説明

生物系廃棄物を原料にする液状肥料の製造方法及び製造装置

【課題】生物系廃棄物から簡易な手段で効率的に液状肥料を製造する。
【解決手段】塊状又は粒状の生物系廃棄物に非病原性微生物を植菌して発酵処理して生物系廃棄物の表層に発酵分解物を産生する発酵処理工程と、同工程を施した生物系廃棄物に流水を接触せしめて前記表層の発酵分解物を洗浄除去する洗浄工程と、前記洗浄工程で得られた発酵分解物を含有する発酵分解物含有液を液状肥料として取り出す液状肥料取得工程とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物系廃棄物、例えば食品廃棄物(食品加工廃棄物、家庭生ゴミ、野菜クズなど)から有用な植物用肥料を製造する技術を提供するもので、特に食品廃棄物に微生物による発酵技術を施して、有用な植物用肥料を提供する方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
バイオマスは再生可能な資源で、これを有効にリサイクリングすることは、地球環境を保全しつつ人類が生存し続けられる唯一の手段である。
しかし、近年の人類は、再生不可能な化石資源を多用して現代文明を築いてきた。こうした事例の一つとして、近代の農業がある。近代農業では、食料の効率的生産の考えのもとに植物の再生能を無視して、化石資源から製造される化学肥料や化学農薬を多用して再生不可能な技術で食料を生産し、さらに、余剰の食料を生ゴミとして消却や埋め立て処分してきた。
生物系廃棄物(例えば、家庭生ゴミ「以下、生ゴミと呼称する」、食品加工廃棄物、農業廃棄物など)を微生物の機能を利用して部分分解して肥料化する技術は、古くから開発されている。この手法の原型はイギリスのアルバート・ハーワードによりインドール法として確立されたとされている(非特許文献1参照)。
その後、この成果をもとにして改良が加えられ、世界各国で利用されており、我が国でもこの原理に基いて生ゴミを肥料(多くの場合土壌改良剤)とする技術が開発されており、生ゴミ処理機と呼ばれる機器も市販されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】アルバート・ハーワード著「ハーワードの有機農業」:横井利直・江川友治・蜷木翠・松崎敏秀共訳、農山村文化協会発行、1987年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、インドール法を原理として我が国で開発されている生ゴミ処理の手法で製造される発酵生産物の多くは、肥料として利用されるよりも、廃棄物を処理した残渣と見なされて取り扱われおり、肥料として利用することが困難な場合が多く、生物系廃棄物の充分なリサイクルがなされているとは言いがたいのが現状である。
その理由の一つとして、インドール法で肥料(完熟の堆肥)を製造するのには長時間と大きな労力を要することにある。
また、得られる堆肥は固形物であって、施肥するにも少なからず労力を要する。
さらに、従来法では、原料である生物体の含む成分の多くが製造中に流出し、肥料として必要な生物成分の回収が容易でない。
【0005】
本発明者らは、前述の再生不可能な農業を再生可能な農業に転換させる技術を開発することは地球規模で、極めて高い社会的意義をもつものと考えて研究を進めてきた。
そして、生物体の含有する成分(ミネラル、ビタミン、糖質、アミノ酸など窒素化合物)が肥料として極めて重要な成分であることを重視して、生物系廃棄物の成分を効率よく回収する、より有利なリサイクリング法を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を開発するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本願発明は以下の生物系廃棄物を原料にする液状肥料の製造方法及び製造装置である。
(1)塊状又は粒状の生物系廃棄物(バイオマス)に非病原性微生物を植菌して発酵処理して生物系廃棄物の表層に発酵分解物を産生する発酵処理工程と、同工程を施した生物系廃棄物に流水を接触せしめて前記表層の発酵分解物を洗浄除去する洗浄工程と、前記洗浄工程で得られた発酵分解物を含有する発酵分解物含有液を液状肥料として取り出す液状肥料取得工程とからなることを特徴とする生物系廃棄物を原料とする液状肥料の製造方法。
(2)塊状又は粒状の生物系廃棄物(バイオマス)に非病原性微生物を担持した微生物吸着担体を接触させることにより、同生物系廃棄物に非病原性微生物を植菌して発酵処理して生物系廃棄物の表層に発酵分解物を産生する発酵処理工程と、同工程を施した生物系廃棄物に流水を接触せしめて前記表層の発酵分解物を洗浄除去する洗浄工程と、前記洗浄工程で得られた発酵分解物を含有する発酵分解物含有液を液状肥料として取り出す液状肥料取得工程とからなることを特徴とする生物系廃棄物を原料とする液状肥料の製造方法。
