説明

生物組織の機能的能力の変化を非破壊的に測定する方法

【課題】もともとの場所の、フラビンおよびニコチンアミドジヌクレオチドなどの、一つ以上の内因性蛍光色素分子の定常状態の蛍光異方性を測定することにより、組織の機能および代謝の状態の非侵襲的な判断のための装置および方法を提供する。
【解決手段】比較的単純な方法である蛍光寿命の測定によって、FADのイソアロキサジン環の回転または振動運動が引用のために活用されることとなり、それゆえ、組織の代謝率および機能の、最初の、安全で、高解像度で、キャリブレーションフリーでの測定を提供するものである。加えて、定常状態の蛍光異方性は、細胞および組織の代謝における随伴変化である、FADやNADHのような内因性の蛍光体における構造または結合の変化、を明らかにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先の出願の相互参照
本出願は、2006年4月13日に出願した米国仮特許出願No.60/744,831に基づく優先権を主張するものであり、該米国仮特許出願の全体は、ここに参照されることによって本出願の一部を構成する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
本発明は、生物組織の機能の非侵襲計測の分野に関する。
【0003】
生物組織の構造的損傷は、常に機能障害を伴う。しかし、逆は必ずしも正しくない。すなわち、非常に多くの病状において、機能障害は、元に戻せない構造的損傷に対し何年も先行することがあり、それゆえ、早期疾患の診断上の指標と、疾患進行の予後指標としての機能を果たしうる。このため、人間の、もともとの位置における組織の機能的画像化に高い注目が集まっている。
【0004】
PETスキャンにより、機能変化の印象的な画像が得られるが、その解像度は粗く、その実施に高い費用がかかる。
【0005】
非侵襲的に、かつ、もともとの位置で、組織の機能状態または代謝率の高解像度の画像を得るためには、光学技術を採用しなければならない。本発明は、その光学技術を提供するものである。
【0006】
体の細胞の機能状態は、確立した呼吸調節のメカニズムを通じ、化学量論的に、組織代謝と関連がある。特に、グルコースやピルビン酸塩などの基板から酸素分子への電子移動の過程において、フラビンアデニンジヌクレオチドFADHのFADへの酸化によりアデノシン三リン酸(ATP)が2分子作り出される一方、ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチドNADHのNADへの酸化により3つのATPが発生する。ATPは、言い換えると、全ての生体細胞内の機能を支える、生体細胞内のパワープロセスに使用される。それゆえ、これら2つのヌクレオチドの変化は細胞機能のモニタのために用いられ、細胞および組織の健康状態の高感度の指標として役立つ。
【0007】
フラビンジヌクレオチドとニコチンアミドジヌクレオチドは、細胞機能とともに変わる蛍光特性およびライフタイムを有し、両方とも、ミトコンドリア内でも組織内の他の細胞内の酵素内でも検出される内因性の蛍光色素分子である。一方または両方の蛍光強度、または、これらの分子の蛍光強度比の事前測定が、チャンスらによる研究の場における代謝の調査のための研究調査に偶然使用されていた。しかしながら、このようなアプローチでは、臨床設定まで拡張することに成功していない。その理由は、100%窒素の状態で動物に吸気させることで、分圧0mmHgの均一の酸素へ細胞をもたらすことによりそのシステムのキャリブレーションをすることが要求されるからである。このことは、不可逆である細胞の死をひき起こすことなく、人で実施することができないことは明らかである。
【0008】
蛍光強度計をキャリブレーションする必要があるのは、励起光への露出の間に蛍光色素分子の光退色が起こるからである。さらに、蛍光強度は、代謝とは無関係の他の要素、たとえば、励起吸収および細胞間に入った放出光により影響を受ける。このような欠陥を克服するために、NADHとFADからの発光率を取得しようとする者もいたが、これらの分子の光退色率が異なるため、臨床的に利用できるツールの妨げとなり、結果は満足できるものではなかった。
【0009】
理論上は、蛍光強度の測定に伴う問題は、蛍光寿命を測定することで克服できる。すなわち、蛍光放射の減衰定数は、パルス励起に従う。しかしながら、興味のある蛍光寿命はフェムト秒のレーザパルスを要求するであろう。光子計数光電子増倍管を使用したとしても、そのような技術は、十分な信号雑音比を得るために、細胞を破壊する励起エネルギを要求するであろう。
【0010】
米国特許No.5,626,134には、そこに開示されていることはここで参照することにより本明細書に組み込まれているが、蛍光異方性の測定に基づいた、いままでにない蛍光寿命の定常状態測定手順が記載されている。開示されている一般的な手順は、体内と体外への両方の適用において、蛍光寿命の時間分解測定の欠陥を克服している。
【0011】
本発明は、体内細胞内のフラビンとニコチンアミドジヌクレオチドの定常状態の蛍光異方性の非侵襲計測に用いることができる修正技術を提供する。以下に詳細を示すように、本発明は、細胞の機能および代謝状態、病状に伴う機能および代謝の変化、を明らかにするために定常状態の蛍光異方性の測定を用いる。さらに、唯一重要なことは、これら内部に生じるヌクレオチドの代謝的に生じた変化、すなわち、機能および代謝の変化、構造変化、体内細胞内の代謝および機能する間にも起こるこれらヌクレオチドの非束縛から束縛への変化、の間に起こる蛍光寿命の変化、の多くの様相を明らかにするために定常状態の蛍光異方性が本発明に用いられるということである。
【0012】
本発明においては、定常状態の蛍光異方性の測定は、非侵襲計測により、もともとの位置の健康および病気である体内細胞の機能および代謝の状態を調べるためのより網羅的で広範囲の手順である。それゆえ、方法および装置は、最初の、安全で、高感度で、キャリブレーションフリーである、2−および3−次元空間の細胞の代謝率および機能状態の非侵襲計測のための学的手法を提供する。
【0013】
理想的には、代謝の変化を撮像することで機能を明らかにする非侵襲的な光学的アプローチは、呼吸調節により与えられる機能と代謝との科学量論的関係に基づき、機能に対しトレース可能な信号をもたらす。酸化還元蛍光定量法は、この基準を満足するひとつの確立したアプローチである。この理由は、還元型ピリジンヌクレオチドおよび酸化フラビンタンパク質の内部蛍光を用いる酸化還元蛍光定量法が、細胞エネルギの代謝にアクセスするために長く使われていたということである。しかしながら、そのような強度に基づいた方法は、光退色、内部フィルタ効果、他の内因性蛍光色素分子のバックグラウンド自己蛍光からの、これら代謝と関連する蛍光色素分子から孤立した貢献に伴う困難性、のため、厳しく制限される。内部フィルタ効果は全ての細胞で現れる。たとえ、蛍光寿命の測定が、ある程度、強度に基づいた測定の制限を克服できたとしても、そのような測定だけで収集した情報は限られており、極端に早い寿命を測定するために、壊れやすい細胞を傷つけうる高いエネルギのレーザパルスの使用を要求する。
【0014】
本発明は、機能に欠くことのできない代謝の定量的結合を保つ一方、強度または寿命に基づく画像の欠陥を克服する、定常状態のフラビンタンパク質の蛍光異方性の画像化(メタボリック マッピング)方法を含む。等方性回転拡散をしたはっきり見える分子種の定常状態の蛍光異方性(A)は、下記式のように、励起状態寿命τと回転相関時間φと関連する。
【0015】
【数1】

【0016】
ここで、Aは制限値(回転がない場合)であり、吸収および放出の遷移双極子モーメントの相対配向によって与えられる。σはτ/φ比である。
【0017】
この式から、蛍光異方性は、配向分布および励起状態寿命の変化を高精度に明らかにする能力のパラメータであることがわかる。そのような、機能により誘発される代謝の変化は、拡散運動、複合体形成、ヘテロ−またはホモ−エネルギ伝達により明らかにされる分子の接近に対する制限から起こりうる。さらに、蛍光異方性および寿命は、それらを計算するために使用する強い信号と異なり、固有のパラメータであり、それゆえ、光の進路と形状に対する感度が低い。測定を、一つの固有の蛍光色素分子に限定したときは、光退色の効果もまた除かれる。これら長所の全ては、もともとの場所の同じ組織、または、異なる生物組織の信頼性のある経時的比較を行う機能に貢献する。
