生理学的パラメータを測定するセンサー配置構成および方法
本発明は、人の生理学的パラメータを監視する、少なくとも1つのセンサーを有するセンサー配置構成および方法と、繊維織物と、繊維織物の使用とに関する。例えば、身体パラメータの遠隔容量型検出において、信号の品質を向上させ、かつ雑音を抑制するのに適しているセンサー配置構成が記載されている。これを達成するため、特定の繊維織物が使用されており、ベッドにおいて使用される織物、例えば、毛布、ベッドカバー、またはマットレスに組み込まれていることが、好ましい。これらの織物繊維は、外部源からの電磁干渉を抑制することができ、かつ、測定中の電荷の蓄積、特に、人の動きに起因する電荷の蓄積を回避するように配置することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の生理学的パラメータを測定する、少なくとも1つのセンサーを有するセンサー配置構成および方法と、繊維織物と、繊維織物の使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
生理学的パラメータをベッドサイドにて測定することは、例えば、心臓病の患者のための病院設備において標準的である。さらに、心臓のデータあるいは肺のデータを自宅で測定することも公知である。国際公開第02/068921号パンフレットには、基本的に患者の存在および挙動・行動を監視するための、力センサーおよび中央監視ステーションを備えているベッドが記載されている。この課題に対する新規の解決策としては、重要なパラメータを、ベッドに組み込まれているセンサーを使用して、機械的、電気的、および電磁的に検出する方法が挙げられる。これらの方法は、欠点として、環境からの電磁干渉(EMI)に起因して誤った信号を出力する傾向がある。このことは、特に、誘導型測定および容量型測定の場合にあてはまる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の目的は、電磁放射の影響を受けにくい、生理学的パラメータを測定するセンサー配置構成および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上の目的は、人の生理学的パラメータを監視する少なくとも1つのセンサーと、少なくとも1枚の繊維織物とを備えているセンサー配置構成であって、前記繊維織物が、前記センサーとの電磁干渉を抑制する導電性遮蔽体を備えている、センサー配置構成、によって達成される。
【0005】
本発明によるセンサー配置構成の利点は、このセンサー配置構成では、特に、容量型または誘導型センサー、あるいは、電磁干渉の影響を受けやすい任意の他の方法を使用しての測定中に、電磁干渉に起因する雑音を低減する効果的な遮蔽体を、ベッドに組み込むことができることである。
【0006】
本発明の好ましい実施例によると、前記導電性遮蔽体は、等電位化部(potential equalization)に接続されている。等電位化部は、本実施例の意味においては、導電性遮蔽体が有効に駆動される電位、または接地とすることができる。この実施例によるセンサー配置構成の利点は、容量型または誘導型の測定を阻害する静電荷または動電荷を、繊維織物を介して放電できることである。導電性遮蔽体は、閉じた領域である必要はなく、導電性要素の網構造(net)から成ることが好ましい。
【0007】
導電性遮蔽体を備えている繊維織物は、人、または、例えば、病院のスタッフの毎日の行動あるいは業務に差し支えないことが好ましい。繊維織物は、はっきりとは目立たない、もしくは、ベッドまたはベッドルームの設計を害さない、またはその両方であることが、より好ましい。繊維織物(織布または不織布とすることができる)は、適切な織物、すなわち、ベッドに関連して使用されている織物と共通していることが、最も好ましい。
【0008】
好ましい実施例においては、前記繊維織物は、着用可能な衣類、特に、寝室着またはパジャマなどの寝間着の少なくとも一部である。別の好ましい実施例によると、前記繊維織物は、ベッドに組み込まれている。前記繊維織物は、寝具、例えば、ベッドシーツ、枕カバー、またはベッドカバーの一部であることが、より好ましい。前記繊維織物は、マットレスの一部であることがさらに好ましく、このマットレスは動かない、すなわち、(眠っている)人によってマットレスの位置がずれることが無いことが有利である。
【0009】
本発明のさらなる好ましい実施例においては、前記センサーは、前記繊維織物に組み込まれている。複数の機能要素を繊維織物に組み込むことができることが有利である。前記繊維織物は、少なくとも、前記導電性遮蔽体を備えている遮蔽層と、前記センサーを備えている検出層と、前記遮蔽層と前記検出層との間に配置されている絶縁層、の層構造を備えていることが、より好ましい。センサーが遮蔽層に相対的に近接していることにより、センサーの効果的な遮蔽が提供されることが有利である。
【0010】
本発明のさらなる好ましい実施例によると、前記センサー配置構成は、前記人を等電位化部に接続する接点をさらに備えている。したがって、人の身体自体が、さらなる遮蔽体として使用されることは、有利である。さらに、人の動きに起因する静電荷の蓄積が低減される。前記接点は、織物電極であることが好ましく、前記織物電極は、着用可能な衣類、ベッドシーツ、ベッドカバー、枕のうちの1つ以上に配置されていることが、より好ましい。
【0011】
本発明のさらなる好ましい実施例によると、前記センサー配置構成は、2枚以上の繊維織物を備えており、繊維織物の各々は、前記導電性遮蔽体の一部を備えており、前記導電性遮蔽体の前記一部が電気的に接続されている。この実施例の利点は、センサーを2つ以上の方向から遮蔽することができることであり、導電性遮蔽体はセンサーを囲んでいることが好ましく、したがって、一種のファラデー箱を形成していることが有利である。
【0012】
一方の繊維織物がベッドカバーに配置されており、かつ、他方の繊維織物がベッドシーツまたはマットレスに配置されていることが好ましく、したがって、上および下からの電磁放射からセンサーが遮蔽されていることが有利である。
【0013】
