説明

生理活性液状組成物及びその製造方法

【課題】優れた免疫賦活効果、抗癌効果等の生理活性を有する生理活性液状組成物を提供する。
【解決手段】紅豆杉の抽出成分(A)、カバノアナタケの抽出成分(B)、キャッツクローの抽出成分(C)、及び冬虫夏草の菌糸体の抽出成分(D)を含有する生理活性液状組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫賦活活性、抗癌効果等を有する生理活性液状組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国の医療費は、平成元年の約20兆円(国民所得の約6.1%)が20年後の平成20年には、1.7倍の約34兆円(国民所得の約9.1%)と大幅に増加し、現在も増加傾向にある。特に深刻な問題は、65歳以上の高齢者比率が現在の22.5%が30年後には33.2%の増加傾向にあることである。更に、高齢者が支払う医療費は、現在、医療費全体の約54%を占めているが、今後、高齢化が進むと国民所得に占める医療費の割合が更に大きく上昇すると予測されている。この問題を回避し、健康で長寿を全うできる安定した社会が求められている。
その様な中、免疫賦活効果、抗癌効果等の薬効が期待される植物や菌類からの抽出物を配合した様々な健康食品やサプリメントが報告されている。
【0003】
例えば特許文献1〜4には、紅豆杉の幹部から温水や酒により抽出した成分を含む健康茶や健康食品が開示されている。
また、特許文献5〜7には主原料である紅豆杉の幹部を真空圧力下で粉砕して得られる粉末に、他の成分(西洋人参、霊芝、陳皮など)を加えて水で煮沸して得られる濃縮液を加えた混合物をドライフリー製法で粉末にした健康食品が開示されている。
【0004】
また、カバノアナタケの抽出物を添加した機能性食品の例として、特許文献8には酵素処理した抽出物を添加した機能性食品、特許文献9には超臨界流体を用いてカバノアナタケの細胞壁を破壊後に抽出して得られる抽出物を添加した機能性食品が開示されている。
【0005】
また、冬虫夏草の抽出物の例としては、特許文献10には、超音波で10μm以下に粉砕後、冬虫夏草の有効成分の抽出技術として、プロテアーゼ又はセルラーゼで酵素処理し、120℃の熱水で抽出する抽出方法が開示されている。また、特許文献11には、冬虫夏草の菌糸体を40〜50℃を水溶液で抽出することによって得られる抽出物を健康食品やサプリメントに使用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−120582号公報
【特許文献2】特開平10−136934号公報
【特許文献3】特開平10−136935号公報
【特許文献4】特開平10−136936号公報
【特許文献5】特開2000−236835号公報
【特許文献6】特開2000−236836号公報
【特許文献7】特開2000−236838号公報
【特許文献8】特開2004−161748号公報
【特許文献9】特開2006−129714号公報
【特許文献10】特開2002−262820号公報
【特許文献11】特開2011−50338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記薬効植物、菌類のうち、タキソール等の抗癌活性を豊富に含有する紅豆杉は、抗癌効果が期待できるため、特に注目されているが、そのほとんどが中国の雲南省等の高山地域に生息しており、資源保護の観点から伐採や輸出を厳しく制限されており、入手し辛い状態にある。そのため、従来原料とされた紅豆杉の幹部からのみでなく、従来廃棄されていた枝や葉の部分からの抽出物の回収が望まれている。
しかしながら、特許文献1〜7の抽出方法は、薬効成分を多く含有する紅豆杉の幹部からの抽出を可能としているが、従来廃棄されていた枝や葉の部分から抽出可能な量は決して多いとはいえず、より効率的に抽出する方法が模索されているのが現状である。
【0008】
また、カバノアナタケにおいても、特許文献8,9で開示された従来の抽出方法では、酵素や超臨界流体を用いた高コストなものであり、製品に沈殿物や浮遊物が残るなどの欠点がある。
【0009】
