説明

生理活性な異種ドメインを担持するコラーゲン線維およびその、例えば、創傷の治癒における使用

少なくとも1つのN−末端ドメインに結合された三重らせん形成ドメインを含んでなる修飾プロ−α鎖であって、N−末端ドメインはラミニン糖タンパク質または分泌白血球プロテアーゼ阻害剤の少なくとも一部からのポリペプチドを含有する。プロ−α鎖は、保持N−末端ドメインを有するプロコラーゲン分子の一部を形成しうる。プロコラーゲン分子は、コラーゲンポリマー、マトリクス、およびゲルへ組込まれ、かつ創傷治癒などの用途に使用されうる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明は、修飾細胞外マトリクス分子、それから製造されるポリマー、マトリクス、およびゲルに関し、かつ創傷治癒などの用途におけるその使用に関する。
【0002】
(背景技術)
慢性創傷を治療する新しい臨床療法の必要がある。創傷ケア市場は巨大であり、足および脚の潰瘍を治療する保健機関のコストは世界中で年間推定70億ドルである(FDAウェブサイトhttp://www.fda.gov/)。かかる創傷に対する既存の治療としては、培養線維芽細胞または多酸基質上に支持された線維芽細胞を含有するグルタルアルデヒド架橋コラーゲンインプラント、I型コラーゲンゲルが挙げられる。化学的基質、外細胞、および架橋化合物の使用は、移植片拒絶、抗原反応、および創傷縁での不十分な統合の危険性を増大させる。また、前培養細胞を含有する包帯は拡大困難であり、患者に新たに送達することも困難である。
【0003】
さらに、静脈性潰瘍など慢性創傷に対する標準の治療は、圧迫療法とともに吸収性または非吸収性包帯の使用である。しかし、この方法は中程度でしか有効でなく、患者には不快であり、効果を発揮するには数か月かかる場合があり、治療が完了した大部分の症例において再発が起こる。したがって、遅延治癒の発症の原因となる基礎を成す細胞および分子メカニズムに対処できない高価な包帯の反復使用を回避する慢性創傷の治療および管理の緊急の必要性がある。結果として中程度でしか有効でない創傷治癒の標準の治療をもたらす最も重要な要因の1つは、細胞浸潤障害と関連した創傷部位でのコラーゲン沈着の顕著な減少である。
【0004】
大部分の細胞は、単純な単細胞生物またはヒト組織の細胞に関係なく、細胞外マトリクス(ECM)として知られ、かつさまざまなタンパク質および多糖類から成る高分子の複雑なネットワークによって取り囲まれている。ECMの主要なタンパク質は、哺乳動物における全タンパク質の約25%を構成すると考えられているコラーゲンと呼ばれる関連タンパク質のファミリーである。少なくとも26個の遺伝学的に明確な型のコラーゲン分子があり、その一部は、通常、長さが数マイクロメートルでありうるとともに、電子顕微鏡によって視覚化されうるコラーゲンフィブリルとして知られる大線維を形成するため、線維コラーゲン(I型、II型、III型、V型、およびXI型コラーゲン)として知られる。
【0005】
コラーゲンフィブリルは、コラーゲン分子のポリマーから成っており、ポリマーを形成するために集合するコラーゲン分子へのプロコラーゲンの変換を含む過程によって生成される。プロコラーゲンは、分子の中心で三重らせんドメインから成り、アミノ末端(N−末端プロペプチドとして知られる)およびカルボキシル末端(C−末端プロペプチドとして知られる)では非らせんドメインを有する。三重らせんドメインは、α鎖として知られる3個のポリペプチド構成されている。プロコラーゲンは、プロ−α鎖(NおよびC−末端形成プロペプチドドメインを有するα鎖)から細胞内で生成される。プロ−α鎖は膜結合リボソーム上で合成され、その後にプロ−α鎖は小胞体へ挿入される。小胞体内ではプロ−α鎖は集合してプロコラーゲン分子になる。プロコラーゲンは細胞外環境へ分泌され、次いでプロコラーゲンN−プロテイナーゼ(N−末端プロペプチドを切断する)およびプロコラーゲンC−プロテイナーゼ(C−末端プロペプチドを切断する)の作用によってコラーゲンへ変換される。プロペプチドが除去されていると、こうして形成されるコラーゲン分子は自然に自己集合し、コラーゲンフィルビルを形成することが可能である。コラーゲンフィブリルの形成における律速段階は、プロコラーゲンC−プロテイナーゼによるCプロペプチドの除去である。
【0006】
コラーゲンフィブリルは他のフィブリル、および細胞外マトリクスの他の成分とも相互作用し、インビボで結合組織を形成する。フィブリルはインビトロで集合し、相互作用してコラーゲンマトリクスまたはゲルを形成する。かかるコラーゲンマトリクスは種々の工業用途を有する。例えば、コラーゲンベースの生物医薬品がインプラントとして化粧品および美容増強市場において、かつしわ、ひだ、および顔の傷を滑らかにするために使用される。コラーゲンベースの製品は人工皮膚(例えば、火傷患者の治療用)、創傷包帯などの製造においても使用される。
【0007】
コラーゲンベースの製品は広範囲に採用されているが、その性能は満足には程遠く、多くの禁忌および副作用が知られている。問題の一部は、これら製品の多くが動物コラーゲン(例えば、牛皮由来)に基づき、そのようなものとしてアレルギーおよび炎症反応や感染を起こすという事実に関係している。他のコラーゲン製品は、死体組織由来であり、それらは結果として炎症およびアレルギー反応の減少がもたらされると提案されている。しかし、かかる製品は製造に費用がかかり、製品品質の管理における困難は性能の変動をもたらしうる。
【0008】
ECMの別の重要な機能は、細胞への成長因子の貯蔵および提示である。ECMのプロテオグリカン成分は多くの成長因子の活性の調節にける中心的な役割を果たし、したがって、有力な病態生理学的調節因子を示す。
【0009】
プロテオグリカンのファミリーの公知の実施例は、主に20−24アミノ酸のロイシンに富む反復配列から成る約40kDaのコアタンパク質を有する。これらのタンパク質は小さなロイシンに富むプロテオグリカン(Small Leucine−Rich Proteglycan)(SLRP)として知られ、通常、配列LXLXLXNX(L/I)を含有し、ここでL=ロイシン、N=アスパラギンは特定の保存位置にあり、X=任意のアミノ酸である。
【0010】
SLRPファミリーは少なくとも4個のメンバー、すなわちデコリン、ブグリカン、フィブロモジュリン、およびルミカン(そのすべては1980年代後期/1990年代初期に詳細に特徴づけられた)を含んでなる。これらのプロテオグリカンは、細胞周期の調節、組織修復、およびコラーゲンフィブリルとのその相互作用による組織の機械的特性の修飾において特殊な機能を有する。デコリンおよび関連プロテオグリカンは、形質転換成長因子β(TGF−β)ファミリーのメンバーを含む種々の成長因子の活性に結合し、かつこれを修飾することも報告されている。TGF−βなどの成長因子は、細胞活性およびECM再構築に対する主要な影響を有する。少なくとも5種類のTGF−β(TGF−β1−TGF−β5)があり、その化学的構造および活性は広く報告されている(例えば、非特許文献1を参照)。
【0011】
TGF−β(特にTGF−β1およびTGF−β2)の主要な病理生理学的活性は、創傷治癒の促進である。しかし、これはしばしば瘢痕形成の増大および線維症と関係がある。実際に、TGF−βの修飾における臨床的関心は、瘢痕形成を削減するためのその活性の抑制と関係があった(ただし、これは創傷治癒の速度に悪影響を及ぼす)。例えば、特許文献1は、TGF−β1およびTGF−β2の活性を抑制し、特に瘢痕形成の削減に有利である組成物を開示している。
【0012】
TGF−βに結合することが知られている別のプロテオグリカンは、III型TGF−β受容体である。このプロテオグリカンは、TGF−βのリザーバとして作用しうるとともに、ベータグリカン(または細胞膜から切断され、ECMに遊離して存在する場合は可溶性ベータグリカン)としても知られる細胞膜受容体である。
【0013】
TGF−βなど成長因子の活性の修飾は、重要な臨床的関心である。種々の関係者が、薬理的活性剤としてのプロテオグリカンの有用性を調査している。例えば、線維症状、創傷治癒、および瘢痕を調節するかかる分子の使用が以下において意図されている。すなわち、
(1)特許文献2―瘢痕の予防または削減のための薬剤としてのデコリンおよび関連プロテオグリカンの使用に関して、および
(2)特許文献3―抗瘢痕剤としての可溶性ベータグリカンの使用を開示。
【0014】
本出願人の同時係属出願の特許文献4は、新規の修飾プロコラーゲン分子に関するが、ここで分子の少なくとも1つのN−末端ドメインはプロテオグリカンタンパク質コアの少なくとも部分からのポリペプチド配列を含有する。かかる修飾プロコラーゲンからのコラーゲンゲルおよびマトリクスの生成は、創傷部位へ成長因子を引き付けることによって創傷治癒を補助することがわかっている。さらに、プロコラーゲンマトリクスは、細胞収縮に対して増大した耐性を有することがわかっている。
【0015】
こうした進歩にもかかわらず、依然として、創傷治癒を補助する一方、従来技術の利用で経験された不利点を回避し、または削減するための別の薬剤を開発する必要がある。
【0016】
ラミニンは、基底膜内に遍在的に分布している多機能的糖タンパク質の大きなファミリーである。ラミニンは、インテグリンおよびIV型コラーゲンを含む細胞表面反応因子を介してその高親和性結合部位によって細胞と相互作用する能力による発達、分化、および遊走における重要な役割を有する。それらは、1つの長い腕と3つの短い腕を有する十字分子へ集合するαβγヘテロ三量体タンパク質である、3つの遺伝学的に明確な鎖から成る。ラミニン−1、ラミニン−2、ラミニン−5、およびラミニン−10を含む18種類のラミニンイソ型がある。
【0017】
ラミニンはケラチン生成細胞に結合することが知られており、皮膚創傷の再上皮形成に必要とされる重要な細胞である上皮細胞およびケラチン生成細胞へ生存および分化のシグナルを提供する。
【0018】