【0018】
蛍光異方性は、蛍光色素分子の濃度に対し独立であるため、蛍光強度に基づいた画像または構造技術とは異なり、その感度は、調査する組織の厚さに対し独立である。特に重要なのは、人の生物組織の細胞の生体エネルギを調査するのに使用することができる、本発明の方法が有する広い安全マージンと、異方性の値をフィルタすることで他の内因性の蛍光色素分子からの寄与を除く機会を提供するバンドパスおよびノッチフィルタの機能である。
【0019】
フラビンタンパク質(FP)の蛍光発光はより長波長、低エネルギの光で励起することができ、ピリジンヌクレオチド(NADHまたはNADPH)よりも光退色に対する高い耐性を有し、ほとんど単独でミトコンドリアと結びつく(Koke et al,”Sensitivity of flavoprotein fluorescence to oxidative state in single isolated heart cells”,Cytobios(1981),vol. 32,p.139−145; Scholz et al,”Flavin and pyridine nucleotide oxidation−reduction changes in perfused rat liver”, J.Biol. Chem.(1969), vol.224, p.2317−2324)。FPの定常状態蛍光異方性に限定した測定することにより、高エネルギのパルスで組織が損傷する危険性を、励起状態寿命に関係する長さの期間の間分配する低エネルギの光を使用することで取り除く。フラビン共同因子から与えられた多くの酵素のうち、リポアミドデヒドロゲナーゼ(LipDH)が、電子伝達フラビンタンパク質(ETF)からのより小さい貢献による蛍光シグナルを支配することは、従来から示されている。ETFのレドックス状態がミトコンドリア内のNAD+/NADH比によって間接的に影響されている一方で、そのFAD共同因子がミトコンドリアのNAD+/NADHプールと直接的に平衡しているため、LipDHは、細胞の代謝および機能の直接のプローブの役目をする。
【0020】
さらにまた、注意すべきは、時間分解蛍光異方性の測定には、組織をほとんど破壊するであろう超高速のレーザパルスが必要だということである。このため、定常状態の蛍光異方性の測定が、最新の発明に使用されている。さらに、フラビンジヌクレオチドの蛍光異方性の測定は、好適な実施形態である。なぜなら、より長い励起波長およびかくしてより低い励起エネルギを用いることができ、それゆえ、人の目内のもともとの場所の網膜の機能状態の非侵襲的な画像化のような壊れやすい組織におけるその使用の安全性を保証しているからである。
【0021】
たとえ、ここで開示する手順が、フラビンおよびニコチンアミドジヌクレオチドの蛍光異方性、すなわち、組織の代謝および機能の状態、の非侵襲的な測定に向かっているとしても、定常状態蛍光異方性が病気の経過によって影響されうる全ての内因性の蛍光色素分子に適用されうる一般的な手順だということは、当業者にとって明らかであろう。
【0022】
本発明はまた、上述した非侵襲的な方法であって、組織の定常状態蛍光異方性を、初めに安静状態で、続いて、刺激を受けた状態で測定することによって、感度を拡張した方法をも含む。
【0023】
定常状態の蛍光異方性マップは、2−または3−次元のスペースにおけるこれらの二つの状態において取得し、そして、安静状態の異方性マップは、刺激を受けた状態で得られたものから、ポイントごとに差し引かれる。得られた蛍光異方性マップは、それゆえに、刺激を受けた状態に対応した組織の性質を明らかにする。このように、手順は病状の検知および予後診断のための明確な用途を有し、そこでは、刺激を受けた状態への変化の大きさは低減され、機能および代謝の損失の空間的場所を特定することができる。
【発明の概要】
【0024】
発明の概要
本発明は、もともとの場所の、フラビンおよびニコチンアミドジヌクレオチドなどの、一つ以上の内因性蛍光色素分子の定常状態の蛍光異方性を測定することにより、組織の機能および代謝の状態の非侵襲的な判断のための装置および方法を提供する。本発明を用いることにより、比較的単純な方法である蛍光寿命の測定によって、FADのイソアロキサジン環の回転または振動運動が引用のために活用されることとなり、それゆえ、組織の代謝率および機能の、最初の、安全で、高解像度で、キャリブレーションフリーでの測定を提供するものである。加えて、定常状態の蛍光異方性は、細胞および組織の代謝における随伴変化である、FADやNADHのような内因性の蛍光体における構造または結合の変化、を明らかにすることができる。
【0025】
体の組織の機能および代謝の状態の非侵襲計測は、連続的な偏光された励起光で組織を照射すること、定常状態の蛍光異方性を計算するのに十分な情報を提供する方法で内因性の蛍光体から放射された蛍光の偏光特性を特徴づけること、および、組織の代謝および組織の機能活動を表すために計算した蛍光異方性の値を使用すること、により達成することができる。
【0026】
蛍光異方性は、空間の複数のポイントにおいて測定することができ、これにより、組織の機能および代謝の状態の地形学的な測定を提供する。同様に、光学的連続的分割技術が、組織内の様々な深さにおける組織の機能および代謝の状態の空間的マップを提供するために、非侵襲的に使用しうる。その結果、本発明は、空間、時間、深さにおける、体の組織の機能および代謝の状態の非侵襲計測のための、高感度で、キャリブレーションフリーで、高解像度である方法を提供する。
【0027】
本発明は、また、特定の内因性の蛍光体のための定常状態の蛍光異方性の測定を切り離すために蛍光異方性の値の範囲をフィルタリングする新しい方法をも含む。
【0028】
本発明は、また、定常状態の蛍光異方性を、三次元空間で、断層映像的に測定する装置および方法をも含み、その装置は、共焦点スキャニングシステムと接続される。
【0029】
本発明は、また、病気検出における上記方法の感度を拡張する方法をも含む。安静状態にある定常状態の蛍光異方性を最初に測定し、次に、空間の複数のポイントにおいて、刺激を受けた状態で同じ測定をし、刺激を受けた状態における測定から安静状態の測定を差し引くことにより、刺激を与えたときへの変化量の病気が導入されたことによる減少を検知することができ、また、二次元および三次元空間で、このような病気が導入された障害の場所を突き止めることができる。
【0030】
本発明は、それゆえ、フラビンアデニンおよびニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの定常状態の蛍光異方性を測定することにより、もともとの場所で、生物組織の代謝および機能の状態を非侵襲計測するための装置および方法を提供する最初のものを有する。
【0031】
本発明は、二次元空間および断層映像的な三次元空間の、もともとの場所における、組織分布的な生物組織の代謝および機能の状態の非侵襲計測のための装置および方法を提供するものも、さらに有する。
【0032】
本発明は、組織の機能および代謝の状態に関する病気の効果を測定することにより、病気の非侵襲的な早期検出を可能とするものも、さらに有する。
【0033】
本発明は、同じ患者の組織の機能および代謝の経時的変化と、患者の代謝プロファイルの変化と臨床試験で確かめられた病気進行の標準データベースとの比較と、から病気の進行の予後を可能とするものも、さらに有する。
【0034】
本発明は、そのような不可逆的な構造的損傷に先行する機能および代謝の変化を測定することで、不可逆的な構造的損傷に先立って病気を検出することを可能とするものも、さらに有する。
【0035】
本発明は、組織の代謝および機能の状態に関する治療装置の効果を非侵襲的かつ非破壊的にモニタすることにより、病気を改善する方向に誘導される治療装置を誘導するものも、さらに有する。
【0036】
本発明は、病気が導入された組織の機能の障害の明確な場所を測定するものも、さらに有するのであって、該測定は、安静状態および刺激を受けた状態にあるそのような組織を測定することにより、また、二次元または三次元空間におけるいくつかのポイントにおけるそのような測定を正確に比較することにより行う。