特許文献10に記載された冬虫夏草からの有効成分の抽出技術は、前処理に高価な超音波粉砕装置を必要としており、また、高価なプロテアーゼ又はセルラーゼという酵素による酵素処理を行っており、経済的な課題が残る。また、抽出に120℃の熱水を使用するため、エネルギーコストがかかると同時に、有益な成分の活性が失われる可能性がある。
また、特許文献11記載された抽出技術は、冬虫夏草から安価に有効成分を抽出することができる方法であるが、抽出効率の点で改善の余地がある。
【0010】
また、癌やインフルエンザ、リュウマチなどの炎症は、人体の様々な機能が複雑に絡み合って起こっている。上記の抽出成分は、それぞれ単独でも効能を有するが、その有効成分の効能については不明な部分が多く、特に複数成分を組み合わせた場合の効能についてはいまだ詳細が分かっていないのが実状である。例えば、詳細は不明であるが、上記鎮痛作用や抗炎症作用等を発揮する有効成分を含有した薬効植物、菌類を、そのまま例えば複数併用して服用しても、複数併用しただけの効果を得ることができない場合がある。
特に、抗癌活性を豊富に含有する紅豆杉は、その効用を高める為に免疫力を増強し抗酸化作用のある他の薬効植物、菌類と混合し相乗効果を高めて用いることが期待されているが、いまだ満足するものは得られていない。
【0011】
かかる状況下、本発明の目的は、優れた免疫賦活効果、抗癌効果等の生理活性を有する生理活性液状組成物及びその効率的な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、紅豆杉に加え、他の薬効植物、菌類についての薬効成分同士の相互作用に着目し、それらの組み合わせを創意工夫した結果、各原料が持つ有効な作用の相乗効果が発揮できる組み合わせを見出した。
さらに、各原料から活性の低下を抑制して、有効成分を抽出する方法を見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 紅豆杉の抽出成分(A)、カバノアナタケの抽出成分(B)、キャッツクローの抽出成分(C)及び冬虫夏草の菌糸体の抽出成分(D)を含有する生理活性液状組成物。
<2> 成分(A)が、紅豆杉の枝と葉の抽出成分である前記<1>記載の生理活性液状組成物。
<3> 成分(D)が、冬虫夏草Cordyceps sinensisの菌糸体の抽出成分である前記<1>又は<2>記載の生理活性液状組成物。
<4> 紅豆杉の枝と葉を粉砕後、ブタノールで1次抽出して1次抽出液と抽出残渣を得て、得られた抽出残渣を70〜95℃の温水で2次抽出して、紅豆杉の抽出成分(A)を含む抽出液を得る工程と、
カバノアナタケを粉砕後、エタノールで1次抽出して1次抽出液と抽出残渣を得て、得られた抽出残渣を70〜95℃の温水で2次抽出して、カバノアナタケの抽出成分(B)を含む抽出液を得る工程と、
キャッツクローを粉砕後、70〜95℃の温水で抽出して、キャッツクローの抽出成分(C)を含む抽出液を得る工程と、
冬虫夏草の菌糸体を粉砕後、70〜95℃の温水で抽出して、冬虫夏草の菌糸体の抽出成分(D)を含む抽出液を得る工程と、
前記抽出成分(A)〜(D)を含む抽出液を混合する工程と、
を含む生理活性液状組成物の製造方法。
<5> 紅豆杉の抽出成分(A)を得る工程において、1次抽出液を乾燥させることによって得られる乾燥物を、1次抽出の抽出残渣、2次抽出に用いる70〜95℃の温水、及び2次抽出で得られる紅豆杉の抽出成分(A)を含む抽出液のうち、少なくとも1つに添加する工程を含む前記<4>記載の生理活性液状組成物の製造方法。
<6> カバノアナタケの抽出成分(B)を得る工程において、1次抽出液を乾燥させることによって得られる乾燥物を、1次抽出の抽出残渣、2次抽出に用いる70〜95℃の温水、及び2次抽出で得られるカバノアナタケの抽出成分(B)を含む抽出液のうち、少なくとも1つに添加する工程を含む前記<4>または<5>に記載の生理活性液状組成物の製造方法。
<7> 前記抽出成分(A)〜(D)を混合する工程後、フィルタリングにより雑菌の除去を行う前記<4>から<6>のいずれかに記載の生理活性液状組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の生理活性液状組成物は、免疫賦活効果、抗癌効果を初めとした生理活性を有する。本発明の製造方法によれば、各原料から、活性を低下させることなく、効率よく抽出物を得ることができるため、該生理活性液状組成物を安定的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】生理活性効果の評価(抗癌作用)における、試験区と対照区についての24時間後の結果である。