細胞外マトリクスへ分泌され、創傷治癒に関係する別の分子は、分泌白血球プロテアーゼ阻害剤(SLPI)である。この分子は、抗ロイコプロテアーゼとしても知られ、好中球エラスターゼの11.7kDカチオン阻害剤である。損傷に対する保護に加えて、これは抗菌および抗炎症として機能することも示されている。SLPIは自然に血液によって生成され、皮膚を破壊する基質であるエラスターゼのレベルを修飾する。
【特許文献1】国際公開第92/17206号パンフレット
【特許文献2】国際公開第93/09880号パンフレット
【特許文献3】国際公開第97/05892号パンフレット
【特許文献4】PCT/GB2002/004785号明細書
【非特許文献1】スポーン(Sporn)ら、J.Cell Biol.、105、p.1039、1987年
【0019】
(発明の開示)
本発明の目的は、従来技術の薬剤および送達システムに関係した問題に対処することである。本発明の別の目的は、技術上周知のコラーゲンマトリクスおよびゲルと関係した問題に対処することである。
【0020】
本発明は、所望の機能的特性が、三量体化されプロコラーゲン誘導体を形成しうる本発明の第1の態様に従い修飾プロ−α鎖をデザインすることによって薬剤またはコラーゲンマトリクスなどの組成物へ導入されうるという本発明者による理解に基づく。これらは次にコラーゲンモノマー(保持プロペプチドとともに)に変換され、その後に重合されうる。これにより新しい生物学的特性を有する新規のコラーゲンポリマーの合成および集合が可能となる。
【0021】
このために、本発明の第1の態様は、少なくとも1つのN−末端ドメインに結合された三重らせん形成ドメインを含んで成り、N−末端ドメインがラミニン糖タンパク質の少なくとも部分もしくは分泌白血球プロテアーゼ阻害剤またはその機能的誘導体の少なくとも部分に由来するポリペプチド配列を含有することを特徴とする修飾プロ−α鎖を提供する。
【0022】
本発明者は、分子生物学的方法を使用して、本発明の第1の態様による修飾プロ−α鎖がそこから発現されうるように、プロ−α鎖をコードする遺伝子を修飾しうることを見出した。したがって、本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様による修飾プロ−α鎖をコードするDNA分子が提供される。
【0023】
次いで、本発明者は、本発明の第1の態様による修飾プロ−α鎖を三量体化し、修飾N−プロペプチドを有するプロコラーゲン分子を形成した。この三量体は修飾プロ−α鎖のホモ三量体であってよく、または天然のプロ−α鎖をも含有するヘテロ三量体であってもよい。したがって、本発明の第3の態様によれば、プロ−α鎖の三量体を含んで成り、プロ−α鎖の少なくとも1つが本発明の第1の態様によるプロ−α鎖であることを特徴とするプロコラーゲン分子が提供される。
【0024】
次いで、本発明者は、本発明の第3の態様によるプロコラーゲン分子が重合され、コラーゲンポリマーを形成することを立証する別の実験を行った。さらに本発明者は、コラーゲンポリマーがその表面上でそのN−プロペプチドまたはその誘導体を保持するように、ドメインの切断に対する感受性が変更されるようにN−末端ドメインを修飾することによってN−プロペプチド切断を調節しうることを立証した。これは、プロコラーゲンN−プロテイナーゼに耐性であるように本発明の第3の態様によるプロコラーゲン分子をデザインすることによって達成されうる。あるいは、この分子は、部分的にのみ切断され、またはよりゆっくり切断されうる。本発明の第1の態様によるプロ−α鎖は、プロコラーゲンN−プロテイナーゼに耐性を与えるアミノ酸配列を含有するようにも修飾されていることが好ましい。
【0025】
あるいは、本発明者は、プロコラーゲンN−プロテイナーゼが阻害されている、または不在である環境下に保持N−プロペプチドとコラーゲンポリマーを集合しうることを見出した。
【0026】
本発明の第4の態様によれば、その中に含まれたコラーゲンモノマーの少なくとも一部が、保持N−末端の少なくとも一部がラミニン糖タンパク質の少なくとも部分、分泌白血球プロテアーゼ阻害剤またはその機能的誘導体の少なくとも部分をコードするポリペプチド配列を含有することを特徴とするN末端を保持したコラーゲンモノマーを含んでなるコラーゲンポリマーが提供される。
【0027】
本発明の第4の態様によるコラーゲンポリマーは、コラーゲンフィブリルを形成しうる。
【0028】
したがって、コラーゲンポリマーを構成するプロコラーゲンのC−末端ドメインは、例えば、骨形成タンパク質(BMP−1)などプロコラーゲンC−プロテイナーゼを用いて除去されうる。これは、結果としてフィブリル表面で提示されるN−末端プロペプチドが生じることがわかっている。
【0029】
EP−A0985732号明細書は、N−末端に融合した生物学的に活性のペプチド(例えば、それ自体が成長因子)とともに、重合してフィブリルを形成しうるキメラコラーゲンの生成を意図している。しかし、EP−A0985732号明細書は、本発明の第1の態様によるプロ−α鎖のN−末端ドメインへのラミニンまたは分泌白血球プロテアーゼ阻害剤(SLPI)の少なくとも部分のポリペプチド配列の添加を意図または開示していない。
【0030】
本発明の第1の態様による修飾プロ−α鎖は、好ましくは、線維形成プロコラーゲンの修飾形態(例えば、I、II、III、V、またはXI型プロ−α鎖の修飾形態)である。好ましくは、この分子は修飾III型プロ−α鎖である。この型は、I型コラーゲンと共集合しうるとともに、ホモ三量体も形成しうるため好ましい。最も好ましくは、修飾プロα1(III)鎖である。
【0031】
ラミニン分子の部分のみがプロ−αに付着していることが好ましい。より好ましくは、N−末端はラミニン分子のα鎖の球状ドメインに由来する。N−末端はα鎖の少なくともG3球状ドメインのアミノ酸配列を含んでなることが最も好ましい。あるいは、N−末端はG1〜G3ドメインのアミノ酸配列を含んで成りうる。
【0032】
本発明の好ましい実施形態においては、プロ−α鎖のN−末端配列は、ラミニン−5が上皮源の細胞に高い親和性を有するため、ラミニン−5のα3鎖のアミノ配列の少なくとも部分で置換される。
【0033】
分泌白血球プロテアーゼ阻害剤の少なくとも部分をコードするポリペプチド配列によるN−末端の置換の場合、阻害剤の全配列がN−末端ドメインに付着していることが好ましい。
【0034】
好ましくは、プロ−α鎖のN−プロペプチド配列は、N100の前にプロコラーゲンN−プロペプチド配列を置換し、確実にコラーゲンがそのシグナル配列を保持するようにする。
【0035】
天然のN−末端プロペプチド形成ドメインは、N−末端の実質的にすべてがラミニン糖タンパク質またはSLPIによって置換されるように修飾されうる。通常のN−末端プロペプチド形成ドメインが置換される程度は、ラミニン分子のケラチン生成細胞結合機能性、またはSLPI分子のエラスターゼ阻害機能性が確実に導入されることよりも重要ではない。したがって、N−末端プロペプチド形成ドメインは完全に置換され、部分的に置換され、またはその全体において(必要な機能性が添加されたという条件で)維持されうる。
【0036】
三量体化し、N−プロペプチド切断に耐性であるプロコラーゲンを形成する本発明による一部の修飾プロ−α鎖を作り出すことが望ましい。したがって、本発明の第1の態様による一部の好ましい分子は、かかる切断に耐性のプロコラーゲンを与える修飾N−プロテイナーゼ切断部位を規定するアミノ酸配列を有する。エーラー・ダンロス(Ehlers Danlos)症候群VII型は、プロコラーゲン分子上のN−プロテイナーゼ切断部位を破壊するコラーゲン遺伝子における変異を有する。したがって、この変異を知った上で、かかる修飾を必要とするドメインの領域は容易に同定される。
【0037】
プロ−α鎖のらせん形成ドメインとN−プロペプチド形成ドメインとの間の領域(いわゆるヒンジドメイン)は最も適切に修飾され、N−プロテイナーゼに耐性を与える。例えば、切断部位でのPro−GlnはLeu−Proに変化されうる。
【0038】
本発明の第1の態様による修飾プロ−α鎖は、直接化学結合によって、またはインビトロアミノ酸重合の後、タンパク質折り畳み、必要に応じて、修飾ポリペプチド配列のグリコシル化によって形成されうる。しかし、分子生物学技術を用いて本発明の第2の態様によるDNA分子をデザインし、細胞またはかかるDNA分子を含有する発現システムにおいて修飾プロ−α鎖を発現させることが好ましい。
【0039】
本発明の第2の態様によるDNA分子は、アミノ酸が添加され、置換され、または欠失されるようにN−末端プロペプチド形成ドメインをコードする塩基を操作することによって形成されうる。ラミニン、SLPI、またはその機能的誘導体をコードするヌクレオチド配列が、N−プロペプチド形成ドメインをコードする塩基へ挿入されることが好ましい。ラミニン糖タンパク質のα鎖の少なくともG3ドメインまたはSLPI分子のすべてをコードするヌクレオチド配列がN−プロペプチド形成ドメインをコードする塩基へ挿入されることが特に好ましい。
【0040】
好ましい修飾としては、G3またはG1、ラミニン−5のα3鎖のG2およびG3ドメインをコードするヌクレオチド配列の挿入が挙げられる。
【0041】
あるいは、天然のプロ−α鎖のN−プロペプチド形成ドメインをコードする塩基は完全に削除され、ラミニンのα鎖の球状ドメインの少なくとも1つをコードする塩基、またはSLPI分子をコードする塩基で置換されうる。
【0042】
本発明の好ましい実施形態によれば、DNA分子はC−」プロペプチドドメインおよびプロ−α鎖のα鎖をコードしうるとともに、ラミニン糖タンパク質またはSLPIタンパク質のα鎖の少なくとも1つの球状ドメインをコードする配列によって完全に置換される「天然の」N−プロペプチドを有しうる。
【0043】
