説明

生理学的効果を有する化合物

本発明は生理学的効果を有する式(I)の化合物に、及びその調製に、及びその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の生理学的効果を有し、具体的には皮膚、並びに特に口腔、鼻窩及び咽喉の粘膜上で冷感又は温感をもたらす化合物に関する。本発明はこれらの化合物を含有する組成物にも関し、これらの化合物を合成するための様々なプロセスにまで及ぶ。
【背景技術】
【0002】
香料産業において、快適な爽快効果をユーザーに与える製品に対する需要が増大している。食品、飲料全般、菓子類、チューイングガム及びまた口腔又は身体の衛生を目的とする製品の場合、冷感をもたらすことが可能な物質が第一に求められる。
【0003】
この分野での基準物質はミント精油の主成分である(L)−メントールである。
【0004】
しかしながら、この化合物は高揮発性、ミントの特徴的な残り香(odor reminiscent)、及びまた高濃度で発生する苦味といった幾つかの欠点を有し、これらの欠点によりこの化合物はこれらの特質が望ましくない製剤には適さない。更に、(L)−メントールを高濃度で使用すると、灼熱感を感じることがある。これらの欠点を克服するために、香料産業では強力で長続きする生理学的な爽快感を与えるが、苦味又は臭気のない製品の調製が研究されている。このようにして、エーテル類[(L)−メトキシ−1,2−プロパンジオール、(L)−メトキシ−2−メチル−1,2−プロパンジオール、(L)−メンチルメチルエーテル]、エステル類[(L)−メンチル酢酸エステル、乳酸エステル、コハク酸エステル、グルタル酸エステル、イソ酪酸エステル又は2−メトキシ酢酸エステル]、カーボネート[(L)−メンチルグリセロールカーボネート]、(L)−メントン並びにそのアセタールのうちの幾つか(乳酸及びグリセリン酸)、イソプレゴール及びそのアセテート、並びにまた或る特定のN−一置換アミド、例えば2,3−ジメチル−2−(2−プロピル)酪酸N−メチルアミドといったような(L)−メントールの或る特定の誘導体がこれまでに報告されている。
【0005】
特許文献1は、生理学的なリフレッシュ効果を有するものとしてp−メンタン−3−カルボン酸のN−一置換アミドを記載している。Wilkinson Sword Ltd.社によって特許請求された多くのアミドの中で、WS−3と呼ばれるN−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミドは依然として今日まで非常に広範に使用されている。
【0006】
国際出願の特許文献2はリフレッシュ能を有する多くの化合物を挙げており、薬剤等の或る特定の組成物の風味を改善するためのそれらの使用を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,150,052号
【特許文献2】国際公開第2007/089252号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
リフレッシュさせる生理作用物質がかなりの数あるにもかかわらず、依然として長時間にわたって続く冷感を与える組成物が必要とされている。
【0009】
更にここ数年、世界の香料市場において口腔内で熱感をもたらす非常に辛味のある(spicy:スパイシーな)調製物に関心が高まっている。この効果のために最も広く使用されている化合物はトウガラシから抽出されたカプサイシン及びコショウ由来のピペリンであるが、新たな強い味覚に対する必要性が確立されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、特定の生理学的効果、特にリフレッシュ効果、感温効果及び/又は刺激効果を有する新規の化合物に対するこの探求に含まれる。この関連で本発明は、以下の一般式(I):
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、
破線の結合はそれぞれ独立して存在しているか又は存在しておらず(ただし2つの連続した破線の結合は同時には存在しない)、
(エチルを除く)は、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cシクロアルキル及びC〜Cシクロアルケニルから選択され、これらの基はそれぞれ任意で、少なくとも1つのヒドロキシル官能基、カルボキシル官能基、ニトリル官能基、C〜Cアルコキシ官能基、C〜Cアルコキシカルボニル官能基、C〜Cシアノアルキル官能基及びベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル官能基で置換されていてもよく、
C1原子とC7原子との間の破線の結合が存在しない場合、
及びRは独立して水素原子又はC〜Cアルキルであり、
C1原子とC7原子との間の破線の結合が存在する場合、
は水素原子又は直鎖若しくは分岐鎖のC〜Cアルキルであり、
は存在しない)の化合物を提案する。
【0013】
本発明のために、
「C〜Cアルキル」という用語は、1個〜6個の炭素原子を含有する任意の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、特にメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基及びイソブチル基を示し、
「C〜Cアルケニル」という用語は、アルケニル不飽和を少なくとも1つ含む、2個〜6個の炭素原子を含有する任意の直鎖又は分岐鎖のアルケニル基、特にエチレニル基、n−プロピレニル基、イソプロピレニル基及びイソブチレニル基を示し、
「C〜Cシクロアルキル」という用語は、3個〜6個の炭素原子を含有する任意の環状アルキル基、特にシクロペンチル基及びシクロヘキシル基を示し、
「C〜Cシクロアルケニル」という用語は、アルケニル不飽和を少なくとも1つ含む、5個又は6個の炭素原子を含有する任意の環状アルケニル基、特にフェニル基を示す。
【0014】
同様に、「C〜Cアルコキシ」、「C〜Cアルコキシカルボニル」又は「C〜Cシアノアルキル」という用語は、1個〜4個の炭素原子を含有する任意のアルコキシ基、アルキルオキシカルボニル基又はシアノアルキル基を意味することが意図される。
【0015】
本発明は、特に一般式(I−1)、(I−2)、(I−3)、(I−4)及び(I−5)の化合物に関する:
【0016】
【化2】

【0017】
(R、R及びRは上で規定されるようなものである)。
【0018】
以下の表I、表II、表III、表IV及び表Vは本発明による化合物の特に有利な例を挙げている。
【0019】
【表1】

【0020】
【表2】

【0021】
【表3】

【0022】
【表4】

【0023】
【表5】

【0024】
本発明は、本発明者らにより為され、香料の専門家により裏付けられた、リフレッシュ剤として既に知られている(特に上述の国際出願の特許文献2に記載の)N−エチル−2−(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)アセトアミド:
【0025】
【化3】

【0026】
の生理学的効果を、アミド官能基のエチル基のレベルで正確に行われる化学修飾により有意にかつ有利に調節することができるという観察結果に基づいている。
【0027】
本発明者らは、このエチル基を立体障害のより小さい基、すなわちメチル基に置き換えることにより、リフレッシュ効果が著しく増幅された化合物が得られることに特に注目している。
【0028】
反対に、このエチル基をより立体障害の大きい基に置き換えることにより、特に有利な感温効果、辛味効果及び/又は刺痛効果が化合物に与えられる。或る特定の場合では、程度の差はあるが顕著なリフレッシュ効果が保持される。
【0029】
そのため本発明の第1の態様は、リフレッシュ能が高いことが知られている上で規定のような一般式(I)の化合物に関する。これらの化合物のR基はメチルである。
【0030】
本発明のこの第1の態様によれば、有利にはR基及びR基のうち少なくとも1つが水素原子である。特に、Rは水素原子であり、Rは水素原子及びメチル基又はエチル基から選択される。好ましくは、R及びRは両方とも水素原子である。
【0031】
本発明のこの第1の態様によれば、好ましい態様は特に、
N−メチル−2−(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)アセトアミド(化合物1)
2−(6−イソプロピル−3−メチルシクロヘキサ−2−エニル)−N−メチルアセトアミド(化合物19)
2−(2−イソプロペニル−5−メチルシクロヘキシル)−N−メチルアセトアミド(化合物15)
2−(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキサ−1−エニル)−N−メチルアセトアミド(化合物17)
2−(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシリデン)−N−メチルアセトアミド(化合物18)
2−(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)−N−メチルプロピオンアミド(化合物8)
3−(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)−N−メチルブチルアミド(化合物9)
である。
【0032】
比較研究により、これらのリフレッシュ剤の中で、化合物1が強度及び知覚閾値の両方に関して最も効果的であることが示される。
【0033】
本発明の第2の態様は、感温効果及び/又は刺激効果及び/又は催唾効果が知られている上で規定のような一般式(I)の化合物に関する。これらの化合物のR基は、エチル基の立体障害よりも大きい立体障害を特徴とする。特に、Rを、
イソプロピル基、イソブチル基、エチレニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基、フェニル基若しくはベンジル基(これらの基はそれぞれ任意で、ヒドロキシル官能基、カルボキシル官能基、ニトリル官能基、C〜Cアルコキシ(特にメトキシ及びエトキシ)官能基、C〜Cアルコキシカルボニル(特にメトキシカルボニル及びエトキシカルボニル)官能基又はC〜Cシアノアルキル官能基から選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい)、又は他に
ヒドロキシル官能基、カルボキシル官能基、ニトリル官能基、C〜Cアルコキシ(特にメトキシ及びエトキシ)官能基、C〜Cアルコキシカルボニル(特にメトキシカルボニル及びエトキシカルボニル)官能基若しくはC〜Cシアノアルキル官能基から選択される基で置換されたメチル基
から選択することができる。
【0034】
好ましい1つの実施の形態によれば、Rは、ヒドロキシル官能基、カルボキシル官能基、ニトリル官能基、C〜Cアルコキシ(特にメトキシ及びエトキシ)官能基、C〜Cアルコキシカルボニル(特にメトキシカルボニル及びエトキシカルボニル)官能基及びC〜Cシアノアルキル官能基から選択される少なくとも1つの基で置換されたフェニル基又はベンジル基である。
【0035】
好ましくは、Rは、
【0036】
【化4】

