説明

生物転換法を利用したペリヌスリンテウス菌糸体の液体培養による人参からの新規のジンセノサイド製造方法

【課題】本発明はジンセノサイドの生物転換活性が優秀なペリヌスリンテウス菌株(Phellinus linteus、KCTC 0912BP)菌糸体の液体培養により製造されたジンセノサイドRd、Rg2およびRh1を提供し、さらに、前記菌株由来の多糖類の特異構成成分であるマンノーズを含む製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は水参、乾参および紅参などの人参に微量存在するかまたは存在しないジンセノサイドRd、Rg2およびRh1をペリヌスリンテウス菌糸体の液体培養により生物転換法を利用した短期間大量生産方法に関し、人参成分のうちジンセノサイドの生物転換活性が優秀なペリヌスリンテウス菌株(Phellius linteus、KCTC 0912BP)から大量生産が可能な生物転換された新規のジンセノサイド生産方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物転換法を利用したペリヌスリンテウス菌糸体液体培養による人参からの新規のジンセノサイド製造方法に関し、より詳細には薬理学的活性が優秀な物質を多量含有している人参成分のうち桑黄茸菌糸体の液体培養法による生物転換法を利用して有用なサポニン成分を短期間に大量生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
‘東洋の神秘な霊薬’として知られた高麗人参は、人参の生育に適合な自然条件と久しい間蓄積された栽培および加工技術などにより世界最高の品質と認められており、韓国を象徴する代表的なイメージ商品として脚光を浴びている。特に、高麗人参は他の植物が全く有していないサポニン、ポリフェノールなどの生理活性物質を多量含有しており薬理的効能が非常に優れるため今日まで優秀な生薬剤として知られている。
【0003】
最近の科学的な研究結果、人参はジンセノサイド(人参サポニン)、ポリアセチレン、ポリフェノール系化合物、有機酸、アミノ酸、ペプチド、多糖類、ビタミン類などのような多様な生理活性物質を含んでおり、そのうちジンセノサイドが最も優秀な生理活性機能を有していることが明らかにされており、その薬理作用としては中枢神経抑制作用、蛋白質合成促進作用、免疫機能調節作用、インシュリン類似作用、解毒作用、抗発癌と抗癌作用などが報告されている。
【0004】
サポニンは糖部分(glycose)と非糖部分(aglycose)で構成された配当体であって、植物界に広く分布されているが、人参サポニンは非糖部がダンマラン系トリテルペンである点が特徴的であり、プロトパナキシジオール(protopanaxdiol)、プロトパナキシトリオール(protopanaxtriol)系に分類され現在まで38種のジンセノサイド化学構造が明かされている。
【0005】
そのうち5種の主要なジンセノサイド(ジンセノサイドRb1、Rb2、Rc、Re、Rg1)が全体ジンセノサイドの80%以上を占めていることが知られており、ジンセノサイドは非糖部にグルコース、ラムノース、アラビノース、ザイロースのような糖類が結合された化合物であって、結合された糖らの種類と数、そして結合位置によって薬理作用が夫々異なることが知られている。これらジンセノサイド誘導体らのうち特に最近には人参に少量存在するジンセノサイドの生理活性機能に対する研究が多くなされているが、このようなジンセノサイド、即ち、Rd、Rg3、Rh1およびCkは前記5種の主要なジンセノサイドに比べて一層優秀な生理活性を有していることが示されている(特許文献1)。
【0006】
従って、最近にはこのように主要ジンセノサイドを微量ジンセノサイドに転換しようとする試図が活発になされており、その方法には熱処理する方法(特許文献2)、酸とアルカリを処理する方法(特許文献3)、酵素処理する方法(特許文献4)などが開示されている。
【0007】
しかし、前記熱または酸とアルカリで処理する方法は、他の優秀な活性を有する微量存在するジンセノサイドと多糖類らを分解することがあり、その結果人参の他の生理活性が消去されるという問題点がある。一方、酵素処理する方法は気質の量に比べて酵素が非常に多く必要であるため、反応時間と収率において非効率的であるという問題点がある。
【0008】
