、隣接するユニット間のフレーム24は共用させて、実験用の発電装置を構成した。3ユニット間の嫌気性域31、31’、31”には基質液流路27−28を、好気性域32、32’、32”には空気流路29−30を形成した。また、図示していないが、各アノード1及び各カソード3を導線により電気的に直列に接続して、電流量計(電力利用機器)を介して閉回路を形成した。電流量計を含めた外部回路の抵抗は約1Ωであり、内部抵抗は50Ω程度であった。
【0061】
基質液注入口27より、メタノールを主成分とするCOD1000mg/Lの工場廃水(AQS 0.1mmol/L含有、pH6.5〜6.7)を注入し、各嫌気性域31、31’、31”を通過させた後、処理液排出口28より排出するようにした。また、空気注入口29より相対湿度が100%になるよう調整した加湿空気を通気し、各カソード区画32、32’、32”を通過させた後、排出口30より排気するようにした。各好気性域32、32’、32”において発生した余剰のアルカリ性水溶液は、経時的に少量の水を通水して洗い落とし、各嫌気性域31、31’、31”へ注入した。
【0062】
本装置の3つのユニットを合わせた有効容積は、嫌気性域(微生物反応室)、好気性域(空気反応室)ともに108mLであり、滞留時間が、工場廃水は500分間、空気は0.5分間となるように供給速度を調整した。電極の総表面積は、アノード、カソードともに108cm2とした。嫌気性域31、31’、31”には、運転開始前に嫌気性微生物集積培養体を0.5gずつ添加した。
【0063】
運転開始から5日間は、微生物が嫌気性域(微生物反応室)内に付着するのを待つため通液を行わず、Handbook of Microbial Media (Atlasら1997, CRC Press)に記載されているDesulfuromonas培地を嫌気性域(微生物反応室)側に充填して硫黄還元菌の優占化を促した。その後5日間は、工場廃水の滞留時間を2日間として予備運転を行い、予備運転開始の10日後より嫌気性域滞留時間500分間での通常運転にして、40日後までアノード1、カソード3間の電流量及び電圧を測定した。
【0064】
塩基性官能基を有するアノードを以下のように調製した。市販のVulcan XC-72Rカーボン粉末を5%ナフィオン(登録商標)溶液(イソプロパノール溶媒)に混合し、N,N−ジメチルアミノプロピルアミンを添加してボールミル内で90分間混合して、上記カーボン粉末に存在するキノン基とN,N−ジメチルアミノプロピルアミンのアミノ基との間でシッフ塩基結合を形成させた。これを電極基材表面に塗布し、テフロン(登録商標)シートに挟んでホットプレス処理することにより結着させ、実験系アノードとした。実験系アノードの塩基性官能基の密度は15mmol/m2であった。
【0065】
一方、アミノ基を導入していないカーボン粉末を上記と同様に電極基材表面に塗布、結着させ、対照系アノードとした。対照系アノードの塩基性官能基の密度は0.1mmol/m2未満であった。
【0066】
本実施例では、予備実験期間中を含めて、常にカソード・アノード間は電気的に接続した状態とした。試験結果を図4に示す。装置運転開始直後はどちらの系もほとんど電流密度が計測されなかった。開始後2日で電流密度が120mA/m2以上になり、6日後ではおよそ1800mA/m2まで急激に増加し、嫌気性域のpHは6.7(水素イオン濃度:1.0×10-6.7mol/L)となった。8日後には電流密度が2400mA/m2に達した。嫌気性域滞留時間500分間での通常運転が開始された10日後までにpHは6.1になった。その後、嫌気性域のpHは連続通水及びカソードからのアルカリ性水溶液供給によってpH6.3程度を維持した。
【0067】
本発明の塩基性官能基を有するアノードを用いた実験系では、8日後から10日後まで電流密度約2000mA/m2を維持し、10日後以降の定常運転期間中に電流密度はさらに上昇し、20日後以降は6400〜8000mA/m2を維持した。
【0068】
一方、対照系では、pHが6.5以下になった8日後から徐々に電流密度が減少しはじめ、10日後で電流密度が500mA/m2となった。その後の定常運転期間中、電流密度はやや上昇して700〜800mA/m2の範囲内で推移した。
【0069】
以上の結果より、アノードに塩基性官能基を導入することによって、嫌気性域のpHが6.3程度まで低下しても(すなわち、水素イオンの隔膜を介する輸送のために必要な濃度勾配が形成されても)長時間にわたって大きな電流密度が得られることが確認できた。