【0037】
から選択される。一般的に、この実施の形態に属する化合物はかなりの生理学的な感温効果及び/又は辛味効果を特徴とする。
【0038】
別の好ましい実施の形態によれば、Rはイソプロピル基、イソブチル基、−CHCOOH基、−CHCOOMe基、−CHCOOEt基、−CHOH基、−CHCHOH基及び−CHC(CHOH基から選択される。一般的に、この実施の形態に属する化合物はかなりの生理学的な刺痛効果、催唾効果を特徴とする。
【0039】
有利には本発明によれば、R及びRは両方とも水素原子である。
【0040】
本発明のこの第2の態様によれば、好ましい化合物は特に、
N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)−2−(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)アセトアミド(化合物19)
N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)−2−(2−イソプロペニル−5−メチルシクロヘキシル)アセトアミド(化合物16)
N−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルメチル−2−(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)アセトアミド(化合物14)
[2−(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)アセチルアミノ]エチルアセテート(化合物5)
[2−(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)アセチルアミノ]メチルアセテート(化合物4)
N−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)−2−(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)アセトアミド(化合物7)
N−(2−ヒドロキシエチル)−2−(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)アセトアミド(化合物6)
N−(4−シアノメチルフェニル)−2−(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)アセトアミド(化合物13)
N−(4−シアノフェニル)−2−(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)アセトアミド(化合物12)
[2−(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)アセチルアミノ]酢酸(acetatic acid)(化合物3)
N−イソブチル−2−(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)アセトアミド(化合物2)
N−(2−メチルオキシカルボニルフェニル)−2−(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)アセトアミド(化合物11)
である。
【0041】
これらの化合物の中で、化合物10及び化合物11が特に好ましい。化合物10は生理学的な強い刺激−灼熱効果を示す。一方、化合物11は刺激−灼熱の側面のない、生理学的な著しい感温効果を示す。
【0042】
本発明による化合物は複数の不斉中心を有する。本発明は、別々に又は混合物として検討される様々な鏡像異性体(enantiomers)及びジアステレオ異性体(diastereoisomers)を包含する。
【0043】
本発明は、上で規定のような一般式(I)の鏡像異性体の混合物にまで及び、それぞれの鏡像異性体が様々な割合で上記混合物中に存在していてもよい。本発明の主題は特に、上で規定のような一般式(I)の化合物のラセミ混合物である。
【0044】
鏡像異性体の混合物又は純粋な形態の生成は、例えば光学的に濃縮された又は光学的に純粋な出発生成物を用いた当業者に既知の方法、及び結晶化又はクロマトグラフィによる分離方法により行われる。
【0045】
上述のように、本発明による一般式(I)の化合物は特定の生理学的効果を有する。これらは皮膚、並びに特に口腔、鼻窩及び咽喉の粘膜上に冷感及び/又は温感をもたらす。これらのアミドの中には、該アミドが添加された食品に爽快感を与える、程度の差はあるが強い生理学的なリフレッシュ効果をもたらすものもある一方で、生理学的な感温効果をもたらすものもある。これらの中には、三叉神経を活性化し、それにより該アミドが添加された食品に辛味を与える物質に特徴的な生理学的な刺痛効果又は刺激−灼熱効果のような他の生理学的効果をもたらし得るものもある。
【0046】
結論として、本発明による化合物は、例えば食品タイプの組成物(チューイングガム、菓子類、飲料等)、化粧品、医薬品又はパラメディカル(paramedical)組成物(ボディケア又は口歯(oro-dental)衛生組成物、トローチ剤、マウススプレー、シロップ、ローション等)中で生理作用物質、特にリフレッシュ剤又は感温剤として有利に使用される。本発明による化合物を、単独で又は当業者に既知であり、所望の効果に従って選択することができる1つ又は複数の他の生理作用物質(例えば香料、匂い物質(odorous agents))との混合物として使用することができる。
【0047】
かかる組成物の基本製品は想定される組成物及びそれにより想定される用途に従って当業者によって容易に決定され、これに関して通常の構成要素、例えば溶媒(複数可)及び/又はアジュバント(複数可)が既知である。好適な基本製品は例えば非限定的であるが、食品、医薬品、化粧品、ボディケア製品及び口歯衛生製品を含む。
【0048】
組成物に組み込まれる本発明による化合物の有効量は、組成物の性質、所望の効果、及び任意に存在する他の化合物の性質に応じて変わり、当業者によって容易に決定することができる。通常、この有効量は非常に広い範囲、組成物の総重量により0.1%〜99%、具体的には0.1重量%〜50重量%、特に0.1重量%〜30重量%内で変化し得る。
【0049】
本発明による化合物をそのままで使用するか、又はそうでなくとも最終組成物に適した他の成分を含有することができる不活性支持材料中に若しくは不活性支持材料上に組み込むことができる。例えば極性溶媒、油、脂肪、微粉固体、シクロデキストリン、マルトデキストリン、ガム、樹脂及びこのような組成物との関連で知られる任意の他の支持材料を含む多様な支持材料を使用することができる。
【0050】
本発明は特に、本発明による式(I)の化合物を少なくとも1つ含む、顔、身体若しくは身体の一部のケア用の化粧品組成物、特にフェイス及び/若しくはボディクリーム、タルカムパウダー、ヘア若しくはボディオイル、シャンプー、ヘアローション、シャワー用ジェル、洗面用石鹸(toiletry soap)、ボディ制汗剤、ボディデオドラント、ローション、シェービングクリーム、シェービング用石鹸、歯磨き粉、洗口剤若しくは軟膏、又は本発明による一般式(I)の化合物を少なくとも1つ含む組成物に関する。
【0051】
本発明は特に、本発明による一般式(I)の化合物を少なくとも1つ含む、食品タイプの、すなわち最終食品(例えばチューイングガム、菓子類、アルコール飲料又はノンアルコール飲料等)の組成物の一部である芳香組成物にも関する。
【0052】
本発明は特に、本発明による一般式(I)の化合物を少なくとも1つ含む、口腔内適用に適した医薬品又は医薬部外品(特にシロップ、錠剤、トローチ剤、スプレー、洗口剤、歯磨き粉)の組成物の一部である芳香化合物にも関する。本発明は対応する医薬品又は医薬部外品にまで及ぶ。
【0053】
本発明は本発明による一般式(I)の化合物を調製する方法にまで及ぶ。
【発明を実施するための形態】
【0054】
第1の実施形態では、式(I−1)の化合物(R及びRはそれぞれ水素原子を示し、Rは上で規定のようなものである)をスキーム1に従って強塩基及びアルキル化剤との連続反応によりアミドIIから得ることができる。
【0055】
【化5】

【0056】
選択的には、塩基はアミド、アルカリ金属のアルコキシド若しくは水酸化物、有機リチウム化合物又はアルカリ金属水素化物から選択することができる。より選択的には、塩基は有機リチウム化合物から選択される。更により選択的には、塩基はN−ブチルリチウムである。アルキル化剤はアミン官能基を式(I)で規定のようなアルキルRでアルキル化することを可能にする当業者に既知の任意のアルキル化剤であり得る。好ましくは、アルキル化剤は、スルホン酸エステル(例えばトシル酸エステル又はメシル酸エステル)、臭化アルキル、ヨウ化アルキル又は塩化アルキルから選択されるが、触媒量のアルカリ金属ハロゲン化物が反応媒体に同時に導入されるものとする。より選択的には、アルキル化剤は臭化アルキル又はヨウ化アルキルである。この反応に適した溶媒は、芳香族炭化水素、エーテル、環状エーテル、ジメチルホルムアミド若しくはジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、又はこれらの混合物であり得る。
【0057】
通例、スキーム1の終了時に得られるような式(I−1)の化合物(R及びRはそれぞれ水素原子であり、Rは上で規定のようなものである)を1回又は任意で2回アルキル化し、スキーム2により式(I−1)の化合物を得ることができる。
【0058】
【化6】