すでに示されているように、N−プロペプチド切断に耐性の本発明による一部のプロ−α鎖、プロコラーゲン、またはコラーゲンポリマーを作ることが望ましい。したがって、本発明の第2の態様による一部の好ましいDNA分子は、かかる切断に耐性のそれから発現されるタンパク質を変化させる修飾N−プロテイナーゼ切断部位をコードするDNA配列を有する。好ましくは、発現タンパク質は切断に耐性である。あるいは、発現タンパク質における切断は部分的であり、または非修飾タンパク質におけるよりもゆっくりでありうる。プロ−α鎖のらせん形成ドメインとN−プロペプチド形成ドメインとの間の領域(いわゆるヒンジドメイン)は変異され、N−プロテイナーゼに耐性を与えることが好ましい。例えば、切断部位でのPro−Glnをコードするヌクレオチドは、Leu−Proをコードするヌクレオチドに変化されうる。
【0044】
DNA分子は適切なベクター内に組込まれ、組換えベクターを形成しうる。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、またはファージでありうる。かかるベクターは多くの場合、1つもしくはそれ以上の選択可能なマーカーを含み、前記ベクターでトランスフェクトされた細胞の選択を可能にし、好ましくは、本発明の第2の態様によるDNA分子を組込む組換えベクターを収容する細胞の選択を可能にする。
【0045】
標準の分子生物学技術を用いて、本発明の第2の態様によるDNA分子を含んでなるベクターを構成することができる。好ましい構成物および発現システムは実施例において詳細に述べられている。
【0046】
ベクターは発現ベクターであり、DNA分子の発現を駆動する調節配列を有しうる。かかる調節配列を含まないベクターも使用されうるとともに、これらはDNA分子を複製するためのクローニングベクターとして有用である。かかるベクターが使用されると、DNA分子は最終的に、本発明のプロコラーゲン誘導体の生成に使用されうる適切な発現ベクターに転移される必要がある。
【0047】
クローニングベクターにおけるDNA分子の複製または組換え発現ベクターからのタンパク質生成物の発現は、適切な宿主細胞内で実行される。DNA分子は、宿主細胞内のベクター内に組込まれうる。かかる宿主細胞は原核細胞または真核細胞でありうる。真核細胞宿主は、酵母、昆虫、および哺乳動物細胞を含みうる。DNA分子によってコードされるタンパク質の発現に使用される宿主は、理想としては安定して変換されるが、不安定に変換された(一過性)宿主の使用は排除されていない。
【0048】
好ましい宿主細胞はHEK293細胞系およびその誘導体である。
【0049】
本発明のDNA分子は、トランスジェニック植物、または好ましくは、動物における発現のためにデザインされた導入遺伝子構成物にも組込まれうる。かかる導入遺伝子構成物の発現のために適切に形成されうるトランスジェニック動物としては、家禽などの鳥、両生動物種、および魚種が挙げられる。タンパク質は体液または他の体内生成物(必要に応じて卵など)から収穫されうる。好ましいトランスジェニック動物は(ヒト以外の)哺乳動物、特に有胎盤哺乳動物である。本発明の第2の態様のDNA分子の発現生成物は、かかる哺乳動物の乳腺において発現されうるとともに、発現生成物はその後に乳から回収されうる。有蹄動物、特に経済的に重要な有蹄動物、例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、水牛、ラクダ、およびブタは、本発明によるトランスジェニック動物としての使用に最も適した有胎盤哺乳動物である。かかる哺乳動物のトランスジェニック哺乳動物発現システムの生成および有用性は、一般に、および場合により具体的に、国際公開第A8800239号パンフレットおよび同第9005188号パンフレットに開示されている。
【0050】
宿主は、本発明の第2の態様のDNA分子のタンパク質生成物から本発明の第1の態様のプロコラーゲン誘導体の集合ための適切な細胞内装置を含有することが好ましい。特に、発現宿主、特にトランスジェニック動物は、発現、集合、分泌を促進する発現の他の外因性DNA、または本発明の第3の態様のプロコラーゲン誘導体の生合成の他の態様、および本発明の第4の態様によるコラーゲンポリマーを含有しうる。例えば、発現宿主は、プロリル4−ヒドロキシラーゼを共発現しうるが、これは国際公開第9307889号パンフレットに開示されているように、プロコラーゲンの天然生合成において重要な翻訳後酵素である。
【0051】
DNA、特に、天然プロ−α鎖をコードするcDNAが知られており、技術上利用可能である。例えば、国際公開第A9307889号パンフレット、および国際公開第A9416570号パンフレット、およびその両方に引用された文献が詳細を示している。かかるDNAは、本発明のDNA分子を製造するための便利な開始点として使用されうる。組換え技術を使用して、かかる開始点から本発明のDNA分子を得ることができる。
【0052】
DNA配列、cDNA、完全ゲノム配列、およびミニ遺伝子(完全長遺伝子に存在するイントロンの全部ではなく、一部を含有するゲノム配列)は、組換え手段によって天然起源のプロ−α鎖(上記の開始点DNAなど)をコードするDNA配列へ挿入され、本発明の第2の態様によるDNA分子を形成しうる。一般にコラーゲン遺伝子に存在する多数のイントロンのため、実験的実用性は通常、cDNA、または、場合により、ミニ遺伝子の使用に有利となる。挿入DNA配列、cDNA、完全ゲノム配列、またはミニ遺伝子は、発現し、本発明の第3の態様によるプロコラーゲンへ集合した場合、かかるプロコラーゲン誘導体のN−末端ドメインにおける所望の修飾を生じさせるアミノ酸をコードする。
【0053】
これらの方法において使用されるDNA物質のいずれか(DNA配列、cDNA、完全ゲノム配列、およびミニ遺伝子、本発明の第2の態様によるDNA分子、およびベクターを含む)は、インビトロ方法を含む、連続的ヌクレオチドを連結させ、かつ/またはオリゴ−、および/またはポリ−ヌクレオチドをライゲーションするステップを含む便利な方法によって調製されうる。しかし、組換えDNA技術が最適な方法を成す。
【0054】
本発明の第2の態様によるDNA分子の好ましいベクターは、エピソームとして複製するプラスミドpCep4である。このプラスミドは、EBV核抗原でトランスフェクトされたHEK293などの細胞系におけるクローン化DNA分子の高レベルの発現を可能にする。
【0055】
本発明の第4の態様によるコラーゲンポリマーは、多くの形態でありうる。コラーゲンフィブリルに類似した円筒形ポリマーは、コラーゲン分子が主要な成分である場合、本発明の第3の態様によるプロコラーゲン由来のコラーゲン分子とコラーゲンの混合物から生成される。あるいは、シート状の構造は、通常のコラーゲン分子の非存在下、または実質的に非存在下に本発明の第3の態様によるプロコラーゲン誘導体を使用することによって形成されうる。
【0056】
本発明の第4の態様によるコラーゲンポリマーの顕著な特徴は、修飾N−末端プロペプチドが、特に、プロコラーゲンのC−末端ドメインが除去されている場合に形成されたポリマー/フィブリルの表面に配置されていることである。本発明者は、天然コラーゲンと本発明の第3の態様による修飾プロコラーゲンの混合物から形成されたフィブリルが、フィブリル表面で修飾N−プロペプチドを示すが、天然コラーゲン(すなわち、保持N−プロペプチドを含まないコラーゲン)はフィブリルのコアを形成することを明らかにした。フィブリルにおける分子の配置は、原線維間腔へのN−プロペプチドの提示を最適化する。
【0057】
したがって、本発明者は、本発明の第3の態様によるプロコラーゲン分子および/または本発明の第4の態様によるコラーゲンポリマーからコラーゲンマトリクスを形成することができた。前記コラーゲンマトリクスは、本発明の重要な第5の態様を形成する。
【0058】
好ましくは、このマトリクスは、コラーゲンモノマーの少なくとも一部が、ラミニン糖タンパク質の少なくとも一部分、または分泌白血球プロテアーゼ阻害剤の少なくとも部分を含有するN−末端ドメインを有するという事実によって特徴づけられる。
【0059】
本発明の第5の態様によるコラーゲンマトリクスは、既知のコラーゲンマトリクスに対していくつかの利点を有する。ラミニン糖タンパク質の球状ドメインのコラーゲンマトリクスへの組込みは、そのケラチン生成細胞結合特性によるケラチン生成細胞のクローリングを促進し、それによって再上皮形成を加速する。したがって、このマトリクスを使用して創傷縁から生きた細胞を補充することができる。
【0060】
さらに、SLPIドメインのコラーゲンマトリクスへの組込みも創傷治癒を補助し、抗菌および抗炎症特性を提供し、皮膚の破壊を削減する。
【0061】
本発明の第5の態様によるコラーゲンマトリクスは、好ましくは、本発明の第2の態様によるヒト組換えDNA分子で製造される。この場合には、第3の利点は、マトリクスがヒトに投与されるとアレルギーおよび炎症反応を引き起こす可能性が低いことである。
【0062】
コラーゲンマトリクスは、コラーゲンモノマーまたはプロコラーゲンの酸性溶液を(適切なプロテイナーゼの存在下に)中和し、温めることによって形成されうる。かかる条件下、コラーゲンモノマーは自然にポリマーフィブリルへ自己集合し、これは次いでもつれた状態になり、水和した多孔性のゲルを形成する。かかるゲルの剛性は、少なくとも部分的に、ゲルを形成するために使用されるコラーゲンの濃度、および形成されるコラーゲンフィブリルの直径によって決まる。コラーゲンマトリクスまたはゲルは、その中に形成される容器の形状を持つ。したがって、一方の寸法が薄く(数ミリメートル)かつ他方の寸法が広大(数センチメートル以上)であるゲルが製造されうる。かかるマトリクスは適切に成形され、代替皮膚または角膜の基礎を形成しうる。あるいは、コラーゲンゲルが、長骨(円筒形および細長い)、上顎骨(鎌形または湾曲)、関節軟骨(円板状)、腱(ロープ状)、または靭帯(ストラップ状)の形状を有する型で成型されうる。
【0063】
