説明

生理活性アルファベータペプチドを作製する方法

非天然型生理活性ポリペプチドを作製する方法が記載されている。当該方法は、α−アミノ酸残基を含むアミノ酸配列を有した生理活性ポリペプチド又はその生理活性断片を選択するステップ、及び、前記生理活性ポリペプチドの配列に一致するアミノ酸配列を有する合成ポリペプチドを作製するステップを含むが、ステップ(a)の前記生理活性ポリペプチド又は断片に存在する前記α−アミノ酸残基のうち約14%から約50%が、β−アミノ酸残基と置換され、前記α−アミノ酸残基は、繰り返しパターンで分配される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルファ及びベータアミノ酸残基を含むポリペプチド化合物を作製する方法、該方法により生成された化合物、及び、ヒトを含めた動物における疾患を治療する薬剤的に活性な作用物質としての前記化合物の使用を対象としている。
【背景技術】
【0002】
多くの天然に存在する生理活性化合物は、α−アミノ酸に基づく蛋白質又はペプチド(すなわち、1つのアミノ酸のα−カルボキシル基が、隣接するアミノ酸のα−アミノ基にアミド結合によって連結されるα−アミノ酸の配列)である。近年、新たな薬剤的に活性の医薬物質の発見へのアプローチは、ペプチドのライブラリーを合成するため、続いて、所望の結合活性等の所望の活性を有するライブラリー内の化合物を評価するためにされてきた。しかし、α−アミノ酸ペプチドは、特に、in vinoで不十分に吸収される且つ蛋白質分解を受けやすい場合が多いため、薬剤的使用に対して完全に満足のいくものであるというわけではない。
【0003】
β−アミノ酸、及び、β−アミノ酸から合成されるペプチドに対する多くの研究が、科学及び特許の文献で報告されてきた。例えば、本発明の共同発明者Samuel H.Gellmanにより率いられたグループによって行われた、“Application of Microwave Irradiation to the Synthesis of 14−helical Beta−Peptides”,Murray&Gellman,Organic Letters(2005)7(8),1517−1520;“Synthesis of 2,2−Disubstituted Pyrrolidine−4−carboxylic Acid Derivatives and Their Incorporation into Beta−Peptide Oligomers”,Huck&Gellman,J.Org.Chem.(2005)70(9),3353−62;“Effects of Conformational Stability and Geometry of Guanidinium Display on Cell Entry by Beta−Peptide”,Potocky,Menon,&Gellman,Journal of the American Chemical Society(2005)127(11):3686−7;“Residue requirements for helical folding in short alpha/beta−peptides:crystallographic characterization of the 11−helix in an optimized sequence”,Schmitt,Choi,Guzei,&Gellman,Journal of the Americal Chemical Society(2005),127(38),13130−1、及び、“Efficient synthesis of a beta−peptide combinatorial library with microwave irradiation”,Murray,Farooqi,Sadowsky,Scalf,Freund,Smith,Chen,&Gellman,Journal of the American Chemical Society(2005),127(38),13271−80を含む研究を参照されたい。スイス、チューリッヒのDieter Seebachにより率いられた別のグループも、ベータポリペプチドの分野において大規模に発表した。例えば、Seebach et al.(1996)Helv.Chim.Acta.79:913−941;及び、Seebach et al.(1996)Helv.Chim.Acta.79:2043−2066を参照されたい。それら2つの研究論文のうち1つ目の文献において、Seebach et al.は、βヘキサペプチド、すなわち、(H−β−HVal−β−HAla−β−HLeu)2−OHの合成及び特徴づけを記載している。興味深いことに、この研究論文は、βペプチドの構造に対する従来技術の報告は、矛盾し且つ「部分的に議論の余地のある」ものであることに特に注目している。2番目の研究論文において、Seebach等は、上記のβヘキサペプチドの二次構造、及び、二次構造に対する残基の変化による作用を調査している。
【0004】
Dado and Gellman(1994)J.Am.Chem.Soc.116:1054−1062は、β−アラニン及びγ−アミノ酪酸の誘導体における分子内水素結合を記載している。この研究論文は、ポリマーの主鎖上の最も近い隣接するアミド基間での分子内水素結合が好まれない場合にβペプチドはα−アミノ酸ポリマーと類似の様式で折り畳まることを仮定している。
【0005】
Suhara et al.(1996)Tetrahedron Lett.37(10):1575−1578は、C−1β−カルボキシレート及びC−2α−アミノ基を介してD−グリコシルアミン誘導体が互いに連結されたβペプチドの糖質類縁体を報告している。この化合物の種類には、「カルボペプトイド」という慣用名が与えられた。
【0006】
組み合わせライブラリーを生じる方法に関して、いくつかのレビューが入手可能である。例えば、Ellman(1996)Acc.Chem.Res.29:132−143及びLam et al.(1997)Chem.Rev.97:411−448を参照されたい。
【0007】
βポリペプチドに関する近年の特許文献では、例えば、“Beta−Peptides with Antifungal Activity”と題された米国公開特許出願第2008/0166388号;“Concise Beta2−Amino Acid Synthesis via Organocatalytic Aminomethylation”と題された第2008/0058548号;“Beta−polypeptides that inhibit cytomegalovirus infection”と題された第2007/0154882号;“Beta−amino acids”と題された第2007/0123709号;及び、“Poly−beta−peptides from functionalized beta−lactam monomers and antibacterial compositions containing same”と題された第2007/0087404号を参照されたい。“Peptides”と題された米国公開特許出願第2003/0212250号も参照されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、蛋白質分解耐性の非天然型生理活性ポリペプチドを作る方法を対象としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
当該方法は、本質的にα−アミノ酸残基から成るアミノ酸配列を有する生物学的又は薬剤的に活性のポリペプチド又はその生理活性断片(「標的」)を選択するステップを含む。次に、標的のα−アミノ酸に一致するアミノ酸配列を有する合成ポリペプチドが作製される。しかし、合成ポリペプチドにおいて、標的に存在するα−アミノ酸残基の約14%から約50%がβ−アミノ酸残基と置換される。より好ましくは、標的に存在するα−アミノ酸残基の約20%から約50%がβ−アミノ酸残基と置換される。そのβ−アミノ酸残基は、合成ポリペプチドのアミノ酸配列を通してβ−アミノ酸残基及びα−アミノ酸残基が繰り返しパターンで分配されるように合成ポリペプチドに配置される。結果として生じる非天然型ポリペプチドは、好ましくは約10から約100残基の長さ、より好ましくは約20から約50残基の長さを有する。少なくとも2つの残基がβ−アミノ酸残基であることが好ましい。
【0010】
本発明の1つの見解において、標的におけるα−アミノ酸残基のうち少なくとも1つが、β及びβ炭素原子を包含する環を介して環状にされた少なくとも1つのβ−アミノ酸残基と置換される。本発明の別の見解においては、挿入されたβ−アミノ酸残基の大部分又は全てが、β及びβ炭素原子を包含する環を介して環状にされる。本発明の別の見解では、β−アミノ酸残基のうち少なくとも1つは、そのβ及びβ炭素原子で未置換である。あるいは、β−アミノ酸残基のうち全てを、そのβ及びβ炭素原子にて(直鎖、分枝、又は、環状の置換基と)置換することができる。
【0011】
本発明の別の見解において、標的に存在するα−アミノ酸残基の約14%から約50%がβ−アミノ酸残基と置換され、各β−アミノ酸残基は、置換するα−アミノ酸残基と同じ側鎖を少なくとも1つ有する。従って、この見解において、当該方法は、擬態される標的を選択するステップ、続いて、標的の配列に一致するアミノ酸配列を有する合成ポリペプチドを作製するステップを含むが、標的に存在するα−アミノ酸残基の約20%から約50%が類似性のβ−アミノ酸残基と置換される。この本発明の見解では、各類似性のβ−アミノ酸残基は、置換するα−アミノ酸残基と同じ側鎖を少なくとも1つ有する。ここでも、β−アミノ酸残基及びα−アミノ酸残基は、合成ポリペプチドのアミノ酸配列において繰り返しのパターンで分配される。
【0012】
SEQ ID番号:4〜11、16〜22、及び、25〜30において示された一次アミノ酸配列を含む単離された非天然型ポリペプチドも本発明に含まれる。これらの非天然型ポリペプチドは、ヒト細胞に対するヒト免疫不全ウイルスの融合を阻害する方法に使用することができる。当該方法は、SEQ ID番号:4〜11、16〜22、及び、25〜30において示された一次アミノ酸配列を含む単離された非天然型ポリペプチドにヒト細胞を接触させ、それによって、細胞がその細胞膜を介したHIVの進入に耐性になるステップを含む。
【0013】
本発明の別の見解は、ヒト細胞に対するヒト免疫不全ウイルス(HIV)の融合を阻害する方法を対象としている。当該方法は、第一に、α−アミノ酸残基を含むアミノ酸配列を有し且つin vivoでのHIV融合に必要な天然の生理活性ポリペプチド又はその生理活性断片を選択するステップを含む。次に、前記生理活性ポリペプチド又はその断片の配列に一致するアミノ酸配列を有した合成ポリペプチドが作製される。合成ポリペプチドにおいて、生理活性ポリペプチド又は断片に存在するα−アミノ酸残基の約14%から約50%がβ−アミノ酸残基と置換される。さらに、合成ポリペプチドにおいて、β−アミノ酸残基及びα−アミノ酸残基が、繰り返しのパターンで分配される。次に、ヒト細胞がその合成ポリペプチドに接触される。
【0014】
本発明における全ての実施形態において、繰り返しのパターンがβ−アミノ酸残基を、らせん形構造をとる非天然型ポリペプチドにおけるらせんの一側面上で一直線をなすように置くことが(要求されないけれども)全般的に好ましい。すなわち、非天然型ポリペプチドがらせん形構造をとる場合に、ポリペプチドによってとられた折り畳み構造において、α−及びβ−残基の繰り返しのパターンがβ−アミノ酸残基を、折り畳み分子構造の一側面に沿って一直線をなすように配置する。β−アミノ酸残基及びα−アミノ酸残基の繰り返しのパターンは、(ααααααβ)、(αααααβ)、(ααααβ)、(αααβ)、(ααβ)、(ααβαααβ)、(ααβαβαβ)、及び、(αβ)等、長さが2から7残基のパターンであり得る。長さが2から7残基のα−及びβ−アミノ酸残基の独特なパターン全てが本発明の範囲内にあることは明白である。
【0015】
すでに知られているか又は将来開発されるポリペプチド合成のいかなる手段も介してポリペプチド化合物を作製するために当該方法を使用することができる。最新のペプチド合成方法を使用し、本発明の方法に従い作製されたポリペプチドは、全般的に、約100残基長未満、より好ましくは、全残基が約10から約50、さらに好ましくは、全残基が約20から約50である。これらの記述された範囲外の範囲も本発明の範囲内である。Abgent社(San Diego,California,USA)等、多くの商業的なサービスが、約100残基までのペプチド合成を提供している
オリゴマーに沿った側鎖の配列は、病状に対して所望の生理活性を有した原型αペプチド(標的)に基づいていることが好ましい。所望の化合物の特性を最適化するために、側鎖の配列は、α/βペプチドの主鎖上への翻訳後に変えることもできる。
【0016】
非天然型α/βペプチドの主鎖に導入された各β残基は、2つの主鎖炭素(β又はβ)のうちの1つの炭素又は主鎖炭素のうちの両方の炭素にて側鎖を有することができる。側鎖も、その2つの主鎖炭素を接続する環を介して環状にすることができる。
【0017】
本発明において特に注目すべきは、側鎖を有するβ−残基との原型標的配列内のα−残基の置換が、オリゴマーに沿った側鎖の配列を乱すことなく主鎖に対する改変を可能にするということである。環状β−残基は主鎖を堅くし、らせん形構造を促進する。
【0018】
主鎖の改変によりオリゴマーに与えられたプロテアーゼ耐性を最大にするために、β−残基は配列の全長に沿って均等に一定の間隔で置かれることが好ましい。規則正しく繰り返す主鎖のパターンの例として、それだけに限られないが、(ααααααβ)、(αααααβ)、(ααααβ)、(αααβ)、(ααβ)、(ααβαααβ)、(ααβαβαβ)、及び、(αβ)が挙げられる。
【0019】
最終化合物における所望の特性には、一般に病状の起源又は悪化に関与する、特に、ヒト細胞内へのHIVの侵入に関与する蛋白質間相互作用を調節する能力、並びに、(例えば、in vivoでの半減期、体内分布の改善等)標的αペプチド配列に関する改善された薬物動態学的及び薬力学的特性が含まれる。らせん形構造は必要ではないけれども、最終化合物のうち多くが、溶液においてらせん形構造をとる。
【0020】
数値範囲は、本明細書において使用される場合、明確に開示されていようとなかろうと、その範囲内に含まれる全ての数及び数の部分集合を含むよう意図される。さらに、これらの数値範囲は、その範囲内のいかなる数又は数の部分集合も対象とした請求項に対する支持を提供するとして解釈されるべきである。例えば、1から10という開示は、2から8、3から7、5、6、1から9、3.6から4.6、3.5から9.9等という範囲を支持するとして解釈されるべきである。
【0021】
本発明における単数形の特徴又は限定への言及は全て、言及されている文脈によって逆に特定又は明確に意味していない限り、対応する複数形の特徴又は限定を含むべきであり、逆もまた同様である。
【0022】
本明細書において使用される方法又は工程段階の組み合わせ全ては、その組み合わせが言及されている文脈によって逆に特定又は明確に意味していない限り、いかなる順でも試みることができる。
【0023】
本発明の方法、化合物、及び、組成物は、本明細書に記載された本発明の重要な要素及び限定、並びに、本明細書に記載されたか、さもなければ、合成有機化学において有用ないかなる追加の又は任意の成分、構成要素、若しくは限定も含む、上記のものから成る、又は、本質的に上記のものから成り得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1A】αペプチド1〜3、及び、α/βペプチド4〜11の配列を描写している。ボールド体の残基は、そのα−アミノ酸の対応物に対応するβ−残基を示し、ボールド体で下線が引かれた残基は、環状にされたβ−アミノ酸残基ACPC(X)及びAPC(Y)である。
【図1B】α−アミノ酸、対応するβ−アミノ酸類似体、及び、環状のβ−残基ACPC(X)及びAPC(Z)の構造を描写している。
【図2A】3つのNHRセグメント及び2つのCHRセグメントから構成されるgp41−5蛋白質を描写している。
【図2B】競合FPアッセイにおいてトレーサーとして使用される蛍光CHRペプチドを描写している(Flu=5−カルボキシフルオレスセイン)。
【図2C】gp41−5によって形成される5ヘリックスバンドルとFlu−CHRペプチドとの相互作用の概略図である。
【図3A】NHRペプチド1とCHR類似体3との間で形成された複合体の円二色性(CD)スペクトルを描写している。実線は、25℃にてPBS中20μMという全濃度の、示されたオリゴマーの1:1の混合物に対して観察されたスペクトルである。点線は、個々の構成要素のCDからの1:1の相互に作用しない混合物に対して計算されたスペクトルである。
【図3B】NHRペプチド1とCHR類似体4との間で形成された複合体の円二色性(CD)スペクトルを描写している。実線は、25℃にてPBS中20μMという全濃度の、示されたオリゴマーの1:1の混合物に対して観察されたスペクトルである。点線は、個々の構成要素のCDからの1:1の相互に作用しない混合物に対して計算されたスペクトルである。
【図3C】NHRペプチド1とCHR類似体5との間で形成された複合体の円二色性(CD)スペクトルを描写している。実線は、25℃にてPBS中20μMという全濃度の、示されたオリゴマーの1:1の混合物に対して観察されたスペクトルである。点線は、個々の構成要素のCDからの1:1の相互に作用しない混合物に対して計算されたスペクトルである。
【図3D】NHRペプチド1とCHR類似体9とで形成された複合体の円二色性(CD)スペクトルを描写している。実線は、25℃にてPBS中20μMという全濃度の、示されたオリゴマーの1:1の混合物に対して観察されたスペクトルである。点線は、個々の構成要素のCDからの1:1の相互に作用しない混合物に対して計算されたスペクトルである。
【図4A】αペプチド1と3とで新たに特徴づけした複合体の結晶構造において観察した6ヘリックスバンドル(図4A)、及び、αペプチド1と2とで以前に特徴づけされた複合体(Chan,Fass,Berger,and Kim,Cell 1997,89,263−273)の結晶構造において観察した6ヘリックスバンドル(図4B)の比較である。2つの構造体間のCα原子のRMSDは、0.7Åである。
【図4B】αペプチド1と3とで新たに特徴づけした複合体の結晶構造において観察した6ヘリックスバンドル(図4A)、及び、αペプチド1と2とで以前に特徴づけされた複合体(Chan,Fass,Berger,and Kim,Cell 1997,89,263−273)の結晶構造において観察した6ヘリックスバンドル(図4B)の比較である。2つの構造体間のCα原子のRMSDは、0.7Åである。