【0037】
当業者である読者は、次の、図面の簡単な説明、発明の詳細な説明、添付された請求の範囲を読むことで、本発明の他の目的および特長を認識することができるであろう。
【0038】
図面の簡単な説明
図1は、本発明に係る、組織の機能および代謝を測定するために使用する画像装置の概略図を示す。
【0039】
図2は、組織の三次元マップを得るために、本発明に基づき作製された画像装置の概略図を示す。
【0040】
図3A−3Fは、蛍光異方性の測定によって、動物の目の組織の状態の変化を検出するための本発明の使用法を図示した図を示す。ここで、図3Aは、異なる状態における蛍光異方性の変化量を示す周波数ヒストグラムを示す。図3Bおよび3Cは、異なる状態における動物の目の蛍光異方性の値のグレースケールマップを示す。図3Dは、動物の処理された目および処理されていない目の赤外線走査を示す。図3Eおよび3Fは、動物の目の状態を描写した血管撮影図を示す。
【0041】
図4A−4Fは、糖尿病性網膜症を検出するための本発明の使用法を図示した図を示す。ここで、図4A−4Dは、様々な状態における蛍光異方性の変化を示す周波数ヒストグラムを示す。図4Eは、グラフの要約および結果を示し、図4Fは、関心領域を示す網膜の走査を示す。
【0042】
図5A−5Hは、安静状態と刺激を受けた状態の蛍光異方性のマップを比較することで組織の機能を分析するための本発明の使用法を示す。ここで、図5A−5Cは、安静状態と刺激を受けた状態の網膜の一部を示しており、二つの状態の比較を示している。図5Dは関心領域の走査を、図5E−5Hは結果を解析したグラフを示す。
【0043】
図6A−6Gは、本発明の緑内障の検出への使用法を示す。ここで、図6A−6Bは緑内障でない患者の蛍光異方性の値のグレースケールのマップを示し、図6Cは様々な患者の異方性の値のグラフを示し、図6D−6Eは緑内障である患者および緑内障でない患者の蛍光異方性の値を示す図を示し、図6F−6Gは従来の診断技術を使用した同じ患者の対応結果の図を示す。
【0044】
図7A−7Fは本発明の高眼圧症の検出への使用法を示す。ここで、図7Aおよび7Dは様々な状態の蛍光異方性の周波数ヒストグラムを示し、図7B、7C、7E、および、7Fは様々な状態における目を示すX線断層撮影を示す。
【0045】
図8Aおよび8Bは本発明の糖尿病性網膜症の治療の有効性の評価への使用法を示す。ここで、図8Aは治療および未治療を示す網膜領域の蛍光異方性の二次元マップを示し、図8Bは図8Aに描かれた線に沿って測定した蛍光異方性の値を示す。
【0046】
図9は本発明により人の網膜を測定することで生じさせた蛍光異方性の値を示すグラフであり、図は対象が純酸素を吸入する間になされた測定に基づく曲線および対象が純空気を吸入する間になされた測定に基づく曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
発明の詳細な説明
図1は、組織の画像における非侵襲的な組織の機能および代謝の組織分布的な二次元マッピングのために設計された装置10の概略図を示す。試料12は、光を照射されると蛍光を発する蛍光体と呼ばれる一以上の物質を包含する一以上の生物組織を含む。
【0048】
試料12はタングステン光源16を利用した光ファイバを用いた照明装置14により非偏光の可視光で照射される。キセノンアークランプ18の放射エネルギはコレクタレンズ20で集約され、シャッタ22の通過を選択的に許可される。光は、次に、グラン−トンプソン偏光子24(イーリング株式会社で得られる)を通過する。
【0049】
光は、励起フィルタ26でスペクトル的に整形され、次に、ダイクロイックミラ28(オメガ オプティカルから得られる)により反射される。ダイクロイックミラ28は対物レンズ30を通して、励起波長を画像化された組織に向けて反射させ、組織内の蛍光体に蛍光を発生させる。
【0050】
励起した組織12から放射されたルミネセンスは対物レンズ30で集約され、ダイクロイックミラ28およびエミッションフィルタ32を通過する。エミッションフィルタ32は、放射波長を、放射された蛍光を励起偏光平面に対し平行36および垂直38の直線偏光された要素に分離するウォラストンプリズム偏光子34へ通過させる。平行および垂直のベクトル要素36、38は、それぞれ同時に、二つのビデオカメラ40Aおよび40B(たとえば、Xybion model 250)のCCD(charge coupled devices)チップによって検出される。
【0051】
低速走査の冷却CCDカメラ、SITまたはISITチューブカメラ(tube cameras)、もしくは、光ダイオードアレイ(図示せず)、といった十分な空間的解像度を有する代替的な光学検出器もまた、放射された蛍光の平行および垂直の要素への二次元分離の検出に適するであろう。
【0052】
二つのビデオカメラの出力は、二つのディジタル化ボード42Aおよび42B(Imaging Technologiesによって販売されるもの、または、Data Translationによる指定モデル DT3851のようなもの)によって、マイクロコンピュータ44(たとえば、IBMまたは同等のコンピュータで、望ましくは、33または66MHzで動作するプロセッシングチップを有するもの)内でディジタル化される。このようなデバイスは、タスクおよびモニタ46への画像表示に先立って行う後続の画像処理にとって十分なものである。
【0053】
図2は、組織の代謝および機能の断層撮影の(三次元の)マッピングのために設計された、本発明に係る装置の概略図を示すものである。一つのチューナブルなアルゴンレーザからの光(たとえば、Melles Griot 部品番号35 LAP 321−240)および二つのダイオードレーザ(たとえば、Melles Griot 部品番号56 ICS 008−HS)は、図2にSMPPFとして示された、三又のシングルモード偏光フィルタ(Ealing株式会社によりカタログ番号34−5223指定のもとで販売されているようなもの)により、共焦点デバイスに光を投入する。
【0054】
励起または画像波長は、適切なレーザをコンピュータ制御による選択により選択され、アルゴンレーザの場合はレーザをチューニングすることによりおよびコンピュータによる選択可能な狭いバンドパスフィルタを付加的に使用することにより選択される。アルゴンレーザは、FADからの蛍光異方性の測定のために488nmにおける励起が可能であるだけでなく、反射モードの組織を観察するために514nmにおける励起も可能である。ダイオードレーザは、反射モードの730nmまたは830nmにおける組織の観察を可能とする。他の波長で光を放射する他の光源も本実施形態で使用しうる。
【0055】
小径ファイバー(<150μm)はレンズシステム(L1およびL2)により平行とされる点光源として役立つ。平行光は、直線偏光子P1(Meadowlark Opticsから入手できるであろう、部品番号C001298)を通過し、次に、特注生産されるLCDねじれネマチックスイッチ(Meadowlark Optics 部品番号C001700のようなもの)を通過する。ねじれネマチックスイッチは、入射する平行光の偏光面をおよそ20msecの立ち上がり時間で90°回転させることによる高速回転を可能とする。偏光の直交面のいずれかにおける直線偏光は表面鏡で反射され、平行偏光は、走査システムとして役立つ二つのサーボコントロールドミラVSMおよびHSMに入射するため図2においてDCMで示された(ChromaまたはOmega Opticsから得られるようなもの)ダイクロイックミラを通過する。
【0056】
ミラVSMおよびHSMの動作により、組織の試料を、垂直および平行方向にそれぞれラスタ様式に走査することで組織の二次元走査を実施する。
【0057】