本発明の第4および第5の態様によるコラーゲンポリマーおよびマトリクスは、本発明による修飾プロコラーゲン分子由来の組換えコラーゲンのみを含んで成りうる。あるいは、かかるコラーゲンポリマーまたはマトリクスは、本発明による修飾コラーゲンまたは修飾プロコラーゲン、および商業的供給源から入手可能なものなど、組織または細胞培養から抽出されたコラーゲンの混合物でありうる。例えば、本発明の第4の態様によるコラーゲンポリマーは、ウシI型コラーゲンと混合され、本発明の第5の態様によるマトリクスを形成しうる。
【0064】
本発明によるプロコラーゲンまたはコラーゲンを用いて、天然コラーゲン(例えば、ウシコラーゲン)から形成されたゲルまたはマトリクスでコラーゲンフィブリルの表面を被覆することができ、またはそれらをゲル形成中にフィブリルへ組込むことができる。それによって、プロコラーゲンまたはコラーゲンへ導入された新しい機能的部分は、それらが細胞と相互作用し、または細胞機能に影響を及ぼしうるコラーゲンフィブリルの表面に提示される。プロコラーゲンは、可溶性プロコラーゲンを保持したそのN−末端ドメインを有するフィブリル形成コラーゲンに変換し、生体内原位置でゲル形成を可能にするBMP−1などプロコラーゲンC−プロテイナーゼとともに可溶性前駆体として適用されうる。これにより修飾コラーゲンは適用地点でコラーゲンフィブリルと一体化し、ぴったり合うことができる。
【0065】
本発明の第1−第5の態様による分子は、細胞付着から創傷治癒まで、および細胞分化やアポトーシスから改善された分子および細胞結合特性を有する創傷包帯の製造までの広範囲の生物学的現象を探査するための研究の場で使用されうる。しかし、分子の好ましい使用は、医療または化粧品目的に使用されうるコラーゲンマトリクスの形成におけるものである。
【0066】
本発明の第6の態様によれば、病状の治療のための本発明の第1−第5の態様のいずれか1つによる分子またはマトリクスの使用が提供される。
【0067】
本発明の第7の態様によれば、創傷または線維障害の治療において使用するための薬剤の製造のための本発明の第1−第5の態様のいずれか1つによる分子またはマトリクスの使用が提供される。
【0068】
本発明の第8の態様によれば、本発明の第1−第5の態様のいずれか1つに記載の分子またはマトリクスの治療有効量を治療を必要とする対象に投与するステップを含んでなる創傷を治療する方法が提供される。
【0069】
治療される病状は、ECMの再構築によって少なくとも部分的に特徴づけられる状態である。
【0070】
上記の考慮事項は主にヒトの状態、障害、または疾患に適用されるが、創傷治癒は他の動物、特に家畜または飼いならされた動物(例えば、ウマ、ウシ、イヌ、ネコ等)においても問題となりうる。例えば、腹部創傷または付着は、瘢痕または線維症をもたらす腱および靭帯損傷のように、ウマ(特に競走馬)を安楽死させなければならない主な理由である。
【0071】
本発明の第3および第4の態様による分子、および本発明の第5の態様によるマトリクスは、種々の型の薬剤へ調製されうる。本発明の薬剤は、特にその薬剤が使用される様式によって多くの異なる形態をとりうる。したがって、例えば、薬剤は液体、軟膏、クリーム、ゲル、ヒドロゲル、粉末、エアロゾル、または移植可能なデバイス(例えば、バイオポリマースポンジによって)の形態でありうる。
【0072】
本発明の第3および第4の態様による分子は直接(例えば、液体形態で)投与されうる。しかし、これらの分子は創傷包帯、移植可能なデバイス、人工皮膚、または組織等へ組込まれていることが好ましい。
【0073】
薬剤は局所適用であることが好ましい。薬剤は皮膚または創傷範囲への局所適用に最も適切に使用されうる。
【0074】
修飾プロコラーゲン、コラーゲン、またはコラーゲンフィブリルを含んでなる薬剤は、エアロゾルによって送達されうる(例えば、肺の線維状態への送達用に)。
【0075】
薬剤の賦形剤は患者によって耐容性良好であり、創傷または線維症の部位へのコラーゲンポリマーの放出を可能にするものであるべきことが理解されるであろう。賦形剤は理想としては無菌性であり、付形剤および/または安定剤のほか、薬剤を形成する分子と混合されうる。かかる賦形剤は、好ましくは、生体分解性、生体溶解性、生体吸収性、および/または非炎症性である。
【0076】
薬剤は多くのやり方で使用されうる。したがって、例えば、患者の創傷において、かつ/またはその周りで適用され、創傷治癒の所望の促進を提供しうる。組成物が「既存の」創傷に適用される場合は、薬剤的に許容される賦形剤は、炎症反応を引き起こすことがなく、または組織に対して毒性であるように十分に「マイルド」となる。明らかに、SLPI分子を含有する修飾コラーゲンの包含は炎症反応の削減を補助するであろう。
【0077】
本発明の第3または第4の態様による分子は、創傷または線維症部位をカバーし、またはパックするために使用されうる滅菌包帯またはパッチで提供されうる。
【0078】
薬剤は、より良く放出されうる移植可能なデバイスとして提供されうる。例えば、薬剤はデバイスの生体溶解または分解によって放出されうる。あるいは、超音波など外的刺激がプロコラーゲン、コラーゲンモノマー、またはコラーゲンポリマーの放出を引き起こしうる。
【0079】
予防的に本発明に基づく薬剤を使用することも可能である。例えば、薬剤はその後に形成される外科創傷の治癒の調節を提供するために手術前に適用されうる。
【0080】
次いで、コラーゲンマトリクスは、半固体ゲルの形態で対象に(例えば、皮膚、軟骨、筋、または神経組織に)投与されうる。あるいは、創傷包帯、移植可能なデバイス、人工皮膚、または組織等の形成において使用されうる、より固体のマトリクスが形成されうる。
【0081】
本発明の第5の態様によるマトリクスを含んでなる人工皮膚は、ECM成分のみを含んで成り、またはさらに線維芽細胞および/または内皮細胞など培養細胞を含んで成りうる。かかる細胞を含有する人工皮膚は、「生きている」代替皮膚製品として周知である。
【0082】
コラーゲンマトリクスは、皮膚創傷または火傷への局所適用のために人工皮膚へ形成されることが好ましい。本発明の第5の態様によるマトリクスを含んでなる人工皮膚は、重度の創傷、広範囲の創傷、慢性創傷(例えば、皮膚潰瘍)および火傷を治療するために特に有用である。
【0083】
マトリクスは、薬剤的に許容される賦形剤中に水和されるべきであることが理解されるであろう。賦形剤は、炎症反応を引き起こすことがなく、または治療される組織に対して毒性であるように十分に無菌で「マイルド」となる。
【0084】
マトリクスは、創傷または線維症部位をカバーし、またはパックするために使用されうる滅菌包帯またはパッチへ組込まれうる。
【0085】
好ましい実施形態においては、マトリクスは、コンビダーマ(Combiderm)N包帯などの包帯に適用され、次いで脱水される。包帯で実行される脱水ゲルは、次いで創傷に適用される。
【0086】
マトリクスは移植可能デバイスとして提供されうるが、そこからマトリクスはそれ自体が創傷部位へ放出されうる。放出はデバイスの生体溶解または分解によって引き起こされうる。あるいは、超音波などの外的刺激がコラーゲンポリマー放出を引き起こしうる。
【0087】
本発明の第5の態様によるコラーゲンマトリクスは、シートへ成型されうる。好ましいシートは厚さ1−数ミリメートル×1平方センチメートルでありうる。かかるシートは無細胞であり、または人工皮膚、軟骨、骨または角膜を生成する間葉および/または線維芽細胞、または心血管パッチを生成する内皮細胞で密集されうる。細胞は患者または組織適合ドナー、患者またはドナーの幹細胞、または培養で増幅された細胞から入手されうる。かかるマトリクスは、本発明の第3および第4の態様による分子で被覆され、ケラチン生成細胞結合機能またはエラスターゼ阻害をマトリクスに与えることができる。コラーゲンマトリクスまたはコラーゲン細胞構成物は、無細胞条件下、および生理的温度下、または極低温条件下に必要とされるまで保存されうる。
【0088】
治癒および線維症を調節するために必要とされる分子の量は、その生物活性およびバイオアベイラビリティなどの因子の数によって決まり、次に投与方法、および使用される特定の分子の物理化学特性によって決まることが理解されるであろう。例えば、必要とされるコラーゲンマトリクスの量は、ゲルの濃度(これは、水性、粘性、または比較的固体であることが―臨床的必要に応じて―必要とされうる)、その中に含まれる新しい機能的部分を有するコラーゲンの割合などの因子によって決まる。他の因子としては、
A)治療される特定の状態。
B)状態の重度。
C)対象の年齢。
D)送達の部位。
E)治療される対象における分子の半減期。
が挙げられる。
【0089】
投与の頻度は、上記の因子、および特に治療される対象内の化合物またはマトリクスの半減期によっても影響されるであろう。
【0090】
一般に、治療される対象は、それが創傷の7日以内、好ましくは創傷の48時間以内、より好ましくは創傷の24時間以内、さらに好ましくは創傷の12時間以内に投与される場合は、修飾プロコラーゲン、コラーゲンモノマー、またはコラーゲンポリマーの適用から利点を得るであろう。薬剤は、医師の指示により線維症状に罹患した対象に投与されるべきである。これは診断が行われ次第でありうる。治療は創傷が治癒し、または線維障害が消失し、医師が満足するまで継続しなくてはならない。
【0091】
予防薬として(例えば、手術前に)使用される場合、薬剤は、創傷が発生し、または線維障害が発症しうることが認識され次第、投与されなければならない。例えば、本発明の第4の態様によるコラーゲンポリマーを含有するクリームまたは軟膏は、選択的手術が実行され、かつ創傷治癒の速度増大がその後に望まれる対象の皮膚上の部位に適用されうる。この場合、薬剤は対象の術前準備中に適用され、または(対象の健康状態や年齢、および形成される創傷のサイズによって)手術の数時間前または数日前に適用することが望ましい場合もある。
【0092】
投与の頻度は、使用される分子の生物学的半減期によって決まる。通常、クリームまたは軟膏は、創傷部位での分子の濃度が治療効果を有するために適したレベルで維持されるように標的組織に適用されなければならない。これには毎日またはさらに1日数回の投与が必要とされうる。