また、茸類の場合において、多様な研究により色々な生理活性が高い素材であると認識されている。これらのうち桑黄茸の1種であるペリヌスリンテウスの場合には抗癌活性が96.7%であり、ペリヌスリンテウス菌糸体の蛋白多糖体がSarcoma180複数癌および固形癌を効果的に抑制すると報告されている。高等菌類によるジンセノサイドの転換方法は高等菌類の培養法によって固体培養法と液体培養法の二つに分けられるが、人参を気質として高等菌類を培養する場合、培養時間が長くかかり生産効率が劣るため、生産性が問題点として浮刻されている。
【0009】
特に、高等菌類の固体培養の場合には生産空間の問題点、人力消費型の工程で産業化過程の難関として作用することがある。このような固体培養については特許文献1、5、6に開示されている。前記特許らによれば、高等菌類を含む人参自体は固体培地上で約14〜90日間発酵を通じて人参製品を製造する方法が公知されている。
【特許文献1】韓国公開特許10‐2006‐0062083号公報
【特許文献2】韓国特許公告第1996‐017670号公報
【特許文献3】韓国特許登録10‐0620107号公報
【特許文献4】韓国特許公告10‐02304002号公報
【特許文献5】韓国特許登録10‐0496666号公報
【特許文献6】韓国公開特許10‐2004‐0108476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は前記の如き点らを勘案して今まで報告されたことがない桑黄茸ペリヌスリンテウス菌株の菌糸体を液体培養により生物転換法を利用した水参・乾参および紅参などに微量存在するかまたは存在しないジンセノサイドRd、Rg2およびRh1を短期間に大量生産することができる方法を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の前記目的は桑黄茸ペリヌスリンテウス KCTC 0912BP菌株を種菌培養し、紅参粉末培地を製造して前記種菌を接種した後に大量培養し、桑黄発酵人参乾燥粉末を取得してブタノール溶液で還流冷却した後に残留物を乾燥し、メタノールを加えて溶解し濾過した後HPLC分析を実施することにより達成した。
【0012】
本発明の特徴は水参・乾参および紅参などに微量存在するかまたは存在しない稀貴のジンセノサイドRd、Rg2およびRh1をペリヌスリンテウス菌株の菌糸体液体培養により生物転換させて短期間に大量生産することができる製造方法を提供することにより完成した。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水参・乾参および紅参粉末をペリヌスリンテウス KCTC 0912BP菌株の菌糸体の液体培養を通じてこの菌株の強力な生物転換酵素により水参・乾参および紅参の成分中に微量または存在しない稀貴なるジンセノサイドRd、Rg2およびRh1を含む總サポニンを短期間に大量生産する効果がある。
【0014】
また、本発明はペリヌスリンテウス菌株(Phellinus linteus KCTC 0912BP)を液体培養法により生物転換された人参粉末は前記稀貴性ジンセノサイドのみならず、前記菌株由来の特異多糖類構成成分であるマンノーズを含む優れた効果があるため、生物医薬産業上非常に有用な発明である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の構成を詳細に説明する。
【0016】
本発明は人参成分のうちジンセノサイドの生物転換活性が優秀なペリヌスリンテウス菌糸(Phellinus linteus、KCTC 0912BP)を利用して、この菌株の液体培養により生物転換された新規の大量生産可能で稀貴なジンセノサイド製造方法を提供する。より詳細には、本発明はジンセノサイドの生物転換活性が優秀なペリヌスリンテウス(Phellinus linteus、KCTC 0912BP)菌株を選択し、前記菌株の菌糸体の液体培養により得られるジンセノサイドRd、Rg2およびRh1のみならず桑黄茸菌糸体由来の特異多糖体の構成成分がマンノーズで構成される多糖体の製造方法を提供する。
【0017】