蛍光励起または反射モードにおける画像化のいずれかのための光は、三つの波長のいずれであっても、第一の要素である対物レンズL3、次に、第二の要素であって外部シェルに収容する対物レンズL4を通過する。蛍光放射または組織から反射した光は、対物レンズL4およびL3を通じて戻り、ミラVSMおよびHSMによってダイクロイックミラDCM上へ走査される。ダイクロイックミラDCMは500nmより大きい波長の光を反射し、その光は、順に、5オーダーの大きさにより(O.D.>5 from 300−500nm)500nmより大きい光を透過させ500nmより小さい光を阻止するロングパス干渉フィルタ(Chroma 部品番号HQ5101pのようなもの)を通過する。
【0058】
波長が500nmより大きい光は、L5によるピンホール上へ画像化され、次に、P1の偏光面に対して平行に設定した偏光面を有する直線偏光子P2(Meadowlark Optics、部品番号C001298であってもよい)を通過する。P2を通過する光は、図2で「検出器」として示した、特注品である高感度の光電子倍増管モジュール(Hamamatsu 部品番号H9656−20MOD W/2.5 MHz AMPのようなもの)の検出器の表面に落ちる。光電子倍増管モジュールの出力はディジタル化され、512x512画素のビットマップ画像がランダムアクセスメモリ(RAM)に保存され、ディスクに格納される。アバランシェフォトダイオードのような他の検出器で光電子倍増管を置き換えてもよい。走査の解像度は、他の走査システムおよびサーボコントローラを選択することにより望ましい解像度に調整することができる。
【0059】
蛍光異方性の画像のために、ねじれネマチックスイッチによる偏光平面の回転はフルフレーム収集スピードと同期させ、これにより、偏光の直交面における組織を継続的に励起する。ここに示した本実施形態においては、フルフレームの走査時間は28msecである。ねじれネマチックを作動させることで、蛍光放射はP2の偏光面に対し平行および垂直のベクトル成分に分解され、かくして、次の式により、蛍光異方性の計算に用いるベクトル成分IおよびIが与えられる。
【0060】
【数2】

【0061】
ここで、Gは、平行および垂直面における伝送効率を補正するために用いる経験上の補正率である。
【0062】
システムは、自動化され、6〜25Hzの範囲の速度で平行および垂直面における連続した蛍光放射画像を得るために同期がとられる。直交偏光面に対応した望ましい数のフレームを得て、ショットノイズを除去するために平均化することができる。そして、目のようなもののように動く組織の場合の画像は、並進および回転のためのソフトウェアにより位置合わせすることができる。
【0063】
組織は、位置が固定された内部アセンブリとともに外部シェルを動かすことで焦点が合わされる。共焦点代謝マッパの内部アセンブリ全体は、描写にともなうx方向への並進のために動力化され、内部アセンブリはステッピングモニタにより選択可能な不連続のステップで動かすことができる。
【0064】
ステッピングモニタによりピンホールの大きさおよび内部アセンブリの変位の大きさを適切に選択することにより、蛍光異方性および反射画像の両方のために、組織の深さ内で望ましい解像度において組織を区分することを行う。この方法においては、三次元空間における断層撮影による蛍光異方性マップを得ることができる。同様に、NADHのような他の内因性蛍光体の蛍光異方性マッピングのために、DCMの他のペアおよびブロッキングフィルタをコンピュータで動作するリニアソレノイドで置換することができる。
【0065】
被検査組織の代謝および機能の変化に対し適切な感度を有するシステムを実現するために、定常状態の異方性をそのような情報を提供する適切な蛍光体、たとえばFAD、に制限することが必要になる。言い換えれば、全ての組織は与えられた励起波長で蛍光を発する内因性物質を含んでおり、組織内の複数の蛍光体から発生した全体のバックグラウンド蛍光から代謝に関連する蛍光体から情報を抽出することが必要になる。
【0066】
原理的には、スペクトル的に成形した励起および発光フィルタにより興味ある蛍光体から情報を抽出することができる。しかしながら、この手順はこの重要な課題を達成するのに十分であることはめったにない。したがって、以下に示すように、本発明は、蛍光放射から計算した定常状態の蛍光異方性の値の範囲を扱う新しいアプローチを提供する。
【0067】
与えられた蛍光体に対し、蛍光異方性を分離する方法を発展させるために、図1に示す光学装置を用いて組織を画像化することができる。ここで、平行および垂直ベクトル成分を検出するCCD検出器が全視野を平均する光ファイバが結合した高感度回折格子分光計(たとえば、Ocean Optics、部品番号USB4000−VIS−NIR)により置換される。このように、組織から生じる蛍光異方性は、波長の関数として決定することができる。上で与えられた式を使うと(および、前記米国特許No.5,626,134)、励起光の蛍光面に対し平行および垂直の蛍光放射のベクトル成分から蛍光異方性を計算することができ、放射波長の関数として蛍光異方性を表すためのソフトウェアを作成することができる。
【0068】
投射した励起光の適切なスペクトル形成およびバンドパスフィルタリング、すなわち、収集された異方性の値の範囲を制限することにより、放射異方性スペクトルを、FADやNADHといった既知の蛍光体の蛍光放射スペクトルの公表値とぴったり合致するよう強制することができる。同様の手順は、その蛍光異方性の変化が他の病状と関連する他の内因性蛍光体からの寄与を切り離すことに適用することができる。そのような手順による結果は、以下述べる図9において要約される。
【0069】
FADのみに基づく定常状態の蛍光異方性を切り離す上述の手順の実力を試験するために、人の網膜を、488nmの励起光、および、波長の関数として決定した放射された蛍光のベクトル成分から計算した蛍光異方性により画像化した。測定は、大気または100%酸素のいずれかを吸気する対象に対し行った。蛍光異方性の値は、蛍光異方性が、文献で見つけることができるようなFADの蛍光放射スペクトルにぴったり合致する波長の関数としてプロットされるまで、バンドパスフィルタでフィルタリングした。大気と比較して、対象が酸素を吸入しているときに蛍光異方性の大きさが変化するので、大気および100%酸素の状態において得られた結果を標準化することにより、この新しい手順の効果を試験することができる。もし、本発明の手順が効果的であれば、次に、標準化のときに二つのグラフを重ねるべきである。実行により何が得られたかが明確である。図9は、二つの状態の測定を示す曲線のグラフを示す。
【0070】
要約すれば、本発明は、フィルタパラメータを最適に調整することにより、異方性のグラフを既知の蛍光体のグラフと適合させることを可能とする。そのような調整は、望ましくは、といっても必ずしもそうである必要もないが、完全にソフトウェアでなされる。次に、本発明によって作られた装置は、前もって決めたパラメータで、未知の試料に対して実施され、そして、確信をもって、得られた結果が関心のある特定の物質に基づいていたことを知ることとなるであろう。
【0071】
すなわち、上述した例において、関心のある蛍光体はFADであり、パラメータを選択して異方性のグラフをFADの既知のグラフと合致させることとなり、これは、システムが、試料内の全ての蛍光体からの寄与からFADからの寄与を分離させたことを意味する。装置の次の操作は、未知の試料において、試料内の他の蛍光体ではなくFADの効果のみに基づく結果を出す。かくして、本発明は、試料が複数の蛍光体を含む場合であっても、また、他の蛍光体からの寄与が関心のある蛍光体の効果を覆い隠す場合であっても、特定の蛍光体からの蛍光異方性を検出する信頼度の高い方法を提供する。
【0072】
さらに、一般的な手法の新しい改良は、望ましい実施形態に対し、非侵襲的検出の感度を増加させ、病気が導入されたことによる組織内の機能および代謝能の減少を突き止めることを可能とする。これは、次の例において、人のもともとの場所の網膜で達成することができる。ここでは、網膜は最初に、図2のレーザ3により供給され、網膜が反応しない830nmの光で位置確認のために画像化され、次に、飽和光に対する網膜の代謝反応の反応時間以内でよく下がる100msec以内で網膜の定常状態の代謝マップを得る。この手順は、暗所における安静状態における定常状態の蛍光異方性マップを提供する。次に、網膜は、点滅速度が6−13Hzの範囲で、アルゴンレーザであるレーザ1で供給される点滅する青(488nm)または緑(514nm)の光が20−30秒連続した830nmで画像化され、点滅中に蛍光異方性画像が得られる。それによって、光の測定、網膜を刺激した状態とする。光の刺激に反応する網膜の機能的能力の二次元または三次元のマップを生じさせるために、暗所および明所の蛍光異方性マップを位置合わせし、画素から画素を差し引くことができる。加えて、光の刺激の空間的、スペクトル的、または、時間的構成の異なる型を選択することにより、網膜内の異なる細胞層および型に対し機能および代謝を切り離すことができる。
