説明

生物脱硫装置

【課題】微生物を含む液又は汚泥を循環させながら、担体充填層に硫黄酸化細菌を付着させて立ち上げ、微生物を含む液又は汚泥の循環を停止し、散水に切り替えるタイミングを判定しえる生物脱硫装置及びその立ち上げ方法を提供する。
【解決手段】硫化水素ガスを含むガスが導入される生物反応槽1と、この生物反応槽1内に配置され,微生物を付着させるための担体が充填された担体充填層2a,2bと、生物反応槽1内に酸素を含むガスを供給させる手段14と、生物反応槽1内の上部に生物に必要な水を散水する二種類以上の散水機構3,4と、生物反応槽1からの排水のpH又はアルカリ度を計測する検出計21,循環タンク5中の微生物を含む液又は汚泥の白濁度合を検知する検出計23,及び生物反応槽1の出口ガス13中の硫化水素濃度を測定する硫化水素濃度検出計22のうち、少なくとも二つの検出計とを具備することを特徴とする生物脱硫装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に下水や産業排水等の有機性排水の嫌気性消化処理で発生するバイオガスの生物脱硫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水汚泥や生ごみといった有機性廃棄物や食品工場排水などの有機性排水の処理法として、メタン発酵処理法が多く適用されてきている。このメタン発酵処理法は、有機性廃棄物又は有機性排水を生物反応槽に投入し、生物反応槽内に充填したメタン発酵細菌群により有機物を分解し、メタンガスを主成分とするバイオガスを生成すると共に、排水中の有機物を分解除去する処理法である。しかしながら、排水中にたんぱく質由来などの硫黄成分が含まれている場合、硫酸還元菌の作用により、硫黄成分が還元され、バイオガス中に硫化水素ガスを生成する。
【0003】
バイオガス中に含まれるメタンガスをボイラーまたは発電機などの燃料として使用する場合には、バイオガスに含まれる硫化水素ガスを除去する必要が生じる。この理由は、バイオガスを燃焼させる際にバイオガス中の硫化水素ガスが酸化され硫黄酸化物が生成し、機器を腐食させる可能性があるためである。
【0004】
バイオガス中に含まれる硫化水素ガスを除去する方法としては、酸化鉄を主成分とする吸着剤を用いて吸着除去する乾式脱硫方法や、アルカリなどを用いた水溶液に吸収除去する湿式脱硫方法が利用されている。これら方法は吸着のために吸着剤などの薬品が必要であることと、吸着後の吸着剤が廃棄物になることから、ランニングコストが高騰する方式であった。
【0005】
そこで、本発明者等は、先に、低ランニングコストで脱硫を行うシステムとして、反応槽に硫化水素を酸化分解する微生物が付着した充填材を充填し、バイオガス中の硫化水素を除去する技術を提案している。その方法は好気性処理を行った処理水を微生物が付着した充填材を充填した生物反応槽に上部からかけ流し、微生物に必要な水分、アルカリ度を補給しつつ、下部から硫化水素を含むバイオガスと空気を導入し、ガス中の硫化水素を酸化除去し、処理を行うという装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特願2007−20018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記発明は、硫化水素ガスを含むガスが導入され、微生物を付着させるための充填材を充填した生物反応槽と生物反応槽内に酸素を含むガスを供給させる手段と生物反応槽上部に生物に必要な水(例えば、生物処理後の処理水)を散水する散水手段を有した生物脱硫装置である。しかし、その立ち上げにあたっては、次に述べる課題があった。
(1)生物脱硫装置の迅速な立ち上げを行わなくては、ガス中の硫化水素濃度に起因する腐食の問題により、ボイラーや発電機でバイオガスの有効利用ができない。
(2)迅速な立ち上げと立ち上げ後の安定的処理の両立が困難である
(3)散水装置の目詰まりがある。
【0008】
上記課題を解決するにあたっては、充填材に硫黄を酸化する硫黄酸化細菌を付着させ、その付着量が目標とする硫化水素除去を達成するのに十分量であるか否かを何らかの指標で判断することが必要である。
【0009】
