説明

生理学的試験方法及び装置

身体的努力のまじめさを試験する装置及び方法。本装置は可動性部材(20)、この可動性部材(シャフト)に加えられた力を測定するセンサ(14);及び可動性部材の運動抵抗を変化させるための抵抗手段(32)を備える。可動性部材に印加された変動させた抵抗力と測定された力との間の関係を求めて使用者の努力のまじめさを評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒトの関節の動作を測定する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は人体の1つの関節又は複数関節の組み合わせの動作を測定することに関し、特に動作試験プロセス中に患者が払う努力を測定することに関する。
作業場で普通に起こるような事故、或いは道路交通事故といった事故で負傷した時、事故の結果として負傷者に支払われるかもしれない正確な賠償金額を査定するため、負傷者の傷の程度を決定することが通常は必要となる。支払われるべき賠償額は、典型的には負傷者の傷並びに事故に起因する負傷者の身体部分の使用又は動作の損失の程度に関係づけられる。例えば、事故で腕を負傷した場合、支払い賠償額は、負傷者の腕の使用がどの程度まで損なわれたかに依存しよう。また、負傷の正確な査定により、リハビリ計画を監視し、必要に応じて変更することが可能となる。
【0003】
しかし、負傷又は事故等に起因して関節の動作がどの程度まで損なわれたかを決定するための関節動作の反復可能な満足できる科学的査定方法は現在までのところ存在しない。現在、大部分の負傷は医師又は理学療法士により主観的に評価されている。査定方法は一般に非科学的で不正確に陥りやすい。特に問題となるのは、患者が、例えば、試験時に課せられた動作課題をすることができないふりをしたり、或いは最大限の努力を下回る力しか出さないことにより、本来より重度の負傷であるかのように装う時である。
【0004】
これは、負傷に関係する保険支払いを行う組織、特に保険会社にっとって大きな問題である。
関節動作を正確に測定することができないため、関節動作の改善も正確に測定することができない点で、さらなる関連する問題が発生する。即ち、患者が理学療法又は他の関節に関係する負傷の治療を受けている時に、例えば、1週間単位の基準で関節のフィットの改善又は低下を正確にプロットすることは不可能である。
【0005】
本発明は、身体の関節の動作を繰り返し正確に測定するための装置であって、関節動作の測定を受けている患者が試験時に最低限の努力又は少なくとも最大限を下回る努力しかしていないかどうかを決定する手段を好ましくは備えている装置を提供することを目的とする。
【0006】
本明細書を通して、「含む」、又は「含有する」、「備える」なる用語は、そこに述べた要素、数字もしくは工程、又は複数の要素、数字もしくは要素の群を包含することを意味するものであり、任意の他の要素、数字もしくは工程、又は複数の要素、数字もしくは要素の群を排除するものではない。
【0007】
本明細書に含まれている文献、行為、材料、装置、物品などの記載は本発明に対する説明を提供することだけを目的とする。これらのいずれか又は全てが従来技術の一部を構成するか、又は本発明に関連する技術分野において本出願の優先日より前にそれが存在していたかのように一般常識であったことを容認するものであると解すべきではない。
【発明の開示】
【0008】
1側面において、本発明は、下記を含む動作試験装置を提供する:
可動性部材;
可動性部材に加えられた力を測定するセンサ;及び
可動性部材の運動抵抗を変化させるための抵抗手段。
【0009】
可動性部材はシャフト又はレバーであってもよい。
可動性部材がシャフトである場合、シャフトは回転可能なものであってもよい。この態様では、センサはシャフトに加えられたトルクを測定するトルクセンサからなるものでよい。
【0010】
抵抗手段は、シャフトをトルクセンサに可変連結する連結(カップリング)手段を備えていてもよい。シャフトとトルクセンサのそのような可変連結は、シャフトの回転抵抗を変化させる。そのような抵抗手段の1例は、電気ブレーキ、渦電流カップリング、サーボモータ等である。
【0011】
抵抗手段が連結手段を含んでいる場合、典型的には、抵抗は、連結がなく、抵抗が全く加えられておらず、シャフトがトルクセンサに対して自由に回転する状態と、シャフトがトルクセンサに完全に連結されている状態との間で可変である。
【0012】
本装置は、シャフトの位置を測定するエンコーダをさらに備えることが好ましい。本発明の装置はまた、トルクセンサから入力データを受け取るための制御手段も備えることができる。この制御手段は制御信号を抵抗手段に入力し、シャフトに印加された抵抗とトルクセンサにより測定されたトルクとの間の関係を決定するように配列されていてもよい。また、制御手段がエンコーダからシャフトの角度位置に関する信号を受信してもよい。
【0013】
別の側面において、本発明は下記を備える動作試験装置を提供する:
シャフト;
シャフトに加えられたトルクを測定するトルクセンサ;及び
シャフトの回転抵抗を変化させるためにトルクセンサにシャフトを可変連結する連結手段。
【0014】
可動性部材がレバーを備える場合、該レバーは抵抗手段に接続されていてもよい。抵抗手段はポンプ部材から構成しうる。ポンプ部材は典型的にはレバーに対する抵抗を変化させるための制御バルブを有する。さらに、この態様のポンブ手段はセンサに接続されていてもよく、該センサはレバーに加えられた力を測定する。センサは、力がレバーに加えられた時のポンプ内の流体の圧力変化を測定するために圧力計を備えていてもよい。
【0015】
ある広い関連側面において、本発明は、関節動作の試験の努力のまじめさを評価する方法であって、変動する負荷に対するその関節の応答を反復測定することによる方法を提供する。