本発明の別の目的は、少なくとも1つの着用可能なセンサーまたはベッドに組み込まれているセンサーを使用して、人の生理学的パラメータを測定する方法であって、前記センサーが、導電性遮蔽体を備えている繊維織物を使用して電磁干渉から遮蔽されている、方法、である。本発明による方法の利点は、導電性遮蔽体を備えている繊維織物が、人、または、例えば、病院のスタッフの毎日の行動あるいは業務に差し支えないことである。
【0014】
本発明の別の目的は、少なくとも1つのセンサーを有する検出層と、前記センサーとの電磁干渉を抑制する導電性遮蔽体を備えている遮蔽層と、を少なくとも備えている層構造、を有する繊維織物である。
【0015】
本発明による繊維織物の利点は、複数の機能要素が繊維織物に組み込まれていることである。センサーが遮蔽層に相対的に近接していることにより、センサーの効果的な遮蔽が提供されることが有利である。前記繊維織物は、絶縁層をさらに備えていることが好ましく、前記絶縁層は、前記遮蔽層と前記検出層との間に配置されている。
【0016】
本発明の別の目的は、ベッドに組み込まれているセンサーまたは着用可能なセンサーとの電磁干渉を抑制する導電性遮蔽体を備えている繊維織物の使用である。ベッドに組み込まれているセンサーまたは着用可能なセンサーに関連して繊維織物を使用することにより、センサーが割り当てられている人、または、例えば、病院のスタッフの毎日の行動あるいは業務に過度に差し支えることなく、電磁遮蔽を提供することが有利である。
【0017】
本発明の上記およびその他の特性、特徴、および利点は、本発明の原理を一例として図解している添付の図面を参照しながら、以下の詳細な説明を読み進めることによって明らかになるであろう。以下の説明は、例を目的としてのみ記載されており、本発明の範囲を制限するものではない。添付の図面の内容は以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1a】ベッドに組み込まれているセンサーの例を概略的に示している。
【図1b】ベッドに組み込まれているセンサーの例を概略的に示している。
【図2a】身体に着用可能なセンサーの例を概略的に示している。
【図2b】身体に着用可能なセンサーの例を概略的に示している。
【図3a】本発明による、センサー配置構成および繊維織物の実施例を概略的に示している。
【図3b】本発明による、センサー配置構成および繊維織物の実施例を概略的に示している。
【図4a】本発明による繊維織物を有する、本発明によるセンサー配置構成の別の実施例を概略的に示している。
【図4b】本発明による繊維織物を有する、本発明によるセンサー配置構成の別の実施例を概略的に示している。
【図5】遮蔽されていない容量型センサーの測定値と、遮蔽されている容量型センサーの測定値の例を1つの図に示している。
【図6】本発明による繊維織物の異なる例によって遮蔽されている容量型センサーの測定値を示している。
【図7】本発明による繊維織物の異なる例によって遮蔽されている容量型センサーの測定値を示している。
【図8】本発明による繊維織物の異なる例によって遮蔽されている容量型センサーの測定値を示している。
【図9】本発明による繊維織物の異なる例によって遮蔽されている容量型センサーの測定値を示している。
【図10】本発明による繊維織物の異なる例によって遮蔽されている容量型センサーの測定値を示している。
【図11】本発明による繊維織物の異なる例によって遮蔽されている容量型センサーの測定値を示している。
【図12】本発明による繊維織物の異なる例によって遮蔽されている容量型センサーの測定値を示している。
【図13】本発明による繊維織物の異なる例によって遮蔽されている容量型センサーの測定値を示している。
【図14】本発明による繊維織物の異なる例によって遮蔽されている容量型センサーの測定値を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、特定の実施例に関連して特定の図面を参照しながら説明されているが、本発明はこれらの実施例または図面に限定されず、請求項によってのみ限定される。記載されている図面は概略的なものに過ぎず、本発明を制限するものではない。図面において、いくつかの要素の大きさは、図解を目的として誇張されており、正しい縮尺では描かれていない。
【0020】
単数の名詞を記載するときに不定冠詞または定冠詞(例えば、「a」、「an」、「the」)が使用されている場合、特に明記されていない限りは、複数のその名詞も含まれる。
【0021】
さらに、説明および請求項における語「第一」、「第二」、「第三」などは、類似する要素の間で区別するために使用されており、必ずしも連続する順序あるいは時間的な順序を記述してはいない。このように使用されている語は、適切な状況下において相互に交換可能であり、本文書に記載されている本発明の実施例は、本文書に記載または図解されている以外の順序において動作できることを理解されたい。
【0022】
説明および請求項における語「上部」、「下部」、「の上」、「の下」などは、説明を目的として使用されており、必ずしも相対的な位置を記述してはいない。このように使用されている語は、適切な状況下において相互に交換可能であり、本文書に記載されている本発明の実施例は、本文書に記載または図解されている以外の配置において動作できることを理解されたい。
【0023】
なお、説明および請求項において使用されている語「備えている」は、その後ろにリストされている手段に制限されるようには解釈されないものとする。この語は、別の要素またはステップを除外しない。したがって、表現「手段Aおよび手段Bを備えているデバイス」の範囲は、コンポーネントAおよびコンポーネントBのみから構成されるデバイスには制限されないものとする。この表現は、本発明においてはこのデバイスの関連するコンポーネントのみが、AおよびBであることを意味する。
【0024】
図1a、図1b、図2a、および図2bには、ベッドに組み込まれているセンサーの例と、身体に着用可能なセンサーの例を概略的に示してある。ベッドの生地(図1aおよび図1b)および衣類(図2aおよび図2b)に組み込まれているセンサー10(例えば、容量型または誘導型、あるいは直接接触型電極)が示されている。センサー10は、例えば、図1aに示されているように、ベッドシーツ1に組み込むことができる。図1bは、ベッドシーツ1の概略的な断面図を示しており、センサー10を任意の適切な種類の分析電子回路(図示していない)に接続しているリード線11が見えている。図2aは、センサー10が組み込まれているシャツ2を示している。図2bは、センサー10が装着されているズボン3を示している。センサー10の配置形状に応じて、異なる遮蔽オプションが適用される。