本発明者達は前記ペリヌスリンテウス菌株の菌糸体をポテトデキストローズ(PDA)固体培地に移し純粋培養する工程と;PDA固体培地で培養された菌糸体を再び夫々ポテトデキストローズブロス液体培地で液体培養する工程と;水参300gを流水で水洗した後、5Lの閉鎖された容器に入れて加熱された水蒸気を利用して5時間蒸参し、前記蒸参された水参を熱風乾燥機50℃で1時間乾燥した後に、乾燥室で水分が15%以下になるように自然乾燥して紅参を製造し、生物転換用材料を製造する工程と;前記工程で得た紅参粉末を含む液体培地に前記ペリヌスリンテウス菌株菌糸体と共に生物反応器に入れて滅菌した後、人参ジンセノサイドを大量生産する工程と;生物転換された桑黄茸発酵人参から目的の稀貴のジンセノサイドRd、Rg2およびRh1と構成糖を分析する工程と;本発明桑黄発酵人参の免疫効果および毒性試験工程により構成される。
【0018】
本発明の別の目的は前記桑黄茸菌糸体液体培養法を利用した生物転換工程から短時間内に得られたジンセノサイドの特徴がRd、Rg2およびRh1を含む總サポニンを提供することにある。
【0019】
本発明の別の特徴は前記ペリヌスリンテウス菌株(Phellinus linteus KCTC 0912BP)を液体培養法により生物転換されたジンセノサイドのうちRd、Rg2およびRh1が共存するものは今まで全く開示されたことがない点にある。
【0020】
以下、本発明の具体的な構成の実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明の権利範囲はこれら実施例にのみ限定されるのではなく、当業者が若干の設計変更または数値および工程の変更を試図して容易に迂回発明を実施することができるが、このような発明らは本発明の権利範囲に属すると言うべきであろう。
【実施例】
【0021】
[実施例1] ペリヌスリンテウス菌株(Phellinus linteus KCTC 0912BP)の菌糸体種菌培養
本発明で用いたペリヌスリンテウスKCTC 0912BP菌株は韓国の江原道雪嶽山で採集選抜したものであって、韓国生命工学研究院生物資源センター(KCTC)で特許菌株として寄託されている菌株を分譲したものである。前記菌株は本発明者達の研究の結果、生物転換活性が最も優秀なものと確認された。菌糸体の種培養の培養条件は前記種菌をポテトテキストローズアガー(PDA)培地で25℃に維持して7〜10日間培養した後、クリーンベンチで菌糸片を約0.5cm大に切断し、100mlポテトテキストローズブロス複合培地が入っている500ml三角フラスコに入れて更に10日間培養した。10日間充分に培養された前記菌株の菌糸体を粉砕機で4,000rpmで1分間噴射し、更に200〜300mlのWIM滅菌培地(表1)が入っている1L三角フラスコに、種菌として10%(v/v)を接種した後、10日間液体培養し、この培養液を10%(v/v)種菌として用いた。種菌として用いる液体培養菌糸体は滅菌されたミキサー器に入れた後均質化させ7L容量の上部型発酵器(Marubishi Co.Ltd.)に5LのWIM培地が含まれている容器に接種した。ペリヌスリンテウス KCTC 0912BP菌株の菌糸体の培養環境は空気注入速度を0.1〜1vvmに調整しながら供給した。空気注入速度1vvm以上では多量の泡発生に因り菌糸体が培養器壁面に付着して成長する傾向があるため、空気注入速度は1vvm以下に調整した。培養温度は培養室内に温冷房器を設置して室内の温度を20〜35℃に調整して5〜10日間培養した。生物反応器は滅菌器を利用して121℃で20分間殺菌した。
【0022】
【表1】

【0023】
[実施例2] 紅参粉末の製造
脳頭を除去した水参4kgを流水で水洗した後、20Lの閉鎖された容器に入れて加熱した水蒸気で5時間蒸参した。前記蒸参された水参を熱風乾燥機に入れて50℃で1時間乾燥した後、乾燥室に移し水分含量15%以下になるように自然乾燥した。紅参を生物転換用材料に利用するために砂別器を利用して約20〜30メッシュサイズに紅参粉末を製造した。
【0024】
[実施例3]本発明ペリヌスリンテウス菌株の菌糸体の液体培養による生物転換システムを利用した人参ジンセノサイド大量生産
前記実施例2で製造した紅参粉末を含むWIM培地36Lを製造して70L生物反応器(in situ fermenter)に移した後、121℃で40分間滅菌工程を遂行した。生物反応器の温度を、低温循環槽を利用して約28℃まで落とした後、前記実施例1で培養したペリヌスリンテウス KCTC 0912BP菌株菌糸体種菌4Lを70L生物反応器に通常用いられている無菌接種方法を利用して接種し培養した。比較例として、原料を水参粉末または乾参粉末を用いる場合には前記紅参粉末の代わりに水参粉末または乾参粉末を含むWIM培地36Lを製造して70Lの生物反応器(in situ fermenter)に移した後、121℃で40分間滅菌工程を遂行した。