【図2】生理活性効果の評価(抗癌作用)における、試験区と対照区についての48時間後の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、紅豆杉の抽出成分(A)、カバノアナタケの抽出成分(B)、キャッツクローの抽出成分(C)及び冬虫夏草の菌糸体の抽出成分(D)を含有する生理活性液状組成物に関する。
【0017】
本発明の生理活性液状組成物には、各原料が含有するタキソールやアルカロイド、SOD様成分、βグルカン等を有しており、免疫賦活活性、抗癌作用を初めとした生理活性を有する。
そのため、本発明の生理活性液状組成物を経口摂取することにより、免疫賦活活性、抗癌作用を発揮することができ、その他にも抗リュウマチ作用、抗酸化作用、鎮痛作用,沈静作用、抗炎症作用,免疫力増強作用,血行改善作用、抗腫瘍作用や血糖降下作用等を発揮することができる。
【0018】
以下、抽出成分(A)〜(D)について詳細に説明する。
【0019】
抽出成分(A)は、紅豆杉を、例えば、水、メタノール、エタノール、ブタノール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール又はこれらの混合液などからなる抽出媒と接触させることにより抽出した抽出液、その濃縮物、乾燥物が挙げられる。
原料として紅豆杉の幹部、葉部、枝部が使用でき、これらの混合物を使用してもよい。
なお、詳しくは後述するが、ブタノールによって1次抽出を行う本発明の製造方法によれば、紅豆杉の幹部のみならず、紅豆杉の葉部や枝部からも効率的に抽出成分(A)を得ることができる。
【0020】
抽出成分(B)は、カバノアナタケを、例えば、水、メタノール、エタノール、ブタノール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール又はこれらの混合液などからなる抽出媒と接触させることにより抽出した抽出液、その濃縮物、乾燥物が挙げられる。
カバノアナタケは、シラカバやダケカンバ等のカバノキ類に多く寄生し、それらの樹木の樹液を養分にして生育している耐寒性のきのこであり、その成分に、抗腫瘍作用や血糖降下作用等の生理活性を有する。
原料としてカバノアナタケの子実体や菌糸体や菌核が使用でき、これらの混合物を使用してもよい。好ましい抽出対象は菌核であり、生理活性成分の抽出効率を高めるためには菌核は粉砕して用いることが好ましい。
【0021】
抽出成分(C)は、キャッツクローを、例えば、水、メタノール、エタノール、ブタノール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール又はこれらの混合液などからなる抽出媒と接触させることにより抽出した抽出液、その濃縮物、乾燥物が挙げられる。
キャッツクロー(Uncaria Tomentosa)は、ペルーアマゾン源流の標高400〜800m程度の高地に自生する蔓性植物であり、プテロポディン,イソプテロポディン等のオキシインドールアルカロイドをはじめとして、ポリフェノール、アントシアニン、テルペン、キノビック酸,植物性ステロール,タンニン等の様々な薬効成分が含まれている。
原料として、キャッツクローの根や樹皮を主に使用することができ、これらの混合物を使用してもよい。生理活性成分の抽出効率を高めるためには根や樹皮は粉砕して用いることが好ましい。
【0022】
抽出成分(D)は、冬虫夏草の菌糸体の抽出成分である。抽出成分(D)は、冬虫夏草の菌糸体を、例えば、水、メタノール、エタノール、ブタノール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール又はこれらの混合液などからなる抽出媒と接触させることにより抽出した抽出液、その濃縮物、乾燥物が挙げられる。