【図4C】1+3の複合体の結晶構造を描写している。
【図4D】2.8Åの分解能まで解析された、1+10の複合体の結晶構造を描写している。
【図4E】2.8Åの分解能まで解析された、1+8の複合体の結晶構造を描写している。
【図4F】全てαペプチドヘリックスバンドルで形成された1+3の、1+10によって形成されたものとのオーバーレイを描写している。
【図4G】全てαペプチドヘリックスバンドルで形成された1+3の、1+8によって形成されたものとのオーバーレイを描写している。
【図5A】円二色性(CD)スペクトルを描写している。25℃にてPBS中20μM濃度での、NHRペプチド1並びにCHRペプチド3、4、5、8、及び、10に対する重畳されたCDデータを描写している。
【図5B】円二色性(CD)スペクトルを描写している。25℃にてPBS中20μMという全濃度の、示された1:1の混合物のCDスペクトル(実線)を、個々の構成要素のCD測定からの1:1の相互に作用しない混合物に対して計算されたスペクトル(点線)と共に描写している。
【図5C】円二色性(CD)スペクトルを描写している。PBS中20μM濃度での、示された複合体に対する222nmでの温度依存性の分子楕円率を描写している。
【図6】PBS中全ペプチドが20μMという濃度での、1+3、1+4、1+5、及び、1+9の1:1の混合物に対する222nmでの温度依存性の分子楕円率を描写したグラフである。
【図7A】Puma BH3ペプチド(1)及びα/βペプチド類似体2〜8の一次配列を描写している(灰色の丸及びボールド体の文字はβ残基を示している)。枠で囲まれた残基は、配列相同性に基づく結合にとって最も重要な疎水性位置を示している。
【図7B】1のヘリカルホイール図を描写している。枠で囲まれた残基は、配列相同性に基づく結合にとって最も重要な疎水性位置を示している。
【図7C】図7Bと同じ向きで描かれた1〜8の概略図を提示している。白及び灰色の丸は、それぞれα残基及びβ残基によって占領された7価の原子の位置を示している。
【図7D】ジェネリックのα−アミノ酸及びジェネリックのβ−アミノ酸の構造を提示しており、「R」置換基は、慣習的に「側鎖」と呼ばれている。
【図8】化合物1〜8によるBcl−x又はMcl−1に結合した蛍光標識したBak BH3ペプチドの置換に対する阻害定数を描写したヒストグラムである。折れたバーは、アッセイにおいて識別可能なものよりも堅固に結合する化合物を示している。8に対する値は、どちらの蛋白質に対しても100μMよりも弱かった。
【図9A】図9Dにおいて構造が示されている3の蛋白質分解安定性を描写している。TBS中20μMペプチドの溶液を、室温にて10μg/mLのプロテイナーゼKでインキュベートした。簡単な指数関数型減衰への適合から生じる曲線を用いて時間依存的な分解のデータを描写している。
【図9B】図9Dにおいて構造が示されている4の蛋白質分解安定性を描写している。TBS中20μMペプチドの溶液を、室温にて10μg/mLのプロテイナーゼKでインキュベートした。簡単な指数関数型減衰への適合から生じる曲線を用いて時間依存的な分解のデータを描写している。
【図9C】図9Dにおいて構造が示されている10の蛋白質分解安定性を描写している。TBS中20μMペプチドの溶液を、室温にて10μg/mLのプロテイナーゼKでインキュベートした。簡単な指数関数型減衰への適合から生じる曲線を用いて時間依存的な分解のデータを描写している。
【図9D】化合物3、4、及び、10の構造を示しており、示された時点にて質量分析によって観察された蛋白質分解の生成物も描写している。鉛直線は、示された残基間の主鎖アミド結合の加水分解と一致した1つ又は両方の生成物のMALDI−MSによる観察を示している。
【図10A】gp41由来の融合阻止ペプチドの濃度の関数として、示されたウイルス株によるTZM−bl細胞の感染の阻害を描写したグラフである。各データポイントは、3つの独立した実験からの平均±S.E.M.である。NL4−3感染の阻害を描写している。
【図10B】gp41由来の融合阻止ペプチドの濃度の関数として、示されたウイルス株によるTZM−bl細胞の感染の阻害を描写したグラフである。各データポイントは、3つの独立した実験からの平均±S.E.M.である。CC1/85感染の阻害を描写している。
【図10C】gp41由来の融合阻止ペプチドの濃度の関数として、示されたウイルス株によるTZM−bl細胞の感染の阻害を描写したグラフである。各データポイントは、3つの独立した実験からの平均±S.E.M.である。HC4感染の阻害を描写している。
【図10D】gp41由来の融合阻止ペプチドの濃度の関数として、示されたウイルス株によるTZM−bl細胞の感染の阻害を描写したグラフである。各データポイントは、3つの独立した実験からの平均±S.E.M.である。DJ258感染の阻害を描写している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の略語は本明細書を通して使用される。
AcO=無水酢酸、酢酸オキシド(acetic oxide)、アセチルアセテート
ACPC=trans−2−アミノシクロペンタンカルボン酸
APC=trans−3−アミノピロリジン−4−カルボン酸
Boc=tert−ブトキシカルボニル
BOP=ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−(ジメチルアミノ)−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート
β−Gal=β−ガラクトシダーゼ
CD=円二色性
CHR=C末端7アミノ酸繰り返し
DIEA=N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMF=ジメチルホルムアミド
DMSO=ジメチルスルホキシド
EDTA=エチレンジアミン四酢酸
FKBP=FK506−結合蛋白質
Fmoc=9−フルオレニルメチルホルミル
FP=蛍光偏光
Halogen=F、Cl、Br、及びI
HBTU=2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート
HIV=ヒト免疫不全ウイルス
HOBT=N−ヒドロキシベンゾトリアゾール
HPLC=高速液体クロマトグラフィー
iPrEtN=N,N−ジイソプロピルエチルアミン
IPTG=イソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド
MALDI−TOF−MS=マトリックス支援レーザー脱離飛行時間型質量分析
MeOH=メタノール
NHR=N末端7アミノ酸繰り返し
NMP=1−メチル−2−ピロリジノン
PTH1R及びPTH2R=副甲状腺ホルモン受容体1及び2
RMSD=標準偏差
RTKs=受容体チロシンキナーゼ
TNF=腫瘍壊死因子
PBS=リン酸緩衝食塩水
TBS=トリス緩衝食塩水
Tris=トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン
TFA=トリフルオロ酢酸
TNBS=2,4,6−トリニトロベンゼン−スルホン酸。
【0026】
本明細書では、他に示されていない限り、「本発明の化合物」等の用語は、塩の形状の化合物だけでなく遊離塩基の形状の化合物、また、固体相に結合した時の化合物も含む。アミン置換基等の塩基性置換基が存在する場合、塩の形状は、例えば二塩化水素化物等の酸付加塩であり得る。塩は、それだけに限らないが、鉱酸及び有機酸から得られるものを含み、明白に、例えば、塩酸塩及び臭化水素酸塩等のハロゲン化水素酸塩(hydrohalides)、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、スルファミン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、マロン酸塩、シュウ酸塩、サリチル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、メチレンビス−b−ヒドロキシナフトアート、ゲンチジン酸塩、イセチオン酸塩、ジ−p−トルオイル酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、シクロヘキシルスルホン酸塩、キナ酸塩等を含む。塩基付加塩には、アルカリ若しくはアルカリ土類金属の塩基、又は、トリエチルアミン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、Nメチルモルホリン等、従来の有機塩基から得られるものが含まれる。他の適した塩は、例えば、Handbook of Pharmaceutical Salts,P.H.Stahl and C.G.Wermuch,Eds.,(Copy Right)2002,Verlag Helvitica Chemica Acta(Zurich,Switzerland)、及び、S.M.Berge,et al.,“Pharmaceutical Salts,”J.Pharm.Sci.,66:p.1−19(January 1977)において見られ、どちらの文献も、全内容を本出願において援用する。
【0027】
本発明のβペプチドのβ−アミノ酸残基は、特徴的にβ−アミノ−n−プロピオン酸の誘導体であり、一般的に、主鎖における位置番号2の炭素原子(β炭素)にて、及び/又は、位置番号3の炭素原子(β炭素)にてさらに置換され、例えば、N末端アミノ窒素原子にてさらに置換することができる。β、β、及び、アミノ置換基は、1から43個の炭素原子を有する置換基を含むことができ、任意にカルボニル(すなわち−C(O)−)基を有するO、N、又はSから選択される4個までのヘテロ原子によって任意に割り込まれ、さらに、ハロ、NO、−OH、C1−4アルキル、−SH、−SO、−NH、C1−4アシル、C1−4アシルオキシ、C1−4アルキルアミノ、C1−4ジアルキルアミノ、トリハロメチル、−CN、C1−4アルキルチオ、C1−4アルキルスルフィニル、又は、C1−4アルキルスルホニルから選択される6個までの置換基によって任意に置換される。
【0028】
β−アミノ酸残基のβ及び/又はβ炭素原子上の置換基は、例えば、−H、−CH、−CH(CH、−CH−CH(CH、−CH(CHCH、−CH−フェニル、CH−pOH−フェニル、−CH−インドール、−CH−SH、−CH−CH−S−CH、−CHOH、−CHOH−CH、−CH−CH−CH−CH−NH、−CH−CH−CH−NH−C(NH)NH、−CH−イミダゾール、−CH−COOH、−CH−CH−COOH、−CH−CONH、−CH−CH−CONH等、天然のα−アミノ酸のα−炭素原子に存在する置換基を含む群から選択することができか、又は、蛋白新生のα−アミノ酸プロリンにおいて見られるように、隣接するNH基と共にピロリジン環を画定する。
【0029】
本発明に従って、本発明の化合物は所望の特性を有することが判ってきた。例えば、3個以上が環状にされた残基を約7個又はそれ以上有する本明細書に記載された化合物は、安定したらせん形構造を溶液において形成することができる。また、本明細書に記載された化合物は、ペプシン等のペプチダーゼの作用に対して、対応するαペプチドよりもはるかに優れた安定性を有する。本明細書に記載された化合物は、それ自体では、対応するαペプチドよりも例えば血清半減期等のより長い半減期を同様に示すと思われている。
【0030】
本発明は、例えば、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%が単一の異性体の形状から成る等、純な異性体の形状の本発明の化合物、並びに、これらの形状の混合物を含む。本発明の化合物は、個々の鏡像異性体の形状でもあり得るか、又は、ラセミ化合物若しくはジアステレオ混合物若しくはいかなる他の可能な異性体の混合物の形状でもあり得る。
【0031】
本発明の化合物は、本明細書に記載された合成化学手順だけでなく、α−アミノ酸ペプチドを作製するために使用することができる手順に類似の他の手順によっても調製することができる。そのような手順は、例えばBoc方法もFmoc方法も使用した、溶液の手順も固体相の手順も含む。このように、本明細書に記載された化合物は、第1のβ−アミノ酸残基のβ−アミノ基若しくはその前駆物質と第2のβ−アミノ酸残基又はα−アミノ酸残基のα−カルボキシル基若しくはその前駆物質との間でアミド結合が形成される連続するアミド結合形成手順によって調製することができる。アミド結合形成ステップは、所望のα/βポリペプチドを与えるよう要求される間は何度でも、特定のα−アミノ酸残基及び/若しくはβ−アミノ酸残基、並びに/又はその前駆物質を用いて繰り返すことができる。また、2つ、3つ、又はそれ以上のアミノ酸残基を含むペプチド(α又はβ)は、より大きなα/βペプチドを生じるよう共に結合させることができる。環状の化合物は、前に合成した直鎖状のポリペプチドのN末端とC末端との間にペプチド結合を形成することによって調製することができる。
【0032】
β−アミノ酸を、対応するα−アミノ酸から、例えばNにより保護されたα−アミノ酸のアーント・アイシュタート増炭反応によってエナンチオ選択的に生成することができる。従来、そのような増炭の後には、Wolff転位の活性ジアゾケトン中間体のβ−アミノ酸残基との結合が続く場合がある。
【0033】
本明細書に記載された方法を使用して、特定の薬剤的使用を示した所望の活性、特に生物学的活性を有した化合物をスクリーニングするのに使用するための別々の化合物コレクション又は化合物のライブラリーを確立することができる。
【0034】
従って、本発明は、本明細書に記載された複数の化合物を含む、別々の(一般的に2から約1000個の化合物を含む)化合物コレクション、及び、(一般的に20乃至100から例えば100,000個以上の化合物等、何十万個もの化合物を含む)化合物のライブラリーも含む。
【0035】
所望の生物学的活性を有した化合物は、以下に記述される適切なスクリーニングアッセイを使用して同定することができる。
【0036】
HIV蛋白質gp41は、エンベロープウイルスの哺乳類細胞に対する融合に関与する蛋白質の種類の標準的な例である。ウイルス−細胞融合の間、gp41N末端は宿主細胞の膜内に入り込み、三量体の蛋白質は、N末端7アミノ酸繰り返し(NHR)領域の3つのコピー及びC末端7アミノ酸繰り返し(CHR)領域の3つのコピーから構成される6へリックスバンドルの形成を含めた徹底的な構造転位を経る。gp41の6ヘリックスバンドルの形成は、ウイルス−細胞融合には必要不可欠なステップであり、従って、合理的に設計された抗ウイルス物質を使用して妨害するという目的にとって魅力的な工程である。本発明の有用性及び機能性を実証するために、gp41に類似性ではあるがα−及びβ−残基の混合物から構成される非天然型ポリペプチド(α/βペプチド)を作製し、HIV−細胞融合の阻害薬として作用することを示した。
【0037】
例えば化合物1及び2等、gp41NHR又はCHR配列に基づくいくつかのαペプチド(それぞれSEQ ID番号:1及び2、図1Aを参照)を融合阻害薬として調査した。最も突出した例は、CHR領域から得られる(“FUZEON”という登録商標の下、Hoffmann−La Roche,Inc.により販売される)36−残基のαペプチド薬剤エンフビルチドである。α−ヘリックス様式で3つの鍵となるCHR疎水性側鎖を表示するよう意図された、小分子、環状ペプチド、テルフェニル、及び、βペプチドを含めた短いα−ヘリックス模倣物を使用して、いくつかのグループを、gp41の6ヘリックスバンドル形成を阻害するよう試した。しかし、これらの分子は、細胞ベースのアッセイにおいて控えめな抗HIV活性(エンフビルチドに対してIC50>1μM vs.〜1nM)のみを表示する。同様の結果が、内部の架橋結合によってα−らせん性に向けて化学的に前もって処置した比較的短いαペプチドを用いて見られた。
【0038】
原型αペプチド配列の鍵となる構造的及び機能的特性を模倣するα/βペプチドフォルダマーを系統的に展開することによって、類似性のαポリペプチドよりも蛋白質分解に対して安定した非天然型生理活性ポリペプチドが生じるということを本発明は発見した。本明細書において「配列ベースの設計」と呼ばれる当該方法は、β−アミノ酸残基全般、好ましくは置換されたα−残基の側鎖を生じるβ−アミノ酸残基との標的配列を通じたα−残基の系統的置換を含む。図1Bを参照されたい。α→β改変によって、親αペプチドからの側鎖配列は維持されながらペプチド主鎖の化学的組成が変わる。配列ベースの設計の系統的使用によって、アポトーシスに関与する蛋白質様四次組立体の形成及び蛋白質らせん体の擬態等の複雑な行動を示すα/βペプチドが生じる。gp41により媒介されるHIV−細胞融合を、その標的が非常に生物医学的に重要なものであるため、配列ベースの主鎖改変の有用性及び機能性を実証するモデルシステムとして選択した。要するに、他の治療的に重要な標的に対しても繰り返すことができる合理的且つ系統的な方法を使用して設計された、gp41により媒介されるHIV−細胞融合を阻害する薬理学的に活性な作用物質は信じられないほど有用である。当該方法は、より短時間で、試験及びエラーが少なく、合理的に指揮された様式で薬理学的に活性な作用物質を設計する手段を提供する。
【0039】
化合物2等の天然のgp41 CHR配列に基づくαペプチドは広範に調査されてきており、いくつかのグループは、合理的な変異誘発によるCHR αペプチドの結合親和性及び生物学的安定性を改善する試みを発表した。本発明の有用性及び機能性を実証するために、最近報告されたgp41 CHR類似体のαペプチド3(SEQ ID番号:3、図1Aを参照)を、α→β改変に対する起始点として選んだ。αペプチド3は、
操作されたらせん内部の塩橋及びXxx→Ala置換によってらせん傾向を強めるよう意図された側鎖変異を多数含む。以前の研究において、3は、細胞培養において高められた抗ウイルス効力を示し、野生型CHR配列に基づくペプチドに対する半減期を増やした。3における変異は、gp41 NHR領域とのその結合相互作用の構造的性質を改変するよう意図しなかったけれども、6ヘリックスバンドル構造が不変であったというさらなる実験的証拠を求めた。αペプチド1と3との共結晶を、ハンギングドロップ蒸気拡散法によって得て、その構造を2.0Åの分解能まで解析した(表1及び図4Aを参照)。結果として生じる6ヘリックスバンドルは、天然のNHR+CHRペプチド複合体によって形成されるものと本質的に同一である。図4A(1+3共結晶)と図4B(1+2共結晶)とを比較されたい。
【0040】
【表1】