【実施例2】
【0070】
図3に示す実験用の発電装置を用い、アノード(多孔質グラファイト)表面に電子メディエーターとしてアントラキノン−2,6−ジスルホン酸塩(AQ−2,6−DS)を固定化した後、塩基性官能基を導入した場合(実験系)と、導入しなかった場合(対照系)の発電性能を比較した。
【0071】
発電ユニットの構成及び電極以外の実験条件は、実施例1と同様とした。ただし、注入する有機性排水としては電子メディエーターを含まない食品排水(主たる炭素源:スクロースおよび酢酸ナトリウム、COD1500mg/L、pH6.5〜6.7)を使用した。
【0072】
アントラキノン−2,6−ジスルホン酸(AQ−2,6−DS)の電極基材表面への固定化は以下の通り行った。市販のAQ−2,6−DSをAQ−2,6−DSに対して1/2モルに相当する量のスルホランとオキシ塩化リンとを含むアセトニトリル溶液中70℃条件下で1時間反応させ、スルホン酸基を酸クロリド化した。これを氷冷しながら濾過して氷水で洗浄後乾燥させ、AQ−2,6−DSクロリドの粉末を得た。
【0073】
一方、市販のVulcan XC-72Rカーボン粉末を5%ナフィオン(登録商標)溶液に混合し、N,N−ジメチルアミノプロピルアミンを添加してボールミル内で90分間混合した。この処理により、上記カーボン粉末に存在するキノン基とN,N−ジメチルアミノプロピルアミンのアミノ基との間でシッフ塩基結合を形成させた。これをDMF溶媒中で混合しつつ上述したAQ−2,6−DSクロリドを8.6mmol添加し、トリエチルアミン0.8mLを加えて12時間反応させ、AQ−2,6−DSをスルホンアミド結合によって上記カーボン粉末上に固定化した。これをアノード電極基材表面に塗布し、テフロン(登録商標)シートに挟んでホットプレス処理することにより結着させ、対照系アノードとして使用した。対照系アノードの塩基性官能基の密度は0.1mmol/m2未満であった。
【0074】
上記AQ−2,6−DSクロリド固定化カーボン粉末を、さらにAQ−2,6−DSクロリドに対し1/2モルに相当する量のスルホランとオキシ塩化リンとを含むアセトニトリル溶液中70℃条件下で1時間反応させ、スルホン酸基を酸クロリド化した後、プロパンジアミン50mmolとトリエチルアミン0.25mLとを添加したテトラヒドロフラン250mL中で12時間反応させ、アミド結合によってプロパンジアミンをスルホン酸基に結合させた。これをアノード電極基材表面に塗布し、テフロン(登録商標)シートに挟んでホットプレス処理することにより結着させ、実験系アノードとして使用した。実験系アノードの塩基性官能基の密度は12mmol/m2であった。
【0075】
試験結果を図5に示す。装置運転開始直後はどちらの系もほとんど電流密度が計測されなかった。開始後3日で電流密度が100mA/m2以上になり、6日後ではおよそ1400mA/m2まで急激に増加し、嫌気性域のpHは6.7(水素イオン濃度:1.0×10-6.7mol/L)となった。嫌気性域滞留時間500分間での通常運転が開始された10日後までにpHは6.2になった。その後、嫌気性域のpHは連続通水及びカソードからのアルカリ性水溶液供給によってpH6.4程度を維持した。
【0076】
本発明の塩基性官能基をアノードに導入した実験系では、電流密度は7日後に少し下がったが1000mA/m2よりは高く、その後は再び急激に上昇し、10日後以降の定常運転期間中、1000mA/m2より高い電流密度を示し、15日後以降は3400〜4500mA/m2の電流密度を示した。
【0077】
一方、塩基性官能基をアノードに導入しなかった対照系では、pHが6.5以下になった6日後から徐々に電流密度が減少しはじめ、10日後で電流密度が320mA/m2となった。その後の定常運転期間中、電流密度はやや上昇して400〜800mA/m2の範囲内で推移した。
【0078】
以上の結果より、アノードに塩基性官能基を導入することによって、嫌気性域のpHが6.4程度まで低下しても(すなわち、水素イオンの隔膜を介する輸送のために必要な濃度勾配が形成されても)長時間にわたって大きな電流密度が得られることが確められた。
【実施例3】
【0079】
図3に示す実験用の発電装置を用い、遊離の電子メディエータ−として塩基性の1,5−ジアミノアントラキノン(DAAQ)を使用した場合(実験系)と、酸性の電子メディエータ−の塩であるアントラキノン−2−カルボン酸塩(AQC)を使用した場合(対照系)の発電性能を比較した。
【0080】