【0059】
置換基R及び置換基Rを得ることを可能にするアルキル化剤は当業者にとって既知である。好ましくは、アルキル化剤は、スルホン酸エステル(例えばトシル酸エステル又はメシル酸エステル)、臭化アルキル、ヨウ化アルキル又は塩化アルキルから選択されるが、触媒量のアルカリ金属ハロゲン化物が反応媒体に同時に導入されるものとする。選択的には、アルキル化剤は臭化アルキル又はヨウ化アルキルである。
【0060】
文献(L.F. Tietze, T. Eicher, U. Diederichsen and A. Speicher, Reactions and Synthesis in the Organic Chemistry Laboratory, p.459, Wiley-VCH ed. 2007)によって、シトロネラールからの[1r]−2−(トランス−2−イソプロペニル−シス−5−メチルシクロヘキシル)マロン酸のジメチルエステルIII−2の合成が報告されており、その翻案(E.J. Corey and P. Carpino, Tet. Lett., 31, 3857, 1990)が立体選択的合成経路を説明している。このため出発生成物が(S)−シトロネラール、(R)−シトロネラール、又はシトロネラールのラセミ混合物であるかに応じて、化合物III−2がそれぞれ、エナンチオピュアな(enantiopure)(1S,2S,5S)形態若しくは(1R,2R,3R)形態、又はそのラセミ混合物形態で得られる。続いて化合物III−2の水素添加により、[1r]−2−(トランス−2−イソプロピル−シス−5−メチルシクロヘキシル)マロン酸のジメチルエステルIII−1が生成される(スキーム3)。
【0061】
【化7】

【0062】
第2の実施形態では、式(III−1)のマロン酸エステル及び式(III−2)のマロン酸エステルからそれぞれ式(I−1)の化合物及び式(I−2)の化合物を得ることができる。式(IV)の酸を得ることを可能にする当業者に既知の一連の反応の後、式(IV)の化合物のカルボキシル官能基の活性化、その後のスキーム4による適当なアミンとの縮合により、式(I−1)のアミド及び式(I−2)のアミドが生成された。
【0063】
【化8】

【0064】
塩素化剤は、当業者に既知の任意の塩素化剤、例えばSOCl、ClCO−COCl、PCl又はPClであってもよく、より選択的には、塩素化剤はSOCl又はClCO−COClである。
【0065】
第3の実施形態により、式
【0066】
【化9】

【0067】
(R、R及びRは式(I)に規定のようなものである)のアルキルアミドと、式(V)(破線の結合はそれぞれ独立して存在しているか又は存在していない(ただし2つの連続した点線の結合(pointed bonds)は同時には存在しない))のケトンとの縮合により得られた中間体である式(VI)のアミドアルコールを介して式(I)の化合物を得ることが可能になる。好ましい式(V)の化合物は表VIで規定の化合物(Va)〜化合物(Vf)である。
【0068】
【表6】

【0069】
続いて当業者が一般式(I)の所望の化合物を得るために選択することができる様々な工程に中間体アミドアルコールを供することができる(スキーム5)。
【0070】
【化10】

【0071】
特に、アミドアルコールを例えば、酸性媒体中での脱水、又はカルボニルジイミダゾール及びカリウムt−ブトキシドとの連続反応に供することができる(ただしRは水素原子である)。これらの工程の後に任意で、一般式(I)の他の化合物、特に式(I−1)の化合物を得るために程度の差はあるが制御された水素添加を続けることが可能である。
【0072】
この実施形態の第1の変形形態では、式
【0073】
【化11】

【0074】
のアルキルアミドを式(Va)のケトンと縮合し、このようにして得られたアミドアルコールを酸性媒体中で脱水させることにより、式(I−3)の化合物が得られる:
【0075】
【化12】

【0076】
この実施形態の第2の変形形態では、式
【0077】
【化13】

【0078】
のアルキルアミドを式(Va)のケトンと縮合し、このようにして得られたアミドアルコールをカルボニルジイミダゾール及びカリウムt−ブトキシドとの連続反応に供することにより(ただしRは水素原子である)、式(I−4)の化合物が得られる:
【0079】
【化14】

【0080】
鏡像異性体同士が全く異なる官能特性及び生理特性を有し得ることは当業者によって認知されていることである。このため、(L)−メントールは生理学的なリフレッシュ剤であるが、その鏡像異性体である(D)−メントールは苦味があり、芳香組成物で使用されることはめったにない。
【0081】
式(I−1)の化合物及び式(I−2)の化合物が炭素C1、炭素C2及び炭素C5に少なくとも3つの不斉中心を含むため、それぞれ(S)−シトロネラール及び(R)−シトロネラールからスキーム3及びスキーム4に従って、(1S,2S,5S)鏡像異性体及び(1R,2R,5R)鏡像異性体を選択的に得ることができる。一方、(1S,2S,5S)鏡像異性体と(1R,2R,5R)鏡像異性体とのラセミ混合物はラセミ体のシトロネラールから同じように得ることができる。それから鏡像異性体を当業者に既知の方法、例えば結晶化法又はクロマトグラフィ法に従って分離することができる。通例、後者と同じラセミ混合物の(1S,2S,5S)鏡像異性体及び(1R,2R,5R)鏡像異性体は、知覚閾値及び感じられるリフレッシュ効果の強度の両方に関して官能特性及び生理特性に顕著な違いを示さない。結果として、本発明の対象は式(I)の化合物の任意の純粋な鏡像異性体及びジアステレオ異性体、並びにまた任意の割合でのそれらの任意の混合物、特にラセミ混合物である。
【0082】
以下の実施例は本発明による化合物を生成するための様々なプロセス、及びまたそれらの使用、及びそれらの利点を更に説明している。これらの実施例は例示の目的でのみ与えられ、本発明を限定するものとは考えることはできない。
【実施例】
【0083】
実施例1:化合物IIの調製
初めに、スキーム3によりラセミ体のシトロネラールから化合物III−2を得る。それからスキーム4に従って化合物IIを得る。詳細な反応スキームは以下の通りである:
【0084】
【化15】