【0025】
図3aおよび図3bには、1つの可能な方法が概略的に描かれており、ベッドシーツ1におけるセンサー10によって生理学的パラメータが測定される人の下のベッド(いずれも図示していない)の中に、導電性遮蔽体20が層として組み込まれている。導電性遮蔽体20は、例えば、金属板、金属薄板の網構造、または導電糸の網構造とすることができる。導電性遮蔽体20は、繊維織物に含まれている1つのデバイスとして設けることができ、このデバイスは、ベッドの中に配置されている、あるいは、マットレス(図示していない)またはベッドシーツに組み込まれている。別の実施例によると、ベッドシーツ1は、導電性遮蔽層20と、1つまたは複数の絶縁層30と、センサー10を有する検出層と、を含んでいる層構造を備えている。導電性遮蔽体20は、等電位化部12(本実施例においては接地部12)に接続されていることが好ましい。導電性遮蔽体20は、必ずしも閉じた領域である必要はなく、導電性要素(例えば、導電糸)の網構造として配置することもできる。導電糸は、格子または蛇行状として配置することができるが、完全な面を形成することもできる。
【0026】
本発明による、描かれているセンサー配置構成は、下部領域からの電磁干渉に対する良好な遮蔽を提供する。人の上部において同じ良好な遮蔽を得る目的で、図4aおよび図4bに示したように、類似する層構造をベッドカバー4に組み込むことができる。
【0027】
図4aは、センサー10と、ベッドシーツ1の一部とを覆っているベッドカバー4の平面図である。この場合も、ベッド内の人およびベッド自体は描いていない。図4bにおいて最も良く理解できるように、導電性遮蔽体20の一部21は、ベッドカバー4に組み込まれており、ベッドシーツ1における導電性遮蔽層20への電気接続13を備えており、導電性遮蔽層20は、この場合にも、等電位化部12(本実施例においては電位P)に接続されている。したがって、遮蔽層20は、この電位において有効に駆動される。この方式においても、人における電荷蓄積を防止することができ、したがって、さらに、センサー10の感度の低下が防止され、かつ測定電子回路の飽和が防止される。ベッドシーツ1とベッドカバー4との間の電気接点(galvanic contact)によって、人およびセンサー10は、ベッド上にいるときの動きから蓄積する電荷を除去するための電位によって完全に囲まれる。
【0028】
別の手法においては、人自身の身体を遮蔽体として用いることができる。この場合、人が、明確な電位に接続されていることを保証しなければならない。このことは、人の寝間着における織物電極によって、または、ベッドシーツまたは枕の一部を織物接点として使用することによって、人を接続することにより達成することができる。この場合にも、導電性の繊維織物を使用することができる。
【0029】
次に、図5〜図14を参照すると、遮蔽を目的とする繊維織物構造の効果の傾向を示す測定結果が示されている。遮蔽能力に対する繊維織物構造の影響を示すため、皮膚との電気的接触なしに、心電図(ECG)と、筋電図(EMG)と、脳電図(EEG)とを測定するために使用される容量型のセンサーを、導電性遮蔽体を有する9つの異なる繊維織物を使用して遮蔽した。マットレスまたはベッドシーツ1に組み込まれているセンサー10(図1a、図1b)と同様に、このようなセンサーを検出電極が上方を向くように配置したとき、センサー10は、空気中に存在する信号を検出する。織物の遮蔽能力は、センサー10によって検出される信号の周波数スペクトルを見ることによって観察することができる。したがって、図5〜図14には、横座標軸におけるヘルツ単位の周波数に対して、dBm単位のセンサー信号出力(1ミリワットに対する出力測定値)が縦座標軸に示されている。図6〜図12には、1つの図あたり2つの測定値が描かれている。原則として、点線の曲線は、繊維織物の2枚のコーティング層による測定値を示しているのに対して、実線は、繊維織物の1層による測定値を示している。
【実施例1】
【0030】
9つの異なる繊維織物(本例においては織物1〜織物9と称する)を使用して、容量型センサーを遮蔽した。これらの織物は、以下の2つのカテゴリに分けることができる。
金属ベースのコーティングを有する織物
ポリマーベースのコーティングを有する織物
【0031】
金属によってコーティングされている織物は、ポリマーによってコーティングされている織物よりも、1 m2あたりの抵抗率が低い。電荷の蓄積を防止するためには、1 m2あたりの抵抗率が低い織物を使用することが有利である。したがって、遮蔽体は、特に全体にわたり同じ電位を有し、したがって、電荷の蓄積が防止される。
【0032】
遮蔽に使用された異なる織物の周波数スペクトルは、図6〜図14に示されている。
【0033】
図5におけるスペクトルは、得ることのできる限界を示しており、何らの遮蔽なしでセンサーを使用したときと(点線)、厚さ2.5ミリメートルの壁の閉じた金属箱によって遮蔽が達成されているときとを示している。
【0034】
図13および図14には、織物8および織物9(いずれもポリマーによってコーティングされている織物)の測定値が示されている。織物における隙間は、その遮蔽能力に関連するものと結論することができる。織物8は、約1.6 mm×1.8 mm幅の穴を有するメッシュタイプの織物である。これに対して、織物9は、相当に小さい隙間を有する密に織られている織物である。織物8は、50 Hz、150 Hz、250 Hz、350 Hz、および450 Hzから、センサーを遮蔽するには適していない。
【0035】
図9を参照すると、織物4の測定値は、同程度の結果を示している。織物4は、編まれて金属(銀)によってコーティングされた織物である。また、織物4は、同程度の隙間構造を備えている。織物4の測定値から、織物における隙間のサイズは、遮蔽能力に関連するものと結論することができる。単層の織物4を使用してセンサーを遮蔽したときには(実線)、周波数50 Hzおよび350 Hzは、遮蔽されていないセンサー(図5)の場合よりも小さいが、2層の織物4を使用したときには、センサー出力に対するこれらの周波数成分の影響がさらに低減している(点線)。2層を使用すると、織物における隙間が効果的に減少する。