配列ベースの設計に使用するために本発明者等が調査した様々な異なるα/β主鎖パターンの中で、最も広範に研究したのはααβαααβの繰り返しであった。α−ヘリックスの2残基繰り返しに対して調整されるこのパターンは、らせん一巻きあたりにβ残基を1つ置き、らせんの一表面に沿ってβ−残基の「ストライプ」を生じる。ααβαααβ主鎖により形成されたらせんがα−ヘリックスに非常に類似していることが、結晶構造によって示されてきた。3のα→β改変での最初の試みにおいて、11個のβ−残基をααβαααβパターンに組み込んだ(α/βペプチド4、SEQ ID番号:4、図1Aを参照)。これによって、gp41 NHRコアへの結合に関与する疎水性の面とは反対の位置を占める非自然型残基が生じた。
【0041】
gp41に対するαペプチド3及びα/β類似体の親和性を決定するために、最近報告されたin vitroでの競合蛍光偏光(FP)アッセイを利用した。該アッセイは、gp41融合中間体の蛋白質モデルを使用する。図2A、2B、及び、2Cを参照されたい。モデル蛋白質gp41−5は、短い軟性ループによって連結された3つのNHRセグメント(SEQ ID番号:12)及び2つのCHRセグメント(SEQ ID番号:13)から構成される。図2Aを参照されたい。gp41−5コンストラクトは折り重なって、フルオレセインによりラベルされたCHRαペプチドに対する結合部位を1つ有した5ヘリックスバンドルを形成する。フルオレセインによりラベルされたCHRαペプチド(SEQ ID番号:14)は、図2Bに示されている。この蛍光リガンドの置換によって、競合FPにおける読み取りが提供される。その反応は図2Cにおいて概略的に描写されており、0.4nMの置換定数(K)を有した。
【0042】
【表2】