【0085】
[1r]−2−(トランス−2−イソプロピル−シス−5−メチルシクロヘキシル)酢酸の調製
方法1
7gの5%パラジウム炭素、134g(0.5mol)の化合物III−2及び0.5lのメタノールを1l容のオートクレーブに連続で導入する。オートクレーブを3バールの水素下で調整し(conditioned)、24時間攪拌する。溶液を濾過し、濃縮して、残留生成物を真空下で蒸留する。128gの化合物III−1を単離する、すなわちモル収率は95%である。
【0086】
63gのKOH(1.12mol、1.5当量)、63gの水、0.74lのメタノール及びそれから100g(0.37mol)の化合物III−1を従来型の装置に連続で導入する。混合物を12時間還流させ、それからコンデンサーを蒸留装置に交換する。蒸留が進むにつれてメタノールが留去され、メタノールが水に置き換わる。蒸気の温度が80℃に達したら蒸留を中断する。周囲温度まで冷却した溶液を100mlのメチルt−ブチルエーテルで2回抽出し、それから0℃まで冷却し、pH=3まで酸性化する。得られた懸濁液を200mlのメチルt−ブチルエーテルで3回抽出する。有機相を中性になるまで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、それから濃縮する。残留固体をメチルt−ブチルエーテルとメチルシクロヘキサンとの混合物から再結晶化させる。71.5gの[1r]−2−(トランス−2−イソプロピル−シス−5−メチルシクロヘキシル)マロン酸を白色固体の形態で得る、すなわち収率は80%である。
【0087】
120gの酢酸及び3gの96%硫酸(0.031mol)を従来型の装置に連続で導入する。溶液を5分間攪拌し、それから80g(0.33mol)の先に得られた[1r]−2−(トランス−2−イソプロピル−シス−5−メチルシクロヘキシル)マロン酸を添加する。得られた混合物を12時間還流させ、それから周囲温度まで冷却した後、5gの酢酸ナトリウム三水和物を添加する。得られた溶液を0.5時間攪拌する。酢酸を真空下で留去し、残渣を0.2 lの水中に取り、続いてそれを0.15 lのメチルt−ブチルエーテルで3回抽出する。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶液を濃縮し、それから残渣を真空下で蒸留する。得られた粘性油を−30℃でメチルシクロヘキサンから結晶化させ、白色固体の形態で53.7gの[1r]−2−(トランス−2−イソプロピル−シス−5−メチルシクロヘキシル)酢酸を生成し、それにより82%の収率が表される。
方法2
25gの化合物III−2、3gの5%パラジウム炭素(Pd/C at 5%)及びそれから0.1 lの無水トルエンを0.25 l容のオートクレーブに導入する。オートクレーブを3バールの水素下で調整し、それから24時間攪拌する。出発生成物がないことを確認した後、混合物を濾過し、濃縮して蒸留する。23.4gの[1r]−2−(トランス−2−イソプロペニル−シス−5−メチルシクロヘキシル)酢酸のメチルエステルを無色の油の形態で単離する、すなわち収率が92%である。
Bp=56℃/26.6Pa
5.3gのKOH(2当量)、10gの水、0.1 lのメタノール及びそれから10g(0.047mol)の先に得られた[1r]−2−(トランス−2−イソプロペニル−シス−5−メチルシクロヘキシル)酢酸のメチルエステルを従来型の装置に連続で導入する。得られた溶液を3時間還流する。それから0.1 lの水で希釈した後、メタノールを蒸留により除去する。得られた水相を0.05 lのメチルt−ブチルエーテルで2回抽出し、それからpH=3まで酸性化する。白色懸濁液を0.1 lのメチルt−ブチルエーテルを2回用いて取り出す。この有機相を中性になるまで洗浄し、乾燥させ、それから濃縮する。白色残渣をメチルシクロヘキサンから再結晶化させ、7.9gの[1r]−2−(トランス−2−イソプロピル−シス−5−メチルシクロヘキシル)酢酸を得る。
収率:85%。
化合物IIの調製:
40g(0.202mol)の先に得られた[1r]−2−(トランス−2−イソプロピル−シス−5−メチルシクロヘキシル)酢酸、0.2 lの無水トルエン及びそれから3滴のジメチルホルムアミドを従来型の装置に連続で導入する。新たに精製した塩化チオニル(37.5g、1.3当量)を滴下漏斗に注ぎ、それから丸底フラスコに滴下する。得られた混合物を周囲温度で12時間攪拌し、それから溶媒を部分真空下で留去する。残渣を高真空下で蒸留し、無色の液体の形態で42.5gの[1r]−2−(トランス−2−イソプロピル−シス−5−メチルシクロヘキシル)アセチルクロライドを得る、すなわち収率は98%である。
【0088】
32%アンモニア水溶液0.05 lを従来型の装置に導入し、上記溶液を氷水浴により0℃にする。21g(0.1mol)の先に得られた[1r]−2−(トランス−2−イソプロピル−シス−5−メチルシクロヘキシル)アセチルクロライドの無水ジクロロメタン溶液0.15 lを滴下漏斗に導入し、それから丸底フラスコに滴下する。得られた混合物を2時間攪拌し、それからこれらの相を分離する。水相を保持する。有機相を0.1 lの浄水、0.1 lの5%塩酸、及びそれから再び0.1 lの浄水で2回洗浄する。この有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、それから濃縮する。残留固体をメチルt−ブチルエーテルとメチルシクロヘキサンとの混合物から再結晶化させ、14.60gの化合物IIを得る。
Mp=147℃、収率74%。
H NMR:CDCl,200MHz:0.77(d;7.0Hz,3H);0.86(d,6.8Hz,3H);0.91(d,6.8Hz,3H);0.60〜1.10(m,4H);1.20〜1.50(m,1H);1.60〜2.00(m,6H);2.55(d*d,8.4/18.5Hz,1H);5.7(s,2H)
13C NMR:CDCl,50MHz:15.75;21.95;22.96;24.62;27.30;32.88;35.59;37.34;40.91;42.15;47.61;176.13ppm。
MS:m/z=197[M];182;165;154;138;112;95;86;67;59(100)amu。
IR:σ(cm−1)3400,3200,1647,1438,1410,1194,1152,801,693,657。
【0089】
実施例2:化合物1の調製
方法1
実施例1に記載の化合物IIの調製プロトコルと同一のプロトコルに従って(0.05lのアンモニア水を同量の40%モノメチルアミン水溶液に置き換える)、メチルt−ブチルエーテルとメチルシクロヘキサンとの混合物を用いた再結晶化の後に9.7gの化合物Iを白色固体の形態で得る。
Mp=142℃;収率92%。
H NMR:CDCl,200MHz:0.75(d,6.8Hz,3H);0.83(d,6.7Hz,3H);0.88(d,6.7Hz,3H;0.5〜1.2(m,3H);1.45(m,1H);1.50〜2.00(m,7H),2.50(m,1H);2.79(d,4.8Hz,3H);5.56(s,1H)。
13C NMR:CDCl,50MHz:15.27;21.60;22.60;24.30;26.30;26.90;32.52;35.26;37.07;41.18;41.81;47.29;173.81ppm。
MS:m/z=211[M];196;180;168;163;126;100;95;81;73(100);58amu
IR:σ(cm−1)3254,3090,1643,1568,1454,1372,1279,1189,1160,995,913,753,722,626。
方法2
スキーム1に従って、3.94g(0.02mol)の実施例1で得られた化合物II及び0.05 lの無水テトラヒドロフランを従来型の装置に連続で導入する。溶液を0℃にし、それから2.25NのN−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.05当量)0.009 lをゆっくり添加する。混合物を同じ温度で1時間攪拌し、それから3.55g(1.25当量)のヨードメタンを迅速に添加する。得られた懸濁液を周囲温度で2時間攪拌し、それから加水分解し、乾燥させ、濃縮する。得られた白色固体をメチルt−ブチルエーテルとメチルシクロヘキサンとの混合物から再結晶化させ、3.55gの化合物1を得る、すなわち収率は84%である。この生成物は第1の方法を用いて得られた生成物と同一のものである。
【0090】
実施例3:化合物2の調製
実施例1に記載の化合物IIの調製プロトコルと同一のプロトコルに従って、9.14g(0.125mol、2.5当量)のイソブチルアミン(アンモニア水の代わりとして)を用いて、化合物2を得る。
Mp=82℃;収率83%。
H NMR:CDCl,200MHz:0.75(d,6.7Hz,3H);0.82(d,6.7Hz,3H);0.90(d,2.8Hz,3H);0.95(d,2.8Hz,3H),0.50〜1.20(m,6H);1.20〜1.50(m,2H);1.50〜2.00(m,7H),2.50(d,12.3Hz,1H);3.10(m,2H);5.6(s,1H)。
13C NMR:CDCl,50MHz:15.66;20.52;21.95;22.97;24.65;27.29;28.90;32.89;35.62;37.44;41.85;42.37;47.24;47.71;173.32ppm。
MS:m/z=253[M];238;224;210;198;181;168;163;142;137;115(100);100;95;81;72;60amu。
IR:σ(cm−1)3315,3093,2955,2847,1642,1553,1464,1437,1370,1275,1187,1160,1126,997,973,738,704,627。
【0091】
実施例4:化合物3の調製
実施例3のプロトコルと同一のプロトコルに従って、9.46g(0.125mol、2.5当量)のグリシンを用いて、化合物3を得る。
Mp=153℃;収率44%。
H NMR:CDCl,200MHz:0.70(d,6.8Hz,3H);0.81(d,6.6Hz,3H);0.86(d,6.6Hz,3H);0.50〜1.10(m,4H);1.10〜1.30(m,1H);1.50〜2.10(m,6H);2.32(m,1H);3.70(m,2H);8.2(m,2H)。
13C NMR:CDCl,50MHz:15.50;21.83;22.97;24.27;26.58;26.62;32.50;35.22;36.69;36.82;46.95;169.70;172.69ppm。
IR:σ(cm−1)3366,3279,3100,2950,2850,1748,1703,1662,1601,1528,1439,1337,1214,1133,1035,995,668,610。
【0092】
実施例5:化合物4の調製
実施例3のプロトコルと同一のプロトコルに従って、9.42g(0.075mol、1.5当量)のメチルグリシネートクロライド(methyl glycinate chloride)及び12.65g(0.125mol、2.5当量)のトリエチルアミンを用いて、化合物4を得る。
Mp=88℃;収率76%。
H NMR:CDCl,200MHz:0.76(d,7.0Hz,3H);0.85(d,6.7Hz,3H);0.90(d,6.7Hz,3H);0.60〜1.10(m,3H);1.20〜1.50(m,2H);1.50〜2.00(m,6H);2.56(d*d,19/8.9Hz,1H);3.77(s,3H);4.06(d,5Hz,2H);5.94(s,1H)。
13C NMR:CDCl,50MHz:15.25;21.57;24.24;26.93;32.50;35.20;37.05;40.88;41.23;41.74;47.16;52.36;170.62;173.19ppm。
MS:m/z=269[M];254;238;226;210;180;163;158;137;131(100);109;103;99;95;90;81amu。
IR:σ(cm−1)3325,3266,3080,2950,2845,1744,1635,1531,1437,1386,1227,1183,1136,980,743,7087,671,624。
【0093】
実施例6:化合物5の調製
実施例3のプロトコルと同一のプロトコルに従って、10.46g(0.075mol、1.5当量)のエチルグリシネートクロライドを用いて、化合物5を得る。
Mp=79℃;収率69%。
H NMR:CDCl,200MHz:0.76(d,6.8Hz,3H);0.84(d,6.8Hz,3H);0.90(d,6.8Hz,3H);0.60〜1.10(m,3H);1.20〜1.50(m,2H);1.30(t,7.2Hz,3H);1.50〜2.00(m,6H);2.57(d*d,18.9/8.9Hz,1H);4.04(d,5Hz,2H);4.22(q,7.2Hz,2H);5.99(s,1H)。
13C NMR:CDCl,50MHz:14.17;15.25;21.57;22.59;24.24;26.92;32.50;35.21;37.03;40.86;41.40;41.74;47.15;61.50;170.17;173.17ppm。
MS:m/z=283[M];268;240;238;210;181;172;163;145(100);137;117;109;104;99;95;81amu。
IR:σ(cm−1)3337,3068,1731,1634,1544,1441,1370,1351,1309,1249,1186,1152,11312,1044,1027,944,859,655,624,596。
【0094】
実施例7:化合物6の調製
実施例3のプロトコルに従って、7.64g(0.125mol、2.5当量)の無水エタノールアミンを用いて、化合物6を得る。
Mp=106℃;収率88%。
H NMR:CDCl,200MHz:0.76(d,6.8Hz,3H);0.85(d,6.6Hz,3H);0.90(d,6.6Hz,1H);0.60〜1.10(m,3H);1.20〜1.50(m,2H);1.50〜2.00(m,6H);2.53(d*d,18.4/8.6,1H);3.39(m,2H);4.20(m,2H);6.75(s,1H)。
13C NMR:CDCl,50MHz:15.59;21.91;22.99;24.57;27.24;32.86;35.53;37.37;41.45;42.03;42.81;47.68;62.33;175.05ppm。
MS:m/z=241[M];226;210;19+8;181;163;156;137;130;109;103(100);95;81;60amu。
IR:σ(cm−1)3447,3302,3084,2950,2850,1623,1554,1452,1278,1218,1190,1132,1060,999,966,865,747,695,624。
【0095】
実施例8:化合物7の調製
実施例3のプロトコルに従って、11.12g(0.075mol、1.5当量)の1−アミノ−2−メチルプロパン−2−オールを用いて、化合物7を得る。
Mp=110℃;収率88%。
H NMR:CDCl,200MHz:0.77(d,7Hz,3H);0.84(d,6.7Hz,3H);0.90(d,6.7Hz,3H);0.60〜1.10(m,3H);1.20〜1.50(m,2H);1.22(s,6H);1.60〜2.00(m,6H);2.55(d*d,18.8/8.9Hz,1H);3.21(s,H);3.26(d,5.8Hz,2H);6.25(s,H)。
13C NMR:CDCl,50MHz:15.67;21.96;24.61;27.30;27.68(2c);32.86;35.59;37.37;41.65;42.23;47.70;50.88;71.19;174.77ppm。
MS:m/z=269[M];254;250;236;226;211(100);196;181;168;163;137;131;126;113;100;95;81;73amu。
IR:σ(cm−1)3321,3086,2963,2843,1639,1557,1445,1368,1275,1148,1132,996,741,693,658。
【0096】
実施例9:化合物10の調製
実施例3のプロトコルに従って、15.3gのバニリルアミン及び15.3gのトリエチルアミンから出発して、化合物10を得る。
Mp=140℃;収率68%。
H NMR:CDSOCD,200MHz:0.54(d,6.8Hz,3H);0.64(d,6.8Hz,3H);0.69(d,6.8Hz,3H);0.60〜1.10(m,5H);1.10〜1.20(m,1H);1.30〜1.80(m,5H);2.10〜2.30(m,1H);3.58(s,3H);4.02(m,2H);6.45〜6.65(m,3H);8.05(s,1H);8.69(s,1H)。
13C NMR:CDSOCD,50MHz:15.50;21.82;22.95;24.26;26.59;32.51;35.19;36.87;40.27;41.70;42.19;47.08;55.85;112.01;115.43;120.13;130.98;145.71;147.76;172.08ppm。
IR:σ(cm−1)3333,3139,2951,2912,2841,1633,1601,15550,1515,1451,1433,1371,1349,1273,1250,1234,1188,1156,1124,1034,919,866,830,798,742。
【0097】
実施例10:化合物11の調製
実施例3のプロトコルに従って、15.1gのアントラニル酸メチル及び15.3gのトリエチルアミンから出発して、化合物11を得る。
Mp=83℃;収率88%。
H NMR:CDCl,200MHz:0.84(d,6.4Hz,3H);0.86(d,6.8Hz,3H);0.97(d,6.8Hz,3H);0.60〜1.10(m,5H);1.10〜1.20(m,1H);1.50〜2.00(m,5H);2.78(m,1H);3.92(s,3H);7.06(t*d,7.0/1.0Hz,1H);7.53(t*d,7.0/1.6Hz,1H);8.02(d*d,8.0/1.6Hz,1H);8.76(d*d,8.0/1.0Hz,1H);11.1(s,1H)。
IR:σ(cm−1)3270,2955,2908,1703,1687,1602,1588,1524,1446,1257,1236,1086,764,728,702。
【0098】
実施例11:化合物12の調製
実施例3のプロトコルと同様のプロトコルに従い、3.10gの4−アミノベンゾニトリル及び2.78gの無水トリエチルアミンから出発して、化合物12を得る。
【0099】
5.41g(0.025mol)の[1r]−2−(トランス−2−イソプロピル−シス−5−メチルシクロヘキシル)酢酸塩化物、0.05lの無水ジクロロメタン及び2.78g(0.00385l)の無水トリエチルアミンを、浸漬型温度計、KOHの溶液で満たされた乾燥板(drying guard)を備える垂直式コンデンサー、及び0.1 l容の定圧滴下漏斗を備えた250ml容の三つ口丸底フラスコに連続で導入する。得られた溶液を0℃にする。
【0100】
それから3.1g(0.0265mol)の4−アミノベンゾニトリルの無水ジクロロメタン溶液0.02 lを漏斗に導入する。この溶液を丸底の反応フラスコに0.5時間かけて滴下すると、白色の沈殿が発生する。得られた溶液を周囲温度で2時間攪拌し、それから0.1 lの水、0.1 lの1N HCl及び炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液0.1 lで連続的に洗浄する。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、それからロータリーエバポレーターで濃縮する。得られた白色沈殿を−20℃でジクロロメタン/ヘキサン混合物を用いて結晶化させる。それから白色固体を単離する。
Mp=141℃;収率84%。
H NMR:CDCl,200MHz:0.77(d,8Hz,3H);0.83(d,7Hz,3H);0.91(d,8Hz,3H);0.65〜1.10(m,3H);1.20〜1.50(m,2H);1.50〜2.00(m,6H);2.72(d*d,18/20Hz,1H);3.10(m,2H);7.58(d,9Hz,2H);7.72(d,9Hz,2H);7.92(s,1H)。
13C NMR:CDCl,50MHz:15.23;21.54;24.19;27.04;32.49;35.08;37.12;41.90;42.26;47.14;106.67;119.56;133.23;142.28;172.10ppm。
IR:σ(cm−1)3247,3178,3106,2959,2911,2842,2218,1663,1594,1537,1501,1444,1409,1354,1325,1307,1262,1251,1174,1121,980,846,836,776。
【0101】
実施例12:化合物13の調製
実施例11のプロトコルに従って、3.50gの4−アミノベンジルアミド(4−アミノベンジルニトリルの代わりとして)から出発して、化合物13を得る。
Mp=142℃;収率78%。
H NMR CDCl,200MHz:0.77(d,8Hz,3H);0.83(d,8Hz,3H);0.94(d,8Hz,3H);0.60〜1.10(m,3H);1.20〜1.50(m,2H);1.50〜2.00(m,6H);2.67(d*d,18/10Hz,1H);3.71(s,2H);7.23(d,8Hz,2H);7.56(d,8Hz,2H);7.79(s,1H)。
13C NMR:CDCl,50MHz:15.24;21.56;22.57;23.07;24.20;26.98;32.48;35.14;37.14;41.84;42.12;47.17;118.02;120.45;125.19;128.48;138.02;171.88ppm。
IR:σ(cm−1)3344,2958,2912,2840,2250,1660,1597,1520,1413,1370,1322,1306,1173,1126,909,809,678。
【0102】
実施例13:化合物14の調製
実施例3のプロトコルと同様のプロトコルに従い、ピペロニルアミン、無水ジクロロメタン及びN−メチルモルホリンから出発して、化合物14を得る。
【0103】
5g(0.0331mol)のピペロニルアミン、100mlの無水ジクロロメタン及び3.36g(0.0331mol)のN−メチルモルホリンを、連続的に、従来の器具を備えており(is equipped conventionally)、乾燥しており、窒素でフラッシングされた、250ml容の三つ口丸底フラスコに導入する。混合物を0℃にする。0.0331molのブロモメントール酸(bromomentholic acid)塩化物の、約2倍量の無水ジクロロメタン中の溶液を滴下する。即座に白色沈殿が形成され、反応媒体中で10℃を超えないように添加を継続する。得られた溶液を周囲温度で一晩攪拌し、それから砕いた氷と10%HCl水溶液との混合物に注ぐ。それから有機相を100mlの水(1回目の洗浄時に添加する)、100mlの4N 水酸化物ナトリウム水溶液、及び100mlの水(3回目の洗浄時に添加する)で洗浄し、それからMgSOで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮する。得られた白色固体をジクロロメタン/メチルシクロヘキサン混合物から再結晶化させる。
Mp=133℃;収率87%。
H NMR:CDCl,200MHz:0.76(d,8Hz,3H);0.84(d,8Hz,3H);0.89(d,8Hz,3H);0.60〜1.10(m,3H);1.20〜1.50(m,2H);1.50〜2.00(m,6H);2.55(m,1H);4.34(d,6Hz,2H);5.85(s,1H);5.93(s,2H);6.76(m,3H)。
13C NMR:CDCl,50MHz:15.26;21.55;22.57;24.20;26.89;32.47;37.17;37.06;41.29;41.82;43.35;47.28;101.03;108.23;108.44;121.07;132.48;146.89;147.88;172.83ppm。
IR:σ(cm−1)3313,2955,2939,2907,2841,1637,1542,1501,1486,1441,1250,1188,1096,1042,942,922,856,812,734,703。
【0104】
実施例14:化合物16の調製
実施例11〜実施例13のプロトコルと同様のプロトコルに従い、化合物16を調製する。
【0105】
6.3g(0.075mol)の炭酸水素ナトリウム、0.1 lの蒸留水、5g(0.02625mol)の4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジルアンモニウムクロライド及び0.05 lのテトラヒドロフランを、浸漬型温度計及び上昇型コンデンサー(ascending condenser)を備えた250ml容の三つ口丸底フラスコに連続的に導入する。透明な溶液が得られるまで全体を攪拌し、それから0℃にする。[1r]−2−(トランス−2−イソプロペニル−シス−5−メチルシクロヘキシル)アセチルクロライド(5.36g、0.025mol)のテトラヒドロフラン溶液0.05 lを丸底の反応フラスコに滴下する。
【0106】
混合物を周囲温度で2時間攪拌し、それから溶媒をロータリーエバポレーターで除去する。得られた水相を0.1 lのジクロロメタンで2回抽出する。合わせた有機相を0.1 lの1N塩酸、その後0.1 lの塩化ナトリウムの飽和水溶液で洗浄する。それからそれらを無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮する。得られた白色固体をジクロロメタン/メチルシクロヘキサン混合物から再結晶化させる。
【0107】
この処理のために、Corey E.J. and Carpino P. (Tet. Lett., 31, 3857, 1990)に従って[1r]−2−(トランス−2−イソプロペニル−シス−5−メチルシクロヘキシル)アセチルクロライドを事前に調製した。
Mp=104℃;収率80%。
H NMR:CDCl,200MHz:0.86(d,6Hz,3H);0.60〜1.05(m,2H);1.65(s,3H);1.20〜2.0(m,8H);2.38(d*d,14/2Hz,1H);3.87(s,3H);4.35(m,2H);4.70(m,2H);5.70(m,2H);6.80(m,3H)。
13C NMR:CDCl,50MHz:18.79;22.57;32.12;32.34;34.91;36.69;41.09;41.97;43.49;51.74;55.90;110.66;111.55;114.34;120.80;130.44;145.11;146.71;148.73;172.53ppm。
IR:σ(cm−1)3315,2915,2842,1631,1595,1558,1514,1452,1427,1274,1247,1232,1210,1177,1156,1123,1039,886,847,828,794,751,737。
【0108】
実施例15:化合物8の調製
スキーム4に従い、化合物III−1から出発して化合物8を得る:
【0109】
【化16】