【0036】
次に図12を参照し、隙間構造を有し、かつ金属(銀の上のニッケル)によってコーティングされている別の織物は、織物7である。織物7の測定値からも、2層を有する場合(点線)には、単層(実線))よりも良好にセンサーを遮蔽することと、したがって、隙間のサイズが小さいほど良好であることを結論することができる。織物4と織物7の測定値を比較すると、2層の織物7は、2層の織物4よりもセンサーを良好に遮蔽することを観察することができる。肉眼では、織物4と織物7の隙間は同じ大きさである。実際に確認すると、織物7(厚さ18ミル)は、織物4(8±1ミル)よりも厚い。
【0037】
織物1, 2, 3, 5, 6, および9は、織物4, 7, および8のように、明確に確認できる隙間構造を持たない織物である。明確に確認できない隙間構造を有する一連の織物のうち、織物2と織物6は、構造が非常に似ている。いずれも、金属によってコーティングされているリップストップナイロン織物である。織物6は、銀によってコーティングされており、織物2は、銀の上のニッケルによってコーティングされている。
【0038】
図7および図11に示されている織物2および織物6の測定値は、異なる遮蔽挙動を明確に示している。織物6(図11)は、25 Hz、50 Hz、225 Hz、および250 Hzなどの周波数において、センサーの遮蔽において織物2(図7)ほど良好ではない。これとは別に、センサーの出力は、直流から約250 Hzの周波数帯域において高い雑音レベルを有し、これは、ECGの測定に関連する。これらの繊維は同じ構造を有するが、表面抵抗率に関して異なるため、遮蔽も表面抵抗率に依存するものと想定される。織物6の表面抵抗率は、1 m2あたり0.25オーム未満であり、織物2の表面抵抗率は、1 m2あたり0.1オーム未満である。
【0039】
次に図8および図10を参照し、織物3および織物5は、いずれも、銀によってコーティングされている、ナイロン糸をベースとする織物である。さらに、いずれも、不織布である。織物3(図8)は、編地であり、織物5(図10)は、ループ織物(looped fabric)である。織物3および織物5は厚く見えるが、測定値は、織物3および織物5によって提供される遮蔽があまり良好ではないことを示している。これらの織物のいずれも、250 Hz以下の周波数範囲においてセンサーをあまり良好には遮蔽していない。この領域における雑音レベルは、確認できる隙間のない構造の、テストした他の織物の場合よりも高い。
【0040】
測定された最後の織物は、織物1であり、その測定値は図6に示されている。織物1は、ナイロン糸をベースとするいわゆる点結合織物(point-bonded fabric)であり、銀の上のニッケルによってコーティングされている。単層のみの織物1を使用したときには、周波数250 Hzにおいてセンサーが完全には遮蔽されない(実線)。2層を使用すると、250 Hzの遮蔽が高まる(点線)。なお、ECGの測定の場合、150 Hzまでの周波数のみが必要である。EMGの場合、500 Hzまでの周波数が関連する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の生理学的パラメータを測定する、少なくとも1つのセンサーを有するセンサー配置構成および方法と、繊維織物と、繊維織物の使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
生理学的パラメータをベッドサイドにて測定することは、例えば、心臓病の患者のための病院設備において標準的である。さらに、心臓のデータあるいは肺のデータを自宅で測定することも公知である。国際公開第02/068921号パンフレットには、基本的に患者の存在および挙動・行動を監視するための、力センサーおよび中央監視ステーションを備えているベッドが記載されている。この課題に対する新規の解決策としては、重要なパラメータを、ベッドに組み込まれているセンサーを使用して、機械的、電気的、および電磁的に検出する方法が挙げられる。これらの方法は、欠点として、環境からの電磁干渉(EMI)に起因して誤った信号を出力する傾向がある。このことは、特に、誘導型測定および容量型測定の場合にあてはまる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の目的は、電磁放射の影響を受けにくい、生理学的パラメータを測定するセンサー配置構成および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上の目的は、人の生理学的パラメータを監視する少なくとも1つのセンサーと、少なくとも1枚の繊維織物とを備えているセンサー配置構成であって、前記繊維織物が、前記センサーとの電磁干渉を抑制する導電性遮蔽体を備えている、センサー配置構成、によって達成される。
【0005】
本発明によるセンサー配置構成の利点は、このセンサー配置構成では、特に、容量型または誘導型センサー、あるいは、電磁干渉の影響を受けやすい任意の他の方法を使用しての測定中に、電磁干渉に起因する雑音を低減する効果的な遮蔽体を、ベッドに組み込むことができることである。
【0006】
本発明の好ましい実施例によると、前記導電性遮蔽体は、等電位化部(potential equalization)に接続されている。等電位化部は、本実施例の意味においては、導電性遮蔽体が有効に駆動される電位、または接地とすることができる。この実施例によるセンサー配置構成の利点は、容量型または誘導型の測定を阻害する静電荷または動電荷を、繊維織物を介して放電できることである。導電性遮蔽体は、閉じた領域である必要はなく、導電性要素の網構造(net)から成ることが好ましい。
【0007】