αペプチド3は、アッセイにおける検出の限界(K<0.2nM)を下回るgp41−5に対する結合親和性を競合FP実験において示した(表2を参照)。α/βペプチド類似体4(SEQ ID番号:4)は、測定可能な親和性を示したが、原型α配列よりも10,000倍弱くモデル蛋白質に結合した。本発明者等による未発表の研究によって、3のN末端付近で見つかるW‐‐W‐‐‐IモチーフがNHR結合にとって重大な意味を持つということが提案された。(Chan et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA95:15613−7も参照されたい)。従って、純なα主鎖上にこれらの鍵となる疎水性側鎖を示したα/βペプチド4のキメラ誘導体(すなわち、それぞれオリゴマー5及び6、SEQ ID番号:5及び6)はgp41−5に対してより強い結合を示すということを仮定した。実際、FPアッセイにおいてnMよりも下の親和性を有してgp41−5に結合された(α+α/β)ペプチド5は、親αペプチド3から識別可能である。5におけるα/βセグメントをN末端(α/βペプチド6)の方へ延ばすことによって、結合親和性は減少される。
【0043】
gp41CHR領域等の生物医学的に重要性がある配列の配列ベースのα→β改変における根本的な動機付けのうちの1つは、蛋白質分解に対して高められた耐性を表示しながら親αペプチドの機能を模倣するオリゴマーを生じることである。本明細書に示されているように、ααβαααβ主鎖は、プロテアーゼに対して有用なレベルの耐性を与えるが、キメラオリゴマーにおける長いαペプチドセグメントは、プロテアーゼによって効果的に切断される。
【0044】
β残基が配列を通して組み込まれた、gp41CHR領域のα/βペプチド類似体を生じるために、順応性のある置換又は未置換のβ−及び/又はβ−残基を、trans−2−アミノシクロペンタンカルボン酸(ACPC)及びtrans−2−アミノピロリジンカルボン酸APC、図1Bを参照、並びに、全内容を本出願において援用する米国特許第6,060,585号及び第6,613,876号に記載されたもの等の環状にされたβ残基と置換した。β−アミノ酸残基におけるCα−Cβ結合の環による制約は、ねじれの自由を制限し、多様なβペプチド及びα/βペプチドにおける折りたたみを促進する。キメラ(α+α/β)ペプチド6(SEQ ID番号:6)における3つのβ−hAla残基のACPCとの置換は、6と比較してgp41−5に対する結合において40倍の改善を示すα/βペプチド7(SEQ ID番号:7)を生じた。同じβ−hAla→ACPC置換を、オリゴマー4(SEQ ID番号:4)に適用し、8(SEQ ID番号:8)を生じた。α/βペプチド8は、4よりも50倍高いgp41−5に対する親和性を示した。結合をさらに改善するために、8における3つのβ−hArg残基を、ACPCのカチオン性類似体であるAPCに変異させて9(SEQ ID:9)を生成した。満足なことに、α/βペプチド9は、その高い程度のβ−残基含有量を考慮に入れると印象的であるgp41−5結合親和性(K=9nM)を示した。
【0045】
αペプチド3は、細胞培養におけるHIV−細胞融合の強力阻害剤であると示されてきた。本明細書に記載の研究では、競合FP実験において最良のα/βペプチド類似体に対して得たin vitroでの結果を3に有利に比較した。gp41CHRの模倣物を、次に、生物学的環境においてgp41により媒介された膜融合を阻止する能力に対して検査した。より生物学的に重要性を持つ状況においてフォルダマーを選択するαペプチド3の効力を比較するために、前記の細胞間融合アッセイを利用した。この実験では、2つの株化細胞が共培養される。1つの株化細胞は、(gp120+gp41を生じるために細胞プロテアーゼによって処理される)HIV−1 Env、及び、Tat(HIV転写活性化因子)を発現する。その他の株化細胞は、CD4(HIVの主要な細胞表面受容体)を発現し、(Tatによる活性化に感受性がある)HIV末端反復配列に先行される酵素β−ガラクトシダーゼ(β−Gal)に対する遺伝子を生じる。Envにより媒介された細胞間融合はβ−Galを発現し、化学発光酵素試験によって定量化することができる。化合物3、4、5、及び、9を、上記のアッセイにおいてgp41により媒介された膜融合を乱す能力に対して検査した。結果(表2)は、最良のフォルダマーである化合物5及び9(それぞれ、SEQ ID番号:5及び9)がαペプチド3から識別不能なIC50値を有するということを示した。
【0046】
選択α/βペプチドのgp41NHR領域との相互作用を、円二色性(CD)分光法によってさらに調査した。3、4、5、8、9、及び、10のCDスペクトルを、単独でも(図5Aを参照)、NHRαペプチド1との1:1の混合物においても(それぞれ、図3A、3B、3C、及び、3Dを参照)測定した。重畳されたスペクトルに対する図5B及び5Cも参照されたい。単離したCHR類似体は、変化するらせん性の程度を示した。αペプチド3(図3A)は、PBS中20μMにて有意ならせん含有量を示し、それは、すでに発表されたデータと一致した。7つのβ→環状βの置換を有したα/βペプチド9(図3D)は強度のCD最小値を明らかにし、それは、よく折り畳まれたα/βペプチドのらせんと一致した。NHR+CHRペプチドの各1:1の混合物に対する観察されたCDスペクトル(図3A〜3D、実線)を、混合する前の対応する個々のオリゴマーに対して観察されたスペクトルを平均することによって計算されたもの(図3A〜3D、点線)に比較した。競合FPアッセイにおいてgp41−5に対してnM又はより優れた親和性を示したα/βペプチド5及び9(それぞれ、SEQ ID番号:5及び9)は、NHRαペプチド1と混合された場合に、どちらも有意な程度の誘発らせん性を示した。これとは対照的に、FPによりgp41−5に対して単に控えめな親和性を有したαペプチド3は、1との実質的にゼロの協同的相互作用を示した。よく折り畳まれた混合物間(1+3、1+5、及び、1+9、それぞれ、図3A、3C、及び、3D)でのCDの符号(signature)の大きさは類似しているが、208及び222nmでの強度の比は、β残基の含有量の関数として変化する(β−残基が多い程、222nmでの追従される強度ピークは低くなる)。よく折り畳まれたNHR/CHRの複合体(1+3、1+5、及び、1+9)はそれぞれ、協同的な熱転移を示し(図6を参照)、T値は、競合FPによるgp41−5に対する親和性における相対的な差と相関する。
【0047】
(gp41モデルに利用したααβαααβパターンを含んだ)混合されたα/β主鎖は、ペプチドベースのHIV融合阻害剤の深刻な欠点であるプロテアーゼによる分解に対する耐性を与えることができるということが示されてきた(データは省略)。乱交雑のセリンプロテアーゼプロテイナーゼKによる分解に対するαペプチド3並びにα/βペプチド4及び9の安定性を検査した。蛋白質分解アッセイの条件下で、αペプチド3を数分内に完全に分解し、配列内の少なくとも10個の異なるアミド結合の加水分解から産物を生じた。シンプルなα→βの置換を有したα/βペプチド4が、原型αペプチド3と比較して、安定性において20倍の改善を示した。α/βCHR類似体9は、αペプチド3と比較して、安定性においてさらに優れた改善(280倍)を示した。α/βペプチド9の4と比較した蛋白質分解安定性における相対的な改善は、CDによって観察されるように、おそらくその固有のらせん性の差から生じる。
【0048】
本発明は、従って、α−アミノ酸原型の生理活性を保持するが細胞培養において且つin vivoで蛋白質分解に抵抗する非天然型α/βポリペプチドを生じるために系統的なα→β改変を利用する方法である。gp41モデルにおいて示されているように、本発明に従ってなされたHIVgp41CHR領域における系統的なα→βの改変によって、本来のαペプチドと比較して強力な効力及び高められた蛋白質分解安定性を有したα/βペプチド類似体が生じる。前記発見によって、親のαペプチド配列の構造及び機能を模倣するオリゴマーを作る一般的な方法として、配列ベースの主鎖改変の範囲が確立される。
【0049】
gp41モデルは、どのようにして本発明が特定の環境において作用するかということの例証として本明細書において示されている。当該方法は、いかなるαポリペプチドも標的又は原型として使用して繰り返すことができ、それらのαポリペプチドは、本発明の方法に従って作製された対応するα/βポリペプチドにより模倣されることになる。
【0050】
従って、例えば、本発明の方法を使用して合理的な根拠でα/βポリペプチドを作製し、腫瘍壊死因子(TNF)とその受容体との相互作用を標的にすることによって関節リウマチを治療することができる。この蛋白質間相互作用の考察のために、例えば、Williams,Ghrayeb,Feldmann,&Maini(1995)Immunology 84:433−439を参照されたい。同様に、本発明の方法を使用して合理的な根拠でα/βポリペプチドを作製し、ガラニンとその受容体との相互作用を標的にすることによって中枢神経系及び末梢神経系の障害を治療することができる。ガラニン及びその受容体、並びに、この相互作用を使用して薬物標的を設計することの適合性に関する考察のために、例えば、Mitsukawa,Lu,&Bartfai(2008)Cell.Mol.Life Sci.(June2008)65(12):1796−17805を参照されたい。
【0051】
本発明を使用して合理的な根拠でα/βポリペプチドを作製し、副甲状腺ホルモンとその受容体(PTH1R及びPTH2R)との相互作用を標的にすることによって骨代謝及びカルシウム代謝に関する障害を治療することもできる。例えば、Usdin,Bonner,&Hoare(2002),“The parathyroid hormone 2(PTH2)receptor,”Recept.Channels8(3−4):211−218;及び、Mannstadt,Juppner,&Gardella(1999),“Receptors for PTH and PTHrP:their biological importance and functional properties,”Am.J.Physiol.277(5Pt.2):F665−675を参照されたい。
【0052】
本発明を使用して合理的な根拠でα/βポリペプチドを作製し、トロンビン反応等のセリンプロテアーゼ反応に関する障害を治療することもできる。例えば、一連のαポリペプチドトロンビン阻害剤を記載した欧州特許EP1141022号を参照されたい。類似の立体構造をとり、(gp41システムのケースにおいて実証されているように)非常に類似の抗トロンビン活性を有するが、細胞培養において且つin vivoで蛋白質分解に対してはるかに乏しい感受性を有するα/βポリペプチドを作製するために本発明を使用することができる。
【0053】
本発明を使用して合理的な根拠でα/βポリペプチドを作製し、例えばEPH受容体とそのエフリンリガンドを標的にすることによって腫瘍の発症又は進行を阻害することもできる。EPH受容体とそのエフリンリガンドは、受容体型チロシンキナーゼ(RTK)の最大のサブファミリーを構成し、動物の発達に関与する細胞シグナル経路の構成要素である。EPHシグナル伝達は、いくつかの器官において観察される発癌の工程においても重要な役割を果たす。これらの受容体は、細胞接着及び細胞形態、細胞遊走、並びに、血管新生を含めた、腫瘍形成及び転移に直接関連する広範囲の工程に関与する。従って、EPH発現及びシグナル伝達活性は、腫瘍形成工程において決定的なシステムである。例えば、Castano,Davalos,Schwarts&Arango(Aug2008)Histol.Histopathol.23(8):1011−1023を参照されたい。このように、本発明の方法を使用して、合理的な根拠で、エフリンリガンドを模倣するα/βポリペプチドを作製することができる。
【0054】
適した薬物の候補が同定されると、その生物学的及び/又は薬理学的な活性を、いかなる数の周知及び工業的に受け入れられたアッセイを使用しても検定することができる。
【0055】
本明細書に記載された化合物の抗炎症及び免疫抑制の活性は、以下の類似のアッセイ:IL−1β分泌阻害、LPSによる発熱、THP−1細胞からのサイトカイン放出、及び、機能性IL−1拮抗のアッセイ、並びに、ラットにおけるカラゲニン誘発足蹠浮腫のアッセイ(欧州特許EP0606044号及び欧州特許EP0618223号に記載);マクロフィリン結合、混合リンパ球反応(MLR)、IL−6により媒介された増殖、限局性移植片対宿主(GvH)反応、ラットにおける腎同種移植片反応、ラットにおける実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、フロイントアジュバント関節炎、FKBP結合、ステロイドによる増強、並びに、Mip及びMip様因子阻害のアッセイ(国際公開WO94/09010号、欧州特許EP0296123号、及び、欧州特許EP0296122号に記載)によって決定される。
【0056】
本明細書に記載された化合物の中枢神経系(CNS)の活性は、以下の類似のアッセイ:Weber et al.,Schmiedeberg’s Arch.Pharmacol.337,595−601(1988)及び欧州特許EP0641787号に記載の方法を含めたセロトニンID(5HT10)受容体刺激薬アッセイ;5HT3受容体刺激薬アッセイ(英国特許GB2240476号及び欧州特許0189002号に記載);ラットにおけるアポモルヒネ誘発の苦痛のアッセイ、並びに、ドーパミン受容体(D1及びD2)結合アッセイ等の、精神障害及びパーキンソン病の治療における活性に対するアッセイ(英国特許GB20206115B号に記載);ドーパミン受容体拮抗薬活性に対するアッセイ(統合失調症及び関係疾患に関連、欧州特許EP0483063号及び欧州特許EP0544240号に記載);老年認知症及びアルツハイマー病に関する活性に対するアッセイ(欧州特許EP0534904号に記載);脳虚血に関する活性に対するアッセイ(欧州特許EP0433239号に記載)、及び、単離されたモルモットの回腸における蠕動反射等の消化管運動に関するアッセイ、並びに、(特に5−HT4受容体での)抗セロトニン作動性効果のアッセイ(欧州特許EP0505322号に記載)によって決定される。
【0057】
骨代謝及びカルシウム代謝に関する本明細書に記載された化合物の活性は、国際公開WO94/02510号、英国特許GB2218102B号、及び、国際公開WO89/09786号に記載されたアッセイのような(又はそのようなアッセイに類似の)アッセイによって決定される。
【0058】
喘息及び他のアレルギー及び炎症性の状態に関する本明細書に記載された化合物の活性は、以下のアッセイ手順:PDEアイソザイム阻害、ホルミル−Met−Leu−Phe(fMLP)による好酸球活性化の阻害、TNFα分泌の阻害、SRS−A産生の阻害、モルモットにおける菌体内毒素(LPS)誘発致死、マウスにおけるアラキドン酸誘発刺激性皮膚炎、ヒト気管支の緩和、SRS−A誘発気管支収縮の抑制、ボンベシン誘発気管支収縮の抑制、アカゲザルにおけるメタコリン(MeCH)誘発気管支収縮の抑制、及び、モルモットにおける気道運動亢進の抑制のアッセイ(欧州特許EP0664289号、国際公開WO94/12493号、英国特許GB2213482号に記載)によって決定される。
【0059】
本明細書に記載された化合物のセリンプロテアーゼ(例えばトロンビン)阻害活性は、国際公開WO94/20526号に記載されたアッセイ等を使用して決定される。本明細書に記載された化合物の糖蛋白質IIb/IIIa拮抗薬活性は、Cook et al.,Thrombosis and Haemostasis,70(3),531−539(1993)及びThrombosis and Haemostasis,70(5),838−847(1993)、並びに、Mueller et al.J.Biol.Chem.,268(9),6800−6808(1993)によって記載されたアッセイ手順を使用して決定される。
【0060】
本明細書に記載された化合物の抗癌活性は、欧州特許EP0296122号に記載された抗腫瘍活性のアッセイ、又は、例えば英国特許GB2239178号に記載された治験手順によって決定される。対象の化合物の多剤耐性(MDR)−逆転活性は、欧州特許EP0296122号に記載されたアッセイによって決定される。
【0061】
上記の特許文献及び他の刊行物の関連技術は、全内容を本出願において援用する。これらのアッセイにおいて適切なレベルの活性を有する、本発明に従い作製された化合物は、対応する治療又は病状に関する医薬品として有用である。
【0062】
このように、本発明は、医薬品として使用するための本明細書に記載された化合物、及び、HIVウイルスによる感染を含めた、本明細書に記載されたアッセイのいずれにも関連するいかなる疾患も治療するための薬物の製造に対する前記化合物の使用を含む。本発明は、医薬品として本発明の方法に従い作製された化合物の使用、及び、効果的な量の前記化合物を薬剤的に受け入れ可能な希釈剤又はキャリアと共に含む医薬品組成物も含む。
【0063】
本発明の化合物は、固体相合成技術を使用して合成することができる。
【0064】
従って、Fmoc−Nにより保護されたβ−アミノ酸を使用して、オルソ−クロロ−トリチルクロリド樹脂上に、標準状態下での従来の手動の固体相合成手順によりポリ−α/βペプチドを合成することができる。
【0065】
オルソ−クロロ−トリチル樹脂を用いたFmoc−β−アミノ酸のエステル化は、Barlos et al.,Tetrahedron Lett.(1989),30,3943の方法に従い行うことができる。前記樹脂(150mg、1.05mmolCl)は、2mlのCHClにおいて10分間で膨張する。次に、CHCl及びiPrEtN中のFmocにより保護されたβ−アミノ酸の溶液が連続して添加され、その懸濁液は、アルゴン下で4時間混ぜ合わされる。後に、前記樹脂はろ過され、CHCl/MeOH/iPrEtN(17:2:1、3x3分)、CHCl(3x3分)、DMF(2x3分)、CHCl(3x3分)、及び、MeOH(2x3分)で洗浄される。樹脂の置換は、300nmでのジベンゾフルベン付加物の吸光度を測定することによって、3mgの試料で決定される。Fmoc基は、Ar通気下でDMF中20%ピペリジン(4ml、2x20分)を使用して取り除かれる。次に、前記樹脂はろ過され、DMF(6x3分)で洗浄される。各結合ステップに対して、DMF(2ml)及びiPrEtN(9当量)中β−アミノ酸(3当量)、BOP(3当量)、及び、HOBT(3当量)の溶液が、前記樹脂に連続して添加され、その懸濁液はAr下で1時間混ぜ合わされる。結合反応のモニタリングが、2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)を用いて行われる(W.S.Hancock and J.E.Battersby,Anal.Biochem.(1976),71,260)。陽性のTNBSテストの(不完全な結合を示す)場合、懸濁液はさらに1時間反応させておく。次に、以下のFmoc脱保護ステップに先立ち、前記樹脂はろ過され、DMF(3x3分)で洗浄される。最後のFmoc保護基の除去後、前記樹脂は、DMF(6x3分)、CHCl(3x3分)、EtO(3x3分)で洗浄され、真空下で3時間乾かされる。最後に、Ar下でCHCl中2%TFA(2ml、5x15分)を使用して、ペプチドが前記樹脂から切断される。溶媒が除去され、油性の残基はエーテルにおいて粉砕され、未精製のα/βポリペプチドが生じる。前記化合物は、HPLCによってさらに精製される。
【0066】
本明細書に記載された化合物の経口バイオアベイラビリティは、標準的な手順を使用してラットにおいて決定される。絶対的な経口バイオアベイラビリティは、約1%であると予想される。
【0067】
α/βペプチドが溶液において示す安定した構造、酵素分解に対するその安定性、及び、その励ましになる薬物動態特性を考慮すると、本発明の化合物は、有用な医薬品を提供する可能性を有する。
【0068】
上記のように、gp41CHR由来のαペプチドである3を、α→β改変に対する起始点として使用した(図1A)。T−2635としても知られるαペプチド3は、野生型gp41CHR領域と比較して50%変異され、α−らせん傾向を高めるよう意図された、Xxx→Ala置換と操作されたi→i+4塩橋との組み合わせを有する。αペプチド3は、α−アミノ酸配列の改変を介したgp41CHRαペプチドの抗ウイルス効力を改善することにおける、現在までに報告された最も成功した例のうちの一つを表している。初期の研究は、3において最適化された側鎖配列で始まった。さらに、α→β残基置換という形状の主鎖組成物における変化を調査した。α/βペプチド4では、3におけるα−残基の部分集合がβ−残基によって置換され、置換されたα−残基の側鎖を生じている(図1Bを参照)。従って、α/βペプチド4は、非天然型主鎖上に示される3に存在する側鎖の配列を有している。4のβ残基は、ααβαααβパターンに組み込まれ、折り畳み後、らせんの一側面にそって走るβ−残基のストライプを生じる。この設計は、らせんの外周に沿って分子表面まで4の遠位にβ−ストライプを置き、6ヘリックスバンドル内のgp41NHR領域三量体に対して納まる。
【0069】
gp41の6ヘリックスバンドルの蛋白質モデルに基づく競合蛍光偏光(FP)アッセイを使用して、3及び4を比較した(詳細については実施例を参照)。前記アッセイによって、3つのNHRセグメント及び2つのCHRセグメントを有する操作された5−ヘリックスバンドル蛋白質gp41−5からの蛍光標識したCHRαペプチドの置換が測定される。gp41−5蛋白質コンストラクトに対する親和性は、CHR−模倣の作用物質の、HIV−細胞融合のすぐ前に形成されるgp41プレヘアピン中間体に結合する能力と相関する。予想されるように、αペプチド3は、gp41−5に対して非常に密接に結合する(K<0.2nM;表1)。しかし、類似性のα/βペプチド4は、gp41−5に対して、3よりも10,000倍弱い親和性のみを表示する。この蛋白質ベースのアッセイにおけるα/βペプチド4の控えめな効力は、比較できる実験におけるいくつかの小分子及びペプチド模倣薬により表示されたものに匹敵する。
【0070】
3と4との結合における劇的な差を理解する、及び、gp41に対するα/βペプチドの親和性を改善する試みにおいて、キメラα/βペプチド5及び6を調製及び特徴づけた。5も6も、純粋なαセグメントをN末端及びにて、及び、α/βセグメントをC末端にて有する。これらのオリゴマーは、αペプチド3及びα/βペプチド4のキメラである。α/βペプチド5は、gp41−5に対して非常に高い親和性を表示し、αペプチド3のものと区別がつかない。しかし、(6のように)α/βセグメントをN末端の方向に延ばすことによって、親和性の有意な損失が生じる。α→β改変に対するN末端セグメントの感受性は、この領域における側鎖、特に、3のTrp、Trp、及び、Ile10に対応するものがNHR三量体に対するCHR結合において重大な役割を果たすことを示したデータと一致する(29)。
【0071】
α/βペプチド5及び6は、4に対するgp41擬態における改善を表しているが、蛋白質分解に対する耐性を最大限にするために、α/βペプチド配列を通してβ−残基を置くことが望ましい。しかし、各α→βの置換は、主鎖に対して軟性の結合を加え、らせん形成に関連するコンホメーションエントロピーのペナルティーを増やすはずである。11個のα→β置換から生じる4の折り畳まれていない状態の、3に対してより大きいコンホメーションエントロピーは、これら2つのオリゴマー間のgp41−5に対する結合親和性における大きな差を説明する。β−残基はこの安定性の減少の原因であるけれども、これらの残基は、その化学的構造によってユニークに可能にされる構造的に予め組織化する手段を提供する。環状β−残基の取り込み(例えば、ACPC及びAPC、図1B)は、Cα−Cβ主鎖のねじれを抑圧し、その結果、主鎖のアミド水素結合を破壊することなく折り畳み傾向を高めることができる。
【0072】
gp41擬態の状況における構造的に予め組織化することの影響を、β−残基の部分集合を環状の類似体と置換することによって探索した。第1の比較は、3つのβ−hAla残基がACPCによって置換されるα/βペプチド7、6の類似体を含んだ(図1A及び1B)。β−hAlaもACPCも非極性であり、この類似性は、側鎖配列から現れる物性を維持すると予想した。6と比較した場合の、7によって表示されるgp41−5に対する30倍高い親和性は、残基ベースで堅くなることが、ペプチド模倣フォルダマーを発展させるための配列ベースの設計に対して有用な補完物であるという仮説を支持している。オリゴマー7における2つのβ−hAla残基のAPC、ACPCの複素環類似体との置換によって、gp41−5に対して非常に高い親和性を示したα/βペプチド8が生じる。α/βペプチド8におけるAPC36は、gp41−5に含まれたNHR領域とかみ合うCHR配列の領域内にある。この観察は、7及び8の類似のK値を説明することができる。環状β−残基の好ましい寄与のさらなる証拠が、オリゴマー4、9、及び10の比較から生じ、該オリゴマーのそれぞれは、配列を通してβ−残基を有する。α/βペプチド9を、4つのβ−hAla→ACPC置換によって4から生じ、Kを45倍改善した。10を生じるための、9の3つのβ−hAla残基のAPCとの置換は、さらに10倍までKを改善する。完全に軟性のα/βペプチド4に対して、堅くされた類似体10(K=9nM)は、380倍までのgp41−5に対する高められた結合を示している。
【0073】
CHRαペプチド3並びにα/βペプチド類似体4、5、8、及び10と、gp41NHR領域から得られたペプチド(1)との相互作用を、円二色性(CD)分光法によって調査した。NHRαペプチド1は、gp41CHRαペプチドと混ぜ合わされた場合に6−ヘリックスバンドルを形成し、この6−ヘリックスバンドルは、ウイルス侵入の間にgp41によりとられた後融合の状態を表すと考えられている。αペプチド3は、PBS中20μMにて有意ならせん含有量を示し、すでに発表されたデータと一致した(図5A)。α/βペプチド4は、類似の条件下で有意ならせん度を示さなかった。しかし、7つのβ→環状β置換を有する類似体10は、強度のCD最小値を示し、よく折り畳まれたα/βペプチドヘリックスと一致した(図5A)。各1:1のNHR+CHRペプチドの混合物に対する観察したCDスペクトル(図3A乃至3D、及び、5B、実線)を、対応する個々のオリゴマーに対するスペクトルを平均することによって計算されたもの(図3A乃至3D、及び、5B、点線)と比較した。競合FPアッセイにおいてgp41−5に対して高い親和性を表示したα/βペプチド5、8、及び10はそれぞれ、NHRαペプチド1と混ぜ合わされた場合に、有意な程度の誘発らせん度を示し、6−ヘリックスバンドルの形成と一致した。対照的に、gp41−5に対して控えめな親和性のみを有するα/βペプチド4は、1との実質的にゼロの相互作用を示した。よく折り畳まれた混合物間(1+3、1+5、1+8、及び、1+10)でのCDの符号(signature)の大きさは類似しているが、208及び222nmでの強度の比は、β−残基の含有量の関数として変化する(β−残基の含有量が多い程、222nmでの関連する強度ピークは低くなる)。この傾向は、混ぜ合わされたα/β主鎖を有するらせん形オリゴマーに対する以前の研究と一致している。1+3、1+5、1+8、及び、1+10によって形成された複合体はそれぞれ、非常に協同的な熱転移を示した(図5Cを参照)。Tm,app値における傾向(すなわち、見かけのT)は、競合FPアッセイにおける3、5、8、及び10の間でのgp41−5に対する親和性における差と相関し、すなわち、gp41−5に対する結合が強い程、関連するNHRペプチド1との組立体はより安定する。
【0074】
結晶構造
X線結晶学を利用して、NHRαペプチド1によって形成されたヘテロマーの6−ヘリックスバンドルをCHRαペプチド3、キメラCHRα/βペプチド8、又は、CHRα/βペプチド10と比較した(表3を参照)。
【0075】
【表3】