(3)発酵処理工程の後の洗浄工程が、所要の発酵分解時間を経て後に行われ、かつ繰り返し反復し多数回にわたって行われることを特徴とする前項(1)又は(2)に記載の生物系廃棄物を原料とする液状肥料の製造方法。
(4)生物系廃棄物が生ゴミであることを特徴とする前項(1)〜(3)のいずれか1項に記載の生物系廃棄物を原料とする液状肥料の製造方法。
(5)生物系廃棄物が食品加工廃棄物、家庭生ゴミ、野菜クズなどの食品廃棄物であることを特徴とする前項(1)〜(3)のいずれか1項に記載の生物系廃棄物を原料とする液状肥料の方法。
(6)生物系廃棄物が単一の特定の植物であることを特徴とする前項(1)〜(3)のいずれか1項に記載の生物系廃棄物を原料とする液状肥料の製造方法。
(7)生物系廃棄物が単一の動物種であることを特徴とする前項(1)〜(3)のいずれか1項に記載の生物系廃棄物を原料とする液状肥料の製造方法。
【0007】
(8)前項(1)〜(7)のいずれか1項に記載の生物系廃棄物を原料とする液状肥料の製造方法で得られた液状肥料。
(9)前項(8)記載の液状肥料を用いて植物を栽培し育成することを特徴とする植物の育成方法。
(10)(a)塊状又は粒状の生物系廃棄物(バイオマス)と非病原性微生物からなる混合物を収容し発酵処理する処理容器と、(b)同処理容器内の発酵処理済みの混合物に流水を接触せしめる流水接触手段と、(c)流水接触手段により得られた発酵分解物含有液を液状肥料として装置外へ導出する液状肥料導出手段とからなることを特徴とする生物系廃棄物を原料にする液状肥料の製造装置。
(11)処理容器中に収容される混合物が、塊状又は粒状の生物系廃棄物(バイオマス)と非病原性微生物を担持した微生物吸着担体とからなるものであることを特徴とする前項(10)記載の生物系廃棄物を原料とする液状肥料の製造装置。
(12)流水接触手段が、発酵処理済みの混合物に散水して行う方式のものであることを特徴とする前項(10)又は(11)に記載の生物系廃棄物を原料とする液状肥料の製造装置。
(13)処理容器が、生物系廃棄物と非病原性微生物の投入口と撹拌手段を備えてなるものであることを特徴とする前項(10)〜(12)のいずれか1項に記載の液状肥料の製造装置。
【発明の効果】
【0008】
本願発明によれば、食品廃棄物等の大量の生物系廃棄物を簡易な方法及び装置によって、有用な液状肥料となして提供することができる。
また、本願発明の液状肥料製造装置を用いることにより、大量の生物系廃棄物をを高速で分解し、例えば原料の生物系廃棄物の50倍(重量比)以上の発酵分解物含有液(Digested Liquid Food)(以下、「DLF」ともいう)を製造できる。
こうして製造されるDLFは、慣行的に肥料として市販されている有機肥料と同等以上の肥料効果を発揮する有用なものとなる。
かくして、本発明によれば、自然界に汚染物質を放出することなく、生物系廃棄物をほぼ完全にリサイクル処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本願発明の実施例にかかる生物系廃棄物を原料とする液状肥料の製造装置の外観斜視図
【図2】同液状肥料の製造装置の一部断面説明図
【図3】本願発明で好適に使用される微生物吸着担体の外観図
【図4】本発明の液状肥料を用いて植物を栽培する植物の育成方法をイチゴ栽培に適用した効果を示す写真
【図5】本発明の液状肥料を用いて植物を栽培する植物の育成方法を小松菜の栽培に適用した効果を示す写真
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る技術は、好ましくは特に食品廃棄物(食品加工廃棄物、家庭生ゴミ、野菜クズなど)を微生物による発酵技術で分解し、得られる発酵分解物に流水を接触(例えば、上方から散水)せしめて溶解・抽出し、発酵分解物含有液を取得する。 そしてその発酵分解物含有液は、有機質の液体t肥料として植物の育成に利用される。
本発明の技術においては、生物系廃棄物中の成分を効率よく回収する手段として、(a)生物体を効率よく分解すること、及び(b)生体を構成する成分を効率よく抽出回収することが重要であり、こうした2つのステップを連続して行えるシステムを構成するlことが好ましい。
【0011】
上記の生物系廃棄物中の生物体を効率的に発酵分解し、生物体の成分を効率的に抽出する手段の一例として、図に示す生物系廃棄物を原料とする液状肥料の製造装置を挙げることができる。
図1は本願発明の実施例にかかる生物系廃棄物を原料とする液状肥料の製造装置の外観斜視図であり、図2は同液状肥料の製造装置の一部断面説明図である。
そして、図3は本願発明で好適に使用される微生物吸着担体の外観図である。
