説明

生理活性物質測定システム

【課題】自然災害等によりライフラインが分断された際において、生活基盤の確保は重要な課題となるが、同時にウイルスなどの病原菌などの感染菌への対策を迅速に取ることができれば、住民の健康を維持しながら生活インフラの復旧を進めることに役立つ。
【解決手段】本発明は燃料電池を電源とすることにより、可搬可能で効率よく使用することができる生理活性物質測定システムを提供することにより、商用電源が配備されていない環境下や災害時において、感染菌を効率よく迅速に同定することを可能にするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池を電力源とする生理活性物質測定システムに関するものであり、簡便にかつ迅速に生理活性物質を測定することを可能にするシステムである。
【背景技術】
【0002】
地震、洪水等の自然災害や事故時に等によりライフラインが分断された際において、生活基盤の確保は重要な課題となるが、同時にウイルスなどの病原菌などの感染菌への対策を迅速を取ることができれば、住民の健康を維持しながら生活インフラの復旧を進めることに役立つ。このような状況に対応できると考えられる生理活性物質測定システムとしては、下記特許文献1に迅速に正確な測定ができる生理活性物質測定システムが報告されている。
【0003】
しかしながら、上記システムを商用電源が利用できない状況において使用するためには、必要な場所に移動して使用可能な独立電源としては鉛電池、リチウムイオン電池などの二次電池、太陽光により発電する太陽電池、エンジン式の発電機などが挙げられるが、それぞれに欠点を持っている。二次電池は自然放電の影響もあり、普段使用する頻度が少ない場合は、使用したいときに十分な充電状態にしておくためには普段の確認が欠かせず、上記の状況においては電池を使い切った後に再充電が難しい。太陽電池はこのような欠点は少ないものの、天候に依存するために使用したい際に十分な電力を供給できるとは限らない。エンジン式発電機は、燃料となるガソリンなどを手配しておけば十分な電力を確保できるものの、発電機が発する騒音・振動・排気ガスなどは、長時間稼働が必要な場合は使用する環境での不快感の原因となるとともに、測定の障害となることも考えられる。このようなことから、新しい可動型発電機として燃料電池の利用が期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開特許WO2010/041595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、燃料電池を電源とすることにより、可搬可能で効率よく使用することができる生理活性物質測定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
[1]燃料電池を電力源とし、以下の(1)〜(6)のすべてを含むことを特徴とする生理活性物質測定システム。
(1)反応部:資料と試薬類を混合し反応させるための手段であって、(a)測定対象試料、(b)反応材、(c)測定対象物質を(特異的に結合する物質と反応させることにより)検出可能とするシステム、(d)反応材セット部、(e)分注用ポンプ、(f)温度制御部、をすべて含む。
(2)検出部:反応経過を検出するための手段。
(3)可動部:上記(1)〜(2)の各部を、目的に応じてX軸、Y軸、Z軸それぞれに動かすための手段。
(4)読取部:測定項目に応じて試薬に関する情報を外部から機器に読み取るための手段。
(5)表示操作部:機器の状況を把握する、あるいは、機器を操作するための手段。
(6)制御部:上記(1)〜(5)の各部を制御するための手段。
[2]燃料電池がダイレクトメタノール燃料電池であることを特徴とする[1]に記載の生理活性物質測定システム。
[3]装置から2m離れた位置での騒音レベルが40dB以下であることを特徴とする[1]又は[2]のいずれかに記載の生理活性物質測定システム。
[4]燃料電池に使用する高分子電解質膜が、厚みが60μm以下であり、5Mメタノールのメタノール透過速度が10mmol/m・s以下である炭化水素系高分子膜であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の生理活性物質測定システム。
【発明の効果】
【0007】
本発明は燃料電池を電源とすることにより、可搬可能で効率よく使用することができる生理活性物質測定システムを提供することができ、商用電源が配備されていない環境下や災害時において、感染菌を効率よく迅速に同定することを可能にするものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明のダイレクトメタノール燃料電池を電力源とする生理活性物質測定システムの1例である。
【図2】図2は、図1中の生理活性システム反応部の1例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に示す燃料電池の中で水素を燃料とする燃料電池は、高分子電解質膜と高分子電解質膜を両側から挟むアノード(燃料極)およびカソード(空気極)を含む複数の燃料電池セルを直列に接続(積層)した燃料電池セルスタックとして構成される。燃料電池のアノードおよびカソードには、例えば白金Ptからなる触媒が含まれる。アノードには、水素と水が供給され電極触媒反応によりプロトン、電子が生成する。カソードには空気が導入され、空気中の酸素が高分子電解質膜を通ってきたプロトンおよび外部回路を通ってきた電子と反応して水を生成する。