生物反応器の温度を、低温循環槽を利用して約28℃まで落とした後、前記実施例1で培養したペリヌスリンテウス KCTC 0912BP菌株菌糸体種菌4Lを70Lの生物反応器に通常用いられている無菌接種方法を利用して接種し培養した。発酵人参反応条件は空気注入速度を0.1〜1vvmに調節しながら供給した。空気注入速度1vvm以上では多量の泡の発生によって菌糸体が培養器壁面に付着して成長する傾向があるため空気注入速度は1vvm以下に調整した。培養温度は培養室内に温冷房器を設置して室内の温度を20〜35℃に調整して1〜10日間培養した。培養終了後の発酵人参は濾過紙で濾過し乾燥機で60℃、8時間乾燥後に桑黄発酵人参の重量を測定して乾燥重量で約600g/Lを得た。細胞外多糖体および人参発酵抽出物成分が含有されている培養余液は60ブリックスに濃縮した後、桑黄発酵人参乾燥物と混合して乾燥機で60℃、5時間乾燥した。最終乾燥物は砂別器を利用して約100メッシュ大に粉末化して最終1.6kgの桑黄発酵人参粉末を収得した。
【0025】
[実施例4] 生物転換された人参のジンセノサイドの抽出
前記実施例3の結果大量培養された桑黄茸発酵人参のジンセノサイドのパターンの分析は、健康機能食品法人参製品の実施例基準および試験法に準じて実施した。即ち、100メッシュを通過した検体5gを計量して250mlの還流用フラスコに取り水飽和ブタノール溶液50mlを加えた後、70〜80℃の水浴で1時間還流冷却して冷やし、濾過して250mlの分液余頭に移した。残留物に対し前記操作を2回以上繰り返した。分液余頭に蒸留水50mlを加えた後、激しく振り水層とブタノール層が完全に分離されるまで静置した。水層(下層)を除去しブタノール層を予め含量とした濃縮フラスコに移し水浴中で減圧濃縮した後、その残留物にエーテル50mlを加え約46℃の水浴で30分間還流冷却してエーテルを除去した。残留物は含量になるまで乾燥してジンセノサイドの本発明による分析用乾燥試料を得た。
【0026】
(実験例1) 本発明の生物転換された桑黄発酵人参ジンセノサイドのHPLC分析
前記実施例4の桑黄発酵人参乾燥物(試料)にメタノールを加えて完全に溶解した後、0.45μm Minisart RC‐15(Satorius)フィルターで濾過して、下記の分析条件に従いHPLCに注入、人参ジンセノサイドを分析してピークの面積を比較した。カラムはPlatinum C18(100A,1.5μl,33mm×7mm)を用い、移動相は、水とアセトニトリルの比率を80:20から始めて、最初の10分間を75:25、そして後の15分間は50:50の比率で水とアセトニトリルの濃度勾配が調節された。移動相の流速は1.2ml/minであり、クロマトグラムは波長203nmで得た(図1、図2)。原料である水参は、本発明では乾燥粉末を用い、生物転換させたものと比較すると、桑黄発酵人参粉末の特徴的なジンセノサイド変化はRd、Rg2およびRh1で2.5〜10倍の著しい増加様相を示した(表2)。
【0027】
【表2】

【0028】
(実験例2) 本発明の生物転換された桑黄発酵人参の多糖類分析
前記実施例4により得た桑黄発酵人参から多糖類を抽出するために桑黄発酵人参乾燥粉末(試料)、水参粉末と紅参粉末各4gに20倍の水80mlを加えて3時間還流抽出した。抽出液を濾過して95%エタノールを濾過液の4倍量添加した後、4℃で12時間静置して遠心分離した。遠心分離した後に上澄み液を除去し沈澱物を乾燥して高分子多糖類を得た。高分子多糖類のうち桑黄菌糸体から由来した固有の多糖類は、多糖類のうち含まれたメチル‐α‐D‐マンノピラノシドの含量として次の実験方法により測定した。
【0029】
検体50mgを精密に計り20mlのガラス容器に入れ、メタノール性0.75N塩酸試液10mlを入れて窒素を充填した後、80℃の水浴で24時間反応させた。この半応液を室温で冷却した後、減圧蒸留用100mlのフラスコに移し60℃で減圧濃縮させた。減圧濃縮された乾燥物にメタノール20mlを入れて完全に溶解し0.45μmフィルターで濾過した後、濾液10mlを取って更に60℃で減圧濃縮させた。残渣に内部標準液5mlを入れトリメチルクロロシラン(TMCS)0.5ml、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)1mlを入れて3分間激しく震盪した後、濾過して検液とした。標準液は特級試薬メチル‐α‐D‐マンノピラノシドを34.5mg精密に計量した後、内部標準液を加えて溶かし正確に50mlとし、この液5mlを取りTMCS0.5mlおよびHMDS1mlを入れて3分間激しく震盪して調製した。内部標準液はラムノース50mgを精密に計り無水ピリジンを加えて溶かし正確に100mlにして調製した。