【0110】
20g(0.074mol)のマロン酸エステルIII−1及びそれから0.1 lの無水ジメチルスルホキシドを従来型の装置に導入する。得られた溶液を10℃〜15℃(結晶化限界)まで冷却する。媒体の温度が20℃を超えないように、8.75g(0.078mol、1.05当量)のカリウムt−ブトキシドをゆっくり導入する。得られた溶液を周囲温度で2時間維持し、それから12.6g(0.089mol、1.2当量)のヨードメタンを滴下する。混合物を2時間攪拌し、それから0.3 lの浄水に注ぐ。水相を0.1 lのメチルシクロヘキサンで4回抽出する。合わせた有機相を0.1 lの浄水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、それから濃縮する。得られた白色固体を−30℃でメチルシクロヘキサンから再結晶化させる。17.24gの[1r]−2−(トランス−2−イソプロピル−シス−5−メチルシクロヘキシル)−2−メチルマロン酸のジメチルエステルを得る、すなわち収率は82%である。
【0111】
8.4gのKOH(0.15mol、1.5当量)、10gの水、0.2 lのメタノール及びそれから15g(0.05mol)の先に得られたエステルを従来型の装置に連続的に導入する。混合物を12時間還流させ、それからコンデンサーを蒸留装置に交換する。蒸留が進行するにつれて、メタノールが水に置き換わることにより、メタノールが留去される。蒸気の温度が80℃に達したら、蒸留を中断する。周囲温度まで冷却した溶液を0.1 lのメチルt−ブチルエーテルで2回抽出し、それから0℃まで冷却し、pH=3まで酸性化する。得られた懸濁液を0.2 lのメチルt−ブチルエーテルで3回抽出する。有機相を中性になるまで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、それから濃縮する。残留固体をメチルt−ブチルエーテルとメチルシクロヘキサンとの混合物から再結晶化させる。10.9gの[1r]−2−(トランス−2−イソプロピル−シス−5−メチルシクロヘキシル)−2−メチルマロン酸を白色固体の形態で単離する、すなわち収率は85%である。
【0112】
12gの酢酸及び0.5gの96%硫酸を従来型の装置に連続的に導入する。溶液を5分間攪拌し、それから10.9g(0.0425mol)の先に得られた酸を添加する。得られた混合物を12時間還流させ、それから周囲温度まで冷却し、1gの酢酸ナトリウム三水和物を添加し、それから得られた溶液を0.5時間攪拌する。酢酸を真空下で留去し、残渣を0.2 lの水中に取り、続いて0.05 lのメチルt−ブチルエーテルで3回抽出する。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶液を濃縮し、残渣を真空下で蒸留する。粘性油の形態で得られた[1r]−2−(トランス−2−イソプロピル−シス−5−メチルシクロヘキシル)プロピオン酸を0.05 lの無水トルエン中に取る。
【0113】
10g(0.04mol)の上述の酸の無水トルエン溶液0.05 l及びそれから2滴のN,N−ジメチルホルムアミドを従来型の装置に連続的に導入する。新たに精製した塩化オキサリル(6.45g、1.3当量)を滴下漏斗に注ぎ、それから丸底フラスコに滴下する。得られた混合物を周囲温度で12時間攪拌し、それから溶媒を部分真空下で留去する。残渣を0.025 lの無水トルエン中に取り、それを真空下で留去する。残渣を0.025 lの無水トルエンを用いて取り出す。
【0114】
40%のモノメチルアミン水溶液0.025 lを従来型の装置に導入し、該溶液を氷水浴を用いて0℃にする。先の酸塩化物のトルエン溶液を滴下漏斗に導入し、それから丸底フラスコに滴下する。得られた混合物を2時間攪拌し、それから相を分離する。水相を保持する。有機相を0.05 lの浄水、0.05 lの5%塩酸、及びそれから再び0.1 lの浄水で2回洗浄する。この有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、それから濃縮する。残留固体をメチルt−ブチルエーテルとメチルシクロヘキサンとの混合物から再結晶化させ、2つの立体異性体の(2:1の割合の)混合物の形態で8.3gの化合物8を得る。
Mp=133℃;収率74%。
【0115】
生成物は2つの立体異性体からなり、これらはNMRシグナルの属性(attribution)が明白である場合、それぞれMajor及びminorと示される。
H NMR:CDCl,200MHz:0.72(d,6.8Hz,3H);0.88(d,7.0Hz,3H);0.91(d,7.0Hz,3H);0.60〜1.00(m,4H);1.14(d,7.2Hz,3H);1.00〜1.50(m,2H);1.60〜1.90(m,3H);2.10(m,1H);2.59(q.d.2.6/7.2Hz,1H);2.79(d,4.8Hz,3H M);2.82(d,4.8Hz,3H m);5.50(s,1H)。
13C NMR:CDCl,50MHz:15.63(M);15.81(m);21.91(m);22.05(M);23.08(m);23.12(M);24.70(m);24.84(M);24.70(m);24.84(M);26.52(M);26.58(m);26.74(m);27.24(M);33.10(m);33.61(M);35.35(M);35.68(m);35.82(m);37.31(M);40.35(m);40.79(M);42.22(m);43.97(m);44.29(m);44.83(M);175.80(M);177.10(m)ppm。
MS:m/z=225[M+.];210;194;182;154;140;123;100;87(100);69amu。
IR:σ(cm−1)3334,3070,2950,2866,1644,1547,1455,1407,1368,1298,1243,1159,1025,685。
【0116】
実施例16:化合物9の調製
ヨードメタンを9.70g(0.089mol、1.2当量)のブロモエタンに置き換えた実施例15のプロトコルに従って、15.9gの[1r]−2−(トランス−2−イソプロピル−シス−5−メチルシクロヘキシル)−2−エチルマロン酸のジメチルエステルを得る、すなわち収率は72%である。それから2つの立体異性体の(1:1の割合の)混合物の形態で8.13gの化合物9を得る。
Mp=137℃;収率68%。
H NMR:CDCl,200MHz:0.70〜1.00(m,12H);1.00〜2.10(m,12H);2.31(d.t,2.5/12Hz,1H);2.80(d,4.9Hz,3H);2.83(d,4.9Hz,3H);5.60(s,1H)。
13C NMR:CDCl,50MHz:13.13;13.75;15.46;15.70;17.79;21.90;22.00;23.05;23.15;24.34;24.81;24.89;26.40;26.66;26.85;27.18;33.33;33.67;35.26;35.69;36.48;36.68;42.54;43.41;44.44;44.76;48.98;49.19;175.14;176.29ppm。
MS:m/z=239[M+.];224;210;196;180;168;154;101(100);95;86;81amu。
IR:σ(cm−1)3298,2958,2870,1644,1547,1456,1409,1365,1239,1159,800,685。
【0117】
実施例17:化合物15の調製
スキーム3に従い、化合物III−2から出発して化合物15を得る:
【0118】
【化17】