αペプチド3を生じる天然のCHR配列に対する変異は、gp41NHR領域とのその結合相互作用の性質を改変するよう意図しなかったけれども、6−ヘリックスバンドル構造は、1及び天然のCHR配列によって形成されたものと比較して不変であった直接的証拠を求めた。αペプチド1と3との共結晶を得て、その構造を2.0Åの分解能まで解析した。図4Aを参照されたい。結果として生じる6ヘリックスバンドルは、天然のCHR配列を有する1+2に対するものと本質的に同一である(図4Bを参照)。標準偏差(rmsd)は、Cα原子に対して0.73Åである。
【0076】
1+10の複合体の結晶も得て、その構造を2.8Åの分解能まで解析した。図4Dを参照されたい。αペプチド1及びα/βペプチド10は結合して、1+3により形成される組立体と類似の6−ヘリックスバンドルを形成する(並べての比較を可能にするために図4Cにおいて複写)。α/βペプチド10のみを有した結晶(図示せず)も得た。10の構造のみを2.1Åの分解能まで解析し、1+10によって形成された6−ヘリックスバンドルのgp41NHR三量体とかみ合う残基を疎水性の中心部が含む平行の三量体ヘリックスバンドルを明らかにした。結晶状態のα/βペプチド10の自己集合は、すでに観察した原型αペプチド3の作用に相当し、溶液において自己集積化すると示された。
【0077】
1+10及び1+3の構造の中心部NHR三量体は、非常に一致している(NHR残基3〜30に対して0.65ÅCαrmsd)。2つのバンドルがNHR三量体を介して並べられた場合、CHRヘリックスはC末端セグメントにおいて非常に接近して一列に並ぶ(残基16〜33に対して0.84ÅCαrmsd)が、N末端付近でそれる(残基2〜15に対して4.2ÅCαrmsd)。この分岐は、α/βペプチド10と比較してαペプチド3のより高次のらせん形を反映している。10によって形成されたらせんの分岐部分は、CHRαペプチドにおいて安定した6−ヘリックスバンドルの形成に不可欠である2つのTrp残基を有する。1+10の構造において、Trp及びTrpの側鎖は、電子密度において分離されず、高度の乱れを示唆している。さらに、1+3の複合体のCHRTrpを包むNHR残基Lys29及びTrp26の側鎖において著しい乱れを観察した。図4F及び4Gは、全てαペプチドヘリックスバンドルで形成された1+3の、1+10によって形成されたものとのオーバーレイ(図4F)、及び、1+8によって形成されたものとのオーバーレイ(図4G)を描写している。
【0078】
6−ヘリックスバンドル形成におけるgp41CHR領域Trp−Trp−Ileモチーフのよく確立された役割が与えられると、α/βペプチド10のN末端セグメントが1+10の複合体の結晶構造のNHR結合ポケットにかみ合わないという観察は、興味あるものである。α/βペプチド10における最初の10個の残基の除去により、Trp−Trp−Ileモチーフが存在しないオリゴマー11が生じる(図1Aを参照)。1+10の結晶構造に基づき推測することができるように、10のN末端領域が溶液内でのNHR三量体に対する結合に関与していなかった場合、10に匹敵するgp41−5に対する親和性を11は示すはずである。しかし、α/βペプチド11は、gp41−5に対して測定可能な親和性を示さず(K>10μM)、10のN末端セグメントは溶液におけるgp41−5に対する高親和性の結合に不可欠であることを示している。
【0079】
1+3の複合体と1+10の複合体のCHR領域N末端セグメントの差によって動機づけられ、αペプチド3とα/βペプチド10とのキメラであるCHRα/βペプチド8との複合体におけるNHRペプチド1の構造を調査した。1+8の複合体を結晶化し、その構造を2.8Åの分解能まで解析した。図4Eを参照されたい。α/βペプチド10と比較して、キメラα/βペプチド8は、よりもはるかに接近して、1+3によって形成された全てαペプチドの6−ヘリックスバンドル内のCHRヘリックス(3)と一列に並ぶ(図4C、残基2〜33に対して1.4ÅCαrmsd)。8のN末端セグメントにおけるTrp−Trp−Ileモチーフの側鎖は、NHR中心部三量体上の結合ポケット内への予想されたパッキングを示している(データは示さず)。この結果及び先の切られたα/βペプチド11の作用に基づき、10のN末端部分と1+10の複合体におけるNHR三量体との直接接触の欠如は結晶パッキングの人為産物であることが推測される。
【0080】
抗ウイルス活性
生物学的状況におけるαペプチド3並びにα/βペプチド4、5、及び10の活性を評価するために、二組の実験を行った。第一の実験は、gp41により媒介されるHIV−細胞間融合のモデルを作るために一般的に使用される、HIV−1クローンHxB2のenv遺伝子の実験に基づく細胞間融合アッセイにおいてオリゴマーを比較した。(Deng YQ,Zheng Q,Ketas TJ,Moore JP,&Lu M(2007)Protein design of a bacterially expressed HIV−1 gp41 fusion inhibitor.Biochemistry 46(14):4360−4369)細胞間融合アッセイの結果(表4)は、α/βペプチド5及び10がαペプチド3と区別がつかないIC50値を有し、一方、α/βペプチド4ははるかに効果的ではないことを示した。化合物3、4、5、及び10を、次に、株化細胞TZM−b1のHIV感染を防ぐ能力について評価した。(Wei XP,et al.(2002)Emergence of resistant human immunodeficiency virus type 1 in patients receiving fusion inhibitor(T−20)monotherapy.Antimicrob Agents Chemother 46(6):1896−1905)これらの研究は、1つのT細胞系統適応株(T−cell line adapted strain)及び3つの一次分離株(primary isolate)を利用し、株のうち2つはX4向性であり、その他2つはR5向性である。
【0081】
【表4】