【0010】
本発明に示す燃料電池の中でダイレクトメタノール燃料電池は、高分子電解質膜と高分子電解質膜を両側から挟むアノード(燃料極)およびカソード(空気極)を含む複数の直接メタノール型燃料電池セルを直列に接続(積層)した燃料電池セルスタックとして構成される。燃料電池のアノードには、例えば白金PtおよびルテニウムRuからなる触媒が含まれ、カソードには、例えば白金Ptからなる触媒が含まれる。アノードには、メタノールと水が供給され電極触媒反応によりプロトン、電子が生成し、副生成物として二酸化炭素が生成する。カソードには空気が導入され、空気中の酸素が高分子電解質膜を通ってきたプロトンおよび外部回路を通ってきた電子と反応して水を生成する。
【0011】
ダイレクトメタノール燃料電池は、高濃度のメタノール燃料(メタノールを約50wt%程度含む水溶液から100wt%メタノール)を収容する燃料タンクを含み、燃料タンクは燃料供給パイプを介して希釈メタノール水溶液が収容される水溶液タンクに接続される。燃料ポンプの駆動によって燃料タンク内のメタノール燃料が水溶液タンクに供給される。水溶液タンクには水位レベルセンサが装着され、水溶液タンク内のメタノール水溶液の水位が検出されるとともに、燃料電池セルスタックに供給される希釈濃度メタノールが調整される。水溶液タンクは、水溶液パイプを介して燃料電池のアノードに接続される。水溶液ポンプによりメタノール水溶液は、必要により冷却ファンを有する熱交換器および水溶液フィルタを通してアノードに供給される。一方、ダイレクトメタノール燃料電池のカソードにはエアポンプにより空気供給パイプを介して酸素を含む空気が供給される。必要に応じて、エアフィルタ、エアポンプの騒音を低下させるためのエアチャンバが使用される。
【0012】
アノード出口と水溶液タンクとはパイプを介して接続され、アノードから排出される未反応のメタノールを含む水溶液や生成された二酸化炭素やガス化したメタノール等が水溶液タンクに与えられる構成とできる。また、カソード出口には必要に応じてパイプを介して水タンクが接続される。さらにパイプには、必要に応じて冷却ファンを有する気液分離器が介挿され、カソードから排出される水分(水および水蒸気)を含む排気がパイプを介して水タンクに与えられる。水タンクは水還流パイプを介して水溶液タンクに接続され、水溶液タンクの状況に応じて必要なときに水溶液タンクへ水が還流される構成とできる。
【0013】
本発明のダイレクトメタノール燃料電池が発生する運転音は上記のポンプ類によるものが主となるのみで、エンジン式の発電機に比べて遙かに騒音レベルが低い特徴がある。限外濾過装置モータが駆動していない状態で、装置から2m離れた位置での騒音レベルが40dB以下とすることができることを特徴とするが、35dB以下となる装置とすることが好ましく、30dB以下であることが特に好ましい。
【0014】
ダイレクトメタノール燃料電池には二次電池が接続される。二次電池は、燃料電池からの出力を補完するものであり、燃料電池からの電気エネルギーによって充電され、その放電によってモータや補機類に電気エネルギーを与える。直流電流を利用する際は直流モータを直接駆動させることができるが、交流モータを駆動させる場合には、インバータを介して燃料電池が発電した直流電流を交流電流とすることができる。また必要に応じて電圧変更を加えることや、電圧変更後直流に戻して使用するようにすることもできる。
【0015】
ダイレクトメタノール燃料電池に使用する高分子電解質膜を形成するポリマーには、パーフルオロスルホン酸系ポリマーを使用することができるが、以下に記載する高分子電解質を用いることもできる。
例えば、芳香族炭化水素系のイオン性基含有ポリマーとしては、ポリマー主鎖に芳香族あるいは芳香環とエーテル結合、スルホン結合、イミド結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、スルフィド結合、カーボネート結合及びケトン結合から選択される少なくとも1種以上の結合基を有する構造を持つ非フッ素系のイオン伝導性ポリマーであり、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリパラフェニレン、ポリアリーレン系ポリマー、ポリフェニルキノキサリン、ポリアリールケトン、ポリエーテルケトン、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド等の構成成分の少なくとも1種を含むポリマーに、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボキシル基、及びそれらの誘導体の少なくとも1種が導入されているポリマーが挙げられる。