図中、符号の1は液状肥料の製造装置、2は処理容器、3は駆動部、4は回転軸、5は攪拌羽根、6は濾過部、7:散水装置、8は給水口、9は液状肥料収集盤、10は液状肥料排出パイプ、11は生物系廃棄物と非病原性微生物の投入口、12は空気孔、13は操作パネル、20は液状肥料貯蔵槽、21は汲み上げポンプ、22は液状肥料取り出し口、30は微生物吸着担体である。
【0012】
本装置は、ハウジング1の内部に駆動部3によって回転する回転軸4に装着された複数個の攪拌羽根5で構成された攪拌装置とシャワー機能を持つ散水装置7とを備え、生物系廃棄物と非病原性微生物との混合物を攪拌して生物系廃棄物の発酵を促進させる処理容器2を備えている。
そして、この処理容器2には、生物体を強力に分解する活性を持つ微生物を吸着、保持する機能を持つ微生物吸着担体30(例えば、「クラゲール」(商品名:クラレ株式会社製の20μm前後の多数の小孔が中心部まで全通しているポリビニール製のゲル状粒状体」あるいは/及び「バイオスター」(商品名:株式会社シンクピア製のポリプロピレン製の粒状体)を用意、投入し、前記微生物の水洗による流出を可及的に少なくして、発酵分解速度を高めることが好ましい。
また、前記処理容器2の上部に取り付けた撒水装置7の各ノズルから間欠的に撒水し、処理容器2内の生物系廃棄物と微生物の担体を攪拌することで、発酵分解物を抽出・水洗し、処理容器2の底部に設けた濾過部6で洗液を濾過して、処理容器2の下方に配置された、液状肥料収集盤9に滴下させ、前記液状肥料収集盤の端部に接続された液状肥料パイプ10を介して液状肥料製造装置のハウジング1外に設けた液状肥料貯留槽20に収集する。かくして、生物体を殆ど完全に分解して成分を水抽出液として収集することができる。
なお、液状肥料は、液状肥料収集盤9から液状肥料貯留槽20へ自然に流入することが好ましく、したがって液状肥料盤9の底板は液状肥料流出口に向けて傾斜してなり、液状肥料貯留槽20は液状肥料流出口の下方に設けられることとなるので、地下式、あるいは半地下式とすることも考慮されてよく、貯蔵された液状肥料は汲み上げポンプ21を作動して、液状肥料取り出し口22から取り出して使用することであってよい。
そして、ハウジング1には、生物系廃棄物と非病原性微生物とを処理容器2内に投入するための投入口11と微生物に活動に必要な空気を取り込む空気孔12、及び装置の運転・停止、攪拌装置の回転数、間欠散水する散水装置の潜水間隔等を制御する制御パネルが備えられている。
【0013】
図1に示す液状肥料の製造装置の処理容器2内に生ゴミ 50kgを投入し、菌体吸着材として「クラゲール」50kgと5株のバチルス属のバクテリア菌体(細胞数約100億個)を添加し、攪拌しつつ発酵分解させ、発酵途中に30分間隔で約4.2リットルの水道水を上方から散水して、底部にDFLを集める。
なお、生ゴミの組成は、野菜類40%、肉類15%、殻類30%、果物10%、その他5%、重量%からなるものである。
【0014】
本発明で使用する微生物は、生物体を分解する活性を有する微生物であれば、バクテリア、酵母、カビ類を問わない。
また、それらの単独でも混合物でも使用できるので、本発明の実施に特定の微生物を必要としないが、本発明の実施においては、病原性や保存性などを考慮して、主としてナットウ菌(バチルス・サブチリス)及び/又はバチルス属細菌を用いた。
使用した菌株を例示すれば、バチルス・アミノリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens )IFO14141、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)IFO12374、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)IFO3329、バチルス・コアギュランス(Bacills coagulans)IFO12583、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)IFO12195、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)IFO AKU212、バチルス・ナットウ(Bacillus natto)AKU206、バチルス・プミルス(Bacillus pumilis)IFO12087、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)IFO12210、バチルス・サブチルスIFO3134、バチルス・サブチリスTS-132(本発明者らが分離した菌株)、バチルス・サブチリスTS−A(FERM P−18351、本発明者らが分離した菌株)などのバクテリア、酵母では、トリコスポロン・ペニシレータム(Trichosporon penicillatum SNO−3ATCC42397、クリベロマイセス・フラジリス(Kluyveromyces fragilis)IFO0288、エンドマイコプシス・リンドネリ(Endomycopsisi lindnenri)、カンヂダ・クルセイ(Candida krusei)などが挙げられる。