感染力アッセイの結果(表4、図10A、10B、10C、及び10D)は、異なる補助受容体を使用する3、5、及び10間でのHIV−1株に対する類似の生物学的効力を示している。この発見は、gp41の保存領域とのペプチド相互作用を介した侵入において必要且つ共有のステップのブロッキングを示している。ここで報告した化合物間で、細胞ベースのアッセイにおいてgp41−5への結合に対するKとIC50との値の間に不完全な相関関係があることに注目することができる。例えば、gp41−5に対する10の親和性は、5の親和性の45倍を超えたが、10に対するIC50値は、5に対するものよりも低い場合があった。この矛盾に対していくつかあり得る理由が存在する。gp41−5に存在するCHR領域とNHR領域との配列の差、及び、検査したウイルスに存在するCHR領域とNHR領域との配列の差が、gp41−5結合親和性と一部の株に対する抗ウイルス活性との間に、他の株と比較してより優れた相関関係を生じる場合がある。さらに、gp41へのCHRペプチドの結合に対する会合速度は、平衡結合親和性であるよりも相対的な抗ウイルス効力の優れた前兆であることがこれまでに示唆されてきた。(Steger HK&R大tMJ(2006)Kinetic dependence to HIV−1 entry inhibition.J Biol Chem 281(35):25813−25821)10において堅くされた主鎖は、gp41とのその会合速度を、5の会合速度と比較して変えることができる。gp41由来の融合阻害剤に対する感受性は、ビリオン内に取り込まれたEnvの量、CD4及び補助受容体とのEnv相互作用の強さ、融合工程の動態学及びエネルギー論、並びに、抑制ペプチドに対する結合部位におけるアミノ酸の異形を含めた、ウイルスの株の間で異なる多くの因子によって影響を受け得る。概して、抗ウイルスアッセイの結果は、CHR由来のα/βペプチドが複雑な生物学的環境においてgp41を効果的に模倣するという仮定を強く支持している。
【0082】
蛋白質分解感受性
蛋白質間相互作用のフォルダマー拮抗薬を開発するための重要な動機づけは、蛋白質分解に対する感受性を減少することの見込みである。蛋白質分解酵素による急速な破壊は、αペプチド薬物の臨床的使用に対する重要な欠点を表している。乱交雑のセリンプロテアーゼであるプロテイナーゼKによる分解に対するαペプチド3並びにα/βペプチド4及び10の感受性を比較した。アッセイ条件の下、αペプチド3を数分以内に完全に分解し(図9A)、質量分析によって、配列内の少なくとも10個の異なるアミド結合の加水分解が明らかになった(図9D、一番上の配列)。排他的にα→β置換を有したα/βペプチド4は、原型αペプチド3と比較して、安定性において20倍の改善を示した。図9B及び図9Dの真ん中の配列を参照されたい。堅くされたα/βペプチド10は、αペプチド3と比較して、安定性においてさらに優れた改善(280倍)を示した。図9C及び図9Dの一番下の配列を参照されたい。α/βペプチド4と比較した場合のα/βペプチド10のより優れた安定性はおそらく、CDによって検出される10のより高いらせん傾向から生じる。質量分析によってα/βペプチド10に対して観察した少数の蛋白質分解産物(図9D)は、混ぜ合わされたα/β主鎖におけるβ−残基が隣接するアミドを蛋白質切断から保護する傾向がある、以前の観察を支持している。
【0083】
多くの蛋白質が、非常に選択的な相互作用に関与する表面を示す。蛋白質間相互作用によって媒介される情報の流れは、個々の細胞及び生物全体の通常の機能にとって不可欠であり、そのような相互作用は、疾患においても鍵となる役割を果たし得る。特定の蛋白質間複合体の形成を阻害するためのストラテジーをつきとめるための重要な動機付けがある。臨床レベルにて、このゴールに最も成功したアプローチは、操作された蛋白質又は蛋白質断片、すなわち、蛋白質標的自体として同じ構成要素から構成された分子の使用を含む。本発明の方法の動機づけ仮定は、蛋白質によって表示された認識表面を、蛋白質様立体構造をとる且つ蛋白質様側鎖を表示する非天然型オリゴマーを用いて模倣することができるというもの、並びに、そのようなオリゴマーは天然の蛋白質間会合の阻害剤として機能するというものである。天然の蛋白質配列は、洗練された機能を有する非天然型主鎖を有した折り畳まれたオリゴマーを設計するための論理的な起始点である。ここで提示されるデータは、広範囲に研究されたウイルス感染工程の状況においてこれらの仮説に対して強力な支持を与える。
【0084】
本明細書に提示された結果は、長いα−らせんセグメントであるHIV蛋白質gp41のCHR領域を、α−及びβ−アミノ酸残基から構成されるオリゴマーによって構造的及び機能的に模倣することができるということを示している。意図された結合パートナーを用いた強力な会合、細胞ベースのアッセイにおけるHIV感染の強力な阻害、及び、蛋白質切断に対する耐性を含めた好ましい特性の概要を明らかにするα/βペプチドを生じるよう、二段階工程が要求された。第一の設計段階は、親ペプチド配列における選択されたα−残基の、本来の側鎖を保持する類似のβ−残基との置換を含む。第二の設計段階は、軟性のβ−残基の、環状に予め組織化されたβ−残基との選択的な置換を含む。これらの改変は、最初のα→β改変を用いて不可避で導入された有害な主鎖屈曲性を取り除くよう意図されている。
【0085】
gp41CHRセグメントの効果的なα/βペプチド模倣物を生じるために二段階アプローチを使用することは、異なる及び本質的に簡略な蛋白質認識システムにおける本発明者等の以前の発見に照らして注目すべきことである。Bcl−2蛋白質ファミリーにおいて蛋白質間相互作用を媒介するBH3領域の短いα−らせんセグメントの模倣は、この設計アプローチの第一段階、原型配列を通じた簡単なα→β置換のみを要求した。(Horne WS,Boersma MD,Windsor MA,&Gellman SH(2008)Sequence−based design of α/β−peptide foldamers that mimic BH3 domains.Angew Chem Int Ed 47(15):2853−2856)これとは対照的に、gp41−5に対して控えめな親和性のみを示したα/βペプチド4は、天然のgp41CHR領域及び関連する配列において別のα/β主鎖パターンを探索することによって設計された一連のα/βペプチドの間で同定された最も強力なgp41模倣物であった。
【0086】
本明細書において報告された結果は、蛋白質間認識事象に関与するα−ヘリックスを模倣する非天然型オリゴマーを開発する初期の試みと比較して実質的な進歩を表している。以前の研究は、一般的に2から4つのらせん回転のみである比較的短いα−らせん標的に限定されていた。これらの前の研究において発展されたオリゴマーの有効性は、一般的に控えめ(IC50値は、1μMよりも大きいもの)である。さらに、大部分の以前に研究されたシステムにおいて、効果的な阻害が、小分子拮抗薬を用いて可能になってきた。本明細書における結果は、合理的に設計されたオリゴマーを用いて長いα−ヘリックス(〜10回転)を構造的及び機能的に模倣することができるということがデータによって示されているため特徴的である。現在まで、小分子を用いてgp41の6−ヘリックスバンドル組立体を破壊する試みは比較的不成功に終わっていた。
【0087】
天然の蛋白質において進化的にコードされた洗練された認識シグナルを「読む」ことができる非天然型オリゴマーを設計することの価値が、本発明の研究によって実証されている。α/βペプチドによるHIV感染性の強力な阻害は、機能的なフォルダマーの開発において重要な進展である。
【実施例】
【0088】
試薬
ペプチド合成において使用される保護されたα−アミノ酸及び樹脂を、Novabiochem社(EMD Chemicals Inc.社及びMerck KGaA社、Darmstadt,Germanyの完全所有子会社)から購入した。保護されたβ−アミノ酸を、PepTech社(Burlington,Massachusetts,USA)から購入した。環状にされたβ−残基、Fmoc−ACPC及びFmoc−APC(Boc)を、すでに記載されたように調製した。Lee,LePlae,Proter,and Gellman,J.Org.Chem.2001,66,3597−3599;LePlae,Umezawa,Lee,and Gellman,J.Org.Chem.2001,66,5629−5632.2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)を、AnaSpec社(San Jose,California,USA)から購入した。5−カルボキシフルオレスセインを、Invitrogen社(Carlsbad,California,USA)から購入した。1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)を、Advanced Chemtech社(Louisville,Kentucky,USA)から購入した。他の試薬全てを、Sigma−Aldrich Corp.社(St.Louis,Missouri,USA)又はFisher Scientific社(Pittsburgh,Pennsylvania,USA)から購入し、受け入れたままの状態で使用した。
【0089】
合成
全てのペプチドを、“NovaSyn TGR”ブランドの樹脂(Novabiochem社)で調製した。αペプチドを、Symphony Multiple Peptide Synthesizer(Protein Technologies Inc.社、Tucson,Arizona,USA)で標準的なFmoc固体相ペプチド合成方法によって調製した。α/βペプチドを、Synergy432A automated synthesizer(Applied Biosystems社、Foster City,California,USA)で自動化されたFmoc固体相ペプチド合成によって調製した。α/βペプチドを、マイクロ波補助Fmoc固体相ペプチド合成によって手動でも調製した。Erdelyi and Gogoll(2002)Synthesis 11:1592−1596.8:2:1のDMF/DIEA/AcOを用いた処理によって、各ペプチドのN末端にキャップ状の構造を付加した。樹脂を徹底的に洗浄し(3xDMF、3xCHCl、3xMeOH)、次に、真空下で乾燥させた。全てのペプチドを、94:2.5:2.5:1のTFA/HO/エタンジチオール/トリイソプロピルシランを用いた処理によって樹脂から切断した。前記樹脂をろ過し、さらなるTFAで洗浄して、乾燥窒素流の下で混合ろ液を2mLまで濃縮させた。粗ペプチドを、冷たいエーテル(45mL)の添加によって切断混合物から沈殿させた。前記混合物を遠心分離してデカントし、さらに、残りの固体を窒素流の下で乾燥させた。逆相HPLCによってprep−C18カラムで、0.1%TFA水溶液と0.1%TFAアセトニトリル溶液との勾配を使用してペプチドを精製した。最終生成物の正体及び純度を、それぞれMALDI−TOF−MS及び分析用HPLCによって確認した。原液の濃度を、UV吸光度によって決定した。Gill,S.C.;Vonhippel,P.H.Anal.Biochem.1989,182,319−326.MALDI−TOF−MS(モノアイソトピック〔M+H〕,m/z): 1:obsd.=4162.6,calc.=4162.4; 2:obsd.=4288.7,calc.=4288.0; 3:obsd.=4455.0,calc.=4455.3; 4:obsd.=4609.9,calc.=4609.5; 5:obsd.=4526.1,calc.=4525.4; 6:obsd.=4552.7,calc.=4553.4; 7:obsd.=4631.6,calc.=4631.4; 8:obsd.=4516.5,calc.=4515.3; 9:obsd.=4713.0,calc.=4713.5; 10:obsd.=4539.9,calc.=4539.4; 11:obsd.=3299.4,calc.=3299.8。
【0090】
Flu−C38の合成
遊離なN末端を有した全長C38ペプチド(WMEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLELDK;SEQ ID番号:23)を有する“NovaSyn TGR”ブランドの樹脂を、Symphony Multiple Peptide Synthesizer(Protein Technologies,Inc.社)で標準的なFmoc固体相ペプチド合成方法によって25μmolスケールで調製した。合成に続き、樹脂をガラス注射器まで移した。5−カルボキシフルオレスセイン(28mg、0.075mmol)及びHOBT・HO(11mg、0.075mmol)を、N−メチル−2−ピロリジノン(0.75nL)に溶解した。ジイソプロピルカルボジイミド(12μL、0.075mmol)を添加した。結果として生じる溶液を、ペプチドを有する樹脂まで移した。反応容器をホイルで覆い、振盪機上に一晩置いた。前記樹脂を、DMF(3x)で洗浄し、新たな試薬を用いて結合反応を繰り返した。次に、前記樹脂をDMF(3x)、20%ピペリジン(2x)、DMF(3x)、CHCl(3x)、及び、MeOH(3x)で洗浄した。Fischer,R.;Mader,O.;Jung,G.;Brock,R.Bioconjugate Chem.2003,14,653−660.上記のように、粗ペプチドを切断及び精製した。水溶液中で調製した原液を、可視吸光度によって定量化した(pH8にてε494=68,000M−1cm−1)。MALDI−TOF−MS(モノアイソトピック〔M+H〕,m/z):obsd.=5089.3,calc.=5089.3。
【0091】
結晶化
1μLの結晶化原料(crystallization stock)と1μLの貯蔵緩衝液(reservoir buffer)を混ぜ合わせた後に、0.7mL緩衝液で室温にて平衡化することによって懸滴を調製した。1+3の複合体及び1+8の複合体の原液を、水中全ペプチドが2.2mMという最終濃度まで、それぞれのペプチドの濃縮された原料を1:1の比で混ぜ合わせることによって調製した。1+3の結晶を、0.1M Tris pH8.5、1M(NH)HPOを含む貯蔵緩衝液から得た。1+8の複合体の結晶を、0.4M LiSO・HO、12%v/vPEG8000、20%v/vグリセロールを含む貯蔵緩衝液で成長させた。1+10の複合体を結晶化する初期の試みにおいて、水中全ペプチドが0.76mMという最終濃度までそれぞれのペプチドの濃縮された原料を1:1の比で混ぜ合わせることによって原液を調製した。この方法で調製した1+10の原料は、完全に可溶性であるというわけではなかった。しかし、結果として生じる粘性の懸濁液は、0.5M 硫酸アンモニウム、0.1M HEPES−Na、pH7.5、30%v/v2−メチル−2,4−ペンタンジオールから構成される望ましい緩衝液から、α/βペプチド10の結晶のみをもたらした。続く1+10の結晶化の試みに対して、水中全ペプチドが130μMで1:1のペプチド混合物を再び折り畳むことによって、複合体の原液を調製し、続いて、10kDa分子量のカットオフ膜を介して、4℃での遠心分離によって1.1mMまで濃縮した。1+10の結晶を、この方法で調製した原料、及び、0.2M NaCl、0.1M Tris pH8.5、25%w/vPEG3350から構成される貯蔵緩衝液から得た。
【0092】
X線データコレクション及び構造決定
全ての結晶を液体窒素において急速冷凍した。冷凍に先立ち、1+3の複合体の結晶を、0.08M Tris pH8.5、1.6M(NH)HPO、20%v/vグリセロールの中に簡単に浸した。10の結晶及び1+8の結晶を、結晶化ドロップから直接冷凍した。冷凍に先立ち、1+10の複合体の結晶は、0.2M NaCl、0.1M Tris pH8.5、25%w/vPEG3350、20%v/vグリセロール内に簡単に浸した。1+3の複合体及び1+8の複合体に対する回折データを、Cu Kα放射線を使用してBruker X8 Proteum Diffractometer(Bruker AXS,Inc.社、Madison,Wisconsin USA)で収集し、Bruker Proteum2ソフトウェアパッケージを用いて処理した。10の結晶及び1+10の複合体の結晶に対する回折データを、Advanced Photon Source,Argonne National LaboratoryのLife Sciences Collaborative Access Team beamline 21−ID−Gにて収集し、HKL−2000ブランドのソフトウェア(HKL Research,Inc.社、Charlottesville,Virginia,USA)を用いて処理した。CCP4ソフトウェアスイートを使用して構造決定を実行した。Collaborative Computational Project Number4(1994)The CCP4 Suite−Programs for Protein Crystallography.Acta Crystallogr,Sect D 50:760−763.分子置換を、Phaserソフトウェア(McCoy AJ,Grosse−Kunstleve RW,Storoni LC,&Read RJ(2005)Likelihood−enhanced fast translation functions.Acta Crystallogr,Sect D61:458−464)、又は、Molrepソフトウェア(Vagin A&Teplyakov A(1997)MOLREP:An automated program for molecular replacement.J Appl Crystallogr 30(6):1022−1025)を用いて実行した。自動化された精製に対するRefmac(Murshudov GN,Vagin AA,&Dodson EJ(1997)Refinement of macromolecular structures by the maximum−likelihood method.Acta Crystallogr,Sect D 53:240−255)、手動のモデル構成に対するCoot(Emsley P&Cowtan K(2004)Coot:Model−building tools for molecular graphics.Acta Crystallogr,Sect D 60:2126−2132)、及び、自動化された水構成及び自由原子密度改変に対するARP/wARPの組み合わせによって精製を成し遂げた。(Lamzin VS&Wilson KS(1993)Automated refinement of protein models.Acta Crystallogr,Sect D 49:129−147)1+3の複合体の構造を、発表されたgp41六量体構造(PDB ID:1AIK)から得たサーチモデルを用いて解析した。Chan DC,Fass D,Berger JM,&Kim PS(1997)Core structure of gp41 from the HIV envelope glycoprotein.Cell 89(2):263−273.α/βペプチド10の構造を、1+3の複合体からのCHRヘリックスをサーチモデルとして用いて解析した。2つのサーチモデルである、1+3の複合体からのNHRヘリックス及びα/βペプチド10のみの構造からのCHRヘリックスを用いて、1+10の複合体の構造を解析した。2つのサーチモデルである、1+3の複合体からのNHRヘリックス、並びに、1+3及び1+10の構造体から調製したキメラCHRヘリックスを用いて1+8の複合体の構造を解析した。PyMOL(DeLano Scientific、Palo Alto,California,USA)を使用して、分子グラフィックスを調製した。
【0093】
プロテアーゼ安定性
ペプチドの原液を、TBS中(UV吸光度に基づく)25μMの濃度で調製した。プロテイナーゼKの溶液を、TBS中(重量対容積に基づく)50μg/mLの濃度で調製した。各蛋白質分解反応に対して、40μLのペプチド原料を、10μLのプロテイナーゼK原料と混ぜ合わせた。室温にて反応を進めさせ、100μLの1%TFA水溶液を添加することによって所望の時点にて反応を停止させた。125μLの結果として生じる反応停止された反応を、分析用逆相HPLC上に注入し、0.1%TFA水溶液と0.1%TFAアセトニトリル溶液との勾配で作動させた。存在する開始ペプチドの量は、220nmでのピークの積分によって定量化した。各時点に対して2度反応を行った。GraphPad Prismブランドのソフトウェア(GraphPad Software,Inc.社、La Jolla,California,USA)を使用して時間依存的なペプチド濃度を指数関数型減衰に適合させることによって、半減期を決定した。一部の時点に対する未精製の試料を、MALDI−MSによって分析し、観察した生成物を使用して、反応の間に切断されたアミド結合を同定した。
【0094】
gp41−5の発現、精製、及び、再折り畳み
本明細書に使用されるgp41−5コンストラクトの配列は以下である。
【0095】
【数1】