【0119】
実験条件はL.F. Tietze et alにより記載された条件と同一である。
Mp=116℃;収率83%。
H NMR:CDCl 200MHz:0.87(d,6.4Hz,3H);0.50〜1.10(m,2H);1.66(s,3H);1.30〜2.00(m,8H);2.33(d*d,2.8/13.8Hz,1H);2.78(d,4.8Hz,3H);4.71(s,2H);5.83(s,1H)。
13C NMR:CDCl,50MHz:19.18;22.96;26.56;32.55;32.73;35.53;37.01;41.46;42.16;52.16;111.81;149.15;173.90ppm。
MS:m/z=209[M+.];194;166;136;121;109;95;73(100)amu。
IR:σ(cm−1)3252,3082,2923,2842,1642,1570,1433,1375,1261,1183,1155,899,768,623。
13C NMR:CDCl,50MHz:20.37;20.46;23.76(2C);27.30;27.49;33.80(2C);33.87;33.97;35.79;35.94;37.90;38.26;42.51;43.26;50.28;50.86;52.96;53.33;54.23;55.66;113.47;113.82;148.89;149.42;169.24;170.72;174.17;174.28ppm。
MS:m/z=267[M+.];252;236;221;208;184;144;136;131(100);121;107;101;93;79amu。
IR:σ(cm−1)3265,3100,2923,2860,1747,1642,1568,1437,1330,1407,1300,1265,1155,1119,897,758,728。
【0120】
実施例18:化合物VIaの調製
【化18】