導電性遮蔽体を備えている繊維織物は、人、または、例えば、病院のスタッフの毎日の行動あるいは業務に差し支えないことが好ましい。繊維織物は、はっきりとは目立たない、もしくは、ベッドまたはベッドルームの設計を害さない、またはその両方であることが、より好ましい。繊維織物(織布または不織布とすることができる)は、適切な織物、すなわち、ベッドに関連して使用されている織物と共通していることが、最も好ましい。
【0008】
好ましい実施例においては、前記繊維織物は、着用可能な衣類、特に、寝室着またはパジャマなどの寝間着の少なくとも一部である。別の好ましい実施例によると、前記繊維織物は、ベッドに組み込まれている。前記繊維織物は、寝具、例えば、ベッドシーツ、枕カバー、またはベッドカバーの一部であることが、より好ましい。前記繊維織物は、マットレスの一部であることがさらに好ましく、このマットレスは動かない、すなわち、(眠っている)人によってマットレスの位置がずれることが無いことが有利である。
【0009】
本発明のさらなる好ましい実施例においては、前記センサーは、前記繊維織物に組み込まれている。複数の機能要素を繊維織物に組み込むことができることが有利である。前記繊維織物は、少なくとも、前記導電性遮蔽体を備えている遮蔽層と、前記センサーを備えている検出層と、前記遮蔽層と前記検出層との間に配置されている絶縁層、の層構造を備えていることが、より好ましい。センサーが遮蔽層に相対的に近接していることにより、センサーの効果的な遮蔽が提供されることが有利である。
【0010】
本発明のさらなる好ましい実施例によると、前記センサー配置構成は、前記人を等電位化部に接続する接点をさらに備えている。したがって、人の身体自体が、さらなる遮蔽体として使用されることは、有利である。さらに、人の動きに起因する静電荷の蓄積が低減される。前記接点は、織物電極であることが好ましく、前記織物電極は、着用可能な衣類、ベッドシーツ、ベッドカバー、枕のうちの1つ以上に配置されていることが、より好ましい。
【0011】
本発明のさらなる好ましい実施例によると、前記センサー配置構成は、2枚以上の繊維織物を備えており、繊維織物の各々は、前記導電性遮蔽体の一部を備えており、前記導電性遮蔽体の前記一部が電気的に接続されている。この実施例の利点は、センサーを2つ以上の方向から遮蔽することができることであり、導電性遮蔽体はセンサーを囲んでいることが好ましく、したがって、一種のファラデー箱を形成していることが有利である。
【0012】
一方の繊維織物がベッドカバーに配置されており、かつ、他方の繊維織物がベッドシーツまたはマットレスに配置されていることが好ましく、したがって、上および下からの電磁放射からセンサーが遮蔽されていることが有利である。
【0013】
本発明の別の目的は、少なくとも1つの着用可能なセンサーまたはベッドに組み込まれているセンサーを使用して、人の生理学的パラメータを測定する方法であって、前記センサーが、導電性遮蔽体を備えている繊維織物を使用して電磁干渉から遮蔽されている、方法、である。本発明による方法の利点は、導電性遮蔽体を備えている繊維織物が、人、または、例えば、病院のスタッフの毎日の行動あるいは業務に差し支えないことである。
【0014】
本発明の別の目的は、少なくとも1つのセンサーを有する検出層と、前記センサーとの電磁干渉を抑制する導電性遮蔽体を備えている遮蔽層と、を少なくとも備えている層構造、を有する繊維織物である。
【0015】
本発明による繊維織物の利点は、複数の機能要素が繊維織物に組み込まれていることである。センサーが遮蔽層に相対的に近接していることにより、センサーの効果的な遮蔽が提供されることが有利である。前記繊維織物は、絶縁層をさらに備えていることが好ましく、前記絶縁層は、前記遮蔽層と前記検出層との間に配置されている。
【0016】
本発明の別の目的は、ベッドに組み込まれているセンサーまたは着用可能なセンサーとの電磁干渉を抑制する導電性遮蔽体を備えている繊維織物の使用である。ベッドに組み込まれているセンサーまたは着用可能なセンサーに関連して繊維織物を使用することにより、センサーが割り当てられている人、または、例えば、病院のスタッフの毎日の行動あるいは業務に過度に差し支えることなく、電磁遮蔽を提供することが有利である。
【0017】
本発明の上記およびその他の特性、特徴、および利点は、本発明の原理を一例として図解している添付の図面を参照しながら、以下の詳細な説明を読み進めることによって明らかになるであろう。以下の説明は、例を目的としてのみ記載されており、本発明の範囲を制限するものではない。添付の図面の内容は以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1a】ベッドに組み込まれているセンサーの例を概略的に示している。
【図1b】ベッドに組み込まれているセンサーの例を概略的に示している。
【図2a】身体に着用可能なセンサーの例を概略的に示している。
【図2b】身体に着用可能なセンサーの例を概略的に示している。
【図3a】本発明による、センサー配置構成および繊維織物の実施例を概略的に示している。
【図3b】本発明による、センサー配置構成および繊維織物の実施例を概略的に示している。
【図4a】本発明による繊維織物を有する、本発明によるセンサー配置構成の別の実施例を概略的に示している。
【図4b】本発明による繊維織物を有する、本発明によるセンサー配置構成の別の実施例を概略的に示している。
【図5】遮蔽されていない容量型センサーの測定値と、遮蔽されている容量型センサーの測定値の例を1つの図に示している。
【図6】本発明による繊維織物の異なる例によって遮蔽されている容量型センサーの測定値を示している。
【図7】本発明による繊維織物の異なる例によって遮蔽されている容量型センサーの測定値を示している。
【図8】本発明による繊維織物の異なる例によって遮蔽されている容量型センサーの測定値を示している。
【図9】本発明による繊維織物の異なる例によって遮蔽されている容量型センサーの測定値を示している。
【図10】本発明による繊維織物の異なる例によって遮蔽されている容量型センサーの測定値を示している。
【図11】本発明による繊維織物の異なる例によって遮蔽されている容量型センサーの測定値を示している。
【図12】本発明による繊維織物の異なる例によって遮蔽されている容量型センサーの測定値を示している。
【図13】本発明による繊維織物の異なる例によって遮蔽されている容量型センサーの測定値を示している。