なお、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボシキル基などの官能基をポリマーに含むことで、ポリマーのイオン伝導性が発現される。この中で特に有効に作用する官能基は、スルホン酸基である。また、ここでいうポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン等は、その分子鎖にスルホン結合、エーテル結合、ケトン結合を有しているポリマーの総称であり、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンスルホンなどを含むとともに、これらのポリマーを使用することができる。
【0016】
上記官能基を含有するポリマーのうち、特に芳香環上にスルホン酸基を持つポリマーは、上記例のような骨格を持つポリマーに対して適当なスルホン化剤を反応させることにより得ることができる。このようなスルホン化剤としては、例えば、芳香族系炭化水素系ポリマーにスルホン酸基を導入する例として報告されている、濃硫酸や発煙硫酸を使用するもの(例えば、Solid State Ionics,106,P.219(1998))、クロル硫酸を使用するもの(例えば、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,22,P.295(1984))、無水硫酸錯体を使用するもの(例えば、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,22,P.721(1984)、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,23,P.1231(1985))等が有効である。本発明のイオン性基含有ポリマー、特にイオン伝導性がスルホン酸基であるポリマーを得るためには、これらの試薬を用い、それぞれのポリマーに応じた反応条件を選定することにより実施することができる。また、特許第2884189号に記載のスルホン化剤等を用いることも可能である。
【0017】
また、上記芳香族炭化水素系イオン性基含有ポリマーは、重合に用いるモノマーの中の少なくとも1種に酸性基を含むモノマーを用いて合成することもできる。例えば、芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物から合成されるポリイミドにおいては、芳香族ジアミンの少なくとも1種にスルホン酸基やホスホン酸基を含有するジアミンを用いて酸性基含有ポリイミドとすることが出来る。芳香族ジアミンジオールと芳香族ジカルボン酸から合成されるポリベンズオキサゾール、芳香族ジアミンジチオールと芳香族ジカルボン酸から合成されるポリベンズチアゾール、芳香族テトラミンと芳香族ジカルボン酸から合成されるポリベンズイミダゾールの場合は、芳香族ジカルボン酸の少なくとも1種にスルホン酸基含有ジカルボン酸やホスホン酸基含有ジカルボン酸を使用することにより酸性基含有ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリベンズイミダゾールとすることが出来る。芳香族ジハライドと芳香族ジオールから合成されるポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトンなどは、モノマーの少なくとも1種にスルホン酸基含有芳香族ジハライドやスルホン酸基含有芳香族ジオールを用いることで合成することが出来る。この際、スルホン酸基含有ジオールを用いるよりも、スルホン酸基含有ジハライドを用いる方が、重合度が高くなりやすいとともに、得られた酸性基含有ポリマーの熱安定性が高くなるので好ましい。
【0018】
芳香族炭化水素系イオン性基含有ポリマーは、スルホン酸基含有ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリエーテルケトン系ポリマーなどのポリアリーレンエーテル系化合物、ポリアリーレン系化合物であることがより好ましい。
【0019】
芳香族炭化水素系イオン性基含有ポリマーの中で特に好ましいのは、一般式1で表される繰り返し単位を有するものである。
【化1】

[一般式1において、Xは−S(=O)−基又は−C(=O)−基を、YはH又は1価の陽イオンを、ZはO又はS原子のいずれかを、Zは、O原子、S原子、−C(CH−基、−C(CF−基、−CH−基、シクロヘキシル基、直接結合のいずれかを、n1は1以上の整数を表す。]
【0020】
一般式1において、Xは−S(=O)−基であると溶剤への溶解性が向上するため好ましい。Xが−C(=O)−基であると、ポリマーの軟化温度を下げて電極との接合性をさらに高めたり、電解質膜に光架橋性を付与したりすることができるため好ましい。高分子電解質膜として用いる場合には、YはH原子であることが好ましい。ただし、YがH原子であると、熱などによって分解しやすくなるので、電解質膜の製造などの加工時にはYをNaやKなどのアルカリ金属塩としておき、加工後に酸処理によってYをH原子に変換して高分子電解質膜を得ることもできる。ZはO原子であるとポリマーの着色が少なかったり、原料が入手しやすかったりするなどの利点があり好ましい。ZがSであると耐酸化性が向上するため好ましい。n1は1〜30の範囲にあることが好ましく、n1が3以上の場合には、n1が異なる複数の単位が含まれていてもよい。Zは、O原子、S原子、−C(CH−基、−C(CF−基、−CH−基、シクロヘキシル基、直接結合を表し、O原子、S原子であるとより接合性がより改良されるため好ましい。Zが直接結合である場合は、得られる高分子電解質膜の寸法安定性が改良されるために好ましい。n1が3以上の場合はZがO原子であると、高分子電解質膜にした場合の電極触媒層との接合性が特に向上するため好ましい。