【0015】
また、糸状菌としては、アスペルギルス・アリゼイ(Aspergillus oryzae)IFO0288、アスペルギルス・シロウサミ(Aspergillus usamii mut.shirousamii)IFO6082、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus swamori)IFO4206などが挙げられるが、本発明の実施に使用し得る微生物は、動・植物体など生物体を優位に分解できる活性を持つ微生物あるいは微生物の集合体の形で使用でき、上記の微生物に限定されるものではない。
本発明の実施によって得られる抽出液である発酵分解物含有液(DLF:Digested Liquid Food )は農作物の栽培のための肥料や養液として使用される。
本発明者の一人である坂井拓夫が開発した微生物であるBNA菌(Bacillus subtilis TS−A株、FERM P−18351)を他のバチルス属の菌株と混合して使用している。
これは、本発明の実施が実用的に有利な点ではあるが、必ずしも本発明に必須ではない。
【0016】
本発明では、発酵中に処理容器2内の物質を水洗するので、処理容器2内の微生物が流出して、微生物の数が激減する可能性がある。
そこで、投入物の生物系廃棄物の分解に関与する微生物を順次供給できるように、予め微生物を吸着担体30に固定しておき、微生物の数減少に応じて供給できる方法を研究した。その結果、微生物を吸着担体30に吸着させておけば、微生物吸着担体30と生物系廃棄物投入物の間で一種の平衡を保って微生物吸着担体30から微生物が供給されることを見出した。微生物吸着担体30の使用は、本発明の実施に必ずしも必須ではなく、その使用は本発明の実施を限定するものではないが、微生物の活性を高める目的において有利である。
本発明で使用する微生物吸着担体30としては、多孔質ポリビニール製の「クラゲール」(登録商標:クラレ株式会社製)やポリプロピレン系の高分子発泡多孔質構造体である「バイオスター」(商品名:シンクピアジャパン株式会社)などがある。
これらは、必ずしも必要ではないが、微生物活性を高度に発揮させるためには添加が望ましく、添加量は必ずしも限定されるものではないが、両者ともに、生ゴミなどの投入物1kgに対して0.8〜1.2リットルが適当量である。
【0017】
前記の微生物の中で好ましいのは、バチルス・サブチリスIFO12113、バチルス・サブチリスTS−132(本発明者らが分離した菌株)、バチルス・サブチリスTS−A(FERM P−18351、本発明者らが分離した菌株)、などのバクテリ及びトリコスポロン・ペニシレータムSNO−(ATCC42397)、クリベロマイセス・フラジリスIFO0288、エンドマイコプシス・リンドネリIFO AKU4206、カンヂダ・クルセイIFO0013など酵母がある。
【0018】
本発明に使用する微生物は、常法によって培養して得られる。その培養条件は微生物によって異なるが、それらの微生物の体量が最大になる条件を選んで培養される。汎用される培地には、デンプン、ペプトン、カゼイン加水分解物、酵母エキス、ブドウ糖、あるいは場合によってはリン酸塩、カリウム塩などの無機塩類も適当に添加することができる。また、小麦フスマ、米ヌカ、大豆粉、モミガラなどの栄養源を適当に添加してもよい。培養も、通気液体培養、個体培養など通常の微生物を増殖させるに好都合な条件が選択される。
【0019】
使用される微生物は、通常、微生物吸着担体30である「クラゲール」あるいは/及び「バイオスター」と接触させそれらに吸着させておくのが有利である。
すなわち、当該微生物を培養後液体培地に懸濁し、これに微生物吸着担体30を投入して1〜3日程度室温に静置して微生物吸着担体30に微生物を吸着させて使用する。
【0020】
以下に本発明を実施例に基づいて、より具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0021】
図1に示す処理容器2に表1に示す組成の家庭より排出された生ゴミを10kg投入し、更にバチルス・サブチリスの菌体を吸着させ担持させた5リットルの「バイオスター」を投入して処理を行った。
処理中に30分間隔で5リットルの水道水を上方から撒水し、洗浄液を器外の貯留槽20に集めて貯留し、24時間の処理で約170リットルの発酵分解物含有液:DFL(洗浄水)を得た。