【0093】
製薬工業によって従来使用されるものなどの既知の手順(例えば、インビボ実験、臨床試験等)を使用し、組成物の特定の処方および正確な治療計画(化合物の1日量および投与の頻度など)を確立することができる。
【0094】
一般に、本発明に基づく使用には、1ng〜10mgの量のコラーゲンポリマー、より好ましくは、1μg〜1mgの量のコラーゲンポリマーを含有する薬剤が、1センチメートル当りの線状損傷に適用されうる。単に一例として、約10μgのコラーゲンポリマーを含有する薬剤が、1cmの線状切開創傷への適用に適切である。急性創傷と比べ慢性創傷の治癒を刺激するには高用量が必要とされる。
【0095】
薬剤の有効性、および特に慢性創傷への適用に調製された薬剤の有効性は、プロテアーゼ阻害剤(例えば、ガラドリン(galadrin))と組合されると、有効性を増強させた。プロテアーゼ阻害剤は、創傷、特に慢性創傷において高レベルで確認されうるプロテアーゼによってコラーゲンの分解を阻止し、または遅延させる。プロテアーゼ阻害剤は、好ましくは、広域プロテアーゼ阻害剤である。
【0096】
本発明の第3、第4、および第5の態様による分子およびマトリクスが、他の創傷治癒または抗線維剤と組合わせて使用され、またはその後に別の薬剤が(例えば、瘢痕の予防のために)使用されることが理解されるであろう。
【0097】
本発明の第5の態様によるマトリクス(病状の治療、化粧またはその他に使用される)が生体内原位置(すなわち、マトリクスが必要とされる組織/部位)で形成されうることが理解されるであろう。例えば、本発明の第4の態様によるコラーゲンポリマーの溶液またはスラリーを使用し、創傷包帯を十分に湿らせることができる。ゲル形成は、包帯が使用される場合に誘発されうる(例えば、包帯がそのパッケージから取出され、または創傷部位に接触すると反応が開始されうる)。あるいは、本発明の第4の態様によるコラーゲンポリマーの溶液、またはさらに本発明の第3の態様によるプロコラーゲンが標的体組織に注入され、天然コラーゲンでマトリクス形成が進行させられうる。
【0098】
本発明の第2の態様によるDNA分子は、遺伝子治療技術において使用されうる。したがって、本発明の第9の態様によれば、遺伝子治療技術に使用される送達システムが提供され、前記送達システムは、創傷部位または線維症の部位で本発明の第1の態様による修飾プロ−α鎖の発現をもたらすように転写されることが可能である本発明の第2の態様によるDNA分子を含んでなる。
【0099】
本発明の第10の態様によれば、創傷または線維障害を治療するための薬剤の使用において使用される前記パラグラフで規定された送達システムの使用が提供される。
【0100】
本発明の第11の態様によれば、上記規定の送達システムの治療量を治療を必要とする患者に投与するステップから成る創傷または線維症状を治療する方法が提供される。
【0101】
送達システムは、本発明の第3の態様によるプロコラーゲン分子、または本発明の第4の態様によるコラーゲンポリマーの持続レベルを、大部分の従来の送達システムで可能であるよりも長期間にわたって創傷部位または線維症の部位で達成するためにきわめて適切である。修飾プロ−α鎖は、本発明の第2の態様のDNA分子で変換されている部位での細胞から継続的に発現されうる。したがって、修飾プロコラーゲンまたはコラーゲンポリマーがインビボ薬剤としてきわめて短い半減期を有している場合でも、治療量は治療組織から継続的に発現されうる。
【0102】
さらに、本発明の送達システムを使用し、創傷または線維症の部位と接触する軟膏またはクリームにおいて必要とされるものなど従来の医薬賦形剤を使用する必要なしにDNA分子を提供することができる。これは、創傷治癒に使用される化合物のための十分な賦形剤(非炎症性、生体適合性、生体吸収性であることが必要とされ、活性剤を(貯蔵時または使用時に)分解または不活性化してはならない)を提供することが困難である場合が多いため特に有利である。
【0103】
送達システムは、DNA分子が(送達システムが患者に投与されると)発現され、プロコラーゲン、および修飾N−末端を有するコラーゲンポリマーを形成する修飾プロ−α鎖を生成することが可能であるようになっている。次いで、これらの修飾N−末端は細胞または生物学的活性剤と創傷または線維症の部位で相互作用し、それによって状態を治療する。
【0104】
DNA分子は、適切なベクター内に含有され、組換えベクターを形成することができる。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、またはファージでありうる。かかる組換えベクターは、DNA分子による形質転換細胞のための本発明の送達システムにおいてきわめて有用である。ベクターはpCEP4または類似のベクターでありうる。
【0105】
組換えベクターは、他の機能的要素も含みうる。例えば、組換えベクターは、ベクターが自動的に細胞の核で複製するようにデザインされうる。この場合、DNA複製を含む要素が組換えベクターにおいて必要とされうる。あるいは、組換えベクターは、ベクターおよび組換えDNA分子が細胞のゲノムへ一体化するようにデザインされうる。この場合、標的一体化(例えば、相同的組換えによる)に有利であるDNA配列が望ましい。組換えベクターは、クローニング方法における選択的マーカーとして使用されうる遺伝子をコードするDNAも有しうる。
【0106】
組換えベクターはさらに必要に応じて遺伝子の発現を制御するプロモーターまたはレギュレーターも含んで成りうる。
【0107】
DNA分子は(ただし必ずしもそうではないが)、治療される対象の細胞のDNAへ組込まれることになるものでありうる。未分化細胞は安定して変換され、遺伝学的に修飾された娘細胞をもたらしうる(この場合、対象における発現の調節が、例えば、特定の転写因子または遺伝子活性剤により必要とされうる)。あるいは、送達システムは、治療される対象における分化細胞の不安定または一過性の変換に有利であるようにデザインされうる。この場合には、発現の調節は、変換細胞が死滅し、またはタンパク質の発現を停止するとDNA分子の発現が停止するため(理想としては、創傷、線維症、または瘢痕が治療され、または予防される場合)重要でないとみられる。
【0108】
送達システムは、DNA分子をベクターへ組込まれることなしに対象に提供しうる。例えば、DNA分子は、リポソームまたはウイルス粒子内に組込まれうる。あるいは、「裸の」DNA分子は、適切な手段、例えば、直接エンドサイトーシス摂取によって対象の細胞へ挿入されうる。
【0109】
DNA分子は、トランスフェクション、感染、マイクロインジェクション、細胞融合、原生質体融合、または弾道衝撃によって治療される患者の細胞に転移されうる。例えば、転移は、被覆金粒子、DNA分子を含有するリポソーム、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス)、およびプラスミドDNAを創傷範囲に直接、局所適用によって、または注射によって直接DNA摂取を提供する手段(例えば、エンドサイトーシス)による弾道トランスフェクションによるものでありうる。
【0110】
上記の考慮事項は主にヒトの損傷に適用されるが、創傷治癒は他の動物(特に家畜および飼いならされた動物、例えば、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ等)においても問題となりうる。例えば、腹部創傷または付着は、ウマを安楽死させなければならない主な理由である。上記の薬剤および送達システムは、かかる動物の治療における使用にも適切である。
【0111】
次に、以下の非限定的な実施例および図面を参考にして本発明をさらに説明する。
図1 天然プロコラーゲン分子を示す概略図である。
図2 本発明の第3の態様によるプロコラーゲン分子であるlam−プロコラーゲンを示す概略図である。
図3 実施例1からの本発明の第2の態様によるDNA分子のヌクレオチド配列を示す図である。
図4 実施例1からの本発明の第1の態様による修飾プロ−α鎖のアミノ酸配列を示す図である。
図5 実施例1および2に記載されたウェスタンブロットを示す写真である。
図6 実施例2からの本発明の第2の態様によるDNA分子のヌクレオチド配列を示す図である。
図7 実施例2からの本発明の第1の態様による修飾プロ−α鎖のアミノ酸配列を示す図である。
図8 実施例3からの本発明の第2の態様によるDNA分子のヌクレオチド配列を示す図である。
図9 実施例3からの本発明の第1の態様による修飾プロ−α鎖のアミノ酸配列を示す図である。
図10 実施例3に記載されているウェスタンブロットを示す写真である。
【0112】
図1は、N−末端プロペプチド1、アルファらせんドメイン2、およびC−末端プロペプチド3を有する天然プロコラーゲンを示す。分子のヒンジ領域(1と2の間)におけるプロコラーゲンN−プロテイナーゼ切断部位4も示されている。図2は、N−プロペプチド1がラミニン5の少なくとも1つの球状結合ドメインによって置換されている本発明の第3の態様によるプロコラーゲン分子であるlam−プロα1(III)またはLam−Coll(登録商標)を示す。
【0113】
(実施例)
実施例1:本発明の第2の態様によるDNA分子のデザインおよび構成、本発明の第1の態様により発現された修飾プロ−α鎖のアミノ酸配列、および本発明の第3の態様により調製された修飾プロコラーゲンの発現および特徴
プロα1(III)鎖のN−プロペプチドの球状ドメインの代わりにラミニン5のα3鎖のG1、G2、およびG3ドメインの全コード領域を含んでなる本発明の第2の態様によるDNA分子が構成された。
【0114】
DNA分子の生成のためのクローニング法は、以下の一次PCR反応を伴った。
1.基質: コラーゲンのプロα1(III)鎖の完全cDNAを含有するpRMI(X14420で公的に入手可能)。