【0073】
望ましい実施形態は、網膜の場合においては光の刺激を採用するが、同様の望ましい実施形態は、検査組織に適切な別の刺激モードを選択することにより、別の体の組織に適用することができることは明白である。
【0074】
図3A−3Fは、組織の代謝の変化を検出するための本発明の使用法を示す。これらの図に示す実験においては、猿の一つの目に広い静脈のレーザ励起された閉塞により軽い損傷を受けさせた。後者の状態は、広く網膜分枝静脈閉塞症(BRVO)として技術的に理解されている。図3A−3Fは、この損傷を検出する本発明の能力を示す。
【0075】
図3A−3Fに示された実験においては、斑点の蛍光異方性を次の三つの状態において計測した。第一に、損傷を受けた目の斑点の蛍光異方性を、斑点を中心に20°を超える視野で、動物が純酸素を吸入している間に測定した。第二に、損傷を受けていない(「反対側の」)目の斑点の蛍光異方性を、同様に動物が純酸素を吸入している間に測定した。第三に、損傷を受けていない目の斑点の蛍光異方性を、動物が大気を吸入している間に測定した。図3Aに示すように、これらの状態である三つの全ては、明確なグラフをもたらした。
【0076】
通常の、未処置の目は、動物が純酸素を吸入したときは、大気を吸入したときと比較して蛍光異方性が増加した値を示す。また、損傷した目は、動物が純酸素を吸入したときは、動物が大気を吸入したときの未処置の目と比較して明確に低い蛍光異方性の値を提供する。全ての比較は、同じ動物で行った。
【0077】
それゆえ、図3Aは、動物が酸素を吸入するときに組織の代謝が増大し、静脈閉塞が導入されることで組織に流れる血液が減少することにより低下する限り、微妙な代謝の変化を検出する本発明の使用法を示す。この導入された損傷は、従来の方法を使用しても検出することができなかった。
【0078】
図3Bは、動物が純酸素を吸入している間の、損傷を受けた目の蛍光異方性の値の、20°の視野を超えるグレースケールの空間マップを示す。暗い領域は高い値に対応し、明るい領域は低い値に対応する。図3Cは、同様に動物が純酸素を吸入している間の、損傷していない目に関する同様のマップを示す。図3Bに示す蛍光異方性の値が、図3Cと比較して全20°の視野に渡って低下しており、斑点において最も顕著な低下を示すことに注意する。逆に、図3Cは、図2Bと比較して、全視野に渡って異方性の値が増加しており、斑点において最も顕著な増加が起こっていることを示す。
【0079】
図3Dは、損傷および未損傷の動物の目の近赤外走査を比較して示す。図3Eは、レーザ励起による静脈分枝閉塞症の場所を示す蛍光眼底血管造影図を示す。図3Fは、斑点を中央にした、損傷した目の蛍光眼底血管造影図であり、斑点に侵入する血管のねじれを示す。
【0080】
図3Aにおいて、人の操作、または、プログラム制御のコンピュータにより比較を自動化かつ実施することにより視覚的な曲線の比較が可能である。これに関連し、このような比較を行うための手段として図2に示すコンピュータを考慮すべきである。
【0081】
グレースケールの代謝マップにおいて、暗い領域は高い値に対応し、明るい領域は低い値に対応する。蛍光異方性のグレースケールと量的値の関係は図内の画像を線形的に同程度増大させる。この図および次の全ての図においては、周波数ヒストグラムは、測定領域内の異なる蛍光異方性の値を発生させる周波数のプロットである。
【0082】
図4A−4Fは、病気を識別するための本発明の使用法を示す。特に、これらの図は、病気が網膜の代謝の低下を伴う人の網膜組織において、糖尿病性網膜症を識別する蛍光異方性の定常状態の測定についての使用法を示す。発明は、耳側網膜において、中程度の非増殖糖尿病性網膜症および軽度の増殖糖尿病性網膜症(PDR)の両方を識別するために用いられる。
【0083】
図4Aは、大気を吸入している、中程度の非増殖糖尿病性網膜症の患者の蛍光異方性の周波数ヒストグラムを示す。図4Bは、同様に大気を吸入している、年齢的性的健常対照者の蛍光異方性の値の周波数ヒストグラムを示す。図4Bにおける健常者に対してなされた測定と比較して、図4Aのヒストグラムの平均値がより低い値にシフトしており、より広くなっていることに注意する。
【0084】
図4Cは、純酸素を吸入している、図4Aと同じ患者の蛍光異方性の値の周波数ヒストグラムを示す。この患者の異方性の値の平均値が、大気を吸入している健常対照者(図4B)のそれとほぼ同じであることに注意する。
【0085】
図4Dは、純酸素を吸入している、年齢的性的健常対照者の蛍光異方性の値の周波数ヒストグラムを示す。図4Cのヒストグラムが、純酸素を吸入している健常対照者(図4D)のそれより広いことに注意する。
【0086】
図4Eは、軽度のPDR患者の正規化平均値を年齢的性的健常対照者と比較して示す(n=20、エラーバーは+/− 1S.E.M.)。アステリスクが付いたバーは、示されたP値において、結果に統計的有意性があることを示す。中央のバーは、統計的有意性に対して少なすぎる一人の患者の試験を示す。それにもかかわらず、蛍光眼底血管造影法により実証したように、約10年間糖尿病であって明白な網膜症ではないその患者の蛍光異方性の平均値は、一番目と三番目のバーと比較して、中間の蛍光異方性の値の低下を示す。
【0087】
図4Fは、蛍光異方性の周波数ヒストグラムを生成した耳側網膜における関心領域を示す網膜の近赤外線の走査を示す。
【0088】
すでに述べたように、図2に示すコンピュータは、図4A−4Dに示す曲線間、および/または図4Eのバーの間の比較をする手段と考えることができる。
【0089】
図5A−5Hは、安静状態における組織の蛍光異方性マップを、刺激を与えた状態における同じ組織で得られたそれから量的に差し引くことにより、組織の機能的および代謝的障害の検出および場所の突き止めることにおける本発明の使用法を示す。本発明は、それゆえ、刺激に反応する能力の低下を示す組織内の領域の量的測定および場所を突き止めることを可能とする。
【0090】
図5Aは、暗所で、安静状態における、空間蛍光異方性網膜の視神経乳頭を中心にした20°の視野の空間蛍光異方性代謝マップ示す。暗所においては、耳側網膜および側頭部神経網膜周縁は鼻網膜および神経網膜周縁と比較して低下する。
【0091】
図5Bは、20秒間12Hzで光を点滅させる刺激を与えた後における、図5Aと同じ領域の代謝マップを示す。点滅させた光は、図5Aに関連する全領域にわたって蛍光異方性の値の増加をひき起こすことに注意する。図5Cは、点滅させた光による刺激への反応時の20°視野(b−a)の機能マップを生じさせるために、図5Aおよび図5Bを位置合わせし、互いに画素から画素を差し引いたときの結果を示す。耳側網膜および側頭部神経網膜周縁が支配的となったことに注意する。グレースケールと蛍光の量的値の間の関係は、図内の画像を線形的に同程度増大させており、明るい領域は高い値に対応し、暗い領域は低い値に対応する。
【0092】
図5Dは、方向づけのため、図5A−5Cに示す領域と同じ領域の赤外線走査を示す。
【0093】
図5Eは、図5A(暗所)の横線間のピクセル内の距離の関数としての鉛直方向の平均を示すグラフを示す。なめらかな曲線は、20次のチェビシェフ多項式フィット(r=0.9818)である。値は、側頭部から鼻側までプロットされている。残差は正規分布された。
【0094】
図5Fは、図5B(光点滅後)の横線間のピクセル内の距離の関数としての鉛直方向の平均を示すグラフを示す。なめらかな曲線は、20次のチェビシェフ多項式フィット(r=0.7806)である。値は、側頭部から鼻側までプロットされている。残差は正規分布された。
【0095】
図5Gおよび5Hは、それぞれ、暗所および光点滅後の、20°の視野で視神経乳頭の蛍光異方性の値の周波数ヒストグラムを示す。