冬虫夏草としては、中国チベットでコウモリ蛾科の幼虫(Hepialus armoricanus)に寄生する然産冬虫夏草子実体から分離した冬虫夏草(Cordyceps sinensis)をはじめとして、セミタケ(Cordyceps sobolifera)、サナギタケ(Cordyceps militaris)、ミミカキタケ(Cordyceps nutans)等を使用することができる。これらは、固体及び液体培養によって純化したものを使用することが好ましい。好適には、冬虫夏草の子実体をフェニコール寒天培地に表面培養させた後、さらにポテト液体培地で培養させた冬虫夏草菌の菌糸体が用いられる。このように純化した菌糸体を使用することで、抽出成分(D)、さらには抽出成分(D)を含有する、本発明の生理活性液状組成物に沈殿物や浮遊物などの不純物の発生が起こりづらくなる。
【0023】
これらの冬虫夏草の中でも、中国天然産の冬虫夏草Cordyceps sinensisは、免疫賦活活性や抗腫瘍活性等の生理活性の最も高いため好適である。
冬虫夏草Cordyceps sinensis(特に純化したもの)を、高温殺菌された古米やおから、焼酎粕、醤油粕、野菜くず等の食品残さ等の未利用有機物に接種し、20℃〜28℃程度、湿度は80%以上の暗室で10日〜25日間程度培養発酵させることで、アミノ酸、エルゴステロール、β−グルカン、ビタミンE、SOD(スーパーオキシドディスムターゼ)物質などの有益な成分を生成し、特に免疫賦活性や抗酸化性が高いため好ましく用いられる。
本発明の生理活性液状組成物は、上記抽出成分(A)〜(D)を混合することで製造することができる。混合比率は、目的とする効能や対象者の年齢、性別、体質などを考慮して選択される。なお、各抽出成分の重量は、溶媒を十分に留去して得られた乾燥物の重量である。
【0024】
本発明の生理活性液状組成物は、抽出成分(A)〜(D)以外にも、他の成分を含んでいてもよい。
他の成分としては、食品に用いられる様々な添加剤、具体的には、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤漂白剤、防菌防黴剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香料等が挙げられる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、他の薬効植物、菌類を添加してもよい。
【0025】
以下、本発明の生理活性液状組成物を製造するのに特に適した方法(以下、「本発明の製造方法」と称す。)について説明する。
本発明の製造方法は、紅豆杉の枝と葉を粉砕後、ブタノールで1次抽出して1次抽出液と抽出残渣を得て、得られた抽出残渣を70〜95℃の温水で2次抽出して、紅豆杉の抽出成分(A)を含む抽出液を得る工程と、
カバノアナタケを粉砕後、エタノールで1次抽出して1次抽出液と抽出残渣を得て、得られた抽出残渣を70〜95℃の温水で2次抽出して、カバノアナタケの抽出成分(B)を含む抽出液を得る工程と、
キャッツクローを粉砕後、70〜95℃の温水で抽出して、キャッツクローの抽出成分(C)を含む抽出液を得る工程と、
冬虫夏草の菌糸体を粉砕後、70〜95℃の温水で抽出して、冬虫夏草の菌糸体の抽出成分(D)を含む抽出液を得る工程と、
前記抽出成分(A)〜(D)を含む抽出液を混合する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0026】
本発明の製造方法の特徴の一つは、紅豆杉の抽出方法において、ブタノールを抽出媒として1次抽出を行うことにある。
ブタノールは紅豆杉の組織に浸透し、柔らかくする作用を有しており、紅豆杉をブタノールに浸漬して1次抽出を行うと、ブタノールに溶解する紅豆杉の抽出成分(A)を含む1次抽出液と、抽出残渣を得られる。この抽出残渣は、ブタノールによって柔らかくなっているため、70〜95℃の温水に浸漬して2次抽出することによって、容易に紅豆杉の抽出成分(A)を抽出することができる。
ここで、ブタノールは、紅豆杉の幹部のみならず、従来の水やエタノールを利用した抽出方法では抽出困難で廃棄されていた紅豆杉の枝と葉も、柔らかくすることができるため、紅豆杉の枝と葉からでも、効率的に抽出成分(A)を得ることができる。なお、より多く抽出するために、抽出残渣に対する2次抽出は複数回行ってもよい。
【0027】