【0121】
0.4 lのメチルt−ブチルエーテル及びそれからn−ブチルリチウムのヘキサン溶液0.16 l(2.5N、0.4mol)を従来型の装置に連続的に導入する。得られた混合物を0℃にし、それから14.6g(0.2mol)のN−メチルアセトアミドのメチルt−ブチルエーテル溶液0.1 lを0℃の温度を維持するように滴下漏斗でゆっくりと添加する。得られた懸濁液を同じ温度で2時間、及びそれから周囲温度で18時間攪拌し、淡黄色の溶液を得る。この溶液を−20℃にし、それから30.8g(0.2mol)の(L)−メントン(Va)を滴下する。反応混合物を周囲温度で18時間維持した後、加水分解する。丸底フラスコ内で60℃を超えずに存在するメントン(Bp=35℃〜40℃/26.6Pa)を排除するために、濃縮後に得られた粗生成物を高真空下で蒸留する。純粋な生成物を得るために、残渣を−30℃でヘキサンから2回再結晶化させる。30.5gの化合物VIaを白色固体の形態で単離する。
Mp=81℃;収率67%。
H NMR:CDCl,200MHz:0.85(d,6.2Hz,3H);0.89(d,7.0Hz,3H);0.93(d,7.0Hz,3H);0.70〜1.10(m,3H);1.40〜1.60(m,2H);1.60〜1.90(m,3H);1.96(d,14.3Hz,1H);1.90〜2.10(m,1H);2.78(d,14.3Hz,1H);2.82(d,4.6Hz,3H);3.97(s,1H);6.29(s,1H)。
13C NMR:CDCl,50MHz:16.28;18.84;20.65;22.02;24.40;24.68;26.12;33.47;44.01;45.19;49.02;72.25;172.38ppm。
MS:m/z=227[M+.];212;210;209;194;170;157;142;115;109;100;95;86;81;73(100)amu。
IR:σ(cm−1)3311,2950,2867,1640,1557,1451,1407,1367,1346,1239,1183,1159,1071,1052,987,889,821,713,654。
【0122】
実施例19:化合物17の調製
スキーム5に従って実施例18で得られた化合物VIaを介して化合物17を調製する:
【0123】
【化19】

【0124】
11.35g(0.05mol)の化合物VIa、0.1 lの無水トルエン及びそれから2滴のメタンスルホン酸を従来型の装置に連続的に導入する。得られた溶液を還流下で16時間攪拌し、それから冷却して、1Nの重炭酸ナトリウム水溶液0.05 lで中和する。乾燥させ、真空下で濃縮した後、残渣をガスクロマトグラフィにより分析する。複数の異性体が識別可能であり、主要な異性体は混合物の75%超を占める。この残渣を−30℃でヘキサンから連続的に2回再結晶化させ、白色固体の形態で化合物17を得る。
Mp=82℃;収率64%。
H NMR:CDCl,200MHz:0.87(d,6.4Hz,3H);0.90(d,6.3Hz,6H);0.60〜1.20(m,2H);1.40〜2.00(m,6H);2.40〜2.60(m,1H);2.72(d,4.8Hz,3H);2.81(d,16.5Hz,1H);2.97(d,12.5Hz,1H);5.95(s,1H)。
13C NMR:CDCl,50MHz:20.65;21.10;21.96;23.53;26.66;29.38;29.90;31.48;40.07;41.09;123.14;140.84;172.14ppm。
MS:m/z=209[M+.];194;166;136;121;109;95;81;73(100)amu。
IR:σ(cm−1)3288,3079,2960,2872,1650,1549,1458,1403,1338,1260,1160,1052,716,681。
【0125】
実施例20:化合物18の調製
スキーム5に従って実施例18で得られた化合物VIaを介して化合物18を調製する:
【0126】
【化20】