【0096】
図2に示すコンピュータおよびモニタは、上記分析を行う手段として使用することができる。図5A−5Dに示すパターンは、モニタ上に表示することができ、一方、図5Cの異なる画像を形成するために必要な計算はコンピュータで行うことができる。コンピュータはまた、図5Eおよび5Fの近似曲線を生じさせ、図5Gおよび5Hに示す曲線を生じさせ、比較するために使用する。
【0097】
図6A−6Gは、人の病状を非侵襲的に識別するための本発明の使用法を示す。この例においては、病気は、原発性開放角緑内障(POAG)である。
【0098】
図6Cは、一般の患者、軽度のPOAGの患者、および、重度のPOAGの患者の視神経乳頭を横切った蛍光異方性の値のグラフを示す。かくして、本発明は、病気の存在だけでなく、重症の程度の識別をもすることができる。
【0099】
図6Dおよび6Eは、正常制御(図6D)および軽度のPOAG(図6E)の
神経網膜周縁の異なる領域で測定した蛍光異方性の値のダイアグラムを示す。軽度の病気の患者の蛍光異方性の値は、全ての位置において低下していることに注意する。
【0100】
図6Fおよび6Gは、緑内障の検出に最も一般的に使用される装置であるハイデルベルクHRTIIによる、それぞれ図6Aおよび6Bの、一般の患者、軽度の患者の測定を示す。このように、従来技術では、正常の制御と軽度の患者との識別に失敗する。
【0101】
図2に示すコンピュータは、それゆえ、図6Cに示す曲線を生じさせ分析させ、かつ、病状の存在およびその重症度の程度を診断させるためにプログラムすることができる。
【0102】
図7A−7Fは、定常状態の蛍光異方性を測定することによる、目の組織の血流および機能と代謝の低下の微妙な変化を検出するための本発明の使用法を示す。特に、猿の目の観察から得たこれらの図は、高眼圧症(OHT)を検出するための本発明の使用法を示す。本発明は、従来技術のうち最も高感度の方法である光コヒーレンス断層撮影法を用いても常に観察可能というわけではない微妙な効果を検出する。
【0103】
図7Aは、猿が純酸素を吸収している状態における、同じ猿の正常で治療のない目およびOHTである目の視神経乳頭を中心とした20℃の視野の蛍光異方性の周波数ヒストグラムを示す。病気の目の蛍光異方性の値は健康な目の値より低い。図7Bは、コヒーレンス断層撮影法(OCT)を用いた、正常で治療のない視神経乳頭を示し、図7Cは、同様にOCTの技術を用いた、OHTの視神経乳頭を示す。視神経乳頭の発掘に対応した病気の目の低下した蛍光異方性の値を、図7Cに示す。
【0104】
図7Dは、動物が純酸素を吸収している状態における、正常で治療のない目およびOHTである目の斑点を中心とした20℃の視野の蛍光異方性の周波数ヒストグラムを示す。正常の目の斑点と比較した高眼圧症の斑点の蛍光異方性の値の著しい低下に注意する。OCTによっては構造損傷が示されない事実があるにもかかわらず、この眼圧増大に伴う蛍光異方性の値の顕著な低下がある。図7Eおよび7Fは、それぞれ、同じ猿の正常および病気の目の断層撮影を示す。全てのOCTマップは、猿が麻酔されており、そのため、OCT測定に通常関連する動きアーチファクトが除かれ、非常に高品質であった。図7A−7Fの全てのデータは同じ動物のものである。図7Aおよび7Dに示す曲線の比較は、図2に示すコンピュータで行うことができる。
【0105】
図8A−8Bは、定常状態の蛍光異方性の測定を通じ、治療介入の効果を示す本発明の使用法を示す。この場合、増殖性糖尿病網膜症の治療のために汎網膜光凝固が使用された。
【0106】
図8Aは、治療のない組織および二つのレーザ光凝固された小領域を示す、増殖性の病気をもつ糖尿病患者の周辺網膜の領域の蛍光異方性の二次元マップを示す。分析のためのコンピュータで描かれた線はその領域を横切って配置され、治療のない領域および治療した領域を示す。図8Bは、線形状に沿って測定した、定常状態の蛍光異方性の値を示すグラフを示す。上述したように、組織の代謝は蛍光異方性と相関する。グラフは、組織の代謝がレーザ治療によって増大したことを示し、それゆえ、治療効果の兆候を示す。
【0107】
上で示した例は人の網膜内の病状を扱うものであるが、本発明の手法が、生物学的変化の二つの一般分類内、すなわち、血管新生およびアポトーシス、で起こる変化を検出するために用いることができることは当業者にとって明らかである。
【0108】
血管新生は、組織の代謝要求に合致させるために新たな血管を形成する過程であり、その血管は、通常の形成においては、形成中に起こる代謝の変化によって決まるパターンをたどる十分な能力を有する血管の形成を導く協調的進路をたどる。しかしながら、多数の病状は、漏れやすいか十分な能力の無いことがある新たな血管の病勢盛んな非協調的成長をもたらす。
【0109】
本発明の手法を適用することができる病気の注目すべき一つの部類は、成長し、死をもたらす重大性を潜在的に有する癌の分野である。血管新生の分野で一般に受入れられているシーケンス・オブ・イベントは、代謝の増大または血流の低下の結果、組織の酸素処理が低水準となる組織の低酸素症となり、ひいては、血管内皮成長因子(VEGF)を発現する遺伝子の上方制御を起こす。VEGEは、他の血管形成成長因子とともに、新しい血管の成長をひき起こすと説明されてきた。上述した糖尿病性網膜症の例は、このケースの一つを示す。多くの複製起点および組織障害を含む癌においては、腫瘍を、それが視覚的に識別できるようになるより前に本発明により検出できる。腫瘍は、新しい血管が腫瘍を育成する場合にのみサイズが大きくなる、そして、CTスキャンおよびMRIスキャンにおける造影剤を採用する構造技術が、新しく形成された血管を流れる造影剤の注入で視覚化された大きさの増大を探す。本発明は、新しい血管が成長する前の代謝の増大を検出し、初期段階で腫瘍を切除することを可能とする。これにより、広範囲の化学療法および放射線診療の必要性を低減する。
【0110】
創傷治癒は、本発明の手段の他の興味深い適用先を提供する。死んだ組織の外科的な除去における重大な問題は、生きているものと死んでいるもの(代謝的に非活性な組織)の間の区別である。同様に、新しい血管は、二つの生きている組織の接続を支えるために成長する必要がある。本発明は、生きている組織と死んだ組織を区別し、支持能力のある組織を血管の成長に適合させるために用いることができる。上記は、本手段が適用可能である病気の網羅的なリストではないことは当業者にとって明らかである。例えば、遺伝子学上世代から世代に受け継がれるミトコンドリア病のホストがある。そのようなミトコンドリア病は、これらの病気の異常な代謝の結果に基づき、本発明の技術を用いることで検出および画像化することができる。
【0111】
アポトーシスは細胞の死の組織的な形態であって、体内の組織の継続的な更新において通常進行する。しかしながら、病状は、血管新成の場合と同様に、患者に重大な結果をもたらすとともに、非協調的となるプロセスをひき起こす。本発明は、緑内障および他の目の神経系の病気の場合における積極的に進行するアポトーシスの一例を提供する。
【0112】
緑内障は、ハンチントン病、パーキンソン病、アルツハイマー病を含む神経変性の病気の広い系統に属する。本発明の方法は、この類型の他の病気を初期段階において検出するために適用することができる。
【0113】
例えば、アルツハイマー病は、網膜の神経線維および神経節細胞の破壊に関連する。しかしながら、アルツハイマー病の構造の画像は、細胞が死んだ比較的病状が進んだ段階における網膜において病気を示すだけである。代謝機能障害がすべての組織のアポトーシスに先行することはよく知られており、ここで開示する手段は、目の定期健診中の、アルツハイマー病および他の神経変性の病気の初期段階における検出を可能とする。
【0114】
内科医が故意にアポトーシス、すなわち細胞死、を導入した一つの興味深いケースは、化学療法剤および/または放射線で癌治療をした領域である。
アポトーシスに先行する細胞の機能障害および代謝低下と同時に、細胞を死亡させ引き返し限界点を通過する、アポトーシスの最終段階を起こさせるためにエネルギが要求される。この代謝のバーストは、定常状態のフラビンタンパク質の蛍光異方性の画像を用いて可視化でき、それゆえ、腫瘍専門医は、化学療法および放射線療法の極端な副作用を避けるためにそのような薬剤の投与を停止または低減する一方、癌細胞を殺すのに十分な化学療法剤を提供することができる。