オリゴヌクレオチド:
T3(5’末端) 5’AATTAACCCTCACTAAAGGG 3’ (配列番号1)

SSG1−20R
(3’末端) 5’ACAGAGATGTTGCCAAAATAATAGTGGGATG 3’ (配列番号2)
生成物A:300bp。
【0115】
2.基質: Asp718I部位でクローニングされたα3鎖の遺伝子を含有するLam5α3−pSECTAG2C

オリゴヌクレオチド:
SSG1−20F(5’末端)
5’TATTTTGGCAACATCTCTGTCCTTGTTTCTC 3’ (配列番号3)

LG3−20R(3’末端)
5’ CTTGACCATTAGCATCTTGCCACACCTTCAC 3’ (配列番号4)

生成物B:1800bp。
【0116】
3.基質: pRM1

オリゴヌクレオチド:
LG3−20F(5’末端)
5’ GCAAGATGCTAATGGTCAAGGACCTCAAGGC 3’ (配列番号5)

III−JL11(3’末端)
5’ AGACCCTGCAGGTCCAACTT 3’ (配列番号6)

生成物C:700bp。
【0117】
次いで、以下の二次PCR反応を行った。

1) 基質: A(300bp)とB(1.8kb)生成物の混合物
オリゴヌクレオチド: T3(5’末端)
LG3−20R(3’末端)
生成物AB:2.1kb
2) 基質: B(1.8kb)とC(700bp)の混合物
オリゴヌクレオチド: SSG1−20F(5’末端)
III−JL11(3’末端)
生成物BC:2.5kb
【0118】
ABおよびBC生成物のpBluescriptへのクローニング
生成物ABをHindIIIおよびNot1で消化し、次いでやはりHindIIIおよびNot1で消化したpBSへライゲーションし、G123AB−pBSプラスミドを生成した。生成物BCをHindIIIおよびBAMH1で消化し、次いでやはりHindIIIおよびBAMH1で消化したpBSへライゲーションし、G123BC−pBSプラスミドを生成した。
【0119】
キメラLamG123コラーゲン遺伝子の生成
G123AB−pBSプラスミドをHindIIIおよびNot1で消化し、1.27kb断片をゲル精製した。G123BC−pBSプラスミドをHindIIIおよびBamH1で消化し、1.36kb断片をゲル精製した。pRMIプラスミドをNot1およびBamH1で消化し、6.8kb断片をゲル精製した。
【0120】
3つの断片をいっしょにライゲーションし、LamG123コラーゲン融合タンパク質をコードする遺伝子を生成した。lamG123コラーゲン遺伝子の正確な集合をDNAシークエンシングによって判定した。
【0121】
LamG123コラーゲン/pBluescriptプラスミドの修飾
NotI部位を3’でオリゴヌクレオチドTAS14NotAおよびオリゴ32merTAS12NotSを用いて標準のPCR介在部位特異的突然変異誘発法によってコラーゲン配列に導入したが、その詳細は以下の通りである。すなわち、
TAS14NotA(アンチセンス)
5’GTTGTAAAACGGCGGCCGCTGAATTGTAATAC 3’ (配列番号7)
オリゴ32merTAS12NotS(センス)
5’GTATTACAATTCAGCGGCCGCCGTTTTACAAC 3’ (配列番号8)
オリゴヌクレオチドは、NotI部位をpBluescript配列内にKpnI部位の約50bp下流で導入する。
【0122】
pCEP4へのサブクローニング
LamG123コラーゲン/pBluescriptプラスミドをNotIで消化し、6kb断片を得、これはNotI消化およびホスファターゼ化pCEP4(10.4kb)ヘライゲーションされた。pCep4ベクター(インビトロジェン・ライフ・テクノロジーズ(Invitrogen Life Technologies)は市販されており、配列は、http://www.invitrogen.com.で確認されうる。6kb NotI断片のpCep4への正確な配向は、DNAシークエンシングによって判定された。
【0123】
上記で概略されたクローニング法を用いて、N100前のプロコラーゲンIII型N−プロペプチド配列を、ラミニン5のα3鎖のG123ドメインの配列で置換したが、コラーゲンIIIシグナル配列を維持した。DNA分子の全ヌクレオチド配列は図3(および配列番号9)に示されている。図4(および配列番号10)は、DNA分子から発現されうる修飾プロ−α鎖(本発明の第1の態様による分子)のアミノ酸配列を示す。ラミニンのG123とプロコラーゲン配列との間の接合が図3および4の下線で示されている。
【0124】
発現ベクターPCEP4へサブクローニングされたDNA分子は、HEK293−EBNA細胞(インビトロジェン・ライフ・テクノロジーズ(Invitrogen Life Technologies)で発現されている。
【0125】
HEK293−EBNA細胞は当業者に周知であり、詳細は、http://www.invitrogen.com/Content/Tech−Online/molecular_biology/manuals_pps/293ebna_man.pdfから入手可能である。
【0126】
HEK293−EBNA細胞はプロコラーゲンを分泌することがなく、したがって、コラーゲンを発現する陰性背景に理想的である。重要なことには、これらの細胞は、プロコラーゲン配列におけるプロリン残基の水酸化に対して、したがって、三重らせんの安定性に対してきわめて重要であるプロリル4−ヒドロキシラーゼを含有する。HEK293−EBNA系はEBNA1抗原も発現し、これは細胞へトランスフェクトされたプラスミドDNAが、そのプラスミドの存在が適切な抗生物質(一般にハイグロマイシン)によって選択される場合にエピソームとして維持されることを確実にする。
【0127】
本発明の第1の態様による修飾プロ−α鎖は、HEK293−EBNA細胞の小胞体において生成される。次いで、これらの分子は自動的にホモ三量体(本発明の第3の態様による修飾プロコラーゲン分子)を形成する。前記細胞から生成される修飾プロコラーゲン分子を以下、LamG123−collと呼ぶ。
【0128】
インテグラ(Integra)CL350フラスコにDNA分子で変換したHEK293−EPNA細胞を接種し、7日間放置した。次いで、強化培地を毎週3回収穫した(接種後7、9、12、14、および16日)。
【0129】
LamG123−collは、抗コラーゲン抗体を用いてウェスタンブロット法によって特徴づけられた。結果は添付の図面の図5に示されているが、ここでレーン1はIII型プロコラーゲン対照であり、レーン2はトランスフェクトされていない293細胞からの媒体を有し、レーン3はLG123−collでトランスフェクトされた293EBNA細胞からの媒体を有し、レーン4はLamG3−collでトランスフェクトされた293EBNA細胞からの媒体を有する(以下の実施例2を参照)。
【0130】
実施例2:本発明の第2の態様によるDNA分子のデザインおよび構成、本発明の第1の態様により発現された修飾プロ−α鎖のアミノ酸配列、および本発明の第3の態様により調製された修飾プロコラーゲンの発現および特徴
プロα1(III)鎖のN−プロペプチドの球状ドメインの代わりにラミニン5のα−3鎖のG3ドメインのコード領域を含んでなる本発明の第2の態様によるDNA分子が構成された。
【0131】
DNA分子の生成のためのクローニング法は、以下の一次PCR反応を伴った。
1.基質: コラーゲンのプロ−α1(III)の完全cDNAを含有するpRMI(X14420で公的に入手可能)。

オリゴヌクレオチド:
T3(5’末端) 5’AATTAACCCTCACTAAAGGG 3’
(配列番号1)
SSLAMG3−2
(3’末端)
5’GCTTCCAGTCTTCCGAGCATGCCAAAATAATAGTGGG3’
(配列番号11)
生成物A:300bp。
【0132】
2.基質: Asp718I部位でクローンニングされたα3鎖の遺伝子を含有するLam5α3−pSECTAG2C