【0016】
より具体的には、本発明は、下記工程を含む、関節がシャフトに加えたトルクを測定する方法を提供する:
シャフトの回転に対して変化する抵抗力を印加し;
シャフトに加えられたトルクを測定し;
印加抵抗力を記録し;そして
印加抵抗力と測定されたトルクとの間の関係を測定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の具体例を、例示のみを目的として添付図面を参照しながら以下に説明する。
添付図面を参照すると、全体として10で示される装置は、矩形函体状ケーシング12を備える。このケーシング一つの内壁15にトルクセンサ14の片側が装着されている。トルクセンサ14の反対側に固定されているのは、中央に穴18が開いている装着プレート16であり、細長いシャフト20の一端がこの穴18を通って突き出ている。シャフト20のこの端部は装着プレート及びトルクセンサ14に対して回転自在である。シャフト20は、装着プレート16からトルクセンサ14と同軸方向に向かい、その先端は自由端部21を形成し、この端部は、トルクセンサ14が装着されている壁面15とは反対側のケーシング壁面24に形成されている開口22を通って突出している。
【0018】
シャフト20の自由端部21はカップリング(連結継手)26を形成し、このカップリング26は、全てでないにせよほとんどの関節がすることができる軸を中心とする回転運動を生ずるように使用することができる、任意の関節又は関節の組み合わせを試験するための各種の関節試験用インターフェースに取付けることができる。
【0019】
シャフトより大径の中心内腔(ボア)30を有するブレーキ・ステータ・コイル28が装着プレート16に固定されている。シャフト20はその中心内腔30を通って突き出ている。ブレーキロータ32がシャフト20に装着され、これはブレーキ・ステータ・コイル28に対向する摩擦面34を備え、ブレーキ・ステータ・コイル28と共に電気ブレーキを構成する。ブレーキロータ32に給電される電流が増大するとブレーキロータ32とブレーキ・ステータ・コイル28との間の抵抗、従って、これら2部材間の連結が増大する。電流がある最大値であって、ブレーキが完全にオン状態(かかった状態)であると、シャフト20に加えられたトルクはトルクセンサ14に直接伝えられる。ブレーキが完全に外れた状態であると、シャフト20は自由に回転し、トルクセンサ14にはトルクが全く加わらない。ケーシングの壁面24に装着されたシャフトエンコーダ36が、シャフト20の角度位置を測定する。
【0020】
マイクロコントローラ50の形態のコンピュータ制御手段がトルクセンサ14及びシャフトエンコーダ36に接続され、これがトルクセンサにより測定されたトルク及びシャフトエンコーダにより測定されたシャフトの角度位置を表示する入力信号を受信する。マイクロコントローラはまたフィードバックループを介して電気ブレーキに印加される電流を制御する。
【0021】
シャフト20にシャフトを方向Aの方に回転させるトルクが加わると、そのトルクはトルクセンサ14により測定される。
本装置10は、ブレーキロータ32及びブレーキ・ステータ・コイル28を用いて、シャフト20のその長手軸を回転軸とする回転に対する抵抗を増大させ、それをトルクセンサ14により測定することにより機能するものであることは認められよう。この抵抗は、ブレーキロータ32に給電される電流を変化させることにより迅速かつ正確に制御することができる。シャフト20に加えられたトルクはトルクセンサ14により測定され、これは従って患者の関節又は関節の組み合わせの動作の測定値を与える。
【0022】
実質的に全ての関節の動作を、関節の動きを監視するためにカップリング26に取付けられた可撓性ロープ及びキャプスタンを用いて測定することができる。
しかし、上述したようにして関節が発生しうるトルクを測定することによって関節の動作を単に測定するだけでは、患者が可能な限り懸命に努力する、すなわち、最大限の努力を発揮するのでなければ、真の関節動作を測定することにならない。また、固定された一定負荷の印加に基づいて動作を測定するだけでは、患者がその課題に払っている努力のまじめさの表示が得られない。
【0023】
従って、最大限を下回る努力しかしないことにより真の動作試験を不正確にすることがより困難となるようにするため、特に好ましい態様では、コンピュータ制御手段50が、患者がシャフト20を回転させている間に電気ブレーキにより負荷された抵抗型負荷を変化させるようにプログラムされている。これにより、患者が試験を偽る(不正確化する)のが非常に困難となる。なぜなら、変化しない抵抗に対して、例えば「50%の努力」をしようと決めることは比較的簡単であるが、抵抗が連続的に変化する場合には、患者は、その元の努力レベルを一貫して保ちながら加えるのに必要な、変化する努力レベルを正確かつ迅速に計算することはできないからである。
【0024】
そのため、本システムは電気ブレーキに印加される抵抗型負荷を変化させて、患者によるシャフトの回転に対する抵抗を変化させる。装置10は、患者がシャフト20に加えたトルクを測定し、測定トルクをシャフト20の回転に印加された抵抗と相関させる。
【0025】
装置10は、患者が行う一つの運動動作の間にシャフト20の回転に対する抵抗を変化させる。例えば、患者が手を肩まで上げるように求められた場合、その1動作において、シャフトの回転に対する抵抗は数回変化しよう。
【0026】
正弦波、鋸波(ノコギリ歯)、及び不均一パターンを含むいくつかの抵抗パターンを印加することができる。図2及び3に示したパターンは段階変化型のものである。