【0115】
本発明の手法の非常に大切な適用先は、麻酔学の分野である。すべての処置にわたって、麻酔医の目標は、不可逆の障害から脳を保護することである。確かに、二例を挙げると、バイパス手術および頚動脈血管内膜切除術のような長い手術において、認識の喪失が報告されている。網膜は、脳の一部であるだけでなく、脳の最も代謝が活発な部分である。現在のところ、不可逆の損傷から脳を保護するために重要なのは脳の網膜の酸素処理および代謝率であるのに対し、測定できるのは血液の酸素分圧だけである。本発明の技術で、手術中に網膜を画像化することにより、残りの脳内における機能障害および細胞死に先行する、減少した網膜組織の代謝を測定することができるであろう。そして、それにより、不可逆的な脳障害を回避するために、患者へ供給する酸素を調整することができる。少なすぎる酸素が損傷を与えるため過剰な酸素を長期間供給する。このため、本発明の手段は、正常な代謝レベルのデータベースと比較し、適切かつ安全なレベルの酸素を供給し患者に届ける酸素を調整するために使用することができる。すべての病状に対しデータベースの比較および使用をし、正常値を決めることにより、正常の代謝の閾値を決めることができ、組織代謝の領域を正常レベルに回復させるために治療方法を採用することができる。そのようなデータベースは臨床試験で決めることができる。
【0116】
現在の仕様は、代謝の基質の一つ、つまり、酸素に注目し過ぎている。グルコースは、もちろん、酸化的代謝の過程における二番目に重要な基質である。多くの手段が提案されてきており、血糖の測定に対しては、いくつかは実施されている。しかしながら、酸素と同様に、組織内の生きている細胞のミトコンドリアにグルコースを供給するレベルにあり、このことが最も重要である。本発明に係る方法は、第二の基質である酸素を一定に保ったときの、ミトコンドリアの代謝およびグルコース供給を測定する特有の機会を提供する。確かに、糖尿病の人は、日常生活において患者に供給する酸素のレベルは、一定に維持した大気における酸素の割合である。それゆえ、本発明は、非侵襲的方法で目的に達する、糖尿病患者のグルコースおよびインシュリンを調整する全く異なる方法を提供する。家庭でのヘルスケアで用いる手で握れる大きさの装置を発展させて、血糖、インシュリン、糖尿病の飲み薬によるミトコンドリアの機能およびその変化をモニタする。これは、目への偏光のフラッシュにより行う。血糖に重点を置く、信号対雑音比のレベルが低いであろう多くの他の提案と異なり、本手法は、ここで提供する例で示すように、高い信号対雑音比のレベルを達成している。
【0117】
ミトコンドリアの代謝は生命にとって極めて重要であり、当業者にとっては、ここで示す手段が、複数の医学の専門分野に広範に及ぶ適用となりうることが明らかであろう。
【0118】
同様に、図1および2に示した方法の実施は、本方法に基づき工夫された多くのうちの二つである。定常状態のフラビンタンパク質の蛍光異方性の画像は、直接に画像化されるいかなる組織――目、皮膚、頸部など――に対しても適用でき、食道、胃、腸管、肺のような内臓を研鑽する内視鏡検査装置、または、医学分野で現在使用されている腹腔鏡検査および間接鏡検査装置に容易に組み込まれることができる。加えて、シングルモードの偏光を保存する光ファイバを用いることにより、血管および他の小内径の領域に挿入することができる小型カテーテルを、本発明に係る方法を用いて製造することができる。
【0119】
本発明は、当業者にとって明らかな他の方法に変更することもできる。図1および2に示す特別な配置は大幅に変更することができ、上述した方法を実施する方法は多く存在する。このような変更は請求の範囲の精神および範囲内において考慮されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】図1は、本発明に係る、組織の機能および代謝を測定するために使用する画像装置の概略図を示す。
【図2】図2は、組織の三次元マップを得るために、本発明に基づき作製された画像装置の概略図を示す。
【図3A】図3Aは、異なる状態における蛍光異方性の変化量を示す周波数ヒストグラムを示す。
【図3B】図3Bは、異なる状態における動物の目の蛍光異方性の値のグレースケールマップを示す。
【図3C】図3Cは、異なる状態における動物の目の蛍光異方性の値のグレースケールマップを示す。
【図3D】図3Dは、動物の処理された目および処理されていない目の赤外線走査を示す。
【図3E】図3Eは、動物の目の状態を描写した血管撮影図を示す。
【図3F】図3Fは、動物の目の状態を描写した血管撮影図を示す。
【図4A】図4Aは、様々な状態における蛍光異方性の変化を示す周波数ヒストグラムを示す。
【図4B】図4Bは、様々な状態における蛍光異方性の変化を示す周波数ヒストグラムを示す。
【図4C】図4Cは、様々な状態における蛍光異方性の変化を示す周波数ヒストグラムを示す。
【図4D】図4Dは、様々な状態における蛍光異方性の変化を示す周波数ヒストグラムを示す。
【図4E】図4Eは、グラフの要約および結果を示す。
【図4F】図4Fは、関心領域を示す網膜の走査を示す。
【図5A】図5Aは、安静状態と刺激を受けた状態の網膜の一部を示しており、二つの状態の比較を示している。
【図5B】図5Bは、安静状態と刺激を受けた状態の網膜の一部を示しており、二つの状態の比較を示している。
【図5C】図5Cは、安静状態と刺激を受けた状態の網膜の一部を示しており、二つの状態の比較を示している。
【図5D】図5Dは、関心領域の走査を示す。
【図5E】図5Eは、結果を解析したグラフを示す。
【図5F】図5Fは、結果を解析したグラフを示す。
【図5G】図5Gは、結果を解析したグラフを示す。
【図5H】図5Hは、結果を解析したグラフを示す。
【図6A】図6Aは、緑内障でない患者の蛍光異方性の値のグレースケールのマップを示す
【図6B】図6Bは、緑内障でない患者の蛍光異方性の値のグレースケールのマップを示す
【図6C】図6Cは、様々な患者の異方性の値のグラフを示す。
【図6D】図6Dは、緑内障である患者および緑内障でない患者の蛍光異方性の値を示す図を示す。
【図6E】図6Eは、緑内障である患者および緑内障でない患者の蛍光異方性の値を示す図を示す。
【図6F】図6Fは、従来の診断技術を使用した同じ患者の対応結果の図を示す。
【図6G】図6Gは、従来の診断技術を使用した同じ患者の対応結果の図を示す。
【図7A】図7Aは、様々な状態の蛍光異方性の周波数ヒストグラムを示す。
【図7B】図7Bは、様々な状態における目を示すX線断層撮影を示す。
【図7C】図7Cは、様々な状態における目を示すX線断層撮影を示す。
【図7D】図7Dは、様々な状態の蛍光異方性の周波数ヒストグラムを示す。
【図7E】図7Eは、様々な状態における目を示すX線断層撮影を示す。
【図7F】図7Fは、様々な状態における目を示すX線断層撮影を示す。
【図8A】図8Aは、治療および未治療を示す網膜領域の蛍光異方性の二次元マップを示す。
【図8B】図8Bは図8Aに描かれた線に沿って測定した蛍光異方性の値を示す。
【図9】図9は、対象が純酸素を吸入する間になされた測定に基づく曲線および対象が純空気を吸入する間になされた測定に基づく曲線を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体眼組織の機能的能力の変化を非破壊的に測定する方法であって、
a)安静状態の眼組織に刺激を与えてその代謝を変化させ、刺激を受けた眼組織にする段階と、
b)安静状態の眼組織と刺激を受けた眼組織とを直線偏光で照射し、眼組織の蛍光体に蛍光を発生させる段階と、
c)眼組織の代謝または機能の第一状態として、安静状態の眼組織内の複数の深さにおける蛍光体から放射された蛍光の第一定常状態の蛍光異方性を非破壊的に測定する段階と、
d)代謝または機能の第二状態として、刺激を受けた眼組織内の複数の深さにおける蛍光体から放射された蛍光の第二定常状態の蛍光異方性を非破壊的に測定する段階と、
e)第一定常状態の蛍光異方性と第二定常状態の蛍光異方性とを比較することにより、蛍光異方性の変化を求める段階と、