発電ユニットの構成及び電極以外の実験条件は、実施例2と同様とした。ただし、実験系では注入水中にDAAQを1mmol/Lとなるように添加し、pHを6.8に調整し、一方、対照系では、注入水中にAQCを1mmol/Lとなるように添加し、pHを同じく6.8に調整した。
【0081】
実験結果を図6に示す。装置運転開始直後はどちらの系もほとんど電流密度が計測されなかったが、開始後4日で電流密度が300mA/m2以上になり、5日後ではおよそ1000mA/m2まで急激に増加し、そのときの嫌気性域のpHは6.7(水素イオン濃度:1.0×10-6.7mol/L)となった。
【0082】
実験系では、その後、電流密度がさらに上昇し、15日後以降は3200〜3500mA/m2の電流密度を示した。この間、pHは約6.7を維持した。
一方、対照系では、pHが6.5以下になった6日後から電流密度が減少しはじめ、9日後で電流密度が335mA/m2となった。その後も電流密度はやや降下して220〜300mA/m2の範囲内で推移した。
【0083】
以上の結果より、本発明の塩基性の電子メディエータ−を使用することによって、嫌気性域のpHを維持し、長時間にわたって大きな電流密度が得られることが確められた。なお、実施例3において得られた電流密度が実施例1において得られた電流密度の半分程度であった原因としては、実施例1においては電極表面をアミノ化処理したカーボンブラック粉末で覆っているため、実施例3における未処理のグラファイト板に比べて比表面積が大きく、活性化過電圧が低下しているためであると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1は、本発明による発電装置に好適に用いることができるカソード付近の拡大図である。
【図2】図2は、本発明による発電装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図3】図3は、実施例1、2、3で用いた実験用発電ユニットの概略構成図である。
【図4】図4は、実施例1で測定されたpH値及び電流密度の経時変化を示すグラフである。
【図5】図5は、実施例2で測定されたpH値及び電流密度の経時変化を示すグラフである。
【図6】図6は、実施例3で測定されたpH値及び電流密度の経時変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0085】
1:アノード
2:隔膜(電解質膜)
3:カソード
4:嫌気性域
5:好気性域
6:導線
24:セパレーター
25:セルフレーム(アノード区画)
26:セルフレーム(カソード区画)
27:基質液注入口
28:処理液排出口
29:空気注入口
30:空気排出口
31、31’、31”:嫌気性域(微生物反応室)
32、32’、32”:好気性域(空気反応室)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
嫌気性条件下で生育可能な微生物、有機性物質を含有する溶液もしくは懸濁液、電子メディエーター及びアノードを含む嫌気性域と、分子状酸素及びカソードを含む好気性域と、該嫌気性域及び該好気性域とを画定する隔膜と、を具備し、該アノード及び該カソードを電力利用機器に電気的に接続して閉回路を形成し、該嫌気性域内での有機性物質を電子供与体とする微生物の酸化反応と該好気性域内での酸素を電子受容体とする還元反応とを利用して発電する発電方法に用いる電子メディエーターであって、塩基性官能基を有することを特徴とする生物発電用電子メディエーター。
【請求項2】
前記塩基性官能基は、第4級アンモニウム基(−NR3+OH-)や第1〜3級アミノ基(−NH2、−NHR、−NR2)及びこれらの誘導体からなる群より選ばれることを特徴とする請求項1に記載の生物発電用電子メディエーター。
【請求項3】
アントラキノン−2−カルボン酸(AQC)、アントラキノン−2−スルホン酸(AQS)、アントラキノンジスルホン酸(AQDS)、2−エチルアントラキノン(EAQ)、2−メチル−1,4−ナフトキノン(MNQ)、2,3−ジメチル−1,4−ナフトキノン(DMNQ)、ラパコール(LpQ)、1,2−ナフトキノン−4−スルホン酸(NQS)、2,3,5−トリメチルベンゾキノン(TMABQ)およびこれらの誘導体からなる群より選ばれる物質に塩基性官能基を導入して得られることを特徴とする請求項1又は2に記載の生物発電用電子メディエーター。
【請求項4】