【0030】
前記の通り調製された検液および標準液を以って次のGC分析法により試験して得られる検液と標準液の面積で多糖類の含量を計算した。
【0031】
分析機器はGC(Varian 3800)にし、分析条件は次の通りにした。
【0032】
Column:RTX−5Capillary column(0.53mm×30m)
Detector:水素火炎イオン化検出器(290℃)
Column Temp:180℃で1分間維持後、毎分4℃で上昇させ220℃で維持する。
【0033】
Injector Temp:270℃
Carrier gas:N2 80psi、Air 60psi
Injection volume:1.0μl
計算方法は下記の通りである。
【0034】
検体中メチル-α‐D‐マンノピラノシドピーク面積
As:標準液のメチル‐α‐D‐マンノピラノシドピーク面積
Asi:標準液の内部標準物質ピーク面積
AT:検液のメチル‐α‐D‐マンノピラノシドピーク面積
Ati:検液の内部標準物質ピーク面積
Ws:標準品採取量(mg)
WT:検体の採取量(mg)
分析の結果、桑黄発酵紅参粉末1g当たりに14mgのマンノーズが含まれた反面、水参、乾参または紅参ではマンノーズが全く分析されなかった(図3、図4)。従って、本発明方法による桑黄発酵人参粉末は桑黄菌糸体から由来した多糖類を含んでおり、水参・乾参および紅参で得られた多糖類とは構成糖の種類および含量が全く異なるのが分かった。
【0035】
(実験例3) 本発明の生物転換された桑黄発酵紅参の免疫増強効果調査
<培養および試験物質投与>
本発明の前記実施例3で製造した桑黄発酵紅参粉末を利用して抽出されたサポニンを利用して大食細胞での免疫増強効果を調査した。大食細胞の活性度を測定するために一酸化窒素(NO)の生成量を求めた。普通一酸化窒素は低分子のラジカルであって神経信号伝達機能、血液凝固および血圧調節機能および癌細胞に対抗する免疫機能などの役割が知られている。大食細胞系列のRaw264.7細胞株は韓国細胞株研究財団から分譲を受けたのであり、10%FBSを含有するDMEMを細胞培養液で37℃、5%のCOの培養器で培養し、1週間に2回継代培養して維持した。Raw264.7細胞株を10%のFBSを含有するDMEMで5×105cells/mlにして96 well plateに分注して24時間適応化させ、FBSが含まれていないDMEM培地を利用して試験物質を溶かして処理した。24時間培養した後、各wellの培養液から遊離されたNO量を測定した。NOの定量のために上澄み液100μlを取り、Griess試薬(Sigma:G4410)を同量混合して15分間反応させた後、ELISA判読器を用いて、540nmで吸光度を測定した。標準検量線を作成するために亜硝酸ナトリウムを利用した。試験物質処理群および陰性対照群などのNO濃度は優位差検定(Student t‐test)を利用して分析し、P<0.01であるとき有意性を認めた。
【0036】
<免疫増強効果の測定>
本実験はマウス由来の大食細胞(Raw 264.7)に桑黄発酵紅参など4種の試験物質を処理して一酸化窒素(NO)の生成量を指標として大食細胞の免疫機能強化効果を評価するために実施した。活性化された大食細胞により合成されるNOは免疫界を活性化し、抗ウイルスおよび抗癌活性を発揮する重要な信号物質の役割をするものと知られている。本実験結果では、試験物質全てからNO濃度が陰性対照群に比べて増加傾向を示し、特に、桑黄発酵紅参処理群の場合、その他の試験物質より高い14.6μmol/LのNO生成量を示した(図5)。従って、本発明桑黄発酵紅参の場合、代食細胞の免疫機能調節効果が優秀なものと判断された。即ち、陰性対照群と比較したとき全ての試験物質で統計学的に有意性(P<0.01)があるのが確認された。
【0037】
[実験例4] 本発明の生物転換された発酵紅参の毒性試験
<実験動物の食餌および試験物質の投与>