【0021】
一般式1で表される繰り返し単位を有するイオン性基含有ポリマーは、さらに一般式2で表される繰り返し単位をさらに含有していることが好ましい。
【0022】
【化2】

[一般式2において、Arは二価の芳香族基を、ZはO原子又はS原子のいずれかを、Zは、O原子、S原子、−C(CH−基、−C(CF−基、−CH−基、シクロヘキシル基、直接結合のいずれかを、n2は1以上の整数を表す。]
【0023】
一般式2において、ZはO原子であるとポリマーの着色が少なかったり、原料が入手しやすかったりするなどの利点があり好ましい。ZがS原子であると耐酸化性が向上するため好ましい。n2は1〜30の範囲にあることが好ましく、n2が3以上の場合には、n2が異なる複数の単位が含まれていてもよい。Zは、O原子、S原子、−C(CH−基、−C(CF−基、−CH−基、シクロヘキシル基、直接結合を表し、O原子、S原子であるとより接合性がより改良されるため好ましい。Zが直接結合である場合は、得られる高分子電解質膜の寸法安定性が改良されるために好ましい。n2が3以上の場合はZがO原子であると、高分子電解質膜にした場合の電極触媒層との接合性が特に向上するため好ましい。
【0024】
本発明における高分子電解質膜を構成するイオン性基含有ポリマーが、主として、一般式1で表される繰り返し単位と、一般式2で表される繰り返し単位で構成される場合には、それぞれのモル比は、7:93〜70:30の範囲であることが好ましい。モル比が7:93とは、一般式1で表される繰り返し単位のモル数を7としたとき、一般式2で表される繰り返し単位のモル数が93であることを表す。70:30のモル比よりも一般式1で表される繰り返し単位が多くなると、高分子電解質膜としたときの燃料透過性が大きくなる場合があり好ましくない。7:93のモル比よりも一般式1で表される繰り返し単位が少なくなると、高分子電解質膜としたときのプロトン伝導性が低下して抵抗が増大するため好ましくない。10:90〜50:50の範囲であることがより好ましい。10:90〜40:60の範囲であることがさらに好ましい。本発明におけるイオン性基含有ポリマーは、一般式1及び一般式2で表される繰り返し単位を有することによって適切な軟化温度を有し、高分子電解質膜としたときに良好な電極との接合性を示す。
【0025】
一般式2におけるArは、電子吸引性基を有する二価の芳香族基が好ましい。電子吸引性基とは、例えばスルホン基、スルホニル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、スルホン酸アミド基、スルホン酸イミド基、カルボキシル基、カルボニル基、カルボン酸エステル基、シアノ基、ハロゲン基、トリフルオロメチル基、ニトロ基などを挙げることができるが、これらに限定されず、公知の任意の電子吸引性基であればよい。
【0026】
Arの好ましい構造は、化学式3〜6で表される構造である。化学式3の構造はポリマーの溶解性を高めることができ好ましい。化学式4の構造はポリマーの軟化温度を下げて電極との接合性を高めたり、光架橋性を付与したりするので好ましい。化学式5又は6の構造はポリマーの膨潤を少なくできるので好ましく、化学式6の構造がより好ましい。化学式3〜6の中でも化学式6の構造が最も好ましい。
【0027】
【化3】

【0028】
本発明の高分子電解質膜を構成するイオン性基含有ポリマーのさらに好ましい態様の一つは、高分子電解質膜が主として、一般式1で表される構造と、一般式2で表される構造で構成され、かつ一般式1におけるZ及びZがいずれもO原子であり、かつ、n1が3以上であるイオン性基含有ポリマーである。このようなイオン性基含有ポリマーを用いると、電極との接合性が特に向上するため好ましい。
【0029】
前記のイオン性基含有ポリマーのさらに好ましい態様の一つは、一般式2における、Z及びZがいずれもO原子であり、かつ、n2が3以上であるとより好ましい。このようなイオン性基含有ポリマーを用いると、電極との接合性がより一層向上するため好ましい。
【0030】
本発明の高分子電解質膜を構成するイオン性基含有ポリマーのさらに好ましい態様の一つは、一般式1及び一般式2に加えて、一般式7で表される繰り返し単位を有するイオン性基含有ポリマーである。一般式1及び一般式2で表される繰り返し単位に加え、一般式7で表される繰り返し単位をさらに有していることが、高分子電解質膜としたときの膜の形態安定性を高めることができるため好ましい。
【0031】
【化4】

[一般式7において、Xは−S(=O)−基又は−C(=O)−基を、YはH又は1価の陽イオンを、ZはO又はS原子のいずれかを表す。]
【0032】