【0127】
11.35g(0.05mol)の化合物VIa、9.75g(0.06mol、1.2当量)のN,N−カルボニルジイミダゾール及び0.1 lの無水テトラヒドロフランを従来型の装置に連続的に導入する。このようにして得られた溶液を周囲温度で2時間、及びそれから50℃で2時間、攪拌する。溶液を周囲温度まで冷却し、それから7.84g(0.07mol、1.4当量)のカリウムt−ブトキシドの無水THF溶液0.1 lを反応媒体中で30℃を超えないように添加する。周囲温度で18時間後、媒体を加水分解し、乾燥させ、真空下で濃縮する。
【0128】
濃縮物の気相クロマトグラフィによる分析により、それぞれ9%:6%:14%:71%の割合の4つの異性体の存在が示される。
【0129】
主要な異性体である化合物18を−30℃でのヘキサンからの結晶化により単離する(収率は58%である、すなわち6.06gの白色固体が得られる)。
Mp=64℃。
H NMR:CDCl,200MHz:0.86(d,6.2Hz,3H);0.89(d,6.6Hz,3H);0.95(d,6.6Hz,3H);1.00〜1.50(m,2H);1.60〜2.00(m,5H);2.30〜2.50(m,1H);2.82(d,4.8Hz,3H);3.09(d*d,4.1/12.9Hz,1H);5.56(s,1H);6.04(s,1H)。
13C NMR:CDCl,50MHz:19.52;20.70;21.96;26.01;26.78;27.37;31.89;33.42;36.12;51.98;115.97;157.98;168.40ppm。
MS:m/z=209[M+.];194;167;152;137;121;109;101;95;81;73(100)amu。
IR:σ(cm−1)3273,3083,2950,2866,1655,1627,1559,1443,1408,1385,1263,1244,1195,1160,895,873,745,678。
【0130】
実施例21:(1’S,2’S,5’S)−2−[(2’−イソプロペニル−5’−メチル)シクロヘキシ−1−イル]酢酸のN−メチルアミド(化合物1’)の調製
実施例1及び実施例2と同一のプロトコルに従って(S)−シトロネラールから出発して化合物1の(1S,2S,5S)鏡像異性体(化合物1’)を得る。
Mp=105℃;[α]25=+76.4°(c=1;EtOH)。
【0131】
実施例22:(1’R,2’R,5’R)−2−[(2’−イソプロペニル−5’−メチル)シクロヘキシ−1−イル]酢酸のN−メチルアミド(化合物1’’)の調製
実施例1及び実施例2と同一のプロトコルに従って(R)−シトロネラールから出発して化合物1の(1R,2R,5R)鏡像異性体(化合物1’’)を得る。
Mp=105℃;[α]25=−76.4°(c=1;EtOH)。
【0132】
実施例23:鏡像異性体1’と鏡像異性体1’’との比較
実施例21及び実施例22で得られたエナンチオピュア化合物1’及びエナンチオピュア化合物1’’、並びにまた実施例2で得られた化合物1のラセミ混合物を官能特性及び生理特性の比較評価のために香料の専門家のパネルに供した。
【0133】
この評価では、知覚閾値及び感じられるリフレッシュ効果の強度の両方に関して、別々に回収された2つの鏡像異性体1’と鏡像異性体1’’との間においても、ラセミ混合物を用いても何らの顕著な違いを実証することができなかった。
【0134】
実施例24:化合物1の評価の結果
食品香料
鉱水中30ppmの用量で該分子を評価した。パネリストは嚥下後、急速に広がる爽快感を感じ、飲料の芳香ノート(aromatic note)をミント系、マツ系、甘草系、感温、刺激、催唾と記載した。
【0135】
ミント香料中において該分子を試験し、フォンダンにおいて50ppmの用量で評価した。パネリストが数分間続く強い爽快感を感知した。
【0136】
該分子はミント香料中10%の用量であり、得られた香料は甘い菓子類中0.2%の用量であった。
【0137】
【表7】

【0138】
テイスターのパネルは爽快感を触れた瞬間から及び数分間感知した。化合物1を含有しない香料(処方A)の爽快感はそれほど強力ではなく、化合物1を含有する香料(処方B)で感知した爽快感より口腔にある期間が短かった。
【0139】
該分子を柑橘系果実香料中10%で試験し、得られた香料は脂肪のフィリング(fatty filling)中0.3%の用量であった。
【0140】
パネリストは持続的な爽快感、及びレモンプロファイルの変化を感知した。化合物1を含有しない製品は特定の爽快感を全く示さなかった。
歯磨き粉香料
これらの組成物はミントを含有しない小児用のストロベリー香料であり、爽快感を示すことを可能にするものとする。
【0141】
【表8】

【0142】
これらの2つの香料を1%の用量でゲルに適用し、ブラッシングにより試験した。
【0143】
ストロベリーA:ストロベリー、軽く焼けたグリーンノート/バニラ風味
【0144】
ストロベリーB:ストロベリー、かなり迅速に感知されるかすかな爽快感、グリーンノート(green note)、軽い(light:ライト)、より強いバニラ風味。
【0145】
実施例25:化合物10の評価の結果
食品の香料
化合物10の官能特性の評価を鉱水中1ppmの濃度で行った。香料の専門家は舌の上に乗せた直後に広がる灼熱感及び催唾感を感じた。
【0146】
続いて化合物10をカレー/トウガラシ香料において試験し、クラッカーにおいて5%(最終用量:500ppm)で評価した。
【0147】
【表9】

【0148】
パネリストは香料Bが処方Aと同程度刺激的であることを見出した。芳香ノートはわずかに変化し、化合物10がより長続きする感覚を与える。
口歯衛生に適用するための香料
化合物10を様々な用途:アルコール洗口剤及び非アルコール洗口剤及び歯磨き粉で試験した。テイスターのパネルは刺激感及び温感を感じた。この分子は、舌の縁上で刺痛感を与え、トウガラシのように刺激的であり、かつ催唾性を有するので非常に有益である。
【0149】
【表10】

【0150】
洗口剤(アルコールなし):
香料の用量 0.2%
基準香料:レモン系、コーラ系、冷感、ミント系
香料B:レモン系、刺激、コーラ系、冷感、ミント系、舌先での刺激感
洗口剤(6%アルコール):
香料の用量 0.2%
基準香料:レモン系、コーラ系、冷感、ミント系
香料A:レモン系、刺激、コーラ系、冷感、ミント系、舌先での刺激感
シリカベースの歯磨き粉:
香料の用量 1%
基準香料:レモン系、コーラ系、冷感、ミント系
香料C:レモン系、刺激、コーラ系、冷感、ミント系、舌先での刺激感

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】

(式中、
破線の結合はそれぞれ独立して存在しているか又は存在しておらず(ただし2つの連続した破線の結合は同時には存在しない)、
(エチルを除く)は、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cシクロアルキル及びC〜Cシクロアルケニルから選択され、これらの基はそれぞれ任意で、少なくとも1つのヒドロキシル官能基、カルボキシル官能基、ニトリル官能基、C〜Cアルコキシ官能基、C〜Cアルコキシカルボニル官能基、C〜Cシアノアルキル官能基及びベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル官能基で置換されていてもよく、
C1原子とC7原子との間の破線の結合が存在しない場合、
及びRは独立して水素原子又はC〜Cアルキルであり、
C1原子とC7原子との間の破線の結合が存在する場合、
は水素原子又はC〜Cアルキルであり、
は存在しない)の化合物。
【請求項2】
がメチルであることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が水素原子であり、Rが水素原子及びメチル基又はエチル基から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
及びRが両方とも水素原子であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物が、
N−メチル−2−(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)アセトアミド
2−(6−イソプロピル−3−メチルシクロヘキサ−2−エニル)−N−メチルアセトアミド
2−(2−イソプロペニル−5−メチルシクロヘキシル)−N−メチルアセトアミド
2−(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキサ−1−エニル)−N−メチルアセトアミド
2−(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシリデン)−N−メチルアセトアミド
2−(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)−N−メチルプロピオンアミド
3−(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)−N−メチルブチルアミド
から選択されることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
がエチル基の立体障害よりも大きい立体障害を有することを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
が少なくとも1つのヒドロキシル官能基、カルボキシル官能基、ニトリル官能基、C〜Cアルコキシ官能基、C〜Cアルコキシカルボニル官能基又はC〜Cシアノアルキル官能基で置換されたフェニル基又はベンジル基であることを特徴とする、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
が、
【化2】

から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
がイソプロピル基、イソブチル基、−CHCOOH基、−CHCOOMe基、−CHCOOEt基、−CHOH基、−CHCHOH基及び−CHC(CHOH基から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の化合物。
【請求項10】
及びRが両方とも水素原子であることを特徴とする、請求項6〜9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
前記化合物が、
N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)−2−(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)アセトアミド
N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)−2−(2−イソプロペニル−5−メチルシクロヘキシル)アセトアミド
N−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルメチル−2−(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)アセトアミド
[2−(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)アセチルアミノ]エチルアセテート
[2−(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)アセチルアミノ]メチルアセテート
N−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)−2−(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)アセトアミド
N−(2−ヒドロキシエチル)−2−(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)アセトアミド
N−(4−シアノメチルフェニル)−2−(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)アセトアミド
N−(4−シアノフェニル)−2−(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)アセトアミド
[2−(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)アセチルアミノ]酢酸
N−イソブチル−2−(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)アセトアミド
N−(2−メチルオキシカルボニルフェニル)−2−(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)アセトアミド
から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の化合物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の式(I)の化合物を少なくとも1つ含む芳香組成物。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の式(I)の化合物を少なくとも1つ含む食品タイプの芳香組成物。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の式(I)の化合物を少なくとも1つ含む、口腔内用途に適した、医薬品又は医薬部外品の組成物の一部である芳香組成物。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の式(I)の化合物を少なくとも1つ含む、顔、身体又は身体の一部のケア用の化粧品組成物。

【公表番号】特表2012−524764(P2012−524764A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506542(P2012−506542)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際出願番号】PCT/FR2010/000313
【国際公開番号】WO2010/122239
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(510116347)
【Fターム(参考)】