オリゴヌクレオチド:
SLAMG3−1(5’末端)

5’CCCACTATTATTTTGGCATGCTCGGAAGACTGGAAGC 3’
(配列番号12)
LG3−20R(3’末端)
5’ CTTGACCATTAGCATCTTGCCACACCTTCAC 3’
(配列番号4)
生成物B:700bp。
【0133】
次いで、以下の二次PCR反応を行った。
1) 基質: A(300bp)とB(700bp)生成物の混合物
オリゴヌクレオチド: T3(5’末端)
LG3−20R(3’末端)
生成物AB:1.0kb
【0134】
AB生成物のpBluescriptへのクローニング
生成物ABをHindIIIおよびNot1で消化し、次いでやはりHindIIIおよびNot1で消化したpBSへライゲーションし、G3AB−pBSプラスミドを生成した。
【0135】
キメラLamG−コラーゲン遺伝子の生成
G3AB−pBSプラスミドをNot1およびHindIIIで消化し、200bp断片をゲル精製した。G3AB−pBSプラスミドをBamH1およびHindIIIで消化し、1.36kb断片をゲル精製した。pRMIプラスミドをNot1およびBamH1で消化し、6.8kb断片をゲル精製した。
【0136】
3つの断片をいっしょにライゲーションし、LamG3−コラーゲン融合タンパク質をコードする遺伝子を生成した。lamG3−コラーゲン遺伝子の正確な集合をDNAシークエンシングによって判定した。
【0137】
LamG3−コラーゲン/pBluescriptプラスミドの修飾
NotI部位を3’でオリゴヌクレオチドTAS14NotAおよびオリゴ32merTAS12NotSを用いて標準のPCR介在部位特異的突然変異誘発法によってコラーゲン配列に導入した(上記の実施例1を参照)。
【0138】
オリゴヌクレオチドは、NotI部位をpBluescript配列内にKpnI部位の約50bp下流で導入する。
【0139】
pCEP4へのサブクローニング
LamG3−コラーゲン/pBluescriptプラスミドをNotIで消化し、5kb断片を得、これはNotI消化およびホスファターゼ化pCEP4(10.4kb)ヘライゲーションされた。5kb NotI断片のpCep4への正確な配向は、DNAシークエンシングによって判定された。
【0140】
上記で概略されたクローニング法を用いて、N100前のプロコラーゲンIII型N−プロペプチド配列を、ラミニン5のα3鎖のG3ドメインの配列で置換したが、コラーゲンIIIシグナル配列を維持した。DNA分子の全ヌクレオチド配列は図6(および配列番号13)に示されている。図7(および配列番号14)は、DNA分子から発現されうる修飾プロ−α鎖(本発明の第1の態様による分子)のアミノ酸配列を示す。ラミニンのG3とプロコラーゲン配列との間の接合が図6および7の下線で示されている。
【0141】
発現ベクターPCEP4へサブクローニングされたDNA分子は、HEK293−EBNA細胞(インビトロジェン・ライフ・テクノロジーズ(Invitrogen Life Technologies)で発現されている。
【0142】
本発明の第1の態様による修飾プロ−α鎖は、HEK293−EBNA細胞の小胞体において生成される。次いで、これらの分子は自動的にホモ三量体(本発明の第3の態様による修飾プロコラーゲン分子)を形成する。前記細胞から生成される修飾プロコラーゲン分子を以下、LamG3−collと呼ぶ。
【0143】
インテグラ(Integra)CL350フラスコに本実施例からのDNA分子で変換したHEK293−EPNA細胞を接種し、7日間放置した。次いで、強化培地を毎週3回収穫した(接種後7、9、12、14、および16日)。
【0144】
LamG3−collは、抗コラーゲン抗体を用いてウェスタンブロット法によって特徴づけられた。結果は添付の図面の図5に示されているが、ここでレーン4はLamG3−collでトランスフェクトされた293EBNA細胞からの媒体を有する。
【0145】
実施例3: 本発明の第2の態様によるDNA分子のデザインおよび構成、本発明の第1の態様により発現された修飾プロ−α鎖のアミノ酸配列、および本発明の第3の態様により調製された修飾プロコラーゲンの発現および特徴
プロα1(III)鎖のN−プロペプチドの球状ドメインの代わりに分泌白血球プロテアーゼ阻害剤前駆体(「SLPI」)の全コード領域を含んでなる本発明の第2の態様によるDNA分子が構成された。「SLPI−コラーゲン」(またはslpi−coll)は、ポリメラーゼ連鎖反応、制限消化、およびライゲーションを含む、SLPICコラーゲンIII/pCEP4構成物を構成することによって生成された。
【0146】
ポリメラーゼ連鎖反応
プラチナ(Platinum)(登録商標)Pfx DNAポリメラーゼ(インビオロジェン(Invitrogen)、英国(U.K.))、メーカーによって推奨された対応する処方および循環プログラムをSLPI−コラーゲンのクローニングにおいて実行されたすべてのPCRのために使用した。SLPI−コラーゲンIII/pCEP4構成物の集合に3回のPCRを必要とした。
【0147】
第1回目では、ヒトSLPIをコードする配列をイメージクローン4733996(英国(UK)ヒューマン・ゲノム・マッピング・プロジェクト・リソース・センター(Human Genome Mapping Project Resource Centre)、英国(U.K.))から増幅させた。以下のプライマーをPCRにおいて使用した。すなわち、
【化1】

【0148】
プライマーは結果として、上記の配列においてボールド体の大文字で示される5’末端でNotI制限部位(GCGGCCGC)を含有するSLPI PCR産物をもたらし、その3’末端で、上記の配列においてイタリック体の小文字で示される、ヒトIII型コラーゲンの5’末端をコードする10個の塩基対が存在した。アニーリング温度は48℃であった。PCR産物は、0.42キロ塩基対(kbp)のサイズを有することが予想された。次いで、これは、キアゲンゲル抽出キット(キアゲン(Qiagen)、英国(U.K.))を用いてゲル精製された。
【0149】
第2回目のPCRでは、ヒトIII型コラーゲンをコードする配列の一部を以下のプライマーを用いる構成物pRMIから増幅させた。すなわち、
【化2】

【0150】
イタリック体の小文字は、SLPIをコードするヌクレオチドを示す。アニーリング温度は50℃であった。pRMIは、ヒトIII型コラーゲン挿入を有するpBluescript SK(−)ベクターである。その結果、PCR産物の5’末端は、SLPIの3’末端をコードする10個の塩基対を有した。コラーゲンIII PCR産物の予想サイズは1.603kbpであった。次いで、これは、キアゲンゲル抽出キット(キアゲン(Qiagen))を用いてゲル精製された。
【0151】
第3回目のPCRでは、SLPI−コラーゲンIII断片を精製SLPIおよびコラーゲンIII PCR産物から増幅させた。以下のプライマーを用いた。すなわち、
【化3】

【0152】
結果として生じるPCR産物は、2.023kbpのサイズを有することが予想された。これはNotIおよびXmaI制限部位も含んだ。次いで、これは、キアゲン(Qiagen)ゲル抽出キットによってゲル精製された。
【0153】
制限、消化、およびライゲーション
精製SLPI−コラーゲンIIIPCR産物を制限酵素(ロシュ(Roche)、英国(U.K.))NotIおよびXmaIで消化すると同時に、ベクターpRMIをNotIおよびEcoR Vで消化した後、XmaIで消化した。次いで、消化物をキアゲン(Qiagen)ゲル抽出キットによってゲル精製し、これはその後にアルカリホスファターゼでベクター消化物を脱リン酸化した。挿入および脱リン酸化ベクターの収量を評価するとともに、高濃度のT4 DNAリガーゼ(ニュー・イングランズ・バイオラブズ(New Englands Biolabs)、英国(U.K.))を用いて、ライゲーション反応をメーカーの指示に従い設定した。
【0154】
形質転換およびコロニースクリーニング
ライゲーション反応物5μlを化学的コンピテントDH5α細胞へ形質転換した。各コロニーからのDNAをキアゲン(Qiagen)ミニプレップキット(キアゲン(Qiagen))によって抽出した。陽性クローンをXhoIによる制限消化によって区別し、アガロースゲル上で正しいサイズ(1.936、2.520、4.680kbp)の断片を得た。
【0155】
PCR産物のシークエンシング
陽性クローンが同定されると、シークエンシング反応を行い、ポリメラーゼによるPCR産物への導入に誤りがないことを確実にした。シークエンシング反応において使用されたプライマーが以下に示されている。すなわち、