また、紅豆杉の抽出成分(A)を得る工程において、1次抽出液を乾燥させることによって得られる乾燥物を、1次抽出の抽出残渣、2次抽出に用いる70〜95℃の温水、及び2次抽出で得られる紅豆杉の抽出成分(A)を含む抽出液のうち、少なくとも1つに添加する工程を含むことが好ましい。
紅豆杉の1次抽出液には、ブタノールに溶解する紅豆杉の抽出成分(A)が含まれる。そのため、1次抽出液のブタノールを留去することによって得られる乾燥物には抽出成分(A)が多量に含まれるため、この乾燥物を、1次抽出の抽出残渣、2次抽出に用いる70〜95℃の温水、及び2次抽出で得られる紅豆杉の抽出成分(A)を含む抽出液のうち、少なくとも1つに添加することにより、抽出成分(A)濃度を高めることができる。
【0028】
なお、得られた抽出成分(A)はフィルタリングにて、沈殿物や不純物を取り除くことが好ましい。上記1次抽出液の乾燥物には、ブタノールに溶解して、水に溶解できない成分も含まれるが、そのような成分もフィルタリングで除去できる。
【0029】
さらに、カバノアナタケも温水のみでは抽出しづらいため、まず、エタノールで1次抽出して1次抽出液と抽出残渣を得て、得られた抽出残渣を70〜95℃の温水で2次抽出して、カバノアナタケの抽出成分(B)を含む抽出液を得る方が効率的である。なお、より多く抽出するために、抽出残渣に対する2次抽出は複数回行ってもよい。
【0030】
また、カバノアナタケの抽出成分(B)を得る工程において、1次抽出液を乾燥させることによって得られる乾燥物を、1次抽出の抽出残渣、2次抽出に用いる70〜95℃の温水、及び2次抽出で得られるカバノアナタケの抽出成分(B)を含む抽出液のうち、少なくとも1つに添加する工程を含むことが好ましい。
カバノアナタケの1次抽出液には、エタノールに溶解するカバノアナタケの抽出成分(B)が含まれる。そのため、1次抽出液のエタノールを留去することによって得られる乾燥物には抽出成分(B)が多量に含まれるため、この乾燥物を、1次抽出の抽出残渣、2次抽出に用いる70〜95℃の温水、及び2次抽出で得られるカバノアナタケの抽出成分(B)を含む抽出液のうち、少なくとも1つに添加することにより、抽出成分(B)濃度を高めることができる。
なお、得られた抽出成分(B)はフィルタリングにて、沈殿物や不純物を取り除くことが好ましい。
【0031】
また、キャッツクローの抽出成分(C)、冬虫夏草の菌糸体の抽出成分(D)は、水への溶解性がたかいため、70〜95℃の温水を用いることで、十分に抽出を行うことができる。
なお、得られた抽出成分(C)や抽出成分(D)はフィルタリングにて、沈殿物や不純物を取り除くことが好ましい。
【0032】
上記抽出成分(A)〜(D)及び必要に応じて添加されるその他の成分を混合することで、本発明の生理活性液状組成物を得ることができる。
混合順序も反応や沈殿物が発生するなど特段の問題がない限り任意であり、生理活性液状組成物の構成成分のうち、何れか2成分又は3成分以上を予め配合し、その後に残りの成分を混合してもよいし、一度に全部を混合してもよい。
【0033】
本発明の製造方法において、抽出成分(A)〜(D)、及び必要に応じてその他の成分を混合する工程後、フィルタリングにより雑菌の除去を行うことが好ましい。
フィルターとしては、例えば、大腸菌も除去できる孔径0.2μm程度のろ過フィルターが挙げられる。このようにフィルタリングを行うことで、雑菌の繁殖を抑制し、製品の浮遊物や沈殿物の発生を防ぐことができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0035】
原料として、紅豆杉は中国雲南省産のもの、カバノアナタケはロシア産のもの、キャッツクローはペルー産のものをそれぞれ用いた。
【0036】
冬虫夏草の菌糸体は、以下のように得た。
クリーンベンチ内で、冬虫夏草Cordyceps sinensis の子実体を切断し、121℃で20分間オートクレーブで殺菌されたフェニコール平板培地に接種し、20℃〜30℃に設定されたインキュベータで1週間培養した。次いで、平板培地で培養されたCordyceps sinensisの菌糸体をクリーンベンチ内で取り出し、121℃で20分間オートクレーブで殺菌されたポテト液体培地に接種し、20℃〜30℃に設定されたインキュベータで1週間培養した。