本発明は上述した課題を解決するためになされたもので、微生物を含む液又は汚泥を循環させながら、担体充填層に硫黄酸化細菌を付着させて立ち上げ、微生物を含む液又は汚泥の循環を停止し、散水に切り替えるタイミングを判定しえる生物脱硫装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の生物脱硫装置は、硫化水素ガスを含むガスが導入される生物反応槽と、この生物反応槽内に配置され,微生物を付着させるための担体が充填された担体充填層と、前記生物反応槽内に酸素を含むガスを供給させる手段と、前記生物反応槽内の上部に生物に必要な水を散水する二種類以上の散水機構を具備することを特徴とする。
【0011】
本発明の生物脱硫装置の立ち上げ方法は、上記生物脱硫装置を立ち上げる方法において、微生物を含有する液又は汚泥を生物脱硫の種汚泥として投入し生物反応槽に循環するための循環タンクと循環ポンプと配管を備えた第1の散水機構を有し、この第1の散水機構のうち、循環タンクと生物反応槽を接続する配管は生物反応槽内部にまで延出し、その延出した配管部分には直径5〜20mmの大きさの穴が開口され、生物反応槽内の上部には担体充填層へ水を散水する配管を備えた第2の散水機構を有し、この第2の散水機構の配管は生物反応槽内部にまで延出し、その延出した配管部分に分散性のよいノズルが設けられ、微生物を含有する液又は汚泥を循環させながら硫化水素を含むガスと酸素を含むガスを生物反応槽内に供給し、微生物を担体へ付着させながら生物脱硫装置の立ち上げを行うことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1に係る生物脱硫装置の説明図。
【図2】本発明の実施例2に係る生物脱硫装置の概略的な全体図。
【図3】本発明の実施例3に係る生物脱硫装置の概略的な全体図。
【図4】本発明の実施例4に係る生物脱硫装置の概略的な全体図。
【図5】本発明の実施例5に係る生物脱硫装置の概略的な全体図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る生物脱硫装置について更に詳しく説明する。
(1)本発明の生物脱硫装置は、上述したように、生物反応槽と、担体充填層と、生物反応槽内に酸素を含むガスを供給させる手段と、二種類以上の散水機構とを具備している。ここで、散水機構は、微生物を含有する液又は汚泥を生物脱硫の種汚泥として投入し生物反応槽に循環するため第1の散水機構と、固形分の少ない水(生物処理水)を生物反応槽内の担体充填層に噴霧するための第2の散水機構を備えている。ここで、第1の散水機構は、例えば微生物を含有する液又は汚泥を生物脱硫の種汚泥として投入し生物反応槽に循環するための循環タンクと、循環ポンプと、これらを接続する配管(循環配管)を備えている。
【0014】
(2)本発明の生物脱硫装置の立ち上げ方法において、上述したように、第1の散水機構のうち、循環配管は生物反応槽内部にまで延出し、その延出した配管部分には直径5〜20mmの大きさの穴が開口され、かつ第2の散水機構の配管は生物反応槽内部にまで延出し、その延出した配管部分に分散性のよいノズルが設けられ、微生物を含有する液又は汚泥を循環させながら硫化水素を含むガスと酸素を含むガスを生物反応槽内に供給し、微生物を担体へ付着させながら生物脱硫装置の立ち上げを行っている。
【0015】
ここで、生物反応槽の上部への散水の切り替える方法としては、次の方法が挙げられる。(2-1)生物反応槽からの排水のpHまたはアルカリ度のいずれかもしくは両方を測定し、生物反応槽からの排水のpH又はアルカリ度のいずれかもしくは両方が低下した場合に、微生物を含有する液又は汚泥の循環を停止し、生物反応槽上部への散水に切り替える方法。(2-2)生物反応槽の出口ガス中の硫化水素ガス濃度を測定し、出口ガスの硫化水素濃度が低下した場合に、微生物を含有する液又は汚泥の循環を停止し、生物反応槽上部への散水に切り替える方法。
【0016】
(2-3)循環タンクの水の白濁を検知し、循環タンク内の白濁が確認された場合に、微生物を含有する液又は汚泥の循環を停止し、生物反応槽上部への散水に切り替える方法。
(2-4)上記(2-1)〜(2-3)に記載のうち、2つの以上の方法により、微生物を含有する液又は汚泥の循環を停止し、生物反応槽上部への散水に切り替えるタイミングの時期を判断し、切り替える方法。
また、本発明においては、前記の種汚泥として、嫌気性消化処理を行っている施設の消化液、又は消化汚泥を利用することができる。
【0017】