SK−T7 5’−gta ata cga ctc act ata ggg c−3’ (配列番号19)
C3For1 5’−gct gtt gaa gga gga tgt−3’ (配列番号20)
C3For2 5’−aga ggc ttc gat gga cga3’ (配列番号21)
C3For3 5’gga ctg cga ggt ggt gca3’ (配列番号22)
C3Rev1 5’−ttc tcc cag gaa tac cag−3’ (配列番号23)
C3Rev2 5’−agg gaa tcc ggc agt tcc−3’ (配列番号24)
C3Rev3 5’−ctc ggg gac cag atg gcc−3’ (配列番号25)
【0156】
SLPI−コラーゲンIII PCR産物のpCEP4へのサブクローニング
SLPI−コラーゲンIIIをpCEP4へサブクローニングするために、SLPI−コラーゲンIII/SK(+)をNotIで消化した。この後、末端をクレノー(Klenow)(ロシュ(Roche))で充填し、HindIIIで制限消化した。NotIをKpnIで置換したことを除き、ベクターpCEP4で同じ手順を行った。次いで、挿入およびベクターをキアゲン(Qiagen)ゲル抽出キット(キアゲン(Qiagen))を用いてゲル精製した。自己ライゲーションを阻止するために、ベクターもアルカリホスファターゼ(ロシュ(Roche))で脱リン酸化した。
【0157】
高濃度のT4 DNAリガーゼ(NEB)を用いるライゲーション反応を、挿入およびベクターの収量を評価した後に設定した。次いで、化学的コンピテントDH5α細胞を構成物で形質転換した。各コロニーからのDNAをキアゲン(Qiagen)ミニプレップキット(キアゲン(Qiagen))によって抽出した。XhoIによる消化とともに、陽性クローンが得られたDNA断片のサイズ(1.924、2.520、および11.480kbp)によって示された。
【0158】
上記で概略されたクローニング法を用いて、プロコラーゲンIII型N−プロペプチド配列をSLPIの配列で置換したが、コラーゲンIIIシグナル配列を維持した。DNA分子の全ヌクレオチド配列は図8(および配列番号26)に示されている。図9(および配列番号27)は、DNA分子から発現されうる修飾プロ−α鎖(本発明の第1の態様による分子)のアミノ酸配列を示す。図8および9における下線を引いた部分は、それぞれ、SLPIのDNAおよびアミノ酸配列と関連しているが、下線を引いていない部分は、フォン・ヴィレブランド(von Willebrand)因子を発端とするヒトプロコラーゲンIIIのDNAおよびアミノ酸配列と関連している。
【0159】
pCEP4ベクターへクローニングされたDNA分子はHEK293 Ebna細胞で発現される(図10を参照)。slpi−colのバンドは、抗slpi抗体へブロッティンッグされたウェスタンにおける単一バンドである。
【0160】
上記の実施例は、ラミニンまたはSLPI分子の一部または全部を含有する修飾コラーゲンが生成されうることを示す。これらの修飾ドメインは、特定の所望の機能的特徴をコラーゲンに与え、分子の創傷治癒特性を増強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】天然プロコラーゲン分子を示す概略図である。
【図2】本発明の第3の態様によるプロコラーゲン分子であるlam−プロコラーゲンを示す概略図である。
【図3】実施例1からの本発明の第2の態様によるDNA分子のヌクレオチド配列を示す図である。
【図4】実施例1からの本発明の第1の態様による修飾プロ−α鎖のアミノ酸配列を示す図である。
【図5】実施例1および2に記載されたウェスタンブロットを示す写真である。
【図6】実施例2からの本発明の第2の態様によるDNA分子のヌクレオチド配列を示す図である。
【図7】実施例2からの本発明の第1の態様による修飾プロ−α鎖のアミノ酸配列を示す図である。
【図8】実施例3からの本発明の第2の態様によるDNA分子のヌクレオチド配列を示す図である。
【図9】実施例3からの本発明の第1の態様による修飾プロ−α鎖のアミノ酸配列を示す図である。
【図10】実施例3に記載されているウェスタンブロットを示す写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのN−末端ドメインに結合された三重らせん形成ドメインを含んでなる修飾プロ−α鎖であって、N−末端ドメインがラミニン糖タンパク質の少なくとも部分もしくは分泌白血球プロテアーゼ阻害剤またはその機能的誘導体の少なくとも部分に由来するポリペプチド配列を含有する、修飾プロ−α鎖。
【請求項2】
三重らせん形成ドメインが線維形成プロ−α鎖に由来する、請求項1記載の修飾プロ−α鎖。
【請求項3】
三重らせん形成ドメインがI、II、III、V、またはXI型プロ−α鎖に由来する、請求項2記載の修飾プロ−α鎖。
【請求項4】
三重らせん形成ドメインがプロα1(III)鎖に由来する、請求項3記載の修飾プロ−α鎖。
【請求項5】
N−末端ドメインがラミニン分子の一部を含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の修飾プロ−α鎖。
【請求項6】
N−末端ドメインがラミニン分子のα鎖の球状ドメインに由来する、請求項5記載の修飾プロ−α鎖。
【請求項7】
N−末端ドメインがα鎖の少なくともG3球状ドメインのアミノ酸配列を含んでなる、請求項6記載の修飾プロ−α鎖。
【請求項8】
N−末端がG1〜G3ドメインのアミノ酸配列を含んでなる、請求項6記載の修飾プロ−α鎖。
【請求項9】
プロ−α鎖のN−末端配列がラミニン5の球状鎖のアミノ酸配列の少なくとも部分で置換される、請求項5〜8のいずれか一項に記載の修飾プロ−α鎖。
【請求項10】
プロコラーゲンN−プロペプチド配列がN100の前にラミニン糖タンパク質の配列で置換される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の修飾プロ−α鎖。
【請求項11】
分泌白血球プロテアーゼ阻害剤の全配列が前記N−末端ドメインに付着している、請求項1記載の修飾プロ−α鎖。
【請求項12】
N−末端プロペプチドドメインと関連したN−プロテイナーゼ切断部位が、切断に対するドメインの感受性を変化させるように修飾されている、請求項1〜11のいずれか一項に記載の修飾プロ−α鎖。
【請求項13】
N−プロテイナーゼ切断部位が、ドメインが切断されないように修飾されている、請求項12記載の修飾プロ−α鎖。
【請求項14】
プロ−α鎖のらせん形成ドメインとN−プロペプチド形成ドメインとの間の領域が、N−プロテイナーゼに対する抵抗性を与えるように修飾されている、請求項13記載の修飾プロ−α鎖。
【請求項15】
領域におけるPro−GlnがLeu−Proに変化されている、請求項14記載の修飾プロ−α鎖。
【請求項16】
N−末端ドメインが配列番号10のアミノ酸を含有する、請求項8記載の修飾プロ−α鎖。
【請求項17】
N−末端ドメインが配列番号14のアミノ酸を含有する、請求項7記載の修飾プロ−α鎖。
【請求項18】
N−末端ドメインが配列番号27のアミノ酸を含有する、請求項11記載の修飾プロ−α鎖。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1つによって規定された修飾プロ−α鎖をコード化するDNA分子。
【請求項20】
分子が配列番号9の塩基を包含することを特徴とする請求項19記載の修飾プロ−α鎖をコード化するDNA分子。
【請求項21】
分子が配列番号13の塩基を包含することを特徴とする請求項19記載の修飾プロ−α鎖をコード化するDNA分子。
【請求項22】
分子が配列番号26の塩基を包含することを特徴とする請求項19記載の修飾プロ−α鎖をコードするDNA分子。
【請求項23】
プロ−α鎖の少なくとも1つが、請求項1〜18のいずれか1つによって規定された修飾プロ−α鎖であることを特徴とするプロ−α鎖の三量体を含んでなるプロコラーゲン分子。
【請求項24】
分子のC−末端ドメインが除去されている、請求項23記載のプロコラーゲン分子。
【請求項25】
コラーゲンモノマーを含むコラーゲンポリマーであって、その中に含有されるコラーゲンモノマーの少なくともいくらかはN−プロペプチドを保持し、その保持されたN−プロペプチドの少なくともいくらかがラミニン糖タンパク質の少なくとも部分もしくは分泌白血球プロテアーゼ阻害剤またはその機能的誘導体の少なくとも部分に由来するポリペプチド配列を含有することを特徴とする、コラーゲンポリマー。
【請求項26】
プロペプチドドメインを保持するコラーゲンモノマーが、請求項23または24によって規定されたプロコラーゲン分子に由来する、請求項25記載のコラーゲンポリマー。
【請求項27】
請求項23および24によって規定されたプロコラーゲン分子に由来する修飾プロペプチドドメインを有するコラーゲンモノマーを含んでなるコラーゲンマトリクス。
【請求項28】
請求項26によって規定されたコラーゲンポリマー、または請求項27によって規定されたコラーゲンマトリクスを含んでなる包帯。
【請求項29】
病状の治療のための請求項1〜28のいずれか一項に記載の修飾プロ−α鎖、プロコラーゲン分子、ポリマー、マトリクス、または包帯の使用。
【請求項30】
創傷または線維障害の治療において使用するための薬剤の製造のための請求項1〜28のいずれか一項に記載の修飾プロ−α鎖、プロコラーゲン分子、ポリマー、マトリクス、または包帯の使用。
【請求項31】
請求項1〜28のいずれか一項に記載の修飾プロ−α鎖、プロコラーゲン分子、ポリマー、マトリクス、または包帯の治療有効量をかかる治療を必要とする対象に投与することを含む、創傷または線維障害を治療する方法。
【請求項32】
請求項27に記載のコラーゲンマトリクスを含んでなる人工皮膚/組織。
【請求項33】
請求項27に記載のコラーゲンマトリクスを含んでなる身体用インプラント。
【請求項34】
病状の治療のための請求項27、32、または33に記載のコラーゲンマトリクス、人工皮膚/組織、または身体用インプラントの使用。
【請求項35】
遺伝子療法において使用するための送達システムであって、創傷部位または線維症の部位で修飾プロ−α鎖の発現をもたらすことが可能であり、またはもたらすように転写されている、請求項19〜22のいずれか一項に記載のDNA分子を含んでなる、送達システム。
【請求項36】
創傷または線維障害を治療するための薬剤の製造における請求項35において規定された送達システムの使用。
【請求項37】
請求項35において規定された送達システムの治療量を治療を必要とする患者に投与することを含む、創傷または線維症状を治療する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−527204(P2007−527204A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506159(P2006−506159)
【出願日】平成16年4月21日(2004.4.21)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001719
【国際公開番号】WO2004/094472
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(505395858)ザ・ユニバーシティ・オブ・マンチェスター (18)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF MANCHESTER
【Fターム(参考)】