一般式7において、Xは−S(=O)−基であると溶剤への溶解性が向上するため好ましい。Xが−C(=O)−基であると、ポリマーの軟化温度を下げて電極との接合性をさらに高めたり、電解質膜に光架橋性を付与したりすることができるため好ましい。高分子電解質膜として用いる場合には、YはH原子であることが好ましい。ただし、YがH原子であると、熱などによって分解しやすくなるので、電解質膜の製造などの加工時にはYをNaやKなどのアルカリ金属塩としておき、加工後に酸処理によってYをH原子に変換して高分子電解質膜を得ることもできる。ZはO原子であるとポリマーの着色が少なかったり、原料が入手しやすかったりするなどの利点があり好ましい。ZがSであると耐酸化性が向上するため好ましい。
【0033】
本発明の高分子電解質膜を構成するイオン性基含有ポリマーが、一般式1、2、及び7で表される繰り返し単位を有している場合には、Z及びZが、O原子又はS原子であり、かつ、n1が1であると、高分子電解質膜とした場合の電極触媒層との接合性と、膜の形態安定性がより良好になるので好ましい。また、Z及びZが、O原子又はS原子であり、かつ、n2が1であると、高分子電解質膜とした場合の電極触媒層との接合性と、膜の形態安定性がさらに良好になるので好ましい。
【0034】
本発明の高分子電解質膜を構成するイオン性基含有ポリマーは、一般式1、2、及び7で表される繰り返し単位に加え、一般式8で表される繰り返し単位をさらに有していると、高分子電解質膜としたときに、電極触媒層との接合性と、膜の形態安定性を大きく向上することができるためよりより好ましい。
【0035】
【化5】

[一般式8において、Arは2価の芳香族基を、ZはO原子又はS原子のいずれかを表す。]
【0036】
一般式8におけるZはO原子であるとポリマーの着色が少なかったり、原料が入手しやすかったりするなどの利点があり好ましい。ZがS原子であると耐酸化性が向上するため好ましい。化学式8におけるArは、電子吸引性基を有する二価の芳香族基が好ましい。電子吸引性基とは、例えばスルホン基、スルホニル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、スルホン酸アミド基、スルホン酸イミド基、カルボキシル基、カルボニル基、カルボン酸エステル基、シアノ基、ハロゲン基、トリフルオロメチル基、ニトロ基などを挙げることができるが、これらに限定されず、公知の任意の電子吸引性基であればよい。
【0037】
Arの好ましい構造は、化学式3〜6で表される構造である。化学式3の構造はイオン性基含有ポリマーの溶解性を高めることができ好ましい。化学式4の構造はイオン性基含有ポリマーの軟化温度を下げて電極との接合性をさらに高めたり、光架橋性を付与したりするので好ましい。化学式5又は6の構造はイオン性基含有ポリマーの膨潤を少なくできるので好ましく、化学式6の構造がより好ましい。化学式3〜6の中でも化学式6の構造が最も好ましい。
【0038】
本発明の高分子電解質膜を構成するイオン性基含有ポリマーが、一般式1、2、7及び8でそれぞれ表される繰り返し単位を全て有している場合は、それぞれの繰り返し単位のモル%、及びその他の繰り返し単位のモル%が下記数式1〜3を満たすことが好ましい。
【0039】
0.9≦(n3+n4+n5+n6)/(n3+n4+n5+n6+n7)≦1.0
数式1
0.05≦(n3+n4)/(n3+n4+n5+n6)≦0.7 数式2
0.01≦(n4+n6)/(n3+n4+n5+n6)≦0.95 数式3(上記数式中、n3は一般式7で表される繰り返し単位のモル%を、n4は一般式1で表される繰り返し単位のモル%を、n5は一般式8で表される繰り返し単位のモル%を、n6は一般式2で表される繰り返し単位のモル%を、n7はその他の繰り返し単位のモル%を、それぞれ表す。)
【0040】
(n3+n4+n5+n6)/(n3+n4+n5+n6+n7)が0.9よりも小さいと、高分子電解質膜としたときに良好な特性が得られないため好ましくない。より好ましいのは0.95〜1.0の範囲である。
【0041】
(n3+n4)/(n3+n4+n5+n6)が0.05よりも小さくなると、高分子電解質膜としたときに十分なプロトン伝導性が得られないため好ましくない。また、0.9よりも大きいと高分子電解質膜としたときの膨潤性が著しく大きくなるため好ましくない。より好ましい範囲は0.1〜0.7の範囲である。
【0042】
(n3+n4)/(n3+n4+n5+n6)は0.07〜0.5の範囲であることが好ましく、0.1〜0.4の範囲であることがより好ましい。0.5よりも大きいと、燃料透過性が大きくなる場合があり好ましくない。0.07よりも小さいと、プロトン伝導性が低下して抵抗が増大するため好ましくない。
【0043】
(n4+n6)/(n3+n4+n5+n6)が0.01よりも少ないと、高分子電解質膜としたときに電極触媒層との接合性が低下するため好ましくない。0.95よりも大きいと、高分子電解質膜としたときの膨潤性が大きくなりすぎる場合があるため好ましくない。0.05〜0.8がより好ましい範囲である。0.4〜0.8の範囲であることがさらに好ましい。
【0044】
なお、本発明におけるイオン性基含有ポリマーにおいて、上記各一般式で表される各繰り返し単位の結合様式は特に限定されるものではなく、ランダム結合、交互結合、連続したブロック構造での結合など、いずれでもよい。
【0045】