次に、本発明の実施形態に係る生物脱硫装置の具体的な例について図面を参照して説明する。なお、本実施形態は下記に述べることに限定されない。
(実施例1):請求項1,2に対応
本発明の実施例1に係る生物脱硫装置について図1(A),(B)を参照して説明する。ここで、図1(A)は同生物脱硫装置の概略的な全体図、図1(B)は図1(A)の第1の散水機構の配管の下面図である。
図中の1は、内部に硫化水素ガスを含むガスが導入される生物反応槽である。この生物反応槽1の内部には、微生物を付着させるための担体が充填された担体充填層2a,2bが上下に配置されている。生物反応槽1の内部には、底部から硫化水素を含むガス及び空気が供給されるようになっている。生物反応槽1及びその周辺には、該生物反応槽内の上部に生物に必要な水を散水する第1の散水機構3及び第2の散水機構4が配置されている。
【0018】
第1の散水機構3は、微生物を含有する液又は汚泥を生物脱硫の種汚泥として生物反応槽1に投入し、循環するためのものであり、循環タンク5と、循環ポンプ6と、循環タンク5と生物反応槽1を接続する循環配管7を備えている。この第1の散水機構3のうち、循環配管7は生物反応槽1の内部にまで延出し、その延出した配管部分には直径5〜20mmの大きさの複数の穴8が開口されている(図1(A)参照)。穴8は、微生物を含む液または汚泥を担体充填層2a,2bに噴霧するもので、後述するシャワーノズルの穴径より大きく設定されている。循環配管7の途中にバルブ9aが介装されている。
【0019】
第2の散水機構4は、生物反応槽内部にまで延出する配管10を備え、その延出した配管の先端部分に分散性のよいシャワーノズル11が設けられている。配管10にはバルブ9bが介装されている。配管10のシャワーノズル11からは固形分の少ない水(例えば、排水を生物処理した後の処理水、以後、生物処理水と呼ぶ。)が担体充填層2a,2bに噴霧される。なお、図中の符番12はドレン管、符番13は処理ガス配管、符番14は生物反応槽1に空気を供給する空気供給用配管(酸素を含むガスを供給させる手段)を示す。
【0020】
実施例1の生物脱硫装置は、図1のように、硫化水素ガスを含むガスが導入される生物反応槽1と、この生物反応槽内に配置され,微生物を付着させるための担体が充填された担体充填層2a,2bと、生物反応槽内に酸素を含むガスを供給させる手段と、生物反応槽内の上部に微生物を含有する液又は汚泥を導入する第1の散水機構3と、生物反応槽内の上部に生物処理水を噴霧する第2の散水機構4を備えている。
【0021】
こうした構成の生物脱硫装置を立ち上げる場合は、微生物を含む液または汚泥を循環タンク5に投入した状態で、循環タンク5と循環ポンプ6と循環配管7を用いて、微生物を含有する液又は汚泥を生物反応槽1へ循環供給させながら、硫化水素を含むガスと空気を生物反応槽内に供給し、微生物を担体充填層2a,2bの担体へ付着させながら行う。こうした立ち上げにより、硫黄酸化細菌を充填層2a,2bに付着させ、それを種菌として、充填層2a,2bに付着している硫黄酸化細菌を増殖させる。
【0022】
図1において、仮に生物処理水を散水するシャワーノズルと同一の配管で消化汚泥などの固形分を多く含むものを循環させた場合、その固形分によるシャワーノズルの目詰まりが懸念される。また、たとえ循環させる原液は固形分の少ない液であったとしても、硫黄酸化細菌の働きにより、ガス中の硫化水素が酸化されると、一部固形物である単体硫黄が生成し、それがシャワーノズルの目詰まりの原因となりうる。
【0023】
しかし、実施例1においては、散水する配管10と生物脱硫装置の立ち上げを行う際に利用する循環配管7を別ラインとすることにより、このシャワーノズル11の目詰まりを解消できる。また、生物処理水の散水はシャワーノズル11で液を全体に分散させることにより、担体充填層内で硫化水素ガスの液中への溶け込み反応と生物反応を効率的に進めることができる。
【0024】
なお、実施例1において、微生物を含む液または汚泥は、硫黄酸化細菌を含むものであればよく、硫化水素と微量の酸素と水を含む環境下で生息したものであれば何でもよい。具体的には、他で稼動している生物脱硫装置の処理液であってもよいし、嫌気性消化処理の消化液、消化汚泥などでもよい。本発明者によれば、消化液、消化汚泥で表面の一部が酸素に曝されていたものであれば、硫黄酸化細菌が存在し、短期間で生物脱硫装置を立ち上げが可能であることを確認済みである。