gp41−5の発現、精製、及び、再折り畳みを、以前に記載されたように実行した。Frey,G.;Rits−Volloch,S.;Zhang,X.Q.;Schooley,R.T.;Chen,B.;Harrison,S.C.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.2006,103,13938−13943.Prof.Stephen Harrison(Harvard University)によって提供されたgp41−5プラスミドの試料を、電気穿孔によってE.Coli細胞(Rosetta(商標)株、Novagen社)内に形質移入した。50μg/mLアンピシリン(gp41−5プラスミドにより提供される耐性)、及び、30μg/mLクロラムフェニコール(Rosetta(商標)株に含まれる稀なtRNAに対してプラスミドにより提供される耐性)を追加した20mL LBにおいて、単一のコロニーを一晩増殖させた。500mLの抗生物質追加LBに、5mLのオーバーナイトスターターカルチャーを混入した。0.75のOD600まで37℃で細胞を増殖させ、後に、1mMの最終濃度までIPTGを添加することによって誘発した。前記細胞を、さらに37℃で3時間増殖させ、次に、4℃にて15分間12,000gで遠心分離した。その細胞ペレットを氷冷の氷酢酸に溶解し、定期的に攪拌させながら45分間氷の上に放置した。その懸濁液を、4℃にて15分間39,000gで遠心分離した。上澄みをデカントして凍結乾燥した。粗蛋白質を、調製用のHPLCによって、0.1%TFA水溶液と0.1%TFAアセトニトリル溶液との勾配により溶出されるC18カラムで精製した。精製した蛋白質を凍結乾燥し、再折り畳みまで40℃にて貯蔵した。再折り畳みには、精製したgp41−5(〜2mg)を、10mLの6M 塩化グアニジウムに溶解した。結果として生じる溶液を、0.1M グリシン pH3.6(1x)に対して、続いて、PBS(2x)に対して室温にて透析した。遠心分離によって沈殿物を除去し、結果として生じる蛋白質をさらに精製することなく使用した。
【0096】
蛍光偏光
蛍光偏光アッセイを、室温にて黒色のポリスチレンプレートにおいて行った。全ての測定を2ウェルで行った。アッセイ緩衝液を、20nM ホスフェート、pH7.4、1mM EDTA、50mM NaCl、0.2mM NaN、0.5mg/mL “Pluronic F−68”ブランドのポリオキシアルキレンエーテル界面活性剤から構成した。gp41−5に対するFlu−C38の結合親和性を、384−ウェルプレートにおいて、(競合FP実験の条件を模倣するよう添加された)1%v/v DMSOを有したアッセイ緩衝液における1つのウェルあたりの最終容積が50μLになるまで、増加する濃度の蛋白質により固定された濃度のラベルされたペプチド(0.2nM)を滴定することによって測定した。全てのウェルにおいて二度行った。そのプレートを30分間平衡化させ、Envision 2100プレートリーダーで分析した。Graphpad Prism software(Graphpad Software Inc.社、La Jolla,California)を使用して、データをFP直接結合モデルに適合させた。Roehrl,M.H.A.;Wang,J.Y.;Wagner,G.Biochemistry 2004,43,16056−16066.トレーサーのKを、0.4±0.1nMであるように決定した。測定した結合親和性は、gp41−5/Flu−CHR相互作用に対して以前に報告されたものよりもいくらかきつかった(K=3nM)が、以前の研究は、はるかに高い濃度のトレーサー(5nM)を直接結合実験において利用していた。直接結合FP実験において正確に決定することができるK値の下限は、利用されるトレーサーの濃度にほぼ等しい。Roehrl,Wang&Wagner,supra。
【0097】
競合蛍光偏光アッセイを、黒い96−ウェルプレートにおいて行った。2nM gp41−5、1nM Flu−C38の溶液をFPアッセイ緩衝液において調製し、96−ウェルプレート内に配列した(100μL/ウェル)。DMSOにおいて段階希釈のペプチド阻害剤を含有する第二の原料プレートを調製した。ペプチド原液を、アッセイプレートまで移した(1つのウェルあたり1μL)。各アッセイプレートは、以下の3つの対照:(1)100μLアッセイ緩衝液+1μLDMSO;(2)非結合性のトレーサー対照として100μLの1nM Flu−C38+1μL DMSO;(3)結合性のトレーサー対照として100μLの2nM 蛋白質/1nM トレーサー溶液+1μL DMSO;のそれぞれも4つのウェルにおいて含んだ。全ての実験条件を二度実行し、各ペプチドを2〜3の独立した実験においてアッセイした。データ分析を、GraphPad Prismにおいて行った。各実験からのRaw mPデータを、S字状の用量反応に適合し、曲線の一番上と一番下に対して、結果として生じるパラメータに基準化した。全ての実験が、少なくとも1つの化合物を含み、検査した最も高い濃度にて完全な阻害を示した。各オリゴマーにおける多数の独立した実行からの基準化されたデータを組み合わせて、唯一の浮遊パラメータとしてKを有したFP競合結合に対して正確な分析用表現に世界的に適合させた。競合FP実験において測定可能なKに対する下界は、トレーサーのKに基づき0.2nMであると考慮した。Roehrl,Wang,&Wagner,supraを参照されたい。
【0098】
円二色性分光法
円二色性測定を、Aviv 202SF Circular Dichroism Spectrophotometerで実行した。各ペプチドの試料を、PBS中20μMの濃度で調製した。1:1ペプチド混合物の溶液を、それぞれのペプチド測定に使用する同じ20μMの原料から等しい容積を混ぜ合わせることによって調製した。スペクトルを、1mmセルにおいて、1nmのステップサイズ及び5秒の平均時間で記録した。全てのスペクトルは、同じセルにおいて測定される緩衝液に対してバックグラウンド補正される。熱融解(thermal melt)を、各温度変化の間に10分の平衡時間を設けて5度の上昇で実行した。GraphPad Prismを使用して、熱変性データを、単純な二状態の折り畳みモデル(Shortle,D.;Meeker,A.K.;Freire,E.Biochemistry 1988,27,4761−4768)に適合させた。
【0099】
プロテアーゼ安定性
ペプチドの原液を、TBS中(UV吸光度に基づき)25uMの濃度で調製した。プロテイナーゼKの溶液を、TBS中(重量対容積に基づき)50μg/mLの濃度で調製した。各蛋白質分解反応に対して、40μLのペプチド原料を、10μLのプロテイナーゼK原料と混ぜ合わせた。室温にて反応を進めさせ、100μLの1%TFA水溶液を添加することによって所望の時点にて反応を停止させた。125μLの結果として生じる反応停止された反応を、分析用逆相HPLC上に注入し、存在する開始ペプチドの量を、220nmでのピークの積分によって定量化した。各時点に対して2度反応を行った。GraphPad Prismを使用して時間依存的なペプチド濃度を指数関数型減衰に適合させることによって、半減期を決定した。一部の時点に対する未精製の試料を、MALDI−MSによって分析し、観察した生成物を使用して、反応の間に切断されたアミド結合を同定した。
【0100】
抗ウイルスアッセイ
CHO細胞において発現されたHIV−1クローンHXB2の外被糖蛋白質に基づき、U373−MAGI細胞を標的として用いる細胞間融合アッセイを、以前に記載されたように実行した。(Deng YQ,Zheng Q,Ketas TJ,Moore JP,&Lu M(2007)Protein design of a bacterially expressed HIV−1 gp41 fusion inhibitor.Biochemistry 46(14):4360−4369)。U373−MAGI標的細胞におけるβ−ガラクトシダーゼ発現の基礎レベルを測定することによって判定されるように、α/βペプチド全てが5μMにて細胞毒性を示さなかった。HIV−1感染性の阻害を、HIV−1 LTR(末端反復配列)の制御下でCD4、CXCR4、CCR5、及び、ルシフェラーゼ遺伝子を発現するTZM−b1(JC53BL)細胞で測定した。(Wei XP,et al.(2002)Emergence of resistant human immunodeficiency virus type 1 in patients receiving fusion inhibitor(T−20)monotherapy.Antimicrob Agents Chemother 46(6):1896−1905)。4つのHIV−1株:クレイドBのX4−向性T細胞系統適応分離株IIIB由来のクローンであるNL4−3;クレイドBのX4一次分離株であるHC4(Trkola A,et al.(1998)Neutralization sensitivity of human immunodeficiency virus type 1 primary isolates to antibodies and CD4−based reagent is independent of coreceptor usage.J Virol 72(3):1876−1885);R5一次分離株、CC1/85(クレイドB)(Connor RI,Sheridan KE,Ceradini D,Choe S,&Landau NR(1997)Change in coreceptor use correlates with disease progression in HIV−1−infected individuals.J Exp Med 185(4):621−628);及び、別のR5一次分離株、DJ258(クレイドA)(Louwagie J,et al.(1995)Genetic diversity of the envelope glycoprotein from human immunodeficiency virus type−1 isolates of African origin.J Virol 69(1):263−271);のPBMCにおいて生成されるウイルスストックを使用した。
【0101】
手短に言えば、播種の前日に、10細胞/ml、100μl/ウェルの密度でTZM−b1細胞を播いた。50μlの段階的に希釈されたペプチド(又は対照として培養液のみ)を各ウェルに添加した。次に、50μlのウイルス、40 TCID50又はバックグラウンドの対照として培養液のみを各ウェルに添加した。3日目に、光学顕微鏡によってウェルを検査した。細胞培養密度及び細胞形態に対して、ペプチドを有するウェル及びペプチドを有さないウェルを比較した。高濃度のペプチドが使用された際に毒性のサインは識別されなかった。次に、感染力を、Bright−Glo Luciferase Assay System(Promega Corporation社、Madison,Wisconsin,USA)を用いて製造者の指示に従い、相対光ユニットにおいて定量化した。実験を3回行った。検査ウェルの信号を、阻害剤のない対照ウェルの信号に、どちらもバックグラウンドを差し引いた後、基準化した。感染性の%阻害を、log10濃度の阻害剤の関数としてnMで表した。4パラメータS字状関数を、Prism(Graphpad)においてデータに適合させた。前記適合に対するR値は、NL4−3に対して0.95〜1.0;HC4に対して0.98〜1.0;CC 1/85に対して0.95〜0.98;及び、DJ258に対して0.92〜0.98であった。最後に、3つの繰り返し実験のそれぞれの適合からIC50値の平均±S.E.Mを計算した。結果は、図10A(NL4−3)、10B(CC1/85)、10C(HC4)、及び、10D(DJ258)においてグラフを用いて描写されている。
【0102】
BH3領域を模倣するα/βペプチドの配列ベースの設計
上記のように、蛋白質上の特異的部位に堅固及び選択的に結合する分子を設計することは、分子認識において重要な挑戦であると考えられる。従って、適切な分子を同定するための系統的アプローチは、紛れもない利点である。この実施例は、天然の蛋白質結合領域にわたった系統的な主鎖の改変(すなわち、配列ベースの設計)を使用して、標的蛋白質の表面に堅固及び選択的に結合するα/βペプチドフォルダマーを迅速に生じることができるということを示すよう提供されている。この実施例においては、配列ベースの設計アプローチを使用して、蛋白質Bcl−xのBH3認識クレフトに対するα/βペプチドフォルダマーリガンドを開発した。Bcl−xは、プログラムされた細胞死経路を制御する、及び、抗アポートシスメンバー(例えば、Bcl−2、Bcl−x、Mcl−1)もアポトーシス促進メンバー(例えば、Bak、Bad、Puma)も含むBcl−2ファミリーのメンバーである。Adams&Cory(2007)Oncogene 26:1324−1337を参照されたい。
【0103】
この実施例は、本発明者等及び他の者によって以前に追求されたフォルダマーリガンドに対する構造ベースの設計アプローチとは基本的に異なるBH3認識クレフトに対するα/βペプチドリガンドの配列ベースの設計を記述している。そのアプローチは、規則的に一定の間隔で配置されたα−残基の部分集合を、本来の側鎖を有するβ−残基と置換することを含む。各αからβへの置換は、余分なメチレンユニットを主鎖内に導入する。利用される置換戦略の副生成物として立体構造の模倣は達成されるけれども、この配列ベースのアプローチは、αペプチド原型の折り畳み構造を再現することを直接の目的としない。先の実施例に示されているように、配列ベースの設計を使用して、αペプチド原型からヘリックスバンドルフォルダマー四次構造を生じることができるということは実証された。この実施例では、当該方法が、αらせんBH3領域の蛋白質結合作用を模倣するために使用される。抗アポトーシスBcl−2ファミリーの蛋白質に堅固に結合するフォルダマーを生じるためには、配列ベースの設計が構造ベースの設計よりも効率的であること、及び、配列ベースの設計は蛋白質分解に対して有意な耐性を表示するα/βペプチドを与えることができるということを結果は実証している。
【0104】
Pumaは、抗アポトーシスのファミリーメンバーに乱交雑に結合するBcl−2相同体である。Chen et al.(2005)Mol.Cell 17:393−403を参照されたい。Puma BH3領域に一致する26−残基のαペプチド(1’)を、異なるα/βペプチド主鎖上に表示された同じ側鎖の一次配列を有した7つのα/βペプチド類似体(2’〜8’)と共に調製した。図7Aを参照されたい。各α/βペプチドは、一側面に沿って走る疎水性側鎖のよく発達した「ストライプ」を有するαヘリックスを形成するαペプチド配列の間で共通の7価の原子のパターンから得たααβαααβ主鎖繰り返しを有した。図7Bを参照されたい。最近の結晶構造は、ααβαααβ主鎖によってαヘリックス様立体構造の形成が可能になっていることを実証されている。Horne,Price,Keck,&Gellman(2007)J.Am.Chem.Soc.129:4178−4180を参照されたい。α/βペプチド2’〜8’は、全てのあり得るααβαααβ主鎖パターンを有したPuma BH3配列の異性体を表している。これらのオリゴマーは、β−残基の帯がらせんの外周を移動する一連のPuma類似体としてみなすことができる。図7Cを参照されたい。
【0105】
化合物1’〜8’を、2つの異なるBcl−2ファミリーの標的、Bcl−xL及びMcl−1に結合する能力に対して検査した。各化合物に対する阻害定数(K)を、蛍光標識されたBak−BH3ペプチドをトレーサーとして用いて競合蛍光偏光(FP)アッセイによって決定した(図8を参照)。Puma−BH3ペプチド(1’)は、これらのFPアッセイを用いて測定することができる親和性よりも堅固なBcl−xL及びMcl−1に対する親和性を示し、それは以前の研究と一致した。α/βペプチド2’〜8’に対するK値は、100μMから1nM未満まで異なる。β−残基取り込みの位置における変化は、Bcl−xに対しては100,000倍及びMcl−1に対しては700倍を超える等、各蛋白質に対する親和性をかなり変える。
【0106】
どちらの蛋白質標的に対しても、4’は、Bcl−xに対してはK<1nM及びMcl−1に対してはK=150nMで、最も堅固に結合するフォルダマーである。Puma BH3配列内の決定的な疎水性残基にてβ−改変を有するα/βペプチド5’がBcl−xに対してナノモルの親和性を示すということは注目すべきでことである。β−残基取り込みの位置が、これらの蛋白質標的に対する親和性に加えて、Puma由来のα/βペプチド異性体の間でBcl−x対Mcl−1選択性に強く影響を与えるということが、これらのデータによって実証される。例えば、3’は、前記2つの蛋白質に対して等しい親和性を示しているが、5’は、Mcl−1よりもBcl−xに対して4000倍を超える選択性を表示している。FP競合アッセイから得た親和性及び選択性に関する結論の妥当性を、N末端アセチル基がBODYPY−TMRフルオロフォアと置換された類似体を用いた直接結合FP測定を行うことによって、αペプチド1’及びα/βペプチド4’及び5’に対して検査した。直接結合によって決定されるK値は、競合データから得たK値と一致した(表5を参照)。K対Kの絶対値における差は、直接結合モードで測定された親和性に対する付加されたフルオロフォアの控えめな寄与を反映する場合がある。
【0107】
【表5】