次いで、古米やおから、焼酎粕などの未利用有機物を耐熱容器に詰め、レトルト殺菌装置などで殺菌後、無菌室で常温まで冷却した。液体培養で培養された菌糸体を注射器で取り出し、殺菌後に常温まで冷却された未利用有機物に接種し、暗室で、20℃〜28℃、湿度80%以上とした培養発酵室に10日〜25日程度培養することで、原料となる冬虫夏草の菌糸体を得た。
【0037】
生理活性液状組成物は、以下のように製造した。
(1)所定量の紅豆杉の枝と葉を、粉砕後に室温でブタノールで1次抽出し、1次抽出液と、抽出残渣を得た。その後、この1次抽出液からブタノールを留去して得られた乾燥物を、1次抽出の抽出残渣に添加し、次いで、その抽出残渣に対し、抽出効率の高い70℃〜95℃の温水で複数回抽出を行うことにより、この2次抽出液を、フィルタリングで沈殿物・不純物を取り除くことによって、紅豆杉の抽出物(A)を含む水溶液を得た。
得られた紅豆杉の抽出物(A)を含む水溶液1Lを十分に乾燥させて得られた乾燥物の重量は、0.35gであった。
(2)カバノアナタケを、粉砕後に室温でエタノールで1次抽出し、1次抽出液と、抽出残渣を得た。その後、この1次抽出液からエタノールを留去して得られた乾燥物を、1次抽出の抽出残渣に添加し、次いでその抽出残渣に対し、抽出効率の高い70℃〜95℃の温水で複数回抽出を行うことにより、2次抽出液を得た。この2次抽出液を、フィルタリングで沈殿物・不純物を取り除くことによって、カバノアナタケの抽出物(B)を含む水溶液を得た。
得られたカバノアナタケの抽出物(B)を含む水溶液1Lを十分に乾燥させて得られた乾燥物の重量は、3.85gであった。
(3)キャッツクローを粉砕後、70℃〜95℃の温水で複数回抽出を行うことで、キャッツクローの抽出物(C)を含む水溶液を得た。なお、沈殿物・不純物はフィルタリングで取り除いた。
得られたキャッツクローの抽出物(C)を含む水溶液1Lを十分に乾燥させて得られた乾燥物の重量は、1.4gであった。
(4)冬虫夏草の菌糸体を粉砕後、70℃〜95℃の温水で複数回抽出を行うことで、冬虫夏草の菌糸体の抽出物(D)を含む水溶液を得た。なお、沈殿物・不純物はフィルタリングで取り除いた。
得られた冬虫夏草の菌糸体の抽出物(D)を含む水溶液1Lを十分に乾燥させて得られた乾燥物の重量は、1.4gであった。
(5)次いで、抽出物(A)を含む水溶液を5重量%、抽出物(B)を含む水溶液を55重量%、抽出物(C)を含む水溶液を20重量%、抽出物(D)を含む水溶液を20重量%として、十分に室温で均一になるまで混合したのち、最終的に大腸菌も除去できる孔径0.2μmのろ過フィルターを通すことで、実施例の生理活性液状組成物を得た。
【0038】
「生理活性効果の評価(抗癌作用)」
抗癌作用について、大腸癌細胞DLD-1をシャーレに摂取し、生理活性効果を検証した。検証は、何も加えない対照区と生理活性用組成物を加えた試験区に分け、24時間、48時間の経過観察を行い、癌細胞の生存率をWST-8キット(キシダ化学株式会社)で計測して行った。表1に24時間後、48時間後、72時間後の癌細胞の生存率(対照区比)を示す。
また、24時間後及び48時間後の試験区と対照区について、位相差蛍光顕微鏡(Leica fluorescence microscope, 型番leica DFC300FX)にて測定した結果を示す図1、図2にそれぞれ示す。
【0039】
図1,2から、対照区では癌細胞が生存しているのに対し、試験区では明らかに減少していることがわかる。このことから、本発明の、高い癌抑制効果があることを確認することができた。
【0040】
【表1】

【0041】
(免疫賦活効果及び免疫異常抑制効果の評価)
実施例の生理活性液状組成物について、免疫賦活効果及び免疫異常抑制効果の評価を行った。下記条件の試験を行い、スキッドマウスの血液を採取して免疫細胞の割合と数の増減で検証した。

(1)使用マウス
スキッドマウス(SCID, B17/Icr scid/scid 雄)
80匹(5匹×4×4)
対象マウス(WT, B17/Icr +/+ 雄)

(2)試験方法
試験区1:マウス1匹について、1日0.025cc投与
試験区2:マウス1匹について、1日0.050cc投与
試験区3:マウス1匹について、1日0.100cc投与