【0025】
(実施例2):請求項1,3に対応
本発明の実施例2に係る生物脱硫装置について図2を参照して説明する。但し、図1と同部材は同符番を付して説明を省略し、要部のみ説明する。
実施例2は、生物反応槽1から排出される排水のpHを測定するためのpH測定計21をドレン管12に設けたことを特徴とする。なお、pHを測定するpH測定計の代わりにアルカリ度を測定する測定計を配置してもよい。
【0026】
微生物を含む液または汚泥を循環タンク5に投入し、その液または汚泥を循環しながら硫化水素ガスを含むガスと酸素を含むガス(空気)を通気しながら立ち上げることにより、硫黄酸化細菌が十分に充填層に付着すれば、ガス中の硫化水素単体硫黄(SO)まで酸化され、一部は硫酸まで酸化される。
硫酸濃度が増大してくると、やがて排水中のpH及びアルカリ度が低下する。pH、アルカリ度の低下が見られるタイミングで微生物を含む水又は汚泥の循環を停止し、生物処理水の散水に切り替える。
【0027】
ところで、硫酸を主因とするpH、アルカリ度の低下は、生物脱硫設備の配管及び生物反応槽1の躯体の腐食の原因となるため、好ましくない。一方でpH及びアルカリ度の低下は、硫黄酸化細菌が担体充填層2a,2bに十分に付着したことを示す指標となる。
【0028】
実施例2によれば、ドレン管12にpH測定計21を設けることにより、pH、アルカリ度が所定の値以下になった場合に生物処理水の散水に切り替えることにより、腐食を防ぐと同時に生物脱硫装置を迅速に立ち上げることを可能とし、立ち上げ後も安定的な処理を実現することができる。
【0029】
事実、本発明者が行った試験では、約4000mg/Lのアルカリ度を含む消化液を循環させながら、10000ppmの硫化水素ガスを含むガスを通気したところ、3〜4日程度でアルカリ度が1000mg/L程度まで低下し、そこから、pHの急低下(7付近から2〜3に低下)が見られた。これらのことから、低下の判定値としては、アルカリ度が1000mg/L以下、pHが6以下になったところで切り替えるとよいと考えられる。
【0030】
(実施例3):請求項1,4に対応
本発明の実施例3に係る生物脱硫装置について図3を参照して説明する。但し、図1と同部材は同符番を付して説明を省略し、要部のみ説明する。
実施例3は、生物反応槽1からの処理ガス配管13に硫化水素濃度を測定するための硫化水素濃度検出計22を設けたことを特徴とする。
【0031】
微生物を含む液または汚泥を循環タンク5に投入し、その液または汚泥を循環しながら硫化水素ガスを含むガスと酸素を含むガスを通気し、立ち上げることにより、硫黄酸化細菌が十分に担体に付着すれば、ガス中の硫化水素の一部は単体硫黄(S)まで酸化され、一部は硫酸まで酸化される。
これに伴いガス中の硫化水素が脱硫され、処理ガス中の硫化水素濃度が低下する。処理ガス中の硫化水素濃度が十分に目標の除去性能を満たした場合、担体に十分な生物が付着していると考えることができ、そのタイミングで微生物を含む水又は汚泥の循環を停止し、生物処理水の散水に切り替える。
【0032】
実施例3によれば、処理ガス配管13に硫化水素濃度検出計22を設けることにより、処理ガス中の硫化水素濃度により、生物処理水の散水の切り替えタイミングを判定することにより、生物脱硫装置を迅速に立ち上げ、処理を安定化させることができる。
事実、本発明者等が行った試験では、約4000mg/Lのアルカリ度を含む消化液を循環させながら、10000ppmの硫化水素ガスを含むガスを通気したところ、処理ガスの硫化水素は徐々に低下し、2〜4日後にはゼロ付近まで低下した。
【0033】
(実施例4):請求項1,5に対応
本発明の実施例4に係る生物脱硫装置について図4を参照して説明する。但し、図1と同部材は同符番を付して説明を省略し、要部のみ説明する。
実施例5は、循環タンク5内の微生物を含む液または汚泥の白濁を検知する検出計23例えばカメラを循環タンク5に設けたことを特徴とする。ここで、カメラを用いた場合、画像解析により汚泥又は液の色度を判定する。
【0034】
微生物を含む液または汚泥を循環タンクに投入し、その液または汚泥を循環しながら硫化水素ガスを含むガスと酸素を含むガスを通気し、立ち上げることにより、硫黄酸化細菌が十分に担体に付着すれば、ガス中の硫化水素の一部は単体硫黄(S)まで酸化され、一部は硫酸まで酸化される。単体硫黄の増加により循環液は白濁してくる。この白濁を循環タンク5に設けた検出計23で検知し、白濁が判定値以上になった場合に微生物を含む水又は汚泥の循環を停止し、生物処理水の散水に切り替える。