【図14】本発明による繊維織物の異なる例によって遮蔽されている容量型センサーの測定値を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、特定の実施例に関連して特定の図面を参照しながら説明されているが、本発明はこれらの実施例または図面に限定されず、請求項によってのみ限定される。記載されている図面は概略的なものに過ぎず、本発明を制限するものではない。図面において、いくつかの要素の大きさは、図解を目的として誇張されており、正しい縮尺では描かれていない。
【0020】
単数の名詞を記載するときに不定冠詞または定冠詞(例えば、「a」、「an」、「the」)が使用されている場合、特に明記されていない限りは、複数のその名詞も含まれる。
【0021】
さらに、説明および請求項における語「第一」、「第二」、「第三」などは、類似する要素の間で区別するために使用されており、必ずしも連続する順序あるいは時間的な順序を記述してはいない。このように使用されている語は、適切な状況下において相互に交換可能であり、本文書に記載されている本発明の実施例は、本文書に記載または図解されている以外の順序において動作できることを理解されたい。
【0022】
説明および請求項における語「上部」、「下部」、「の上」、「の下」などは、説明を目的として使用されており、必ずしも相対的な位置を記述してはいない。このように使用されている語は、適切な状況下において相互に交換可能であり、本文書に記載されている本発明の実施例は、本文書に記載または図解されている以外の配置において動作できることを理解されたい。
【0023】
なお、説明および請求項において使用されている語「備えている」は、その後ろにリストされている手段に制限されるようには解釈されないものとする。この語は、別の要素またはステップを除外しない。したがって、表現「手段Aおよび手段Bを備えているデバイス」の範囲は、コンポーネントAおよびコンポーネントBのみから構成されるデバイスには制限されないものとする。この表現は、本発明においてはこのデバイスの関連するコンポーネントのみが、AおよびBであることを意味する。
【0024】
図1a、図1b、図2a、および図2bには、ベッドに組み込まれているセンサーの例と、身体に着用可能なセンサーの例を概略的に示してある。ベッドの生地(図1aおよび図1b)および衣類(図2aおよび図2b)に組み込まれているセンサー10(例えば、容量型または誘導型、あるいは直接接触型電極)が示されている。センサー10は、例えば、図1aに示されているように、ベッドシーツ1に組み込むことができる。図1bは、ベッドシーツ1の概略的な断面図を示しており、センサー10を任意の適切な種類の分析電子回路(図示していない)に接続しているリード線11が見えている。図2aは、センサー10が組み込まれているシャツ2を示している。図2bは、センサー10が装着されているズボン3を示している。センサー10の配置形状に応じて、異なる遮蔽オプションが適用される。
【0025】
図3aおよび図3bには、1つの可能な方法が概略的に描かれており、ベッドシーツ1におけるセンサー10によって生理学的パラメータが測定される人の下のベッド(いずれも図示していない)の中に、導電性遮蔽体20が層として組み込まれている。導電性遮蔽体20は、例えば、金属板、金属薄板の網構造、または導電糸の網構造とすることができる。導電性遮蔽体20は、繊維織物に含まれている1つのデバイスとして設けることができ、このデバイスは、ベッドの中に配置されている、あるいは、マットレス(図示していない)またはベッドシーツに組み込まれている。別の実施例によると、ベッドシーツ1は、導電性遮蔽層20と、1つまたは複数の絶縁層30と、センサー10を有する検出層と、を含んでいる層構造を備えている。導電性遮蔽体20は、等電位化部12(本実施例においては接地部12)に接続されていることが好ましい。導電性遮蔽体20は、必ずしも閉じた領域である必要はなく、導電性要素(例えば、導電糸)の網構造として配置することもできる。導電糸は、格子または蛇行状として配置することができるが、完全な面を形成することもできる。
【0026】
本発明による、描かれているセンサー配置構成は、下部領域からの電磁干渉に対する良好な遮蔽を提供する。人の上部において同じ良好な遮蔽を得る目的で、図4aおよび図4bに示したように、類似する層構造をベッドカバー4に組み込むことができる。
【0027】
図4aは、センサー10と、ベッドシーツ1の一部とを覆っているベッドカバー4の平面図である。この場合も、ベッド内の人およびベッド自体は描いていない。図4bにおいて最も良く理解できるように、導電性遮蔽体20の一部21は、ベッドカバー4に組み込まれており、ベッドシーツ1における導電性遮蔽層20への電気接続13を備えており、導電性遮蔽層20は、この場合にも、等電位化部12(本実施例においては電位P)に接続されている。したがって、遮蔽層20は、この電位において有効に駆動される。この方式においても、人における電荷蓄積を防止することができ、したがって、さらに、センサー10の感度の低下が防止され、かつ測定電子回路の飽和が防止される。ベッドシーツ1とベッドカバー4との間の電気接点(galvanic contact)によって、人およびセンサー10は、ベッド上にいるときの動きから蓄積する電荷を除去するための電位によって完全に囲まれる。
【0028】
別の手法においては、人自身の身体を遮蔽体として用いることができる。この場合、人が、明確な電位に接続されていることを保証しなければならない。このことは、人の寝間着における織物電極によって、または、ベッドシーツまたは枕の一部を織物接点として使用することによって、人を接続することにより達成することができる。この場合にも、導電性の繊維織物を使用することができる。
【0029】