1−アミノアントラキノン(AAQ)、1,5−ジアミノアントラキノン(DAAQ)、1,5−ジアミノアントラキノン−2−スルホン酸(DAAQS)、1,5−ジアミノアントラキノンジスルホン酸(DAAQ DS)、2−メチル−5−アミノ−1,4−ナフトキノン(MANQ)、2−ブロモ−3−メチル−5−アミノ−1,4−ナフトキノン(BrMANQ)、2,3−ジメチル−5−アミノ−1,4−ナフトキノン(DMANQ)及び2−ヒドロキシ−3−(3−メチル−2−ブテニル)−5−アミノ−1,4−ナフトキノン(ALpQ)からなる群より選択される請求項1に記載の生物発電用電子メディエーター。
【請求項5】
pH7における標準電極電位(E0’)が−0.13V〜−0.28Vの範囲内にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の生物発電用電子メディエーター。
【請求項6】
嫌気性条件下で生育可能な微生物、有機性物質を含有する溶液もしくは懸濁液、電子メディエーター及びアノードを含む嫌気性域と、分子状酸素及びカソードを含む好気性域と、該嫌気性域及び該好気性域とを画定する隔膜と、を具備し、該アノード及び該カソードを電力利用機器に電気的に接続して閉回路を形成し、該嫌気性域内での有機性物質を電子供与体とする微生物の酸化反応と該好気性域内での酸素を電子受容体とする還元反応とを利用して発電する発電方法に用いるアノードであって、電極基材表面に塩基性官能基を有することを特徴とする生物発電用アノード。
【請求項7】
前記塩基性官能基は、第4級アンモニウム基(−NR3+OH-)や第1〜3級アミノ基(−NH2、−NHR、−NR2)及びこれらの誘導体からなる群より選ばれることを特徴とする請求項6に記載の生物発電用アノード。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の生物発電用電子メディエーターを電極基材表面に固定化してなることを特徴とする請求項6又は7に記載の生物発電用アノード。
【請求項9】
前記電極基材表面に存在する塩基性官能基の密度が10mmol/m2以上であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の生物発電用アノード。
【請求項10】
嫌気性条件下で生育可能な微生物、有機性物質を含有する溶液もしくは懸濁液、電子メディエーター及びアノードを含む嫌気性域と、分子状酸素及びカソードを含む好気性域と、該嫌気性域及び該好気性域とを画定する隔膜と、を具備し、該アノード及び該カソードを電力利用機器に電気的に接続して閉回路を形成し、該嫌気性域内での有機性物質を電子供与体とする微生物の酸化反応と該好気性域内での酸素を電子受容体とする還元反応とを利用して発電する発電方法であって、該電子メディエーター又は該アノードが塩基性官能基を有することを特徴とする発電方法。
【請求項11】
前記電子メディエーターとして請求項1〜5のいずれか1項に記載の生物発電用電子メディエーターを用いることを特徴とする請求項10に記載の発電方法。
【請求項12】
前記アノードとして請求項6〜9のいずれか1項に記載の生物発電用アノードを用いることを特徴とする請求項10又は11に記載の発電方法。
【請求項13】
嫌気性条件下で生育可能な微生物、有機性物質を含有する溶液もしくは懸濁液、電子メディエーター及びアノードを含む嫌気性域と、分子状酸素及びカソードを含む好気性域と、該嫌気性域及び該好気性域とを画定する隔膜と、を具備し、該アノード及び該カソードを電力利用機器に電気的に接続して閉回路を形成し、該嫌気性域内での有機性物質を電子供与体とする微生物の酸化反応と該好気性域内での酸素を電子受容体とする還元反応とを利用して発電する発電装置であって、該電子メディエーター又は該アノードが塩基性官能基を有することを特徴とする発電装置。
【請求項14】
前記電子メディエーターとして請求項1〜5のいずれか1項に記載の生物発電用電子メディエーターを含むことを特徴とする請求項13に記載の発電装置。
【請求項15】
前記アノードとして請求項6〜9のいずれか1項に記載の生物発電用アノードを含むことを特徴とする請求項13又は14に記載の発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−331706(P2006−331706A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−150414(P2005−150414)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)