【0035】
実施例4によれば、循環タンク5に検出計23を設けることにより、循環タンク5内の微生物を含む液または汚泥の白濁を検知し、単体硫黄生成の増加を判断する。この白濁の検知により、生物処理水の散水の切り替えタイミングを判定することにより、生物脱硫装置を迅速に立ち上げ、処理を安定化させることができる。
【0036】
なお、実施例4において、白濁を検知する方法としては、上記検出計の他に、例えば目視、循環タンク内の水の一部をサンプリングし、そのサンプリングした水中の固形分の色を目視するかもしくは画像解析により判定する手法などが考えられる。
【0037】
(実施例5):請求項1,6に対応
本発明の実施例5に係る生物脱硫装置について図5を参照して説明する。但し、図1〜図4と同部材は同符番を付して説明を省略し、要部のみ説明する。
実施例5は、ドレン管12にpH計測計21を、処理ガス配管13に硫化水素濃度検出計22を、更に循環タンク5に検出計23を設けたことを特徴とする。
【0038】
微生物を含む液または汚泥を循環タンク5に投入し、その液または汚泥を循環しながら硫化水素ガスを含むガスと酸素を含むガスを通気し、立ち上げることにより、硫黄酸化細菌が十分に担体に付着すれば、ガス中の硫化水素の一部は単体硫黄(S)まで酸化され、一部は硫酸まで酸化される。これに伴い、単体硫黄の増大、処理ガス中の硫化水素濃度の低下、硫酸の増大に伴うpH、アルカリ度の低下がみられる。
【0039】
実施例5によれば、pH計測計21で排出される泥又は液のpHを、硫化水素濃度検出計22で処理ガス中の硫化水素濃度を、更に検出計23で液または汚泥の白濁度合を夫々検知することにより、複数項目で生物処理水の散水への切り替えを判断することにより、より正確な判断を行うことができる。
【0040】
なお、実施例5では、pH,硫化水素濃度,及び白濁度合で生物処理水の散水の切り替えを行った場合について述べたが、これに限らず、pH及び硫化水素濃度等のように2つ以上の複数項目で散水の切り替えを判断してもよい。
【0041】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。具体的には、前記の種汚泥として、嫌気性消化処理を行っている施設の消化液、又は消化汚泥を利用してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1…生物反応槽、2a,2b…担体充填層、3…第1の散気機構、4…第2の散気機構、5…循環タンク、6…循環ポンプ、7…循環配管、8…穴、9a,9b…バルブ、10…配管、11…シャワーノズル、12…ドレン管、13…処理ガス配管、21…pH計測計、22…硫化水素濃度計測計、23…白濁検出計。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫化水素ガスを含むガスが導入される生物反応槽と、この生物反応槽内に配置され,微生物を付着させるための担体が充填された担体充填層と、前記生物反応槽内に酸素を含むガスを供給する手段と、前記生物反応槽内の上部に生物に必要な水を散水する二種類以上の散水機構と、
前記生物反応槽からの排水のpH又はアルカリ度を計測する検出計,前記散水機構のうち一つの散水機構の一構成要素である循環タンク中の微生物を含む液又は汚泥の白濁度合を検知する検出計,及び前記生物反応槽の出口ガス中の硫化水素濃度を測定する硫化水素濃度検出計のうち、少なくとも二つの検出計と
を具備することを特徴とする生物脱硫装置。
【請求項2】
前記検出計のうち、3種類の検出計全てを具備することを特徴とする請求項1記載の生物脱硫装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−255155(P2012−255155A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−150374(P2012−150374)
【出願日】平成24年7月4日(2012.7.4)
【分割の表示】特願2008−7188(P2008−7188)の分割
【原出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】