本発明前記実施例3で製造された桑黄発酵紅参粉末を利用してICR系列のマウスに単回投与して毒性試験を行った。マウスに発酵紅参産物を1回経口投与した後、14日間の死亡率、臨床症状観察、体重測定、飼料および水の摂取量測定、GOT/GPT検査などを実施して産物の毒性を評価した。実験動物は(株)大韓バイオリンクで生産された4週齢のICR系列のマウス40匹を1週間動物飼育室(22±2℃)で適応化させた後に利用した。夫々のグループには5匹のマウスを選別し、試験期間中に用いた敷藁は高圧蒸気滅菌器で121℃、15分間滅菌し、水は滅菌水道水を清潔な瓶に入れて実験動物に自由に供給した。
【0038】
実験物質の調製は桑黄発酵紅参産物を熱水抽出物と100メッシュを通過した粉末に分けて、投与量別に選抜して生理食塩水に泡が生じないように注意深く混合して投与当日に行った。投与容量は下記表の通りに行った。試験物質の投与はゾンデを用いて経口投与し、投与量は投与直前の体重に従って算出した。
【0039】
<分析試料の採取および試料分析>
全ての実験動物に対し毎日1回一定時間に一般状態の変化、中毒症状の発現および死亡の有無を観察した。体重測定と飼料および水の摂取量は2日に一回ずつ測定し、体重は試験物質の投与前および剖検前日にも測定した。血液生化学的検査は血液を冷蔵庫に2時間程度放置した後、遠心分離し血清を分離してGOT/GPT検出キット(牙山製薬)を利用した。
【0040】
実験の結果、全ての実験群で死亡した動物はなく、別他の臨床症状も観察されなかった。体重測定、飼料および水の摂取量測定の結果、雌・雄投与群全部から対照群と比較して有意性のある変化は観察されなかった(表3)。また、血液生化学的検査でも対照群と比較して観察された異常徴候がなく(表4)、剖検結果、組織臓器の特別な異常もまた観察されなかった。
【0041】
【表3】

【0042】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明による水参のジンセノサイドパターンを示した液体クロマトグラムである。
【図2】本発明の生物転換法により生産されたジンセノサイドパターンを示した液体クロマトグラムである。
【図3】本発明による紅参多糖体の構成糖のパターンを示したガスクロマトグラムである。
【図4】本発明の生物転換法により生産された桑黄茸発酵紅参多糖体の構成糖のパターンを示したガスクロマトグラムである。
【図5】本発明の桑黄茸発酵紅参の免疫増強効果を示した図面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペリヌス属菌株の液体培養から生成される生物転換法を利用したジンセノサイド製造方法。
【請求項2】
前記ペリヌス属菌株はペリヌスリンテウス(Phellinus linteus KCTC 0912BP)であることを特徴とする請求項1記載のジンセノサイド製造方法。
【請求項3】
前記ペリヌス属菌株を、生物転換用原料人参粉末を含む液体培養培地で、空気注入速度0.1〜1vvm、攪拌速度50〜500rpm、培養温度20〜35℃で1〜10日間培養することを特徴とする請求項1または2記載のジンセノサイド製造方法。
【請求項4】
前記生物転換用原料人参が水参、乾参または紅参を含むことを特徴とする請求項3記載のジンセノサイド製造方法。
【請求項5】
請求項1から4いずれか記載のジンセノサイド製造方法により製造されたジンセノサイドRd、Rg2またはRh1を含み、多糖体構成成分がマンノーズである生物転換人参粉末。
【請求項6】
請求項1から4いずれか記載のジンセノサイド製造方法により製造されたジンセノサイドRd、Rg2またはRh1を含み、多糖体構成成分がマンノーズである生物転換人参粉末抽出物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−212137(P2008−212137A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174160(P2007−174160)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(507224255)ファニン ファーム カンパニー リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】WHANIN PHARM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】84−1, Munjeong−dong,Songpa−gu, Seoul 138−200, Republic of Korea
【Fターム(参考)】