Puma BH3領域の特定のα/β類似体は天然の蛋白質パートナーに高い親和性で結合することができるということを確立すると、そのα/βペプチドが蛋白質分解酵素によって認識及び処理されるかどうかを決定するために実験を行った。αペプチド1’並びにα/βペプチド4’及び5’を、広範な基質特性を有した2つのプロテアーゼ:(1)疎水性の残基に対するC末端を切断する傾向がある非特異的なセリンプロテアーゼであるプロテイナーゼK、及び、(2)個々のアミノ酸に蛋白質を消化する攻撃的なエンドペプチダーゼとエキソペプチダーゼとの混合物である“PRONASE”ブランドのプロテイナーゼに対するその感受性に対して検査した。(“PRONASE”は、EMD Chemicals Inc.社、Gibbstown,NJ.の登録商標である)。表3に提示した結果によって、ααβαααβ主鎖は蛋白質分解に対する実質的な耐性を与えることができると示されている。Bcl−xにもMcl−1にも堅固に結合するα/βペプチド4’は、αペプチド1’と比較して、プロテイナーゼKに対して4000倍を超える安定性の改善、及び、“PRONASE”ブランドのプロテイナーゼに対して100倍を越える安定性の改善を示した。質量分析による切断産物の分析は、β−残基が近くのアミド結合を蛋白質分解から保護する傾向があるということを示し、それは、単離されたαからβの挿入に対する以前の報告と一致した。α/βペプチド5’は、蛋白質分解に対する感受性が異性体4’よりも高いが、それにもかかわらず5’は、αペプチド1’と比較して有意な改善を示している。
【0108】
以前の研究は、BH3由来のαペプチドのαらせん傾向が抗アポトーシスBcl−2ファミリー蛋白質に対する親和性の重要な決定要因であり得ることを示唆してきた。従って、円二色性(CD)分光法を利用して、この実施例において記述した堅固な結合のα/βペプチド(4’及び5’)の2つ及び最も弱い結合の類似体(7’)の1つの間にある立体構造の差を探索した。4’、5’、及び、7’に対するCDスペクトルの定性比較は、これら3つの異性体間での結合親和性における大きな差はらせん傾向の差によって説明することはできないと示している。これら3つのα/βペプチドのそれぞれが、ほぼ202nmにてCD最小値を示しており、1つの残基あたりの楕円率は、水溶液において−13,000から−15,000deg cm dmol−1である。ααβαααβ主鎖におけるらせん形成は、206nmでの強いCD最小値によって反映され、最大の大きさは、約−40,000deg cm dmol−1である。このように、水溶液における4’、5’、及び、7’のみに対するCDデータは、比較的低い母集団のらせん状態を示唆している。同様に、水溶液におけるPuma αペプチド1に対するCD符号(〔θ〕222=−10,000 deg cm dmol−1 res−1)は、ほとんどないαらせん含有量を示唆している。いかなる特定の機構にも限定されることなく、Bcl−x及びMcl−1に対するBH3領域αペプチドの結合後のαらせん形成の誘導に対する確立された前例に基づき、本発明者等は、4’及び5’等のα/βペプチドが、蛋白質パートナーへの結合後にらせん立体構造をとるよう誘発されることを仮定している。
【0109】
配列ベースの設計の簡単な原理を使用してらせんαペプチドリガンドを、蛋白質標的に対して匹敵する結合親和性及び実質的に改善された蛋白質分解安定性を有したα/βペプチドに変換することができるということが本明細書において報告した研究によって実証されている。本明細書において開示及び請求された戦略は、蛋白質間相互作用のフォルダマーベースの阻害剤の開発に対する以前の研究からの重要な発展である。本明細書に記述された配列ベースのアプローチは、α−ヘリックスのフォルダマー模倣物を生じる構造ベースのアプローチよりも効率的であると、これらの実施例によって示されてきた。
【0110】
要するに、一次配列情報に基づき完全に設計した一連のちょうど7つのα/βペプチドを評価することによって、すでに記載されたキメラα/β+αリガンドのうち、Bcl−xに対する親和性において最良のものに対抗する化合物が生じる。Sadowsky,Schmitt,Lee,Umezawa,Wang,Tomita and Gellman(2005)J.Am.Chem.Soc 127:11966−11968;Sadowsky,Fairlie,Hadley,Lee,Umezawa,Nikolovska−Coleska,Wang,Huang,Tomita,and Gellman(2007)J.Am.Chem.Soc.129:139−154;及び、Sadowsky,Murray,Tomita,and Gellman(2007)ChemBioChem 8:903−916を参照されたい。さらに、最良のα/βペプチドは、構造ベースの設計を介して同定されるオリゴマーによって標的にされない生物医学的に重要なBcl−2ファミリー蛋白質であるMcl−1に対して控えめによく結合する。ペプチド配列にわたった多数の系統的なα−残基からβ−残基への置換(Puma BH3領域では26位置のうち7つの置換)の実行は、蛋白質分解性に安定な生理活性のオリゴマーの設計における前例を超えて有意な進歩を構成する。この置換パターンの一見解は抗アポトーシス蛋白質に対する結合という点で耐用性がよいという発見は、驚くべき及び注目すべきことである。
【0111】
本明細書において例示した配列ベースの設計は、商業的に入手可能なα−及びβ−アミノ酸モノマー、並びに、標準的な自動化されたペプチド合成方法を用いて実行することができる。従って、他の者にとって同様に試みることはわかりやすいことである。
【0112】
キメラα+α/βフォルダマーの比較
以下のペプチド12、13、及び、8は、リードα/βフォルダマー10のキメラα+α/βフォルダマーである。これらのペプチドを、N末端付近の領域におけるベータ置換の効果を決定するために作製した。ベータ残基を、7価の原子に沿って「f」及び「c」位置において順次差し引いた。αからβへの置換の効果を、以前に報告した蛍光偏光(FP)競合アッセイを用いてモニターした。(Frey,G.;Rits−Volloch,S.;Zhang,X.Q.;Schooley,R.T.;Chen,B.;Harrison,S.C.Small molecules that bind the inner core of gp41 and inhibit HIV envelope−mediated fusion.Proc.Natl.Acad.Sci.,2006,103,13938−43)。ゆるやかに増加する、結合減少の効果をβ置換が有していることを結果は示唆している。
【0113】
キメラα+α/βフォルダマー、N末端付近の「f」及び「c」位置からのβ残基の差し引き:
【0114】
【数2】

ボールド体の残基は、
【0115】
【化1】

である。
ボールド体で下線が引かれた残基は、Xは、
【0116】
【化2】

であり、
Zは、
【0117】
【化3】

である。
(nM):
化合物10=9
化合物12=8
化合物13=0.8
化合物8=0.3。
【0118】
β置換がペプチドの一領域において結合を破壊したかどうかを決定するために、ベータのストライプにおいて置換された異なるアルファセグメントを用いてα+α/βキメラペプチドを合成した。着目した領域は、ペプチドのN末端8、中間14、及び、C末端15の付近であった。アルファセグメントを導入することによってフォルダマーの結合は増えたが、Kiは全て非常に類似したことをFPデータは示し、β置換はらせんの全長にわたって結合をゆっくり破壊し、特定の領域では違ったことを示唆した。
【0119】
キメラα+α/βフォルダマー、N末端、中間、及び、C末端領域におけるαセグメントの差し引き:
【0120】
【数3】

(nM):
化合物8=0.3
化合物14=1.4
化合物15=0.2。
【0121】
フォルダマー10は、折り畳みにおいて寄与するよう環状の残基がCα−Cβねじれ角を効果的に制限したが、他の手段はらせんを制限するよう使用することができることを示した。α残基の塩橋は、αヘリックスを予め形成することに効果的であった。Nishikawa,H.;Nakamura,S.;Kodama,E.;Ito,S.;Kajiwara,K.;Izumi,K.;Sakagami,Y.;Oishi,S.;Ohkubo,T.;Kobayashi,Y.;Otaka,A.;Fujii,N.;Matsuoka,M.Electrostatically constrained alpha−helical peptide inhibits replication of HIV−1 resistant to enfuvirtide.Int.J.Biochem.Cell Biol.2009,41,891−9を参照されたい。別の設計戦略は、i+4位置におけるグルタメートのストライプと相互作用するアルギニンのストライプをi位置に置き、αらせん構造を支持した。Burkhard,P.;Meier,M.;Lustig,A.Design of a minimal protein oligomerization domain by a structural approach.Prot.Sci.,2000,9,2294−2301を参照されたい。
【0122】
以下のペプチド17は、らせんを予め組織化する塩橋を形成するベータ残基の能力を検査した。「f」及び「c」位置がベータ置換に最も協力的であったことは以前に発見したため、iとi+4との相互作用を最大化するよう、β−hArgを「f」位置に置き、β−hGluを「c」位置に置いた。ペプチド16を、環状のベータ残基も塩橋ベータ残基もベータストライプにおいて相乗的に作用したかどうかを検査するために作製した。FPデータは、α/βフォルダマー16及び17がフォルダマー1に対してほぼ等しい阻害剤であったことを示唆した。
【0123】
【数4】

(nM):
化合物10=9
化合物16=3
化合物17=11。
【0124】
これらの結果は、化合物17がいかなる環状にされた残基も有さないことにおいて有意である。いかなる基本的機構又は現象にも限定されないけれども、立体構造の安定性は、らせん構造の一側面に沿ってイオン対を取り込むことによって達成されるように思われる。
【0125】
本出願は、2008年10月17日に出願した米国仮特許出願第61/106,205号、及び、2009年7月29日に出願した米国仮特許出願第61/229,325号に基づく優先権を主張するものであり、全内容を本出願において援用する。
【0126】
政府基金に関する記述
本発明は、以下の機関:National Institutes of Health(NIH)GM56414及びCA119875により与えられた米国政府の支援のもとに行われた。米国政府は本発明においてある種の権利を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非天然型生理活性ポリペプチドを作製する方法であって:
(a)α−アミノ酸残基を含むアミノ酸配列を有した生理活性ポリペプチド又はその生理活性断片を選択するステップ;及び
(b)ステップ(a)の前記生理活性ポリペプチド又は断片の配列に一致するアミノ酸配列を有する合成ポリペプチドを作製するステップであり、
(i)前記合成ポリペプチドにおいて、ステップ(a)の前記生理活性ポリペプチド又は断片に存在する前記α−アミノ酸残基のうち約14%から約50%が、β−アミノ酸残基と置換され、
(ii)前記合成ポリペプチドにおいて、前記β−アミノ酸残基及び前記α−アミノ酸残基は、繰り返しパターンで分配され、さらに、
(iii)前記合成ポリペプチドは、約10残基から約100残基までの長さを有し、少なくとも2つのβ−アミノ酸残基を含む、ステップ;
を含む方法。
【請求項2】
ステップ(b)の(i)は、前記α−アミノ酸残基のうち少なくとも1つを、β及びβ炭素原子を包含する環を介して環状にされた少なくとも1つのβ−アミノ酸残基と置換するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(b)の(i)は、ステップ(a)の前記生理活性ポリペプチド又は断片に存在する前記α−アミノ酸残基のうち約14%から約50%を、β及びβ炭素原子を包含する環を介して環状にされたβ−アミノ酸残基と置換するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(b)の(i)は、ステップ(a)の前記生理活性ポリペプチド又は断片に存在する前記α−アミノ酸残基のうち約14%から約50%をβ−アミノ酸残基と置換するステップを含み、前記β−アミノ酸残基のうち少なくとも1つが、そのβ及びβ炭素原子にて未置換である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(b)の(i)は、ステップ(a)の前記生理活性ポリペプチド又は断片に存在する前記α−アミノ酸残基のうち約14%から約50%をβ−アミノ酸残基と置換するステップを含み、前記β−アミノ酸残基のうち全てが、そのβ及びβ炭素原子にて置換される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(b)の(i)は、ステップ(a)の前記生理活性ポリペプチド又は断片に存在する前記α−アミノ酸残基のうち約14%から約50%をβ−アミノ酸残基と置換するステップを含み、各β−アミノ酸残基が、置換する前記α−アミノ酸残基と同じ側鎖を少なくとも1つ有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
蛋白質分解耐性の非天然型生理活性ポリペプチドを作製する方法であって:
(a)α−アミノ酸残基を含むアミノ酸配列を有した生理活性ポリペプチド又はその生理活性断片を選択するステップ;及び
(b)ステップ(a)の前記生理活性ポリペプチド又は断片の配列に一致するアミノ酸配列を有する合成ポリペプチドを作製するステップであり、
(i)前記合成ポリペプチドにおいて、ステップ(a)の前記生理活性ポリペプチド又は断片に存在する前記α−アミノ酸残基のうち約14%から約50%が、類似性のβ−アミノ酸残基と置換され、
(ii)各類似性のβ−アミノ酸残基は、置換する前記α−アミノ酸残基と同じ側鎖を少なくとも1つ有し、

(iii)前記合成ポリペプチドにおいて、前記β−アミノ酸残基及び前記α−アミノ酸残基は、繰り返しパターンで分配され、さらに、
(iv)前記合成ポリペプチドは、約10残基から約100残基までの長さを有し、少なくとも2つのβ−アミノ酸残基を含む、ステップ;
を含む方法。
【請求項8】
前記ポリペプチドによってとられる折り畳み構造において、前記繰り返しパターンは、前記非天然型ポリペプチドがらせん形構造をとる場合に、前記β−アミノ酸残基を前記折り畳み分子構造の一側面に沿って一直線をなすように配置する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の非天然型生理活性ポリペプチドを作製する方法。
【請求項9】
β−アミノ酸残基及びα−アミノ酸残基の前記繰り返しのパターンは、(ααααααβ)、(αααααβ)、(ααααβ)、(αααβ)、(ααβ)、(ααβαααβ)、(ααβαβαβ)、及び、(αβ)からなる群から選択される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の非天然型生理活性ポリペプチドを作製する方法。
【請求項10】
ステップ(b)は、約20残基から約50残基を有する合成ポリペプチドを作製するステップを含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の非天然型生理活性ポリペプチドを作製する方法。
【請求項11】
SEQ ID番号:4〜11及び25〜30に示された一次アミノ酸配列を含む単離された非天然型ポリペプチド。
【請求項12】
ヒト細胞に対するヒト免疫不全ウイルスの融合を阻害する方法であって、SEQ ID番号:4〜11及び25〜30に示された一次アミノ酸配列を含む単離された非天然型ポリペプチドにヒト細胞を接触させるステップを含む方法。
【請求項13】
ヒト細胞に対するヒト免疫不全ウイルス(HIV)の融合を阻害する方法であって:
(a)α−アミノ酸残基を含むアミノ酸配列を有し、in vivoでのHIV融合に必要な天然の生理活性ポリペプチド又はその生理活性断片を選択するステップ;
(b)ステップ(a)の前記生理活性ポリペプチド又は断片の配列に一致するアミノ酸配列を有する合成ポリペプチドを作製するステップであり、
(i)前記合成ポリペプチドにおいて、ステップ(a)の前記生理活性ポリペプチド又は断片に存在する前記α−アミノ酸残基のうち約14%から約50%が、β−アミノ酸残基と置換され、
(ii)前記合成ポリペプチドにおいて、前記β−アミノ酸残基及び前記α−アミノ酸残基は、繰り返しパターンで分配され、さらに、
(iii)前記合成ポリペプチドは、約10残基から約100残基までの長さを有し、少なくとも2つのβ−アミノ酸残基を含む、ステップ;並びに、
(c)ステップ(b)の前記合成ポリペプチドにヒト細胞を接触させるステップ;
を含む方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【公表番号】特表2012−505903(P2012−505903A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532211(P2011−532211)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/060659
【国際公開番号】WO2010/045342
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(506097988)ウィスコンシン アルムニ リサーチ ファンデイション (14)
【Fターム(参考)】