次に、図5〜図14を参照すると、遮蔽を目的とする繊維織物構造の効果の傾向を示す測定結果が示されている。遮蔽能力に対する繊維織物構造の影響を示すため、皮膚との電気的接触なしに、心電図(ECG)と、筋電図(EMG)と、脳電図(EEG)とを測定するために使用される容量型のセンサーを、導電性遮蔽体を有する9つの異なる繊維織物を使用して遮蔽した。マットレスまたはベッドシーツ1に組み込まれているセンサー10(図1a、図1b)と同様に、このようなセンサーを検出電極が上方を向くように配置したとき、センサー10は、空気中に存在する信号を検出する。織物の遮蔽能力は、センサー10によって検出される信号の周波数スペクトルを見ることによって観察することができる。したがって、図5〜図14には、横座標軸におけるヘルツ単位の周波数に対して、dBm単位のセンサー信号出力(1ミリワットに対する出力測定値)が縦座標軸に示されている。図6〜図12には、1つの図あたり2つの測定値が描かれている。原則として、点線の曲線は、繊維織物の2枚のコーティング層による測定値を示しているのに対して、実線は、繊維織物の1層による測定値を示している。
【実施例1】
【0030】
9つの異なる繊維織物(本例においては織物1〜織物9と称する)を使用して、容量型センサーを遮蔽した。これらの織物は、以下の2つのカテゴリに分けることができる。
金属ベースのコーティングを有する織物
ポリマーベースのコーティングを有する織物
【0031】
金属によってコーティングされている織物は、ポリマーによってコーティングされている織物よりも、1 m2あたりの抵抗率が低い。電荷の蓄積を防止するためには、1 m2あたりの抵抗率が低い織物を使用することが有利である。したがって、遮蔽体は、特に全体にわたり同じ電位を有し、したがって、電荷の蓄積が防止される。
【0032】
遮蔽に使用された異なる織物の周波数スペクトルは、図6〜図14に示されている。
【0033】
図5におけるスペクトルは、得ることのできる限界を示しており、何らの遮蔽なしでセンサーを使用したときと(点線)、厚さ2.5ミリメートルの壁の閉じた金属箱によって遮蔽が達成されているときとを示している。
【0034】
図13および図14には、織物8および織物9(いずれもポリマーによってコーティングされている織物)の測定値が示されている。織物における隙間は、その遮蔽能力に関連するものと結論することができる。織物8は、約1.6 mm×1.8 mm幅の穴を有するメッシュタイプの織物である。これに対して、織物9は、相当に小さい隙間を有する密に織られている織物である。織物8は、50 Hz、150 Hz、250 Hz、350 Hz、および450 Hzから、センサーを遮蔽するには適していない。
【0035】
図9を参照すると、織物4の測定値は、同程度の結果を示している。織物4は、編まれて金属(銀)によってコーティングされた織物である。また、織物4は、同程度の隙間構造を備えている。織物4の測定値から、織物における隙間のサイズは、遮蔽能力に関連するものと結論することができる。単層の織物4を使用してセンサーを遮蔽したときには(実線)、周波数50 Hzおよび350 Hzは、遮蔽されていないセンサー(図5)の場合よりも小さいが、2層の織物4を使用したときには、センサー出力に対するこれらの周波数成分の影響がさらに低減している(点線)。2層を使用すると、織物における隙間が効果的に減少する。
【0036】
次に図12を参照し、隙間構造を有し、かつ金属(銀の上のニッケル)によってコーティングされている別の織物は、織物7である。織物7の測定値からも、2層を有する場合(点線)には、単層(実線))よりも良好にセンサーを遮蔽することと、したがって、隙間のサイズが小さいほど良好であることを結論することができる。織物4と織物7の測定値を比較すると、2層の織物7は、2層の織物4よりもセンサーを良好に遮蔽することを観察することができる。肉眼では、織物4と織物7の隙間は同じ大きさである。実際に確認すると、織物7(厚さ18ミル)は、織物4(8±1ミル)よりも厚い。
【0037】
織物1, 2, 3, 5, 6, および9は、織物4, 7, および8のように、明確に確認できる隙間構造を持たない織物である。明確に確認できない隙間構造を有する一連の織物のうち、織物2と織物6は、構造が非常に似ている。いずれも、金属によってコーティングされているリップストップナイロン織物である。織物6は、銀によってコーティングされており、織物2は、銀の上のニッケルによってコーティングされている。
【0038】
図7および図11に示されている織物2および織物6の測定値は、異なる遮蔽挙動を明確に示している。織物6(図11)は、25 Hz、50 Hz、225 Hz、および250 Hzなどの周波数において、センサーの遮蔽において織物2(図7)ほど良好ではない。これとは別に、センサーの出力は、直流から約250 Hzの周波数帯域において高い雑音レベルを有し、これは、ECGの測定に関連する。これらの繊維は同じ構造を有するが、表面抵抗率に関して異なるため、遮蔽も表面抵抗率に依存するものと想定される。織物6の表面抵抗率は、1 m2あたり0.25オーム未満であり、織物2の表面抵抗率は、1 m2あたり0.1オーム未満である。
【0039】
次に図8および図10を参照し、織物3および織物5は、いずれも、銀によってコーティングされている、ナイロン糸をベースとする織物である。さらに、いずれも、不織布である。織物3(図8)は、編地であり、織物5(図10)は、ループ織物(looped fabric)である。織物3および織物5は厚く見えるが、測定値は、織物3および織物5によって提供される遮蔽があまり良好ではないことを示している。これらの織物のいずれも、250 Hz以下の周波数範囲においてセンサーをあまり良好には遮蔽していない。この領域における雑音レベルは、確認できる隙間のない構造の、テストした他の織物の場合よりも高い。
【0040】
測定された最後の織物は、織物1であり、その測定値は図6に示されている。織物1は、ナイロン糸をベースとするいわゆる点結合織物(point-bonded fabric)であり、銀の上のニッケルによってコーティングされている。単層のみの織物1を使用したときには、周波数250 Hzにおいてセンサーが完全には遮蔽されない(実線)。2層を使用すると、250 Hzの遮蔽が高まる(点線)。なお、ECGの測定の場合、150 Hzまでの周波数のみが必要である。EMGの場合、500 Hzまでの周波数が関連する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の生理学的パラメータを監視する少なくとも1つのセンサーと、少なくとも1枚の繊維織物とを備えているセンサー配置構成であって、前記繊維織物が、前記センサーとの電磁干渉を抑制する導電性遮蔽体を備えている、センサー配置構成。