f)同一の代謝または機能の状態にある照合眼組織内の複数の深さにおける蛍光体からの、対応する蛍光異方性の変化を得る段階と、
g)被評価眼組織の蛍光異方性の変化と、照合眼組織の対応する蛍光異方性の変化と、の差を、前記被評価眼組織の複数の深さにおける機能的能力の変化として測定する段階と、
を含む方法。
【請求項2】
蛍光体は眼組織の内因性である、請求項1の方法。
【請求項3】
方法は眼組織の機能的能力を非侵襲的に測定する、請求項1の方法。
【請求項4】
第二状態は眼組織を、蛍光励起には足りない程度の光にさらすことでもたらす、請求項1の方法。
【請求項5】
段階(g)は、眼組織の病状の情報を得る段階を含む、請求項1の方法。
【請求項6】
段階(g)は、眼組織の代謝についての情報を得る段階を含む、請求項1の方法。
【請求項7】
段階(g)は、前記組織が構造的障害の兆候を表す前に眼組織の機能的能力の変化を測定する手段をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項8】
機能障害は、低酸素症および初期のアポトーシスからなる群から選択された、請求項7の方法。
【請求項9】
異方性のプロファイルを既知のパターンと一致させるパラメータを選択すること、および、未知の組織試料の定常状態の蛍光異方性を分析するために前記パラメータを使用することによって、定常状態の蛍光異方性を測定するためのシステムをキャリブレーションする段階をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項10】
段階(c)、(d)および(e)は組織内の複数の点において実施され、眼組織の領域の定常状態の蛍光異方性の空間マップを得る、請求項1の方法。
【請求項11】
段階(f)は、第一状態の組織に関して得た前記空間マップと第二状態の組織に対応した空間マップとを比較し、蛍光異方性の変化の空間マップを得る段階を含み、段階(g)は、蛍光異方性の変化の空間マップを利用して組織の機能的能力が低下した領域を測定する段階を含む、請求項10の方法。
【請求項12】
生物組織の機能的能力の変化を非破壊的に測定する方法であって、
a)安静状態の生物組織に刺激を与えてその代謝を変化させ、刺激を受けた組織にする段階と、
b)安静状態の生物組織と刺激を受けた生物組織とを偏光で照射し、組織の蛍光体に蛍光を発生させる段階と、
c)蛍光体から放射された蛍光の、安静状態の定常状態の蛍光異方性と、刺激を受けた状態の定常状態の蛍光異方性とを測定する段階と、
d)安静状態の組織から得た定常状態の蛍光異方性と、刺激を受けた組織から収集した定常状態の蛍光異方性と、を比較する段階と、
e)当該比較に基づいて生物組織の機能的能力の変化を測定する段階と、を含む、方法。
【請求項13】
組織の複数の場所の定常状態の蛍光異方性の値を測定する段階と、
前記安静状態の組織と刺激を受けた組織とに対応する点の間の蛍光異方性の差を有するマップを生成する段階と、をさらに含む、請求項12の方法。
【請求項14】
第一状態の組織の空間マップは、第二状態の同じ組織の空間マップから画素ごとに差し引かれることにより、二次元の定常状態の蛍光異方性のマップを作成する、請求項11の方法。
【請求項15】
組織内の異なる深さにおいて得られた二次元のマップを結合して、第一状態から第二状態への定常状態の蛍光異方性の変化の三次元量を生成するために、光学的連続的分割を利用する、請求項14の方法。
【請求項16】
安静状態の生物組織は、組織が蛍光体の蛍光励起には足りない放射強度で照射されることで刺激される、請求項12の方法。
【請求項17】
第二状態は、組織を増加させた酸素にさらすことで生じさせる、請求項1の方法。
【請求項18】
蛍光体は、ミトコンドリアの蛍光体である、請求項1の方法。
【請求項19】
蛍光体は、リポアミドデヒドロゲナーゼ(LipDH)である、請求項18の方法。
【請求項20】
LipDH内に蛍光を生じさせるために選択される偏光は、第一状態および第二状態のLipDHから放射される蛍光の定常状態の蛍光異方性を測定するのに使用される、請求項19の方法。
【請求項21】
偏光は眼組織に損傷を与えない、請求項20の方法。
【請求項22】
段階(c)は、前記代謝または機能の第一状態において評価された前記眼組織の複数の深さからの前記放射された蛍光の空間マップを構成する段階をさらに有する、請求項1の方法。
【請求項23】
段階(d)は、前記代謝または機能の第二状態おいて評価された前記眼組織の複数の深さからの前記放射された蛍光の空間マップを構成する段階をさらに有する、請求項22の方法。
【請求項24】
段階(e)は、測定された前記眼組織の蛍光異方性の変化の空間マップを得るために、第一状態において測定された眼組織に関して得られた前記空間マップと、第二状態において測定された眼組織に対応する空間マップと、を比較する段階をさらに有する、請求項23の方法。
【請求項25】
段階(f)は、第一状態の照合眼組織に関して得られた空間マップと、第二状態の照合眼組織に対応する空間マップと、を比較した、前記照合組織の蛍光異方性の変化の空間マップを得る段階をさらに有する、請求項24の方法。
【請求項26】
段階(g)は、測定された眼組織の機能的能力を測定するために、測定された前記眼組織の蛍光異方性の変化の前記空間マップを、照合組織の蛍光異方性の変化の空間マップと比較する段階をさらに有する、請求項25の方法。
【請求項27】
生体眼組織の機能的能力の変化を非破壊的に測定する方法であって、
a)安静状態の生物組織に刺激を与えてその代謝を変化させ、刺激を受けた組織にする段階と、
b)安静状態の眼組織の蛍光体から放射される蛍光の第一定常状態の蛍光異方性を、眼組織にとって破壊的でなく、測定する段階と、
c)刺激を受けた眼組織の蛍光体から放射される蛍光の第二定常状態の蛍光異方性を、眼組織にとって破壊的でなく、測定する段階と、
d)第一定常状態の蛍光異方性と第二定常状態の蛍光異方性とを比較することにより蛍光異方性の変化を測定する段階と、
e)蛍光異方性の変化から眼組織の機能的能力を測定する段階と、
を有する、方法。
【請求項28】
f)安静状態と刺激を受けた状態の組織の間の定常状態の蛍光異方性の変化の大きさの減少を測定する段階、をさらに含む、請求項12の方法。
【請求項29】
同様に測定された照合組織から蛍光異方性の変化を得る段階と、生体組織の蛍光異方性の変化と照合組織の蛍光異方性の変化との差を測定する段階と、をさらに含み、段階(e)は、その差に基づいて生体組織の機能的能力の変化を測定する段階をさらに含む、請求項12の方法。

【図1】
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【図2】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図9】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図4E】
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【図4F】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図5H】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図6G】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図8A】
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【図8B】
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【公開番号】特開2013−78592(P2013−78592A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−255630(P2012−255630)
【出願日】平成24年11月21日(2012.11.21)
【分割の表示】特願2009−505524(P2009−505524)の分割
【原出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(508295155)
【Fターム(参考)】