このDLFの成分分析を行ったところ、表2に示す分析値が得られ、肥料として必要な窒素、リン酸、カリウムがすべてバランスよく含有されており、その他アミノ酸、還元糖なども検出された。また、1,000万個/mlの芽胞を形成するバクテリア(バチラス属のバクテリア)が含まれていた。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【実施例2】
【0024】
実施例1と同様な方法で、キャベツ5kg、レタス2kg、コマツナ5kg、ニンジン(予め5cm程度の長さに切断した)2kg、ピーマン2kg、大根の葉(予め5cm程度の長さに切断した)4kg及び馬鈴薯(予め1/2に分割した)5kgと、更に実施例に準じて「クラゲール」及び「バイオスター」(何れもバクテリアを吸着担持したもの)をそれぞれ5リットルずつ処理容器に投入し、実施例1と同様に運転し、30分間隔で10リットルの水道水を撒水し、洗浄液(DFL)を貯留タンクに集めて貯留し、約450リットルのDLFを得た。
こうして得たDLFの成分を分析した結果、表3に示す結果が得られた。
この場合も実施例1の場合と同様に肥料として必要な窒素、リン酸、カリウムをすべてバランス良く含有されており、その他アミノ酸、還元糖なども検出された。
また、1,000万個/mlの芽胞を形成するバクテリア(バチラス属のバクテリア)が含まれていた。
【0025】
【表3】

【実施例3】
【0026】
実施例1で取得したDLFの肥料としての効果を検証するため、イチゴ(品種名:幸香“サチノカ”)育苗(土壌を用いたポットを使用)におけるDLFの効果を市販の有機肥料(多木肥料株式会社製の有機3号)と比較した。
肥料の施用条件は、有機3号の場合は原液を300倍に希釈して用いた。
DLFの場合は10倍に希釈したものを用い、いずれの場合も、苗1本当たり溶液を5mlの割合で4日に一度施用し、生育の状況を観察した。
その結果を図4に示すが、約1ヶ月間、両者の肥料効果に大きな差異は認められず、むしろ苗の伸長ではDLFに良好な結果が得られた。かくして、DLFに優れた肥料としての効果が確認できた。
【実施例4】
【0027】
実施例2で製造したDLFの肥料効果をコマツナのプランター栽培で検証した。
園芸用プランターに約10cmの深さになるように鹿沼土を入れ、その上部に、15gの苦土石灰を混合した畑土を15cmの厚さになるように重層した。
こうしてプランターをA,B2つ準備し、Aには、水で300倍に希釈した多木肥料株式会社製肥料(有機3号)を1平方メートル当たり2リットルの割合で施肥した。
Bのプランターには水で10倍に希釈したDLF(実施例2で製造したもの)を1平方メートル当たり2リットルの割合で施肥した。
この状態で5日間放置した後、再度、同様の施肥処理をした。
さらに、2日放置した後、これにコマツナの種子(カネコ種苗株式会社産)1mlを播種した。
発芽し、2〜3枚の本葉が発生した頃に株間が5cm程度になる様に間引きした。
それまで、4〜5日間隔で1平方メートル当たり2リットルの割合で撒水した。
両プランタともほぼ同時期に本葉が3〜5枚にまで生長した。
この条件下で、コマツナを無作為に収穫し、根の土を洗浄除却して重量を測定した。その結果を表4に示すが、市販有機肥料とDLFの肥料効果に大きな差異はなく、DLFの方が僅かに生育促進の効果が認められた。この結果から、DLFが肥料として機能することが確証できた。
【0028】
【表4】

【実施例5】
【0029】
実施例2の手法で製造した野菜を原料にしたDLFの肥料としての効果を検証した。すなわち、実施例4で示したプランター栽培法に準じて、慣行肥料を施与していない群とDLFを実施例4に準じて施与した群に分けて実験した。
この実証実験では、香草の一種であるコリアンダーの発芽生長に就いて検討した。その結果、図5に見られるように、DLFを施与することによって、生長が促進されることが明らかとなった。
図5で示すように、DLFを施与した場合には、播種2週間後には本葉の発生が認められるが、無施与の場合には生育が遅れ播種2週間のちでも双葉の発生が認められるのみである。このように、野菜類を原料にしたDLFには植物の生長を促進する肥料効果があることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本願発明により、食品廃棄物等の大量の生物系廃棄物を簡易な方法及び装置によって、有用な液状肥料となして低コストで提供することができ、かつ汚染物を自然界に放出することがないので、環境汚染を引き起こさないリサイクル技術として活用できる。
すなわち本発明は、生物系廃棄物を肥料としてリサイクルする新しい手段を提供でき、良好な地球環境の継続的な維持に貢献できるものとなる。
【符号の説明】