【請求項2】
前記導電性遮蔽体が、等電位化部に接続されている、請求項1に記載のセンサー配置構成。
【請求項3】
前記繊維織物が、着用可能な衣類の少なくとも一部である、請求項1に記載のセンサー配置構成。
【請求項4】
前記繊維織物が、ベッドに組み込まれている、請求項1に記載のセンサー配置構成。
【請求項5】
前記繊維織物が、寝具の一部である、請求項4に記載のセンサー配置構成。
【請求項6】
前記繊維織物が、マットレスの一部である、請求項4に記載のセンサー配置構成。
【請求項7】
前記センサーが、前記繊維織物に組み込まれている、請求項1に記載のセンサー配置構成。
【請求項8】
前記繊維織物が、少なくとも、前記導電性遮蔽体を備えている遮蔽層と、前記センサーを備えている検出層と、絶縁層と、の層構造を備えており、前記絶縁層が、前記遮蔽層と前記検出層との間に配置されている、請求項1に記載のセンサー配置構成。
【請求項9】
前記人を等電位化部に接続する接点をさらに備えている、請求項1に記載のセンサー配置構成。
【請求項10】
前記接点が、織物電極であり、かつ、前記織物電極が、着用可能な衣類、ベッドシーツ、ベッドカバー、枕のうちの1つ以上に配置されている、請求項9に記載のセンサー配置構成。
【請求項11】
2枚の繊維織物を備えており、繊維織物の各々が、前記導電性遮蔽体の一部を備えており、前記導電性遮蔽体の前記一部が電気的に接続されており、かつ、
一方の繊維織物がベッドカバーに配置されており、かつ、他方の繊維織物がベッドシーツまたはマットレスに配置されている、
請求項1に記載のセンサー配置構成。
【請求項12】
少なくとも1つの着用可能なセンサーまたはベッドに組み込まれているセンサーを使用して、人の生理学的パラメータを測定する方法であって、前記センサーが、導電性遮蔽体を備えている繊維織物を使用して電磁干渉から遮蔽される、方法。
【請求項13】
少なくとも1つのセンサーを有する検出層と、前記センサーとの電磁干渉を抑制する導電性遮蔽体を備えている遮蔽層と、を少なくとも備えている層構造、を有する繊維織物。
【請求項14】
絶縁層をさらに備えており、前記絶縁層が、前記遮蔽層と前記検出層との間に配置されている、請求項13に記載の繊維織物。
【請求項15】
ベッドに組み込まれているセンサーまたは着用可能なセンサーとの電磁干渉を抑制する導電性遮蔽体を備えている繊維織物の使用。
【請求項1】
人の生理学的パラメータを監視する少なくとも1つのセンサーと、少なくとも1枚の繊維織物とを備えているセンサー配置構成であって、前記繊維織物が、前記センサーとの電磁干渉を抑制する導電性遮蔽体を備えている、センサー配置構成。
【請求項2】
前記導電性遮蔽体が、等電位化部に接続されている、請求項1に記載のセンサー配置構成。
【請求項3】
前記繊維織物が、着用可能な衣類の少なくとも一部である、請求項1に記載のセンサー配置構成。
【請求項4】
前記繊維織物が、ベッドに組み込まれている、請求項1に記載のセンサー配置構成。
【請求項5】
前記繊維織物が、寝具の一部である、請求項4に記載のセンサー配置構成。
【請求項6】
前記繊維織物が、マットレスの一部である、請求項4に記載のセンサー配置構成。
【請求項7】
前記センサーが、前記繊維織物に組み込まれている、請求項1に記載のセンサー配置構成。
【請求項8】
前記繊維織物が、少なくとも、前記導電性遮蔽体を備えている遮蔽層と、前記センサーを備えている検出層と、絶縁層と、の層構造を備えており、前記絶縁層が、前記遮蔽層と前記検出層との間に配置されている、請求項1に記載のセンサー配置構成。
【請求項9】
前記人を等電位化部に接続する接点をさらに備えている、請求項1に記載のセンサー配置構成。
【請求項10】
前記接点が、織物電極であり、かつ、前記織物電極が、着用可能な衣類、ベッドシーツ、ベッドカバー、枕のうちの1つ以上に配置されている、請求項9に記載のセンサー配置構成。
【請求項11】
2枚の繊維織物を備えており、繊維織物の各々が、前記導電性遮蔽体の一部を備えており、前記導電性遮蔽体の前記一部が電気的に接続されており、かつ、
一方の繊維織物がベッドカバーに配置されており、かつ、他方の繊維織物がベッドシーツまたはマットレスに配置されている、
請求項1に記載のセンサー配置構成。
【請求項12】
少なくとも1つの着用可能なセンサーまたはベッドに組み込まれているセンサーを使用して、人の生理学的パラメータを測定する方法であって、前記センサーが、導電性遮蔽体を備えている繊維織物を使用して電磁干渉から遮蔽される、方法。
【請求項13】
少なくとも1つのセンサーを有する検出層と、前記センサーとの電磁干渉を抑制する導電性遮蔽体を備えている遮蔽層と、を少なくとも備えている層構造、を有する繊維織物。
【請求項14】
絶縁層をさらに備えており、前記絶縁層が、前記遮蔽層と前記検出層との間に配置されている、請求項13に記載の繊維織物。
【請求項15】
ベッドに組み込まれているセンサーまたは着用可能なセンサーとの電磁干渉を抑制する導電性遮蔽体を備えている繊維織物の使用。
【図1a】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2010−524620(P2010−524620A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504926(P2010−504926)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【国際出願番号】PCT/IB2008/051409
【国際公開番号】WO2008/129446
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【国際出願番号】PCT/IB2008/051409
【国際公開番号】WO2008/129446
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
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