本発明における上記イオン性基含有ポリマーの合成方法としては、公知の方法を採用でき、特に限定されないが、合成に用いる原料モノマーの好ましい例として、下記一般式9〜11で表される構造のモノマーを挙げることができる。さらに、一般式12で表される構造のモノマーをさらに用いると、膜の形態安定性など物理的な特性が向上するため好ましい。
【0046】
【化6】

【0047】
一般式9〜12において、Xは−S(=O)−基又は−C(=O)−基を、YはH又は1価の陽イオンを、Z及びZ10は、それぞれ独立してCl原子、F原子、I原子、Br原子、ニトロ基のいずれかを、Z及びZ11は、それぞれ独立してOH基、SH基、−O−NH−C(=O)−R基、−S−NH−C(=O)−R基のいずれかを[Rは芳香族又は脂肪族の炭化水素基を表す。]、Zは、O原子、S原子、−C(CH−基、−C(CF−基、−CH−基、シクロヘキシル基のいずれかを、Arは分子中に、スルホン基、カルボニル基、スルホニル基、ホスフィン基、シアノ基、トリフルオロメチル基などのパーフルオロアルキル基、ニトロ基、ハロゲン基などの電子吸引性基を有する芳香族基を表す。
【0048】
一般式9で表される化合物の具体例としては、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジフルオロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホブチル−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホブチル−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホブチル−4,4’−ジクロロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホブチル−4,4’−ジフルオロジフェニルケトン、及びそれらのスルホン酸基が1価陽イオン種との塩になったもの等が挙げられる。1価陽イオン種としては、ナトリウム、カリウムや他の金属種や各種アミン類等でも良く、これらに制限されるわけではない。
【0049】
一般式9で表される化合物のうち、スルホン酸基が塩になっている化合物の例としては、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジクロロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジフルオロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホン酸カリウム−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホン酸カリウム−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホン酸カリウム−4,4’−ジクロロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホン酸カリウム−4,4’−ジフルオロジフェニルケトンなどを挙げることができる。
【0050】
一般式10で表される化合物の具体例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−チオビスベンゼンチオール、4,4’−オキシビスベンゼンチオール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどを挙げることができ、4,4’−チオビスベンゼンチオール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、末端ヒドロキシル基含有フェニレンエーテルオリゴマー(下記化学式13で表される構造のもの)が好ましい。化学式13においては、nは1以上の整数からなり、nの異なる成分が混合されたものでも良い。
【0051】
【化7】

【0052】
一般式10で表される構造のモノマーは、イオン性基含有ポリマーの柔軟性を高め、変形に対する破壊を抑制することや、ガラス転移温度を低下させて電極触媒層との接合性を向上させたりするなどの効果をもたらすことができる。
【0053】
一般式11で表される化合物としては、同一芳香環にハロゲン、ニトロ基などの求核置換反応における脱離基と、それを活性化する電子吸引性基を有する化合物を挙げることができる。具体例としては、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,4−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、2,4−ジフルオロベンゾニトリル、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、デカフルオロビフェニル等が挙げられるがこれらに制限されることなく、芳香族求核置換反応に活性のある他の芳香族ジハロゲン化合物、芳香族ジニトロ化合物、芳香族ジシアノ化合物なども使用することができる。
【0054】
一般式12で表される化合物の例としては、4,4’−ビフェノール、4、4’−ジメルカプトビフェノールなどを挙げることができ、4,4’−ビフェノールが好ましい。