試験区4:マウス1匹について、1日0.150cc投与

・n=5匹とし、1日、7日、14日で採血

(3)評価
免疫細胞のCD11b細胞とCD49b細胞の血液中の割合をBecton Dickinson社FACSVantage SEで解析し、リウマチ等の炎症因子とされるサイトカインTNF-αは、長浜ライフサイエンスラボラトリー(オリエンタル酵母工業株式会社)で計測した。表2にCD11b細胞の結果、表3にCD49b細胞の結果、表4にTNF-α値の結果を示す。
【0042】
検証結果は、下表に示すようにCD11b細胞とCD49b細胞の血液中の割合が増加しており、免疫が賦活されていることが確認された。一方、TNF-α値は、対照区のSCID、WT共に同程度高値を示すが、treatmentにより、濃度にかかわらず、著明に減少、7日目は検出感度以下まで減少し、炎症因子の増加を正常に制御できていることを検証することができた。
【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
【表4】

【0046】
以上の検証結果から本発明の生理活性液状組成物が、免疫賦活効果、癌抑制効果及びリュウマチ等の炎症因子抑制効果を兼ね備えていることを確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、優れた免疫賦活効果、抗癌効果等の生理活性を有する生理活性液状組成物が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紅豆杉の抽出成分(A)、カバノアナタケの抽出成分(B)、キャッツクローの抽出成分(C)、及び冬虫夏草の菌糸体の抽出成分(D)を含有することを特徴とする生理活性液状組成物。
【請求項2】
成分(A)が、紅豆杉の枝と葉の抽出成分である請求項1記載の生理活性液状組成物。
【請求項3】
成分(D)が、冬虫夏草Cordyceps sinensisの菌糸体の抽出成分である請求項1又は2記載の生理活性液状組成物。
【請求項4】
紅豆杉の枝と葉を粉砕後、ブタノールで1次抽出して1次抽出液と抽出残渣を得て、得られた抽出残渣を70〜95℃の温水で2次抽出して、紅豆杉の抽出成分(A)を含む抽出液を得る工程と、
カバノアナタケを粉砕後、エタノールで1次抽出して1次抽出液と抽出残渣を得て、得られた抽出残渣を70〜95℃の温水で2次抽出して、カバノアナタケの抽出成分(B)を含む抽出液を得る工程と、
キャッツクローを粉砕後、70〜95℃の温水で抽出して、キャッツクローの抽出成分(C)を含む抽出液を得る工程と、
冬虫夏草の菌糸体を粉砕後、70〜95℃の温水で抽出して、冬虫夏草の菌糸体の抽出成分(D)を含む抽出液を得る工程と、
前記抽出成分(A)〜(D)を含む抽出液を混合する工程と、
を含むことを特徴とする生理活性液状組成物の製造方法。
【請求項5】
紅豆杉の抽出成分(A)を得る工程において、1次抽出液を乾燥させることによって得られる乾燥物を、1次抽出の抽出残渣、2次抽出に用いる70〜95℃の温水、及び2次抽出で得られる紅豆杉の抽出成分(A)を含む抽出液のうち、少なくとも1つに添加する工程を含む請求項4記載の生理活性液状組成物の製造方法。
【請求項6】
カバノアナタケの抽出成分(B)を得る工程において、1次抽出液を乾燥させることによって得られる乾燥物を、1次抽出の抽出残渣、2次抽出に用いる70〜95℃の温水、及び2次抽出で得られるカバノアナタケの抽出成分(B)を含む抽出液のうち、少なくとも1つに添加する工程を含む請求項4または5に記載の生理活性液状組成物の製造方法。
【請求項7】
前記抽出成分(A)〜(D)を混合する工程後、フィルタリングにより雑菌の除去を行う請求項4から6のいずれかに記載の生理活性液状組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−56868(P2013−56868A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197395(P2011−197395)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(506426465)株式会社アジア環境研究所 (3)
【Fターム(参考)】