図2を参照すると、各回に100%の努力をしている患者の場合であって、測定トルク52と印加抵抗54との間の関係Lはかなり一定であることが示されている。しかし、患者が「50%の努力」しかしないことにより試験をごまかそうとする場合、負荷が変動するのにつれて一貫して最大限を下回る50%の努力を維持することはできないため、図3に示すように、測定トルクと印加抵抗力との関係Lにより大きなばらつき/標準偏差が測定されることになろう。試験は反復してもよく、患者の動作のばらつきが、最大限の努力を下回ることをさらに表示する。
【0027】
抵抗負荷の変動はエンコーダ又は時間のいずれかにより測定されるようなシャフトの位置に基づくものでもよい。この変動は、例えば、負荷の傾斜変化又は段階変化又はその両方により連続的に変化させてもよい。この変動は増大型、減少型、又は一定停止型でもよい。
【0028】
電気ブレーキは、渦電流カップリングもしくは類似制御方式のカップリング手段又はサーボモータといった等価の別の要素に置換してもよい。さらに、可変抵抗を付与する方法は、油の流れを制限して制御された抵抗トルクを生ずることができるように可変流量制御手段を備えた油圧モータ又はアクチュエータとすることもできよう。
【0029】
本システムは、能動形でも受動形でもよい。例えば、能動形システムでは、抵抗電気ブレーキは可変トルクサーボドライブで置換することができる。
本装置は関節動作の反復可能な測定手段を提供するので、関節動作の改善を測定することができ、例えば、ひじの動作を1週間単位の基準で測定して、関節動作の力及び運動範囲の増大を測定及び追跡することができる。
【0030】
ここに具体的態様に関して示した本発明に対して、本発明の技術思想を逸脱せずに多くの変更及び/又は改変が可能であることは当業者には理解されよう。
従って、ここに示した態様はあらゆる点において例示であり、制限ではないと解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】努力のまじめさを計測するための反復動作測定用装置の概要図である。
【図2】装置に印加された抵抗負荷を測定トルクに対して比較したグラフである。
【図3】装置に印加された抵抗負荷を測定トルクに対して比較した別のグラフである。
【符号の説明】
【0032】
10:装置、12:ケーシング、14:トルクセンサ、16:装着プレート、20:シャフト、26:カップリング、28:ブレーキ・ステータ・コイル、32:ブレーキロータ、36:シャフトエンコーダ、50:マイクロコントローラ、52:測定トルク、54:印加抵抗


【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動性部材;
可動性部材に加えられた力を測定するセンサ;及び
可動性部材の運動抵抗を変化させるための抵抗手段、
を含む動作試験装置。
【請求項2】
可動性部材がシャフトを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
センサがシャフトに加えられたトルクを測定するトルクセンサを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
抵抗手段がシャフトをトルクセンサに可変連結する連結手段を備え、それによりシャフトの回転抵抗を変動させる、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
抵抗が、シャフトとトルクセンサとの間に連結がない状態と、シャフトがトルクセンサに完全に連結されている状態との間で可変である、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
連結手段が電気プレーキを含む、請求項2又は3に記載の装置。
【請求項7】
ユーザがシャフトに加えたトルクを表示する入力データをトルクセンサから受け取る制御手段をさらに備える、請求項3に記載の装置。
【請求項8】
制御手段がシャフトに印加される抵抗を変化させるために抵抗手段に制御信号を付与するようにも配列されている、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
シャフトの位置を測定するエンコーダをさらに備える、請求項7又は8に記載の装置。
【請求項10】
制御手段がエンコーダからシャフトの角度位置を表示する信号も受け取る、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
制御手段が、シャフトの回転抵抗とトルクセンサにより測定されたトルクとの間の関係を確立する、請求項7〜10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
関節動作試験時の努力のまじめさを評価する方法であって、変動する負荷に対するその関節の応答を反復測定することによる方法。
【請求項13】
下記工程を含む、関節がシャフトに加えたトルクを測定する方法:
シャフトの回転に対して変化する抵抗力を印加し;
シャフトに加えられたトルクを測定し;
印加抵抗力を記録し;そして
印加抵抗力と測定されたトルクとの間の関係を測定する。

【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−501640(P2007−501640A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522181(P2006−522181)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【国際出願番号】PCT/AU2004/001038
【国際公開番号】WO2005/013821
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(506041855)テック・ソリューションズ・プロプライエタリー・リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】TEK SOLUTIONS PTY LTD
【Fターム(参考)】