上述の芳香族求核置換反応において、一般式9〜12で表される化合物とともに他の各種活性化ジハロゲン芳香族化合物やジニトロ芳香族化合物、ビスフェノール化合物、ビスチオフェノール化合物をモノマーとして併用することもできる。
【0055】
その他のビスフェノール化合物又はビスチオフェノール化合物の例としては、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ハイドロキノン、レゾルシン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、1,4−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、フェノールフタレイン、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキサイド等が挙げられるが、この他にも芳香族求核置換反応によるポリアリーレンエーテル系化合物の重合に用いることができる各種芳香族ジオール又は各種芳香族ジチオールを使用することもでき、上記の化合物に限定されるものではない。
【0056】
本発明におけるイオン性基含有高分子電解質膜の製造方法においては、上記の活性化ジハロゲン芳香族化合物やジニトロ芳香族化合物や芳香族ジオール類又は芳香族ジチオール類を原料とし、塩基性化合物の存在下で、公知の芳香族求核置換反応により重合して得られるポリマーで、対数粘度が0.1〜2.0dL/gで、軟化温度が90℃以上のものが好ましく、さらに軟化温度が140〜250℃のものがより好ましい。
【0057】
ダイレクトメタノール燃料電池の発電効率を高くするためには、メタノール透過速度の小さい高分子電解質膜を使用することが好ましい。メタノールが高分子電解質膜を透過しやすいと、アノードでの未反応メタノールがカソード側に移動する割合が増し、燃料利用率が低下するとともに、カソード側でメタノール酸化反応が起こることで起電力低下が起こるためである。メタノール透過速度の低い膜としては炭化水素系高分子電解質膜が有利となる。このため、燃料電池に使用する高分子電解質膜として、厚みが60μm以下であり、5Mメタノールのメタノール透過速度が10mmol/m・s以下である炭化水素系高分子膜が好ましい。メタノール透過速度が7mmol/m・s以下であれば更に好ましく、5mmol/m・s以下であれば特に好ましいと言える。高分子電解質膜のメタノールの透過速度は、以下の方法で測定される。25℃に調整した5M(モル/リットル)のメタノール水溶液に24時間浸漬した高分子電解質膜交換膜をH型セルに挟み込み、セルの片側に100mlの5Mメタノール水溶液を、他方のセルに100mlの超純水(18MΩ・cm)を注入し、25℃で両側のセルを撹拌しながら、イオン交換膜を通って超純水中に拡散してくるメタノール量をガスクロマトグラフを用いて測定することで算出する。
【0058】
本発明の生理活性物質測定システムは、図1に示すように、反応部、測定対象試料、反応材、測定対象物質を検出可能とするシステム、反応材セット部、分注用ポンプ、温度制御部、の構成要素よりなる。このうち、反応部は試料と試薬類を混合し反応させるための手段であるが、図2に示すように(a)測定対象試料、(b)反応材、(c)測定対象物質を(特異的に結合する物質と反応させることにより)検出可能とするシステム、(d)反応材セット部、(e)分注用ポンプ、(f)温度制御部、からなる。読取部は、ICカードリーダー、バーコードリーダー、反応有り無しセンサ等を備えているとよい。さらに、生理活性物質測定システムには通信ポートを備えていることも好ましい。
【0059】
本発明の生理活性物質測定システムを構成する反応材は、リガンド捕捉剤が結合された多孔性フィルタを含む。多孔性フィルタの素材、構造については特に限定されるものではなく、グラスファイバーフィルタなどを用いることができる。反応材は、さらに吸水プラグを含んでいても良い。吸水プラグは、多孔性フィルタ(固相担体)の下部に溶液の通過を迅速にさせるために設置される。吸水プラグの素材や構造などについては特に限定されるものではないが、たばこのフィルターのようなセルロース繊維を綿状(筒状など)に形成したものが好ましい。反応材は、これらの例示に限定されるものではない。
【0060】
測定対象試料は、いくつかの区切られたセルが結合した形態をしている。その形状は特に限定されるものではないが、測定対象物を検出可能とするシステムを支持する支持部の制御動作を単純化させるために、各セルの結合は一次元方向に直列であることが好ましい。測定対象試料は、使用直前までシールされ密封されていることが好ましい。さらにはシールされたまま測定対象物を検出可能とするシステムにセットされ、測定時に分注チップにより穿孔される構造となっていることが好ましい。
【0061】
検出部は、反応材からの微量な光を検出するための手段として機能するものであり、その具体的な構成については特に限定されるものではない。例えば、市販の光電子増倍管を使用し、光電子増倍管からの微少出力電圧を適宜増幅させることにより検出が可能である。
【0062】
読取部は、外部からの情報を読み取る手段として機能するものであり、その具体的な構成については特に限定されるものではない。例えば、ICカードリーダー、バーコードリーダーおよび反応材有り無しセンサを備える構成が例示される。