【0031】
1:ハウジング
2:処理容器
3:モータ
4:回転軸
5:攪拌羽根
6:濾過部
7:散水装置
8:給水口
9:液状肥料収集盤
10:液状肥料排出パイプ
11:生物系廃棄物と非病原性微生物の投入口
12:空気孔
13:操作パネル
20:液状肥料貯蔵槽
21:汲み上げポンプ
22:液状肥料取り出し口
30:微生物吸着担体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塊状又は粒状の生物系廃棄物(バイオマス)に非病原性微生物を植菌して発酵処理して生物系廃棄物の表層に発酵分解物を産生する発酵処理工程と、同工程を施した生物系廃棄物に流水を接触せしめて前記表層の発酵分解物を洗浄除去する洗浄工程と、前記洗浄工程で得られた発酵分解物を含有する発酵分解物含有液を液状肥料として取り出す液状肥料取得工程とからなることを特徴とする生物系廃棄物を原料とする液状肥料の製造方法。
【請求項2】
塊状又は粒状の生物系廃棄物(バイオマス)に非病原性微生物を担持した微生物吸着担体を接触させることにより、同生物系廃棄物に非病原性微生物を植菌して発酵処理して生物系廃棄物の表層に発酵分解物を産生する発酵処理工程と、同工程を施した生物系廃棄物に流水を接触せしめて前記表層の発酵分解物を洗浄除去する洗浄工程と、前記洗浄工程で得られた発酵分解物を含有する発酵分解物含有液を液状肥料として取り出す液状肥料取得工程とからなることを特徴とする生物系廃棄物を原料とする液状肥料の製造方法。
【請求項3】
発酵処理工程の後の洗浄工程が、所要の発酵分解時間を経て後に行われ、かつ繰り返し反復して多数回にわたって行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の生物系廃棄物を原料とする液状肥料の製造方法。
【請求項4】
生物系廃棄物が生ゴミであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の生物系廃棄物を原料とする液状肥料の製造方法。
【請求項5】
生物系廃棄物が食品加工廃棄物、家庭生ゴミ、野菜クズなどの食品廃棄物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の生物系廃棄物を原料とする液状肥料の製造方法。
【請求項6】
生物系廃棄物が単一の特定の植物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の生物系廃棄物を原料とする液状肥料の製造方法。
【請求項7】
生物系廃棄物が単一の動物種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の生物系廃棄物を原料とする液状肥料の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の生物系廃棄物を原料とする液状肥料の製造方法で得られた液状肥料。
【請求項9】
請求項8記載の液状肥料を用いて植物を栽培し育成することを特徴とする植物の育成方法。
【請求項10】
(a)塊状又は粒状の生物系廃棄物(バイオマス)と非病原性微生物からなる混合物を収容し発酵処理する処理容器と、(b)同処理容器内の発酵処理済みの混合物に流水を接触せしめる流水接触手段と、(c)流水接触手段により得られた発酵分解物含有液を液状肥料として装置外へ導出する液状肥料導出手段とからなることを特徴とする生物系廃棄物を原料にする液状肥料の製造装置。
【請求項11】
処理容器中に収容される混合物が、塊状又は粒状の生物系廃棄物(バイオマス)と非病原性微生物を担持した微生物吸着担体とからなるものであることを特徴とする請求項10記載の生物系廃棄物を原料にする液状肥料の製造装置。
【請求項12】
流水接触手段が、発酵処理済みの混合物に散水して行う方式のものであることを特徴とする請求項10又は11に記載の生物系廃棄物を原料にする液状肥料の製造装置。
【請求項13】
処理容器が、生物系廃棄物と非病原性微生物の投入口と撹拌手段を備えてなるものであることを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の生物系廃棄物を原料にする液状肥料の製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−96957(P2012−96957A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245880(P2010−245880)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(592047478)
【出願人】(510291426)
【出願人】(510291437)
【Fターム(参考)】