【0063】
本発明の生理活性物質測定システムは、反応材、測定対象試料を専用の機器の搭載して測定するように構成されるもので、このような機器も本発明の中に含まれる。
【0064】
本システムでの測定法は、以下の(A)または(B)の工程を含む。
(A)(a)測定対象の生理活性物質を含む試料溶液と、該対象物質に特異的に結合する第一の抗体にリガンドが結合された結合体(試薬1)を含む溶液とを接触させて、試薬1と測定対象物質との複合体を溶液中で形成する工程。(b)該複合体を含む溶液を、反応材の、上記リガンドの捕捉剤が結合された多孔性フィルタの表面に滴下して、該複合体のリガンド部分を、該リガンド捕捉剤に結合させる工程。(c)反応材の多孔性フィルタ表面に、上記測定対象物質に特異的に結合する酵素で標識された第二の抗体(試薬2)の溶液を滴下して、試薬2をリガンド捕捉剤とリガンド部分を介して反応材の多孔性フィルタに結合している第一の抗体と測定物質の複合体に結合させる工程。(d)反応材の多孔性フィルタに結合した酵素の活性を発光基質(試薬3)を用いて測定する工程。
(B)(a)測定対象の生理活性物質を含む試料溶液と、該対象物質に特異的に結合する第一の抗体と、リガンドが結合された結合体(試薬1)と該対象物質に特異的に結合する第一の抗体と同じもしくは異なる部分に結合する第二の抗体と、酵素で標識された第二の抗体(試薬2)を接触させて、試薬1と試薬2と測定対象物質との複合体を溶液中にて形成する工程。(b)該複合体を含む溶液を、反応材の、上記リガンドの捕捉剤が結合された多孔性フィルタの表面に滴下して、該複合体のリガンド部分を該リガンド捕捉剤に結合させる工程。(c)反応材の多孔性フィルタを洗浄することにより未結合の試薬を除去する工程。(d)反応材の多孔性フィルタに結合した酵素の活性を発光基質(試薬3)を用いて測定する工程。
【0065】
本発明にかかる生理活性物質測定システムに適用する測定原理は、上記の例に限定されるものではない。上記においては、測定対象物質を抗原とする抗原抗体反応の特異性を利用して免疫学的測定法による測定計を構築した例を示したが、その他にも測定対象に適した相互作用や適宜利用して測定計を構築して良い。このような相互作用として、DNAやRNAなどの核酸のハイブリダイゼーション、酵素とその基質(または基質アナログ、競争阻害剤など)などが挙げられるがそれらに限定されない。リガンドおよびリガンド捕捉剤の組合せについても、上記の例示に限定されるものではなく、測定対象に適した相互作用を適宜利用して良い。
【実施例】
【0066】
図1および図2に、本発明のダイレクトメタノール燃料電池を電源とする生理活性物質測定システムの1例を示す。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明により、商用電源が利用できない状況においても、簡便かつ迅速に生理活性物質の測定ができるようになるので、商用電源が配備されていない環境下や災害時にライフラインが分断された際において、感染菌の蔓延を未然に防ぐ検査装置として特に有用なものとなることが期待される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池を電力源とし、以下の(1)〜(6)のすべてを含むことを特徴とする生理活性物質測定システム。
(1)反応部:資料と試薬類を混合し反応させるための手段であって、(a)測定対象試料、(b)反応材、(c)測定対象物質を(特異的に結合する物質と反応させることにより)検出可能とするシステム、(d)反応材セット部、(e)分注用ポンプ、(f)温度制御部、をすべて含む。
(2)検出部:反応経過を検出するための手段。
(3)可動部:上記(1)〜(2)の各部を、目的に応じてX軸、Y軸、Z軸それぞれに動かすための手段。
(4)読取部:測定項目に応じて試薬に関する情報を外部から機器に読み取るための手段。
(5)表示操作部:機器の状況を把握する、あるいは、機器を操作するための手段。
(6)制御部:上記(1)〜(5)の各部を制御するための手段。
【請求項2】
燃料電池がダイレクトメタノール燃料電池であることを特徴とする請求項1に記載の生理活性物質測定システム。
【請求項3】
装置から2m離れた位置での騒音レベルが40dB以下であることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の生理活性物質測定システム。
【請求項4】
燃料電池に使用する高分子電解質膜が、厚みが60μm以下であり、5Mメタノールのメタノール透過速度が10mmol/m・s以下である炭化水素系高分子膜であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の生理活性物質測定システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−168032(P2012−168032A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29630(P2011−29630)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】